JP2007107913A - 反応素子及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】基体上の所望の位置に複数の反応関与分子が、本来の機能を発揮し易い状態で高効率に固定化された反応素子を提供することを目的とする。
【解決手段】基体に設けた複数の反応領域のそれぞれに異なる材料からなる結合部位を配置し、異なる反応に関与する複数の反応関与分子をその結合ドメインの反応領域に配置した結合部位に対する結合選択性を利用して各反応領域毎に結合させて反応素子を形成する。
【選択図】 図7

Description

本発明は、基体上に配置された二以上の反応領域のそれぞれに、反応関与分子を固定化してなる反応素子、標的物質検出素子、それを用いた標的物質検出装置及び検出方法、ならびに、反応素子の製造方法及びそのためのキットに関する。より具体的には、基体上に配置した複数の反応関与分子と所望の物質とが関与する複数の反応を同一基体上もしくは同一流路上で媒介させ得る標的物質検出素子、それを用いた標的物質の検出装置及び方法、ならびに、その標的物質検出素子の製造方法及びそのためのキットに関する。
DNA、RNAといった遺伝子を含む核酸分子、酵素や抗体といった生体分子の有する分子認識能、物質変換能を利用した、所謂バイオセンサー、バイオリアクターに関し、その広範な応用を目的として、多くの研究開発が行われてきた。バイオセンサーに関しては、環境汚染物質の問題や社会的安全性、更には、健康に対する関心の高まりと共に、例えば、多様な検出対象への適用を目標とする、更なる技術開発の要求が高まっている。また、バイオリアクターに関しても、最近、環境にやさしいクリーンなプロセス技術として高い注目を集めており、例えば、種々なバイオプロセスを利用する産物の生産法開発等、一層の技術開発の要求が高まっている。
具体的には、バイオセンサーに関しては、上記のように、各生体分子が有する分子認識の選択性を利用する検出装置の開発が広く行われている。例えば、デオキシリボ核酸(以下、DNAと記す)鎖間における、塩基配列依存の相補的水素結合(相補鎖間のハイブリダイズ反応)を利用したDNAセンサーチップがある。更に、タンパク質分子と低分子間またはタンパク質分子同士などの特異的な結合能に由来する分子認識能、例えば、抗原抗体反応を利用して、血液中に溶出する疾病マーカー等を検出する抗体センサーがある。また、糖尿病患者のためのグルコースセンサーに代表される、酸化還元酵素や加水分解酵素を利用して、基質物質の濃度を検出する酵素センサー等のバイオセンサーがある。このように各種の検出手法に基づく検出装置の開発が挙げられる。現在は、これら生体分子を応用するバイオセンサーでは、利用されるDNAなどの核酸分子や、抗体・酵素等のタンパク質などの生体分子を、基体または担体などの基体表面に固定化して、生体分子固定化基体の形態で使用する方式をとるものが一般的である。
一方、バイオリアクターに関しては、目的産物の産生能を有する微生物自体を利用する手法に代えて、主にタンパク質の一種である酵素の位置選択的触媒機能を利用して、アミノ酸等の食品添加物、医薬候補物質や抗生物質を酵素反応により生産する手法がある。更に、酵素反応を、化学品やポリマー材料の生産へと応用する検討もなされてきている。この様な酵素反応を利用するバイオリアクターの開発においても、少量多品種生産に適する装置の開発が主流となってきている。例えば、コンビナトリアル・ケミストリー手法による候補物質のスクリーニング技術の普及に伴い、バイオセンサーと同様に反応に利用する酵素タンパク質を固定化した装置によって、小型化(すなわち少量生産)へのニーズが高まってきている。
近年のバイオセンサーにおいては、医療診断等の観点から単一のマイクロチップ中で複数検体の検出を行われることが望まれている。同じく、バイオリアクターにおいては、基体上で複数の反応を連続で行われることが望まれる。このように、複数の反応を同一のマイクロチップ上で行うために、複数のタンパク質を高効率、高機能、かつ、安価に固定化する技術の開発が急務である。
複数のタンパク質をマイクロチップ上に固定化した例として、特開2003−344396号公報は、タンパク質のカルボキシル末端にスルフヒドリル基を付加させ、基体に固定化層を塗布した後に固定化するタンパク質固定化技術を開示している。同公報ではこの固定化方法によりタンパク質を高配向に固定化したアレイを作製できるとされている。この方法では、複数のタンパク質をスポットする段階でインクジェット技術等により各々の固定化位置を特定しておく必要がある。更に、固定化収率の向上のためには、タンパク質のカルボキシ末端にGly-Gly-Glyなどのリンカーペプチドを含む融合タンパク質を作製した上で、共有結合を行わせる操作が別途必要である。その上、このような製法においては、複数のタンパク質を固定化したタンパク質アレイは作製できるが、流路に複数のタンパク質を順次固定化した反応素子を簡便に作製することは困難である場合がある。
また、特開2002−243734号公報には、マイクロチップの基体上に流路を設け、更に流路中、若しくは上蓋材中の複数の位置に生体分子を固定化し、基体と上蓋材を接合させることで、マイクロチップの流路中で生体反応を行わせる反応システムを構築する技術が開示されている。本開示技術では、生体分子を固定化する前でなく固定化後に上蓋材を基体上に接合して流路を形成し、目的物溶液の送液により反応させる。そのため、固定化するタンパク質の活性を保持しようとすれば、接合方法が限定されるため、マイクロチップ製造上の作業効率が悪くなる場合がある。
マイクロチップ基体の接合方法としては、接着剤等を薄く塗布して行うことが一般的である。この方法では、マイクロチャネルの封鎖、内壁の汚染や、内包する装置類にダメージを与えることが懸念され、生体分子を固定化後に接着剤で接合を行えば、接着剤の混入によって固定化した生体分子の性能を低下させるおそれもある。マイクロチップ基体の接合方法には、化学的に接合表面を活性化して接合する方法、接合表面の温度を上昇させて接合する方法(拡散接合法など)、もある。ところが、これらの方法では、固定化した生体分子の変性を招く可能性が大きい。
すなわち、これら簡便な接合方法では、本来の活性を維持したまま複数の生体分子を流路上に固定化したマイクロチップを提供することができない場合がある。
特開2004−69677号公報には、銅フタロシアニン粒子およびカーボンブラック粒子に結合するペプチドの配列が記載されており、この配列を抗原または抗体のアミノ末端若しくはカルボキシル末端に融合させ、各々の前記粒子に結合させた例がある。しかしながら、号公報には、複数の融合体を基体上に固定化するバイオセンサー、もしくはバイオリアクターとして使用する記載は無い。
特開2003−344396号公報 特開2002−243734号公報 特開2004−69677号公報
先に挙げた基体上への共有結合による生体高分子の固定では、同一基体上に複数の生体分子を固定化する方法において、予め基体の所望の位置に生体高分子を固定化するため前処理を施した後にインクジェット法等により複数の生体分子を配置している。このような生体高分子の基体への固定には、所望の固定化反応を実施する為の官能基を有する化学架橋剤を用いることが一般的である。化学架橋剤の標的となる生体分子側の官能基は、それらに多く含まれるアミノ基、カルボシキル基、カルボン酸である。このような固定化法では、生体分子の特定の位置の官能基を修飾することは困難である。更には固定化の為の化学修飾箇所が生体分子の活性部位の近接する場合、生体分子の所望の機能を低下させることが懸念される。
また、上記の化学架橋剤を用いた生体分子の固定化方法では、上述したように無作為に固定化のための反応部位が決定される為に検出する対象分子との結合に適した配向にならない場合がある。この場合、固定化されている生体分子の量に見合った反応効率または検出感度を達成することができないことが懸念される。より高い、反応効率もしくは検出感度を達成する為には、複数の生体分子の機能を保持しつつ、固定化するための容易な手段が必要である。
流路系のマイクロチップを作製する際、通常基体に生体分子を固定化した後、液漏れを回避するために熱溶融、もしくは接着剤等により上蓋材を施す場合が考えられる。その場合、固定化した生体分子のうち少なくとも一部が失活する可能性が高いため、上蓋材を配置する為の処理方法が限定される。
一方、上蓋材処理後の複数の生体分子固定化方法としては、複数の光架橋剤の使用が挙げられる。光架橋分子種としては、アジド(azide)、ジアゾ(diazo)、ジアジリン(diazirine)カルボニル(carbonyl)などの分子種が挙げられる。これらの分子種は光照射によりアジド→ナイトレン(nitrene)、ジアゾ及びジアジリン→カルベン(carbene)、カルボニル→活性カルボニル(excited carbonyl)或いはカルボニルラジカル(carbonyl radical)といった活性種となり、それぞれ求核的に近傍のタンパク質分子と反応する。しかし、いずれにしても、任意の生体分子中に部位特異的に固定化することは困難であり、生体分子を適正な配向で、かつその機能を維持して固定化することができない場合がある。
現状では以上のように、基体上に所望の位置に所望の機能を有するの生体分子を、機能を維持した状態で固定化する手段が十分に開発されているとは言いがたい。以上のことを考慮に入れ、本発明は、基体上の所望の位置に複数の生体分子等からなる反応関与分子が、本来の機能を発揮し易い状態で高効率に固定化された反応素子を提供することを目的とする。本発明の更なる目的は、かかる反応素子の構造を有する標的物質検出素子、それを用いた検出装置及び方法、これらの素子の製造方法、並びにこれらの素子の作製のためのキットを提供することにある。
本発明では、複数の反応を同一基体上で実施するために、基体上に複数の反応領域を配置し、各々の反応領域に対し特異的に結合する結合ドメインを介して各反応領域毎に異なる複数の反応関与分子を固定することで反応素子を形成している。
すなわち、本発明の反応素子は、基体と、基体上に配置された複数の反応領域と、各反応領域内に配置された反応関与分子と、を有する反応素子であって、
前記反応関与分子はそれが配置される反応領域の有する結合部位に対して選択的に結合し得る結合ドメインを有し、該結合ドメインが該結合部位とが結合することで該反応領域に配置されており、かつ
各反応領域毎に反応関与分子が関与する反応が異なる
ことを特徴とする反応素子である。
本発明の検出素子は、検体中の検出対象物質を検出するための検出素子において、
基体と、基体上に配置された複数の反応領域と、各反応領域内に配置された反応関与分子と、を有し、
前記反応関与分子はそれが配置される反応領域の有する結合部位に対して選択的に結合し得る結合ドメインを有し、該結合ドメインが該結合部位とが結合することで該反応領域に配置されており、かつ
各反応領域毎に反応関与分子と前記検出対象物質とが関与する反応が異なる
ことを特徴とする検出素子である。
本発明の検出装置は、検体中の標的物質を検出するための装置において、
