JP2006002280A - 塗工紙の製造方法及び塗工紙 - Google Patents

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Abstract

【課題】白紙光沢、白色度、印刷強度、印刷光沢、インク乾燥性、耐ブリスター性に優れた、塗工層を2層有する塗工紙の製造方法を提供する。
【解決手段】顔料とバインダーとを含有する下塗り塗工用組成物を塗工原紙に塗工して下塗り塗工層を形成し、次に下塗り塗工層上に顔料とバインダーとを含有する上塗り塗工用組成物を塗工して上塗り塗工層を形成する塗工工程を有する塗工紙の製造方法であって、下塗り塗工用組成物に含有される顔料の少なくとも一部が、アスペクト比3以上の針状あるいは柱状の顔料である塗工紙の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、塗工紙の製造方法及び塗工紙に関し、更に詳しくは、白紙光沢、白色度、印刷強度、印刷光沢、インク乾燥性、耐ブリスター性に優れた、塗工層を2層有する塗工紙の製造方法、及び、その塗工紙の製造方法で製造された塗工紙に関する。本発明の塗工紙の製造方法により得られる塗工紙は、特に、枚葉オフセット印刷用あるいは輪転オフセット印刷用の用紙として好適に用いられる。
紙の外観や印刷適性を改良するために、紙(塗工原紙)に、カオリンや炭酸カルシウム(重質、軽質)等の白色顔料と水性バインダー(澱粉、ラテックス)とを主成分とする塗工用組成物が塗工される。この塗工された紙、すなわち塗工紙は、今日広く使用されており、中質原紙、上質原紙等の塗工原紙の種類により、また塗工量の多少により数多くのグレードに分けられている。その中でも、高級グレードとなるA2以上の塗工紙を製造する方法としては、塗工原紙に直接塗工用組成物(下塗り塗工用組成物)を塗工(下塗り)して下塗り塗工層を形成し、その下塗り塗工層上に更に塗工用組成物(上塗り塗工用組成物)を塗工(上塗り)して上塗り塗工層を形成することにより、塗工原紙に2層の塗工層を形成する方法が主流である。
このように、2層の塗工層を形成することにより、1層目の塗工層(下塗り塗工層)は、重質炭酸カルシウムを主体とした安価な下塗り塗工用組成物により塗工原紙を被覆して表面を平滑に形成し、2層目の塗工層(上塗り塗工層)は、塗工紙の外観や印刷適性の優れた上塗り塗工用組成物を上記下塗り塗工層上に塗工することにより、塗工紙の品質を向上させることができる。また、塗工紙の平滑性及び被覆性を向上させるために、下塗り塗工用組成物の成分として、重質炭酸カルシウムに、カオリン及び/又は軽質炭酸カルシウムを併用するのが一般的である。この場合に、炭酸カルシウム含有率を高くすると平滑性、被覆性が悪化し、白紙光沢及び印刷光沢が低下する傾向がある。逆に、カオリン含有率を高くすると、白色度が低下する傾向がある。また、更に塗工紙の品質を向上させるために、上塗り塗工用組成物にプラスチックピグメントを使用することもある(例えば、特許文献1参照)。このプラスチックピグメントとして中空粒子を用いることがあるが、この場合には、印刷時に吸水性が低下して、インク転移不良を起こし易く、インク乾燥性も低下する傾向にある。
上述のような2層の塗工層を有する塗工紙は通常透気性が悪いという問題がある。これは下塗り塗工層と上塗り塗工層との間の界面部分に原因があるものと推測することができる。このような塗工紙を使用して、枚葉オフセット印刷をすると、透気性が悪いためインクの乾燥が遅くなり、印刷した塗工紙を積み重ねていったときに、印刷面のインクが次の印刷物の裏面に転移してしまういわゆる裏移りのトラブルが起き易くなる。また、塗工紙の一方の面(表面)に枚葉オフセット印刷をした後、他方の面(裏面)に更に枚葉オフセット印刷をする場合、表面の既に印刷された面が圧胴に接する(裏面がブランケットに接する)ため、インクが乾燥状態にないと、そのインクの表層部が、圧胴により剥がされ、印刷面(表面)の印刷が劣化し易いという問題があった。
また、上述のような2層の塗工層を有する塗工紙を使用して、輪転オフセット印刷をする場合には、印刷後にインクを強制乾燥させるときに、塗工紙に火脹れ(ブリスター)が発生し易いという問題があった。これは、輪転オフセット印刷では印刷後のインクを強制乾燥させる必要があるが、このとき熱せられた原紙内の水分が瞬間的に水蒸気となって膨張するが、透気性が悪いとこの水蒸気を瞬間的に逃がすことができず塗工紙に火脹れが発生するものである。このような塗工紙印刷後の乾燥時の火脹れは、塗工紙のグレードがA3、A2、A1グレードの順に高級紙になるほど、すなわち塗工用組成物の塗工量が増加するほど発生しやすくなる。
特開平7−238495号公報
本発明は、上述の従来技術の問題に鑑みなされたものであり、白紙光沢、白色度、印刷強度、印刷光沢、インク乾燥性、耐ブリスター性に優れた、塗工層を2層有する塗工紙の製造方法を提供することを特徴とする。そして、その塗工紙の製造方法で製造された塗工紙を提供することを特徴とする。
上記課題を解決するため、本発明によって以下の塗工紙の製造方法及び塗工紙が提供される。
[1] 顔料とバインダーとを含有する下塗り塗工用組成物を塗工原紙に塗工して下塗り塗工層を形成し、次に前記下塗り塗工層上に顔料とバインダーとを含有する上塗り塗工用組成物を塗工して上塗り塗工層を形成する塗工工程を有する塗工紙の製造方法であって、前記下塗り塗工用組成物に含有される前記顔料の少なくとも一部が、アスペクト比3以上の針状あるいは柱状の顔料である塗工紙の製造方法。
[2] 前記アスペクト比3以上の針状あるいは柱状の顔料が、サチンホワイトである[1]に記載の塗工紙の製造方法。
[3] 前記サチンホワイトの含有量が、前記下塗り塗工用組成物に含有される顔料(下塗り用顔料)全体に対して1〜30質量%である[1]又は[2]に記載の塗工紙の製造方法。
[4] 前記下塗り用顔料中に、更に、前記下塗り用顔料全体に対して、炭酸カルシウム50〜97質量%、及びその他の無機顔料0〜49質量%が含有される[3]に記載の塗工紙の製造方法。
