JP2010059441A - 架橋剤を含むラテックス組成物およびその架橋成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】カルボキシル基含有重合体ラテックスにアルミニウム原子に結合する水酸基を2個以上含有する有機金属架橋剤を含有することを特徴とするカルボキシル基含有重合体ラテックス組成物、その架橋成形体及びカルボキシル基封鎖剤で表面処理された架橋成形体。
【選択図】なし
Description
ディップ成形用ラテックスの代表的なものとして、天然ゴムラテックスがある。天然ゴムラテックス製品は、良好な物理的、化学的性質を有するが、製品に含有される天然タンパク質の溶出に伴い、使用者にアレルギー反応を起こす事例があり、タンパク質を含まない合成ゴムラテックスを使用する製品の生産が増加する傾向にある。
合成ゴムラテックスの代表例は、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBRゴム)などの合成ゴムラテックスであるが、燃焼排ガス中にアクリロニトリルに由来するシアン化水素等の有害物質が発生する可能性も指摘され、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、(特開2001−192918号:特許文献1)、カルボキシル基含有アイオノマー系エラストマー等の新たなラテックス原料も注目されている。
天然ゴムの場合には、イオウと、酸化亜鉛などの加硫促進剤を添加し、天然ゴム分子の二重結合間にイオウの共有結合を形成する。いわゆるイオウ加硫では、天然ゴムの場合には天然ゴム粒子内でも架橋構造が形成されると考えられており、優れた製品物性が発現される。
ジエン系カルボキシル化合成ゴムラテックスの場合にも、天然ゴムの場合と同様のイオウ加硫法が一般的に採用されている。しかし、添加される各薬品の役割は、天然ゴムラテックスの加硫の場合とはかなり異なる。すなわち、酸化亜鉛は、水と接触すると、水酸基が表面に生成し、この水酸基がラテックス粒子のカルボキシル基と反応し、(P.H.Starmer、Plastics and Rubber Processing and Applications 、9(1988)209-214:非特許文献1)、ペンダント半塩を形成し、さらに加熱乾燥過程を経過するとクラスターイオン架橋を形成すると考えられている。この亜鉛架橋により、引張り強度、伸び、硬さ等の表面的な測定物性は決定されており、この点はイオウ架橋が製品物性を決定している天然ゴムラテックスの場合との大きな相違点である。
ここで、クラスターイオン架橋とは、カルボキシル基がクラスターを形成し、亜鉛の2価のカチオンを、クラスターを形成しているカルボキシル基全体で中和している状態を言う。この構造の特徴から、ゴムが伸ばされると、架橋がずれることになり、ストレスを掛けると、短時間の間に応力緩和(クリープ)が起こり、長時間使用すると、永久歪が大きくなって、ゴムが伸びてしまう(N.D.Zakharov、 Rubber Chem. and Tech、 Rubber Division Acs. Akron、US. Vol36、no3 568-574:非特許文献2)。
一方、イオウは、ブタジエンに由来する二重結合間を共有結合で架橋するが、引張り強度、伸び、硬さ等の測定物性に対する影響は小さい。しかし、ゴム製品の耐久性、クリープ耐性、耐水性、耐溶媒性等、ゴム製品の重要な性質を支配しており、これがカルボキシル化合成ゴムラテックスにおいてもイオウ加硫法が多く採用されている理由である。
また、近年では、手袋などのディップ成形品に含まれる加硫促進剤に対する遅延型アレルギーに基づく接触皮膚炎の発症も増加傾向にあり、加硫促進剤を使用しないディップ成形品の開発が求められている。
さらには、食品分野においては、ゴム手袋から溶出する重金属である亜鉛溶出量の規制が強化される傾向にある。
ところで、イオウ、加硫促進剤を使用しない架橋法としては、本発明者等のアルミン酸塩等を使用する方法があるが(特許3635060:特許文献2)、アルミニウムは3価のカチオンとして働くため、ゴム製品が硬くなる欠点がある。
また、特開2003−165814(特許文献3)には、含イオウ加硫剤、加硫促進剤、酸化亜鉛をいずれも実質的に含まないディップ成形用組成物が提案されているが、本発明者等の検討によると、この組成物を使用したディップ製品は、クリープ耐性、耐水性、耐溶剤性が低く、粘着性が強いという問題点がある。
また、特開2005-97217(特許文献5)は、アクリル酸またはその誘導体を重合してなるアニオン性水溶性高分子化合物の多価カチオン性化合物によるイオン架橋体を成分とする美白ゲルシートを開示しているが、多価カチオン性化合物としてジヒドロキシアルミニウムアミノアセテートが記載されているが、この架橋剤もアニオン性水溶性高分子化合物のゲル化剤であり、24時間静置してゲル化している。したがって、特許文献4と同様、本発明にかかるカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックスの架橋剤を開示するものではない。
さらに、特開2005-15514(特許文献6)は、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体を具体例とするアイオノマー樹脂とカルボキシル基との反応性を有する水溶性チタン化合物を必須成分として含有する水分散型防錆塗料用組成物を開示しており、その水溶性チタン化合物として、ジヒドロキシチタンラクテートが記載されている。しかし、係るアイオノマー樹脂は、2価または3価の金属イオンで中和できる特殊な樹脂であり、本発明にかかるカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックスの架橋剤を開示するものではない。
そこで、本発明者は、金属原子に結合した水酸基を二個有する有機金属化合物に着目した。もし、酸化亜鉛と同様に、金属原子に結合した水酸基がカルボキシル基と反応するとすれば、係る有機金属化合物はカルボキシル基を架橋するはずである。
本発明者は、係る推論を実証すべく、酸化亜鉛を添加したカルボキシル基を含有するラテックスに、アルミニウム原子に2個の水酸基が結合したジヒドロキシ有機アルミニウム金属化合物またはジヒドロキシ有機チタン化合物を添加し、ディップ成形品を作製したところ、係るジヒドロキシ有機金属化合物がカルボキシル基を架橋することを見出した。しかも驚いたことに、製品は、イオウ加硫製品に匹敵する耐久性、クリープ耐性、耐水性に優れたディップ成形品であった。しかも、製品の剥離性も大幅に改善されていた。
ここに、酸化亜鉛によるクラスターイオン架橋の本質的な欠点であるクリープ耐性、耐水性の不足は、ジヒドロキシ有機金属化合物の使用により、解決することができた。ジヒドロキシ有機金属化合物の水酸基は、カルボキシル基と金属エステル結合を形成すると考えられる。
これに伴い、含イオウ加硫物、加硫促進剤を含まない低アレルギー性ディップ製品が得られ、本発明が完成した。
また、イオウ加硫の場合と同様、ジヒドロキシ有機金属化合物は2価の架橋であるから、柔軟で風合いの良い製品が得られる。
さらに、上記ジヒドロキシ有機アルミニウム金属化合物単独添加でも、実用可能な物理的性能を有する製品を製造することができる。
さらに、チタン原子に結合した2個の水酸基を有する化合物も、2価の架橋剤であり、カルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックスを効果的に架橋することが判明した。
本発明に係る有機金属架橋剤を使用すると、水素結合を引き起こすカルボキシル基に結合するので、製品の粘着性が大幅に低下するが、その効果は、疎水性の高い構造を有する架橋剤の方が効果が高い。そこで、本発明者は、疎水性の高い有機金属架橋剤の合成を行った。係る架橋剤を使用すると、ディップ架橋成形体の粘着性は大幅に改善された。
まず、カルボン酸のアルミニウム・ジ・ソープを添加した。カルボン酸のジ・ソープは、水酸基を1個しか有していないので、架橋剤としては機能しないが、カルボキシル基には結合し、さらに疎水性構造を2個有するので、疎水性が高くなる。したがって、係るラテックス組成物の架橋成形体の非粘着性は、大幅に向上した。
疎水性基を有するカルボン酸は、通常、水溶性カルボン酸塩としてラテックスに添加されるが、ロジンエマルジョンサイズ剤の様に、エマルジョン化して添加することもできる。
