JP5288544B2 - 多層塗工紙 - Google Patents

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Description

本発明は、共重合体ラテックスをバインダーとして使用する多層塗工紙に関するものである。更に詳しくは、オフセット印刷、グラビア印刷、及びその他の印刷に供される塗工紙または塗工板紙であって、接着強度(ピック強度及び湿潤ピック強度)、耐ブリスター性、印刷光沢及び印刷時の操業性に優れた多層塗工紙に関するものである。
塗工紙とは、抄造された紙の表面の平滑性を高め、光沢や印刷適性を向上させる目的で、原紙にカオリンクレー、炭酸カルシウム、サチンホワイト、タルク、酸化チタンなどの無機顔料およびプラスチック顔料などの有機顔料を塗布したものであり、これらの顔料のバインダーとしては、ジエン系共重合体ラテックスが一般的に用いられている。顔料バインダーとして用いられる共重合体ラテックスの性質は、これを利用した塗工紙の表面強度に大きな影響を及ぼすことが知られている。
近年、カラー印刷された雑誌類やパンフレット、広告等の需要の増大に伴い、印刷速度の高速化が進められており、特にインクのタックによる紙の表面の破壊に対する抵抗性(いわゆるピック強度及び湿潤ピック強度)の改善が以前にも増して要求されるようになった。また、塗工紙を生産する製紙メーカーにとっては、製品のコストダウンが主要課題の1つでもあり、共重合体ラテックスの使用割合を減らす事が要求され、この観点でも少量の共重合体ラテックスを使用する条件で優れた接着強度(ピック強度及び湿潤ピック強度)を発現させる事が望まれている。更には最近の印刷方式は大量印刷に適したオフセット輪転式印刷の割合が増加し、また印刷速度も高速化しており、印刷直後に従来にも増して高温の条件で乾燥させる工程を経る事から、塗工紙の耐ブリスター性の改良が望まれている。また印刷時の印刷機のブランケット汚れに代表される、印刷操業性に関しても改良が望まれている。
これらの品質は、例えば印刷時のピック強度を改良すると、印刷時の耐ブリスター性が低下する現象などの様に、互いに相反する場合が多く、ひとつの品質項目を改善しようとすると、他の品質項目が劣化する場合が多い。
従来より、原紙上に2層以上の塗工層を設け、それぞれの塗工層に用いるバインダーである共重合体ラテックスの設計をコントロ−ルする事により、各塗工層の機能を効果的に発現させ、上記のような相反する品質バランスを改良する試みが提案されている。例えば、2層よりなる顔料塗工紙において、その下塗り層にゲル含有量が5乃至60%であるスチレン・ブタジエン・アクリル共重合体を用いる事により、耐ブリスター適性が良好でかつ印刷適性に優れる輪転オフセット印刷用塗被紙が提案されている(特許文献1)。しかしこの発明による多層塗工紙では、用いる共重合体ラテックスのゲル含有量が低い為、塗工紙の接着強度は劣り、塗工紙の耐ベタツキ性も劣ることから印刷時のブランケット汚れのトラブルを起こしやすい。また下塗り顔料塗工層に特定の最低成膜温度を有する共重合体ラテックスを含むことで、ピック強度と印刷光沢に優れるオフセット印刷用ダブル塗工紙が提案されている(特許文献2、3)。しかしこの発明による多層塗工紙でも、塗工紙の接着強度は不充分である。更には下塗り塗工層に、特定の単量体組成とゲル含有量を有する共重合体ラテックスを使用し、加えて該共重合体ラテックスの乳化重合時にエチレン系不飽和カルボン酸の使用方法に工夫を加える事により、耐ブリスター性と表面強度に優れるオフセット輪転用多層塗工紙が提案されている(特許文献4)。しかし依然としてこの発明による多層塗工紙でも接着強度の改良は不充分である。その他、下塗り塗工層に用いる共重合体ラテックスとして、アルコール性水酸基を有する水溶性高分子の存在下に単量体を重合して得られ、特定範囲のガラス転移温度を有するものを用いた、表面強度および耐ブリスター性に優れる多層塗工紙も提案されている(特許文献5)。
特公平7−13360号公報 特許第2898670号公報 特開平6−166995号公報 特開平11−293593号公報 特開2005−105462号公報 つまる所上記の各発明でも塗工紙の接着強度と耐ブリスター性の両物性を同時に改良させるには効果は不充分であり、特に使用するラテックス部数が少ない条件下では改良効果の不足が顕著である。また塗工紙の接着強度と印刷光沢のバランス、及び印刷時の印刷操業性の改良にも課題を残していた。
本発明は、以上のような状況から、塗工紙のピック強度と湿潤ピック強度を向上させ、
同時に塗工紙の耐ブリスター性、印刷光沢、印刷操業性をも改良させる、印刷用塗工紙を提供する事を課題とする。
本発明者は、上述の問題点を解決するために鋭意検討した結果、原紙の片面または両面に片面当り少なくとも2層以上の塗工層を有する多層塗工紙に関して、バインダーとして使用する共重合体ラテックスのトルエン不溶分を特定の範囲にすること、及び塗工層を構成する顔料100質量部当りの共重合体ラテックスの含有量を特定の範囲にすることによって顕著な効果を発現する事を見出し、鋭意検討した結果、本発明をなすに至った。即ち本発明は、下記の通りである。
[1]原紙の片面または両面に片面当り少なくとも2層以上の塗工層を有する多層塗工紙であって、その少なくとも1つの塗工層中に、トルエン不溶分が96質量%以上の共重合体ラテックスを、その塗工層を構成する顔料100質量部当り5〜15質量部含む多層塗工紙。
