JP2005312446A5 - - Google Patents

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金結合性複合タンパク質
本発明は、金結合性複合タンパク質に関するものである
近年の半導体微細加工技術の向上にともなうデバイスの小型化により、半導体産業は大きく発展してきた。リソグラフィーに代表される微細加工技術は、現在ではその加工精度は数百ナノメートルに達している。それらを応用した材料・デバイスの活躍の場は広く、光、電気等の通信、バイオ、エネルギーなど幅広い分野で期待されている。しかしながら、現在の微細加工技術の延長上で100ナノメートル以下の加工を考えた場合、技術的な課題に加え、加工に要する時間及びコストと産業上で利用する上では課題が多く、適用可能な分野の広がりに応じて、これらに代わる新しい精密構造作製技術が切望されている。
このような中、従来のトップダウン方式の加工技術に代わり、原子や分子レベルで制御し、所望の構造と特性を作り込むボトムアップ方式による新規材料に向けた研究開発が活発におこなわれている。ボトムアップ式の精密構造作製技術の一例としては、金属表面上で分子配列制御した分子デバイスの開発等が挙げられ、そのような分子配列制御技術のひとつとして、物質が持つ自己組織化を利用した方法の利用が検討されている。最近の検討例としては、Lindsayら(Science、300:p1413、2003)は分子末端にチオール基を有するアルカンチオール及びアルカンジチオールを金基板上に配向させた自己組織化膜を用いて分子スィッチング機能の検討をおこなっている。
核酸、タンパク質に代表される生体分子は、その機能を発揮する為に原子レベルで制御された精密な構造を構築することが知られている。そのような生体分子の特性を利用し、生体分子を金属または金属酸化物、半導体上に配置した種々のデバイスへの生体分子の応用の検討も考えられている。このようなデバイス開発をするための第一段階として、生体分子を基板上に配置する微小な構造体を作製する技術が重要となる。例えば、デオキシリボ核酸(DNA)や、各種の機能を有するアミノ酸配列を有するペプチドの金基板上における固定化を考えた場合、DNA、ペプチドは化学的に合成することが可能であり、その際にこれらの物質の末端をチオール基(−SH)で化学修飾することにより、S−Au表面吸着を利用して金基板上にこれらの物質が配位することが広く知られている。これを利用してDNA、またはペプチドを金上に固定化した実験系及びデバイス化検討が行われている。
一方、酵素、抗体などの機能を有するタンパク質は高分子量を有し、このような高分子量の化合物を高次構造形成し、且つ機能を発揮するように化学的に合成することは大変難しく、現在も色々と検討が行われているが機能と高次構造を持ち合わした機能性タンパク質を合成するまでには未だ到達していない場合が多いのが実情である(Science、302:p1364、2003)。機能性タンパク質を基板材料へ固定化する場合、基板との結合には、基板側をシランカップリング剤に代表される種々の表面処理剤で処理し、タンパク質側に前記表面処理面と結合できる官能基を導入することが一般的に行われている(Proteomics、3:p254、2003)。しかしながら、このような機能性タンパク質への反応性官能基の導入は、化学修飾によって行われることが一般的であり、非選択的に導入部位が決定されるために機能性タンパク質の機能発現部位を修飾されることで機能し難い形状で基板上に固定化され、得られる活性が低下する可能性があることが指摘されている。
遺伝工学的手法による結合部位をタンパク質に導入した融合タンパクを作製することも可能である。一例としては、低分子化合物であるビオチンと結合することが知られている(ストレプト)アビジンの全部もしくはビオチン結合部位を所望のタンパク質のN末端、C末端に遺伝子工学的に導入し、融合タンパク質として発現させ、所望の基板表面に配置したビオチンを介することによって固定化する方法が知られている。
また、最近では固定化する基板材料と結合できる5以上のアミノ酸からペプチドを取得し、所望のタンパク質と融合し融合タンパクを作製し、基材に結合、固定化させる技術が開示されている。Belcherらは、ファージディスプレー法によりGaAsのある結晶面を特異的に認識できる12アミノ酸からなるペプチドを開示し(Nature、405:p665、2000)、生体材料の自己組織化能を用いたデバイス検討の新たな可能性を示した。更には、他の半導体(PbS、CdS)などに対する7乃至14アミノ酸からなるペプチドのアミノ酸配列を開示している(WO03/029431)。また、Brownらにより、14残基からなるアミノ酸配列を単位とする繰り返し構造を有するペプチドが金に対して親和性を示した幾つかのアミノ酸配列を開示している(Nature Biotechnology、15:p269、1997)。その他、これまでに金属(Au、Pt、Pd、Ag)、金属酸化物(SiO2、ZnO、Cr23、Fe23)、半導体に対する親和性ペプチドは前記ファージディスプレー法などにより多数取得されている。
このような基板材料親和性ペプチドを介して、所望の生体分子を基板上に固定化することにより生体分子間または異なる物質に対する相互作用により自己組織化的に、所望の機能・形状を周期的に有する構造体を構築することも可能である。例えば、前記Belcherらは、ZnS粒子と結合したZnS親和性ペプチドを提示したM13ファージが自己組織化により配向することにより、液晶様フィルムを作製する技術を開示している(Science,296:892、2002)。
更に、上記のように、遺伝子工学的に、基板結合性部位を融合した所望の機能性タンパク質を作製することにより、機能性タンパク質の基板固定化を機能部位以外の所望の部位に設定して行うことが可能となることが幾つかの技術例よって示されている。しかしながら、基板材料親和性ペプチドを直接または数個のアミノ酸からなるリンカーを介して機能性タンパク質末端に連鎖して、固相(例えば基板)に結合させ、タンパク質の固定化を試みる場合、機能性タンパク質の活性部位(例えば、抗体の抗原結部位を構成する幾つかのアミノ残基)が基板に近接し、基板表面からの何らかの相互作用(例えば、静電作用等)を受け構造変化等が生じ、十分に所望の機能を発揮できない恐れがある。また、リンカーを更に長く設定した場合においても、リンカーとなるペプチドの分子運動の自由度が高いと機能性部位に近接に配置され、その機能を阻害することも考えられる。
上記のことから、本発明者らは機能性タンパク質リンカーを始めとする機能性高分子材料を固定化する基材結合部位は、固定化するタンパク質の所望の活性を阻害することなく、基板から一定の距離を確保するスペーサーとなる構造部分(足場構造)と基板と結合する部位を有することが必要であるという考えに至った。
このような足場構造を有する分子認識分子として、抗体が最もよく知られている。抗体は、動物が自らの体液中に侵入する様々な異物に対して、その異物表面の種々の構造を認識して特異的に結合させ、その免疫系により無毒化させる自己防御機構の中で機能するタンパク質の一つである。その抗体の多様性(様様な異物に結合する為の違ったアミノ酸配列を持つ抗体数)は、動物個体あたり107乃至108種と見積もられている。その構造長短二本ずつのポリペプチド鎖から形成され、長いポリペプチド鎖を重鎖、短いポリペプチド鎖を軽鎖とそれぞれ呼ばれる。
これら重鎖及び軽鎖はそれぞれ可変領域と定常領域を有している。軽鎖は、一つの可変領域(VL)および一つの定常領域(CL)の二ドメインから構成されるポリペプチド鎖であり、一方で重鎖は一つの可変領域(VH)と三つの定常領域(CH1乃至CH3)の四ドメインから構成されるポリペプチド鎖である。上記各々のドメインは、アミノ酸約110個からなり筒状の構造をとり、逆平行の向きに配置されたβシート群による層状構造が形成され、この層状構造をひとつのSS結合により結合し、非常に安定した構造体を形成している。また、抗体の多様な抗原種への結合は前記可変領域(VHまたはVL)がそれぞれ有する三つの相補的決定領域(complementarity determining region:CDR)のアミノ酸配列の多様性に起因するものであることが知られている。前記CDRは、VHまたはVLにそれぞれ3つあり、フレームワーク領域により分離されて配置され、対象となる認識部位の官能基の空間配置を認識することにより、より高度な特異的な分子認識を可能としている。
上記CDRの多様性は、骨髄幹細胞が抗体産生細胞であるBリンパ細胞へ分化する際に、抗体遺伝子座で生じるDNA再編成に発揮される。重鎖ではVH遺伝子断片、D遺伝子断片、JH遺伝子断片から構成され部分、軽鎖ではVλまたはVκ遺伝子断片、JλまたはJκ遺伝子断片から構成される部分でDNA再編成を起こすことによって生じることが知られている。このようなDNA再編成はB細胞毎に独立に起こるため、ひとつのB細胞は1種類の抗体しか産生しない。しかし、個体内においてのB細胞全体では、多様な抗体の産生が可能となる。
上記のような特定物質に結合することのできる抗体は、従来、上記のように動物が有する免疫系における抗体産生機構を利用して人為的に作製され、様様な産業分野で利用されている。作製方法の一例としては、目的の抗原物質をアジュバンドと共に被免疫動物(ウサギ、ヤギ、マウス等)に一定間隔で免疫し、その血清中に損じする抗体を回収する方法がある。このようにして得られた抗体は、免疫に用いた抗原物質の表面には様々な構造を認識する複数の抗体の混合物である。このようにひとつの抗原に結合する複数の抗体を含む血清はポリクロナール抗体と呼ばれる。
一方、被免疫動物の脾臓には目的の抗原と結合する抗体を産生する多種のBリンパ球が存在している。このような抗体産出B細胞を株化した腫瘍細胞と融合し、ハイブリドーマ細胞を作製する。前記のように一つのBリンパ球は一種類の抗体を産出するものである。一種類の抗体を産出するB細胞を永代培養できる系を確立されている。このように作製された抗体は、モノクロナール抗体と呼ばれる。
前記抗体の構造を足場として用いた分子認識構造体として、特開平05−055534号公報において、二つの異なる抗原を認識する多重結合性抗体及びそれを用いた多重膜形成方法が開示されている。この技術によれば、第一の抗原と第二の抗原を認識する融合抗体を得ることができる。更に、基板表面に、第一の抗原、前記融合抗体、第二の抗原を順次配置することにより、化学的な修飾をすることなく多重膜を形成できる。しかしながら、開示されている融合抗体を得るためには、動物細胞を用いる必要があり、コスト面及び作業煩雑さという点で問題がある。更に、多層膜を形成する場合においては基板表面上に予め前記融合タンパクが認識可能な抗原を配置する工程を設けなければならない。
上記抗体をある種のタンパク質分解酵素で処理して得られる抗体断片、Fab、Fab'、F(ab')2も親となる抗体と同様の抗原に対して結合能を持つことが知られている。
上記VH、VLまたはそれらの複合体であるFv、更には前記VHまたはVLからなる複合体において、一方のカルボキシ末端と他方のアミノ末端数個のアミノ酸からなるペプチドを介して連結した一本鎖Fv(single chain Fv:scFv)等も同様にして親抗体と同様の抗原に対して結合性を示すことが知られている。
Skerra及びBetterは、遺伝工学的な方法によって分泌シグナル配列をN末端に付加したFab型とFv型抗体断片を大腸菌による抗体遺伝子の発現する方法を開示している(Science,240:p1038、1988)、(Science、240:p1041、1988)。また、特表平07−501451号公報において多価抗原結合タンパク質及びその製造方法、特表平08−504100号公報においては多価、及び多重特異性結合タンパク質及びその製造方法に関する技術をそれぞれ開示している。この二つの技術において、結合性タンパク質は一以上の抗原に結合する抗体可変領域部(VH及び/またはVL)を含んでなるタンパク質であることを開示している。特表平07−501451号公報においては、バンカルシノーマ抗原TAG−72、フルオレセインにそれぞれ認識する結合タンパク及びこれらを認識する二重特異性結合性タンパク質の構成、及びアミノ酸配列更にはそれらをコードする塩基配列を開示している。特表平08−504100号公報においては、実施例において特表平08−504100号にかかる出願の出願時において既知のタンパク質(細胞膜タンパク、癌抗原CEA、FcRγ1等)や低分子化合物に対する抗体断片複合体からなる二価及び二重特異性結合タンパク質について開示している。
しかしながら、前記の開示技術では無機物質に代表される基板材料表面を直接的に認識し、結合する結合性タンパク質に関する技術に関しては開示されていない。そのために、前記結合性タンパク質を基板上に配置した構造体を作製する場合には、従来既知の方法、例えば、基板または前記結合性タンパク質を化学修飾し、共有結合により基板上に配置する等の方法によって配置しなければならない。また、金属や半導体物質の微粒子に結合させる際も、同様にして結合対象である微粒子または結合性タンパク質を化学的に修飾する必要があった。このような化学修飾は、タンパク質がその分子内に多数有するアミノ残基やカルボキシル基を標的とする場合が多く、その反応にかかわる部位は非選択的である。その為に、所望の活性を発揮する部位も基板固定または標識化部位になる恐れがあり、結果としてタンパク質の所望の活性を低下させる恐れがある。また、このような問題はマイクロデバイス化技術のみではなく、バイオセンサー等のセンシング素子を作製する上でも抗体等の標的物質を捕捉する分子をその捕捉機能を十分に発揮できる分子配向性をもって基板上に固定化することは重要な技術となる。
また、上記抗体と同様な足場構造を有するタンパク質に、多様な分子認識能を付与する研究も進められている。例えば、anticolin(Review in Molecular Biotechnology、74:p257、2001)、フィブロネクチン タイプIIIドメイン(J.Mol.Biol、284:p1141、1998)等が挙げられる。anticolinは、lipocalinをベースに改変された捕捉タンパク質である。liocalinは、160乃至180アミノ残基からなるタンパク質で低水溶性物質の輸送・貯蔵として機能するタンパク質である。構造は、8つのβシートから構成される樽型の構造体である。前記βシート間を繋ぐ4つのループ構造により対象物を認識し、結合することができる。フィブロネクチンは、一般的に100残基以下のアミノ酸からなるタンパク質であり、細胞外マトリクスとの接合や細胞間接合において重要な役割を担うタンパク質である。上記二つのタンパク質同様にβシート構造を有し、βシート間のループ構造により標的物質を認識するタンパク質である。上記anticolin、フィブロネクチンのβシート間のループ構造にランダムなアミノ酸配列導入し、新規の結合タンパク質を構築することが行われている。これらの分子は、分子認識部位とは別にβシートからなる強固な分子構造を有している為、所望の機能性高分子材料と融合することにより、基板を特異的に認識し、結合することにより固定化することができ、且つ固定化する高分子材料の所望の活性を阻害することなく、基板から一定の距離を確保するスペーサー機能も併せ持つことが期待される。しかしながら、前記抗体に代表される上記のような構造的に安定な足場構造を有する分子認識タンパク質において、金属、半導体材料に代表される無機物質を特異的に認識し、結合する例は今までは無い。
一方、各種物質(標的物質)の検出の分野においては、標的物質の検出および/または定量等は、特に、抗原および抗体のような蛋白質、並びに糖、レクチンおよび核酸に関しては、これまでいくつか確立されている。例えば、標的物質を特異的に認識・結合する抗体に標識物質を結合することにより、標識物質を介した検出または定量が可能となることが知られている。標識物質としては、金等の金属またはラテックス等の有機材料から微粒子、特定波長域の励起光により蛍光を発する蛍光物質やその蛍光物質を反応生成物とする酵素(例えばHRP等)を用いることが一般的である。抗体等のタンパク質を標識する方法としては、物理吸着による方法と反応活性のある官能基を標識物質/或いは被標識物質に導入し、それを架橋点として化学結合を形成する化学結合法が挙げられる。
以下、検出に用いられる抗体を一例として従来技術に関して述べる。特許第03108115号明細書において、抗体に金微粒子を物理的に吸着させることにより金標識する方法の一例が示されている。この方法によれば、予め調整した金コロイド分散液にモノクロナール抗体を加え、遠心沈降処理して上清液を除去し、数度の洗浄工程を経てし、金標識抗体を得ることができる。
次に、抗体を化学結合法により標識する方法について、説明する。抗体はタンパク質のアミノ基、またはSH基を有しており、これらに対し反応性を有する官能基を標識物質側に予め設けておくことにより、蛍光物質などの標識物質と抗体などの被標識物質との化学的な結合が可能となる。例えば、アミノ基と反応する、N−ヒドロキシスクシンイミドやイソチオシアネート基、ニトロアリールハライド基、酸クロリド基を有した標識物質を導入する方法が挙げられる。N−ヒドロキシスクシンイミドは、アミノ基とpH7以上の環境下で効率よく反応し、非常に安定なアミド結合を形成することが知られ、タンパク質を標識するための架橋剤として広く用いられている(Biochemistry、Vol.11、pp2291、1972)。タンパク質上のα位とリシン側鎖のε位のアミノ基がスクシンイミド基の反応ターゲットとなることができる。特に、ε位アミノ基が、一般的なスクシンイミドのターゲットと考えられている。例えば、金微粒子を標識物質として化学的に抗体などのタンパク質に結合させる場合、まず金微粒子を少なくとも一端にSH基を有し、他方に前述のタンパク質の側鎖残基と反応性の高い官能基を有した化合物で修飾する。次いでタンパク質と前記反応性官能基と架橋することにより結合させることが可能である。しかし、これらの方法では、リジンやフリーのα−アミノ基を有する残基を非選択的に反応対象とする為に、標識される対象となる抗体等のタンパク質の機能を阻害する恐れがある。また、イソチアネート基を有する蛍光物質としてFITCが知られているが、スクシイミドと同様にアミノ基に対する非特異な反応による被標識タンパク質の所望の特性低下が懸念される。
また、−SH基を架橋点とすることができる。SH基を利用する方法は、マレイミド法とピリジルジスルフィド法に大別できる。マレイミド法はSH基選択的な反応基としてマレイミドを有する架橋剤を用いる方法で、温和な条件で選択的な架橋ができることが知られている。例えば、被結合対象が抗体の場合、抗体分子のヒンジ部のジスルフィドを開裂させたSH基は、抗原認識部分とは無関係であるため、SH基を修飾しても抗体の特異性が損なわれないことが期待される。このSH基を架橋点にすることで所望の機能を損なうことなく標識物質を結合することが可能である。しかしながら、抗体全分子内にはSS結合が16箇所あり、その中には抗原認識部位であるCDR(complementary disision resion)を有する重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)の構造を保持するためのSS結合も含まれ、その還元箇所も部位特位的に行わなければ、その機能を損なう恐れがある。
特公平04−070320号公報は、広範な種々の金属イオンと高い親和性をもつてキレート化する低分子量蛋白質であるメタロチオネインまたはそのフラグメントを用いたタンパク標識技術について開示している。この公報には、メタロチオネインはスルフヒドリル部分にて標識物質となる金属イオンと結合し、その他の官能基、例えば、アミン基、水酸基、カルボキシル基を架橋点として抗体等と結合させる技術が開示されている。メタロネオチン内においては金属イオン結合部位と被標識物質結合部位が区別されて、それぞれの被結合物質が結合することが可能であるが、被標識物質の結合部位は他の架橋方法と同様に定かではなく、上記と同様の問題点が依然として残る場合があると考えられる。
更に、前記のような化学架橋による標識物質に固定化方法による非選択的な修飾を解決する手段として、遺伝子工学的な修飾法が挙げられる。遺伝工学的手法により結合部位をタンパク質に導入した融合タンパクを作製することも可能である。一例としては、蛍光物質等の標識物質の末端に低分子化合物であるビオチンを化学的に導入し、前記ビオチンと結合することが知られている(ストレプト)アビジンの全部もしくはビオチン結合部位を所望のタンパク質のN末、C末に遺伝子工学的に導入し、融合タンパク質として発現させ、前記ビオチン−アビジン結合を介することによって目的のタンパク質と標識物質を結合させる方法が知られている。このように標識物質、例えば、蛍光物質に低分子化合物を導入し、それを認識し結合できるタンパク質を導入した目的のタンパク質との融合タンパク質を遺伝子工学的に作製し、選択的な結合部位を導入することができる。
