JP5142458B2 - 標的物質捕捉分子、標的物質捕捉用の素子、これらを用いた標的物質検出用の装置及びキット、並びに、標的物質の検出方法 - Google Patents
標的物質捕捉分子、標的物質捕捉用の素子、これらを用いた標的物質検出用の装置及びキット、並びに、標的物質の検出方法 Download PDFInfo
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Description
前記二以上の機能性分子が、金結合性断片と、金と異なる標的物質を捕捉するための機能性分子とからなり、
前記金結合性断片が、以下の配列番号:60のアミノ酸配列からなることを特徴とする。
(配列番号:60)
Gln Val Gln Leu Val Glu Ser Gly Ala Glu Val Lys Lys Ala Gly Glu
Ser Leu Lys Ile Ser Cys Lys Gly Ser Gly Tyr Ser Phe Pro Ser Tyr
Trp Ile Asn Trp Val Arg Gln Met Pro Gly Lys Gly Leu Glu Trp Met
Gly Met Ile Tyr Pro Ala Asp Ser Asp Thr Arg Tyr Ser Pro Ser Phe
Gln Gly His Val Thr Ile Ser Ala Asp Lys Ser Ile Asn Thr Ala Tyr
Leu Gln Trp Ala Gly Leu Lys Ala Ser Asp Thr Ala Ile Tyr Tyr Cys
Ala Arg Leu Gly Ile Gly Gly Arg Tyr Met Ser Arg Trp Gly Gln Gly
Thr Leu Val Thr Val Ser Ser Ala。
前記基体の一部に少なくとも金が含まれており、この金からなる部分が前記金結合性断片と結合しており、前記金と異なる標的物質を捕捉するための機能性分子はその捕捉機能を維持している
ことを特徴とする。
本発明における標的捕捉分子とは、可溶性タンパク質と、異なる標的物質と結合する二以上の機能性分子とを有して構成されることを特徴とするものである。つまり、可溶性タンパク質を基部(足場)に、異なる標的物質と結合する機能性分子を有する分子である。可溶性タンパク質を足場とする為に水溶液に懸濁、可溶化しやすい特徴を有する。更に、異なる標的物質と結合する機能性分子の2以上を有することにより一つの標的物質捕捉分子で異なる二以上の標的物質を捕捉できる。
(可溶性タンパク質)
本発明で用いる可溶性タンパク質は前述のように標的物質を捕捉するための機能性分子を保持する基部(足場)として機能するとともに、標的物質捕捉分子の安定生産性を得るための骨格部分としての役割も担う。可溶性タンパク質としては、従来既知のタンパク質を用いることが可能であるが、機能性分子が安定に機能を発揮する為の構造をとりやすい環境(例えば、細胞質内またはペリプラズム画分を含む細胞質外)で安定に存在するタンパク質が特に好ましい。例えば、細胞質内で安定に存在するタンパク質の例としては、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、リボソーム、β―ガラクトシダーゼ等が挙げられる。
標的物質捕捉分子に可溶性タンパク質を供給し得るファージとして、繊維状ファージが挙げられる。具体的には、f1、fd、M13、If1、Ike、Xf、Pf1、及びPf3等が挙げられる。中でも、fd、M13ファージが生活環を始めとして、遺伝子構造、ビリオンの構造とともに公知であり、遺伝子工学的に取り扱い易く、所望の特性を持たせる上で比較的改良し易く好ましい。ファージを可溶性タンパク質供給材料として用いる場合は、ファージ表面、つまりファージ外殻を構成する主要コートタンパク質およびマイナーコートタンパク質から選択された一以上に、異なる標的物質に特異的に結合する二以上のタンパク質からなる標的物質捕捉用の機能分子が提示されている構造が好ましい。
M13の主要コート・タンパク質VIII(pVIII)は「遺伝子VIII」(gVIII)と呼ばれる部分によってコードされ、50個のアミノ酸からなる。pVIIIは、大腸菌に感染したファージミドのgVIII部分からまず、アミノ酸73個のpVIII前駆体として菌体内において宿主のタンパク合成酵素群を利用して合成される。pVIII前駆体N末端の23個のアミノ酸は、合成されたpVIII前駆体ポリペプチドを細胞膜(内膜)内に輸送するための分泌シグナルペプチドであることが知られている。シグナル配列が切断された後のpVIIIはそのN末端が内膜に埋め込まれた形態で配置される。