(1)基体と、基体上に配置された複数の反応領域と、各反応領域内に配置された反応関与分子と、を有し、前記反応関与分子はそれが配置される反応領域の有する結合部位に対して選択的に結合し得る結合ドメインを有し、該結合ドメインが該結合部位とが結合することで該反応領域に配置されており、かつ 各反応領域毎に反応関与分子と前記検出対象物質とが関与する反応が異なる検出素子と、
(2)前記反応関与分子と前記検出対象物質とが関与する反応の有無を検出するための検出手段と、
を有することを特徴とする検出装置である。
本発明の反応素子の製造方法は、基体に設けられた二以上の反応領域毎に異なる反応関与分子を配置した反応素子を製造する方法であって、
(1)基体上に、各反応領域毎に異なる材料から形成された結合部位を配置して二以上の反応領域を設ける工程と、
(2)前記二以上の反応領域の結合部位のそれぞれに選択的に結合する結合ドメインを有する反応関与分子を前記基体と反応させて、前記二以上の反応領域のそれぞれに配置する工程と、
を有することを特徴とする反応素子の製造方法である。
本発明の検体に含まれる標的物質の検出方法は、
上記構成の検出素子と検体とを反応させる工程と、
前記検出素子の有する反応関与分子と前記検体中の標的物質とが関与する反応を検出する工程と、
を有することを特徴とする標的物質検出方法である。
本発明の反応素子作製用キットは、同一基体上で二以上の異なる反応を各反応毎に反応領域で生じさせるための反応素子を作製するためのキットであって、
(1)各反応領域毎に異なる材料から形成された結合部位を配置して二以上の反応領域を設けた基体と、
(2)前記二以上の反応領域の結合部位のそれぞれに対して選択的に結合し得る結合ドメインを有する反応関与分子と、
を有することを特徴とする反応素子作製のためのキットである。
本発明における反応素子及び検出素子では、所望の反応に関与する反応関与分子の基体に設けられた反応領域への固定が、反応関与分子に導入した反応領域に対して特異的に結合し得るドメインを介して行なわれる。基体に、二以上の反応領域を設け、これらの反応領域のそれぞれに対して特異的に結合し得る異なる反応関与分子の複数を用いることで、異なる反応を行なう反応領域の複数を基体に形成できる。しかも、反応領域に特異的に結合し得るドメインの反応関与分子への導入を、反応関与分子の所望の機能を損なわない位置に容易に行なうことが可能である。更に、反応領域への反応関与分子の固定を所望の機能を発揮できる配向で行なうことも可能である。その結果、反応関与反応効率の良い反応素子を作製することが可能となる。この反応素子を用いて、反応効率の良い標的物質検出素子及び装置、並びに標的物質の検出方法を提供することができる。
本発明を実現するための最良の形態について以下に示す。まず、反応素子を構成するための基体及び反応関与分子について説明する。
(基体)
本発明における基体とは、反応領域を形成するための支持体である。基体は、後述する反応領域を形成、支持できるものであればよい。はれば従来公知の種々の材料から適宜選択して用いることができる。
例えば、電気的な方法を用いて反応領域内で生じる種々の反応を検出する場合、導電性の基体が好ましく用いられる。このような導電性の基体としては、基体全体が導電性材料から形成されているものや、非導電性の基材の反応領域形成部に導電性材料の層を積層して導電層を形成したものなどが利用できる。導電性を有する基体を用いることにより、本発明にかかる反応素子の有する機能ドメイン近傍で起こる物理量または化学量の量変化を電気的な手法より検出することも可能となる。この導電層の形成方法としては、所望の基材の所定領域に従来既知の導電性材料を一般的な塗布、蒸着等を用いる成膜、または物理的な貼り合わせなどの従来既知の方法から所望の特性を得ることができる方法を適宜選択できる。
また、基体を透光性とすることにより、本発明にかかる反応素子の有する機能ドメイン近傍で生じる変化を光学的な手法により測定することも可能となる。透光性基体は、本発明の反応素子上の測定対象である物質の変化を観察できるものであれば、従来既知の透光性材料から形成された基体から適宜選択して用いることが可能である。
また、基体表面に目的の反応対象物や試料内に混在した共雑物が非特異的に吸着することを防ぐことも反応素子の所望の反応効率を向上させる上では有用である。非特異的吸着の防止には、ポリエチレングリコール(PEG)や2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)共重合体などの吸着抑制効果のある親水性材料から目的用途に応じたものを選択し基体の所望とする領域に付与する方法が利用できる。このような親水性材料の基体への付与には、これらの材料から塗布液を調製して、これを基体の所定の領域に塗布する方法が利用できる。その際、従来既知の方法から目的の膜厚を達成できる方法を基体の化学特性や表面性状などを考慮して適した方法を選択して用いることが好ましい。
また、基体上の少なくとも一部に流路を配置することも可能である。加えて、本発明の反応素子の反応領域に試料を導入する導入口及び前記反応素子外に試料を排出する為の排出口を設けてもよい。本発明における流路とは、導入口と一以上の反応領域、または反応領域と排出口、または二以上の反応領域を連結するためのものである。特に、μmオーダー〜数百μmオーダーの微小流路中に反応領域を配置することにより、反応槽等を用いるバッチ型もしくは、多数のウエルを配列したアレイ型の反応領域を用いた場合に比べ、所望の反応に係わる試料の使用効率を向上させることが期待できる。その結果、本発明によれば、微量な試料の測定または反応に適した反応素子を提供することができる。また、流路内表面も基体と同様に非特異吸着防止を目的とした処理方法を採用することが可能である。
(反応領域)
本発明における反応領域とは、反応関与分子が配置されてそれが関与する反応が行なわれる領域であり、反応関与分子の有する結合ドメインが選択的に結合し得る結合部位を有する。このように、反応関与分子が選択的に結合し得る結合部位が反応領域に設けられていることで、反応領域毎に異なる反応に関与する反応関与分子を配置して、反応領域毎に異なる反応を行なわせることが可能となる。この反応関与分子の有する結合ドメインの反応領域選択性は、反応関与分子側の結合ドメインと反応領域側の結合部位との組合せにより得ることができる。すなわち、反応領域側に設ける結合部位の構成材料を反応領域毎に異ならせることで、反応領域毎に異なる反応関与分子を配置することができる。
反応関与分子との結合部位を有する反応領域を互いに区分された領域として基体上に複数個配置した例を、図7、図9及び図10に示す。図7の例では、2つの反応領域12a及び12bを設け、各反応領域に、反応関与分子20と結合する結合部位を構成する粒子14a及び14bを各反応領域内に保持できる状態でそれぞれ配置している。図9の例では、結合部位を形成し得る材料の薄膜40及び42を基体の所定位置に設けて反応領域とし、この薄膜に反応関与分子20及び22をそれぞれ結合させている。すなわち、薄膜40及び42が占める領域自体が反応領域となっている。図10の例では、反応関与分子の有する結合ドメインが認識する材料からなるフィルター48から結合部位を形成し、このフィルターを所定領域に配置することで反応領域としている。なお、図10に示す反応領域12は、結合部位を構成する粒子14を所定空間内に充填することにより得られたものである。図7、図9及び図10に示すように反応領域を極微細に形成し、かつ反応関与分子の必要量を反応領域に配置可能であるので、本発明の反応素子の構成は、少量試料を用いる検出または反応に容易に適用可能である。
このように、各反応領域毎に選択的に反応関与分子を配置することで複数の異なる反応を同一基体上で行うこともできる。なお、必要に応じて、同一の反応を行なう複数の反応領域を基体上に配置することもできる。
反応領域に配置する結合部位を構成する材料としては、上記条件を満たすものものから適宜選択して使用することが可能である。反応領域側の結合部位形成用の材料としては、金属材料、金属酸化物、粘土鉱物、半導体化合物、不溶性無機塩、無機系固形物材料、天然高分子、合成高分子を挙げることができる。これらから選ばれる何れか1以上或いはその2以上の材料の複合体を用いることができる。金属材料としては、金、銀、銅、鉄、白金等を挙げることができる。金属酸化物としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、等を挙げることができる。粘度鉱物としては、カオリナイト、ベントナイト、タルク、雲母等を挙げることができる。半導体化合物としては、Si、GaAs、GaP、ZnS、CdS、CdSe、等を挙げることができる。不溶性無機塩としては、シリカゲル、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウムゲル等を挙げることができる。無機系固形物材料としては、ガラス類およびセラミクスなどを挙げることができる。合成樹脂材料としては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリスチレン等を挙げることができる。天然樹脂材料としては、にかわ、ゼラチン、カゼイン、若しくはアルブミン等のタンパク質類、アラビアゴム、若しくはトラガントゴム等の天然ゴム類、サポニン等のグルコシド類、アルギン酸及びアルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸トリエタノールアミン、若しくはアルギン酸アンモニウム等のアルギン酸誘導体、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、若しくはエチルヒドロキシルセルロース等のセルロース誘導体等を挙げることができる。
上記(構成)材料による複数個の反応領域は、反応領域を構成するための材料を所望の形状に成形した後に、それらを基体上の所望の位置に超音波、熱、圧力、化学的処理により配置することによって形成可能である。また、金属材料を用いた化学蒸着法もしくはスパッタリングによるものでもよい。所望の材料が反応領域内の所望の位置に成膜されるようマスキングを施し、化学蒸着もしくはスパッタリングを行うことも可能である。マスキングに用いるマスク形状を選択することにより、比較的に容易に任意のパターンを作製することが可能であることも知られている。更には、マスキングの位置を変えて成膜を繰り返すことで、基体上に複数の構成材料からなる反応領域を複数個配置することが可能である。また、基体上に金属または金属酸化物蒸着面を設け、エッチング法やEB法により、不要な部分を基体上から除去することで所望のパターンを設けることも可能である。
さらに、所望の反応において単位体積あたりの反応量を増す方法としては、従来既知の比表面積の大きい(材料)形状のものを反応領域として選択することも可能である。平面に比べ比表面積の大きな材料としては球形に代表される粒子、ならびに微小構造体が知られている。特に、微小構造体が1μm以下の細孔構造を有することで、流体試料中に含まれる反応に関与する分子が微小構造体内を通過する際に、その壁面に固定化された反応素子の有する反応関与分子に達する為に必要な拡散距離の平均を大幅に削減することができる。その結果として、所望の反応効率の向上を図ることができる。このような微小構造体としては、従来既知の微小溝、ホール(孔)、柱状構造体、突起状構造体、凹型構造体、凸型構造体、ドーム型構造体等が挙げられる。これら構造体の作製方法としては、微小構造体を基体上に直接成形する方法もある。微小構造体を予め別途工程で作製したものを反応領域として配置することも可能である。微小構造体を基体上に直接成形する一例として、シリコン基体上にアルミニウム膜を蒸着し、それを陽極酸化した酸化アルミナノ構造体を得る方法がある。