特表平07−501451号公報 特表平08−504100号公報 特表平07−501451号公報 特公平04−070320号公報 特許第03108115号明細書 国際公開第03/029431号パンフレット Science、300:p1413、2003 Science、302:p1364、2003 Proteomics、3:p254、2003 Nature、405:p665、2000 Nature Biotechnology、15:p269、1997 Science,296:892、2002 Science,240:p1038、1988 Science、240:p1041、1988 Review in Molecular Biotechnology、74:p257、2001 J.Mol.Biol、284:p1141、1998 Biochemistry、Vol.11、pp2291、1972
しかしながら、前記の開示技術では無機物質に代表される基板材料表面や標識用物質を分子選択的に認識し、結合する結合性タンパク質に関する技術に関しては開示されていない。そのために、前記結合性タンパク質または複合タンパク質を基板上に配置した構造体を作製する場合には、従来既知の方法、例えば、基板または前記結合性タンパク質を化学修飾し、共有結合により基板上に配置する等の方法によって配置しなければならない。また、金属や半導体物質の微粒子、及び標識用物質に結合させる際も、同様にして結合対象である微粒子または結合性タンパク質を化学的に修飾する必要があった。このような化学修飾は、タンパク質がその分子内に多数有するアミノ残基やカルボキシル基を標的とする場合が多く、その反応にかかわる部位は非選択的である。その為に、所望の活性を発揮する部位も基板固定または標識化部位になる恐れがあり、結果としてタンパク質の所望の活性を低下させる恐れがある。
また、このような問題はマイクロデバイス化技術のみではなく、バイオセンサー等のセンシング素子を作製する上でも抗体等の標的物質を捕捉する分子をその捕捉機能を十分に発揮できる分子配向性をもって基板上に固定化することは重要な技術となる。
本発明は、
第一のドメインと第二のドメインとを有するタンパク質であって、
前記第一のドメインが金からなる部分を表面に有する基体を特異的に認識して捕捉する部位を有し、
前記第二のドメインが標的物質を捕捉する部位を有することを特徴とするタンパク質である。
前記第一のドメインが、F(ab´)2、Fab´、Fabおよびこれらの一部の少なくとも一種を含んでいることが好ましい
前記第一のドメインが
(1)抗体重鎖可変領域(VH)、前記抗体重鎖可変領域の変異体、前記抗体重鎖可変領域の一部、前記抗体重鎖可変領域の変異体の一部、
(2)抗体軽鎖可変領域(VL)、前記抗体軽鎖可変領域の変異体、前記抗体軽鎖可変領域の一部、前記抗体軽鎖可変領域の変異体の一部
から選択された少なくとも一種を含んでいることが好ましい
前記第一のドメインが、配列番号:1〜48に示されるアミノ酸配列のうち少なくとも一つの配列を含む前記抗体重鎖可変領域(VH)を含むことが好ましい
前記第一のドメインが、配列番号:1〜48に示されるアミノ酸配列のうちの一つの配列の一個もしくは数個のアミノ酸が、欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を一つ以上含む前記抗体重鎖可変領域(VH)の変異体を含むことが好ましい
前記第一のドメインが、配列番号:49〜57に示されるアミノ配列のうち少なくとも一つの配列を含む前記抗体軽鎖可変領域(VL)を含むことが好ましい
前記第一のドメインが、配列番号:49〜57に示されるアミノ酸配列のうちの一つの配列の一個もしくは数個のアミノ酸が、欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を一つ以上含む前記抗体重鎖可変領域(VL)の変異体を含むことが好ましい
前記タンパク質が、前記金からなる部分を表面に有する基体を特異的に認識して捕捉する部位である第三のドメインと、前記標的物質を捕捉する第四のドメインとを、更に有し、
前記第一〜第四のドメインが以下の(1)〜(7)のいずれかの関係を有していることが好ましい
(1)前記第一のドメインと前記第二のドメインが一本のポリペプチド鎖を形成している。(2)前記第一のドメインと前記第二のドメインが一以上のアミノ酸を介して結合している。
(3)前記第三のドメインと前記第四のドメインが一本のポリペプチド鎖を形成している。(4)前記第三のドメインと前記第四のドメインが一以上のアミノ酸を介して結合している。
(5)少なくとも前記第一のドメイン、第二のドメイン及び第三のドメインが一つのポリペプチド鎖を形成している。
(6)少なくとも前記第一のドメイン、第二のドメイン及び第四のドメインが一つのポリペプチド鎖を形成している。
(7)前記第一乃至第四のドメインの全てが一つのポリペプチド鎖を形成している。
本発明にかかる金結合性複合タンパク質は金結合部位と構造部を有することにより、これと連鎖して結合する機能性物質を金基板表面に固定化する際に、機能性物質は、その本来の機能に対する固定化の影響は及ばず、また、固定化に際して、なんらの試薬を利用していないため、その機能に影響を及ぼす化学反応を被ることもない。更には、金基板との距離を保つことにより機能性物質がその機能に影響を及ぼすような基板から相互作用を受けることもない。
更に、本発明の金結合性複合タンパク質は少なくとも金と、特定の物質に対する複数の結合部を有する。これにより、少なくとも(i)表面の少なくとも部に金を有する基板と(ii)本発明の金結合性複合タンパク質、更には(iii)本発明の金結合性複合タンパク質が結合できる特定の物質から構成される多層体を形成する構造体とすることができる。この際、本発明にかかる金結合性複合タンパク質は抗体可変領域ドメインが有する立体的にも安定したβシート構造を有するため、金基板と特定の物質との結合部位の間に空間位置を保つことが可能であり、金また金以外の物質(例えば、標的物質)を結合する本金結合性複合タンパク質のドメイン(例えば、第二のドメイン)が、金を含む基板から何らかの相互作用を受けることがなく、結合能を保持することができる。また、これにより極めて薄膜な緻密な多層構造体を形成することが可能である。金結合性複合タンパク質によるこれらの特性を利用して、検出装置とすることができる。例えば、金薄膜上に所望の物質と結合可能な金結合性複合タンパク質を設けることで所望物質のセンシング素子とすることができる。その検出方法としては、光学的な手段、例えば表面プラズモン共鳴などを利用した手段を提供することができる。
一方、本発明にかかる金結合性タンパク質は、金を含む物質を標識物質とすることで、標的物質に金を含む標識物質を結合するための接続部材として利用可能である。この接続部材としての形態によれば、以下に示す代表的な効果を得ることができる。
第1の効果として、標的物質を結合する部位と標識物質を結合する部位をそれぞれ一以
上有し、それぞれの結合部位は互いに独立して被結合物質と結合することにより、従来の
標識方法で問題となっていた標識物質を結合した際に生じる被標識物質の標的物質結合能
の低下が見られない、優れた標的物質を標識できる接続部材を提供することができる。第
二の効果として、生体高分子であること、更にタンパク質であることにより、タンパク質
の複数のアミノ残基と標的物質表面の相互作用に起因する高い結合性が期待できる。第三
の効果として、接続部材が抗体可変領域であることによって、結合部位が高次構造により
規定された立体配置で規定される為高い結合特異性が期待できる。第四の効果として、標
識物質が金を含む物質であることにより、試料に対する散乱光量測定だけでなく、増強ラ
マンや局在プラズモンの原理を応用した光学的測定に加え、その電気特性を利用した電気
測定も可能とすることができる。第の効果として、前記接続部材を利用することで、標的物質/接続部材/標識物質を同時または任意に加えることが可能な検出方法及び検出キットを提供することができる。
以下、本発明金結合性複合タンパク質、金結合性タンパク質およびその用途について説明する。
(1)金結合性タンパク質
・抗体
金結合性タンパク質は、抗体の少なくとも一部を含んでなるものである。前記金との結合のために用いる抗体には、すべての脊椎動物のリンパ系細胞で産出される金に対する結合性を有する抗体、及びそれらのアミノ酸配列におけるアミノ酸の1個または数個が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有し、その構造・機能において関連を有する、すなわち目的とする金結合性を維持したタンパク質が含まれる。抗体は、その特性(免疫学的または物理学的な)の分類において、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEに分類されるが、その何れの分類であってもよい。更には、これらが多量体を形成していてよい。例えば、IgAは2量体、IgMは5量体を形成するが金に結合しうる形状であれば何ら問題はない。また、その使用用途がin vitroである場合は哺乳類に限らず、IgW、IgYであっても問題ない。
・金結合性抗体の取得
金結合性を示す抗体を取得する方法としては、従来行われてきた抗血清調製技術、および細胞融合によるモノクローン抗体作製技術を適宜選択して行うことができる。例えば、結合対象となる金微粒子を適当な免疫動物に免疫し、抗体価の上昇を確認したところで血清中から抗体を回収する。前記免疫とは、抗原となる金微粒子を適当な溶媒、例えば生理食塩水などで適当な濃度に希釈し、この溶液を静脈内や腹腔内に投与し、これに必要に応じてフロイント完全アジュバントを併用投与し、動物に1〜2週間間隔で3〜4回程度投与する方法が一般的である。このようにして免疫された動物を最終免疫後3日目に解剖し、摘出した脾臓から得られた脾臓細胞を免疫細胞として使用する。免疫する金微粒子として、10nm以下であることがこのましく、より好ましくは2nm以下である。更には、血清アルブミン等のタンパク質を共有結合させてハプテン化させることが更に好ましい。従来から免疫反応を生じにくい抗原においても、ある種タンパク抗原と複合体とすることによりタンパク質抗原の一部として認識され、産出を誘導されると予想される。
得られる抗体はポリクローナルでも良いが、モノクローナルとすることによってより金に対する特異性に優れたクローンを選択することが可能となる。モノクローナルな抗体は、それを産生する細胞をクローニングすることによって得ることができる。一般的には、免疫動物から回収した脾臓等のイムノグルブリン産生細胞を癌化細胞と融合させることによってハイブリドーマを形成することができる(Gulfre G.,Nature 266.550−552,1977)。例えば、癌化細胞としてはマウス由来ミエローマP3/X63−AG8.653(ATCC No. CRL−1580)、P3/NSI/1−Ag4−1(NS−1)、P3/X63−Ag8.U1(P3U1)、SP2/0−Ag14(Sp2/O,Sp2)、NS0、PAI、F0あるいはBW5147、ラット由来ミエローマ210RCY3−Ag.2.3.、ヒト由来ミエローマU−266AR1、GM1500−6TG−A1−2、UC729−6、CEM−AGR、D1R11あるいはCEM−T15等のミエローマ細胞をあげることができる。
モノクローナルの抗体を産生する細胞のスクリーニングは、前記細胞をタイタープレート中で培養し、増殖の見られたウェルの培養上清の前記金微粒子に対する反応性を、例えばRIA(radio immunoassay)やELISA(enzyme−linked immuno−solvent assay)等の酵素免疫測定法、免疫沈降等によって測定することができる。または、表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance:SPR)装置を利用した金結合性を定量的に測定することも可能である。
・抗体断片
本発明における抗体断片とは、モノクローナル抗体の一部分の領域を意味し、具体的にはF(ab')2、Fab'、Fab、Fd、Fv(variable fragment of antibody)、scFv(single chain Fv)、dsFv(disulphide stabilised Fv)あるいは可変領域(VH)または軽鎖可変領域(VL)からなる単ドメインdAb(single domain antibody)等が挙げられる。
ここで、「F(ab')2」及び「Fab'」とは、抗体を、タンパク分解酵素であるペプシンあるいはパパイン等で処理することにより得ることができる。抗体のヒンジ領域で2本の重鎖(H鎖)間に存在するジスルフィド結合の前後で消化されて生成される抗体フラグメントを意味する。例えば、IgGをパパインで処理すると、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の上流で切断されて軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)からなる軽鎖(L鎖)、及び重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域1(CH1)とからなる重鎖(H鎖)フラグメントがC末端領域でジスルフィド結合により結合した相同な2つのフラグメントを得る。これら2つの相同な抗体フラグメントを各々Fab'という。またIgGをペプシンで処理すると、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の下流で切断されて前記2つのFab'がヒンジ領域でつながったものよりやや大きい抗体フラグメントを製造することができる。この抗体フラグメントをF(ab')2という。
このような金結合性タンパク質は、上記Fab'、F(ab')2であってもよい。また、VHと前記CH1を結合したFd断片であっても構わない。
さらには、抗体の可変領域部(Fv)またはその一部であってもよく、例えばFvを構成する重鎖可変領域(VH)や軽鎖可変領域(VL)またはその一部であってもよい。一方、前記VHまたはVLからなる複合体において、一方のカルボキシ末端と他方のアミノ末端数個のアミノ酸からなるペプチドを介して連結した一本鎖Fv(single chain Fv:scFv)を利用することもできる。上記scFvを形成するVH/VL間(順不同)に一以上のアミノ酸からなるリンカーを設けることが望ましい。アミノ酸リンカーの残基長については、VHまたはVLと抗原との結合に必要な構造形成を妨げるような拘束力を持たないように設計することが重要である。具体的な例としては、アミノ酸リンカー長は、5乃至18残基が一般的で15残基が最も多く用いられ検討されている。
これら断片は遺伝工学的な手法により得ることが可能である。
更には、VH、VLが何れか単ドメインdAbであっても構わないが、前記単ドメイン構造は一般的に不安定であることが多いのでPEG修飾等の化学修飾による安定化を施しても良い。また、重鎖抗体としてin vivoにおいても存在し、機能することができることが知られているラクダ重鎖抗体の可変領域VHH(J.Mol.Biol、311:p123、2001)、Nurse sharkのイムノグロブリン様分子の可変領域IgNARであっても構わない。更には、ヒト又はマウス由来に代表される重鎖・軽鎖から構成される抗体分子のVH、VLを図1乃至図4のようにドメイン単体で使用する際にVH/VL界面等を重鎖抗体の相当部分を参考に変異導入することによって安定性が向上させても良い。
金結合部位は、(1)抗体重鎖可変領域(VH)、その変異体及びこれらの一部、並びに(2)抗体軽鎖可変領域(VL)、その変異体及びこれらの一部、から選択された少なくとも1種を含んでなるものとすることができる。抗体重鎖可変領域(VH)としては、配列番号:1〜48のアミノ配列の少なくとも一つを含んでなるタンパク質を、抗体軽鎖可変領域(VL)としては、配列番号:49〜57のアミノ配列の少なくとも一つを含んでなるタンパク質を好ましいものとして挙げることができる。これらの配列番号:1〜57のアミノ配列のそれぞれの一個もしくは数個のアミノ酸が、欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を一つ以上含み、金結合性を有しているタンパク質も同様に利用できる。
・金親和性抗体断片の取得
・酵素処理による取得
また、上記抗体をある種の酵素処理することで、前記抗体の抗原結合部位及び抗原結合能をある程度有した抗体断片を得ることもできる。例えば、前記得られた抗体をパパイン処理することによりFab断片またはその類似体を得るができ、ペプシン処理によってF(ab')2断片またはその類似体が得られる。前記抗体断片は、前記酵素的手法の他に化学的分解して作製する方法もある。これら抗体断片も金に対して結合能を有するものであれば、何ら問題なく使用することができる。
本発明に係わる上記Fab'、Fv、VHまたはVLのdAbを得る方法としては、遺伝工学的な手法を用いた取得も可能である。例えば、前記VHまたはVL遺伝子ライブラリーを作製し、それらをタンパク質として網羅的に発現させて、その遺伝子と対応させながら、金または標的物質に対する結合性により選択する方法がある。前記遺伝子ライブラリーは、たとえば、臍帯血、扁桃、骨髄、あるいは末梢血細胞や脾細胞等から得ることができる。例えば、ヒト末梢血細胞からmRNAを抽出し、cDNAを合成する。次に、ヒトVH、VLをコードする配列をプローブとして、ヒトVHまたはVLのcDNAライブラリーを作製する。例えば、ヒトVHファミリー(VH1乃至7)をファミリー毎に幅広く増幅することができるプライマーやヒトVLを増幅できるプライマーは公知である。これらVH、VL毎にプライマーを組み合わせてRT−PCRを行い、VH、VLをコードした遺伝子を取得する。また、ファージディスプレー法を用いることも可能である。ファージディスプレー法は、VH、VLまたはそれら含む複合体(例えば、Fab、scFv)をコードした遺伝子ライブラリーをファージ外殻タンパクをコードした遺伝子と結合し、ファージミドライブラリーを作製し、それらを大腸菌に形質転換し、種々のVHまたはVLを外殻タンパクの一部として有するファージとして発現させる。それらのファージを用いて、上記同様にして金また標的物質に対する結合性により選択することができる。ファージに融合タンパクとして提示されたVHまたはVLをコードする遺伝子は、ファージ内にファージミドにコードされているのでDNAシークエンス解析をすることにより、特定することができる。
上記金結合性タンパク質をコードする核酸を用い、それをタンパク質として宿主細胞(例えば、大腸菌、酵母、マウス、ヒト等由来の従来既知のタンパク発現用細胞)形質転換し、上記金結合性タンパクを発現できるための遺伝子ベクターとなる核酸からなる構成物を得ることもできる。一つの前記発現ベクターにより発現できる金結合性タンパク質は、抗体全分子、またはその抗体断片であるF(ab')2、Fab、Fv(scFv)、VH、VL、またはこれら複合体から選択して、設計することが可能である。ひとつの発現用ベクターに複数の前記断片をコードする場合、それぞれの抗体断片が独立した個々のポリペプチド鎖として発現させることができる。また、ドメイン間を連続して結合またはアミノ酸を介して結合させた一つのポリペプチド鎖として発現するベクター構成とすることも可能である。
金結合性タンパク質発現用ベクターの構成は、選択する宿主細胞に応じて既知のプロモーター等の導入遺伝子を発現させるために必要な構成等に組み込むことより、設計及び構築することができる。ベクター構成は、選択する宿主細胞に応じて既知のプロモーター等の構成等を参照し、構築することができる。また、大腸菌等を宿主細胞として用いる場合、外来遺伝子産物である金結合性タンパク質またその構成物を速やかに細胞質外に除外することで、プロテアーゼによる分解を少なくすることが可能である。また、この外来遺伝子産物が菌体にとって毒性である場合でも、菌体外へ分泌することによりその影響を小さくすることができることが知られている。通常、既知の細胞質膜あるいは内膜を通過して分泌されるタンパク質の多くがその前駆体のN末端にシグナルペプチドを有し、分泌過程においてシグナルペプチダーゼにより切断され、成熟タンパク質となる。多くのシグナルペプチドはそのN末に塩基性のアミノ酸、疎水性アミノ酸、シグナルペプチダーゼによる切断部位と配置されている。
金結合性タンパク質をコードする核酸の5'側にシグナルペプチドであるpelBに代表される従来既知のシグナルペプチドをコードする核酸を配することにより分泌発現させることができる。
また、ひとつのベクター中に金結合性タンパク質または複数の抗体断片から構成されるポリペプチド鎖をそれぞれ独立して複数挿入することも可能である。この場合、各ドメインまたはポリペプチド鎖をコードする核酸の5'側にpelBをコードする核酸を配置し、分泌を促すことができる。更に、または一以上のドメインからなるポリペプチド鎖として発現させる場合、前記ポリペプチド鎖の5'末端に同様にしてpelBをコードする核酸を配置することにより分泌を促すことができる。このようにシグナルペプチドをN末端に融合した金結合性タンパク質は、ペリプラズマ画分及び培地上清から精製することができる。