[5] 前記上塗り塗工用組成物に含有される顔料(上塗り用顔料)中にアスペクト比3以上の針状あるいは柱状の顔料を含まない[1]〜[4]のいずれかに記載の塗工紙の製造方法。
[6] 前記上塗り塗工用組成物に含有される顔料(上塗り用顔料)中に、前記上塗り用顔料全体に対して、有機顔料1〜100質量%、及び無機顔料0〜99質量%が含有される[1]〜[5]のいずれかに記載の塗工紙の製造方法。
[7] 前記有機顔料が中空プラスチックピグメントである[6]に記載の塗工紙の製造方法。
[8] 前記下塗り塗工用組成物に含有されるバインダー(下塗り用バインダー)が、(a)脂肪族共役ジエン単量体20〜65質量%、(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体0.5〜10質量%、(c)シアン化ビニル単量体0〜50質量%、及び(d)これらの単量体と共重合可能な他の単量体0〜79.5質量%の共重合体(但し、(a)+(b)+(c)+(d)=100質量%)からなり、ゲル含有量が60〜98質量%、重量平均粒子径が50〜200nmの共重合体ラテックスを含有する[1]〜[7]のいずれかに記載の塗工紙の製造方法。
[9] 前記上塗り塗工用組成物に含有されるバインダー(上塗り用バインダー)が、(a’)脂肪族共役ジエン単量体20〜65質量%、(b’)エチレン性不飽和カルボン酸単量体0.5〜10質量%、(c’)シアン化ビニル単量体3〜50質量%、及び(d’)これらの単量体と共重合可能な他の単量体0〜76.5質量%からなる共重合体(但し、(a’)+(b’)+(c’)+(d’)=100質量%)からなり、ゲル含有量が40〜98質量%、重量平均粒子径が50〜200nmの共重合体ラテックスを含有する[1]〜[8]のいずれかに記載の塗工紙の製造方法。
[10] 前記下塗り用バインダーと前記上塗り用バインダーとが同一成分である[8]又は[9]に記載の塗工紙の製造方法。
[11] 前記下塗り塗工層の塗工量が3〜15g/m2であり、前記上塗り塗工層の塗工量が3〜15g/m2である[1]〜[10]のいずれかに記載の塗工紙の製造方法。
[12] [1]〜[11]のいずれかに記載の塗工紙の製造方法で得られた塗工紙。
[13] 枚葉オフセット印刷又は輪転オフセット印刷に使用される[12]に記載の塗工紙。
本発明の塗工紙の製造方法によれば、塗工原紙に下塗り塗工層を形成し、次に下塗り塗工層上に上塗り塗工層を形成する塗工工程を有する塗工紙の製造方法であって、下塗り塗工用組成物に含有される顔料の少なくとも一部を、アスペクト比3以上の針状あるいは柱状の顔料としたため、白紙光沢、白色度、印刷強度、印刷光沢、インク乾燥性、耐ブリスター性に優れた塗工紙を製造することができる。また、本発明の塗工紙によれば、本発明の塗工紙の製造方法で得られた塗工紙であるため、白紙光沢、白色度、印刷強度、印刷光沢、インク乾燥性、耐ブリスター性に優れたものとなり、印刷に使用したときの印刷物の品質が向上し、印刷操業性も向上させることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施の形態」という。)を具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
本発明の塗工紙の製造方法の一の実施の形態は、顔料とバインダーとを含有する下塗り塗工用組成物を塗工原紙に塗工して下塗り塗工層を形成し、次に下塗り塗工層上に顔料とバインダーとを含有する上塗り塗工用組成物を塗工して上塗り塗工層を形成する塗工工程を有する塗工紙の製造方法であって、下塗り塗工用組成物に含有される顔料の少なくとも一部が、アスペクト比3以上の針状あるいは柱状の顔料である塗工紙の製造方法である。ここで、針状あるいは柱状の顔料のアスペクト比とは、針状あるいは柱状の顔料の長径を短径で除して得られた値(長さ方向の距離を長さ方向と直角をなす断面の距離で除した値)であり、その顔料についての平均値をとったものである。そして、その測定は次のようにして行う。すなわち、顔料の電子顕微鏡写真を撮影して拡大した写真から、長さ方向と断面方向の距離を測定して算出する。
(下塗り塗工用組成物−顔料)
本実施の形態の塗工紙の製造方法に使用する下塗り塗工用組成物中には、アスペクト比3以上の針状あるいは柱状の顔料が含有される。下塗り塗工用組成物中にこのような針状あるいは柱状の顔料が含有されることにより、下塗り塗工層が空隙の多い、嵩高いものとなり、下塗り塗工層と上塗り塗工層との界面部分での透気性の悪化が解消されて透気性が向上する。これにより、本実施の形態の塗工紙の製造方法により製造された塗工紙は、白紙光沢、印刷光沢、インク乾燥性、耐ブリスター性に優れたものとなる。
本実施の形態において、針状あるいは柱状の顔料のアスペクト比は、上述のように3以上であるが、好ましくは5〜50であり、更に好ましくは7〜30であり、特に好ましくは9〜15である。アスペクト比が3より小さいと、下塗り塗工層の嵩高さが不十分になり、透気性が向上しないため、特にインク乾燥性及び耐ブリスター性が低下する。
アスペクト比3以上の針状あるいは柱状の顔料としては、サチンホワイト、アラゴナイト系の炭酸カルシウム等を挙げることができる。これらの中でも、白色光沢、印刷光沢を向上させるために、サチンホワイトが好ましい。
サチンホワイトとは、スルホアルミン酸カルシウムのことであり、以下の構造式で示される化合物である。すなわち、pH(水素イオン指数)12.3以上のとき、4CaO・Al23・3CaSO4・31〜32H2O、pH12.3以下のとき、3CaO・Al23・3CaSO4・31〜32H2Oである。pH=12.3のときは上記2種の構造式が混在する状態になる。サチンホワイトは市販品を利用することも、また自製したものを使用することもできる。市販品としては、例えば白石工業社の製品SW、SW−B、SW−BLを使用することができる。また、消石灰に硫酸アルミニウムを反応させて自製して使用することも可能である。
