JP5055541B2 - Ss25ペプチド、ss25’ペプチド、および/またはクッションタンパク質を含む、クッション性吸着剤 - Google Patents
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Description
特に、本発明は、クッションタンパク質がサーモコッカス コダカレンシスのリボヌクレアーゼHIIまたはその変異体である、上記クッション性吸着剤に関するものである。
さらに、本発明は、これらクッション性吸着剤を有する固体に関するものである。
2、本発明は、クッションタンパク質が、配列番号5および/または6に示されるタンパク質から選択される、上記1に記載のクッション性吸着剤に関する。
3、本発明は、固体が、金属、プラスチック、ガラスからなる群から選択される、上記1または2に記載のクッション性吸着剤に関する。
4、本発明は、上記1〜3のいずれか1項に記載のクッション性吸着剤を有する固体に関する。
本発明における「ガラス」とは、二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とした物質を意味する。
本発明における固体および固体表面の材料は、すべて市場より入手でき、そして、これら材料を用いて固体および固体表面を作製できる。
配列番号2(SS25ペプチド):KKGSTWEGEGDA
配列番号2のペプチドは、SS25ペプチドとも呼ばれ、前記SS25'ペプチドの2つのRがKに置き換わったものである。
配列番号3(SS25'revペプチド):ADGEGEWTSGRR、
配列番号4(SS25revペプチド):ADGEGEWTSGKK、
であってもよい。
本発明における超好熱菌とは、生育至適温度が80℃以上の微生物群を指し、系統学上でアーキアまたは細菌に分類されるPyrococcus furiosus、Pyrococcus abysii、Methanococcus jannaschii、Thermotoga maritimaなどを意味する。
MKIAGIDEAGRGPVIGPMVIAAVVVDENSLPKLEELKVRDSKKLTPKRREKLFNEILGVLDDYVILELPPDVIGSREGTLNEFEVENFAKALNSLKVKPDVIYADAADVDEERFARELGERLNFEAEVVAKHKADDIFPVVSAASILAKVTRDRAVEKLKEEYGEIGSGYPSDPRTRAFLENYYREHGEFPPIVRKGWKTLKKIAEKVESEKKAEERQATLDRYFRKV
MKIAGIAEAGRGPVIGPMVIAAVVVDENSLPKLEELKVRDSKKLTPKRREKLFNEILGVLDDYVILELPPDVIGSREGTLNEFEVENFAKALNSLKVKPDVIYAAAADVDEERFARELGERLNFEAEVVAKHKADDIFPVVSAASILAKVTRDRAVEKLKEEYGEIGSGYPSDPRTRAFLENYYREHGEFPPIVRKGWKTLKKIAEKVESEKKAEERQATLDRYFRKV
T5ペプチド(配列番号8):KELAEDDVEPT、
PS19ペプチド(配列番号9):RAFIASRRIKRP、
PS23ペプチド(配列番号10):AFLRLKKAAIHR、
Tiペプチド(配列番号11):RKLPDAPGMHTW
KPS19R10ペプチド(配列番号12):KRAFIASRRIRRP
Zeo1ペプチド(配列番号13):VKTQATSREEPPRLPSKHRPG、
Zeo2ペプチド(配列番号14):MDHGKYRQKQATPG、
Au1ペプチド(配列番号15):MHGKTQATSGTIQS、
Au2ペプチド(配列番号16):LGQSGQSLQGSEKLTNG、
Au3ペプチド(配列番号17):EKLVRGMEGASLHPA、
Pt1ペプチド(配列番号18):DRTSTWR、
Pt2ペプチド(配列番号19):QSVTSTK、
Pt3ペプチド(配列番号20):SSSHLNK、
Pd1ペプチド(配列番号21):SVTQNKY、
Pd2ペプチド(配列番号22):SPHPGPY、
Pd3ペプチド(配列番号23):HAPTPML、
Ag1ペプチド(配列番号24):AYSSGAPPMPPF、
Ag2ペプチド(配列番号25):NPSSLFRYLPSD、
Ag3ペプチド(配列番号26):SLATQPPRTPPV、
Si1ペプチド(配列番号27):MSPHPHPRHHHT、
Si2ペプチド(配列番号28):RGRRRRLSCRLL、
Si3ペプチド(配列番号29):KPSHHHHHTGAN、
ZnO1ペプチド(配列番号30):NTRMTARQHRSANHKSTQRARS、
ZnO2ペプチド(配列番号31):TRRGTHNKD、
CaCO3 1ペプチド(配列番号32):HTQNMRMYEPWF、
CaCO3 2ペプチド(配列番号33):DVFSSFNLKHMR、
Cr2O31ペプチド(配列番号34):WRPKAATN FEMS、
Cr2O32ペプチド(配列番号35):RIRHRLVGQ、
PbO21 ペプチド(配列番号36):YPPFHNNDHRS、
PbO22ペプチド(配列番号37):SKPLARSSGA、
CoO1ペプチド(配列番号38):GRMQRRVAH、
CoO2ペプチド(配列番号39):LGKDRPHFHRS、
MnO21ペプチド(配列番号40):HHMLRRRNT、
MnO22ペプチド(配列番号41):HINASQRVA、
Fe2O3ペプチド(配列番号42):RRTVKHHVN、
GaAs1ペプチド(配列番号43):AQNPSDNNTHTH、
