JP2008123996A - 非水電解質電池用セパレータおよび非水電解質電池 - Google Patents

非水電解質電池用セパレータおよび非水電解質電池 Download PDF

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Abstract

【課題】 異常発熱した際の安全性に優れた非水電解質電池を構成し得るセパレータと、該セパレータを有する非水電解質電池を提供する。
【解決手段】 熱可塑性樹脂を主成分とし、かつ150℃における熱収縮率が10%以上の樹脂多孔質膜と、前記樹脂多孔質膜表面に形成されてなり、耐熱性微粒子を70体積%以上含有する耐熱多孔質層とを有することを特徴とする非水電解質電池用セパレータ、および該セパレータを有する非水電解質電池により、前記課題を解決する。前記非水電解質電池用セパレータにおいては、樹脂多孔質膜の厚みA(μm)と耐熱多孔質層の厚みB(μm)との比A/Bが、1〜5であることが好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、高温時の寸法安定性に優れた非水電解質電池用セパレータと、該セパレータを有し、高温環境下に置かれても安全な非水電解質電池に関するものである。
リチウムイオン電池などの非水電解質電池は、エネルギー密度が高いという特徴から、携帯電話やノート型パーソナルコンピューターなどの携帯機器の電源として広く用いられている。携帯機器の高性能化に伴って素子の高容量化が更に進む傾向にあり、安全性の確保が重要となっている。
現行の非水電解質電池では、正極と負極の間に介在させるセパレータとして、例えば厚みが20〜30μm程度のポリオレフィン系の多孔質フィルムが使用されている。また、セパレータの素材としては、電池の熱暴走温度以下でセパレータの構成樹脂を溶融させて空孔を閉塞させ、これにより電池の内部抵抗を上昇させて短絡の際などに電池の安全性を向上させる所謂シャットダウン効果を確保するため、融点の低いポリエチレン(PE)が適用されることがある。
ところで、こうしたセパレータとしては、例えば、多孔質化と強度向上のために一軸延伸または二軸延伸したフィルムが用いられている。このようなセパレータは単独で存在する膜として供給されるため、作業性などの点で一定の強度が要求され、これを前記延伸によって確保している。そのため、前記のセパレータには延伸によるひずみが生じており、これが高温に曝されると、残留応力によって収縮が起こるという問題がある。収縮温度は、融点、すなわちシャットダウン温度と非常に近いところに存在する。このため、ポリオレフィン系の多孔質フィルムセパレータを使用するときには、充電異常時などに電池の温度がシャットダウン温度に達すると、電流を直ちに減少させて電池の温度上昇を防止しなければならない。空孔が十分に閉塞せず電流を直ちに減少できなかった場合には、電池の温度は容易にセパレータの収縮温度にまで上昇するため、内部短絡による発火の危険性があるからである。
前記のようなセパレータの熱収縮に伴う電池の安全性や、各種原因による内部短絡に対する信頼性を高めるべく、本発明者らは、シャットダウン機能を確保するための樹脂を主体として含む第1セパレータ層と、耐熱温度が150℃以上のフィラーを主体として含む第2セパレータ層とを有する多孔質の電気化学素子用セパレータを開発し、既に特許出願を済ませている(特許文献1)。
特許文献1に開示のセパレータにおいては、前記第2セパレータ層がセパレータ本来の機能、主に正極と負極との直接の接触による短絡を防止する機能を確保するための層であり、第2セパレータ層の有する耐熱温度が150℃以上のフィラーによって、前記の機能を確保することに加えて、セパレータの熱収縮も防止している。そして、第2セパレータ層では保持し得ないシャットダウン機能を、前記の第1セパレータ層を併設することで確保している。
国際公開第2007/066768号公報
特許文献1に開示の電気化学素子用セパレータを用いて構成した非水電解質電池であれば、セパレータの熱収縮による問題を良好に解消でき、しかも優れたシャットダウン機能も確保できる。
しかし、その一方で、従来から使用されているポリオレフィンなどの耐熱性の比較的低い熱可塑性樹脂で構成された多孔質フィルム製のセパレータを使用しつつ、前記の熱収縮による問題を解消する技術の開発に対する要望もある。
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、異常発熱した際の安全性に優れた非水電解質電池を構成し得るセパレータと、該セパレータを有する非水電解質電池を提供することにある。
前記目的を達成し得た本発明の非水電解質電池用セパレータは、熱可塑性樹脂を主成分とし、かつ150℃における熱収縮率が10%以上の樹脂多孔質膜と、前記樹脂多孔質膜表面に形成されてなり、耐熱性微粒子を70体積%以上含有する耐熱多孔質層とを有することを特徴とするものである。
また、本発明の非水電解質電池は、本発明の非水電解質電池用セパレータを有するものである。
本発明によれば、異常発熱した際の安全性に優れた非水電解質電池を構成し得るセパレータと、該セパレータを有する非水電解質電池を提供することができる。すなわち、本発明の非水電解質電池は、異常発熱した際の安全性が優れている。
本発明の非水電解質電池用セパレータ(以下、単に「セパレータ」という場合がある)は、熱可塑性樹脂を主成分とし、かつ150℃における熱収縮率が10%以上の樹脂多孔質膜(以下、単に「樹脂多孔質膜」という場合がある)と、耐熱性微粒子を70体積%以上含有する耐熱多孔質層(以下、単に「耐熱多孔質層」という場合がある)とを有することを特徴としている。
