JP2006037298A - 紙塗工用組成物及び塗工紙 - Google Patents

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Abstract

【課題】塗工時の操業性が良好で、安価で、ドライ強度、ウエット強度、白紙光沢及び印刷光沢が良好な塗工紙を得ることができる紙塗工用組成物を提供する。
【解決手段】顔料とバインダーとを含有する紙塗工用組成物であって、顔料が、サチンホワイトを含有し、バインダーが、(a)脂肪族共役ジエン単量体30〜65質量%、(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体1〜8質量%、及び(c)これらの単量体と共重合可能な他の単量体27〜69質量%の共重合体を含むラテックスを含有し、前記共重合体の平均粒子径が30〜120nmである紙塗工用組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、紙塗工用組成物及び塗工紙に関し、更に詳しくは、塗工時の操業性が良好で、安価で、ドライ強度、ウエット強度、白紙光沢及び印刷光沢が良好な塗工紙を得ることができる紙塗工用組成物及び塗工紙に関する。
紙の外観や印刷適性を改良するために、紙(塗工原紙)に、顔料とバインダーとを含有する紙塗工用組成物が塗工される。そして、紙塗工用組成物に含有される顔料として安価なサチンホワイトを使用すると、塗工紙の印刷光沢及び白紙光沢が向上することは古くから知られていた(例えば、特許文献1参照)。しかし、サチンホワイトを使用すると、紙塗工用組成物の流動性が悪くなり、特に高剪断速度における粘度(ハイシェアー粘度)が高くなるため、塗工原紙に紙塗工用組成物を高速で塗工することが困難になるという問題があった。そして、流動性の悪さを解消するためには、紙塗工用組成物の固形分を低くしなければならないという問題があった。そして、これらの問題は、ブレード塗工を行うときに顕著に現れた。また、顔料としてサチンホワイトを使用すると、バインダーの使用量を多くする必要があるという問題もあった。
一方、紙塗工用組成物に含有される顔料として中空プラスチックピグメントを使用することもでき、塗工紙の印刷光沢及び白紙光沢を向上させることができるが、中空プラスチックピグメントが高価であるため、塗工紙が高価なものとなるという問題があった。
特開平9−256295号公報
本発明は、上述の従来技術の問題に鑑みなされたものであり、塗工時の操業性が良好で、安価で、ドライ強度、ウエット強度、白紙光沢及び印刷光沢が良好な塗工紙を得ることができる紙塗工用組成物、及び、その紙塗工用組成物を塗工原紙に塗工して得られる塗工紙を提供することを特徴とする。
上記課題を解決するため、本発明によって以下の紙塗工用組成物及び塗工紙が提供される。
[1] 顔料とバインダーとを含有する紙塗工用組成物であって、前記顔料が、サチンホワイトを含有し、前記バインダーが、(a)脂肪族共役ジエン単量体30〜65質量%、(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体1〜8質量%、及び(c)これらの単量体と共重合可能な他の単量体27〜69質量%の共重合体を含むラテックスを含有し、前記共重合体の平均粒子径が30〜120nmである紙塗工用組成物。
[2] 前記ラテックスのトルエンゲル含有量が70〜98質量%である[1]に記載の紙塗工用組成物。
[3] 前記共重合体が、(a)脂肪族共役ジエン単量体30〜65質量%、(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体2〜8質量%、及び(c)これらの単量体と共重合可能な他の単量体27〜68質量%の共重合体である[1]又は[2]に記載の紙塗工用組成物。
[4] 前記共重合体が、(a)脂肪族共役ジエン単量体30〜65質量%、(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体1〜8質量%、(d)アミド基を有する単量体及び/又は水酸基を有する単量体1〜8質量%、及び(e)これらの単量体と共重合可能な他の単量体19〜68質量%の共重合体である[1]又は[2]に記載の紙塗工用組成物。
[5] 前記共重合体が、複数のガラス転移温度を有するものであり、複数の前記ガラス転移温度の中で最も低いガラス転移温度が−50〜0℃の範囲にあり、複数の前記ガラス転移温度の中で最も高い前記ガラス転移温度と最も低い前記ガラス転移温度との差が8℃以上である[1]〜[4]のいずれかに記載の紙塗工用組成物。
[6] 前記共重合体が、示差走査熱量計で測定したときに得られる示差走査熱量曲線が転移領域を有するものであり、前記転移領域が−80〜40℃の範囲にあり、前記転移領域の最低温度と最高温度との差が20℃以上である[1]〜[4]のいずれかに記載の紙塗工用組成物。
[7] 前記サチンホワイトが、前記顔料全体に対して、1〜25質量%含有されている[1]〜[6]のいずれかに記載の紙塗工用組成物。
[8] 塗工原紙と、前記塗工原紙に[1]〜[7]のいずれかに記載の紙塗工用組成物が塗工されてなる塗工層とを備える塗工紙。
[9] 塗工原紙と、前記塗工原紙に[1]〜[7]のいずれかに記載の紙塗工用組成物がブレード塗工方式で塗工された塗工層とを備える塗工紙。
本発明の紙塗工用組成物によれば、バインダーが平均粒子径30〜120nmの共重合体を含む所定のラテックスを含有するため、顔料としてサチンホワイトを含有していても、流動性に優れたものとなり、特にハイシェアー粘度の低いものとなる。そして、本発明の紙塗工用組成物は上記のようにサチンホワイトを含有しているため、本発明の紙塗工用組成物を塗工原紙に塗工することにより、安価で、ドライ強度、ウエット強度、白紙光沢及び印刷光沢が良好な本発明の塗工紙を得ることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施の形態」という。)を具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