pVIIIに、抗体断片をはじめとする所望の機能性分子をその機能を十分に発揮できるように融合し、ファージ表面に提示する方法としては、例えば、特開2004−000221号公報に開示された技術及びそれを参考にした技術に基づいて、発現用遺伝子を構築し、ファージ表面へのタンパク発現を行なう方法を好適に利用可能である。具体的には、
(1)内膜を通過して表面に目的タンパク質を導くためのシグナル配列をコードするDNA、
(2)所望の機能性分子をコードするDNA、
(3)gVIIIもしくはN末端を欠損させたpVIIIをコードするDNA、
を、必要に応じてベクター部分と共に、所望の発現が得られるように機能的に組み合わせてファージミド(組換え遺伝子)を作製し、これを用いてファージ表面にpVIIIと機能性分子の融合タンパク質を提示するか、あるいはこの融合タンパク質をファージから分離した状態で取得する。
pIIIは、遺伝子III(gIII)がコードするファージ外殻タンパク質のひとつである。gIIIへ目的の機能性分子をコードするDNAを挿入することとにより、所望の機能性分子がpIIIと共にファージ表面に発現され、ファージ表面に現れることが種々の文献等で示されている。
(pIII/機能性分子融合タンパク質)
pIIIと機能性分子の融合タンパク質は、先に説明したpVIIIと同様にこれらをコードするファージミドを作製し、宿主大腸菌に形質転換することによって供給される。しかし、ファージに宿主への感染能を要求する際、pIIIのN末端部と宿主大腸菌のF繊毛との結合が必要となる。この場合、ファージ構成タンパクをコードするファージゲノムを、ヘルパーファージにて共感染させることにより、機能性分子をpIIIに提示し、且つ感染能を有するファージを作製できることが知られている。つまり、ファージが有する5つのpIIIタンパク質を野生型と融合型の不均一にすることが可能である。この際、ヘルパーファージゲノムには通常IG(intergenic)領域に多少の欠損を与えて複製効率を減少させてる方法が知られている。大多数は内部に抗体遺伝子断片をコードしたファージミドを有し遺伝型と表現型が1対となったファージ抗体が分泌されることが知られている。機能性分子/pIII融合タンパク質をコードするDNAは、Science,1985,228,1315−1317等の文献を参考に、発現する機能性分子の機能を鑑みて選択し、作製することが可能である。
機能性分子としては、2以上の異なる標的物質捕捉用のものが用いられる。例えば、2以上の異なる機能性分子として、基体を標的として捕捉する機能性分子と、検出対象としての標的物質を捕捉する機能性分子を組み合わせて用いることで、基体に固定したバイオセンサーとしての機能を標的物質捕捉分子に付与することができる。本発明では、標的物質捕捉分子の有する二以上の機能性分子が、金結合性断片と、金と異なる標的物質を捕捉するための機能性分子とから構成される。機能性分子は、標的物質の捕捉用として機能し、可溶性タンパク質とともに宿主で発現可能であり、遺伝子工学的な手法用いることで設計・作製することができるものが好適に用いられる。例えば、従来既知の酵素、抗体等のタンパク質、または機能性ペプチド鎖からその用途に応じて選択して用いることができる。これらの中では、抗体、特に抗体断片が望ましい。抗体または抗体断片は、非常に構造が安定で、且つ標的物質との結合能が強いものを選択すること可能である。しかし、抗体全分子の場合、遺伝子工学的に扱い難く、特に大腸菌を用いた簡易な生産系には現在の技術では未だ解決すべき課題が多い。このような生産性を鑑みた場合、本発明の好ましい形態は前記抗体分子の標的結合領域である可変領域(VH、VL)もしくは定常領域(CH1、CL)を含む、あるいはこれらからなる抗体断片である。また、機能性分子はこれらの抗体断片として全てのアミノ酸配列または構造を保持している必要はなく、所望の機能を有する為に最低限に必要なアミノ酸および構造を有するものであれば構わない。特に、pVIIIに融合する場合は、低分子であることが望ましいことは前述したとおりである。本発明に用いられる機能性分子の大きさとしては、5乃至300残基からなることが好ましい。5以上であれば、特定物質に結合能を有することが知られている。300残基以下であれば可溶性を維持しつつ発現することが可能である。
