JP2014210899A - ラテックスフォーム及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高発泡倍率で成形が容易であり、且つ、水溶性の吸水剤を用いた場合と同等以上の吸水性を有するラテックスフォーム、及びこのようなラテックスフォームを簡易な工程で製造可能なラテックスフォームの製造方法を提供する。【解決手段】ゴムポリマーの粒子が分散されたゴムラテックスと当該ゴムラテックス中に分散されたβ−デンプンとを含む混合物を発泡させ、マトリックスゴム中にβ−デンプンを含むラテックスフォームを成形した後に、ラテックスフォームを水分の存在下で加熱処理することで、β−デンプンをα化させるとともに、α−デンプンをマトリックスゴムに化学結合させる湿熱処理することにより、マトリックスゴムを構成するゴムポリマーの少なくとも一部に化学結合したα−デンプンを含むラテックスフォームであって、当該ラテックスフォーム中に存在する気泡の少なくとも一部が連続気泡である、ラテックスフォームとした。【選択図】なし

Description

本発明は、ラテックスフォーム及びその製造方法に関し、より詳細には、ラテックスポリマーを発泡させることにより得られる吸水性を有するラテックスフォーム及びその製造方法に関する。
ポリマーの微粒子が水中に分散されたラテックスを発泡させることにより得られる吸水性を有するラテックスフォーム(以下、「吸水性ラテックスフォーム」と記載する場合もある。)は、結露防止用等の吸水性を有するシール材、止水材、ワイプ材等の広範囲の用途を有している。そのため、ラテックスフォームの構造や製造方法に関する研究が盛んに行われている。例えば、水溶性ポリマー発泡体層及び粒子状超吸収性ポリマーによって構成される層状体(例えば、特許文献1を参照)の提案がなされている。
また、水不溶性のセルロースをベースとした吸水性ポリマーをラテックスポリマーと組み合わせて、その構造内にセルロースベースの吸水性ポリマーを含んだラテックスポリマーフォームの提案もなされている(例えば、特許文献2を参照)。
さらに、後処理工程として、ゴムラテックス発泡体を界面活性剤を含む親水性ポリウレタン水分散液で処理して、発泡体骨格部分の表面に親水性樹脂皮膜を形成させる製造方法が提案されている(例えば、特許文献3を参照)。
特表平11−506384号公報 特公平3−177440号公報 特開平8−112138号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、吸水剤として水溶性の充填剤、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂などを用いているが、吸水性ラテックスフォームの製造において、これらの水溶性の充填剤を用いた場合、水に溶解させると増粘し、混入できる気体(例えば、空気)量が減少することから、低発泡倍率の発泡体となりやすく、成形も困難となる、という問題があった。
また、上記特許文献2に記載された技術では、水不溶性の吸水剤、例えば、セルロース類を用いているが、このような水不溶性の吸水剤を用いた場合、粘度上昇は抑えられるものの、水溶性吸水剤と比較して親水性に乏しいため、吸水速度が不充分となる等の問題があった。また、上記の水不溶性の吸水剤はラテックス中のポリマーと化学的に結合していないため、吸水時に脱離が起こり易く、吸水性が維持できないという問題もあった。
さらに、上記特許文献3に記載された技術では、後処理工程におけるラテックスフォームの親水化が行われているが、このような親水化は、シートに界面活性剤等を含浸させ、その後乾燥させる工程が必要となるため、工程が煩雑になるという問題点や、風合いや柔軟性が親水化前後で変わるという問題点があった。
以上のように、吸水剤としては、高発泡倍率とし、成形を容易にするために、水不溶性であることが好ましいが、水不溶性の吸水剤は、水溶性吸水剤と比較して親水性に乏しいことから、吸水速度が遅い、吸水量が小さい等の課題があった。また、水不溶性の吸水剤は、ラテックス中のポリマーと化学的に結合していないため、吸水剤が脱離するという問題もあった。さらには、吸水剤等のフィラーを含有させずに後処理工程における親水化をした場合にも、工程が煩雑になるという課題があった。
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高発泡倍率で成形が容易であり、且つ、水溶性の吸水剤を用いた場合と同等以上の吸水性を有するラテックスフォーム、及びこのようなラテックスフォームを簡易な工程で製造可能なラテックスフォームの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、水不溶性のβ−デンプンをゴムラテックス中へ分散させた混合物を発泡させ、この発泡させたラテックスフォームを、所定の湿熱処理により、デンプンをα化させて親水性を発現させるとともに、ラテックスフォームのマトリックスゴムを構成するゴムポリマーの少なくとも一部に化学結合させることにより、高発泡倍率で成形が容易であり、且つ、水溶性の吸水剤を用いた場合と同等以上の吸水性を有するラテックスフォームを簡易な工程で得ることができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、マトリックスゴムを構成するゴムポリマーの少なくとも一部に化学結合したα−デンプンを含むラテックスフォームであって、当該ラテックスフォーム中に存在する気泡の少なくとも一部が連続気泡である、ラテックスフォームである。
前記ラテックスフォームにおいて、前記ゴムポリマーの少なくとも一部が有する官能基と、前記α−デンプンが有する水酸基とが、直接または間接的に化学結合していてもよい。
この場合に、前記官能基が、カルボキシル基又は水酸基であってもよい。
さらにこの場合に、前記ゴムポリマーの少なくとも一部が有するカルボキシル基又は水酸基中の酸素原子と、前記α−デンプンが有する水酸基中の酸素原子とが、デンプン架橋剤を介して架橋されていてもよい。
また、前記ラテックスフォームにおいて、発泡倍率が、3倍以上20倍以下であることが好ましい。
また、前記ラテックスフォームにおいて、吸水倍率が、100%以上500%以下であることが好ましい。
また、本発明は、ゴムポリマーの粒子が分散されたゴムラテックスと、当該ゴムラテックス中に分散されたβ−デンプンとを含む混合物を発泡させ、マトリックスゴム中にβ−デンプンを含むラテックスフォームに成形するフォーム成形工程と、前記ラテックスフォームを水分の存在下で加熱処理することで、前記β−デンプンをα化させるとともに、前記α−デンプンを前記マトリックスゴムに化学結合させる湿熱処理工程と、を含む、ラテックスフォームの製造方法である。
前記ラテックスフォームの製造方法において、前記ゴムポリマーの少なくとも一部が、カルボキシル基又は水酸基を有していてもよい。
この場合に、前記混合物が、前記ゴムポリマーの少なくとも一部が有するカルボキシル基又は水酸基中の酸素原子と、前記α−デンプンが有する水酸基中の酸素原子と、を架橋させるデンプン架橋剤を更に含んでいてもよい。
また、前記ラテックスフォームの製造方法において、前記β−デンプンの含有量が、前記ゴムポリマー100質量部に対して0.8質量部以上であることが好ましい。
また、前記ラテックスフォームの製造方法において、前記デンプン架橋剤の含有量が、前記ゴムポリマー100質量部に対して0.3質量部以上であることが好ましい。
また、前記ラテックスフォームの製造方法において、前記湿熱処理工程が、前記β−デンプンの全質量の30%以上の水分の存在下において、温度60℃以上で10分以上実施されることが好ましい。
また、前記ラテックスフォームの製造方法において、前記フォーム成形工程では、メカニカルフロス法により前記混合物を発泡させることが好ましい。