本発明の紙塗工用組成物の一の実施の形態は、顔料とバインダーとを含有する紙塗工用組成物であって、顔料が、サチンホワイトを含有し、バインダーが、(a)脂肪族共役ジエン単量体30〜65質量%、(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体1〜8質量%、及び(c)これらの単量体と共重合可能な他の単量体27〜69質量%の共重合体を含むラテックスを含有し、その共重合体の平均粒子径が30〜120nmである紙塗工用組成物である。ここで、平均粒子径とは、動的光散乱法を利用して測定したものであり、キュムラント法による平均粒子径である。この測定は例えば、大塚電子社の「レーザー粒径解析システムLP−510、モデルPAR−III」によって測定することができる。
(バインダー(ラテックス))
本実施の形態の紙塗工用組成物に含有されるバインダーは特定のラテックスを含有する。そのラテックスは、(a)脂肪族共役ジエン単量体(「(a)成分」ということがある。)30〜65質量%、(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体(「(b)成分」ということがある。)1〜8質量%、及び(c)これらの単量体と共重合可能な他の単量体(「(c)成分」ということがある。)27〜69質量%の共重合体を含み、その共重合体の平均粒子径が30〜120nmである。
上記ラテックスに使用される(a)脂肪族共役ジエン単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、クロロプレン等が挙げられるが、好ましくは1,3−ブタジエンである。これらの(a)脂肪族共役ジエン単量体は、1種単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。(a)脂肪族共役ジエン単量体は、得られる重合体に適度な柔軟性と伸びを与え、耐衝撃性を付与するために有用な成分であり、その使用割合は共重合体全体に対して30〜65質量%であるが、35〜55質量%であることが好ましい。この(a)成分が30質量%未満であると、紙塗工用組成物が硬くなり過ぎ、充分なドライ強度が得られない。一方、(a)成分が65質量%を超えると、充分な強度、特にウエット強度が得られず、また、粘着性が高くなり、操業性が悪化する。
上記ラテックスに使用される(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。これらの(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、1種単独で、あるいは2種以上を使用することもできる。かかる(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体の使用割合は、共重合体全体に対して1〜8質量%であり、2〜6質量%であることが好ましく、3〜4質量%であることが更に好ましい。(b)成分が1質量%未満では、紙塗工用組成物の機械的安定性、化学的安定性及び粘度安定性が低下する。一方(b)成分が8質量%を超えると、紙塗工用組成物の粘度及びハイシェアー粘度が高くなり過ぎ、塗工に支障をきたす。ここで、「ハイシェアー粘度」とは、ハーキュレスハイシェアービスコメーターを用い、下記の条件で求めたものである。すなわち、内径40mm、有効深さ80.5mmのカップに適量の塗工液を入れ、直径39.8mm、有効長25mm(カップとのクリアランスは0.1mm)のボブF(回転体)を使用して、スイープ時間を10秒にセットして最大回転数を8800rpmとして、流動曲線([剪断測度(回転数)]−[剪断応力(トルク)]曲線)を求め、これより見掛け粘度を求めた。この測定は例えば、熊谷理機工業社製の「ハーキュレス高剪断粘度計」で行うことができる。
また、上記(a)成分、(b)成分と共重合可能な他の単量体(c)(「(c)成分」ということがある。)としては、以下のものが挙げられ、その使用割合は、共重合体全体に対して27〜68質量%であり、27〜63質量%が好ましい。(c)成分としては芳香族ビニル単量体、アルキル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、アクリルアミド系化合物、N−メチロールアクリルアミド、水酸基を有する単量体等が挙げられる。これらのうち、芳香族ビニル単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレンなどが挙げられ、特にスチレンが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、特にメチルメタクリレートが好ましい。更にアクリルアミド系化合物としては、アクリルアミド、メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。また、水酸基を有する単量体としては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート等が挙げられる。これら(c)成分は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもかまわない。(c)成分は、共重合体に、主として目的に応じた適度なガラス転移温度を与えるために使用するものである。
