JP2018053099A - ポリイミドゲル状組成物、ポリイミド多孔質体、その製造方法、断熱材 - Google Patents
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Abstract
Description
即ち、本発明は、以下の事項に関する。
本発明に用いるポリイミド前駆体は、前記一般式(1)で示される反復単位からなり、式中、Bはテトラカルボン酸成分に起因する4価のユニットである。また、Aはジアミン成分に起因する2価のユニットである。ポリイミド前駆体を構成するユニットについて以下に詳述する。
本発明に用いるポリイミド前駆体の良溶媒としては、ポリイミド前駆体を溶解するものであれば特に限定されないが、具体的にはアミド系溶媒が挙げられる。アミド系溶媒の例としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−エチル−2−ピロリドン(NEP)、ピリジン、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)等を挙げる事が出来る。これらの良溶媒は、それぞれ単体で用いてもよいし、二種以上の混合物として用いても構わない。
本発明に用いるポリイミド前駆体の非溶媒は、ポリイミド前駆体のイミド化の進行に伴う溶媒への溶解性の低下による相分離を制御する為に用いられる。非溶媒を用いない場合も、イミド化に伴い一部の組成のポリイミドは上記良溶媒に不溶となるが、一般的には物理架橋に伴うゲル化が中心であり、有色透明なゲルが生成する。この場合、ゲルの網目構造は非常に細かい為、常圧乾燥等では毛細管力によるゲルの収縮を抑制出来ず、高い空孔率のポリイミド多孔質体を得ることは困難である。一方、非溶媒を適度に加える事で、ポリイミド前駆体の段階では溶媒と相溶している状態から、イミド化触媒及び脱水剤の添加によってイミド化が進行するにつれて混合溶媒への溶解性が低下し、物理架橋の進行と同時に相分離が誘起される。この場合、得られるゲルは一般的に有色半透明から有色不透明のものであり、常圧乾燥等の条件でもゲルの収縮を抑制可能な相分離構造を持つポリイミドゲル状組成物が得られる。
本発明では、化学イミド化によりポリイミド前駆体をイミド化する。具体的にはイミド化触媒と脱水剤をポリイミド前駆体に混合する事で、イミド化を促進し、相分離及びゲル化を誘起する事で高次構造が制御されたポリイミドゲルを得ることが出来る。イミド化触媒としては、トリメチルアミン、トリエチレンジアミン等の脂肪族第3級アミン、ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン、イソキノリン、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、イミダール、ベンズイミダゾール等の複素環第3級アミン等が挙げられるが、臭気や反応性の観点からイソキノリンやメチルピリジン、イミダゾール等がより好ましい。脱水剤としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等の脂肪族酸無水物、無水安息香酸、無水フタル酸等の芳香族酸無水物等が挙げられるが、脂肪族酸無水物が好ましく、無水酢酸がより好ましい。
本発明のポリイミドゲル状組成物は、ポリイミド前駆体と、ポリイミド前駆体の良溶媒と、前記ポリイミド前駆体の非溶媒と、イミド化触媒、及び脱水剤を少なくとも混合することで得られる。より具体的には、ポリイミド前駆体の良溶媒及び非溶媒からなる溶液を調整し、その中にイミド化触媒、及び脱水剤を加える事でポリイミドゲル状組成物が得られる。
本発明のポリイミドゲル状組成物には、必要に応じて補強材を添加することが出来る。補強材としては、ポリイミドゲル状組成物を補強する効果のあるものであれば特に限定されないが、特に繊維状物質やそれからなる織布又は不織布等が好ましい。より具体的には、高分子繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、又は生重合体繊維等からなる織布又は不織布等が挙げられる。補強材を添加する場合、イミド化触媒及び脱水剤を混合前又は混合後に、ドープが流動性を保っている間に添加することが好ましい。なお、織布や不織布を補強材として用いる場合は、イミド化触媒及び脱水剤を混合後、ドープが流動性を保っている間に織布や不織布に含浸させて複合させる事が好ましい。
本発明では、上記ポリイミドゲル状組成物を乾燥させることで、ポリイミド多孔質体を得ることが出来る。乾燥方法としては、公知の手法を用いる事が出来るが、例えば、常圧乾燥、超臨界乾燥、凍結乾燥等が用いられる。本発明のポリイミドゲル状組成物は、あらかじめ非溶媒を加えることで、相分離によって高次構造が制御され、非溶媒を加えなかった場合よりも毛細管力による収縮に耐えやすい構造となっている。そのため、溶媒置換後、常圧乾燥させる方法であっても、高い空孔率を有する多孔質体を得ることが可能である。超臨界乾燥や凍結乾燥等での乾燥も可能であるが、コスト的観点から溶媒置換後、常圧乾燥させる方法がより好ましい。
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)
パラフェニレンジアミン(PPD)
N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)
二塩基酸エステル:No.23エステル(DBE):三協化学株式会社製
イソキノリン
無水酢酸