アスペクト比3以上の針状あるいは柱状の顔料の含有量は、下塗り塗工用組成物に含有される顔料(下塗り用顔料)全体に対して1〜30質量%であることが好ましく、320質量%であることが更に好ましく、5〜12質量%であることが特に好ましい。1質量%より少ないと、下塗り塗工層の嵩高さが不十分になり、透気性が向上しないことがあり、30質量%より多いと、下塗り塗工用組成物の流動性が低下し、塗工原紙に塗工し難くなることがある。
本実施の形態の塗工紙の製造方法で使用する上記下塗り用顔料中に、更に、炭酸カルシウムが下塗り用顔料全体に対して50〜97質量%含有され、その他の無機顔料が下塗り用顔料全体に対して0〜49質量%含有されることが好ましい。炭酸カルシウムの含有量が50質量%より少ないと塗工紙の価格が高価になることがあり、97質量%より多いと下塗り塗工層の平滑性、被覆性が悪くなり、塗工紙の白紙光沢及び印刷光沢が低下することがある。炭酸カルシウムとしては、重質炭酸カルシウム及び/又は比較的安価な立方形、球状形、紡錘形の軽質炭酸カルシウムを使用することができる。軽質炭酸カルシウムの含有量が多すぎると、塗工紙の価格が高価になることがある。下塗り用顔料中に含有されるその他の無機顔料としては、カオリン、タルク、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛等を挙げることができる。
(下塗り塗工用組成物−バインダー)
本実施の形態の塗工紙の製造方法に使用する下塗り塗工用組成物に含有されるバインダー(下塗り用バインダー)は、(a)脂肪族共役ジエン単量体20〜65質量%、(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体0.5〜10質量%、(c)シアン化ビニル単量体0〜50質量%、及び(d)これらの単量体と共重合可能な他の単量体0〜79.5質量%の共重合体(但し、(a)+(b)+(c)+(d)=100質量%)からなり、ゲル含有量が60〜98質量%、重量平均粒子径が50〜200nmの共重合体ラテックス(A)を含有することが好ましい。
上記共重合体ラテックス(A)に使用される(a)脂肪族共役ジエン単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、クロロプレン等が挙げられるが、好ましくは1,3−ブタジエンである。これらの(a)脂肪族共役ジエン単量体は、1種単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。かかる(a)脂肪族共役ジエン単量体は、得られる重合体に適度な柔軟性と伸びを与え、耐衝撃性を付与するために有用な成分であり、その使用割合は共重合体全体に対して20〜65質量%であることが好ましく、30〜55質量%であることが更に好ましい。この(a)成分が20質量%未満であると、共重合体が硬くなり過ぎ、充分な接着強度が得られないことがある。一方、(a)成分が65質量%を超えると粘着性が大となり、操業性が悪化することがある。
上記共重合体ラテックス(A)に使用される(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。これらの(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、1種単独で、あるいは2種以上を使用することもできる。かかる(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体の使用量は、共重合体全体に対して0.5〜10質量%であることが好ましく、2.5〜7質量%であることが更に好ましい。(b)成分が0.5質量%未満では、重合時の共重合体ラテックス(A)の安定性が悪く、また、塗工用組成物の機械的安定性も低下し、塗工時の操業性が低下することがある。一方(b)成分が10質量%を超えると、塗工用組成物粘度が高くなり過ぎ塗工に支障をきたすことがある。
上記共重合体ラテックス(A)に使用されるシアン化ビニル単量体(c)としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。その使用量は、共重合用単量体全体に対して0〜50質量%であることが好ましく、5〜35質量%であることが更に好ましい。50質量%を超えると、インキ転移性が悪化することがある。
また、上記単量体(a)、(b)、(c)と共重合可能な他の単量体(d)としては、以下のものが挙げられ、その使用量は、共重合体全体に対して0〜79.5質量%であることが好ましい。すなわち、単量体(d)としては芳香族ビニル単量体、アルキル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、アクリルアミド系化合物、N−メチロールアクリルアミド等が挙げられる。これらのうち、芳香族ビニル単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレンなどが挙げられ、特にスチレンが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、特にメチルメタアクリレートが好ましい。更にアクリルアミド系化合物としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これら(d)成分は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもかまわない。(d)成分は、共重合体に、主として目的に応じた適度なガラス転移温度を与えるために使用するものである。
上記下塗り用バインダーとして使用する共重合体ラテックス(A)のゲル含有量は60〜98質量%であることが好ましく、80〜95質量%であることが更に好ましい。ゲル含有量が60質量%未満又は98質量%より多いと、いずれも充分な接着強度が得られないことがある。ここで、ゲル含有量とは、共重合体ラテックス中の共重合物等をイソプロパノール中で凝固させ、得られた凝固物をトルエンに浸漬させたときの、トルエン中に残存する固形物の上記凝固物に対する質量比率(トルエンゲル含有率)である。
