JP2015047790A - ガスバリア性フィルムおよびこれを含む電子デバイス - Google Patents

ガスバリア性フィルムおよびこれを含む電子デバイス Download PDF

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Abstract

【課題】高いガスバリア性を有し、かつ、経時の安定性に優れるガスバリア性フィルムを提供する。【解決手段】基材と、前記基材の一方の面側に配置されたポリシラザン改質物を含む第1のガスバリア層と、前記基材のもう一方の面側に配置されたポリシラザン改質物を含む第2のガスバリア層と、を含み、前記第1のガスバリア層および前記第2のガスバリア層の少なくとも一方が、無機粒子を含む、ガスバリア性フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、ガスバリア性フィルムおよびこれを含む電子デバイスに関する。
従来、プラスチック基板やフィルムの表面に、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物を含む薄膜(ガスバリア層)を形成したガスバリア性フィルムが、食品、医薬品等の分野で物品を包装する用途に用いられている。ガスバリア性フィルムを用いることによって、水蒸気や酸素等のガスによる物品の変質を防止することができる。
このようなガスバリア性フィルムとして、乾式成膜法により形成されたガスバリア層を有するガスバリア性フィルム、および湿式成膜法により形成されたガスバリア層を有するガスバリア性フィルムが知られている。
前記乾式成膜法としては、基材上に無機膜を蒸着してガスバリア層を形成する方法、基材上に半導体レーザー等で金属を堆積してガスバリア層を形成する方法等が挙げられる。
また、前記湿式成膜法としては、基材上にポリシラザンを主成分とする塗布液を塗布、改質してガスバリア層を形成する方法等が挙げられる。
ところで、近年、上記のような水蒸気や酸素等の透過を防ぐガスバリア性フィルムが、液晶表示素子(LCD)、太陽電池(PV)、有機エレクトロルミネッセンス(EL)などの電子デバイスの分野にも利用されつつある。ガスバリア性フィルムを電子デバイスに適用するためには、特に高いガスバリア性が要求される。
電子デバイスに適用可能な高いガスバリア性を有するガスバリア性フィルムとして、例えば、特許文献1には、樹脂フィルムの両面にバリア層が形成されたバリアフィルムであって、該バリアフィルムの水蒸気透過率が5×10−3g/m/day以下及び/又は酸素透過率が5×10−3cc/m/day以下であることを特徴とするバリアフィルムに係る発明が記載されている。特許文献1によれば、基材となる樹脂フィルムの両面にガスバリア層を形成することで、ガスバリア層の厚膜化によるクラックの発生を防止しつつ、高いガスバリア性が実現できることが記載されている。なお、特許文献1のガスバリア性フィルムのガスバリア層は、プラズマCVD法等の真空成膜法、すなわち乾式成膜法により形成される。
特開2006−76051号公報
しかしながら、特許文献1のガスバリア性フィルムを構成するガスバリア層を、製造コストや、より高いガスバリア性を得る観点から、乾式成膜法に代えて、湿式成膜法で形成した場合には、所定のガスバリア性が得られるものの、経時の安定性が必ずしも十分ではないことが判明した。
そこで、本発明は、高いガスバリア性を有し、かつ、経時の安定性に優れるガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。
本発明者は鋭意研究を行った結果、基材の両面に湿式成膜法で形成されたガスバリア層を有するガスバリア性フィルムにおいて、形成されるガスバリア層がポリシラザンの改質物とともに無機粒子を含有することで、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の上記課題は以下の手段により達成される。
1.基材と、前記基材の一方の面側に配置されたポリシラザン改質物を含む第1のガスバリア層と、前記基材のもう一方の面側に配置されたポリシラザン改質物を含む第2のガスバリア層と、を含み、前記第1のガスバリア層および前記第2のガスバリア層の少なくとも一方が、無機粒子を含む、ガスバリア性フィルム;
2.前記第1のガスバリア層および前記第2のガスバリア層のいずれか一方が、無機粒子を含む、1に記載のガスバリア性フィルム;
3.前記無機粒子が、酸化チタンおよび/または酸化亜鉛である、1または2に記載のガスバリア性フィルム;
4.電子デバイス本体と、1〜3のいずれか1つに記載のガスバリア性フィルムとを含む、電子デバイス。
本発明によれば、高いガスバリア性を有し、かつ、経時の安定性に優れるガスバリア性フィルムを提供できる。
プラズマCVD法によるガスバリア層の形成に用いられる製造装置の一例を示す模式図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
<ガスバリア性フィルム>
本形態に係るガスバリア性フィルムは、基材と、前記基材の一方の面にポリシラザン改質物を含む第1のガスバリア層と、前記基材のもう一方の面にポリシラザン改質物を含む第2のガスバリア層と、を含む。この際、前記第1のガスバリア層および前記第2のガスバリア層の少なくとも一方が、無機粒子を含む。
ガスバリア性フィルムの水蒸気透過度は、0.01g/(m・24h)以下であることが好ましく、0.0001g/(m・24h)以下であることがより好ましい。なお、本明細書において、「水蒸気透過度」の値は、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された値を採用するものとする。なお、測定条件は、温度:60±0.5℃、相対湿度(RH):90±2%である。
[基材]
本発明に用いられる基材は、特に限定されないが、可撓性および透過性を有する折り曲げ可能なフィルム基材であることが好ましい。
基材の具体例としては、特に制限されないが、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の樹脂のフィルム;有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム(Sila−DEC:チッソ株式会社製、シルプラス:新日鐵化学社製等);透明ポリイミドのフィルム(透明ポリイミド系フィルム タイプHM:東洋紡株式会社製、透明ポリイミド系フィルム ネオプリムL L−3430:三菱ガス化学株式会社製)等が挙げられる。
これらのうち、コストや入手の容易性等の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)等を用いることが好ましい。
また、光学的透明性、耐熱性等の観点から、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム等を用いることが好ましい。
これらの基材は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記の樹脂フィルムを用いた基材は、未延伸フィルムであっても、延伸フィルムであってもよい。
上記樹脂フィルムを用いた基材は、従来公知の一般的な方法により製造することができる。例えば、樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸フィルムを製造することができる。また、前記未延伸フィルムを一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、または基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸フィルムを製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することができるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2倍〜10倍であることが好ましい。当該延伸フィルムには、基材の寸法安定性を向上させるため、延伸後に緩和処理を行ってもよい。
本発明に用いる基材の膜厚は、5〜500μmであることが好ましく、25〜250μmであることがより好ましい。
本発明に用いる基材は、線膨張係数が50ppm/℃以下であることが好ましく、1〜50ppm/℃であることが好ましい。基材の線膨張係数が50ppm/℃以下であると、液晶表示装置(LCDパネル)等の電子デバイスにガスバリア性フィルムを適用した場合、環境温度変化等に対する色ズレの発生や基材の変形を抑制しうることから好ましい。なお、本明細書において「線膨張係数」とは、下記の方法により測定した値を採用するものとする。具体的には、EXSTAR TMA/SS6000型熱応力歪測定装置(セイコーインスツル株式会社製)を用いて、測定する基材を窒素雰囲気下で5℃/分で30〜50℃まで加熱した後、一時温度を維持する。その後、再度5℃/分で30〜150℃に加熱し、このとき、引張モード(荷重5g)で基材の寸法変化を測定する。当該値から線膨張係数が求められる。
本発明に係る基材は、可視光(400〜700nm)の光透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。光透過率が80%以上であると、液晶表示装置(LCDパネル)等の電子デバイスにガスバリア性フィルムを適用した場合、高い輝度が得られうることから好ましい。なお、本明細書において、「光透過率」とは、分光光度計(可視紫外線分光光度計 UV−2500PC:株式会社島津製作所製)を用いて、ASTM D−1003規格に準拠して可視光線の入射光量に対する全透過光量を測定して算出される、可視光域における平均透過率を意味する。
さらに、本発明に用いる基材は、JIS B 0601(2001)で規定される10点平均表面粗さRzが1〜1500nmであることが好ましく、5〜400nmであることがより好ましく、300〜350nmであることがさらに好ましい。また、JIS B 0601(2001)で規定される中心線平均粗さRaが0.5〜12nmであることが好ましく、1〜8nmであることがより好ましい。RzやRaが上記範囲内にあると、塗布液の塗布性が向上することから好ましい。基材は、必要に応じて、片面または両面を研摩して平滑性を向上させてもよい。
本発明に係る基材には、コロナ処理が施されていてもよい。
また、上述した基材上には、適宜その他の層(中間層)が形成されていてもよい。中間層としては、アンカーコート層、平滑層、およびクリアハードコート層等が挙げられる。これらのうち、基材上にクリアハードコート層を形成することが好ましい。
(クリアハードコート(CHC)層)
クリアハードコート層は、基材とガスバリア層との密着性向上、高温高湿下での基材およびガスバリア層の膨張・収縮の差から生じる内部応力の緩和、ガスバリア層を設ける下層の平坦化、基材からのモノマー、オリゴマー等の低分子量成分のブリードアウト防止等の機能を有する。
クリアハードコート層は、感光性樹脂組成物を基材上に塗布した後、硬化させることによって形成されうる。
前記感光性樹脂組成物は、通常、感光性樹脂、光重合開始剤、および溶媒を含む。
前記感光性樹脂としては、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性モノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限されないが、ラジカル反応性不飽和結合を有するアクリレート化合物を含有する樹脂、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する樹脂、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを含有する樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いられうる。
前記光重合開始剤としては、特に制限されないが、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾインベンゾエート、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパン、α−アシロキシムエステル、チオキサンソン類等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いられうる。
前記溶媒としては、特に制限されないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;α−またはβ−テルピネオール等のテルペン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、ジエチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、シクロヘキシルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、安息香酸メチル等のエステル類;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類が挙げられる。これらの溶媒は単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。
前記感光性樹脂組成物は、必要に応じてさらに酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、無機粒子、感光性樹脂以外の樹脂等の添加剤が添加されていてもよい。
