JP2007162166A - 塗工板紙用組成物および塗工板紙 - Google Patents

塗工板紙用組成物および塗工板紙 Download PDF

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Abstract

【課題】塗工板紙において、インキセット性が良好でかつニス引き適性が良好、また、強度発現性も良好で、糊付け適性、BP適性等の後加工適性も良好にする共重合体ラテックスを提供する。
【解決手段】下記構造単位を有する共重合体からなるコア部70〜95質量部と、コア部の周囲に配設される下記構造単位を有する共重合体からなるシェル部30〜5質量部とを備え平均粒子径40〜150(70〜100)nmのコア−シェル型共重合体を含有する共重合体ラテックス。コア部:脂肪族共役ジエン単量体由来の構造単位45〜70%、シアン化ビニル単量体由来の構造単位30〜55%、エチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位0〜2%、他の単量体由来の構造単位0〜25%。シェル部:芳香族ビニル単量体由来の構造単位50〜95%、エチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位5〜20%、他の単量体由来の構造単位0〜45%。
【選択図】なし

Description

本発明は、塗工板紙用組成物および塗工板紙に係り、さらに詳しくは、糊付け適性、ブリスターパック適性、ニス引き適性等の後加工適性に優れる塗工板紙用組成物とそれを用いた塗工板紙に関する。
塗工板紙は、紙器、ブリスターパック容器、本の表紙などに使用されることが多く、それ故に、糊付け適性、ブリスターパック適性、ニス引き適性等の後加工適性が重要になる。
糊付け適性、ブリスターパック適性等を良好にするためには、塗工層の強度が強くなくてはならず、一般的に塗工紙よりも、多くのバインダーが使用される。このように、塗工板紙においては、バインダーが多く使用される結果、インキセットは遅くなる。インキセットが遅くなると、印刷後裏移りして商品価値を損なうため、印刷速度を低下するか、あるいはインキセットを速める対策が講じられる。しかし、インキセットを速めると、ニス引き適性が低下する。即ち、塗布したニスが沈み易くなるため、ニス引き後の光沢が低下する。この傾向は印刷光沢も同様であるが、特にニス引き適性において著しい。
インキセットを速くする最も簡単な方法は、バインダーの使用量を低下させることであるが、ニス引き光沢ばかりでなく、糊付け性やブリスターパック適性も低下し、ドライピック強度も低下してしまう。そのため、アクリロニトリルを使用しないラテックスを使用すること、粒子径の大きなラテックスを使用すること、粒子径の小さい顔料を使用することなどの手段が採られるが、これらの手段はいずれもニス引き後の光沢が低下するという問題が残る。
ニス引き光沢を良好にするためには、上記と反対にアクリロニトリルの多いラテックスを使用すること、粒子径の極めて小さいラテックスを使用すること、アスペクト比の大きな扁平の顔料を多く使用することなどの手段が採られるが、インキセットが遅くなってしまうという問題がある。結局、従来に於いては、両性質の妥協できる水準を探して品質設計せざるを得ないというのが実情であった。
最近、ラテックスの観点から上記の問題を解決しようとする提案がなされた(特許文献1参照)。この特許出願に係る技術は、乾燥皮膜の酢酸エチル膨潤度が3.0以上であり、そのガラス転移温度が0℃を超えるラテックスに係るものであるが、ガラス転移温度が0℃を超えるために強度発現性が充分でなく、また、インキセット性とニス引き適性の関係もなお向上したものが望まれる。
特開2005−187499号公報
本発明は、上述した従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、インキセット性及びニス引き適性がともに良好で、強度発現性も良好であり、糊付け適性やブリスターパック適性等の後加工適性も良好である塗工板紙用組成物とそれを用いた塗工板紙を提供することにある。
本発明によれば、顔料及びバインダーを含み、前記バインダーが下記ラテックスを含む塗工板紙用組成物が提供される。
下記構造単位を有する共重合体からなるコア部70〜95質量部と、下記構造単位を有する共重合体からなるシェル部30〜5質量部(コア部+シェル部=100質量部)とを備え、平均粒子径40〜150nmのコア−シェル型共重合体を含有する共重合体ラテックス。
コア部:
脂肪族共役ジエン単量体由来の構造単位45〜70質量%、
シアン化ビニル単量体由来の構造単位30〜55質量%、
エチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位0〜2質量%、
及びこれらの単量体と共重合可能な他の単量体由来の構造単位0〜25質量%(コア部全体を100質量%とする)。
シェル部:
芳香族ビニル単量体由来の構造単位50〜95質量%、
エチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位5〜20質量%、
及びこれらの単量体と共重合可能な他の単量体由来の構造単位0〜45質量%(シェル部全体を100質量%とする)。
但し、コア部とシェル部の合計は、以下の条件を満たす。
(a)脂肪族共役ジエン単量体((a’)単量体)由来の構造単位35〜76質量%
(b)芳香族ビニル単量体((b’)単量体)由来の構造単位3〜40質量%
(c)シアン化ビニル単量体((c’)単量体)由来の構造単位20〜55質量%
(d)エチレン性不飽和カルボン酸単量体((d’)単量体)由来の構造単位0.2〜10質量%
(e)(a’)〜(d’)単量体と共重合可能な他の単量体((e’)単量体)由来の構造単位0〜41.8質量%
((a)構造単位+(b)構造単位+(c)構造単位+(d)構造単位+(e)構造単位=100質量%)
