本発明はプリント基板及び半導体集積回路に関し、特に、例えば、複数の電源端子とGND端子を備えるASIC等のIC、及びICを搭載するプリント基板に関するものである。
近年の半導体集積回路(以下、ICという)は、プロセス技術の微細化による高集積化が進み、チップ内に搭載する回路規模が飛躍的に増大している。特に、内部コア回路とI/Oバッファ部とに大別されるICチップ内の構成において、内部コア回路における集積化が進んでいる。その結果、内部コア回路に構成されるCMOSなどのスイッチング素子数が大規模化し、且つその動作スピードは年々高速化し続けている。
内部コア回路に構成された膨大な数のスイッチング素子がICを動作させるクロック周期で同時にオン・オフを繰り返すため、同じタイミングで瞬時電流が発生する。瞬時電流はIC内部の配線部と、IC外部のプリントパターン等に流れる電流経路に寄生するインピーダンスとにより電圧降下を生じさせる。このため、高周波での周期的な電位変動がノイズ源となり、ICを搭載するプリント基板、プリント基板を実装する装置全体へとそのノイズが伝播していく。
ICの内部は、上述のように、内部コア回路部と外部とのインタフェース部分であるI/Oバッファ部に大別され、従来のICでは、内部コア回路部の電源配線とI/Oバッファ部の電源配線及びGND配線は、IC内部で共通に配線されていた。
このように、内部コア回路部とI/Oバッファ部のそれぞれの電源とGNDがIC内部で共通に配線される場合には、内部コア回路部の電源とGNDに発生した高周波の電位変動がI/Oバッファ部の電源配線とGND配線へと伝播する。I/Oバッファ部の信号出力端子での状態がハイレベル(H)のとき電源配線に、ローレベル(L)のときGND配線に接続された状態となり、電源配線及びGND配線に伝播された高周波の電位変動が出力される。
また、I/Oバッファ部の電源配線と信号出力端子間に存在する寄生容量、I/Oバッファ部のGND配線と信号出力端子間に存在する寄生容量を介して、高周波の電位変動が信号出力端子に伝播する。寄生容量であっても、周波数が高ければインピーダンスが低下し、ノイズは伝播してしまう。例えば、寄生容量が10pF、ノイズ成分の周波数が200MHzであれば、寄生容量のインピーダンスは、約80Ωとなる。つまり、I/Oバッファ部の寄生容量の大小、ノイズの周波数に依存して大小が変化するものの、信号出力端子にノイズが伝播する要因となる。
信号出力端子に伝播した高周波の電位変動は、プリント基板、ケーブル、及び金属筐体に伝播し、最終的に機器からの輻射ノイズレベルを増大させる。
また、I/Oバッファ部の信号入力端子はICチップ内部の電源配線、特に、GND配線に寄生容量で高周波結合されているため、内部コア回路の瞬時電流により電源配線及びGND配線に発生した高周波の電位変動がその端子を介してプリント基板に伝播する。その結果、信号出力端子の場合と同様に、機器からの輻射ノイズレベルを増大させることになる。
以上のような背景から、上述のようなIC内部におけるノイズ干渉を抑制することを主な目的として、ICの内部配線を分離する技術が、以下に例示するように、これまでにも数多く提案されている。
特許文献1は、少なくとも1つの特定回路の電源と基準電位の配線の少なくとも一方が、その特定回路と同一チップ上に形成された他の回路の電源及び/又は基準電位の配線と電気的に分離かつ絶縁されているIC内部の配線構成を開示している。従って、たとえその特定回路には大電流が流れてノイズパルスが発生しても、そのノイズパルスが他の回路には伝達されず、このノイズによる回路の誤動作を招くことがないようにしている。
特許文献2は、半導体チップの電源層とグランド層とを信号配線層と分離し、さらにこの電源層とグランド層の夫々に入力専用バッファ、出力専用バッファ、及び内部論理回路をそれぞれ分離して設けたIC内部の配線構成を開示している。これにより、出力バッファの同時動作時のスイッチングノイズによる影響を避けるための配線上の対策を容易にしている。
特許文献3は、所定の基板上に作り込まれた素子間を複数の配線層夫々に作り込まれた配線を用いて接続して形成された回路が組み込まれた重層構造のICを開示している。特に、そのICは、複数の配線層夫々に作り込まれた、ノイズ発生源の回路部分とノイズを低減する回路部分とを分離する形状のレイアウトパターンを有する複数の配線と、これら複数の配線を互いに接続するコンタクトとを備えている。さらに、そのICは互いに接続されたこれら複数の配線を、定電位部位に接続する定電位配線とを備えている。これにより、IC内のある回路部分の信号がそのIC内の他の回路部分へとノイズとして誘導されてしまうことを低減するようにしている。
特許文献4は、第1の電源及びGND配線と第2の電源及びGND配線とを有するICに関するものである。特許文献4によれば、第1の電源及びGND配線と第2の電源及びGND配線は分離され、第1の電源及びGND配線は同時動作する出力バッファ回路に接続され、第2の電源及びGND配線はその出力バッファ回路以外の入出力バッファ回路に接続される。このように、特許文献4では同時動作する出力バッファ回路と入力バッファ回路の電源グランド配線を分離して、出力バッファ回路の同時動作数を大幅に増加させるという効果を達成している。
特許文献5は、複数の出力端子を有する半導体メモリに関するものである。特許文献5によれば、これら出力端子に連なる出力トランジスタに接続された電源線並びに接地線の配線を隣接する配線と分離したことが特徴となっている。これにより、周辺回路からの影響を低減し、かつ隣接する他の出力回路からの影響を低減することができ、特に並行して配列された電源線(或いは接地線)の一部を接続することにより配線幅を細くすることが出来、面積の増加を抑える効果を達成している。
さて、ICの動作の高速化が進むに従い、動作時に発生するグランド(接地)GNDあるいは電源電圧の変動によるノイズ量が外部出力端子において大きくなる。ICの使用電圧が低下するとノイズマージンも減少する。これに伴い、ノイズによる使用中での誤動作が大きな問題となってきている。この問題を解決するため、特許文献6ではIC内部において、外部出力端子或いは外部入出力端子用の周辺電源ライン及びGNDラインと、内部回路に電源電圧を供給する内部回路用電源ライン及びGNDラインとをIC内部のパターン上で分割している。これにより、前者で発生したノイズが後者に接続されている内部回路に影響を及ぼさないようにしている。
特許文献7は周期パルス信号の発生/出力する回路とその周期パルス信号により動作する回路とを内部回路として有するICに関するものである。そのICは、入力端子をプルアップ或いはプルダウンする負荷手段と出力端子を駆動する駆動手段とを含む出力回路及び前記内部回路が、別々の電源及び接地配線ならびに電源及び接地端子を夫々備えることを特徴としている。そして、周期パルス信号を扱う割合が大きい回路を内部回路として1まとめにし、入力端子をプルアップ或いはプルダウンする負荷手段と出力端子を駆動する駆動手段とを含む出力回路の電源系と別に構成している。これにより、内部回路で発生した高調波ノイズは、出力端子だけでなくプルアップ或いはプルダウンされた入力端子からもIC外部へ放射されなくなる。従って、特許文献7によれば、ノイズを内部回路の電源系からのみの放射に制限でき、ICから電磁放射される周期スペクトル高調波を低減できる効果を達成している。
また、IC内部で互いに分離された各電源配線とGND配線は、半導体チップ内の配線部に寄生するインダクタンス成分と半導体チップからリードフレームに接続するボンディングワイヤの寄生インダクタンス成分とにより高周波分離されている状態となる。従って、プリント基板でのパターン配線に関わらず、誤動作やノイズ伝播等が発生しないように図れることになる。
このように、IC内部での様々なノイズ干渉を防止するために、IC内部で各機能ブロック毎の電源、GND配線を他の機能ブロック用の電源GND配線から分離する技術が数多く開示されている。
一方、複数のICを搭載するプリント基板上でも、各IC間の電源配線又はGND配線を分離する、またはインダクタンス素子等を用いて高周波を分離することにより、輻射ノイズや誤動作等といったノイズに関する課題を解決する数多くの提案がなされている。
例えば、特許文献8〜14はICの外部電源端子又はGND端子の配線をプリント基板上に搭載される他のICの外部電源端子又はGND端子の配線と物理的にパターン分離するプリント基板やインダクタンス素子を用いて分離するプリント基板を開示している。
また、特許文献15は、ASIC等のように複数の電源端子とGND端子を備えるICを搭載する多層回路基板を開示している。特許文献15によれば、バイパスコンデンサの数を少なく抑えながら、回路基板から放射されるEMIノイズの低減を図ることができる回路基板を提供するものとして、次の構成を開示している。即ち、第1の層に、主電源プレーンと、主電源プレーンとの間に電気的な接続を絶つクリアランスを介して島状に設けられるサブ電源プレーンとを設ける。そして、主電源プレーンとサブ電源プレーンとの間は、第1の層とは異なる層に形成され、バイパスコンデンサが接続される第1の電源供給パターンにより接続される。さらに、少なくともICの一部の電源端子への電源供給をサブ電源プレーンとの間にバイパスコンデンサを設けずに接続される第2の電源供給パターンを介して行うようにしている。
特開昭61−119071号公報
特開平5−67682号公報
特開平6−37258号公報
特開平6−112320号公報
特開平7−74259号公報
特開平5−291511号公報
特開平9−8233号公報
特開平5−13909号公報
