JP5522224B2 - 反射防止膜の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、反射防止膜の製造方法に関する。
近年、可視光の波長以下の周期の微細凹凸構造を表面に有する材料は、反射防止機能、Lotus効果等の機能性を発現することから、その有用性が注目されている。特に、略円錐形状の凸部を並べたMoth−Eye構造と呼ばれる微細凹凸構造は、空気の屈折率から材料の屈折率に連続的に増大していくことで有効な反射防止の手段となることが知られている。
材料表面に微細凹凸構造を形成する方法としては、材料の表面を直接加工する方法、微細凹凸構造に対応した反転構造を有するモールドを用いる方法があり、生産性、経済性の点から、後者の方法が優れている。モールドに反転構造を形成する方法としては、電子線描画法、レーザー光干渉法等が知られている。しかし、これらの方法によるモールドの製造コストは、非常に高く、微細凹凸構造を表面に有する材料にも多大なコストが上乗せされる結果となっている。
近年、簡便に製造できるモールドとして、陽極酸化ポーラスアルミナが注目されている(例えば、特許文献1)。この陽極酸化ポーラスアルミナを用いて、微細凹凸構造を正確に形成する技術は着実に進歩してきている。
一般に表面に微細凹凸構造を有する場合、機械的強度が低く耐擦傷性が不充分であることが知られており、その改良が図られている。例えば、凸部の断面形状が0.3<h/h<0.9(ただし、hは実際の凸部の高さであり、hは凸部の断面において凸部の両側面の底に接する部分での接線tが交わる点までの高さである。)を満足する微細凹凸構造が提案されている(特許文献2)。
しかしながら、特許文献2には、シミュレーションの結果のみが記載され、実際に前記式を満足する凸部の製造方法については触れられていない。
なお、モールドの凹部の形状と、このモールドを用いて形成される凸部の形状とが一致しない光学素子の製造方法が開示されている(特許文献3)。しかし、特許文献3に記載の発明においては、モールドの凹部の深さが、形成される凸部の高さの1.5〜10倍とするための射出成型条件が記載されているだけであり、先端部の耐擦傷性に優れた円錐形状の凸部を形成する方法については触れられていない。
特開2005−156695号公報 特開2005−173457号公報 特開2006−133722号公報
よって、本発明の目的は、先端部の耐擦傷性に優れる凸部が形成された反射防止膜を製造できる方法、および表面に形成された凸部の先端部の耐擦傷性に優れる反射防止膜を提供することにある。
本発明の反射防止膜の製造方法は、表面に周期が可視光の波長以下である凸部が形成された反射防止膜の製造方法であって、(i)表面に前記凸部に対応する凹部が形成されたモールドの表面に、粘度が1〜1×10Pa・sの液状の樹脂材料を接触させる工程と、(ii)前記樹脂材料を固体状もしくは半固体状にし、前記反射防止膜を形成する工程と、(iii)前記反射防止膜と前記モールドとを分離する工程とを有し、
前記(i)工程において、曲率半径rが0<r<R(ただし、Rは、凸部の最大幅の半分である。)を満足する先端部を有する凸部となるように、前記モールドの凹部を前記液状の樹脂材料によって完全に充填しないことを特徴とする。
本発明の反射防止膜の製造方法は、(iv)前記(iii)の工程後に前記樹脂材料を固体状にする工程を有していてもよい。
本発明の反射防止膜の製造方法によれば、先端部の耐擦傷性に優れる凸部が形成された反射防止膜を製造できる。
本発明の反射防止膜は、表面に形成された凸部の先端部の耐擦傷性に優れる。
陽極酸化ポーラスアルミナの製造工程の一部を示す断面図である。 陽極酸化ポーラスアルミナの細孔の形状の一例を示す断面図である。 陽極酸化ポーラスアルミナの細孔の形状の他の例を示す断面図である。 陽極酸化ポーラスアルミナの細孔の形状の他の例を示す断面図である。 本発明の反射防止膜の一例を示す断面図である。 本発明の反射防止膜の製造方法の一例を示す断面図である。 本発明の反射防止膜の製造方法の他の例を示す断面図である。 先端部の曲率半径が0である凸部の一例を示す断面図である。 先端部の曲率半径がRである凸部の一例を示す断面図である。
本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
<反射防止膜の製造方法>
本発明の反射防止膜の製造方法は、表面に凸部が形成された反射防止膜の製造方法であって、下記工程を有する方法である。
(i)表面に前記凸部に対応する凹部が形成されたモールドの表面に、粘度が1〜1×10Pa・sの液状の樹脂材料を接触させる工程。
(ii)前記樹脂材料を固体状にし、前記反射防止膜を形成する工程。
