JP2009155634A - 架橋剤を含むラテックス組成物およびその架橋成形体ならびにラテックス架橋成形体用表面処理液 - Google Patents

架橋剤を含むラテックス組成物およびその架橋成形体ならびにラテックス架橋成形体用表面処理液 Download PDF

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Abstract

【課題】新規架橋剤を含むカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物を提供する。
【解決手段】カルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックスと、下記(a)〜(d)から選ばれた一またはそれ以上の化合物とを含む、カルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物。
(a)金属原子に結合した水酸基を二個又はそれ以上含有する有機金属架橋剤、
(b)カチオン性失活変性ポリアミン系樹脂、カチオン性失活ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、カチオン性失活ポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、カチオン性失活アミン基もしくは四級アンモニウム塩基含有ポリビニルアルコール、カチオン性失活アミン基もしくは四級アンモニウム塩基含有ポリアクリルアミド、カチオン性失活アミン基もしくは四級アンモニウム塩基含有炭水化物、または架橋性官能基が導入された、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールもしくは炭水化物系高分子、
(c)耐水化剤を添加した、アニオン性もしくはノニオン性ポリビニルアルコール、アニオン性もしくはノニオン性ポリアクリルアミド、またはアニオン性もしくはノニオン性炭水化物系高分子、
(d)カチオン化剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、カルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックスと、(a)カチオン性失活変性ポリアミン系樹脂、カチオン性失活ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、カチオン性失活ポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、カチオン性失活アミン基もしくは四級アンモニウム塩基含有ポリビニルアルコール、カチオン性失活アミン基もしくは四級アンモニウム塩基含有ポリアクリルアミド、カチオン性失活アミン基もしくは四級アンモニウム塩基含有炭水化物、または架橋性官能基が導入された、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールもしくは炭水化物、(b)耐水化剤または耐水性ポリマーを添加した、アニオン性もしくはノニオン性ポリビニルアルコール、アニオン性もしくはノニオン性ポリアクリルアミド、またはアニオン性もしくはノニオン性炭水化物、(c)耐水性ポリビニルアルコールおよび(d)カチオン化剤、から選ばれた一またはそれ以上の化合物とを含む、カルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物およびその架橋成形体に関する。
本発明はまた、(A)オレフィン系不飽和モノマーを構成モノマーとして含む共重合体からなるアニオン性表面サイズ剤(オレフィン系表面サイズ剤)およびスチレン系不飽和モノマーを構成モノマーとして含む共重合体からなるアニオン性表面サイズ剤からなる群より選ばれる表面サイズ剤と、(B)金属原子に結合した水酸基を二個又はそれ以上含有する有機金属架橋剤、カチオン性失活アミン系化合物、および水溶性水素結合形成剤、からなる群から選ばれる一種類以上の化合物を含む、ラテックス架橋成形体用表面処理液に関する。
ゴム手袋、指サック等の浸漬製品等は、安全衛生に対する関心の高まりから医療(院内感染、SARS感染予防など)、食品加工分野(O-157問題)および電子部品製造分野など各方面において広く使用されている。これらゴム手袋、指サック等の製造方法の1つとしてディップ成形法が挙げられる。ディップ成形法としては、木材、ガラス、陶磁、金属又はプラスチックなどから作られた型を予め凝固剤液に浸漬した後、天然ゴムラテックス組成物や合成ゴムラテックス組成物に浸漬するアノード凝着浸漬法や、型をラテックス組成物に浸漬した後、凝固液に浸漬するティーグ凝着浸漬法などが知られており、これらのディップ成形法により得られる成形物がディップ成形品である。
ディップ成形用ラテックスの代表的なものとして、天然ゴムラテックスがある。天然ゴムラテックス製品は、良好な物理的、化学的性質を有するが、製品に含有される天然タンパク質の溶出に伴い、使用者にアレルギー反応を起こす事例があり、タンパク質を含まない合成ゴムラテックスを使用する製品の生産が増加する傾向にある。
合成ゴムラテックスの代表例は、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBRゴム)などの合成ゴムラテックスであるが、燃焼排ガス中にアクリロニトリルに由来するシアン化水素等の有害物質が発生する可能性も指摘され、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)(特許文献1:特開2001−192918号)、カルボキシル基含有アイオノマー系エラストマー等の新たなラテックス原料も注目されている。
ディップ成形品には、高度な物性が要求される。高度な物性を発現する為には、ポリマー間に架橋構造を導入する必要がある。
天然ゴムの場合には、イオウと、酸化亜鉛などの加硫促進剤を添加し、天然ゴム分子の二重結合間にイオウの共有結合を形成する。いわゆるイオウ加硫では、天然ゴムの場合には天然ゴム粒子内でも架橋構造が形成されると考えられており、優れた製品物性が発現される。
ジエン系カルボキシル化合成ゴムラテックスの場合にも、天然ゴムの場合と同様のイオウ加硫法が一般的に採用されている。しかし、添加される各薬品の役割は、天然ゴムラテックスの加硫の場合とはかなり異なる。すなわち、酸化亜鉛は、水と接触すると、水酸基が表面に生成し、この水酸基がラテックス粒子のカルボキシル基と反応し、(非特許文献1:P.H.Starmer、Plastics and Rubber Processing and Applications 、9(1988)209-214)、ペンダント半塩を形成し、さらに加熱乾燥過程を経過するとクラスターイオン架橋を形成すると考えられている。この亜鉛架橋により、引張り強度、伸び、硬さ等の表面的な測定物性は決定されており、この点はイオウ架橋が製品物性を決定している天然ゴムラテックスの場合との大きな相違点である。
ここで、クラスターイオン架橋とは、カルボキシル基がクラスターを形成し、亜鉛の2価のカチオンを、クラスターを形成しているカルボキシル基全体で中和している状態を言う。この構造の特徴から、ゴムが伸ばされると、架橋がずれることになり、ストレスを掛けると、短時間の間に応力緩和(クリープ)が起こり、長時間使用すると、永久歪が大きくなって、ゴムが伸びてしまう(非特許文献2:N.D.Zakharov、 Rubber Chem. and Tech、 Rubber Division Acs. Akron、US. Vol36、no3 568-574)。
一方、イオウは、ブタジエンに由来する二重結合間を共有結合で架橋するが、引張り強度、伸び、硬さ等の測定物性に対する影響は小さい。しかし、ゴム製品の耐久性、クリープ耐性、耐水性、耐溶媒性等、ゴム製品の重要な性質を支配しており、これがカルボキシル化合成ゴムラテックスにおいてもイオウ加硫法が多く採用されている理由である。
以上のように、イオウ加硫はジエン系カルボキシル化合成ゴムラテックスにおいても重要な役割を果たしているが、一方においては金属と接触するとイオウが金属を酸化するため、電子部品製造分野においては、使用が控えられる傾向にある。
また、近年では、手袋などのディップ成形品に含まれる加硫促進剤に対する遅延型アレルギーに基づく接触皮膚炎の発症も増加傾向にあり、加硫促進剤を使用しないディップ成形品の開発が求められている。
さらには、食品分野においては、ゴム手袋から溶出する重金属である亜鉛溶出量の規制が強化される傾向にある。
ところで、イオウ、加硫促進剤を使用しない架橋法としては、本発明者等のアルミン酸塩等を使用する方法があるが(特許文献2:特許3635060号)、アルミニウムは3価のカチオンとして働くため、ゴム製品が硬くなる欠点がある。
また、特開2003−165814(特許文献3)には、含イオウ加硫剤、加硫促進剤、酸化亜鉛をいずれも実質的に含まないディップ成形用組成物が提案されているが、本発明者等の検討によると、この組成物を使用したディップ製品は、クリープ耐性、耐水性、耐溶剤性が低く、粘着性が強いという問題点がある。