特開平10−41629号公報
特開平10−223997号公報
特開平11−233951号公報
特開2001−274558号公報
特開2003−69169号公報
特開2003−133747号公報
特開2003−282781号公報
さて、前述のように、プロセス技術の微細化による内部コア回路の集積化は日々進歩しており、内部コア回路に構成されるCMOSなどのスイッチング素子数はさらに大規模化し、且つその動作速度も一層高速化し続けている。
従って、ICの内部コア回路で発生したノイズが他のブロック回路に伝播しないように、特許文献1〜7で提案されたようなIC内部で各電源配線間と各GND配線間を分離する構成だけでは不十分になってきている。言い換えると、ICの内部対策とプリント板のパターン配線方法との両側面からの対策の必要性が高まっている。
一方、特許文献8〜14には、複数のICが搭載されるプリント基板上において、各IC間の電源パターン又はGNDパターンを分離して配線することやインダクタンス素子等を用いて分離する構成が開示されている。これらの構成によれば、プリント基板上に別々に搭載されている各ICの電源端子やGND端子に発生する高周波の電位変動が他のICの電源端子やGND端子へ伝播することは抑制可能である。
しかしながら、1個のパッケージ内に複数の機能ブロックを備えたASIC等のICでは、各機能ブロック毎に電源端子とGND端子を夫々備えるため、同一ICの電源端子またはGND端子は、プリント基板上では同じ配線で接続される。そのため、内部コア回路で発生した高周波電流による電位変動が全てのI/Oバッファの電源端子又はGND端子にプリント基板上のパターンを介して伝播し、全てのI/Oバッファから入出力される信号線に高周波の電位変動が伝播する。
その結果、信号入力端子及び信号出力端子に伝播した高周波の電位変動は、高周波ノイズとして、プリント基板、ケーブル、及び金属筐体に伝播する。ケーブルは、伝播したノイズを放射するアンテナと化する。金属筐体は、その形によりノイズ輻射のアンテナと化する場合がある。例えば、平面板金が非常に峡い距離で平行に配置されていたり、複数の筐体間の接続部に細長い接隙等が構成されている場合には、アンテナ化する。
プリント基板及びケーブル全体をBOX型の金属筐体で囲う機器等の場合には、ケーブルにノイズが伝播していた場合においても、最終的にBOX型の金属筐体でノイズが遮蔽されるため、機器からの輻射ノイズレベルは抑制される。また、機器を囲うBOX型の金属筐体は、多数の接続点で各板金が接触する構成とされることにより、機器からの輻射ノイズレベルが抑制されている。BOX型の金属筐体で囲まれる機器とは、例えば、オシロスコープ等のような測定器やパーソナルコンピュータである。
しかしながら、機器全体を金属筐体で囲うことが困難な機器の場合には、ケーブル等に伝播したノイズが抑制されず、最終的に機器からの輻射ノイズレベルが増大するという問題を生じさせてしまう。
例えば、画像形成装置は、プリント基板やケーブルといった電装パーツ以外に電子写真プロセスを構成するためのパーツが多く装備され、カートリッジや定着器といったユーザ交換パーツが多く、記録媒体の供給部である給紙カセットも構成される。従って、機器全てを筐体で囲むことはユーザビリティを悪化させるという課題があった。また、プリント基板及びケーブル等の部分のみを金属筐体で囲む場合には、複雑なパーツが多く構成され、装置のサイズアップやコストアップを招くという課題があった。
また、ASICのI/Oポートが同じプリント基板内の他のICとのみ接続される場合には、アンテナと化するケーブルに接続されていないために、輻射ノイズへ与える影響は小さい。しかしながら、ASICのI/Oポートが多数構成され、このI/Oポートがケーブルを介して他のプリント基板の回路と接続される構成が多い画像形成装置では、輻射ノイズへの影響が大きい。
特許文献16は、1個のICに備えられる複数の電源端子を、主電源プレーンと島状に設けられ且つバイパスコンデンサを設けないサブ電源プレーンとに分け、一部の端子への電源供給を各電源プレーンから分けて供給する構成を開示している。その構成によれば、バイパスコンデンサの数を抑制するとともに、ICの高速スイッチング動作等に起因するコモンモードノイズの主電源プレーンへの漏洩を抑制することができる。さらに、特許文献15によれば、接地電位に接続されたGNDのプレーン層が形成されており、ASICの内部ロジック用GND端子が安定したGND電位に接続されている構成となっている。このために、内部ロジック用GNDからのノイズ漏洩については大きな問題とはならなかった。
しかしながら、IC動作がさらに高速化し、その高調波ノイズがGNDプレーンのインピーダンスを無視できないノイズ周波数に及ぶと、共通インピーダンスとして形成されているGNDプレーン層に流れる電流がノイズ源となってしまう。そのノイズ周波数は、例えば、500MHz〜5GHz程度である。これにより、ICのGND電位が高周波帯域で安定せず、GNDプレーンで発生した高周波ノイズが回路基板から輻射されるEMIノイズレベルを増加させてしまうという問題が生じてしまう。GNDプレーンのインダクタンス成分を小さくするためには、導電層(一般的には、35μm厚の銅箔)の厚みを数倍に増す等の対策が考えられるが、コストアップを招くという別の問題が生じてしまう。
一方、単層の片面プリント基板と2層の両面プリント基板では、GNDパターンのインダクタンス成分が比較的大きいため、より低い周波数帯域(例えば、100MHz〜200MHz帯域)においても、GNDパターンの配線インピーダンスが影響する。このため、ICのGND電位が安定せず、GNDパターンに伝播した高周波ノイズがICのI/Oバッファ部のGND端子、バイパスコンデンサを介してI/Oバッファ部の電源端子に伝播してしまう。このように、ICの全ての入出力信号端子に高周波ノイズが伝播してしまうという問題が生じてしまう。
上述のように、単層の片面プリント基板や2層の両面プリント基板では、安定した電位の電源電圧と基準GND電位とをプリント基板全体に供給可能な電源プレーンやGNDプレーンを構成することは不可能である。このため、GNDパターンを可能な限り4層基板に近いベタGND構成で接続することがノイズ対策とされている。単層の片面プリント基板や2層の両面プリント基板に搭載されるASICは、4層のプリント基板に搭載されるような超高速で大規模なASICであることはその用途から考えても少なく、ベタGNDを可能な限り広い面積とすることでノイズ対策を行っている。
しかしながら、単層の片面プリント基板や2層の両面プリント基板に搭載される比較的低速なクロック(例えば、10MHz〜25MHz程度)で動作させるASICも、プロセス技術の微細化による内部コア回路の集積化は年々高まっている。従って、内部コア回路に用いられるCMOSなどのスイッチング素子数はさらに大規模化し、且つその動作速度も一層高速になってきている。
実際の動作に用いるシステムクロック速度が20MHz程度であっても、内部素子のスイッチング速度が高速化しているので、内部動作に用いるシステムクロックパルスの立ち上がり速度(Tr)と立下り速度(Tf)を示す信号波形も急峻なものとなる。このため、システムクロックにより駆動される内部コア回路のスイッチングによる瞬時電流がより大きくなる。
加えて、最近使用されるシステムクロックの周波数もICの価格低下に反比例して高速化している。その結果、システムクロックパルスの立ち上がり速度(Tr)と立下り速度(Tf)の高速化、システムクロックそのものの高速化により、輻射ノイズに含まれる高調波成分の周波数帯域がより高くなってきている。輻射ノイズ成分の周波数が高くなると、プリント板のパターン配線によるインピーダンス値は増加し、プリント板のGND電位はより不安定化してしまう。従って、4層プリント基板のような平面状の電源配線やGND配線を構成できない単層の片面プリント基板や2層の両面プリント基板では、比較的安定したフレームGNDまでのインピーダンスが大きくなりICのGND端子電位に与える影響が益々大きくなる。
例えば、同一のICに備えられる内部コア部の電源端子とGND端子とI/Oバッファ部の電源端子とGND端子とは、プリント基板全体の大きさを考慮すると、ほぼ同じロケーションに配置される。このため、多数の電源端子とGND端子を備えるICの各電源端子間、各GND端子間の配線インピーダンスがフレームGNDまでのインピーダンスよりも小さく、従来よりも高周波帯域で干渉しやすくなってしまう。つまり、プリント基板上のパターン配線を介して、内部コア回路の電源端子やGND端子に発生した高周波の電位変動がI/Oバッファ部の電源端子及びGND端子により伝播しやすくなってしまう。その結果、I/Oバッファ部の信号入出力端子に伝播する輻射ノイズレベルが増大してしまうという問題が生じてしまう。
また、インピーダンスの低いベタGNDを構成するために、単層の片面プリント基板や2層の両面プリント基板から4層のプリント基板に変更した場合には、プリント基板の大幅なコストアップを招いてしまうという別の問題が生じてしまう。
また、プリント基板上の電源配線、GND配線、I/Oバッファからの全ての信号入出力線に高周波の電位変動が伝播する。これを防止するためには、プリント基板上にフィルタを追加したり、フェライトコアやシールド板金等を用いることが必要になる。しかしながら、そのような対策には、膨大な設計時間とコストアップを招いてしまうという問題がある。
本発明は上記従来例に鑑みてなされたもので、単層、2層、4層等の全ての種類のプリント基板に適応可能であり、安価かつ簡単な構成でノイズ源からの輻射を抑制可能なプリント基板を提供することを目的としている。本発明は特に、内部で分離された多数の対となる電源端子とGND端子とを備えるICを搭載するプリント基板に適用されることが好ましい。