また、上記の各微小構造体をシリコン、シリカ、ガラス、石英ガラス等からなる基体表面に形成するには、フォトリソグラフィー、エッチング、サンドブラスト等を用いた表面加工を基体に施す方法がある。また、プラスチック(樹脂)製の基体に対しては、成型方法を適宜選択して各微小構造体を形成する方法がある。更には、これら構造体の表面に金、銀、白金等の薄膜が配置されたものでもよい。別工程で作製し、基体上に配置する微小構造体としては、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレンダイアモンド或いはそれらの集合体、アルミナ、カーボン、フラーレン、ZnO等からなるナノウイスカー、SiO2、アルミノシリケート、その他のメタロシリケート、TiO2、SnO2、Ta25等からなるメソポーラス薄膜、微粒子、及びモノリス構造体、貫通型多孔質アルミナ膜構造体、シリコンナノワイヤー等が挙げられる。この中から本発明の反応素子の用途に応じて適宜選択して用いることが可能である。
粒子を用いて反応領域を形成する場合、例えば、反応領域の幅あるいは深さを、流路の幅および深さよりも大きくした上で、その粒子径は流路幅若しくは流路深さより大きなものを使用することができる。また、粒子配置領域を決定する為の粒子径より小さい孔径のフィルターを反応領域と流路との境界に配置することも可能である。これらの構成により、粒子を基体に固定ないで使用する場合であっても、反応領域内に粒子を保持することが可能となる。また、粒子を基体の所定部に固定して反応領域を形成してもよい。このような粒子としては従来既知のものから用途に応じて選択して用いることが可能である。
(反応関与分子)
本発明における反応関与分子とは、基体上の反応領域の有する結合部位と結合してそこに固定され、直接又は流路を介して反応領域に導入された反応物質を用いた反応に関与する分子である。反応物質が標的物質であれば、反応関与分子として標的物質に特異的に結合する分子を用いることで、標的物質と反応関与分子との反応を反応領域内で生じさせることができ、この反応を標的物質の検出に利用できる。
この反応関与分子は、基体上の反応領域に設けられた結合部位と選択的(特異的)に結合する結合ドメインと、所望の反応に関与するための機能ドメインと、を少なくとも有する融合体である。
本発明に好適な機能ドメインとしては、捕捉反応、触媒反応、タンパク質再巻き戻し反応、等種々の反応に関与する分子を選択して用いることが可能であるが、これらに限定されるものではない。例えば、捕捉反応を担う分子として、抗体−抗原反応の抗体もしくは抗原、が挙げられる。抗体分子としては、抗体、その構成要素を含む断片(例えばFab’、F(ab’)2)、これらの構成要素を遺伝子工学的な手法により改良したFv、VH、VL、scFv、Diabodyなどの抗体断片等が挙げられる。または、種々の低分子リガンド分子に関する受容体等の自然界に存在ある捕捉体、及びそれらの組み換え体を利用することも可能である。さらに、触媒反応を行う分子としては、従来既知の酵素等が挙げられる。タンパク質再巻き戻し反応を行う分子としては、GroEL、GroES、DnaK、DnaJ、GrpEなどの分子シャペロンが挙げられる。また、いずれの反応においても、それらを行う分子は上記に限定されるものではない。また、反応関与分子の作製上の観点から、より好ましい機能ドメインは生体分子であり、さらに好ましくはタンパク質である。機能ドメインがタンパク質の場合、通常の遺伝子工学的手法により融合体が作製できるため、タンパク質への光架橋官能基導入などの化学合成のような煩雑な作業が不要であり、タンパク質の本来の活性を発揮することが可能である。
結合ドメインには、反応領域に反応関与分子を材料選択的に結合させることが可能な材料から目的に応じたものを選択して用いることができる。そのような結合ドメインとしては市販キットとしても使用されているニッケルに対して親和性を有するヒスチジンタグ(>5残基)を使用することも可能である。更には、Nature Biotechnol., 2003, Vol. 2, p974-985に開示された金属または金属酸化物と結合するペプチドを選択して使用することも可能である。また、反応領域に用いられる材料と結合するペプチドまたはタンパク質が公知でない場合、または従来既知のペプチド及びタンパク質以上の親和性を有するものを選択したい場合、ファージディスプレー、大腸菌ディスプレー、酵母ディスプレー等の表面提示法により、材料特異的なアミノ酸配列(ペプチド)や抗体等の結合性タンパク質を得ることが可能である。この方法により、所望の材料に対する結合ドメインを取得することができる。
反応領域に配置する結合部位を構成する材料と、それに対して取得した結合ドメインの解離定数等の結合に係わるパラメータは、一般的にはSPR(表面プラズモン共鳴測定)やQCM(水晶振動子測定)等の測定装置により容易に求めることができる。本発明において、特異的と表するものの解離定数(KD)は10-6M以下であり、より好ましくは10-7M以下である。KDが10-6Mより大きい場合、非特異な結合と区別することが難しくなり、また、一般的に解離速度も速いことが懸念され、そのような場合、反応関与分子が反応領域上に安定的にした固定化されているとは言いがたい。
また、SPRやQCMのセンサ基体上に設けることができる材料には装置使用上に制限がある為、そのような場合には、酵素標識免疫吸着測定法(ELISA)等によりその結合能を定性的に評価することも可能である。これの方法は比較的容易に本発明に使用する反応領域と結合ドメインの組合せにおける結合交叉の状況を予め調べることができる。
反応関与分子における機能ドメインと結合ドメインが共にペプチド鎖である場合、反応関与分子を融合タンパク質として遺伝子工学的な手法により作製することも可能である。異なる反応領域で異なる反応を行わせる場合には、結合ドメイン及び機能ドメインの両方において異なる反応関与分子を用いる。
本発明においては、機能ドメインとは別に結合ドメインを設けたことで、後述するように基体上への反応関与分子の配置選択性を向上させることが可能である。
機能ドメインと結合ドメインは、リンカーを介して結合させてもよい。リンカーは、用いる機能ドメインや結合ドメインの分子種により適宜選択して用いることができる。リンカーの一例としては、機能ドメイン、結合ドメインがタンパク質などのペプチドからなるものである場合、従来公知のGly−Gly−Gly−Gly−Serの繰り返し等のアミノ酸の連結等が例に挙げられる。このようなリンカーを使用することにより、反応領域表面と機能ドメイン(特に機能ドメインの機能部位)との間に間隔を設けることにより、両者の相互作用、特に機能ドメインの立体構造への基体表面の影響を抑制し、所望の機能をより確実に発揮できるように反応素子を設計することも可能である。
(反応領域の結合部位構成材料と結合ドメインの組合せ)
本発明の反応素子は、2以上の反応領域と、2以上の反応関与分子と、を有し、反応関与分子と、反応関与分子が選択的に結合する反応領域と、の組合せが2以上存在することを特徴とする。例えば、反応領域A及びBを基体に形成した際に、これらに配置する結合部位の構成材料を異ならせておき、反応領域Aに選択的に結合する結合ドメインaを有する反応関与分子と、反応領域Bを選択的に結合する結合ドメインbを有する反応関与分子を用意する。こうすることで、反応領域とこれに特異的に反応する結合ドメインを有する反応関与分子との異なる2つの組合せを得ることができる。なお、必要に応じて反応領域A及びBの少なくとも一方を複数基体上に設けることもできる。この構成において、各反応関与分子の有する機能ドメインの機能を異なるものとした場合には、反応領域AとBとで異なる反応を生じさせることができる。すなわち、本発明の反応素子では、異なる材料構成の結合部位を有する反応領域の数に応じた異なる反応関与分子を基体に固定できる。つまり、本発明の反応素子が複数の機能を有する反応素子として機能することが可能となる。また、反応領域構成材料を予め基体上に配置することにより、基体上の所望の位置に所望の機能を有する反応関与分子を配置することも可能であり、例えば、機能ドメインに抗体等の捕捉分子を用いることによりフィンガープリンティングによる目的分子の検出等も可能である。
なお、結合ドメインが同じであって、機能ドメインが異なる反応関与分子の組合せを用いて、同一反応領域内に異なる機能ドメインを配置して、反応領域間で関与する反応を異ならせることもできる。
このような反応素子の作製方法としては、少なくと以下の工程を含んでなる方法が例示できる。
(1)基体上に、二以上の反応領域を形成する工程。
(2)基体上に形成した2以上の反応領域のそれぞれに結合する結合ドメインを有する反応関与分子を各反応領域に固定する工程。
(1)反応領域形成工程には、前記(反応領域)の項にて記載した種々の形成方法をその用途に応じて選択して使用することが可能である。例えば、基体に金属または金属酸化物からなる蒸着膜をマスク法により所望のパターンで成膜する方法、基体上の蒸着膜をエッチング法やEB法により所望のパターンに加工する方法等を組み合わせて基体上に所望の二以上の反応領域を形成することができる。
次に、(2)反応領域に反応関与分子を固定する工程では、本発明の特徴の一つとして、反応関与分子が有する機能ドメイン分子とは独立した結合ドメインを介して反応領域への反応関与分子の固定化がなされる。その為に、従来必要であったアミノカップリング処理、種々の表面活性化処理、または反応関与分子側への化学修飾等を必須とすることがなくなる。これにより、作製工程の削減と共に、種々の処理時に反応関与分子の所望の活性が低下するという懸念を払拭することが可能である。
反応領域と反応関与分子を接触させる方法には、例えば、反応関与分子を含む溶液中に反応領域を設けた基体を浸漬する浸漬方法が利用できる。また、反応関与分子を含む溶液を基体の所定位置に塗布する塗布方法も利用できる。塗布方法としては、インクジェット法が好適に利用できる。いずれの場合も、反応領域と反応関与分子を一定時間接触した後に非特異的な結合種を所定の洗浄液にて洗浄し、反応領域との特異的な結合する反応関与分子のみを選択的に配置することが可能である。
このように、本発明の製造方法によれば、基体上に反応領域を配置し、配された反応領域に反応関与分子を導入する、という極めて簡便な2つの工程により上述したような機能を発揮する反応素子を製造することが可能である。さらに、本発明の製造方法の特徴としては、固定する際に異なる種類の反応関与分子を同時に反応領域に導入しても、各々の結合ドメインが対応した反応領域の材料を認識するため、個別に導入する必要がない点が挙げられる。