これらのうち、好ましい添加剤の一つは、表面に光重合反応性を有する感光性基が導入された反応性シリカ粒子(以下、単に「反応性シリカ粒子」とも称する)である。前記光重合性を有する感光性基としては、特に制限されないが、例えば(メタ)アクリロイルオキシ基に代表される重合性不飽和基が挙げられる。反応性シリカ粒子が有する光重合性を有する感光性基と、感光性樹脂が有する重合性不飽和基とが反応することによってガスバリア層との密着性が向上しうる。
前記反応性シリカ粒子としては、特に制限されないが、重合性不飽和基修飾加水分解性シランが有する加水分解性シリル基を加水分解することによって、シリカ粒子とシリルオキシ基を生成して得られたもの、すなわち、重合性不飽和基修飾加水分解性シランとシリカ粒子とが化学的に結合したものでありうる。前記加水分解性シリル基としては、特に制限されないが、アルコキシシリル基;アセトキシシリル基等のカルボキシレートシリル基;クロロシリル基等のハロゲン化シリル基;アミノシリル基;オキシムシリル基;ヒドリドシリル基が挙げられる。なお、重合性不飽和基としては、特に制限されないが、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニル基、シンナモイル基、マレート基、アクリルアミド基等が挙げられる。
前記反応性シリカ粒子の平均粒径としては、0.001〜0.1μmであることが好ましく、0.001〜0.01μmであることがより好ましい。反応性シリカ粒子が、上記範囲の平均粒径を有することにより、感光性樹脂組成物に含有されうる後述のマット剤と組み合せて用いることで、防眩性と解像性とをバランスよく満たす光学特性およびハードコート性を有しうる。なお、本明細書において「平均粒径」とは、TEM(透過型電子顕微鏡)で層の断面観察を行い、その中の任意の粒子を10個選んで測定した粒径の平均値を採用するものとする。
前記反応性シリカ粒子を感光性樹脂組成物中に含む場合、反応性シリカ粒子は、20〜60質量%で含有されることが好ましい。反応性シリカ粒子が20質量%以上含有されると、ガスバリア層との密着性が向上しうることから好ましい。一方、反応性シリカ粒子が60質量%以下であると、高温高湿環境下におけるフィルムの変形が抑制され、これに伴うクラックの発生を抑制しうることから好ましい。
また、感光性樹脂組成物はマット剤を含むことが好ましい。マット剤を含有することによって光学特性が調整されうる。
マット剤としては、特に制限されず、シリカ、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム等が用いられうる。前記マット剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて使用されうる。
マット剤の平均粒径は、0.1〜10μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。マット剤が上記範囲の平均粒径を有することにより、感光性樹脂組成物に含有されうる上述の反応性シリカ粒子と組み合せて用いることで、防眩性と解像性とをバランスよく満たす光学特性およびハードコート性を有しうる。
感光性樹脂組成物中のマット剤の含有量は、感光性樹脂組成物中の固形分100質量部に対して、好ましくは2〜20質量部、より好ましくは4〜18質量部、さらに好ましくは6〜16質量部である。
さらに感光性樹脂組成物は、感光性樹脂以外の樹脂を含むことが好ましい。当該感光性樹脂以外の樹脂としては、特に制限されないが、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂が挙げられる。
熱可塑性樹脂の具体例としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体;酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のビニル系樹脂およびこれらの共重合体;ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール系樹脂;アクリル樹脂、メタクリル樹脂等のアクリル系樹脂およびこれらの共重合体;ポリスチレン系樹脂;ポリアミド系樹脂;線状ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。
熱硬化性樹脂の具体例としては、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂の具体例としては、光重合性プレポリマーもしくは光重合性モノマー等の1または2種以上を混合した電離放射線硬化塗料に、電離放射線(紫外線または電子線)を照射して硬化するものが挙げられる。この際、前記光重合性プレポリマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化すると3次元網目構造を形成するウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート等のアクリル系プレポリマーが特に好ましい。また、光重合性モノマーとしては、上述の光感光性樹脂等が使用されうる。
感光性樹脂組成物の基材への塗布方法としては、特に制限されないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法等の湿式コーティング法、または蒸着法等の乾式コーティング法が挙げられる。
塗布によって得られた塗膜を電離放射線を照射して硬化させることによりクリアハードコート層が形成されうる。なお、電離放射線は、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等から発せられる100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域の真空紫外光、または走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線が使用されうる。
クリアハードコート層の厚さとしては、好ましくは1〜10μm、より好ましくは2〜7μmである。クリアハードコート層の厚さが1μm以上であると、ガスバリア性フィルムの耐熱性が向上しうることから好ましい。一方、クリアハードコート層の厚さが10μm以下であると、ガスバリア性フィルムの光学特性が好適に調整され、また、ガスバリア性フィルムのカールを抑制しうることから好ましい。
基材上に、上述のアンカーコート層、平滑層、およびクリアハードコート層からなる群から選択される少なくとも1つの中間層が形成される場合、基材および中間層の総膜厚は、5〜500μmであることが好ましく、25〜250μmであることがより好ましい。
[第1のガスバリア層]
第1のガスバリア層は、基材の一方の面側に配置される。当該第1のガスバリア層は、ポリシラザン改質物を含む。その他必要に応じて無機粒子、アミン触媒および金属触媒等の添加剤を含んでいてもよい。
第1のガスバリア層の膜厚は、10〜500nmであることが好ましく、20〜300nmであることがより好ましい。第1のガスバリア層の膜厚が10nm以上であると、膜厚が均一にでき、また、高いガスバリア性が得られることから好ましい。一方、第1のガスバリア層の膜厚が500nm以下であると、クラックを抑制できることから好ましい。
一実施形態において、第1のガスバリア層が後述する無機粒子を含む場合には、第1のガスバリア層の水蒸気透過度は、1g/(m・24h)以下であることが好ましく、1×10−1〜1×10−3g/(m・24h)であることがより好ましい。また、別の一実施形態において、第1のガスバリア層が無機粒子を含まない場合には、第1のガスバリア層の水蒸気透過度は、1×10−3g/(m・24h)以下であることが好ましく、1×10−4g/(m・24h)以下であることがより好ましい。
(ポリシラザン改質物)
ポリシラザン改質物とは、ポリシラザンを改質することによって得られる改質物を意味する。
ポリシラザン改質物は、ポリシラザンが改質されて得られる酸化ケイ素を含む。その他、ポリシラザンが改質されて得られる窒化ケイ素および/または酸化窒化ケイ素が含まれていてもよい。
ポリシラザン
ポリシラザンは、その構造内にSi−N、Si−H、N−H等の結合を有するポリマーである。
前記ポリシラザンとしては、特に制限されないが、改質処理を行うことを考慮すると、比較的低温でセラミック化してシリカに変性する化合物であることが好ましく、例えば、特開平8−112879号公報に記載の下記の一般式で表される単位からなる主骨格を有する化合物であることが好ましい。
上記一般式において、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、またはアルコキシ基を表す。
ポリシラザンは、得られるガスバリア層の緻密性の観点から、R、R、およびRのすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザン(以下、「PHPS」とも称する)であることが特に好ましい。
パーヒドロポリシラザンは直鎖構造と6員環および8員環を中心とする環構造とが存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)であり、分子量によって液体または固体の物質でありうる。当該パーヒドロポリシラザンは、市販品を使用してもよく、市販品としては、アクアミカ NN120、NN110、NAX120、NAX110、NL120A、NL110A、NL150A、NP110、NP140(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)等が挙げられる。
低温でセラミック化するポリシラザンの別の例としては、上記一般式で表されるポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(例えば、特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(例えば、特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(例えば、特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(例えば、特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(例えば、特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(例えば、特開平7−196986号公報)等が挙げられる。
改質
ポリシラザンは改質により転化して酸化ケイ素を生じる。
ポリシラザンの酸化ケイ素への改質機構としては、ポリシラザンの水の加水分解による改質が挙げられる。具体的には、ポリシラザンのSi−N結合が水により加水分解され、これによってポリマー主鎖が切断されることでSi−OHを形成する。そして、改質条件下において2つのSi−OHが脱水縮合すると、Si−O−Si結合を形成し、硬化することで酸化ケイ素を生じる。
また、ポリシラザンの改質を特に真空紫外光の照射により行った場合には、上記酸化ケイ素への改質機構とともに、または代えてポリシラザンの直接酸化による酸化ケイ素への改質が起こりうる。具体的には、ポリシラザンに真空紫外光を照射すると、真空紫外光や、真空紫外光によって活性化されたオゾンおよび活性酸素等によって、ポリシラザン中のHやNが、直接Oと置き換わって(すなわち、シラノールを経由することなく)Si−O−Si結合を形成し、硬化することで酸化ケイ素を生じる(光量子プロセスと呼ばれる光子の作用)。
この際、真空紫外光の照射によるポリシラザンの改質においては、上記ポリシラザンの直接酸化による酸化ケイ素への改質とともに、または代えて窒化ケイ素および/または酸化窒化ケイ素への改質が起こりうる。具体的には、ポリシラザンに真空紫外光を照射すると、励起等によりポリシラザン中のSi−H結合やN−H結合が比較的容易に切断され、不活性雰囲気下ではSi−Nとして再結合する。これにより、窒化ケイ素や酸化窒化ケイ素が生じうる。
なお、ポリシラザンの改質を真空紫外光の照射によって行う場合、ポリシラザンが直接酸化されることから、高密度で欠陥の少ない改質膜を形成することができ、高いガスバリア性を有するガスバリア層が形成されうる。本明細書において、「真空紫外光(VUV光)」とは、波長200nm以下の高いエネルギーを有する紫外光を意味する。
上記改質機構はあくまで推測のものであり、ポリシラザンが上記機構とは異なる機構によって酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素が生じる場合であっても、本発明の技術的範囲に含まれる。
(無機粒子)
第1のガスバリア層は、無機粒子を含みうる。
無機粒子としては、特に制限されず、公知のものが用いられうる。
前記無機粒子としては、金属酸化物粒子が挙げられる。当該金属酸化物粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム等が挙げられる。これらのうち、経時の安定性を向上させる観点から、酸化チタンおよび/または酸化亜鉛を用いることが好ましい。
また、無機粒子は、表面処理剤を用いて表面改質をしていてもよい。
前記表面処理剤としては、例えば、無機系化合物、有機系化合物が挙げられる。
無機系化合物としては、特に制限されないが、アルミナ、シリカ、ジルコニアやそれらの水和物などが挙げられる。これらのうち、無機粒子の疎水化度を制御しやすいことから、特にアルミナ、シリカ、アルミナおよびシリカの組み合わせが好ましい。