また、発現させたタンパク精製時の作業の簡便さを考慮して、抗体分子、または独立した各抗体断片もしくは複数の抗体断片が連続して結合して形成されたポリペプチド鎖のNまたはC末端に精製用のタグを遺伝子工学的に配置することが可能である。前記精製用タグとしては、ヒスチジンが6残基連続したヒスチジンタグ(以下、His×6)やグルタチオン−S−トランスフェラーゼのグルタチオン結合部位などが挙げられる。前記タグの導入方法としては、前記発現用ベクターにおける金結合性タンパク質をコードする核酸の5'または3'末端に精製タグをコードする核酸を挿入する方法や市販の精製タグ導入用ベクターを使用するなどが挙げられる。
以下に、上記発現ベクターを用いた金結合性タンパク質の製造方法について述べる。金結合性タンパク質、またはその構成要素となるポリペプチド鎖は、従来既知のタンパク発現用の宿主細胞に、宿主細胞に応じて設計した上記金結合性タンパク質発現用ベクターを形質転換し、宿主細胞内のタンパク合成システムを用いて、宿主細胞内に合成される。その後、宿主細胞内外に蓄積または分泌された目的タンパク質を細胞内部または細胞培養上清から精製することにより得ることができる。例えば、大腸菌を宿主細胞として用いる場合、金結合性タンパク質をコードする核酸の5'側にpelBに代表される従来既知のシグナルペプチドをコードする核酸を配することにより細胞質外に分泌発現しやすい構成にすることができる。
ひとつの発現用ベクター金結合性タンパク質を構成する複数のポリペプチド鎖を発現させる場合、各ポリペプチド鎖をコードする核酸の5'側にpelBをコードする核酸を配置し、発現時に細胞質外への分泌を促すことができる。このようにシグナルペプチドをN末端に融合した金結合性タンパク質は、ペリプラズマ画分及び培地上清から精製することができる。精製方法としては、前記精製タグがHisタグの場合、ニッケルキレートカラムやGSTの場合、グルタチオン固定化カラムを使用することで精製することができる。
また、菌体内に発現した金結合性タンパクが不溶性顆粒で得ることも可能である。この場合、培養液から得られた菌体をフレンチプレスや超音波により破砕した細胞破砕液から前記不溶性顆粒を遠心分離することができる。得られた不溶性顆粒画分を尿素、塩酸グアニジン塩を含む従来既知の変性剤を含んだ緩衝溶液で可溶化した後に、変性条件下で前記同様なカラム精製することができる。得られたカラム溶出画分は、リフォールディング作業により、変性剤除去と活性構造再構築を行うことができる。リフォールディング方法としては、従来既知の方法から適宜用いることも可能である。具体的には、段階透析法や希釈法などを目的のタンパクに応じて用いることが可能である。
金結合性タンパク質の各ドメインまたは各ポリペプチド鎖は、同一宿主細胞内で発現させることも可能であるし、別の宿主細胞を使用して発現した後に共存させて、複合体化させることも可能である。
更に、金結合性タンパク質をコードするベクターを用いて、細胞抽出液を用いて生体外でのタンパク質発現をすることも可能である。好適に用いられる細胞抽出液としては、大腸菌、小麦胚芽、ウサギ網状赤血球等が挙げられる。しかしながら、上記無細胞抽出液によるタンパク合成は一般的には還元条件下で行われる。その為に、抗体断片中のジスルフィド結合を形成させるために何らかの処理を行う方がより好ましい。
金結合性タンパク質の好ましい解離乗数(KD)は、0.1%Tween20存在下のバッファー条件下で10-6M以下であり、より好ましくは10-8M以下である。上記条件において、BSAなど比較的に金への非特異的な吸着が多いとされるタンパク質材料であっても金への吸着ができないことを本発明者の検討において確認している。KD値が10-6M以下であれば、上記のような非特異吸着性のタンパク質の吸着挙動と十分に区別することが可能であり、更に10-8M以下であることで固定化用のアンカー分子として十分に機能することができる。
・抗体断片タンパク発現
金結合性タンパク質を、所望の制限酵素、例えば上記の例ではNcoI/NheIにより切断して金結合性抗体断片コードDNAを得る。これを宿主細胞に応じた従来公知のタンパク発現用プラスミドに導入することで抗体断片を得ることができる。例えば、大腸菌の場合、菌体外発現またはペリプラズム画分から目的の抗体断片を回収したい場合、前記抗体断片コード遺伝子の上流に従来既知のシグナルペプチドを導入することができる。シグナルペプチドとしては、pelB等が挙げられる。また、発現後、培養上清または菌体画分から目的タンパク精製を容易にするために、従来既知の精製用タグを融合してもよい。具体的には、ヒスチジン6残基(His×6)やグルタチオン−S−トランスフェラーゼのグルタチオン結合部を導入し、融合タンパクとすることができる。これらは、Hisタグの場合、ニッケル等の金属キレートカラムなどにより精製することが容易にできる。GSTタグの場合は、グルタチオンをセファロース等に担体に固定化したカラムにより精製することが可能である。
また、菌体内に発現した目的タンパクが不溶性顆粒で得ることができない場合、これらを尿素、塩酸グアニジン塩を含む従来既知の緩衝溶液で可溶化した後に、リフォールディングを行うことも可能である。リフォールディング方法としては、従来既知の方法から適宜用いることも可能である。具体的には、段階透析法や希釈法などを目的のタンパクに応じて用いることが可能である。
これらで得られた抗体、及びそれらの断片、例えばFab、(Fab')2、Fd、VHまたはVLまたは前記それらの複合体等のアミノ酸配列において、一もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列であっても金結合性を示すものであれば本発明の範囲から超えるものではない。
金結合性タンパク質の好ましい解離乗数(KD)は、0.1%Tween20存在下のバッファー条件下で10-6M以下であり、より好ましくは10-8M以下である。上記条件において、BSAなど比較的に金への非特異的な吸着が多いとされるタンパク質材料であっても金への吸着ができないことを本発明者の検討において確認している。
D値が10-6M以下であれば、上記のような非特異吸着性のタンパク質の吸着挙動と十分に区別することが可能であり、更に10-8M以下であることで固定化用のアンカー分子として十分に機能することができる。
・金を有する被結合対象物
金を有する被結合対象物は、少なくともその表面の一部に金を有する物質から種々選択して用いることができる。免疫やパニング等により金結合性タンパク質を選択する際は、金以外の物質に対して吸着するタンパク質の混入を除くために被結合対象物表面は金のみであることがより望ましい。表面以外の内部コア基材となる材料は、金は勿論のことその他既知の種々の材料から選択して用いることができる。更に、粒子状、より好ましくは1乃至100μmφの微粒子にすることにより結合に係わる比表面積が増加して好ましく、またパニング終了時の回収の際も遠心分離により容易に回収することができる。また、下記のように市販の種々のプラスチックプレート、例えば培養シャーレ、96穴タイタープレートに金蒸着して用いてもよい。この場合、金表面の接液面積及び攪拌による分子拡散効果を鑑みて、そのサイズ及びウェル数を決定することが好ましい。
被結合対象物の形状としては、平板、球形、針状、多孔状等、既知の形状から適宜選択して用いることができる。形成方法としては、物理的または化学的な蒸着方法や塩化金を用いた化学的な製造方法から適宜選択することができる。得られた金を含む表面は、酸化膜や副生成物、共雑等の不純物を除去するため、酸性溶液、アルカリ性溶液、有機溶媒等で予め洗浄して所望の金の露出状態を作製し、用いてもよい。
・基体
金結合性タンパク質と、表面の少なくとも一部が金から形成されている基体とから各種の用途に使用し得る構造体を得ることができる。この基体は、その表面の少なくとも一部に金を配置されたものであり、構造体を形成しうるものであればいかなる材質、形状のものも利用可能である。構造体に用いる基体の材質は、構造体を形成しうるものであればいかなる材質でもよく、金属、金属酸化物、無機半導体、有機半導体、ガラス類、セラミクス、天然高分子、合成高分子、プラスチックから選ばれる何れか1以上或いはその複合体を含んでなる材質である。基体の形状は、構造体を形成しうるものであればいかなる形状でもよく、板状、粒子状、多孔体状、突起状、繊維状、筒状、網目状から選ばれる何れか1以上の形状を含んでなる形状である。
基体形成用の有機高分子化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2、4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンなどのスチレン系重合性モノマー、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートなどのアクリル系重合性モノマー、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートなどのメタクリル系重合性モノマー、メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニルなどのビニルエステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトン等のビニルケトン類などのビニル系重合性モノマー、からなる群より選択された重合性モノマーを重合させて製造された有機高分子化合物を挙げることができる。
また、例えば、無機系固形物の例としては、カオリナイト、ベントナイト、タルク、雲母等の粘土鉱物;アルミナ、二酸化チタン、酸化亜鉛、マグネタイト、フェライト、NbTa複合酸化物、WO3、In23、MoO3、V25、SnO2、等の金属酸化物;シリカゲル、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウムゲル等の不溶性無機塩;金、銀、プラチナ、銅等の金属;GaAs,GaP,ZnS、CdS、CdSe、等の半導体化合物、ガラス、シリコン、或いはこれらの複合体などを用いることができるが、勿論、これらに限定されるものではない。
基体は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ジアセテート、トリセテート、セロハン、セルロイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリビニルクロライド、ポリビニリデンクロライド、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどのプラスチックからなるフィルム、ポリビニルクロライド、ポリビニルアルコール、アセチルセルロース、ポリカーボネート、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、テフロン等からなる多孔性高分子膜、木板、ガラス板、シリコン基板、木綿、レーヨン、アクリル、絹、ポリエステルなどの布、上質紙、中質紙、アート紙、ボンド紙、再生紙、バライタ紙、キャストコート紙、ダンボール紙、レジンコート紙などの紙を用いて、膜状やシート状とすることもできるが、勿論、これらに限定されるものではない。なお、これら膜状やシート状の材料は、滑らかなものであっても、凹凸のついたものであっても良い。
基体の例としては、シリコンやシリカ、ガラス、石英ガラス等の基板及びそれらの基板にフォトリソグラフィーやエッチング、サンドブラスト等の手法で施された微小流路やホール(孔)、或いはそれらの表面に金や銀、白金の薄膜が施されたもの、PDMS(ポリジメチルシロキサン)やPMMA(ポリメチルメタクリレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PS(ポリスチレン)等の基板及び成型技術により施された微小流路やホール(孔)、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、フラーレンダイアモンド或いはそれらの集合体、アルミナ、カーボン、フラーレン、ZnO等からなるナノウイスカー、SiO2、アルミノシリケート、その他のメタロシリケート、TiO2、SnO2、Ta25等からなるメソポーラス薄膜、微粒子、及びモノリス構造体、金、銀、銅、白金等の微粒子、マグネタイト、フェライト、ヘマタイト、ガンマ・ヘマタイト、マグヘマイト等の鉄酸化物微粒子、アルミニウムシリコン混合膜及びそれを陽極酸化したシリコン酸化物ナノ構造体、ポーラスアルミナ薄膜、アルミナナノホール構造体、シリコンナノワイヤー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、基体の大きさは使用用途に応じて種々選択することが可能である。
・標的物質検出用のキット
金結合性タンパク質に標的物質との結合性を付加した構成を用いて、標的物質検出用のキットを得ることができる。例えば、上記の構造体を形成するための基体及び金結合性複合タンパク質と、該構造体への標的物質の結合を検出するための検出手段と、を有する標的物質検出用キットを構成することができる。例えば、標的物質への金結合性タンパク質を含むタンパク質への結合は、金結合性タンパク質含むタンパク質が結合した状態の標的物質に対して金または金を含む標識物質を付加して、これを物理的あるいは化学的な手法で検出することによって行うことができる。あるいは、標的物質が金を含むものであれば、金結合性タンパク質の金への結合性を利用して、金結合性タンパク質を金を含む標的物質に結合させ、この結合状態を標識を利用して検出することができる。この場合に用いる標識としては接続部材の説明において後述するものを利用できる。更に、例えば、光学的な変化、電気的な変化、あるいは熱的な変化などにおける物理量の変化によって標的物質と金結合性タンパク質との結合を検出することができる。
なお、かかる標的物質との結合性を付加した構成としては、後述する金結合性複合タンパク質や、金結合性タンパク質を標的物質と標識物質との結合部材として利用する場合を好ましいものとして挙げることができる。
・表面プラズモン共鳴装置
なお、金結合性タンパク質を含むタンパク質の金に対する結合は、例えば、従来既知の表面プラズモン共鳴測定装置で定量的に測定することができる。表面プラズモン共鳴は、一般にガラス基板上に設けた金薄膜上の屈折率変化を全反射角以下でガラス側から入射させた光によりガラス/金界面で生じるエバネセント波と金薄膜上の自由電子の共鳴(表面プラズモン共鳴)によって生じる共鳴角変化から測定する方法である。測定された屈折率変化を、被対象タンパク質の金への結合量として換算し、評価できる。
・解離定数(KD
「解離定数(KD)」とは、「解離速度(kd)」値を「結合速度(ka)」値で除して求められる値である。これらの定数は、前記モノクローナル抗体またはそれらの断片が金に対する親和性を表す指標として用いられる。前記定数は、種々の方法に従って解析することができるが、本発明においては、測定機器であるBiacore2000(アマシャムファルマシア社製)を用い、前記装置に添付された解析ソフトに従って、得られた結合曲線から解析して得た。
(2)金結合性複合タンパク質
本発明にかかる金結合性複合タンパク質は、2以上のドメインから構成され、1以上のドメインが上記の構成の金結合性タンパク質を有するものである。この複合タンパク質には以下の構成のものが例示できる。
(a)上記構成の金結合性タンパク質を含む第一のドメインと、特定の物質に対する結合部位を有するタンパク質を含む第二のドメインと、を有する複合タンパク質。
(b)上記の第一のドメインと第二のドメインに加えて、第一のドメインと複合体を形成する第三のドメイン及び前記第二のドメインと複合体を形成する第四のドメインの少なくとも一方を更に有する複合タンパク質。
なお、第二〜第四のドメインの少なくとも1つは金結合性のタンパク質を有することができ、その場合は、上記構成の金結合性タンパク質を含有させることでこれらのドメインを形成できる。なお、第一〜第四のドメインの被結合物質への結合性は各ドメインで独立して設定することができ、これらのドメインにおいて同じ結合性を有するドメインが2以上存在してもよく、異なる結合性のドメインからこれらのドメインを構成してもよい。
更に、記第一〜第四のドメインから選択された少なくとも2種が同一ポリペプチド鎖中に含まれているものであってもよい。このような構成としては、以下の構成を含む場合を挙げることができる。
(1)第一のドメインと第二のドメインが一本のポリペプチド鎖を形成している構成。
(2)第一のドメインと第二のドメインが一以上のアミノ酸を介して結合されている構成。
(3)第三のドメインと第四のドメインが一本のポリペプチド鎖を形成する構成。
(4)第三のドメインと第四のドメインが一以上のアミノ酸を介して結合されている構成。
(5)第一のドメインと第二のドメインを含んでなる第一のポリペプチド鎖と、第三のドメインと第四のドメインを含んでなる第二のポリペプチド鎖とからなる構成。
(6)第一のドメインと第二のドメインを含んでなる第一のポリペプチド鎖と、第三のドメインと第二のドメインを含んでなる第三のポリペプチド鎖とからなる構成。
(7)第一のドメインと第二のドメインを含んでなる第一のポリペプチド鎖と、第一のドメインと第四のドメインを含んでなる第四のポリペプチド鎖と、からなる構成。
(8)少なくとも第一のドメインと第二のドメイン、及び第三のドメインを含んでなる一つのポリペプチド鎖からなる構成。
(9)少なくとも第一のドメインと第二のドメイン、第四のドメインを含んでなる一つのポリペプチド鎖からなる構成。
(10)第一〜第四のドメインを含んでなる一つのポリペプチド鎖からなる構成。
・金結合性複合タンパク質
金結合性複合タンパク質の構成要素としてのタンパク質は、少なくとも二以上のアミノ酸が結合して形成されるポリペプチド鎖を少なくとも一以上含んでなり、それらポリペプチド鎖が特定の立体構造を形成するように折り畳まれて、固有の機能(変換、分子認識等)発揮できる分子のことを言う。また、本発明の金結合性複合タンパク質は、少なくとも金に対する結合部位を一以上有し、更に金もしくは金以外の物質との結合部位を少なくとも一以上有する、多価または多重特異性の結合性を示す複合タンパク質で、少なくとも以下を含んでなる複合化されたタンパク質である。好ましい構成としては、金に対する結合部位を有し、少なくとも抗体軽鎖可変領域(VL)または重鎖可変領域(VH)の一部を含む第一のドメインと、特定の物質(以下、標的物質)に対する結合部位を有し、少なくともVHまたはVLの一部を含む第二のドメインを有するものを挙げることができる。(以下、金に結合するVH、VLをVH(G)、VL(G)、標的物質に結合するVH、VLをVH(T)、VL(T)とする。)
抗体重鎖可変領域(VH)、抗体軽鎖可変領域(VL)は、前述したように抗体重鎖及び抗体軽鎖が有する可変領域である。抗体重鎖可変領域(VH)、抗体軽鎖可変領域(VL)は、一般的には各々アミノ酸約110個からなり筒状の構造をとり、逆平行の向きに配置されたβシート群による層状構造が形成され、この層状構造をひとつのSS結合により結合し、非常に安定した構造体を形成している。また、前記可変領域(VHまたはVL)は、抗体の多様な抗原への結合を決定する相補的決定領域(complementarity determining region:CDR)と呼ばれる部分を有することが知られている。前記CDRは、VHまたはVLにそれぞれ3つあり、比較的に多様性の少ないアミノ酸配列であるフレームワーク領域により分離されて配置され、対象となる認識部位の官能基の空間配置を認識することにより、より高度な特異的な分子認識を可能としている。
以下に、本発明の金結合性複合タンパク質の一例について述べる。本発明の金結合性複合タンパク質の最小単位は、上記第一のドメインと上記第二のドメインから構成され、図1にその模式的な図を示す。その組み合わせ例としては、VH(G)−VH(T)、VH(G)−VL(T)、VL(G)−VH(T)、VL(G)−VL(T)といった組み合わせが挙げられる。この例では、金結合性複合タンパク質は、第一のドメインと第二のドメインは相補的な結合部位を形成することなく、第一のドメインが金、第二のドメインが標的物質へと独立して結合するものである。第一のドメインと第二ドメインは、独立したポリペプチド鎖であっても、ドメインが連続的に結合されたポリペプチド鎖であってもよいが、ポリペプチド鎖が連続して結合されたポリペプチド鎖を形成することが、製造工程の簡略化及びその機能発現においてより好ましい形態である。第一のドメインと第二のドメインが連続して結合されたポリペプチド鎖の場合、第一のドメインと第二のドメインを直接連鎖してもよいし、一個以上のアミノ酸からなるリンカーを介して連鎖してもよい。アミノ酸からなるリンカーは1乃至10個のアミノ酸からなるものであることが好ましい。より好ましくは1乃至5個のアミノ酸からなるものである。リンカーのアミノ酸長が11乃至15である場合、第一のドメインと第二のドメインは配置による制限が少なく、前記ドメイン間で相補的な結合形成(scFv化)してしまう場合がある。このVH/VL間の相補的な複合体形成を抑制するために、リンカー長を短くし、ドメイン間に構造的な制約を負荷することが有効であることが知られている。第一もしくは第二のドメインのそれぞれが標的物質に結合した場合にもたらされる構造変化の影響が互いの所望する標的物質に対する結合能に影響がないことが望ましい。このために、リンカーをα−ヘリックス等の二次構造を持たせたり、本来所望の結合特性に無関係なポリペプチドのドメンインを挿入することも所望の特性や生産性に著しい影響を与えない範囲において可能である。