ここでいう内部で分離された多数の対となる電源端子とGND端子を備えるICとは、IC内部の各機能ブロックの種類ごとに別々の外部接続電源端子・GND端子を備えたICである。それは、さらには、1つの機能ブロックに対し、外部接続する複数対の電源端子及びGND端子が備えられたICを示す。
上記目的を達成するため本発明のプリント基板は以下の構成からなる。
即ち、少なくとも第1の回路と、前記第1の回路に接続される第1種の電源端子と第1種のGND端子との第1種のペア端子と、第2の回路と、前記第2の回路に接続される第2種の電源端子と第2種のGND端子との第2種のペア端子とを備え、前記第1種のペア端子と前記第2種のペア端子とが内部的に分離されたICを搭載するプリント基板であって、前記第1種のGND端子からの配線が前記第2種のGND端子及び前記プリント基板のGNDパターンへと導かれる経路に、前記第1の回路の動作によって発生した高周波の電位変動を抑制するための第1の抑制手段が設けられることを特徴とする。
ここで、前記第1の回路に接続される前記第1種のペア端子を少なくとも2組以上有し、前記少なくとも2組以上の第1種のペア端子各々の第1種のGND端子が前記IC近傍の短距離のパターンで接続されることが望ましい。そして、前記短距離のパターンは、少なくとも前記ICの端子配列内側に配置される部分を有する。
ここで、第1の抑制手段の態様としてはフェライトビーズが考えられる。そして、第1の抑制手段は、直流電流に対してはインピーダンスが小さくなる一方、高周波電流に対してはそのインピーダンスが大きくなる特性をもつ。
前記第1種のGND端子からの配線パターンを前記第2種のGND端子からの配線パターンと物理的に分離配置し、前記物理的に分離配置した配線パターンにより前記第1の抑制手段に相当するインダクタが形成されるようにしても良い。
更に、少なくとも2組以上の前記第1の回路に接続される前記第1種のペア端子と、少なくとも2組以上の前記第2の回路に接続される前記第2種のペア端子とを有し、前記第1種のペア端子各々を相互に接続する第1の配線インピーダンスは、前記第2種のペア端子各々を相互に接続する第2の配線インピーダンスも小さいことことが望ましい。
また、第1種の電源端子と第2種の電源端子に対しては所定の電源電圧が供給される。
さらに、第1種の電源端子からの配線と第1種のGND端子からの配線との間に接続される第1の電荷蓄積手段を有することが望ましい。
さらに、第1種の電源端子からの配線が第2種の電源端子からの配線及び電源電圧のパターンへと導かれる経路に設けられる、例えば、フェライトビーズのような第2の抑制手段と、第2種の電源端子と第2種のGND端子との間に接続された第2の電荷蓄積手段とをさらに有することが望ましい。
また、第1の抑制手段の別の態様としてはコモンモードチョークが考えられる。
また、前記プリント基板は、第1種の電源端子からの配線パターンを第2種の電源端子からの配線パターンから物理的に分離配置し、第1種のGND端子からの配線パターンを前記第2種のGND端子からの配線パターンから物理的に分離配置し、その物理的に分離配置した配線パターンにより第1の抑制手段に相当するインダクタが形成されるようにしても良い。
或いは、電源電圧供給部から所定の電源電圧が第1の回路に供給され、第1種の電源端子からの配線パターンと第1種のGND端子からの配線パターンとがその電源電圧供給部に至るまで平衡に這い回され、その平衡な配線パターンにより第1の抑制手段に相当するインダクタが形成されるようにしても良い。
なお、その電源電圧供給部は外部の電源電圧ユニットであっても良い。
なお、前記ICの代表的な実施態様はASICであり、第1の回路はそのASICの内部コア回路であり、第2の回路はそのASICのI/Oバッファ回路である。
以上の構成で、前記ICに第1及び第2電荷蓄積手段と第1及び第2の抑制手段とは内蔵されていても良い。
また、本発明の半導体集積回路は以下の構成からなる。
少なくとも第1の回路と、前記第1の回路に接続される第1種の電源内部配線と第1種のGND内部配線との第1種のペア内部配線と、第2の回路と、前記第2の回路に接続される第2種の電源内部配線と第2種のGND内部配線との第2種のペア内部配線とを備え、前記第1種のペア内部配線と前記第2種のペア内部配線とが分離された半導体集積回路であって、前記第1のGND内部配線が前記第2のGND内部配線及び前記半導体集積回路の外部接続GND端子へと導かれる内部経路に、前記第1の回路の動作によって発生した高周波の電位変動を抑制するための第1の内部抑制手段と、前記第1種の電源内部配線と前記第1種のGND内部配線との間に接続される第1の内部電荷蓄積手段とが設けられることを特徴とする。
更に、前記第1種の電源配線が前記第2種の電源配線及び前記半導体集積回路の外部接続電源端子へと導かれる内部経路に第2の抑制手段が設けられることを特徴とする。
また、前記第2の電源配線と前記第2のGND配線との間に接続された第2の電荷蓄積手段とをさらに有することを特徴とする。
なお、前記半導体集積回路の代表的な実施態様はASICであり、第1の回路はそのASICの内部コア回路であり、第2の回路はそのASICのI/Oバッファ回路である。
従って本発明によれば、簡単な構成によりICの第1の回路の動作により発生した高周波の電位変動がそのICの第2の回路の電源端子やGND端子、さらにプリント基板全体へと伝播していくことを抑制することができるという効果がある。
これにより、プリント基板のみならず、例えば、ケーブルや金属筐体を備える機器からの不要な輻射を安価な構成で抑制することが可能となる。
以下添付図面を参照して本発明の好適ないくつかの実施例について、さらに具体的かつ詳細に説明する。以下に説明するいくつかの実施例で説明するICは、数万ゲート〜数十万ゲートの集積回路を内蔵したASICである。
まず、以下に説明する実施例に共通な不要輻射のノイズ源となるICの構造とICの輻射ノイズ発生メカニズムについて説明する。ICの輻射ノイズ発生メカニズムは、本発明に際して解明したものである。
<ICの説明>
図1は本発明の代表的な実施例であるICの内部構成を示すブロック図である。このICが高周波ノイズを発生する。つまり、ICは輻射ノイズ源となる。
図1において、(a)はICのモールドパッケージの外観を示す図である。説明の便宜上、ICとしてピン数の比較的少ない64ピンのQFPパッケージの例が示されている。このパッケージの各辺には16ピンずつのリード端子が備えられている。各辺中央部に内部コア回路用の電源端子VDD1〜VDD4とGND端子VSS1〜VSS4が備えられている。また、各辺の端部にはI/Oバッファ部用の電源VDDO1〜VDDO4とGND端子VSSO1〜VSSO4が備えられている。
また、(b)は、ICの内部構成を簡単に示した図である。図示のように、IC2の内部は、半導体チップ3として構成される内部コア回路部4とI/Oバッファ部5とボンディングワイヤ6とから構成される。実際には、リードフレームの内部リード部分がIC内に構成されている。図1ではこの内部リードを便宜上省略している。パッケージ内部の半導体チップ3と各リードフレームは、ボンディングワイヤ6により接続される。つまり、内部コア回路4とI/Oバッファ部5の電源配線及びGND配線は、内部リードと外部リードからなるリードフレームとボンディングワイヤ6とを介してプリント基板上の電源配線パターンとGND配線パターンに接続されている。
尚、背景技術で説明したように、IC内に機能ブロック部が複数構成されている場合には、各機能ブロック部の電源及びGNDの配線が他の機能ブロック部の電源及びGNDの配線とIC内で互いに独立して配線されていないとノイズ干渉による不具合が生じる。
従って、この実施例に従うASICの内部では、図1(b)に示すように、内部コア回路4の電源配線とI/Oバッファ部5の電源配線は、互いに独立して配線されている。また、内部コア回路4のGND配線とI/Oバッファ部5のGND配線においても、互いに独立して配線されている。
<ICの輻射ノイズ発生メカニズム>
図2はICが輻射ノイズを発生する様子を示す図である。
図2に示されるように、プリント基板1には、IC2、コネクタ12a、12bが実装されている。IC2のI/Oバッファ5から出力される信号線はコネクタ12bに接続されている。また、コネクタ12bには他のプリント基板等と接続するためのケーブルが接続されている。IC2に供給される電源電圧Vccは、ケーブルが接続されたコネクタ12aに接続される。IC2のGND端子はプリント基板1のシグナルGND8に接続されており、プリント基板1のGNDパターンはフレームGND7に接続されている。
IC2のI/Oバッファ5の出力信号端子9に伝播した高周波のノイズ変動は、コネクタ12bに接続されるケーブルに伝播し、ケーブルをアンテナとして輻射される。
一方、IC2の電源端子に伝播した高周波のノイズ変動は、プリント基板上の電源パターンVccに伝播し、電源電圧Vccが印加される箇所全てに及んで高周波の電位変動が伝播される。コネクタ12aには電源電圧Vccを印加するパターンが接続されているため、ケーブルをアンテナとして高周波のノイズ変動が輻射される。
プリント基板1のシグナルGND8は、ベタGND面積に依存してインダクタンスが変化する。多層プリント基板の場合には、インダクタンス成分が極めて小さいGNDプレーンを有するため、シグナルGND8は、フレームGND7と同じ比較的安定した接地電位が与えられる。