(iii)前記反射防止膜と前記モールドとを分離する工程。
なお、本発明においては、必要であればさらに、(iv)前記(iii)の工程後に前記樹脂材料を固体状にする工程を有してもよい。
(i)工程:
(モールド)
モールドとしては、表面に微細凹部を有するものを用いることができ、アルミニウムの酸化皮膜(アルマイト)に細孔(凹部)が形成された、いわゆる陽極酸化ポーラスアルミナが好ましい。
陽極酸化ポーラスアルミナは、例えば、下記(a)〜(e)工程を経て製造できる。
(a)アルミニウムを電解液中、定電圧下で陽極酸化して酸化皮膜を形成する工程。
(b)酸化皮膜を除去し、陽極酸化の細孔発生点を形成する工程。
(c)アルミニウムを電解液中、再度陽極酸化し、細孔発生点に細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
(d)細孔の径を拡大させる工程。
(e)前記(c)工程と(d)工程を繰り返し行う工程。
(a)工程:
アルミニウムの純度は、90%以上が好ましく、99%以上がより好ましく、99.5%以上が特に好ましい。アルミニウムの純度が低いと、陽極酸化した時に、不純物の偏析により可視光を散乱する大きさの凹凸構造が形成されたり、陽極酸化で得られる細孔の規則性が低下したりすることがある。
電解液としては、酸性電解液、アルカリ性電解液が挙げられ、酸性電解液が好ましい。
酸性電解液とは、硫酸、シュウ酸、リン酸、これらの混合物等が挙げられる。
シュウ酸を電解液として用いる場合:
シュウ酸の濃度は、0.7M以下が好ましい。シュウ酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて酸化皮膜の表面が粗くなることがある。
電圧が30〜60Vの時、周期が100nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向にあり、周期が可視光の波長より大きくなることがある。
電解液の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。電解液の温度が60℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
硫酸を電解液として用いる場合:
硫酸の濃度は0.7M以下が好ましい。硫酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて定電圧を維持できなくなることがある。
電圧が25〜30Vの時、周期が63nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向があり、周期が可視光の波長より大きくなることがある。
電解液の温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がよりに好ましい。電解液の温度が30℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
細孔の直径制御は、常法に従って行えばよい。例えば、陽極酸化を高電圧で行うほど細孔の直径は大きくなる。また、酸性電解液を用いた場合、硫酸、シュウ酸、リン酸の順で細孔の直径は大きくなる。
細孔の周期は、20〜500nmが好ましい。細孔の周期が20nm未満では、陽極酸化の制御が難しく、目的に応じた周期の細孔が得られない。細孔の周期が500nmを超えると、電圧が電解液の耐電圧を超え、細孔を形成できない。細孔の周期は、細孔の中心から、これに隣接する細孔の中心までの距離である。
酸化皮膜の厚さは、電界放出形走査電子顕微鏡で観察した時に、10μm以下が好ましく、1〜5μmがより好ましく、1〜3μmが特に好ましい。酸化皮膜の厚さが10μmを超えると、アルミニウムの結晶粒界が目視でも確認できるようになり、反射防止膜表面に結晶粒界の凹凸までもが転写されることがある。
(b)工程:
酸化皮膜を一旦除去し、これを陽極酸化の細孔発生点にすることで細孔の規則性を向上することができる(例えば、益田,応用物理,vol.69,No.5,p558(2000))。
酸化皮膜を除去する方法としては、アルミニウムを溶解せず、アルミナを選択的に溶解する溶液に溶解させて除去する方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、クロム酸/リン酸混合液等が挙げられる。
(c)工程:
図1に示すように、酸化皮膜を除去したアルミニウム12を再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔(凹部14)を有する酸化皮膜16が形成される。
陽極酸化は、(a)工程と同様な条件で行えばよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
