JP2008243713A - スパークプラグの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 過酷な熱サイクル試験においても、中間部材と外側電極母材との間に大きな隙間が生じにくく、また、外側電極チップと中間部材との溶融金属部にえぐれが生じにくいスパークプラグの製造方法を提供すること。
【解決手段】 スパークプラグ100は、中心電極130と、接地電極チップ143を中間部材142を介して接地電極母材141に接合してなる接地電極140とを備える。そして、スパークプラグ100の製造方法は、中間部材142に突起部142pを設け、この突起部142pを用いて、中間部材142と接地電極母材141とをプロジェクション溶接することにより、中間部材142と接地電極母材141とを接合する。
【選択図】 図7

Description

本発明は、内燃機関用のスパークプラグの製造方法に関し、特に、外側電極チップを中間部材を介して外側電極母材に接合した外側電極を有するスパークプラグの製造方法に関する。
従来より、中心電極と、外側電極チップを中間部材を介して外側電極母材に接合した外側電極とを備えるスパークプラグが知られている。例えば特許文献1や特許文献2に、このようなスパークプラグが開示されている。
特許文献1では、スパークプラグのうち外側電極を、次のように製造している。即ち、棒状の耐蝕性卑金属製部材(中間部材)の先端に、チップ状の耐火花消耗性電極材(外側電極チップ)を、TIG溶接またはレーザ溶接で接合し、その後、この耐蝕性卑金属製部材(中間部材)を適当寸法にカットする。そして、この耐蝕性卑金属製部材(中間部材)と外側電極(外側電極母材)とを平面同士で接触させて抵抗溶接を行い、外側電極を形成する(特許文献1の特許請求の範囲等を参照)。
また、特許文献2では、外側電極を次のように製造している。即ち、互いに平行な第1面と第2面を有する中間部材を予め作製し、この中間部材の第1面にチップ(外側電極チップ)をレーザ溶接する。次に、この中間部材の第2面と電極母材(外側電極母材)の接合面とを平面同士で接触させて抵抗溶接を行い、外側電極を形成する(特許文献2の特許請求の範囲等を参照)。この中間部材と電極母材(外側電極母材)との抵抗溶接は、中間部材の周縁部分を電気抵抗溶接機で押さえ付けながら電流を流して行っている(特許文献2の図4及びその説明箇所等参照)。
特開平8−298178号公報 特開2004−134209号公報
しかしながら、特許文献1,2の製造方法で製造したスパークプラグは、高温に加熱した後に自然冷却する熱サイクルを多数回繰り返す熱サイクル試験を行うと、中間部材と外側電極母材との間のうち径方向中央部分に大きな隙間が生じ、中間部材と外側電極母材との接合信頼性が低下するおそれがある。また、外側電極チップと中間部材との溶融金属部に、合金が外側から部分的に消失したえぐれが生じる場合もある。
中間部材と外側電極母材との間の径方向中央部分に大きな隙間が生じるのは、次のような理由に由るものと考えられる。即ち、中間部材と外側電極母材を抵抗溶接する際には、中間部材の周縁部分を外側電極母材に押さえ付けているため、この周縁部分においては、中間部材と外側電極母材が互いに溶け合って確実に溶接される。しかし、中間部材の径方向中央部分は加圧してないため、この中央部分においては、中間部材と外側電極母材が確実には溶接されないことがある。このため、熱サイクル試験を行うと、そのときの熱応力により、確実には溶接されていない径方向中央部分に大きな隙間が生じるものと考えられる。
また、外側電極チップと中間部材との溶融金属部にえぐれが生じるのは、次のような理由に由るものと考えられる。即ち、上記のように中間部材と外側電極母材との間の径方向中央部分に大きな隙間があると、外側電極チップから外側電極母材への熱引きが悪くなるので、熱サイクル試験において、外側電極チップと中間部材との溶融金属部が高温に晒される。そうすると、この溶融金属部が高温酸化し、これにより溶融金属部を構成する合金が徐々に消失してえぐれが生じるものと考えられる。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、外側電極チップを中間部材を介して外側電極母材に接合してなる外側電極を有するスパークプラグについて、過酷な熱サイクル試験を行っても、中間部材と外側電極母材との間に大きな隙間が生じにくく、また、外側電極チップと中間部材との溶融金属部にえぐれが生じにくいスパークプラグの製造方法を提供することを目的とする。
