JP2013138416A - スピーカユニット - Google Patents

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Nobuo Oya
修生 大矢
Akira Yasunaga
亮 安永
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Abstract

【課題】防水・防塵効果を有し、所望の音圧の周波数特性を有するスピーカユニットを提供する。
【解決手段】スピーカ本体101と、これを収容するスピーカ筐体102と、前記スピーカ筐体102の前面開口部104を被覆する通気性を有する多孔質フィルム117とを備えた、スピーカユニット。
【選択図】図1

Description

本発明は、スピーカユニットまたはレシーバユニットに関する。本発明のスピーカユニットまたはレシーバユニットは、液体や粉塵などの異物が侵入することを防ぐ防水・防塵構造を有し、また、スピーカ本体の音圧特性を変化させることもできる。
スピーカやマイクロフォンのように気体を媒介として音波を授受することで機能するデバイスは、必然的に大気に対して開放された形態を取る。従って、使用環境において液体や粉塵がデバイスに直接接触し、トラブルが生じるという問題がある。特に、近年携帯電話などの小型電子機器に搭載されるコンデンサマイクロフォンやMEMSマイクロフォン、小型スピーカ・レシーバなどは、精密な電子デバイスであるにも関わらず音孔や開放口を有するために、使用環境は元より、携帯電話などのデバイスに搭載する工場プロセスにおける歩留まりを低下させる要因の一つにもなっている。
このような問題に対して、従来から様々な防水・防塵構造が提案されている。例えば、デバイスの開口部を覆うように不織布を配置し、必要に応じて撥水剤をスプレーコーティングする技術が知られている(特許文献1)。しかし、撥水剤の効果の持続性は使用環境によりバラつきがあり、また、不織布の目の粗さでは細かな粉塵の侵入を完全に防ぐことは困難であった。
別の方法として、通気性のない薄膜状の無孔フィルムを音孔や開口部に貼り付けることも提案されている(特許文献2)。この場合、無孔フィルムを開口部等にそのまま貼付すると、フィルムが共振周波数を持って振動してしまい、対象音の音波の特性(周波数特性)を変えて伝達してしまうという問題がある。この問題を回避するため、特許文献2には、フィルムをたるませて貼る、または、フィルムにエンボス加工を施し凹凸を設けることが記載されている。しかし、工業プロセス上、たるみを規格化して同じようにフィルムを貼ることは容易ではない。また、フィルムの凹凸を最適に設計すること、周波数特性に影響を与えないレベルの精度でエンボス加工を施したフィルムの凹凸を維持してフィルムをデバイスに貼り付けることは容易ではない。したがって、これらの方法によると、プロセスが煩雑化し、収率低下や製造原価がかさむ等の問題が生じる。
また、無孔フィルムを用いると、空間が密閉され、温度変化などにより空間の圧力が変化してしまうという問題もある。この問題を回避するため、特許文献2には、別途通気孔を設けることが記載されているが、この通気孔から液体や塵芥が浸入する危険性があり、また通気孔を空けることによる音響への影響を考慮しなければならないなど、工業的には煩雑な工程を増やすことになり好ましくない。
一方、スピーカ本体やレシーバ本体の周辺の空間配置により、その音圧特性は大きく変化することが知られている。その大きさに比較的自由度がある場合には、その空間配置や構造を最適化することで所望の音圧特性を得ることが出来る。しかしながら、携帯電話や携帯ゲーム機などの小型電子機器のサイズでは、スピーカを収容する容積が極めて限られることから、必ずしも所望の周波数応答性を実現することが出来ない。また、ハウジングと人間の耳との間に擬似的な密封空間があることが前提で使用されるレシーバの場合も、適切な周波数応答性を実現することは困難である。
上記問題に対して、スピーカやレシーバのハウジングや周辺のキャビティを工夫する様々な解決手段が提案されている(特許文献3、4)。しかしながら、これらの解決手段はいずれもキャビティなどの空間配置を工夫することによるため、狭い空間では限界がある。特に、近年の携帯電話の薄型化に伴い、ますます空間配置の設計自由度が狭まっていることから、該手段を用いることは限界がある。
特開昭61−74498号公報 特開2010−11340号公報 特開2000−49920号公報 特開2004−129192号公報
本発明は、上記問題点を解決することを目的とする。すなわち、防水・防塵効果を有するスピーカユニットであって、従来より容易に共振や音圧に関する問題を解決し、所望の音圧の周波数特性を有するスピーカユニットを提供することを目的とする。
本発明は、以下の事項に関する。
1. スピーカ本体と、
これを収容するスピーカ筐体と、
前記スピーカ筐体の前面開口部を被覆する通気性を有する多孔質フィルムとを備えた、スピーカユニット。
2. 前記スピーカ筐体の前面開口部が通気性を有する多孔質フィルムにより被覆されてキャビティが形成された、上記1に記載のスピーカユニット。
3. 通気性を有する多孔質フィルムの耐水圧が2kPa以上である、上記1または2に記載のスピーカユニット。
4. 通気性を有する多孔質フィルムの最大貫通孔の大きさが0.3mmφ以下であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のスピーカユニット。
5. スピーカ本体の音圧特性を変化させることができる、上記1〜4のいずれかに記載のスピーカユニット。
6. 通気性を有する多孔質フィルムでスピーカ筐体の前面開口部を被覆する前と比べて200Hzの音圧特性を6dB以上高めることができる、上記1〜5のいずれかに記載のスピーカユニット。
7. 通気性を有する多孔質フィルムでスピーカ筐体の前面開口部を被覆する前と比べて8000Hzの音圧特性を6dB以上低減することができる、上記1〜6のいずれかに記載のスピーカユニット。
8. 通気性を有する多孔質フィルムの寸法変化率が200℃、2時間で1%以内である、上記1〜7のいずれかに記載のスピーカユニット。
9. 通気性を有する多孔質フィルムが、ポリイミドを主成分とする、上記1〜8のいずれかに記載のスピーカユニット。
10 通気性を有する多孔質フィルムが、
2つの表面層(a)及び(b)と、当該表面層(a)及び(b)の間に挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造のポリイミド多孔質フィルムであって、
前記マクロボイド層は、前記表面層(a)及び(b)に結合した隔壁と、当該隔壁並びに前記表面層(a)及び(b)に囲まれた、膜平面方向の平均孔径が10〜500μmである複数のマクロボイドとを有し、
前記マクロボイド層の隔壁は、厚さが0.1〜50μmであり、平均孔径0.01〜50μmの複数の細孔を有し、前記表面層(a)及び(b)はそれぞれ、厚さが0.1〜50μmであり、少なくとも一方の表面層が平均孔径0.01〜200μmの複数の細孔を有し、前記のマクロボイド層の隔壁並びに前記表面層(a)及び(b)における細孔同士が連通し更に前記マクロボイドに連通しており、
総膜厚が5〜500μmであり、空孔率が60〜95%である、上記1〜9のいずれかに記載のスピーカユニット。