(d)工程:
図1に示すように、細孔(凹部14)の径を拡大させる処理(以下、細孔径拡大処理と記す。)を行う。細孔径拡大処理は、アルミナを溶解する溶液に浸漬して陽極酸化で得られた細孔の径を拡大させる処理である。このような溶液としては、例えば、5質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。
細孔径拡大処理の時間を長くするほど、細孔径は大きくなる。
(e)工程:
図1に示すように、(c)工程の陽極酸化と、(d)工程の細孔径拡大処理を繰り返すと、直径が開口部から深さ方向に連続的に減少する形状の細孔(凹部14)を有する陽極酸化ポーラスアルミナ(モールド10)が得られる。
同じ条件で陽極酸化と細孔径拡大処理とを繰り返すことで、図2に示すような略円錐形状の細孔(凹部14)が形成される。陽極酸化時間、細孔径拡大処理時間を変化させることで、図3に示すような逆釣鐘形状の細孔(凹部14)、図4に示すような先鋭形状の細孔(凹部14)等を形成できる。
繰り返し回数は、合計で3回以上が好ましく、5回以上がより好ましい。繰り返し回数が2回以下では、非連続的に細孔の直径が減少するため、このような細孔を有するモールドを用いて製造された反射防止膜の反射率低減効果が劣る。
図2〜4に示すような細孔(凹部)を有するモールドを用いて製造された反射防止膜の表面は、いわゆるMoth−Eye構造となり、有効な反射防止の手段となる。
細孔の深さは、50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。細孔の深さが50nm以上であれば、得られる反射防止膜の反射率が十分に低くなる。
細孔のアスペクト比(深さ/周期)は、0.5以上が好ましく、1以上がより好ましい。アスペクト比が0.5以上であれば、得られる反射防止膜の反射率が十分に低くなり、かつ入射角依存性も小さくなる。
細孔の開口径は、10〜500nmが好ましく、20〜300nmがより好ましい。細孔の開口径が10nm以上であれば、モールドの作製を任意に制御できる。細孔の開口径が500nm以下であれば、細孔に液状の樹脂材料が完全に充填しないように液状の樹脂材料の粘度を調整しやすい。
モールドの表面は、反射防止膜との分離が容易になるように、離型剤で処理されていてもよい。処理方法としては、例えば、シリコーン系ポリマーまたはフッ素ポリマーをコーティングする方法、フッ素化合物を蒸着する方法、フッ素系シランカップリング剤またはフッ素シリコーン系シランカップリング剤をコーティングする方法等が挙げられる。
モールドの形状は、平板状、円柱状、円筒形状等が挙げられる。円柱状または円筒形状のモールドは、円柱状または円筒形状のアルミニウムからなるモールド、または円柱状または円筒形状の支持体の表面にアルミニウム層を有するモールドが挙げられる。
(液状の樹脂材料)
液状の樹脂材料としては、硬化性樹脂組成物、または溶融状態にある熱可塑性樹脂が挙げられる。
硬化性樹脂組成物としては、光硬化反応、電子線硬化反応または熱硬化反応を起こす成分と、これらの反応を促進する成分との混合物が挙げられ、例えば、重合性化合物と重合開始剤との混合物が挙げられる。
重合性化合物としては、例えば、1モルの多価アルコールと、2モル以上の(メタ)アクリル酸またはその誘導体とから得られるエステル化物A;多価アルコールと、多価カルボン酸またはその無水物と、(メタ)アクリル酸またはその誘導体とから得られるエステル化物B等が挙げられる。
エステル化物Aとしては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エステル化物Bとしては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、セバシン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸等の多価カルボン酸またはその無水物と、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと、(メタ)アクリル酸またはその誘導体からそれぞれ任意に選択された組み合わせで得られるエステル化物等が挙げられる。
重合性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
光硬化反応を利用する場合、光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