また、スチレン重合体、メタクリル酸アルキル重合体等の有機填料も架橋成形体の疎水性を高め、製品の非粘着性化に貢献する。
以上のように、本発明の有機金属架橋剤と疎水性構造を有する化合物をジエン系ゴムラテックスに添加することにより、有機金属架橋剤が疎水性構造を持たない場合であっても、内添のみで製品の非粘着性化が可能になった。
その結果、クリープ耐性、耐水性が良好な成形体を得ることができた。
係る界面活性剤のブリードアウトを防止するためには、保護コロイドとして作用する水溶性ポリマーを添加することが効果的である。
水溶性ポリマーを使用すると、クリーミングという現象が起こることが知られているが、クリーミングが起こると、ラテックス層と水層が分離する。この現象から分かるように、水溶性ポリマーをラテックスに添加すると、いわゆる保護コロイドを形成し、ラテックス粒子とフリーの界面活性剤が隔離され、リーチング等の製造工程で界面活性剤の放出が促進され、界面活性剤のブリードアウトが抑制される。このため、界面活性剤またはそのカルシウム塩によるいわゆるヌメリ感がなくなり、粘着性も減少する。
本発明者は、有機アルミニウム金属系架橋剤を添加したラテックス組成物に、疎水化処理したエチルヒドロキシエチルセルロースを少量(0.15部)添加して、成形体を形成したところ、ヌメリ感が減少し、製品表面にさっぱり感が出てきた。さらに、製品の剥離性、耐水性が向上し、粘つき感が減少した。
本発明者は、成形体膜同士の癒着は、水素結合等の化学結合によると考えるが、カルボキシル基封鎖剤で全てのカルボキシル基を封鎖すると、ラテックスの架橋が進みすぎて、ゴム的性質を失ってしまう。そこで、本発明者等は、成形体の表面のカルボキシル基を封鎖すれば、膜同士の癒着は防止できると考え、アルミン酸塩または水酸化アルミニウムゲル添加系で、製品のカルボキシル基封鎖剤による製品の表面処理を提案した(特許文献2)が、アルミニウムが3価のカチオンとして作用するため、製品が硬くなり、アルミン酸塩または水酸化アルミニウムゲル添加量を制限される欠点があり、カルボキシル基封鎖剤表面処理では、効果が十分に発揮されなかった。
本有機金属架橋剤系では、製品が硬くなる欠点はなく、単独でも剥離性が良好であることもあり、カチオン性カルボキシル基封鎖剤表面処理で製品の非粘着性化を効果的に実現できた。
浸漬製品の粘着性は、カルシウム濃度の高い型側がフィルムのラテックス側より低い。したがって、カチオン性カルボキシル基による表面処理の必要性は、浸漬型側が低く、反対側が高い。そこで、両面の表面処理をすることも、片側の表面処理を省くことも可能である。
ここで、製品の非粘着性とは、後述する加熱非粘着性試験で合格することを言うが、実際には、製造後使用までのほぼ6ヶ月間、製品表面が相互に接着しないことを言う。
(1)カルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックスと、金属原子に結合した水酸基を二個又はそれ以上含有する有機金属架橋剤とを含む、カルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物。
(2)さらに疎水性物質、疎水性基含有カルボン酸またはその塩、疎水性基含有カルボン酸アルミニウム・ジ・ソープまたはトリ・ソープ、および疎水性基含有カルボン酸金属石鹸から選ばれた一または二以上の有機化合物を含有することを特徴とする、(1)のカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物。
(3)疎水性物質が、ワックス類、合成ワックス類、ポリオレフィン系ワックス類、低分子量ポリオレフィン、低密度ポリエチレン、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、石油樹脂、ロジンエステル、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、アクリル系樹脂、メタクリル酸アルキル重合樹脂、およびスチレン系樹脂、表面サイズ剤から選ばれた一または二以上の有機化合物であることを特徴とする(2)のカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物。
(4)疎水性基含有カルボン酸またはその塩が、ロジン類、強化ロジン、不均化ロジン、ダイマー酸、石油樹脂サイズ剤、アルケニルコハク酸、トール油脂肪酸、高級脂肪酸、二塩基酸、多塩基酸またはそれらの塩であることを特徴とする(2)のカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物。
(5)さらに水溶性ポリマーを含有することを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかのカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物。
(6)水溶性ポリマーが、タマリンドガム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、疎水化エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド・ランダム共重合体、水溶性ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコールであることを特徴とする(5)のカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物。
(7)水酸化マグネシウムおよび/または水酸化カルシウムをさらに含有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかのカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物。(8)金属原子がアルミニウムまたはチタンであることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかのカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物。
(9)(1)〜(8)のいずれかのカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物を架橋および成形してなる架橋成形体。
(10)カチオン性カルボキシル基封鎖剤で表面処理されたことを特徴とする(9)の架橋成形体。
(11)カチオン性カルボキシル基封鎖剤が、三価以上のカチオン性金属イオン架橋剤、カチオン性水酸化アルミニウムゾル、二価のジルコニウム化合物、第4級アンモニウム塩基を有するスチレン系表面サイズ剤、カチオン性エピクロルヒドリン系樹脂、ポリアミドエポキシ樹脂、およびキトサン第4級アンモニウム塩基を有するスチレン系表面サイズ剤、カチオン性エピクロルヒドリン系樹脂、キトサン、カチオン性スチレンアクリル共重合体系樹脂、カチオン性スチレンアクリルエマルジョン系樹脂、カチオン性アクリル共重合体系樹脂、カチオン性オレフィン・マレイン酸系樹脂、カチオン性ウレタン系樹脂、またはカチオン性長鎖アルキル含有ポリマー剥離剤である、(10)の架橋成形体。
(12)浸漬製品であることを特徴とする(9)〜(11)のいずれかの架橋成形体。
(13)下記式[1]、[2]、[3]、[4]および[5]の群から選ばれた構造を有する一または二以上の有機金属化合物からなることを特徴とするジエン系ゴムラテックス有機金属架橋剤。
係る架橋剤を含有するラテックス組成物を利用すると、イオウ、加硫促進剤を含有しない低アレルギー性ディップ成形品を得ることができ、医療、食品分野、電子部品分野等で広く利用することができる。また、紙加工分野等に新たな用途を開発することができる。
本発明に利用されるゴムラテックスは、カルボキシル基含有ジエン系ラテックスである。カルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックスとしては、カルボキシル変性NBR、カルボキシル変性SBR、カルボキシル変性MBR等が挙げられるが、特に、エチレン性不飽和カルボン酸系単量体0.1〜20重量%、共役ジエン系単量体30〜80重量%およびこれらと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体10〜69.5重量%を乳化重合して得られたジエン系ゴムラテックスであることが好ましい。
