JP2004331750A - ポリヒドロキシアルカノエートを含有する磁性構造体及びその製造方法ならびにその用途 - Google Patents

ポリヒドロキシアルカノエートを含有する磁性構造体及びその製造方法ならびにその用途 Download PDF

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Abstract

【課題】徐放性薬剤や超音波造影剤の有効成分の形成に好適に利用し得るマイクロカプセル等の、外相部に内相部が内包され、かつ磁性体を含有する構造体を提供する。
【解決手段】ポリヒドロキシアルカノエート及び磁性体を含有する構造体の構成を、ポリヒドロアルカノエートを含む外相部と、外相部に内包される内相部とを有し、磁性体が外相部及び内相部の少なくともどちらか一方に含有されている構造とする。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、3−ヒドロキシアルカン酸をモノマーユニットとして少なくとも含有するポリヒドロキシアルカノエート(以下、PHAと略記することもある)を含む固相からなる外相部と、この外相部に内包された内相部とを有し、これらの部分の少なくとも一方に磁性体が含有されている構造体及びその製造方法、並びにその用途に関する。
【0002】
【背景技術】
マイクロカプセルは、医薬品、農薬、食品、接着剤、液晶等の多岐にわたる分野における種々の用途への適用が検討されている。例えば、医薬品においては、今まで薬効持続時間が短かった薬物を長時間にわたり効果を発揮できるように改良し得る徐放性製剤としての応用検討がなされてきており、薬理効果の持続はもとより薬物使用量の低減、副作用の軽減、ノンコンプライアンスの改善等の効果が期待されている。さらに近年では徐放性製剤組成物として特に一定の率で薬物を放出することができ、薬物放出速度が実質的にゼロ次である放出制御製剤組成物が種々提案されている。このような放出制御製剤としては例えば、経口製剤、注射剤、皮膚貼付剤等が開発されつつある。
【0003】
また、医学、薬学の分野のみならず、例えば、化粧品分野においても安定性に問題のある有効成分を患部に選択的に移行させ、徐放性を持たせる材料として期待されている。さらには、農業分野においては、徐放性機能を有する農薬や肥料が、また、記録材料分野においては各種カプセルインクの応用等が検討されている。
【0004】
薬学の分野においては、ポリヒドロキシアルカノエートを用い、薬剤内封カプセルとして形成したものとして、米国特許第614665号明細書(特許文献1)に、ポリヒドロキシアルカノエートからなる多孔性グラニュールに親水性薬剤を捕捉(Entrapped)した微粒子、およびコア材として親油性薬剤を溶解した油滴をポリヒドロキシアルカノエートからなるシェルに封入(Encapsulated)した、薬剤組成物の製造方法が開示されている。
【0005】
これらのなかでも経口製剤は広範囲に研究・開発が進められ、多くの製剤が上市されてきたが、こと注射剤に関しては一部インシュリンのデポ製剤等が医療の場で使用されているに過ぎない。この理由として、徐放性を持たせるための高分子化合物の開発がなされなかったことが挙げられる。経口製剤の場合に用いられる高分子化合物は必ずしも生体内で分解される必要はないが、注射剤では生体内で毒性を発現することなく分解代謝排泄されることが実用上絶対必須条件となり、更にその投与部位での局所障害を引き起こさないこと等厳しい条件が要求される。
【0006】
このような状況下で、近年多くの高分子化合物が検討され、それらのなかでも手術の縫合に用いられているポリ乳酸、乳酸−グリコール酸共重合体、ヒドロキシ酪酸−グリコール酸共重合体等が安全かつ有用な高分子化合物として期待されている(特公平1−57087号公報(特許文献2)、WO94/10982公報(特許文献3)、特開平8−151322号公報(特許文献4)、特開平8−217691号公報(特許文献5))。実際に徐放性製剤を調製する目的でこれらの高分子化合物を用いたマイクロカプセル化の技術が多く報告されている。また、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸(以下、PHBと略記することもある)についても、活性成分放出の制御された調節性ペプチドのマイクロカプセルや、ラステッドを含有するマイクロカプセルが報告されている(特開昭61−431119号公報(特許文献6)、Drug Delivery System、7(5)、367−371、1992(非特許文献1)、同8(2)、131−136、1993(非特許文献2))。また、3−ヒドロキシ酪酸/4−ヒドロキシ酪酸共重合体についても、生理活性物質の放出率をモノマーユニット比により制御する徐放性製剤が開示されている(特開平11−199514号公報(特許文献7))。
【0007】
これらの技術の多くは易水溶性薬物を包含するものであり、例えば、特開昭60−100516号(特許文献8)および特開昭62−201816号(特許文献9)には、水中乾燥法により、高いトラップ率で、分散性の良い水溶性薬物の徐放性マイクロカプセルを製造する方法が開示されている。また、特開平1−158529号公報(特許文献10)、特開平2−124814号公報(特許文献11)にはポリ乳酸−グリコール酸共重合体に水溶性薬物を含有させる方法が開示され、また特開平3−32302号公報(特許文献12)には生理活性ポリペプチドを、特開平2−330741号公報(特許文献13)にはEGFを含有させた徐放性製剤が、さらには、特開平4−321622号(特許文献14)において、乳酸/グリコール酸の組成比が80/20〜100/0で重量平均分子量7、000〜30、000のコポリマーないしホモポリマーを含有し、2カ月以上にわたってポリペプチドをゼロ次放出する長期徐放型マイクロカプセルが開示されている。
【0008】
このように、従来のマイクロカプセルの製法を、大きく分けると、界面重合法、in−situ重合法等の化学的な方法、相分離法(コアセルベーション法)、界面沈殿法、液中乾燥法、オリフィス法等の物理化学的方法、噴霧乾燥法、乾式混合法等の機械的な方法の3つに分類され、これらの中でも、水溶性薬物をマイクロカプセル化する方法としては、界面重合法、in−situ重合法、液中乾燥法、オリフィス法、相分離法(コアセルベーション法)等を採用することが提案されている。
【0009】
各種の生理活性ポリペプチドや低分子水溶性薬物の徐放性マイクロカプセルについては多くの報告があるが[クリティカル リビュー イン セラピューティック ドラッグ キャリアー システム(Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems)、 12巻、 1−9頁(1995)(非特許文献3); 特表平2−503315号公報(特許文献15); EPA 0586238(特許文献16);ジャーナル オブ ファーマシューティカル サイエンス(J.Pharm.Sci.)、 75巻、 750−755頁(1986)(非特許文献4); 特開昭57−118512号公報(特許文献17)]、それらの多くが、(1)製造工程において薬物の外水相への漏出が大きく薬物の封入率が低い、(2)得られるカプセルは一般的に多孔質で初期放出が大きい、また、(3)製造工程により生理活性物質が変性し、十分な生物学的利用率が得られない、と云う点から、その用途によっては満足すべき長期の徐放性を達成できない場合があるのが現状である。
【0010】
マイクロカプセルの徐放性の改善について、特開昭61−63613号(特許文献18)には、ポリ乳酸を基剤とするマイクロカプセルにおける投与一定時間経過後の活性成分の放出速度低下を防止する目的で、活性成分を分散させるポリ乳酸の有機溶媒溶液中に、該溶媒に溶解しかつ生体内で消化される脂溶性の添加物(中鎖脂肪酸トリグリセリド、低級脂肪酸トリグリセリド等)を均一に溶解することが記載されている。しかしながら、他の基剤への応用や活性成分の水溶液を用いるマイクロカプセルの調製についての示唆はない。特開平8−151321号公報(特許文献19)には、無晶型水溶性生理活性物質と高分子重合物とを含み、S/O/W型乳化物から製造されるマイクロカプセルが開示されているが、薬物の水溶液を内水相として用いるマイクロカプセルの製造法や水溶性生理活性ペプチドの金属複合体を用いる方法については一切記載されていない。また、EP 0765660号公報(特許文献20)には、無晶型2−ピペラジノン−1−酢酸誘導体を含有するマイクロカプセルが記載されており、その製造において、S/O/W型乳化物が用いられている。しかし薬物水溶液を内水相として用いるマイクロカプセルの製造法や水溶性生理活性ペプチドの金属複合体を用いる方法についての記載はない。一般に、水溶性生理活性物質のマイクロカプセルの製造においては、薬物含量の均質性や操作性の点で、薬物を固体状で用いる例えば、S/O型よりもW/O型の方が優れており、工業規模での大量生産においては、W/O型で用いることが望まれている。
【0011】
このように、徐放性製剤を用いる薬剤の放出制御においてしばしば指摘される問題点は、徐放性製剤を体内に投与後、薬剤の放出初期段階に、多量の薬剤化合物が一度に放出されてしまう現象(初期バースト現象)の存在である。徐放性製剤において初期バーストが起きると、場合によっては体内血中の薬剤化合物濃度が許容上限を越えてしまい、患者を危険にさらすことになる。薬剤化合物の種類と生体内分解性ポリマーの構造を選択すること等によってある程度の初期バーストを回避する方法が発見されているが、初期バースト現象を防止する根本的な解決方法は未だ見いだされていない。また、一方、薬剤化合物を長期にわたって徐放させるため、あるいは高価な薬剤をできるだけ経済的に有利に少量の製剤中に含有させるために、マイクロカプセル中に薬剤化合物をできるだけ高濃度に含有させたいという要求がある。
【0012】
しかしながら、従来から知られているマイクロカプセルの調製方法では、薬剤化合物のマイクロカプセル中に取り込まれる割合(取り込み率)が低くなりがちであった。特に、水溶性薬物を薬物として利用する場合、薬物が膜外に散逸しやすく薬物の封入率が低い点が大きな課題であった。また、取り込み率が高くなる方法で調製したマイクロカプセルは、その薬剤放出において初期バースト現象が起こり易いという欠点があった。
【0013】
また、超音波診断または検査分野においても、超音波反射体として、ポリマーの微小球であるマイクロバルーンを生体内に投与することが提案されてきている。従来から、液体中に分散された微細な気泡、すなわちマイクロバブルは、超音波診断または検査のために非常に効果的な超音波リフレクターであることが知られている。しかしながら、マイクロバブルは、短時間に、安定剤を添加した状態でもせいぜい数分間で消失してしまう。そのため、マイクロバブルの調製後直ちに生体内に投与する必要があり、実際の医療現場での使用は困難であった。また、生体内に投与後、血管を通しての透過を容易にするためには、その気泡サイズが約1〜10μmの範囲にあることが必要である。マイクロバブルでは、生成される気泡の多くは40〜50μm程度であり、その点でも、生体内に投与して、超音波診断に利用する上では、必ずしも好適なものではなかった。
【0014】
これらマイクロバブルの有する課題を解消するために、上に記したようにポリマーの微小球であるマイクロバルーンを生体内に投与することが提案されてきている(例えば、特開平3−503684号公報(特許文献21))。ただし、従来の方法によって得られるマイクロバルーンは、より高い造影効果(コントラスト効果)が得るためには、大量に投与する必要があり、特に、心筋を造影する場合、要望される高い造影効果(コントラスト効果)を十分に満足する、有効な造影剤がない点が課題であった。その要因として、微粒子内部での中空構造がなく、多くの気泡を含んだ均一な微粒子が得にくいことが挙げられる。加えて、かかるマイクロバルーンの大量投与は、場合によっては、生体に過度の負担をかけ、安全性の点からも、なお改善すべき課題を有していた。
【0015】
また、磁性体を含有するカプセル構造体は、磁力により容易に捕集される点から、主に生化学分野において、医療診断薬担体、細菌あるいは細胞分離担体、核酸あるいは蛋白分離精製担体、ドラッグデリバリー担体、酵素反応担体、細胞培養担体等としての優れた効果が期待されている。磁性体含有カプセル構造体の合成法については、親油化処理した磁性体を重合性モノマー中に分散し、これを懸濁重合する方法(特開昭59−221302号(特許文献22))、同じく親油化処理した磁性体を重合性モノマー中に分散し、ホモジナイザーで水中に均質化して重合することにより、比較的小粒子径の磁性粒子を得る方法(特公平4−3088号(特許文献23))、あるいは特定の官能基を有する多孔性ポリマー粒子の存在下で、鉄化合物を析出させたのち酸化することにより、多孔性ポリマー粒子内部に磁性体を導入し、大粒径かつ均一径の磁性粒子を得る方法(特公平5−10808号(特許文献24))が挙げられる。
【0016】
しかしながら、これらの合成法により得られた磁性体含有カプセル構造体を医療診断薬担体等に用いると、磁性体の多くがカプセル構造体内部に存在する場合でも、感度が大幅に低下したり、非特異的反応を示したりして、十分な実用性能が得られない場合が多い。これは、磁性体含有カプセル構造体表面に磁性体が部分的に露出し、あるいは構造体表面と内部の磁性体の間にミクロパスが形成されるため、磁性体成分が溶出し、実用性能を損なうためであると考えられる。一般に、磁性体はポリマー粒子よりも親水性が高く、従来の合成法では、磁性体がカプセル構造体の表面あるいは表面近傍へ局在することが、実用性能を損なう大きな原因の1つであると考えられる。このように、従来の磁性体含有カプセル構造体においては、含まれる磁性体成分の表面への露出、ミクロパスの形成等による磁性体成分の溶出を抑えることが困難であり、その溶出が問題とならない分野に限定して使用せざるをえないのが実状であった。
【0017】
ところで、近年、生物工学的手法によって高分子化合物を製造する研究が活発に行われてきており、また、一部で実用化されている。例えば、微生物由来の高分子化合物として、PHBや3−ヒドロキシ−n−酪酸と3−ヒドロキシ−n−吉草酸との共重合体(以下、PHB/Vと略記することもある)等のPHA、バクテリアセルロースやプルラン等の多糖類、ポリ−γ−グルタミン酸やポリリジン等のポリアミノ酸等が知られている。特にPHAは、従来のプラスチックと同様に、溶融加工等により各種製品に利用することができるうえ、生体適合性にも優れており、医療用軟質部材等としての応用も期待されている。
【0018】
これまで、多くの微生物がPHAを生産し菌体内に蓄積することが報告されてきた。アルカリゲネス・ユウトロファス・H16 株(Alcaligenes eutropus H16、ATCC No.17699)、メチロバクテリウム属(Methylobacterium sp.)、パラコッカス属(Paracoccus sp.)、アルカリゲネス属(Alcaligenes sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)の微生物によるPHB/Vの生産が報告されている(特開平5−74492 号公報(特許文献25)、特公平6−15604 号公報(特許文献26)、特公平7−14352号公報(特許文献27)、特公平8−19227 号公報(特許文献28))。
【0019】
また、コマモナス・アシドボランス・IFO 13852 株(Comamonas acidovorans IFO 13852)が、3−ヒドロキシ−n−酪酸と4−ヒドロキシ−n−酪酸とをモノマーユニットに持つPHAを生産することが開示されている(特開平9−191893 号公報(特許文献29))。さらに、アエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)により、3−ヒドロキシ−n−酪酸と3−ヒドロキシヘキサン酸との共重合体を生産することが開示されている(特開平5−93049 号公報(特許文献30)、特開平7−265065 号公報(特許文献31))。
【0020】
これらPHBやPHB/Vの生合成は、種々の炭素源から、生体内の様々な代謝経路を経て生成された(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAまたは(R)−3−ヒドロキシバレリルCoAを基質とした、酵素による重合反応によって行われる。
【0021】
この重合反応を触媒する酵素がPHB合成酵素(PHBポリメラーゼ、PHBシンターゼともいう)である。なお、CoAとは補酵素A(coenzyme A)の略称であり、その化学構造は下記式の通りである。
【0022】
【化44】
Figure 2004331750
また、近年、炭素数が3から12程度までの中鎖長(medium−chain−length)の3−ヒドロキシアルカン酸ユニットからなるポリヒドロキシアルカノエート(以下、mcl−PHAと略す場合がある)についての研究が精力的に行われている。特許第 2642937 号明細書(特許文献32)では、シュードモナス・オレオボランス・ATCC 29347 株(Pseudomonas oleovorans ATCC 29347)に非環状脂肪族炭化水素を与えることにより、炭素数が6から 12 までの3−ヒドロキシアルカン酸のモノマーユニットを有するPHAが生産されることが開示されている。また、Appl.Environ.Microbiol.、58、746(1992)(非特許文献5)には、シュードモナス・レジノボランス(Pseudomonas resinovorans)が、オクタン酸を単一炭素源として、3−ヒドロキシ−n−酪酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシデカン酸をモノマーユニットとするPHAを生産し、また、ヘキサン酸を単一炭素源として、3−ヒドロキシ−n−酪酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシデカン酸をユニットとするPHAを生産することが報告されている。ここで、原料の脂肪酸よりも鎖長の長い3−ヒドロキシアルカン酸モノマーユニットの導入は、後述の脂肪酸合成経路を経由していると考えられる。
【0023】
Int.J.Biol.Macromol.、16(3)、119(1994)(非特許文献6)には、シュードモナスsp.61−3株(Pseudomonas sp.strain 61−3)が、グルコン酸ナトリウムを単一炭素源として、3−ヒドロキシ−n−酪酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシデカン酸、3−ヒドロキシドデカン酸といった3−ヒドロキシアルカン酸、および、3−ヒドロキシ−5−cis−デセン酸、3−ヒドロキシ−5−cis−ドデセン酸といった3−ヒドロキシアルケン酸をユニットとするPHAを生産することが報告されている。
【0024】
上記のPHAは側鎖にアルキル基を有するモノマーユニットからなるPHA(以下、usual−PHAと略す場合がある)である。しかし、より広範囲な応用、例えば機能性ポリマーとしての応用を考慮した場合、アルキル基以外の置換基(例えば、フェニル基、不飽和炭化水素、エステル基、アリル基、シアノ基、ハロゲン化炭化水素、エポキシド等等)を側鎖に導入したPHA(以下、unusual−PHAと略す場合がある)が極めて有用である。
【0025】
フェニル基を有するunusual−PHAの生合成の例としては、Macromolecules、24、5256−5260(1991) (非特許文献7)、Macromol.Chem.、191、1957−1965(1990) (非特許文献8)、Chirality、3、492−494(1991) (非特許文献9)で、シュードモナス・オレオボランスが、5−フェニル吉草酸から、3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットを含むPHAを生産すると報告されている。また、Macromolecules、29、1762−1766(1996) (非特許文献10)で、シュードモナス・オレオボランスが、5−(4−トリル)吉草酸(5−(4−メチルフェニル)吉草酸)から、3−ヒドロキシ−5−(4−トリル)吉草酸ユニットを含むPHAを生産すると報告されている。さらに、Macromolecules、32、2889−2895(1999) (非特許文献11)には、シュードモナス・オレオボランスが、5−(2、4−ジニトロフェニル)吉草酸から、3−ヒドロキシ−5−(2、4−ジニトロフェニル)吉草酸ユニットおよび3−ヒドロキシ−5−(4−ニトロフェニル)吉草酸ユニットを含むPHAを生産すると報告されている。
【0026】
また、フェノキシ基を有するunusual−PHAのとしては、Macromol.Chem.Phys.、195、1665−1672(1994) (非特許文献12)で、シュードモナス・オレオボランスが、11−フェノキシウンデカン酸から3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸ユニットおよび3−ヒドロキシ−9−フェノキシノナン酸ユニットを含むPHAを生産すると報告されている。また、Macromolecules、29、3432−3435(1996) (非特許文献13)には、シュードモナス・オレオボランスが、6−フェノキシヘキサン酸から3−ヒドロキシ−4−フェノキシ酪酸ユニットおよび3−ヒドロキシ−6−フェノキシヘキサン酸ユニットを含むPHAを、8−フェノキシオクタン酸から3−ヒドロキシ−4−フェノキシ酪酸ユニット、3−ヒドロキシ−6−フェノキシヘキサン酸ユニットおよび3−ヒドロキシ−8−フェノキシオクタン酸ユニットを含むPHAを、11−フェノキシウンデカン酸から3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸ユニットおよび3−ヒドロキシ−7−フェノキシヘプタン酸ユニットを含むPHAを生産することが報告されている。
【0027】
さらに、Can.J.Microbiol.、41、32−43(1995)(非特許文献14)では、シュードモナス・オレオボランス・ATCC 29347 株及びシュードモナス・プチダ・KT 2442 株(Pseudomonas putida KT 2442)が、p−シアノフェノキシヘキサン酸または p−ニトロフェノキシヘキサン酸から、3−ヒドロキシ−p−シアノフェノキシヘキサン酸ユニットまたは3−ヒドロキシ−p−ニトロフェノキシヘキサン酸ユニットを含むPHAを生産すると報告している。特許第 2989175 号公報(特許文献33)には、3−ヒドロキシ−5−(モノフルオロフェノキシ)吉草酸ユニットあるいは3−ヒドロキシ−5−(ジフルオロフェノキシ)吉草酸ユニットからなるホモポリマー、少なくとも3−ヒドロキシ−5−(モノフルオロフェノキシ)ペンタノエートユニットあるいは3−ヒドロキシ−5−(ジフルオロフェノキシ)ペンタノエートユニットを含有するコポリマーとその製造方法が記載されている。
【0028】
また、シクロヘキシル基を有するunusual−PHAとしては、Macromolecules、30、1611−1615(1997)(非特許文献15)に、シュードモナス・オレオボランスが、シクロヘキシル酪酸またはシクロヘキシル吉草酸から該PHAを生産するとの報告がある。
【0029】
また、置換基を側鎖に導入したPHAのうち、スルフィド型(−S−)の硫黄原子を側鎖に有するPHAの開発としては、Macromolecules.、32、8315−8318(1999)(非特許文献16)には、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)27N01株を用いて、オクタン酸と11−(フェニルスルファニル)ウンデカン酸を基質として、3−ヒドロキシ−5−(フェニルスルファニル)吉草酸と3−ヒドロキシ−7−(フェニルスルファニル)へプタン酸をモノマーユニットとして含むPHAを生産することが報告されている。ただし、その際、シュードモナス・プチダ27N01株は、予め、増殖基質としてオクタン酸のみを含む培地で前培養し、その培養液を基質として11−(フェニルスルファニル)ウンデカン酸のみを含む培地にイノキュレートする方法が用いられている。
【0030】
更に、PolymerPreprints、JapanVol49、No.5、1034(2000)(非特許文献17)では、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)27N01株を用いて、11−[(フェニルメチル)スルファニル]ウンデカン酸を基質として3−ヒドロキシ−5−ベンジルチオ吉草酸及び3−ヒドロキシ−7−[(フェニルメチル)スルファニル]へプタン酸の2つのモノマーユニットからなるPHAを生産することが報告されている。但し、この場合、シュードモナス・プチダ27N01株は、増殖基質としてオクタン酸のみを含む培地で前培養し、その培養液を基質として11−[(フェニルメチル)スルファニル]ウンデカン酸のみを含む培地にイノキュレートする方法が用いられている。
【0031】
これらmcl−PHAやunusual−PHAの生合成は、原料となる各種アルカン酸から、生体内の様々な代謝経路(例えば、β酸化系や脂肪酸合成経路)を経て生成された(R)−3−ヒドロキシアシルCoAを基質とした、酵素による重合反応によって行われる。この重合反応を触媒する酵素がPHA合成酵素(PHAポリメラーゼ、PHAシンターゼともいう)である。ここで、前述のPHB合成酵素はPHA合成酵素において基質となるモノマーが限定されているものであり、PHB合成酵素は、PHA合成酵素の範疇に含まれるものである。
【0032】
以下に、β酸化系およびPHA合成酵素による重合反応を経て、アルカン酸がPHAとなるまでの反応を示す。
【0033】
【化45】
Figure 2004331750
一方、脂肪酸合成経路を経る場合は、該経路中に生じた(R)−3−ヒドロキシアシル−ACP(ACPとはアシルキャリアプロテインのことである)から変換された(R)−3−ヒドロキシアシルCoAを基質として、同様にPHA合成酵素によりPHAが合成されると考えられる。
【0034】
また、近年、上記のPHB合成酵素やPHA合成酵素を菌体外に取り出して、無細胞系(in vitro)でPHAを合成しようとする試みが始まっている。Proc.Natl.Acad.Sci.USA、92、6279−6283(1995)(非特許文献18)では、アルカリゲネス・ユウトロファス(Alcaligenes eutrophus)由来のPHB合成酵素に3−ヒドロキシブチリルCoAを作用させることにより、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットからなるPHBを合成することに成功している。また、Int.J.Biol.Macromol.、25、55−60(1999)(非特許文献19)では、アルカリゲネス・ユウトロファス由来のPHB合成酵素に、3−ヒドロキシブチリルCoAや3−ヒドロキシバレリルCoAを作用させることにより、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットや3−ヒドロキシ−n−吉草酸ユニットからなるPHAの合成に成功している。さらにこの報告では、ラセミ体の3−ヒドロキシブチリルCoAを作用させたところ、酵素の立体選択性によって、R体の3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットのみからなるPHBが合成されたとしている。Macromol.Rapid Commun.、21、77−84(2000)(非特許文献20)においても、アルカリゲネス・ユウトロファス由来のPHB合成酵素を用いた細胞外でのPHB合成が報告されている。
【0035】
また、FEMS Microbiol.Lett.、168、319−324(1998)(非特許文献21)では、クロマチウム・ビノサム(Chromatium vinosum)由来のPHB合成酵素に3−ヒドロキシブチリルCoAを作用させることにより、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットからなるPHBを合成することに成功している。
【0036】
Appl.Microbiol.Biotechnol.、54、37−43(2000)(非特許文献22)では、シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)のPHA合成酵素に3−ヒドロキシデカノイルCoAを作用させることにより、3−ヒドロキシデカン酸ユニットからなるPHAを合成している。
【0037】
【特許文献1】
米国特許第614665号明細書
【特許文献2】
特公平1−57087号公報
【特許文献3】
WO94/10982公報
【特許文献4】
特開平8−151322号公報
【特許文献5】
特開平8−217691号公報
【特許文献6】
特開昭61−431119号公報
【特許文献7】
特開平11−199514号公報
【特許文献8】
特開昭60−100516号公報
【特許文献9】
特開昭62−201816号公報
【特許文献10】
特開平1−158529号公報
【特許文献11】
特開平2−124814号公報
【特許文献12】
特開平3−32302号公報
【特許文献13】
特開平2−330741号公報
【特許文献14】
特開平4−321622号公報
【特許文献15】
特表平2−503315号公報
【特許文献16】
EPA 0586238
【特許文献17】
特開昭57−118512号公報
【特許文献18】
特開昭61−63613号公報
【特許文献19】
特開平8−151321号公報
【特許文献20】
EP 0765660号公報
【特許文献21】
特開平3−503684号公報
【特許文献22】
特開昭59−221302号公報
【特許文献23】
特公平4−3088号公報
【特許文献24】
特公平5−10808号公報
【特許文献25】
特開平5−74492 号公報
【特許文献26】
特公平6−15604 号公報
【特許文献27】
特公平7−14352号公報
【特許文献28】
特公平8−19227 号公報
【特許文献29】
特開平9−191893 号公報
【特許文献30】
特開平5−93049 号公報
【特許文献31】
特開平7−265065 号公報
【特許文献32】
特許第 2642937 号明細書
【特許文献33】
特許第 2989175 号公報
【非特許文献1】
Drug Delivery System、7(5)、367−371、1992
【非特許文献2】
Drug Delivery System、8(2)、131−136、1993
【非特許文献3】
クリティカル リビュー イン セラピューティック ドラッグ キャリアー システム(Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems)、 12巻、 1−9頁(1995)
【非特許文献4】
;ジャーナル オブ ファーマシューティカル サイエンス(J.Pharm.Sci.)、 75巻、 750−755頁(1986)
【非特許文献5】
Appl.Environ.Microbiol.、58、746(1992)
【非特許文献6】
Int.J.Biol.Macromol.、16(3)、119(1994)
【非特許文献7】
Macromolecules、24、5256−5260(1991)
【非特許文献8】
Macromol.Chem.、191、1957−1965(1990)
【非特許文献9】
Chirality、3、492−494(1991)
【非特許文献10】
Macromolecules、29、1762−1766(1996)
【非特許文献11】
Macromolecules、32、2889−2895(1999)
【非特許文献12】
Macromol.Chem.Phys.、195、1665−1672(1994)
【非特許文献13】
Macromolecules、29、3432−3435(1996)
【非特許文献14】
Can.J.Microbiol.、41、32−43(1995)
【非特許文献15】
Macromolecules、30、1611−1615(1997)
【非特許文献16】
Macromolecules.、32、8315−8318(1999)
【非特許文献17】
PolymerPreprints、JapanVol49、No.5、1034(2000)
【非特許文献18】
Proc.Natl.Acad.Sci.USA、92、6279−6283(1995)
【非特許文献19】
Int.J.Biol.Macromol.、25、55−60(1999)
【非特許文献21】
Macromol.Rapid Commun.、21、77−84(2000)
【非特許文献22】
Appl.Microbiol.Biotechnol.、54、37−43(2000)
【0038】
【発明が解決しようとする課題】
発明者らは高分子化合物に大きな付加価値を与えるための要素技術として、高分子化合物で薬物を被覆したマイクロカプセルに着目してきた。このように高分子化合物で特定の薬物を被覆することによって、極めて有用な機能性、特には徐放性を有するマイクロカプセルを得ることができる。前記の如きマイクロカプセルを作出する試みは従来、有機合成的手法によって多くなされてきた。
【0039】
仮に、かかるマイクロカプセルを前述のような生物工学的手法により製造することができれば、新たな高分子化合物の利用や、新たな機能・構造の付与が可能になると期待できるうえ、より環境低負荷かつ資源循環型の製造プロセスを低コストで実現できるものと考えられる。例えば、生物の触媒作用に特有の極めて厳密な分子認識能や立体選択性を利用して、新たな機能性高分子化合物や、極めてキラリティーの高い高分子化合物により被覆されたマイクロカプセルを、極めて簡便かつ環境低負荷なプロセスで製造することが可能になる。
【0040】
また、生分解性高分子であるポリ乳酸あるいは乳酸−グリコール酸共重合体マイクロカプセル等に水溶性薬物を含有せしめることには薬物放出特性の点で多くの課題が残されているのが現状である。また、水溶性薬物については薬物が散逸しやすく、従って、薬物が有効にマイクロカプセル等の構造体内に保持されなかったり、マイクロカプセル化されない点も大きな課題である。
【0041】
よって本発明は、前記課題を解決するために創案されたものであり、薬物、特には水溶性薬物を含有させたマイクロカプセル等の構造体、あるいは実質的に水に溶解しない薬物(この中には、一般的に難水溶性薬物と言われる薬物を包含する)を含有させたマイクロカプセル等の構造体であっても、実質上支障となるような初期放出を示さず、更に一定期間実用上許容されるゼロ次放出を示し、かつ磁性特定を有し、徐放性製剤として有用な構造体およびその製造方法を提供することにある。また、薬物、特には水溶性薬物を安定性よくカプセル等の構造体中に内包した高薬物含量であり、かつ磁性特定を有する徐放性製剤およびその製造方法を提供することにある。
【0042】
また、USP614665に開示されたポリヒドロキシアルカノエートからなる多孔性グラニュールに親水性薬剤を捕捉した微粒子は、毒性がなく、生分解性を有し、in situで薬剤を捕捉出来るものの、多孔性の構造であることから拡散により速やかに親水性薬剤が放出されてしまい、徐放性を制御することは困難であった。
【0043】
よって本発明は、ポリヒドロキシアルカノエートの構造を最適化することにより、薬剤保持能力・徐放性の最適化を図り、親水性薬剤その他水溶性物質や親油性薬剤その他疎水性物質に対しても保持性に優れ、徐放性を制御することが可能な磁性薬剤保持粒子を提供することでもある。
【0044】
また、従来の方法によって得られるマイクロバルーンでは、微粒子内部での中空構造がなく、多くの気泡を含んだ均一な微粒子が得にくいために、超音波診断や検査において、高い造影効果(コントラスト効果)を達成する上では、大量に投与しなければならず、特には、心筋を造影する上では、要望される高い造影効果(コントラスト効果)を十分に満足できる、有効な造影剤がない点が大きな課題であった。また、かかるマイクロバルーンの大量投与は、場合によっては、生体に過度の負担をかけ、安全性の点からも、改善すべき課題を残すものであった。
【0045】
よって本発明は、微粒子中に多くの気泡を含ませるために、PHAの一枚膜をもつマイクロカプセル状の中空構造をもつ微粒子を選択的に多く得ることができる中空マイクロカプセル等の中空磁性構造体の製造方法を提供し、かかる中空マイクロカプセル等の中空磁性構造体を利用して、高い造影効果を発揮する超音波造影剤およびその製造方法を提供するものである。より具体的には、本発明は、心筋、心腔または肝臓の超音波診断や検査に利用可能な、造影効果の高い超音波造影剤を提供するものである。特には、磁性を活用することで、生体中での移動を制御できる医療診断薬剤保持粒子ならびに超音波診断に利用可能な造影粒子、薬剤を患者の疾患部に移動させるドラックデリバリー粒子を提供することである。
【0046】
また、従来の合成法により得られる磁性体含有カプセル構造体は、金属イオンの外部への溶出という課題を有するために、金属イオンの溶出による影響を受けない用途・分野にしか適用することができないのが現状である。よって本発明は、磁性体の分散性および磁気応答性に優れ、金属イオンが外部に溶出されにくく、種々の用途・分野に幅広く適用することのできる、磁性体を含有するマクロカプセル等の構造体ならびにその製造方法を提供するものである。
【0047】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、本発明者らが鋭意検討した結果、3−ヒドロキシアルカン酸ユニットを含有するPHAを用いることにより、PHAを主体とする固相からなる外相部と、それに内包された内相部を有し、これらの部分の少なくとも一方に磁性体が含有され、例えばマイクロカプセルの形態とし得る磁性構造体を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0048】
本発明にかかる構造体は、ポリヒドロキシアルカノエート及び磁性体を含有する構造体であって、
前記ポリヒドロアルカノエートを含む外相部と、
前記外相部に内包される内相部とを有し、
前記磁性体は、前記外相部及び前記内相部の少なくともどちらか一方に含有されていることを特徴とする構造体である。
【0049】
この構造体では、外相部はPHAを含み、内相部は固相、液相及び気相の少なくとも1つから構成される。例えば、外相部がシェル部を形成し、内相部がコア部を形成しているマイクロカプセルの形態とすることができる。また、PHAを含む外相部の内側に薬剤などを含む内相部の複数が分散しているマイクロスフェアの形態とすることもできる。磁性体は、構造に応じて、外相部と内相部の少なくとも一方に含有させることができる。
【0050】
さらに、本発明にかかる構造体の製造方法の一態様は、ポリヒドロアルカノエートを含む外相部と、前記外相部に内包される内相部とを有し、磁性体が前記外相部及び前記内相部の少なくともどちらか一方に含有されている構造体の製造方法であって
ポリヒドロキシアルカノエートおよび有機溶媒を含む油相と、水相と、磁性体と、を含む液状原料を用意する工程と、
前記液状原料から前記有機溶媒及び/または水を除去する工程と、
を有し、
前記油相及または水相に由来するPHAを含む外相部に内相部が内包され、これらの外相部及び内相部の少なくとも一方に磁性体が含有された構造体を得る
ことを特徴とする構造体の製造方法である。
【0051】
また、本発明に係る構造体の製造方法の他の態様は、ポリヒドロアルカノエートを含む外相部と、前記外相部に内包される内相部とを有し、磁性体が前記外相部及び前記内相部の少なくともどちらか一方に含有されている構造体の製造方法であって、
ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素および3−ヒドロキシアシル補酵素Aを含む水相を用意する工程と、
有機溶媒を含む油相を用意する工程と、
前記水相、前記油相および磁性体を含むエマルションを調製する工程と、
前記エマルション中でポリヒドロキシアルカノエート合成酵素により3−ヒドロキシアシル補酵素Aを重合させてポリヒドロキシアルカノエートを合成する工程と、
前記エマルションから有機溶媒および/または水を除去する工程と
を有し、
前記油相及または水相に由来するPHAを含む外相部に内相部が内包され、これらの外相部及び内相部の少なくとも一方に磁性体が含有された構造体を得る
ことを特徴とする構造体の製造方法である。
【0052】
上記の各態様にかかる製造方法の好ましい具体的な態様には、以下のものが含まれる。
ア)上記構成の構造体の製造方法であって、水相を、少なくともポリヒドロキシアルカノエート、有機溶媒および磁性体を含む油相に分散させてW/O型のエマルションを調製する工程と、該エマルションから有機溶媒を除去して、前記構造体を形成する工程と、を有することを特徴とする製造方法。
イ)前記W/O型エマルションを更に水相に分散してW/O/W型エマルションを調製する工程と、該W/O/W型エマルションから有機溶媒を除去して、前記構造体を形成する工程と、を有することを特徴とする構造体の製造方法。
ウ)前記水相に前記油相を分散させてO/W型エマルションを調製する工程と、前記O/W型エマルションから有機溶媒および/または水を除去する工程とを有することを特徴とする構造体の製造方法。
エ)上記構成の構造体の製造方法であって、
1)ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素および3−ヒドロキシアシル補酵素Aを少なくとも含む水相を、磁性体を含む油相に分散させてW/O型エマルションを調製する工程と、
2)ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素により3−ヒドロキシアシル補酵素Aを重合させてポリヒドロキシアルカノエートを合成する工程と、
3)該W/O型エマルションから有機溶媒を除去して前記構造体を得る工程と、
を有することを特徴とする構造体の製造方法。
オ)上記構成の構造体の製造方法であって、
1)水相を、磁性体を含む油相に分散させてW/O型エマルションを調製する工程と、
2)該W/O型エマルションをさらに、少なくともポリヒドロキシアルカノエート合成酵素および3−ヒドロキシアシル補酵素Aを含む水相に分散することでW/O/W型エマルションを調製する工程と、
3)ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素により3−ヒドロキシアシル補酵素Aを重合させてポリヒドロキシアルカノエートを合成する工程と、
4)該W/O/W型エマルションから有機溶媒を除去して前記構造体を得る工程と、
を有することを特徴とする構造体の製造方法。
カ)上記構成の構造体の製造方法であって、
1)ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素および3−ヒドロキシアシル補酵素Aを含む水相を、磁性体を含む油相に分散させてW/O型エマルションを調製する工程と、
2)該W/O型エマルションをさらに、少なくともポリヒドロキシアルカノエート合成酵素および3−ヒドロキシアシル補酵素Aを含む水相に分散することでW/O/W型エマルションを調製する工程と、
3)ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素により3−ヒドロキシアシル補酵素Aを重合させてポリヒドロキシアルカノエートを合成する工程と、
4)該W/O/W型エマルションから有機溶媒を除去して前記構造体を得る工程と、
を有することを特徴とする構造体の製造方法。
キ)上記構成の構造体の製造方法であって、
1)ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素および3−ヒドロキシアシル補酵素Aを含む水相を、磁性体を含む油相に分散させてW/O型エマルションを調製する工程と、
2)該W/O型エマルションをさらに、水相に分散することでW/O/W型エマルションを調製する工程と、
3)ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素により3−ヒドロキシアシル補酵素Aを重合させてポリヒドロキシアルカノエートを合成する工程と、
4)該W/O/W型エマルションから有機溶媒を除去して前記構造体を得る工程と、
を有することを特徴とする構造体の製造方法。
ク)上記構成の構造体の製造方法であって、
1)磁性体を含む油相を、少なくともポリヒドロキシアルカノエート合成酵素および3−ヒドロキシアシル補酵素Aを含む水相に分散させてO/W型エマルションを調製する工程と、
2)ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素により3−ヒドロキシアシル補酵素Aを重合させてポリヒドロキシアルカノエートを合成する工程と、
3)該O/W型エマルションから前記構造体を得る工程と、
を有することを特徴とする構造体の製造方法。
ケ)上記構成の構造体の製造方法であって、
1)磁性体を含む油相を、少なくともポリヒドロキシアルカノエート合成酵素および3−ヒドロキシアシル補酵素Aを含む水相に分散させてO/W型エマルションを調製する工程と、
2)該O/W型エマルションをさらに、油相に分散することでO/W/O型エマルションを調製する工程と、
3)ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素により3−ヒドロキシアシル補酵素Aを重合させてポリヒドロキシアルカノエートを合成する工程と、
4)該O/W/O型エマルションから有機溶媒を除去して前記構造体を得る工程と、
を有することを特徴とする構造体の製造方法。
【0053】
上記製造方法における磁性体の分散相については、磁性体の表面性質(親水性であるか、親油性であるか)により、有機溶媒を含む油相でなく、水相に懸濁することも可能である。
【0054】
前記構造体に担持される物質は水溶性物質及び脂溶性物質のいずれでもよい。このような物質としては、例えば、薬剤においては、in vitro、in vivoで不安定なもの、体内で徐々に放出され、あるいは特定の臓器に速やかに分布することが所望される薬物等が挙げられるが、これら以外にもバイオマーカー、あるいはプラスミドやDNA、RNA等、生体内に投与して有効なものであれば特に制約されることはない。
【0055】
本発明にかかる製剤は、上記の構造体を用いた製剤である。また、本発明にかかる製剤の製造方法は、上記の構造体の製造工程を含む製剤の製造方法である。この製剤は、薬物、特には実質的に水に溶解しない薬物について初期放出が少なく、長期間にわたる良好な徐放性を示す高薬物含量の徐放性製剤として好適である。また、かかる製剤は、薬物、特には水溶性薬物について初期放出が少なく、長期間にわたる良好な徐放性を示す高薬物含量の徐放性製剤として好適である。
【0056】
さらに本発明者らは、造影効果(コントラスト効果)の高い超音波造影剤を開発する目的で鋭意研究を行った結果、本発明の内相が気相を有する中空構造体が、内相部に多くの気泡を含ませることが可能な構造を有し、超音波造影剤の有効成分としての中空構造体として好適であること、さらには、上記中空構造体を水中に分散させた後、減圧下で乾燥し、乾燥機内にパーフルオロカーボンのガスを充満させることにより、前記ガスを中空構造体の中空構造内部すなわち気泡内に充満させたときは、生体での超音波造影効果がより高い造影剤が得られることを明らかにし、本発明にかかる超音波造影剤を完成した。すなわち、本発明の超音波造影剤は前記中空構造体を含有する超音波造影剤である。また、本発明の超音波造影剤は、心筋造影用、心腔(心臓を構成する心室、心房等の空間)造影用または肝臓造影用として有用である。
【0057】
【発明の実施の形態】
本発明の構造体としては、例えば、置換基を側鎖に有する多様な構造のモノマーユニットを含むPHAにより、あるいはPHAを主体とした固相で外相部を構成し、外相部内に内相部が内包された構造を有する。この構造体は、マイクロカプセルの形態を採り得るが、二層構造に限定されず、要は固相、液相及び気相の少なくとも1つの相が固相に内包されていればよい。内相は、固相、液相及び気相の少なくとも1つの相から構成できる。磁性体は構造体の構造に応じて、外相部とうち相の少なくとも一方に含有させることができる。また、この構造体におけるPHAは固相部に内包される内相部にも含有されてもよい。本発明にかかる構造体は、高機能性マイクロカプセルとして極めて有用である。
【0058】
以下に、本発明をより詳細に説明する。
【0059】
<マイクロカプセル>
本出願の明細書において用いる「マイクロカプセル」なる語の概念には、これらの語がドラッグ・デリバリー・システム(DDS)や高分子化学において一般的に有する概念を完全に包含するが、必ずしも等価なものではない。本出願の特許請求の範囲及び明細書において用いる「マイクロカプセル」の走査電子顕微鏡的形態の態様に関しては、例えば、ラズベリー状又は金米糖(こんぺいとう、ポルトガル語のconfeito)状の多くの突起を有するような態様、赤血球状の偏平な態様、ラグビーボール状の回転楕円体様の態様、大腸菌状の紡錘形様の態様等をも包含する。本出願の明細書において言及する「マイクロカプセル」は、通常、例えば、ポリマーエマルション、ラテックス、ポリマーサスペンジョンを構成するマイクロスフィアとしての特性をも有する。このように、本出願の特許請求の範囲及び明細書において用いる「マイクロカプセル」なる語は、これらの語がドラッグ・デリバリー・システム(DDS)や高分子化学において一般的に有する概念と、必ずしも等価なものではないのではあるが、本発明に係るヘテロポリマー系の本質的「態様」について言及するに当たり便宜的に用いるものとする。
【0060】
例えば、本発明のマイクロカプセルにおける、固相、液相及び気相の少なくとも1つの相およびPHAの相互関係の態様としては、例えば、
1)微小球中の固相を形成するPHA内に、固相、液相及び気相の少なくとも1つの相が分散・混合された混合相1相からなるモノリシック型、
2)PHAの薄い膜(被覆層)の内部に、固相、液相及び気相の少なくとも1つの相を含有・保護した形で、外膜とその内部といった2相からなるリザーバー型等を包含する。
【0061】
本発明においてはマイクロカプセル内に、多量の固相、液相及び気相の少なくとも1つの相および磁性体を内在させるという観点からは、2)の形態がより好ましい。例えば液相を内包する場合、液相としては油相及び水相があり、同一カプセル内に水相と油相が混在した構成を採ることもできる。ここで、「油相」及び「水相」とはエマルションを形成する場合の「油相としての性質を有するもの」、及び「水相としての性質を有するもの」にそれぞれ相当し、本発明において、特には薬剤等の保持において、好適に用い得る油相成分について、特に代表的なものを非限定的に例示しておくと、例えば植物油(例えば大豆油、ゴマ油、綿実油、オリーブ油、サフラワー油、コーン油、菜種油、落花生油等)、中鎖脂肪酸トリグリセリド類[例えば日本油脂株式会社製のパナセート800,810,1000,1200等の様な炭素数6〜12の脂肪酸(例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸等)のトリグリセリド類]、液状炭化水素(例えば流動パラフィン、スクワレン、スクワラン等)等の水とエマルションを形成できる油相成分が利用できる。なお、PHAを油相に溶解させてマイクロカプセル化を行いマイクロカプセル中に油相を内包させる場合の油相としては、後述するPHAを溶解する油相を用いることができる。水相の形成には水を主体とする水性の溶媒が利用できる。これらの相に所望とする物質を溶解させて所望の機能を有するマイクロカプセルとする。
【0062】
本発明にかかるマイクロカプセルとしては、直径が1〜10μmの範囲の微小球状マイクロカプセルが挙げられる。
【0063】
また薬物等を固形物として保持する場合、モノリシック型粒状体(マイクロスフェア)についても好適に利用可能である。例えば、本発明の徐放性製剤組成物に含有させる構造体における薬物(A)およびPHA(B)の相互関係の態様としては、例えば、以下の1)〜4)が挙げられる。
1)薬物(A)が単一のコア部に含まれ、PHA(B)がシェルに含まれる、コア/シェル構造を有するマイクロカプセルとしての態様。
2)薬物(A)が複数のコアに含まれ、PHA(B)がシェルに含まれる、コア/シェル構造を有するマイクロカプセルとしての態様。
3)薬物(A)が複数の島状部分にふくまれ、島状部分を内包するPHA(B)が海状部分に含まれる、コア/シェル構造を有するマイクロカプセルとしての態様。
4)薬物(A)およびPHA(B)が相溶化したミクロ相分離構造を有する態様。
【0064】
なお、これらの態様におけるコア部は薬物の単独で、あるいはその他の成分との組合せから形成されるものであってもよく、またシェル部はPHA単独で、あるいはその他の成分との組合せから形成されるのもであってもよい。
【0065】
磁性体の含有形態についても、上と同様な態様が挙げられる。
【0066】
本発明にかかる構造体としては、例えば、少なくとも薬効を有する薬物、PHAおよび磁性体を含有する組成物により、構成される、直径が10nm(ナノメートル)〜100μmの範囲の微小球状製剤が挙げられる。自己乳化性の観点からは、通常、サブミクロンの大きさ(平均粒径1μm以下)が好ましく採用される。
【0067】
さらに本発明における中空構造体は、微粒子の外形となる、少なくともPHAからなる部分と、その内部に、少なくとも中空である部分を有し、内部において、PHAからなる隔壁部分と中空部分、あるいは磁性体とが混在する場合も含むものである。この場合、磁性体は固相及び中空部分の少なくも一方に含有させることができる。
【0068】
PHAを含む固相部分とこれに内包される気相部分との関係について述べると、その一態様として、例えば、
1)PHAで形成される微小球であり、その内部に中空部分が分散した基本的に1相であるモノリシック型の中空微粒子(マイクロスフェアとも呼ばれる)、
2)PHAを含む薄い外膜(外被またはシェル)の内部に中空部分(コア)を内包し、保護した形で、外膜とその内部といった明確な2相からなるリザーバー型等の中空マイクロカプセルを挙げることができる。
【0069】
本発明にかかる「中空構造体」の態様としては、例えば、少なくともPHAを含有する組成物により、その外被が構成され、前記した態様にて磁性体が保持される、直径が1〜10μmの範囲の微小球状中空微粒子が挙げられる。
【0070】
さらに、本発明の中空構造体における、中空部とPHAを含んでなる外被の形態、より具体的には、気泡(A)およびPHA(B)の相互関係の態様としては、例えば、以下の1)〜4)が挙げられる。
1)気泡(A)が単一のコア部に含まれ、PHA(B)がシェルに含まれる、コア/シェル構造を有するマイクロカプセルとしての態様。
2)気泡(A)が複数のコアに含まれ、PHA(B)がシェルに含まれる、コア/シェル構造を有するマイクロカプセルとしての態様。
3)気泡(A)が複数の島状部分にふくまれ、島状部分を内包するPHA(B)が海状部分に含まれる、コア/シェル構造を有するマイクロカプセルとしての態様。
4)気泡(A)およびPHA(B)が相溶化したミクロ相分離構造を有する態様。
【0071】
磁性体の含有形態についても、上と同様な態様が挙げられる。
【0072】
なお、これらの態様におけるコア部は気泡の単独で、あるいはその他の成分との組合せから形成されるものであってもよく、またシェル部はPHA単独で、あるいはその他の成分との組合せから形成されるのもであってもよい。
【0073】
さらに、本発明の構造体では、前記ポリヒドロキシアルカノエートのモノマーユニット組成は、前記構造体の外被の内側から外側へと向かう方向において変化していることを特徴とする構造体とすることもできる。
【0074】
また、前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部は、化学修飾が施されてなるポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする構造体としてもよい。例えば、前記の化学修飾が施されてなるポリヒドロキシアルカノエートは、少なくとも、その化学修飾としてグラフト鎖を有するポリヒドロキシアルカノエートを含むことができる。その際、前記グラフト鎖は、少なくともエポキシ基を有するモノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートに対して、そのエポキシ基に対する化学修飾により導入されたグラフト鎖であることができる。また、前記グラフト鎖は、アミノ基を有する化合物からなるグラフト鎖であることができる。例えば、前記アミノ基を有する化合物は、末端アミノ変性化合物であることが好ましい。一例として、前記末端アミノ変性化合物は、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、末端アミノ変性ポリシロキサンからなる群より選択される少なくとも一つのポリマーであることができる。
