JP5255424B2 - 共重合体ラテックス、塗工紙用組成物及び印刷用塗工紙 - Google Patents
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Description
バインダーとしての共重合体ラテックスには、従来よりスチレンとブタジエンを主要モノマー成分として乳化重合されたスチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス、いわゆるSBラテックスが汎用的に用いられている。
近年、塗工紙の生産は広告やパンフレット、雑誌等の旺盛な需要を背景に生産量は増加を続けており、これに伴い高速化も進んでいる。同様の背景から、塗工紙の印刷速度も高速化が進んでいる。印刷の際にインクのタックによる紙の表面の破壊に対する抵抗性(いわゆるピック強度)の改善が以前にも増して要求されるようになった。また、印刷機のロール上に紙粉等の異物が堆積し、印刷物の品質を低下させる問題(いわゆるパイリングトラブル)も解決しなければならない課題である。
一方で、塗工紙を生産するメーカーにとっては、製品のコストダウンが主要課題の一つであり、共重合体ラテックスの使用割合を減らすことが求められている。このような観点からも、共重合体ラテックスの性能として、ピック強度の改善が強く望まれている。
塗工紙の生産においては、先に述べた共重合体ラテックスを主バインダーとする塗工紙用組成物が、原紙にフラッデドニップロールやジェットファウンテン方式によってアプリケートされ、ブレード等によって余分な塗工紙用組成物が掻き取られ、塗工紙用組成物の所定量を塗布し、乾燥するのが一般的な方法である。塗工紙の多くは、表裏両面に塗工紙用組成物が塗布され印刷されるが、このため塗工紙の生産では、原紙の片面(おもて面)に塗布乾燥後、もう一方の面(裏面)に同様な方法で処理が行われる。このブレードによる計量の際に塗工紙はブレードとバッキングロールとの間で高いシェアーと圧力を受け、特に裏面塗工時におもて面の塗工層表層部分がバッキングロールに転移する、いわゆるバッキングロール汚れが発生することがあり、汚れの発生が著しくなると原紙の紙切れや頻繁な研磨によるロール洗浄の必要が生じ、生産性が低下する。
加えて、塗工後の加工処理(カレンダー工程)においても、生産スピードの上昇に伴い、加工処理の条件が過酷(温度上昇や圧力上昇)になることで、カレンダーロール汚れの操業上のトラブルも発生しがちである。
これら塗工紙のピック強度と、塗工紙生産上での操業性の問題であるカレンダーロール汚れ適性、バッキングロール汚れ適性は相反する性質であり、これらの性能を高水準で両立させるために、共重合体ラテックスについても様々な改良がなされてきた。例えば、特定の単量体組成で多段重合を行う共重合体ラテックスや、ガラス転移温度を特定の範囲に選択する多段共重合体ラテックスの改良が多数提案されている(特許文献1〜5)。しかしながらこれらの発明では、塗工紙生産上での操業性(塗工工程でのバッキングロール汚れ及び、仕上げ工程でのカレンダーロール汚れ)の改善、塗工紙のピック強度向上等、全ての課題を満足させる手段としていずれも不完全なものであった。
[1]共役ジエン系単量体(a)、シアン化ビニル系単量体(b)、エチレン系不飽和カルボン酸単量体(c)、および単量体(a)、単量体(b)及び単量体(c)と共重合可能な他の単量体(d)から成る単量体混合物であって、該共役ジエン系単量体(a)を25〜55質量%、該シアン化ビニル系単量体(b)を5〜35質量%、該エチレン系不飽和カルボン酸単量体(c)を1〜7質量%、そして該他の単量体(d)を3〜69質量%(但し(a)+(b)+(c)+(d)=100質量%)含む該単量体混合物を、少なくとも二段の重合工程を経る乳化重合によって製造される共重合体ラテックスであって、重合の第一工程で使用される単量体混合物100質量%に対する該共役ジエン系単量体(a)の質量比をA1質量%、重合の第二工程で使用される単量体混合物100質量%に対する該共役ジエン系単量体(a)の質量比をA2質量%とした場合に、−6≦A1−A2≦10を満たし、かつ重合の第一工程で使用される単量体混合物100質量%に対する該シアン化ビニル系単量体(b)の質量比をB1質量%、重合の第二工程で使用される単量体混合物100質量%に対する該シアン化ビニル系単量体(b)の質量比をB2質量%とした場合に、5≦B2−B1≦25を満たし、更に、前記エチレン系不飽和カルボン酸単量体(c)はエチレン系不飽和モノカルボン酸(c−1)とエチレン系不飽和ジカルボン酸(c−2)を含み、該エチレン系不飽和モノカルボン酸(c−1)の全単量体混合物100質量%に対する質量比をC1質量%、エチレン系不飽和ジカルボン酸(c−2)の全単量体混合物100質量%に対する質量比をC2質量%とした場合に、C1/C2≦1を満たす、上記共重合体ラテックス。
