JP5929775B2 - ガスバリア性フィルムおよびその製造方法、ならびに前記ガスバリア性フィルムを含む電子デバイス - Google Patents

ガスバリア性フィルムおよびその製造方法、ならびに前記ガスバリア性フィルムを含む電子デバイス Download PDF

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本発明は、ガスバリア性フィルムおよびその製造方法、ならびに前記ガスバリア性フィルムを含む電子デバイスに関する。
従来、プラスチック基板やフィルムの表面に、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物を含む薄膜(ガスバリア層)を形成したガスバリア性フィルムが、食品、医薬品等の分野で物品を包装する用途に用いられている。ガスバリアフィルムを用いることによって、水蒸気や酸素等のガスによる物品の変質を防止することができる。
近年、このような水蒸気や酸素等の透過を防ぐガスバリア性フィルムについて、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、液晶表示(LCD)素子等の電子デバイスへの展開が要望され、多くの検討がなされている。これらの電子デバイスにおいては、高いガスバリア性、例えば、ガラス基材に匹敵するガスバリア性が要求される。しかし、このような高いバリア性を有するガスバリア性フィルムは未だ得られていないのが現状である。
ガスバリア性フィルムを製造する方法としては、気相法による無機成膜方法を利用した方法が知られている。当該気相法による無機成膜方法としては、フィルム等の基材上に、プラズマCVD法(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長法、化学蒸着法)によって金属(テトラエトキシシラン(TEOS)に代表される有機ケイ素化合物等)を酸素プラズマで酸化しながら蒸着して無機膜(ガスバリア層)を形成する方法、および半導体レーザー等を用いて金属を蒸発させて、酸素の存在下で基板上に堆積する真空蒸着法やスパッタ法により無機膜(ガスバリア層)を形成する方法等が挙げられる。
これらの気相法による無機成膜方法は、食品、医薬品等の分野で物品を包装に用いられるガスバリア性フィルムの製造に用いられてきた。そして近年、当該無機成膜方法により製造されたガスバリア性フィルムを電子デバイスに適用すべく、さらに高いガスバリア性を得るための検討が行われている。このような検討としては、形成される無機膜の好適な組成範囲の決定、無機膜の膜厚の増加、複数の無機膜の積層等が挙げられる。
しかしながら、気相法による無機成膜方法では、形成された無機膜(ガスバリア層)に欠陥が生じる場合がある。そのため、無機膜の組成範囲を好適なものとしても、欠陥により十分なガスバリア性が得られないことがある。また、無機膜の膜厚の増加や無機膜の積層を行ったとしても、欠陥の連続成長やクラックの発生により、十分なガスバリア性が得られないことがある。
このような背景のなか、気相法による無機膜形成法のうち、原子層堆積法(ALD法:Atomic Layer Deposition)は、形成される無機膜に欠陥が少なく、緻密かつ良好なガスバリア性を有するガスバリア層が得られることが報告されている。ALD法とは、2種以上のガスを基材上に交互に導入することにより、原子層を1層ごとに堆積させる方法である。ALD法により製造されたガスバリア性フィルムは、高いガスバリア性を有することから、電子デバイスに適用できる可能性がある。
しかしながら、ALD法は原子層を1層ごとに堆積させる方法であることから、ガスバリア層の厚さを確保するためには長時間を要するという問題がある。通常、ALD法により形成された原子層の厚さは約0.1nmであり、原子層1層を形成するのに要する時間は約8.4秒である。そのため、例えば、100nmを成膜しようとすると、単純計算で140分もの時間を要するのである。特許文献1には、基板上に、互いに対向する一対の電極間に有機発光材料を配置した構造体を備える有機EL素子であって、前記構造体の外表面に、前記有機発光材料を被覆する保護層を有し、この保護層がALD法により形成されていることを特徴とする有機EL素子が開示されている。特許文献1によれば、TMA(トリメチルアルミニウム)のガスおよびHOのガスを基板上に交互に導入し、5000回繰り返すことにより、膜厚約400nmのアルミナ(Al)の保護層を得ている。そして、上記保護層の形成には約11時間もの長時間を要することが記載されている。
ALD法では、成膜時の温度が高いほど良好なガスバリア性が得られる傾向がある。例えば、特許文献2には、プラスチック基板上に、少なくとも一層の無機物からなるバリア層と少なくとも一層の有機層とを交互に有するガスバリアフィルムであって、前記バリア層の少なくとも一層がALD法によって形成されたことを特徴とするガスバリアフィルムが開示されている。そして、実施例(特に、B−1およびB−12)には、基材上に、ALD法で形成された無機バリア層、有機層、ALD法で形成された無機バリア層がこの順で積層されたガスバリアフィルムが開示されている。B−1およびB−12のガスバリアフィルムを対比すると、ALD法を250℃で行った場合のガスバリアフィルム(B−1)では、水蒸気透過率が0.005g/m・dayであるのに対し、ALD法を100℃で行った場合のガスバリアフィルム(B−12)では、水蒸気透過率が0.05g/m・dayである(水蒸気透過率は、38℃、相対湿度90%の条件下でMOCON法により測定している)。すなわち、成膜時の温度が高いほど良好なガスバリア性が得られることが示されている。しかしながら、このような高温条件を適用するためには、基板に耐熱性が求められる。一般的に、耐熱性を有する基板は、耐熱性を有さない基板よりも高価であることから、工業的な観点を考慮するとコストの面で不利である。
また、ALD法を用いた場合には高いガスバリア性を有しうるが、この場合であっても、電子デバイスに適用するには十分なガスバリア性が必ずしも得られていない。例えば、上述のように特許文献2に記載のガスバリアフィルムでは、水蒸気透過率は0.005g/m・dayとなっている。
ところで、上記気相法による無機成膜法を利用しないガスバリア性フィルムの製造方法も検討されている。当該ガスバリア性フィルムの製造方法としては、例えば、無機前駆体を主成分とする塗布液を基材上に塗布した後、表面処理してガスバリア層を形成するガスバリア性フィルムの製造方法が報告されている。特許文献3には、樹脂基材上に、シラザン骨格を基本ユニットとするポリマーを塗工して膜厚250nm以下のポリマー膜を形成する第一ステップと、形成されたポリマー膜に真空紫外光を照射する第二ステップと、上記第二ステップで形成された膜上に、上記第一ステップ及び上記第二ステップを繰り返して膜を重ねて形成する第三ステップと、を含む、フレキシブルガスバリアフィルムの製造方法が開示されている。特許文献3の製造方法により得られるフレキシブルガスバリアフィルムによれば、ポリマー膜上に孔や凹部等の欠陥がなく表面が平滑であり、ガスバリア性に優れることが記載されている。さらに、ポリマー膜の総膜厚を薄くできることから、フィルムのフレキシビリティが良好であり、クラックも生じにくく、基材とポリマー膜、そして層間の接着性も良好で膜や層の剥離も生ずることがないことが記載されている。
特開2001−284042号公報 特開2007−090803号公報 特開2009−255040号公報
しかしながら、特許文献3の方法によって得られるフレキシブルガスバリアフィルムは、保存安定性、特に過酷な条件(高温高湿条件)下での保存安定性に劣るという問題があった。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、保存安定性、特に過酷な条件(高温高湿条件)下での保存安定性に優れるガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、基材上に、ポリシラザン化合物の改質層(第1のガスバリア層)およびALD法により形成された第2のガスバリア層と、をこの順で配置してなるガスバリア性フィルムにより、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の上記課題は、基材と、ポリシラザン化合物を含む塗布液を塗布して得られた塗膜に、真空紫外光を照射して形成された第1のガスバリア層と、原子層堆積法(ALD法)により形成された金属酸化物を含む第2のガスバリア層と、この順に配置されてなる、ガスバリア性フィルムによって達成される。
本発明の上記課題はまた、ポリシラザン化合物を含む塗布液を基材上に塗布し、真空紫外光を照射して第1のガスバリア層を形成する工程(1)と、前記第1のガスバリア層上に、金属化合物を用いて原子層堆積法(ALD法)により第2のガスバリア層を形成する工程(2)と、を有する、本発明のガスバリア性フィルムの製造方法によっても達成される。
本発明のガスバリア性フィルムは、保存安定性、特に過酷な条件(高温高湿条件)下での保存安定性に優れる。
本発明のガスバリア性フィルムの層構成の一実施形態を示す概略断面図である。 本発明に係る制御層の好ましい形態であるCVD層の形成に用いられる真空プラズマCVD装置の一例を示す模式図である。 本発明に係る制御層の好ましい形態であるCVD層の形成に用いられる他の製造装置の一例を示す模式図である。 極値等を有さないガスバリア層のXPSデプスプロファイルによる層の厚さ方向の各元素プロファイルの一例である。 実施例6〜9のガスバリア性フィルム(6)〜(9)におけるCVD層の膜厚組成を示す図である。 本発明に係るガスバリア性フィルムを封止フィルムとして用いた電子機器である有機ELパネルの一例である。
本発明は、基材と、ポリシラザン化合物を含む塗布液を塗布して得られた塗膜に、真空紫外光を照射して形成された第1のガスバリア層(本明細書では、「第1のガスバリア層」または「PHPS層」とも称する)と、原子層堆積法(ALD法)により形成された金属酸化物を含む第2のガスバリア層(本明細書では、「第2のガスバリア層」または「ALD層」とも称する)と、がこの順に配置されてなる、ガスバリア性フィルムを提供する。
また、本発明は、ポリシラザン化合物を含む塗布液を基材上に塗布し、真空紫外光を照射して第1のガスバリア層を形成する工程(1)(本明細書では、「工程(1)」とも称する)と、前記第1のガスバリア層上に、金属化合物を用いて原子層堆積法(ALD法)により第2のガスバリア層を形成する工程(2)(本明細書では、「工程(2)」とも称する)と、を有する、本発明のガスバリア性フィルムの製造方法をも提供する。
本発明のガスバリア性フィルムは、PHPS層及びALD層が基材上にこの順に配置される構造(即ち、基材/PHPS層/ALD層)を有することを特徴とする。このような構造を有するガスバリア性フィルムは優れた保存安定性、特に過酷な条件(高温高湿条件)下での保存安定性を発揮できる。ここで、本発明の構成による上記作用効果の発揮のメカニズムは以下のように推測される。なお、本発明は下記に限定されるものではない。すなわち、ポリシラザン化合物を含む塗布液を塗布して得られた塗膜に、真空紫外光を照射して形成される第1のガスバリア層は、容易に所定の膜厚に成膜することができる。しかしながら、第1のガスバリア層を形成する際の真空紫外光照射(改質処理)により膜を緻密化させるにしたがって、ポリシラザン化合物塗布表面が収縮して、第1のガスバリア層表面にクラックやダングリングボンド(未結合手)等の欠陥が発生する。このため、第1のガスバリア層のみを基材上に配置されてなるガスバリア性フィルムは、高温高湿条件下では、上記クラックやダングリングボンドを起点として劣化が生じてしまい、その結果、ガスバリア性フィルムは湿熱耐性に劣るという耐久性上の問題がある。一方、原子層堆積法(ALD法)により形成されるALD層は、原子層単位で膜を形成するため、欠陥の少ないまたは欠陥が存在しない緻密な構造を有する。しかしながら、上述したように、ALD法は成膜速度が遅いため、所定の膜厚を得ようとすると、かなり長い時間を要し、大量生産には適さないという産業上の問題がある。これに対して、本発明によるように、PHPS層上に緻密な構造を有するALD層を設けることによって、高温高湿条件下であっても、ガスバリア性フィルム表面(ALD層表面)にはクラックやダングリングボンド(未結合手)が発生しにくいまたは発生しない。また、たとえ、第1のガスバリア層(PHPS層)にクラックやダングリングボンドが発生しても、ALD層がこれらの欠陥を被覆(補修)して、密な表面を形成するため、高温高湿条件下であってもガスバリア性(例えば、低酸素透過性、低水蒸気透過性)の低下を抑制・防止できる。また、ALD法で堆積する膜で酸化物を形成することで、成膜面全面をOH基にすることができ、ポリシラザンが原子単位で緻密に原子層堆積膜と密着し、ポリシラザン膜自体が緻密になることによっても、高温高湿条件下でのガスバリア性(例えば、低酸素透過性、低水蒸気透過性)を向上できる。
また、このような構造を有するガスバリア性フィルムは、本来、ガスバリア性に優れるPHPS層及びALD層との組み合わせであるため、高いガスバリア性(例えば、低酸素透過性、低水蒸気透過性)を有する。
したがって、本発明のガスバリア性フィルムは、保存安定性、特に過酷な条件(高温高湿条件)下での保存安定性に優れる。また、本発明のガスバリア性フィルムは、10−5〜10−6g/m/dayの水蒸気透過度(WVTR)という優れたガスバリア性を示すため、有機エレクトロルミネッセンスなどに好適に使用できる。加えて、本発明のガスバリア性フィルムは、透明性、屈曲性にも優れる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」及び「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
<ガスバリア性フィルム>
本発明のガスバリア性フィルムの層の構成について、図1を用いて説明する。
図1において、本発明のガスバリア性フィルム11は、基材12、ならびに上記基材12上に順次形成された第1のガスバリア層13及び第2のガスバリア層14を有する。なお、本発明のガスバリア性フィルムは、第1のガスバリア層13及び第2のガスバリア層14からなるユニットの積層構造を有しても良い。積層構造を有する場合、少なくとも1ユニットが第1及び第2のガスバリア層から構成されるものであれば良い。このため、本発明のガスバリア性フィルムとしては、(ア)第1及び第2のガスバリア層から構成されるユニットを積層して構成される構造;(イ)第1のガスバリア層と第2のガスバリア層との間または第1及び第2のガスバリア層から構成される2つのユニット間に別の中間層(例えば、有機層、吸湿層、帯電防止層、平滑層、ブリードアウト層)を設けた構造;(ウ)基材と当該基材上に最初に形成される第1及び第2のガスバリア層から構成されるユニットとの間に別の制御層(例えば、有機層、吸湿層、帯電防止層、平滑層、ブリードアウト層)を設けた構造;(エ)最外層の(基材と最も遠い)第2のガスバリア層の上に別の保護層(例えば、有機層、吸湿層、帯電防止層、平滑層、ブリードアウト層)を設けた構造;(オ)第1のガスバリア層が形成されていない側の基材上に別の機能層(例えば、有機層、吸湿層、帯電防止層、平滑層、ブリードアウト層)を設けた構造;上記(ア)〜(オ)を適宜組み合わせた構造などが挙げられる。
[基材]
本発明に用いられる基材は、長尺な支持体であって、ガスバリア層を保持することができるものであれば、特に限定されない。
基材には、通常、プラスチックフィルムまたはシートが用いられ、無色透明な樹脂からなるフィルムまたはシートが好ましく用いられる。用いられるプラスチックフィルムは、ガスバリア層、ハードコート層等を保持できるフィルムであれば材質、厚み等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。前記プラスチックフィルムとしては、具体的には、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
本発明に係るガスバリア性フィルムを有機EL素子等の電子デバイスの基板として使用する場合は、前記基材は耐熱性を有する素材からなることが好ましい。具体的には、線膨張係数が15ppm/K以上100ppm/K以下で、かつガラス転移温度(Tg)が100℃以上300℃以下の樹脂基材が使用される。該基材は、電子部品用途、ディスプレイ用積層フィルムとしての必要条件を満たしている。即ち、これらの用途に本発明のガスバリア性フィルムを用いる場合、ガスバリア性フィルムは、150℃以上の工程に曝されることがある。この場合、ガスバリア性フィルムにおける基材の線膨張係数が100ppm/Kを超えると、ガスバリア性フィルムを前記のような温度の工程に流す際に基板寸法が安定せず、熱膨張および収縮に伴い、遮断性性能が劣化する不都合や、或いは、熱工程に耐えられないという不具合が生じやすくなる。15ppm/K未満では、フィルムがガラスのように割れてしまいフレキシビリティが劣化する場合がある。
基材のTgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。基材として用いることができる熱可塑性樹脂のより好ましい具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET:70℃)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン株式会社製、ゼオノア(登録商標)1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報に記載の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば三菱ガス化学株式会社製、ネオプリム(登録商標):260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報に記載の化合物:300℃以上)、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルイミド等が挙げられる(括弧内はTgを示す)。または、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム(Sila−DEC:チッソ株式会社製、シルプラス:新日鐵化学社製等);透明ポリイミドのフィルム(透明ポリイミド系フィルム タイプHM:東洋紡株式会社製、透明ポリイミド系フィルム ネオプリムL L−3430:三菱ガス化学株式会社製)等を基材の材料として使用してもよい。
これらのうち、コストや入手の容易性の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)等を用いることが好ましい。
また、光学的透明性、耐熱性等の性状や、無機層、ガスバリア層との密着性の観点から、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム等を用いることが好ましい。
さらに、製造工程の観点から、特に耐熱性の高い、具体的にはガラス転移点が150℃以上であるポリイミドやポリエーテルイミド、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルムを用いることが好ましい。例えば、ガスバリア性フィルムを電子デバイスに用いる場合、アレイ作製工程でプロセス温度が200℃を超える場合がある。特にロール・トゥ・ロールによる製造では、基材には常にある程度の張力が印加されている。そこで、ガラス転移点が150℃以上の基材を用いると、基材が高温下に置かれて基材温度が上昇した場合であっても、基材の弾性率の急激な低下による基材の伸長を抑制することができ、ガスバリア層の損傷を防ぐことができることから好ましい。ただし、上記のような耐熱性樹脂は、通常、非結晶性であるため、結晶性のPETやPENと比較して吸水率は大きな値となる。その結果、湿度による基材の寸法変化の度合いがより大きくなり、ガスバリア層を損傷しうる。しかしながら、これらの基材の両面にガスバリア層を形成することで、高温高湿の過酷な条件下で基材の吸脱湿による寸法変化を抑制しうる。したがって、耐熱性基材と、前記耐熱性基材の両面にガスバリア層を配置してなるガスバリア性フィルムは好ましい一形態である。
さらに、本発明に係るガスバリア性フィルムは、有機EL素子等の電子デバイスとして利用される場合には、プラスチックフィルムは透明であることが好ましい。すなわち、可視光(400〜700nm)の光線透過率が通常80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。光線透過率は、JIS K7105:1981に記載された方法、すなわち積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率および散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
ただし、本発明に係るガスバリア性フィルムをディスプレイ用途に用いる場合であっても、観察側に設置しない場合などは必ずしも透明性が要求されない。したがって、このような場合は、プラスチックフィルムとして不透明な材料を用いることもできる。不透明な材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、公知の液晶ポリマーなどが挙げられる。
これらの基材は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記の樹脂フィルムを用いた基材は、未延伸フィルムであっても、延伸フィルムであってもよい。
上記の樹脂フィルムを用いた基材は、従来公知の一般的な製法により製造することができる。例えば、樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸フィルムを製造することができる。また、前記未延伸フィルムを一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等の公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、または基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸フィルムを製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することができるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2〜10倍であることが好ましい。当該延伸フィルムには、基材の寸法安定性を向上させるため、延伸後に緩和処理を行ってもよい。
本発明に係るガスバリア性フィルムに用いられる基材の厚みは、用途によって適宜選択されるため特に制限がないが、典型的には5〜500μmであることが好ましく、25〜250μmである。これらのプラスチックフィルムは、透明導電層、プライマー層等の機能層を有していてもよい。機能層については、上述したもののほか、特開2006−289627号公報の段落番号「0036」〜「0038」に記載されているものを好ましく採用できる。
