JP2006037312A - 塗工紙の製造方法及び塗工紙 - Google Patents

塗工紙の製造方法及び塗工紙 Download PDF

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尚 松井
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Abstract

【課題】印刷光沢、平滑性、白紙光沢、吸水着肉性及びインキセット性が良好な塗工紙の製造方法、及びその塗工紙の製造方法で製造された塗工紙を提供する。
【解決手段】顔料とバインダーとを含有する下塗り塗工用組成物を塗工原紙に塗工して下塗り塗工層を形成し、下塗り塗工層上に顔料とバインダーとを含有する上塗り塗工用組成物を塗工して上塗り塗工層を形成する塗工工程を有する塗工紙の製造方法であって、下塗り塗工用組成物中に、顔料100質量部に対してバインダー5〜13質量部が含有され、下塗り塗工用組成物に含有される顔料が、中空プラスチックピグメント3〜20質量部及び重質炭酸カルシウム60〜95質量部を含有する(顔料全体を100質量部とする)塗工紙の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、塗工紙の製造方法及び塗工紙に関し、更に詳しくは、印刷光沢、平滑性及び白紙光沢が良好で、更に吸水着肉性及びインキセット性が良好な塗工紙の製造方法、及び、その塗工紙の製造方法で製造された塗工紙に関する。本発明の塗工紙の製造方法により得られる塗工紙は、特に、枚葉オフセット印刷用又は輪転オフセット印刷用の用紙として好適に用いられる。
紙の外観や印刷適性を改良するために、紙(塗工原紙)に、カオリンや炭酸カルシウム(重質、軽質)等の白色顔料と水性バインダー(澱粉、ラテックス)とを主成分とする塗工用組成物が塗工される。この塗工された紙(塗工紙)は、鮮明な印刷画像を得るために今日広く使用されているが、更なる印刷適性の向上が求められている。
印刷適性を良好にするために、塗工原紙に直接塗工用組成物(下塗り塗工用組成物)を塗工(下塗り)して下塗り塗工層を形成し、その下塗り塗工層上に更に塗工用組成物(上塗り塗工用組成物)を塗工(上塗り)して上塗り塗工層を形成することにより、塗工原紙に2層の塗工層を形成する方法が採られている。
このように、2層の塗工層を形成することにより、1層目の塗工層(下塗り塗工層)は、安価な下塗り塗工用組成物により塗工原紙を被覆して表面を平滑に形成し、2層目の塗工層(上塗り塗工層)は、塗工紙の外観や印刷適性の優れた上塗り塗工用組成物を上記下塗り塗工層上に塗工することにより、塗工紙の品質を向上させることができる。また、更に塗工紙の品質を向上させるために、上塗り塗工用組成物にプラスチックピグメントを使用することもある(例えば、特許文献1参照)。このプラスチックピグメントとして中空粒子を用いることがあるが、上塗り塗工用組成物に中空プラスチックピグメントを使用すると、白紙光沢、平滑性、印刷光沢を向上させることができるが、印刷時に吸水着肉性が低下する(吸水性が低下して、インキ転移不良を起こす)傾向にある。また、インキセット性が遅くなる欠点を伴う。
一方、中空プラスチックピグメントを顔料として使用しながら、トップ塗工に使用せず、アンダー塗工に使用した例が塗工板紙の分野で認められる(例えば、特許文献2参照)。この例の目的は、白色度ムラ、光沢度ムラを無くすことにあり、その際に吸水着肉性も向上すると述べられている。しかし、ここに述べられている方法をそのまま塗工紙に適用すると、下塗り塗工用組成物の流動性が良くないために、吸水着肉性の向上は若干認められるものの充分ではなく、インキセット性、平滑性の改良効果も充分ではなかった。
特開平7−238495号公報 特開2003−306892号公報
本発明は、上述の従来技術の問題に鑑みなされたものであり、印刷光沢、平滑性及び白紙光沢が良好で、更に吸水着肉性及びインキセット性が良好な塗工紙の製造方法を提供することを特徴とする。そして、その塗工紙の製造方法で製造された塗工紙を提供することを特徴とする。
上記課題を解決するため、本発明によって以下の塗工紙の製造方法及び塗工紙が提供される。
[1] 顔料とバインダーとを含有する下塗り塗工用組成物を塗工原紙に塗工して下塗り塗工層を形成し、前記下塗り塗工層上に顔料とバインダーとを含有する上塗り塗工用組成物を塗工して上塗り塗工層を形成する塗工工程を有する塗工紙の製造方法であって、前記下塗り塗工用組成物が、前記顔料100質量部に対して前記バインダー5〜13質量部を含有し、前記下塗り塗工用組成物に含有される前記顔料が、中空プラスチックピグメント3〜20質量部及び重質炭酸カルシウム60〜95質量部を含有する(前記顔料全体を100質量部とする)塗工紙の製造方法。
[2] 前記下塗り塗工用組成物に含有される顔料が、更に他の顔料を、顔料全体100質量部に対して37質量部以下含有する[1]に記載の塗工紙の製造方法。
[3] 前記上塗り塗工用組成物には前記中空プラスチックピグメントが含有されていない[1]又は[2]に記載の塗工紙の製造方法。
[4] 前記下塗り塗工用組成物に含有されるバインダー(下塗り用バインダー)が、(a)脂肪族共役ジエン単量体30〜65質量%、(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体1〜8質量%、及び(d)これらの単量体と共重合可能な他の単量体27〜69質量%の共重合体を含むラテックスを含有し、前記共重合体の平均粒子径が30〜120nmである[1]〜[3]のいずれかに記載の塗工紙の製造方法。
[5] 前記上塗り塗工用組成物に含有されるバインダー(上塗り用バインダー)が、(a’)脂肪族共役ジエン単量体30〜65質量%、(b’)エチレン性不飽和カルボン酸単量体1〜8質量%、(c’)シアン化ビニル単量体5〜35質量%、及び(d’)これらの単量体と共重合可能な他の単量体0〜64質量%の共重合体を含むラテックスを含有し、前記共重合体の平均粒子径が30〜150nmである[1]〜[4]のいずれかに記載の塗工紙の製造方法。