本発明のスピーカユニットは、通気性を有する多孔質フィルムによりスピーカ筐体の前面開口部が被覆されている。ここで、本発明において「被覆」とは、スピーカ筐体の前面開口部の周縁にフィルムの周縁部が固定され、スピーカ筐体の前面開口部の周縁から液体や粉塵が進入しないように隙間なく固定されていることをいう。これにより、外部からスピーカ筐体内部への液体や粉塵の進入を防ぐことができる。また、本発明に用いる多孔質フィルムは、その製造に用いる原料や製造方法を適宜選択することにより、空孔率、膜厚、表面の平均孔径、最大孔径、貫通孔径等を適宜調整することができる。したがって、多孔質フィルムの特性を適宜選択することにより、スピーカユニットにおける所望の音響空間を実現でき、設計の自由度が高い。特に、本発明のスピーカユニットは、狭い空間で空間配置の自由度が低い場合であっても、所望の音圧の周波数特性となるように設計しやすい。
本発明のスピーカユニットの一例を示す。 実施例における測定方法を示す。 実施例1における測定結果を示す。 実施例2における測定結果を示す。 実施例4における測定結果を示す。 比較例1における測定結果を示す。 比較例2における測定結果を示す。 比較例3における測定結果を示す。 比較例4における測定結果を示す。 比較例7における測定結果を示す。 比較例8における測定結果を示す。
以下、本発明について詳細に説明する。本発明のスピーカユニットは、少なくとも、スピーカ本体と、前面開口部(音孔)を有するスピーカ筐体と、スピーカ筐体の前面開口部を被覆する多孔質フィルムとを備える。図1は本発明のスピーカユニットの一例を示したものであり、図1(a)はスピーカユニットを正面から見た外観図、図1(b)はスピーカユニットの開口部を多孔質フィルムで被覆した時の断面図である。スピーカユニットは、スピーカ本体101と、そのスピーカ本体101を収容したスピーカ筐体102とを備え、スピーカ本体101とスピーカ筐体102とはボルト105で固定されている。スピーカ筐体102の前面は開口部104を備え、開口部104の周囲に接着剤付着面103を備える。多孔質フィルム117は接着剤付着面103に付着した接着剤116(例えば両面テープでもよい)により固定され開口部104を隙間なく被覆する。多孔質フィルムの固定方法は、特に限定されず、枠止めであってもよい。スピーカ筐体102の開口部104に多孔質フィルム117が被覆されたことにより、スピーカ筐体内にキャビティ112が形成されている。
本発明のスピーカユニットにおいて、多孔質フィルムのスピーカ筐体の前面開口部への貼付の態様は、通常の貼付であっても、たるませた貼付であってもよいが、製品ごとの性能のばらつきをより小さくするためには、通常の貼付であることが好ましい。ここで、本発明において「通常の貼付」とは、フィルムにたるみや凹凸を形成させないそのままの状態での貼付、またはフィルムの外周に向かって伸張力(テンション)をかけた状態での貼付のことをいう。一般に、無孔フィルムの通常の貼付を行った場合は、上記のように共振による問題があるが、本発明は多孔質フィルムを用いることにより、通常の貼付であっても共振による不自然な音の特性変化を生じることなく音波の振動を伝達することができる。
また、上述のとおり、本発明のスピーカユニットは、多孔質フィルムが取り付けられることにより、スピーカ本体と筐体開口部との間にキャビティが形成される。これにより、多孔質フィルムは、音響空間を構成する壁としても機能し、例えばヘルムホルツ共鳴のような共鳴現象を利用してスピーカ本体の音圧特性を積極的に変化させることもできる。具体的には、本発明のスピーカユニットは、多孔質フィルムでスピーカ筐体の前面開口部を被覆する前と比べて、例えば、200Hzの音圧特性を好ましくは6dB以上高めることができ、また、8000Hzの音圧特性を好ましくは6dB以上低減することができる。
本発明のスピーカユニットに用いる多孔質フィルムは、特に限定はされないが、例えば、以下の特性を有することが好ましい。
多孔質フィルムの耐水圧は、2kPa以上であることが好ましく、3kPa以上であることがより好ましい。耐水圧とは、フィルムが水の浸透を食い止めることが出来る水圧のことである。耐水圧が該範囲内であると、日常的には十分な防水効果が得られる。また、多孔質フィルムの最大貫通孔の大きさは、0.3mmφ以下であることが好ましく、0.2mmφ以下であることがより好ましい。最大貫通孔の大きさが該範囲内であると、十分な防塵効果が得られる。ここで貫通孔の大きさとは、フィルムの一方の面から他方の面までに通じる貫通パスにおける最小の径を意味する。すなわち、円柱状の貫通孔がフィルム面に垂直にある場合は円柱の直径が貫通孔の大きさとなり、貫通パスの直径が変化する場合は最小の直径の箇所が物質が通る際のボトルネックとなるので、この最小の径を貫通孔の大きさと定義する。
本発明の多孔質フィルムの膜厚は2.5〜500μmであり、力学強度の観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは20μm以上であり、好ましくは300μm以下、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは50μm以下、特に好ましくは40μm以下である。
また、本発明の多孔質フィルムの空孔率は30〜95%であり、物質透過性、力学強度、及び膜の構造保持性の観点から、好ましくは35〜92%、さらに好ましくは40〜85%の範囲である。
また、本発明の多孔質フィルムのガーレー値(0.879g/mmの圧力下で100ccの空気が膜を透過するのに要する秒数)は、好ましくは800秒以下、より好ましくは300秒以下、更に好ましくは100秒以下であり、特に好ましくは60秒以下であり、下限値は特に限定されないが、0秒より大きく、好ましくは0.01秒以上である。ガーレー値は、JIS P8117に準拠して測定することができる。本発明に用いる多孔質フィルムは、通気性が非常に大きくてもよい。
本発明に用いる多孔質フィルムは、250℃、15分、0.5MPaの圧縮応力負荷後の膜厚み変化率が、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、更に好ましくは0〜1%である。また、ASTM D1204に準拠した200℃、2時間での膜平面方向における寸法安定性が、好ましくは±1%以内、より好ましくは±0.8%以内、更に好ましくは±0.5%以内である。
また、本発明に用いる多孔質フィルムは、耐熱性、高温下での寸法安定性の観点から、ガラス転移温度が、240℃以上であるか、又は300℃以上で明確な転移点がないことが好ましい。
また、本発明に用いる多孔質フィルムの構造は、例えば、複数の細孔を有する2つの表面層と、当該2つの表面層の間に挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造(特開2011−219585号公報、特開2011−219586号公報等参照)であってもよいし、フィルム全体が微細な貫通孔を複数有する、均質な単層構造であってもよい。
例えば、本発明に用いる多孔質フィルムは、2つの表面層(a)及び(b)と、当該表面層(a)及び(b)の間に挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造のポリイミド多孔質フィルムであって、前記マクロボイド層は、前記表面層(a)及び(b)に結合した隔壁と、当該隔壁並びに前記表面層(a)及び(b)に囲まれた、膜平面方向の平均孔径が10〜500μmである複数のマクロボイドとを有し、前記マクロボイド層の隔壁は、厚さが0.1〜50μmであり、平均孔径0.01〜50μmの複数の細孔を有し、前記表面層(a)及び(b)はそれぞれ、厚さが0.1〜50μmであり、少なくとも一方の表面層が平均孔径0.01〜200μmの複数の細孔を有し、前記のマクロボイド層の隔壁並びに前記表面層(a)及び(b)における細孔同士が連通し更に前記マクロボイドに連通しており、総膜厚が5〜500μmであり、空孔率が60〜95%であることが好ましい。