本発明のセパレータのうち、樹脂多孔質膜は、セパレータ本来の機能、すなわち、主に正極と負極との直接の接触による短絡を防止する機能を有するものであり、また、シャットダウン機能を確保するための構成要素でもある。すなわち、電池の温度が樹脂多孔質膜を構成する熱可塑性樹脂の融点以上に達したときには、かかる熱可塑性樹脂が溶融してセパレータの空孔を塞ぎ、電気化学反応の進行を抑制するシャットダウンを生じる。
しかしながら、樹脂多孔質膜は、150℃における熱収縮率が10%以上であり、従来公知のポリオレフィン製多孔質フィルムセパレータと同様に、高温下では熱収縮し得る。
そこで、本発明のセパレータでは、耐熱性微粒子を70体積%以上含有する耐熱多孔質層を、樹脂多孔質膜の表面に形成して、セパレータ全体の熱収縮を抑制している。耐熱多孔質層では、耐熱性微粒子の量が多くこれらが密に存在しているため、喩え高温下において樹脂多孔質膜が収縮しようとしても、耐熱多孔質層中の耐熱性微粒子同士が衝突することでセパレータ全体の収縮を抑制すると考えられる。
このように、本発明では、熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂多孔質膜と耐熱多孔質層とでセパレータを構成し、樹脂多孔質膜により良好なシャットダウン機能を確保しつつ、耐熱多孔質層を、セパレータの形状を保持する骨格として機能させることで、熱収縮の抑制も達成している。
本発明のセパレータを構成する樹脂多孔質膜は、電気絶縁性を有しており、電気化学的に安定で、更に後で詳述する電解液や、セパレータ製造の際に使用する溶媒(これも後述する)に安定であれば、その材質である熱可塑性樹脂について特に制限は無いが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレートや共重合ポリエステルなどのポリエステル;などで構成された多孔質膜であることが好ましい。なお、本発明のセパレータは、100〜140℃において、その孔が閉塞する性質(すなわちシャットダウン機能)を有していることが好ましい。そのため、樹脂多孔質膜は、融点、すなわち、JIS K 7121の規定に準じて、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される融解温度が、100〜140℃の熱可塑性樹脂を素材とするものがより好ましく、ポリエチレンを主成分とする単層の多孔質膜であるか、ポリエチレンとポリプロピレンとを2〜5層積層した積層多孔質膜などの、ポリエチレンを主成分とする多孔質膜を構成要素とする積層多孔質膜であることが更に好ましい。
樹脂多孔質膜としては、例えば、従来公知の非水電解質電池などで使用されている前記例示の熱可塑性樹脂で構成された多孔質膜、すなわち、溶剤抽出法、乾式または湿式延伸法などにより作製されたイオン透過性の多孔質膜を用いることができる。
なお、樹脂多孔質膜において、「熱可塑性樹脂を主成分とする」や「ポリエチレンを主成分とする」とは、樹脂多孔質膜を構成する成分のうち、主成分である成分(熱可塑性樹脂またはポリエチレン)が80質量%以上であることを意味している。
前記のような樹脂多孔質膜を使用することで、電池の内部温度が上昇した際に樹脂多孔質膜の孔が閉塞する所謂シャットダウン機能を付与することが容易となり、電池の内部温度上昇時における安全性確保を容易に達成することが可能となる。シャットダウン機能が有効に働く状態の目安としては、加熱によりシャットダウンを生じた後の樹脂多孔質膜について、JIS P 8117に準拠した方法で行われ、0.879g/mmの圧力下で100mlの空気が膜を透過する秒数で示されるガーレー値が表される透気度が、加熱前(シャットダウンを生じる前)の透気度の、5倍以上であることが好ましく、10倍以上であることがより好ましく、100倍以上であることが更に好ましい。
また、樹脂多孔質膜の150℃における熱収縮率の上限値は、80%であることが好ましい。
なお、本明細書でいう樹脂多孔質膜およびセパレータの熱収縮率は、所定の大きさに切り出した試料(樹脂多孔質膜またはセパレータ)を、所定温度(測定温度)に調節した恒温槽中で3時間保持した後、試料を取り出して室温に放冷してから、恒温槽での保持前の試料の大きさと保持後の試料の大きさとを比較することで測定した値である。なお、試料に方向性のある場合には、それぞれの方向(長手方向、幅方向)について、加熱前と加熱後との長さを測定して熱収縮率を計算し、値の大きな方を樹脂多孔質膜およびセパレータの熱収縮率とする。
本発明のセパレータを構成する耐熱多孔質層は、耐熱性微粒子を含有することで、その耐熱性を確保している。なお、本明細書でいう「耐熱性」とは、少なくとも150℃において変形などの形状変化が目視で確認されないことを意味している。耐熱性微粒子の有する耐熱性は、200℃以上であることが好ましい。