得られたポリイミド多孔質体の多孔構造を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。試料を液体窒素中で破断した断面にスパッタリングにより金を蒸着して観察を行った。測定にはJEOL社製Carry Scope JCM−5700を用いた。
所定の大きさに切り取った多孔質体の面積、厚み、及び質量を測定し、目付質量から密度及び空孔率を下記一般式(2)、(3)によって求めた。
密度(g/cm3)=w/S×d (一般式2)
空孔率(%)=(1−(w/S×d)/D)×100 (一般式3)
(式中、Sは多孔質体の面積、dは厚み、wは測定した質量、Dはポリイミド緻密体の推定密度をそれぞれ意味する。ポリイミド緻密体の推定密度はs−BPDA/ODAの場合、1.37g/cm3とし、s−BPDA/PPDの場合、1.47g/cm3として計算した。)
撹拌羽、窒素導入管、排気管を取り付けた500mlのガラス製セパラブルフラスコにODA12.16g及びDMAc270gを投入し、撹拌混合した。さらにs−BPDA約17.84gを徐々に加えながら撹拌し、室温で48時間混合してs−BPDA/ODAからなるポリイミド前駆体のDMAc溶液(ポリイミド前駆体固形分約10.0wt%)を調整した。
撹拌羽、窒素導入管、排気管を取り付けた500mlのガラス製セパラブルフラスコにPPD8.09g及びNMP120gを投入し、撹拌混合した。さらにs−BPDA約21.91gを徐々に加えながら撹拌し、室温で48時間混合してs−BPDA/PPDからなるポリイミド前駆体のNMP溶液(ポリイミド前駆体固形分約20.0wt%)を調整した。
製造例1で得られたポリイミド前駆体のDMAc溶液10gと、DMAc3gと、DBE7gと、イソキノリン0.522g(ポリイミド前駆体の−COOHに対して1モル当量)を混合し均一になるまで攪拌した。さらに、無水酢酸0.413g(ポリイミド前駆体の−COOHに対して1モル当量)を加え、THINKY社製あわとり練太郎(ARE−250)を用いて2000rpmで2分間攪拌、2200rpmで2分間脱泡を行い、均一になるように攪拌、脱泡操作を行った。得られた混合溶液をテフロン(登録商標)製のシャーレに移し、湿気が入らないように密閉した状態で、室温で1日静置して、ポリイミドゲル状組成物を得た。得られたポリイミドゲル状組成物をシャーレから取り出し、過剰量のエタノール中に浸漬し、8時間毎にエタノールを交換しながら24時間溶媒置換を行った。さらに、過剰量のヘプタン中に浸漬し、8時間毎にヘプタンを交換しながら24時間溶媒置換を行い、室温、常圧で24時間乾燥させた後、110℃で2時間乾燥させてポリイミド多孔質体を得た。得られたポリイミド多孔質体の特性を表1に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を図1に示す。非溶媒であるDBEを適度に加える事でイミド化に伴う相分離による高次構造形成と、イミド化に伴う物理架橋によるゲル化を制御し、高い空孔率の多孔質体が得られることが示された。
表1に示す組成比となるように、追加するDMAc及びDBEの量を変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリイミドゲル状組成物を作成し、さらに同様の溶媒置換、乾燥方法を用いてポリイミド多孔質体を得た。得られたポリイミド多孔質体の特性を表1に示す。非溶媒であるDBEの量を制御することで、得られる多孔質体の空孔率を制御可能であることが示された。
製造例2で得られたポリイミド前駆体のNMP溶液5gと、DMAc5gと、DBE10gと、イソキノリン0.642g(ポリイミド前駆体の−COOHに対して1モル当量)を混合し均一になるまで攪拌した。さらに、無水酢酸0.507g(ポリイミド前駆体の−COOHに対して1モル当量)を加え、THINKY社製あわとり練太郎(ARE−250)を用いて2000rpmで2分間攪拌、2200rpmで2分間脱泡を行い、均一になるように攪拌、脱泡操作を行った。得られた混合溶液をテフロン(登録商標)製のシャーレに移し、湿気が入らないように密閉した状態で、室温で1日静置して、ポリイミドゲル状組成物を得た。得られたポリイミドゲル状組成物をシャーレから取り出し、過剰量のエタノール中に浸漬し、8時間毎にエタノールを交換しながら24時間溶媒置換を行った。さらに、過剰量のヘプタン中に浸漬し、8時間毎にヘプタンを交換しながら24時間溶媒置換を行い、室温、常圧で24時間乾燥させた後、110℃で2時間乾燥させてポリイミド多孔質体を得た。得られたポリイミド多孔質体の特性を表1に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を図2に示す。ポリイミド前駆体の組成をs−BPDA/PPDに変更した場合も、s−BPDA/ODA組成程でないものの、高い空孔率の多孔質体が得られることが示された。
非溶媒であるDBEを添加せず、表1に示す組成比となるようにDMAcを追加した以外は、実施例1と同様の方法でポリイミドゲル状組成物を作成し、さらに同様の溶媒置換、乾燥方法を用いてポリイミド多孔質体を得た。得られたポリイミド多孔質体の特性を表1に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を図3に示す。非溶媒であるDBEを添加しない場合、溶媒置換後の常圧乾燥ではゲルの収縮を抑制出来ず、高い空孔率の多孔質体は得られなかった。