本発明で述べる抗体断片とは、モノクローナル抗体の一部分の領域を意味し、具体的には、Fab’、Fab、Fd、Fv(variable fragment of antibody)、scFv(single chain Fv)、dsFv(disulphide stabilised Fv)あるいは可変領域(VH)または軽鎖可変領域(VL)からなる単ドメインdAb(single domain antibody)等が挙げられる。更には、ラクダ重鎖抗体の可変領域(VHH)、サメ抗体様分子(IgNAR:Immunogloblin New Antigen Receptor)等も適応することが可能である。
あるペプシンあるいはパパイン等で処理することにより得ることができる断片である。すなわち、抗体のヒンジ領域で2本の重鎖(H鎖)間に存在するジスルフィド結合の前後で消化されて生成される抗体フラグメントである。
ファージ表面に提示される機能性分子、例えば抗体や抗体断片のターゲットは固相を形成する基板であってもよい。例えば、金基板に対して結合性を示す抗体断片としては、配列番号:1乃至配列番号:57の一以上を含んでなるものが我々の検討により明らかになった。配列番号:1乃至配列番号:57を有するVHの具体例を配列番号:58乃至配列番号:74に、VLの具体例を配列番号:75乃至配列番号:77に示す。本発明においては配列番号:60のアミノ酸からなる抗体断片が、金基板に対して結合性を示す機能性分子として用いられる。また、アミノ酸配列において、一もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列であっても金結合性を発揮できる配列であれば何ら本発明において問題はない。以下、配列番号:78乃至配列番号:96に金結合性タンパク質の塩基配列の一例を示す。
(その他:マイナー・コート・タンパク質)
導入された結合ドメイン又はエピトープは繊維状ファージ上にキメラマイナーコートタンパク質の一部として提示することもできる。これらは「遺伝子III、VI、VII、及びIX」によってコードされ、それぞれはビリオンあたり約5個のコピーが存在し、形態形成又は感染に係わっている。対照的に、主要コート・タンパク質は一つのビリオンあたり2500個以上のコピーが存在する。「遺伝子III、VI、VII、及びIX」タンパク質はビリオンの端に存在する。
本発明においては、抗原抗体反応を用いた各手法によって抗原となり得る物質であれば如何なる分子も捕捉対象としての標的物質として用いることが可能である。
本発明に係る基体としては、本発明の目的を達成し得るものであれば、材質、形状のものも利用可能である。本発明では、その表面の少なくとも一部に金が配置された基体が用いられる。
上記構成の標的物質捕捉分子の有する機能性分子として、基体を標的物質し、基体との結合性を有する基体用機能性分子と、試料(検体)中に存在する検出用の標的物質を標的とする検出用機能性分子との組合せを用い、これを基体に基体用機能性分子を利用して結合させた検出用素子を形成し、検出用機能性分子を利用して検出対象標的物質(例えば先に挙げた各種の非生体物質及び生体物質)の検出を行うことができる。また、この素子と、検出用機能性分子と検出対象標的物質との結合を検知し得る検出手段(例えば、光学測定装置や電気測定装置、各種試薬類)とを少なくとも用いて検出装置あるいは検出キットを構成することができる。
(1)標的物質捕捉分子をその基体用機能性分子を介して基体表面の少なくと一部に結合させる工程。
(2)基体と検体(試料)を接触させる工程。
(3)基体を洗浄する工程。
(4)標的物質捕捉分子の検出用機能性分子により捕捉された検出対象としての標的物質を検出する工程。
工程(4)の検出には、標的物質捕捉分子または検出対象としての標的物質に特異的に結合し、検出可能な標識を有する物質を用いて光学的に検出する方法(例えば、後述する実施例におけるルミノール反応を利用する方法)、金からなる、あるいは金からなる部分を含む表面を有する基体を用いた場合における増強ラマンや局在プラズモンの原理を応用した光学的測定に加え、その電気特性を利用した電気測定によって行うことができる。なお、上記各工程の具体的な操作は定法に基づいて行なうことができる。
(実施例1)
<HEL結合scFV融合pIII発現用プラスミドの作製及び発現確認>
pIII融合タンパク発現用として、M13KE(NEW ENGLAND BIOLABS.社製)を用いる。M13KEのマルチクローニングサイトにHEL結合scFv(配列番号:97、98)を挿入する。同社 Technical Bulletinに準拠し、同プラスミドのAcc65I/EagIに挿入する。得られる発現用プラスミドをpM13−HpIIIと
する。pM13−GIIIを前記Technical Bulletinに準じ、大腸菌にエレクトロポーレーションにて形質転換し、HEL結合scFv融合pIII提示ファージの発現を行う。