【0075】
その他、上記の化学修飾が施されてなるポリヒドロキシアルカノエートとして、前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部は、架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートとすることもできる。例えば、前記架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートは、少なくともエポキシ基を有するモノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートに対して、そのエポキシ基に対して架橋化がなされてなるポリヒドロキシアルカノエートであるであることができる。その際、一例として、前記架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートは、ジアミン化合物、無水コハク酸、2−エチル−4−メチルイミダゾール、電子線照射処理からなる群より選択される少なくとも一つの手段により、架橋化がなされているポリヒドロキシアルカノエートであってもよい。前記ジアミン化合物が、ヘキサエチレンジアミンであることが好ましい。
【0076】
上記のマイクロカプセルは、一般的には、W/O/W(Water in Oil in Water)型エマルション法、O/W(Oil in Water)型エマルション法等によって調製することができる。
【0077】
より具体的には、PHAと磁性体とを含むマイクロカプセルの製造方法の第1の態様は、
1)PHAならびに磁性体をクロロホルム等の有機溶媒に溶解させ、そこへ水溶液を添加して乳化させ、W/O型エマルションを得、
2)必要に応じて、該エマルションを多量の水中へ投入して乳化させてW/O/W型エマルションを得た後、
3)減圧条件下での蒸発等により、有機溶剤を除去することにより、微小球状の沈澱物を生成させ、必要に応じて回収及び乾燥を行い、マイクロカプセルを調製する方法である。
【0078】
また、PHAと磁性体とを含むマイクロカプセルの製造方法の第2の態様は、1)PHAならびに磁性体をクロロホルム等の有機溶剤中に溶解させ、
2)該有機相を多量の水中に投入して乳化させ、O/W型エマルションを得、
3)減圧条件下での蒸発等により、PHAの溶解度を超える範囲まで有機溶剤を除去することにより、微小球状の沈澱物を生成させ、必要に応じて回収及び乾燥を行い、マイクロカプセルを調製する方法である。
【0079】
また、PHAと磁性体とを含むマイクロカプセルの製造方法の第3の態様は、1)磁性体を含む有機溶媒へ、PHA合成酵素および3−ヒドロキシアシルCoAを含む水溶液を添加して乳化させ、W/O型エマルションを得、
2)PHA合成反応を行うことにより、微小球状の沈澱物を生成させ、必要に応じて回収及び乾燥を行い、マイクロカプセルを調製する方法である。
【0080】
また、PHAと磁性体とを含むマイクロカプセルの製造方法の第4の態様は
1)磁性体を含む有機溶媒へ、水溶液を添加して乳化させ、W/O型エマルションを得、
2)該エマルションを、PHA合成酵素および3−ヒドロキシアシルCoAを含む多量の水中へ投入して乳化させてW/O/W型エマルションを得た後、
3)PHA合成反応を行うことにより、微小球状の沈澱物を生成させ、必要に応じて回収及び乾燥を行い、マイクロカプセルを調製する方法である。
【0081】
さらに、PHAと磁性体とを含むマイクロカプセルの製造方法の第5の態様は、
1)磁性体を含む有機溶媒へ、PHA合成酵素および3−ヒドロキシアシルCoAを含む水溶液を添加して乳化させ、W/O型エマルションを得、
2)該エマルションを、PHA合成酵素および3−ヒドロキシアシルCoAを含む多量の水中へ投入して乳化させてW/O/W型エマルションを得た後、
3)PHA合成反応を行うことにより、微小球状の沈澱物を生成させ、必要に応じて回収及び乾燥を行い、マイクロカプセルを調製する方法である。
【0082】
さらに、PHAと磁性体とを含むマイクロカプセルの製造方法の第6の態様は、
1)磁性体を含む有機溶媒へ、PHA合成酵素および3−ヒドロキシアシルCoAを含む水溶液を添加して乳化させ、W/O型エマルションを得、
2)該エマルションを、多量の水中へ投入して乳化させてW/O/W型エマルションを得た後、
3)PHA合成反応を行うことにより、微小球状の沈澱物を生成させ、必要に応じて回収及び乾燥を行い、マイクロカプセルを調製する方法である。
【0083】
また、PHAと磁性体とを含むマイクロカプセルの製造方法の第7の態様は、1)磁性体を含む有機溶媒を、PHA合成酵素および3−ヒドロキシアシルCoAを含む多量の水中に投入して乳化させてO/W型エマルションを得、
2)PHA合成反応を行うことにより、微小球状の沈澱物を生成させ、必要に応じて回収及び乾燥を行い、マイクロカプセルを調製する方法である。
【0084】
さらに、PHAと磁性体とを含むマイクロカプセルの製造方法の第8の態様は、
1)磁性体を含む有機溶媒を、PHA合成酵素および3−ヒドロキシアシルCoAを含む多量の水中に投入して乳化させてO/W型エマルションを得、
2)該エマルションを、多量の油中へ投入して乳化させてO/W/O型エマルションを得た後、
3)PHA合成反応を行うことにより、微小球状の沈澱物を生成させ、必要に応じて回収及び乾燥を行い、マイクロカプセルを調製する方法である。
【0085】
磁性体の分散相については、その表面性質(親水性であるか、親油性であるか)により、有機溶媒を含む油相でなく、水相に懸濁することも可能である。
【0086】
<PHAの例示とその製造方法について>
本発明に利用可能なPHAとしては、下記式[1]から[10]で表されるモノマーユニットを少なくとも含むPHAを例示することができる。
【0087】
【化46】
Figure 2004331750
(ただし、該モノマーユニットは、式中R1およびaの組合せが下記のいずれかであるモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つである。R1が水素原子(H)であり、aが0から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、
R1がハロゲン原子であり、aが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、
R1が発色団でありaが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が、カルボキシル基あるいはその塩であり、aが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、
R1が、
【0088】
【化47】
Figure 2004331750
であり、aが1から7の整数のいずれかであるモノマーユニット。)
【0089】
【化48】
Figure 2004331750
(ただし、式中bは0から7の整数のいずれかを表し、R2は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO、−CF、−C及び−Cからなる群から選ばれたいずれか1つを表す。);
【0090】
【化49】
Figure 2004331750
(ただし、式中cは1から8の整数のいずれかを表し、R3は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO、−CF、−C及び−Cからなる群から選ばれたいずれか1つを表す。);
【0091】
【化50】
Figure 2004331750
(ただし、式中dは0から7の整数のいずれかを表し、R4は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO、−CF、−C及び−Cからなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0092】
【化51】
Figure 2004331750
(ただし、式中eは1から8の整数のいずれかを表し、R5は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO、−CF、−C、−C、−CH、−C及び−Cからなる群から選ばれたいずれか1つを表す。);
【0093】
【化52】
Figure 2004331750
(ただし、式中fは0から7の整数のいずれかを表す。);
【0094】
【化53】
Figure 2004331750
(ただし、式中gは1から8の整数のいずれかを表す。);
【0095】
【化54】
Figure 2004331750
(ただし、式中hは1から7の整数のいずれかを表し、R6は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO、 −COOR’、−SOR’’、−CH、−C、−C、−CH(CH、−C(CHからなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H)、Na、K、−CH及び−Cのいずれかであり、R’’は−OH、−ONa、−OK、ハロゲン原子、−OCH及び−OCのいずれかである。);
【0096】
【化55】
Figure 2004331750
(ただし、式中iは1から7の整数のいずれかを表し、R7は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO、−COOR’及び−SOR’’からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H)、Na、K、−CH及び−Cのいずれかであり、R’’は−OH、−ONa、−OK、ハロゲン原子、−OCH及び−OCのいずれかである。);及び
【0097】
【化56】
Figure 2004331750
(ただし、式中jは1から9の整数のいずれかを表す。)
本発明において使用するPHAは、3−ヒドロキシアルカノエートをモノマー単位とするポリエステル樹脂である。ここで、このような化合物を微生物を利用して生産した場合、該ポリエステル樹脂はR体のみからなるアイソタクチックなポリマーであるが、物性/機能の両面において本発明の目的を達成しうるならば、特にアイソタクチックなポリマーである必要はなく、アタクチックなポリマーについても利用することが可能である。また、ラクトン化合物を有機金属系触媒(例えば、アルミニウム、亜鉛、スズ等を含む有機触媒)を用いて開環重合を行う化学合成法によりPHAを得ることも可能である。
【0098】
また、W/O型エマルション、W/O/W型エマルション、O/W型エマルション、あるいはO/W/O型エマルションの調製とともに、PHA合成酵素による3−ヒドロキシアシルCoAの重合反応を利用してPHAを合成する場合、PHAの合成反応に関与するPHA合成酵素によって合成され得るPHAであれば、特に限定はされない。前述の通り、PHA合成酵素は、生物体内でのPHA合成反応系における最終段階を触媒する酵素であり、従って、生物体内において合成され得ることが知られているPHAであれば、いずれも該酵素による触媒作用を受けて合成されていることになる。よって、所望のPHAに対応する3−ヒドロキシアシルCoAを、PHA合成酵素に作用させることによって、生物体内において合成され得ることが知られているあらゆる種類のPHAで固相、液相及び気相の少なくとも1つの相と磁性体を含有せしめた、さらには被覆したマイクロカプセルを作成することが可能である。
【0099】
また、本発明においては、側鎖構造R1〜R7について種々の原子あるいは官能基からなる群から選ばれる1種以上の原子あるいは官能基を選択することが可能である。また、R2〜R7の置換位置については、オルト、メタあるいはパラ位の何れにおいても対応するモノマーユニットからなるPHAを取得することが可能であるが、機能性、物性等が何れの異性体においても大きな相違が無い場合、収率あるいはポリマー中への取り込まれ易さにおいてメタ位あるいはパラ位における置換体を好適に用い得る。
【0100】
なお、前記のハロゲン原子の具体例としては、フッ素、塩素、臭素等を挙げることができる。また、前記の発色団としては、発色団を含む原料化合物からPHAが合成され得るものであれば特に限定はされないが、高分子合成時の立体障害等を考慮すると、原料化合物であるアルカノエートの末端カルボキシル基と発色団との間に炭素数1から5のメチレン鎖があるほうが望ましい。また、発色団の光吸収波長が可視域にあれば着色した構造体が得られ、可視域以外に光吸収波長があっても種々の電子材料として利用することができる。このような発色団の例として、ニトロソ、ニトロ、アゾ、ジアリールメタン、トリアリールメタン、キサンテン、アクリジン、キノリン、メチン、チアゾール、インダミン、インドフェノール、ラクトン、アミノケトン、ヒドロキシケトン、スチルベン、アジン、オカサジン、チアジン、アントラキノン、フタロシアニン、インジゴイド等を挙げることができる。
【0101】
本発明において用いられるPHAとしては上記モノマーユニットを複数含むランダム共重合体やブロック共重合体を用いることも可能であり、各モノマーユニットや含まれる官能基の特性を利用したPHAの物性制御や複数の機能の付与、官能基間の相互作用を利用した新たな機能の発現等が可能となる。さらに、モノマー化合物の添加量や添加順序を適宜制御することによって、任意の順序および組成比のブロック共重合体を合成することも可能である。また必要に応じて、PHAを合成したのち、あるいは、合成中に、さらに化学修飾等を施しても良い。
【0102】
例えば、基質である3−ヒドロキシアシルCoAの種類や濃度等の組成を経時的に変化させることによって、マイクロカプセルの内側から外側へ向かう方向においてPHAのモノマーユニット組成を変化させることも可能である。マイクロカプセル表層のPHAと内層のPHAを適宜選択することで、本発明の効果、例えば液相あるいは気相の保持機能、徐放性の制御、水溶液中での自己分散性等をさらに高めることができる。より具体的には、適宜、PHAのモノマーユニットを選択し、マイクロカプセルの内側から外側へ向かう方向に変化、例えば多層構造あるいはグラディエント構造とすることが可能である。
【0103】
また、マイクロカプセル表層のPHAにグラフト鎖を導入することにより、該グラフト鎖に起因する、例えば液相あるいは気相の保持機能、水溶液中での自己分散性、徐放性の制御等の機能性の発現が可能となる。また、マイクロカプセル表層のPHAを架橋化せしめることにより、例えば、液相あるいは気相の保持機能の向上、マイクロカプセルの機械的強度の向上、徐放性の制御等が可能となる。
【0104】
このように、PHAを微生物(in vivo)合成あるいは無細胞(in vitro)合成を用いて生産する場合、前記の各種モノマーユニットを含み得るが、必要とするポリマーの機能性、物性等を考慮の上、適当数を含むように設計すると良い。一般には前記の6種類程度までのモノマーユニットを含むことで本発明の目的を十分に達成することが期待できるが、微妙な機能性、物性の制御を望む場合、より多くの種類のモノマーユニットで構成することも可能である。
【0105】
なお、本発明のマイクロカプセルに用いる、PHA生産微生物あるいはPHA合成酵素によるin vitro合成により合成されるPHAは、一般にR体のみから構成されるアイソタクチックなポリマーである。
【0106】
これら所望の物性のPHAは、本発明におけるPHAを合成可能な微生物の培養条件等を選択することによって得られる。例えば、培養時間等の制御により、数平均分子量の制御が可能である。また、溶媒抽出、再沈殿等の手段を用いた低分子量成分の除去により、数平均分子量の制御が可能である。また、in vitro合成においては反応溶液の組成、反応時間等の条件を適宜選択することにより、各種物性の制御が可能である。
【0107】
PHAの分子量は、数平均分子量で1,000から1,000万程度、好ましくは5,000から100万程度とするのが望ましい。また、これらのPHAの分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、好ましくは1〜10である。分散度は、特に好ましくは1〜5である。
【0108】
本発明におけるマイクロカプセルにおいて、例えば、液相を含有せしめた場合、液相の保持および徐放機能、あるいは水溶液中での自己分散性等が重要になる。本発明のマイクロカプセルはこうした問題を解決した点に最大の特徴を有する。つまり、液相の保持および徐放機能、あるいは水溶液中での自己分散性等は上述のようにPHAのモノマーユニットの種類/組成比/分子量/結晶性を制御することにより制御可能である。
【0109】
また、徐放性製剤として薬物、特には水溶性薬物を含有せしめた場合、放出特性の制御には初期の放出速度制御とそれ以降の放出速度制御の両方が必要になる。
【0110】
本発明の徐放性製剤はこうした問題を解決した点に最大の特徴を有する。つまり、薬物の初期放出量は上述のようにPHAのモノマーユニットの種類/組成比/分子量/結晶性を制御することにより制御可能であり、また、薬物の放出期間についてもPHAのモノマーユニットの種類/組成比/分子量/結晶性を制御することにより初期放出量同様に制御が可能である。また本発明の徐放性製剤は、薬物放出特性を単にゼロ次放出した徐放性製剤に限らず、初期の放出量を任意に高く設定することや薬物の放出時間にタイムラグを有する徐放性製剤を調製することも可能であり、その応用範囲は極めて広いものである。
【0111】
さらに、徐放性製剤として薬物、特には実質的に水に溶解しない薬物を含有せしめた場合についても、放出特性の制御には初期の放出速度制御とそれ以降の放出速度制御の両方が必要になる。本発明の徐放性製剤はこうした問題を解決した点に最大の特徴を有する。つまり、薬物の初期放出量は上述のようにPHAのモノマーユニットの種類/組成比/分子量/結晶性を制御することにより制御可能であり、また、薬物の放出期間についてもPHAのモノマーユニットの種類/組成比/分子量/結晶性を制御することにより初期放出量同様に制御が可能である。また本発明の徐放性製剤は、薬物放出特性を単にゼロ次放出した徐放性製剤に限らず、初期の放出量を任意に高く設定することや薬物の放出時間にタイムラグを有する徐放性製剤を調製することも可能であり、その応用範囲は極めて広いものである。
【0112】
また、超音波造影剤として利用する上では、中空構造体に含有される気泡の量とともに、その気泡の保持機能が重要になる。本発明の超音波造影剤は、この気泡の保持機能が向上した、本発明の中空構造体を超音波反射体として利用した点に最大の特徴を有する。つまり、気泡の保持機能は上述のようにPHAに含まれるモノマーユニットの種類/組成比/分子量/結晶性を制御することにより制御可能である。
【0113】
PHAを微生物生産により得る具体的方法としては、式(1)〜(10)のモノマーユニットの1種以上を含むPHAを式(1)〜(10)のモノマーユニットに対応するアルカン酸から製造し得る微生物を、該対応するアルカン酸を含んだ培地中で培養することで可能となる。PHAを製造し得る微生物としては、PHAを生産する微生物から適宜選択された微生物、あるいは、それら微生物のPHA合成酵素遺伝子を導入した形質転換体等が挙げられる。培養方法等については後述する。
【0114】
例えば、下記式[22]で表される5−(4−フルオロフェニル)吉草酸(FPVA)から、下記式[21]で表される3−ヒドロキシ−5−(4−フルオロフェニル)吉草酸(3−HFPV)モノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを製造し得る微生物を培養することにより、3HFPVモノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを製造することが可能である。
【0115】
【化57】
Figure 2004331750
また、下記式[24]で表される4−フェノキシ酪酸(PxBA)から、下記式[23]で表される3−ヒドロキシ−4−フェノキシ酪酸(3HPxB)モノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを製造し得る微生物を培養することにより、3HPxBモノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを製造することが可能である。
【0116】
【化58】
Figure 2004331750
また、下記式[26]で表される4−シクロヘキシル酪酸(CHBA)から、下記式[25]で表される3−ヒドロキシ−4−シクロヘキシル酪酸(3HCHB)モノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを製造し得る微生物を培養することにより、3HCHBモノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを製造することが可能である。
【0117】
【化59】
Figure 2004331750
また、下記式[28]で表される5−ベンゾイル吉草酸(BzVA)から、下記式[27]で表される3−ヒドロキシ−5−ベンゾイル吉草酸(3HBzV)モノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを製造し得る微生物を培養することにより、3HBzVモノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを製造することが可能である。
【0118】
【化60】
Figure 2004331750
また、下記式[30]で表される5−(4−フルオロベンゾイル)吉草酸(FBzVA)から、下記式[29]で表される3−ヒドロキシ−5−(4−フルオロベンゾイル)吉草酸(3HFBzV)モノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを製造し得る微生物を培養することにより、3HFBzVモノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを製造することが可能である。
【0119】
【化61】
Figure 2004331750
また、下記式[32]で表される5−チエニル吉草酸(TVA)から、下記式[31]で表される3−ヒドロキシ−5−チエニル吉草酸(3HTV)モノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを製造し得る微生物を培養することにより、3HTVモノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを製造することが可能である。
【0120】
【化62】
Figure 2004331750
また、下記式[34]で表される5−チエノイル吉草酸(ToVA)から、下記式[33]で表される3−ヒドロキシ−5−チエノイル吉草酸(3HToV)モノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを製造し得る微生物を培養することにより、3HToVモノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを製造することが可能である。
【0121】
【化63】
Figure 2004331750
また、下記式[36]で表される5−(4−フルオロチオフェノキシ)吉草酸(FTPxVA)から、下記式[35]で表される3−ヒドロキシ−5−(4−フルオロチオフェノキシ)吉草酸(3HFTPxV)モノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを製造し得る微生物を培養することにより、3HFTPxVモノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを製造することが可能である。
【0122】
【化64】
Figure 2004331750
また、下記式[38]で表される5−[(4−フルオロフェニルメチル)スルファニル]吉草酸から、下記式[37]で表される3−ヒドロキシ−5−[(4−フルオロフェニルメチル)スルファニル]吉草酸モノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを製造し得る微生物を培養することにより、3−ヒドロキシ−5−[(4−フルオロフェニルメチル)スルファニル]吉草酸モノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを製造することが可能である。
【0123】
【化65】
Figure 2004331750
また、下記式[40]で表される5−チオチエノキシ吉草酸(TTxVA)から、下記式[39]で表される3−ヒドロキシ−5−チオチエノキシ吉草酸(3HTTxV)モノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを製造し得る微生物を培養することにより、3HTTxVモノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを製造することが可能である。
【0124】
【化66】
Figure 2004331750
また、下記式[42]で表されるオクタン酸(OA)から、下記式[41]で表される3−ヒドロキシオクタン酸(3HO)モノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを製造し得る微生物を培養することにより、3HOモノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを製造することが可能である。
【0125】
【化67】
Figure 2004331750
また、下記式[44]で表されるオクテンから、下記式[43]で表される3−ヒドロキシ−7、8−エポキシオクタン酸モノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを製造し得る微生物を培養することにより、3−ヒドロキシ−7、8−エポキシオクタン酸モノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを製造することが可能である。
【0126】
【化68】
Figure 2004331750
<微生物>
本発明の方法で用いる微生物は、式(1)〜(10)に示されるユニットを少なくとも1種含むPHAの生産を、対応するアルカン酸を含む培地中で培養することにより行いうる微生物であれば如何なる微生物であってもよい。
【0127】
PHAを合成する微生物としては、PHBやPHB/V生産菌を用いることができ、このような微生物として、アエロモナス属(Aeromonas sp.)、アルカリゲネス属(Alcaligenes sp.)、クロマチウム属(Chromatium sp.)、コマモナス属(Comamonas sp.)、メチロバクテリウム属(Methylobacterium sp.)、パラコッカス属(Paracoccus sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)の等の他に、本発明者らにより分離された、バルクホルデリア・セパシア・KK01株(Burkholderia cepacia KK01)、ラルストーニャ・ユートロファ・TB64株(Ralstonia eutropha TB64)、アルカリゲネス属・TL2株(Alcaligenes sp.TL2)等を用いることができる。なお、KK01 株は寄託番号FERM BP−4235として、TB64株は寄託番号FERM BP−6933 として、TL2株は寄託番号FERM BP−6913 として寄託されている。
【0128】
例えば、mcl−PHAやunusual−PHAの生産菌を用いることができ、このような微生物として、前述のシュードモナス・オレオボランス、シュードモナス・レジノボランス、シュードモナス属61−3株、シュードモナス・プチダ・KT2442株、シュードモナス・アエルギノーサ等のほかに、本発明者らにより分離された、シュードモナス・プチダ・P91株(Pseudomonas putida P91)、シュードモナス・チコリアイ・H45株(PseudomonascichoriiH45)、シュードモナス・チコリアイ・YN2株(PseudomonascichoriiYN2)、シュードモナス・ジェッセニイ・P161株(Pseudomonasjessenii P161)等のシュードモナス属微生物や、特開2001−78753号公報に記載のバークホルデリア属・OK3株(Burkholderiasp.OK3、FERMP−17370)、特開2001−69968号公報に記載のバークホルデリア属・OK4株(Burkholderia sp.OK4、FERMP−17371)等のバークホルデリア属微生物を用いることができる。また、これら微生物に加えて、アエロモナス属(Aeromonas sp.)、コマモナス属(Comamonas sp.)等に属し、mcl−PHAやunusual−PHAを生産する微生物を用いることも可能である。
【0129】
なお、P91株は寄託番号FERM BP−7373として、H45株は寄託番号FERM BP−7374として、YN2株は寄託番号FERM BP−7375として、P161株は寄託番号FERM BP−7376として、寄託されている。また、上記のFERM番号の寄託は、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許微生物寄託センター(旧名:経済産業省産業技術研究所(通商産業省工業技術院)生命工学工業技術研究所特許微生物寄託センター)での寄託であり、BPは特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約に基づく寄託である。
【0130】
なお、前記のP91株、H45株、YN2株およびP161株の菌学的性質を列挙すれば以下の通りである。
【0131】
(シュードモナス・プチダ・P91株の菌学的性質)
(1)形態学的性質
細胞の形と大きさ:桿菌、0.6μm×1.5μm
細胞の多形性:なし
運動性:あり
胞子形成:なし
グラム染色性:陰性
コロニー形状:円形、全縁なめらか、低凸状、表層なめらか、光沢、クリーム色
(2)生理学的性質
カタラーゼ:陽性
オキシダーゼ:陽性
O/F試験:酸化型
硝酸塩の還元:陰性
インドールの生成:陰性
ブドウ糖酸性化:陰性
アルギニンジヒドロラーゼ:陽性
ウレアーゼ:陰性
エスクリン加水分解:陰性
ゼラチン加水分解:陰性
β−ガラクトシダーゼ:陰性
King’s B寒天での蛍光色素産生:陽性
(3)基質資化能
ブドウ糖:陽性
L−アラビノース :陰性
D−マンノース :陰性
D−マンニトール :陰性
N−アセチル−D−グルコサミン:陰性
マルトース:陰性
グルコン酸カリウム:陽性
n−カプリン酸 :陽性
アジピン酸:陰性
dl−リンゴ酸:陽性
クエン酸ナトリウム:陽性
酢酸フェニル:陽性
(シュードモナス・チコリアイ・H45株の菌学的性質)
(1)形態学的性質
細胞の形と大きさ:桿菌、0.8μm×1.0〜1.2μm
細胞の多形性:なし
運動性:あり
胞子形成:なし
グラム染色性:陰性
コロニー形状:円形、全縁なめらか、低凸状、表層なめらか、光沢、クリーム色
(2)生理学的性質
カタラーゼ:陽性
オキシダーゼ:陽性
O/F試験:酸化型
硝酸塩の還元:陰性
インドールの生成:陰性
ブドウ糖酸性化:陰性
アルギニンジヒドロラーゼ:陰性
ウレアーゼ:陰性
エスクリン加水分解:陰性
ゼラチン加水分解:陰性
β−ガラクトシダーゼ:陰性
King’sB寒天での蛍光色素産生 :陽性
4%NaClでの生育 :陰性
ポリ−β−ヒドロキシ酪酸の蓄積:陰性
(3)基質資化能
ブドウ糖:陽性
L−アラビノース :陰性
D−マンノース :陽性
D−マンニトール :陽性
N−アセチル−D−グルコサミン:陽性
マルトース:陰性
グルコン酸カリウム:陽性
n−カプリン酸 :陽性
アジピン酸:陰性
dl−リンゴ酸:陽性
クエン酸ナトリウム:陽性
酢酸フェニル:陽性。
【0132】
(シュードモナス・チコリアイ・YN2株の菌学的性質)
(1)形態学的性質
細胞の形と大きさ:桿菌、0.8μm×1.5〜2.0μm
細胞の多形性:なし
運動性:あり
胞子形成:なし
グラム染色性:陰性
コロニー形状:円形、全縁なめらか、低凸状、表層なめらか、光沢、半透明
(2)生理学的性質
カタラーゼ:陽性
オキシダーゼ:陽性
O/F試験:酸化型
硝酸塩の還元:陰性
インドールの生成:陽性
ブドウ糖酸性化:陰性
アルギニンジヒドロラーゼ:陰性
ゼラチン加水分解:陰性
β−ガラクトシダーゼ:陰性
King’s B寒天での蛍光色素産生:陽性
4%NaClでの生育 :陽性(弱い生育)
ポリ−β−ヒドロキシ酪酸の蓄積:陰性
Tween 80の加水分解:陽性
(3)基質資化能
ブドウ糖:陽性
L−アラビノース :陽性
D−マンノース :陰性
D−マンニトール :陰性
N−アセチル−D−グルコサミン:陰性
マルトース:陰性
グルコン酸カリウム:陽性
n−カプリン酸 :陽性
アジピン酸:陰性
dl−リンゴ酸:陽性
クエン酸ナトリウム:陽性
酢酸フェニル:陽性
(シュードモナス・ジェッセニイ・P161株の菌学的性質)
(1)形態学的性質
細胞の形と大きさ:球状 φ0.6μm、桿状 0.6μm×1.5〜2.0μm
細胞の多形性:あり(伸長型)
運動性:あり
胞子形成:なし
グラム染色性:陰性
コロニー形状:円形、全縁なめらか、低凸状、表層なめらか、淡黄色
(2)生理学的性質
カタラーゼ:陽性
オキシダーゼ:陽性
O/F試験:酸化型
硝酸塩の還元:陽性
インドールの生成:陰性
アルギニンジヒドロラーゼ:陽性
ウレアーゼ:陰性
エスクリン加水分解:陰性
ゼラチン加水分解:陰性
β−ガラクトシダーゼ:陰性
King’sB寒天での蛍光色素産生 :陽性
(3)基質資化能
ブドウ糖:陽性
L−アラビノース :陽性
D−マンノース :陽性
D−マンニトール :陽性
N−アセチル−D−グルコサミン:陽性
マルトース:陰性
グルコン酸カリウム:陽性
n−カプリン酸 :陽性
アジピン酸:陰性
dl−リンゴ酸:陽性
クエン酸ナトリウム:陽性
酢酸フェニル:陽性。
【0133】
<培養工程>
本発明にかかるPHAの製造方法においては、上記するPHA生産能を有する微生物を利用して、原料のアルカン酸から、対応する前記一般式(1)から(10)で表される、側鎖末端に各種官能基を有する3−ヒドロキシアルカン酸ユニットを含むPHAを生産させ、細胞内に蓄積させる。
【0134】
微生物の通常の培養、例えば、保存菌株の作製、PHAの生産に必要とされる菌数や活性状態を確保するための増殖等には、用いる微生物の増殖に必要な成分を含有する培地を適宜選択して用いる。例えば、微生物の生育や生存に悪影響を及ぼすものでない限り、一般的な天然培地(肉汁培地、酵母エキス等)や、栄養源を添加した合成培地等、いかなる種類の培地をも用いることができる。温度、通気、攪拌等の培養条件は、用いる微生物に応じて適宜選択する。
【0135】
一方、前記したようなPHA生産微生物を用いて、目的とする3−ヒドロキシアルカン酸ユニットを含むPHAを製造する際には、培地として、PHA生産用の原料として、このモノマーユニットに対応するアルカン酸に加えて、微生物の増殖用炭素源を少なくとも含んだ無機培地等を用いることができる。原料のアルカン酸は、培地あたり0.01%〜1%(質量/容量)の範囲、より好ましくは、0.02%〜0.2%(質量/容量)の範囲に初期の含有率を選択することが望ましい。原料のアルカン酸の種類によっては、その水溶性が良好でないものもあるが、本発明においては、上記の微生物を用いる場合、培地中に懸濁された状態であっても何ら問題とはならない。
【0136】
なお、原料のアルカン酸の培地への溶解性を高めるため、場合によっては、1−ヘキサデセンやn−ヘキサデカンのような溶媒に溶解、あるいは、微細な懸濁物とした形状で培地中に添加することも可能である。その際には、利用する1−ヘキサデセンやn−ヘキサデカンのような溶媒の添加濃度は、培地に対して、その濃度は3%(容量/容量)以下にすることが必要である。
【0137】
培地には、微生物が増殖に利用する増殖基質を別途添加することが好ましい。この増殖基質は、酵母エキスやポリペプトン、肉エキスといった栄養素を用いることが可能である。更に、糖類、TCA回路中の中間体として生じる有機酸ならびにTCA回路から一段階ないしは二段階の生化学反応を経て生じる有機酸またはその塩、アミノ酸またはその塩等から、用いる菌株に応じて、増殖基質としての有用性を考慮して、適宜選択することができる。また、目的とするモノマーの割合が低くてもよい場合は、炭素数4から12の直鎖アルカン酸あるいはその塩等を基質として用いてもよい。但しこの場合は直鎖で置換基のない単純なモノマー(以下mclと略する)の割合が高くなることに留意する必要がある。
【0138】
これらのうち、糖類としては、グリセロアルデヒド、エリスロース、アラビノース、キシロース、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースといったアルドース、グリセロール、エリスリトール、キシリトール等のアルジトール、グルコン酸等のアルドン酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸等のウロン酸、マルトース、スクロース、ラクトースといった二糖等から選ばれる1つ以上の化合物が好適に利用できる。
【0139】
また、有機酸或いはその塩としては、ピルビン酸、オキサロ酢酸、クエン酸、イソクエン酸、ケトグルタル酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、乳酸等がその例であり、或いはその塩から選ばれる1つ以上の化合物が好適に利用できる。
【0140】
また、アミノ酸或いはその塩としては、グルタミン酸、アスパラギン酸或いはその塩から選ばれる1つ以上の化合物が好適に利用できる。
【0141】
一般に、これら種々の増殖基質の中でも、ポリペプトンや糖類を用いるのがより好ましい。原料化合物と共存させる、これらの増殖基質は、通常、培地あたり0.1%〜5%(質量/容量)の範囲、より好ましくは、0.2%〜2%(質量/容量)の範囲にその含有率を選択することが望ましい。
【0142】
微生物にPHAを生産・蓄積させる培養方法としては、一旦十分に増殖させた後に、塩化アンモニウムのような窒素源を制限した培地へ菌体を移し、目的ユニットの基質となる化合物を加えた状態でさらに培養すると生産性が向上する場合がある。例えば、前記の異なる培養条件からなる工程を複数段接続した多段方式の採用が挙げられる。
【0143】
その際、培養温度は、上記の菌株が良好に増殖可能な温度であればよく、例えば、15〜40℃、好ましくは20〜35℃の範囲、より好ましくは20℃〜30℃の範囲に選択することが適当である。
【0144】
培養は、液体培養、固体培養等、利用する微生物が増殖し、培地中に含有される原料のアルカン酸から、前記一般式(1)から(10)で示されるユニットを含むPHAを生産する培養方法ならば、いかなる培養方法をも用いることができる。さらには、原料、増殖基質、さらには酸素の供給が適正に行われるならば、バッチ培養、フェドバッチ培養、半連続培養、連続培養等の種類も問わない。例えば、液体バッチ培養の形態としては、振とうフラスコによって振とうさせて酸素を供給する方法、ジャーファーメンターによる攪拌通気方式の酸素供給方法がある。
【0145】
上記の培養方法に用いる無機培地としては、リン源(例えば、リン酸塩等)、窒素源(例えば、アンモニウム塩、硝酸塩等)等、微生物が増殖し得る成分を含んでいるものであればいかなるものでも良く、例えば無機塩培地としては、MSB培地、E培地(J.Biol.Chem.、218、97〜106(1956))、M9培地等を挙げることができる。なお、本発明における実施例で用いるM9培地の組成は以下の通りである。
[M9培地]
NaHPO : 6.2g
KHPO : 3.0g
NaCl : 0.5g
NHCl : 1.0g
(培地1リットル中、pH 7.0)
さらに、良好な増殖及びPHA合成酵素の生産のためには、上記の無機塩培地に以下に示す微量成分溶液を 0.3%(容量/容量)程度添加するのが好ましい。
【0146】
(微量成分溶液)
ニトリロ三酢酸:1.5g MgSO:3.0g、MnSO:0.5g、NaCl:1.0g、FeSO:0.1g、CaCl:0.1g、CoCl:0.1g、 ZnSO:0.1g、 CuSO:0.1g、AlK(SO)2:0.1g、 HBO:0.1g、 NaMoO:0.1g、NiCl:0.1g
(1リットル中)
<PHAの回収>
本発明にかかる培養液からのPHAの取得には、通常行なわれている方法を適用することができる。PHAが培養液中に分泌される場合は、培養液からの抽出精製方法が、また、菌体に蓄積される場合は、菌体からの抽出精製方法が用いられる。例えば、微生物の培養菌体からのPHAの回収には、通常行なわれているクロロホルム等の有機溶媒による抽出が最も簡便ではあるが、クロロホルム以外にジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトンが用いられる場合もある。また、有機溶媒が使用しにくい環境中においては、SDS等の界面活性剤による処理、リゾチーム等の酵素による処理、EDTA、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、アンモニア等の薬剤による処理によってPHA以外の菌体成分を除去して、菌体内成分を除去することによってPHAのみを回収する方法を採ることもできる。
【0147】
なお、微生物の培養、微生物によるPHAの生産と菌体内への蓄積、ならびに、菌体からのPHAの回収は、上記の方法に限定されるものではない。例えば、本発明にかかるPHAの生産方法に利用される微生物は上記の4種の菌株以外でも、これら4種の菌株と同様の本発明にかかるPHA生産の生産能を有する微生物を用いることができる。
【0148】
<形質転換体を用いた生合成>
また、前述のPHA生産菌の持つPHA合成酵素遺伝子を他の微生物に導入した形質転換体を用いて、所望のPHAを生産することも可能である。PHA合成酵素遺伝子のクローニング、発現ベクターの作製、および、形質転換体の作製は、定法に従って行うことができる。大腸菌等の細菌を宿主として得られた形質転換体においては、培養に用いる培地として、天然培地あるいは合成培地、例えば、LB培地、M9培地等が挙げられる。また、培養温度は 25 〜 37℃の範囲で、好気的に8〜27時間培養することにより、微生物の増殖を図る。その後集菌し、菌体内に蓄積されたPHAの回収を行うことができる。培地には、必要に応じて、カナマイシン、アンピシリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン等の抗生物質を添加しても良い。また、発現ベクターにおいて、誘導性のプロモーターを用いている場合は、形質転換体を培養する際に、該プロモーターの対応する誘導物質を培地に添加して発現を促しても良い。例えば、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)、テトラサイクリン、インドールアクリル酸(IAA)等が誘導物質として挙げられる。
【0149】
<3−ヒドロキシアシルCoA>
本発明の生物工学的手法を利用したカプセル化方法において、PHA合成酵素の基質として用いる3−ヒドロキシアシルCoAとして、具体的には、下記式[11]から[20]で表される3−ヒドロキシアシルCoAを例示することができる。
【0150】
【化69】
Figure 2004331750
(ただし、前記式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、式中R1およびaは、前記式[1]と同様に定義される。)
【0151】
【化70】
Figure 2004331750
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、b及びR2は前記式[2]と同様に定義される。)
【0152】
【化71】
Figure 2004331750
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、c及びR3は前記式[3]と同様に定義される。)
【0153】
【化72】
Figure 2004331750
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、d及びR4は前記式[4]と同様に定義される。)
【0154】
【化73】
Figure 2004331750
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、e及びR5は前記式[5]と同様に定義される。)
【0155】
【化74】
Figure 2004331750
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、fは前記式[6]と同様に定義される。)
【0156】
【化75】
Figure 2004331750
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、gは前記式[7]と同様に定義される。)
【0157】
【化76】
Figure 2004331750
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、h及びR6は前記式[8]と同様に定義される。)
【0158】
【化77】
Figure 2004331750
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、I及びR7は前記式[9]と同様に定義される。)
【0159】
【化78】
Figure 2004331750
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、jは前記式[10]と同様に定義される。)
これらの3−ヒドロキシアシルCoAは、例えば、酵素を用いたin vitro合成法、微生物や植物等の生物体を用いたin vivo合成法、化学合成法等の中から適宜選択した方法で合成して用いることができる。特に、酵素合成法は該基質の合成に一般に用いられている方法であり、市販のアシルCoAシンセターゼ(アシルCoAリガーゼ、E.C.6.2.1.3)を用いた下記反応、
【0160】
【化79】
Figure 2004331750
を用いた方法等が知られている(Eur.J.Biochem.、250、432−439(1997)、Appl.Microbiol.Biotechnol.、54、37−43(2000)等)。酵素や生物体を用いた合成工程には、バッチ式の合成方法を用いても良く、また、固定化酵素や固定化細胞を用いて連続生産してもよい。
【0161】
<PHA合成酵素およびその生産菌>
本発明に用いるPHA合成酵素は、該酵素を生産する微生物から適宜選択された微生物、あるいは、それら微生物のPHA合成酵素遺伝子を導入した形質転換体等により生産されたものを用いることが可能であり、前述のPHA生産菌を好適に用いることができる。
【0162】
<PHA合成酵素の取得>
本発明にかかるPHA合成酵素の生産に用いる微生物の通常の培養、例えば、保存菌株の作成、PHA合成酵素の生産に必要とされる菌数や活性状態を確保するための増殖等には、用いる微生物の増殖に必要な成分を含有する培地を適宜選択して用いることが可能である。
【0163】
培養は液体培養や固体培養等、該微生物が増殖する方法であればいかなる方法をも用いることができる。さらに、バッチ培養、フェドバッチ培養、半連続培養、連続培養等の種類も問わない。液体バッチ培養の形態としては、振とうフラスコによって振とうさせて酸素を供給する方法、ジャーファーメンターによる攪拌通気方式の酸素供給方法がある。また、これらの工程を複数段接続した多段方式を採用してもよい。
【0164】
前記したようなPHA生産微生物を用いて、PHA合成酵素を生産する場合は、例えば、オクタン酸やノナン酸等のアルカン酸を含む無機培地で該微生物を増殖させ、対数増殖期から定常期初期にかけての微生物を遠心分離等で回収して所望の酵素を抽出する方法等を用いることができる。なお、上記のような条件で培養を行うと、添加したアルカン酸に由来するmcl−PHAが菌体内に合成されることになるが、この場合、一般に、PHA合成酵素は菌体内に形成されるPHAの微粒子に結合して存在するとされている。しかし、本発明者らの検討によると、上記の方法で培養した菌体の破砕液を遠心分離した上清液にも、相当程度の酵素活性が存在していることがわかっている。これは、前記の如き対数増殖期から定常期初期にかけての比較的培養初期には、菌体内で該酵素が活発に生産され続けているため、遊離状態のPHA合成酵素も相当程度存在するためと推定される。
【0165】
上記の培養方法に用いる無機培地としては、リン源(例えば、リン酸塩等)、窒素源(例えば、アンモニウム塩、硝酸塩等)等、微生物が増殖し得る成分を含んでいるものであればいかなるものでも良く、例えば無機塩培地としては、MSB培地、E培地(J.Biol.Chem.、218、97−106(1956))、M9培地等を挙げることができる。なお、M9培地の組成は前述の通りである。さらに、良好な増殖及びPHA合成酵素の生産のためには、上記の無機塩培地に培地に前述の微量成分溶液を0.3%(容量/容量)程度添加するのが好ましい。培養温度としては上記の菌株が良好に増殖可能な温度であれば良く、例えば 15〜40℃、好ましくは 20〜35℃程度が適当である。
【0166】
また、前述のPHA生産菌の持つPHA合成酵素遺伝子を導入した形質転換体を用いて、所望のPHA合成酵素を生産することも可能である。PHA合成酵素遺伝子のクローニング、発現ベクターの作製、および、形質転換体の作製は、定法に従って行うことができる。大腸菌等の細菌を宿主として得られた形質転換体においては、培養に用いる培地として、天然培地あるいは合成培地、例えば、LB培地、M9培地等が挙げられる。また、培養温度は25から37℃の範囲で、好気的に8〜27時間培養することにより、微生物の増殖を図る。その後集菌し、菌体内に蓄積されたPHA合成酵素の回収を行うことができる。培地には、必要に応じて、カナマイシン、アンピシリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン等の抗生物質を添加しても良い。また、発現ベクターにおいて、誘導性のプロモーターを用いている場合は、形質転換体を培養する際に、該プロモーターの対応する誘導物質を培地に添加して発現を促しても良い。例えば、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)、テトラサイクリン、インドールアクリル酸(IAA)等が誘導物質として挙げられる。
【0167】
PHA合成酵素としては、微生物の菌体破砕液や、硫酸アンモニウム等によりタンパク質成分を沈殿・回収した硫安塩析物等の粗酵素を用いても良く、また、各種方法で精製した精製酵素を用いても良い。該酵素には必要に応じて、金属塩、グリセリン、ジチオスレイトール、EDTA、ウシ血清アルブミン(BSA)等の安定化剤、付活剤を適宜添加して用いることができる。
【0168】
PHA合成酵素の分離・精製方法は、PHA合成酵素の酵素活性が保持される方法であればいかなる方法をも用いることができる。例えば、得られた微生物菌体を、フレンチプレス、超音波破砕機、リゾチームや各種界面活性剤等を用いて破砕したのち、遠心分離して得られた粗酵素液、またはここから調製した硫安塩析物について、アフィニティクロマトグラフィー、陽イオンまたは陰イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過等の手段を単独または適宜組み合わせることによって精製酵素を得ることができる。特に、遺伝子組換えタンパク質は、N末端やC末端にヒスチジン残基等の「タグ」を結合した融合タンパク質の形で発現させ、このタグを介して親和性樹脂に結合させることによって、より簡便に精製することができる。融合タンパク質から目的のタンパク質を分離するには、トロンビン、血液凝固因子Xa等のプロテアーゼで切断する、pHを低下せしめる、結合競合剤として高濃度のイミダゾールを添加する等の方法を用いると良い。あるいは、発現ベクターとしてpTYB1(New Englan Biolab社製)を用いた場合のようにタグがインテインを含む場合はdithiothreitol等で還元条件として切断する。アフィニティクロマトグラフィーによる精製を可能とする融合タンパク質には、ヒスチジンタグの他にグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、キチン結合ドメイン(CBD)、マルトース結合タンパク(MBP)、あるいはチオレドキシン(TRX)等も公知である。GST融合タンパク質は、GST親和性レジンによって精製することができる。
【0169】
PHA合成酵素の活性測定は、既報の各種方法を用いることができるが、例えば、3−ヒドロキシアシルCoAがPHA合成酵素の触媒作用により重合してPHAになる過程で放出されるCoAを、5、5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)で発色させて測定することを測定原理とする、以下に示す方法によって測定することができる。試薬1:ウシ血清アルブミン(Sigma社製)を0.1 M トリス塩酸バッファー(pH8.0) に3.0 mg/ml溶解、試薬2:3−ヒドロキシオクタノイルCoAを0.1 M トリス塩酸バッファー(pH8.0) に3.0 mM溶解、試薬3:トリクロロ酢酸を0.1 M トリス塩酸バッファー(pH8.0) に10 mg/ml溶解、試薬4:5、5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)を0.1 M トリス塩酸バッファー(pH8.0) に2.0 mM溶解。第1反応(PHA合成反応):試料(酵素)溶液100μlに試薬1を100μl添加して混合し、30℃で1分間プレインキュベートする。ここに、試薬2を100μl添加して混合し、30℃で1〜30分間インキュベートしたのち、試薬3を添加して反応を停止させる。第2反応(遊離CoAの発色反応):反応停止した第1反応液を遠心分離(15、000×g、10分間)し、この上清500μlに試薬4を500μl添加し、30℃で10分間インキュベートしたのち、412 nmの吸光度を測定する。酵素活性の算出:1分間に1μmolのCoAを放出させる酵素量を1単位(U)とする。
【0170】
なお、該酵素により合成されるPHAは、一般にR体のみから構成されるアイソタクチックなポリマーである。
【0171】
<磁性体>
本発明の構造体に含有させる磁性体は、構造体の目的とする用途や特性に応じてその種類や構造を選択して用いることができる。
【0172】
磁性体としては、例えば、磁性を有する金属または金属化合物が挙げられ、さらに具体的には、四三酸化鉄(Fe3O4)、γ−重三二酸化鉄(γ−Fe2O3)、MnZnフェライト、NiZnフェライト、 YFeガーネット、GaFeガーネット、Baフェライト、Srフェライト等各種フェライト、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、クロム等の金属、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル等の合金を挙げることができ、これらに限定されるものではない。ここで、例えば生体物質を固定する場合、あるいは生体内に投与する場合等については、生体に対する適合性の良好なマグネタイト(Fe3O4)のほか、必要に応じてマグネタイトの金属元素の一部を少なくとも1種類の他の金属元素で置換した各種フェライト組成等が好適に適用可能である。これら磁性体の形状は、生成条件によって変化し、多面体、8面体、6面体、球状、棒状、燐片状等等があるが、異方性の少ない構造が機能の安定発現のためにはより好ましい。本発明の構造体を構成する磁性体の一次粒子の粒子径は、その用途に応じて適宜選択可能であるが、例えば、0.001〜10μmの範囲内の粒径を有する粒子を用いると良い。
【0173】
また、磁性体としては、超常磁性を有するものについても好ましく用いることができる。例えば、フェライトの粒子径が20nm程度以下と小さい場合には、フェライトは熱擾乱影響を受け超常磁性を示すようになり、残留磁化や保磁力を持たなくなる。超常磁性であっても磁界を印加することにより磁気的操作が可能であり、また超常磁性であれば残留磁化や保磁力を持たないので、磁界のないときに磁気的な凝集の生じるおそれがない。
【0174】
また、磁性体は金属または金属化合物を含むマトリックス等のような複合材料であってもよく、マトリックスは有機または無機の各種材料から構成されるものである。
【0175】
その他、粒子表面を脂肪酸で被覆する方法、シランカップリング剤処理に代表される各種カップリング剤処理を行う方法等、各種手法により疎水化処理を行った磁性体についても、本発明の磁性体として好ましく利用することができる。