非溶媒であるDBEを添加せず、表1に示す組成比となるようにDMAcを追加した以外は、実施例3と同様の方法でポリイミドゲル状組成物を作成し、さらに同様の溶媒置換、乾燥方法を用いてポリイミド多孔質体を得た。得られたポリイミド多孔質体の特性を表1に示す。また、得られた多孔質体の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を図4に示す。非溶媒であるDBEを添加しない場合、溶媒置換後の常圧乾燥ではゲルの収縮を抑制出来ず、高い空孔率の多孔質体は得られなかった。
製造例1で得られたポリイミド前駆体のDMAc溶液10gと、DMAc6gと、DBE9.5gと、イソキノリン0.522g(ポリイミド前駆体の−COOHに対して1モル当量)を混合し均一になるまで攪拌した。さらに、無水酢酸0.413g(ポリイミド前駆体の−COOHに対して1モル当量)を加え、THINKY社製あわとり練太郎(ARE−250)を用いて2000rpmで2分間攪拌、2200rpmで2分間脱泡を行い、均一になるように攪拌、脱泡操作を行った。得られた混合溶液をポリプロピレンとポリエステルからなる複合不織布(シンサレート:3M社製)に含浸させ、湿気が入らないように密閉した状態で、室温で1日静置して、高分子繊維からなる不織布で補強されたポリイミドゲル状組成物を得た。得られたポリイミドゲル状組成物を過剰量のエタノール中に浸漬し、8時間毎にエタノールを交換しながら24時間溶媒置換を行った。さらに、過剰量のヘプタン中に浸漬し、8時間毎にヘプタンを交換しながら24時間溶媒置換を行い、室温、常圧で24時間乾燥させた後、110℃で2時間乾燥させてポリイミド多孔質体を得た。得られたポリイミド多孔質体の特性を表1に示す。高分子繊維からなる不織布で補強した場合も、補強材無しの場合と同等の密度を有する多孔質体が得られることが示された。また、補強材を用いた多孔質体は、補強材を用いなかった場合と比較して柔軟性に富み、断熱材等の用途に好適な繊維強化ポリイミド多孔質体が得られることが示された。
ポリプロピレンとポリエステルからなる複合不織布の代わりに、グラスウール(24kg/cm3、厚み1cm)を用いた以外は実施例4と同様の方法で、グラスウール強化ポリイミドゲル状組成物を作成し、さらに同様の溶媒置換、乾燥方法を用いてグラスウール強化ポリイミド多孔質体を得た。得られたポリイミド多孔質体の特性を表1に示す。ガラス繊維からなる不織布で補強した場合も、補強材無しの場合と同等の密度を有する多孔質体が得られることが示された。また、補強材を用いた多孔質体は、補強材を用いなかった場合と比較して柔軟性に富み、断熱材等の用途に好適な繊維強化ポリイミド多孔質体が得られることが示された。
Claims (12)
- 下記一般式(1)で示される反復単位からなるポリイミド前駆体と、ポリイミド前駆体の良溶媒と、前記ポリイミド前駆体の非溶媒と、イミド化触媒、及び脱水剤を少なくとも混合してなることを特徴とするポリイミドゲル状組成物。
- 前記ポリイミド前駆体の非溶媒が、グリコールジエーテル系溶媒、カルボン酸ジエステル系溶媒、グリコールモノエーテルアセテート系溶媒のいずれか一種、若しくは二種以上の混合物であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミドゲル状組成物。
- 前記ポリイミド前駆体の非溶媒の混合量が、全溶媒量に対して5wt%以上、80wt%未満であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載のポリイミドゲル状組成物。
- 一般式(1)中、Bで示される構造の一部に下記化学式(2)で示される構造を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリイミドゲル状組成物。
- 一般式(1)中、Aで示される構造の一部に下記化学式(3)で示される構造を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリイミドゲル状組成物。
- 前記ポリイミド前駆体の良溶媒が、アミド系有機溶媒であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリイミドゲル状組成物。
- 前記のアミド系有機溶媒がN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドのいずれか一種、若しくは二種以上の混合物であることを特徴とする請求項6に記載のポリイミドゲル状組成物。
- 補強材が添加されたことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリイミドゲル状組成物。
- 請求項8に記載の補強材が、高分子繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、又は生重合体繊維からなる織布又は不織布から選ばれることを特徴とする、ポリイミドゲル状組成物。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリイミドゲル状組成物を乾燥させたことを特徴とするポリイミド多孔質体。
- 請求項10に記載のポリイミドゲル状組成物の乾燥方法が、溶媒置換後、常圧乾燥させる方法であることを特徴とする、ポリイミド多孔質体の製造方法。
- 請求項10又は11に記載の方法で得られたポリイミド多孔質体を用いた断熱材。
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