GaAs2ペプチド(配列番号44):RLELAIPLQGSG、
GaAs3ペプチド(配列番号45):TPPRPIQYNHTS、
ZnSペプチド(配列番号46):NNPMHQN、
Cnh1ペプチド(配列番号47):DYFSSPYYEQLF、
Cnh2ペプチド(配列番号48):WPGWHHVPAVS、
Cnh3ペプチド(配列番号49):GHWHHITKVSKQ、
Cnt ペプチド(配列番号50):HWSAWWRSNQS、
Zn2 + 1ペプチド(配列番号51):HFQAQMRHGHGH および
Zn2 + 2ペプチド(配列番号52):HQSHHYGPRDHT
配列番号8に示すペプチドは、T5ペプチドとも呼ばれ、ステンレス、酸化チタンに吸着できることが本発明の実施例において示されている。
配列番号9に示すペプチドは、PS19ペプチドとも呼ばれ、ポリスチレンに吸着できることが報告されている(Biotechnol. Prog. 2006 Mar-Apr;22(2):401-5.)。
配列番号10に示すペプチドは、PS23ペプチドとも呼ばれ、ポリスチレンに吸着できることが報告されている(Biotechnol. Prog. 2006 Mar-Apr;22(2):401-5.)。
配列番号12に示すペプチドは、KPS19R10ペプチドとも呼ばれ、ポリスチレンに吸着できることが報告されている(Journal of Biotechnology, in press(2006).)。
配列番号13、14に示すペプチドは、それぞれZeo1、Zeo2ペプチドとも呼ばれ、ゼオライトに吸着できることが報告されている(Adv. Mater. 14, 1853-1856(2002).)。
配列番号15、16、17に示すペプチドは、それぞれAu1、Au2、Au3ペプチドとも呼ばれ、金に吸着できることが報告されている(Nature Biotechnol. 15, 269-272(1997).)。
配列番号18、19、20に示すペプチドは、それぞれPt1、Pt2、Pt3ペプチドとも呼ばれ、白金に吸着できることが報告されている(Nature Mater. 2, 577-585(2003).)。
配列番号21、22、23に示すペプチドは、それぞれPd1、Pd2、Pd3ペプチドとも呼ばれ、パラジウムに吸着できることが報告されている(Nature Mater. 2, 577-585(2003).)。
配列番号24、25、26に示すペプチドは、それぞれAg1、Ag2、Ag3ペプチドとも呼ばれ、銀に吸着できることが報告されている(Nature Mater. 1, 169-172(2002).)。
配列番号27、28、29に示すペプチドは、それぞれSi1、Si2、Si3ペプチドとも呼ばれ、酸化ケイ素に吸着できることが報告されている(J. Nanosci. Nanotechnol. 2, 1-6(2002).)。
配列番号32、33に示すペプチドは、それぞれCaCO31、CaCO32ペプチドとも呼ばれ、炭酸カルシウムに吸着できることが報告されている(Biotech. Lett. 22, 1211-1216(2000).)。
配列番号34、35に示すペプチドは、それぞれCr2O31、Cr2O32ペプチドとも呼ばれ、酸化クロム(III)に吸着できることが報告されている(Microbiol. Lett. 170, 363-371(1999).)。
配列番号36、37に示すペプチドは、それぞれPbO21、PbO22ペプチドとも呼ばれ、二酸化鉛に吸着できることが報告されている(Microbiol. Lett. 170, 363-371(1999).)。
配列番号38、39に示すペプチドは、それぞれCoO1、CoO2ペプチドとも呼ばれ、酸化コバルトに吸着できることが報告されている(Microbiol. Lett. 170, 363-371(1999).)。
配列番号42に示すペプチドは、Fe2O3ペプチドとも呼ばれ、酸化鉄(III)に吸着できることが報告されている(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 8651-8655(1992).)。
配列番号43、44、45に示すペプチドは、それぞれGaAs1、GaAs2、GaAs3ペプチドとも呼ばれ、ガリウム砒素に吸着できることが報告されている(Nature 405, 665-668(2000).)。
配列番号46に示すペプチドは、ZnSペプチドとも呼ばれ、硫化亜鉛に吸着できることが報告されている(Science 296, 892-895(2002).)。
配列番号47、48、49に示すペプチドは、それぞれCnh1、Cnh2、Cnh3ペプチドとも呼ばれ、カーボンナノホーンに吸着できることが報告されている(Langmuir 6;21(25):11907-14(2005).)。
配列番号51、52に示すペプチドは、それぞれZn2 + 1、Zn2 + 2ペプチドとも呼ばれ、ポリスチレンに吸着できることが報告されている(J. Mol. Biol. 299, 725-732(2000).)。
また、配列番号1〜4に示すペプチドは、固体表面に吸着できるので本発明のクッション性吸着剤であるだけでなく固体表面親和性ペプチドでもあリ得る。
本発明における「目的のタンパク質やペプチドの活性」には、酵素、抗体、サイトカイン、レセプター、ホルモンの活性だけでなく、抗体や受容体との結合性も含む。
(1)SS23ペプチド、SS25'ペプチド、T5ペプチド、K4A2D4ペプチドの合成
