JP2006149214A - L−アミノ酸生産菌及びl−アミノ酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ピルビン酸を中間体とする生合成経路を経て生成するL−アミノ酸の生産能を有するコリネ型細菌であって、アセチルCoAハイドロラーゼの活性が低下するように改変されたコリネ型細菌を用いて、該L−アミノ酸を製造する。
【選択図】なし
Description
効率よく製造する方法を提供することを課題とする。
(1) ピルビン酸を中間体とする生合成経路を経て生成するL−アミノ酸の生産能を有するコリネ型細菌であって、アセチルCoAハイドロラーゼの活性が低下するように改変されたコリネ型細菌。
(2) 染色体上のアセチルCoAハイドロラーゼをコードする遺伝子またはその発現制御領域に変異が導入されたことによりアセチルCoAハイドロラーゼの活性が低下した、(1)のコリネ型細菌。
(3) 染色体上のアセチルCoAハイドロラーゼ遺伝子が破壊されたことによりアセチルCoAハイドロラーゼ活性が低下した、(1)のコリネ型細菌。
(4) 前記アセチルCoAハイドロラーゼが、下記(A)又は(B)に記載のタンパク質である(1)〜(3)のいずれかのコリネ型細菌、
(A)配列番号24に示すアミノ酸配列を有するタンパク質。
(B)配列番号24に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、または付加を含むアミノ酸配列を有し、かつ、アセチルCoAハイドロラーゼ活性を有するタンパク質。
(5) 前記アセチルCoAハイドロラーゼ遺伝子が、下記(a)又は(b)に記載のDNAである(2)又は(3)のコリネ型細菌、
(a)配列番号23の塩基番号1037〜2542からなる塩基配列を含むDNA、又は
(b)配列番号23の塩基番号1037〜2542からなる塩基配列又は同塩基配列から調製され得るプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、アセチルCoAハイドロラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(6) さらにグルタミン酸デヒドロゲナーゼ活性が上昇するように改変されたことを特徴とする(1)〜(5)のいずれかのコリネ型細菌。
(7) 前記L−アミノ酸がL−グルタミン酸、L−アルギニン、L−グルタミン、L−プロリン、L−アラニン、及びL−バリンからなる群より選ばれる1又は2以上のアミノ酸である(1)〜(5)にいずれかのコリネ型細菌
(8) (1)〜(7)のいずれかのコリネ型細菌を培地中で培養し、該培地中にピルビン酸を中間体とする生合成経路を経て生成するL−アミノ酸を生成・蓄積せしめ、該L−アミノ酸を培地から採取することを特徴とする、ピルビン酸を中間体とする生合成経路を経て生成するL−アミノ酸の製造法。
(9) 前記L−アミノ酸がL−グルタミン酸、L−アルギニン、L−グルタミン、L−プロリン、L−アラニン、及びL−バリンからなる群より選ばれる1又は2以上のアミノ酸である、(8)のL−アミノ酸の製造法。
本発明において、「コリネ型細菌」とは、従来ブレビバクテリウム属に分類されていたが、現在コリネバクテリウム属に分類されている細菌も含み(Int. J. Syst. Bacteriol., 41, 255(1991))、またコリネバクテリウム属と非常に近縁なブレビバクテリウム属細菌を含む。このようなコリネ型細菌の例として以下のものが挙げられる。
コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム
コリネバクテリウム・アセトグルタミカム
コリネバクテリウム・アルカノリティカム
コリネバクテリウム・カルナエ
コリネバクテリウム・グルタミカム
コリネバクテリウム・リリウム
コリネバクテリウム・メラセコーラ
コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス(コリネバクテリウム・エフィシェンス)
コリネバクテリウム・ハーキュリス
ブレビバクテリウム・ディバリカタム
ブレビバクテリウム・フラバム
ブレビバクテリウム・インマリオフィラム
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム
ブレビバクテリウム・ロゼウム
ブレビバクテリウム・サッカロリティカム
ブレビバクテリウム・チオゲニタリス
コリネバクテリウム・アンモニアゲネス
ブレビバクテリウム・アルバム
ブレビバクテリウム・セリヌム
ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム
育種によってL−グルタミン酸生産能を付与するための方法としては、例えば、L−グルタミン酸生合成に関与する酵素をコードする遺伝子の発現が増強するように改変する方法を挙げることができる。L−グルタミン酸生合成に関与する酵素としては、例えば、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、グルタミンシンテターゼ、グルタミン酸シンターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アコニット酸ヒドラターゼ、クエン酸シンターゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ホスホエノールピルビン酸シンターゼ、エノラーゼ、ホスホグリセルムターゼ、ホスホグリセリン酸キナーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、フルトースビスリン酸アルドラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼなどが挙げられる。