一方、GNDプレーンの存在しない単層の片面プリント基板や2層の両面プリント基板の場合には、GNDパターンのインダクタンス成分が大きくなるため、シグナルGND8の電位は比較的不安定な状態となる。従って、IC2は、電源端子のみならずGND端子にも高周波の電位変動が発生し、輻射ノイズの原因となる。
次に、4層のプリント基板、2層の両面プリント基板、単層の片面プリント基板の各プリント基板からの輻射ノイズについて、さらに具体的に説明する。
1.4層プリント基板からの輻射ノイズ
図3は4層プリント基板に実装されたICとその接続の様子を示す図である。
図3において、(a)には4層のプリント基板パターンとIC2の接続が模式的に示されている。図1で示したように、ICの電源端子VDDO1〜VDDO4は、各辺のコーナー部にそれぞれ配置され、電源端子VDD1〜4は、各辺の中央部にそれぞれ配置される等、パーケージ全体に対して均等に分散された位置に各端子が配置されることが一般的である。本説明においては、、図3(a)のIC2に示すように、VDDO端子とVDD端子が交互に配置される様子に関して、図の簡略化のために一列にて模式的に描画されている。つまり、実際には、VDDO1の隣接電源端子として、VDD1とVDD4が配置されている。また、GND端子VSSOとVSSに関しても同様である。
図3(a)に示すように、IC2の電源端子VDDO1〜VDDO4と電源端子VDD1〜VDD4は、プリント基板1aの電源プレーン10aに接続されている。一方、IC2のGND端子VSSO1〜VSSO4とGND端子VSS1〜VSS4は、プリント基板1aのシグナルGND8であるGNDプレーン11aに接続されている。GNDプレーン11aはフレームGND7にも接続されている。GNDプレーン11aのインダクタンス成分21aは極めて小さいため、IC2のGND端子VSSO1〜VSSO4とGND端子VSS1〜VSS4は、比較的安定したフレームGND7に低インピーダンスで接続され、安定した接地電位を確保できている。
尚、バイパスコンデンサについては、図を簡単にするため、その記載を省略している。
図3(b)は、4層プリント基板でのノイズ伝播経路を簡単に示している。なお、図3(b)では、説明の便宜上、IC2の内部コア用電源端子VDD1〜VDD4と内部コア用GND端子VSS1〜VSS4をまとめて、内部コア用電源端子VDDと内部コア用GND端子VSSとで示している。また、IC2のI/Oバッファ用電源端子VDDO1〜VDDO4とI/Oバッファ用GND端子VSSO1〜VSSO4をまとめて、I/Oバッファ用電源端子VDDOとI/Oバッファ用GND端子VSSOとで示している。
さて、IC2の電源端子VDDとGND端子VSSとの間にはバイパスコンデンサC1が接続される。一方、電源端子VDDOとGND端子VSSOとの間にはバイパスコンデンサC11が接続される。また、プリント基板1に供給される電源電圧VccはフレームGND7に比較的近い配置にてバイパスコンデンサC12に印加される。
前述のように、IC2のピンと半導体チップ3はボンディングワイヤで接続される。図3(b)には、VDD端子、VSS端子、VDDO端子、VSSO端子夫々のピンに接続されるボンディングワイヤ6vdd、6vss、6vddo、6vddo、6vssoが図示されている。これらのボンディングワイヤには寄生インダクタンス成分が含まれる。なお、図3(b)に示されるように、電源端子VDDには電源電圧Vccからフェライトビーズ13を介して電源電圧が供給されるように構成されている。
内部コア回路4に集積されたトランジスタの高速スイッチングにより、ボンディングワイヤ6vddとバイパスコンデンサC1とボンディングワイヤ6vssと内部コア回路4内の配線を介して電源端子VDDとGND端子VSSには高周波電流i1aが流れる。この高周波電流i1aが流れる電流経路には寄生インダクタンスが存在するので、コモンモードのノイズ電流i11aとノイズ電流i12aが電源端子VDDとGND端子VSSに発生する。
ノイズ電流i11aはフェライトビーズ13の高周波インピーダンスにより、電源端子VDDO及び電源電圧Vccへの伝播が抑制される。ノイズ電流i12aは、ノーマルモードのノイズ電流i21aに変化し、低インピーダンスのGNDプレーン11aを介してフレームGND7に流れる。しかし、GNDプレーン11aのインダクタンス21aが小さいため、ノイズ電流i21aにより発生する電圧降下は微小であり、プリント基板1内のGNDプレーンに伝播するノイズレベルは小さい。
2.2層両面プリント基板からの輻射ノイズ
図4は2層両面プリント基板に実装されたICとその接続の様子を示す図である。
図4(a)にはIC2とプリント基板パターンの接続が模式的に示されている。この例において、電源パターン10bとGNDパターン11bは、いくつものVIAを介して、半田面層と部品面層の接続を行うことが一般的である。しかしながら、ここでは説明を簡単にするため、これらの層は記載せず、プリント基板1に占める電源パターンとGNDパターンの面積を示すように図示されている。
図4(a)に示すように、IC2の電源端子VDDO1〜VDDO4と電源端子VDD1〜VDD4は、プリント基板1の電源パターン10bに接続されている。一方、IC2のGND端子VSSO1〜VSSO4とGND端子VSS1〜VSS4は、プリント基板1のシグナルGND8であるGNDパターン11bに接続されている。GNDパターン11bはフレームGND7にも接続されている。IC2のGND端子VSSO1〜VSSO4とGND端子VSS1〜VSS4は、GNDパターン11bの比較的小さいインダクタンス成分21bを介してフレームGND7に接続されている。
尚、バイパスコンデンサについては、図を簡単にするため、その記載を省略している。
図4(b)は、2層両面プリント基板でのノイズ伝播経路を簡単に示している。なお、図4(b)では、図3(b)において既に説明した構成については同じ参照記号を付してその説明を省略する。
内部コア回路4に集積されたトランジスタの高速スイッチングにより、ボンディングワイヤ6vddとバイパスコンデンサC1とボンディングワイヤ6vssと内部コア回路4内の配線を介して電源端子VDDとGND端子VSSには高周波電流i1aが流れる。この高周波電流i1aが流れる電流経路には寄生インダクタンスが存在するので、コモンモードのノイズ電流i11aとノイズ電流i12aが電源端子VDDとGND端子VSSに発生する。
ノイズ電流i11bはフェライトビーズ13の高周波インピーダンスにより、電源端子VDDO及び電源電圧Vccへの伝播が抑制される。ノイズ電流i12bは、ノーマルモードのノイズ電流i21bに変化し、インダクタンス成分21bを介してフレームGND7に流れる。
この構成では、GNDプレーン11bのインダクタンス21bが比較的小さいものの、ノイズ電流i21aにより発生する電圧降下は無視できない大きさとなる。そして、高周波のノイズ電流i21aとインダクタンス21bによって発生する高周波の電位変動がGND端子VSSOに生じ、バイパスコンデンサC11を介して電源端子VDDOへも伝播する。一方、I/Oバッファ5の出力信号端子9からの出力信号は、I/Oバッファ5のGND端子VSSOと電源端子VDDOの電位をハイレベル(H)及びローレベル(L)の信号として出力する。また、I/Oバッファ5の電源配線と信号出力端子間に存在する寄生容量、I/Oバッファ5のGND配線と信号出力端子間に存在する寄生容量を介して、高周波の電位変動が信号出力端子に伝播する。つまり、電源端子VDDOとGND端子VSSOに伝播された高周波の電位変動がI/Oバッファ5の全ての入出力信号に重畳されてしまうことになる。
3.GNDパターン面積の少ない2層両面プリント基板と単層片面プリント基板からの輻射ノイズ
図5はGNDパターン面積の少ない2層両面プリント基板或いは単層片面プリント基板に実装されたICとその接続の様子を示す図である。
図5(a)にはIC2とプリント基板パターンの接続が模式的に示されている。この例において、電源パターン10cとGNDパターン11cは、いくつものVIAやジャンパ線を介して、半田面と部品面の接続を行うことが一般的である。しかしながら、ここでは説明を簡単にするため、これらの接続面は記載せず、プリント基板1に占める電源パターンとGNDパターンの面積を示すように図示されている。
図5(a)に示すように、IC2の電源端子VDDO1〜VDDO4と電源端子VDD1〜VDD4は、プリント基板1の電源パターン10cに接続されている。一方、IC2のGND端子VSSO1〜VSSO4とGND端子VSS1〜VSS4は、プリント基板1のシグナルGND8であるGNDパターン11cに接続されている。GNDパターン11cはフレームGND7にも接続されている。IC2のGND端子VSSO1〜VSSO4とGND端子VSS1〜VSS4は、GNDパターン11cのインダクタンス成分21cを介してフレームGND7に接続されている。
尚、バイパスコンデンサについては、図を簡単にするため、その記載を省略している。
図5(b)は、単層片面プリント基板でのノイズ伝播経路を簡単に示している。なお、図5(b)では、図3(b)や図4(b)において既に説明した構成については同じ参照記号を付してその説明を省略する。
内部コア回路4のトランジスタの高速スイッチングにより、ボンディングワイヤ6vddとバイパスコンデンサC1とボンディングワイヤ6vssと内部コア回路4内の配線とを介して、電源端子VDDとGND端子VSSには高周波電流i1cが流れる。高周波電流i1cにより、コモンモードのノイズ電流i11cとノイズ電流i12cが発生する。ノイズ電流i11cはフェライトビーズ13の高周波インピーダンスにより、電源端子VDDO及び電源Vccへの伝播が抑制される。ノイズ電流i12cは、ノーマルモードのノイズ電流i21cに変化し、インダクタンス成分21cを介してフレームGND7に流れる。