SS23ペプチドおよびSS25'ペプチドは、大腸菌鞭毛ランダムペプチドライブラリーディスプレイシステム(FliTrx random peptide library display system、Invitrogen)からステンレス(SUS316L)への親和性に基づいてスクリーニングされたペプチドである。
T5ペプチドは既に報告されているステンレス吸着性ペプチド(J. Biosci. Bioeng., 1999, vol. 88, No. 5, pp. 536-541)である。
K4A2D4ペプチドは連続的に塩基性-酸性アミノ酸残基が並ぶように任意に設計したコントロールのためのペプチドである。
SS23ペプチド(配列番号7):PKSEVALRVDVE、
T5ペプチド(配列番号8):KELAEDDVEPT、および
K4A2D4ペプチド(配列番号53):KKKKAADDDD
をペプチド合成機(Applied Biosystems社 pionner)を用いて合成した。上記のアミノ酸配列を入力し、サポート樹脂、Fmocアミノ酸(Applied Biosystems)の必要量を算出した。必要量のサポート樹脂、Fmocアミノ酸を測り取り、サポート樹脂を十分量のDMF(dimethylformamido、ナカライ)で約30分膨潤させた。さらに、アミノ酸にHATU(Applied Biosystems)を0.12〜0.15g加えた。樹脂をカラムに充填し本体にセット後、ペプチド合成機にプログラムを入力し、合成を開始した。
吸着実験に用いる溶媒として100 mMの KNO3(Wako) 水溶液を調製し、0.05 M KOH(Wako)を用いてpH 6.0に調整した。
透析チューブ(Wako Dialysis Membrane、Size8)の前処理として、透析チューブを50 cmほどに切断し、イオン交換水の入ったビーカーに入れ、これを煮沸した湯の中に10分間浸した。その後、透析チューブの内外をイオン交換水で洗浄し、イオン交換水が入った別のビーカーに移した後、オートクレーブし、4℃で保存した。
前処理後の透析チューブを約15 cmの長さに切り、イオン交換水で内外を洗浄した後、(1)で調製したペプチド溶液を中に加えた。透析チューブの両端を専用の器具で留め、吸着実験で使用する溶媒(pH 6.0の100 mMの KNO3、ペプチド溶液のおよそ100倍量)中に浸し、4℃で攪拌しながら6時間インキュベーションした。その後、溶媒を交換し、再度6時間インキュベーションし、ペプチド溶液を回収した。
ペプチドまたはタンパク質濃度の測定はBCA protein assay kit(PIERCE)を使用した。BCA protein assay reagent AとBCA protein assay reagent Bを50:1で混合し、これをBCA reagentとした。BCA reagentとサンプルを20:1で混合し、37℃で30分間インキュベートした後、562 nmで吸光度を測定した。検量線作成に牛血清アルブミン(BSA、PIERCE)を用い、ペプチドまたはタンパク質濃度を算出した。
ステンレス粒子((福田金属箔粉工業、SUS316L、比表面積:0.25m2/g、等電点(pI):6.5)100 gに0.1 N NaOH 200 mlを加え、75℃で1時間振とうしながら洗浄した。この操作を3回繰り返した後、室温に戻して大量(計10 L以上)のイオン交換水を20回に分けて加え懸濁することで残存するNaOHを除去した。pH試験紙によって洗浄水が中性になるまでこの操作を繰り返した。続いて、室温下でメタノール(Wako)を約150 ml加えよく撹拌した。この操作を2回繰り返し、最後にアセトン(Wako)150 mlで洗浄し、乾燥機(50℃)で乾燥させた。
(1)で調製した試料溶液2 mlを20 mlバイアル瓶(日電理化硝子株式会社)中に入れ、(3)で調製したステンレス粒子500 mgを試料溶液に加えて懸濁し、瓶口に付属のゴム栓をし、その上からアルミキャップ(日電理化硝子株式会社)をして完全に密栓した。バイアル瓶をよく振って十分に懸濁し、30℃に保ったシェーカーに設けた振とう機にバイアルを横倒しに設置し、振とう中も懸濁状態が十分に維持できるようにした。振とう速度125 strokes/minとし、2時間振とうした。振とう終了後、上清をフィルター(Millipore、Millex-LG 0.2μm)ろ過し、BCA法を用いてタンパク質濃度を測定した(実験後のpHを吸着実験におけるpHとした) 。このようにして測定したろ液中のペプチド濃度を平衡濃度とし、吸着実験に使用したはじめのペプチド溶液のペプチド濃度とろ液中のペプチド濃度との差より吸着量(表面積1m2あたりのペプチド量(mgもしくはnmol))を算出し、平衡濃度を横軸、吸着量を縦軸にプロットすることで吸着等温線を作成した。
吸着等温線においては、ろ液中の吸着しなかったペプチドまたはタンパク質の濃度を平衡濃度とし、平衡濃度が0である間の吸着量を見掛け不可逆吸着量と考える。吸着実験で使用するタンパク質の濃度を上げても吸着量が増加しない(この場合、横軸(平衡濃度)に平行な直線が得られる)場合、タンパク質の吸着が固体表面において単層かつ不可逆的に吸着がなされたと考えられる。一方、平衡濃度の上昇とともに吸着量の増加が見られる場合は、可逆的な吸脱着が固体表面上において起こっていると考えられる。
図1に示されるように、SS25'ペプチドは、T5ペプチドと同程度かそれ以上のステンレスに対する吸着量を示した。
(1) RNaseA(168.0 unit/mg)はSigma社より購入したものを使用した。
(2) RNaseA-SS25の調製
