JP2014051710A - 陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法、モールドの製造方法および微細凹凸構造を表面に有する成形体 - Google Patents

陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法、モールドの製造方法および微細凹凸構造を表面に有する成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】特殊な装置を用いることなく、結晶粒界の段差が抑えられ、細孔の規則性が高く、かつ細孔の間隔が比較的大きい陽極酸化ポーラスアルミナおよびモールドを簡便に製造できる方法;および突起の規則性が高く、突起の間隔が比較的大きく、外観が良好であり、かつヘイズが小さい、複数の突起からなる微細凹凸構造を表面に有する成形体を提供する。
【解決手段】複数の細孔12からなる微細凹凸構造を表面に有する陽極酸化ポーラスアルミナ(酸化皮膜14)を製造する方法であって、0.35モル/L以上1.0モル/L未満の濃度のシュウ酸水溶液を電解液として用い、電解液の温度を10℃超20℃未満とし、50〜68Vの電圧にてアルミニウム基材10を陽極酸化する工程を有する陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、複数の細孔からなる微細凹凸構造を表面に有する陽極酸化ポーラスアルミナおよびモールドの製造方法、ならびに該モールドを用いて得られた、微細凹凸構造を表面に有する成形体に関する。
近年、微細加工技術の進歩によって、成形体の表面にナノスケールの微細凹凸構造を付与することが可能となった。ナノスケールの微細凹凸構造は、例えばモスアイ効果と呼ばれる反射防止機能や、ロータス効果と呼ばれる撥水機能のように、構造由来の機能が発現することから、ナノスケールの微細凹凸構造の産業上の利用が盛んに図られている。
成形体の表面に微細凹凸構造を付与する技術は様々である。これらのうち、モールドの表面に形成された微細凹凸構造を、成形体本体の表面に転写する方法は、簡便かつ少ない工程で成形体の表面に微細凹凸構造を付与できるため、工業生産に適している。近年、微細凹凸構造を表面に有する大面積のモールドを簡便に製造する方法として、アルミニウム基材を陽極酸化することによって複数の細孔を有する酸化皮膜(陽極酸化ポーラスアルミナ)を形成する方法が注目されている。
陽極酸化を利用してモールドを製造する場合、モールドに好適な細孔の深さと規則的な配列とを両立するために、陽極酸化を二段階に分けて実施する方法(以下、本明細書においては「二段酸化法」とも記す。)が適している。すなわち、下記工程(i)〜工程(iii)を順次行い、モールドに好適な細孔を得る。
工程(i):アルミニウム基材の表面を陽極酸化し、細孔の深さを無視して細孔を規則的に配列させる工程。
工程(ii):工程(i)で形成された酸化皮膜の一部または全部を除去する工程。
工程(iii):工程(ii)の後、アルミニウム基材を再び陽極酸化して、規則的な配列を保ったまま任意の深さの細孔を形成する工程。
酸化皮膜の細孔の間隔(ピッチ)は、陽極酸化時の印加電圧に概ね比例して大きくなることが知られている。細孔の間隔が比較的大きな酸化皮膜を形成する方法としては、例えば、下記の方法が提案されている。
(1)アルミニウム基材を冷却しつつ、1.0モル/L以上の濃度のシュウ酸水溶液を電解液として用い、電解液の温度を25℃以上とし、目的よりも低い電圧で陽極酸化を開始し、その後電圧を上昇させて最終電圧70〜130Vの電圧にてアルミニウム基材を陽極酸化して、細孔の間隔が150〜250nmである酸化皮膜を形成する方法(特許文献1)。
(2)アルミニウム基材を電解液と接しない背面から冷却しつつ、1.5モル/Lの濃度のシュウ酸水溶液を電解液として用い、電解液の温度を32℃とし、80Vの最大電圧にてアルミニウム基材を陽極酸化して、細孔の間隔が160nmである酸化皮膜を形成する方法(特許文献2)。
しかし、(1)、(2)の方法では、細孔を規則的に配列させるためには、細孔が規則的に配列するまで細孔の深さを無視して工程(i)の陽極酸化を行う、すなわち酸化皮膜の厚さを非常に厚くする必要がある。
工程(i)で形成される酸化皮膜が厚すぎる場合、工程(ii)の後にアルミニウム基材において生じる結晶粒界の段差が視認できるほど顕著になる。結晶粒界の段差が顕著なモールドを用いると、成形体本体の表面にもモールド由来のマクロな凹凸が転写されてしまい、成形体の外観が悪くなる。
一方、工程(i)で形成される酸化皮膜を薄くしてしまうと、細孔の規則性が低くなり、その結果、成形体のヘイズが高くなることがある。
また、陽極酸化時の印加電圧を高めて細孔の間隔が比較的大きい酸化皮膜を形成しようとすると、「ヤケ」と呼ばれる現象が発生し、複数の細孔からなる微細凹凸構造が破壊されてしまう。特に(1)、(2)の方法では、電解液の濃度および温度が高い条件で印可電圧を高くしているため、「ヤケ」が起こりやすい。そのため、(1)、(2)の方法では、アルミニウム基材を特殊な装置で冷却する必要があり、モールドを簡便に製造できない。
特開2009−256751号公報 特開2011−089200号公報
本発明は、特殊な装置を用いることなく、結晶粒界の段差が抑えられ、細孔の規則性が高く、かつ細孔の間隔が比較的大きい陽極酸化ポーラスアルミナおよびモールドを簡便に製造できる方法;および突起の規則性が高く、突起の間隔が比較的大きく、外観が良好であり、かつヘイズが小さい、複数の突起からなる微細凹凸構造を表面に有する成形体を提供する。
本発明の陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法は、複数の細孔からなる微細凹凸構造を表面に有する陽極酸化ポーラスアルミナを製造する方法であって、0.35モル/L以上1.0モル/L未満の濃度のシュウ酸水溶液を電解液として用い、電解液の温度を10℃超20℃未満とし、50〜68Vの電圧にてアルミニウム基材を陽極酸化する工程を有する。
