JP2011004097A - 撥水性通気カバー、撥水性通気カバー付きトランスデューサー - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリイミド多孔質膜は、ビフェニルテトラカルボン酸成分及びピロメリット酸成分から選ばれる成分を含むテトラカルボン酸成分と、ベンゼンジアミン成分、ジアミノジフェニルエーテル成分及びビス(アミノフェノキシ)フェニル成分から選ばれる芳香族ジアミンを含む芳香族ジアミン化合物とから得られる芳香族ポリイミドからなる。
【選択図】なし
Description
特に本発明は、携帯電話機などの電話機、ハンズフリーヘッドセット、デジタルカメラ、ビデオレコーダなどのデジタル家電、補聴器などの医療機器、自動車の音声装置などに用いるマイクロフォン、スピーカーなどのトランスデューサーの保護カバーとして利用することができ、ポリイミド多孔膜からなる通気性及び撥水性に優れ、リフロー処理しても特性の変化がないか又は少ない撥水性通気カバー、及びこれらの撥水性通気カバーを使用したカバー付きトランスデューサーに関する。
特許文献1には、電子部品を内蔵する電子機器のケースに撥油性を有する防水性通気フィルターを具備し、該撥油性防水性通気フィルターが通気性基材に60〜90%のパーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールと10〜40モル%のテトラフルオロエチレンからなる非晶質コポリマーを含有せしめた材料からなることを特徴とする電子機器が開示されている。
特許文献2には、音声伝送性の保護カバーアセンブリであって、(a)微孔性メンブランから成っており、前記微孔性メンブランは、前記メンブランの少なくとも一部が、音響エネルギーに応答して自由に運動するように少なくとも1つの接着支持システムによって周囲で支持されており、前記アセンブリが、少なくとも1メートル水柱の瞬間水流入圧力と、300〜3000Hzの周波数域で3dB以下の総合音響伝送損失とを有していることを特徴とする、音声伝送性の保護カバーアセンブリが開示されている。
またECMやMEMSマイクロフォンなどのトランスデューサーは、リフロー対応化が進み、リフローにより直接配線基板に表面実装されるものが開発されている。しかしながら、従来の保護カバーは、ポリテトラフルオロエチレンを主成分とするものや、脂肪族ナイロン繊維の不織布、ポリエチレンテレフタレート繊維の不織布など、ガラス転移温度が200℃以下の高分子材料で構成されているために、250℃以上の熱風に晒されるプリント基板のはんだ付けにおけるリフロー工程を通すと、その特性が変化してしまい品質の安定性が損なわれるという問題がある。
本発明は、マイクロフォン、スピーカーなどのトランスデューサーに使用できる通気性、撥水性及び耐熱性に優れる保護カバーを提供することである。
本発明は、トランスデューサーの開口部(穴)に保護カバーを取り付けた状態で、リフローにより直接トランスデューサーを基板にハンダ等により実装可能な、耐熱性に優れる保護カバーを提供することである。
本発明の第二は、本発明の第一の撥水性通気カバーを保護カバーとして有するカバー付きトランスデューサーに関する。
1)撥水性通気カバーは、トランスデューサーの保護用であること。
2)撥水性通気カバーは、基板のはんだ付けにおけるリフロー方式対応であること、好ましくは基板へのはんだ付けがリフロー方式対応のトランスデューサーの保護カバー用であること。これにより、トランスデューサーの開口部(穴)に保護カバーを取り付けた状態で、リフローにより直接トランスデューサーを基板に実装可能となり、保護カバー付きトランスデューサー実装基板を得ることができる。
3)トランスデューサーは、エレクトリックコンデンサーマイクロホン(ECM)又はMEMSマイクロフォンであること、好ましくはトランスデューサーは、基板のはんだ付けにおけるリフロー方式対応のECM又は基板のはんだ付けにおけるリフロー方式対応のMEMSマイクロフォンであること。
4)撥水性通気カバーは、ガーレー値が0〜3秒/100ccの範囲、厚みが10〜50μmの範囲であること。
5)ポリイミド多孔質膜は、ガラス転移温度が240℃以上のポリイミドからなるポリイミド多孔質膜であること、好ましくはポリイミド多孔質膜のガラス転移温度が240℃以上であり、ガーレー値が0〜3秒/100ccの範囲、厚みが10〜50μmの範囲であること。
