JP2005186202A - 超砥粒ワイヤソー巻き付け構造、超砥粒ワイヤソー切断装置および超砥粒ワイヤソーの巻き付け方法 - Google Patents

超砥粒ワイヤソー巻き付け構造、超砥粒ワイヤソー切断装置および超砥粒ワイヤソーの巻き付け方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 結合材の損傷および超砥粒の欠落を軽減できる超砥粒ワイヤソー巻き付け構造、超砥粒ワイヤソー切断装置および超砥粒ワイヤソーの巻き付け方法を提供する。
【解決手段】 超砥粒ワイヤソー巻き付け構造は、平均直径Dで形成された超砥粒ワイヤソー10と、リール1とを備える。超砥粒ワイヤソー10は、芯線11と、芯線11の表面を取り囲む結合材12と、結合材12によって芯線11の表面に固着された複数の超砥粒13とを含む。リール1は、一方端3と他方端4とを有する外周面2を含む。加工物に向けて順次繰り出される超砥粒ワイヤソー10は、一方端3と他方端4との間で往復しながら外周面2に多層に巻き付けられる。超砥粒ワイヤソー10が一方端3と他方端4との間で外周面2に巻き付けられるピッチPは、D<P<2Dの関係を満たす。
【選択図】 図4

Description

この発明は、一般的には、超砥粒ワイヤソー巻き付け構造、超砥粒ワイヤソー切断装置および超砥粒ワイヤソーの巻き付け方法に関し、より特定的には、シリコンインゴットからのシリコンウェハのスライシングや、金属、樹脂、鉱石、ガラス、サファイア、水晶、SiCおよび化合物半導体など各種材料の切断加工に用いられる固定砥粒方式の超砥粒ワイヤソーの巻き付け構造、超砥粒ワイヤソー切断装置および超砥粒ワイヤソーの巻き付け方法に関する。
従来、芯線の表面にダイヤモンド砥粒を固着した、固定砥粒方式のダイヤモンドワイヤソーが、超砥粒ワイヤソーの一例として提案されている。このダイヤモンドワイヤソーを用いると、極めて良好な切れ味で金属等の材料を切断することができる。また、研磨液と砥粒とを混合したスラリーが不要であり、水溶性または不水溶性の切削液を利用することができる。このため、切断時に飛散するスラッジによって切断装置およびその周辺が汚染されることを抑制でき、作業環境の改善を図ることができる。
加えて、このダイヤモンドワイヤソーによれば、数km以上といった長尺で作製することが可能となる。これにより、複数の切断加工を同時に行なうことができるため、スラリーを用いたマルチワイヤソー方式と比較して数倍以上の切断速度を得ることができる。このような固定砥粒方式の超砥粒ワイヤソーは、たとえば、特開平8−126953号公報(特許文献1)、特開平9−155631号公報(特許文献2)および国際公開第98/35784号パンフレット(特許文献3)に開示されている。
また別に、特開平4−351222号公報には、ボンディング作業時に繰り出し不良のない状態で、往復多層状に巻き取られたボンディングワイヤ巻線が開示されている(特許文献4)。特許文献4に開示されたボンディングワイヤ巻線では、スプールの一端から他端に向けて巻き取られるボンディングワイヤと、さらにスプールの他端から一端に向けて巻き取られるボンディングワイヤとが交差する角度が0.03°以上に設定されている。
さらに、特開2002−18517号公報には、ボビンへの線材の巻き取り不良を防止することを目的とした線材巻き取り装置が開示されている(特許文献5)。特許文献5に開示された線材巻き取り装置は、電線、ワイヤ、ケーブルをボビンに巻き取るための装置である。線材巻き取り装置には、ボビンの鍔位置を検出可能な鍔検出センサが設けられており、そのセンサが鍔位置を検出するたびに、線材を案内するトラバーサの移動方向が反転される。
さらに、特開2000−349120号公報には、ワイヤに傷不良が発生するまでのガイドの寿命を長くすることを目的とした半導体素子用ボンディングワイヤの巻き取り方法が開示されている(特許文献6)。特許文献6に開示された巻き取り方法では、非回転式の巻き取りガイドが用いられ、その巻き取りガイドは、ダイヤモンドライクカーボン膜で被覆した硬質基材から形成されている。
特開平8−126953号公報 特開平9−155631号公報 国際公開第98/35784号パンフレット 特開平4−351222号公報 特開2002−18517号公報 特開2000−349120号公報