さて、GNDプレーン11cのインダクタンス21cは比較的大きい値となるので、電源端子VDDとGND端子VSSから発生した高周波のノイズ電流i21cとインダクタンス21cによって発生する高周波の電位変動がGND端子VSSOに生じる。そして、バイパスコンデンサC11を介して電源端子VDDOへも伝播する。一方、I/Oバッファ5の出力信号端子9からの出力信号は、I/Oバッファ5のGND端子VSSOと電源端子VDDOの電位をハイレベル(H)及びローレベル(L)の信号として出力する。また、I/Oバッファ部の電源配線と信号出力端子間に存在する寄生容量、I/Oバッファ部のGND配線と信号出力端子間に存在する寄生容量を介して、高周波の電位変動が信号出力端子に伝播する。つまり、電源端子VDDOとGND端子VSSOに伝播された高周波の電位変動がI/Oバッファ5の全ての入出力信号に重畳されてしまうことになる。
また、ASIC等のように、内部コア用GND端子VSS及びI/Oバッファ用GND端子VSSOがIC2にそれぞれ2個ずつ以上構成された場合には、一般的に各辺の中央部とコーナ部とに交互に配置される。この場合、内部コア用GND端子VSSとI/Oバッファ用GND端子VSSOがそれぞれ複数存在する。このため、内部コア用GND端子VSSとI/Oバッファ用GND端子VSSOとに接続される配線パターンをベタパターンで接続すると、内部コア用GND端子VSSとI/Oバッファ用GND端子VSSOが交互に配線されることとなる。
プリント基板全体の大きさを考慮すると、同一のICに備えられる内部コア用GND端子VSSとI/Oバッファ用GND端子VSSOのパターンは、IC近傍のほぼ同じロケーションに交互に配置されることとなる。その結果、内部コア用GND端子VSSとI/Oバッファ用GND端子VSSO間のインピーダンスは、ICからプリント基板のフレームGND部までのインピーダンスと比較して小さくなってしまう。このため、内部コア用GND端子VSSとI/Oバッファ用GND端子VSSOは、互いに高周波ノイズの伝播及び干渉を生じやすい構成となる。
なお、ノイズ電流i21cとインダクタンス21cにより発生する電圧降下は、高周波の電位変動を発生させて、GND端子VSSOとバイパスコンデンサC11を介して電源端子VDDOとに伝播するだけにとどまらない。電源電圧VccとシグナルGND8全体にも伝播する。つまり、プリント基板1c内でシグナルGND8と電源電圧Vccに接続された全ての回路部へと高周波のノイズ変動が伝播し、プリント基板全体をノイズ源と化してしまう。
従って、プリント基板に多数のケーブルが接続されている場合には、ほとんどのケーブルからのノイズ輻射が発生し、対策がより難しくなる。このノイズ対策には、高額なコストが必要となる。また、この構成では、高周波帯域において安定した電源パターンやGNDパターンとなる部分がプリント基板全体に及んでいない。このため、高周波帯域で低インピーダンス接続が可能なバイパスコンデンサ等をプリント基板のGND配線部に追加しても、接続されたGND配線部の電位自体が高周波ノイズで電位変動する。このため、その対策効果は低く、効果的な対策は容易ではない。
次に、以上の構成や原理を踏まえて、ICからの輻射ノイズを抑制するプリント基板の実施例について説明する。
実施例1に従うプリント配線基板は、ICの内部コア回路をノイズ源として発生する輻射ノイズをフェライトビーズを用いて抑制することを特徴とする。
図6はICからの輻射ノイズを抑制するプリント配線基板におけるICとの接続を示す図である。なお、図6において、既に図1〜図5において説明した内容と同じ構成要素や信号には同じ参照番号や参照記号を付し、その説明は省略する。
図6(a)にはIC2とプリント基板パターンの接続が模式的に示されている。この例において、電源パターン10dとGNDパターン11dは、いくつものVIA、リードジャンパ、チップジャンパ等を介して、半田面と部品面のパターン接続を行うことが一般的である。しかしながら、ここでは説明を簡単にするため、これらの接続面は記載せず、プリント基板1に占める電源パターンとGNDパターンの面積を示すように図示されている。
図6(a)に示すように、IC2の内部コア用GND端子VSS1〜VSS4は、プリント基板1のGNDパターン11dに直接接続されず、フェライトビーズ14を介して、GNDパターン11dに接続される。一方、IC2のI/Oバッファ用GND端子VSSO1〜VSSO4はGNDパターン11dにそのまま接続される。つまり、IC2のGND端子VSS1〜VSS4は、GND端子VSSO1〜VSSO4からフェライトビーズ14を介して高周波帯域で分離され、一方のGND端子VSSO1〜VSSO4はシグナルGND8に接続される。
尚、バイパスコンデンサについては、図を簡単にするため、その記載を省略している。
図6(b)はプリント基板でのノイズ伝播経路を簡単に示している。なお、図5(b)では、図3(b)、図4(b)、及び図5(b)において既に説明した構成については同じ参照記号を付してその説明を省略する。
図6(b)に示されるように、この実施例では、電源端子VDDには、電源電圧Vccからフェライトビーズ13を介して電源電圧が供給されるように接続している。
さて、内部コア回路4のトランジスタの高速スイッチングにより、ボンディングワイヤ6vddと6vssとバイパスコンデンサC1と内部コア回路4内の配線のインダクタンスとを介して、電源端子VDDとGND端子VSSには高周波電流i1dが流れる。高周波電流i1dにより、コモンモードのノイズ電流i11dとノイズ電流i12dが発生する。GNDプレーン11dのインダクタンス21dは比較的大きい値となるため、プリント基板1のシグナルGNDに高周波電流が流れると各配置間で不安定な電位状態となる。
しかしながら、この実施例によれば、ノイズ電流i11dは、フェライトビーズ13の高周波インピーダンスにより電源端子VDDO及び電源電圧Vccへの伝播が抑制される。一方、ノイズ電流i12dは、フェライトビーズ14の高周波インピーダンスによりGND端子VSSO及びシグナルGND8への伝播が抑制される。
従って、内部コア回路4のスイッチング動作により発生した高周波ノイズは、プリント基板1dへ伝播することなく、内部コア回路4内に封じ込めることが可能となる。
言い換えれば、内部コア回路4のスイッチング動作により流れる高周波電流がプリント基板1dへ伝播することなく、内部コア回路4とバイパスコンデンサC1で形成される電流閉ループ内にのみ封じ込めることが可能となる。
一般的には、あるGND電位が他のGND電位から浮いてしまうと、浮いたGND電位部に対応する回路と他の回路との動作不良を招く恐れがある。つまり、GND端子にインダクタンス素子を挿入することは、動作不良を招く恐れがあると考えられる。この実施例にかかるプリント基板は、内部コア回路4のGND端子VSSがインダクタンス素子を介してプリント基板のGNDパターンと高周波帯域においてハイインピーダンスで接続される。
しかしながら、入出力信号が他の回路と接続されるI/Oバッファ5のGND端子VSSOは、プリント基板のGNDパターンに直接接続される構成であるため、上述したような動作不良に対する懸念は基本的に排除することが可能となる。
また以下に説明するように、この実施例では、バイパスコンデンサC1の適正な接続を行う。これにより、インダクタンス素子をGND端子に接続された内部コア回路4と、インダクタンス素子をGND端子に接続されていないI/Oバッファ5との接続部においても、動作不良等の問題が生じることはなくなる。その結果、内部コア回路4により発生した高周波ノイズを内部コア回路4内に封じ込めることが可能となる。
この実施例に従うICの輻射ノイズを抑制するプリント配線基板では、内部コア用電源端子VDDと内部コア用GND端子VSS間にバイパスコンデンサC1を接続している。また、フェライトビーズ14は、シグナルGND8とGND端子VSS間に接続されている。
次に、ノイズとなる高周波電流の封じ込めについて説明する。
図7はこの実施例に従う高周波電流の封じ込めの様子を模式的に示す図である。
図7(a)に示すように、内部コア回路4の高速スイッチング動作に必要な瞬時電流i1dは、バイパスコンデンサC1より充放電を繰り返して供給される。一方、図7(b)に示すように、内部コア回路4で消費される電力は、電源電圧Vccよりフェライトビーズ13とフェライトビーズ14を介して供給される。
例えば、フェライトビーズのインピーダンスとして100MHzで100Ω、直流抵抗が0.1〜0.2Ω程度の特性のもので十分なノイズ源の封じ込めを行うことが可能である。尚、輻射ノイズレベルが強い周波数帯域にあわせたフェライトビーズの選択も可能である。例えば、内部コア回路が消費する平均電流が100mAであれば、フェライトビーズの直流抵抗を0.2Ωとして、電圧降下は0.02Vとなる。従って、I/Oバッファ5のGND端子電位と比較して0.02V分オフセットされたGND電位上において、内部コア回路4は動作することとなる。しかしながら、電源電圧Vccは+1.8〜+3.3V程度であるので、通常動作上、何の支障も生じない。