さらに、本発明に用いる基材は、JIS B 0601(2001年)で規定される10点平均表面粗さRzが1〜1500nmであることが好ましく、5〜400nmであることがより好ましく、300〜350nmであることがさらに好ましい。また、JIS B 0601(2001年)で規定される中心線平均粗さRaが0.5〜12nmであることが好ましく、1〜8nmであることがより好ましい。RzやRaが上記範囲内にあると、塗布液の塗布性が向上することから好ましい。基材は、必要に応じて、片面または両面、好ましくはバリア層を設ける面を研摩して平滑性を向上させてもよい。
基材の少なくとも本発明に係るガスバリア層を設ける側には、密着性向上のための公知の種々の処理、例えばエキシマ処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、またはプラズマ処理や、後述するプライマー層の積層等を行うことが好ましく、必要に応じて上記処理を組み合わせて行うことがより好ましい。
[第1のガスバリア層(PHPS層)]
第1のガスバリア層は、ポリシラザン化合物を含む塗布液(以下、「第1の塗布液」とも称する)を基材上に塗布し、得られた塗膜に真空紫外光を照射して形成される(工程(1))。
(第1の塗布液)
第1の塗布液は、ポリシラザン化合物を含む。
ポリシラザン化合物
ポリシラザン化合物とは、その構造内にSi−N、Si−H、N−H等の結合を有するポリマーであり、SiO、Si、およびこれらの中間固溶体SiO等の無機前駆体として機能する。
前記ポリシラザン化合物は、特に制限されないが、後述する改質処理を行うことを考慮すると、比較的低温でセラミック化してシリカに変性する化合物であることが好ましく、例えば、特開平8−112879号公報に記載の下記の一般式(1)で表される単位からなる主骨格を有する化合物であることが好ましい。
Figure 0005929775
上記一般式(1)において、R、R及びRは、水素原子、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基を表す。この際、R、R及びRは、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。ここで、アルキル基としては、炭素原子数1〜8の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基が挙げられる。より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などがある。また、アリール基としては、炭素原子数6〜30のアリール基が挙げられる。より具体的には、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などの非縮合炭化水素基;ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基などの縮合多環炭化水素基が挙げられる。(トリアルコキシシリル)アルキル基としては、炭素原子数1〜8のアルコキシ基で置換されたシリル基を有する炭素原子数1〜8のアルキル基が挙げられる。より具体的には、3−(トリエトキシシリル)プロピル基、3−(トリメトキシシリル)プロピル基などが挙げられる。上記R〜Rに場合によって存在する置換基は、特に制限はないが、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、メルカプト基(−SH)、シアノ基(−CN)、スルホ基(−SOH)、カルボキシル基(−COOH)、ニトロ基(−NO)などがある。なお、場合によって存在する置換基は、置換するR〜Rと同じとなることはない。例えば、R〜Rがアルキル基の場合には、さらにアルキル基で置換されることはない。これらのうち、好ましくは、R、R及びRは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、ビニル基、3−(トリエトキシシリル)プロピル基または3−(トリメトキシシリルプロピル)基である。R、R及びRすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザン(PHPS)が特に好ましい。このようなポリシラザンから形成されるガスバリア層(ガスバリア膜)は高い緻密性を示す。
パーヒドロポリシラザンは直鎖構造と6員環および8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)であり、液体または固体の物質でありうる(分子量によって異なる)。当該パーヒドロポリシラザンは、市販品を使用してもよく、当該市販品としては、アクアミカ NN120、NN120−10、NN120−20、NN110、NAX120、NAX120−20、NAX110、NL120A、NL120−20、NL110A、NL150A、NP110、NP140(いずれも、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)等が挙げられる。
低温でセラミック化するポリシラザン化合物の別の例としては、上記一般式で表されるポリシラザン化合物にケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(例えば、特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(例えば、特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(例えば、特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(例えば、特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(例えば、特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(例えば、特開平7−196986号公報)等が挙げられる。
第1の塗布液中のポリシラザン化合物の含有量は、所望のガスバリア層の膜厚や塗布液のポットライフ等によっても異なるが、第1の塗布液の全量に対して、0.2質量%〜35質量%であることが好ましい。
前記第1の塗布液は、さらにアミン触媒、金属、および溶媒を含んでいてもよい。
アミン触媒および金属
アミン触媒および金属は、後述する改質処理において、ポリシラザン化合物の酸化ケイ素化合物への転化を促進しうる。
用いられうるアミン触媒としては、特に制限されないが、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、3−モルホリノプロピルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサンが挙げられる。
また、用いられうる金属としては、特に制限されないが、白金アセチルアセトナート等の白金化合物、プロピオン酸パラジウム等のパラジウム化合物、ロジウムアセチルアセトナート等のロジウム化合物が挙げられる。
アミン触媒および金属は、ポリシラザン化合物に対して、0.05〜10質量%含むことが好ましく、0.1〜5質量%含むことが好より好ましく、0.5〜2質量%含むことがさらに好ましい。触媒添加量を上記範囲とすると、反応の急激な進行よる過剰なシラノール形成、膜密度の低下、および膜欠陥の増大等を防止しうることから好ましい。
溶媒
第1の塗布液に含有されうる溶媒としては、ポリシラザン化合物と反応するものでなければ特に制限はなく、公知の溶媒が用いられうる。具体的には、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素等の炭化水素系溶媒;脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル系溶媒が挙げられる。より詳細には、炭化水素溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン、塩化メチレン、トリクロロエタン等が挙げられる。また、エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらの溶媒は単独で、または2種以上を混合して用いられうる。これらの溶媒は、ポリシラザン化合物の溶解度や溶剤の蒸発速度等を考慮し、目的に応じて適宜選択されうる。
(塗膜の形成)
上記第1の塗布液を基材上に塗布することによって、塗膜が得られる。
第1の塗布液の塗布方法としては、適宜公知の方法が採用されうる。塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、ワイヤレスバーコート法、グラビア印刷法が挙げられる。
第1の塗布液の塗布量は、特に制限されないが、乾燥後のガスバリア層の厚さを考慮して適宜調節されうる。
第1の塗布液を塗布した後は、塗膜を乾燥させることが好ましい。塗膜を乾燥することによって、塗膜中に含有される有機溶媒を除去することができる。この際、塗膜に含有される有機溶媒は、すべてを乾燥させてもよいが、一部残存させていてもよい。一部の有機溶媒を残存させる場合であっても、好適なガスバリア層が得られうる。なお、残存する溶媒は後に除去されうる。
塗膜の乾燥温度は、適用する基材によっても異なるが、20〜200℃であることが好ましい。例えば、ガラス転位温度(Tg)が70℃のポリエチレンテレフタレート基材を基材として用いる場合には、乾燥温度は、熱による基材の変形等を考慮して150℃以下に設定することが好ましい。上記温度は、ホットプレート、オーブン、ファーネスなどを使用することによって設定されうる。乾燥時間は短時間に設定することが好ましく、例えば、乾燥温度が150℃以下である場合には1〜30分に設定することが好ましい。また、乾燥雰囲気は、大気雰囲気下、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下、真空雰囲気下、酸素濃度をコントロールした減圧雰囲気下等のいずれの条件であってもよい。
また、均一な塗膜を得る観点から、アニールを行ってもよい。アニール温度は、特に制限されないが、60〜200℃であることが好ましく、70〜160℃であることがより好ましい。当該アニール温度は、一定であっても、段階的に変化させても、連続的に温度を変化(昇温および/または降温)させてもよい。アニール時間は、特に制限されないが、5秒〜24時間であることが好ましく、10秒〜2時間であることがより好ましい。
(真空紫外光照射)
上記で塗膜に真空紫外光を照射すると、塗膜を構成するポリシラザン化合物が改質され第1のガスバリア層が形成される。ここで、ポリシラザン化合物の改質とは、ポリシラザン化合物が酸化ケイ素化合物および/または酸窒化ケイ素化合物へ転化することを意味する。なお、本明細書において「真空紫外光」とは、10〜200nmの波長を有する電磁波を含む紫外光を意味し、好ましくは100〜200nm、より好ましくは100〜180nmである。
以下に、真空紫外光照射によりパーヒドロポリシラザンが転化される際の反応機構を説明するが、当該反応機構は推定されるものであり、実際の反応が説明される反応機構と異なる経路で進行しても本発明の技術的範囲に含まれる。
(I)脱水素、およびこれに伴うSi−N結合の形成
パーヒドロポリシラザン中のSi−H結合やN−H結合は、真空紫外光照射による励起等で比較的容易に切断され、不活性雰囲気下ではSi−Nとして再結合すると考えられる(Siの未結合手が形成される場合もある)。すなわち、酸化することなくSiN組成として硬化する。この場合はポリマー主鎖の切断は生じない。Si−H結合やN−H結合の切断は触媒の存在や、加熱によって促進される。切断されたHはHとして膜外に放出される。
(II)加水分解・脱水縮合によるSi−O−Si結合の形成
パーヒドロポリシラザン中のSi−N結合は水により加水分解され、ポリマー主鎖が切断されてSi−OHを形成する。2つのSi−OHが脱水縮合すると、Si−O−Si結合を形成して硬化する。これは大気中でも生じうる反応であるが、不活性雰囲気下における真空紫外光照射では、照射の熱によって基材からアウトガスとして生じる水蒸気が主な水分源となると考えられる。水分が過剰となると脱水縮合しきれないSi−OHが残存し、SiO2.1〜2.3の組成で表されるガスバリア性の低い硬化膜となる。
(III)一重項酸素による直接酸化、Si−O−Si結合の形成
真空紫外光照射中、適当量の酸素が存在すると、酸化力が非常に強い一重項酸素が形成される。パーヒドロポリシラザン中のHやNは、Oと置き換わってSi−O−Si結合を形成して硬化する。ポリマー主鎖の切断により結合の組み換えを生じる場合もあると考えられる。
(IV)真空紫外光照射・励起によるSi−N結合切断を伴う酸化
真空紫外光のエネルギーはパーヒドロポリシラザン中のSi−Nの結合エネルギーよりも高いため、Si−N結合は切断され、周囲に酸素源(酸素、オゾン、水等)が存在すると酸化されてSi−O−Si結合(場合によってはSi−O−N結合)を生じると考えられる。ポリマー主鎖の切断により結合の組み換えを生じる場合もあると考えられる。
ポリシラザン化合物を含有する層に真空紫外光照射を施した層の酸化窒化ケイ素の組成の調整は、上述の(I)〜(IV)の酸化機構を適宜組み合わせて酸化状態を制御することで行うことができる。上述のように、当該酸化機構は、シラノールを経由することなく直接酸化されることから(光量子プロセスと呼ばれる光子の作用)、当該酸化過程において体積変化が少なく、高密度で欠陥の少ない酸化ケイ素膜および/または酸窒化ケイ素膜が得られうる。その結果、より緻密な酸化ケイ素膜および/または酸窒化ケイ素膜が得られうる。したがって、真空紫外光の照射によりポリシラザン化合物が改質されて得られるガスバリア層は、高いバリア性を有しうる。
真空紫外光の光源としては、特に限定されず、公知のものが使用されうる。例えば、低圧水銀ランプ、エキシマランプ等が挙げられる。これらのうち、エキシマランプ、特にキセノン(Xe)エキシマランプを用いることが好ましい。
前記キセノンエキシマランプ等の希ガスエキシマランプは、真空紫外光を照射できる。Xe、Kr、Ar、Ne等の希ガスの原子は最外殻電子が閉殻となっており、化学的に非常に不活性であることから不活性ガスと呼ばれる。しかし、放電等によりエネルギーを得た希ガス(励起原子)は、他の原子と結合して分子を形成することができる。例えば、希ガスがキセノンの場合には、
e+Xe→Xe
Xe+2Xe→Xe +Xe
Xe →Xe+Xe+hν(172nm)
となる。この際、励起されたエキシマ分子であるXe が基底状態に遷移するとき、172nmのエキシマ光(真空紫外光)が発光する。上記エキシマランプは前記エキシマ光を利用する。前記エキシマ光を発生させる方法としては、例えば、誘電体バリア放電を用いる方法および無電極電界放電を用いる方法が挙げられる。
誘電体バリア放電とは、両電極間に誘電体(エキシマランプの場合は透明石英)を介してガス空間を配し、電極に数10kHzの高周波高電圧を印加した場合に、ガス空間に生じる雷に似た非常に細いmicro dischargeと呼ばれる放電である。前記micro dischargeのストリーマが管壁(誘電体)に達すると、誘電体表面に電荷が溜まるため、micro dischargeは消滅する。誘電体バリア放電は、このmicro dischargeは管壁全体に広がり、生成・消滅を繰り返していることから、肉眼でも分かる光のチラツキを生じる。また、非常に温度の高いストリーマが局所的に直接管壁に達するため、管壁の劣化を早める可能性もある。
また、無電極電界放電とは、容量性結合による無電極電界放電であり、別名RF放電とも呼ばれる。具体的には、誘電体バリア放電と同様にランプや電極等が配置され、前記電極に極間に印加される高周波は数MHzの高周波電圧を印加した場合に生じる空間的・時間的に一様な放電である。当該無電極電界放電を用いる方法では、チラツキが無く、長寿命のランプが得られうる。
誘電体バリア放電の場合にはmicro dischargeが電極間のみで生じるため、放電空間全体で放電を行わせるには外側の電極は外表面全体を覆い、かつ、外部に光を取り出すために光を透過するものでなければならない。当該外部電極としては、光を遮らないように細い金属線を用いた網状の電極が用いられうる。しかしながら、前記外部電極は、真空紫外光照射によって発生するオゾン等により損傷しうる。そこで、電極の損傷を防ぐために、ランプの周囲、すなわち、照射装置内を窒素等の不活性ガスの雰囲気とし、合成石英の窓を設けて照射光を取り出す必要が生じる。二重円筒型ランプは、外径が約25mmであるため、ランプ軸の直下とランプ側面とでは照射面までの距離の差を無視することができず、前記距離によっては照度に大きな差が生じうる。したがって、仮にランプを密着して並べても、一様な照度分布が得られるとは限らない。合成石英の窓を設けた照射装置にすれば酸素雰囲気中の距離を一様にでき、一様な照度分布が得られうる。しかし、前記合成石英の窓は、高価な消耗品であるばかりでなく、光の損失も生じうる。
一方、無電極電界放電の場合には、外部電極を網状にする必要はなく、ランプ外面の一部に外部電極を設けるだけでグロー放電は放電空間全体に広がりうる。外部電極には通常アルミのブロックで作られた光の反射板を兼ねた電極がランプ背面に使用されうる。しかしながら、ランプの外径は誘電体バリア放電の場合と同様に大きいため、一様な照度分布にするためには合成石英が必要となる。
細管エキシマランプの最大の特徴は構造がシンプルなことである。石英管の両端を閉じ、内部にエキシマ発光を行うためのガスを封入しているだけである。
細管ランプの管の外径は6〜12mmであることが好ましく、あまり太いと始動に高い電圧が必要になる。
放電の形態は誘電体バリア放電であっても、無電極電界放電であってもよい。電極の形状はランプに接する面が平面であってもよいが、ランプの曲面に合わせた形状にすることでランプをしっかり固定でき、また、電極がランプに密着することで放電がより安定しうる。またアルミで曲面を鏡面にすれば光の反射板としても機能しうる。
このようなエキシマ光(真空紫外光)の照射装置は、市販のランプ(例えば、ウシオ電機株式会社製、株式会社エム・ディ・コム製)を使用することが可能である。
エキシマランプは、エキシマ光が一つの波長に集中し、必要な光以外がほとんど放射されない点に特徴を有し、効率性が高い。また、余分な光が放射されないことから、対象物の温度を低く保つことができる。さらに、始動・再始動に時間を要さないことから、瞬時に点灯点滅が可能となる。特に、Xeエキシマランプは、波長の短い172nmの真空紫外光を単一波長で放射することから、発光効率に優れている。当該Xeエキシマランプは、172nmと波長が短く、エネルギーが高いことから、有機化合物の結合の切断能が高いことが知られている。また、Xeエキシマランプは、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素であっても効率よく活性酸素やオゾンを発生させることができる。したがって、例えば、波長185nmの真空紫外光を発する低圧水銀ランプと対比すると、Xeエキシマランプは、高い有機化合物の結合切断能を有し、活性酸素やオゾンを効率的に発生させることができ、低温かつ短時間でポリシラザン化合物の改質処理をすることができる。また、Xeエキシマランプは、光の発生効率が高いため、低電力で瞬時に点灯点滅が可能であり、単一の波長を発光できることから、高スループットに伴うプロセス時間の短縮や設備面積の縮小等の経済的観点、および熱によるダメージを受けやすい基材を用いたガスバリア性フィルムへの適用等の観点からも好ましい。
このように、エキシマランプは光の発生効率が高いため、低電力で点灯させることができ、また、照射対象物の表面温度の上昇を抑制することができる。また、内部まで侵入する光子の数も増加するため改質膜厚の増加および/または膜質の高密度化が可能である。
真空紫外光照射の条件は、一般的に、照射強度と照射時間の積で表される積算光量を指標として転化反応を検討するが、酸化シリコンのように組成は同一であっても、様々な構造形態をとる材料を用いる場合には、照射強度の絶対値が重要になることもある。
真空紫外光照射の照射強度は、使用する基材や第1のガスバリア層の組成、濃度等によっても異なるが、1mW/cm〜100kW/cmであることが好ましく、1mW/cm〜10W/cmであることがより好ましい。
真空紫外光照射の時間は、使用する基材や第1のガスバリア層の組成、濃度等によっても異なるが、0.1秒〜10分であることが好ましく、0.5秒〜3分であることがより好ましい。
真空紫外光の積算光量は、特に制限されないが、200〜5000mJ/cmであることが好ましく、500〜3000mJ/cmであることがより好ましい。真空紫外光の積算光量が200mJ/cm以上であると、十分な改質が行われることにより高いバリア性が得られうることから好ましい。一方、真空紫外光の積算光量が5000mJ/cm以下であると、基材が変形することなく平滑性の高いガスバリア層が形成されうることから好ましい。
また、真空紫外光の照射温度は、適用する基材によっても異なり、当業者によって適宜決定されうる。真空紫外光の照射温度は、50〜200℃であることが好ましく、80〜150℃であることがより好ましい。照射温度が上記範囲内であると、基材の変形や強度の劣化等が生じにくく、基材の特性が損なわれないことから好ましい。
さらに、真空紫外光の照射雰囲気は、特に制限されないが、活性酸素やオゾンを発生させて効率的に改質を行う観点から酸素を含む雰囲気下で行うことが好ましい。真空紫外照射の酸素濃度は10〜10000体積ppm(0.001〜1体積%)であることが好ましく、50〜5000体積ppmであることがより好ましい。酸素濃度が10体積ppm以上であると、改質効率が高くなることから好ましい。一方、酸素濃度が10000体積ppm以下であると、大気と酸素との置換時間が短縮されうることから好ましい。
紫外線照射の対象となる塗膜は、塗布時に酸素および微量の水分が混入し、さらには基材や隣接層等にも吸着酸素や吸着水が存在しうる。当該酸素等を利用すれば、照射庫内に新たに酸素を導入しなくとも、改質処理を行う活性酸素やオゾンの発生に要する酸素源は十分でありうる。また、Xeエキシマランプのような172nmの真空紫外光は酸素により吸収されるため、塗膜に到達する真空紫外線量が減少する場合があることから、真空紫外光の照射時には、酸素濃度を低く設定し、真空紫外光が効率よく塗膜まで到達できる条件とすることが好ましい。
真空紫外光の照射雰囲気中の酸素以外のガスは、乾燥不活性ガスであることが好ましく、コストの観点から、乾燥窒素ガスであることがより好ましい。なお、酸素濃度は、照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガス等のガス流量を計測し、流量比を変えることで調整することができる。
発生させた真空紫外光は、照射効率向上と均一な照射を達成する観点から、発生源からの真空紫外光を反射板で反射させてから改質前の第1のガスバリア層に照射してもよい。また、真空紫外光の照射は、バッチ処理にも連続処理にも適用可能であり、使用する基材の形状によって適宜選定されうる。例えば、基材が長尺フィルム状である場合には、これを搬送させながら連続的に真空紫外光を照射して改質を行うことが好ましい。