また、一般的に、カルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物の架橋成形体は成形体膜同士の癒着を防止するために表面処理される。ここで、表面処理に使用する非粘着性表面処理剤としては、カチオン性のカルボキシル基封鎖剤が用いられるが、カルボキシル基封鎖剤で全てのカルボキシル基を封鎖すると、ラテックスの架橋が進みすぎて、ゴム的性質を失ってしまう。そこで、本発明者等は、成形体の表面のカルボキシル基を封鎖すれば、膜同士の癒着は防止できると考え、アルミン酸塩または水酸化アルミニウムゲル添加系で、製品のカルボキシル基封鎖剤による製品の表面処理を提案した(特許文献2:特許3635060号)が、アルミニウムが3価のカチオンとして作用するため、製品が硬くなり、アルミン酸塩または水酸化アルミニウムゲル添加量を制限される欠点があり、カルボキシル基封鎖剤表面処理では、効果が十分に発揮されなかった。
特開2001−192918号 特許3635060号 特開2003−165814号 P.H.Starmer、Plastics and Rubber Processing and Applications 、9(1988)209-214 N.D.Zakharov、 Rubber Chem. and Tech、 Rubber Division Acs. Akron、US. Vol36、no3 568-574
本発明の目的は、酸化亜鉛を代替しうる架橋剤を発見することである。また更なる目的は、イオウ、含イオウ加硫剤を代替し得る架橋剤を発見することである。これら架橋剤を使用することにより、耐久性、クリープ耐性、耐水性、耐溶剤性等、従来のイオウ加硫製品に匹敵する物性をもち、しかも、イオウ、含イオウ加硫物、加硫促進剤を含まない低アレルギー性架橋成形体、特に、ディップ製品を提供することにある。
本発明の他の目的は、ラテックス架橋成形体用の新たな表面処理液を提供することである。
水溶性ポリマーをラテックス原料に添加すると、一般的に洗剤浸漬後の引張り強さ(洗剤耐性)が低下する傾向がある。
しかし、本発明者はノニオン性もしくはアニオン性ポリビニルアルコール、またはノニオン性ポリアクリルアミドを添加すると洗剤耐性の低下がないということを発見した。また、アニオン性ポリアクリルアミドを添加すると、洗剤耐性が低下したが、耐水化剤を少量添加したところ、洗剤耐性の低下が抑制されることを発見した。
また、ノニオン性、アニオン性ポリビニルアルコール、ノニオン性、アニオン性ポリアクリルアミドは、水と接触しない使用環境では、耐久性、クリープ耐性が十分にあることを発見した。
浸漬製品の着用後の耐水性を試験したところ、着用初期は、十分耐水性があったが、着用後5時間後に試験すると、ノニオン性、アニオン性ポリビニルアルコール、ノニオン性ポリアクリルアミド、アニオン性ポリアクリルアミドを添加した製品は、いずれも短時間に吸水して膨潤した。
これに対し、耐水化剤を添加したノニオン性、アニオン性ポリビニルアルコール、アニオン性ポリアクリルアミド添加製品は、5時間後の着用耐性が良好であった。
ポリアルキレンポリアミンと二塩基性カルボン酸の縮合樹脂(変性ポリアミン系樹脂)は、pH8.5±1.0で、コロイド滴定を行うとカチオン性を呈しない。コロイド滴定は、試料をpH3に調製して全カチオン活性を測定し、次にpH9に調製して、四級アンモニウム塩基に由来するカチオン活性を測定する。そして、その差をアミン基に由来するカチオン活性としている。
係るカチオン性を呈しない変性ポリアミン系樹脂(ポリアルキレンポリアミンと二塩基性カルボン酸の縮合樹脂)はラテックス原料に容易に添加できるが、かかる樹脂の添加製品は、耐水性、耐クリープ性、初期着用後耐水性、5時間後耐水性があった。
そこで、本発明者は、カチオン性、両性ポリアクリルアミドをpH9.0に調製して、コロイド滴定によりカチオン性の有無を調べたところ、アミン基ポリアクリルアミドは、カチオン性を失っていた。一方、四級アンモニウム塩基を有するポリアクリルアミドは、カチオン性を呈した。
これらの知見を基に、pH7以上、好ましくはpH9以上に調製して、カチオン性を失わせたポリアクリルアミドをラテックス原料に配合したところ、その浸漬製品は耐水性、耐クリープ性、初期着用後耐水性、着用5時間後耐水性があった。
アミン基を有するポリビニルアルコールも、pHを上記同様に調製することによってカチオン性を失わせることができる。
ポリアクリルアミドは、アミド結合を形成するアミンが-NH2であることが他のポリアミド結合と異なるところである。この特徴により、アクリルアミドを重合すると、ノニオン性のポリアクリルアミドを合成することができる。即ち、アミド構造はカチオン性を与えない。このため、アミン構造を導入したポリアクリルアミドは、pH調整により、容易にカチオン性を失わせることができると考えられる。
また、ポリビニルアルコールはアミド構造をもたない。したがって、アミン基によるカチオン性は、コロイド滴定の知見どおり、弱アルカリ性の領域ではカチオン性を失う。
ここで、アミン基を有するカチオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリビニルアルコールは、合成後、無機酸、有機酸(水溶性化酸ということがある)を添加して対イオンであるアニオンを供給し、合成物をカチオン化している。したがって、酸を添加していないアミン基含有ポリマー(カチオン性を帯びていない)を直接添加すればよい。
次に、本発明者は、四級アンモニウム塩基を含有するポリマーのカチオン性失活法を検討した。四級アンモニウム塩基は、常にプラスに帯電しており、そのカチオン性を失活させることは困難であるとも考えられる。
例えば、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂(ポリアミドエポキシ樹脂)(商品名WS4030、星光PMC製)とノニオン性アルキルケテンダイマーを添加したラテックス配合液は、当初安定に存在し、ラテックス浸漬製品フィルムを形成することができ、その品質も良好であったが、2日後に凝固した。係る四級アンモニウム塩基を含有するカチオン性ポリマーを添加すると、ラテックス配合液が不安定である、酸化亜鉛を添加することができない等、ラテックス浸漬製品製造上致命的な欠陥が付きまとう。
そこで、四級アンモニウム塩基の失活法が重要になる。
本発明者は、アニオン性疎水性化合物である強化ロジン(商品名FR-1900、星光PMC製)1.0部、アンモニア0.5部(いずれも対ラテックス)を希釈水に相当する水に溶解し、その水溶液にポリアミドエピクロルヒドリン樹脂(商品名WS4030、星光PMC製)およびポリアミンエピクロルヒドリン樹脂(ポリアミンエポキシ樹脂)(商品名WS4052、星光PMC製)10%を滴下したところ、当初は透明であった液が、途中で乳濁することを知った。その滴定当量は、WS4030では0.57部、WS4052では0.67部であった。
そこで、乳濁物を生じない範囲であるFR-1900、1.0部アンモニア、0.5部の水溶液に、WS4030、0.5部、またはWS4052、0.5部を滴下した透明な液を調製し、この調製液をラテックスに添加してラテックス調製液を調製したところ、調製液は安定に存在し、作製した浸漬製品の性質は良好であった。FR-1900を添加してからアンモニアとWS4030またはWS4052を添加しても同様な結果が得られた。
強化ロジンは、カルボキシル基を有するが、係る強化ロジンが安定に存在する範囲の四級アンモニウム塩含有ポリマーの添加であれば、ラテックス配合液は安定である。四級アンモニウムカチオンの対イオンとして強化ロジンアニオンが配位し、四級アンモニウムカチオンがブロックされたものと考えられる。
したがって、四級アンモニウムカチオンをアニオンでブロックすれば、四級アンモニウム塩を含有するポリマーを添加したラテックスは安定に存在し、良好な浸漬製品が得られる。ここに、四級アンモニウムカチオンを失活させる方法が完成した。(本明細書では、カチオン性を失活させた四級アンモニウム塩基を含有する化合物もカチオン性失活アミン系化合物と称する。)
実際に必要とされるアニオンの量と、四級アンモニウム塩を含有するポリマーの許容添加量は、ラテックス添加系で測定することが望ましい。
また、上記ポリマーに代えて、液状カチオンデンプン、カチオン性ポリビニルアルコールを添加したところ、同様の結果を得た。
水溶性カチオン性グアーガム、カチオン性セルロース等炭水化物系高分子も同様の効果をもつ。
耐水化剤もしくは耐水性ポリマーは、アニオン性、ノニオン性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ノニオン性、アニオン性炭水化物のみならず、カチオン性を失わせたアミン基、四級アンモニウム塩基含有ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアミン系樹脂、水溶性炭水化物系高分子配合ラテックスにも添加することが望ましい。