[2]前記共重合体は、示差走査熱量計によって得られる温度―熱量曲線の微分曲線において、ピーク値が最大となる温度(Tmax)が−20から+50℃の範囲にあり、かつ転移領域の最低温度TL(℃)、転移領域の最高温度TH(℃)とした場合に以下の関係を満たす、上記[1]記載の共重合体ラテックス。
0.4≦(Tmax−TL)/(TH−Tmax)≦1.9
[3]前記単量体(d)として、全単量体混合物100質量%に対し、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル単量体を1〜5質量%含む、上記[1]又は[2]に記載の共重合体ラテックス。
[4]前記エチレン系不飽和カルボン酸単量体(c)として、エチレン系不飽和ジカルボン酸(c−2)を含み、該エチレン系不飽和ジカルボン酸(c−2)は、その50〜100質量%が前記重合の第二工程以降で乳化重合の系内に添加される、上記[1]〜[3]のいずれか一に記載の共重合体ラテックス。
[5]上記[1]〜[4]のいずれか一に記載の共重合体ラテックスを含有する、塗工紙用組成物。
[6]上記[5]に記載の塗工紙用組成物を原紙に塗布してなる、坪量が70g/m 2 以下の印刷用塗工紙。
[共重合体ラテックス、及びその製造方法]
本発明の共重合体ラテックスは、共役ジエン系単量体(a)、シアン化ビニル系単量体(b)、エチレン系不飽和カルボン酸単量体(c)、および単量体(a)、単量体(b)及び単量体(c)と共重合可能な他の単量体(d)から成り、該共役ジエン系単量体(a)を25〜55質量%、該シアン化ビニル系単量体(b)を5〜35質量%、該エチレン系不飽和カルボン酸単量体(c)を1〜7質量%、そして該他の単量体(d)を3〜69質量%(但し(a)+(b)+(c)+(d)=100質量%)含む単量体混合物を乳化重合することによって得られる。以下、これらに付いて順次説明する。
共重合体ラテックスの必須成分であるシアン化ビニル系単量体(b)は、共重合体ラテックスを構成する全単量体を100質量%とした場合、通常5〜35質量%、好ましくは10〜27質量%、更に好ましくは15〜25質量%の割合で用いる。シアン化ビニル系単量体(b)を上記の範囲で使用することにより、共重合体ラテックスに優れたピック強度、湿潤ピック強度を付与し、更には耐ベタツキ性を向上することができる。このベタツキ性の向上に伴い、塗工紙生産時の仕上げ工程でのカレンダーロール汚れ適性、特に高温カレンダー使用時のカレンダーロール汚れ適性を高めることができる。
シアン化ビニル系単量体(b)の好ましい例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリルなどが挙げられ、これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
単量体(d)について、上記以外の単量体として好ましい例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸アルキルエステル類、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチルなどのアミノアルキルエステル類、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどのピリジン類、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのグリシジルエステル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、グリシジルメタクリルアミド、N,N−ブトキシメチルアクリルアミドなどのアミド類、酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類、塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル類、p−スチレンスルホン酸及びそのナトリウム塩などが挙げられ、これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらを適宜選択することにより、共重合体ラテックスにさまざまな特性を付与することができる。