耐熱性微粒子としては、電気絶縁性を有する無機微粒子であることが好ましく、具体的には、酸化鉄、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、TiO、BaTiOなどの無機酸化物微粒子;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの無機窒化物微粒子;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶微粒子;シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶微粒子;モンモリロナイトなどの粘土微粒子;などが挙げられる。ここで、前記無機酸化物微粒子は、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、マイカなどの鉱物資源由来物質またはこれらの人造物などの微粒子であってもよい。また、金属、SnO、スズ−インジウム酸化物(ITO)などの導電性酸化物、カーボンブラック、グラファイトなどの炭素質材料などで例示される導電性材料の表面を、電気絶縁性を有する材料(例えば、前記の無機酸化物など)で被覆することにより電気絶縁性を持たせた粒子であってもよい。
また、耐熱性微粒子には、有機微粒子を用いることもできる。有機微粒子の具体例としては、ポリイミド、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、架橋ポリメチルメタクリレート(架橋PMMA)、架橋ポリスチレン(架橋PS)、ポリジビニルベンゼン(PDVB)、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド縮合物などの架橋高分子の微粒子;熱可塑性ポリイミドなどの耐熱性高分子の微粒子;が挙げられる。これらの有機微粒子を構成する有機樹脂(高分子)は、前記例示の材料の混合物、変性体、誘導体、共重合体(ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体)、架橋体(前記の耐熱性高分子の場合)であってもよい。
耐熱性微粒子は、前記例示のものを1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記例示の耐熱性微粒子の中でも、無機酸化物微粒子がより好ましく、アルミナ、シリカ、ベーマイトが更に好ましい。
耐熱性微粒子の粒径は、平均粒径で、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.1μm以上であって、好ましくは15μm以下、より好ましくは1μm以下である。なお、耐熱性微粒子の平均粒径は、例えば、レーザー散乱粒度分布計(例えば、HORIBA社製「LA−920」)を用い、耐熱性微粒子を溶解しない媒体に分散させて測定した数平均粒子径として規定することができる。
また、耐熱性微粒子の形態としては、例えば、球状に近い形状を有していてもよく、板状の形状を有していてもよいが、短絡防止の点からは、板状の粒子や、一次粒子が凝集した二次粒子構造の粒子であることが好ましい。耐熱性微粒子が、板状であったり、一次粒子が凝集した二次粒子構造を有する場合には、前記の耐熱多孔質層によるセパレータの骨格としての作用(セパレータの熱収縮を抑える作用)がより良好となる。板状の粒子は、セパレータの熱収縮を抑える作用が特に良好であることから好適である。前記の板状粒子や二次粒子の代表的なものとしては、板状のアルミナや板状のベーマイト、二次粒子状のアルミナや二次粒子状のベーマイトなどが挙げられる。
板状粒子の形態としては、アスペクト比が、5以上、より好ましくは10以上であって、100以下、より好ましくは50以下であることが望ましい。板状粒子におけるアスペクト比は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した画像を画像解析することにより求めることができる。
耐熱多孔質層における耐熱性微粒子の量は、耐熱多孔質層の構成成分の全体積中、70体積%以上であり、80体積%以上であることが好ましく、90体積%以上であることがより好ましい。耐熱多孔質層中の耐熱性微粒子を前記のように高含有量とすることで、セパレータ全体の熱収縮を良好に抑制することができる。また、耐熱多孔質層には、耐熱性微粒子同士を結着したり耐熱多孔質層と樹脂多孔質膜とを結着したりするために有機バインダを含有させることが好ましく、このような観点から、耐熱多孔質層における耐熱性微粒子量の好適上限値は、例えば、耐熱多孔質層の構成成分の全体積中、99体積%である。なお、耐熱多孔質層における耐熱性微粒子の量を70体積%未満とすると、例えば、耐熱多孔質層中の有機バインダ量を多くする必要が生じるが、その場合には耐熱多孔質層の空孔が有機バインダによって埋められてしまい、セパレータとしての機能を喪失する虞があり、また、開孔剤などを用いて多孔質化した場合には、耐熱性微粒子同士の間隔が大きくなりすぎて、熱収縮を抑制する効果が低下する虞がある。
耐熱多孔質層に用いる有機バインダとしては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA、酢酸ビニル由来の構造単位が20〜35モル%のもの)、エチレン−エチルアクリレート共重合体などのエチレン−アクリル酸共重合体、フッ素樹脂[ポリフッ化ビニリデン(PVDF)など]、フッ素系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリN−ビニルアセトアミド、架橋アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの有機バインダは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用しても構わない。