上記の塗工板紙用組成物においては、顔料100質量部に対し、バインダーを13〜20質量部含むことが好ましい。また、このうち、上記ラテックスを10質量部以上含むことが好ましい。そして、ラテックスの粒子径は70〜100nmであることが好ましい。
また、本発明によれば、塗工板紙原紙と、前記塗工板紙原紙に塗工液が塗工されてなる塗工層とを備える塗工板紙であって、前記塗工液が上記の塗工板紙用組成物である塗工板紙が提供される。ここで、前記塗工層が上塗り塗工層と下塗り塗工層とからなり、前記上塗り塗工層を形成する塗工液が上記の塗工板紙用組成物であることが好ましい。
本発明の塗工板紙用組成物及び塗工板紙によれば、特定の共重合体ラテックスを含むバインダーと、顔料とを含有するため、インキセット性及びニス引き適性がともに良好であるとともに、強度発現性も良好で、かつ糊付け適性やブリスターパック適性等の後加工適性も良好であるという優れた効果を奏する。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施の形態」という。)を具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
本発明の塗工板紙用組成物は、顔料及びバインダーを含み、前記バインダーが下記の共重合体ラテックスを含むことにその特徴を有する。
まず、本発明の塗工板紙用組成物において用いる共重合体ラテックスについて説明する。
本発明において用いる共重合体ラテックスの一の実施の形態は、下記構造単位を有する共重合体からなるコア部70〜95質量部と、下記構造単位を有する共重合体からなるシェル部30〜5質量部(コア部+シェル部=100質量部)とを備えるコア−シェル型共重合体を含有し、そのコアシェル型共重合体の平均粒子径が40〜150nmの共重合体ラテックスである。コア部を構成する構造単位:脂肪族共役ジエン単量体由来の構造単位45〜70質量%、シアン化ビニル単量体由来の構造単位30〜55質量%、エチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位0〜2質量%、及びこれらの単量体と共重合可能な他の単量体由来の構造単位0〜25質量%(コア部全体を100質量%とする。)。シェル部を構成する構造単位:芳香族ビニル単量体由来の構造単位50〜95質量%、エチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位5〜20質量%、及びこれらの単量体と共重合可能な他の単量体由来の構造単位0〜45質量%(シェル部全体を100質量%とする。)。但し、コア部とシェル部の合計は、以下の条件を満たす。
(a)脂肪族共役ジエン単量体((a’)単量体)由来の構造単位35〜76質量%
(b)芳香族ビニル単量体((b’)単量体)由来の構造単位3〜40質量%
(c)シアン化ビニル単量体((c’)単量体)由来の構造単位20〜55質量%
(d)エチレン性不飽和カルボン酸単量体((d’)単量体)由来の構造単位0.2〜10質量%
(e)(a’)〜(d’)単量体と共重合可能な他の単量体((e’)単量体)由来の構造単位0〜41.8質量%
((a)構造単位+(b)構造単位+(c)構造単位+(d)構造単位+(e)構造単位=100質量%)
本実施の形態の共重合体ラテックスは、粒子状のコア−シェル型共重合体が水中に分散してなるものである。ここで、平均粒子径とは、動的光散乱法を利用して測定したものであり、キュムラント法による平均粒子径である。この測定は例えば、大塚電子社製の「レーザー粒径解析システムLP−510、モデルPAR−III」によって測定することができる。
(コア部)
コア部の中で、脂肪族共役ジエン単量体((a’)単量体)由来の構造単位としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、クロロプレン等に由来する構造単位が挙げられるが、好ましくは1,3−ブタジエン由来の構造単位である。これらの脂肪族共役ジエン単量体由来の構造単位は、1種単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。脂肪族共役ジエン単量体由来の構造単位は、コア部に適度な柔軟性と伸びを与え、耐衝撃性を付与するために有用な成分であり、その使用割合はコア部全体に対して45〜70質量%であり、45〜67質量%であることが好ましく、47〜65質量%であることが更に好ましい。45質量%未満であると、コア部が硬くなり過ぎ、接着強度が悪化する。70質量%を超えると、軟らかくなり過ぎ、べとつき防止性(塗工操業性)が悪化する。
コア部の中で、シアン化ビニル単量体((c’)単量体)由来の構造単位としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等に由来する構造単位が挙げられ、特にアクリロニトリル由来の構造単位が好ましい。その使用量は、コア部全体に対して30〜55質量%であり、30〜52質量%であることが好ましく、32〜50質量%であることが更に好ましい。30質量%未満であると、ニス引き時にニスの浸透が大きくなり、良好なニス引き光沢が得られない。また、インク溶剤の吸収が高くなり過ぎ印刷光沢が低下する。55質量%を超えると、コア部が硬くなり過ぎ接着強度が低下する。
コア部の中で、エチレン性不飽和カルボン酸単量体((d’)単量体)由来の構造単位としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等に由来する構造単位が挙げられる。これらのエチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位は、1種単独で、あるいは2種以上を使用することもできる。エチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位の使用割合は、コア部全体に対して0〜2質量%である。2質量%を超えると、コア−シェル型共重合体としたときのコア−シェル構造の安定性が低くなる。