本発明のモールドの製造方法は、複数の細孔からなる微細凹凸構造を表面に有するモールドを製造する方法であって、下記の工程(a)〜工程(e)を有する。
工程(a):0.35モル/L以上1.0モル/L未満の濃度のシュウ酸水溶液を電解液として用い、電解液の温度を10℃超20℃未満とし、50〜68Vの電圧にてアルミニウム基材を陽極酸化し、該アルミニウム基材の表面に複数の細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
工程(b):前記工程(a)で形成された前記酸化皮膜の少なくとも一部を除去する工程。
工程(c):前記工程(b)または下記工程(d)の後、アルミニウム基材を陽極酸化して、複数の細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
工程(d):前記工程(c)の後、酸化皮膜の一部を除去し、細孔の孔径を拡大する工程。
工程(e):前記工程(c)と前記工程(d)とを交互に繰り返す工程。
本発明の微細凹凸構造を表面に有する成形体は、本発明のモールドの製造方法で得られたモールドの表面に形成された複数の細孔からなる微細凹凸構造を、成形体本体の表面に転写してなるものである。
本発明の陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法によれば、特殊な装置を用いることなく、結晶粒界の段差が抑えられ、細孔の規則性が高く、かつ細孔の間隔が比較的大きい陽極酸化ポーラスアルミナを簡便に製造できる。
本発明のモールドの製造方法によれば、特殊な装置を用いることなく、結晶粒界の段差が抑えられ、細孔の規則性が高く、外観が良好であり、かつ細孔の間隔が比較的大きいモールドを簡便に製造できる。
本発明の成形体は、突起の規則性が高く、突起の間隔が比較的大きく、外観が良好であり、かつヘイズが小さい。
アルミニウム基材の表面に複数の細孔を有する酸化皮膜が形成されたモールドの製造工程を示す断面図である。 微細凹凸構造を表面に有する成形体の製造装置の一例を示す構成図である。 微細凹凸構造を表面に有する成形体の一例を示す断面図である。
本明細書において、「細孔」とは、アルミニウム基材の表面の酸化皮膜に形成された微細凹凸構造の凹部のことをいう。
また、「細孔の間隔」は、隣接する細孔同士の中心間距離を意味する。
また、「突起」とは、成形体の表面に形成された微細凹凸構造の凸部のことをいう。
また、「微細凹凸構造」は、凸部または凹部の平均間隔がナノスケールであるの構造を意味する。
また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの総称である。
また、「活性エネルギー線」は、可視光線、紫外線、電子線、プラズマ、熱線(赤外線等)等を意味する。
[陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法]
本発明の陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法は、下記の工程(a)を有する方法である。必要に応じて、後述する工程(b)〜工程(e)を行ってもよい。
工程(a):0.35モル/L以上1.0モル/L未満の濃度のシュウ酸水溶液を電解液として用い、電解液の温度を10℃超20℃未満とし、50V以上68V未満の電圧にてアルミニウム基材を陽極酸化する工程。
工程(a)を行うと、アルミニウム基材の表面に複数の細孔を有する酸化皮膜(陽極酸化ポーラスアルミナ)が形成される。
アルミニウム基材の表面の一部または全部を電解液に浸漬して陽極酸化することによって、電解液に浸漬した部分に酸化皮膜を形成できる。陽極酸化の初期に形成される酸化皮膜は、細孔の位置や大きさが不均一で規則性は皆無であるが、酸化皮膜が厚くなるとともに、徐々に細孔の配列の規則性が増していく。しかし、酸化皮膜が厚すぎる場合、工程(a)の後にアルミニウム基材において生じる結晶粒界の段差が視認できるほど顕著になる。特に、細孔の周期が100nmを超える大ピッチの細孔を有する酸化皮膜を形成する場合、高い電圧をアルミニウム基材に印加する必要があり、酸化皮膜が厚くなりやすい。本発明に係る実施形態においては、細孔の周期が100nmを超える大ピッチの細孔を有する酸化皮膜を形成する場合において、工程(a)において形成する酸化皮膜を厚くし過ぎることなく、高い規則性が得られるものであり、本発明に係る酸化皮膜をモールドとして成形体を製造した場合に、外観が良好であり、ヘイズが低く、反射防止性能に優れた成形体を得ることができる。
アルミニウム基材の形状は、特に限定されず、板状、円柱状、円筒状等、モールドとして使用可能な形状であればどのような形状であってもよい。
アルミニウム基材としては、公知の切削方法または研磨方法(機械研磨、羽布研磨、テープ研磨、化学研磨、電解研磨等)によって表面が切削または研磨され、少なくとも陽極酸化する部分が鏡面化されたものが好ましい。
アルミニウム基材の純度は、97.5質量%超が好ましく、98.0質量%以上がより好ましく、99.0質量%以上がもっとも好ましい。アルミニウム基材の純度が97.5質量%超であれば、製造過程において、不純物の金属間化合物が脱落して発生するマクロな凹凸が多くなりすぎない。
アルミニウム基材の平均結晶粒径は、100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、60μm以下がさらに好ましい。平均結晶粒径が100μm以下であれば、二段酸化法を採用した場合に、第一の酸化皮膜を除去した際に生じる結晶粒界の段差が比較的目立たず、特に透明成形体の製造に用いるモールドに適する。
