JP2014024240A - モールドの製造方法および微細凹凸構造を表面に有する成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】細孔の間隔が比較的大きいモールドを製造する場合であっても、特殊な装置を用いることなくモールドを簡便に製造できる方法、および該モールドの微細凹凸構造が転写された、凹凸の間隔が比較的大きい微細凹凸構造を表面に有する成形体を提供する。
【解決手段】リン酸、マロン酸およびリンゴ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸を含む電解液を用い、80〜180Vの電圧にてアルミニウム基材10を陽極酸化し、アルミニウム基材10の表面に複数の細孔12を有する酸化皮膜14を形成する工程(a)を有するモールド18の製造方法;モールド18の表面に形成された複数の細孔12からなる微細凹凸構造が転写された成形体。
【選択図】図1

Description

本発明は、複数の細孔からなる微細凹凸構造を表面に有するモールドの製造方法、および該モールドの微細凹凸構造が転写された、微細凹凸構造を表面に有する成形体に関する。
近年、微細加工技術の進歩によって、成形体の表面にナノスケールの微細凹凸構造を付与することが可能となった。ナノスケールの微細凹凸構造は、例えばモスアイ効果と呼ばれる反射防止機能や、ロータス効果と呼ばれる撥水機能のように、構造由来の機能が発現することから、ナノスケールの微細凹凸構造の産業上の利用(有機EL素子の光取り出し効率の向上、画像表示装置の反射防止、画像表示装置の画像鮮明性の向上、種々の部材の撥水材等)が盛んに図られている。
成形体の表面に微細凹凸構造を付与する技術は様々である。これらのうち、モールドの表面に形成された微細凹凸構造を、成形体本体の表面に転写する方法は、簡便かつ少ない工程で成形体の表面に微細凹凸構造を付与できるため、工業生産に適している。近年、微細凹凸構造を表面に有する大面積のモールドを簡便に製造する方法として、アルミニウム基材を陽極酸化することによって複数の細孔を有する酸化皮膜(陽極酸化ポーラスアルミナ)を形成する方法が注目されている(例えば、特許文献1、2参照)。
陽極酸化を利用してモールドを製造する場合、モールドに好適な細孔の深さと規則的な配列とを両立するために、陽極酸化を二段階に分けて実施する方法(以下、本明細書中では「二段酸化法」とも記す。)が適している。すなわち、下記の工程(1)〜工程(3)を順次行い、モールドに好適な細孔を得る。
工程(1):アルミニウム基材の表面を陽極酸化し、細孔の深さを無視して細孔を規則的に配列させる工程。
工程(2):工程(1)で形成された酸化皮膜の一部または全部を除去する工程。
工程(3):工程(2)の後、アルミニウム基材を再び陽極酸化して、規則的な配列を保ったまま任意の深さの細孔を形成する工程。
酸化皮膜の細孔の間隔(ピッチ)は、陽極酸化時の印加電圧に概ね比例して大きくなることが知られている。例えば、特許文献1においては、40Vの定電圧にてアルミニウム基材を陽極酸化することによって、細孔の間隔が100nmの酸化皮膜を形成している。特許文献2においては、80Vの定電圧にてアルミニウム基材を陽極酸化することによって、細孔の間隔が200nmの酸化皮膜を形成している。
このように、アルミニウム基材の表面に複数の細孔を有する酸化皮膜が形成されたものをモールドとして利用する場合、陽極酸化の条件によって細孔の形状や間隔を制御できるという利点もある。
特許第4658129号公報 特許第4368415号公報
しかし、細孔の間隔が比較的大きい(150nmを超える)酸化皮膜を簡便に形成することは容易ではない。印加電圧を高めて細孔の間隔が大きい酸化皮膜を形成しようとすると、「熱暴走」や「ヤケ」と呼ばれる現象が発生し、複数の細孔からなる微細凹凸構造が破壊されてしまう。
特許文献2においては、濃度0.05モル/L、温度3℃のシュウ酸水溶液からなる電解液を用い、80Vの電圧にてアルミニウム基材を陽極酸化して細孔の間隔が約200nmの酸化皮膜を形成している。しかし、特許文献2においては、電解液を3℃の低温に維持する特殊な装置が必要であり、経済的ではない。
画像表示装置における反射防止部材、有機EL素子における光取り出し部材等においては、対象とする光の波長、各部材の微細凹凸構造の機械的特性等を鑑みて、凹凸の間隔が比較的大きい微細凹凸構造を形成することが好ましい場合がある。しかし、上述したように、細孔の間隔が比較的大きい酸化皮膜が形成されたモールドを簡便かつ安価に製造することは困難である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、細孔の間隔が比較的大きいモールドを製造する場合であっても、特殊な装置を用いることなくモールドを簡便に製造できる方法、および該モールドの微細凹凸構造が転写された、凹凸の間隔が比較的大きい微細凹凸構造を表面に有する成形体を提供する。
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の電解液を用いることによって、特殊な装置を用いることなく、高電圧にてアルミニウム基材を安定して陽極酸化できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のモールドの製造方法は、アルミニウム基材の表面に複数の細孔を有する酸化皮膜が形成されたモールドを製造する方法であって、下記の工程(a)を有することを特徴とする。
工程(a):リン酸、マロン酸およびリンゴ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸を含む電解液を用い、80〜180Vの電圧にてアルミニウム基材を陽極酸化し、該アルミニウム基材の表面に複数の細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
本発明のモールドの製造方法は、下記の工程(b)〜(e)をさらに有することが好ましい。