その解決手段は、中心電極と、この中心電極と放電ギャップを隔てて離間し、外側電極チップを中間部材を介して外側電極母材に接合してなる外側電極と、を備えるスパークプラグの製造方法であって、前記中間部材及び前記外側電極母材の少なくともいずれかに設けられた突起部を用いて、前記中間部材と前記外側電極母材とをプロジェクション溶接するプロジェクション溶接工程を備えるスパークプラグの製造方法である。
本発明によれば、中間部材及び外側電極母材の少なくともいずれかに設けられた突起部を用いて、両部材をプロジェクション溶接するプロジェクション溶接工程を備える。これにより、従来の抵抗溶接の場合よりも中間部材と外側電極母材とを広い面積に亘って確実に溶接できる。従って、製造されたスパークプラグに過酷な熱サイクル試験を行ったときに、中間部材と外側電極母材との間に大きな隙間が生じるのを防止できる。また、中間部材と外側電極母材とを広い面積に亘って確実に溶接できるため、外側電極チップから外側電極母材への熱引きが良好になる。従って、製造されたスパークプラグに過酷な熱サイクル試験を行ったときに、外側電極チップと中間部材との溶融金属部に高温酸化によるえぐれが生じることを防止できる。
なお、「突起部」は、中間部材にのみ設けてもよいし、外側電極母材にのみ設けてもよいし、両部材にそれぞれ設けてもよい。また、「突起部」は、1つだけ設けてもよいし、複数設けてもよい。また、「突起部」は、プロジェクション溶接に適する形態とすればよく、その形状は適宜変更できる。例えば、円柱形状や角柱形状とすることができる。また、その先端面を球面としたり、先端を尖らせた形状とすることもできる。
更に、上記のスパークプラグの製造方法であって、前記突起部は、前記プロジェクション溶接の際に前記中間部材の周縁よりも径方向内側に配置される形態で、前記中間部材及び前記外側電極母材の少なくともいずれかに設けられてなるスパークプラグの製造方法とすると良い。
前述したように、中間部材と外側電極母材との間、このうち特に径方向中央部分に、大きな隙間が生じると、外側電極チップから外側電極母材への熱引きが悪くなり、熱サイクル試験において、外側電極チップと中間部材との溶融金属部に高温酸化によるえぐれが生じやすい。
これに対し本発明では、突起部を、プロジェクション溶接の際に中間部材の周縁よりも径方向内側に配置される形態で、中間部材及び外側電極母材の少なくともいずれかに設けている。このため、前述のプロジェクション溶接を行えば、中間部材と外側電極母材の間のうち、中間部材の周縁よりも径方向内側の部分が確実に溶接されやすいので、この径方向内側の部分に大きな隙間を生じることを防止できる。従って、製造されたスパークプラグに過酷な熱サイクル試験を行ったときに、外側電極チップと中間部材との溶融金属部に高温酸化によるえぐれが生じることをより確実に防止できる。
更に、上記のスパークプラグの製造方法であって、前記突起部は、前記プロジェクション溶接の際に前記中間部材の径方向中央に配置される形態で、前記中間部材及び前記外側電極母材の少なくともいずれかに設けられてなるスパークプラグの製造方法とすると良い。
本発明では、突起部を、プロジェクション溶接の際に中間部材の径方向中央に配置される形態で、中間部材及び外側電極母材の少なくともいずれかに設けている。このため、前述のプロジェクション溶接を行えば、中間部材と外側電極母材の間のうち、熱引きに特に寄与する、中間部材の径方向中央の部分が確実に溶接されやすいので、この径方向中央の部分に大きな隙間を生じることをより確実に防止できる。従って、製造されたスパークプラグに過酷な熱サイクル試験を行ったときに、外側電極チップと中間部材との溶融金属部に高温酸化によるえぐれが生じることを更に確実に防止できる。
更に、上記のいずれかに記載のスパークプラグの製造方法であって、前記突起部は、その軸線方向と直交する断面の平均断面積が0.03mm2 以上0.2mm2 以下で、その突出長さが0.05mm以上0.2mm以下であるスパークプラグの製造方法とすると良い。
突起部の平均断面積が0.03mm2 未満と小さ過ぎたり、0.2mm2 を超える場合や、その突出長さが0.05mm未満と小さすぎたり、0.2mmを超える場合には、プロジェクション溶接の際、中間部材と外側電極母材とを広い面積に亘って確実に溶接することが困難となる場合もある。
これに対し本発明では、突起部の平均断面積を0.03mm2 以上0.2mm2 以下とし、その突出長さを0.05mm以上0.2mm以下としているので、プロジェクション溶接の際、中間部材と外側電極母材とを広い面積に亘ってより確実に溶接できる。
なお、「平均断面積」は、突起部のうち、その軸線方向と直交する断面の断面積について、突起部の軸線方向先端から軸線方向基端までを平均した値を指す。また、突起部が複数存在する場合には、「平均断面積」は、これらの突起部の平均断面積を合わせた値を指す。