本発明によれば、ゴムラテックス中にβ−デンプンを分散させた混合物を発泡させた後に、湿熱処理を行うことにより、高発泡倍率で成形が容易であり、且つ、水溶性の吸水剤を用いた場合と同等以上の吸水性を有するラテックスフォーム、及びこのようなラテックスフォームを簡易な工程で製造可能なラテックスフォームの製造方法を提供することが可能となる。
本発明に係るラテックスフォームの製造方法の一例を示すフローチャートである。 本発明に係るラテックスフォームにおけるα−デンプンの結合状態の一例を示す模式図である。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
なお、本発明に係るラテックスフォーム及びその製造方法については、以下の順序で説明する。
1 ラテックスフォームの製造方法
2 ラテックスフォームの構造
3 ラテックスフォームの用途
4 作用効果のまとめ
[ラテックスフォームの製造方法]
本発明に係るラテックスフォームの製造方法は、β−デンプンをゴムラテックス中に分散させた混合物を発泡させてマトリックスゴム中にβ−デンプンを含むラテックスフォームに成形した後に、湿熱処理を行うことで、β−デンプンをα化させるとともに、α−デンプンをマトリックスゴムに化学結合させる方法である。すなわち、本製造方法では、水不溶性のβ−デンプンをゴムラテックス中へ分散させ、このゴムポリマーの粒子及びβ−デンプンを含むラテックスを所定の手法により発泡させたラテックスフォームに対して所定の湿熱処理を施す。この湿熱処理により、デンプンをα化させて親水性を発現させるとともに、ラテックスフォームのマトリックスを構成するゴムポリマーにα化したデンプンを化学結合させることで、吸水剤(α−デンプン)のラテックスフォームからの脱落を抑制した吸水性ラテックスフォームを得ることができる。
ここで、本発明においては、吸水剤としてデンプンを用いているが、α−デンプンをゴムラテックス中に混合して使用すると増粘し、成形(発泡成形)が困難となる。そこで、本発明では、β−デンプンをゴムラテックス中に分散させ、ゴムラテックスの発泡後に、後処理でβ−デンプンをα化している。このように、ゴムラテックスの発泡時にはデンプンがβ−デンプンの状態であるため、ゴムラテックスが増粘せずに、発泡剤としての気体(例えば、空気等)を多量に混入させることができることから、高発泡倍率で成形することが可能となる。また、発泡後にβ−デンプンをα化させ、吸水性の高いα−デンプンとしていることから、水溶性の吸水材を用いた場合と同等以上の吸水性を有するラテックスフォームを得ることができる。また、ラテックスフォームを製造するための工程も、ラテックスを発泡させた後に、得られたラテックスフォームを湿熱処理するだけであるので、吸水性に優れる高発泡倍率のラテックスフォームを容易に成形することができる。以下、図1を参照しながら、本発明に係るラテックスフォームの製造方法について詳細に説明する。図1は、本発明に係るラテックスフォームの製造方法の一例を示すフローチャートであり、(a)は概略を示しており、(b)は(a)のフォーム成形工程の詳細を示しており、(c)は(a)の湿熱処理工程の詳細を示している。
図1に示すように、本発明に係るラテックスフォームの製造方法は、主に、フォーム成形工程S1と、湿熱処理工程S2と、を含む。
(フォーム成形工程S1)
具体的には、まず、フォーム成形工程S1は、ゴムポリマーの粒子が分散されたゴムラテックスと、当該ゴムラテックス中に分散されたβ−デンプンとを含む混合物を発泡させ、マトリックスゴム中にβ−デンプンを含むラテックスフォームに成形する工程であり、例えば、原料調製工程S11と、発泡・ゲル化工程S13と、加熱工程S15と、を含む。
≪原料調製工程S11≫
原料調製工程S11では、ゴムラテックスと、当該ゴムラテックス中に分散されたβ−デンプンとを含む混合物を調製する。このゴムラテックス中には、必要に応じて、後述するデンプン架橋剤、副原料、その他の添加剤を添加してもよい。以下、上記混合物に含まれる各成分について詳述する。
<ゴムラテックス>
本発明で用いられるゴムラテックスは、天然ゴム又は合成ゴムの未架橋又は部分架橋ポリマー(以下、「ゴムポリマー」と記載する。)が、架橋剤(加硫剤)及び起泡剤等とともに、粒子として水中に分散されたものである。ゴムポリマーが天然ゴムの場合、ゴム樹液、これを濃縮したもの、又はゴム樹液等に更に保存剤等を配合したものが用いられる。ゴムポリマーが合成ゴムの場合、ゴムラテックスは、一般に乳化重合によって調製される。あるいは、溶液重合等の方法によって得られたポリマーを、界面活性剤と水によって乳化し、必要に応じて溶媒を除去して調製することもできる。ラテックスフォームの原料としては、通常、ゴムポリマーの含有量が55〜70質量%のラテックスが用いられるが、安定な発泡体(フォーム)を形成し得ることから、好ましくは60〜68質量%のゴムポリマーを含有するラテックスが用いられる。ただし、本発明では、上記含有量範囲を外れるゴムラテックスを用いることは勿論差し支えなく、例えば、後述するようにカルボキシル変性されたゴムラテックスが用いられる場合、ゴムポリマーの含有量が上記範囲から外れたラテックスが用いられることもある。また、本発明に係るゴムラテックスは、乳化重合又はゴムポリマーの乳化に用いられた、脂肪酸アルカリ金属塩、アルキルスルホン酸アルカリ金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩のような界面活性剤等を含有していてもよい。
本発明のゴムポリマーとしては、ゴム系のポリマーであれば特に限定されないが、モノマー単位としてエチレン、プロピレン、スチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリルアミド、アクリルアミド誘導体、ビニルエーテルおよびビニルピロリドン等を1種以上含むポリマーを使用することができる。このようなポリマーとしては、例えば、天然ゴム(NR)や、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)、アクリレート−ブタジエンゴム、メチルメタクリレート−ブタジエンゴム(MBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等の合成ゴムが挙げられる。また、本発明で使用可能なゴムポリマーとしては、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン系ラテックス、DPL(解重合ラテックス)又はクロロスルホン化ポリエチレンラテックス中のゴムポリマー等も挙げられる。
また、本発明では、上記混合物中に含まれるゴムポリマーのうちの少なくとも一部が、官能基としてカルボキシル基又は水酸基を有するもの(以下、「カルボキシル変性ゴムポリマー」又は「水酸基変性ゴムポリマー」等と記載する場合もある。)を用いてもよい。このような変性ゴムポリマーとしては、例えば、カルボキシ変性スチレン−ブタジエンゴム、カルボキシ変性アクリロニトリル−ブタジエンゴム等が挙げられる。また、このような変性ゴムポリマーを使用する場合、変性されていないゴムポリマーと変性ゴムポリマーとの質量比(変性されていないゴムポリマー:変性ゴムポリマー)は、それぞれのゴムポリマーが分散されたラテックスにおけるゴムポリマーの含有量にもより異なるが、例えば、90:10〜0:100とすればよい。
なお、本発明においては、上述したようなゴムポリマーを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
<デンプン>
