JP4429105B2 - 有機物固定化構造体及びその製造方法、ペプチド及びdna - Google Patents

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Description

本発明は、少なくとも一部に酸化珪素層を有する基体表面に有機物を固定化してなる有機物固定化基体、ならびにその製造方法、使用方法、更には、前記有機物の固定化に利用される、酸化珪素を含む層に親和性のあるペプチドと該ペプチドをコードするDNAに関する。より具体的には、基体上に固定した生体物質を利用する検出装置や反応装置、分離装置、回収装置への応用が可能な、生体物質固定化基体、ならびにその製造方法に関する。
DNA、RNAといった遺伝子を含む核酸分子、酵素や抗体といった生体物質の有する分子認識能、物質変換能を利用した、所謂バイオセンサー、バイオリアクタに関し、その広範な応用を目的として、多くの研究開発が行われてきた。
バイオセンサーに関しては、環境汚染物質の問題や社会的安全性、更には、健康に対する関心の高まりと共に、例えば、多様な検出対象への適用を目標とする、更なる技術開発の要求が高まっている。また、バイオリアクタに関しても、最近、環境にやさしいクリーンなプロセス技術として高い注目を集めており、例えば、種々なバイオプロセスを利用する産物の生産法開発等、一層の技術開発の要求が高まっている。
具体的には、バイオセンサーに関しては、上記のように、各生体物質分子が有する分子認識の選択性を利用する検出装置の開発が広く行われている。例えば、デオキシリボ核酸(以下、DNAと記す)鎖間における、塩基配列依存の相補的水素結合(相補鎖間のハイブリダイズ反応)を利用したDNAセンサーチップ、あるいは、タンパク質分子と低分子間またはタンパク質分子同士などの特異的な結合能に由来する分子認識能、例えば、抗原抗体反応を利用して、血液中に溶出する疾病マーカー等を検出する抗体センサー、さらには、糖尿病患者のためのグルコースセンサーに代表される、酸化還元酵素や加水分解酵素を利用して、基質物質の濃度を検出する酵素センサー等のバイオセンサーを初めとする、各種の検出手法に基づく検出装置の開発が挙げられる。
現在は、これら生体物質を応用するバイオセンサーでは、利用されるDNAなどの核酸分子や、抗体・酵素等のタンパク質などの生体物質を、基板または担体などの基体表面に固定化して、生体物質固定化基体の形態で使用する方式をとるものが一般的である。
また、昨今開発が進められているバイオセンサーに要求される性能品質の一つに、μ−TASに代表される、「高感度且つ小型化」が挙げられる。この「高感度且つ小型化」の目標を達成するためには、如何にして、微小な反応場または検出場の空間を有効に利用するとともに、感度を上げるかが重要な技術課題となる。
例えば、基板上に生体物質を固定化している検出場において、目的とする被検出物の特異的な結合に加えて、被検出物以外の生体物質の非特異な吸着が多く生じる可能性、あるいは、被検出物自体が非特異的に基板上に吸着する可能性があり、これら非特異な吸着現象は、バイオセンサーのS/N比を低下させる要因の一つとなる。特に、検出場が微小になるほど、目的とする被検出物の特異的な結合の総量自体、少なくなるため、非特異な吸着に起因するノイズの影響を受けやすく、高感度な測定を難しくする。また、微量なサンプルを有効に活用する観点でも、被検出物の非特異的吸着が多いと、十分高い確度で測定を行うことが困難となり、非特異な吸着現象を低減、抑制することが、やはり大きな技術的な課題となってくる。
一方、バイオリアクタに関しては、目的産物の産生能を有する微生物自体を利用する手法に代えて、主にタンパク質の一種である酵素の位置選択的触媒機能を利用して、アミノ酸等の食品添加物、医薬候補物質や抗生物質を酵素反応により生産する手法、さらには、酵素反応を、化学品やポリマー材料の生産へと応用する検討もなされてきている。この様な酵素反応を利用するバイオリアクタの開発においても、少量多品種生産に適する装置の開発が主流となってきている点、例えば、コンビナトリアル・ケミストリー手法による候補物質のスクリーニング技術の普及に伴い、前記バイオセンサーと同様に反応に利用する酵素タンパク質を固定化した装置によって、小型化(すなわち少量生産)へのニーズが高まってきている。
また、このようなバイオセンサー及びバイオリアクタに利用される生体物質固定化基材用の基材、基板・担体の材料としては、一般的に、固定化する有機物、例えば、生体物質の種類・用途に応じて、有機ポリマー、ガラス、セラミクス、金属基板等、既知の材料から適宜選択して用いられている。
基材上に固定化する有機物が特異的な作用する対象物質が、生体物質、特にタンパク質である場合、基材として利用する基板表面が疎水的であると、かかる疎水的な表面上への対象物質タンパク質の非特異的な吸着が増加する。そのため、バイオセンサーでは、十分な検出感度を達成することができない、また、バイオリアクタでは、高い生産性をあげることができない恐れがある。
このような疎水的な表面上へ非特異的な吸着を低減する方法の一つとして、対象物質タンパク質を含む液と接触させる、有機物固定化基板の少なくとも流路や反応場等の部位に対しては、基板表面に親水化処理を施す手法がある。親水化処理を施されている基板表面では、表面に物理的に吸着される対象物質タンパク質は、所望の組成からなる洗浄用の水溶液を用いて、基板表面を置換し、洗浄する操作によって、比較的容易に除去することができる。基板表面に対する親水化処理方法としては、表面に酸化珪素に代表される酸化金属層を設ける方法や、シランカップリング剤に代表されるカップリング剤処理を行って、親水性に富むカップリング剤被覆層を設ける方法は、一般的に利用されている。
このような親水化処理を施した表面を具える基板に対して、その表面に、生体物質、特にタンパク質等の生体物質を固定化する方法としては、例えば、タンパク質溶液中に浸漬する、またはタンパク質溶液を塗布する手段を用いて、基板表面にタンパク質溶液の塗布層を形成した後、該塗布層に含有される溶媒を除去・乾燥することで、物理吸着によって、タンパク質を基板表面上に固定化する手法や、反応性官能基を導入する目的で、基板表面またはタンパク質分子に化学修飾を施した後に、導入される反応性官能基間の反応を利用して、化学結合を形成することによって、基板表面にタンパク質分子を化学結合的に固定化する手法等が、基板表面への生体物質の固定化手段として、現在まで知られている。
物理吸着による固定化法の一例として、特許文献1には、導電性基板の表面上に有機電荷移動錯体層を形成し、次いで、この有機電荷移動層上にタンパク質溶液を塗布した後乾燥させることで、有機電荷移動層を介して基板表面に酵素タンパク質を物理的吸着・固定化する手法を適用した酵素電極の作製方法が開示されている。
化学結合を用いた固定化法の一例として、非特許文献1には、白金蒸着したシリコン基板表面に、アミン系シランカップリング剤処理を施した後、グルタルアルデヒド等架橋剤を用いて、前記アミノ・シランカップリング由来のアミノ基と、ペプチド鎖との間を化学的結合により連結して、固定化する方法が開示されている。その他に、ガラス基板上に抗体を固定化してなるバイオセンサー等の検出装置を作製する際にも、ガラス基板の表面にシランカップリング剤処理によって反応性官能基を導入し、同様に架橋剤を用いて、化学的結合を介してペプチド鎖を固定化する方法が適用されている。
しかしながら、物理吸着や架橋反応による化学的結合を利用して、生体物質を固定化する方法では、特に、酵素や抗体等のタンパク質に適用する際、基板上への物理吸着に際して、タンパク質側の吸着に係わる部位は、任意で選択することができない、また、架橋剤に対する、タンパク質側の反応に係わる官能基の存在部位は任意に設定できず、さらには、反応可能な官能基が複数存在する際には、その間での選択性が極めて低い。つまり、物理吸着や架橋反応による化学的結合による基板への結合においては、タンパク質側の結合に関与する部位は、無作為に選択されるため、対象の化合物に対する該タンパク質の結合能や、該タンパク質の酵素活性等に、直接的に関与する部位、もしく間接的に関係している部位が、基板表面への結合にも関与する部位となると、基板上に結合した際、タンパク質が有する、対象との結合能や酵素活性が著しく低下することが懸念される。
従って、基板表面への結合に関与する、被固定化分子側の固定化部位を予め設定する手段、例えば、基板表面上に固定化される生体物質の配向性を予め制御することが可能な技術開発が重要となっている。
加えて、「高感度且つ小型化」を達成する際には、基材表面の微小な領域において、生体物質を高集積化して、固定化することが必要となる。
生体物質を高集積化して、固定化する方法の一例として、比表面積が大きい基材、例えば、ナノレベルの規則的な細孔構造を有する多孔体を基板として採用し、比表面積の大きな細孔構造を具える表面に生体物質を固定化する手法が、一般的に知られている。前記用途に利用可能なナノメートルオーダーのスケールで、規則性を有する細孔構造を形成する従来の方法として、ポリマー加工したメンブレン・フィルタ−や、ポーラス・ガラス、陽極酸化アルミ膜等がよく知られている。また、コーティング法によって、多孔性の被覆膜を金属やガラス等の基板表面上に形成する方法も知られている。多孔性膜の形成方法としては、非特許文献2に記載される手法では、先ず、非イオン性ブロックポリマーを鋳型として、その周りにアルコキシシランを出発物質として酸性条件下においてシリカを形成させた構造体を形成する。その後、加熱もしくは有機溶媒処理することにより、鋳型の非イオン性ブロックポリマーを消失させることにより、数nmオーダーの孔径を有する多孔体構造のシリカ膜が得られることが開示されている。
このような数nmオーダーの孔径が形成されている多孔体を基板とすることで、微小な領域においても、高感度の検出に十分な量の生体物質が固定化されている反応場を作製することができる。
この多孔性基材を利用する手法、特に、多孔質の酸化珪素材料に対して、タンパク質等の生体物質を固定化する方法の例として、下記する文献を挙げることができる。
特許文献2には、表面がアニオン性であるメソポーラス・シリカ多孔体の細孔内に、ペルオキシダーゼ、サチライシン、リパーゼといった酵素タンパク質を、ファンデルワールス(van der Waals)力により固定化した超安定化酵素が開示されている。
特許文献3には、同じく、メソポーラス・シリカ多孔質材料の細孔にペルオキシダーゼを固定化した酵素固定構造体により、基質リグニンを分解する方法が開示されている。
更に、同様に酵素タンパク質を多孔性基材に固定する方法を適用して、特許文献4には、燃料の酵素的改質方法が、特許文献5には、酵素の固定化方法が、特許文献6には、脂質分解酵素であるリパーゼの特異性向上の方法がそれぞれ開示されている。
更に、非特許文献3は、酸化珪素のメソポーラス・モレキュラーシーブに、チトクロームc、パパイン、トリプシンといった酵素タンパク質を固定化すると、それら酵素タンパク質の性能が向上することを報告している。
非特許文献4は、ナノポーラス・ゾル−ゲルガラスの細孔に、末端にアルデヒド基を有するシラン化剤(トリメトキシシリルプロパナール)を利用して、酵素タンパク質(α−キモトリプシン)を共有結合により固定化することにより、該酵素タンパク質の安定性が向上することを報告している。
特開平06−003317号公報 特開2000−139459号公報 特開2001−128672号公報 特開2001−46100号公報 特開2001−178457号公報 特開2002−95471号公報 Sensor and Actuators B 15−16 p127 (1993) Science 279, 548 (1997) Journal of Molecular Catalysis. B, 2(2−3), 115−126 (1996) Biotechnology and Bioengineering, 74(3), 249−255 (2000)
上述する比表面積が大きい基材、例えば、ナノレベルの規則的な細孔構造を有する多孔体を基板として採用することで、基板表面により多くの生体物質を固定化することは可能であるが、基板上に固定化される生体物質が、例えば、検出する対象物質との結合に適する配向をとっていない場合、固定化されている生体物質の量に見合った検出感度を達成することができない。また、作用すべき基質物質に対して、適正な配向をとっていない場合、固定化されている生体物質の量に見合った、反応性を達成することができない。すなわち、基板上に固定化される生体物質は、その用途に適する配向性を制御した上で、固定化が達成されていないと、比表面積の大きい基材を利用して、基板表面により多くの生体物質を固定化することに伴う利点が発揮されないものとなる。
換言するならは、基板上に固定化される生体物質が、その用途に適する配向性を制御した上で、固定化が達成されていないと、所望の検出感度、あるいは、反応性を得るためには、基板上に固定化される生体物質の量を更に増すことが必要となり、基板の単位面積当たりに過剰な量の生体物質を固定化する、あるいは、生体物質を固定化する基板の面積を過度に広くするなどの対応を余儀なくされることになる。生体物質を固定化する基板の面積を過度に広くすると、装置自体の小型化を図る上で、大きな障害となる。あるいは、その作製に大きなコストを要する生体物質材料の使用量が増すと、装置全体として、コストアップの要因となり、工程当たりの必要コストを低減する上で、大きな障害となる。
したがって、基板上に固定化される生体物質を、その用途に適する配向性を制御しつつ、かつ、比表面積が大きい基板を利用して、該基板表面により多くの生体物質を固定化することを可能とする、配向性を制御した固定化手法の開発が望まれている。
本発明は前記の課題を解決するもので、本発明の目的は、バイオセンサーやバイオリアクタなどで利用される、有機物、特には、生体物質を基材の表面に固定化する際、その有機物、特には、生体物質が有する生理的機能の発揮に適する配向で、基材の表面に安定に有機物の固定化が可能な新規な固定化手段を採用する有機物固定化構造体と、その新規な固定化手段を利用する作製方法を提供することにある。加えて、本発明は、前記新規な固定化手段として利用可能な酸化珪素を含む層に親和性のあるペプチドと該ペプチドをコードするDNAの提供するものである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、基材の表面に対して、有機物、特には、生体物質を固定化する際、利用可能な新たな固定化手段を検討したところ、固定化した有機物、特には、生体物質が、その本来の生理的機能を十分に発揮する上では、固定化に利用される部位を有機物の本体部とは別に設け、加えて、該固定化に利用される部位における基材の表面との結合には、化学的試薬を利用する手法ではなく、かかる固定化に利用される部位に特異的な、物理的な相互作用を利用する手法を選択すると、有機物、特には、生体物質が有する生理的機能の発揮に適する配向で、基材の表面に安定に有機物の固定化が可能となることを見出した。さらに、前記固定化に利用される部位に特異的な、物理的な相互作用を利用する手法として、固定化すべき表面の材質として、酸化珪素を含む部材を利用すると、酸化珪素に対して親和性を有するペプチドを選別することが可能であり、この酸化珪素に対して親和性を有するペプチドを含む結合ドメインを、有機物、特には、生体物質からなる機能ドメインと連結した融合体の形態とすると、酸化珪素を含む部材で構成される表面を有する基材に対して、表面の酸化珪素と、酸化珪素に対して親和性を有するペプチドを含む結合ドメインとの間における物理的結合を介して、有機物、特には、生体物質を、それが有する生理的機能の発揮に適する配向で、高い再現性と安定性で固定化が可能であることを確認した。本発明は、これらの知見に基づき、完成されたものである。
すなわち、本発明にかかる有機物が固定化された構造体は、
基体の表面に有機物が固定化された構造体であって、
前記基体の表面の少なくとも一部が、酸化珪素を含む一以上の部材によって構成され、
前記有機物は、酸化珪素に対して結合能を有するアミノ酸配列からなるペプチドを少なくとも一つ含んでなる結合ドメインを介して、前記基体の表面に結合され、
前記ペプチドは、下記配列番号:1または配列番号:2
(配列番号:1)Val−Ser−Pro−Met−Arg−Ser−Ala−Thr−Thr−His−Thr−Val
(配列番号:2)Ile−Pro−Met−His−Val−His−His−Lys−His−Pro−His−Val
に示すアミノ酸配列からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列、
前記アミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸の欠失、置換若しくは付加がなされた改変アミノ酸配列、
あるいは、それらアミノ酸配列の繰り返し構造または複合体を含んでなるペプチドである
ことを特徴とする、有機物が固定化された構造体である。
本発明にかかる有機物固定化構造体、例えば、表面に生体物質を固定化した基板においては、固定がなされる基板表面として、酸化珪素層を設け、一方、固定する有機物は、生体物質自体を機能ドメインとして、前記酸化珪素層に対する結合能を有する結合ドメインを、この機能ドメインに連結した構成とすることにより、機能ドメインである生体物質部分は、基板表面と直接接触することなく、連結されている結合ドメインによって、その酸化珪素結合能による選択的な固定が可能となる。この独立に設けられている結合ドメインを介して、基板表面に固定化することで、生体物質は、その本来の機能に対する固定化の影響は及ばず、また、固定化に際して、なんらの試薬を利用していないため、その機能に影響を及ぼす化学反応を被ることもない。
加えて、本発明を適用することで得られる、生体物質固定化基体では、固定化されている生体物質は、予め、この生体物質自体を機能ドメインとし、この機能ドメインとは全く独立して設ける、酸化珪素層に対する結合能を有する結合ドメインを、この機能ドメインに連結した構成を有する融合体として作製し、結合ドメインによる物理的な結合を介して、酸化珪素層を設ける基体表面上に固定されるので、機能ドメインとする生体物質の種類、その機能に依存することなく、結合ドメインに含まれるペプチドとして、酸化珪素層に対する結合能を有する様々のアミノ酸配列の内から、適宜選択されるアミノ酸配列を用いることが可能となる。換言するならば、本発明にかかる有機物固定化構造体では、結合ドメインに含まれるペプチドのアミノ酸配列を適宜選択して、固定対象の有機物、特には、生体物質が有する機能は、本来の機能水準と全く遜色のない融合体とすることができ、多様な固定対象の有機物への利用が可能である。
本発明では、上述する有機物固定化構造体の発明、すなわち、
基体の表面に有機物が固定化された構造体であって、
前記基体の表面の少なくとも一部が、酸化珪素を含む一以上の部材によって構成され、
前記有機物は、酸化珪素に対して結合能を有するアミノ酸配列からなるペプチドを少なくとも一つ含んでなる結合ドメインを介して、前記基体の表面に結合され、
前記ペプチドは、下記配列番号:1または配列番号:2
(配列番号:1)Val−Ser−Pro−Met−Arg−Ser−Ala−Thr−Thr−His−Thr−Val
(配列番号:2)Ile−Pro−Met−His−Val−His−His−Lys−His−Pro−His−Val
に示すアミノ酸配列からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列、
前記アミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸の欠失、置換若しくは付加がなされた改変アミノ酸配列、
あるいは、それらアミノ酸配列の繰り返し構造または複合体を含んでなるペプチドである
ことを特徴とする、有機物が固定化された構造体における、好ましい態様の一例として、下記の態様を挙げることができる。
先ず、前記有機物は、生体物質であることが好ましい。具体的には、ここで用いる「生体物質」とは、結合ドメインと連結した形態などに調製するため、天然に存在する生体物質と実質的に同じ構成を有するが、その機能自体は保持される範囲で、非本質部分に対して人為的改変が施されている、「生体由来の物質」をも包含している。その際、前記生体物質と結合ドメインとの連結部において、前記結合ドメイン中の前記ペプチドと前記生体物質の間に、一以上のアミノ酸からなるリンカーが更に含まれる形状とすることが可能である。
一方、本発明にかかる有機物が固定化された構造体において、
前記基体の少なくとも一部が多孔質であることが、一般に好ましい。
また、本発明は、上記する本発明にかかる有機物が固定化された構造体の発明に関連して、下記する形態の発明をも提供している。
すなわち、本発明にかかる有機物固定化構造体の製造方法は、
基体の表面上に有機物を固定化してなる構造体の製造方法であって、
酸化珪素に対して結合能を有するアミノ酸配列からなるペプチドを少なくとも一つ以上含んでなる結合ドメインと有機物とが連結してなる、有機物−結合ドメイン融合体を調製する工程と、
前記結合ドメインの少なくとも一部を、前記表面の少なくとも一部が酸化珪素を含む一以上の部材によって構成された基体に結合させることにより、前記結合ドメインを介して、前記基体の表面に前記有機物を固定化する工程とを有し、
前記ペプチドは、下記配列番号:1または配列番号:2
(配列番号:1)Val−Ser−Pro−Met−Arg−Ser−Ala−Thr−Thr−His−Thr−Val
(配列番号:2)Ile−Pro−Met−His−Val−His−His−Lys−His−Pro−His−Val
に示すアミノ酸配列からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列、
前記アミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸の欠失、置換若しくは付加がなされた改変アミノ酸配列、
あるいは、それらアミノ酸配列の繰り返し構造または複合体を含んでなるペプチドである
ことを特徴とする製造方法である。
さらには、本発明にかかる有機物が固定化された構造体において、発明の本質的な構成要素の一つである、上記結合ドメインとしての利用可能な、酸化珪素親和性ペプチドの発明も提供されている。すなわち、本発明にかかる酸化珪素親和性ペプチドは、
下記配列番号:1または配列番号:2
(配列番号:1)Val−Ser−Pro−Met−Arg−Ser−Ala−Thr−Thr−His−Thr−Val
(配列番号:2)Ile−Pro−Met−His−Val−His−His−Lys−His−Pro−His−Val
に示すアミノ酸配列からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列、
前記アミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸の欠失、置換若しくは付加がされた改変アミノ酸配列、
あるいは、それらアミノ酸配列の繰り返し構造または複合体を含んでなる
ことを特徴とする酸化珪素に親和性のペプチドである。
対応して、かかる酸化珪素親和性ペプチドのコード遺伝子に相当する、本発明にかかる酸化珪素親和性ペプチドをコードするDNAは、
下記配列番号:1または配列番号:2
(配列番号:1)Val−Ser−Pro−Met−Arg−Ser−Ala−Thr−Thr−His−Thr−Val
(配列番号:2)Ile−Pro−Met−His−Val−His−His−Lys−His−Pro−His−Val
に示すアミノ酸配列からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列、
前記アミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸の欠失、置換若しくは付加がされた改変アミノ酸配列、
あるいは、それらアミノ酸配列の繰り返し構造または複合体を含んでなる酸化珪素に親和性のペプチド鎖をコードする塩基配列を含む
ことを特徴とする酸化珪素親和性ペプチドをコードするDNAである。
なお、前記本発明にかかる酸化珪素親和性ペプチドをコードするDNAは、通常、ベクター中に挿入された形態で使用されることが多い。従って、かかるベクター中に挿入された形態に相当する、本発明にかかる酸化珪素に親和性のペプチド鎖をコードするDNAを含むベクターは、
下記配列番号:1または配列番号:2
(配列番号:1)Val−Ser−Pro−Met−Arg−Ser−Ala−Thr−Thr−His−Thr−Val
(配列番号:2)Ile−Pro−Met−His−Val−His−His−Lys−His−Pro−His−Val
に示すアミノ酸配列からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列、
前記アミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸の欠失、置換若しくは付加がなされた改変アミノ酸配列、
あるいは、それらアミノ酸配列の繰り返し構造または複合体を含んでなる酸化珪素に親和性のペプチド鎖をコードするDNAを含むベクターである。
更には、本発明にかかる有機物が固定化された構造体の用途発明も提供されており、その一つの形態に相当する、本発明にかかる検出装置は、
検体中の標的物質を検出するための装置であって、
上述の構成を有する本発明にかかる、基体の表面に有機物が固定化された構造体と検体とを接触させることにより、前記有機物と前記標的物質とを結合させるための手段と、
前記結合された標的物質を検出するための手段とを有する
ことを特徴とする検出装置である。
また、本発明にかかる有機物が固定化された構造体の用途発明における、他の形態に相当する、本発明にかかる検出方法は、
検体中の標的物質を検出する方法であって、
上述の構成を有する本発明にかかる、基体の表面に有機物が固定化された構造体と検体とを接触させることにより、前記有機物と前記標的物質とを結合させる工程と、
前記結合された標的物質を検出する工程とを有する
ことを特徴とする検出方法である。
以下に、本発明に関して、より詳しく説明する。
まず、本発明にかかる有機物固定化構造体は、
基体の表面上に有機物を固定化してなる構造体であって、
前記基体表面の少なくとも一部は、酸化珪素を含む一以上の部材によって構成される面であり、
前記基体表面への有機物の固定化は、該有機物に連結される、少なくとも一以上のアミノ酸からなるペプチドを含んでなる結合ドメインを介して、基体表面に対して、該結合ドメインの少なくとも一部が結合することによってなされている
ことを特徴とする、有機物固定化構造体の形態とすることができる。
その際、本発明にかかる有機物固定化構造体において、
前記結合ドメインに含まれるペプチドは、
前記酸化珪素を含む一以上の部材中の酸化珪素に対して結合能を有するアミノ酸配列を含んでなるペプチドであることが好ましい。
その際、前記酸化珪素に対する結合能を有するアミノ酸配列を含んでなるペプチドは、
下記配列番号:1、配列番号:2
Val−Ser−Pro−Met−Arg−Ser−Ala−Thr−Thr−His−Thr−Val (配列番号:1)
Ile−Pro−Met−His−Val−His−His−Lys−His−Pro−His−Val (配列番号:2)
に示すアミノ酸配列からなる群より選択される、少なくとも一つのアミノ酸配列の全部、またはその一部を含むアミノ酸配列を含んでなるペプチドであることがより好ましい。
一方、前記有機物は、生体物質であることが望ましい。
その際、前記生体物質と結合ドメインとの連結部において、
前記結合ドメイン中の前記酸化珪素に対して結合能を有するアミノ酸配列を含んでなるペプチドと前記生体物質の間には、一以上のアミノ酸からなるリンカーが含まれていてもよい。
また、対応して、本発明にかかる有機物固定化構造体の製造方法は、
基体の表面上に有機物を固定化してなる構造体であって、
前記基体表面の少なくとも一部は、酸化珪素を含む一以上の部材によって構成される面であり、
前記基体表面への有機物の固定化は、該有機物に連結される、少なくとも一以上のアミノ酸からなるペプチドを含んでなる結合ドメインを介して、基体表面に対して、該結合ドメインの少なくとも一部が結合することによってなされている、有機物固定化構造体を製造する方法であって、
(1)前記結合ドメインを該有機物に連結してなる構成の有機物−結合ドメイン融合体を作製する工程、及び