上述の改質処理によって得られるガスバリア層の膜厚や密度等は、塗布条件や真空紫外光照射の条件等を適宜選択することにより制御することができる。例えば、真空紫外光の照射方法を、連続照射、複数回に分割した照射、複数回の照射が短時間な、いわゆるパルス照射等から適宜選択することで、ガスバリア層の膜厚や密度等が制御されうる。
第1のガスバリア層の厚さ(塗布厚さ)は、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、第1のガスバリア層の厚さ(塗布厚さ)は、乾燥後の厚さとして、1nm〜100μm程度であることが好ましく、10nm〜10μm程度であることがより好ましく、50nm〜1μmであることがさらにより好ましく、20nm〜2μmであることが特に好ましい。第1のガスバリア層の膜厚が1nm以上であれば十分なバリア性を得ることができ、100μm以下であれば、ガスバリア層形成時に安定した塗布性を得ることができ、かつ高い光線透過性を実現できる。
また、第1のガスバリア層は、適度な表面の平滑性を有することが好ましい。具体的には、第1のガスバリア層の表面の平滑性としては、第1のガスバリア層の中心線平均粗さ(Ra)が、50nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。このような第1のガスバリア層の中心線平均粗さ(Ra)の下限は、特に制限されないが、実用上、0.01nm以上であり、0.1nm以上であることが好ましい。このようなRaを有する第1のガスバリア層であれば、当該第1のガスバリア層中の凹凸に良好に対応して第2のガスバリア層が第1のガスバリア層上に密接して形成される。このため、第1のガスバリア層に生じるクラックやダングリングボンド等の欠陥を第2のガスバリア層がより効率よく被覆して、密な表面を形成する。ゆえに、高温高湿条件下でのガスバリア性(例えば、低酸素透過性、低水蒸気透過性)の低下をより有効に抑制・防止できる。なお、本明細書において、ガスバリア層の中心線平均粗さ(Ra)は、下記実施例に記載される方法によって測定される値である。
上記中心線平均粗さ(Ra)を有する第1のガスバリア層の形成方法は、特に制限されない。例えば、制御層(特に、下記のCVD層)を基材と第1のガスバリア層との間に設ける方法;中間層(特に、下記のCVD層)を第1のガスバリア層と第2のガスバリア層との間に設ける方法;基材の選択により表面粗さを制御する方法;下地層の表面粗さを制御する方法;PHPS層塗布前に表面処理を行う方法などの方法によって、第1のガスバリア層の中心線平均粗さ(Ra)を上記範囲に制御できる。
改質処理の程度については、形成された第1のガスバリア層をXPS分析することによって、ケイ素(Si)原子、窒素(N)原子、酸素(O)原子等の各原子組成比を求めることで確認できる。なお、本明細書において「XPS分析」は、実施例に記載の方法により測定されるものとする。
なお、第2のガスバリア層の補修効果等により、得られるガスバリア性フィルムは高いガスバリア性を有する。よって、第1のガスバリア層のガスバリア性は多少低くてもよい。より具体的には、第1のガスバリア層の水蒸気透過率は、0.5g/m/日以下であることが好ましく、0.2g/m/日以下であることがより好ましい。なお、上記「水蒸気透過率」は下記方法によって測定される値である。
(水蒸気透過率の測定方法)
真空蒸着装置JEE−400(日本電子株式会社製)を用い、透明導電膜を付ける前のガスバリア性フィルム試料の表面に、マスクを通して12mm×12mmのサイズで水分と反応して腐食する金属である金属カルシウム(粒状)を蒸着膜厚が80nmとなるように蒸着させた。その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面に水蒸気不透過性の金属である金属アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)を蒸着させて仮封止をした。次いで、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下に移した。前記仮封止した金属アルミニウム蒸着面に紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製)を介して厚さ0.2mmの石英ガラスを貼り合わせ、紫外線を照射して前記紫外線硬化樹脂を硬化させて本封止し、水蒸気バリア性評価試料を作製した。
得られた水蒸気バリア性評価試料を、恒温恒湿度オーブンYamato Humidic Chamber IG47Mを用いて、60℃、90%RHの高温高湿下で保存し、金属カルシウムの腐食を観察した。観察は、保存後6時間までは1時間ごと、24時間までは3時間ごと、48時間までは6時間ごと、それ以降は12時間ごとに行った。金属カルシウムの腐食面積が1%となるまでの時間を求め、下記式により水蒸気透過率を算出した。
Figure 0005929775
[第2のガスバリア層(ALD層)]
第2のガスバリア層は、上記第1のガスバリア層上に、金属化合物を用いて原子層堆積法(ALD法)により形成され(工程(2))、ALD法により形成された金属酸化物を含む。ここで、金属酸化物としては、特に制限されないが、酸化アルミニウム(Al)、酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)、酸化ニオブ(Nb)、酸化タンタル(Ta)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化ランタン(La)などが挙げられる。これらのうち、層の緻密さなどを考慮すると、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタンが好ましく、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタンがより好ましい。
金属酸化物としては、特に限定されず、アルミニウム、チタン、ケイ素、ジルコニウム、ハフニウム、ランタン、ニオブ、タンタル、マグネシウム、亜鉛などの酸化物および複合酸化物が挙げられる。樹脂基材上に成膜することを考慮し50℃〜120℃の温度で良質な膜が得られる観点から、金属酸化物が、Al、TiO、SiOおよびZrOからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。微小な欠陥に材料を含浸できることから、材料の分子量の大きさを考慮して、TMA(トリメチルアルミニウム)やTiCl(塩化チタン)が使えるAlおよびTiOを含むことが更に好ましい。
また、各ガスの導入時間や、成膜温度、成膜時の圧力を調整することによりAlO、TiO、SiO、ZrOなどの中間酸化物、窒化物なども可能であり、必要により使用することは問題ない。
(ALD法)
ALD法とは、2種以上のガス(第1のガスおよび第2のガス)を基材上に交互に導入することにより、原子層を1層ごとに堆積させる方法である。より詳細には、はじめに第1のガスを基材上に導入してガス分子層(単原子層)を形成させる。次いで不活性ガスを導入することにより、第1のガスをパージ(除去)する。なお、形成された第1のガスのガス分子層は、化学吸着により不活性ガスを導入してもパージされない。次に、第2のガスを導入して形成されたガス分子層を酸化して無機膜が形成される。最後に、不活性ガスを導入することにより、第2のガスをパージし、ALD法の1サイクルが完了する。上記サイクルを繰り返すことにより、原子層が1層ずつ堆積されて、所定の膜厚を有する第2のガスバリア層を形成することができる。なお、ALD法は、基板の表面の凹凸によらず、陰影部分も含めて無機膜を形成することができる。
製膜温度は、ガス分子の基材への吸着のため基材表面の活性化が必要である。このため、製膜温度は、ある程度高温であることが好ましく、基材のプラスチック基板のガラス転移温度あるいは分解開始温度を超えない範囲で適宜調整すればよい。プラスチック基材を用いる場合、通常反応器内の温度は、50〜200℃程度である。サイクル1回の堆積速度は通常、0.01〜0.3nmであり、製膜サイクルを繰り返すことによって所望の膜厚とする。
例えば、第2のガスバリア層の金属酸化物が酸化アルミニウムの場合、前記第1のガスはアルミニウム化合物を気化して得られるガスであり、前記第2のガスは酸化性ガスでありうる。また、不活性ガスは、上記第1のガスおよび/または第2のガスと反応しないガスである。
前記アルミニウム化合物としては、アルミニウムを含み、気化できるものであれば特に制限はない。アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEA)、およびトリクロロアルミニウムが挙げられる。
その他、形成する金属酸化物膜によって原料ガスを適宜選択すればよく、例えば、M.Ritala:Appl.Surf.Sci.112,223(1997)に記載のものを使用することができる。具体的には、第2の層の金属酸化物が酸化ケイ素の場合、前記第1のガスはケイ素化合物を気化して得られるガスである。かようなケイ素化合物としては、モノクロロシラン(SiHCl、MCS)、ヘキサクロロジシラン(SiCl、HCD)、テトラクロロシラン(SiCl、STC)、トリクロロシラン(SiHCl、TCS)等の他のクロロシラン系や、トリシラン(Si、TS)、ジシラン(Si、DS)、モノシラン(SiH、MS)等の無機原料や、アミノシラン系のテトラキスジメチルアミノシラン(Si[N(CH]4、4DMAS)、トリスジメチルアミノシラン(Si[N(CHH、3DMASi)、ビスジエチルアミノシラン(Si[N(C、2DEAS)、ビスターシャリーブチルアミノシラン(SiH[NH(C)]、BTBAS)などが挙げられる。
また、第2の層の金属酸化物が酸化チタンの場合、前記第1のガスはチタン化合物を気化して得られるガスである。かようなチタン化合物としては、四塩化チタン(TiCl)、チタン(IV)イソプロポキシド(Ti[(OCH)(CH)、テトラキスジメチルアミノチタン([(CHN]Ti、TDMATi)、テトラキスジエチルアミノチタン(Ti[N(CHCH、TDEATi、)などが挙げられる。
また、第2の層の金属酸化物が酸化ジルコニウムの場合、前記第1のガスはジルコニウム化合物を気化して得られるガスである。かようなジルコニウム化合物としては、テトラキスジメチルアミノジルコニウム(IV)(Zr[(CHN])、テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウム(IV)(Zr[N(CH)CHCH)などが挙げられる。
また、第2のガスを構成する前記酸化性ガスとしては、ガス分子層を酸化できるものであれば特に制限はなく、例えば、オゾン(O)、水(HO)、過酸化水素(H)、メタノール(CHOH)、およびエタノール(COH)等が用いられうる。また、酸素ラジカルを用いることも可能である。ラジカルを用いる場合は、高周波電源(例えば、周波数13.56MHzの電源)を用いてガスを励起させることで、高密度な酸素ラジカルを生じさせることが可能であり、酸化および窒化反応をより促進させることができる。装置の大型化や実用性等を考慮すると、13.56MHzの電源を用いたICP(Inductively Coupled Plasma)モードでの放電が望ましい。
また、窒化物、及び窒酸化物にしたい場合は、窒素ラジカルを用いることができる。窒素ラジカルは、前述酸素ラジカル生成と同様にして生成することができる。
また、装置の大きさ、1サイクル時間の短縮の観点から、酸化性ガスとしてオゾン、酸素ラジカルを用いることが好ましい。更に低温で緻密な膜を形成する観点からは、酸素ラジカルを用いることが好ましい。
前記不活性ガスとしては、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン)、窒素ガス等が用いられうる。
第1のガスの導入時間は、0.05〜10秒であることが好ましく、0.1〜3秒であることがより好ましく、0.5〜2秒であることがさらに好ましい。第1のガスの導入時間が0.05秒以上であると、ガス分子層を形成できる時間が十分に確保できることから好ましい。一方、第1のガスの導入時間が10秒以下であると、1サイクルに要する時間が低減できることから好ましい。
また、第1のガスをパージするための不活性ガスの導入時間は、0.05〜10秒であることが好ましく、0.5〜6秒であることがより好ましく、1〜4秒であることがさらに好ましい。不活性ガスの導入時間が0.05秒以上であると、第1のガスを十分にパージできることから好ましい。一方、不活性ガスの導入時間が10秒以下であると、1サイクルに要する時間を低減でき、形成されたガス分子層への影響が少なくなることから好ましい。
さらに第2のガスの導入時間は、0.05〜10秒であることが好ましく、0.1〜3秒であることがより好ましく、0.5〜2秒であることがさらに好ましい。第2のガスの導入時間が0.05秒以上であると、ガス分子層を酸化できる時間が十分に確保できることから好ましい。一方、第2のガスの導入時間が10秒以下であると、1サイクルに要する時間が低減でき、副反応が防止されうることから好ましい。
また、第2のガスをパージするための不活性ガスの導入時間は、0.05〜10秒であることが好ましく、0.5〜6秒であることがより好ましく、1〜4秒であることがさらに好ましい。不活性ガスの導入時間が0.05秒以上であると、第2のガスを十分にパージできることから好ましい。一方、不活性ガスの導入時間が10秒以下であると、1サイクルに要する時間が低減でき、形成された原子層への影響が少ないことから好ましい。
ALD法において、無機膜を成膜する際の成膜温度(基材温度)は、350℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましく、150℃未満であることがさらに好ましく、120℃未満であることが特に好ましい。成膜温度が350℃以下であると、基材に求められる耐熱性が小さくなり、製造コストを低減できることから好ましい。
(第2のガスバリア層の構成)
第2のガスバリア層は、ALD法により形成された金属酸化物を含む。ただし、ALD法の条件や原料ガスによって形成される第2のガスバリア層の構成が異なる場合があり、一義的に第2のガスバリア層の構成を規定することは困難である。例えば、第2のガスバリア層中のALD法により形成された金属酸化物膜は、ALD法の条件によっては、緻密の程度が異なりうる。
第2のガスバリア層は、ALD法により形成された金属酸化物の他、適宜公知の成分を含んでいてもよい。具体例としては、アルミニウム以外の金属原子を含む原料ガスを用いてALD法により形成された金属酸化物を含む原子層等が挙げられる。ALD法で使用可能な原料ガスや形成可能な無機薄膜は多岐にわたり、例えば、M.Ritala:Appl. Surf. Sci. 112, 223(1997)に記載のものを使用することができる。
第2のガスバリア層の厚さは、1〜100nmであることが好ましく、5〜70nmであることが好ましく、10〜60nmであることがより好ましい。第2のガスバリア層の厚さが1nm以上であると、良好なガスバリア性や補修効果が得られる。一方、第2のガスバリア層の厚さが100nm以下であると、短時間で第2のガスバリア層を形成することができ、かつ、第1のガスバリア層の高温高湿条件下での欠陥を十分補修できる。なお、特に、第2のガスバリア層の厚さが10〜60nmの場合には、ガスバリア性や補修効果を満足しかつ製造コストに優れる。
また、第2のガスバリア層の厚さが第1のガスバリア層の中心線平均粗さ(Ra(nm))と同じまたはそれ以上であることが好ましい。すなわち、第2のガスバリア層の厚さ(T(nm))が、第1のガスバリア層の中心線平均粗さ(Ra(nm))と同等以上(T≧Ra)であることが好ましい。より好ましくは、第1のガスバリア層の中心線平均粗さ(Ra(nm))に対する第2のガスバリア層の厚さ(T(nm))の比(T/Ra)が、1〜250であり、5〜200であることが特に好ましい。このような比を満たす第2のガスバリア層であれば、第1のガスバリア層の凹部を完全に第2のガスバリア層で埋めることができる。このため、第1のガスバリア層に生じるクラックやダングリングボンド等の欠陥を第2のガスバリア層がより効率よく被覆して、密な表面を形成する。ゆえに、高温高湿条件下でのガスバリア性(例えば、低酸素透過性、低水蒸気透過性)の低下をより有効に抑制・防止できる。なお、第2のガスバリア層の厚さは、ALD法の条件、ALD操作の繰り返し回数などによって、適宜調節できる。
なお、第2のガスバリア層は、ALD法により形成されるため、PHPS層の欠陥補修が行われやすい。この結果、ALD法により形成された第2のガスバリア層の膜面は平滑性が高い。したがって、第1のガスバリア層の欠陥補修の程度を示しうる指標として、第2のガスバリア層表面(第1のガスバリア層と接しない側の第2のガスバリア層表面)の中心線平均表面粗さ(Ra)が用いられる。ここで、第2のガスバリア層表面の中心線平均表面粗さ(Ra)は、0.8〜100nmであることが好ましく、1.0〜10nmであることがより好ましい。かような範囲であれば、ALD層による欠陥の補修が好適に行われていると判断でき、フィルム全体のガスバリア性能が向上する。なお、中心線平均表面粗さ(Ra)は、実施例に記載の方法により測定することができる。
[制御層/中間層/保護層/機能層]
一実施形態において、ガスバリア性フィルムは制御層/中間層/保護層/機能層を有していてもよい。制御層は、通常、第1のガスバリア層の第2のガスバリア層とは反対の面(基材と第1のガスバリア層との間)に配置される。
(CVD層)
前記制御層/中間層/保護層/機能層は、CVD層であってもよく、好ましくは、制御層は、CVD層である。ここで、CVD層は、ケイ素、アルミニウムおよびチタンからなる群より選択される少なくとも1種の酸化物、窒化物、酸窒化物または酸炭化物の少なくとも1種を含む。ケイ素、アルミニウムおよびチタンからなる群より選択される少なくとも1種の酸化物、窒化物、酸窒化物または酸炭化物としては、具体的には、酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素(SiON)、酸炭化ケイ素(SiOC)、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、およびアルミニウムシリケートなどのこれらの複合体が挙げられる。これらは、副次的な成分として他の元素を含有してもよい。
CVD層は上記化合物を有することで、ガスバリア性を有する。ここで、CVD層のガスバリア性は、基材上にCVD層を形成させた積層体で算出した際に、後述の実施例に記載の方法により測定された透過水分量が0.1g/(m・24h)以下であることが好ましく、0.01g/(m・24h)以下であることがより好ましい。
CVD層は、化学蒸着法(CVD法)で形成される。化学蒸着法(化学気相成長法、Chemical Vapor Deposition)は、基材上に、目的とする薄膜の成分を含む原料ガスを供給し、基板表面或いは気相での化学反応により膜を堆積する方法である。また、化学反応を活性化する目的で、プラズマなどを発生させる方法などがあり、熱CVD法、触媒化学気相成長法、光CVD法、真空プラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法など公知のCVD方式等が挙げられる。特に限定されるものではないが、製膜速度や処理面積の観点から、プラズマCVD法を適用することが好ましい。化学蒸着法によりCVD層を形成すると、ガスバリア性の点で有利である。
真空プラズマCVD法、大気圧または大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法により得られるガスバリア層は、原材料(原料ともいう)である金属化合物、分解ガス、分解温度、投入電力などの条件を選ぶことで、目的の化合物を製造できるため好ましい。
例えば、ケイ素化合物を原料化合物として用い、分解ガスに酸素を用いれば、ケイ素酸化物が生成する。これはプラズマ空間内では非常に活性な荷電粒子・活性ラジカルが高密度で存在するため、プラズマ空間内では多段階の化学反応が非常に高速に促進され、プラズマ空間内に存在する元素は熱力学的に安定な化合物へと非常な短時間で変換されるためである。
原料化合物としては、ケイ素化合物、チタン化合物、およびアルミニウム化合物を用いる。
これらのうち、ケイ素化合物として、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラキスジメチルアミノシラン、テトライソシアナートシラン、テトラメチルジシラザン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、トリエトキシフルオロシラン、アリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、ベンジルトリメチルシラン、ビス(トリメチルシリル)アセチレン、1,4−ビストリメチルシリル−1,3−ブタジイン、ジ−t−ブチルシラン、1,3−ジシラブタン、ビス(トリメチルシリル)メタン、シクロペンタジエニルトリメチルシラン、フェニルジメチルシラン、フェニルトリメチルシラン、プロパルギルトリメチルシラン、テトラメチルシラン、トリメチルシリルアセチレン、1−(トリメチルシリル)−1−プロピン、トリス(トリメチルシリル)メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ビニルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、Mシリケート51等が挙げられる。また、後述の好適な形態である(i)〜(iii)の要件を満たす層の形成の際に用いられる原料化合物であるケイ素化合物が挙げられる。
チタン化合物としては、例えば、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンテトライソポロポキシド、チタンn−ブトキシド、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−エチルアセトアセテート)、チタンジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンアセチルアセトネート、ブチルチタネートダイマー等が挙げられる。
アルミニウム化合物としては、アルミニウムエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムs−ブトキシド、アルミニウムt−ブトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、トリエチルジアルミニウムトリ−s−ブトキシド等が挙げられる。