工程(b):前記工程(a)で形成された前記酸化皮膜の一部または全部を除去する工程。
工程(c):前記工程(b)または下記工程(d)の後、リン酸、マロン酸およびリンゴ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸を含む電解液を用い、80〜180Vの電圧にてアルミニウム基材を再び陽極酸化して、複数の細孔を有する酸化皮膜を形成する、または該酸化皮膜を成長させる工程。
工程(d):前記工程(c)の後、前記工程(c)で形成された酸化皮膜の一部を除去し、細孔の孔径を拡大する工程。
工程(e):前記工程(c)と前記工程(d)とを交互に繰り返す工程。
本発明の微細凹凸構造を表面に有する成形体は、本発明のモールドの製造方法で得られたモールドの表面に形成された複数の細孔からなる微細凹凸構造が転写されたものであることを特徴とする。
本発明のモールドの製造方法によれば、細孔の間隔が比較的大きいモールドを製造する場合であっても、特殊な装置を用いることなく簡便にモールドを製造できる。
本発明の微細凹凸構造を表面に有する成形体は、凹凸の間隔が比較的大きい微細凹凸構造を表面に有する。
アルミニウム基材の表面に複数の細孔を有する酸化皮膜が形成されたモールドの製造工程を示す断面図である。 微細凹凸構造を表面に有する成形体の製造装置の一例を示す構成図である。 微細凹凸構造を表面に有する成形体の一例を示す断面図である。
本明細書において、「細孔」とは、アルミニウム基材の表面の酸化皮膜に形成された微細凹凸構造の凹部のことをいう。
また、「細孔の間隔」は、隣接する細孔同士の中心間距離を意味する。
また、「突起」とは、成形体の表面に形成された微細凹凸構造の凸部のことをいう。
また、「微細凹凸構造」は、凸部または凹部の平均間隔がナノスケールであるの構造を意味する。
また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの総称である。
また、「活性エネルギー線」は、可視光線、紫外線、電子線、プラズマ、熱線(赤外線等)等を意味する。
[モールドの製造方法]
本発明のモールドの製造方法は、下記の工程(a)を有する方法である。モールドに好適な細孔の深さと規則的な配列とを両立する点からは、工程(a)の後に、下記の工程(b)〜工程(e)をさらに有することが好ましい。
工程(a):リン酸、マロン酸およびリンゴ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸を含む電解液を用い、80〜180Vの電圧にてアルミニウム基材を陽極酸化し、該アルミニウム基材の表面に複数の細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
工程(b):前記工程(a)で形成された前記酸化皮膜の一部または全部を除去する工程。
工程(c):前記工程(b)または下記工程(d)の後、リン酸、マロン酸およびリンゴ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸を含む電解液を用い、80〜180Vの電圧にてアルミニウム基材を再び陽極酸化して、複数の細孔を有する酸化皮膜を形成する、または該酸化皮膜を成長させる工程。
工程(d):前記工程(c)の後、酸化皮膜の一部を除去し、細孔の孔径を拡大する工程。
工程(e):前記工程(c)と前記工程(d)とを交互に繰り返す工程。
以下、各工程について詳細に説明する。
<工程(a)>
工程(a)は、リン酸、マロン酸およびリンゴ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸を含む電解液を用い、80〜180Vの電圧にてアルミニウム基材を陽極酸化し、該アルミニウム基材の表面に複数の細孔を有する酸化皮膜(陽極酸化ポーラスアルミナ)を形成する第一の酸化皮膜形成工程である。
具体的には、電解液中で陽極と陰極との間に所定電圧の電流を流して陽極であるアルミニウム基材を陽極酸化する。
工程(a)を行うと、例えば図1に示すように、アルミニウム基材10の表面に複数の細孔12を有する酸化皮膜14が形成される。
アルミニウム基材の表面の一部または全部を電解液に浸漬して陽極酸化することによって、電解液に浸漬した部分に酸化皮膜を形成できる。陽極酸化の初期に形成される酸化皮膜は、細孔の位置や大きさが不均一で規則性は皆無であるが、酸化皮膜が厚くなるとともに、徐々に細孔の配列の規則性が増していく。
アルミニウム基材の形状は、特に限定されず、板状、円柱状、円筒状等、モールドとして使用可能な形状であればどのような形状であってもよい。
アルミニウム基材としては、公知の研磨方法(機械研磨、羽布研磨、化学研磨、電解研磨等)によって表面が研磨され、少なくとも陽極酸化する部分が鏡面化されたものが好ましい。
アルミニウム基材の純度は、99.0質量%超が好ましく、99.5質量%以上がより好ましく、99.9質量%以上がもっとも好ましい。アルミニウム基材の純度が99.0質量%超であれば、モールドの製造過程において、不純物の金属間化合物が脱落して発生するマクロな凹凸が多くなりすぎない。
アルミニウム基材の平均結晶粒径は、100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、1〜60μmがさらに好ましい。平均結晶粒径が100μmを超えると、二段酸化法を採用した場合に、第一の酸化皮膜を除去した際に生じるマクロな凹凸構造が視認されやすくなり、モールドとしての使用に制限が生じる場合がある。
アルミニウム基材の平均結晶粒径は、アルミニウム基材の被加工面における任意に選ばれた100個以上の結晶粒について算出された円換算直径の平均値である。被加工面の結晶粒の観察は光学顕微鏡等で行うことができ、円換算直径の平均値は、例えば日本ローパー社製の「Image−Pro PLUS」等の画像解析ソフトウエアを用いることで求められる。