また、本実施の形態の紙塗工用組成物に含有されるラテックスを構成する共重合体は、(a)脂肪族共役ジエン単量体30〜65質量%、(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体1〜8質量%、(d)アミド基を有する単量体及び/又は水酸基を有する単量体(「(d)成分」ということがある。)1〜8質量%、及び(e)これらの単量体と共重合可能な他の単量体(「(e)成分」ということがある。)19〜68質量%の共重合体であり、平均粒子径が30〜120nmであることが好ましい。ここで、(a)脂肪族共役ジエン単量体及び(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、上述した(a)成分及び(b)成分と同じである。
(d)成分としては、上述した(c)成分の中の、アミド基を含有する単量体及び/又は水酸基を含有する単量体を挙げることができる。(d)成分が1質量%以上であると粘度安定性が更に向上する。(d)成分が更に8質量%を超えるとラテックスあるいはこれを用いた塗工液の粘度が高くなり過ぎることがある。
また、(e)成分としては、上述した(c)成分から(d)成分を除いた単量体を挙げることができる。
上記バインダーに含有されるラテックスを構成する共重合体の平均粒子径は、30〜120nmであり、好ましくは60〜110nm、更に好ましくは70〜100nmである。30nm未満であると、紙塗工用組成物のウエット強度が低下し、紙塗工用組成物が発泡する。また、平均粒子径30nm未満の共重合体を含むラテックスを製造するときには使用する乳化剤の量も多くなり、製造も難しい。120nmを超えると、ハイシェアー粘度が高くなり過ぎ、紙塗工用組成物の塗工に支障をきたす。ここで、共重合体の平均粒子径というときは、ラテックス中に、乳化剤により乳化されて分散する共重合体を含む粒子の平均粒子径をいう。
上記バインダーに含有されるラテックスのゲル含有量は70〜98質量%であることが好ましく、85〜95質量%であることが更に好ましい。ゲル含有量が70質量%未満であると、得られる塗工紙のドライ強度が弱くなることがある。98質量%を超えると、ドライ強度及びウエット強度が弱くなることがある。ここで、ゲル含有量とは、ラテックス中の共重合物等をイソプロパノール中で凝固させ、得られた凝固物をトルエンに浸漬させたときの、トルエン中に残存する固形物の上記凝固物に対する質量比率(トルエンゲル含有率)である。
本実施の形態の紙塗工用組成物に使用するラテックスを構成する共重合体は、複数のガラス転移温度を有するものであり、それら複数のガラス転移温度の中で最も低いガラス転移温度が−50〜0℃の範囲にあり、更に、それら複数のガラス転移温度の中で最も高いガラス転移温度と最も低いガラス転移温度との差が8℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度は、示差走査熱量計で測定された値である。上記複数のガラス転移温度の中で最も低いガラス転移温度が−50℃より低いと、ラテックスの粘着性が大となり、塗工時の操業性が悪くなることがあり、0℃より高いとラテックスが硬くなり過ぎて接着性が低下することがある。また、複数のガラス転移温度の中で最も高いガラス転移温度と最も低いガラス転移温度との差が8℃より小さいと、強度、ウエット強度が低下する傾向にある。
上述の複数のガラス転移温度を有するラテックスは、ラテックスを構成する共重合体の粒子(ポリマー粒子)が、ガラス転移温度の異なる複数のポリマーから構成されることにより、そのガラス転移温度が複数となるものである。このガラス転移温度の異なる複数のポリマーは、「コア−シェル構造」を形成することが好ましい。すなわち、一のポリマーがコア(中心部分)となり、他のポリマーがそのコアの外周を覆ってシェルを形成するものであることが好ましい。更に他のガラス転移温度のポリマーを有する場合には、更にシェルの外周を覆って複数のシェルの層(シェル層)を形成するようにポリマー粒子が構成されることが好ましい。そして、ポリマー粒子の表面を構成するシェルを形成するポリマーのガラス転移温度が高いことが好ましく、コアに近いポリマーほどガラス転移温度が低く、コアを構成するポリマーが最もガラス転移温度が低いことが好ましい。ガラス転移温度が低いと衝撃吸収性が向上する。上述のように構成することにより、コア等の内側のポリマーの衝撃吸収性を向上させ、得られる塗工紙のドライ強度を更に高くすることができる。
更に、本実施の形態の紙塗工用組成物に使用するラテックスを構成する共重合体は、示差走査熱量計により測定したときに得られる示差走査熱量曲線が、転移領域を有するものであり、転移領域が−80〜40℃の範囲にあり、転移領域の最低温度と最高温度との差が20℃以上であることが好ましい。転移領域における最低温度が−80℃より低いと、粘着性が大きくなり塗工時の操業性が低下する外、ラテックスの生産もしづらくなる。転移領域における最高温度が40℃より高いと、ラテックスが硬くなり過ぎて接着性が低下することがある。また、転移領域の最低温度と最高温度との差が20℃より小さいと、強度、ウエット強度が低下する傾向にある。