また、原料ラテックスまたは配合組成物をカチオン化するカチオン化剤も耐水性を付与する。係るカチオン化剤は、ラテックスまたは配合薬品に四級アンモニウム塩基を導入するが、配合時は1価のカチオンであるから、アニオン性のラテックス原料にも容易に配合できる。
さらに、ポリアミドを添加せずに、係るカチオン化剤を添加するだけで、耐久性、クリープ耐性、耐水性、着用後耐水性を有する浸漬製品を製造することができる。
また、上記架橋性官能基をポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、水溶性炭水化物系高分子に導入することができる。
さらに、ノニオン性、アニオン性ポリビニルアルコールであっても、耐水化変性されたポリビニルアルコールを添加した浸漬製品は、耐水化剤を添加しなくても着用後の耐久性が良好であった。
上記剥離性、耐水性を有し、さらに強度が発現するジエン系ゴムラテックス組成物を紙に内添、含浸、あるいは塗工すると、ラテックス等に由来する耐水性不足、粘着性、強度不足等が改善され、耐ブロッキング性、耐水性、湿し水に耐える表面強度(ウェットピック抵抗性、湿潤摩擦抵抗性)を有する紙が製造できる。
本発明の架橋剤を用いると、製品が硬くなる問題はなく、単独でも剥離性が良好であることもあり、カチオン性カルボキシル基封鎖剤表面処理で製品の非粘着性化を効果的に実現できた。
浸漬製品の粘着性は、カルシウム濃度の高い型側がフィルムのラテックス側より低い。したがって、カチオン性カルボキシル基による表面処理の必要性は、浸漬型側が低く、反対側が高い。そこで、両面の表面処理をすることも、片側の表面処理を省くことも可能である。
ここで、製品の非粘着性とは、後述する加熱非粘着性試験で合格することを言うが、実際には、製造後使用までのほぼ6ヶ月間、製品表面が相互に接着しないことを言う。
アニオン性表面サイズ剤でラテックス成形膜を表面処理すると、処理膜表面が滑性を持つが、表面処理剤が膜内部に拡散すると、滑性を失う。しかし、該表面処理液に有機金属架橋剤、カチオン性失活アミン系化合物(耐水化剤または耐水性ポリマーを添加した、アニオン性もしくはノニオン性ポリビニルアルコール、アニオン性もしくはノニオン性ポリアクリルアミド、またはアニオン性もしくはノニオン性炭水化物系高分子)または水素結合形成剤を添加すると、表面の滑性を維持することを見出した。
以上の知見に基づいて本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]カルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックスと、下記(a)〜(d)から選ばれた一またはそれ以上の化合物とを含む、カルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物。
(a)カチオン性失活変性ポリアミン系樹脂(カチオン性失活変性ポリアルキレンポリアミン二塩基性カルボン酸縮合樹脂)、カチオン性失活ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂(ポリアミドエポキシ樹脂)、カチオン性失活ポリアミンエピクロルヒドリン樹脂(ポリアミンエポキシ樹脂)、カチオン性失活アミン基もしくは四級アンモニウム塩基含有ポリビニルアルコール、カチオン性失活アミン基もしくは四級アンモニウム塩基含有ポリアクリルアミド、カチオン性失活アミン基もしくは四級アンモニウム塩基含有炭水化物系高分子、または架橋性官能基が導入された、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールもしくは炭水化物系高分子、
(b)耐水化剤または耐水性ポリマーを添加した、アニオン性もしくはノニオン性ポリビニルアルコール、アニオン性もしくはノニオン性ポリアクリルアミド、またはアニオン性もしくはノニオン性炭水化物系高分子、
(c)耐水性ポリビニルアルコール
(d)カチオン化剤。
[2]さらに疎水性物質、疎水性基含有カルボン酸またはその塩、疎水性基含有カルボン酸アルミニウム・ジ・ソープまたはトリ・ソープ、および疎水性基含有カルボン酸金属石鹸から選ばれた一またはそれ以上の有機化合物を含有することを特徴とする、[1]に記載のカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物。
[3]さらに水溶性ポリマーを含有することを特徴とする、[1]または[2]に記載のカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物。
[4]さらに金属原子に結合した水酸基を二個又はそれ以上含有する有機金属架橋剤を含有することを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載のカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物。
[5]水酸化マグネシウムおよび/または水酸化カルシウムをさらに含有することを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載のカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物を架橋および成形してなる架橋成形体。
[7]カチオン性カルボキシル基封鎖剤、および/またはアニオン性疎水性化合物で表面処理されたことを特徴とする[6]に記載の架橋成形体。
[8]浸漬製品であることを特徴とする、[6]または[7]に記載の架橋成形体。
[9](A)オレフィン系不飽和モノマーを構成モノマーとして含む共重合体からなるアニオン性表面サイズ剤およびスチレン系不飽和モノマーを構成モノマーとして含む共重合体からなるアニオン性表面サイズ剤からなる群より選ばれるサイズ剤と、
(B)金属原子に結合した水酸基を二個又はそれ以上含有する有機金属架橋剤、カチオン性失活アミン系化合物、および水溶性水素結合形成剤、からなる群から選ばれる一種類以上の化合物を含む、ラテックス架橋成形体用表面処理液。
[10][9]記載の表面処理液で表面処理されたラテックス架橋成形体。
本発明は、イオウ加硫並みの特性を付与することのできる新たなカルボキシル基架橋剤を提供する。係る架橋剤を含有するラテックス組成物を利用すると、イオウ、加硫促進剤を含有しない低アレルギー性ディップ成形品を得ることができ、医療、食品分野、電子部品分野等で広く利用することができる。また、紙加工分野等に新たな用途を開発することができる。
本発明の組成物を使用して定法に従いディップ成形品を作製したところ、きわめて耐久性のある製品が得られた。特筆すべきは、ディップ成形品の着用試験をしたところ、イオウ加硫製品と同様、クリープ耐性、耐水性が優れていたことである。一方、酸化亜鉛のみを配合したディップ製品は、短時日のうちに製品が伸び、さらに汗によって耐水性が低下し、白化した。このような事実から、本発明に係るカルボキシル基架橋剤は、含イオウ加硫剤を置換し得る。さらに本発明によるディップ成形品の顕著な特徴は、製品の粘着性が大幅に低減することである。
また、このようにして作製したディップ成形品は、実質的にイオウ、加硫促進剤を含有しないので、低アレルギー性である。さらに、重金属である亜鉛を実質的に含有しない製品の製造も可能であり、医療分野、食品分野、電子部品製造分野等、広い分野で使用できるディップ成形品の製造が可能である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物は、(a)カチオン性失活変性ポリアミン系樹脂、カチオン性失活ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、カチオン性失活ポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、カチオン性失活アミン基もしくは四級アンモニウム塩基含有ポリビニルアルコール、カチオン性失活アミン基もしくは四級アンモニウム塩基含有ポリアクリルアミド、カチオン性失活アミン基もしくは四級アンモニウム塩基含有炭水化物、または架橋性官能基が導入された、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールもしくは炭水化物、(b)耐水化剤もしくは耐水性ポリマーを添加した、アニオン性もしくはノニオン性ポリビニルアルコール、アニオン性もしくはノニオン性ポリアクリルアミド、またはアニオン性もしくはノニオン性炭水化物、(c)耐水性ポリビニルアルコールおよび(d)カチオン化剤、から選ばれた一またはそれ以上の化合物を含有する。
耐水化剤としては、カチオン性失活一級、二級、三級アミン基を含有するポリマー、多価金属化合物(炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムカリウム)、アルデヒド基を有するグリオキサール、ジアルデヒドデンプン、エポキシ基を有するグリセロールポリグリシジルエーテル樹脂、メチロール基を有する尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ケトン樹脂、多価アルコールカルボニル付加物(Sequarez 755など)、カチオン化剤、ホウ砂が挙げられる。