更に、金結合性複合タンパク質は、第一のドメインと複合体を形成する、VHまたはVLの一部を少なくとも含む第三のドメイン、または/及び第二のドメインと複合体を形成する、VLまたはVHの少なくとも一部を含む第四のドメインを含んでなる構成であっても良い。第三のドメインは、第一のドメインは複合体を形成することにより、第一のドメインと相補的な金結合部位を形成しすることがより望ましい。
例えば、図2aの模式図で示すように第一のドメインがVH(G)である場合、第三のドメインは第一のドメインとFvを形成し得るVLであることが好ましく、より好ましくは第一のドメインと第三のドメインが金結合部位を連合して形成する構成である。
このように第一のドメインが第三のドメインがFvを形成することにより、構造的により安定化し、構造変化による機能低下を抑制することが期待できる。さらに、第三のドメインが第一のドメインと連合して金結合部位を形成することにより、更に結合能(例えば、結合速度の向上、解離速度の抑制等)を向上することも期待される。
更には、図2bに示すように第一のドメインと第三のドメインは、それぞれ独立したポリペプチド鎖として設けても、連鎖してなるポリペプチド鎖であってもよい。(例えば、図2bの模式図に示すように第三のドメイン−第一のドメイン−第二のドメイン。金及びターゲットに対して結合能が発揮されるように適宜その構成を決定することができる。) また、別の例として、図3の模式図に示すような構成も可能である。つまり、前記第一のドメインと前記第二のドメインからなるポリペプチド鎖と第三のドメインと前記第二のドメインからなるポリペプチド鎖からなる複合体である。この場合、第一のドメインと第三のドメインから形成されるFvまたはFv様複合体により金と結合し、上記第二のドメインにより標的物質に対して結合するアンカーとして第一のドメインが機能するものである。
また、本発明の金結合性複合タンパク質は、第二のドメインと複合体を形成する、少なくともVHまたはVLの一部からなる第四のドメインを含んだ構成であっても良い。第四のドメインは、前記第二のドメインとともに標的物質に対する結合部位を相補的に形成することが望ましい。例えば、図4aの模式図に示すように、第二のドメインがVLである場合、第四のドメインは第二のドメインとFvを形成し得るVHであることが好ましく、より好ましくは第二のドメインと第四のドメインが前記標的物質に対する結合部位を連合して形成する構成である。また、図4bの模式図に示すように、第一のドメイン、第二のドメイン、及び第四のドメインが連鎖したポリペプチド鎖を形成してもよい。特に、図4bの構成において第一のドメインにて少なくとも表面の一部に金を有する基体と結合し、第二及び第四のドメインにて標的物質と結合する場合、第一のドメインが基体との結合した際において不可逆的な構造変化をした場合においてもリンカー等を設計することにより第二及び第四のドメインの標的物質との結合能への影響を最小限に抑えるようにすることが可能である。
更に、図5の模式図に示すような構成も可能である。つまり、前記第一のドメインと前記第二のドメインからなるポリペプチド鎖と第一のドメインと前記第四のドメインからなるポリペプチド鎖からなる複合体である。この場合、第二のドメインと第四のドメインから形成されるFvまたはFv様複合体により標的物質を結合し、上記両ポリペプチド鎖を金に対して結合するアンカーとして第一のドメインが機能するものである。
また、本金結合性複合タンパク質は第三及び第四のドメインをともに構成材料とすることが可能である。図6の模式図に示すように第三及び第四のドメインがそれぞれ独立したポリペプチド鎖であっても、図7の模式図に示すように連鎖されてなるポリペプチド鎖であってもよい。連鎖したポリペプチド鎖の場合、第三のドメインと第四のドメインを直接連鎖してもよいし、図7のように一以上のアミノ酸からなるリンカーを介して連鎖してもよい。リンカー長の設定については、前記と同様にアミノ酸からなるリンカーは1乃至10アミノ酸であることが好ましい。より好ましくは1乃至5である。
また、図8の模式図に示すように前記第一乃至第四のドメインが一つのポリペプチド鎖内に連鎖されたものであってもよい。この場合、第一のドメインと第三のドメインが複合体を形成し金と結合し、第二のドメインと第四のドメインが複合体を形成し金及び金以外の物質に結合できるように配置できるように構成されるものである。その為に、前記リンカーをドメイン間に設けることが好ましい。例えば、第一及び第二のドメイン間、第三及び第四のドメイン間は1乃至5アミノ酸であり、第二及び第三のアミノ酸のドメイン間は15乃至25アミノ酸である。同じような構成において、第一のドメインと第二のドメイン、第三のドメインと第四のドメインをそれぞれ/双方とも入れ替えること可能である。
これら一本鎖ポリペプチド内における各ドメインの配列は、金またはターゲットに対する結合性、及び本金結合性複合タンパク質の長期安定性等、所望の特性に応じて適宜選択して決定することが可能である。
第一のドメインは、例えば、配列番号:1乃至配列番号:57の中の少なくとも一つの配列を含んでなるものであり、これらのアミノ酸配列において、一個もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列のものであっても金に対する結合性を保持できれば何ら問題はない。更には、上記のアミノ酸配列の一部を形成する配列またはそれらを含む複合体であっても金結合性を示すものであれば何ら問題なく金結合性タンパク質として使用することが可能である。配列番号:1乃至配列番号:57を有するVHの具体例を配列番号:58乃至配列番号:74に、VLの具体例を配列番号:75乃至配列番号:77に示す。
第三のドメインは、配列番号:1乃至配列番号:57から選ばれるアミノ酸を一以上有していることが望ましい、更には、配列番号:58乃至配列番号:77の中から第一のドメインに応じて適宜選択して設定することがより好ましい。
金結合性複合タンパク質をコードする核酸を用いて、それをタンパク質として宿主細胞(例えば、大腸菌、酵母、マウス、ヒト等由来の従来既知のタンパク発現用細胞)形質転換し、上記金結合性タンパクを発現できるための遺伝子ベクターとなる核酸からなる構成物を得ることもできる。本発明の金結合性複合タンパク質を構成しうる第一及び第三のドメインをコードする核酸の配列例を配列番号:98乃至配列番号:116に示す。
一つの前記発現ベクターにより発現できる本発明の金結合性複合タンパク質の各ドメインは、1乃至4のいずれかから選択して、設計することが可能である。ひとつの発現用ベクターに本発明の金結合性複合タンパク質の複数のドメインをコードする場合、それぞれのドメインが独立した個々のポリペプチド鎖として発現させることができる。また、ドメイン間を連続して結合またはアミノ酸を介して結合させた一つのポリペプチド鎖として発現するベクター構成とすることも可能である。本発明の金結合性複合タンパク質発現用ベクターの構成は、選択する宿主細胞に応じて既知のプロモーター等の導入遺伝子を発現させるために必要な構成等に組み込むことより、設計及び構築することができる。ベクター構成は、選択する宿主細胞に応じて既知のプロモーター等の構成等を参照し、構築することができる。また、大腸菌等を宿主細胞として用いる場合、外来遺伝子産物である本発明の金結合性複合タンパク質を速やかに細胞質外に除外することで、プロテアーゼによる分解を少なくすることが可能である。また、この外来遺伝子産物が菌体にとって毒性である場合でも、菌体外へ分泌することによりその影響を小さくすることができることが知られている。通常、既知の細胞質膜あるいは内膜を通過して分泌されるタンパク質の多くがその前駆体のN末端にシグナルペプチドを有し、分泌過程においてシグナルペプチダーゼにより切断され、成熟タンパク質となる。多くのシグナルペプチドはそのN末に塩基性のアミノ酸、疎水性アミノ酸、シグナルペプチダーゼによる切断部位と配置されている。
本発明の金結合性複合タンパク質をコードする核酸の5'側にシグナルペプチドであるpelBに代表される従来既知のシグナルペプチドをコードする核酸を配することにより分泌発現させることができる。また、ひとつのベクター中に本発明の金結合性複合タンパク質を構成する各ドメインまたは複数のドメインから構成されるポリペプチド鎖をそれぞれ独立して複数挿入することも可能である。この場合、各ドメインまたはポリペプチド鎖をコードする核酸の5'側にpelBをコードする核酸を配置し、分泌を促すことができる。更に、または一以上のドメインからなるポリペプチド鎖として発現させる場合、前記ポリペプチド鎖の5'末端に同様にしてpelBをコードする核酸を配置することにより分泌を促すことができる。このようにシグナルペプチドをN末端に融合した本発明の金結合性複合タンパク質、あるいはその構成用途してのドメインは、ペリプラズマ画分及び培地上清から精製することができる。また、発現させたタンパク精製時の作業の簡便さを考慮して、独立した各ドメインもしくは複数のドメインが結合して形成されたポリペプチド鎖のNまたはC末端に精製用のタグを遺伝子工学的に配置することが可能である。前記精製用タグとしては、ヒスチジンが6残基連続したヒスチジンタグ(以下、His×6)やグルタチオン−S−トランスフェラーゼのグルタチオン結合部位などが挙げられる。前記タグの導入方法としては、前記発現用ベクターにおける金結合性タンパク質をコードする核酸の5'または3'末端に精製タグをコードする核酸を挿入する方法や市販の精製タグ導入用ベクターを使用するなどが挙げられる。
以下に、上記発現ベクターを用いた本発明の金結合性複合タンパク質の製造方法について述べる。
本発明の金結合性複合タンパク質、またはその構成要素となるポリペプチド鎖は、従来既知のタンパク発現用の宿主細胞に、宿主細胞に応じて設計した上記金結合性複合タンパク質発現用ベクターを形質転換し、宿主細胞内のタンパク合成システムを用いて、宿主細胞内に合成される。その後、宿主細胞内外に蓄積または分泌された目的タンパク質を細胞内部または細胞培養上清から精製することにより得ることができる。
例えば、大腸菌を宿主細胞として用いる場合、本発明の金結合性複合タンパク質をコードする核酸の5'側にpelBに代表される従来既知のシグナルペプチドをコードする核酸を配することにより細胞質外に分泌発現しやすい構成にすることができる。ひとつの発現用ベクターで本発明の金結合性複合タンパク質を構成する各ドメインを得るための複数のポリペプチド鎖を発現させる場合、各ポリペプチド鎖をコードする核酸の5'側にpelBをコードする核酸を配置し、発現時に細胞質外への分泌を促すことができる。このようにシグナルペプチドをN末端に融合した本発明の金結合性複合タンパク質は、ペリプラズマ画分及び培地上清から精製することができる。精製方法としては、前記精製タグがHisタグの場合、ニッケルキレートカラムやGSTの場合、グルタチオン固定化カラムを使用することで精製することができる。
また、菌体内に発現した本発明の金結合性複合タンパクを不溶性顆粒で得ることも可能である。この場合、培養液から得られた菌体をフレンチプレスや超音波により破砕した細胞破砕液から前記不溶性顆粒を遠心分離することができる。得られた不溶性顆粒画分を尿素、塩酸グアニジン塩を含む従来既知の変性剤を含んだ緩衝溶液で可溶化した後に、変性条件下で前記同様なカラム精製することができる。得られたカラム溶出画分は、リフォールディング作業により、変性剤除去と活性構造再構築を行うことができる。リフォールディング方法としては、従来既知の方法から適宜用いることも可能である。具体的には、段階透析法や希釈法などを目的のタンパクに応じて用いることが可能である。
本発明の金結合性複合タンパク質の各ドメインまたは各ポリペプチド鎖は、各々を同一宿主細胞内で発現させてから複合化させることも可能であるし、別の宿主細胞を使用して発現した後に共存させて、複合体化させることも可能である。
更に、本発明の金結合性複合タンパク質をコードするベクターを用いて、細胞抽出液を用いて生体外でのタンパク質発現をすることも可能である。好適に用いられる細胞抽出液としては、大腸菌、小麦胚芽、ウサギ網状赤血球等が挙げられる。しかしながら、上記無細胞抽出液によるタンパク合成は一般的には還元条件下で行われる。その為に、抗体断片中のジスルフィド結合を形成させるために何らかの処理を行う方がより好ましい。
本発明の金結合性複合タンパク質の好ましい解離乗数(KD)は、0.1%Tween20存在下のバッファー条件下で10-6M以下であり、より好ましくは10-8M以下である。上記条件において、BSAなど比較的に金への非特異的な吸着が多いとされるタンパク質材料であっても金への吸着ができないことを本発明者の検討において確認している。KD値が10-6M以下であれば、上記のような非特異吸着性のタンパク質の吸着挙動と十分に区別することが可能であり、更に10-8M以下であることで固定化用のアンカー分子として十分に機能することができる。
金を含む標的物質に対して結合能を有するこのような抗体重鎖可変領域(VH)、または抗体軽鎖可変領域(VL)を取得する方法のひとつとして、前記VHまたはVL遺伝子ライブラリーを作製し、それらをタンパク質として網羅的に発現させて、その遺伝子と対応させながら、金または標的物質に対する結合性により選択する方法がある。前記遺伝子ライブラリーは、たとえば、臍帯血、扁桃、骨髄、あるいは末梢血細胞や脾細胞等から得ることができる。例えば、ヒト末梢血細胞からmRNAを抽出し、cDNAを合成する。次に、ヒトVH、VLをコードする配列をプローブとして、ヒトVHまたはVLのcDNAライブラリーを作製する。例えば、ヒトVHファミリー(VH1乃至7)をファミリー毎に幅広く増幅することができるプライマーやヒトVLを増幅できるプライマーは公知である。これらVH、VL毎にプライマーを組み合わせてRT−PCRを行い、VH、VLをコードした遺伝子を取得する。また、ファージディスプレー法を用いることも可能である。ファージディスプレー法は、VH、VLまたはそれら含む複合体(例えば、Fab、scFv)をコードした遺伝子ライブラリーをファージ外殻タンパクをコードした遺伝子と結合し、ファージミドライブラリーを作製し、それらを大腸菌に形質転換し、種々のVHまたはVLを外殻タンパクの一部として有するファージとして発現させる。それらのファージを用いて、上記同様にして金また標的物質に対する結合性により選択することができる。ファージに融合タンパクとして提示されたVHまたはVLをコードする遺伝子は、ファージ内にファージミドにコードされているのでDNAシークエンス解析をすることにより、特定することができる。
更には、金または標的物質にて免疫した動物から目的の抗体を産出する細胞を採取し、上記と同じプライマーを使用し、VHまたはVLの塩基配列及びアミノ酸配列を特定することができる。
また、本発明の第三のドメイン、第四のドメインは標的物質に対して既知の抗体及び抗体断片の可変領域のアミノ配列を元に設計することができる。また、標的物質に対する抗体または抗体断片が未取得の場合、これに対する抗体を取得した後にアミノ酸配列を解析することにより、前記と同様にして設計することも可能である。前記第三のドメインと前記第四のドメインが供に金結合性複合タンパク質を構成するドメインであってもよい。このようにして、得られたVHまたはVLの塩基配列を用いて、本発明の金結合性複合タンパクを作製することが可能である。
・金を有する被結合対象物
免疫やパニング等により金結合性タンパク質を選択する際に用いる被結合対象物としては、先に金結合性タンパク質の場合に例示したものが利用できる。
・基体
本発明に係る金結合性複合タンパク質は、基体との組み合わせることで種々の用途に利
用できる構造体を得ることができる。この用途に利用できる基体としては、先に金結合性タンパク質の場合に例示したものが利用できる。
・標的物質
本発明にかかる金結合性複合タンパク質を、金との結合性を有するドメインと、標的物質に対して結合性を有するドメインとが含まれるように構成することで、標的物質検出用の複合タンパク質として利用することが可能となる。この検出対象としての標的物質としては、抗原抗体反応を用いた各手法によって抗原となり得る物質であれば如何なる分子も用いることが可能である。例えば、標的物質は、非生体物質と生体物質に大別される。
非生体物質として産業上利用価値の大きいものとしては、環境汚染物質としての塩素置換数/位置の異なるPCB類、同じく塩素置換数/位置の異なるダイオキシン類、いわゆる環境ホルモンと呼ばれる内分泌撹乱物質(例:ヘキサクロロベンゼン、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロ酢酸、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、アミトロール、アトラジン、アラクロール、ヘキサクロロシクロヘキサン、エチルパラチオン、クロルデン、オキシクロルデン、ノナクロル、1,2−ジブロモ−3−クロロプロパン 、DDT、ケルセン、アルドリン、エンドリン、ディルドリン、エンドスルファン(ベンゾエピン)、ヘプタクロル、ヘプタクロルエポキサイド、マラチオン、メソミル、メトキシクロル、マイレックス、ニトロフェン、トキサフェン、トリフルラリン、アルキルフェノール(炭素数5〜9)、ノニルフェノール、オクチノニルフェノール、4−オクチルフェノール、ビスフェノールA、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジエチル、ベンゾ(a)ピレン、2,4ージクロロフェノール、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、ベンゾフェノン、4−ニトロトルエン、オクタクロロスチレン、アルディカーブ、ベノミル、キーポン(クロルデコン)、マンゼブ(マンコゼブ)、マンネブ、メチラム、メトリブジン、シペルメトリン、エスフェンバレレート、フェンバレレート、ペルメトリン、ビンクロゾリン、ジネブ、ジラム、フタル酸ジペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジプロピル)等が挙げられる。
生体物質としては、核酸、タンパク質、糖鎖、脂質及びそれらの複合体から選択される生体物質が含まれ、更に詳しくは、核酸、タンパク質、糖鎖、脂質から選択される生体分子を含んでなるものであり、具体的には、DNA、RNA、アプタマー、遺伝子、染色体、細胞膜、ウイルス、抗原、抗体、レクチン、ハプテン、ホルモン、レセプタ、酵素、ペプチド、スフィンゴ糖、スフィンゴ脂質の何れかから選択された物質を含むものであれば、如何なる物質にも本発明を適用することができる。更には、前記の「生体物質」を産生する細菌や細胞そのものも、本発明が対象とする「生体物質」として標的物質となり得る。
