JP7326785B2 - 多孔質ポリイミド膜及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の課題は、マクロボイドを有し、かつ両表面が良好に開口している多孔質ポリイミド膜及びその製造方法を提供することにある。
[1] 表面層(a)、表面層(b)、及び前記表面層(a)と前記表面層(b)との間に挟まれたマクロボイド層、を有する多孔質ポリイミド膜であって、
前記マクロボイド層は、前記表面層(a)及び(b)に結合した隔壁と、前記隔壁並びに前記表面層(a)及び(b)に囲まれた、膜平面方向の個数平均孔径が10μm~500μmである複数のマクロボイドとを有し、
前記マクロボイド層の前記隔壁の厚みが、0.1μm~50μmであり、
前記表面層(a)及び(b)の各々の厚みが、0.1μm~50μmであり、
前記表面層(a)及び(b)がそれぞれ、面積平均開口径20μm以上の複数の細孔を有し、
前記表面層(a)及び(b)の前記細孔が前記マクロボイドに連通しており、
前記表面層(a)の面積平均開口径Aと前記表面層(b)の面積平均開口径Bとが、下記の関係:
0.80≦A/B≦1.25
を満たし、
前記表面層(a)の表面開口率が5%以上であり、かつ前記表面層(b)の表面開口率が10%以上である、多孔質ポリイミド膜。
[2] 前記表面層(a)の個数平均開口径が20μm以上200μm以下であり、
前記表面層(b)の個数平均開口径が30μm以上200μm以下である、
上記態様1に記載の多孔質ポリイミド膜。
[3] 総膜厚が5μm~500μmであり、かつ空孔率が50%~95%である、上記態様1又は2に記載の多孔質ポリイミド膜。
[4] ガーレー値が1秒以下である、上記態様1~3のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜。
[5] パームポロメーターで測定したときの平均流量孔径が5~200μmである、上記態様1~4のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜。
[6] 前記マクロボイド層の隔壁、並びに前記表面層(a)及び(b)の厚みが略同一である、上記態様1~5のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜。
[7] 前記多孔質ポリイミド膜を膜平面方向に対して垂直に切断したときの断面において、膜平面方向の個数平均孔径が10μm~500μmのマクロボイドの断面積が膜断面積の50%以上である、上記態様1~6のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜。
[8] 前記多孔質ポリイミド膜を膜平面方向に対して垂直に切断したときの断面において、前記マクロボイドの総数の60%以上が、膜平面方向の長さ(L)と膜厚み方向の長さ(d)との比(L/d)0.5~3を有する、上記態様1~7のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜。
[9] ガラス転移温度が200℃以上であるか、又は明確なガラス転移温度が観察されない、上記態様1~8のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜。
[10] 全光線透過率が25%以上99%以下で、かつヘイズが60%以上95%以下である、上記態様1~9のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜。
[11] 上記態様1~10のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法であって、
ポリアミック酸と有機溶媒とを含むポリアミック酸溶液をフィルム状に流延し、水と良溶媒とを必須に含む凝固溶媒に浸漬又は接触させて、ポリアミック酸の多孔質膜を作製する工程、及び
前記工程で得られたポリアミック酸の多孔質膜を熱処理してイミド化する工程、
を含み、
前記良溶媒は、30℃における前記ポリアミック酸の溶解度が水よりも高い溶媒であり、
前記凝固溶媒中の前記良溶媒の比率が15質量%以上である、多孔質ポリイミド膜の製造方法。
[12] 前記良溶媒のSP値が、10(cal/cm3)0.5以上13.5(cal/cm3)0.5以下である、上記態様11に記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
