WO2016147959A1 - ガスバリア性フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた屈曲性を有し、保存安定性の高いガスバリア性フィルムを提供することである。【解決手段】樹脂基材と、真空成膜法によって形成されてなる、ガスバリア層と、を含み、前記ガスバリア層が、Si、OおよびNと;V、NbおよびTaからなる群から選択される少なくとも1種の原子Mと;を含む酸化窒化膜である、ガスバリア性フィルム。

Description

ガスバリア性フィルム
 本発明は、ガスバリア性フィルムに関する。
 従来、プラスチック基板やフィルムの表面に、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物を含む薄膜(ガスバリア層)を形成したガスバリア性フィルムが、食品、医薬品等の分野で物品を包装する用途に用いられている。ガスバリア性フィルムを用いることによって、水蒸気や酸素等のガスによる物品の変質を防止することができる。
 近年、このような水蒸気や酸素等の透過を防ぐガスバリア性フィルムが、液晶表示素子(LCD)、太陽電池(PV)、有機エレクトロルミネッセンス(EL)などの電子デバイスの分野にも利用されつつある。電子デバイスにガスバリア性フィルムを適用するためには、フレキシブル性、透明性、耐熱性等を有することが必要である。また、電子デバイスは水分等の影響を特に受けやすいことから、高いガスバリア性、例えば、ガラス樹脂基材に匹敵するガスバリア性が要求される。
 ところで、製造の過程でロール状に巻いたり、あるいは、電子デバイスにおいて曲面ディスプレイに適用させるためガスバリア性フィルムにフレキシブル性を持たせる要求がある。
 しかしながら、ガスバリア層として通常用いられる「酸化ケイ素膜」は、硬くて脆いという性質がある。
 そこで、かような問題を解決することを目的として、プラスチック樹脂基材の少なくとも一方の面に厚み50~300Åの無機バリア層を設けたフィルムであって、前記プラスチック樹脂基材と前記無機バリア層の間に樹脂層が積層されており、かつ前記無機バリア層が、AlとSiと酸素、窒素からなり、Al原子とSi原子の重量比が15:85~40:60の範囲であり、窒素の酸素に対するモル比が10~40%であり、純金属分100gに対する酸素原子と窒素原子の合計モル数が下記の式を満足することを特徴とするガスバリア性フィルムという構成を採用したり(特許文献1);樹脂基材上に、少なくとも1層のケイ素を含む無機層と、該無機層の表面に設けられた有機層を有するガスバリア性フィルムであって、有機層が、(メタ)アクリレート系化合物と、分子内にチオール基を2つ以上有する化合物と、ラジカル重合開始剤を含む重合性組成物を硬化して得られる、ガスバリア性フィルムを提供したりする技術(特許文献2)が知られている。
特開2005-138537号公報 特開2010-228412号公報
 他方、ガスバリア性フィルムの作製後、当該ガスバリア性フィルムを有機エレクトロルミネッセンス(EL)などの電子デバイスに適用するまでに、一定期間保管されたり、あるいは、曲面ディスプレイに適用された場合、その形状を維持する必要があるため、屈曲応力が掛かった場合であっても、長期間に亘り、そのガスバリア性能を維持するため、安定性の高いガスバリア性フィルムが必要と考えた。
 しかしながら、従来の技術においては、かような安定性の観点では、十分に議論されておらず、問題があることが分かった。
 そこで、本発明が、解決しようとするところは、優れた屈曲性を有し、ガスバリア性能を維持する安定性の高いガスバリア性フィルムを提供することである。
 本発明者は、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を行った。上述した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映したガスバリア性フィルムは、樹脂基材と、真空成膜法によって形成されてなる、ガスバリア層と、を含み、前記ガスバリア層が、Si、OおよびNと;V、NbおよびTaからなる群から選択される少なくとも1種の原子Mと;を含む酸化窒化膜である。
本発明の一実施形態のガスバリア性フィルムを示す概略断面図である。 本発明の一実施形態のガスバリア性フィルムを示す概略断面図である。 本発明の一実施形態のガスバリア性フィルムを示す概略断面図である。 水蒸気透過度評価セルの一例を示す模式図である。 本発明の水蒸気透過度評価装置および水蒸気透過度評価システムの構成の一例である。 水蒸気透過度評価システム100の機能ブロック図である。 水蒸気透過度算出処理の流れを示すフローチャートである。 実施例で用いた巻き取り式のスパッタリング装置の模式図である。
 本発明は、樹脂基材と、真空成膜法によって形成されてなる、ガスバリア層と、を含み、前記ガスバリア層が、Si、OおよびNと;V、NbおよびTaからなる群から選択される少なくとも1種の原子Mと;を含む酸化窒化膜である、ガスバリア性フィルムである。このような構成を有する本発明のガスバリア性フィルムは、優れた屈曲性を有し、安定性が向上する。
 なぜ、本発明のガスバリア性フィルムにより上記効果が得られるのか、詳細は不明であるが、下記のようなメカニズムが考えられる。ただし、本発明の技術的範囲は、以下には制限されない。すなわち、5価で安定した構造をとることができる5族元素をSiON構造に組み込むことで、SiONの構造が安定化し、保存性が向上するものと推定している。他族の元素でも5価をとることができるものもあるが、構造的には安定ではなく同様な効果が得られないと考えられる。
 以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。また、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
 本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で測定する。
 <ガスバリア性フィルム>
 図1は、本発明の一実施形態のガスバリア性フィルムを示す概略断面図である。図1に示されるように、本発明の一実施形態のガスバリア性フィルムFは、樹脂基材B上に、真空成膜法によって形成されてなる、ガスバリア層Gが形成されてなる。そして、当該ガスバリア層Gは、Si、OおよびNと、V、NbおよびTaからなる群から選択される少なくとも1種の原子Mとを含む酸化窒化膜(酸化窒化珪素膜)である。かような構成を有することによって、優れた屈曲性を有し、長期間、ガスバリア性能を維持する安定性の高いガスバリア性フィルムを提供することができる。
 以下、本形態の各構成について説明する。
 [樹脂基材]
 樹脂基材Bとしては、フレキシブル性を有するものが好ましく用いられ、具体的には、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸-マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂を含む基材が挙げられる。該樹脂基材は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
 基材として用いることができる熱可塑性樹脂のより好ましい具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET:70℃)、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン株式会社製、ゼオノア(登録商標)1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001-150584号公報に記載の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば三菱ガス化学株式会社製、ネオプリム(登録商標):260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF-PC:特開2000-227603号公報に記載の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP-PC:特開2000-227603号公報に記載の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002-80616号公報に記載の化合物:300℃以上)等が挙げられる(括弧内はTgを示す)。
 本発明に係るガスバリア性フィルムは、有機EL素子等の電子デバイスとして利用されることから、樹脂基材は透明であることが好ましい。すなわち、ガスバリア性フィルムの光線透過率が通常65%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。光線透過率は、JIS K7105:1981に記載された方法、すなわち積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率および散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
 また、上記に挙げた樹脂基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。当該樹脂基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。これらの基材の製造方法については、国際公開第2013/002026号の段落「0051」~「0055」の記載された事項を適宜採用することができる。
 本発明の好ましい実施形態によれば、樹脂基材は、ハードコート層などの機能層を有していてもよい。ハードコート層に含まれる材料の例としては、例えば、熱硬化性樹脂や活性エネルギー線硬化性樹脂が挙げられるが、成形が容易なことから、活性エネルギー線硬化性樹脂が好ましい。このような硬化性樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。また、本発明の好ましい実施形態では、ハードコート層は、透明性を有するクリアハードコート層である。
 このように、本発明の好ましい実施形態によれば、前記樹脂基材の表面には、機能層が位置する。
 また、当該機能層の表面粗さRaも特に制限はないが、4nm以下が好ましく、3nm以下がより好ましく、2nm以下がさらに好ましい。特に、屈曲応力が掛かった後も、長期に亘ってガスバリア性を維持させる観点から、1nm以下であることが特に好ましい。