更に、上記のいずれかに記載のスパークプラグの製造方法であって、製造に用いる前記中間部材は、前記プロジェクション溶接の際に抵抗溶接機により押圧される鍔部を有し、この鍔部の厚みが0.2mm以上であるスパークプラグの製造方法とすると良い。
中間部材のうち、抵抗溶接機により押圧される鍔部の厚みが0.2mm未満と薄すぎると、プロジェクション溶接の際にこの鍔部に反り等の変形が生じて、溶接に不具合が起こることがある。
これに対し本発明では、抵抗溶接機により押圧される鍔部の厚みを0.2mm以上としている。従って、プロジェクション溶接の際に、鍔部に変形を生じさせることなく、中間部材と外側電極母材とをより確実に溶接できる。
更に、上記のいずれかに記載のスパークプラグの製造方法であって、製造に用いる前記中間部材は、Niを80wt%以上含むNi合金からなるスパークプラグの製造方法とすると良い。
前述したように、外側電極チップから外側電極母材への熱引きが悪いと、過酷な熱サイクル試験を行った際に、外側電極チップと中間部材との溶融金属部に高温酸化によるえぐれが生じやすい。
そこで、本発明では、中間部材を、Niを80wt%以上含むNi合金からなるものとしている。このため、中間部材の熱伝導性が高く、外側電極チップから外側電極母材への熱引きが良好になる。従って、過酷な熱サイクル試験を行った際に、外側電極チップと中間部材との溶融金属部にえぐれが生じることをより確実に防止できる。
更に、上記のいずれかに記載のスパークプラグの製造方法であって、製造に用いる前記中間部材は、Ni合金からなるNi合金部と、このNi合金部に内包されたCu金属部と、を有するスパークプラグの製造方法とすると良い。
前述したように、外側電極チップから外側電極母材への熱引きが悪いと、過酷な熱サイクル試験を行った際に、外側電極チップと中間部材との溶融金属部に高温酸化によるえぐれが生じやすい。
そこで、本発明では、中間部材を、Ni合金からなるNi合金部と、このNi合金部に内包されたCu金属部とを有するものとしている。熱伝導性が極めて高いCu金属部を有するので、中間部材全体の熱伝導性も高く、外側電極チップから外側電極母材への熱引きが良好になる。従って、過酷な熱サイクル試験を行った際に、外側電極チップと中間部材との溶融金属部にえぐれが生じることをより確実に防止できる。
更に、上記のいずれかに記載のスパークプラグの製造方法であって、ヘッダ加工またはプレス加工により、前記中間部材及び前記外側電極母材の少なくともいずれかに前記突起部を設ける突起部形成工程を備えるスパークプラグの製造方法とする良い。
本発明によれば、ヘッダ加工またはプレス加工により、中間部材及び外側電極母材の少なくともいずれかに、突起部を設ける。このようにすれば、容易かつ確実に、突起部を形成できる。
(実施形態1)
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図1に本実施形態1に係るスパークプラグ100を示す。また、図2に中心電極130及び接地電極(外側電極)140付近を示し、更に、図3に接地電極140の先端付近の部分断面を示す。このスパークプラグ100は、エンジンのシリンダヘッドに取り付けられて使用に供される内燃機関用のスパークプラグである。
スパークプラグ100は、図1に示すように、主体金具110と、絶縁体120と、中心電極130と、接地電極140とを備える。
このうち主体金具110は、低炭素鋼からなり、軸線AX方向に延びる筒状をなす。主体金具110は、径大なフランジ部110fと、これより基端側(図中、上方)に位置し、スパークプラグ100をシリンダーヘッドに取り付ける際に工具を係合させる断面六角形状の工具係合部110mと、更にその基端側に位置し、絶縁体120を主体金具110に加締め固定するための加締部110nとを有する。また、フランジ部110fの先端側(図中、下方)には、フランジ部110fより細径で、外周にスパークプラグ100をシリンダーヘッドにネジ止めするための取付ねじ部110gが形成された先端部110sを有する。
絶縁体120は、アルミナ系セラミックからなり、主体金具110によって周囲が取り囲まれ、その先端部120sが主体金具110の先端面110scから先端側(図中、下方)に突出すると共に、基端部120kが主体金具110の加締部110nから基端側(図中、上方)に突出している。絶縁体120には、軸線AX方向に沿った軸孔が穿設され、その先端側(図中、下方)には中心電極130が、一方、基端側(図中、上方)には高電圧を中心電極130に導く端子金具150が、挿入され固定されている。
中心電極130は、絶縁体120の先端面120scから先端側(図中、下方)に突出した状態で絶縁体120に保持されている。この中心電極130は、図2に示すように、基端側(図中、上方)に位置する中心電極母材131と、先端側(図中、下方)に位置する中心電極チップ133とからなる。