[13] 前記良溶媒が、20℃の前記良溶媒100gに対して前記ポリアミック酸が10g以上溶解する溶媒である、上記態様11又は12に記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
[14] 前記良溶媒が、N-メチル-2-ピロリドン、N、N-ジメチルアセトアミド、及びN、N-ジメチルホルムアミドからなる群から選択される1種以上である、上記態様11~13のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
[15] 前記凝固溶媒中の前記良溶媒の比率が15質量%~20質量%であり、前記凝固溶媒中の貧溶媒及び非溶媒の合計比率が80質量%~85質量%である、上記態様11~14のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
[16] 前記凝固溶媒中の前記良溶媒の比率が15質量%~20質量%であり、前記凝固溶媒中の水の比率が80質量%~85質量%である、上記態様15に記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
[17] 前記ポリアミック酸溶液が、極限粘度1.0~3.0のポリアミック酸3~60質量%と、有機溶媒40~97質量%とからなり、
前記有機溶媒が、N-メチル-2-ピロリドン、N、N-ジメチルアセトアミド、及びN、N-ジメチルホルムアミドからなる群から選択される1種以上である、上記態様11~16のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
[18] 前記ポリアミック酸が、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物からなる群から選ばれる少なくとも一種のテトラカルボン酸二無水物と、ベンゼンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル及びビス(アミノフェノキシ)フェニルからなる群から選ばれる少なくとも一種のジアミンとから得られる、上記態様11~17のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
[19] 前記熱処理が、前記ポリアミック酸の多孔質膜を250℃以上まで昇温させることを含む、上記態様11~18のいずれかに記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
[20] 前記熱処理を、200℃以上の温度域での昇温速度230℃/分以上にて行う、上記態様19に記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
本発明の一態様は、表面層(a)及び(b)と、当該表面層(a)及び(b)の間に挟まれたマクロボイド層とを有する多孔質ポリイミド膜を提供する。図1(a)及び(b)を参照し、典型的な態様において、多孔質ポリイミド膜1は、表面層(a)2及び表面層(b)4並びにマクロボイド層3の三層構造を有する。マクロボイド層3は、複数のマクロボイド31と、マクロボイド同士31を隔てる隔壁32とを有する。マクロボイド31は、隔壁32並びに表面層(a)2及び表面層(b)4によって囲まれた空間である。
0.80≦A/B≦1.25
を満たす。上記A/Bが1に近いほど、表面層(a)と表面層(b)とでの開口径の差が小さく、多孔質ポリイミド膜の両表面の構造差が小さいことを意味する。A/Bは、当該構造差を小さくすることによる利点(すなわち、表裏を区別せずに使用できること、ろ過の閾サイズをより明確に規定できること等)を良好に得る観点から、A/Bは、0.80以上1.25以下であり、好ましくは、0.90以上1.12以下、0.91以上1.10以下、又は0.94以上1.07以下である。
本発明の別の態様は、前述の本発明の一態様に係る多孔質ポリイミド膜の製造方法を提供する。該方法は、
ポリアミック酸と有機溶媒とを含む(好ましくは、ポリアミック酸と有機溶媒とからなる)ポリアミック酸溶液をフィルム状に流延し、水と良溶媒とを必須に含む凝固溶媒に浸漬又は接触させて、ポリアミック酸の多孔質膜を作製する工程、及び
上記工程で得られたポリアミック酸の多孔質膜を熱処理してイミド化する工程、
を含む。一態様において、水は、当該方法で用いられるポリアミック酸の貧溶媒又は非溶媒である。
1)1,4-ジアミノベンゼン(パラフェニレンジアミン)、1,3-ジアミノベンゼン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン等のベンゼン核1つのべンゼンジアミン、