ここで、エチレン性不飽和カルボン酸系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマール酸、イタコン酸、マレイン酸などが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。特にメタクリル酸が好ましい。
また、共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。特に1,3−ブタジエンが好ましい。
さらに、共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体としては、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどシアン化ビニル系単量体、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジルなどの不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体、アクリルアミド、メタクリロアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドなどのエチレン系不飽和カルボン酸アミド系単量体、メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ビニルピリジンなどのエチレン系不飽和アミン系単量体、酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類などが挙げられ、そのうちの1種または2種以上用いることができる。
そのような化合物としては、以下に示すように、カルボン酸のカルボキシル基に結合したアルミニウム原子に2個の水酸基が付いたジヒドロキシアルミニウム構造を有する化合物が挙げられる。この2個の水酸基が、ポリマーのカルボキシル基を架橋する。したがって、イオウと同様、二価の架橋剤である。
上記ジヒドロキシアルミニウム有機化合物は、一般にはカルボン酸のジヒドロキシアルミニウム塩として得られるが、それに限定されるものではない。カルボン酸は、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、脂環式カルボン酸等種類を問わない。また、アミノ基や水酸基などの置換基を有するカルボン酸でもよい。
具体例としては、オクチル酸(C8)ジヒドロキシアルミニウム、オクタン酸(C8)ジヒドロキシアルミニウム、カプリン酸(C10)ジヒドロキシアルミニウム、ナフテン酸ジヒドロキシアルミニウム等がある。カルボン酸には、アミノ基、水酸基等の官能基を有するカルボン酸のジヒドロキシアルミニウム塩も本発明の架橋剤として使用することができる。具体例としては、グリシンジヒドロキシアルミニウムやリジンジヒドロキシアルミニウムがある。
二塩基性カルボン酸のジヒドロキシアルミニウム構造(カルボン酸のモノ・ソープに相当する)の場合には、ジヒドロキシアルミニウム構造が2個存在すると考えられる(化学構造2)。
多塩基性カルボン酸のジヒドロキシアルミニウム構造の場合には、多塩基性に相当するジヒドロキシアルミニウム構造が複数生成する。
二塩基性カルボン酸の2個のジヒドロキシアルミニウム構造を有するカルボン酸アルミニウム塩を合成するためには、二塩基性カルボン酸1モルあたり、理論上2モルの水溶性アルミニウム塩が必要である。
環状ポリマー
化学構造2〜4において、R1は飽和もしくは不飽和の2価脂肪族基、または2価芳香族基を示す。
ジヒドロキシビス(ヒドロキシカルボキシラート)チタンは、特開2000-351787(特許文献7)の実施例1に従って合成することができる。例えば、ジヒドロキシビス(ヒドロキシイソブチラート)チタンは、イソプロパノールにα-ヒドロキシイソ酪酸を溶解させ、モル比2:1に相当するイソプロポキシチタンをゆっくり滴下する。滴下終了後室温で撹拌を続け、白色懸濁液になってから撹拌を止め、ロータリーエバポレーターでイソプロパノールを溜去してジヒドロキシビス(ヒドロキシイソブチラート)チタンを得る。
同様にして、グリコール酸、乳酸、α-ヒドロキシ酪酸、α-ヒドロキシイソ酪酸、β−ヒドロキシプロピオン酸、β−ヒドロキシ酪酸、β−ヒドロキシイソ酪酸、γ−ヒドロキシ酪酸、グリセリック酸、タートロニック酸、リンゴ酸、酒石酸、メソ酒石酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸から該当するジヒドロキシビス(ヒドロキシカルボキシラート)チタンが合成できる。
ジヒドロキシチタンラクテートは、以下の化学構造5(R2=CH3、R3=H)に示すように、チタン金属原子に結合した2個の水酸基を有する。この化合物をアンモニアを加えてからカルボキシル化ジエン系ゴムラテックスに添加したところ、ラテックスは長期間安定に存在し、架橋剤として上記アルミニウム金属化合物と同様の効果を示した。
使用できるサイズ剤には、まず、アビエチン酸及びその異性体を主成分とするロジン、水素化ロジン、不均化ロジン、ロジンをマレイン化またはフマール化した強化ロジンなどがある。
また、合成サイズ剤として知られるアルケニルコハク酸塩は、界面活性剤、合成サイズ剤として使用されており、これらは、C12、C16、C18のオレフィンオリゴマーに無水マレイン酸を付加し、アルカリで加水分解して製造される。これらは、ジ・カルボン酸である。
ロジン酸ジヒドロキシアルミニウムやアルケニルコハク酸系アルミニウム化合物など、上記サイズ剤の化学構造1〜4の構造を有する有機アルミニウム金属化合物も本発明の架橋剤として使用できる。
有機金属架橋剤の添加量は、架橋剤の分子量が大幅に異なるので、一概に言えないが、ラテックス100重量部当り0.3部から2部が好ましく、0.5部から1.5部がより好ましい。
有機金属架橋剤が酸性を示す場合、カルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物の安定性のために、アンモニア等を用いて組成物をアルカリ性、好ましくはpH9〜10にしておくことが好ましい。
すなわち、本発明のカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物は、さらに疎水性物質、疎水性基含有カルボン酸またはその塩、疎水性基含有カルボン酸アルミニウム・ジ・ソープまたはトリ・ソープまたは疎水性基含有カルボン酸金属石鹸から選ばれた一または二以上の有機化合物を含有するものであってもよい。
疎水性物質、疎水性基含有カルボン酸またはその塩、疎水性基含有カルボン酸アルミニウム・ジ・ソープまたはトリ・ソープまたは疎水性基含有カルボン酸金属石鹸の添加量は特に制限されないが、ラテックス100重量部あたり0.5〜2.0重量部含有させることが好ましく、0.5〜1.0重量部含有させることがより好ましい。
疎水性基含有カルボン酸またはその塩としては、ロジン類、強化ロジン、不均化ロジン、ダイマー酸、石油樹脂サイズ剤、アルケニルコハク酸、トール油脂肪酸、高級脂肪酸、二塩基酸または多塩基酸またはそれらの塩が挙げられる。なお、疎水性基含有カルボン酸としては、水溶性の塩として添加することが有効であるが、ロジンエステルの様にエマルジョン化されているものは、酸として添加できる。
また、カルボン酸のアルミニウム・ジ・ソープまたは各種疎水性基含有カルボン酸金属石鹸は、架橋成形体に耐水性、剥離性を付与し、製品の非粘着性化に寄与する。
水溶性ポリマーとしては、天然物系のタマリンドガム、カラギーナン、半合成系のカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、疎水化エチルヒドロキシエチルセルロース、合成系のポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド・ランダム共重合体、水溶性ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール等が挙げられる。クリーミングを起こさない水溶性ポリマーでも効果がある。
しかし、水溶性ポリマーを添加すると、組成物の粘度が上昇するので、粘度が40cps以下になるよう、ポリマーの重合度、添加量、ラテックス濃度等を選択する必要がある。また、多くの場合、ラテックス原料よりも剛直な分子であるから、製品の物性に影響が少ない範囲で選択することが好ましい。