 ここで、活性エネルギー線硬化性樹脂とは、紫外線や電子線のような活性エネルギー線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。活性エネルギー線硬化性樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性エネルギー線を照射することによって硬化させて、活性エネルギー線硬化性樹脂層、すなわちハードコート層が形成される。活性エネルギー線硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する紫外線硬化性樹脂が好ましい。予めハードコート層が形成されている市販の樹脂基材を用いてもよく、その具体例としては、例えば、KBフィルム(商標)125G1SBF、A1MN10(株式会社きもと製)などが好ましい。
 該樹脂基材は、単層でもよいし2層以上の積層構造であってもよい。該樹脂基材が2層以上の積層構造である場合、各樹脂基材は同じ種類であってもよいし異なる種類であってもよい。
 本発明に係る樹脂基材の厚さ(2層以上の積層構造である場合はその総厚)は、ハンドリング性とフレキシブル性との観点から、10~200μmであることが好ましく、20~150μmであることがより好ましい。
 [ガスバリア層]
 ガスバリア層Gは、樹脂基材B上に真空成膜法によって形成されてなり、Si、OおよびNと;V、NbおよびTaからなる群から選択される少なくとも1種の原子Mと;を含む酸化窒化膜である。このような形態であるので、優れた屈曲性を有し、長期に亘り安定したガスバリア性能を発揮する。なお、本明細書中、「~上」とは、「直上」のみならず、上記のように、機能層、ポリシラザン由来膜などの他の層を介して位置する場合も含む概念である。
 このように、本発明のガスバリア層は、Siと、V、NbおよびTaからなる群から選択される少なくとも1種の原子Mと;を含む、酸化窒化膜である。V、NbおよびTaからなる群から選択される少なくとも1種の原子Mをガスバリア層に含ませることによって、堅くて脆い性質を有する、(ガスバリア膜として用いられる)酸化ケイ素膜に、構造的な安定性を付与し、製造プロセスの過程でロール状に巻き取るときや、ガスバリア性フィルムを屈曲ディスプレイに適応する場合であっても、優れた耐久性、保管安定性を向上し、長きに亘りガスバリア性能を維持させる。
 ここで、同様の効果を奏する形態として、ガスバリア膜(酸化ケイ素膜)とは別個の層として、V、NbおよびTaからなる群から選択される少なくとも1種の原子を含む層を形成することも考えられる。しかしながら、このような形態では、屈曲応力が掛かるとフィルムの変形に追従することができず、堅くて脆い性質を有する酸化ケイ素膜がダメージを受け、結果として、初期のガスバリア性能が優れていても、長期に亘る高いガスバリア性能を発揮することができない場合がある。
 これに対し、本発明のガスバリア層の構成によれば、Siや、Oの周辺に、構造的な安定性を付与する原子Mが存在する。しかも本発明のガスバリア層は、窒素原子をも導入している酸化窒化膜であるので、より構造的な安定性が付与される。よって、ガスバリア性フィルムの変形に対して構造的に追従することができ、本発明の所望の効果を奏することができる。
 本発明のガスバリア層のXPSで測定した原子組成比は、特に制限はないが、好ましい形態によれば、ガスバリア層のXPSで測定した原子組成比が、Si(ケイ素原子)を100としたときに、Mが、好ましくは0.1~200であり、より好ましくは0.5~150であり、さらに好ましくは1~100である。特に、1~100であることによって、ガスバリア性フィルムの構造がより安定となり、長期に亘り、ガスバリア性能をより維持することができる。
 また、Siを100としたときに、O(酸素原子)が、好ましくは10~400であり、より好ましくは30~350であり、さらに好ましくは40~300である。このような範囲であることによって、このような原子組成比を有することによって、ガスバリア性フィルムの構造がよりさらに安定するため、ガスバリア性能を高めることができる。
 また、Siを100としたときに、N(窒素原子)が、好ましくは10~150であり、より好ましくは30~100であり、さらに好ましくは40~80である。このような原子組成比を有することによって、ガスバリア性フィルムの構造がよりさらに安定するため、ガスバリア性能を高めることができる。
 以上より、本発明の好ましい実施形態によれば、前記ガスバリア層のXPSで測定した原子組成比が、Siを100としたときに、Mが、1~100であり、Oが、40~300であり、Nが、40~80である。
 以下、本発明で採用するXPSの条件について説明する。
 《XPS分析条件》
 ・装置:アルバックファイ製QUANTERASXM
 ・X線源:単色化Al-Kα
 ・測定領域:Si2p、C1s、N1s、O1s、その他測定する金属に応じて定法により設定
 ・スパッタイオン:Ar(2keV)
 ・デプスプロファイル:一定時間スパッタ後、測定を繰り返す。1回の測定は、SiO2換算で、約2.5nmの厚さ分となるようにスパッタ時間を調整する
 ・定量:バックグラウンドをShirley法で求め、得られたピーク面積から相対感度係数法を用いて定量した。データ処理は、アルバックファイ社製のMultiPakを用いる。
 本発明のガスバリア層の製造方法は、ガスバリア層が、Si、OおよびNと;V、NbおよびTaからなる群から選択される少なくとも1種の原子Mと;を含む酸化窒化膜となるような真空成膜法を用いた方法であれば特に制限されない。
 本発明の好ましい実施形態によれば、樹脂基材上に、真空成膜法によってガスバリア層を形成することを有し、前記ガスバリア層が、Si、OおよびNと;V、NbおよびTaからなる群から選択される少なくとも1種の原子Mと;を含む酸化窒化膜である、ガスバリア性フィルムの製造方法が提供される。
 例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD)、イオン注入法、プラズマCVD(chemical vapordeposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)などの化学蒸着法が挙げられる。中でも、下部に備えるガスバリア層へのダメージを与えることなく成膜が可能となり、高い生産性を有することから、スパッタ法により形成することが好ましい。
 スパッタ法による成膜は、DC(直流)スパッタリング、RF(高周波)スパッタリング、マグネトロンスパッタリング方法、さらに中間的な周波数領域を用いたデュアルマグネトロン(DMS)スパッタ法などの従来技術を、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。また、金属モードと、酸化物モードの中間である遷移モードを利用した反応性スパッタ法も用いることができる。また、ターゲットの印加方式はターゲット種に応じて適宜選択され、DC(直流)スパッタリング、およびRF(高周波)スパッタリングのいずれを用いてもよい。
 DCスパッタリング、マグネトロンスパッタリング方法あるいはDMSスパッタリングを行なう際には、Si、OおよびNと;V、NbおよびTaからなる群から選択される少なくとも1種の原子Mと;を含む酸化窒化膜となるようなターゲットを適宜選択して使用することができる。
 ターゲットとしては、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化バナジウムまたは酸化タンタルと、窒化酸化ケイ素とで形成された混合焼結材を使用することができ、ガスバリア層のXPSで測定した原子組成比となるように、ターゲットの成分の組成比を適宜変更することによって使用することができる。または窒化酸化ケイ素のターゲットと;V、NbおよびTaからなる群から選択される少なくとも1種の原子Mと;を含む酸化物ターゲットをともに用いることもできる。また金属ターゲットを用いた反応性スパッタによっても形成できる。
 プロセスガスとしては、He、Ne、Ar、Kr、Xe等の不活性ガス、酸素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素のうち少なくとも1種等のプロセスガスを用いることができる。スパッタ法における成膜条件としては、ガス圧力、印加電力、放電電流、放電電圧、時間等が挙げられるが、これらは、スパッタ装置や、膜の材料、膜厚等に応じて適宜選択することができる。
 本発明のガスバリア層は、単層でもよいし2層以上の積層構造であってもよい。該ガスバリア層が2層以上の積層構造である場合、該ガスバリア層は同じ組成であってもよいし異なる組成であってもよい。
 ガスバリア層の厚さ(2層以上の積層構造である場合はその総厚)は、特に制限されないが、1~500nmであることが好ましく、3~300nmであることが好ましく、5~200nmであることがさらに好ましい。好ましい範囲の下限を1nm以上とすることで、ガスバリア性が十分に確保でき、好ましい範囲の上限を500nm以下とすることで、繰り返し屈曲した後でも初期と遜色ないガスバリア性を維持することができる。
 [ポリシラザン由来膜]
 本発明の好ましい形態によれば、ガスバリア性フィルムは、ポリシラザンを含有する塗布液を塗布および乾燥することを有して得られる、ポリシラザン由来膜をさらに有する。ガスバリア性フィルムにおけるポリシラザン由来膜の位置は、特に制限されないが、前記ポリシラザン由来膜は、前記ガスバリア層に接触して形成される。より具体的に説明する。よって、本発明の好ましい実施形態によれば、樹脂基材上に、ポリシラザンを含有する塗布液を塗布および乾燥することを有してポリシラザン由来膜を形成することを含む、ガスバリア性フィルムの製造方法が提供される。
 図2は、本発明の一実施形態のガスバリア性フィルムを示す概略断面図である。本形態のガスバリア性フィルムFは、樹脂基材Bと、真空成膜法によって形成されてなる、ガスバリア層Gとを含み、前記ガスバリア層Gと接触するように、前記樹脂基材B上に形成されてなるポリシラザン由来膜Pを含む。
 図3は、本形態のガスバリア性フィルムFは、樹脂基材Bと、真空成膜法によって形成されてなる、ガスバリア層Gとを含み、前記ガスバリア層Gと接触するように、当該ガスバリア層G上に形成されてなるポリシラザン由来膜Pを含む。
 図2や、図3に示されるように、前記ポリシラザン由来膜Pが、前記ガスバリア層Gに接触して形成されることによって、折り曲げ耐性と、長期に亘るガスバリア性能の維持に資する。