本発明に用いる多孔質フィルムは、ポリイミドを主成分とする多孔質フィルム(ポリイミド多孔質フィルム)であることが好ましい。ポリイミド多孔質フィルムは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られる。
本発明に用いるポリイミド多孔質フィルムは、後述のようにポリアミック酸溶液或いはポリイミド溶液を介して製造することができるが、用いる原料の種類、ポリマー溶液のポリマー濃度、粘度、有機溶液など、凝固条件(溶媒置換速度調整層の種類、温度、凝固溶媒など)などを適宜選択することにより、空孔率、膜厚、表面の平均孔径、貫通孔径などを適宜設計することができる。例えば、高い防水性(例えば耐水圧8kPa以上)が必要な場合、多孔質フィルムの製造において、フッ素系の原料を用いたり、表面の孔径を数μmと小さくしたりすることにより、所望の特性を有する多孔質フィルムを得ることができる。以下、ポリイミド多孔質フィルムの製造に用いる原料等について詳説する。
テトラカルボン酸二無水物は、任意のテトラカルボン酸二無水物を用いることができ、所望の特性などに応じて適宜選択することができる。テトラカルボン酸二無水物の具体例として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)などのビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、m−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2−ビス〔(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物等を挙げることができる。また、2,3,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸等の芳香族テトラカルボン酸を用いることも好ましい。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
これらの中でも、特に、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を好適に用いることができる。
ジアミンは、任意のジアミンを用いることができる。ジアミンの具体例として、以下のものを挙げることができる。
1)1,4−ジアミノベンゼン(パラフェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエンなどのベンゼン核1つのべンゼンジアミン、
2)4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシドなどのベンゼン核2つのジアミン、
3)1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)−4−トリフルオロメチルベンゼン、3,3’−ジアミノ−4−(4−フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジ(4−フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(3−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼンなどのベンゼン核3つのジアミン、
4)3,3’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどのベンゼン核4つのジアミン。
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。用いるジアミンは、所望の特性などに応じて適宜選択することができる。
これらの中でも、芳香族ジアミン化合物が好ましく、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及びパラフェニレンジアミン、1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを好適に用いることができる。特に、ベンゼンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル及びビス(アミノフェノキシ)フェニルからなる群から選ばれる少なくとも一種のジアミンが好ましい。
本発明に用いるポリイミド多孔質フィルムは、耐熱性、高温下での寸法安定性の観点から、以下の芳香族ポリイミドからなるポリイミド多孔質フィルムであることが好ましい。
(i)ビフェニルテトラカルボン酸単位及びピロメリット酸単位からなる群から選ばれる少なくとも一種のテトラカルボン酸単位と、芳香族ジアミン単位とからなる芳香族ポリイミド、
(ii)テトラカルボン酸単位と、ベンゼンジアミン単位、ジアミノジフェニルエーテル単位及びビス(アミノフェノキシ)フェニル単位からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジアミン単位とからなる芳香族ポリイミド、
及び/又は、
(iii)ビフェニルテトラカルボン酸単位及びピロメリット酸単位からなる群から選ばれる少なくとも一種のテトラカルボン酸単位と、ベンゼンジアミン単位、ジアミノジフェニルエーテル単位及びビス(アミノフェノキシ)フェニル単位からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジアミン単位とからなる芳香族ポリイミド。
次に、本発明に用いるポリイミド多孔質フィルムの一例として、複数の細孔を有する2つの表面層と、当該2つの表面層の間に挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造を有するポリイミド多孔質フィルム(以下、単に「マクロボイド層を有するポリイミド多孔質フィルム」と記載することもある)の製造方法について説明する。
マクロボイド層を有するポリイミド多孔質フィルムの製造方法は、テトラカルボン酸単位及びジアミン単位からなるポリアミック酸0.3〜60質量%と有機極性溶媒40〜99.7質量%とからなるポリアミック酸溶液(A)、及び前記ポリアミック酸100質量部に対して0.1〜200質量部の、極性基を有する有機化合物(B)又は側鎖に極性基を有する高分子化合物(C)を含有するポリアミック酸溶液組成物を、フィルム状に流延し、水を必須成分とする凝固溶媒に浸漬又は接触させて、ポリアミック酸の多孔質膜を作製する工程、及び前記工程で得られたポリアミック酸の多孔質膜を熱処理してイミド化する工程を含む。ここで、前記の極性基を有する有機化合物(B)及び前記高分子化合物(C)は、前記ポリアミック酸溶液組成物のフィルム状流延物に水の浸入を促進させる有機化合物である。
ポリアミック酸とは、テトラカルボン酸単位及びジアミン単位からなり、ポリイミド前駆体或いはその部分的にイミド化したポリイミド前駆体である。ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを重合することで得ることができる。ポリアミック酸を熱イミド化若しくは化学イミド化することにより、閉環してポリイミドとすることができる。本発明におけるポリイミドは、イミド化率が約80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上であることが好ましい。