上述の超砥粒ワイヤソーを用いて切断加工を行なう場合、超砥粒ワイヤソーは、リールに巻かれた状態とされ、その状態から加工物に向けて繰り出されたり、回収されたりする。このため、超砥粒ワイヤソーを切断装置に装着可能な状態とするためには、まず超砥粒ワイヤソーを切断装置に応じたリールに巻き付ける必要がある。図8は、従来において、リールに巻かれた超砥粒ワイヤソーを示す断面図である。
図8を参照して、超砥粒ワイヤソー310は、芯線311と、結合材312を用いて芯線311の表面に固着された複数の超砥粒313とを備える。超砥粒313は、遊離砥粒方式の場合とは異なり、結合材312の表面から突出するように設けられている。超砥粒ワイヤソー310は、円筒状に形成されたリール301の表面に、その表面の両端の間を往復しながら多層に巻き付けられている。超砥粒ワイヤソー310は、リール301の表面の両端の間で一定のピッチで巻き付けられており、隣り合う超砥粒ワイヤソー310同士が接触している。
このような状態に超砥粒ワイヤソー310をリール301に巻き付ける場合、隣り合う超砥粒ワイヤソー310同士が擦れ合うため、結合材312が超砥粒313によって傷付けられるという問題が発生する。また、超砥粒313同士が強く衝突することによって、超砥粒313が芯線311の表面から欠落するという問題も発生する。またこのような問題は、切断加工時において、図8に示す状態と同様の状態で超砥粒ワイヤソー310を加工物に向けて繰り出したり回収したりする場合にも発生する。
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、結合材の損傷および超砥粒の欠落を軽減できる超砥粒ワイヤソー巻き付け構造、超砥粒ワイヤソー切断装置および超砥粒ワイヤソーの巻き付け方法を提供することである。
この発明に従った超砥粒ワイヤソー巻き付け構造は、平均直径Dで形成された超砥粒ワイヤソーと、リール部とを備える。超砥粒ワイヤソーは、芯線と、芯線の表面を取り囲む結合材と、結合材によって芯線の表面に固着された複数の超砥粒とを含む。リール部は、一方端と他方端とを有する外周面を含む。加工物に向けて順次繰り出される超砥粒ワイヤソーは、一方端と他方端との間で往復しながら外周面に多層に巻き付けられる。超砥粒ワイヤソーが一方端と他方端との間で外周面に巻き付けられるピッチPは、D<P<2Dの関係を満たす。
このように構成された超砥粒ワイヤソー巻き付け構造によれば、超砥粒ワイヤソーが巻き付けられるピッチPが超砥粒ワイヤソーの平均直径Dよりも大きいため、超砥粒ワイヤソーをリール部の表面に巻き付ける際に、巻き付ける超砥粒ワイヤソーと、隣り合う位置に巻かれた超砥粒ワイヤソーとが強く擦れ合うことを防止できる。また、ピッチPが2Dよりも小さいため、超砥粒ワイヤソーをリール部の表面に巻き付ける際に、巻き付ける超砥粒ワイヤソーが、下層に巻かれた、互いに隣り合う超砥粒ワイヤソーの隙間に食い込むということがない。これにより、超砥粒ワイヤソーを再びリール部から繰り出す時に、超砥粒ワイヤソー同士が強く擦れ合うことを防止できる。これらの理由から、ピッチPが適正な範囲に設定された本発明によれば、結合材が損傷し、超砥粒が欠落することを軽減させることができる。
また好ましくは、ピッチPは、1.1D<P<(31/2)Dの関係をさらに満たす。このように構成された超砥粒ワイヤソー巻き付け構造によれば、上述の効果をさらに効果的に得ることができる。また加えて、ピッチPが(31/2)Dよりも小さいため、巻き付ける超砥粒ワイヤソーが、2層下に巻かれた超砥粒ワイヤソーに接触するということがない。このため、超砥粒ワイヤソー同士の接触に起因して結合材が損傷し、超砥粒が欠落することを軽減させることができる。
また好ましくは、芯線の平均直径がd1であり、超砥粒の平均直径がd2である場合、平均直径d1およびd2は、0.02<d2/d1<0.5の関係を満たす。このように構成された超砥粒ワイヤソー巻き付け構造によれば、d2/d1が0.5よりも小さいため、芯線の平均直径に対して超砥粒の平均直径が大きくなりすぎることがない。このため、芯線の表面に設けられた結合材によって超砥粒を確実に保持することができる。これにより、超砥粒が欠落することをさらに軽減させることができる。また、d2/d1が0.02よりも大きいため、超砥粒がある程度の大きさを有している。これにより、超砥粒が切断時の加工応力に耐え切れず芯線の表面から欠落するという事態を回避することができる。また、超砥粒が細かすぎるために超砥粒ワイヤソーの切れ味が極端に低下するということがない。