「示差走査熱量計により測定したときに得られる示差走査熱量曲線が、転移領域を有する」とは、上記ラテックスをサンプルとして示差走査熱量計でガラス転移温度の測定を行ったときに得られる示差走査熱量曲線において、サンプルがガラス転移するときのガラス転移領域が、一定の温度領域に渡って幅広く広がった状態となる。そして、示差走査熱量曲線の微分曲線([温度]−[電力/時間]曲線)の上記温度領域において、転移領域のピーク部分(先端部分)の形状が、通常のピーク形状のように三角形の頂点部分のような形状ではなく、台形の上底のような幅広いピーク形状となることをいう。従って、この場合には、一つ又は複数のガラス転移温度というものを観念できず、示差走査熱量曲線におけるガラス転移を示す領域全体が、ガラス転移領域(転移領域)としてとらえられる。転移領域の範囲は、上記示差走査熱量曲線([温度]−[電力]曲線)において、[電力]の値が変化し始める温度から、[電力]の値の一連の変化が終わる温度までの範囲である。そして、このような示差走査熱量曲線が得られるラテックスは、それを構成するポリマー粒子が、ガラス転移温度の異なる複数のポリマーから構成され、それぞれのガラス転移温度が連続的に並ぶように構成されている。本実施の形態においては、ラテックスを構成するポリマー粒子が、上述した「コア−シェル構造」のように、コアとその外周を覆う多数のシェルから構成されることが好ましい(「コア−連続シェル構造」)。この場合、コアを構成するポリマーのガラス転移温度が最も低く、その外周を覆う多数のシェル層は、内側から外側に向かって順次ガラス転移温度が高くなり、最外周のシェルを構成するポリマーのガラス転移温度が最も高いことが好ましい。そして、隣り合うポリマーのガラス転移温度は近い値であることが好ましい。このように構成することにより、ポリマー粒子内部の衝撃吸収性を更に向上させることができ、得られる塗工紙のドライ強度を更に高くすることができる。
上記ラテックスは乳化重合により得ることが好ましい。乳化重合するに際しては、水性媒体中で乳化剤、重合開始剤、分子量調節剤などを用いて製造することができる。ここで、乳化剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを単独で、あるいは2種以上を併用して使用できる。ここで、アニオン性界面活性剤としては、例えば高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、ポリエチレングリコールアルキルエーテルの硫酸エステルなどが挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、通常のポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型、アルキルフェニルエーテル型などが用いられる。両性界面活性剤としては、アニオン部分としてカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、燐酸エステル塩を、カチオン部分としてはアミン塩、第4級アンモニウム塩を持つものが挙げられ、具体的にはラウリルベタイン、ステアリルベタインなどのベタイン類、ラウリル−β−アラニン、ステアリル−β−アラニン、ラウリルジ(アミノエチル)グリシン、オクチルジ(アミノエチル)グリシン、などのアミノ酸タイプのものなどが用いられる。
重合開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性重合開始剤、過酸化ベンゾイル、ラウリルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルなどの油溶性重合開始剤、還元剤との組み合わせによるレドックス系重合開始剤などが、それぞれ単独であるいは組み合わせで使用できる。
分子量調節剤、キレート化剤、無機電解質なども公知のものが使用できる。分子量調節剤としては、クロロホルム、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素類、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸などのメルカプタン類、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイドなどのキサントゲン類、ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマー、1,1−ジフェニルエチレンなど通常の乳化重合で使用可能なものを全て使用できる。
重合方法としては、単量体の一部を重合した後、その残りを連続的にあるいは断続的に添加する方法、あるいは単量体を重合のはじめから連続的に添加する方法が好ましい。上述した、「コア−シェル構造」のポリマー粒子を有するラテックスを作製するときには、1段目と2段目の単量体組成を変えた2段重合を行う。このとき、1段目の重合を充分進行させた後に2段目の重合を行うのが好ましい。また、上述した、「コア−連続シェル構造」のポリマー粒子を有するラテックスを作製するときには、一部の単量体を重合した後、残りの単量体をその組成を連続的に変化させながらインクレメントして重合する、あるいは残りの単量体を2段に分け、各々を適度な速度でインクレメントして重合する方法が好ましい。重合温度は、通常20〜85℃、好ましくは25〜80℃である。重合時間は、通常5〜30時間、好ましくは8〜25時間である。
(バインダー(その他))
上記バインダーは、上記ラテックスの他にも、澱粉、カゼイン、大豆蛋白等を含有してもよい。これらの中では、澱粉が好ましい。澱粉としては、燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、酸化澱粉、酵素変性澱粉等の加工澱粉を使用することができる。これらは、1種単独で又は2種以上を併用することができる。
(顔料)
本実施の形態の紙塗工用組成物に使用する顔料は、サチンホワイトを含有する。サチンホワイトを含有することにより、得られる塗工紙の印刷光沢及び白紙光沢が向上する。サチンホワイトは、針状結晶であり、通常、長さ1〜3μm、断面の長径0.1〜0.2μmである。断面とは、長さ方向に垂直な平面で切断したときの切断面である。