また、本発明の反応素子は上述のように基体の少なくとも一部に流路を形成することにより、更なる効果を発揮することが可能である。基体上での流路及び反応領域の配置関係としては以下の形態を挙げることができる。
1)反応領域が流路中に複数の反応領域が設けられている。
2)流路に対して大きい反応領域間を流路が連結するように設ける。
これらの位置関係の一方、あるいは両方を満たすように流路を形成することができる。図1(1)には供給用開口と回収用開口の間に設けられた流路10の一部を同幅で区分して反応領域12を設けた例を、図1(2)には流路10の途中に流路よりも幅の広い反応領域12を設けた例をそれぞれ示す。
上記1)の流路形態で且つ流路径を1mm以下とした場合、上述したようにバッチ型もしくはアレイ型の反応領域を用いた場合に比べ、所望の反応に係わる試料の使用効率を向上させることが期待できる。その結果、微量な試料の測定または反応に適した反応素子を提供することができる。また、反応領域の形成に上述した微小構造体を用いることは上述したように反応効率の向上に繋がり、反応素子としてより好ましい形態となる。
上記1)、2)のいずれの形態においても、反応領域を流路で直列型に連結することにより、複数段反応からなる反応系を反応素子内にて実現することも可能である。また、流路を用いることにより、反応領域に反応関与分子を固定化する方法をより簡便化させることが可能である。例えば、基体上の異なる材料構成を有する複数の反応領域のいずれかに固定化すべき反応関与分子を溶液として、試料導入口から流路を介してそれが固定される反応領域に接触させ、その後洗浄溶液による洗浄工程を経て、所望の位置に反応関与分子が固定された反応素子を提供することができる。このような流路があれば、洗浄工程も洗浄液を流路の導入口より導入することにより簡便に実施することが可能である。
(反応素子の応用)
本発明の反応素子は、バイオセンサー、バイオリアクターなどに利用することができる。特にバイオセンサーへの応用例としては、機能ドメインとして抗体あるいは抗体断片を使用することで、血清、体内外の分泌液などから疾病マーカーなど複数のタンパク質を捕捉し検出することが可能となる。また、機能ドメインとして酵素を使用することで、食品中、体内、大気中に含まれる有害物質の測定、食品や空気中に含まれる有害物質や、河川の水に含まれる環境ホルモンなどの測定が可能となる。本発明の反応素子を利用したバイオリアクターとしては、広義では上記した反応を含むこともあるが、特には機能ドメインとして酵素など変換分子を用いた物質生産用として好適である。本発明においては、2以上の異なる機能を有する反応素子を別々の領域に区分して流路中の反応領域に固定した構成を得ることが容易である。この構成を利用して、物質生産のための反応を行う反応領域の前後に、その原料あるいは反応物を精製するための捕捉分子を固定した反応領域を配置することも可能である。あるいは、タンパク質を扱う反応領域の前後にタンパク質の再巻き戻し反応を行うための機能を有する反応関与分子を固定した反応領域を設けることも可能である。例えば、タンパク質が関与する各種の捕捉反応や変換反応を行う際に、反応に用いるタンパク質が変性している場合は所望の反応が効果的に進行しない場合がある。そこで、分子シャペロンのようなタンパク質再巻き戻し反応を行う機能分子を用いた反応素子を固定した反応領域を設け、変性タンパク質の構造を巻き戻してから、目的とする捕捉反応や変換反応に供給することで、効果的な反応を行うことが可能となる。
(検出素子)
本発明の検出素子は、上述した反応素子の構造を有するもので、機能ドメインとして所望とする検出において利用する反応に関与し得る分子を用いたものである。例えば、機能ドメインとして標的物質を認識するドメインを用いることで標的物質検出素子として利用することができる。すなわち、基体に設けられた反応領域に固定された反応関与分子の有する機能ドメインへの試料中に含まれる標的物質の結合を検出することで、試料中における標的物質の有無を検査することが可能となる。この、機能ドメインと標的物質との結合は、この結合に基づく物理的及び/或いは化学的な量変化を各変化に応じて選択された検出手段により測定することにより行なう。更に、基体上に反応領域が複数存在するので、各反応領域での検出が可能となるように、必要に応じて検出手段を複数用いることもできる。本発明にかかる検出素子はバイオセンサーなどの検出素子として好適である。
(検出方法(検出手段)及び検出装置)
反応関与分子と検体中の標的物質との反応に基づく物理的及び/或いは化学的な量変化を検出する手段としては、各種の検出手段から目的に応じて選択したものが利用できる。光学的検出手段としては、蛍光法、電気化学ルミネッセンス法及びプラズモン共鳴法を利用したものが好ましい。蛍光法、電気化学ルミネッセンス法を利用する検出手段によれば、光量値をもとに標的物質濃度を求めることができるため、検出機構を簡易なものとすることが可能となる。また、プラズモン共鳴法を用いる場合、反応中の物理的変化を検出することができるため、反応過程の進行状況をも標的物質濃度をもとめるパラメータとすることが可能となる。また、プラズモン共鳴法を用いる検出法では、標識が不要であるため、反応領域での反応工程が低減し、検出までに要する時間をより短時間とすることが可能となる。
また、図8に示すように、検出素子と検出手段とを用いることで検出装置を構成することができる。なお、上記の装置構成において、検出素子の代わりに反応素子を使用し、反応素子中において反応関与分子と反応した物質を、検出手段を用いて検出することもできる。
(キット)
本発明にかかる反応素子を作製するためのキットを、反応領域を形成した基体と、反応関与分子と、をそれぞれ別部品として用いて構成することができる。このキットを利用して、実施者は基体の流路を利用して反応関与分子を反応領域に導入することで、検出素子あるいは反応素子を作製することができる。この反応領域を形成した基体の例としては、金属酸化物等を蒸着した反応領域を有する基体、粒子を充填した基体、微小構造体を形成した反応領域を有する基体などが挙げられる。
また、基体と、反応領域を構成する物質と、前記反応関与分子と、をそれぞれ別部品として用いてキットを構成することもできる。この反応領域を構成する物質の例としては、充填するための粒子、接着あるいは固定するための微小構造体等が挙げられる。
さらには、基体と、反応領域を構成する物質に固定化した反応関与分子と、をそれぞれ別部品としてキットを構成することもできる。この反応領域を構成する物質に固定化した反応関与分子の例としては、機能ドメイン―リンカー―結合ドメイン融合体のような反応関与分子が、既に粒子、あるいは微小構造体に固定化されており、かつ、基体に充填、接着、あるいは固定することが可能な状態となっているもの等が挙げられる。なお、上述した全てのキットの提供方法において、複数の反応領域を流路で連結していてもよく、複数の反応領域が流路中に存在していてもよい。
本発明のキットによれば、従来の化学架橋を用いた固定化方法を採用する場合と異なり、専門知識を有さない者でも比較的容易に反応素子を作製することができ、更に、反応による物質の捕獲あるいは検出を行うことが可能となる。
(参照例1)フェライト親和性ペプチド配列の取得
(1)フェライト粒子懸濁液の調製
フェライト粒子(平均粒径100μm)5mgに対して、1mlのTBSバッファー(50mMトリス−HCl(pH7.5)、150mM NaCl)を添加し、懸濁した。10,000rpm(9300g)5分遠心分離を行い、上清を取り除いた。沈澱に対して、アセトン1mlを添加・懸濁し、再度前述の条件で遠心分離を行い、上清を取り除いた。さらに、沈澱に対してTBS−0.1Tバッファー(50mMトリス−HCl(pH7.5)、150mM NaCl、0.1% Tween−20)1mlを添加・懸濁し、前述の条件で遠心分離を行い、上清を取り除いた。この操作をさらに2度繰り返した。得られた沈澱を1ml TBS−0.1Tバッファーにて懸濁し、さらに、懸濁液10μlに対して、990μlのTBS−0.1Tバッファーを添加し、ファージ・ディスプレイ・ペプチドライブラリーからのスクリーニングに用いるフェライト粒子懸濁液とした。
(2)ファージ・ディスプレイ・ペプチドライブラリーからのパンニング
フェライト粒子懸濁液に、4×1010 pfuのPh.D.−12ファージ・ディスプレイ・ライブラリー(NewEngland Biolabs, Inc.)と100μlのTBS−0.1Tバッファーを加え、30分、室温(25℃)に放置した。その後、10,000rpm(9300g)5分遠心分離を行い、上清を取り除いた。生じた沈澱を、TBS−0.1Tバッファー1mlにて懸濁した。懸濁液に対して、10,000rpm(9300g)5分遠心分離を行い、上清を取り除き、未結合のファージを除去する洗浄操作とした。さらに、9回同様の洗浄操作を行った。次いで、pH2.2のバッファー(0.2Mグリシン−HCl(pH2.2)、1mg/mlBSA)により、フェライト粒子に結合したファージを回収した。回収したファージを、大腸菌ER2537株(NewEngland Biolabs, Inc.)に感染させ、増幅を行った。
この一次スクリーニングで分画、増幅されたファージを用いて、同様の操作で二次以降のスクリーニングを実施した。ただし、二次スクリーニング以降、添加するファージは、2×1011 pfuとし、洗浄操作時に用いるバッファーには、TBS−0.5Tバッファー(50mMトリス−HCl(pH7.5)、150mM NaCl、0.5% Tween−20)を使用した。
(3)塩基配列の決定
この多段スクリーニング後、最終的に増幅されたファージを一部採り、これをクローン化した。単離された35個のクローンから、それぞれssDNAを調製し、ペプチド・ライブラリー中のランダム領域の塩基配列を決定した。解読されたランダム領域の塩基配列に基づき、アミノ酸配列を解析したところ、35個のクローンのうち8個のクローンが、下記の配列番号:1に示すアミノ酸配列を有していた。この8個のクローンは共通のアミノ酸配列を有する最も大きい集団であり、この配列番号:1をフェライト粒子に対する結合能を示すペプチドのアミノ酸配列とした。
Met−Pro−Ser−Trp−Arg−Thr−His−His−Val−Ala−Thr−Pro (配列番号:1)
(参照例2)アルミナ親和性ペプチド配列の取得
アルミナ粒子(平均粒径100μm)に対して、参照例1と同様にスクリーニング、パンニング、および塩基配列の決定を行い、51個のクローンのうち11個のクローンが、下記の配列番号:2に示すアミノ酸配列を有していた。この11個のクローンは共通のアミノ酸配列を有する最も大きい集団であり、この配列番号:2を、アルミナ粒子に対する結合能を示すペプチドのアミノ酸配列とした。
Val-Tyr-Ala-Asn-Gln-Thr-Pro-Pro-Ser-Lys-Ala-Arg (配列番号:2)
(参照例3)親和性ペプチド提示ファージ間での結合交叉試験
参照例1および参照例2で得られたフェライト、アルミナ親和性ペプチドの材料結合能の特異性を確認するため、配列番号:1および配列番号:2に提示した単一ファージ群を用いてファージELISAによる材料特異性の評価を行う。すなわち、各材料に対して得られた親和性ペプチドのみが結合し、対象の親和性ペプチド以外が結合しないことを確認する。(ステップ1)