また好ましくは、結合材は、レジンボンド、電着、メタルボンドおよびビトリファイドボンドからなる群より選ばれた少なくとも一種を含む。このように構成された超砥粒ワイヤソー巻き付け構造によれば、超砥粒を芯線の表面に確実に保持し、超砥粒の欠落を防止することができる。
この発明に従った超砥粒ワイヤソー切断装置は、上述のいずれかに記載の超砥粒ワイヤソー巻き付け構造を用いて設けられた超砥粒ワイヤソー供給部を備える。このように構成された超砥粒ワイヤソー切断装置によれば、結合材の損傷および超砥粒の欠落が軽減された超砥粒ワイヤソーを用いて、所望の切断加工を行なうことができる。
この発明に従った超砥粒ワイヤソーの巻き付け方法は、平均直径Dで形成された超砥粒ワイヤソーと、一方端と他方端とを有する外周面を含むリール部とを準備する工程を備える。超砥粒ワイヤソーは、芯線、芯線の表面を取り囲む結合材および結合材によって芯線の表面に固着された複数の超砥粒を含む。超砥粒ワイヤソーの巻き付け方法は、超砥粒ワイヤソーを一方端と他方端との間で往復させながら外周面に多層に巻き付ける工程をさらに備える。超砥粒ワイヤソーを巻き付ける工程は、一方端と他方端との間で超砥粒ワイヤソーを巻き付けるピッチPが、D<P<2Dの関係を満たすように超砥粒ワイヤソーを巻き付ける工程を含む。
このように構成された超砥粒ワイヤソーの巻き付け方法によれば、超砥粒ワイヤソーを巻き付けるピッチPが超砥粒ワイヤソーの平均直径Dよりも大きいため、超砥粒ワイヤソーをリール部の表面に巻き付ける際に、巻き付ける超砥粒ワイヤソーと、隣り合う位置に巻かれた超砥粒ワイヤソーとが強く擦れ合うということがない。また、ピッチPが2Dよりも小さいため、超砥粒ワイヤソーをリール部の表面に巻き付ける際に、巻き付ける超砥粒ワイヤソーが、下層に巻かれた、互いに隣り合う超砥粒ワイヤソーの隙間に食い込むということがない。これにより、超砥粒ワイヤソーを再びリール部から繰り出す時に、超砥粒ワイヤソー同士が強く擦れ合うことを防止できる。これらの理由から、ピッチPを適正な範囲に設定して超砥粒ワイヤソーを巻き付ける本発明によれば、結合材が損傷し、超砥粒が欠落することを軽減させることができる。
また好ましくは、超砥粒ワイヤソーを巻き付ける工程は、超砥粒ワイヤソーの破断強度の5%以上50%以下となる巻き付け張力で超砥粒ワイヤソーを巻き付ける工程を含む。このように構成された超砥粒ワイヤソーの巻き付け方法によれば、巻き付け張力が超砥粒ワイヤソーの破断強度の5%以上であるため、いったんリール部に巻き付けた超砥粒ワイヤソーが時間の経過とともに緩むということがない。また、巻き付け張力が超砥粒ワイヤソーの破断強度の50%以下であるため、超砥粒ワイヤソー同士が食い込んで結合材が傷付くということがない。
以上説明したように、この発明に従えば、結合材の損傷および超砥粒の欠落を軽減できる超砥粒ワイヤソー巻き付け構造、超砥粒ワイヤソー切断装置および超砥粒ワイヤソーの巻き付け方法を提供することができる。
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1における超砥粒ワイヤソー巻き付け構造を備える超砥粒ワイヤソー巻き線を示す斜視図である。図1を参照して、超砥粒ワイヤソー10が、円筒状に形成されたリール1の外周面に多層に巻き付けられている。後に詳細に説明するが、本実施の形態における超砥粒ワイヤソー巻き付け構造では、超砥粒ワイヤソー10が外周面に巻き付けられるピッチPが所定の範囲に設定されている。
超砥粒ワイヤソー10は、シリコンインゴットからのシリコンウェハのスライシングの他、超硬合金、サーメット、セラミックス、ゲルマニウム、フェライト、センダスト、アルニコ、サマリウムコバルト、ネオジウム磁石、ガラス、水晶、サファイア、石材、耐火レンガ、タイル、樹脂材料、FRP(fiber-glass reinforced plastic:ガラス繊維強化プラスチック)、CFRP(carbon fiber reinforced plastic:炭素繊維強化プラスチック)、グラファイト、砥石、宝石および金属材料などの切断加工に用いられる。
図2は、図1中の超砥粒ワイヤソーを拡大して示す模式図である。図2の一部には、超砥粒ワイヤソーの長手方向の縦断面が示されている。図3は、図2中のIII−III線上に沿った断面を示す模式図である。
