JP2006109573A - 車両用回転電機およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】磁石保持部材16を、永久磁石15の周方向の2つの側面25を覆う2つの側部27、および外周面26を覆うとともに2つの側部27を架橋する両側架橋部28により構成し、2つの側部27を両側架橋部28よりも低剛性にする。これにより、磁石保持部材16を略コの字状に形成することができるため、素材の使用量を低減することができる。さらに、磁石保持部材16において、2つの側部27を両側架橋部28よりも低剛性とすることにより、板状の素材を略コの字状に容易に形成することができる。この結果、コストアップすることなく磁石保持部材16の破損の虞を低減することができる。
【選択図】図4
Description
従来より、例えば、車両に搭載される交流発電機では、ロータを構成するランデル型の爪状磁極とステータとの間で磁束を確実に受け渡すため、この爪状磁極の側面間に永久磁石を介在させて、爪状磁極間の磁束の漏洩を防止する技術が公知となっている。さらに、この永久磁石が遠心力により径方向外側に飛び出し破損するのを防止するための技術が考えられている。
しかし、特許文献1に記載の技術によれば、磁石保持部材が樹脂により成形されているため、強度が低く破損する虞がある。また、特許文献2に記載の技術のように、非磁性金属の板状部材により永久磁石を包囲すれば、強度が向上し磁石保持部材自体が破損する虞が低減される。しかし、板状部材の包囲端部同士の係合などを行う必要があり加工に手間がかかる。さらに、永久磁石を軸方向に全周において包囲するため、磁石保持部材に用いる金属素材の使用量も多くなる。以上により、特許文献2に記載の磁石保持部材は製造コストが高いものになってしまう。
請求項1に記載の車両用回転電機は、周方向に互いに対向し磁束の受渡を行う複数の爪状磁極を有するとともに、回転軸に組み付けられるポールコアと、互いに向かい合う2つの爪状磁極の間に介在して、磁束の漏洩を減少する方向に着磁された複数の永久磁石と、永久磁石を保護するとともに、2つの爪状磁極の間に永久磁石を保持する金属製の磁石保持部材とを備え、磁石保持部材は、永久磁石の外周面および周方向両側面を囲うように形成され、永久磁石の周方向両側面を覆う2つの側部は、永久磁石の外周面を覆う両側架橋部よりも低剛性である。
これにより、磁石保持部材を略コの字状や略C字状に形成することができるため、永久磁石の全周を囲う場合に比べ素材の使用量を低減することができる。さらに、磁石保持部材において、2つの側部を両側架橋部よりも低剛性とすることにより、板状の素材を略コの字状や略C字状に容易に形成することができる。この結果、コストアップすることなく磁石保持部材の破損の虞を低減することができる。
請求項2に記載の2つの側部は、周方向に貫通する孔部を有することにより、両側架橋部よりも低剛性になっている。
これにより、プレス加工等の簡易な手段によって、2つの側部を低剛性にすることができる。
請求項3に記載の2つの側部は、両側架橋部よりも板厚が薄いことにより、両側架橋部よりも低剛性になっている。
請求項4に記載の2つの側部の反両側架橋部側の端部は、永久磁石の内周面に係合している。
これにより、永久磁石が内周側に脱落するのを防止することができる。
請求項5に記載の磁石保持部材は、非磁性材料を素材としている。
このため、磁石保持部材に防錆効果を有する素材を用いることにより、錆の進行による磁石保持部材の破損を防止できる。また、永久磁石が錆びるのを抑制することができるので、永久磁石にメッキなどの高価な表面処理を施す必要がなくなり、コストを低減できる。
請求項6に記載の車両用回転電機では、磁石保持部材の側部の外側面と、爪状磁極の周方向側面との間に形成される空隙(以下、「磁極/部材間空隙」と呼ぶ)に、熱硬化性樹脂が充填されている。
これにより、磁石保持部材と爪状磁極との固着が強化され、より強固に永久磁石を2つの爪状磁極の間に保持することができる。
請求項7に記載の車両用回転電機では、磁極/部材間空隙に、内周側に向かい漸増する部分がある。
これにより、径方向内側に向かい漸増する部分に充填された熱硬化性樹脂は、遠心力が作用する永久磁石に対し、くさびとして機能する。この結果、さらに強固に磁石保持部材を介して永久磁石を2つの爪状磁極の間に保持することができるので、磁石保持部材の破損を防止できる。