また、IC2の消費電流が多い場合にはより直流抵抗の小さいものを選択すれば良い。また、内部コア回路4のスイッチング周波数に応じて、バイパスコンデンサC1の容量値は決定される。通常、MHz帯域でのインピーダンスが小さいチップセラミックコンデンサが用いられる。IC2の電源供給端子にはフェライトビーズが付加されている場合が多く、実際にはフェライトビーズの直流抵抗分の電圧降下によって、IC2に供給される電源電圧もGND電位と同様に若干低下する。しかしながら、本発明では、IC2に接続されるGND電位が消費電流にあわせて若干オフセットされた電位となるのみなので、通常動作上、何の支障も生じない。
尚、図6(b)において、双方向に構成されたダイオードD1は高周波帯域で分離されたGND端子VSSOとGND端子VSS間のESD対策として追加されたものである。通常、これはIC2内に備えられるものであるが、IC2に内蔵されていない場合には、必要な構成となる。
次に、IC2を2層両面プリント基板に実装した場合のパターン配線の一例を図8に示す。
図8に示すように、IC2は内部コア用電源端子VDD及びGND端子VSSを各2組、I/Oバッファ用電源端子VDDO及びGND端子VSSOを各2組備えている。また、プリント基板1のGNDパターン11dは、プリント基板の2層ともに形成され、多数のVIAで接続されるものの、図面を簡略化するために、VIAの記載は省略している。
プリント基板裏面において、IC2の内部コア用GND端子VSS1とVSS2は、I/Oバッファ用GND端子のVSSOパターンとはフェライトビーズ45で分離される。また、IC2の内部コア用電源端子VDD1とVDD2は、I/Oバッファ用電源端子VDDOのパターンとフェライトビーズ55で分離される。IC2の内部コア用GND端子VSS1とVSS2間は、IC2の裏面に島状の比較的面積の多いベタパターンで接続されている。また、プリント基板表面において、バイパスコンデンサ50と51は、内部コア用電源と内部コア用GND間とに接続される。一方、バイパスコンデンサ40と41は、I/Oバッファ用電源とI/Oバッファ用GND間とに接続される。
内部コア用GND端子VSS1とVSS2とが接続される比較的面積の多い島状のパターンは、IC2の端子配列内側に配置される。内部コア用GND端子VSS1とVSS2間は、ICの端子配列内側に比較的面積の多いパターンで接続されることにより、端子間の配線インピーダンスが低く形成される。
一般的にIC2の内部は極微小な幅のラインで配線されているため、内部配線距離が長くなるほどインピーダンスが高くなる。例えば、IC2内で接続されている同じI/Oバッファ用のGND配線部であっても、対向する外部端子間(図8におけるVSS1端子とVSS2端子間、VSSO1端子とVSSO2端子間)のインピーダンスは高くなり、数Ωの直流抵抗分が寄生する。
内部コア用のGNDパターンとI/Oバッファ用のGNDパターンをIC外部のプリント基板上の配線を用いてベタパターンで接続する従来の構成では、内部コア用GND端子VSS1とVSS2間がプリント基板上のベタパターンで接続される。このため、その接続は低インピーダンスとなっていた。
一方、内部コア用GND端子に接続されるGNDパターンとI/Oバッファ用GND端子に接続されるGNDパターンとをインダクタンス素子を介して接続するようにしたプリント基板では、次の問題がある。即ち、内部コア用GND端子VSS1とVSS2間のインピーダンス及びI/Oバッファ用GND端子VSSO1とVSSO2間のインピーダンスが配線方法によっては高くなってしまい、ノイズ耐量が低下する構成となってしまう。
そこで、図8に示すプリント基板のパターン配線では、IC近傍のプリント基板エリアを利用する。具体的には、内部コア用GND端子VSS1とVSS2間のインピーダンス及びI/Oバッファ用GND端子VSSO1とVSSO2間のインピーダンスとが低くなるように配線する。
ここで、I/Oバッファ用GND端子VSSO1とVSSO2間のインピーダンスについて説明する。
I/Oバッファ(I/Oポート)から出力された信号電流は、I/Oバッファ用GND端子を介してリターン電流が流れる。I/Oバッファ用GND端子は、I/Oバッファのポート数と比較して非常に少ない数量で構成される。つまり、各I/Oバッファ用GND端子間(図8におけるVSSO1端子とVSSO2端子間)は、低インピーダンスとなるように接続されることにより、リターン電流の経路が多く確保される。
次に、内部コア用GND端子VSS1とVSS2間のインピーダンスについて説明する。
内部コア用GND端子間(図8におけるVSS1端子とVSS2端子間)に関しても集積回路の共通GNDとされる。このため、内部コア用GND端子間(図8におけるVSS1端子とVSS2端子間)は、低インピーダンスとなるように接続されることにより、高周波の電流経路が多く確保される。
つまり、内部コア用GND端子に接続されるパターンには高周波電流が流れるため、各内部コア用GND端子間(図8におけるVSS1端子とVSS2端子間)を高周波帯域で低インピーダンスとなるように接続される。これにより、ノイズ発生源のノイズレベルをさらに減衰させることが可能となる。尚、各内部コア用GND端子間(図8におけるVSS1端子とVSS2端子間)は、ICパッケージの下部分、言い換えれば、ICの外部接続端子に囲まれる部分に構成される。
従って、内部コア用GND端子に接続されるGNDパターンをI/Oバッファ用GND端子に接続されるGNDパターンから分離するのみならず、複数の内部コア用GND端子間を低インピーダンスで接続するGNDパターンを形成すると次の効果が得られる。即ち、ノイズ発生源のノイズレベルをさらに抑制することが可能となり、複数のI/Oバッファ用GND端子間を低インピーダンスで接続するGNDパターンとを形成することにより、ノイズ耐量を一層向上させることが可能となる。
尚、I/Oバッファ用GND端子間のインピーダンスは、主にIC外部からのノイズ耐量に対して配慮されるべきものであり、また、IC外部からのリターン電流の経路とされるものである。内部コア用GND端子間のインピーダンスは、主にIC内部から発生する高周波電流に対して考慮されるべきものである。従って、パターン配線上の制約により、内部コア用GND端子間のインピーダンスとI/Oバッファ用GND端子間のインピーダンスに優先度を設けなければならない場合もある。このような場合には、内部コア用GND端子間の配線がICの外部端子に囲まれる部分に構成されることが望ましい。
次に、図15を用いて、上述の各内部コア用GND端子間の配線と各I/Oバッファ用GND端子間の配線について、さらに具体例を示して説明する。
図15は、図1(a)に示した内部コア用GND端子VSS1〜VSS4とI/Oバッファ用GND端子VSSO1〜VSSO4との各4本ずつを備えたASICをプリント基板に実装する一例を示した図である。この図では、そのASICに関し、内部コア用GND端子に接続される配線とI/Oバッファ用GND端子に接続される配線とをフェライトビーズで分離した構成例を示している。
なお、図15において、(a)はICのモールドパッケージの外観を示した図であり、(b)はASICの各端子の一部がプリント基板上へ接続される様子を示した図である。
GND端子VSSO2は、IC2の内側からGNDが配線される。内部コア用GND端子VSS3とVSS4は、IC2の内側で配線接続される。内部コア用GND端子とI/Oバッファ用GND端子とは島状のパターンで分離されている。このため、従来の構成(内部コア用のGNDパターンとI/Oバッファ用のGNDパターンをIC外部のプリント基板上の配線を用いてベタパターンで接続する)と比較して十分に高周波ノイズの抑制が可能となる。
しかしながら、内部コア用GND端子のVSS1とVSS2は、内部コア用GND端子のVSS3とVSS4とに接続される島状のGNDパターンから隔離されている。つまり、内部コア回路から発生するノイズレベルを減衰させる効果を高めるためには、図8の説明で示したように、配線を変更すると良い。即ち、内部コア用GND端子間(図8におけるVSS1端子とVSS2端子間、図15におけるVSS1端子とVSS2端子とVSS3端子とVSS4端子の各端子間)は、低インピーダンスとなるように配線変更されることが望ましい。これにより、さらにノイズ発生源のノイズレベルを抑制することが可能となる。
特に単層のプリント基板の場合には、銅箔層が1層しかないために、表面実装タイプのICパッケージの外部接続端子に囲まれる部分においてパターンを交差させることができず、図15に示すような配線になりやすい。このような図15のパターン配線構成をさらに向上させた例を図16に示す。
図16は、内部コア用GND端子VSS1〜VSS4に接続される配線をICパッケージの内側(外部接続端子に囲まれる部分)に形成したものである。
図16において、(a)はICのモールドパッケージの外観を示した図であり、(b)はASICの各端子の一部がプリント基板上へ接続される様子を示した図である。
この図に示すように、ICパッケージの外側にI/Oバッファ用GND端子に接続される配線を主に形成することにより、ノイズ発生源のノイズレベルをさらに減衰させることが可能となる。
以上述べたようにこの実施例に従えば、内部コア用の電源端子とGND端子が、I/Oバッファ用の電源端子とGND端子とから内部で分離されたICを搭載するプリント基板において、高周波帯域のインピーダンス分離が行われる。これは、内部コア用の外部GND端子とI/Oバッファ用の外部GND端子の間にインダクタンス素子を追加してなされる。この分離により、内部コア用電源端子とGND端子に発生した高周波の電位変動が、ICを搭載するプリント基板上のパターンを介して、ICのI/Oバッファ用電源端子とGND端子及びプリント基板全体へと伝播するのを抑制することができる。