また、これらの金属を含む原料ガスを分解して無機化合物を得るための分解ガスとしては、水素ガス、メタンガス、アセチレンガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、亜酸化窒素ガス、酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、酸素ガス、水蒸気などが挙げられる。また、上記分解ガスを、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスと混合してもよい。
原料化合物を含む原料ガスと、分解ガスを適宜選択することで所望のバリア層を得ることができる。化学蒸着法により形成されるCVD層は、酸化物、窒化物、酸窒化物または酸炭化物である。
以下、CVD法のうち、好適な形態であるプラズマCVD法について具体的に説明する。
図2は、本発明に係るCVD層の形成に用いられる真空プラズマCVD装置の一例を示す模式図である。
図2において、真空プラズマCVD装置101は、真空槽102を有しており、真空槽102の内部の底面側には、サセプタ105が配置されている。また、真空槽102の内部の天井側には、サセプタ105と対向する位置にカソード電極103が配置されている。真空槽102の外部には、熱媒体循環系106と、真空排気系107と、ガス導入系108と、高周波電源109が配置されている。熱媒体循環系106内には熱媒体が配置されている。熱媒体循環系106には、熱媒体を移動させるポンプと、熱媒体を加熱する加熱装置と、冷却する冷却装置と、熱媒体の温度を測定する温度センサと、熱媒体の設定温度を記憶する記憶装置とを有する加熱冷却装置160が設けられている。
加熱冷却装置160は、熱媒体の温度を測定し、熱媒体を記憶された設定温度まで加熱又は冷却し、サセプタ105に供給するように構成されている。供給された熱媒体はサセプタ105の内部を流れ、サセプタ105を加熱又は冷却して加熱冷却装置160に戻る。このとき、熱媒体の温度は、設定温度よりも高温又は低温になっており、加熱冷却装置160は熱媒体を設定温度まで加熱又は冷却し、サセプタ105に供給する。かくて冷却媒体はサセプタと加熱冷却装置160の間を循環し、サセプタ105は、供給された設定温度の熱媒体によって加熱又は冷却される。
真空槽102は真空排気系107に接続されており、この真空プラズマCVD装置101によって成膜処理を開始する前に、予め真空槽102の内部を真空排気すると共に、熱媒体を加熱して室温から設定温度まで昇温させておき、設定温度の熱媒体をサセプタ105に供給する。サセプタ105は使用開始時には室温であり、設定温度の熱媒体が供給されると、サセプタ105は昇温される。
一定時間、設定温度の熱媒体を循環させた後、真空槽102内の真空雰囲気を維持しながら真空槽102内に成膜対象の基板110を搬入し、サセプタ105上に配置する。
カソード電極103のサセプタ105に対向する面には多数のノズル(孔)が形成されている。
カソード電極103はガス導入系108に接続されており、ガス導入系108からカソード電極103にCVDガスを導入すると、カソード電極103のノズルから真空雰囲気の真空槽102内にCVDガスが噴出される。
カソード電極103は高周波電源109に接続されており、サセプタ105及び真空槽102は接地電位に接続されている。
ガス導入系108から真空槽102内にCVDガスを供給し、加熱冷却装置160から一定温度の熱媒体をサセプタ105に供給しながら高周波電源109を起動し、カソード電極103に高周波電圧を印加すると、導入されたCVDガスのプラズマが形成される。プラズマ中で活性化されたCVDガスがサセプタ105上の基板110の表面に到達すると、基板110の表面に薄膜であるCVD層が成長する。
この際のサセプタ105とカソード電極103との距離は適宜設定される。
また、原料ガスおよび分解ガスの流量は、原料ガスおよび分解ガス種等を考慮して適宜設定される。一実施形態として、原料ガスの流量は、30〜300sccmであり、分解ガスの流量は100〜1000sccmである。
薄膜成長中は、加熱冷却装置160から一定温度の熱媒体がサセプタ105に供給されており、サセプタ105は、熱媒体によって加熱又は冷却され、一定温度に維持された状態で薄膜が形成される。一般に、薄膜を形成する際の成長温度の下限温度は、薄膜の膜質により決まっており、上限温度は、基板110上に既に形成されている薄膜のダメージの許容範囲により決まっている。下限温度や上限温度は形成する薄膜の材質や、既に形成されている薄膜の材質等によって異なるが、ガスバリア性の高い膜質を確保するために下限温度は50℃以上であり、上限温度は基材の耐熱温度以下であることが好ましい。
真空プラズマCVD法で形成される薄膜の膜質と成膜温度の相関関係と、成膜対象物(基板110)が受けるダメージと成膜温度の相関関係とを予め求め、下限温度・上限温度が決定される。例えば、真空プラズマCVDプロセス中の基板110の温度は50〜250℃であることが好ましい。
更に、カソード電極103に13.56MHz以上の高周波電圧を印加してプラズマを形成した場合の、サセプタ105に供給する熱媒体の温度と基板110の温度の関係が予め測定されており、真空プラズマCVDプロセス中に基板110の温度を、下限温度以上、上限温度以下に維持するために、サセプタ105に供給する熱媒体の温度が求められる。
例えば、下限温度(ここでは50℃)が記憶され、下限温度以上の温度に温度制御された熱媒体がサセプタ105に供給されるように設定されている。サセプタ105から還流された熱媒体は、加熱又は冷却され、50℃の設定温度の熱媒体がサセプタ105に供給される。例えば、CVDガスとして、シランガスとアンモニアガスと窒素ガスの混合ガスが供給され、基板110が、下限温度以上、上限温度以下の温度条件に維持された状態で、SiN膜が形成される。
真空プラズマCVD装置101の起動直後は、サセプタ105は室温であり、サセプタ105から加熱冷却装置160に還流された熱媒体の温度は設定温度よりも低い。したがって、起動直後は、加熱冷却装置160は還流された熱媒体を加熱して設定温度に昇温させ、サセプタ105に供給することになる。この場合、サセプタ105及び基板110は熱媒体によって加熱、昇温され、基板110は、下限温度以上、上限温度以下の範囲に維持される。
複数枚の基板110に連続して薄膜を形成すると、プラズマから流入する熱によってサセプタ105が昇温する。この場合、サセプタ105から加熱冷却装置160に還流される熱媒体は下限温度(50℃)よりも高温になっているため、加熱冷却装置160は熱媒体を冷却し、設定温度の熱媒体をサセプタ105に供給する。これにより、基板110を下限温度以上、上限温度以下の範囲に維持しながら薄膜を形成することができる。
このように、加熱冷却装置160は、還流された熱媒体の温度が設定温度よりも低温の場合には熱媒体を加熱し、設定温度よりも高温の場合は熱媒体を冷却し、いずれの場合も設定温度の熱媒体をサセプタに供給しており、その結果、基板110は下限温度以上、上限温度以下の温度範囲が維持される。
薄膜が所定膜厚に形成されたら、基板110を真空槽102の外部に搬出し、未成膜の基板110を真空槽102内に搬入し、上記と同様に、設定温度の熱媒体を供給しながら薄膜を形成する。
(CVD層の他の好適な形態)
また、本発明のCVD層の他の好適な一実施形態として、CVD層は構成元素に炭素、ケイ素、及び酸素を含むCVD層がある。より好適な形態は、以下の(i)〜(ii)の要件を満たすCVD層である。
(i)CVD層の膜厚方向におけるCVD層表面からの距離(L)と、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対するケイ素原子の量の比率(ケイ素の原子比)との関係を示すケイ素分布曲線、前記Lとケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する酸素原子の量の比率(酸素の原子比)との関係を示す酸素分布曲線、ならびに前記Lとケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、炭素分布曲線が少なくとも2つの極値を有する、
(ii)炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値と最小値との差の絶対値が3at%以上である。
かような組成をもつことで、ガスバリア性と屈曲性を高度に両立する観点から好ましい。
更に、CVD層の全層厚の90%以上の領域において、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量(100at%)に対する各原子の平均原子比率が、下記式(A)又は(B)で表される序列の大小関係を有することが好ましい。
式(A)
(炭素平均原子比率)<(ケイ素平均原子比率)<(酸素平均原子比率)
式(B)
(酸素平均原子比率)<(ケイ素平均原子比率)<(炭素平均原子比率)
であれば、屈曲耐性がさらに向上し、より好ましい。
以下、上記好適な実施形態について説明する。
(i)前記CVD層の膜厚方向における前記CVD層表面からの距離(L)と、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対するケイ素原子の量の比率(ケイ素の原子比)との関係を示すケイ素分布曲線、前記Lとケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する酸素原子の量の比率(酸素の原子比)との関係を示す酸素分布曲線、ならびに前記Lとケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、炭素分布曲線が少なくとも2つの極値を有することが好ましい。該CVD層は、前記炭素分布曲線が少なくとも3つの極値を有することが好ましく、少なくとも4つの極値を有することがより好ましいが、5つ以上有してもよい。炭素分布曲線が少なくとも2つの極値を有することで、炭素原子比率が濃度勾配を有して連続的に変化し、屈曲時のガスバリア性能が高まる。なお、炭素分布曲線の極値の上限は、特に制限されないが、例えば、好ましくは30以下、より好ましくは25以下である。極値の数は、バリア層の膜厚にも起因するため、一概に規定することはできない。
ここで、少なくとも3つの極値を有する場合においては、前記炭素分布曲線の有する1つの極値および該極値に隣接する極値における前記CVD層の膜厚方向における前記CVD層の表面からの距離(L)の差の絶対値(以下、単に「極値間の距離」とも称する)が、いずれも200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、75nm以下であることが特に好ましい。このような極値間の距離の距離であれば、CVD層中に炭素原子比が多い部位(極大値)が適度な周期で存在するため、CVD層に適度な屈曲性を付与し、ガスバリア性フィルムの屈曲時のクラックの発生をより有効に抑制・防止できる。なお、本明細書において極値とは、前記CVD層の膜厚方向における前記CVD層の表面からの距離(L)に対する元素の原子比の極大値または極小値のことをいう。また、本明細書において極大値とは、CVD層の表面からの距離を変化させた場合に元素(酸素、ケイ素または炭素)の原子比の値が増加から減少に変わる点であって、かつその点の元素の原子比の値よりも、該点からCVD層の膜厚方向におけるCVD層の表面からの距離をさらに4〜20nmの範囲で変化させた位置の元素の原子比の値が3at%以上減少する点のことをいう。すなわち、4〜20nmの範囲で変化させた際に、いずれかの範囲で元素の原子比の値が3at%以上減少していればよい。これは、CVD層の膜厚により変動する。例えば、CVD層が300nmである場合は、CVD層の膜厚方向におけるCVD層の表面からの距離を20nm変化させた位置の元素の原子比の値が3at%以上減少する点が好ましい。さらに、本明細書において極小値とは、CVD層の表面からの距離を変化させた場合に元素(酸素、ケイ素または炭素)の原子比の値が減少から増加に変わる点であり、かつその点の元素の原子比の値よりも、該点からCVD層の膜厚方向におけるCVD層の表面からの距離をさらに4〜20nmの範囲で変化させた位置の元素の原子比の値が3at%以上増加する点のことをいう。すなわち、4〜20nmの範囲で変化させた際に、いずれかの範囲で元素の原子比の値が3at%以上増加していればよい。ここで、少なくとも3つの極値を有する場合の、極値間の距離の下限は、極値間の距離が小さいほどガスバリア性フィルムの屈曲時のクラック発生抑制/防止の向上効果が高いため、特に制限されない。
さらに、該CVD層は、(ii)前記炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値および最小値の差の絶対値が3at%以上であることが好ましく、5at%以上であることがより好ましく、7at%以上であることがさらに好ましい。炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値および最小値の差の絶対値が3at%以上であることで、屈曲時のガスバリア性能が高まる。なお、本明細書において、「最大値」とは、各元素の分布曲線において最大となる各元素の原子比であり、極大値の中で最も高い値である。同様にして、本明細書において、「最小値」とは、各元素の分布曲線において最小となる各元素の原子比であり、極小値の中で最も低い値である。
また、CVD層の膜厚の90%以上(上限:100%)の領域で、(酸素の原子比)、(ケイ素の原子比)、(炭素の原子比)の順で多い(原子比がO>Si>C)ことが好ましい。かような条件となることで、得られるガスバリア性フィルムのガスバリア性や屈曲性が十分となる。ここで、上記炭素分布曲線において、上記(酸素の原子比)、(ケイ素の原子比)および(炭素の原子比)の関係は、バリア層の膜厚の、少なくとも90%以上(上限:100%)の領域で満たされることがより好ましく、少なくとも93%以上(上限:100%)の領域で満たされることがより好ましい。ここで、バリア層の膜厚の少なくとも90%以上とは、バリア層中で連続していなくてもよく、単に90%以上の部分で上記した関係を満たしていればよい。前記ケイ素分布曲線、前記酸素分布曲線、および前記炭素分布曲線において、ケイ素の原子比、酸素の原子比、および炭素の原子比が、該CVD層の膜厚の90%以上の領域において、該条件を満たす場合には、前記層中におけるケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対するケイ素原子の含有量の原子比率は、25〜45at%であることが好ましく、30〜40at%であることがより好ましい。また、前記CVD層中におけるケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する酸素原子の含有量の原子比率は、33〜67at%であることが好ましく、45〜67at%であることがより好ましい。さらに、前記層中におけるケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する炭素原子の含有量の原子比率は、3〜33at%であることが好ましく、3〜25at%であることがより好ましい。
CVD層の前記酸素分布曲線は、少なくとも1つの極値を有することが好ましく、少なくとも2つの極値を有することがより好ましく、少なくとも3つの極値を有することがさらに好ましい。前記酸素分布曲線が極値を少なくとも1つ有する場合、得られるガスバリア性フィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性がより向上する。なお、酸素分布曲線の極値の上限は、特に制限されないが、例えば、好ましくは20以下、より好ましくは10以下である。酸素分布曲線の極値の数においても、バリア層の膜厚に起因する部分があり一概に規定できない。また、少なくとも3つの極値を有する場合においては、前記酸素分布曲線の有する1つの極値および該極値に隣接する極値における前記CVD層の膜厚方向におけるCVD層の表面からの距離の差の絶対値がいずれも200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。このような極値間の距離であれば、ガスバリア性フィルムの屈曲時のクラックの発生をより有効に抑制・防止できる。
加えて、CVD層の前記酸素分布曲線における酸素の原子比の最大値および最小値の差の絶対値(以下、単に「Omax−Omin差」とも称する)が3at%以上であることが好ましく、5at%以上であることがより好ましく、6at%以上であることがさらにより好ましく、7at%以上であることがさらに好ましい。前記絶対値が5at%以上であれば、得られるガスバリア性フィルムのフィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性がより向上する。
さらに、CVD層の前記ケイ素分布曲線におけるケイ素の原子比の最大値および最小値の差の絶対値(以下、単に「Simax−Simin差」とも称する)が5at%未満であることが好ましく、4at%未満であることがより好ましく、3at%未満であることがさらに好ましい。前記絶対値が5at%未満である場合、得られるガスバリア性フィルムのガスバリア性および機械的強度がより向上する。ここで、Simax−Simin差の下限は、Simax−Simin差が小さいほどガスバリア性フィルムの屈曲時のクラック発生抑制/防止の向上効果が高いため、特に制限されない。
また、CVD層の膜厚方向に対する炭素及び酸素原子の合計量はほぼ一定であることが好ましい。これにより、CVD層は適度な屈曲性を発揮し、ガスバリア性フィルムの屈曲時のクラック発生をより有効に抑制・防止されうる。より具体的には、CVD層の膜厚方向における該CVD層の表面からの距離(L)とケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する、酸素原子および炭素原子の合計量の比率(酸素および炭素の原子比)との関係を示す酸素炭素分布曲線において、前記酸素炭素分布曲線における酸素および炭素の原子比の合計の最大値および最小値の差の絶対値(以下、単に「OCmax−OCmin差」とも称する)が5at%未満であることが好ましく、4at%未満であることがより好ましく、3at%未満であることがさらに好ましい。前記絶対値が5at%未満であれば、得られるガスバリア性フィルムのガスバリア性がより向上する。
前記ケイ素分布曲線、前記酸素分布曲線、前記炭素分布曲線、および前記酸素炭素分布曲線は、X線光電子分光法(XPS:Xray Photoelectron Spectroscopy)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比(単位:at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、このように横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線においては、エッチング時間は膜厚方向における前記CVD層の膜厚方向における前記CVD層の表面からの距離(L)に概ね相関することから、「CVD層の膜厚方向におけるCVD層の表面からの距離」として、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出されるCVD層の表面からの距離を採用することができる。なお、本発明では、ケイ素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線および酸素炭素分布曲線は、下記測定条件にて作成した。
(測定条件)
エッチングイオン種:アルゴン(Ar);
エッチング速度(SiO熱酸化膜換算値):0.05nm/sec;
エッチング間隔(SiO換算値):10nm;
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名"VG Theta Probe";
照射X線:単結晶分光AlKα
X線のスポット及びそのサイズ:800×400μmの楕円形。
膜面全体において均一でかつ優れたガスバリア性を有するCVD層を形成するという観点から、CVD層が膜面方向(CVD層の表面に平行な方向)において実質的に一様であることが好ましい。ここで、CVD層が膜面方向において実質的に一様とは、XPSデプスプロファイル測定によりCVD層の膜面の任意の2箇所の測定箇所について前記酸素分布曲線、前記炭素分布曲線および前記酸素炭素分布曲線を作成した場合に、その任意の2箇所の測定箇所において得られる炭素分布曲線が持つ極値の数が同じであり、それぞれの炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値および最小値の差の絶対値が、互いに同じであるかもしくは5at%以内の差であることをいう。
さらに、前記炭素分布曲線は実質的に連続であることが好ましい。ここで、炭素分布曲線が実質的に連続とは、炭素分布曲線における炭素の原子比が不連続に変化する部分を含まないことを意味し、具体的には、エッチング速度とエッチング時間とから算出される前記CVD層のうちの少なくとも1層の膜厚方向における該CVD層の表面からの距離(x、単位:nm)と、炭素の原子比(C、単位:at%)との関係において、下記数式(1)で表される条件を満たすことをいう。
Figure 0005929775
また、炭素分布曲線において、当該CVD層の炭素原子比率が層全体の平均値として8〜20at%の範囲内であることが好ましく、10〜20at%の範囲であることがより好ましい。当該範囲内にすることにより、ガスバリア性と屈曲性を十分に満たすガスCVD層を形成することができる。
なお、CVD層がサブレイヤーを有する場合、上記条件(i)〜(ii)を全て満たすサブレイヤーが複数積層されてCVD層を形成していてもよい。サブレイヤーを2層以上備える場合には、複数のサブレイヤーの材質は、同一であってもよいし異なっていてもよい。
CVD層の好適な形態である、(i)〜(ii)の要件を満たす層は、プラズマCVD(PECVD)法により形成される層であることが好ましく、さらに基材を一対の成膜ローラー上に配置し、前記一対の成膜ローラー間に放電してプラズマを発生させるプラズマCVD法により形成されることがより好ましい。なお、前記プラズマCVD法はペニング放電プラズマ方式のプラズマCVD法であっても良い。
プラズマCVD法においてプラズマを発生させる際には、複数の成膜ローラーの間の空間にプラズマ放電を発生させることが好ましく、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラーのそれぞれに前記基材を配置して、一対の成膜ローラー間に放電してプラズマを発生させることがより好ましい。このようにして、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラー上に基材を配置して、かかる一対の成膜ローラー間に放電することにより、成膜時に一方の成膜ローラー上に存在する基材の表面部分を成膜しつつ、もう一方の成膜ローラー上に存在する基材の表面部分も同時に成膜することが可能となって効率よく薄膜を製造できるばかりか、通常のローラーを使用しないプラズマCVD法と比較して成膜レートを倍にでき、なおかつ、略同じ構造の膜を成膜できるので前記炭素分布曲線における極値を少なくとも倍増させることが可能となり、効率よく上記条件(i)〜(ii)を全て満たす層を形成することが可能となる。