ポリアミック酸を重合するための溶媒としては任意の有機極性溶媒を用いることができ、p−クロロフェノール、o−クロルフェノール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ピリジン、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、フェノール、クレゾールなどの有機極性溶媒などを用いることができ、特にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を好ましく用いることができる。テトラカルボン酸二無水物及びジアミンは、上述したものを好ましく用いることができる。
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン、及び上記の有機極性溶媒などを用いて任意の方法で製造することができる。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンと略等モルで、好ましくは約100℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは0〜60℃、特に好ましくは20〜60℃の温度で、好ましくは約0.2時間以上、より好ましくは0.3〜60時間反応させることで、ポリアミック酸溶液を製造することができる。
ポリアミック酸溶液を製造するときに、分子量を調整する目的で、任意の分子量調整成分を反応溶液に加えてもよい。
ポリアミック酸の対数粘度(30℃、濃度;0.5g/100mL、溶媒;NMP)は、本発明の多孔質ポリイミド膜が製造できる粘度であればよい。本発明の方法では、前記対数粘度が好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5〜7であるポリアミック酸を用いることが好ましい。
ポリアミック酸は、アミック酸の一部がイミド化していても、本発明に影響を及ぼさない範囲であればそれを用いることができる。
ポリアミック酸溶液(A)は、ポリアミック酸0.3〜60質量%と有機極性溶媒40〜99.7質量%とからなる。ポリアミック酸の含有量が0.3質量%未満だと多孔質ポリイミド膜を作製した際のフィルム強度が低下し、60質量%を超えると多孔質ポリイミド膜の物質透過性が低下する。ポリアミック酸溶液(A)におけるポリアミック酸の含有量は、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜15質量%、更に好ましくは5〜10質量%であり、ポリアミック酸溶液(A)における有機極性溶媒の含有量は、好ましくは70〜99質量%、より好ましくは85〜98質量%、更に好ましくは90〜95質量%である。
ポリアミック酸溶液(A)は、有機極性溶媒の存在下でテトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合反応させて得られる溶液であってもよく、ポリアミック酸を有機極性溶媒に溶解させて得られる溶液であってもよい。
ポリアミック酸溶液組成物は、ポリアミック酸溶液(A)と極性基を有する有機化合物(B)とを含有する組成物、ポリアミック酸溶液(A)と極性基を有する高分子化合物(C)とを含有する組成物、ポリアミック酸溶液(A)と極性基を有する有機化合物(B)と極性基を有する高分子化合物(C)とを含有する組成物を挙げることができ、好ましくはポリアミック酸溶液(A)と極性基を有する有機化合物(B)とを含有する組成物、又はポリアミック酸溶液(A)と極性基を有する高分子化合物(C)とを含有する組成物である。
極性基を有する有機化合物(B)及び極性基を有する高分子化合物(C)は、ポリアミック酸溶液組成物のフィルム状流延物への水の浸入を促進させる有機化合物である。ポリアミック酸溶液組成物のフィルム状流延物への水の浸入を促進させることで、ポリイミド膜中に平均孔径が10〜500μmのマクロボイドを形成することができる。
極性基を有する有機化合物(B)は、ポリアミック酸溶液組成物のフィルム状流延物を凝固浴に浸漬する工程において、ポリアミック酸の凝固が、極性基を有する有機化合物(B)を含有しないポリアミック酸溶液組成物におけるポリアミック酸の凝固過程と比較して促進される効果が認められるものであればよく、特に凝固浴と接触する面から内部へと膜厚み方向に速やかに凝固化を促進する効果を有するものであることが好ましい。したがって、極性基を有する有機化合物(B)は、上記の特性上、ポリアミック酸と反応しないか又は反応しにくい化合物であることが好ましい。
極性基を有する有機化合物(B)としては、例えば安息香酸、フタル酸などのカルボン酸基を有する有機化合物、ニトリル基を有する有機化合物、水酸基を有する有機化合物、スルホン酸基を有する有機化合物などを用いることができ、これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に極性基を有する有機化合物としては、安息香酸、フタル酸などのカルボン酸基を有する有機化合物が好ましい。
極性基を有する高分子化合物(C)は、ポリアミック酸溶液組成物のフィルム状流延物を凝固浴に浸漬する工程において、ポリアミック酸の凝固が、前記高分子化合物(C)を含有しないポリアミック酸溶液組成物におけるポリアミック酸の凝固過程と比較して促進される効果が認められるものであればよく、特に凝固浴と接触する面から内部へと膜厚み方向に速やかに凝固化を促進する効果を有するものであることが好ましい。したがって、前記高分子化合物(C)は、上記の特性上、ポリアミック酸と反応しないか又は反応しにくい化合物であることが好ましい。
極性基を有する高分子化合物(C)としては、側鎖にCN基、OH基、COOH基、SOH基、NH基などの極性基を有する重合体(例えばビニル重合体など)などを挙げることができ、これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に極性基を有する高分子化合物(C)としては、ポリアクリロニトリルなどの側鎖にCN基、OH基、COOH基、SOH基、NH基などの極性基を有するビニル重合体が好ましい。
ポリアミック酸溶液組成物において、前記高分子化合物(C)の含有量は、マクロボイドの形成の観点から、ポリアミック酸100質量部に対して0.1〜200質量部、好ましくは1〜150質量部、より好ましくは10〜100質量部、更に好ましくは20〜70質量部である。
ポリアミック酸溶液組成物において、極性基を有する有機化合物(B)と極性基を有する高分子化合物(C)とを含有する場合、前記有機化合物(B)と前記高分子化合物(C)との合計の含有量は、マクロボイドの形成の観点から、ポリアミック酸100質量部に対して0.1〜200質量部、好ましくは1〜150質量部、より好ましくは10〜100質量部、更に好ましくは20〜70質量部である。
極性基を有する高分子化合物(C)は、下記特徴(C1)〜(C4)の少なくとも1つ、好ましくは下記特徴(C1)〜(C3)、より好ましくは下記特徴(C1)〜(C4)のすべてを備えることが好ましい。
(C1)水、凝固溶媒及び/又は有機極性溶媒に不溶又は難溶であること。
(C2)熱イミド化工程で分解されること。
(C3)ポリアミック酸溶液組成物中に極性基を有する高分子化合物(C)が均質で懸濁していること。
(C4)ポリアミック酸と相溶しないこと。
極性基を有する高分子化合物(C)の作用機序については明確でないが、以下のように考えられる。
c1)ポリアミック酸中に極性基を有する高分子化合物(C)が非相溶物として残存する。この高分子化合物(C)の一部または全部は、凝固溶媒に浸漬又は接触させてポリアミック酸の多孔質膜を作製する際において凝固浴中に溶出し、更には加熱イミド化する工程で分解される。その結果、ポリイミド膜のマクロボイド層の隔壁並びに表面層(a)及び(b)において、除去された高分子化合物(C)が存在していた部分は細孔を形成し、ポリイミド膜の物質透過性が向上する。