具体的なタンパク質としては、いわゆる疾病マーカーが挙げられる。例としては、胎児期に肝細胞で産生され胎児血中に存在する酸性糖蛋白であり、肝細胞癌(原発性肝癌)、肝芽腫、転移性肝癌、ヨークサック腫瘍のマーカーとなるα−フェトプロテイン(AFP)、肝実質障害時に出現する異常プロトロンビンであり、肝細胞癌で特異的に出現することが確認されるPIVKA−II、免疫組織化学的に乳癌特異抗原である糖蛋白で、原発性進行乳癌、再発・転移乳癌のマーカーとなるBCA225、ヒト胎児の血清、腸および脳組織抽出液に発見された塩基性胎児蛋白であり、卵巣癌、睾丸腫瘍、前立腺癌、膵癌、胆道癌、肝細胞癌、腎臓癌、肺癌、胃癌、膀胱癌、大腸癌のマーカーである塩基性フェトプロテイン(BFP)、進行乳癌、再発乳癌、原発性乳癌、卵巣癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるCA15−3、膵癌、胆道癌、胃癌、肝癌、大腸癌、卵巣癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるCA19−9、卵巣癌、乳癌、結腸・直腸癌、胃癌、膵癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるCA72−4、卵巣癌(特に漿液性嚢胞腺癌)、子宮体部腺癌、卵管癌、子宮頸部腺癌、膵癌、肺癌、大腸癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるCA125、上皮性卵巣癌、卵管癌、肺癌、肝細胞癌、膵癌マーカーとなる糖蛋白であるCA130、卵巣癌(特に漿液性嚢胞腺癌)、子宮体部腺癌、子宮頸部腺癌のマーカーとなるコア蛋白抗原であるCA602、卵巣癌(特に粘液性嚢胞腺癌)、子宮頸部腺癌、子宮体部腺癌のマーカーとなる母核糖鎖関連抗原であるCA54/61(CA546)、大腸癌、胃癌、直腸癌、胆道癌、膵癌、肺癌、乳癌、子宮癌、尿路系癌等の腫瘍関連のマーカー抗原として現在、癌診断の補助に最も広く利用されている癌胎児性抗原(CEA)、膵癌、胆道癌、肝細胞癌、胃癌、卵巣癌、大腸癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるDUPAN−2、膵臓に存在し、結合組織の弾性線維エラスチン(動脈壁や腱などを構成する)を 特異的に加水分解する膵外分泌蛋白分解酵素であり、膵癌、膵嚢癌、胆道癌のマーカーとなるエラスターゼ1、ヒト癌患者の腹水や血清中に高濃度に存在する糖蛋白であり、肺癌、白血病、食道癌、膵癌、卵巣癌、腎癌、胆管癌、胃癌、膀胱癌、大腸癌、甲状腺癌、悪性リンパ腫のマーカーとなる免疫抑制酸性蛋白(IAP)、膵癌、胆道癌、乳癌、大腸癌、肝細胞癌、肺腺癌、胃癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるNCC−ST−439、前立腺癌のマーカーとなる糖蛋白質であるγ−セミノプロテイン(γ−Sm)、ヒト前立腺組織から抽出された糖蛋白であり、前立腺組織のみに存在し、それゆえ前立腺癌のマーカーとなる前立腺特異抗原(PSA)、前立腺から分泌される酸性pH下でリン酸エステルを水解する酵素であり、前立腺癌の腫瘍マーカーとして用いられる前立腺酸性フォスファターゼ(PAP)、神経組織及び神経内分泌細胞に特異的に存在する解糖系酵素であり、肺癌(特に肺小細胞癌)、神経芽細胞腫、神経系腫瘍、膵小島癌、食道小細胞癌、胃癌、腎臓癌、乳癌のマーカーとなる神経特異エノラーゼ(NSE)、子宮頸部扁平上皮癌の肝転移巣から抽出・精製された蛋白質であり、子宮癌(頸部扁平上皮癌)、肺癌、食道癌、頭頸部癌、皮膚癌のマーカーとなる扁平上皮癌関連抗原(SCC抗原)、肺腺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、膵癌、卵巣癌、子宮癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるシアリルLeX−i抗原(SLX)、膵癌、胆道癌、肝癌、胃癌、大腸癌のマーカーとなる糖鎖抗原であるSPan−1、食道癌、胃癌、直腸・結腸癌、乳癌、肝細胞癌、胆道癌、膵癌、肺癌、子宮癌のマーカーであり、特に他の腫瘍マーカーと組み合わせて進行癌を推測し、再発予知・治療経過観察として有用である単鎖ポリペプチドである組織ポリペプタイド抗原(TPA)、卵巣癌、転移性卵巣癌、胃癌、大腸癌、胆道系癌、膵癌、肺癌のマーカーとなる母核糖鎖抗原であるシアリルTn抗原(STN)、肺の非小細胞癌、特に肺の扁平上皮癌の検出に有効な腫瘍マーカーであるシフラ(cytokeratin;CYFRA)、胃液中に分泌される蛋白消化酵素であるペプシンの2種(PG I・PG II )の不活性型前駆体であり、胃潰瘍(特に低位胃潰瘍)、十二指腸潰瘍(特に再発、難治例)、ブルンネル腺腫、ゾーリンガーエリソン症候群、急性胃炎のマーカーとなるペプシノゲン(PG)、組織障害や感染により、血漿中で変化する急性相反応蛋白であり、急性心筋梗塞等により心筋に壊死が起こると、高値を示すC−反応性蛋白(CRP)、組織障害や感染により、血漿中で変化する急性相反応蛋白である血清アミロイドA蛋白(SAA)、主に心筋や骨格筋に存在する分子量約17500のヘム蛋白であり、急性心筋梗塞、筋ジストロフィー、多発性筋炎、皮膚筋炎のマーカーとなるミオグロビン、骨格筋,心筋の可溶性分画を中心に存在し、細胞の損傷によって血液中に遊出する酵素であって、急性心筋梗塞、甲状腺機能低下症、進行性筋ジストロフィー症、多発性筋炎のマーカーとなるクレアチンキナーゼ(CK)(骨格筋由来のCK−MM型,脳,平滑筋由来のCK−BB型,心筋由来のCK−MB型の3種のアイソザイム及びミトコンドリア・アイソザイムや免疫グロブリンとの結合型CK(マクロCK))、横紋筋の薄いフィラメント上でトロポニンI,Cとともにトロポニン複合体を形成し,筋収縮の調節に関与している分子量39,000の蛋白であり、横紋筋融解症、心筋炎、心筋梗塞、腎不全のマーカーとなるトロポニンT、骨格筋・心筋いずれの細胞にも含まれる蛋白であり,測定結果の上昇は骨格筋,心筋の障害や壊死を意味するため、急性心筋梗塞症、筋ジストロフィー、腎不全のマーカーとなる心室筋ミオシン軽鎖I、また、近年ストレスマーカーとして注目されてきているクロモグラニンA、チオレドキシン、8−OhdG、等が挙げられる。
・標的物質検出用キット
本発明にかかる金結合性複合タンパク質を用いて標的物質検出用のキットを構成することできる。例えば、第二ドメイン及び必要に応じて用いられる第四ドメインに標的物質に対して特異的に結合する抗体及びその変異体を用いた金結合性複合タンパク質と、金を含む表面を有する基体と、基体上に金結合性複合タンパク質を介して固定された標的物質を検出するための検出手段と、を含む標的物質検出用のキットを構成することができる。金基体上に金結合性複合タンパク質を介して固定された標的物質の検出には、前述の表面プラズモン共鳴測定装置を用いて測定することが可能である。また、金を少なくとも一部に含んだ基体を標識物質として標的物質を検出方法が利用できる。このような金基板と標的物質、標識物質と標的物質を仲介する物質としては、前述した金結合性複合タンパク質を利用できる。これらの標的物質を認識し、結合する抗体断片を用いて金結合性複合タンパク質を形成することにより本発明に使用することが可能である。
以下、本発明の実施例として金に対して結合を示すタンパク質の取得とその評価について詳細に述べる。本発明は、本実施例の記載内容に何ら制限されるものではない。
実施例1(抗体重鎖可変領域VHライブラリーの作製)
ヒト成人末梢血Bリンパ球由来Fabライブラリーを鋳型として、VHコード遺伝子を以下のprimerを使用してPCR(タカラバイオ、LAキット)にて推奨の方法に準じDNA複製を行う。プライマーは、以下のように設定した。
・back primers
(配列番号:78)
5'−TCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCCAGGTGCAGCTGGTGCAGTCTGG−3'
(配列番号:79)
5'−TCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCCAGRTYCAGCTGGTGCAGTCTGG−3'
(配列番号:80)
5'−TCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCCAGSTRCAGCTGCAGSAGTCRGG−3'
(配列番号:81)
5'−TCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCSARGTGCAGKTGGTGGAGTCTGG−3'
(配列番号:82)
5'−TCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCCCAGTGTGAGGTGCAGCTGGTGG−3'
(配列番号:83)
5'−TCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCCAGGTGCAGCTACAGSAGTGGGG−3'
・forward primers
(配列番号:84)
5'−ATTCTCGACTGCTAGCTGAGGAGACGGTGACCAGGGT GCC−3'
(配列番号:85)
5'−ATTCTCGACTGCTAGCTGAAGAGACGGTGACCATTGT CCC−3'
(配列番号:86)
5'−ATTCTCGACTGCTAGCTGAGGAGACGGTGACCAGGGT TCC−3'
(配列番号:87)
5'−ATTCTCGACTGCTAGCTGAGGAGACGGTGACCGTGGT CCC−3'
(1)上記Fabライブラリーを鋳型とし、上記プライマーを用いてPCRによるVHコード遺伝子の増幅を行う。PCR条件:95℃×10min、(94℃×1min、60℃×2min、72℃×2min)×35cycle、72℃×6min)。
(2)タンパク発現用ベクターとして、pLUCK(Biochem Biophys Res Commun.218、pp682、1996)のマルチクローニングサイトを図11に示すようにのように改良したプラスミドpRA−XXを用意する。(HindIIIにつづき、シグナルペプチドであるpelBをコードする核酸配列を配置し、続いてNcoI及びEcoRIの間に、NheI/SacII/SpeIの順に制限酵素部位を設け、SacII/SpeIの間にHis×6をコードする核酸配列を設ける。また、アンピシリン耐性遺伝子、T7プラモーター、lacオペレーター、T7ターミネ−ター配列はpluckと同じとした。)
(3)上記PCR産物及び上記プラスミドをNcoI/NheI(それぞれNew England Biolabs)にて推奨の方法により制限酵素による切断を行う。
上記プラスミド制限酵素切断溶液を、スピンカラム 400HR(アマシャムサイエンス)する。
(4)制限酵素により切断したPCR断片溶液を市販のゲル精製キット(SV Gel and PCR Clean−up system: Promega社)を使用して精製する。
(5)上記二つの断片を、市販のT4リガーゼキット(Roche社)を業者推奨の方法にて調合しライゲーションを行う。図12aに示すVHコード遺伝子挿入ベクターを得る。
(6)ライゲーション産物を用いてエレクトロポレーションによる大腸菌DS12S株の形質転換を行った。ラージスケールでプラスミドの調製を行った。
(7)これらプラスミド溶液を系列希釈し、それぞれの溶液をエレクトロポレーションにて大腸菌BL21(DE3)の形質転換を行い、同溶液にLB培地を700μL添加した後に、37℃にて一時間振盪培養した。培養液を6000rpmで5分間遠心した後に、上清650μLを廃棄した。
(8)残りの上清と沈殿画分を懸濁し、LB/Amp.プレートに撒き、37℃にて一晩静置した。その結果、最終的におよそ5×105クローンを含む抗体VHライブラリーを得た。
(9)次に、上記103倍希釈プレート3枚から任意に1000個のコロニーを選択し、以下の工程でタンパク粗抽出液を調整する。各コロニ−をLB/amp. 3mL液体培地に植え継ぎ、28℃にて6時間振盪培養を行う。次に、IPTGを終濃度1mMとなるように添加し、更に12時間振盪培養を行った。
(10)続いて、遠心(10,500rpm×5min)により、培養画分、上清菌体画分を得た。
(11)得られた菌体画分を氷中で冷却したオスモチック溶液(0.5Mスクロース、1M Tris−HCl(pH8.0)、0.5mMEDTA)200μLを加え、懸濁し、氷中で10分間静置する。次に、冷やした滅菌水を1mLを加え、氷中に1時間静置する。遠心(6000rpm×30min)した後、上清を透析バック(MWCO10,000)に入れ、外液をTris+0.1% Tween20溶液(20mM Tris、500mM NaCl)として、6時間毎に外液を交換しながら18時間透析を行う。
上記工程で得られた透析内液を金結合性抗体重鎖可変領域(VH)のスクリーニングのサンプルとした。
実施例2(金結合性抗体重鎖可変領域(VH)のスクリーニング)
金結合性抗体重鎖可変領域(VH)のスクリーニング用基板として、金蒸着(厚み100nm)した96穴タイタープレートを用意した。実施例1で得られた1000のサンプル溶液250μLを各wellに分注し、1時間緩やかに振盪する。上清を廃棄し、プレートを裏返し、紙タオル上で10回叩き、水分を取り除く。洗浄工程として、Tris+0.1%Tween20 200μLを各wellに加え、10分間緩やかに振盪し、この作業を3回繰り返す。HRP結合抗His抗体(インビトロジェン社)を1:10000でTris+0.1%Tween20溶液で希釈した抗体溶液 200μLを各wellに分注し、1時間緩やかに振盪する。続いて、前記洗浄工程と同様の作業を行う。HRP基質および発色材となるDetect Reagent1及び2(アマシャムサイエンス社)各100μLずつを各wellに分注し、1分間緩やかに浸透する。
ルミノールの化学発光量を定量する。
上記により化学発光が認められた15サンプルのコロニーを、LB/amp. 1.5mLに植え継ぎ、37℃にて一晩振盪培養を行う。得られた菌体からSV MiniPrep DNA purification system(プロメガ社)を用いて、プラスミドを精製する。上記で得られた17つのVL提示ファージミドのDNA配列を以下の方法にて配列を決定する。シークエンス用プライマーは、発現用ベクターのVHコード遺伝子上流に位置するpelB配列部に設定する。シークエンス用のprimerは以下のとおり。
pelB−back
(配列番号:88)5'−ccgct ggatt gttat tactc gc−3' 上記primerを使用し、業者推奨のシークエンス反応キットと反応液組成によりBigDye−PCR反応を行った。温度サイクルは96℃×3min→(94℃×1min→50℃×1min→68℃×4min)×30cycleとする。次に、エタノール沈殿により精製した前記PCR産物をシークエンサー(ABI社製377)により塩基配列を決定した。その結果、配列番号:58乃至配列番号:74の各配列を得た。
実施例3(抗体軽鎖可変領域VLライブラリーの作製)
実施例1と同様方法により、ヒト末梢血細胞のFabライブラリーからVL遺伝子ライブラリーを作製する。プライマーは以下のとおり。
・back primer
(配列番号:89)
5'−TCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCGMCATYCAGWTGACCCAGTCTCC−3'
(配列番号:90)
5'−TCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCGATRTTGTGATGACYCAGWCTCC−3'
(配列番号:91)
5'−TCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCGAAATTGTGWTGACGCAGTCTCC−3'
(配列番号:92)
5'−TCGCAACTGCGGCCCAGCCGGCCATGGCCGACATCGWGHTGACCCAGTCTCC−3'
・forward primer
(配列番号:93)
5'−TTCTCGACTTGCGGCCGCACGTTTGATTTCCACCTT GGTCCC−3'
(配列番号:94)
5'−TTCTCGACTTGCGGCCGCACGTTTGATCTCCAGCTTGGTCCC−3'
(配列番号:95)
5'−TTCTCGACTTGCGGCCGCACGTTTGATATCCACTTT GGTCCC−3'
(配列番号:96)
5'−TTCTCGACTTGCGGCCGCACGTTTGATCTCCACCTT GGTCCC−3'
(配列番号:97)
5'−TTCTCGACTTGCGGCCGCACGTTTAATCTCCAGTCG TGTCCC−3'
また、実施例1の(2)におけるタンパク発現用プラスミド作製を作製する際に、NcoI/SacII間のNheIをNotIに変更した以外は同様にしてプラスミドを作製し、用いた。さらに、実施例1の(11)の工程終了時に得られたVLタンパク透析内液を、金結合性抗体軽鎖可変領域(VL)のスクリーニングのサンプルとした。
実施例4(金結合性抗体軽鎖可変領域(VL)のスクリーニング)
スクリーニングサンプルを実施例3で得るサンプルとした以外は、実施例2と同様にして金結合性VLのスクリーニングを行なう。その結果、配列番号:75乃至配列番号:77の各配列を得た。
以下、実施例1のヒト末梢血細胞Fab遺伝子ライブラリーより、ファージミド作製し、金結合性VL、またはVHをスクリーニングする。
実施例5(金親和性VL提示ファージ群のスクリーニング)
以下の手順により、VL提示ファージライブラリーを作製し、金に結合性を示すファージ群の選択を行なう。
(1)VL提示用ファージミド
ヒト成人末梢血Bリンパ球由来Fabライブラリーを鋳型として、プライマーとして実施例3で用いた配列番号:89乃至配列番号:97を用いてVLコード遺伝子を複製する。更に、M13ファージのコートタンパクであるPIIIタンパクのN末端の一部を欠損させ、更にVLタンパクが融合されて発現されるように作製されたVL提示ファージミド(図12b)のライブラリを使用する。(Biochem Biophys Res Commun. 1996、218,pp682)
(2)VL断片提示ファージライブラリー作製
1)形質転換
上記VLコード遺伝子ライブラリー(350ng/μL)1μLを大腸菌DH12S 40μLにエレクトロポレーション(印加電圧:1.5KV、抵抗:186Ω容量:50μF、)にて形質転換する。次に、以下の手順でVL提示ファージライブラリーを調整する。
2)培養
(i)形質転換後のDH12S溶液にLB培地800μL加え、37℃にて1時間、振盪培養(140rpm)する。
(ii)上記培養液を20mL LB培地+終濃度アンピシリン100μg/mL(LB/amp.)に加え、37℃にて3〜4時間培養する。
(iii)ヘルパーファージであるM13KO7 40μLを加え、更に1時間、100rpmにて振盪培養する。
(iv)50mg/mL カナマイシン溶液を終濃度50μg/mLとなるように加えて、37℃にて振盪培養(100rpm)を行なう。
3)VL提示ファージライブラリーの回収
(i)上記培養液に20%PEG/500mMNaClを5mL加え、氷中に1時間以上放置する。
(ii)遠心(6500rpm×35分間)にて、上清を丁寧に取り除く。
(iii)沈殿をPBSバッファー500μLで懸濁し、VL提示ファージ溶液を得る。
4)VL提示ファージライブラリーのタイター評価
(i)JM109グリセロールストック 10μLをLBに加え、37℃にて振盪培養する。
(ii)上記3)で調整したVL提示ファージ溶液をLB培地により系列希釈溶液を準備する。
(iii)OD600が〜0.5となった(a)培養液750μLに系列(×10-6〜10-10
)希釈液10μLを加え、37℃にて1時間振盪培養する。
(iv)遠心(6000rpm×5min)を行い、培養上清700μLを除く。
(v)残った培地上清と沈殿をピペッティングにて懸濁し、LB/amp.プレートに撒き、37℃にて一晩静置する。
(vi)コロニ−が100以下となる希釈濃度プレート上に生じたコロニーをカウントして、VL提示ファージライブラリー溶液のタイター価とする。
得られたVL提示ファージライブライリー溶液: 5×109cfu/μL(3)金微粒子を用いたVLパニング
上記作製したファージライブラリー溶液と金微粒子(1.5μmφ:アルドリッチ社製)を用いて以下の方法によるパニング作業を5ラウンド繰り返し、金結合性VLを提示するファージ群を選択することを目的とした。
1)結合実験
(i)滅菌済エッペンチューブ(1.5mL)に上記ファージ溶液(溶液中の全ファージ数が1010cfuとなる量)に対して、上記金微粒子溶液(50mg/PBS1mL)10μL、更にPBS+0.1%Tween20(PBST)を全量が1000μLになるように加え、結合反応溶液とした。
(ii)上記結合反応溶液を室温にて緩やかに回転させながら30分間保持した。
(iii)上記(ii)を遠心(10,000rpm×5min)して、溶液上清を丁寧に廃棄する。
2)洗浄(非特異吸着物の洗浄)
(i)上記エッペンチューブ中の金微粒子にPBST500μLを加え、室温にて緩やかに回転させながら10分間保持する。
(ii)遠心(10,000rpm×5min)し、洗浄上清を丁寧に廃棄する。
(iii)上記(i)及び(ii)を10回繰り返す。
3)酸溶出と酸溶出画分のタイター評価
上記2)で得られた金微粒子に吸着したファージタイターを評価を以下の手順にて確認する。
3)−1 酸溶出
(i)先浄後の金微粒子に対して、0.2MGly−HCl(pH2.2)115μL加えた。1分間緩やかに上下に回転させながら保持する。
(ii)遠心(10,000rpm×5min)にて、上清を酸溶出画分として回収する。
(iii)回収した酸溶出画分を1MTris−HCl 15μLを加え、中和する。
(iv)中和後の酸溶出液1μLを系列希釈し、前記タイター評価法によりタイター値を側定する。
(v)残りの酸溶出画分をすばやく金微粒子画分と合わせ、再度懸濁する。
3)−2 タイター評価
(2)―3)、4)と同様にして、タイター評価を行い、以下のような結果を得る。
1ラウンド:9.8×102 cfu
2ラウンド:1.0×103 cfu
3ラウンド:7.8×102 cfu
4ラウンド:1.3×103 cfu
5ラウンド:1.1×104 cfu
4)再感染及びファージ増幅
4ラウンド目までは、3)で得られた金微粒子に吸着したファージ群を大腸菌に再感染工程を経ることによりファージ数を増幅させて、次パニング用のファージ溶液を準備する。
(i)再感染及びファージ増幅用に大腸菌JM109をLB培地20mLで37℃にて振盪培養(140rpm)する。
(ii)OD600=0.3〜0.5となった(a)の大腸菌培養液に前記3)の金微粒子懸濁液を加え、37℃にて1時間振盪培養(140rpm)を行なう。
(iii)終濃度が100μg/mLになるようにアンピシリンを加え、振盪培養を37℃にて2時間行なう。
(iv)ヘルパーファージM13KO7 40μLを加え、振盪速度を100rpmに落として37℃にて培養を1時間行なう。