(2)前記有機物−結合ドメイン融合体を前記基体の表面に接触させ、該有機物−結合ドメイン融合体中に含まれる結合ドメインの少なくとも一部を、前記基体表面に結合させて、前記結合ドメインを介して、基体の表面に前記有機物の固定化を行う工程を含む
ことを特徴とする、有機物固定化構造体の製造方法の形態とすることができる。
その際、本発明にかかる有機物固定化構造体の製造方法では、例えば、
前記有機物が、タンパク質を含んでなる生体物質である場合、
前記(1)有機物−結合ドメイン融合体を作製する工程は、
(1−1)前記生体物質に含まれるタンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列と、
前記結合ドメインに含まれるペプチド部分のアミノ酸配列をコードする塩基配列とが、前記二つのアミノ酸配列を連結してコードするように、連結されてなる塩基配列を有する連結遺伝子に基づき、前記結合ドメインに含まれるペプチド部分を前記生体物質に含まれるタンパク質に連結してなる融合体型タンパク質を発現させる工程、及び
(1−2)前記融合体型タンパク質によって、前記生体物質に含まれるタンパク質と前記結合ドメインに含まれるペプチドとの間において連結がなされる前記有機物−結合ドメイン融合体を作製する工程
を含むことが好ましい。
加えて、本発明は、上述する形態において、本発明にかかる有機物固定化構造体の構成に利用される結合ドメインに含まれるペプチドが有する、特定のアミノ酸配列の発明をも適用しており、
すなわち、かかる形態の本発明にかかる酸化珪素親和性ペプチドは、
下記配列番号:1、配列番号:2
Val−Ser−Pro−Met−Arg−Ser−Ala−Thr−Thr−His−Thr−Val (配列番号:1)
Ile−Pro−Met−His−Val−His−His−Lys−His−Pro−His−Val (配列番号:2)
に示すアミノ酸配列からなる群より選択される、少なくとも一つのアミノ酸配列を含んでなることを特徴とする酸化珪素親和性ペプチドである。さらには、かかる形態に対応する、本発明にかかるDNA分子は、下記配列番号:1、配列番号:2
Val−Ser−Pro−Met−Arg−Ser−Ala−Thr−Thr−His−Thr−Val (配列番号:1)
Ile−Pro−Met−His−Val−His−His−Lys−His−Pro−His−Val (配列番号:2)
に示すアミノ酸配列からなる群より選択される、少なくとも一つのアミノ酸配列の全部、またはその一部を含むアミノ酸配列、
もしくは、それらアミノ酸配列の繰り返し構造を含んでなる酸化珪素親和性ペプチド鎖をコードするDNAを含む
ことを特徴とするDNA分子である。あるいは、かかる形態に対応する、本発明にかかるベクターは、
下記配列番号:1、配列番号:2
Val−Ser−Pro−Met−Arg−Ser−Ala−Thr−Thr−His−Thr−Val (配列番号:1)
Ile−Pro−Met−His−Val−His−His−Lys−His−Pro−His−Val (配列番号:2)
に示すアミノ酸配列からなる群より選択される、少なくとも一つのアミノ酸配列の全部、またはその一部を含むアミノ酸配列、
もしくは、それらアミノ酸配列の繰り返し構造を含んでなる酸化珪素親和性ペプチド鎖をコードするDNAを含むベクターである。
まお、本発明にかかるベクターは、例えば、プラスミド、ファージミド、コスミドといった、遺伝子導入、形質転換、タンパク質発現等の分子生物学的操作に用いられる各種ベクター中に、上記のアミノ酸配列をコードするDNAを挿入してなるベクターとすることができる。
本発明にかかる有機物固定化構造体では、表面の少なくとも一部が、酸化珪素を含む一以上の部材によって構成されている基体の表面上に、有機物を固定化する際、従来利用されている、物理吸着法や、化学的手法を利用して、酸化珪素を含む部材に共有結合を介して生体物質を固定する手法に代えて、例えば、用いる表面部材中の酸化珪素に対する結合能について、ランダム・ペプチド・ライブラリーをスクリーニングすることで簡便に取得することができ、所望の酸化珪素に対する結合能を有するペプチド断片のアミノ酸配列に基づき、前記酸化珪素に対し結合能を示すアミノ酸配列を有するペプチド含む結合ドメインを設計し、有機物に対して、該結合ドメインを予め結合してなる有機物−結合ドメイン融合体とすることで、この酸化珪素に対する結合能を有する結合ドメイン部を介して、酸化珪素を含む部材の表面に対して、特異的に有機物−結合ドメイン融合体を固定化する手法を用いている。
従って、前記結合ドメインを予め結合してなる有機物−結合ドメイン融合体において、前記有機物が生体物質の場合は、該生体物質の本来の機能(分子認識能や触媒能)が発揮されていることを、前もって確認しておくことができ、その後、生体物質−結合ドメイン融合体を、酸化珪素を含む部材表面に固定化する際、生体物質の機能に対して、影響を及ぼす試薬等を利用する化学的な反応を利用していないので、生体物質−結合ドメイン融合体を、酸化珪素を含む部材表面に固定化した際にも、固定化される生体物質は、その機能を十分発揮できる状態に保持されたものとなる。加えて、基材表面に利用する酸化珪素部材に応じて、スクリーニングによって、予め所望の結合能を有するアミノ酸配列を選別することができ、また、対象とする生体物質に応じて、生体物質と予め結合させる結合ドメインの結合形態と、結合ドメイン中に含まれる酸化珪素に対する結合能を示すアミノ酸配列とを設計できるので、本発明にかかる有機物固定化構造体は、利用する酸化珪素、対象とする有機物、特に生体物質の双方ともに、広範囲に適用することが可能である。
以下に、本発明における好適な実施態様について、更に詳しく説明する。
本発明にかかる有機物固定化構造体では、有機物を固定化する基材表面には、その表面の少なくとも一部に、酸化珪素を含む一以上の部材で構成される領域を設け、この酸化珪素を含む部材からなる領域において、有機物を固定化している。その酸化珪素を含む部材からなる領域への固定化は、該有機物に連結される、少なくとも一以上のアミノ酸からなるペプチドを含んでなる結合ドメインを介して、基体表面に対して、該結合ドメインの少なくとも一部が結合することによってなされている。従って、該結合ドメインが、酸化珪素を含む部材からなる領域と選択的に結合する結果、この結合ドメインと連結されている有機物自体の基体表面への物理吸着は回避され、有機物自体の機能は、物理吸着に付随した影響を被ることがないものとされている。
図1に、本発明にかかる有機物固定化構造体の実施形態の一例を模式的に示す。図1に示す形態では、基材本体は、平板状の基板11であり、その表面に酸化珪素を含む部材で構成される被覆層として、酸化珪素層12を設けている。有機物の固定化は、この酸化珪素層12の表面において、結合ドメイン15と選択的になされる。一方、この結合ドメイン15と連結されている機能ドメイン14に相当する有機物自体は、酸化珪素層12に対して、非選択的な、弱い物理吸着が可能であっても、結合ドメイン15部分がより優先的に結合する結果、かかる競争過程によって、機能ドメイン14に相当する有機物自体が物理吸着を起こす頻度は低く、また非特異的な弱い物理吸着は固定化条件を選択することにより低減させることも可能である。
従って、基材本体、例えば、基板は、その表面に酸化珪素を含む部材で構成される被覆層を設けることが可能であれば、従来公知の種々の材料からなる基板を、使用目的に応じて、適宜選択して用いることができる。具体的には、鉄、アルミ、金等の金属材料、ポリスチレン、PMMA、PCに代表される合成樹脂材料、シリコンなどの半導体材料、アルミナ、サファイアなどの酸化物やセラミックス材料、あるいは、これら材料の二種以上を組み合わせた複合材料を用いて形成される基板から、適宜選択して用いることができる。
一方、基材本体の表面に設ける、酸化珪素を含む部材で構成される被覆層は、少なくとも、その最表面には、酸化珪素の表層が露呈する形態とすることが好ましい。酸化珪素層12は、例えば、アルコキシシラン等の原料と、必要に応じて、重合開始剤、金属触媒等を適量含む溶液を用いて、かかる溶液を、例えば、基板表面に従来既知の方法により、塗布コートし、溶媒の蒸散、乾燥と、加熱処理して、重合による酸化珪素層とする方法で作製することができる。
あるいは、基板表面に設ける酸化珪素層12は、CVD法を適用して、形成することもできる。CVD法を適用する場合、堆積過程において、相当の高温加熱がなされるため、基板材料は、この高温加熱において、熱損傷等を受けることのない材料を選択する必要がある。加えて、堆積される酸化珪素層の熱膨張率と、基板の熱膨張率に大きな差異があると、堆積後、冷却する際、酸化珪素層に機械的歪みが誘起され、剥落や反りを生じることもあり、この点をも考慮して、基板材料を選択することが好ましい。
なお、酸化珪素層12は、多孔体被膜構造とすると、多孔体は細孔を有し、比表面積が大きくなり、固定化に利用可能な延べ表面積を増すことができ、一般に好ましい。本発明では、この多孔体中の細孔内に固定化を行う際にも、機能ドメイン14に相当する有機物自体の物理吸着ではなく、結合ドメインによる選択的な結合を介する固定化が起こるように、細孔の内径を固定化する有機物の形状に応じて、適正化することが好ましい。また、多孔体被膜構造とする際には、酸化珪素層12の厚さも、前記細孔の内径、ならびに、固定化する有機物の形状に応じて、適正化することが好ましい。
例えば、酸化珪素層12の厚さを、ナノメートルオーダーに選択する際には、極薄い酸化珪素膜形成により適している、CVD法などの気相堆積法を適用することが好ましい。
一方、酸化珪素層を多孔体被膜構造とする際には、CVD法などの気相堆積法ではなく、例えば、酸性条件下で、界面活性剤を添加したアルコキシシラン溶液を用いて、塗布層を形成し、35℃にて20時間反応させ、その後、80℃で48時間加熱することにより、界面活性剤相が網目状に混在する酸化珪素層を形成させる。次に、層内に混在している界面活性剤相を取り除く(例えば、加熱による場合、500℃にて6時間)ことにより、かかる界面活性剤相が占めていた領域が、孔径1nm〜1000nmの細孔構造として残される多孔質材料層を得る手法を利用することができる。上記の工程により作製した酸化珪素−界面活性剤複合体から界面活性剤を取り除く方法としては、前記の加熱方法以外に、有機溶媒処理して、界面活性剤を溶出除去する手法等が挙げられる。いずれの手法を採用するかは、使用する基板の物性、例えば、耐熱性、溶剤耐性等に応じて、適宜選択して用いることが好ましい。
酸化珪素層を多孔体被膜構造とすると、比表面積を大幅に増加することができ、単位面積あたりの固定化される生体物質数を多くすることができる利点がある。また、生体物質が固定化された細孔内部は、この分子認識反応場に侵入する分子を、その細孔径の大きさにより選択する機能を付加する利点もある。更には、平面上に生体物質を固定化した場合に比べ、細孔内部一つ一つの反応場の体積は、限定されており、縮小されたものとなる。そのため、限られた空間を有する細孔内部の反応場では、対象化合物が生体物質と結合する際、必要な平均移動距離を大幅に短縮でき、分子認識反応効率を向上する効果を示すことも期待できる。従って、細孔径は、対象化合物の大きさ、試料溶液の粘性を考慮して、目的とする対象化合物の選択的な細孔内へ侵入が可能な範囲に選択することも可能である。例えば、細孔径を、1nm〜500nmの範囲、好ましくは、10nm〜300nmの範囲に選択することが好ましい。
上述するように、酸化珪素層は、基板表面に直接、気相から蒸着する方法、もしくは塗布膜を処理して形成する方法を利用して作製することができる。また、基板に有機材料を採用する際には、酸化珪素層の形成工程で選択する温度、使用できる溶剤等は、基板材料の種類に応じて、適宜選択されるものである。場合によっては、予め酸化珪素材料粒子を形成し、基板材料の性質を鑑みて選択された溶媒に懸濁し、酸化珪素材料粒子の懸濁液を塗布し、必要に応じて加熱して溶媒を除去することにより、粒子状酸化珪素を含む層を形成することも可能である。
更には、基体自体を、透光性材料とすることにより、その表面に固定化した生体物質の挙動を、光学的な手法により測定することが可能な構造してもよい。
本発明においては、基材表面に固定化される有機物は、作製される有機物固定化構造体の使用用途に応じて、適宜選択すべきものである。少なくとも、一以上のアミノ酸からなるペプチドを含んでなる結合ドメインと連結することが可能であれば、機能ドメインとして利用される有機物の種類は、特に制限はない。一以上のアミノ酸からなるペプチドを含んでなる結合ドメインと連結することが可能な、種々の生体物質を、基材表面に固定化される有機物として選択することができる。本発明を適用可能な有機物として、選択可能な生体物質の例として、具体的には、核酸分子、一以上のアミノ酸からなるペプチドまたはタンパク質、糖鎖および糖鎖−タンパク質複合体を挙げることができる。
例えば、核酸分子の例としては、デオキシリボ核酸分子、リボ核酸分子等が挙げられる。例えば、DNAチップなどでは、固定化されるDNA分子の塩基配列と相補的な塩基配列を有する核酸分子を、ハイブリダイズ反応によって認識する機構を利用するため、該DNA分子は、所定の塩基配列を有する一本鎖のDNA分子とされる。加えて、核酸分子の一部は、特定の立体構造を形成し、かかる立体構造に由来する分子認識能を有することも判明している。この種の立体構造に由来する分子認識能を有する核酸分子は、アプタマーと総称され、例えば、SELEX法に代表される分子進化工学的手法により、多様な塩基配列のうちから、高い分子認識能を有する塩基配列を選別取得することも可能である。されには、DNA結合性タンパク質において、そのターゲートとなる二重鎖DNAの塩基配列も特定されており、この種の二重鎖DNA分子も、本発明を適用可能な有機物として、選択可能である。
また、本発明を適用可能な有機物の選択可能なタンパク質分子の例として、酵素、抗体、レセプタ−分子、または足場タンパク質分子が挙げられる。
本発明を適用可能な抗体分子としては、抗原物質を被検体動物に導入し、その免疫反応の結果産出される免疫抗体分子、さらには、前記免疫抗体の構造を部分的もしくは全体的に遺伝工学的に改変された組換え抗体分子など、種々の方法で採取される免疫グロブリン分子が挙げられる。これら抗体は、モノクロ−ナル抗体、またはポリクロ−ナル抗体であってもよい。これら抗体分子は、任意の免疫グロブリン・クラスに含まれ、例えば、ヒトIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEから選択できる。これらのクラスのなかでも、IgGクラスの抗体分子は、より好適に利用できる。
免疫グロブリン分子に加えて、抗体断片分子を利用することもでき、Fab、Fab’、F(ab’)2等が挙げられる。例えば、Fab断片分子は、抗体グロブリンのパパイン消化によって得られる抗体断片分子と、ほぼ同じ断片分子である。F(ab’)2は、抗体グロブリンのペプシン消化によって得られる抗体断片分子と、ほぼ同じ断片分子である。これら抗体断片分子の調製は、抗体グロブリンを酵素的または化学的分解して作製する方法もあるが、多くは、遺伝子工学的に組み換え生産する方法も適用可能である。さらには、免疫グロブリン分子中の抗原認識部位である、可変領域部(Fv)を構成する重鎖部(VH)と軽鎖部(VL)とを、ペプチド・リンカーで連結して、抗原認識能を具える、遺伝子工学的に組み換え生産された分子とされている、scFv(single chain Fv)を利用することもできる。
例えば、機能ドメイン14とする生体物質が、組み換え生産可能なタンパク質である場合、それと連結される、一以上のアミノ酸からなるペプチドを含んでなる結合ドメイン15とは、両者のペプチド鎖が一連に連結された融合タンパク質の形態とすることができる。その際、機能ドメイン14部と、結合ドメイン15部との間に、適当なアミノ酸長のリンカー配列を挿入することもできる。
一方、本発明を適用する生体物質が、その配列が未知なタンパク質や核酸分子、糖鎖の場合には、この生体物質、ペプチド構造を含む結合ドメイン、あるいは、双方に対して、その機能に重大な影響を及ぼさない範囲で、両者の連結に利用される反応性官能基の導入等の化学的修飾・変換を予め施した上で、両者間を化学結合によって連結した複合体を作製することができる。具体的には、両者の連結に利用される反応性官能基として、マレイミド基とスルファニル基(−SH)、スクシイミド基とアミノ基、イソシアネート基とアミノ基、ハロゲンとヒドロキシ基、ハロゲンとスルファニル基(−SH)、エポキシ基とアミノ基、エポキシ基とスルファニル基(−SH)の組み合わせになるように、生体物質、ペプチド構造を含む結合ドメイン、あるいは、双方に、予め化学的修飾・変換を施した後に、前記の官能基間で化学的な結合を形成させることで、生体物質−ペプチド構造含む結合ドメイン融合体を形成することができる。
さらには、本発明を適用する生体物質が脂質の場合には、酸化珪素結合性ペプチド構造に加えて、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、プロリンなどの遊離の疎水性基を有するアミノ酸を複数含む「疎水ペプチド構造」をも具えている「結合ドメイン」を作製し、脂質分子の「疎水ペプチド構造」に対する疎水結合により、脂質−ペプチド構造含む結合ドメインの複合体を作製し、融合体に代えて利用することも可能である。
本発明にかかる有機物固定化構造体において、基体表面に設ける酸化珪素層表面に固定化する際に利用する結合ドメイン15は、該酸化珪素層12に対して特異的な結合能を有する一以上のアミノ酸からなるペプチド鎖を含む分子、あるいは、該ペプチド鎖のアミノ酸配列を含むタンパク質を利用することができる。
本発明に利用される結合ドメイン15は、好ましい一形態において、酸化珪素層12に親和性を有する一以上のアミノ酸からなるアミノ酸配列を有している。
結合ドメインが有する、酸化珪素層に親和性を有するアミノ配列の好ましい例は、
Val−Ser−Pro−Met−Arg−Ser−Ala−Thr−Thr−His−Thr−Val (配列番号:1)、
Ile−Pro−Met−His−Val−His−His−Lys−His−Pro−His−Val (配列番号:2)、
からなる群より選ばれた少なくとも一つの全部または一部を含むものがより好ましいが、
Val−Ser−Pro−Met−Arg−Ser−Ala−Thr−Thr−His−Thr−Val(配列番号:1)の全部または一部を含むペプチドであっても、もしくは
Ile−Pro−Met−His−Val−His−His−Lys−His−Pro−His−Val(配列番号:2)の全部または一部を含むペプチドであってもよい。
また、前記アミノ酸配列の全部または一部の繰り返し構造を有していてもよい。
また、これらアミノ酸配列複数種を含んでなる複合体であってもよい。
なお、前述する配列番号:1または配列番号:2に示すアミノ酸配列の一部を含むペプチドとは、該アミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸の欠失、置換若しくは付加がなされた改変アミノ酸配列を有するペプチドであり、改変の基礎とするアミノ酸配列と同様の酸化珪素層に対する親和性を具えるものであれば何ら問題はない。なお、アミノ酸の付加は、通常、かかるアミノ酸配列のN末、C末に更なるアミノ酸配列を付加する形態とすることが望ましい。また、アミノ酸の欠失は、通常、かかるアミノ酸配列のN末、C末から、合計1または数個のアミノ酸を除去してなる、末端短縮型のアミノ酸配列とする形態が望ましい。一方、アミノ酸の置換は、通常、置換を受けるアミノ酸に対して、所謂、相同的な置換と称されるアミノ酸置換を施す形態が望ましい。改変を受けるアミノ酸数の総和が、数個を超えない範囲で、複数種の変異を施すことも可能である。その際、改変アミノ酸配列において、元となるアミノ酸配列と一致するアミノ酸数は、少なくとも7個以上、より好ましくは8個以上であることが好ましい。
さらには、前記結合ドメインが有する、酸化珪素層に親和性を有する、一以上のアミノ酸からなるアミノ配列は、酸化珪素層に対する親和性に関して、ランダム・ペプチド・ライブラリーのスクリーニングによって決定されたアミノ酸配列、もしくは酸化珪素層の化学的性質により合理的に設計されたアミノ酸配列であってもよい。
以下に、酸化珪素層に親和性を有するアミノ酸配列を取得するための、ランダム・ペプチド・ライブラリーのスクリーニング法について記載する。
スクリーニングに利用可能なランダム・ペプチド・ライブラリーとしては、ランダム・ペプチドを可溶性の形で化学的に合成したランダム合成ペプチド・ライブラリーや、樹脂ビーズ上で合成した固相固定化ペプチド・ライブラリー、化学合成されたランダム配列のDNAをリボソ−ム無細胞系で生合成したペプチド・ライブラリー、例えば、M13系ファージの表面蛋白質(例えば、geneIII蛋白質)のN末端側遺伝子にランダム合成遺伝子を連結して調製されたファージ・ディスプレイ・ペプチドライブラリー、同様の手法で細菌の層タンパク質、Omp A(Francisco ら, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 10444−10448あるいはPistor と Hoborn, 1989, Klin. Wochenschr., 66, 110−116)、PAL(Fuchs ら, 1991, Bio/Technology, 9, 1369−1372)、Lamb(Charbit ら, 1988, Gene, 70, 181−189及び Bradbury ら, 1993, Bio/Technology, 1565−1568)、フィンブリン(Hedeg AardとKlem M., 1989, Gene, 85, 115−124及び Hofnung, 1991, Methods Cell Biol.、 34, 77−105)、およびIgAプロテア−ゼβ領域(Klauser ら, 1990, EMBO J., 9, 1991−1999)に融合して提示したランダム・ペプチド・ライブラリーなどを挙げることができる。
これらのランダム・ペプチド・ライブラリーを用いて、酸化珪素層に対して親和性を有するアミノ酸配列をスクリ−ニング手法としては、化学合成ペプチド・ライブラリーを用いる場合には、ペプチド・ライブラリーと酸化珪素層2と同じ材料からなるカラム担体やプレート等担体または基板とを接触させ結合(吸着)させた後、酸化珪素層に対して親和性を有しないペプチドを洗浄工程により除き、しかる後に酸化珪素層に結合しているペプチドを回収しエドマン分解等を用いてそのアミノ酸配列を決定する。
一方、ファージ・ディスプレイ・ペプチドライブラリーを用いる場合には、前記担体や前記酸化珪素被覆基板表面に、上記のライブラリーを添加することによって接触させ、結合ファージを残し、非結合ファージは洗浄で洗い流す。洗浄後残ったファージを酸などにより溶出し緩衝液で中和した後、大腸菌に感染させファージを増幅する。この選別(パンニング操作)を複数回繰り返すと、目的の酸化珪素層に親和性のある複数のクローンが濃縮される。ここで単一のクローンを得るため再度大腸菌に感染させた状態で培地プレート上にコロニーを作らせる。それぞれの単一コロニーを液体培地で培養した後、培地上清中に存在するファージをポリエチレングリコ−ル等で沈澱精製し、その塩基配列を解析すれば、目的とするペプチドのアミノ酸配列を知ることができる。
ファージ・ディスプレイ・ペプチド・ライブラリーを用いた酸化珪素層に対して親和性を有するペプチドのスクリ−ニングは、酸化珪素層に対してより強く結合するファージを濃縮する、いわゆるパンニング操作を含んでいるために、より信頼性のあるペプチド候補を選別できるので、本発明の目的に好適に用いることができる。ファージ・ディスプレイ・ランダム・ペプチド・ライブラリーを構築する方法としては、例えば、M13 系ファージの表面蛋白質(例えば、geneIII蛋白質)のN末端側遺伝子にランダム合成遺伝子を連結し作製すれば良い。その方法としては、Scott、 J.K. and Smith、 G.P., Science Vol.249, 386 (1990)やCwirla、 S.E. et al.、 Proc. Natl. Acad. Sci. USA Vol.87、 6378、 (1990)等の報告がある。挿入する遺伝子の大きさは、ペプチドが安定に発現できれば、特に制限はないが、作製したライブラリーがすべてのランダム配列を網羅し、しかも親和性を有するためには6から40アミノ酸に相当する長さ(分子量約600から4000に相当)が適当で、中でも7から18アミノ酸が好ましい。
ファージ・ディスプレイ・ペプチド・ライブラリーのスクリ−ニングによって得られた酸化珪素層に対して親和性を有するアミノ酸配列を直列繋ぎ繰り返し構造を構成してもよい。また、二種類以上得られた場合には、これらのアミノ酸配列からなる群より選ばれた少なくとも一つのアミノ酸配列の、全部または一部分のアミノ酸配列を適当な組合せで直列に繋いだ配列を、酸化珪素層に対して親和性を有するアミノ酸配列として用いても良い。この際、二種類のアミノ酸配列の間には適当なスペーサー配列を設けることが望ましい。スペーサー配列としては、約3〜約400アミノ酸の範囲で、連結する酸化珪素層に対して親和性を有するアミノ酸配列が有する、酸化珪素層に対する親和性に悪影響を及ぼさないものとすることが可能である。なお、二種類のアミノ酸配列を含む結合ドメインと機能ドメインとからなる融合タンパク質の発現性、および安定性を考慮する場合、スペーサー配列は、3〜15アミノ酸の範囲に選択することがより好ましい。また、連結する酸化珪素層に対して親和性を有するアミノ酸配列が有する、酸化珪素層に対する親和性に悪影響を及ぼさない範囲であれば、スペーサー配列はいかなるアミノ酸を含んでもよい。最も好ましくは、スペーサー配列は、前記機能ドメインの機能を妨害せず、また、生体物質が酸化珪素層に結合するのを妨害しないものである。
本発明で利用される、酸化珪素層に対する親和性を有するアミノ酸配列は、ランダム・ペプチド・ライブラリーのスクリ−ニングによって決定されたアミノ酸配列の他、酸化珪素層の化学的性質により合理的に設計し、アミノ酸配列とすることもできる。それらでライブラリーを構成し、上記のようなスクリーニング方法により、更に親和性の高いアミノ酸配列を選択することもできる。
このような一以上のアミノ酸からなる、酸化珪素層に対する親和性を有するアミノ酸配列を含む結合ドメインと、機能ドメインとする、所望の特性を有するタンパク質とを連結してなる融合タンパク質は、前記機能ドメインをコードする遺伝子の上流もしくは下流に、本発明にかかる酸化珪素を含む層に親和性を有する少なくとも一以上のアミノ酸からなるペプチドをコードする遺伝子を、読み枠を一致させて挿入した発現ベクターを構築することにより、安定に前記融合タンパク質を作製することができる。該発現ベクターに使用するプロモーター配列や、形質転換確認用の抗生物質耐性遺伝子配列等は、従来既知のものから選択して使用することができる。
酸化珪素層に対する融合タンパク質の固定化は、前記機能ドメイン14に融合され、翻訳される前記結合ドメイン15中の前記スクリーニング操作により得られた酸化珪素層に対する親和性を有するアミノ酸配列(以下、酸化珪素層親和性部位15a)を介して成される。
表面が親水性である酸化珪素層2では、前記機能ドメイン14に融合され、翻訳される前記酸化珪素層親和性部位15aとして、親水性基、特には、カチオン性を有する残基やヒドロキシ基を有するアミノ酸を多く含んだ配列を選ぶことによって、前記結合ドメイン15を介する酸化珪素層2への固定化をより強固なものとすることができる。
上記方法により取得さられた前記酸化珪素層親和性部位15aは、通常の遺伝子工学的手法を用いて、前記機能ドメイン14とされるタンパク質に融合して利用される。前記酸化珪素層親和性部位は、前記機能ドメイン14とされるタンパク質のN末端、あるいはC末端に連結して発現することができる。また、適当なリンカー配列を挿入して、結合ドメインとして、発現することもできる。
リンカー配列としては、約3〜約400アミノ酸の範囲で、結合ドメインと機能ドメインともに所望の機能が発揮するように選択できる。さらに、結合ドメインと機能ドメインを連結した融合タンパク質の発現性、ならびに安定性を考慮する場合、前記のアミノ酸からなるリンカー配列の利用が好ましく、また、リンカー配列はいかなるアミノ酸を含んでもよい。最も好ましくは、リンカー配列の配列長は、3〜15アミノ酸の範囲に選択する。すなわち、リンカー配列は、前記機能ドメイン14とするタンパク質の機能発揮を妨害せず、また、前記結合ドメイン15が酸化珪素層12に結合するのを妨害しないものである。加えて、場合によっては、リンカー配列の配列長を調節することにより、結合ドメインを介して基板上に結合される、機能ドメインとされるタンパク質の基板上での配向性を調整することも可能である。