以上のような方法により、クエン酸シンターゼ遺伝子、フォスフォエノールピルベートカルボキシラーゼ遺伝子、及び/又はグルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子、イソクエン酸デヒドロゲナーゼの発現が増強するように改変されたコリネ型細菌としては、特開2001-825447号公報、特開平07-834672号公報、国際公開00/18935号パンフレットに記載された微生物が例示できる。
が低下したコリネ型細菌としては、特開平07-834672号公報, 特開平06-237779号公報等に記載された菌株が利用出来る。
このような耐性菌の具体例としては、下記のような菌株が挙げられる。
・ ブレビバクテリウム・フラバムAJ11355(FERM P-5007;特開昭56-1889号公報)
コリネバクテリウム・グルタミカムAJ11368(FERM P- P-5020;特開昭56-1889号公報)
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11217(FERM P-4318;特開昭57-2689号公報)
コリネバクテリウム・グルタミカムAJ11218(FERM-P4319;特開昭57-2689号公報)
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11564(FERM P-5472;特開昭56-140895公報)
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11439(FERM P-5136;特開昭56-35981号公報)
コリネバクテリウム・グルタミカムH7684(FERM BP-3004;特開平04-88994号公報)
例えば、L−イソロイシンおよびL−メチオニン要求性,ならびにD−リボ−ス,プリンリボヌクレオシドまたはピリミジンリボヌクレオシドに耐性を有し,かつL−バリン生産能を有する変異株(FERM P-1841、FERM P-29、特公昭53-025034号公報) や、ポリケトイド類に耐性を有する変異株(FERM P-1763、FERM P-1764;特公平06-065314号公報) 、更には酢酸を唯一の炭素源とする培地でL-バリン耐性を示し、且つグルコースを唯一の炭素源とする培地でピルビン酸アナログ(β−フルオロピルビン酸等)に感受性を有する変異株(FERM BP-3006、BP-3007 特許3006929号明細書)が挙げられる。
ギニン生合成に関与する酵素をコードする遺伝子の発現が増強するように改変する方法を挙げることができる。L−アルギニン生合成系酵素としては、N−アセチルグルタミルリン酸レダクターゼ(argC)、オルニチンアセチルトランスフェラーゼ(argJ)、N−アセチルグルタメートキナーゼ(argB)、アセチルオルニチントランスアミナーゼ(argD)、オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ(argF)、アルギニノコハク酸シンターゼ(argG)、アルギニノコハク酸リアーゼ(argH)、カルバモイルリン酸シンターゼから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。これらのアルギニン生合成遺伝子は、Argオペロン(argCJBDFRGH)から構成されており、argRがコードするアルギニンリプレッサーにより制御されている。従って、アルギニンリプレッサーを破壊することによって、Argオペロンの発現量が向上し、酵素活性が上昇する。(特開2002-051790号公報)
(特開2004-187684号公報)
L−グルタミン生産能を有するコリネ型細菌の具体例としては、下記のような菌株が挙げられる。
ブレビバクテリウム・フラバムAJ11573(FERM P-5492) 特開昭56-151495号公報、
ブレビバクテリウム・フラバムAJ12210(FERM P-8123) 特開昭61-202694号公報、
ブレビバクテリウム・フラバムAJ12212(FERM P-8123) 特開昭61-202694号公報、
ブレビバクテリウム・フラバムAJ12418(FERM-BP2205) 特開平2-186994号公報、
ブレビバクテリウム・フラバムDH18(FERM P-11116) 特開平3-232497号公報、
コリネバクテリウム・メラセコラDH344(FERM P-11117) 特開平3-232497号公報、
コリネバクテリウム・グルタミカムAJ11574(FERM P-5493) 特開昭56-151495号公報。
ることができる。例えば、L−プロリン生合成に関与する酵素としては、グルタミン酸5‐キナーゼ、γ‐グルタミル−リン酸レダクターゼ、ピロリン−5−カルボキシレートレダクターゼが挙げられる。
また、L−アラニンはL−アスパラギン酸からβ−脱炭酸に反応によってL−アラニンに変換されるため、L−アスパラギン酸生産菌において、アセチルCoAハイドロラーゼ活性が低下するように改変することによってL-アラニン生産菌を得ることができる。