実験では、タマリンドガム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、疎水化エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド・ランダム共重合体、水溶性ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール等が良好であったが、ラテックス原料の性質によっても異なる。
水溶性ポリマーの添加量は特に制限されないが、ラテックス100重量部あたり0.05〜0.25重量部含有させることが好ましく、0.1〜0.2重量部含有させることがより好ましい。
また、以下の分散水酸化カルシウムの調製と同様にして、水酸化マグネシウム懸濁液を調製し、コロイダル水酸化マグネシウムの代わりに使用することができる。
水酸化カルシウムは、コロイダル水酸化マグネシウムと同様に、水溶性カルシウム塩と水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウム等の強アルカリを反応させて、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムが共存する水酸化カルシウムとして製造することができる。さらに、生石灰を消和し、生成した水酸化カルシウムに水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムを添加し、分散機で分散することにより、同等の効果を持つ水酸化カルシウムを調整することが出来る。水酸化カルシウムの添加量は、モル当量でコロイダル水酸化マグネシウムの場合と同程度である。
なお、上記組成物には、必要に応じて、老化防止剤、防腐剤、分散剤、増粘剤などを適宜添加することができる。
なお、本発明に係る組成物をディップ(浸漬)成形用組成物として使用する場合には、含硫黄加硫剤および加硫促進剤については実質的に含まないことが好ましく、さらにこれらの物質については、ディップ成形用組成物中に全く含まれないことが特に好ましいが、具体的には、いずれの物質についても、ジエン系ゴムラテックス(固形分)100重量部に対して0.2重量部以下の使用が好ましい。
なお、上記各成分を添加して本発明の組成物を得る際には、各成分を添加する順番やタイミングは特に制限されず、各成分を同時に添加してもよいし、いくつかの成分を添加した後、しばらく時間をおいてから残りの成分を添加してもよい。
有機系表面処理剤としては、カチオン性石油樹脂、カチオン性アルキルケテンダイマーが有効である。
有機高分子系表面処理剤としては、第4級アンモニウム塩基を有するスチレン系表面サイズ剤、カチオン性エピクロルヒドリン系樹脂(ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、ポリアミドアミンエピクロルヒドリン樹脂、ポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、ポリアミド尿素ホルムアルデヒド樹脂等)、ポリアミドエポキシ樹脂、およびキトサン第4級アンモニウム塩基を有するスチレン系表面サイズ剤、カチオン性エピクロルヒドリン系樹脂(ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、ポリアミドアミンエピクロルヒドリン樹脂、ポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、ポリアミド尿素ホルムアルデヒド樹脂等)、キトサン等のカチオン性ポリマーが有効である。
また、表面サイズ剤等として使用されるカチオン性高分子、例えばカチオン性スチレンアクリル共重合体系樹脂、カチオン性スチレンアクリルエマルジョン系樹脂、カチオン性アクリル共重合体系樹脂、カチオン性オレフィン・マレイン酸系樹脂、カチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性長鎖アルキル含有ポリマー剥離剤等のカチオン性高分子は、カルボキシル基封鎖剤として機能する共に、剥離剤としても機能する。
表面処理剤の使用濃度は特に制限されないが、例えば、0.1〜2.0%、好ましくは0.2〜1.0%の溶液が使用できる。
なお、表面処理は架橋成形体の両面に施すことが好ましい。
一方、酸化亜鉛のみを配合したディップ製品は、短時日のうちに製品が伸び、さらに汗によって耐水性が低下し、白化した。
このような事実から、本発明に係るカルボキシル基架橋剤は、含イオウ加硫剤を置換し得る事が明らかである。さらに本発明によるディップ成形品の顕著な特徴は、製品の粘着性が大幅に低減したことである。
また、このようにして作製したディップ成形品は、実質的にイオウ、加硫促進剤を含有しないので、低アレルギー性である。さらに、重金属である亜鉛を実質的に含有しない製品の製造も可能であり、医療分野、食品分野、電子部品製造分野等、広い分野で使用できるディップ成形品の製造が可能である。
以下、本明細書で使用した新規架橋剤の合成法を記載する。尚、係る合成法または架橋剤は、一例を示すに過ぎず、本発明は、係る合成法または架橋剤に限定されるものではない。
試薬オクチル酸を水酸化ナトリウムに溶解し、オクチル酸ナトリウム5%水溶液を調製し、予め65℃に加熱する。
別途、オクチル酸ナトリウム1モルに対し、1.05モルに相当する硝酸アルミニウムを秤量し、硝酸アルミニウム水溶液を調製する。水溶液の量は、オクチル酸ジヒドロキシアルミニウム生成理論量が1%になるように調整する。該硝酸アルミニウム水溶液も予め65℃に加熱する。
上記硝酸アルミニウム水溶液に、オクチル酸ナトリウム5%水溶液を撹拌しながらゆっくり滴下する。滴下後、65℃で1時間、撹拌を続ける。オクチル酸ジヒドロキシアルミニウムの生成した懸濁液をそのまま静置し、翌日、上澄みを除き、ろ過する。硝酸アルミニウムが残存しない程度まで水で洗浄し、エチルアルコールで置換・洗浄後、風乾して製品とした。生成物のアルミニウム含有量を測定したところ、13.4%であり、ほぼ理論量のアルミニウム含有量(13.2%)に相当する。したがって、本物質は、カルボン酸のモノ・ソープである。
ロジン酸カリウム5%水溶液を調製し、以後上記1と同様にしてロジン酸ジヒドロキシアルミニウムを合成した。本物質は、ロジン酸のモノ・ソープであり、前記化学構造1に該当する。
1)豊年製油社製二塩基カルボン酸、セバシン酸ナトリウム(SA−NA)5%水溶液を調製し、予め65℃に加熱する。
セバシン酸ナトリウム1モルに対し、2.05モルに相当する硝酸アルミニウムを秤量し、上記同様に硝酸アルミニウム水溶液を調製し、予め、65℃に加熱する。
上記硝酸アルミニウム水溶液に、セバシン酸ナトリウム5%水溶液を撹拌しながらゆっくり滴下し、滴下後65℃で1時間、撹拌を続ける。その後、上記と同様にして、前記化学構造2のジヒドロキシアルミニウム構造を2個有するセバシン酸テトラヒドロキシアルミニウム粉末を得る(セバシン酸アルミニウム石鹸(I))。本物質は、二塩基カルボン酸のモノ・ソープに相当し、前記化学構造2に該当する。
2)セバシン酸ナトリウム1モルに対して、半量の1.025モルに相当する硝酸アルミニウム5%水溶液を、セバシン酸ナトリウム水溶液に添加した以外は、1)に記載した方法でセバシン酸アルミニウム石鹸を合成する(セバシン酸アルミニウム石鹸(II))。なお、セバシン酸ナトリウムの濃度は、アルミニウム石鹸濃度が理論量で1%になるように調製する。
本アルミニウム石鹸(セバシン酸アルミニウム石鹸(II))は、硝酸アルミニウム添加量が1)の半量であり、セバシン酸アルミニウムのジ・ソープに相当し、前記化学構造3および/または4の構造を有すると考えられる。いずれにしても、アルミニウム原子に結合した水酸基を2個または2個以上有する。
3)セバシン酸ナトリウム1モルに対し、1.525モルに相当する硝酸アルミニウム5%水溶液を、セバシン酸ナトリウム溶液に添加した以外は、1)に記載した方法でセバシン酸アルミニウム石鹸を合成する(セバシン酸アルミニウム石鹸(I)とセバシン酸アルミニウム石鹸(II)の混合物、セバシン酸アルミニウム石鹸(III))。なお、セバシン酸ナトリウムの濃度は、アルミニウム石鹸濃度が理論量で1%になるように調製する。
本アルミニウム石鹸(セバシン酸アルミニウム石鹸(III))は、硝酸アルミニウム添加量が1)と2)の中間量であり、前記化学構造2、3、4の構造を有する化合物の混合物であると考えられる。
ハリマ化成社製二塩基カルボン酸、DIACID(トール油脂肪酸とアクリル酸の反応生成物)を水酸化カリウム液に溶解し、5%水溶液を調製した。