PhD.−12ファージ・ディスプレイ・ペプチド・ライブラリー(NEW ENGLAND BIOLAB)から選別された配列番号:1及び配列番号:2を提示する各クローン、およびペプチド未提示クローンのファージ懸濁液を用意する。すなわち、各懸濁液の2×1011pfu相当を0.5%TBSTバッファーで希釈して0.5mlとする。
(ステップ2)
上記プレートのウエル毎に、ターゲットとして、フェライト粒子、アルミナ粒子、多孔質フェライト40、多孔質アルミナの断片各5mgを混同しないように個別に入れた。更に、3種類のファージ懸濁液、および0.5%TBSTバッファーを各段ごとに各々添加し、25℃で30分間静置する。なお、各ターゲット材料の調達は以下とおりである。
フェライト粒子:
下記参照例9の作製方法により調製したものを用いた。
アルミナ粒子:
マイクロン社製AX−50(平均粒径50μm)を用いた。
多孔質フェライト40:
下記参照例10の作製方法により調製したものを用いた。
多孔質アルミナ:
Whatman製アノディスクメンブレン(厚さ60μm、直径13mm、孔径0.2μm)を用いた。
(ステップ3)
上清を捨てた後、前記ウエル内において各ターゲットを0.5%TBSTバッファー2mlで10回洗浄する。
(ステップ4)
上記ウエル中の洗浄済みの各ターゲットに、0.5mlのHRP結合抗M13抗体溶液(抗M13抗体(NEW ENGLAND BIOLAB社製)2μLをTBST20mLに懸濁)を加えて、60分間緩やかに振盪させる。次に、上清を捨て、0.5%TBSTバッファー2mlで洗浄する操作を繰り返すことによって5回洗浄する。
(ステップ5)
上記ステップ4を経た各ターゲットが入っているウエルに、0.5mlのDetction Reagent1(Amersham Pharmacia #RPN2209)を添加する。さらに、0.5mlのDetction Reagent2(Amersham Pharmacia #RPN2209)を加えて、3分後、HRP結合抗M13抗体中の標識酵素HRPの作用により得られる、420nmにおけるルミノール発光強度を測定する。表1に、各クローンに対する評価結果を示す。なお、I420は420nmでの発光強度を示す。
Figure 2007107913
なお、上記のファージELISA測定系のステップ2において、ファージを混合していない場合(コントロール)に観測される微量の発光強度は、タイタープレートの自家発光等の誤差と考えられる。
以上の評価によって、得られた親和性ペプチドが、いずれも結合交叉がなく、スクリーニングに用いた粒子を認識することが確認される。
(参照例4)フェライト親和性ペプチドを融合したニワトリ卵白リゾチーム(HEL)結合性scFvの作製
フェライト親和性ペプチド(配列番号:1)をHEL−scFvのC末端に融合したタンパク質を以下の工程により作製する。
1.発現ベクター作製
予め、HEL結合性scFvの構成要素となるVL及びVHを、pET−15b(Novagen社)のマルチクローニングサイトを図2に示すように変更したべクターに挿入する。それぞれpUT−VL_HEL、pUT−VH_HELとする。なお、VLとしてはクローン名:VL_HEL(配列番号:3及び配列番号:4)を、VHとしては、クローン名:VH_HEL(配列番号:5及び配列番号:6)を用いた。
次に、VL、リンカー(GGGGS)×3、VH、GGGS、フェライト親和性ペプチド(配列番号:1)、His×6(以下、Hisタグ)が連続して翻訳され、融合タンパクとして発現されるような発現ベクターpUT−scFv_HELを以下のように作製する(図2)。
まず、上記で得られたpUT−VH_HELをテンプレートして、以下のプライマーを用い、PCRを行う。
FescFv−B(配列番号:7)
5’−NNNNNACGGCCGGCGGGGGCGGTAGCGGCGGTGGCGGGTCGGGCGGTGGCGGATCGGATATCCAGCTGCAGGAGT−3’
FescFv−F(配列番号:8)
5’−NNNNNACCGCGGTGGGGTGGCTACATGGTGAGTTCGCCAACTCGGCATGCTCCCGCCCCCGGAGACGGTGACGAGGGT−3’
尚、PCRは市販のPCRキット(タカラバイオ LA−Taqキット)を使用し、業者推奨のプロトコールに従い行う。その結果得られたPCR産物を2%アガロース電気泳動を行う。次に、ゲル抽出キット(Promega社)を使用してゲルから粗精製を行い、約400bpのPCR断片を得る。シークエンスの結果、目的の塩基配列を有することを確認する。得られたPCR断片を、Eco521/SacIIを用いて、切断する。次いで、アガロース電気泳動を行い、Vector側及びInsert側でそれぞれ目的の断片を精製する。精製して得られた核酸断片を、Vector:Insert=1:5となるように混合し、ライゲーション反応を行う。
以下、上記ライゲーション反応液を用いてJM109コンピテントセル40μLを形質転換する。形質転換は、ヒートショックを氷中→42℃×90sec→氷中の条件でおこなう。ヒートショックにより形質転換した上記BL21溶液にLB培地750μLを加え、一時間37℃にて振盪培養を行う。その後、6000rpm×5分間遠心を行い、培養上清650μLを廃棄し、残った培養上清と沈殿となった細胞画分を攪拌し、LB/amp.プレートに撒き、一晩37℃にて静置する。プレートから無作為にコロニーを選択し、LB/amp.液体培地3mLにて振盪培養を行い、市販のMiniPrepキット(プロメガ社製)を用い、業者推奨の方法により、プラスミドを抽出する。得られたプラスミドをNotI/SacIIを用いて、切断する。次いで、アガロース電気泳動を行い、目的の遺伝子断片が挿入されていることを確認する。このプラスミドをpUT−scFv_HELとする。
以下、上記作業にて得られたプラスミドpUT−scFv_HELを用いてBL21(DE3)コンピテントセル40μLを形質転換する。形質転換は、ヒートショックを氷中→42℃×90sec→氷中の条件でおこなう。ヒートショックにより形質転換した上記BL21溶液にLB培地750μLを加え、一時間37℃にて振盪培養を行う。その後、6000rpm×5分間遠心を行い、培養上清650μLを廃棄し、残った培養上清と沈殿となった細胞画分を攪拌し、LB/amp.プレートに撒き、一晩37℃にて静置する。
2.予備培養
プレート上のコロニーを無作為に選択し、3.0mL LB/amp.培地にて28℃にて一晩振盪培養を行う。
3.本培養
上記予備培養溶液を2×YT培地 750MLに植え継ぎ、更に培養を28℃にて継続する。OD600が0.8を越えた時点で、終濃度が1mMとなるようにIPTGを加え、更に28℃にて終夜培養を行う。
4.精製
目的のポリペプチド鎖を不溶性顆粒画分から以下の工程により精製する。
(4−1)不溶性顆粒の回収
上記3.で得られた培養液を6000rpm×30minにて遠心し、沈殿を菌体画分として得る。得られた菌体をトリス溶液(20mM トリス/500mM NaCl)15mlに氷中にて懸濁する。得られた懸濁液をフレンチプレスにて破砕し、菌破砕液を得る。次に、菌破砕液を12,000rpm×15minで遠心を行い、上清を除き、沈殿を不溶性顆粒画分として得る。
(4−2)不溶性顆粒画分の可溶化
上記(4−1)で得られた不溶性画分を6M 塩酸グアニジン/トリス溶液 10mLを加えて、一晩浸漬する。次に、12,000rpm×10minで遠心し、上清を可溶化溶液として得る。
(4−3)金属キレートカラム
金属キレートカラム担体として、His−Bind(Novagen社製)を用いる。カラム調整やサンプル負荷、及び洗浄工程は、前記業者の推奨方法に準拠し、室温(20℃)にて行う。目的であるHisタグ融合のポリペプチドの溶出は60mMイミダゾール/Tris溶液にて行う。溶出液のSDS−PAGE(アクリルアミド15%)の結果、単一バンドであり、精製されていることを確認する。
(4−4)透析
上記溶出液に対して、外液を6M 塩酸グアニジン/Tris溶液として4℃にて透析を行い、溶出液中のイミダゾールの除去を行い、上記それぞれのポリペプチド鎖溶液を得る。
(4−5)リフォールディング
HEL結合性Fvと上記ペプチドを融合したscFv−_HELのポリペプチド鎖溶液を個別に用いて、以下の工程により、脱塩酸グアニンジンを透析(4℃)にて行いながらタンパク質のリフォールディングを行う。
(4−5−1)
6M 塩酸グアニジン/Tris溶液を用い、それぞれのポリペプチド鎖のモル吸光係数とΔO.D.(280nm〜320nm)値から濃度7.5μMのサンプル(希釈後体
積10ml)を調整する。次にβ−メルカプトエタノール(還元剤)を終濃度375μM(タンパク濃度50倍)になるよう添加、室温、暗所で4時間還元を行う。このサンプル溶液を透析バック(MWCO:14,000)に入れ、透析用サンプルとする。
(4−5−2)
透析外液を6M塩酸グアニンジン/トリス溶液として、透析サンプルを浸漬し、緩やかに攪拌しながら6時間透析する。
(4−5−3)
外液の塩酸グアニジン濃度を3M、2Mと段階的に下げる。それぞれの外液濃度において、6時間透析する。
(4−5−4)
酸化型グルタチオン(GSSG)を終濃度375μM、L−Argを 終濃度0.4M)となるようにトリス溶液に加え、上記3)の2Mの透析外液を加え、塩酸グアニジン濃度が1Mとし、pHをNaOHで、pH8.0(4℃)に調整した溶液にて、12時間緩やかに攪拌しながら透析する。
(4−5−5)
上記(4−5−4)と同様の作業にて塩酸グアニジン濃度0.5Mの含L−Arg トリス溶液を整し、更に12時間透析する。
(4−5−6)
最後にトリス溶液にて12時間透析する。
(4−5−7)
透析終了後、10000rpmで約20分遠心分離し凝集体と上清を分離する。上記で得られた溶液に対して、更に外液をリン酸バッファー(以下、PBS)に替え、上記溶液を用いて、HEL固定化セファロースにてアフィニティ精製を行う。
(参照例5)アルミナ親和性ペプチドを融合したβ―ガラクトシダーゼ(βgal)結合性scFvの作製
アルミナ親和性ペプチド(配列番号:2)をβgal−scFvのC末端に融合したタンパク質を以下の工程により作製する。まず、発現ベクターを作製する。βgal−scFv(配列番号:9)及び(配列番号:10)、GGGS、アルミナ親和性ペプチド(配列番号:2)、Hisタグが連続して翻訳され、融合タンパクとして発現される発現ベクターpUT−scFv_βgalを以下のように作製する(図3)。
本参照例では、長鎖DNAの合成方法として知られている藤本らの手法(藤本英也、合成遺伝子の作製法、植物細胞工学シリーズ7 植物のPCR実験プロトコール、1997、秀潤社、p95−100)を用いる。この方法の原理は、120MER程度のオリゴヌクレオチドプライマーを3'末端に20mer程度のオーバーラップを持つように作製し、お互いのオリゴヌクレオチドプライマーのオーバーラップ領域を利用して、欠損部分を伸張させ、さらに両末端のプライマーを用いてPCRを行うことによって増幅するというものである。この操作を順次繰り返し、目的とする長鎖DNAを合成する。