コア部の中で、上記単量体(脂肪族共役ジエン単量体、シアン化ビニル単量体及びエチレン性不飽和カルボン酸単量体)と共重合可能な他の単量体((e’)単量体)由来の構造単位としては、以下のものが挙げられ、その使用割合は、コア部全体に対して0〜25質量%である。上記他の単量体由来の構造単位としては芳香族ビニル単量体、アルキル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、アクリルアミド系化合物、N−メチロールアクリルアミド、水酸基を有する単量体等に由来する構造単位が挙げられる。これらのうち、芳香族ビニル単量体由来の構造単位としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン等に由来する構造単位が挙げられ、特にスチレン由来の構造単位が好ましい。アルキル(メタ)アクリレート由来の構造単位としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート等に由来する構造単位が挙げられ、特にメチルメタクリレート由来の構造単位が好ましい。更にアクリルアミド系化合物由来の構造単位としては、アクリルアミド、メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等に由来する構造単位が挙げられる。また、水酸基を有する単量体由来の構造単位としては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート等に由来する構造単位が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもかまわない。
共重合体ラテックスに含有されるコア部を構成する各単量体由来の構造単位の分析は、熱分解ガスクロマトグラフによる組成分析により可能であり、例えば、日本分析工業社製の熱分解装置「JHP3型キュリーポイントパイロライザー」および島津製作所社製「GC2010ガスクロマトグラフ」によって測定することができる。
(シェル部)
シェル部の中で、芳香族ビニル単量体((b’)単量体)由来の構造単位としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン等に由来する単量体が挙げられ、特にスチレン由来の単量体が好ましい。その使用量は、シェル部全体に対して50〜95質量%であり、55〜92質量%であることが好ましく、60〜90質量%であることが更に好ましい。50質量%未満であると、費記事ガラス転移点の制御とインク溶剤との親和性のバランスがくずれ、べとつき防止性(塗工操業性)と印刷光沢のバランスが低下する。また、良好なインキセット性が得られない。95質量%を超えると、エチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位の量が減少することになり、結果として本実施の形態の共重合体ラテックスの機械的安定性及び化学的安定性が低下する。
シェル部の中で、エチレン性不飽和カルボン酸単量体((d’)単量体)由来の構造単位としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等に由来する構造単位が挙げられる。これらのエチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位は、1種単独で、あるいは2種以上を使用することもできる。エチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位の使用割合は、シェル部全体に対して5〜20質量%であり、8〜17質量%であることが好ましく、10〜15質量%であることが更に好ましい。5質量%未満であると、本実施の形態の共重合体ラテックスの機械的安定性及び化学的安定性が低下する。20質量%を超えると、本実施の形態の共重合体ラテックスの粘度が高くなり過ぎ、作業性が低下する。
シェル部の中で、上記単量体(芳香族ビニル単量体及びエチレン性不飽和カルボン酸単量体)と共重合可能な他の単量体((e’)単量体)由来の構造単位としては、以下のものが挙げられ、その使用割合は、シェル部全体に対して0〜45質量%である。上記他の単量体由来の構造単位としては脂肪族共役ジエン系単量体、シアン化ビニル単量体、アルキル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、アクリルアミド系化合物、N−メチロールアクリルアミド、水酸基を有する単量体等に由来する構造単位が挙げられる。これらのうち、脂肪族共役ジエン系単量体由来の構造単位としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、クロロプレン等に由来する構造単位が挙げられるが、好ましくは1,3−ブタジエン由来の構造単位である。シアン化ビニル単量体由来の構造単位としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等に由来する構造単位が挙げられ、好ましくはアクリロニトリル由来の構造単位である。アルキル(メタ)アクリレート由来の構造単位としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート等に由来する構造単位が挙げられ、好ましくはメチルメタクリレート由来の構造単位である。更にアクリルアミド系化合物由来の構造単位としては、アクリルアミド、メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等に由来する構造単位が挙げられる。また、水酸基を有する単量体由来の構造単位としては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート等に由来する構造単位が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもかまわない。