本発明に係るラテックスフォームの製造方法においては、ゴムラテックスの発泡時にはβ−デンプンの状態とし、発泡後に湿熱処理を施してβ−デンプンを吸水性(親水性)を有するα−デンプンに変化させる、すなわちα化(「糊化」ともいう。)させることで、ラテックスフォームに吸水性を持たせている。
β−デンプンとは、天然の結晶状態(β構造)にあるデンプンのことをいい、α−デンプンとは、デンプン中の糖鎖間の水素結合が破壊されて糖鎖が自由になった状態(α構造)のデンプンのことをいう。ここで、デンプンが、β構造では吸水性を有さず、α構造になると吸水性を発現する理由を以下に説明する。
デンプンは、天然の結晶状態(β構造)では、多数(300〜3000個程度)のα−グルコースがグリコシド結合により直鎖状に結合した天然高分子であり、分子量の小さなアミロースと、枝分かれが多く分子量が大きなアミロペクチンとがある。アミロースは、各グルコース中の隣り合う水酸基同士(2位の炭素原子に結合した水酸基と3位の炭素原子に結合した水酸基と)が水素結合することにより螺旋構造を形成し、6位の炭素原子に結合した水酸基が、螺旋の外側を向いて余った状態となる。また、アミロース分子同士は、相互に6位の炭素に結合した水酸基同士で水素結合を形成して、2本の螺旋が絡み合った所謂二重螺旋構造を形成し、それがさらに凝集して巨大な塊となっているため、アミロース一分子当たりの表面の親水基(水酸基)の部分が減少している。そのため、β−デンプンの状態では、水に溶解しない。また、アミロペクチンは、元々二重螺旋構造を有していることから、アミロースと同様に水に溶解しない。
一方、このβ−デンプンを水分の存在下で加熱すると、熱によりβ−デンプン(アミロースやアミロペクチン)に運動エネルギーが与えられ、二重螺旋構造を形成している水酸基同士の水素結合が切断され、水酸基が螺旋構造の外側に露出して吸水性(親水性)を発現する(α化)。この外側に露出した水酸基が水分子と結合することで、α−デンプンは、水に溶解した状態となる。この際、デンプンを構成するアミロースやアミロペクチンのうち螺旋の長さが長いアミロペクチンは、完全に水に溶解せずに、水を吸収して膨潤し、糊状又は粘凋な溶液となる。従って、α−デンプンの状態では、水に溶解し、糊状又は粘凋な溶液となることから、これを直接ゴムラテックスに添加すると、ゴムラテックスが増粘し、混入できる気体(例えば、空気)量が減少してしまう。
そのため、本発明では、上述のように、ゴムラテックスの発泡時にはβ−デンプンの状態とし、発泡後に湿熱処理を施してβ−デンプンをα化させている。
本発明におけるβ−デンプンの配合量は、ゴムラテックス中において、ゴムポリマー100質量部に対して0.8質量部以上であることが好ましい。β−デンプンの配合量が0.8質量部未満であると、得られるラテックスフォームの吸水性が不足する場合がある。より吸水性を高めるという観点からは、β−デンプンの配合量が2.3質量部以上であることがより好ましい。一方、β−デンプンの配合量が多すぎると、ラテックスフォームの物性(例えば、密度、引張強さ、伸び、硬さ、圧縮応力等)が悪くなったり、ラテックスフォームの形状を保つことができなくなったりする場合があるため、β−デンプンの配合量が9質量部以下であることが好ましい。
<デンプン架橋剤>
本発明に係るラテックスフォームの製造方法では、ゴムラテックス中にデンプン架橋剤をさらに添加してもよい。このデンプン架橋剤は、2つの分子に存在する酸素原子同士を架橋するものであり、具体的には、上述したゴムポリマーの少なくとも一部が有するカルボキシル基又は水酸基中の酸素原子と、デンプン(α−デンプン)が有する水酸基中の酸素原子と、を架橋させるものである。なお、このデンプン架橋剤によるゴムポリマーとデンプンとの架橋構造の詳細については、後述する。
このようなデンプン架橋剤としては、反応温度が60℃以上で酸素原子と結合する物質であれば特に限定はされないが、例えば、炭酸ジルコニウムアンモニウム等の有機ジルコニウム化合物や有機チタン化合物、水溶性エポキシ樹脂、ホルムアルデヒド樹脂(ホルマリン系縮合樹脂)等が挙げられる。
また、デンプン架橋剤の配合量は、ゴムラテックス中において、ゴムポリマー100質量部に対して0.3質量部以上であることが好ましい。デンプン架橋剤の配合量が0.3質量部未満であると、α−デンプンのゴムポリマーに対する結合力が不足して、α−デンプンがラテックスフォームの使用により脱離しやすくなる場合があるか、あるいは、α−デンプンのゴムポリマーに対する結合量が低下する恐れがある。α−デンプンのゴムポリマーに対する結合力をより高くし、結合量をより増加させるという観点からは、デンプン架橋剤の配合量が0.8質量部以上であることがより好ましい。一方、デンプン架橋剤の配合量が多すぎると、ラテックスフォームが加熱収縮を起こしてしまう恐れがあるため、デンプン架橋剤の配合量が3質量部以下であることが好ましい。
なお、本発明に係るラテックスフォームの製造方法では、上述したデンプン架橋剤を含んでいなくてもよく、この場合、後述するように、ゴムポリマーが有するカルボキシル基又は水酸基と、デンプンが有する水酸基とが直接的に反応(例えば脱水縮合等)し、架橋剤を介さずに、デンプンがゴムポリマーに直接結合することとなる。
<加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤>
本発明に係るラテックスフォームの製造方法では、ゴムラテックス中に、上述した成分に加え、必要に応じて、ラテックスフォームの製造に慣用される副原料、例えば、架橋剤(ゴムポリマー同士を架橋するための添加剤であり、例えば、加硫剤)、架橋促進剤(架橋剤による架橋反応を促進するための添加剤であり、例えば、加硫促進剤)、老化防止剤等を添加してもよい。
架橋剤としては、ゴムポリマーの種類及び架橋反応機構に応じて、硫黄、有機過酸化物、又はフェノール化合物等が用いられる。硫黄による架橋の場合、コロイド状硫黄及び微粉末硫黄の他;二塩化硫黄及びジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等の硫黄化合物等を用いることができる。有機過酸化物による架橋の場合、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド;ベンゾイルペルオキシド、m−トルイルペルオキシド等のアシルペルオキシド;t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブトキシペルオキシ)ヘキサン等のアルキルペルオキシド;t−ブトキシペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノアート、t−ブトキシペルオキシベンゾアート等のペルオキシエステル;1,1−ビス(t−ブトキシペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブトキシペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサ等のペルオキシケタール;t−ブトキシペルオキシイソプロピルカルボナート、t−ブトキシペルオキシ−2−エチルヘキシルカルボナート等のペルオキシカルボナート等の有機過酸化物を用いることができる。有機過酸化物は、そのまま配合してもよく、モレキュラーシーブ等の無機粉末に吸着させたり、炭化水素や可塑剤に溶解したり、ポリジメチルシロキサンなどの不活性の液体に混和したりして安定化したものを、配合に使用してもよい。フェノール化合物による架橋の場合、アルキフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、硫化−p−第三ブチルフェノール樹脂及びアルキルフェノール・スルフィド樹脂等を用いることができる。架橋剤の配合量は、ゴムポリマーの種類、架橋機構、及び架橋剤によっても異なるが、ゴムラテックスの混合物中において、ゴムポリマー100質量部に対して0.02〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。
