JP3754936B2 - ポリヒドロキシアルカノエート含有構造体およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリヒドロキシアルカノエート生合成反応に関与するポリヒドロキシアルカノエート合成酵素を基材に固定化し、該酵素により3−ヒドロキシアシル補酵素Aを重合させてポリヒドロキシアルカノエートを合成させることにより該基材の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートで被覆することを特徴とする、ポリヒドロキシアルカノエート含有構造体の製造方法に関するものである。より詳しくは基材に対して結合能を有するアミノ酸配列を含むポリヒドロキシアルカノエート合成酵素を該基材に固定化することにより該構造体を製造することを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート含有構造体の製造方法に関するものである。
【0002】
本発明は、ポリヒドロキシアルカノエートと基材および該基材に固定化されたポリヒドロキシアルカノエート合成酵素とを備え、該ポリヒドロキシアルカノエートが該基材の少なくとも一部を被覆した構造を有していることを特徴とする構造体に関するものである。本発明の構造体には、粒状の基材にポリヒドロキシアルカノエートを被覆した粒状の構造体(以下、「カプセル構造体」という)と、平板またはフィルム状の基材の少なくとも一部ををポリヒドロキシアルカノエートで被覆した、平板またはフィルム状の構造体(以下、「積層構造体」という)とが包含される。
【0003】
本発明の構造体は、機能性構造体として幅広い用途に利用可能であり、例えば、カプセル構造体であれば分散安定性に優れた顔料分散体や帯電性に優れた電子写真用トナーなど各種の機能性構造体として、また、積層構造体であればOHPフィルムや電子デバイスなど各種の機能性構造体として、それぞれ幅広い用途に利用可能である。
【0004】
【従来の技術】
高分子材料は現代の産業や生活に不可欠のものであり、安価軽量であること、成形性が良いことなどから、家電品の筐体をはじめ包装材や緩衝材、あるいは繊維材料など、多岐に渡って利用されている。一方、これら高分子材料の安定な性質を利用して、高分子の分子鎖に様々な機能を発現する置換基を配して、液晶材料やコート剤などの各種機能材料も得られている。これら機能材料は構造材料としての高分子よりも付加価値が高いため、少量生産でも大きな市場ニーズが期待できる。このような高分子機能材料は、これまで高分子の合成プロセスの中で、あるいは合成した高分子を置換基で修飾することにより、有機合成化学的手法により得られている。高分子機能材料の基本骨格となる高分子はほとんどの場合、石油系原料から有機合成化学的手法によって得られており、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリルアミドなどがその典型的な例である。
【0005】
ところで、本願発明者らは高分子化合物に大きな付加価値を与えるための一つの要素技術として、高分子化合物により基材を被覆した重層構造体に着目してきた。高分子化合物で特定の基材を被覆することによって、極めて有用な機能性を有する複合構造体を得ることができる。
【0006】
従来、基材の被覆のために用いる高分子化合物は有機合成的手法により合成・構造体化され、これに種々の機能が付加されているが、近年、生物工学的手法によって高分子化合物を製造する研究が活発に行われてきており、一部で実用化されている。例えば、微生物由来の高分子化合物として、ポリ−3−ヒドロキシ−n−酪酸(以下、PHBと略す場合もある)や3−ヒドロキシ−n−酪酸と3−ヒドロキシ−n−吉草酸との共重合体(以下、PHB/Vと略す場合もある)等のポリヒドロキシアルカノエート(以下、PHAと略す場合がある)、バクテリアセルロースやプルラン等の多糖類、ポリ−γ−グルタミン酸やポリリジン等のポリアミノ酸などが知られている。特にPHAは、従来のプラスチックと同様に、溶融加工等により各種製品に利用することができるうえ、生体適合性にも優れており、医療用軟質部材等としての応用も期待されている。
【0007】
近年、上記のPHB合成酵素やPHA合成酵素を菌体外に取り出して、無細胞系(in vitro)でPHAを合成しようとする試みが始まっている。
【0008】
例えば、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、92、6279−6283(1995)では、アルカリゲネス・ユウトロファス(Alcaligenes eutrophus)由来のPHB合成酵素に3−ヒドロキシブチリルCoAを作用させることにより、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットからなるPHBを合成することに成功している。また、Int.J.Biol.Macromol.、25、55−60(1999)では、アルカリゲネス・ユウトロファス由来のPHB合成酵素に、3−ヒドロキシブチリルCoAや3−ヒドロキシバレリルCoAを作用させることにより、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットや3−ヒドロキシ−n−吉草酸ユニットからなるPHAの合成に成功している。さらにこの報告では、ラセミ体の3−ヒドロキシブチリルCoAを作用させたところ、酵素の立体選択性によって、R体の3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットのみからなるPHBが合成されたとしている。Macromol.Rapid Commun.、21、77−84(2000)においても、アルカリゲネス・ユウトロファス由来のPHB合成酵素を用いた細胞外でのPHB合成が報告されている。
【0009】
また、FEMS Microbiol.Lett.、168、319−324(1998)では、クロマチウム・ビノサム(Chromatium vinosum)由来のPHB合成酵素に3−ヒドロキシブチリルCoAを作用させることにより、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットからなるPHBを合成することに成功している。
【0010】
Appl.Microbiol.Biotechnol.、54、37−43(2000)では、シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)のPHA合成酵素に3−ヒドロキシデカノイルCoAを作用させることにより、3−ヒドロキシデカン酸ユニットからなるPHAを合成している。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、生物工学的手法を高分子化合物の合成に適用することによって、従来の有機合成的手法では実現が困難であった新たな高分子化合物の合成や、新たな機能・構造の付与が可能になると期待されている。また、従来の有機合成化学的手法では多段階に渡る反応を要していた製造工程を、1段階の工程のみで実現できる場合も多くあり、製造プロセスの簡略化やコストダウン、所要時間の短縮等の効果も期待されている。さらに、有機溶剤や酸・アルカリ、界面活性剤等の使用削減、温和な反応条件の設定、非石油系原料や低純度原料のからの合成等が可能となり、より環境低負荷かつ資源循環型の合成プロセスの実現が可能となる。なお、低純度原料からの合成についてさらに詳しく説明すれば、生物工学的合成プロセスでは一般に、触媒である酵素の基質特異性が高いため、低純度の原料を用いても所望の反応を選択的に進めることが可能であり、よって、廃棄物やリサイクル原料などの使用も期待できる。
【0012】
一方、前記の通り、本願発明者らは高分子化合物に大きな付加価値を与えるための要素技術として、高分子化合物で基材を被覆した構造体に着目してきた。このように高分子化合物で特定の基材を被覆することによって、極めて有用な機能性を有する複合構造体を得ることができる。特に、かかる構造体を前述のような生物工学的手法により製造することができれば、従来の有機合成的手法では実現が困難であった新たな高分子化合物の利用や、新たな機能・構造の付与が可能になると期待できるうえ、より環境低負荷かつ資源循環型の製造プロセスを低コストで実現できるものと考えられる。例えば、生物の触媒作用に特有の極めて厳密な分子認識能や立体選択性を利用して、従来の有機合成化学的手法では実現が困難であった新たな機能性高分子化合物や、極めてキラリティーの高い高分子化合物により被覆されたカプセル構造体や積層構造体を、極めて簡便かつ環境低負荷なプロセスで製造することが可能になる。
【0013】
従って、本発明の目的は、生物工学的手法を用いた高機能な高分子化合物構造体およびその製造方法を提供することにある。より詳しくは、PHB合成酵素やPHA合成酵素を菌体外に取り出して、in vitroでPHAを合成することによって、PHAによって基材を被覆した構造体の製造しようとする場合に、より効果的な酵素の利用方法を提供することにある。また本発明は、機能性複合構造体として広範囲に利用可能な、高分子化合物により基材を被覆した構造体およびその効率的な製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、基材に対して結合能を有するペプチドのアミノ酸配列を、ペプチドライブラリからスクリーニングし、このアミノ酸配列のペプチドを、遺伝子工学的手法を用いてPHA合成酵素に融合させて提示させたところ、該PHA合成酵素を効果的に基材表面に固定化することができ、ここに3-ヒドロキシアシル補酵素Aを添加して合成反応を行わせると、該基材表面を所望のPHAで効率的に被覆することができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明はポリヒドロキシアルカノエートによって、基材の少なくとも一部を被覆されたポリヒドロキシアルカノエート含有構造体の製造方法に関して、該基材に対して結合能を有するアミノ酸配列を含むポリヒドロキシアルカノエート合成酵素を該基材に固定化し、酵素の基質となる3-ヒドロキシアシル補酵素Aを添加することにより該構造体を製造することである。
【0015】
本発明によればPHA合成酵素を効果的に基材表面に固定化することができるので、3-ヒドロキシアシル補酵素Aを添加して合成反応を行わせると、孤立したPHAグラニュールが生じず、効率的に基材表面をPHAで効率的に被覆することができる。
【0016】
本発明にかかる構造体は、基材表面の少なくとも一部をPHAで被覆した構造を有するものであり、基材全体をPHA層で被覆した場合には基材を核とするカプセル構造体を得ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明において、PHAで被覆される基材とは、PHA合成酵素を固定化することのできるものであれば、一般的な高分子化合物や無機系固形物、例えば、樹脂、ガラス、金属等から適宜選択して用いることができる。また、PHA合成酵素の固定化方法や、作製した構造体の応用の形態等に応じて、基材の種類や構造を適宜選択して用いることができる。
【0018】
例えば、粒子状の基材(コア)としては、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2、4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンなどのスチレン系重合性モノマー、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートなどのアクリル系重合性モノマー、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートなどのメタクリル系重合性モノマー、メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニルなどのビニルエステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトン等のビニルケトン類などのビニル系重合性モノマー、からなる群より選択された重合性モノマーを重合させて製造された樹脂微粒子;あるいは、上記モノマー系に極性基重合体や着色剤などの各種添加剤を添加して製造された樹脂微粒子;パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、フィッシャートロピッシュワックス、アミドワックス、高級脂肪酸、エステルワックス及びこれらの誘導体又はこれらのグラフトまたはブロック化合物等を含有する微粒子;カオリナイト、ベントナイト、タルク、雲母等の粘土鉱物;アルミナ、二酸化チタン等の金属酸化物;シリカゲル、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウムゲル等の不溶性無機塩;カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、マグネタイトなどの黒色顔料;黄鉛、亜鉛黄、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザーイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどの黄色顔料;赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンジGKなどの橙色顔料;ベンカラ、カドミウムレッド鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、ブリリアントカーミン3B、エオキシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキなどの赤色顔料;紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー一部分塩素化合物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCなどの青色顔料;マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどの紫色顔料;酸化クロム、クロムグリーン、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGなどの緑色顔料;亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などの白色顔料;バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイトなどの体質顔料;などを用いることができるが、もちろんこれらに限定されるものではない。これらは必要に応じて2種以上を組合せて用いることができる。コアの形状は、その用途に応じて適宜選択可能であるが、例えば、粒径0.1μmから1.0 mm の範囲内の粒径を有する粒子を用いると良い。
【0019】
また、その他の形態の基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ジアセテート、トリアセテート、セロハン、セルロイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリビニルクロライド、ポリビニリデンクロライド、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどのプラスチックからなるフィルム、ポリビニルクロライド、ポリビニルアルコール、アセチルセルロース、ポリカーボネート、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、テフロン等からなる多孔性高分子膜、木板、ガラス板、シリコン基板、木綿、レーヨン、アクリル、絹、ポリエステルなどの布、上質紙、中質紙、アート紙、ボンド紙、再生紙、バライタ紙、キャストコート紙、ダンボール紙、レジンコート紙などの紙を用いることができるが、もちろんこれらに限定されるものではない。なお、前記基材の表面が滑らかなものであっても、凹凸のついたものであっても良いし、透明、半透明、不透明のいずれであっても良い。また、これら前記基材の中より2種類以上を互いに張り合わせたものであっても良い。
【0020】
本発明の基材に対する結合能を有するペプチドのアミノ酸配列を得るためには、例えば以下に述べるファージディスプレイペプチドライブラリー法が挙げられる。ファージランダムペプチドライブラリーを構築する方法としては、例えばM13 系ファージの表面蛋白質(例えばgeneIII 蛋白質)のN末端側遺伝子にランダム合成遺伝子を連結し作製すれば良い。その方法としてはScott、 JK.and Smith、 GP.、 Science Vol. 249、 386、 1990、 やCwirla、 SE et al.、 Proc.Natl. Acad. Sci. USA Vol. 87、 6378、 1990 等の報告がある。挿入する遺伝子の大きさはペプチドが安定に発現できれば特に制限はないが、作製したライブラリーがすべてのランダム配列を網羅し、しかも結合能を有するためには6から40アミノ酸に相当する長さ(分子量約600から4000に相当)が適当で、中でも7から18アミノ酸が好ましい。目的の基材に結合するファージを選択するためには基材を例えばカラムやプレート上に固定化し上記のライブラリーを基材に接触させ結合ファージを残し非結合ファージは洗浄で洗い流す。洗浄後残ったファージを酸などにより溶出し緩衝液で中和した後大腸菌に感染させファージを増幅する。この選別を複数回繰り返すと目的の基材に結合能のある複数のクローンが濃縮される。ここで単一なクローンを得るため再度大腸菌に感染させた状態で培地プレート上にコロニーを作らせる。それぞれの単一コロニーを液体培地で培養した後、培地上清中に存在するファージをポリエチレングリコール等で沈殿精製し、その塩基配列を解析すればペプチドの構造を知ることができる。
ランダムなアミノ酸配列を有するペプチドライブラリーの作製方法としては、上記のようなファージを用いる方法のほか化学合成したペプチドを用いることも可能である。その方法として例えばビーズを用いる方法(Lam、KS et al、 Nature、354、 82、 1991) 、液相フォーカシング法(Houghton、 RA et al.、 Nature、 354、84、 1991)、マイクロプレート法(Fodor、 SPA et al.、 Science、 251、 767、 1991)などが報告されており、何れも本発明に供し得る。
【0021】
上記方法により得られた基材に対する結合能を有するペプチドのアミノ酸配列は、通常の遺伝子工学的手法を用いて、ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素に融合して利用される。基材に対する結合能を有するペプチドはポリヒドロキシアルカノエート合成酵素のN末端あるいはC末端に連結して発現することができる。また適当なスペーサー配列を挿入して発現することもできる。
【0022】
スペーサー配列としては、約3〜約400アミノ酸が好ましく、また、スペーサー配列はいかなるアミノ酸を含んでもよい。最も好ましくは、スペーサー配列は、PHA合成酵素が機能するのを妨害せず、また、PHA合成酵素が基材に結合するのを妨害しないものである。
【0023】
<PHA>
本発明に利用可能なPHAとしては、PHAの生合成反応に関わるPHA合成酵素によって合成され得るPHAであれば、特に限定はされない。
【0024】
ここで、PHAの生合成は、原料となる各種アルカン酸から、生体内の様々な代謝経路(例えば、β酸化系や脂肪酸合成経路)を経て生成された(R)-3-ヒドロキシアシルCoAを基質とした、酵素による重合反応によって行われる。この重合反応を触媒する酵素がPHA合成酵素(PHAポリメラーゼ、PHAシンターゼともいう)である。
なお、CoAとは補酵素A(coenzyme A)の略称であり、その化学構造は下記式の通りである。
【0025】
【化36】
Figure 0003754936
【0026】
以下に、β酸化系およびPHA合成酵素による重合反応を経て、アルカン酸がPHAとなるまでの反応を示す。
【0027】
【化37】
Figure 0003754936
【0028】
一方、脂肪酸合成経路を経る場合は、該経路中に生じた(R)-3-ヒドロキシアシル-ACP(ACPとはアシルキャリアプロテインのことである)から変換された(R)-3-ヒドロキシアシルCoAを基質として、同様にPHA合成酵素によりPHAが合成されると考えられる。
【0029】
さらに、上記のPHB合成酵素やPHA合成酵素を菌体外に取り出して、無細胞系(in vitro)でPHAを合成できることもわかっており、以下のような実例がある。例えば、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、92、6279-6283(1995)では、アルカリゲネス・ユウトロファス(Alcaligenes eutrophus)由来のPHB合成酵素に3-ヒドロキシブチリルCoAを作用させることにより、3-ヒドロキシ-n-酪酸ユニットからなるPHBを合成することに成功している。また、Int.J.Biol.Macromol.、25、55-60(1999)では、アルカリゲネス・ユウトロファス由来のPHB合成酵素に、3-ヒドロキシブチリルCoAや3-ヒドロキシバレリルCoAを作用させることにより、3-ヒドロキシ-n-酪酸ユニットや3-ヒドロキシ-n-吉草酸ユニットからなるPHAの合成に成功している。さらにこの報告では、ラセミ体の3-ヒドロキシブチリルCoAを作用させたところ、酵素の立体選択性によって、R体の3-ヒドロキシ-n-酪酸ユニットのみからなるPHBが合成されたとしている。Macromol.Rapid Commun.、21、77-84(2000)においても、アルカリゲネス・ユウトロファス由来のPHB合成酵素を用いた細胞外でのPHB合成が報告されている。また、FEMS Microbiol.Lett.、168、319-324(1998)では、クロマチウム・ビノサム(Chromatium vinosum)由来のPHB合成酵素に3-ヒドロキシブチリルCoAを作用させることにより、3-ヒドロキシ-n-酪酸ユニットからなるPHBを合成することに成功している。Appl.Microbiol.Biotechnol.、54、37-43(2000)では、シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)のPHA合成酵素に3-ヒドロキシデカノイルCoAを作用させることにより、3-ヒドロキシデカン酸ユニットからなるPHAを合成している。
【0030】
このように、PHA合成酵素は、生物体内でのPHA合成反応系における最終段階を触媒する酵素であり、従って、生物体内において合成され得ることが知られているPHAであれば、いずれも該酵素による触媒作用を受けて合成されていることになる。よって、所望のPHAに対応する3-ヒドロキシアシルCoAを、本発明における基材に固定化された該酵素に作用させることによって、生物体内において合成され得ることが知られているあらゆる種類のPHAで顔料を被覆したカプセル構造体を作成することが可能である。
【0031】
本発明で使用されるPHAとして、具体的には、下記式式[1]から式[10]で表されるモノマーユニットを少なくとも一つ含むPHAを例示することができる。
【0032】
【化38】
Figure 0003754936
【0033】
(ただし、該モノマーユニットは、式中R1およびaの組合せが下記のいずれかであるモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つである。
【0034】
R1が水素原子(H)であり、aが0から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、
R1がハロゲン原子であり、aが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、
R1が発色団であり、aが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、
R1がカルボキシル基あるいはその塩であり、aが1から10の整数であるモノマーユニット、
R1が、
【0035】
【化39】
Figure 0003754936
【0036】
であり、aが1から7の整数のいずれかであるモノマーユニット。)
【0037】
【化40】
Figure 0003754936
【0038】
(ただし、式中bは0から7の整数のいずれかを表し、R2は水素原子(H)、ハロゲン原子、-CN、-NO2、-CF3、-C25及び-C37からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0039】
【化41】
Figure 0003754936
【0040】
(ただし、式中cは1から8の整数のいずれかを表し、R3は水素原子(H)、ハロゲン原子、-CN、-NO2、-CF3、-C25及び-C37からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0041】
【化42】
Figure 0003754936
【0042】
(ただし、式中dは0から7の整数のいずれかを表し、R4は水素原子(H)、ハロゲン原子、-CN、-NO2、-CF3、-C25及び-C37からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0043】
【化43】
Figure 0003754936
【0044】
(ただし、式中eは1から8の整数のいずれかを表し、R5は水素原子(H)、ハロゲン原子、-CN、-NO2、-CF3、-C25、-C37、-CH3、-C25及び-C37からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0045】
【化44】
Figure 0003754936
【0046】
(ただし、式中fは0から7の整数のいずれかを表す。)
【0047】
【化45】
Figure 0003754936
【0048】
(ただし、式中gは1から8の整数のいずれかを表す。)
【0049】
【化46】
Figure 0003754936
【0050】
(ただし、式中hは1から7の整数のいずれかを表し、R6は水素原子(H)、ハロゲン原子、-CN、-NO2、-COOR'、-SO2R''、-CH3、-C25、-C37、-CH(CH3)2及び-C(CH3)3からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR'は水素原子(H)、Na、K、-CH3及び-C25のいずれかであり、R''は-OH、-ONa、-OK、ハロゲン原子、-OCH3及び-OC25のいずれかである。)
【0051】
【化47】
Figure 0003754936
【0052】
(ただし、式中iは1から7の整数のいずれかを表し、R7は水素原子(H)、ハロゲン原子、-CN、-NO2、-COOR'及び-SO2R''からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR'は水素原子(H)、Na、K、-CH3及び-C25のいずれかであり、R''は-OH、-ONa、-OK、ハロゲン原子、-OCH3及び-OC25のいずれかである。)
【0053】
【化48】
Figure 0003754936
【0054】
(ただし、式中jは1から9の整数のいずれかを表す。)
なお、前記のハロゲン原子の具体例としては、フッ素、塩素、臭素などを挙げることができる。
【0055】
上記PHAを合成する基質として用いる3-ヒドロキシアシルCoAとして、具体的には、下記式化学式[12]から化学式[21]で表される3-ヒドロキシアシルCoAを例示することができる。
【0056】
【化49】
Figure 0003754936
【0057】
(ただし、前記化学式中-SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、式中R1およびaは前記化学式[1]と同様に定義される。)
【0058】
【化50】
Figure 0003754936
【0059】
(ただし、式中-SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、b及びR2は前記化学式[2]と同様に定義される。)
【0060】
【化51】
Figure 0003754936
【0061】
(ただし、式中-SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、c及びR3は前記化学式[3]と同様に定義される。)
【0062】
【化52】
Figure 0003754936
【0063】
(ただし、式中-SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、d及びR4は前記化学式[4]と同様に定義される。)
【0064】
【化53】
Figure 0003754936
【0065】
(ただし、式中-SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、e及びR5は前記化学式[5]と同様に定義される。)