アルミニウム基材の平均結晶粒径は、アルミニウム基材の被加工面における任意に選ばれた100個以上の結晶粒について算出された円換算直径の平均値である。被加工面の結晶粒の観察は光学顕微鏡等で行うことができ、円換算直径の平均値は、例えば日本ローパー社製の「Image−Pro PLUS」等の画像解析ソフトウエアを用いることで求められる。
シュウ酸水溶液中のシュウ酸の濃度は、0.35モル/L以上1.0モル/L未満であり、0.4〜0.9モル/Lが好ましく、0.45〜0.85モル/Lがより好ましい。シュウ酸の濃度が0.35モル/L以上1.0モル/L未満であり、かつ電解液の温度および印加電圧が後述する範囲内であれば、酸化皮膜をあまり厚くすることなく、規則性の高い細孔を形成できる。酸化皮膜をあまり厚くする必要がないため、工程(b)の後に生じるアルミニウム基材の結晶粒界の段差が抑えられる。また、シュウ酸の濃度が1.0モル/L未満であれば、「ヤケ」と呼ばれる現象が起こりにくく、微細凹凸構造の部分的な破壊が起こりにくい。
電解液の温度は、10℃超20℃未満であり、12〜19℃が好ましく、13〜18℃がより好ましい。電解液の温度が10℃超20℃未満であり、かつ電解液の温度が上述した範囲内であり、印加電圧が後述する範囲内であれば、酸化皮膜をあまり厚くすることなく、規則性の高い細孔を形成できる。また、酸化皮膜をあまり厚くする必要がないため、工程(b)の後に生じるアルミニウム基材の結晶粒界の段差が抑えられる。また、電解液の温度が20℃未満であれば、「ヤケ」と呼ばれる現象が起こりにくく、微細凹凸構造の部分的な破壊が起こりにくい。
印加電圧は、50〜68Vであり、55〜68Vが好ましく、57〜63Vがより好ましい。印加電圧が50〜68Vであれば、細孔の間隔を比較的大きく、具体的には120nm以上160nm未満にできる。また、印加電圧が68V以下であれば、「ヤケ」と呼ばれる現象が起こりにくく、微細凹凸構造が部分的に破壊されにくい。
工程(a)において形成される酸化皮膜の厚さは、50μm以下が好ましく、0.1〜10μmが好ましく、0.5〜5μmがより好ましい。酸化皮膜の厚さが50μm以下であれば、工程(b)の後に生じるアルミニウム基材の結晶粒界の段差が抑えられる。酸化皮膜の厚さが0.5μm以上であれば、工程(b)において酸化皮膜を除去した際に、アルミニウム基材の表面の機械加工の痕は十分に除かれる。モールド由来のマクロな凹凸の成形体本体の表面への転写を回避できるため、外観の良好な成形体が得られることから、モールドとしての使用に適する。
酸化皮膜の厚さは電流密度と酸化時間の積である積算電気量に比例する。電流密度と酸化時間を変更することによって、酸化皮膜の厚さを調整できる。
本発明の陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法で製造される陽極酸化ポーラスアルミナの用途としては、後述するモールドの他に、フィルタ、ノズル(紡糸用ノズル等)等が挙げられ、モールドが好適である。
以下、モールドの製造方法について説明する。
[モールドの製造方法]
本発明のモールドの製造方法は、少なくとも下記の工程(a)を有する方法であり、細孔の形状を開口部から深さ方向に徐々に径が縮小するテーパー形状にできる点から、工程(a)〜工程(e)を有する方法が好ましい。
工程(a):0.35モル/L以上1.0モル/L未満の濃度のシュウ酸水溶液を電解液として用い、電解液の温度を10℃超20℃未満とし、50〜68Vの電圧にてアルミニウム基材を陽極酸化し、該アルミニウム基材の表面に複数の細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
工程(b):前記工程(a)で形成された前記酸化皮膜の少なくとも一部を除去する工程。
工程(c):前記工程(b)または下記工程(d)の後、アルミニウム基材を陽極酸化して、複数の細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
工程(d):前記工程(c)の後、酸化皮膜の一部を除去し、細孔の孔径を拡大する工程。
工程(e):前記工程(c)と前記工程(d)とを交互に繰り返す工程。
以下、各工程について詳細に説明する。
<工程(a)>
工程(a)は、上述した陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法における工程(a)と同じである。
工程(a)を行うと、例えば図1に示すように、アルミニウム基材10の表面に複数の細孔12を有する酸化皮膜14が形成される。
<工程(b)>
工程(b)は、工程(a)で形成された酸化皮膜の一部または全部を除去する酸化皮膜除去工程である。
例えば、工程(b)において酸化皮膜14の全部を除去すると、図1に示すように、アルミニウム基材10の表面に窪み16が露出する。
酸化皮膜の一部または全部を除去することによって、酸化皮膜の底部のバリア層からなる窪みまたはバリア層の形状に対応した窪みがアルミニウム基材の表面に形成される。工程(a)において規則的に配列した細孔を形成することによって、工程(b)において酸化皮膜の一部または全部を除去して形成される窪みも、規則的に配列したものとなる。
酸化皮膜14の一部または全部を除去する方法としては、アルミニウムを溶解せず、アルミナを選択的に溶解する溶液に浸漬する方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、クロム酸/リン酸混合液等が挙げられる。
<工程(c)>
工程(c)は、工程(b)または下記工程(d)の後、アルミニウム基材を電解液に浸漬して再び陽極酸化して、複数の細孔を有する酸化皮膜を形成する第二の酸化皮膜形成工程である。
工程(b)の後に工程(c)を行うと、例えば図1に示すように、アルミニウム基材10が陽極酸化されて、複数の細孔12を有する酸化皮膜14が再び形成される。