scFv−f(配列番号:112)
NNNNCCATGCCCGATATCGTCCTGACCCAG
scFv−r(配列番号:113)
AGCTACCGCGGAGACGGTGACGAGGGT
発現確認は、以下のファージELISA法を用いる。
(1)HEL(生化学工業社製)を固定化したアミノ修飾タイタープレートに系列希釈したVH提示ファージ溶液をそれぞれ80μL分注し、シェイカーで緩やかに1時間攪拌する。
(2)ファージ溶液を取り除き、各wellにPBST 90μLを分注して10分間攪拌し、洗浄上清を廃棄する。この作業を3回繰り返す。
(3)HRP結合抗M13抗体/PBST(1/5000)溶液75μlを各wellに分注した後に、シェイカーにて1時間緩やかに攪拌する。
(4)上記上清を廃棄する。次に、PBST 90μL/wellを分注し、10分間攪拌し、洗浄上清を廃棄する。この洗浄作業を3回繰り返す。
(5)detection reagent 1、2(Amasham BIOSIENCE) を各35μL/wellずつ分注し、1分間緩やかに攪拌しながら反応させる。
(6)ルミノールの発光強度を測定する。
比較実験として、pM13−HpIIIの代わりにM13KO7(NEW ENGLAND BIOLABS社製)とした以外は上記とどうような実験を行う。pM13−GpIIIから得られるファージに金結合性VHを提示していることを確認する。
<SBA−15親和性ペプチド融合pVIII発現ベクターの構築>
pVIII融合タンパク発現用として、f1ベースのファジミドM13mp18(NEW ENGLAND BIOLABS社製)のマルチクローニングサイトBamH1/SpeIを用い
、以下の順になるような遺伝子(配列番号:101)を構築する。
(1)プロモーター配列、(2)シャイン−ダルガルノ(SD)配列、(3)M13−gVIIIシグナル配列コードDNA配列、(4)SBA−15親和性ペプチドコードDNA配列(配列番号:99)、(5)M13−gVIII、(6)複数の停止コドン、(7)転写ターミネーター。
(A)1.5mLエッペンドルフチューブにSBA−15 1mg/PBST溶液、ファージ溶液を80μLを順次加え、シェイカーで緩やかに1時間攪拌する。
(B)遠心(15000rpm、10分間)した後に、上清溶液を取り除き、再びPBST 1000μLを分注して10分間攪拌し、洗浄上清を廃棄する。この作業を3回繰り返す。
(C)HRP結合抗M13抗体/PBST(1/5000)溶液500μlを加えた後に、シェイカーにて1時間緩やかに攪拌する。
(D)遠心(15000rpm、10分間)した後に、上清を廃棄する。次に、PBST 1000μLを分注し、10分間攪拌し、洗浄上清を廃棄する。この作業を3回繰り返す。
(E)detection reagent 1、2(Amasham BIOSIENCE) を各35μL/wellずつ分注し、1分間緩やかに攪拌しながら反応させる。
(F)ルミノールの発光強度を測定する。
比較実験として、pM13−SpVIIIの代わりにM13KO7(NEW ENGLAND BIOLABS社製)とした以外は上記とどうような実験を行う。pM13−SpVIIIから得られるファージに金結合性VHを提示していることを確認する。
<HEL結scFv融合pIII/SBA−15親和性ペプチド融合pVIII同時発現プラスミドの構築>
実施例1で得られるpM13−HpIII及び実施例2で得られるpM13−SpVIIIを用いて金結合性VH融合pIII/SBA−15融合pVIII同時発現プラスミドを構築する。pM13−HpIII及びpM13−SpVIIIをBspHI/BsmI(ともにNEW ENGLAND BIOLABS社製)にてTechnical Bulliten記載の業者推奨の方法にて制限酵素による切断反応を行う。その結果得られる酵素反応溶液をアガロースゲル電気泳動を行う。pM13−HpIII切断反応液のkbp及びpM13−SpVIII反応液のkbpを切り出し、精製キット(Promega社製:商品名Wizard SV Gel and PCR Clean−Up System)にて精製する。次に、上記にて得られたDNA断片をT4−Ligase(Roche社製)にて業者推奨の方法にて2時間ライゲーションを行う。得られるライゲーション溶液を実施例2と同様に、形質転換し、ファージ発現/回収を行う。発現確認は、以下の方法により行う。
(1)1.5mLエッペンドルフチューブにSBA−15 1mg/PBST溶液、ファージ溶液を80μLを順次加え、シェイカーで緩やかに1時間攪拌する。