また、この共重合体ラテックス(A)の重量平均粒子径は、50〜200nm、好ましくは60〜120nm、更に好ましくは70〜100nmである。50nm未満であると、塗工層が緻密になり過ぎることがある。また、平滑性が低下し、上塗り後の平滑性も低下し、インキ転移性、印刷光沢等の印刷適性を低下させ易いことがある。また、200nmを超えると充分な接着強度が得られなくなり、印刷光沢も低下することがある。
上記共重合体ラテックス(A)は乳化重合により得ることが好ましい。乳化重合するに際しては、水性媒体中で乳化剤、重合開始剤、分子量調節剤などを用いて製造することができる。ここで、乳化剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを単独で、あるいは2種以上を併用して使用できる。ここで、アニオン性界面活性剤としては、例えば高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、ポリエチレングリコールアルキルエーテルの硫酸エステルなどが挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、通常のポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型、アルキルフェニルエーテル型などが用いられる。両性界面活性剤としては、アニオン部分としてカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、燐酸エステル塩を、カチオン部分としてはアミン塩、第4級アンモニウム塩を持つものが挙げられ、具体的にはラウリルベタイン、ステアリルベタインなどのベタイン類、ラウリル−β−アラニン、ステアリル−β−アラニン、ラウリルジ(アミノエチル)グリシン、オクチルジ(アミノエチル)グリシン、などのアミノ酸タイプのものなどが用いられる。
重合開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性重合開始剤、過酸化ベンゾイル、ラウリルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチルニトリルなどの油溶性重合開始剤、還元剤との組み合わせによるレドックス系重合開始剤などが、それぞれ単独であるいは組み合わせで使用できる。
分子量調節剤、キレート化剤、無機電解質なども公知のものが使用できる。分子量調節剤としては、クロロホルム、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素類、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸などのメルカプタン類、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイドなどのキサントゲン類、ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマー、1,1−ジフェニルエチレンなど通常の乳化重合で使用可能なものを全て使用できる。
重合方法としては、単量体の一部を重合した後、その残りを連続的にあるいは断続的に添加する方法、あるいは単量体を重合のはじめから連続的に添加する方法が採られる。重合温度は、通常20〜85℃、好ましくは25〜80℃である。重合時間は、通常5〜30時間、好ましくは8〜25時間である。
下塗り用バインダーとしては、他にも、スチレン・ブタジエン系共重合体ラテックス、スチレン・アクリル系共重合体ラテックス、アクリル系共重合体ラテックス、酢酸ビニル・アクリル系共重合体ラテックス、ブタジエン・メチルメタクリル系ラテックス等の各種共重合体ラテックス;酸化デンプン、エステル化デンプン、酵素変性デンプン、エーテル化デンプンやそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性デンプン、カゼインなどの天然系バインダー等も使用することができる。これらは、1種単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
(下塗り塗工用組成物−その他)
本実施の形態の塗工紙の製造方法に使用する下塗り塗工用組成物に含有される顔料及びバインダーの質量比は、顔料100質量部に対して、バインダー3〜30質量部(固形分として)であることが好ましく、5〜20質量部であることが更に好ましく、7〜15質量部であることが特に好ましい。バインダーが、顔料100質量部に対して3質量部より少ないと、バインダーとしての充分な接着機能を発現し難くなり、30質量部より多いと、塗工紙の白色度を損ねたり、過度な粘着性に起因する塗工紙製造プロセスや塗工紙印刷プロセスでの操業トラブルの原因となることがある。ここで、バインダーの固形分とは、バインダーから、分散媒あるいは溶媒である水を除いた成分をいう。
下塗り塗工用組成物中に含有される顔料及びバインダーの合計量は、下塗り塗工用組成物全体に対して90質量%以上であることが好ましく、95〜99質量%であることが更に好ましい。
本実施の形態の塗工紙の製造方法に使用する下塗り塗工用組成物には、上記顔料及びバインダーに加えて、耐水性改良剤、顔料分散剤、粘度調節剤、着色顔料、蛍光染料及びpH調節剤等一般に使用されている種々の添加剤を任意に配合することができる。顔料、バインダー、その他添加剤を含む下塗り塗工用組成物の固形分濃度は、30〜70質量%が好ましい。
(上塗り塗工用組成物−顔料)
本実施の形態の塗工紙の製造方法に使用する上塗り塗工用組成物に含有される顔料(上塗り用顔料)中に、上塗り用顔料全体に対して、有機顔料1〜100質量%、無機顔料0〜99質量%が含有されることが好ましい。