【0066】
【化54】
Figure 0003754936
【0067】
(ただし、式中-SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、fは前記化学式[6]と同様に定義される。)
【0068】
【化55】
Figure 0003754936
【0069】
(ただし、式中-SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、gは前記化学式[7]と同様に定義される。)
【0070】
【化56】
Figure 0003754936
【0071】
(ただし、式中-SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、h及びR6は前記化学式[8]と同様に定義される。)
【0072】
【化57】
Figure 0003754936
【0073】
(ただし、式中-SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、i及びR7は前記化学式[9]と同様に定義される。)
【0074】
【化58】
Figure 0003754936
【0075】
(ただし、式中-SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、jは前記化学式[10]と同様に定義される。)
また、本発明のPHA含有構造体において基材表面を親水性にする場合には、PHA含有構造体を構成するPHAとして、親水性官能基を有するものを用いる。親水性官能基としてはいかなるものでもよいが、アニオン性官能基を用いることができ、また、アニオン性官能基としてはいかなるものを用いてもよいが、特にカルボキシル基を用いることができる。カルボキシル基を有するPHAとしては、下記式[11]に示すモノマーユニットを少なくと1つ含むPHAを例示できる。
【0076】
【化59】
Figure 0003754936
【0077】
(ただし、式中kは1から10の整数のいずれかである。)
また、上記PHAのうち、さらに具体的に、下記式[23]で示される3-ヒドロキシピメリン酸を含有するPHA
【0078】
【化60】
Figure 0003754936
【0079】
を例示できる。
【0080】
また、上記式[11]で示されるPHAを合成する基質として用いる3-ヒドロキシアシルCoAとして、下記式[22]で表される3-ヒドロキシアシルCoAを例示することができる。
【0081】
【化61】
Figure 0003754936
【0082】
(ただし、前記式中-SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、式中kは前記式[11]と同様に定義される。)
また、上記式[23]で示される3-ヒドロキシピメリン酸を含有するPHAを合成する基質として用いる3-ヒドロキシアシルCoAとして、下記式[24]で表される3-ヒドロキシピメリルCoA
【0083】
【化62】
Figure 0003754936
【0084】
を示すことができる。
【0085】
なお、前記のハロゲン原子の具体例としては、フッ素、塩素、臭素などを挙げることができる。また、前記の発色団としては、その3-ヒドロキシアシルCoA 体がPHA合成酵素の触媒作用を受け得るものである限り特に限定はされないが、高分子合成時の立体障害などを考慮すると、3-ヒドロキシアシルCoA 分子内において、CoAの結合したカルボキシル基と発色団との間に炭素数1から5のメチレン鎖があるほうが望ましい。また、発色団の光吸収波長が可視域にあれば、体質顔料を用いても着色したPHA含有構造体が得られる。このような発色団の例として、ニトロソ、ニトロ、アゾ、ジアリールメタン、トリアリールメタン、キサンテン、アクリジン、キノリン、メチン、チアゾール、インダミン、インドフェノール、ラクトン、アミノケトン、ヒドロキシケトン、スチルベン、アジン、オカサジン、チアジン、アントラキノン、フタロシアニン、インジゴイドなどを挙げることができる。
【0086】
本発明において用いられるPHAとしては、上記モノマーユニットを複数含むランダム共重合体やブロック共重合体を用いることも可能であり、各モノマーユニットや含まれる官能基の特性を利用したPHAの物性制御や複数の機能の付与、官能基間の相互作用を利用した新たな機能の発現等が可能となる。さらに、基質である3-ヒドロキシアシルCoAの添加量や添加順序を適宜制御することによって、任意の順序および組成比のブロック共重合体を基材表面に合成することも可能である。また必要に応じて、PHAを合成したのち、あるいは、合成中に、さらに化学修飾等を施しても良い。
【0087】
例えば、基質である3-ヒドロキシアシルCoAの種類や濃度などの組成を経時的に変化させることによって、ポリヒドロキシアルカノエート含有構造体の積層方向においてPHAのモノマーユニット組成を変化させることも可能である。これによって、例えば、基材と親和性の低いPHAで被覆構造体を形成する必要がある場合、まず基材を基材と親和性の高いPHAで被覆し、その基材と親和性の高いPHAのモノマーユニット組成を、目的とするPHAのモノマーユニット組成に積層方向に変化、例えば多層構造あるいはグラディエント構造とすることで、基材との結合を強固にしたPHA被膜を形成することが可能となる。
【0088】
また、該PHAに化学修飾を施すことにより、各種の特性等を改良したポリヒドロキシアルカノエート含有構造体を得ることができる。例えば、該PHAにグラフト鎖を導入することで、該グラフト鎖に起因する各種の特性を備えたPHAにより、基材の少なくとも一部を被覆したポリヒドロキシアルカノエート含有構造体を得ることができる。また、該PHAを架橋化せしめることで、所望の物理化学的性質(例えば、機械的強度、耐薬品性、耐熱性など)を備えたPHAにより、基材の少なくとも一部を被覆したポリヒドロキシアルカノエート含有構造体を得ることができる。なお、本発明における化学修飾(Chemical modification)とは、高分子材料の分子内または分子間、あるいは高分子材料と他の化学物質との間で化学反応を行わせることにより、該高分子材料の分子構造を改変することを言う。また、架橋(crosslinking)とは、高分子材料の分子内または分子間を化学的あるいは物理化学的にに結合せしめて網状構造をつくることを言い、架橋剤(crosslinking agent)とは、前記架橋反応を行うために添加する、前記高分子材料と一定の反応性を有する物質を言う。
【0089】
なお、本発明の構造体に用いる、PHA合成酵素により合成されるPHAは、一般にR体のみから構成されるアイソタクチックなポリマーである。
【0090】
PHAの合成基質である3-ヒドロキシアシルCoAは、例えば、酵素を用いたin vitro合成法、微生物や植物などの生物体を用いたin vivo合成法、化学合成法等の中から適宜選択した方法で合成して用いることができる。特に、酵素合成法は該基質の合成に一般に用いられている方法であり、市販のアシルCoAシンセターゼ(アシルCoAリガーゼ、E.C.6.2.1.3)を用いた下記反応、
【0091】
【化63】
Figure 0003754936
【0092】
を用いた方法などが知られている(Eur.J.Biochem.、250、432-439(1997)、Appl.Microbiol. Biotechnol.、54、37-43(2000)など)。酵素や生物体を用いた合成工程には、バッチ式の合成方法を用いても良く、また、固定化酵素や固定化細胞を用いて連続生産してもよい。
【0093】
<PHA合成酵素およびその生産菌>
本発明に用いるPHA合成酵素は、該酵素を生産する微生物から適宜選択された微生物、あるいは、それら微生物のPHA合成酵素遺伝子を導入した形質転換体により生産されたものを用いることができる。
【0094】
PHA合成酵素を生産する微生物としては、 PHBやPHB/V生産菌を用いることができ、このような微生物として、アエロモナス属(Aeromonas sp.)、アルカリゲネス属(Alcaligenes sp.)、クロマチウム属(Chromatium sp.)、コマモナス属(Comamonas sp.)、メチロバクテリウム属(Methylobacterium sp.)、パラコッカス属(Paracoccus sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)のなどの他に、本発明者らにより分離された、バルクホルデリア・セパシア・KK01株(Burkholderia cepacia KK01)、ラルストーニャ・ユートロファ・TB64株(Ralstonia eutropha TB64)、アルカリゲネス属・TL2株(Alcaligenes sp. TL2)などを用いることができる。なお、KK01株は寄託番号FERM BP-4235として、TB64株は寄託番号FERM BP-6933として、TL2株は寄託番号FERM BP-6913として寄託されている。
【0095】
また、PHA合成酵素を生産する微生物として、mcl-PHAやunusual-PHAの生産菌を用いることができ、このような微生物として、シュードモナス・オレオボランス、シュードモナス・レジノボランス、シュードモナス属61-3株、シュードモナス・プチダ・KT2442株、シュードモナス・アエルギノーサなどのほかに、本発明者らにより分離された、シュードモナス・プチダ・P91株(Pseudomonas putida P91)、シュードモナス・チコリアイ・H45株(Pseudomonas cichorii H45)、シュードモナス・チコリアイ・YN2株(Pseudomonas cichorii YN2)、シュードモナス・ジェッセニイ・P161株(Pseudomonas jessenii P161)等のシュードモナス属微生物や、特開2001-78753号公報に記載のバークホルデリア属・OK3株(Burkholderia sp. OK3、FERM P-17370)、特開2001-69968号公報に記載のバークホルデリア属・OK4株(Burkholderia sp. OK4、FERM P-17371)などのバークホルデリア属微生物を用いることができる。また、これら微生物に加えて、アエロモナス属(Aeromonas sp.)、コマモナス属(Comamonas sp.)などに属し、mcl-PHAやunusual-PHAを生産する微生物を用いることも可能である。
【0096】
なお、P91株は寄託番号FERM BP-7373として、H45株は寄託番号FERM BP-7374として、YN2株は寄託番号FERM BP-7375として、P161株は寄託番号FERM BP-7376として寄託されている。また、上記の FERM 番号の寄託は、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許微生物寄託センター(旧名:経済産業省産業技術研究所(通商産業省工業技術院)生命工学工業技術研究所特許微生物寄託センター)での寄託であり、 BP は特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約に基づく寄託である。
【0097】
本発明にかかるPHA合成酵素の生産に用いる微生物の通常の培養、例えば、保存菌株の作成、PHA合成酵素の生産に必要とされる菌数や活性状態を確保するための増殖などには、用いる微生物の増殖に必要な成分を含有する培地を適宜選択して用いる。例えば、微生物の生育や生存に悪影響を及ぼすものでない限り、一般的な天然培地(肉汁培地、酵母エキスなど)や、栄養源を添加した合成培地など、いかなる種類の培地をも用いることができる。
【0098】
培養は液体培養や固体培養等、該微生物が増殖する方法であればいかなる方法をも用いることができる。さらに、バッチ培養、フェドバッチ培養、半連続培養、連続培養等の種類も問わない。液体バッチ培養の形態としては、振とうフラスコによって振とうさせて酸素を供給する方法、ジャーファーメンターによる攪拌通気方式の酸素供給方法がある。また、これらの工程を複数段接続した多段方式を採用してもよい。
【0099】
前記したようなPHA生産微生物を用いて、PHA合成酵素を生産する場合は、例えば、オクタン酸やノナン酸等のアルカン酸を含む無機培地で該微生物を増殖させ、対数増殖期から定常期初期にかけての微生物を遠心分離等で回収して所望の酵素を抽出する方法などを用いることができる。なお、上記のような条件で培養を行うと、添加したアルカン酸に由来するmcl-PHAが菌体内に合成されることになるが、この場合、一般に、PHA合成酵素は菌体内に形成されるPHAの微粒子に結合して存在するとされている。しかし、本発明者らの検討によると、上記の方法で培養した菌体の破砕液を遠心分離した上清液にも、相当程度の酵素活性が存在していることがわかっている。これは、前記の如き対数増殖期から定常期初期にかけての比較的培養初期には、菌体内で該酵素が活発に生産され続けているため、遊離状態のPHA合成酵素も相当程度存在するためと推定される。
【0100】
上記の培養方法に用いる無機培地としては、リン源(例えば、リン酸塩等)、窒素源(例えば、アンモニウム塩、硝酸塩等)など、微生物が増殖し得る成分を含んでいるものであればいかなるものでも良く、例えば無機塩培地としては、MSB培地、E培地(J.Biol.Chem.、218、97-106(1956))、M9培地等を挙げることができる。なお、本発明における実施例で用いるM9培地の組成は以下の通りである。
【0101】
Na2HPO4 : 6.2 g
KH2PO4 : 3.0 g
NaCl : 0.5 g
NH4Cl : 1.0 g
(培地1リットル中、pH7.0)
さらに、良好な増殖及びPHA合成酵素の生産のためには、上記の無機塩培地に以下に示す微量成分溶液を0.3%(v/v)程度添加するのが好ましい。
(微量成分溶液)
ニトリロ三酢酸: 1.5 g
MgSO4 : 3.0 g
MnSO4 : 0.5 g
NaCl : 1.0 g
FeSO4 : 0.1 g
CaCl2 : 0.1 g
CoCl2 : 0.1 g
ZnSO4 : 0.1 g
CuSO4 : 0.1 g
AlK(SO4)2: 0.1 g
H3BO3 : 0.1 g
Na2MoO4: 0.1 g
NiCl2 : 0.1 g
(1リットル中)
培養温度としては上記の菌株が良好に増殖可能な温度であれば良く、例えば 14〜40℃、好ましくは 20〜35℃程度が適当である。
【0102】
また、前述のPHA生産菌の持つPHA合成酵素遺伝子を導入した形質転換体を用いて、所望のPHA合成酵素を生産することも可能である。PHA合成酵素遺伝子のクローニング、発現ベクターの作製、および、形質転換体の作製は、定法に従って行うことができる。大腸菌等の細菌を宿主として得られた形質転換体においては、培養に用いる培地として、天然培地あるいは合成培地、例えば、LB培地、M9培地等が挙げられる。また、培養温度は25から37℃の範囲で、好気的に8〜27時間培養することにより、微生物の増殖を図る。その後集菌し、菌体内に蓄積されたPHA合成酵素の回収を行うことができる。培地には、必要に応じて、カナマイシン、アンピシリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン等の抗生物質を添加しても良い。また、発現ベクターにおいて、誘導性のプロモーターを用いている場合は、形質転換体を培養する際に、該プロモーターの対応する誘導物質を培地に添加して発現を促しても良い。例えば、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)、テトラサイクリン、インドールアクリル酸(IAA)等が誘導物質として挙げられる。
【0103】
PHA合成酵素としては、微生物の菌体破砕液や、硫酸アンモニウム等によりタンパク質成分を沈殿・回収した硫安塩析物などの粗酵素を用いても良く、また、各種方法で精製した精製酵素を用いても良い。該酵素には必要に応じて、金属塩、グリセリン、ジチオスレイトール、EDTA、ウシ血清アルブミン(BSA)などの安定化剤、付活剤を適宜添加して用いることができる。
【0104】
PHA合成酵素の分離・精製方法は、PHA合成酵素の酵素活性が保持される方法であればいかなる方法をも用いることができる。例えば、得られた微生物菌体を、フレンチプレス、超音波破砕機、リゾチームや各種界面活性剤等を用いて破砕したのち、遠心分離して得られた粗酵素液、またはここから調製した硫安塩析物について、アフィニティクロマトグラフィー、陽イオンまたは陰イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過等の手段を単独または適宜組み合わせることによって精製酵素を得ることができる。特に、遺伝子組換えタンパク質は、N末端やC末端にヒスチジン残基等の「タグ」を結合した融合タンパク質の形で発現させ、このタグを介して親和性樹脂に結合させることによって、より簡便に精製することができる。融合タンパク質から目的のタンパク質を分離するには、トロンビン、血液凝固因子Xa等のプロテアーゼで切断する、pHを低下せしめる、結合競合剤として高濃度のイミダゾールを添加する等の方法を用いると良い。あるいは、発現ベクターとしてpTYB1(New Englan Biolab社製)を用いた場合のようにタグがインテインを含む場合はdithiothreitolなどで還元条件として切断する。アフィニティクロマトグラフィーによる精製を可能とする融合タンパク質には、ヒスチジンタグの他にグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、キチン結合ドメイン(CBD)、マルトース結合タンパク(MBP)、あるいはチオレドキシン(TRX)等も公知である。GST融合タンパク質は、GST親和性レジンによって精製することができる。
【0105】
PHA合成酵素の活性測定は、既報の各種方法を用いることができるが、例えば、3-ヒドロキシアシルCoAがPHA合成酵素の触媒作用により重合してPHAになる過程で放出されるCoAを、5、5'-ジチオビス-(2-ニトロ安息香酸)で発色させて測定することを測定原理とする、以下に示す方法によって測定することができる。試薬1:ウシ血清アルブミン(Sigma社製)を0.1 M トリス塩酸バッファー(pH8.0)に3.0 mg/ml溶解、試薬2:3-ヒドロキシオクタノイルCoAを0.1 M トリス塩酸バッファー(pH8.0) に3.0 mM溶解、試薬3:トリクロロ酢酸を0.1 M トリス塩酸バッファー(pH8.0) に10 mg/ml溶解、試薬4:5、5'-ジチオビス-(2-ニトロ安息香酸)を0.1 M トリス塩酸バッファー(pH8.0) に2.0 mM溶解。第1反応(PHA合成反応):試料(酵素)溶液100μlに試薬1を100μl添加して混合し、30℃で1分間プレインキュベートする。ここに、試薬2を100μl添加して混合し、30℃で1〜30分間インキュベートしたのち、試薬3を添加して反応を停止させる。第2反応(遊離CoAの発色反応):反応停止した第1反応液を遠心分離(15、000×g、10分間)し、この上清500μlに試薬4を500μl添加し、30℃で10分間インキュベートしたのち、412 nmの吸光度を測定する。酵素活性の算出:1分間に1μmolのCoAを放出させる酵素量を1単位(U)とする。
【0106】
<構造体の作製>
本発明のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体の製造方法の一例としては、▲1▼基材に対して結合能を有するアミノ酸配列を含むPHA合成酵素を基材に固定化する工程、▲2▼基質である3-ヒドロキシアシルCoAを添加する工程、▲3▼PHA合成反応を行う工程、▲4▼PHAにより被覆されたポリヒドロキシアルカノエート含有構造体を用途に応じて必要なら加工する工程、を少なくとも有する方法を挙げることができる。
【0107】
本発明の基材に対する結合能を有するアミノ酸配列は、ランダムペプチドライブラリのスクリーニングによって決定されたアミノ酸配列もしくは基材の化学的性質により合理的に設計されたアミノ酸配列である。
【0108】
本発明に用いられるランダムペプチドライブラリとしては、ランダムペプチドを可溶性の形で化学的に合成したランダム合成ペプチドライブラリーや、樹脂ビーズ上で合成した固相固定化ペプチドライブラリー、化学合成されたランダム配列のDNAをリボソーム無細胞系で生合成したペプチドライブラリ、例えばM13 系ファージの表面蛋白質(例えばgeneIII 蛋白質)のN末端側遺伝子にランダム合成遺伝子を連結して調製されたファージディスプレイペプチドライブラリー、同様の手法で細菌の膜タンパク質、Omp A(Francisco ら、1993、PNAS、90、10444-10448あるいはPistor と Hoborn、1989、Klin.Wochenschr.、66、110-116)、PAL(Fuchs ら、1991、Bio/Technology、9、1369-1372)、Lamb(Charbit ら、1988、Gene、70、181-189 及び Bradbury ら、1993、Bio/Technology、1565-1568)、フィンブリン(Hedegaard と Klemm、1989、Gene、85、115-124 及び Hofnung、1991、Methods Cell Biol.、34、77-105)、およびIgAプロテアーゼβ領域(Klauser ら、1990、EMBO J.、9、1991-1999)に融合して提示したランダムペプチドライブラリ、などを挙げることができる。
【0109】
これらのランダムペプチドライブラリを用いて基材に対して結合能を有するアミノ酸配列をスクリーニング手法としては、化学合成ペプチドライブラリを用いる場合には、ペプチドライブラリと基材とを接触させ、基材に対して結合能を有しないペプチドを除き、しかる後に基材に結合しているペプチドを回収しエドマン分解等を用いてそのアミノ酸配列を決定する。
【0110】
一方、ファージディスプレイペプチドライブラリーを用いる場合には、基材が粒形の場合にはカラムやプレート上に該基材を固定化し、あるいは基材が板状の場合にはそのままその表面に、上記のライブラリーを添加することによって接触させ結合ファージを残し非結合ファージは洗浄で洗い流す。洗浄後残ったファージを酸などにより溶出し緩衝液で中和した後大腸菌に感染させファージを増幅する。この選別を複数回繰り返すと目的の基材に結合能のある複数のクローンが濃縮される。ここで単一なクローンを得るため再度大腸菌に感染させた状態で培地プレート上にコロニーを作らせる。それぞれの単一コロニーを液体培地で培養した後、培地上清中に存在するファージをポリエチレングリコール等で沈殿精製し、その塩基配列を解析すればペプチドの構造を知ることができる。
ファージディスプレイペプチドライブラリを用いた基材に対して結合能を有するペプチドのスクリーニングは、基材に対してより強く結合するファージを濃縮する、いわゆるパンニング操作を含んでいるために、より信頼性のあるペプチド候補を選別できるので本発明に好適に用いることができる。ファージランダムペプチドライブラリーを構築する方法としては、例えばM13 系ファージの表面蛋白質(例えばgeneIII 蛋白質)のN末端側遺伝子にランダム合成遺伝子を連結し作製すれば良い。その方法としてはScott、 JK.and Smith、 GP.、 Science Vol. 249、 386、 1990、 やCwirla、 SE et al.、 Proc.Natl. Acad. Sci. USA Vol. 87、 6378、 1990 等の報告がある。挿入する遺伝子の大きさはペプチドが安定に発現できれば特に制限はないが、作製したライブラリーがすべてのランダム配列を網羅し、しかも結合能を有するためには6から40アミノ酸に相当する長さ(分子量約600から4000に相当)が適当で、中でも7から18アミノ酸が好ましい。
【0111】
ファージディスプレイペプチドライブラリのスクリーニングによって、基材に対して結合能を有するペプチドが、二種類以上得られた場合には、これらのペプチドからなる群より選ばれた少なくとも1つのペプチドの、全部または一部分のアミノ酸配列を適当な組合せで直列に繋いだ配列を、基材に対して結合能を有するペプチドとして用いても良い。この際、二種類のアミノ酸配列の間には適当なスペーサー配列を設けることが望ましい。スペーサー配列としては、約3〜約400アミノ酸が好ましく、また、スペーサー配列はいかなるアミノ酸を含んでもよい。最も好ましくは、スペーサー配列は、PHA合成酵素が機能するのを妨害せず、また、PHA合成酵素が基材に結合するのを妨害しないものである。
【0112】
本発明の基材に対する結合能を有するアミノ酸配列は、ランダムペプチドライブラリのスクリーニングによって決定されたアミノ酸配列の他、基材の化学的性質により合理的に設計されたアミノ酸配列とすることもできる。
【0113】
基材に対するPHA合成酵素の固定化は、合成酵素に融合され提示された該基材に対して結合能を有するアミノ酸配列を介して成される。PHA合成酵素などの酵素タンパク質は、アミノ酸が多数結合したポリペプチドであり、リシン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸などの遊離のイオン性基を有するアミノ酸によってイオン吸着体としての性質を示し、またアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、プロリンなどの遊離の疎水性基を有するアミノ酸によって、また有機高分子であるという点で疎水吸着体としての性質を有している。従って、程度の差はあるが、イオン性や疎水性、もしくはイオン性と疎水性の両方の性質を有する基材に固定化させることが可能である。
【0114】
主にイオン性官能基を表面に露出している基材、例えば、粘土鉱物や金属酸化物等を主要な成分とする無機顔料を基材として用いる場合には、合成酵素に融合され提示される該基材に対して結合能を有するアミノ酸配列として、リシン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸などの遊離のイオン性基を有するアミノ酸を多く含んだ配列を選ぶことによって、イオン吸着法によってPHA合成酵素を固定化することができる。
【0115】
また、主に表面が非極性である基材、例えば、芳香環を複数有するアゾ顔料や縮合多環のフタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料等の有機顔料、カーボンブラックなどの炭素結晶からなる無機顔料を基材として用いる場合には、合成酵素に融合され提示される該基材に対して結合能を有するアミノ酸配列として、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、プロリンなどの遊離の疎水性基を有するアミノ酸を多く含んだ配列を選ぶことによって、疎水吸着によってPHA合成酵素を固定化することができる。
【0116】
上記方法により得られた基材に対する結合能を有するペプチドのアミノ酸配列は、通常の遺伝子工学的手法を用いて、ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素に融合して利用される。基材に対する結合能を有するペプチドはポリヒドロキシアルカノエート合成酵素のN末端あるいはC末端に連結して発現することができる。また適当なスペーサー配列を挿入して発現することもできる。
【0117】
スペーサー配列としては、約3〜約400アミノ酸が好ましく、また、スペーサー配列はいかなるアミノ酸を含んでもよい。最も好ましくは、スペーサー配列は、PHA合成酵素が機能するのを妨害せず、また、PHA合成酵素が基材に結合するのを妨害しないものである。
【0118】
前記ファージディスプレイペプチドライブラリのスクリーニングなどの操作によって、基材に対して結合能を有するペプチドが、二種類以上決定された場合には、これらのペプチドをそれぞれ個別にPHA合成酵素に融合した、複数種類のPHA合成酵素を、混合物として本発明に用いることができる。
【0119】
基材に対して結合能を有するアミノ酸配列を含むPHA合成酵素の分離・精製方法は、上述したように、該PHA合成酵素の酵素活性が保持される方法であればいかなる方法をも用いることができる。
【0120】
基材にPHA合成酵素を固定化する工程は、基材に対して結合能を有するアミノ酸配列を含むPHA合成酵素を水性媒体中で基材と接触させることにより達成される。
【0121】
本工程のPHA合成用の水性媒体の組成は、PHA合成反応を行う工程を妨げないものであればよいが、後の工程の省略化を図るために、PHA合成酵素の活性を発揮させ得る組成としておくこともできる。ここで、PHA合成酵素の活性を発揮させ得る組成として、例えば緩衝液を用いることができる。緩衝液としては、生化学的反応に用いられる一般的な緩衝液、例えば、酢酸バッファー、リン酸バッファー、リン酸カリウムバッファー、3-(N-モルフォリノ)プロパンスルフォン酸(MOPS)バッファー、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルフォン酸(TAPS)バッファー、トリス塩酸バッファー、グリシンバッファー、2-(シクロヘキシルアミノ)エタンスルフォン酸(CHES)バッファーなどが好適に用いられる。PHA合成酵素の活性を発揮させ得る緩衝液の濃度は、一般的な濃度、即ち5mMから1.0Mの範囲で使用することができるが、望ましくは10〜200mMで行うことが好ましい。また、pHは5.5から9.0、好ましくは7.0から 8.5となるように調製するが、使用するPHA合成酵素の至適pHやpH安定性によっては、上記範囲以外に条件を設定することも除外されない。
