JP2010275525A - 活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、及びそれを用いたナノ凹凸構造体とその製造方法、及びナノ凹凸構造体を備えた撥水性物品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】硬化したときの表面自由エネルギーが37mJ/m2以上である多官能モノマー(A)を60〜97質量部、硬化したときの表面自由エネルギーが30mJ/m2以下であるモノマー(B)を3〜29質量部含む重合反応性モノマー成分と、重合反応性モノマー成分100質量部に対して、0.01〜10質量部の活性エネルギー線重合開始剤(D)とを含有し、(A)は分子内に3個以上のラジカル重合性官能基を有し、かつ分子量をラジカル重合性官能基の数で除した値が110〜200であり、(B)は分子内に1個以上のラジカル重合性官能基を有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
これらの中でも、ナノ凹凸構造の転写性、表面組成の自由度を考慮すると、活性エネルギー線の照射により樹脂組成物を硬化させて、ナノ凹凸構造を転写する方法が好適である。該方法は、連続生産が可能なベルト状やロール状のスタンパを用いる場合に特に好適であり、生産性に優れた方法である。
また、得られるナノ凹凸構造体は、同じ樹脂組成物を用いて作製した表面が平滑なハードコートなどの成形体に比べて耐擦傷性に劣り、使用中の耐久性に問題があった。
また、樹脂組成物にフッ素系化合物やシリコーン系化合物等の撥水性成分を配合し、撥水性を発現させやすくする方法が知られている。
また、特許文献2には、シリコーンジアクリレートを含む樹脂組成物の硬化物からなり、隣り合う凸部同士の距離が可視光の波長以下である微細凹凸構造を表面に有する反射防止物品が開示されている。
特許文献2に記載の反射防止物品に用いられる樹脂組成物は、主に反射防止性能を発現させることを目的としているため、得られる反射防止物品は反射防止性能に優れるものの、十分な撥水性を有するものではなかった。
また、高い耐擦傷性と良好な撥水性を兼ね備えたナノ凹凸構造体を得ることは必ずしも容易ではなく、これらの性能を発現できるナノ凹凸構造体を形成できる樹脂組成物が望まれている。
ここで、前記重合反応性モノマー成分は、前記多官能モノマー(A)およびモノマー(B)と共重合可能なモノマー(C)を20質量部以下含むことが好ましい。
また、前記重合反応性モノマー成分100質量部に対して、0.01〜5質量部の紫外線吸収剤および/または酸化防止剤(E)をさらに含有することが好ましい。
また、本発明の撥水性物品は、前記ナノ凹凸構造体を備えたことを特徴とする。
また、本発明のナノ凹凸構造体の製造方法は、ナノ凹凸構造の反転構造が形成されたスタンパと、基材との間に、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を配し、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を重合および硬化させた後、前記スタンパを剥離し、前記基材の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなるナノ凹凸構造を形成することを特徴とする。
なお、本発明において「(メタ)アクリロイル基」は「アクリロイル基および/またはメタクリロイル基」を、「(メタ)アクリレート」は「アクリレートおよび/またはメタクリレート」をそれぞれ意味する。
また、「活性エネルギー線」とは、電子線、紫外線、可視光線、プラズマ、赤外線などの熱線等を意味する。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線を照射することで重合反応が進行し、硬化する樹脂組成物である。
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」という場合がある。)は、重合反応性モノマー成分と、活性エネルギー線重合開始剤(D)とを含有する。
重合反応性モノマー成分は、当該モノマー成分を硬化したときの表面自由エネルギーが37mJ/m2以上である多官能モノマー(A)と、当該モノマー成分を硬化したときの表面自由エネルギーが30mJ/m2以下であるモノマー(B)を含む。