このうち、中心電極母材131は、円柱形状をなし、熱伝導性が高いCuからなるCu金属部を、Niを80wt%以上含むNi合金(具体的には、インコネル(登録商標)600)からなる高Ni合金部で包囲することにより構成されている。
中心電極チップ133は、円柱形状をなし、中心電極母材131にレーザ溶接で接合され、先端側(図中、下方)に向かって突出している。この中心電極チップ133は、貴金属合金、具体的にはIr−Pt合金からなる。
一方、接地電極140は、図2及び図3に示すように、先端側(図中、下方)に位置する接地電極母材(外側電極母材)141と、基端側(図中、上方)に位置する接地電極チップ(外側電極チップ)143と、これらの間に介在する中間部材142とからなる。
このうち、接地電極母材141は、熱伝導性が高いCuからなるCu金属部141gを、Niを80wt%以上含むNi合金(具体的には、インコネル(登録商標)601)からなる高Ni合金部141hで取り囲むことにより構成されている。この接地電極母材141は、その基端部141kが主体金具110の先端面110scに接合され、先端部141sが軸線AX側に向けて屈曲されてなり、径方向内側を向く内側側面141mが、中心電極130の中心電極チップ133と対向するように配置されている。
中間部材142(図4参照)は、径大な円柱形状をなし先端側(図中、下方)に位置するフランジ部(鍔部)142dと、これよりも径小な円柱形状をなし基端側(図中、上方)に位置する円柱部142eとからなる。この中間部材142は、全体がNiを80wt%以上含むNi合金(具体的には、インコネル(登録商標)601)からなる。
中間部材142(フランジ部142d)と接地電極母材141とは溶接により接合されているので、図3に示すように、中間部材142と接地電極母材141との間には、中間部材142と接地電極母材141とが互いに溶融混合して固化した溶融金属部145が形成されている。特に本実施形態1では、中間部材142と接地電極母材141とが後述するプロジェクション溶接により接合されているので、中間部材142と接地電極母材141とが、中間部材142の径方向中央を中心として、広い面積に亘って確実に溶接されている。
接地電極チップ143(図5参照)は、円柱形状をなし、貴金属合金、具体的にはPt−Rh合金からなる。この接地電極チップ143は、中間部材142の円柱部142eに接合され、基端側(図3中、上方)に向かって突出し、中心電極チップ133と対向している。接地電極チップ143と中間部材142とは、レーザ溶接により接合しているので、接地電極チップ143と中間部材142との間には、接地電極チップ143と中間部材142とが互いに溶融混合して固化した溶融金属部146が形成されている。
また、この接地電極チップ143の接地電極母材141の内側側面141mからの突出長さHは、0.80mmである。また、接地電極チップ143と中心電極チップ133との間隙は、火花放電を生じさせる放電ギャップGとなっている。
次いで、上記スパークプラグ100の製造方法について説明する。
まず、公知の手法により、中心電極母材131と中心電極チップ133とを有する中心電極130を作製する。具体的には、中心電極チップ133を中心電極母材131にレーザ溶接して、中心電極130を作製する。
そして、公知の手法により、この中心電極130を、別途形成した絶縁体120に組み付けると共に、端子金具150等も絶縁体120に組み付け、ガラスシールを行う。また、主体金具110を用意し、公知の手法により、主体金具110に棒状の接地電極母材141(中間部材142及び接地電極チップ143が接合されておらず、屈曲加工もされていない状態の接地電極母材141)を接合する。その後、公知の手法により、この接地電極母材141を接合した主体金具110に、中心電極130等を組み付けた絶縁体120を組み付け、加締め等を行う。
一方、これとは別に、ヘッダ加工により、図4に示す、突起部142pを有する中間部材142を作製する。この工程が本発明の突起部形成工程に相当する。この溶接前の中間部材142は、厚みDが0.25mmで径大なフランジ部(鍔部)142dと、このフランジ部142dの一方の主面の径方向中央に設けられた径小な円柱部142eと、フランジ部142dの他方の主面の径方向中央に設けられた、後述するプロジェクション溶接を行うための1つの突起部142pとからなる。従って、突起部142pは、中間部材142の周縁142fよりも径方向内側であって、更には中間部材142の径方向中央に配置されている。この突起部142pは、断面積(平均断面積)Sが0.07mm2 、突出長さLが0.10mmの円柱形状をなしている。