[2]原紙に隣接する第一塗工層中に、トルエン不溶分が96%以上の共重合体ラテックスを、その塗工層を構成する顔料100質量部当り5〜15質量部含む前記[1]記載の多層塗工紙。
[3]多層塗工紙を構成する全ての塗工層に、トルエン不溶分が96%以上の共重合体ラテックスを、その塗工層を構成する顔料100質量部当り5〜15質量部含む前記[1]記載の多層塗工紙。
[4]共重合体ラテックスが、(a)共役ジエン系単量体35〜60質量%、(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体1.5〜7質量%、(c)シアン化ビニル系単量体10〜40質量%、および(d)その他共重合可能な単量体3〜53.5質量%(但し(a)+(b)+(c)+(d)=100質量%)から成る単量体混合物を乳化重合して得られる共重合体ラテックスであって、前記の乳化重合は、少なくとも二段の重合工程を経るものであり、重合の第一工程で使用される単量体混合物100質量%に対する、第一工程で使用される(a−1)共役ジエン系単量体の質量比をA1質量%、重合の最終工程で使用される単量体混合物100質量%に対する、最終工程で使用される(a−2)共役ジエン系単量体の質量比をA2質量%とした場合に、A1:A2の比が、10:1〜10:5の範囲にある、前記[1]から[3]のいずれか一つに記載の多層塗工紙。
[5]共重合体ラテックスを構成する上記(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体は、(b−イ)エチレン系不飽和一塩基酸と、(b−ロ)エチレン系不飽和二塩基酸とを必須成分として含み、かつ、使用する(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体の全質量100質量%に対し、(b−イ)エチレン系不飽和一塩基酸の割合が、55〜90質量%の範囲にある、前記[4]記載の多層塗工紙。
[6]オフセット輪転式印刷に用いる、前記[1]から[5]のいずれか一つに記載の多層塗工紙。
本発明の多層塗工紙によれば、塗工紙のピック強度及び湿潤ピック強度向上と共に、耐ブリスター性、印刷光沢、塗工紙パイリング適性及び塗工紙ベタツキ性の全てを向上させることができる。その結果、塗工紙の接着強度並びに印刷光沢、オフセット輪転印刷適性、印刷機の汚れ防止等の観点での印刷操業性に極めて優れた性能を付与させる事が可能になる。
以下、本発明について、特にその好ましい実施の形態を中心に、具体的に説明する。まず本発明に用いる共重合体ラテックスについて説明するが、当該共重合体ラテックスは、トルエン不溶分が96質量%以上である事が必要である。トルエン不溶分とは、共重合体ラテックスの架橋度合いを示す指標である。その測定方法は、基材上に湿潤状態のラテックスを塗布、乾燥させ、得られたフィルムを裁断後、フィルムの乾燥質量(W1)を測定し、フィルムに対して大過剰のトルエンに浸漬・振とうする。6時間の振とう後に、200メッシュの金網を通し、金網上に残ったフィルムの乾燥質量(W2)を測定し、W2/W1×100(質量%)として算出する事ができる。例えば特開平2−269897号公報を参照。
本発明の多層塗工紙に用いる共重合体ラテックスは、このトルエン不溶分が96質量%以上である事により、多層塗工紙に優れたピック強度、湿潤ピック強度、印刷光沢、耐ブリスター性、塗工紙ベタツキ性を発現させる。共重合体ラテックスのトルエン不溶分は、多層塗工紙に優れた耐ブリスター性を発現させ、かつピック強度、湿潤ピック強度をより高める観点で、96〜99.5質量%の範囲にある事が好ましく、更に好ましくは97〜99質量%、最も好ましくは98〜99質量%である。共重合体ラテックスのトルエン不溶分の調整は、共重合体ラテックスを製造する際の条件、例えば共重合に用いる単量体に対する連鎖移動剤の量を調整する事などにより可能である。
本発明の多層塗工紙に用いる共重合体ラテックスは、上記の如くトルエン不溶分が十分に高い事で特に優れた耐ブリスター性を発現させる。この理由は必ずしも定かではないが、共重合体の架橋度合いが極めて高い為に、印刷後の乾燥工程で熱履歴を受けた際に、塗工層中の共重合体が熱により変形することなく、塗工層の空隙が埋められにくくなり、塗工紙中の水分が表面から円滑に抜けていく事が主な理由と考える。
本発明の多層塗工紙に用いる共重合体ラテックスは、公知の単量体を出発原料として乳化重合して得られる。単量体の好ましい例としては、(a)共役ジエン系単量体、(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体、(c)シアン化ビニル系単量体、および(d)その他共重合可能な単量体である。