請求項8に記載の車両用回転電機では、磁極/部材間空隙に充填される熱硬化性樹脂が、ポールコアの内周側に装着される界磁コイルを保護する含浸固着樹脂と同じ樹脂素材である。
これにより、界磁コイルの含浸固着処理と同時に、磁極/部材間空隙における固着処理を行うことができる。このため、作業工数を減らしてコストを低減することができる。
請求項9に記載の車両用回転電機の製造方法では、界磁コイルに含浸固着樹脂の被膜を形成しておき、磁極/部材間空隙に充填された熱硬化性樹脂とともに、含浸固着樹脂の皮膜に加熱処理を施す。
これによれば、界磁コイル、ポールコア、永久磁石および磁石保持部材などを所定の構成に組み立ててロータを形成する前に、熱硬化前の熱硬化性樹脂材料(プレポリマ)で界磁コイルに被膜を形成しておく。そして、ロータ全体を加熱処理することにより、界磁コイルの含浸固着処理と、磁極/部材間空隙における固着処理とを行う。これにより、ロータを組み立てた後に、プレポリマを界磁コイルに塗布する場合に比べて、作業の煩雑さを大幅に低減できる。
また、2つの側部の反両側架橋部側の端部は、永久磁石の内周面に係合している。
また、磁石保持部材は、非磁性材料を素材としている。
また、磁石保持部材の側部の外側面と、爪状磁極の周方向側面との間に形成される空隙(磁極/部材間空隙)に、熱硬化性樹脂が充填されている。
また、磁極/部材間空隙に充填される熱硬化性樹脂は、ポールコアの内周側に装着される界磁コイルを保護する含浸固着樹脂と同じ樹脂素材である。
最良の形態3の車両用回転電機の磁極/部材間空隙は、内周側に向かい漸増する部分がある。
実施例1の車両用回転電機1の構成を図1ないし図7を用いて説明する。なお、本実施例では、車両用回転電機1として、内燃機関(図示せず)により回転駆動され車載電源(図示せず)等に電力を供給する交流発電機(以下、発電機1とする)を取り上げて説明する。
発電機1は、図1に示すように、電機子として機能するステータ2、界磁極として機能するロータ3、ステータ2およびロータ3を収容するハウジング4、電機子コイル5に誘起される交流電力を直流電力に変換する整流器6などにより構成されている。
実施例1の発電機1の作用を説明する。
内燃機関によりロータ3が回転駆動された状態で、界磁コイル12に界磁電流が通電され爪状磁極13が磁化すると、ステータ2の電機子コイル5に交流電力が誘起されるとともに、誘起された交流電力は整流器6により直流電力に変換され車載電源等に供給される。この際、2つの隣り合う爪状磁極13の間に介在する永久磁石15は、磁束の漏洩を減少させ爪状磁極13の間で確実に磁束を受け渡す。そして、ロータ3の回転に伴い、永久磁石15に遠心力が作用するが、この永久磁石15は磁石保持部材16により略コの字状に収容されて保護され、さらに磁石保持部材16は爪状磁極13により径方向に係止されているので、遠心力による永久磁石15の飛び出しが防止される。
実施例1の発電機1の効果を説明する。
実施例1の発電機1の磁石保持部材16は、永久磁石15の周方向の2つの側面25を覆う2つの側部27、および外周面26を覆うとともに2つの側部27を架橋する両側架橋部28により構成され、2つの側部27は両側架橋部28よりも低剛性である。
これにより、磁石保持部材16を略コの字状に形成することができるため、永久磁石15の全周を囲う場合に比べ素材の使用量を低減することができる。さらに、磁石保持部材16において、2つの側部27を両側架橋部28よりも低剛性とすることにより、板状の素材を略コの字状に容易に形成することができる。この結果、コストアップすることなく磁石保持部材16の破損の虞を低減することができる。
これに対し、本実施例のように低剛性の側部27で永久磁石15の側面25を覆うことにより、永久磁石15の側面25とポールコア14の表面との直接接触を回避できるとともに、局所的な押圧力を吸収することができる。この結果、永久磁石15の破損の虞を低減することができるという効果もある。
孔部29はプレス加工等の簡易な手段によって設けることができる。このため容易に2つの側部27を低剛性にすることができる。
これにより、永久磁石15が内周側に脱落するのを防止することができる。
このため、磁石保持部材16に防錆効果を有する素材を用いることにより、錆の進行による磁石保持部材16の破損を防止できる。また、永久磁石15が錆びるのを抑制することができるので、永久磁石15にメッキなどの高価な表面処理を施す必要がなくなり、コストを低減できる。