本発明のコリネ型細菌は、上記のようなL−アミノ酸生産能を有するコリネ型細菌であって、かつアセチルCoAハイドロラーゼ活性が低下するように改変されたコリネ型細菌である。
本発明のコリネ型細菌は、上記のようなピルビン酸を中間体とする生合成経路を経て生成するL−アミノ酸の生産能を有するコリネ型細菌を、アセチルCoAハイドロラーゼ活性が低下するように改変することにより得ることができる。なお、本発明のコリネ型細菌の育種において、L−アミノ酸生産能の付与とアセチル−CoAハイドロラーゼ(EC 3.1.2.1)活性を低下させる改変は、どちらを先に行ってもよい。
置換、glyからproへの置換、hisからasn、lys、gln、arg又はtyrへの置換、ileからleu、met、val又はpheへの置換、leuからile、met、val又はpheへの置換、lysからasn、glu、gln、his又はargへの置換、metからile、leu、val又はpheへの置換、pheからtrp、tyr、met、ile又はleuへの置換、serからthr又はalaへの置換、thrからser又はalaへの置換、trpからphe又はtyrへの置換、tyrからhis、phe又はtrpへの置換、及び、valからmet、ile又はleuへの置換が挙げられる。
な相同組換えを利用した遺伝子置換による遺伝子破壊は既に確立しており、直鎖上DNAを用いる方法や温度感受性複製起点を含むプラスミドを用いる方法などがある(米国特許第6303383号明細書、又は特開平05-007491号公報)。また、上述のような相同組換えを利用した遺伝子置換により遺伝子破壊は、宿主上で複製能力を持たないプラスミドを用いても行うことが出来る。
145 (1994)69-73)。すなわち、コリネ型細菌では、レバンシュークラーゼを発現させると、シュークロースを資化することによって生成したレバンが致死的に働き、生育することが出来ない。従って、レバンシュークラーゼを搭載したベクターが染色体上に残ったままの菌株をシュークロース含有プレートで培養すると生育できず、ベクターが脱落した菌株のみシュークロース含有プレートで選択することが出来る。
バチルス・アミロリキュファシエンス:sacB GenBank Accession Number X52988
ザイモモナス・モビリス:sacB GenBank Accession Number L33402
バチルス・ステアロサーモフィラス:surB GenBank Accession Number U34874
ラクトバチルス・サンフランシセンシス:frfA GenBank Accession Number AJ508391
アセトバクター・キシリナス:lsxA GenBank Accession Number AB034152
グルコンアセトバクター・ジアゾトロフィカス:lsdA GenBank Accession Number L41732
。
によって処理し、アセチルCoAハイドロラーゼの活性が低下した菌株を選択する方法が挙げられる。
コリネ型細菌のGDH活性を増幅するには、GDHをコードする遺伝子断片を、該細菌で機能するベクター、好ましくはマルチコピー型のベクターと連結して組み換えDNAを作製し、これをL−アミノ酸生産能を有するACH活性の低下したコリネ型細菌に導入して形質転換すればよい。形質転換株の細胞内のGDHをコードする遺伝子のコピー数が上昇する結果、GDH活性が増幅される。
コリネ型細菌のGDHをコードする遺伝子(gdh遺伝子)の塩基配列は既に明らかにされている(配列番号25:Molecular Microbiology (1992) 6 (3), 317-326 NCgl1999
NC_003450の2194739..2196082 の相補鎖)ので、その塩基配列に基づいて作製したプライマー、コリネ型細菌染色体DNAを鋳型とするPCR法(PCR:polymerase chain reaction; White,T.J. et al ;Trends Genet. 5,185(1989)参照)によって、gdh遺伝子を取得することができる。コリネ型細菌等の他の微生物のGDHをコードする遺伝子も、同様にして取得され得る。
上記のようにして得られるコリネ型細菌を培地で培養し、該培地中にピルビン酸を中間体とする生合成経路を経て生成するL−アミノ酸を生成蓄積させ、該培地から該L−アミノ酸を採取することにより、ピルビン酸を中間体とする生合成経路を経て生成するL−アミノ酸を効率よく製造することができる。
窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、りん酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等のアンモニウム塩または硝酸塩等が使用される。
有機微量栄養素としては、アミノ酸、ビタミン、脂肪酸、核酸、更にこれらのものを含有するペプトン、カザミノ酸、酵母エキス、大豆タンパク分解物等が使用され、生育にアミノ酸などを要求する栄養要求性変異株を使用する場合には要求される栄養素を補添することが好ましい。
無機塩類としては、りん酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、マンガン塩等が
使用される。
培養終了後の培養液から上記L−アミノ酸を採取する方法は、公知の回収方法に従って行えばよい。例えば、培養液から菌体を除去した後に、濃縮晶析することによって採取される。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する.