 また、本発明の好ましい形態においては、ポリシラザン由来膜に対して、エネルギーを印加し、ポリシラザンの酸化ケイ素または酸窒化ケイ素等への転化反応を行い、無機薄膜へ改質する。このようにすることによってさらにガスバリア性が向上する。
 具体的には、ポリシラザンは、好ましくは下記の構造を有する。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
 上記一般式(I)において、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R、RおよびRは、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
 また、上記一般式(I)において、nは、整数であり、一般式(I)で表される構造を有するポリシラザンが150~150,000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。
 上記一般式(I)で表される構造を有する化合物において、好ましい態様の一つは、R、RおよびRのすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザンである。
 または、ポリシラザンとしては、下記一般式(II)で表される構造を有する。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002
 上記一般式(II)において、R1’、R2’、R3’、R4’、R5’およびR6’は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R1’、R2’、R3’、R4’、R5’およびR6’は、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
 また、上記一般式(II)において、n’およびpは、整数であり、一般式(II)で表される構造を有するポリシラザンが150~150,000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。なお、n’およびpは、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
 上記一般式(II)のポリシラザンのうち、R1’、R3’およびR6’が各々水素原子を表し、R2’、R4’およびR5’が各々メチル基を表す化合物;R1’、R3’およびR6’が各々水素原子を表し、R2’、R4’が各々メチル基を表し、R5’がビニル基を表す化合物;R1’、R3’、R4’およびR6’が各々水素原子を表し、R2’およびR5’が各々メチル基を表す化合物が好ましい。
 または、ポリシラザンとしては、下記一般式(III)で表される構造を有する。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003
 上記一般式(III)において、R1”、R2”、R3”、R4”、R5”、R6”、R7”、R8”およびR9”は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R1”、R2”、R3”、R4”、R5”、R6”、R7”、R8”およびR9”は、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
 また、上記一般式(III)において、n”、p”およびqは、整数であり、一般式(III)で表される構造を有するポリシラザンが150~150,000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。なお、n”、p”およびqは、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
 上記一般式(III)のポリシラザンのうち、R1”、R3”およびR6”が各々水素原子を表し、R2”、R4”、R5”およびR8”が各々メチル基を表し、R9”が(トリエトキシシリル)プロピル基を表し、R7”がアルキル基または水素原子を表す化合物が好ましい。
 一方、そのSiと結合する水素原子部分の一部がアルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより下地である基材との接着性が改善され、かつ硬くて脆いポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができ、より(平均)膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点がある。このため、用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンとを選択してよく、混合して使用することもできる。
 パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6および8員環を中心とする環構造とが存在する構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600~2000程度(ポリスチレン換算)で、液体または固体の物質があり、その状態は分子量により異なる。
 ポリシラザンは有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン由来膜形成用塗布液として使用することができる。ポリシラザン溶液の市販品としては、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製の NN120-10、NN120-20、NAX120-20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL120-20、NL150A、NP110、NP140、SP140等が挙げられる。
 (ポリシラザン由来膜形成用塗布液)
 ポリシラザン由来膜形成用塗布液を調製するための溶剤としては、ポリシラザンを溶解できるものであれば特に制限されないが、ポリシラザンと容易に反応してしまう水および反応性基(例えば、ヒドロキシル基、あるいはアミン基等)を含まず、ポリシラザンに対して不活性の有機溶剤が好ましく、非プロトン性の有機溶剤がより好ましい。具体的には、溶剤としては、非プロトン性溶剤;例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターペン等の、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒;塩化メチレン、トリクロロエタン等のハロゲン炭化水素溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類:例えば、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、モノ-およびポリアルキレングリコールジアルキルエーテル(ジグライム類)などを挙げることができる。上記溶剤は、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度等の目的にあわせて選択され、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
 ポリシラザン由来膜形成用塗布液におけるポリシラザンの濃度は、特に制限されず、層の膜厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、好ましくは1~80質量%、より好ましくは5~50質量%、さらに好ましくは10~40質量%である。
 ポリシラザン由来膜形成用塗布液は、改質を促進するために、触媒を含有することが好ましい。本発明に適用可能な触媒としては、塩基性触媒が好ましく、特に、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、3-モルホリノプロピルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン等のアミン触媒、Ptアセチルアセトナート等のPt化合物、プロピオン酸Pd等のPd化合物、Rhアセチルアセトナート等のRh化合物等の金属触媒、N-複素環式化合物が挙げられる。これらのうち、アミン触媒を用いることが好ましい。この際添加する触媒の濃度としては、ケイ素化合物を基準としたとき、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5~7質量%の範囲である。触媒添加量をこの範囲とすることで、反応の急激な進行による過剰なシラノール形成、および膜密度の低下、膜欠陥の増大などを避けることができる。
 (ポリシラザン由来膜形成用塗布液を塗布する方法)
 ポリシラザン由来膜形成用塗布液を塗布する方法としては、従来公知の適切な湿式塗布方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
 塗布厚さは、好ましい厚さや目的に応じて適切に設定され得る。一例を挙げれば、乾燥後の塗布液(塗膜)の厚さ(複数回塗膜形成を行う場合は1回当たりの厚さ)は、好ましくは40nm以上1000nm以下であり、より好ましくは50nm以上300nm以下である。
 塗布液を塗布した後は、塗膜を乾燥させる。塗膜を乾燥することによって、塗膜中に含有される有機溶媒を除去することができる。この際、塗膜に含有される有機溶媒は、すべてを乾燥させてもよいが、一部残存させていてもよい。
 塗膜の乾燥温度は、適用する基材によっても異なるが、50~200℃であることが好ましい。例えば、ガラス転移温度(Tg)が70℃のポリエチレンテレフタレート基材を基材として用いる場合には、乾燥温度は、熱による基材の変形等を考慮して150℃以下に設定することが好ましい。上記温度は、ホットプレート、オーブン、ファーネスなどを使用することによって設定されうる。乾燥温度としては、10分以下が好ましく、5分以下が好ましい。また、乾燥雰囲気は、大気雰囲気下、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下、真空雰囲気下、酸素濃度をコントロールした減圧雰囲気下等のいずれの条件であってもよい。
 (エネルギーの印加)
 ポリシラザンの酸化ケイ素または酸窒化ケイ素等への転化反応は、公知の方法を適宜選択して適用することができる。改質処理としては、具体的には、プラズマ処理、紫外線照射処理、加熱処理が挙げられる。
 改質処理としては、樹脂基材への適応という観点から、より低温で、転化反応が可能なプラズマ処理や紫外線照射処理による転化反応が好ましい。以下、好ましい改質処理方法であるプラズマ処理、真空紫外線照射処理について説明する。