(2)遠心(15000rpm、10分間)した後に、上清溶液を取り除き、再びPBST 1000μLを分注して10分間攪拌し、洗浄上清を廃棄する。この作業を3回繰り返す。
(3)次に、1μM HEL 1000μLを加え、シェイカーで緩やかに1時間攪拌する。
(4)遠心(15000rpm、10分間)した後に、上清溶液を取り除き、再びPBST 1000μLを分注して10分間攪拌し、洗浄上清を廃棄する。この作業を3回繰り返す。
(5)HRP結合抗HEL抗体/PBST(1/5000)溶液500μlを加えた後に、シェイカーにて1時間緩やかに攪拌する。
(6)遠心(15000rpm、10分間)した後に、上清を廃棄する。次に、PBST 1000μLを分注し、10分間攪拌し、洗浄上清を廃棄する。この作業を3回繰り返す。
(7)detection reagent 1、2(Amasham BIOSIENCE) を各35μL/wellずつ分注し、1分間緩やかに攪拌しながら反応させる。
(8)ルミノールの発光強度を測定する。
実施例1及び2で得られるファージを比較実験として行い、実施例3で得られるファージがルミノール発光強度が最も高いことを確認する。
<金結合性VH融合pVIII発現ベクターの構築>
pVIII融合タンパク発現用として、f1ベースのファジミドM13mp18(NEW ENGLAND BIOLABS社製)のマルチクローニングサイトBamH1/SpeIを用い
、以下の順になるような遺伝子を構築する(配列番号:102)。
(1)プロモーター配列、(2)シャイン−ダルガルノ(SD)配列、(3)M13−gVIIIシグナル配列コードDNA配列、(4)金結合性VHコードDNA配列(配列番号:80)、(5)M13−gVIII、(6)複数の停止コドン、(7)転写ターミネーター
本実施例においては、プロモーター配列はtacプロモーターを使用する。得られるプラスミドをpM13−GpVIIIとする。pM13−GpVIIIを用いて実施例2と同様にして得られるファージを以下の方法にて金結合性を確認する。
(A)金蒸着タイタープレートに系列希釈したVH提示ファージ溶液をそれぞれ80μL分注し、シェイカーで緩やかに1時間攪拌する。
(B)ファージ溶液を取り除き、各wellにPBST 90μLを分注して10分間攪拌し、洗浄上清を廃棄する。この作業を3回繰り返す。
(C)HRP結合抗M13抗体/PBST(1/5000)溶液75μlを各wellに分注した後に、シェイカーにて1時間緩やかに攪拌する。
(D)上記上清を廃棄する。次に、PBST 90μL/wellを分注し、10分間攪拌し、洗浄上清を廃棄する。この洗浄作業を3回繰り返す。
(E)detection reagent 1、2(Amasham BIOSIENCE) を各35μL/wellずつ分注し、1分間緩やかに攪拌しながら反応させる。
(F)ルミノールの発光強度を測定する。
比較実験として、pM13−GVIIIの代わりにM13KO7(NEW ENGLAND BIOLABS社製)とした以外は上記と同様にして実験を行う。pM13−GVIIIから得られるファージに金結合性VHを提示していることを確認する。
<HEL結scFv融合pIII/金結合VH融合pVIII同時発現プラスミドの構築>
実施例4で得られるpM13−GpIII及び実施例2で得られるpM13−SpVIIIを用いて金結合性VH融合pIII/SBA−15融合pVIII同時発現プラスミドの構築する。
pM13−GpIII及びpM13−SpVIIIをBspHI/BsmI(ともにNEW E
NGLAND BIOLABS社製)にてTechnical Bulliten記載の業者推奨の方法にて制限酵素による切断反応を行う。
発現確認は、以下の方法により行う。
(1)金蒸着タイタープレートに系列希釈したVH提示ファージ溶液をそれぞれ80μL分注し、シェイカーで緩やかに1時間攪拌する。
(2)ファージ溶液を取り除き、各wellにPBST 90μLを分注して10分間攪拌し、洗浄上清を廃棄する。この作業を3回繰り返す。
(3)次に、1μM HEL 1000μLを加え、シェイカーで緩やかに1時間攪拌する。
(4)遠心(15000rpm、10分間)した後に、上清溶液を取り除き、再びPBST 1000μLを分注して10分間攪拌し、洗浄上清を廃棄する。この作業を3回繰り返す。
(5)HRP結合抗HEL抗体/PBST(1/5000)溶液500μlを加えた後に、シェイカーにて1時間緩やかに攪拌する。
(6)遠心(15000rpm、10分間)した後に、上清を廃棄する。次に、PBST 1000μLを分注し、10分間攪拌し、洗浄上清を廃棄する。この作業を3回繰り返す。