6)ポリイミド多孔質膜は、
ビフェニルテトラカルボン酸成分及びピロメリット酸成分から選ばれる成分を含むテトラカルボン酸成分と、
ベンゼンジアミン成分、ジアミノジフェニルエーテル成分及びビス(アミノフェノキシ)フェニル成分から選ばれる芳香族ジアミンを含む芳香族ジアミン化合物とから得られる芳香族ポリイミドからなるポリイミド多孔質膜であること。
7)ポリイミド多孔質膜は、ポリイミド溶液若しくはポリミック酸溶液を用いて溶媒置換誘起相分離法若しくは熱誘起相分離法により得られるポリイミド多孔膜をドライエッチング処理された多孔質膜であること。
本発明は、トランスデューサーに保護カバーを取り付けた状態で、リフロー工程により直接基板に実装することができる保護カバーを提供することができ、組立工程を簡略化できる。
本発明の撥水性通気カバーは、エレクトリックコンデンサーマイクロホン(ECM)やMEMSマイクロフォンなどのトランスデューサに設けられた音声伝達などに利用される開口部(穴)から内部に水の侵入を防止する保護カバーに使用することができる。
ハンダ等により配線基板等の実装に用いられるリフロー工程でも特性の変化しにくい耐熱性を有する撥水性通気カバーは、ガラス転移温度が240℃以上、さらに245℃以上、さらに250℃以上、さらに255℃以上、さらに260℃以上のポリイミドからなるポリイミド多孔質膜を撥水処理すること、又はガラス転移温度が240℃以上、さらに245℃以上、さらに250℃以上、さらに255℃以上、さらに260℃以上の撥水処理したポリイミド多孔質膜で得ることができる。
撥水性通気カバーの厚みは、用いる用途に応じて厚みを選択すればよく、例えばトランスデューサーなどの保護カバー用としては厚みが好ましくは10〜50μmの範囲、より好ましくは10〜40μmの範囲、さらに好ましくは10〜35μmの範囲であり、不織布を用いた保護カバーと比べ薄膜であることから、薄膜化が可能である。
ポリイミド多孔質膜の撥水処理は、撥水処理剤をそのまま、又は水溶液や有機溶剤に溶解や懸濁させた状態で、ポリイミド多孔質膜に含浸させたり、ポリイミド多孔質膜を浸漬させたり、ポリイミド多孔質膜の表面に吹き付けたり塗布したりして行うことができる。
ドライエッチングは、スパッタ、プラズマ及びコロナ放電処理から選ばれるエッチング、又はドライブラストが好ましい。
ポリイミド多孔質膜をドライエッチング処理する場合、ポリイミド多孔質体の相分離過程で気体若しくは液体と接触して得られる表面の一部若しくは全部をドライエッチング処理で除去することにより、優れた通気性のポリイミド多孔質体を得ることが出きる。
多孔質材料中での音響減衰は、その流れ抵抗、多孔度、迷路度、粘性・熱的特性長、密度、弾性率などの多孔質材料の特性因子が複雑に絡み合って起こる現象であり、一義的に論ずることは出来ないが、その中でも特に流れ抵抗が大きな支配因子である。また、保護カバーを保護対象のトランスデューサにどのように配置するか、トランスデューサの特性によって、保護膜を介した際の音響信号の減衰やその様式は異なる。
本発明における撥水性通気カバーのベース素材であるポリイミド多孔質膜は、物理的化学的な安定性に富むので、ドライエッチングの緩やかに進行させることが容易である。従って、ドライエッチング処理の条件を変更することで流れ抵抗を精密に制御することが出来るので、各々の利用形態により適切な流れ抵抗の膜を調整することにより、所望の音響減衰特性を有する撥水性通気カバーを提供することが出来る。
特にポリイミド多孔質膜は、
ビフェニルテトラカルボン酸成分及びピロメリット酸成分から選ばれる成分を含むテトラカルボン酸成分(特にテトラカルボン酸二無水物)と、
ベンゼンジアミン成分、ジアミノジフェニルエーテル成分及びビス(アミノフェノキシ)フェニル成分から選ばれる芳香族ジアミンを含む芳香族ジアミン化合物とから得られる芳香族ポリイミドからなるポリイミド多孔質膜、好ましくはガラス転移温度が240℃以上のポリイミド多孔質膜を好ましく用いることができる。
テトラカルボン酸二無水物100モル%中、ピロメリット酸二無水物及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物から選ばれる成分を50〜100モル%、さらに70〜100モル%、特に80〜100モル%含むことが好ましい。