また、工程(d)の後に工程(c)を行うと、既存の酸化皮膜の下に新たな酸化皮膜が形成され、既存の細孔の底部から下方に延びる新たな細孔が形成される。
アルミニウム基材の表面に窪みが形成された状態で再び陽極酸化すると、窪みが細孔発生点として作用し、新たな酸化皮膜の細孔は、窪みに対応した位置に発生する。特に、窪みが規則的に配列している場合、陽極酸化の初期、すなわち新たに形成される酸化皮膜が薄い状態であっても、規則的に配列した細孔が形成され、サブミクロンオーダーで細孔の深さが調節され、規則的に配列した細孔を容易に製造することができる。
工程(c)の陽極酸化における印加電圧は、工程(a)の印加電圧と同じことが好ましい。
陽極酸化の時間は、電解液の組成や印加電圧の大きさ、所望する細孔の深さによって変動するため特に限定されないが、細孔の深さを精密に調整するためには3秒以上が好ましい。
工程(c)における電解液は、シュウ酸水溶液であることが好ましい。
工程(c)におけるシュウ酸水溶液中のシュウ酸の濃度は、0.01モル/L以上1.0モル/L未満が好ましく、0.03モル/L以上1.0モル/L未満がより好ましい。シュウ酸の濃度が0.01モル/L以上1.0モル/L未満の範囲であれば、工程(a)で得られた規則性を維持して細孔を形成することができる。
工程(c)における電解液の温度は、上述した工程(a)における範囲が好ましく、工程(a)における温度と同じであることが好ましい。
工程(c)における印加電圧は、工程(a)における最大の印加電圧と同じであることが好ましい。
なお、上述のように、細孔発生点として作用する窪みが形成されているアルミニウム基材をさらに陽極酸化する場合、陽極酸化の条件が異なっていても規則的に配列した細孔が形成されやすい。したがって、工程(c)における印加電圧以外の陽極酸化の条件(電解液の種類、濃度、温度等)は、必ずしも工程(a)と一致させる必要はなく、酸化皮膜の厚さを調整しやすい条件に適宜変更してもよい。
<工程(d)>
工程(d)は、工程(c)の後、酸化皮膜の一部を除去し、細孔の孔径を拡大する孔径拡大処理工程である。
工程(c)の後に工程(d)を行うと、例えば図1に示すように、工程(c)によって形成された酸化皮膜14の一部が除去されて、細孔12の孔径が拡大する。
孔径拡大処理の具体的方法としては、アルミナを溶解する溶液に浸漬して、酸化皮膜に形成されている細孔をエッチングによって拡大させる方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、5.0質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。浸漬する時間を長くするほど、細孔の孔径は大きくなる。
<工程(e)>
工程(e)は、工程(c)と工程(d)とを交互に繰り返して細孔の深さと形状を調整する繰り返し工程である。
工程(c)と工程(d)とを交互に繰り返すことによって、例えば図1に示すように、細孔12の形状を開口部から深さ方向に徐々に径が縮小するテーパー形状にでき、その結果、周期的な複数の細孔12からなる酸化皮膜14が表面に形成されたモールド18を得ることができる。
工程(c)および工程(d)の条件、例えば、陽極酸化の電解液濃度や酸化時間、孔径拡大処理の時間、孔径拡大処理に利用する溶液の温度や濃度を適宜設定することによって、様々な形状の細孔を有する酸化皮膜を形成できる。モールドを用いて製造される成形体の用途等に応じて、これら条件を適宜設定すればよい。また、工程(c)および工程(d)を繰り返す際に、前回に行った各工程と同一の条件で行う必要はなく、各種条件を適宜変更しても構わない。
工程(c)の回数は、回数が多いほど滑らかなテーパー形状にすることができる点から、工程(e)の前に行った工程(c)も含めて少なくとも3回が好ましい。同じく、工程(d)の回数も、回数が多いほど滑らかなテーパー形状にすることができる点から、工程(e)の前に行った工程(d)も含めて少なくとも3回が好ましい。それぞれの回数が2回以下の場合、非連続的に細孔の孔径が減少する傾向にあり、このようなモールドを用いて反射防止物品(反射防止膜等)を製造した場合、その反射率低減効果が劣る可能性がある。
工程(e)は、工程(c)で終了してもよく、工程(d)で終了してもよい。
工程(c)および工程(e)における陽極酸化を長時間施すほど深い細孔を得ることができるが、微細凹凸構造を転写するためのモールドとして用いる場合、工程(e)を経て最終的に得られる酸化皮膜の厚さは、0.01〜0.8μm程度でよい。
<モールド>
本発明のモールドの製造方法によれば、アルミニウム基材の表面に、開口部から深さ方向に徐々に径が縮小するテーパー形状の細孔が比較的規則的に配列して形成され、その結果、微細凹凸構造を有する酸化皮膜(陽極酸化ポーラスアルミナ)が表面に形成されたモールドを製造できる。
隣接する細孔の平均間隔は、120nm以上160nm未満であり、130〜150nmが好ましい。細孔の平均間隔が120nm以上であれば、モールドの表面を転写して得られる成形体(反射防止物品等)の反射防止性能を損なうことなく耐擦傷性能を向上でき、かつ突起同士の合一に起因する成形体の白化を抑制することができる。細孔の平均間隔が160nm未満であれば、本発明の製造方法にて規則性の高いポーラスアルミナが得られる。
また、モールドを反射防止物品(反射防止膜等)の製造に用いる場合、細孔の深さが100nm以上であることが好ましく、150nm以上であることがより好ましい。細孔の深さが100nm未満のモールドを用いた場合、反射防止膜に形状を転写することが難しくなったり、モールドからの離型が困難になったりするおそれがある。
また、モールドの細孔のアスペクト比(=深さ/平均間隔)は、0.25以上が好ましく、0.5以上がさらに好ましく、0.75以上がもっとも好ましい。アスペクト比が0.25以上であれば、反射率が低い表面を形成でき、その入射角依存性も十分に小さくなる。