前記例示の有機バインダの中でも、150℃以上の耐熱性を有する耐熱樹脂が好ましく、特に、エチレン−アクリル酸共重合体、フッ素系ゴム、SBRなどの柔軟性の高い材料がより好ましい。これらの具体例としては、三井デュポンポリケミカル社製の「エバフレックスシリーズ(EVA、商品名)」、日本ユニカー社製のEVA、三井デュポンポリケミカル社製の「エバフレックス−EEAシリーズ(エチレン−アクリル酸共重合体、商品名)」、日本ユニカー社製のEEA、ダイキン工業社製の「ダイエルラテックスシリーズ(フッ素ゴム、商品名)」、JSR社製の「TRD−2001(SBR、商品名)」、日本ゼオン社製の「EM−400B(SBR、商品名)」などが挙げられる。また、アクリル酸ブチルを主成分とし、これを架橋した構造を有する低ガラス転移温度の架橋アクリル樹脂(自己架橋型アクリル樹脂)も好ましい。
なお、これら有機バインダを使用する場合には、後記する耐熱多孔質層形成用の組成物(スラリーなど)の溶媒に溶解させるか、または分散させたエマルジョンの形態で用いればよい。
本発明のセパレータの厚みは、正極と負極とをより確実に隔離する観点から、6μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。他方、セパレータの厚みが大きすぎると、電池としたときのエネルギー密度が低下してしまうことがあるため、その厚みは、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。
また、セパレータを構成する樹脂多孔質膜の厚みをA(μm)、耐熱多孔質層の厚みをB(μm)としたとき、AとBとの比率A/Bは、5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、また、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。本発明のセパレータでは、前記のように、樹脂多孔質膜の厚み比率を大きくし耐熱多孔質層を薄くしても、セパレータ全体の熱収縮を抑制することが可能であり、良好なシャットダウン機能を確保しつつ、セパレータの熱収縮による短絡の発生を高度に抑制することができる。なお、セパレータにおいて、樹脂多孔質膜が複数存在する場合には、厚みAはその総厚みであり、耐熱多孔質層が複数存在する場合には、厚みBはその総厚みである。
なお、具体的な値で表現すると、樹脂多孔質膜の厚み(樹脂多孔質膜が複数存在する場合には、その総厚み)は、5μm以上であることが好ましく、また、30μm以下であることが好ましい。そして、耐熱多孔質膜の厚み(耐熱多孔質層が複数存在する場合には、その総厚み)は、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、4μm以上であることが更に好ましく、また、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、6μm以下であることがより好ましい。樹脂多孔質膜が薄すぎると、シャットダウン機能が弱くなる虞があり、厚すぎると、電池のエネルギー密度の低下を引き起こす虞があることに加えて、熱収縮しようとする力が大きくなり、セパレータ全体の熱収縮を抑える効果が小さくなる虞がある。また、耐熱多孔質層が薄すぎると、セパレータ全体の熱収縮を抑制する効果が小さくなる虞があり、厚すぎると、セパレータ全体の厚みの増大を引き起こしてしまう。
セパレータ全体の空孔率としては、電解液の保液量を確保してイオン透過性を良好にするために、乾燥した状態で、30%以上であることが好ましい。一方、セパレータ強度の確保と内部短絡の防止の観点から、セパレータの空孔率は、乾燥した状態で、70%以下であることが好ましい。なお、セパレータの空孔率:P(%)は、セパレータの厚み、面積あたりの質量、構成成分の密度から、下記(1)式を用いて各成分iについての総和を求めることにより計算できる。
P = 100−(Σa/ρ)×(m/t) (1)
ここで、前記式中、a:質量%で表した成分iの比率、ρ:成分iの密度(g/cm)、m:セパレータの単位面積あたりの質量(g/cm)、t:セパレータの厚み(cm)である。
また、前記(1)式において、mを樹脂多孔質膜の単位面積あたりの質量(g/cm)とし、tを樹脂多孔質膜の厚み(cm)とすることで、前記(1)式を用いて樹脂多孔質膜の空孔率:P(%)を求めることもできる。この方法により求められる樹脂多孔質膜の空孔率は、30〜70%であることが好ましい。
更に、前記(1)式において、mを耐熱多孔質層の単位面積あたりの質量(g/cm)とし、tを耐熱多孔質層の厚み(cm)とすることで、前記(1)式を用いて耐熱多孔質層の空孔率:P(%)を求めることもできる。この方法により求められる耐熱多孔質層の空孔率は、20〜60%であることが好ましい。
また、本発明のセパレータは、JIS P 8117に準拠した方法で行われ、0.879g/mmの圧力下で100mlの空気が膜を透過する秒数で示されるガーレー値が、10〜300secであることが望ましい。透気度が大きすぎると、イオン透過性が小さくなり、他方、小さすぎると、セパレータの強度が小さくなることがある。さらに、セパレータの強度としては、直径1mmのニードルを用いた突き刺し強度で50g以上であることが望ましい。かかる突き刺し強度が小さすぎると、リチウムのデンドライト結晶が発生した場合に、セパレータの突き破れによる短絡が発生する場合がある。前記の構成を採用することにより、前記の透気度や突き刺し強度を有するセパレータとすることができる。