耐水性ポリマーとしては、表面サイズ剤として使用されるポリマーが好適に使用されるが、表面サイズ剤ポリマーに限定されるものではない。
耐水化剤もしくは耐水性ポリマーの添加量は、0.02部以上好ましくは0.05部以上、さらに好ましくは0.1部以上である。
耐水性ポリビニルアルコールとしては、炭素数3以下のオレフィン単位を含有する変性ポリビニルアルコール、末端にチオール基を有する変性ポリビニルアルコール等、アニオン性反応性ポリビニルアルコール(Butanedioic acid, 2-methylene, polymer with ethenyl acetate, hydrolyzed,s)が例示される。
カチオン化剤としては、N-(3chloro-2-hydroxypropyl)trimethylammonium chloride、2-3-epoxytrimethylammonium chloride等が挙げられる。
(a)〜(d)の添加量は特に制限されないが、それぞれ、ラテックス100重量部あたり0.03〜2.0重量部含有させることが好ましく、0.1〜1.0重量部含有させることがより好ましい。
ポリビニルアルコールは、基本的に酢酸ビニルモノマーをメタノール中で重合・鹸化して製造される。また、ポリアミド系と同様に、カルボキシル化、カチオン化した製品が製造されている。また、ケイ素含有ビニルモノマーと酢酸ビニルとの共重合によってケイ素含有変性製品が得られる。
ポリアクリルアミドは、アクリルアミドの重合によって得られる。
アニオン性ポリアクリルアミドは、ポリアクリルアミドのアルカリによる加水分解、またはアクリルアミドとアクリル酸またはメタクリル酸との共重合によって得られる。
カチオン性、両性ポリアクリルアミドは、マンニッヒ変性物、ホフマン分解物、カチオン性モノマーとの共重合物として得られる。
カルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックスとしては、カルボキシル変性NBR、カルボキシル変性SBR、カルボキシル変性MBR等が挙げられるが、特に、エチレン性不飽和カルボン酸系単量体0.1〜20重量%、共役ジエン系単量体30〜80重量%およびこれらと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体10〜69.5重量%を乳化重合して得られたジエン系ゴムラテックスであることが好ましい。
ここで、エチレン性不飽和カルボン酸系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマール酸、イタコン酸、マレイン酸などが挙げられ、1種または2種以上
用いることができる。特にメタクリル酸が好ましい。
また、共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。特に1,3−ブタジエンが好ましい。
さらに、共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体としては、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどシアン化ビニル系単量体、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジルなどの不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体、アクリルアミド、メタクリロアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドなどのエチレン系不飽和カルボン酸アミド系単量体、メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ビニルピリジンなどのエチレン系不飽和アミン系単量体、酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類などが挙げられ、そのうちの1種または2種以上用いることができる。
本発明のカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物は、上記(a)〜(d)に加えてさらに疎水性物質、疎水性基含有カルボン酸またはその塩、疎水性基含有カルボン酸アルミニウム・ジ・ソープまたはトリ・ソープまたは疎水性基含有カルボン酸金属石鹸から選ばれた一または二以上の有機化合物を含有するものであってもよい。
疎水性物質、疎水性基含有カルボン酸またはその塩、疎水性基含有カルボン酸アルミニウム・ジ・ソープまたはトリ・ソープまたは疎水性基含有カルボン酸金属石鹸の添加量は特に制限されないが、ラテックス100重量部あたり0.5〜2.0重量部含有させることが好ましく、0.5〜1.0重量部含有させることがより好ましい。
疎水性物質としては、ワックス類、合成ワックス類、ポリオレフィン系ワックス類、低分子量ポリオレフィン、低密度ポリエチレン、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、石油樹脂、ロジンエステル類、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、アクリル系樹脂、メタクリル酸アルキル重合樹脂、スチレン系樹脂等が挙げられる。
疎水性基含有カルボン酸またはその塩としては、ロジン類、強化ロジン、不均化ロジン、ダイマー酸、石油樹脂サイズ剤、アルケニルコハク酸、トール油脂肪酸、高級脂肪酸、二塩基酸または多塩基酸またはそれらの塩が挙げられる。なお、疎水性基含有カルボン酸としては、水溶性の塩として添加することが有効であるが、ロジンエステルの様にエマルジョン化されているものは、酸として添加できる。
また、カルボン酸のアルミニウム・ジ・ソープまたは各種疎水性基含有カルボン酸金属石鹸は、架橋成形体に耐水性、剥離性を付与し、製品の非粘着性化に寄与する。
また、本発明のカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物は、ディップ成形体表面のヌメリを防止するために、上記(a)〜(d)に加えてさらに水溶性ポリマーを含有するものであってもよい。
水溶性ポリマーをラテックスに添加すると、いわゆる保護コロイドを形成し、ラテックス粒子とフリーの界面活性剤が隔離され、リーチング等の製造工程で界面活性剤の放出が促進され、界面活性剤のブリードアウトが抑制される。このため、界面活性剤またはそのカルシウム塩によるいわゆるヌメリ感がなくなり、粘着性も減少する。
水溶性ポリマーとしては、天然物系のタマリンドガム、カラギーナン、半合成系のカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、疎水化エチルヒドロキシエチルセルロース、合成系のポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド・ランダム共重合体、水溶性ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール等が挙げられる。クリーミングを起こさない水溶性ポリマーでも効果がある。
しかし、水溶性ポリマーを添加すると、組成物の粘度が上昇するので、粘度が40cps以下になるよう、ポリマーの重合度、添加量、ラテックス濃度等を選択する必要がある。
また、多くの場合、ラテックス原料よりも剛直な分子であるから、製品の物性に影響が少ない範囲で選択することが好ましい。
ラテックス原料の性質によっても異なるが、タマリンドガム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、疎水化エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド・ランダム共重合体、水溶性ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール等が好ましい。
水溶性ポリマーの添加量は特に制限されないが、ラテックス100重量部あたり0.05〜0.25重量部含有させることが好ましく、0.1〜0.2重量部含有させることがより好ましい。
本発明のカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物は、上記(a)〜(d)に加えてさらに、コロイダル水酸化マグネシウムおよび/または水酸化カルシウムをさらに含有するものであってもよい。
コロイダル水酸化マグネシウムは、水溶性マグネシウム塩と水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウム等の強アルカリを反応させて、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムが共存する水酸化マグネシウムとして製造することができる。アルカリに塩を添加しても、塩にアルカリを添加してもよいが、なるべく低濃度で、高pHで反応させることが望ましい。実際には、原料ラテックスに添加して、ラテックス濃度を30%程度またはそれ以下にし、組成物pHを9.2〜9.8程度になるようにすることが好ましいが、原料ラテックスのカルボキシル基含量、粒子表面に存在するカルボキシル基量、ラテックスの安定度等、ラテックスの性質によって異なる。また、コロイダル水酸化マグネシウムの添加量もラテックスの性質によって異なるが、MgO換算で0.2から0.5部程度が好ましい。