 〈真空紫外線照射処理:エキシマ照射処理〉
 本発明において、最も好ましい改質処理方法は、真空紫外線照射による処理(エキシマ照射処理)である。真空紫外線照射による処理は、ポリシラザン化合物内の原子間結合力より大きい100~200nmの光エネルギーを用い、好ましくは100~180nmの波長の光エネルギーを用い、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみの作用により、直接切断しながら活性酸素やオゾンによる酸化反応を進行させることで、比較的低温(約200℃以下)で、酸化ケイ素膜の形成を行う方法である。なお、エキシマ照射処理を行う際は、上述したように熱処理を併用することが好ましい。
 本発明においての放射線源は、100~180nmの波長の光を発生させるものが好ましいが、好適には約172nmに最大放射を有するエキシマラジエータ(例えば、Xeエキシマランプ)、約185nmに輝線を有する低圧水銀蒸気ランプ、並びに230nm以下の波長成分を有する中圧および高圧水銀蒸気ランプ、および約222nmに最大放射を有するエキシマランプである。このうち、Xeエキシマランプは、波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから、発光効率に優れている。この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラジカルな酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。
 また、波長の短い172nmの光のエネルギーは、有機物の結合を解離させる能力が高いことが知られている。この活性酸素やオゾンと紫外線放射とが持つ高いエネルギーによって、短時間でポリシラザン塗膜の改質を実現できる。
 エキシマランプは光の発生効率が高いため、低い電力の投入で点灯させることが可能である。また、光による温度上昇の要因となる波長の長い光は発せず、紫外線領域で、すなわち短い波長でエネルギーを照射するため、解射対象物の表面温度の上昇が抑えられる特徴を持っている。このため、本発明においては、熱の影響を受けやすいとされるPETなどのフレシキブルフィルム材料に適している。
 紫外線照射時の反応には、酸素が必要であるが、真空紫外線は、酸素による吸収があるため紫外線照射工程での効率が低下しやすいことから、真空紫外線の照射は、可能な限り酸素濃度および水蒸気濃度の低い状態で行うことが好ましい。すなわち、真空紫外線照射時の酸素濃度は、10~20,000体積ppm(0.001~2体積%)とすることが好ましく、50~10,000体積ppm(0.005~1体積%)とすることがより好ましい。また、転化プロセスの間の水蒸気濃度は、好ましくは1000~4000体積ppmの範囲である。
 真空紫外線照射時に用いられる、照射雰囲気を満たすガスとしては乾燥不活性ガスとすることが好ましく、特にコストの観点から乾燥窒素ガスにすることが好ましい。酸素濃度の調整は照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで調整可能である。
 真空紫外線照射工程において、ポリシラザン塗膜が受ける塗膜面での該真空紫外線の照度は1mW/cm~10W/cmであると好ましく、30mW/cm~200mW/cmであることがより好ましく、50mW/cm~160mW/cmであるとさらに好ましい。1mW/cm以上であれば、改質効率が向上し、10W/cm以下であれば、塗膜に生じ得るアブレーションや、基材へのダメージを低減することができる。
 塗膜面における真空紫外線の照射エネルギー量(照射量)は、100mJ/cm~50J/cmであることが好ましく、200mJ/cm~20J/cmであることがより好ましく、500mJ/cm~10J/cmであることがさらに好ましい。100mJ/cm以上であれば、改質が十分となり、50J/cm以下であれば、過剰改質によるクラック発生や、基材の熱変形を抑制することができる。
 また、用いられる真空紫外線は、CO、COおよびCHの少なくとも一種を含むガスで形成されたプラズマにより発生させてもよい。さらに、CO、COおよびCHの少なくとも一種を含むガス(以下、炭素含有ガスとも称する)は、炭素含有ガスを単独で使用してもよいが、希ガスまたはHを主ガスとして、炭素含有ガスを少量添加することが好ましい。プラズマの生成方式としては容量結合プラズマなどが挙げられる。
 ポリシラザン由来膜の厚さ(2層以上の積層構造である場合はその総厚)は、10~1000nmであることが好ましく、50~600nmであることがより好ましい。この範囲であれば、ガスバリア性と耐久性とのバランスが良好となり好ましい。ポリシラザン由来膜の厚さは、TEM観察により測定することができる。
 [種々の機能を有する層]
 本発明のガスバリア性フィルムにおいては、上記に説明したハードコート層だけではなく、アンカーコート層、平滑層などの種々の機能を有する、他の機能層を設けることができる。
 以上、本発明は、樹脂基材と、真空成膜法によって形成されてなる、ガスバリア層と、を含み、前記ガスバリア層が、Si、OおよびNと;V、NbおよびTaからなる群から選択される少なくとも1種の原子Mと;を含む酸化窒化膜である、ガスバリア性フィルムである。このような構成を有する本発明のガスバリア性フィルムは、優れた屈曲性を有し、長期に亘り、優れたガスバリア性能を維持する。
 かようなガスバリア性能の有無についての測定方法については制限されないが、例えば、以下のような方法が好適である。すなわち、ガスバリア性フィルムに対して屈曲試験を行った後、一定期間、当該ガスバリア性フィルムの保管を行う。その後、初期の水蒸気透過度およびその標準偏差と、保管後の水蒸気透過度およびその標準偏差とを比較し、その標準偏差の変化を見ることによって評価することができる。
 水蒸気透過度と、標準偏差は、例えば、以下の方法を以って測定することができる。本発明において、かような方法によって測定することによって、ガスバリア性フィルム内の面内のばらつきを定量化できるメリットがある。以下の水蒸気透過度評価方法は、日本国特許出願2014-124090号に記載の内容を参照することによって行うことができるが、具体的には以下のとおりである。
 〔1〕水蒸気透過度評価方法
 〔1.1〕評価方法
 水蒸気透過度評価方法は、腐食性金属を有する水蒸気透過度評価セルによって少なくとも前記(1)~(5)のステップにて、ガスバリア性フィルム等の水蒸気透過度および水蒸気透過度のばらつき(標準偏差(σ))を評価する水蒸気透過度評価方法である。
 また、前記水蒸気透過度評価方法は、以下の装置を用いて行われることが好ましい。
 本発明に用いられる水蒸気透過度評価装置は、上記(1)~(5)のステップを順次行うことができる装置であって、前記水蒸気透過度評価セルの一方の面に対して斜め方向または法線方向から照明光を照射する手段と、前記水蒸気透過度評価セルからの反射光または反対側の面から出射する透過光のいずれかを測定する手段と、前記腐食性金属層の指定した範囲内を、それぞれ一定の単位面積で10等分以上の一定の分割数に分割し、相互に対応する各部分の光学的特性の変化量から、腐食部分のデータ解析をして面積と厚さを算出する手段と、得られた腐食部分の面積と膜厚から水蒸気透過度を算出し、平均値と標準偏差を計算する手段と、を具備することが好ましい。
 以下、各ステップの詳細を説明する。
 (1)水蒸気透過度評価セルを作製するステップ
 このステップは、水分不透過基板と、水分と反応して腐食する腐食性金属層と、評価試料とをこの順に設けた水蒸気透過度評価セルを作製するステップである。
 水蒸気透過度評価セル(以下、簡単に評価セルともいう。)は、その内部に水分と反応して腐食する腐食性金属層(以下、単に腐食性金属層ともいう。)を有する。
 図4に、水蒸気透過度評価セルの一例を示す模式図を示す。
 水蒸気透過度評価セルCは、まず水分不透過基板1上に水分と反応して腐食する腐食性金属層2を形成する。
 水分不透過基板1とは、水分の透過をせず、透明であるものが好ましく、ガラス樹脂基材であることが好ましい。例えば、ソーダライムガラス、ケイ酸塩ガラスなどが挙げられ、ケイ酸塩ガラスであることが好ましく、具体的には、シリカガラスまたはホウケイ酸ガラスであることがより好ましい。ガラス樹脂基材の厚さは、0.1~2mmの範囲内であり、透明であることが透過光で画像撮影する際にノイズを持ち込まない観点から好ましい。
 腐食性金属とは、水分と反応して腐食する金属層を構成する金属であって、光学的特性が変化する金属であることが好ましい。
 具体的には、アルカリ金属、第2族金属またはその合金が好ましく、リチウムやカリウムなどのアルカリ金属、またはカルシウム、マグネシウムやバリウムなどの第2族金属が挙げられる。中でも安価で比較的蒸着膜を形成しやすいカルシウムであることが好ましい。
 カルシウムは、水分と化学結合を起こすことで、水酸化カルシウムに変化し、銀色から透明に変色する。例えば、カルシウムの光反射率や光透過率または輝度値の変化を測定することで、腐食の程度を解析することができ、水蒸気透過度を測定することができる。
 腐食性金属層の形成は蒸着でも塗布でも限定はされないが、作業性、層厚の制御の観点から蒸着であることが好ましい。例えば以下のように実施する。金属蒸着源を有する真空蒸着装置を用い、水分と反応して腐食する金属を、蒸着させたい部分以外をマスクした評価対象の水分不透過基板1に蒸着させる。真空蒸着装置を用いることは、蒸着後大気に触れることなしに後述する封止材である接着剤層によって腐食性金属層を封止できることから、好ましい。また、当該腐食性金属層2は評価試料6上に設けてもよい。
 腐食性金属層2の層厚は10~500nmの範囲内であることが好ましい。蒸着によって形成された水分と反応して腐食する金属層の厚さが10nm以上であると、金属層が水分不透過基板1上に均一に形成されるため好ましい。一方、500nm以下であると、接着剤で封止する際に、水分と反応して腐食する金属層が形成されている部分と形成されていない部分の境目の段差を小さくすることで、境界部での剥離や封止欠陥ができにくくなるため好ましい。
 腐食性金属層2の形成表面積は、後述するステップ(3)において、水蒸気に曝す前後における腐食性金属層の指定した範囲内を、それぞれ一定の単位面積で10等分以上の一定の分割数に分割し、相互に対応する各部分の光学的特性の変化量を測定する観点から、1cm以上であることが好ましく、1~1000cmの範囲内であることが好ましく、1~500cmの範囲内であることがさらに好ましい。