及び/又は
c2)ポリアミック酸溶液組成物の凝固を促進するなど、凝固過程に影響を与えることにより、ポリイミド膜の物質透過性が向上する。
ポリアミック酸溶液組成物に極性基を有する高分子化合物(C)を添加する場合には、該高分子化合物(C)は、原体そのままで、又は溶解溶液もしくは懸濁溶液などの形態で添加することができる。
なお、ポリアミック酸溶液組成物の製造の際に、溶液が懸濁状になる場合があるが、十分な時間をかけて撹拌することで均質な状態を保つことができれば、本発明のポリイミドの製造に用いることができる。
また、ポリアミック酸溶液組成物の溶液粘度は、流延のしやすさ及びフィルム強度の観点から、好ましくは10〜10000ポアズ(1〜1000Pa・s)、より好ましくは100〜3000ポアズ(10〜300Pa・s)、更に好ましくは200〜2000ポアズ(20〜200Pa・s)、特に好ましくは300〜1000ポアズ(30〜100Pa・s)である。
(流延)
本発明のマクロボイド層を有するポリイミド多孔質フィルムの製造方法では、まず、ポリアミック酸溶液組成物を、フィルム状に流延する。流延方法は特に限定されず、例えば、ポリアミック酸溶液組成物をドープ液として使用し、ブレードやTダイなどを用いてガラス板やステンレス板等の上に、ポリアミック酸溶液組成物をフィルム状に流延することができる。また、連続の可動式のベルト上に、ポリアミック酸溶液組成物をフィルム状に断続的又は連続的に流延して、連続的に個片又は長尺状の流延物を製造することができる。ベルトは、ポリアミック酸溶液組成物及び凝固溶液に影響を受けないものであればよく、ステンレスなどの金属製、ポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂製を用いることができる。また、Tダイからフィルム状に成形したポリアミック酸溶液組成物をそのまま凝固浴に投入することもできる。また、必要に応じて流延物の片面又は両面を、水蒸気などを含むガス(空気、不活性ガスなど)と接触させてもよい。
(ポリアミック酸の多孔質膜の作製)
次に、流延物を、凝固溶媒に浸漬又は接触させて、ポリアミック酸を析出させて多孔質化を行うことで、ポリアミック酸の多孔質膜を作製する。得られたポリアミック酸の多孔質膜は、必要に応じて洗浄及び/又は乾燥を行う。
凝固溶媒は、水、又は5質量%以上100質量%未満の水と0質量%を超え95質量%以下の有機極性溶媒との混合液を用いることができる。火災などの安全面、製造原価、及び得られる膜の均質性の確保の観点から、水と有機極性溶媒とを含む凝固溶媒を用いることが好ましい。凝固溶媒に含有してもよい有機極性溶媒としては、ポリアミック酸の貧溶媒であるエタノール、メタノール等のアルコ−ル類、アセトン等が挙げられる。また、NMPやDMAcといったポリアミック酸の良溶媒を用いることも出来る。良溶媒を用いる場合は、混合溶媒がポリアミック酸の貧溶媒になる範囲で水と良溶媒の混合比率を調整することで、混合溶媒を好適に凝固溶媒として用いることが出来る。
凝固溶媒が水と有機極性溶媒との混合液である場合、凝固溶媒100質量%中の水の含有量は、好ましくは5質量%以上100質量%未満、より好ましくは20質量%以上100質量%未満、更に好ましくは30〜95質量%、特に好ましくは45〜90質量%である。凝固溶媒100質量%中の有機極性溶媒の含有量は、好ましくは0質量%を超え95質量%以下、より好ましくは0質量%を超え80質量%以下、更に好ましくは5〜70質量%、特に好ましくは10〜55質量%である。
凝固溶媒の温度は、目的に応じて適宜選択して用いればよく、例えば−30〜70℃、好ましくは0〜60℃、さらに好ましくは10〜50℃の範囲で行うことが好ましい。
(イミド化処理)
次に、得られたポリアミック酸の多孔質膜を熱処理してイミド化してポリイミド多孔質フィルムを製造する。イミド化としては、熱イミド化処理、化学イミド化処理等を挙げることができるが、本発明では熱イミド化処理が行われる。
(熱イミド化処理)
熱イミド化処理は、例えば、ポリアミック酸の多孔質膜を、ピン、チャック若しくはピンチロールなどを用いて熱収縮により平滑性が損なわれないように支持体に固定し、大気中にて加熱することにより行うことができる。反応条件は、例えば280〜600℃、好ましくは350〜550℃の加熱温度で、2〜120分間、好ましくは3〜90分間、さらに好ましくは5〜60分の加熱時間から適宜選択して行うことが好ましい。
本発明の方法では、熱イミド化処理において200℃以上の温度域での昇温速度が、25℃/分以上、好ましくは50℃/分以上であり、さらに好ましくは70〜300℃/分、より好ましくは120〜200℃/分である。イミド化反応が顕著に起こる200℃以上の温度域において上記の昇温速度で加熱することにより、表面開口率及び孔径が大幅に向上し、気体などの物質透過性が大幅に向上した本発明の多孔質ポリイミド膜を得ることができる。
なお、極性基を有する高分子化合物(C)を含むポリアミック酸溶液組成物を用いる場合には、ポリアミック酸の多孔質膜を前記高分子化合物(C)の熱分解開始温度以上に加熱して熱イミド化することが好ましい。前記高分子化合物(C)の熱分解開始温度は、例えば、熱重量測定装置(TGA)を用いて、空気中、10℃/分の条件で測定することができる。
通常、ポリアミック酸溶液の流延物からポリイミドフィルムを成形する場合は、急激な加熱昇温を行うと急激に溶媒揮発が生じて発泡現象を誘発し良好なフィルムが得られないため、一定量の溶媒が溶液から揮発して溶液がゲル状になるまでは緩やかな昇温速度で加熱が行われる。一方、ポリイミド多孔質フィルムの場合は、前駆体であるポリアミック酸多孔質膜の形成工程である貧溶媒凝固浴への浸漬工程で大部分の良溶媒が抽出されるので、熱イミド化工程において上記のような発泡現象は生じない。しかしながら、ポリアミック酸のガラス転移温度がイミド化反応の進行に従って上昇するプロファイルと比べて大幅に高い温度で加熱処理を施すと、高分子の流動が生じて孔が閉塞して緻密化が生じ、通気性が悪化するという問題が生じる。
これに対して、ポリアミック酸多孔質膜の熱イミド化処理において200℃以上の温度域での昇温速度を50℃/分以上、好ましくは70℃以上、さらに、好ましくは100℃以上とすることで、表面開口率及び孔径が大幅に向上し、気体などの物質透過性が大幅に向上したポリイミド多孔質フィルムを得ることができる。昇温速度を50℃/分以上とすることで物質透過性を向上させることができる作用機序についてはまだ明らかにされていないが、マクロボイドを有するポリアミック酸多孔質膜において空孔率が高いために緻密化が行われるだけの物質移動が起こらないことや、原料に用いた極性基を有する有機化合物(B)がポリアミック酸分子の流動を抑制することに起因すると推測される。
また、均質な単層構造からなる多孔質フィルムは、極性基を有する有機化合物(B)および極性基を有する高分子化合物(C)を用いないこと以外は、上記マクロボイドを有するポリイミド多孔質フィルムの製造方法と同様の方法により製造することができる。具体的には、例えば特開平11−310658号公報、特開2000−306568号公報、特開2003−138057号公報、特開2007−92078号公報、特開2007−169661号などに記載の溶媒置換誘起法を利用することができる。溶媒置換誘起法(A)としては、ポリイミド溶液若しくはポリアミック酸溶液を流延し、流延物の片面若しくは両面に多孔質フィルムや溶媒などの溶媒置換速度調整層を設け、ポリイミド溶液若しくはポリアミック酸溶液と凝固溶媒とが直接接触を避けて、ポリマーを析出させる方法であり、ポリアミック酸の場合得られる析出物をさらに加熱してイミド化することにより、多孔質ポリイミドを得ることができる。