1)1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエンなどのベンゼン核1つのべンゼンジアミン、
2)4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル成分
3)1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼンなどのビス(アミノフェノキシ)フェニル成分を挙げることができる。これらは単独でも、2種以上でも用いることもできる。
ジアミン成分100モル%中、ベンゼンジアミン成分、ジアミノジフェニルエーテル成分及びビス(アミノフェノキシ)フェニル成分から選ばれる成分を50〜100モル%、さらに70〜100モル%、特に80〜100モル%含むことが好ましい。
溶媒置換誘起法(A)としては、
ポリイミド溶液若しくはポリアミック酸溶液を流延し、流延物の片面若しくは両面に多孔質フィルムや溶媒などの溶媒置換速度調整層を設け、ポリイミド溶液若しくはポリアミック酸溶液と凝固溶媒とが直接接触を避けて、ポリマーを析出させる方法であり、ポリアミック酸の場合得られる析出物をさらに加熱してイミド化することにより、多孔質ポリイミドを得ることができる。
溶媒置換誘起法(A)により、表面に緻密層が無く、断面構造は壁状ではなく網状であり、表面には多数の孔を有し、表面の孔は他面に網目若しくは屈曲した(直線的でない)状態で連続孔として存在し、独立孔が全く若しくはほとんど存在しない多孔質体が得られる。
ポリアミック酸と、凝固を促進させる極性基を有する有機化合物と、さらに必要に応じて重合体(A)と、有機極性溶媒とを含むポリアミック酸溶液組成物をフィルム状に流延し、必要に応じて水蒸気含有の気体と接触させ、水を必須成分とする凝固溶媒に浸漬若しくは接触させて得られるポリアミック酸の多孔質膜を、その後イミド化する方法であり、通気性に優れるポリイミド多孔質体を得ることができる。
膜を膜平面方向に対して垂直に切断した断面構造は、膜の片側の表面層(a)と、その反対側の表面層(b)と、両表面層を支持する複数の支持部とを有し、両表面層は支持部により主としてラダー形状に接続され、表面層(a及び/又はb)と支持部に囲まれた膜横方向の長さ10μm以上、好ましくは10〜150μm、より好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは10〜80μmのマクロボイドを多数有し、
表面層(a)及び表面層(b)は、表面に多数の孔を有し、該孔の一部若しくは全部が表面からマクロボイド表面に非直線的に連通しており、
支持部は、表面に多数の孔を有し、該孔の一部若しくは全部が一方の表面から他方の表面に非直線的に連通している多孔体である。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリアミック酸と、極性基を有する有機化合物と、必要に応じて重合体(A)と、有機極性溶媒とを含むポリアミック酸溶液組成物をフィルム状に流延し、水を必須成分とする凝固溶媒に浸漬若しくは接触させて得られるポリアミック酸の多孔質膜を、熱処理してイミド化することにより製造方法することができる。
極性基を有する有機化合物としては、ポリアミック酸溶液組成物のフィルム状流延物への水の浸入を促進させる有機化合物である。
ポリアミック酸溶液組成物は、さらに重合体(A)を含むことにより、さらに透過性が向上し、穴の多い多孔膜を得ることができる。
ポリアミック酸溶液組成物において、ポリアミック酸と有機極性溶媒とは、ポリアミック酸を有機極性溶媒に溶解して得られるポリアミック酸溶液を用いることができる。
例えば極性基を有する有機化合物は、流延したポリアミック酸溶液を凝固浴に浸漬する工程において、極性基を有する有機化合物を含有するポリアミック酸溶液組成物からのポリアミック酸の凝固が、通常のポリアミック酸の凝固過程と比較して促進される効果が認められる物であればよく、特に凝固浴と接触する面から内部へと膜厚み方向に速やかに凝固化を促進する効果を有する物であることが好ましい。
極性基を有する有機化合物は、上記の特性上、ポリアミック酸と反応しない若しくは反応しにくい化合物であることが好ましい。
ポリアミック酸溶液組成物において、極性基を有する有機化合物の含有量は適宜選択すればよいが、極性基を有する有機化合物の含有量はポリアミック酸100質量部に対して、好ましくは0.1〜200質量部、より好ましくは1〜150質量部、さらに好ましくは10〜100質量部、特に好ましくは20〜70質量部の割合で含むことが効果に優れるために好ましい。