2)4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル等のジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,3’-ジクロロベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,2’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、2,2’-ジメトキシベンジジン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド等のベンゼン核2つのジアミン、
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。用いるジアミンは、所望の特性等に応じて適宜選択することができる。
まず、ポリアミック酸溶液をフィルム状に流延する。流延方法は特に限定されず、例えば、ポリアミック酸溶液をドープ液として使用し、ブレードやTダイ等を用いてガラス板やステンレス板等の上に、ポリアミック酸溶液をフィルム状に流延することができる。また、連続の可動式のベルト又はドラム上に、ポリアミック酸溶液をフィルム状に断続的又は連続的に流延して、連続的に個片又は長尺状の流延物を製造することができる。ベルト又はドラムは、ポリアミック酸溶液及び凝固溶液に影響を受けないものであればよく、ステンレス等の金属製、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂製を用いることができる。また、Tダイからフィルム状に成形したポリアミック酸溶液をそのまま凝固浴に投入することもできる。また、必要に応じて流延物の片面又は両面を、水蒸気等を含むガス(空気、不活性ガス等)と接触させてもよい。
次に、流延物を、凝固溶媒に浸漬又は接触させて、ポリアミック酸を析出させて多孔質化を行うことで、ポリアミック酸の多孔質膜を作製する。得られたポリアミック酸の多孔質膜は、必要に応じて洗浄及び/又は乾燥を行う。
流延工程の後、得られたポリアミック酸の多孔質膜を熱処理又は化学処理によってイミド化して多孔質ポリイミド膜を製造する。簡便な製造プロセスの観点から、熱イミド化処理が好ましい。熱イミド化処理は、当該処理後の膜の縦方向(長手方向)及び横方向の収縮率を、好ましくはそれぞれ40%以下、より好ましくは30%以下に抑制するように行われる。特に限定されないが、熱イミド化は、例えば、ポリアミック酸の多孔質膜を、ピン、チャック若しくはピンチロール等を用いて支持体に固定し、大気中にて加熱することにより行っても良い。反応条件は、例えば280~600℃、好ましくは300~550℃の加熱温度で、1~120分間、好ましくは2~120分間、より好ましくは3~90分間、更に好ましくは5~30分の加熱時間から適宜選択して行うことが好ましい。好ましい態様において、熱処理は、ポリアミック酸の多孔質膜を250℃以上まで昇温させることを含む。
ポリイミドは他のプラスチックに比べて耐熱性及び機械強度に優れるため、本開示の多孔質ポリイミド膜は例えば250℃以上のような高温条件下でも好適に使用できる。高温条件の用途の具体例としては、音響部品の保護膜、耐熱フィルタ等が挙げられる。また、本開示の多孔質ポリイミド膜は、マクロボイドを有しながら、機械強度が良好で、かつ高い光線透過率を有する。このような特性は例えば細胞培養用シートとして特に好適である。
(1)膜厚
膜厚の測定は、接触式の厚み計で行った。
ガーレー値(0.879g/m2の圧力下で100ccの空気が膜を透過するのに要する秒数)の測定を、JIS P8117に準拠して行った。
(a)表面層(a)及び(b)の平均表面開口率、個数平均開口径、面積平均開口径及び最大開口径
多孔質ポリイミド膜表面の走査型電子顕微鏡像より、200点以上の開孔部について各々の孔面積Sを測定し、下式(1)に従って孔の形状が真円であるとした際の直径dを計算より求めた。
孔径d=2×(S/π)0.5…(1)
求めた各々の孔径dから、個数平均開口径Sn、及び面積平均開口径Saを、下式(2)、(3)に従って求めた。
個数平均開口径Sn=Σ(d)/n…(2)
(n:孔の総数)
面積平均開口径Sa=Σ(d3)/Σ(d2)…(3)
また、2.36mm×1.88mmの観察視野内の細孔について、当該観察視野の面積に対する観察視野内の細孔の合計面積の比率を平均表面開口率とし、当該観察視野内での細孔の孔径dの最大値を最大開口径とした。