SS25ペプチド(配列番号2:KKGSTWEGEGDA)と牛膵臓由来Ribonuclease Aとのキメラタンパク質(RNaseA-SS25)を作製した。
トリプトン 2%(w/v) (ナカライテスク)
酵母エキス 0.5%(w/v) (ナカライテスク)
塩化ナトリウム 0.05%(w/v) (Wako)
塩化マグネシウム 2 mM (Wako)
D-グルコース 4 mM (Wako)
トリプトン 1%(w/v) (ナカライテスク)
酵母エキス 0.5%(w/v) (ナカライテスク)
塩化ナトリウム 1%(w/v) (Wako)
Agar 1.5%(w/v) (Wako)
Ampicillin(終濃度100 μg/ml) (Wako)
5'-
AAAGAGACAGCAGCCGCAAAGTTTGAGCGTCAGCATATGGATAGTAGCACCAGTGCTGCCAGTTCTTCCAACTACTGTAACCAGATGATGAAGTCTAGAAACTTGACCAAGGACAGATGTAAGCCAGTTAACACATTTGTCCACGAGAGTTTGGCTGATGTCCAAGCCGTCTGCAGTCAGAAAAACGTTGCATGCAAGAACGGTCAAACGAACTGTTACCAGAGTTACAGCACCATGTCCATCACTGACTGTCGTGAGACAGGCTCGAGCAAGTATCCTAATTGTGCTTACAAGACCACACAGGCGAACAAACACATCATTGTTGCTTGTGAAGGTAACCCTTACGTTCCTGTCCACTTTGACGCCAGTGTTTGA-3'
KETAAAKFERQHMDSSTSAASSSNYCNQMMKSRNLTKDRCKPVNTFVHESLADVQAVCSQKNVACKNGQTNCYQSYSTMSITDCRETGSSKYPNCAYKTTQANKHIIVACEGNPYVPVHFDASV
RNaseA-SS25の調製のためには、京都大学の林研究室の茶谷氏より供与されたプラスミドpBXR(図2a)を使用した。このプラスミドpBXRは、pET22b(+)(Novagen)のT7 promoter領域下流のpelB leader配列に続いて牛膵臓由来RNaseAをコードするDNAが連結されて組み込まれたものである。
RV-A-SacI(配列番号57):5'-GGCGAGCTCGAAACACTGGCGTCAAAGTGGACAGG-3' (下線部はSacIサイトを意味する)
のプライマーおよび鋳型としてpBXRを用いたPCRにより、終止コドンを含まないRNaseAをコードするDNAを増幅した。次いで、MscI(TOYOBO)およびSacI(Takara)で制限酵素処理を行った後、予めMscIおよびSacIで消化されて、終止コドンを含むRNaseAが取り除かれている pBXRに挿入して、終止コドンを含まないRNaseAを有するプラスミドpBXR'を作成した。
PCR用チューブに以下に記載するSS25ペプチドをコードするオリゴヌクレオチド25fwとその相補鎖25rev(2 pmol/μl)((株)BEXに委託合成して入手した)をそれぞれ2μl(4 pmol)加え、さらにアニーリングバッファー(TE buffer pH 8.0(10 mM Tris-HCl + 1 mM EDTA)を4μl添加後、サーマルサイクラー(TaKaRa、Takara PCR Thermal Cycler Dice)にセットした。94℃で5分保温した後、電源を切って室温に戻すことで、SS25ペプチドをコードするDNAを調製した。
25fw(配列番号58):5'-CCAAGAAGGGATCAACATGGGAAGGAGAAGGAGATGCATGAGC-3'
25rev(配列番号59):5'-GGCCGCTCATGCATCTCCTTCTCCTTCCCATGTTGATCCCTTCTTGGAGCT-3'
pBXR'および得られたSS25ペプチドをコードするDNAをそれぞれSacI、NotI(Takara)の2種類の制限酵素で処理するために、各DNA溶液に各制限酵素を1μlとそれらのbuffer(Takara)を添加し、37℃で一晩インキュベートした。制限酵素処理後、滅菌水を加えて全量60μlとし、エッペンドルフチューブに移した。DNAを精製するために、等量のPCI溶液(PHenol-Chroloform-isoamylalcohol混合溶液(混合比は体積比で25:24:1))を加え、ボルテックスミキサーでよく撹拌し、遠心分離(15,000 rpm、8 min)した。上層(水層)を回収し、再び等量のPCI溶液を加え、同様の操作を行った。そして、DNAをアルコール沈殿するために、回収した水層に1/10量の3M 酢酸ナトリウム溶液と、2.5倍量の100% エタノールを加え、混合した。冷凍庫(-20℃)で30分放置し、遠心(15,000 rpm、30分)した。上清除去後、70% エタノールを1ml加え、軽く撹拌し、遠心(15,000 rpm、15分)した。上清除去後、室温で乾燥させた。制限酵素処理を行ったSS25ペプチドをコードするDNA、pBXR'をそれぞれ20μl、10μlの滅菌水に溶解させた。エッペンドルフチューブにSS25ペプチドをコードするDNAを3μl(約3 pmol)、pBXR'を1μl(約0.03 pmol)、滅菌水を8μl加えた。さらに、DNA ligation kit Ver.2 solution I(Takara)を12μl添加し、16℃で6時間インキュベートした。ライゲーション終了後、反応液3μlを100μlの大腸菌HB101コンピテントセルに加え、氷上で20分放置した。次に42℃の温水に45秒間浸した後、氷上で2分放置した。ここへSOC培地を0.4 ml加え、37℃で1時間インキュベートした。培養終了後、培養液をLB+Amp(0.1 mg/ml)寒天プレートに植菌し、30℃で一晩培養した。翌日コロニーを数個ピックアップし、5 mlのLB+Amp(0.1 mg/ml)培地に植菌した。37℃で一晩培養後、プラスミドを単離し、RNaseAをコードするDNAの3'末端とSS25ペプチドをコードするDNAの5'末端が連結していることを確認した。なお、RNaseAとSS25ペプチドの間には、両者の連結に使用した制限酵素を含む配列(TCGAGCTCC)に由来する3つのセリン(-Ser-Ser-Ser-)が存在する。このプラスミドをpBXR'-SS25プラスミドと命名した(図2b)。