また、有機系化合物としては、特に制限されないが、反応性有機ケイ素化合物、有機チタン化合物などが挙げられる。
前記反応性有機ケイ素化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2−メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシブチルメチルジメトキシシランなどのアルコキシシラン;ヘキサメチルジシラザン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどのポリシロキサン化合物などが挙げられる。これらのうち、無機粒子の疎水化度を制御しやすいことから、特に3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルハイドロジェンポリシロキサンを用いることが好ましい。
前記有機チタン化合物としては、アルコキシチタン(すなわち、チタンアルコキシド)、チタンポリマー、チタンアシレート、チタンキレート、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネートなどが挙げられる。これらのうち、特にチタンアシレート、チタンキレートを用いることが好ましい。
なお、表面改質した無機粒子は、市販品を使用してもよい。当該市販品としては、例えば、T−805(日本アエロジル社製)、STT−30A、STT−65S−S(チタン工業社製)、TAF−500T、TAF−1500T(富士チタン工業社製)、MT−100S、MT−100T、MT−150A、MT−500B、MT−600B、MT−100SA、MT−500SA、MT−600SA(テイカ社製)、IT−S、PT−401M(石原産業社製)などが挙げられる。
上述の表面処理剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
表面処理剤による無機粒子の表面改質は、特に制限されず、公知の方法、例えば、乾式処理、湿式処理により行うことができる。前記乾式処理としては、無機粒子を撹拌等によりクラウド状に分散させたものに、アルコール等で溶解した表面処理剤溶液を噴霧、または気化した表面処理剤を接触させて付着させる方法が挙げられる。また、前記湿式処理としては、例えば、表面処理剤を水または有機溶媒に分散させた溶液に、無機粒子を添加して混合・撹拌する、または無機粒子を溶液中に分散させ、その中に表面処理剤を滴下して付着させる方法が挙げられる。また、湿式処理の際、ビーズミル等によって湿式解砕処理を行ってもよい。その後、得られた溶液をろ過、乾燥し、得られた無機粒子をアニール処理(焼き付け)することにより行うことができる。
無機粒子の平均粒径は、1〜20nmであることが好ましく、1〜10nmであることがより好ましい。無機粒子の平均粒径が1nm以上であると、取り扱いが容易となることから好ましい。一方、無機粒子の平均粒径が20nm以下であると、第1のガスバリア層が好適なガスバリア性を有することから好ましい。なお、ここでいう「無機粒子の粒径」とは、無機粒子が表面改質されている場合には、表面改質された無機粒子全体としての平均粒径を意味する。
無機粒子の添加量は、ポリシラザンに対して、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることがより好ましい。無機粒子の添加量が0.01質量%以上であると、ガスバリア層の経時の安定性が向上することから好ましい。一方、無機粒子の添加量が10質量%以下であると、第1のガスバリア層が好適なガスバリア性を有することから好ましい。なお、第1のポリシラザン改質物は、ポリシラザンの改質条件に応じて規定されるものであるから、ポリシラザンに対する無機粒子の添加量によって、第1のガスバリア層における無機粒子の相対的な添加量を規定することができる。また、ここでいう「無機粒子の添加量」とは、無機粒子が表面改質されている場合には、表面改質された無機粒子全体としての添加量を意味する。
(アミン触媒および金属触媒)
第1のガスバリア層は、アミン触媒および/または金属触媒を含んでいてもよい。
前記アミン触媒としては、特に制限されないが、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、3−モルホリノプロピルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサンが挙げられる。
前記金属触媒としては、特に制限されないが、白金アセチルアセトナート等の白金化合物、プロピオン酸パラジウム等のパラジウム化合物、ロジウムアセチルアセトナート等のロジウム化合物が挙げられる。
前記アミン触媒および前記金属触媒を添加することで、ポリシラザンの改質を促進することができる。
(第1のガスバリア層の形態)
上述のように第1のガスバリア層は基材の一方の面側に配置される。この際、第1のガスバリア層は2層以上が積層されていてもよい(すなわち、基材−第1のガスバリア層−第1のガスバリア層等)。また、他の層が基材と第1のガスバリア層との間に介在していてもよいし(すなわち、基材−他の層−第1のガスバリア層)、第1のガスバリア層の表面にさらに他の層が形成されていてもよいし(すなわち、基材−第1のガスバリア層−他の層)、これらの組み合わせであってもよい(すなわち、基材−他の層−第1のガスバリア層−他の層)。この際、他の層はさらに2層以上が積層されていてもよい(すなわち、基材−第1のガスバリア層−他の層−他の層等)。
上記他の層としては、特に制限されないが、公知のガスバリア層、例えば、乾式成膜法により形成されるガスバリア層が挙げられる。
当該乾式成膜法により形成されるガスバリア層は、二硫化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ガリウム、酸化インジウムスズ(ITO)、アルミニウム添加亜鉛酸化物(AZO)、亜鉛スズ複合酸化物(ZTO)、窒化アルミニウム、炭化ケイ素等の無機物を含みうる。
乾式成膜法により形成されるガスバリア層の膜厚は、10〜500nmであることが好ましく、20〜300nmであることがより好ましい。
また、乾式成膜法により形成されるガスバリア層の水蒸気透過度は、0.1g/(m・24h)以下であることが好ましく、0.0001〜0.01g/(m・24h)であることがより好ましい。
[第2のガスバリア層]
第2のガスバリア層は、基材の第1のガスバリア層が配置される面とは反対の面側に配置される。これにより、少なくとも第1のガスバリア層、基材、第2のガスバリア層がこの順に配置される。
(第2のガスバリア層)
第2のガスバリア層の構成は、第1のガスバリア層と同様であることからここでは説明を省略する。
[第1のガスバリア層および第2のガスバリア層]
上述のように第1のガスバリア層および第2のガスバリア層は、無機粒子を含みうる。この際、第1のガスバリア層および第2のガスバリア層の少なくとも一方が、無機粒子を含み、好ましくは第1のガスバリア層および第2のガスバリア層のいずれか一方が、無機粒子を含む。なお、基材の一方の面側に第1のガスバリア層を2以上有する場合および/または基材のもう一方の面側に第2のガスバリア層を2以上有する場合には、少なくとも1つの第1のガスバリア層または少なくとも1つの第2のガスバリア層が無機粒子を含むことにより、「第1のガスバリア層が無機粒子を含む」または「第2のガスバリア層が無機粒子を含む」ということができる。
上述のような構成を有するガスバリア性フィルムは、高いガスバリア性を有し、かつ、経時の安定性に優れる。
従来の基材の両面にガスバリア層が配置されたガスバリア性フィルム、例えば、特許文献1に記載のガスバリア性フィルムは、乾式成膜法によりガスバリア層を形成することから製造コストが高価となりうる。また、基材表面に存在する突起やガスバリア層中への異物混入によって生じる微細孔、ガスバリア層の膨張・収縮によって生じる微小なひび割れ、取り扱い時の折り曲げや接触などによって生じる傷等によって、ガスバリア性の低下が生じうる。
そこで、本発明者は、より製造コストを削減し、より高いガスバリア性を得る観点から、基材の両面に湿式成膜法により形成されたガスバリア層(ポリシラザンを主成分とする塗布液を塗布、改質して形成されるガスバリア層)が配置されたガスバリア性フィルムについて検討した。前記ガスバリア性フィルムによれば、特許文献1と同様に、両面にガスバリア層を形成することで、一定のガスバリア性を得ることができる。しかしながら、本発明者の検討によれば、当該ガスバリア性フィルムは、経時の安定性が必ずしも十分ではないことが判明した。具体的には、前記ガスバリア性フィルムは、経時的にガスバリア性が劣化しうるのである。
この理由は必ずしも明らかではないが、以下のメカニズムによるものであると考えられる。
上述のように、湿式成膜法により形成されるガスバリア層は、通常、ポリシラザンを主成分とする塗布液を塗布し、得られた塗膜を改質することにより形成される。
ここで、基材の一方の面側のみにガスバリア層を設ける場合には、以下のようにポリシラザンの改質が進行しうる。すなわち、ポリシラザンの改質は、改質条件によっても異なるが、照射される真空紫外光および/または外部の水分等により、塗膜の表面から進行する傾向がある。この場合、改質されたポリシラザンの塗膜表面は水分等を通しにくく、また、真空紫外光は照射波長が短いためポリシラザンの塗膜内部まで到達しない場合がある。そうすると、ポリシラザンの塗膜内部は、改質が起こりにくい状態となり、ポリシラザンの塗膜内部における改質が十分に進行しない可能性がある。しかしながら、基材上のポリシラザンの塗膜は、基材側から基材を介して外部の水分等が供給されるため、ポリシラザンの塗膜内部についても改質は進行する。したがって、ガスバリア層は層内部の大部分の領域または全領域が改質され、結果として高いガスバリア性を有するとともに、経時の安定性に優れる。なお、基材を介して供給される水分による改質は、ポリシラザンの塗膜の形成と同時に進行する可能性がある。
一方、基材の両面にガスバリア層を形成した場合には、照射される真空紫外光および/または外部の水分等によるポリシラザンの改質は、塗膜の表面から進行しうることから、ポリシラザンの塗膜内部は改質が起こりにくい状態にある。ここで、基材の両面にガスバリア層を有する場合には、基材側からの外部の水分の供給等は起こりにくい。そうすると、ポリシラザンの塗膜内部、特に基材に近い領域においては、改質が不十分の領域(未改質領域)が残存しうる。そして、ガスバリア層が未改質領域を有する場合には、例えば、ガスバリア層の端面等からガスバリア層内部に侵入しうる外部の水分等と作用してシラノール(−SiOH)が形成されうる。その結果、ガスバリア層の膜構造が破壊されることにより劣化し、ガスバリア性が低下するものと考えられる。この際、当該膜構造の破壊を生じさせる要因の1つである端面から侵入する外部の水分は、ガスバリア層の膜厚が極めて薄膜であることから、その量は極めて微量となる。その結果、膜構造の破壊は、長期間をかけてゆっくりと進行するため、ガスバリア性フィルムは経時的に劣化することとなる。
これに対し、本形態に係るガスバリア性フィルムは、基材の両面に第1のガスバリア層および第2のガスバリア層を有するため、上記と同様の未改質領域が生じる可能性がある。しかしながら、第1のガスバリア層および第2のガスバリア層の少なくとも一方が無機粒子を含むことで、未改質領域に基づく経時的なガスバリア性の劣化を防止することができる。当該経時的なガスバリア性の劣化が防止できる理由は明らかではなく、無機粒子による直接的または間接的な作用に基づくものであると考えられる。
なお、主として無機粒子の間接的な作用により、例えば、基材の一方の面側に第1のガスバリア層を形成し、次いで基材のもう一方の面側に第2のガスバリア層を形成する場合において、第1のガスバリア層のみが無機粒子を含む場合でも、経時的なガスバリア性の劣化を防止することができる。具体的には、上記形態によれば、第1のガスバリア層は基材側からの外部の水等の侵入等により未改質領域の形成が起こりにくく、第2のガスバリア層に未改質領域が残存する可能性があるといえる。その結果、経時的なガスバリア性の劣化が生じる場合には、第2のガスバリア層に生じうる未改質領域が要因となると考えられる。しかしながら、この場合においても、第1のガスバリア層に含まれている無機粒子が、間接的な作用等により、第2のガスバリア層の経時的なガスバリア性の劣化を防止することができる。
ただし、上記のメカニズムはあくまで推測のものであり、他のメカニズムによって本発明の効果を発揮する場合であっても、本発明の技術的範囲に含まれる。
<ガスバリア性フィルムの製造方法>
ガスバリア性フィルムの製造方法は、ポリシラザンを含む第1の塗布液を基材の一方の面側に塗布し、前記ポリシラザンを改質することを含む第1のガスバリア層の形成工程(1)と、ポリシラザンを含む第2の塗布液を基材のもう一方の面側に塗布し、前記ポリシラザンを改質することを含む第2のガスバリア層の形成工程(2)と、を含む。
[工程(1)]
工程(1)は、第1の塗布液を基材の一方の面側に塗布し、前記ポリシラザンを改質することを含む。これにより、第1のガスバリア層が形成される。
(基材)
基材としては、上述のものと同様のものが用いられうることからここでは説明を省略する。
(第1の塗布液)
第1の塗布液は、ポリシラザンおよび溶媒を含む。その他必要に応じて、無機粒子、アミン触媒および金属触媒等の添加剤を含んでいてもよい。
ポリシラザン
ポリシラザンは上述のものと同様のものが用いられうることからここでは説明を省略する。