シェル部の厚さは、0.5〜10nmであることが好ましく、1〜8nmであることが更に好ましく、2〜5nmであることが特に好ましい。0.5nmより薄いと、インク溶剤との親和性が低下し、印刷光沢が低下することがある。また、インキセットが遅くなることがあり、べとつき防止性(塗工操業性)が悪化することがある。10nmより厚いと、インク溶剤の吸収が高くなり過ぎ印刷光沢が低下することがある。また、ニス引き時にニスの浸透が大きく、良好なニス引き後の光沢が得られないことがある。
(コア−シェル型共重合体)
本実施の形態の共重合体ラテックスに含有されるコア−シェル型共重合体は、上述したコア部と、その周囲を覆うように配設(形成)されたシェル部とを備えるものである。本実施の形態の共重合体ラテックスにおいて、コア−シェル型共重合体は水中に分散する微粒子であり、その平均粒子径は、40〜150nmであり、70〜100nmであることが好ましい。40nm未満であると、ラテックスの工業的製造が困難になるほか、インキセット性が低下する可能性がある。100nmを超えると、ニス引き適性が低下するほか、強度も低下する。
コア−シェル型共重合体を構成するコア部とシェル部の質量比は、[コア部/シェル部]が[70/30]〜[95/5]である。コア部が70質量%未満であると、ニス引き時のニスの浸透が大きく、良好なニス引き光沢が得られないことがあり、また、溶剤の吸収が高くなり過ぎ、印刷光沢が低下する。コア部が95質量%を超えると、インク溶剤との親和性が低下し印刷光沢が低下する。また、インキセットが遅くなることがある。
上述したコア部を形成する各単量体由来の構造単位とシェル部を形成する各単量体由来の構造単位は、その合計が以下の条件を満たす必要がある。
(a)脂肪族共役ジエン単量体((a’)単量体)由来の構造単位35〜76質量%
(b)芳香族ビニル単量体((b’)単量体)由来の構造単位3〜40質量%
(c)シアン化ビニル単量体((c’)単量体)由来の構造単位20〜55質量%
(d)エチレン性不飽和カルボン酸単量体((d’)単量体)由来の構造単位0.2〜10質量%
(e)(a)〜(d)単量体と共重合可能な他の単量体((e’)単量体)由来の構造単位0〜41.8質量%
((a)構造単位+(b)構造単位+(c)構造単位+(d)構造単位+(e)構造単位=100質量%)
そして、上述した、コア部を形成する各単量体由来の構造単位とシェル部を形成する各単量体由来の構造単位は、その合計が以下の条件を満たすことが好ましい。
(a)脂肪族共役ジエン単量体((a’)単量体)由来の構造単位40〜69質量%
(b)芳香族ビニル単量体((b’)単量体)由来の構造単位5〜30質量%
(c)シアン化ビニル単量体((c’)単量体)由来の構造単位25〜50質量%
(d)エチレン性不飽和カルボン酸単量体((d’)単量体)由来の構造単位1〜8質量%
(e)(a)〜(d)単量体と共重合可能な他の単量体((e’)単量体)由来の構造単位0〜29質量%
((a)構造単位+(b)構造単位+(c)構造単位+(d)構造単位+(e)構造単位=100質量%)
共重合体ラテックスの中で、脂肪族共役ジエン単量体由来の構造単位が、35質量%未満であると、共重合体が硬くなり過ぎ、接着強度が悪化する。76質量%を超えると、軟らかくなり過ぎ、べとつき防止性が悪化する。芳香族ビニル単量体由来の構造単位が、3質量%未満であると、ガラス転移点が低くなり、べとつき防止性が低下する。40質量%を超えると、共重合体が硬くなり過ぎ接着強度が悪化する。シアン化ビニル単量体が、20質量%未満であると、インク溶剤の吸収が高くなり過ぎ印刷光沢が低下する。また、良好なニス引き光沢が得られない。55質量%を超えると、共重合体が硬くなり過ぎ接着強度が低下する。エチレン性不飽和カルボン酸単量体が、0.2質量%未満であると、共重合体の機械的安定性及び化学的安定性が低下し多量の凝集物の発生を招く。10質量%を超えると、共重合体の粘度が高くなり過ぎ、作業性が低下する。
本実施の形態の共重合体ラテックスにおいては、コア部のガラス転移温度が−30〜−10℃の範囲にあり、シェル部のガラス転移温度が20℃以上であることが好ましい。また、シェル部のガラス転移温度は、100℃以下であることが好ましい。コア部のガラス転移温度が−30℃未満であると、共重合体が軟らかくなり過ぎ、べとつき防止性が悪化することがあり、−10℃を超えると共重合体が硬くなり過ぎ、接着強度が悪化することがある。また、シェル部のガラス転移温度が20℃未満であると、共重合体が軟らかくなり過ぎ、べとつき防止性が悪化することがある。
(共重合体ラテックスの製造方法)
本実施の形態の共重合体ラテックスは、以下に示す共重合体の製造方法の一の実施の形態により製造することができる。
本実施の形態の共重合体の製造方法は、下記単量体組成(A)70〜95質量部を共重合して得られる粒子状のコア部の存在下で、下記単量体組成(B)30〜5質量部(単量体組成(A)+単量体組成(B)=100質量部)を乳化重合するものである。単量体組成(A):脂肪族共役ジエン単量体45〜70質量%、シアン化ビニル単量体30〜55質量%、エチレン性不飽和カルボン酸単量体0〜2質量%、及びこれらの単量体と共重合可能な他の単量体0〜25質量%。単量体組成(B):芳香族ビニル単量体50〜95質量%、エチレン性不飽和カルボン酸単量体5〜20質量%、及びこれらの単量体と共重合可能な他の単量体0〜45質量%。
但し、単量体組成(A)と単量体組成(B)の合計は、以下の条件を満たす。
(a’)脂肪族共役ジエン単量体35〜76質量%
(b’)芳香族ビニル単量体3〜40質量%
(c’)シアン化ビニル単量体20〜55質量%
(d’)エチレン性不飽和カルボン酸単量体0.2〜10質量%
(e’)(a’)〜(d’)成分と共重合可能な他の単量体0〜41.8質量%
((a’)+(b’)+(c’)+(d’)+(e’)=100質量%)