その結果、以上説明した実施例によれば、プリント基板、ケーブル、及び金属筐体を備える機器からの輻射を抑制可能な構成を数個のフェライトビーズの追加のみで実現することができる。
また、従来、プリント基板のGNDパターンをできる限り広いスペースでベタ状に形成して輻射ノイズ対策を行っていたことに対し、この実施例によれば、プリント基板のGNDパターン面積に依存せずICの輻射ノイズ対策を行うことが可能となる。これにより、従来は輻射ノイズ対策に用いてきたGNDパターンの面積を削減することが可能となるため、プリント基板におけるパターン設計の自由度が向上する。
加えて、ICの入出力ポートに接続される各信号線に付加していた輻射ノイズ対策用のフィルタ部品を削減することができる。また、ICを搭載するプリント配線基板を備えた機器に備えられる輻射ノイズ対策のシールド部材等を削減することも可能となる。
なお、以上説明した実施例では、フェライトビーズ13、フェライトビーズ14、バイパスコンデンサC1、バイパスコンデンサC11、ESD保護ダイオードD1をプリント基板上に構成した例について説明した本発明はこれによって限定されるものではない。例えば、図9に示すように、IC内に、次のものを内蔵しても良い。即ち、インダクタンス16(上記フェライトビーズ13に相当)、インダクタンス17(上記フェライトビーズ14に相当)、バイパスコンデンサC1、バイパスコンデンサC11、ESD保護ダイオードD1である。
図9に示すように、インダクタンス16とインダクタンス17は半導体チップ内で形成可能なインダクタンス成分によって構成される。例えば、所望のインダクタンス成分が得られるように、半導体チップ内部の配線パターンをトグル状に引き回す等が有効である。
この実施例に従うプリント配線基板は、コモンモードチョークを用いて、ICの内部コア回路をノイズ源として発生する高周波ノイズを抑制することを特徴としている。尚、この実施例で説明するICは大多数の内部ロジック回路を一定の同期クロックで動作させるASICである。
図10はICからの輻射ノイズを抑制するプリント配線基板におけるICとの接続を示す図である。なお、図10において、既に図1〜図6において説明したのと同じ構成要素や信号には同じ参照番号や参照記号を付し、その説明は省略する。
図10(a)にはIC2とプリント基板パターンの接続が模式的に示されている。この例において、電源パターン10eとGNDパターン11eは、いくつものVIA、リードジャンパ、チップジャンパ等を介して、半田面と部品面のパターン接続を行うことが一般的である。しかしながら、ここでは説明を簡単にするため、これらの接続面は記載せず、プリント基板1に占める電源パターンとGNDパターンの面積を示すように図示されている。
図10(a)に示すように、IC2の内部コア用GND端子VSS1〜VSS4は、プリント基板1のGNDパターン11eに直接接続されず、コモンモードチョーク15を介して、GNDパターン11eに接続される。一方、内部コア用電源端子VDDには、電源電圧Vccからフェライトビーズ13とコモンモードチョーク15とを介して電源が供給されるように接続される。つまり、一対となる内部コア用GND端子VSSと電源端子VDDの双方から流れるコモンモード電流に関しては、コモンモードチョーク15を介して、プリント基板のシグナルGND8と電源電圧Vccに接続されている。
尚、バイパスコンデンサについては、図を簡単にするため、その記載を省略している。
図10(b)はプリント基板でのノイズ伝播経路を簡単に示している。なお、図10(b)では、図3(b)、図4(b)、図5(b)、及び図6(b)において既に説明した構成については同じ参照記号を付してその説明を省略する。
内部コア回路4に集積されたトランジスタの高速スイッチングによりボンディングワイヤ6vdd、6vssとバイパスコンデンサC1と内部コア回路4の配線によるインダクタンスとを介して電源端子VDDとGND端子VSSには高周波電流i1eが流れる。高周波電流i1eにより、コモンモードのノイズ電流i11eとノイズ電流i12eが発生する。GNDプレーン11eのインダクタンス21eは比較的大きい値となるため、プリント基板1のシグナルGNDに高周波電流が流れると各配置間で不安定な電位状態となる。
しかしながら、ノイズ電流i11eとi12eは、コモンモードチョーク15により、電源電圧VccとシグナルGND8へコモンモードで伝播することが抑制される。
また、GNDパターンに比較してパターン幅が細くインピーダンスが高い電源配線パターンでは、ノーマルモードのノイズが発生しやすい。発生したノーマルモードのノイズ成分は、フェライトビーズ13の高周波インピーダンスにより、電源端子VDDO及び電源電圧Vccへの伝播が抑制される。
従って、内部コア回路4のスイッチング動作により発生する高周波ノイズを、プリント基板1eへ伝播することなく、内部コア回路4内に封じ込めることが可能となる。言い換えれば、内部コア回路4のスイッチング動作により流れる高周波電流をプリント基板1eへ伝播することなく、内部コア回路4とバイパスコンデンサC1で形成される電流閉ループ内に封じ込めることが可能となる。
次に、ノイズとなる高周波電流の封じ込めについて説明する。
図11はこの実施例に従う高周波電流の封じ込めの様子を模式的に示す図である。
図11(a)に示すように、内部コア回路4の高速スイッチング動作に必要な瞬時電流i1dは、バイパスコンデンサC1より充放電を繰り返して供給される。一方、図11(b)に示すように、電源電圧Vccからノーマルモードで供給される電流に対するインピーダンスはコモンモードチョークであるためほとんど生じない。つまり、電源電圧Vccからノーマルモードで供給される電流に対しては、コモンモードチョークの有無は関係しない。但し、正確にはコモンモードチョークにも微小な直流抵抗分(抵抗13、14)が存在する。このため、ノーマルモードで流れる電流に対し、微小な直流抵抗分の電位降下は発生するが問題となるレベルではない。
また、図11(c)には、直流電流に対する等価回路を示されている。内部コア回路4で消費される電力は、電源電圧Vccよりフェライトビーズ13、コモンモードチョーク15を介して供給される。フェライトビーズ13とコモンモードチョーク15の直流抵抗分の電位降下による影響は、実施例1で説明したのと同様に、電源電圧Vccが+1.8〜3.3V程度であるので、通常動作上、何の支障も生じない。
尚、実施例1で説明したように、内部コア用GND端子に接続されるGNDパターンをI/Oバッファ用GND端子に接続されるGNDパターンから分離するのみならず、複数の内部コア用GND端子間(図10(a)におけるVSS1〜VSS4間)を低インピーダンスで接続するGNDパターンを形成しても良い。これにより、ノイズ発生源のノイズレベルをさらに抑制することが可能となる。さらに、複数のI/Oバッファ用GND端子間(図10(a)におけるVSSO1〜VSSO4間)を低インピーダンスで接続するGNDパターンとを形成することによりノイズ耐量を一層向上させることが可能となる。
以上述べたようにこの実施例に従えば、内部コア用の電源端子とGND端子が、I/Oバッファ用の電源端子とGND端子とから内部で分離されたICを搭載するプリント基板において、高周波帯域のインピーダンス分離が行われる。この分離は、内部コア用の電源端子とGND端子とにコモンモードチョークを追加して、内部コア用の電源端子とGND端子からコモンモードで流れる電流に対して行われる。これにより、内部コア用の電源端子とGND端子に発生した高周波の電位変動が、ICを搭載するプリント基板上のパターンを介して、ICのI/Oバッファ用電源端子とGND端子及びプリント基板全体へと伝播するのを抑制することができる。
その結果、以上説明した実施例によれば、プリント基板、ケーブル、及び金属筐体を備える機器からの輻射を抑制可能な構成を1個のコモンモードチョークの追加のみで実現することができる。
また、この実施例によっても実施例1で説明したような効果を得ることができる。
この実施例に従うプリント配線基板は、GNDパターンの配線分離を用いて、ICの内部コア回路をノイズ源として発生する高周波ノイズを抑制することを特徴とする。尚、この実施例で説明するICは、実施例2と同様のASICである。
この実施例に従うプリント配線基板は、実施例1で説明したフェライトビーズ14の部分をパターン配線に置き換えた構成に相当する。このようにパターン配線を備える構成は、4層プリント基板などの、基板面積に余裕があるものに適用される。即ち、図6に示した電源端子VDD1〜VDD4を電源端子VDDO1〜VDDO4の電源パターンから島状に分離し、且つ、GND端子VSS1〜VSS4をGND端子VSSO1〜VSSO4のGNDパターンから島状に分離した構成とするのである。島状に分離される電源端子VDD1〜VDD4とGND端子VSS1〜VSS4への接続部は、少なくとも1個以上のVIAを介すことによりインダクタンス値を調整することが可能である。また、ジグザグパターンにする等してインダクタンスを形成させることも可能である。
その結果、内部コア回路4で発生した高周波の電位変動は、パターン配線によるインダクタンス成分により、電源端子VDDO及び電源電圧Vcc、電源端子VSSO及びシグナルGND8へ伝播することが抑制される。
従って、内部コア回路4のスイッチング動作により発生した高周波ノイズはプリント基板1へ伝播することなく、内部コア回路4内に封じ込めることが可能となる