【0122】
また、基材が粉体の場合、水性媒体中での基材の分散状態を保つために、後の工程を妨げない種類及び濃度であれば、適当な界面活性剤を添加してもよい。このような界面活性剤の例として、例えばオレイン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル−N−サルコシン酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤、3−〔(コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ〕−1−プロパンスルホン酸(CHAPS)、3−〔(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ〕−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸(CHAPSO)、パルミトイルリゾレシチン、ドデシル−β−アラニン等の両性イオン界面活性剤、オクチルグルコシド、オクチルチオグルコシド、ヘプチルチオグルコシド、デカノイル−N−メチルグルカミド(MEGA−10)、ポリオキシエチレンドデシルエーテル(Brij、Lubrol)、ポリオキシエチレン−i−オクチルフェニルエーテル(Triton X)ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(Nonidet P−40、Triton N)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(Span)、ポリオキシエチレンソリビトールエステル(Tween)等の非イオン界面活性剤などを挙げることが出来る。
【0123】
また、水性媒体中での粉体状基材の分散状態を保つために、後の工程を妨げない種類及び濃度であれば、適当な補助溶媒を添加してもよい。補助溶媒としては、例えばヘキサン等、直鎖脂肪族炭化水素、またメタノール、エタノール等の1価アルコール類やグリセロール等の多価アルコール類及び脂肪酸エーテル類、カルボン酸エステル類等の誘導体から選ばれる一種又は二種以上のものを選択し使用することができる。
【0124】
イオン吸着法または疎水吸着法によるPHA合成酵素の基材への固定化は、基材とPHA合成酵素を所定の水性媒体中で所定の濃度となるように混合することによって達成される。このとき、酵素が基材の表面に均等に吸着されるよう、反応容器を適当な強度で振盪あるいは攪拌することが望ましい。
【0125】
上記固定化処理において、基材と酵素の混合された水性媒体の組成としては、水性媒体のpHや塩濃度によって基材およびPHA合成酵素の表面電荷の正負や電荷量、疎水性が変化するので、それを考慮した組成とするのが望ましい。例えば、基材が主にイオン吸着性である場合には、塩濃度を下げることにより、基材とPHA合成酵素との吸着に寄与する電荷量を増やすことができる。また、pHを変える事により、両者の反対電荷を増やすことができる。基材が主に疎水吸着性である場合には、塩濃度を上げることによって両者の疎水性を増やすことができる。また、予め電気泳動やぬれ角等を測定し、基材やPHA合成酵素の荷電状態や疎水性を調べることで、吸着に適した組成を設定をすることもできる。さらに、基材とPHA合成酵素との吸着量を直接測定して組成を求めることもできる。吸着量の測定は、例えば、基材に濃度既知のPHA合成酵素溶液を添加し、吸着処理を行った後、溶液中のPHA合成酵素濃度を測定し、差し引き法により吸着酵素量を求める等の方法を用いればよい。
【0126】
イオン吸着法や疎水吸着法による酵素の固定化を補強する目的で、操作の煩雑さや酵素の失活の可能性を考慮すれば共有結合法によってもかまわない。例えば、芳香族アミノ基を有する基材をジアゾ化し、これに酵素をジアゾカップリングする方法や、カルボキシル基、アミノ基を有する基材と酵素の間にペプチド結合を形成させる方法、ハロゲン基を有する基材と酵素のアミノ基等との間でアルキル化する方法、臭化シアンで活性化した基材と酵素のアミノ基を反応させる方法、基材のアミノ基と酵素のアミノ基との間を架橋する方法、アルデヒド基またはケトン基を有する化合物とイソシアニド化合物の存在下、カルボキシル基、アミノ基を有する基材と酵素を反応させる方法、ジスルフィド基を有する基材と酵素のチオール基との間で交換反応させる方法などがある。
【0127】
上記方法により作製された固定化酵素は、そのままでも用いることができるが、さらに凍結乾燥等を施した上で使用することもできる。酵素の固定化処理を行う時間は1分から24時間が望ましく、より望ましくは10分から1時間である。過剰な静置あるいは放置は酵素活性の低下を招くので好ましくない。
【0128】
3-ヒドロキシアシルCoAの重合によりPHAが合成される反応において放出されるCoA量が1分間に1μmolとなるPHA合成酵素量を1単位(U)としたとき、基材に固定する酵素の量は、例えば基材がカプセル構造体のコアである場合、基材1 gあたり10 単位(U)から1、000単位(U)、望ましくは50 単位(U)から500単位(U) の範囲内に設定すると良い。
【0129】
基質である3-ヒドロキシアシルCoAを添加する工程では、前記の固定化酵素は所望のPHAの原料となる3-ヒドロキシアシルCoAを含む水系反応液中に投入され、基材表面のPHA合成酵素によりPHAが合成されることにより、基材がPHAにより被覆された構造体を形成する。上記水系反応液は、PHA合成酵素の活性を発揮させ得る条件に調整された反応系として構成されるべきであり、例えば通常、pH5.5からpH9.0、好ましくはpH7.0からpH 8.5となるよう、緩衝液により調製する。ただし、使用するPHA合成酵素の至適pHやpH安定性によっては、上記範囲以外に条件を設定することも除外されない。緩衝液の種類は、使用するPHA合成酵素の活性を発揮させ得るものであれば、設定するpH領域等に応じて適宜選択して用いることができるが、例えば、一般の生化学反応に用いられる緩衝液、具体的には、酢酸バッファー、リン酸バッファー、リン酸カリウムバッファー、3-(N-モルフォリノ)プロパンスルフォン酸(MOPS)バッファー、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルフォン酸(TAPS)バッファー、トリス塩酸バッファー、グリシンバッファー、2-(シクロヘキシルアミノ)エタンスルフォン酸(CHES)バッファーなどを用いると良い。緩衝液の濃度も、使用するPHA合成酵素の活性を発揮させ得るものであれば特に限定はされないが、通常5.0 mMから1.0 M、好ましくは0.1 Mから0.2 Mの濃度のものを使用すると良い。反応温度は、使用するPHA合成酵素の特性に応じて適宜設定するものであるが、通常、4℃から50℃、好ましくは20℃から40℃に設定すると良い。ただし、使用するPHA合成酵素の至適温度や耐熱性によっては、上記範囲以外に条件を設定することも除外されない。反応時間は、使用するPHA合成酵素の安定性等にもよるが、通常、1分間から24時間、好ましくは30分間から3時間の範囲内で適宜選択して設定する。反応液中の3-ヒドロキシアシルCoA濃度は、使用するPHA合成酵素の活性を発揮させ得る範囲内で適宜設定するものであるが、通常、0.1 mMから1.0 M、好ましくは0.2 mMから0.2 Mの範囲内で設定すると良い。なお、反応液中における3-ヒドロキシアシルCoA濃度が高い場合、一般に、反応系のpHが低下する傾向にあるため、3-ヒドロキシアシルCoA濃度を高く設定する場合は、前記の緩衝液濃度も高めに設定することが好ましい。
また、上記工程において、水系反応液中の3-ヒドロキシアシルCoAの種類や濃度などの組成を経時的に変化させることによって、基材の垂直方向に基材を被覆するPHAのモノマーユニット組成を変化させることができる。
【0130】
このモノマーユニット組成の変化した基材の形態として、例えば、PHA被膜の組成変化が連続的で、垂直方向に組成の勾配を形成した1層のPHAが基材を被覆した形態を挙げることができる。製造方法としては、例えば、PHAを合成しながら反応液中に別組成の3-ヒドロキシアシルCoAを添加するなどの方法によればよい。
【0131】
また別の形態として、PHA被膜の組成変化が段階的で、組成の異なるPHAが基材を多層に被覆した形態を挙げることができる。この製造方法としては、ある3-ヒドロキシアシルCoAの組成でPHAを合成した後、洗浄などによって調製中の基材を反応液からいったん回収し、これに異なる3-ヒドロキシアシルCoAの組成からなる反応液を再度添加するなどの方法によればよい。
【0132】
上記反応により得られた構造体は、必要に応じて、洗浄工程に供する。構造体の洗浄方法は、該構造体製造の目的上好ましくない変化を、該構造体に及ぼすものでない限り、特に限定はされない。構造体が、基材をコアとしPHAを外被とするカプセル構造体である場合は、例えば、遠心分離によって該構造体を沈殿させ、上清を除去することによって、反応液に含まれる不要成分を除去することができる。ここに水、緩衝液、メタノール等の該PHAが不溶である洗浄剤を添加し、遠心分離をする操作を行うことにより、さらに洗浄することもできる。また、遠心分離の替わりに、濾過等の手法を用いても良い。一方、構造体が、平板状の基材をPHAで被覆した構造体である場合は、例えば、上記洗浄剤に浸漬するなどして洗浄することができる。さらに、上記構造体は、必要に応じて、乾燥工程に供することができる。さらに該構造体に各種二次加工や化学修飾等の処理を施して使用することもできる。
【0133】
例えば、基材表層のPHAに化学修飾を施すことにより、さらに有用な機能・特性を備えたポリヒドロキシアルカノエート含有構造体を得ることができる。例えば、グラフト鎖を導入することにより、該グラフト鎖に起因する各種の特性を備えたポリヒドロキシアルカノエート含有構造体を得ることができる。例えば、後述するポリシロキサンをグラフト鎖として導入すれば、機械的強度、分散性、耐候性、撥(耐)水性、耐熱性等が向上したポリヒドロキシアルカノエート含有構造体を得ることができる。また、基材表層のPHAを架橋化せしめることにより、ポリヒドロキシアルカノエート含有構造体の機械的強度、耐薬品性、耐熱性などを向上させることが可能である。
【0134】
化学修飾の方法は、所望の機能・構造を得る目的を満たす方法であれば特に限定はされないが、例えば、反応性官能基を側鎖に有するPHAを合成し、該官能基の化学反応を利用して化学修飾する方法を、好適な方法として用いることができる。
【0135】
前記の反応性官能基の種類は、所望の機能・構造を得る目的を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、前記したエポキシ基を例示することができる。エポキシ基を側鎖に有するPHAは、通常のエポキシ基を有するポリマーと同様の化学的変換を行うことができる。具体的には、例えば水酸基に変換したり、スルホン基を導入することが可能である。また、チオールやアミンを有する化合物を付加することもでき、例えば、末端に反応性官能基を有する化合物、具体的には、エポキシ基との反応性が高いアミノ基を末端に有する化合物などを添加して反応させることにより、ポリマーのグラフト鎖が形成される。
【0136】
アミノ基を末端に有する化合物としては、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、アミノ変性ポリシロキサン(アミノ変性シリコーンオイル)などのアミノ変性ポリマーを例示することができる。このうち、アミノ変性ポリシロキサンとしては、市販の変性シリコーンオイルを使用しても良く、また、J.Amer.Chem.Soc.、78、2278(1956)などに記載の方法で合成して使用することもでき、該ポリマーのグラフト鎖の付加による機械的強度、分散性、耐光性、耐候性、撥(耐)水性、耐熱性の改善等の効果が期待できる。
また、エポキシ基を有するポリマーの化学的変換の他の例として、ヘキサメチレンジアミンなどのジアミン化合物、無水コハク酸、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどによる架橋反応が、物理化学的変換の例として電子線照射などによる架橋反応が挙げられる。このうち、エポキシ基を側鎖に有するPHAとヘキサメチレンジアミンとの反応は、下記のスキームに示すような形で進行し、架橋ポリマーが生成する。
【0137】
【化64】
Figure 0003754936
【0138】
本発明のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体において、基材に固定化された酵素は、該ポリヒドロキシアルカノエートと該基材との親和性および密着性を高め、該基材を被覆する該ポリヒドロキシアルカノエートを剥がれにくくする、という効果がある。
【0139】
得られた構造体において、基材がPHAで被覆されていることを確認する方法としては、一般には、例えば、ガスクロマトグラフィー等による組成分析と電子顕微鏡等による形態観察とを組み合わせた方法や、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)とイオンスパッタリング技術を用いて、各構成層のマススペクトルから構造を判定する方法などを用いることができる。しかし、さらに直接的かつ簡便な確認方法として、本発明者らによって新たに開発された、ナイルブルーA染色と蛍光顕微鏡観察とを組み合わせた方法を用いることもできる。本発明者らは、PHA合成酵素を用いた無細胞系(in vitro)でのPHA合成を簡便に判定できる方法について鋭意検討を続けてきた結果、PHAに特異的に結合して蛍光を発する性質を有する薬剤であり、Appl.Environ.Microbiol.、44、238-241(1982) において微生物細胞(in vivo)でのPHA生産の簡易的判別に用いることができると報告されているナイルブルーAが、適切な使用方法および使用条件の設定によって、無細胞系でのPHA合成の判定にも用いることができることを見出し、上記の方法を完成させた。即ち、本方法では、所定濃度のナイルブルーA溶液を濾過したのち、PHAを含む反応液に混合し、蛍光顕微鏡で一定の波長の励起光を照射しながら観察することにより、合成されたPHAのみから蛍光を発せしめ、これを観察することによって、無細胞系でのPHA合成を簡易に判定することができる。使用した基材が上記条件下で蛍光を発する性質を有するものでない限り、上記方法を本発明の構造体の製造に応用することにより、基材の表面を被覆したPHAを直接的に観察し、評価することができる。
【0140】
PHAの分子量は特に制限はないが、ポリヒドロキシアルカノエート含有構造体の強度を維持するため、数平均分子量が1,000〜10,000,000、より好ましくは、3,000〜1,000,000の範囲とするのが望ましい。PHAの分子量は、ポリヒドロキシアルカノエート含有構造体からクロロホルムによってPHAを抽出した後、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定すればよい。
【0141】
<構造体の利用>
本発明の特徴の一つは、通常の有機合成化学的手法では製造が困難であった構造体の製造を可能にしたことであり、従って、従来の有機合成化学的手法で製造されたカプセル構造体や積層構造体にはない優れた特性を付与した構造体を得ることが可能である。例えば、従来の有機合成的手法では実現が困難であった新たな高分子化合物の利用や、新たな機能・構造の付与が可能になる。さらに具体的には、生物の触媒作用に特有の極めて厳密な分子認識能や立体選択性を利用して、従来の有機合成化学的手法では実現が困難であった新たな機能性高分子化合物や、極めてキラリティーの高い高分子化合物により被覆されたカプセル構造体や積層構造体等を、極めて簡便なプロセスで製造することが可能になる。
【0142】
上記の如き構造体の応用の一例としては、電子写真用高機能カプセルトナーや分散安定性に優れたマイクロカプセル化顔料インク、電気泳動表示用電気泳動粒子、カラーフィルター用着色組成物などが挙げられる。
【0143】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、以下に述べる実施例は本発明の最良の実施形態の一例ではあるが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0144】
(参考例1) PHA合成酵素生産能を有する形質転換体の作製、および、PHA合成酵素の生産
PHA合成酵素生産能を有する形質転換体を以下の方法で作製した。即ちYN2株を100 mLのLB培地(1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム、pH7.4)で30℃、一晩培養後、マーマーらの方法により染色体DNAを分離回収した。得られた染色体DNAを制限酵素HindIIIで完全分解した。ベクターにはpUC18を使用し、制限酵素HindIIIで切断した。末端の脱リン酸処理(Molecular Cloning、1、572、(1989); Cold Spring Harbor Laboratory出版)ののち、DNAライゲーションキットVer.II(宝酒造)を用いて、ベクターの切断部位(クローニングサイト)と染色体DNAのHindIII完全分解断片とを連結した。この染色体DNA断片を組み込んだプラスミドベクターを用いて、大腸菌(Escherichia coli)HB101株を形質転換し、YN2株のDNAライブラリーを作製した。
【0145】
次に、YN2株のPHA合成酵素遺伝子を含むDNA断片を選択するため、コロニー・ハイブリダイズ用のプローブ調製を行った。配列番号:5および配列番号:6の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを合成し(アマシャムファルマシア・バイオテク)、このオリゴヌクレオチドをプライマーに用いて、染色体DNAをテンプレートとしてPCRを行った。PCR増幅されてきたDNA断片をプローブとして用いた。プローブの標識化は、市販の標識酵素系AlkPhosDirect(アマシャムファルマシア・バイオテク)を利用して行った。得られた標識化プローブを用いて、YN2株の染色体DNAライブラリーからコロニーハイブリダイゼーション法によってPHA合成酵素遺伝子を含む組換えプラスミドを有する大腸菌菌株を選抜した。選抜した菌株から、アルカリ法によってプラスミドを回収することで、PHA合成酵素遺伝子を含むDNA断片を得ることができた。
【0146】
ここで取得した遺伝子DNA断片を、不和合性グループであるIncP、IncQ、あるいはIncWの何れにも属さない広宿主域複製領域を含むベクターpBBR122(Mo Bi Tec)に組み換えた。この組み換えプラスミドをシュードモナス・チコリアイYN2ml株(PHA合成能欠損株)にエレクトロポレーション法により形質転換したところ、YN2ml株のPHA合成能が復帰し、相補性を示した。従って、選抜された遺伝子DNA断片は、シュードモナス・チコリアイYN2ml株内において、PHA合成酵素に翻訳可能な、PHA合成酵素遺伝子領域を含むことが確認される。
【0147】
このPHA合成酵素遺伝子を含むDNA断片について、サンガー法により塩基配列を決定した。その結果、決定された塩基配列中には、それぞれペプチド鎖をコードする、配列番号:2および配列番号:4で示される塩基配列が存在することが確認された。下で述べるように、個々のペプチド鎖からなる蛋白質は、ともに酵素活性を有しており、配列番号:2および配列番号:4で示される塩基配列はそれぞれPHA合成酵素遺伝子であることを確認することができた。すなわち、配列番号:1に示すアミノ酸配列を配列番号:2の塩基配列はコードしており、配列番号:3に示すアミノ酸配列を配列番号:4の塩基配列はコードしており、この何れか一方のアミノ酸配列を有する蛋白質のみで、PHA合成能が発揮されることを確認した。
【0148】
配列番号:2で示される塩基配列のPHA合成酵素遺伝子について、染色体DNAをテンプレートとしてPCRを行い、PHA合成酵素遺伝子の完全長を再調製した。
【0149】
配列番号:2で示される塩基配列に対して、上流側プライマーとなる、その開始コドンよりも上流の塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(配列番号:7)および下流側プライマーとなる、終止コドンよりも下流の塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(配列番号:8)をそれぞれ設計・合成した(アマシャムファルマシア・バイオテク)。このオリゴヌクレオチドをプライマーとして、染色体DNAをテンプレートとしてPCRを行い、PHA合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA-PCRキット;宝酒造)。
【0150】
同様に、配列番号:4で示される塩基配列のPHA合成酵素遺伝子についても、染色体DNAをテンプレートとしてPCRを行い、PHA合成酵素遺伝子の完全長を再調製した。配列番号:4で示される塩基配列に対して、上流側プライマーとなる、その開始コドンよりも上流の塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(配列番号:9)および下流側プライマーとなる、終止コドンよりも下流の塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(配列番号:10)をそれぞれ設計・合成した(アマシャムファルマシア・バイオテク)。このオリゴヌクレオチドをプライマーとして、PCRを行い、PHA合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA-PCRキット;宝酒造)。
【0151】
次に、得られたPHA合成酵素遺伝子の完全長を含むPCR増幅断片を、それぞれについて制限酵素HindIIIを用いて完全分解した。また、発現ベクターpTrc99Aも制限酵素HindIIIで切断し、脱リン酸化処理(Molecular Cloning、1巻、572頁、1989年;Cold Spring Harbor Laboratory出版)した。この発現ベクターpTrc99Aの切断部位に、両末端の不用な塩基配列を除いたPHA合成酵素遺伝子の完全長を含むDNA断片を、DNAライゲーションキットVer.II(宝酒造)を用いて連結した。
【0152】
得られた組換えプラスミドで大腸菌(Escherichia coli HB101:宝酒造)を塩化カルシウム法により形質転換した。得られた組換え体を培養し、組換えプラスミドの増幅を行い、組換えプラスミドをそれぞれ回収した。配列番号:2の遺伝子DNAを保持する組換えプラスミドをpYN2-C1(配列番号2由来)、配列番号:4の遺伝子DNAを保持する組換えプラスミドをpYN2-C2(配列番号4由来)とした。
【0153】
pYN2-C1、pYN2-C2で大腸菌(Escherichia coli HB101fB fadB欠損株)を塩化カルシウム法により形質転換し、それぞれの組換えプラスミドを保持する組換え大腸菌株、pYN2-C1組換え株、pYN2-C2組換え株を得た。
【0154】
pYN2-C1組換え株、pYN2-C2組換え株それぞれを酵母エキス0.5%、オクタン酸0.1%とを含むM9培地200mlに植菌して、37℃、125ストローク/分で振盪培養した。24時間後、菌体を遠心分離によって回収し、常法によりプラスミドDNAを回収した。
【0155】
pYN2-C1に対して、上流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:11)および下流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:12)をそれぞれ設計・合成した(アマシャムファルマシア・バイオテク)。このオリゴヌクレオチドをプライマーとして、pYN2-C1をテンプレートとしてPCRを行い、上流にBamHIおよびSacI制限部位、下流にSpeIおよびXhoI制限部位を有するPHA合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA-PCRキット;宝酒造)。
【0156】
同様にpYN2-C2に対して、上流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:13)および下流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:14)をそれぞれ設計・合成した(アマシャムファルマシア・バイオテク)。このオリゴヌクレオチドをプライマーとして、pYN2-C2をテンプレートとしてPCRを行い、上流にBamHI制限部位、下流にXhoI制限部位を有するPHA合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA-PCRキット;宝酒造)。
【0157】
精製したそれぞれのPCR増幅産物をBamHIおよびXhoIにより消化し、プラスミドpGEX‐6P‐1(アマシャムファルマシア・バイオテク社製)の対応する部位に挿入した。これらのベクター(pGEX-C1およびpGEX-C2)を用いて大腸菌(JM109)を形質転換し、発現用菌株を得た。菌株の確認は、Miniprep(Wizard Minipreps DNA Purification Systems、PROMEGA社製)を用いて大量に調製したプラスミドDNAをBamHI、XhoIで処理して得られるDNA断片により行った。得られた菌株をLB-Amp培地10mLで一晩プレ・カルチャーした後、その0.1mLを、10mLのLB-Amp培地に添加し、37℃、170rpmで3時間振とう培養した。その後IPTGを添加 (終濃度 1mM) し、37℃で4~12時間培養を続けた。
【0158】
IPTG 誘導した大腸菌を集菌 (8000×g、 2分、4℃) し、1/10 量の 4℃ PBSに再懸濁した。凍結融解およびソニケーションにより菌体を破砕し、遠心 (8000×g、 10分、4℃)して固形夾雑物を取り除いた。目的の発現タンパク質が上清に存在することをSDS-PAGEで確認した後、誘導され発現されたGST融合タンパク質をグルタチオン・セファロース4B(Glutathion Sepharose 4B beads: アマシャムファルマシア・バイオテク社製)で精製した。
【0159】
使用したグルタチオンセファロースは、予め非特異的吸着を抑える処理を行った。すなわち、グルタチオンセファロースを同量のPBSで3回洗浄(8000×g、1分、4℃) した後、4%BSA含有PBSを同量加えて4℃で1時間処理した。処理後同量のPBSで2回洗浄し、1/2量のPBSに再懸濁した。前処理したグルタチオンセファロース 40μLを、無細胞抽出液1mL に添加し、4℃で静かに攪拌した。これにより、融合タンパク質GST-YN2-C1およびGST-YN2-C2をグルタチオンセファロースに吸着させた。
吸着後、遠心 (8000×g、 1分、4℃)してグルタチオンセファロースを回収し、400μLのPBSで3回洗浄した。その後、10 mMグルタチオン40μLを添加し、4℃で1時間攪拌して、吸着した融合タンパク質を溶出した。遠心 (8000×g、2分、4℃)して上清を回収した後PBSに対して透析し、GST融合タンパク質を精製した。SDS-PAGEにより、シングルバンドを示すことを確認した。
【0160】
各GST融合タンパク質500μgをPreScissionプロテアーゼ(アマシャムファルマシア・バイオテク、5U)で消化した後、グルタチオン・セファロースに通してプロテアーゼとGSTを除去した。フロースルー分画をさらに、PBSで平衡化したセファデックスG200カラムにかけ、発現タンパク質YN2-C1およびYN2-C2の最終精製物を得た。SDS-PAGEによりそれぞれ60.8kDa、および61.5kDaのシングルバンドを示すことを確認した。
【0161】
各精製酵素活性は前述の方法で測定した。また、試料中のタンパク質濃度は、マイクロBCAタンパク質定量試薬キット(ピアスケミカル社製)によって測定した。各精製酵素の活性測定の結果を表1に示した。
【0162】
【表1】
Figure 0003754936
【0163】
該酵素を生体溶液試料濃縮剤(みずぶとりくんAB-1100、アトー(株)製)を用いて濃縮し、10 U/mlの精製酵素溶液を得た。
【0164】
(参考例2) 3-ヒドロキシアシルCoAの合成
