JP2008209867A - スタンパおよび防眩性反射防止物品とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミニウム基材10の表面に形成された第1の微細凹凸構造S1上に、陽極酸化アルミナからなり、可視光の波長以下の周期の第2の微細凹凸構造S2が形成されたことを特徴とするスタンパ20、および防眩性反射防止物品とその製造方法。
【選択図】図4
Description
特許文献2記載の方法では、工程数が多くコスト高となる上、反射防止層をグラビアコート法などの塗布方法で形成させるため、反射率の低下が充分ではなかった。また、反射防止層を屈折率の異なる層からなる多層構造にすることにより反射防止性を発現させているため、反射率の波長依存性が大きいという問題があった。
さらに、本発明の防眩性反射防止物品は、前記製造方法により製造されたことを特徴とする。
また、このようなスタンパを用いて製造され、反射率が充分に低く、かつ波長依存性の小さい防眩性反射防止物品も実現できる。
本発明のスタンパは、アルミニウム基材の表面に形成された第1の微細凹凸構造上に、陽極酸化アルミナからなり、可視光の波長以下の周期の第2の微細凹凸構造が形成されたものであり、該第2の微細凹凸構造はアルミニウム基材の陽極酸化によって形成される。
なお、本発明において「可視光の波長」とは400nmの波長を意味する。また、微細凹凸構造の「周期」とは、微細凹凸構造を構成する凹部の中心からこれに隣接する凹部の中心までの距離のことである。
<アルミニウム基材>
図1は、本発明に用いるアルミニウム基材の断面図である。アルミニウム基材10は、スタンパを製造する際の原型であり、その表面には、図1に示すように第1の微細凹凸構造S1が形成されている。
前記第1の微細凹凸構造S1は、アルミニウムの表面に形成された微細な凹凸構造であれば特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウムのインゴット(鋳塊)をロール等で圧延する際に発生する結晶組織のひずみ(圧延痕)等が挙げられ、圧延されたアルミニウムの表面に形成される。
本発明においては、第1の微細凹凸構造S1は、JIS B 0601−1994に基く、算術平均粗さ(Ra)、10点平均粗さ(Rz)、凹凸の平均周期(Sm)が各々下記範囲を満たすものであれば、防眩性をより発現できる。算術平均粗さ(Ra)は、0.01μm〜1.0μmが好ましく、0.01μm〜0.6μmがより好ましい。10点平均粗さ(Rz)は、0.10μm〜2.0μmが好ましく、0.10μm〜1.0μmがより好ましい。凹凸の平均周期(Sm)は、5μm〜65μmが好ましく、8μm〜40μmがより好ましい。なお、算術平均粗さ(Ra)、10点平均粗さ(Rz)、凹凸の平均周期(Sm)は、原子間力顕微鏡(AFM)などの走査型プローブ顕微鏡の測定により求められる。また、本発明では、図1に示すように、凹凸を構成する凹部の中心からこれに隣接する凹部の中心までの距離を、凹凸の平均周期(Sm)とする。
なお、アルミニウム基材は、通常、機械研磨、羽布研磨、電解研磨などの方法で表面が鏡面化された後、スタンパの製造に供される。
上述したアルミニウム基材の第1の微細凹凸構造上に、陽極酸化アルミナからなる第2の微細凹凸構造が形成されたスタンパを製造する方法としては、圧延により第1の微細凹凸構造(圧延痕)が表面に形成されたアルミニウム基材を電解液中、定電圧下で陽極酸化して酸化皮膜を形成する第1の酸化皮膜形成工程(a)と、形成された酸化皮膜を除去し、陽極酸化の細孔発生点を形成する酸化皮膜除去工程(b)と、細孔発生点が形成されたアルミニウム基材を電解液中、再度陽極酸化し、細孔発生点に細孔を備えた酸化皮膜を形成する第2の酸化皮膜形成工程(c)と、形成された細孔の径を拡大させる孔径拡大処理工程(d)とを順次実施する方法が挙げられる。孔径拡大処理工程(d)の後には、第2の酸化皮膜形成工程(c)と孔径拡大処理工程(d)とを繰り返し行う繰り返し工程(e)をさらに行うことが好ましい。