セパレータの平均孔径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上であって、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。また、樹脂多孔質膜の平均孔径は、0.01μm〜0.5μmであることが好ましく、耐熱多孔質膜の平均孔径は、0.05〜1μmであることが好ましい。
非水電解質電池においては、シート状の正極とシート状の負極とをセパレータを介して積層し、渦巻状に巻回した巻回体電極群を使用する場合があるが、このような電池においては、巻回に伴ってセパレータが屈曲するため、耐熱多孔質層に割れが発生する虞がある。かかる場合には、前記の各平均孔径(特に樹脂多孔質膜における平均孔径)が前記好適値であれば、耐熱多孔質層に割れが生じた部分において、リチウムデンドライトの貫通を防止することができ、より信頼性の高い電池を構成できるようになる。なお、巻回体電極群を使用せず、正極と負極とをセパレータを介して積層することにより構成される所謂積層型の電極群を使用する電池においては、セパレータ、樹脂多孔質膜および耐熱多孔質層の各平均孔径には特に制限は無いが、この場合においても前記の各平均孔径を満足することが好ましい。
本明細書でいうセパレータ、樹脂多孔質膜および耐熱多孔質層の平均孔径は、JIS K 3832の規定に準拠した方法により求められる値を指す。
また、セパレータの曲路率は、リチウムデンドライトの貫通による内部短絡の発生をより良好に防止して、電池の信頼性をより高める観点からは、3以上であることが好ましい。他方、セパレータの曲路率が大きすぎると、リチウムイオンの移動が妨げられて電池の負荷特性が低下する虞があることから、その曲路率は10以下であることが好ましい。
本明細書でいうセパレータの曲路率は、以下の方法で求められる値である。セパレータを2枚のステンレス鋼板で挟みこんでモデルセルを作製し、導電率が既知である電解液中での抵抗値を交流インピーダンス法により求める。セパレータの枚数を1枚、2枚、3枚と変化させて抵抗値の変化を求め、下記(2)式により曲路率bを計算する。
b=(P/100)・a・σ・R/1 (2)
ここで、P:セパレータの空孔率(%)、a:セパレータの面積(cm)、σ:電解液の導電率(S/cm)、R:セパレータ1枚あたりの抵抗(Ω)、l:セパレータの厚み(μm)である。
例えば、セパレータの耐熱多孔質層において、耐熱性微粒子として、前記の板状粒子や一次粒子が凝集した二次粒子構造のものを使用することで、セパレータの曲路率を容易に前記好適値に調節することができる。
本発明のセパレータは、前記の各構成を採用することで、例えば、長手方向に直交する方向(TD方向)での熱収縮率を、好ましくは150℃で5%以下、より好ましくは150℃で3%以下、更に好ましくは165℃で5%以下とすることができることから、電池の異常発熱時においても、セパレータの熱収縮によって正極と負極とが直接接触することによる短絡が抑制でき、樹脂多孔質膜により確保されるシャットダウン機能と相俟って、高温での安全性および信頼性に優れた電池を構成することができる。
本発明のセパレータを作製する方法としては、例えば、耐熱性微粒子を有機溶剤または水に分散させた耐熱多孔質層形成用の組成物(スラリーなど)を調製し、これを樹脂多孔質膜上に塗布した後、有機溶剤または水を乾燥などにより除去することで耐熱多孔質層を形成する方法が挙げられる。なお、耐熱多孔質層に有機バインダを含有させる場合には、有機バインダを有機溶剤などに均一に溶解した溶液または有機バインダのエマルジョンを、耐熱性微粒子と予め混合し、その後この混合物を有機溶剤または水と混合して調製した耐熱多孔質層形成用の組成物を用いればよい。
前記の方法によりセパレータを作製した場合には、耐熱多孔質層形成用の組成物を樹脂多孔質膜に塗布し、有機溶剤または水を乾燥などにより除去することで、耐熱多孔質層が多孔質となるため、特別に孔を開けるプロセスが不要であり、簡便に耐熱多孔質層を形成することができる。
耐熱多孔質層形成用の組成物の調製に使用する有機溶剤としては、樹脂多孔質膜を溶解したり膨潤させたりするなどして樹脂多孔質膜にダメージを与えないものであり、また、有機バインダを使用する場合にあっては有機バインダを均一に溶解可能であるものであれば特に制限は無いが、テトラヒドロフラン(THF)などのフラン類;メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)などのケトン類;などが好適である。なお、高沸点の有機溶剤は、耐熱多孔質層形成用の組成物を樹脂多孔質膜に塗布した後に、乾燥などによって有機溶剤を除去する際に、樹脂多孔質膜に熱溶融などのダメージを与える虞があるので好ましくない。また、界面張力を制御するため、これらの有機溶剤に多価アルコールなどを適宜加えてもよい。
ただし、本発明のセパレータは、前記の作製方法で作製されたものに限定される訳ではなく、他の方法で作製しても構わない。
なお、本発明のセパレータにおいて、耐熱多孔質層と樹脂多孔質膜とは、それぞれ1層ずつである必要はなく、複数の層がセパレータ中にあってもよい。例えば、樹脂多孔質膜の両面に耐熱多孔質層を形成した構成としてもよい。ただし、層数を増やすことでセパレータの厚みを増やして、内部抵抗の増加やエネルギー密度の低下を招く虞があるので、層数を多くしすぎるのは好ましくなく、セパレータを構成する層(耐熱多孔質層および樹脂多孔質膜)の総数は5層以下であることが好ましく、より好ましくは2層の構成である。