架橋促進剤としては、各種物質が使用できるが、極性油に対する膨潤性を下げることから、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛のようなジチオカルバミン酸亜鉛類;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドのようなチウラム類;N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアリルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアリルスルフェンアミド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミドのようなスルフェンアミド類;2−メルカプトベンゾチアゾール及びその塩(ナトリウム塩、亜鉛塩、シクロヘキシルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩等)、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、4−モルホリニル−2−ベンゾチアジルジスルフィド、2−(N,N−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾールのようなベンゾチアゾール類;並びにそれらの混合物が好ましい。これらのうち、ジチオカルバミン酸亜鉛類がさらに好ましく、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛が特に好ましい。架橋促進剤の配合量は、ゴムラテックスの混合物中において、ゴムポリマー100質量部に対して0.02〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。
老化防止剤としては、例えば、N−フェニル−N’−(p−トルエンスルホニル)−p−フェニレンジアミン等のジフェニルアミン系化合物;芳香族アミンと脂肪族ケトンの縮合物;2−メルカプトベンゾイミダゾールやその亜鉛塩等のイミダゾール系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等のモノ−フェノール系化合物;ビス−、トリス、ポリフェノール系化合物等が挙げられる。老化防止剤の配合量は、ゴムラテックスの混合物中において、ゴム系ポリマー100質量部に対して1.0〜10質量部が好ましく、2.0〜6.0質量部がより好ましい。
なお、架橋剤、架橋促進剤及び老化防止剤については、ゴムラテックス中での分散性を向上させるため、これらの副原料を予め分散剤等を用いて水中に分散させてペースト状にしたもの(加硫系ペースト)を調製し、この加硫系ペーストをゴムラテックス中に添加してもよい。
<起泡剤、気泡安定剤>
本発明に係るラテックスフォームの製造方法では、ゴムラテックス中に、上述した成分に加え、必要に応じて、ラテックスフォームの製造に慣用される起泡剤や気泡安定剤を副原料としてさらに添加してもよい。
起泡剤としては、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸アンモニウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ひまし油カリウム石鹸、やし油カリウム石鹸のような脂肪酸塩;ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、オレイルサルコシンナトリウム、ココイルサルコシンナトリウムのようなサルコシン塩;やし油アルコール硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムのような硫酸塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウムのようなスルホン酸塩;塩化ステアリルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウムのようなカチオン性界面活性剤等が例示される。起泡剤の配合量は、ゴムラテックスの混合物中において、ゴムポリマー100質量部に対して1.0〜10質量部が好ましく、1.5〜6.0質量部がより好ましい。
気泡安定剤としては、例えば、塩化エチルなどの塩化アルキルを、ホルムアルデヒド及びアンモニアと反応させて得られる反応生成物、例えばエチルクロリド・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物;アルキル第四級アンモニウムクロリド;アルキルアリールスルホン酸塩;及び高級脂肪酸アンモニウム等が例示される。これらのうち、気泡安定効果が優れることから、塩化アルキル・ホルムアルデヒド・アンモニアの反応生成物がより好ましい。気泡安定剤の配合量は、ゴムラテックスの混合物中において、ゴムポリマー100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜6.0質量部がより好ましい。
<その他の添加剤>
本発明に係るラテックスフォームの製造方法では、上述した成分に加えて、ゴムラテックス中に、必要に応じて、充填剤、顔料及び染料のような着色剤、香料、増粘剤、分散剤、安定剤、防黴剤等を添加してもよい。
<混合方法>
原料調製工程S11では、以上説明したような各成分を混合することで、ラテックスフォームの原料混合物である液状のラテックスフォーム原料を調製する。この際の混合方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、各成分を混合する混合タンク等の容器内で撹拌しながら混合すればよい。
≪発泡・ゲル化工程S13≫
発泡・ゲル化工程S13では、上記原料調製工程S11で得られた液状のラテックスフォーム原料に所定の発泡用ガス及びゲル化剤を添加し、これらを充分に混合させてラテックスフォーム原料中に気泡が多数存在する状態にすると共に、ゲル化されたラテックスフォーム原料を得る。この発泡・ゲル化工程S13は、通常は、原料調製工程S11で得られた液状のラテックス原料と、発泡用ガスと、ゲル化剤とをミキシングヘッド等の混合装置により充分に混合することで実施される。なお、ここでいうゲル化したラテックスフォーム原料とは、完全にゲル化が完了したラテックスフォーム原料だけを指すものでなく、発泡・ゲル化工程S13により添加されたゲル化剤により、原料調製工程S11で得られる液状のラテックスフォーム原料から次第にゲル化している途上のラテックスフォーム原料及び完全にゲル化したラテックスフォーム原料の両方を指すものである。
<ゲル化剤>
ゲル化剤は、ラテックスフォーム原料中において、直径0.5〜5.0μm程度の粒子の懸濁液の状態、すなわちラテックスの状態で存在するゴムポリマーの粒子の化学的安定性を低下させると共に、この粒子を凝集させて、所謂ゲル化状態とするための物質である。このゲル化剤としては、例えば、ケイフッ化ナトリウム、ケイフッ化カリウム、ケイフッ化カルシウムのようなヘキサフルオロケイ酸塩;またはシクロヘキシルアミンの酢酸塩、スルファミン酸塩のようなシクロヘキシルアミン塩等を使用でき、一般には、これらの化合物を水溶液状態とした液状物が使用される。これらのうち、特に、ケイフッ化ナトリウムが、ゲル化開始時間の制御等の反応制御が容易であることから好適に使用されている。