サチンホワイトとは、スルホアルミン酸カルシウムのことであり、以下の構造式で示される化合物である。すなわち、pH(水素イオン指数)12.3以上のとき、4CaO・Al23・3CaSO4・31〜32H2O、pH12.3以下のとき、3CaO・Al23・3CaSO4・31〜32H2Oである。pH=12.3のときは上記2種の構造式が混在する状態になる。サチンホワイトは市販品を利用することも、また自製したものを使用することもできる。市販品としては、例えば白石工業社製のSW(商品名)、SW−B(商品名)、SW−BL(商品名)を使用することができる。また、消石灰に硫酸アルミニウムを反応させて自製して使用することも可能である。
顔料中のサチンホワイトの含有量は、顔料全体に対して3〜25質量%であることが好ましく、5〜12質量%であることが更に好ましい。3質量%より少ないと、得られる塗工紙の白紙光沢及び印刷光沢に劣ることがあり、25質量%より多いと流動性が低下することがある。
本実施の形態の紙塗工用組成物で使用する上記顔料として、更に、カオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム等を使用することができる。これらの中でも、重質炭酸カルシウムが好ましく、カオリンと重質炭酸カルシウムとを使用することも好ましい。これら、サチンホワイト以外の顔料成分の含有量は、本実施の形態の紙塗工用組成物の効果を損なわない限り特に限定されるものではない。
(紙塗工用組成物)
本実施の形態の紙塗工用組成物は、上述した顔料とバインダーとを含有する。紙塗工用組成物に含有される顔料とバインダーとの質量比は、顔料100質量部に対して、バインダー7〜18質量部(固形分として)であることが好ましい。バインダーが、顔料100質量部に対して7質量部より少ないと、バインダーとしての充分な接着機能を発現し難くなり、18質量部より多いと、塗工紙の白色度を損ねたり、過度な粘着性に起因する塗工紙製造プロセスや塗工紙印刷プロセスでの操業トラブルの原因となることがある。ここで、バインダーの固形分とは、バインダーから、分散媒あるいは溶媒である水を除いた成分をいう。
また、顔料と、バインダー中のラテックスとの質量比は、顔料100質量部に対して、バインダー5〜15質量部(固形分として)であることが好ましく、7〜12質量部であることが更に好ましい。5質量部より少ないと、紙塗工用組成物の流動性が低下することがあり、15質量部より多いと、塗工紙の白色度を損ねたり、過度な粘着性に起因する塗工紙製造プロセスや塗工紙印刷プロセスでの操業トラブルの原因となることがある。
紙塗工用組成物に含有される顔料とバインダーとの合計量は、紙塗工用組成物全体に対して90質量%以上であることが好ましく、95〜99質量%であることが更に好ましい。
本実施の形態の紙塗工用組成物には、上記顔料及びバインダーに加えて、耐水性改良剤、顔料分散剤、粘度調節剤、着色顔料、蛍光染料及びpH調節剤等一般に使用されている種々の添加剤を任意に配合することができる。顔料、バインダー、その他添加剤を含む紙塗工用組成物の固形分濃度は、30〜70質量%が好ましい。
(塗工紙)
次に、本発明の塗工紙の一の実施の形態について説明する。本実施の形態の塗工紙は、塗工原紙と、塗工原紙に上述した本発明の紙塗工用組成物が塗工されてなる塗工層とを備えるものである。
(塗工原紙)
本実施の形態の塗工紙を構成する塗工原紙は特に限定されず、紙塗工用組成物を塗工することにより塗工紙として使用可能であればよい。塗工原紙の原料パルプの種類は特に限定されず、例えば、機械パルプ、化学パルプ、古紙パルプ(DIP)等が挙げられる。また、塗工原紙には、内添剤として炭酸カルシウム、クレー及びタルク等の顔料、アルキルケテンダイマー、ロジン酸石鹸及び硫酸バンド等のサイズ剤、カチオン澱粉及びポリアクリルアミド等の紙力増強剤、並びに嵩高剤等を使用することもできる。更に、上記塗工原紙の表面には、サイズプレス、ゲートロールコーター、メータードサイズプレス等を使用して、アクリルアミド又はアクリル−スチレンポリマー等の表面サイズ剤を塗布することもできる。
(塗工層)
本実施の形態の塗工紙を構成する塗工層は、紙塗工用組成物の塗工量が、片面当たり3〜20g/m2であることが好ましい。3g/m2より少ないと白紙光沢や印刷光沢が低下することがあり、20g/m2より多いとコストの割りに品質の向上が小さくなることがある。
(塗工紙の製造)
本実施の形態の塗工紙の製造方法は、上述した紙塗工用組成物を塗工原紙に、下記塗工方法により塗工するものである。紙塗工用組成物を塗工原紙に塗工する塗工方法としては、一般の塗工紙の製造方法において用いられている方法を採用することができる。例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ゲートロールコーター、チャンプレックスコーター、サイズプレスコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等を使用して塗工することができる。これらの中でも、ブレードコーターにより塗工する場合に、本発明の紙塗工用組成物の低いハイシェアー粘度による効果が強く発揮される。それは、ブレードコーターにより塗工すると、紙塗工用組成物に高い剪断力を加えながら塗工することになるため、ハイシェアー粘度が高いと、塗工に大きな支障をきたすことになるからである。