[6] 前記下塗り用バインダーと前記上塗り用バインダーとが同一成分である[1]〜[5]のいずれかに記載の塗工紙の製造方法。
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載の塗工紙の製造方法により製造した塗工紙。
本発明の塗工紙の製造方法によれば、下塗り塗工用組成物に含有される顔料に中空プラスチックピグメントが所定量(顔料全体100質量部に対して3〜20質量部)含有され、且つ、下塗り塗工用組成物に含有されるバインダーが顔料100質量部に対して5〜13質量部と少ないため、得られる塗工紙の印刷光沢及び白紙光沢が良好になると共に、吸水着肉性、インキセット性及び平滑性が良好なものとなる。更に、下塗り塗工用組成物に含有される重質炭酸カルシウムが、顔料100質量部に対し60〜95質量部と多いため、下塗り塗工用組成物の流動性を良好にすることができる。また、本発明の塗工紙によれば、本発明の塗工紙の製造方法で得られた塗工紙であるため、印刷光沢、平滑性及び白紙光沢が良好で、更に吸水着肉性及びインキセット性が良好な塗工紙となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施の形態」という。)を具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
本発明の塗工紙の製造方法の一の実施の形態は、顔料とバインダーとを含有する下塗り塗工用組成物を塗工原紙に塗工して下塗り塗工層を形成し、次に下塗り塗工層上に顔料とバインダーとを含有する上塗り塗工用組成物を塗工して上塗り塗工層を形成する塗工工程を有する塗工紙の製造方法であって、下塗り塗工用組成物が、顔料100質量部に対してバインダー5〜13質量部を含有し、下塗り塗工用組成物に含有される顔料が、中空プラスチックピグメント3〜20質量部及び重質炭酸カルシウム60〜95質量部を含有する(顔料全体を100質量部とする)塗工紙の製造方法である。
(下塗り塗工用組成物−顔料)
本実施の形態の塗工紙の製造方法に使用する下塗り塗工用組成物中には、顔料として中空プラスチックピグメントが含有される。その含有量は、顔料全体を100質量部としたときに、3〜20質量部であり、好ましくは5〜12質量部である。3質量部未満のときは、得られる塗工紙の平滑性、白紙光沢及び印刷光沢が向上しない。20質量部を超えると、流動性が悪化する。流動性が悪いと、塗工時の操作性が悪くなり、特にブレード塗工による高速塗工ができなくなり、また、高固形分で塗工することができなくなる。従って、このように流動性が悪化すると、塗工時の操作性を維持するために、低固形分にせざるを得ず、乾燥エネルギーを多く消費してコスト高となり、また品質も低下傾向を示す。このように、顔料として中空プラスチックピグメントを使用すると、含有量が多過ぎない場合でも塗工用組成物の流動性が悪化する傾向にあるため、流動性を良好に保つために、顔料100質量部に対して、重質炭酸カルシウム60〜95質量部を含有させる必要がある。重質炭酸カルシウムをこのような含有率で含有させることにより、中空プラスチックピグメントを含有しながら流動性を良好に維持することができる。重質炭酸カルシウムが60質量部未満であると、下塗り塗工用組成物の流動性が悪化する。95質量部を超えると、得られる塗工紙の平滑性、白紙光沢が低下する。
本実施の形態において、下塗り塗工用組成物に使用する中空プラスチックピグメントは、動的光散乱法による平均粒子径(外径)が0.3〜1.7μmであることが好ましく、0.5〜1.2μmであることが更に好ましい。0.3μmより小さいと、充分な不透明度や被覆性が得られにくくなることがある。1.7μmより大きいと、塗工用組成物の流動性を損なって、塗工時の作業性を悪くすることがある。また、中空プラスチックピグメントは、中空部分(空気層)の中空プラスチックピグメント粒子全体に対する比率(平均中空率)が、20体積%以上であることが好ましく、45〜90体積%であることが更に好ましい。20体積%より小さいと、充分な不透明度が得られ難くなったり、充分な白紙光沢が発現しないことがある。
下塗り塗工用組成物に使用する中空プラスチックピグメントの材質としては、ポリスチレン、及び、スチレンを主成分とした他の共重合可能なモノマーとの共重合物であることが好ましく、これらの中でも、ポリスチレンが好ましい。他の共重合可能なモノマーとしては、例えば、アクリロニトリルやメチルメタクリレート、ブタジエンやイソプレン等を挙げることができる。スチレンを主成分とする、とはスチレンを80質量%以上含むことを意味し、80質量%未満の場合には粒子の中空状態が維持されにくくなるなどの問題を生じることがある。
中空プラスチックピグメントは種々の方法で製造したものを用いることができるが、アルカリ膨潤法で製造したものが好ましい。ここで、アルカリ膨潤法とは、例えば、特開昭56−32513号公報に開示された方法である。また、市販品を使用してもよく、例えば、JSR社製;商品名「AE851」を使用することができる。
本実施の形態において、中空プラスチックピグメントは、上述のように下塗り塗工用組成物中に含有されることが必要であるが、上塗り塗工用組成物中には含有されないことが好ましい。中空プラスチックピグメントを、下塗り塗工用組成物中に含有させると、得られる塗工紙の吸水着肉性及びインキセット性を低下させずに、印刷光沢及び白紙光沢を向上させることができるが、上塗り塗工用組成物中に含有させると、吸水着肉性及びインキセット性が低下することがある。
本実施の形態において、下塗り塗工用組成物に使用する重質炭酸カルシウムは、粒径が2μm以下の微粒子の含有率が、60〜90質量%であることが好ましく、60〜75質量%であることが更に好ましい。市販品としては、例えば、イメリス社製;商品名「カービタル60」、イメリス社製;商品名「カービタル75」、ファイマテック社製;商品名「FMT−60」、ファイマテック社製;商品名「FMT−75」等を挙げることができる。粒径が2μm以下の微粒子の含有率が、60質量%より少ないと、下塗り塗工用組成物の流動性が悪化することがある。そして下塗り塗工後の平滑性が低下し、上塗り塗工後の平滑性、白紙光沢及び印刷光沢が低下することがある。