一連のオーバーラップPCR法を図2に従って順次行う。図3に示す全16種の各種プライマー(Ga、G01、Gb、G02、Gc、G03、Gd、G04、Ge、G05、Gf、G06、Gg、G07、Gh、G08)のDNA配列を配列番号11〜26にそれぞれ示す。図3におけるStep3の伸張反応終了後、完全長のβgal−scFv遺伝子が合成されているか塩基配列を確認する。
β―ガラクトシダーゼ結合性scFvの遺伝子配列をもつプラスミドpPM160+scFv(J. Mol. Biol. 280 (1), 117−127 (1998)に記載)をテンプレートとして、以下のプライマーを用い、PCRを行う。
AlscFv−B(配列番号:27)
5’−NNNNNACCATGGATGGCCCAGGTGCAGCTG−3’
AlscFv−F(配列番号:28)
5’−NNNNNACCGCGGCCGTGCTTTCGATGGCGGAGTATGGTTTGCATATACGCTACCGCCCCCTGCGGCCCCATTCAGATC−3’
尚、PCRは市販のPCRキット(タカラバイオ LA−Taqキット)を使用し、業者推奨のプロトコールに従い行う。その結果得られたPCR産物を2%アガロース電気泳動を行う。次に、ゲル抽出キット(Promega社)を使用してゲルから粗精製を行い、約900bpのPCR断片を得る。シークエンスの結果、目的の塩基配列を有することを確認する。得られたPCR断片を、NcoI/SacIIを用いて、切断する。次いで、アガロース電気泳動を行い、Vector側及びInsert側でそれぞれ目的の断片を精製する。精製して得られた核酸断片を、Vector:Insert=1:5となるように混合し、ライゲーション反応を行う。
以下、上記ライゲーション反応液を用いてJM109コンピテントセル40μLを形質転換する。形質転換は、ヒートショックを氷中→42℃×90sec→氷中の条件でおこなう。ヒートショックにより形質転換した上記BL21溶液にLB培地750μLを加え、一時間37℃にて振盪培養を行なう。その後、6000rpm×5分間遠心を行い、培養上清650μLを廃棄し、残った培養上清と沈殿となった細胞画分を攪拌し、LB/amp.プレートに撒き、一晩37℃にて静置する。プレートから無作為にコロニーを選択し、LB/amp.液体培地3mLにて振盪培養を行い、市販のMiniPrepキット(プロメガ社製)を用い、業者推奨の方法により、プラスミドを抽出する。得られたプラスミドをNotI/SacIIを用いて、切断する。次いで、アガロース電気泳動を行い、目的の遺伝子断片が挿入されていることを確認する。このプラスミドをpUT−scFv_βgalとする。
以下、上記作業にて得られたプラスミドpUT−scFv_βgalを用いてBL21(DE3)コンピテントセル40μLを形質転換する。形質転換は、ヒートショックを氷中→42℃×90sec→氷中の条件でおこなう。ヒートショックにより形質転換した上記BL21溶液にLB培地750μLを加え、一時間37℃にて振盪培養を行なう。その後、6000rpm×5分間遠心を行い、培養上清650μLを廃棄し、残った培養上清と沈殿となった細胞画分を攪拌し、LB/amp.プレートに撒き、一晩37℃にて静置する。
以下、予備培養から精製に関しては、参照例4同様の操作を行った後、β−ガラクトシダーゼ固定化セファロースでアフィニティ精製し、アルミナ親和性ペプチド融合β―ガラクトシダーゼ結合性scFvを得る。
(参照例6)フェライト親和性ペプチドを融合したアスパルターゼの作製
フェライト親和性ペプチド(配列番号:1)をアスパルターゼのC末端に融合したタンパク質を以下の工程により作製する。まず、発現ベクターを作製する。アスパルターゼ、GGGS、フェライト親和性ペプチド(配列番号:1)、Hisタグが連続して翻訳され、融合タンパクとして発現されるような発現ベクターpUT−Aspを以下のように作製する。(図4)
アスパルターゼをコードする遺伝子として、大腸菌由来の遺伝子(配列番号:29)及び(配列番号:30)を含むプラスミドDNA pGS73(Journal of General Microbiology,130,p1271−1278,1984参照)をテンプレートとして、以下のプライマーを用い、PCRを行う。
FeAsp−B(配列番号:31)
5’−NNNNNATCTAGAATGTCTAAGACGAGCAAC−3’
FeAsp−F(配列番号:32)
5’−NNNNNAACTAGTATGGTGATGATGGTGATGCCGCGGTGGGGTGGCTACATGGTGAGTTCGCCAACTCGGCATGCTCCCGCCCCCGTTCTCCAAGTAGAGCCT−3’
尚、PCRは市販のPCRキット(タカラバイオ LA−Taqキット)を使用し、業者推奨のプロトコールに従い行う。その結果得られたPCR産物を1%アガロース電気泳動を行う。次に、ゲル抽出キット(Promega社)を使用してゲルから粗精製を行い、約1700bpのPCR断片を得る。シークエンスの結果、目的の塩基配列を有することを確認する。得られたPCR断片を、XbaI/SpeIを用いて、切断する。次いで、アガロース電気泳動を行い、Vector側及びInsert側でそれぞれ目的の断片を精製する。精製して得られた核酸断片を、Vector:Insert=1:5となるように混合し、ライゲーション反応を行う。
以下、上記ライゲーション反応液を用いてJM109コンピテントセル40μLを形質転換する。形質転換は、ヒートショックを氷中→42℃×90sec→氷中の条件でおこなう。ヒートショックにより形質転換した上記BL21溶液にLB培地750μLを加え、一時間37℃にて振盪培養を行なう。その後、6000rpm×5分間遠心を行い、培養上清650μLを廃棄し、残った培養上清と沈殿となった細胞画分を攪拌し、LB/amp.プレートに撒き、一晩37℃にて静置する。プレートから無作為にコロニーを選択し、LB/amp.液体培地3mLにて振盪培養を行い、市販のMiniPrepキット(プロメガ社製)を用い、業者推奨の方法により、プラスミドを抽出する。得られたプラスミドをXbaI/SpeIを用いて、切断する。次いで、アガロース電気泳動を行い、目的の遺伝子断片が挿入されていることを確認する。このプラスミドをpUT−Aspとする。
以下、上記作業にて得られたプラスミドpUT−Aspを用いてBL21(DE3)コンピテントセル40μLを形質転換する。形質転換は、ヒートショックを氷中→42℃×90sec→氷中の条件でおこなう。ヒートショックにより形質転換した上記BL21溶液にLB培地750μLを加え、一時間37℃にて振盪培養を行なう。その後、6000rpm×5分間遠心を行い、培養上清650μLを廃棄し、残った培養上清と沈殿となった細胞画分を攪拌し、LB/amp.プレートに撒き、一晩37℃にて静置する。
以下、この融合体は菌体内により多く発現されるため、予備培養から精製に関しては、参照例4同様の操作を行い、フェライト親和性ペプチド融合アスパルターゼを得る。
(参照例7)アルミナ親和性ペプチドを融合したアスパラギン酸β−脱炭酸酵素の作製
アルミナ親和性ペプチド(配列番号:2)をアスパラギン酸β−脱炭酸酵素(以下、ADCと呼ぶ)のC末端に融合したタンパク質を以下の工程により作製する。
まず、発現ベクターを作製する。ADC(配列番号:33及び配列番号:34)、GGGS、アルミナ親和性ペプチド(配列番号:2)、Hisタグが連続して翻訳され、融合タンパクとして発現されるような発現ベクターpUT−ADCを以下のように作製する(図5)。
ADCをコードする遺伝子を含むプラスミドDNA pPD601(シュードモナス・ダクネー由来、ATCC40448)をテンプレートとして、以下のプライマーを用い、PCRを行う。
AlscFv−B(配列番号:35)
5’−NNNNNATCTAGAATGAGCAAGGATTATCAG−3’
AlscFv−F(配列番号:36)
5’−NNNNNACCGCGGCCGTGCTTTCGATGGCGGAGTATGGTTTGCATATACGCTACCGCCCCCGCGCTTGTTCCCTTGCTG−3’
尚、PCRは市販のPCRキット(タカラバイオ LA−Taqキット)を使用し、業者推奨のプロトコールに従い行う。その結果得られたPCR産物を1%アガロース電気泳動を行う。次に、ゲル抽出キット(Promega社)を使用してゲルから粗精製を行い、約1700bpのPCR断片を得る。シークエンスの結果、目的の塩基配列を有することを確認する。得られたPCR断片を、XbaI/SacIIを用いて、切断する。次いで、アガロース電気泳動を行い、Vector側及びInsert側でそれぞれ目的の断片を精製する。精製して得られた核酸断片を、Vector:Insert=1:5となるように混合し、ライゲーション反応を行う。
以下、上記ライゲーション反応液を用いてJM109コンピテントセル40μLを形質転換する。形質転換は、ヒートショックを氷中→42℃×90sec→氷中の条件でおこなう。ヒートショックにより形質転換した上記BL21溶液にLB培地750μLを加え、一時間37℃にて振盪培養を行なう。その後、6000rpm×5分間遠心を行い、培養上清650μLを廃棄し、残った培養上清と沈殿となった細胞画分を攪拌し、LB/amp.プレートに撒き、一晩37℃にて静置する。プレートから無作為にコロニーを選択し、LB/amp.液体培地3mLにて振盪培養を行い、市販のMiniPrepキット(プロメガ社製)を用い、業者推奨の方法により、プラスミドを抽出する。得られたプラスミドをXbaI/SacIIを用いて、切断する。次いで、アガロース電気泳動を行い、目的の遺伝子断片が挿入されていることを確認する。このプラスミドをpUT−ADCとする。
以下、上記作業にて得られたプラスミドpUT−ADCを用いてBL21(DE3)コンピテントセル40μLを形質転換する。形質転換は、ヒートショックを氷中→42℃×90sec→氷中の条件でおこなう。ヒートショックにより形質転換した上記BL21溶液にLB培地750μLを加え、一時間37℃にて振盪培養を行なう。その後、6000rpm×5分間遠心を行い、培養上清650μLを廃棄し、残った培養上清と沈殿となった細胞画分を攪拌し、LB/amp.プレートに撒き、一晩37℃にて静置する。
以下、この融合体は菌体内により多く発現されるため、予備培養から精製に関しては、参照例4同様の操作を行い、アルミナ親和性ペプチド融合ADCを得る。
(参照例8)アルミナ親和性ペプチド融合GroELの作製アルミナ親和性ペプチド
アルミナ親和性ペプチド(配列番号:2)をGro−ELのC末端に融合したタンパク質を以下の工程により作製する。まず、発現ベクターを作製する。Gro−EL(配列番号:37及び配列番号:38)、GGGS、アルミナ親和性ペプチド(配列番号:2)、Hisタグが連続して翻訳され、融合タンパクとして発現されるような発現ベクターpUT−GroELを以下のように作製する(図6)。GroELをコードする遺伝子を含むプラスミドpQE30−EGroELをテンプレートとして、以下のプライマーを用い、PCRを行う。
AlGroEL−B(配列番号:39)
5’−NNNNNATCTAGAGTTTATGCGAATCAGACT−3’