また、以下の分散水酸化カルシウムの調製と同様にして、水酸化マグネシウム懸濁液を調製し、コロイダル水酸化マグネシウムの代わりに使用することができる。
水酸化カルシウムは、コロイダル水酸化マグネシウムと同様に、水溶性カルシウム塩と水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウム等の強アルカリを反応させて、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムが共存する水酸化カルシウムとして製造することができる。
さらに、生石灰を消和し、生成した水酸化カルシウムに水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムを添加し、分散機で分散することにより、同等の効果を持つ水酸化カルシウムを調製することが出来る。水酸化カルシウムの添加量は、モル当量でコロイダル水酸化マグネシウムの場合と同程度である。
本発明のカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物は、上記(a)〜(d)に加えてさらに、金属原子に結合した水酸基を二個以上含有する有機金属架橋剤を含有するものであってもよい。金属原子に結合した水酸基を二個以上含有する有機金属架橋剤としては、WO2008/001764に記載されているようなアルミニウム原子に結合した水酸基を2個又はそれ以上含む化合物やチタン原子に結合した水酸基を2個又はそれ以上含む化合物などが挙げられる。
好ましくは、カルボン酸のカルボキシル基にアルミニウム原子が結合し、該アルミニウム原子に結合した水酸基を2個又はそれ以上含む構造を有する化合物が挙げられる。
そのような化合物としては、以下に示すように、カルボン酸のカルボキシル基に結合したアルミニウム原子に2個の水酸基が付いたジヒドロキシアルミニウム構造を有する化合物が挙げられる。この2個の水酸基が、ポリマーのカルボキシル基を架橋する。したがって、イオウと同様、二価の架橋剤である。
Figure 2009155634
(Rは飽和もしくは不飽和の脂肪族基、または芳香族基を示す。)
上記ジヒドロキシアルミニウム有機化合物は、一般にはカルボン酸のジヒドロキシアルミニウム塩として得られるが、それに限定されるものではない。カルボン酸は、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、脂環式カルボン酸等種類を問わない。また、アミノ基や水酸基などの置換基を有するカルボン酸でもよい。
具体例としては、オクチル酸(C8)ジヒドロキシアルミニウム、オクタン酸(C8)ジヒドロキシアルミニウム、カプリン酸(C10)ジヒドロキシアルミニウム、ナフテン酸ジヒドロキシアルミニウム等がある。カルボン酸には、アミノ基、水酸基等の官能基を有するカルボン酸のジヒドロキシアルミニウム塩も本発明の架橋剤として使用することができる。具体例としては、グリシンジヒドロキシアルミニウムやリジンジヒドロキシアルミニウムがある。
なお、本金属架橋剤は、重合して存在することが知られており、たとえば、乳酸ジヒドロキシアルミニウムは、固体では5量体であるとされている。かかる重合体も本発明の有機金属架橋剤に含まれる。
本化合物は、安全性が高いと考えられる。例えば、上述したグリシンジヒドロキシアルミニウム、またはアセチルサリチル酸ジヒドロキシアルミニウムは、制酸剤として医薬に使用されている。
アルミニウム原子に結合した水酸基を2個又はそれ以上含む有機金属架橋剤としては、二塩基性カルボン酸の2つのカルボキシル基のそれぞれにアルミニウム原子が結合し、各アルミニウム原子に2つの水酸基が結合したジヒドロキシアルミニウム構造を有する化合物も挙げられる。
二塩基性カルボン酸のジヒドロキシアルミニウム構造(カルボン酸のモノ・ソープに相当する)の場合には、ジヒドロキシアルミニウム構造が2個存在すると考えられる(化学構造2)。
Figure 2009155634
この場合もカルボキシル基の架橋剤として機能するが、以下の実験の結果からは、架橋成形体の引張り強度を向上させる効果が認められた。
多塩基性カルボン酸のジヒドロキシアルミニウム構造の場合には、多塩基性に相当するジヒドロキシアルミニウム構造が複数生成する。
二塩基性カルボン酸の2個のジヒドロキシアルミニウム構造を有するカルボン酸アルミニウム塩を合成するためには、二塩基性カルボン酸1モルあたり、理論上2モルの水溶性アルミニウム塩が必要である。
しかし、二塩基性カルボン酸1モルに対し、1モルの水溶性アルミニウム塩しか添加しない場合には、以下の化学構造3および/または4の化合物(二塩基性カルボン酸の一方のカルボキシル基にアルミニウム原子が結合し、該アルミニウム原子に1つの水酸基が結合した構造を繰り返し単位とするポリマー)が生成するが、いずれの化合物もアルミニウム原子に結合した水酸基を2以上有するので、カルボキシル基を架橋する機能を有すると考えられる。
環状ポリマー
Figure 2009155634
鎖状ポリマー(末端のアルミニウム原子には2つの水酸基が結合する)
Figure 2009155634
二塩基酸塩で1モルから2モル水溶性アルミニウム塩を添加した場合には、化学構造2、3、および4の構造を有する混合物が生成すると考えられる。
化学構造2〜4において、R1は飽和もしくは不飽和の2価脂肪族基、または2価芳香族基を示す。
二塩基性カルボン酸は、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、脂環式カルボン酸等種類を問わない。また、アミノ基や水酸基などの置換基を有するカルボン酸でもよい。二塩基性カルボン酸として具体的には、アジピン酸、2,4−ジエチルグルタール酸、アゼライン酸、セバシン酸等があるが、高級二塩基酸としては、岡村製油のC12、C20、C22ジ・カルボン酸、WestvacoのC21ジ・カルボン酸が知られている。また、トール油脂肪酸、または大豆油脂肪酸から、ダイマー酸(C36二塩基酸)が合成されている。
上記のようなアルミニウム原子に結合した水酸基を2個以上含む有機金属架橋剤は、例えば、カルボン酸に水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの水酸化物を添加してカルボン酸ナトリウムまたはカルボン酸カリウムなどのカルボン酸塩の水溶液を調製し、そこに硝酸アルミニウムを反応させることによって得られる。
チタン原子に結合した水酸基を2個以上含む化合物としては、ジヒドロキシビス(ヒドロキシカルボキシラート)チタンまたはそのエステルなどが挙げられる。
ジヒドロキシビス(ヒドロキシカルボキシラート)チタンは、特開2000-351787の実施例1に従って合成することができる。例えば、ジヒドロキシビス(ヒドロキシイソブチラート)チタンは、イソプロパノールにα-ヒドロキシイソ酪酸を溶解させ、モル比2:1に相当するイソプロポキシチタンをゆっくり滴下する。滴下終了後室温で撹拌を続け、白色懸濁液になってから撹拌を止め、ロータリーエバポレーターでイソプロパノールを溜去してジヒドロキシビス(ヒドロキシイソブチラート)チタンを得る。
同様にして、グリコール酸、乳酸、α-ヒドロキシ酪酸、α-ヒドロキシイソ酪酸、β−ヒドロキシプロピオン酸、β−ヒドロキシ酪酸、β−ヒドロキシイソ酪酸、γ−ヒドロキシ酪酸、グリセリック酸、タートロニック酸、リンゴ酸、酒石酸、メソ酒石酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸から該当するジヒドロキシビス(ヒドロキシカルボキシラート)チタンが合成できる。
ジヒドロキシチタンラクテートは、以下の化学構造5(R2=CH3、R3=H)に示すように、チタン金属原子に結合した2個の水酸基を有する。この化合物をアンモニアを加えてからカルボキシル化ジエン系ゴムラテックスに添加したところ、ラテックスは長期間安定に存在し、架橋剤として上記アルミニウム金属化合物と同様の効果を示した。
Figure 2009155634
R2は飽和または不飽和脂肪族基であり、R3は水素原子または飽和もしくは不飽和の脂肪族基である。
なお、架橋成形体に耐水性、剥離性を付与するためには、架橋剤に疎水性を付与することが望ましい。このようなカルボン酸原料として、紙に使用されるサイズ剤が注目される。
使用できるサイズ剤には、まず、アビエチン酸及びその異性体を主成分とするロジン、水素化ロジン、不均化ロジン、ロジンをマレイン化またはフマール化した強化ロジンなどがある。
また、合成サイズ剤として知られるアルケニルコハク酸塩は、界面活性剤、合成サイズ剤として使用されており、これらは、C12、C16、C18のオレフィンオリゴマーに無水マレイン酸を付加し、アルカリで加水分解して製造される。これらは、ジ・カルボン酸である。