(7)detection reagent 1、2(Amasham BIOSIENCE) を各35μL/wellずつ分注し、1分間緩やかに攪拌しながら反応させる。
(8)ルミノールの発光強度を測定する。
実施例2及び4で得られるファージを比較実験として行い、実施例3で得られるファージがルミノール発光強度が最も高いことを確認する。
<DsbA融合金結合VH/HEL結合scFv複合体の作製>
以下の工程により本発明の標的捕捉分子を作製し、評価する。
(1)金結合VH/HEL結合scFvコードDNAの作製
(1−1)金結合VH(配列番号:80)、GGGGSコードDNA配列×3リンカー、HEL結合scFv(配列番号:97)をコードするDNAを作製する。
(1−2)上記DNAをテンプレートとして以下のprimerにてPCRにて増幅する。
7s4−fw−Nco1(配列番号:103):
ACATGCCATGGCCCAGGTGCAGTTGGTGGAGTCTG
HEL−bk−Hind3(配列番号:104):
AATGGCAAGCTTGGCCGTGATGATCAGCTTGGTA
(1−3)上記PCR産物をNcoI/HindIIIにて、pET−39b(Novagen社製)に挿入する。制限酵素(NcoI、HindIII:NEB社製)による切断ならびにライゲーション反応(T4−Ligase:Roche社製)は業者推奨のプロトコールに準じて行う。
(1−4)上記により得られるライゲーション溶液 5μLをJM109コンピテントセル(プロメガ社)50μLに加えて、ヒートショックによる形質転換を行う。
(1−5)その後、LB/カナマイシン(終濃度50μg/mL)プレートに展開し、37℃にて静置する。得られたコローニーから目的の遺伝子が導入されたプラスミドをスクリーニングする。
(2)目的タンパク質の発現
(2−1)上記(1−1)で得られたプラスミドをBL21コンピテントセル(プロメガ社製)に形質転換する。方法は(1−1)と同様にヒートショックにより行い、その後LB/カナマイシン(終濃度50μg/mL)プレートに展開し、28℃にて一晩静置する。
(2−2)プレート上で得られたコローニーをつまようじにて突付き、3mL LB/カナマイシン溶液に移して28℃にて終夜培養する。
(2−3)得られる培養液を、250mL 2×YT培地(トリプトン 16g、酵母エキス 10g、塩化ナトリウム 5g/L)/カナマイシン培地に全量加えて、更に時間培養する。4)OD600=0.8の時点でIPTGを添加し、目的タンパク質の発現誘導を行う。以降、22℃にて終夜培養を行う。
(3)目的タンパク質の回収
(3−1)上記(2)で得られた培養液を6000rpm、30分間遠心を行い、上清を回収する。上清の重量を測定し、4℃にて保存する。
(3−2)上清重量の60wt%分の硫酸アンモニウムを4回に分けて、攪拌しながら添加し、6時間攪拌状態を維持する。
(3−3)得られた懸濁液を8000rpm、20分間遠心する。上清を廃棄し、沈殿をTris緩衝液:20mM Tris/500mM NaCl(pH7.9@4℃) 10mLにて浸漬、一晩静置する。
(3−4)上記(3−3)で得られた溶液を4℃にて透析(MWCO:14000)にて、脱塩を行う。透析外液はTris緩衝液。
(3−5)Niキレートカラムにより精製。担体はHis−Bind(Novagen社)を使用し、業者推奨の方法に準じて4℃にてカラム精製を行う。
(3−6)脱イミダゾールの為の透析を行う。透析チューブ及び外液は(3−4)と同じとする。
得られたタンパク質溶液をSDSPAGEで確認したところ約6.5kDaに単一バンドが確認できる。これをDsbA−VH(G)−scFv(H)として、実施例4と同様にして確認を行ない、金およびHELに結合性のあるタンパク質であることを確認する。
<β-グルコシダーゼ融合金結合VH/HEL結合scFv複合体の作製>
(1)金結合VH/LacΔα融合タンパク発現ベクターの構築
(1−1)LacΔα断片のクローニング_
Anal.Chem.(2002)74、pp2500−2504の発現ベクター作製方法を参照し行うことができる。LacΔαをE.coli DH5αから以下のprimerによりクローニングする。
LacΔα_fw(配列番号:105):
5’−CCCGGATCCGCGGCCGCCATGACCATGTTACGGAATTCACTGG−3’
LacΔα_bk(配列番号:106)
5’−CCCCCCTCGAGTTATTTTTGACACCAGACCAACTGG−3’
(1−2)pET−32への挿入