また、このようにして一対の成膜ローラー間に放電する際には、前記一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが好ましい。さらに、このようなプラズマCVD法に用いる成膜ガスとしては、有機ケイ素化合物と酸素とを含むものが好ましく、その成膜ガス中の酸素の含有量は、前記成膜ガス中の前記有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量未満であることが好ましい。また、本発明のガスバリア性フィルムにおいては、前記バリア層が連続的な成膜プロセスにより形成された層であることが好ましい。
また、生産性の観点から、ロールツーロール方式で前記基材の表面上に前記CVD層を形成させることが好ましい。また、このようなプラズマCVD法によりCVD層を製造する際に用いることが可能な装置としては、特に制限されないが、少なくとも一対の成膜ローラーと、プラズマ電源とを備え、かつ前記一対の成膜ローラー間において放電することが可能な構成となっている装置であることが好ましく、例えば、図3に示す製造装置を用いた場合には、プラズマCVD法を利用しながらロールツーロール方式で製造することも可能となる。
以下、図3を参照しながら、CVD層の形成方法について、より詳細に説明する。なお、図3は、CVD層(CVD層)を製造するために好適に利用することが可能な製造装置の一例を示す模式図である。また、以下の説明および図面中、同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図3に示す製造装置31は、送り出しローラー32と、搬送ローラー33、34、35、36と、成膜ローラー39、40と、ガス供給管41と、プラズマ発生用電源42と、成膜ローラー39および40の内部に設置された磁場発生装置43、44と、巻取りローラー45とを備えている。また、このような製造装置においては、少なくとも成膜ローラー39、40と、ガス供給管41と、プラズマ発生用電源42と、磁場発生装置43、44とが図示を省略した真空チャンバ内に配置されている。さらに、このような製造装置31において前記真空チャンバは図示を省略した真空ポンプに接続されており、かかる真空ポンプにより真空チャンバ内の圧力を適宜調整することが可能となっている。
このような製造装置においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39と成膜ローラー40)を一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各成膜ローラーがそれぞれプラズマ発生用電源42に接続されている。そのため、このような製造装置31においては、プラズマ発生用電源42により電力を供給することにより、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の空間に放電することが可能であり、これにより成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の空間にプラズマを発生させることができる。なお、このように、成膜ローラー39と成膜ローラー40とを電極としても利用する場合には、電極としても利用可能なようにその材質や設計を適宜変更すればよい。また、このような製造装置においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39および40)は、その中心軸が同一平面上において略平行となるようにして配置することが好ましい。このようにして、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39および40)を配置することにより、成膜レートを倍にでき、なおかつ、同じ構造の膜を成膜できるので前記炭素分布曲線における極値を少なくとも倍増させることが可能となる。そして、このような製造装置によれば、CVD法により基材2の表面上にCVD層3を形成することが可能であり、成膜ローラー39上において基材2の表面上にCVD層成分を堆積させつつ、さらに成膜ローラー40上においても基材2の表面上にCVD層成分を堆積させることもできるため、基材2の表面上にCVD層を効率よく形成することができる。
成膜ローラー39および成膜ローラー40の内部には、成膜ローラーが回転しても回転しないようにして固定された磁場発生装置43および44がそれぞれ設けられている。
成膜ローラー39および成膜ローラー40にそれぞれ設けられた磁場発生装置43および44は、一方の成膜ローラー39に設けられた磁場発生装置43と他方の成膜ローラー40に設けられた磁場発生装置44との間で磁力線がまたがらず、それぞれの磁場発生装置43、44がほぼ閉じた磁気回路を形成するように磁極を配置することが好ましい。このような磁場発生装置43、44を設けることにより、各成膜ローラー39、40の対向側表面付近に磁力線が膨らんだ磁場の形成を促進することができ、その膨出部にプラズマが収束され易くなるため、成膜効率を向上させることができる点で優れている。
また、成膜ローラー39および成膜ローラー40にそれぞれ設けられた磁場発生装置43および44は、それぞれローラー軸方向に長いレーストラック状の磁極を備え、一方の磁場発生装置43と他方の磁場発生装置44とは向かい合う磁極が同一極性となるように磁極を配置することが好ましい。このような磁場発生装置43、44を設けることにより、それぞれの磁場発生装置43、44について、磁力線が対向するローラー側の磁場発生装置にまたがることなく、ローラー軸の長さ方向に沿って対向空間(放電領域)に面したローラー表面付近にレーストラック状の磁場を容易に形成することができ、その磁場にプラズマを収束させることができため、ローラー幅方向に沿って巻き掛けられた幅広の基材2を用いて効率的に蒸着膜であるCVD層3を形成することができる点で優れている。
成膜ローラー39および成膜ローラー40としては適宜公知のローラーを用いることができる。このような成膜ローラー39および40としては、より効率よく薄膜を形成せしめるという観点から、直径が同一のものを使うことが好ましい。また、このような成膜ローラー39および40の直径としては、放電条件、チャンバのスペース等の観点から、直径が300〜1000mmφの範囲、特に300〜700mmφの範囲が好ましい。成膜ローラーの直径が300mmφ以上であれば、プラズマ放電空間が小さくなることがないため生産性の劣化もなく、短時間でプラズマ放電の全熱量が基材2にかかることを回避できることから、基材2へのダメージを軽減でき好ましい。一方、成膜ローラーの直径が1000mmφ以下であれば、プラズマ放電空間の均一性等も含めて装置設計上、実用性を保持することができるため好ましい。
このような製造装置31においては、基材2の表面がそれぞれ対向するように、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39と成膜ローラー40)上に、基材2が配置されている。このようにして基材2を配置することにより、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の対向空間に放電を行ってプラズマを発生させる際に、一対の成膜ローラー間に存在する基材2のそれぞれの表面を同時に成膜することが可能となる。すなわち、このような製造装置によれば、プラズマCVD法により、成膜ローラー39上にて基材2の表面上にCVD層成分を堆積させ、さらに成膜ローラー40上にてCVD層成分を堆積させることができるため、基材2の表面上にCVD層を効率よく形成することが可能となる。
このような製造装置に用いる送り出しローラー32および搬送ローラー33、34、35、36としては適宜公知のローラーを用いることができる。また、巻取りローラー45としても、基材2上にCVD層3を形成したガスバリア性フィルム1を巻き取ることが可能なものであればよく、特に制限されず、適宜公知のローラーを用いることができる。
ガス供給管41および真空ポンプとしては、原料ガス等を所定の速度で供給または排出することが可能なものを適宜用いることができる。
また、ガス供給手段であるガス供給管41は、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の対向空間(放電領域;成膜ゾーン)の一方に設けることが好ましく、真空排気手段である真空ポンプ(図示せず)は、前記対向空間の他方に設けることが好ましい。このようにガス供給手段であるガス供給管41と、真空排気手段である真空ポンプを配置することにより、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の対向空間に効率良く成膜ガスを供給することができ、成膜効率を向上させることができる点で優れている。
さらに、プラズマ発生用電源42としては、適宜公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このようなプラズマ発生用電源42は、これに接続された成膜ローラー39と成膜ローラー40とに電力を供給して、これらを放電のための対向電極として利用することを可能とする。このようなプラズマ発生用電源42としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、前記一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが可能なもの(交流電源など)を利用することが好ましい。また、このようなプラズマ発生用電源42としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、印加電力を100W〜10kWとすることができ、かつ交流の周波数を50Hz〜500kHzとすることが可能なものであることがより好ましい。また、磁場発生装置43、44としては適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。
このような図3に示す製造装置31を用いて、例えば、原料ガスの種類、プラズマ発生装置の電極ドラムの電力、真空チャンバ内の圧力、成膜ローラーの直径、ならびにフィルム(基材)の搬送速度を適宜調整することにより、本発明に係るバリア層を製造することができる。すなわち、図1に示す製造装置31を用いて、成膜ガス(原料ガス等)を真空チャンバ内に供給しつつ、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39および40)間に放電を発生させることにより、前記成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解され、成膜ローラー39上の基材2の表面上および成膜ローラー40上の基材2の表面上に、バリア層3がプラズマCVD法により形成される。この際、成膜ローラー39、40のローラー軸の長さ方向に沿って対向空間(放電領域)に面したローラー表面付近にレーストラック状の磁場が形成して、磁場にプラズマを収束させる。このため、基材2が、図1中の成膜ローラー39のA地点および成膜ローラー40のB地点を通過する際に、バリア層で炭素分布曲線の極大値が形成される。これに対して、基材2が、図1中の成膜ローラー39のC1およびC2地点、ならびに成膜ローラー40のC3およびC4地点を通過する際に、バリア層で炭素分布曲線の極小値が形成される。このため、2つの成膜ローラーに対して、通常、5つの極値が生成する。また、バリア層の極値間の距離(炭素分布曲線の有する1つの極値および該極値に隣接する極値におけるバリア層の膜厚方向におけるバリア層の表面からの距離(L)の差の絶対値)は、成膜ローラー39、40の回転速度(基材の搬送速度)によって調節できる。なお、このような成膜に際しては、基材2が送り出しローラー32や成膜ローラー39等により、それぞれ搬送されることにより、ロールツーロール方式の連続的な成膜プロセスにより基材2の表面上にバリア層3が形成される。
前記ガス供給管41から対向空間に供給される成膜ガス(原料ガス等)としては、原料化合物を含む原料ガス、反応ガス、キャリアガス、放電ガスが単独または2種以上を混合して用いることができる。CVD層3の形成に用いる前記成膜ガス中の原料ガスとしては、形成するCVD層3の材質に応じて適宜選択して使用することができる。
上記(i)〜(ii)の要件を満たす層を形成するためには、原料化合物として有機ケイ素化合物を用いることが好ましい。このような有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ヘキサメチルジシラン(HMDS)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサンが挙げられる。これらの有機ケイ素化合物の中でも、化合物の取り扱い性および得られるCVD層のガスバリア性等の特性の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1.1.3.3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。これらの有機ケイ素化合物は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても使用することができる。
また、前記成膜ガスとしては、前記原料ガスの他に反応ガスを用いてもよい。このような反応ガスとしては、前記原料ガスと反応して酸化物、窒化物等の無機化合物となるガスを適宜選択して使用することができる。酸化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができる。また、窒化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、単独でもまたは2種以上を組み合わせても使用することができ、例えば酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて使用することができる。
前記成膜ガスとしては、前記原料ガスを真空チャンバ内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。さらに、前記成膜ガスとしては、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電用ガスを用いてもよい。このようなキャリアガスおよび放電用ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガス;水素を用いることができる。
このような成膜ガスが原料ガスと反応ガスを含有する場合には、原料ガスと反応ガスの比率としては、原料ガスと反応ガスとを完全に反応させるために理論上必要となる反応ガスの量の比率よりも、反応ガスの比率を過剰にし過ぎないことが好ましい。反応ガスの比率を過剰にし過ぎないことで、形成されるCVD層3によって、優れたバリア性や耐屈曲性を得ることができる点で優れている。また、前記成膜ガスが前記有機ケイ素化合物と酸素とを含有するものである場合には、前記成膜ガス中の前記有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下であることが好ましい。
以下、前記成膜ガスとして、原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(有機ケイ素化合物、HMDSO、(CHSiO)と、反応ガスとしての酸素(O)を含有するものとを用い、ケイ素−酸素系の薄膜を製造する場合を例に挙げて、成膜ガス中の原料ガスと反応ガスとの好適な比率等について、より詳細に説明する。
原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(HMDSO、(CHSiO)と、反応ガスとしての酸素(O)と、を含有する成膜ガスをプラズマCVDにより反応させてケイ素−酸素系の薄膜を作製する場合、その成膜ガスにより下記反応式(1)で表されるような反応が起こり、二酸化ケイ素が生成する。
Figure 0005929775
このような反応においては、ヘキサメチルジシロキサン1モルを完全酸化するのに必要な酸素量は12モルである。そのため、成膜ガス中に、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素を12モル以上含有させて完全に反応させた場合には、均一な二酸化ケイ素膜が形成されてしまうため、上記条件(i)〜(ii)を全て満たすCVD層を形成することができなくなってしまう。そのため、本発明において、CVD層を形成する際には、上記反応式(1)の反応が完全に進行してしまわないように、ヘキサメチルジシロキサン1モル(ヘキサメチルジシロキサンの流量)に対して酸素量(酸素の流量)を化学量論比の12モル(流量比12倍)より少なくすることが好ましい。なお、実際のプラズマCVDチャンバ内の反応では、原料のヘキサメチルジシロキサンと反応ガスの酸素とは、ガス供給部から成膜領域へ供給されて成膜されるので、反応ガスの酸素のモル量(流量)が原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の12倍のモル量(流量)であったとしても、現実には完全に反応を進行させることはできず、酸素の含有量を化学量論比に比して大過剰に供給して初めて反応が完結すると考えられる(例えば、CVDにより完全酸化させて酸化ケイ素を得るために、酸素のモル量(流量)を原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の20倍以上程度とする場合もある)。そのため、原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)は、化学量論比である12倍量以下(より好ましくは、10倍以下)の量であることが好ましい。このような比でヘキサメチルジシロキサンおよび酸素を含有させることにより、完全に酸化されなかったヘキサメチルジシロキサン中の炭素原子や水素原子がCVD層中に取り込まれ、上記条件(i)〜(iv)を全て満たすCVD層を形成することが可能となって、得られるガスバリア性フィルムにおいて優れたガスバリア性および耐屈曲性を発揮させることが可能となる。なお、有機EL素子や太陽電池などのような透明性を必要とするデバイス用のフレキシブル基板への利用の観点から、成膜ガス中のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)の下限は、ヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の0.1倍より多い量とすることが好ましく、0.5倍より多い量とすることがより好ましい。
また、真空チャンバ内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができるが、0.5Pa〜50Paの範囲とすることが好ましい。
また、このようなプラズマCVD法において、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間に放電するために、プラズマ発生用電源42に接続された電極ドラム(本実施形態においては、成膜ローラー39および40に設置されている)に印加する電力は、原料ガスの種類や真空チャンバ内の圧力等に応じて適宜調整することができるものであり一概に言えるものでないが、0.1〜10kWの範囲とすることが好ましい。このような印加電力が100W以上であれば、パーティクルが発生を十分に抑制することができ、他方、10kW以下であれば、成膜時に発生する熱量を抑えることができ、成膜時の基材表面の温度が上昇するのを抑制できる。そのため基材が熱負けすることなく、成膜時に皺が発生するのを防止できる点で優れている。
基材2の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバ内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.25〜100m/minの範囲とすることが好ましく、0.5〜20m/minの範囲とすることがより好ましい。ライン速度が0.25m/min以上であれば、基材に熱に起因する皺の発生を効果的に抑制することができる。他方、100m/min以下であれば、生産性を損なうことなく、CVD層として十分な厚みを確保することができる点で優れている。
上記したように、本実施形態のより好ましい態様としては、CVD層を、図3に示す対向ロール電極を有するプラズマCVD装置(ロールツーロール方式)を用いたプラズマCVD法によって成膜する。これは、対向ロール電極を有するプラズマCVD装置(ロールツーロール方式)を用いて量産する場合に、可撓性(屈曲性)に優れ、機械的強度、特にロールツーロールでの搬送時の耐久性と、バリア性能とが両立するCVD層を効率よく製造することができるためである。このような製造装置は、太陽電池や電子部品などに使用される温度変化に対する耐久性が求められるガスバリア性フィルムを、安価でかつ容易に量産することができる点でも優れている。
図4は、極値等を有さないガスバリア層のXPSデプスプロファイルによる層の厚さ方向の各元素プロファイルの一例である。当該ガスバリア層は、平坦電極(水平搬送)タイプのプラズマ放電でのCVD法で形成しており、炭素原子成分の濃度勾配の連続的な変化が起こらない様子がわかる。図4において、符号A〜Dは、A:炭素分布曲線、B:ケイ素分布曲線、C:酸素分布曲線、D:酸素炭素分布曲線を各々表す。
(ポリシロキサン系層)
前記制御層/中間層/保護層/機能層は、ポリシロキサン系層であってもよい。
ポリシロキサン系層は、ポリシロキサンおよび/またはポリシロキサンを改質してなる生成物を含む。
ポリシロキサン
ポリシロキサンとしては、特に制限されず、公知のものが用いられうる。なかでも下記一般式(2)で表されるオルガノポリシロキサンを用いることが好ましい。
Figure 0005929775
上記一般式(2)において、R〜Rは、それぞれ独立して、C1〜C8の有機基を表す。この際、前記R〜Rの少なくとも1つは、アルコキシ基または水酸基であり、mは1以上の整数である。C1〜C8の有機基としては、特に制限されないが、γ−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基;ビニル基等のアルケニル基;フェニル基等のアリール基;γ−メタクリルオキシプロピル基等の(メタ)アクリル酸エステル基;γ−グリシドキシプロピル基等のエポキシ含有アルキル基;γ−メルカプトプロピル基等のメルカプト含有アルキル基;γ−アミノプロピル基等のアミノアルキル基;γ−イソシアネートプロピル基等のイソシアネート含有アルキル基;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の直鎖または分岐鎖アルキル基;シクロヘキシル基、シクロペンチル基等の脂環状アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基等の直鎖状または分岐状アルコキシ基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、カプロイル基等のアシル基が挙げられる。