本発明の共重合体ラテックスの製造は、従来商業的に用いられている乳化重合法の装置を使用して行われるものであるが、少なくとも二段の重合工程を含む多段重合法を取ることが必要である。多段重合法とは、例えば特開2002−226524号公報に開示されている如く、組成の異なる複数の単量体混合物を準備し、重合反応の進行に伴って系内に添加する単量体混合物の組成を、重合反応の途中で変化させる重合法である。
上記のような多段重合法を行う場合、本発明の共重合体ラテックスで目的とする効果を高める為には、各重合段の単量体混合物の組成が重要である。重合反応における時系列的な観点で整理した場合、最初の工程を第一工程、これに続く工程を第二工程、(更にこれに続く第三工程以降が存在してもよい。)と定義した場合に、各工程における共役ジエン系単量体(a)、及びシアン化ビニル系単量体(b)の使用割合が重視すべき点である。
また、重合の第一工程で使用される単量体混合物100質量%に対する、シアン化ビニル系単量体(b)の質量比をB1質量%、重合の第二工程で使用される単量体混合物100質量%に対する、シアン化ビニル系単量体(b)の質量比をB2質量%とした場合、5≦B2−B1≦25を満たすことが必要である。B2−B1の値について好ましくは、7≦B2−B1≦20であり、更に好ましくは10≦B2−B1≦15である。B2−B1がこの値を満たすことにより、耐ベタツキ性及び湿潤ピック強度を向上することができ、かつ共重合体ラテックスの重合安定性を低下させることがない。
第二に前記微分曲線における転移領域の最低温度をTL(℃)、転移領域の最高温度をTH(℃)とした時に
0.4≦(Tmax−TL)/(TH−Tmax)≦1.9
の関係を満たすことが好ましい。(Tmax−TL)/(TH−Tmax)のより好ましい範囲は0.5≦(Tmax−TL)/(TH−Tmax)≦1.5であり、更により好ましい範囲は0.6≦(Tmax−TL)/(TH−Tmax)≦1.1の範囲である。(Tmax−TL)/(TH−Tmax)を前記範囲に調整するためには、例えば、多段重合を行う場合の各工程での単量体組成、各工程のステージ比(各工程ごとの単量体混合物全量の質量比)、各工程開始時の重合転化率を調整することによりコントロール可能である。更に重合の第二工程開始時の、第一工程の単量体混合物の重合転化率を50〜80質量%とすることが有効である。第一工程の重合転化率は第一工程で用いる重合遅延剤の量や重合時間により調整が可能である。重合遅延剤の好ましい例としてはα−メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。
共重合体ラテックスの粒子径は、50〜110nmであることが好ましく、より好ましくは65〜95nmである。この範囲の粒子径に設計することにより、塗工紙用組成物に最適な保水性、流動性を付与することができ、及び塗工紙に優れたピック強度、湿潤ピック強度を付与することができる。特に、塗工紙のパイリング適性において効果を高めることができる。
共重合体ラテックスのゲル分率(トルエン不溶分)は、70〜98質量%に有ることが好ましく、更に好ましくは80〜97質量%、最も好ましくは93〜96質量%の範囲にあることである。この範囲にゲル分率を調整することによって、共重合体ラテックスの耐ベタツキ性と塗工紙のピック強度を同時に向上させることができる。
使用する界面活性剤についても特に制限はなく、従来公知のアニオン、カチオン、両性および非イオン性の界面活性剤を用いることができる。好ましい界面活性剤の例としては、脂肪族セッケン、ロジン酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩などのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマーなどのノニオン性界面活性剤が挙げられ、これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。使用される界面活性剤の量は、単量体100質量部当たり、0.3〜2.0質量部であることが好ましい。