本発明においては、第1の酸化皮膜形成工程(a)と、酸化皮膜除去工程(b)を実施しなくてもスタンパを製造することができるが、形成される細孔の規則性の点から、第2の酸化皮膜形成工程(c)の前に、第1の酸化皮膜形成工程(a)と、酸化皮膜除去工程(b)を実施するのが好ましい。
このような方法によれば、第1の微細凹凸構造を有するアルミニウム基材上に、開口部から深さ方向に徐々に径が縮小するテーパー形状の細孔(第2の微細凹凸構造の凹部に相当)が周期的に形成される。すなわち、第1の微細凹凸構造上に第2の微細凹凸構造が形成された表面構造を有するスタンパを得ることができる。
ここで、各工程について具体的に説明する。
第1の酸化皮膜形成工程(a)(以下、(a)工程という場合もある。)では、アルミニウム基材10を電解液中、定電圧下で陽極酸化し、図2(a)に示すように、アルミニウム基材10の表面に形成された第1の微細凹凸構造上に、細孔11を備え、ポーラスアルミナからなる酸化皮膜12を形成する。使用される電解液としては、酸性電解液、アルカリ性電解液が挙げられるが、酸性電解液が好ましい。また、酸性電解液としては、硫酸、シュウ酸、これらの混合物等が使用できる。
また、化成電圧が30〜60Vの時、周期が100nmの規則性の高い細孔を有する酸化皮膜を得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向にあり、周期が可視光の波長より大きくなることがある。
電解液の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。電解液の温度が60℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
また、化成電圧が25〜30Vの時、周期が63nmの規則性の高い細孔を有する酸化皮膜を得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向があり、周期が可視光の波長より大きくなることがある。
電解液の温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がよりに好ましい。電解液の温度が30℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
上述の(a)工程の後、(a)工程により形成された酸化皮膜12を除去することにより、図2(b)に示すように、除去された酸化皮膜12の底部(バリア層と呼ばれる)に対応する周期的な窪み、すなわち、細孔発生点13を形成する(酸化皮膜除去工程(b)(以下、(b)工程という場合もある。))。このように、形成された酸化皮膜12を一旦除去し、陽極酸化の細孔発生点13を形成することで、最終的に形成される細孔の規則性を向上させることができる(例えば、益田,応用物理,vol.69,No.5,p558(2000)参照。)。
次いで、細孔発生点13が形成されたアルミニウム基材10を電解液中、定電圧下で再度陽極酸化し、再び酸化皮膜を形成する(第2の酸化皮膜形成工程(c)(以下、(c)工程という場合もある。))。(c)工程では、(a)工程と同様の条件(電解液濃度、電解液温度、化成電圧等)下で陽極酸化すればよい。
これにより、図2(c)に示すように、円柱状の細孔14が形成された酸化皮膜15を設けることができる。(c)工程においても、陽極酸化を長時間施すほど、深い細孔を得ることができるが、例えば防眩性反射防止物品などの光学用途成形体を製造するためのスタンパを製造する場合には、ここでは90〜300μm程度の酸化皮膜を形成すればよく、(a)工程で形成するほどの厚さの酸化皮膜を形成する必要はない。第2の酸化皮膜形成工程(c)の時間を長くするほど、細孔は深くなる。
このような(c)工程の後には、(c)工程で形成された細孔14の径を拡大させる孔径拡大処理工程(d)(以下、(d)工程という場合もある。)を行って、図2(d)に示すように、細孔14の径を図2(c)の場合よりも拡径する。
孔径拡大処理の具体的方法としては、アルミナを溶解する溶液に浸漬して、(c)工程で形成された細孔径をエッチングにより拡大させる方法が挙げられ、(b)工程のように全ての酸化皮膜を除去するわけではない。このような溶液としては、例えば、5質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。孔径拡大処理工程(d)の時間を長くするほど、細孔径は大きくなる。