第1の塗布液中のポリシラザンの含有量は、所望の第1のガスバリア層の膜厚や塗布液のポットライフ等によっても異なるが、第1の塗布液の全量に対して、0.2〜35質量%であることが好ましい。
無機粒子
無機粒子は上述のものと同様のものが用いられうることからここでは説明を省略する。
第1の塗布液中の無機粒子の含有量は、ポリシラザンの添加量に対して、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることがより好ましい。
溶媒
溶媒としては、ポリシラザンと反応するものでなければ特に制限はなく、公知の溶媒が用いられうる。具体的には、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素等の炭化水素系溶媒;脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル系溶媒が挙げられる。より詳細には、炭化水素溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン、塩化メチレン、トリクロロエタン等が挙げられる。また、エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらの溶媒は単独で、または2種以上を混合して用いられうる。
アミン触媒および金属触媒
アミン触媒および金属触媒としては上述のものと同様のものが用いられうることからここでは説明を省略する。
このうち、第1の塗布液がアミン触媒および/または金属触媒を含む場合には、当該アミン触媒および/または金属触媒は、ポリシラザンに対して、0.1〜10質量%含むことが好ましい。特にアミン触媒については、塗布性の向上および反応の時間の短縮の観点から、ポリシラザンに対して、0.5〜5質量%含むことがより好ましい。
(塗布)
塗布においては、第1の塗布液を基材上に塗布し、塗膜を形成する。なお、基材が中間層を有する場合には、第1の塗布液を中間層上に塗布する場合がある。
第1の塗布液の塗布方法としては、適宜公知の方法が採用されうる。具体的には、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
第1の塗布液の塗布量は、特に制限されないが、上記所望の第1のガスバリア層の厚さとなるように適宜調節されうる。
(ポリシラザンの改質)
ポリシラザンの改質方法は特に制限されず、公知の方法が適用されうる。具体的なポリシラザンの改質方法としては、紫外光の照射、プラズマ照射、加熱、およびこれらの組み合わせ等が挙げられる。
前記紫外光の照射は、公知の方法で紫外光を照射することにより行われうる。紫外光を照射することにより、ポリシラザンが改質されうる。なお、「紫外光の照射」には、第1の塗布液の塗布によって得られた塗膜に紫外光が照射される環境とすることを含む。したがって、「紫外光の照射」には、蛍光灯、黄色灯等の環境下に前記塗膜を静置することも含まれる。これらのうち、紫外光の照射は、酸化性ガス雰囲気下と低湿度環境で行うことが好ましい。
照射する紫外光の波長は、特に限定されないが、10〜450nmであることが好ましく、100〜300nmであることがより好ましく、100〜200nmであることがさらに好ましく、100〜180nmであることが特に好ましい。これらのうち、照射する紫外光は、転化反応をより低温かつ短時間で進める観点から、真空紫外光(波長200nm以下の紫外光)であることが好ましい。
上述のように、真空紫外光の照射により、ポリシラザンがシラノールを経由することなく直接酸化されることから(光量子プロセスと呼ばれる光子の作用)、当該酸化過程において体積変化が少なく、高密度で欠陥の少ない酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素等を含む膜が得られうる。また、真空紫外光では、反応雰囲気中に存在する酸素等から高い酸化能力を有するオゾンや活性酸素が生成され、当該オゾンや活性酸素によってもポリシラザンの改質処理を行うことができる。その結果、より緻密な酸化ケイ素、窒化ケイ素、および酸化窒化ケイ素等の膜が得られうる。したがって、真空紫外光の照射によりポリシラザンが改質されて得られるガスバリア層は、高いバリア性を有しうる。なお、真空紫外光照射は、塗膜形成後であればいずれの時点で実施してもよい。
紫外光の光源としては、特に制限されないが、低圧水銀灯、重水素ランプ、キセノンエキシマランプ、メタルハライドランプ、エキシマレーザー等が用いられうる。また、上述のように蛍光灯、黄色灯等であってもよい。これらのうち、キセノンエキシマランプ等の希ガスエキシマランプを用いることが好ましい。
ランプの出力は、400W〜30kWであることが好ましい。
照度は、1mW/cm〜100kW/cmであることが好ましく、1mW/cm〜10W/cmであることがより好ましい。
照射エネルギーは、10〜10000mJ/cmであることが好ましく、100〜8000mJ/cmであることがより好ましい。
前記キセノンエキシマランプ等の希ガスエキシマランプは、真空紫外光を照射できる。Xe、Kr、Ar、Ne等の希ガスの原子は最外殻電子が閉殻となっているため、化学的に非常に不活性であることから、不活性ガスと呼ばれる。しかし、放電等によりエネルギーを得た希ガスの原子(励起原子)は、他の原子と結合して分子を作ることができる。希ガスがキセノンの場合には
e+Xe→Xe
Xe+2Xe→Xe +Xe
Xe →Xe+Xe+hν(172nm)
となる。この際、励起されたエキシマ分子であるXe が基底状態に遷移するとき、172nmのエキシマ光(真空紫外光)を発光する。上記エキシマランプは前記エキシマ光を利用する。前記エキシマ発光を得る方法としては、例えば、誘電体バリア放電を用いる方法および無電極電界放電を用いる方法が挙げられる。
エキシマランプは、エキシマ光が一つの波長に集中し、必要な光以外がほとんど放射されない点に特徴を有し、効率性が高い。また、余分な光が放射されないことから、対象物の温度を低く保つことができる。さらに、始動・再始動に時間を要さないことから、瞬時に点灯点滅が可能となる。特に、Xeエキシマランプは、波長の短い172nmの真空紫外光を単一波長で放射することから、発光効率に優れている。当該Xeエキシマランプは、172nmと波長が短く、エネルギーが高いことから、有機化合物の切断能が高いことが知られている。また、Xeエキシマランプは、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素であっても効率よく活性酸素やオゾンを発生させることができる。したがって、例えば、メイン波長254nmの紫外光を発する低圧水銀ランプと対比すると、Xeエキシマランプは、高い有機化合物の結合切断能を有し、活性酸素やオゾンを効率的に発生させることができ、低温かつ短時間でポリシラザン層の改質処理をすることができる。また、Xeエキシマランプは、光の発生効率が高いため、低電力で瞬時に点灯点滅が可能であり、単一の波長を発光できることから、高スループットに伴うプロセス時間の短縮や設備面積の縮小等の経済的観点、および熱によるダメージを受けやすい基材を用いたガスバリア性フィルムへの適用等の観点からも好ましい。
このように、エキシマランプは光の発生効率が高いため、低電力で点灯させることができ、また、照射対象物の表面温度の上昇を抑制することができる。また、内部まで侵入する光子の数も増加するため改質膜厚も増加および/または膜質の高密度化が可能である。ただし、照射時間が長すぎると平面性の劣化やガスバリア性フィルムの他の材料に悪影響を及ぼす場合がある。一般的には、照射強度と照射時間の積で表される積算光量を指標として転化反応を検討するが、酸化ケイ素のように組成は同一であっても、様々な構造形態をとる材料を用いる場合には、照射強度の絶対値が重要になることもある。
よって、真空紫外光照射により改質を行う場合には、少なくとも1回は100〜200mW/cmの最大照射強度を与えることが好ましい。最大照射強度が100mW/cm以上であると、改質効率が向上し、短時間で改質が進行しうることから好ましい。一方、最大照射強度が200mW/cm以下であると、ガスバリア性フィルムの劣化やランプ自体の劣化を抑制しうることから好ましい。
真空紫外光の照射時間は、特に制限されないが、高照度工程での照射時間は0.1秒〜3分間であることが好ましく、0.5秒〜1分であることがより好ましい。
真空紫外光照射時の酸素濃度は0.5体積%以下であることが好ましく、0.1体積%以下であることがより好ましい。酸素濃度が0.5体積%以下であると、大気と酸素との置換時間が短縮されうることから好ましい。
紫外光照射の対象となる塗膜は、塗布時に酸素および微量の水分が混入し、さらには基材や隣接層等にも吸着酸素や吸着水が存在しうる。当該酸素等を利用すれば、照射庫内に新たに酸素を導入しなくとも、改質処理を行う活性酸素やオゾンの発生に要する酸素源は十分でありうる。また、Xeエキシマランプのような172nmの真空紫外光は酸素により吸収されるため、塗膜に到達する真空紫外光量が減少する場合があることから、真空紫外光の照射時には、酸素濃度を低く設定し、真空紫外光が効率よく塗膜まで到達できる条件とすることが好ましい。
真空紫外光の照射雰囲気中の酸素以外のガスは、乾燥不活性ガスであることが好ましく、コストの観点から特に乾燥窒素ガスを用いることがより好ましい。なお、酸素濃度は、照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガス等のガス流量を計測し、流量比を変えることで調整することができる。
発生させた真空紫外光は、照射効率向上と均一な照射を達成する観点から、発生源からの真空紫外光を反射板で反射させてから改質前のポリシラザン層に照射してもよい。また、真空紫外光照射は、バッチ処理にも連続処理にも適用可能であり、被塗布基材の形状によって適宜選定されうる。例えば、基材が長尺フィルム状である場合には、これを搬送させながら連続的に真空紫外光を照射して改質を行うことが好ましい。
また、前記プラズマ照射は、公知の方法でプラズマを照射することにより行われる。プラズマを照射することにより、紫外光が放出され、結果として、上述の紫外光の照射が行われうる。当該プラズマ照射によれば、波長が150nm以下の高いエネルギーを有する真空紫外光を好適に発生させることができる。
プラズマ照射は、酸素濃度および水蒸気濃度が低減された雰囲気下で行うことが好ましい。具体的には、酸素濃度は、0.001体積%(10体積ppm)以下であることが好ましく、酸素濃度0.0002体積%(2体積ppm)以下であることがより好ましい。また、水蒸気濃度は、10体積ppm以下であることが好ましく、1体積ppm以下であることがより好ましい。
酸素濃度および水蒸気濃度の調整方法としては、特に制限されないが、装置内を減圧にする方法、ガスフローする方法等が挙げられる。これらのうち、装置内を減圧にする方法により酸素濃度および水蒸気濃度を調整することが好ましい。当該装置内を減圧にする方法は、真空ポンプを用いて大気圧から好ましくは100Pa以下、より好ましくは20Pa以下まで減圧する。
酸素濃度および水蒸気濃度の調整後、所定のガスを導入し、所定の圧力とすることで、プラズマで励起する環境とすることができる。
プラズマによって励起されたガスはエネルギーを放出して失活するが、その際、気体の種類と圧力に依存して、種々の波長の真空紫外光を放出する。プラズマ照射は、真空紫外光を放出する励起種で大別すると、(1)低圧プラズマ処理と、(2)大気圧近傍プラズマ処理と、の2つの方法に分けられる。
(1)低圧プラズマ処理
低圧プラズマ処理は、減圧する方法により酸素濃度および水蒸気濃度の調整し、ガスを装置内に導入することで行われる。低圧プラズマ処理では、低圧下のプラズマにより励起された原子、分子が基底状態もしくは下の準位に落ちる際の真空紫外の発光を利用する。低圧プラズマで発生する真空紫外光の波長は、プラズマを発生させるガス種に依存する。真空紫外光の波長は、短波長であることが好ましく、125nm以下の真空紫外光であることがより好ましい。なお、過度に短波長の真空紫外光であると、高いエネルギー準位に励起される頻度が低くなり、発光強度は著しく減少する。そのため、実質的に低圧プラズマ処理で利用できる比較的高強度の真空紫外光の波長は、50nm以上となる。すなわち、低圧プラズマ処理で利用する光の波長として50〜125nmの範囲であることがより好ましい。
低圧プラズマ処理における圧力は、照射効率の観点から、0.1〜100Paであることが好ましい。
低圧プラズマ処理に使用されるガス種は、特に制限されないが、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)等の希ガスが挙げられる。これらのガス種は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。なお、ヘリウム(He)を使用する場合に生じる真空紫外光の波長は、通常58.4nmであり、ネオン(Ne)を使用する場合に生じる真空紫外光の波長は、通常73.6nmおよび74.4nmであり、アルゴン(Ar)を使用する場合に生じる真空紫外光の波長は、通常104.8nmおよび106.7nmである。