(R)-3-ヒドロキシオクタノイル-CoAは、Rehm BHA、 Kruger N、 Steinbuchel A (1998) Journal of Biological Chemistry 273 pp24044-24051に基づき、若干の変更を加え次のように行った。acyl-CoA synthetase(Sigma社製)を、2 mM ATP、 5 mM MgCl2、 2 mM coenzyme A、 2mM (R)-3-hydroxyoctanoateを含むトリス塩酸緩衝液(50 mM、 pH 7.5)に溶解し、0.1ミリユニット/マイクロリットルとした。37℃の温浴中で保温し、適時サンプリングし反応の進行をHPLCで分析した。サンプリングした反応溶液に硫酸を0.02 Nになるように添加して酵素反応を止めた後、n-heptaneで未反応の基質である(R)-3-hydroxyoctanoateを抽出して除去した。HPLCによる分析には、RP18カラム(nucleosil C18、 7mm、 Knauser)を用い、25 mMリン酸緩衝液(pH 5.3)を移動相として、アセトニトリルの直線濃度勾配をかけて溶出し、ダイオードアレイ検出器で200から500 nmの吸光スペクトルをモニターすることによって、酵素反応によって生成したチオエステル化合物を検出した。同様にして、(R)-3-ヒドロキシ-5-フェニルバレリルCoAおよび(R)-3-ヒドロキシ-5-(4-フルオロフェニル)バレリルCoAを調製した。
【0165】
(実施例1) 銅フタロシアニンに対する結合能を有するアミノ酸配列の取得
▲1▼銅フタロシアニン (a型 東京化成工業社製)をメタノールに5 mg/mlの濃度に成るように懸濁した。この1.5mlをポリスチレン製プレートに加え、メタノールを蒸発させて除くことによって、ポリスチレン製プレートの表面に銅フタロシアニンの皮膜を固着させた。固着した銅フタロシアニンの皮膜は0.1%Tween-20を含むTBSバッファー(50 mM Tris-HCl pH 7.5、 150 mM NaCl)で洗浄しても脱離しないことを確認した。
▲2▼ウシ血清アルブミン(BSA)を含むブロッキングバッファー( 0.1M NaHCO3(pH8.6)、 5mg/ml BSA、 0.1mg/ml streptavidin、 0.02%NaN3)を、銅フタロシアニンの固着したポリスチレン製プレートに満たし4℃で1時間静置した。その後ブロッキングバッファーを捨てTBSTバッファー(TBSバッファー + 0.1%Tween-20)でプレートを10回洗浄した。
▲3▼Ph.D.-7ファージディスプレイペプチドライブラリ(New England BioLabs社製)の1.4 x 1011pfu相当をプレートに添加し、25℃で60分間静置した。
▲4▼プレートの溶液を捨て、TBSTバッファーで10回洗浄した。
▲5▼1mlの溶出バッファー(0.2M Glycine-HCl(pH2.2)、 1mg/ml BSA)を加えて3分間静置した後、溶液を微量遠沈チューブに移し、150mlの1M Tris-HCl(pH9.1)を加えて中和し、溶出されたファージを得た。
▲6▼溶出されたファージを対数増殖初期の大腸菌ER2537(New England BioLabs社製)に感染させ増幅した。37℃で4.5時間培養した。次にファージを遠心分離により細胞から分離し、ポリエチレングリコールの沈殿により精製した。精製、増幅されたファージはTBSバッファーに懸濁され、適当な希釈系列を大腸菌に感染させることによって力価(titer)を測定した。
▲7▼増幅されたファージを用いて、前記▲1▼から▲6▼をあと3回繰返した。ただし用いるTBSTバッファー中のTween-20の濃度を0.5%に上げることによって、洗浄の条件を厳しくした。
2回目からは、ポリスチレン製プレートにBSAによるブロッキングのみを行ったものに対しても同様の操作を行い、コントロールとした。各サイクルにおいて溶出されたファージの力価(titer)を表2に示す。
【0166】
【表2】
Figure 0003754936
【0167】
最終的に溶出されたファージを大過剰の大腸菌に感染させることによってクローン化した。各クローンを大腸菌に感染させ増幅した後、ssDNAを調製し、ランダム領域の塩基配列を解読し、ディスプレイしているペプチドのアミノ酸配列を決定した。その結果、ピックアップした30クローンのアミノ酸配列と頻度を表3に示す。
【0168】
【表3】
Figure 0003754936
【0169】
アミノ酸配列VxHxLVxなる銅フタロシアニン結合モチーフ、特にアミノ酸配列VFHKLVW(配列番号:15)なる銅フタロシアニン結合配列を決定することができた。
【0170】
(実施例2) 銅フタロシアニンに対する結合能を有するPHA合成酵素の調製
アミノ酸配列VFHKLVW(配列番号:15)なる銅フタロシアニン結合配列を、スペーサー配列GGGSを介して、PHA合成酵素のN末端に融合して発現する大腸菌発現ベクターを次のようにして構築した。このアミノ酸配列をコードするDNAは二本鎖合成オリゴヌクレオチドとして作製し、pGEX-C1プラスミドの適切な制限開裂部位(BamHIおよびSacI)にライゲーションする。この場合に、2つの合成オリゴヌクレオチドO1(5' GATCCGTGTTCCACAAATTAGTGTGGGGTGGAGGTTCGGAGCT、配列番号:16)およびO2(5' CCGAACCTCCACCCCACACTAATTTGTGGAACACG、配列番号:17)を製造業者の説明に従いT4ポリヌクレオチドキナーゼ(Gibco製)を用いてリン酸化した。続いて80℃で5分間加熱し、その後室温までゆっくり冷却させた。この二本鎖DNA断片は、その後のクローニングに直接用いた。
【0171】
プラスミドpGEX‐C1をBamHIおよびSacIにより消化し、前記二本鎖DNA断片を挿入した。このベクターを用いて大腸菌(JM109)を形質転換し、発現用菌株を得た。菌株の確認は、Miniprep(Wizard Minipreps DNA Purification Systems、PROMEGA社製)を用いて調製したプラスミドDNAをテンプレートとしてpGEX 5' Sequencing Primer(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いたシークエンシングによってインサートの塩基配列を決定することにより行った。得られた菌株をLB-Amp培地10mLで一晩プレ・カルチャーした後、その0.1mLを、10mLのLB-Amp培地に添加し、37℃、170rpmで3時間振とう培養した。その後IPTGを添加 (終濃度 1mM) し、37℃で4~12時間培養を続けた。
【0172】
IPTG 誘導した大腸菌を集菌 (8000×g、 2分、4℃) し、1/10 量の 4℃ PBSに再懸濁した。凍結融解およびソニケーションにより菌体を破砕し、遠心 (8000×g、 10分、4℃)して固形夾雑物を取り除いた。目的の発現タンパク質が上清に存在することをSDS-PAGEで確認した後、誘導され発現されたGST融合タンパク質をグルタチオン・セファロース4B(Glutathion Sepharose 4B beads: アマシャムファルマシア・バイオテク社製)で精製した。
【0173】
使用したグルタチオンセファロースは、予め非特異的吸着を抑える処理を行った。すなわち、グルタチオンセファロースを同量のPBSで3回洗浄(8000×g、1分、4℃) した後、4%BSA含有PBSを同量加えて4℃で1時間処理した。処理後同量のPBSで2回洗浄し、1/2量のPBSに再懸濁した。前処理したグルタチオンセファロース 40μLを、無細胞抽出液1mL に添加し、4℃で静かに攪拌した。これにより、融合タンパク質GST-YN2-C1をグルタチオンセファロースに吸着させた。
【0174】
吸着後、遠心 (8000×g、 1分、4℃)してグルタチオンセファロースを回収し、400μLのPBSで3回洗浄した。その後、10 mMグルタチオン40μLを添加し、4℃で1時間攪拌して、吸着した融合タンパク質を溶出した。遠心 (8000×g、2分、4℃)して上清を回収した後PBSに対して透析し、GST融合タンパク質を精製した。SDS-PAGEにより、シングルバンドを示すことを確認した。
【0175】
各GST融合タンパク質500μgをPreScissionプロテアーゼ(アマシャムファルマシア・バイオテク、5U)で消化した後、グルタチオン・セファロースに通してプロテアーゼとGSTを除去した。フロースルー分画をさらに、PBSで平衡化したセファデックスG200カラムにかけ、発現タンパク質YN2-C1(pht)の最終精製物を得た。SDS-PAGEにより61.9kDaのシングルバンドを示すことを確認した。
【0176】
精製酵素活性は前述の方法で測定した。また、試料中のタンパク質濃度は、マイクロBCAタンパク質定量試薬キット(ピアスケミカル社製)によって測定した。酵素濃度は1.9 U/mlまた比活性は 4.0 U/mgタンパク質であった。精製酵素を生体溶液試料濃縮剤(みずぶとりくんAB-1100、アトー(株)製)を用いて濃縮し、10 U/mlの精製酵素溶液を得た。
【0177】
(実施例3) 銅フタロシアニンに対する結合能の評価
銅フタロシアニンを、0.1%Tween-20を含むTBSバッファーに0.5%(w/v)になるように懸濁した。この10mlをテフロン製遠沈管にとり、ここに、実施例2で調整したPHA合成酵素YN2-C1(pht)および参考例1で調整したYN2-C1の0.5U相当を加え、室温で30分間振とうした。遠心分離操作(10、000 x g、4℃、10分間)によって銅フタロシアニン粒子を沈殿として回収し、銅フタロシアニンに結合しなかった酵素を含む上清と分離した。銅フタロシアニンを再び0.1%Tween-20を含むTBSバッファーに懸濁し、遠心操作を繰返すことによって、銅フタロシアニンを洗浄した。洗浄した銅フタロシアニンの懸濁液の酵素活性を測定した結果を表4に示す。
【0178】
【表4】
Figure 0003754936
【0179】
コントロールの酵素YN2-C1に比べて、銅フタロシアニン結合配列を融合した酵素YN2-C1(pht)の方が、酵素活性が高く、酵素を有効に基材表面に固定化できることが確かめられた。
【0180】
(実施例4) 銅フタロシアニンのPHAカプセル構造体
銅フタロシアニンを、0.1%Tween-20を含むTBSバッファーに0.5%(w/v)になるように懸濁した。この10mlをテフロン製遠沈管にとり、ここに、PHA合成酵素YN2-C1(pht)またはYN2-C1の0.5U相当を加え、室温で30分間振とうした。一度遠心分離操作によって銅フタロシアニンを回収し、これを再び0.1%Tween-20を含むTBSバッファーに0.5%(w/v)になるように懸濁した。次に参考例2で調整した (R)-3-ヒドロキシオクタノイルCoAを終濃度5mMになるように添加した。37℃で30分間インキュベートすることによって、合成反応を行った。
【0181】
反応液中で生成したPHAをナイルブルーAで染色し蛍光顕微鏡観察したところ、YN2-C1を添加した試料については遊離のPHAグラニュールが観察されたが、YN2-C1(pht)を添加した試料については遊離のPHAグラニュールが観察されず、合成酵素による効率的なPHA合成がなされたことが確認できた。
【0182】
反応液を、遠心分離(10、000 x g、4℃、10分間)して、銅フタロシアニンをコアにするカプセル構造体の含水ケーキを得た。この含水ケーキを水に再懸濁した後、再度遠心分離操作によってカプセル構造体を回収した。この操作を3回繰返すことで洗浄した。
【0183】
作製したカプセル構造体の含水ケーキの一部を、真空乾燥したのち、20 mlのクロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC-MS、島津QP-5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、図1に示す通り、当該PHAは3-ヒドロキシオクタン酸をモノマーユニットとするPHAであることが確認された。さらに、該PHAの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC-8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED-C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=21、000、Mw=40、000であった。
【0184】
(実施例5) カーボンブラックに対する結合能を有するアミノ酸配列の取得
▲1▼カーボンブラック (シグマ アルドリッチ ジャパン社製)をメタノールに5 mg/mlの濃度に成るように懸濁した。この1.5mlをポリスチレン製プレートに加え、メタノールを蒸発させて除くことによって、ポリスチレン製プレートの表面にカーボンブラックの皮膜を固着させた。固着したカーボンブラックの皮膜は0.1%Tween-20を含むTBSバッファー(50 mM Tris-HCl pH 7.5、 150 mM NaCl)で洗浄しても脱離しないことを確認した。
▲2▼ウシ血清アルブミン(BSA)を含むブロッキングバッファー( 0.1M NaHCO3(pH8.6)、 5mg/ml BSA、 0.1mg/ml streptavidin、 0.02%NaN3)を、カーボンブラックの固着したポリスチレン製プレートに満たし4℃で1時間静置した。その後ブロッキングバッファーを捨てTBSTバッファー(TBSバッファー + 0.1%Tween-20)でプレートを10回洗浄した。
▲3▼Ph.D.-7ファージディスプレイペプチドライブラリ(New England BioLabs社製)の1.4 x 1011pfu相当をプレートに添加し、25℃で60分間静置した。
▲4▼プレートの溶液を捨て、TBSTバッファーで10回洗浄した。
▲5▼1mlの溶出バッファー(0.2M Glycine-HCl(pH2.2)、 1mg/ml BSA)を加えて3分間静置した後、溶液を微量遠沈チューブに移し、150mlの1M Tris-HCl(pH9.1)を加えて中和し、溶出されたファージを得た。
▲6▼溶出されたファージを対数増殖初期の大腸菌ER2537(New England BioLabs社製)に感染させ増幅した。37℃で4.5時間培養した。次にファージを遠心分離により細胞から分離し、ポリエチレングリコールの沈殿により精製した。精製、増幅されたファージはTBSバッファーに懸濁され、適当な希釈系列を大腸菌に感染させることによって力価(titer)を測定した。
▲7▼増幅されたファージを用いて、前記▲1▼から▲6▼をあと3回繰返した。ただし用いるTBSTバッファー中のTween-20の濃度を0.5%に上げることによって、洗浄の条件を厳しくした。
2回目からは、ポリスチレン製プレートにBSAによるブロッキングのみを行ったものに対しても同様の操作を行い、コントロールとした。各サイクルにおいて溶出されたファージの力価(titer)を表5に示す。
【0185】
【表5】
Figure 0003754936
【0186】
最終的に溶出されたファージを大過剰の大腸菌に感染させることによってクローン化した。各クローンを大腸菌に感染させ増幅した後、ssDNAを調製し、ランダム領域の塩基配列を解読し、ディスプレイしているペプチドのアミノ酸配列を決定した。その結果、ピックアップした30クローンのアミノ酸配列と頻度を表6に示す。
【0187】
【表6】
Figure 0003754936
【0188】
アミノ酸配列WxWILxNなるカーボンブラック結合モチーフ、特にアミノ酸配列WFWILVN(配列番号:18)なるカーボンブラック結合配列を決定することができた。
【0189】
(実施例6) カーボンブラックに対する結合能を有するPHA合成酵素の調製アミノ酸配列WFWILVN(配列番号:18)なるカーボンブラック結合配列を、スペーサー配列GGGSを介して、PHA合成酵素のC末端に融合して発現する大腸菌発現ベクターを次のようにして構築した。このアミノ酸配列をコードするDNAは二本鎖合成オリゴヌクレオチドとして作製し、pGEX-C2プラスミドの適切な制限開裂部位(SpeIおよびXhoI)にライゲーションする。この場合に、2つの合成オリゴヌクレオチドO3(5' CTAGTTGGTTCTGGATTTTAGTGAACGGTGGAGGTTCGC、配列番号:19)およびO4(5' TCGAG CGAACCTCCACCGTTCACTAAAATCCAGAACCA A、配列番号:20)を製造業者の説明に従いT4ポリヌクレオチドキナーゼ(Gibco製)を用いてリン酸化した。続いて80℃で5分間加熱し、その後室温までゆっくり冷却させた。この二本鎖DNA断片は、その後のクローニングに直接用いた。
【0190】
プラスミドpGEX‐C2をSpeIおよびXhoIにより消化し、前記二本鎖DNA断片を挿入した。このベクターを用いて大腸菌(JM109)を形質転換し、発現用菌株を得た。菌株の確認は、Miniprep(Wizard Minipreps DNA Purification Systems、PROMEGA社製)を用いて調製したプラスミドDNAをテンプレートとしてpGEX 3' Sequencing Primer(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いたシークエンシングによってインサートの塩基配列を決定することにより行った。得られた菌株をLB-Amp培地10mLで一晩プレ・カルチャーした後、その0.1mLを、10mLのLB-Amp培地に添加し、37℃、170rpmで3時間振とう培養した。その後IPTGを添加 (終濃度 1mM) し、37℃で4~12時間培養を続けた。
【0191】
IPTG 誘導した大腸菌を集菌 (8000×g、 2分、4℃) し、1/10 量の 4℃ PBSに再懸濁した。凍結融解およびソニケーションにより菌体を破砕し、遠心 (8000×g、 10分、4℃)して固形夾雑物を取り除いた。目的の発現タンパク質が上清に存在することをSDS-PAGEで確認した後、誘導され発現されたGST融合タンパク質をグルタチオン・セファロース4B(Glutathion Sepharose 4B beads: アマシャムファルマシア・バイオテク社製)で精製した。
【0192】
使用したグルタチオンセファロースは、予め非特異的吸着を抑える処理を行った。すなわち、グルタチオンセファロースを同量のPBSで3回洗浄(8000×g、1分、4℃) した後、4%BSA含有PBSを同量加えて4℃で1時間処理した。処理後同量のPBSで2回洗浄し、1/2量のPBSに再懸濁した。前処理したグルタチオンセファロース 40μLを、無細胞抽出液1mL に添加し、4℃で静かに攪拌した。これにより、融合タンパク質GST-YN2-C1をグルタチオンセファロースに吸着させた。
【0193】
吸着後、遠心 (8000×g、 1分、4℃)してグルタチオンセファロースを回収し、400μLのPBSで3回洗浄した。その後、10 mMグルタチオン40μLを添加し、4℃で1時間攪拌して、吸着した融合タンパク質を溶出した。遠心 (8000×g、2分、4℃)して上清を回収した後PBSに対して透析し、GST融合タンパク質を精製した。SDS-PAGEにより、シングルバンドを示すことを確認した。
【0194】
各GST融合タンパク質500μgをPreScissionプロテアーゼ(アマシャムファルマシア・バイオテク、5U)で消化した後、グルタチオン・セファロースに通してプロテアーゼとGSTを除去した。フロースルー分画をさらに、PBSで平衡化したセファデックスG200カラムにかけ、発現タンパク質YN2-C2(cb)の最終精製物を得た。SDS-PAGEにより61.9kDaのシングルバンドを示すことを確認した。
【0195】
精製酵素活性は前述の方法で測定した。また、試料中のタンパク質濃度は、マイクロBCAタンパク質定量試薬キット(ピアスケミカル社製)によって測定した。酵素濃度は2.1 U/mlまた比活性は 4.1 U/mgタンパク質であった。精製酵素を生体溶液試料濃縮剤(みずぶとりくんAB-1100、アトー(株)製)を用いて濃縮し、10 U/mlの精製酵素溶液を得た。
【0196】
(実施例7) カーボンブラックに対する結合能の評価
カーボンブラックを、0.1%Tween-20を含むTBSバッファーに0.5%(w/v)になるように懸濁した。この10mlをテフロン製遠沈管にとり、ここに、実施例6で調整したPHA合成酵素YN2-C2(cb)および参考例1で調整したYN2-C2の0.5U相当を加え、室温で30分間振とうした。遠心分離操作(10、000 x g、4℃、10分間)によってカーボンブラック粒子を沈殿として回収し、カーボンブラックに結合しなかった酵素を含む上清と分離した。カーボンブラックを再び0.1%Tween-20を含むTBSバッファーに懸濁し、遠心操作を繰返すことによって、カーボンブラックを洗浄した。洗浄したカーボンブラックの懸濁液の酵素活性を測定した結果を表7に示す。
【0197】
【表7】
Figure 0003754936
【0198】
コントロールの酵素YN2-C2に比べて、カーボンブラック結合配列を融合した酵素YN2-C2(cb)の方が、酵素活性が高く、酵素を有効に基材表面に固定化できることが確かめられた。
【0199】
(実施例8) カーボンブラックのPHAカプセル構造体
カーボンブラックを、0.1%Tween-20を含むTBSバッファーに0.5%(w/v)になるように懸濁した。この10mlをテフロン製遠沈管にとり、ここに、PHA合成酵素YN2-C2(cb)または YN2-C2の0.5U相当を加え、室温で30分間振とうした。一度遠心分離操作によってカーボンブラックを回収し、これを再び0.1%Tween-20を含むTBSバッファーに0.5%(w/v)になるように懸濁した。次に参考例2で調整した (R)-3-ヒドロキシ-5-フェニルバレリルCoAを終濃度5mMになるように添加した。37℃で30分間インキュベートすることによって、合成反応を行った。
反応液中で生成したPHAをナイルブルーAで染色し蛍光顕微鏡観察したところ、YN2-C2を添加した試料については遊離のPHAグラニュールが観察されたが、YN2-C2(cb)を添加した試料については遊離のPHAグラニュールが観察されず、合成酵素による効率的なPHA合成がなされたことが確認できた。
【0200】
反応液を、遠心分離(10、000 x g、4℃、10分間)して、カーボンブラックをコアにするカプセル構造体の含水ケーキを得た。この含水ケーキを水に再懸濁した後、再度遠心分離操作によってカプセル構造体を回収した。この操作を3回繰返すことで洗浄した。
【0201】
作製したカプセル構造体の含水ケーキの一部を、真空乾燥したのち、20 mlのクロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC-MS、島津QP-5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、図2に示す通り、当該PHAは3-ヒドロキシ-5-フェニル吉草酸をモノマーユニットとするPHAであることが確認された。さらに、該PHAの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC-8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED-C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=16、000、Mw=36、000であった。
【0202】
(実施例9) シリコン基板に対する結合能を有するアミノ酸配列の取得
▲1▼単結晶シリコン基板 (FZ法により製造、(1 0 0)面、比抵抗100Ω・cm〜1kΩ・cm)の表面をメタノールで洗浄し、ウシ血清アルブミン(BSA)を含むブロッキングバッファー( 0.1M NaHCO3(pH8.6)、 5mg/ml BSA、 0.1mg/ml streptavidin、 0.02%NaN3)で表面を満たし4℃で1時間静置した。その後ブロッキングバッファーを捨てTBSTバッファー(TBSバッファー + 0.1%Tween-20)でシリコン基板を洗浄した。
▲2▼Ph.D.-7ファージディスプレイペプチドライブラリ(New England BioLabs社製)の1.4 x 1011pfu相当をシリコン基板上に添加し、25℃で60分間静置した。
▲3▼シリコン基板上の溶液を捨て、TBSTバッファーで洗浄した。
▲4▼1mlの溶出バッファー(0.2M Glycine-HCl(pH2.2)、 1mg/ml BSA)を加えて表面を満たし3分間静置した後、溶液を微量遠沈チューブに移し、150mlの1M Tris-HCl(pH9.1)を加えて中和し、溶出されたファージを得た。
▲5▼溶出されたファージを対数増殖初期の大腸菌ER2537(New England BioLabs社製)に感染させ増幅した。37℃で4.5時間培養した。次にファージを遠心分離により細胞から分離し、ポリエチレングリコールの沈殿により精製した。精製、増幅されたファージはTBSバッファーに懸濁され、適当な希釈系列を大腸菌に感染させることによって力価(titer)を測定した。
▲6▼増幅されたファージを用いて、前記▲1▼から▲5▼をあと3回繰返した。ただし用いるTBSTバッファー中のTween-20の濃度を0.5%に上げることによって、洗浄の条件を厳しくした。
各サイクルにおいて溶出されたファージの力価(titer)を表8に示す。
【0203】
【表8】
Figure 0003754936
【0204】
最終的に溶出されたファージを大過剰の大腸菌に感染させることによってクローン化した。各クローンを大腸菌に感染させ増幅した後、ssDNAを調製し、ランダム領域の塩基配列を解読し、ディスプレイしているペプチドのアミノ酸配列を決定した。その結果、ピックアップした30クローンのアミノ酸配列と頻度を表9に示す。
【0205】
【表9】
Figure 0003754936
【0206】
アミノ酸配列DSxxTINなるシリコン基板結合モチーフ、特にアミノ酸配列DSHFTIN(配列番号:21)なるシリコン基板結合配列を決定することができた。
【0207】
(実施例10) シリコン基板に対する結合能を有するPHA合成酵素の調製
アミノ酸配列DSHFTIN(配列番号:21)なるシリコン基板結合配列を、スペーサー配列GGGSを介して、PHA合成酵素のN末端に融合して発現する大腸菌発現ベクターを次のようにして構築した。このアミノ酸配列をコードするDNAは二本鎖合成オリゴヌクレオチドとして作製し、pGEX-C1プラスミドの適切な制限開裂部位(BamHIおよびSacI)にライゲーションする。この場合に、2つの合成オリゴヌクレオチドO5(5' GATCCGATTCA CATTTTACTATTAATGGTGGAGGTTCGGAGCT、配列番号:22)およびO6(5' CCGAACCTCCACCATTAATAGTAAAATGTGAATCG、配列番号:23)を製造業者の説明に従いT4ポリヌクレオチドキナーゼ(Gibco製)を用いてリン酸化した。続いて80℃で5分間加熱し、その後室温までゆっくり冷却させた。この二本鎖DNA断片は、その後のクローニングに直接用いた。
【0208】
プラスミドpGEX‐C1をBamIおよびSacIにより消化し、前記二本鎖DNA断片を挿入した。このベクターを用いて大腸菌(JM109)を形質転換し、発現用菌株を得た。菌株の確認は、Miniprep(Wizard Minipreps DNA Purification Systems、PROMEGA社製)を用いて調製したプラスミドDNAをテンプレートとしてpGEX 5' Sequencing Primer(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いたシークエンシングによってインサートの塩基配列を決定することにより行った。得られた菌株をLB-Amp培地10mLで一晩プレ・カルチャーした後、その0.1mLを、10mLのLB-Amp培地に添加し、37℃、170rpmで3時間振とう培養した。その後IPTGを添加 (終濃度 1mM) し、37℃で4~12時間培養を続けた。
【0209】
IPTG 誘導した大腸菌を集菌 (8000×g、 2分、4℃) し、1/10 量の 4℃ PBSに再懸濁した。凍結融解およびソニケーションにより菌体を破砕し、遠心 (8000×g、 10分、4℃)して固形夾雑物を取り除いた。目的の発現タンパク質が上清に存在することをSDS-PAGEで確認した後、誘導され発現されたGST融合タンパク質をグルタチオン・セファロース4B(Glutathion Sepharose 4B beads: アマシャムファルマシア・バイオテク社製)で精製した。
【0210】
使用したグルタチオンセファロースは、予め非特異的吸着を抑える処理を行った。すなわち、グルタチオンセファロースを同量のPBSで3回洗浄(8000×g、1分、4℃) した後、4%BSA含有PBSを同量加えて4℃で1時間処理した。処理後同量のPBSで2回洗浄し、1/2量のPBSに再懸濁した。前処理したグルタチオンセファロース 40μLを、無細胞抽出液1mL に添加し、4℃で静かに攪拌した。これにより、融合タンパク質GST-YN2-C1をグルタチオンセファロースに吸着させた。
【0211】
吸着後、遠心 (8000×g、 1分、4℃)してグルタチオンセファロースを回収し、400μLのPBSで3回洗浄した。その後、10 mMグルタチオン40μLを添加し、4℃で1時間攪拌して、吸着した融合タンパク質を溶出した。遠心 (8000×g、2分、4℃)して上清を回収した後PBSに対して透析し、GST融合タンパク質を精製した。SDS-PAGEにより、シングルバンドを示すことを確認した。