以後、上記3.1)と同様にして、前記化学構造2に該当するジヒドロキシアルミニウム構造を2個有するDIACIDテトラヒドロキシアルミニウム石鹸を得る。本物質は、二塩基酸のモノ・ソープに相当する。
星光PMC社製アルケニル無水コハク酸(GS−L、C12ASA)を等量の水酸化カリウム水溶液に三等分して投入すると、発熱しながら加水分解する。最終的に20%アルケニルコハク酸カリウム塩溶液を調製した。このC12アルケニルコハク酸カリウム溶液を5%に希釈し、65℃に調整する。
C12アルケニルコハク酸カリウム1モルに対して、1.525モルに相当する硝酸アルミニウム5%水溶液をC12アルケニルコハク酸カリウム溶液に添加した以外は、3.3)に記載した方法でC12アルケニルコハク酸アルミニウム石鹸を合成する。
本アルミニウム石鹸は、二塩基酸1モルあたり、1.5モル相当の硝酸アルミニウムの添加であり、前記化学構造2、3、4に該当する化合物が混在するものと考えられる。
試薬アジピン酸を等量の水酸化カリウム水溶液に添加し、5%アジピン酸カリウム溶液を調製した。このアジピン酸カリウム液に、反応で生成する硝酸を中和するに足る水酸化カリウムをさらに添加し、50℃に加熱する。
アジピン酸カリウム1モルに対して、2.05モルに相当する水で希釈した硝酸アルミニウム水溶液を、水酸化カリウムを添加したアジピン酸カリウム液に撹拌しながらゆっくり滴下し、50℃で1時間、撹拌しながら反応を続ける。反応後、水酸化カリウムでpH5.5に調整し、遠心分離機でジヒドロキシアルミニウム構造を2個有するアルミニウム化合物を分離する(アジピン酸テトラヒドロキシアルミニウム)。なお、アジピン酸カリウムの濃度は、アルミニウム石鹸濃度が理論量で1%になるように調製する。
本アルミニウム石鹸は、二塩基酸1モルに対し、2モルの硝酸アルミニウムの添加であり、前記化学構造2に相当するアルミニウム原子に2個の水酸基を有する構造が2個あると考えられる。
グリシンジヒドロキシアルミニウムは協和化学より入手した(グリシナール)。
ジヒドロキシチタンラクテートは松本製薬工業社より入手した(オルガチックスTC−310)。
乳酸ジヒドロキシアルミニウムは多木化学より入手した(M−160P)。
カルボキシル基含有ジエン系合成ゴムラテックスは多様であるが、本実施例では、その代表であるカルボキシル変性NBRを使用した。本発明は、カルボキシル変性NBRに限定されるものではないことは当然である。
カルボキシル変性NBRとしては、日本エイアンドエル社製、NK‐223を使用した。NK‐223の諸物性を以下に記載する。
固形分 44-46%
pH 8.8-9.5
粘度/mPa・s 最大300
粒子径/nm 100-150
比重 約1
Tg/℃ -25
結合アクリロニトリル量/% 28
メタクリル酸量/% 6
乳化システム アニオン性
塩化マグネシウム・6水塩の5%溶液を調製し、常温で水酸化カリウム溶液に撹拌しながら添加する。塩化マグネシウム・6水塩の量は、ラテックス固形分当たりの添加当量である。
水酸化カリウムの量は、塩化マグネシウムを中和する当量に対し、1.0部及び1.5部過剰になるように調整する。生成するコロイダル水酸化マグネシウムの濃度は、懸濁液をラテックスに添加し、ラテックス組成物のラテックス濃度が、所定の濃度になるように水酸化カリウム液に水を添加して調整する。
使用したNBRラテックスの場合、過剰の水酸化カリウムが1.0部の場合、ラテックス組成物のpHは、ほぼ、9.3程度である。過剰の水酸化カリウムが1.5部の場合、ラテックス組成物のpHは、ほぼ、9.7程度である。
水酸化カリウム溶液を塩化マグネシウム・6水塩溶液に添加する場合にも同様にしてコロイダル水酸化マグネシウムを調製する。
他の水溶性マグネシウム塩を使用する場合にも、同様にしてコロイダル水酸化マグネシウム懸濁液を調製する。
また、以下の水酸化カルシウムの調製と同様にして、水酸化マグネシウム懸濁液を調製し、コロイダル水酸化マグネシウムの代わりに使用することができる。
水酸化カルシウムの調製
定法どおり、生石灰を消和して25%水酸化カルシウム懸濁液を調製し、その後所定量の水酸化カリウム添加して、ボールミルで24時間分散し、水酸化カルシウム懸濁液を調製する。
ラテックスに、所定の有機金属架橋剤を添加し、1日熟成する。その後、酸化亜鉛を添加する場合には、バイエル活性亜鉛華を所定量添加する。さらに、調製液pHを所定のpHにするようにアンモニアを添加し、組成物ラテックス濃度を33%に調整した。
その結果、6ヶ月経過しても沈殿物の生成、粘度の上昇等の現象が認められなかった。即ち、カルボキシル変性NBRに本架橋剤を添加した組成物は、長期間安定である。
尚、必要に応じ、酸化亜鉛を先に添加し、1日熟成後有機金属架橋剤を添加する場合もある。
ラテックスに、所定の有機金属架橋剤を添加し、1日熟成する。その後、上記のようにして調製したコロイダル水酸化マグネシウムを10分間撹拌を継続し、その後、30分静置した後、上記有機金属架橋剤を添加したラテックスに所定添加量になるように添加する。なお、上述の有機金属架橋剤とコロイダル水酸化マグネシウムの添加順序は、逆にすることができる。
上記1)、2)または3)で調製したラテックス組成物に、水溶性ポリマーを所定量添加する。水溶性ポリマーの水への溶解が遅い場合には、界面活性剤を添加して溶解した。本実験では、花王製エマルゲン1108を使用したが、本発明は、係る界面活性剤に限定されるものではない。
別に凝固液として濃度15%の硝酸カルシウム水溶液を調製し、80℃で予備乾燥しておいた手袋用モールドを2秒間浸漬し、引き上げた後、水平にして回転下に乾燥(80℃×2分)させた。引き続き、下記比較例及び実施例のディップ成形組成物に手袋用モールドを2秒間浸漬し、引き上げた後、水平にして回転下で乾燥(80℃×2分)させた。次にその手袋用モールドを40℃の温水に3分間浸漬して、洗浄した後、120℃で20分間加熱処理して手袋用モールドの表面に固形皮膜物を得た。最後にこの固形皮膜物を手袋用モールドから剥がし、手袋形状のディップ成形品を得た。
定法により、各ディップ成形品の引張り強度、伸びを測定した。
1)耐久性および耐水性試験
手袋の指を鋏で切断して、指に連続着用し、耐久性、クリープ耐性、耐水性等の着用適性テストを行った。耐久性は、指に連続着用し、日数で表した。クリープ耐性が不足し、ゴム膜が膨張して伸びた場合には、試験を中止した。耐水性は、着用時のゴム膜白化の程度で判定した。白化が激しいものを×とした。白化の程度に応じ、△、○、◎に分類した。2)剥離性試験
プラスチックフィルムの間に2枚の手袋を重ね、170×210mm断面、3kgの加重をかけ、1週間放置し、手袋が剥離するかどうか剥離試験を行った。剥離できずに膜が癒着したものを×、剥離するものの、力を必要とするものを△、剥離に困難性がないものを○、剥離が容易なものを◎とした。
3)非粘着性試験
手袋同士が互いに接するように、2枚に重ねた手袋の上下にガラス板を置き、90℃、60分間、乾燥器で加熱した。手袋を取り出し、手袋が剥離できずに膜が癒着したものを×、剥離するものの、力を必要とするものを△、剥離に困難性がないものを○、剥離が容易なものを◎とした。
比較例1
NK-223、100重量部(固形分換算)にアンモニア0.4部(3%アンモニア水溶液)、バイエル活性亜鉛華1.2部を添加した。その後、脱イオン水を加えてラテックス濃度を33%に調製し、比較用ディップ成形用組成物とした。
比較例2
NK-223、100重量部(固形分換算)にアンモニア0.4部(3%アンモニア水溶液)、を添加した。その後、脱イオン水を加えてラテックス濃度33%に調製し、比較用ディップ成形用組成物とした。
ディップ成形用組成物の作製
実施例1〜4
NK-223、100重量部(固形分換算)にアンモニア0.5部(3%アンモニア水溶液)、一般式(1)の構造を1個有する化合物、オクチル酸ジヒドロキシアルミニウムを0.25、0.5、0.75、1.0部各々添加し、翌日活性亜鉛華(バイエル:酸化亜鉛)1.2部を添加した。
その後、脱イオン水を加えてラテックス濃度を33%に調製し、ディップ成形用組成物とした。
実施例5〜22
実施例5〜22は、表1に示すようにして、原料ラテックスに各種有機金属架橋剤を添加して、ディップ成形用組成物とした。
各成形体の試験結果を表1に示す。
比較例1は、酸化亜鉛単独の架橋であり、典型的なクラスターイオン架橋系である。結果を見ると、引張り強度、伸び等、表面的な測定物性は、実施例の結果と大差はないが、クリープ耐性が低いために、着用試験でゴムが伸びてしまい、2日で耐久性試験を中止した。特に目立つ特徴は、数時間の着用で、手の汗によりゴム膜が白化することであり、耐水性が低いことが分かる。剥離性試験の結果は、ゴム膜が完全に癒着してしまい、無理に剥がそうとすると、膜が破断してしまう。