(a)共役ジエン系単量体は、共重合体に架橋構造を付与し、柔軟性を与え、ピック強度、衝撃吸収性を与えるために好ましい成分であり、該共重合体ラテックスを構成する全単量体100質量%に対して、好ましくは35〜60質量%、より好ましくは38〜55質量%、最も好ましくは40〜50質量%の割合で用いられる。この単量体の使用量を上記範囲に設定する事により、共重合体に適度の柔軟性と弾性を付与してピック強度を向上させ、更には塗工紙の耐ベタツキ性を向上させる事ができる。使用される共役ジエン系単量体の好ましい例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエンなどがあげられ、これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、好ましい原料の1つである(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体は、該共重合体ラテックスに必要な分散安定性を与え、塗工紙のピック強度、湿潤ピック強度を高めるための重要な成分であり、該共重合体ラテックスを構成する全単量体100質量%に対して、好ましくは1.5〜7質量%、より好ましくは2〜6質量%、更に好ましくは2.5〜5質量%の割合で用いられる。この単量体の使用量を上記範囲に設定する事により、共重合体ラテックスの耐湿潤ベタツキ性を良好(べたつかない)に保つ事が可能になり、塗工紙生産の際のさまざまな問題発生を回避する事が可能となる。また共重合体ラテックスの粘度を取り扱いに支障をきたさない適度な範囲に調整する事が可能である。
(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体の好ましい例としては、アクリル酸、メタクリル酸等の(b−イ)エチレン系不飽和一塩基酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の(b−ロ)エチレン系不飽和二塩基酸などがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。より好ましくは、(b−イ)エチレン系不飽和一塩基酸と、(b−ロ)エチレン系不飽和二塩基酸を併用して使用することであり、かつ、使用する(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体の全質量100質量%に対し、(b−イ)エチレン系不飽和一塩基酸の割合が、55〜90質量%の範囲にある事である。(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体の使用方法をこのような特定の条件にする事で、共重合体ラテックスの分散安定性を良好に保ち、かつ塗工紙印刷時の印刷機ロール汚れなどの諸問題を回避する事ができる。(b−イ)エチレン系不飽和一塩基酸の占めるより好ましい割合は、使用する(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体の全質量100質量%に対し、60〜85質量%、最も好ましくは65〜75質量%である。
また、共重合体ラテックスの好ましい原料の1つである(c)シアン化ビニル単量体は、塗工紙に印刷光沢を付与し、更に塗工紙の耐ベタツキ性を向上させるための好的な成分であり、該共重合体ラテックスを構成する全単量体を100質量%に対して、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは15〜35質量%、更に好ましくは20〜30質量%の割合で用いられる。この単量体の使用量を上記範囲に設定する事により、塗工紙の耐ベタツキ性を向上させる効果が高まり、かつ共重合体ラテックスの重合安定性の低下を防止することができる。シアン化ビニル単量体の好ましい例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリルなどがあげられ、これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
また、他の原料として上記(a)〜(c)単量体と共重合が可能である、(d)その他共重合可能な単量体を使用する事ができる。この(d)その他共重合可能な単量体を適宜選択することにより、共重合体ラテックス及びその組成物にさまざまな特性を付与できる。(d)その他共重合可能な単量体の好ましい例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、などのアクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸アルキルエステル類、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチルなどのアミノアルキルエステル類、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどのピリジン類、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのグリシジルエステル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、グリシジルメタクリルアミド、N,N−ブトキシメチルアクリルアミドなどのアミド類、酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類、塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル類などがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記各種単量体の中でも、得られる共重合体ラテックスを使用した塗工紙のピック強度、湿潤ピック強度、及び共重合体ラテックスの重合安定性の観点から、スチレン、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチルを用いることが好ましい。
