JP2011164232A - 定着装置及び画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】定着ベルト21を介して加圧回転体31に圧接して記録媒体Pが搬送されるニップ部Wを形成する固定部材26と、定着ベルトの内周面に対向するように固設されて定着ベルトを加熱するパイプ状の金属部材22と、を備える。そして、加圧回転体31に対向する固定部材26の対向面における曲率が、加圧回転体31の曲率よりも小さくなるように構成され。
【選択図】図4
Description
そして、定着ベルトがヒータによって加熱された金属部材によって加熱されて、ニップ部に向けて搬送された記録媒体上のトナー像がニップ部にて熱と圧力とを受けて記録媒体上に定着されることになる。
このような問題を解決するために、ニップ部におけるニップ幅や面圧を大きく設定する方策が考えられる。しかし、その場合、定着画像の定着性は向上するものの、ニップ部から送出される記録媒体にシワが発生する不具合や、ニップ部における摩擦抵抗が増大して装置の駆動トルクが大きくなる不具合が生じてしまう可能性がある。
V/240≦X≦V/40
なる関係が成立するように構成されたものである。
X≦W×0.4
なる関係が成立するように構成されたものである。
図1〜図9にて、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
図1に示すように、本実施の形態1における画像形成装置1は、タンデム型カラープリンタである。画像形成装置本体1の上方にあるボトル収容部101には、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した4つのトナーボトル102Y、102M、102C、102Kが着脱自在(交換自在)に設置されている。
ボトル収容部101の下方には中間転写ユニット85が配設されている。その中間転写ユニット85の中間転写ベルト78に対向するように、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部4Y、4M、4C、4Kが並設されている。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、露光部3から発せられたレーザ光Lの照射位置に達して、この位置での露光走査によって各色に対応した静電潜像が形成される(露光工程である。)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、中間転写ベルト78及び第1転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上のトナー像が中間転写ベルト78上に転写される(1次転写工程である。)。このとき、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上には、僅かながら未転写トナーが残存する。
最後に、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、不図示の除電部との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の残留電位が除去される。
こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上でおこなわれる、一連の作像プロセスが終了する。
ここで、中間転写ユニット85は、中間転写ベルト78、4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79K、2次転写バックアップローラ82、クリーニングバックアップローラ83、テンションローラ84、中間転写クリーニング部80、等で構成される。中間転写ベルト78は、3つのローラ82〜84によって張架・支持されるとともに、1つのローラ82の回転駆動によって図1中の矢印方向に無端移動される。
そして、中間転写ベルト78は、矢印方向に走行して、各1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kの1次転写ニップを順次通過する。こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト78上に重ねて1次転写される。
その後、中間転写ベルト78は、中間転写クリーニング部80の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト78上の未転写トナーが回収される。