本実施の形態において使用する、単量体組成(A)及び単量体組成(B)は、上述した共重合体ラテックスにおける、コア−シェル型共重合体のコア部及びシェル部を構成する各「単量体由来の構造単位」に対応する各「単量体」と同様のものを使用することが好ましく、それにより同様の効果を得ることができる。例えば、本実施の形態における「(a’)脂肪族共役ジエン単量体」は、上述した本発明の共重合体ラテックスにおける「(a)脂肪族共役ジエン単量体((a’)単量体)由来の構造単位」に対応する「脂肪族共役ジエン単量体((a’)単量体)」と同様とすることが好ましい。
本実施の形態の共重合体ラテックスの製造方法は、単量体組成(A)を乳化重合してコア部を形成し、その重合液に単量体組成(B)等を添加して更に乳化重合することにより、粒子状のコア−シェル型共重合体が水中に分散する共重合体ラテックスを製造するものであることが好ましい。
単量体組成(A)及び単量体組成(B)を乳化重合するに際しては、水性媒体中で乳化剤、重合開始剤、分子量調節剤などを用いて重合することができる。ここで、乳化剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを単独で、あるいは2種以上を併用して使用できる。ここで、アニオン性界面活性剤としては、例えば高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、ポリエチレングリコールアルキルエーテルの硫酸エステルなどが挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、通常のポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型、アルキルフェニルエーテル型などが用いられる。両性界面活性剤としては、アニオン部分としてカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、燐酸エステル塩を、カチオン部分としてはアミン塩、第4級アンモニウム塩を持つものが挙げられ、具体的にはラウリルベタイン、ステアリルベタインなどのベタイン類、ラウリル−β−アラニン、ステアリル−β−アラニン、ラウリルジ(アミノエチル)グリシン、オクチルジ(アミノエチル)グリシン、などのアミノ酸タイプのものなどが用いられる。
重合開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性重合開始剤、過酸化ベンゾイル、ラウリルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルなどの油溶性重合開始剤、還元剤との組み合わせによるレドックス系重合開始剤などが、それぞれ単独であるいは組み合わせで使用できる。
分子量調節剤、キレート化剤、無機電解質なども公知のものが使用できる。分子量調節剤としては、クロロホルム、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素類、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸などのメルカプタン類、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイドなどのキサントゲン類、ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマー、1,1−ジフェニルエチレンなど通常の乳化重合で使用可能なものを全て使用できる。
重合方法としては、単量体組成(A)をまず乳化重合してコア部を生成させる。単量体組成(A)の重合方法としては、単量体組成(A)の一部を重合した後、その残りを連続的にあるいは断続的に添加する方法、あるいは単量体組成(A)を重合のはじめから連続的に添加する方法が好ましい。このような単量体組成(A)の乳化重合により、粒子状のコア部が水中に分散した重合液が得られる。このときの重合転化率は、90%以上であることが好ましい。次に、この重合液に単量体組成(B)を連続的に添加しながら乳化重合を行うことが好ましい。これにより、コア部の周囲に単量体組成(B)がグラフト重合して、コア部からなるコア部とその周囲に形成されたシェル部とを備える粒子状のコア−シェル型共重合体が形成される。そして、本実施の形態の共重合体ラテックスを得ることができる。
重合温度は、単量体組成(A)及び単量体組成(B)のいずれの重合においても、通常20〜85℃、好ましくは25〜80℃である。重合時間は、単量体組成(A)及び単量体組成(B)の重合時間を合計したときに、通常5〜30時間、好ましくは8〜25時間である。
本実施の形態の共重合体ラテックスの製造方法により製造された共重合体ラテックスに含有されるコア−シェル型共重合体のコア部とシェル部の質量比は、上述した本発明の共重合体ラテックスに含有されるコア−シェル型共重合体の場合と同様であり、それにより、同様の効果を得ることができる。
本実施の形態により得られた共重合体ラテックスに含有されるコア−シェル型共重合体の平均粒子径は上述した本発明の共重合体ラテックスに含有されるコア−シェル型共重合体の場合と同様であることが好ましく、それにより、同様の効果を得ることができる。
(塗工板紙用組成物)
本発明の塗工板紙用組成物においては、上記した共重合体ラテックスを含むバインダーと、顔料とを含有するものである。
(塗工板紙用組成物−バインダー)
本発明の塗工板紙用組成物に含有されるバインダーは、上記の共重合体ラテックスを含有するが、その他にも、澱粉、カゼイン、大豆蛋白等を含有してもよい。これらの中では、澱粉が好ましい。澱粉としては、燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、酸化澱粉、酵素変性澱粉等の加工澱粉を使用することができる。これらは、1種単独で又は2種以上を併用することができる。
(塗工板紙用組成物−顔料)