 実際の測定に当たっては、評価試料全体の水蒸気透過度を精度良く評価する観点から、評価対象の腐食性金属層2の表面積の合計が10cm以上となるように、前記水蒸気透過度評価セルCを複数個用い、得られた水蒸気透過度の平均値を得ることが好ましい。
 当該腐食性金属層2を形成した後はマスクを取り去り、大気に触れないうちに、接着剤層3として光硬化型接着剤含有層または熱硬化型接着剤含有層によって封止し、次いで樹脂基材4とガスバリア層5で構成される評価試料6と貼合する。
 接着剤層3に用いられる接着剤は、特に限定されず、通常接着剤、粘着剤として用いられるもの、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられ、アクリル酸系オリゴマーまたはメタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化性または熱硬化性接着剤、エポキシ系等の熱硬化性または化学硬化性(二液混合)接着剤、ホットメルト型のポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤等が好ましく用いることができる。
 本発明では、シート状に加工された接着剤を用いることが好ましい。
 シート状タイプの接着剤を用いる場合には、常温(25℃程度)では非流動性を示し、かつ、加熱すると50~120℃の範囲内の温度で流動性を発現するような接着剤を用いる。
 接着剤層の厚さとしては、特に制限はなく、接着シートの用途等に応じて適宜選定されるが、好ましくは0.5~100μmの範囲、より好ましくは1~60μmの範囲、さらに好ましくは3~40μmの範囲である。接着強度の観点から0.5μm以上であることが好ましく、100μm以下であれば封止端からの水分影響を小さくすることができる。
 接着剤層の厚さ50μmにおける水蒸気透過度は、40℃、相対湿度90%RHの雰囲気下で、好ましくは25g/m/day以下、より好ましくは10g/m/day以下、さらに好ましくは8g/m/day以下である。水蒸気透過率が25g/m/day以下であれば、端部からの水浸入を防止することができる。
 接着剤の光透過率は、全光透過率で80%以上が好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。全光透過率が80%未満となると入射した光のロスが大きくなり評価に支障を生じる。全光線透過率は、JIS K 7375:2008「プラスチック-全光線透過率および全光線反射率の求め方」に従って測定することができる。
 ガスバリア性フィルムである評価試料6の貼合する向きは、樹脂基材4上に形成されているガスバリア層5が、本発明に係る水蒸気透過度評価セルCにおいては腐食性金属層2の面側に配置されることが好ましい。
 また、接着剤およびガスバリア性フィルムに残存する水分等の影響を抑えるために、水蒸気透過度評価セルは前処理を行うことが好ましい。特に接着剤と腐食性金属が直接接触するようなCaセル構成の場合は、接着剤の残存水分量が0~2000ppmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは10~1000ppmの範囲内である。
 この範囲より大きい場合は、腐食性金属と接着剤の水分との反応の影響が大きくなり、評価に支障が生じる。一方、小さい場合は非常に長い処理時間を要することになり、現実的ではない。残存水分量の測定方法としては、カールフィシャー法やGC-MASS法など既知の方法を用いることができる。
 また場所による残留水分量が異なる場合があり、作製したCaセルの腐食性金属部にムラが生じる場合があるので、残存水分量が所定範囲内に入っている場合でも前処理をすることが望ましい。
 前処理の方法としては、真空下もしくは低水分濃度環境下に曝すことによりなされる。処理温度・時間は、フィルムの耐熱性や接着剤の耐熱性・硬化条件によって適宜決めればよいが、例えば室温環境であれば4時間以上真空もしくは低水分濃度環境に曝すことが望ましい。
 (2)腐食性金属層の光学的特性の変化を測定するステップ
 ステップ(2)は、水蒸気に曝す前後において、前記水蒸気透過度評価セルの一方の面側から光を入射して前記腐食性金属層の光学的特性の変化を測定するステップであり、後述する水蒸気透過度評価装置の照明装置および測定装置によって、腐食性金属層の腐食部分の光学的特性の変化を測定するステップである。
 前記測定する手段は、光電子増倍管(Photomultiplier tube)または分光器を用いることができる。
 分光器を用いる場合は、前記水蒸気透過度評価セルの一方の面側から光を入射し、反射光または透過光によって、前記腐食性金属層の光学的特性の変化をスポット的に移動しながら測定することが好ましい。
 また、腐食性金属層の指定した範囲を画像として撮影する場合は、前記水蒸気透過度評価セルの一方の面側から光を入射し、反射光または透過光を、エリア型、もしくはラインセンサ型のCCD、またはCMOSカメラを用いて撮影することができ、中でもエリア型のCCD、またはCMOSカメラを用いることが好ましい。
 ステップ(2)は、水蒸気に曝す前後において、前記水蒸気透過度評価セルの一方の面側から光を入射して前記腐食性金属層の光学的特性の変化を測定するステップであるが、評価セルに入射した光の反射光を測定する場合と透過光を測定する場合がある。ガスバリア性フィルムが透明であれば、透過光を測定するステップであることが好ましい。
 これは、本発明では腐食部分の光学的特性の変化を測定し、当該部位の光学的特性の変化量を求め、データ処理によって腐食部分の面積と厚さから腐食金属の体積を算出する観点から、機器からの反射光等によるノイズ等の影響の少ない透過光を測定することが好ましい実施態様である。
 測定は、水蒸気に曝した後は所定の時間毎に行うことが好ましい。こうして、腐食が経時的にどのように進行するかをデータ化することができる。
 「水蒸気に曝す」とは、前記評価セルを、例えば恒温恒湿槽に格納して水蒸気と接触させることをいう。当該恒温恒湿槽の温度および湿度条件は適宜選択されるものであるが、例えば、温度は室温~90℃の範囲であることが好ましく、相対湿度は40~90%RHの範囲であることが好ましい。また、当該恒温恒湿槽への格納時間は、特に定めるものではないが、10~2000時間程度から選択されることが好ましく、格納時間中に適当な間隔で一旦評価セルを取出し評価してもよい。
 (3)データ処理による光学的特性の変化量の測定ステップ
 ステップ(3)は、前記腐食性金属層の指定した範囲内を、それぞれ一定の単位面積で10等分以上の一定の分割数に分割し、相互に対応する各部分の光学的特性の変化量を測定するステップである。
 一定の単位面積とは、前記10等分以上に分割した腐食性金属層の等分された表面積が、0.01~3mmの範囲内であることが好ましい。さらに好ましくは0.1~2mmの範囲内である。これは、分割面積が3mm以下であれば、データが離散的にならず、ばらつきを充分に表現でき、一方、分割面積が0.01mm以上であれば、腐食性金属層の腐食による消失部分の影響が小さくなり、ばらつきの算出に問題が生じない理由による。
 光学的特性とは前記したように、腐食性金属層の光反射率、透過率または輝度値であり、これら特性の所定の時間内での変化量をデータ解析から求める。データ解析はCPU(Central Processing Unit)に制御され、後述する専用のデータ処理部14において行われる。
 また、ステップ(3)においては、前記腐食性金属層の指定した範囲内を、前記単位面積を2種以上変えて等分し、複数の分割数において、前記相互に対応する各部分の光学的特性の変化量を測定し、後述するステップ(4)およびステップ(5)によって、平均値と標準偏差をそれぞれ算出して、算出値の精度を確認するステップとすることも好ましい。
 (4)水蒸気透過度算出ステップ
 ステップ(4)は、後述する水蒸気透過度算出部14bにおいて、前記データ処理によって得た光学的特性の変化量から腐食部分の厚さを算出し、腐食部分の面積に乗じることで腐食部分の体積を算出し、当該データに基づき水蒸気透過度を算出するステップである。
 例えば、ステップ(1)で腐食性金属層の表面積を1cmで形成し、ステップ(2)によって撮影された画像データを、面積が1mmずつとなるように100等分に分割し、水蒸気に曝す前後の相互に対応する各部分の光学的特性(光反射率、光透過率または輝度値)の変化量から換算される腐食性金属層の厚さを算出し、面積に乗ずることによって、腐食された金属層の体積を算出する。
 腐食された金属層の厚さは、光学的特性(光反射率、光透過率または輝度値)の変化量が腐食性金属と化学結合した水蒸気量に比例するため、上記変化量に基づいて求めることが可能である。
 具体的には、あらかじめ形成された腐食性金属層の水蒸気に曝す前の光学的特性を測定し、次いで本発明の評価における温湿度条件でモデル的に水蒸気に曝して腐食させながら、当該光学的特性の変化部位をトレースする。同時に、腐食した金属層の厚さを光学顕微鏡等でモニターしながら、測定された光学的特性の変化量と対応する腐食された金属層の厚さの関係を解析し、検量線を作成しておく。
 本法では、光学的特性の変化量と対応する腐食された金属層の厚さは、Lambert-Beerの法則に則ることができ、ある特定の範囲であれば一次関数で近似することもできる。
 また、求められた腐食された金属層の厚さから、下記腐食率(%)として求めることもでき、腐食された金属層の体積を求めるときに、当該腐食率を用いることもできる。
 腐食率(%)=(腐食された金属層の厚さ/あらかじめ形成した腐食性金属層の厚さ)×100
 モデル実験においては、限定されるものではないが、光学的特性の変化量を精度良く測定することが必要であるので、測定環境の光反射等による影響(ノイズ)を考慮しなくてもよい、透過光を撮影して画像を得る方法であることが、好ましい。
 したがって、上記モデル実験によって得られる検量線から腐食した金属層の厚さを知ることができるため、恒温恒湿度処理を施した水蒸気透過度評価セルの腐食する金属の腐食面積とその厚さから算出される腐食金属物の総体積を経時的に観察することによって、腐食性金属と反応した水分量が算出されるため、評価試料の水蒸気透過度を定量的に評価できる。
 腐食性金属は水分と反応することで金属水酸化物に変化する。下記式(1)に示すように、価数aの金属1molはamolの水分と反応し、1molの金属水酸化物を生成する。
 (式1) M+aHO→M(OH)+(a/2)H