本発明の樹脂組成物は、硬化したときの表面自由エネルギーが低いモノマー(モノマー(B))を、樹脂組成物の硬化に伴う相分離によって、硬化物の表面に偏在させることを特徴とする。硬化に伴う相分離は、表面自由エネルギーが高いモノマー(多官能モノマー(A))により誘起され、多官能モノマー(A)の表面自由エネルギーが高くなるほど誘起されやすい。ただし、多官能モノマー(A)とモノマー(B)の表面自由エネルギー差が広がりすぎると、両者が相溶しにくくなり樹脂組成物が白濁し、硬化が不均一になる場合がある。従って、多官能モノマー(A)とモノマー(B)には、適度な相溶性を持たせることが重要である。
多官能モノマー(A)は、樹脂組成物の主成分であり、硬化物の機械特性(特に耐擦傷性)を良好に維持する役割を果たすと共に、硬化に伴う相分離を誘起させる。
多官能モノマー(A)は、硬化したときの表面自由エネルギーが37mJ/m2以上であり、好ましくは37〜65mJ/m2であり、より好ましくは40〜60mJ/m2であり、さらに好ましくは43〜50mJ/m2である。多官能モノマー(A)の表面自由エネルギーが37mJ/m2以上であれば、硬化に伴う相分離を効果的に誘起できやすくなる。一方、表面自由エネルギーが65mJ/m2以下であれば、樹脂組成物の分離および白濁を抑制できやすくなる。
接触角は、固体と液体それぞれの表面自由エネルギーによって一意に決まるものであり、ヤングの式から求められる。本発明においては、水の表面自由エネルギーを72.8mJ/m2として、ヤングの式から多官能モノマー(A)の硬化物における表面自由エネルギーを求める。
また、多官能モノマー(A)は、分子量をラジカル重合性官能基の数で除した値(分子量/ラジカル重合性官能基の数)が110〜200であり、好ましくは120〜180であり、より好ましくは130〜150である。この値が110以上であれば、得られる樹脂組成物の硬化物の架橋点間分子量が小さくなり過ぎて硬化物が硬くかつ脆くなることを抑制できやすくなる。一方、200以下であれば、硬化物の弾性率が低下するのを抑制でき、耐擦傷性が維持しやすくなる。
例えば体表的な3官能モノマーであるトリメチロールプロパントリアクリレートの場合、分子量は296であり、ラジカル重合性官能基の数は3であるため、分子量/ラジカル重合性官能基の数=98.7となる。
また、分子量が800を超える4官能モノマーや、分子量が1200を超える6官能モノマー等は、分子量/ラジカル重合性官能基の数>200となる。
従って、これらのモノマーやトリメチロールプロパントリアクリレートは、本発明の多官能モノマー(A)とは異なる。
多官能モノマー(A)の具体例を以下に示す。
4官能モノマーとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのエトキシ変性物やプロポキシ変性物、エトキシ・プロポキシ変性物、ブトキシ変性物、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートのエトキシ変性物やプロポキシ変性物、エトキシ・プロポキシ変性物、ブトキシ変性物などが挙げられる。
5官能以上の多官能モノマーとしては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートのエトキシ変性物やプロポキシ変性物、エトキシ・プロポキシ変性物、ブトキシ変性物などが挙げられる。
さらに、多官能モノマー(A)として、トリメチロールエタンと、コハク酸または無水コハク酸と、アクリル酸とを2/1/4の質量比率で混ぜて反応させた混合物などを用いてもよい。
また、市販品としては、新中村化学工業社製の「NKエステルATM−4E」、「A−TMPT−3EO」、ダイセル・サイテック社製の「EBECRYL40」、第一工業製薬社製の「ニューフロンティアTMP−2」等が好適である。
モノマー(B)は、樹脂組成物の硬化物に撥水性を付与する役割を果たす。
モノマー(B)は、硬化したときの表面自由エネルギーが30mJ/m2以下であり、好ましくは10〜30mJ/m2であり、より好ましくは15〜30mJ/m2であり、さらに好ましくは15〜25mJ/m2である。モノマー(B)の表面自由エネルギーが30mJ/m2以下であれば、硬化に伴う相分離を効果的に誘起できやすくなる。一方、表面自由エネルギーが10mJ/m2以上であれば、樹脂組成物の分離および白濁を抑制できやすい。
なお、モノマー(B)の表面自由エネルギーは、多官能モノマー(A)の表面自由エネルギーと同様にして算出できる。
このようなモノマー(B)としては、例えばポリブタジエン構造、水素添加ポリブタジエン構造、ポリジメチルシロキサン構造、ポリフルオロアルキル鎖などを有する化合物が挙げられる。また、これらの構造中にセグメントが導入されていてもよい。セグメントが導入されていると、多官能モノマー(A)や後述するモノマー(C)との相溶性が適度に向上する。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