【0212】
各GST融合タンパク質500μgをPreScissionプロテアーゼ(アマシャムファルマシア・バイオテク、5U)で消化した後、グルタチオン・セファロースに通してプロテアーゼとGSTを除去した。フロースルー分画をさらに、PBSで平衡化したセファデックスG200カラムにかけ、発現タンパク質YN2-C1(Si)の最終精製物を得た。SDS-PAGEにより61.9kDaのシングルバンドを示すことを確認した。
【0213】
精製酵素活性は前述の方法で測定した。また、試料中のタンパク質濃度は、マイクロBCAタンパク質定量試薬キット(ピアスケミカル社製)によって測定した。酵素濃度は2.1 U/mlまた比活性は 4.1 U/mgタンパク質であった。精製酵素を生体溶液試料濃縮剤(みずぶとりくんAB-1100、アトー(株)製)を用いて濃縮し、10 U/mlの精製酵素溶液を得た。
【0214】
(実施例11) シリコン基板に対する結合能の評価
シリコン基板表面を、0.1%Tween-20を含むTBSTバッファーで洗浄した。ここに、実施例10で調整したPHA合成酵素YN2-C1(Si)または参考例1で調整したYN2-C1の0.5U相当を加え、室温で30分間振とうした。TBSTバッファーでシリコン基板表面を洗浄し、シリコン基板に結合しなかった酵素を除いた。洗浄したシリコン基板表面をTBSTバッファーで満たし、ここに酵素の基質である3-ヒドロキシオクタノイルCoAを加え、CoAの生成速度から、シリコン基板表面に固定化された酵素活性を測定した。結果を表10に示す。
【0215】
【表10】
Figure 0003754936
【0216】
コントロールの酵素YN2-C1に比べて、シリコン基板結合配列を融合した酵素YN2-C1(Si)の方が、酵素活性が高く、酵素を有効に基材表面に固定化できることが確かめられた。
【0217】
(実施例12) シリコン基板のPHA積層構造体
シリコン基板表面を、0.1%Tween-20を含むTBSTバッファーで洗浄した。ここに、PHA合成酵素YN2-C1(Si)または YN2-C1の0.5U相当を加え、室温で30分間振とうした。TBSTバッファーでシリコン基板表面を洗浄し、シリコン基板に結合しなかった酵素を除いた。洗浄したシリコン基板表面をTBSTバッファーで満たし、参考例2で調整した (R)-3-ヒドロキシ-5-(4-フルオロフェニル)バレリルCoAを終濃度5mMになるように添加した。37℃で30分間インキュベートすることによって、合成反応を行った。
反応液上清中およびシリコン基板上で生成したPHAをナイルブルーAで染色し蛍光顕微鏡観察したところ、YN2-C1を添加した試料については遊離のPHAグラニュールが観察されたが、YN2-C1(Si)を添加した試料については反応液上清中に遊離のPHAグラニュールが観察されず、合成酵素による効率的なPHA合成がなされたことが確認できた。またシリコン基板上に積層したPHAを蛍光染色観察することができた。
【0218】
作製したPHA積層シリコン基板構造体を、真空乾燥したのち、20 mlのクロロホルムに浸漬し、60℃で20時間攪拌して積層しているPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC-MS、島津QP-5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、図3に示す通り、当該PHAは(R)-3-ヒドロキシ-5-(4-フルオロフェニル)吉草酸をモノマーユニットとするPHAであることが確認された。さらに、該PHAの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC-8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED-C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=17、000、Mw=37、000であった。
(実施例13) カプセル構造体の作製(グラジェント構造)
実施例2で調整した発現タンパク質YN2-C1(pht)(10 U/ml)10質量部に沈降法によって粒径をそろえた銅フタロシアニン粒子(体積平均粒子径1.45μm)1質量部、PBS 39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してPHA合成酵素を銅フタロシアニンに固定化した。これを遠心分離(10、000×g、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(10、000×g、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0219】
上記固定化酵素を30 mM (R)−3−ヒドロキシオクタノイルCoA(Eur.J.Biochem.、250、432−439(1997)に記載の方法で調製)、0.1%ウシ血清アルブミン(Sigma社製)を含む0.1 Mリン酸バッファー(pH7.0)100質量部に浸漬した。次いで、30℃で緩やかに振盪しながらこの反応液に30 mM (R)−3−ヒドロキシピメリルCoA(J.Bacteriol.、182、2753−2760(2000) に記載の方法で調製)、0.1%ウシ血清アルブミン(Sigma社製)を含む0.1 Mリン酸バッファー(pH7.0)をマイクロチューブポンプ(東京理化器械社製MP-3N)を用いて1分間に25質量部の割合で添加した。
【0220】
30分間振とう後、0.1 Mリン酸バッファー(pH7.0)で洗浄して、未反応物等を除去して風乾し、カプセル構造体を得た。
【0221】
このカプセル構造体の表面に形成されたポリマーの質量を、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS IV、CAMECA製)により測定した。得られたマススペクトルから、カプセル構造体表面は3−ヒドロキシピメリン酸と3−ヒドロキシオクタン酸の共重合体(モル比17:1)で構成されていることがわかった。また、イオンスパッタリングによりカプセル構造体表面を少しずつ削りながら同様にTOF−SIMSによりマススペクトルを測定していったところ、前記共重合体における3−ヒドロキシピメリン酸の組成比率が次第に減少し、3−ヒドロキシオクタン酸の組成比率が増加した。これより、本実施例のカプセル構造体は、表面を親水性官能基を有するポリヒドロキシピメレートで被覆し、その下を親水性官能基を有する3−ヒドロキシピメリン酸と疎水性官能基を有する3−ヒドロキシオクタン酸の共重合体によって、下層に至るにつれて3−ヒドロキシオクタン酸の組成比率を高めながら被覆したカプセル構造体であることがわかった。
【0222】
また、該PHAの平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=21、000、Mw=40、000であった。
【0223】
(実施例14) カプセル構造体の作製(化学修飾)
実施例2で調整した発現タンパク質YN2-C1(pht)(10 U/ml)10質量部に銅フタロシアニン粒子(粒径0.12μm〜135μm)1質量部、PBS 39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してPHA合成酵素を銅フタロシアニンに固定化した。これを遠心分離(10、000×g、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(10、000×g、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0224】
上記固定化酵素を0.1 Mリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R、S)−3−ヒドロキシ−5−フェノキシバレリルCoA(3−フェノキシプロパナールとブロモ酢酸エチルとのReformatsky反応で得られた3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸を得たのち、Eur.J.Biochem.、250、432−439(1997)に記載の方法で調製)0.8質量部、(R、S)−3−ヒドロキシ−7、8−エポキシオクタノイルCoA(Int.J.Biol.Macromol.、12、85−91(1990)に記載の方法で合成した3−ヒドロキシ−7−オクテン酸の不飽和部分を3−クロロ安息香酸でエポキシ化したのち、Eur.J.Biochem.、250、432−439(1997)に記載の方法で調製)0.2質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪して試料1を得た。
【0225】
比較対照として、(R、S)−3−ヒドロキシ−7、8−エポキシオクタノイルCoAを、3−ヒドロキシオクタノイルCoAに変更する以外は、上記と同様の方法で試料2を得た。
【0226】
上記の試料10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380 nm励起フィルタ、420 nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、いずれの試料においても、銅フタロシアニン粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該銅フタロシアニン粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。
【0227】
対照として、0.1 Mリン酸バッファー(pH7.0)49質量部に銅フタロシアニン1質量部を添加し、30℃で2.5時間緩やかに振盪した後、同様にナイルブルーAで染色して蛍光顕微鏡観察を行った。その結果、銅フタロシアニン粒子表面は全く蛍光を発しなかった。
【0228】
さらに、試料の一部を遠心分離(10、000×g、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。この抽出液について1H−NMR分析を行った(使用機器:FT−NMR:Bruker DPX400、測定核種:1H、使用溶媒:重クロロホルム(TMS入り))。ここから計算した各側鎖ユニットのユニット%を表11に示す。
【0229】
【表11】
Figure 0003754936
【0230】
上記の試料1を50質量部遠心分離(10、000×g、4℃、10分間)してカプセル構造体を回収し、精製水50質量部に懸濁する操作を3回繰返したのち、該懸濁液に架橋剤としてヘキサメチレンジアミン0.5質量部を溶解させた。溶解を確認後、凍結乾燥により水を除去した(これを試料3とする)。さらに、試料3を70で12時間反応させた(これを試料4とする)。
上記試料3及び試料4をクロロホルムに懸濁し、60で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出し、真空乾燥によりクロロホルムを除去し、示差走査熱量計(DSC;パーキンエルマー社製、Pyris 1、昇温:10℃/分)装置で測定を行った。その結果、試料3では90付近に明確な発熱ピークがみられ、ポリマー中のエポキシ基とヘキサメチレンジアミンとの反応が起こり、ポリマー同士の架橋が進行していることが示される。一方、試料4では明確なヒートフローは見られず、架橋反応がほぼ完了していることが示される。
さらに、同様のサンプルにつき、赤外吸収を測定した(FT−IR;パーキンエルマー社製、1720X)。その結果、試料3で見られたアミン(3340 cm-1付近)及びエポキシ(822 cm-1付近)のピークが試料4では消失している。
【0231】
以上の結果より、側鎖にエポキシユニットをもつPHAとヘキサメチレンジアミンを反応させることにより、架橋ポリマーが得られることが明らかとなった。
【0232】
一方、比較対照として試料2について同様の評価を行ったが、前記の如き、ポリマー同士の架橋を明確に示す評価結果は得られなかった。
【0233】
(実施例15) 銅フタロシアニンに対する結合能を有するアミノ酸配列の取得
▲1▼銅フタロシアニン (a型 東京化成工業社製)を0.1%Tween-20を含むTBSバッファー(50 mM Tris-HCl pH 7.5、 150 mM NaCl)に5 mg/mlの濃度に成るように懸濁した。この10μlをエッペンドルフチューブに加え、990μl TBSTバッファー(TBSバッファー + 0.1%Tween-20)を加えて希釈した。
▲2▼Ph.D.-12ファージディスプレイペプチドライブラリ(New England BioLabs社製)の4 x 1010pfu相当をチューブに添加し、25℃で10分間静置した。
▲3▼チューブを遠心分離(20,630×g、5分間)した後、上清を捨て沈殿として顔料を回収した。回収した顔料を再びTBSTバッファーに懸濁し遠心分離を繰返すことによって、顔料をTBSTバッファーで10回洗浄した。
▲4▼100μlの溶出バッファー(0.2M Glycine-HCl(pH2.2)、 1mg/ml BSA)を加えて1分間静置した後、遠心分離(20,630×g、5分間)し、上清を別のエッペンドルフチューブに移し、15mlの1M Tris-HCl(pH9.1)を加えて中和し、溶出されたファージを得た。
▲5▼溶出されたファージを対数増殖初期の大腸菌ER2537(New England BioLabs社製)に感染させ増幅した。37℃で4.5時間培養した。次にファージを遠心分離により細胞から分離し、ポリエチレングリコールの沈殿により精製した。精製、増幅されたファージはTBSバッファーに懸濁され、適当な希釈系列を大腸菌に感染させることによって力価(titer)を測定した。
▲6▼増幅されたファージを用いて、前記▲1▼から▲5▼をあと3回繰返した。ただし用いるTBSTバッファー中のTween-20の濃度を0.5%に上げることによって、洗浄の条件を厳しくした。
2回目からは、エッペンドルフチューブに対しても同様の操作を行い、コントロールとした。各サイクルにおいて溶出されたファージの力価(titer)を表12に示す。
【0234】
【表12】
Figure 0003754936
【0235】
最終的に溶出されたファージを大過剰の大腸菌に感染させることによってクローン化した。各クローンを大腸菌に感染させ増幅した後、ssDNAを調製し、ランダム領域の塩基配列を解読し、ディスプレイしているペプチドのアミノ酸配列を決定することによって、銅フタロシアニンに対して結合能を有するアミノ酸配列を取得した。結果のアミノ酸配列と頻度を表13に示す。
【0236】
【表13】
Figure 0003754936
【0237】
(実施例16) 実施例2と同様にして銅フタロシアニンに対する結合能を有するPHA合成酵素の次のようにして調製した。各アミノ酸配列(配列番号:24から配列番号38)に対して、スペーサー配列GSを介して、PHA合成酵素のN末端に融合して発現する大腸菌発現ベクターを次のようにして構築した。これらのアミノ酸配列をコードするDNAは二本鎖合成DNAとして作製するために、次の表14に挙げる合成オリゴヌクレオチドのセットを用意した。
【0238】
【表14】
Figure 0003754936
【0239】
表14に挙げたそれぞれのアミノ酸配列に対する2種の合成DNAを夫々製造業者の説明に従いT4ポリヌクレオチドキナーゼ(Gibco製)を用いてリン酸化した。続いて2種の合成DNAを等モル混合し、80℃で5分間加熱し、その後室温までゆっくり冷却させることによって二本鎖DNA断片を形成させた。形成された二本鎖DNA断片は、その後のクローニングに直接用いた。
【0240】
プラスミドpGEX‐C1をBamHIおよびSacIにより消化し、前記二本鎖DNA断片を挿入した。このベクターを用いて大腸菌(JM109)を形質転換し、発現用菌株を得た。菌株の確認は、Miniprep(Wizard Minipreps DNA Purification Systems、PROMEGA社製)を用いて調製したプラスミドDNAをテンプレートとしてpGEX 5' Sequencing Primer(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いたシークエンシングによってインサートの塩基配列を決定することにより行った。得られた菌株をLB-Amp培地10mLで一晩プレ・カルチャーした後、その0.1mLを、10mLのLB-Amp培地に添加し、37℃、170rpmで3時間振とう培養した。その後IPTGを添加 (終濃度 1mM) し、37℃で4~12時間培養を続けた。
【0241】
IPTG 誘導した大腸菌を集菌 (8000×g、 2分、4℃) し、1/10 量の 4℃ PBSに再懸濁した。凍結融解およびソニケーションにより菌体を破砕し、遠心 (8000×g、 10分、4℃)して固形夾雑物を取り除いた。目的の発現タンパク質が上清に存在することをSDS-PAGEで確認した後、誘導され発現されたGST融合タンパク質をグルタチオン・セファロース4B(Glutathion Sepharose 4B beads: アマシャムファルマシア・バイオテク社製)で精製した。
【0242】
使用したグルタチオンセファロースは、予め非特異的吸着を抑える処理を行った。すなわち、グルタチオンセファロースを同量のPBSで3回洗浄(8000×g、1分、4℃) した後、4%BSA含有PBSを同量加えて4℃で1時間処理した。処理後同量のPBSで2回洗浄し、1/2量のPBSに再懸濁した。前処理したグルタチオンセファロース 40μLを、無細胞抽出液1mL に添加し、4℃で静かに攪拌した。これにより、融合タンパク質GST-aa24-YN2-C1〜GST-aa38-YN2-C1をグルタチオンセファロースに吸着させた。[融合タンパク質GST-aa##-YN2-C1におけるaa##は配列番号##のアミノ酸配列からなるポリペプチドをPHA合成酵素とGSTの間に融合して発現していることを意味する。]
吸着後、遠心 (8000×g、 1分、4℃)してグルタチオンセファロースを回収し、400μLのPBSで3回洗浄した。その後、10 mMグルタチオン40μLを添加し、4℃で1時間攪拌して、吸着した融合タンパク質を溶出した。遠心 (8000×g、2分、4℃)して上清を回収した後PBSに対して透析し、GST融合タンパク質を精製した。SDS-PAGEにより、シングルバンドを示すことを確認した。
【0243】
各GST融合タンパク質500μgをPreScissionプロテアーゼ(アマシャムファルマシア・バイオテク、5U)で消化した後、グルタチオン・セファロースに通してプロテアーゼとGSTを除去した。フロースルー分画をさらに、PBSで平衡化したセファデックスG200カラムにかけ、それぞれの発現タンパク質aa24-YN2-C1(pht)〜aa38-YN2-C1(pht)の最終精製物を得た。[発現タンパク質aa##-YN2-C1(pht)におけるaa##は配列番号##のアミノ酸配列からなるポリペプチドをPHA合成酵素のN末端に融合して発現していることを意味する。]
それぞれの精製酵素の活性は前述の方法で測定した。また、試料中のタンパク質濃度は、マイクロBCAタンパク質定量試薬キット(ピアスケミカル社製)によって測定した。酵素濃度は1.9 U/mlまた比活性は 4.0 U/mgタンパク質であった。精製酵素を生体溶液試料濃縮剤(みずぶとりくんAB-1100、アトー(株)製)を用いて濃縮し、10 U/mlの精製酵素溶液を得た。
【0244】
(実施例17) 銅フタロシアニンに対する結合能の評価
銅フタロシアニンを、0.1%Tween-20を含むTBSバッファーに0.5%(w/v)になるように懸濁した。この10mlをテフロン製遠沈管にとり、ここに、実施例16で調整したPHA合成酵素aa24-YN2-C1(pht)〜aa38-YN2-C1(pht)、および参考例1で調整したYN2-C1の0.5U相当を加え、室温で30分間振とうした。遠心分離操作(10、000 x g、4℃、10分間)によって銅フタロシアニン粒子を沈殿として回収し、銅フタロシアニンに結合しなかった酵素を含む上清と分離した。銅フタロシアニンを再び0.1%Tween-20を含むTBSバッファーに懸濁し、遠心操作を繰返すことによって、銅フタロシアニンを洗浄した。洗浄した銅フタロシアニンの懸濁液の酵素活性を測定した結果を表15に示す。
【0245】
【表15】
Figure 0003754936
【0246】
コントロールの酵素YN2-C1に比べて、銅フタロシアニン結合配列を融合した酵素aa24-YN2-C1(pht)〜aa38-YN2-C1(pht)の方が、酵素活性が高く、酵素を有効に基材表面に固定化できることが確かめられた。
【0247】
(実施例18)
銅フタロシアニンに対する結合能を有する二種類のアミノ酸配列、Lys-Tyr-Asp-Ser-Arg-His-Leu-His-Thr-His-Ser-His(配列番号:24)およびPro-Asn-Arg-Leu-Gly-Arg-Arg-Pro-Val-Arg-Trp-Glu(配列番号:25)の全部を、スペーサー配列Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Serを介してこの順番に直列に繋いだ配列Lys-Tyr-Asp-Ser-Arg-His-Leu-His-Thr-His-Ser-His-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Ser-Pro-Asn-Arg-Leu-Gly-Arg-Arg-Pro-Val-Arg-Trp-Glu(配列番号:144)を、さらにスペーサー配列GSを介して、PHA合成酵素のN末端に融合して発現する大腸菌発現ベクターを次のようにして構築した。このアミノ酸配列をコードするDNAは、二種類の合成オリゴヌクレオチド、
5'-GATCCAAATATGATAGCCGTCATCTGCATACCCATAGCCATGGCGGCGGCAGCGGCGGCGGCAGCCCGAACCGTCTGGGCCGTCGTCCGGTGCGTTGGGAAGAGCT-3'(配列番号:145)および
5'-CTTCCCAACGCACCGGACGACGGCCCAGACGGTTCGGGCTGCCGCCGCCGCTGCCGCCGCCATGGCTATGGGTATGCAGATGACGGCTATCATATTTG-3'(配列番号:146)をそれぞれT4ポリヌクレオチドキナーゼ(Gibco製)を用いてリン酸化した後、等モル混合し、80℃で5分間加熱し、その後室温までゆっくり冷却させることによって二本鎖DNA断片として形成させた。形成された二本鎖DNA断片は、実施例16と同様にして、プラスミドpGEX‐C1のBamHI/SacIサイトに挿入し、このベクターを用いて大腸菌(JM109)を形質転換し、発現用菌株を得た。実施例16と同様にして、配列番号144のアミノ酸配列をN末端に融合した発現タンパク質aa144-YN2-C1(pht)を精製し、10 U/mlの精製酵素溶液を得た。実施例17と同様にして精製酵素の銅フタロシアニンに対する結合能を評価した。結果を表16に示す。
【0248】
【表16】
Figure 0003754936
【0249】
コントロールの酵素YN2-C1に比べて、銅フタロシアニン結合配列を融合した酵素aa144-YN2-C1(pht)の方が、酵素活性が高く、酵素を有効に基材表面に固定化できることが確かめられた。
【0250】
(実施例19) カーボンブラックに対する結合能を有するアミノ酸配列の取得
▲1▼カーボンブラック (シグマ アルドリッチ ジャパン社製)を0.1%Tween-20を含むTBSバッファー(50 mM Tris-HCl pH 7.5、 150 mM NaCl)に5 mg/mlの濃度に成るように懸濁した。この10μlをエッペンドルフチューブに加え、990μl TBSTバッファー(TBSバッファー + 0.1%Tween-20)を加えて希釈した。
▲2▼Ph.D.-12ファージディスプレイペプチドライブラリ(New England BioLabs社製)の4 x 1010pfu相当をチューブに添加し、25℃で10分間静置した。
▲3▼チューブを遠心分離(20,630×g、5分間)した後、上清を捨て沈殿として顔料を回収した。回収した顔料を再びTBSTバッファーに懸濁し遠心分離を繰返すことによって、顔料をTBSTバッファーで10回洗浄した。
▲4▼100μlの溶出バッファー(0.2M Glycine-HCl(pH2.2)、 1mg/ml BSA)を加えて1分間静置した後、遠心分離(20,630×g、5分間)し、上清を別のエッペンドルフチューブに移し、15mlの1M Tris-HCl(pH9.1)を加えて中和し、溶出されたファージを得た。
▲5▼溶出されたファージを対数増殖初期の大腸菌ER2537(New England BioLabs社製)に感染させ増幅した。37℃で4.5時間培養した。次にファージを遠心分離により細胞から分離し、ポリエチレングリコールの沈殿により精製した。精製、増幅されたファージはTBSバッファーに懸濁され、適当な希釈系列を大腸菌に感染させることによって力価(titer)を測定した。
▲6▼増幅されたファージを用いて、前記▲1▼から▲5▼をあと4回繰返した。ただし用いるTBSTバッファー中のTween-20の濃度を0.5%に上げることによって、洗浄の条件を厳しくした。
2回目からは、エッペンドルフチューブに対しても同様の操作を行い、コントロールとした。各サイクルにおいて溶出されたファージの力価(titer)を表17に示す。
【0251】
【表17】
Figure 0003754936
【0252】
最終的に溶出されたファージを大過剰の大腸菌に感染させることによってクローン化した。各クローンを大腸菌に感染させ増幅した後、ssDNAを調製し、ランダム領域の塩基配列を解読することによって、カーボンブラックに対して結合能を有するアミノ酸配列を取得した。結果のアミノ酸配列と頻度を表18に示す。
【0253】
【表18】
Figure 0003754936
【0254】
【表19】
Figure 0003754936
【0255】
(実施例20) 次のようにしてカーボンブラックに対する結合能を有するPHA合成酵素を調製した。各アミノ酸配列(配列番号:39から配列番号63)に対して、スペーサー配列GSを介して、PHA合成酵素のN末端に融合して発現する大腸菌発現ベクターを次のようにして構築した。これらのアミノ酸配列をコードするDNAは二本鎖DNAとして作製するために、次の表19に挙げる合成オリゴヌクレオチドのセットを用意した。
【0256】
【表20】
Figure 0003754936
【0257】
【表21】
Figure 0003754936
【0258】
表19に挙げたそれぞれのアミノ酸配列に対する2種の合成DNAを夫々製造業者の説明に従いT4ポリヌクレオチドキナーゼ(Gibco製)を用いてリン酸化した。続いて2種の合成DNAを等モル混合し、80℃で5分間加熱し、その後室温までゆっくり冷却させることによって二本鎖DNA断片を形成させた。形成された二本鎖DNA断片は、その後のクローニングに直接用いた。
【0259】
プラスミドpGEX‐C1をBamHIおよびSacIにより消化し、前記二本鎖DNA断片を挿入した。このベクターを用いて大腸菌(JM109)を形質転換し、発現用菌株を得た。菌株の確認は、Miniprep(Wizard Minipreps DNA Purification Systems、PROMEGA社製)を用いて調製したプラスミドDNAをテンプレートとしてpGEX 5' Sequencing Primer(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いたシークエンシングによってインサートの塩基配列を決定することにより行った。得られた菌株をLB-Amp培地10mLで一晩プレ・カルチャーした後、その0.1mLを、10mLのLB-Amp培地に添加し、37℃、170rpmで3時間振とう培養した。その後IPTGを添加 (終濃度 1mM) し、37℃で4~12時間培養を続けた。
【0260】
IPTG 誘導した大腸菌を集菌 (8000×g、 2分、4℃) し、1/10 量の 4℃ PBSに再懸濁した。凍結融解およびソニケーションにより菌体を破砕し、遠心 (8000×g、 10分、4℃)して固形夾雑物を取り除いた。目的の発現タンパク質が上清に存在することをSDS-PAGEで確認した後、誘導され発現されたGST融合タンパク質をグルタチオン・セファロース4B(Glutathion Sepharose 4B beads: アマシャムファルマシア・バイオテク社製)で精製した。
【0261】
使用したグルタチオンセファロースは、予め非特異的吸着を抑える処理を行った。すなわち、グルタチオンセファロースを同量のPBSで3回洗浄(8000×g、1分、4℃) した後、4%BSA含有PBSを同量加えて4℃で1時間処理した。処理後同量のPBSで2回洗浄し、1/2量のPBSに再懸濁した。前処理したグルタチオンセファロース 40μLを、無細胞抽出液1mL に添加し、4℃で静かに攪拌した。これにより、融合タンパク質GST-aa39-YN2-C1〜GST-aa63-YN2-C1をグルタチオンセファロースに吸着させた。[融合タンパク質GST-aa##-YN2-C1におけるaa##は、配列番号##のアミノ酸配列からなるポリペプチドをPHA合成酵素とGSTの間に融合して発現していることを意味する。]