本実施の形態において、下塗り塗工用組成物に含有される顔料中に更に他の顔料(中空プラスチックピグメントと重質炭酸カルシウム以外の顔料)が含有されていてもよい。他の顔料の含有量は、顔料全体100質量部に対して、37質量部以下であり、35質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。他の顔料としては、カオリン、サチンホワイト、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム等の本実施の形態の効果を損なわないような従来の無機顔料を使用することができる。
(下塗り塗工用組成物−バインダー)
本実施の形態の塗工紙の製造方法に使用する下塗り塗工用組成物に含有されるバインダー(下塗り用バインダー)は、(a)脂肪族共役ジエン単量体30〜65質量%、(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体1〜8質量%、及び(d)これらの単量体と共重合可能な他の単量体27〜69質量%の共重合体を含むラテックス(A)を含有し、その共重合体(共重合体粒子)の平均粒子径が30〜120nmであることが好ましい。
上記ラテックス(A)に使用される(a)脂肪族共役ジエン単量体(「(a)成分」ということがある。)としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、クロロプレン等が挙げられるが、好ましくは1,3−ブタジエンである。これらの(a)脂肪族共役ジエン単量体は、1種単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。(a)脂肪族共役ジエン単量体は、得られる重合体に適度な柔軟性と伸びを与え、耐衝撃性を付与するために有用な成分であり、その使用割合は共重合体全体に対して30〜65質量%であることが好ましく、35〜55質量%であることが更に好ましい。この(a)成分が30質量%未満であると、共重合体が硬くなり過ぎ、充分な強度が得られないことがある。一方、(a)成分が65質量%を超えると、粘着性が大となり操業性が悪化することがあり、また、充分な強度、特にウェット強度が得られないことがある。
上記ラテックス(A)に使用される(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体(「(b)成分」ということがある。)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。これらの(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、1種単独で、あるいは2種以上を使用することもできる。(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体の使用量は、共重合体全体に対して1〜8質量%であることが好ましく、2〜5質量%であることが更に好ましい。(b)成分が1質量%未満では、ラテックス(A)の機械的安定性、化学的安定性及び粘度安定性が低下することがある。一方(b)成分が8質量%を超えると、塗工用組成物の粘度(BF粘度、HS粘度)が高くなり過ぎ塗工に支障をきたすことがある。
また、上記(a)成分及び(b)成分と共重合可能な他の単量体(d)(「(d)成分」ということがある。)としては、以下のものが挙げられ、その使用量は、共重合体全体に対して27〜69質量%であることが好ましい。(d)成分としては芳香族ビニル単量体、アルキル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、アクリルアミド系化合物、N−メチロールアクリルアミド、シアン化ビニル等が挙げられる。これらのうち、芳香族ビニル単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレンなどが挙げられ、特にスチレンが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、特にメチルメタクリレートが好ましい。更にアクリルアミド系化合物としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。更にシアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。これら(d)成分は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもかまわない。(d)成分は、共重合体に、主として目的に応じた適度なガラス転移温度を与えるために使用するものである。
また、このラテックス(A)を構成する共重合体(共重合体粒子)の平均粒子径は、30〜120nm、好ましくは50〜110nm、更に好ましくは80〜100nmである。30nm未満のラテックスを製造するときには使用する乳化剤の量も多くなり、製造も難しく塗工用組成物も発泡する。また、ウエット強度、平滑性が低下するとともに吸水着肉性、印刷光沢等の印刷適性が低下する。また、120nmを超えると、ドライ強度及び印刷光沢が低下する。ここで、平均粒子径とは、動的光散乱法を利用して測定したものであり、キュムラント法による平均粒子径である。この測定は例えば、大塚電子社製の「レーザー粒径解析システムLP−510、モデルPAR−III」によって測定することができる。
上記下塗り用バインダーとして使用するラテックス(A)のゲル含有量は50〜98質量%であることが好ましく、80〜95質量%であることが更に好ましい。ゲル含有量が50質量%未満であると、ドライ強度が弱い。ゲル含有量が98質量%を超えると、ウェット強度が弱くなる。ここで、ゲル含有量とは、ラテックス中の共重合物等をイソプロパノール中で凝固させ、得られた凝固物をトルエンに浸漬させたときの、トルエン中に残存する固形物の上記凝固物に対する質量比率(トルエンゲル含有率)である。