モノマー(B)の具体例を以下に示す。
ポリジメチルシロキサン構造を有する化合物としては、ポリジメチルシロキサン変性アクリレート(例えば信越化学工業社製のシリコーンジアクリレート「x−22−1602」等)などが挙げられる。
ポリフルオロアルキル鎖を有する化合物としては、フッ素含有アルキル基を有する(メタ)アクリレート、例えば2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1,1,2,2-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
これらの中でも相分離を誘起しやすい観点から、モノマー(B)としては、ポリジメチルシロキサン構造を有する化合物が好ましい。
ところで、ナノ凹凸構造体が十分な撥水性を発現するには、ポリジメチルシロキサン構造を有する化合物を3質量部以上加えることが好ましいが、上述したように含有量が増えると白濁したり相分離したりすることがある。3質量部以上加えても白濁やマクロな相分離を効果的に抑制するには、ポリジメチルシロキサン構造を有する化合物として、多官能モノマー(A)や後述するモノマー(C)との相溶性セグメントを有する化合物を用いるのが好ましい。相溶性セグメントとしては、例えばポリアルキレンオキサイド骨格やアミド結合などが挙げられる。このような相溶性セグメントを有するポリジメチルシロキサン構造を有する化合物として、上述した信越化学工業社製のシリコーンジアクリレート「x−22−1602」などが挙げられ、モノマー(B)として特に好ましく用いられる。
重合反応性モノマー成分は、上述した多官能モノマー(A)およびモノマー(B)と共重合可能なモノマー(C)が含むことが好ましい。
モノマー(C)としては、分子内に1個のラジカル重合性官能基を有する化合物(ただし、硬化したときの表面自由エネルギーが30mJ/m2以下のモノマーを除く)が好ましい。
また、基材としてアクリル系フィルムを用いる場合には、メチルアクリレート、エチルアクリレートを用いることが特に好ましい。
活性エネルギー線重合開始剤(D)は、活性エネルギー線を照射することで開裂し、重合反応を開始させるラジカルを発生する化合物である。
装置コストや生産性の観点から、活性エネルギー線として紫外線を用いるのが一般的である。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特に、吸収波長の異なる2種以上を併用することが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、紫外線吸収剤および/または酸化防止剤(E)を含有することが好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系の紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、ベンゾエート系の紫外線吸収剤などが挙げられる。市販品としては、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「チヌビン400」や「チヌビン479」、共同薬品社製の「Viosorb110」などが挙げられる。
酸化防止剤としては、例えばフェノール系の酸化防止剤、リン系の酸化防止剤、イオウ系の酸化防止剤、ヒンダードアミン系の酸化防止剤などが挙げられる。市販品としては、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「IRGANOX」シリーズなどが挙げられる。
これら紫外線吸収剤および酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、離型剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、光安定剤、難燃剤、難燃助剤、重合禁止剤、充填剤、シランカップリング剤、着色剤、強化剤、無機フィラー、耐衝撃性改質剤等の公知の添加剤を含有してもよい。
樹脂組成物は、ナノ凹凸構造を形成させるスタンパへ流し込むことを考慮すると、25℃における回転式B型粘度計で測定される粘度が、10000mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは5000mPa・s以下であり、さらに好ましくは2000mPa・s以下である。但し、樹脂組成物の粘度が10000mPa・s以上であっても、スタンパへ流し込む際にあらかじめ加温して粘度を下げることが可能であれば、作業性を損なうことなく樹脂組成物を使用できる。