吸着後、遠心 (8000×g、 1分、4℃)してグルタチオンセファロースを回収し、400μLのPBSで3回洗浄した。その後、10 mMグルタチオン40μLを添加し、4℃で1時間攪拌して、吸着した融合タンパク質を溶出した。遠心 (8000×g、2分、4℃)して上清を回収した後PBSに対して透析し、GST融合タンパク質を精製した。SDS-PAGEにより、シングルバンドを示すことを確認した。
【0262】
各GST融合タンパク質500μgをPreScissionプロテアーゼ(アマシャムファルマシア・バイオテク、5U)で消化した後、グルタチオン・セファロースに通してプロテアーゼとGSTを除去した。フロースルー分画をさらに、PBSで平衡化したセファデックスG200カラムにかけ、それぞれの発現タンパク質aa39-YN2-C1(cb)〜aa63-YN2-C1(cb)の最終精製物を得た。[発現タンパク質aa##-YN2-C1(cb)におけるaa##は配列番号##のアミノ酸配列からなるポリペプチドをPHA酵素のN末端に融合して発現していることを意味する。]
それぞれの精製酵素の活性は前述の方法で測定した。また、試料中のタンパク質濃度は、マイクロBCAタンパク質定量試薬キット(ピアスケミカル社製)によって測定した。酵素濃度は1.9 U/mlまた比活性は 4.0 U/mgタンパク質であった。精製酵素を生体溶液試料濃縮剤(みずぶとりくんAB-1100、アトー(株)製)を用いて濃縮し、10 U/mlの精製酵素溶液を得た。
【0263】
(実施例21) カーボンブラックに対する結合能の評価
カーボンブラックを、0.1%Tween-20を含むTBSバッファーに0.5%(w/v)になるように懸濁した。この10mlをテフロン製遠沈管にとり、ここに、実施例20で調整したPHA合成酵素aa39-YN2-C1(cb)〜aa63-YN2-C1(cb)、および参考例1で調整したYN2-C1の0.5U相当を加え、室温で30分間振とうした。遠心分離操作(10、000 x g、4℃、10分間)によってカーボンブラック粒子を沈殿として回収し、カーボンブラックに結合しなかった酵素を含む上清と分離した。カーボンブラックを再び0.1%Tween-20を含むTBSバッファーに懸濁し、遠心操作を繰返すことによって、カーボンブラックを洗浄した。洗浄したカーボンブラックの懸濁液の酵素活性を測定した結果を表20に示す。
【0264】
【表22】
Figure 0003754936
【0265】
コントロールの酵素YN2-C1に比べて、カーボンブラック結合配列を融合した酵素aa39-YN2-C1(cb)〜aa63-YN2-C1(cb)の方が、酵素活性が高く、酵素を有効に基材表面に固定化できることが確かめられた。
【0266】
(実施例22)
カーボンブラックに対する結合能を有する二種類のアミノ酸配列、Trp-Pro-His-Ala-Trp-Lys-Val-Trp-Trp-Pro-Ala-Ser(配列番号:39)およびAsn-Trp-Trp-Trp-Pro-Pro-Tyr-Ile-Arg-His-Gln-Pro(配列番号:40)の全部を、スペーサー配列Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Serを介してこの順番に直列に繋いだ配列Trp-Pro-His-Ala-Trp-Lys-Val-Trp-Trp-Pro-Ala-Ser-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Ser-Asn-Trp-Trp-Trp-Pro-Pro-Tyr-Ile-Arg-His-Gln-Pro(配列番号:147)を、さらにスペーサー配列GSを介して、PHA合成酵素のN末端に融合して発現する大腸菌発現ベクターを次のようにして構築した。このアミノ酸配列をコードするDNAは、二種類の合成オリゴヌクレオチド、
5'-GATCCTGGCCGCATGCGTGGAAAGTGTGGTGGCCGGCGAGCGGCGGCGGCAGCGGCGGCGGCAGCAACTGGTGGTGGCCGCCGTATATTCGTCATCAGCCGGAGCT-3'(配列番号:148)および
5'-CCGGCTGATGACGAATATACGGCGGCCACCACCAGTTGCTGCCGCCGCCGCTGCCGCCGCCGCTCGCCGGCCACCACACTTTCCACGCATGCGGCCAG-3'(配列番号:149)をそれぞれT4ポリヌクレオチドキナーゼ(Gibco製)を用いてリン酸化した後、等モル混合し、80℃で5分間加熱し、その後室温までゆっくり冷却させることによって二本鎖DNA断片として形成させた。形成された二本鎖DNA断片は、実施例20と同様にして、プラスミドpGEX‐C1のBamHI/SacIサイトに挿入し、このベクターを用いて大腸菌(JM109)を形質転換し、発現用菌株を得た。実施例20と同様にして、配列番号147のアミノ酸配列をN末端に融合した発現タンパク質aa147-YN2-C1(cb)を精製し、10 U/mlの精製酵素溶液を得た。実施例21と同様にして精製酵素のカーボンブラックに対する結合能を評価した。結果を表21に示す。
【0267】
【表23】
Figure 0003754936
【0268】
コントロールの酵素YN2-C1に比べて、カーボンブラック結合配列を融合した酵素aa147-YN2-C1(cb)の方が、酵素活性が高く、酵素を有効に基材表面に固定化できることが確かめられた。
<実施例23>静電荷像現像トナーの作製及び評価
銅フタロシアニンを0.1 μm以下となるようにサンドミルで分散し、この1質量部に0.1%Tween-20を含むPBSバッファー39 質量部を添加し懸濁した。この10mlをテフロン製遠沈管にとり、ここに、実施例16で調整したPHA合成酵素aa24-YN2-C1(pht)4U相当を加え、室温で30分間振とうしてPHA合成酵素を顔料表面に吸着させた。これを遠心分離(98、000m/s2(10、000G)、4℃、10 分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98、000m/s2(10、000G)、4℃、10 分間)して銅フタロシアニンにPHA合成酵素を固定化した。
【0269】
上記各固定化酵素を 0.1 Mリン酸バッファー(pH 7.0)48 質量部に懸濁し、(R、S)−3−ヒドロキシ−5−フェノキシバレリルCoA(J.Org.Chem.、55、1490−1492(1990)に記載の方法で合成した3-フェノキシプロパナール及びブロモ酢酸エチルを原料とし、亜鉛によるReformatsky反応で得られた3-ヒドロキシ-5-フェノキシ吉草酸エステルを加水分解して3-ヒドロキシ-5-フェノキシ吉草酸を得たのち、Eur.J.Biochem.、250、432−439(1997) に記載の方法で調製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1 質量部を添加し、30 ℃で2時間緩やかに振盪した。生成した青色のマイクロカプセル化顔料(以下着色剤と記す)を濾過洗浄乾燥し、着色剤1とした。
【0270】
この着色剤1を真空乾燥したのち、20 mLのクロロホルムに懸濁し、60 ℃で 20 時間攪拌して外被を構成するポリマーを抽出した。抽出液を孔径 0.45 μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー-質量分析装置(GC-MS、島津QP-5050、EI法)で分析を行った。その結果、得られた着色剤1の外被の主成分は3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸ユニットからなるPHAであることを確認した。
【0271】
さらに、このPHAの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC-8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED-C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度; 40 ℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=29、000 であった。
【0272】
また、マイクロカプセル化前後の顔料の体積平均粒子径をレーザードップラー方式粒度分布測定機(UPA-150 ;日機装社製)を用いて測定し、結果を表22にまとめた。
【0273】
次に下記組成
・スチレン-ブチルアクリレート共重合樹脂(ガラス転移温度70℃):100質量部
・着色剤1:5質量部
・荷電制御剤(ヘキスト社製:NXVP 434):2質量部
を混合し、二軸エクストルーダー(L/D= 30)で溶融混練した。この混練物を冷却後、ハンマーミルで粗粉砕し、ジェットミルで微粉砕した後に分級して、粉砕法によってシアン着色粒子(1)を得た。このシアン着色粒子(1)の粒度は、重量平均粒径 7.1 μm、微粉量は 6.0 個数%であった。
【0274】
このシアン着色粒子(1)100 質量部に対して、流動向上剤として、ヘキサメチルジシラザンで処理した疎水性シリカ微粉体(BET: 250 m2/g)1.5 質量部をヘンシェルミキサーで乾式混合して、本実施例のシアントナー(1)を得た。更に、得られたシアントナー(1)7質量部と樹脂コート磁性フェライトキャリア(平均粒子径: 45 μm)93 質量部とを混合して、磁気ブラシ現像用の2成分系シアン現像剤(1)を調製し、後述する評価を行なった。
<比較例1>
PHA合成酵素aa24-YN2-C1(pht)の替わりにYN2-C1を用いた他は実施例23と同様の方法によりシアントナー(2)を得た。更にこれを用いて実施例 23 と同様にして2成分系シアン現像剤(2)を得た。このトナーの特性を実施例 23 と同様に評価した。
<比較例2>
PHA合成酵素aa24-YN2-C1(pht)4U相当の替わりにYN2-C1を10U相当用いた他は実施例23と同様の方法によりシアントナー(3)を得た。更にこれを用いて実施例 23 と同様にして2成分系シアン現像剤(3)を得た。このトナーの特性を実施例 23 と同様に評価した。
<比較例3>
また、比較として着色剤1の替わりに銅フタロシアニンを5質量部使用する以外は実施例23と同様の方法により、シアントナー(4)を得た。更にこれを用いて実施例 23 と同様にして2成分系シアン現像剤(4)を得た。このトナーの特性を実施例 23 と同様に評価した。
【0275】
<評価1>
上記現像剤(1)、(2)、(3)、(4)について、常温常湿(25 ℃、60 %RH)、及び高温高湿(30℃、80 %RH)のそれぞれの環境下で10 秒、及び 300 秒攪拌後のトナーの帯電量を測定した。その結果を表22にまとめて示した。
【0276】
【表24】
Figure 0003754936
【0277】
マイクロカプセル化前後の顔料の粒径から、比較例1は比較例2と比べ顔料のマイクロカプセル化が十分ではないが、これは比較例1では顔料への酵素添加量が比較例2より少なかったためだと考えられる。一方、実施例23の酵素添加量は比較例1と同じであるが、マイクロカプセル化は比較例2と同程度であり、優れた帯電量を示した。
【0278】
以上の結果から、実施例23では少量の酵素によって顔料をマイクロカプセル化することができ、より効率的にトナーの帯電量を上げられることがわかった。
【0279】
次に上記着色剤を用いて画像形成を行なった。画像を形成する手段としては、図4に示したように、市販のレーザービームプリンターLBP-EX(キヤノン社製)にリユース機構を取り付けて改造し、再設定した画像形成装置を用いた。即ち、図3に示した画像形成装置では、転写後に感光体ドラム 20 上に残った未転写トナーを、該感光体ドラム 20 に当接しているクリーナー 21 の弾性ブレード 22 により掻き落とした後、クリーナーローラーによってクリーナー 21 内部へと送り、更にクリーナーリユース 23 を経て、搬送スクリューを設けた供給用パイプ 24 によってホッパー25 を介して現像器 26 に戻し、再度、回収トナーを利用するシステムを取り付
けられている。
【0280】
図4に示した画像形成装置では、一次帯電ローラー 27 により、感光体ドラム 20 の表面の帯電がなされる。一次帯電ローラー 27 には、ナイロン樹脂で被覆された、導電性カーボンが分散されたゴムローラー(直径 12 mm、当接圧 50 g/cm)を使用し、静電潜像担持体(感光体ドラム 20)上に、レーザー露光(600 dpi、不図示)により、暗部電位VD=-700 V、明部電位VL=-200 Vの静電潜像を形成した。トナー担持体として、その表面に、カーボンブラックが分散された樹脂がコートされている表面粗度Raが 1.1 を呈する現像スリーブ 28 を用いた。
【0281】
図5に、実施例 24 、比較例2で用いた一成分現像剤用の現像装置の要部の拡大断面図を示した。静電潜像を現像する条件としては、該現像スリーブ 28 の速度を、対向する感光ドラム 20 面の移動速度に対して 1.1 倍の速さになるように設定し、更に、感光ドラム 20 と現像スリーブ 28 との間隔α(S-D間)を 270 μmとした。トナーの層厚規制部材としては、ウレタンゴム製ブレード 29 を当接させて用いた。又、トナー画像を定着させる加熱定着装置の設定温度は 160 ℃とした。なお、定着装置は、図6及び図7に示した定着装置を用いた。
【0282】
以上のようにして、常温常湿(25 ℃、60 %RH)環境下、8枚(A4サイズ)/分のプリントアウト速度で、トナーを逐次補給しながら連続モード(即ち、現像器を休止させることなくトナーの消費を促進させるモード)で、3万枚までプリントアウトを行い、得られたプリントアウト画像について画像濃度を測定し、その耐久について下記に示した基準で評価した。又、10、000 枚目の画像を観察し、画像カブリについて下記の基準で評価した。又、同時に、耐久試験後における画像形成装置を構成している各装置の様子を観察し、各装置と上記の各トナーとのマッチングについても評価した。以上の結果を表23にまとめて示した。
【0283】
[耐久時の画像濃度推移]
通常の複写機用普通紙(75 g/m2)に、所定枚数のプリントアウトをして、初期の画像に対するプリント終了時における画像の画像濃度維持の程度により評価した。尚、画像濃度はマクベス反射濃度計(マクベス社製)を用い、原稿濃度が 0.00 の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定し、評価に用いた。
◎:優(終了時の画像濃度が 1.40 以上)
○:良(終了時の画像濃度が 1.35 以上 1.40 未満)
△:可(終了時の画像濃度が 1.00 以上 1.35 未満)
×:不可(終了時の画像濃度が 1.00 未満)
[画像カブリ]
通常の複写機用普通紙(75 g/m2)に所定枚数のプリントアウトをし、プリント終了時のベタ白画像により評価した。具体的には、下記のような方法で評価した。
反射式濃度計(TOKYO DENSHOKU CO.、LTD社製REFLECTOMETER ODEL TC-6DS)を用いて測定したプリント後の白地部反射濃度の最悪値をDs、プリント前の用紙の反射濃度平均値をDrとし、これらの値から(Ds-Dr)を求め、これをカブリ量とし、下記の基準で評価した。
◎:非常に良好(カブリ量が0%以上 1.5 %未満)
○:良好(カブリ量が 1.5 %以上 3.0 %未満)
△:実用可(カブリ量が 3.0 %以上 5.0 %未満)
×:実用不可(カブリ量が 5.0 %以上)
[画像形成装置マッチング評価]
1.現像スリーブとのマッチング
プリントアウト試験終了後、現像スリーブ表面への残留トナーの固着の様子とプリントアウト画像への影響を目視で評価した。
◎ : 非常に良好(未発生)
○ : 良好(殆ど発生せず)
△ : 実用可(固着があるが、画像への影響が少ない)
× : 実用不可(固着が多く、画像ムラを生じる)
2.感光ドラムとのマッチング
感光体ドラム表面の傷や残留トナーの固着の発生状況とプリントアウト画像への影響を目視で評価した。
◎ : 非常に良好(未発生)
○ : 良好(僅かに傷の発生が見られるが、画像への影響はない)
△ : 実用可(固着や傷があるが、画像への影響が少ない)
× : 実用不可(固着が多く、縦スジ状の画像欠陥を生じる)
3.定着装置とのマッチング
定着フィルム表面の様子を観察し、表面性及び残留トナーの固着状況の結果を総合平均化して、その耐久性を評価した。
【0284】
(1)表面性
プリントアウト試験終了後の定着フィルム表面の傷や削れの発生の様子を目視で観察し、評価した。
◎ : 非常に良好(未発生)
○ : 良好(殆ど発生せず)
△ : 実用可
× : 実用不可
(2)残留トナーの固着状況
プリントアウト試験終了後の定着フィルム表面の残留トナーの固着状況を目視で観察し、評価した。
◎ : 非常に良好(未発生)
○ : 良好(殆ど発生せず)
△ : 実用可
× : 実用不可
【0285】
【表25】
Figure 0003754936
【0286】
顔料のマイクロカプセル化が十分に行なわれた実施例23、比較例2のトナーではいずれの評価においても良好な結果を得ることができた。以上の結果から、実施例23では少量の酵素によって効率的に優れた画像形成能を有するトナーを作製できることがわかった。
【0287】
<実施例24>カラーフィルターの作製および評価
銅フタロシアニンを0.1 μm程度となるようにサンドミルで分散し、この1質量部に0.1%Tween-20を含むPBSバッファー39 質量部を添加し懸濁した。この10mlをテフロン製遠沈管にとり、ここに、実施例16で調整したPHA合成酵素aa25-YN2-C1(pht)4U相当を加え、室温で30分間振とうしてPHA合成酵素を顔料表面に吸着させた。これを遠心分離(98、000m/s2(10、000G)、4℃、10 分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98、000m/s2(10、000G)、4℃、10 分間)して銅フタロシアニンにPHA合成酵素を固定化した。
【0288】
上記固定化酵素を0.1 Mリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R)-3-ヒドロキシピメリルCoA(Eur.J.Biochem.、250、432-439(1997) に記載の方法で調製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。生成したマイクロカプセル化顔料を遠心分離(10、000×g、4℃、10分間)により回収し、このマイクロカプセル化顔料4質量部に対し、エチレングリコール10質量部、ジエチレングリコール15質量部、スチレンーマレイン酸樹脂の モノエタノールアミン塩(平均分子量3万、酸価300)0.6質量部、イオン交換水70.4質量部を添加し、攪拌翼による攪拌(80rpm)によって分散させた。この分散液を着色組成物(1)とした。
【0289】
また、先に回収したマイクロカプセル化顔料のPHAモノマーユニットの同定を実施例23と同様に行ったところ、該PHAは3-ヒドロキシピメリン酸からなるPHAであることが確認された。
【0290】
さらに、該PHAの分子量を実施例23と同様にゲルパーミエーションクロマトグ
ラフィーにより評価した結果、Mn=47、000であった。
【0291】
次に、着色組成物(1)を用いて、インクジェット記録装置によりガラス基板にブルーのインクドットを形成した。さらに、80℃で20分間、さらに180℃で1時間乾燥して、着色層を形成した。得られた着色層の厚みは0.4μmであった。次に、このの顔料微粒子層上に透明保護膜として、熱硬化型樹脂(ハイコートLC−2001、三洋化成製)をスピンナーにより乾燥膜厚が0.5μmになるように塗工し、120℃で30分間プリベークした後、200℃で30分間、本ベークにより保護膜を形成して本発明の
カラーフィルタ(1)を得た。
【0292】
<比較例4>
PHA合成酵素aa25-YN2-C1(pht)の替わりにYN2-C1を用いた他は実施例24と同様の方法によりシアントナー(2)を得た。更にこれを用いて実施例 24 と同様にして2成分系シアン現像剤(2)を得た。このトナーの特性を実施例 24 と同様に評価した。
<比較例5>
PHA合成酵素aa25-YN2-C1(pht)4U相当の替わりにYN2-C1を10U相当用いた他は実施例24と同様の方法によりシアントナー(3)を得た。更にこれを用いて実施例 24 と同様にして2成分系シアン現像剤(3)を得た。このトナーの特性を実施例 24 と同様に評価した。
<比較例6>
また、比較として着色組成物(1)の替わりに銅フタロシアニンを4質量部使用する以外は実施例24と同様の方法により、シアントナー(4)を得た。更にこれを用いて実施例 24と同様にして2成分系シアン現像剤(4)を得た。このトナーの特性を実施例 24 と同様に評価した。
【0293】
<評価2>
実施例24、比較例4,5,6の各着色組成物中のマイクロカプセル化顔料の体積平均粒子径及び30日間室温で貯蔵した後の体積平均粒子径を体積平均粒子径は、レーザードップラー方式粒度分布測定機(UPA−150;日機装社製)を用いて測定し、表24に示した。
ここで、マイクロカプセル化前の顔料の粒子径は0.102であった。
【0294】
【表26】
Figure 0003754936
【0295】
マイクロカプセル化前後(貯蔵前)の顔料の粒径から、比較例4は比較例5と比べ顔料のマイクロカプセル化が十分ではないが、これは比較例4では顔料への酵素添加量が比較例5より少なかったためだと考えられる。一方、実施例24の酵素添加量は比較例4と同じであるが、マイクロカプセル化は比較例5と同程度であった。
マイクロカプセル化が十分に行なわれた実施例24、比較例5ではマイクロカプセル化顔料の体積平均粒子径は、貯蔵前後でほぼ同等の値を示し、貯蔵安定性に優れていた。
【0296】
以上の結果から、実施例24では少量の酵素によって顔料をマイクロカプセル化することができ、より効率的に顔料の凝集を防ぐことができることがわかった。
【0297】
次にカラーフィルター(1)、(2)、(3)、(4)について、以下のような評価を行
い、結果を表25にまとめた。
(1)凝集ムラ
作製したカラーフィルタの画像を位相差顕微鏡で透過光による観察を行った。(2)着色層の基板との密着性
作製したカラーフィルタを125℃ 85% 6時間の条件でプレッシャークッカーテストにより評価した。
(3)透明性
作製したカラーフィルタの透明性について、透過率を測定して評価した。それぞれ400nm〜700nmの範囲で最大透過率の得られる波長で測定した。また測定は画素について10ケ所を測定し、その平均を求めた。
【0298】
また、同時に目視による官能評価によっても行った。
(4)色彩性
作製したカラーフィルタの色彩性を、目視による官能評価により評価した。
(5)コントラスト(消偏特性)
二枚の偏光板をこれらの光軸を変化できるように対向して配置し、これら偏光板の間に偏光板と接触させてカラーフィルタを配置した。この状態で、液晶パネル用バックライト(商品名:SLC3LC1EX4UA、東芝ライテック社製)を用いてカラーフィルタにバックライト光を照射し、2枚の偏光板の光軸を変化させ、光軸が直交する時と、平行となる時における自然光での輝度(明度)を色彩輝度計(“トプコン”BM−5A)を用いて測定し、これらの比を消偏特性として算出した。また、同時に目視による官能評価によっても行った。
【0299】
【表27】
Figure 0003754936
【0300】
顔料のマイクロカプセル化が十分に行なわれた実施例24、比較例5のカラーフィルターでは凝集ムラもなく、密着性、透明性、色彩性、コントラストの全てにおいて良好な結果を示し、優れた特性を有することがわかった。
以上の結果から、実施例24では少量の酵素によって優れた特性を有するカラーフィルターを効率的に作製できることがわかった。
【0301】
(実施例25) 電気泳動粒子の作製および評価
界面活性剤としてTween‐20を1質量%加えた20mMリン酸緩衝液(pH7.0)に、顔料としてカーボンブラックを25質量%の濃度で懸濁した。これをボールミルで混合することによって、カーボンブラックの分散液を調製した。レーザー光散乱法によるとその平均粒径は1.2μmの単分散状態であった。
【0302】
次いで実施例20で調整したPHA合成酵素aa39-YN2-C1(cb)を40U/mLになるように加え、20℃で30分間静置した。次に参考例2で調整した (R)-3-ヒドロキシオクタノイルCoAを終濃度5mMになるように添加した。37℃で30分間インキュベートすることによって、合成反応を行った。
【0303】
反応液を、遠心分離(10、000 x g、4℃、10分間)して、カーボンブラックをマイクロカプセル化した電気泳動粒子の含水ケーキを得た。この含水ケーキをエタノールに再懸濁した後、再度遠心分離操作によって電気泳動粒子を回収した。この操作を3回繰返すことで脱水処理した。 次にケロセンで電気泳動粒子を懸濁し、遠心・洗浄を繰返すことによって、分散媒をケロセンに置換し、電気泳動表示用分散系(1)とした。
【0304】
上記電気泳動粒子を真空乾燥したのち、20 mlのクロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC-MS、島津QP-5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、図3に示す通り、当該PHAは3-ヒドロキシオクタン酸をモノマーユニットとするPHAであることが確認された。さらに、該PHAの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC-8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED-C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=22、000、Mw=42、000であった。
【0305】
<比較例7>
PHA合成酵素aa39-YN2-C1(cb)の替わりにYN2-C1を用いた他は実施例25と同様の方法により電気泳動粒子(2)を得た。更にこれを用いて実施例 25 と同様にして電気泳動表示用分散系(2)を得た。
【0306】
<比較例8>
PHA合成酵素aa39-YN2-C1(cb)40U相当の替わりにYN2-C1を100U相当用いた他は実施例25と同様の方法により電気泳動粒子(3)を得た。更にこれを用いて実施例 25と同様にして電気泳動表示用分散系(3)を得た。
【0307】
<比較例9>
カーボンブラック25 gを、加熱溶融したポリエチレン樹脂75 gに加え、ロールミルを用いて均一に分散した後に、冷却硬化させて微粉砕した粒子を電気泳動粒子(4)とし、これを用いて実施例 25 と同様にして電気泳動表示用分散系(4)を得た。
【0308】
<評価3>
電気泳動粒子の絶縁性媒体に対する分散性の評価を行なった。
【0309】
試験管中に被検体である電気泳動粒子を3gと、分散媒(ケロセン)50mlと、必要ならば界面活性剤(ポリカルボン酸誘導体)0.6gとを添加し、マグネチックスターラで2時間攪拌した後、直ちに上澄みを1.0ml量り取り、これをオーブンで加熱して分散媒を完全に除去した後の重量を測定した。このときの重量をWo (g) とした。また、上記の試験管を所定時間静置した後、同様に上澄みを1.0 ml量り取り、これをオーブンで加熱して分散媒を完全に除去した後の重量を測定した。このときの重量をWi (g) とした。そして、下記の式により分散安定性Sを算出した。
【0310】
分散安定性S(%)=Wi (g) /Wo (g)×100(式1)
このようにして求めた各電気泳動粒子の分散安定性S及びレーザー光散乱法による各電気泳動粒子の粒径の測定結果を表26に示した。
【0311】
【表28】
Figure 0003754936
【0312】
マイクロカプセル化前後の顔料の粒径から、比較例7は比較例8と比べ顔料のマイクロカプセル化が十分ではないが、これは比較例7では顔料への酵素添加量が比較例8より少なかったためだと考えられる。一方、実施例25の酵素添加量は比較例7と同じであるが、マイクロカプセル化は比較例8と同程度であった。
【0313】
マイクロカプセル化が十分に行なわれた実施例25、比較例8では電気泳動粒子の分散媒中での分散安定性に優れていた。
【0314】
以上の結果から、実施例25では少量の酵素によって顔料をマイクロカプセル化することができ、電気泳動粒子とした際、より効率的に分散安定性を向上できることがわかった。
【0315】
次に各電気泳動粒子の動作確認を行なった。
【0316】
厚さ150μmのPESフィルムからなる光透過性の第1基板上にITO電極を成膜し、フォトリソグラフィー及びウエットエッチングによりライン状にパターニングした。この上に絶縁層として光を乱反射させて白色を示す酸化チタン微粒子含有樹脂層を形成した