また、上記希ガス原子のプラズマは、プラズマによる励起によって真空紫外光を発するだけでなく、発光しない準安定な励起状態の原子を多量に形成する。この準安定な励起状態の原子が持つエネルギーを有効利用するために、希ガス中に水素(H)ガスおよび/または窒素(N)ガスを添加してもよい。これらのうち、準安定な励起状態を持たない水素ガスを添加することが好ましい。希ガス中に水素ガス、窒素ガス等の添加ガスを添加すると、準安定な励起状態の希ガス原子の持つ励起エネルギーが効率よく添加ガスの励起に使われる。その結果、希ガス原子の真空紫外発光に、添加ガスの真空紫外発光も加わり、波長150nm以下の真空紫外光の照射強度を増加させることができる。なお、添加ガスは、解離・励起された原子が真空紫外光を発する場合と、励起された分子が真空紫外光を発する場合とがあるが、分子の発光はバンド状になっており、その中心波長は原子の発光波長より長い。なお、励起された水素原子の発する主要な真空紫外光の波長は、通常121nmであり、窒素原子の発する主要な真空紫外光の波長は、通常120nmである。
上記使用されうるガス種のうち、好ましいガス種としては、He、Ne、HeとHの混合ガス、NeとHの混合ガス、ArとHとの混合ガスである。添加ガスの比率は、0.1〜20体積%であることが好ましく、0.5〜10体積%であることがより好ましい。この範囲であれば、添加ガスの効果が顕著に現れ、また、プラズマ密度の減少もほとんど見られず、添加ガスの励起に使われる準安定な励起状態の希ガス原子の密度が上昇しうる。
なお、効率よくプラズマ照射を行う観点から、波長150nm以下の光を吸収して、自身が分解するような多原子分子のガス種(例えばCO、CO、CHSi−H等)は、実質的に含まれないことが好ましい。
低圧プラズマ処理の電源の周波数は、1MHz〜100GHzであることが好ましく、4MHz〜10GHzであることがより好ましい。この範囲であれば、プラズマ生成反応に直接寄与する電子に効率よくエネルギーを与えることができ、電子密度、すなわちプラズマ密度が向上しうる。また、プラズマで発生する真空紫外光の強度が強くなり、また、エネルギーの伝達効率が向上しうる。
低圧プラズマ処理のプラズマ生成方式は、従来公知の方式を用いることができる。具体例としては、例えば、容量結合プラズマ(CCP)、誘導結合プラズマ(ICP)、表面波プラズマ、電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマ、ヘリコン波プラズマ等が挙げられる。
低圧プラズマ処理の投入電力密度は、0.1〜20W/cmであることが好ましく、0.3〜10W/cmであることがより好ましい。この範囲であれば、十分な強度の照射ができ、基材の温度上昇による熱変形、プラズマの不均一化、電極などのプラズマ源を構成する部材の損傷などを防止することができる。なお、本明細書において「投入電力密度」とは、プラズマへの投入電力の大きさの指標を意味し、プラズマの大きさを反映するプラズマ源の占める面積で規格化したものである。投入電力密度は、単位面積あたりの塗膜に照射される真空紫外光の照射強度に相関するパラメータとなる。なお、特に、容量結合プラズマのような有電極プラズマの場合には、高周波を印加する側の電極面積が、実質的にプラズマの大きさを規定しており、これをプラズマ源の占める面積とする。
(2)大気圧近傍プラズマ処理
大気圧近傍プラズマ処理は、減圧する方法またはガスフローする方法により酸素濃度および水蒸気濃度の調整し、ガスを装置内に導入し、装置内を大気圧近傍の圧力とすることで行われる。大気圧近傍プラズマ処理では、エキシマの発光を利用することが好ましい。
大気圧近傍プラズマ処理に利用されるガス種は、特に制限されないが、150nm以下のエキシマ光を発光させる観点から、アルゴン(Ar)であることが好ましい。なお、Arを使用する場合に生じる真空紫外光の波長は、通常126nmである。また、Arエキシマ(Ar )は、プラズマにより形成された準安定状態のAr原子(Ar)をもとに、次式で表される3体衝突反応で生じるとされている。
ガス種としてアルゴンを使用する場合、プラズマ密度等の観点から、アルゴン以外の不純物ガスは少ないことが好ましく、1体積%以下であることがより好ましく、0.5体積%以下であることがさらに好ましい。
なお、効率よくプラズマ照射を行う観点から、波長150nm以下の光を吸収して、自身が分解するような多原子分子のガス種(例えばCO、CO、CHSi−H等)は、実質的に含まれないことが好ましい。
大気圧近傍プラズマ処理における圧力は、1〜110kPaであることが好ましく、10〜90kPaであることがより好ましい。したがって、大気圧近傍プラズマ処理は、大気圧下で行うことも、わずかに減圧もしくは加圧して行うこともできる。これらのうち、効率的なプラズマ照射を行う観点から、わずかに減圧して行うことが好ましい。
大気圧近傍プラズマ処理のプラズマ生成方式は、従来公知の大気圧近傍でプラズマを生成できる方式を用いることができる。具体例としては、例えば、誘電体バリア放電を用いるダイレクト処理方式が挙げられる。
大気圧近傍プラズマ処理の電源の周波数は、50Hz〜1GHzであることが好ましく、1kHz〜100MHzであることがより好ましい。この範囲であれば、プラズマで形成される準安定状態の原子が多く、高い照射光度の真空紫外光が得られうる。また、プラズマのガス温度が低く抑えることができ、基材等に熱的な損傷を与えることを防止することができる。
大気圧近傍プラズマ処理の投入電力密度は、0.1〜20W/cmであることが好ましく、0.3〜10W/cmであることがより好ましい。この範囲であれば、十分な強度の照射ができ、基材の温度上昇による熱変形、プラズマの不均一化、電極などのプラズマ源を構成する部材の損傷などを防止することができる。
さらに、前記加熱によってもポリシラザンが改質しうる。
加熱の方法としては、特に制限はなく、ヒートブロック等の発熱体に基材を接触させ熱伝導により塗膜を加熱する方法、抵抗線等による外部ヒーターにより雰囲気を加熱する方法、IRヒーターの様な赤外領域の光を用いた方法等が挙げられる。これらの方法は、塗膜の平滑性等の観点から適宜選択されうる。
加熱処理の温度としては、特に制限はないが、50〜200℃であることが好ましく、80〜150℃であることがより好ましい。また、加熱時間としては1秒〜10時間であることが好ましく、10秒〜1時間であることがより好ましい。
ポリシラザンの改質は、紫外光照射またはプラズマ照射と、加熱処理とを組み合わせることが好ましい。紫外光照射またはプラズマ照射と、加熱処理とを組み合わせることにより、改質が促進されうる。
上述の改質処理によって得られる第1のガスバリア層の膜厚や密度等は、塗布条件、紫外光の強度、照射時間、波長(光のエネルギー密度)、および照射方法、プラズマ照射の方法、ガス種、圧力、電源の周波数、および投入電力密度、並びに加熱温度等を適宜選択することにより制御することができる。例えば、紫外光の照射方法を、連続照射、複数回に分割した照射、複数回の照射が短時間な、いわゆるパルス照射等から適宜選択することで、第1のガスバリア層の膜厚や密度等が制御されうる。
改質処理の程度については、形成された第1のガスバリア層をXPS表面分析することによって、ケイ素(Si)原子、窒素(N)原子、酸素(O)原子等の各原子組成比を求めることで確認できる。
なお、ポリシラザンの改質は、上記加熱、紫外光の照射時、プラズマ照射時のみに起こるものではなく、第1の塗布液を基材上に塗布した後から生じうる。
上述したように、ポリシラザンを紫外光の照射、プラズマ照射、加熱、およびこれらの組み合わせ等の方法により改質することで、酸化ケイ素を含む第1のポリシラザン改質物を得ることができる。また、特に前記改質が、真空紫外光の照射を含む場合には、酸化ケイ素とともに、窒化ケイ素および/または酸化窒化ケイ素を含む第1のポリシラザン改質物が得られうる。
[工程(2)]
工程(2)は、第2の塗布液を基材のもう一方の面側(第1のガスバリア層が形成された面とは反対の面側)に塗布し、ポリシラザンを改質することを含む。これにより、第2のガスバリア層が形成される。
工程(2)は、工程(1)と同様の方法で行われうることから、ここでは説明を省略する。
[工程(3)]
本発明の一実施形態において、ガスバリア性フィルムの製造方法は、他の層を形成する工程(3)をさらに含んでいてもよい。
工程(3)はいずれの時点で行ってもよい。例えば、工程(1)の前に工程(3)を行い、他の層上に第1のガスバリア層を形成してもよい。また、工程(1)後、工程(2)前に工程(3)を行い、他の層上に第2のガスバリア層を形成してもよい。
(他の層)
他の層としては、上述のように特に制限されないが、公知のガスバリア層、例えば、乾式成膜法により形成されるガスバリア層が挙げられる。以下においては、乾式成膜法によりガスバリア層を形成する方法について説明する。
(乾式成膜法)
乾式製膜法としては、物理気相成長法および化学気相成長法が挙げられる。物理気相成長法とは、気相中で物質の表面に物理的手法により目的とする物質の薄膜を堆積する方法をいい、蒸着法(抵抗加熱法、電子ビーム蒸着法、分子線エピタキシー法)、イオンプレーティング法、スパッタ法等が挙げられる。一方、化学気相成長法(化学蒸着法、CVD法)とは、基材上に、目的とする薄膜の成分を含む原料ガスを供給し、基板表面または気相における化学反応により膜を堆積させる方法をいい、熱CVD法、触媒化学気相成長法、光CVD法、プラズマCVD法等が挙げられる。これらのうち、スパッタ法、プラズマCVD法を用いることが好ましく、プラズマCVD法を用いることがより好ましい。
以下、プラズマCVD法を例に挙げて説明する。
プラズマCVD法においてプラズマを発生させる際には、複数の成膜ローラーの間の空間にプラズマ放電を発生させることが好ましく、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラーのそれぞれに基材を配置して、一対の成膜ローラー間に放電してプラズマを発生させることがより好ましい。このようにして、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラー上に基材を配置して、かかる一対の成膜ローラー間に放電することにより、成膜時に一方の成膜ローラー上に存在する基材の表面部分を成膜しつつ、もう一方の成膜ローラー上に存在する基材の表面部分も同時に成膜することが可能となって効率よく薄膜を製造できるばかりか、通常のローラーを使用しないプラズマCVD法と比較して成膜レートを倍にでき、なおかつ、略同一である構造の膜を成膜できる。
また、このようにして一対の成膜ローラー間に放電する際には、前記一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが好ましい。さらに、このようなプラズマCVD法に用いる成膜ガスとしては、有機ケイ素化合物と酸素とを含むものが好ましく、その成膜ガス中の酸素の含有量は、前記成膜ガス中の前記有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量未満であることが好ましい。また、乾式成膜法により形成されたガスバリア層は連続的な成膜プロセスにより形成された層であることが好ましい。
また、生産性の観点から、ロールツーロール方式で前記基材の表面上に前記ガスバリア層を形成させることが好ましい。また、このようなプラズマCVD法によりガスバリア層を形成する際に用いることが可能な装置としては、特に制限されないが、少なくとも一対の成膜ローラーと、プラズマ電源とを備え、かつ前記一対の成膜ローラー間において放電することが可能な構成となっている装置であることが好ましく、例えば、図1に示す製造装置を用いた場合には、プラズマCVD法を利用しながらロールツーロール方式で製造することも可能となる。
以下、図1を参照しながら、基材を一対の成膜ローラー上に配置し、前記一対の成膜ローラー間に放電してプラズマを発生させるプラズマCVD法によるガスバリア層の形成方法について、より詳細に説明する。なお、図1は、本方法よりガスバリア層を形成するために好適に利用することが可能な製造装置の一例を示す模式図である。また、以下の説明および図面中、同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図1に示す製造装置31は、送り出しローラー32と、搬送ローラー33、34、35、36と、成膜ローラー39、40と、ガス供給管41と、プラズマ発生用電源42と、成膜ローラー39および40の内部に設置された磁場発生装置43、44と、巻取りローラー45とを備えている。また、このような製造装置においては、少なくとも成膜ローラー39、40と、ガス供給管41と、プラズマ発生用電源42と、磁場発生装置43、44とが図示を省略した真空チャンバ内に配置されている。さらに、このような製造装置31において前記真空チャンバは図示を省略した真空ポンプに接続されており、かかる真空ポンプにより真空チャンバ内の圧力を適宜調整することが可能となっている。
このような製造装置においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39と成膜ローラー40)を一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各成膜ローラーがそれぞれプラズマ発生用電源42に接続されている。そのため、このような製造装置31においては、プラズマ発生用電源42により電力を供給することにより、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の空間を放電することが可能であり、これにより成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の空間にプラズマを発生させることができる。なお、このように、成膜ローラー39と成膜ローラー40とを電極としても利用する場合には、電極としても利用可能なようにその材質や設計を適宜変更すればよい。また、このような製造装置においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39および40)は、その中心軸が同一平面上において略平行となるようにして配置することが好ましい。このようにして、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39および40)を配置することにより、成膜レートを倍にでき、なおかつ、同じ構造の膜を成膜できる。そして、このような製造装置によれば、CVD法によりガスバリア層を形成することが可能であり、成膜ローラー39上においてガスバリア層成分を堆積させつつ、さらに成膜ローラー40上においてもガスバリア層成分を堆積させることもできるため、効率よくガスバリア層を形成することができる。