また、樹脂組成物は、70℃における回転式B型粘度計で測定される粘度が、5000mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは2000mPa・s以下である。
本発明の樹脂組成物は、ナノ凹凸構造の反転構造が形成されたスタンパを用いた転写法によりナノ凹凸構造を転写する際に用いる樹脂組成物として最適である。
本発明のナノ凹凸構造体は、本発明の樹脂組成物を重合および硬化してなるナノ凹凸構造を表面に有する。ナノ凹凸構造は、樹脂組成物の硬化物の片面または全面、ならびに全体または一部に形成される。
ここで、図1に本発明のナノ凹凸構造体の一例を示す。この例のナノ凹凸構造体10は、後述する基材11の上に本発明の樹脂組成物の硬化物12が形成されている。また、ナノ凹凸構造体10は、その表面にナノ凹凸構造が形成されている。
また、本発明において「隣り合う凸部の間隔」とは、図1に示すように、ナノ凹凸構造の凸部13の中心からこれに隣接する凸部の中心までの距離w1のことであり、「隣り合う凹部の間隔」とは、ナノ凹凸構造の凹部14の中心からこれに隣接する凹部の中心までの距離w2のことである。
ここで、「凸部の高さ(または凹部の深さ)」とは、図1に示すように、凸部13の先端13aから隣接する凹部14の底部14aまでの垂直距離d1のことである。
ナノ凹凸構造体の製造方法としては、例えばナノ凹凸構造の反転構造が形成されたスタンパと、基材との間に本発明の樹脂組成物を配し、活性エネルギー線の照射により樹脂組成物を硬化して、スタンパの凹凸形状を転写した後にスタンパを剥離する方法、樹脂組成物にスタンパの凹凸形状を転写してからスタンパを剥離し、その後に活性エネルギー線を照射して樹脂組成物を硬化する方法などが挙げられる。
これらの中でも、ナノ凹凸構造の転写性、表面組成の自由度を考慮すると、前者の方法が特に好ましく、連続生産が可能なベルト状やロール状のスタンパを用いれば、生産性が向上する。
基材としては、光を透過する成形体であれば特に限定されず、例えばメチルメタクリレート(共)重合体、ポリカーボネート、スチレン(共)重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体等の合成高分子、セルロースジアセテート、セルローストリアセテートやセルロースアセテートブチレート等の半合成高分子、ポリエチレンテレフタラート、ポリ乳酸等のポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリウレタン、これら高分子の複合物(ポリメチルメタクリレートとポリ乳酸の複合物、ポリメチルメタクリレートとポリ塩化ビニルの複合物など)、ガラスなどが挙げられる。
これら成形体は射出成形体でも、押し出し成形体でも、キャスト成形体でもよい。また、シート状でもフィルム状でもよい。さらに、密着性、帯電防止性、耐擦傷性、耐候性等の改良を目的として、表面にコーティングやコロナ処理が施されていてもよい。
スタンパにナノ凹凸構造を形成する方法としては特に限定されないが、電子ビームリソグラフィー法やレーザー光干渉法などが挙げられる。例えば適当な支持基板上に適当なフォトレジスト膜を塗布した後に、紫外線レーザー、電子線、X線等の光を用いて露光後、現像することによってナノ凹凸構造を有する型を形成できる。この型をそのままスタンパとして使用することもできるが、フォトレジスト層を介して支持基板をドライエッチングにより選択的にエッチングした後、レジスト層を除去することで支持基板そのものに直接ナノ凹凸構造を形成することも可能である。
スタンパそのものの形状としては特に限定されず、平板状、ベルト状、ロール状のいずれでもよいが、ベルト状やロール状にすることで連続的にナノ凹凸構造を転写できるため生産性をより高めることができる。
活性エネルギー線照射による重合・硬化方法としては、紫外線照射による重合・硬化が好ましく、紫外線を照射するランプとしては高圧水銀灯やメタルハライドランプ、フュージョンランプ等を使用することができる。
紫外線照射量は、樹脂組成物中の重合開始剤の吸収波長や含有量にもよるため一概には言えないが、400mJ/cm2以上であることが好ましい。樹脂組成物の硬化が不十分だと得られるナノ凹凸構造体の耐擦傷性が低下する場合がある。また照射量が多すぎると硬化物の着色や基材の劣化などを引き起こす場合がある。従って、400〜4000mJ/cm2の積算光量で硬化させることが好ましく、より好ましくは400〜2000mJ/cm2である。照射強度についても特に制限されるものではないが、基材の劣化等を招かない程度の出力に抑えることが好ましい。