ロジン酸ジヒドロキシアルミニウムやアルケニルコハク酸系アルミニウム化合物など、上記サイズ剤の化学構造1〜4の構造を有する有機アルミニウム金属化合物も本発明の架橋剤として使用できる。
架橋剤の添加量は、架橋剤の分子量が大幅に異なるので、一概に言えないが、ラテックス100重量部当り0.3部から2部が好ましく、0.5部から1.5部がより好ましい。
架橋剤が酸性を示す場合、カルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物の安定性のために、アンモニア等を用いて組成物をアルカリ性、好ましくはpH9〜10にしておくことが好ましい。
本発明の架橋剤をカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックスに添加すると、酸化亜鉛の場合と同様、ポリマー鎖に存在するカルボキシル基にペンダント半エステル結合するものと考えられ、配合組成物は、いわゆるブツの生成もなく、6ヶ月間安定に存在した。したがって、係る組成物を原料メーカー側で調製し、ユーザーに販売することができる。
なお、上記組成物には、必要に応じて、老化防止剤、防腐剤、分散剤、増粘剤などを適宜添加することができる。
なお、本発明の組成物はさらに酸化亜鉛を含むものであってもよい。酸化亜鉛の添加量はラテックスの種類にもよるが、ラテックス100重量部あたり0.7〜2.0重量部が好ましく、1.0〜1.5重量部がより好ましい。
なお、本発明に係る組成物をディップ(浸漬)成形用組成物として使用する場合には、含硫黄加硫剤および加硫促進剤については実質的に含まないことが好ましく、さらにこれらの物質については、ディップ成形用組成物中に全く含まれないことが特に好ましいが、具体的には、いずれの物質についても、ジエン系ゴムラテックス(固形分)100重量部に対して0.2重量部以下の使用が好ましい。
また、本発明のディップ成形用組成物には、必要に応じて、天然ゴムラテックス、イソプレンゴムラテックスなどのゴムラテックス、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア水などのpH調整剤、二酸化チタン、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸、炭酸マグネシウムなどの充填剤、スチレン化フェノール、イミダゾール類、パラフェニレンジアミンなどの老化防止剤、ファーストイエロー、フタロシアンブルー、群青などの着色剤などを適宜配合してもよい。
なお、上記各成分を添加して本発明の組成物を得る際には、各成分を添加する順番やタイミングは特に制限されず、各成分を同時に添加してもよいし、いくつかの成分を添加した後、しばらく時間をおいてから残りの成分を添加してもよい。
上記ディップ成形用組成物を使用してディップ成形品を得るためには、例えば直接浸漬法、アノード凝着浸漬法、ティーグ浸漬法など従来公知のディップ成形法がいずれも適用される。ディップ成形品の形状は特に制限されないが、例えば、手袋等の形状が例示される。ディップ成形後、好ましくは100〜150℃で加熱することによって、有機金属架橋剤によるカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックスのカルボキシル基の架橋が達成される。すなわち、上記の各成分を混合して組成物を得、それを加熱することによって本発明の架橋成形体を製造することができる。
以下、アノード凝着浸漬法について簡単に説明する。まず、型を凝固液に浸漬し、引き上げて乾燥することにより型表面に凝固剤が付着した状態にする。凝固液は、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウムなどのカルシウム塩を水、またはアルコール、ケトンなどの親水性有機溶媒に溶解させたものである。凝固液中のカルシウム濃度は、通常5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%である。凝固液には必要に応じてノニオン、アニオン界面活性剤などの界面活性剤、炭酸カルシウム、タルク、シリカゲルなどの充填剤を配合してもよい。ついで凝固剤が付着した型をディップ成形用共重合体ラテックス組成物中に浸漬し、引き上げる。この時、凝固剤と共重合ラテックスが反応して型上にゴム状皮膜が形成される。得られた皮膜を水洗、乾燥した後、型から剥離すればディップ成形品となる。
なお、カルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物の架橋成形体は成形体膜同士の癒着を防止するために、表面処理されたものであってもよい。表面処理に使用する非粘着性表面処理剤としては、カチオン性のカルボキシル基封鎖剤が好ましく、無機系では、三価以上のカチオン性金属イオン架橋剤(ポリ水酸化アルミニウム塩、水溶性アルミニウム塩、水溶性チタン化合物等)、カチオン性水酸化アルミニウムゾル(アルミナゾル)等の無機系化合物が有効であるが、本発明では、2価のジルコニウム化合物によっても非粘着性化する。本発明の有機アルミニウム金属架橋剤の効果が大きいためであると考えられる。
有機系表面処理剤としては、カチオン性石油樹脂、カチオン性アルキルケテンダイマーが有効である。
有機高分子系表面処理剤としては、第4級アンモニウム塩基を有するスチレン系表面サイズ剤、カチオン性エピクロルヒドリン系樹脂(ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、ポリアミドアミンエピクロルヒドリン樹脂、ポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、ポリアミド尿素ホルムアルデヒド樹脂等)、ポリアミドエポキシ樹脂、およびキトサン第4級アンモニウム塩基を有するスチレン系表面サイズ剤、キトサン等のカチオン性ポリマーが有効である。
また、表面サイズ剤等として使用されるカチオン性高分子、例えばカチオン性スチレンアクリル共重合体系樹脂、カチオン性スチレンアクリルエマルジョン系樹脂、カチオン性アクリル共重合体系樹脂、カチオン性オレフィン・マレイン酸系樹脂、カチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性長鎖アルキル含有ポリマー剥離剤等のカチオン性高分子は、カルボキシル基封鎖剤として機能する共に、剥離剤としても機能する。
さらに、アニオン性スチレンアクリル共重合体系樹脂、アニオン性スチレンアクリル系樹脂、アニオン性アクリル共重合体系樹脂、アニオン性オレフィン・マレイン酸系樹脂、アニオン性ウレタン系樹脂、アニオン性長鎖アルキル含有ポリマー剥離剤等のアニオン性高分子は、疎水性物質として、非粘着性化剤、剥離剤としても機能する。また、ロジン、ロジンエマルジョン、エステル化ロジンエマルジョン、アルケニルコハク酸塩、アルキルケテンダイマー等も非粘着性化効果を有する。
表面処理剤の使用濃度は特に制限されないが、例えば、0.1〜2.0%、好ましくは0.2〜1.0%の溶液が使用できる。
なお、表面処理は架橋成形体の両面に施すことが好ましい。
また、下記の表面処理液を用いることもできる。
本発明の表面処理液は、オレフィン系不飽和モノマーを構成モノマーとして含む共重合体からなるアニオン性表面サイズ剤(オレフィン系表面サイズ剤)およびスチレン系不飽和モノマーを構成モノマーとして含む共重合体からなるアニオン性表面サイズ剤から選択される表面サイズ剤と、上記金属原子に結合した水酸基を二個又はそれ以上含有する有機金属架橋剤、カチオン性失活アミン系化合物および水溶性水素結合形成剤から選択される1種類以上の化合物を含む。
オレフィン系表面サイズ剤とは、オレフィン系不飽和モノマーを構成モノマーとして含む共重合体をいう。具体的には、疎水性不飽和モノマーである不飽和モノマーとカルボキシル基含有不飽和モノマーもしくはその塩を主構成要素とする共重合体である。
スチレン系表面サイズ剤とは、スチレン系不飽和モノマーを構成モノマーとして含む共重合体をいう。具体的には、スチレン系不飽和モノマーとカルボキシル基含有不飽和モノマーもしくはその塩を主構成要素とする共重合体である。
上記共重合されるカルボキシル基含有不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸ハーフエステル、イタコン酸、イタコン酸ハーフエステル、シトラコン酸、フマール酸等が挙げられる。
カチオン性失活アミン系化合物としては、上記(b)で説明した耐水化剤または耐水性ポリマーを添加した、アニオン性もしくはノニオン性ポリビニルアルコール、アニオン性もしくはノニオン性ポリアクリルアミド、またはアニオン性もしくはノニオン性炭水化物が挙げられる。
水溶性水素結合形成剤としては、ポリビニルアルコール系、ポリアミド系、炭水化物系が挙げられる。