なお、この突起部形成工程においては、ヘッダ加工の代わりにプレス加工を行うことにより、突起部142pを有する中間部材142を形成してよい。
また別途、円柱形状の接地電極チップ143を用意しておく。そして、図5に示すように、この接地電極チップ143を中間部材142の円柱部142eの中央上に載置し、図中に矢印で示すようにレーザ光LSを照射して、接地電極チップ143と中間部材142とをレーザ溶接する。これにより、図6に示すように、接地電極チップ143と中間部材142との間に、両部材が互いに溶融混合して固化した溶融金属部146が形成される。
次に、プロジェクション溶接工程において、図7に示すように、接地電極チップ143が接合された中間部材142を、接地電極母材141にプロジェクション溶接する。具体的には、抵抗溶接機TYにより、中間部材142のフランジ部142dの周囲を押圧して、中間部材142の突起部142pを接地電極母材141に圧接させ、電流を流して突起部142pにその電流を集中させ、中間部材142と接地電極母材141とをプロジェクション溶接する。これにより、図3に示したように、径方向中央部分を中心とした広い範囲に亘って、中間部材142と接地電極母材141とが互いに溶融混合して固化した溶融金属部145が形成される。
その後は、接地電極140を軸線AX側に曲げて所定形状とし、中心電極130との間に放電ギャップGを形成すれば、上記スパークプラグ100が完成する。
以上で説明したように、本実施形態1では、中間部材142に突起部142pに設けて、この突起部142pを用いて、中間部材142と接地電極母材141とをプロジェクション溶接している。このようにすることで、従来の抵抗溶接の場合に比して、中間部材142と接地電極母材141とを径方向中央を中心として広い面積に亘って確実に溶接できる。従って、製造されたスパークプラグ100に後述する過酷な熱サイクル試験を行ったときに、中間部材142と接地電極母材141との間に大きな隙間が生じるのを防止できる。
特に、突起部142pを、中間部材142の周縁142fよりも径方向内側、更に具体的には、径方向中央に配置している。これにより、中間部材142と接地電極母材141とを、特に熱引きに寄与する径方向中央を中心とした広い面積に亘って確実に溶接できるため、接地電極チップ143から接地電極母材141への熱引きが良好になる。従って、製造されたスパークプラグ100に後述する過酷な熱サイクル試験を行ったときに、接地電極チップ143と中間部材142との溶融金属部146に高温酸化によるえぐれが生じることを防止できる。
更に本実施形態1では、突起部142pの断面積(平均断面積)Sを0.03mm2 以上0.2mm2 以下(具体的には0.07mm2 )とし、突出長さLを0.05mm以上0.2mm以下(具体的には0.10mm)としている。このため、プロジェクション溶接の際、中間部材142と接地電極母材141とを広い面積に亘ってより確実に溶接できる。
また、抵抗溶接機TYにより押圧されるフランジ部142dの厚みDを0.2mm以上(具体的には0.25mm)としている。従って、プロジェクション溶接の際の押圧によっても、フランジ部142dに反りなどの変形を生じさせることなく、中間部材142と外側電極母材141とをより確実に溶接できる。
更に本実施形態1では、中間部材142全体を、Niを80wt%以上含むNi合金からなるものとしている。このため、中間部材142の熱伝導性が高く、接地電極チップ143から接地電極母材141への熱引きが良好になる。従って、後述する過酷な熱サイクル試験を行った際に、接地電極チップ143と中間部材142との溶融金属部146にえぐれが生じることをより確実に防止できる。
また、本実施形態1では、ヘッダ加工により、中間部材142に突起部142pを設けている。このようにすれば、容易かつ確実に、中間部材142に突起部142pを形成できる。
(実施例)
本実施形態の効果を検証するために、本発明に係る実施例として、表1に示すように、突起部142pの断面積(平均断面積)Sを0.03mm2 〜0.25mm2 の範囲で異ならせ、突出長さLを0.03mm〜0.28mmの範囲で異ならせ、また、中間部材142のフランジ部142dの厚みDを0.15mm〜0.25mmの範囲で異ならせ、それ以外は上記実施形態1と同様にして、15種類のスパークプラグ100を製造した。
一方、比較例として、突起部142pを設けずに、それ以外は上記実施形態1と同様にして、スパークプラグを製造した。
Figure 2008243713
次に、これらのスパークプラグ100について次のような熱サイクル試験を行った。即ち、1000℃で2分間加熱し、その後1分間自然冷却するサイクルを1000サイクル行った。そして試験後、中間部材142と接地電極母材141との溶融金属部145を観察した。