図2および図3を参照して、超砥粒ワイヤソー10は、線状に延びる芯線11と、芯線11の表面11aを覆う結合材12と、結合材12によって表面11a上に固着された複数の超砥粒13とを備える。超砥粒13は、たとえばダイヤモンド砥粒から形成されており、結合材12の表面12aから一部が突出するように設けられている。
超砥粒ワイヤソー10は、平均直径Dを有する。この際、超砥粒ワイヤソー10の長手方向に間隔を隔てた任意の位置に3つの測定地点を選び、これらの地点のそれぞれにおいて、超砥粒ワイヤソー10の直径を3方向で測定し、合計9つの測定値を得る。そして、得られた測定値の平均を算出することによって、超砥粒ワイヤソー10の平均直径Dを求める。
芯線11の平均直径d1は、0.01mm以上1mm以下であることが好ましい。芯線11の平均直径d1は、上述の測定法によって同様に求めることができる。芯線11としては、たとえば、鋼線、銅めっきを施した鋼線およびブラスめっきを施した鋼線のいずれか1つを用いることができる。
鋼線としては、容易に極細線に仕上げることができ、強度が高いピアノ線が最も好ましい。ピアノ線はそのままでも使用することができるが、保管を容易にし、かつレジンボンドの密着性を良好にして超砥粒の保持力を高めるためには、ピアノ線に銅めっきまたはブラスめっき等の表面処理を施すことが好ましい。
その他の材質の芯線としては、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、ガラス繊維のいずれか1種の単線または撚り線を用いることができる。または、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、ガラス繊維のうち2種以上の繊維を混合して撚り線としたものも用いることができる。さらに、これらの撚り線に鋼線を加えた撚り線を芯線として用いることも可能である。
超砥粒13の平均直径がd2である場合、芯線11および超砥粒13の平均直径d1およびd2は、0.02<d2/d1<0.5の関係を満たすことが好ましい。この場合、平均直径d1が、たとえば、0.11mm、0.13mm、0.155mm、0.16mm、0.18mm、0.2mmまたは0.5mmである芯線11を用いることができる。また、平均直径d2が、たとえば、0.010mm、0.012mm、0.032mm、0.042mmまたは0.055mmである超砥粒13を用いることができる。このような関係を満たす超砥粒13および芯線11を使用することによって、表面11a上に確実に保持した状態の超砥粒13を切断加工に寄与させることができる。また同時に、優れた切れ味を得ることができる。
結合材12としては、レジンボンド、電着、メタルボンドまたはビトリファイドボンドを用いることができる。また、レジンボンドとメタルボンドとの複合ボンドや、レジンボンドとビトリファイドボンドとの複合ボンドなどの各種の結合材を結合材12として用いることもできる。なお、本実施の形態における効果が特に顕著に得られるのは、レジンボンドまたはレジンボンドを主体とする複合ボンドを用いた場合である。
レジンボンドとして適用できる樹脂としては、弾性率、軟化温度、成形性、物理的特性の観点から、アルキド樹脂、フェノール樹脂、ホルマリン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアナトエステル樹脂、ポリエーテルイミド、ポリパラバン酸、芳香族ポリアミドなどが好ましい。
電着とは、電着によって結合材12を芯線11の表面11aに形成する場合を指し、たとえば、ニッケル(Ni)めっきを結合材12として表面11aに形成する。また、結合材12としてメタルボンドを用いる場合、適当な金属粉と超砥粒13とを混合粉とし、その混合粉を芯線11の表面11aに焼き付ける。
図4は、図1中のIV−IV線上に沿った断面図である。図4では、リール1に実際に巻かれている超砥粒ワイヤソー10の一部のみが模式的に示されている。図4を参照して、リール1は、外周面2と、外周面2の両端から直角方向に立ち上がる内壁5とを有する。外周面2と内壁5とが交差する位置には、一方端3および他方端4が規定されている。