モールドの微細凹凸構造が形成された表面は、離型が容易になるように、離型処理が施されていてもよい。離型処理の方法としては、例えば、リン酸エステル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、フッ素ポリマー等をコーティングする方法、フッ素化合物を蒸着する方法、フッ素系表面処理剤またはフッ素シリコーン系表面処理剤をコーティングする方法等が挙げられる。
<作用効果>
以上説明した本発明の陽極酸化ポーラスアルミナおよびモールドの製造方法にあっては、一段目の陽極酸化にて、0.35モル/L以上1.0モル/L未満の濃度のシュウ酸水溶液を電解液として用い、電解液の温度を10℃超20℃未満とし、50〜68Vの電圧にてアルミニウム基材を陽極酸化し、該アルミニウム基材の表面に複数の細孔を有する酸化皮膜を形成しているため、特殊な装置を用いることなく、結晶粒界の段差が抑えられ、細孔の規則性が高く、かつ細孔の間隔が比較的大きい陽極酸化ポーラスアルミナおよびモールドを簡便に製造できる。
[微細凹凸構造を表面に有する成形体]
本発明の微細凹凸構造を表面に有する成形体は、本発明のモールドの製造方法で得られたモールドの表面に形成された複数の細孔からなる微細凹凸構造を、成形体本体の表面に転写して得られるものである。
モールドの微細凹凸構造(細孔)を転写して製造された成形体は、その表面にモールドの微細凹凸構造の反転構造(突起)が、鍵と鍵穴の関係で転写される。
モールドの微細凹凸構造を成形体本体の表面に転写する方法としては、例えば、モールドと透明基材(成形体本体)の間に未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を充填し、モールドの微細凹凸構造に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が接触した状態で、活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させた後にモールドを離型する方法が好ましい。これによって、透明基材の表面に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる微細凹凸構造が形成された成形体を製造できる。得られた成形体の微細凹凸構造は、モールドの微細凹凸構造の反転構造となる。
<成形体本体>
透明基材としては、活性エネルギー線の照射を、該透明基材を介して行うため、活性エネルギー線の照射を著しく阻害しないものが好ましい。透明基材の材料としては、例えば、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ガラス等が挙げられる。
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物>
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いる方法は、熱硬化性樹脂組成物を用いる方法に比べて加熱や硬化後の冷却を必要としないため、短時間で微細凹凸構造を転写することができ、量産に好適である。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の充填方法としては、モールドと透明基材の間に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を供給した後に圧延して充填する方法、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布したモールド上に透明基材をラミネートする方法、あらかじめ透明基材上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布してモールドにラミネートする方法等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、重合反応性化合物と、活性エネルギー線重合開始剤とを含有する。上記の他に、用途に応じて非反応性のポリマーや活性エネルギー線ゾルゲル反応性成分が含まれていてもよく、増粘剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、溶剤、無機フィラー等の各種添加剤が含まれていてもよい。
重合反応性化合物としては、分子中にラジカル重合性結合および/またはカチオン重合性結合を有するモノマー、オリゴマー、反応性ポリマー等が挙げられる。
ラジカル重合性結合を有するモノマーとしては、単官能モノマー、多官能モノマーが挙げられる。
ラジカル重合性結合を有する単官能モノマーとしては、(メタ)アクリレート誘導体(メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等)、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、スチレン誘導体(スチレン、α−メチルスチレン等)、(メタ)アクリルアミド誘導体((メタ)アクリルアミド、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等)等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ラジカル重合性結合を有する多官能モノマーとしては、二官能性モノマー(エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、1,2−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、1,4−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ブタン、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミド等)、三官能モノマー(ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート等)、四官能以上のモノマー(コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸の縮合反応混合物、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等)、二官能以上のウレタンアクリレート、二官能以上のポリエステルアクリレート等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