溶媒置換誘起法(A)により、表面に緻密層が無く、断面構造は壁状ではなく網状であり、表面には多数の孔を有し、表面の孔は他面に網目若しくは屈曲した(直線的でない)状態で連続孔として存在し、独立孔が全く若しくはほとんど存在しない多孔質体が得られる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<スピーカユニットの準備>
以下のようなスピーカユニットを作製した。図1は本発明のスピーカユニットの一例を示したものであり、図1(a)はスピーカユニットを正面から見た外観図、図1(b)はスピーカユニットの開口部を多孔質フィルムで被覆した時の断面図である。スピーカユニットは、スピーカ本体101と、そのスピーカ本体101を収容したスピーカ筐体102とを備え、スピーカ本体101とスピーカ筐体102とはボルト105で固定されている。スピーカ筐体102の前面は開口部104を備え、開口部104の周囲に接着剤付着面103を備える。多孔質フィルム117は接着剤付着面103に付着した接着剤116により固定され開口部104を隙間なく被覆する。スピーカ筐体102の開口部104に多孔質フィルム117が被覆されたことにより、スピーカ筐体内にキャビティ112が形成されている。スピーカ本体101には(株)エフ・ピー・エス製のスピーカ(品番:FPS0202N3R2)を用いた。スピーカ本体の幅106の寸法は44mm、スピーカ本体の高さ107の寸法は54mm、スピーカ本体の奥行113の寸法は8mmである。スピーカ筐体102の材質はアルミニウムであり、開口部の幅108の寸法は54mm、開口部の高さ109の寸法は64mm、開口部の奥行114の寸法は13mm、スピーカ筐体の幅110の寸法は70mm、スピーカ筐体の高さ111の寸法は89mm、スピーカ筐体の奥行115の寸法は18mmである。接着剤116にはポリエステル樹脂の基材にアクリル系の粘着剤が塗布された厚みが0.1mmの両面テープを用いた。
以下の実施例および比較例においては、スピーカユニット207とスピーカアンプ208と音響解析ソフトが駆動できるパソコン209とマイク205とを図2のように接続して測定を行った。スピーカユニット207とマイク205は無響箱210に収容され、スピーカユニット207はジャッキ203より、マイク205はスタンド206より、それぞれ位置調整が可能である。スピーカユニット207の前面とマイク205の前面との距離は50cm、スピーカユニット207とマイク205の中心高さは15cmに設定した。
(音圧の周波数成分の測定)
音圧の周波数成分は、音響解析ソフトにてサイン波のスイープ信号をスピーカアンプ208を介して任意の出力でスピーカ本体201に入力し、マイク205で集音した時のマイクの感度を音響解析ソフトにて測定したものとした。すなわち、一般的に音圧周波数特性と呼ばれる音圧レベルの絶対値の周波数特性ではない。スピーカ本体201へ入力する信号は、スピーカユニット207においてフィルムを貼付していない状態でスピーカ本体201に1000Hzのサイン波信号を入力し、マイク205の集音部から2cm下方を騒音計で測定した時、音圧レベルが70dBになるように設定した。音響解析ソフトには吉正電子(株)製の商品名DSSF3を使用した。マイク205にはソニー(株)製の商品名ECM−G5Mを使用した。スピーカアンプ208にはヤマハ(株)製の商品名P800を使用した。音圧の周波数成分の測定において、音響解析ソフトの「周波数特性」の「周波数スイープ」の機能を使用し、測定条件として開始を100Hzに設定、終了を20000Hzに設定、測定時間を40秒に設定、サンプリング周波数を48kHzに設定した。
実施例において、フィルムとして用いたポリイミド多孔質フィルムAおよびポリイミド多孔質フィルムBの製造方法は以下のとおりである。
<参考例1>
(ポリアミック酸溶液組成物Aの調製)
500mlのセパラブルフラスコに、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶媒として用いて、酸無水物として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)を、ジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを、モル比がほぼ1、ポリマー濃度が8質量%になる量を測り取って投入した。その後、撹拌羽、窒素導入管、排気管を取り付けたセパラブルカバーで蓋をし、撹拌を開始した。23時間後、ポリアクリロニトリル粒状物(三井化学(株)製、商品名:バレックス2090MN)をポリアミック酸100質量部に対して10質量部の量を、安息香酸(以下、BAと略す)をポリアミック酸100質量部に対して50質量部の量を、3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸をポリアミック酸100質量部に対して1質量部の量をそれぞれフラスコ内に添加し、撹拌操作を継続した。30時間後に撹拌を終了し、フラスコ内のドープを加圧ろ過器(濾紙:アドバンテック東洋(株)製:粘稠液用濾紙No.60)でろ過して、ポリアミック酸溶液組成物Aを得た。溶液組成物Aは粘稠な懸濁液体で、粘度は400ポアズ(40Pa・s)(25℃)であった。
(ポリイミド多孔質フィルムAの製造)
室温下で、卓上の自動コーターを用いて、表面に鏡面研磨を施したステンレス製の20cm角の基板上に、上記により調製したポリアミック酸溶液組成物Aを厚さ約130μmで、均一に流延塗布した。その後、90秒間、温度23℃、湿度40%の大気中に放置し、その後、凝固浴(水90質量部/NMP10質量部、室温)中に基板全体を投入した。投入後、8分間静置し、基板上にポリアミック酸膜を析出させた。その後、基板を浴中から取りだし、基板上に析出したポリアミック酸膜を剥離した後に、純水中に3分間浸漬し、ポリアミック酸膜を得た。このポリアミック酸膜を温度23℃、湿度40%の大気中で乾燥させた後、10cm角のピンテンタ−に張りつけて電気炉内にセットした。約30℃/分の昇温速度で150℃まで加熱し、その後200℃/分の昇温速度で380℃まで加熱し、そのまま5分間保持する温度プロファイルで熱処理を行い、ポリイミド多孔質フィルムAを得た。
得られたポリイミド多孔質フィルムAの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、いずれも膜横方向の長さ10μm以上のマクロボイドが多数確認でき、
・横方向の長さ5μm以上のボイド中、横方向の長さ(L)と膜厚み方向の長さ(d)との比がL/d=0.5〜3の範囲に入るボイドの数が70%以上であることを確認できた。
・膜横方向の長さ10μm以上のマクロボイドを多数有し、その断面積が総断面積の70%以上であることを確認できた。
ポリイミド多孔質フィルムAのガラス転移温度は約280℃であり、寸法安定性は200℃で1%以内であった。250℃、15分、0.5MPaの圧縮応力負荷後の膜厚み変化率は、1%以下であった。また、ポリイミド多孔質フィルムAの表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、基板側の表面に連通する孔を多数有する多孔質構造であった。また、耐水圧は2.1kPaであった。ポリイミド多孔質フィルムAの特性について表1に示す。測定方法は以下のとおりである。
(フィルムの評価)
1)膜厚