(v)終濃度が50μg/mLになるようにカナマイシンを加え、振盪培養を37℃にて終夜培養を行なう。
(vi)(2)―3)、4)と同様の操作により培養上清中のファージを回収し、ファージ溶液を作製する。さらに、タイター値を評価し、増幅されていることを確認する。
以下の増幅後に得られたタイター値を示す。
1ラウンド:2.4×109 cfu
2ラウンド:8.1×108 cfu
3ラウンド:1.8×109 cfu
4ラウンド:1.1×1010 cfu
(iv)ファージELISA
1)ELISA用金蒸着基板の作製
実施例2と同じ金蒸着(厚み100nm)を行った96穴タイタープレート(BD社、ポリスチレン)を用いて、ファージELISA用の基板とする。
2)VL提示ファージ単クローン調整
前記(3)‐4)の5ラウンド目のタイター評価での×104の希釈プレート上に発現した11個のコロニーをからファージミドを以下の手順により回収する。
(i)各コロニーをLB/amp. 20mLで37℃にて培養する。
(ii)ヘルパーファージM13KO7 40μLを加え、振盪速度を100rpmに落として37℃にて培養を1時間行なう。
(iii)終濃度が50μg/mLになるようにカナマイシンを加え、振盪培養を37℃にて終夜培養を行なう。
(iv)(2)−3)、4)と同様の操作により培養上清中のファージを回収し、ファージ溶液を作製する。さらに、タイター値を評価し、増幅されていることを確認する。
以下の増幅後に得られたタイター値を示す
No.1:3.8×109 cfu
No.2:9.0×108 cfu
No.3:2.4×109 cfu
No.4:1.0×109 cfu
No.5:9.7×107 cfu
No.6:4.4×108 cfu
No.7:6.2×109 cfu
No.8:8.9×107 cfu
No.9:1.4×109 cfu
No.10:1.1×1010 cfu
No.11:4.9×109 cfu
2)ファージ溶液の調整
1)で得られた各ファージ溶液をタイター値が109cfuから順次1/10となるように希釈系列を各200μLを以下の組成で作製する。
VL提示ファージ溶液:xμL
スーパーブロッキングバッファー(PIERCE社):20μL
0.5%Tween20/PBS:x/5μL
PBS:180−(6x/5)μL
3)ELISA
(i)金蒸着タイタープレートに系列希釈したVL提示ファージ溶液をそれぞれ80μL分注し、シェイカーで緩やかに1時間攪拌する。
(ii)ファージ溶液を取り除き、各wellにPBST 90μLを分注して10分間攪拌し、洗浄上清を廃棄する。この作業を3回繰り返す。
(iii)HRP−Anti M13イムノグロブリン/SBB/PBS(1/1000:1:10)溶液75μlを各wellに分注した後に、シェイカーにて1時間緩やかに攪拌する。
(iv)上記イムノグロブリン溶液の上清を廃棄する。次に、PBST 90μL/wellを分注し、10分間攪拌し、洗浄上清を廃棄する。この洗浄作業を3回繰り返す。
(v)detection reagent 1、2(Amasham BIOSIENCE) を各35μL/wellずつ分注し、1分間緩やかに攪拌しながら反応させる。(vi)ルミノールの発光強度を測定した。発光強度の高いNo.1、No.2、No.3を金結合性VL提示ファージクローンとする。
上記4つのファージクローンよりファージミドを単離し、金結合性VLの塩基並びにアミノ酸配列を明らかにした。次に、発現ベクターを作製し、タンパクを発現させて表面プラズモン共鳴(SPR)金基板上に結合性を確認する。
実施例6(金親和性VLタンパクの取得)
(1)ファージミドの回収
実施例5(3)‐4)の5ラウンド目のタイター評価での×104の希釈プレート上に発現した前記No.7に相当するコロニーからファージミドを以下の手順により回収した。
(i)各コロニーをLB/amp. 1.6mLで37℃にて終夜培養する。
(ii)Minipreps SV plus DNA Purification system(promega)を用い、業者推奨の方法にてファージミドを回収する。
(2)発現ベクター作製
上記3種のVLタンパクを発現する発現ベクターを以下の構成で構築する。実施例1の図11に示すpRA−XX及上記(1)で得られたファージミドを各々のNcoI及びNotIを用いて制限酵素反応により切断する。得られたVL断片をpRA−XXに挿入し、VLコード核酸を融合タンパクとして発現されるプラスミドpRA−VLNo,n(n:クローン番号)を作製する。(図13)
(3)タンパク発現及び精製
以下、上記で得られた3つのVLタンパク発現用ベクターを用いてVLタンパクを発現させる。
1)形質転換
上記発現ベクターを用いて、BL21(DE3)コンピテントセル40μLを形質転換する。形質転換は、ヒートショックを氷中→42℃×90sec→氷中の条件でおこなう。
ヒートショックにより形質転換した上記BL21溶液にLB培地750μLを加え、一時間37℃にて振盪培養を行なう。その後、6000rpm×5分間遠心を行い、培養上清650μLを廃棄し、残った培養上清と沈殿となった細胞画分を攪拌し、LB/amp.プレートに撒き、一晩37℃にて静置する。
2)予備培養
プレート上のコロニーを無作為に選択し、3.0mL LB/amp.培地にて28℃にて一晩振盪培養を行なう。
3)本培養
上記予備培養溶液を2×YT培地 750MLに植え継ぎ、更に培養を28℃にて継続する。OD600が0.8を越えた時点で、終濃度が1mMとなるようにIPTGを加え、更に28℃にて終夜培養を行なう。
4)精製
(i)硫安沈殿
3)で得られた培養液を6000rpm×30min遠心し、培養上清を得た。
得られた培養上清重量を計測し、培養上清重量の60%の硫酸アンモニウムを徐々に加える。一晩4℃にて攪拌する。
(ii)脱塩
(i)液を8000rpm×20minで遠心し、上清を廃棄する。得られた沈殿を20mM Tris/500mM NaCl(以下、Tris溶液)15mLを加え、4℃にて一晩浸し、溶解させる。次に、得られた上記溶解液を透析用セルロースチューブ(三光純薬製)に入れ、外液をTris溶液として4℃にて透析を行い、脱塩を行なう。(外液は6時間毎に交換した)
(iii)金属キレートカラム
金属キレートカラム担体として、His−Bind(Novagen社製)を用いる。カラム調整やサンプル負荷、及び洗浄工程は、前記業者の推奨方法に準拠し、4℃にて行った。目的であるHisタグ融合のVLタンパク溶出は500mMイミダゾール/Tris溶液にて行なう。
溶出液のSDS−PAGE(アクリルアミド15%)の結果、単一バンドであり、精製されていることを確認する。上記溶出液に対して、外液をTris溶液として再び透析を行い、溶出液中のイミダゾールの除去を行なう。更に、外液をリン酸バッファー(以下、PBS)に替え、バッファー置換を行い、SPR用VLタンパク溶液とする。
実施例7(SPR測定)
実施例6で得られたVLタンパク質の金に対する結合性をSPRにて測定した。SPR測定装置として、BIAcore2000(BIAcore社製)を使用し、被結合物の金基板としては同社のSIA−kit Auの金蒸着ガラス基板を使用する。
以下の条件において測定を行なう。
ランニングバッファー:PBST
温度:25℃
流速:20μL/min
サンプル:VLタンパク/PBST
インジェクション量:20μL
結合性が確認される結合カーブを得る(図9)。
実施例8(VLタンパクの塩基及びアミノ酸配列の決定)
上記で得られたVL No,7のDNA配列を以下の方法にて配列を決定した。
シークエンス用プライマーは、VLコード遺伝子上流に位置するpelB配列部に設定した。シークエンス用のprimerは以下のとおり。実施例2と同様に、
pelB−back
(配列番号:88)
5'−ccgct ggatt gttat tactc gc−3'
のprimerを使用し、業者推奨のシークエンス反応キットと反応液組成によりBigDye−PCR反応を行った。温度サイクルは96℃×3min→(94℃×1min→50℃×1min→68℃×4min)×30cycle→4℃とする。次に、エタノール沈殿により精製した前記PCR産物をシークエンサー(ABI社製377)により塩基配列を決定する。以下の結果を得る。No.7は実施例12の配列番号:76と同じ塩基配列である。
実施例9(金親和性VH提示ファージ群のスクリーニング)
以下の手順により、VH提示ファージライブラリーを作製し、金に結合性を示すファージ群の選択を行なう。
(1)VH提示用ファージミド
実施例1と同様にヒト成人末梢血Bリンパ球由来Fabライブラリーを鋳型として、プライマーは実施例1と同様に配列番号:80乃至配列番号:89を使用する。VHコード遺伝子を複製した。更に、M13ファージのコートタンパクであるPIIIタンパクのN末端の一部を欠損させ、更にVHタンパクが融合されて発現されるように作製されたVH提示ファージミド(図12a)のライブラリを使用する。
(2)VH提示ファージライブラリー作製
以下、(1)を用いたことを除いては実施例5(2)と同様にしてVH提示ファージライブラリーを作製する。得られるVH提示ファージライブライリー溶液: 1×109cfu/μL
(3)金微粒子を用いたVHパニング
上記(2)で作製したファージライブラリー溶液を用いた以外は、実施例5(3)と同様に金結合性VHを提示するファージ群を選択するパニングを行なう。
1)結合実験
以下、実施例5と同様の2)洗浄、3)酸溶出及びタイター評価を行った。
1ラウンド:9.8×102 cfu
2ラウンド:1.0×103 cfu
3ラウンド:7.8×102 cfu
4)再感染及びファージ増幅
実施例5と同様の方法で行った。以下の増幅後に得られたタイター値を示す
1ラウンド:2.4×109 cfu
2ラウンド:8.1×108 cfu
(4)ファージELISA
(1)EISA用金蒸着基板の作製
実施例5と同様ファージELISA用の基板とした。
2)VL提示ファージ単クローン調整
前記VHパニング作業の3ラウンド目のタイター評価での×104の希釈プレート上に発現した20個のコロニーからファージミドを実施例1と同様にして回収した。以下の得られたVH提示ファージ単クローン溶液のタイター値を示す。
No.1:3.8×109 cfu
No.2:9.0×108 cfu
No.3:2.4×109 cfu
No.4:1.0×109 cfu
No.5:9.7×107 cfu
No.6:4.4×108 cfu
No.7:6.2×109 cfu
No.8:8.9×107 cfu
No.9:1.4×109 cfu
No.10:1.1×1010 cfu
No.11:4.9×109 cfu
No.12:9.0×108 cfu
No.13:2.4×109 cfu
No.14:1.0×109 cfu
No.15:9.7×107 cfu
No.16:4.4×108 cfu
No.17:6.2×109 cfu
No.18:8.9×107 cfu
No.19:1.4×109 cfu
No.20:1.1×1010 cfu
2)ファージ溶液の調整
1)で得られた各ファージ溶液をタイター値が109cfuから順次1/10となるように希釈系列を各200μLを以下の組成で作製した。
VH提示ファージ溶液:xμL
可溶化VL溶液(50ng):1μL
スーパーブロッキングバッファー(PIERCE社):20μL
0.5%Tween20/PBS: x/5μL
PBS:179−(6x/5)μL
3)ファージELISA
実施例1と同様の作業にてファージELISAを行った。
比較であるVHライブラリー溶液よりも発光強度の高い3クローンを金結合性VH提示ファージクローンとした。(No.2、4、6)
実施例10(金親和性VHタンパクの取得)
上記3ファージクローンよりファージミドを単離し、それらの発現ベクターを作製した後にタンパクを発現させて表面プラズモン共鳴(SPR)金基板上に結合性を確認する。
更にそれらの金結合性VHの塩基並びにアミノ酸配列を明らかにする。
(1)ファージミドの回収
3ラウンド目のタイター評価での×104の希釈プレート上に発現した15クローンに対応するコロニーからファージミドを以下の手順により回収した。
(a)各コロニーをLB/amp. 1.6mLで37℃にて終夜培養した。
(b)Minipreps SV plus DNA Purification system(promega)を用い、業者推奨の方法にてファージミドを回収した。
(2)発現ベクター作製
上記3種のVHタンパクを発現する発現ベクターを以下の構成で構築する。
PET−15b(Novagen社)のマルチクローニングサイトを変更し、pUT−XXとする。前記pUT−XX及上記(1)で得られたファージミドを各々のNcoI及びNheIを用いて制限酵素反応により切断する。得られたVH断片をpUT−XXに挿入し、VHコード核酸を融合タンパクとして発現されるプラスミドpRA−7sn,(n:上記ファージクローン番号)を作製する。(図14)
(3)タンパク発現及び精製
上記(発現ベクターを、個別の系において以下に記すタンパク発現及び精製工程で処理を行い、3種類(7s2、7s4、7s6)のVHとして取得する。
1)形質転換
上記2つの発現ベクターを、それぞれ異なるBL21(DE3)コンピテントセル溶液 40μLを形質転換する。形質転換は、ヒートショックを氷中→42℃×90sec→氷中の条件でおこなう。ヒートショックにより形質転換した上記BL21溶液にLB培地750μLを加え、一時間37℃にて振盪培養を行った。その後、6000rpm×5分間遠心を行い、培養上清650μLを廃棄し、残った培養上清と沈殿となった細胞画分を攪拌し、LB/amp.プレートに撒き、一晩37℃にて静置する。
2)予備培養
プレート上のコロニーを無作為に選択し、3.0mL LB/amp.培地にて28℃にて一晩振盪培養を行う。
3)本培養
上記予備培養溶液を2×YT培地 750MLに植え継ぎ、更に培養を28℃にて継続した。OD600が0.8を越えた時点で、終濃度が1mMとなるようにIPTGを加え、更に28℃にて終夜培養を行う。
4)精製
目的のポリペプチド鎖を不溶性顆粒画分から以下の工程により精製する。
(i)不溶性顆粒の回収
上記3)で得られた培養液を6000rpm×30minにて遠心し、沈殿を菌体画分として得る。得られた菌体をトリス溶液(20mM トリス/500mM NaCl)15mlに氷中にて懸濁する。得られた懸濁液をフレンチプレスにて破砕し、菌破砕液を得る。
次に、菌破砕液を12,000rpm×15minで遠心を行い、上清を除き、沈殿を不溶性顆粒画分として得る。
(ii)不溶性顆粒画分の可溶化
(a)で得られた不溶性画分を6M 塩酸グアニジン/トリス溶液 10mLを加えて、一晩浸漬する。次に、12,000rpm×10minで遠心し、上清を可溶化溶液として得る。
(iii)金属キレートカラム
金属キレートカラム担体として、His−Bind(Novagen社製)を用いる。
カラム調整やサンプル負荷、及び洗浄工程は、前記業者の推奨方法に準拠し、室温(20℃)にて行う。目的であるHisタグ融合のポリペプチドの溶出は60mMイミダゾール/Tris溶液にて行う。溶出液のSDS−PAGE(アクリルアミド15%)の結果、単一バンドであり、精製されていることを確認する。
(iv)透析
上記溶出液に対して、外液を6M 塩酸グアニンジン/Tris溶液として4℃にて透析を行い、溶出液中のイミダゾールの除去を行い、上記それぞれのポリペプチド鎖溶液を得る。
(v)リフォールディング
上記と同様にして、VHg−VLh及びVHh−VLgのそれぞれのポリペプチド鎖溶液を以下の工程により別個に、脱塩酸グアニンジンを透析(4℃)にて行いながらタンパク質のリフォールディングを行う。
a) 6M 塩酸グアニジン/Tris溶液を用い、それぞれのポリペプチド鎖のモル吸光係数とΔO.D.(280nm−320nm)値から濃度7.5μMのサンプル(希釈後体積10ml)を調整する。次にβ−メルカプトエタノール(還元剤)を終濃度375μM(タンパク濃度50倍)になるよう添加、室温、暗所で4時間還元を行う。このサンプル溶液を透析バック(MWCO:14,000)に入れ、透析用サンプルとする。
b)透析外液を6M塩酸グアニンジン/トリス溶液として、透析サンプルを浸漬し、緩やかに攪拌しながら6時間透析する。
c)外液の塩酸グアニジン濃度を3M、2Mと段階的に下げる。それぞれの外液濃度において、6時間透析する。
d)酸化型グルタチオン(GSSG)を終濃度375μM、L−Argを 終濃度0.4M)となるようにトリス溶液に加え、上記3)の2Mの透析外液を加え、塩酸グアニジン濃度が1Mとし、pHをNaOHで、pH8.0(4℃)に調整した溶液にて、12時間緩やかに攪拌しながら透析する。
e)d)と同様の作業にて塩酸グアニジン濃度0.5Mの含L−Arg トリス溶液を整し、更に12時間透析する。
f)最後にトリス溶液にて12時間透析する。7)透析終了後、10000rpmで約20分遠心分離し凝集体と上清を分離する。
上記で得られた3種のVH溶液に対して、更に外液をリン酸バッファー(以下、PBS)に替え、バッファー置換を行い、SPR用VHタンパク溶液とした。
実施例11(SPR測定)
実施例10で得られたVHタンパク質の金に対する結合性を実施例15と同様にしてSPRにて測定した。7s2、7s4、7s6とも結合性が確認される結合カーブを得た。図10に代表例を示す)。カーブフィッティングによって以下のKDを得た。7s2:KD=5.0×10M-8
7s4:KD=8.0×10M-9
7s6:KD=3.0×10M-7
実施例12(VHタンパクの塩基及びアミノ酸配列の決定)
上記で得られた3つのVH提示ファージミドのDNA配列を実施例2と同様の方法にて配列を決定した。シークエンス用プライマーは、VHコード遺伝子上流に位置するpelB配列部に設定した。実施例2と同様のシークエンス用primerを用い、同様の手順にて解析を行ない、異なる3配列を得た。それらが実施例10で得られる配列番号:59乃至配列番号:61で同じ配列である。
実施例13(SPRによるVH/VL複合体と金結合性実験)
実施例6で得たVLクローン:No.7と実施例10で得たVHクローン:7s2を各50nMPBST溶液を調整した。4℃にて一日間保存した。上記混合溶液を用いて、実施例7と同様にしてSPR測定を行った。その結果、実施例7または実施例11に比べ低濃度で金との結合性を確認できた。混合することにより複合体(Fv)形成され構造安定化による結合性向上が示唆された。(図3)
実施例14(金結合性scFvの取得)
実施例6で得たVLクローン:No.7と実施例10で得たVHクローン:7s2からなるscFvを以下の手順にて作製した。
(1)発現ベクター作製
VL(No.7)コード遺伝子、リンカー(GGGGS)×3、VH(7s4)コード遺伝子、His×6(以下、Hisタグ)連続して翻訳され、融合タンパクとして発現されるような発現ベクターを作製した。
具体的な作製方法については、図15に記す。
プライマーとしては以下を用いる。
scFv−B(配列番号:117)
5'−NNNNNCCATGGCCGGGGGCGGGGGCAGCGGGGGCGGGGGCAGCGGGGGCGGGGGCAGCCAGGTGCAGTTGGTGGAGTCT−3'
scFv−F(配列番号:118)
5'−NNNNNCCGCGGAACCATTCAGATCCTCTTCT−3'
(2)タンパク発現及び精製
以下、上記で得られたscFvタンパク発現用ベクターを用いてscFvタンパクを発現・精製した。
1)タンパク発現
上記発現ベクターを大腸菌BL21(DE3)を形質転換し、培養は2xYT培地を用い28℃で行う。O.D.600=約0.8となったところで、終濃度1mMのIPTGにより発現を誘導し、一晩振盪培養する。菌体を6000rpm×20minにて遠心を行い、培養上清画分と菌体画分を得た。これらサンプルを既知の方法によりSDS−PAGEにより電気泳動を行い、目的のタンパクの発現量を確認した。その結果、培養上清画分への分泌は非常に少ないことがわかった。そこで目的タンパクを菌体画分から精製する為に以下の手順でサンプルを調製した。まず、菌体をPBS 15mLで再懸濁し、さらにPBS 25mLをえ、フレンチプレスによる菌体破砕を行った。得られた破砕液を12000rpm×15minで遠心を行い、沈殿画分を不溶性顆粒として得た。得られた不溶性顆粒を6M塩酸グアニジン/Tris溶液で一晩浸漬し、可溶化し、金属キレートカラム用サンプルとした。
2)金属キレートカラム精製
ランニングバッファーを6M塩酸グアニジン/5mMイミダゾール/Tris溶液とし、溶出時のイミダゾール濃度を100mM、展開温度を室温(20℃)とした以外は実施例2と同様にして精製を行った。
3)透析
2)で得られた溶出画分を透析用セルロースチューブ(三光純薬製)に入れ、外液を6M塩酸グアニンジン/1mMEDTA/Tris溶液として4℃にて透析を行い、イミダゾール除去を行った。(外液は6時間毎に交換した)
3)タンパク質の再構築
2)で得たscFv溶液をTris溶液で7.5μMに調整し、サンプルとした。上記溶液に対して、外液の塩酸グリシン濃度を段階的に下げることにより、内液中の塩酸グアニジン濃度を下げるとともにscFv構造の再構成を行った。