こうして、中間転写ベルト78上でおこなわれる、一連の転写プロセスが終了する。
詳しくは、給紙部12には、転写紙等の記録媒体Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ97が図1中の反時計方向に回転駆動されると、一番上の記録媒体Pがレジストローラ対98のローラ間に向けて給送される。
その後、記録媒体Pは、排紙ローラ対99のローラ間を経て、装置外へと排出される。排紙ローラ対99によって装置外に排出された被転写Pは、出力画像として、スタック部100上に順次スタックされる。
こうして、画像形成装置における、一連の画像形成プロセスが完了する。
図2〜図4に示すように、定着装置20は、定着部材としての定着ベルト21(ベルト部材)、固定部材26、金属部材22(加熱部材)、補強部材23、加熱手段としてのヒータ25(熱源)、加圧回転体としての加圧ローラ31、温度センサ40、断熱部材27、ステー部材28、等で構成される。
定着ベルト21の基材層は、層厚が30〜50μmであって、ニッケル、ステンレス等の金属材料やポリイミド等の樹脂材料で形成されている。
定着ベルト21の弾性層は、層厚が100〜300μmであって、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、フッ素ゴム、等のゴム材料で形成されている。弾性層を設けることで、ニップ部における定着ベルト21表面の微小な凹凸が形成されなくなり、記録媒体P上のトナー像Tに均一に熱が伝わりユズ肌画像の発生が抑止される。
定着ベルト21の離型層は、層厚が10〜50μmであって、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)、等の材料で形成されている。離型層を設けることで、トナーT(トナー像)に対する離型性(剥離性)が担保される。
定着ベルト21の内部(内周面側)には、固定部材26、ヒータ(加熱手段)、金属部材22、補強部材23、断熱部材27、ステー部材28、等が固設されている。また、図示は省略するが、定着ベルト21と金属部材22との間には、潤滑剤が介在(塗布)されている。
ここで、固定部材26は、定着ベルト21の内周面21aに摺接するように固定されている。そして、固定部材26が定着ベルト21を介して加圧ローラ31に圧接することで、記録媒体Pが搬送されるニップ部が形成される。図3を参照して、固定部材26は、その幅方向両端部が定着装置20の側板43に固定支持されている。なお、固定部材26の構成については、後でさらに詳しく説明する。
そして、略パイプ状に形成された金属部材22は、ヒータ25の輻射熱により加熱されて定着ベルト21を加熱する(熱を伝える。)。すなわち、金属部材22がヒータ25によって直接的に加熱されて、金属部材22を介して定着ベルト21がヒータ25によって間接的に加熱されることになる。定着ベルト21の加熱効率を良好に維持するためには、金属部材22の厚さを0.1mm以下に設定することが好ましい。
金属部材22の材料としては、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、鉄、等の金属熱伝導体(熱伝導性を有する金属である。)を用いることができるが、その中でも単位体積の熱容量比(密度×比熱である。)が比較的小さいフェライト系ステンレス鋼が好適である。本実施の形態1では、金属部材22の材料として、フェライト系ステンレス鋼であるSUS430を用いている。また、金属部材22の厚さを0.1mmに設定している。
また、金属部材22と定着ベルト21とが摺接しても定着ベルト21の磨耗が軽減されるように、定着ベルト21の内周面には、双方の部材21、22の間にはフッ素グリスやシリコーンオイル等の潤滑剤が塗布されている。そして、本実施の形態1における金属部材22の外周面には、潤滑剤の保持性を高めるために、粗面部Aが設けられているが、これについては後で詳しく説明する。
なお、本実施の形態1では、金属部材22の断面形状が略円形になるように形成したが、金属部材22の断面形状が多角形になるように形成することもできる。
また、補強部材23は、ヒータ25(加熱手段)によって直接的に加熱されにくいように形成されている。具体的に、補強部材23における、ヒータ25に対向する面の一部又は全部に、断熱部材を設けたり、鏡面処理を施したりすることもできる。これにより、ヒータ25から補強部材23に向かう熱(補強部材23を加熱する熱)が金属部材22の加熱に用いられることになるために、定着ベルト21(金属部材22)の加熱効率がさらに向上することになる。