実施例1から7は、前記化学構造1のジヒドロキシアルミニウム構造を有する有機アルミニウム金属架橋剤であり、成形体の引張り強度、伸びは、比較例1と大差がない。イオウ加硫の場合と同様に、二価の架橋剤の特徴がよくでている。
着用後のゴム膜の白化は、実施例1のオクチル酸ジヒドロキシアルミニウム0.25部添加で認められなくなっている。
着用後のゴム膜の伸び(クリープ耐性)は、実施例1で僅かに認められる。そこで、耐久性試験としては、1週間で着用を打ち切った。
実施例2から4については、膜の白化、伸びはほとんど認められない。着用耐久性は、連続着用で2週間以上(実際には2週間着用しても全く問題がなかったので、試験を2週間で打ち切った。)で、実用上全く心配のない水準であった。
剥離試験は、実施例1では、ゴム膜相互が粘着し、剥離に困難性があるが、いずれの架橋剤でも添加率0.5部以上では、剥離が可能であり、添加率の上昇に伴って剥離が良好になる。
実施例8は、セバシン酸のモノ・ソープに相当する前記化学構造2に相当するジヒドロキシアルミニウム構造を2個有するセバシン酸アルミニウム石鹸(I)を1.0部添加した有機アルミニウム金属架橋剤単独添加系であるが、強度も発現し、さらに耐久性、クリープ耐性、耐水性等、着用適性はきわめて良好であり、剥離性も優れている。有機アルミニウム金属架橋剤が、カルボキシル基を架橋する明白な証拠である。
実施例9〜19は、ジ・カルボン酸系アルミニウム石鹸架橋剤の実施例である。耐久性、クリープ耐性、耐水性、剥離性は、かなり良好であるが、伸びが多少小さく、引張り強度が高めである。
耐水性は、炭素鎖の長いものの方が、良い傾向にある。架橋後の架橋剤の疎水性が影響しているものと考えられる。剥離性もそれに伴って良好である。
実施例11は、セバシン酸のモノ・ソープに相当する前記化学構造2に相当するジヒドロキシアルミニウム構造を2個有するセバシン酸テトラヒドロキシアルミニウム石鹸(I)を合成後、洗浄、乾燥の工程を省略し、アルミニウム石鹸の懸濁液を直接ラテックスに投入した実施例である。比較の対象となる実施例8と比較すると、アンモニアの添加量が0.2部増加しただけで、成形体膜の性質その他に目立った影響は出ていない。合成後、懸濁液の上澄みを除去すれば、アンモニアの添加量もさらに減少するであろう。
このことは、ラテックス成形体の製造現場で有機アルミニウム系架橋剤を合成し、ラテックスに添加して架橋成形体を製造できることを示している。
実施例20は、側鎖にアミノ基を有するジヒドロキシ有機アルミニウム金属架橋剤(グリシンジヒドロキシアルミニウム)の実施例である。
実施例21は、ジヒドロキシチタンラクテート(松本製薬工業社製、オルガチックスTC−310)の実施例である。本化合物もチタンに結合した2個の水酸基があり、ジヒドロキシ有機アルミニウム金属化合物と同様に、カルボキシル変性ラテックスの効果的な架橋剤である。
実施例22は、ジヒドロキシビス(ヒドロキシイソブチラート)チタンの実施例である。本化合物もチタンに結合した2個の水酸基を有する。
実施例23〜27
C12アルケニルコハク酸アルミニウム石鹸0.3部(実施例23)、ロジン酸ジヒドロキシアルミニウム0.3部(実施例24)、C12アルケニルコハク酸アルミニウム石鹸1.0部(実施例25)、ロジン酸ジヒドロキシアルミニウム1.0部(実施例26)、またはジヒドロキシチタンラクテート0.3部(実施例27)をNK-223 100重量部に添加し、翌日、コロイダル水酸化マグネシウム(実施例23,24,27では0.4部、実施例25,26では0.2部(MgO換算))を添加し、ディップ成形用組成物とした。ラテックス濃度は、30%に調整した。
実施例23〜27のディップ成形品の試験結果を表2に示す。
実施例23と24は、コロイダル水酸化マグネシウムに少量の有機アルミニウム金属架橋剤を添加すると、コロイダル水酸化マグネシウム系のクリープ耐性、耐水性が改善されることを示している。
実施例25と26は、有機アルミニウム金属架橋剤単独添加では、引張り強度が、低めであるが、コロイダル水酸化マグネシウムの添加で、十分な強度が得られることを示している。
実施例27のジヒドロキシチタンラクテートの場合も、有機アルミニウム金属架橋剤の場合と同様である。
これらの実験から、重金属である亜鉛化合物を使用せずに、ラテックス成形体が得られることがわかる。
即ち、無イオウ、無加硫促進剤、無亜鉛華の環境にやさしい製品の製造が可能である。
実施例28
ジヒドロキシアルミニウム構造を2個有するセバシン酸テトラヒドロキシアルミニウム石鹸(I)0.75部とアンモニア0.5部をNK-223 100重量部に添加し、翌日酸化亜鉛1.2部を添加する。次に、疎水化エチルヒドロキシエチルセルロース(アクゾノーベル社製、ベルモコルEHM-200、エマルゲン1108、0.5%液に溶解)0.15部を添加し、ディップ成形用組成物とした。ラテックス濃度は、30%に調整した。実施例29
水溶性ポリマーとして、水溶性ポリビニルアセタール(エスレックKW−3、積水化学社製)0.15部を添加した以外、実施例28と同様にして、ディップ成形用組成物を作製した。
実施例30
水溶性ポリマーとして、タマリンドガム(グリロイド3S、大日本製薬社製)0.15部を添加した以外、実施例28と同様にして、ディップ成形用組成物を作製した。
実施例31
水溶性ポリマーとして、PVA(デンカポバールB−20)0.15部を添加した以外、実施例28と同様にして、ディップ成形用組成物を作製した。
実施例32
水溶性ポリマーとして、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイドランダムポリマー(アルコックスEP-10,明成化学)0.1部を添加した以外、実施例28と同様にして、ディップ成形用組成物を作製した。
水溶性ポリマーをラテックスに添加すると、いわゆる保護コロイドを形成し、ラテックス粒子とフリーの界面活性剤が隔離され、リーチング等の製造工程で界面活性剤の放出が促進され、界面活性剤のマイグレーションが抑制される。このため、界面活性剤またはそのカルシウム塩によるいわゆるヌメリ感がなくなり、粘着性も減少する。
特に、疎水性のある水溶性ポリマーを使用すると、製品の表面にさっぱり感が出てくる。表3より、本実施例で使用した水溶性ポリマーは、添加量が少ないにもかかわらず、いずれも製品の剥離性、耐水性、粘つき感が減少している。
実施例33
モノ・ソープとジ・ソープが混在するC12アルケニルコハク酸アルミニウム石鹸1.0部とアンモニア0.2部をNK-223 100重量部に添加し、翌日コロイダル水酸化マグネシウム0.2部(MgO換算)を添加する。次に、疎水化エチルヒドロキシエチルセルロース(アクゾノーベル社製、ベルモコルEHM-200、エマルゲン1108、0.5%液に溶解)0.15部を添加し、ディップ成形用組成物とした。ラテックス濃度は、30%に調整した。
実施例34
水溶性ポリマーとして、水溶性ポリビニルアセタール(エスレックKW‐3、積水化学社製)0.15部を添加した以外、実施例33と同様にして、ディップ成形用組成物を作製した。
実施例35
水溶性ポリマーとして、タマリンドガム(グリロイド3S、大日本製薬社製)を0.15部添加した以外、実施例33と同様にして、ディップ成形用組成物を作製した。
実施例36
水溶性ポリマーとして、PVA(デンカポバールB-20)を0.15部添加した以外、実施例33と同様にして、ディップ成形用組成物を作製した。
実施例28〜36のディップ成形品の試験結果を表3に示す。
水溶性ポリマーをラテックスに添加すると、いわゆる保護コロイドを形成し、ラテックス粒子とフリーの界面活性剤が隔離され、リーチング等の製造工程で界面活性剤の放出が促進され、界面活性剤のマイグレーションが抑制される。このため、界面活性剤またはそのカルシウム塩によるいわゆるヌメリ感がなくなり、粘着性も減少する。
特に、疎水性のある水溶性ポリマーを使用すると、製品の表面にさっぱり感が出てくる。本実施例で使用した水溶性ポリマーは、添加量が少ないにもかかわらず、いずれも製品の剥離性、耐水性、粘つき感が減少している。
実施例37〜40
ジヒドロキシアルミニウム構造を2個有するセバシン酸テトラヒドロキシアルミニウム石鹸(I)0.75部をNK-223 100重量部に添加し、翌日、酸化亜鉛1.2部およびアンモニア0.5部を添加して、ディップ成形用組成物を作製した。