(a) 6M 塩酸グアニジン/Tris溶液を用い、目的タンパクのアミノ酸配列から概算されるモル吸光係数とO.D.(280nm)か7.5μMのサンプルを調整した。(b) 次にβ−メルカプトエタノール(還元剤)を終濃度375μMになるよう添加、室温、暗所で4時間静置した。
(c) サンプルを前記と同様の透析膜に入れ、外液(6M 塩酸グアニジン/Tris溶液)に加え、4℃で約6時間透析する。
(d) 以降、6時間毎に外液を2回交換した。その際に、外液の塩酸グアニジン濃度は3M→2Mと段階的に下げながら透析を行った。
(e) 次に、酸化型グルタチオン(GSSG)を終濃度375μM、L−Argを 終濃度0.4M)となるようにTris溶液に加え、更に上記(d)の透析外液(2M)を加えることで塩酸グアニジン濃度を1Mとして、pHをNaOHで、pH8.0(at 4℃)に調整した外液を用いて4℃で約12時間透析する。
(f) (e)と同様の作業にて0.5M塩酸グアニジン/Tris溶液を作製し、4℃で約12時間透析する。
(g) 最後に、外液をTris溶液に交換して4℃で約12時間透析する。
(h) 透析終了後、10000rpmで約20分遠心分離し凝集体画分と上清画分を分離する。上清画分をSDS−PAGE電気泳動で確認したところ、上清画分に目的のタンパクが可溶化されていることを確認した。VLに前記No.7クローンを配し、VHに7s2を配したscFvを取得した。
実施例15(SPRによるscFvの金結合性評価)
実施例14で得られたscFvタンパク質の金に対する結合性を実施例3と同様にしてSPRにて測定した。金結合性を示す結合カーブが得られた。(図17)
実施例16(Au特異性の確認)
実施例15で得られたscFvタンパク質の金特異性を確認した。確認用の基板として、3mm×5mmのシリコン基板上に70μmφの大きさの円形パターニングを金蒸着(厚さ 50nm)する。上記基板表面をイソプロピルアルコール、アセトン、塩酸と順次10分間浸漬して表面洗浄する。(溶液を替える毎に純水にて洗浄、乾燥する。)上記基板を実施例6で得られたscFv溶液を1μMに調整した溶液に1時間浸漬する。続いて、PBSTにて10分間緩やかに攪拌しながら洗浄する。この作業を3回繰り返し、洗浄液を捨てる。次に、上記基板を100nM 抗Hisタグ抗体/PBST溶液に1時間緩やかに攪拌しながら浸漬する。続いて、PBSTにて10分間緩やかに攪拌しながら洗浄する。この作業を3回繰り返し、洗浄液を捨てる。更に、上記基板を100μM ロドプシン結合抗IGg抗体/PBST溶液に1時間緩やかに攪拌しながら浸漬する。続いて、PBSTにて10分間緩やかに攪拌しながら洗浄する。この作業を3回繰り返し、洗浄液を捨てる。その後、蛍光顕微鏡にて基板を観察した。その結果、金蒸着した円形部のみに蛍光が観察され、シリコン部には蛍光は見られなかった。実施例15で得られたscFvの金特異性が確認できた。
比較例1
実施例16における1μM scFvで金蒸着シリコン基板を処理した以外は、同じ作業にて前記基板を処理した。蛍光顕微鏡による観察の結果、シリコン部のみだけでなく、金蒸着した円形部にも蛍光は確認できなかった。
実施例17(酸化珪素親和性ペプチド融合金結合性タンパクの作製)
酸化珪素親和性ペプチドIPHVHHKHPHVを上記実施例scFvのC末端に融合したタンパク質を以下の工程により作製する。
(1)発現ベクター作製
(a)上記(実施例14)で得られたpUT−scFv(VL#No,7×7s4)をテンプレートして以下のプライマーを用い、PCRを行う。
SiscFv−B(配列番号:119)
5'−NNNNNCCATGGCCCAGGTGCAGTTGGTGGAGT−3'
SiscFv−F(配列番号:120)
5'−NNNNNCCGCGGCACGTGGGGGTGCTTGTGGTGCACGTGCATGGGGATAACCATTCAGATCCTCTTCT−3'
尚、PCRは市販のPCRキット(タカラバイオ LA−Taqキット)を使用し、業者推奨のプロトコールに従い行う。
(b)その結果得られたPCR産物を2%アガロース電気泳動を行う。次に、ゲル抽出キット(Promega社)を使用してゲルから粗精製を行い、約400bpのPCR断片を得る。シークエンスの結果、目的の塩基配列を有することを確認する。
(c)pUT−scFv(7s4)及び上記(b)で得られたPCR断片を、NotI/SacIIを用いて、切断する。次いで、アガロース電気泳動を行い、Vector側及びInsert側でそれぞれ目的の断片を精製する。
(d)上記(c)でえら得た精製した核酸断片を、Vector:Insert=1:5となるように混合し、実施例1と同様にしてライゲーション反応を行う。
以下、形質転換、プラスミド回収、挿入断片の確認については実施例6と同様に行う。
(3)タンパク発現及び精製
上記得られた発現用プラスミドを用いて、実施例10と同様の方法にてタンパク発現及び精製を行い、目的であるタンパク質を得る。
実施例18(金及びHEL結合性タンパク質の取得)
(1)金結合性VHコード核酸断片の調整
金結合性VH(配列番号:61)の5末端側に制限酵素NcoI切断部位、3'末端側に制限酵素NheIを配置したベクター導入用の金結合性VH(以下、VHg)を作製するために、プライマーとして、
gVH−B(配列番号:121)
5'−NNNNN CCATGG CCGAC CAGG TGCAG TTGGT GGAGT CT−3'
gVH−F(配列番号:122)
5'NNNNN GCTAG C GGAGA CGG TGACCAGGGT−3'
を使用して、市販のPCRキットを当業者の推奨する調合にてPCRを行い、約350bpの塩基対を得る。上記VHB−Fを使用し、市販のシークエンス反応キットと反応液組成によりBigDye−PCR反応を行った。温度サイクルは96℃×3min→(94℃×1min→50℃×1min→68℃×4min)×30cycle→4℃とする目的のVHをコードする塩基配列を有する断片が得られたことを確認する。
(2)金結合性VLコード核酸断片の調整
金結合性VL(配列番号:76)の5末端側に制限酵素NheI部位及びリンカー(GGGGS)をコードする核酸、3'末端側にHis×6に引き続き、制限酵素SacIIを配置したベクター挿入用の金結合性VL(以下、VLg)(配列番号:99)を作製するために、プライマーとして
gVL−B(配列番号:123)
NNNNN GCTAGC GGTGGCGGTGGCTCT GAAATTGTGTTGACGCAGTCT、及び
gVL−F(配列番号:124)
NNNNN CCGCG GCACG TTTAA TCTCC AGTCG TGT
を使用する以外は、(1)と同様にして核酸断片を得て、目的のVLの塩基配列を有することを確認する。
(3)HEL結合性VHコード核酸断片の調整
HEL結合性VH(配列番号:125)の5末端側に制限酵素NcoI切断部位、3'末端側に制限酵素NheIを配置したベクター導入用のHEL結合性VH(以下、VHh)を作製するために、プライマーとして、
hVH−B(配列番号:126)
5'−NNNNN CCATGG CCGAC GATATCCAGCTGCAGGAGTCGGGCCC−3、及び
hVH−F(配列番号:127)
5'NNNNN GCTAG C GGAGA CGG TGACGTCTGT−3
を使用する以外は、(1)と同様にして核酸断片を得て、目的のVHの塩基配列を有することを確認する。
(4)HEL結合性VLコード核酸断片の調整
HEL結合性VL(配列番号:128)の5末端側に制限酵素NheI切断部位及びリンカー(GGGGS)をコードする核酸、3'末端側にHis×6に引き続き、制限酵素SacII切断部位を配置したベクター挿入用のHEL結合性VL(以下、VLh)を作製するために、プライマーとして、
hVL−B(配列番号:129)
NNNNNGCTAGCGGTGGCGGTGGCTCTGATATCGTCCTGAC CCAGAG、及び
hVL−F(配列番号:130)
NNNNN CCGCG GCCTT GATCT CCAGC TTGGT GC
を使用する以外は、(1)と同様にして核酸断片を得て、目的のVLの塩基配列を有することを確認する。
実施例19(発現ベクター作製)
上記4種の核酸断片用いてを2つの発現ベクターを以下の構成で構築する。
(1)VHg−VLh発現用ベクター(pGHEL)の作製 (図15)
(i)VHgの挿入
前記プラスミドpUT−XXを、制限酵素NcoI/NheI(ともにNew England Biolabs社)で切断し、スピンカラム 400HR(アマシャムサイエンス)する。次に、同様に制限酵素NcoI/NheIにて切断したVHgを切断し、切断断片を市販のゲル精製キット(SV Gel and PCR Clean−up system: Promega社)を使用して精製する。上記二つの断片を、市販のT4リガーゼキット(Roche社)を業者推奨の方法にて調合しライゲーションを行う。
ライゲーション溶液をJM109コンピテントセル(Promega社)40μLにヒートショック法により形質転換した後に、LB/アンピシリン(amp.)プレートに撒き、37℃にて一晩静置する。
次に、プレート中から任意のコロニーをLB/amp. 3mL液体培地に植え継ぎ、37℃にて一晩振盪培養を行う。その後、市販のMiniPrepsキット(Plus Minipreps DNA Purification System:Promega社)を使用して、プラスミドを回収する
得られたプラスミドを、gVH−Fを使用して前記シークエンス方法にて塩基配列を確認したところ、目的の断片が挿入されていることを確認する。
(ii)VLHの挿入
上記1)で得られたプラスミドpUT-VHgを制限酵素NheI/SacIIで切断し、スピンカラム 400HR(アマシャムサイエンス)する。次に、同様に制限酵素NheI/SacIIにて切断したVLhを得る。以下、上記(a)と同様にして、ライゲーション及び目的のVHg−VLH発現用プラスミドpGHELであることを確認する。(確認用プライマーは、hVL−F)
(2)VHh−VLg 発現用ベクター(pHGOLD)の作製(図16)
(iii)VHhの挿入
上記(i)と同様の方法にてVHhをプラスミドpUTに挿入し、得られたプラスミドが目的のプラスミドであることを確認する。(確認用プライマーは、hVH−F)
(iv)VLgの挿入
VLgを上記(iii)で得られたプラスミドに上記(b)と同様の方法にて挿入し、得られたプラスミドが目的のVHH−VLg発現用ベクターpHGOLDであることを1)と同様にして確認する。(確認用プライマーは、gVL−F)
実施例20(タンパク発現及び精製)
上記実施例19の(ii)で得られたVHg−VLh、及び実施例19の(iv)で得られたVHh−VLgのポリペプチドを発現する発現ベクターを、個別の系において以下に記すタンパク発現及び精製工程で処理を行い、それぞれポリペプチド鎖VHg−VLh及びVHh−VLgとして取得する。
1)形質転換
上記2つの発現ベクターを、それぞれ異なるBL21(DE3)コンピテントセル溶液 40μLを形質転換する。形質転換は、ヒートショックを氷中→42℃×90sec→氷中の条件でおこなう。ヒートショックにより形質転換した上記BL21溶液にLB培地750μLを加え、一時間37℃にて振盪培養を行った。その後、6000rpm×5分間遠心を行い、培養上清650μLを廃棄し、残った培養上清と沈殿となった細胞画分を攪拌し、LB/amp.プレートに撒き、一晩37℃にて静置する。
2)予備培養
プレート上のコロニーを無作為に選択し、3.0mL LB/amp.培地にて28℃にて一晩振盪培養を行う。
3)本培養
上記予備培養溶液を2×YT培地 750MLに植え継ぎ、更に培養を28℃にて継続した。OD600が0.8を越えた時点で、終濃度が1mMとなるようにIPTGを加え、更に28℃にて終夜培養を行う。
4)精製
目的のポリペプチド鎖を不溶性顆粒画分から以下の工程により精製する。
(i)不溶性顆粒の回収
上記3)で得られた培養液を6000rpm×30minにて遠心し、沈殿を菌体画分として得る。得られた菌体をトリス溶液(20mM トリス/500mM NaCl)15mlに氷中にて懸濁する。得られた懸濁液をフレンチプレスにて破砕し、菌破砕液を得る。
次に、菌破砕液を12,000rpm×15minで遠心を行い、上清を除き、沈殿を不溶性顆粒画分として得る。
(ii)不溶性顆粒画分の可溶化
上記(i)で得られた不溶性画分を6M 塩酸グアニジン/トリス溶液 10mLを加えて、一晩浸漬する。次に、12,000rpm×10minで遠心し、上清を可溶化溶液として得る。
(iii)金属キレートカラム
金属キレートカラム担体として、His−Bind(Novagen社製)を用いる。
カラム調整やサンプル負荷、及び洗浄工程は、前記業者の推奨方法に準拠し、室温(20℃)にて行う。目的であるHisタグ融合のポリペプチドの溶出は60mMイミダゾール/Tris溶液にて行う。溶出液のSDS−PAGE(アクリルアミド15%)の結果、単一バンドであり、精製されていることを確認する。
(iv)透析
上記溶出液に対して、外液を6M 塩酸グアニンジン/Tris溶液として4℃にて透析を行い、溶出液中のイミダゾールの除去を行い、上記それぞれのポリペプチド鎖溶液を得る。
(v)リフォールディング
上記と同様にして、VHg−VLh及びVHh−VLgのそれぞれのポリペプチド鎖溶液を以下の工程により別個に、脱塩酸グアニンジンを透析(4℃)にて行いながらタンパク質のリフォールディングを行う。
(a) 6M 塩酸グアニジン/Tris溶液を用い、それぞれのポリペプチド鎖のモル吸光係数とΔO.D.(280nm−320nm)値から濃度7.5μMのサンプル(希釈後体積10ml)を調整する。次にβ−メルカプトエタノール(還元剤)を終濃度375μM(タンパク濃度50倍)になるよう添加、室温、暗所で4時間還元を行う。このサンプル溶液を透析バック(MWCO:14,000)に入れ、透析用サンプルとする。(b)透析外液を6M塩酸グアニンジン/トリス溶液として、透析サンプルを浸漬し、緩やかに攪拌しながら6時間透析する。
(c)外液の塩酸グアニジン濃度を3M、2Mと段階的に下げる。それぞれの外液濃度において、6時間透析する。
(d)酸化型グルタチオン(GSSG)を終濃度375μM、L−Argを 終濃度0.4M)となるようにトリス溶液に加え、上記(c)の2Mの透析外液を加え、塩酸グアニジン濃度が1Mとし、pHをNaOHで、pH8.0(4℃)に調整した溶液にて、12時間緩やかに攪拌しながら透析する。
(e)上記(d)と同様の作業にて塩酸グアニジン濃度0.5Mの含L−Arg トリス溶液を整し、更に12時間透析する。
(f)最後にトリス溶液にて12時間透析する。
(g)透析終了後、10000rpmで約20分遠心分離し凝集体と上清を分離する。
(vi)2量化画分の精製
上記(v)で得られた個々の5μM ポリペプチド(VHg−VLh、VHh−VLg)溶液を混合し、4℃にて一晩する。次に、セファデックス75カラム(カラム:バッファー 20mM トリス、500mM NaCl、流速 1ml/min)にて二量体化した60kDa相当(インジェクションから約18分)のフラクションを得る。これをSPR測定用サンプルとする。
実施例21(SPR測定による金結合性評価)
実施例20で得られた2量化タンパク質画分の金に対する結合性をSPRにて測定する。SPR測定装置として、BIAcore2000(BIAcore社製)を使用し、被結合物の金基板としては同社のSIA−kit Auの金蒸着ガラス基板を使用した。以下の条件において測定を行う。サンプルとして、実施例15で得た2量化タンパク質画分 500nM(前記と同様にして、吸光度より算出)を使用する。
ランニングバッファー:0.1%Tween20/トリス溶液:TBST
温度:25℃
流速:20μL/min
サンプルインジェクション量:40μL
金に対する結合性を示すが結合カーブを得る(図18)。
実施例22(SPR測定によるHEL結合性評価)
実施例21において金結合性をSPR評価したサンプルに引き続き、連続して1μM HEL溶液をインジェクションし、金に結合した2量化タンパク質画分のHELに対する結合性をSPRにて測定する。図に示すHELに対する結合性を示すが結合カーブを得る(図18)。
実施例23(Au特異性の確認)
実施例22で得られた金結合性タンパク質及びHELが結合したSPRチップの金基板を用いて以下の実験を引き続き行った。上記金基板を1μM 抗HEL抗体/PBST溶液をインジェクションする。その後、PBSTにて洗浄する。更に、1μM ロドプシン結合抗IGg抗体/PBST溶液をインジェクションした後に、PBSTで洗浄する。その後、SPR装置から上記SPRチップを取り出し、蛍光顕微鏡にて基板を観察する。その結果、金基板上にSPRの流路上に蛍光が観察される。
比較例2
未使用の金蒸着基板を用いて、実施例23と同様の作業を行なう。その結果、金基板上に蛍光が観察されない。
実施例24
実施例20における(i)乃至(v)と同様の工程で得られる巻き戻しポリペプチド鎖VHg−VLhを作製し、5μM VHg−VLh/トリス溶液を得る。
実施例25
実施例24で得られるVHg−VLh/トリス溶液を500nMにトリス溶液で希釈し、実施例20と同様にして金基板に対する結合性をSPRにより評価する。更に連続して1μM HEL溶液をインジェクションし、金に結合した2量化タンパク質画分のHELに対する結合性をSPRにて測定する。金及びHELに対する結合性を示すが結合カーブを得る。
実施例26
実施例25において、0.5μM 抗HEL抗体 VL/トリス溶液を共存させた一晩静置してサンプルを調整する。
実施例27
実施例26で調整したサンプルに対して、実施例15と同様にして金基板に対する結合性をSPRにより評価する。更に、実施例16と同様にして、連続して1μM HELをインジェクションしてHELに対する結合性をSPRにて測定する。結合性を示す結合カーブを得る。
実施例28(HEL検出イムノクロマトグラフィー装置の作製)
検出方法例としてHELを検出するイムノクロマトグラフィー装置を作製する。
1)抗HEL抗体を固相化したイムノクロマトグラフィー用多孔質担体の作製 ニトロセルロースシート(BAS−85、シュライヒャー−シュエル社製)を5 mm×30 mmに切断し、その端より10 mmの位置に抗HEL抗体溶液0.5 mg/mL(日本バイオテスト社製)を直線状に塗布し、検出部位を作製する。室温にて2時間静置させ、液体を乾燥し、抗体をシート状に固着する。1%スキムミルク(ディフコ社製)/PBST溶液で、上記シートを2時間振盪してブロッキングを行った後、室温にて静置してイムノクロマトグラフィー用担体を用意する。
2)金標識抗HEL抗体断片の調整及び保持担体の作製
(i)金標識抗HEL抗体断片の作製
実施例20で作製した金/HEL二重特異性抗体断片を用いて以下の工程で作製する。金微粒子分散溶液(粒子径50 nm、田中貴金属社製)に実施例20で作製した金/HEL二重特異性抗体断片を加え充分混和して、室温、3時間反応を行う。未反応の金/HEL二重特異性抗体断片を除去するため12,000rpm、5分間遠心分離を行い、上清を取り除き、沈降物を得た。得られた沈降物をPBST1.0 mLで懸濁した。更に、上記条件において遠心を行う。得られた沈降物を、1%BSA/PBST1.0 mLに懸濁する。
(ii)金標識抗HEL抗体断片保持担体の作製
上記金標識抗HEL抗体断片溶液5μL及び各種塩基の10%水溶液5μLをベンリーゼ不織布(旭化成社製)5 mm×5 mmに含浸させ風乾し、金標識抗HEL抗体断片保持担体を作製した。
3)試験片型イムノクロマトグラフィー装置の作製
上記1)で作製した上記イムノクロマトグラフィー用担体の一方の端から2.5 mmの位置まで上記2)(ii)金標識抗HEL抗体断片保持担体を重ねた。さらに上記抗体断片保持担体上に液体試料吸収用担体(ろ紙No.526 アドバンテック東洋社製)を重ねた。また、免疫クロマトグラフィー用支持体のもう一方の端から5 mmの位置まで過剰試料吸収部位用担体 (ろ紙No.526)を重ねた。最後に裏側にテープを貼り、全体を固定化して試験片型免疫クロマトグラフィー装置を作製した。標準HEL溶液を用いた試験の結果、抗HEL抗体固定化部が赤色に呈色するのが確認される。
実施例29(電気測定装置の作製)
金電極を用いたタンパク質検出法の一例を示す。
1)ガラス基板上に2つの金電極を設ける。電極間の距離は20μmとする。前記ガラス基板の金電極間に、0.1%ポリ−L−リジン(シグマ社)水溶液20μLを滴下し、3時間静置する。
次に、水洗浄を行った後にエタノールで洗浄処理を3回行い、乾燥する。
2)次いで、抗HELポリクローナル抗体(ROCKLAND社)をProteomics、3、pp254(2003)に基づいて上記(a)で得られたガラス基板への固定化を行う。
3)実施例20で作製した金/HEL二重特異性抗体断片 PBST溶液と20nm金ナノ粒子(田中貴金属社製)を反応させる。(比較として、PBST溶液)
4) 1)で得られた抗HEL抗体固定化基板に、1μM HEL/PBS溶液を付加する。
5) 次いで。3)に2)で得られた金結合タンパク質溶液を付加する。