さらには、ヒータ25によって固定部材26も直接的に加熱されにくくなり、ニップ部では積極的に定着ベルト21は加熱されないことになる。そのため、ニップ部に送入された記録媒体Pの温度がニップ部から送出されるときには低くなる。すなわち、ニップ部出口では、記録媒体P上に定着されたトナー像の温度が低くなって、トナーの粘性が低下して、定着ベルト21に対するトナー接着力が小さくなった状態で、記録媒体Pは定着ベルト21から分離される。したがって、定着工程直後の記録媒体Pが定着ベルト21に巻き付いてジャムになる不具合が防止されるとともに、定着ベルト21に対するトナー固着も抑制される。
なお、ここで述べた固定部材26及び加圧ローラ31の曲率と定着画像の定着性との関係については、後で詳しく説明する。
金属板を曲げ加工することにより形成する略パイプ状の金属部材22は、その肉厚を薄くすることができるために、ウォームアップ時間を短縮することができる。しかし、金属部材22自身の剛性は小さくなっているため、加圧ローラ31の加圧力に抗しきれずに、撓んだり、変形することがある。パイプ状の金属部材22が変形してしまうと所望のニップ幅が得られずに、定着性が低下するという問題が生じる。これに対して、本実施の形態1では、薄肉の金属部材22とは別に高剛性の固定部材26を設置してニップ部を形成しているために、そのような問題が生じるのを未然に防止することができる。
本実施の形態1では、定着ベルト21と金属部材22とがほぼ全周にわたって近接しているため、加熱待機時(プリント動作待機時)においても定着ベルト21を周方向に温度ムラなく加熱できる。したがって、プリント要求を受けた後、速やかにプリント動作をおこなうことができる。このとき、従来のオンデマンド方式の定着装置(例えば、特許第2884714号公報参照。)では、ニップ部で加熱待機時に加圧ローラを変形させたまま熱を与えてしまうと、加圧ローラのゴムの材質によっては、熱劣化を起こして加圧ローラの寿命が短くなってしまったり、加圧ローラに圧縮永久ひずみが発生してしまったりする(ゴムの圧縮永久ひずみは、ゴムの変形に加熱が加わることにより増大する。)。そして、加圧ローラに圧縮永久ひずみが発生すると、加圧ローラの一部が凹んだ状態になり、所望のニップ幅が得られないため、定着不良が発生したり、回転時に異音が生じたりする。
これに対して、本実施の形態1では、固定部材26と金属部材22との間に断熱部材27が設置されているために、加熱待機時に金属部材22の熱が固定部材26に達しにくくなる。したがって、加熱待機時に加圧ローラ31が変形した状態で高温加熱される不具合が軽減されて、上述の問題が生じるのを抑止することができる。
これに対して、本実施の形態1では、固定部材26と金属部材22との間に断熱部材27が設置されているために、金属部材22の熱がニップ部の潤滑剤に達しにくくなる。したがって、潤滑剤の高温による劣化が軽減されて、上述の問題が生じるのを抑止することができる。
略パイプ状の金属部材22は、0.1mm厚のステンレス板に曲げ加工を施して形成したものである。したがって、ステンレス板を曲げ加工によって所望のパイプ形状に加工しようとしても、そのままでは、スプリングバックによって径が大きくなる方向に開いてしまい所望のパイプ形状を形成することができない。そして、金属部材22がスプリングバックによって開いてしまうと、定着ベルト21の内周面に接触してしまい定着ベルト21を傷つけたり、定着ベルト21との接触ムラによる定着ベルト21の加熱ムラが生じたりしてしまう。本実施の形態1では、このような不具合が生じるのを抑止するために、金属部材22の開口部が形成された凹部(曲げ部)をステー部材28で固定することによって、金属部材22のスプリングバックによる変形を抑止している。具体的には、スプリングバック力に抗するように曲げ加工が施された金属部材22の形状を保持しながら、金属部材22の内周面側からステー部材28を凹部に圧入する。