AlGroEL−F(配列番号:40)
5’−NNNNNACCGCGGCCGTGCTTTCGATGGCGGAGTATGGTTTGCATATACGCTACCGCCCCCCATCATGCCGCCCATGCC−3’
尚、PCRは市販のPCRキット(タカラバイオ LA−Taqキット)を使用し、業者推奨のプロトコールに従い行う。その結果得られたPCR産物を1%アガロース電気泳動を行う。次に、ゲル抽出キット(Promega社)を使用してゲルから粗精製を行い、約1800bpのPCR断片を得る。シークエンスの結果、目的の塩基配列を有することを確認する。得られたPCR断片を、XbaI/SacIIを用いて、切断する。次いで、アガロース電気泳動を行い、Vector側及びInsert側でそれぞれ目的の断片を精製する。精製して得られた核酸断片を、Vector:Insert=1:5となるように混合し、ライゲーション反応を行う。以下、上記ライゲーション反応液を用いてJM109コンピテントセル40μLを形質転換する。形質転換は、ヒートショックを氷中→42℃×90sec→氷中の条件でおこなう。ヒートショックにより形質転換した上記BL21溶液にLB培地750μLを加え、一時間37℃にて振盪培養を行なう。その後、6000rpm×5分間遠心を行い、培養上清650μLを廃棄し、残った培養上清と沈殿となった細胞画分を攪拌し、LB/amp.プレートに撒き、一晩37℃にて静置する。プレートから無作為にコロニーを選択し、LB/amp.液体培地3mLにて振盪培養を行い、市販のMiniPrepキット(プロメガ社製)を用い、業者推奨の方法により、プラスミドを抽出する。得られたプラスミドをXbaI/SacIIを用いて、切断する。次いで、アガロース電気泳動を行い、目的の遺伝子断片が挿入されていることを確認する。
このプラスミドをpUT−GroELとする。
以下、上記作業にて得られたプラスミドpUT−GroELを用いてBL21(DE3)コンピテントセル40μLを形質転換する。形質転換は、ヒートショックを氷中→42℃×90sec→氷中の条件でおこなう。ヒートショックにより形質転換した上記BL21溶液にLB培地750μLを加え、一時間37℃にて振盪培養を行なう。その後、6000rpm×5分間遠心を行い、培養上清650μLを廃棄し、残った培養上清と沈殿となった細胞画分を攪拌し、LB/amp.プレートに撒き、一晩37℃にて静置する。
以下、この融合体は菌体内により多く発現されるため、予備培養から精製に関しては、参照例4同様の操作を行い、アルミナ親和性ペプチド融合GroELを得る。
(参照例9)フェライト粒子の作製
NiO20.5モル%、ZnO30.0モル%、Fe2349.5モル%の組成となるように、各種酸化物を調合し、900℃空気中で2時間仮焼成したのち、粉砕した。次に、スラリー濃度が60%になるように水を添加して、分散剤を適量添加したのち、ボールミルにて3時間混合しスラリー化し、これに結合剤を適量添加した。これを150℃以上の温度にてスプレードライヤで造粒乾燥した。造粒物を、空気中で、バッチ炉を用い、1300℃で焼成した。次いで、これを解砕、分級して、平均粒径60μmの各種フェライト粒子をえた。
(参照例10)多孔質フェライトの作製
(a)水溶液製造工程
容器に水を入れ、その中に粉末状のアルギン酸アンモニウムを1%(wt)となるように入れて撹拌機で混合する。これにより粘性を有するアルギン酸アンモニウム水溶液Aが得られる。なお、このアルギン酸アンモニウムの代わりにアルギン酸ナトリウムを用いることもできる。
(b)スラリー製造工程
アルギン酸アンモニウム水溶液を容器に移し、アルギン酸アンモニウム水溶液1に対して、平均粒径3μmのバリウムフェライト金属粉末を1の割合で添加し、撹拌機で混合撹拌してスラリーBが製造される。
(c)スラリー吸着工
スラリーBを底の浅い容器に移し、この容器内に担持体としてのシート状のポリウレタンフォーム(スポンジ)の多孔材を入れ、その多孔材に前記スラリーBを含浸させる。
(d)圧搾工程
スラリーの含浸した多孔材を一対の回転する絞りローラで圧搾処理して、多孔材から余分なスラリーBが除去される。
(e)乾燥工程
圧搾されて余分なスラリーBの除去された多孔材を、天日又は乾燥機で乾燥処理して水分が除去されて、乾燥された多孔材が製造される。なお、この乾燥工程は、次の焼結工程の焼結炉内で前処理として行うようにしてもよい。
(f)焼結工程
(f−1)第1段階
乾燥された多孔材は、焼結炉に入れられ、空気注入バルブを閉,空気排出バルブを開にし、空気排出バルブの設けられているラインから焼結炉内の気体を吸引除去する真空処理をして、焼結炉内を無酸素雰囲気に保って約300℃に加熱処理される。これにより、ポリウレタンフォームは焼失する。なお、有酸素状態で約300℃に加熱してポリウレタンフォームを焼失させた場合、ポリウレタンフォームが炭化し、良質の多孔質フェライト材を得ることができない。
(f−2)第2段階
空気注入バルブ,空気排出バルブをあけ、空気注入バルブの設けられているラインから空気を供給して焼結炉内を有酸素雰囲気に保って約1000℃で約120分間焼結処理される。
(g)製品取出工程
焼結炉から多孔材の焼失したフェライト金属の焼結して得られた多孔質フェライト材が取出される。この多孔質フェライト材は、三次元網目構造の多孔質に形成されている。しかも、この多孔質フェライト材は、酸化雰囲気中で焼結されているので、永久磁石材として優れたものとすることができる。
(実施例1)複数検出型バイオセンサーの作製およびそれを用いた検出
マイクロチップ素材としてポリジメチルシロキサン(PDMS)樹脂を選択する。PDMSを基板として用いる複数反応型マイクロチップの模式図を図7に示す。マイクロチップの流路10は、幅及び深さ共に約20μmであり、反応領域12は幅及び深さ共に約500μmとする。各反応領域12aにはフェライト粒子14a(参照例9の製造方法による)、12bにはアルミナ粒子14b(マイクロン社製AX−50)を配置する。供給用開口16および回収用開口18(口径200μm)を持つガラス板を両開口が流路10の両端に位置し、かつそれ以外の流路部分がガラス板で覆われるよう張り合わせ、マイクロチップを作製する。
参照例4および参照例5で作製されたフェライト親和性ペプチド融合HEL結合性scFv、アルミナ親和性ペプチド融合β―ガラクトシダーゼ結合性scFvを混合し、それぞれ1μMとなるように、2種融合体PBST溶液(0.1%Tween20)を調整する。前記2種融合体PBST溶液100μlを毎分1μlの流速で供給用開口16より注入し、流路10および各反応領域12a、12bを順次通過させ、回収用開口18より回収する。さらにチップ上に結合せずに残存した融合体を洗浄する。この洗浄は0.5%のTween20を含むPBST溶液500μlを供給用開口16より注入し、回収用開口18より回収することで行う。以上の工程により、反応領域12aに配置された粒子14a上に、フェライト粒子に対する親和性ペプチドを融合したscFv20が固定化される。また、反応領域12bに配置された粒子14b上に、アルミナ粒子に対する親和性ペプチドを融合したscFv22が固定化される。このようにして、複数検出型のバイオセンサーが作製される。
図8に、マイクロチップ上に検出器を固定したバイオセンサーの断面図を示す。以下に検出方法を述べる。レーザーダイオード光源24からの光はコリメートレンズ26で平行光28となる。照射位置制御手段により、この平行光28が反応領域12aまたは12b上に照射される。この検出器は、蛍光性標識からの蛍光を測定するためのものであるので、反応領域12a及び12bからの反射光30を検出しないように、入射光28の波長帯の光を遮断するフィルター34を光電子増倍管36直前に入れてある。尚、反応領域12a及び12bの粒子14a及び14b上で照射光により励起された蛍光色素標識から発光させる蛍光はフィルター32を通して光電子増倍管36で検出される。
捕獲されたHELおよびβ―ガラクトシダーゼに対して、二次抗体として1μM−FITC標識抗HEL抗体/PBST溶液(0.1%Tween20)100μl、および1μM−TxRed標識抗β―ガラクトシダーゼ抗体/PBST溶液(0.1%Tween20)100μlを供給用開口16より1μl/minで流した。その後、0.5%のTween20を含むPBST溶液(pH7.4)100μlを同流速で流し、回収用開口18より回収する。反応したFITC標識二次抗体、および1μM−TxRed標識抗体の蛍光強度を測定することにより、検体中のHELおよびβ―ガラクトシダーゼの定量を行う。
(実施例2)複数検出型マイクロアレイの作製およびそれを用いた検出
複数検出型マイクロアレイの模式図を図9に示す。石英基板38の表面上に複数の多孔質反応領域として、多孔質フェライト40(参照例10の製造方法による)、多孔質アルミナ42(ワットマン社製アノディスクメンブレン)を配した。その後、前記2種融合体PBST溶液中に基板を浸漬させる。この操作により融合体20が、多孔質フェライト反応領域40に固定化され、融合体22が多孔質アルミナ反応領域42に固定化される。基板を引き上げた後、0.5%のTween20を含むPBST溶液(pH7.4)にて3回洗浄し、2種の検体A(HEL)44および検体B(β―ガラクトシダーゼ)46の混合溶液に基板を浸漬する。基板を引き上げた後、0.5%のTween20を含むPBST溶液(pH7.4)にて3回洗浄する。捕獲されたHELおよびβ―ガラクトシダーゼに対して、二次抗体として1μM−FITC標識抗HEL抗体/PBST溶液(0.1%Tween20)、および1μM−TxRed標識抗β―ガラクトシダーゼ抗体/PBST溶液を供給用開口16より1μl/minで流した。その後、0.5%のTween20を含むPBST溶液(pH7.4)にて3回洗浄する。蛍光顕微鏡でFITCに対応するフィルターを用いて観察することで、多孔質反応領域40の部分では520nmの蛍光が観察される。また、TxRedに対応するフィルターを用いて観察することで、多孔質反応領域42の部分では620nmの蛍光が観察される。以上の操作により、混合溶液中のHELおよびβ―ガラクトシダーゼの存在が確認される。
(実施例3)連続反応型バイオリアクターの作製およびフマル酸からのアラニンの合成
参照例6および参照例7で作製されたフェライト親和性ペプチド融合アスパルターゼ、アルミナ親和性ペプチド融合ADCを混合し、それぞれ1μMとなるように、2種融合体PBST溶液(0.1%Tween20)を調整する。実施例1と同様に、反応領域に粒子を配した図7に示したマイクロチップに対して、前記2種融合体PBST溶液100μlを毎分1μlの流速で供給用開口16より注入し、流路10および各反応領域12a、12bを順次通過し、回収用開口18より回収する。さらにチップ上に親和性を伴わずに残存した融合体を洗浄するため、0.5%のTween20を含むPBST溶液500μlを供給用開口16より注入し、回収用開口18より回収する。以上の工程により、反応領域12aに配置されたフェライト粒子14a上に、フェライト親和性ペプチドを融合したアスパルターゼ38が固定化される。また、反応領域12bに配置されたアルミナ粒子14b上に、アルミナ親和性ペプチドを融合したアスパラギン酸β−脱炭酸酵素40が固定化される。こうして、連続反応系バイオリアクターが作製される。