得られたPCR断片及びベクターとなるpET−32(Novagen社)をNotI/XhoIにて業者推奨の方法により制限酵素反応を行い、上述と同様の方法にてゲル精製を行う。得られるPCR断片及びDNA断片(約5.9kbp)をT4リガーゼ(Roche社)にてライゲーションを行う。
(1−3)金結合VHコードDNA断片の挿入
上記(1−2)で得られるプラスミドにNcoI/HindIIIにて金結合性VHを挿入する。金結合VHコードDNA断片の増幅は、実施例6の同じくPCRにて行なう。用いるprimerは以下の通り。得られるPCR断片及びプラスミドをNcoI/HindIIIにて制限酵素で切断反応を行い、次いでライゲーションを行い、目的のtrx−金結合VHコードDNA−LacΔαをコードするプラスミドpET−GHΔαを作製する。
7s4−fw−Nco1_2(配列番号:111)
ACATGCCATGGCAGGTGCAGTTGGTGGAGTCTG
HEL−bk−Hind3(配列番号:104)
AATGGCAAGCTTGGCCGTGATGATCAGCTTGGTA
(2)HEL結合scFv/LacΔω融合タンパク発現ベクターの構築
(2−1)LacΔω断片のクローニング
上記と同様にAnal.Chem.(2002)74、pp2500−2504の発現ベクター作製方法を参照し行うことができる。LacΔωをE.coli DH5αから以下のpri
merによりクローニングする。
LacΔω_fw(配列番号:107)
5’−CCCGGATCCGCGGCCGCCATGACCATGATTACGGATTCACTGG−3’
LacΔω_bk(配列番号:108)
5’−CCCCCCTCGAGTTACGGTGCACGGGTGAACTG−3’
(2−2)pET−32への挿入
得られたPCR断片及びベクターとなるpET−32(Novagen社)をNotI/XhoIにて業者推奨の方法により制限酵素反応を行い、上述と同様の方法にてゲル精製を行う。得られるPCR断片及びDNA断片(約5.9kbp)をT4リガーゼ(Roche社)にてライゲーションを行う。
(2−3)HEL結合scFvコードDNA断片の挿入
上記(2−2)で得られるプラスミドにNcoI/HindIIIにて金結合性VHを挿入する。金結合VHコードDNA断片の増幅は、実施例6の通りに行なう。得られるPCR断片及びプラスミドをNcoI/HindIIIにて制限酵素で切断反応を行い、次いでライゲーションを行い、目的のtrx−HEL結合scFvコードDNA−LacΔωをコードするプラスミド
pET−HFΔωを作製する。
scFv(HEL)_fw(配列番号:109)
5’−ACATGCCATGGGATATCGTCCTGACCCAGA−3’
scFv(HEL)_bk(配列番号:110)
5’−AATGGCAAGCTTCGCGGAGACGGTGACGAGGGT−3’
(3)融合タンパク質発現
(3−1)予備培養
上記プラスミドをそれぞれ用いてE.coli Origami B(DE3)pLysS(Novagen社)にて目的タンパク質の発現を行う。業者推奨の方法により形質転換を行う。2×YTプレート(2×YTの組成は上述の通り。寒天:15g/L。更に、抗生物質として50μg/mL アンピシリン、15μg/mL カナマイシン、12.5μg/mL テトラサイクリンを添加)に展開し、プレート上に得られる単一コロニーを5mL 2×YT溶液(上記から寒天を除いた組成)にて37℃にて一晩培養する。
(3−2)本培養
得られる5mL培養液を上記と同じ組成の2×YT培地 400mLに加える。37℃にてOD600が0.8以上になった時点で、終濃度10μMとなるようにIPTGを加え、16℃環境にて12時間培養を続ける。
(3−3)タンパク質の回収
a)菌体破砕
上記(3−2)で得られる培養液を6000rpm、30分間遠心し、上清を廃棄する。沈殿画分、すなわち細胞画分をリン酸緩衝液(2.7mM KCl、1.8mM KHPO3、10mM Na2HPO3、140mM NaCl) 20mLにて懸濁する。続いて、4℃条件下にてフレンチプレスを行なう。得られる菌体破砕溶液を、15000rpm、10分間遠心し、細胞質画分溶液を得る。
b)融合タンパク質精製
以下の操作は全て4℃環境下にて行う。上記で得られる金結合VH−LacΔα含細胞質画分
溶液とHEL結合scFv−LacΔω含細胞質画分溶液を混合する。得られる混合溶液をNP
−Sepharose(biosearchtech社)にてアフィニティカラムクロマトグラフィにより精製する。方法は、業者推奨の方法に準ずる。溶出画分を外液をリン酸緩衝液として透析を行う。外液交換は6時間毎に3回行う。