多孔質ポリイミド膜表面の走査電子顕微鏡像において、2.36mm×1.88mmの観察視野内に存在する、孔径dが20μm以上の細孔の個数から単位面積当たりの個数(単位:個/mm2)を求めた。
寸法安定性の測定は、200℃で2時間の条件で、ASTM D1204に準拠して行った。
所定の大きさに切り取った多孔質ポリイミド膜の膜厚D、面積E及び質量Wを測定し、目付質量から空孔率Pを下式(4)によって求めた。
空孔率P=(1-(W/(E×D×ρ))×100(%)…(4)
(式中、ρはポリイミドの密度を意味し、ポリイミドの密度は1.37g/cm3として計算した。)
固体粘弾性アナライザーを用いて、引張モード、周波数10Hz、ひずみ2%、窒素ガス雰囲気の条件で動的粘弾性測定を行い、その温度分散プロファイルにおいて損失正接が極大値を示す温度をガラス転移温度とした。
パームポロメーター(POROMETER 3G zh(カンタクローム社製))を用いて測定した。
溶液粘度の測定は、E型回転粘度計で行った。以下に測定手順を示す。
(i)製造例で調製したポリイミド溶液を密閉容器に入れ、30℃の恒温槽に10時間保持した。
(ii)E型粘度計(東京計器製、高粘度用(EHD型)円錐平板型回転式、コーンローター:1°34’)を用い、(i)で準備したポリイミド溶液を測定溶液として、温度30±0.1℃の条件で測定した。3回測定を行い、平均値を採用した。測定点に5%以上のばらつきがあった場合は、更に2回の測定を行い5点の平均値を採用した。
希釈溶媒としてN-メチル-2ピロリドン(NMP)を用い、以下の測定手順により極限粘度を求めた。
(i)溶液濃度cが0.1,0.075,0.05,0.025,0.010〔g/dL〕になるように、測定対象のポリアミック酸のNMP溶液を調整した。溶液は、嫌気雰囲気中で1週間の間連続して攪拌操作を施した。
(ii)ウベローデ型希釈粘度計を用いて30℃の恒温槽中で、NMPの流下時間を測定した。続けて(i)で作製した溶液についても各々流下時間を測定した。いずれの測定も3回行い、平均値を採用した。測定時間のばらつきが3%以上であった場合は、更に2回の追加測定を行い小さい値から3点の平均値を取り、採用値とした。
(iii)上記(ii)の測定値から比粘度ηspを算出し、y 軸をηsp/c、x 軸をcにしたグラフを作成した(Hugginsプロット)。プロット点をグラフソフトで直線回帰分析を行い回帰直線の切片から極限粘度を求めた。回帰直線のR2が0.900以下であった場合は、再度溶液を作製し、再測定を行った。
JIS K7361、7136及び7105、並びにASTM D1003に準拠したヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、商品名:NDH5000)を用いて、膜の全光線透過率、及び濁度(ヘイズ)を測定した。
(ポリアミック酸溶液組成物Aの調製)
500mlのセパラブルフラスコに、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を溶媒として用いて、酸無水物として3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)を、ジアミンとして4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを、酸無水物/ジアミンのモル比0.997、ポリマー濃度が8質量%になる量を測り取って投入した。その後、撹拌翼、窒素導入管、排気管を取り付けたセパラブルカバーで蓋をし、撹拌操作を30時間継続した。撹拌を終了し、フラスコ内のドープを加圧ろ過器(濾紙:アドバンテック東洋(株)製:粘稠液用濾紙No.60)でろ過して、ポリアミック酸溶液組成物A(ポリアミック酸濃度:8質量%)を得た。溶液組成物Aは粘稠な液体であり、溶液粘度は360ポイズ(30℃)であった。また上記ポリアミック酸は、極限粘度2.8を有し、30℃の水100gに対して2g以下、30℃のNMP100gに対して30g以上、及び20℃のNMP100gに対して25g以上溶解するものであった。
(ポリアミック酸溶液組成物Bの調製)
調製例1で得られたポリアミック酸溶液組成物A 100質量部に対してポリアクリロニトリル共重合体(三井化学株式会社製、商品名:バレックス2090S、以下「PAN」ともいう)5質量部を投入した。その後、撹拌翼、窒素導入管、排気管を取り付けたセパラブルカバーで蓋をし、20時間撹拌を継続してポリアミック酸溶液組成物を得た。フラスコ内のドープを加圧ろ過器(アドバンテック東洋株式会社製、粘調液用濾紙No.60使用)でろ過して、ポリアミック酸溶液組成物Bを得た。溶液は粘調な懸濁液体で、溶液粘度は430ポイズ(30℃)であった。