超砥粒ワイヤソー10は、まず、一方端3から他方端4に向けてピッチPで外周面2に巻き付けられている(第1層目の超砥粒ワイヤソー101a、101b、101cおよび101d)。第1層目の超砥粒ワイヤソーが他方端4まで巻き付けられた後、超砥粒ワイヤソー10は、既に巻き付けられた超砥粒ワイヤソーの上から次は他方端4から一方端3に向けてピッチPで巻き付けられている(第2層目の超砥粒ワイヤソー102a、102b、102cおよび102d)。さらに、超砥粒ワイヤソー10は、第3層目では一方端3から他方端4に向けて、第4層目では他方端4から一方端3に向けてという具合に、一方端3と他方端4との間を往復しながらピッチPで多層に巻き付けられている。
このように超砥粒ワイヤソー10が一方端3と他方端4との間で外周面2上に巻き付けられるピッチPは、D<P<2Dの関係を満たしている。また好ましくは、ピッチPは、1.1D<P<1.9Dの関係を満たしている。
図5は、図1中に示す超砥粒ワイヤソー巻き線を製造するための巻き付け装置を示す概略図である。図5を参照して、巻き付け装置21は、リール1が取り付けられる回転軸を有し、リール1を所定の速度で回転させるための第1の駆動手段としてのモーター22と、リール1の近傍に配置され、リール1に巻き付けられる超砥粒ワイヤソー10が案内されるトラバーサ24と、トラバーサ24が接続され、トラバーサ24を往復運動させるための第2の駆動手段としてのモーター25とを備える。
モーター25の回転軸は、ボールネジ26に接続されており、トラバーサ24は、ボールネジ26のナットに接続されている。モーター25を所定の周期で正反転させることによって、トラバーサ24を矢印27に示す方向に往復運動させることができる。超砥粒ワイヤソー10がリール1に向けて繰り出される経路上には、超砥粒ワイヤソー10の巻き付け張力を測定するための張力計23が設けられている。巻き付け装置21には、さらに、モーター22および25の回転速度を適切に制御するための図示しない制御部が設けられている。
続いて、巻き付け装置21を用いて、超砥粒ワイヤソー10をリール1に巻き付ける方法について説明する。まず、モーター22の回転軸にリール1をセッティングし、外周面2の一方端3側に超砥粒ワイヤソー10の先端を固定する。次に、モーター22を駆動させることによってリール1を回転させ、トラバーサ24に案内された超砥粒ワイヤソー10を外周面2に巻き付けてゆく。この際、モーター22の回転速度に基づいて、図示しない制御部からモーター25に向けて適切な回転速度と、回転方向を反転する時期とが指示される。これにより、トラバーサ24は一定速度で往復運動を行ない、超砥粒ワイヤソー10は、D<P<2Dの関係を満たすピッチPで一方端3と他方端4との間を往復しながら多層に巻き付けられる。
また、張力計23で測定された超砥粒ワイヤソー10の巻き付け張力Tに基づいて、図示しない制御部からモーター22に向けて適切な回転速度が指示されてもよい。この場合、図示しない制御部からは、巻き付け張力Tが超砥粒ワイヤソー10の破断強度の5%以上50%以下となるようにモーター22の回転速度が指示される。これにより、いったん巻き付けた超砥粒ワイヤソー10が緩んでしまうことを防止できる。また同時に、巻き付けられた超砥粒ワイヤソー10同士が食い込んで、結合材12が損傷することを防止できる。
また好ましくは、巻き付け張力Tが超砥粒ワイヤソー10の破断強度の5%以上30%以下となるようにモーター22の回転速度を制御する。さらに好ましくは、巻き付け張力Tが超砥粒ワイヤソー10の破断強度の10%以上20%以下となるようにモーター22の回転速度を制御する。
このように構成された超砥粒ワイヤソー巻き付け構造および超砥粒ワイヤソーの巻き付け方法によれば、D<Pの関係を満たすピッチPで超砥粒ワイヤソー10が巻き付けられているため、超砥粒ワイヤソー10をリール1に巻き付ける際に互いに隣り合う超砥粒ワイヤソー10同士(たとえば、図4中の超砥粒ワイヤソー102bと超砥粒ワイヤソー102c)が擦れ合うということがない。また、P<2Dの関係を満たすピッチPで超砥粒ワイヤソー10が巻き付けられているため、巻き付けようとする超砥粒ワイヤソー10が下層の互いに隣り合う超砥粒ワイヤソー10の間(たとえば、図4中の超砥粒ワイヤソー102bが、超砥粒ワイヤソー101cと超砥粒ワイヤソー101dとの間)に食い込むことがない。これにより、超砥粒ワイヤソー10の結合材12が傷付いたり、超砥粒13が欠落したりすることを防止できる。