ラジカル開始剤は、熱または還元剤の存在下でラジカル分解して単量体の付加重合を開始させるものであり、無機系開始剤、有機系開始剤のいずれも使用することが可能である。好ましい例としてはペルオキソニ硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物などがあり、具体的にはペルオキソニ硫酸カリウム、ペルオキソニ硫酸ナトリウム、ペルオキソニ硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、2,2−アゾビスブチロニトリル、クメンハイドロパーオキサイドなどが挙げられ、これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。また酸性亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸やその塩、エリソルビン酸やその塩、ロンガリットなどの還元剤を重合開始剤と組み合わせて用いる、いわゆるレドックス重合法を用いることも可能である。
本発明の共重合体ラテックスを製造する場合の重合固形分濃度は、生産効率と、乳化重合時の粒子径制御の観点から、好ましくは35〜60質量%、より好ましくは40〜50質量%である。ここにいう固形分濃度とは、共重合ラテックスを乾燥することにより得られる固形分質量の、乾燥前の共重合体ラテックス質量に対する割合を言う。
本発明の共重合体ラテックスを製造する方法に関しては、乳化重合の系内に単量体混合物を添加する手段については特に制約はない。単量体混合物の一部を一括して予め乳化重合系内に仕込み重合した後、残りの単量体混合物を連続的もしくは間欠的に仕込む方法、あるいは単量体混合物を各重合段の最初から連続的または間欠的に仕込む方法を使用することができ、これらの重合方法を組み合わせて重合してもよいが、商業生産ベースにおいて、発生する重合熱の除去の観点から、製品の生産性を考慮した場合に、特に重合の第二工程以降については連続的に系内に添加する方法が好ましい。
共重合体ラテックスには、必要に応じて公知の各種重合調整剤を用いることができる。これらはたとえばpH調整剤、キレート剤などであり、pH調整剤の好ましい例としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムなどが挙げられ、キレート剤の好ましい例としてはエチレンジアミン四酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
共重合体ラテックスの、最終製品としての固形分濃度についても特に制限はなく、通常固形分濃度は30〜60質量%の範囲に希釈又は濃縮して調製される。
共重合体ラテックスには、その効果を損ねない限り、必要に応じて各種添加剤を添加すること、あるいは他のラテックスを混合して用いることが可能であり、例えば分散剤、消泡剤、老化防止剤、耐水化剤、殺菌剤、印刷適性向上剤、滑剤などを添加すること、アルカリ感応型ラテックス、有機顔料などを混合して用いることもできる。
顔料と共重合体ラテックスとの使用割合は、塗工紙用組成物の使用目的によって適宜決定することができるが、顔料100質量部に対して共重合体ラテックス3〜30質量部を用いることが好ましい。そして、この塗工紙用組成物は、各種ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、バーコーターなどを用いる通常の方法によって原紙に塗工することができるが、ブレードコーターを用いることが好ましい。塗工形態も原紙に対し片面、又は表裏の両面に塗工されうるものであり、また片面当たりの塗工回数についても1回であるシングル塗工の他、2回の塗工工程を行ういわゆるダブル塗工に供することもできる。この場合、本発明の共重合体ラテックスはその下塗り用塗工紙用組成物、及び上塗り用塗工紙用組成物のいずれにも用いることができる。