本発明のナノ凹凸構造体は、本発明の樹脂組成物の硬化物で形成されるナノ凹凸構造を表面に有するので、高い耐擦傷性と良好な撥水性を兼ね備えると共に、連続的な屈折率の変化によって優れた反射防止性能を発現できる。従って、本発明のナノ凹凸構造体は、反射防止膜(反射防止フィルムを含む)、立体形状の反射防止体として好適である。
本発明の撥水性物品は、本発明のナノ凹凸構造体を備える。撥水性物品は、高い耐耐擦傷性と良好な撥水性を有すると共に、優れた反射防止性能を発現する。
ナノ凹凸構造体が反射防止膜である場合には、例えば、液晶表示装置、プラズマディスプレイパネル、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、陰極管表示装置のような画像表示装置、レンズ、ショーウィンドー、眼鏡レンズ等の対象物の表面に、ナノ凹凸構造体を貼り付けて使用する。
また、対象物が画像表示装置である場合には、その表面に限らず、その前面板に対してナノ凹凸構造体を貼り付けてもよいし、前面板そのものを本発明のナノ凹凸構造体から構成することもできる。
各種測定および評価方法は以下の通りである。
陽極酸化ポーラスアルミナからなるスタンパの一部について、その縦断面を1分間Pt蒸着し、電界放出形走査電子顕微鏡(日本電子社製、「JSM−7400F」)により加速電圧3.00kVで観察した。そして、隣り合う細孔の間隔(周期)および細孔の深さを測定した。それぞれ10点ずつ測定しその平均値を求め、測定値とした。
ナノ凹凸構造体の縦断面を10分間Pt蒸着し、上記(1)の場合と同様の装置および条件にて、隣り合う凸部または凹部の間隔、ならびに凸部の高さを測定した。それぞれ10点ずつ測定しその平均値を求め、測定値とした。
樹脂組成物の25℃における粘度を、回転式B型粘度計を用いて測定した。
ナノ凹凸構造体に1μLのイオン交換水を滴下し、自動接触角測定器(KRUSS社製)を用いて、θ/2法にて接触角を算出した。
磨耗試験機(新東科学社製、「HEIDON」)に1cm四方のキャンバス布を装着し、100gの荷重をかけて、往復距離50mm、ヘッドスピード60mm/sの条件にてナノ凹凸構造体の表面を1000回擦傷した。その後、外観について目視にて観察し、以下の評価基準により評価した。
◎:傷が確認できない。
○:1〜2本の傷が確認される。
△:3〜5本の傷が確認される。
×:6本以上の傷が確認される。
純度99.99%のアルミニウム板を、羽布研磨および過塩素酸/エタノール混合溶液(1/4体積比)中で電解研磨し鏡面化した。
(a)工程:
該アルミニウム板について、0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流40V、温度16℃の条件で30分間陽極酸化を行った。
(b)工程:
酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混合水溶液に6時間浸漬して、酸化皮膜を除去した。
(c)工程:
該アルミニウム板について、0.3Mシュウ酸水溶液中、直流40V、温度16℃の条件で30秒陽極酸化を行った。
(d)工程:
酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、32℃の5質量%リン酸に8分間浸漬して、細孔径拡大処理を行った。
(e)工程:
前記(c)工程および(d)工程を合計で5回繰り返し、周期100nm、深さ180nmの略円錐形状の細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナを得た。
実施例および比較例で用いた各モノマーの物性等を表1に示す。
なお、モノマーの表面自由エネルギーは以下のようにして算出した。すなわち、モノマーを平滑なフィルム状に硬化させ、硬化物上に1μLのイオン交換水を滴下し、自動接触角測定器(KRUSS社製)を用いて、θ/2法にて接触角を測定した。ついで、接触角の測定値をヤングの式に代入し、水の表面自由エネルギーを72.8mJ/m2として、モノマーの硬化物における表面自由エネルギーを求めた。
また、多官能モノマーである「TAS」のラジカル重合性官能基の数は、混合した化合物が理想的に反応したと仮定した場合の値である。