なお本実施の形態では、超砥粒ワイヤソー巻き線を製造するための巻き付け装置として、超砥粒ワイヤソー10が水平方向に往復移動しながらリール1に巻き付けられる横型の巻き付け装置21を用いたが、超砥粒ワイヤソー10が水平方向以外の方向、たとえば垂直方向に巻き付けられる縦型の巻き付け装置を用いてもよい。但し、横型の巻き付け装置21を用いた場合には、重力の影響を受けないため、超砥粒ワイヤソー10をリール1の外周面2上で滑らすことなく所定のピッチPで巻き付け易くなる。
(実施の形態2)
この発明の実施の形態2における超砥粒ワイヤソー巻き付け構造は、実施の形態1における超砥粒ワイヤソー巻き付け構造と比較して、基本的には同様の構造を備える。以下、重複する構造については説明を繰り返さない。
本実施の形態では、超砥粒ワイヤソー10が、さらに1.1D<P<(31/2)Dの関係を満たすピッチPでリール1の外周面2に巻き付けられている。また、さらに好ましくは、ピッチPは、1.2D<P<(31/2)Dの関係を満たしている。このように構成された超砥粒ワイヤソー巻き付け構造によれば、実施の形態1に記載の効果に加えて、以下に説明する効果を奏することができる。
図6は、リールに巻き付けられた超砥粒ワイヤソーの外形を表した模式図である。図6を参照して、第n層に巻き付けられた超砥粒ワイヤソー31aの上から、第(n+1)層に超砥粒ワイヤソー31bおよび31cが巻き付けられ、第(n+2)層に超砥粒ワイヤソー31dが巻き付けられた状態が示されている。これらの超砥粒ワイヤソーは、P=(31/2)DとなるピッチPで巻き付けられている。
この場合、図中の角度αは30°となり、第(n+2)層に巻き付けられた超砥粒ワイヤソー31dは、第(n+1)層に巻き付けられた超砥粒ワイヤソー31bおよび31cのみならず、第n層に巻き付けられた超砥粒ワイヤソー31aに接触した状態となる。このような接触によって、超砥粒ワイヤソー31aの結合材12が損傷するおそれは増大する。また、P>(31/2)Dの関係を満たすピッチPで超砥粒ワイヤソーが巻き付けられている場合、超砥粒ワイヤソー31dは、超砥粒ワイヤソー31aにのみ接触する。この場合、超砥粒ワイヤソーの巻き付けられた状態が不安定となり、巻き付けピッチが変動するおそれが生じる。
したがって、本実施の形態における超砥粒ワイヤソー巻き付け構造によれば、結合材12の損傷および超砥粒13の欠落をさらに軽減できるとともに、巻き乱れのない状態で超砥粒ワイヤソー10をリール1に巻き付けることができる。
(実施の形態3)
図7は、この発明の実施の形態3における超砥粒ワイヤソー切断装置を示す斜視図である。図7を参照して、超砥粒ワイヤソー切断装置51は、加工物55との間で超砥粒ワイヤソー10を繰り出したり、回収したりする超砥粒ワイヤソー供給部57を備える。超砥粒ワイヤソー供給部57には、実施の形態1または2における超砥粒ワイヤソー巻き付け構造を用いて超砥粒ワイヤソー10が巻き付けられたリール1が設けられている。リール1は、加工物55に対して両側に2つ配置されており、それぞれモーターの回転軸に取り付けられている。
超砥粒ワイヤソー切断装置51は、さらに、超砥粒ワイヤソー10を案内する複数のガイドローラー52および53と、加工物55の下方に位置し、所定の間隔を隔てて配置された2つのメインローラー56と、メインローラー56の近傍に設けられた2つの切削液ノズル54とを備える。メインローラー56の外周面には、加工物55の切断寸法に応じて溝が設けられている。2つのリール1に両端が巻き付けられた超砥粒ワイヤソー10は、その溝に案内されながら、2つのメインローラー56の間で張架されている。ガイドローラー52は、所定の方向に往復運動可能に設けられている。
超砥粒ワイヤソー切断装置51を用いて加工物55を切断する場合、リール1が接続されたモーターを正反転させ、超砥粒ワイヤソー10を2つのリール1の間で往復運動させる。このとき、ガイドローラー52を図5中に示すトラバーサ24と同様に往復運動させてもよい。これにより、超砥粒ワイヤソー切断装置51を用いた切断加工時においても、超砥粒ワイヤソー10が所定のピッチPでリール1に巻き付けられ、実施の形態1または2に記載の効果と同様の効果を奏することができる。
続いて、2つのメインローラー56の間で移動する多数本の超砥粒ワイヤソー10に向けて、加工物55を押し付ける。これにより、加工物55を多数枚に切断加工することができる。この際、メインローラー56の外周面に形成された溝と加工物55には、切削液ノズル54から切削液が供給される。この切削液は、切断加工時の摩擦を低減し、冷却を促進する役割を果たす。なお、超砥粒ワイヤソー10が所定のピッチPで巻き付けられるようにガイドローラー52を往復移動させた場合には、超砥粒ワイヤソー10がリール1に巻き付けられた状態で、超砥粒ワイヤソー10の隙間に切断加工時に供給された切削液が介在する。このため、切削液による上述の効果を特に有効に得られるものと考えられる。