本発明にかかる有機物固定化構造体では、前記ファージ・ディスプレイ・ペプチド・ライブラリーのスクリ−ニングなどの操作によって、酸化珪素層に対して親和性を有するアミノ酸配列が、二種類以上決定された場合には、これらのアミノ酸配列をそれぞれ個別に含む結合ドメインを、前記機能ドメインとするタンパク質に融合した、複数種類の融合体タンパク質を、混合物として、同一の基体表面に固定化した形態とすることもできる。
前記機能ドメイン14とするタンパク質と前記酸化珪素層親和性部位15aを含む結合ドメインとを連結してなる融合タンパク質の分離・精製方法は、前記機能ドメインとするタンパク質の活性が、保持される方法であれば、いかなる方法をも用いることができる。
酸化珪素層12に、有機物を、酸化珪素層親和性部位15aを含む結合ドメインを介して固定化する工程は、有機物と結合ドメインとで構成される融合体を、水性媒体中で酸化珪素層12と接触させることにより達成される。
本発明において、結合ドメインを介して固定化を行う工程に用いる水性媒体の組成は、固定化される有機物、例えば、生体物質が行う目的化合物の結合または変換反応を妨げないものであればよいが、後の工程の省略化を図るために、生体物質が示す結合または変換反応活性を発揮させ得る組成としておくこともできる。ここで、活性を発揮させ得る組成として、例えば、緩衝液を用いることができる。緩衝液としては、生化学的反応に用いられる一般的な緩衝液、例えば、酢酸バッファー、リン酸バッファー、リン酸カリウムバッファー、3−(N−モルフォリノ)プロパンスルフォン酸(MOPS)バッファー、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルフォン酸(TAPS)バッファー、トリス塩酸バッファー、グリシンバッファー、2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルフォン酸(CHES)バッファーなどが好適に用いられる。例えば、生体物質が後述するPHA合成酵素タンパク質である際、その酵素活性を発揮させ得る緩衝液の濃度は、一般的な濃度、即ち5mMから10Mの範囲で使用することができるが、望ましくは10〜200mMで行うことが好ましい。また、pHは5.5〜9.0、好ましくは7.0〜8.5となるように調製する。
有機物と結合ドメインとで構成される融合体を、結合ドメイン15を介して、基板表面の酸化珪素層12への固定化は、酸化珪素層12を設ける基板が浸漬される液を、有機物と結合ドメインとで構成される融合体が所定の濃度となるように上記水性媒体中に溶解する溶液とすることによって達成される。このとき、有機物と結合ドメインとで構成される融合体に含まれる、酸化珪素層親和性部位15aを含む結合ドメイン部分が、酸化珪素層の表面に均等に結合されるよう、反応容器を適当な強度で振盪あるいは攪拌することが望ましい。
上記固定化処理において、利用される水性媒体の組成としては、水性媒体のpHや塩濃度によって、酸化珪素層および結合ドメインに含まれる酸化珪素層親和性部位15aの表面電荷の電荷量、疎水性が変化するので、それを考慮した組成とするのが望ましい。例えば、塩濃度を上げることによって両者の疎水性を増やすことができる。
また、基板表面に設ける酸化珪素層12に対する、溶媒のぬれ角等を予め測定し、酸化珪素層12の親水性、疎水性を調べることで、結合ドメインの結合に適した溶液組成を設定することもできる。さらに、酸化珪素層2表面に対する、酸化珪素層親和性部位15aの結合量を直接測定して、溶液組成を求めることもできる。結合量の測定は、例えば、ある一定面積の酸化珪素層に、濃度既知の有機物と結合ドメインとで構成される融合体溶液を添加し、固定化処理を行った後、溶液中に残余している有機物と結合ドメインとで構成される融合体の濃度を測定し、差し引き法により結合量を求める等の方法を用いればよい。
上記方法により作製された、有機物固定化構造体、例えば、生体物質固定化基板は、そのままでも用いることができる。さらに、凍結乾燥等を施した上で使用してもよい。生体物質の固定化処理を行う時間は、1分間から48時間が望ましく、より望ましくは、10分間から3時間である。過剰な静置あるいは放置は、固定化された生体物質の所望の機能活性低下を招くことも少なくなく、一般に好ましくない。
本発明にかかる検出方法では、本発明にかかる有機物固定化構造体において、該有機物として、標的物質に対する結合能を有するものを選択した上で、検体中に含有されている標的物質を該有機物と結合させることで、構造体上に間接的に固定する手法を利用している。その際、本発明にかかる有機物固定化構造体では、種々な有機物について、その標的物質に対する結合能を保持した状態で簡便に固定化が可能である。従って、種々な有機物から、検出対象の標的物質に対する結合能を有するものを適宜選択することで、多様な標的物質の検出に適用可能である。
なお、本発明にかかる検出方法が対象とする標的物質は、非生体物質と生体物質に大別される。
本発明にかかる検出方法が適用可能な非生体物質であり、また、かかる非生体物質に対する検出方法は、産業上利用価値の大きいものなるものとしては、例えば、各種動物や植物に対して、好ましくない作用を及ぼす種々の環境汚染物質が挙げられる。具体的には、環境汚染物質としての塩素置換数/位置の異なるPCB類、同じく塩素置換数/位置の異なるダイオキシン類、いわゆる環境ホルモンと呼ばれる内分泌撹乱物質(例:ヘキサクロロベンゼン、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロ酢酸、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、アミトロール、アトラジン、アラクロール、ヘキサクロロシクロヘキサン、エチルパラチオン、クロルデン、オキシクロルデン、ノナクロル、1,2−ジブロモ−3−クロロプロパン、DDT、ケルセン、アルドリン、エンドリン、ディルドリン、エンドスルファン(ベンゾエピン)、ヘプタクロル、ヘプタクロルエポキサイド、マラチオン、メソミル、メトキシクロル、マイレックス、ニトロフェン、トキサフェン、トリフルラリン、アルキルフェノール(炭素数5〜9)、ノニルフェノール、オクチノニルフェノール、4−オクチルフェノール、ビスフェノールA、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジエチル、ベンゾ(a)ピレン、2,4−ジクロロフェノール、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、ベンゾフェノン、4−ニトロトルエン、オクタクロロスチレン、アルディカーブ、ベノミル、キーポン(クロルデコン)、マンゼブ(マンコゼブ)、マンネブ、メチラム、メトリブジン、シペルメトリン、エスフェンバレレート、フェンバレレート、ペルメトリン、ビンクロゾリン、ジネブ、ジラム、フタル酸ジペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジプロピル)等が挙げられる。
なお、これら生体内で好ましくない作用を発揮する汚染物質は、生体内細胞が産生する受容体タンパク質など、当該汚染物質に対する結合能を示すタンパク質、あるいは、複合体形成能を有する核酸分子を介して、様々な臓器、組織、細胞へ取り込まれる。従って、これら汚染物質の検出には、当該汚染物質に対する結合能を示すタンパク質、あるいは、複合体形成能を有する核酸分子を、本発明にかかる有機物固定化構造体における、有機物として利用することが好適である。
検出対象の生体物質としては、核酸、タンパク質、糖鎖、脂質及びそれらの複合体から選択される生体物質が含まれ、更に詳しくは、核酸、タンパク質、糖鎖、脂質から選択される生体分子を含んでなるものである。具体的には、DNA、RNA、アプタマー、遺伝子、染色体、細胞膜、ウイルス、抗原、抗体、レクチン、ハプテン、ホルモン、レセプタ、酵素、ペプチド、スフィンゴ糖、スフィンゴ脂質の何れかから選択された物質を含むものであれば、如何なる生体物質の検出に、本発明にかかる検出方法を適用することができる。更には、前記の「生体物質」を産生する細菌や細胞そのものも、細菌や細胞に由来する「生体物質」の検出に本発明にかかる検出方法を適用することで、広義の「標的物質」とすることが可能である。
本発明にかかる検出方法が好適に適用可能な、具体的なタンパク質として、所謂、疾病マーカーが挙げられる。かかる疾病マーカー・タンパク質の一例として、
胎児期に肝細胞で産生され胎児血中に存在する酸性糖蛋白であり、肝細胞癌(原発性肝癌)、肝芽腫、転移性肝癌、ヨークサック腫瘍のマーカーとなるα−フェトプロテイン(AFP)、
肝実質障害時に出現する異常プロトロンビンであり、肝細胞癌で特異的に出現することが確認されるPIVKA−II、
免疫組織化学的に乳癌特異抗原である糖蛋白で、原発性進行乳癌、再発・転移乳癌のマーカーとなるBCA225、
ヒト胎児の血清、腸および脳組織抽出液に発見された塩基性胎児蛋白であり、卵巣癌、睾丸腫瘍、前立腺癌、膵癌、胆道癌、肝細胞癌、腎臓癌、肺癌、胃癌、膀胱癌、大腸癌のマーカーである塩基性フェトプロテイン(BFP)、
進行乳癌、再発乳癌、原発性乳癌、卵巣癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるCA15−3、
膵癌、胆道癌、胃癌、肝癌、大腸癌、卵巣癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるCA19−9、
卵巣癌、乳癌、結腸・直腸癌、胃癌、膵癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるCA72−4、
卵巣癌(特に漿液性嚢胞腺癌)、子宮体部腺癌、卵管癌、子宮頸部腺癌、膵癌、肺癌、大腸癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるCA125、
上皮性卵巣癌、卵管癌、肺癌、肝細胞癌、膵癌マーカーとなる糖蛋白であるCA130、
卵巣癌(特に漿液性嚢胞腺癌)、子宮体部腺癌、子宮頸部腺癌のマーカーとなるコア蛋白抗原であるCA602、
卵巣癌(特に粘液性嚢胞腺癌)、子宮頸部腺癌、子宮体部腺癌のマーカーとなる母核糖鎖関連抗原であるCA54/61(CA546)、
大腸癌、胃癌、直腸癌、胆道癌、膵癌、肺癌、乳癌、子宮癌、尿路系癌等の腫瘍関連のマーカー抗原として現在、癌診断の補助に最も広く利用されている癌胎児性抗原(CEA)、
膵癌、胆道癌、肝細胞癌、胃癌、卵巣癌、大腸癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるDUPAN−2、
膵臓に存在し、結合組織の弾性線維エラスチン(動脈壁や腱などを構成する)を特異的に加水分解する膵外分泌蛋白分解酵素であり、膵癌、膵嚢癌、胆道癌のマーカーとなるエラスターゼ1、
ヒト癌患者の腹水や血清中に高濃度に存在する糖蛋白であり、肺癌、白血病、食道癌、膵癌、卵巣癌、腎癌、胆管癌、胃癌、膀胱癌、大腸癌、甲状腺癌、悪性リンパ腫のマーカーとなる免疫抑制酸性蛋白(IAP)、
膵癌、胆道癌、乳癌、大腸癌、肝細胞癌、肺腺癌、胃癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるNCC−ST−439、
前立腺癌のマーカーとなる糖蛋白質であるγ−セミノプロテイン(γ−Sm)、
ヒト前立腺組織から抽出された糖蛋白であり、前立腺組織のみに存在し、それゆえ前立腺癌のマーカーとなる前立腺特異抗原(PSA)、
前立腺から分泌される酸性pH下でリン酸エステルを水解する酵素であり、前立腺癌の腫瘍マーカーとして用いられる前立腺酸性フォスファターゼ(PAP)、
神経組織及び神経内分泌細胞に特異的に存在する解糖系酵素であり、肺癌(特に肺小細胞癌)、神経芽細胞腫、神経系腫瘍、膵小島癌、食道小細胞癌、胃癌、腎臓癌、乳癌のマーカーとなる神経特異エノラーゼ(NSE)、
子宮頸部扁平上皮癌の肝転移巣から抽出・精製された蛋白質であり、子宮癌(頸部扁平上皮癌)、肺癌、食道癌、頭頸部癌、皮膚癌のマーカーとなる扁平上皮癌関連抗原(SCC抗原)、
肺腺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、膵癌、卵巣癌、子宮癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるシアリルLeX−i抗原(SLX)、
膵癌、胆道癌、肝癌、胃癌、大腸癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるSPan−1、
食道癌、胃癌、直腸・結腸癌、乳癌、肝細胞癌、胆道癌、膵癌、肺癌、子宮癌のマーカーであり、特に他の腫瘍マーカーと組み合わせて進行癌を推測し、再発予知・治療経過観察として有用である単鎖ポリペプチドである組織ポリペプタイド抗原(TPA)、
卵巣癌、転移性卵巣癌、胃癌、大腸癌、胆道系癌、膵癌、肺癌のマーカーとなる母核糖鎖抗原であるシアリルTn抗原(STN)、
肺の非小細胞癌、特に肺の扁平上皮癌の検出に有効な腫瘍マーカーであるシフラ(cytokeratin;CYFRA)、
胃液中に分泌される蛋白消化酵素であるペプシンの2種(PG I・PG II)の不活性型前駆体であり、胃潰瘍(特に低位胃潰瘍)、十二指腸潰瘍(特に再発、難治例)、ブルンネル腺腫、ゾーリンガーエリソン症候群、急性胃炎のマーカーとなるペプシノゲン(PG)、
組織障害や感染により、血漿中で変化する急性相反応蛋白であり、急性心筋梗塞等により心筋に壊死が起こると、高値を示すC−反応性蛋白(CRP)、
組織障害や感染により、血漿中で変化する急性相反応蛋白である血清アミロイドA蛋白(SAA)、
主に心筋や骨格筋に存在する分子量約17500のヘム蛋白であり、急性心筋梗塞、筋ジストロフィー、多発性筋炎、皮膚筋炎のマーカーとなるミオグロビン、骨格筋,心筋の可溶性分画を中心に存在し、細胞の損傷によって血液中に遊出する酵素であって、急性心筋梗塞、甲状腺機能低下症、進行性筋ジストロフィー症、多発性筋炎のマーカーとなるクレアチンキナーゼ(CK)(骨格筋由来のCK−MM型,脳、平滑筋由来のCK−BB型,心筋由来のCK−MB型の、三種のアイソザイム、ならびに、ミトコンドリア・アイソザイムや免疫グロブリンとの結合型CK(マクロCK))、
横紋筋の薄いフィラメント上でトロポニンI,Cとともにトロポニン複合体を形成し,筋収縮の調節に関与している分子量39,000の蛋白であり、横紋筋融解症、心筋炎、心筋梗塞、腎不全のマーカーとなるトロポニンT、
骨格筋・心筋いずれの細胞にも含まれる蛋白であり、測定結果の上昇は骨格筋、心筋の障害や壊死を意味するため、急性心筋梗塞症、筋ジストロフィー、腎不全のマーカーとなる心室筋ミオシン軽鎖I、
また、近年、ストレス・マーカーとして注目されてきているクロモグラニンA、チオレドキシン、8−OhdG、等が挙げられる。
上述する核酸、タンパク質、糖鎖、脂質及びそれらの複合体から選択される生体物質の多くは、当該生物が産生する内因性物質であるが、異種の生物においては、免疫原性物質として機能する。従って、当該生物が産生する内因性物質を、異種生物に対して、免疫原性物質として免疫感作することで、特異的な反応性を示す抗体を創製することが可能である。例えば、タンパク質、あるいは、タンパク質成分を含む複合体を免疫原とすると、一般に、立体構造を有するタンパク質分子上には、複数のエピトープ部位が存在し、対応して、各エピトープ部位と選択的に反応する抗体複数種、抗体複数種を含む坑血清、あるいはポリクローナル抗体を創製することが可能である。従って、標識物質である生体物質を免疫原として、特異的な抗体複数種を創製することが可能である際には、特異的な抗体の一つを、本発明にかかる有機物固定化構造体における、有機物として利用することが好適である。
一方、立体構造を有していない核酸分子は、免疫原性物質として機能を示さない場合があるが、特定の塩基配列を有する核酸分子に関しては、その塩基配列の相補性を利用して、プローブ・ハイブリダイゼーション法を適用して、DNAプローブと選択的に結合させることができる。すなわち、標識物質である核酸分子に対して、良好なハイブリダイゼーションが可能なDNAプローブを、本発明にかかる有機物固定化構造体における有機物として、好適に利用することができる。
また、糖鎖、脂質も多くの場合、免疫原として機能し、特異的な反応性を示す抗体を創製することが可能である。従って、標識物質である糖鎖、脂質を免疫原として、特異的な抗体複数種を創製することが可能である際には、特異的な抗体の一つを、本発明にかかる有機物固定化構造体における、有機物として好適に利用することができる。加えて、糖鎖、脂質に対して、当該生物自体がそらに対する受容体タンパク質を有していることもある。そのような内因性の受容体タンパク質が存在している、標識物質である糖鎖、脂質については、その内因性の受容体タンパク質を、本発明にかかる有機物固定化構造体における、有機物として好適に利用することができる。特に、糖鎖自体が、糖鎖間の相互作用が可能な構成を有する場合、この糖鎖間の相互作用を利用するプローブとして、本発明に利用することも可能である。
なお、本発明にかかる検出方法では、本発明にかかる有機物固定化構造体において、該有機物が示す、標的物質に対する結合能を利用して、標的物質を選択的に結合、固定化した上で、構造体上に固定、濃縮される標的物質の有無、あるいはその量を検出する。具体的には、検体中に低濃度で含有されている標的物質は、本発明にかかる有機物固定化構造体の表面に存在する、有機物によって選択的に結合、固定化され、その後、有機物固定化構造体を分離、回収することで、結果的に、濃縮がなされる。
この構造体上に固定、濃縮される標的物質を検出する手法は、従来既知の方法から適宜選択して用いることが可能である。例えば、標的物質を特異的に認識・結合する物質、例えば、抗体(所謂、二次抗体)などを利用し、この二次抗体を予め標識化しておき、構造体上に固定、濃縮される標的物質と反応した二次抗体の標識により、検出または定量が可能である。なお、前記標的物質を特異的に認識・結合する物質、特には、二次抗体は、対象とする標的物質と選択的に結合するものであって、本発明の有機物固定化構造体において、該有機物によって標的物質が結合された状態でも、対象とする標的物質と反応可能なものが利用される。すなわち、該有機物によって標的物質が結合される際に利用される、標的物質上の結合部位と、かかる抗体に対するエピトープ部位とが相違しているモノクロナル抗体、もしくは、そのような抗体を含む抗体群(ポリクローナル抗体)が利用可能である。場合によっては、該有機物によって標的物質が結合された状態では、標的物質自体には存在していないエピトープの発現が起こる場合もある。この有機物と標的物質との複合体に特有のエピトープ部位に特異的な反応性を有する抗体は、より選択性の高い二次抗体として好適に利用できる。
例えば、二次抗体など、標的物質を特異的に認識・結合する物質に対する標識化に利用される標識化合物としては、例えば、金等の金属またはラテックス等の有機材料から微粒子、特定波長域の励起光により蛍光を発する蛍光物質やその蛍光物質を反応生成物とする酵素、例えばHRP等を挙げることができる。二次抗体等のタンパク質を標識する方法としては、物理吸着による方法、あるいは、反応活性のある官能基を標識物質/或いは被標識物質に導入し、それを架橋点として化学結合を形成する化学結合法が挙げられる。
前記標的物質を特異的に認識・結合する物質に付されている標識を検出する方法としては、従来既知の検出方法を用いることができる。例えば、二次抗体に付す標識物質として、従来既知の標識物質、例えば、蛍光物質、発光物質、金属及び金属酸化物微粒子等を用いると、これら標識物質に対応する定量性の高い検出手段は従来から多く報告されている。
標識化に利用可能な、蛍光物質としては、従来既知の蛍光色素である、4−メチルウンベリフェロン,7−ヒドロキシ−4−ビフェニル−ウンベリフェロン,3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸2−フェニルアニリド,3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸2,4−ジメチルアニリド,6−ブロモ−2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸2−メチルアニリド,3−ヒドロキシ−2−アントラノイック酸2−メチルアニリド,ピレン,フルオレセイン,ペリレン,ローダミン,テキサスレッド等が挙げられる。
標識化に利用可能な、発光物質として、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが広く用いられている。
標識化に利用可能な、金属としては、金や銀、銅、白金、亜鉛、アルミニウム、リチウム、カリウムなどのアルカリ金属元素、ベリリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属元素、鉄、コバルト、ニッケルなどの磁性を帯びる金属など、任意の金属元素を含む金属元素含有微粒子が従来から利用されている。これら微粒子状の標識の検出には、例えば、プラズモン共鳴法が高い感度の点から好適に利用される。従って、プラズモン共鳴が起こりやすい金や銀、銅、アルミニウム、亜鉛、カリウムなどが、好適な例として挙げられるが、これらの金属元素に限定されるものではない。
また、標識化に利用可能な、半導体微粒子としては、ZnS,ZnSe,ZnTe,CdS,CdSe,CdTe,InGaAs,InPの半導体ナノ微粒子が挙げられる。また、一種類の半導体種から形成される微粒子のみでなく、より幅の広いバンドギャップを持つ半導体材料により被覆した半導体微粒子も含まれる。これら半導体微粒子の粒子径は、好ましくは、1nm〜50nmの範囲、より好ましくは、2nm〜20nmの範囲に選択することが望ましい。
標識化に利用可能な、強磁性材料微粒子としては、例えば、Fe34、γ−Fe23、Co−γ−Fe23、(NiCuZn)O・Fe23、(CuZn)O・Fe23、(Mn・Zn)O・Fe23、(NiZn)O・Fe23、SrO・6Fe23、BaO・6Fe23、SiO2で被覆したFe34、(粒子径 約20nm)[Enzyme Microb. Technol.,vol.2, p.2〜10(1980)参照]、更には、各種の高分子材料(ナイロン、ポリアクリルアミドタンパク質等)とフェライトとの複合微粒子等を挙げることができる。
また、本発明にかかる検出装置は、検体中の標的物質を検出する用途に適合する検出装置であり、その検出方式には、専ら、上述の本発明にかかる検出方法を適用するものである。従って、上述の本発明にかかる検出方法において、好適とされる態様は、本発明にかかる検出装置においても、好適な態様となる。
以下に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、これら実施例は、本発明にかかる最良の実施形態の一例ではあるが、本発明はかかる実施例に示す形態に限定されるものではない。
下記する実施例では、本発明にかかる有機体固定化構造体、特には、生体物質固定化基体の構成について、機能ドメインに相当する生体物質として、ポリヒドロキシアルカネ−ト(PHA)合成酵素タンパク質、また、結合ドメインとして、酸化珪素層親和性ペプチドを採用し、PHA合成酵素タンパク質のN末に、前記酸化珪素層親和性ペプチドを、リンカー配列を介して連結してなる、融合体型PHA合成酵素タンパク質を、表面に酸化珪素層を被覆した基板上に固定化してなる生体物質固定基板を例に採り、かかる生体物質固定基板の構成と、その製造方法に関して、具体的に説明する。
また、前記結合ドメインとして利用される、酸化珪素層親和性ペプチドのアミノ酸配列の取得方法に関しても、具体的に説明する。
これら実施例に先立ち、参照例1において、前記生体物質固定基板において利用される、酸化珪素層、具体的には、メソポーラス・シリカ(SBA−15)層の形成方法を、加えて、参照例2において、融合体型PHA合成酵素タンパク質を構成する、機能ドメインに相当する生体物質である、PHA合成酵素タンパク質の遺伝子組換え生産方法、ならびに、該組換え型PHA合成酵素タンパク質の酵素活性、その測定方法について、予め説明を加える。
さらには、実施例においては、融合体型PHA合成酵素タンパク質を、表面に酸化珪素層を被覆した基板上に固定化してなる生体物質固定基板において、固定化されている融合体型PHA合成酵素タンパク質が保持する酵素活性は、前記組換え型PHA合成酵素タンパク質の酵素活性を基準とした評価によって、検証がなされている。
(参照例1)
メソポーラス・シリカ(SBA−15)の作製
ポリ(エチレンオキサイド)−ポリ(プロピレンオキサイド)−ポリ(エチレンオキサイド);<エチレンオキサイド20単位、プロピレンオキサイド70単位、エチレンオキサイド20単位からなるブロック共重合体、以下、EO20−PO70−EO20>4g、0.041mol テトラエトキシシラン(TEOS)/0.24mol HCl、6.67mol H2Oからなるシリカ反応液を調製した。
このシリカ反応液を、35℃にて20時間反応させ、更に80℃にて48時間反応させた。続いて、500℃にて6時間加熱して、含まれるブロック共重合体樹脂EO20−PO70−EO20を燃焼させることにより、多孔性シリカを得た。
得られた多孔性シリカにおいて、平均孔径は、7.9nmで、孔間のシリカ壁面の平均的な厚さは、3nmであった。
(参照例2)
PHA合成酵素生産能を有する形質転換体の作製、及びPHA合成酵素の生産
PHA合成酵素生産能を有する形質転換体を以下の方法で作製した。
先ず、PHA合成酵素生産能を有するYN2株(Pseudomonas cichorii YN2, FERM BP−7375)を100 mlのLB培地(1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム、pH7.4)で30℃、一晩培養後、マーマーらの方法により、該YN2株の染色体DNAを分離回収した。得られた染色体DNAを制限酵素HindIIIで完全分解した。クローニング・ベクターには、pUC18を使用し、制限酵素HindIIIで切断した。末端の脱リン酸処理(Molecular Cloning, 1, 572 (1989); Cold Spring Harbor Laboratory出版)の後、DNAライゲーション・キット Ver.II(宝酒造)を用いて、ベクターの切断部位(クローニングサイト)に、染色体DNAのHindIII完全分解断片を連結・挿入した。この染色体DNA断片を組み込んだプラスミド・ベクターを用いて、大腸菌(Escherichia coli)HB101株を形質転換し、YN2株のDNAライブラリーを作製した。
次に、YN2株由来のPHA合成酵素遺伝子を含むDNA断片を選択するため、コロニー・ハイブリダイズ用のプロ−ブ調製を行った。配列番号:11ならびに配列番号:12の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを合成し(アマシャム・ファルマシア・バイオテク)、このオリゴヌクレオチド二種をプライマー対に用いて、染色体DNAをテンプレートとして、PCR増幅を行った。PCR増幅産物のDNA断片を単離し、コロニー・ハイブリダイゼーション用のプローブとして用いた。プローブの標識化は、市販のアルカリフォスパターゼ標識酵素系AlkPhosDirect(アマシャム・ファルマシア・バイオテク)を利用して行った。得られた酵素標識化プロ−ブを用いて、YN2株の染色体DNAライブラリーからコロニー・ハイブリダイゼーション法によって、目的とするPHA合成酵素遺伝子を含む組換えプラスミドを有する大腸菌菌株を選抜した。選抜した菌株から、アルカリ法によってプラスミドを回収することで、YN2株由来のPHA合成酵素遺伝子を含むDNA断片を得ることができた。
(配列番号:11)フォワード・プライマーの塩基配列
5'−TGCTGGAACT GATCCAGTAC−3'
(配列番号:12)リバース・プライマーの塩基配列
5'−GGGTTGAGGA TGCTCTGGAT GTG−3'