上塗り用顔料に含有される有機顔料としては、中空プラスチックピグメント、密実プラスチックピグメント等、一般に塗工用組成物に含有させて使用されるものを挙げることができる。これらのなかでも、中空プラスチックピグメントが、白色度、不透明度をより向上させることができることより好ましい。上記中空プラスチックピグメントは、その平均粒子径が0.2〜2.0μmであることが好ましく、平均中空率が20体積%以上であることが好ましい。
中空プラスチックピグメントを上塗り用顔料として使用して塗工紙を製造すると、印刷時に吸水性が低下しインク転移不良を起こし易く、インク乾燥性も低下するという問題がある。これは、塗工紙製造において、塗工工程で中空プラスチックピグメントを含有する塗工用組成物を塗工し、その後、カレンダー工程で、中空プラスチックピグメントが押しつぶされて変形し塗工紙が有する空隙が埋められることにより塗工紙の透気性が低下してしまうことによるものである。しかし、下塗り用顔料の少なくとも一部にアスペクト比3以上の針状あるいは柱状の顔料を使用することにより、この傾向を大幅に抑制することができる。これは、下塗り層の空隙が増加して塗工層全体の透気性、吸水性が良好になる外、下塗り層と上塗り層の界面に空隙の少ない緻密な層が形成されるのを抑制するためと思われ、このことにより、印刷時の吸水性の低下を防ぎ、インク乾燥性の低下も防ぐことが出来る。
上塗り用顔料に含有される無機顔料としては、上述した下塗り用顔料として使用することができる、サチンホワイト、炭酸カルシウム及びその他の無機顔料を使用することができる。これらは1種単独で又は2種以上を併用して使用することができる。ここで、好ましくは、上塗り顔料に、サチンホワイトや針状あるいは柱状の炭酸カルシウムを使用しない配合にした方が良い。確かに、これらの顔料を使用すると、プラスチックピグメントを用いてもインキ転移性やインキ乾燥性の心配がなくなるが、これらは下塗り塗工層に使用することで解決でき、ここでも使用すると逆にインキの浸透が過大になり易く、印刷光沢が低下する傾向を示す。
上塗り用顔料に含有される、有機顔料と無機顔料との含有量の比率は、特に制限されるものではなく、用途に合わせて適宜決定することができる。
(上塗り塗工用組成物−バインダー)
本実施の形態の塗工紙の製造方法で使用される上塗り塗工用組成物に含有されるバインダー(上塗り用バインダー)は、(a’)脂肪族共役ジエン単量体20〜65質量%、(b’)エチレン性不飽和カルボン酸単量体0.5〜10質量%、(c’)シアン化ビニル単量体3〜50質量%、及び(d’)これらの単量体と共重合可能な他の単量体0〜76.5質量%の共重合体からなり(但し、(a’)+(b’)+(c’)+(d’)=100質量%)ゲル含有量が40〜98質量%、重量平均粒子径が50〜200nmの共重合体ラテックス(B)を含有することが好ましい。
上記共重合体ラテックス(B)に使用される(a’)脂肪族共役ジエン単量体としては、上述した下塗り用バインダーに含有される共重合体ラテックス(A)に使用される(a)脂肪族共役ジエン単量体と同様のものを使用することができ、同様の効果を得ることができる。その使用割合は、共重合体全体に対して20〜65質量%であることが好ましく、30〜55質量%であることが更に好ましい。この(a’)成分が20質量%未満であると、共重合体が硬くなり過ぎ、充分な接着強度が得られないことがある。一方、(a’)成分が65質量%を超えると粘着性が大となり、操業性が悪化することがある。
上記共重合体ラテックス(B)に使用される(b’)エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、上述した下塗り用バインダーに含有される共重合体ラテックス(A)に使用される(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体と同様のものを使用することができ、同様の効果を得ることができる。かかる(b’)エチレン性不飽和カルボン酸単量体の使用量は、共重合体全体に対して0.5〜10質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることが更に好ましい。(b’)成分が0.5質量%未満では、重合時の共重合体ラテックス(B)の安定性が悪く、また、塗工用組成物の機械的安定性も低下し、塗工時の操業性が低下することがある。一方(b’)成分が10質量%を超えると、塗工用組成物粘度が高くなり過ぎ塗工に支障をきたすことがある。
上記共重合体ラテックス(B)に使用される(c’)シアン化ビニル単量体としては、上述した下塗り用バインダーに含有される共重合体ラテックス(A)に使用される(c)シアン化ビニル単量体と同様のものを使用することができ、同様の効果を得ることができる。その使用量は、共重合体全体に対して3〜50質量%であることが好ましく、5〜35質量%であることが更に好ましい。3質量%より少ないと印刷光沢が低下することがあり、50質量%を超えると、インキ転移性が悪化することがある。
また、上記単量体(a’)、(b’)、(c’)と共重合可能な他の単量体(d’)としては、上述した下塗り用バインダーに含有される共重合体ラテックス(A)に使用される(d)他の単量体と同様のものを使用することができ、同様の効果を得ることができる。その使用量は、共重合体全体に対して0〜76.5質量%であることが好ましい。
上記上塗り用バインダーとして使用する共重合体ラテックス(B)のゲル含有量は40〜98質量%であることが好ましく、80〜95質量%であることが更に好ましい。ゲル含有量が40質量%未満又は98質量%より多いと、いずれも充分な接着強度が得られないことがある。
また、この共重合体ラテックス(B)の重量平均粒子径は、50〜200nm、好ましくは60〜120nm、更に好ましくは70〜100nmである。50nm未満であると、塗工層が緻密になり過ぎることがある。また、平滑性が低下し、上塗り後の平滑性も低下し、インキ転移性、印刷光沢等の印刷適性を低下させ易いことがある。また、200nmを超えると充分な接着強度が得られなくなり、印刷光沢も低下することがある。
上記共重合体ラテックス(B)の製造方法は、上述した下塗り用バインダーに含有される共重合体ラテックス(A)の製造方法と同様とすることが好ましく、使用原料等も同様とすることが好ましい。