本発明の塗工板紙用組成物に含有される顔料としては、カオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、サチンホワイト等を使用することができる。これらの中でも、重質炭酸カルシウムが好ましく、カオリンと重質炭酸カルシウムとを使用することも好ましい。これらは、1種を単独で使用することもでき、また2種以上を併用することもできる。
本発明の塗工板紙用組成物に含有される顔料とバインダーとの質量比は、特に限定されるものではないが、顔料100質量部に対して、バインダー13〜20質量部(固形分として)であることが好ましく、14〜18質量部(固形分として)であることがさらに好ましい。バインダーが、顔料100質量部に対して13質量部より少ないとニス引き光沢が低下する他、糊付け性やブリスターパック(BP)適性などの後加工適性が低下する。あるいは、ドライピック強度やウエットピック強度が低下する。バインダー中、上記ラテックスは10質量部以上使用するのが望ましい。これが少ないとニス引き適性とインキセット性、強度、後加工適性のいずれか、あるいは全てが低下する可能性がある。ここで、バインダーの固形分とは、バインダーから、分散媒あるいは溶媒である水を除いた成分をいう。
塗工板紙用組成物に含有される顔料とバインダーとの合計量は、塗工板紙用組成物全体に対して90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。
本発明の塗工板紙用組成物には、上記顔料及びバインダーに加えて、耐水性改良剤、顔料分散剤、粘度調節剤、着色顔料、蛍光染料及びpH調節剤等一般に使用されている種々の添加剤を任意に配合することができる。顔料、バインダー、その他添加剤を含む塗工板紙用組成物の固形分濃度は、30〜70質量%が好ましい。
(塗工板紙)
本発明に係る塗工板紙の一の実施の形態は、塗工板紙原紙と、塗工板紙原紙に塗工液が塗工されてなる塗工層とを備える塗工板紙であって、上述した本発明の塗工板紙用組成物を塗工液として使用するものである。特に本発明は、高級白板紙、特殊白板紙、一般マニラボール、コート白ボール等に分類される塗工白板紙に好適に適用される。
(塗工板紙−塗工板紙原紙)
本発明の塗工板紙を構成する塗工板紙原紙は特に限定されず、本発明の塗工板紙用組成物を塗工することにより本発明の塗工板紙として使用可能であればよい。塗工板紙原紙の原料パルプの種類は特に限定されず、例えば、機械パルプ、化学パルプ、古紙パルプ(DIP)等が挙げられる。
板紙は一般に厚手になるため、3層から9層の多層構造からなっている。上記の高級白板紙、特殊白板紙、一般マニラボール、コート白ボールは、主に原紙の各層がどのような種類のパルプで構成されているかにより分類されており、これら上記白板紙の原紙はもちろん、各層がどのようなパルプで組み合わされた原紙でも良い。
板紙の定義は明確ではなく、坪量225g/m2以上の紙を板紙と分類する場合もあるが、これ以上の紙はもちろん、これより小さな坪量の160g/m2や190g/m2の主として包装材料用の紙は板紙に分類されており、これらに使用する板紙原紙も含有するものである。
また、塗工板紙原紙には、場合によっては、内添剤として炭酸カルシウム、クレー及びタルク等の顔料、アルキルケテンダイマー、ロジン酸石鹸及び硫酸バンド等のサイズ剤、カチオン澱粉及びポリアクリルアミド等の紙力増強剤、並びに嵩高剤等を使用することもできる。更に、上記塗工板紙原紙の表面には、サイズプレス、ゲートロールコーター、メータードサイズプレス等を使用して、アクリルアミド又はアクリル−スチレンポリマー等の表面サイズ剤を塗布することもできる。
(塗工板紙−塗工層)
本発明の塗工板紙を構成する塗工層は、塗工板紙用組成物の塗工量が、1〜50g/m2であることが好ましい。更に好ましくは、6〜25g/m2である。1g/m2より少ないと白紙光沢や印刷光沢が低下することがあり、50g/m2より多いとコストの割りに品質の向上が小さくなることがある。
本発明の塗工板紙において、塗工層が上塗り塗工層と下塗り塗工層とからなるダブル塗工の場合は、特にトップ塗工に本組成物を適用するのが効果的である。アンダー、トップともに本ラテックスを使用することは勿論可能である。
(塗工板紙の製造)
本発明の塗工板紙の製造方法は、上述した塗工板紙用組成物(塗工液)を塗工板紙原紙に、下記塗工方法により塗工するものである。塗工板紙用組成物(塗工液)を塗工板紙原紙に塗工する塗工方法としては、一般の塗工板紙の製造方法において用いられている方法を採用することができる。例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ゲートロールコーター、チャンプレックスコーター、サイズプレスコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等を使用して塗工することができる。
また、塗工層が上塗り塗工層と下塗り塗工層の2層であって、上塗り塗工層を本発明の塗工板紙用組成物を塗工したものとする場合には、まず、塗工板紙原紙に下塗り塗工層用の塗工液を塗工する。そして、塗工した下塗り塗工層用の塗工液を乾燥させた後に、本発明の塗工板紙用組成物(塗工液)を下塗り塗工層の表面に塗工するのが望ましいが、下塗り塗工後、未乾燥状態あるいは半乾燥状態で、本発明の塗工板紙用組成物(塗工液)を下塗り塗工層の表面に塗工しても良い。
本発明の塗工板紙を製造する方法としては、塗工板紙原紙に塗工液を塗工する塗工工程以外に、塗工板紙用組成物を塗工して未乾燥塗工紙を作製した後に、その未乾燥塗工紙を乾燥させる乾燥工程を有することが好ましい。また、上記乾燥工程の後に更に、カレンダー工程を設けてもよい。カレンダー処理を行うことで、得られた塗工板紙の白紙光沢及び印刷光沢を充分に引き出すことができる。更に、上述の工程以外に適宜所望の工程を有してもよい。