本発明の表面処理剤で表面処理されるラテックス架橋成形体としては、上記(a)〜(d)から選ばれた一またはそれ以上の化合物を含むカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物、およびこれに疎水性物質、水溶性ポリマー、金属原子に結合した水酸基を二個もしくはそれ以上含有する有機金属架橋剤、水酸化マグネシウムもしくは水酸化カルシウムを加えたカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物の架橋成形体が挙げられるが、これらのラテックス組成物の成形体に限られず、金属原子に結合した水酸基を二個又はそれ以上含有する有機金属架橋剤を含むカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物、およびこれに疎水性物質、水溶性ポリマー、水酸化マグネシウムもしくは水酸化カルシウムを加えた組成物の成形体であってもよい。
また、従来のイオウや酸化亜鉛を含むカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物の成形体であってもよい。
さらに、天然ゴムラテックスの成形体であってもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。なお実施例中、割合を示す部および%は特に断りのない限り重量基準によるものである。
[実施例1〜16、比較例1〜3]
ポリアミド、ポリビニルアルコール系配合剤の効果を確認するために、以下の組成のゴムラテックス成形体を作製し、評価を行った。使用原料、配合液組成等は以下に示した。<使用ラテックス>
・NBR ラテックス LX550L (日本ゼオン製)
・ZnO 1.3部
・アンモニア ラテックス調製液のpHが9.0〜9.5の範囲に入るように、添加量を調整した。
<配合薬品>
アミン基を含有するポリマーについては、その化合物にアンモニアを添加してカチオン性を失活させてからラテックスに配合した。
(疎水性物質)
F1:強化ロジンFR1900(星光PMC製)
(添加架橋剤)
・ポリビニルアルコール系
アニオン性ポリビニルアルコール
V1:ゴーセナ-ルP-7000(日本合成化学工業製)
ノニオン性ポリビニルアルコール
V2:ゴーセサイズP-7100(日本合成化学工業製)
カチオン性失活ポリビニルアルコール
V3:ゴーセファイマーK-210(日本合成化学工業製)
・ポリアクリルアミド系
ノニオン性ポリアクリルアミド
A1:ハリコート6045(ハリマ化成製)
アニオン性ポリアクリルアミド
A2:ST5000(星光PMC製)
カチオン性失活両性ポリアクリルアミド
A3:DS4395(星光PMC製)
カチオン性失活アミン基含有ポリアクリルアミド
A4:カチオン性失活アミン基含有ポリアクリルアミド、
FX7200(星光PMC製)
・変性ポリアミン系樹脂
H1:変性ポリアミン系樹脂
PA6650(星光PMC製)
・カチオン性失活ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂
W1:カチオン性失活ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、
WS4030(星光PMC製)
W2:カチオン性失活ポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、
WS4052(星光PMC製)
(注)本水溶性樹脂は、アンモニア(0.5部)とFR-1900(1.0部)を加えた水溶液に上記水溶性樹脂を添加し、その後ラテックスに添加した。)
・カチオン性失活水溶性カチオンデンプン
D1:カチオン性失活液状カチオンデンプン
DD4280(星光PMC製)
(耐水化剤)
T1:ジヒドロキシ乳酸アルミニウム(多木化学製)
T2:カチオン性失活変性ポリアミン系樹脂
PA6650(星光PMC製)
T3:炭酸ジルコニウムアンモニウム
ベイコート20(ZrO2として計算)(日本軽金属製)

(カチオン化剤)
K1:N-(3-chloro-2-hydroxypropyl)trimethylammonium chloride(Dow USA製)
<ディップ成形品の製造>
凝固液として濃度15%の硝酸カルシウム水溶液を調製し、80℃で予備乾燥しておいた手袋用モールドを2秒間浸漬し、引き上げた後、水平にして回転下に乾燥(80℃×2分)させた。引き続き、表1の組成のディップ成形組成物に手袋用モールドを2秒間浸漬し、引き上げた後、水平にして回転下で乾燥(80℃×2分)させた。次にその手袋用モールドを40℃の温水に3分間浸漬して、洗浄した後、120℃で20分間加熱処理して手袋用モールドの表面に固形皮膜物を得た。最後にこの固形皮膜物を手袋用モールドから剥がし、手袋形状のディップ成形品を得た。
<表面処理>
手袋の裏面処理に相当するフィルムの表面処理を常法により行った。処理液は、アニオン性スチレン・アクリル樹脂(T-XP118、星光PMC製)0.75%液である。
(試験項目)
・引張り強さ
・洗剤耐性試験
試料をドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 2 %液に55℃、22時間浸漬し、その後引張強さを測定する。
・乾燥状態耐久性
作製した指サックを水と接触させずに2日間着用し、耐久性を試験した。○は膜に亀裂、破断等の欠陥がない状態を示す。
・初期耐水性
作製した指サックを着用して水仕事を行い、指サックの膨潤状態を観察した。
・着用後耐水性
作製した指サックを5時間着用し、その後水仕事をして、指サックの膨潤状態を観察した。○は着用状態で水と接しても膨潤しない場合を示し、×は膨潤して指サックが指より太くなった状態を示す。
結果を表1に示す。
Figure 2009155634
(評価)
ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール系薬品または変性ポリアミン系樹脂、またはカチオン化剤を添加した浸漬製品は、水と接触しない状態では、着用してもクリープが起こらず、十分な耐久性がある。
しかし、浸漬製品を水と接触させると、着用初期は浸漬製品の耐水性は良好であるが、数時間着用したのちにノニオン性、アニオン性ポリマーを添加した製品は急速に水を吸収して膨潤してしまう。なお、水との接触を止めて着用を継続すると、乾燥するにつれ形状が元に戻る。
一方、変性ポリアミン系樹脂、カチオン性を失活させたポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、ポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、炭水化物を添加した浸漬製品は、着用後の耐水性も良好である。
また、各種の少量の耐水化剤を添加したノニオン性、アニオン性ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、炭水化物を添加した浸漬製品は、着用後の耐水性が良好で、しかも耐久性、クリープ耐性があり、非粘着性でもあった。
さらに、ラテックスまたは調製液に配合する薬品をカチオン化するカチオン化剤は、耐水化剤として機能し、また、カチオン化剤単独配合製品は、着用後の耐水性が良好であった。
[実施例17〜21]
さらに、以下の組成のゴムラテックス成形体を作製し、評価を行った。
<使用ラテックス>
・NBR ラテックス LX550L (日本ゼオン製)
・ZnO 1.3部
・アンモニア ラテックス調製液のpHが9.0〜9.5の範囲に入るように、添加量を調整した。
<配合薬品>
耐水性ポリビニルアルコール系(VT)
VT1:エチレン変性ポリビニルアルコール
エクセバールRS2117(クラレ社製)
VT2:末端チオール変性ポリビニルアルコール
クラレポバールM-205(クラレ社製)
デンプン系(D)
D2:酸化デンプン エースB(王子コーンスターチ社製)
耐水性ポリマー(W)
W1:オレフィン系表面サイズ剤(アニオン)
PM1329(荒川化学社製)
W2:スチレンアクリル系表面サイズ剤(アニオン)
PM1308S(荒川化学社製)
W3:スチレン系表面サイズ剤(カチオン)
表面サイズ剤SS2720(星光PMC社製)
(評価)
結果を表2に示した。
ノニオン性、アニオン性ポリビニルアルコールであっても、耐水化変性されたポリビニルアルコールを添加した浸漬製品は、耐水化剤を添加しなくても着用後の耐久性が良好であった。
また、ノニオン性、アニオン性ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、デンプンであっても、耐水性のポリマーを添加すれば、着用後の耐久性は良好であった。
Figure 2009155634
<表面処理剤の検討>
以下のような組成のラテックス組成物を調製し、成形した後、各種表面処理剤を検討した。
A.ラテックス調製原料
1.カルボキシル化NBR LX550L 100部(日本ゼオン社製)、ラテックス濃度30%
活性亜鉛華 1.3部(バイエル社製)
NH3 0.7部
強化ロジン(FR1900) 0.8部(星光PMC社製)
カチオン化PVA(ゴーセファイマーK-210) 0.6部(日本合成化学工業社製)