カチオン重合性結合を有するモノマーとしては、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基等を有するモノマーが挙げられ、エポキシ基を有するモノマーが特に好ましい。
分子中にラジカル重合性結合および/またはカチオン重合性結合を有するオリゴマーまたは反応性ポリマーとしては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとの縮合物等の不飽和ポリエステル類;ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カチオン重合型エポキシ化合物、側鎖にラジカル重合性結合を有する上述のモノマーの単独または共重合ポリマー等が挙げられる。
活性エネルギー線重合開始剤としては、公知の重合開始剤を用いることができ、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させる際に用いる活性エネルギー線の種類に応じて適宜選択することが好ましい。
光硬化反応を利用する場合、光重合開始剤としては、カルボニル化合物(ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等)、硫黄化合物(テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
電子線硬化反応を利用する場合、重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、チオキサントン(2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等)、アセトフェノン(ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等)、ベンゾインエーテル(ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等)、アシルホスフィンオキサイド(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等)、メチルベンゾイルホルメート、1,7−ビスアクリジニルヘプタン、9−フェニルアクリジン等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における活性エネルギー線重合開始剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。活性エネルギー線重合開始剤が0.1質量部未満では、重合が進行しにくい。一方、活性エネルギー線重合開始剤が10質量部を超えると、硬化樹脂が着色したり、機械強度が低下したりすることがある。
非反応性のポリマーとしては、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物としては、例えば、アルコキシシラン化合物、アルキルシリケート化合物等が挙げられる。
アルコキシシラン化合物としては、RSi(OR’)で表されるものが挙げられる。RおよびR’は炭素数1〜10のアルキル基を表し、xおよびyはx+y=4の関係を満たす整数である。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン等が挙げられる。
アルキルシリケート化合物としては、RO[Si(OR)(OR)O]で表されるものが挙げられる。R〜Rはそれぞれ炭素数1〜5のアルキル基を表し、zは3〜20の整数を表す。具体的にはメチルシリケート、エチルシリケート、イソプロピルシリケート、n−プロピルシリケート、n−ブチルシリケート、n−ペンチルシリケート、アセチルシリケート等が挙げられる。
<製造装置>
微細凹凸構造を表面に有する成形体は、例えば、図2に示す製造装置を用いて、下記のようにして製造される。
微細凹凸構造(図示略)を表面に有するロール状モールド20と、ロール状モールド20の表面に沿って移動する帯状のフィルム42(透明基材)との間に、タンク22から活性エネルギー線硬化性樹脂組成物38を供給する。
ロール状モールド20と、空気圧シリンダ24によってニップ圧が調整されたニップロール26との間で、フィルム42および活性エネルギー線硬化性樹脂組成物38をニップし、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物38を、フィルム42とロール状モールド20との間に均一に行き渡らせると同時に、ロール状モールド20の微細凹凸構造の凹部内に充填する。
ロール状モールド20の下方に設置された活性エネルギー線照射装置28から、フィルム42を通して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物38に活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物38を硬化させることによって、ロール状モールド20の表面の微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層44を形成する。