このように構成された超砥粒ワイヤソー切断装置によれば、所定のピッチPで巻き付けられた超砥粒ワイヤソー10を用いているため、超砥粒ワイヤソー10を再びリール1から繰り出す際にも結合材12が損傷したり超砥粒13が欠落したりすることがない。このため、加工物55を優れた切れ味で切断することができ、超砥粒ワイヤソー10の寿命を延ばすことができる。また、超砥粒ワイヤソー10が所定のピッチPで巻き付けられるようにガイドローラー52を往復移動させた場合には、切断加工の継続中においても、結合材12が損傷したり超砥粒13が欠落することを軽減できる。
本発明による超砥粒ワイヤソー巻き付け構造および巻き付け方法の評価を行なうため、以下に説明する実施例および比較例を実施した。
(実施例1)
図7中の超砥粒ワイヤソー切断装置51を利用して、超砥粒ワイヤソー10の巻き付けピッチPが、結合材12の損傷および超砥粒13の欠落にどのような影響を与えるかを調査する試験を行なった。超砥粒ワイヤソー10の芯線11として、平均直径d1が0.18mmのピアノ線を使用した。また、超砥粒13として、平均直径d2が42μmのダイヤモンド砥粒を使用し、結合材12としてフェノール樹脂を使用した。超砥粒ワイヤソー10の平均直径Dは、0.25mmであった。
以下の試験条件で、超砥粒ワイヤソー10を2つのリール1の間で繰り返し往復走行させる繰り出し試験を行なった。
「試験条件」
超砥粒ワイヤソー速度;800m/min
巻き付け張力T;9.8N
巻き付けピッチP;0.4mm(D<P<2D)
切削液;水溶性切削液
繰り出しサイクル(1往復を1サイクルとする);212サイクル
試験後、2つのメインローラー56の間に張架されている長さ約82mの超砥粒ワイヤソー10を顕微鏡を用いて観察し、結合材12の累積剥離長さおよび超砥粒13の欠落の有無を調査した。結果、結合材12の累積剥離長さは、50mmであり、超砥粒13の欠落はほとんど認められなかった。
(比較例1)
実施例1と同一仕様の超砥粒ワイヤソー10を用い、実施例1の試験条件に倣って繰り出し試験を行なった。但し、試験条件のうち巻き付けピッチPのみを0.2mm(P<D)とした。試験後、実施例1と同様に超砥粒ワイヤソー10を観察した結果、結合材12の累積剥離長さは、250mmであり、超砥粒13の欠落が確認された。
(比較例2)
実施例1と同一仕様の超砥粒ワイヤソー10を用い、実施例1の試験条件に倣って繰り出し試験を行なった。但し、試験条件のうち巻き付けピッチPのみを0.6mm(P>2D)とした。試験後、実施例1と同様に超砥粒ワイヤソー10を観察した結果、結合材12の累積剥離長さは、280mmであり、超砥粒13の欠落が確認された。
(実施例2)
次に、超砥粒ワイヤソー10の巻き付け張力Tの変化によりどのような影響があるかを調査するため、実施例1と同一仕様の超砥粒ワイヤソー10を用い、以下の試験条件で繰り出し試験を行なった。なお、予め超砥粒ワイヤソー10に引っ張り試験を実施した結果、超砥粒ワイヤソー10の破断強度は78Nであった。
「試験条件」
超砥粒ワイヤソー速度;800m/min
巻き付け張力T;9.8N(超砥粒ワイヤソー10の破断強度の12.6%)
巻き付けピッチP;0.4mm(D<P<2D)
切削液;水溶性切削液
繰り出しサイクル;424サイクル
試験後、実施例1と同様に超砥粒ワイヤソー10を観察した結果、結合材12の累積剥離長さは、350mmであった。
(実施例3)
実施例1と同一仕様の超砥粒ワイヤソー10を用い、実施例2の試験条件に倣って繰り出し試験を行なった。但し、試験条件のうち巻き付け張力Tのみを25.7N(超砥粒ワイヤソー10の破断強度の33%)とした。試験後、実施例1と同様に超砥粒ワイヤソー10を観察した結果、結合材12の累積剥離長さは、2300mmであった。
(実施例4)
実施例1と同一仕様の超砥粒ワイヤソー10を用い、実施例2の試験条件に倣って繰り出し試験を行なった。但し、試験条件のうち巻き付け張力Tのみを29.4N(超砥粒ワイヤソー10の破断強度の37.7%)とした。試験後、実施例1と同様に超砥粒ワイヤソー10を観察した結果、結合材12の累積剥離長さは、4120mmであった。