(上塗り塗工用組成物−その他)
本実施の形態の塗工紙の製造方法に使用する上塗り塗工用組成物に含有される顔料及びバインダーの質量比は、上述した下塗り用バインダーに含有される顔料及びバインダーの質量比と同様とすることが好ましく、それにより同様の効果を得ることができる。
上塗り塗工用組成物中に含有される顔料及びバインダーの合計量は、上塗り塗工用組成物全体に対して90質量%以上であることが好ましく、95〜99質量%であることが更に好ましい。
本実施の形態の塗工紙の製造方法に使用する上塗り塗工用組成物には、上記顔料及びバインダーに加えて、耐水性改良剤、顔料分散剤、粘度調節剤、着色顔料、蛍光染料及びpH調節剤等一般に使用されている種々の添加剤を任意に配合することができる。顔料、バインダー、その他添加剤を含む下塗り塗工用組成物の固形分濃度は、30〜70質量%が好ましい。
本実施の形態の塗工紙の製造方法に使用する、下塗りバインダーと上塗りバインダーとは、異なる成分としてもよいが、同一成分としてもよい。同一成分とすると、塗工紙の製造工程において、一種類のバインダーを調合すれば良いことになるため、生産効率を向上させることができる。
(塗工原紙)
本実施の形態の塗工紙の製造方法に使用する塗工原紙は特に限定されず、下塗り塗工用組成物及び上塗り塗工用組成物を塗工することにより塗工紙として使用可能であればよい。塗工原紙の原料パルプの種類は特に限定されず、例えば、機械パルプ、化学パルプ、古紙パルプ(DIP)等が挙げられる。また、塗工原紙には、内添剤として炭酸カルシウム、クレー及びタルク等の顔料、アルキルケテンダイマー、ロジン酸石鹸及び硫酸バンド等のサイズ剤、カチオン澱粉及びポリアクリルアミド等の紙力増強剤、並びに嵩高剤等を使用することもできる。更に、上記塗工原紙の表面には、サイズプレス、ゲートロールコーター、メータードサイズプレス等を使用して、アクリルアミド又はアクリル−スチレンポリマー等の表面サイズ剤を塗布することもできる。
(塗工紙の製造)
本実施の形態の塗工紙の製造方法は、上述した下塗り塗工用組成物を塗工原紙に塗工して下塗り塗工層を形成し、次に下塗り塗工層上に上述した上塗り塗工用組成物を塗工して上塗り塗工層を形成する塗工工程を有するものである。下塗り塗工用組成物や上塗り塗工用組成物を塗工する方法としては、一般の塗工紙の製造方法において用いられている方法を採用することができる。例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ロールコーター、チャンプレックスコーター、サイズプレスコーター、グラビアコーター等を使用して塗工することが出来る。下塗り塗工した後に、乾燥させてから上塗り塗工を行うことが好ましい。
本実施の形態の塗工紙の製造方法では、下塗り塗工層の塗工量が、3〜15g/m2であることが好ましい。3g/m2より少ないと充分な平滑性が得られないため、上塗り塗工後の光沢や平滑度、印刷適性が低下することがある。すなわち、2度塗工するメリットが小さくなることがある。15g/m2より多いとコストの割りに品質の向上が小さくなることがある。また、上塗り塗工層の塗工量は、3〜15g/m2であることが好ましい。3g/m2より少ないと充分な光沢、平滑性、印刷適性が得られないことがあり、15g/m2より多いと、コストが掛かりすぎることがある。
本実施の形態の塗工紙の製造方法では、塗工工程以外に、塗工原紙に下塗り塗工用組成物と上塗り塗工用組成物とを塗工して未乾燥塗工紙を作製した後に、その未乾燥塗工紙を乾燥させる乾燥工程を有することが好ましい。乾燥工程における乾燥方法としては、特に限定されるものではなく、一般の塗工紙の製造方法において用いられている方法を採用することができる。例えば、熱風乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥等を採用することができる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本実施の形態の塗工紙の製造方法では、乾燥工程の後に更に、カレンダー工程を設けてもよい。カレンダー処理を行うことで、得られた塗工紙の塗工層の特性を充分に活かすことができるようになる。特に、カレンダー処理により、平滑性及び光沢度を充分に引き出すことができる。カレンダー処理としては、スーパーカレンダー、マシンカレンダー及びソフトニップカレンダー等が挙げられる。これらは1種のみを施してもよく、2種以上を施してもよい。
本実施の形態の塗工紙の製造方法は、上述の工程以外に適宜所望の工程を有してもよい。
本発明の塗工紙の一の実施の形態は、上述した本発明の塗工紙の製造方法の一の実施の形態で得られた塗工紙である。そのため、白紙光沢、白色度、印刷強度、印刷光沢、インク乾燥性、耐ブリスター性に優れた塗工紙である。
本実施の形態の塗工紙は、枚葉オフセット印刷用及び輪転オフセット印刷用として特に好適に使用することができる。また、その他の平版印刷用、グラビア印刷等の凹版印刷用、及び凸版印刷用としても使用することができる。
次に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。なお、実施例において割合を示す「部」及び「%」はそれぞれ質量部及び質量%を意味する。
1.共重合体ラテックス(A)、(B)の製造