ここで取得したPHA合成酵素遺伝子DNA断片を、不和合性グル−プであるIncP、IncQ、あるいはIncWの何れにも属さない、広宿主域複製領域を含むベクター pBBR122(Mo Bi Tec)に組み換えた。この組み換えプラスミドを、シュードモナス・チコリアイ YN2ml株(PHA合成能欠損株)にエレクトロポレーション法により形質転換したところ、形質転換したYN2ml株では、PHA合成能が復帰し、相補性を示した。従って、選抜された遺伝子DNA断片は、少なくとも、シュードモナス・チコリアイ YN2ml株内において、PHA合成酵素に翻訳可能な、PHA合成酵素遺伝子領域を含むことが確認される。
このYN2株由来のPHA合成酵素遺伝子を含むDNA断片について、サンガー法により塩基配列を決定した。その結果、決定された塩基配列中には、それぞれペプチド鎖をコ−ドする、配列番号:7ならびに配列番号:8で示される二種の塩基配列が存在することが確認された。下で述べるように、この二種の塩基配列でコードされる、二種のペプチド鎖からなるタンパク質は、ともに、PHA合成酵素活性を有しており、配列番号:7と配列番号:8で示される塩基配列は、それぞれPHA合成酵素遺伝子であることを確認することができた。すなわち、配列番号:9に示すアミノ酸配列が、配列番号:7の塩基配列によりコードされており、配列番号:10に示すアミノ酸配列は、配列番号:8の塩基配列によってコードされており、この二種のアミノ酸配列を有するタンパク質の何れか一方のみでも、PHA合成能が発揮されることを確認した。
配列番号:7で示される塩基配列のPHA合成酵素遺伝子に関して、染色体DNAをテンプレートとして、PCR増幅を行って、完全長のPHA合成酵素遺伝子を再調製した。
配列番号:8で示される塩基配列に対して、上流側プライマーとなる、その開始コドンよりも上流の塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(配列番号:15)、ならびに下流側プライマーとなる、終止コドンよりも下流の塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(配列番号:13)をそれぞれ設計・合成した(アマシャム・ファルマシア・バイオテク)。この二種のオリゴヌクレオチドをプライマー対として、染色体DNAをテンプレートとしてPCR増幅を行って、完全長のPHA合成酵素遺伝子を増幅した(LA−PCRキット;宝酒造)。
(配列番号:15) 上流側プライマーの塩基配列
5'−GGACCAAGCT TCTCGTCTCA GGGCAATGG−3'
(配列番号:13) 下流側プライマーの塩基配列
5'−CGAGCAAGCT TGCTCCTACA GGTGAAGGC−3'