特に重合体(A)を含むポリアミック酸溶液組成物を用いると、支持層は膜厚み方向や横方向に連通する多数の微細な孔からなる層で形成されるためである。
・重合体(A)の特徴
(A1)水、凝固溶媒及び/又は有機極性溶媒に不溶又は難溶であること。
(A2)熱イミド化工程で分解されること。
(A3)ポリアミック酸溶液組成物中に重合体(A)が均質で懸濁していること。
さらに重合体(A)は以下の特徴を有することが好ましい。
(A4)ポリアミック酸と相溶しないこと。
本発明では、ポリアミック酸溶液組成物が上記特徴を有する重合体(A)を含むことにより、含有する効果については明確でないが、
x1)得られるポリアミック酸中に重合体(A)が非相溶物として残存し、多孔膜構造を形成後に凝固浴中に一部または全部が溶出、さらには、加熱イミド化する工程で、重合体(A)の一部又は全部が分解され、一部又は全部が除去されることにより、透過性が向上する、
又は
x2)ポリアミック酸溶液組成物の凝固を促進するなど、凝固過程に影響を与えることにより透過性が向上する、と考えられるか、若しくは両方が作用していると考えられる。
ポリアミック酸溶液組成物の重合体(A)としては、上記特徴(A1)〜(A4)の少なくとも1つの特徴、好ましくは上記特徴(A1)〜(A3)の特徴、さらに好ましくは上記(A1)〜(A4)の特徴を有する重合体であればよく、含有量も適宜選択して用いればよい。
ポリアミック酸溶液組成物において、重合体(A)の含有量は、ポリアミック酸100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは1〜30質量部、さらに好ましくは2〜20質量部、特に好ましくは3〜12質量部の割合で含むことが効果に優れるために好ましい。
ポリアミック酸溶液組成物に重合体(A)を添加する場合、重合体(A)は重合体(A)そのまま、重合体(A)の溶解溶液、重合体(A)の懸濁溶液などで添加することができる。
ポリアミック酸溶液組成物は、ポリアミック酸溶液と、ポリアミック酸溶液組成物のフィルム状流延物に水の浸入を促進させる化合物と、重合体(A)を混合して、ポリアミック酸溶液組成物を製造することができる。この場合、溶液が懸濁状になる場合があるが、十分な時間をかけて攪拌することで均質な状態を保つことが出来れば、本発明に用いることが出来る。
1)ポリアミック酸溶液組成物をドープ液として使用し、そのドープ液よりフィルム状(膜状)に流延して流延物を形成し、必要に応じて流延物の片面若しくは両面を水蒸気などを含むガス(空気、不活性ガスなど)と接触させ、その流延物を凝固溶媒に浸漬若しくは接触させて、ポリアミック酸を析出させて多孔質化を行い、必要に応じて多孔質化したポリアミック酸膜を洗浄及び/又は乾燥してポリアミック酸の多孔質膜を製造し、ポリアミック酸の多孔質膜をさらに熱イミド化処理或いは化学イミド化処理を行いイミド化して、多孔質ポリイミドを製造する方法、などを挙げることが出来る。
重合体(A)を含むポリアミック酸溶液組成物を用いる場合には、ポリアミック酸の多孔質膜をさらに重合体(A)の熱分解開始温度以上に加熱して熱イミド化処理を行いイミド化して、多孔質ポリイミドを製造することが好ましい。
ポリアミック酸溶液又はポリアミック酸溶液組成物は、ブレードやTダイなどを用いて、可動式のベルト上、若しくは連続の可動式のベルト上にフィルム状に連続的に流延して、連続的に個片若しくは長尺状の多孔膜を製造することができる。ベルトは、ポリアミック酸溶液組成物及び凝固溶液に影響を受けないものであればよく、ステンレスなどの金属製、テフロンなどの樹脂製を用いることができる。また、Tダイからフィルム状に成形したポリアミック酸溶液組成物をそのまま凝固浴に投入することも出来る。
重合体(A)の熱分解開始温度はTGA(空気中、10℃/分)の条件で測定することができる。