【0176】
本発明にかかる構造体における磁性体の含有量は1〜80質量%、好ましくは5〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%である。磁性体の量が1質量%より少ないと磁気性能が不足して構造体としての性能が不十分となるおそれがあり、また、磁性体含量が80質量%を越えると磁性体が多すぎるため、構造体本来の機能が損なわれ、実用性能の面で満足できなくなるおそれがある。
【0177】
<構造体およびその製造方法 − 親水性薬物を内包 −>
本発明における構造体の一態様は、少なくとも薬物、磁性体ならびにPHAを含有する構造体であり、マイクロスフェアの形態やマイクロカプセルの形態等種々の形態をとり得る。その具体例としては、例えばPHAを含むシェル内のコア部に薬物を含むマイクロカプセル、または薬物を含む部分が内相部としてPHAを含む外相内に分散しているような構造体(マイクロスフェア)等が挙げられる。磁性体は構造体の構成に応じて外相部及び内相部の少なくとも一方に含有させる。
【0178】
本発明の徐放性製剤は、上記の薬物を含有する構造体を有効成分として調製することができる。この徐放性製剤は、例えば、薬物を含む溶液を内水相とし、PHAおよび磁性体を含む溶液を油相とするW/O型エマルション、あるいは、該W/O型エマルションをさらに外水相に乳化したW/O/W型エマルションを粒状体化して得られた構造体単独で、あるいは構造体と必要に応じて添加される各種の添加剤とにより調製することができる。
【0179】
該粒状体は、例えば液中乾燥法、相分離法、噴霧乾燥法またはこれらに準ずる方法によって行うことができる。
【0180】
また、薬物、PHA合成酵素および3−ヒドロキシアシルCoAを含む溶液を内水相とするW/O型エマルション、あるいは、内水相と油相からなるW/O型エマルションをさらに外水相に乳化したW/O/W型エマルション(PHA合成酵素および3−ヒドロキシアシルCoAは内水相と外水相の少なくとも一方に含有される)を得、PHA合成反応を行うことにより、構造体を調製する方法(in
vitro合成法)についても好適に用いることができる。
【0181】
さらには、薬物を含む溶液を内水相とするW/O型エマルションを、PHA合成酵素および3−ヒドロキシアシルCoAを含む外水相に乳化したW/O/W型エマルションを得、PHA合成反応を行うことにより、構造体を調製する方法についても好適に用いることができる。
【0182】
<W/O型エマルションの調製 − 親水性薬物を内包 −>
薬物を含む溶液を内水相とし、PHA及び磁性体を含む溶液を油相とするW/O型エマルションは、以下のようにして製造することができる。
【0183】
まず、水に水溶性薬物を加え溶解または分散し、これに必要であればゼラチン、寒天、ポリビニルアルコールあるいは塩基性アミノ酸(例えばアルギニン、ヒスチジン、リジン)等の薬物保持物質を加えて溶解もしくは懸濁し、内水相とする。内水相における薬物の濃度は、約0.001〜90質量%、好ましくは約0.01〜80質量%である。該薬物保持物質の添加量は、生理活性物質に対して、通常約0.01〜約100重量倍、より好ましくは約0.05〜約50重量倍である。これらの薬物保持物質は、あらかじめ任意の濃度に生理活性物質と共に水に溶解し、除菌・除塵フィルターを用いてろ過した後、凍結乾燥して保存し、調製時に溶解して用いることもできる。なお、本発明の徐放性製剤においては、内水相に薬物保持物質を用いない場合でも、生理活性物質の取り込み率が十分満足なものである。
【0184】
内水相には、薬物の安定性、溶解性を保つためのpH調整剤として、炭酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、リン酸、塩酸等、水酸化ナトリウム、アルギニン、リジンおよびそれらの塩等を添加してもよい。また、さらに薬物の安定化剤として、アルブミン、ゼラチン、トレハロース、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、デキストリン、シクロデキストリン(α−、β−、γ−)およびそれらの誘導体(例、マルトシールβ−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンスルフォブチルエーテル等)、亜硫酸水素ナトリウム、ポリエチレングリコール等のポリオール化合物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル[例、Tween 80、Tween 60(花王、日本)]、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体[例、HCO−60、HCO−70(日光ケミカルズ、日本)]等の界面活性剤、等を、あるいは保存剤として、一般に用いられるパラオキシ安息香酸エステル類(メチルパラベン、プロピルパラベン等)、ベンジルアルコール、クロロブタノール、チメロサール等を添加してもよい。
【0185】
このようにして得られる内水相とPHAおよび磁性体を含む溶液(油相)を混合し、ついで乳化操作を行いW/O型エマルションを調製する。該乳化操作としては、公知の方法が用いられる。例えば、断続振盪法、プロぺラ型攪拌機、タービン型攪拌機等のミキサーを用いる攪拌法、コロイドミル法、ホモジナイザー法、超音波照射法等が挙げられる。本発明では、これらの方法を適宜組み合わせて使用してもよい。このW/O型エマルションは、その乳化の程度で薬物の放出が影響を受け、乳化の程度が不十分であると初期バーストが大きくなる傾向にあり、内水相がある程度以上に微細な程、薬物とPHAの相互作用が強く、PHAによる放出制御がPHAの種類/組成比/分子量/結晶性に依存して長期の放出制御をより正確にできるので好ましい。
【0186】
上記したPHAおよび磁性体を含む溶液(油相)は、水と実質的に混和しない有機溶媒に、PHAおよび磁性体を含有させたものが用いられる。該有機溶媒の水に対する溶解度は、好ましくは、常温(20℃)で3質量%以下である。また有機溶媒の沸点は120℃以下であることが好ましい。有機溶媒としては、例えばハロゲン化炭化水素(例、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等)、ケトン類(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エーテル類(例、テトラヒドロフラン、エチルエーテル、イソプロピルエーテル等)、エステル類(例、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン等)等が挙げられる。これらは2種以上適宜の割合で混合して用いてもよい。有機溶媒は、さらに好ましくはハロゲン化炭化水素(例、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等)である。油相におけるPHAの濃度は、該PHAの種類、分子量、溶媒の種類によって異なるが、好ましくは約0.01〜80質量%である。さらに好ましくは約0.1〜70質量%である。特に好ましくは約1〜60質量%である。
油相に分散する磁性体としては、例えば、磁性を有する金属または金属化合物が挙げられ、さらに具体的には、四三酸化鉄(Fe3O4)、γ−重三二酸化鉄(γ−Fe2O3)、MnZnフェライト、NiZnフェライト、 YFeガーネット、GaFeガーネット、Baフェライト、Srフェライト等各種フェライト、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、クロム等の金属、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル等の合金が挙げられる。また、油相における磁性体の処方量は、該磁性体の種類、溶媒の種類、PHAの処方量、等により異なるが、構造体の含有する磁性体の量が1〜80質量%、好ましくは5〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%になるように処方するとよい。
【0187】
なお、内水相との相溶性、後述する外水相への有機溶媒の分配、揮散等を変化させるため、油相に一部親水性の有機溶媒、例えばエタノール、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン等を添加してもよい。また、内部の薬物を溶解あるいは安定化させるために、ショ糖脂肪酸エステル等の界面活性剤を添加してもよい。また、PHAの安定性に依存するが、PHAを含む溶液を室温ないし冷所で密閉容器の中で保存してもよい。
【0188】
薬物を含む水溶液とPHAおよび磁性体を含む有機溶媒溶液との混合割合は、前者1重量部当たり、後者が約0.1〜1000重量部、好ましくは約1〜100重量部である。また、
徐放性製剤における薬物の配合量は、薬物の種類、所望の薬理効果および効果の持続期間等によって異なるが、PHAに対して約0.01〜50質量%用いられる。好ましくは、約0.1〜40質量%用いられる。特に好ましくは、約1〜30質量%用いられる。
【0189】
<W/O/W型エマルションの調製及び液中乾燥法 − 親水性薬物を内包 −>
ついで、このようにして得られるW/O型エマルションを粒状体化工程に付す。例えば液中乾燥法等により粒状体化を行う場合、W/O型エマルションをさらに水相(以下、外水相と略記する)に加え、W/O/W型エマルションを製造した後、油相中の有機溶媒を除去し、マイクロカプセル等の構造体を調製する。
【0190】
外水相の体積は、一般的には油相体積の約1ないし約10、000倍から選ばれる。さらに好ましくは、約2ないし約5、000倍から選ばれる。特に好ましくは、約5ないし約2、000倍から選ばれる。
【0191】
外相の水相中には乳化剤を加えてもよく、その例としては、一般に安定なW/O/W型エマルションを形成するものであればいずれでもよいが、たとえば、アニオン界面活性剤(例、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等)、非イオン性界面活性剤〔ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween 80、Tween 60、アトラスパウダー社製、米国)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体(HCO−70、HCO−60、HCO−50、日光ケミカルズ社製)等〕、あるいはポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、レシチン、ゼラチン、ヒアルロン酸それらの誘導体等が挙げられ、これらの中の一種類か、いくつかを組み合わせて使用してもよい。外水相における乳化剤の濃度は、約0.01〜20質量%、好ましくは約0.05〜10質量%の範囲から適宜決定される。
【0192】
上記外水相中に浸透圧調節剤を加えてもよい。本発明で用いられる浸透圧調節剤としては、水溶液とした場合浸透圧を示すものであればいかなる物質であってもよい。該浸透圧調節剤の具体例としては、例えば水溶性の多価アルコール類、水溶性の一価アルコール類、水溶性の単糖類、二糖類およびオリゴ糖あるいはそれらの誘導体、水溶性のアミノ酸、水溶性のペプチド、タンパク質あるいはそれらの誘導体等が挙げられる。
【0193】
上記水溶性の多価アルコール類としては、例えばグリセリン等の二価アルコール類、アラビトール、キシリトール、アドニトール等の五価アルコール類、マンニトール、ソルビトール、ズルシトール等の六価アルコール類等が挙げられる。これらのうち六価のアルコール類が好ましい。なかでも、マンニトールが特に好ましい。上記水溶性の一価アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。これらのうちエタノールが好ましい。上記水溶性の単糖類としては、例えばアラビノース、キシロース、リボース.2−デオキシリボース等の五炭糖類、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、マンノース、ソルボース、ラムノース、フコース等の六炭糖類が挙げられる。これらのうち六炭糖類が好ましい。上記水溶性の二糖類としては、例えば麦芽糖、セロビオース、α、α−トレハロース、乳糖、ショ糖等が挙げられる。これらのうち乳糖、ショ糖が好ましい。上記水溶性のオリゴ糖としては、例えばマルトトリオース、ラフィノース等の三糖類、スタキオース等の四糖類等が挙げられる。これらのうち三糖類が好ましい。上記水溶性の単糖類、二糖類およびオリゴ糖の誘導体としては、例えばグルコサミン、ガラクトサミン、グルクロン酸、ガラク
ツロン酸等が挙げられる。
【0194】
上記水溶液のアミノ酸としては、例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、セリン、トレオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、システイン、メチオニン等の中性アミノ酸、アイパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸等が挙げられる。またこれらの水溶性アミノ酸の酸(例、塩酸、硫酸、リン酸等)またはアルカリ(例、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属等)との塩を用いてもよい。水溶性のペプチド、タンパク質あるいはそれらの誘導体としては、例えばカゼイン、グロブリン、プロラミン、アルブミン、ゼラチン等が挙げられる。
【0195】
上記浸透圧調節剤のうち水溶性の多価アルコール類、ならびに水溶性の単糖類、二糖類およびオリゴ糖あるいはそれらの誘導体が好ましい。水溶性の多価アルコール類、水溶性の単糖類が更に好ましい。特に好ましくは水溶性の多価アルコール類である。これら浸透圧調節剤は、単独で使用しても、1種以上を混合して使用してもよい。これらの浸透圧調節剤は、外水相の浸透圧が生理食塩水の浸透圧の約1/50ないし約5倍、好ましくは約1/25ないし約3倍となる濃度で用いられる。具体的には、これらの浸透圧調節剤の外水相中での濃度は、浸透圧調節剤が非イオン性物質の場合、約0.001〜60質量%、好ましくは約0.01〜40質量%、より好ましくは約0.05〜30質量%、特に好ましくは約1〜10質量%である。また、浸透圧調節剤がイオン性物質の場合、上記の濃度を全体のイオン価で除した濃度が用いられる。浸透圧調節剤の添加濃度は、溶解度以下である必要はなく、一部が分散状態であってもよい。
【0196】
本発明の製造法において、W/O/W型乳化物を形成させる際にW/O型乳化物の粘度を50cpから10、000cpの範囲内に調整することが好ましい。粘度を調整する方法としては、例えば(1)油相のPHAおよび磁性体の濃度を調整する、(2)水相と油相との量比を調整する、(3)W/O型乳化物の温度を調整する、(4)外水相の温度を調整する、(5)W/O型乳化物を外水相に注入する際に、例えばラインヒーター、クーラー等でW/O型乳化物の温度を調整する等の方法が挙げられ、これらの方法は単独でも、組み合わせて使用してもよい。上記方法においては、要は、W/O型乳化物がW/O/W型乳化物になる時のW/O型乳化物の粘度が50cpから10、000cpの範囲内になるようにしさえすればよい。上記(1)において、油相のPHAの濃度を調整する場合の濃度は、PHAの種類、有機溶媒の種類等で変化するので一義的に決定されるものではないが、好ましくは約10〜80質量%である。上記(2)において、水相と油相との量比を調整する場合の量比は、薬物の種類および量、油相の性質によって一義的に決定されるものではないが、好ましくはW/O=約1〜50体積%である。上記(3)において、W/O型乳化物の温度を調整する場合の温度は、例えば約−20℃ないし有機溶媒の沸点の範囲、好ましくは約0〜30℃、更に好ましくは約10〜20℃である。W/O型乳化物の粘度調整の時期は、上記(1)および(2)の場合は、W/O型乳化物を製造する時点で行うことができる。また、上記(4)において、例えば外水相にW/O型乳化物を添加する際に外水相の温度をあらかじめ調整しておくことにより、上記(3)と同様の結果となるようにすればよい。外水相の温度は、例えば約5〜30℃、好ましくは約10〜25℃、更に好ましくは約12〜20℃である。
【0197】
有機溶媒を除去する方法は、公知の方法に従って行うことができる。例えばプロペラ型撹拌機あるいはマグネチックスターラー等で撹拌しながら常圧もしくは徐々に減圧にして有機溶媒を蒸発させる方法、ロータリーエバポレーター等を用いて真空度、温度を調節しながら有機溶媒を蒸発させる方法等が挙げられる。
【0198】
この後、構造体を遠心分離あるいはろ別により分取し、構造体の表面に付着している遊離の薬物、薬物保持物質、乳化剤等を蒸留水で数回繰り返し洗浄し、さらに減圧乾燥、あるいは蒸留水に再分散後に凍結乾燥等により残存した溶媒・水分の除去を行う。
【0199】
<相分離法 − 親水性薬物を内包 −>
相分離法により粒状体化を行う場合、攪拌下、W/O型エマルションにコアセルベーション剤を徐々に加え、PHAを析出、固化させることにより、構造体を調製する。コアセルベーション剤としては、PHAの溶剤に混和する高分子系、鉱物油系または植物油系の化合物で、粒状体化用のPHAを溶解しないものであればよく、例えばシリコーン油、ゴマ油、大豆油、コーン油、綿実油、ココナッツ油、アマニ油、鉱物油、n−ヘキサン、n−ヘプタン、メタノール、エタノール等が挙げられる。これらは2種以上を混合して用いてもよい。コアセルベーション剤の使用量は、W/O型エマルションに対し、例えば約0.01〜1、000容量倍、好ましくは約0.1〜200容量倍である。このようにして得られる構造体を、遠心分離あるいはろ過により分取した後、ヘキサン、ヘプタン等の洗浄液で繰り返し洗浄して、コアセルベーション剤を除去し、その後、加温ないし減圧して洗浄液を蒸発させる。さらに、所望により、上記した水中乾燥法の場合と同様にして、遊離の薬物および有機溶媒の除去を行う。
【0200】
<噴霧乾燥法 − 親水性薬物を内包 −>
噴霧乾燥法により粒状体化を行う場合、W/O型エマルションまたは水中乾燥法の場合と同様にして製造したW/O/W型エマルションを、ノズルを用いてスプレードライヤー装置(噴霧乾燥機)の乾燥室内へ噴霧し、極めて短時間に微粒化液滴内の有機溶媒および水を揮発させることにより、微粒状のマイクロカプセル等の構造体を調製する。ノズルとしては、例えば二液体ノズル型、圧力ノズル型、回転ディスク型が挙げられる。このようにして得られる構造体を、所望により、蒸留水で数回繰り返し洗浄して、マイクロカプセル等の構造体の表面に付着している遊離の薬物、薬物保持物質、乳化剤等を除去する。ついで、洗浄されたマイクロカプセルを、減圧乾燥するか、あるいは蒸留水に再分散後凍結乾燥して、さらに有機溶媒の除去を行ってもよい。
【0201】
<マイクロカプセル等の構造体およびその製造方法 − 親油性薬物を内包 −>
以下に、親油性薬物を内包させた構造を有する構造体について説明する。なお、この構造体の構造は、先に親水性薬物について説明したものと同じようにマイクロカプセルやマイクロスフェアの形態をとり得る。この場合も、磁性体は構造体の構成に応じて外相部及び内相部の少なくとも一方に含有させる。
【0202】
親油性薬物を内包する構造体は、薬物、磁性体、PHAおよび有機溶媒を含む油相から有機溶媒を除去することで製造することができる。本発明の製造法において、(a)薬物及び(b)PHAを含有する有機溶媒液を製造する方法としては、最終的に(a)及び(b)が溶媒系で溶解状態あるいは均一な分散液となる方法であれば如何なる方法も用い得る。該方法としては、例えば(1)(a)を溶媒で溶液又は分散液状態としたものと、(b)を溶媒で溶液又は分散液状態としたものとを混合、(2)(a)を溶媒で溶液又は分散液状態としたものと、(b)とを混合、(3)(b)を溶媒で溶液又は分散液状態としたものと、(a)とを混合、(4)(a),(b)及び溶媒を混合し、(a)及び(b)を溶媒系で溶液状態とする方法が挙げられる。上記の溶媒は、各溶媒を混合後、(a)及び(b)を溶解状態とし得る溶媒系となるように適宜選択される。上記の溶媒は具体的には、例えば上記の有機溶媒の一種または二種以上を適宜の割合で混合した溶媒に、所望により(a)及び(b)の溶解を阻害しない程度に上記有機溶媒を加えた溶媒が用いられる。
【0203】
このようにして製造された、薬物、磁性体とPHAの溶液あるいは分散液からなる油相から有機溶媒を除去することにより、本発明のマイクロカプセル等の構造体を作製することができる。
【0204】
具体的には、公知のマイクロカプセル等の構造体の調製方法、例えば、溶媒を蒸散させて構造体を固化させる方法(液中乾燥法)、あるいは上記溶液あるいは懸濁液にこの液と混和するがPHAを溶解しない溶媒(いわゆる貧溶媒)を添加しながら攪拌してPHAを相分離させることによって固化した構造体を調製する方法(相分離法)、あるいは噴霧乾燥法等により固化した構造体を得る方法、あるいは前記油相の有機溶媒を除去後の固体をジェットミル等の方法を用いて構造体に粉砕する気体粉砕法、あるいは、これらに準ずる方法が用いられる。
【0205】
また、薬物および磁性体を有機溶剤中に溶解及び/又は懸濁させ、該有機相をPHA合成酵素および3−ヒドロキシアシルCoAを含む多量の水中に投入して乳化させてO/W型エマルションを得、PHA合成反応を行うことにより、マイクロカプセル等の構造体を調製する方法(in vitro合成法)についても好適に用いることができる。
【0206】
<有機溶媒具体例 − 親油性薬物を内包 −>
前記有機溶媒としては、水に対する溶解度が、常温(20℃)で3%(質量/質量)以下である有機溶媒が好ましい。また有機溶媒の沸点は120℃以下であることが好ましい。このような有機溶媒としては、例えばハロゲン化炭化水素(例、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等)、ケトン類(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エーテル類(例、テトラヒドロフラン、エチルエーテル、イソプロピルエーテル等)、エステル類(例、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン等)等が挙げられる。これらは2種以上適宜の割合で混合して用いてもよい。有機溶媒は、さらに好ましくはハロゲン化炭化水素(例、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等)である。
【0207】
<薬物/PHAの濃度 − 親油性薬物を内包 −>
薬物の使用量は、薬物の種類、所望の持続性付与期間により異なるが、溶液中の濃度としては、約0.001%ないし約200%(質量/質量)、より好ましくは0.001%ないし100%(質量/質量)、とりわけ好ましくは0.01%ないし50%(W/W)から選ばれる。また、薬物の配合量としては、薬物の種類、所望の薬理効果および効果の持続期間等によって異なるが、PHAに対して約0.01から約60%(質量/質量)用いられる。好ましくは、約0.1から約55%(質量/質量)用いられる。特に好ましくは、約1から約50%(質量/質量)用いられる。PHAの濃度は、分子量、溶媒の種類によって異なるが、好ましくは約0.01ないし約80%(質量/質量)である。さらに好ましくは約0.1ないし約70%(質量/質量)である。特に好ましくは約1ないし約60%(質量/質量)である。
【0208】
<液中乾燥法 − 親油性薬物を内包 −>
液中乾燥法によりマイクロカプセル等の構造体を製造する場合は、通常、薬物、磁性体、PHAおよび有機溶媒を含む油相を水相中に分散させて、O/W型エマルションを形成させた後、油相中の溶媒を除去することにより行われる。水相の体積は、一般的には油相体積の約1ないし約10,000倍から選ばれる。好ましくは、約2ないし約5,000倍から選ばれる。さらに好ましくは、約5ないし約2,000倍から選ばれる。特に好ましくは約50〜約1000倍である。該水相の温度は予め例えば約5℃ないし約30℃、好ましくは約10℃ないし約25℃、更に好ましくは約10℃ないし約20℃に調整しておいてもよい。上記水相中に乳化剤を加えてもよい。該乳化剤は、一般に安定なO/W型エマルションを形成できるものであればいずれでもよい。
【0209】
乳化剤としては、非毒性、非抗原乳化剤を用いることが好ましく、具体的には、例えばアニオン性界面活性剤(オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等)、カチオン性界面活性剤(ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等)、両性イオン性界面活性剤(N−ラウリルグリシン等)、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル〔ツイーン(Tween)80、ツイーン60、ツイーン40、ツイーン20、アトラスパウダー社〕、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体〔HCO−70、HCO−60、HCO−50、日光ケミカルズ〕等)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ハイドロオキシエチルセルロース、レシチン、澱粉、カゼイン、ペクチン、ゼラチン、アルギン酸、アルギン酸塩、ローカストビーンガム、グァーガム、アラビアガム、キサンタンガム、寒天、カラギーナン、ヒアルロン酸、胆汁酸塩、コール酸ナトリウム、ポリオキシエチレンエーテル等が挙げられる。これらの乳化剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
【0210】
使用の際の乳化剤の濃度は、約0.001〜約20%(質量/容量)の範囲から適宜選択できる。さらに好ましくは約0.01〜約10%(質量/容量)の範囲で用いられる。特に好ましくは約0.05〜約5%(質量/容量)の範囲で用いられる。乳化工程には公知の混合装置が種々使い得る。例えば、断続振とう法、プロペラ型攪拌機あるいはタービン型攪拌機等のミキサーによる方法、回転子と固定子の間隔を狭くし、高速に回転する方法、超音波振動による方法、狭い間隔を音速以上の高速で通過させる方法、シラスバルーンを焼結した微細孔を有する無機質膜を通過させる方法等が挙げられる。
【0211】
このO/W型エマルションは、その乳化の程度で薬物の放出が影響を受け、乳化の程度が不十分であると初期バーストが大きくなる傾向にあり、内油相がある程度以上に微細な程、薬物とPHAの相互作用が強く、PHAによる放出制御がPHAの生分解性に依存して長期の放出制御をより正確にできるので好ましい。
【0212】
本発明のO/W型エマルションを製造する際の構成成分を供給する態様も公知の技術に従い、種々の方法が取り得る。例えば、予めPHAおよび磁性体溶液を容器に仕込み、そこへ乳化剤を含む水相成分を添加する方法、その添加順番を逆にする方法、あるいは両者を一定比率で連続的に供給する方法等が挙げられる。回転による混合の場合は、最初に示した順序が好ましく、この場合、初期にはPHAおよび磁性体が連続相を成し、水相が分散相を形成するいわゆるW/O型エマルションであり、水相成分の添加量の増加に伴い、W/O型からO/W型への転相が生じ、油相の粒状体化が促進される。
【0213】
有機溶媒を除去する方法は、自体公知の方法に従って行うことができる。例えばプロペラ型撹拌機あるいはマグネチックスターラー等で撹拌しながら常圧もしくは徐々に減圧にして有機溶媒を蒸発させる方法、ロータリーエバポレーター等を用いて真空度を調節しながら有機溶媒を蒸発させる方法等が挙げられる。このO/W型エマルションから液中乾燥する際に、有機溶媒が揮発し、マイクロカプセル等の構造体が固化してその構造が決定される。このようにして得られた構造体は遠心分離あるいは瀘過して分取した後、構造体の表面に付着している遊離の薬物、薬物保持物質、乳化剤等を蒸留水で数回繰り返し洗浄し、蒸留水等に再分散して凍結乾燥する。
【0214】
<相分離法 − 親油性薬物を内包 −>
相分離法によりマイクロカプセル等の構造体を製造する場合は、薬物、磁性体及びPHAとの有機溶媒溶液にコアセルベーション剤を一定速度で撹拌下徐々に加え、PHAを析出、固化させる。該コアセルベーション剤は、薬物とPHAとの有機溶媒溶液の体積の約0.01倍ないし約1,000倍の体積量が加えられる。さらに好ましくは、約0.05倍ないし約500倍の体積量である。特に好ましくは、約0.1倍ないし約200倍の体積量である。コアセルベーション剤としては、PHAの溶媒に混和する高分子系、鉱物油系または植物油系の化合物で、PHAを溶解しないものであればよい。具体的には、例えばシリコーン油,ゴマ油,大豆油,コーン油,綿実油,ココナツ油,アマニ油,鉱物油,n−ヘキサン,n−ヘプタン、メタノール、エタノール等が挙げられる。
【0215】
これらは2種以上混合して用いてもよい。このようにして得られたマイクロカプセル等の構造体は、瀘過して分取した後、ヘプタン等により繰り返し洗浄し、コアセルベーション剤を除去し、さらに、遊離薬物および溶媒の除去を行う。
【0216】
<マイクロカプセルおよびその製造方法 − 液相を内包 −>
本発明におけるマイクロカプセルは、シェル部にPHAが含有され、コア部に少なくとも液相を有し、更に磁性体をシェル部及び/またはコア部に含有する微粒子状の構造体としての形態を有することができ、その形態は、先に詳細に説明した。
【0217】
このマイクロカプセルは、例えば、内水相と、PHAおよび磁性体を含む油相とからなるW/O型エマルション、あるいは、該W/O型エマルションをさらに外水相に乳化したW/O/W型エマルション、PHAおよび磁性体を含む油相、および、外水相からなるO/W型エマルションをマイクロカプセル化することにより製造される。該マイクロカプセル化は、例えば液中乾燥法、相分離法、噴霧乾燥法またはこれらに準ずる方法によって行われる。
【0218】
また、PHA合成酵素および3−ヒドロキシアシルCoAを含む溶液を内水相とするW/O型エマルション、あるいは、内水相と油相とからなるW/O型エマルションをさらに外水相に乳化したW/O/W型エマルション(PHA合成酵素および3−ヒドロキシアシルCoAは内水相及び外水相の少なくとも一方に含まれる)、あるいは、PHA合成酵素および3−ヒドロキシアシルCoAを含む溶液を外水相とするO/W型エマルション、あるいは、該O/W型エマルションをさらに、外油相に乳化したO/W/O型エマルションを得、PHA合成反応を行うことにより、マイクロカプセルを調製する方法(in vitro合成法)についても好適に用いることができる。
【0219】
<W/O型エマルションの調製 − 液相を内包 −>
内水相と、PHAおよび磁性体を含む油相とからなるW/O型エマルションは、以下のようにして製造することができる。
【0220】
まず、内水相における水は、外油相の有機溶剤溶液と比重を合わせるために無機塩または有機塩を溶解させた水溶液の形態とすることができる。前記無機塩としては、例えば塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カルシウム、臭化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等があげられる。
【0221】
また、有機塩としては、例えば酢酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、リン酸、アスコルビン酸等の有機酸のナトリウム塩、カリウム塩等があげられる。これらのうち、本発明では、特に、経済性、比重の合わせ易さ、洗浄の容易さの点から塩化カルシウム水溶液を使用するのが望ましい。これらの無機塩または有機塩は、PHAおよび磁性体の有機溶剤溶液との比重を合わせるうえで、約1〜60(重量/容量)%、好ましくは約20〜50(重量/容量)%の濃度となるように水に添加される。これにより油相内に水滴が均一に分散したW/O型エマルションを得ることができる。
【0222】
このようにして得られる内水相とPHAおよび磁性体を含む溶液(油相)を混合し、ついで乳化操作を行いW/O型エマルションを調製する。該乳化操作としては、公知の方法が用いられる。例えば、断続振盪法、プロぺラ型攪拌機、タービン型攪拌機等のミキサーを用いる攪拌法、コロイドミル法、ホモジナイザー法、超音波照射法等が挙げられる。本発明では、これらの方法を適宜組み合わせて使用してもよい。特に、このW/O型エマルションを調製する一次乳化は、最終目的であるマイクロカプセル構造の均一性を保証するために重要であり、この段階で内水相をできる限りPHAの有機溶剤溶液内に均一に分散させることが必要である。このためには、内水相の水滴径をできるだけ小さくするのが好ましいので、超音波照射法を他の分散法と組み合わせる方法が好適に採用される。
【0223】
上記したPHAおよび磁性体を含む溶液(油相)としては、該PHAを水と実質的に混和しない有機溶媒に溶解したものが用いられる。該有機溶媒の水に対する溶解度は、好ましくは、常温(20℃)で3質量%以下である。また有機溶媒の沸点は120℃以下であることが好ましい。有機溶媒としては、例えばハロゲン化炭化水素(例、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等)、ケトン類(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エーテル類(例、テトラヒドロフラン、エチルエーテル、イソプロピルエーテル等)、エステル類(例、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン等)等が挙げられる。これらは2種以上適宜の割合で混合して用いてもよい。有機溶媒は、さらに
好ましくはハロゲン化炭化水素(例、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等)である。油相におけるPHAの濃度は、該PHAの種類、分子量、溶媒の種類によって異なるが、好ましくは約0.01〜80質量%である。さらに好ましくは約0.1〜70質量%である。特に好ましくは約1〜60質量%である。
【0224】
油相に分散する磁性体としては、例えば、磁性を有する金属または金属化合物が挙げられ、さらに具体的には、四三酸化鉄(Fe3O4)、γ−重三二酸化鉄(γ−Fe2O3)、MnZnフェライト、NiZnフェライト、 YFeガーネット、GaFeガーネット、Baフェライト、Srフェライト等各種フェライト、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、クロム等の金属、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル等の合金が挙げられる。また、油相における磁性体の処方量は、該磁性体の種類、溶媒の種類、PHAの処方量、等により異なるが、構造体の含有する磁性体の量が1〜80質量%、好ましくは5〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%になるように処方するとよい。
【0225】
なお、内水相との相溶性、後述する外水相への有機溶媒の分配、揮散等を変化させるため、油相に一部親水性の有機溶媒、例えばエタノール、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン等を添加してもよい。また、PHAの安定性に依存するが、PHAを含む溶液を室温ないし冷所で密閉容器の中で保存してもよい。
【0226】
水溶液とPHAを含む有機溶媒溶液との混合割合は、前者1重量部当たり、後者が約0.1〜1000重量部、好ましくは約1〜100重量部である。
【0227】
<W/O/W型エマルションの調製&液中乾燥法 − 液相を内包 −>
ついで、このようにして得られるW/O型エマルションをマイクロカプセル化工程に付す。例えば液中乾燥法等によりマイクロカプセル化を行う場合、W/O型エマルションをさらに水相(外水相)に加え、W/O/W型エマルションを製造した後、油相中の有機溶媒を除去し、マイクロカプセルを調製する。
【0228】
外水相の体積は、一般的には油相体積の約1ないし約10、000倍から選ばれる。さらに好ましくは、約2ないし約5、000倍から選ばれる。特に好ましくは、約5ないし約2、000倍から選ばれる。
【0229】
外相の水相中には乳化剤を加えてもよく、その例としては、一般に安定なW/O/W型エマルションを形成するものであればいずれでもよいが、たとえば、アニオン界面活性剤(例、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等)、非イオン性界面活性剤〔ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween 80、Tween 60、アトラスパウダー社製、米国)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体(HCO−70、HCO−60、HCO−50、日光ケミカルズ社製)等〕、あるいはポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、レシチン、ゼラチン、ヒアルロン酸それらの誘導体等が挙げられ、これらの中の一種類か、いくつかを組み合わせて使用してもよい。外水相における乳化剤の濃度は、約0.01〜20質量%、好ましくは約0.05〜10質量%の範囲から適宜決定される。
【0230】
上記外水相中に浸透圧調節剤を加えてもよい。本発明で用いられる浸透圧調節剤としては、水溶液とした場合浸透圧を示すものであればいかなる物質であってもよい。該浸透圧調節剤の具体例としては、例えば水溶性の多価アルコール類、水溶性の一価アルコール類、水溶性の単糖類、二糖類およびオリゴ糖あるいはそれらの誘導体、水溶性のアミノ酸、水溶性のペプチド、タンパク質あるいはそれらの誘導体等が挙げられる。
【0231】
上記水溶性の多価アルコール類としては、例えばグリセリン等の二価アルコール類、アラビトール、キシリトール、アドニトール等の五価アルコール類、マンニトール、ソルビトール、ズルシトール等の六価アルコール類等が挙げられる。これらのうち六価のアルコール類が好ましい。なかでも、マンニトールが特に好ましい。上記水溶性の一価アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。これらのうちエタノールが好ましい。上記水溶性の単糖類としては、例えばアラビノース、キシロース、リボース.2−デオキシリボース等の五炭糖類、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、マンノース、ソルボース、ラムノース、フコース等の六炭糖類が挙げられる。これらのうち六炭糖類が好ましい。上記水溶性の二糖類としては、例えば麦芽糖、セロビオース、α、α−トレハロース、乳糖、ショ糖等が挙げられる。これらのうち乳糖、ショ糖が好ましい。上記水溶性のオリゴ糖としては、例えばマルトトリオース、ラフィノース等の三糖類、スタキオース等の四糖類等が挙げられる。これらのうち三糖類が好ましい。上記水溶性の単糖類、二糖類およびオリゴ糖の誘導体としては、例えばグルコサミン、ガラクトサミン、グルクロン酸、ガラクツロン酸等が挙げられる。
【0232】
上記水溶液のアミノ酸としては、例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、セリン、トレオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、システイン、メチオニン等の中性アミノ酸、アイパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸等が挙げられる。またこれらの水溶性アミノ酸の酸(例、塩酸、硫酸、リン酸等)またはアルカリ(例、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属等)との塩を用いてもよい。水溶性のペプチド、タンパク質あるいはそれらの誘導体としては、例えばカゼイン、グロブリン、プロラミン、アルブミン、ゼラチン等が挙げられる。
【0233】
上記浸透圧調節剤のうち水溶性の多価アルコール類、ならびに水溶性の単糖類、二糖類およびオリゴ糖あるいはそれらの誘導体が好ましい。水溶性の多価アルコール類、水溶性の単糖類が更に好ましい。特に好ましくは水溶性の多価アルコール類である。これら浸透圧調節剤は、単独で使用しても、1種以上を混合して使用してもよい。これらの浸透圧調節剤は、外水相の浸透圧が生理食塩水の浸透圧の約1/50ないし約5倍、好ましくは約1/25ないし約3倍となる濃度で用いられる。具体的には、これらの浸透圧調節剤の外水相中での濃度は、浸透圧調節剤が非イオン性物質の場合、約0.001〜60質量%、好ましくは約0.01〜40質量%、より好ましくは約0.05〜30質量%、特に好ましくは約1〜10質量%である。また、浸透圧調節剤がイオン性物質の場合、上記の濃度を全体のイオン価で除した濃度が用いられる。浸透圧調節剤の添加濃度は、溶解度以下である必要はなく、一部が分散状態であってもよい。
【0234】
W/O型エマルションの水への乳化にあたっては、W/O型エマルションを水に分散させた後、攪拌操作を加える。攪拌操作としては、前述の乳化方法がいずれも採用可能であるが、特にホモジナイザーを用いるのが単一層の有機溶剤溶液相で水を包み込んだ構造を有する有機溶剤溶液のマイクロカプセルを得るうえで好ましい。ホモジナイザーを用いる場合は、100 〜100、000rpm、好ましくは1、000 〜50、000rpm で0.1 〜30分間、好ましくは0.5 〜20分間操作するのがよい。
【0235】
かかる操作により外部水相中でのW/O型エマルション滴の径を小さくする。つまり、このホモジナイザーによる攪拌はW/O型エマルション滴内の水相の分散状態を変えることなく、W/O型エマルション滴の径を低下させるのに有効である。ここで、W/O型エマルション滴の径を1 〜20μm にまで低下させることが最終的に得られるマイクロカプセルを高分子一枚膜構造とするためには重要である。次にこの状態で、プロペラ攪拌機等で攪拌下放置する。この際、W/O型エマルション滴中の内水相は不安定であるため、PHAの固化以前に互いに合一して混ざり合い、大きな一つの水滴になる。一方、W/O型エマルション自体は外水相内の乳化剤によって安定化されているため、結果として、内水相が単一層であるPHAの有機溶剤溶液相で囲まれたカプセル構造が形成されることになる。
【0236】
かかるカプセル構造をもつW/O型エマルション滴の形成を促すうえで、内水相の塩の種類およびその量、油相内のポリマーの濃度、油相(W/O型エマルション滴)およびこれを乳化させる外水相の各温度、さらに油相と水相の量比を適宜調節するのが好ましい。特に内水相内に無機塩を用いることで内水相の表面張力が増大し、水相の不安定化が促進され、粒子作成過程でW/O型エマルション滴内の水相がお互いに合一し、一枚膜構造のエマルションの割合が増加する。
【0237】
本発明の製造法において、W/O/W型乳化物を形成させる際にW/O型乳化物の粘度を50cpから10、000cpの範囲内に調整することが好ましい。粘度を調整する方法としては、例えば(1)油相のPHAおよび磁性体の濃度を調整する、(2)水相と油相との量比を調整する、(3)W/O型乳化物の温度を調整する、(4)外水相の温度を調整する、(5)W/O型乳化物を外水相に注入する際に、例えばラインヒーター、クーラー等でW/O型乳化物の温度を調整する等の方法が挙げられ、これらの方法は単独でも、組み合わせて使用してもよい。上記方法においては、要は、W/O型乳化物がW/O/W型乳化物になる時のW/O型乳化物の粘度が50cpから10、000cpの範囲内になるようにしさえすればよい。上記(1)において、油相のPHAの濃度を調整する場合の濃度は、PHAの種類、有機溶媒の種類等で変化するので一義的に決定されるものではないが、好ましくは約10〜80質量%である。上記(2)において、水相と油相との量比を調整する場合の量比は、油相の性質等によって一義的に決定されるものではないが、好ましくはW/O=約1〜50体積%である。上記(3)において、W/O型乳化物の温度を調整する場合の温度は、例えば約−20℃ないし有機溶媒の沸点の範囲、好ましくは約0〜30℃、更に好ましくは約10〜20℃である。W/O型乳化物の粘度調整の時期は、上記(1)および(2)の場合は、W/O型乳化物を製造する時点で行うことができる。また、上記(4)において、例えば外水相にW/O型乳化物を添加する際に外水相の温度をあらかじめ調整しておくことにより、上記(3)と同様の結果となるようにすればよい。外水相の温度は、例えば約5〜30℃、好ましくは約10〜25℃、更に好ましくは約12〜20℃である。
【0238】
有機溶媒を除去する方法は、公知の方法に従って行うことができる。例えばプロペラ型撹拌機あるいはマグネチックスターラー等で撹拌しながら常圧もしくは徐々に減圧にして有機溶媒を蒸発させる方法、ロータリーエバポレーター等を用いて真空度、温度を調節しながら有機溶媒を蒸発させる方法等が挙げられる。
【0239】
この後、必要に応じて、マイクロカプセルを遠心分離あるいはろ別により分取し、マイクロカプセルの表面に付着している乳化剤等を蒸留水で数回繰り返し洗浄し、さらに減圧乾燥、あるいは蒸留水に再分散後に凍結乾燥等により残存した溶媒・水分の除去を行っても良く、また、前記工程にて調製したマイクロカプセルスラリーを、そのまま適当な分散媒に分散し用いても良い。 蒸留水に再分散する際には分散剤を加えても良い。前記分散剤はマイクロカプセルの凝集を防止する作用を有する。分散剤としては、例えばTween80 系界面活性剤、ショ糖脂肪酸エステル、マンニトール、ソルビトール、グルコース、ガラクトース、ショ糖等が挙げられる。この分散剤は約0.001 〜30質量%濃度で水に溶解して使用される。
【0240】
また、生成したPHA一枚膜構造をもつマイクロカプセルはそのまま再分散させてもよいが、その中には多孔質構造をもつものが含まれるため、洗浄後、低速で遠心分離して非沈澱物と沈澱物とに分けてもよい。この遠心分離は約50〜3、000rpmの範囲の回転数で1〜60分間行うのが適当である。また、遠心分離は数回行うのが好ましい。
【0241】
遠心分離により非沈澱物相にはPHAからなる一枚膜構造のマイクロカプセルが回収される。また、乾燥したマイクロカプセルを得るために、必要ならば加温して行う減圧乾燥法、凍結乾燥法等が使用可能であるが、凍結乾燥法を使用するのが好ましい。
【0242】
かくして粒径が1 〜10μm のマイクロカプセルが得られる。このマイクロカプセルは後述の実施例に記載のようにカプセル表面に孔のない球形である。
【0243】
<相分離法 − 液相を内包 −>
相分離法によりマイクロカプセル化を行う場合、攪拌下、W/O型エマルションにコアセルベーション剤を徐々に加え、PHAを析出、固化させることにより、マイクロカプセルを調製する。コアセルベーション剤としては、PHAの溶剤に混和する高分子系、鉱物油系または植物油系の化合物で、カプセル化用のPHAを溶解しないものであればよく、例えばシリコーン油、ゴマ油、大豆油、コーン油、綿実油、ココナッツ油、アマニ油、鉱物油、n−ヘキサン、n−ヘプタン、メタノール、エタノール等が挙げられる。これらは2種以上を混合して用いてもよい。コアセルベーション剤の使用量は、W/O型エマルションに対し、例えば約0.01〜1、000容量倍、好ましくは約0.1〜200容量倍である。このようにして得られるマイクロカプセルを、遠心分離あるいはろ過により分取した後、ヘキサン、ヘプタン等の洗浄液で繰り返し洗浄して、コアセルベーション剤を除去し、その後、加温ないし減圧して洗浄液を蒸発させる。さらに、所望により、上記した水中乾燥法の場合と同様にして、有機溶媒の除去を行う。
【0244】
<噴霧乾燥法 − 液相を内包 −>
噴霧乾燥法によりマイクロカプセル化を行う場合、W/O型エマルションまたは水中乾燥法の場合と同様にして製造したW/O/W型エマルションを、ノズルを用いてスプレードライヤー装置(噴霧乾燥機)の乾燥室内へ噴霧し、極めて短時間に微粒化液滴内の有機溶媒および水を揮発させることにより、微粒状のマイクロカプセルを調製する。ノズルとしては、例えば二液体ノズル型、圧力ノズル型、回転ディスク型が挙げられる。このようにして得られるマイクロカプセルを、所望により、蒸留水で数回繰り返し洗浄して、マイクロカプセルの表面に付着している乳化剤等を除去する。ついで、洗浄されたマイクロカプセルを、減圧乾燥するか、あるいは蒸留水に再分散後凍結乾燥して、さらに有機溶媒の除去を行ってもよい。
【0245】
<O/W型エマルションの調製 − 液相を内包 −>
O/W型エマルションから液中乾燥法によりマイクロカプセルを製造する場合は、通常、PHA、磁性体および有機溶媒を含む油相を水相中に分散させて、O/W型エマルションを形成させた後、油相中の溶媒を除去することにより行われる。水相の体積は、一般的には油相体積の約1ないし約10、000倍から選ばれる。好ましくは、約2ないし約5、000倍から選ばれる。さらに好ましくは、約5ないし約2、000倍から選ばれる。特に好ましくは約50〜約1000倍である。該水相の温度は予め例えば約5℃ないし約30℃、好ましくは約10℃ないし約25℃、更に好ましくは約10℃ないし約20℃に調整しておいてもよい。上記水相中に乳化剤を加えてもよい。該乳化剤は、一般に安定なO/W型エマルションを形成できるものであればいずれでもよく、前述の乳化剤を好適に用いることができる。使用の際の乳化剤の濃度は、約0.001〜約20%(質量/容量)の範囲から適宜選択できる。さらに好ましくは約0.01〜約10%(質量/容量)の範囲で用いられる。特に好ましくは約0.05〜約5%(質量/容量)の範囲で用いられる。また、乳化工程についても、前述した公知の混合装置が種々使い得る。
【0246】
特に、このO/W型エマルションを調製する乳化は、最終目的であるマイクロカプセルの構造の均一性を保証するために重要であり、この段階でPHAおよび磁性体を含む内油相をできる限り外水相内に均一に分散させることが必要である。このためには、内油相の液滴径をできるだけ小さくするのが好ましいので、超音波照射法を他の分散法と組み合わせる方法が好適に採用される。
【0247】
本発明のO/W型エマルションを製造する際の構成成分を供給する態様も公知の技術に従い、種々の方法が取り得る。例えば、予めPHA溶液を容器に仕込み、そこへ乳化剤を含む水相成分を添加する方法、その添加順番を逆にする方法、あるいは両者を一定比率で連続的に供給する方法等が挙げられる。回転による混合の場合は、最初に示した順序が好ましく、この場合、初期にはPHAおよび磁性体が連続相を成し、水相が分散相を形成するいわゆるW/O型エマルションであり、水相成分の添加量の増加に伴い、W/O型からO/W型への転相が生じ、油相の微粒子化が促進される。
【0248】
有機溶媒を除去する方法は、前述の方法に従って行うことができる。このようにして得られたマイクロカプセルは、必要に応じて、遠心分離あるいは瀘過して分取した後、マイクロカプセルの表面に付着している乳化剤等を蒸留水で数回繰り返し洗浄し、蒸留水等に再分散して凍結乾燥して用いても良く、また、前記工程にて調製したマイクロカプセルスラリーを、そのまま適当な分散媒に分散し用いても良い。
【0249】
<中空構造体およびその製造方法>
本発明における中空マイクロカプセル等の中空構造体は、少なくとも、内部に気泡を含む、そのカプセル外被にPHAを含有する微粒子としての形態をとることができ、その形態は、先に詳細に説明した。
【0250】
本発明の超音波造影剤に利用可能な中空構造体は、例えば、内水相、および、有機溶媒、磁性体とPHAとを含む溶液を油相とするW/O型エマルション、または、該W/O型エマルションをさらに外水相に乳化したW/O/W型エマルション、あるいは、有機溶媒、磁性体とPHAとを含む溶液の内油相、および、外水相からなるO/W型エマルションを基に、その油相中のPHAを固化することで、中空マイクロカプセル化することにより製造される。該中空マイクロカプセル化は、例えば、液中乾燥法、相分離法、噴霧乾燥法またはこれらに準ずる方法によって行われる。
【0251】
また、PHA合成酵素および3−ヒドロキシアシルCoAを含む溶液を内水相とするW/O型エマルション、または、内水相と油相からなるW/O型エマルションをさらに外水相に乳化したW/O/W型エマルション(PHA合成酵素および3−ヒドロキシアシルCoAは内水相と外水相の少なくとも一方に含有される)、あるいは、PHA合成酵素および3−ヒドロキシアシルCoAを含む溶液を外水相とするO/W型エマルション、または、該O/W型エマルションをさらに外油相に乳化したO/W/O型エマルションを作製した上で、水相においてPHA合成反応を行い、これをカプセル化することにより、中空構造体を調製する方法(in vitro合成法)も好適に用いることができる。
【0252】
<W/O型エマルションの調製 − 中空構造体 −>
本発明の中空構造体を製造する際に利用する、内水相と、PHAおよび磁性体を含む油相とからなるW/O型エマルションは、以下のようにして調製することができる。
【0253】
まず、内水相に用いる水は、外油相の有機溶剤溶液と比重を合わせるため、必要に応じて、無機塩または有機塩を溶解させた水溶液の形態とすることができる。前記無機塩としては、例えば、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カルシウム、臭化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等があげられる。また、有機塩としては、例えば、酢酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、リン酸、アスコルビン酸等の有機酸のナトリウム塩、カリウム塩等があげられる。
【0254】
これらの水溶性塩のうち、本発明では、特に、経済性、比重調整の容易さ、洗浄の容易さの点から、塩化カルシウムを使用することが望ましい。これらの無機塩または有機塩は、PHAの有機溶剤溶液との比重を合わせる上では、約1〜60(質量/容量)%、好ましくは、約20〜50(質量/容量)%の濃度となるように水に添加される。これにより、水溶液の比重と、PHAおよび磁性体を含む油相の比重との差異を無くすことで、油相内に水滴が均一に分散したW/O型エマルションを得ることができる。
【0255】
内水相とする、前記の比重調整を施した水溶液と、PHAおよび磁性体を含む溶液(油相)とを混合し、ついで乳化操作を行いW/O型エマルションを調製する。この乳化操作では、公知の方法が用いられる。例えば、断続振盪法、プロぺラ型攪拌機、タービン型攪拌機等のミキサーを用いる攪拌法、コロイドミル法、ホモジナイザー法、超音波照射法等が挙げられる。本発明では、これらの方法を適宜組み合わせて使用してもよい。特に、このW/O型エマルションを調製する一次乳化は、そのW/O型エマルションの内水相の水滴径が、形成される中空構造体の中空部の大きさ、さらには、中空構造体の外径をも規定するので、最終目的である中空構造体の中空構造の均一性を保証するために重要である。すなわち、いずれの中空構造体にも同程度の一枚膜中空構造をもたせるためには、この段階で内水相をできる限りPHAおよび磁性体を含む有機溶剤溶液内に均一に分散させることが必要である。加えて、作製された中空構造体を超音波造影剤として使用する上では、中空構造体の外径を、例えば、10μm以下に留めることが望ましい。これをも考慮すると、内水相の水滴径をできるだけ小さくするのが好ましいので、超音波照射法を他の分散法と組み合わせる方法が好適に採用される。
【0256】
上記したPHAおよび磁性体を含む溶液(油相)は、該PHAを水と実質的に混和しない有機溶媒に溶解したものが用いられる。該有機溶媒の水に対する溶解度は、好ましくは、常温(20℃)で3質量%以下である。また有機溶媒の沸点は120℃以下であることが好ましい。有機溶媒としては、例えば、ハロゲン化炭化水素(例、ジクロロメタン,クロロホルム,クロロエタン,ジクロロエタン,トリクロロエタン,四塩化炭素等)、ケトン類(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エーテル類(例、テトラヒドロフラン、エチルエーテル、イソプロピルエーテル等)、エステル類(例、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン,トルエン,キシレン等)等が挙げられる。これらの有機溶媒は、2種以上適宜の割合で混合して用いてもよい。有機溶媒は、さらに好ましくは、ハロゲン化炭化水素(例、ジクロロメタン,クロロホルム,クロロエタン,ジクロロエタン,トリクロロエタン,四塩化炭素等)である。油相におけるPHAの濃度は、該PHAの種類、分子量、溶媒の種類によって異なるが、好ましくは、約0.01〜80質量%である。さらに好ましくは、約0.1〜70質量%である。特に好ましくは、約1〜60質量%である。