この(d)その他共重合可能な単量体は、共重合体ラテックスを構成する全単量体100質量%に対して、好ましくは3〜53.5質量%、より好ましくは15〜30質量%の割合で用いられる。この単量体を上記範囲で使用する事で、好適なピック強度が発現する。
本発明の多層塗工紙で用いられる共重合体ラテックスは、上記の単量体の混合物(ただし、使用する前記(a)〜(d)の合計量を100質量%とする。)を乳化重合法により重合することで得られる。
共重合体ラテックスの製造は、従来商業的に用いられている乳化重合法の装置を使用して行われるものであるが、少なくとも二段の重合工程を含む多段重合法を取る事が好ましい。これにより目的の課題に対する効果がより大きくなる。多段重合法とは、例えば特開2002−226524号公報に開示されている如く、組成の異なる複数の単量体混合物を準備し、重合反応の進行に伴って系内に添加する単量体混合物の組成を、重合反応の途中で変化させる重合法である。
上記のような多段重合法を行う場合、本発明の共重合体ラテックスで目的とする効果を高める為には、各重合段の単量体混合物の組成が重要である。重合反応における時系列的な観点で整理した場合、最初の工程を第一工程、これに続く工程を第二工程、(更にこれに続く第三工程以降が存在してもよい。また、最後に行う工程を最終工程とする。)と定義した場合に、各工程における(a)共役ジエン系単量体の量が重視すべき点である。即ち重合の第一工程で使用される単量体混合物100質量%に対する、第一工程で使用される(a−1)共役ジエン系単量体の質量比をA1質量%、重合の最終工程で使用される単量体混合物100質量%に対する、最終工程で使用される(a−2)共役ジエン系単量体の質量比をA2質量%とした場合に、A1:A2の比が、10:1〜10:5の範囲にあることが好ましい。この条件を満たす事で、本発明の多層塗工紙はより優れたピック強度、耐ベタツキ性を発現する。A1:A2の比はより好ましくは、10:2〜10:4、最も好ましくは10:3〜10:3.5の範囲である。また第一工程で用いる単量体混合物の量と、第二工程以降の各工程で用いられる単量体混合物の量との質量比は、40:60〜80:20の範囲であることが好ましく、45:55〜65:35の範囲であることがより好ましい。この範囲に入ることで得られた共重合体ラテックスを使用した塗工紙の耐ベタツキ性、及びピック強度・湿潤ピック強度をより高める事ができる。最も好ましい範囲は、55:45〜62:38の範囲である。
更に、(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体の使用方法に、ある特定の制限を加えることが好ましい。前述の様に、原料単量体として(b−イ)エチレン系不飽和一塩基酸と、(b−ロ)エチレン系不飽和二塩基酸を併用して使用する事が好ましいが、このエチレン系不飽和二塩基酸単量体については、重合開始時点で系内に存在する量と重合開始後に系内に後添加(すなわち、第二工程以降における添加)する量との比、および系内に後添加するタイミングが重要である。
即ち、(b−ロ)エチレン系不飽和二塩基酸の少なくとも60質量%以上は、後添加されるのが好ましいが、第二工程以降で、かつその時点までに系内に添加された単量体の重合転化率が65〜95質量%の範囲内にある時点で系内に後添加を開始する事が好ましく、この条件が満たされる事によって、得られる共重合体ラテックスを使用した塗工紙はより良好な耐ベタツキ性を得ることが可能となる。系内に後添加される(b−ロ)エチレン系不飽和二塩基酸割合のより好ましい範囲は70質量%以上であり、最も好ましくは80質量%以上である。
後添加される(b−ロ)エチレン系不飽和二塩基酸の系内への後添加開始時期は、その時点までに系内に添加された他の単量体の重合転化率が70〜90質量%になったいずれかの時点から、系内に後添加開始される事がより好ましい。
共重合体ラテックスのガラス転移温度(Tg)は、特に限定されるものではないが、塗工紙のピック強度・湿潤ピック強度と耐ベタツキ性を両立させる観点から、−20℃〜+40℃の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは−15℃〜+25℃、さらに好ましくは−10〜+10℃の範囲にあることである。なお、Tgは、1種類の共重合体ラテックスにおいて1点だけである必要はなく、複数のTgを有していてもよい。
共重合体ラテックスの粒子径は50〜150nmであることが好ましく、60〜110nmにあることがより好ましい。この範囲の粒子径に設定する事により、ラテックスの粘度を好適な範囲に調整する事が可能であり、作業性を低下させないようにすることができる。更には、ピック強度・湿潤ピック強度の低下や塗料粘度上昇を抑制させる事ができる。
本発明の共重合体ラテックスを製造するに当たっては、上述した特定事項以外については特に制限はなく、水性媒体中で界面活性剤の存在下、ラジカル開始剤により重合を行うなどの方法を用いることができる。