本発明の共重合体ラテックス、及びこれを用いた塗工紙用組成物が塗布された印刷用紙は坪量が70g/m2以下あることが好ましく、この領域で塗工紙生産上の操業性の問題、特に塗工工程での塗工紙用組成物の裏抜け防止に優れた効果を発現する。坪量の好ましい範囲は30〜65g/m2であり、最も好ましくは40〜60g/m2である。
更に、上述の共重合体ラテックスは、紙のコーティング剤、カーペットバッキング剤、その他接着剤、各種塗料にも用いることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例の具体的態様に限定されるものではない。
(1)ピック強度:
RI印刷試験機(明製作所製)を用いて、印刷インク(東洋インキ製造社製 PRINTING INK;タック15)(商品名)0.4ccを1回刷りし、ゴムロールに現れたピッキング状態を別の台紙に裏取りし、その状態を観察した。評価は相対的な10点評価法とし、ピッキング現象の少ないものほど高得点とした。
(2)湿潤ピック強度:
RI印刷試験機(明製作所製)を用いてスリーブロールで塗工紙表面に給水し、その直後に印刷インク(東洋インキ製造社製 PRINTING INK;タック13)0.4ccを1回刷りし、ゴムロールに現れたピッキング状態を別の台紙に裏取りし、その状態を観察した。評価は相対的な10点評価法とし、ピッキング現象の少ないものほど高得点とした。
(3)共重合体ラテックスのベタツキ性:
マイラーフィルムに共重合体ラテックスをNo.18のワイヤーバーで塗布し130℃で30秒乾燥した。このフィルムを黒ラシャ紙と重ね合わせ、温度130℃、線圧19600N/mのスーパーカレンダーを通過させた後、黒ラシャ紙を剥離する。この黒ラシャ紙繊維のラテックスフィルムへのベタツキによる転移状態を目視評価した。評価は相対的な10点評価法で行ない、転移の少ないものほど高得点とした。
(4)共重合体ラテックスの湿潤ベタツキ性:
マイラーフィルムに共重合体ラテックスをNo.18のワイヤーバーで塗布し130℃で30秒乾燥した。このフィルムと水中に5秒間浸漬させた黒ラシャ紙と重ね合わせ、温度80℃、線圧19600N/mのスーパーカレンダーを通過させた後、黒ラシャ紙を剥離する。この黒ラシャ紙繊維のラテックスフィルムへのベタツキによる転移状態を目視評価した。評価は相対的な10点評価法で行ない、転移の少ないものほど高得点とした。
(5)共重合体ラテックスのトルエン不溶分の測定:
共重合体ラテックスのpHを8に調整した後、130℃で30分乾燥させて成膜させる。このフィルム0.5gをトルエン30ccに浸せきし、3時間振とう後目開き45μmの金属網にてろ過して不溶分を採取し、130℃で1時間乾燥させて不溶分の重量を測定し、次式でトルエン不溶分を求めた。
トルエン不溶分=(乾燥後のトルエン不溶分質量/浸せき前に採取したフィルム質量)×100(%)
(6)塗工紙のパイリング適性:
RI印刷試験機(明製作所製)を用いて、印刷インキ(東洋インキ製造株式会社製 TKハイエコー藍M)0.4ccを20回重ね刷りし、ゴムロールに現れたピッキング状態を別の台紙に裏取りし、その状態を監察した。評価は相対的な10点評価法とし、ピッキング現象の少ないものほど高得点とした。
(7)共重合体ラテックスのTmax、TH、及びTLの測定:
共重合体ラテックスを100℃で30分乾燥し、フィルムを作成した。このフィルムを示差走査熱量計(セイコー電子社製DSC−6220)を用いて、昇温速度15℃/minで測定して、各温度に対する熱量の微分曲線(DDSC)を得た。図1に後述する実施例1の共重合体ラテックスのDDSCのチャートを記し、Tmax、TH、及びTLの値を記した。
(8)塗工紙用組成物の保水性の測定
塗工紙用組成物を保水度計(kaltec Scientific,Inc製AA−GWR)を用いて、セル圧力140KPa/cm2,加圧時間30sec条件下において、0.2μmのフィルターを通過する水分量を計った。この水分量の少ないもの程、保水性が優れている。
(9)共重合体ラテックスの粒子径
動的光散乱法により、光散乱光度計(シーエヌウッド社製、モデル6000)を用いて、初期角度45度−測定角度135度で測定した。
共重合体ラテックスAの製造