本実施の形態の塗工紙を製造する方法としては、塗工工程以外に、紙塗工用組成物を塗工して未乾燥塗工紙を作製した後に、その未乾燥塗工紙を乾燥させる乾燥工程を有することが好ましい。乾燥工程における乾燥方法としては、特に限定されるものではなく、一般の塗工紙の製造方法において用いられている方法を採用することができる。例えば、熱風乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥等を採用することができる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本実施の形態の塗工紙を製造する方法としては、上記乾燥工程の後に更に、カレンダー工程を設けてもよい。カレンダー処理を行うことで、得られた塗工紙の白紙光沢及び印刷光沢を充分に引き出すことができる。カレンダー処理としては、スーパーカレンダー、マシンカレンダー及びソフトニップカレンダー等が挙げられる。これらは1種のみを施してもよく、2種以上を施してもよい。
本実施の形態の塗工紙の製造方法は、上述の工程以外に適宜所望の工程を有してもよい。
本実施の形態の塗工紙は、枚葉オフセット印刷用及び輪転オフセット印刷用として特に好適に使用することができる。また、その他の平版印刷用、グラビア印刷等の凹版印刷用、及び凸版印刷用としても使用することができる。
次に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。尚、実施例において割合を示す「部」及び「%」はそれぞれ質量部及び質量%を意味する。
1.ラテックスの製造
(ラテックスA)
攪拌機を備え、温度調節の可能なオートクレーブ中に、水200部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.8部、過硫酸カリウム1.0部、重亜硫酸ナトリウム0.5部、そして1段目単量体成分として、1,3−ブタジエン25部、スチレン10部、アクリロニトリル10部及びt−ドデシルメルカプタン0.2部を一括して仕込み、45℃で6時間反応させ、重合転化率が80%以上であることを確認した(1段目の重合)。その後、2段目単量体成分として、1,3−ブタジエン20部、スチレン15部、アクリロニトリル10部、メチルメタクリレート7部、イタコン酸2部及びアクリル酸1部を7時間にわたって連続的に添加しながら60℃で重合を継続した。連続添加終了後も更に70℃で6時間反応させ(2段目の重合)、共重合体からなる粒子を含むラテックスAを得た。最終的な重合転化率は99%であった。得られたラテックスAについて、共重合体粒子(ポリマー粒子)の平均粒子径、ゲル含有量及びガラス転移温度を以下の方法で求めた。結果を表1に示す。尚、表1において、「ラテックス単量体組成」の欄に記載の数値は、「1段目単量体組成」と「2段目単量体組成」のそれぞれの成分の配合量を合計した値を示し、各成分の全配合量を示している。例えば、「ラテックス単量体組成」の「ブタジエン」は、「1段目単量体組成」の「ブタジエン」25質量部と、「2段目単量体組成」の「ブタジエン」20質量部とを合計して45質量部となることを示している。また、表1において、各成分に付されている(a)、(b)及び(c)の記号は、上述した本発明の紙塗工用組成物を構成する共重合体となる(a)成分、(b)成分及び(c)成分をそれぞれ示す。
(ラテックスB)
攪拌機を備え、温度調節の可能なオートクレーブ中に、水200部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、過硫酸カリウム0.5部、α−メチルスチレンダイマー0.5部、t−ドデシルメルカプタン0.1部、1,3−ブタジエン8部、スチレン6部、アクリロニトリル2部、及びメチルメタクリレート2部を一括して仕込み、70℃で4時間反応させ、重合転化率が70%以上であることを確認した(1段目の重合)。その後、2段目単量体成分として、1,3−ブタジエン37部、スチレン19部、アクリロニトリル18部、メチルメタクリレート5部、イタコン酸2部及びアクリル酸1部を10時間にわたって連続的に添加しながら70℃で重合を継続した。連続添加終了後も更に70℃で6時間反応させ(2段目の重合)、共重合体からなる粒子を含むラテックスBを得た。最終的な重合転化率は99%であった。得られたラテックスBについて、共重合体粒子の平均粒子径、ゲル含有量及びガラス転移温度を以下の方法で求めた。結果を表1に示す。
(ラテックスC)
攪拌機を備え、温度調節の可能なオートクレーブ中に、水200部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、過硫酸ナトリウム1部及び、α−メチルスチレンダイマー0.5部、t−ドデシルメルカプタン0.2部及び、1,3−ブタジエン2部、スチレン2部、メチルメタクリレート2部、イタコン酸2部、アクリル酸1部を一括して仕込み、60℃で1時間反応させた。その後に、2段目単量体成分として、α−メチルスチレンダイマー0.5部、t−ドデシルメルカプタン0.3部、ブタジエン28部、スチレン12部、アクリロニトリル10部を10部/時間の速度で連続的に添加し重合を継続させた。更に3段目単量体成分として、α−メチルスチレンダイマー0.5部、t−ドデシルメルカプタン0.2部、ブタジエン10部、スチレン18部、メチルメタクリレート3部、アクリロニトリル10部を10部/10時間の速度で連続的に添加し重合させた。これから更に6時間にわたって70℃で反応させた。最終的な重合転化率は98%であった。得られたラテックスCについて、共重合体粒子の平均粒子径、ゲル含有量及びガラス転移温度を以下の方法で求めた。結果を表1に示す。尚、表1において、ラテックスCの「3段目単量体成分」は、表1のラテックスCの2段目単量体組成の欄に、[2段目単量体成分]と共に、「[2段目単量体成分]+[3段目単量体成分]」のように表示されている。例えば、ラテックスCの2段目単量体組成の「ブタジエン」の欄に記載の「28+10」は、2段目単量体成分として添加する「ブタジエン」が28質量部で、3段目単量体成分として添加する「ブタジエン」が10質量部であることを示している。また、表1において、ラテックスCの「Tg」の欄に記載の[−25、50]は、転移領域の最低温度と最高温度を示している。すなわち、最低温度が−25℃で、最高温度が50℃である。