使用する乳化剤についても特に制限はなく、従来公知のアニオン、カチオン、両性および非イオン性の界面活性剤を用いることができる。好ましい界面活性剤の例としては、脂肪族セッケン、ロジン酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩などのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマーなどのノニオン性界面活性剤があげられ、これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。使用される界面活性剤の量は、全単量体100質量部当たり、0.3〜2.0質量部である事が好ましい。
ラジカル開始剤は、熱または還元剤の存在下でラジカル分解して単量体の付加重合を開始させるものであり、無機系開始剤、有機系開始剤のいずれも使用することが可能である。好ましい例としてはペルオキソ二硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物などがあり、具体的にはペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、2,2−アゾビスブチロニトリル、クメンハイドロパーオキサイドなどがあげられ、これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。また酸性亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸やその塩、エリソルビン酸やその塩、ロンガリットなどの還元剤を重合開始剤と組み合わせて用いる、いわゆるレドックス重合法を用いることもできる。
共重合体ラテックスを製造する場合、ラジカル重合において通常用いられる公知の連鎖移動剤を用いることが可能である。連鎖移動剤の好ましい例としては、核置換α−メチルスチレンの二量体のひとつであるα−メチルスチレンダイマー、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタンなどのメルカプタン類、テトラメチルチウラジウムジスルフィド、テトラエチルチウラジウムジスルフィドなどのジスルフィド類、四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化誘導体、2−エチルヘキシルチオグリコレートなどがあげられ、これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。連鎖移動剤の添加方法にも特に制限はなく、一括添加、回分添加、連続添加など公知の添加方法が用いられる。連鎖移動剤の使用量は、共重合体ラテックスのトルエン不溶分を決定する為の重要因子であり、全単量体100質量部当り、0.5〜2.5質量部が好ましく、更に好的には1.0〜2.0質量部の範囲で用いる事である。
共重合体ラテックスを製造する場合の重合温度は、特に制約はなく、通常40〜100℃の範囲で行う事が一般的であるが、生産効率と、得られる共重合体ラテックス及びその組成物のピック強度等の品質の観点からは、重合開始時から単量体混合物の添加終了時までの期間においては、55〜85℃の範囲が好ましく、より好ましくは60〜70℃の範囲である。また全単量体を重合系内に添加終了後に、各単量体の重合転化率を引き上げる為に、重合温度を上げる方法(いわゆるクッキング工程)を設ける事も可能であり、この工程の重合温度は80〜100℃の範囲にある事が好ましい。
共重合体ラテックスを製造する場合の重合固形分濃度は、生産効率と、乳化重合時の粒子径制御の観点から、30〜60質量%、更に好ましくは37〜50質量%である。ここにいう固形分濃度とは、元の共重合体ラテックス質量に対する乾燥により得られた固形分質量の割合を言う。
共重合体ラテックスを製造するにあたって、乳化重合の系内に(各重合工程)の単量体混合物を添加する手段に関しては、上記で説明した方法以外には特に制約はない。単量体混合物の一部を一括して予め乳化重合系内に仕込み重合した後、残りの単量体混合物を連続的もしくは間欠的に仕込む方法、あるいは単量体混合物を各重合段の最初から連続的または間欠的に仕込む方法を採りうるものであり、これらの重合方法を組み合わせて重合してもよいが、商業生産ベースにおいて、発生する重合熱の除去の観点から、製品の生産性を考慮した場合に、全単量体混合物の80質量%以上については、連続的に系内に添加する方法が好ましい。
共重合体ラテックスの製造に際しては、粒子径の調整のため公知のシード重合法を用いることも可能であり、シードを作製後同一反応系内で共重合体ラテックスの重合を行うインターナルシード法、別途作製したシードを用いるエクスターナルシード法などの方法を適宜選択して用いることができる。
共重合体ラテックスの製造には、必要に応じて公知の各種重合調整剤を用いることができる。これらはたとえばpH調整剤、キレート剤などであり、pH調整剤の好ましい例としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムなどがあげられ、キレート剤の好ましい例としてはエチレンジアミン四酢酸ナトリウムなどがあげられる。
共重合体ラテックスの、最終製品としての固形分濃度についても特に制限はなく、通常固形分濃度は30〜60質量%の範囲に希釈もしくは濃縮して調製される。
共重合体ラテックスには、その効果を損ねない限り、必要に応じて各種添加剤を添加すること、あるいは他のラテックスを混合して用いることが可能であり、例えば分散剤、消泡剤、老化防止剤、耐水化剤、殺菌剤、印刷適性剤、滑剤などを添加すること、アルカリ感応型ラテックス、有機顔料などを混合して用いることもできる。