次いで、再度(c)工程を行って、図2(e)に示すように、細孔14の形状を径の異なる2段の円柱状とし、その後、再度(d)工程を行う。このように(c)工程と(d)工程を繰り返す繰り返し工程(e)工程(以下、(e)工程という場合もある。)により、図3に示すような、細孔14の形状を開口部から深さ方向に徐々に径が縮小するテーパー形状にできる。その結果、図4に示すような、アルミニウム基材の表面に形成された圧延痕からなる第1の微細凹凸構造S1上に、陽極酸化アルミナからなる周期的な第2の微細凹凸構造S2が、第1の微細凹凸構造S1の形状を反映しつつ形成された表面構造を有するスタンパ20を得ることができる。
このようにして作成されるスタンパの形状は特に限定されず、平板状でもロール状でもよいが、ロール状にすることで連続的にその表面構造を後述する活性エネルギー線硬化性組成物などを用いて転写できるため、生産性をより高めることができ好ましい。
さらに、本発明のスタンパは、表面に圧延痕などの第1の微細凹凸構造を有するアルミニウム基材を原型として形成されたものであるため、第2の微細凹凸構造が第1の微細凹凸構造の形状を反映しつつ形成されるので、防眩性をも発現でき、特に防眩性反射防止物品などの光学用途成形体の製造に有用である。
また、本発明のスタンパが防眩性反射防止物品を製造するものである場合には、細孔の深さは60nm以上であることが好ましく、90nm以上であることがより好ましい。深さが60nm以上であると、スタンパの転写により形成された防眩性反射防止物品の表面、すなわち転写面の反射率がより低下する。また、スタンパの細孔のアスペクト比(=細孔14の深さ/周期)が0.5以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましい。アスペクト比が0.5以上であると、反射率の増加を抑制し、波長依存性が充分に小さくなる。
なお、細孔の深さとは、図3に示すように、細孔14の底部から隣接する凸部の先端までの鉛直距離Depのことである。
<製造方法>
以上説明したスタンパを用いることによって、このスタンパの表面構造が転写された転写面を有する防眩性反射防止物品を製造できる。
例えば、スタンパを用いて、射出成形、プレス成形する方法、スタンパと透明成形体の間に活性エネルギー線硬化性組成物を充填し、活性エネルギー線照射にて活性エネルギー線硬化性組成物を硬化してスタンパの表面構造を転写した後、離型する方法、スタンパと透明成形体の間に活性エネルギー線硬化性組成物を充填し、活性エネルギー線硬化性組成物にスタンパの表面構造を転写した後離型し、その後に活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させる方法が挙げられる。中でも、表面構造の転写性、表面組成の自由度を考慮すると、スタンパと透明成形体の間に活性エネルギー線硬化性組成物を充填し、活性エネルギー線照射にて活性エネルギー線硬化性組成物を硬化してスタンパの表面構造を転写した後、離型する方法が本発明には適している。
照射量は、硬化が進行するエネルギー量であればよいが、通常、100〜5000mJ/cm2である。
あるいは、透明成形体上に固体状の未硬化の活性エネルギー線硬化性組成物をコーティングしておき、この活性エネルギー線硬化性組成物に対してロール型のスタンパを圧接してスタンパの表面構造を転写した後、未硬化の活性エネルギー線硬化性組成物に活性エネルギー線を照射して硬化する方法によっても、同様に本発明の防眩性反射防止物品が得られる。
本発明に用いられる透明成形体は、光を透過するものであれば特に限定されない。例えば、メチルメタクリレート(共)重合体、ポリカーボネート、スチレン(共)重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリウレタン、ガラス、水晶などが挙げられる。透明成形体は射出成形、押し出し成形、キャスト成形のいずれの方法によって作成してもよい。