ポリアミック酸溶液組成物中に含まれるポリアミック酸の濃度は本発明の目的を達成する濃度であればよく、例えばポリアミック酸と有機極性溶媒との合計100質量%中、ポリアミック酸は0.3〜60質量%、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜15質量%、さらに好ましくは5〜10質量%の割合で溶解してポリアミック酸溶液に調製される。ポリアミック酸の割合が0.3質量%より小さいと多孔質膜を作製した際のフィルム強度が低下するので適当でなく、60質量%より大きいと多孔質膜の透過性が低下するため、上記範囲の割合が好適である。また、ポリアミック酸溶液組成物の溶液粘度は、流延可能な粘度であれば適宜選択して用いればよく、例えば10〜10000ポイズ、好ましくは100〜3000ポイズ、より好ましくは200〜2000ポイズ、さらに好ましくは300〜1000ポイズである。溶液粘度が10ポイズより小さいと多孔質膜を作製した際のフィルム強度が低下するので適当でなく、10000ポイズより大きいとフィルム状に流延することが困難となるので、上記範囲が好適である。
凝固溶媒としては、凝固溶媒100質量%中に好ましくは水質量が5〜100%、より好ましくは20〜100質量%、さらに好ましくは30〜95質量%、特に好ましくは45〜90質量%含むことが好ましく、
さらに好ましくは凝固溶媒は、100質量%中に好ましくは水5〜100質量%と有機極性溶媒95〜0質量%、より好ましくは水20〜100質量%と有機極性溶媒80〜0質量%、さらに好ましくは30〜95質量%と有機極性溶媒70〜5質量%、特に好ましくは45〜90質量%と有機極性溶媒55〜10質量%を含むことが好ましい。
凝固溶媒は、水、有機極性溶媒の他に、ポリアミック酸の貧溶媒であるエタノール、メタノール等のアルコ−ル類、アセトンなどを含むことができる。
凝固溶媒の温度は、目的に応じて適宜選択して用いてばよく、例えば−30〜70℃、好ましくは0〜60℃、さらに好ましくは10〜50℃の範囲で行うことが好ましい。
懸濁したポリイミド溶液から可溶溶媒と不溶溶媒とを除去する方法であり、懸濁したポリイミド溶液から可溶溶媒と不溶溶媒とを除去することが、懸濁したポリイミド溶液を、該ポリイミドの別の不溶溶媒と接触させて除去してもよい。
上記熱誘起法において、ポリイミドの代わりにポリアミック酸を用いることができ、最終的に加熱してイミド化することにより多孔質体を得ることができる。
b1)溶媒可溶なポリイミドを合成する、
b2)ポリイミドの不溶溶媒を見つける、
b3)ポリイミドを可溶溶媒に溶解し、ポリイミド溶液を作る、
b4)ポリイミド溶液に不溶溶媒を配合後、加温して均一で透明な溶液になり、その後冷却してポリイミド溶液中にポリイミドが塊や粉体状に析出することなく、均一に懸濁溶液になる不溶溶媒を調べる、必要なら濁点量を測定する[ポリイミドが塊や粉体状に沈殿しないように、溶液の加熱温度、溶液の冷却速度、不溶溶媒の配合量、ポリマーの重合度や濃度を変更する]
b5)上記b4)の結果、ポリイミドと可溶溶媒と不溶溶媒とを含むポリイミド溶液を加温して、均一で透明なポリイミド溶液を得る、必要なら透明溶液の状態で、支持体に流延したり成形型などを用いて形状を整える、
b6)上記b5)の透明なポリイミド溶液を冷却して、ポリイミド溶液中にポリイミドが塊や粉体状に析出することなく、均一に懸濁溶液にする、必要なら懸濁溶液のまま放置する、必要なら湿度の低い環境下で冷却する、
b7)上記b6)の懸濁溶液から可溶溶媒と不溶溶媒とを除去する、必要に応じてさらに乾燥や加熱を行う、
ことによりポリイミド多孔質体を製造することができる。
本発明の撥水性通気カバーをトランスデューサーに取り付ける方法として、
1)トランスデューサーに直接取り付ける、
2)トランスデューサーに接着剤を介して取り付ける、
などを挙げることができる。
本発明の撥水性通気カバーは、カバーに接着剤層をはり付けたり、カバーより硬い支持体を取り付けて使用することができる。
〔1:溶液粘度〕
溶液粘度の測定は、E型回転粘度計で行った。以下に測定手順を示す。
(i)参考例で作製したポリアミック酸溶液を密閉容器に入れ、30℃の恒温槽に10時間保持した。
(ii)E型粘度計(東京計器製:高粘度用(EHD型)円錐平板型回転式,コーンローター:1°34’)を用い、(i)で準備したポリアミック酸溶液を測定溶液として、温度30±0.1℃の条件で測定した。3回測定を行い、平均値を採用した。測定点に5%以上のばらつきがあった場合は、さらに2回の測定を行い5点の平均値を採用した。
〔2:膜厚み〕
接触式の膜厚み計により、9箇所で測定を行い、平均値を膜厚みとした。