(A)pBS3の構築
sacB遺伝子(配列番号19)をバチルス・ズブチリスの染色体DNAを鋳型として配列番号1と2をプライマーとして用いて、PCRにより取得した。PCR反応は、LA taq(TaKaRa)を用い、94 ℃で5分保温を1サイクル行った後、変性94℃ 30秒、会合49℃ 30秒、伸長72℃ 2分からなるサイクルを25回繰り返した。生成したPCR産物を常法により精製後BglIIとBamHIで消化し、平滑化した。この断片をpHSG299のAvaIIで消化後、平滑化した部位に挿入した。このDNAを用いて、エシェリヒア・コリJM109のコンピテントセル(宝バイオ社製)を用いて形質転換を行い、カナマイシン(以下、Kmと略す)25μg/mlを含むLB培地に塗布し、一晩培養した。その後、出現したコロニーを釣り上げ、単コロニーを分離し形質転換体を得た。得られた形質転換体よりプラスミドを抽出し、目的のPCR産物が挿入されていたものをpBS3と命名した。pBS3の構築過程を図1に示す。
pBS3上に存在するカナマイシン耐性遺伝子配列中のSmaI部位をアミノ基置換を伴わない塩基置換によりカナマイシン耐性遺伝子を破壊したプラスミドをクロスオーバーPCRで取得した。まず、pBS3を鋳型として配列表配列番号3,4の合成DNAをプライマーとしてPCRを行い、カナマイシン耐性遺伝子のN末端側の増幅産物を得る。一方Km耐性遺伝子のC末端側の増幅産物を得るためにpBS3を鋳型として配列表配列番号5,6の合成DNAを鋳型としてPCRを行った。PCR反応はPyrobest DNA Polymerase(宝バイオ社製)を用い、98 ℃で5分保温を1サイクル行った後、変性98℃ 10秒、会合57℃ 30秒、伸長72℃ 1分からなるサイクルを25回繰り返すことにより目的のPCR産物を得ることができる。配列表配列番号4と5は部分的に相補的であり、またこの配列内に存在するSmaI部位はアミノ酸置換を伴わない塩基置換を施すことにより破壊されている。次にSmaI部位が破壊された変異型カナマイシン耐性遺伝子断片を得るために、上記カナマイシン耐性遺伝子N末端側及びC末端側の遺伝子産物を、それぞれほぼ等モルとなるように混合し、これを鋳型として配列表配列番号3,6の合成DNAをプライマーとしてPCRを行い変異導入されたKm耐性遺伝子増幅産物を得た。PCR反応はPyrobest DNA Polymerase(宝バイオ社)を用い、98 ℃で5分保温を1サイクル行った後、変性98℃ 10秒、会合57℃ 30秒、伸長72℃ 1.5分からなるサイクルを25回繰り返すことにより目的のPCR産物を得ることができる。
。その後、出現したコロニーを釣り上げ、単コロニー分離し、形質転換体を得た。得られた形質転換体よりプラスミドを抽出し、目的のPCR産物が挿入されていたものをpBS4Sと命名した。pBS4Sの構築過程を図2に示す。
上記(B)で構築したpBS4Sにコリネ型細菌の温度感受性複製起点を挿入したプラスミドの構築方法は、pHSC4(特開平5−7491号公報)のBamHIとSmaI処理して平滑化して得たコリネ型細菌の温度感受性複製起点をpBS4SのNdeIサイトを平滑化した部位に挿入した。このDNAを用いて、エシェリヒア・コリJM109のコンピテントセル(宝バイオ社製)を用いて形質転換を行い、Km 25μg/mlを含むLB培地に塗布し、一晩培養した。その後、出現したコロニーを釣り上げ、単コロニーを分離し形質転換体を得た。得られた形質転換体よりプラスミドを抽出し、目的のPCR産物が挿入されていたものをpBS5Tと命名した。
図3にpBS5Tの構築図を示す。
(A) ラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子破壊用断片のクローニング