本発明の非水電解質電池は、前記本発明のセパレータを有していればよく、その他の構成・構造については特に制限は無く、従来公知の非水電解質一次電池および非水電解質二次電池で採用されている各種構成・構造を適用することができる。以下に、一例として、非水電解質二次電池について詳述する。
非水電解質二次電池の形態としては、スチール缶やアルミニウム缶などを外装缶として使用した筒形(角筒形や円筒形など)などが挙げられる。また、金属を蒸着したラミネートフィルムを外装体としたソフトパッケージ電池とすることもできる。
正極としては、従来公知の非水電解質二次電池に用いられている正極、すなわち、Liイオンを吸蔵放出可能な活物質を含有する正極であれば特に制限はない。例えば、活物質として、Li1+xMO(−0.1<x<0.1、M:Co、Ni、Mn、Al、Mgなど)で表される層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物、LiMnやその元素の一部を他元素で置換したスピネル構造のリチウムマンガン酸化物、LiMPO(M:Co、Ni、Mn、Feなど)で表されるオリビン型化合物などを用いることが可能である。前記層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物の具体例としては、LiCoOやLiNi1−xCox−yAl(0.1≦x≦0.3、0.01≦y≦0.2)などのほか、少なくともCo、NiおよびMnを含む酸化物(LiMn1/3Ni1/3Co1/3、LiMn5/12Ni5/12Co1/6、LiMn3/5Ni1/5Co1/5など)などを例示することができる。
導電助剤としては、カーボンブラックなどの炭素材料が用いられ、バインダとしては、PVDFなどのフッ素樹脂が用いられ、これらの材料と活物質とが混合された正極合剤により正極活物質含有層が、例えば集電体上に形成される。
また、正極の集電体としては、アルミニウムなどの金属の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、厚みが10〜30μmのアルミニウム箔が好適に用いられる。
正極側のリード部は、通常、正極作製時に、集電体の一部に正極活物質含有層を形成せずに集電体の露出部を残し、そこをリード部とすることによって設けられる。ただし、リード部は必ずしも当初から集電体と一体化されたものであることは要求されず、集電体にアルミニウム製の箔などを後から接続することによって設けてもよい。
負極としては、従来公知の非水電解質二次電池に用いられている負極、すなわち、Liイオンを吸蔵放出可能な活物質を含有する負極であれば特に制限はない。例えば、活物質として、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維などの、リチウムを吸蔵、放出可能な炭素系材料の1種または2種以上の混合物が用いられる。また、Si,Sn、Ge,Bi,Sb、Inなどの元素およびその合金、リチウム含有窒化物、または酸化物などのリチウム金属に近い低電圧で充放電できる化合物、もしくはリチウム金属やリチウム/アルミニウム合金も負極活物質として用いることができる。これらの負極活物質に導電助剤(カーボンブラックなどの炭素材料など)やPVDFなどのバインダなどを適宜添加した負極合剤を、集電体を芯材として成形体(負極活物質含有層)に仕上げたもの、または、前記の各種合金やリチウム金属の箔を単独、もしくは集電体上に積層したものなどが用いられる。
負極に集電体を用いる場合には、集電体としては、銅製やニッケル製の箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタルなどを用い得るが、通常、銅箔が用いられる。この負極集電体は、高エネルギー密度の電池を得るために負極全体の厚みを薄くする場合、厚みの上限は30μmであることが好ましく、下限は5μmであることが望ましい。また、負極側のリード部は、正極側のリード部と同様にして形成すればよい。
電極は、前記の正極と前記の負極とを、本発明のセパレータを介して積層した積層型の電極群や、更にこれを巻回した巻回体電極群の形態で用いることができる。
なお、本発明のセパレータが、最外層の一方が耐熱多孔質層であり他方が樹脂多孔質膜である構成の場合、電極群を構成するに当たっては、耐熱多孔質層が正極側となり、樹脂多孔質膜が負極側となるように配置することが好ましい。詳細な理由は不明であるが、樹脂多孔質膜を負極側に配置した場合には、正極側に配置した場合よりも、シャットダウンを生じた場合に、樹脂多孔質膜から溶融した樹脂のうち、活物質含有層に吸収される割合が少なくなり、溶融した樹脂がセパレータの孔を閉塞するのに、より有効に利用されるからである。また、耐熱多孔質層が無機酸化物などの耐酸化性に優れた材料で構成されている場合には、セパレータの酸化による劣化を防止する観点からも、耐熱多孔質層が正極側となり、樹脂多孔質膜が負極側となるように配置することが好ましい。
非水電解液としては、リチウム塩を有機溶媒に溶解した溶液が用いられる。リチウム塩としては、溶媒中で解離してLiイオンを形成し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こしにくいものであれば特に制限は無い。例えば、LiClO、LiPF、LiBF 、LiAsF 、LiSbF などの無機リチウム塩、LiCFSO、LiCFCO、Li(SO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiC2n+1SO(n≧2)、LiN(RfOSO〔ここでRfはフルオロアルキル基〕などの有機リチウム塩などを用いることができる。