【0257】
油相に分散する磁性体としては、例えば、磁性を有する金属または金属化合物が挙げられ、さらに具体的には、四三酸化鉄(Fe3O4)、γ−重三二酸化鉄(γ−Fe2O3)、MnZnフェライト、NiZnフェライト、 YFeガーネット、GaFeガーネット、Baフェライト、Srフェライト等各種フェライト、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、クロム等の金属、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル等の合金が挙げられる。また、油相における磁性体の処方量は、該磁性体の種類、溶媒の種類、PHAの処方量、等により異なるが、構造体の含有する磁性体の量が1〜80質量%、好ましくは5〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%になるように処方するとよい。
【0258】
なお、内水相との相溶性、外水相への有機溶媒の分配、揮散等を変化させるため、油相に一部親水性の有機溶媒、例えば、エタノール、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン等を添加してもよい。また、PHAの安定性に依存するが、PHAを含む溶液を調製した後、それを室温ないし冷所で密閉容器の中で保存してもよい。
【0259】
水溶液とPHAを含む有機溶媒溶液との混合割合は、前者1質量部当たり、後者が約0.1〜1000質量部、好ましくは約1〜100質量部である。
【0260】
<W/O/W型エマルションの調製、ならびに液中乾燥法 − 中空構造体 −>
ついで、得られたW/O型エマルションを中空マイクロカプセル化工程に付す。例えば、液中乾燥法等により中空マイクロカプセル化を行う場合、W/O型エマルションを、さらに水相(以下、外水相と略記する)に加え、W/O/W型エマルションを製造した後、油相中の有機溶媒を除去し、中空構造体を調製する。
【0261】
外水相の容量は、一般的には、油相容量の約1ないし約10,000倍から選ばれる。さらに好ましくは、約2ないし約5,000倍から選ばれる。特に好ましくは、約5ないし約2,000倍から選ばれる。
【0262】
外水相中には乳化剤を加えてもよく、その例としては、一般に安定なW/O/W型エマルションを形成するものであればいずれでもよいが、たとえば、アニオン界面活性剤(例、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等)、非イオン性界面活性剤〔ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween 80,Tween 60,アトラスパウダー社製,米国)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体(HCO−70,HCO−60,HCO−50,日光ケミカルズ社製)等〕、あるいはポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、レシチン、ゼラチン、ヒアルロン酸それらの誘導体等が挙げられ、これらの中の一種類か、いくつかを組み合わせて使用してもよい。外水相における乳化剤の濃度は、約0.01〜20質量%、好ましくは、約0.05〜10質量%の範囲から適宜決定される。
【0263】
上記外水相中に浸透圧調節剤を加えてもよい。本発明の製造方法で用いられる浸透圧調節剤としては、水溶液とした場合、浸透圧を示すものであればいかなる物質であってもよい。該浸透圧調節剤の具体例としては、例えば、水溶性の多価アルコール類、水溶性の一価アルコール類、水溶性の単糖類、二糖類およびオリゴ糖あるいはそれらの誘導体、水溶性のアミノ酸、水溶性のペプチド,タンパク質あるいはそれらの誘導体等が挙げられる。
【0264】
上記水溶性の多価アルコール類としては、例えば、グリセリン等の二価アルコール類、アラビトール,キシリトール,アドニトール等の五価アルコール類、マンニトール,ソルビトール,ズルシトール等の六価アルコール類等が挙げられる。これらのうち六価のアルコール類が好ましい。なかでも、マンニトールが特に好ましい。上記水溶性の一価アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。これらのうちエタノールが好ましい。上記水溶性の単糖類としては、例えば、アラビノース,キシロース,リボース.2−デオキシリボース等の五炭糖類、ブドウ糖,果糖,ガラクトース,マンノース,ソルボース,ラムノース,フコース等の六炭糖類が挙げられる。これらのうち、六炭糖類が好ましい。上記水溶性の二糖類としては、例えば、麦芽糖、セロビオース、α,α−トレハロース、乳糖、ショ糖等が挙げられる。これらのうち、乳糖、ショ糖が好ましい。上記水溶性のオリゴ糖としては、例えば、マルトトリオース,ラフィノース等の三糖類、スタキオース等の四糖類等が挙げられる。それらのうちでは、三糖類が好ましい。上記水溶性の単糖類、二糖類およびオリゴ糖の誘導体としては、例えば、グルコサミン、ガラクトサミン、グルクロン酸、ガラクツロン酸等が挙げられる。
【0265】
上記水溶性のアミノ酸としては、例えば、グリシン,アラニン,バリン,ロイシン,イソロイシン,フェニルアラニン,チロシン,トリプトファン,セリン,トレオニン,プロリン,ヒドロキシプロリン,システイン,メチオニン等の中性アミノ酸、アイパラギン酸,グルタミン酸等の酸性アミノ酸、リジン,アルギニン,ヒスチジン等の塩基性アミノ酸等が挙げられる。またこれらの水溶性アミノ酸の酸(例、塩酸,硫酸,リン酸等)またはアルカリ(例、ナトリウム,カリウム等のアルカリ金属等)との塩を用いてもよい。水溶性のペプチド,タンパク質あるいはそれらの誘導体としては、例えばカゼイン,グロブリン,プロラミン,アルブミン,ゼラチン等が挙げられる。
【0266】
上記浸透圧調節剤のうち水溶性の多価アルコール類、ならびに水溶性の単糖類、二糖類およびオリゴ糖あるいはそれらの誘導体が好ましい。水溶性の多価アルコール類、水溶性の単糖類が更に好ましい。特に好ましくは水溶性の多価アルコール類である。これら浸透圧調節剤は、単独で使用しても、1種以上を混合して使用してもよい。これらの浸透圧調節剤は、外水相の浸透圧が生理食塩水の浸透圧の約1/50ないし約5倍、好ましくは約1/25ないし約3倍となる濃度で用いられる。具体的には、これらの浸透圧調節剤の外水相中での濃度は、浸透圧調節剤が非イオン性物質の場合、約0.001〜60質量%、好ましくは約0.01〜40質量%、より好ましくは約0.05〜30質量%、特に好ましくは約1〜10質量%である。また、浸透圧調節剤がイオン性物質の場合、上記の濃度を全体のイオン価で除した濃度が用いられる。ただし、浸透圧調節剤の添加濃度は、溶解度以下である必要はなく、一部が分散状態であってもよい。
【0267】
W/O型エマルションの水への乳化にあたっては、W/O型エマルションを水に分散させた後、攪拌操作を加える。攪拌操作としては、前述の乳化方法がいずれも採用可能であるが、特にホモジナイザーを用いることが、単一層の有機溶剤溶液相で水を包み込んだ構造を有する有機溶剤溶液のエマルション粒子(マイクロカプセル)を得る上で好ましい。ホモジナイザーを用いる場合は、100 〜100,000rpm、好ましくは1,000 〜50,000rpm で0.1 〜30分間、好ましくは0.5 〜20分間操作するのがよい。
【0268】
かかる操作により、外部水相中でのW/O型エマルション滴の外径を小さくする。つまり、このホモジナイザーによる攪拌はW/O型エマルション滴内の水相の分散状態を変えることなく、W/O型エマルション滴の外径を低下させるのに有効である。ここで、W/O型エマルション滴の外径を1 〜20μmにまで低下させることが、最終微粒子を高分子一枚膜構造とするためには重要である。次に、この状態で、プロペラ攪拌機等で攪拌下放置する。この際、W/O型エマルション滴中の内水相は不安定であるため、PHAの固化以前に、微細な水滴が互いに合一して混ざり合い、より大きな一つの微小水滴になる。一方、W/O型エマルション自体は外水相内の乳化剤によって安定化されているため、結果として、内水相が単一層であるPHAおよび磁性体の有機溶剤溶液相で囲まれたカプセル構造が形成されることになる。
【0269】
かかるカプセル構造をもつW/O型エマルション滴の形成を促すうえで、内水相の塩の種類およびその量、油相内のポリマーの濃度、油相(W/O型エマルション滴)およびこれを乳化させる外水相の各温度、さらに油相と水相の量比を適宜調節するのが好ましい。特に、内水相内に無機塩を用いることで内水相の表面張力が増大し、水相の不安定化が促進され、粒子作成過程でW/O型エマルション滴内の水相がお互いに合一し、一枚膜構造のエマルションの割合が増加する。
【0270】
本発明の製造方法において、W/O/W型乳化物を形成させる際に、W/O型乳化物の粘度を50cpから10,000cpの範囲内に調整することが好ましい。粘度を調整する方法としては、例えば、(1)油相のPHAおよび磁性体の濃度を調整する、(2)水相と油相との量比を調整する、(3)W/O型乳化物の温度を調整する、(4)外水相の温度を調整する、(5)W/O型乳化物を外水相に注入する際に、例えば、ラインヒーター、クーラー等でW/O型乳化物の温度を調整する等の方法が挙げられ、これらの方法は単独でも、組み合わせて使用してもよい。上記方法を用いて、W/O型乳化物を、W/O/W型乳化物にする際、そのW/O型乳化物の粘度を50cpから10,000cpの範囲内になるように、一時的に粘度を調整しさえすればよい。上記(1)において、油相のPHAの濃度を調整する場合、そのPHAの濃度は、PHAの種類、有機溶媒の種類等で変化するので一義的に決定されるものではないが、好ましくは、約10〜80質量%である。上記(2)において、水相と油相との量比を調整する場合の量比は、油相の性質等によって一義的に決定されるものではないが、好ましくは、W/O=約1〜50(容量/容量)%である。上記(3)において、W/O型乳化物の温度を調整する場合、その温度は、例えば、約−20℃ないし有機溶媒の沸点の範囲、好ましくは約0〜30℃、更に好ましくは約10〜20℃である。W/O型乳化物の粘度調整の時期は、上記(1)および(2)の場合は、W/O型乳化物を製造する時点で行うことができる。また、上記(4)において、例えば、外水相にW/O型乳化物を添加する際に、外水相の温度を予め調整しておくことにより、上記(3)と同様の結果となるようにすればよい。外水相の温度は、例えば、約5〜30℃、好ましくは約10〜25℃、更に好ましくは約12〜20℃である。
【0271】
有機溶媒を除去する方法は、公知の方法に従って行うことができる。例えば、プロペラ型撹拌機あるいはマグネチックスターラー等で撹拌しながら常圧もしくは徐々に減圧にして有機溶媒を蒸発させる方法、ロータリー・エバポレーター等を用いて真空度、温度を調節しながら有機溶媒を蒸発させる方法等が挙げられる。
【0272】
この後、微粒子状の中空構造体を遠心分離あるいはろ別により分取し、中空構造体の表面に付着している乳化剤等を蒸留水で数回繰り返し洗浄し、さらに減圧乾燥、あるいは蒸留水に再分散後に凍結乾燥等により残存した溶媒・水分の除去を行う。
【0273】
蒸留水に再分散する際に分散剤を加えても良い。前記分散剤は中空構造体の凝集を防止する作用を有する。分散剤としては、例えばTween80 系界面活性剤、ショ糖脂肪酸エステル、マンニトール、ソルビトール、グルコース、ガラクトース、ショ糖等が挙げられる。この分散剤は、約0.001 〜30質量%濃度で水に溶解して使用される。
【0274】
また、生成したPHA一枚膜構造をもつ微粒子はそのまま再分散させてもよいが、その中には多孔質構造をもつものが含まれるため、洗浄後、低速で遠心分離して非沈澱物と沈澱物とに分けてもよい。この遠心分離は約50〜3,000rpmの範囲の回転数で1〜60分間行うのが適当である。また、遠心分離は数回行うのが好ましい。
【0275】
遠心分離により非沈澱物相にはPHAからなる一枚膜構造の磁性体含有中空構造体が回収され、この一枚膜構造中空構造体を使用した超音波造影剤は高い超音波造影効果を発揮する。また、乾燥した微粒子を得るために、必要ならば加温して行う減圧乾燥法、凍結乾燥法等が使用可能であるが、凍結乾燥法を使用するのが好ましい。
【0276】
かくして粒径が1 〜10μm の中空構造体が得られる。この中空構造体は後述の実施例に記載のように微粒子表面に孔のない、内部に中空体を多く含む球形である。
【0277】
<相分離法 − 中空構造体 −>
相分離法により中空マイクロカプセル化を行う場合、攪拌下、W/O型エマルションにコア・セルベーション剤を徐々に加え、PHAを析出、固化させることにより、中空構造体を調製する。コア・セルベーション剤としては、PHAの溶剤に混和する高分子系、鉱物油系または植物油系の化合物で、カプセル化用のPHAを溶解しないものであればよく、例えば、シリコーン油、ゴマ油、大豆油、コーン油、綿実油、ココナッツ油、アマニ油、鉱物油、n−ヘキサン、n−ヘプタン、メタノール、エタノール等が挙げられる。これらは2種以上を混合して用いてもよい。コア・セルベーション剤の使用量は、W/O型エマルションに対し、例えば約0.01〜1,000容量倍、好ましくは約0.1〜200容量倍である。このようにして得られる微粒子状の中空構造体を、遠心分離あるいはろ過により分取した後、ヘキサン,ヘプタン等の洗浄液で繰り返し洗浄して、コア・セルベーション剤を除去し、その後、加温ないし減圧して洗浄液を蒸発させる。さらに、所望により、上記した水中乾燥法の場合と同様にして、有機溶媒の除去を行う。
【0278】
<噴霧乾燥法 − 中空構造体 −>
噴霧乾燥法により中空マイクロカプセル化を行う場合、W/O型エマルションまたは水中乾燥法の場合と同様にして製造したW/O/W型エマルションを、ノズルを用いてスプレー・ドライヤー装置(噴霧乾燥機)の乾燥室内へ噴霧し、極めて短時間に微粒化液滴内の有機溶媒および水を揮発させることにより、微粒状の中空構造体を調製する。ノズルとしては、例えば二液体ノズル型、圧力ノズル型、回転ディスク型が挙げられる。このようにして得られる中空構造体を、所望により、蒸留水で数回繰り返し洗浄して、中空構造体の表面に付着している乳化剤等を除去する。ついで、洗浄された微粒子を、減圧乾燥するか、あるいは蒸留水に再分散後凍結乾燥して、さらに有機溶媒の除去を行ってもよい。
【0279】
<O/W型エマルションの調製 − 中空構造体 −>
O/W型エマルションを基にして、液中乾燥法により中空構造体を製造する場合は、通常、PHA、磁性体および有機溶媒を含む油相を水相中に分散させて、O/W型エマルションを形成させた後、油相中の有機溶媒を除去することにより行われる。水相の体積は、一般的には油相体積の約1ないし約10,000倍から選ばれる。好ましくは、約2ないし約5,000倍から選ばれる。さらに好ましくは、約5ないし約2,000倍から選ばれる。特に好ましくは約50〜約1000倍である。該水相の温度は予め例えば約5℃ないし約30℃、好ましくは約10℃ないし約25℃、更に好ましくは約10℃ないし約20℃に調整しておいてもよい。上記水相中に乳化剤を加えてもよい。該乳化剤は、一般に安定なO/W型エマルションを形成できるものであればいずれでもよく、前述の乳化剤を好適に用いることができる。使用の際の乳化剤の濃度は、約0.001〜約20%(質量/容量)の範囲から適宜選択できる。さらに好ましくは約0.01〜約10%(質量/容量)の範囲で用いられる。特に好ましくは約0.05〜約5%(質量/容量)の範囲で用いられる。また、乳化工程についても、前述した公知の混合装置が種々使い得る。
【0280】
特に、このO/W型エマルションを調製する乳化は、油相の液滴径が中空構造体の外径を規定し、延いては、中空部の構造をも規定するので、最終目的である中空構造体の中空構造の均一性を保証するために重要である。いずれの中空構造体にも同程度の中空構造をもたせるためには、この段階でPHAおよび磁性体を含む内油相をできる限り外水相内に均一に分散させることが必要である。このためには、内油相の液滴径をできるだけ小さくするのが好ましいので、超音波照射法を他の分散法と組み合わせる方法が好適に採用される。
【0281】
本発明の製造方法に利用するO/W型エマルションを製造する際の構成成分を供給する態様も公知の技術に従い、種々の方法が取り得る。例えば、予め、PHAおよび磁性体を含む溶液を容器に仕込み、そこへ乳化剤を含む水相成分を添加する方法、その添加順番を逆にする方法、あるいは両者を一定比率で連続的に供給する方法等が挙げられる。回転による混合の場合は、最初に示した順序が好ましく、この場合、初期にはPHAおよび磁性体を含む油相が連続相を成し、水相が分散相を形成するいわゆるW/O型エマルションであり、水相成分の添加量の増加に伴い、W/O型からO/W型への転相が生じ、油相からの中空構造体の形成(微粒子化)が促進される。
【0282】
有機溶媒を除去する方法は、前述のW/O型エマルションに対しても適用される方法に従って行うことができる。このようにして得られた中空構造体は遠心分離あるいは瀘過して分取した後、中空構造体の表面に付着している乳化剤等を蒸留水で数回繰り返し洗浄し、蒸留水等に再分散して凍結乾燥する。
【0283】
<in vitro合成法>
in vitro合成法による構造体製造工程は、前述のようにW/O型エマルション、あるいは該W/O型エマルションから調製した、あるいは別途調製したW/O/W型エマルション、またはO/W型エマルション、あるいは該O/W型エマルションからO/W/O型エマルションを調製する工程、PHA合成酵素に3−ヒドロキシアシルCoAを反応させてPHAを合成させる工程とを少なくとも含むものである。
【0284】
PHA合成酵素等の酵素タンパク質は、アミノ酸が多数結合したポリペプチドであり、リシン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の遊離のイオン性基を有するアミノ酸によって親水性を示し、またアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、プロリン等の遊離の疎水性基を有するアミノ酸によって、また有機高分子であるという点で疎水性を有している。従って、程度の差はあるが、親水性と疎水性の両方の性質を有する水相/油相界面に存在させることが可能である。
【0285】
ここで、反応液(水相)のpHや塩濃度、温度によってPHA合成酵素の表面電荷の正負や電荷量、疎水性が変化するので、酵素活性上許容される範囲内で反応液の調整を行うことが望ましい。例えば、塩濃度を下げることにより、PHA合成酵素の電荷量を増やすことができる。また、pHを変える事により、反対電荷を増やすことができる。また、塩濃度を上げることによって疎水性を増やすことができる。また、予め電気泳動やぬれ角等を測定し、PHA合成酵素の荷電状態や疎水性を調べることで、反応に適した溶液条件を設定をすることもできる。さらに、各エマルションにおいて水相/油相界面におけるPHA合成酵素の存在量を直接測定して条件を求めることもできる。界面における存在量の測定は、例えば、濃度既知のPHA合成酵素溶液を用いて、各エマルションを調製した後、水相中のフリーのPHA合成酵素濃度を測定することにより求めることが可能である。
【0286】
3−ヒドロキシアシルCoAの重合によりPHAが合成される反応において放出されるCoA量が1分間に1μmolとなるPHA合成酵素量を1単位(U)としたとき、反応に供する酵素の量は、例えば、油相1 gあたり10 単位(U)から1、000単位(U)、望ましくは50 単位(U)から500単位(U) の範囲内に設定すると良い。
【0287】
前記のPHA合成酵素ならびに所望のPHAの原料となる3−ヒドロキシアシルCoAを含む反応液中で、水相/油相界面のPHA合成酵素によりPHAが合成されることにより、水相が内水相としてPHAにより被覆された構造体を形成する。W/O型エマルションあるいはO/W型エマルションにおける水相は、PHA合成酵素の活性を発揮させ得る条件に調整された反応系として構成されるべきであり、例えば通常、pH5.5からpH9.0、好ましくはpH7.0からpH8.5となるよう、緩衝液により調製する。ただし、使用するPHA合成酵素の至適pHやpH安定性によっては、上記範囲以外に条件を設定することも除外されない。緩衝液の種類は、使用するPHA合成酵素の活性を発揮させ得るものであれば、設定するpH領域等に応じて適宜選択して用いることができるが、例えば、一般の生化学反応に用いられる緩衝液、具体的には、酢酸バッファー、リン酸バッファー、リン酸カリウムバッファー、3−(N−モルフォリノ)プロパンスルフォン酸(MOPS)バッファー、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルフォン酸(TAPS)バッファー、トリス塩酸バッファー、グリシンバッファー、2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルフォン酸(CHES)バッファー等を用いると良い。緩衝液の濃度も、使用するPHA合成酵素の活性を発揮させ得るものであれば特に限定はされないが、通常5.0 mMから1.0 M、好ましくは0.1 Mから0.2 Mの濃度のものを使用すると良い。反応温度は、使用するPHA合成酵素の特性に応じて適宜設定するものであるが、通常、4℃から50℃、好ましくは20℃から40℃に設定すると良い。ただし、使用するPHA合成酵素の至適温度や耐熱性によっては、上記範囲以外に条件を設定することも除外されない。反応時間は、使用するPHA合成酵素の安定性等にもよるが、通常、1分間から24時間、好ましくは30分間から3時間の範囲内で適宜選択して設定する。反応液中の3−ヒドロキシアシルCoA濃度は、使用するPHA合成酵素の活性を発揮させ得る範囲内で適宜設定するものであるが、通常、0.1 mMから1.0M、好ましくは0.2 mMから0.2 Mの範囲内で設定すると良い。なお、反応液中における3−ヒドロキシアシルCoA濃度が高い場合、一般に、反応系のpHが低下する傾向にあるため、3−ヒドロキシアシルCoA濃度を高く設定する場合は、前記の緩衝液濃度も高めに設定することが好ましい。
【0288】
また、PHA合成工程において、水系反応液中の3−ヒドロキシアシルCoAの種類や濃度等の組成を経時的に変化させることによって、内側から外側に向かう方向に構造体を構成するPHAのモノマーユニット組成を変化させることができる。マイクロカプセル構造を形成する場合には、シェルを構成するPHAの内側から外側へ向かう方向でのPHAのモノマーユニット組成を変化させることができる。
【0289】
このモノマーユニット組成の変化した構造体の形態として、例えば、PHA被膜の組成変化が連続的で、内側から外側に向かう方向に組成の勾配を形成した1層のPHAが薬物を被覆したマイクロカプセルとして形態を挙げることができる。製造方法としては、例えば、PHAを合成しながら反応液中に別組成の3−ヒドロキシアシルCoAを添加する等の方法によればよい。
【0290】
また別の形態として、PHA被膜の組成変化が段階的で、組成の異なるPHAが薬物を多層に被覆したマイクロカプセルとしての形態を挙げることができる。この製造方法としては、ある3−ヒドロキシアシルCoAの組成でPHAを合成した後、遠心分離等によって調製中のマイクロカプセルを反応液からいったん回収し、これに異なる3−ヒドロキシアシルCoAの組成からなる反応液を再度添加する等の方法によればよい。
【0291】
以上、W/O型エマルションおよびO/W型エマルションからのマイクロカプセル化を含む構造体化について説明したが、W/O/W型エマルションあるいはO/W/O型エマルションについても同様にして構造体を製造することができる。W/O/W型エマルションについては、内水相および外水相それぞれにPHA合成酵素および3−ヒドロキシアシルCoAを含有させることが可能であるが、薬物の取り込み率を高くするためには外水相にのみPHAを合成させることも好ましい。また、磁性体をカプセルに内包し、磁性体のカプセル表面への露出を最小限とするためには、外水相においてPHAを合成させることがより好ましい。さらに、O/W/O型エマルションについても、磁性体のカプセル表面への露出を最小限とするためには、磁性体は内油相にのみ含有させることがより好ましい。W/O/W型エマルションについては、内水相および外水相におけるPHA合成酵素および3−ヒドロキシアシルCoAの存在形態については3種類の組合せが考えられるが、薬物の取り込み率、その放出特性、製造工程の簡便さ、コスト等を考慮して決定すればよい。
【0292】
上記反応により得られた構造体は、必要に応じて、洗浄工程に供する。粒状体の洗浄方法は、マイクロカプセル等の構造体の製造の目的上好ましくない変化を、構造体に及ぼすものでない限り、特に限定はされない。例えば、瀘過して分取した後、ヘプタン等により繰り返し洗浄し、遊離薬物および溶媒の除去を行う。また、遠心分離によって該構造体を沈殿させ、上清を除去することによって、反応液に含まれる不要成分を除去することができる。ここにヘプタン等の該PHAが不溶である洗浄剤を添加し、遠心分離をする操作を行うことにより、さらに洗浄することもできる。さらに、上記構造体は、必要に応じて、乾燥工程に供することができる。さらに該構造体に各種二次加工や化学修飾等の処理を施して使用することもできる。
【0293】
例えば、マイクロカプセル等の構造体の表層のPHAに化学修飾を施すことにより、さらに有用な機能・特性を備えた構造体を得ることができる。例えば、グラフト鎖を導入することにより、該グラフト鎖に起因する各種の特性、例えば徐放性の制御、液相あるいは気相の保持機能が向上したマイクロカプセル等の構造体を得ることができる。また、マイクロカプセル等の構造体の表層のPHAを架橋化せしめることにより、マイクロカプセルの徐放性の制御、液相あるいは気相の保持機能の向上が可能である。
【0294】
化学修飾の方法は、所望の機能・構造を得る目的を満たす方法であれば特に限定はされないが、例えば、反応性官能基を側鎖に有するPHAを合成し、該官能基の化学反応を利用して化学修飾する方法を、好適な方法として用いることができる。
【0295】
前記の反応性官能基の種類は、所望の機能・構造を得る目的を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、前記したエポキシ基を例示することができる。エポキシ基を側鎖に有するPHAは、通常のエポキシ基を有するポリマーと同様の化学的変換を行うことができる。具体的には、例えば水酸基に変換したり、スルホン基を導入することが可能である。また、チオールやアミンを有する化合物を付加することもでき、例えば、末端に反応性官能基を有する化合物、具体的には、エポキシ基との反応性が高いアミノ基を末端に有する化合物等を添加して反応させることにより、ポリマーのグラフト鎖が形成される。
【0296】
アミノ基を末端に有する化合物としては、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、アミノ変性ポリシロキサン(アミノ変性シリコーンオイル)等のアミノ変性ポリマーを例示することができる。このうち、アミノ変性ポリシロキサンとしては、市販の変性シリコーンオイルを使用しても良く、また、J.Amer.Chem.Soc.、78、2278(1956)等に記載の方法で合成して使用することもでき、該ポリマーのグラフト鎖の付加による徐放性の制御、液相あるいは気相の保持機能の向上、水溶液中での自己分散性の向上等の効果が期待できる。
【0297】
また、エポキシ基を有するポリマーの化学的変換の他の例として、ヘキサメチレンジアミン等のジアミン化合物、無水コハク酸、2−エチル−4−メチルイミダゾール等による架橋反応が、物理化学的変換の例として電子線照射等による架橋反応が挙げられる。このうち、エポキシ基を側鎖に有するPHAとヘキサメチレンジアミンとの反応は、下記のスキームに示すような形で進行し、架橋ポリマーが生成する。
【0298】
【化80】
Figure 2004331750
このようにして得られた構造体の、粒子全体に占める内包部の体積比率は約10%から90%の範囲であり、構造体の機能、機械的強度等を考慮すれば、約35%から85%程度がより好ましい範囲である。
【0299】
得られたマイクロカプセル等の構造体において、薬物がPHAで被覆されていることを確認する方法としては、一般には、例えば、ガスクロマトグラフィー等による組成分析と電子顕微鏡等による形態観察とを組み合わせた方法や、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)とイオンスパッタリング技術を用いて、各構成層のマススペクトルから構造を判定する方法等を用いることができる。しかし、さらに直接的かつ簡便な確認方法として、本発明者らによって新たに開発された、ナイルブルーA染色と蛍光顕微鏡観察とを組み合わせた方法を用いることもできる。本発明者らは、PHA合成酵素を用いた無細胞系(in vitro)でのPHA合成を簡便に判定できる方法について鋭意検討を続けてきた結果、PHAに特異的に結合して蛍光を発する性質を有する薬剤であり、Appl.Environ.Microbiol.、44、238−241(1982) において微生物細胞(in vivo)でのPHA生産の簡易的判別に用いることができると報告されているナイルブルーAが、適切な使用方法および使用条件の設定によって、無細胞系でのPHA合成の判定にも用いることができることを見出し、上記の方法を完成させた。即ち、本方法では、所定濃度のナイルブルーA溶液を濾過したのち、PHAを含む反応液に混合し、蛍光顕微鏡で一定の波長の励起光を照射しながら観察することにより、合成されたPHAのみから蛍光を発せしめ、これを観察することによって、無細胞系でのPHA合成を簡易に判定することができる。上記方法を本発明の構造体の製造に応用することにより、疎水溶液の表面を被覆したPHAを直接的に観察し、評価することができる。
【0300】
<賦形剤 − 親水性薬物を内包 −>
本発明の徐放性製剤は、賦形剤を含有していることが好ましい。賦形剤としては、生体内に投与しても毒性が少なく、凍結乾燥または噴霧乾燥等の乾燥が容易で、生体内に投与した場合速やかに溶解するか、また、用時溶解するものであることが望まれる。このような賦形剤としては、例えば糖、セルロース誘導体、アミノ酸、タンパク質、ポリアクリル酸誘導体、有機塩、無機塩等が挙げられる。これらの賦形剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。ここにおいて、糖としては、例えばD−マンニトール、アルギン酸ナトリウム、果糖、デキストラン、デキストリン、白糖、D−ソルビトール、ラクトース、ブドウ糖、マルトース、デンプン類、トレハロース等が挙げられる。セルロース誘導体としては、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネート等が挙げられる。アミノ酸としては、例えばグリシン、アラニン、チロシン、アルギニン、リジン等が挙げられる。タンパク質としては、例えばゼラチン、フィブリン、コラーゲン、アルブミン等が挙げられる。ポリアクリル酸誘導体としては、例えばポリアクリル酸ナトリウム、メタアクリル酸/アクリル酸共重合体(オイドラギット、ローム社製、ドイツ)等が挙げられる。有機塩としては、例えばクエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。無機塩としては、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等が挙げられる。賦形剤としては、上記以外に、徐放性製剤用基剤であるポリマーを溶解しない水溶性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等も用いられる。賦形剤は、好ましくは糖類であり、とりわけ凍結乾燥が容易で毒性が少ないD−マンニトールが好ましい。
【0301】
賦形剤の使用量は、賦形剤の溶解度、賦形剤を溶解して得られる溶液の張度、粘度、分散性、安定性等によって決定されるが、徐放性製剤を乾燥した場合に、乾燥徐放性製剤中の賦形剤の含量が、例えば約0.5〜99質量%、好ましくは約1〜90質量%、より好ましくは約2〜60質量%となるように用いられる。賦形剤としてD−マンニトールを用いる場合は、乾燥徐放性製剤中の賦形剤の含量が、約2〜40質量%となることが特に好ましい。これらの賦形剤の添加によって、1)徐放性製剤(特にマイクロスフェア)の乾燥時および乾燥後の粒子の接触および衝突の頻度が低下し、凍結乾燥または噴霧乾燥時の粒子の均一性が保たれる、2)徐放性製剤のガラス転移点以上の温度での乾燥が可能となり、より完全な水または有機溶媒の除去が可能となる、3)徐放性製剤の経時的安定性が改善され、分散性が良好で、冷所保存に限定されることなく、例えば室温での長期使用期限を有する徐放性製剤が得られる等の優れた効果が得られる。
【0302】
本発明において、賦形剤を含有する徐放性製剤は、例えば上記した水中乾燥法、相分離法または噴霧乾燥法によって得られる構造体と賦形剤とを混合することによって製造することができる。構造体は、洗浄後に減圧乾燥したもの、あるいは洗浄後に蒸留水に再分散し凍結乾燥したものであってもよい。混合の方法は、特に限定されず、例えば混合機等を用いて行われるが、均一な混合物を得られるような方法が好ましい。また、賦形剤を含有する徐放性製剤は、例えば噴霧乾燥法により構造体を製造する場合に、W/O型エマルションの噴霧と同時に賦形剤の水溶液を別ノズルから噴霧することによっても製造することができる。さらに、賦形剤を含有する徐放性製剤は、水中乾燥法および噴霧乾燥法において用いられるW/O/W型エマルションを製造する際に、外水相に賦形剤の水溶液を使用することによっても製造することができる。賦形剤を含有する徐放性製剤は、好ましくは水中乾燥法、相分離法または噴霧乾燥法によって得られる構造体を洗浄し、洗浄された構造体を、賦形剤を溶解または懸濁した蒸留水に分散し、ついで凍結乾燥または減圧乾燥することによって製造される。また、洗浄された構造体を蒸留水に分散し、得られる分散液に賦形剤を溶解または懸濁した後に、凍結乾燥または減圧乾燥を行ってもよい。とりわけ、洗浄された構造体を賦形剤を溶解した蒸留水に分散するか、洗浄された構造体を蒸留水に分散して得られる分散液に賦形剤を溶解した後に、凍結乾燥することにより、均一な混合物が得られる。
【0303】
<加熱処理 − 親水性薬物を内包 −>
さらに、上記した水中乾燥法、相分離法または噴霧乾燥法によって得られる構造体を、所望により、PHAのガラス転移温度 (Tg) 以上で、構造体の各粒子が互いに付着しない程度の温度に加熱することより、構造体中の水および有機溶媒の除去をより完全に行うとともに、徐放性の改善を行うことができる。この際、有機溶媒は、約1000ppm未満、好ましくは約500ppm 未満、より好ましくは約100ppm 未満程度まで除去することが好ましい。加熱の時期は、所望により賦形剤を添加した後、構造体を凍結乾燥または減圧乾燥した後が好ましいが、特に限定されるものではなく、例えば小分け後でもよい。
【0304】
加熱温度がPHAのガラス転移温度未満では、水または有機溶媒の除去が充分でない場合があり、また高温過ぎると構造体の融着、変形、薬物の分解、劣化等の危険性が増大するので、加熱温度は一概に定義できないが、PHAの物性(例、分子量、安定性等)、薬物、構造体の平均粒子径、加熱時間、構造体の乾燥程度、加熱方法等を考慮し、適宜決定することができる。好ましくは、PHAのガラス転移温度以上で、該構造体の各粒子が互いに付着しない程度の温度で加熱乾燥する。より好ましくは、PHAのガラス転移温度からガラス転移温度より約30℃高い温度以下の温度、さらに好ましくはPHAのガラス転移温度からガラス転移温度より約20℃高い温度以下の温度である。加熱時間は、加熱温度、処理する構造体量等によって異なるが、一般的には構造体自体の温度が所定の温度に達した後、約6〜120時間、さらに好ましくは約12〜96時間である。また、加熱時間の上限は、残存有機溶媒、水分が許容値以下になれば特に限定されないが、ガラス転移温度以上の条件下では構造体が軟化し、構造体同士の物理的接触あるいは構造体積層時の荷重により変形するので、有機溶媒、水分の残存が許容値以下になったら、速やかに加熱を終了することが好ましい。加熱方法は特に限定されないが、構造体が均一に加熱される方法であればいかなる方法を用いてもよい。加熱乾燥方法の好ましい具体例として、例えば恒温槽、流動槽、移動層あるいはキルン中で加熱乾燥する方法、マイクロ波で加熱乾燥する方法等が用いられる。これらの中で、恒温槽中で加熱乾燥する方法が好ましい。上記のように、凍結乾燥の後、構造体を減圧下加温することにより、構造体中の有機溶媒が効率よく除去され、生体に安全な構造体を得ることができる。このようにして得られた構造体中の有機溶媒残存量は、約100ppm以下である。
【0305】
<凝集防止剤 − 親油性薬物を内包 −>
水中乾燥法、コアセルベーション法およびin vitro合成法での製造では、洗浄中の粒子状の構造体同士の凝集を防ぐために、洗浄液である蒸留水に凝集防止剤を加えてもよい。該凝集防止剤としては、例えばマンニトール,ラクトース,ブドウ糖,デンプン類(例、コーンスターチ等)等の水溶性多糖、グリシン,フィブリン,コラーゲン等のタンパク質、塩化ナトリウム,リン酸水素ナトリウム等の無機塩類等が挙げられる。
【0306】
<噴霧乾燥法 − 親油性薬物を内包 −>
噴霧乾燥法によってマイクロカプセル等の構造体を製造する場合には、薬物とPHAとの有機溶媒溶液または分散液を、ノズルを用いてスプレードライヤー(噴霧乾燥器)の乾燥室内へ噴霧し、極めて短時間に微粒化液滴内の有機溶媒を揮発させ、構造体を調製する。該ノズルとしては、二流体ノズル型、圧力ノズル型、回転ディスク型等が挙げられる。このとき、所望によって薬物とPHAとの有機溶媒溶液または分散液と同時に構造体の凝集防止を目的として前述の凝集防止剤の水溶液を別ノズルより噴霧することも有効である。このようにして得られた構造体は、必要であれば加温・減圧下において構造体中の水分および有機溶媒の除去をさらに行う。
【0307】
<有機溶媒除去方法 − 親油性薬物を内包 −>
有機溶媒を除去する方法は、前述のとおり公知の方法に従って行うことができる。例えばプロペラ型撹拌機あるいはマグネチックスターラー等で撹拌しながら常圧もしくは徐々に減圧にして有機溶媒を蒸発させる方法、ロータリーエバポレーター等を用いて真空度を調節しながら有機溶媒を蒸発させる方法等が挙げられる。このO/W型エマルションから液中乾燥する際に、有機溶媒が揮発、固化して構造体の構造が決定される。このようにして得られた構造体は遠心分離あるいは瀘過して分取した後、構造体の表面に付着している遊離の薬物、薬物保持物質、乳化剤等を蒸留水で数回繰り返し洗浄し、蒸留水等に再分散して凍結乾燥する。
【0308】
<凝集防止剤 − 親油性薬物を内包 −>
凍結乾燥の際に、凝集防止剤を加えてもよい。該凝集防止剤としては、例えばマンニトール,澱粉類(例、コーンスターチ等)等の水溶性多糖、無機塩類、アミノ酸、タンパク質等が挙げられる。これらのうち好ましくはマンニトールである。構造体と凝集防止剤との混合比(質量比)は、約50:1ないし約1:1、好ましくは約20:1ないし約1:1、更に好ましくは約10:1ないし約5:1である。洗浄中の粒子同士の凝集を防ぐために、洗浄液である蒸留水に凝集防止剤を加えてもよい。該凝集防止剤としては、例えばマンニトール,ラクトース,ブドウ糖,デンプン類(例、コーンスターチ等)等の水溶性多糖、グリシン,フィブリン,コラーゲン等のタンパク質、塩化ナトリウム,リン酸水素ナトリウム等の無機塩類等が挙げられる。凝集防止剤は、好ましくはマンニトールである。
【0309】
<加温処理 − 親油性薬物を内包 −>
また、凍結乾燥の後、さらに減圧下加温することにより、構造体中の水分および有機溶媒の除去をさらに行い、徐放性の改善を行なってもよい。加熱温度がPHAのガラス転移温度未満では、薬物の過剰量の初期放出性改善の効果がなく、また高温過ぎると構造体の融着,変形,薬物の分解,劣化等の危険性が増大する。加熱温度は一概にいえないが、PHAの物性(例、分子量,安定性等)、薬物、マイクロカプセル等の構造体の平均粒子径、加熱時間、構造体の乾燥程度、加熱方法等を考慮し適宜決定することができる。有機溶媒は1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満程度まで除くのがよい。
【0310】
好ましくは、PHAのガラス転移温度以上で、該構造体の各粒子が互いに付着しない程度の温度で加熱乾燥する。好ましくは、PHAのガラス転移温度からガラス転移温度より約30℃高い温度範囲内で加熱乾燥する。より好ましくは、ガラス転移温度以上ガラス転移温度より10℃高い温度以下の温度、さらに好ましくはガラス転移温度以上ガラス転移温度より5℃高い温度以下(特にガラス転移温度より3ないし4℃高い温度)で加熱乾燥すると徐放性が改善される。加熱乾燥時間も加熱温度,処理する構造体量等によって異なるが、一般的にはマイクロカプセル等の構造体自体の温度が所定の温度に達した後、約24ないし約120時間が好ましい。さらに約48ないし約120時間が好ましい。特に約48〜約96時間が好ましい。とりわけ、上限に関しては、加熱時間は残存有機溶媒、水分が許容値以下であれば何時間でもよいが、ガラス転移温度以上の条件下では構造体は軟化しており、構造体同志の物理的接触あるいは積層時の荷重により変形する。従って、有機溶媒、水分の残存が許容値以下になったら速やかに加熱乾燥を終了することが望ましい。
【0311】
加熱方法は特に限定されないが、構造体が均一に加熱される方法であればいかなる方法を用いてもよい。該加熱乾燥方法の好ましい具体例として、例えば恒温槽,流動槽,移動槽あるいはキルン中で加熱乾燥する方法、マイクロ波で加熱乾燥する方法等が用いられる。これらの中で、恒温槽中で加熱乾燥する方法が好ましい。
【0312】
<油相あるいは水相含有物 − 液相を内包 −>
上記マイクロカプセルに担持される物質は、本発明のマイクロカプセルの用途により適宜選択される。
【0313】
本発明のマイクロカプセルを例えば人工赤血球用マイクロカプセルとして用いる場合には、マイクロカプセルに担持される物質としては、ヘモグロビン、ヘモシアニン等を挙げることができる。
【0314】
本発明のマイクロカプセルを例えばインク用、トナー用あるいは塗料用マイクロカプセルとして用いる場合には、マイクロカプセルに担持される物質としては、染料水溶液や顔料分散液等、具体的にはC.I.アシッドレッド52、C.I.アシッドブルー1、C.I.アシッドブラック2、同123等の酸性染料、C.I.ベーシックブルー7、C.I.ベーシックレッド1等の塩基性染料、C.I.ダイレクトブラック19、C.I.ダイレクトブルー86等の直接染料等の直接染料、C.I.ソルベントブラック7、同123、C.I.ソルベントレッド8、同49、同100、C.I.ソルベントブルー2、同25、同55、同70、C.I.ソルベントグリーン3、C.I.ソルベントイエロー21、同61、C.I.ソルベントオレンジ37、C.I.ソルベントバイオレット8、同21等の油溶性染料、C.I.リアクティブイエロー15、42;C.I.リアクティブレッド24、218;C.I.リアクティブブルー38、220等の反応性染料、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、マグネタイト等の黒色顔料、黄鉛、亜鉛黄、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザーイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等の黄色顔料、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンジGK等の橙色顔料、ベンカラ、カドミウムレッド鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、ブリリアントカーミン3B、エオキシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ等の赤色顔料、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー一部分塩素化合物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC等の青色顔料、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等の紫色顔料、酸化クロム、クロムグリーン、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等の緑色顔料、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等の白色顔料、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等の体質顔料等を挙げることが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0315】
本発明のマイクロカプセルを例えば薬物徐放用カプセルとして用いる場合には、マイクロカプセルに担持される薬物としては、水易溶解性の薬物ならびに水難溶解性(脂溶性)の薬物の両方を挙げることができる。このような薬物としてたとえばステロール(たとえばコレステロール、シトステロール)、エストロゲン(たとえばエストロン、エストラジオールおよびそのエステル、エチニルエストラジオール等)、コルチコイドおよびそれらのエステル、カルシトニンのようなペプチドホルモン、抗生物質(たとえばゲンタマイシン、バンコマイシン、アミカシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、ミノサイクリン、テトラサイクリン等)、クロラムフェニコール、マクロライド抗生物質(たとえばエリスロマイシンおよびその誘導体、特にそのパルミテートおよびステアレート、またはスピラマイシン等)、抗寄生菌剤および皮膚用薬剤(たとえばクロトリマゾール、ミコナゾール、ジスラノール等)、消炎鎮痛剤(たとえばインドメタシン、ジクロフェナック、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、4−ビフェニル酢酸およびそのエチルエステル等)、シアノコバラミンのようなビタミン類、ウロキナーゼのような酵素剤、フルオロウラシル、アラシチジンのような制癌制等が挙げられる。
【0316】
<賦形剤 − 気相を内包 −>
本発明の中空構造体を利用して調製される超音波造影剤は、賦形剤を含有していても良い。該賦形剤としては、生体内に投与しても毒性が少なく、凍結乾燥または噴霧乾燥等の乾燥が容易で、生体内に投与した場合速やかに溶解するか、また、用時溶解するものであることが望まれる。このような賦形剤としては、例えば、糖、セルロース誘導体、アミノ酸、タンパク質、ポリアクリル酸誘導体、有機塩、無機塩等が挙げられる。これらの賦形剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
【0317】
賦形剤に利用可能な糖としては、例えば、D−マンニトール、アルギン酸ナトリウム、果糖、デキストラン、デキストリン、白糖、D−ソルビトール、ラクトース、ブドウ糖、マルトース、デンプン類、トレハロース等が挙げられる。セルロース誘導体としては、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネート等が挙げられる。
【0318】
また、アミノ酸としては、例えば、グリシン、アラニン、チロシン、アルギニン、リジン等が挙げられる。タンパク質としては、例えば、ゼラチン、フィブリン、コラーゲン、アルブミン等が挙げられる。ポリアクリル酸誘導体としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、メタアクリル酸/アクリル酸共重合体(オイドラギット、ローム社製、ドイツ)等が挙げられる。有機塩としては、例えば、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。無機塩としては、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等が挙げられる。
【0319】
賦形剤としては、上記以外に、PHAを溶解しない水溶性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等も用いられる。賦形剤は、好ましくは糖類であり、とりわけ凍結乾燥が容易で毒性が少ないD−マンニトールが好ましい。
【0320】
賦形剤の使用量は、賦形剤の溶解度、賦形剤を溶解して得られる溶液の張度,粘度,分散性,安定性等によって決定されるが、超音波造影剤を乾燥した場合に、乾燥超音波造影剤中の賦形剤の含量が、例えば約0.5〜99質量%、好ましくは約1〜90質量%、より好ましくは約2〜60質量%となるように用いられる。賦形剤としてD−マンニトールを用いる場合は、乾燥超音波造影剤中の賦形剤の含量が、約2〜40質量%となることが特に好ましい。これらの賦形剤の添加によって、1)超音波造影剤(特にマイクロスフェア)の乾燥時および乾燥後の粒子の接触および衝突の頻度が低下し、凍結乾燥または噴霧乾燥時の粒子の均一性が保たれる、2)超音波造影剤のガラス転移点以上の温度での乾燥が可能となり、より完全な水または有機溶媒の除去が可能となる、3)超音波造影剤の経時的安定性が改善され、分散性が良好で、冷所保存に限定されることなく、例えば室温での長期使用期限を有する超音波造影剤が得られる等の優れた効果が得られる。
【0321】
本発明において、賦形剤をも含有する超音波造影剤は、例えば、上記した水中乾燥法、相分離法または噴霧乾燥法によって得られる中空構造体と、賦形剤とを混合することによって製造することができる。該中空構造体は、洗浄後に減圧乾燥したもの、あるいは洗浄後に蒸留水に再分散し凍結乾燥したものであってもよい。混合の方法は、特に限定されず、例えば、混合機等を用いて行われるが、均一な混合物を得られるような方法が好ましい。
【0322】
また、賦形剤を含有する超音波造影剤は、例えば、噴霧乾燥法により中空構造体を製造する場合に、W/O型エマルションの噴霧と同時に賦形剤の水溶液を別ノズルから噴霧することによっても製造することができる。さらに、賦形剤を含有する超音波造影剤は、水中乾燥法および噴霧乾燥法において用いられるW/O/W型エマルションを製造する際に、外水相に賦形剤の水溶液を使用することによっても製造することができる。賦形剤を含有する超音波造影剤は、好ましくは水中乾燥法、相分離法または噴霧乾燥法によって得られる中空構造体を洗浄し、洗浄された中空構造体を、賦形剤を溶解または懸濁した蒸留水に分散し、ついで凍結乾燥または減圧乾燥することによって製造される。また、洗浄された中空構造体を蒸留水に分散し、得られる分散液に賦形剤を溶解または懸濁した後に、凍結乾燥または減圧乾燥を行ってもよい。とりわけ、洗浄された中空構造体を賦形剤を溶解した蒸留水に分散するか、洗浄された中空構造体を蒸留水に分散して得られる分散液に賦形剤を溶解した後に、凍結乾燥することにより、均一な混合物が得られる。
【0323】
<加熱処理 − 気相を内包 −>
さらに、上記した水中乾燥法、相分離法または噴霧乾燥法によって得られる中空構造体を、所望により、PHAのガラス転移温度 (Tg) 以上で、該中空構造体の各粒子が互いに付着しない程度の温度に加熱することより、中空構造体中の水および有機溶媒の除去をより完全に行うとともに、気泡の保持機能の改善を行うことができる。その際、有機溶媒は、約1000ppm未満、好ましくは約500ppm 未満、より好ましくは約100ppm 未満程度まで除去することが好ましい。加熱の時期は、所望により賦形剤を添加した後、中空構造体を凍結乾燥または減圧乾燥した後が好ましいが、特に限定されるものではなく、例えば小分け後でもよい。
【0324】
加熱温度がPHAのガラス転移温度未満では、水または有機溶媒の除去が充分でない場合があり、また高温過ぎると中空構造体微粒子の融着、変形等の危険性が増大するので、加熱温度は一概に定義できないが、PHAの物性(例、分子量、安定性等)、中空構造体の平均粒子径、加熱時間、中空構造体の乾燥程度、加熱方法等を考慮し、適宜決定することができる。好ましくは、PHAのガラス転移温度以上で、該中空構造体の各粒子が互いに付着しない程度の温度で加熱乾燥する。より好ましくは、PHAのガラス転移温度からガラス転移温度より約30℃高い温度以下の温度、さらに好ましくはPHAのガラス転移温度からガラス転移温度より約20℃高い温度以下の温度である。
【0325】
加熱時間は、加熱温度,処理する中空構造体量等によって異なるが、一般的には中空構造体自体の温度が所定の温度に達した後、約6〜120時間、さらに好ましくは約12〜96時間である。また、加熱時間の上限は、残存有機溶媒、水分が許容値以下になれば特に限定されないが、ガラス転移温度以上の条件下では中空構造体が軟化し、中空構造体同士の物理的接触あるいは中空構造体積層時の荷重により変形するので、有機溶媒、水分の残存が許容値以下になったら、速やかに加熱を終了することが好ましい。
【0326】
加熱方法は特に限定されないが、中空構造体が均一に加熱される方法であればいかなる方法を用いてもよい。該加熱乾燥方法の好ましい具体例として、例えば恒温槽,流動槽,移動層あるいはキルン中で加熱乾燥する方法、マイクロ波で加熱乾燥する方法等が用いられる。これらの中で、恒温槽中で加熱乾燥する方法が好ましい。上記のように、凍結乾燥の後、中空構造体を減圧下加温することにより、中空構造体中の有機溶媒が効率よく除去され、生体に安全な中空構造体を得ることができる。このようにして得られた中空構造体中の有機溶媒残存量は、約100ppm以下である。
【0327】
<応用 − 親水性薬物を内包 −>
本発明に用いられる薬物としては、その種類は特に限定されず、生理活性ポリペプチド、抗生物質、抗真菌剤、抗高脂血症剤、循環器官用剤、抗血小板薬(抗血小板凝集抑制剤)、抗脂血症剤、抗凝血剤、止血剤、抗腫瘍剤、解熱剤、鎮痛剤、消炎剤、鎮咳去たん剤、鎮静剤、筋弛緩剤、抗てんかん剤、抗潰瘍剤、抗うつ剤、抗アレルギー剤、強心剤、抗不整脈治療剤、血管拡張剤、降圧利尿剤、糖尿病治療剤、ホルモン剤、抗結核剤、麻薬拮抗剤、骨吸収抑制剤、骨形成促進剤、血管新生阻害剤等からなる群から選ばれる1種または2種以上を用いることが可能であるが、特には水溶性薬物が好ましい。
【0328】
<製剤 − 親水性薬物を内包 −>
本発明の徐放性製剤は、本発明のマイクロカプセル等の構造体をそのままあるいはそれを原料物質として種々の剤形に製剤化し、例えば注射剤、埋め込み剤、経口投与製剤(例、散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等)、経鼻投与製剤、坐剤(例、直腸坐剤、膣坐剤等)等のいずれであってもよい。これらの製剤は、製剤分野において通常一般に用いられる公知の方法によって製造することができる。例えば注射剤は、上記した構造体を、水性あるいは油性の分散媒に分散することにより製造される。水性分散媒としては、例えば蒸留水に等張化剤(例、塩化ナトリウム、ブドウ糖、D−マンニトール、ソルビトール、グリセリン等)、分散剤(例、Tween 80、HCO−50、HCO−60、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等)、保存剤(例、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、フェノール等)、無痛化剤(例、ブドウ糖、グルコン酸カルシウム、塩酸プロカイン等)等を溶解した溶液が挙げられる。また、油性分散媒としては、例えばオリーブ油、ゴマ油、ラッカセイ油、大豆油、コーン油、中鎖脂肪酸グリセリド等が挙げられる。該注射剤は、プレフィルドシリンジのチャンバー内に充填されてもよいし、また、分散媒と構造体をいわゆるダブルチャンバープレフィルドシリンジ(DPS)内の異なるチャンバーに分離して充填してもよい。また、注射剤を製造する際、構造体に、上記の組成以外に、さらに、賦形剤(例、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、ブドウ糖等)を加えて、再分散した後、凍結乾燥もしくは噴霧乾燥して固型化し、用時に、注射用蒸留水あるいは適当な分散媒を加えると、より安定した徐放性注射剤が得られる。この場合の粒子径は、例えば懸濁注射剤として使用する場合にはその分散度、通針性を満足する範囲であればよく、例えば、平均粒子径として約0.1ないし約500μmの範囲が挙げられる。好ましくは、約1ないし約300μmの範囲の粒子径である。さらに好ましくは、約2ないし約200μmの範囲の平均粒子径である。また、前記のように浸透圧調節剤を水相中に加えることにより、構造体の形状を通針により適した球状にすることもできる。構造体を無菌製剤にするには、例えば製造全工程を無菌にする方法、ガンマ線で滅菌する方法、防腐剤を添加する方法等が挙げられるが、特に限定されない。