(ラテックスD〜L)
単量体組成を表1に示す組成とし、その他の条件を上記ラテックスAの製造条件として、ラテックスD〜Lを作製した。各ラテックスを構成する共重合体の粒子径は、主として乳化剤の配合量によってコントロールした。得られたラテックスについて、共重合体粒子の平均粒子径、ゲル含有量及びガラス転移温度を以下の方法で求めた。結果を表1に示す。
2.ラテックスの性状測定
(1)平均粒子径
共重合体粒子の平均粒子径は、レーザーパーティクルアナライザー(大塚電子社製、商品名:レーザー粒径解析システム、LP−510モデルPAR−III)を用い、常法により求めた。結果を表1に示す。
(2)ゲル含有量
ラテックスを水酸化ナトリウムによりpH8.0に調整した後、イソプロパノールで凝固させ、この凝固物を蒸留水により洗浄し、乾燥させて乾燥試料を得た。その後、所定量(約0.03g)の乾燥試料を、100mlのトルエンに、25℃で、20時間浸漬した。次いで、この溶液を120メッシュの金網で濾過し、得られる残存固形分の質量を測定し、処理前のラテックスの全固形分に対する割合(質量%)を求めた。結果を表1に示す。
(3)ガラス転移温度
ラテックスを130℃で30分間加熱乾燥し、フィルムを作製した。示差走査熱量計(セイコー電子社製、商品名:DSC−220C)を用いて、昇温速度15℃/分の条件で、この乾燥フィルムのガラス転移温度Tg又は転移領域を測定することにより共重合体のTg又は転移領域とした。結果を表1に示す。また、図1に、ラテックスA、B及びCの示差走査熱量曲線及びその時間微分曲線を示した。ラテックスAの示差走査熱量曲線Aの時間微分曲線A’では、ガラス転移点Tgを示すピーク1が二つ現れている。ラテックスBの示差走査熱量曲線Bの時間微分曲線B’では、ガラス転移点Tgを示すピーク2が一つ現れている。ラテックスCの示差走査熱量曲線Cの時間微分曲線C’では、ガラス転移領域(転移領域)3が現れている。
Figure 2006037298
3.紙塗工用組成物の調製
上述のようにして製造したラテックスA〜Lと、下記成分(1)〜(8)とを用いて、表2の処方(配合I)により、紙塗工用組成物を調製した。更に、ラテックスD及びEについては、表2の配合Iによる調製と共に、配合IIによる調製も行った。
(1)サチンホワイト;商品名「SW−BL」、白石工業社製。
(2)カオリンクレー;商品名「ミラグロス」、エンゲルハード社製。
(3)カオリンクレー;商品名「HT」、エンゲルハード社製。
(4)重質炭酸カルシウム;商品名「ファイマテック90」、ファイマテック社製。
(5)軽質炭酸カルシウム;商品名「ブリリアント15」、白石工業社製。
(6)分散剤(ポリアクリル酸系分散剤);商品名「アロン−T40」、東亞合成社製。
(7)水酸化ナトリウム;商品名「水酸化ナトリウム1級」、和光純薬社製。
(8)澱粉;商品名「MS4600」、日本食品工業社製。
尚、表2中、「固形分(%)」とは、紙塗工用組成物総質量に占める、ラテックス及び上記(1)〜(8)の総固形分質量の比率(質量%)を意味する。また、「固形分(%)」以外の、各成分を示す数値は質量部で示した。
Figure 2006037298
4.紙塗工用組成物の特性測定
(1)粘度(BF粘度)
紙塗工用組成物を、25℃に調整した水槽で2時間調温し、温度が充分に一定となったことを確認した後、回転式粘度計[ブルックフィールド粘度計](TOKIMEC社製、商品名「デジタル粘度計」)を用い、60回転における見掛け粘度を、測定開始から1分後に測定した。結果を表3に示す。
(2)粘度安定性
上記「(1)粘度」の測定方法で粘度測定したサンプル(紙塗工用組成物)を、60℃で12時間保持(加熱処理)した後に、再度上記「(1)粘度」の方法で粘度測定する。そして、加熱処理前の粘度(加熱処理前粘度)と加熱処理後の粘度(加熱処理後粘度)とを比較し、(加熱処理後粘度)/(加熱処理前粘度)の値が、1〜1.5の場合は「◎」、1.5より大きく2.0以下の場合は「○」、2.0を超えた場合は「×」とした。結果を表3に示す。
(3)ハイシェアー粘度(HS粘度)
紙塗工用組成物を、25℃に調整した水槽で2時間調温し、温度が充分に一定となったことを確認する。その後、回転式粘度計[ハーキュレスハイシェアー回転粘度計](熊谷理機工業社製、商品名「ハイシェアビスコメーター」)を用いて、回転体(ボブF)を用い、0〜8000rpmで、上昇下降時間(sweep time)10秒の条件で、上記一定温度の紙塗工用組成物の測定を行い、見掛け粘度を求めた。結果を表3に示す。
5.塗工紙の製造
表1に示すラテックス(A〜L)を用い、表2に示す配合(配合I、II)で得られた紙塗工用組成物を用いて、以下の方法で塗工紙を製造した(実施例1〜9,比較例1〜5)。
上記紙塗工用組成物を、塗工原紙(80.5g/m2)の表面上に、塗工量が13.5±0.5g/m2(片面)となるようにラボブレードコーター(SMT社製、商品名「枚葉式コーター」)を使用して塗工し、200℃の熱風乾燥機にて10秒間乾燥した。その後、同条件で裏面上に紙塗工用組成物を塗工して、塗工紙を得た。得られた塗工紙について、23℃、湿度50%の条件で、由利ロール社製の商品名「ダブルテストカレンダー」を使用し、スーパーカレンダー処理を4回行い、オフセット印刷用塗工紙を得た(実施例1〜9,比較例1〜5)。得られたオフセット印刷用塗工紙について、ドライピック強度(ドライ強度)、ウエットピック強度(ウエット強度)、印刷光沢及び白紙光沢の評価を以下の方法で行った。結果を表3に示す。
6.塗工紙の評価
(1)ドライピック強度(DP)