ゲル化剤の配合量は、液状のラテックスフォーム原料100質量部に対して1〜10質量部程度が好適である。ゲル化剤の配合量が上記範囲外となると、好適なゲル化を発現できない、すなわち、長時間経過しても液状のままゲル化しなかったり、短時間でゲル化が進行して所望の形状への成形が困難になったりする。これにより、具体的にはゲル化の完了に必要な時間(以下、「ゲル化時間」という。)が長くなり過ぎたり、短くなり過ぎたりしてしまうことにより、好適なラテックスフォームが得られなくなってしまう。
<発泡ガス>
発泡・ゲル化工程S13で液状のラテックスフォーム原料に混合される発泡ガスは、ラテックスフォーム中の気泡(セル)を形成するものであり、この発泡ガスの混入量によって、得られるラテックスフォームの発泡倍率及び密度が決まる。ラテックスフォームの密度を調整するためには、所望のラテックスフォームの密度と、ラテックスフォーム原料の体積(例えば、ラテックスフォーム原料が注入される成形型の内容積)とから、必要なラテックスフォーム原料の重量を算出し、この重量において所望の体積となるように発泡ガスの量を決定すればよい。また、発泡ガスの種類としては、主に空気が使用されるが、その他にも、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスを使用することもできる。
<発泡方法、発泡条件>
本発明に係るラテックスフォームの製造方法で使用される発泡方法としては、ラテックスフォームの製造で一般的に使用される方法であれば特に制限されないが、例えば、メカニカルフロス(機械発泡)法を使用することができる。メカニカルフロス法は、ラテックスフォーム原料を攪拌羽根等で攪拌することにより、大気中の空気をラテックスフォーム原料に混入させて発泡させる方法である。撹拌装置としては、メカニカルフロス法に一般に用いられる撹拌装置を特に制限なく使用可能であるが、例えば、ホモジナイザー、ディゾルバー、メカニカルフロス発泡機等を使用することができる。このメカニカルフロス法によれば、ラテックスフォーム原料と空気との混合割合を調節することによって、種々の用途に適した密度のラテックスフォームを得ることができる。
ラテックスフォーム原料と空気との混合時間は特に制限されないが、通常は1〜10分、好ましくは2〜6分である。混合温度も特に制限されないが、通常は常温である。また、上記の混合における攪拌速度は、気泡を細かくするために200rpm以上が好ましく(500rpm以上がより好ましく)、発泡機からの発泡物(ラテックスフォーム)の吐出をスムーズにするために2000rpm以下が好ましい(800rpm以下がより好ましい)。
<成形、ゲル化>
以上のようにして発泡及びゲル化したラテックスフォーム原料は、例えば、ドクターナイフ、ドクターロール等の公知の手段により、所望のラテックスフォームの厚みに合わせたシート状等に成形される。
また、上述したゲル化の完了により、ゲル化したラテックスフォーム原料中に存在する発泡ガスは気泡として保持されることになる。この気泡は、そのまま最終的に得られるラテックスフォームのセルとなるため、この気泡の大きさはセル径を決定することになる。気泡径は、基本的にゲル化時間に依存している。すなわち、ゲル化時間が長ければ、その間にゲル化したラテックスフォーム原料中に混合された気泡が互いに接触し合って合一して巨大化したり、ゲル化したラテックスフォーム原料の外へ排出されることになってしまうので、ゲル化時間が短い程、小さなセル径となる。
≪加熱工程S15≫
加熱工程S15では、成形型に注入されたラテックスフォーム原料の架橋が充分に進行するのに充分な加熱を行ない、ゴムポリマーの架橋(硬化)反応を進行及び完了させてラテックスフォームに成形する。具体的には、上述した架橋剤によりゴムポリマー同士が架橋され、硬化したゴムが形成される。この際の加熱手段としては、ラテックスフォーム原料に充分な加熱を施し、ゴムポリマーを架橋(硬化)させ得るものであれば特に制限はされないが、例えば、トンネル式加熱炉等を使用することができる。また、加熱温度及び加熱時間も、ゴムポリマーを架橋(硬化)させることができる温度及び時間であればよく、例えば、80〜150℃(特に、120℃程度が好適)で1時間程度とすればよい。
また、この加熱工程S15において、ラテックス中の水分がラテックスフォーム原料中から水蒸気として抜けるが、この水蒸気が抜ける際の通り道が、ラテックスフォーム内部から外部まで連通されることとなる。従って、本発明に係るラテックスフォームでは、この水蒸気が抜ける際の通り道が連続気泡として残るため、ラテックスフォーム中に存在する気泡の少なくとも一部が連続気泡となる。そのため、α−デンプンが吸水性を有することによるだけでなく、連続気泡を有することによっても、本発明に係るラテックスフォームの吸水性を向上させることができる。ここで、発泡・ゲル化工程S13で混入された発泡ガスがそのまま残存している場合には、得られたラテックスフォーム中では独立気泡となり、混入された発泡ガスが、本工程において水蒸気が抜ける際に連通された場合には、得られたラテックスフォーム中では連続気泡となる。また、本発明においては、ラテックスフォーム中の気泡の一部が連続気泡であり、残りの気泡が独立気泡であってもよく、あるいは、全ての気泡が連続気泡であってもよい。
なお、ゲル化したラテックスフォーム原料を架橋(硬化)する前の状態でも後述する湿熱処理工程S2を実施することが可能なものであれば、本加熱工程S15を必ずしも実施する必要はなく、後述する湿熱処理工程S2において、ゴムポリマーの架橋を行うようにしてもよい。
また、加熱処理工程S15を実施した場合であっても、本工程の条件次第ではゴムポリマーの架橋が充分に進行しなかったり、後述する湿熱処理の温度条件等によっては、湿熱処理においてゴムポリマーの架橋がさらに進行したりすることもある。一方、この加熱工程S15においても、ラテックス中に水分が存在することから、後述する湿熱処理工程S2を実施する前に、一部のβ−デンプンのα化が進むこともある。
以上説明したように、本フォーム成形工程S1により、マトリックスゴム中にβ−デンプンを含むラテックスフォームを得ることができる。
(湿熱処理工程S2)
湿熱処理工程S2は、フォーム成形工程S1で得られたラテックスフォームを水分の存在下で加熱処理することで、β−デンプンをα化させるとともに、α−デンプンをマトリックスゴムに化学結合させる工程であり、例えば、熱処理工程S21と、乾燥工程S23と、を含む。
≪熱処理工程S21≫
熱処理工程S21では、β−デンプンをα化させるとともに、α−デンプンをマトリックスゴムに化学結合させるが、ここで、α化とは、β−デンプンを水分の存在下で加熱することで水素結合が切断され、ゲル状のα−デンプンとすることである。このα化によって、デンプンの吸水性(親水性)が増加し、粘度の上昇等が生ずる。この理由については上述した通りである。
本熱処理工程S21の条件としては、例えば、(デンプンの種類にもよるが)デンプンの質量の30%以上の量の水分の存在下で、加熱温度を60℃以上とすることが好ましく、105℃以上とすることがより好ましい。水分量を前記範囲とすることで、β−デンプンのα化が進みやすくなる。また、加熱温度を前記範囲とすることで、上述したデンプン架橋剤による架橋反応が進みやすくなる(デンプンのα化は、デンプンの種類やその他の条件によっては常温から進む場合もある)。一方、加熱温度が高すぎるとゴムポリマーが熱分解する可能性があることから、加熱温度を180℃以下とすることが好ましく、125℃以下とすることがより好ましい。また、デンプンのα化やデンプン架橋剤による架橋反応を充分に進行させるためには、処理時間を10分以上とすることが好ましく、30分以上とすることがより好ましい。一方、処理時間が長すぎるとゴムポリマーが熱分解する可能性があることから、処理時間を60分以下とすることが好ましい。また、熱処理工程S21で用いられる処理装置としては、特に制限されるものではないが、比較的高温で水蒸気を存在させる必要があることから、例えば、オートクレーブ等を使用することが好ましい。