【0329】
経口投与製剤は、例えば上記した構造体に、賦形剤(例、乳糖、白糖、デンプン等)、崩壊剤(例、デンプン、炭酸カルシウム等)、結合剤(例、デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース等)、滑沢剤(例、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000等)等を添加して圧縮成形し、次いで必要により、味のマスキング、腸溶性あるいは持続性の目的のため自体公知の方法でコーティングすることにより製造できる。コーティング剤としては、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、ツイーン80、ブルロニックF68、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネート、オイドラギット(ローム社製、ドイツ、メタアクリル酸・アクリル酸共重合)および色素(例、酸化チタン、ベンガラ等)等が用いられる。
【0330】
経鼻投与製剤は、固状、半固状または液状のいずれであってもよい。固状の経鼻投与製剤は、例えば上記したマイクロカプセル等の構造体そのままであってもよいが、通常該構造体に賦形剤(例、グルコース、マンニトール、デンプン、微結晶セルロース等)、増粘剤(例、天然ガム類、セルロース誘導体、アクリル酸重合体等)等を添加、混合することにより製造できる。例えば液状の経鼻投与製剤は、上記した注射剤の場合と同様にして製造することができる。また、これらの経鼻投与製剤は、いずれも、pH調節剤(例、炭酸、リン酸、クエン酸、塩酸、水酸化ナトリウム等)、防腐剤(例、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウム等)等を含んでいてもよい。
【0331】
坐剤は、油性または水性であってよく、また、固状、半固状あるいは液状のいずれであってもよい。坐剤は、通常油性基剤、水性基剤または水性ゲル基剤を用いて製造される。油性基剤としては、例えば高級脂肪酸のグリセリド〔例、カカオ脂、ウイテプゾル類(ダイナマイトノーベル社、ドイツ)等〕、中級脂肪酸〔例、ミグリオール類(ダイナマイトノーベル社、ドイツ)等〕、あるいは植物油(例、ゴマ油、大豆油、綿実油等)等が挙げられる。水性基剤としては、例えばポリエチレングリコール類、プロピレングリコール等が挙げられる。水性ゲル基剤としては、例えば天然ガム類、セルロース誘導体、ビニール重合体、アクリル酸重合体等が挙げられる。
【0332】
本発明の徐放性製剤は、低毒性で哺乳動物(例、ヒト、牛、豚、犬、ネコ、マウス、ラット、ウサギ等)に対して安全に用いることができる。徐放性製剤の投与量は、薬物の種類と含量、剤形、薬物放出の持続時間、対象疾病〔例、前立腺癌、前立腺肥大症、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮線維腫、思春期早発症、乳癌、膀胱癌、子宮頚部癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、大腸癌、胃炎、ホジキン病、悪性黒色腫、転移、多発性骨髄腫、非ホジキン性リンパ腫、非小細胞肺癌、卵巣癌、消化性潰瘍、全身性真菌感染症、小細胞肺癌、心弁膜症、乳腺症、多嚢胞性卵巣、不妊、慢性無排卵症婦人における適性排卵誘発、ざそう(アクネ)、無月経(例、続発性無月経)、卵巣および乳房の嚢胞性疾患(多嚢胞性卵巣を含む)、婦人科系の癌、卵巣性高アンドロゲン血症および多毛症、胸腺幼若化を介したT細胞産生によるAIDS、男性性犯罪者の治療のための男性避妊等のホルモン依存性疾患の治療および避妊、月経前症候群(PMS)の症状軽減、体外受精(IVF)等〕、対象動物等によって種々異なるが、薬物の有効量であればよい。薬物の1回あたりの投与量としては、例えば徐放性製剤が1カ月製剤である場合、好ましくは、成人1人当たり約0.01mgないし約100mg/kg体重の範囲から適宜選ぶことができる。さらに好ましくは、約0.05mgないし約50mg/kg体重の範囲から適宜選ぶことができる。特に好ましくは、約0.1mgないし約10mg/kg体重の範囲から適宜選ぶことができる。1回あたりの徐放性製剤の投与量は成人1人当たり好ましくは、約0.1mgないし約500mg/kg体重の範囲から適宜選ぶことができる。さらに好ましくは、約0.2mgないし約300mg/kg体重の範囲から適宜選ぶことができる。投与回数は、数週間に1回、1か月に1回、あるいは数か月に1回等、薬物の種類と含量、剤形、薬物放出の持続時間、対象疾病、対象動物等によって適宜選ぶことができる。
【0333】
<応用 − 親油性薬物を内包 −>
本発明に用いられる薬物としては、その種類は特に限定されず、抗生物質、抗真菌剤、抗高脂血症剤、循環器官用剤、抗血小板薬(血小板凝集抑制剤)、抗腫瘍剤、解熱剤、鎮痛剤、消炎剤、鎮咳去たん剤、鎮静剤、抗てんかん剤、抗潰瘍剤、抗うつ剤、抗アレルギー剤、強心剤、不整脈治療剤、血管拡張剤、降圧利尿剤、糖尿病治療剤、ホルモン剤、骨吸収抑制剤からなる群から選ばれる1種または2種以上を用いることが可能であるが、特には難水溶性薬物が好ましく、例えばステロイド系統の薬物、プロテイン薬物、ペプチド薬物、5−フルオロウラシル、Me−CCUN、オメプラゾル(omeprazole)、プラチナ製剤(具体的にはシスプラチン、カルボプラチン、イソプラチン又はこれらの修飾体等)の如き抗癌剤及びその他の一般的な抗生剤等が好適に使用可能である。
【0334】
<製剤 − 親油性薬物を内包 −>
本発明の徐放性製剤は、本発明のマイクロカプセル等の構造体をそのまま、あるいは、構造体を原料物質として種々の剤形に製剤化し、例えば注射剤、埋め込み剤、経口投与製剤(例、散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等)、経鼻投与製剤、坐剤(例、直腸坐剤、膣坐剤等)等のいずれであってもよい。
【0335】
これらの製剤は、製剤分野において通常一般に用いられる公知の方法によって製造することができる。例えば注射剤は、上記した構造体を、水性あるいは油性の分散媒に分散することにより製造される。水性分散媒としては、例えば蒸留水に等張化剤(例、塩化ナトリウム、ブドウ糖、D−マンニトール、ソルビトール、グリセリン等)、分散剤(例、Tween 80、HCO−50、HCO−60、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等)、保存剤(例、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、フェノール等)、無痛化剤(例、ブドウ糖、グルコン酸カルシウム、塩酸プロカイン等)等を溶解した溶液が挙げられる。また、油性分散媒としては、例えばオリーブ油、ゴマ油、ラッカセイ油、大豆油、コーン油、中鎖脂肪酸グリセリド等が挙げられる。該注射剤は、プレフィルドシリンジのチャンバー内に充填されてもよいし、また、分散媒と構造体をいわゆるダブルチャンバープレフィルドシリンジ(DPS)内の異なるチャンバーに分離して充填してもよい。また、注射剤を製造する際、構造体に、上記の組成以外に、さらに、賦形剤(例、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、ブドウ糖等)を加えて、再分散した後、凍結乾燥もしくは噴霧乾燥して固型化し、用時に、注射用蒸留水あるいは適当な分散媒を加えると、より安定した徐放性注射剤が得られる。この場合の粒子径は、例えば懸濁注射剤として使用する場合にはその分散度、通針性を満足する範囲であればよく、例えば、平均粒子径として約0.1ないし約500μmの範囲が挙げられる。好ましくは、約1ないし約300μmの範囲の粒子径である。さらに好ましくは、約2ないし約200μmの範囲の平均粒子径である。また、前記のように浸透圧調節剤を水相中に加えることにより、構造体の形状を通針により適した球状にすることもできる。構造体を無菌製剤にするには、例えば製造全工程を無菌にする方法,ガンマ線で滅菌する方法,防腐剤を添加する方法等が挙げられるが、特に限定されない。
【0336】
経口投与製剤は、例えば上記したマイクロカプセル等の構造体に、賦形剤(例、乳糖、白糖、デンプン等)、崩壊剤(例、デンプン、炭酸カルシウム等)、結合剤(例、デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース等)、滑沢剤(例、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000等)等を添加して圧縮成形し、次いで必要により、味のマスキング,腸溶性あるいは持続性の目的のため自体公知の方法でコーティングすることにより製造できる。コーティング剤としては、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース,エチルセルロース,ヒドロキシメチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,ポリオキシエチレングリコール,ツイーン80,ブルロニックF68,セルロースアセテートフタレート,ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート,ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネート,オイドラギット(ローム社製,ドイツ,メタアクリル酸・アクリル酸共重合)および色素(例、酸化チタン,ベンガラ等)等が用いられる。
【0337】
経鼻投与製剤は、固状、半固状または液状のいずれであってもよい。固状の経鼻投与製剤は、例えば上記したマイクロカプセル等の構造体そのままであってもよいが、通常該構造体に賦形剤(例、グルコース、マンニトール、デンプン、微結晶セルロース等)、増粘剤(例、天然ガム類、セルロース誘導体、アクリル酸重合体等)等を添加、混合することにより製造できる。例えば液状の経鼻投与製剤は、上記した注射剤の場合と同様にして製造することができる。また、これらの経鼻投与製剤は、いずれも、pH調節剤(例、炭酸、リン酸、クエン酸、塩酸、水酸化ナトリウム等)、防腐剤(例、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウム等)等を含んでいてもよい。
【0338】
坐剤は、油性または水性であってよく、また、固状、半固状あるいは液状のいずれであってもよい。坐剤は、通常油性基剤、水性基剤または水性ゲル基剤を用いて製造される。油性基剤としては、例えば高級脂肪酸のグリセリド〔例、カカオ脂、ウイテプゾル類(ダイナマイトノーベル社、ドイツ)等〕、中級脂肪酸〔例、ミグリオール類(ダイナマイトノーベル社、ドイツ)等〕、あるいは植物油(例、ゴマ油、大豆油、綿実油等)等が挙げられる。水性基剤としては、例えばポリエチレングリコール類、プロピレングリコール等が挙げられる。水性ゲル基剤としては、例えば天然ガム類、セルロース誘導体、ビニール重合体、アクリル酸重合体等が挙げられる。
【0339】
本発明の徐放性製剤は、低毒性で哺乳動物(例、ヒト,牛,豚,犬,ネコ,マウス,ラット,ウサギ等)に対して安全に用いることができる。徐放性製剤の投与量は、薬物の種類と含量、剤形、薬物放出の持続時間、対象疾病〔例、前立腺癌,前立腺肥大症,子宮内膜症,子宮筋腫,子宮線維腫,思春期早発症,乳癌,膀胱癌,子宮頚部癌,慢性リンパ性白血病,慢性骨髄性白血病,大腸癌,胃炎,ホジキン病,悪性黒色腫,転移,多発性骨髄腫,非ホジキン性リンパ腫,非小細胞肺癌,卵巣癌,消化性潰瘍,全身性真菌感染症,小細胞肺癌,心弁膜症,乳腺症,多嚢胞性卵巣,不妊,慢性無排卵症婦人における適性排卵誘発,ざそう(アクネ),無月経(例、続発性無月経),卵巣および乳房の嚢胞性疾患(多嚢胞性卵巣を含む),婦人科系の癌,卵巣性高アンドロゲン血症および多毛症,胸腺幼若化を介したT細胞産生によるAIDS,男性性犯罪者の治療のための男性避妊等のホルモン依存性疾患の治療および避妊,月経前症候群(PMS)の症状軽減,体外受精(IVF)等〕、対象動物等によって種々異なるが、薬物の有効量であればよい。薬物の1回あたりの投与量としては、例えば徐放性製剤が1カ月製剤である場合、好ましくは、成人1人当たり約0.01mgないし約100mg/kg体重の範囲から適宜選ぶことができる。さらに好ましくは、約0.05mgないし約50mg/kg体重の範囲から適宜選ぶことができる。特に好ましくは、約0.1mgないし約10mg/kg体重の範囲から適宜選ぶことができる。1回あたりの徐放性製剤の投与量は成人1人当たり好ましくは、約0.1mgないし約500mg/kg体重の範囲から適宜選ぶことができる。さらに好ましくは、約0.2mgないし約300mg/kg体重の範囲から適宜選ぶことができる。投与回数は、数週間に1回、1か月に1回、あるいは数か月に1回等、薬物の種類と含量、剤形、薬物放出の持続時間、対象疾病、対象動物等によって適宜選ぶことができる。
【0340】
<応用 − 液相を内包 −>
本発明のマイクロカプセルを例えば人工赤血球組成物として用いる場合には、マイクロカプセル化工程で得られるスラリーを生理食塩水に懸濁し、さらにゲルろ過法、遠心分離法等公知の手段によって粗大粒子を除去する。
【0341】
本発明のマイクロカプセルを例えばインク組成物として用いる場合には、水性媒体に分散される。水性媒体への分散を補助する目的で、界面活性剤や保護コロイド、さらには水溶性有機溶剤等を、塗膜の耐水性を著しく低下させない範囲で添加することもできる。また防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤等を添加することもできる。本発明の水性顔料インクに添加しても良い保護コロイドとして具体的には、にかわ、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、アラビアゴム、フィッシュグリュー等の天然タンパク質やアルギン酸、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、芳香族アミド、ポリアクリル酸、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、アクリル、ポリエステル等の合成高分子等が挙げられる。保護コロイドは、定着性や粘度調節、速乾性を挙げる目的で、必要に応じて使用されるものであり、インク中の保護コロイドの含有割合は、30質量%以下が好ましく、20質量%以下が特に好ましい。
【0342】
本発明の水性顔料インクに添加しても良い界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、両性イオン性、非イオン性のいずれの活性剤でも良い。アニオン性界面活性剤の例としては、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、半硬化牛脂脂肪酸ナトリウム、等の脂肪酸塩類;ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸トリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、オクタデシル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類;ノニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のベンゼンスルホン酸塩類;ドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物等のナフタレンスルホン酸塩類;スルホコハク酸ジドデシルナトリウム、スルホコハク酸ジオクタデシルナトリウム等のスルホコハク酸エステル塩類;ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸トリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレン硫酸エステル塩類;ドデシルリン酸カリウム、オクタデシルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩類等が挙げられる。カチオン性界面活性剤の例としては、酢酸オクタデシルアンモニウム、ヤシ油アミン酢酸塩等のアルキルアミン塩類;塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、塩化ドデシルベンジルジメチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩類が挙げられる。両性イオン性活性剤の例としては、ドデシルベタイン、オクタデシルベタイン等のアルキルベタイン類;ドデシルジメチルアミンオキシド等のアミンオキシド類等が挙げられる。非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテル、ポリオキシエチレン(9−オクタデセニル)エーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンフェニルエーテル類;ポリ酸化エチレン、コ−ポリ酸化エチレン酸化プロピレン等のオキシラン重合体類;ソルビタンドデカン酸エステル、ソルビタンヘキサデカン酸エステル、ソルビタンオクタデカン酸エステル、ソルビタン(9−オクタデセン酸)エステル、ソルビタン(9−オクタデセン酸)トリエステル、ポリオキシエチレンソルビタンドデカン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンヘキサデカン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンオクタデカン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンオクタデカン酸トリエステル、ポリオキシエチレンソルビタン(9−オクタデセン酸)エステル、ポリオキシエチレンソルビタン(9−オクタデセン酸)トリエステル等のソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビトール(9−オクタデセン酸)テトラエステル等のソルビトール脂肪酸エステル類;グリセリンオクタデカン酸エステル、グリセリン(9−オクタデセン酸)エステル等のグリセリン脂肪酸エステル類が挙げられる。これらの非イオン性活性剤の中でもHLBが14以上のものが特に好ましい。本発明に用いる上記界面活性剤の配合量は、単独使用の場合又は2種以上を混合使用する場合によりその配合量は変動するが、インク組成物全量に対して0〜10質量%、好ましくは0〜5質量%である。本発明の水性顔料インク組成物は、組成物全量に対して水が20〜95質量%、顔料が1〜60体積%の範囲で含有することが好ましい。
【0343】
<パーフルオロカーボン − 気相を内包 −>
本発明の超音波造影剤に利用される中空構造体の中空内にパーフルオロカーボンのガスを充満させるには、前記中空構造体を水中で分散させた後、減圧下で乾燥し、ついで減圧状態の乾燥機内にパーフルオロカーボンのガスを注入し、好ましくは常圧に戻せばよい。
【0344】
ここで、中空構造体を分散させる水は、前述の分散剤を含んでいてもよい。減圧下での乾燥は、必要ならば加温して行う減圧乾燥法、凍結乾燥法等が使用可能であるが、凍結乾燥法を使用するのが好ましい。パーフルオロカーボンとしては、造影剤を体内に投与した後も気体状態が維持されるように、沸点が体温以下、好ましくは、10℃以下であればよい。具体的には、オクタフルオロシクロブタン、オクタフルオロプロパン、ヘキサフルオロエタン等があげられる。また、使用するパーフルオロカーボンのガスは水に難溶性であるのが好ましく、これにより、血液等の体液内に溶解することがなく、造影効果の持続時間を長くすることができる。
【0345】
<水性キャリア − 気相を内包 −>
本発明の方法によって得られる中空構造体は、乾燥した微粒子状であるため、超音波造影剤として使用する際には、適当な水性キャリア(生理食塩水、マンニトール水溶液等)に分散させて経口的または非経口的に生体内に投与される。特に、注射による投与が望ましい。前記水性キャリアには、必要に応じて公知の分散剤を添加してもよい。また、超音波造影剤として使用する際、中空構造体は、水性キャリアを含む造影剤総量に対して0.01〜80質量%、好ましくは0.01〜50質量%の濃度となるように添加される。
【0346】
【実施例】
以下に実施例、比較例および実験例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。なお、以下の実施例、比較例および実験例において、「%」は特記しない限り質量%を示す。なお、以下における「マイクロカプセル」には、先に述べた2つの形態、すなわち1層(モノリシック)型と2層(コア/シェル)型があり、これらを総称して「マイクロカプセル」と記載する。
【0347】
(参考例1) PHB合成酵素生産能を有する形質転換体の作製
TB 64 株由来のPHB合成酵素の生産能を有する形質転換体の作製方法に関しては、発明者らが別途既に出願しているが、ここではその具体例を挙げる。TB 64 株を 100 mLのLB培地(1%ポリペプトン、0.5 %酵母エキス、0.5 %塩化ナトリウム、pH 7.4)で、30 ℃、一晩培養後、マーマーらの方法により染色体DNAを分離回収した。得られた染色体DNAを制限酵素Sau3AIで部分分解した。ベクターはpUC 18 を使用し、制限酵素BamHIで切断し、脱リン酸化処理(Molecular Cloning、1巻、572 頁、1989 年;Cold Spring Harbor Laboratory出版)の後、DNAライゲーションキットVer.II(宝酒造)を用いて染色体DNAのSau3AI部分分解断片と連結した。次に、この連結DNA断片を用いて大腸菌(Escheichia coli)HB 101 株を形質転換し、TB 64 株の染色体DNAライブラリーを作製した。
【0348】
次に、TB 64 株のPHB合成系酵素群遺伝子を含むDNA断片を得るための表現型スクリーニングを行った。選択培地には2%グルコースを含有するLB培地を用い、寒天平板培地上のコロニーが適当な大きさに生育してきた時点でスダンブラックB溶液を噴霧し、UV光照射により蛍光を発するコロニーを取得した。取得したコロニーからアルカリ法によりプラスミドを回収することでPHB合成系酵素群遺伝子を含むDNA断片を得ることができた。
【0349】
ここで取得した遺伝子断片を不和合性グループであるIncP、IncQ、あるいはIncWの何れにも属さない広宿主域複製領域を含むベクターpBBR 122(Mo BiTec)に組み換え、この組み換えプラスミドをラルストーニャ・ユートロファTB 64 m1株(PHB合成能欠損株)にエレクトロポレーション法により形質転換したところ、TB 64 m1株のPHB合成能が復帰し、相補性を示した。
【0350】
次に、PHB合成酵素遺伝子の開始コドン近傍の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを設計・合成し(アマシャムファルマシア・バイオテク)、このオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、PHB合成酵素遺伝子を含む断片を増幅した(LA−PCRキット;宝酒造)。
【0351】
次に、上のようにして得られたPCR増幅断片について制限酵素BamHIを用いて完全分解し、発現ベクターpTrc 99 Aの制限酵素BamHIで切断、脱リン酸化処理(Molecular Cloning、1巻、5.7.2 頁、1989 年;Cold Spring Harbor Laboratory出版)したものに、DNAライゲーションキットVer.II(宝酒造)を用いて連結した。得られた組換えプラスミドで大腸菌(Escherichia coliHB 101)を塩化カルシウム法により形質転換し(宝酒造)、得られた組換え体より回収した組換えプラスミドをpTB 64−PHBとした。pTB 64−PHBで大腸菌(Escherichia coli HB 101)を塩化カルシウム法に
より形質転換し、pTB 64−PHB組換え株を得た。
【0352】
(参考例2) GST融合PHB合成酵素生産能を有する形質転換体の作製
pTB 64−PHB組換え株をLB培地 200 mLに植菌して、37 ℃、125 ストローク/分で 12 時間振盪培養した。このようにして得られた菌体を遠心分離によって回収し、定法によりプラスミドDNAを回収した。
【0353】
pTB 64−PHBに対して、上流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:1)および下流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:2)をそれぞれ設計・合成した(アマシャムファルマシア・バイオテク)。このオリゴヌクレオチドをプライマーとして、pTB 64−PHBをテンプレートとしてPCRを行い、上流にBamHI制限部位、下流にXhoI制限部位を有するPHB合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA−PCRキット;宝酒造)。
【0354】
精製したPCR増幅産物をBamHIおよびXhoIにより消化し、プラスミドpGEX‐6P‐1(アマシャムファルマシア・バイオテク社製)の対応する部位に挿入した。これらのベクターを用いて大腸菌(JM 109)を形質転換し、発現用菌株を得た。菌株の確認は、Miniprep(Wizard Minipreps DNA Purification Systems、PROMEGA社製)を用いて大量に調製したプラスミドDNAをBamHI、XhoIで処理して得られるDNA断片により行った。
【0355】
(参考例3) PHB合成酵素の調製
得られた発現用菌株をアンピシリン(100 μg/L)を添加した2×YT培地(ポリペプトン 16 g/L、酵母エキス 10 g/L、NaCl 5g/L、PH 7.0)100 mLで 30 ℃にて一晩前培養した。
【0356】
これをアンピシリン(100 μg/L)を添加した2×YT培地(ポリペプトン 16 g/L、酵母エキス 10 g/L、NaCl 5g/L、PH 7.0)10 リットルに添加し、30℃にて3時間培養後、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を最終濃度1mMとなるように添加し、30 ℃にて3時間培養した。
【0357】
回収した培養液を4℃、78000m/s2(=8000G)で 10 分間遠心処理し、上清を取り除いた後、菌体ペレットを4℃のPBS溶液 500 mLに再懸濁した。この菌液をあらかじめ4℃に冷却しておいたベッセルに各回 40 mLずつ注入し、フレンチプレスによって 216MPa(=2200 kg/cm2)に加圧しながら少しずつノズルから菌液を解放することで菌体破砕処理を行った。菌体破砕液を4℃、78000m/s2(=8000G)で 10 分間遠心処理した後、上清を回収した。この上清を 0.45 μmのフィルターで濾過し、固形夾雑物を取り除き、上清中に目的のグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)の融合したPHB合成酵素が存在することをSDS−PAGEで確認した。
【0358】
次に、このGST融合PHB合成酵素をグルタチオン・セファロース4B(Glutathion Sepharose 4B:アマシャムファルマシア・バイオテク社製)で精製した。グルタチオン・セファロース4Bの 75 %スラリー 6.65 mLを4℃、4900m/s2(=500G)で5分間遠心処理し、上清を取り除いた後、4℃のPBS溶液 200 mLに再懸濁し、さらに4℃、4900m/s2(=500G)で5分間遠心処理し、上清を取り除いた。さらに4℃のPBS溶液5mLに再懸濁し、グルタチオン・セファロース4B の 50 %スラリーとした。
【0359】
このグルタチオン・セファロース4Bの 50 %スラリー 10 mLに先ほど調整した上清全量を添加し、室温で 30 分間緩やかに振とうしてグルタチオン・セファロース4Bに上清中の目的とする融合たんぱく質をアフィニティ吸着させた。その後、4℃、4900m/s2(=500G)で5分間遠心処理し、上清を取り除いた後、4℃のPBS溶液5mLに再懸濁し、再び同様の遠心処理を行い、上清を除いた。このGST融合PHB合成酵素を固定化したグルタチオン・セファロース4Bについて、PBS溶液への再懸濁と遠心処理を2回繰り返して洗浄した後、最後に5℃のクリベージ緩衝液(Cleavage Buffer;Tris−HCl 50 mM、NaCl150mM、EDTA1mM、Dithiothreitol1mM、PH7)5mLに懸濁した。これに4% のプレシション・プロテアーゼ(PreScission Protease;アマシャムファルマシアバイオテク社製)のクリベージ緩衝液溶液 0.5 mLを添加し、5℃で4時間緩やかに振とうした。これを4℃、4900m/s2(=500G)で5分間遠心処理し、上清を回収した。次に上記と同様に調整したグルタチオン・セファロース4Bの 50 %スラリー1mLを、4℃、4900m/s2(=500G)で5分間遠心処理し、上清を除いた後のグルタチオン・セファロース4Bに先ほど回収した上清を添加し、緩やかに攪拌して上清中に残留したプレシション・プロテアーゼをグルタチオン・セファロース4Bに吸着させた。次いで4℃、4900m/s2(=500G)で5分間遠心処理して上清を回収した。この上清はSDS−PAGEにより、シングルバンドを示し、精製されていることを確認した。
【0360】
また、含有するPHB合成酵素活性を以下の方法で測定した。まず、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)を 0.1 M トリス塩酸バッファー(pH 8.0)に 3.0mg/mL溶解した溶液 100 μLを酵素溶液 100 μLに添加して混合し、30 ℃で1分間プレインキュベートした。これに、3−ヒドロキシブチリルCoAを 0.1 M トリス塩酸バッファー(pH 8.0)に 3.0 mM溶解した溶液 100 μLを添加して混合し、30 ℃で1〜 30 分間インキュベートしたのち、トリクロロ酢酸を 0.1 M トリス塩酸バッファー(pH 8.0)に 10 mg/mL溶解した溶液 300 μLを添加して反応を停止させた。反応停止したこの溶液を遠心分離(147、000m/s2(=15、000G)、10 分間)し、5、5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)を 0.1 Mトリス塩酸バッファー(pH 8.0)に 2.0 mM溶解した溶液 500 μLを上清 500 μLに添加し、30 ℃で 10 分間インキュベートしたのち、412 nmの吸光度を測定した。そして1分間に1μmolのCoAを放出させる酵素量を1単位(U)として、酵素活性を計算した。その結果、比活性として 7.5 U/mLが得られた。この液を、ライホゲルを添加して限外濾過濃縮し、10 U/mLとしたものを精製酵素液(1)とした。
【0361】
(参考例4) PHB合成酵素含有粗酵素液の調製方法
KK 01 及びTL2株を、酵母エキス 0.5 %、ミネラル溶液(下記参照)0.3%を含有したM9培地(下記組成)10 リットルで 30 ℃、24 時間培養し、回収した培養液を4℃、78000m/s2(=8000G)で 10 分間遠心処理し、上清を取り除いた後、菌体ペレットを4℃のPBS溶液 500 mLに再懸濁した。この菌液をあらかじめ4℃に冷却しておいたベッセルに各回 40 mLずつ注入し、フレンチプレスによって 2200 kg/cm2に加圧しながら少しずつノズルから菌液を解放することで菌体破砕処理を行った。得られた菌体破砕液を4℃、78000m/s2(=8000G)で10 分間遠心処理した後、上清を回収した。この上清を 0.45 μmのフィルターで濾過し、固形夾雑物を取り除き、含有するPHB合成酵素活性を前述の方法で測定した。その結果、比活性としてKK 01 株については 1.6 U/mL、TL2株については 1.2 U/mLが得られた。この液を、生体溶液試料濃縮剤(商品名:みずぶとりくん、アトー社製)を添加して限外濾過濃縮し、10 U/mLとした粗酵素液を、KK 01 株由来のものを粗酵素液(1)、TL2株由来のものを粗酵素液(2)とした。
【0362】
[M9培地]
Na2HPO4 : 6.2g
KH2PO4 : 3.0g
NaCl : 0.5g
NH4Cl : 1.0g
(培地1リットル中、pH 7.0)
(ミネラル溶液)
ニトリロ三酢酸:1.5g MgSO4:3.0g ;MnSO4:0.5g;NaCl:1.0g;;FeSO4:0.1g;CaCl2:0.1g;CoCl2:0.1g;ZnSO4:0.1g ;CuSO4:0.1g;AlK(SO4)2:0.1g;H3BO3:0.1g;Na2MoO4:0.1g;NiCl2:0.1g;(1リットル中、pH 7.0)
(参考例5) PHA合成酵素生産能を有する形質転換体の作製
PHA合成酵素生産能を有する形質転換体を作製した。
【0363】
YN2株を 100 mLのLB培地(1%ポリペプトン(日本製薬(株)製)、0.5 %酵母エキス(Difco社製)、0.5 %塩化ナトリウム、pH 7.4)で 30 ℃、一晩培養後、マーマーらの方法により染色体DNAを分離回収した。得られた染色体DNAを制限酵素Hind IIIで完全分解した。ベクターにはpUC 18 を使用し、制限酵素Hind IIIで切断した。末端の脱リン酸処理(Molecular Cloning、1、572、(1989); Cold Spring Harbor Laboratory出版)ののち、DNAライゲーションキットVer.II(宝酒造(株)製)を用いて、ベクターの切断部位(クローニングサイト)と染色体DNAのHind III完全分解断片とを連結した。この染色体DNA断片を組み込んだプラスミドベクターを用いて、大腸菌(Escherichia coli)HB 101 株を形質転換し、YN2株のDNAライブラリーを作製した。
【0364】
次に、YN2株のPHA合成酵素遺伝子を含むDNA断片を選択するため、コロニー・ハイブリダイズ用のプローブ調製を行った。配列番号:3および配列番号:4の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを合成し(アマシャムファルマシア・バイオテク(株))、このオリゴヌクレオチドをプライマーに用いて、染色体DNAをテンプレートとしてPCRを行った。PCR増幅されてきたDNA断片をプローブとして用いた。プローブの標識化は、市販の標識酵素系AlkPhosDirect(アマシャムファルマシア・バイオテク(株)製)を利用して行った。
【0365】
得られた標識化プローブを用いて、YN2株の染色体DNAライブラリーからコロニーハイブリダイゼーション法によってPHA合成酵素遺伝子を含む組換えプラスミドを有する大腸菌菌株を選抜した。選抜した菌株から、アルカリ法によってプラスミドを回収することで、PHA合成酵素遺伝子を含むDNA断片を得ることができた。
【0366】
ここで取得した遺伝子DNA断片を、不和合性グループであるIncP、IncQ、あるいはIncWの何れにも属さない広宿主域複製領域を含むベクターpBBR 122(Mo Bi Tec)に組み換えた。この組み換えプラスミドをシュードモナス・チコリアイYN2mL株(PHA合成能欠損株)にエレクトロポレーション法により形質転換したところ、YN2mL株のPHA合成能が復帰し、相補性を示した。従って、選抜された遺伝子DNA断片は、シュードモナス・チコリアイYN2mL株内において、PHA合成酵素に翻訳可能な、PHA合成酵素遺伝子領域を含むことが確認される。
【0367】
このDNA断片について、サンガー法により塩基配列を決定した。その結果、決定された塩基配列中には、それぞれペプチド鎖をコードする、配列番号:5および配列番号:6で示される塩基配列が存在することが確認された。これらのPHA合成酵素遺伝子について、染色体DNAをテンプレートとしてPCRを行い、PHA合成酵素遺伝子の完全長を再調製した。
【0368】
即ち、配列番号:5で示される塩基配列のPHA合成酵素遺伝子に対する、上流側プライマー(配列番号:7)および下流側プライマー(配列番号:8)、配列番号:6で示される塩基配列のPHA合成酵素遺伝子に対する、上流側プライマー(配列番号:9)および下流側プライマー(配列番号: 10)をそれぞれ合成した(アマシャムファルマシア・バイオテク(株))。これらのプライマーを用いて、配列番号:5および配列番号:6で示される塩基配列それぞれについてPCRを行い、PHA合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA−PCRキット;宝酒造(株)製)。
【0369】
次に、得られたPCR増幅断片および発現ベクターpTrc 99 Aを制限酵素Hind IIIで切断し、脱リン酸化処理(Molecular Cloning、1巻、572 頁、1989年;Cold Spring Harbor Laboratory出版)したのち、この発現ベクターpTrc 99 Aの切断部位に、両末端の不用な塩基配列を除いたPHA合成酵素遺伝子の完全長を含むDNA断片を、DNAライゲーションキットVer.II(宝酒造(株)製)を用いて連結した。
【0370】
得られた組換えプラスミドで大腸菌(Escherichia coli HB 101 :宝酒造)を塩化カルシウム法により形質転換した。得られた組換え体を培養し、組換えプラスミドの増幅を行い、組換えプラスミドをそれぞれ回収した。配列番号:5の遺伝子DNAを保持する組換えプラスミドをpYN2−C1、配列番号:6の遺伝子DNAを保持する組換えプラスミドをpYN2−C2とした。pYN2−C1、pYN2−C2で大腸菌(Escherichia coli HB 101 fB fadB欠損株)を塩化カルシウム法により形質転換し、それぞれの組換えプラスミドを保持する組換え大腸菌株、pYN2−C1組換え株、pYN2−C2組換え株を得た。
【0371】
(参考例6) PHA合成酵素の生産1
pYN2−C1に対して、上流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号: 11)および下流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号: 12)をそれぞれ設計・合成した(アマシャムファルマシア・バイオテク(株))。このオリゴヌクレオチドをプライマーとして、pYN2−C1をテンプレートとしてPCRを行い、上流にBamHI制限部位、下流にXhoI制限部位を有するPHA合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA−PCRキット;宝酒造(株)製)。
【0372】
同様にpYN2−C2に対して、上流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号: 13)および下流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号: 14)をそれぞれ設計・合成した(アマシャムファルマシア・バイオテク(株))。このオリゴヌクレオチドをプライマーとして、pYN2−C2をテンプレートとしてPCRを行い、上流にBamHI制限部位、下流にXhoI制限部位を有するPHA合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA−PCRキット;宝酒造(株)製)。
【0373】
精製したそれぞれのPCR増幅産物をBamHIおよびXhoIにより消化し、プラスミドpGEX−6P−1(アマシャムファルマシア・バイオテク(株)製)の対応する部位に挿入した。これらのベクターを用いて大腸菌(JM 109)を形質転換し、発現用菌株を得た。菌株の確認は、Miniprep(Wizard Minipreps DNA Purification Systems、PROMEGA社製)を用いて大量に調製したプラスミドDNAをBamHI、XhoIで処理して得られるDNA断片により行った。得られた菌株をLB−Amp培地 10 mLで一晩プレ・カルチャーした後、その 0.1 mLを、10 mLのLB−Amp培地に添加し、37 ℃、170 rpmで3時間振とう培養した。その後IPTGを添加(終濃度 1 mM)し、37 ℃で4から 12 時間培養を続けた。
【0374】
IPTG 誘導した大腸菌を集菌(78000m/s2(=8000G)、2分、4℃)し、1/ 10 量の 4℃ リン酸緩衝生理食塩水(PBS;8 g NaCl、1.44 g Na2HPO4、0.24 g KH2PO4、0.2 g KCl、1、000 mL精製水)に再懸濁した。凍結融解およびソニケーションにより菌体を破砕し、遠心(78000m/s2(=8000G)、10分、4℃)して固形夾雑物を取り除いた。目的の発現タンパク質が上清に存在することをSDS−PAGEで確認した後、誘導され発現されたGST融合タンパク質をグルタチオン・セファロース4B(アマシャムファルマシア・バイオテク(株)製)で精製した。
【0375】
使用するグルタチオン・セファロースは、予め非特異的吸着を抑える処理を行った。すなわち、グルタチオン・セファロースを同量のPBSで3回洗浄(78000m/s2(=8000G)、1分、4℃)した後、4%ウシ血清アルブミン含有PBSを同量加えて4℃で1時間処理した。処理後同量のPBSで2回洗浄し、1/2量のPBSに再懸濁した。
【0376】
前処理したグルタチオン・セファロース 40 μLを、無細胞抽出液1 mL に添加し、4℃で静かに攪拌した。これにより、融合タンパク質GST−YN2−C1およびGST−YN2−C2をグルタチオン・セファロースに吸着させた。吸着後、遠心(78000m/s2(=8000G)、1分、4℃)してグルタチオン・セファロースを回収し、400 μLのPBSで3回洗浄した。その後、10 mMグルタチオン 40 μLを添加し、4℃で1時間攪拌して、吸着した融合タンパク質を溶出した。遠心(78000m/s2(=8000G)、2分、4℃)して上清を回収した後PBSに対して透析し、GST融合タンパク質を精製した。SDS−PAGEにより、シングルバンドを確認した。
【0377】
各GST融合タンパク質 500 μgをPreScissionプロテアーゼ(アマシャムファルマシア・バイオテク(株)製、5U)で消化した後、グルタチオン・セファロースに通してプロテアーゼとGSTとを除去した。フロースルー分画をさらに、PBSで平衡化したセファデックスG 200 カラムにかけ、発現タンパク質YN2−C1およびYN2−C2の最終精製物を得た。SDS−PAGEによりそれぞれ 60.8 kDa、および 61.5 kDaのシングルバンドを確認した。
【0378】
該酵素を生体溶液試料濃縮剤(みずぶとりくんAB−1100、アトー(株)製)を用いて濃縮し、10 U/mLの精製酵素溶液を得た。
【0379】
各精製酵素活性は前述の方法で測定した。また、試料中のタンパク質濃度は、マイクロBCAタンパク質定量試薬キット(ピアスケミカル社製)によって測定した。各精製酵素の活性測定の結果を表1に示した。
【0380】
【表1】
Figure 2004331750
(参考例7) PHA合成酵素の生産2
P 91 株、H 45 株、YN2株およびP 161 株を、酵母エキス(Difco社製)0.5 %、オクタン酸 0.1 %とを含むM9培地 200 mLに植菌して、30 ℃、125ストローク/分で振盪培養した。24 時間後、菌体を遠心分離(98、000m/s2(10、000G)、4℃、10 分間)によって回収し、0.1 M トリス塩酸バッファー(pH 8.0)200 mLに再懸濁して再度遠心分離することによって洗浄した。菌体を 0.1 Mトリス塩酸バッファー(pH 8.0)2.0 mLに再懸濁し、超音波破砕機にて破砕したのち、遠心分離(118、000m/s2(=12、000G)、4℃、10 分間)して上清を回収して粗酵素溶液を得た。各粗酵素活性は前述の方法で測定し、その結果を表2に示した。
【0381】
【表2】
Figure 2004331750
該粗酵素溶液を生体溶液試料濃縮剤(みずぶとりくんAB−1100、アトー(株)製)を用いて濃縮し、10 U/mLの粗酵素溶液を得た。
【0382】
(参考例8)3−ヒドロキシアシルCoAの合成
(R)−3−ヒドロキシオクタノイル−CoAは、Rehm BHA、 Kruger N、 SteinbuchelA (1998) Journal of Biological Chemistry 273 pp24044−24051に基づき、若干の変更を加え次のように行った。acyl−CoA synthetase(Sigma社製)を、2 mM ATP、 5 mM MgCl2、 2 mM coenzyme A、 2mM (R)−3−hydroxyoctanoateを含むトリス塩酸緩衝液(50 mM、 pH 7.5)に溶解し、0.1ミリユニット/マイクロリットルとした。37℃の温浴中で保温し、適時サンプリングし反応の進行をHPLCで分析した。サンプリングした反応溶液に硫酸を0.02 Nになるように添加して酵素反応を止めた後、n−heptaneで未反応の基質である(R)−3−hydroxyoctanoateを抽出して除去した。HPLCによる分析には、RP18カラム(nucleosil C18、 7μm、 Knauser)を用い、25 mMリン酸緩衝液(pH 5.3)を移動相として、アセトニトリルの直線濃度勾配をかけて溶出し、ダイオードアレイ検出器で200から500 nmの吸光スペクトルをモニターすることによって、酵素反応によって生成したチオエステル化合物を検出した。同様にして、(R)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoAおよび(R)−3−ヒドロキシ−5−(4−フルオロフェニル)バレリルCoAを調製した。
【0383】
(参考例9)
D−グルコース 0.5%と、5−(4−フルオロフェニル)吉草酸(FPVA)0.1%とを含むM9培地 20Lにシュードモナス・チコリアイ・YN2株(Pseudomonas cichorii YN2、FERM BP−7375)を植菌し、30℃、80回転/分、通気量 2.5L/分で通気攪拌培養した。48時間後、菌体を遠心分離によって回収し、D−グルコース 0.5%と、FPVA 0.1%とを含み、窒素源(NH4Cl)を含まないM9培地 20Lに再懸濁して、更に 30℃、80回転/分、通気量 2.5L/分で通気攪拌培養した。48時間後、菌体を遠心分離によって回収し、回収した湿菌体より分析評価用に1gを分取、冷メタノールで一度洗浄の後、凍結乾燥して凍結乾燥ペレットを得た。
【0384】
残りの湿菌体については、約 1.7%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液 500mLに懸濁し、約4℃で2時間振盪してPHAを抽出した。遠心分離によりPHAを回収し乾燥した結果、培地液量1L当たり 0.87gのPHAが得られた。このPHAを例示化合物1とした。
【0385】
この凍結乾燥ペレットを 20mLのクロロホルムに懸濁し、60℃で 20時間攪拌してPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmメンブレンフィルターでろ過したのち、ロータリーエバポレーターで濃縮し、濃縮液を冷メタノール中で再沈殿させ、更に沈殿のみを回収して真空乾燥してPHAを得た。
【0386】
得られたPHAの組成は以下のようにして分析した。すなわち、約 10mgのPHAを 25mL容ナス型フラスコに入れ、クロロホルム2mLに溶解させ、3%硫酸を含むメタノール溶液2mLを加えて、100℃で還流しながら 3.5時間反応させた。反応終了後、脱イオン水 10mLを加えて激しく 10分間振盪した後に、2層に分離した下層のクロロホルム層を取り出し、硫酸マグネシウムで脱水したのち、このクロロホルム層をガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS、島津QP−5050、カラム:DB−WAX(J&W社、0.32mm×30m)、EI法)にかけて、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、PHAモノマーユニットとしては、96%が3HFPVであり、4%が3−ヒドロキシ酪酸のユニットであり、FPVAに由来する所望のモノマーユニットである3HFPVモノマーユニットの比率が高いPHAが高収率で得られた。
【0387】
また、このPHAの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソー HLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;(クロロホルム、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=71,500、Mw=158,000 であった。
【0388】
(参考例10)
FPVAの替わりに4−フェノキシ酪酸(PxBA)を用いた以外は参考例9と全く同じ条件で、3−ヒドロキシ−4−フェノキシ酪酸(3HPxB)モノマーユニットを含むPHAを合成したところ、培地液量1L当たり 0.15gのPHAが得られた。このPHAを例示化合物2とした。
【0389】
得られたPHAについて参考例9と同様に分析評価を行ったところ、PHAモノマーユニットとしては、95%がPxBAであり、5%が3−ヒドロキシ酪酸のユニットであり、PxBAに由来する所望のモノマーユニットである3HPxBモノマーユニットの比率が高いPHAが高収率で得られた。また、分子量はMn=71、500、Mw=158、000 であった。
【0390】
(参考例11)
FPVAの替わりに4−シクロヘキシル酪酸(CHBA)を用いた以外は参考例9と全く同じ条件で、3−ヒドロキシ−4−シクロヘキシル酪酸(3HCHB)モノマーユニットを含むPHAを合成したところ、培地液量1L当たり 0.79gのPHAが得られた。このPHAを例示化合物3とした。
【0391】
得られたPHAについて参考例9と同様に分析評価を行ったところ、PHAモノマーユニットとしては、98%が3HCHBであり、2%が3−ヒドロキシ酪酸のユニットであり、CHBAに由来する所望のモノマーユニットである3HCHBモノマーユニットの比率が高いPHAが高収率で得られた。また、分子量はMn=92,200、Mw=218,000 であった。
【0392】
(参考例12)
FPVAの替わりに5−ベンゾイル吉草酸(BzVA)を用いた以外は参考例9と全く同じ条件で、3−ヒドロキシ−5−ベンゾイル吉草酸(3HBzV)モノマーユニットを含むPHAを合成したところ、培地液量1L当たり 0.55gのPHAが得られた。このPHAを例示化合物4とした。
【0393】
得られたPHAについて参考例9と同様に分析評価を行ったところ、PHAモノマーユニットとしては、88%が3HBzVであり、12%が3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシデカン酸、3−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシドデセン酸のうち1種以上のユニットであり、BzVAに由来する所望のモノマーユニットである3HBzVモノマーユニットの比率が高いPHAが高収率で得られた。また、分子量はMn=325,000、Mw=1,240,000 であった。
【0394】
(参考例13)
FPVAの替わりに5−(4−フルオロベンゾイル)吉草酸(FBzVA)を用いた以外は参考例9と全く同じ条件で、3−ヒドロキシ−5−(4−フルオロベンゾイル)吉草酸(3HFBzV)モノマーユニットを含むPHAを合成したところ、培地液量1L当たり 0.35gのPHAが得られた。このPHAを例示化合物5とした。
【0395】
得られたPHAについて参考例9と同様に分析評価を行ったところ、PHAモノマーユニットとしては、79%が3HFBzVであり、21%が3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシデカン酸、3−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシドデセン酸のうち1種以上のユニットであり、FBzVAに由来する所望のモノマーユニットである3HFBzVモノマーユニットの比率が高いPHAが高収率で得られた。また、分子量はMn=285,000、Mw=833,000 であった。
【0396】
(参考例14)
FPVAの替わりに5−チエニル吉草酸(TVA)を用いた以外は参考例9と全く同じ条件で、3−ヒドロキシ−5−チエニル吉草酸(3HTV)モノマーユニットを含むPHAを合成したところ、培地液量1L当たり 0.85gのPHAが得られた。このPHAを例示化合物6とした。
【0397】
得られたPHAについて参考例9と同様に分析評価を行ったところ、PHAモノマーユニットとしては、97%が3HTVであり、3%が3−ヒドロキシ酪酸のユニットであり、TVAに由来する所望のモノマーユニットである3HTVモノマーユニットの比率が高いPHAが高収率で得られた。また、分子量はMn=75,000、Mw=185,000 であった。
【0398】
(参考例15)
FPVAの替わりに5−チエノイル吉草酸(ToVA)を用いた以外は参考例9と全く同じ条件で、3−ヒドロキシ−5−チエノイル吉草酸(3HToV)モノマーユニットを含むPHAを合成したところ、培地液量1L当たり 0.15gのPHAが得られた。このPHAを例示化合物7とした。
【0399】
得られたPHAについて参考例9と同様に分析評価を行ったところ、PHAモノマーユニットとしては、62%が3HToVであり、38%が3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシデカン酸、3−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシドデセン酸のうち1種以上のユニットであり、ToVAに由来する所望のモノマーユニットである3HToVモノマーユニットの比率が高いPHAが高収率で得られた。また、分子量はMn=105,000、Mw=252,000 であった。
【0400】
(参考例16)
FPVAの替わりに5−(4−フルオロチオフェノキシ)吉草酸(FTPxVA)を用いた以外は参考例9と全く同じ条件で、3−ヒドロキシ−5−(4−フルオロチオフェノキシ)吉草酸(3HFTPxV)モノマーユニットを含むPHAを合成したところ、培地液量1L当たり 0.92gのPHAが得られた。このPHAを例示化合物8とした。
【0401】
得られたPHAについて参考例9と同様に分析評価を行ったところ、PHAモノマーユニットとしては、82%が3HFTPxVであり、18%が3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシデカン酸、3−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシドデセン酸のうち1種以上のユニットであり、FTPxVAに由来する所望のモノマーユニットである3HFTPxVモノマーユニットの比率が高いPHAが高収率で得られた。また、分子量はMn=95,000、Mw=282,000 であった。
【0402】
(参考例17)
FPVAの替わりに5−[(4−フルオロフェニルメチル)スルファニル]吉草酸を用いた以外は参考例9と全く同じ条件で、3−ヒドロキシ−5−[(4−フルオロフェニルメチル)スルファニル]吉草酸モノマーユニットを含むPHAを合成したところ、培地液量1L当たり 0.35gのPHAが得られた。このPHAを例示化合物9とした。
【0403】
得られたPHAについて参考例9と同様に分析評価を行ったところ、PHAモノマーユニットとしては、89%が3−ヒドロキシ−5−[(4−フルオロフェニルメチル)スルファニル]吉草酸モノマーユニットであり、11%が3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシデカン酸、3−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシドデセン酸のうち1種以上のユニットであり、5−[(4−フルオロフェニルメチル)スルファニル]吉草酸に由来する所望のモノマーユニットである3−ヒドロキシ−5−[(4−フルオロフェニルメチル)スルファニル]吉草酸モノマーユニットの比率が高いPHAが高収率で得られた。また、分子量はMn=35,000、Mw=92,000 であった。
【0404】
(参考例18)