(比較例3)
実施例1と同一仕様の超砥粒ワイヤソー10を用い、実施例2の試験条件に倣って繰り出し試験を行なった。但し、試験条件のうち巻き付け張力Tのみを39.2N(超砥粒ワイヤソー10の破断強度の52%)とした。試験後、実施例1と同様に超砥粒ワイヤソー10を観察した結果、結合材12の累積剥離長さは、6530mmであった。
(比較例4)
実施例1と同一仕様の超砥粒ワイヤソー10を用い、実施例2の試験条件に倣った繰り出し試験を試みた。但し、試験条件のうち巻き付け張力Tのみを3N(超砥粒ワイヤソー10の破断強度の3.8%)とした。しかしながら、この場合、リール1に超砥粒ワイヤソー10を巻き付ける際に、巻き緩みが発生し、試験を実施することができなかった。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
この発明の実施の形態1における超砥粒ワイヤソー巻き付け構造を備える超砥粒ワイヤソー巻き線を示す斜視図である。 図1中の超砥粒ワイヤソーを拡大して示す模式図である。 図2中のIII−III線上に沿った断面を示す模式図である。 図1中のIV−IV線上に沿った断面図である。 図1中に示す超砥粒ワイヤソー巻き線を製造するための巻き付け装置を示す概略図である。 リールに巻き付けられた超砥粒ワイヤソーの外形を表した模式図である。 この発明の実施の形態3における超砥粒ワイヤソー切断装置を示す斜視図である。 従来において、リールに巻かれた超砥粒ワイヤソーを示す断面図である。
符号の説明
1 リール、2 外周面、3 一方端、4 他方端、10,31a,31b,31c,31d 超砥粒ワイヤソー、11 芯線、11a 表面、12 結合材、13 超砥粒、51 超砥粒ワイヤソー切断装置、57 超砥粒ワイヤソー供給部。

Claims (7)

  1. 芯線と、前記芯線の表面を取り囲む結合材と、前記結合材によって前記芯線の表面に固着された複数の超砥粒とを含み、平均直径Dで形成された超砥粒ワイヤソーと、
    一方端と他方端とを有する外周面を含み、加工物に向けて順次繰り出される前記超砥粒ワイヤソーが、前記一方端と前記他方端との間で往復しながら前記外周面に多層に巻き付けられるリール部とを備え、
    前記超砥粒ワイヤソーが前記一方端と前記他方端との間で前記外周面に巻き付けられるピッチPは、D<P<2Dの関係を満たす、超砥粒ワイヤソー巻き付け構造。
  2. 前記ピッチPは、1.1D<P<(31/2)Dの関係をさらに満たす、請求項1に記載の超砥粒ワイヤソー巻き付け構造。
  3. 前記芯線の平均直径がd1であり、前記超砥粒の平均直径がd2である場合、平均直径d1およびd2は、0.02<d2/d1<0.5の関係を満たす、請求項1または2に記載の超砥粒ワイヤソー巻き付け構造。
  4. 前記結合材は、レジンボンド、電着、メタルボンドおよびビトリファイドボンドからなる群より選ばれた少なくとも一種を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の超砥粒ワイヤソー巻き付け構造。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の超砥粒ワイヤソー巻き付け構造を用いて設けられた超砥粒ワイヤソー供給部を備える、超砥粒ワイヤソー切断装置。
  6. 芯線、前記芯線の表面を取り囲む結合材および前記結合材によって前記芯線の表面に固着された複数の超砥粒を含み、平均直径Dで形成された超砥粒ワイヤソーと、一方端と他方端とを有する外周面を含むリール部とを準備する工程と、
    前記超砥粒ワイヤソーを前記一方端と前記他方端との間で往復させながら前記外周面に多層に巻き付ける工程とを備え、
    前記超砥粒ワイヤソーを巻き付ける工程は、前記一方端と前記他方端との間で前記超砥粒ワイヤソーを巻き付けるピッチPが、D<P<2Dの関係を満たすように前記超砥粒ワイヤソーを巻き付ける工程を含む、超砥粒ワイヤソーの巻き付け方法。
  7. 前記超砥粒ワイヤソーを巻き付ける工程は、前記超砥粒ワイヤソーの破断強度の5%以上50%以下となる巻き付け張力で前記超砥粒ワイヤソーを巻き付ける工程を含む、請求項6に記載の超砥粒ワイヤソーの巻き付け方法。
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