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム2256株由来のラクテートデヒドロゲナーゼ(以下、ldh遺伝子と略す)のORFを欠失した遺伝子断片は、既に公開されているコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032 (GenBank Database Accession No.NC_003450)の該遺伝子の塩基配列(配列番号21)を参考に設計した合成DNAをプライマーとして用いたクロスオーバーPCRで取得した。具体的にはブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム2256株の染色体DNAを鋳型として、配列表配列番号7、8の合成DNAをプライマーとして常法によりPCRを行いldh遺伝子N末端側の増幅産物を得た。一方、ldh遺伝子C末端側の増幅産物を得るために、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム2256株ゲノムDNAを鋳型とし、配列表配列番号9、10の合成DNAをプライマーとして常法によりPCRを行った。配列表配列番号8と9は互いに相補的であり、ldhのORFの全配列を欠損させた構造となっている。
上記(A)で得られたpΔldh56-1はコリネ型細菌の細胞内で自律複製可能とする領域を含まないため、本プラスミドでコリネ型細菌を形質転換した場合、極めて低頻度であるが本プラスミドが相同組換えにより染色体に組み込まれた株が形質転換体として出現する。ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム2256株を電気パルス法により高濃度のプラスミドpΔldh56-1を用いて形質転換し、カナマイシン25μg/mlを含むCM-Dex培地(グルコース 5g/L、ポリペプトン 10g/L、イーストエキストラクト 10g/L、KH2PO4 1g/L、MgSO4・7H2O 0.4g/L、FeSO4・7H2O 0.01g/L、MnSO4・7H2O 0.01g/L、尿素 3g/L、大豆加水分解物 1.2g/L、pH7.5(KOH))に塗布し、31.5℃で約30時間培養した。この培地上に生育した株は該プラスミドのldh遺伝子断片とブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム2256株ゲノ
ム上の同遺伝子との間で相同組み換えを起こした結果、同ゲノムに該プラスミドに由来するカナマイシン耐性遺伝子およびSacB遺伝子が挿入されている株である。
(A)アセチルCoAハイドロラーゼ遺伝子破壊用断片のクローニング
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム2256株のアセチルCoAハイドロラーゼ遺伝子(以下、該遺伝子をachとする)のORFを欠失した遺伝子断片の取得は、既に公開されているコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032 (GenBank Database Accession No. NC_003450 )の該遺伝子の塩基配列(配列番号23)を参考に設計した合成DNAをプライマーとして用いたクロスオーバーPCRで取得した。具体的には、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム2256株ゲノムDNAを鋳型とし、配列表配列番号13と14の合成DNAをプライマーとしてPCRを行い、ach遺伝子C末端側の増幅産物を得る。一方、ach遺伝子N末端側の増幅産物を得るために、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム2256株ゲノムDNAを鋳型として、配列表配列番号15と16の合成DNAをプライマーとしてPCRを行う。配列表配列番号14と15は互いに相補的である。PCR反応は、KOD -plus-(東洋紡社製)を用い、N末端側、C末端側ともに、94℃で2分保温を1サイクル行った後、変性94℃ 10秒、会合55℃ 30秒、伸長68℃ 50秒からなるサイクルを30回繰り返した。次に、内部配列を欠失したach遺伝子断片を得るために、上記ach N末側およびC末側の遺伝子産物をそれぞれほぼ等モルとなるように混合し、これを鋳型として配列表配列番号17と18の合成DNAをプライマーとしてPCRを行い変異導入されたach遺伝子増幅産物を得た。PCR反応は、KOD
-plus-(TOYOBO)を用い、94℃で2分保温を1サイクル行った後、変性94℃ 10秒、会合55℃