FPVAの替わりに5−チオチエノキシ吉草酸(TTxVA)を用いた以外は参考例9と全く同じ条件で、3−ヒドロキシ−5−チオチエノキシ吉草酸(3HTTxV)モノマーユニットを含むPHAを合成したところ、培地液量1L当たり1.1gのPHAが得られた。このPHAを例示化合物10とした。
【0405】
得られたPHAについて参考例9と同様に分析評価を行ったところ、PHAモノマーユニットとしては、90%が3HTTxVであり、10%が3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシデカン酸、3−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシドデセン酸のうち1種以上のユニットであり、TTxVAに由来する所望のモノマーユニットである3HTTxVモノマーユニットの比率が高いPHAが高収率で得られた。また、分子量はMn=205,000、Mw=550,000 であった。
【0406】
(参考例19)
FPVAの替わりにオクタン酸(OA)を用いた以外は参考例9と全く同じ条件で、3−ヒドロキシオクタン酸(3HO)モノマーユニットを含むPHAを合成したところ、培地液量1L当たり 0.75gのPHAが得られた。このPHAを例示化合物11とした。
【0407】
得られたPHAについて参考例9と同様に分析評価を行ったところ、PHAモノマーユニットとしては、65%が3HOであり、35%が3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘプタン酸、3−ヒドロキシノナン酸、3−ヒドロキシデカン酸、3−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシドデセン酸のうち1種以上のユニットであり、OAに由来する所望のモノマーユニットである3HOモノマーユニットの比率が高いPHAが高収率で得られた。また、分子量はMn=132,000、Mw=312,000 であった。
【0408】
(参考例20)
酵母エキス0.1%を含むM9寒天培地上のYN2株のコロニーを、OD(600nm)=1.0となるように滅菌した生理食塩水に懸濁した。予め作成しておいた、炭素源を含まない1/10N−M9寒天培地100枚に、参考例9における菌株の懸濁液を塗布し、1−オクテン雰囲気中下、30℃で静置培養した。
【0409】
4日後、菌体を集め、メタノールで洗浄して遠心分離によって集菌し、減圧乾燥した。
【0410】
乾燥菌体にクロロホルム50mLを加え、30℃で48時間攪拌してPHAを抽出した。クロロホルム層をろ過し、エバポレーターで濃縮した後、冷メタノールに注加し、沈殿を回収して減圧乾燥したところ、0.26gのPHAが得られた。このPHAを例示化合物12とした。
【0411】
得られたPHAについて参考例9と同様に分析評価を行い、さらに1H−NMR分析を行った(使用機器:FT−NMR:Bruker DPX400、測定核種:1H、使用溶媒:重クロロホルム(TMS入り))。側鎖末端のメチン、側鎖の末端二重結合およびエポキシに関わるプロトンの帰属はMacromolecules、31、 1480−1486(1998)に従って行った。この結果、PHAモノマーユニットとしては、17%がエポキシユニットであり、30%が飽和ユニット、53%が不飽和ユニットであった。飽和、不飽和ユニットは3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシヘプタン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシデカン酸、3−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシヘキセン酸、3−ヒドロキシヘプテン酸、3−ヒドロキシオクテン酸、3−ヒドロキシドデセン酸のうち1種以上のユニットであり、1−オクテンに由来する所望のモノマーユニットであるエポキシモノマーユニットの比率が高いPHAが高収率で得られた。また、分子量はMn=251,000、Mw=550,000であった。
【0412】
(参考例21) 磁性体の調製1
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄イオンに対してl.0〜1.1当量の苛性ソーダ溶液を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。この水溶液のpHを8前後に維持しながら、空気を吹き込み、80〜90℃で酸化反応を行い、種晶を生成させるスラリー液を調製した。
次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し0.9〜1.2当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液をpH8前後に維持して、空気を吹き込みながら酸化反応をすすめ、酸化反応後に生成した磁性酸化鉄粒子を洗浄、濾過、乾燥し、凝集している粒子を解砕し、平均粒径が0.1μmの粒状の磁性体1を得た。
【0413】
(実施例1)
N−(S)−2−Tetrahydrofuroyl−Gly−D2Nal−D4ClPhe−D3Pal−Ser−NMeTyr−DLys(Nic)−Leu−Lys(Nisp)−Pro−DAlaNH2(以下ペプチドAと略記する)の酢酸塩(TAP社製)500mgを、蒸留水 0.6ml に溶解した。得られる溶液を、4.5gの例示化合物1および1.5gの磁性体1をジクロロメタン5.8mlに含有させた溶液に加え、小型ホモジナイザー(キネマチカ社製)で60秒間混合してW/O型乳化物を得た。このW/O型乳化物を16℃に冷却した後、予め16℃に冷却しておいた0.1%ポリビニルアルコール(EG−40、日本合成化学製)水溶液1000ml中に注入し、タービン型ホモミキサー(特殊機化製)を用い、7000 rpm でW/O/W型乳化物とした。このW/O/W型乳化物を室温で3時間撹拌してジクロロメタンを揮散させ、W/O型乳化物を固化させた後、遠心分離機(05PR−22、日立製作所)を用いて 2000 rpm で遠心分離した。得られる沈殿物を蒸留水に再分散後、分散液をさらに遠心分離し、遊離薬物を洗浄除去した。得られたマイクロカプセルを少量の蒸留水に再分散後、分散液にD−マンニトール0.3gを加え、凍結乾燥し、粉末として磁性マイクロカプセル1を得た。マイクロカプセル中のペプチドAの含有率を表3に示す。
【0414】
(実施例2〜12)
例示化合物1の替わりに例示化合物2〜12を用いた以外は実施例1と全く同様にして磁性マイクロカプセル2〜12を得た。マイクロカプセル中のペプチドAの含有率を表3に示す。
【0415】
(実施例13)
上記の磁性マイクロカプセル12の50質量部を精製水50質量部に懸濁したのち、該懸濁液に架橋剤としてヘキサメチレンジアミン0.5質量部を溶解させた。溶解を確認後、凍結乾燥により水を除去した後、70℃で12時間反応させることで磁性マイクロカプセル13を得た。マイクロカプセル中のペプチドAの含有率を表3に示す。
【0416】
磁性マイクロカプセル13について赤外吸収を測定した(FT−IR;パーキンエルマー社製、1720X)ところ、加熱処理前に観察されたアミン(3340 cm−1付近)及びエポキシ(822 cm−1付近)のピークが磁性マイクロカプセル13では消失していた。これより、側鎖にエポキシユニットをもつPHAとヘキサメチレンジアミンを反応させることで、架橋ポリマーにより被覆された磁性マイクロカプセル13が得られたことがわかる。
【0417】
(実施例14)
上記の磁性マイクロカプセル12について50質量部に、末端アミノ変性ポリシロキサン(変性シリコーンオイルTSF4700、GE東芝シリコーン(株)製)を10質量部添加し、70℃で2時間反応させた。これをメタノールに懸濁し、遠心分離(10、000×g、4℃、20分間)する操作を繰返すことで洗浄、乾燥し、ポリシロキサンのグラフト鎖を有する磁性マイクロカプセル14を得た。マイクロカプセル中のペプチドAの含有率を表3に示す。
【0418】
磁性マイクロカプセル14について赤外吸収を測定した(FT−IR;パーキンエルマー社製、1720X)ところ、加熱処理前に観察されたアミン(3340 cm−1付近)及びエポキシ(822 cm−1付近)のピークが磁性マイクロカプセル14では消失していた。これより、側鎖にエポキシユニットをもつPHAと末端アミノ変性ポリシロキサンを反応させることにより、ポリシロキサンのグラフト鎖を有する磁性マイクロカプセル14が得られたことがわかる。
【0419】
(比較例1)
例示化合物1の替わりに乳酸−グリコール酸共重合体(以下、PLGAと略記する)(和光純薬製、lot.940810、乳酸/グリコール酸(モル比):74/26、GPC重量平均分子量:10,000、GPC数平均分子量:3,900、末端基定量法による数平均分子量:3,700)を用いる以外は実施例1と同様にして磁性マイクロカプセル15を調製した。マイクロカプセル中の薬物含量を表3に示す。
【0420】
【表3】
Figure 2004331750
(実施例15)
ペプチドAの酢酸塩(TAP社製)500mgを、0.1 Mリン酸バッファー(pH 7.0) 0.6ml に溶解し、さらに精製酵素液(1)60μl、(R)−3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)60mg、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)5mgを加え溶解した。得られる溶液を、1.5gの磁性体1を分散したジクロロメタン5.8mlに加え、小型ホモジナイザー(キネマチカ社製)で60秒間混合してW/O型乳化物を得た。このW/O型乳化物を16℃に冷却した後、予め16℃に冷却しておいた0.1%ポリビニルアルコール(EG−40、日本合成化学製)水溶液1000ml中に注入し、タービン型ホモミキサー(特殊機化製)を用い、7000 rpm でW/O/W型乳化物とした。このW/O/W型乳化物を室温で3時間撹拌して、PHAを合成するとともにジクロロメタンを揮散させ、W/O型乳化物を固化させた後、遠心分離機(05PR−22、日立製作所)を用いて 2000 rpm で遠心分離した。得られる沈殿物を蒸留水に再分散後、分散液をさらに遠心分離し、遊離薬物を洗浄除去した。得られたマイクロカプセルを少量の蒸留水に再分散後、分散液にD−マンニトール0.3gを加え、凍結乾燥し、粉末として磁性マイクロカプセル16を得た。マイクロカプセル中のペプチドAの含有率を表4に示す。
【0421】
また、磁性マイクロカプセル16を、20 mLのクロロホルムに懸濁し、60 ℃で 20 時間攪拌して外被を構成するPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45 μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS、島津QP−5050、EI法)で分析し、PHBモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、得られたクロマトグラムの中で主成分であるピークが標品であるヒドロキシ酪酸のメチル化化合物との保持時間が同一であることから、得られた磁性マイクロカプセル16の外被の主成分はPHBであることを確認した。
【0422】
さらに、該PHBの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度; 40 ℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn= 73、000 であった。
【0423】
(実施例16)
実施例15における精製酵素液(1)の替わりに粗酵素液(1)を用いた点以外は、実施例15と全く同様にして磁性マイクロカプセル17を得た。マイクロカプセル中の薬物含量を表4に示す。
【0424】
実施例15と同様にして評価した結果、得られた磁性マイクロカプセル17の外被の主成分が
PHBであることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた磁性マイクロカプセル17に含まれるPHAの数平均分子量は 71、000 であった。
【0425】
(実施例17)
実施例15における精製酵素液(1)の替わりに粗酵素液(2)を用いた点以外は、実施例15と全く同様にして磁性マイクロカプセル18を得た。マイクロカプセル中の薬物含量を表4に示す。
【0426】
実施例15と同様にして評価した結果、得られた磁性マイクロカプセル18の外被の主成分がPHBであることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた磁性マイクロカプセル18に含まれるPHAの数平均分子量は 73、000 であった。
【0427】
(実施例18)
実施例15における精製酵素液(1)の替わりに精製酵素液(2)を用いた点と(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAの替わりに(R)−3−ヒドロキシオクタノイルCoA(Eur.J.Biochem.、250、432−439(1997)に記載の方法で調製)を用いた点以外は、実施例15と全く同様にして磁性マイクロカプセル19に含まれるPHAを得た。マイクロカプセル中の薬物含量を表4に示す。
【0428】
実施例15と同様にして評価した結果、得られた磁性マイクロカプセル19の外被の主成分が3−ヒドロキシオクタン酸ユニットからなるPHAであることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた磁性マイクロカプセル19に含まれるPHAの数平均分子量は 24、000 であった。
【0429】
(実施例19)
実施例15における精製酵素液(1)の替わりに精製酵素液(3)を用いた点と(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAの替わりに(R、S)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoA(Reformatsky反応により得られた3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸を得たのち、Eur.J.Biochem.、250、432−439(1997) に記載の方法で調製)を用いた点以外は、実施例15と全く同様にして磁性マイクロカプセル20を得た。マイクロカプセル中の薬物含量を表4に示す。
【0430】
実施例15と同様にして評価した結果、得られた磁性マイクロカプセル20の外被の主成分が
3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットからなるPHAであることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた磁性マイクロカプセル20に含まれるPHAの数平均分子量は 21、000であった。
【0431】
(実施例20)
実施例15における精製酵素液(1)の替わりに粗酵素液(3)を用いた点と(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAの替わりに(R、S)−3−ヒドロキシ−5−フェノキシバレリルCoA(J.Org.Chem.、55、1490−1492(1990)に記載の方法で合成した3−フェノキシプロパナール及びブロモ酢酸エチルを原料とし、亜鉛によるReformatsky反応で得られた3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸を得たのち、Eur.J.Biochem.、250、432−439(1997) に記載の方法で調製)を用いた点以外は、実施例15と全く同様にして磁性マイクロカプセル21を得た。マイクロカプセル中の薬物含量を表4に示す。
【0432】
実施例15と同様にして評価した結果、得られた磁性マイクロカプセル21の外被の主成分が3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸ユニットからなるPHAであることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた磁性マイクロカプセル21に含まれるPHAの数平均分子量は 24、000 であった。
【0433】
(実施例21)
実施例15における精製酵素液(1)の替わりに粗酵素液(4)を用いた点と(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAの替わりに(R、S)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoAを用いた点以外は、実施例15と全く同様にしてPHA合成反応を行った。ここで室温において1時間反応を行った後、さらに(R、S)−3−ヒドロキシ−5−フェノキシバレリルCoA60mgを添加し、室温においてさらに2時間反応を行った。以降の処理は実施例15と全く同様にして磁性マイクロカプセル22を得た。マイクロカプセル中の薬物含量を表4に示す。
【0434】
このカプセル構造体の表面に形成されたポリマーの質量を、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS IV、CAMECA製)により測定した。得られたマススペクトルから、カプセル構造体表面のPHAは主に3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸ユニットで構成されていることが確認された。また、イオンスパッタリングによりカプセル構造体の表面を少しずつ削りながら同様にTOF−SIMSによりマススペクトルを測定していったところ、ある時点でカプセル構造体を構成するPHAのモノマーユニットの主成分が3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットに置き換わることが確認された。これより、本実施例のカプセル構造体は、薬物1を被覆した、ポリ(3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸)の上を、ポリ(3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸)が被覆した、所望のカプセル構造体であることがわかった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた磁性マイクロカプセル22に含まれるPHAの数平均分子量は 21、000 であった。
【0435】
(実施例22)
実施例15における精製酵素液(1)の替わりに粗酵素液(5)を用いた点と60mgの(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAの替わりに48mgの(R、S)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoA、12mgの(R、S)−3−ヒドロキシ−7、8−エポキシオクタノイルCoA(Int.J.Biol.Macromol.、12、85−91(1990)に記載の方法で合成した3−ヒドロキシ−7−オクテン酸の不飽和部分を3−クロロ安息香酸でエポキシ化したのち、Eur.J.Biochem.、250、432−439(1997)に記載の方法で調製)を用いた点以外は、実施例15と全く同様にして磁性マイクロカプセル23を得た。マイクロカプセル中の薬物含量を表4に示す。
【0436】
1H−NMR(使用機器:FT−NMR:Bruker DPX400、測定核種:1H、使用溶媒:重クロロホルム(TMS入り))解析の結果より、得られた磁性マイクロカプセル23の外被は、3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットが75%、3−ヒドロキシ−7、8−エポキシオクタン酸ユニットが25%からなるPHAであることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた磁性マイクロカプセル23に含まれるPHAの数平均分子量は 22、000 であった。
【0437】
(実施例23)
上記の磁性マイクロカプセル23について50質量部を精製水50質量部に懸濁したのち、該懸濁液に架橋剤としてヘキサメチレンジアミン0.5質量部を溶解させた。溶解を確認後、凍結乾燥により水を除去した後、70℃で12時間反応させることで磁性マイクロカプセル24を得た。マイクロカプセル中の薬物含量を表4に示す。
【0438】
磁性マイクロカプセル24について赤外吸収を測定した(FT−IR;パーキンエルマー社製、1720X)ところ、加熱処理前に観察されたアミン(3340 cm−1付近)及びエポキシ(822 cm−1付近)のピークが磁性マイクロカプセル24では消失していた。これより、側鎖にエポキシユニットをもつPHAとヘキサメチレンジアミンを反応させることで、架橋ポリマーにより被覆された磁性マイクロカプセル24が得られたことがわかる。
【0439】
(実施例24)
上記の磁性マイクロカプセル23について50質量部に、末端アミノ変性ポリシロキサン(変性シリコーンオイルTSF4700、GE東芝シリコーン(株)製)を10質量部添加し、70℃で2時間反応させた。これをメタノールに懸濁し、遠心分離(10、000×g、4℃、20分間)する操作を繰返すことで洗浄、乾燥し、ポリシロキサンのグラフト鎖を有する磁性マイクロカプセル25を得た。マイクロカプセル中の薬物含量を表4に示す。
【0440】
磁性マイクロカプセル25について赤外吸収を測定した(FT−IR;パーキンエルマー社製、1720X)ところ、加熱処理前に観察されたアミン(3340 cm−1付近)及びエポキシ(822 cm−1付近)のピークが磁性マイクロカプセル25では消失していた。これより、側鎖にエポキシユニットをもつPHAと末端アミノ変性ポリシロキサンを反応させることにより、ポリシロキサンのグラフト鎖を有する磁性マイクロカプセル25が得られたことがわかる。
【0441】
【表4】
Figure 2004331750
(実施例25)
ペプチドAの酢酸塩(TAP社製)500mgを、蒸留水 0.6ml に溶解した。得られる溶液を、1.5gの磁性体1を分散したジクロロメタン5.8mlに加え、小型ホモジナイザー(キネマチカ社製)で60秒間混合してW/O型乳化物を得た。このW/O型乳化物を16℃に冷却した後、予め16℃に冷却しておいた0.1 Mリン酸バッファー(pH 7.0) 、0.1%ポリビニルアルコール(EG−40、日本合成化学製)水溶液100ml中に注入し、タービン型ホモミキサー(特殊機化製)を用い、7000 rpm でW/O/W型乳化物とした。このW/O/W型乳化物に、さらに精製酵素液(1)5ml、(R)−3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)1g、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)100mgを加え溶解した。
【0442】
このW/O/W型乳化物を室温で3時間撹拌して、PHAを合成するとともにジクロロメタンを揮散させ、W/O型乳化物を固化させた後、遠心分離機(05PR−22、日立製作所)を用いて 2000 rpm で遠心分離した。得られる沈殿物を蒸留水に再分散後、分散液をさらに遠心分離し、遊離薬物を洗浄除去した。得られたマイクロカプセルを少量の蒸留水に再分散後、分散液にD−マンニトール0.3gを加え、凍結乾燥し、粉末として磁性マイクロカプセル26を得た。マイクロカプセル中のペプチドAの含有率を表5に示す。
【0443】
また、磁性マイクロカプセル26を、20 mLのクロロホルムに懸濁し、60 ℃で 20 時間攪拌して外被を構成するPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45 μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS、島津QP−5050、EI法)で分析し、PHBモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、得られたクロマトグラムの中で主成分であるピークが標品であるヒドロキシ酪酸のメチル化化合物との保持時間が同一であることから、得られた磁性マイクロカプセル26の外被の主成分はPHBであることを確認した。
【0444】
さらに、該PHBの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度; 40 ℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn= 78、000 であった。
【0445】
(実施例26)
実施例25における精製酵素液(1)の替わりに粗酵素液(1)を用いた点以外は、実施例25と全く同様にして磁性マイクロカプセル27を得た。マイクロカプセル中の薬物含量を表5に示す。
【0446】
実施例25と同様にして評価した結果、得られた磁性マイクロカプセル27の外被の主成分がPHBであることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた磁性マイクロカプセル27に含まれるPHAの数平均分子量は 75、000 であった。
【0447】
(実施例27)
実施例25における精製酵素液(1)の替わりに粗酵素液(2)を用いた点以外は、実施例25と全く同様にして磁性マイクロカプセル28を得た。マイクロカプセル中の薬物含量を表5に示す。
【0448】
実施例25と同様にして評価した結果、得られた磁性マイクロカプセル28の外被の主成分がPHBであることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた磁性マイクロカプセル28に含まれるPHAの数平均分子量は 77、000 であった。
【0449】
(実施例28)
実施例25における精製酵素液(1)の替わりに精製酵素液(2)を用いた点と(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAの替わりに(R)−3−ヒドロキシオクタノイルCoA(Eur.J.Biochem.、250、432−439(1997)に記載の方法で調製)を用いた点以外は、実施例25と全く同様にして磁性マイクロカプセル29を得た。マイクロカプセル中の薬物含量を表5に示す。
【0450】
実施例25と同様にして評価した結果、得られた磁性マイクロカプセル29の外被の主成分が3−ヒドロキシオクタン酸ユニットからなるPHAであることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた磁性マイクロカプセル29に含まれるPHAの数平均分子量は 27、000 であった。
【0451】
(実施例29)
実施例25における精製酵素液(1)の替わりに精製酵素液(3)を用いた点と(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAの替わりに(R、S)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoA(Reformatsky反応により得られた3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸を得たのち、Eur.J.Biochem.、250、432−439(1997) に記載の方法で調製)を用いた点以外は、実施例25と全く同様にして磁性マイクロカプセル30を得た。マイクロカプセル中の薬物含量を表5に示す。
【0452】
実施例25と同様にして評価した結果、得られた磁性マイクロカプセル30の外被の主成分が3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットからなるPHAであることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた磁性マイクロカプセル30に含まれるPHAの数平均分子量は 22、000 であった。
【0453】
(実施例30)
実施例25における精製酵素液(1)の替わりに粗酵素液(3)を用いた点と(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAの替わりに(R、S)−3−ヒドロキシ−5−フェノキシバレリルCoA(J.Org.Chem.、55、1490−1492(1990)に記載の方法で合成した3−フェノキシプロパナール及びブロモ酢酸エチルを原料とし、亜鉛によるReformatsky反応で得られた3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸を得たのち、Eur.J.Biochem.、250、432−439(1997) に記載の方法で調製)を用いた点以外は、実施例25と全く同様にして磁性マイクロカプセル31を得た。マイクロカプセル中の薬物含量を表5に示す。
【0454】
実施例25と同様にして評価した結果、得られた磁性マイクロカプセル31の外被の主成分が3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸ユニットからなるPHAであることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた磁性マイクロカプセル31に含まれるPHAの数平均分子量は 23、000 であった。
【0455】
(実施例31)
実施例25における精製酵素液(1)の替わりに粗酵素液(4)を用いた点と(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAの替わりに(R、S)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoAを用いた点以外は、実施例25と全く同様にしてPHA合成反応を行った。ここで室温において1時間反応を行った後、さらに(R、S)−3−ヒドロキシ−5−フェノキシバレリルCoA1gを添加し、室温においてさらに2時間反応を行った。以降の処理は実施例25と全く同様にして磁性マイクロカプセル32を得た。マイクロカプセル中の薬物含量を表5に示す。
【0456】
このカプセル構造体の表面に形成されたポリマーの質量を、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS IV、CAMECA製)により測定した。得られたマススペクトルから、カプセル構造体表面のPHAは主に3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸ユニットで構成されていることが確認された。また、イオンスパッタリングによりカプセル構造体の表面を少しずつ削りながら同様にTOF−SIMSによりマススペクトルを測定していったところ、ある時点でカプセル構造体を構成するPHAのモノマーユニットの主成分が3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットに置き換わることが確認された。これより、本実施例のカプセル構造体は、薬物1を被覆した、ポリ(3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸)の上を、ポリ(3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸)が被覆した、所望のカプセル構造体であることがわかった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた磁性マイクロカプセル32に含まれるPHAの数平均分子量は 24、000 であった。
【0457】
(実施例32)
実施例25における精製酵素液(1)の替わりに粗酵素液(5)を用いた点と1gの(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAの替わりに800mgの(R、S)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoA、200mgの(R、S)−3−ヒドロキシ−7、8−エポキシオクタノイルCoA(Int.J.Biol.Macromol.、12、85−91(1990)に記載の方法で合成した3−ヒドロキシ−7−オクテン酸の不飽和部分を3−クロロ安息香酸でエポキシ化したのち、Eur.J.Biochem.、250、432−439(1997)に記載の方法で調製)を用いた点以外は、実施例25と全く同様にして磁性マイクロカプセル33を得た。マイクロカプセル中の薬物含量を表5に示す。
【0458】
1H−NMR(使用機器:FT−NMR:Bruker DPX400、測定核種:1H、使用溶媒:重クロロホルム(TMS入り))解析の結果より、得られた磁性マイクロカプセル33の外被は、3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットが78%、3−ヒドロキシ−7、8−エポキシオクタン酸ユニットが22%からなるPHAであることを確認した。
また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた磁性マイクロカプセル33に含まれるPHAの数平均分子量は 25、000 であった。
【0459】
(実施例33)
上記の磁性マイクロカプセル33について50質量部を精製水50質量部に懸濁したのち、該懸濁液に架橋剤としてヘキサメチレンジアミン0.5質量部を溶解させた。溶解を確認後、凍結乾燥により水を除去した後、70℃で12時間反応させることで磁性マイクロカプセル34を得た。マイクロカプセル中の薬物含量を表5に示す。
【0460】
磁性マイクロカプセル34について赤外吸収を測定した(FT−IR;パーキンエルマー社製、1720X)ところ、加熱処理前に観察されたアミン(3340 cm−1付近)及びエポキシ(822 cm−1付近)のピークがカプセル34では消失していた。これより、側鎖にエポキシユニットをもつPHAとヘキサメチレンジアミンを反応させることで、架橋ポリマーにより被覆された磁性マイクロカプセル34が得られたことがわかる。
【0461】
(実施例34)
上記の磁性マイクロカプセル33について50質量部に、末端アミノ変性ポリシロキサン(変性シリコーンオイルTSF4700、GE東芝シリコーン(株)製)を10質量部添加し、70℃で2時間反応させた。これをメタノールに懸濁し、遠心分離(10、000×g、4℃、20分間)する操作を繰返すことで洗浄、乾燥し、ポリシロキサンのグラフト鎖を有する磁性マイクロカプセル35を得た。マイクロカプセル中の薬物含量を表5に示す。
【0462】
磁性マイクロカプセル35について赤外吸収を測定した(FT−IR;パーキンエルマー社製、1720X)ところ、加熱処理前に観察されたアミン(3340 cm−1付近)及びエポキシ(822 cm−1付近)のピークが磁性マイクロカプセル35では消失していた。これより、側鎖にエポキシユニットをもつPHAと末端アミノ変性ポリシロキサンを反応させることにより、ポリシロキサンのグラフト鎖を有する磁性マイクロカプセル35が得られたことがわかる。
【0463】
【表5】
Figure 2004331750
実験例1
約 20 mgの磁性マイクロカプセル12を分散溶媒(2.5 mgのカルボキシメチルセルロース、0.5 mg のポリソルベート 80、25 mg のマンニトールを溶解した蒸留水)0.5 ml に分散して10週齢雄性SDラットの背部皮下に22G注射針で投与した。投与後一定時間毎にラットを屠殺して投与部位に残存するマイクロカプセルを取り出し、この取り出したマイクロカプセル中のペプチドAを定量した結果を表6に示す。
【0464】
実験例2〜9および比較例実験例1
磁性マイクロカプセル12、13、14、15、23、24、25、33、34、35をマイクロカプセルとして用いた以外は実験例1と全く同様にして、製剤を調製し、経時的にペプチドAを定量した。残存率を表6に示す。
【0465】
【表6】
Figure 2004331750
(実施例35)
抗生物質としてバンコマイシンを担持するマイクロカプセルを次のようにして調製した。
【0466】
1.5gの磁性体1を分散した70mLのクロロホルムに、5 % グルコース溶液にバンコマイシンを 0.2 g、参考例6で調製したPseudomonas cichorii YN2由来のPHA合成酵素YN2−C2を10U/mL、参考例8で調製した(R)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoAを終濃度1mMになるように添加した10mLを加え、プローブ型超音波発振機(Ohtake)で乳化し、W/O型乳化液を作成した。超音波の照射は50ワットの条件で30秒間、10回くりかえして行った。このようにして調製した乳化液を37℃で3時間インキュベートすることによって、PHA合成反応を行った。
【0467】
反応液を、ゲルろ過法(Sephadex G−50カラム)によってサイズ分画して、磁性マイクロカプセルを得た。動的光散乱法によると該マイクロカプセル平均粒径は840nmの単分散状態であった。
【0468】
作製した磁性マイクロカプセルの一部を、真空乾燥したのち、20 mlのクロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS、島津QP−5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、当該PHAは3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸をモノマーユニットとするPHAであることが確認された。さらに、該PHAの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=15、000、Mw=37、000であった。
【0469】
(実施例36)
8−[1−オキソ−3−[1−(フェニルメチル)ピペリジン−4−イル]プロピル]−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンズアゼピン(以下、薬物2と称する)200mgと2.0gの例示化合物1、さらに2.0gの磁性体1をジクロロメタン2mlに溶解した溶液を、16〜18℃に冷却した後、あらかじめ16〜18℃に冷却しておいた0.1%ポリビニルアルコール(EG−40、日本合成化学製)水溶液500mlに注入し、タービン型ホモミキサー(特殊機化製)を用い、7000rpmでO/W型エマルションとした。得られたO/W型エマルションを室温で3時間撹拌してジクロロメタンを揮発させ、油相を固化させた後、1500rpmで遠心分離した。得られた沈殿物を蒸留水に再分散後、分散液をさらに遠心分離し、遊離薬物を洗浄除去した。得られたマイクロカプセルを少量の蒸留水に再分散後、凍結乾燥し、粉末としてマイクロカプセルを得、これを磁性マイクロカプセル36とした。マイクロカプセル中の薬物含量を表7に示す。なお、薬物含量は25mgのマイクロカプセルを60%アセトニトリル含有リン酸緩衝液(pH7)10mlに溶解したサンプルをHPLC法で定量することによって測定した。
【0470】
(実施例37〜47)
例示化合物2〜12を用いる以外は実施例36と同様にして磁性マイクロカプセル37〜47を調製した。マイクロカプセル中の薬物含量を表7に示す。
【0471】
(実施例48)
上記の磁性マイクロカプセル47の50質量部を精製水50質量部に懸濁したのち、該懸濁液に架橋剤としてヘキサメチレンジアミン0.5質量部を溶解させた。溶解を確認後、凍結乾燥により水を除去した後、70℃で12時間反応させることで磁性マイクロカプセル48を得た。
【0472】
磁性マイクロカプセル48について赤外吸収を測定した(FT−IR;パーキンエルマー社製、1720X)ところ、加熱処理前に観察されたアミン(3340 cm−1付近)及びエポキシ(822 cm−1付近)のピークが磁性マイクロカプセル48では消失していた。これより、側鎖にエポキシユニットをもつPHAとヘキサメチレンジアミンを反応させることで、架橋ポリマーにより被覆された磁性マイクロカプセル48が得られたことがわかる。
【0473】
(実施例49)
上記の磁性マイクロカプセル47について50質量部に、末端アミノ変性ポリシロキサン(変性シリコーンオイルTSF4700、GE東芝シリコーン(株)製)を10質量部添加し、70℃で2時間反応させた。これをメタノールに懸濁し、遠心分離(10,000×g、4℃、20分間)する操作を繰返すことで洗浄、乾燥し、ポリシロキサンのグラフト鎖を有する磁性マイクロカプセル49を得た。
【0474】
磁性マイクロカプセル49について赤外吸収を測定した(FT−IR;パーキンエルマー社製、1720X)ところ、加熱処理前に観察されたアミン(3340 cm−1付近)及びエポキシ(822 cm−1付近)のピークが磁性マイクロカプセル49では消失していた。これより、側鎖にエポキシユニットをもつPHAと末端アミノ変性ポリシロキサンを反応させることにより、ポリシロキサンのグラフト鎖を有する磁性マイクロカプセル49が得られたことがわかる。
【0475】
(比較例2)
例示化合物の替わりに乳酸−グリコール酸共重合体(以下PLGAと略記する)(和光純薬製、Lot. No.K1030、乳酸/グリコール酸組成比(モル%):75/25、GPC重量平均分子量:13000)を用いる以外は実施例36と同様にして磁性マイクロカプセル50を調製した。マイクロカプセル中の薬物含量を表7に示す。
【0476】
【表7】
Figure 2004331750
実施例50
薬物2を1.5gと4.5gの例示化合物1、さらに1.5gの磁性体1をジクロロメタン9mlに溶解した溶液を、16〜18℃に冷却した後、あらかじめ16〜18℃に冷却しておいた0.1%ポリビニルアルコール水溶液500mlに注入し、タービン型ホモミキサー(特殊機化製)を用い、8000rpmでO/W型エマルションとした。得られたO/W型エマルションを室温で3時間撹拌してジクロロメタンを揮発させ、油相を固化させた後、遠心分離器を用いて1500rpmで遠心分離した。得られた沈殿物を蒸留水に再分散後、分散液をさらに遠心分離し、遊離薬物を洗浄除去した。得られたマイクロカプセルを少量の蒸留水に再分散後、凍結乾燥し、粉末としてマイクロカプセルを得、これを磁性マイクロカプセル51とした。マイクロカプセル中の薬物含量を表8に示す。
【0477】
(実施例51〜61)
例示化合物2〜12を用いる以外は実施例50と同様にして磁性マイクロカプセル52〜62を調製した。マイクロカプセル中の薬物含量を表8に示す。
【0478】
(実施例62)
磁性マイクロカプセル62を用いる以外は実施例48と同様にして磁性マイクロカプセル63を調製した。マイクロカプセル中の薬物含量を表8に示す。
【0479】
(実施例63)
磁性マイクロカプセル62を用いる以外は実施例49と同様にして磁性マイクロカプセル64を調製した。マイクロカプセル中の薬物含量を表8に示す。
【0480】
(比較例3)
例示化合物の替わりに乳酸−グリコール酸共重合体(以下PLGAと略記する)(和光純薬製、Lot. No.K1030、乳酸/グリコール酸組成比(モル%):75/25、GPC重量平均分子量:13000)を用いる以外は実施例50と同様にして磁性マイクロカプセル65を調製した。マイクロカプセル中の薬物含量を表8に示す。
【0481】
【表8】
Figure 2004331750
(実施例64)
200mgの薬物1および0.5gの磁性体1をジクロロメタン2mlに含有させた溶液を、16〜18℃に冷却した後、あらかじめ16〜18℃に冷却しておいた0.1%ポリビニルアルコール(EG−40、日本合成化学製)を溶解した0.1 Mリン酸バッファー(pH 7.0)100mlに注入し、タービン型ホモミキサー(特殊機化製)を用い、7000rpmでO/W型エマルションとした。得られたO/W型エマルションに、精製酵素液(1)5ml、(R)−3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)1g、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1gを添加、溶解し、室温で3時間緩やかに撹拌してPHAの合成とジクロロメタンの揮発を行い、油相を固化させた後、1500rpmで遠心分離した。得られた沈殿物を蒸留水に再分散後、分散液をさらに遠心分離し、遊離薬物を洗浄除去した。得られたマイクロカプセルを少量の蒸留水に再分散後、凍結乾燥し、粉末としてマイクロカプセルを得、これを磁性マイクロカプセル66とした。マイクロカプセル中の薬物含量を表9に示す。なお、薬物含量は25mgのマイクロカプセルを60%アセトニトリル含有リン酸緩衝液(pH7)10mlに溶解したサンプルをHPLC法で定量することによって測定した。
【0482】
また、磁性マイクロカプセル66を、20 mLのクロロホルムに懸濁し、60 ℃で 20 時間攪拌して外被を構成するPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45 μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHBモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、得られたクロマトグラムの中で主成分であるピークが標品であるヒドロキシ酪酸のメチル化化合物との保持時間が同一であることから、得られた磁性マイクロカプセル66の外被の主成分はPHBであることを確認した。
【0483】
さらに、該PHBの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度; 40 ℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn= 78,000 であった。
【0484】
(実施例65)
実施例64における精製酵素液(1)の替わりに粗酵素液(1)を用いた点以外は、実施例64と全く同様にして磁性マイクロカプセル67を得た。マイクロカプセル中の薬物含量を表9に示す。
【0485】
実施例64と同様にして評価した結果、得られた磁性マイクロカプセル67の外被の主成分がPHBであることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた磁性マイクロカプセル67に含まれるPHAの数平均分子量は 75,000 であった。
【0486】
(実施例66)
実施例64における精製酵素液(1)の替わりに粗酵素液(2)を用いた点以外は、実施例64と全く同様にして磁性マイクロカプセル68を得た。マイクロカプセル中の薬物含量を表9に示す。
【0487】
実施例64と同様にして評価した結果、得られた磁性マイクロカプセル68の外被の主成分がPHBであることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた磁性マイクロカプセル68に含まれるPHAの数平均分子量は 74,000 であった。
【0488】
(実施例67)
実施例64における精製酵素液(1)の替わりに精製酵素液(2)を用いた点と(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAの替わりに(R)−3−ヒドロキシオクタノイルCoA(Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)に記載の方法で調製)を用いた点以外は、実施例64と全く同様にして磁性マイクロカプセル69を得た。マイクロカプセル中の薬物含量を表9に示す。
【0489】
実施例64と同様にして評価した結果、得られた磁性マイクロカプセル69の外被の主成分が3−ヒドロキシオクタン酸ユニットからなるPHAであることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた磁性マイクロカプセル69に含まれるPHAの数平均分子量は 25,000 であった。
【0490】
(実施例68)
実施例64における精製酵素液(1)の替わりに精製酵素液(3)を用いた点と(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAの替わりに(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoA(Reformatsky反応により得られた3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸を得たのち、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997) に記載の方法で調製)を用いた点以外は、実施例64と全く同様にして磁性マイクロカプセル70を得た。マイクロカプセル中の薬物含量を表9に示す。実施例64と同様にして評価した結果、得られた磁性マイクロカプセル70の外被の主成分が3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットからなるPHAであることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた磁性マイクロカプセル70に含まれるPHAの数平均分子量は 22,000 であった。
【0491】
(実施例69)
実施例64における精製酵素液(1)の替わりに粗酵素液(3)を用いた点と(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAの替わりに(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェノキシバレリルCoA(J.Org.Chem.,55,1490−1492(1990)に記載の方法で合成した3−フェノキシプロパナール及びブロモ酢酸エチルを原料とし、亜鉛によるReformatsky反応で得られた3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸を得たのち、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997) に記載の方法で調製)を用いた点以外は、実施例64と全く同様にして磁性マイクロカプセル71を得た。マイクロカプセル中の薬物含量を表9に示す。
【0492】
実施例64と同様にして評価した結果、得られた磁性マイクロカプセル71の外被の主成分が3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸ユニットからなるPHAであることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた磁性マイクロカプセル71に含まれるPHAの数平均分子量は 24,000 であった。
【0493】
(実施例70)
実施例64における精製酵素液(1)の替わりに粗酵素液(4)を用いた点と(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAの替わりに(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoAを用いた点以外は、実施例64と全く同様にしてPHA合成反応を行った。ここで室温において1時間反応を行った後、さらに(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェノキシバレリルCoA1gを添加し、室温においてさらに2時間反応を行った。以降の処理は実施例64と全く同様にして磁性マイクロカプセル72を得た。マイクロカプセル中の薬物含量を表9に示す。
【0494】
このカプセル構造体の表面に形成されたポリマーの質量を、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS IV、CAMECA製)により測定した。得られたマススペクトルから、カプセル構造体表面のPHAは主に3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸ユニットで構成されていることが確認された。また、イオンスパッタリングによりカプセル構造体の表面を少しずつ削りながら同様にTOF−SIMSによりマススペクトルを測定していったところ、ある時点でカプセル構造体を構成するPHAのモノマーユニットの主成分が3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットに置き換わることが確認された。これより、本実施例のカプセル構造体は、薬物2を被覆した、ポリ(3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸)の上を、ポリ(3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸)が被覆した、所望のカプセル構造体であることがわかった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた磁性マイクロカプセル72に含まれるPHAの数平均分子量は 23,000 であった。
【0495】
(実施例71)
実施例64における精製酵素液(1)の替わりに粗酵素液(5)を用いた点と1gの(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAの替わりに0.8gの(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoA、0.2gの(R,S)−3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタノイルCoA(Int.J.Biol.Macromol.,12,85−91(1990)に記載の方法で合成した3−ヒドロキシ−7−オクテン酸の不飽和部分を3−クロロ安息香酸でエポキシ化したのち、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)に記載の方法で調製)を用いた点以外は、実施例64と全く同様にして磁性マイクロカプセル73を得た。マイクロカプセル中の薬物含量を表9に示す。
【0496】
1H−NMR(使用機器:FT−NMR:Bruker DPX400、測定核種:1H,使用溶媒:重クロロホルム(TMS入り))解析の結果より、得られた磁性マイクロカプセル73の外被は、3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットが76%、3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタン酸ユニットが24%からなるPHAであることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた磁性マイクロカプセル73に含まれるPHAの数平均分子量は 20,000 であった。
【0497】
(実施例72)
上記の磁性マイクロカプセル73について50質量部を精製水50質量部に懸濁したのち、該懸濁液に架橋剤としてヘキサメチレンジアミン0.5質量部を溶解させた。溶解を確認後、凍結乾燥により水を除去した後、70℃で12時間反応させることで磁性マイクロカプセル74を得た。マイクロカプセル中の薬物含量を表9に示す。
【0498】
磁性マイクロカプセル74について赤外吸収を測定した(FT−IR;パーキンエルマー社製、1720X)ところ、加熱処理前に観察されたアミン(3340 cm−1付近)及びエポキシ(822 cm−1付近)のピークが磁性マイクロカプセル74では消失していた。これより、側鎖にエポキシユニットをもつPHAとヘキサメチレンジアミンを反応させることで、架橋ポリマーにより被覆された磁性マイクロカプセル74が得られたことがわかる。
【0499】
(実施例73)
上記の磁性マイクロカプセル73について50質量部に、末端アミノ変性ポリシロキサン(変性シリコーンオイルTSF4700、GE東芝シリコーン(株)製)を10質量部添加し、70℃で2時間反応させた。これをメタノールに懸濁し、遠心分離(10,000×g、4℃、20分間)する操作を繰返すことで洗浄、乾燥し、ポリシロキサンのグラフト鎖を有する磁性マイクロカプセル75を得た。マイクロカプセル中の薬物含量を表9に示す。
【0500】
磁性マイクロカプセル75について赤外吸収を測定した(FT−IR;パーキンエルマー社製、1720X)ところ、加熱処理前に観察されたアミン(3340 cm−1付近)及びエポキシ(822 cm−1付近)のピークが磁性マイクロカプセル75では消失していた。これより、側鎖にエポキシユニットをもつPHAと末端アミノ変性ポリシロキサンを反応させることにより、ポリシロキサンのグラフト鎖を有する磁性マイクロカプセル75が得られたことがわかる。
【0501】
【表9】
Figure 2004331750
実験例10