上記ラテックス(A)は乳化重合により得ることが好ましい。乳化重合するに際しては、水性媒体中で乳化剤、重合開始剤、分子量調節剤などを用いて製造することができる。ここで、乳化剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを単独で、あるいは2種以上を併用して使用できる。ここで、アニオン性界面活性剤としては、例えば高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、ポリエチレングリコールアルキルエーテルの硫酸エステルなどが挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、通常のポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型、アルキルフェニルエーテル型などが用いられる。両性界面活性剤としては、アニオン部分としてカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、燐酸エステル塩を、カチオン部分としてはアミン塩、第4級アンモニウム塩を持つものが挙げられ、具体的にはラウリルベタイン、ステアリルベタインなどのベタイン類、ラウリル−β−アラニン、ステアリル−β−アラニン、ラウリルジ(アミノエチル)グリシン、オクチルジ(アミノエチル)グリシン、などのアミノ酸タイプのものなどが用いられる。
重合開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性重合開始剤、過酸化ベンゾイル、ラウリルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルなどの油溶性重合開始剤、還元剤との組み合わせによるレドックス系重合開始剤などが、それぞれ単独であるいは組み合わせで使用できる。
分子量調節剤、キレート化剤、無機電解質なども公知のものが使用できる。分子量調節剤としては、クロロホルム、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素類、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸などのメルカプタン類、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイドなどのキサントゲン類、ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマー、1,1−ジフェニルエチレンなど通常の乳化重合で使用可能なものを全て使用できる。
重合方法としては、単量体の一部を重合した後、その残りを連続的にあるいは断続的に添加する方法、あるいは単量体を重合のはじめから連続的に添加する方法が採られる。重合温度は、通常20〜85℃、好ましくは25〜80℃である。重合時間は、通常5〜30時間、好ましくは8〜25時間である。
下塗り用バインダーとしては、他にも、スチレン・ブタジエン系共重合体ラテックス、スチレン・アクリル系共重合体ラテックス、アクリル系共重合体ラテックス、酢酸ビニル・アクリル系共重合体ラテックス、ブタジエン・メチルメタクリル系ラテックス等の各種共重合体ラテックスや、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等を使用することができる。また、更に、酸化デンプン、エステル化デンプン(例えば、燐酸エステル化デンプン)、酵素変性デンプン、エーテル化デンプン(例えば、ヒドロキシエチルエーテル化デンプン)やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性デンプン、カゼイン、大豆蛋白などの天然系バインダー等も使用することができる。これらは、1種単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
(下塗り塗工用組成物−組成)
本実施の形態の塗工紙の製造方法に使用する下塗り塗工用組成物に含有される顔料及びバインダーの質量比は、顔料100質量部に対して、バインダー5〜13質量部(固形分として)であることが好ましく、6〜13質量部であることが更に好ましく、7〜12質量部であることが特に好ましい。下塗り塗工用組成物に含有される顔料中に中空プラスチックピグメントを含有させるだけでは、必ずしも吸水着肉性、インキセット性及び平滑性が良好なものとはならない。特に、下塗り塗工用組成物中のバインダーの含有量が多過ぎると、これらの特性に悪影響を与えることが判明したため、バインダーの含有量を上記範囲に限定する必要がある。バインダーの含有量が13質量部を超えると、得られる塗工紙の吸水着肉性、インキセット性及び平滑性が低下する。バインダーの含有量が5質量部未満であると、バインダーとしての充分な接着機能を発現しにくくなる。ここで、バインダーの固形分とは、バインダーから、分散媒あるいは溶媒である水を除いた成分をいう。
下塗り塗工用組成物中に含有される顔料及びバインダーの合計量は、下塗り塗工用組成物全体に対して90質量%以上であることが好ましく、95〜99質量%であることが更に好ましい。
本実施の形態の塗工紙の製造方法に使用する下塗り塗工用組成物には、上記顔料及びバインダーに加えて、耐水性改良剤、顔料分散剤、粘度調節剤、着色顔料、蛍光染料及びpH調節剤等一般に使用されている種々の添加剤を任意に配合することができる。顔料、バインダー、その他添加剤を含む下塗り塗工用組成物の固形分濃度は、30〜70質量%が好ましい。
(上塗り塗工用組成物−顔料)
本実施の形態の塗工紙の製造方法に使用する上塗り塗工用組成物に含有される顔料(上塗り用顔料)としては、有機顔料、無機顔料、又は有機顔料と無機顔料の混合顔料を使用することができる。