 よって水蒸気透過量は、恒温恒湿処理時間、水蒸気透過度評価セルの腐食性金属層の表面積と処理後の腐食された金属表面積、腐食した腐食性金属層の厚さ、腐食性金属の腐食部分の厚さ補正係数、腐食後の金属水酸化物の密度から求めることができる(式3)。
 恒温恒湿処理後の金属水酸化物のモル量(X):
 (式2) X=(δ×t×d(MOH))/M(MOH)
 水蒸気透過度(g/m/day):
 (式3) 水蒸気透過度(g/m/day)=X×18×m×(10/A)×(24/T)
 恒温恒湿処理時間      : T(hour)
 腐食性金属層の表面積    : A(cm
 腐食した腐食性金属層の厚さ : t(cm)
 腐食された金属表面積    : δ(cm
 腐食後の金属水酸化物分子量 : M(MOH)
 腐食後の金属水酸化物密度  : d(MOH)(g/cm
 腐食性金属の価数      : m
 ここで、腐食した腐食性金属層の厚さは、前記光学的特性の変化量から腐食率を求め厚さに換算したものである。
 (5)水蒸気透過度の平均値と標準偏差とを算出するステップ
 ステップ(5)は、前記ステップ(4)において得られた、一定の単位面積で10等分以上の一定の分割数に分割した各部分の水蒸気透過度のデータに基づき、後述するデータ処理部14cで、平均値と標準偏差とを算出するステップである。平均値および標準偏差ともに常法によって求めることができ、平均値は算術平均値である。また、ばらつきを表現するのにヒストグラムを用いることも好ましいため、データ処理部14cでヒストグラムを作成することも好ましい。
 (標準偏差の求め方)
 標準偏差は、水蒸気透過度の値を対数に変換した値から、下記に示す方法で算出する。
 水蒸気透過度の値を対数に変換したN個のデータ x1, x2, ..., xNを母集団とし、その母集団の相加平均(母平均)mを下記数式1によって求める:
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000004
 次に、上で求めた母平均 mを使って下記数式2で分散を求める。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000005
 この分散(σ)の正の平方根σを、標準偏差(σ)とする。
 例えば、ガスバリア性フィルム全体の水蒸気透過度を知るには、上記分割した各部分のデータの平均値を算出することで行うことができるが、さらに下記方法を採用することが好ましい。
 前記腐食性金属層の表面積の合計を10cm以上となるように、前記水蒸気透過度評価セルを複数個用い、それらから得られた画像データを1画像へ合成して、各セルの水蒸気透過度の算術平均値を求めフィルム全体の水蒸気透過度とし、さらにそれぞれのセルで一定の単位面積で分割した箇所の水蒸気透過度の標準偏差を求めて、フィルム全体のばらつきを算出することが好ましい。このような処理フローも水蒸気透過度分布算出部14cで行うことができる。また、各水蒸気透過度評価セルで分割した各部分のデータを算出し、その各データを合わせ標準偏差を算出してもよい。
 複数の水蒸気透過度評価セルを合算することで各評価セルのばらつきだけでなく、よりフィルム全体の特性を表すことができる。
 〔1.2〕水蒸気透過度評価装置およびシステム
 以下、本発明に好ましい水蒸気透過度評価装置およびシステムについて、その一例を説明する。
 〔1.2.1〕水蒸気透過度評価装置およびシステムの構成
 本発明の水蒸気透過度評価装置は、前記(1)~(5)のステップを順次行うことができる装置であって、水蒸気透過度評価セルの一方の面に対して斜め方向または法線方向から照明光を照射する手段と、前記水蒸気透過度評価セルからの反射光または反対側の面から出射する透過光のいずれかを測定する手段と、前記腐食性金属層の指定した範囲内を、それぞれ一定の単位面積で10等分以上の一定の分割数に分割し、相互に対応する各部分の光学的特性の変化量から、腐食部分のデータ解析をして面積と厚さを算出する手段と、得られた腐食部分の面積と厚さから水蒸気透過度および水蒸気透過度のばらつきを計算する手段と、を具備することが好ましい。
 以下、本発明で好ましい測定手段であるCCDカメラを用いた撮像装置、およびそれによって撮像された画像を用いた画像処理を例にとって、水蒸気透過度評価装置およびシステムを説明する。
 本発明の水蒸気透過度評価装置および水蒸気透過度評価システムの構成の一例として、図5に示す。また、水蒸気透過度評価システム100の機能ブロック図を図6に示す。
 図5(a)に示すとおり、本発明の水蒸気透過度評価方法に用いる水蒸気透過度評価システム100は、データ処理装置10、撮像調整装置20、撮像装置30、試験片観察台40、外部出力装置50および照明装置60を備えていることが好ましい。
 撮像装置30および照明装置60は、評価セルの一方の面に対して斜め方向から照射し、その反射光を測定する場合もあり、その場合は図5(b)示した撮像装置31および照明装置61の配置であることが好ましい。
 [データ処理装置]
 データ処理装置10は、撮像調整装置20および撮像装置30と相互に通信可能に接続されている。以下において、データ処理装置10の各構成について説明する。
 図6に示すとおり、データ処理装置10は、制御部11、記録部12、通信部13、データ処理部14(局所水蒸気透過度算出部14a、水蒸気透過度算出部14b、水蒸気透過度分布算出部14c)および操作表示部15等を備え、バス16により各部が相互に通信可能に接続されている。
 制御部11は、データ処理装置10の動作を統括制御するCPU(Central Processing Unit)11aと、CPU11aがプログラムを実行する際に各種データを一時的に格納するためのワークメモリーとして機能するRAM(Random Access Memory)11bと、CPU11aが読み出して実行するプログラムや固定データが記憶されたプログラムメモリー11cなどを備えている。プログラムメモリー11cは、ROMなどにより構成されている。
 記録部12は、撮像装置30により撮影された画像データの他、データ処理部で用いる各種閾値のデータ、照明装置60の照射条件データ、実際に評価で測定された水蒸気透過度の値、撮影された腐食部分の腐食性金属層の厚さ変換データ等、本発明の水蒸気透過度評価方法に係るデータを格納、記録する。
 通信部13は、ネットワークI/F等の通信用のインターフェイスを備え、イントラネット等のネットワークを介して、操作表示部15から入力された測定条件を撮像調整装置20に送信する。また、通信部13は、撮像装置30から送られる画像データを受信する。
 データ処理部14は、通信部13により受信し、撮像装置30により撮影された腐食性金属層の画像データから、全体および前記微細分割部位の光学的特性の変化量について解析する。
 データ処理部14は、ステップ(3)、ステップ(4)およびステップ(5)に用いられる、局所水蒸気透過度算出部14a、水蒸気透過度算出部14bおよび水蒸気透過度分布算出部14cを備える。
 局所水蒸気透過度算出部14aには、ステップ(3)および(4)である、水蒸気に曝す前後における撮影により得た画像の腐食性金属層の指定した範囲内を、それぞれ一定の単位面積で10等分以上の一定の分割数に分割し、相互に対応する各部分の光学的特性の変化量を測定し、当該測定で得た光学的特性の変化量から腐食部分の体積を算出し、当該体積に基づき水蒸気透過度を算出する手段である。
 水蒸気透過度算出部14bと水蒸気透過度分布算出部14cは、ステップ(5)である、前記ステップにおいて得られた各部分の水蒸気透過度データに基づき、平均値と標準偏差を算出する手段である。
 操作表示部15は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、LCDを覆うように設けられたタッチパネル、各種スイッチやボタン、テンキーおよび操作キー群等(図示略)から構成されてもよい。操作表示部15は、ユーザーからの指示を受け付けその操作信号を制御部11に出力する。また、操作表示部15は、制御部11から出力される表示信号に従って、各種操作指示や設定情報を入力するための各種設定画面や各種処理結果等を表示する操作画面をLCD上に表示する。
 [撮像調整装置]
 撮像調整装置20は、データ処理装置10から受信した測定条件に基づいて撮像装置30を調整する。
 具体的には、撮像調整装置20は、データ処理装置10から受信した測定条件、例えば、水蒸気透過度評価セルからの位置(高さ)、撮影間隔、移動速度、撮像倍率等に基づいて撮像装置30を調整することができる。
 [撮像装置]
 照明装置60を水蒸気透過度評価セルCの法線方向に配置し、照明光を水蒸気透過度評価セルCに当て、透過する光を撮像装置30にて撮影する。水蒸気透過度評価セルCの腐食による透過光の変化を感度良く撮影するため、照明装置60、水蒸気透過度評価セルC、撮像装置30の位置を設定する。
 また、水蒸気透過度評価セルCの反射光によって評価する場合は、図5(b)で示すように、照明装置61を水蒸気透過度評価セルCの斜め45°方向に配置し、照明光を水蒸気透過度評価セルCに当て、反射光を撮像装置31にて撮影する。水蒸気透過度評価セルCの腐食による透過光の変化を感度良く撮影するため、照明装置61、水蒸気透過度評価セルC、撮像装置31の位置を設定する。つまり、照明装置61から水蒸気透過度評価セルCへの光の入射角と水蒸気透過度評価セルCから撮像装置31への反射角を等しくする。
 撮像装置30は、エリア型もしくはラインセンサ型のCCDまたはCMOSカメラを用いることができる。水蒸気透過度評価セルCの測定対象範囲を数回以内の撮影でカバーできる場合は、エリア形、それよりも広い範囲を撮影する必要がある場合はラインセンサ形を使用すると、撮影時間、精度の面で好ましい。
 好ましくはエリア型のカメラであり、エリア型のカメラの場合は200万画素以上で、ばらつきを好ましく得るためには1画素が50μm以下となるようにレンズや撮影条件を決定することが望ましい。
 [照明装置]
 照明装置60としては、撮像装置30で反射光または透過光を撮影するのに十分な面積が必要で、輝度はできる限り均一であることが好ましい。
 照明装置60の光源は、特に限定されるものではないが、重水素ランプやハロゲンランプ、LED(Light Emitting Diode)ランプを光源としたファイバー型の光源、または蛍光灯やLED、OLED(Organic Light Emitting Diode)を用いた面光源を用いることができる。好ましくは面光源である。
 [試験片観察台]