攪拌機を備え、温度調節の可能なオートクレーブ中に、1段目単量体成分等として、1,3−ブタジエン7質量%、スチレン7質量%、メチルメタアクリレート2質量%、アクリロニトリル2質量%、アクリル酸1.0質量%、イタコン酸1.0質量%、ドデシルベンゼンスルホン酸0.3質量%、過硫酸カリウム0.5質量%、水180質量%、α−メチルスチレンダイマー0.5質量%、t−ドデシルメルカプタン0.1質量%を一括して仕込み、60℃で3時間反応させ、重合転化率が70%以上であることを確認した(1段目の重合)。その後、2段目単量体成分として、1,3−ブタジエン36質量%、スチレン20質量%、メチルメタアクリレート6質量%、アクリロニトリル18質量%、過硫酸カリウム1質量%、α−メチルスチレンダイマー1質量%、t−ドデシルメルカプタン0.2質量%を12時間にわたって連続的に添加しながら70℃で重合を継続した。連続添加終了後も更に75℃で2時間反応させ(2段目の重合)、共重合体からなる粒子を含む共重合体ラテックス(A)を得た。最終的な重合転化率は99%であった。得られた共重合体ラテックス(A)について、重合体粒子の重量平均粒子径、ゲル含有量を以下の方法で求めた結果、重量平均粒子径は90(nm)、ゲル含有量は85(質量%)であった。共重合体ラテックス(B)としては、共重合体ラテックス(A)と同じものを使用した。以下、共重合体ラテックス(A)、及び共重合体ラテックス(B)を、単に「共重合体ラテックス」ということがある。
2.共重合体ラテックスの特性測定
(1)重量平均粒子径
重合体粒子の重量平均粒子径は、大塚電子社製のレーザーパーティクルアナライザー(モデルPAR−III)を用い、常法により求めた。
(2)ゲル含有量
共重合体ラテックスを水酸化ナトリウムによりpH8.0に調整した後、イソプロパノールで凝固させ、この凝固物を蒸留水により洗浄し、乾燥させて乾燥試料を得た。その後、所定量(約0.03g)の乾燥試料を、100mlのトルエンに、25℃で、20時間浸漬した。次いで、この溶液を120メッシュの金網で濾過し、得られる残存固形分の質量を測定し、処理前の共重合体ラテックスの全固形分に対する割合(質量%)を求めた。
3.塗工用組成物の調製
上記で製造した共重合体ラテックスと、下記成分(1)〜(5)とを用いて、表1の処方(配合1〜6)により、下塗り塗工用組成物及び上塗り塗工用組成物を調製した。
(1)カオリンクレー;商品名「ミラグロス」、エンゲルハード社製。
(2)炭酸カルシウム;商品名「カービタル60」、IMERYS社製。
(3)中空プラスチックピグメント(中空PP);商品名「AE851」、JSR社製、外径1.1μm、中空率55%(以下、「プラスチックピグメント」を「PP」ということがある)。
(4)サチンホワイト;商品名「BL−SW」、白石工業社製。アスペクト比は10前後である。
(5)澱粉;商品名「王子エースA」、王子コーンスターチ社製。
尚、表1中、「全固形分濃度」とは、該塗工用組成物スラリー総質量に占める、上記成分(A)、(B)及び(1)〜(5)の総固形分質量の比率(質量%)を意味する。また、「全固形分濃度」以外の、各成分を示す数値は質量部で示した。
4.下塗り塗工用組成物及び上塗り塗工用組成物の特性測定
(1)粘度
表1に示す各配合で調製した塗工用組成物を、25℃に調整した水槽で2時間調温し、温度が充分に一定となったことを確認した後、粘度計(TOKIMEC社製、商品名「DIGITAL VISOMETER」)を用い、60回転における見かけ粘度を、測定開始から1分後に測定した。
Figure 2006002280
5.塗工紙の製造
表1に示す、下塗り塗工用組成物(配合1〜4)及び上塗り塗工用組成物(配合5,6)を用い、枚葉式コーター(SMT社製)による塗工を実施し、以下に示す方法により塗工紙を作製した。そして、以下に示す各種評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例1〜4、比較例1〜4)
上記下塗り塗工用組成物を、塗工原紙(75g/m2)上に、SMT社製の枚葉式コーターにより、塗工速度100m/分、塗工量が10g/m2になるように塗工し、150℃の熱風乾燥機にて6秒間乾燥して塗工紙を得た。次に、上塗り塗工用組成物を、上記下塗り塗工を施した塗工原紙上に、上記下塗り塗工用組成物を塗工した方法と同様の方法により、塗工し、乾燥させた。次に、カレンダー工程において、由利ロール社製の商品名「ダブルテストカレンダー」を使用し、線圧100kg/cm、ロール温度50℃の条件でスーパーカレンダー処理を2回行い、オフセット印刷用塗工紙を得た。
6.塗工紙の評価
(1)ドライピック強度(DP)
RI印刷機(明製作所社製)で印刷したときのピッキングの程度を肉眼で判定し、印刷強度を評価した。ピッキングの特に少ないもの(特に良好な水準)を「◎」、非常に少ないもの(良好な水準(◎と○との中間水準))を「◎〜○」、少ないもの(合格水準)を「○」、多いもの(劣る水準)を「△」として、その程度を評価した。
(2)ウエットピック強度(WP)
上記RI印刷機を用いて、塗工紙表面を吸水ロールで湿してから、RI印刷機で印刷したときのピッキングの程度を肉眼で判定し、印刷強度を評価した。ピッキングの特に少ないもの(特に良好な水準)を「◎」、少ないもの(合格水準)を「○」、多いもの(劣る水準)を「△」として、その程度を評価した。
(3)インク乾燥性
RI印刷機(明製作所社製)で印刷し、2時間後、印刷面にキャスト紙をあてがいRI印刷機でインクを練らない状態で空通し圧着した。キャスト紙にインクが裏写りした状態を目視判定し、インク乾燥性に特に優れたもの(特に良好な水準)を「◎」、非常に優れたもの(良好な水準(◎と○との中間水準))を「◎〜○」、優れたもの(合格水準)を「○」、劣るもの(劣る水準)を「△」、特に劣るもの(特に劣る水準)を「×」として、その程度を評価した。
(4)印刷光沢
上記RI印刷機を用いて、オフセット用インキを塗工紙にベタ刷りした後、村上式光沢計により入射角60°、反射角60°で測定した。印刷光沢に特に優れたもの(特に良好な水準)を「◎」、非常に優れたもの(良好な水準(◎と○との中間水準))を「◎〜○」、優れたものを「○」、劣るもの(劣る水準)を「△」、特に劣るもの(特に劣る水準)を「×」として、その程度を評価した。
(5)白紙光沢
ハンター白色度計を用い、入射角75°、反射角75°で測定した。白紙光沢に特に優れたもの(特に良好な水準)を「◎」、非常に優れたもの(良好な水準(◎と○との中間水準))を「◎〜○」、優れたもの(合格水準)を「○」、劣るもの(劣る水準)を「△」、特に劣るもの(特に劣る水準)を「×」として、その程度を評価した。
(6)白色度