(ポリアミック酸溶液組成物Aを用いる多孔質ポリイミド膜の作製)
室温下で、卓上の自動コーターを用いて、表面に鏡面研磨を施したステンレス製の20cm角の基板上に、調製例1で調製したポリアミック酸溶液組成物Aを厚み約130μmで、均一に流延塗布した。その後、15秒間、温度23℃、湿度40%の大気中に放置し、その後、表1に示すNMP濃度である水とNMPの混合溶媒からなる室温の凝固浴中に基板全体を投入した。投入後4分間静置し、基板上にポリアミック酸膜を析出させた。その後、基板を浴中から取りだし、基板上に析出したポリアミック酸膜を剥離した後に、純水中に3分間浸漬し、ポリアミック酸膜を得た。このポリアミック酸膜を温度40℃、湿度40%以下の大気中で乾燥させた後、10cm角のピンテンタ-に張りつけて四辺を拘束した。電気炉内にセットして約10℃/分の昇温速度で70℃まで加熱し、その後、表1に示す昇温速度で360℃まで加熱し、そのまま3分間保持、その後徐冷して、多孔質ポリイミド膜を得た。得られた多孔質ポリイミド膜の、膜厚、空孔率、ガーレー値を表1に示す。なお、NMPのSP値は、11.2である。
(ポリアミック酸溶液組成物Bを用いる多孔質ポリイミド膜の作製)
ポリアミック酸溶液組成物としてポリアミック酸溶液組成物Bを用いる以外は、実施例1と同様の操作を行い、多孔質ポリイミド膜を得た。得られた多孔質ポリイミド膜の、膜厚、空孔率、ガーレー値を表1に示す。
実施例1~4、及び比較例1~3の表面開口率、開口径、最大開口径、20μm以上の開口の個数、平均流量細孔径を測定した。結果を表2に示す。
実施例1~4、及び比較例1~3の全光線透過率(%)及び濁度(ヘイズ)を測定した。結果を表3に示す。
・横方向の長さ5μm以上のボイド中、横方向の長さ(L)と膜厚み方向の長さ(d)との比がL/d=0.5~3の範囲に入るボイドの数が60%以上であることを確認した。
・膜横方向の長さ10μm以上500μm以下のマクロボイドの総断面積が膜断面積の60%以上であることを確認した。
2 表面層(a)
25,45 細孔
3 マクロボイド層
31 マクロボイド
32 隔壁
35 孔
4 表面層(b)
Claims (20)
- 表面層(a)、表面層(b)、及び前記表面層(a)と前記表面層(b)との間に挟まれたマクロボイド層、を有する多孔質ポリイミド膜であって、
前記マクロボイド層は、前記表面層(a)及び(b)に結合した隔壁と、前記隔壁並びに前記表面層(a)及び(b)に囲まれた、膜平面方向の個数平均孔径が10μm~500μmである複数のマクロボイドとを有し、
前記マクロボイド層の前記隔壁の厚みが、0.1μm~50μmであり、
前記表面層(a)及び(b)の各々の厚みが、0.1μm~50μmであり、
前記表面層(a)及び(b)がそれぞれ、面積平均開口径20μm以上の複数の細孔を有し、
前記表面層(a)及び(b)の前記細孔が前記マクロボイドに連通しており、
前記表面層(a)の面積平均開口径Aと前記表面層(b)の面積平均開口径Bとが、下記の関係:
0.80≦A/B≦1.25
を満たし、
前記表面層(a)の表面開口率が5%以上であり、かつ前記表面層(b)の表面開口率が10%以上である、多孔質ポリイミド膜。 - 前記表面層(a)の個数平均開口径が20μm以上200μm以下であり、
前記表面層(b)の個数平均開口径が30μm以上200μm以下である、
請求項1に記載の多孔質ポリイミド膜。 - 総膜厚が5μm~500μmであり、かつ空孔率が50%~95%である、請求項1又は2に記載の多孔質ポリイミド膜。
- ガーレー値が1秒以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の多孔質ポリイミド膜。
- パームポロメーターで測定したときの平均流量孔径が5~200μmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の多孔質ポリイミド膜。
- 前記マクロボイド層の隔壁の厚みが1μm~15μmであり、並びに前記表面層(a)及び(b)の厚みがそれぞれ0.5μm~10μmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の多孔質ポリイミド膜。
- 前記多孔質ポリイミド膜を膜平面方向に対して垂直に切断したときの断面において、膜平面方向の個数平均孔径が10μm~500μmのマクロボイドの断面積が膜断面積の50%以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の多孔質ポリイミド膜。