なお、デンプンのゴムポリマーへの化学結合は、主に、湿熱処理工程S2(熱処理工程S21)で起こるものと考えられる。ただし、本発明者は、上述した加熱処理工程S15においても、ある程度のデンプンの化学結合は起こっているが、その程度が小さく、その時点での吸水性は不十分である、と推測している。
<α化のタイミングによる吸水性の違い>
ここで、例えば、特開平8−109278号公報(発泡成形体、発泡成形体用原料および発泡成形体の製造方法)には、デンプンとゴムラテックスと水を加熱発泡成形するに際して、デンプンをα化し増粘するとともにゴムラテックスとの分子親和力により均一分散を行い、強度と弾性のある発泡成形体を得る方法が開示されている。この方法は、本発明と同様にデンプンのα化をおこなっているが、α化のタイミングが異なる。すなわち、デンプンとラテックスの混和前または混和と同時にα化を行っている。これにより、デンプンとゴムラテックスとを均一に混和することができる。
しかし、この方法では、上述した水溶性の充填剤(例えば、CMC、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂)を用いた場合と同様に、デンプンとラテックスとの混和時に増粘し、混入できる気体(発泡ガス)の量が減少することから、低発泡倍率の発泡体となりやすく、成形も困難となる、という問題がある。また、この方法では、α−デンプンはラテックスと単に混和している状態であることから、繰り返し使用することでデンプン成分が脱落し、吸水性の観点からα−デンプンを使用しようとする場合には、吸水性が経時で低下する、という問題がある。これに対して、本発明に係るラテックスフォームの製造方法では、ラテックス原料の発泡後に、後処理工程としてα化及びデンプンとゴムポリマーとの結合を行っていることから、このような問題は生じない。また、上記先行技術の方法とは、デンプンのα化の目的が異なることから、β−デンプンのゴムラテックスとの配合比も異なる。
≪乾燥工程S23≫
乾燥工程S23では、上記熱処理工程S21でラテックスフォーム中に吸収された水分を除去する。この際の乾燥方法としては特に制限されるものではないが、例えば、熱風乾燥等を用いればよい。また、乾燥温度及び乾燥時間についても特に制限されるものではないが、例えば、80℃程度で1〜3時間程度とすればよい。
[ラテックスフォームの構成]
以上、本発明に係るラテックスフォームの製造方法について詳細に説明したが、続いて、このような製造方法により得られる本発明に係るラテックスフォームの構成について詳細に説明する。
(構造)
本発明に係るラテックスフォームは、上述したβ−デンプン及び必要に応じて副原料やその他の添加剤が分散されたゴムラテックスを発泡させたラテックスフォームであって、マトリックスゴムを構成するゴムポリマーの少なくとも一部に化学結合したα−デンプンを含むものであって、当該ラテックスフォーム中に存在する気泡の少なくとも一部が連続気泡である、ラテックスフォームである。
本発明に係るマトリックスゴムとは、ラテックスフォームのマトリックス樹脂となるゴムポリマーのことであり、このようなゴムポリマーとしては、上述したゴムポリマーが挙げられる。このマトリックスゴムであるゴムポリマーの少なくとも一部には、α−デンプンが化学結合しており、このα−デンプンが化学結合されていることにより、本発明に係るラテックスフォームは吸水性を有することができるとともに、長期間α−デンプンを保持することができるため、吸水性を長期的に維持することが可能となる。ここで、図2を参照しながら、α−デンプンの結合状態について説明する。図2は、本発明に係るラテックスフォームにおけるα−デンプンの結合状態の一例を示す模式図である。
図2には、デンプンがジルコニウムを介して間接的にカルボキシ変性NBRに化学結合している例を示している。図2に示す例では、マトリックスゴムを構成するゴムポリマーの一例であるNBRがカルボキシル基を有しており、このカルボキシル基中の酸素原子と、デンプンが有する水酸基中の酸素原子とが、それぞれ、デンプン架橋剤としてのジルコニウム(デンプン架橋剤としては、炭酸ジルコニウムアンモニウムを使用)に配位結合した状態となっている。また、デンプン架橋剤が水溶性エポキシ樹脂の場合は開環反応により架橋構造を形成し、デンプン架橋剤がホルムアルデヒド樹脂の場合は縮合反応により架橋構造を形成することができる。ただし、NBR等のゴムポリマーとデンプンとは、デンプン架橋剤を介して間接的に結合している状態のみならず、NBR等のゴムポリマーが有するカルボキシル基(又は水酸基)等の官能基と、デンプンが有する水酸基とが脱水縮合等することで共有結合(例えば、エステル結合やエーテル結合)を形成し、直接化学結合されていてもよい。すなわち、本発明に係るラテックスフォームにおいては、ゴムポリマーの少なくとも一部が有する官能基(例えば、カルボキシル基又は水酸基)と、α−デンプンが有する水酸基とが、直接または間接的に化学結合していてもよい。
また、このα−デンプンは、ゴムラテックスの発泡後にβ−デンプンがα化されたものであり、発泡時にはゴムラテックスが増粘することもないため、空気等の発泡ガスを多量に混入することができることから、本発明に係るラテックスフォームは、発泡倍率が高い(密度が低い)ものとなる。
(物性)
次に、上述した構造を有する本発明に係るラテックスフォームの有する物性について説明する。本発明に係るラテックスフォームは、上述したように、α−デンプンを有することから、高い吸水性を有するものである。また、このα−デンプンがマトリックスゴムを構成するゴムポリマーに化学結合していることから、α−デンプンが脱離しにくいため、長期間の使用や繰り返しの使用によっても吸水性が低下しにくく、高い吸水性を長期間維持することができる。
<発泡倍率>
また、上述したように、本発明に係るラテックスフォームは、α−デンプンを含んでいるが、発泡時にはβ−デンプンとして存在していたことから、水に不溶であり、増粘することもないことから、空気等の発泡ガスを多量に混入することができる。従って、本発明に係るラテックスフォームは、発泡倍率が高いものとなる。このように発泡倍率が高いことにより、フォームを軽く柔軟なものにしたり、吸水性を向上させるという効果を奏することができる。
このような効果を奏するためには、具体的には、本発明に係るラテックスフォームの発泡倍率が、3倍以上20倍以下であることが好ましい。発泡倍率が3倍未満であると、ラテックスフォームの硬度が高くなり過ぎてしまう恐れがある。一方、発泡倍率が20倍超であると混入した空気の分散が悪いため、泡の成長により気泡が大きくなり、セル構造が非常に粗く(セル径が大きく)なってしまう恐れがある。
なお、本発明における発泡倍率は、密度の逆数として次の式で算出することができる。
発泡倍率=1000/A A:密度(kg/m
<密度>
本発明に係るラテックスフォームは、発泡倍率が高いことと同じ理由で、密度が低いものとなる。このように密度が低いことにより、フォームを軽く柔軟なものにしたり、吸水性を向上させるという効果を奏することができる。
このような効果を奏するためには、具体的には、本発明に係るラテックスフォームの密度が、50kg/m以上300kg/m以下であることが好ましい。密度が50kg/m未満であると、混入した空気の分散が悪いため、泡の成長により気泡が大きくなり、セル構造が非常に粗く(セル径が大きく)なってしまう。一方、密度が300kg/m超であるとラテックスフォームの硬度が高くなり過ぎてしまう恐れがある。
なお、本発明に係る密度としては、JIS K6400に準じて、見掛け密度として室温で測定した値を用いることとする。