上述したように、金属板を曲げ加工することにより形成する略パイプ状の金属部材22は、その肉厚を薄くすることができるために、ウォームアップ時間を短縮することができる。しかし、金属部材22自身の剛性は小さくなっているため、加圧ローラ31の加圧力が金属部材22に作用すると、その加圧力に抗しきれずに、撓んだり、変形してしまう。そして、パイプ状の金属部材22が変形してしまうと所望のニップ幅が得られずに、定着性が低下するという問題が生じてしまう。これに対して、本実施の形態1では、薄肉の金属部材22に凹部(固定部材26が挿設されている部分である。)をニップ部から離れるように設けて、加圧ローラ31の加圧力が金属部材22に直接的に作用しないように構成しているために、そのような問題が生じるのを未然に防止することができる。
装置本体1の電源スイッチが投入されると、ヒータ25に電力が供給されるとともに、加圧ローラ31の図2中の矢印方向の回転駆動が開始される。これにより、加圧ローラ31との摩擦力によって、定着ベルト21も図2中の矢印方向に従動(回転)する。
その後、給紙部12から記録媒体Pが給送されて、2次転写ローラ89の位置で、記録媒体P上に未定着のカラー画像が担持(転写)される。未定着画像T(トナー像)が担持された記録媒体Pは、不図示のガイド板に案内されながら図2の矢印Y10方向に搬送されて、圧接状態にある定着ベルト21及び加圧ローラ31のニップ部に送入される。
そして、金属部材22(ヒータ25)によって加熱された定着ベルト21による加熱と、補強部材23によって補強された固定部材26と加圧ローラ31との押圧力とによって、記録媒体Pの表面にトナー像Tが定着される。その後、ニップ部から送出された記録媒体Pは、矢印Y11方向に搬送される。
図4を参照して、本実施の形態1における定着装置20は、加圧ローラ31(加圧回転体)に対向する固定部材26の対向面における曲率が、加圧ローラの曲率よりも小さくなるように構成されている。
具体的に、本実施の形態1において、加圧ローラ31は、外径が30mmに設定されているため、その曲率は1/15となる。これに対して、加圧ローラ31に対向する固定部材26の対向面は、その凹状部がR30mmにて形成されているため、その曲率は1/30になる。
このように構成することにより、ニップ部の下流側(図4の一点鎖線で囲んだ部分である。)に、軽接触領域(弱ニップ部)が形成される。この軽接触領域は、記録媒体Pがニップ部で受ける圧力よりも弱い圧力で記録媒体Pが定着ベルト21に圧接する領域である。すなわち、ニップ部の下流側において、ニップ部から送出された記録媒体Pは、定着ベルト21に軽接触することになる。そして、このようにニップ部下流側の軽接触領域で、ニップ部で定着された記録媒体P上の定着画像がさらに補助的に定着されることにより、ニップ部におけるニップ幅Wや面圧を大きく設定したり定着温度を高く設定したりすることなく、定着画像の定着性を向上させることができる。さらには、ニップ部から送出される記録媒体にシワが発生する不具合や、ニップ部における摩擦抵抗が増大して装置の駆動トルクが大きくなる不具合を生じさせることなく、定着画像の定着性を向上させることができる。
これに対して、本実施の形態1のようにニップ部下流側に軽接触領域が形成されている場合には、ニップ部における定着工程を補完するように軽接触領域でも補助的な定着工程がおこなわれるため、ニップ部から送出される記録媒体にシワが発生する副作用や、ニップ部における摩擦抵抗が増大して装置の駆動トルクが大きくなる副作用を生じさせることなく、定着画像の定着性を向上させることができる。
なお、軽接触領域にて補助的な定着工程を終えた記録媒体Pは、定着ベルト21の変曲部(固定部材26との接触がなくなり曲率が大きく変化する部分である。)で、定着部材21から分離されて図4の矢印方向に搬送されることになる。
このように構成することにより、ニップ部下流側における軽接触領域を確実に確保することができるため、上述した定着性を向上させる効果が確実に発揮されることになる。
特に、ニップ部におけるジャム紙の除去作業性の向上や、定着ベルトや加圧ローラ31の圧縮歪みの軽減等を目的として、定着ベルト21(固定部材26)に対して加圧ローラ31を接離する接離機構を設けた場合においても、定着ベルト21に加圧ローラ31が当接した状態において、ニップ部下流側にて固定部材26と加圧ローラ31との間の距離が定着ベルト21の厚みよりも大きくなるように形成することが重要になる。
V/240≦X≦V/40
なる関係が成立するように構成することが好ましい。
図4を参照して、ニップ部下流側の軽接触領域において、定着ベルト21は、金属部材22との間に微小なギャップが形成された状態で走行しながら、記録媒体Pに対して、ニップ部に比べて低い面圧で熱量を供給する。すなわち、ニップ部から送出された記録媒体Pは、軽接触領域を通過する間に、金属部材22によって加熱された定着ベルト21に接触(又は、近接)した状態で、熱量を受けることになる。このように面圧が少なくて主として熱量を与える軽接触領域は、オーブンのように熱源を近接させた場合と同様の効果があり、ニップ部から送出された後の定着画像の定着性を向上させることになる。