 試験片観察台40は、例えば、試験片固定台41、二軸電動ステージ42および装置フレーム43を備える態様が好ましい。前記透過光を撮影する場合は、試験片固定台41は、透過光を遮らないように、その部分が中空であるか透明であることが必要である。
 具体的には、試験片観察台40は、試験片固定台41によって水蒸気透過度評価セルCを固定する。試料となる水蒸気透過度評価セルCが、例えば、ロール状に巻き取られている場合であっても、短軸方向を試験片固定台41によって固定し、所定の速さで二軸電動ステージを動かし、水蒸気透過度評価セルCを長軸方向に移動させることで、試験片観察台40よりも広い範囲を撮像装置30で測定することができる。
 なお、試験片観察台40は、データ処理装置10と通信可能に接続されていてもよい。データ処理装置10と試験片観察台40を相互に通信可能に接続することで、水蒸気透過度評価セルCを移動させる速度をデータ処理装置10により設定してもよい。
 [外部出力装置]
 データ処理装置10は、データ処理装置10と通信可能に接続される外部出力装置50を備えていてもよい。外部出力装置50は、一般的なPC(Personal Computer)であってもよいし、画像形成装置等であってもよい。また、外部出力装置50は、データ処理装置10の操作表示部15の代わりに操作表示部として機能してもよい。
 〔1.2.2〕水蒸気透過度算出方法のフローチャート
 次いで、ガスバリア性フィルムの水蒸気透過度算出方法についての測定例を、図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。
 インプットされるデータとしては、撮像条件、測定モード(透過光系または反射光系)、および画像分割面積と分割数などの画像分割パラメータ設定等のデータである(S1)。画像分割パラメータは数種を同時に設定し、最終的に評価結果を随時比較できるようにすることも好ましい。
 インプットされたデータによって、腐食性金属層表面の腐食部分の画像データが取得される(S2)。局所水蒸気透過度算出部14aにて、撮像された腐食性金属層の分割された各部分の光学的特性の変化量を得る画像処理が行われる(S3)。
 画像処理の結果、アウトプットとして、入力した測定モードに則した腐食性金属層の光学的変化量が取得される(S4)。当該変化量からあらかじめ作成した、光学的変化量と腐食金属層の厚さとの検量線をもとに、腐食部分の厚さを求め各部分の腐食率を算出する(S5)。
 次いで、水蒸気透過度算出部14bにおいて、反射系の測定の場合は、以下の計算式(i)によって水蒸気透過度が計算される(S6)。
 式中、WVTRは水蒸気透過度(Water Vapor Transmission Rate)の略号である。Aは定数をあらかじめ計算したもので、A=(3.3445×10-2)である。
 (i)反射WVTR(g/m/day)=A×反射光による腐食金属層膜厚:0hr)(nm)×腐食率(%)/今回測定時間(hr)
 透過系の場合は、透過光による腐食金属層膜厚を計算し、得られた透過光による腐食金属層膜厚から、同様に下記計算式(ii)から透過WVTRの計算を行う(S8)。
 (ii)透過WVTR(g/m/day)=A×透過光による腐食金属層膜厚:0hr)(nm)×腐食率(%)/今回測定時間(hr)
 以上求めた各ピクセル(等分した分割部位)ごとの各水蒸気透過度のデータを用いて、水蒸気透過度分布算出部14cにおいて、反射WVTRまたは透過WVTRの平均値および標準偏差を算出する(S7)。この時に各ピクセルでの水蒸気透過度のヒストグラムを作成することもできる。
 以上の水蒸気透過度のデータは、記録部12のデータベースに反映させる。
 <電子デバイス>
 本発明のガスバリア性フィルムは、空気中の化学成分(酸素、水、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等)によって性能が劣化するデバイスに好ましく適用できる。すなわち、本発明は、本発明のガスバリア性フィルムと、電子デバイス本体と、を含む電子デバイスを提供する。
 本発明の電子デバイスに用いられる電子デバイス本体の例としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)、液晶表示素子(LCD)、薄膜トランジスタ、タッチパネル、電子ペーパー、太陽電池(PV)等を挙げることができる。本発明の効果がより効率的に得られるという観点から、該電子デバイス本体は有機EL素子または太陽電池が好ましく、有機EL素子がより好ましい。
 本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
 <実施例1>
 図8に示す構造の巻き取り式のスパッタリング装置を使用してガスバリア性フィルムを作製した。
 具体的には、酸化ニオブと窒化酸化ケイ素とで形成された混合焼結材であるスパッタターゲットをスパッタ電極18Aに設置し、樹脂基材B(クリアハードコート付きPETフィルム(厚み:125μm(CHCの膜厚は1~5μm))、株式会社きもと製、商品名:A1MN10))の面上に、アルゴンガスおよび酸素ガスによるスパッタリングを表1で示す原子組成となるように実施することによってガスバリア層(厚さ:100nm)を設けた。なお、他の実施例、比較例におけるガスバリア層の厚さも、100nmである。
 より具体的には、まず、スパッタ電極18Aに酸化ニオブ/窒化酸化ケイ素を焼結されたスパッタターゲットを設置した。
 巻き取り室7Aの中で、前記樹脂基材Bを、ガスバリア層を設ける側の面がスパッタ電極18Aに対向するように巻き出しロール8Aにセットし、6A方向に巻き出し、ガイドロール9A、10A、11Aを介して、水道水で15℃に調整されたクーリングドラム12Aに通した。
 真空度2×10-1Paとなるように酸素ガス分圧10%としてアルゴンガスおよび酸素ガスを導入し、直流電源により投入電力4000Wを印加することにより、アルゴン・酸素ガスプラズマを発生させ、スパッタリングにより前記樹脂基材Bの表面上にガスバリア層(100nm)を形成した。なお、ガスバリア層の厚みは、樹脂基材の搬送速度により調整した。その後、ガイドロール13A、14A、15Aを介して巻き取りロール16Aに巻き取った。
 このようにして、ガスバリア性フィルムを作製した。
 <実施例2>
 表1で示す原子組成となるようにターゲットの混合比を調整した以外は、実施例1と同様にして樹脂基材B上にガスバリア層を設けることによって、ガスバリア性フィルムを作製した。
 <実施例3>
 表1で示す原子組成となるようにターゲットの混合比を調整した以外は、実施例1と同様にして樹脂基材B上にガスバリア層を設けることによって、ガスバリア性フィルムを作製した。
 <実施例4>
 ターゲットとして酸化ニオブから酸化タンタルに変更し、表1で示す原子組成となるようにターゲットの混合比を調整した以外は、実施例1と同様にして樹脂基材B上にガスバリア層を設けることによって、ガスバリア性フィルムを作製した。
 <実施例5>
 ターゲットとして酸化ニオブから酸化バナジウムに変更し、表1で示す原子組成となるようにターゲットの混合比を調整した以外は、実施例1と同様にして樹脂基材B上にガスバリア層を設けることによって、ガスバリア性フィルムを作製した。
 <実施例6>
 表1で示す原子組成となるようにターゲットの混合比を調整した以外は、実施例1と同様にして樹脂基材B上にガスバリア層を設けることによって、ガスバリア性フィルムを作製した。
 <実施例7>
 ターゲットとして酸化ニオブから酸化タンタルに変更し、かつ、下記に示すように、ポリシラザン(パーヒドロポリシラザン;PHPS)を含む塗布液を上記樹脂基材B上に塗布および乾燥して得られたポリシラザン由来膜に改質を行った膜上に、表1で示す原子組成となるようにターゲットの混合比を調整してガスバリア層を設けた以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルムを作製した。
 下記に示すようなポリシラザン(パーヒドロポリシラザン;PHPS)を含む塗布液を塗布し、上記樹脂基材B上に塗布膜を形成した後、真空紫外線照射による改質を行って形成した。
 (i)パーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NN120-20)と、(ii)アミン触媒(N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン(TMDAH))をパーヒドロポリシラザンに対して5質量%含有する、パーヒドロポリシラザン20質量%のジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NAX120-20)とを、4:1(質量比)の割合で混合し、さらに乾燥膜厚調整のためジブチルエーテルで適宜希釈し、塗布液を調製した。
 スピンコート法により塗布液を、樹脂基材B上に、下記表に示す乾燥膜厚になるよう塗布し、80℃で2分間乾燥した。次いで、乾燥した塗膜に対して、波長172nmのXeエキシマランプを用い、80℃にて、下記表に示す酸素濃度、および照射エネルギーの条件で、真空紫外線照射処理を施して、ポリシラザン由来膜に改質を行った膜を形成した。
 成膜条件の詳細を、下記表に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
 <実施例8>
 ターゲットとして酸化ニオブから酸化タンタルに変更し、表1で示す原子組成となるようにターゲットの混合比を調整した以外は実施例1と同様にして樹脂基材B上にガスバリア層を設けることによって、ガスバリア性フィルムを作製した。
 <実施例9>
 樹脂基材Bの表面粗さを変更したもの(クリアハードコート付きPETフィルム 株式会社きもと製A1MN36)に変更した以外は、実施例5と同様にして、ガスバリア性フィルムを作製した。当該クリアハードコート付きPETフィルムの厚みも125μmである。
 <実施例10>
 樹脂基材をクリアハードコートのないPET(帝人株式会社製 テイジン(登録商標)テトロン(登録商標)フィルム)に変更した以外は、実施例5と同様にして、ガスバリア性フィルムを作製した。当該樹脂基材の厚みも125μmである。
 <比較例1>
 ターゲットとして、窒化酸化ケイ素のみを用い、表1で示す原子組成となるようにターゲットの混合比を調整した以外は、実施例1と同様にして樹脂基材B上にガスバリア層を設けることによって、ガスバリア性フィルムを作製した。
 <比較例2>
 ターゲットとして酸化ニオブから酸化アルミに変更し、表1で示す原子組成となるようにターゲットの混合比を調整した以外は、実施例1と同様にして樹脂基材B上にガスバリア層を設けることによって、ガスバリア性フィルムを作製した。