電子線硬化反応を利用する場合、重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン;ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド;メチルベンゾイルホルメート、1,7−ビスアクリジニルヘプタン、9−フェニルアクリジン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
熱硬化反応を利用する場合、熱重合開始剤としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物;前記有機過酸化物にN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン等のアミンを組み合わせたレドックス重合開始剤等が挙げられる。
重合開始剤の量は、重合性化合物100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましい。重合開始剤の量が0.01質量部未満では、硬化性樹脂組成物の十分な硬化を実現できない。重合開始剤の量が10質量部を超えると、樹脂の分子量が下がり、樹脂の強度が不十分となったり、重合開始剤の残留物等のために硬化後の反射防止膜の着色問題が生じたりする。
硬化性樹脂組成物は、必要に応じて非反応性のポリマー、活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物を含んでいてもよい。
非反応性のポリマーとしては、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物としては、例えば、アルコキシシラン化合物、アルキルシリケート化合物等が挙げられる。
アルコキシシラン化合物としては、下記式(2)の化合物が挙げられる。
Si(OR’) ・・・(2)。
ただし、R、R’は、それぞれ炭素数1〜10のアルキル基を表し、x、yは、x+y=4の関係を満たす整数を表す。
アルコキシシラン化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン等が挙げられる。
アルキルシリケート化合物としては、下記式(3)の化合物が挙げられる。
O(Si(OR)(OR)O) ・・・(3)。
ただし、R〜Rは、それぞれ炭素数1〜5のアルキル基を表し、zは、3〜20の整数を表す。
アルキルシリケート化合物としては、メチルシリケート、エチルシリケート、イソプロピルシリケート、n−プロピルシリケート、n−ブチルシリケート、n−ペンチルシリケート、アセチルシリケート等が挙げられる。
硬化性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、増粘剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、溶剤、無機フィラー等の各種添加剤を含んでいてもよい。
溶融状態にある熱可塑性樹脂としては、溶融温度以上に加熱された、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等。)、ポリメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂等が挙げられる。
液状の樹脂材料の粘度は、1Pa・s〜1×10Pa・sであり、1Pa・s〜5×10Pa・sが好ましい。液状の樹脂材料の粘度が1Pa・s未満であれば、モールドの凹部への樹脂材料の浸入を制御することができないため、モールドの凹部への樹脂材料が完全に充填されてしまう。その結果、先端部の曲率半径rが式(1)を満足する凸部を有する反射防止膜を得ることができない。液状の樹脂材料の粘度が1×10Pa・sを超えると、液状の樹脂材料の流動性が低くなり、安定した膜を形成できない。
液状樹脂の粘度は、一般のレオメーター等によって測定することができ、測定される粘度としては例えば複素粘性率がある。
液状の樹脂材料の粘度の調整方法としては、成分の混合比を変える方法、増粘剤または溶剤を用いる方法、温度を変える方法等が挙げられる。このように粘度を調整することによって、凸部の先端部の形状を変えることができる。
モールドの表面に液状の樹脂材料を接触させる方法としては、下記(I)または(II)の方法が挙げられる。
(I)図5に示すように、モールド10の表面に液状の樹脂材料20を塗布する方法。モールド10の表面に液状の樹脂材料20を塗布した後、液状の樹脂材料20の塗膜を樹脂基材24で覆ってもよい。
(II)図6に示すように、樹脂基材24上に液状の樹脂材料20を塗布した後、液状の樹脂材料20の塗膜にモールド10を押し付ける方法。
塗布方法としては、ローラーコート法、バーコート法、エアーナイフコート法等が挙げられる。