2.カルボキシル化NBR LX550L 100部(日本ゼオン社製)、ラテックス濃度30%
活性亜鉛華 1.3部(バイエル社製)
NH3 0.7部
強化ロジン(FR1900)0.8部(星光PMC社製)
ノニオン性ポリビニルアルコール(ゴーセサイズP2100) 0.5部(日本合成化学工業社製)
乳酸ジヒドロキシアルミニウム 0.4部(多木化学社製)

3. カルボキシル化NBR LX550L 100部(日本ゼオン社製)、ラテックス濃度30%
活性亜鉛華 1.3部(バイエル社製)
KOH 0.6部
イオウ 0.6部
BZ(加硫促進剤) 0.2部
EZ(加硫促進剤) 0.6部
強化ロジン(FR1900) 0.8部(星光PMC社製)
4. カルボキシル化NBR LX550L 100部(日本ゼオン社製)、ラテックス濃度30%
KOH 2.0部
ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂(WS4030) 0.4部(星光PMC社製)
強化ロジン(FR1900) 0.75部(星光PMC社製)
アジピン酸テトラヒトロキシアルミニウム 0.6部
調整液pH9.5

5.天然ゴムラテックス調製液
・ハイアンモニウム天然ゴムラテックス(固形分濃度60%)にコロイドイオウ 0.8部、酸化亜鉛 1.0部、BZ 0.7部を添加し、40℃で24時間熟成した。
・上記原料に、強化ロジンFR1900(星光PMC社製) 1.0部を添加し、ラテックス濃度40%に調整して原料とした。
(ラテックス製品の表面処理法)
NBRラテックス調製液 天然ゴムラテックス調製液
↓ ↓
型浸漬(凝固剤 硝酸カルシウム) 型浸漬(凝固剤 硝酸カルシウム)
↓ ↓
加熱 80℃、3分 加熱 90℃、5分
↓ ↓
成形膜の温水抽出 45℃、3分または10分 成形膜の温水抽出 45℃、3分
↓ ↓
加熱100℃、1分 加熱100℃、1分
↓ ↓
表面処理液に浸漬 5秒 表面処理液に浸漬 5秒
↓ ↓
加熱乾燥、115℃、15分 加熱乾燥、115℃、15分
(表面処理液の組成)
A1:オレフィン系表面サイズ剤(ポリマロン1329) 1.0%(荒川化学社製)
乳酸ジヒドロキシアルミニウム(タキセラムM-160P) 0.3%(多木化学社製)
A2:オレフィン系表面サイズ剤(ポリマロン1329) 1.0%(荒川化学社製)
ノニオン性ポリアクリルアミド(ハーコート1057) 0.4%(ハリマ化成社製)
A3:オレフィン系表面サイズ剤(ポリマロン1329) 1.0%(荒川化学社製)
乳酸ジヒドロキシアルミニウム 0.3%
ポリビニルアルコール(ゴーセサイズ7100) 0.5%(日本合成化学社製)
B1:オレフィン系表面サイズ剤(ポリマロン1329) 1.0%(荒川化学社製)
変性ポリアミン系樹脂(PA6650) 0.3%(星光PMC社製)
ノニオン性ポリビニルアルコール(ゴーセサイズ7100) 0.5%(日本合成化学社製)
B2:オレフィン系表面サイズ剤(ポリマロン1329) 1.5%(荒川化学社製)
カチオン性ポリビニルアルコール(ゴーセファイマーK-210) 0.6%(日本合成化学工業社製)
B3:オレフィン系表面サイズ剤(ポリマロン1329) 1.0%(荒川化学社製)
変性ポリアミン系樹脂(PA6650) 0.3%(星光PMC社製)
乳酸ジヒドロキシアルミニウム 0.3%
C1:スチレン・アクリル系表面サイズ剤(T-XP118) 1.0%(星光PMC社製)
乳酸ジヒドロキシアルミニウム 0.3%
ポリビニルアルコール(ゴーセサイズ7100) 0.5%(日本合成化学社製)
(潤滑性の試験法)
いわゆる手袋の裏面処理に相当する表面処理液で処理した2個の指サックを2本の指に挟み、処理面同士を接触させる。軽く指で押し、容易に指サックが滑る場合を○とした。滑りはするが、滑りがスムーズでない場合は、△とした。滑らない場合を×とした。
結果を表3および4に示す。アニオン性表面サイズ剤でラテックス成形膜を表面処理すると、処理膜表面が滑性を持つが、表面処理剤が膜内部に拡散すると、滑性を失う。しかし、該表面処理液に有機金属架橋剤、カチオン性失活アミン系化合物(耐水化剤または耐水性ポリマーを添加した、アニオン性もしくはノニオン性ポリビニルアルコール、アニオン性もしくはノニオン性ポリアクリルアミド、またはアニオン性もしくはノニオン性炭水化物)または水素結合形成剤を添加すると、表面の滑性を維持する(温水抽出時間、3分)ことがわかった。
なお、温水抽出時間を長くすると、表面処理剤の拡散を抑制する物質が成形膜から溶出するためか、表面処理剤が成形膜内にさらに拡散するので、表面処理剤、有機金属架橋剤、カチオン性失活アミン系化合物、および水溶性水素結合形成剤の3成分からなる表面処理液で表面処理すると、表面処理剤の拡散が抑制され、長時間の温水抽出処理を行っても処理表面の滑性が維持される。
Figure 2009155634
Figure 2009155634
本発明の成形用組成物を用いることにより、耐久性、耐クリープ性、耐水性に優れ、剥離性を兼ね備えたディップ成形品を得ることができ、医療、食品加工分野および電子部品製造分野など各方面において広く使用されるゴム手袋等を得ることができるものである。
さらに、上記組成物を紙等に内添、含浸、塗工することにより、耐ブロッキング性、耐水性、耐久性に優れた紙製品等を得ることができる。
本発明の表面処理液でラテックス成形体を表面処理すると、表面処理剤の拡散が抑制され、長時間の温水抽出処理を行っても処理表面の滑性が維持される。

Claims (10)

  1. カルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックスと、下記(a)〜(d)から選ばれた一またはそれ以上の化合物とを含む、カルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物。
    (a)カチオン性失活変性ポリアミン系樹脂、カチオン性失活ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、カチオン性失活ポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、カチオン性失活アミン基もしくは四級アンモニウム塩基含有ポリビニルアルコール、カチオン性失活アミン基もしくは四級アンモニウム塩基含有ポリアクリルアミド、カチオン性失活アミン基もしくは四級アンモニウム塩基含有炭水化物系高分子、または架橋性官能基が導入された、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールもしくは炭水化物系高分子、
    (b)耐水化剤または耐水性ポリマーを添加した、アニオン性もしくはノニオン性ポリビニルアルコール、アニオン性もしくはノニオン性ポリアクリルアミド、またはアニオン性もしくはノニオン性炭水化物系高分子、
    (c)耐水性ポリビニルアルコール
    (d)カチオン化剤。
  2. さらに疎水性物質、疎水性基含有カルボン酸またはその塩、疎水性基含有カルボン酸アルミニウム・ジ・ソープまたはトリ・ソープ、および疎水性基含有カルボン酸金属石鹸から選ばれた一またはそれ以上の有機化合物を含有することを特徴とする、請求項1に記載のカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物。
  3. さらに水溶性ポリマーを含有することを特徴とする、請求項1または2に記載のカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物。
  4. さらに金属原子に結合した水酸基を二個又はそれ以上含有する有機金属架橋剤を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物。
  5. さらに水酸化マグネシウムおよび/または水酸化カルシウムを含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のカルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物を架橋および成形してなる架橋成形体。
  7. カチオン性カルボキシル基封鎖剤、および/またはアニオン性疎水性化合物で表面処理されたことを特徴とする請求項6記載の架橋成形体。
  8. 浸漬製品であることを特徴とする請求項7に記載の架橋成形体。
  9. (A)オレフィン系不飽和モノマーを構成モノマーとして含む共重合体からなるアニオン性表面サイズ剤およびスチレン系不飽和モノマーを構成モノマーとして含む共重合体からなるアニオン性表面サイズ剤からなる群より選ばれるサイズ剤と、
    (B)金属原子に結合した水酸基を二個又はそれ以上含有する有機金属架橋剤、カチオン性失活アミン系化合物、および水溶性水素結合形成剤、からなる群から選ばれる一種類以上の化合物を含む、ラテックス架橋成形体用表面処理液。
  10. 請求項9記載の表面処理液で表面処理されたラテックス架橋成形体。
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