上記一般式(2)で表されるオルガノポリシロキサンのうち、mが1以上、かつ、重量平均分子量(ポリスチレン換算)が1000〜20000であるオルガノポリシロキサンを用いることがより好ましい。オルガノポリシロキサンの重量平均分子量が1000以上であると、形成されるポリシロキサン系層に亀裂が生じにくくなり、ガスバリア性を維持しうることから好ましい。一方、オルガノポリシロキサンの重量平均分子量が20000以下であると、形成されるポリシロキサン系層が十分に硬化され、層として十分な硬度が得られうることから好ましい。
ポリシロキサンを改質してなる生成物
ポリシロキサンを改質してなる生成物は、上述のポリシロキサンを真空紫外光等で改質して形成することができる。当該ポリシロキサンを改質してなる生成物の具体的な組成は明らかではない。
ポリシロキサン系層は、単層であっても、2層以上が積層されたものであってもよい。2層以上が積層される場合には、各層は同じ成分からなるものであっても、異なる成分からなるものであってもよい。
ポリシロキサン系層の厚さは、所望の性能に応じて適宜に設定されうる。例えば、ポリシロキサン系層の厚さは、100nm〜10μmであることが好ましく、50nm〜1μmであることがより好ましい。ポリシロキサン系層の厚さが100nm以上であると、十分なバリア性が得られうることから好ましい。一方、ポリシロキサン系層の厚さが10μm以下であると、高い光線透過性を実現でき、かつ、ポリシロキサン系層の形成に際して安定した塗布を行うことができることから好ましい。
ポリシロキサン系層の膜密度は、通常、0.35〜1.2g/cmであり、好ましくは0.4〜1.1g/cmであり、より好ましくは0.5〜1.0g/cmである。膜密度が0.35g/cm以上であると、十分な塗膜の機械的強度を得ることができることから好ましい。一方、膜密度が1.2g/cm以下であると、ポリシロキサン系層のクラックが生じにくくなることから好ましい。
ポリシロキサン系層の形成
ポリシロキサン系層は、第2の塗布液を塗布することによって形成することができる。
第2の塗布液
第2の塗布液は、ポリシロキサンを含む。
ポリシロキサンは上述したものと同様のものが用いられうることから、ここでは説明を省略する。
また、前記第2の塗布液は、さらに溶媒や適宜公知の成分を含んでいてもよい。
第2の塗布液に含有されうる溶媒としては、特に制限されないが、水、アルコール系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒等が挙げられる。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレンモノメチルエーテルアセテート、ジアセトンアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ等が挙げられる。芳香族炭化水素系溶媒としては、トルエン、キシレン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エステル系溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸エトキシエチル等が挙げられる。これらの他、ジクロロエタン、酢酸等の溶媒を用いてもよい。これらの溶媒は、単独で、または2種以上を混合して用いられうる。
公知の成分としては、アミノシラン化合物、エポキシシラン化合物、コロイダルシリカ、および硬化触媒が挙げられる。
第2の塗布液の塗布方法としては、従来公知の適切な湿式コーティング法が採用されうる。具体的には、スピンコート、ディッピング、ローラーブレード、スプレー法等が挙げられる。
第2の塗布液の塗布量は、特に制限されないが、乾燥後のポリシロキサン系層の厚さを考慮して適宜調節されうる。
第2の塗布液を塗布した後は、塗膜を乾燥させることが好ましい。塗膜を乾燥することによって、塗膜中に含有される有機溶媒を除去することができる。この際、塗膜に含有される有機溶媒は、すべてを乾燥させてもよいが、一部残存させていてもよい。一部の有機溶媒を残存させる場合であっても、好適なポリシロキサン系層が得られうる。乾燥方法は、上記第1のガスバリア層における「塗膜の形成」と同様の方法が適用されうる。
このように得られた塗膜にさらに真空紫外光照射を行い、ポリシロキサンを改質したものをポリシロキサン系層としてもよい。真空紫外光照射は、上記第1のガスバリア層における「真空紫外光照射」と同様の方法が適用され、照射条件は、所望とする性能に応じて適宜設定されうる。なお、改質されて得られるポリシロキサンの具体的な組成は明らかではない。
(その他の制御層/中間層/保護層/機能層)
前記制御層/中間層/保護層/機能層として、ポリシロキサン系層以外のその他の層を用いてもよい。
その他の層としては、硬化性樹脂系層が挙げられる。
硬化性樹脂系層は、有機樹脂組成物塗布液を塗布して塗膜を形成し、熱処理や光照射処理により硬化させて形成されうる。
有機樹脂組成物塗布液
有機樹脂組成物塗布液は、通常、熱硬化性樹脂および/または光硬化性樹脂、光重合開始剤、並びに溶媒を含む。
熱硬化性樹脂としては、熱処理によって硬化するものであれば特に制限されないが、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(UF)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、アルキド樹脂、ポリウレタン(PUR)、熱硬化性ポリイミド(PI)等が挙げられる。
光硬化性樹脂としては、光処理によって硬化するものであれば特に制限されないが、ラジカル反応性不飽和結合を有するアクリレート化合物を含有する樹脂、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する樹脂、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを含有する樹脂、米国特許第6503634号明細書に記載の「ORMOCER」等が挙げられる。また、分子内に光重合性不飽和基を1個以上有するモノマーを用いてもよい。当該モノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−デシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトリキエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリオキシエチルトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピオンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,2,4−ブタンジオールトリアクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールジアクリレート、ジアリルフマレート、1,10−デカンジオールジメチルアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及び、上記のアクリレートをメタクリレートに換えたもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。
前記熱硬化性樹脂および/または光硬化性樹脂は、重合性基および/または架橋性基を含むことが好ましい。前記重合性基および架橋性基としては、熱処理や光照射により重合反応や架橋反応が生じるものであれば特に制限されず、公知の官能基が挙げられる。具体的には、エチレン性不飽和基、エポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテル基等の重合性基;チオール基、ハロゲン原子、オニウム塩構造等の架橋基等が挙げられる。これらのうち、エチレン性不飽和基を有することが好ましく、当該エチレン性不飽和基としては、特開2007−17948号公報に記載された官能基が挙げられる。
上述の熱硬化性樹脂および/または光硬化性樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いられうる。
前記光重合開始剤としては、特に制限されないが、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ・アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノ−1−プロパン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モノフォリノフェニル)−ブタノン−1、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性の色素と還元剤(アスコルビン酸、トリエタノールアミン等)との組み合わせ等が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
前記溶媒としては、特に制限されないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;α−またはβ−テルピネオール等のテルペン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、シクロヘキシルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、安息香酸メチル等のエステル類;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類が挙げられる。これらの溶媒は単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。
前記有機樹脂組成物塗布液は、必要に応じてさらに酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、無機粒子、カップリング材、感光性樹脂以外の樹脂等の添加剤が添加されていてもよい。
これらのうち、好ましい添加剤は無機粒子およびカップリング材である。
前記無機粒子を添加することで、硬化性樹脂系層の弾性率が調節されうる。
無機粒子としては、特に制限されないが、SiO、Al、TiO、ZrO、ZnO、SnO、In、BaO、SrO、CaO、MgO、VO、V、CrO、MoO、MoO、MnO、Mn、WO、LiMn、CdSnO4、CdIn、ZnSnO、ZnSnO、ZnIn、CdSnO、CdIn、ZnSnO、ZnSnO、ZnIn等が挙げられる。また、無機粒子として、天然雲母、合成雲母等の雲母群、式3MgO・4SiO・HOで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、合成スメクタイト、リン酸ジルコニウムなどの平板状粒子を用いてもよい。前記天然雲母としては、白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母、鱗雲母等が挙げられる。また、合成雲母としては、フッ素金雲母KMg(AlSi10)F、カリ四ケイ素雲母KMg2.5(Si10)F等の非膨潤性雲母;およびNaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si10)F、NaまたはLiテニオライト(Na,Li)MgLi(Si10)F、モンモリロナイト系のNaまたはLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si10)F等の膨潤性雲母等が挙げられる。これらの無機粒子は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
無機粒子の数平均粒径は、1〜200nmであることが好ましく、3〜100nmであることがより好ましい。
前記無機粒子は、表面処理が行われていてもよい。
無機粒子は近年の学術論文に記載の方法に従って自ら調製してもよいが、市販品を用いてもよい。当該市販品としては、のスノーテックスシリーズやオルガノシリカゾル(日産化学工業株式会社製)、NANOBYKシリーズ(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、NanoDur(Nanophase Technologies社製)等が挙げられる。
硬化性樹脂系層中の無機粒子の含有量は、硬化性樹脂系層の質量に対して、10〜95質量%であることが好ましく、20〜90質量%であることがより好ましい。
また、前記カップリング材を添加することで、他の材料を混合することができる。
カップリング剤としては、特に制限されないが、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤等が挙げられる。これらのうち、塗布液の安定性の観点からシランカップリング剤を用いることが好ましい。
前記シランカップリング剤としては、2−クロロエチルトリメトキシシラン,2−クロロエチルトリエトキシシラン,3−クロロプロピルトリメトキシシラン,3−クロロプロピルトリエトキシシラン等のハロゲン含有シランカップリング剤;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、2−グリシジルオキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシジルオキシエチルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;2−アミノエチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−[N−(2−アミノエチル)アミノ]エチルトリメトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルトリエトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト基含有シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなど)、(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤(2−メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2−メタクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、2−アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
硬化性樹脂系層の形成
有機樹脂組成物塗布液のコーティング方法としては、特に制限されないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法等の湿式コーティング法、または蒸着法等の乾式コーティング法が挙げられる。コーティングされた有機樹脂組成物塗布液中に含まれる溶媒等を乾燥除去し、硬化することによって硬化性樹脂系層が形成されうる。
有機樹脂として熱硬化性樹脂を用いる場合には、前記硬化は、通常、加熱によって行う。加熱温度は用いる熱硬化性樹脂によっても異なるが、60〜150℃であることが好ましい。一方、有機樹脂として光硬化性樹脂を用いる場合には、前記硬化は、通常、電離放射線により行う。当該電離放射線としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等から発せられる100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域の真空紫外光、または走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線が使用されうる。前記光照射は、真空紫外光照射によって行ってもよい。真空紫外光によって硬化性樹脂系層を形成すると、第1のガスバリア層と硬化性樹脂系層とを同一ラインで塗布形成することができる。
[中間層/保護層/機能層]
上述の基材、第1のガスバリア層および第2のガスバリア層のいずれかの2層の間または上記いずれかの層の表面に、本発明の効果を損なわない範囲で別途中間層/保護層/機能層を設けてもよい。例えば、基材の第1のガスバリア層が配置された面とは反対の面(基材表面)(機能層)、最外層の(基材と最も遠い)第2のガスバリア層の上(保護層)、第1のガスバリア層と第2のガスバリア層との間または第1及び第2のガスバリア層から構成される2つのユニット間(中間層)には、アンカーコート層、平滑層、およびブリードアウト防止層等の中間層が形成されうる。なお、中間層は、第1及び第2のガスバリア層から構成される2つのユニット間に形成されることが好ましい。
(アンカーコート層)
アンカーコート層は、基材とガスバリア層との密着性を向上させ、かつ、高い平滑性を付与する機能を有する。アンカーコート層は、例えば、アンカーコート剤を基材上に塗布することによって形成されうる。
用いられうるアンカーコート剤としては、特に制限されないが、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、およびアルキルチタネート等が挙げられる。これらのアンカーコート剤は、単独で、または2種以上組み合わせて用いられうる。前記アンカーコート剤には、さらに公知の添加剤、例えば溶剤、希釈剤等を加えてもよい。
アンカーコート剤の基材へのコーティング方法としては、特に制限されないが、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等が挙げられる。基材上にコーティングされたアンカーコート剤中に含まれうる溶剤や希釈剤等を乾燥除去することによって、アンカーコート層が形成されうる。
当該アンカーコート剤は、乾燥状態で0.1〜5g/mとなる塗布量で塗布されることが好ましい。
(平滑層)
平滑層は、通常、基材の一方の面上に形成され、微小な突起等が存在する基材の粗面を平坦化し、基材上に成膜するガスバリア層などにおける凹凸やピンホールの発生を防止する機能を有する。平滑層は、感光性樹脂組成物を基材上に塗布した後、硬化させることによって形成されうる。
前記感光性樹脂組成物は、通常、感光性樹脂、光重合開始剤、および溶媒を含む。
前記感光性樹脂としては、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性モノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限されないが、ラジカル反応性不飽和結合を有するアクリレート化合物を含有する樹脂、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する樹脂、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを含有する樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いられうる。
前記光重合開始剤としては、特に制限されないが、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾインベンゾエート、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパン、α−アシロキシムエステル、チオキサンソン類等が挙げられるこれらの光重合開始剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いられうる。
前記溶媒としては、特に制限されないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;α−またはβ−テルピネオール等のテルペン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、シクロヘキシルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、安息香酸メチル等のエステル類;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類が挙げられる。これらの溶媒は単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。
前記感光性樹脂組成物は、必要に応じてさらに酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、無機粒子、感光性樹脂以外の樹脂等の添加剤が添加されていてもよい。
これらのうち、好ましい添加剤の一つは、表面に光重合反応性を有する感光性基が導入された反応性シリカ粒子(以下、単に「反応性シリカ粒子」とも称する)である。前記光重合性を有する感光性基としては、特に制限されないが、例えば(メタ)アクリロイルオキシ基に代表される重合性不飽和基が挙げられる。反応性シリカ粒子が有する光重合性を有する感光性基と、感光性樹脂が有する重合性不飽和基とが反応することによってガスバリア層との密着性が向上しうる。
前記反応性シリカ粒子としては、特に制限されないが、重合性不飽和基修飾加水分解性シランが有する加水分解性シリル基を加水分解することによって、シリカ粒子とシリルオキシ基を生成して得られたもの、すなわち、重合性不飽和基修飾加水分解性シランとシリカ粒子とが化学的に結合したものでありうる。前記加水分解性シリル基としては、特に制限されないが、アルコキシシリル基;アセトキシシリル基等のカルボキシレートシリル基;クロロシリル基等のハロゲン化シリル基;アミノシリル基;オキシムシリル基;ヒドリドシリル基が挙げられる。なお、重合性不飽和基としては、特に制限されないが、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニル基、シンナモイル基、マレート基、アクリルアミド基等が挙げられる。
前記反応性シリカ粒子の平均粒子径としては、0.001〜0.1μmであることが好ましく、0.001〜0.01μmであることがより好ましい。反応性シリカ粒子が、上記範囲の平均粒子径を有することにより、感光性樹脂組成物に含有されうる後述のマット剤と組み合せて用いることで、防眩性と解像性とをバランスよく満たす光学特性およびハードコート性を有しうる。
前記反応性シリカ粒子を感光性樹脂組成物中に含む場合、反応性シリカ粒子は、20〜60質量%で含有されることが好ましい。反応性シリカ粒子が20質量%以上含有されると、ガスバリア層との密着性が向上しうることから好ましい。一方、反応性シリカ粒子が60質量%以下であると、高温高湿環境下におけるフィルムの変形が抑制され、これに伴うクラックの発生を抑制しうることから好ましい。
また、感光性樹脂組成物はマット剤を含むことが好ましい。マット剤を含有することによって光学特性が調整されうる。