所定の大きさに切取った多孔質フィルムの膜厚及び質量を測定し、目付質量から空孔率を次の式(1)によって求めた。式(1)のSは多孔質フィルムの面積、dは膜厚、wは測定した質量、Dはポリイミドの密度を意味し、ポリイミドの密度は1.34g/cm3を用いて算出した。
ガーレー値(秒/100cc)をJIS・P8117に準拠して測定を行った。測定は膜の異なる箇所で5回以上行い、平均値を算出し小数点以下は四捨五入してガーレー値とした。
〔5:表面の平均孔径〕
多孔質フィルム表面の走査型電子顕微鏡写真より、200点以上の開孔部について孔面積を測定し、該孔面積の平均値から式(2)に従って孔形状が真円であるとした際の平均直径を計算より求めた。式(2)のSaは孔面積の平均値を意味する。
多孔質フィルム表面の走査型電子顕微鏡写真より、200点以上の開孔部について孔面積を測定し、該孔面積から孔形状が真円であるとした際の直径を計算し、その最大値を最大孔径とした。
〔7:表面開口率〕
多孔質フィルム表面の走査型電子顕微鏡写真の5視野より、開孔部の孔面積の総計を測定し、以下の式から表面開口率を求めた。
固体粘弾性アナライザーを用いて、引張モード、周波数10Hz、ひずみ2%、窒素ガス雰囲気、の条件で動的粘弾性測定を行い、その温度分散プロファイルにおいて損失正接が極大値を示す温度をガラス転移温度とした。
〔9:接触角〕
液適法により、水による接触角を計測した。3回測定を行い平均値を接触角とした。
〔10:透水圧〕
垂直に固定したSUS304製の内径20mmφ、外径26mmφの管の下部に膜試料をセットできる治具を備え付けた。このSUS管の下部に測定試料を固定し、上部から定量ポンプで8ml/分の速度で純水を滴下した。膜の下部から観察して、膜の下面に水滴が出現した時間を記録し、その時の水面高さを算出した。この測定を5回繰り返し、平均の水面高さを求め、次式(4)により透水圧を求めた。
積水化学製のAP−T02−L300常圧プラズマ処理装置(平行電極、ダイレクト型)を用いて、以下の条件でプラズマ処理を行った。
プラズマ放出電極/処理対象フィルム間ギャップ:1mm
出力:160V、4.1A、30kHz
ガス:擬似空気混合ガス(窒素:22.5L/分,酸素:0.65L/分、25℃)
(ポリイミド多孔質膜Aの製造)
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶媒に用いて酸無水物として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)を、ジアミンとして1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン(TPE−Q)をモル比が概略1、ポリマー濃度が6質量%になる量を測り取って投入した。その後、撹拌羽、窒素導入管、排気管を取り付けたセパラブルカバーで蓋をし、撹拌を開始した。23時間後、安息香酸(以下、BAと略す)をポリアミック酸100質量部に対して30質量部の量を、3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸をポリアミック酸100質量部に対して1質量部の量をそれぞれフラスコ内に添加し、攪拌操作を継続した。さらに25時間後、ポリ酢酸ビニル50質量%含有酢酸エチル溶液をポリアミック酸100質量部に対して10質量部の量(ポリアミック酸100質量部に対して、ポリ酢酸ビニル(以下、PVACと略す)5質量部に相当)をフラスコ内に添加して攪拌操作を継続した。38時間後に攪拌を終了し、フラスコ内のドープを加圧ろ過器(濾紙:アドバンテック東洋(株)製:粘調液用濾紙NO.60)でろ過して、ポリアミック酸溶液組成物Aを得た。溶液は粘調な懸濁液体で、粘度は540ポイズ(25℃)であった。
室温下卓上の自動コーターを用いて、表面に鏡面研磨を施したステンレス製の20cm角の基板上に、ポリアミック酸溶液組成物Aを厚さ約120μmで、均一に流延塗布した。その後、90秒間、温度23℃、湿度40%の大気中に放置し、その後、凝固浴(水80質量部/NMP20質量部、室温)中に基板全体を投入した。投入後、8分間静置し、基板上にポリアミック酸膜を析出させた。その後、基板を浴中から取りだし、基板上に析出したポリアミック酸膜を剥離した後に、純水中に3分間浸漬し、ポリアミック酸膜を得た。このポリアミック酸膜を温度23℃、湿度40%の大気中で乾燥させた後、10cm角のピンテンタ−に張りつけて電気炉内にセットした。約10℃/分の昇温速度で340℃まで加熱し、そのまま10分間保持する温度プロファイルで熱処理を行い、ポリイミド多孔質膜Aを得た。