具体的には、中間部材142の軸線を通る平面で接地電極140を切断し、その断面をエッチング処理する。そして、その断面において中間部材142と接地電極母材141との接合面を観察し、酸化スケールの進行度合いを測定する。中間部材142(具体的にはフランジ部142d)の軸線に直交する方向の長さに対する、酸化スケールの合計長さ(接合されていない部分の合計長さ)を、酸化スケールの割合として算出する。この酸化スケールの割合が10%未満であった場合を、非常に良好な結果と判断して、表中に「◎」と表示した。また、酸化スケールの割合が10%以上50%以下であった場合を、比較的良好な結果と判断して、表中に「○」と表示した。一方、酸化スケールの割合が50%を超えた場合を、良好でない結果と判断して、表中に「×」と表示した。
その結果、突起部142pを設けた実施例1〜15では、酸化スケールの割合が大きくても50%以内に留まっており、良好な結果であった。これらに対し、突起部142pを設けなかった比較例では、酸化スケールの割合が50%を超えた。このことから、突起部142pを設けてプロジェクション溶接を行うことで、中間部材142と接地電極母材141との接合状態が良好になり、過酷な熱サイクル試験にも耐え得ることが判る。
次に、各実施例1〜15の結果について詳しく検討する。突起部142pの断面積Sを0.03mm2 〜0.20mm2 の範囲内とし、突出長さLを0.05mm〜0.20mmの範囲内とした実施例1〜11では、いずれも酸化スケールの割合が10%未満と小さく、非常に良好な結果であった。
これに対し、突起部142pの断面積Sを0.015mm2 または0.25mm2 とした実施例12,13では、酸化スケールの割合が10%以上50%以下と比較的小さく、比較的良好な結果であったが、上述の実施例1〜11と比較すると、酸化スケールの割合が大きくなっていた。このことから、突起部142pの断面積Sを0.03mm2 〜0.20mm2 の範囲内とするのが好ましいことが判る。
また、突出長さLを0.03mmまたは0.28mmとした実施例14,15では、酸化スケールの割合が10%以上50%以下と比較的小さく、比較的良好な結果であったが、前述の実施例1〜11と比較すると、酸化スケールの割合が大きくなっていた。このことから、突出長さLを0.05mm〜0.20mmの範囲内とするのが好ましいことが判る。
また更に、実施例5〜7については、表2に示すように、製造したスパークプラグ100を外観検査して、中間部材142に反りが発生しているか否かを調べた。反りが発生していないサンプルは、良好なものと判断して、表中に「◎」と表示した。一方、反りが発生したサンプルは、反りに関しては良好でないものと判断して、表中に「×」と表示した。
Figure 2008243713
その結果、中間部材142のフランジ部142dの厚みDを0.20mmまたは0.25mmとした実施例6,7では、中間部材142に反りが発生していなかった。一方、厚みDを0.15mmとした実施例5では、中間部材142のフランジ部142dに反りが発生していた。このことから、反りの点に関しては、中間部材142のフランジ部142dの厚みDを少なくとも0.20mm以上の厚みとするのが好ましいことが判る。
(変形形態)
次いで、上記実施形態1の変形形態について説明する。なお、上記実施形態1と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。図8に本変形形態のスパークプラグ500の製造に用いる中間部材542を示す。本変形形態では、製造に用いる中間部材542が上記実施形態1の中間部材142(図4参照)と異なるのみで、それ以外は上記実施形態1と同様である。
この中間部材542は、その外観形状は上記実施形態1の中間部材142と同じである。即ち、径大なフランジ部(鍔部)542dと、このフランジ部542dの一方の主面の径方向中央に設けられた径小な円柱部542eと、フランジ部542dの他方の主面の径方向中央に設けられた1つの突起部542pとからなる。
しかしながら、その内部は上記実施形態1の中間部材142と異なる。即ち、この中間部材542は、熱伝導性が高いCuからなるCu金属部542gを有し、これをNiを80wt%以上含むNi合金(具体的には、インコネル(登録商標)601)からなる高Ni合金部542hで取り囲むことにより構成されている。
この中間部材542は、熱伝導性が極めて高いCu金属部542gを有するので、中間部材542全体の熱伝導性も高く、接地電極チップ143から接地電極母材141への熱引きが良好になる。従って、前述したような過酷な熱サイクル試験を行った際に、接地電極チップ143と中間部材542との溶融金属部にえぐれが生じることをより確実に防止できる。
(実施形態2)