・ATM−4E:エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業社製、「NKエステルATM−4E」)、
・TAS:トリメチロールエタン/アクリル酸/無水コハク酸を2/4/1で縮合反応させた混合物、
・TMPT−3EO:エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業社製、「NKエステルA−TMPT−3EO」)、
・TMPT−6EO:エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(共栄社化学社製、「ライトアクリレートTMP−6EO−3A」)、
・U−4HA:4官能ウレタン系ハードアクリレート(新中村化学工業社製、「NKオリゴU−4HA」)、
・TMPT−9EO:エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業社製、「NKエステルA−TMPT−9EO」)、
・x−22−1602:シリコーンジアクリレート(信越化学工業社製、「x−22−1602」)、
・HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート、
・NVP:N−ビニルピロリドン、
・PHE:フェノキシエチルアクリレート、
・C6DA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、
・IBXA:イソボルニルアクリレート、
・ACMO:アクリロイルモルホリン。
(樹脂組成物の調製)
多官能モノマー(A)としてエトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業社製、「NKエステルATM−4E」)を90部、モノマー(B)としてシリコーンジアクリレート(信越化学工業社製、「x−22−1602」)を10部、活性エネルギー線重合開始剤(D)として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(日本チバガイギー社製、「DAROCURE1173」)を0.5部と、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(日本チバガイギー社製、「DAROCURE TPO」)を0.5部計量し、これらを混合して、樹脂組成物を調製した。
得られた樹脂組成物の粘度を測定した。結果を表2に示す。
スタンパの細孔が形成された表面上に得られた樹脂組成物を流し込み、その上に厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製、「A−4300」)を押し広げながら被覆した後、フィルム側から高圧水銀灯を用いて2000mJ/cm2のエネルギーで紫外線を照射して、樹脂組成物を硬化した。ついで、フィルムとスタンパを剥離して、ナノ凹凸構造体を得た。
得られたナノ凹凸構造体の表面には、スタンパのナノ凹凸構造が転写されており、図1に示すような、隣り合う凸部13の間隔(距離w1)または隣り合う凹部14の間隔(距離w2)が100nm、凸部13の高さd1が180nmである略円錐形状のナノ凹凸構造が形成されていた。
また、このナノ凹凸構造体について、撥水性および耐擦傷性の評価を実施した。結果を表2に示す。
表2〜5に示す配合組成に従って各成分を混合した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、ナノ凹凸構造体を製造した。得られた樹脂組成物の粘度を測定した。結果を表2〜5に示す。また、得られたナノ凹凸構造体について、撥水性および耐擦傷性の評価を実施した。結果を表2〜5に示す。
なお、表2〜5中の配合量の単位は「部」である。また、実施例1〜14、および比較例1〜12で得られたナノ凹凸構造体の表面には、スタンパのナノ凹凸構造が転写されており、図1に示すような、隣り合う凸部13の間隔(距離w1)または隣り合う凹部14の間隔(距離w2)が100nm、凸部13の高さd1が180nmである略円錐形状のナノ凹凸構造が形成されていた。一方、比較例13〜15で得られたナノ凹凸構造体は、隣接するナノ凹凸構造が部分的に合一していた。
・(A):多官能モノマー(A)
・(B):モノマー(B)
・(C):モノマー(C)
・(D):活性エネルギー線重合開始剤(D)
・DAR1173:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(日本チバガイギー社製、「DAROCURE1173」)、