これに1 mlのLB培地を加え、滅菌したパスツールピペットで1.5 mlのエッペンドルフチューブに移し、37℃で30分間、インキュベートした。この培養液100μlをLB+Amp寒天プレートに植菌し、30℃で終夜培養した。
得られたRNaseA-S25溶液を吸着実験に用いる溶媒に対して透析を行うことで、脱塩及びpHの調整を行った。また、精製したRNaseA-S25の純度をSDS-PAGE(ゲル濃度15 %)により確認した。
0.1 M MES-NaOH緩衝液pH7(0.1 M NaCl、1 mM EDTA)(同仁化学)中に0.06 % Yeast RNA(Sigma)を添加し、これを基質溶液とした。基質溶液2.9 mlにRNaseA-S25溶液0.1 mlを添加し、30℃で反応を開始した。300 nmにおける吸光度を経時的に測定し、その初速度からRNAの加水分解速度を測定した。30℃で、1分間に反応溶液1 ml当たりの300 nmの吸光度を1減少させる酵素量を1uintとした。
T5ペプチド(配列番号8:KELAEDDVEPT)とRibonuclease Aとのキメラタンパク質(RNaseA-T5)を作製した。
PCR用の小型の滅菌チューブに、T5ペプチドの塩基配列をコードしたオリゴヌクレオチドT5fw(2 pmol/μl)2μlとその相補鎖T5rev(2 pmol/μl)2μlを加えた。さらにアニーリングbufferを4μl加え、このマイクロチューブをサーマルサイクラー(TaKaRa BIOMEDICALS)にセットし、94℃で5分間保温した後、電源を切って一晩かけて室温に戻すことで、T5ペプチドをコードするDNAを調製した。
T5fw(配列番号60):5'-CCAAGGAGCTCGCCGAGGATGATGTGGAGCCTACTTGAGC-3'
T5rev(配列番号61):5'-GGCCGCTCAAGTAGGCTCCACATCATCCTCGGCGAGCTCCTTGGAGCT-3'
エッペンドルフチューブにSac I、Not I制限酵素処理を行ったpBXR'を約0.03 pmol、アニーリングを行ったT5 ペプチドをコードするDNAを約0.3 pmol加え、滅菌水にて全量12μlにした。さらにここへ、DNA Ligation Kit Ver.2 Solution Iを12μl添加し、16℃で2時間インキュベーションした。
T5ペプチドをコードするDNAの導入を確認するためにアガロースゲル電気泳動を行った。アガロースゲルは1 %で、1×TAEを用いた。T5ペプチドをコードするDNAの導入が確認されたプラスミドをDNAシークエンサーにより塩基配列の確認を行った。得られたRNaseA-T5発現プラスミドをpBXR’-T5(図2c)とした。なお、RNaseAとT5ペプチドの間には、両者の連結に使用した制限酵素を含む配列(TCGAGCTCC)に由来する3つのセリン(-Ser-Ser-Ser-)が存在する。
吸着実験は、実施例1と同様に実施した。ただし、ペプチド溶液の代わりに、RNaseA、RNaseA-T5およびRNaseA-SS25溶液を用いた。また、吸着実験に用いる溶媒は、100 mMの KNO3(和光純薬)水溶液を調製し、0.05 M KOH(和光純薬)水溶液を用いてpH を、pH3.3〜3.5、pH4.6〜4.7、pH7.0〜7.1に調整した。
図2dに示されるように、酸性〜中性(pH3.3〜7.1)の条件下において、SS25ペプチドを連結したRNaseA(RNaseA-SS25)とT5ペプチドを連結したRNaseA(RNaseA-T5)のステンレスに対する吸着量は、RNaseA単独の場合と比較し高いことが示された。さらに、RNaseA-SS25のステンレスに対する吸着量の方がRNaseA-T5のそれよりも高いことが示された。これより、タンパク質をステンレスに吸着させる際、SS25ペプチドが有効であることが明らかとなった。
(1)不可逆吸着量の測定
実施例2の吸着実験後のRNaseA、RNaseA-T5またはRNaseA-SS25が吸着しているステンレス粒子をカラム(ポリプロピレン製、内径1.5 cm、高さ10 cm)に充填し、吸着実験で使用したpH3.3〜3.5、pH4.6〜4.7またはpH7.0〜7.1の100 mMの KNO3(和光純薬)水溶液を洗浄液として連続的に流速4 ml/minで1時間供給することにより、可逆的に吸着した酵素を取り除いた。
次に、この洗浄したステンレス粒子を50℃で乾燥させ、この乾燥したステンレス粒子をバイアル瓶中で0.1 N NaOH 1 mlと混合した。瓶口に付属のゴム栓をし、その上からアルミキャップをして完全に密栓した。これを75℃に保った恒温槽中で5時間振とうさせることで、不可逆的に吸着した酵素を脱離させた。その後、上清を膜ろ過し、先に記載したBCA法にてタンパク質濃度を測定し、不可逆吸着量を求めた。