<吸水倍率>
本発明に係るラテックスフォームは、α−デンプンを含むことにより、吸水倍率が高いものとなる。このように吸水倍率が高いことにより、高い吸水性が要求される、紙おむつ、化粧用パフ、結露防止用等の吸水性を有するシール材、止水材、ワイプ材等の用途に好適に使用することができる。
このような効果を奏するためには、具体的には、本発明に係るラテックスフォームの吸水倍率が、100%以上500%以下であることが好ましく、200%以上500%以下であることがより好ましく、250%以上500%以下であることが更に好ましく、300%以上500%以下であることが特に好ましい。吸水倍率が100%未満であると、上述した高い吸水性が要求される用途に使用する場合には、吸水倍率が十分でない。一方、吸水倍率が500%を超える場合には、β−デンプンの添加量が増加することで、発泡時における原料のバランスが悪くなって発泡不良を引き起こしたりするため発泡体(ラテックスフォーム)の製造が困難になる。
なお、本発明に係る吸水倍率は、試験片をイオン交換水に浸漬させた前後のラテックスフォームの重量比として算出することができる。具体的には、下記式に従って吸水倍率(%)を求めることができる。
吸水倍率=(B−A)/A×100
A:イオン交換水に浸漬前のラテックスフォームの重量
B:イオン交換水に浸漬後のラテックスフォームの重量
[ラテックスフォームの用途]
以上説明したような本発明に係るラテックスフォームの用途としては、高い吸水性及び高い発泡倍率(低い密度)が要求される用途が好適である。具体的には、例えば、紙おむつ、化粧用パフ、結露防止用等の吸水性を有するシール材、止水材、ワイプ材等の用途が好適である。
[作用効果のまとめ]
以上説明したように、本発明に係るラテックスフォーム及びその製造方法によれば、親水性処理等の後処理工程を必要としないことから、簡易な工程で高吸水性且つ高発泡倍率のラテックスフォームを得ることができる。このように、簡易な工程で且つ工程数も減らすことができることから、低コスト化を図ることもできる(特に、排水処理等にかかるコストを削減することができる)。
また、本発明に係るラテックスフォームは、吸水性に優れるα−デンプンを有することから、吸水速度が速い。さらに、デンプンがマトリックスゴムを構成するゴムポリマーの少なくとも一部に化学結合されていることから、繰り返し使用したとしても、吸水剤としてのデンプンの脱落が抑制され、長期間高い吸水性を維持することができる。また、デンプンの脱落が抑制されることから、繰り返し使用した場合等でも、デンプンが高密度に満遍なく存在することから、吸水ムラも生じにくい。
次に、本発明を実施例及び比較例により、更に具体的に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
(原料)
まず、本実施例及び比較例においては、下記の原料を使用した。
・合成ラテックスゴム:
商品名 Nipol LX531B(アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス) ;日本ゼオン株式会社製
商品名 Nipol LX550L(カルボキシ変性アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス) ;日本ゼオン株式会社製
・加硫系ペースト:
商品名 硫黄(加硫剤)、商品名 ノクセラーMZ(加硫促進剤);大内新興化学工業株式会社製、商品名 酸化亜鉛2種(加硫促進剤);堺化学工業株式会社製、商品名 アデカスタブAO−60(老化防止剤);株式会社ADEKA
・起泡剤:
商品名 オレイン酸カリ石鹸;花王株式会社製
・気泡安定剤:
商品名 トリメンベース;ユニロイヤルケミカルカンパニー製
・β−デンプン:
商品名 ファインテックスS−1;王子コーンスターチ株式会社製
・デンプン架橋剤:
商品名 ジルコゾールAC−7;第一稀元素化学工業株式会社製
・ゲル化剤:
商品名 ケイフッ化ナトリウム;三井化学株式会社製
(加硫系ペーストの調製)
10質量部の加硫剤、6質量部のノクセラーMZ、18質量部の酸化亜鉛2種、13質量部の老化防止剤、および3質量部の分散剤を50質量部のイオン交換水中に加えてボールミルにて48時間分散して、加硫系ペーストを調製した。
(実施例1の作製)
ラテックスフォームをなす主原料である合成ラテックスゴムとして2種類のNBRラテックスゴムを使用し、ラテックス混合物に含まれるゴム系ポリマー100質量部に対し、表1に示す配合に従い、16質量部の加硫系ペースト、1.5質量部の起泡剤、2.0質量部の気泡安定剤、9.0質量部のβ−デンプンおよび3.0質量部のデンプン架橋剤を混合してラテックスフォーム原料を得た。この原料に対して7.6質量部のゲル化剤及びエアーを加え発泡させた後、注型により成形してから120℃、1時間加熱処理をして、実施例1の発泡体(湿熱処理工程前のラテックスフォーム)を得た。次いで、オートクレーブ(トミー工業株式会社製、BS−245)を用いて121℃、および発泡体に含有するデンプン重量の30%以上の水蒸気下で1時間処理し、含有した水を除去して実施例1のラテックスフォームを作製した。
(実施例2〜8、11〜14、16、17および比較例1の作製)
表1に示す配合に従って、実施例1と同様にして、実施例2〜8、11〜14、16、17および比較例1のラテックスフォームを作製した。
(実施例9の作製)
オートクレーブ処理を105℃で1時間行った以外は、実施例1と同様にして、実施例9のラテックスフォームを作製した。
(実施例10、15の作製)
オートクレーブ処理を121℃で30分行った以外は、実施例1と同様にして、実施例10、15のラテックスフォームを作製した。
(実施例18の作製)
オートクレーブ処理を121℃で10分間行った以外は、実施例1と同様にして、実施例18のラテックスフォームを作製した。
(比較例2の作製)
オートクレーブ処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例2のラテックスフォームを作製した。
(比較例3の作製)
表1に示す配合に従って、α−デンプンを用いた以外は、実施例1と同様にして比較例3のラテックスフォームの作製を試みた。しかしながら、ラテックスフォーム原料が増粘したため上手く成形できなかった。
(試験方法)
上記で作成した各実施例と比較例のラテックスフォームについて、吸水性、密度及び発泡倍率を評価した。
<吸水性の評価方法>
〔吸水速度〕
上記で作成した各実施例と比較例のラテックスフォームについて、吸水速度を評価するために、下記に示す方法に従い吸水時間の測定を行い、この測定結果から、吸水速度を評価した。イオン交換水1滴を試験片に滴下して、完全にしみ込むまでの時間を測定した。測定箇所は、フォームの4隅及び中央の計5点測定し、以下の基準で吸水速度を評価した。なお、下記評価において、評価が◎、○及び△のものが本発明における吸水速度の評価として良好なものと判断した。得られた結果を表1に示した。
測定箇所5点すべての吸水時間が10秒以内であった場合「◎」
測定箇所5点のうち1〜4点において吸水時間が10秒以内であった場合「○」
測定箇所5点のうち1〜4点において吸水時間が10秒超60秒以内であった場合「△」
測定箇所5点すべての吸水時間が60秒超であった場合「×」
〔吸水倍率〕
試験片をイオン交換水に浸漬させ、60分後に試験片を引き上げて、その重量を測定した。そして、下記式に従って吸水倍率(%)を求めた。
吸水倍率=(B−A)/A×100
A:浸漬前の試験片の重量 B:浸漬後の試験片の重量
<密度の評価方法>
上記で作成した各実施例と比較例のラテックスフォームについて、JIS K6400に準じて、見掛け密度として室温で測定した。
<発泡倍率の評価方法>