実施例61で得られた磁性マイクロカプセル62の62.8mg(薬物として30mg/kg体重相当)を0.5mlの分散媒(2.5mgのカルボキシメチルセルロース、1.0mgのポリソルベート80、25.0mgのマンニトールを溶解した蒸留水)に分散して10週齢雄性SDラットの背部皮下に22G注射針で投与した。投与後、一定時間毎にラットを屠殺して投与部位に残存するマイクロカプセルを取り出し、この取り出したマイクロカプセル中の薬物量を定量し、投与量に対する残存率を表10に示す。
【0502】
実験例11〜15および比較実験例2
磁性マイクロカプセル62,63,64,65,73,74,75を薬物として30mg/kg体重相当になるよう用いた以外は実験例10と全く同様にして、製剤を調製し、経時的に薬物量を定量した。残存率を表10に示す。
【0503】
【表10】
Figure 2004331750
(実施例74)
2.0gの例示化合物1および1gの磁性体1を塩化メチレン20m1に溶解した液に、精製水12mlを投入し、振盪・攪拌してW/O型エマルションを調製した。さらに超音波を照射することにより内水相の径を小さくした。ついで、小型ホモジナイザー(キネマチカ社(スイス)製のポリトロン)で攪拌しつつ、1w/v%ポリビニルアルコール水溶液200ml中に前記W/O型エマルション32mlを投入し、W/O/W型エマルションとした。このW/O/W型エマルションを攪拌機で6 時間攪拌し、油相中の有機溶媒である塩化メチレンを蒸発させ、油相中の例示化合物1を固化させた。微粒子を遠心分離により捕集し、同時に冷却した精製水で洗浄した後、0.1 %Tween80 水溶液で再分散し、凍結乾燥し、粉末状の微粒子である中空磁性マイクロカプセル1を得た。また、中空磁性マイクロカプセル1を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤1とした。得られた中空マイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表11に示す。
【0504】
(実施例75〜85)
W/O型エマルションを作製する際、その油相に溶解させるポリマーとして例示化合物2〜12を用いる以外は、実施例74と同様にして粉末状の微粒子である中空磁性マイクロカプセル2〜12を得た。また、これら中空マイクロカプセルを用いる超音波造影剤を、それぞれ超音波造影剤2〜12とした。
【0505】
得られた中空マイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表11に示す。
【0506】
(実施例86)
上記の中空磁性マイクロカプセル12の50質量部を精製水50質量部に懸濁したのち、該懸濁液に架橋剤としてヘキサメチレンジアミン0.5質量部を溶解させた。溶解を確認後、凍結乾燥により水を除去した後、70℃で12時間反応させることで中空磁性マイクロカプセル13を得た。架橋化処理を施した中空磁性マイクロカプセル13を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤13とした。得られた中空マイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表11に示す。
【0507】
中空磁性マイクロカプセル13について、赤外吸収を測定した(FT−IR;パーキンエルマー社製、1720X)ところ、加熱処理前に観察されたアミン(3340 cm−1付近)及びエポキシ(822 cm−1付近)のピークが中空磁性マイクロカプセル13では消失していた。これより、側鎖にエポキシ基を有するユニットを含むPHAとヘキサメチレンジアミンを反応させることで、ジアミンとエポキシ基との開環付加で架橋化されたポリマーにより、表面が被覆された中空磁性マイクロカプセル13が得られたことがわかる。
【0508】
(実施例87)
上記中空磁性マイクロカプセル12の50質量部に、末端アミノ変性ポリシロキサン(変性シリコーンオイルTSF4700、GE東芝シリコーン(株)製)を10質量部添加し、70℃で2時間反応させた。これをメタノールに懸濁し、遠心分離(10,000×g、4℃、20分間)する操作を繰返すことで洗浄した後、乾燥して、ポリシロキサンのグラフト鎖を有する中空磁性マイクロカプセル14を得た。この表面にポリシロキサンのグラフト鎖の修飾を有する中空磁性マイクロカプセル14を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤14とした。得られた中空マイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表11に示す。
【0509】
中空磁性マイクロカプセル14について赤外吸収を測定した(FT−IR;パーキンエルマー社製、1720X)ところ、加熱処理前に観察されたアミン(3340 cm−1付近)及びエポキシ(822 cm−1付近)のピークが中空磁性マイクロカプセル14では消失していた。これより、側鎖にエポキシ基を有するユニットを含むPHAと末端アミノ変性ポリシロキサンを反応させることにより、エポキシ基と末端アミノ基との開環付加で、ポリシロキサンのグラフト鎖で修飾された中空磁性マイクロカプセル14が得られていることがわかる。
【0510】
(比較例4)
W/O型エマルションを作製する際、その油相に溶解させるポリマーとしてポリDL乳酸(平均分子量7000)を用いる以外は、実施例74と同様にして粉末状の微粒子である中空磁性マイクロカプセル15を得た。このポリDL乳酸からなる中空磁性マイクロカプセル15を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤15とした。得られた中空マイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表11に示す。
【0511】
【表11】
Figure 2004331750
孔の有無:乾燥の際、内相の水、有機溶媒の蒸散により、外被に孔が生成しているか否を示す。
【0512】
(実施例88)
2gの磁性体1を分散した20m1の塩化メチレン溶液に、12mlの0.1 Mリン酸バッファー(pH 7.0)に精製酵素液(1)0.6ml、(R)−3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)300mg、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)12mgを加え溶解した水溶液を投入し、振盪・攪拌してW/O型エマルションを調製した。さらに超音波を照射することにより内水相の径を小さくした。ついで、小型ホモジナイザー(キネマチカ社(スイス)製のポリトロン)で攪拌しつつ、1w/v%ポリビニルアルコール水溶液200ml に前記W/O型エマルション32m1を投入し、W/O/W型エマルションとした。このW/O/W型エマルションを攪拌機で6 時間攪拌しつつ、PHAを合成するとともに、油相中の塩化メチレンを蒸発させ、PHAを固化させて、マイクロカプセル状微粒子を調製した。得られた微粒子を遠心分離により捕集し、同時に冷却した精製水で洗浄した後、0.1 %Tween80 水溶液で再分散し、凍結乾燥し、粉末状のマイクロカプセル状微粒子である中空磁性マイクロカプセル16を得た。この中空磁性マイクロカプセル16を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤16とした。得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表12に示す。
【0513】
また、中空磁性マイクロカプセル16を、20 mLのクロロホルムに懸濁し、60℃で20 時間攪拌して、マイクロカプセル外被を構成するPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45 μmのメンブレン・フィルターでろ過し、ロータリー・エバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHBモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、得られたクロマトグラムの中で主成分であるピークが標品である3−ヒドロキシ酪酸のメチルエステル化化合物との保持時間が同一であることから、得られた中空磁性マイクロカプセル16の外被の主成分はPHBであることが確認された。
【0514】
さらに、このPHBの分子量をゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度; 40 ℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、数平均分子量Mn= 72,000 であった。
【0515】
(実施例89)
実施例88で用いた精製酵素液(1)に代えて、KK01株由来の粗酵素液(1)を用いた点以外は、実施例88と同じ条件として、中空磁性マイクロカプセル17を得た。この中空磁性マイクロカプセル17を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤17とした。
【0516】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表12に示す。実施例88と同様に、マイクロカプセル外被を構成するPHAの組成を評価した結果、得られた中空磁性マイクロカプセル17の外被の主成分がPHBであることが確認された。また、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた中空磁性マイクロカプセル17外被を構成するPHAの数平均分子量は 73,000 であった。
【0517】
(実施例90)
実施例88で用いた精製酵素液(1)に代えて、TL2株由来の粗酵素液(2)を用いた点以外は、実施例88と同じ条件として、中空磁性マイクロカプセル18を得た。この中空磁性マイクロカプセル18を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤18とした。
【0518】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表12に示す。
【0519】
実施例88と同様に、マイクロカプセル外被を構成するPHAの組成を評価した結果、得られた中空磁性マイクロカプセル18の外被の主成分がPHBであることが確認された。また、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた中空磁性マイクロカプセル18外被を構成するPHAの数平均分子量は 72,000 であった。
【0520】
(実施例91)
実施例88で用いた精製酵素液(1)に代えて、組換えPHA合成酵素の精製酵素液(2)を用い、また、(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAに代えて、(R)−3−ヒドロキシオクタノイルCoA(Eur. J. Biochem., 250, 432−439 (1997)に記載の方法で調製)を用いて、その他の条件は実施例88と同様にして、中空磁性マイクロカプセル19を得た。この中空磁性マイクロカプセル19を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤19とした。
【0521】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表12に示す。
【0522】
実施例88と同様に、マイクロカプセル外被を構成するPHAの組成を評価した結果、得られた中空磁性マイクロカプセル19の外被の主成分が3−ヒドロキシオクタン酸ユニットからなるPHAであることが確認された。また、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた中空磁性マイクロカプセル19外被を構成するPHAの数平均分子量は 25,000 であった。
【0523】
(実施例92)
実施例88で用いた精製酵素液(1)に代えて、組換えPHA合成酵素の精製酵素液(3)を用い、また、 (R)−3−ヒドロキシブチリルCoAに代えて、(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoA(Reformatsky反応により得られた3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸を作製し、次いで、Eur. J. Biochem., 250, 432−439 (1997) に記載の方法で調製)を用いて、その他の条件は実施例88と同様にして、中空磁性マイクロカプセル20を得た。この中空磁性マイクロカプセル20を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤20とした。
【0524】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表12に示す。
【0525】
実施例88と同様に、マイクロカプセル外被を構成するPHAの組成を評価した結果、得られた中空磁性マイクロカプセル20の外被の主成分が3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットからなるPHAであることが確認された。また、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた中空磁性マイクロカプセル20外被を構成するPHAの数平均分子量は 21,000 であった。
【0526】
(実施例93)
実施例88で用いた精製酵素液(1)に代えて、組換えPHA合成酵素の精製酵素液(3)を用い、また、(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAに代えて、(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェノキシバレリルCoA(J. Org. Chem., 55, 1490−1492 (1990)に記載の方法で合成した3−フェノキシプロパナール、及びブロモ酢酸エチルを原料とし、亜鉛によるReformatsky反応で得られた3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸を取得し、次いで、Eur. J. Biochem., 250, 432−439 (1997) に記載の方法で調製)を用いて、その他の条件は実施例88と同様にして、中空磁性マイクロカプセル21を得た。この中空磁性マイクロカプセル21を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤21とした。
【0527】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表12に示す。
【0528】
実施例88と同様に、マイクロカプセル外被を構成するPHAの組成を評価した結果、得られた中空磁性マイクロカプセル21の外被の主成分が3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸ユニットからなるPHAであることが確認された。また、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた中空磁性マイクロカプセル21外被を構成するPHAの数平均分子量は 22,000 であった。
【0529】
(実施例94)
実施例88で用いた精製酵素液(1)に代えて、P91株由来の粗酵素液(4)を用い、また、(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAに代えて、(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoAを用いて、その他の条件は実施例88と同様にして、PHA合成反応を行った。本例では、室温において3時間反応を行った後、さらに、水相中に(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェノキシバレリルCoA300mgを添加し、室温においてさらに2時間反応を行った。その後、油相中の塩化メチレンの蒸発等の処理は、実施例88と同様にして、中空磁性マイクロカプセル22を得た。この中空磁性マイクロカプセル22を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤22とした。
【0530】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表12に示す。
【0531】
このカプセル構造体の表面に形成されたPHAポリマーに含まれるモノマーユニット・フラグメントの質量を、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMSIV、CAMECA製)により測定した。得られたマススペクトルから、カプセル構造体表面のPHAは、主に3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸ユニットで構成されていることが確認された。また、イオンスパッタリングによりカプセル構造体の表面を少しずつ削りつつ、その部分のPHAポリマーに含まれるモノマーユニット・フラグメントの質量を、TOF−SIMSによりマススペクトルを測定していったところ、外被表面より、ある深さスパッタリングが進んだ時点でカプセル構造体を構成するPHAのモノマーユニットの主成分が3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットに換わることが確認された。これより、本実施例のカプセル構造体は、当初の酵素反応で生成するポリ(3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸)の外被層上を、後半の酵素反応で生成するポリ(3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸)が被覆した二層構造の外被を有する、所望のカプセル構造体であることがわかった。また、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた中空磁性マイクロカプセル22の外被表面を構成するPHAの数平均分子量は 23,000 であった。
【0532】
(実施例95)
実施例88で用いた精製酵素液(1)に代えて、YN2株由来の粗酵素液(5)を用い、さらに、60mgの(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAに代えて、240mgの(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoAと、60mgの(R,S)−3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタノイルCoA(Int.J. Biol. Macromol., 12, 85−91 (1990)に記載の方法で合成した3−ヒドロキシ−7−オクテン酸の不飽和部分を3−クロロ安息香酸でエポキシ化した後、Eur. J. Biochem., 250, 432−439 (1997)に記載の方法で調製)を用いて、その他の条件は実施例88と同様にして、中空磁性マイクロカプセル23を得た。この中空磁性マイクロカプセル23を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤23とした。
【0533】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表12に示す。
【0534】
マイクロカプセル外被を構成するPHA組成を、1H−NMR(使用機器:FT−NMR:Bruker DPX400、測定核種:1H、使用溶媒:重クロロホルム(TMS入り))解析により評価した結果、得られた中空磁性マイクロカプセル23の外被は、3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットが77%、3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタン酸ユニットが23%からなるPHAであることを確認した。また、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた中空磁性マイクロカプセル23外被を構成するPHAの数平均分子量は 25,000 であった。
【0535】
(実施例96)
上記中空磁性マイクロカプセル23の50質量部を、精製水50質量部に懸濁した後、該懸濁液に、架橋剤としてヘキサメチレンジアミン0.5質量部を溶解させた。溶解を確認後、凍結乾燥により水を除去した後、70℃で12時間反応させ、表面の架橋化処理を施した中空磁性マイクロカプセル24を得た。この架橋化処理を施した中空磁性マイクロカプセル24を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤24とした。
【0536】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表12に示す。
【0537】
中空磁性マイクロカプセル24について赤外吸収を測定した(FT−IR;パーキンエルマー社製、1720X)ところ、加熱処理前に観察されたアミン(3340 cm−1付近)及びエポキシ(822 cm−1付近)のピークが中空磁性マイクロカプセル24では消失していた。これより、側鎖にエポキシ基を有するユニットをもつPHAとヘキサメチレンジアミンを反応させることで、その表面における、ジアミンとエポキシ基との開環付加で架橋形成されたポリマーにより被覆された中空磁性マイクロカプセル24が得られたことがわかる。
【0538】
(実施例97)
上記の中空磁性マイクロカプセル23の50質量部に、末端アミノ変性ポリシロキサン(変性シリコーンオイルTSF4700、GE東芝シリコーン(株)製)を10質量部添加し、70℃で2時間反応させた。これをメタノールに懸濁し、遠心分離(10,000×g、4℃、20分間)する操作を繰返すことで洗浄し、次いで、乾燥して、ポリシロキサンのグラフト鎖が付加修飾された中空磁性マイクロカプセル25を得た。この表面にポリシロキサンのグラフト鎖が付加修飾された中空磁性マイクロカプセル25を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤25とした。
【0539】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表12に示す。
【0540】
中空磁性マイクロカプセル25について赤外吸収を測定した(FT−IR;パーキンエルマー社製、1720X)ところ、加熱処理前に観察されたアミン(3340 cm−1付近)及びエポキシ(822 cm−1付近)のピークが中空磁性マイクロカプセル25では消失していた。これより、側鎖にエポキシ基を有するユニットを含むPHAに末端アミノ変性ポリシロキサンを反応させることにより、エポキシ基と末端アミノ基との開環付加により、その表面PHAにポリシロキサンのグラフト鎖による化学修飾がなされた中空磁性マイクロカプセル25が得られたことがわかる。
【0541】
【表12】
Figure 2004331750
(実施例98)
2gの磁性体1を分散した20m1の塩化メチレン溶液に、12mlの精製水を投入し、振盪・攪拌してW/O型エマルションを調製した。さらに超音波を照射することにより内水相の径を小さくした。ついで、0.1 Mリン酸バッファー(pH7.0)に1w/v%のポリビニルアルコール、精製酵素液(1)5ml、(R)−3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)1g、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)100mgを加え溶解した水溶液100mlに、小型ホモジナイザー(キネマチカ社(スイス)製のポリトロン)で攪拌しつつ、前記W/O型エマルション32m1を投入し、W/O/W型エマルションとした。このW/O/W型エマルションを攪拌機で6時間攪拌し、PHAを合成するとともに塩化メチレンを蒸発させ、生成したPHAを固化して、マイクロカプセル微粒子を調製した。この微粒子を遠心分離により捕集し、同時に冷却した精製水で洗浄した後、0.1 %Tween80 水溶液で再分散し、凍結乾燥し、粉末状のマイクロカプセル微粒子である中空磁性マイクロカプセル26を得た。この中空磁性マイクロカプセル26を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤26とした。
【0542】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表13に示す。また、中空磁性マイクロカプセル26を、20 mLのクロロホルムに懸濁し、60 ℃で 20 時間攪拌して外被を構成するPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45 μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHBモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、得られたクロマトグラムの中で主成分であるピークが、標品であるヒドロキシ酪酸のメチルエステル化化合物との保持時間が同一であることから、得られた中空磁性マイクロカプセル26の外被の主成分はPHBであることを確認した。
【0543】
さらに、該PHBの分子量をゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度; 40 ℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、数平均分子量Mn= 71,000 であった。
【0544】
(実施例99)
実施例98で用いた精製酵素液(1)に代えて、KK01株由来の粗酵素液(1)を用い、それ以外の条件は、実施例98と同じにして、中空磁性マイクロカプセル27を得た。この中空磁性マイクロカプセル27を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤27とした。
【0545】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表13に示す。
【0546】
実施例98と同様に、マイクロカプセル外被を構成するPHAの組成を評価した結果、得られた中空磁性マイクロカプセル27の外被の主成分がPHBであることを確認した。また、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた中空磁性マイクロカプセル27外被を構成するPHAの数平均分子量は 76,000 であった。
【0547】
(実施例100)
実施例98で用いた精製酵素液(1)に代えて、TL2株由来の粗酵素液(2)を用い、それ以外の条件は、実施例98と同じにして、中空磁性マイクロカプセル28を得た。この中空磁性マイクロカプセル28を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤28とした。
【0548】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表13に示す。
【0549】
実施例98と同様に、マイクロカプセル外被を構成するPHAの組成を評価した結果、得られた中空磁性マイクロカプセル28の外被の主成分がPHBであることを確認した。また、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた中空磁性マイクロカプセル28外被を構成するPHAの数平均分子量は 75,000 であった。
【0550】
(実施例101)
実施例98で用いた精製酵素液(1)に代えて、TL2株由来の粗酵素液(2)を用い、また、(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAに代えて、(R)−3−ヒドロキシオクタノイルCoA(Eur. J. Biochem., 250, 432−439 (1997)に記載の方法で調製)を用いて、それ以外は、実施例98と同様にして、中空磁性マイクロカプセル29を得た。この中空磁性マイクロカプセル29を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤29とした。
【0551】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表13に示す。
【0552】
実施例98と同様に、マイクロカプセル外被を構成するPHAの組成を評価した結果、得られた中空磁性マイクロカプセル29の外被の主成分が3−ヒドロキシオクタン酸ユニットからなるPHAであることを確認した。また、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた中空磁性マイクロカプセル29外被を構成するPHAの数平均分子量は 25,000 であった。
【0553】
(実施例102)
実施例98で用いた精製酵素液(1)に代えて、P91株由来の粗酵素液(3)を用い、また、 (R)−3−ヒドロキシブチリルCoAに代えて、(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoA(Reformatsky反応により得られた3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸を得た後、Eur. J. Biochem., 250, 432−439 (1997)に記載の方法で調製)を用いて、それ以外は、実施例98と同様にして、中空磁性マイクロカプセル30を得た。この中空磁性マイクロカプセル30を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤30とした。
【0554】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表13に示す。
【0555】
実施例98と同様に、マイクロカプセル外被を構成するPHAの組成を評価した結果、得られた中空磁性マイクロカプセル30の外被の主成分が3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットからなるPHAであることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた中空磁性マイクロカプセル30外被を構成するPHAの数平均分子量は 21,000 であった。
【0556】
(実施例103)
実施例98で用いた精製酵素液(1)に代えて、P91株由来の粗酵素液(3)を用い、また、(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAに代えて、(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェノキシバレリルCoA(J. Org. Chem., 55, 1490−1492 (1990)に記載の方法で合成した3−フェノキシプロパナール及びブロモ酢酸エチルを原料とし、亜鉛によるReformatsky反応で得られた3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸エステルを加水分解して、3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸を得た。その後、Eur. J. Biochem., 250, 432−439 (1997) に記載の方法で調製)を用いて、その他の条件は、実施例98と同様にして、中空磁性マイクロカプセル31を得た。この中空磁性マイクロカプセル31を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤31とした。
【0557】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表13に示す。
【0558】
実施例98と同様に、マイクロカプセル外被を構成するPHAの組成を評価した結果、得られた中空磁性マイクロカプセル31の外被の主成分が3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸ユニットからなるPHAであることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた中空磁性マイクロカプセル31外被を構成するPHAの数平均分子量は 23,000 であった。
【0559】
(実施例104)
実施例98で用いた精製酵素液(1)に代えて、粗酵素液(4)を用い、また、(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAに代えて、(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoAを用いて、それ以外の条件は、実施例98と同様にしてPHA合成反応を行った。本例では、室温において3時間反応を行った後、さらに(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェノキシバレリルCoA1gを水相に添加し、室温においてさらに2時間反応を行った。それ以降の処理は、実施例98と同様にして中空磁性マイクロカプセル32を得た。この中空磁性マイクロカプセル32を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤32とした。
【0560】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表13に示す。
【0561】
このカプセル構造体の表面に形成されたポリマーの質量を、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS IV、CAMECA製)により測定した。得られたマススペクトルから、カプセル構造体表面のPHAは主に3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸ユニットで構成されていることが確認された。また、イオンスパッタリングによりカプセル構造体の表面を少しずつ削りながら同様にTOF−SIMSによりマススペクトルを測定していったところ、ある時点でカプセル構造体を構成するPHAのモノマーユニットの主成分が3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットに置き換わることが確認された。これより、本実施例のカプセル構造体は、初期に生成したポリ(3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸)の外被層上に、後半に生成するポリ(3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸)が被覆した二層構造を有する、所望のカプセル構造体であることがわかった。また、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた中空磁性マイクロカプセル32外被を構成するPHAの数平均分子量は 22,000 であった。
【0562】
(実施例105)
実施例98で用いた精製酵素液(1)に代えて、粗酵素液(5)を用い、また、1gの(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAに代えて、800mgの(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoA、200mgの(R,S)−3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタノイルCoA(Int. J. Biol. Macromol., 12,85−91 (1990)に記載の方法で合成した3−ヒドロキシ−7−オクテン酸の不飽和部分を3−クロロ安息香酸でエポキシ化した後、Eur. J. Biochem., 250, 432−439 (1997)に記載の方法で調製)を用いて、それ以外の条件は、実施例98と同様にして、中空磁性マイクロカプセル33を得た。この中空磁性マイクロカプセル33を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤33とした。
【0563】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表13に示す。
【0564】
1H−NMR(使用機器:FT−NMR:Bruker DPX400、測定核種:1H,使用溶媒:重クロロホルム(TMS入り))解析の結果より、得られた中空磁性マイクロカプセル33の外被は、3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットが74%、3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタン酸ユニットが26%からなるPHAであることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた中空磁性マイクロカプセル33外被を構成するPHAの数平均分子量は 23,000 であった。
【0565】
(実施例106)
上記の中空磁性マイクロカプセル33について50質量部を精製水50質量部に懸濁したのち、該懸濁液に架橋剤としてヘキサメチレンジアミン0.5質量部を溶解させた。溶解を確認後、凍結乾燥により水を除去した後、70℃で12時間反応させることで中空磁性マイクロカプセル34を得た。この中空磁性マイクロカプセル34を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤34とした。得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表13に示す。
【0566】
中空マイクロカプセル34について赤外吸収を測定した(FT−IR;パーキンエルマー社製、1720X)ところ、加熱処理前に観察されたアミン(3340 cm−1付近)及びエポキシ(822 cm−1付近)のピークが中空磁性マイクロカプセル34では消失していた。これより、側鎖にエポキシユニットをもつPHAとヘキサメチレンジアミンを反応させることで、架橋ポリマーにより被覆された中空磁性マイクロカプセル34が得られたことがわかる。
【0567】
(実施例107)
上記の中空磁性マイクロカプセル33について50質量部に、末端アミノ変性ポリシロキサン(変性シリコーンオイルTSF4700、GE東芝シリコーン(株)製)を10質量部添加し、70℃で2時間反応させた。これをメタノールに懸濁し、遠心分離(10,000×g、4℃、20分間)する操作を繰返すことで洗浄、乾燥し、ポリシロキサンのグラフト鎖を有する中空磁性マイクロカプセル35を得た。この中空磁性マイクロカプセル35を用いる超音波造影剤を、中空磁性マイクロカプセル35とした。
【0568】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表13に示す。
【0569】
中空磁性マイクロカプセル35について赤外吸収を測定した(FT−IR;パーキンエルマー社製、1720X)ところ、加熱処理前に観察されたアミン(3340 cm−1付近)及びエポキシ(822 cm−1付近)のピークが中空磁性マイクロカプセル35では消失していた。これより、側鎖にエポキシユニットをもつPHAと末端アミノ変性ポリシロキサンを反応させることにより、ポリシロキサンのグラフト鎖を有する中空磁性マイクロカプセル35が得られたことがわかる。
【0570】
【表13】
Figure 2004331750
(実施例108)
0.2gの磁性体1を分散したジクロロメタン2mlを、16〜18℃に冷却した後、予め16〜18℃に冷却しておいた0.1%ポリビニルアルコール(EG−40、日本合成化学製)を溶解した0.1 Mリン酸バッファー(pH 7.0)100mlに注入し、タービン型ホモミキサー(特殊機化製)を用い、7000rpmで攪拌して、O/W型エマルションとした。得られたO/W型エマルションに、精製酵素液(1)5ml、(R)−3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)1g、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1gを添加、溶解し、室温で3時間緩やかに撹拌してPHAの合成とジクロロメタンの揮発を行い、油相中に溶解しているPHAを固化させた後、1500rpmで遠心分離した。得られた沈澱物を蒸留水に再分散後、分散液をさらに遠心分離し、遊離薬物を洗浄除去した。得られたマイクロカプセルを少量の蒸留水に再分散後、凍結乾燥し、粉末として中空磁性マイクロカプセル36を得た。この中空磁性マイクロカプセル36を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤36とした。
【0571】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表14に示す。
【0572】
また、中空磁性マイクロカプセル36を、20 mLのクロロホルムに懸濁し、60℃で20 時間攪拌して外被を構成するPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45 μmのメンブレン・フィルターでろ過し、ロータリー・エバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHBに含まれるモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、得られたクロマトグラムの中で主成分であるピークが、標品であるヒドロキシ酪酸のメチルエステル化化合物との保持時間が同一であることから、得られた中空磁性マイクロカプセル36の外被の主成分はPHBであることを確認した。
【0573】
さらに、該PHBの分子量をゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度; 40 ℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、数平均分子量Mn= 75,000 であった。
【0574】
(実施例109)
実施例108で用いた精製酵素液(1)に代えて、粗酵素液(1)を用いて、それ以外は、実施例108と同様にして、中空磁性マイクロカプセル37を得た。この中空磁性マイクロカプセル37を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤37とした。
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表14に示す。
【0575】
実施例108と同様に、マイクロカプセル外被を構成するPHAの組成を評価した結果、得られた中空磁性マイクロカプセル37の外被の主成分がPHBであることを確認した。また、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた中空磁性マイクロカプセル37外被を構成するPHBの数平均分子量は 73,000 であった。
【0576】
(実施例110)
実施例108で用いた精製酵素液(1)に代えて、粗酵素液(2)を用い、それ以外の条件は、実施例108と同様にして、中空磁性マイクロカプセル38を得た。この中空磁性マイクロカプセル38を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤38とした。得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表14に示す。
【0577】
実施例108と同様に、マイクロカプセル外被を構成するPHAの組成を評価した結果、得られた中空磁性マイクロカプセル38の外被の主成分がPHBであることを確認した。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた中空磁性マイクロカプセル38外被を構成するPHBの数平均分子量は 71,000 であった。
【0578】
(実施例111)
実施例108で用いた精製酵素液(1)に代えて、精製酵素液(2)を用い、また、(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAに代えて、(R)−3−ヒドロキシオクタノイルCoA(Eur. J. Biochem., 250, 432−439 (1997)に記載の方法で調製)を用いて、それ以外の条件は、実施例108と同様にして、中空磁性マイクロカプセル39を得た。この中空磁性マイクロカプセル39を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤39とした。
【0579】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表14に示す。
【0580】
実施例108と同様に、マイクロカプセル外被を構成するPHAの組成を評価した結果、得られた中空磁性マイクロカプセル39の外被の主成分が3−ヒドロキシオクタン酸ユニットからなるPHAであることを確認した。また、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた中空磁性マイクロカプセル39外被を構成するPHAの数平均分子量は 23,000 であった。
【0581】
(実施例112)
実施例108で用いた精製酵素液(1)に代えて、精製酵素液(3)を用い、また、 (R)−3−ヒドロキシブチリルCoAに代えて、(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoA(Reformatsky反応により得られた3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸を得た後、Eur. J. Biochem., 250, 432−439 (1997) に記載の方法で調製)を用いて、それ以外の条件は、実施例108と同様にして、中空磁性マイクロカプセル40を得た。この中空磁性マイクロカプセル40を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤40とした。
【0582】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表14に示す。
【0583】
実施例108と同様に、マイクロカプセル外被を構成するPHAの組成を評価した結果、得られた中空磁性マイクロカプセル40の外被の主成分が3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットからなるPHAであることを確認した。また、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた中空磁性マイクロカプセル40外被を構成するPHAの数平均分子量は 20,000 であった。
【0584】
(実施例113)
実施例108で用いた精製酵素液(1)に代えて、粗酵素液(3)を用い、また、(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAに代えて、(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェノキシバレリルCoA(J. Org. Chem., 55, 1490−1492 (1990)に記載の方法で合成した3−フェノキシプロパナール及びブロモ酢酸エチルを原料とし、亜鉛によるReformatsky反応で得られた3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸エステルを加水分解して、3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸を得た。その後、Eur.J. Biochem., 250, 432−439 (1997) に記載の方法で調製)を用いて、それ以外の条件は、実施例108と同様にして、中空磁性マイクロカプセル41を得た。この中空磁性マイクロカプセル41を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤41とした。
【0585】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表14に示す。
【0586】
実施例108と同様に、マイクロカプセル外被を構成するPHAの組成を評価した結果、得られた中空磁性マイクロカプセル41の外被の主成分が3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸ユニットからなるPHAであることを確認した。また、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた中空磁性マイクロカプセル41外被を構成するPHAの数平均分子量は 24,000 であった。
【0587】
(実施例114)
実施例108で用いた精製酵素液(1)に代えて、粗酵素液(4)を用い、また、(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAに代えて、(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoAを用いて、それ以外の条件は、実施例108と同様にしてPHA合成反応を行った。
【0588】
本例では、室温において1時間反応を行った後、さらに(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェノキシバレリルCoA1gを水相に添加し、室温においてさらに2時間反応を行った。それ以降の処理は実施例108と同様にして、中空磁性マイクロカプセル42を得た。この中空磁性マイクロカプセル42を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤42とした。
【0589】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表14に示す。このカプセル構造体の表面に形成されたポリマーの質量を、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS IV、CAMECA製)により測定した。得られたマススペクトルから、カプセル構造体表面のPHAは主に3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸ユニットで構成されていることが確認された。また、イオンスパッタリングによりカプセル構造体の表面を少しずつ削りつつ、TOF−SIMSによりマススペクトルを測定していったところ、外表面からある深さに達した時点で、カプセル構造体を構成するPHAのモノマーユニットの主成分が3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットに置き換わることが確認された。これより、本実施例のカプセル構造体は、初期に生成したポリ(3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸)の外被層上に、後半に生成したポリ(3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸)が被覆した二層構造の外被を有する、所望のカプセル構造体であることがわかった。また、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた中空磁性マイクロカプセル42外被を構成するPHAの数平均分子量は 21,000 であった。
【0590】
(実施例115)
実施例108で用いた精製酵素液(1)に代えて、粗酵素液(5)を用い、また、1gの(R)−3−ヒドロキシブチリルCoAに代えて、0.8gの(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoA、0.2gの(R,S)−3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタノイルCoA(Int. J. Biol. Macromol., 12, 85−91 (1990)に記載の方法で合成した3−ヒドロキシ−7−オクテン酸の不飽和部分を3−クロロ安息香酸でエポキシ化した後、Eur. J. Biochem., 250, 432−439 (1997)に記載の方法で調製)を用いて、それ以外の条件は、実施例108と同様にして、中空磁性マイクロカプセル43を得た。この中空磁性マイクロカプセル43を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤43とした。
【0591】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表14に示す。1H−NMR(使用機器:FT−NMR:Bruker DPX400、測定核種:1H,使用溶媒:重クロロホルム(TMS入り))解析の結果より、得られた中空磁性マイクロカプセル43の外被は、3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットが73%、3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタン酸ユニットが27%からなるPHAであることを確認した。また、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる解析の結果より、得られた中空磁性マイクロカプセル43外被を構成するPHAの数平均分子量は 21,000 であった。
【0592】
(実施例116)
上記の中空磁性マイクロカプセル43の50質量部を、精製水50質量部に懸濁したのち、該懸濁液に架橋剤としてヘキサメチレンジアミン0.5質量部を溶解させた。溶解を確認した後、凍結乾燥により水を除去した後、70℃で12時間反応させることで、表面に架橋化処理を施した中空磁性マイクロカプセル44を得た。この中空磁性マイクロカプセル44を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤44とした。
【0593】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表14に示す。
【0594】
中空磁性マイクロカプセル44について赤外吸収を測定した(FT−IR;パーキンエルマー社製、1720X)ところ、加熱処理前に観察されたアミン(3340 cm−1付近)及びエポキシ(822 cm−1付近)のピークが中空磁性マイクロカプセル44では消失していた。これより、側鎖にエポキシ基を有するユニットを含むPHAとヘキサメチレンジアミンを反応させることで、表面に架橋化がなされたポリマーにより被覆された中空磁性マイクロカプセル44が得られたことがわかる。
【0595】
(実施例117)
上記の中空磁性マイクロカプセル43の50質量部に、末端アミノ変性ポリシロキサン(変性シリコーンオイルTSF4700、GE東芝シリコーン(株)製)を10質量部添加し、70℃で2時間反応させた。これをメタノールに懸濁し、遠心分離(10,000×g、4℃、20分間)する操作を繰返すことで洗浄した後、乾燥し、ポリシロキサンのグラフト鎖を有する中空磁性マイクロカプセル45を得た。この中空磁性マイクロカプセル45を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤45とした。
【0596】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表14に示す。
【0597】
中空磁性マイクロカプセル45について赤外吸収を測定した(FT−IR;パーキンエルマー社製、1720X)ところ、加熱処理前に観察されたアミン(3340 cm−1付近)及びエポキシ(822 cm−1付近)のピークが中空マイクロカプセル45では消失していた。これより、側鎖にエポキシユニットをもつPHAと末端アミノ変性ポリシロキサンを反応させることにより、ポリシロキサンのグラフト鎖を有する中空マイクロカプセル45が得られたことがわかる。
【0598】
【表14】
Figure 2004331750
実験例16
(in vitroおける超音波造影効果の試験)