図3に示されるように、ペプチドを有さないRNaseAでは、吸着量の顕著な減少が認めらた。一方、SS25ペプチドやT5を有するRNaseAでは、吸着量の減少は、ペプチドを有さないRNaseAに比較して少ないものであった。これより、タンパク質をステンレスに強固に吸着させる際、SS25ペプチドが有効であることが明らかとなった。
(1)チタン粒子の調製
チタン粒子(フルウチ化学株式会社、TIM-72005A、比表面積:0.107 m2/g、pI:4〜5)100 gを高温乾燥機内で一晩高温乾燥(120℃)処理した。この後、イオン交換水を約1L加え、1時間超音波洗浄を行った。この操作を3回繰り返し、室温下でメタノールを約200 ml加えよく撹拌した。この操作を3回繰り返し、最後にアセトン200 mlを加え撹拌する操作を3回行い、乾燥機(50℃)で乾燥させた。
吸着実験は、RNaseAとRNaseA-SS25について、ステンレス粒子をチタン粒子に置き換え、吸着実験に用いる溶媒をpH3.3またはpH5.2の100 mMの KNO3(和光純薬)水溶液に置き換えて実施例2と同様に行なった。
図4に示されるように、pH3.3の条件下において、ペプチドを有さないRNaseA(RNaseA)と比較してSS25ペプチドを有するRNaseA(RNaseA-SS25)の吸着量の増加が認められた。これより、タンパク質をチタンに吸着させる際、SS25ペプチドが有効であることが明らかとなった。
(1)実施例3のステンレス粒子を実施例4の吸着実験後のRNaseAまたはRNaseA-SS25が吸着したチタン粒子に置き換え、洗浄液をpH3.3またはpH5.2の100 mMの KNO3(和光純薬)水溶液に置き換えて、実施例3と同様に行なった。
図5に示されるように、pH3.3および5.2の条件下において、SS25ペプチドを有するRNaseA(RNaseA-SS25)の方が、ペプチドを有さないRNaseA(RNaseA)と比較して不可逆吸着率が高いことが示された。
これより、タンパク質をチタンに強固に吸着させる際、SS25ペプチドが有効であることが明らかとなった。
(1)残存活性の測定方法
測定には、実施例3において、pH7.0〜7.1の100 mMの KNO3水溶液を用いた洗浄操作により可逆的に吸着した酵素を取り除いた、RNaseA、RNaseA-T5またはRNaseA-SS25が吸着したステンレス粒子を用いた。
実施例3における洗浄操作後のRNaseA、RNaseA-T5またはRNaseA-SS25が吸着したステンレス粒子を0.06 % Yeast RNA(10 mM ホウ酸buffer、pH7)5mlに懸濁し、振とうした。反応溶液は振とう後、上清を膜ろ過(Millipore、Millex-LG 0.2μm)した。ろ液の300 nmにおける吸光度変化より、RNAの加水分解速度を測定し、残存活性を求めた。活性の初速度は反応開始0、30秒、1分の3点から算出した。なお、バックグラウンドとしては吸着操作を行っていないステンレス粒子を用いて上記と同様の手順で処理を行ったサンプルを採用した。このようにして算出した残存比活性(unit/mg)を遊離酵素の比活性(吸着実験に用いたRNaseA溶液中のRNaseA活性(168.0 unit/mg)、RNaseA-T5溶液中のRNaseA活性(85.0 unit/mg)、またはRNaseA-SS25溶液中のRNaseA活性(23.0 unit/mg))で割ることにより残存活性率を算出した。
図6に示すとおり、SS25ペプチドを有するRNaseA(RNaseA-SS25)は、T5ペプチドを有するRNaseA(RNaseA-T5)やペプチドを有さないRNaseA(RNaseA)と比較して、残存活性率の増加が認められた。
これより、ステンレスに吸着後のタンパク質の活性の保持にSS25ペプチドが有効であることが明らかとなった。
(1)残存活性の測定方法は、実施例6と同様である。ただし、実施例3における洗浄操作後のRNaseA、RNaseA-T5またはRNaseA-SS25が吸着したステンレス粒子の代わりに、実施例5の洗浄操作後のRNaseAまたはRNaseA-SS25が吸着したチタン粒子を用いた。
図7に示すとおり、SS25ペプチドを有するRNaseAは、ペプチドを有さないRNaseAと比較して、高い残存活性率が認められた。
これより、チタンに吸着後のタンパク質の活性の保持にSS25ペプチドが有効であることが明らかとなった。
(1)RNaseHIITKの調製
配列番号62
5'-
ATGAAGATAGCGGGCATTGACGAGGCCGGGAGGGGGCCAGTTATCGGACCAATGGTGATAGCGGCGGTTGTGGTGGATGAGAATAGCCTCCCAAAGCTCGAAGAACTGAAGGTCAGGGACTCTAAAAAACTGACACCAAAGAGACGGGAGAAGCTTTTCAATGAAATACTCGGAGTTTTAGATGATTATGTAATTCTTGAATTGCCTCCCGATGTCATTGGTTCCAGGGAGGGCACGCTCAACGAGTTCGAGGTTGAGAACTTCGCGAAGGCCCTGAACTCGCTCAAGGTAAAGCCCGATGTAATCTACGCTGACGCGGCTGACGTTGACGAGGAACGCTTTGCGAGAGAGCTTGGGGAGAGGCTGAACTTCGAGGCTGAAGTCGTTGCGAAGCACAAGGCCGACGACATCTTTCCCGTCGTCTCAGCTGCTTCAATCCTCGCCAAGGTTACAAGGGACAGGGCGGTTGAAAAGCTCAAAGAAGAGTACGGGGAGATAGGCTCTGGCTACCCAAGCGACCCAAGAACGAGGGCTTTTCTTGAGAACTATTATCGGGAGCACGGTGAGTTTCCGCCGATAGTTAGGAAGGGCTGGAAGACGCTGAAGAAGATAGCAGAAAAAGTTGAGAGCGAGAAAAAGGCCGAAGAAAGGCAGGCTACTCTTGACCGCTACTTTCGGAAGGTCTGA-3'