透明成形体の形状には特に制限はなく、製造する防眩性反射防止物品に応じて適宜選択できるが、例えば防眩性反射防止物品が反射防止膜などである場合には、シート状またはフィルム状が好ましい。また、活性エネルギー線硬化性組成物との密着性や、帯電防止性、耐擦傷性、耐候性等の改良のために、透明成形体の表面には例えば各種コーティングやコロナ放電処理が施されていてもよい。
本発明に用いられる活性エネルギー線硬化性組成物は、分子中にラジカル重合性および/またはカチオン重合性結合を有する単量体、低重合度の重合体、反応性重合体などの重合成化合物を適宜含有するものである。また、活性エネルギー線硬化性組成物は、必要に応じて光硬化性、熱硬化性、電子線硬化性等の硬化反応を引き起こし、反応を促進したり調節したりする成分や、他の成分を配合することにより調製され、主成分として重合性化合物と重合開始剤の混合物が含まれる。
これら開始剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して0.01〜10質量部である。含有量が0.01質量部未満であると、充分に硬化しにくくなる。一方、含有量が10質量部より多くなると、得られる硬化物が着色したり、機械強度が低下したりする。
非反応性のポリマーとしては、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
アルコキシシラン化合物としては、RxSi(OR’)yで表せるものが使用でき、RおよびR’は炭素数1〜10のアルキル基を表し、xおよびyは、x+y=4の関係を満たす整数である。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルブトキシシランなどが挙げられる。
アルキルシリケート化合物としては、R1O[Si(OR3)(OR4)O]zR2で表せるものが使用でき、R1〜R4はそれぞれ炭素数1〜5のアルキル基を示し、zは3〜20の整数を示す。具体的にはメチルシリケート、エチルシリケート、イソプロピルシリケート、n−プロピルシリケート、n−ブチルシリケート、n−ペンチルシリケート、アセチルシリケートなどが挙げられる。
なお、転写面は、防眩性反射防止物品の表面全体に備わっていてもよく、表面の一部に備わっていてもよい。特に、防眩性反射防止物品が膜形状の場合は、一方の表面の全面に転写面が備わっていてもよく、一方の表面の一部に備わっていてもよい。また、他方の表面に転写面が備わっていてもよく、備わっていなくてもよい。
また、第2の微細凹凸構造が反映され、可視光の波長以下の周期、すなわち400nm以下の微細凹凸構造を有するため、有効な反射防止機能を発現できる。また、凸部の高さが60nm以上であれば、反射率がより低下する。さらに、アスペクト比(=凸部の高さ/周期)が0.5以上であれば、反射率の増加を抑制し、波長依存性が充分に小さくなる。
なお、凸部の高さとは、凸部33の先端から隣接する凹部34の底部までの垂直距離Hのことである。
防眩性反射防止物品が膜形状である場合には、例えば、液晶表示装置、プラズマディスプレイパネル、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、陰極管表示装置のような画像表示装置、レンズ、ショーウィンドー、眼鏡レンズ、1/2波長板、ローパスフィルター等の対象物の表面に貼り付けて使用される。
防眩性反射防止物品が立体形状である場合には、予め用途に応じた形状の透明成形体を用いて防眩性反射防止物品を製造しておき、これを上記対象物の表面を構成する部材として使用することもできる。
また、対象物が画像表示装置である場合には、その表面に限らず、その前面板に対して防眩性反射防止物品を貼り付けてもよいし、前面板そのものを本発明の防眩性反射防止物品から構成することもできる。
その他にも、本発明のスタンパによれば、光導波路、レリーフホログラム、レンズ、偏光分離素子、光取出し効率向上フィルム、1/2波長板、ローパスフィルター、水晶デバイスなどの光学物品、細胞培養シートなどを製造することができる。
(反射率の測定)