成膜ローラー39および成膜ローラー40の内部には、成膜ローラーが回転しても回転しないようにして固定された磁場発生装置43および44がそれぞれ設けられている。
成膜ローラー39および成膜ローラー40にそれぞれ設けられた磁場発生装置43および44は、一方の成膜ローラー39に設けられた磁場発生装置43と他方の成膜ローラー40に設けられた磁場発生装置44との間で磁力線がまたがらず、それぞれの磁場発生装置43、44がほぼ閉じた磁気回路を形成するように磁極を配置することが好ましい。このような磁場発生装置43、44を設けることにより、各成膜ローラー39、40の対向側表面付近に磁力線が膨らんだ磁場の形成を促進することができ、その膨出部にプラズマが収束され易くなるため、成膜効率を向上させることができる点で優れている。
また、成膜ローラー39および成膜ローラー40にそれぞれ設けられた磁場発生装置43、44は、それぞれローラー軸方向に長いレーストラック状の磁極を備え、一方の磁場発生装置43と他方の磁場発生装置44とは向かい合う磁極が同一極性となるように磁極を配置することが好ましい。このような磁場発生装置43、44を設けることにより、それぞれの磁場発生装置43、44について、磁力線が対向するローラー側の磁場発生装置にまたがることなく、ローラー軸の長さ方向に沿って対向空間(放電領域)に面したローラー表面付近にレーストラック状の磁場を容易に形成することができ、その磁場にプラズマを収束させることができため、ローラー幅方向に沿って巻き掛けられた幅広の基材等に効率的に蒸着膜であるガスバリア層を形成することができる点で優れている。
成膜ローラー39および成膜ローラー40としては適宜公知のローラーを用いることができる。このような成膜ローラー39および40としては、より効率よく薄膜を形成せしめるという観点から、直径が同一のものを使うことが好ましい。また、このような成膜ローラー39および40の直径としては、放電条件、チャンバのスペース等の観点から、直径が300〜1000mmφの範囲、特に300〜700mmφの範囲であることが好ましい。成膜ローラーの直径が300mmφ以上であれば、プラズマ放電空間が小さくなることがないため生産性の劣化もなく、短時間でプラズマ放電の全熱量が基材等にかかることを回避できることから、基材等へのダメージを軽減することができるため好ましい。一方、成膜ローラーの直径が1000mmφ以下であれば、プラズマ放電空間の均一性等も含めて装置設計上、実用性を保持することができるため好ましい。
このような製造装置31においては、基材等の表面がそれぞれ対向するように、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39と成膜ローラー40)上に、基材等が配置されている。このようにして基材等を配置することにより、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の対向空間に放電を行ってプラズマを発生させる際に、一対の成膜ローラー間に存在する基材等のそれぞれの表面を同時に成膜することが可能となる。すなわち、このような製造装置によれば、プラズマCVD法により、成膜ローラー39上にて基材等の表面上にガスバリア層成分を堆積させ、さらに成膜ローラー40上にてガスバリア層成分を堆積させることができるため、基材等の表面上にガスバリア層を効率よく形成することが可能となる。
このような製造装置に用いる送り出しローラー32および搬送ローラー33、34、35、36としては適宜公知のローラーを用いることができる。また、巻取りローラー45としても、基材等の上にガスバリア層を形成したフィルムを巻き取ることが可能なものであればよく、特に制限されず、適宜公知のローラーを用いることができる。
また、ガス供給管41および真空ポンプとしては、原料ガス等を所定の速度で供給または排出することが可能なものを適宜用いることができる。
また、ガス供給手段であるガス供給管41は、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の対向空間(放電領域;成膜ゾーン)の一方に設けることが好ましく、真空排気手段である真空ポンプ(図示せず)は、前記対向空間の他方に設けることが好ましい。このようにガス供給手段であるガス供給管41と、真空排気手段である真空ポンプを配置することにより、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の対向空間に効率良く成膜ガスを供給することができ、成膜効率を向上させることができる点で優れている。
さらに、プラズマ発生用電源42としては、適宜公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このようなプラズマ発生用電源42は、これに接続された成膜ローラー39と成膜ローラー40とに電力を供給して、これらを放電のための対向電極として利用することを可能とする。このようなプラズマ発生用電源42としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、前記一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが可能なもの(交流電源など)を利用することが好ましい。また、このようなプラズマ発生用電源42としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、印加電力を100W〜10kWとすることができ、かつ交流の周波数を50Hz〜500kHzとすることが可能なものであることがより好ましい。また、磁場発生装置43、44としては適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。
このような図1に示す製造装置31を用いて、例えば、原料ガスの種類、プラズマ発生装置の電極ドラムの電力、真空チャンバ内の圧力、成膜ローラーの直径、ならびにフィルム(基材等)の搬送速度を適宜調整することにより、ガスバリア層を形成することができる。すなわち、図1に示す製造装置31を用いて、成膜ガス(原料ガス等)を真空チャンバ内に供給しつつ、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39および40)間に放電を発生させることにより、前記成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解され、成膜ローラー39上の基材等の表面上および成膜ローラー40上の基材等の表面上に、ガスバリア層がプラズマCVD法により形成される。この際、成膜ローラー39、40のローラー軸の長さ方向に沿って対向空間(放電領域)に面したローラー表面付近にレーストラック状の磁場が形成して、磁場にプラズマを収束させる。このため、基材等が、図1中の成膜ローラー39のA地点および成膜ローラー40のB地点を通過する際に、ガスバリア層で炭素分布曲線の極大値が形成される。これに対して、基材等が、図2中の成膜ローラー39のC1およびC2地点、ならびに成膜ローラー40のC3およびC4地点を通過する際に、ガスバリア層で炭素分布曲線の極小値が形成される。このため、2つの成膜ローラーに対して、通常、5つの極値が生成する。また、ガスバリア層の極値間の距離(炭素分布曲線の有する1つの極値および該極値に隣接する極値におけるガスバリア層の膜厚方向におけるガスバリア層の表面からの距離(L)の差の絶対値)は、成膜ローラー39、40の回転速度(基材等の搬送速度)によって調節できる。なお、このような成膜に際しては、基材等が送り出しローラー32や成膜ローラー39等により、それぞれ搬送されることにより、ロールツーロール方式の連続的な成膜プロセスにより基材等の表面上にガスバリア層3が形成される。
前記ガス供給管41から対向空間に供給される成膜ガス(原料ガス等)としては、原料ガス、反応ガス、キャリアガス、放電ガスが単独または2種以上を混合して用いることができる。ガスバリア層の形成に用いる前記成膜ガス中の原料ガスとしては、形成するガスバリア層の材質に応じて適宜選択して使用することができる。このような原料ガスとしては、例えば、ケイ素を含有する有機ケイ素化合物や炭素を含有する有機化合物ガスを用いることができる。このような有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ヘキサメチルジシラン(HMDS)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサンが挙げられる。これらの有機ケイ素化合物の中でも、化合物の取り扱い性および得られるガスバリア層のガスバリア性等の特性の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。これらの有機ケイ素化合物は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても使用することができる。また、炭素を含有する有機化合物ガスとしては、例えば、メタン、エタン、エチレン、アセチレンを例示することができる。これら有機ケイ素化合物ガスや有機化合物ガスは、ガスバリア層の種類に応じて適切な原料ガスが選択される。
また、前記成膜ガスとしては、前記原料ガスの他に反応ガスを用いてもよい。このような反応ガスとしては、前記原料ガスと反応して酸化物、窒化物等の無機化合物となるガスを適宜選択して使用することができる。酸化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができる。また、窒化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、単独でもまたは2種以上を組み合わせても使用することができる。例えば酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて使用することができる。
前記成膜ガスとしては、前記原料ガスを真空チャンバ内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。さらに、前記成膜ガスとしては、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電用ガスを用いてもよい。このようなキャリアガスおよび放電用ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガス;水素を用いることができる。
このような成膜ガスが原料ガスと反応ガスを含有する場合には、原料ガスと反応ガスの比率としては、原料ガスと反応ガスとを完全に反応させるために理論上必要となる反応ガスの量の比率よりも、反応ガスの比率を過剰にし過ぎないことが好ましい。反応ガスの比率を過剰にし過ぎないことで、形成されるガスバリア層によって、優れたバリア性や耐屈曲性を得ることができる点で優れている。また、前記成膜ガスが前記有機ケイ素化合物と酸素とを含有するものである場合には、前記成膜ガス中の前記有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下であることが好ましい。
また、真空チャンバ内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができるが、0.5Pa〜50Paの範囲とすることが好ましい。
また、このようなプラズマCVD法において、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間に放電するために、プラズマ発生用電源42に接続された電極ドラム(本実施形態においては、成膜ローラー39および40に設置されている)に印加する電力は、原料ガスの種類や真空チャンバ内の圧力等に応じて適宜調整することができるものであり一概に言えるものでないが、0.1〜10kWの範囲とすることが好ましい。このような印加電力が100W以上であれば、パーティクルが発生を十分に抑制することができ、他方、10kW以下であれば、成膜時に発生する熱量を抑えることができ、成膜時の基材表面の温度が上昇するのを抑制できる。そのため基材等が熱負けすることなく、成膜時に皺が発生するのを防止できる点で優れている。
基材等の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバ内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.25〜100m/minの範囲とすることが好ましく、0.5〜20m/minの範囲とすることがより好ましい。ライン速度が0.25m/min以上であれば、基材に熱に起因する皺の発生を効果的に抑制することができる。他方、100m/min以下であれば、生産性を損なうことなく、ガスバリア層として十分な膜厚を確保することができる点で優れている。