図1 に示す試験装置を用いて、中空磁性マイクロカプセルを用いた超音波造影剤における、超音波造影効果を調べた。すなわち、生理食塩水100m1 を入れたポリプロピレン製の容器1を水槽2内に固定し、容器1内に攪拌子3を入れ、マグネチックスターラーにて攪拌した。前記実施例および比較例で得た各中空磁性マイクロカプセル微粒子の所定量を1w/v%のTween80 水溶液1mlに懸濁し、容器1の生理食塩水中に投入した。ついで、5MHzの中心周波数をもつセクタ式プローブを装着した超音波画像診断装置(東芝社製のSONOLAYER αSSH ‐140 )により、容器1が画面上で中心に位置するようにスキヤンした。そして、造影画面の静止画像において、容器1の前方部分または容器1内全体の輝点の明るさを求め、超音波造影効果の指針とした。
【0599】
実施例85〜87、95〜97、105〜107、115〜117および比較例4で得た各微粒子状のマイクロカプセルを用いている、超音波造影剤12〜14、23〜25、33〜35、43〜45および15について、1w/v%のTween80 水溶液1ml当たり、いくつかの添加量を選択して、前記生理食塩水100ml に投入し、容器1の前方部分の輝点の明るさの経時的変化を調べた。
【0600】
その結果、超音波造影剤12〜14、23〜25、33〜35、43〜45の何れについても、添加量が20mg以下の場合、初期の輝点の明るさの平均値は約25〜30と一定であった。一方、経時的な減衰速度は添加量(懸濁濃度)に依存して、異なっており、中空磁性マイクロカプセル微粒子の懸濁濃度が薄いほど減衰速度が大きく、例えば、添加量が5mgあるいは2.5mgの場合、投入後約5分程度で、輝点の明るさの平均値は20以下となった。一方、添加量が10mgあるいは20mgの場合、投入後約30分経過した時点でも、輝点の明るさの平均値は20以上であった。
【0601】
一方、中空磁性マイクロカプセル微粒子の添加量が40mg以上の場合には、初期において、音響影陰が見られ、輝点の明るさの初期値は、添加量が10mgあるいは20mgの場合に比べて低く、約23であったが、投入後、分散が進むに伴い、その輝点の明るさは経時的に増大し、約10分で28程度まで上昇した。その後は、微粒子の懸濁濃度が高い場合(添加量80mg)、高い輝点の明るさがしばらくの間持続され、懸濁濃度が低い場合(添加量40mg)、徐々に滅衰したが、何れの濃度においても、輝点の明るさがピークに達した後、約30分を経過した時点でも、その輝点の明るさの平均値は25以上であった。
【0602】
従って、本発明のPHA製の中空マイクロカプセルを用いて、水1ml当たり、添加量を10mg以上の懸濁濃度で使用する超音波造影剤に調製することで、長時間にわたり高い造影効果を発揮するということがわかる。
【0603】
一方、ポリDL乳酸(平均分子量7000)を用いて作製された中空磁性マイクロカプセル15を利用する超音波造影剤15では何れの懸濁濃度においても、初期の輝点の明るさの平均値は20以上であるものの、その後は、輝点の明るさは急速に減衰し、約5分後には10以下、約10分以降は5程度しか示さず、投入後の造影効果の継続性は、本発明の超音波造影剤よりも劣るものであった。
【0604】
(実施例118)
ペプチドAの酢酸塩(TAP社製)500mgを、蒸留水 0.6ml に溶解した。得られる溶液を、4.5gの例示化合物1および1.5gの気相法で合成した磁性を有する金属として1次粒子径0.02μmニッケル粉末「Ni(200)UFMP」〔真空冶金(株)製〕(磁性体2とする)をジクロロメタン5.8mlに含有させた溶液に加え、小型ホモジナイザー(キネマチカ社製)で60秒間混合してW/O型乳化物を得た。このW/O型乳化物を16℃に冷却した後、予め16℃に冷却しておいた0.1%ポリビニルアルコール(EG−40、日本合成化学製)水溶液1000ml中に注入し、タービン型ホモミキサー(特殊機化製)を用い、7000 rpm でW/O/W型乳化物とした。このW/O/W型乳化物を室温で3時間撹拌してジクロロメタンを揮散させ、W/O型乳化物を固化させた後、遠心分離機(05PR−22、日立製作所)を用いて 2000 rpm で遠心分離した。得られる沈殿物を蒸留水に再分散後、分散液をさらに遠心分離し、遊離薬物を洗浄除去した。得られたマイクロカプセルを少量の蒸留水に再分散後、分散液にD−マンニトール0.3gを加え、凍結乾燥し、粉末として磁性マイクロカプセル76を得た。マイクロカプセル中のペプチドAの含有率を表15に示す。
【0605】
(実施例119)
ペプチドAの酢酸塩(TAP社製)500mgを、0.1 Mリン酸バッファー(pH 7.0) 0.6ml に溶解し、さらに精製酵素液(1)60μl、(R)−3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)60mg、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)5mgを加え溶解した。得られる溶液を、1.5gの磁性体2を分散したジクロロメタン5.8mlに加え、小型ホモジナイザー(キネマチカ社製)で60秒間混合してW/O型乳化物を得た。このW/O型乳化物を16℃に冷却した後、予め16℃に冷却しておいた0.1%ポリビニルアルコール(EG−40、日本合成化学製)水溶液1000ml中に注入し、タービン型ホモミキサー(特殊機化製)を用い、7000 rpm でW/O/W型乳化物とした。このW/O/W型乳化物を室温で3時間撹拌して、PHAを合成するとともにジクロロメタンを揮散させ、W/O型乳化物を固化させた後、遠心分離機(05PR−22、日立製作所)を用いて 2000 rpm で遠心分離した。得られる沈殿物を蒸留水に再分散後、分散液をさらに遠心分離し、遊離薬物を洗浄除去した。得られたマイクロカプセルを少量の蒸留水に再分散後、分散液にD−マンニトール0.3gを加え、凍結乾燥し、粉末として磁性マイクロカプセル77を得た。マイクロカプセル中のペプチドAの含有率を表15に示す。
【0606】
また、磁性マイクロカプセル77を、20 mLのクロロホルムに懸濁し、60 ℃で 20 時間攪拌して外被を構成するPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45 μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS、島津QP−5050、EI法)で分析し、PHBモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、得られたクロマトグラムの中で主成分であるピークが標品であるヒドロキシ酪酸のメチル化化合物との保持時間が同一であることから、得られた磁性マイクロカプセル77の外被の主成分はPHBであることを確認した。
【0607】
さらに、該PHBの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度; 40 ℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn= 73、000 であった。
【0608】
(実施例120)
ペプチドAの酢酸塩(TAP社製)500mgを、蒸留水 0.6ml に溶解した。得られる溶液を、1.5gの磁性体2を分散したジクロロメタン5.8mlに加え、小型ホモジナイザー(キネマチカ社製)で60秒間混合してW/O型乳化物を得た。このW/O型乳化物を16℃に冷却した後、予め16℃に冷却しておいた0.1 Mリン酸バッファー(pH 7.0) 、0.1%ポリビニルアルコール(EG−40、日本合成化学製)水溶液100ml中に注入し、タービン型ホモミキサー(特殊機化製)を用い、7000 rpm でW/O/W型乳化物とした。このW/O/W型乳化物に、さらに精製酵素液(1)5ml、(R)−3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)1g、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)100mgを加え溶解した。
【0609】
このW/O/W型乳化物を室温で3時間撹拌して、PHAを合成するとともにジクロロメタンを揮散させ、W/O型乳化物を固化させた後、遠心分離機(05PR−22、日立製作所)を用いて 2000 rpm で遠心分離した。得られる沈殿物を蒸留水に再分散後、分散液をさらに遠心分離し、遊離薬物を洗浄除去した。得られたマイクロカプセルを少量の蒸留水に再分散後、分散液にD−マンニトール0.3gを加え、凍結乾燥し、粉末として磁性マイクロカプセル78を得た。マイクロカプセル中のペプチドAの含有率を表15に示す。
【0610】
また、磁性マイクロカプセル78を、20 mLのクロロホルムに懸濁し、60 ℃で 20 時間攪拌して外被を構成するPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45 μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS、島津QP−5050、EI法)で分析し、PHBモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、得られたクロマトグラムの中で主成分であるピークが標品であるヒドロキシ酪酸のメチル化化合物との保持時間が同一であることから、得られた磁性マイクロカプセル78の外被の主成分はPHBであることを確認した。
【0611】
さらに、該PHBの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度; 40 ℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn= 78、000 であった。
【0612】
(実施例121)
薬物2(200mg)と2.0gの例示化合物1、さらに2.0gの気相法で合成した1次粒子径0.02μmのγ−Fe2O3微粉「NanoTek」〔シーアイ化成(株)製〕(磁性体3とする)をジクロロメタン2mlに溶解した溶液を、16〜18℃に冷却した後、あらかじめ16〜18℃に冷却しておいた0.1%ポリビニルアルコール(EG−40、日本合成化学製)水溶液500mlに注入し、タービン型ホモミキサー(特殊機化製)を用い、7000rpmでO/W型エマルションとした。得られたO/W型エマルションを室温で3時間撹拌してジクロロメタンを揮発させ、油相を固化させた後、1500rpmで遠心分離した。得られた沈殿物を蒸留水に再分散後、分散液をさらに遠心分離し、遊離薬物を洗浄除去した。得られたマイクロカプセルを少量の蒸留水に再分散後、凍結乾燥し、粉末としてマイクロカプセルを得、これを磁性マイクロカプセル79とした。マイクロカプセル中の薬物含量を表15に示す。なお、薬物含量は25mgのマイクロカプセルを60%アセトニトリル含有リン酸緩衝液(pH7)10mlに溶解したサンプルをHPLC法で定量することによって測定した。
【0613】
(実施例122)
薬物2を1.5gと4.5gの例示化合物1、さらに1.5gの磁性体3をジクロロメタン9mlに溶解した溶液を、を16〜18℃に冷却した後、あらかじめ16〜18℃に冷却しておいた0.1%ポリビニルアルコール水溶液500mlに注入し、タービン型ホモミキサー(特殊機化製)を用い、8000rpmでO/W型エマルションとした。得られたO/W型エマルションを室温で3時間撹拌してジクロロメタンを揮発させ、油相を固化させた後、遠心分離器を用いて1500rpmで遠心分離した。得られた沈殿物を蒸留水に再分散後、分散液をさらに遠心分離し、遊離薬物を洗浄除去した。得られたマイクロカプセルを少量の蒸留水に再分散後、凍結乾燥し、粉末としてマイクロカプセルを得、これを磁性マイクロカプセル80とした。マイクロカプセル中の薬物含量を表15に示す。
【0614】
(実施例123)
200mgの薬物1および0.5gの磁性体3をジクロロメタン2mlに含有させた溶液を、16〜18℃に冷却した後、あらかじめ16〜18℃に冷却しておいた0.1%ポリビニルアルコール(EG−40、日本合成化学製)を溶解した0.1 Mリン酸バッファー(pH 7.0)100mlに注入し、タービン型ホモミキサー(特殊機化製)を用い、7000rpmでO/W型エマルションとした。得られたO/W型エマルションに、精製酵素液(1)5ml、(R)−3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)1g、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1gを添加、溶解し、室温で3時間緩やかに撹拌してPHAの合成とジクロロメタンの揮発を行い、油相を固化させた後、1500rpmで遠心分離した。得られた沈殿物を蒸留水に再分散後、分散液をさらに遠心分離し、遊離薬物を洗浄除去した。得られたマイクロカプセルを少量の蒸留水に再分散後、凍結乾燥し、粉末としてマイクロカプセルを得、これを磁性マイクロカプセル81とした。マイクロカプセル中の薬物含量を表15に示す。なお、薬物含量は25mgのマイクロカプセルを60%アセトニトリル含有リン酸緩衝液(pH7)10mlに溶解したサンプルをHPLC法で定量することによって測定した。
【0615】
また、磁性マイクロカプセル81を、20 mLのクロロホルムに懸濁し、60 ℃で 20 時間攪拌して外被を構成するPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45 μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHBモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、得られたクロマトグラムの中で主成分であるピークが標品であるヒドロキシ酪酸のメチル化化合物との保持時間が同一であることから、得られた磁性マイクロカプセル81の外被の主成分はPHBであることを確認した。
【0616】
さらに、該PHBの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度; 40 ℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn= 78,000 であった。
【0617】
【表15】
Figure 2004331750
(実施例124)
2.0gの例示化合物1および1gの湿式法で合成した粒子径0.3μmのマグネタイト微粒子「マグネタイトEPT500」〔戸田工業(株)製〕(磁性体4とする)を塩化メチレン20m1に溶解した液に、精製水12mlを投入し、振盪・攪拌してW/O型エマルションを調製した。さらに超音波を照射することにより内水相の径を小さくした。ついで、小型ホモジナイザー(キネマチカ社(スイス)製のポリトロン)で攪拌しつつ、1w/v%ポリビニルアルコール水溶液200ml中に前記W/O型エマルション32mlを投入し、W/O/W型エマルションとした。このW/O/W型エマルションを攪拌機で6 時間攪拌し、油相中の有機溶媒である塩化メチレンを蒸発させ、油相中の例示化合物1を固化させた。微粒子を遠心分離により捕集し、同時に冷却した精製水で洗浄した後、0.1 %Tween80 水溶液で再分散し、凍結乾燥し、粉末状の微粒子である中空磁性マイクロカプセル46を得た。また、中空磁性マイクロカプセル46を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤46とした。得られた中空マイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表16に示す。
【0618】
(実施例125)
2gの磁性体4を分散した20m1の塩化メチレン溶液に、12mlの0.1 Mリン酸バッファー(pH 7.0)に精製酵素液(1)0.6ml、(R)−3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)300mg、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)12mgを加え溶解した水溶液を投入し、振盪・攪拌してW/O型エマルションを調製した。さらに超音波を照射することにより内水相の径を小さくした。ついで、小型ホモジナイザー(キネマチカ社(スイス)製のポリトロン)で攪拌しつつ、1w/v%ポリビニルアルコール水溶液200ml に前記W/O型エマルション32m1を投入し、W/O/W型エマルションとした。このW/O/W型エマルションを攪拌機で6 時間攪拌しつつ、PHAを合成するとともに、油相中の塩化メチレンを蒸発させ、PHAを固化させて、マイクロカプセル状微粒子を調製した。得られた微粒子を遠心分離により捕集し、同時に冷却した精製水で洗浄した後、0.1 %Tween80 水溶液で再分散し、凍結乾燥し、粉末状のマイクロカプセル状微粒子である中空磁性マイクロカプセル47を得た。この中空磁性マイクロカプセル47を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤47とした。得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表16に示す。
【0619】
また、中空磁性マイクロカプセル47を、20 mLのクロロホルムに懸濁し、60℃で20 時間攪拌して、マイクロカプセル外被を構成するPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45 μmのメンブレン・フィルターでろ過し、ロータリー・エバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHBモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、得られたクロマトグラムの中で主成分であるピークが標品である3−ヒドロキシ酪酸のメチルエステル化化合物との保持時間が同一であることから、得られた中空磁性マイクロカプセル47の外被の主成分はPHBであることが確認された。
【0620】
さらに、このPHBの分子量をゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度; 40 ℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、数平均分子量Mn= 72,000 であった。
【0621】
(実施例126)
2gの磁性体4を分散した20m1の塩化メチレン溶液に、12mlの精製水を投入し、振盪・攪拌してW/O型エマルションを調製した。さらに超音波を照射することにより内水相の径を小さくした。ついで、0.1 Mリン酸バッファー(pH7.0)に1w/v%のポリビニルアルコール、精製酵素液(1)5ml、(R)−3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)1g、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)100mgを加え溶解した水溶液100mlに、小型ホモジナイザー(キネマチカ社(スイス)製のポリトロン)で攪拌しつつ、前記W/O型エマルション32m1を投入し、W/O/W型エマルションとした。このW/O/W型エマルションを攪拌機で6時間攪拌し、PHAを合成するとともに塩化メチレンを蒸発させ、生成したPHAを固化して、マイクロカプセル微粒子を調製した。この微粒子を遠心分離により捕集し、同時に冷却した精製水で洗浄した後、0.1 %Tween80 水溶液で再分散し、凍結乾燥し、粉末状のマイクロカプセル微粒子である中空磁性マイクロカプセル48を得た。この中空磁性マイクロカプセル48を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤48とした。
【0622】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表16に示す。また、中空磁性マイクロカプセル48を、20 mLのクロロホルムに懸濁し、60 ℃で 20 時間攪拌して外被を構成するPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45 μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHBモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、得られたクロマトグラムの中で主成分であるピークが、標品であるヒドロキシ酪酸のメチルエステル化化合物との保持時間が同一であることから、得られた中空磁性マイクロカプセル48の外被の主成分はPHBであることを確認した。
【0623】
さらに、該PHBの分子量をゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度; 40 ℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、数平均分子量Mn= 71,000 であった。
【0624】
(実施例127)
0.2gの磁性体4を分散したジクロロメタン2mlを、16〜18℃に冷却した後、予め16〜18℃に冷却しておいた0.1%ポリビニルアルコール(EG−40、日本合成化学製)を溶解した0.1 Mリン酸バッファー(pH 7.0)100mlに注入し、タービン型ホモミキサー(特殊機化製)を用い、7000rpmで攪拌して、O/W型エマルションとした。得られたO/W型エマルションに、精製酵素液(1)5ml、(R)−3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)1g、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1gを添加、溶解し、室温で3時間緩やかに撹拌してPHAの合成とジクロロメタンの揮発を行い、油相中に溶解しているPHAを固化させた後、1500rpmで遠心分離した。得られた沈澱物を蒸留水に再分散後、分散液をさらに遠心分離し、遊離薬物を洗浄除去した。得られたマイクロカプセルを少量の蒸留水に再分散後、凍結乾燥し、粉末として中空磁性マイクロカプセル49を得た。この中空磁性マイクロカプセル49を用いる超音波造影剤を、超音波造影剤49とした。
【0625】
得られたマイクロカプセル微粒子を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察した結果を表16に示す。
【0626】
また、中空磁性マイクロカプセル49を、20 mLのクロロホルムに懸濁し、60℃で20 時間攪拌して外被を構成するPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45 μmのメンブレン・フィルターでろ過し、ロータリー・エバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHBに含まれるモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、得られたクロマトグラムの中で主成分であるピークが、標品であるヒドロキシ酪酸のメチルエステル化化合物との保持時間が同一であることから、得られた中空磁性マイクロカプセル49の外被の主成分はPHBであることを確認した。
【0627】
さらに、該PHBの分子量をゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度; 40 ℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、数平均分子量Mn= 75,000 であった。
【0628】
【表16】
Figure 2004331750
実験例17
実施例74、88、98、108、124〜127の中空磁性カプセル粒子、1、16、26、36、46〜49、それぞれについて1質量%水分散液をシリンジに取り、膀胱を想定したモデル装置に1ccを注入し、直後から10分間、超音波診断装置(日立製作所社製,EUB−565型,3.5MHz リニア掃査型深触子付)で観察したところ、いずれも鮮明に、流体の流れが、共鳴散乱による強いエコーにより観察できた。
【0629】
実験例18
実施例74、88、98、108、124〜127の中空磁性カプセル粒子、1、16、26、36、46〜49、それぞれについて1質量%水溶液をシリンジに取り、人体の血管壁モデル装置(流速2〜3cm/秒、磁束密度は磁界の中央部から1cmのところで約140ガウス、磁気勾配20エルステッド/mm)に1ccを注入し、超音波診断装置(日立製作所社製,EUB−565型,3.5MHz リニア掃査型深触子付)で観察した。中空磁性カプセル粒子を流し始めた時の状態を観察したところ、いずれの粒子においても、チューブ内壁に当該粒子が流れている状態を観察することができた。また、流し始めから1分後の状態を観察したところ、いずれの粒子においても、チューブ内壁面に当該粒子が集まった状態を観察することができた。
【0630】
実験例19
実施例74の中空磁性カプセル粒子1を0.22μm フィルターで濾過した後、高圧蒸気で滅菌した生理的食塩水で無菌的に洗浄、置換し、同生理的食塩水中の10質量%分散液とした。ビーグル犬(6才、13kg、雄)の後足付け根付近に、塩酸ケタラール注射薬(50mg/ml)2mlを筋注して、局所麻酔をした。実験観察中、追加麻酔は行わず、無拘束下で行った。
尿道からカテーテルを挿入し、留置した。シリンジによりカテーテルから生理的食塩水60mlを注入し、膀胱を膨充させた後、上記フェライト被覆ガラスバルーン粒子の分散液0.5mlを注入した。さらに生理的食塩水10mlを注入し、カテーテル内の分散液を完全に注入した。注入前からの状態を、超音波診断装置(横河メディカルシステムズ社製、U−sonic RT5000型、5MHz 深触子付)で観察したところ、磁石によって中空磁性カプセル粒子が集まった状態が観察された。また、磁石を外したところ、再び膀胱内に中空磁性カプセル粒子が分散した状態が観察された。観察後、カテーテルを脱離し、自由排尿させた。中空磁性カプセル粒子の黒色を呈した尿を排尿した。覚醒後、自由歩行し、正常に回復した。実験終了30日後、特に異常な症状を示さなかった。
【0631】
【発明の効果】
本発明により、内部に薬物等を安定性よく内包し、初期放出を示さず所定時後に除法性を有する構造体を提供することが可能である。また、磁性を活用することで、構造体の移動を制御することが可能である。
【0632】
【配列表】
Figure 2004331750
Figure 2004331750
Figure 2004331750
Figure 2004331750
Figure 2004331750
Figure 2004331750
Figure 2004331750

【図面の簡単な説明】
【図1】実験例16における試験方法の原理を示す説明図である。
【符号の説明】
1 容器
2 水槽
3 攪拌子

Claims (51)

  1. ポリヒドロキシアルカノエート及び磁性体を含有する構造体であって、
    前記ポリヒドロアルカノエートを含む外相部と、
    前記外相部に内包される内相部とを有し、
    前記磁性体は、前記外相部及び前記内相部の少なくともどちらか一方に含有されていることを特徴とする構造体。
  2. 前記外相がシェルを形成し、前記内相がコアを形成するマイクロカプセルの形態を有する請求項1に記載の構造体。
  3. 前記ポリヒドロキシアルカノエートが、下記式[1]から式[10]に示すモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つを有するポリヒドロキシアルカノエートである、請求項1または2に記載の構造体。
    Figure 2004331750
    (ただし、該モノマーユニットは、式中R1およびaの組合せが下記のいずれかであるモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つである。
    R1が水素原子(H)であり、aが0から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、
    R1がハロゲン原子であり、aが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、
    R1が発色団であり、aが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、
    R1がカルボキシル基あるいはその塩であり、aが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、
    R1が、
    Figure 2004331750
    であり、aが1から7の整数のいずれかであるモノマーユニット。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中bは0から7の整数のいずれかを表し、R2は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO、−CF、−C及び−Cからなる群から選ばれたいずれか1つを表す。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中cは1から8の整数のいずれかを表し、Rは水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO、−CF、−C及び−Cからなる群から選ばれたいずれか1つを表す。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中dは0から7の整数のいずれかを表し、R4は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO、−CF、−C及び−Cからなる群から選ばれたいずれか1つを表す。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中eは1から8の整数のいずれかを表し、R5は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO、−CF、−C、−C、−CH、−C及び−Cからなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
    Figure 2004331750
    (ただし、式中fは0から7の整数のいずれかを表す。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中gは1から8の整数のいずれかを表す。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中hは1から7の整数のいずれかを表し、R6は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO、−COOR’、−SOR’’、−CH、−C、−C、−CH(CH及び−C(CHからなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H)、Na、K、−CH及び−Cのいずれかであり、R’’は−OH、−ONa、−OK、ハロゲン原子、−OCH及び−OCのいずれかである。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中iは1から7の整数のいずれかを表し、R7は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO、−COOR’及び−SOR’’からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H)、Na、K、−CH及び−Cのいずれかであり、R’’は−OH、−ONa、−OK、ハロゲン原子、−OCH及び−OCのいずれかである。);及び
    Figure 2004331750
    (ただし、式中jは1から9の整数のいずれかを表す。)
  4. 前記ポリヒドロキシアルカノエートの数平均分子量が5,000〜1,000,000である請求項1〜3のいずれかに記載の構造体。
  5. 前記ポリヒドロキシアルカノエートのモノマーユニット組成が前記構造体の内側から外側へ向う方向において変化している請求項1〜4のいずれかに記載の構造体。
  6. 前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部が、化学修飾されたポリヒドロキシアルカノエートである請求項1〜5のいずれかに記載の構造体。
  7. 前記の化学修飾されたポリヒドロキシアルカノエートが、少なくともグラフト鎖を有するポリヒドロキシアルカノエートである請求項6に記載の構造体。
  8. 前記グラフト鎖が、エポキシ基を有するモノマーユニットを少なくとも含むポリヒドロキシアルカノエートの化学修飾によるグラフト鎖である請求項7に記載の構造体。
  9. 前記グラフト鎖が、アミノ基を有する化合物のグラフト鎖であることを特徴とする請求項7または8に記載の構造体。
  10. 前記アミノ基を有する化合物が、末端アミノ変性化合物であることを特徴とする請求項9に記載の構造体。
  11. 前記末端アミノ変性化合物が、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン及び末端アミノ変性ポリシロキサンからなる群より選択される少なくとも一つである請求項10に記載の構造体。
  12. 前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部が、架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートである請求項6に記載の構造体。
  13. 前記架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートが、エポキシ基を有するモノマーユニットを少なくとも含むポリヒドロキシアルカノエートが架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートである請求項12に記載の構造体。
  14. 前記架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートが、ジアミン化合物、無水コハク酸及び2−エチル−4−メチルイミダゾールの少なくとの1つを利用した反応及び電子線照射からなる群より選択される少なくとも一つにより架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートである請求項12または13に記載の構造体。
  15. 前記ジアミン化合物がヘキサメチレンジアミンである請求項14に記載の構造体。
  16. ポリヒドロアルカノエートを含む外相部と、前記外相部に内包される内相部とを有し、磁性体が前記外相部及び前記内相部の少なくともどちらか一方に含有されている構造体の製造方法であって
    ポリヒドロキシアルカノエートおよび有機溶媒を含む油相と、水相と、磁性体と、を含む液状原料を用意する工程と、
    前記液状原料から前記有機溶媒及び/または水を除去する工程と、
    を有し、
    前記油相及または水相に由来するPHAを含む外相部に内相部が内包され、これらの外相部及び内相部の少なくとも一方に磁性体が含有された構造体を得る
    ことを特徴とする構造体の製造方法。
  17. 前記水相と前記油相とによってエマルションを調製する工程をさらに有する請求項16に記載の構造体の製造方法。
  18. 前記油相に、前記水相を分散させてW/O型エマルションを調製する工程と、該W/O型エマルションから有機溶媒および/または水を除去する工程とを有する請求項17に記載の構造体の製造方法。
  19. 前記油相に前記水相を分散させてW/O型エマルションを調製する工程と、前記W/O型エマルションを第二の水相に分散することでW/O/W型エマルションを調製する工程と、W/O/W型エマルション中から有機溶媒および/または水を除去する工程とを有する請求項17に記載の構造体の製造法。
  20. 前記水相に前記油相を分散させてO/W型エマルションを調製する工程と、前記O/W型エマルションから有機溶媒および/または水を除去する工程とを有する請求項17に記載の構造体の製造方法。
  21. 前記有機溶媒および/または水の除去が、少なくとも液中乾燥法、相分離法及び噴霧乾燥法の1つの方法により行われる請求項16から20のいずれかに記載の製造方法。
  22. 前記ポリヒドロキシアルカノエートが、式[1]から式[10]に示すモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つを含有するポリヒドロキシアルカノエートである、請求項16から21のいずれかに記載の製造方法。
    Figure 2004331750
    (ただし、該モノマーユニットは、式中R1およびaの組合せが下記のいずれかであるモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つである。R1が水素原子(H)であり、aが0から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、
    R1がハロゲン原子であり、aが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、
    R1が発色団であり、aが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、
    R1がカルボキシル基あるいはその塩であり、aが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、
    R1が、
    Figure 2004331750
    でありaが1から7の整数のいずれかであるモノマーユニット。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中bは0から7の整数のいずれかを表し、R2は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO、−CF、−C及び−Cからなる群から選ばれたいずれか1つを表す。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中cは1から8の整数のいずれかを表し、R3は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO、−CF、−C及び−Cからなる群から選ばれたいずれか1つを表す。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中dは0から7の整数のいずれかを表し、R4は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO、−CF、−C及び−Cからなる群から選ばれたいずれか1つを表す。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中eは1から8の整数のいずれかを表し、R5は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO、−CF、−C、−C、−CH、−C及び−Cからなる群から選ばれたいずれか1つを表す。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中fは0から7の整数のいずれかを表す。)
    Figure 2004331750
    (ただし、式中gは1から8の整数のいずれかを表す。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中hは1から7の整数のいずれかを表し、R6は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO、−COOR’、−SOR’’、−CH、−C、−C、−CH(CH及び−C(CHからなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H)、Na、K、−CH及び−Cのいずれかであり、R’’は−OH、−ONa、−OK、ハロゲン原子、−OCH及び−OCのいずれかである。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中iは1から7の整数のいずれかを表し、R7は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO、−COOR’及び−SOR’’からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H)、Na、K、−CH及び−Cのいずれかであり、R’’は−OH、−ONa、−OK、ハロゲン原子、−OCH及び−OCのいずれかである。);及び
    Figure 2004331750
    (ただし、式中jは1から9の整数のいずれかを表す。)
  23. 前記ポリヒドロキシアルカノエートを該ポリヒドロキシアルカノエートの生産能を有する微生物を使って生産する、請求項16から21のいずれかに記載の製造方法。
  24. 前記ポリヒドロキシアルカノエートを該ポリヒドロキシアルカノエートの生産能に関与する遺伝子を導入した形質転換体により生産する、請求項23に記載の製造方法。
  25. 前記遺伝子は該ポリヒドロキシアルカノエートの生産能を有する微生物から得られた遺伝子である請求項24に記載の製造方法。
  26. 前記ポリヒドロキシアルカノエートの生産能を有する微生物が、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)、ラルストーニャ属(Ralstonia sp.)及びアルカリゲネス属(Alcaligenes sp.)に属する微生物からなる群から選択される少なくとも1つの微生物である、請求項23に記載の製造方法。
  27. 前記シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)、ラルストーニャ属(Ralstonia sp.)及びアルカリゲネス属(Alcaligenes sp.)に属する微生物が、シュードモナス・プチダ・P91株(Pseudomonas putida P91、FERM BP−7373)、シュードモナス・チコリアイ・H45株(Pseudomonas cichorii H45、FERM BP−7374)、シュードモナス・チコリアイ・YN2株(Pseudomonas cichorii YN2、FERM BP−7375)、シュードモナス・ジェッセニイ・P161株(Pseudomonas jessenii P161、FERM BP−7376)、バークホルデリア・セパシア・KK01株(Burkholderia cepacia KK01、FERM BP−4235)、バークホルデリア属・OK3株(Burkholderia sp. OK3、FERM P−17370)、バークホルデリア属・OK4株(Burkholderia sp. OK4、FERM P−17371)、ラルストーニャ・ユートロファ・TB64株(Ralstonia eutropha TB64、FERMBP−6933)、アルカリゲネス属・TL2株(Alcaligenes sp. TL2、FERM P−14642)からなる群から選択される少なくとも1つの微生物である、請求項26に記載の製造方法。
  28. 前記ポリヒドロキシアルカノエートの生産能を有する形質転換体の宿主微生物が、大腸菌(Escheichia coli)である、請求項24に記載の製造方法。
  29. ポリヒドロアルカノエートを含む外相部と、前記外相部に内包される内相部とを有し、磁性体が前記外相部及び前記内相部の少なくともどちらか一方に含有されている構造体の製造方法であって、
    ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素および3−ヒドロキシアシル補酵素Aを含む水相を用意する工程と、
    有機溶媒を含む油相を用意する工程と、
    前記水相、前記油相および磁性体を含むエマルションを調製する工程と、
    前記エマルション中でポリヒドロキシアルカノエート合成酵素により3−ヒドロキシアシル補酵素Aを重合させてポリヒドロキシアルカノエートを合成する工程と、
    前記エマルションから有機溶媒および/または水を除去する工程と
    を有し、
    前記油相及または水相に由来するPHAを含む外相部に内相部が内包され、これらの外相部及び内相部の少なくとも一方に磁性体が含有された構造体を得る
    ことを特徴とする構造体の製造方法。
  30. 前記水相を、前記油相に分散させてW/O型エマルションを調製する工程と、
    前記W/O型エマルションから有機溶媒および/または水を除去する工程とを有する請求項29に記載の構造体の製造方法。
  31. 第一の水相を、前記油相に分散させてW/O型エマルションを調製する工程と、前記W/O型エマルションをさらに第二の水相に分散することでW/O/W型エマルションを調製する工程と、前記W/O/W型エマルションから有機溶媒および/または水を除去する工程とを有する請求項29に記載の構造体の製造方法。
  32. 前記第一の水相がポリヒドロキシアルカノエート合成酵素および3−ヒドロキシアシル補酵素Aを含む請求項31に記載の構造体の製造方法。
  33. 前記第二の水相がポリヒドロキシアルカノエート合成酵素および3−ヒドロキシアシル補酵素Aを含む請求項31に記載の構造体の製造方法。
  34. 前記第一及び第二の水相がポリヒドロキシアルカノエート合成酵素および3−ヒドロキシアシル補酵素Aを含む請求項31に記載の構造体の製造方法。
  35. 前記油相を、前記水相に分散させてO/W型エマルションを調製する工程と、
    前記O/W型エマルションから有機溶媒および/または水を除去する工程とを有する請求項29に記載の構造体の製造方法。
  36. 第一の油相を、前記水相に分散させてO/W型エマルションを調製する工程と、前記O/W型エマルションをさらに第二の油相に分散することでO/W/O型エマルションを調製する工程と、前記O/W/O型エマルションから有機溶媒および/または水を除去する工程とを有する請求項29に記載の構造体の製造方法。
  37. 前記有機溶媒及び/または水の除去が、少なくとも液中乾燥法、相分離法、噴霧乾燥法の1つの方法により行われる請求項29から36のいずれかに記載の製造方法。
  38. 前記ポリヒドロキシアルカノエートが、式[1]から式[10]に示すモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つを含有するポリヒドロキシアルカノエートであり、前記ユニットのそれぞれに対して対応する3−ヒドロキシアシル補酵素Aが順に式[11]から式[20]に示す3−ヒドロキシアシル補酵素Aである、請求項29から37のいずれかに記載の製造方法。
    Figure 2004331750
    (ただし、該モノマーユニットは、式中R1およびaの組合せが下記のいずれかであるモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つ以上である。
    R1が水素原子(H)であり、aが0から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、
    R1がハロゲン原子であり、aが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、
    R1が発色団であり、aが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、
    R1がカルボキシル基あるいはその塩であり、aが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、
    R1が、
    Figure 2004331750
    であり、aが1から7の整数のいずれかであるモノマーユニット。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中bは0から7の整数のいずれかを表し、R2は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO、−CF、−C及び−Cからなる群から選ばれたいずれか1つを表す。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中cは1から8の整数のいずれかを表し、R3は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO、−CF、−C及び−Cからなる群から選ばれたいずれか1つを表す。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中dは0から7の整数のいずれかを表し、R4は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO、−CF、−C及び−Cからなる群から選ばれたいずれか1つを表す。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中eは1から8の整数のいずれかを表し、R5は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO、−CF、−C、−C、−CH、−C及び−Cからなる群から選ばれたいずれか1つを表す。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中fは0から7の整数のいずれかを表す。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中gは1から8の整数のいずれかを表す。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中hは1から7の整数のいずれかを表し、R6は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO、−COOR’、−SOR’’、−CH、−C、−C、−CH(CH及び−C(CHからなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H)、Na、K、−CH及び−Cのいずれかであり、R’’は−OH、−ONa、−OK、ハロゲン原子、−OCH及び−OCのいずれかである。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中iは1から7の整数のいずれかを表し、R7は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO、−COOR’及び−SOR’’からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H)、Na、K、−CH及び−Cのいずれかであり、R’’は−OH、−ONa、−OK、ハロゲン原子、−OCH及び−OCのいずれかである。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中jは1から9の整数のいずれかを表す。);
    Figure 2004331750
    (ただし、前記式中−SCoAはアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、式中R1およびaは前記式[1]と同様に定義される。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、b及びR2は前記式[2]と同様に定義される。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、c及びR3は前記式[3]と同様に定義される。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、d及びR4は前記式[4]と同様に定義される。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、e及びR5は前記式[5]と同様に定義される。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、fは前記式[6]と同様に定義される。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、gは前記式[7]と同様に定義される。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、h及びR6は前記式[8]と同様に定義される。);
    Figure 2004331750
    (ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、i及びR7は前記式[9]と同様に定義される。);及び
    Figure 2004331750
    (ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、jは前記式[10]と同様に定義される。)
  39. 前記3−ヒドロキシアシル補酵素Aの組成を経時的に変化させることにより、前記ポリヒドロキシアルカノエートの3−ヒドロキシアルカン酸ユニット組成を前記構造体の内側から外側に向かう方向において変化させる請求項29から38のいずれかに記載の製造方法。
  40. 前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部に化学修飾を施す工程をさらに有する請求項29から39のいずれかに記載の製造方法。
  41. 前記ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素を該酵素の生産能を有する微生物を使って生産する、請求項29から40のいずれかに記載の製造方法。
  42. 前記ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素を該酵素の生産能に関与する遺伝子を導入した形質転換体により生産する、請求項41に記載の製造方法。
  43. 前記遺伝子はポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の生産能を有する微生物から得られた遺伝子であることを特徴とする請求項42に記載の製造方法。
  44. 前記ポリヒドロキシアルカノエートの生産能を有する微生物が、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)、ラルストーニャ属(Ralstonia sp.)及びアルカリゲネス属(Alcaligenes sp.)に属する微生物からなる群から選択される少なくとも1つの微生物である、請求項41に記載の製造方法。
  45. 前記シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)、ラルストーニャ属(Ralstonia sp.)及びアルカリゲネス属(Alcaligenes sp.)に属する微生物が、シュードモナス・プチダ・P91株(Pseudomonas putida P91、FERM BP−7373)、シュードモナス・チコリアイ・H45株(Pseudomonas cichorii H45、FERM BP−7374)、シュードモナス・チコリアイ・YN2株(Pseudomonas cichorii YN2、FERM BP−7375)、シュードモナス・ジェッセニイ・P161株(Pseudomonas jessenii P161、FERM BP−7376)、バークホルデリア・セパシア・KK01株(Burkholderia cepacia KK01、FERM BP−4235)、バークホルデリア属・OK3株(Burkholderia sp. OK3、FERM P−17370)、バークホルデリア属・OK4株(Burkholderia sp. OK4、FERM P−17371)、ラルストーニャ・ユートロファ・TB64株(Ralstonia eutropha TB64、FERMBP−6933)、アルカリゲネス属・TL2株(Alcaligenes sp. TL2、FERM P−14642)からなる群から選択される少なくとも1つの微生物である、請求項44に記載の製造方法。
  46. 前記ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の生産能を有する形質転換体の宿主微生物が、大腸菌(Escheichia coli)である、請求項42に記載の製造方法。
  47. 前記内相が医薬成分を含有する請求項1に記載の構造体。
  48. 請求項47の構造体を含んでなる製剤。
  49. 前記内相が気相部を含有する請求項1に記載の構造体。
  50. 前記気相部に、パーフルオロカーボンのガスが満たされていることを特徴とする請求項49記載の構造体。
  51. 請求項49または50に記載の構造体を含有してなる超音波造影剤。
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