樹脂基材24としては、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等。)、ポリメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂等が挙げられる。
(ii)工程:
液状の樹脂材料を固体状もしくは半固体状にする方法としては、樹脂材料が光硬化性樹脂組成物の場合は、光を照射する方法、樹脂材料が電子線硬化性樹脂組成物の場合は、電子線を照射する方法、樹脂材料が熱硬化性樹脂組成物の場合は、加熱する方法、樹脂材料が溶融状態にある熱可塑性樹脂の場合は、冷却する方法等が挙げられる。
(iii)工程:
液状の樹脂材料を樹脂基材に接触させた状態で固体状にした場合、樹脂基材とともに反射防止膜をモールドから分離する。反射防止膜とともにボールドから分離された樹脂基材は、反射防止膜とともに反射防止部材の一部として用いてもよい。
(iv)工程:
液状の樹脂材料を固体状にする方法としては、(ii)と同様の操作を行うことになるが、樹脂材料が光硬化性樹脂組成物の場合は、光を照射する方法、樹脂材料が電子線硬化性樹脂組成物の場合は、電子線を照射する方法、樹脂材料が熱硬化性樹脂組成物の場合は、加熱する方法、樹脂材料が溶融状態にある熱可塑性樹脂の場合は、冷却する方法等が挙げられる。
<反射防止膜>
図7は、本発明の反射防止膜の一例を示す断面図である。反射防止膜30は、表面に複数の凸部32が形成された膜である。反射防止膜30の裏面には、樹脂基材24が設けられていてもよい。
本発明の製造方法によって得られた反射防止膜は、凸部の先端部の曲率半径rが、下記式(1)を満足し、好ましくは下記式(1−1)を満足する。
0<r<R ・・・(1)。
20nm≦r<R ・・・(1−1)。
ただし、Rは、凸部の最大幅の半分である。
すなわち、凸部の形状は、図8に示す形状(先端部の曲率半径が0のもの。)と、図9に示す形状(先端部の曲率半径がRのもの。)との中間の形状となる。
先端部の曲率半径rが0である場合、先端部が先鋭状となるため擦傷に対して非常に弱くなる。先端部の曲率半径rがR以上となる場合、先端部が平坦になるため、反射防止膜と空気との界面において屈折率が急激に変化し、Moth−Eye構造による反射防止効果が弱くなってしまう。
曲率半径rは、原子間力顕微鏡観察、電子顕微鏡観察等によって求めることができる。例えば、電子顕微鏡により凸部の断面観察を行い、得られた断面図から先端部を円弧で近似することにより求めることができる。
凸部の最大幅とは、凸部の断面を観察した際に、凸部を横断する方向の幅の最大値であり、通常は、凸部の底部の幅となる。凸部の最大幅の半分Rは、例えば、凸部が略円錐形状の場合、円錐の底面の半径となる。
凸部の周期は、可視光の波長(380〜780nm)以下が好ましく、モールドの凹部の周期と同じ20〜500nmがより好ましい。凸部の周期は、凸部の中心から、これに隣接する凸部の中心までの距離である。
凸部の高さは、50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。凸部の高さが50nm以上であれば、反射防止膜の反射率が十分に低くなる。
凸部のアスペクト比(高さ/周期)は、0.5以上が好ましく、1.0以上がより好ましい。アスペクト比が0.5以上であれば、反射防止膜の反射率が十分に低くなり、かつ入射角依存性も小さくなる。
反射防止膜のヘイズは、3%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、0.5%以下が特に好ましい。ヘイズが3%を超えると、例えば画像表示装置に用いた場合、画像の鮮明度が低下する。
反射防止膜は、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。可視光の波長以上の周期を有する微細凹凸構造上に、可視光の波長以下の周期を有する本発明における凸部を設けることでアンチグレア機能を付与できる。
本発明の反射防止膜は、例えば、画像表示装置(液晶表示装置、プラズマディスプレイパネル、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、陰極管表示装置等。)、レンズ、ショーウィンドー、眼鏡等の反射防止膜、反射防止フィルム、反射防止シート等として用いられる。
画像表示装置に用いる場合は、最表面上に反射防止膜を貼り付けてもよく、直接最表面を形成する材料上に反射防止膜を形成してもよく、画像表示装置の前面板に反射防止膜を設けてもよい。
以上説明した本発明の反射防止膜の製造方法にあっては、粘度が1〜1×10Pa・sの液状の樹脂材料を用いているため、先端部の耐擦傷性に優れる凸部が形成された反射防止膜を製造できる。すなわち、粘度が1〜1×10Pa・sの液状の樹脂材料は、モールドの凹部に完全に充填されることがないため、形成される凸部の先端部の曲率半径rは0を超えることになる。先端部の曲率半径rが0を超える凸部は、擦傷に対して強さを発揮する。