同様に、配列番号:8で示される塩基配列のPHA合成酵素遺伝子についても、染色体DNAをテンプレートとして、PCR増幅を行い、完全長のPHA合成酵素遺伝子を再調製した。配列番号:8で示される塩基配列に対して、上流側プライマーとなる、その開始コドンよりも上流の塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(配列番号:14)および下流側プライマーとなる、終止コドンよりも下流の塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(配列番号:16)をそれぞれ設計・合成した(アマシャム・ファルマシア・バイオテク)。このオリゴヌクレオチドをプライマーとして、PCRを行い、PHA合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA−PCRキット;宝酒造)。
(配列番号:14) 上流側プライマーの塩基配列
5'−GTATTAAGCT TGAAGACGAA GGAGTGTTG−3'
(配列番号:16) 下流側プライマーの塩基配列
5'−CATCCAAGCT TCTTATGATC GGGTCATGCC−3'

次に、上述する二種の得られた完全長のPHA合成酵素遺伝子を含むPCR増幅断片を、それぞれ、制限酵素HindIIIを用いて完全分解した。また、発現ベクター pTrc99Aも制限酵素HindIIIで切断し、脱リン酸化処理(Molecular Cloning、 1巻、 572頁、 1989年; Cold Spring Harbor Laboratory出版)した。この発現ベクター pTrc99AのHindIII切断部位に、両末端の不用な塩基配列を除いた、完全長のPHA合成酵素遺伝子を含むDNA断片を、それぞれ、DNAライゲ−ション・キット Ver.II(宝酒造)を用いて連結して、二種の組換えプラスミドを作製した。
得られた組換えプラスミドにより、大腸菌(Escherichia coli HB101:宝酒造)を塩化カルシウム法により形質転換した。得られた組換え体を培養し、組換えプラスミドの増幅を行い、組換えプラスミドをそれぞれ回収した。配列番号:7の塩基配列を含む完全長のPHA合成酵素遺伝子DNAを保持する組換えプラスミドを、pYN2−C1(配列番号:11由来)、配列番号:8の塩基配列を含む完全長のPHA合成酵素遺伝子DNAを保持する組換えプラスミドを、pYN2−C2(配列番号:12由来)とした。
組換えプラスミドpYN2−C1、pYN2−C2をそれぞれ用いて、大腸菌(Escherichia coli HB101fB fadB欠損株)を塩化カルシウム法により形質転換し、各組換えプラスミドを保持する組換え大腸菌株、pYN2−C1組換え株、pYN2−C2組換え株を得た。
pYN2−C1組換え株、pYN2−C2組換え株を、それぞれを酵母エキス0.5%、オクタン酸0.1%とを含むM9培地200mlに植菌して、37℃、125ストロ−ク/分で振盪培養した。24時間後、菌体を遠心分離によって回収し、常法によりプラスミドDNAを回収した。
pYN2−C1に対して、上流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:17)および下流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:18)をそれぞれ設計・合成した(アマシャム・ファルマシア・バイオテク)。この二種のオリゴヌクレオチドをプライマー対に用いて、pYN2−C1をテンプレートとしてPCR増幅を行い、上流にBamHIおよびSacI制限部位、下流にSpeIおよびXhoI制限部位を有する、完全長のPHA合成酵素遺伝子を含むDNAを増幅産物として得た(LA−PCRキット;宝酒造)。
上流側プライマー(配列番号:17):
5'−AGTGGATCCT CCGAGCTCAG TAACAAGAGT AACGATGAGT TGAAG−3'
下流側プライマー(配列番号:18):
5'−ATACTCGAGA CTACTAGTCC GTTCGTGCAC GTACGTGCCT GGCGC−3'

同様に、pYN2−C2に対して、上流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:19)および下流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:20)をそれぞれ設計・合成した(アマシャム・ファルマシア・バイオテク)。この二種のオリゴヌクレオチドをプライマー対に用いて、pYN2−C2をテンプレートとしてPCR増幅を行い、上流にBamHI制限部位、下流にXhoI制限部位を有する、完全長のPHA合成酵素遺伝子を含むDNAを増幅産物として得た(LA−PCRキット;宝酒造)。
上流側プライマー(配列番号:19):
5'−ATACTCGAGA CTACTAGTGC GCACGCGCAC GTAAGTCCCG GGCGC−3'
下流側プライマー(配列番号:20):
5'−AGTGGATCCT CCGAGCTCCG CGATAAACCT GCGAGGGAGT CACTA−3'

精製したそれぞれのPCR増幅産物を、制限酵素BamHIおよびXhoIにより消化し、プラスミドpGEX−6P−1(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)の対応する部位に挿入した。これらの二種のベクター(pGEX−C1およびpGEX−C2)を用いて、大腸菌(JM109)を形質転換し、発現用菌株を得た。各菌株における発現ベクター導入の確認は、Miniprep(Wizard Minipreps DNA Purification Systems、PROMEGA社製)を用いて大量に調製したプラスミドDNAを、制限酵素BamHI、XhoIで処理して得られるDNA断片の分子量確認によって行った。得られた発現用菌株をLB−Amp培地10mlで一晩プレ・カルチャ−した後、その培養物0.1mlを、10mlのLB−Amp培地に添加し、37℃、170rpmで3時間振とう培養した。その後、IPTG(終濃度 1mM)を添加し、37℃で4〜12時間培養を続けた。
IPTG誘導した大腸菌を遠心(8000×g、 2分、4℃)して、集菌し、1/10量の4℃ PBSに再懸濁した。凍結融解およびソニケーションにより菌体を破砕し、遠心(8000×g、 10分、4℃)して、固形夾雑物を取り除いた。発現された目的タンパク質(GST融合タンパク質)が上清に存在することを、SDS−PAGEで確認した後、誘導・発現されたGST融合タンパク質をグルタチオン・セファロ−ス4B(Glutathion SePHArose 4B beads:アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)で精製した。
使用したグルタチオン・セファロ−スは、予め非特異的吸着を抑える処理を行った。すなわち、グルタチオン・セファロ−スを同量のPBSで3回洗浄(8000×g、1分、4℃)した後、4%BSA含有PBSを同量加えて4℃で1時間処理した。処理後、同量のPBSで2回洗浄し、1/2量のPBSに再懸濁した。前処理したグルタチオン・セファロ−ス 40μLを、無細胞抽出液1mlに添加し、4℃で静かに攪拌した。この攪拌処理により、GST融合タンパク質GST−YN2−C1およびGST−YN2−C2を、融合パートナーGSTの結合能を利用して、グルタチオン・セファロ−ス上に吸着させた。
吸着後、遠心(8000×g、 1分、4℃)して、グルタチオン・セファロ−スを回収し、400μLのPBSで3回洗浄した。その後、10 mM グルタチオン40μLを添加し、4℃で1時間攪拌して、吸着したGST融合タンパク質を溶出した。遠心(8000×g、2分、4℃)して、GST融合タンパク質を含む上清を回収した。その後、PBSに対して透析し、GST融合タンパク質を精製した。精製後、SDS−PAGEにより、シングルバンドを示すことを確認した。
各GST融合タンパク質500μgを、PreScissionプロテア−ゼ(アマシャム・ファルマシア・バイオテク、5U)で消化して、N末の融合パートナーGST部とC末側のPHA合成酵素タンパク質とを分離した後、グルタチオン・セファロ−ス・カラムに通して、プロテアーゼとGSTを除去した。グルタチオン・セファロ−ス・カラムのフロー・スルー分画を、さらに、PBSで平衡化したセファデックスG200カラムにかけ、発現タンパク質YN2−C1およびYN2−C2の最終精製物を得た。SDS−PAGEにより、最終精製済みの発現タンパク質YN2−C1およびYN2−C2は、それぞれ60.8kDa、および61.5kDaのシングルバンドを示すことを確認した。