次いで、第2の実施の形態について説明する。なお、上記実施形態1と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。図9に本実施形態2のスパークプラグ200の製造に用いる中間部材242を示す。本実施形態2では、製造に用いる中間部材242が上記実施形態1の中間部材142(図4参照)と異なる。それ以外は、基本的に上記実施形態1と同様である。
この中間部材242は、CuからなるCu金属部242gをNi合金からなる高Ni合金部242hが覆っており、径大なフランジ部242dと径小な円柱部242eとを有する形態をなす。そして、フランジ部242dには、プロジェクション溶接を行うための突起部242pが、中間部材242の周縁242fよりも径方向内側に複数(2つ)設けられている。このように突起部242pを複数設け、これらの突起部242pを用いて中間部材242と接地電極母材141とをプロジェクション溶接しても、中間部材242と接地電極母材141とを中間部材242の径方向中央付近を含む広い面積に亘って確実に溶接できる。その他、上記実施形態1と同様な部分は、同様な作用・効果を奏する。
(実施形態3)
次いで、第3の実施の形態について説明する。なお、上記実施形態1または2と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。図10に本実施形態3のスパークプラグ300の製造に用いる中間部材342を示す。本実施形態3では、製造に用いる中間部材342が上記実施形態1,2の中間部材142,242と異なる。それ以外は、基本的に上記実施形態1,2と同様である。
この中間部材342は、CuからなるCu金属部342gをNi合金からなる高Ni合金部342hが覆っており、径大なフランジ部342dと、径小な円柱部342eと、その間に位置するテーパ部342fとを有する形態をなす。そして、フランジ部342dの径方向中央には、プロジェクション溶接を行うための突起部342pが1つ設けられている。このようにテーパ部342fを有する中間部材342においても、突起部342pを用いて中間部材342と接地電極母材141とをプロジェクション溶接すれば、中間部材342と接地電極母材141とを中間部材342の径方向中央を中心として広い面積に亘って確実に溶接できる。その他、上記実施形態1または2と同様な部分は、同様な作用・効果を奏する。
(実施形態4)
次いで、第4の実施の形態について説明する。なお、上記実施形態1〜3のいずれかと同様な部分の説明は、省略または簡略化する。図11に本実施形態4のスパークプラグ400の製造に用いる接地電極母材441を示す。本実施形態4では、製造に用いる接地電極母材441が上記実施形態1〜3の接地電極母材141と異なる。それ以外は、基本的に上記実施形態1等と同様である。
この接地電極母材441は、CuからなるCu金属部441gをNi合金からなる高Ni合金部441hが覆っている。そして、接地電極母材441の先端部441sのうち、内側側面441mの所定位置には、プロジェクション溶接を行うための突起部441pが1つ設けられている。この突起部441pは、プロジェクション溶接を行う際、接地電極母材441に接地電極チップ143が接合された中間部材142を配置した時に、中間部材142の周縁よりも径方向内側、具体的には径方向中央に配置される。
このように接地電極母材441に突起部441pを設け、この突起部441pを用いて中間部材142と接地電極母材441とをプロジェクション溶接しても、中間部材142と接地電極母材441とを中間部材142の径方向中央を中心として広い面積に亘って確実に溶接できる。なお、本実施形態4の突起部441p付きの接地電極母材441は、プレス加工により形成することができる。その他、上記実施形態1〜3のいずれかと同様な部分は、同様な作用・効果を奏する。
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態1〜4に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
上記実施形態1〜3では、中間部材142,242,342にのみ突起部142p,242p,342pを設け、上記実施形態4では、接地電極母材441にのみ突起部441pを設けているが、中間部材と接地電極母材の両方に突起部を設けてもよい。このようにしても、これらの突起部を用いたプロジェクション溶接により、中間部材と接地電極母材とを広い面積に亘って確実に溶接できる。