剥離ロール30により、表面に硬化樹脂層44が形成されたフィルム42をロール状モールド20から剥離することによって、図3に示すような成形体40を得る。
活性エネルギー線照射装置28としては、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。
活性エネルギー線の照射量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化が進行するエネルギー量であればよく、通常、100〜10000mJ/cm程度である。
<成形体>
このようにして製造された成形体40は、図3に示すように、フィルム42(透明基材)の表面に硬化樹脂層44が形成されたものである。
硬化樹脂層44は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる膜であり、表面に微細凹凸構造を有する。
本発明におけるモールドを用いた場合の成形体40の表面の微細凹凸構造は、酸化皮膜の表面の微細凹凸構造を転写して形成されたものであり、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる複数の突起46を有する。
微細凹凸構造としては、略円錐形状、角錐形状等の突起(凸部)が複数並んだ、いわゆるモスアイ構造が好ましい。突起間の間隔が可視光の波長以下であるモスアイ構造は、空気の屈折率から材料の屈折率へと連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となることが知られている。
<用途>
本発明の製造方法で得られた成形体は、表面の微細凹凸構造によって、反射防止性能、撥水性能等の種々の性能を発揮する。
微細凹凸構造を表面に有する成形体がシート状またはフィルム状の場合には、反射防止膜として、例えば、画像表示装置(テレビ、携帯電話のディスプレイ等)、展示パネル、メーターパネル等の対象物の表面に貼り付けたり、インサート成形したりして用いることができる。また、撥水性能を活かして、風呂場の窓や鏡、太陽電池部材、自動車のミラー、看板、メガネのレンズ等、雨、水、蒸気等にさらされるおそれのある対象物の部材としても用いることができる。
微細凹凸構造を表面に有する成形体が立体形状の場合には、用途に応じた形状の透明基材を用いて反射防止物品を製造しておき、これを上記対象物の表面を構成する部材として用いることもできる。
また、対象物が画像表示装置である場合には、その表面に限らず、その前面板に対して、微細凹凸構造を表面に有する成形体を貼り付けてもよいし、前面板そのものを、微細凹凸構造を表面に有する成形体から構成することもできる。例えば、イメージを読み取るセンサーアレイに取り付けられたロッドレンズアレイの表面、FAX、複写機、スキャナ等のイメージセンサーのカバーガラス、複写機の原稿を置くコンタクトガラス等に、微細凹凸構造を表面に有する成形体を用いても構わない。また、可視光通信等の光通信機器の光受光部分等に、微細凹凸構造を表面に有する成形体を用いることによって、信号の受信感度を向上させることもできる。
また、微細凹凸構造を表面に有する成形体は、上述した用途以外にも、光導波路、レリーフホログラム、光学レンズ、偏光分離素子等の光学用途や、細胞培養シート、有機ELおよび無機ELの光取出し効率向上素子としての用途に展開できる。
<作用効果>
以上説明した本発明の微細凹凸構造を表面に有する成形体にあっては、細孔の規則性が高く、かつ細孔の間隔が比較的大きいモールドの微細凹凸構造を、成形体本体の表面に転写してなるものであるため、突起の規則性が高く、突起の間隔が比較的大きい。また、結晶粒界の段差が抑えられたモールドの微細凹凸構造を、成形体本体の表面に転写してなるものであるため、外観が良好で、ヘイズが小さい。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
各種測定、評価は、以下の方法にて行った。
(工程(a)で形成された細孔の間隔および酸化皮膜の厚さ)
工程(a)を行った後、アルミニウム基材の酸化面の一部を切り取って、その縦断面に白金を1分間蒸着し、電解放出型走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製、「JSM−7400F」)を用いて、加速電圧3.00kVで観察した。断面サンプルを2000倍に拡大して観察し、観察範囲で細孔の間隔および酸化皮膜の厚さを測定した。この測定を10点で行い、平均値を求めた。
(工程(a)で形成された酸化皮膜における平均細孔配列数)
工程(a)を行った後、酸化皮膜の表面に白金を1分間蒸着し、電解放出型走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製、「JSM−7400F」)を用いて、加速電圧3.00kVで観察した。酸化皮膜の表面には、細孔が理想三角格子状に配列した複数の領域と、隣接する領域が接する部分にて細孔の配列が乱れた境界部とが存在する。表面サンプルを15000倍に拡大して観察し、観察範囲内にある理想三角格子状に配列した細孔の数を、観察範囲内にある領域の数で除した値を、平均細孔配列数とした。平均細孔配列数が多いほど、細孔の配列が規則的であることを示す。
(成形体のヘイズ)
成形体のヘイズは、JIS K 7361−1に準拠したヘイズメータ(スガ試験機社製)を用いて測定した。
[実施例1]
<モールドの製造>
純度99.99質量%、直径60mm、厚さ2mmのアルミニウム円板をバフ研磨した後、電解研磨して鏡面化し、これをアルミニウム基材として用いた。
工程(a):
0.5モル/Lのシュウ酸水溶液を電解液とし、電解液の温度を16℃に温度調整した。アルミニウム基材を電解液に浸漬し、印加電圧60Vで10分間陽極酸化した。工程(a)の陽極酸化条件、得られた酸化皮膜における細孔の平均間隔、酸化皮膜の厚さ、平均細孔配列数を表1に示す。