30秒、伸長68℃ 90秒からなるサイクルを30回繰り返し、目的の変異導入されたach遺伝子増幅産物を得た。生成したPCR産物を常法により精製後XbaIで消化し、上記実施例1(B)で構築したpBS4SのXbaI部位に挿入した。このDNAを用いて、エシェリヒア・コリJM109のコンピテントセル(宝バイオ社製)を用いて形質転換を行い、IPTG 100μM、X-Gal 40μg/mlおよびカナマイシン25μg/mlを含むLB培地に塗布し、一晩培養した。その後、出現
した白色のコロニーを釣り上げ、単コロニー分離し、形質転換体を得た。得られた形質転換体よりプラスミドを抽出し、目的のPCR産物が挿入されていたものをpBS4S::Δachと命名した。pBS4S::Δachの構築過程を図5に示した。
上記(A)で得られたpBS4S::Δachはコリネ型細菌の細胞内で自律複製可能とする領域を含まないため、本プラスミドでコリネ型細菌を形質転換した場合、極めて低頻度であるが本プラスミドが相同組換えにより染色体に組み込まれた株が形質転換体として出現する。ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム2256Δ(ldh)株を電気パルス法により高濃度のプラスミドpBS4S::Δachを用いて形質転換し、カナマイシン25μg/mlを含むCM-Dex培地に塗布し、31.5℃で約30時間培養した。この培地上に生育した株は該プラスミドのach遺伝子断片とブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム2256Δ(ldh)株のそれぞれのゲノム上の同遺伝子との間で相同組み換えを起こした結果、同ゲノムに該プラスミドに由来するカナマイシン耐性遺伝子およびSacB遺伝子が挿入されている。
(1)ach欠損株の培養評価
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム2256Δ(ldh)株および2256Δ(ldh, ach)株を用いてL-グルタミン酸生産のための培養をS型Jarを用いて以下のように行った。CMDexプレート培地にて培養して得た2256Δ(ldh)株および2256Δ(ldh, ach)株それぞれ1白金耳分をシード培地(グルコース60g、H3PO41.54g、KOH 1.45g、MgSO4・7H2O 0.9g、FeSO4・7H2O 0.01g、VB1・HCl 670μg、Biotin 40μg、大豆加水分解物1.54g、DL-メチオニン 0.28g、AZ-20R 0.1mlを純水1Lに含む(アンモニア水でpH7.2に調整))300mlに接種し、pH7.2(NH3)、31.5℃、通気1/1vvm、PL>0に制御して、残糖が0になるまで培養した。
この培養液30mlをメイン培地(グルコース80g、KH2PO43.46g、MgSO4・7H2O 1g、FeSO4・7H2O 0.01g、MnSO4・4-5H2O 0.01g、VB1・HCl 230μg、大豆加水分解物0.35g、AZ-20R 0.2mlを純水1Lに含む(アンモニアでpH7.3に調整))270mlに接種し、31.5℃、pH7.3、通気1/1vvm、PL>0に制御して培養した。残糖が0になる前に、更にグルコース500g、AZ-20R
0.2mlを純水1Lに含むフィード溶液を70-80ml添加し、残糖が0になるまで培養した。
培養終了後、培養液中のL-グルタミン酸蓄積量は、培養液を適当に希釈した後、バイオテックアナライザーAS210(旭化成)にて分析した。このときの結果を表1に示した。
(1)ach欠損株の培養評価
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム2256Δ(ldh)株および2256Δ(ldh, ach)株を用いてL-アラニン、L-バリン生産のための培養をS型Jarを用いて以下のように行った。CMDexプレート培地にて培養して得た2256Δ(ldh)株および2256Δ(ldh, ach)株それぞれ1白金耳分をシード培地(グルコース60g、H3PO41.54g、KOH 1.45g、MgSO4・7H2O 0.9g、FeSO4・7H2O 0.01g、VB1・HCl 670μg、Biotin 40μg、大豆加水分解物1.54g、DL-メチオニン 0.28g、AZ-20R 0.1mlを純水1Lに含む(アンモニア水でpH7.2に調整))300mlに接種し、pH7.2(NH3)、31.5℃、通気1/1vvm、PL>0に制御して、残糖が0になるまで培養した。