しかしながら、軽圧接触領域の長さX(記録媒体Pの搬送方向に対応した長さである。)が短すぎると定着性を向上させる効果が小さくなり、軽圧接触領域の長さXが長すぎると記録媒体Pに与える熱量が過多になり定着画像にホットオフセットが生じてしまう。本願発明者は、研究を重ねた結果、これらの不具合が生じることのない最適な軽圧接触領域の長さXが、記録媒体Pの搬送速度(プロセス線速)Vや、ニップ幅Wに相関があることを知得した。
図6において、●印で示すグラフは軽接触領域の長さXが4.0mmに設定されたものであり、△印で示すグラフは軽接触領域の長さXが3.0mmに設定されたものであり、◆印で示すグラフは軽接触領域の長さXが2.0mmに設定されたものであり、□印で示すグラフは軽接触領域の長さXが1.0mmに設定されたものであり、▲印で示すグラフは軽接触領域の長さXが0.5mmに設定されたものであり、×印で示すグラフは軽接触領域の長さXが0.3mmに設定されたものである。また、図6における「光沢度」は、紙厚が70(g/m2)の記録媒体P上にトナー付着量が1.0(mg/cm2)のベタ画像を形成したときの、定着画像における9×18mmの範囲の平均値である。また、記録媒体Pの搬送速度(プロセス線速)Vは、120(mm/秒)に設定されている。
ここで、定着画像として許容されるための下限条件と上限条件との幅(定着成立幅)が広いほど定着装置の設計をおこなう際の余裕度が大きくなるが、定着温度制御リプルや記録媒体Pのニップ部突入時の温度落ち込み等を考慮すると、所定の定着成立幅(狙い値A(deg)とする。)以上が必要となる。軽接触領域の長さXが長い場合(●印で示す4.0mmの場合である。)、記録媒体Pに付与される熱量が多くなり、定着性に有利であるために定着ニップ温度の下限値が低くなるものの、ニップ部から付与される熱量が過多になるために、光沢度が急激にピーク値まで達して、ホットオフセット範囲となり、その定着成立幅A1(deg)は狙い値A(deg)よりも小さくなってしまう(狙いの定着成立幅を確保できない。)。これに対して、軽接触領域の長さXが短い場合(×印で示す0.3mmの場合である。)、記録媒体Pに付与される熱量が少なくなり、定着性に不利であるために定着ニップ温度の下限値が高くなるものの、光沢度のピーク値が軽接触領域にともなってシフトせずに、軽接触領域の長さXが0.5〜1.0mmの場合と同じ温度となるために、その定着成立幅A4(deg)は狙い値A(deg)よりも大きくなってしまう(狙いの定着成立幅を確保できない。)。一方、軽接触領域の長さXが0.5mm(▲印で示すものである。)に設定されている場合には、その定着成立幅A2(deg)は狙い値A(deg)と同等になる(狙いの定着成立幅を確保できる。)。また、軽接触領域の長さXが3.0mm(△印で示すものである。)に設定されている場合には、その定着成立幅A3(deg)は狙い値A(deg)と同等になる(狙いの定着成立幅を確保できる。)。
V/240>X
なる関係が成立するときには、軽接触領域を形成してもその効果が発揮されにくく、図5に示す定着装置と同様に、定着性の向上がほとんどないことを知得した。
また、
X>V/40
なる関係が成立するときには、軽接触領域から記録媒体Pが受ける熱量が多くなりすぎてしまい、定着ニップ温度の下限値からの光沢度の上昇カーブが急激なものになり、比較的低温でホットオフセットが発生しまうことを知得した。
このようなことから、軽接触領域の長さX(mm)と、記録媒体Pの搬送速度V(mm/秒)と、の関係は、以下の式を満足することが好ましいことになる。
V/240≦X≦V/40 …(式1)
X≦W×0.4
なる関係が成立するように構成することが好ましい。
これは、上述の(式1)が成立しても、固定部材26と定着ベルト21を介し対向する加圧ローラ31とで形成されたニップ幅により、定着性のばらつきが発生してしまうことによる。具体的に、軽接触領域の長さXが、ニップ幅W(記録媒体Pの搬送方向に対応したニップ部の長さである。)の40%より大きくなると、ニップ部の出口における定着ベルト21や記録媒体Pの挙動が不安定になる。ニップ部に対して軽接触領域が広すぎると、定着ベルト21の剛性や記録媒体Pの紙厚によって、定着ベルト21や記録媒体Pの挙動が常に一定とならずに、軽接触領域における定着ベルト21と記録媒体Pとの接触時間が一定にならない。