上塗り用顔料に含有される有機顔料としては、密実プラスチックピグメント、中空プラスチックピグメント等、一般に塗工用組成物に含有させて使用されるものを挙げることができる。但し、上述したように、中空プラスチックピグメントは、上塗り顔料としては使用しないことが好ましい。
上塗り用顔料に含有される無機顔料としては、上述した下塗り用顔料として使用することができる、サチンホワイト、炭酸カルシウム及びその他の無機顔料を使用することができる。これらは1種単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
上塗り用顔料として有機顔料と無機顔料とを併用する場合には、それぞれの顔料中の含有率は、特に制限されるものではなく、用途に合わせて適宜決定することができる。
(上塗り塗工用組成物−バインダー)
本実施の形態の塗工紙の製造方法で使用される上塗り塗工用組成物に含有されるバインダー(上塗り用バインダー)は、上塗り塗工用組成物に含有されるバインダー(上塗り用バインダー)が、(a’)脂肪族共役ジエン単量体30〜65質量%、(b’)エチレン性不飽和カルボン酸単量体1〜8質量%、(c’)シアン化ビニル単量体5〜35質量%、及び(d’)これらの単量体と共重合可能な他の単量体0〜64質量%の共重合体を含むラテックス(B)を含有し、その共重合体の平均粒子径が30〜150nmであることが好ましい。
上記ラテックス(B)に使用される(a’)脂肪族共役ジエン単量体(「(a’)成分」ということがある。)としては、上述した下塗り用バインダーに含有されるラテックス(A)に使用される(a)脂肪族共役ジエン単量体と同様のものを使用することができ、同様の効果を得ることができる。その使用割合は、共重合体全体に対して30〜65質量%であることが好ましく、35〜55質量%であることが更に好ましい。この(a’)成分が30質量%未満であると、共重合体が硬くなり過ぎ、充分な強度が得られないことがある。一方、(a’)成分が65質量%を超えると、強度、特にウェット強度が低下することがある。また、粘着性が高くなり、操業性が悪化することがある。
上記ラテックス(B)に使用される(b’)エチレン性不飽和カルボン酸単量体(「(b’)成分」ということがある。)としては、上述した下塗り用バインダーに含有されるラテックス(A)に使用される(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体と同様のものを使用することができ、同様の効果を得ることができる。(b’)エチレン性不飽和カルボン酸単量体の使用量は、共重合体全体に対して1〜8質量%であることが好ましく、2〜5質量%であることが更に好ましい。(b’)成分が1質量%未満では、上塗り塗工用組成物の機械的安定性、化学的安定性及び粘度安定性が低下することがある。一方(b’)成分が8質量%を超えると、塗工用組成物の粘度(BF粘度、HS粘度)が高くなり過ぎ塗工に支障をきたすことがある。
上記ラテックス(B)に使用される(c’)シアン化ビニル単量体(「(c’)成分」ということがある。)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。これらの(c’)シアン化ビニル単量体は、1種単独で、あるいは2種以上を使用することもできる。その使用量は、共重合体全体に対して5〜35質量%であることが好ましく、10〜25質量%であることが更に好ましい。(c’)成分が5質量%より少ないと印刷光沢が低下することがあり、35質量%を超えると、ドライ強度が低下し、吸水着肉性が悪化することがある。
また、上記(a’)成分、(b’)成分及び(c’)成分と共重合可能な他の単量体(d’)としては、上述した下塗り用バインダーに含有されるラテックス(A)に使用される(d)他の単量体から、上記(c’)成分を除いたものを使用することができ、同様の効果を得ることができる。その使用量は、共重合体全体に対して0〜64質量%であることが好ましい。
また、このラテックス(B)を構成する共重合体(共重合体粒子)の平均粒子径は、30〜150nm、好ましくは50〜130nmであり、更に好ましくは70〜110nmである。平均粒子径30nm未満のラテックスを製造するときには使用する乳化剤の量も多くなり、製造も難しく塗工用組成物も発泡する。また、ウエット強度、平滑性が低下するとともに吸水着肉性、白紙光沢、印刷光沢等の印刷適性が低下する。また、150nmを超えると、印刷光沢及びウエット強度が低下することがある。
上記上塗り用バインダーとして使用するラテックス(B)のゲル含有量は50〜98質量%であることが好ましく、80〜95質量%であることが更に好ましい。ゲル含有量が50質量%未満であると、ドライ強度が低いことがあり、98質量%を超えると、ドライ強度及びウェット強度が低いことがある。
上記ラテックス(B)の製造方法は、上述した下塗り用バインダーに含有されるラテックス(A)の製造方法と同様とすることが好ましく、使用原料等も同様とすることが好ましい。
(上塗り塗工用組成物−組成)
本実施の形態の塗工紙の製造方法に使用する上塗り塗工用組成物に含有される顔料及びバインダーの質量比は、上述した下塗り用バインダーに含有される顔料及びバインダーの質量比と同様とすることが好ましく、それにより同様の効果を得ることができる。
上塗り塗工用組成物中に含有される顔料及びバインダーの合計量は、上塗り塗工用組成物全体に対して90質量%以上であることが好ましく、95〜99質量%であることが更に好ましい。
本実施の形態の塗工紙の製造方法に使用する上塗り塗工用組成物には、上記顔料及びバインダーに加えて、耐水性改良剤、顔料分散剤、粘度調節剤、着色顔料、蛍光染料及びpH調節剤等一般に使用されている種々の添加剤を任意に配合することができる。顔料、バインダー、その他添加剤を含む下塗り塗工用組成物の固形分濃度は、30〜70質量%が好ましい。
本実施の形態の塗工紙の製造方法に使用する、下塗り用バインダーと上塗り用バインダーとは、異なる成分としてもよいが、同一成分としてもよい。同一成分とすると、塗工紙の製造工程において、一種類のバインダーを調合すればよいことになるため、生産効率を向上させることができる。