得られたポリイミド多孔質膜Aは、膜厚みが26μm、空孔率が76%、ガーレー値が34秒/100ccであった。ポリイミド多孔質膜Aのガラス転移温度は、約270℃であった。
ポリイミド多孔質膜Aの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、膜横方向の長さ10μm以上のマクロボイドが多数確認でき、横方向の長さ5μm以上のボイド中、膜横方向の長さ10μm以上のマクロボイドを多数有し、その断面積が総断面積の70%以上であることを確認した。また、ポリイミド多孔質膜Aの表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、凝固溶媒と直接接触した面は、非常に細かい孔が多数存在している多孔質構造であることを確認した。表面の平均孔径は、0.05μm以下で最大孔径は0.3μm、表面開口率は3%であった。基板側の表面にはやや大きめな孔が多数存在することが分かった。表面の平均孔径は0.11μmであり、最大孔径が4.2μm、表面開口率は32%であった。
ポリイミド多孔質膜Aの常圧プラズマ処理を以下の条件で行った。
1)凝固溶媒と直接接触した面:トータル処理時間60秒
ドライエッチング処理したポリイミド多孔質膜Bは、膜厚みが23μm、空孔率が79%、ガーレー値が1秒/100cc以下であった。ポリイミド多孔質膜のガラス転移温度は、約270℃で変化はなかった。
ポリイミド多孔質膜Bの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、マクロボイドが多数存在する構造に変化は無かった。また、ポリイミド多孔質膜Bの表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、凝固溶媒と直接接触した面は、全面に孔が多数存在する多孔質構造であることを確認した。表面の平均孔径は、0.12μmで最大孔径は1.1μm、表面開口率は44%であった。基板側は直接プラズマ処理を施した面ではないが、処理前と比べて開口度と孔径が大きくなっていることが見て取れた。表面の平均孔径は0.25μmであり、最大孔径が4.4μm、表面開口率は41%であった。また、接触角はプラズマ処理面が21度、反対の面が27度であった。透水圧を測定したところ、すぐに水が染み出したことから、値を求めることは出来なかった。
撥水剤(ノベックEGC−1700 2wt%溶液[住友3M社製])を希釈剤(ノベックHFE−7100[住友3M社製])により約50倍に希釈した処理溶液を調整した。この処理溶液中にポリイミド多孔質膜Bを20秒間浸漬した後に引き上げた。この膜をテフロンガラスクロスで挟み、熱風炉で窒素流量5L/分、 室温〜260℃までを10℃/分の昇温速度で加熱、260℃到達後30分間保持の熱処理を施した。
得られた撥水処理したポリイミド多孔質膜は、膜厚みが23μm、空孔率が78%、ガーレー値が1秒/100cc以下、ガラス転移温度は約270℃であり、撥水処理の前後で変化は認められなかった。また、撥水処理したポリイミド多孔質膜の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、マクロボイドが多数存在する構造に変化は無かった。撥水処理したポリイミド多孔質膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、凝固溶媒と直接接触した面は、全面に孔が多数存在する多孔質構造で表面の平均孔径は、0.12μmで最大孔径は1.2μm、表面開口率は45%で有意性のある変化は認められなかった。基板側は平均孔径は0.26μmであり、最大孔径が4.3μm、表面開口率は41%で有意性のある変化は認められなかった。また、接触角はプラズマ処理面が113度、反対面は119度であった。透水圧は、8600Paであった。
撥水処理したポリイミド多孔質膜をリフローによる影響を、JEDEC・J−STD−20Cに準拠した温度プロファイル条件(大気中、260℃30秒間)を5回繰り返して行った。