また、液状の樹脂材料の粘度を変えることによって、凸部の形状を変更できるため、ひとつのモールドで数種類の反射防止膜を製造でき、モールドの製造にかかる莫大なコストを抑えることができる。
以下に本発明の実施例を示す。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例中における各種測定、評価は、下記方法に従って行った。
(酸化皮膜の厚さ、細孔形状)
モールドの一部を削り、断面にプラチナを1分間蒸着し、電界放出形走査電子顕微鏡(日本電子社製、JSM−7400F)を用いて、加速電圧3.00kVの条件にて、断面を観察し、酸化皮膜の厚さ、細孔の周期、細孔の開口径、細孔の深さを測定した。各測定は、それぞれ5点について行い、平均値を求めた。
(凸部形状)
反射防止膜の破断面にプラチナを5分間蒸着し、モールドと同様に断面を観察し、凸部の周期、凸部の高さ、凸部の底部の幅、凸部の先端部の曲率半径を測定した。各測定は、それぞれ5点について行い、平均値を求めた。
(粘度)
硬化性樹脂組成物の粘度は、レオメーター(ティー・エイ・インスツルメント社製、ARES)を用い25mmパラレルプレートにサンプルを挟み込んで、プレート間距離1mmにて30℃から120℃の温度範囲で10rad/secの角周波数にて複素粘性率を測定した。
(反射率)
反射防止膜の反射率は、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製:U−4100)に5°正反射付属装置を取り付け、可視域(380〜780nm)における反射率を測定した。ちなみにサンプル裏面の反射を抑える目的で裏面に黒色スプレーを吹きつける操作を行った後、測定を行った。
(耐擦傷性)
眼鏡拭き(東レ社製、商品名:トレシー)を用いて摩耗試験を行った。条件は、荷重2000g/20mmφ、往復回数300回とした。試験後のサンプルを目視して、以下の基準で評価した。
◎:傷跡が見られない。
○:凝視すると傷跡が確認できる。
△:傷跡が数本確認できる。
×:傷跡が10本以上確認できる。
〔製造例1〕
(a)工程:
電解液として0.5Mシュウ酸を用い、陰極および陽極としてそれぞれ厚さ0.5mmのアルミニウム板を用い、電圧40V、温度16℃の条件で0.5時間陽極酸化を行った。得られた酸化皮膜の厚みは2.8μmであった。
(b)工程:
酸化皮膜が形成された陽極を、70℃の6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混酸に浸漬して、酸化皮膜を除去した。
(c)工程:
陽極を純水で洗浄した後、電解液として0.3Mシュウ酸を用い、電圧40V、温度16℃の条件で30秒陽極酸化を行った。
(d)工程:
陽極を32℃の5質量%リン酸に8分間浸漬して、細孔径拡大処理を行った。
(e)工程:
前記(c)工程および(d)工程を合計で5回繰り返し、細孔の周期100nm、細孔の開口径80nm、細孔の深さ250nmの陽極酸化ポーラスアルミナを得た。
陽極酸化ポーラスアルミナを、シランカップリング剤(信越シリコーン社製、KP−801M)で処理することにより、酸化皮膜表面のフッ素化処理を行った。
〔製造例2〕
(a)工程:
電解液として0.5Mシュウ酸を用い、陰極および陽極としてそれぞれ厚さ0.5mmのアルミニウム板を用い、電圧120V、温度1℃の条件で0.5時間陽極酸化を行った。なお、いきなり120Vの電圧をかけると、いわゆる「ヤケ」が発生してしまうため、40V程度の定電圧から徐々に電圧を上げる必要がある。得られた酸化皮膜の厚さは、2.7μmであった。
(b)工程:
酸化皮膜が形成された陽極を、70℃の6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混酸に浸漬して、酸化皮膜を除去した。
(c)工程:
陽極を純水で洗浄した後、電解液として4質量%リン酸を用い、電圧80V、温度1℃の条件で30秒陽極酸化を行った。
(d)工程:
陽極を32℃の5質量%リン酸に8分間浸漬して、細孔径拡大処理を行った。
(e)工程:
前記(c)工程および(d)工程を合計で5回繰り返し、細孔の周期280nm、細孔の開口径260nm、細孔の深さ250nmの陽極酸化ポーラスアルミナを得た。
陽極酸化ポーラスアルミナを、シランカップリング剤(信越シリコーン社製、KP−801M)で処理することにより、酸化皮膜表面のフッ素化処理を行った。
〔調製例1〕
ヘキサメチレンジイソシアネート 30質量部、
ポリカプロラクトンジオール(ダイセル化学社製、プラクセル205) 30質量部、