本発明の塗工板紙は、紙器、ブリスターパック容器、本の表紙などとして特に好適に使用することができる。また、その他の各種パッケージ用、各種カード用としても使用することができる。
次に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。尚、実施例において割合を示す「部」及び「%」はそれぞれ質量部及び質量%を意味する。
(コア−シェル型共重合体ラテックスA〜D及びa,bの製造)
攪拌装置および温度調節機を備えた耐圧反応容器に、表1に示す1段目成分を仕込み、窒素で重合系内を置換した。その後、重合系内の温度を40℃に昇温し、この温度で1.5時間重合を行った。次いで、表1に示される2段目成分と、還元剤水溶液の2/5量(20.545部×(2/5))とを8時間かけて連続的に重合系内に添加し、重合を進めコア部を形成した。ここで、重合転化率が90%以上に到達したのを確認した後、重合系内の温度を55℃に昇温し、シェル部成分及び還元剤水溶液の2/5量を1.5時間かけて連続的に重合系内に添加した。重合を完結させるために、残り1/5量の還元剤水溶液を2時間かけて連続的に添加した。最終的な重合転化率は98%であった。得られた非コア−シェル型共重合体を含有する共重合体ラテックスを、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムを用いてpH7.5に調整した後、水蒸気を吹き込んで未反応単量体を除去し、さらに濃縮し固形分濃度50%の共重合体ラテックスを得た。なお、表2は、コア部、シェル部それぞれを100質量%に換算した場合の構造単位の含有量を示す。
(非コア−シェル型ラテックスcの製造)
上記と同様にして、ただし、1段目の単量体の構成割合と2段目の単量体の構成割合をほぼ同じになるようにして非コア−シェル型ラテックスcを得た。
Figure 2007162166
Figure 2007162166
得られた共重合体ラテックスについて、以下に示す方法で、平均粒子径、シェル部の厚み、トルエン不溶分、及びガラス転移温度を求めた。結果を表3に示す。
(平均粒子径)
共重合体ラテックスのコア−シェル型共重合体の平均粒子径は、粒子径測定装置(レーザー粒径解析システムLP−510、モデルPAR−III:大塚電子社製)を用いて動的光散乱法を利用して求めた。
(シェル部の厚み)
共重合体ラテックスの上記平均粒子径、単量体組成(A)の質量、およびコア部の重合転化率から計算により求めた。
(トルエン不溶分)
共重合体ラテックスをpH8.0に調整した後、イソプロパノールで凝固し、この凝固物を洗浄、乾燥した後、所定量(約0.03g)の試料を所定量(100ml)のトルエンに20時間浸漬した。その後、120メッシュの金網でろ過し、得られる残存固形分の仕込の全固形分に対する質量%を求め、トルエン不溶分とした。
(ガラス転移温度(Tg))
共重合体ラテックスを100℃で20時間真空乾燥し、フィルムを作製した。この乾燥フィルムを示差走査熱量計(DSC6100:セイコーインスツルメンツ社製)を用いてASTM法(番号:ASTM D3418−97)に準じて測定した。
Figure 2007162166
(塗工板紙用組成物の調製)
得られた共重合体ラテックスを用いて表4に示す配合処方で塗工板紙用組成物を調製した。調製に際しては、表4に示す配合処方の原料に、全固形分が66質量%となるように水を加え、コーレス分散機を用いて均一に分散混合して塗工板紙用組成物とした。
Figure 2007162166
上記原材料は、具体的には下記のものを使用した。
1級カオリン; ウルトラホワイト90(エンゲルハード社製)
微粒カオリン; ミラグロス(エンゲルハード社製)
重質炭酸カルシウム; カービタル90(イメリス社製)
軽質炭酸カルシウム; タマパール222(奥多摩工業社製)
分散剤; アロンT40(東亜合成工業社製)
潤滑剤; ノップコートC104(サンノプコ社製)
スターチ; MS4600(日本食品工業社製)
(塗工板紙の製造)
得られた塗工板紙用組成物を塗工板紙原紙上に、塗工量が片面15.0±0.5g/m2となるように、ラボブレードコーター(SMT社製)で塗工し、150℃で4秒間乾燥した。得られた塗工板紙を温度23℃、湿度60%の恒温恒湿槽に1昼夜放置し、その後、線圧150kg/cm、ロール温度100℃の条件でグロスカレンダー処理を1回行い、塗工板紙を製造した。得られた塗工板紙について、以下に示す方法で、性能評価を行った。結果を表5に示す。
(ドライピック強度)
RI印刷機(明製作所社製)で印刷したときのピッキングの程度を肉眼で判定し、1.0〜5.0の得点範囲で相対評価を行った。ピッキング現象の少ないものほど高得点とした。数値は測定回数6回の平均値で示した。インキはSMX20(東洋インキ社製)を0.25cc使用し、RI印刷機は60rpmで4〜5回印刷した。
(ウエットピック強度)
RI印刷機(明製作所社製)を用いて、塗工板紙表面を給水ロールで湿してから、RI印刷機で印刷したときのピッキングの程度を肉眼で判定し、ピッキング現象の少ないものほど高得点とした。数値は測定回数6回の平均値で示した。インキはSMX25(東洋インキ社製)を0.2cc使用し、RI印刷機は60rpmで印刷した。
(インキセット)
RI印刷機(明製作所社製)を用いて印刷し、印刷機上で印刷面に合成紙を当てロールで圧着する。このとき、端部から段階的に20秒後、40秒後、60秒後 80秒後、100秒後に圧着して合成紙に転移してくるインキ濃度を測定した。インキ濃度が薄い程ほどインキセット性は良好である。このインキ濃度から5段階相対評価を行った。数字大の方がインキセット性が良好である。インキはValues−G藍(大日本インキ化学社製)を0.6cc使用し、RI印刷機は30rpmで印刷した。
(白紙光沢)
村上式光沢計を使用して、75度の角度で測定した。数字が大きい程、光沢が高いことを示す。
(印刷光沢−単色)