各精製酵素タンパク質の活性は以下の方法で測定した。
PHA合成酵素の活性測定は、基質の3−ヒドロキシアシルCoAがPHA合成酵素の触媒作用により重合してPHAになる過程で放出されるCoAの量を、5、5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)で発色させて測定する、評価方法に基づき、以下の手順で測定した。
試薬1:ウシ血清アルブミン(Sigma社製)を、0.1 M トリス塩酸バッファー(pH8.0)に3.0 mg/ml溶解、
試薬2:3’−ヒドロキシオクタノイルCoAを、0.1 M トリス塩酸バッファー(pH8.0)に3.0 mM溶解、
試薬3:トリクロロ酢酸を、0.1 M トリス塩酸バッファー(pH8.0)に10 mg/ml溶解、
試薬4:5、5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)を、0.1 M トリス塩酸バッファー(pH8.0)に2.0 mM溶解。
第1反応(PHA合成反応):試料(酵素)溶液100μlに、試薬1を100μl添加・混合し、30℃で1分間プレインキュベートする。次いで、この液に、試薬2を100μl添加・混合し、30℃で1〜30分間インキュベートした後、試薬3を添加して、酵素反応を停止させる。
第2反応(遊離CoAの発色反応):反応停止した第1反応液を、遠心分離(15,000×g、10分間)し、上清を採取する。この上清500μlに、試薬4を500μl添加し、30℃で10分間インキュベ−トした後、412 nmの吸光度を測定して、含有されていたCoAの濃度を決定する。
酵素活性の算出:1分間に1μmolのCoAを放出させる酵素量を1単位(U)とする。
また、試料中のタンパク質濃度は、マイクロBCAタンパク質定量試薬キット(ピアスケミカル社製)によって測定した。表1に、各精製酵素の活性測定の結果を示す。
Figure 0004429105
測定された活性に基づき、前記酵素溶液を生体溶液試料濃縮剤(みずぶとりくん AB−1100、アトー(株)製)を用いて濃縮し、10 U/mlの精製酵素溶液を得た。
以下に示す、実施例では、比活性の高いPHA合成酵素タンパク質YN−C1を用いる。
(実施例1)
メソポーラス・シリカ(SBA−15)に対する親和性を有するアミノ酸配列の取得
(ステップ1)
前記参照例1に記載するメソポーラス・シリカSBA−15を、0.1%Tween−20/TBSバッファー(50 mM Tris−HCl pH 7.5、150 mM NaCl)<以下、TBSTバッファー>に5 mg/mlの濃度に成るように懸濁した。この10μlをエッペンドルフチューブに加え、990μl TBSTバッファー(TBSバッファー+0.1%Tween−20)を加えて希釈した。
(ステップ2)
PhD.−12ファージ・ディスプレイ・ペプチド・ライブラリー(NEW ENGLAND BIOLAB社製)の4×1010pfu相当を、前記チューブに添加し、25℃で30分間静置した。
(ステップ3)
前記チューブを遠心分離(20,630×g、5分間)した後、上清を捨て、沈澱画分としてSBA−15を回収した。回収した沈澱を再びTBSTバッファーに懸濁し、遠心分離し、沈澱画分を回収する操作を繰り返すことによって、SBA−15をTBSTバッファーで10回洗浄した。
(ステップ4)
洗浄済みのSBA−15に100μlの溶出バッファー(0.2M Glycine−HCl(pH2.2)、1mg/ml BSA)を加えて、10分間緩やかに振盪させた後、遠心分離(20,630×g、5分間)し、上清を別のエッペンドルフチューブに移した。分取された上清に、15μlの1M Tris−HCl(pH9.1)を加えて中和し、SBA−15上から溶出されたファージを得た。
(ステップ5)
溶出されたファージを、対数増殖初期の大腸菌ER2537(NEW ENGLAND BIOLAB社製)に感染させ、下記の手順に従って増幅した。
感染後、大腸菌を37℃で4.5時間培養した。次に、遠心分離により、ファージを大腸菌から分離し、上清からポリエチレングリコールにより沈澱させて、精製した。増幅、精製されたファージは、TBSバッファーに懸濁し、該ファージ懸濁液について、適当な希釈系列で大腸菌に感染させることによって、その力価(Titer)を測定した。
(ステップ6)
上記のファージの提示するペプチドについて、メソポーラス・シリカSBA−15に対する親和性に関する、一次スクリーニングされた該懸濁液に含まれるファージについて、前記ステップ1〜ステップ5のスクリーニング操作を更に4回繰り返した。但し、二次スクリーニング以降、洗浄に用いる、TBSTバッファー中のTween−20濃度を0.5%に上げることによって、ステップ3における洗浄条件を厳しくし、メソポーラス・シリカSBA−15に対して、より高い親和性を示すファージを選別した。また、三次スクリーニング(2回目)以降では、前記ステップ3における洗浄によって、SBA−15から離脱したファージに関しても、同様の操作を行い、その力価(Titer)を測定し、コントロールとした。
以上、1次スクリーニング〜5次スクリーニングの各回において、SBA−15上から溶出されたファージの力価(titer)を表2に示す。
Figure 0004429105
上記のスクリーニング操作において選別された、最終スクリーニング・ステップで溶出されたファージを、大過剰の大腸菌に感染させることによってクロ−ン化した。
分離される各クロ−ンを、大腸菌に感染させ、増幅した後、各クローンのファージからssDNAを調製し、ランダム領域の塩基配列を解読することによって、SBA−15に対して高い親和性を有する15クローンのファージを取得した。
取得された15クローンのファージに対して、ファージELISAによって酸化珪素に対する親和性評価を行い、また、各ファージの提示ペプチド部をコードするDNA配列を解析して、酸化珪素に対する結合能を示すペプチドのアミノ酸配列を決定した。

1)ファージELISAによる酸化珪素親和性評価
(ステップ1)
SBA−15を、0.1%Tween−20/TBSバッファー(50 mM Tris−HCl pH 7.5、150 mM NaCl)<以下、TBST>に5 mg/mlの濃度になるように懸濁した。この懸濁液10μlをエッペンドルフチューブに加え、990μl TBSTバッファー(TBSバッファー+0.1%Tween−20)を加えて希釈した。
(ステップ2)
PhD.−12ファージ・ディスプレイ・ペプチド・ライブラリー(NEWENGLAND BIOLAB)から選別された上記15クローンの各クローンのファージ懸濁液について、該懸濁液の4×1010pfu相当を前記チューブに添加し、25℃で30分間静置した。
(ステップ3)
前記チューブを遠心分離(20,630×g、5分間)した後、上清を捨て、沈澱画分としてSBA−15を回収した。回収した沈澱を再びTBSTバッファーに懸濁し、遠心分離し、沈澱画分を回収する操作を繰り返すことによって、SBA−15をTBSTバッファーで10回洗浄した。
(ステップ4)
上記チューブ中の洗浄済みSBA−15に、100μlのHRP結合抗M13抗体溶液(抗M13抗体(NEW ENGLAND BIOLAB社製)1μLをTBST10mLに懸濁)を加えて、60分間緩やかに振盪させた。次に、チューブを遠心分離(20,630×g、5分間)した後、上清を捨て、沈澱画分としてSBA−15を回収した。回収した沈澱を再びTBSTバッファーに懸濁し、遠心分離し、沈澱画分を回収する操作を繰り返すことによって、SBA−15をTBSTバッファーで5回洗浄した。
(ステップ5)
SBA−15上に結合しているファージに前記HRP結合抗M13抗体を反応させる処理を施した、SBA−15の沈澱を、50μLのDetction Reagent1(Amersham Pharmacia #RPN2209)で懸濁し、96穴タイタープレートの各ウェルに移す。
さらに、50μLのDetction Reagent2(Amersham Pharmacia #RPN2209)を加えて、3分後、HRP結合抗M13抗体中の標識酵素HRPの作用により得られる、428nmにおけるルミノール発光強度を測定した。
表3に、各クローンに対する評価結果を示す。なお、I420は420nmでの発光強度を示す。
Figure 0004429105
なお、上記ファージELISA測定系において、ステップ2において、SBA−15と接触させる液にファージを混合していない場合(コントロール)に観測される、発光強度は、0.0009であった。
以上の評価によって、得られた15のファージ・クローンが提示するペプチドは、いずれも酸化珪素親和性を有することが確認された。

2)酸化珪素との結合能を示すアミノ酸配列
選別された15のファージ・クローンについて、該ファージのDNA配列解析結果から、各ファージのランダム・ペプチド提示領域のアミノ酸配列を対比して、酸化珪素に対する親和性に関与すると推定されるアミノ酸配列を特定した。表4に、特定された酸化珪素に対する親和性を示すアミノ酸配列と、その出現頻度を示す。
Figure 0004429105
(実施例2)
前記SBA−15に対する親和性を示すアミノ酸配列を含むペプチドを付加したPHA合成酵素を、以下の手順により調製した。
実施例1において取得された、SBA−15に対する親和性を示すアミノ酸配列(配列番号:1と配列番号:2)を、リンカー配列GGGSを介して、PHA合成酵素のN末端に融合してなる、PHA合成酵素融合体を発現する大腸菌発現ベクターを次のようにして構築した。これらのアミノ酸配列をコ−ドするDNA断片を、二本鎖DNAとして作製するために、下記の表5に示す塩基配列を有する合成オリゴヌクレオチドのセットを用意した。
Figure 0004429105
表5に挙げた、各アミノ酸配列に対する二種の合成DNAは、それぞれ製造業者の説明に従い、T4ポリヌクレオチドキナ−ゼ(Gibco製)を用いて、末端をリン酸化した。続いて、二種の合成DNAを等モル混合し、80℃で5分間加熱し、その後、室温までゆっくり冷却させることによって、二本鎖DNA断片を形成した。形成された二本鎖DNA断片は、その後のクロ−ニングに直接用いた。
参照例2で作製したプラスミドpGEX−C1を、制限酵素BamHIおよびSacIにより消化し、前記二本鎖DNA断片を挿入した。このベクターを用いて、大腸菌(JM109)を形質転換し、発現用菌株を得た。各菌株における発現ベクター導入の確認は、Miniprep(Wizard Minipreps DNA Purification Systems、PROMEGA社製)を用いて調製したプラスミドDNAをテンプレートとして、pGEX 5’ Sequencing Primer(アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)を用いたシークエンシングによって、制限酵素BamHIおよびSacI部位間にインサートされている塩基配列を決定することによって行った。得られた発現用菌株を、LB−Amp培地10mLで一晩プレ・カルチャーした後、その培養物0.1mLを、10mLのLB−Amp培地に添加し、37℃、170rpmで3時間振とう培養した。その後、IPTG(終濃度 1mM)を添加し、37℃で4〜12時間培養を続けた。
IPTG誘導した大腸菌を集菌(8000×g、2分、4℃)し、1/10量の4℃ PBSに再懸濁した。凍結融解およびソニケーションにより菌体を破砕し、遠心(8000×g、10分、4℃)して、固形夾雑物を取り除いた。目的の発現タンパク質が、上清に存在することを、SDS−PAGEで確認した。その後、上清から、誘導・発現されたGST融合タンパク質を、グルタチオン・セファロ−ス4B(Glutathion Sepharose 4B beads:アマシャム・ファルマシア・バイオテク社製)で精製した。なお、誘導・発現されるGST融合タンパク質は、融合パートナーのGSTタンパク質のC末と、PHA合成酵素タンパク質YN2−C1のN末との間に、上記配列番号:1のアミノ酸配列とリンカー配列GGGSとが連結されるペプチド鎖が挿入されている融合タンパク質GST−01−YN2−C1、または、融合パートナーのGSTタンパク質のC末と、PHA合成酵素タンパク質YN2−C1のN末との間に、上記配列番号:2のアミノ酸配列とリンカー配列GGGSとが連結されるペプチド鎖が挿入されている融合タンパク質GST−02−YN2−C1である。
使用したグルタチオン・セファロ−スは、予め非特異的吸着を抑える処理を行った。すなわち、グルタチオン・セファロ−スを同量のPBSで3回洗浄(8000×g、1分、4℃)した後、4%BSA含有PBSを同量加えて4℃で1時間処理した。処理後、同量のPBSで2回洗浄し、1/2量のPBSに再懸濁した。前処理したグルタチオン・セファロ−ス 40μLを、無細胞抽出液(上清)1mLに添加し、4℃で静かに攪拌した。この攪拌により、融合タンパク質GST−01−YN2−C1、あるいは、GST−02−YN2−C1をグルタチオン・セファロ−スに吸着させた。
吸着後、遠心(8000×g、1分、4℃)して、グルタチオン・セファロ−スを回収し、400μLのPBSで3回洗浄した。その後、10 mMグルタチオン40μLを添加し、4℃で1時間攪拌して、吸着した融合タンパク質を溶出した。遠心(8000×g、2分、4℃)して、融合タンパク質を含む上清を回収した後、PBSに対して透析し、GST融合タンパク質を精製した。精製後、SDS−PAGEにより、シングルバンドを示すことを確認した。
各GST融合タンパク質500μgを、PreScissionプロテア−ゼ(アマシャム・ファルマシア・バイオテク、5U)で消化して、N末の融合パートナーGST部を切断分離した。この液をグルタチオン・セファロ−ス・カラムに通して、プロテアーゼとGSTを除去した。グルタチオン・セファロ−ス・カラムのフロー・スルー分画を、さらに、PBSで平衡化したセファデックスG200カラムにかけ、ペプチド融合タンパク質01−YN2−C1、あるいは、02−YN2−C2の最終精製物を得た。SDS−PAGEにより、最終精製済みの発現タンパク質01−YN2−C1および02−YN2−C2は、それぞれシングルバンドを示すことを確認した。
得られる最終精製済みの発現タンパク質01−YN2−C1および02−YN2−C2について、それぞれ酵素活性は、上記参照例2に記載の方法で測定した。また、試料中のタンパク質濃度は、マイクロBCAタンパク質定量試薬キット(ピアスケミカル社製)によって測定した。試料の酵素活性は、1.9 U/ml、また比活性は、4.0 U/mgタンパク質であった。最終精製済み酵素溶液を生体溶液試料濃縮剤(みずぶとりくん AB−1100、アトー(株)製)を用いて濃縮し、10 U/mlの精製酵素溶液を得た。
(実施例3)
ペプチド融合タンパク質01−YN2−C1、02−YN2−C2のSBA−15に対する親和性評価
SBA−15を0.1%Tween−20/TBSバッファーに0.5%(w/v)になるように懸濁した。この懸濁液10mlをテフロン製遠沈管にとり、ここに、実施例2で調製した、ペプチド融合PHA合成酵素01−YN2−C1、02−YN2−C1、あるいは、参照例2で調製したPHA合成酵素YN2−C1の0.5U相当量を加え、室温で30分間振とうした。遠心分離操作(10,000×g、4℃、10分間)によって、SBA−15粒子を沈澱として回収し、SBA−15に結合しなかった酵素タンパク質を含む上清と分離した。沈澱画分として、回収されるSBA−15を再び0.1%Tween−20を含むTBSバッファーに懸濁し、遠心分離して、沈澱画分を回収する操作を繰り返すことによって、SBA−15を洗浄した。表6に、洗浄したSBA−15の懸濁液について、上記参照例2に記載する測定方法で、酵素活性を測定した結果を示す。
Figure 0004429105
コントロ−ルの酵素タンパク質YN2−C1と比較して、N末にSBA−15に対する結合能を有するアミノ酸配列のペプチド鎖を融合している酵素タンパク質01−YN2−C1ならびに02−YN2−C1において、観測される酵素活性は高く、N末に融合されているSBA−15に対する結合能を有するアミノ酸配列のペプチド鎖を介して、酵素タンパク質が有効に酸化珪素からなる基材表面に固定化できることが確認された。
(実施例4)
SBA−15に対する親和性を有する二種類のアミノ酸配列、Val−Ser−Pro−Met−Arg−Ser−Ala−Thr−Thr−His−Thr−Val(配列番号:1)およびIle−Pro−Met−His−Val−His−His−lys−His−Pro−His−Val(配列番号:2)の全部を、スペーサー配列Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Serを介して、この順番に直列に繋いだ配列 Val−Ser−Pro−Met−Arg−Ser−Ala−Thr−Thr−His−Thr−Val−Gly−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Ser−Ile−Pro−Met−His−Val−His−His−lys−His−Pro−His−Val(配列番号:21)を、さらにリンカー配列GSを介して、PHA合成酵素のN末端に融合した融合タンパク質を発現する、大腸菌用発現ベクターを次のようにして構築した。
この配列番号:21のアミノ酸配列とリンカー配列GSをコ−ドするDNAは、二種類の合成オリゴヌクレオチド:
5’−GATCCGTGAGCCCCATGAGGAGCGCCACCACCCACACCGTGCGGCGGCGGCAGCGGCGGCGGCAGCATCCCCATGCACGTGCACCACAAGCACCCCCACGTGGGAGCTGAGCT−3’(配列番号:22)および
5’−AGCTCCCACGTGGGGGTGCTTGTGGTGCACGTGCATGGGGATCTGCCGCCGCCGCTGCCGCCGCCGCACGGTGTGGGTGGTGGCGCTCCTCATGGGGCTCAC−3’(配列番号:23)を
それぞれT4ポリヌクレオチドキナ−ゼ(Gibco製)を用いて、末端をリン酸化した後、等モル混合し、80℃で5分間加熱し、その後、室温までゆっくり冷却させることによって二本鎖DNA断片として形成させた。形成された二本鎖DNA断片は、実施例2と同様にして、プラスミドpGEX−C1のBamHI/SacIサイトに挿入し、このベクターを用いて大腸菌(JM109)を形質転換し、発現用菌株を得た。実施例2と同様にして、配列番号:21のアミノ酸配列とリンカー配列GSからなるペプチドをN末端に融合した発現タンパク質21−YN2−C1を精製し、10 U/mlの精製酵素溶液を得た。実施例3と同様にして、SBA−15上に結合されている酵素タンパク質に起因する酵素活性を測定して、この精製酵素タンパク質のSBA−15に対する親和性を評価した。表7に、測定結果を示す。
Figure 0004429105
コントロ−ルの酵素タンパク質YN2−C1と比較して、N末にSBA−15に対する結合能を有する二つのアミノ酸配列を含むペプチド鎖を融合している酵素タンパク質21−YN2−C1において、観測される酵素活性は高く、N末に融合されているSBA−15に対する結合能を有する二つのアミノ酸配列を含むペプチド鎖を介して、酵素タンパク質がより有効に酸化珪素からなる基材表面に固定化できることが確認された。
(実施例5)
本実施例5は、酸化珪素層被覆したシリコン基板上に酸化珪素層親和性ペプチドを融合したポリヒドロキシアルカネ−ト(PHA)合成酵素を固定して得られる有機物固定化構造体及びその製造方法の一例である。図1は、本実施例5の有機物固定化構造体の構成を模式的に示す断面図である。
(1)多孔性シリカ被覆層を有する基板の作製
本実施例5の有機物固定化構造体における基板11として、シリコン基板を用いる。
先ず、シリコン基板上に、参照例1と同様にして調製したSBA−15反応液をスピンコーターにより塗布する。メソポーラス・シリカ(SBA−15)被膜層形成のための、加熱処理の温度条件は参照例1に記載の条件と同じとする。この手法により、シリコン基板11上に、平均厚さ100nmのメソポーラス・シリカ膜を被覆形成した。
シリコン基板11上に形成されたメソポーラス・シリカ(SBA−15)膜は、0.1%Tween−20を含むTBSバッファー(50 mM Tris−HCl(pH7.5)、150 mM NaCl)で洗浄しても、基板表面から脱離しないことの確認を行った。以上の工程によって、シリコン基板11の表面を、多孔性シリカ:SBA―15からなる酸化珪素層12が被覆している、SBA−15被覆シリコン基板(以下、実施例5では、シリカ被覆基板と称する)が作製された。
(2)シリカ被覆基板に対する親和性の評価
実施例2に記載の方法により得られた、配列番号:1のアミノ酸配列を有するペプチドがN末端に連結されてなるPHA合成酵素タンパク質01−YN2−C1を用いて、以下の評価を行った。
(1)で作製したシリカ被覆基板を30ml TBSバッファーが入ったシャーレに浸漬しする。次に、上記実施例2で調製されるPHA合成酵素タンパク質01−YN2−C1、または参照例2で調製されるPHA合成酵素タンパク質YN2−C1 2.5U相当量を加え、室温でゆっくりと1時間間振とうする。シリカ被覆基板をシャーレから取り出した後、基板表面をTBSバッファーにより10回洗浄した。洗浄したシリカ被覆基板を、再びTBSバッファー中に浸漬し、PHA合成酵素活性を上記参照例2に記載の評価方法に準じて測定した。表8に、PHA合成酵素活性の測定結果を示す。
Figure 0004429105
コントロ−ルの酵素タンパク質YN2−C1と比較して、N末にSBA−15に対する結合能を有するアミノ酸配列を含むペプチド鎖を融合している酵素タンパク質01−YN2−C1において、観測される酵素活性は高く、N末に融合されているSBA−15に対する結合能を有するアミノ酸配列を含むペプチド鎖を介して、酵素タンパク質がより有効にシリカ被覆基板の表面に固定化できることが確認された。また、この酸化珪素に対する親和性を有するアミノ酸配列を含むペプチド鎖を、結合ドメイン15として、PHA合成酵素タンパク質のN末に融合している融合体は、該結合ドメイン15を介して、酸化珪素からなる表面被覆層14上に安定に固定化されており、この構成を有する構造体は、表面に固定化されている機能ドメイン14に相当するPHA合成酵素タンパク質部は、本来の酵素活性を保持しており、バイオリアクタとして利用できることが示唆される。
さらに、PHA合成酵素に対する基質濃度を、
試薬2:3’−ヒドロキシオクタノイルCoA/0.1 M Tris−HClバッファー(pH8.0)溶液、基質を3.0mM溶解、に加えて、
試薬2−1;3’−ヒドロキシオクタノイルCoA/0.1 M Tris−HClバッファー(pH8.0)溶液、基質を1.5mM溶解、
試薬2−2;3’−ヒドロキシオクタノイルCoA/0.1 M Tris−HClバッファー(pH8.0)溶液、基質を6.0mM溶解
を用いた系においても、それぞれ、シリカ被覆基板上に固定化された酵素タンパク質01−YN2−C1によるPHA合成酵素活性を測定した。表9に、異なる基質濃度に対する、シリカ被覆基板上に固定化された酵素タンパク質01−YN2−C1の酵素活性の評価結果を示す。
Figure 0004429105
反応系内に添加される基質3’−ヒドロキシオクタノイルCoAの濃度依存的に反応量が変化しており、酸化珪素に対する親和性を有するアミノ酸配列を含むペプチド鎖を介して、シリカ被覆基板上に固定化された酵素タンパク質01−YN2−C1は、本来の酵素活性を保持しており、バイオリアクタとして利用できることが示唆される。
(実施例6)
HEL結合性scFv/SBA−15親和性ペプチド融合タンパク質の作製
SBA−15親和性ペプチドIPMHVHHKHPHV(配列番号:2)をHEL結合性scFvのC末端に融合したタンパク質を以下の工程により作製する。
(1)発現ベクター作製
予め、HEL結合性scFvの構成要素となるVL(クローン名:VL_HEL、配列番号:24にそのアミノ酸配列、ならびに配列番号:25に前記アミノ酸配列をコードする塩基配列を示す)、VH(クローン名:VH_HEL、配列番号:26にそのアミノ酸配列、ならびに配列番号:27に前記アミノ酸配列をコードする塩基配列を示す)のコード遺伝子断片を、それぞれ、pET−15b(Novagen社)のマルチ・クローニングサイトを部分的に変更したべクター中に挿入する。図2に示すように、VLコード遺伝子が挿入されているベクター:pUT−VL_HEL、VHコード遺伝子が挿入されているベクター:pUT−VH_HELとする。
次に、VLのアミノ酸配列(配列番号:24)、scFv分子内リンカー配列(GGGGS)×3、VHのアミノ酸配列(配列番号:26)、GSリンカー(融合ドメイン間リンカー)、SBA−15親和性ペプチド(配列番号:2:IPMHVHHKHPHV)、His×6(以下、Hisタグ)の順で連続したポリペプチド鎖の翻訳が可能な、発現ベクター pUT−scFv(HEL)を以下のように作製する。
VHコード遺伝子が挿入されているベクター:pUT−VH_HELをテンプレートして、下記のプライマーを用いて、PCR産物を調製する。
SiscFv−B(配列番号:28)
5'- NNNNNACGGC CGGCGGGGGC GGTAGCGGCG GTGGCGGGTC GGGCGGTGGC GGATCGGATA TCCAGCTGCA GGAGT -3'
SiscFv−F(配列番号:29)
5'- NNNNNCCGCG GGTGGGGGTG CTTGTGGTGC ACGTGCATGG GGATGCTACC CGCGGAGACG GTGACGAGGG T -3'