上記(3−3)で得られる融合タンパク質に関して、金及びHEL結合性を実施例6と同様の方法にて検査し、二重特異性が示されることを確認する。
101 :本発明の一例である標的物質捕捉分子(捕捉分子提示繊維状ファージ)
102 :pVIIIタンパク質
103 :標的物質捕捉分子融合pVIII
104 :pIIIタンパク質
105 :標的物質捕捉分子融合pIII
106 :標的物質
Claims (13)
- 可溶性タンパク質からなる基部と、異なる標的物質と結合し得る二以上の機能性分子と、を有し、
前記二以上の機能性分子が、金結合性断片と、金と異なる標的物質を捕捉するための機能性分子とからなり、
前記金結合性断片が、以下の配列番号:60のアミノ酸配列からなることを特徴とする標的物質捕捉分子。
(配列番号:60)
Gln Val Gln Leu Val Glu Ser Gly Ala Glu Val Lys Lys Ala Gly Glu
Ser Leu Lys Ile Ser Cys Lys Gly Ser Gly Tyr Ser Phe Pro Ser Tyr
Trp Ile Asn Trp Val Arg Gln Met Pro Gly Lys Gly Leu Glu Trp Met
Gly Met Ile Tyr Pro Ala Asp Ser Asp Thr Arg Tyr Ser Pro Ser Phe
Gln Gly His Val Thr Ile Ser Ala Asp Lys Ser Ile Asn Thr Ala Tyr
Leu Gln Trp Ala Gly Leu Lys Ala Ser Asp Thr Ala Ile Tyr Tyr Cys
Ala Arg Leu Gly Ile Gly Gly Arg Tyr Met Ser Arg Trp Gly Gln Gly
Thr Leu Val Thr Val Ser Ser Ala。 - 前記基部が、前記機能性分子の個数(n:n≧2)に対応したn個の可溶性タンパク質を少なくとも有し、前記機能性分子の各々が異なる可溶性タンパク質に融合してなる融合タンパク質を構成したタンパク質複合体である請求項1記載の標的物質捕捉分子。
- 前記機能性分子が抗体の少なくとも一部から構成される請求項1または2に記載の標的物質捕捉分子。
- 前記可溶性タンパク質が、宿主細胞内で生産可能であり、該宿主内で生産された際に細胞質外へ分泌される為に必要なシグナルペプチドを有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の標的物質捕捉分子。
- 前記可溶性タンパク質が二以上の構成ユニットからなるタンパク質である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の標的物質捕捉分子。
- 各機能性分子がそれぞれ異なる前記構成ユニットに融合されてなる請求項5に記載の標的物質捕捉分子。
- 前記可溶性タンパク質がファージコートタンパク質の中から選択される請求項4に記載の標的物質捕捉分子。
- 基体と、請求項1から7のいずれか1項に記載の標的物質捕捉分子と、を有する標的物質捕捉用素子であって、
前記基体の一部に少なくとも金が含まれており、この金からなる部分が前記金結合性断片と結合しており、前記金と異なる標的物質を捕捉するための機能性分子はその捕捉機能を維持している
ことを特徴とする標的物質捕捉用の素子。 - 前記金と異なる標的物質を捕捉するための機能性分子が、検出対象標的物質の捕捉用である請求項8に記載の素子。
- 検体に含まれる検出対象としての標的物質を検出するための検出装置であって、
請求項9に記載の素子と、
該素子の有する検出対象標的物質捕捉用の機能性分子への標的物質の結合を検出するための検出手段と、
を有することを特徴とする検出装置。 - 検体に含まれる検出対象としての標的物質を検出するためのキットであって、
請求項9に記載の素子と、
該素子の有する検出対象標的物質捕捉用の機能性分子への標的物質の結合を検出するための検出手段と、
を有することを特徴とする標的物質検出用キット。 - 検体中の検出対象としての標的物質を検出する方法において、
請求項9に記載の素子と、検出対象としての標的物質を反応させる工程と、
前記素子の機能性分子への前記検出対象標的物質の結合を検出する工程と、
を有することを特徴とする標的物質の検出方法。 - 請求項1に記載の標的物質捕捉分子と基体とを反応させて、該標的物質捕捉分子を該基体に結合して前記素子を調製する工程と更に含む請求項12に記載の検出方法。
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