従って、内部コア回路4のスイッチング動作により発生する高周波ノイズは、プリント基板1fに伝播するのが抑制され、内部コア回路4内にほぼ封じ込めることができる。言い換えれば、内部コア回路4のスイッチング動作により流れる高周波電流がプリント基板1fへ伝播することが抑制され、内部コア回路4とバイパスコンデンサC1で形成される電流閉ループ内に主な高周波電流が流れることになる。
図12はこの実施例に従うパターン配線分離を行った4層プリント基板の例を示す図である。図12において、(a)は電源用の配線パターンの例を示し、(b)はGND用の配線パターンの例を示す。図12によれば、IC2の内部コア用の電源端子VDD1〜VDD4と内部コア用のGND端子VSS1〜VSS4は、島状に分離されたパターンでIC2の周辺に構成され、夫々、電源プレーン10fとGNDプレーン11fから分離される。
尚、実施例1で説明したように、内部コア用GND端子に接続されるGNDパターンをI/Oバッファ用GND端子に接続されるGNDパターンから分離するのみならず、複数の内部コア用GND端子間(図12(b)におけるVSS1〜VSS4間)を低インピーダンスで接続するGNDパターンを形成しても良い。これにより、ノイズ発生源のノイズレベルをさらに抑制することが可能となる。さらに、複数のI/Oバッファ用GND端子間(図12(b)におけるVSSO1〜VSSO4間)を低インピーダンスで接続するGNDパターンとを形成することにより、ノイズ耐量を一層向上させることが可能となる。
以上述べたように、内部コア回路の高速スイッチング動作に起因して発生する高周波ノイズは、電源端子VDDに接続されるパターンとGND端子VSSに接続されるパターンとをその他の電源パターンやGNDパターンから分離する。これにより、内部コア回路の電源端子VDDとGND端子VSSからノイズが伝播することが抑制される。
加えて、ICから入出力される各信号に付加されていた輻射ノイズ対策用のフィルタ回路を削減することが可能となる。また、ICを搭載するプリント配線基板を備えた機器に備えられる輻射ノイズ対策のシールド部材等を削減することも可能となる。
以上述べたようにこの実施例に従えば、内部コア用の電源端子とGND端子が、I/Oバッファ用の電源端子とGND端子とから内部で分離されたICを搭載するプリント基板において、高周波帯域のインピーダンス分離が行われる。この分離は、I/Oバッファ用の外部GND端子に接続されるその他のGNDパターン配線とは別に内部コア用の外部GND端子に接続されるパターン配線を島状に形成することによりなされる。これにより、内部コア用電源端子とGND端子に発生した高周波の電位変動が、ICを搭載するプリント基板上のパターンを介して、ICのI/Oバッファ用電源端子とGND端子及びプリント基板全体へと伝播することが抑制される。
その結果、以上説明した実施例によれば、プリント基板、ケーブル、及び金属筐体を備える機器からの輻射を抑制可能な構成をコストアップが生じることなく実現することができる。
また、この実施例によっても実施例1〜2で説明したような効果を得ることができる。
実施例4に従うプリント配線基板は次のことを特徴とする。即ち、ICの内部コア用電源端子と内部コア用GND端子へのパターン配線について、電源配線とGND配線が平行になるようにプリント基板の電源供給箇所から専用に配線され、配線による相互インダクタンスも形成する。従って、この実施例では、内部コア用の電源電圧をVcc2、I/Oバッファ用の電源電圧をVcc1として説明する。
図13はこの実施例に従うプリント基板でのノイズ伝播経路を示す図である。
図13(a)に示すように、内部コア用のGND端子とI/Oバッファ用のGND端子は、1枚のプリント基板内において、プリント基板のフレームGNDの近傍において一点アースで接続される。
また、図13(b)には、2つのプリント基板A、Bを含む機器において、ICに供給される電源電圧を別ユニットから供給する構成の場合の配線例が示されている。内部コア4の電源端子とGND端子へのプリント基板Aにおけるパターン配線は、図13(a)に示したのと同様に、対となる内部コア用電源とGNDの配線が平衡となるように、電圧生成ユニットから専用の電源パターンとGNDパターンが配線される。
さらに、図13(b)に示すように、内部コア用のGND端子とI/Oバッファ用のGND端子とは、電圧生成ユニットの電源電圧Vcc2の生成部で一点アースで接続され、近傍にフレームGNDが配置される。また、他のプリント基板Bへ供給される電源電圧Vcc2の電源配線及びGND接続も一点アースで接続される。
図14はパターン配線分離を行った4層プリント基板の例を示す図である。
図14において、(a)は電源プレーン層の配線例を示し、(b)はGNDプレーン層の配線例を示す。図14によれば、IC2の内部コア用の電源端子VDD1〜VDD4と内部コア用のGND端子VSS1〜VSS4は、島状パターンでIC周辺に構成され、プリント基板のフレームGNDの近傍位置まで平衡に配線された後、一点アースで接続される。
その結果、内部コア用電源端子とGND端子のパターン配線は一点アースで接続される箇所まで平衡に配線されるため、内部コア回路4で発生したコモンモードノイズはノーマルモードのノイズに変化することが抑制されつつ、安定してフレームGNDに流れる。従って、I/Oバッファ用電源端子VDDO及びGND端子VSSOに高周波ノイズが伝播することが抑制される。
その結果、以上説明した実施例によれば、内部コア回路4で発生したコモンモードノイズは、電圧生成ユニットのフレームGNDまでノーマルモードのノイズに変化することが抑制されつつ、安定して流れていく。従って、ICのI/Oバッファ用電源端子VDDO及びGND端子VSSOに高周波ノイズが伝播されることが抑制されるとともに、他のプリント基板に高周波ノイズが伝播されることも抑制される。
尚、実施例1で説明したように、内部コア用GND端子に接続されるGNDパターンをI/Oバッファ用GND端子に接続されるGNDパターンから分離するのみならず、複数の内部コア用GND端子間(図14(b)におけるVSS1〜VSS4間)を低インピーダンスで接続するGNDパターンを形成しても良い。これにより、ノイズ発生源のノイズレベルをさらに抑制することが可能となる。さらに、複数のI/Oバッファ用GND端子間(図14(b)におけるVSSO1〜VSSO4間)を低インピーダンスで接続するGNDパターンとを形成することにより、ノイズ耐量を一層向上させることが可能となる。
また、以上説明した実施例1〜4では、ICのASICを例として、内部コア回路に起因する高周波ノイズをその他の回路に伝播させない対策について説明したが、本発明はこれによって限定されるものではない。本発明は、例えば、DSP等のICにも容易に適用可能である。
また、対となる電源端子とGND端子を少なくとも2対以上備え、1対の電源端子とGND端子が他の対となる電源端子とGND端子に対し内部で分離された構成のICであれば、どのような構成のICにも本発明は適用可能である。特に、本発明は高周波帯域で分離する手段として、ノイズ干渉全般の対策を目的として容易に適用可能である。
さらに、以上説明した実施例のプリント配線基板の構成によれば、特定の回路部分の高周波ノイズ干渉を抑制することが可能であるので、逆に、ICの一部の回路について、外部ノイズ源からの干渉を抑制するためにも容易に適用することができる。
またさらに、以上説明した実施例では、ICの内部コア用電源とI/Oバッファ用電源の電圧を同じVccとして説明したが、本発明はこれによって限定されるものではない。例えば、内部コア用の電源電圧を+2.5V、I/Oバッファ用の電源電圧を+3.3V等とする構成であっても、本発明はGND端子側の配線に特徴があるので、容易に適用可能である。
またさらに、以上説明したプリント配線基板は画像形成装置などの電子回路に適用されることが好適である。
本発明の代表的な実施例であるICの内部構成を示すブロック図である。
ICが輻射ノイズを発生する様子を示す図である。
4層プリント基板に実装されたICとその接続の様子を示す図である。
2層両面プリント基板に実装されたICとその接続の様子を示す図である。
GNDパターン面積の少ない2層両面プリント基板或いは単層片面プリント基板に実装されたICとその接続の様子を示す図である。
本発明の実施例1に従うICからの輻射ノイズを抑制するプリント配線基板におけるICとの接続を示す図である。
本発明の実施例1に従う高周波電流の封じ込めの様子を模式的に示す図である。
IC2を2層両面プリント基板に実装した場合のパターン配線の例を示す図である。
輻射ノイズ抑制のための構成要素を内蔵したICの内部構成を示す図である。
本発明の実施例2に従うICからの輻射ノイズを抑制するプリント配線基板におけるICとの接続を示す図である。
本発明の実施例2に従う高周波電流の封じ込めの様子を模式的に示す図である。
本発明の実施例3に従うパターン配線分離を行った4層プリント基板の例を示す図である。
本発明の実施例4に従うプリント基板でのノイズ伝播経路を示す図である。
本発明の実施例4に従うパターン配線分離を行った4層プリント基板の例を示す図である。
IC2をプリント基板に実装した場合のパターン配線の一例を示す図である。
IC2をプリント基板に実装した場合のパターン配線の一例を示す図である。
符号の説明
1 プリント基板
2 IC
3 半導体チップ
4 内部コア回路
5 I/Oバッファ
6 ボンディングワイヤ
7 フレームGND
8 シグナルGND
9 I/Oバッファ入出力端子
10a、10b、10c、10d、10e、10f 電源パターン(電源プレーン)
11a、11b、11c、11d、11e、11f GNDパターン(GNDプレーン)
13、14 フェライトビーズ
15 コモンモードチョーク
16、17 インダクタンス