(塗工原紙)
本実施の形態の塗工紙の製造方法に使用する塗工原紙は特に限定されず、下塗り塗工用組成物及び上塗り塗工用組成物を塗工することにより塗工紙として使用可能であればよい。好ましくは、坪量30〜200g/m2、更に好ましくは、坪量40〜180g/m2の紙である。坪量200g/m2を超える塗工原紙に、本実施の形態において使用する下塗り塗工用組成物及び上塗り塗工用組成物を塗工しても、印刷光沢、平滑性及び白紙光沢が良好で、且つ吸水着肉性及びインキセット性が良好な塗工紙を得られないことがある。塗工原紙の原料パルプの種類は特に限定されず、例えば、機械パルプ、化学パルプ、古紙パルプ(DIP)等が挙げられる。また、塗工原紙には、内添剤として炭酸カルシウム、クレー及びタルク等の顔料、アルキルケテンダイマー、ロジン酸石鹸及び硫酸バンド等のサイズ剤、カチオン澱粉及びポリアクリルアミド等の紙力増強剤、並びに嵩高剤等を使用することもできる。更に、上記塗工原紙の表面には、サイズプレス、ゲートロールコーター、メータードサイズプレス等を使用して、アクリルアミド又はアクリル−スチレンポリマー等の表面サイズ剤を塗布することもできる。
(塗工紙の製造)
本実施の形態の塗工紙の製造方法は、上述した下塗り塗工用組成物を塗工原紙に塗工して下塗り塗工層を形成し、次に下塗り塗工層上に上述した上塗り塗工用組成物を塗工して上塗り塗工層を形成する塗工工程を有するものである。下塗り塗工用組成物や上塗り塗工用組成物を塗工する方法としては、一般の塗工紙の製造方法において用いられている方法を採用することができる。例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ロールコーター、チャンプレックスコーター、サイズプレスコーター、グラビアコーター等を使用して塗工することができる。これらの中でも、特にブレードコーターを用いて下塗り塗工層及び上塗り塗工層を形成することが好ましい。また、下塗り塗工した後に、乾燥させてから上塗り塗工を行うことが好ましい。
本実施の形態の塗工紙の製造方法では、下塗り塗工層の塗工量が、3〜15g/m2であることが好ましい。3g/m2より少ないと充分な平滑性が得られないため、上塗り塗工後の光沢や平滑度、印刷適性が低下することがある。すなわち、2度塗工するメリットが小さくなることがある。15g/m2より多いとコストの割りに品質の向上が小さくなることがある。また、上塗り塗工層の塗工量は、3〜15g/m2であることが好ましい。3g/m2より少ないと充分な光沢、平滑性、印刷適性が得られないことがあり、15g/m2より多いと、コストが掛かりすぎることがある。
本実施の形態の塗工紙の製造方法では、塗工工程以外に、塗工原紙に下塗り塗工用組成物と上塗り塗工用組成物とを塗工して未乾燥塗工紙を作製した後に、その未乾燥塗工紙を乾燥させる乾燥工程を有することが好ましい。乾燥工程における乾燥方法としては、特に限定されるものではなく、一般の塗工紙の製造方法において用いられている方法を採用することができる。例えば、熱風乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥等を採用することができる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本実施の形態の塗工紙の製造方法では、乾燥工程の後に更に、カレンダー工程を設けてもよい。カレンダー処理を行うことで、得られた塗工紙の塗工層の特性を充分に活かすことができるようになる。特に、カレンダー処理により、平滑性及び光沢度を充分に引き出すことができる。カレンダー処理としては、スーパーカレンダー、マシンカレンダー及びソフトニップカレンダー等が挙げられる。これらは1種のみを施してもよく、2種以上を施してもよい。
本実施の形態の塗工紙の製造方法は、上述の工程以外に適宜所望の工程を有してもよい。
本発明の塗工紙の一の実施の形態は、上述した本発明の塗工紙の製造方法の一の実施の形態で得られた塗工紙である。そのため、印刷光沢、平滑性及び白紙光沢が良好で、更に吸水着肉性及びインキセット性が良好な塗工紙である。
本実施の形態の塗工紙は、枚葉オフセット印刷用及び輪転オフセット印刷用として特に好適に使用することができる。また、その他の平版印刷用、グラビア印刷等の凹版印刷用、及び凸版印刷用としても使用することができる。
次に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。尚、実施例において割合を示す「部」及び「%」はそれぞれ質量部及び質量%を意味する。
1.ラテックスの製造
(ラテックス(I))
攪拌機を備え、温度調節の可能なオートクレーブ中に、水200部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.8部、過硫酸カリウム1.0部、重亜硫酸ナトリウム0.5部、そして1段目単量体成分として、1,3−ブタジエン25部、スチレン10部、アクリロニトリル10部及びt−ドデシルメルカプタン0.2部を一括して仕込み、45℃で6時間反応させ、重合転化率が70%以上であることを確認した(1段目の重合)。その後、2段目単量体成分として、1,3−ブタジエン15部、スチレン25部、アクリロニトリル6部、メチルメタクリレート5部、イタコン酸2部及びアクリル酸2部を7時間にわたって連続的に添加しながら60℃で重合を継続した。連続添加終了後も更に70℃で6時間反応させ(2段目の重合)、共重合体からなる粒子を含むラテックス(I)を得た。最終的な重合転化率は99%であった。得られたラテックス(I)について、共重合体粒子(ポリマー粒子)の平均粒子径(粒子径)、ゲル含有量、及びガラス転移温度(Tg)を以下の方法で求めた。結果を表1に示す。
(ラテックス(II))