上記したように、本実施形態のより好ましい態様としては、ガスバリア層を、図1に示す対向ロール電極を有するプラズマCVD装置(ロールツーロール方式)を用いたプラズマCVD法によって成膜するものである。これは、対向ロール電極を有するプラズマCVD装置(ロールツーロール方式)を用いて量産する場合に、可撓性(屈曲性)に優れ、機械的強度、特にロールツーロールでの搬送時の耐久性と、バリア性能とが両立するガスバリア層を効率よく製造することができるためである。このような製造装置は、太陽電池や電子部品などに使用される温度変化に対する耐久性が求められるガスバリア性フィルムを、安価でかつ容易に量産することができる点でも優れている。
<電子デバイス>
本発明の一形態によれば、電子デバイス本体と、上述のガスバリア性フィルムとを含む電子デバイスが提供される。
[電子デバイス本体]
電子デバイス本体としては、特に制限されず、ガスバリア性フィルムが適用されうる公知の電子デバイス本体が挙げられる。例えば、太陽電池(PV)、液晶表示素子(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子等が挙げられる。これらの電子デバイス本体の構成についても、特に制限はなく、公知の構成を有しうる。例えば、有機EL素子は、基板、陰電極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽電極等を有しうる。
[ガスバリア性フィルム]
上述のガスバリア性フィルムは、基材、封止用材料等に使用されうる。基材として、例えば、太陽電池に使用される場合には、ガスバリア性フィルム上にITO等の透明導電性薄膜を透明電極として設けた樹脂支持体として適用することができる。この場合、ガスバリア性フィルムは、電子デバイス本体に組み込まれている。また、封止用材料として使用される場合には、例えば、液晶表示素子を封止した電子デバイスが得られうる。本発明に係るガスバリア性フィルムは、封止用材料として、電子デバイス本体の封止に用いられることが好ましい。
<電子デバイスの製造方法>
電子デバイス本体と、ガスバリア性フィルムとを含む電子デバイスは、特に制限されず、公知の手法を適宜参照して製造されうる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」または「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」または「質量%」を表す。
<実施例1>
[基材の作製]
基材として両面に易接着加工された厚さ100μmのポリエステルフィルムであるコスモシャインA4300(東洋紡績株式会社製)を基材として用いた。
上記ポリエステルフィルムの一方の面に、UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR Z7535(JSR株式会社製)を含む塗布液を、乾燥後の膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した。得られた塗膜を、高圧水銀ランプで照射し、硬化させることでクリアハードコート層を形成した。なお、照射は、空気雰囲気下、1.0J/cmで80℃、3分間行った。
基材のもう一方の面についても、上記と同様の条件でクリアハードコート層を形成し、クリアハードコート層−基材−クリアハードコート層からなる基材を作製した。
なお、先にクリアハードコート層を形成した面を「裏面」と、後にクリアハードコート層を形成した面(裏面とは反対の面)を「表面」とする。また、以下においては、「クリアハードコート層−基材−クリアハードコート層」をまとめて単に「基材」として記載する場合がある。
[工程(1)]
第1の塗布液を基材の表面に塗布し、ポリシラザンを改質することで第1のガスバリア層を形成した。
(第1の塗布液の調製)
第1の塗布液は、パーヒドロポリシラザン溶液および酸化チタンナノ粒子分散液を混合することで調製した。
より詳細には、はじめに、20質量%のパーヒドロポリシラザン(PHPS)(アクアミカ NN120−20)のジブチルエーテル溶液、および5質量%のアミン触媒(N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン)を含む20質量%のPHPSのジブチルエーテル溶液(NAX120−20、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)を、パーヒドロポリシラザン(PHPS)濃度に対してアミン触媒の含有量が1.0質量%となるように混合することで、パーヒドロポリシラザン溶液を調製した。
次に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面改質したアモルファス酸化チタン(表面改質酸化チタン)を作製し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)に分散させることで、表面改質酸化チタン分散液を調製した。
この際、前記表面改質酸化チタンおよび表面改質酸化チタン分散液は、以下のように調製した。
すなわち、容量1Lのガラス容器に、45℃に加温した純水250mlを投入した。撹拌羽を用いて400rpmで撹拌しながら、チタンテトライソプロポキシド(株式会社高純度化学研究所製)36gを滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を行い、白色水性懸濁液を得た。得られた白色水性懸濁液に硫酸を滴下してpHを1.5に調整した。次いで、45℃に保温して、そのまま6時間撹拌を行うことで、白色水性懸濁液を溶解・分散させてアモルファス酸化チタンナノ粒子水分散液を得た。なお、濃度は灰分測定後、硫酸を用いて調整した。
次に、容量3Lのガラス容器に純水1470gを投入し、酢酸を滴下してpHを4.0に調整した。撹拌羽を用いて300rpmで撹拌しながら、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン30gを20分かけてゆっくり滴下した。滴下終了後、30分撹拌を行うことで、表面処理剤水溶液を調製した。
得られた表面処理剤水溶液を、撹拌羽を用いて300rpmで撹拌しながら、チューブポンプを用いて上記のアモルファス酸化チタンナノ粒子水分散液300gを20分かけてゆっくり滴下した。滴下終了後、60℃に昇温して6時間撹拌した。吸引濾過により固液分離を行い、回収した固形物60gに10倍量のメタノールを加えて懸濁液を得た。得られた懸濁液を1時間撹拌し、再度吸引濾過して固液分離を行い、余剰の3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを除去した。この際、得られた固形分は35gであった。得られた固形分を、ボックス型乾燥機を用いて120℃で10分間乾燥させることで、表面改質酸化チタンを調製した。なお、表面改質酸化チタンの平均粒径は4.5nmであった。また、乾燥後の質量は、28gであった。この際、表面改質酸化チタンの相同定及び結晶子径の測定は、X線回折装置X’Pert PRO MPD(PANalytical社製)を用いて行った。
最後に、表面改質酸化チタンの濃度が5質量%となるように、表面改質酸化チタンの乾燥粉をプリロピレングコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)に投入し、超音波ホモジナイザーで超音波壊砕して分散させることで、表面改質酸化チタン分散液を調製した。
パーヒドロポリシラザン溶液中のパーヒドロポリシラザンに対して、表面改質酸化チタンの濃度が1.0質量%となるように、表面改質酸化チタン分散液を混合することで、第1の塗布液を調製した。
(第1のガスバリア層の形成)
蛍光灯下(波長254nm)にて、基材の表面(クリアハードコート層上)に、乾燥後の膜厚が250nmとなるように、第1の塗布液をスピンコートにより塗布して塗膜を得た。得られた塗膜を80℃で1分間乾燥した後、真空紫外光(VUV)照射を行うことで、第1のガスバリア層を形成した。なお、乾燥後の膜厚は、TEM(透過電子顕微鏡)の断面写真により確認した。また、真空紫外線(VUV)照射は真空紫外線照射装置としてステージ可動型キセノンエキシマ照射装置MECL−M−1−200(株式会社エム・ディ・エキシマ製)を用い、ランプと試料との間隔(Gapともいう)が3mmとなるように試料を設置して、以下の条件で照射した。
照度:140mW/cm(172nm)
ステージ温度:100℃
処理環境:ドライ窒素ガス雰囲気下
処理環境の酸素濃度:0.1体積%
ステージ可動速度と搬送回数:10mm/秒で15回搬送
エキシマ光露光積算量:6500mJ/cm
この際、照射時間は、可動ステージの可動速度を適宜変更することにより調節した。また、真空紫外線照射時の酸素濃度は、照射庫内に導入する窒素ガスおよび酸素ガスの流量をフローメーターにより測定し、庫内に導入するガスの窒素ガス/酸素ガス流量比により調整した。
[工程(2)]
基材の、工程(1)で形成した第1のガスバリア層とは反対の面(基材の裏面)に、第2のガスバリア層を形成した。
(第2の塗布液の調製)
第1の塗布液を第2の塗布液として用いた。
(第2のガスバリア層の形成)
工程(1)と同様の方法で基材の裏面(ハードコート層上)に第2のガスバリア層を形成することで、第1のガスバリア層−基材−第2のガスバリア層がこの順で積層されたガスバリア性フィルムを製造した。
<実施例2>
[工程(1)]
実施例1と同様の方法で、基材の表面に第1のガスバリア層を形成した。
[工程(2)]
(第2の塗布液)
第2の塗布液として、パーヒドロポリシラザン溶液を用いた。
当該パーヒドロポリシラザン溶液は、20質量%のパーヒドロポリシラザン(PHPS)(アクアミカ NN120−20)のジブチルエーテル溶液、および5質量%のアミン触媒(N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン)を含む20質量%のPHPSのジブチルエーテル溶液(NAX120−20、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)を、パーヒドロポリシラザン(PHPS)濃度に対してアミン触媒の含有量が1.0質量%となるように混合することで調製した。
(第2のガスバリア層の形成)
上記で調製した第2の塗布液を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルムを製造した。
<実施例3>
[工程(1)]
(第1の塗布液の調製)
実施例1で調製した第1の塗布液を用いた。
(第1のガスバリア層の形成)
蛍光灯下(波長254nm)にて、基材の表面(クリアハードコート層上)に、乾燥後の膜厚が250nmとなるように、第1の塗布液をスピンコートにより塗布して塗膜を得た。得られた塗膜を80℃で1分間乾燥した後、酸素プラズマ処理を行うことで、第1のガスバリア層を形成した。なお、酸素プラズマ処理は以下の条件で行った。
プラズマ処理装置:PC−300プラズマドライクリーナー(サムコ株式会社製)
ガス:O
圧力:10Pa
基材加熱温度:室温(25℃)
投入電力密度:250W/cm
処理時間:60秒。
[工程(2)]
基材の、工程(1)で形成した第1のガスバリア層とは反対の面(基材の裏面)に、第2のガスバリア層を形成した。
(第2の塗布液の調製)
実施例2で調製した第2の塗布液を用いた。
(第2のガスバリア層の形成)
工程(1)と同様の方法で基材の裏面に第2のガスバリア層を形成することで、第1のガスバリア層−基材−第2のガスバリア層がこの順で積層されたガスバリア性フィルムを製造した。
<実施例4>
[工程(1)]
実施例1と同様の方法で、基材の表面に第1のガスバリア層を形成した。
[工程(2)]
(第2の塗布液の調製)
実施例2で調製した第2の塗布液を用いた。
(第2のガスバリア層の形成)
実施例2と同様の方法で、基材の裏面に第2のガスバリア層を形成した。
前記形成した第2のガスバリア層上に、さらに、以下の方法により、第2のガスバリア層を積層することで、2層積層された第2のガスバリア層を形成した。
具体的には、蛍光灯下(波長254nm)にて、乾燥後の膜厚が40nmとなるように、第2の塗布液をスピンコートにより塗布して塗膜を得た。得られた塗膜を80℃で1分間乾燥した後、以下の条件で真空紫外光(VUV)照射を行うことで、第2のガスバリア層を形成した。
照度:140mW/cm(172nm)
ステージ温度:100℃
処理環境:ドライ窒素ガス雰囲気下
処理環境の酸素濃度:0.1体積%
ステージ可動速度と搬送回数:10mm/秒で15回搬送
エキシマ光露光積算量:2500mJ/cm
得られたガスバリア性フィルムは、第1のガスバリア層−基材−第2のガスバリア層(2層)の構成を有する。
<実施例5>
[工程(1)]
実施例1と同様の方法で、基材の表面に第1のガスバリア層を形成した。
[工程(3)]
基材の裏面に、プラズマCVD法を用いてガスバリア層(プラズマCVD)を形成した。
具体的には、工程(1)で得られた基材および第1のガスバリア層を有するフィルムを、図1に示されるような製造装置31にセットして、搬送させた。次いで、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間に磁場を印加すると共に、成膜ローラー39と成膜ローラー40にそれぞれ電力を供給して、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間に放電してプラズマを発生させた。次いで、形成された放電領域に、成膜ガス(原料ガスとしてヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)と反応ガスとして酸素ガス(放電ガスとしても機能する)との混合ガスを供給し、基材の裏面上に、プラズマCVD法にてガスバリア層を形成した。ガスバリア層の厚膜厚は40nmであった。成膜条件は、以下の通りとした。