攪拌機と内部温度調整用の温水ジャケット、及び各種原材料の定量添加設備を備えた、量産用の耐圧反応器に、重合初期の原料として水140質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.3質量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム0.45質量部、α−メチルスチレンダイマー0.4質量部、および平均粒子径20nmのポリスチレン系共重合体のシードラテックス0.5質量部を含む重合初期原料を一括して仕込み、65℃にて充分に攪拌した。次いで、第一重合工程として調製しておいたスチレン24.2質量部、1,3−ブタジエン20質量部、メタクリル酸メチル0.15質量部、アクリロニトリル11.1質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル1.45質量部、アクリル酸1.1質量部、t−ドデシルメルカプタン0.05質量部、α−メチルスチレンダイマー1質量部から成る単量体及び連鎖移動剤混合物の内、12質量部をこの耐圧反応容器内に一括して仕込み、攪拌混合後、濃度30質量%のペルオキソ二硫酸ナトリウム水溶液0.6質量部(固形分換算)を耐圧容器内に5分間かけて添加して重合反応を開始させた。
ペルオキソ二硫酸ナトリウム溶液の添加終了から15分後、残りの第一工程用の単量体及び連鎖移動剤混合物(第一工程用単量体の内88質量%に相当)をこの耐圧容器内に添加開始し、3時間30分かけて連続的に添加を行った。一方、この残りの第一工程用の単量体及び連鎖移動剤混合物の添加と同時に、水17質量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム0.3質量部、及びペルオキソ二硫酸ナトリウム0.4質量部からなる水系混合物の添加を開始し、第一工程用の単量体を添加終了まで連続的に添加し、重合反応を加速させた。第一工程用の単量体及び連鎖移動剤混合物の添加が終了した時点で、直ちに第二工程用の単量体及び連鎖移動剤混合物の添加を開始した。この第二工程用の単量体及び連鎖移動剤混合物は、スチレン12.55質量部、1,3−ブタジエン13.5質量部、メタクリル酸メチル0.15質量部、アクリロニトリル12質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル1質量部、アクリル酸0.8質量部、t−ドデシルメルカプタン0.05質量部、α−メチルスチレンダイマー0.8質量部から成るものであり、2時間かけて連続的にこの耐圧容器内に添加し、重合反応を継続させた。第二工程の単量体及び連鎖移動剤混合物の添加開始時期から30分後に、イタコン酸2質量部を含む固形分濃度15質量%の50℃のイタコン酸水溶液を、この耐圧容器へ添加を開始し、60分かけて全量を添加した。
この共重合体ラテックスには、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムを添加してpHを6.0以上に調整し、スチームストリッピング法で未反応の単量体を除去した後、水酸化ナトリウムを用いてpHを8.0に調整し、濃縮設備を用いて固形分濃度を51質量%に調整した。なお、これらの製造条件を表1にまとめた。
次に、このようにして得られた共重合体ラテックスAについて、ラテックスフィルムのベタツキ性の評価を行った。その結果、優れたベタツキ性が得られた。
次に、この共重合体ラテックスAと以下の構成材料とを使用し、均一に混合して塗工用組成物を調製した。これにより得られた塗工紙用組成物の保水性を測定した結果、優れた保水性が得られた。尚、以下の配合(質量部)は、水を除いて、全て固形分に換算した値である。
カオリンクレー 60質量部
重質炭酸カルシウム 40質量部
ポリアクリル酸ナトリウム 0.05質量部
水酸化ナトリウム 0.1質量部
ヒドロキシエチルエーテル化澱粉 4.0質量部
共重合体ラテックスA 8質量部
水(塗工紙用組成物の全固形分濃度が65質量%となるように添加)
なお、カオリンクレーとしては、アマゾンプラス(粒子径2μm以下の割合=97質量%以上)(商品名)、重質炭酸カルシウムとしてはカービタル97(粒子径2μm以下の割合=90質量%以上)(商品名)、ポリアクリル酸ナトリウムとしてはアロンT−40(東亞合成株式会社製)(商品名)およびヒドロキシエチルエーテル化でんぷんとしてはペンフォードガム(日成共益社製)(商品名)をそれぞれ使用した。