スガ試験機社製の「分光白色度測色計SC10W」を使用し、JIS P8148「紙および板紙の拡散照明方式による白色度試験法」に従い測定した。白色度に特に優れたもの(特に良好な水準)を「◎」、非常に優れたもの(良好な水準(◎と○との中間水準))を「◎〜○」、優れたもの(合格水準)を「○」、劣るもの(劣る水準)を「△」、特に劣るもの(特に劣る水準)を「×」として、その程度を評価した。
(7)透気度
旭精工製、商品名「王研式透気度式」を使用して、王研式透気度を測定した。透気度の特に高い(空気が通過しやすい)もの(特に良好な水準)を「◎」、非常に高いもの(良好な水準(◎と○との中間水準))を「◎〜○」、高いもの(合格水準)を「○」、透気度の低い(空気が通過し難い)もの(劣る水準)を「△」、特に低いもの(特に劣る水準)を「×」として、その程度を評価した。
(8)耐ブリスター性
両面塗工された塗工紙を調湿(水分量約6%)した後、加熱したオイルバスに投入し、ブリスターが発生する状態を観察した。耐ブリスター性に特に優れたもの(特に良好な水準)を「◎」、非常に優れたもの(良好な水準(◎と○との中間水準))を「◎〜○」、優れたもの(合格水準)を「○」、劣るもの(劣る水準)を「△」として、その程度を評価した。
Figure 2006002280
実施例1〜4により得られた塗工紙は、いずれも、各評価結果が良好であり、特にインク乾燥性、印刷光沢、透気度及び耐ブリスター性に優れたものであることがわかる。これに対し、比較例1〜4により得られた塗工紙は、いずれもインク乾燥性に劣るという結果であった。以上より、実施例1〜4により得られた塗工紙は、サチンホワイト(SW)を下塗り塗工用組成物に含有させることにより、透気度が良好となり、それによりインク乾燥性及び耐ブリスター性に優れたものになっていると考えられる。また、実施例1〜4により得られた塗工紙の印刷強度(DP、WP)は、良好に維持されている。
本発明の塗工紙の製造方法は、特に枚葉オフセット印刷用あるいは輪転オフセット印刷用の用紙の製法として有用である。また、その他の平版印刷用紙、グラビア印刷等の凹版印刷用紙、及び凸版印刷用紙等の製法にも有用である。本発明の塗工紙は、特に枚葉オフセット印刷用あるいは輪転オフセット印刷用の用紙の製法として有用である。

Claims (13)

  1. 顔料とバインダーとを含有する下塗り塗工用組成物を塗工原紙に塗工して下塗り塗工層を形成し、次に前記下塗り塗工層上に顔料とバインダーとを含有する上塗り塗工用組成物を塗工して上塗り塗工層を形成する塗工工程を有する塗工紙の製造方法であって、
    前記下塗り塗工用組成物に含有される前記顔料の少なくとも一部が、アスペクト比3以上の針状あるいは柱状の顔料である塗工紙の製造方法。
  2. 前記アスペクト比3以上の針状あるいは柱状の顔料が、サチンホワイトである請求項1に記載の塗工紙の製造方法。
  3. 前記アスペクト比3以上の針状あるいは柱状の顔料の含有量が、前記下塗り塗工用組成物に含有される顔料(下塗り用顔料)全体に対して1〜30質量%である請求項1又は2に記載の塗工紙の製造方法。
  4. 前記下塗り用顔料中に、更に、前記下塗り用顔料全体に対して、炭酸カルシウム50〜97質量%、及びその他の無機顔料0〜49質量%が含有される請求項3に記載の塗工紙の製造方法。
  5. 前記上塗り塗工用組成物に含有される顔料(上塗り用顔料)中に、アスペクト比3以上の針状あるいは柱状の顔料を含まない請求項1〜4のいずれかに記載の塗工紙の製造方法。
  6. 前記上塗り塗工用組成物に含有される顔料(上塗り用顔料)中に、前記上塗り用顔料全体に対して、有機顔料1〜100質量%、及び無機顔料0〜99質量%が含有される請求項1〜5のいずれかに記載の塗工紙の製造方法。
  7. 前記有機顔料が中空プラスチックピグメントである請求項6に記載の塗工紙の製造方法。
  8. 前記下塗り塗工用組成物に含有されるバインダー(下塗り用バインダー)が、(a)脂肪族共役ジエン単量体20〜65質量%、(b)エチレン性不飽和カルボン酸単量体0.5〜10質量%、(c)シアン化ビニル単量体0〜50質量%、及び(d)これらの単量体と共重合可能な他の単量体0〜79.5質量%の共重合体(但し、(a)+(b)+(c)+(d)=100質量%)からなり、ゲル含有量が60〜98質量%、重量平均粒子径が50〜200nmの共重合体ラテックスを含有する請求項1〜7のいずれかに記載の塗工紙の製造方法。
  9. 前記上塗り塗工用組成物に含有されるバインダー(上塗り用バインダー)が、(a’)脂肪族共役ジエン単量体20〜65質量%、(b’)エチレン性不飽和カルボン酸単量体0.5〜10質量%、(c’)シアン化ビニル単量体3〜50質量%、及び(d’)これらの単量体と共重合可能な他の単量体0〜76.5質量%の共重合体(但し、(a’)+(b’)+(c’)+(d’)=100質量%)からなり、ゲル含有量が40〜98質量%、重量平均粒子径が50〜200nmの共重合体ラテックスを含有する請求項1〜8のいずれかに記載の塗工紙の製造方法。
  10. 前記下塗り用バインダーと前記上塗り用バインダーとが同一成分である請求項8又は9に記載の塗工紙の製造方法。
  11. 前記下塗り塗工層の塗工量が3〜15g/m2であり、前記上塗り塗工層の塗工量が3〜15g/m2である請求項1〜10のいずれかに記載の塗工紙の製造方法。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の塗工紙の製造方法で得られた塗工紙。
  13. 枚葉オフセット印刷又は輪転オフセット印刷に使用される請求項12に記載の塗工紙。
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WO2012155378A1 (zh) * 2011-05-17 2012-11-22 天津科技大学 中等白度的原纸涂布的高白度涂布纸及涂布方法及所用涂料
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