これにより、磁石保持部材16と爪状磁極13との固着が強化され、より強固に永久磁石15を2つの爪状磁極13の間に保持することができる。
これにより、界磁コイル12の含浸固着処理と同時に、磁極/部材間空隙における固着処理を行うことができる。このため、作業工数を減らしてコストを低減することができる。
なお、2つの側部27の孔部29にも熱硬化性樹脂38が入りこむことにより、磁石保持部材16と永久磁石15と爪状磁極13とが、さらに強固に固着される。
これによれば、界磁コイル12、ポールコア14、永久磁石15および磁石保持部材16などを所定の構成に組み立ててロータ3を形成する前に、界磁コイル12にプレポリマの被膜を形成しておく。そして、ロータ3を組み立てロータ3全体を加熱処理することにより、界磁コイル12の含浸固着処理と、磁極/部材間空隙における固着処理とを行う。これにより、ロータ3を組み立てた後にプレポリマを界磁コイル12に塗布する場合に比べて、作業の煩雑さを大幅に低減できる。
これにより、磁極/部材間空隙に充填された熱硬化性樹脂38は、遠心力が作用する永久磁石15および磁石保持部材16に対し、くさびとして機能する。この結果、さらに強固に磁石保持部材16を介して永久磁石15を2つの爪状磁極13の間に保持することができるので、磁石保持部材16の破損を防止できる。
これにより、2つの爪状磁極13による挟持効果と、熱硬化性樹脂38のくさび効果とにより、さらに強固に永久磁石15および磁石保持部材16を2つの爪状磁極13の間に保持することができる。
10 回転軸
12 界磁コイル
13 爪状磁極
14 ポールコア
15 永久磁石
16 磁石保持部材
23 周方向側面(爪状磁極の周方向側面)
25 側面(永久磁石の周方向両側面)
26 外周面(永久磁石の外周面)
27 側部
28 両側架橋部
29 孔部
30 端部(側部の反両端架橋部側の端部)
31 内周面(永久磁石の内周面)
32 外側面(側部の外側面)
38 熱硬化性樹脂
Claims (9)
- 周方向に互いに対向し磁束の受渡を行う複数の爪状磁極を有するとともに、回転軸に組み付けられるポールコアと、
互いに向かい合う2つの爪状磁極の間に介在して、磁束の漏洩を減少する方向に着磁された複数の永久磁石と、
前記永久磁石を保護するとともに、前記2つの爪状磁極の間に前記永久磁石を保持する金属製の磁石保持部材とを備えた車両用回転電機において、
前記磁石保持部材は、前記永久磁石の外周面および周方向両側面を囲うように形成され、
前記永久磁石の周方向両側面を覆う2つの側部は、前記永久磁石の外周面を覆う両側架橋部よりも低剛性であることを特徴とする車両用回転電機。 - 請求項1に記載の車両用回転電機において、
前記2つの側部は、周方向に貫通する孔部を有することにより、前記両側架橋部よりも低剛性になっていることを特徴とする車両用回転電機。 - 請求項1に記載の車両用回転電機において、
前記2つの側部は、前記両側架橋部よりも板厚が薄いことにより、前記両側架橋部よりも低剛性になっていることを特徴とする車両用回転電機。 - 請求項1に記載の車両用回転電機において、
前記2つの側部の反両側架橋部側の端部は、前記永久磁石の内周面に係合していることを特徴とする車両用回転電機。 - 請求項1に記載の車両用回転電機において、
前記磁石保持部材は、非磁性材料を素材としていることを特徴とする車両用回転電機。 - 請求項1に記載の車両用回転電機において、
前記磁石保持部材の前記側部の外側面と、前記爪状磁極の周方向側面との間に形成される空隙に、熱硬化性樹脂が充填されていることを特徴とする車両用回転電機。 - 請求項6に記載の車両用回転電機において、
前記空隙は、内周側に向かい漸増する部分があることを特徴とする車両用回転電機。 - 請求項6に記載の車両用回転電機において、
前記空隙に充填される熱硬化性樹脂は、前記ポールコアの内周側に装着される界磁コイルを保護する含浸固着樹脂と同じ樹脂素材であることを特徴とする車両用回転電機。 - 請求項6に記載の車両用回転電機の製造方法であって、
前記ポールコアの内周側に装着される界磁コイルに、前記界磁コイルを保護する含浸固着樹脂の被膜を形成しておき、
前記空隙に充填された熱硬化性樹脂とともに、前記含浸固着樹脂の皮膜に加熱処理を施すことを特徴とする車両用回転電機の製造方法。
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