・DAR TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド(日本チバガイギー社製、「DAROCURE TPO」)。
比較例1の樹脂組成物を硬化して得られたナノ凹凸構造体は、モノマー(C)を45部用いたため、樹脂組成物の硬化における相分離が誘起されにくく、その結果、モノマー(B)が硬化物の表面に十分に偏在されず、良好な撥水性が得られなかった。
比較例2〜7の樹脂組成物を硬化して得られたナノ凹凸構造体は、多官能モノマー(A)として用いたモノマーの表面自由エネルギーが36.0mJ/m2と低かったので、樹脂組成物の硬化における相分離が誘起されにくく、その結果、モノマー(B)が硬化物の表面に十分に偏在されず、良好な撥水性が得られなかった。また、耐擦傷性が低下した。特に、比較例6および7の樹脂組成物を硬化して得られたナノ凹凸構造体は、モノマー(B)の含有量が30部と多かったため、弾性率や硬度が低くなり、耐擦傷性が低下しやすかった。
比較例8の樹脂組成物を硬化して得られたナノ凹凸構造体は、多官能モノマー(A)の含有量が50部と少なく、かつモノマー(B)の含有量が50部と多かったため、弾性率や硬度が低くなり、耐擦傷性が低下した。
比較例9〜11の樹脂組成物を硬化して得られたナノ凹凸構造体は、多官能モノマー(A)の含有量が60部以上であったため、比較例8に比べると耐擦傷性は向上したが、モノマー(B)の含有量が30部以上と多かったため、各実施例に比べると耐擦傷性は低かった。
比較例12の樹脂組成物を硬化して得られたナノ凹凸構造体は、多官能モノマー(A)として用いたモノマーの表面自由エネルギーが36.0mJ/m2と低く、かつモノマー(B)を用いなかったので、良好な撥水性が得られなかった。また、耐擦傷性が低下した。
比較例13〜15の樹脂組成物を硬化して得られたナノ凹凸構造体は、多官能モノマー(A)の分子量をラジカル重合性官能基の数で除した値(分子量/ラジカル重合性官能基の数)が231と大きかったため、弾性率や硬度が低くなり、耐擦傷性が低下した。また隣接するナノ凹凸構造が部分的に合一しており、良好な撥水性も得られなかった。
11:基材、
12:活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物、
13:凸部、
14:凹部。
Claims (6)
- 硬化したときの表面自由エネルギーが37mJ/m2以上である多官能モノマー(A)を60〜97質量部、硬化したときの表面自由エネルギーが30mJ/m2以下であるモノマー(B)を3〜29質量部含む重合反応性モノマー成分と、該重合反応性モノマー成分100質量部に対して、0.01〜10質量部の活性エネルギー線重合開始剤(D)とを含有し、
前記多官能モノマー(A)は、分子内に3個以上のラジカル重合性官能基を有し、かつ当該多官能モノマー(A)の分子量をラジカル重合性官能基の数で除した値(分子量/ラジカル重合性官能基の数)が110〜200であり、
前記モノマー(B)は、分子内に1個以上のラジカル重合性官能基を有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。 - 前記重合反応性モノマー成分は、前記多官能モノマー(A)およびモノマー(B)と共重合可能なモノマー(C)を20質量部以下含むことを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
- 前記重合反応性モノマー成分100質量部に対して、0.01〜5質量部の紫外線吸収剤および/または酸化防止剤(E)をさらに含有することを特徴とする請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を重合および硬化してなるナノ凹凸構造を表面に有することを特徴とするナノ凹凸構造体。
- 請求項4に記載のナノ凹凸構造体を備えたことを特徴とする撥水性物品。
- ナノ凹凸構造の反転構造が形成されたスタンパと、基材との間に、請求項1〜3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を配し、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を重合および硬化させた後、前記スタンパを剥離し、前記基材の表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなるナノ凹凸構造を形成することを特徴とするナノ凹凸構造体の製造方法。
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