前記フォワード側プライマー:SiscFv−Bは、5’末端部にリンカー配列(GGGGS)×3をコードする塩基配列を含み、一方、リバース側プライマー:SiscFv−Fは、5’末端部にスペーサー配列GS、SBA−15親和性ペプチド(配列番号:2:IPMHVHHKHPHV)をコードする塩基配列に対して、相補的な塩基配列を含んでいる。従って、得られるPCR産物は、リンカー配列(GGGGS)×3、VHのアミノ酸配列(配列番号:26)、GSリンカー、SBA−15親和性ペプチド(配列番号:2:IPMHVHHKHPHV)からなるアミノ酸配列をコードする塩基配列を包含している。なお、PCR反応は、市販のPCRキット(タカラバイオ LA−Taqキット)を使用し、業者推奨のプロトコールに従って行う。
PCR反応後、得られるPCR産物は、2%アガロース電気泳動を行って、目的とする塩基長のDNA断片のバンドとして回収する。次に、ゲル抽出キット(Promega社)を使用して、ゲルから粗精製を行い、約400bpのDNA断片を得る。シークエンスを行い、目的の塩基配列を有することを確認する。
VLコード遺伝子が挿入されているベクター:pUT−VL_HEL、ならびに、上記PCR産物のDNA断片を、それぞれ、制限酵素Eco521/SacIIを用いて、消化する。次いで、それぞれ、アガロース電気泳動を行い、pUT−VL_HEL由来のVector側DNA断片、ならびにPCR産物由来のInsert側DNA断片を単離、精製する。
精製された、二種のDNA断片を、Vector:Insert=1:5のモル比率で混合し、実施例1と同様にしてライゲーション反応を行う。得られる発現ベクター:pUT−scFvSp2は、pUT−VL_HEL由来のVector側DNA断片に由来する、VLコード遺伝子(配列番号:25)とHis×6(以下、Hisタグ)のコード配列との間に、PCR産物由来のInsert側DNA断片に由来する、リンカー配列(GGGGS)×3をコードする塩基配列、VHコード遺伝子(配列番号:27)、GSリンカーとSBA−15親和性ペプチド(配列番号:2:IPMHVHHKHPHV)をコードする塩基配列が挿入されたものとなる。
上記ライゲーション反応液を用いて、40μLのBL21溶液中において、JM109コンピテントセルを形質転換する。形質転換は、ヒートショック法により、氷中→42℃×90sec→氷中の条件で行う。ヒートショックにより、形質転換された菌株を含むBL21溶液に、LB培地750μLを加え、37℃で、一時間振盪培養を行う。その後、6000rpm×5分間遠心を行い、培養上清650μLを廃棄する。残った培養上清と沈澱となった細胞画分を攪拌し、LB/amp.プレート上に撒き、37℃で、一晩静置する。
前記プレートから無作為にコロニーを選択し、各コロニーをLB/amp.液体培地3mLにて振盪培養を行う。培養液から、集菌した後、市販のMiniPrepキット(プロメガ社製)を用いて、業者推奨の方法により、組換え菌株からプラスミドを抽出する。抽出されるプラスミドを、制限酵素NotI/SacIIを用いて、消化する。次いで、アガロース電気泳動を行い、目的の塩基長を有するDNA断片が挿入されていることを確認する。
前記のプラスミド増殖、挿入DNA断片の確認作業を終え、精製されたプラスミドpUT−scFvSp2を用いて、40μLのBL21(DE3)溶液中のコンピテントセルを形質転換する。形質転換は、ヒートショック法により、氷中→42℃×90sec→氷中の条件で行う。ヒートショックにより、形質転換された菌株を含むBL21溶液に、LB培地750μLを加え、37℃で、一時間振盪培養を行う。その後、6000rpm×5分間遠心を行い、培養上清650μLを廃棄する。残った培養上清と沈澱となった細胞画分を攪拌し、LB/amp.プレート上に撒き、37℃で、一晩静置する。
(2)予備培養
プレート上のコロニーを無作為に選択し、3.0mL LB/amp.培地にて、28℃で、一晩振盪培養を行う。
(3)本培養
上記予備培養溶液を2×YT培地 750mLに植え継ぎ、更に、28℃で培養を継続する。培養液のOD600が0.8を超えた時点で、終濃度が1mMとなるようにIPTGを加え、更に、28℃で、終夜培養を行う。
(4)精製
形質転換菌株中において、発現ベクターpUT−scFvSp2から翻訳されるポリペプチド鎖は、不溶性顆粒を形成している。下記の工程に従って、不溶性顆粒画分から、目的のポリペプチド鎖の単離、精製を行う。
(i)不溶性顆粒画分の回収
上記本培養で得られる菌体培養液750mLを6000rpm×30minにて遠心し、菌体を沈澱(不溶性画分)として分離する。分離された菌体を、氷中にて、トリス溶液(20mM トリス/500mM NaCl)15mLに懸濁する。この懸濁液中の菌体をフレンチプレスによって破砕する。破菌後、菌破砕液を12,000rpm×15minで遠心を行い、上清を除き、不溶性顆粒を含む沈澱(不溶性画分)を回収する。
(ii)不溶性顆粒画分の可溶化
回収される不溶性顆粒を含む沈澱(不溶性画分)に、6M 塩酸グアニジン/トリス溶液 10mLを加えて、一晩浸漬する。前記変性処理により、不溶性顆粒を形成するポリペプチドの可溶化がなされる。次に、12,000rpm×10minで遠心し、可溶化されたポリペプチドを含む上清を、可溶化成分溶液として分取する。
(iii)Hisタグを有するポリペプチドの金属キレートカラム精製
Hisタグを利用するカラム精製に用いる、金属キレートカラム担体として、His−Bind(Novagen社製)を用いている。カラム調製、サンプル負荷、ならびに、カラム洗浄工程、条件は、業者の推奨方法に準拠し、室温(20℃)にて行う。サンプル負荷、カラム洗浄工程後、該金属キレートカラムに吸着されている、Hisタグ融合のポリペプチドの溶出は、60mM イミダゾール/Tris溶液を用いて行う。溶出液について、SDS−PAGE(アクリルアミド15%)上での泳動によって分析し、単一バンドが観測されることを確認する。観測される、単一バンドの見掛けの分子量は目的のポリペプチド鎖に相当することから、精製されていることが確認される。
(iv)透析
前記溶出液中に含まれるイミダゾールを透析により除去する。6M 塩酸グアニンジン/Tris溶液を外液として、4℃で透析を行い、該ポリペプチド鎖の塩酸グアニンジン/Tris溶液を得る。
(v)リフォールディング処理
前記塩酸グアニンジン/Tris溶液中では、HEL結合性scFvのC末にSBA−15親和性ペプチド(配列番号:2:IPMHVHHKHPHV)が連結された、上記scFv−Sp2のポリペプチド鎖は変性されている。この変性されている、ポリペプチド鎖を、下記する工程に従って、透析(4℃)によって、段階的に脱塩酸グアニンジンを行いつつ、HEL結合性scFvタンパク質部分のリフォールディングを行う。
(イ)該ポリペプチド鎖の塩酸グアニンジン/Tris溶液について、希釈溶媒として、6M 塩酸グアニジン/Tris溶液を用いて、タンパク質濃度を調整する。ポリペプチド鎖のモル吸光係数に基づき、ΔO.D.(280nm−320nm)値を測定しつつ、希釈して、タンパク質濃度を7.5μMに調整する(希釈後体積10mL)。
次に、タンパク質濃度7.5μMのポリペプチド鎖溶液に、β−メルカプトエタノール(還元剤)を終濃度375μM(タンパク質濃度の50倍)になるよう添加する。室温、暗所に、4時間静置して、還元処理を行う。このポリペプチド鎖溶液を透析バック(MWCO:14,000)に入れ、透析サンプルとする。
(ロ)6M塩酸グアニンジン/トリス溶液を透析外液として、透析サンプルを浸漬し、緩やかに攪拌しながら6時間透析する。
(ハ)外液中の塩酸グアニジン濃度を、6Mから、3M、2Mと段階的に下げる。前記外液濃度において、それぞれ、6時間透析する。
(二)酸化型グルタチオン(GSSG)を終濃度375μM、L−Argを終濃度0.4M)となるようにトリス溶液に加え、更に、等量の2M 塩酸グアニジン/Tris溶液を混合して、塩酸グアニジン濃度が1Mの混合液とする。更に、濃NaOH液を用いて、該混合液のpHを8.0(4℃)に調整し、透析外液として用いる。この透析外液に対して、12時間緩やかに攪拌しながら透析する。
(ホ)前記(二)の同様の手順で、塩酸グアニジン濃度0.5Mの含L−Arg トリス溶液を調製し、この透析外液に対して、12時間緩やかに攪拌しながら透析する。
(ヘ)最後に、トリス溶液を透析外液として、12時間透析する。
(ト)一連の透析終了後、10000rpmで約20分遠心分離し、凝集体と上清を分離する。リフォールディング処理された、HEL結合性scFvタンパク質とC末のSBA−15親和性ペプチドからなる融合タンパク質は、可溶性タンパク質として、上清に回収される。
回収された可溶性タンパク質溶液に対して、更に外液をリン酸バッファー(以下、PBS)に替え、透析を行い、緩衝液の変換を行う。この可溶性タンパク質PBS溶液を用いて、HEL固定化セファロースによるアフィニティ精製を行う。前記アフィニティ精製によって、正しくリフォールディング処理がなされた、HEL結合性scFvタンパク質とC末のSBA−15親和性ペプチドからなる融合タンパク質のPBS溶液が得られる。
(実施例7)
構造体の作製
(ステップ1) 参照例1に記載の作製法より作製した多孔体(SBA−15) 200mgを、0.1%Tween20/リン酸バッファー:PBST(pH7.4)中に一晩浸漬する。
(ステップ2) 前記浸漬処理済みの多孔体(SBA−15)に、タンパク質濃度 1.5μMの、実施例6で調製したHEL結合性scFvタンパク質とシリカ親和性ペプチドとの融合タンパク質/PBST溶液を混合して、24時間攪拌する。
(ステップ3) その後、12,000rpm×5minにて遠心を行い、上清を取り除き、沈澱物を採取する。この沈澱物を真空乾燥して、多孔体(SBA−15)の表面にHEL結合性scFvタンパク質とシリカ親和性ペプチドとの融合タンパク質が結合してなる構造体を得る。
(実施例8)
HEL検出用検査キット
(ステップ1) 終濃度がそれぞれ0.1、0.5、1μMとなるように、PBST中にHEL(生化学工業)を溶解した溶液を、3本のエッペンドルフチューブ内で調製する。
(ステップ2) 前ステップで調製したHEL溶液三種に、それぞれ、実施例7で得られた構造体を混合し、室温で、1時間静置する。この混合液中では、抗原のHELと、構造体の表面に固定化されている、HEL結合性scFvタンパク質とシリカ親和性ペプチドとの融合タンパク質との間で、抗原−抗体反応が進行する。
(ステップ3) 前記抗原−抗体反応液を遠心(12000rpm×5分間)して、構造体を含む沈澱部と上清とを分離させ、上清を廃棄する。更に、前記沈澱部に、PBST 500μLを加え、5分間攪拌する。再び、遠心(12000rpm×5分間)した後に、上清を廃棄する。この洗浄作業を5回繰り返した。
(ステップ4) 次に、洗浄済の構造体に、濃度100nMのFITC標識したHELポリクローナル抗体溶液500μLを混合し、室温にてインキュベートする。すなわち、構造体の表面に固定化されている、HEL結合性scFvタンパク質とシリカ親和性ペプチドとの融合タンパク質との反応によって、固定化された抗原のHELに対して、FITC標識したHELポリクローナル抗体を更に反応させる。
(ステップ5) 前記抗体反応を終えた後、該反応液を遠心(12000rpm×5分間)して、構造体を含む沈澱部と上清とを分離させ、上清を廃棄する。更に、前記沈澱部にPBST 500μLを加え、5分間攪拌する。再び、遠心(12000rpm×5分間)した後に、上清を廃棄する。この洗浄作業を5回繰り返した。
(ステップ6) 上記洗浄を終えた沈澱をPBSに再懸濁する。この懸濁液について、蛍光光度計により、FITC標識したHELポリクローナル抗体中のFITC標識に由来する、520nmの蛍光強度を測定する。
(比較例1)
(ステップ1) 参照例1に記載の作製法より作製した多孔体(SBA−15)と、濃度100nMのFITC標識したHELポリクローナル抗体溶液500μLとを混合し、室温にてインキュベートする。
(ステップ2) 上記混合液を遠心(12000rpm×5分間)により、構造体からなる沈澱部と上清を分離させ、上清を廃棄する。
(ステップ3) 次に、分離した沈澱部にPBST 500μL加え、5分間攪拌する。再び、遠心(12000rpm×5分間)した後に、上清を廃棄する。この洗浄作業を5回繰り返した。
(ステップ4) 前記洗浄を終えた後、採取される沈澱をPBSに再懸濁する。この懸濁液について、蛍光光度計により、FITC標識したHELポリクローナル抗体中のFITC標識に由来する、520nmの蛍光強度を測定する。
この比較例1で測定される蛍光は、基体の多孔体(SBA−15)の表面に付着しているFITC標識したHELポリクローナル抗体に起因している。従って、この比較例1において測定される蛍光強度の測定値は、基体の多孔体(SBA−15)の表面に直接付着しているFITC標識したHELポリクローナル抗体量を反映する。
一方、上記実施例8において、測定される蛍光強度は、構造体の表面に固定化されている、HEL結合性scFvタンパク質とシリカ親和性ペプチドとの融合タンパク質と反応した、抗原のHELに対して、更に反応させたFITC標識したHELポリクローナル抗体に起因する蛍光が主体である。なお、基体の多孔体(SBA−15)の表面に直接付着しているFITC標識したHELポリクローナル抗体に由来する蛍光成分も含まれている。従って、上記実施例8において、測定される蛍光強度から、比較例1で測定される蛍光強度をバックグランド値として差し引き、この差分を、固定化されている抗原のHELに対して、更に反応させたFITC標識したHELポリクローナル抗体に起因する蛍光強度と見なす。
実施例8において、終濃度がそれぞれ0.1、0.5、1μMのHEL溶液を用いて、それぞれ求まった、前記のバックグランド値補正後の「差分蛍光強度」を、HEL濃度に対してプロットする。前記HEL濃度範囲において、プロット結果は、優れた直線性を示し、上記条件で測定される、バックグランド値補正後の「差分蛍光強度」は、構造体の表面に固定化されている、HEL結合性scFvタンパク質とシリカ親和性ペプチドとの融合タンパク質との反応に伴う、HEL結合量の定量的な指標となっている。
換言するならば、構造体の表面に固定化されている、HEL結合性scFvタンパク質とシリカ親和性ペプチドとの融合タンパク質を、標的物質のHELと結合、固定化を図る一次抗体とし、FITC標識したHELポリクローナル抗体を検出用の二次抗体とする組み合わせは、標的物質HELの定量的な検査キットに適用可能であることが検証される。
(実施例9)
HEL結合性scFv/SBA−15親和性ペプチド融合タンパクの作製
SBA−15親和性ペプチド:IPHVHHKHPRをHEL結合性scFvのC末端に融合したタンパク質を、以下の工程に従って作製する。
(1)発現ベクターの構築
発現ベクターの構築は、上述の実施例6と同様の手順で行う。
予め、HEL結合性scFvの構成要素となるVL(クローン名:VL_HEL、配列番号:24にそのアミノ酸配列、ならびに配列番号:25に前記アミノ酸配列をコードする塩基配列を示す)、VH(クローン名:VH_HEL、配列番号:26にそのアミノ酸配列、ならびに配列番号:27に前記アミノ酸配列をコードする塩基配列を示す)のコード遺伝子断片を、それぞれ、pET−15b(Novagen社)のマルチ・クローニングサイトを部分的に変更したべクター中に挿入する。図2に示すように、VLコード遺伝子が挿入されているベクター:pUT−VL_HEL、VHコード遺伝子が挿入されているベクター:pUT−VH_HELとする。
次に、VLのアミノ酸配列(配列番号:24)、リンカー配列(GGGGS)×3、VHのアミノ酸配列(配列番号:26)、GSリンカー、SBA−15親和性ペプチド(配列番号:30:IPMHVHHKHPR)、His×6(以下、Hisタグ)の順で連続したポリペプチド鎖の翻訳が可能な、発現ベクター pUT−scFv(HEL)を以下のように作製する。