電解液としては、リン酸、マロン酸およびリンゴ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸を含む電解液を用いる。具体的には、リン酸、マロン酸およびリンゴ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸を溶解した水溶液が挙げられる。これらの酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの酸を用いると、陽極酸化の電解液の酸として従来から用いられてきたシュウ酸や硫酸を用いた場合と比較して、特殊な装置を用いることなく、細孔の間隔が大きい(150nmを超える)酸化皮膜を簡便に形成できる。
電解液の濃度は、酸の種類によって好適な範囲が異なるため一概に規定できないが、リン酸水溶液を電解液として用いる場合は、0.05〜0.4モル/Lが好ましい。電解液の濃度が0.05モル/L以上であれば、濃度が薄すぎることがなく、酸性電解液として十分に作用でき、平坦な酸化皮膜の形成が抑えられて、多孔質な酸化皮膜を形成しやすい。平坦な酸化皮膜は、微細凹凸構造を転写するモールドとしての役割を果たし得ない。電解液の濃度が0.4モル/L以下であれば、「ヤケ」と呼ばれる現象が起こりにくく、微細凹凸構造が部分的に破壊されにくい。また、酸化皮膜の形成速度が速くなりすぎず、細孔の深さを調整しやすい。
電解液の温度は、40℃以下が好ましい。電解液の温度が40℃以下であれば、陽極酸化により発生するジュール熱の解消が遅くなりにくく、電解液の温度が上がり続ける「熱暴走」が起こりにくい。電解液の温度を所定の範囲に維持できない場合、初期条件が同じでもモールドごとに形成される酸化皮膜にバラツキが生じ、形成される酸化皮膜を精密に制御することが困難となる。電解液の温度の下限値については、電解液を低温で維持する特殊な装置を用いる必要がない点で、6℃以上が好ましい。
工程(a)における印加電圧は、80〜180Vが好ましく、85〜175Vがより好ましく、90〜170Vがさらに好ましい。電圧が80V以上であれば、細孔の間隔が比較的大きい(150nmを超える)酸化皮膜を簡便に形成できる。電圧が180V以下であれば、ヤケと呼ばれる現象が発生し細孔が破壊されてしまうことを抑制できる。
工程(a)において形成される酸化皮膜の厚さは、15μm以下が好ましい。酸化皮膜の厚さが15μm以下であれば、後述の工程(b)において酸化皮膜を除去した際に、アルミニウム基材の結晶粒界の段差が視認できるほど大きくなりにくい。結晶粒界の段差が大きいモールドを用いると、結晶粒界の段差も転写されてしまい、視認できるほどのマクロな凹凸が形成され、得られる成形体の外観不良の原因となるおそれがある。
酸化皮膜の厚さは、電解液の濃度、通電時間の合計等の陽極酸化の条件を適宜設定することによって調整される。
工程(a)における陽極酸化の条件は、製造設備の能力、電解液の濃度や温度、印加電圧等に大きく左右されるため一概に規定できないが、具体的な一例を以下に示す。
例えば、15℃に調整した2.6Lの0.2モル/Lのリン酸水溶液からなる電解液を用い、横幅8cm、縦幅1.5cmの半月状撹拌翼にて電解液を350rpmで撹拌しながら、150Vの電圧にて27cmのアルミニウム基材を陽極酸化する場合、特殊な装置を用いることなく「ヤケ」や「熱暴走」を抑制できる。
<工程(b)>
工程(b)は、工程(a)で形成された酸化皮膜の一部または全部を除去する酸化皮膜除去工程である。
工程(b)を行うと、例えば図1に示すように、酸化皮膜14の全部が除去され、アルミニウム基材10の表面に窪み16が露出する。
酸化皮膜の一部または全部を除去することによって、酸化皮膜の底部のバリア層からなる窪みまたはバリア層の形状に対応した窪みがアルミニウム基材の表面に露出する。工程(a)において規則的に配列した細孔を形成することによって、工程(b)において酸化皮膜の一部または全部を除去して形成される窪みも、規則的に配列したものとなる。
酸化皮膜の一部または全部を除去する方法としては、アルミニウムを溶解せず、アルミナを選択的に溶解する溶液に浸漬する方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、クロム酸/リン酸混合液等が挙げられる。
<工程(c)>
工程(c)は、工程(b)または下記工程(d)の後、アルミニウム基材を電解液に浸漬して再び陽極酸化し、複数の細孔を有する酸化皮膜を再び形成する、または該酸化皮膜を成長させる第二の酸化皮膜形成工程である。
工程(b)の後に工程(c)を行うと、例えば図1に示すように、アルミニウム基材10が陽極酸化されて、複数の細孔12を有する酸化皮膜14が再び形成される。
また、工程(d)の後に工程(c)を行うと、既存の酸化皮膜の下に新たな酸化皮膜が形成され、既存の細孔の底部から下方に延びる新たな細孔が形成される。
アルミニウム基材の表面にバリア層に由来する窪みが形成された状態で再び陽極酸化すると、窪みが細孔発生点として作用し、新たな酸化皮膜の細孔は、窪みに対応した位置に発生する。特に、窪みが規則的に配列している場合、陽極酸化の初期、すなわち新たに形成される酸化皮膜が薄い状態であっても、規則的に配列した細孔が形成され、サブミクロンオーダーで細孔の深さを調整できる。
電解液としては、リン酸、マロン酸およびリンゴ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸を含む電解液を用いる。具体的には、リン酸、マロン酸およびリンゴ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸を溶解した水溶液が挙げられる。これらの酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの酸を用いると、陽極酸化の電解液の酸として従来から用いられてきたシュウ酸や硫酸を用いた場合と比較して、特殊な装置を用いることなく、細孔の間隔が大きい(150nmを超える)酸化皮膜を簡便に形成できる。