本発明の多層塗工紙に使用される塗工用顔料としては、カオリンクレー、炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、タルク等の無機顔料、プラスチックピグメントやバインダーピグメントとして知られる有機顔料が挙げられる。各塗工層には、共重合体ラテックス以外に、澱粉、カゼイン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等の水溶性高分子バインダー、増粘剤、染料、泡消剤、防腐剤、耐水化剤、滑剤、印刷適性向上剤、保水剤等の各種添加剤を含有させる事ができる。
本発明の多層塗工紙は原紙の片面または両面に、片面当り少なくとも2層以上の塗工層を有するものであるが、いずれの塗工層においても、前記の各種顔料を任意に用いる事ができる。これらの顔料の中で、最も外層部となる塗工層においては、当該塗工層を構成する顔料100質量部あたり、平均粒子径が2μm以下の粒子を90%以上含むカオリンクレーを30質量部以上用いる事が好ましく、より好ましくは50〜70質量部である。これにより塗工紙の印刷光沢と耐ブリスター性がより優れる。一方、原紙に隣接する第一塗工層においては、当該塗工層を構成する顔料100質量部あたり、炭酸カルシウムを30質量部以上用いる事が好ましく、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは70質量部以上である。これにより塗工紙の耐ブリスター性がより優れる。
本発明の塗工紙において、バインダーとして、トルエン不溶分が96質量%以上の共重合体ラテックスを、各面のいずれかの塗工層に用いる事が必要であり、その使用量は該塗工層を構成する顔料100質量部あたり、5〜15質量部とする事が必要である。使用量をこの範囲に定める事により、塗工紙の耐ブリスター性、印刷光沢を高める事が可能になり、好ましくは顔料100質量部あたり、6〜9質量部である。また各塗工層においては、前述の水溶性高分子バインダーを併用する事ができる。
トルエン不溶分が96質量%以上の共重合体ラテックスを、原紙に隣接する第一塗工層に用いる事が好ましい。これにより塗工紙の耐ブリスター性とピック強度がより高まる。また多層塗工紙を構成する全ての塗工層に、トルエン不溶分が96質量%以上の共重合体ラテックスを使用する事は更に好ましく、目的とする塗工紙のピック強度、湿潤ピック強度、耐ブリスター性、印刷光沢、耐ベタツキ性を最も効果的に向上させる事が可能になる。
本発明の多層塗工紙は、通常行われている実施態様で製造することができる。すなわち、分散剤を溶解させた水中に、顔料、バインダー、及び前述の各種添加剤を添加して混合し、均一な分散液(紙塗工組成物)を調製する。そして、この紙塗工組成物は、各種ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、バーコーターなどを用いる通常の方法によって原紙に塗工する。さらに塗工された塗工紙は、スーパーカレンダー、高温ソフトニップカレンダー、ヤヌスカレンダーなどの仕上げ工程や裁断工程により加工される態様である。
この印刷用塗工紙は、オフセット枚葉式印刷用紙、オフセット輪転式印刷用紙、グラビア式印刷用紙、凸版式印刷用紙、フレキソ印刷用紙等の各種印刷用紙及び板紙、ダンボール用紙、包装紙等に好適に用いられるが、特にオフセット輪転式印刷用紙に用いられる事が望ましい。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例の具体的態様に限定されるものではない。
[各物性の評価方法]
(1)ピック強度:
RI印刷試験機(明製作所製)を用いて、印刷インク(T&K TOKA社製、商品名SDスーパーデラックス50紅B、タック18)0.4ccを1回刷りし、ゴムロールに現れたピッキング状態を別の台紙に裏取りし、その状態を観察した。評価は10点評価法(評価に用いた全サンプルの相対的位置付けで採点)とし、ピッキング現象の少ないものほど高得点とした。
(2)湿潤ピック強度:
RI印刷試験機(明製作所製)を用いてスリーブロールで塗工紙表面に給水し、その直後に印刷インク(T&K TOKA社製SDスーパーデラックス50紅B;タック15)0.4cc1回刷りし、ゴムロールに現れたピッキング状態を別の台紙に裏取りし、その状態を観察した。評価は10点評価法(評価に用いた全サンプルの相対的位置付けで採点)とし、ピッキング現象の少ないものほど高得点とした。
(3)印刷光沢:
RI印刷試験機(明製作所製)を用いて、印刷インク(DIC株式会社製、商品名:ジオスGスミ)0.6ccを1回刷りし、温度23℃、湿度50%で24時間放置後、光沢度計を用いて入射角60°での光沢値を測定した。光沢値が高いものほど、印刷光沢に優れる。
(4)耐ブリスター性:
塗工紙を20cmの大きさに裁断し、その試験片を所定の温度に調整したシリコンオイルバスに浸漬し、ブリスター(膨れ)が発生する最低温度を測定した。最低温度が高いものほど耐ブリスター性が優れる。
(5)塗工紙の耐ベタツキ性:
塗工紙のサンプルを温度50℃、湿度80%の環境で調湿後に、スーパーカレンダー処理し、ロール上に付着する異物の量を観察した。評価は10点評価法(評価に用いた全サンプルの相対的位置付けで採点)とし、異物の少ないものほど高得点とした。