次に、このようにして得られた塗工紙用塗料組成物を、塗工量が片面8g/m2になるように坪量44g/m2の塗工原紙にブレードコーターで塗工し、乾燥した後、ロール温度130℃、線圧147000N/mでスーパーカレンダー処理を行い、塗工紙を得た。得られた塗工紙を印刷試験で評価した。
この塗工紙のピック強度、湿潤ピック強度を評価した。
結果を表1に記載した。優れたピック強度、湿潤ピック強度、パイリング適性が得られた。
共重合体ラテックスを製造する各工程の原料組成、重合温度、後添加するエチレン系不飽和カルボン酸単量体を表1に示す通りに変更する以外は、実施例1と同様の方法で共重合体ラテックスB、C、D、E、Fを得た。
共重合体ラテックスを製造する各工程の原料組成、重合温度、後添加するエチレン系不飽和カルボン酸単量体の量を表2に示す通りに変更する以外は、実施例1と同様の重合を行い、共重合体ラテックスG、H、I、J、K、L、を得た。表2記載の共重合体ラテックスはいずれも本発明の範囲を外れたものであり、ピック強度、湿潤ピック強度、ベタツキ性及び保水性などの性能が劣っていた。
Claims (6)
- 共役ジエン系単量体(a)、シアン化ビニル系単量体(b)、エチレン系不飽和カルボン酸単量体(c)、および単量体(a)、単量体(b)及び単量体(c)と共重合可能な他の単量体(d)から成る単量体混合物であって、該共役ジエン系単量体(a)を25〜55質量%、該シアン化ビニル系単量体(b)を5〜35質量%、該エチレン系不飽和カルボン酸単量体(c)を1〜7質量%、そして該他の単量体(d)を3〜69質量%(但し(a)+(b)+(c)+(d)=100質量%)含む該単量体混合物を、少なくとも二段の重合工程を経る乳化重合によって製造される共重合体ラテックスであって、重合の第一工程で使用される単量体混合物100質量%に対する該共役ジエン系単量体(a)の質量比をA1質量%、重合の第二工程で使用される単量体混合物100質量%に対する該共役ジエン系単量体(a)の質量比をA2質量%とした場合に、−6≦A1−A2≦10を満たし、かつ重合の第一工程で使用される単量体混合物100質量%に対する該シアン化ビニル系単量体(b)の質量比をB1質量%、重合の第二工程で使用される単量体混合物100質量%に対する該シアン化ビニル系単量体(b)の質量比をB2質量%とした場合に、5≦B2−B1≦25を満たし、更に、前記エチレン系不飽和カルボン酸単量体(c)はエチレン系不飽和モノカルボン酸(c−1)とエチレン系不飽和ジカルボン酸(c−2)を含み、該エチレン系不飽和モノカルボン酸(c−1)の全単量体混合物100質量%に対する質量比をC1質量%、エチレン系不飽和ジカルボン酸(c−2)の全単量体混合物100質量%に対する質量比をC2質量%とした場合に、C1/C2≦1を満たす、上記共重合体ラテックス。
- 前記共重合体は、示差走査熱量計によって得られる温度―熱量曲線の微分曲線において、ピーク値が最大となる温度(Tmax)が−20から+50℃の範囲にあり、かつ転移領域の最低温度TL(℃)、転移領域の最高温度TH(℃)とした場合に以下の関係を満たす、請求項1記載の共重合体ラテックス。
0.4≦(Tmax−TL)/(TH−Tmax)≦1.9 - 前記単量体(d)として、全単量体混合物100質量%に対し、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル単量体を1〜5質量%含む、請求項1又は2に記載の共重合体ラテックス。
- 前記エチレン系不飽和カルボン酸単量体(c)として、エチレン系不飽和ジカルボン酸(c−2)を含み、該エチレン系不飽和ジカルボン酸(c−2)は、その50〜100質量%が前記重合の第二工程以降で乳化重合の系内に添加される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の共重合体ラテックス。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の共重合体ラテックスを含有する、塗工紙用組成物。
- 請求項5に記載の塗工紙用組成物を原紙に塗布してなる、坪量70g/m 2 以下の印刷用塗工紙。
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