熱処理後の撥水処理したポリイミド多孔質膜は、膜厚みが23μm、空孔率が78%、ガーレー値が1秒/100cc以下、ガラス転移温度は約270℃であり、熱処理の前後で変化は認められなかった。また、撥水処理したポリイミド多孔質膜の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、マクロボイドが多数存在する構造に変化は無かった。膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、凝固溶媒と直接接触した面は、全面に孔が多数存在する多孔質構造で表面の平均孔径は、0.12μmで最大孔径は1.3μm、表面開口率は46%で有意性のある変化は認められなかった。基板側は平均孔径は0.27μmであり、最大孔径が4.3μm、表面開口率は41%で有意性のある変化は認められなかった。また、接触角はプラズマ処理面が110度、反対面は120度であった。透水圧は8700Paであった。
実施例1で得たポリイミド多孔質膜Aを用いて、実施例1と同様にドライエッチング処理[常圧プラズマ・片面処理])の時間を変えて、ドライエッチング処理したポリイミド多孔質膜を得た。これらを実施例1と同様に撥水処理を行い、ガーレー値を測定し結果を表1に示す。
Claims (13)
- ポリイミド多孔質膜を撥水処理した撥水性通気カバー。
- 撥水性通気カバーは、トランスデューサーの保護用であることを特徴とする請求項1に記載の撥水性通気カバー。
- 撥水性通気カバーは、基板のはんだ付けにおけるリフロー方式対応であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撥水性通気カバー。
- 撥水性通気カバーは、基板のはんだ付けにおけるリフロー方式対応のトランスデューサーの保護カバー用であることを特徴とする請求項1に記載の撥水性通気カバー。
- トランスデューサーは、エレクトリックコンデンサーマイクロホン(ECM)又はMEMSマイクロフォンであることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の撥水性通気カバー。
- 撥水性通気カバーは、ガーレー値が0〜3秒/100ccの範囲、厚みが10〜50μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の撥水性通気カバー。
- ポリイミド多孔質膜は、ガラス転移温度が240℃以上のポリイミドからなるポリイミド多孔質膜であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の撥水性通気カバー。
- 撥水性通気カバーは、ポリイミド多孔質膜のガラス転移温度が240℃以上であり、ガーレー値が0〜3秒の範囲、厚みが10〜50μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の撥水性通気カバー。
- ポリイミド多孔質膜は、
ビフェニルテトラカルボン酸成分及びピロメリット酸成分から選ばれる成分を含むテトラカルボン酸成分と、
ベンゼンジアミン成分、ジアミノジフェニルエーテル成分及びビス(アミノフェノキシ)フェニル成分から選ばれる芳香族ジアミンを含む芳香族ジアミン化合物とから得られる芳香族ポリイミドからなるポリイミド多孔質膜であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の撥水性通気カバー。 - ポリイミド多孔質膜は、ポリイミド溶液若しくはポリミック酸溶液を用いて溶媒置換誘起相分離法若しくは熱誘起相分離法により得られるポリイミド多孔膜をドライエッチング処理された多孔質膜であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の撥水性通気カバー。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の撥水性通気カバーを保護カバーとして有するカバー付きトランスデューサー。
- トランスデューサーは、基板のはんだ付けにおけるリフロー方式対応であることを特徴とする請求項11の記載のカバー付きトランスデューサー。
- トランスデューサーは、基板のはんだ付けにおけるリフロー方式対応のECM又は基板のはんだ付けにおけるリフロー方式対応のMEMSマイクロフォンであることを特徴とする請求項11の記載のカバー付きトランスデューサー。
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