電解液の濃度は、酸の種類によって好適な範囲が異なるため一概に規定できないが、リン酸水溶液を電解液として用いる場合は、0.05〜0.4モル/Lが好ましい。電解液の濃度が0.05モル/L以上であれば、濃度が薄すぎることがなく、酸性電解液として十分に作用でき、平坦な酸化皮膜の形成が抑えられて、多孔質な酸化皮膜を形成しやすい。平坦な酸化皮膜は、微細凹凸構造を転写するモールドとしての役割を果たし得ない。電解液の濃度が0.4モル/L以下であれば、酸化皮膜の形成速度が速くなりすぎず、細孔の深さを調整しやすい。
電解液の温度は、25℃以下が好ましく、17℃以下がより好ましい。電解液の温度が25℃以下であれば、酸化皮膜の形成速度が速くなりすぎず、細孔の深さを調整しやすい。電解液の温度の下限値については、電解液を低温で維持する特殊な装置を用いる必要がない点で、6℃以上が好ましい。
工程(c)における印加電圧は、80〜180Vが好ましく、85〜175Vがより好ましく、90〜170Vがさらに好ましい。電圧が80V以上であれば、細孔の間隔が比較的大きい(150nmを超える)酸化皮膜を簡便に形成できる。電圧が180V以下であれば、ヤケと呼ばれる現象が発生し細孔が破壊されてしまうことを抑制できる。工程(c)における印加電圧は、工程(a)における印加電圧と同じことが好ましいが、種々に変更しても構わない。
工程(c)における通電時間は、3〜60秒が好ましい。通電時間が3秒以上であれば、最終的に得られる酸化皮膜の厚さを後述する0.01μm以上にしやすい。厚さが0.01μm未満の酸化皮膜では、細孔の深さも0.01μmに満たず、モールドとして用いた場合、得られる成形体が十分な反射防止性能を示さないおそれがある。通電時間が60秒以下であれば、最終的に得られる酸化皮膜の厚さを後述する0.8μm以下にしやすい。厚さが0.8μm超の酸化皮膜では、酸化皮膜が厚くなる分だけ細孔も深くなるため、モールドとして用いた場合、離型不良を起こしやすくなるおそれがある。
工程(c)における電圧以外の陽極酸化の条件(電解液の種類、濃度、温度等)は、必ずしも工程(a)と一致させる必要はなく、酸化皮膜の厚さを調整しやすい条件に適宜変更してもよい。
<工程(d)>
工程(d)は、工程(c)の後、酸化皮膜の一部を除去して、細孔の孔径を拡大する孔径拡大処理工程である。
工程(c)の後に工程(d)を行うと、例えば図1に示すように、工程(c)によって形成された酸化皮膜14の一部が除去されて、細孔12の孔径が拡大する。
孔径拡大処理の具体的方法としては、アルミナを溶解する溶液に浸漬して、酸化皮膜に形成されている細孔をエッチングにより拡大させる方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、5.0質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。浸漬する時間を長くするほど、細孔の孔径は大きくなる。
<工程(e)>
工程(e)は、工程(c)と工程(d)とを交互に繰り返して細孔の深さと形状を調整する繰り返し工程である。
工程(c)と工程(d)とを交互に繰り返すことによって、例えば図1に示すように、細孔12の形状を開口部から深さ方向に徐々に径が縮小するテーパー形状にでき、その結果、周期的な複数の細孔12からなる酸化皮膜14が表面に形成されたモールド18を得ることができる。
工程(c)および工程(d)の条件、例えば、陽極酸化の電解液濃度や通電時間、孔径拡大処理の時間、孔径拡大処理に利用する溶液の温度や濃度を適宜設定することによって、様々な形状の細孔を形成する酸化皮膜を形成できる。モールドを用いて製造される成形体の用途等に応じて、これら条件を適宜設定すればよい。
工程(c)の回数は、回数が多いほど滑らかなテーパー形状にすることができる点から、工程(e)の前に行った工程(c)も含めて少なくとも3回が好ましい。同じく、工程(d)の回数も、回数が多いほど滑らかなテーパー形状にすることができる点から、工程(e)の前に行った工程(d)も含めて少なくとも3回が好ましい。なお、細孔を滑らかなテーパー形状とする必要がない場合、それぞれの回数は2回以下であっても構わない。
工程(e)は、工程(c)で終了してもよく、工程(d)で終了してもよい。
工程(c)における陽極酸化を長時間施すほど深い細孔を得ることができるが、微細凹凸構造を転写するためのモールドとして用いる場合、工程(e)を経て最終的に得られる酸化皮膜の厚さは、0.01〜0.8μm程度でよい。
<モールド>
本発明のモールドの製造方法によれば、アルミニウム基材の表面に、開口部から深さ方向に徐々に径が縮小するテーパー形状の細孔が比較的規則的に配列して形成され、その結果、微細凹凸構造を有する酸化皮膜(陽極酸化ポーラスアルミナ)が表面に形成されたモールドを製造できる。
モールドを反射防止部材の製造に用いる場合、細孔の平均間隔は、150nm以上かつ600nm以下(すなわち可視光の波長以下)が好ましく、150nm以上400nm以下であることがさらに好ましい。細孔の平均間隔が150nm以上であれば、モールドの表面の転写によって得られた成形体の反射防止性能が損なわれることなく耐擦傷性能が向上し、かつ突起(凸部)同士の合一に起因する成形体の白化を抑制できる。細孔の平均間隔が600nm以下であれば、モールドの表面の転写によって得られた成形体の表面(転写面)において可視光の散乱が起こりにくくなり、十分な反射防止機能が発現するため、反射防止膜等の反射防止部材の製造に適する。
また、モールドを反射防止部材の製造に用いる場合、細孔の平均間隔が600nm以下であるとともに、細孔の深さが100nm以上であることが好ましく、150nm以上であることがより好ましい。細孔の深さが100nm以上のモールドを用いた場合、反射防止部材の反射防止性能が十分に高くなる。
また、モールドを反射防止部材の製造に用いる場合、細孔のアスペクト比(=深さ/平均間隔)は、0.5以上が好ましく、1以上がもっとも好ましい。アスペクト比が0.5以上であれば、反射率が低い表面を形成でき、その入射角依存性も十分に小さくなる。