に示す、Thermococcus kodakarensis 由来のRNaseHII(GENBANK/AB012613)をコードするDNAは、大阪大学 金谷茂則教授よりプラスミドpJAL700Kに組み込まれ、pJAL700Kが大腸菌 MIC3009株に保持された状態で供与された。
RNaseHIITkをコードする遺伝子全長を含む発現用プラスミド(大阪大学 金谷茂則教授より供与されたpJAL700K(J Bacteriol, 1998 December; 180(23): 6207-6214.) を有する大腸菌 MIC3009株を試験管内の5 ml LB+Amp培地で一晩培養し、菌体を回収後、Quantum Prep Plasmid Miniprep Kit(Bio-Rad)を用いてプラスミド(pJAL700K) を単離した。
上記により精製したプラスミドpJAL700Kを用い、RNaseHIITkをコードする全長DNAを増幅するために以下の条件と組成にてPCRを行った。
94℃、5 min→(94℃、15 sec→50℃、30 sec→68℃、40 sec)×25→4℃、
組成:
プラスミド(pJAL700K) 1μl 10 ng(終濃度)
プライマー(RNase HII-FW、RNase HII-RV) 2μl×2 0.3 μM(終濃度)
2 mM dNTP(TOYOBO) 5μ l0.2 mM(終濃度)
10×KOD Plus Buffer(TOYOBO) 5μl 1 x(終濃度)
25 mM MgSO4 (TOYOBO) 2μl 1 mM(終濃度)
滅菌水 32μl
KOD Plus(TOYOBO) 1μl 1.0 U(終濃度)
Total 50μl
RNase HII-FW(配列番号63):5'-CATATGAAGATAGCGGGCATTG-3' (下線部はNdeIサイトを意味する)
RNase HII-RV(配列番号64):5'-TTGGATCCTCAGACCTTCCGAAAG-3' (下線部はBamHIサイトを意味する)
PCRによって増幅したRNaseHIITkを遺伝子全長を含むDNA断片にKination kit(TOYOBO)を用いてリン酸を付加した。
リン酸化のための各試薬は以下のように加えた。
Blunt End kination buffer(TOYOBO) 5μl
10 mM ATP(Takara) 5μl
Polynucleic Kinase(TOYOBO) 1μl(9 U)
Total 50μl
pUC118 HincII/BAP(Takara) 1μl
滅菌水 1μl
Ligation high(TOYOBO) 3μl
Total 6μl
LB+Ampプレート上でコロニーを形成した株のうち、白いコロニーを選抜し、爪楊枝を用いて5 mlのLB+Amp液体培地に接種した。37℃、15時間培養し、Quantum Prep Plasmid Miniprep Kit(Bio-Rad)を用いてプラスミドを単離した。コロニーの中に目的のDNA断片が挿入されているか調べるため、プラスミドの一部を制限酵素処理し、アガロース電気泳動を行った。電気泳動によりインサートが入っていることが確認されたプラスミドについてはDNAシーケンシングを行った。RNaseHIITkをコードする全長DNA配列を確認したプラスミドをpUC-rnh2とした。
次にpET22b(+)(Novagen)及びpUC-rnh2をNdeI、BamHIで処理した。その後、アガロース電気泳動を行い、GFXTM PCR DNA and Gel Band Purification Kit(GE Healthcare)を用いて以下の手順でNdeI、BamHI処理済pET-22b とpUC-rnh2から切り出されたRNaseHIITkをコードする全長DNAの精製を行った。まず1.5 mlチューブに切り出したゲル断片を移し、Capture bufferを加えた。これをアガロースゲルが溶けるまで60℃でインキュベートした。GFXカラムをCollection tubeにセットし、ゲルの溶解後、GFXカラムにアプライした。室温で1分間インキュベートし、遠心(12000 rpm、30 sec、RT)後、Collection tubeの溶液を捨て、カラムにWash buffer 500μl加え、遠心(12000 rpm、30 sec、RT)した。GFXカラムを新しいエッペンチューブに移し、50μlのTE bufferを添加した。室温で1分インキュベートし、遠心(12000 rpm、1 min、RT)し、NdeI、BamHI処理済pET-22b またはRNaseHIIをコードする遺伝子全長を回収した。次に、回収したNdeI、BamHI処理済pET-22bとRNaseHIITkをコードする遺伝子全長を含むDNA断片を含む溶液を用い、試薬を以下のように加えて、NdeI、BamHI処理済pET-22bとRNaseHIITkをコードする遺伝子全長を含むDNA断片とのライゲーションを行った。なお、Capture buffer、GFXカラム、Collection tube、Wash buffer、TE bufferはキットに含まれているものである。