マット剤としては、特に制限されず、シリカ、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム等が用いられうる。前記マット剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて使用されうる。
マット剤の平均粒子径は、0.1〜10μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。マット剤が上記範囲の平均粒子径を有することにより、感光性樹脂組成物に含有されうる上述の反応性シリカ粒子と組み合せて用いることで、防眩性と解像性とをバランスよく満たす光学特性およびハードコート性を有しうる。
感光性樹脂組成物中のマット剤の含有量は、感光性樹脂組成物中の固形分100質量部に対して、好ましくは2〜20質量部、より好ましくは4〜18質量部、さらに好ましくは6〜16質量部ある。
また、感光性樹脂組成物に含有されうる好ましい添加剤の一つは、感光性樹脂以外の樹脂である。当該感光性樹脂以外の樹脂としては、特に制限されないが、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂が挙げられる。
熱可塑性樹脂の具体例としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体;酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のビニル系樹脂およびこれらの共重合体;ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール系樹脂;アクリル樹脂、メタクリル樹脂等のアクリル系樹脂およびこれらの共重合体;ポリスチレン系樹脂;ポリアミド系樹脂;線状ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。
熱硬化性樹脂の具体例としては、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂の具体例としては、光重合性プレポリマーもしくは光重合性モノマー等の1または2種以上を混合した電離放射線硬化塗料に、電離放射線(紫外線または電子線)を照射して硬化するものが挙げられる。この際、前記光重合性プレポリマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化すると3次元網目構造を形成するウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート等のアクリル系プレポリマーが特に好ましい。また、光重合性モノマーとしては、上述の光感光性樹脂等が使用されうる。
感光性樹脂組成物の基材へのコーティング方法としては、特に制限されないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法等の湿式コーティング法、または蒸着法等の乾式コーティング法が挙げられる。基材上にコーティングされた感光性樹脂組成物中に含まれる溶媒等を乾燥除去し、硬化することによって平滑層が形成されうる。
前記硬化には、電離放射線が用いられうる。当該電離放射線としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等から発せられる100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域の真空紫外光、または走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線が使用されうる。
平滑層の平滑性は、JIS B 0601に規定される表面粗さで表現される値で、最大断面高さRt(p)が、10〜30nmであることが好ましい。Rtが10nm以上であると、ポリシラザン化合物を含む塗布液を塗布して塗膜を形成する工程(2)において、ワイヤーバー、ワイヤレスバー等の塗布方式で平滑層表面に塗工手段が接触する場合に、安定した塗布性が得られうることから好ましい。一方、Rtが30nm以下であると、後述の工程で得られるガスバリア層の凹凸が平滑化されうることから好ましい。
平滑層の厚さとしては、特に制限されないが、1〜10μmであることが好ましく、2〜7μmであることがより好ましい。平滑層の厚さが1μm以上であると、上記平滑層としての機能を十分に発揮しうることから好ましい。一方、平滑層の厚さが10μm以下であると、ガスバリア性フィルムの光学特性のバランスを調整することができ、ガスバリア性フィルムのカールを抑制しうることから好ましい。
(ブリードアウト防止層)
平滑層を有する基材は、加熱の際に基材中から表面に未反応のオリゴマー等が移行して、基材表面が汚染されうる。ブリードアウト防止層は、当該基材表面の汚染を抑制する機能を有する。当該ブリードアウト防止層は、通常、平滑層を有する基材の平滑層とは反対の面に設けられる。
ブリードアウト防止層は、上記機能を有していれば、平滑層と同じ構成であってもよい。すなわち、ブリードアウト防止層は、感光性樹脂組成物を基材上に塗布した後、硬化させることによって形成されうる。
前記感光性樹脂組成物は、感光性樹脂、光重合開始剤、および溶媒を含む。前記感光性樹脂、光重合開始剤、および溶媒は上述の平滑層に記載のものと同様のものが用いられうる。また、前記感光性樹脂組成物は、上述の平滑層と同様に、さらに酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、無機粒子、感光性樹脂以外の樹脂等の添加剤が添加されていてもよい。
したがって、例えば、各種成分を適宜配合して所定の希釈溶剤を加えて塗布液を調製し、当該塗布液を基材上に公知の塗布方法によって塗布する。その後、電離放射線を照射して硬化させることによりブリードアウト防止層が形成されうる。
ブリードアウト防止層の厚さとしては、1〜10μmであることが好ましく、2〜7μmであることがより好ましい。ブリードアウト防止層の厚さが1μm以上であると、ガスバリア性フィルムの耐熱性が向上しうることから好ましい。一方、ブリードアウト防止層の厚さが10μm以下であると、ガスバリア性フィルムの光学特性が好適に調整され、また、ガスバリア性フィルムのカールを抑制しうることから好ましい。
基材上に、上述のアンカーコート層、平滑層、およびブリードアウト層からなる群から選択される少なくとも1つの中間層が形成される場合には、基材および中間層の総膜厚は、5〜500μmであることが好ましく、25〜250μmであることがより好ましい。
また、第1のガスバリア層と第2のガスバリア層との層間に中間層を形成してもよい。
当該中間層は、第1のガスバリア層のガスバリア性を強化する目的、第1のガスバリア層と第2のガスバリア層との接着性を強化する目的等で形成されうる。この際、前記中間層は、本発明の効果を損なわない範囲で形成される。
中間層は、無機層、有機層、および有機無機ハイブリッド層等のいずれであってもよいが、無機層であることが好ましい。
無機層の材料としては、特に制限されないが、ジルコニア、チタニア等が挙げられる。
無機層の厚さとしては、0.05〜10nmであることが好ましく、0.1〜5nmであることがより好ましい。
<第2の形態:ガスバリア性フィルムの製造方法>
本発明の第2の形態によれば、基材上に、ポリシラザン化合物を含む塗布液を、前記基材上に塗布し、真空紫外光を照射して第1のガスバリア層を形成する工程(1)と、前記第1のガスバリア層上に、金属化合物を用いてALD法により第2のガスバリア層を形成する工程(2)と、を含む。ここで、基材とは、基材上に上記中間層が積層された形態を含む。
一実施形態において、前記製造方法は、制御層、中間層、保護層、機能層の少なくとも1層を形成する工程(3)を含んでもよい。工程(3)はより詳細には、制御層、中間層、保護層、機能層の少なくとも1層を形成するための塗布液(例えば、ポリシロキサンを含む第2の塗布液等)を塗布して対応する層を形成する工程である。当該工程(3)は第2の塗布液を塗布して得られた塗膜に真空紫外光照射等の硬化処理を行ってもよい。
上記工程(1)〜(3)は適宜第1の形態の記載が適宜参照されうる。
<第3の形態:電子デバイス>
本発明の一実施形態によれば、電子デバイス本体と、上述のガスバリア性フィルムとを含む電子デバイスが提供される。
[電子デバイス]
上記したような本発明のガスバリア性フィルムは、優れたガスバリア性、透明性、屈曲性を有する。このため、本発明のガスバリア性フィルムは、電子デバイス等のパッケージ、光電変換素子(太陽電池素子)や有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、液晶表示素子等の等の電子デバイスに用いられるガスバリア性フィルムおよびこれを用いた電子デバイスなど、様々な用途に使用することができる。
(電子素子本体)
電子素子本体は電子デバイスの本体であり、本発明に係るガスバリア性フィルム側に配置される。電子素子本体としては、ガスバリア性フィルムによる封止が適用されうる公知の電子デバイスの本体が使用できる。例えば、有機EL素子、太陽電池(PV)、液晶表示素子(LCD)、電子ペーパー、薄膜トランジスタ、タッチパネル等が挙げられる。本発明の効果がより効率的に得られるという観点から、該電子素子本体は、有機EL素子または太陽電池であることが好ましい。これらの電子素子本体の構成についても、特に制限はなく、従来公知の構成を有しうる。
以下、具体的な電子素子本体の一例として有機EL素子およびこれを用いた有機ELパネルについて説明する。
本発明に係るガスバリア性フィルム10を封止フィルムとして用いた電子機器である有機ELパネル9の一例を図6に示す。有機ELパネル9は、図6に示すように、ガスバリアフィルム10と、ガスバリアフィルム10上に形成されたITOなどの透明電極4と、透明電極4を介してガスバリアフィルム10上に形成された有機EL素子5と、その有機EL素子5を覆うように接着剤層6を介して配設された対向フィルム7等を備えている。なお、透明電極4は、有機EL素子5の一部を成すともいえる。このガスバリア性フィルム10におけるガスバリア層が形成された面に、透明電極4と有機EL素子5が形成されるようになっている。また、対向フィルム7は、アルミ箔などの金属フィルムのほか、本発明に係るガスバリアフィルムを用いてもよい。対向フィルム7にガスバリア性フィルムを用いる場合、ガスバリア層が形成された面を有機EL素子5に向けて、接着剤層6によって貼付するようにすればよい。
(有機EL素子)
有機ELパネル9において、ガスバリアフィルム10で封止される有機EL素子5について説明する。
本発明に係るガスバリア性フィルム10を封止フィルムとして用いた電子機器である有機ELパネル9の一例を図6に示す。有機ELパネル9は、図6に示すように、ガスバリアフィルム10と、ガスバリア性フィルム10上に形成されたITOなどの透明電極4と、透明電極4を介してガスバリア性フィルム10上に形成された有機EL素子5と、その有機EL素子5を覆うように接着剤層6を介して配設された対向フィルム7等を備えている。なお、透明電極4は、有機EL素子5の一部を成すともいえる。このガスバリア性フィルム10におけるガスバリア層が形成された面に、透明電極4と有機EL素子5が形成されるようになっている。また、対向フィルム7は、アルミ箔などの金属フィルムのほか、本発明に係るガスバリアフィルムを用いてもよい。対向フィルム7にガスバリア性フィルムを用いる場合、ガスバリア層が形成された面を有機EL素子5に向けて、接着剤層6によって貼付するようにすればよい。
(有機EL素子)
有機ELパネル9において、ガスバリア性フィルム10で封止される有機EL素子5について説明する。
以下に有機EL素子5の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(3)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(4)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(5)陽極/陽極バッファー層(正孔注入層)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極バッファー層(電子注入層)/陰極
(陽極)
有機EL素子5における陽極(透明電極4)としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
陽極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜として形成し、その薄膜をフォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。
この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましい。また、陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。また、陽極の膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
(陰極)
有機EL素子5における陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が陰極として好適である。
陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。また、陰極の膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子5の陽極または陰極のいずれか一方が透明または半透明であれば、発光輝度が向上し好都合である。
また、陰極の説明で挙げた上記金属を1〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に作製することで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
(注入層:電子注入層、正孔注入層)
注入層には電子注入層と正孔注入層があり、電子注入層と正孔注入層を必要に応じて設け、陽極と発光層または正孔輸送層の間、及び陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させる。
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
陽極バッファー層(正孔注入層)は、特開平9−45479号公報、特開平9−260062号公報、特開平8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
陰極バッファー層(電子注入層)は、特開平6−325871号公報、特開平9−17574号公報、特開平10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的には、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その膜厚は0.1nm〜5μmの範囲が好ましい。
(発光層)
有機EL素子5における発光層は、電極(陰極、陽極)または電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。
有機EL素子5の発光層には、以下に示すドーパント化合物(発光ドーパント)とホスト化合物(発光ホスト)が含有されることが好ましい。これにより、より一層発光効率を高くすることができる。
(発光ドーパント)
発光ドーパントは、大きく分けて蛍光を発光する蛍光性ドーパントとリン光を発光するリン光性ドーパントの2種類がある。
蛍光性ドーパントの代表例としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、または希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
リン光性ドーパントの代表例としては、好ましくは元素の周期表で8属、9属、10属の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。発光ドーパントは複数種の化合物を混合して用いてもよい。
(発光ホスト)
発光ホスト(単にホストとも言う)とは、2種以上の化合物で構成される発光層中にて混合比(質量)の最も多い化合物のことを意味し、それ以外の化合物については「ドーパント化合物(単に、ドーパントとも言う)」という。例えば、発光層を化合物A、化合物Bという2種で構成し、その混合比がA:B=10:90であれば化合物Aがドーパント化合物であり、化合物Bがホスト化合物である。更に発光層を化合物A、化合物B、化合物Cの3種から構成し、その混合比がA:B:C=5:10:85であれば、化合物A、化合物Bがドーパント化合物であり、化合物Cがホスト化合物である。
発光ホストとしては構造的には特に制限はないが、代表的にはカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、芳香族ボラン誘導体、含窒素複素環化合物、チオフェン誘導体、フラン誘導体、オリゴアリーレン化合物等の基本骨格を有するもの、またはカルボリン誘導体やジアザカルバゾール誘導体(ここで、ジアザカルバゾール誘導体とは、カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の少なくとも一つの炭素原子が窒素原子で置換されているものを表す。)等が挙げられる。中でも、カルボリン誘導体、ジアザカルバゾール誘導体等が好ましく用いられる。
そして、発光層は上記化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の薄膜化法により成膜して形成することができる。発光層としての膜厚は特に制限はないが、通常は5nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲で選ばれる。この発光層はドーパント化合物やホスト化合物が1種または2種以上からなる一層構造であってもよいし、あるいは同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。正孔輸送材料としては上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
正孔輸送層は上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。この正孔輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
(電子輸送層)
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する電子輸送材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
電子輸送材料としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
電子輸送層は上記電子輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。電子輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
(有機EL素子の作製方法)
有機EL素子5の作製方法について説明する。
ここでは有機EL素子5の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子の作製方法について説明する。
まず、ガスバリア性フィルム10上に所望の電極物質、例えば、陽極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10〜200nmの膜厚になるように、例えば、蒸着やスパッタリング、プラズマCVD等の方法により形成させ、陽極を作製する。
次に、その上に有機EL素子材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の有機化合物薄膜を形成させる。この有機化合物薄膜の成膜方法としては、蒸着法、ウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法)等があるが、均質な膜が得られやすく、且つピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法が特に好ましい。更に層毎に異なる成膜法を適用してもよい。成膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10−6〜10−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、膜厚0.1nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
これらの層を形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは50〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を設けることにより所望の有機EL素子が得られる。
この有機EL素子5の作製は、一回の真空引きで一貫して陽極、正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる成膜法を施しても構わない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。また、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
このようにして得られた有機EL素子5を備える多色の表示装置(有機ELパネル9)に、直流電圧を印加する場合には、陽極をプラス、陰極をマイナスの極性として電圧2〜40V程度を印加すると発光が観測できる。また、交流電圧を印加してもよい。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
<ガスバリア性フィルムの製造>
(実施例1)
工程(1)
基材(帝人デュポンフィルム株式会社製、テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルム(KDL8W))上にポリシラザン塗膜を形成した。すなわち、パーヒドロポリシラザン(アクアミカ NN120−10、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製)の10質量%ジブチルエーテル溶液と、アミン触媒(アクアミカ LExp. NAXCAT−10DB、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製)のN,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサンの10質量%ジブチルエーテル溶液を99対1の割合で混合した液体を、ワイヤレスバーにて、乾燥後の(平均)膜厚が、150nmとなるように塗布し、温度25℃、露点−5℃の乾燥空気で1分間乾燥して塗布試料を得た。得られた塗布試料を、温度85℃、湿度55%RHの雰囲気で2分間処理した。