電解液に用いる有機溶媒としては、前記のリチウム塩を溶解し、電池として使用される電圧範囲で分解などの副反応を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート;プロピオン酸メチルなどの鎖状エステル;γ−ブチロラクトンなどの環状エステル;ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、1,3−ジオキソラン、ジグライム、トリグライム、テトラグライムなどの鎖状エーテル;ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリルなどのニトリル類;エチレングリコールサルファイトなどの亜硫酸エステル類などが挙げられ、これらは2種以上混合して用いることもできる。なお、より良好な特性の電池とするためには、エチレンカーボネートと鎖状カーボネートの混合溶媒など、高い導電率を得ることができる組み合わせで用いることが望ましい。また、これらの電解液に安全性や充放電サイクル性、高温貯蔵性といった特性を向上させる目的で、ビニレンカーボネート類、1,3−プロパンサルトン、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキサン、ビフェニル、フルオロベンゼン、t−ブチルベンゼンなどの添加剤を適宜加えることもできる。
このリチウム塩の電解液中の濃度としては、0.5〜1.5mol/lとすることが好ましく、0.9〜1.25mol/lとすることがより好ましい。
本発明の非水電解質電池は、従来公知の非水電解質電池と同様の用途に用いることができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではない。
実施例1
有機バインダであるPVDFのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液(固形分比率15質量%):600gと、NMP:1000gとを容器に入れ、均一に溶解するまで室温で攪拌した。この溶液に耐熱性微粒子であるアルミナ粉末(平均粒径0.4μm):3000gを4回に分けて加え、ディスパーにより2800rpmで1時間攪拌して均一なスラリーを調製した。ポリエチレン製多孔質膜(厚み12μm、空孔率40%、平均孔径0.4μm、150℃での熱収縮率68%)上に、前記のスラリーをナイフコーターによって塗布し、乾燥して耐熱多孔質層を形成することで、厚みが20μmのセパレータを得た。このセパレータの耐熱多孔質層における耐熱性微粒子の体積比率は88体積%、耐熱多孔質層の空孔率は51%であった。
実施例2
有機バインダであるSBRのエマルジョン(固形分比率40質量%):100gと、水:4000gとを容器に入れ、均一に分散するまで室温で攪拌した。この分散液に耐熱性微粒子であるベーマイト粉末(板状、平均粒径1μm、アスペクト比10):4000gを4回に分けて加え、ディスパーにより2800rpmで5時間攪拌して均一なスラリーを調製した。ポリエチレン製多孔質膜(厚み16μm、空孔率40%、平均孔径0.4μm)上に、前記のスラリーをマイクログラビアコーターによって塗布し、乾燥して耐熱多孔質層を形成することで、厚みが20μmのセパレータを得た。このセパレータの耐熱多孔質層における耐熱性微粒子の体積比率は91体積%、耐熱多孔質層の空孔率は48%であった。
実施例3
有機バインダである自己架橋型アクリル樹脂のエマルジョン(固形分比率40質量%):200gと、水:4000gとを容器に入れ、均一に分散するまで室温で攪拌した。この分散液に耐熱性微粒子であるベーマイト粉末(二次粒子状、二次粒子の平均粒径0.6μm、):4000gを4回に分けて加え、ディスパーにより2800rpmで5時間攪拌して均一なスラリーを調製した。ポリエチレン製多孔質膜(厚み16μm、空孔率40%、平均孔径0.4μm)上に、前記のスラリーをマイクログラビアコーターによって塗布し、乾燥して耐熱多孔質層を形成することで、厚みが20μmのセパレータを得た。このセパレータの耐熱多孔質層における耐熱性微粒子の体積比率は82体積%、耐熱多孔質層の空孔率は46%であった。
実施例4
耐熱性微粒子を、ベーマイト粉末に代えて架橋アクリル樹脂微粒子(平均粒径0.4μm):4000gとした以外は、実施例3と同様にしてセパレータを作製した。このセパレータの耐熱多孔質層における耐熱性微粒子の体積比率は94体積%、耐熱多孔質層の空孔率は49%であった。
比較例1
実施例2〜4のセパレータに用いたポリエチレン製多孔質膜のみを比較例1として用いた。
実施例1〜4および比較例1のセパレータについて、加熱特性測定を行った。実施例1〜4および比較例1のセパレータを150℃の恒温槽に3時間放置し、セパレータの熱収縮率およびガーレー値を測定した。熱収縮率およびガーレー値の測定は、それぞれ前記の方法により行った。また、セパレータのガーレー値については、恒温槽に入れる前(加熱前のガーレー値)も測定した。これらの結果を、セパレータにおける樹脂多孔質膜の厚みA(μm)と耐熱多孔質層の厚みB(μm)との比A/Bの値と併せて、表1に示す。