このようなことから、軽接触領域の長さX(mm)と、ニップ幅W(mm)と、の関係は、以下の式を満足することが好ましいことになる。
X≦W×0.4
なお、本実施の形態1では、ニップ幅Wが6.5mm程度に設定されている。
本実施の形態1では、定着ベルト21の内径と金属部材22の外径との差が0.5mm程度に設定されている。ところが、ニップ部の出口側(下流側)で、定着ベルト21の内径と金属部材22の外径との差を超える定着ベルト21の弛みが生じると、金属部材22から定着ベルト21への熱の伝達が効率よくおこなわれずに、軽接触領域による補助的な定着工程が充分におこなわれなくなってしまう。したがって、本実施の形態1では、ニップ部下流側における定着ベルト21と金属部材22とのギャップが、0.5mm以内になるように設定している。具体的には、ニップ部のニップ幅や面圧や、定着ベルト21や加圧ローラ31の材質や、プロセス線速V等を最適化することにより、上述の条件を設定している。
図7は、本実施の形態1における定着装置20(画像形成装置1)を用いて、軽接触領域の長さXを3.0mmに設定したときの、定着ニップ温度と光沢度との関係を示すグラフ(図6の△印のグラフに対応するものである。)であって、定着温度の制御温度範囲の可変制御を説明するためのグラフである。これに対して、図8は、従来の装置(軽接触領域が形成されていないものである。)における、定着ニップ温度と光沢度との関係を示すグラフである。
図7、図8のいずれも、「光沢度」は、紙厚が70(g/m2)の記録媒体P上にトナー付着量が1.0(mg/cm2)のベタ画像を形成したときの、定着画像における9×18mmの範囲の平均値である。また、記録媒体Pの搬送速度(プロセス線速)Vは、120(mm/秒)に設定されている。
これに対して、図7に示すように、本実施の形態1における定着装置20では、定着ニップ温度が光沢度のピーク値を超えると、光沢度が急激に低下することがわかる。このため、光沢度がピーク値となる定着ニップ温度より高温側において、ユズ肌画像が発生する温度範囲が非常に狭くなり、ユズ肌画像が顕在化しにくくなる。これは、上述したニップ部下流側に形成された軽接触領域による効果であって、図7に示す「ユズ肌発生範囲」よりさらに高温側では低光沢度の制御温度範囲を確保することができる。この低光沢度の制御温度範囲では、全面オフセット画像の凹凸状の表面が均一化されて、低光沢〜無光沢の均一な画像表面を形成することができる。すなわち、本実施の形態1における定着装置20では、高光沢モード(図7では、通常時の設定としている。)が選択された場合には制御温度範囲が図7の「通常画像制御温度範囲」になるようにヒータ制御がおこなわれ、低光沢モードが選択された場合には制御温度範囲が図7の「低光沢制御温度範囲」になるようにヒータ制御がおこなわれる。そのため、ユーザーは、好みの光沢度を任意に選択することができる。また、このような制御は、プロセス線速やニップ部の面圧やニップ幅をメカ的に調整することなく、定着ニップ温度の制御のみでおこなうものであるため、構成が簡易であって制御面やコスト面からも非常に有用である。
特に、本実施の形態1における定着装置20は、上述したようにウォームアップ時間が短く応答性が良いため、「通常画像制御温度範囲」と「低光沢制御温度範囲」との切り替えを短時間にスムーズにおこなうことができるため、光沢度のモード切り替えにともなう大きな「待ち時間」も発生しないことになる。さらに、従来の定着装置におけるユズ肌発生温度範囲に相当する温度範囲を利用して低光沢画像を形成することができるため、定着制御温度が高すぎることにより発生する記録媒体Pのカールも発生しないことになる。
図10にて、この発明の実施の形態2について詳細に説明する。
図10は、実施の形態2における定着装置を示す構成図であって、前記実施の形態1における図2に相当する図である。本実施の形態2における定着装置は、金属部材22が電磁誘導によって加熱される点が、前記実施の形態1のものとは相違する。
ここで、本実施の形態2における定着装置20は、加熱手段として、ヒータ25の代わりに、誘導加熱部50が設置されている。そして、本実施の形態2における金属部材22は、ヒータ25の輻射熱によって加熱される前記実施の形態1のものとは異なり、誘導加熱部50による電磁誘導によって加熱される。