製造された防眩性反射防止物品の裏面(スタンパの表面構造が転写されていない面)を黒色スプレーで塗り、これをサンプルとし、分光光度計(日立社製、「U‐4100」)を用いて入射角5°、波長380nm〜780nmの範囲で透明成形体の表面(スタンパの表面構造が転写された転写面)の相対反射率を測定した。
各サンプルに、蛍光灯(8000cd/m2)を45°の方向から映し、−45°の方向から観察した際の反射像を目視し、以下に示す基準にて評価した。
○:蛍光灯の輪郭がわずかにわかる。
△:蛍光灯はぼやけているが、輪郭は識別できる。
×:蛍光灯の輪郭がはっきり認識できる。
走査電子顕微鏡(日本電子社製、「JSM‐7400F」)を用いて、スタンパの表面を観察した。得られた画像から、第1の微細凹凸構造上に形成された陽極酸化アルミナからなる第2の微細凹凸構造の細孔の周期、細孔の径(開口部および底部)細孔の深さを測定した。
走査電子顕微鏡(日本電子社製、「JSM‐7400F」)を用いて、防眩性反射防止物品の表面を観察した。得られた画像から、スタンパの表面構造を転写した転写面に形成された凸部の周期、凸部の径(開口部および底部)、凸部の高さを測定した。
走査型プローブ顕微鏡(SIIナノテクノロジーズ社製、「SPI4000プローブステーション、SPA400(ユニット)」)を用いて、以下に示す測定条件により、圧延痕からなる第1の微細凹凸構造の、JIS B 0601−1994に基く算術平均粗さ(Ra)、10点平均粗さ(Rz)、凹凸の平均周期(Sm)を求めた。なお、データ処理は、一次傾き補正処理を行った後に、フラット処理を実施した。
測定条件
・走査モード:DFMモード
・探針:Siカンチレバー「DF−20」(SIIナノテクノロジーズ社製)
・走査速度:0.4Hz、Rotation 90度(圧延痕方向に対して垂直方向にスキャン。)
・走査範囲:2.5μm×2.5μm
・ピクセル数:512×512
・測定環境:室温、大気中
活性エネルギー線硬化組成物の原料とその配合量を以下に示す。
・重合性化合物:トリメチロールエタンアクリル酸・無水コハク酸縮合エステル(45質量部)。
・重合性化合物:ヘキサンジオールジアクリレート(45質量部)。
・重合性化合物:「x−22−1602」(信越化学工業社製、10質量部)。
・光重合開始剤:「イルガキュア184」(チバ・スペシャリティケミカルズ社製、3質量部)。
・光重合開始剤:「イルガキュア819」(チバ・スペシャリティケミカルズ社製、0.2質量部)。
<スタンパの製造例1>
純度99.99%の圧延されたアルミニウム板(第1微細凹凸構造:Ra=0.02μm、Rz=0.30μm、Sm=8.7μm)に、過塩素酸とエタノールの混合溶液(体積比=1:4)中で電解研磨を行った後、4.5%シュウ酸水溶液の電解液中、化成電圧40V、16℃の条件にて15分間、陽極酸化を施し、酸化皮膜を形成した(工程(a))。形成された酸化皮膜を、リン酸/クロム酸混液で選択的に溶解除去した(工程(b))。さらに、2.7%シュウ酸水溶液の電解液中で、先と同一の条件で30秒間、陽極酸化を施し(工程(c))、5%リン酸水溶液で8分間孔径拡大処理を行った(工程(d))。さらに工程(c)と工程(d)を繰り返し、これらを合計で5回追加実施して(工程(e))、アルミニウム基材上に陽極酸化アルミナを形成した。次いで、フルオロアルキルシラン(信越シリコーン社製、「KBM‐7803」)を固形分0.5質量%になるようにメタノールで希釈した溶液に、陽極酸化アルミナを10分間ディッピングした後、風乾し、120℃で2時間減圧下、熱処理してスタンパ(A)を得た。
なお、得られたスタンパ(A)の表面を電子顕微鏡で観察したところ、図3に示すように、周期p:100nm、深さDep:250nmの略円錐状のテーパー状細孔からなる第2の微細凹凸構造が、第1の微細凹凸構造上に形成された、図4に示すような表面構造が形成されていた。
また、スタンパ(A)のRa、Rz、Smは、陽極酸化前のアルミニウム板のRa、Rz、Smの値と同様であった。
活性エネルギー線硬化性組成物をスタンパ(A)のスタンパ表面上に数滴垂らし、さらにその上に透明成形体として厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製、「A−4300」)を押し広げながら被覆した後、フィルム側から1600mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射して活性エネルギー線硬化性組成物を光硬化させた。その後、フィルムとスタンパ(A)を剥離して、防眩性反射防止物品(A)を得た。