ポリシラザン塗膜を乾燥した後の上記試料に対し、下記の装置、条件でエキシマ改質処理を施してポリシラザン改質層を形成した。改質処理時の露点温度は−20℃で実施した。改質後の膜厚は、150nmであった。
・改質処理装置
(株)エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200
波長:172nm
ランプ封入ガス:Xe
・改質処理条件
エキシマ光強度 :130mW/cm(172nm)
試料と光源の距離 :2mm
ステージ加熱温度 :80℃
照射装置内の酸素濃度:0.3体積%
エキシマ光照射時のステージ搬送速度:10mm/秒
エキシマ光照射時のステージ搬送回数:3往復
このようにして、第1のガスバリア層を基材上に形成して、PHPS層/基材(1)を得た。得られた第1のガスバリア層の中心線平均粗さ(Ra)を、下記方法に従って、測定したところ、6nmであった。
〔中心線平均表面粗さ(Ra)〕
原子間力顕微鏡(AFM)として、セイコーインスツルメンツ株式会社製、走査型プローブ顕微鏡SPI3700を使用し、ダイナミックフォースモードで試料の表面を、測定面積10×10μm角、走査速度1Hz、x−y方向512×256分割、カンチレバーSI−DF−20(Si、f=126kHz、c=16N/m)の条件で測定したAFMトポグラフィー像につき傾斜自動補正処理を行い、次いで3次元粗さ解析にて中心線平均表面粗さRa(nm)を求めた。この際、測定に用いたカンチレバーは摩耗や汚れのない状態のものを用いた。
工程(2)
続いて、PHPS層/基材(1)のPHPS層上に、Picosun Oy社製SUNALE(登録商標)R−200ALDにて、アルミナAlの薄膜を堆積させて、ALD層/PHPS層/基材(1)を得た。アルミニウム源としてトリメチルアルミニウム(TMA)、酸素源として水を用いた。
ALDフィルムを反応器内に取り付けて、その反応器を真空ポンプにて真空にし、次に窒素ガスをパージして反応器内の圧力を約800〜1100Paに調整し、次いで基材温度を100℃に調整した。次いで原料を以下のサイクルでパルス状に反応器内に導入した。パルスサイクルは、TMA:0.1秒、窒素パージ:4.0秒、水:0.1秒、窒素パージ:4.0秒、で行った。このときTMAおよび水からのAlの堆積速度は0.1nm/サイクルであった。ここでは50サイクル行い5nmのAl薄膜を形成した。
(実施例2)
工程(1)
上記実施例1の工程(1)において、基材(株式会社きもと製、KBフィルム(商標)(125GA1AB))を基材として代わりに使用する以外は、上記実施例1の工程(1)を繰り返すことによって、乾燥後の膜厚が150nmである第1のガスバリア層を基材上に形成して、PHPS層/基材(2)を得た。このようにして得られた第1のガスバリア層の中心線平均粗さ(Ra)を、実施例1と同様にして測定したところ、1nmであった。
工程(2)
上記実施例1の工程(2)において、PHPS層/基材(1)の代わりにPHPS層/基材(2)を使用し、さらに第2のガスバリア層の厚さが1nmとなるように原子堆積法(ALD法)による成膜を行った以外は、上記実施例1の工程(2)を繰り返すことによって、ガスバリア性フィルム(ALD層/PHPS層/基材(2))を得た。
(実施例3)
工程(1)
上記実施例1の工程(1)において、基材(帝人デュポンフィルム株式会社製、ポリエチレンナフタレート(PEN)基材(PQDA5))を基材として代わりに使用する以外は、上記実施例1の工程(1)を繰り返すことによって、乾燥後の膜厚が150nmである第1のガスバリア層を基材上に形成して、PHPS層/基材(3)を得た。このようにして得られた第1のガスバリア層の中心線平均粗さ(Ra)を、実施例1と同様にして測定したところ、0.8nmであった。
工程(2)
Picosun Oy社製SUNALE(登録商標)R−200ALDにて、SiOの薄膜をPHPS層/基材(3)のPHPS層上に堆積させて、ALD層/PHPS層/基材(3)を得た。Si源としてトリスジメチルアミノシラン(3DMASi)、酸素源としてオゾンを用いた。
フィルムを反応器内に取り付けて、その反応器を真空ポンプにて真空にし、次に窒素ガスをパージして反応器内の圧力を約800〜1100Paに調整し、次いで基材温度を100℃に調整した。次いで原料を以下のサイクルでパルス状に反応器内に導入した。パルスサイクルは、3DMASi:0.1秒、窒素パージ:8.0秒、オゾン:0.1秒、窒素パージ:8.0秒、である。このとき3DMASiおよびオゾンからのSiOの堆積速度は0.0625nm/サイクルであった。ここでは64サイクル行い4nmのSiO薄膜を形成した。
(実施例4)
工程(1)
上記実施例1の工程(1)において、基材(株式会社きもと製、KBフィルム(商標)(G1SBF))を基材として代わりに使用する以外は、上記実施例1の工程(1)を繰り返すことによって、乾燥後の膜厚が150nmである第1のガスバリア層を基材上に形成して、PHPS層/基材(4)を得た。このようにして得られた第1のガスバリア層の中心線平均粗さ(Ra)を、実施例1と同様にして測定したところ、0.4nmであった。
工程(2)
Picosun Oy社製SUNALE(登録商標)R−200ALDにて、TiOの薄膜をPHPS層/基材(4)のPHPS層上に堆積させて、ALD層/PHPS層/基材(4)を得た。Ti源としてテトラキスジメチルアミノチタン(TDMATi)、酸素源としてオゾンを用いた。
フィルムを反応器内に取り付けて、その反応器を真空ポンプにて真空にし、次に窒素ガスをパージして反応器内の圧力を約800〜1100Paに調整し、次いで基材温度を100℃に調整した。次いで原料を以下のサイクルでパルス状に反応器内に導入した。パルスサイクルは、TDMATi:0.1秒、窒素パージ:4.0秒、オゾン:0.1秒、窒素パージ:4.0秒、である。このときTDMATiおよびオゾンからのTiOの堆積速度は0.06nm/サイクルであった。ここでは500サイクル行い30nmのTiO薄膜を形成した。
(実施例5)
工程(1)
上記実施例1の工程(1)において、基材(株式会社きもと製、KBフィルム(商標)(G1SBF))を基材として代わりに使用する以外は、上記実施例1の工程(1)を繰り返すことによって、乾燥後の膜厚が150nmである第1のガスバリア層を基材上に形成して、PHPS層/基材(5)を得た。このようにして得られた第1のガスバリア層の中心線平均粗さ(Ra)を、実施例1と同様にして測定したところ、0.4nmであった。
工程(2)
上記実施例1の工程(2)において、PHPS層/基材(1)の代わりにPHPS層/基材(5)を使用し、さらに第2のガスバリア層の厚さが50nmとなるように原子堆積法(ALD法)による成膜を行った以外は、上記実施例1の工程(2)を繰り返すことによって、ガスバリア性フィルム(ALD層/PHPS層/基材(5))を得た。
(実施例6〜9)
CVD層の形成
図3に示す真空プラズマCVD装置を用いて、基材(株式会社きもと製、KBフィルム(商標)(G1SBF))上へ下記成膜条件にてCVD層を300nm形成した。このとき、CVD層表面の表面粗さRaは8.6nmであった。尚、このCVD層の膜厚組成は図5のようであった。ここで、図5において、符号A〜Dは、A:炭素分布曲線、B:ケイ素分布曲線、C:酸素分布曲線、D:酸素炭素分布曲線を各々表す。図4の炭素分布曲線において、極値は9個存在する。また、図4の炭素分布曲線において、炭素の原子比の最大値と最小値との差の絶対値は10at%以上である。
[プラズマ成膜条件]
〈製膜条件〉
・原料ガス(HMDSO)の供給量:50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)
・酸素ガス(O)の供給量:500sccm
・真空チャンバー内の真空度:3Pa
・プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW
・プラズマ発生用電源の周波数:80kHz
・フィルムの搬送速度;1.5m/min
工程(1)
上記実施例1の工程(1)において、上記で形成されたCDV層付の基材を代わりに基材として使用する以外は、上記実施例1の工程(1)を繰り返すことによって、乾燥後の膜厚が150nmである第1のガスバリア層を上記で形成したCVD層上に形成して、PHPS層/CVD層/基材(6)を得た。このようにして得られた第1のガスバリア層の中心線平均粗さ(Ra)を、実施例1と同様にして測定したところ、0.2nmであった。
工程(2)
上記実施例1の工程(2)において、PHPS層/基材(1)の代わりにPHPS層/CVD層/基材(6)を使用し、さらに第2のガスバリア層の厚さが下記表1に示す厚さとなるように原子堆積法(ALD法)による成膜を行った以外は、上記実施例1の工程(2)を繰り返すことによって、ガスバリア性フィルム(ALD層/PHPS層/CVD層/基材(6)〜(9))を得た。
(比較例1)
工程(1)
上記実施例1の工程(1)において、基材(株式会社きもと製、KBフィルム(商標)(125GA1AB))を基材として代わりに使用する以外は、上記実施例1の工程(1)を繰り返すことによって、乾燥後の膜厚が150nmである第1のガスバリア層を基材上に形成して、PHPS層/基材(10)を得た。このようにして得られた第1のガスバリア層の中心線平均粗さ(Ra)を、実施例1と同様にして測定したところ、1nmであった。
ハードコート層の形成
以下のようにして、上記で形成されたPHPS層/基材(10)のPHPS層上に、乾燥後の膜厚が5nmであるハードコート層を形成し、ハードコート層/PHPS層/基材(10)を得た。すなわち、上記PHPS層/基材(10)の反対面(PHPS層が形成されていない面)に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材OPSTAR Z7501を塗布、乾燥後の膜厚が4μmになるようにダイコーターで塗布した後、乾燥条件;80℃、3分で乾燥後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用、硬化条件;1.0J/cm2で硬化を行い、ハードコート層を形成した。このときのハードコート層表面のRaは0.8nmであった。
(比較例2)
工程(1)
上記実施例1の工程(1)において、基材(株式会社きもと製、KBフィルム(商標)(125GA1AB))を基材として代わりに使用する以外は、上記実施例1の工程(1)を繰り返すことによって、乾燥後の膜厚が150nmである第1のガスバリア層を基材上に形成して、PHPS層/基材(11)を得た。このようにして得られた第1のガスバリア層の中心線平均粗さ(Ra)を、実施例1と同様にして測定したところ、1nmであった。
CVD層の形成
図2に示す真空プラズマCVD装置を用いて、PHPS層/基材(11)のPHPS層上へSiOC膜の成膜を行い、CVD層/PHPS層/基材(11)を得た。この時使用した高周波電源は、27.12MHzの高周波電源で、電極間距離は20mmとした。原料ガスとしては、テトラエトキシシラン(TEOS)ガス流量を7.5sccm、酸素ガス流量を30sccmとして真空槽内へ導入した。このとき成膜開始時にフィルム基板温度を100℃、成膜時のガス圧を30Paに設定してSiOC膜10nmを形成した。
続いて上記と同じ装置を用いて、SiOC上にSiO膜を形成した。この時、使用した高周波電源は、27.12MHzの高周波電源で、電極間距離は20mmとした。原料ガスとしては、シランガス流量を7.5sccm、酸素ガス流量を30sccmとして真空槽内へ導入した。このとき成膜開始時にフィルム基板温度を100℃、成膜時のガス圧を30Paに設定してSiO膜10nmを形成した。
(比較例3)
上記実施例1の工程(1)において、基材(株式会社きもと製、KBフィルム(商標)(125GA1AB))を基材として代わりに使用する以外は、上記実施例1の工程(1)を繰り返すことによって、乾燥後の膜厚が150nmである第1のガスバリア層を基材上に形成して、PHPS層/基材(12)を得た。このようにして得られた第1のガスバリア層の中心線平均粗さ(Ra)を、実施例1と同様にして測定したところ、1nmであった。
上記で得られたガスバリア性フィルムについて、下記の方法に従って耐湿熱試験後の劣化度を評価した。結果を下記表1に示す。
《ガスバリア性フィルムの特性の評価方法》
〈耐湿熱(60℃、90%RH)試験後の劣化度〉
以下の測定方法に従って、各ガスバリア性フィルムの透過水分量を測定し、下記の基準に従って、耐湿熱(60℃、90%RH)試験後の劣化度を評価した。
(装置)
蒸着装置:日本電子株式会社製、真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)
(水蒸気バリア性評価用セルの作製)
真空蒸着装置JEE−400(日本電子株式会社製)を用い、透明導電膜を付ける前のガスバリア性フィルム試料の表面に、マスクを通して12mm×12mmのサイズで水分と反応して腐食する金属である金属カルシウム(粒状)を蒸着膜厚が80nmとなるように蒸着させた。その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面に水蒸気不透過性の金属である金属アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)を蒸着させて仮封止をした。次いで、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下に移した。前記仮封止した金属アルミニウム蒸着面に紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製)を介して厚さ0.2mmの石英ガラスを貼り合わせ、紫外線を照射して前記紫外線硬化樹脂を硬化させて本封止し、水蒸気バリア性評価試料を作製した。
得られた両面を封止した試料を、60℃、90%RHの高温高湿下で100時間保存し、特開2005−283561号公報に記載の方法に基づき、保存前および60℃、90%RHの高温高湿下で100時間保存後の金属カルシウムの腐食量からセル内に透過した水分量を計算した。
なお、ガスバリア性フィルム面以外からの水蒸気の透過がないことを確認するために、比較試料としてガスバリア性フィルム試料の代わりに、厚さ0.2mmの石英ガラス板を用いて金属カルシウムを蒸着した試料を、同様な60℃、90%RHの高温高湿下保存を行い、1000時間経過後でも金属カルシウム腐食が発生しないことを確認した。
高温高湿下での保存前(下記式(A)の「高温高湿条件下での保存前の水分透過率」)および保存後(下記式(A)の「高温高湿条件下での保存後の水分透過率」)における、水蒸気透過率(WVTR)の劣化度(高温高湿保存前後での変化率)を下記式(A)に従って算出し、その変化率によって下記ランクに分け、耐湿熱試験後の劣化度を評価した(下記表中の「耐湿熱試験後の劣化度」)。
Figure 0005929775
Figure 0005929775
上記表1から、本発明のALD層/PHPS層/基材(1)〜(9)は、ALD層の代わりにハードコート層及びCVD層が配置されてなる比較例1,2のハードコート層/PHPS層/基材(10)及びCVD層/PHPS層/基材(11)、ならびにALD層を配置しない比較例3のPHPS層/基材(12)に比して、高温高湿条件下での保存安定性に有意に優れることが示される。
実施例10:有機EL素子の作製
実施例1〜9及び比較例1〜3で作製したガスバリア性フィルム1〜12[ALD層/PHPS層/基材(1)〜(5)、ALD層/PHPS層/CVD層/基材(6)〜(9)、ハードコート層/PHPS層/基材(10)、CVD層/PHPS層/基材(11)及びPHPS層/基材(12)]の最外側の(基材から最も反対側の)ガスバリア層上に、以下の方法により透明導電膜を作製した。
・透明導電膜の形成
プラズマ放電装置としては電極が平行平板型のものを用い、この電極間に上記各試料のガスバリアフィルムを載置し、且つ混合ガスを導入して薄膜形成を行った。なお、アース(接地)電極としては、200mm×200mm×2mmのステンレス板に高密度、高密着性のアルミナ溶射膜を被覆し、その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行い、このようにして被覆した誘電体表面を研磨し、平滑にしてRmaxが5μmとなるように加工した電極を用いた。また、印加電極としては、中空の角型の純チタンパイプに対し、アース電極と同様の条件にて誘電体を被覆した電極を用いた。印加電極は複数作製し、アース電極に対向して設け放電空間を形成した。また、プラズマ発生に用いる電源としては、パール工業(株)製高周波電源CF−5000−13Mを用い、周波数13.56MHzで、5W/cmの電力を供給した。そして、電極間に以下の組成の混合ガスを流し、プラズマ状態とし、上記のガスバリアフィルムを大気圧プラズマ処理し、ガスバリア層(セラミック膜)上に錫ドープ酸化インジウム(ITO)膜を100nmの厚さで成膜し、透明導電膜付の試料1〜12を得た。
放電ガス:ヘリウム 98.5体積%
反応性ガス1:酸素 0.25体積%
反応性ガス2:インジウムアセチルアセトナート 1.2体積%
反応性ガス3:ジブチル錫ジアセテート 0.05体積%
・有機EL素子の作製
得られた透明導電膜付の試料1〜12の100mm×100mmを基板とし、これにパターニングを行った後、このITO透明電極を設けたガスバリアフィルム基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥した。この透明支持基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートにα−NPD(下記の式(2))を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにホスト化合物としてCBP(下記の式(3))を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにバソキュプロイン(BCP(下記の式(4)))を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにIr−1(下記の式(5))を100mg入れ、更に別のモリブデン製抵抗加熱ボートにAlq(下記の式(6))を200mg入れ、真空蒸着装置に取付けた。
Figure 0005929775
Figure 0005929775
Figure 0005929775
Figure 0005929775
Figure 0005929775
次いで、真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、α−NPDの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で透明支持基板に蒸着し、正孔輸送層を設けた。更にCBPとIr−1の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、それぞれ蒸着速度0.2nm/秒、0.012nm/秒で前記正孔輸送層上に共蒸着して発光層を設けた。なお、蒸着時の基板温度は室温であった。更にBCPの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で前記発光層の上に蒸着して膜厚10nmの正孔阻止層を設けた。その上に、更にAlqの入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で前記正孔阻止層の上に蒸着して、更に膜厚40nmの電子輸送層を設けた。なお、蒸着時の基板温度は室温であった。引き続き、フッ化リチウム0.5nm及びアルミニウム110nmを蒸着して陰極を形成し、それぞれ透明導電膜付の試料1〜12を用いた有機EL素子試料1〜12を作製した。
・有機EL素子試料の封止
窒素ガス(不活性ガス)によりパージされた環境下で、有機EL素子試料1〜12のアルミニウム蒸着面と、厚さ100μmのアルミ箔を対面させる様にして、ナガセケムテックス社製エポキシ系接着剤を用いて接着させて封止を行った。
[有機EL素子試料の評価(ダークスポット)]
封止された有機EL素子試料1〜12を60℃、90%RHの環境下で通電を行い、ダークスポットの発生等の発光ムラの状況を、0日から120日までの変化を観察した。
こうして観測された各試料の発光ムラを下記の5段階に分類し、評価した。
Figure 0005929775
以上の評価結果(5段階評価)を表2に示す。
Figure 0005929775
本発明の有機EL素子試料1〜9は、高温高湿環境に対するダークスポット評価において良好な結果を示した。一方、有機EL素子試料10〜12は、高温高湿環境において顕著なダークスポットの発生がみられた。
1、10…ガスバリア性フィルム、
2…基材、
3…CVD層、
4…透明電極、
5…有機EL素子、
6…接着剤層、
7…対向フィルム7、
9…有機ELパネル、
11…ガスバリア性フィルム、
12…基材、
13…第1のガスバリア層、
14…第2のガスバリア層,
31…製造装置、
32…送り出しローラー、
33、34、35、36…搬送ローラー、
39、40…成膜ローラー、
41…ガス供給管、
42 プラズマ発生用電源、
43、44…磁場発生装置、
45…巻取りローラー、
101…プラズマCVD装置、
102…真空槽、
103…カソード電極、
105…サセプタ、
106…熱媒体循環系、
107…真空排気系、
108…ガス導入系、
109…高周波電源、
110…基板、
160…加熱冷却装置。

Claims (5)

  1. ポリシラザン化合物を含む塗布液を基材上に塗布し、真空紫外光を照射して第1のガスバリア層を形成する工程(1)と、
    前記第1のガスバリア層上に、金属化合物を用いて原子層堆積法(ALD法)により第2のガスバリア層を形成する工程(2)と、
    を有する、ガスバリア性フィルムの製造方法。
  2. 前記第2のガスバリア層の厚さ(T(nm))が、前記第1のガスバリア層の中心線平均粗さ(Ra(nm))と同等以上(T≧Ra)である、請求項1に記載のガスバリア性フィルムの製造方法
  3. 第1のガスバリア層の中心線平均粗さ(Ra(nm))に対する、前記第2のガスバリア層の厚さ(T(nm))の割合(T/Ra)が、1〜250である、請求項2に記載のガスバリア性フィルムの製造方法
  4. 前記第2のガスバリア層の厚さ(T(nm))が10〜60nmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  5. 工程(1)において、基材上に、化学蒸着法によりケイ素、アルミニウムおよびチタンからなる群より選択される少なくとも1種の酸化物、窒化物、酸窒化物または酸炭化物の少なくとも1種を含むCVD層を形成した後、前記CVD層上にポリシラザン化合物を含む塗布液を塗布し、真空紫外光を照射して第1のガスバリア層を形成する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
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