モールドを有機EL素子の光取り出し部材の製造に用いる場合、細孔の平均間隔は、有機EL素子に閉じ込められた光の各モードの実効波長に等しくなることがもっとも好ましい。実効波長に等しい場合、その実効波長を持つモードを効率的に外部へ出射させることが可能となる。より具体的には、例えば有機EL素子から可視光線を取り出したい場合、細孔の平均間隔は可視光線の波長域と同様の約400〜830nmとすることが好ましい。また、緑色の光を効率的に取り出したい場合、細孔の平均間隔は緑色の波長である490〜575nm程度とすることが好ましい。
また、モールドを有機EL素子の光取り出し部材の製造に用いる場合、細孔のアスペクト比は、0.1〜2が好ましい。アスペクト比が0.1以上であれば、光取り出し効率が十分に高くなる。有機EL素子の光取り出し部材の表面には、スパッタリング、蒸着、コーティング等の方法によって均一な金属薄膜等を形成する場合がある。細孔のアスペクト比が2以下であれば、表面に均一な金属薄膜等を形成しやすい。
モールドの微細凹凸構造が形成された表面は、離型が容易になるように、離型処理が施されていてもよい。離型処理の方法としては、例えば、リン酸エステル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、フッ素ポリマーをコーティングする方法、フッ素化合物を蒸着する方法、フッ素系表面処理剤またはフッ素シリコーン系表面処理剤をコーティングする方法等が挙げられる。
<作用効果>
以上説明した本発明のモールドの製造方法にあっては、特定の電解液を用いてアルミニウム基材を陽極酸化して酸化皮膜を形成するため、細孔の間隔が比較的大きい(例えば150nm以上の)モールドを製造するために高電圧(80V以上)を印加しても、「ヤケ」や「熱暴走」を抑制できる。したがって、本発明の製造方法によれば、細孔の間隔が比較的大きいモールドを製造する場合であっても、特殊な装置を用いずに簡便にモールドを製造できる。
[成形体]
本発明の微細凹凸構造を表面に有する成形体(以下、単に「成形体」とも記す。)は、本発明のモールドの製造方法で得られたモールドの表面に形成された複数の細孔からなる微細凹凸構造が転写されたものである。
本発明の成形体は、例えばモールドの微細凹凸構造を成形体本体の表面に転写することで製造できる。
モールドの微細凹凸構造(細孔)を転写して製造された成形体は、その表面にモールドの微細凹凸構造の反転構造(凸部)が、鍵と鍵穴の関係で転写される。
モールドの微細凹凸構造を成形体本体の表面に転写する方法としては、例えば、モールドと透明基材(成形体本体)の間に未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を充填し、モールドの微細凹凸構造に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が接触した状態で、活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させた後にモールドを離型する方法が好ましい。これによって、透明基材の表面に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる微細凹凸構造が形成された成形体を製造できる。得られた成形体の微細凹凸構造は、モールドの微細凹凸構造の反転構造となる。
<成形体本体>
透明基材としては、活性エネルギー線の照射を、該透明基材を介して行うため、活性エネルギー線の照射を著しく阻害しないものが好ましい。透明基材の材料としては、例えば、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ガラス等が挙げられる。
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物>
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いる方法は、熱硬化性樹脂組成物を用いる方法に比べて加熱や硬化後の冷却を必要としないため、短時間で微細凹凸構造を転写することができ、量産に好適である。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の充填方法としては、モールドと透明基材の間に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を供給した後に圧延して充填する方法、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布したモールド上に透明基材をラミネートする方法、あらかじめ透明基材上に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布してモールドにラミネートする方法等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、重合反応性化合物と、活性エネルギー線重合開始剤とを含有する。上記の他に、用途に応じて非反応性のポリマーや活性エネルギー線ゾルゲル反応性成分が含まれていてもよく、増粘剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、溶剤、無機フィラー等の各種添加剤が含まれていてもよい。
重合反応性化合物としては、分子中にラジカル重合性結合および/またはカチオン重合性結合を有するモノマー、オリゴマー、反応性ポリマー等が挙げられる。
ラジカル重合性結合を有するモノマーとしては、単官能モノマー、多官能モノマーが挙げられる。