膜厚みの測定は、接触式の厚み計で行った。
2)気体透過性
ガーレー値(0.879g/mmの圧力下で100ccの空気が膜を透過するのに要する秒数)の測定は、JIS P8117に準拠して行った。
3)寸法安定性
寸法安定性の測定は、200℃で2時間の条件で、ASTM D1204に準拠して行った。
4)表面の平均孔径
多孔質フィルム表面の走査型電子顕微鏡写真より、200点以上の開孔部について孔面積を測定し、該孔面積の平均値から下式(1)に従って孔の形状が真円であるとした際の平均直径を計算より求めた。
Figure 2013138416
(式中、Saは孔面積の平均値を意味する。)
5)空孔率
所定の大きさに切り取った多孔質フィルムの膜厚及び質量を測定し、目付質量から空孔率を下式(2)によって求めた。
Figure 2013138416
(式中、Sは多孔質フィルムの面積、dは膜厚、wは測定した質量、Dはポリイミドの密度をそれぞれ意味する。ポリイミドの密度は1.34g/cmとする。)
6)ガラス転移温度(℃)
固体粘弾性アナライザーを用いて、引張モード、周波数10Hz、ひずみ2%、窒素ガス雰囲気の条件で動的粘弾性測定を行い、その温度分散プロファイルにおいて損失正接が極大値を示す温度をガラス転移温度とした。
7)溶液粘度
溶液粘度の測定は、E型回転粘度計で行った。以下に測定手順を示す。
(i)参考例で調製したポリアミック酸溶液を密閉容器に入れ、30℃の恒温槽に10時間保持した。
(ii)E型粘度計(東京計器製、高粘度用(EHD型)円錐平板型回転式、コーンローター:1°34’)を用い、(i)で準備したポリアミック酸溶液を測定溶液として、温度30±0.1℃の条件で測定した。3回測定を行い、平均値を採用した。測定点に5%以上のばらつきがあった場合は、さらに2回の測定を行い5点の平均値を採用した。
8)250℃、15分で、0.5MPaの圧縮応力負荷試験
測定する膜を3cm角の正方形に切り出し、格子状に9点にマジックで目印を付け接触式の厚み計で膜厚みを測定した。次に、平行度±10μm未満、温度分布±1℃の圧縮盤である高精度ホットプレスを用いて、測定対象膜を250℃、15分、0.5MPaの条件で圧縮した。続いて、膜を室温のSUS板の上に30分間静置した後に、接触式の膜厚み計で目印部分の膜厚みを測定した。9点での圧縮前後の膜厚みの変化率を下式(3)によって求めた。9点の平均値を膜厚み変化率とした。
Figure 2013138416
9)耐水圧の測定方法
垂直に固定したSUS304製の内径20mmφ、外径26mmφの管の下部にフィルム試料をセットできる治具を備え付けた。このSUS管の下部に測定試料を固定し、上部から定量ポンプで8ml/分の速度で純水を滴下した。フィルムの下部から観察して、フィルムの下面に水滴が出現した時間を記録し、その時の水面高さを算出した。この測定を5回繰り返し、平均の水面高さを求め、次式(4)により耐水圧を求めた。
Figure 2013138416
<参考例2>
(ポリアミック酸溶液組成物Bの調製)
ポリアクリロニトリル粒状物、BAを添加しなかったこと以外は参考例1と同様にして、ポリアミック酸溶液組成物Bを得た。溶液組成物Bは粘稠な懸濁液体であった。
(ポリイミド多孔質フィルムBの製造)
表面に鏡面研磨を施したステンレス製の20cm角基板の平行な2辺上に、厚さ150μmのスペ−サ−を取り付けた。参考例2のポリアミック酸溶液Bをスペ−サ−の間に帯状に流延し、ガラス棒を用いて基板上に均一に引き伸ばし塗布した。基板上に塗布したポリアミック酸溶液の上に、ポリアミック酸溶液液面に対して100μmの間隔を持つドクタ−ナイフを用いて、保護溶媒層としてNMPを均一に塗布し1分間静置した後に、凝固浴(水70質量部/NMP30質量部、室温)中に基板全体を投入した。その間、ポリマ−溶液と保護溶媒層とが完全には混じり合あわずに厚み方向で濃度勾配を保ちかつポリマ−が溶解している状態を保っていた。投入後、5分間静置し、基板上にポリアミック酸を析出させた。基板を取りだし、水中に5分間漬けた後、基板上に析出したポリアミック酸膜を剥離し、ポリアミック酸膜を得た。このポリアミック酸膜を室温で乾燥させた後、8cm角のピンテンタ−に張りつけ50℃/分の速度で360℃まで加熱しそのまま5分間保持した後に室温まで冷却することで、ポリイミド多孔質フィルムBを得た。
上記により得られたポリイミド多孔質フィルムBの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、2つの表面層及びそれに挟まれたマクロボイド層という三層構造が存在せず、また、マクロボイドがほとんど存在していない均質な構造であることが観察できた。また、得られたポリイミド多孔質膜は、保護層積層面側においてはポリイミドがネットワ−ク状に連なった構造を有していた。また、ポリイミド多孔質フィルムBの特性について、ポリイミド多孔質フィルムAと同様の方法で測定したところ、ガラス転移温度は約280℃であり、寸法安定性は200℃で1%以内であった。250℃、15分、0.5MPaの圧縮応力負荷後の膜厚み変化率は、1%以下であった。また、耐水圧は9kPa以上であった。得られたポリイミド多孔質フィルムBの特性を表1に示す。
Figure 2013138416
<実施例1>
図2のスピーカ筐体の前面に、ポリイミド多孔質フィルムAを筐体との隙間が無く、かつたるみの無いように貼り付けて、フィルムを貼り付ける前後の音圧の周波数成分を測定した。フィルムの貼り付け前後での音圧の周波数成分の変化は、200〜10000Hzの範囲内では最大で4dB以下、平均で0.1dBであった。周波数と、フィルム貼付前の音圧感度に対するフィルム貼付後の音圧感度(相対感度)との関係を図3に示す。
<比較例1>
フィルムとして、厚みが7.5μmの無孔のポリイミドフィルムC(ユーピレックス7.5SN、宇部興産株式会社製)を用い、ポリイミドフィルムCの全面に皺を満遍なく十分形成し、たるませて貼り付けた以外は実施例1と同様の操作を行った。フィルムの貼り付け前後の音圧特性を測定したところ、フィルムの貼り付け前後での音圧の周波数成分の変化は、200〜10000Hzの範囲内で最大で17dB以上、平均で0.6dBであった。周波数と、フィルム貼付前の音圧感度に対するフィルム貼付後の音圧感度(相対感度)との関係を図6に示す。
<比較例2>
フィルムとして、厚みが25μmの無孔のポリイミドフィルムD(ユーピレックス25S、宇部興産株式会社製)を用いた以外は、比較例1同様の測定を行った。フィルムの貼り付け前後での周波数成分の変化は、200〜10000Hzの範囲内で最大で15dB以上、平均で0.0dBであった。周波数と、フィルム貼付前の音圧感度に対するフィルム貼付後の音圧感度(相対感度)との関係を図7に示す。
<比較例3>
フィルムとして、厚みが50μmの無孔のポリイミドフィルムE(ユーピレックス50S、宇部興産株式会社製)を用いた以外は、比較例1と同様の測定を行った。フィルムの貼り付け前後での周波数成分の変化は、200〜10000Hzの範囲内で最大で22dB以上、平均で−1.7dBであった。周波数と、フィルム貼付前の音圧感度に対するフィルム貼付後の音圧感度(相対感度)との関係を図8に示す。
<比較例4>
フィルムとして、厚みが25μmの無孔のポリイミドフィルムD(ユーピレックス25S、宇部興産株式会社製)を筐体との隙間が無く、かつたるみの無いように貼り付けて、実施例1と同様の測定を行った。フィルムの貼り付け前後での周波数成分の変化は、200〜10000Hzの範囲内で最大で34dB以上、平均で1.9dBであった。フィルム貼付前の音圧感度に対する、フィルム貼付後の音圧感度(相対感度)を図9に示す。
<実施例2>