RI印刷機(明製作所社製)で印刷したときのピッキングの程度を肉眼で判定し、印刷強度を評価した。ピッキングの全く起きていない場合を5とし、ピッキングが多いものほど小さい数字とした。そして、合格レベルを3.5以上とし、3.5より小さい数字を不合格とした。
(2)ウエットピック強度(WP)
上記RI印刷機を用いて、塗工紙表面を吸水ロールで湿してから、RI印刷機で印刷したときのピッキングの程度を肉眼で判定し、印刷強度を評価した。評価基準は、上記「(1)ドライピック強度」の場合と同様とした。
(3)印刷光沢
上記RI印刷機を用いて、オフセット用インキを塗工紙にベタ刷りした後、村上式光沢計により入射角60°、反射角60°で測定した。
(4)白紙光沢
ハンター白色度計を用い、入射角75°、反射角75°で、塗工紙(印刷していないもの)の白紙光沢を測定した。
Figure 2006037298
実施例1〜9の塗工紙及びこれらに使用した紙塗工用組成物は、いずれも、各評価結果が良好であった。実施例9に使用した塗工用組成物は、単量体成分としてアミド(メタアクリルアミド)を使用しているため、特に粘度安定性に優れていた。これに対し、比較例1及び2においては、いずれも使用したラテックスを構成する共重合体の粒径が大きいため、使用した紙塗工用組成物のハイシェアー粘度が低く、塗工紙のウエットピック強度が低かった。比較例3においては、ラテックスの原料組成中の「エチレン性不飽和カルボン酸単量体」の含有量が少ないため、使用した紙塗工用組成物の粘度安定性が悪く、紙塗工用組成物を塗工原紙に塗工することができなかった。比較例4及び5においては、使用した紙塗工用組成物中にサチンホワイトが含有されていなかったので、得られた塗工紙の印刷光沢及び白紙光沢が低い値であった。
また、実施例1〜9の中では、例えば実施例1においては使用したラテックスAを構成する共重合体のガラス転移点(Tg)が二つ(Tg=−28℃、5℃)であるのに対し、実施例2においては、使用したラテックスBのガラス転移温度(Tg)が一つ(Tg=−11℃)であるため、ドライピック強度が低い値であった。また、実施例3においては、使用したラテックスCを構成する共重合体が、示差走査熱量曲線において幅の広い転移領域を有するため、他の実施例と比較してドライピック強度が高い値であった。
本発明の紙塗工用組成物は、安価で、ドライ強度、ウエット強度、白紙光沢及び印刷光沢が良好な塗工紙を得るために有効に利用することができる。そして、本発明の紙塗工用組成物を塗工原紙に塗工するときの操業性が良好である。本発明の紙塗工用組成物は、特に枚葉オフセット印刷用又は輪転オフセット印刷用の塗工紙の製造に使用することが有用である。本発明の塗工紙は、安価で、ドライ強度、ウエット強度、白紙光沢及び印刷光沢が良好であり、特に枚葉オフセット印刷用あるいは輪転オフセット印刷用の用紙の製法として有用である。
実施例1〜3の塗工紙に使用するラテックスA〜Cの共重合体の示差走査熱量曲線を示す図である。
符号の説明
1,2…ピーク、3…転移領域、A,B,C…示差走査熱量曲線、A’,B’,C’…示差走査熱量曲線の時間微分曲線。

Claims (9)

  1. 顔料とバインダーとを含有する紙塗工用組成物であって、前記顔料が、サチンホワイトを含有し、
    前記バインダーが、(a)脂肪族共役ジエン単量体30〜65質量%、(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体1〜8質量%、及び(c)これらの単量体と共重合可能な他の単量体27〜69質量%の共重合体を含むラテックスを含有し、前記共重合体の平均粒子径が30〜120nmである紙塗工用組成物。
  2. 前記ラテックスのトルエンゲル含有量が、70〜98質量%である請求項1に記載の紙塗工用組成物。
  3. 前記共重合体が、(a)脂肪族共役ジエン単量体30〜65質量%、(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体2〜8質量%、及び(c)これらの単量体と共重合可能な他の単量体27〜68質量%の共重合体である請求項1又は2に記載の紙塗工用組成物。
  4. 前記共重合体が、(a)脂肪族共役ジエン単量体30〜65質量%、(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体1〜8質量%、(d)アミド基を有する単量体及び/又は水酸基を有する単量体1〜8質量%、及び(e)これらの単量体と共重合可能な他の単量体19〜68質量%の共重合体である請求項1又は2に記載の紙塗工用組成物。
  5. 前記共重合体が、複数のガラス転移温度を有するものであり、複数の前記ガラス転移温度の中で最も低いガラス転移温度が−50〜0℃の範囲にあり、複数の前記ガラス転移温度の中で最も高い前記ガラス転移温度と最も低い前記ガラス転移温度との差が8℃以上である請求項1〜4のいずれかに記載の紙塗工用組成物。
  6. 前記共重合体が、示差走査熱量計で測定したときに得られる示差走査熱量曲線が転移領域を有するものであり、前記転移領域が−80〜40℃の範囲にあり、前記転移領域の最低温度と最高温度との差が20℃以上である請求項1〜4のいずれかに記載の紙塗工用組成物。
  7. 前記サチンホワイトが、前記顔料全体に対して、1〜25質量%含有されている請求項1〜6のいずれかに記載の紙塗工用組成物。
  8. 塗工原紙と、前記塗工原紙に請求項1〜7のいずれかに記載の紙塗工用組成物が塗工されてなる塗工層とを備える塗工紙。
  9. 塗工原紙と、前記塗工原紙に請求項1〜7のいずれかに記載の紙塗工用組成物がブレード塗工方式で塗工された塗工層とを備える塗工紙。
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