ラジカル重合性結合を有する単官能モノマーとしては、(メタ)アクリレート誘導体(メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等)、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、スチレン誘導体(スチレン、α−メチルスチレン等)、(メタ)アクリルアミド誘導体((メタ)アクリルアミド、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等)等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ラジカル重合性結合を有する多官能モノマーとしては、二官能性モノマー(エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、1,2−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、1,4−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ブタン、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミド等)、三官能モノマー(ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート等)、四官能以上のモノマー(コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸の縮合反応混合物、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等)、二官能以上のウレタンアクリレート、二官能以上のポリエステルアクリレート等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
カチオン重合性結合を有するモノマーとしては、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基等を有するモノマーが挙げられ、エポキシ基を有するモノマーが特に好ましい。
分子中にラジカル重合性結合および/またはカチオン重合性結合を有するオリゴマーまたは反応性ポリマーとしては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとの縮合物等の不飽和ポリエステル類;ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カチオン重合型エポキシ化合物、側鎖にラジカル重合性結合を有する上述のモノマーの単独または共重合ポリマー等が挙げられる。
活性エネルギー線重合開始剤としては、公知の重合開始剤を用いることができ、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させる際に用いる活性エネルギー線の種類に応じて適宜選択することが好ましい。
光硬化反応を利用する場合、光重合開始剤としては、カルボニル化合物(ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等)、硫黄化合物(テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
電子線硬化反応を利用する場合、重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、チオキサントン(2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等)、アセトフェノン(ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等)、ベンゾインエーテル(ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等)、アシルホスフィンオキサイド(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等)、メチルベンゾイルホルメート、1,7−ビスアクリジニルヘプタン、9−フェニルアクリジン等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における活性エネルギー線重合開始剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。活性エネルギー線重合開始剤が0.1質量部以上であれば、重合が進行しやすい。活性エネルギー線重合開始剤が10質量部以下であれば、硬化樹脂が着色したり、機械強度が低下したりしにくい。
非反応性のポリマーとしては、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物としては、例えば、アルコキシシラン化合物、アルキルシリケート化合物等が挙げられる。
アルコキシシラン化合物としては、RSi(OR’)で表されるものが挙げられる。RおよびR’は炭素数1〜10のアルキル基を表し、xおよびyはx+y=4の関係を満たす整数である。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン等が挙げられる。
アルキルシリケート化合物としては、RO[Si(OR)(OR)O]で表されるものが挙げられる。R〜Rはそれぞれ炭素数1〜5のアルキル基を表し、zは3〜20の整数を表す。具体的にはメチルシリケート、エチルシリケート、イソプロピルシリケート、n−プロピルシリケート、n−ブチルシリケート、n−ペンチルシリケート、アセチルシリケート等が挙げられる。
<製造装置>
本発明の成形体は、例えば、図2に示す製造装置を用いて、下記のようにして製造される。
微細凹凸構造(図示略)を表面に有するロール状モールド20と、ロール状モールド20の表面に沿って移動する帯状のフィルム42(透明基材)との間に、タンク22から活性エネルギー線硬化性樹脂組成物38を供給する。
ロール状モールド20と、空気圧シリンダ24によってニップ圧が調整されたニップロール26との間で、フィルム42および活性エネルギー線硬化性樹脂組成物38をニップし、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物38を、フィルム42とロール状モールド20との間に均一に行き渡らせると同時に、ロール状モールド20の微細凹凸構造の凹部内に充填する。