(6)塗工紙パイリング適性:
RI印刷試験機(明製作所製)を用いて、印刷インク(東洋インキ製造株式会社製、商品名TKハイエコー藍M)0.8ccを50回刷りし、ゴムロール上に付着した異物の量を観察した。評価は10点評価法(評価に用いた全サンプルの相対的位置付けで採点)とし、異物量の少ないものほど高得点とした。
(7)共重合体ラテックスのトルエン不溶分:
2倍に希釈したラテックスをポリテトラフルオロエチレン製のシート上に、No.20のワイヤーバーを用いて塗布し、130℃で30分間乾燥しラテックスフィルムを得る。このラテックスフィルムを裁断後0.5gとり秤量する(W1)。これをトルエン30mlと混合して6時間浸透したのち、200メッシュの金属網にてろ過した場合の残留物の乾燥質量を秤量する(W2)。もとのラテックスフィルム質量に対する残留物の乾燥質量の割合((W2)/(W1)×100)をトルエン不溶分(質量%)とする。
(8)系内に添加された単量体混合物の重合転化率:
反応の任意時間で重合槽(耐圧反応容器)から取り出したサンプルを熱風乾燥機中にて130℃で1時間乾燥し、乾燥前重量と乾燥後重量から固形分濃度(%)を求める。次に、下記(式1)により重合転化率を求める。
重合転化率(%)=100×(固形分濃度−不揮発分濃度)/揮発分濃度・・(式1)
(式中、不揮発分濃度とは、サンプル採取時までに反応系内に添加した単量体混合物中の開始剤、乳化剤、カルボン酸などの揮発しない成分の質量割合(%)の合計値であり、揮発分濃度とは、サンプル採取時までに反応系内に添加した単量体混合物中の1,3−ブタジエン、スチレンなどの揮発成分の質量割合(%)の合計値である。)
共重合体ラテックスの製造
[製造例1〜10]
耐圧反応容器に、重合初期の原料として水120質量部、及び表1又は表2に記す重合初期原料を一括して仕込み、65℃にて十分に攪拌した。次いで、予め調整しておいた表1及び表2に記す第一工程の重合原料(単量体と連鎖移動剤の混合物)を、耐圧容器内に連続的に添加開始し、4時間で全量を添加した。一方、上記第一工程の重合原料の添加開始と同時に、水20質量部、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1.5質量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム0.3質量部、及び水酸化ナトリウム0.2質量部からなる水系混合物の添加を開始し、3時間30分かけて連続的に添加し、重合反応を開始させた。第一工程の重合原料の添加終了後、表1又は表2に記す第二工程の重合原料(単量体と連鎖移動剤の混合物)を、耐圧容器内に連続的に添加開始し、2時間で全量を添加した。第二工程の重合原料の添加終了後、耐圧容器内の温度を95℃に昇温させ、2時間重合反応を継続させて各単量体の重合転化率を高めた。
この共重合体ラテックスには、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムを添加してpHを6.0に調整し、スチームストリッピング法で未反応の単量体を除去した後、分散剤としてポリアクリル酸ナトリウムを共重合体ラテックスの固形分100質量部当たり1質量部添加し、水酸化ナトリウムを用いてpHを8.0に調整し、最後に固形分濃度を50質量%に調整した。この共重合体ラテックスを325メッシュのフィルターを通過させて濾過し、各塗工紙調製に用いた。また得られた共重合体ラテックスの諸物性を表1又は表2に記した。
[実施例1〜18]
第一塗工層用塗工組成物の調製
以下の構成材料を使用し、均一に混合して紙塗工組成物を調製した。尚、以下の配合(質量部)は、水を除いて、全て固形分に換算した値である。
カオリンクレー 20質量部
重質炭酸カルシウム 80質量部
ポリアクリル酸ナトリウム 0.1質量部
水酸化ナトリウム 0.1質量部
ヒドロキシエチルエーテル化酸化澱粉 3質量部
共重合体ラテックス (表3に種類と量を記載)
水(塗工液の全固形分濃度が64質量%となるように添加)
なお、カオリンクレーとしては、商品名カオブライト(THIELE KAOLIN社製;粒子径2μm以下の割合=80〜84%)、重質炭酸カルシウムとしては、商品名カービタル90(イメリスミネラルズ社製;粒子径2μm以下の割合=90質量%以上)、ポリアクリル酸ナトリウムとしては商品名アロンT−40(東亞合成社製)およびヒドロキシエチルエーテル化酸化澱粉としては商品名ペンフォードガム280(ペンフォード社製)をそれぞれ使用した。表3に使用した共重合体ラテックスの種類と量を記載した。
第二塗工層用塗工組成物の調製
以下の構成材料を使用し、均一に混合して紙塗工組成物を調製した。尚、以下の配合(質量部)は、水を除いて、全て固形分に換算した値である。
カオリンクレー 55質量部
重質炭酸カルシウム 45質量部
ポリアクリル酸ナトリウム 0.1質量部
水酸化ナトリウム 0.1質量部
ヒドロキシエチルエーテル化酸化澱粉 3質量部
共重合体ラテックス (表3に種類と量を記載)
水(塗工液の全固形分濃度が64質量%となるように添加)