工程(b):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム基材を、6質量%のリン酸と1.8質量%クロム酸を混合した50℃の水溶液中に3時間浸漬して酸化皮膜を溶解除去し、陽極酸化の細孔発生点となる窪みを露出させた。
工程(c):
細孔発生点を露出させたアルミニウム基材を、16℃に調整した0.05モル/Lのシュウ酸からなる電解液に浸漬し、60Vで18秒間陽極酸化して、酸化皮膜をアルミニウム基材の表面に再び形成した。
工程(d):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム基材を、32℃に調整した5質量%リン酸水溶液中に13分間浸漬して、酸化皮膜の細孔を拡大する孔径拡大処理を施した。
(工程(e))
前記工程(c)と前記工程(e)をさらに交互に4回繰り返し、最後に工程(d)を行った。すなわち、工程(c)を合計で5回行い、工程(d)を合計で5回行った。
その後、脱イオン水で洗浄した後、表面の水分をエアーブローで除去し、平均間隔140nm、平均深さ約200nmの略円錐形状の細孔を有する酸化皮膜が形成されたモールドを得た。
このようにして得られたモールドを、TDP−8(日光ケミカルズ社製)を0.1質量%に希釈した水溶液に10分間浸漬して、一晩風乾することによって離型処理した。
<成形体の製造>
離型処理したモールドと、透明基材であるアクリルフィルム(三菱レイヨン株式会社製、「アクリプレン HBS010」)との間に、下記の組成の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を充填して、高圧水銀ランプで積算光量1000mJ/cmの紫外線を照射することによって、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させた。その後、モールドを剥離し、透明基材と硬化組成物の硬化物からなる成形体(フィルム)を得た。
このようにして製造した成形体の表面には微細凹凸構造が形成されており、突起の平均間隔(ピッチ)は140nm、突起の平均高さは約190nmであった。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物:
トリメチロールエタン・アクリル酸・無水コハク酸縮合エステル:45質量部、
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:45質量部、
信越化学工業社製x−22−1602(商品名):10質量部、
BASF社製イルガキュア184(商品名):2.7質量部、
BASF社製イルガキュア819(商品名):0.18質量部。
[実施例2〜4、比較例1〜6]
工程(a)を表1に記載の条件とし、工程(c)における印加電圧を工程(a)と同じにした以外は、実施例1と同様の方法でモールドおよび成形体を得た。工程(a)の陽極酸化条件、得られた酸化皮膜における細孔の平均間隔、酸化皮膜の厚さ、平均細孔配列数を表1に示す。また、実施例2で作製した成形体のヘイズを測定したところ、成形体のヘイズは0.35%であった。比較例2で作成した成形体のヘイズを測定したところ、成形体のヘイズは0.73%であった。このように、平均細孔配列数の高い(規則性が高い)実施例2で作製した成形体は、平均細孔配列数が低い比較例2で作製した成形体と比較してヘイズが低く、反射防止性能に優れていることが分かる。
Figure 2014051710
本発明のモールドの製造方法によって得られたモールドは、反射防止物品、防曇性物品、防汚性物品、撥水性物品の効率的な量産にとって有用である。また、本発明の微細凹凸構造を表面に有する成形体は、反射防止物品、防曇性物品、防汚性物品、撥水性物品として好適である。
10 アルミニウム基材
12 細孔
14 酸化皮膜
18 モールド
20 ロール状モールド
40 成形体
42 フィルム
46 突起

Claims (3)

  1. 複数の細孔からなる微細凹凸構造を表面に有する陽極酸化ポーラスアルミナを製造する方法であって、
    0.35モル/L以上1.0モル/L未満の濃度のシュウ酸水溶液を電解液として用い、電解液の温度を10℃超20℃未満とし、50〜68Vの電圧にてアルミニウム基材を陽極酸化する工程を有する、陽極酸化ポーラスアルミナの製造方法。
  2. 複数の細孔からなる微細凹凸構造を表面に有するモールドを製造する方法であって、
    下記の工程(a)〜工程(e)を有する、モールドの製造方法。
    工程(a):0.35モル/L以上1.0モル/L未満の濃度のシュウ酸水溶液を電解液として用い、電解液の温度を10℃超20℃未満とし、50〜68Vの電圧にてアルミニウム基材を陽極酸化し、該アルミニウム基材の表面に複数の細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
    工程(b):前記工程(a)で形成された前記酸化皮膜の少なくとも一部を除去する工程。
    工程(c):前記工程(b)または下記工程(d)の後、アルミニウム基材を陽極酸化して、複数の細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
    工程(d):前記工程(c)の後、酸化皮膜の一部を除去し、細孔の孔径を拡大する工程。
    工程(e):前記工程(c)と前記工程(d)とを交互に繰り返す工程。
  3. 請求項2に記載のモールドの製造方法で得られたモールドの表面に形成された複数の細孔からなる微細凹凸構造を、成形体本体の表面に転写してなる、微細凹凸構造を表面に有する成形体。
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