。さらに第2電極として炭化チタンを成膜し、フォトリソグラフィー及びドライエッチングによりライン状に形成し、さらに第1電極上にのみ円形にエッチングし穴をあけた。第2電極上には、さらに絶縁層として高透明ポリイミド層を形成した。次に、熱融着性接着層を第2基板の接合部にパターン状に形成した。
【0317】
PESフィルムからなる光透過性の第2基板を熱プレス成形によって凹形状を形成し、第1基板との接着部には第1基板と同様に熱融着性接着層を形成した。
【0318】
この第2基板の凹部に、透明な絶縁性液体及び実施例25、比較例7,8,9で作製した電気泳動泳動粒子(1)、(2)、(3)、(4)を各々別々に充填した。絶縁性液体としては、第2基板材料であるPESフィルムよりも屈折率が大きいジヨードメタンを使用した。充填後、第1基板及び第2基板の接着層の位置を合わせて、熱をかけて張り合わせた。これに電圧印加回路を設けて表示装置とした。
【0319】
次に、作製した表示装置を用いて表示を行った。印加電圧は±50Vとした。第1電極を正極、第2電極を負極になるように電圧を印加すると、顔料のマイクロカプセル化が十分に行なわれた電気泳動泳動粒子(1)、(3)は、第2基板の凹状構造底面の周辺部にある第2電極上に移動した。これを第2基板側から観察すると第2基板の凹状構造がレンズとして作用するため、第1基板の中央部に光が集光し、露出した白色の絶縁層に入射して、レンズ全体が白色を呈した。また、極性を逆転して、第1電極を負極、第2電極を正極になるように電圧を印加すると、電気泳動泳動粒子は中央部に集り、レンズ全体は電気泳動泳動粒子の黒色を呈した。この時の応答速度は20msec以下であり、2色表示のできる表示装置を作製できた。
【0320】
一方、顔料のマイクロカプセル化が十分行なわれていない電気泳動泳動粒子(2)、(4)は電圧の印加による移動が不均一で、レンズ全体が明確に白色/黒色に変化しなかった。
【0321】
(実施例26)顔料インクの作製および評価
界面活性剤としてTween‐20を1質量%加えた20mMリン酸緩衝液(pH7.0)に、顔料としてカーボンブラックを25質量%の濃度で懸濁した。これをボールミルで混合することによって、カーボンブラックの分散液を調製した。レーザー光散乱法によるとその平均粒径は102 nmの単分散状態であった。
【0322】
次いで実施例20で調整したPHA合成酵素aa40-YN2-C1(cb)を40U/mLになるように加え、20℃で30分間静置した。次に参考例2で調整した (R)-3-ヒドロキシオクタノイルCoAを終濃度5mMになるように添加した。37℃で30分間インキュベートすることによって、合成反応を行った。
【0323】
反応液を、遠心分離(10、000 x g、4℃、10分間)して、カーボンブラックをコアにするマイクロカプセル化顔料の含水ケーキを得た。この含水ケーキを水に再懸濁した後、再度遠心分離操作によってマイクロカプセル化顔料(1)を回収した。この操作を3回繰返すことで洗浄した。
【0324】
作製したマイクロカプセル化顔料の含水ケーキの一部を、真空乾燥したのち、20 mlのクロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC-MS、島津QP-5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、当該PHAは3-ヒドロキシオクタン酸をモノマーユニットとするPHAであることが確認された。さらに、該PHAの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC-8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED-C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=18、000、Mw=37、000であった。
【0325】
上記マイクロカプセル化顔料(1)を用いて水性黒色インクを調製した。黒色インクの組成は次の通りである。なお以下で示す各成分の量は重量部を表わすものとする。分散攪拌機(TKホモディスパ20型、特殊機化工業(株)製)を使用し、分散時間は3時間とした。
マイクロカプセル化顔料:50部
グリセリン:6部
ジエチレングリコール:7部
ポリオキシエチレンドデシルエーテル:0.2部
Proxel XL-2:防腐剤(ZENECA(株)製):0.3部
ベンゾトリアゾール:腐食防止剤(関東化学(株)製):0.005部
水:残部
<比較例10>
PHA合成酵素aa40-YN2-C1(cb)の替わりにYN2-C1を用いた他は実施例26と同様の方法によりマイクロカプセル化顔料(2)を得た。更にこれを用いて実施例 26 と同様にして水性顔料インク(2)を調製した。
<比較例11>
PHA合成酵素aa39-YN2-C1(cb)40U相当の替わりにYN2-C1を100U相当用いた他は実施例26と同様の方法によりマイクロカプセル化顔料(3)を得た。更にこれを用いて実施例 26 と同様にして水性顔料インク(3)を調製した。
<比較例12>
マイクロカプセル化顔料に替わって微粉砕カーボンブラックを用いた他は実施例26と同様に水性顔料インク(4)を調製した。
<評価4>
このようにして調製した水性顔料インク(1)、(2)、(3)、(4)について分散安定性と平均粒径を評価した。分散安定性は70℃、3日間貯蔵後の相分離の程度を尺度とし、顔料分の沈降により生じた上層の半透明部分の全分散液高さに対する割合で表した。平均粒径はレーザードップラ式粒度分析計マイクロトラック(UPA150型、リーズ&ノースロップ社製)で測定したメディアン径をもって平均粒径とした。結果を表27に示す。
【0326】
【表29】
Figure 0003754936
【0327】
マイクロカプセル化前後の顔料の粒径から、比較例10は比較例11と比べ顔料のマイクロカプセル化が十分ではないが、これは比較例10では顔料への酵素添加量が比較例11より少なかったためだと考えられる。一方、実施例26の酵素添加量は比較例10と同じであるが、マイクロカプセル化は比較例11と同程度であった。
【0328】
マイクロカプセル化が十分に行なわれた実施例26、比較例11の水性顔料インクは分散安定性に優れていることが分かった。
【0329】
以上の結果から、実施例26では少量の酵素によって顔料をマイクロカプセル化することができ、水性顔料インクとした際、分散安定性を著しく向上できることがわかった。
【0330】
次にインクジェットプリンター用インクとしての評価を行なった。
【0331】
上記水性顔料インク(1)、(2)、(3)、(4)を用い、360dpiの解像度の記録ヘッドを備えたインクジェットプリンタを用いて吐出周波数7.2kHzで主走査方向に720dpiの間隔で印字を行なった。ここでは記録ヘッドからのインク1滴当たりの吐出量は約25
ピコリットルとして360dpi×720dpiの解像度で形成されるところの1画素にインクを1滴打ち込んで記録を行なった。そしてベタ画像及び文字パターン等を印字して画像のOD、ドット周囲形状、ベタ均一性、裏抜け性、スムージング性及び真円度を評価した。なおプリント媒体としてはキヤノン(株)社製PB用紙を用いた。
ここで、
・ODは、5mm角のベタパターンの部分を測定したものである。
・ドット周囲形状は、線画像のエッジ部分のシャープネスをルーペによって目視にて確認した。
◎:線のエッジがきれいに直線状につながっている。
○:線のエッジの直線性が若干失われているものの、実用上問題はない。
×:線のエッジの直線性が失われている。
・ベタ均一性は5mm角のベタパターンにおける濃度の均一性を目視て確認した。
◎:白く抜けている部分が認められない。
○:白く抜けている部分が認められるものの目立たず、実用上問題がない。
×:白く抜けている部分が目立ち、画像品質に影響を与えている。
・裏抜け性はベタパターンを印字した部分を、裏面から目視にて観察しパターンが透けて見える否かを確認し、またマクベス濃度計を用いて裏面の対応部部の光学濃度を測定した。
◎:殆ど透けて見えず、またマクベス濃度計による光学濃度が0.2未満である。
○:やや透けて見えるが、殆んど気にならず、またマクベス濃度計による光学濃度が0.2以上0.25未満である。
・真円度は、1滴のインクによってプリント媒体上に形成したインクドットの形状をルーペにて観察した。
◎:統計的に見て、殆どのドットが真円に近い。
○:統計的に見て、ドットの真円性が崩れているが、画像形成には支障が無い。
△:統計的に見て、かなりの数のドットの真円性が崩れ、いびつな形状のドットが形成されている。
以上の結果を下記表28に示す。
【0332】
【表30】
Figure 0003754936
【0333】
顔料のマイクロカプセル化が十分に行なわれた実施例24、比較例5において調整されたインクは、インクジェットプリンター用インクとして用いたとき、記録媒体上(紙)での顔料の凝集物は細かい粒子状になってインクドット内に均一に分散し、適切な広がりを持つドット径を有し、且つドット内の画像濃度分布が均一で、またフェザリング等が殆どない、周囲や外形形状の優れたインクドットを得られることがわかった。
【0334】
以上の結果から、実施例26では少量の酵素によって優れた特性を有する水性顔料インクを効率的に作製できることがわかった。
【0335】
(実施例27) 酸化チタンに対する結合能を有するアミノ酸配列の取得
▲1▼酸化チタン (和光純薬社製、酸化チタン(IV)、ルチル型)を0.1%Tween-20を含むTBSバッファー(50 mM Tris-HCl pH 7.5、 150 mM NaCl)に5 mg/mlの濃度に成るように懸濁した。この10μlをエッペンドルフチューブに加え、990μl TBSTバッファー(TBSバッファー + 0.1%Tween-20)を加えて希釈した。
▲2▼Ph.D.-12ファージディスプレイペプチドライブラリ(New England BioLabs社製)の4 x 1010pfu相当をチューブに添加し、25℃で10分間静置した。
▲3▼チューブを遠心分離(20,630×g、5分間)した後、上清を捨て沈殿として顔料を回収した。回収した顔料を再びTBSTバッファーに懸濁し遠心分離を繰返すことによって、顔料をTBSTバッファーで10回洗浄した。
▲4▼100μlの溶出バッファー(0.2M Glycine-HCl(pH2.2)、 1mg/ml BSA)を加えて1分間静置した後、遠心分離(20,630×g、5分間)し、上清を別のエッペンドルフチューブに移し、15mlの1M Tris-HCl(pH9.1)を加えて中和し、溶出されたファージを得た。
▲5▼溶出されたファージを対数増殖初期の大腸菌ER2537(New England BioLabs社製)に感染させ増幅した。37℃で4.5時間培養した。次にファージを遠心分離により細胞から分離し、ポリエチレングリコールの沈殿により精製した。精製、増幅されたファージはTBSバッファーに懸濁され、適当な希釈系列を大腸菌に感染させることによって力価(titer)を測定した。
▲6▼増幅されたファージを用いて、前記▲1▼から▲5▼をあと4回繰返した。ただし用いるTBSTバッファー中のTween-20の濃度を0.5%に上げることによって、洗浄の条件を厳しくした。
2回目からは、エッペンドルフチューブに対しても同様の操作を行い、コントロールとした。各サイクルにおいて溶出されたファージの力価(titer)を表29に示す。
【0336】
【表31】
Figure 0003754936
【0337】
最終的に溶出されたファージを大過剰の大腸菌に感染させることによってクローン化した。各クローンを大腸菌に感染させ増幅した後、ssDNAを調製し、ランダム領域の塩基配列を解読することによって、酸化チタンに対して結合能を有するアミノ酸配列を取得した。結果のアミノ酸配列と頻度を表30に示す。
【0338】
【表32】
Figure 0003754936
【0339】
(実施例28) 次のようにして酸化チタンに対する結合能を有するPHA合成酵素を調製した。各アミノ酸配列(配列番号150から配列番号157)に対して、スペーサー配列GSを介して、PHA合成酵素のN末端に融合して発現する大腸菌発現ベクターを次のようにして構築した。これらのアミノ酸配列をコードするDNAは二本鎖DNAとして作製するために、次の表31に挙げる合成オリゴヌクレオチドのセットを用意した。
【0340】
【表33】
Figure 0003754936
【0341】
表31に挙げたそれぞれのアミノ酸配列に対する2種の合成DNAを夫々製造業者の説明に従いT4ポリヌクレオチドキナーゼ(Gibco製)を用いてリン酸化した。続いて2種の合成DNAを等モル混合し、95℃で5分間加熱し、その後室温までゆっくり冷却させることによって二本鎖DNA断片を形成させた。形成された二本鎖DNA断片は、その後のクローニングに直接用いた。
【0342】
プラスミドpGEX‐C1をBamHIおよびSacIにより消化し、前記二本鎖DNA断片を挿入した。このベクターを用いて大腸菌(JM109)を形質転換し、発現用菌株を得た。菌株の確認は、Miniprep(Wizard Minipreps DNA Purification Systems、PROMEGA社製)を用いて調製したプラスミドDNAをテンプレートとしてpGEX 5' Sequencing Primer(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いたシークエンシングによってインサートの塩基配列を決定することにより行った。得られた菌株をLB-Amp培地10mLで一晩プレ・カルチャーした後、その0.1mLを、10mLのLB-Amp培地に添加し、37℃、170rpmで3時間振とう培養した。その後IPTGを添加 (終濃度 1mM) し、37℃で4~12時間培養を続けた。
【0343】
IPTG 誘導した大腸菌を集菌 (8000×g、 2分、4℃) し、1/10 量の 4℃ PBSに再懸濁した。凍結融解およびソニケーションにより菌体を破砕し、遠心 (8000×g、 10分、4℃)して固形夾雑物を取り除いた。目的の発現タンパク質が上清に存在することをSDS-PAGEで確認した後、誘導され発現されたGST融合タンパク質をグルタチオン・セファロース4B(Glutathion Sepharose 4B beads: アマシャムファルマシア・バイオテク社製)で精製した。
【0344】
使用したグルタチオンセファロースは、予め非特異的吸着を抑える処理を行った。すなわち、グルタチオンセファロースを同量のPBSで3回洗浄(8000×g、1分、4℃) した後、4%BSA含有PBSを同量加えて4℃で1時間処理した。処理後同量のPBSで2回洗浄し、1/2量のPBSに再懸濁した。前処理したグルタチオンセファロース 40μLを、無細胞抽出液1mL に添加し、4℃で静かに攪拌した。これにより、融合タンパク質GST-aa150-YN2-C1〜GST-aa157-YN2-C1をグルタチオンセファロースに吸着させた。[融合タンパク質GST-aa##-YN2-C1におけるaa##は、配列番号##のアミノ酸配列からなるポリペプチドをPHA合成酵素とGSTの間に融合して発現していることを意味する。]
吸着後、遠心 (8000×g、 1分、4℃)してグルタチオンセファロースを回収し、400μLのPBSで3回洗浄した。その後、10 mMグルタチオン40μLを添加し、4℃で1時間攪拌して、吸着した融合タンパク質を溶出した。遠心 (8000×g、2分、4℃)して上清を回収した後PBSに対して透析し、GST融合タンパク質を精製した。SDS-PAGEにより、シングルバンドを示すことを確認した。
【0345】
各GST融合タンパク質500μgをPreScissionプロテアーゼ(アマシャムファルマシア・バイオテク、5U)で消化した後、グルタチオン・セファロースに通してプロテアーゼとGSTを除去した。フロースルー分画をさらに、PBSで平衡化したセファデックスG200カラムにかけ、それぞれの発現タンパク質aa150-YN2-C1(ti)〜aa157-YN2-C1(ti)の最終精製物を得た。[発現タンパク質aa##-YN2-C1(ti)におけるaa##は配列番号##のアミノ酸配列からなるポリペプチドをPHA酵素のN末端に融合して発現していることを意味する。]
それぞれの精製酵素の活性は前述の方法で測定した。また、試料中のタンパク質濃度は、マイクロBCAタンパク質定量試薬キット(ピアスケミカル社製)によって測定した。酵素濃度は1.9 U/mlまた比活性は 4.0 U/mgタンパク質であった。精製酵素を生体溶液試料濃縮剤(みずぶとりくんAB-1100、アトー(株)製)を用いて濃縮し、10 U/mlの精製酵素溶液を得た。
【0346】
(実施例29) 酸化チタンに対する結合能の評価
酸化チタンを、0.1%Tween-20を含むTBSバッファーに0.5%(w/v)になるように懸濁した。この10mlをテフロン製遠沈管にとり、ここに、実施例28で調整したPHA合成酵素aa150-YN2-C1(ti)〜aa157-YN2-C1(ti)、および参考例1で調整したYN2-C1の0.5U相当を加え、室温で30分間振とうした。遠心分離操作(10、000 x g、4℃、10分間)によって酸化チタン粒子を沈殿として回収し、酸化チタンに結合しなかった酵素を含む上清と分離した。酸化チタンを再び0.1%Tween-20を含むTBSバッファーに懸濁し、遠心操作を繰返すことによって、酸化チタンを洗浄した。洗浄した酸化チタンの懸濁液の酵素活性を測定した結果を表32に示す。
【0347】
【表34】
Figure 0003754936
【0348】
コントロールの酵素YN2-C1に比べて、酸化チタン結合配列を融合した酵素aa150-YN2-C1(ti)〜aa157-YN2-C1(ti)の方が、酵素活性が高く、酵素を有効に基材表面に固定化できることが確かめられた。
【0349】
(実施例22)
酸化チタンに対する結合能を有する二種類のアミノ酸配列、His-Ala-Thr-Gly-Thr-His-Gly-Leu-Ser-Leu-Ser-His(配列番号:150)およびThr-Leu-Pro-Ser-Pro-Leu-Ala-Leu-Leu-Thr-Val-His(配列番号:151)の全部を、スペーサー配列Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Serを介してこの順番に直列に繋いだ配列His-Ala-Thr-Gly-Thr-His-Gly-Leu-Ser-Leu-Ser-His-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Ser- Thr-Leu-Pro-Ser-Pro-Leu-Ala-Leu-Leu-Thr-Val-His(配列番号:174)を、さらにスペーサー配列GSを介して、PHA合成酵素のN末端に融合して発現する大腸菌発現ベクターを次のようにして構築した。このアミノ酸配列をコードするDNAは、二種類の合成オリゴヌクレオチド、
5'-GATCCCATGCGACCGGCACCCATGGCCTGAGCCTGAGCCATGGCGGCGGCAGCGGCGGCGGCAGCACCCTGCCGAGCCCGCTGGCGCTGCTGACCGTGCATGAGCT-3'
(配列番号:175)および
5'-CATGCACGGTCAGCAGCGCCAGCGGGCTCGGCAGGGTGCTGCCGCCGCCGCTGCCGCCGCCATGGCTCAGGCTCAGGCCATGGGTGCCGGTCGCATGG-3'(配列番号:176)をそれぞれT4ポリヌクレオチドキナーゼ(Gibco製)を用いてリン酸化した後、等モル混合し、95℃で5分間加熱し、その後室温までゆっくり冷却させることによって二本鎖DNA断片として形成させた。形成された二本鎖DNA断片は、実施例28と同様にして、プラスミドpGEX‐C1のBamHI/SacIサイトに挿入し、このベクターを用いて大腸菌(JM109)を形質転換し、発現用菌株を得た。実施例28と同様にして、配列番号174のアミノ酸配列をN末端に融合した発現タンパク質aa174-YN2-C1(ti)を精製し、10 U/mlの精製酵素溶液を得た。実施例29と同様にして精製酵素の酸化チタンに対する結合能を評価した。結果を表33に示す。
【0350】
【表35】
Figure 0003754936
【0351】
コントロールの酵素YN2-C1に比べて、酸化チタン結合配列を融合した酵素aa174-YN2-C1(ti)の方が、酵素活性が高く、酵素を有効に基材表面に固定化できることが確かめられた。
【0352】
【発明の効果】
本発明のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体の製造方法によれば、様々な基材に対して、これに結合能を有するアミノ酸配列を選択することで、該基材に対して結合能を有するアミノ酸配列を含むポリヒドロキシアルカノエート合成酵素を、該基材上に効率的に固定化することができる。さらに、酵素の基質となる3-ヒドロキシアシル補酵素Aを添加することによって、該基材の表面を所望のポリヒドロキシアルカノエートによって効率的に被覆することが可能となる。本発明のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体は、様々な性質のポリヒドロキシアルカノエートで表面を被覆されているので、機能性構造体として、幅広い用途に利用可能である。
【0353】
【配列表】
Figure 0003754936
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【図面の簡単な説明】
【図1】実施例4の銅フタロシアニンのPHAカプセル構造体の外殻のGC-MS分析結果を示す図。
【図2】実施例8のカーボンブラックのPHAカプセル構造体の外殻のGC-MS分析結果を示す図。
【図3】実施例12のシリコン基板のPHA積層構造体の積層体のGC-MS分析結果を示す図。
【図4】トナーのリユース機構を有する画像形成装置の概略的説明図である。
【図5】一成分現像剤用の現像装置の要部の断面図である。
【図6】定着装置の要部の分解斜視図である。
【図7】定着装置の非駆動時のフィルム状態を示した要部の拡大断面図である。
【符号の説明】
1、20 :感光体(静電潜像担持体)
2、27 :帯電ローラー
3:露光
4、26 :現像装置(4-1、4-2、4-3、4-4)
5:中間の転写体
6:被転写材
7:転写ローラー
13 :感光体ドラム
11、28 :現像剤担持体
30 :ステー
31 :加熱体
31 a:ヒーター基板
31 b:発熱体
31 c:表面保護層
31 d:検温素子
32 :定着フィルム
33 :加熱ローラー
34 :コイルばね
35 :フィルム端部規制フランジ
36 :給電コネクター
37 :絶縁部材
38 :入口ガイド
39 :出口ガイド(分離ガイド)
43 :スクリーン
45 :真空計
47 :吸引口
49 :電位計

Claims (50)

  1. 基材表面の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートによって被覆したポリヒドロキシアルカノエート含有構造体の製造方法であって、
    前記ポリヒドロキシアルカノエート合成用の酵素を該基材表面に固定する工程と、
    該酵素の基質となる3−ヒドロキシアシル補酵素Aの存在下に該基材表面でポリヒドロキシアルカノエートを合成し、該基材表面の少なくとも一部を合成されたポリヒドロキシアルカノエートで被覆して該構造体を得る工程と、
    を有し、
    前記酵素には、前記基材への結合能を有するアミノ酸配列が融合されている
    ことを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート含有構造体の製造方法。
  2. ポリヒドロキシアルカノエートが、式[1]から式[10]に示すモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つを含有するポリヒドロキシアルカノエートであり、それぞれ対応する3−ヒドロキシアシル補酵素Aが式化学式[12]から化学式[21]に示す3−ヒドロキシアシル補酵素Aのいずれかである、請求項1に記載の製造方法。
    Figure 0003754936
    (ただし、該モノマーユニットは、式中R1およびaの組合せが下記のいずれかであるモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つである。
    R1が水素原子(H)であり、aが0から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、
    R1がハロゲン原子であり、aが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、
    R1が発色団であり、aが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、
    R1がカルボキシル基あるいはその塩であり、aが1から10の整数であるモノマーユニット、
    R1が、
    Figure 0003754936
    であり、aが1から7の整数のいずれかであるモノマーユニット。)
    Figure 0003754936
    (ただし、式中bは0から7の整数のいずれかを表し、R2は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO2、−CF3、−C2F5及び−C37からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
    Figure 0003754936
    (ただし、式中cは1から8の整数のいずれかを表し、R3は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO2、−CF3、−C25及び−C37からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
    Figure 0003754936
    (ただし、式中dは0から7の整数のいずれかを表し、R4は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO2、−CF3、−C25及び−C37からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
    Figure 0003754936
    (ただし、式中eは1から8の整数のいずれかを表し、R5は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO2、−CF3、−C25、−C37、−CH3、−C25及び−C37からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
    Figure 0003754936
    (ただし、式中fは0から7の整数のいずれかを表す。)
    Figure 0003754936
    (ただし、式中gは1から8の整数のいずれかを表す。)
    Figure 0003754936
    (ただし、式中hは1から7の整数のいずれかを表し、R6は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO2、 −COOR'、−SO2R''、−CH3、−C25、−C37、−CH(CH32及び−C(CH33からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR'は水素原子(H)、Na、K、−CH3及び−C25のいずれかであり、R''は−OH、−ONa、−OK、ハロゲン原子、−OCH3及び−OC25のいずれかである。)
    Figure 0003754936
    (ただし、式中iは1から7の整数のいずれかを表し、R7は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO2、−COOR'及び−SO2R''からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR'は水素原子(H)、Na、K、−CH3及び−C25のいずれかであり、R''は−OH、−ONa、−OK、ハロゲン原子、−OCH3及び−OC25のいずれかである。)
    Figure 0003754936
    (ただし、式中jは1から9の整数のいずれかを表す。)
    Figure 0003754936
    (ただし、前記化学式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、式中R1およびaは、前記化学式[1]と同様に定義される。)
    Figure 0003754936
    (ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、b及びR2は前記化学式[2]と同様に定義される。)
    Figure 0003754936
    (ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、c及びR3は前記化学式[3]と同様に定義される。)
    Figure 0003754936
    (ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、d及びR4は前記化学式[4]と同様に定義される。)