攪拌機を備え、温度調節の可能なオートクレーブ中に、水200部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.8部、過硫酸カリウム1.0部、重亜硫酸ナトリウム0.5部、そして1段目単量体成分として、1,3−ブタジエン25部、スチレン20部、及びt−ドデシルメルカプタン0.2部を一括して仕込み、45℃で6時間反応させ、重合転化率が70%以上であることを確認した(1段目の重合)。その後、2段目単量体成分として、1,3−ブタジエン15部、スチレン31部、メチルメタクリレート5部、イタコン酸2部、及びアクリル酸2部を7時間にわたって連続的に添加しながら60℃で重合を継続した。連続添加終了後も更に70℃で6時間反応させ(2段目の重合)、共重合体からなる粒子を含むラテックス(II)を得た。最終的な重合転化率は99%であった。得られたラテックス(II)について、共重合体粒子(ポリマー粒子)の平均粒子径、ゲル含有量、及びガラス転移温度を以下の方法で求めた。結果を表1に示す。
2.ラテックス(I)及びラテックス(II)の性状測定
(1)平均粒子径
共重合体粒子の平均粒子径は、レーザーパーティクルアナライザー(大塚電子社製、商品名:LP−510、モデルPAR−III)を用い、常法により求めた。
(2)ゲル含有量
ラテックスを水酸化ナトリウムによりpH8.0に調整した後、イソプロパノールで凝固させ、この凝固物を蒸留水により洗浄し、乾燥させて乾燥試料を得た。その後、所定量(約0.03g)の乾燥試料を、100mlのトルエンに、25℃で、20時間浸漬した。次いで、この溶液を120メッシュの金網で濾過し、得られる残存固形分の質量を測定し、処理前のラテックスの全固形分に対する割合(質量%)を求めた。
(3)ガラス転移温度(Tg)
ラテックスを130℃で30分間加熱乾燥し、フィルムを作製した。示差走査熱量計(セイコー電子社製、商品名:DSC−220C)を用いて、昇温速度15℃/分の条件で、この乾燥フィルムのガラス転移温度(℃)を測定して、共重合体のガラス転移温度とした。
Figure 2006037312
3.塗工用組成物の調製
上記で製造したラテックス(I)及びラテックス(II)と、下記成分(1)〜(8)とを用いて、表2の処方(配合U1〜U4(下塗り塗工用組成物)、T1〜T3(上塗り塗工用組成物))により、下塗り塗工用組成物及び上塗り塗工用組成物を調製した。
(1)2級カオリンクレー;商品名「HT」、エンゲルハード社製。
(2)微粒カオリンクレー;商品名「ミラグロス」、エンゲルハード社製。
(3)サチンホワイト;商品名「SW−BL」、白石工業社製。
(4)重質炭酸カルシウムA;商品名「カービタル60」、イメリス社製。
(5)重質炭酸カルシウムB;商品名「カービタル90」、イメリス社製。
(6)軽質炭酸カルシウム;商品名「ブリリアント15」、白石工業社製。
(7)澱粉;商品名「MS4600」、日本食品工業社製。
(8)中空プラスチックピグメント(中空PP);商品名「AE851」、JSR社製。
尚、表2中、「固形分(質量%)」とは、紙塗工用組成物総質量に占める、ラテックス及び上記(1)〜(8)の総固形分質量の比率(質量%)を意味する。また、「固形分(質量%)」以外の、各成分を示す数値は、顔料全体を100質量部としたときの質量部で示した。
4.下塗り塗工用組成物及び上塗り塗工用組成物の特性測定
(流動性)
得られた下塗り塗工用組成物及び上塗り塗工用組成物の流動性を、ハイシェアー粘度(H−VIS(mPa・s))を測定することにより評価した。ハイシェアー粘度が低いほど塗工時の流動性が良好である。ハイシェアー粘度は、ハーキュレスハイシェアービスコメーターを用い、下記の条件で求めた。すなわち、内径40mm、有効深さ80.5mmのカップに適量の塗工液を入れ、直径39.8mm、有効長25mm(カップとのクリアランスは0.1mm)のボブF(回転体)を使用して、スイープ時間を10秒にセットして最大回転数を8800rpmとして流動曲線([剪断測度(回転数)]−[剪断応力(トルク)]曲線)を求め、これより見掛け粘度を求めた。この測定は、熊谷理機工業社製の「ハーキュレス高剪断粘度計」で行った。結果を表2に示す。
Figure 2006037312
表2より、下塗り塗工用組成物U1及びU2は、重質炭酸カルシウムの含有量が多いため、中空プラスチックピグメントを含有していてもU3に対して流動性が同等であることが分かる。これに対し、上塗り塗工用組成物T2及びT3は、重質炭酸カルシウムの含有量が少ないため、中空プラスチックピグメントによる流動性の低下が生じていることが分かる。
5.塗工紙の製造
表2に示す、下塗り塗工用組成物(配合U1〜U4)及び上塗り塗工用組成物(配合T1〜T3)を表3に示すように組み合わせて用い、ラボブレードコーター(SMT社製、商品名「枚葉式コーター」)による塗工を実施し、以下に示す方法により塗工紙(オフセット印刷用塗工紙)を作製した。そして、以下に示す各種評価(塗工紙の評価)を行った。結果を表3に示す。表3において、「下塗り用」は、「下塗り塗工用組成物」を示し、「上塗り用」は、「上塗り塗工用組成物」を示す。また、「評価」は、「塗工紙の評価」を示す。
(実施例1〜4、比較例1〜3)
上記下塗り塗工用組成物を、塗工原紙(80.5g/m2)上に、上記ラボブレードコーターにより、塗工量が片面10.0±0.5g/m2となるように塗工し、200℃の熱風で10秒間乾燥した。その後、同条件で、裏面を塗工した。次に、上塗り塗工用組成物を、上記下塗り塗工を施した塗工原紙上に、上記下塗り塗工用組成物を塗工した方法と同様の方法により、両面に塗工し、乾燥させた。上塗り塗工用組成物の塗工量は、片面13.0±0.5g/m2とした。得られた塗工紙を、温度23℃、湿度50%の恒温恒湿槽中に1昼夜放置した。次に、カレンダー工程において、由利ロール社製の商品名「ダブルテストカレンダー」を使用し、線圧100kg/cm、ロール温度50℃の条件でスーパーカレンダー処理を4回行い、オフセット印刷用塗工紙を得た。
6.塗工紙の評価
(1)ドライピック強度(DP)