この培養液30mlをメイン培地(グルコース80g、KH2PO43.46g、MgSO4・7H2O 1g、FeSO4・7H2O 0.01g、MnSO4・4-5H2O 0.01g、VB1・HCl 230μg、大豆加水分解物0.35g、AZ-20R
0.2mlを純水1Lに含む(アンモニアでpH7.3に調整))270mlに接種し、31.5℃、pH7.3、通気1/1vvm、PL>0に制御して培養した。残糖が0になる前に、更にグルコース500g、AZ-20R 0.2mlを純水1Lに含むフィード溶液を70-80ml添加し、残糖が0になるまで培養した。
培養終了後、培養液中のL-アラニン、L-バリン蓄積量は、培養液を適当に希釈した後、アミノ酸アナライザーL8500(HITACHI)にて分析した。このときの結果を表2に示した。
2256Δ(ldh, ach)では、親株の2256Δ(ldh)株に比べて、L-アラニンの蓄積量が約2.2倍、L-バリンで約4倍の向上が認められた。この結果より、L-アラニン、L-バリンの生産において、ACH活性の消失または低下が有効であることが示された。
Claims (9)
- ピルビン酸を中間体とする生合成経路を経て生成するL−アミノ酸の生産能を有するコリネ型細菌であって、アセチルCoAハイドロラーゼの活性が低下するように改変されたコリネ型細菌。
- 染色体上のアセチルCoAハイドロラーゼをコードする遺伝子またはその発現制御領域に変異が導入されたことによりアセチルCoAハイドロラーゼの活性が低下した、請求項1に記載のコリネ型細菌。
- 染色体上のアセチルCoAハイドロラーゼ遺伝子が破壊されたことによりアセチルCoAハイドロラーゼ活性が低下した、請求項1に記載のコリネ型細菌。
- 前記アセチルCoAハイドロラーゼが、下記(A)又は(B)に記載のタンパク質である請求項1〜3のいずれか一項に記載のコリネ型細菌、
(A)配列番号24に示すアミノ酸配列を有するタンパク質、又は
(B)配列番号24に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、または付加を含むアミノ酸配列を有し、かつ、アセチルCoAハイドロラーゼ活性を有するタンパク質。 - 前記アセチルCoAハイドロラーゼ遺伝子が、下記(a)又は(b)に記載のDNAである請求項2又は3に記載のコリネ型細菌、
(a)配列番号23の塩基番号1037〜2542からなる塩基配列を含むDNA、又は
(b)配列番号23の塩基番号1037〜2542からなる塩基配列又は同塩基配列から調製され得るプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、アセチルCoAハイドロラーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。 - 前記コリネ型細菌がさらにグルタミン酸デヒドロゲナーゼ活性が上昇するように改変されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のコリネ型細菌。
- 前記L−アミノ酸がL−グルタミン酸、L−アルギニン、L−グルタミン、L−プロリン、L−アラニン、及びL−バリンからなる群より選ばれる1又は2以上のアミノ酸である請求項1〜6のいずれか一項に記載のコリネ型細菌。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載のコリネ型細菌を培地中で培養し、該培地中にピルビン酸を中間体とする生合成経路を経て生成するL−アミノ酸を生成・蓄積せしめ、該L−アミノ酸を培地から採取することを特徴とする、ピルビン酸を中間体とする生合成経路を経て生成するL−アミノ酸の製造法。
- 前記L−アミノ酸がL−グルタミン酸、L−アルギニン、L−グルタミン、L−プロリン、L−アラニン、及びL−バリンからなる群より選ばれる1又は2以上のアミノ酸である、請求項8に記載のL−アミノ酸の製造法。
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