 <比較例3>
 ターゲットとして酸化ニオブから酸化チタンに変更し、表1で示す原子組成となるようにターゲットの混合比を調整した以外は、実施例1と同様にして樹脂基材B上にガスバリア層を設けることによって、ガスバリア性フィルムを作製した。
 <比較例4>
 ターゲットとして酸化ニオブから酸化亜鉛に変更し、表1で示す原子組成となるようにターゲットの混合比を調整した以外は、実施例1と同様にして樹脂基材B上にガスバリア層を設けることによって、ガスバリア性フィルムを作製した。
 <比較例5>
 実施例7と同様のガスバリア層を設けたこと以外は、比較例2と同様にしてガスバリア性フィルムを作製した。
 <比較例6>
 マグネトロンスパッタ装置を用い、酸化タンタルの焼結材をターゲットとし、アルゴンガスと酸素ガスを導入しガス圧0.1Paとなるように調整し、樹脂基材B上に酸化タンタル層をスパッタし、その上に、ガスバリア層を設けたこと以外は、比較例1と同様にしてガスバリア性フィルムを作製した。
 《XPS分析条件》
 ・装置:アルバックファイ製QUANTERASXM
 ・X線源:単色化Al-Kα
 ・測定領域:Si2p、C1s、N1s、O1s、その他測定する金属に応じて定法により設定
 ・スパッタイオン:Ar(2keV)
 ・デプスプロファイル:一定時間スパッタ後、測定を繰り返す。1回の測定は、SiO換算で、約2.5nmの厚さ分となるようにスパッタ時間を調整する
 ・定量:バックグラウンドをShirley法で求め、得られたピーク面積から相対感度係数法を用いて定量した。データ処理は、アルバックファイ社製のMultiPakを用いた。
 [中心線平均表面粗さ(Ra)]
 原子間力顕微鏡(AFM)として、セイコーインスツルメンツ株式会社製、走査型プローブ顕微鏡SPI3700を使用し、ダイナミックフォースモードで、樹脂基材Bの表面を、測定面積1×1μm角、走査速度1Hz、x-y方向512×256分割、カンチレバーSI-DF-20(Si、f=126kHz、c=16N/m)の条件で測定したAFMトポグラフィー像につき傾斜自動補正処理を行い、次いで3次元粗さ解析にて中心線平均表面粗さRa(nm)を求めた。この際、測定に用いたカンチレバーは摩耗や汚れのない状態のものを用いた。
 [マイクロ水蒸気透過率μWVTRの測定(Ca評価)・屈曲耐性]
 (1)作製直後(初期)の屈曲試験前の水蒸気透過度および屈曲試験前後の水蒸気透過度の標準偏差(σ)の測定
 実施例1~10、比較例1~6で作製したガスバリア性フィルムについて、成膜先頭および後尾の位置から、樹脂基材Bの幅手方向に100mm間隔および50mm四方の面積で各4か所、計8か所の試料を採取した。また、φ25の曲率で内外各100回曲げを行った後、別の場所から、各4か所、計8か所の試料を採取した。
 これら試料について、以下のように測定を行った。
 25mm四方のガラス上に蒸着装置にて12mm四方の面積でカルシウム(Ca:腐食性金属)を、蒸着装置:日本電子株式会社製真空蒸着装置JEE-400を用いて蒸着し、次いで、接着剤(スリーボンド製1655)を貼合した25mm四方にカットした、実施例1~10、比較例1~6のガスバリア性フィルムで封止を行い、ガスバリア性フィルムの水蒸気透過度評価セルの作製を行った。
 なお接着剤を貼合したガスバリア性フィルムは接着剤の水分およびガスバリア性フィルム表面の吸着水を除去するため1昼夜グローブボックス(GB)内に放置した。
 作製した評価セルは、図5(a)のように、ガラス面側の法線方向より光を入射し、反対面側よりエリア型のCCDカメラにて撮影を行った。その後、評価セルを60℃90%RHの恒温恒湿槽(Yamato Humidic ChamberIG47M)にて100hr放置し、同様にCCDカメラにて撮影を行った。
 また、切り抜いた10mm四方の画像を1mmの大きさになるように100分割し、それぞれ分割した箇所の輝度値を取得し、カルシウム膜厚および水蒸気透過度(WVTR)の算出を行った。得られた100個の水蒸気透過度(WVTR)の値を対数に変換した値から標準偏差(σ)を算出した。以上求めた水蒸気透過度(WVTR:g/m/day)および標準偏差(σ)を採取した評価試料全体として、それぞれ算術平均し、ガスバリア性フィルム全体の水蒸気透過度と標準偏差(σ)とした(水蒸気透過度については屈曲試験前のみ、標準偏差については、屈曲試験前後の結果を示している)。結果を表1に示す。
 (2)5ヶ月保管後、10ヶ月保管後の水蒸気透過度の標準偏差(σ)の測定
 上記において、屈曲試験を行った後、さらに別の場所の各4か所、計8か所の試料を採取した。それを、5ヶ月保管後、上記と同様に、水蒸気透過度の標準偏差(σ)の測定を行った。また、同様にして、10ヶ月保管後の水蒸気透過度の標準偏差(σ)の測定を行った。なお、保管の環境条件は、室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件である。結果を表1に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000007
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000008
 本発明のガスバリア性フィルムによれば、水蒸気透過度の標準偏差(σ)が、下記式(I)を満たすことが好ましい。
 式(I)0.01≦σ≦0.40
 また、本発明のガスバリア性フィルムによれば、水蒸気透過度の標準偏差(σ)は下記式(II)を満たすことがより好ましい。
 式(II)0.03≦σ≦0.30
 ガスバリア性フィルムの前記標準偏差(σ)が、0.40を超えると、当該ガスバリア性フィルムを具備する電子デバイスに局所的な欠点を与える可能性がある。また、電子デバイス間で性能ばらつきが発生する虞がある。
 上記結果より、実施例のガスバリア性フィルムは、初期はもちろんのこと、5ヶ月保管後も10ヶ月保管後も、水蒸気透過度の標準偏差(σ)が、0.40以下を維持している。このように、本発明のガスバリア性フィルムは、優れた屈曲性を有し、長期に亘り、ガスバリア性能を維持することができることが示唆される。
 さらに、実施例のガスバリア性フィルムでは、実施例9および10を除くすべての実施例で、5ヶ月保管後の水蒸気透過度の標準偏差(σ)が0.30以下を維持している。また、10ヶ月保管後であっても、約半分の実施例が0.30以下を維持するという驚くべき結果を示している。
 これに対し、比較例のガスバリア性フィルムは、5ヶ月保管後であれば、水蒸気透過度の標準偏差(σ)が0.40以下を維持するものの、0.30以下となる形態は一つもなく、10ヶ月保管後に至っては、すべての形態で0.40を超えてしまっている。これは、かようなガスバリア性フィルムを具備するデバイスには長期保存性の観点で大きな欠陥を有していることが示唆される。
  G  ガスバリア層、
  B  樹脂基材、
  P  ポリシラザン由来膜、
  C 水蒸気透過度評価セル、
  F ガスバリア性フィルム、
  1 水分不透過基板、
  2 腐食性金属層、
  3 接着剤層、
  4 樹脂基材、
  5 ガスバリア層、
  6 評価試料、
 100 水蒸気透過度評価システム、
 10 データ処理装置、
 11 制御部、
 11a CPU
 11b RAM
 11c プログラムメモリー
 12 記録部、
 13 通信部、
 14 データ処理部、
 14a 局所水蒸気透過度算出部、
 14b 水蒸気透過度算出部、
 14c 水蒸気透過度分布算出部、
 15 操作表示部、
 20 撮像調整装置、
 30、31 撮像装置、
 40 試験片観察台、
 50 外部出力装置、
 41 試験片固定台、
 42 二軸電動ステージ、
 43 装置フレーム、
 60、61 照明装置、
 6A 方向、
 7A 巻き取り室、
 8A 巻き出しロール、
 9A,10A,11A ガイドロール
 12A クーリングドラム、
 13A,14A,15A ガイドロール、
 16A 巻き取りロール、
 18A スパッタ電極。
 なお、本出願は、2015年3月18日に出願された日本国特許出願第2015-055229号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。

Claims (9)

  1.  樹脂基材と、
     真空成膜法によって形成されてなる、ガスバリア層と、
    を含み、
     前記ガスバリア層が、Si、OおよびNと;V、NbおよびTaからなる群から選択される少なくとも1種の原子Mと;を含む酸化窒化膜である、ガスバリア性フィルム。
  2.  前記ガスバリア層のXPSで測定した原子組成比が、
     Siを100としたときに、
     Mが、1~100であり、
     Oが、40~300であり、
     Nが、40~80である、請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
  3.  前記樹脂基材の表面に、機能層が位置し、
     前記機能層の表面粗さRaが、1nm以下である、請求項1または2に記載のガスバリア性フィルム。
  4.  前記機能層が、ハードコート層である、請求項3に記載のガスバリア性フィルム。
  5.  ポリシラザンを含有する塗布液を塗布および乾燥することを有して得られる、ポリシラザン由来膜をさらに有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルム。
  6.  前記ポリシラザン由来膜が、前記ガスバリア層に接触して形成される、請求項5に記載のガスバリア性フィルム。
  7.  樹脂基材上に、真空成膜法によってガスバリア層を形成することを有し、
     前記ガスバリア層が、Si、OおよびNと;V、NbおよびTaからなる群から選択される少なくとも1種の原子Mと;を含む酸化窒化膜である、ガスバリア性フィルムの製造方法。
  8.  樹脂基材上に、ポリシラザンを含有する塗布液を塗布および乾燥することを有してポリシラザン由来膜を形成することを含む、請求項7に記載の製造方法。
  9.  請求項1~6のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムを含む、電子デバイス。
PCT/JP2016/057210 2015-03-18 2016-03-08 ガスバリア性フィルム WO2016147959A1 (ja)

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