定着ベルト21が図10中の矢印方向に回転駆動されると、定着ベルト21は誘導加熱部50との対向位置で加熱される。詳しくは、励磁コイルに高周波の交番電流を流すことで、金属部材22の周囲に磁力線が双方向に交互に切り替わるように形成される。このとき、金属部材22表面に渦電流が生じて、金属部材22自身の電気抵抗によってジュール熱が発生する。このジュール熱によって、金属部材22が電磁誘導加熱されて、さらに加熱された金属部材22によって定着ベルト21が加熱される。
また、本実施の形態2でも、補強部材23は、誘導加熱部50(加熱手段)によって直接的に加熱されにくいように形成されている。具体的に、補強部材23の材料として、電磁誘導加熱がされにくい金属材料を用いることになる。
このような場合にも、固定部材26の対向面の曲率が加圧ローラ31の曲率よりも小さくなるように構成することで、本実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
20 定着装置、
21 定着ベルト(定着部材)、
22 金属部材(加熱部材)、
23 補強部材、
25 ヒータ(加熱手段)、
26 固定部材、
31 加圧ローラ(加圧回転体)、
P 記録媒体、 W ニップ幅、 X 軽接触領域の長さ。
Claims (10)
- 所定方向に走行してトナー像を加熱して溶融するとともに、可撓性を有する無端状の定着ベルトと、
前記定着ベルトの内周面側に固設されて、当該定着ベルトを介して加圧回転体に圧接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する固定部材と、
前記定着ベルトの内周面に対向するように固設されて前記定着ベルトを加熱するとともに、加熱手段によって加熱されるパイプ状の金属部材と、
を備え、
前記加圧回転体に対向する前記固定部材の対向面における曲率が、前記加圧回転体の曲率よりも小さくなるように構成されたことを特徴とする定着装置。 - 前記金属部材は、前記ニップ部を除く位置で前記定着ベルトの内周面に対向するように固設され、
前記ニップ部に対して前記定着ベルトの走行方向の下流側において、前記固定部材と前記加圧回転体との間の距離が前記定着ベルトの厚みよりも大きくなるように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。 - 前記ニップ部に対して前記定着ベルトの走行方向の下流側において前記ニップ部から送出された記録媒体が前記定着ベルトに軽接触する領域の長さをX(mm)として、前記ニップ部に搬送される記録媒体の搬送速度をV(mm/秒)としたときに、
V/240≦X≦V/40
なる関係が成立するように構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置。 - 前記ニップ部におけるニップ幅をW(mm)としたときに、
X≦W×0.4
なる関係が成立するように構成されたことを特徴とする請求項3に記載の定着装置。 - 前記ニップ部に対して前記定着ベルトの走行方向の下流側において、前記定着ベルトと前記金属部材とのギャップが、前記定着ベルトの内径と前記金属部材の外径との差以内になるように構成されたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の定着装置。
- 前記定着ベルトの表面温度が制御される制御温度範囲を可変して定着画像の光沢度を調整することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の定着装置。
- 定着画像の光沢度を高くする高光沢モードが選択された場合に前記制御温度範囲が低めになるように前記定着ベルトの表面温度を制御し、定着画像の光沢度を低くする低光沢モードが選択された場合に前記制御温度範囲が高めになるように前記定着ベルトの表面温度を制御することを特徴とする請求項6に記載の定着装置。
- 前記金属部材の内周面側に固設されて前記固定部材に当接して当該固定部材を補強する補強部材をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の定着装置。
- 前記補強部材は、前記加熱手段によって加熱されないように形成されたことを特徴とする請求項8に記載の定着装置。
- 請求項1〜請求項9のいずれかに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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