RI印刷機(明製作所社製)を用いて、インキはValues−G藍(大日本インキ化学社製)を0.3cc使用し、30rpmで印刷した。1日放置後、村上式光沢計を使用して60度の角度で測定した。数字が大きい程、光沢が高いことを示す。
(印刷光沢−重色)
RI印刷機(明製作所社製)を用いて、インキはValues−G藍(大日本インキ化学社製)を0.3cc及び同紅0.4cc使用して30rpmで連続印刷した。1日放置後、村上式光沢計を使用して60度の角度で測定した。数字が大きい程、光沢が高いことを示す。
(ニス引き適性)
RI印刷機(明製作所社製)のゴムロールに、1ccのUV硬化性のニス、カートンOPニス(東華色素化学工業社製)を乗せ。均一になるまで練った後に30rpmでサンプルの塗工板紙に塗布する。塗布10秒後にUV照射を1分行って硬化させる。硬化させた後、白紙光沢を測定する要領で光沢を測定する。
(糊付け性)
中央に幅0.2cm×長さ10cmの長方形を切り抜いた厚み0.5mmのサンプルより大きい板と、3cm×15cmに切った塗工紙サンプルを用意する。サンプルの表面に上記の板を乗せその溝に酢酸ビニル系の糊ライフボンドAV650(日栄化工社製)を満たし、過剰の糊をブレードでかきとる。直ちに板をはずして、もう一枚の同じサンプルを裏面が接するようにして重ねて圧着する。2kgの加重を2分掛けた後一日放置する。その後、一定の状態で剥がし、その接着状態から判定する。基材の原紙から剥がれた場合は良好塗工層から剥がれているものは不良、接着面から剥がれるものは最も不良として、相対評価を行った。
(ブリスターパック適性)
荒川塗料工業社製のブリスターパック用接着剤#11とシンナーを1:1にブレンドして得た液を塗工板紙の表面にコーティング用ロッド#12を用いて一定量塗布する。
乾燥させた後、2.5cm×7cmの試験片に切り、その上に厚み0.2mmの同じ大きさの塩ビフィルムを重ね、インパルスシーラーで150℃×5秒圧着する。冷却後、塩ビフィルムを一定の状態で剥がし、その接着状態から判定した。基材の原紙から剥がれた場合は良、塗工層から剥がれているものは不良、接着面から剥がれるものは最も不良として、相対評価をおこなった。
Figure 2007162166
以上の結果から、実施例1〜5の塗工板紙及びこれらに使用した共重合体ラテックスは、いずれも、各評価結果が良好であった。一方、比較例1〜5については、次のことがわかる。
比較例1;ラテックスaは、コアシェル構造のラテックスであるが、シェル部のANが多いため、インキセット性が悪い。
比較例2;上記ラテックスaを一部減量することで、インキセットは向上するものの、まだ遅く、一方、ニス引き適性は低下傾向を示す。
比較例3;ラテックスaを2部減すると、インキセット性は良くなるが、ニス引き光沢が低下し、後加工適性、ドライ強度、ウエット強度が低下する。
比較例4;ラテックスbは、aと組成が異なり、aよりもインキセットが良好であるが、やはりシェルのANの割合が多いため、インキセット性が良くない。
比較例5;ANを使用しない非コア−シェル型ラテックスであるため、ニス引き光沢が悪い。
本発明に係る塗工板紙用組成物とそれを用いた塗工板紙は、糊付け適性、ブリスターパック適性、ニス引き適性等の後加工適性に優れるとともに、印刷光沢、インキセット性等の印刷適性にも優れるため、紙器、ブリスターパック容器、本の表紙等に有用である。

Claims (5)

  1. 顔料及びバインダーを含み、前記バインダーが下記ラテックスを含む塗工板紙用組成物。
    下記構造単位を有する共重合体からなるコア部70〜95質量部と、下記構造単位を有する共重合体からなるシェル部30〜5質量部(コア部+シェル部=100質量部)とを備え、平均粒子径40〜150nmのコア−シェル型共重合体を含有する共重合体ラテックス。
    コア部:
    脂肪族共役ジエン単量体由来の構造単位45〜70質量%、
    シアン化ビニル単量体由来の構造単位30〜55質量%、
    エチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位0〜2質量%、
    及びこれらの単量体と共重合可能な他の単量体由来の構造単位0〜25質量%(コア部全体を100質量%とする)。
    シェル部:
    芳香族ビニル単量体由来の構造単位50〜95質量%、
    エチレン性不飽和カルボン酸単量体由来の構造単位5〜20質量%、
    及びこれらの単量体と共重合可能な他の単量体由来の構造単位0〜45質量%(シェル部全体を100質量%とする)。
    但し、コア部とシェル部の合計は、以下の条件を満たす。
    (a)脂肪族共役ジエン単量体((a’)単量体)由来の構造単位35〜76質量%
    (b)芳香族ビニル単量体((b’)単量体)由来の構造単位3〜40質量%
    (c)シアン化ビニル単量体((c’)単量体)由来の構造単位20〜55質量%
    (d)エチレン性不飽和カルボン酸単量体((d’)単量体)由来の構造単位0.2〜10質量%
    (e)(a’)〜(d’)単量体と共重合可能な他の単量体((e’)単量体)由来の構造単位0〜41.8質量%
    ((a)構造単位+(b)構造単位+(c)構造単位+(d)構造単位+(e)構造単位=100質量%)
  2. 前記顔料100質量部に対し、前記バインダーを13〜20質量部含む請求項1記載の塗工板紙用組成物。
  3. 前記ラテックスの粒子径が70〜100nmである請求項1記載の塗工板紙用組成物。
  4. 塗工板紙原紙と、前記塗工板紙原紙に塗工液が塗工されてなる塗工層とを備える塗工板紙であって、前記塗工液が請求項1記載の塗工板紙用組成物である塗工板紙。
  5. 塗工板紙原紙と、前記塗工板紙原紙に塗工液が塗工されてなる塗工層とを備える塗工板紙であって、前記塗工層が上塗り塗工層と下塗り塗工層とからなり、前記上塗り塗工層を形成する塗工液が請求項1記載の塗工板紙用組成物である塗工板紙。
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