先ず、リンカー配列(GGGGS)×3、VHのアミノ酸配列(配列番号:26)、GSリンカー、SBA−15親和性ペプチド(配列番号:30:IPMHVHHKHPR)からなるアミノ酸配列をコードする塩基配列を包含している二本鎖DNAを下記する方法で調製する。
VHコード遺伝子が挿入されているベクター:pUT−VH_HELをテンプレートして、下記のプライマーを用いて、PCR産物を調製する。
SiscFv−B (配列番号:31)
5'- NNNNNACGGC CGGCGGGGGC GGTAGCGGCG GTGGCGGGTC GGGCGGTGGC GGATCGGATA TCCAGCTGCA GGAGT -3'
SiscFv−F (配列番号:32)
5’- NNNNNCCGCG GGTGGTGCTT GTGGTGCACG TGCATGGGGA TGCTACCCGC GGAGACGGTG ACGAGGGT -3’

前記フォワード側プライマー:SiscFv−Bは、5’末端部にリンカー配列(GGGGS)×3をコードする塩基配列を含み、一方、リバース側プライマー:SiscFv−Fは、5’末端部にスペーサー配列GS、SBA−15親和性ペプチド(配列番号:30:IPMHVHHKHPR)をコードする塩基配列に対して、相補的な塩基配列を含んでいる。従って、得られるPCR産物は、リンカー配列(GGGGS)×3、VHのアミノ酸配列(配列番号:26)、GSリンカー、SBA−15親和性ペプチド(配列番号:30:IPMHVHHKHPR)からなるアミノ酸配列をコードする塩基配列を包含している。なお、PCR反応は、市販のPCRキット(タカラバイオ LA−Taqキット)を使用し、業者推奨のプロトコールに従って行う。
以降の工程は、上記実施例6に記載の工程と同様にして、HEL結合性scFvタンパク質のC末にSBA−15親和性ペプチド(IPMHVHHKHPR)が連結された融合タンパク質のPBS溶液が得られる。
(実施例10)
HEL結合性scFv/SBA−15親和性ペプチド融合タンパクの作製(2)
SBA−15親和性ペプチドとして、配列番号2のアミノ酸配列に基づき、改変を施した配列番号33:IPMHVHHHPHVを選択し、かかるSBA−15親和性ペプチドをHEL結合性scFvのC末端に融合したタンパク質を、以下に記した工程以外は、実施例6に記載の工程に従って作製する。
(1)発現ベクターの構築
SBA−15親和性ペプチドとして用いる、配列番号33:IPMHVHHHPHVのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する合成DNAを用い、それ以外は実施例6に記載と同様の手順で発現べクターを作製する。この発現ベクターから、実施例6に開示する手法に準じて、HEL結合性scFvタンパク質のC末にSBA−15親和性ペプチド(配列番号:33:IPMHVHHHPHV)が連結された融合タンパク質のPBS溶液を得る。
リンカー配列(GGGGS)×3、VHのアミノ酸配列(配列番号:26)、GSリンカー、SBA−15親和性ペプチド(配列番号:33:IPMHVHHHPHV)からなるアミノ酸配列をコードする塩基配列を包含している二本鎖DNAを調整するため、PCR産物の調製工程では、下記する塩基配列を有するプライマー用いる。
SiscFv−B2 (配列番号:31)
5'- NNNNNACGGC CGGCGGGGGC GGTAGCGGCG GTGGCGGGTC GGGCGGTGGC GGATCGGATA TCCAGCTGCA GGAGT 3'
SiscFv−F3 (配列番号:34)
5'- NNNNNGACGT GGGGGTGCCT GTGGTGCACG TGCATGGGGA TGCTACCCGC GGAGACGGTG ACGAGGGT 3'

前記フォワード側プライマー:SiscFv−B2は、5’末端部にリンカー配列(GGGGS)×3をコードする塩基配列を含み、一方、リバース側プライマー:SiscFv−F3は、5’末端部にスペーサー配列GS、SBA−15親和性ペプチド(配列番号:33:IPMHVHHHPR)をコードする塩基配列に対して、相補的な塩基配列を含んでいる。
(実施例11)
HEL結合性scFv/SBA−15親和性ペプチド融合タンパクの作製(2)
SBA−15親和性ペプチドとして、配列番号2のアミノ酸配列に基づき、改変を施した配列番号35:IPMVHHKHPHVを選択し、かかるSBA−15親和性ペプチドをHEL結合性scFvのC末端に融合したタンパク質を、以下に記した工程以外は、実施例6に記載の工程に従って作製する。
(1)発現ベクターの構築
SBA−15親和性ペプチドとして用いる、配列番号35:IPMVHHKHPHVのアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する合成DNAを用い、それ以外は実施例6に記載と同様の手順で発現べクターを作製する。この発現ベクターから、実施例6に開示する手法に準じて、HEL結合性scFvタンパク質のC末にSBA−15親和性ペプチド(配列番号:35:IPMVHHKHPHV)が連結された融合タンパク質のPBS溶液を得る。
リンカー配列(GGGGS)×3、VHのアミノ酸配列(配列番号:26)、GSリンカー、SBA−15親和性ペプチド(配列番号:35:IPMVHHKHPHV)からなるアミノ酸配列をコードする塩基配列を包含している二本鎖DNAを調整するため、PCR産物の調製工程では、下記する塩基配列を有するプライマー用いる。
SiscFv−B2 (配列番号:31)
5'- NNNNNACGGC CGGCGGGGGC GGTAGCGGCG GTGGCGGGTC GGGCGGTGGC GGATCGGATA TCCAGCTGCA GGAGT -3'
SiscFv−F4 (配列番号:36)
5'- NNNNNGACGT GGGGGTGCTT GTGGTGCACT CTCATGGGGA TGCTACCCGC GGAGACGGTG ACGAGGGT -3'

前記フォワード側プライマー:SiscFv−B2は、5’末端部にリンカー配列(GGGGS)×3をコードする塩基配列を含み、一方、リバース側プライマー:SiscFv−F3は、5’末端部にスペーサー配列GS、SBA−15親和性ペプチド(配列番号:35:IPMVHHKHPR)をコードする塩基配列に対して、相補的な塩基配列を含んでいる。
(実施例12)
HEL検出用検査キット
前記実施例9、10、11の調製法によって得られる、HEL結合性scFvタンパク質のC末にSBA−15親和性ペプチドとして、配列番号:30:IPMHVHHKHPR、配列番号:33:IPMHVHHHPHV、または配列番号:35:IPMVHHKHPHVのアミノ酸配列のペプチドが連結された融合タンパク質三種を用いて、上記実施例7に記載の手順に準じて、該融合タンパク質を多孔体(SBA−15)の表面に結合してなる構造体を作製する。
上記実施例8に記載の手順に準じて、作製された構造体の表面に固定化されている、該HEL結合性scFvタンパク質とシリカ親和性ペプチドとの融合タンパク質を、標的物質のHELと結合、固定化を図る一次抗体とし、FITC標識したHELポリクローナル抗体を検出用の二次抗体とする組み合わせは、標的物質HELの定量的な検査キットに適用可能であることを検証する。
また、作製された構造体の表面に固定化されている、融合タンパク質の密度は、HEL結合性scFvタンパク質のC末にSBA−15親和性ペプチドとして、配列番号:30:IPMHVHHKHPR、配列番号:33:IPMHVHHHPHV、または配列番号:35:IPMVHHKHPHVのアミノ酸配列のペプチドが連結された融合タンパク質三種を用いた場合と、上述する実施例7のHEL結合性scFvのC末にSBA−15親和性ペプチド(配列番号:2:IPMHVHHKHPHV)が連結された融合タンパク質を用いた場合との間で、検出可能な差違は見出されていない。すなわち、かかる融合タンパク質中において、SBA−15親和性ペプチド(配列番号:2:IPMHVHHKHPHV)と、それに基づき改変が施されている三種のSBA−15親和性ペプチド(配列番号:30:IPMHVHHKHPR)、(配列番号:33:IPMHVHHHPHV)ならびに(配列番号:35:IPMVHHKHPHV)との間で、基体SBA−15の表面に対する結合能には、検出可能な差違は見出されていない。
本発明は、有機物固定化構造体、例えば、表面に生体物質を固定化した基板において、固定がなされる基板表面として、酸化珪素層を設け、一方、固定する有機物は、生体物質自体を機能ドメインとして、前記酸化珪素層に対する結合能を有する結合ドメインを、この機能ドメインに連結した構成とすることにより、機能ドメインである生体物質部分は、基板表面と直接接触することなく、連結されている結合ドメインによって、その酸化珪素結合能による選択的な固定を可能としている。この独立に設けられている結合ドメインを介して、基板表面に固定化されている生体物質は、その本来の機能に対する固定化の影響は及ばず、また、固定化に際して、なんらの試薬を利用していないため、その機能に影響を及ぼす化学反応を被ることもない。従って、本発明を適用することで得られる、生体物質固定化基体では、固定化されている生体物質は、その機能に対する影響を最小限に抑え、効率的かつ高配向に基板表面上に固定されたものとなる。
つまり、本発明は、生体物質などの有機物を基体表面に固定化して、該有機物の有する種々の生理的機能を利用する、バイオセンサーやバイオリアクタを初めとする、各種の生体物質の機能を応用する製品の高性能化に利用可能である。
実施例5に示す、本発明にかかる有機物固定化構造体の一例における、構造体の構成を模式的に示す断面図である。 実施例7に示す、HEL結合性scFv/SBA−15親和性ペプチド融合タンパク質の組換え発現用プラスミドpUT−scFvSp2の構築手順を模式的に示す図である。
符号の説明
11 基板
12 酸化珪素層
14 機能ドメイン(酵素タンパク質)
15 結合ドメイン(酸化珪素親和性ペプチド)

Claims (10)

  1. 基体の表面に有機物が固定化された構造体であって、
    前記基体の表面の少なくとも一部が、酸化珪素を含む一以上の部材によって構成され、
    前記有機物は、酸化珪素に対して結合能を有するアミノ酸配列からなるペプチドを少なくとも一つ含んでなる結合ドメインを介して、前記基体の表面に結合され、
    前記酸化珪素は、メソポーラス・シリカSBA−15であり、
    前記ペプチドは、下記配列番号:1または配列番号:2
    (配列番号:1)Val−Ser−Pro−Met−Arg−Ser−Ala−Thr−Thr−His−Thr−Val
    (配列番号:2)Ile−Pro−Met−His−Val−His−His−Lys−His−Pro−His−Val
    に示すアミノ酸配列からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列
    あるいは、それらアミノ酸配列の繰り返し構造からなるペプチドである
    ことを特徴とする、有機物が固定化された構造体。
  2. 前記有機物は、生体物質である
    ことを特徴とする請求項1に記載の構造体。
  3. 前記生体物質と結合ドメインとの連結部において、前記結合ドメイン中の前記ペプチドと前記生体物質の間に、一以上のアミノ酸からなるリンカーが更に含まれる
    ことを特徴とする請求項2に記載の構造体。
  4. 前記基体の少なくとも一部が多孔質である
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の構造体。
  5. 基体の表面上に有機物を固定化してなる構造体の製造方法であって、
    酸化珪素に対して結合能を有するアミノ酸配列からなるペプチドを少なくとも一つ以上含んでなる結合ドメインと有機物とが連結してなる、有機物−結合ドメイン融合体を調製する工程と、
    前記結合ドメインの少なくとも一部を、前記表面の少なくとも一部が酸化珪素を含む一以上の部材によって構成された基体に結合させることにより、前記結合ドメインを介して、前記基体の表面に前記有機物を固定化する工程とを有し、
    前記酸化珪素は、メソポーラス・シリカSBA−15であり、
    前記ペプチドは、下記配列番号:1または配列番号:2
    (配列番号:1)Val−Ser−Pro−Met−Arg−Ser−Ala−Thr−Thr−His−Thr−Val
    (配列番号:2)Ile−Pro−Met−His−Val−His−His−Lys−His−Pro−His−Val
    に示すアミノ酸配列からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列
    あるいは、それらアミノ酸配列の繰り返し構造からなるペプチドである
    ことを特徴とする有機物固定化構造体の製造方法。
  6. 酸化珪素に対して親和性を有するペプチドであって、
    前記酸化珪素は、メソポーラス・シリカSBA−15であり、
    前記ペプチドは、
    下記配列番号:1または配列番号:2
    (配列番号:1)Val−Ser−Pro−Met−Arg−Ser−Ala−Thr−Thr−His−Thr−Val
    (配列番号:2)Ile−Pro−Met−His−Val−His−His−Lys−His−Pro−His−Val
    に示すアミノ酸配列からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列
    あるいは、それらアミノ酸配列の繰り返し構造からなるペプチドである
    ことを特徴とする酸化珪素に親和性のペプチド。
  7. 酸化珪素に対して親和性を有するペプチドをコードするDNAであって、
    前記酸化珪素は、メソポーラス・シリカSBA−15であり、
    該DNAによりコードされる、前記酸化珪素に対して親和性を有するペプチドは、
    下記配列番号:1または配列番号:2
    (配列番号:1)Val−Ser−Pro−Met−Arg−Ser−Ala−Thr−Thr−His−Thr−Val
    (配列番号:2)Ile−Pro−Met−His−Val−His−His−Lys−His−Pro−His−Val
    に示すアミノ酸配列からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列
    あるいは、それらアミノ酸配列の繰り返し構造からなるペプチドであり、
    前記DNAは、前記酸化珪素に対して親和性を有するペプチドをコードする塩基配列を含む
    ことを特徴とする酸化珪素親和性ペプチドをコードするDNA。
  8. 酸化珪素に対して親和性を有するペプチド鎖をコードするDNAを含むベクターであって、
    前記酸化珪素は、メソポーラス・シリカSBA−15であり、
    前記DNAによりコードされる、前記酸化珪素に対して親和性を有するペプチド鎖は、
    下記配列番号:1または配列番号:2
    (配列番号:1)Val−Ser−Pro−Met−Arg−Ser−Ala−Thr−Thr−His−Thr−Val
    (配列番号:2)Ile−Pro−Met−His−Val−His−His−Lys−His−Pro−His−Val
    に示すアミノ酸配列からなる群より選択される少なくとも一つのアミノ酸配列
    あるいは、それらアミノ酸配列の繰り返し構造からなるペプチド鎖であり、
    該ベクター中に含まれる、前記DNAは、前記酸化珪素に対して親和性を有するペプチド鎖をコードする塩基配列を含むDNAである
    ことを特徴とする酸化珪素に親和性のペプチド鎖をコードするDNAを含むベクター。
  9. 検体中の標的物質を検出するための装置であって、
    請求項1に記載の基体の表面に有機物が固定化された構造体と検体とを接触させることにより、前記有機物と前記標的物質とを結合させるための手段と、
    前記結合された標的物質を検出するための手段とを有する
    ことを特徴とする検出装置。
  10. 検体中の標的物質を検出する方法であって、
    請求項1に記載の基体の表面に有機物が固定化された構造体と検体とを接触させることにより、前記有機物と前記標的物質とを結合させる工程と、
    前記結合された標的物質を検出する工程とを有する
    ことを特徴とする検出方法。
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