ロール状モールド20の下方に設置された活性エネルギー線照射装置28から、フィルム42を通して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物38に活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物38を硬化させることによって、ロール状モールド20の表面の微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層44を形成する。
剥離ロール30により、表面に硬化樹脂層44が形成されたフィルム42をロール状モールド20から剥離することによって、図3に示すような成形体40を得る。
活性エネルギー線照射装置28としては、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。
活性エネルギー線の照射量は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化が進行するエネルギー量であればよく、通常、100〜10000mJ/cm程度である。
<成形体>
このようにして製造された成形体40は、図3に示すように、フィルム42(透明基材)の表面に硬化樹脂層44が形成されたものである。
硬化樹脂層44は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる膜であり、微細凹凸構造を表面に有する。
本発明におけるモールドを用いた場合の成形体40の表面の微細凹凸構造は、酸化皮膜の表面の微細凹凸構造を転写して形成されたものであり、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる複数の凸部46を有する。
微細凹凸構造としては、略円錐形状、角錐形状等の突起(凸部)が複数並んだ、いわゆるモスアイ構造が好ましい。突起間の間隔が可視光の波長以下であるモスアイ構造は、空気の屈折率から材料の屈折率へと連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となることが知られている。
<用途>
本発明の成形体は、表面の微細凹凸構造によって、反射防止性能、撥水性能等の種々の性能を発揮する。
本発明の成形体がシート状またはフィルム状の場合には、反射防止膜として、例えば、画像表示装置(テレビ、携帯電話のディスプレイ等)、展示パネル、メーターパネル等の対象物の表面に貼り付けたり、インサート成形したりして用いることができる。また、撥水性能を活かして、風呂場の窓や鏡、太陽電池部材、自動車のミラー、看板、メガネのレンズ等、雨、水、蒸気等にさらされるおそれのある対象物の部材としても用いることができる。
本発明の成形体が立体形状の場合には、用途に応じた形状の透明基材を用いて反射防止部材を製造しておき、これを上記対象物の表面を構成する部材として用いることもできる。
また、対象物が画像表示装置である場合には、その表面に限らず、その前面板に対して、本発明の成形体を貼り付けてもよいし、前面板そのものを、本発明の成形体から構成することもできる。例えば、イメージを読み取るセンサーアレイに取り付けられたロッドレンズアレイの表面、FAX、複写機、スキャナ等のイメージセンサーのカバーガラス、複写機の原稿を置くコンタクトガラス等に、本発明の成形体を用いても構わない。また、可視光通信等の光通信機器の光受光部分等に、本発明の成形体を用いることによって、信号の受信感度を向上させることもできる。
本発明の成形体は、有機EL素子の光取り出し部材として用いることができる。本発明の成形体は、有機EL素子の最表面に配置されてもよく、屈折率の異なる部材の界面に配置されてもよい。本発明の成形体は、接着等によって有機EL素子に固定されてもよい。本発明の成形体の表面に、スパッタリング、蒸着、コーティング等によって金属薄膜等を形成したものを光取り出し部材として用いてもよい。
また、本発明の成形体は、上述した用途以外にも、光導波路、レリーフホログラム、光学レンズ、偏光分離素子等の光学用途や、細胞培養シートとしての用途に展開できる。
<作用効果>
以上説明した本発明の成形体にあっては、本発明のモールドの製造方法で得られたモールドの表面に形成された複数の細孔からなる微細凹凸構造が転写されたものであるため、突起の間隔が比較的大きい(例えば150nm以上の)微細凹凸構造を表面に有する。また、本発明のモールドの製造方法で得られたモールドを用いることによって、のモールドの微細凹凸構造の反転構造を表面に有する成形体を一工程で簡便に製造できる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
各種測定、評価は、以下の方法にて行った。
(酸化皮膜の厚さ)
アルミニウム基材の酸化面の一部を切り取って、その縦断面に白金を1分間蒸着し、電解放出型走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製、「JSM−7400F」)を用いて、加速電圧3.00kVで観察した。断面サンプルを2000倍に拡大して観察し、観察範囲で酸化皮膜の厚さを測定した。
(モールドの細孔の平均間隔および深さ)
酸化皮膜が表面に形成されたモールドの一部を切り取って、表面に白金を1分間蒸着し、電解放出型走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製、「JSM−7400F」)を用いて、加速電圧3.00kVで1万倍に拡大して観察した。細孔の平均間隔(ピッチ)は一直線上に並んだ6個の細孔の中心間距離を平均して求めた。
また、モールドの一部を異なる2箇所から切り取って、その縦断面に白金を1分間蒸着し、同じく電解放出型走査電子顕微鏡を用いて加速電圧3.00kVで観察した。各断面サンプルを5万倍に拡大して観察し、観察範囲で10個の細孔の深さを測定し、平均した。この測定を2点で行い、各観察点の平均値をさらに平均して細孔の平均深さを求めた。
(成形体の突起の平均間隔および高さ)