成形品を作製する際、実施例37は、硝酸アルミニウム(Al2O3換算)が0.5%液になるよう硝酸カルシウム凝固液に溶解し、その凝固液で成形品を作製した(型側カチオン性カルボキシル基封鎖剤処理)。成形膜のリーチング後、80℃で1分乾燥後、ポリマロン360(荒川化学社製、第4級アンモニウム塩基を有するスチレン系表面サイズ剤)1%液に成形膜を浸漬し(外表面側カチオン性カルボキシル基封鎖剤処理)、90℃で2分乾燥し、さらに1分リーチングを行い、以後、通常どおり、加熱乾燥を行った。
実施例38は、凝固液に硝酸ジルコニウムを0.5%(ZrO2換算)溶解した以外は、実施例37と同様にして、表面処理した成形膜を作製した。
実施例39は、凝固液にポリアミドアミンエピクロルヒドリン縮合反応生成物(WS4020、星光PMC社製)0.5%、外表面側処理にポリ水酸化アルミニウムクロライド(アルファイン83、大明化学社製)1%(Al2O3換算)液を使用して、表面処理した成形膜を作製した。
実施例40は、水溶性キトサン(大日精化工業社製)0.5%を硝酸カルシウム凝固液に溶解し、外表面側処理に水溶性キトサン1%液を使用して、表面処理した成形膜を作製した。凝固液に性基と酸溶解した以外は、実施例37と同様にして、表面処理した成形膜を作製した。
実施例41〜43
ジヒドロキシアルミニウム構造を2個有するセバシン酸テトラヒドロキシアルミニウム石鹸(I)0.75部をNK-223 100重量部に添加し、翌日、酸化亜鉛1.2部、アンモニア0.5部と疎水化エチルヒドロキシエチルセルロース(アクゾノーベル社製、ベルモコルEHM-200、エマルゲン1108、0.5%液に溶解)0.15部を添加し、ディップ成形用組成物とした。ラテックス濃度は、30%に調整した。
実施例41は、硝酸アルミニウムが0.5%(Al2O3換算)液になるよう硝酸カルシウム凝固液に溶解し、その凝固液で成形品を作製した。成形膜のリーチング後、80℃で1分乾燥後、ポリマロン360(荒川化学社製、第4級アンモニウム塩基を有するスチレン系表面サイズ剤)、1%液に成形膜を浸漬し、90℃で2分乾燥し、さらに1分リーチングを行い、以後、通常どおり、加熱乾燥を行った。
実施例42は、凝固液に硝酸ジルコニウムを0.5%(ZrO2換算)溶解した以外は、実施例41と同様にして、表面処理した成形膜を作製した。
実施例43は、凝固液にカチオン性ポリアミドアミンエピクロルヒドリン縮合反応生成物(WS4020、星光PMC社製)0.5%、外表面側処理にポリ水酸化アルミニウムクロライド1%(Al2O3換算)液を使用して、表面処理した成形膜を作製した。
試験結果を表4に示す。
尚、本実験ではカチオン性カルボキシル基封鎖剤処理を成膜工程で行ったが、製品を型から外した後に製品をカチオン性カルボキシル基封鎖剤液に浸漬して処理することができる。
実施例44〜47
C12アルケニルコハク酸アルミニウム石鹸1.0部をNK-223 100重量部に添加し、翌日、コロイダル水酸化マグネシウム0.2部(MgO換算)を添加し、ディップ成形用組成物とした。ラテックス濃度は、30%に調整した。
実施例44は、硝酸アルミニウムが0.5%(Al2O3換算)液になるよう硝酸カルシウム凝固液に溶解し、その凝固液で成形品を作製した。成形膜のリーチング後、80℃で1分乾燥後、ポリマロン360(荒川化学社製、第4級アンモニウム塩基を有するスチレン系表面サイズ剤)1%液に成形膜を浸漬し、90℃で2分乾燥し、さらに1分リーチングを行い、以後、通常どおり、加熱乾燥を行った。
実施例45は、凝固液に硝酸ジルコニウムを0.5%(ZrO2換算)溶解した以外は、実施例44と同様にして、表面処理した成形膜を作製した。
実施例46は、凝固液にカチオン性ポリアミドアミンエピクロルヒドリン縮合反応生成物(WS4020、星光PMC社製)0.5%、外表面側処理にポリ水酸化アルミニウムクロライド1%(Al2O3換算)液を使用して、表面処理した成形膜を作製した。
実施例47は、水溶性キトサン(大日精化工業社製)0.5%を硝酸カルシウム凝固液に溶解し、外表面側処理に水溶性キトサン1%液を使用して、表面処理した成形膜を作製した。
実施例48〜50
C12アルケニルコハク酸アルミニウム石鹸1.0部をNK-223 100重量部に添加し、翌日、コロイダル水酸化マグネシウム0.2部(MgO換算)を添加し、さらに、疎水化エチルヒドロキシエチルセルロース(アクゾノーベル社製、ベルモコルEHM-200、エマルゲン1108、0.5%液に溶解)0.15部を添加し、ディップ成形用組成物とした。ラテックス濃度は、30%に調整した。
実施例48は、硝酸アルミニウムが0.5%(Al2O3換算)液になるよう硝酸カルシウム凝固液に溶解し、その凝固液で成形品を作製した。成形膜のリーチング後、80℃で1分乾燥後、ポリマロン360(荒川化学社製、第4級アンモニウム塩基を有するスチレン系表面サイズ剤)、1%液に成形膜を浸漬し、90℃で2分乾燥し、さらに1分リーチングを行い、以後、通常どおり、加熱乾燥を行った。
実施例49は、凝固液に硝酸ジルコニウムを0.5%(ZrO2換算)溶解した以外は、実施例48と同様にして、表面処理した成形膜を作製した。
実施例50は、凝固液にカチオン性ポリアミドアミンエピクロルヒドリン縮合反応生成物(WS4020、星光PMC社製)0.5%、外表面側処理にアルミナゾル(アルミナゾル100、日産化学社製)1%(Al2O3換算)液を使用して、表面処理した成形膜を作製した。
実施例51〜54
NK−223、100重量部に、一般式(3)の構造を有するジヒドロキシチタンラクテート(松本製薬工業社製、オルガチックスTC−310)0.8部とアンモニア0.6部の混合物を添加し、翌日、コロイダル水酸化マグネシウム0.2部(MgO換算)を添加し、ディップ成形用組成物とした。ラテックス濃度は、30%に調整した。
実施例51は、ポリ水酸化アルミニウムクロライド(アルファイン83、大明化学社製)が0.5%(Al2O3換算)液になるよう硝酸カルシウム凝固液に溶解し、その凝固液で成形品を作製した。成形膜のリーチング後、80℃で1分乾燥後、ポリマロン360(荒川化学社製、第4級アンモニウム塩基を有するスチレン系表面サイズ剤)1%液に成形膜を浸漬し、90℃で2分乾燥し、さらに1分リーチングを行い、以後、通常どおり、加熱乾燥を行った。
実施例52は、凝固液に硝酸ジルコニウムを0.5%(ZrO2換算)溶解した以外は、実施例51と同様にして、表面処理した成形膜を作製した。
実施例53は、凝固液にカチオン性ポリアミドアミンエピクロルヒドリン縮合反応生成物(WS4020、星光PMC社製)0.5%、外表面側処理にポリ水酸化アルミニウムクロライド1%(Al2O3換算)液を使用して、表面処理した成形膜を作製した。
実施例54は、水溶性キトサン(大日精化工業社製)0.5%を硝酸カルシウム凝固液に溶解し、外表面側処理に水溶性キトサン1%液を使用して、表面処理した成形膜を作製した。
実施例44〜54のディップ成形品の試験結果を表5に示す。
実施例37〜54は、カルボキシル基封鎖剤によるディップ成形体の表面処理の実験である。
本発明者は、成形体膜同士の癒着は、水素結合等の化学結合によると考えるが、カルボキシル基封鎖剤で全てのカルボキシル基を封鎖すると、ラテックスの架橋が進みすぎて、ゴム的性質を失ってしまう。そこで、成形体の表面だけのカルボキシル基を封鎖すれば、膜同士の癒着は防止できると考えられる。そのために、製品の表面処理が有効である。
実施例37〜54の実験により、カルボキシル基封鎖剤による効果は認められるが、特に2価のカチオンに過ぎないジルコニウム化合物によっても、非粘着性化できることが分かった。
以下の実施例では、カルボキシ変性NBRとして、日本エイアンドエル社製NK−220を使用した。本ラテックスの結合メタクリル酸量は4.5%で、NK−223の6%に比べて少ない。
ラテックスの基本配合は、NK−220 100重量部にバイエル活性亜鉛華1.5部とアンモニア0.4部を配合し、その後、有機金属架橋剤と疎水性物質等を添加した。
有機金属架橋剤としては、水溶性の乳酸ジヒドロキシアルミニウム(多木化学、M−160P)と合成したアジピン酸テトラヒドロキシアルミニウムを使用した。有機金属架橋剤の添加量は、両者とも、ラテックス当たり、1.1部とした。
また、疎水性物質等の添加量は、0.75部とした。各疎水性物質の詳細は、表6に示す。
調製液のラテックス濃度は、30%とした。
ディップ成形品の製造は、手袋の場合とほぼ同じであるが、型は、径16mmの試験管をサンドブラストで砂打ちして使用した。また、凝固液の濃度は、硝酸カルシウム・4水塩450g/1000gとしたが、これはガラス型の凝固液保持力が小さいためである。