なお、カオリンクレーとしては、商品名カオファイン(THIELE KAOLIN社製;粒子径2μm以下の割合=95%以上)、重質炭酸カルシウムとしては、商品名カービタル97(イメリスミネラルズ社製;粒子径2μm以下の割合=97質量%以上)、ポリアクリル酸ナトリウムとしては商品名アロンT−40(東亞合成社製)およびヒドロキシエチルエーテル化酸化澱粉としては商品名ペンフォードガム280(ペンフォード社製)をそれぞれ使用した。表3に使用した共重合体ラテックスの種類と量を記載した。
多層塗工紙の製造と評価
次に、表3に記載した第一塗工層用の紙塗工組成物を、塗工量が片面10g/mになるように坪量74g/mの塗工原紙の表裏面にそれぞれブレードコーターで塗工し、130℃で5秒間乾燥した後、表3に記載した第二塗工層用の紙塗工組成物を、塗工量が片面8g/mになるように第一塗工層が塗工された紙の表裏面にブレードコーターで塗工し、130℃で5秒間乾燥した。この塗工紙をロール温度50℃、線圧147,000N/mでスーパーカレンダー処理を行い塗工紙を得た。得られた塗工紙について各物性を評価し、これらの評価結果を表3に記載した。優れたピック強度及び湿潤ピック強度、印刷光沢、耐ブリスター性、耐ベタツキ性、パイリング適性を有していた。
[比較例1〜12]
上記実施例と同じく、使用する共重合体ラテックスの種類と量だけを変更して、第一塗工層用塗工組成物、第二塗工層用塗工組成物を調製した上で、実施例と同じ方法で多層塗工紙を調製し、各種物性を評価した。評価結果を表4に記した。
比較例1〜6は、本願発明で規定するトルエン不溶分を有する共重合体ラテックスを使用していないため、多層塗工紙のピック強度、湿潤ピック強度、印刷光沢、耐ブリスター性、塗工紙の耐ベタツキ性、パイリング適性のいずれも劣る結果となった。
比較例7及び10はそれぞれ第一塗工層、第二塗工層に本願発明で規定するトルエン不溶分を有する共重合体ラテックスを使用しているものの、当該塗工層を構成する顔料100質量部当りの共重合体ラテックスの使用量が少なく、多層塗工紙のピック強度、湿潤ピック強度、印刷光沢、パイリング適性が劣る結果となった。
比較例8及び9はそれぞれ第一塗工層、第二塗工層に本願発明で規定するトルエン不溶分を有する共重合体ラテックスを使用しているものの、当該塗工層を構成する顔料100質量部当りの共重合体ラテックスの使用量が多く、多層塗工紙の耐ブリスター性、塗工紙の耐ベタツキ性が劣る結果となった。
比較例11及び12は共に第一塗工層、第二塗工層に本願発明で規定するトルエン不溶分を有する共重合体ラテックスを使用しているものの、当該塗工層を構成する顔料100質量部当りの共重合体ラテックスの使用量が所定の範囲から外れており、多層塗工紙のピック強度、湿潤ピック強度、印刷光沢、耐ブリスター性、パイリング適性、塗工紙の耐ベタツキ性のいずれかの物性が大きく劣っていた。
Figure 0005288544
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Claims (4)

  1. 原紙の片面または両面に片面当り少なくとも2層以上の塗工層を有する多層塗工紙であって、その少なくとも1つの塗工層中に、トルエン不溶分が98.1〜99質量%の共重合体ラテックスを、その塗工層を構成する顔料100質量部当り5〜15質量部含む多層塗工紙であって、前記共重合体ラテックスが、(a)共役ジエン系単量体35〜60質量%、(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体1.5〜7質量%、(c)シアン化ビニル系単量体20〜30質量%、および(d)その他共重合可能な単量体3〜53.5質量%(但し(a)+(b)+(c)+(d)=100質量%)から成る単量体混合物を、メルカプタン類を含む連鎖移動剤の存在下に乳化重合して得られる共重合体ラテックスであり、上記(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体は、(b−イ)エチレン系不飽和一塩基酸と、(b−ロ)エチレン系不飽和二塩基酸とを必須成分として含み、かつ、使用する(b)エチレン系不飽和カルボン酸単量体の全質量100質量%に対し、(b−イ)エチレン系不飽和一塩基酸の割合が、65〜75質量%の範囲にあり、
    更に前記の乳化重合は、少なくとも二段の重合工程を経るものであり、重合の第一工程で使用される単量体混合物100質量%に対する、第一工程で使用される(a−1)共役ジエン系単量体の質量比をA1質量%、重合の最終工程で使用される単量体混合物100質量%に対する、最終工程で使用される(a−2)共役ジエン系単量体の質量比をA2質量%とした場合に、A1:A2の比が、10:2〜10:4の範囲にあり、
    更に重合の第一工程で用いる単量体混合物と、重合の第二工程以降の各工程で用いられる単量体混合物の量との質量比が、45:55〜65:35の範囲である、多層塗工紙。
  2. 重合の前記第一工程で用いる単量体混合物と、重合の第二工程以降の各工程で用いられる単量体混合物の量との質量比が、55:45〜62:38の範囲である、請求項1に記載の多層塗工紙
  3. 前記の乳化重合は、重合開始時から単量体混合物の添加終了までの期間において、55〜85℃の範囲の重合温度で行われる、請求項1又は2に記載の多層塗工紙。
  4. オフセット輪転式印刷に用いる、請求項1から3のいずれか一項に記載の多層塗工紙。
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