成形体(フィルム)の表面および縦断面に白金を10分間蒸着し、電解放出型走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製、「JSM−7400F」)を用いて、加速電圧3.00kVの条件で成形体の表面および断面を観察した。成形体の表面を1万倍に拡大して観察し、一直線上に並んだ6個の突起(凸部)の中心間距離を平均して突起の平均間隔(ピッチ)を求めた。また、成形体の断面を5万倍で観察し、10本の突起の高さを平均して突起の平均高さを求めた。
[実施例1]
<モールドの製造>
純度99.99質量%、平均結晶粒径200μm、厚さ0.3mmのアルミニウム板を30mm×90mmの大きさに切断し、過塩素酸/エタノール混液(体積比=1/4)中で電解研磨し、これをアルミニウム基材として用いた。
工程(a):
0.2モル/Lのリン酸水溶液を15℃に調整した。リン酸水溶液にアルミニウム基材を浸漬し、リン酸水溶液を横幅8cm、縦幅1.5cmの半月状撹拌翼にて350rpmで撹拌しながら、150Vの定電圧にてアルミニウム基材を10分間陽極酸化し、厚さ10μmの酸化皮膜を形成した。
工程(b):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム基材を、6質量%のリン酸と1.8質量%クロム酸を混合した70℃の水溶液中に6時間浸漬して、酸化皮膜を溶解除去し、陽極酸化の細孔発生点となる窪みを露出させた。
工程(c):
細孔発生点を露出させたアルミニウム基材を、15℃に調整した0.2モル/Lのリン酸水溶液に浸漬し、150Vの定電圧にて40秒間陽極酸化して、酸化皮膜をアルミニウム基材の表面に再び形成した。
工程(d):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム基材を、32℃に調整した5質量%リン酸水溶液中に19分間浸漬して、酸化皮膜の細孔を拡大する孔径拡大処理を施した。
工程(e):
前記工程(c)と前記工程(d)をさらに交互に4回繰り返した。すなわち、工程(c)を合計で5回行い、工程(d)を合計で5回行った。
その後、脱イオン水で洗浄した後、表面の水分をエアーブローで除去し、平均間隔400nm、平均深さ約500nmの略円錐形状の細孔を有する厚さ0.6μmの酸化皮膜からなるモールドを得た。
このようにして得られたモールドを、オプツールDSX(ダイキン工業株式会社製)をデュラサーフHD−ZV(ダイキン工業株式会社製)で0.1質量%に希釈した液に、10分間浸漬して、一晩風乾することによって離型処理した。
<成形体の製造>
離型処理したモールドと、透明基材であるアクリルフィルム(三菱レイヨン株式会社製、「アクリプレン HBS010」)との間に、下記の組成の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を充填して、高圧水銀ランプで積算光量1000mJ/cmの紫外線を照射することによって、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させた。その後、モールドを剥離し、透明基材と硬化組成物の硬化物からなる成形体(フィルム)を得た。
このようにして製造した成形体の表面には微細凹凸構造が形成されており、突起の平均間隔(ピッチ)は400nm、突起の平均高さは480nmであった。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物:
トリメチロールエタン・アクリル酸・無水コハク酸縮合エステル:45質量部、
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート:45質量部、
信越化学工業社製x−22−1602(商品名):10質量部、
BASF社製イルガキュア184(商品名):2.7質量部、
BASF社製イルガキュア819(商品名):0.18質量部。
本発明のモールドの製造方法は、反射防止部材、防曇性部材、防汚性部材、撥水性部材、有機EL素子の光取出し部材の効率的な量産にとって有用である。また、本発明の微細凹凸構造を表面に有する成形体は、反射防止部材品、防曇性部材、防汚性部材、撥水性部材、有機EL素子の光取り出し部材として好適である。
10 アルミニウム基材
12 細孔
14 酸化皮膜
18 モールド
20 ロール状モールド
40 成形体
42 フィルム
46 凸部

Claims (3)

  1. アルミニウム基材の表面に複数の細孔を有する酸化皮膜が形成されたモールドを製造する方法であって、
    下記の工程(a)を有する、モールドの製造方法。
    工程(a):リン酸、マロン酸およびリンゴ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸を含む電解液を用い、80〜180Vの電圧にてアルミニウム基材を陽極酸化し、該アルミニウム基材の表面に複数の細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
  2. 下記の工程(b)〜(e)をさらに有する、請求項1に記載のモールドの製造方法。
    工程(b):前記工程(a)で形成された前記酸化皮膜の一部または全部を除去する工程。
    工程(c):前記工程(b)または下記工程(d)の後、リン酸、マロン酸およびリンゴ酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸を含む電解液を用い、80〜180Vの電圧にてアルミニウム基材を再び陽極酸化して、複数の細孔を有する酸化皮膜を形成する、または該酸化皮膜を成長させる工程。
    工程(d):前記工程(c)の後、前記工程(c)で形成された酸化皮膜の一部を除去し、細孔の孔径を拡大する工程。
    工程(e):前記工程(c)と前記工程(d)とを交互に繰り返す工程。
  3. 請求項1または2に記載のモールドの製造方法で得られたモールドの表面に形成された複数の細孔からなる微細凹凸構造が転写された、微細凹凸構造を表面に有する成形体。
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