ガラス型を凝固液に2分浸漬し、ドライヤーで乾燥後、ラテックス調製液に10秒浸漬し、75℃で3分乾燥し、50℃のお湯で3分リーチングを行い、その後、95℃で3分、110℃で10分乾燥し、最後に生成した固形皮膜物を型から剥がし、指サック状のディップ成形品を得た。
本法の成形品の非粘着性試験は、生成した固形皮膜物を型から剥がす際、膜を型の上に巻き上げて外し、膜を巻き上げたまま乾燥機に入れ、90℃で60分乾燥する。その後、試料を乾燥機から取り出し、巻き戻るかどうかを試験する。容易に巻き戻れば◎、巻き戻れば○、抵抗はあるが、巻き戻れば△、巻き戻らなければ×とした。
実施例55〜56は、水溶性有機金属架橋剤(乳酸ジヒドロキシアルミニウム)または疎水性基を含有しない有機金属架橋剤(アジピン酸テトラヒドロキシアルミニウム)1.1部を添加し、ラテックス濃度30%の調製液を作製した。
実施例57〜68
実施例57〜68は、水溶性有機金属架橋剤(乳酸ジヒドロキシアルミニウム)または疎水性基を含有しない有機金属架橋剤(アジピン酸テトラヒドロキシアルミニウム)1.1部と各種疎水性化合物0.75部をNK−220 100重量部に添加し、ラテックス濃度30%の調製液を作製した。
係るディップ成形用組成物から作製した成形品の結果を表6に示す。
なお、用いた疎水性化合物は以下のとおりである。
実施例57:オクチル酸アルミニウム・ジ・ソープ(ホープ製薬:オクトープアルミA)実施例58:不均化ロジン(ハリマ化成:バンディスT-25K)
実施例59:C‐21ジ・カルボン酸(ハリマ化成:DIACID1550)
実施例60:C‐12アルケニルコハク酸カリウム(星光PMC:GS1945)
実施例61:パラフィンワックスと低分子量ポリエチレン混合物(日本精鑞:XEM5036)(融点、114℃、粒子径4μm)
実施例62:スチレン系重合体(サイデン化学:サイビノールPG‐1)(粒子径0.6〜0.7μm)
実施例63:メタクリル酸アルキル重合体(サイデン化学:サイビノールPG‐2)(粒子径3〜5μm)
実施例64:低分子量ポリエチレン(三井化学:ケミパールW4005)(粒子径0.6μm)
実施例65:エチレン系熱可塑性エラストマー(三井化学:ケミパールA100)(粒子径4μm)
実施例66:エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(三井化学:ケミパールV300)(粒子径6μm)
実施例67:低密度ポリエチレン(三井化学:ケミパールM200)(粒子径6μm)
実施例68:石油樹脂エマルジョン(東邦化学:TFE−22)
実施例69〜71は、活性亜鉛華の代わりに水酸化カリウム(大ラテックス1.5部)を添加して分散した水酸化カルシウム0.35部(MgO換算、CaO換算、0.49部)を添加し、さらに水溶性有機金属架橋剤(乳酸ジヒドロキシアルミニウム)1.0部と疎水性物質0.75部をNK−220 100重量部に添加し、ラテックス濃度30%の調製液を作製した。
係るディップ成形用組成物から作製した成形品の結果を表7に示す。
実施例69:C‐12アルケニルコハク酸カリウム(星光PMC:GS1945)
実施例70:石油樹脂エマルジョン(東邦化学:TFE−22)
実施例71:低分子量ポリエチレン(三井化学:ケミパールW4005)(粒子径0.6μm)
実施例55および56は、水溶性有機金属架橋剤および低分子量有機金属架橋剤のみを添加したラテックス組成物の成形品の品質である。引張強度、耐水性、耐久性、クリープ耐性は良好であるが、非粘着性が十分でない。
実施例57〜66は、水溶性乳酸ジヒドロキシアルミニウムに、各種の疎水性基含有化合物を添加した系である。引張強度、耐水性、耐久性、クリープ耐性が良好であるとともに、製品が非粘着性化している。
実施例67および68は、低分子で疎水性が乏しいアジピン酸テトラヒドロキシアルミニウムを架橋剤とした場合であるが、この架橋剤単独では非粘着性が劣るが、各種の疎水性基含有化合物を添加した系では、製品が非粘着性化している。
このように、有機金属架橋剤が疎水性構造を持たなくても、疎水性基含有化合物を添加することにより、製品を非粘着性化することができる。
また、実施例69〜71は、活性亜鉛華の代わりに水酸化カリウムを添加して分散した水酸化カルシウムを添加した系であるが、水溶性有機金属架橋剤と疎水性基含有化合物を添加した系では、製品が非粘着性化している。
さらに、上記組成物を紙等に内添、含浸、塗工することにより、耐ブロッキング性、耐水性、耐久性に優れた紙製品等を得ることができる。
Claims (11)
- カルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックスと、アルミニウム原子に結合した水酸基を二個以上含有する有機金属架橋剤とを含む、カルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物。
- さらにワックス類、合成ワックス類、ポリオレフィン系ワックス類、低分子量ポリオレフィン、低密度ポリエチレン、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、石油樹脂、ロジンエステル、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、アクリル系樹脂、メタクリル酸アルキル重合樹脂、およびスチレン系樹脂、表面サイズ剤から選ばれる疎水性物質、ロジン類、強化ロジン、不均化ロジン、ダイマー酸、石油樹脂サイズ剤、アルケニルコハク酸、トール油脂肪酸、高級脂肪酸、二塩基酸、多塩基酸から選ばれる疎水性基含有カルボン酸またはその塩、疎水性基含有カルボン酸アルミニウム・ジ・ソープまたはトリ・ソープ、および疎水性基含有カルボン酸金属石鹸から選ばれた一または二以上の有機化合物を含有することを特徴とする、請求項1に記載のカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物。
- さらにタマリンドガム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、疎水化エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド・ランダム共重合体、水溶性ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコールから選ばれる水溶性ポリマーを含有することを特徴とする、請求項1または2に記載のカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物。
- 水酸化マグネシウムおよび/または水酸化カルシウムをさらに含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物。
- 前記有機金属架橋剤を、該ラテックス100重量部当り0.3部〜2部含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載のカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物を架橋および成形してなる架橋成形体。
- 三価以上のカチオン性金属イオン架橋剤、カチオン性水酸化アルミニウムゾル、二価のジルコニウム化合物、第4級アンモニウム塩基を有するスチレン系表面サイズ剤、カチオン性エピクロルヒドリン系樹脂、ポリアミドエポキシ樹脂、およびキトサン第4級アンモニウム塩基を有するスチレン系表面サイズ剤、カチオン性エピクロルヒドリン系樹脂、キトサン、カチオン性スチレンアクリル共重合体系樹脂、カチオン性スチレンアクリルエマルジョン系樹脂、カチオン性アクリル共重合体系樹脂、カチオン性オレフィン・マレイン酸系樹脂、カチオン性ウレタン系樹脂、およびカチオン性長鎖アルキル含有ポリマー剥離剤から選ばれるカチオン性カルボキシル基封鎖剤で表面処理されたことを特徴とする請求項7記載の架橋成形体。
- 浸漬製品であることを特徴とする請求項7または8に記載の架橋成形体。
- 前記有機金属化合物を、該ラテックス100重量部当り0.3部〜2部用いることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
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