Figure 2008123996
実施例5
<正極の作製>
正極活物質であるLiCoO:90質量部、導電助剤であるアセチレンブラック:7質量部、およびバインダであるPVDF:3質量部を、NMPを溶剤として均一になるように混合し、正極合剤含有ペーストを調製した。このペーストを集電体となる厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に、活物質塗布長が表280mm、裏面210mmになるように間欠塗布し、乾燥した後、カレンダー処理を行って、全厚が150μmになるように正極活物質含有層の厚みを調整し、幅43mmになるように切断して正極を作製した。その後、正極におけるアルミニウム箔の露出部にタブ付けを行った。
<負極の作製>
負極活物質である黒鉛:95質量部とPVDF:5質量部とを、NMPを溶剤として均一になるように混合して負極合剤含有ペーストを調製した。このペーストを銅箔からなる厚さ10μmの集電体の両面に、活物質塗布長が表290mm、裏面230mmになるように間欠塗布し、乾燥した後、カレンダー処理を行って、全厚が142μmになるように負極活物質含有層の厚みを調整し、幅45mmになるように切断して負極を作製した。その後、負極における銅箔の露出部にタブ付けを行った。
<電池の組み立て>
前記のようにして得た正極と負極とを、実施例1のセパレータを樹脂多孔質膜が負極側に向くように介在させつつ重ね、渦巻状に巻回して巻回体電極群を作製した。得られた巻回体電極群を押しつぶして扁平状にし、厚み4mm、高さ50mm、幅34mmのアルミニウム製外装缶に入れ、電解液(エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを体積比で1対2に混合した溶媒にLiPFを濃度1.2mol/lで溶解したもの)を注入した後に封止を行って、非水電解質電池を作製した。
実施例6〜8および比較例2
セパレータを実施例2〜4または比較例1のものに変更した以外は、実施例5と同様にして非水電解質電池を作製した。
実施例5〜8および比較例2の非水電解質電池について、下記のオーブンテストを行った。実施例5〜8および比較例2の電池について、0.2Cの電流で4.25Vまで定電流充電し、その後4.25Vでの定電圧充電を行った。なお、総充電時間は、8時間とした。次に、150℃に加熱した恒温槽中に各電池を3時間放置し、電池表面の温度を観察した。結果を表2に示す。
また、前記のオーブンテストを行ったものとは別の実施例5〜8および比較例2の非水電解質電池について、前記のオーブンテストと同じ条件で充電を行った後に、恒温槽中で30℃から150℃まで1℃/分の速度で昇温し、電池の内部抵抗変化からシャットダウン温度を測定した。なお、シャットダウン温度は電池の内部抵抗が、30℃での内部抵抗の10倍以上となった時点での温度とした。これらの結果を表2に併記する。
Figure 2008123996
表2に示すように、実施例5〜8の電池は、比較例2の電池と同等程度のシャットダウン温度を有しており、また、150℃でのオーブンテストにおいて異常が認められなかった。このように、実施例5〜8の電池は、比較例2の電池に比較して高温放置時の安全性に優れた電池であることが分かる。
なお、実施例5〜8および比較例2の非水電解質電池について、0.2Cの電流で4.2Vまで定電流充電し、その後4.2Vでの定電圧充電を行い(総充電時間8時間)、0.2Cの電流で放電した結果、いずれの電池も780〜790mAhの放電容量を示し、電池として良好に機能することが確認できた。

Claims (11)

  1. 熱可塑性樹脂を主成分とし、かつ150℃における熱収縮率が10%以上の樹脂多孔質膜と、前記樹脂多孔質膜表面に形成されてなり、耐熱性微粒子を70体積%以上含有する耐熱多孔質層とを有することを特徴とする非水電解質電池用セパレータ。
  2. 樹脂多孔質膜の厚みA(μm)と耐熱多孔質層の厚みB(μm)との比A/Bが、1〜5である請求項1に記載の非水電解質電池用セパレータ。
  3. 耐熱性微粒子が、電気絶縁性の無機微粒子である請求項1または2に記載の非水電解質電池用セパレータ。
  4. 電気絶縁性の無機微粒子が、アルミナ、シリカおよびベーマイトよりなる群から選択される少なくとも1種の微粒子である請求項3に記載の非水電解質電池用セパレータ。
  5. 電気絶縁性の無機微粒子が、板状粒子である請求項3または4に記載の非水電解質電池用セパレータ。
  6. 電気絶縁性の無機微粒子が、一次粒子が凝集した二次粒子構造を有している請求項3または4に記載の非水電解質電池用セパレータ。
  7. 耐熱多孔質層が、有機バインダを更に含有している請求項1〜6のいずれかに記載の非水電解質電池用セパレータ。
  8. 樹脂多孔質膜の主成分である熱可塑性樹脂が、ポリオレフィンである請求項1〜7のいずれかに記載の非水電解質電池用セパレータ。
  9. 100〜140℃において、樹脂多孔質膜の孔が閉塞する性質を有している請求項1〜8のいずれかに記載の非水電解質電池用セパレータ。
  10. 150℃における熱収縮率が5%以下である請求項9に記載の非水電解質電池用セパレータ。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の非水電解質電池用セパレータを有することを特徴とする非水電解質電池。
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