    Figure 0003754936
    (ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、e及びR5は前記化学式[5]と同様に定義される。)
    Figure 0003754936
    (ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、fは前記化学式[6]と同様に定義される。)
    Figure 0003754936
    (ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、gは前記化学式[7]と同様に定義される。)
    Figure 0003754936
    (ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、h及びR6は前記化学式[8]と同様に定義される。)
    Figure 0003754936
    (ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、i及びR7は前記化学式[9]と同様に定義される。)
    Figure 0003754936
    (ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、jは前記化学式[10]と同様に定義される。)
  3. 前記基材を被覆するポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部に化学修飾を施す工程をさらに有する請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記の化学修飾を施す工程が、ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部を架橋化せしむ工程である請求項に記載の製造方法。
  5. 前記架橋化工程が、ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部と架橋剤とを反応させる工程である請求項に記載の製造方法。
  6. 基材に対して結合能を有するアミノ酸配列が、ランダムペプチドライブラリのスクリーニングによって決定されたアミノ酸配列である請求項1に記載の製造方法。
  7. 基材表面の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートによって被覆したポリヒドロキシアルカノエート含有構造体であって、
    該ポリヒドロキシアルカノエート合成用の酵素が該基材表面に固定化された構造を有し、
    該酵素には、前記基材への結合能を有するアミノ酸配列が融合されている
    ことを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート含有構造体。
  8. ポリヒドロキシアルカノエートが、式[1]から式[10]に示すモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つを含有するポリヒドロキシアルカノエートである請求項に記載のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体。
    Figure 0003754936
    (ただし、該モノマーユニットは、式中R1およびaの組合せが下記のいずれかであるモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つである。
    R1が水素原子(H)であり、aが0から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、
    R1がハロゲン原子であり、aが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、
    R1が発色団であり、aが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、
    R1がカルボキシル基あるいはその塩であり、aが1から10の整数であるモノマーユニット、
    R1が、
    Figure 0003754936
    であり、aが1から7の整数のいずれかであるモノマーユニット。)
    Figure 0003754936
    (ただし、式中bは0から7の整数のいずれかを表し、R2は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO2、−CF3、−C25及び−C37からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
    Figure 0003754936
    (ただし、式中cは1から8の整数のいずれかを表し、R3は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO2、−CF3、−C25及び−C37からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
    Figure 0003754936
    (ただし、式中dは0から7の整数のいずれかを表し、R4は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO2、−CF3、−C25及び−C37からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
    Figure 0003754936
    (ただし、式中eは1から8の整数のいずれかを表し、R5は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO2、−CF3、−C25、−C37、−CH3、−C25及び−C37からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
    Figure 0003754936
    (ただし、式中fは0から7の整数のいずれかを表す。)
    Figure 0003754936
    (ただし、式中gは1から8の整数のいずれかを表す。)
    Figure 0003754936
    (ただし、式中hは1から7の整数のいずれかを表し、R6は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO2、−COOR'、−SO2R''、−CH3、−C25、−C37、−CH(CH32及び−C(CH33からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR'は水素原子(H)、Na、K、−CH3、−C25のいずれかであり、R''は−OH、−ONa、−OK、ハロゲン原子、−OCH3及び−OC25のいずれかである。)
    Figure 0003754936
    (ただし、式中iは1から7の整数のいずれかを表し、R7は水素原子(H)、ハロゲン原子、−CN、−NO2、−COOR'、−SO2R''からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR'は水素原子(H)、Na、K、−CH3及び−C25のいずれかであり、R''は−OH、−ONa、−OK、ハロゲン原子、−OCH3及び−OC25のいずれかである。)
    Figure 0003754936
    (ただし、式中jは1から9の整数のいずれかを表す。)
  9. 該ポリヒドロキシアルカノエートが親水性官能基を有する、請求項に記載のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体。
  10. 該ポリヒドロキシアルカノエートがアニオン性官能基を有する、請求項に記載のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体。
  11. 該ポリヒドロキシアルカノエートがカルボキシル基を有する、請求項10に記載のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体。
  12. 前記カルボキシル基を有するポリヒドロキシアルカノエートが、式[11]に示すモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つを含有するポリヒドロキシアルカノエートである、請求項11に記載のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体。
    Figure 0003754936
    (ただし、kは1から10の整数のいずれかである。)
  13. 前記ポリヒドロキシアルカノエートのモノマーユニット組成が前記ポリヒドロキシアルカノエート含有構造体の積層方向において変化している請求項7から12の何れかに記載のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体。
  14. 前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部が、化学修飾されたポリヒドロキシアルカノエートである請求項7から13の何れかに記載のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体。
  15. 前記の化学修飾されたポリヒドロキシアルカノエートが、少なくともグラフト鎖を有するポリヒドロキシアルカノエートである請求項14に記載のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体。
  16. 前記グラフト鎖が、エポキシ基を有するモノマーユニットを少なくとも含むポリヒドロキシアルカノエートの化学修飾によるグラフト鎖である請求項15に記載のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体。
  17. 前記グラフト鎖が、アミノ基を有する化合物のグラフト鎖である請求項15または16に記載のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体。
  18. 前記アミノ基を有する化合物が、末端アミノ変性化合物である請求項17に記載のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体。
  19. 前記末端アミノ変性化合物が、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン及び末端アミノ変性ポリシロキサンからなる群より選択される少なくとも一つである請求項18に記載のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体。
  20. 前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部が、架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートである請求項14に記載のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体。
  21. 前記架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートが、エポキシ基を有するモノマーユニットを少なくとも含むポリヒドロキシアルカノエートが架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートであるである請求項20に記載のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体。
  22. 前記架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートが、ジアミン化合物、無水コハク酸及び2−エチル−4−メチルイミダゾールから選択される少なくとも1つを利用した反応並びに電子線照射からなる群より選択される少なくとも一つにより架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートである請求項20または21に記載のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体。
  23. 前記ジアミン化合物がヘキサメチレンジアミンである請求項22に記載のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体。
  24. 基材が銅フタロシアニンであり、該基材に対して結合能を有するアミノ酸配列が
    Lys−Tyr−Asp−Ser−Arg−His−Leu−His−Thr−His−Ser−His(配列番号:24)、
    Pro−Asn−Arg−Leu−Gly−Arg−Arg−Pro−Val−Arg−Trp−Glu(配列番号:25)、
    Lys−Cys−Cys−Tyr−Tyr−Asp−His−Ser−His−Ala−Leu−Ser(配列番号:26)、
    Glu−Tyr−Leu−Ser−Ala−Ile−Val−Ala−Gly−Pro−Trp−Pro(配列番号:27)、
    Lys−Leu−Trp−Ile−Leu−Glu−Pro−Thr−Val−Thr−Pro−Thr(配列番号:28)、
    Gln−Ser−Asn−Leu−Lys−Val−Ile−Pro−Ser−Trp−Trp−Phe(配列番号:29)、
    Trp−Ile−Pro−Pro−Gln−Trp−Ser−Arg−Leu−Ile−Glu−Pro(配列番号:30)、
    Asp−His−Pro−Gln−Ala−Lys−Pro−Asn−Trp−Tyr−Gly−Val(配列番号:31)、
    Gly−Leu−Pro−Pro−Tyr−Ser−Pro−His−Arg−Leu−Ala−Gln(配列番号:32)、
    Lys−Leu−Thr−Thr−Gln−Tyr−Met−Ala−Arg−Ser−Ser−Ser(配列番号:33)、
    Lys−Val−Trp−Met−Leu−Pro−Pro−Leu−Pro−Gln−Ala−Thr(配列番号:34)、
    Asn−Val−Thr−Ser−Thr−Ala−Phe−Ile−Asp−Thr−Pro−Trp(配列番号:35)、
    Arg−Leu−Asn−Leu−Asp−Ile−Ile−Ala−Val−Thr−Ser−Val(配列番号:36)、
    Thr−Leu−Pro−Ser−Pro−Leu−Ala−Leu−Leu−Thr−Val−His(配列番号:37)、
    Thr−Asn−Arg−His−Asn−Pro−His−His−Leu−His−His−Val(配列番号:38)、
    からなる群より選ばれた少なくとも1つの全部または一部である請求項7から23の何れかに記載のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体。
  25. 基材が銅フタロシアニンであり、該基材に対して結合能を有するアミノ酸配列が
    Lys−Tyr−Asp−Ser−Arg−His−Leu−His−Thr−His−Ser−His(配列番号:24)
    の全部または一部である請求項24に記載のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体。
  26. 基材が銅フタロシアニンであり、該基材に対して結合能を有するアミノ酸配列が
    Pro−Asn−Arg−Leu−Gly−Arg−Arg−Pro−Val−Arg−Trp−Glu(配列番号:25)
    の全部または一部である請求項24に記載のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体。
  27. 基材がカーボンブラックであり、該基材に対して結合能を有するアミノ酸配列が
    Trp−Pro−His−Ala−Trp−Lys−Val−Trp−Trp−Pro−Ala−Ser(配列番号:39)、
    Asn−Trp−Trp−Trp−Pro−Pro−Tyr−Ile−Arg−His−Gln−Pro(配列番号:40)、
    Trp−His−Trp−Ser−Trp−Thr−Pro−Trp−Pro−Ser−His−His(配列番号:41)、
    Trp−Pro−Trp−Ala−Trp−His−Pro−Ser−Arg−Asp−Val−Tyr(配列番号:42)、
    Trp−His−Gly−Tyr−Trp−Tyr−Ser−Asn−Leu−Asn−Thr−Thr(配列番号:43)、
    Trp−Trp−Thr−Pro−Trp−Met−Ser−His−Ala−Tyr−Pro−Val(配列番号:44)、
    Trp−Pro−Asn−Pro−Tyr−Trp−Gly−Trp−Phe−Ala−Ala−Val(配列番号:45)、
    Thr−Ser−Trp−His−Thr−Trp−Trp−Trp−Arg−Gln−Pro−Pro(配列番号:46)、
    Asn−Ala−Trp−His−Lys−Tyr−Trp−Trp−Pro−Ile−Thr−Lys(配列番号:47)、
    His−Pro−Asn−Asn−Asp−Trp−Ser−Lys−Ala−Pro−Gln−Phe(配列番号:48)、
    Trp−Trp−Thr−Pro−Gln−Pro−Trp−Trp−Ser−Phe−Pro−Ile(配列番号:49)、
    Trp−Pro−His−Thr−Ser−Trp−Trp−Gln−Thr−Pro−Leu−Thr(配列番号:50)、
    Trp−His−Val−Asn−Trp−Asp−Pro−Met−Ala−Trp−Tyr−Arg(配列番号:51)、
    Ser−Trp−Pro−Trp−Trp−Thr−Ala−Tyr−Arg−Val−His−Ser(配列番号:52)、
    Trp−His−Ser−Asn−Trp−Tyr−Gln−Ser−Ile−Pro−Gln−Val(配列番号:53)、
    Gly−Tyr−Trp−Pro−Trp−Lys−Phe−Glu−His−Ala−Thr−Val(配列番号:54)、
    Ala−Trp−Trp−Pro−Thr−Thr−Phe−Pro−Pro−Tyr−Tyr−Tyr(配列番号:55)、
    Asn−Pro−Trp−Trp−Ser−His−Tyr−Tyr−Pro−Arg−Ser−Val(配列番号:56)、
    Trp−Pro−His−Asn−Tyr−Pro−Leu−Asn−His−Ser−Asn−Pro(配列番号:57)、
    Thr−Trp−Ala−His−Pro−Leu−Glu−Ser−Asp−Tyr−Leu−Arg(配列番号:58)、
    His−Thr−Tyr−Tyr−His−Asp−Gly−Trp−Arg−Leu−Ala−Pro(配列番号:59)、
    Thr−Phe−Val−Gln−Thr−Pro−Leu−Ser−His−Leu−Ile−Ala(配列番号:60)、
    Arg−Val−Pro−Pro−Ser−Lys−Leu−Thr−Arg−Pro−Pro−Phe(配列番号:61)、
    His−Ser−Ile−Tyr−Ser−Val−Thr−Pro−Ser−Thr−Ala−Ser(配列番号:62)、
    Leu−Asn−Thr−Gln−Asn−His−Ala−Pro−Leu−Pro−Ser−Ile(配列番号:63)、
    からなる群より選ばれた少なくとも1つの全部または一部である請求項7から23の何れかに記載のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体。
  28. 基材がカーボンブラックであり、該基材に対して結合能を有するアミノ酸配列が
    Trp−Pro−His−Ala−Trp−Lys−Val−Trp−Trp−Pro−Ala−Ser(配列番号:39)
    の全部または一部である請求項27に記載のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体。
  29. 基材がカーボンブラックであり、該基材に対して結合能を有するアミノ酸配列が
    Asn−Trp−Trp−Trp−Pro−Pro−Tyr−Ile−Arg−His−Gln−Pro(配列番号:40)
    の全部または一部である請求項27に記載のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体。
  30. 基材が酸化チタンであり、該基材に対して結合能を有するアミノ酸配列が
    His−Ala−Thr−Gly−Thr−His−Gly−Leu−Ser−Leu−Ser−His(配列番号:150)、
    Thr−Leu−Pro−Ser−Pro−Leu−Ala−Leu−Leu−Thr−Val−His(配列番号:151)、
    Leu−Ser−Thr−His−Tyr−Val−Asn−Arg−Ser−His−Ile−Thr(配列番号:152)、
    Ala−Tyr−His−Ile−Asn−Gln−Leu−Gly−Ala−Pro−Pro−Ala(配列番号:153)、
    Leu−His−Leu−Thr−Pro−His−Pro−Gly−Asp−Thr−Leu−Thr(配列番号:154)、
    Gln−Asp−Val−His−Leu−Thr−Gln−Gln−Ser−Arg−Tyr−Thr(配列番号:155)、
    Leu−Glu−Ile−Pro−Ser−Asn−Gly−Leu−Asn−His−Lys−Ile(配列番号:156)、
    Leu−Glu−Ile−Pro−Ser−Asn−Gly−Leu−Asn−His−Asn−Ile(配列番号:157)
    からなる群より選ばれた少なくとも1つの全部または一部である請求項7から23の何れかに記載のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体。
  31. 基材が酸化チタンであり、該基材に対して結合能を有するアミノ酸配列が
    His−Ala−Thr−Gly−Thr−His−Gly−Leu−Ser−Leu−Ser−His(配列番号:150)
    の全部または一部である請求項30に記載のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体。
  32. 基材が酸化チタンであり、該基材に対して結合能を有するアミノ酸配列が
    Thr−Leu−Pro−Ser−Pro−Leu−Ala−Leu−Leu−Thr−Val−His(配列番号:151)
    の全部または一部である請求項30に記載のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体。
  33. 基材がシリコン基板であり、該基材に対して結合能を有するアミノ酸配列がAsp−Ser−His−Phe−Thr−Ile−Asn(配列番号:21)である請求項7から23の何れかに記載のポリヒドロキシアルカノエート含有構造体。
  34. ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素が、該酵素の生産能を有する微生物、または該生産能に関与する遺伝子を宿主に導入した形質転換体により生産されるポリヒドロキシアルカノエート合成酵素である、請求項1からの何れかに記載の製造方法。
  35. 着色材の表面の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートで被覆して得られた着色剤を含む静電荷像現像トナーであって、
    基材を着色材とした請求項7から32の何れかの構造体を少なくとも構成の一部とすることを特徴とする静電荷像現像トナー。
  36. 銅フタロシアニンの表面の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートで被覆して得られた着色剤を含む静電荷像現像トナーであって、
    請求項24から26の何れかの構造体を少なくとも構成の一部とすることを特徴とする静電荷像現像トナー。
  37. カーボンブラックの表面の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートで被覆して得られた着色剤を含む静電荷像現像トナーであって、
    請求項27から29の何れかの構造体を少なくとも構成の一部とすることを特徴とする静電荷像現像トナー。
  38. 酸化チタンの表面の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートで被覆して得られた着色剤を含む静電荷像現像トナーであって、
    請求項30から32の何れかの構造体を少なくとも構成の一部とすることを特徴とする静電荷像現像トナー。
  39. 着色材の表面の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートで被覆して得られた着色剤を含むカラーフィルタ用着色組成物であって、基材を着色材とした請求項7から32の何れかの構造体を少なくとも構成の一部とすることを特徴とするカラーフィルタ用着色組成物。
  40. 銅フタロシアニンの表面の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートで被覆して得られた着色剤を含むカラーフィルタ用着色組成物であって、
    請求項24から26の何れかの構造体を少なくとも構成の一部とすることを特徴とするカラーフィルタ用着色組成物。
  41. カーボンブラックの表面の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートで被覆して得られた着色剤を含むカラーフィルタ用着色組成物であって、
    請求項27から29の何れかの構造体を少なくとも構成の一部とすることを特徴とするカラーフィルタ用着色組成物。
  42. 酸化チタンの表面の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートで被覆して得られた着色剤を含むカラーフィルタ用着色組成物であって、
    請求項30から32の何れかの構造体を少なくとも構成の一部とすることを特徴とするカラーフィルタ用着色組成物。
  43. 着色材の表面の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートで被覆して得られた着色剤を含む電気泳動粒子であって、
    基材を着色材とした請求項7から32の何れかの構造体を少なくとも構成の一部とすることを特徴とする電気泳動粒子。
  44. 銅フタロシアニンの表面の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートで被覆して得られた着色剤を含む電気泳動粒子であって、
    請求項24から26の何れかの構造体を少なくとも構成の一部とすることを特徴とする電気泳動粒子。
  45. カーボンブラックの表面の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートで被覆して得られた着色剤を含む電気泳動粒子であって、
    請求項27から29の何れかの構造体を少なくとも構成の一部とすることを特徴とする電気泳動粒子。
  46. 酸化チタンの表面の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートで被覆して得られた着色剤を含む電気泳動粒子であって、
    請求項30から32の何れかの構造体を少なくとも構成の一部とすることを特徴とする電気泳動粒子。
  47. 着色材の表面の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートで被覆して得られた着色剤を含む顔料インクであって、
    基材を着色材とした請求項7から32の何れかの構造体を少なくとも構成の一部とすることを特徴とする顔料インク。
  48. 銅フタロシアニンの表面の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートで被覆して得られた着色剤を含む顔料インクであって、
    請求項24から26の何れかの構造体を少なくとも構成の一部とすることを特徴とする顔料インク。
  49. カーボンブラックの表面の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートで被覆して得られた着色剤を含む顔料インクであって、
    請求項27から29の何れかの構造体を少なくとも構成の一部とすることを特徴とする顔料インク。
  50. 酸化チタンの表面の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートで被覆して得られた着色剤を含む顔料インクであって、
    請求項30から32の何れかの構造体を少なくとも構成の一部とすることを特徴とする顔料インク。
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