ヒドロキシエチルアクリレート 40質量部、および
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製、イルガキュア184)3質量部を混合し、硬化性樹脂組成物Aを調製した。
〔実施例1〕
(i)工程:
製造例1で得た陽極酸化ポーラスアルミナの表面に、硬化性樹脂組成物A(粘度2.7×10Pa・s)を塗布し、ポリエチレンテレフタレートフィルムを被せた。
(ii)工程:
紫外線照射機(高圧水銀ランプ、積算光量3600mJ/cm、ピーク照度180mW/cm)を用いて、硬化性樹脂組成物Aの塗膜に紫外線を照射し、硬化性樹脂組成物Aの硬化を行い、反射防止膜を形成した。
(iii)工程:
反射防止膜と前記モールドとを分離し、表面に凸部が形成された反射防止膜を得た。凸部の周期は、100nmであり、凸部の高さは200nmであり、凸部の底部の幅は、80nmであり、凸部の先端部の曲率半径は、20nmであった。反射防止膜の反射率は、380〜780nmの範囲の全てで0.6%以下となり、波長依存性の少ない反射防止膜としての適用が期待できる。また、耐擦傷性の評価は○であった。
〔実施例2〕
(i)工程:
製造例1で得た陽極酸化ポーラスアルミナの表面に、硬化性樹脂組成物Aを塗布し、ポリエチレンテレフタレートフィルムを被せた。
(ii)工程:
紫外線照射機(高圧水銀ランプ、積算光量600mJ/cm、ピーク照度180mW/cm)を用いて、硬化性樹脂組成物Aの塗膜に紫外線を照射し、硬化性樹脂組成物Aの硬化を行い、反射防止膜を形成した。
(iii)工程:
反射防止膜と前記モールドとを分離し、表面に凸部が形成された反射防止膜を得た。
(iv)工程:
紫外線照射機(高圧水銀ランプ、積算光量3600mJ/cm、ピーク照度180mW/cm)を用いて、反射防止膜に紫外線を照射し、硬化性樹脂組成物Aの硬化を行い、反射防止膜を形成した。凸部の周期は、100nmであり、凸部の高さは240nmであり、凸部の底部の幅は、80nmであり、凸部の先端部の曲率半径は、20nmであった。反射防止膜の反射率は、380〜780nmの範囲の全てで0.6%以下となり、波長依存性の少ない反射防止膜としての適用が期待できる。また、耐擦傷性の評価は○であった。
〔実施例3〕
製造例2で得た陽極酸化ポーラスアルミナを用いた以外は、実施例1と同様にして反射防止膜を得た。凸部の周期は、280nmであり、凸部の高さは200nmであり、凸部の底部の幅は、260nmであり、凸部の先端部の曲率半径は、60nmであった。反射防止膜の反射率は、380〜780nmの範囲の全てで0.6%以下となり、波長依存性の少ない反射防止膜としての適用が期待できる。また、耐擦傷性の評価は◎であった。
〔実施例4〕
(ii)工程の前に70℃で5分間保持したこと以外は、実施例1と同様にして反射防止膜を得た。なお、硬化性樹脂組成物の70℃での粘度は2.4Pa・sであった。凸部の周期は、100nmであり、凸部の高さは、220nmであり、凸部の底部の幅は、80nmであり、凸部の先端部の曲率半径は、10nmであった。反射防止膜の反射率は、380〜780nmの範囲の全てで0.6%以下となり、波長依存性の少ない反射防止膜としての適用が期待できる。また、耐擦傷性の評価は○であった。
本発明の製造方法で製造された反射防止膜は、耐擦傷性に優れているため、従来の反射防止膜に比べ、適用範囲が広い。また、微細凹凸構造を有しているため、反射防止膜以外にも、光導波路、レリーフホログラム、レンズ、偏光分離素子等の光学物品、細胞培養シート、超撥水性フィルム、超親水性フィルム等としての用途展開が期待できる。
10 モールド
14 凹部
20 液状の樹脂材料
30 反射防止膜
32 凸部

Claims (2)

  1. 表面に周期が可視光の波長以下である凸部が形成された反射防止膜の製造方法であって、
    (i)表面に前記凸部に対応する凹部が形成されたモールドの表面に、粘度が1〜1×10Pa・sの液状の樹脂材料を接触させる工程と、
    (ii)前記樹脂材料を固体状もしくは半固体状にし、前記反射防止膜を形成する工程と、
    (iii)前記反射防止膜と前記モールドとを分離する工程と
    を有し、
    前記(i)工程において、曲率半径rが0<r<R(ただし、Rは、凸部の最大幅の半分である。)を満足する先端部を有する凸部となるように、前記モールドの凹部を前記液状の樹脂材料によって完全に充填しない、反射防止膜の製造方法。
  2. さらに、(iv)前記(iii)の工程後に前記樹脂材料を固体状にする工程を有する、請求項1に記載の反射防止膜の製造方法。
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