得られた防眩性反射防止物品(A)の表面(転写面)は、スタンパ(A)の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、図7に示すように、周期p’:100nm、高さH:220nmの凸部が形成されていた。
また、防眩性反射防止物品(A)のRa、Rz、Smは、陽極酸化前のアルミニウム板のRa、Rz、Smの値と同様であった。
得られた防眩性反射防止物品の反射率、防眩性の各評価を行った。また、アスペクト比(=凸部の高さ/周期)を求めた。結果を表1に示す。
純度99.99%の圧延されたアルミニウム板を用いる代わりに、純度99.99%のインゴットから切り出した、圧延痕からなる第1の微細凹凸構造が表面に形成されていないアルミニウム板(Ra=0μm、Rz=0μm、Sm=0μm)を用いた以外は実施例1と同様の方法でスタンパ(B)を製造し、さらに防眩性反射防止物品(B)を製造し、反射率、防眩性の各評価を行った。また、アスペクト比(=凸部の高さ/周期)を求めた。結果を表1に示す。
なお、スタンパ(B)の表面を電子顕微鏡で観察したところ、周期:100nm、深さ:250nmの略円錐状のテーパー状細孔からなる微細凹凸構造が形成されていたが、第1の微細凹凸構造に相当するものは認められなかった。また、スタンパ(B)のRa、Rz、Smは、陽極酸化前の、圧延痕からなる第1の微細凹凸構造が表面に形成されていないアルミニウム板のRa、Rz、Smの値と同様であった。
さらに、防眩性反射防止物品(B)の表面(転写面)は、スタンパ(B)の微細凹凸構造が転写され、周期100nm、高さ220nmの凸部が形成されていた。また、防眩性反射防止物品(B)のRa、Rz、Smは、陽極酸化前の圧延痕のないアルミニウム板のRa、Rz、Smの値と同様であった。
陽極酸化を施さなかった以外は実施例1と同様の方法でスタンパ(C)を製造し、さらに防眩性反射防止物品(C)を製造し、反射率、防眩性の各評価を行った。また、アスペクト比(=凸部の高さ/周期)を求めた。結果を表1に示す。
なお、スタンパ(C)の表面を電子顕微鏡で観察したところ、圧延痕からなる第1の微細凹凸構造のみが認められ、略円錐状のテーパー状細孔からなる第2の微細凹凸構造は形成されていなかった。スタンパ(C)のRa、Rz、Smは、陽極酸化前のアルミニウム板のRa、Rz、Smの値と同様であった。
さらに、防眩性反射防止物品(C)の表面(転写面)は、スタンパ(C)の圧延痕からなる第1の微細凹凸構造が転写されていた。防眩性反射防止物品(C)のRa、Rz、Smは、陽極酸化前のアルミニウム板のRa、Rz、Smの値と同様であった。
一方、比較例1の防眩性反射防止物品(B)は、その表面に、圧延痕からなる第1の微細凹凸構造を反映した構造が形成されなかったため、防眩性が実施例1に比べて劣っていた。
比較例2の防眩性反射防止物品(C)は、その表面に、陽極酸化アルミナからなる第2の微細凹凸構造を反映した構造が形成されなかったため、アスペクト比が0であり、波長依存性を小さくできなかった。また、反射率が高く、反射防止性が実施例1に比べて劣っていた。
11、14:細孔
12、15:酸化皮膜
13:細孔発生点
20:スタンパ
30:防眩性反射防止物品
31:透明成形体
32:硬化物
33:凸部
34:凹部
S1:第1の微細凹凸構造
S2:第2の微細凹凸構造
Claims (3)
- アルミニウム基材の表面に形成された第1の微細凹凸構造上に、陽極酸化アルミナからなり、可視光の波長以下の周期の第2の微細凹凸構造が形成されたことを特徴とするスタンパ。
- 請求項1に記載のスタンパの表面構造を転写することを特徴とする防眩性反射防止物品の製造方法。
- 請求項2に記載の製造方法により製造されたことを特徴とする防眩性反射防止物品。
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