10mMフマル酸溶液100μlを供給用開口16より10μl/minで流した後、0.1%Tween20含有PBST(pH7.4)100μlを同流速で流し、回収用開口18より200μl全てを回収する。回収溶液をHPLCで定量することにより、乳酸が4.9μMの濃度で検出され、原料のフマル酸から98%の収率でアラニンが得られることが確認される。
(実施例4)バイオセンサーの作製およびHELの再巻き戻し、検出
参照例4および参照例8で作製されたフェライト親和性ペプチド融合HEL結合性scFv、アルミナ親和性ペプチド融合GroELを混合し、それぞれ1μMとなるように、2種融合体PBST溶液(0.1%Tween20)を調整する。
反応領域12及び48を流路10に対して直列した構成の図10に示すマイクロチップを用意する。流路及び反応領域のサイズは実施例1と同様である。反応領域48の空間には多孔質アルミナ(ワットマン社製アノディスクメンブレン)48を充填し、反応領域12には参照例9で作製したフェライト粒子を配置した。
このマイクロチップの流路10に、前記2種融合体PBST溶液100μlを毎分1μlの流速で供給用開口16より注入し、流路10および各反応領域48および12を順次通過させ、回収用開口18より回収する。さらにチップ上に親和性を伴わずに残存した融合体を洗浄するため、0.5%のTween20を含むPBST溶液500μlを供給用開口16より注入し、回収用開口18より回収する。以上の工程により、反応領域48に、多孔質アルミナに対する親和性ペプチドを融合したGroEL50が固定され、反応領域12に、フェライト粒子に対する親和性ペプチドを融合したscFv22、がそれぞれ固定化される。このようにして、変性HEL含有溶液のHEL量を測定することが可能なバイオセンサーが作製される。
4M塩酸グアニジン中で変性させて活性を低下させ、円二色性分散計でαへリックス含量の著しい低下が認められたHEL(1mM溶液)を、再生用緩衝液中、終濃度が1μM、になるように調製し、供給用開口16より10μl/minで流した。なお、再生用緩衝液に組成は以下のとおりである。
10mM Mg(CH3COO)2、20mM KCl、5mM ATP、50mM Tris−HCl (pH7.4)
その後、0.1%Tween20含有PBST(pH7.4)100μlを同流速で流し、回収用開口18より200μl全てを回収する。図10のマイクロチップには実施例1と同様に検出装置を組み込んでおり、上記操作後、蛍光標識二次抗体を流し洗浄することで、反応領域12上に反応したHEL相当量の蛍光が観察される。
なお、上記操作において、ATPを加えないHEL溶液をチップ中に流し、同様の操作を行ったところ、反応領域12において二次抗体に関する蛍光強度を得ることができない。このことから、反応領域48に固定されたGroEL融合体がATPにより機能していることが確認される。また、塩酸グアニジン中で変性したHELが固定化されたGroEL融合体により再巻き戻しされ、さらに固定化されたscFv融合体により捕捉されることが確認される。
本発明では、基体と、基体上に配置された二以上の反応領域と、これら反応領域にそれぞれ選択的に結合する結合ドメインを有する反応関与分子と、を少なくとも用いて構成された反応素子を使用する。その結果、基体上に複数の反応関与分子を高配向および高機能の状態のまま固定化することが可能である。また、複数の反応関与分子を基体上の複数の反応領域に導入するという容易な操作により固定化が可能であることから、バイオセンサーおよびバイオリアクターの製造工程の簡略化が可能である。更には、流路系のマイクロチップを作製する際、反応領域を有する基体と上蓋材を液体が漏れないよう十分な接着を施した後に固定化が可能であることから、上蓋材の処理方法を選択することなく反応素子を作製することができる。
つまり、本発明は、生体分子など複数の反応関与分子を基体上に固定化して、反応関与分子の有する種々の生理的機能を利用する、バイオセンサーやバイオリアクターを初めとする、各種の生体分子の機能を応用する製品の高性能化、低価格化に利用可能である。
本発明における反応領域と流路の説明図である。 本発明の参照例4に関する発現ベクターの説明図である。 本発明の参照例5に関するオーバーラップPCRおよび発現ベクターの説明図である。 本発明の参照例6に関する発現ベクターの説明図である。 本発明の参照例7に関する発現ベクターの説明図である。 本発明の参照例8に関する発現ベクターの説明図である。 本発明の実施例1に関するマイクロチップの模式図である。 本発明の実施例1に関するマイクロチップの断面図である。 本発明の実施例2に関するマイクロチップの模式図である。 本発明の実施例4に関するマイクロチップの断面図である。
符号の説明
10 流路
12 反応領域
14 反応領域として配置された粒子
16 供給用開口
18 回収用開口
20 フェライト粒子に固定されたフェライト親和性ペプチド融合タンパク質
22 アルミナ粒子に固定されたアルミナ親和性ペプチド融合タンパク質
24 光源(レーザーダイオード)
26 コリメータレンズ
28 平行光
30 反射光
32 コリメータレンズ
34 入射光の波長帯の光を遮蔽するフィルター
36 光電子増倍管(PMT)
38 マイクロアレイ基体
40 多孔質フェライト反応領域
42 多孔質アルミナ反応領域
44 検体A
46 検体B
48 多孔質アルミナフィルター
50 多孔質アルミナフィルターに固定されたアルミナ親和性ペプチド融合タンパク質

Claims (17)

  1. 基体と、基体上に配置された複数の反応領域と、各反応領域内に配置された反応関与分子と、を有する反応素子であって、
    前記反応関与分子はそれが配置される反応領域の有する結合部位に対して選択的に結合し得る結合ドメインを有し、該結合ドメインが該結合部位とが結合することで該反応領域に配置されており、かつ
    各反応領域毎に反応関与分子が関与する反応が異なる
    ことを特徴とする反応素子。
  2. 前記基体に流路が設けられており、該流路中に前記反応領域が配置されている請求項1に記載の反応素子。
  3. 前記流路の上流から下流へ向かう方向に前記二以上の反応領域が直列配置されている請求項2記載の反応素子。
  4. 検体中の検出対象物質を検出するための検出素子において、
    基体と、基体上に配置された複数の反応領域と、各反応領域内に配置された反応関与分子と、を有し、
    前記反応関与分子はそれが配置される反応領域の有する結合部位に対して選択的に結合し得る結合ドメインを有し、該結合ドメインが該結合部位とが結合することで該反応領域に配置されており、かつ
    各反応領域毎に反応関与分子と前記検出対象物質とが関与する反応が異なる
    ことを特徴とする検出素子。
  5. 前記基体に流路が設けられており、該流路中に前記反応領域が配置されている請求項4に記載の検出素子。
  6. 前記流路の上流から下流へ向かう方向に前記二以上の反応領域が直列配置されている請求項5記載の検出素子。
  7. 検体中の標的物質を検出するための装置において、
    (1)基体と、基体上に配置された複数の反応領域と、各反応領域内に配置された反応関与分子と、を有し、前記反応関与分子はそれが配置される反応領域の有する結合部位に対して選択的に結合し得る結合ドメインを有し、該結合ドメインが該結合部位とが結合することで該反応領域に配置されており、かつ 各反応領域毎に反応関与分子と前記検出対象物質とが関与する反応が異なる検出素子と、
    (2)前記反応関与分子と前記検出対象物質とが関与する反応の有無を検出するための検出手段と、
    を有することを特徴とする検出装置。
  8. 前記基体に流路が設けられており、該流路中に前記反応領域が配置されている請求項7に記載の標的物質検出装置。
  9. 前記流路の上流から下流へ向かう方向に前記二以上の反応領域が直列配置されている請求項8記載の検出装置。
  10. 前記検出手段が、前記反応関与分子と前記標的物質とが関与する反応に基づく物理的及び/或いは化学的な量変化を検出する手段である請求項7〜9のいずれかに記載の検出装置。
  11. 基体に設けられた二以上の反応領域毎に異なる反応関与分子を配置した反応素子を製造する方法であって、
    (1)基体上に、各反応領域毎に異なる材料から形成された結合部位を配置して二以上の反応領域を設ける工程と、
    (2)前記二以上の反応領域の結合部位のそれぞれに選択的に結合する結合ドメインを有する反応関与分子を前記基体と反応させて、前記二以上の反応領域のそれぞれに配置する工程と、
    を有することを特徴とする反応素子の製造方法。
  12. 前記基体が流路を有し、該流路中に前記反応領域を配置する請求項11に記載の製造方法。
  13. 前記流路の上流から下流へ向かう方向に前記二以上の反応領域を直列配置する請求項12記載の製造方法。
  14. 検体に含まれる標的物質の検出方法において、
    請求項4〜6のいずれかに記載の検出素子と検体とを反応させる工程と、
    前記検出素子の有する反応関与分子と前記検体中の標的物質とが関与する反応を検出する工程と、
    を有することを特徴とする標的物質検出方法。
  15. 同一基体上で二以上の異なる反応を各反応毎に反応領域で生じさせるための反応素子を作製するためのキットであって、
    (1)各反応領域毎に異なる材料から形成された結合部位を配置して二以上の反応領域を設けた基体と、
    (2)前記二以上の反応領域の結合部位のそれぞれに対して選択的に結合し得る結合ドメインを有する反応関与分子と、
    を有することを特徴とする反応素子作製のためのキット。
  16. 前記基体が流路を有し、該流路中に前記反応領域が配置されている請求項15に記載のキット。
  17. 前記流路の上流から下流へ向かう方向に前記二以上の反応領域が直列配置されている請求項16記載のキット。
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JP2008284433A (ja) * 2007-05-16 2008-11-27 National Institute Of Advanced Industrial & Technology マイクロリアクターおよびその製造方法
JP2008298600A (ja) * 2007-05-31 2008-12-11 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 複数の認識物質が固定化されたマイクロ流体素子、その製造方法及びそれを用いた分析方法
WO2009017014A1 (ja) * 2007-07-27 2009-02-05 Kazusa Dna Research Institute Foundation マイクロ流路形成体を利用したマイクロビーズアレイ用チップ、マイクロビーズアレイ及びこれらを用いた被検物質を検出する方法

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