実施形態1に係るスパークプラグの側面図である。 実施形態1に係るスパークプラグのうち、中心電極及び接地電極付近の部分拡大図である。 実施形態1に係るスパークプラグのうち、接地電極の先端付近の部分拡大断面図である。 実施形態1に係るスパークプラグの製造方法に関し、(a)は製造に用いる中間部材の側面図であり、(b)はこの中間部材の突起部側から見た平面図である。 実施形態1に係るスパークプラグの製造方法に関し、接地電極チップを中間部材にレーザ溶接する様子を示す説明図である。 実施形態1に係るスパークプラグの製造方法に関し、接地電極チップを中間部材に溶接した後の様子を示す説明図である。 実施形態1に係るスパークプラグの製造方法に関し、中間部材を接地電極母材にプロジェクション溶接する様子を示す説明図である。 変形形態に係るスパークプラグの製造方法に関し、製造に用いる中間部材の側面図である。 実施形態2に係るスパークプラグに関し、(a)は製造に用いる中間部材の側面図であり、(b)はこの中間部材の突起部側から見た平面図である。 実施形態3に係るスパークプラグに関し、(a)は製造に用いる中間部材の側面図であり、(b)はこの中間部材の突起部側から見た平面図である。 実施形態4に係るスパークプラグに関し、接地電極母材の先端部の側面図である。
符号の説明
100,200,300,400,500 スパークプラグ
130 中心電極
131 中心電極母材
133 中心電極チップ
140 接地電極(外側電極)
141,441 接地電極母材(外側電極母材)
141g,441g Cu金属部
141h,441h 高Ni合金部
142,242,342,542 中間部材
142d,242d,342d,542d フランジ部(鍔部)
242g,342g,542g Cu金属部
242h,342h,542h 高Ni合金部
142p,242p,342p,441p,542p 突起部
143 接地電極チップ(外側電極チップ)
145 溶融金属部
146 溶融金属部
AX 軸線
G 放電ギャップ
L 突出長さ
D 厚み
TY 抵抗溶接機

Claims (8)

  1. 中心電極と、この中心電極と放電ギャップを隔てて離間し、外側電極チップを中間部材を介して外側電極母材に接合してなる外側電極と、を備えるスパークプラグの製造方法であって、
    前記中間部材及び前記外側電極母材の少なくともいずれかに設けられた突起部を用いて、前記中間部材と前記外側電極母材とをプロジェクション溶接するプロジェクション溶接工程を備える
    スパークプラグの製造方法。
  2. 請求項1に記載のスパークプラグの製造方法であって、
    前記突起部は、
    前記プロジェクション溶接の際に前記中間部材の周縁よりも径方向内側に配置される形態で、前記中間部材及び前記外側電極母材の少なくともいずれかに設けられてなる
    スパークプラグの製造方法。
  3. 請求項2に記載のスパークプラグの製造方法であって、
    前記突起部は、
    前記プロジェクション溶接の際に前記中間部材の径方向中央に配置される形態で、前記中間部材及び前記外側電極母材の少なくともいずれかに設けられてなる
    スパークプラグの製造方法。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかに記載のスパークプラグの製造方法であって、
    前記突起部は、
    その軸線方向と直交する断面の平均断面積が0.03mm2 以上0.2mm2 以下で、その突出長さが0.05mm以上0.2mm以下である
    スパークプラグの製造方法。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれかに記載のスパークプラグの製造方法であって、
    製造に用いる前記中間部材は、
    前記プロジェクション溶接の際に抵抗溶接機により押圧される鍔部を有し、この鍔部の厚みが0.2mm以上である
    スパークプラグの製造方法。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれかに記載のスパークプラグの製造方法であって、
    製造に用いる前記中間部材は、
    Niを80wt%以上含むNi合金からなる
    スパークプラグの製造方法。
  7. 請求項1〜請求項5のいずれかに記載のスパークプラグの製造方法であって、
    製造に用いる前記中間部材は、
    Ni合金からなるNi合金部と、
    このNi合金部に内包されたCu金属部と、を有する
    スパークプラグの製造方法。
  8. 請求項1〜請求項7のいずれかに記載のスパークプラグの製造方法であって、
    ヘッダ加工またはプレス加工により、前記中間部材及び前記外側電極母材の少なくともいずれかに前記突起部を設ける突起部形成工程を備える
    スパークプラグの製造方法。
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