原料ガス(ヘキサメチルジシロキサン:HMDSO)の供給量:50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)
酸素ガス(O)の供給量:500sccm
真空チャンバー内の真空度:3Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度;0.8m/min。
[工程(2)]
(第2の塗布液の調製)
実施例2で調製した第2の塗布液を用いた。
(第2のガスバリア層の形成)
前記形成したガスバリア層(プラズマCVD)上に、さらに、以下の方法により、第2のガスバリア層を形成した。
具体的には、蛍光灯下(波長254nm)にて、乾燥後の膜厚が40nmとなるように、第2の塗布液をスピンコートにより塗布して塗膜を得た。得られた塗膜を80℃で1分間乾燥した後、以下の条件で真空紫外光(VUV)照射を行うことで、第2のガスバリア層を形成した。
照度:140mW/cm(172nm)
ステージ温度:100℃
処理環境:ドライ窒素ガス雰囲気下
処理環境の酸素濃度:0.1体積%
ステージ可動速度と搬送回数:10mm/秒で15回搬送
エキシマ光露光積算量:2500mJ/cm
得られたガスバリア性フィルムは、第1のガスバリア層−基材−ガスバリア層(プラズマCVD)−第2のガスバリア層の構成を有する。
<比較例1>
[工程(1)]
(第1の塗布液の調製)
実施例2で調製した第2の塗布液を第1の塗布液として用いた。
(第1のガスバリア層の形成)
実施例2の工程(2)と同様の方法で、基材の表面に第1のガスバリア層を形成した。
[工程(2)]
実施例2と同様の方法で、基材の裏面に第2のガスバリア層を形成した。
得られたガスバリア性フィルムは、第1のガスバリア層−基材−第2のガスバリア層の構成を有する。
<比較例2>
[工程(1)]
実施例1と同様の方法で、基材の表面にガスバリア性フィルムを形成した。
[工程(2)]
第2のガスバリア層に代えて、ポリビニルアルコールおよび表面改質酸化チタンを含む塗布液を用いて、基材の裏面にガスバリア層(PVA)を形成した。
(塗布液の調製)
塗布液は、ポリビニルアルコール溶液および酸化チタンナノ粒子分散液を混合することで調製した。
より詳細には、ポリビニルアルコール(PVA、和光純薬工業株式会社製)を、水に溶解してポリビニルアルコール溶液を調製した。
また、実施例1と同様の方法で、酸化チタンナノ粒子分散液を調製した。
ポリビニルアルコール溶液中のポリビニルアルコールに対して、表面改質酸化チタンの濃度が1.0質量%となるように、表面改質酸化チタン分散液を混合することで、塗布液を調製した。
(ガスバリア層(PVA)の形成)
基材の裏面に、乾燥後の膜厚が250nmとなるように、塗布液をスピンコートにより塗布して塗膜を得た。得られた塗膜を100℃で60分間乾燥することで、ガスバリア層(PVA)を形成した。
得られたガスバリア性フィルムは、第1のガスバリア層−基材−ガスバリア層(PVA)の構成を有する。
実施例1〜5並びに比較例1および2で製造したガスバリア性フィルムを、表1に示す。この際、実施例5のガスバリア層(プラズマCVD)、比較例2のガスバリア層(PVA)については第2のガスバリア層としてまとめて記載した。
<性能評価>
実施例1〜5並びに比較例1および2で製造したガスバリア性フィルムについて、性能評価を行った。
[バリア性の評価]
真空蒸着装置JEE−400(日本電子株式会社製)を用い、製造したガスバリア性フィルムの第1のガスバリア層の表面に、マスクを通して12mm×12mmのサイズで水分と反応して腐食する金属である金属カルシウム(粒状)を蒸着膜厚が80nmとなるように蒸着させた。その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面に水蒸気不透過性の金属である金属アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)を蒸着させて仮封止をした。次いで、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下に移した。前記仮封止した金属アルミニウム蒸着面に紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製)を介して厚さ0.2mmの石英ガラスを貼り合わせ、紫外線を照射して前記紫外線硬化樹脂を硬化させることで本封止し、バリア性評価試料を作製した。
得られたバリア性評価試料を、恒温恒湿度オーブンYamato Humidic ChamberIG47Mを用いて、85℃、85%RHの高温高湿下で保存し、100時間後の12mm×12mmの金属カルシウム蒸着面積に対する金属カルシウムの腐食面積を百分率(%)で算出し、下記の基準に従ってバリア性を評価した。
○:金属カルシウムが腐食した面積が1%未満である
△:金属カルシウムが腐食した面積が1%以上、10%未満である
×:金属カルシウムが腐食した面積が、10%以上である。
得られた結果を下記表2に示す。
[有機EL素子の発光特性の評価]
製造したガスバリア性フィルムを用いて有機EL素子を作製し、作製した有機EL素子の発光特性についての評価を行った。
(有機EL素子の作製)
第1電極層の形成
製造したガスバリア性フィルムの第1のガスバリア層上に、厚さ150nmのITO(インジウムチンオキシド)をスパッタ法により成膜した。次いで、フォトリソグラフィー法によりパターニングを行い、第1電極層を形成した。なお、パターニングは発光面積が50mm平方となるように行った。
正孔輸送層の形成
ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS:Bytron P AI 4083、Bayer社製)を純水65%およびメタノール5%で希釈した溶液を正孔輸送層形成用塗布液として準備した。
ガスバリア性フィルムの第1電極層が形成された面とは反対の面(第2のガスバリア層表面)を洗浄表面改質処理した。当該洗浄表面改質処理には低圧水銀ランプ(波長:184.9nm、照射強度15mW/cm)を使用し、ガスバリア性フィルムとの距離が10mmとなる条件で行った。なお、帯電除去処理には、微弱X線による除電器を使用した。
上記で形成した第1電極層上に、上記準備した正孔輸送層形成用塗布液を、大気中、25℃、相対湿度(RH)50%の条件で、乾燥後の厚みが50nmとなるように押出し塗布機を用いて塗布した。得られた塗膜について、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度100℃の条件で、成膜面から高さ100mmの距離で送風することにより溶媒を除去し、次いで加熱処理装置により温度150℃で裏面伝熱方式の熱処理を行い、正孔輸送層を形成した。
発光層の形成
ホスト材のH−Aを1.0gと、ドーパント材のD−Aを100mgと、ドーパント材のD−Bを0.2mgと、ドーパント材のD−Cを0.2mgと、を100gのトルエンに溶解し、白色発光層形成用塗布液として準備した。
上記で形成した正孔輸送層上に、上記で準備した白色発光層形成用塗布液を窒素ガス濃度99%以上の雰囲気下、塗布温度25℃、塗布速度1m/minの条件で、乾燥後の厚みが40nmとなるように押出し塗布機を用いて塗布した。得られた塗膜について、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度60℃の条件で、成膜面から高さ100mmの距離で送風することにより溶媒を除去し、次いで加熱処理装置により温度130℃で裏面伝熱方式の熱処理を行い、発光層を形成した。
電子輸送層の形成
下記E−Aを、0.5質量%溶液となるように2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール中に溶解し、電子輸送層形成用塗布液を準備した。
上記で形成した発光層上に、上記で準備した電子輸送層形成用塗布液を窒素ガス濃度99%以上の雰囲気下、塗布温度25℃、塗布速度1m/minの条件で、乾燥後の厚みが30nmとなるように押出し塗布機を用いて塗布した。得られた塗膜について、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度60℃の条件で、成膜面から高さ100mmの距離で送風することにより溶媒を除去し、次いで加熱処理装置により温度200℃で裏面伝熱方式の熱処理を行い、電子輸送層を形成した。
電子注入層の形成
上記で形成した電子輸送層上に、電子注入層を形成した。より詳細には、第1電極層、正孔輸送層、発光層、および電子輸送層を備えるガスバリア性フィルムを減圧チャンバーに投入し、5×10−4Paまで減圧した。減圧チャンバー内に予め準備していたタンタル製蒸着ボートのフッ化セシウムを加熱することで、厚さ3nmの電子注入層を形成した。
第2電極の形成
第1電極上に取り出し電極になる部分を除き、上記で形成した電子注入層上に第2電極を形成した。より詳細には、第1電極層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、および電子注入層を備えるガスバリア性フィルムを減圧チャンバーに投入し、5×10−4Paまで減圧した。第2電極形成材料としてアルミニウム用いて、取り出し電極を有し、かつ、発光面積が50mm×50mmとなるように蒸着法でマスクパターン成膜して、第2電極を形成した。なお、第2電極の厚さは100nmであった。
裁断
第2電極まで形成したガスバリア性フィルムを、窒素雰囲気に移動させて、紫外線レーザーを用いて規定の大きさに裁断した。
電極リード接続
裁断したガスバリア性フィルムに、異方性導電フィルムDP3232S9(ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製)を用いて、フレキシブルプリント基板(ベースフィルム:ポリイミド12.5μm、圧延銅箔18μm、カバーレイ:ポリイミド12.5μm、表面処理NiAuメッキ)を接続した。この際、温度170℃(別途熱伝対を用いて測定したACF温度140℃)、圧力2MPaで10秒間圧着を行うことで接続を行った。
封止
電極リード(フレキシブルプリント基板)を接続したガスバリア性フィルムを、市販のロールラミネート装置を用いて封止部材を接着することで、有機EL素子を作製した。より詳細には、封止部材には、30μm厚のアルミニウム箔(東洋アルミニウム株式会社製)に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(12μm厚)をドライラミネーション用の接着剤(2液反応型のウレタン系接着剤)を介してラミネートしたもの(接着剤層の厚み1.5μm)を用いた。封止部材を接着するための接着剤としては、エポキシ系接着剤であるビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)、ジシアンジアミド(DICY)、およびエポキシアダクト系硬化促進剤を含む熱硬化性接着剤を用いた。ディスペンサを使用して、アルミニウム面にアルミ箔の接着面(つや面)に沿って厚み20μmで熱硬化性接着剤を均一に塗布した。次いで、封止部材を、取り出し電極および電極リードの接合部を覆うようにして密着・配置し、圧着ロール温度120℃、圧力0.5MPa、装置速度0.3m/minの条件で圧着ロールにより密着封止した。
[有機EL素子の発光特性の評価]
素子作製直後の発光特性、および1000時間後(室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%で保存)の発光特性をそれぞれ測定し、下記の基準に従って発光特性を評価した。
◎:発光すべき領域内におけるダークスポット(DS)の面積が0.05%未満である
○:発光すべき領域内におけるDSの面積が0.05%以上1%未満である
△:発光すべき領域内におけるDSの面積が1%以上5%未満である
×:発光すべき領域内におけるDSの面積が5%以上である
××:発光すべき領域内におけるDSの面積が50%以上である
×××:発光すべき領域内におけるDSの面積が80%以上である。
得られた結果を下記表2に示す。
表2の結果からも明らかなように、本発明に係るガスバリア性フィルムは、バリア性の評価および有機EL素子の発光特性の評価結果から、ガスバリア性が高く、経時の安定性に優れることが分かる。

Claims (4)

  1. 基材と、
    前記基材の一方の面側に配置されたポリシラザン改質物を含む第1のガスバリア層と、
    前記基材のもう一方の面側に配置されたポリシラザン改質物を含む第2のガスバリア層と、を含み、
    前記第1のガスバリア層および前記第2のガスバリア層の少なくとも一方が、無機粒子を含む、ガスバリア性フィルム。
  2. 前記第1のガスバリア層および前記第2のガスバリア層のいずれか一方が、無機粒子を含む、請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
  3. 前記無機粒子が、酸化チタンおよび/または酸化亜鉛である、請求項1または2に記載のガスバリア性フィルム。
  4. 電子デバイス本体と、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムとを含む、電子デバイス。
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