上記密度の値を用いて、密度の逆数として下記式のようにして、上記で作成した各実施例と比較例のラテックスフォームの発泡倍率を算出した。
発泡倍率=1000/A A:密度(kg/m
Figure 2014210899
<評価結果>
表1に示すように、実施例1〜18のラテックスフォームは、いずれも良好な吸水性(吸水速度)を有し、且つ発泡倍率が高いものであった。特に、カルボキシル基を有するゴムポリマーを含み、β−デンプンの含有量が2.3質量部以上であり、デンプン架橋剤の含有量が0.8質量部以上であり、湿熱処理温度が105℃以上であり、且つ湿熱処理時間が30分以上である実施例1〜10については、非常に吸水性(吸水速度及び吸水倍率)が高いものとなった。また、β−デンプンの含有量が2.3質量部未満の実施例11,12、デンプン架橋剤の含有量が0.8質量部未満の実施例13,14、及び、デンプン架橋剤を含まないが湿熱処理時間が短めの実施例15については、実施例1〜10に比べるとやや劣るものの良好な吸水性を有していた。さらに、カルボキシル基を有するゴムポリマーを含まない実施例16、デンプン架橋剤を含まず湿熱処理時間も長い実施例17、及び湿熱処理時間が30分未満である実施例18は、実施例11〜15と比べるとやや劣るものの良好な吸水性を有していた。
一方、デンプンを含まない比較例1及び湿熱処理をせずにデンプンがα化していない(β−デンプンのままである)比較例2については、吸水性が悪いものとなった。これは比較例1及び2のラテックスポリマー中に吸水性を有するα−デンプンが含まれていないことによるものと考えられる。また、発泡後にβ−デンプンをα化させるのではなく、初めからα−デンプンを含有させた比較例3については、ラテックスフォーム原料が増粘し、ラテックスフォームに成形することができなかった(そのため、吸水性、発泡倍率、密度等は評価していない)。
(物性値の測定方法)
上記で作製した実施例2の試験片について、下記に示す方法に従い測定を行い、得られた結果を表2に示した。
(1)密度の測定:上述した通りである。
(2)引張強さ及び伸びの測定:JIS K6400に準じて、試験片を2号形のダンベル状に打ち抜いて測定した。
(3)硬さの測定:アスカー硬度計F型(高分子計器株式会社製)を用いて測定した。
(4)圧縮応力の測定:JIS K6400に準じて、25%及び65%圧縮時の圧縮応力を測定した。
Figure 2014210899
(物性値の測定結果)
表2に示すように、実施例2のラテックスフォームは、密度が高く、引張強さ及び伸びが適度な値であり、硬さが軟らかい(硬さの測定値及び圧縮応力が低く)ものとなっていることがわかる。
(吸水性(耐久性)の評価方法)
全自動洗濯機(株式会社東芝製、AW−421S)を準備し、洗濯水量を45Lに設定し、上記で作製した試験片(実施例2、13〜15)を入れた。洗い13分、脱水7分の洗濯工程を行った後、試験片を乾燥させた。試験片の耐久性(吸水性が維持できるかどうか)を評価するために、洗濯前のものと、上記洗濯工程を1〜4回繰り返したものの吸水性の評価を行った。得られた結果を表3に示した。吸水性の評価方法は上述した通りである。
Figure 2014210899
(吸水性(耐久性)の評価結果)
表3に示すように、デンプン架橋剤を適量含む実施例2のラテックスフォームは、4回の洗濯工程後も非常に良好な吸水性を保っていた。このことから、適量の架橋剤の添加によりデンプンとゴムポリマーとの結合力が強くなり、デンプンの脱落が抑制され、ラテックスフォームが長期間高い吸水性を維持できることがわかった。また、デンプン架橋剤の添加量が少ない実施例13のラテックスフォームは、2回の洗濯工程後には吸水率がやや低下し、4回の洗濯工程後では吸水性が大きく低下し、さらにデンプン架橋剤の添加量が少ない実施例14のラテックスフォームは、1回の洗濯工程後には吸水率がやや低下し、3回の洗濯工程後では吸水性が大きく低下した。このことから、少量でもデンプン架橋剤を添加することで、ある程度デンプンの脱落が抑制されているものの、その効果は適量添加した場合よりも劣ることがわかった。一方、デンプン架橋剤を添加していない実施例15では、1回の洗濯工程後に吸水性が大きく低下した。このことから、デンプン架橋剤を添加しない場合には、デンプンが脱落しやすくなり、デンプン架橋剤を添加したものと比較して、長期間高い吸水性を維持することは難しいことがわかった。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述した形態に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で当業者が想到し得る他の形態または各種の変更例についても本発明の技術的範囲に属するものと理解される。

Claims (13)

  1. マトリックスゴムを構成するゴムポリマーの少なくとも一部に化学結合したα−デンプンを含むラテックスフォームであって、
    当該ラテックスフォーム中に存在する気泡の少なくとも一部が連続気泡である、ラテックスフォーム。
  2. 前記ゴムポリマーの少なくとも一部が有する官能基と、前記α−デンプンが有する水酸基とが、直接または間接的に化学結合している、請求項1に記載のラテックスフォーム。
  3. 前記官能基が、カルボキシル基又は水酸基である、請求項2に記載のラテックスフォーム。
  4. 前記ゴムポリマーの少なくとも一部が有するカルボキシル基又は水酸基中の酸素原子と、前記α−デンプンが有する水酸基中の酸素原子とが、デンプン架橋剤を介して架橋されている、請求項3に記載のラテックスフォーム。
  5. 発泡倍率が、3倍以上20倍以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のラテックスフォーム。
  6. 吸水倍率が、100%以上500%以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載したラテックスフォーム。
  7. ゴムポリマーの粒子が分散されたゴムラテックスと、当該ゴムラテックス中に分散されたβ−デンプンとを含む混合物を発泡させ、マトリックスゴム中にβ−デンプンを含むラテックスフォームに成形するフォーム成形工程と、
    前記ラテックスフォームを水分の存在下で加熱処理することで、前記β−デンプンをα化させるとともに、前記α−デンプンを前記マトリックスゴムに化学結合させる湿熱処理工程と、
    を含む、ラテックスフォームの製造方法。
  8. 前記ゴムポリマーの少なくとも一部が、カルボキシル基又は水酸基を有する、請求項7に記載のラテックスフォームの製造方法。
  9. 前記混合物が、前記ゴムポリマーの少なくとも一部が有するカルボキシル基又は水酸基中の酸素原子と、前記α−デンプンが有する水酸基中の酸素原子と、を架橋させるデンプン架橋剤を更に含む、請求項8に記載のラテックスフォームの製造方法。
  10. 前記β−デンプンの配合量が、前記ゴムポリマー100質量部に対して0.8質量部以上である、請求項7〜9のいずれか一項に記載のラテックスフォームの製造方法。
  11. 前記デンプン架橋剤の配合量が、前記ゴムポリマー100質量部に対して0.3質量部以上である、請求項7〜10のいずれ一項に記載のラテックスフォームの製造方法。
  12. 前記湿熱処理工程が、前記β−デンプンの全質量の30%以上の水分の存在下において、温度60℃以上で10分以上実施される、請求項7〜11のいずれか一項に記載のラテックスフォームの製造方法。
  13. 前記フォーム成形工程では、メカニカルフロス法により前記混合物を発泡させる、請求項7〜12のいずれか一項に記載のラテックスフォームの製造方法。
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