RI印刷機(明製作所社製)で印刷したときのピッキングの程度を肉眼で判定し、印刷強度を評価した。ピッキングの全く起きていない場合を5とし、ピッキングが多いものほど小さい数字とした。そして、合格レベルを3.5以上とした。
(2)ウェットピック強度(WP)
上記RI印刷機を用いて、塗工紙表面を吸水ロールで湿してから、RI印刷機で印刷したときのピッキングの程度を肉眼で判定し、印刷強度を評価した。評価基準は、上記「(1)ドライピック強度」の場合と同様とした。
(3)印刷光沢
上記RI印刷機を用いて、オフセット用インキを塗工紙にベタ刷りした後、村上式光沢計により入射角60°、反射角60°で測定した。表3において、[単色]とは墨、藍、紅又は黄インクのどれか一色(今回は墨)を一回だけ印刷することであり、[重色]とは藍、紅及び黄インクの中のどれか2色(今回は藍/紅)を連続で印刷することである。
(4)白紙光沢
未印刷の塗工紙を村上式光沢計により入射角75°、反射角75°で光沢度を測定した。
(5)吸水着肉性
オフセット印刷時の湿し水がついた後の吸水着肉性を評価するためのテストを実施した。上記RI印刷機を用いて、塗工紙表面を吸水ロールで湿してから、RI印刷機でピッキングを起こさない条件で印刷した。印刷面をスキャナーに取り込み、その輝度を測定して比較した。数値が高いものが良好である。
(6)インキセット性
上記RI印刷機を使用して印刷し、印刷の後、印刷機上で印刷面に白紙を乗せて、一定時間後にロールで圧着し、このときのインキの付着状態からインキセット性を評価する。インキの付着した紙をスキャナーに取り込み、インキの輝度を測定して判定する。インキ付着の度合が大きいものほど、インキセットは遅く、輝度は大である。すなわち、数値の小さいほうがインキセット性は良好である。
(7)不透明度
ハンター白色度計(熊谷社製、商品名「AUTOMATIC REFLECTO METER」)を用い、試料に白色、黒色の標準板を裏当てし、緑色フィルターを用いてそれぞれの反射率を測定し、前者(白色標準板使用)に対する後者(黒色標準板使用)の比率%で示した。
(8)平滑性
東洋精機社製、商品名「マイクロトポグラフ」を使用し、3kgf/cm2の加圧下、10msec後に測定した。平均粗さがμmで示される。数値が小さいほど平滑である。
Figure 2006037312
実施例1〜4により得られた塗工紙は、いずれも、各評価結果が良好であり、印刷光沢、平滑性、白紙光沢、吸水着肉性及びインキセット性に優れたものであることが分かる。これに対し、比較例1により得られた塗工紙は、下塗り塗工用組成物及び上塗り塗工用組成物中に中空プラスチックピグメントが含有されていないため、白色光沢、印刷光沢に劣り、更に平滑度及び不透明度にも劣ることが分かる。また、比較例2により得られた塗工紙は、上塗り塗工用組成物だけに中空プラスチックピグメントが多く含有されているため、吸水着肉性及びインキセット性に劣ることが分かる。更に、比較例3では下塗り塗工用組成物の炭酸カルシウム量が少なく、バインダー量が多いため、流動性が悪く、吸水着肉性に劣り、インキセット性も遅い。
実施例1〜4により得られたそれぞれの塗工紙を比較すると、実施例2により得られた塗工紙が、下塗り塗工用組成物だけでなく、上塗り塗工用組成物中にも中空プラスチックピグメントを含有しているため、吸水着肉性及びインキセット性が、実施例1の場合より劣る結果となっていることが分かる。
本発明の塗工紙の製造方法は、特に枚葉オフセット印刷用あるいは輪転オフセット印刷用の用紙(塗工紙)の製法として有用である。また、その他の平版印刷用紙、グラビア印刷等の凹版印刷用紙、及び凸版印刷用紙等の製法にも有用である。本発明の塗工紙は、特に枚葉オフセット印刷用あるいは輪転オフセット印刷用の用紙として有用である。

Claims (7)

  1. 顔料とバインダーとを含有する下塗り塗工用組成物を塗工原紙に塗工して下塗り塗工層を形成し、前記下塗り塗工層上に顔料とバインダーとを含有する上塗り塗工用組成物を塗工して上塗り塗工層を形成する塗工工程を有する塗工紙の製造方法であって、
    前記下塗り塗工用組成物が、前記顔料100質量部に対して前記バインダー5〜13質量部を含有し、
    前記下塗り塗工用組成物に含有される前記顔料が、中空プラスチックピグメント3〜20質量部及び重質炭酸カルシウム60〜95質量部を含有する(前記顔料全体を100質量部とする)塗工紙の製造方法。
  2. 前記下塗り塗工用組成物に含有される顔料が、更に他の顔料を、顔料全体100質量部に対して37質量部以下含有する請求項1に記載の塗工紙の製造方法。
  3. 前記上塗り塗工用組成物には前記中空プラスチックピグメントが含有されていない請求項1又は2に記載の塗工紙の製造方法。
  4. 前記下塗り塗工用組成物に含有されるバインダー(下塗り用バインダー)が、(a)脂肪族共役ジエン単量体30〜65質量%、(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体1〜8質量%、及び(d)これらの単量体と共重合可能な他の単量体27〜69質量%の共重合体を含むラテックスを含有し、前記共重合体の平均粒子径が30〜120nmである請求項1〜3のいずれかに記載の塗工紙の製造方法。
  5. 前記上塗り塗工用組成物に含有されるバインダー(上塗り用バインダー)が、(a’)脂肪族共役ジエン単量体30〜65質量%、(b’)エチレン性不飽和カルボン酸単量体1〜8質量%、(c’)シアン化ビニル単量体5〜35質量%、及び(d’)これらの単量体と共重合可能な他の単量体0〜64質量%の共重合体を含むラテックスを含有し、前記共重合体の平均粒子径が30〜150nmである請求項1〜4のいずれかに記載の塗工紙の製造方法。
  6. 前記下塗り用バインダーと前記上塗り用バインダーとが同一成分である請求項1〜5のいずれかに記載の塗工紙の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の塗工紙の製造方法により製造した塗工紙。
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