6) 4)で得られた基板をPBS溶液にて3回洗浄する。その後、銀増幅溶液(シグマ・ケミカル社、Silver Enhanceer Solution)中に5分間浸漬し、水で洗浄した。 電極間の電気抵抗が比較サンプルのPBSTのみと比べて低下することが確認される。
実施例30(VHg−VHhタンパクの酵母発現ベクター作製)
(1)NheI−VHh−SacII断片の作製
同じく実施例19にて作製したpHGoldを鋳型に末端にそれぞれNheI/SacIIを有するVHh断片をPCRにて作製する。
プライマーとして以下を用いる。
NheI−VHh_f(配列番号131)
NNNNNGCTAGCCAGGTGCAGTTGGTGGAGTCT
VHh−SacII_r(配列番号132)
NNNNNCCCGCGGATGAGGAGACGGTGACCAGGGTT
上記プライマーを使用し、pfu−turboを当業者推奨方法によりPCRを行う。
得られるPCR反応液をアガロースゲル(2%)電気泳動を行い、約350bpの断片を得ること確認する。
(2)VHg―VHhDNA断片作製
上記実施例19にて作成したpGHELのVLh部分に上記(1)で得られたVHh断片を導入する。上記(1)で得られたPCR断片及びpGHELをNheI/SacII(ともにタカラバイオ株式会社製)にて切断する。制限酵素反応は当業者推奨方法にて行う。得られる反応溶液をそれぞれアガロース電気泳動を行い、ゲル精製を行う。(PCR断片:アガロース2%、pGHEL:アガロース1%とする。)ゲル精製には、上述したゲル精製キットにて行う。上記で得られる制限酵素後のPCR断片が約350bp、プラスミド断片3000bpであることを確認し、以下、実施例19と同様の方法にて新規プラスミドが得られる。得られるプラスミドをシークエンサーにより塩基配列を確認し、目的の塩基配列であることを確認する。(このプラスミドをpHgHhとする。)
(3)酵母発現プラスミドへの挿入
PCRは上記同様の業者推奨方法による。
酵母(Pichia pastris)発現プラスミドとしては、pPCIZαA(インビトロジェン社)を使用する。前記プラスミドのマルチクローニングサイトにあるEcoRI及びSacIIを利用し、目的の遺伝子を導入する。
導入する遺伝子は(2)で得られるpHgHhを鋳型として、PCRにより作製する。
プライマーとして
7s4−fw−EcoR1s(配列番号133)
AAGCTGAATTCCAGGTGCAGTTGGTGGAGTCT
HELVH―SacII―r(配列番号134)
NNNNNCCGCGGAGACGGTGACGAGGGT
得られるPCR断片と上記pPCIZαAをEcoRI及びSacIIにて順次切断し、上述と同様にしてゲル精製にて目的の断片をそれぞれ得る。ライゲーションは上述した方法により行い、上記と同様にしてライゲーション反応液を形質転換して、寒天プレートに撒く。この場合の寒天プレートは、トリプトン10g/酵母エキス5g/NaCl5g/寒天15g/LにZeocinを25μg/Lになるように添加したものである。これにより選択されるコロニーを液体培地(トリプトン10g/酵母エキス5g/NaCl5g、Zeocin 25μg/L)で37℃一晩培養し、プラスミドを回収後、シークエンサーにて配列を確認し、本実施例の目的であるVHg−VHh:VH_gold−linker(GGGGS)―VH_HELを発現するプラスミドを得る。(pPCIZ−αHHとする)
実施例31(VHg−VHhタンパクの発現/精製)
VHg−VHhの発現はEasySelect Pichia Expression Kit Ver.G(インビトロジェン社)を用いて行う。形質転換体作製、タンパク作製及び精製(金属キレートカラム)については当業者推奨方法にて行う。金属キレートカラムにより得られる1Mイミダゾール溶出画分 5mLをTrisバッファー (20mM Tris/200mM NaCl、1mM EGTA:pH7.9)を外液として4℃にて透析を行う。外液交換は6時間毎に3回行う。
続いて、Sephadex75(アマシャムバイオサイエンス社)を用いて、ゲルろ過による精製(バッファー条件:50mM Tris−HCl、200mM NaCl、1mMEDTA、pH8.0、流速:0.7mL/min)を4℃にて行う。得られる分画を濃縮後、SDS−PAGE(アクリルアミド17.5%)及びHRP融合抗His抗体を用いて、上述と同様のwestern Blottingを行う。これにより、目的のタンパク質の分画を特定し、単一バンドに精製される。その中で、約25kDaの単量体タンパク質であることを示唆するピークを分取し、以下の評価を行う。(図19)
実施例32(SPR測定による金結合性評価)
実施例31で得られるタンパク質画分の金に対する結合性をSPRにて測定する。SPR測定装置として、BIAcore2000(BIAcore社製)を使用し、被結合物の金基板としては同社のSIA−kit Auの金蒸着ガラス基板を使用した。以下の条件において測定を行う。サンプルとして、実施例20で得られるタンパク質画分 500nM(前記と同様にして、吸光度より算出)を使用する。実施条件は実施例21と土曜とする。金に対する結合性を示すが結合カーブを得る。(図20)
実施例33(VHg−VHhタンパク変異体作製 ―1)
実施例30の金結合性VHのV37L、G44E、L45RとなるVHg変異体(配列番号:135、136)になるように実施例30で得られるプラスミドpPCIZ−α7s4を鋳型にQCキット(STRATAGENE社製)を使用する。当業者の推奨方法により、以下のプライマーを使用し3度の作業により目的のプラスミドをえる。作業毎に一箇所ずつ変異を順次導入する。
1箇所目の変異導入の為のPCRプライマー
V37F―f(配列番号:137)
TTACTGGATCAACTGGTTCCGCCAGATGCCCGG
V37F−r(配列番号:138)
CCGGGCATCTGGCGGAACCAGTTGATCCAGTAA
2箇所目の変異導入の為のPCRプライマー
G44E−f(配列番号:139)
CAGATGCCCGGCAAAGAACTGGAATGGATGGGG
G44E−r(配列番号:140)
CCCCATCCATTCCAGTTCTTTGCCGGGCATCTG
3箇所目の変異導入の為のPCRプライマー
L45F−f(配列番号:141)
GCCCGGCAAAGAAAGGGAATGGATGGGGATG
L45F−r(配列番号:142)
CATCCCCATCCATTCCCTTTCTTTGCCGGGC
変異導入はシークエンスにて確認する。形質転換以降タンパク質発現までは実施例31と同様の手段にて行う。約25kDaの単量体タンパク質のピークを用いて以下の評価を行う。
実施例34(SPR測定による金結合性評価)
実施例33で得られるタンパク質画分の金に対する結合性をSPRにて測定する。SPR測定装置として、BIAcore2000(BIAcore社製)を使用し、被結合物の金基板としては同社のSIA−kit Auの金蒸着ガラス基板を使用した。以下の条件において測定を行う。サンプルとして、実施例33で得られるタンパク質画分 500nM(前記と同様にして、吸光度より算出)を使用する。実施条件は実施例21と土曜とする。金に対する結合性を示すが結合カーブを得る。(図21)
実施例35(VHg−HELscFvタンパク変異体作製)
実施例31のHEL結合性VHの代わりにHEL結合性scFv(配列番号:143、144)融合したタンパク質となるように置換する。HEL結合性scFvは、Journal of Biological chemistry、2003、279、pp8979に示されたHEL結合scFvコード遺伝子を導入されたプラスミドを鋳型にPCRにてHEL結合性scFvをコードするDNA断片を得る。PCRは前述の方法と同様、当業者の推奨方法により、以下のプライマーを使用する。
scFv−f(配列番号:145)
NNNNCCATGCCCGATATCGTCCTGACCCAG
scFv−r(配列番号:146)
AGCTACCGCGGAGACGGTGACGAGGGT
制限酵素反応以降は実施例30と同様な手法により目的のプラスミドを得る。得られるプラスミドをシークエンスにより、目的とした遺伝子配列であることを確認する。また、形質転換以降タンパク質発現までは実施例31と同様の手段にて行う。約39kDaの単量体タンパク質を得る。
実施例36(SPR測定による金及びHELに対する二重結合性評価)
実施例35で得られるタンパク質画分の金に対する結合性をSPRにて測定する。SPR測定装置として、BIAcore2000(BIAcore社製)を使用し、被結合物の金基板としては同社のSIA−kit Auの金蒸着ガラス基板を使用した。以下の条件において測定を行う。サンプルとして、実施例31で得られるタンパク質画分 500nM(前記と同様にして、吸光度より算出)を使用する。実施条件は実施例21及び22と同様とする。金に対する結合性を示すが結合カーブを得る。(図22)
実施例37(VHg変異体―VLh発現プラスミド作製)
実施例19で得られる発現用プラスミド(pGHEL)の金結合性VHコード配列に配列番号
:で示されるDNA配列を挿入する。挿入方法は、前記pGHELを鋳型として、上述のQuickChange kit(Stratagene社)を用いて行う。得られるプラスミドが目的の配列であることを確認する。次いで、得られるプラスミドを用いて実施例20と同様にしてタンパク質を発現精製、及びVHh−VLgとニ量化を行う。
Sephadex G75を用いて、分子量約50kDaのタンパク画分を分画する。(図23)
A14P−f(配列番号:147)
GAGCAGAGGTGAAAAAGCCAGGGGAGTCTCTGAAG
A14P−r(配列番号:148)
CTTCAGAGACTCCCCTGGCTTTTTCACCTCTGCTC
実施例38(SPRによる金及びHELの二重結合性評価)
実施例37で得られるタンパク質画分の金に対する結合性をSPRにて測定する。SPR測定装置として、BIAcore2000(BIAcore社製)を使用し、被結合物の金基板としては同社のSIA−kit Auの金蒸着ガラス基板を使用した。以下の条件において測定を行う。サンプルとして、実施例37で得られるタンパク質画分 500nM(前記と同様にして、吸光度より算出)を使用する。実施条件は実施例21と同様とする。金に対する結合性を示すが結合カーブを得る。(図24)
実施例39(VHg−VHgタンパク質発現プラスミドの作製)
実施例30のVHhの代わりにVHgをコードするDNA断片を用いる以外は同じ方法により実施例30とどうような方法によりpPCIZ−αVHg2を作製する。上記で使用するVHgをコードするDNA断片を作製するための鋳型としては実施例10で得るpRA2−7s4を用い、プライマーとしては
VHg−f(配列番号:149)
NNNNNGCTAGC GGCGGGGGCGGTAGC CAGGTGCAGTTGGTGGAGTCT
VHg−r(配列番号:150)
NNNNNCCGCGGATGAGGAGACGGTGACCAGGGTT
を用いる。目的のプラスミドであることをシークエンスにて確認する。
実施例40(VHg−VLgタンパクの作製)
実施例31と同様の手法により目的タンパク質を精製する。分子量約25kDaのVHg−VHgの2量体からなるタンパク質を精製する。(図25)
実施例41(VHg−VLg4量体タンパク質発現プラスミドの作製)
実施例39のVHg−VHgをつなぐリンカーGGGGSをGSと変更した以外は同じ方法により実施例30とどうような方法によりpPCIZ−αVHg4を作製する。上記で使用するVHgをコードするDNA断片を作製するための鋳型としては実施例10で得られるpRA2−7s4を用い、プライマーとしては
VHg4−f(配列番号:151)
NNNNNGCTAGC GGCAGC CAGGTGCAGTTGGTGGAGTCTVHg4−r(配列番号:152)
NNNNNCCGCGGATGAGGAGACGGTGACCAGGGTT
を用いる。目的のプラスミドであることをシークエンスにて確認する。
実施例42(金微粒子凝集反応)
実施例40、44で得られるタンパク質のそれぞれ500μM/PBST溶液を金微粒子(20nmφ:田中貴金属社製)を室温にてインキュベートする。いずれのタンパク質を用いた場合においても、金微粒子が凝集することが観察される。また、金微粒子/タンパク質混合溶液のスペクトル(λmax)が経時的に変化し、半値幅も拡大することが観察され、金微粒子間の距離が近接していることを示唆する結果を得る(図26)。
(比較例2)
実施例36において、500nM HELの代わりに500nM BSAとした以外は同じとする。BSAの結合は確認できない。実施例35で得られる金基板上に結合するタンパク質はHEL
を特異的な結合することが示される。(図27)
(比較例3)
抗HEL抗体(Rockland社製)を用いて金基板上に直接固定化された抗体の結合能評価をSPR測定により行う。
(1)10μM 抗HEL抗体/PBS溶液を作製する。
(2)(1)で得られる抗体溶液を1μL/minにて100μLインジェクションする。吸着した抗体分子のシグナルは1907R.Uである。
(3)続いて、1%カゼイン/PBS溶液を(2)と同様な条件にてインジェクションする。
(4)更に、1%カゼイン/PBS溶液 40μLを20μL/minにてインジョクションを行い、金基板上がブロッキングされていることを確認する。
(5)次いで、1μM HEL 40μLを20μL/minにてインジョクションを行い、図28の結果を得る。
その結果、金基板に固定された抗体分子は1907R.Uに対して結合したHEL分子は11R.Uである。固定時の空間配置を考慮し、仮に抗体一分子が一つの抗原を基板上に固定されたと考えると抗体の約6%が標的物質を捕捉した計算となる。
一方で、上記実施例で示される本発明は基板上に固定されるタンパク質の約20〜40%以上が標的物質を捕捉することが示される。
更には、センサの捕捉分子となるタンパク質を固定する条件においても、溶液濃度/固定時間においても本発明の実施例は何ら特殊な化学物質や工程を行うことなく、従来既知の物理吸着法に比べ、優れた基板固定方法であることが示唆される結果を得る。
本発明は、金に対する結合部位を一以上有し、且つ特定の物質に対する結合部位を有する金結合性タンパク質、及び前記金結合性タンパク質を固定化した金基板を含む構造体及びそれを利用した検出装置を提供する。本発明を適用することで得られる金結合性タンパク質を固定化した構造体からなる検出装置では、基板となる金を特異的に認識する結合部位することにより固定化されている為、前記タンパク質が有する他方の特定の物質(標的物質)を認識する結合部位が基板に固定化されることもなく、基板から間隔を確保して配向される。それにより、標的物質結合部位が基板からの結合能に対する影響を最小限に抑え、効率的かつ高配向に基板表面上に固定されたものとなる。
つまり、本発明は、生体物質などの有機物を基体表面に固定化して、該有機物の有する種々の生理的機能を利用する、バイオセンサーやバイオリアクタを初めとする、各種の生体物質の機能を応用する製品の高性能化に利用可能であることが示唆される。
一方、本発明は、標的物質を標識する接続部材であって、標的物質を結合する部位と前記標識物質を結合する部位をそれぞれ一以上有し、上記のそれぞれの結合部位は互いに独立して被結合物質と結合することを特徴とする接続部材を提供する。本発明を適用することで得られる従来の化学的な架橋法に行うことなく、目的のタンパク質を標識することが可能となる。これにより、標識に際して問題であった標的物質に対する種々のタンパク質の結合能に対する影響を最小限に抑え、製造効率的を向上させることが可能である。つまり、本発明は、生体物質などの接続部材を基体表面に固定化して、該接続部材の有する種々の生理的機能を利用する、バイオセンサー等の各種の生体物質の機能を応用する製品の高性能化に利用可能であることが示唆される。
本発明にかかる複合タンパク質の一例における、構造体の構成を模式的に示す図である。 本発明にかかる複合タンパク質の一例における、構造体の構成を模式的に示す図である。 本発明にかかる複合タンパク質の一例における、構造体の構成を模式的に示す図である。 本発明にかかる複合タンパク質の一例における、構造体の構成を模式的に示す図である。 本発明にかかる複合タンパク質の一例における、構造体の構成を模式的に示す図である。 本発明にかかる複合タンパク質の一例における、構造体の構成を模式的に示す図である。 本発明にかかる複合タンパク質の一例における、構造体の構成を模式的に示す図である。 本発明にかかる複合タンパク質の一例における、構造体の構成を模式的に示す図である。 本発明で得られるVLのSPR評価の一例を示す図である。 本発明で得られるVHのSPR評価の一例を示す図である。 本発明の実施例を説明する為のベクター模式図である。 本発明の実施例を説明する為のベクター模式図である。 本発明の実施例を説明する為のベクター模式図である。 本発明の実施例を説明する為のベクター模式図である。 本発明の実施例を説明する為のベクター模式図である。 本発明の実施例を説明する為のベクター模式図である。 本発明で得られるscFvのSPR評価の一例を示す図である。 実施例21におけるSPRチャートである。 実施例31におけるGPCチャートである。 実施例32におけるSPRチャートである。 実施例34におけるSPRチャートである。 実施例36におけるSPRチャートである。 実施例37におけるGPCチャートである。 実施例38におけるSPRチャートである。 実施例40におけるGPCチャートである。 実施例42における含金微粒子溶液吸光曲線である。 比較例2におけるSPRチャートである。 比較例3におけるSPRチャートである。

Claims (8)

  1. 第一のドメインと第二のドメインとを有するタンパク質であって、
    前記第一のドメインが金からなる部分を表面に有する基体を特異的に認識して捕捉する部位を有し、
    前記第二のドメインが標的物質を捕捉する部位を有することを特徴とするタンパク質。
  2. 前記第一のドメインが、F(ab´)2、Fab´、Fabおよびこれらの一部の少なくとも一種を含んでいることを特徴とする請求項1に記載のタンパク質。
  3. 前記第一のドメインが
    (1)抗体重鎖可変領域(VH)、前記抗体重鎖可変領域の変異体、前記抗体重鎖可変領域の一部、前記抗体重鎖可変領域の変異体の一部、
    (2)抗体軽鎖可変領域(VL)、前記抗体軽鎖可変領域の変異体、前記抗体軽鎖可変領域の一部、前記抗体軽鎖可変領域の変異体の一部
    から選択された少なくとも一種を含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載のタンパク質。
  4. 前記第一のドメインが、配列番号:1〜48に示されるアミノ酸配列のうち少なくとも一つの配列を含む前記抗体重鎖可変領域(VH)を含むことを特徴とする請求項3に記載のタンパク質。
  5. 前記第一のドメインが、配列番号:1〜48に示されるアミノ酸配列のうちの一つの配列の一個もしくは数個のアミノ酸が、欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を一つ以上含む前記抗体重鎖可変領域(VH)の変異体を含むことを特徴とする請求項3に記載のタンパク質。
  6. 前記第一のドメインが、配列番号:49〜57に示されるアミノ配列のうち少なくとも一つの配列を含む前記抗体軽鎖可変領域(VL)を含むことを特徴とする請求項3に記載のタンパク質。
  7. 前記第一のドメインが、配列番号:49〜57に示されるアミノ酸配列のうちの一つの配列の一個もしくは数個のアミノ酸が、欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を一つ以上含む前記抗体重鎖可変領域(VL)の変異体を含むことを特徴とする請求項3に記載のタンパク質。
  8. 前記タンパク質が、前記金からなる部分を表面に有する基体を特異的に認識して捕捉する部位である第三のドメインと、前記標的物質を捕捉する第四のドメインとを、更に有し、
    前記第一〜第四のドメインが以下の(1)〜(7)のいずれかの関係を有していることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のタンパク質。
    (1)前記第一のドメインと前記第二のドメインが一本のポリペプチド鎖を形成している。(2)前記第一のドメインと前記第二のドメインが一以上のアミノ酸を介して結合している。
    (3)前記第三のドメインと前記第四のドメインが一本のポリペプチド鎖を形成している。(4)前記第三のドメインと前記第四のドメインが一以上のアミノ酸を介して結合している。
    (5)少なくとも前記第一のドメイン、第二のドメイン及び第三のドメインが一つのポリペプチド鎖を形成している。
    (6)少なくとも前記第一のドメイン、第二のドメイン及び第四のドメインが一つのポリペプチド鎖を形成している。
    (7)前記第一乃至第四のドメインの全てが一つのポリペプチド鎖を形成している。
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