- 前記多孔質ポリイミド膜を膜平面方向に対して垂直に切断したときの断面において、前記マクロボイドの総数の60%以上が、膜平面方向の長さ(L)と膜厚み方向の長さ(d)との比(L/d)0.5~3を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の多孔質ポリイミド膜。
- ガラス転移温度が200℃以上であるか、又は明確なガラス転移温度が観察されない、請求項1~8のいずれか一項に記載の多孔質ポリイミド膜。
- 全光線透過率が25%以上99%以下で、かつヘイズが60%以上95%以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の多孔質ポリイミド膜。
- 請求項1~10のいずれか一項に記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法であって、
ポリアミック酸と有機溶媒とを含むポリアミック酸溶液をフィルム状に流延し、水と良溶媒とを必須に含む凝固溶媒に浸漬又は接触させて、ポリアミック酸の多孔質膜を作製する工程、及び
前記工程で得られたポリアミック酸の多孔質膜を熱処理してイミド化する工程、
を含み、
前記良溶媒は、30℃における前記ポリアミック酸の溶解度が水よりも高い溶媒であり、
前記凝固溶媒中の前記良溶媒の比率が15質量%以上である、多孔質ポリイミド膜の製造方法。 - 前記良溶媒のSP値が、10(cal/cm3)0.5以上13.5(cal/cm3)0.5以下である、請求項11に記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
- 前記良溶媒が、20℃の前記良溶媒100gに対して前記ポリアミック酸が10g以上溶解する溶媒である、請求項11又は12に記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
- 前記良溶媒が、N-メチル-2-ピロリドン、N、N-ジメチルアセトアミド、及びN、N-ジメチルホルムアミドからなる群から選択される1種以上である、請求項11~13のいずれか一項に記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
- 前記凝固溶媒中の前記良溶媒の比率が15質量%~20質量%であり、前記凝固溶媒中の貧溶媒及び非溶媒の合計比率が80質量%~85質量%である、請求項11~14のいずれか一項に記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
- 前記凝固溶媒中の前記良溶媒の比率が15質量%~20質量%であり、前記凝固溶媒中の水の比率が80質量%~85質量%である、請求項15に記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
- 前記ポリアミック酸溶液が、極限粘度1.0~3.0のポリアミック酸3~60質量%と、有機溶媒40~97質量%とからなり、
前記有機溶媒が、N-メチル-2-ピロリドン、N、N-ジメチルアセトアミド、及びN、N-ジメチルホルムアミドからなる群から選択される1種以上である、請求項11~16のいずれか一項に記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。 - 前記ポリアミック酸が、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物からなる群から選ばれる少なくとも一種のテトラカルボン酸二無水物と、ベンゼンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル及びビス(アミノフェノキシ)フェニルからなる群から選ばれる少なくとも一種のジアミンとから得られる、請求項11~17のいずれか一項に記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
- 前記熱処理が、前記ポリアミック酸の多孔質膜を250℃以上まで昇温させることを含む、請求項11~18のいずれか一項に記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
- 前記熱処理を、200℃以上の温度域での昇温速度230℃/分以上にて行う、請求項19に記載の多孔質ポリイミド膜の製造方法。
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