ポリイミド多孔質フィルムAに代えて、ポリイミド多孔質フィルムBを用いた以外は、実施例1と同様の測定を行った。膜の貼り付け前後での周波数成分の変化は、200Hzで11dB、8000Hzで−8.8dBであった。周波数と、フィルム貼付前の音圧感度に対するフィルム貼付後の音圧感度(相対感度)との関係を図4に示す。
<実施例3>
実施例2と同様の測定を10回行い、200〜10000Hzでの音圧のばらつきを測定したところ、標準偏差は0.116dBであった。
<実施例4>
ポリイミド多孔質フィルムAに代えて、ポリイミド多孔質フィルムBを全面に皺を満遍なく十分形成し、たるませて貼り付けた以外は、実施例1と同様の測定を行った。フィルム貼付前の音圧感度に対する、フィルム貼付後の音圧感度(相対感度)を図5に示す。
<比較例5>
比較例2と同様の測定を10回行い、200〜10000Hzでの音圧のばらつきを測定したところ、標準偏差は0.250dBであった。
<比較例6>
比較例4と同様の測定を10回行い、200〜10000Hzでの音圧のばらつきを測定したところ、標準偏差は0.208dBであった。
<比較例7>
ポリイミド多孔質フィルムAに代えて、SUS製のメッシュ(線径0.023mm、目開き41μm、開口面積比40.7%、400mesh、耐水圧1.2kPa)を用いた以外は、実施例1と同様の測定を行った。膜の貼り付け前後での周波数成分の変化は、200〜10000Hzの範囲内では最大で4dB以下、平均で0.15dBであり、200Hzで0.25dB、8000Hzで−2.99dBであった。周波数と、フィルム貼付前の音圧感度に対するフィルム貼付後の音圧感度(相対感度)との関係を図10に示す。
<比較例8>
ポリイミド多孔質フィルムAに代えて、ポリエステルメッシュ(テトロン繊維製、線径0.071mm、目開き183μm、開口面積比51.9%、100mesh、耐水圧0.4kPa)を用いた以外は、実施例1と同様の測定を行った。膜の貼り付け前後での周波数成分の変化は、200〜10000Hzの範囲内では最大で4dB以下、平均で0.38dBであり、200Hzで0.61dB、8000Hzで−2.11dBであった。周波数と、フィルム貼付前の音圧感度に対するフィルム貼付後の音圧感度(相対感度)との関係を図11に示す。
実施例1および比較例1〜4より、多孔質フィルムAを用いると、無孔フィルムC、DまたはEを用いた場合より、膜の貼付前後における200〜10000Hzの範囲の感度の変化が小さく、スピーカの音圧特性への影響が軽微であることが示された。
実施例3および比較例5、比較例6より、無孔フィルムDを用いた場合に比べ、多孔質フィルムBを用いた場合の方が、音圧についての標準偏差が小さいことが示された。これは、無孔フィルムDはたるませて貼り付けているのに対し、多孔質フィルムはたるみがないように貼り付けているため、貼付のばらつきが多孔質フィルムBを用いる場合の方が小さいからであると示唆される。また、無孔フィルムをたるみがないように貼り付けても、フィルムの共振の影響が大きいために、標準偏差が多孔質フィルムより大きいことが示された。
実施例1および比較例7,8より、多孔質フィルムAを用いると、繊維を構成材料とするメッシュを用いた場合より、200〜10000Hzの範囲の感度の変化を抑えつつ高い防水性能を付与することができることが示された。
また、実施例2および比較例7,8より、多孔質フィルムBを用いると、繊維を構成材料とするメッシュを用いた場合より、高い防水性能を付与できるとともに、スピーカ本体の音圧特性を変化させることができることが示された。メッシュを用いた方が、膜の貼付前後における200〜10000Hzの範囲の感度の変化が小さく、スピーカの音圧特性への影響が軽微であることが示された。
101 スピーカ本体
102 スピーカ筐体
103 接着剤付着面
104 開口部
105 ボルト
106 スピーカ本体の幅
107 スピーカ本体の高さ
108 開口部の幅
109 開口部の高さ
110 スピーカ筐体の幅
111 スピーカ筐体の高さ
112 キャビティ
113 スピーカ本体の奥行
114 開口部の奥行
115 スピーカ筐体の奥行
116 接着剤
117 多孔質フィルム
201 スピーカ本体
202 スピーカ筐体
203 ジャッキ
204 フィルム
205 マイク
206 スタンド
207 スピーカユニット
208 スピーカアンプ
209 パソコン
210 無響箱

Claims (10)

  1. スピーカ本体と、
    これを収容するスピーカ筐体と、
    前記スピーカ筐体の前面開口部を被覆する通気性を有する多孔質フィルムとを備えた、スピーカユニット。
  2. 前記スピーカ筐体の前面開口部が通気性を有する多孔質フィルムにより被覆されてキャビティが形成された、請求項1に記載のスピーカユニット。
  3. 通気性を有する多孔質フィルムの耐水圧が2kPa以上である、請求項1または2に記載のスピーカユニット。
  4. 通気性を有する多孔質フィルムの最大貫通孔の大きさが0.3mmφ以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスピーカユニット。
  5. スピーカ本体の音圧特性を変化させることができる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のスピーカユニット。
  6. 通気性を有する多孔質フィルムでスピーカ筐体の前面開口部を被覆する前と比べて200Hzの音圧特性を6dB以上高めることができる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のスピーカユニット。
  7. 通気性を有する多孔質フィルムでスピーカ筐体の前面開口部を被覆する前と比べて8000Hzの音圧特性を6dB以上低減することができる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のスピーカユニット。
  8. 通気性を有する多孔質フィルムの寸法変化率が200℃、2時間で1%以内である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のスピーカユニット。
  9. 通気性を有する多孔質フィルムが、ポリイミドを主成分とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のスピーカユニット。
  10. 通気性を有する多孔質フィルムが、
    2つの表面層(a)及び(b)と、当該表面層(a)及び(b)の間に挟まれたマクロボイド層とを有する三層構造のポリイミド多孔質フィルムであって、
    前記マクロボイド層は、前記表面層(a)及び(b)に結合した隔壁と、当該隔壁並びに前記表面層(a)及び(b)に囲まれた、膜平面方向の平均孔径が10〜500μmである複数のマクロボイドとを有し、
    前記マクロボイド層の隔壁は、厚さが0.1〜50μmであり、平均孔径0.01〜50μmの複数の細孔を有し、前記表面層(a)及び(b)はそれぞれ、厚さが0.1〜50μmであり、少なくとも一方の表面層が平均孔径0.01〜200μmの複数の細孔を有し、前記のマクロボイド層の隔壁並びに前記表面層(a)及び(b)における細孔同士が連通し更に前記マクロボイドに連通しており、
    総膜厚が5〜500μmであり、空孔率が60〜95%である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のスピーカユニット。
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