NdeI、BamHI処理済pET-22b(+) 1μl
滅菌水 1μl
Ligation high(TOYOBO) 3μl
Total 6μl
POLY(rA)- p(dT)12〜18 (GE Healthcare)
(12〜18個のアデニンのリボヌクレオチド鎖と12〜18個のチミンのデオキシリボヌクレオチド鎖からなるDNA-RNAハイブリッドである2本鎖核酸)
トリスヒドロキシメチルアミノメタン(Tris) (Wako)
NaCl (Wako)
2-メルカプトエタノール (Wako)
BSA (Sigma)
MnCl2 (Wako)
ステンレス粒子に対する吸着実験
ステンレス粒子に対する吸着実験は、試料溶液としてRNaseHIITkの溶液を用い、吸着のための溶媒として10mM KNO3、pH5.5、pH6.6または7.05を用いて、実施例1と同様に実施した。
チタン粒子に対する吸着実験は、試料溶液としてRNaseHIITkの溶液を用い、吸着のための溶媒として10mM KNO3、pH6.6を用いて、実施例4と同様に実施した。
図8に示すように、ステンレスやチタンに対する高い吸着が認められました。
これより、RNaseHIITkがステンレスやチタンに吸着できることが明らかとなった。
(1)実施例8の吸着実験後のRNaseHIITKが吸着したステンレスおよびチタン粒子と吸着に用いた10mM KNO3、pH6.6、5.5または7.05の溶媒を洗浄液として用いて、実施例3と同様に行なった。
図9に示されるように、RNaseHIITKでは、不可逆吸着率(ステンレス:68%、チタン73%)が高いことが示された。
これより、RNaseHIITkがステンレスやチタンに強固に吸着できることが明らかとなった。
(1)残存活性の測定
実施例8の吸着実験後のRNaseHIITKが吸着したステンレス粒子を用いて、吸着後のRNaseHIITkの残存活性を測定した。
活性測定の前に、実施例8で得られたステンレス粒子の洗浄を次のように行った。RNaseHIITkを吸着させた実施例8のステンレス粒子の入ったバイアル瓶に、吸着実験で用いた溶媒(10 mM KNO3、pH6.5)を1 ml加え懸濁し、再び上清を1ml取り除いた。この操作を数回繰り返した後、上清を膜ろ過し、活性が無いことを確認した。洗浄は10回行えば十分であった。この洗浄操作により、不可逆吸着したRNaseHIITKの活性を測定することが可能となる。
図10は、RNaseHIITkのステンレス吸着後の残存活性率を示す。この時、比較として実施例6のRNaseAおよびRNaseA-SS25のステンレス吸着後の残存活性率も示す。
RNaseHIITkは、RNaseA-SS25と同程度であり、ペプチドなしRNaseA(RNaseA)より高い残存活性率も示した。
これより、RNaseHIITkがステンレスに吸着後も高い活性を保持できることが明らかとなった。
(1)実施例8の吸着実験後のRNaseHIITKが吸着したチタン粒子を用いて、吸着後のRNaseHIITkの残存活性を測定した。
吸着後のRNaseHIITkの残存活性測定は、RNaseHIITKの吸着したステンレス粒子の代わりにRNaseHIITKが吸着したチタン粒子を用いたことと洗浄に用いた溶媒が10 mM KNO3、pH6.6であることを除いて、実施例10と同様である。
図11は、RNaseHIITkのチタン吸着後の残存活性率を示す。この時、比較として実施例7のRNaseAおよびRNaseA-SS25のチタン吸着後の残存活性率も示す。
RNaseHIITkは、ペプチドなしRNaseA(RNaseA)より高い残存活性率を示したが、RNaseA-SS25よりは低い残存活性率であった。
これより、RNaseHIITkがチタンに吸着後も高い活性を保持できることが明らかとなった。
(1)RNase HIITk-N-SS25'およびRNase HIITk -C-SS25'の調製
RNase HIITkのN末端に配列番号1のSS25'ペプチドのC末端が連結したキメラタンパク質(RNase HIITk-N-SS25')およびRNase HIITkのC末端にSS25'ペプチドのC末端が連結したキメラタンパク質(RNase HIITk -C-SS25')(図12a)を調製した。
RNase HIITkをコードするDNAにSS25'ペプチドをコードするDNAを付加するため、オーバーラップPCR法を行なった。オーバーラップPCR法により、RNase HIITk をコードするDNAの5'末端または3'末端にSS25'ペプチドをコードするDNAを追加した。PCRはKOD Plus DNA polymerase(TOYOBO)を用いて3回行った。反応条件と組成を以下に示す。
94℃、5 min→(94℃、15 sec→50℃、30 sec→68℃、40 sec)×25→ 4℃、∞
組成:
鋳型DNA(pET-rnh2) 1μl 10 ng(終濃度)
プライマー 2μl×2 0.3μM(終濃度)
2 mM dNTP(TOYOBO) 5μ l0.2 mM(終濃度)
10×KOD Plus Buffer(TOYOBO) 5μl 1 x(終濃度)
25 mM MgSO4 (TOYOBO) 2μl 1 mM(終濃度)
滅菌水 32μl
KOD Plus(TOYOBO) 1μl 1.0 U(終濃度)
Total 50μl
RNase HIITk-N-SS25'の場合
1回目のPCRには、SS25'-N-FW-1とRNase HII-RVのプライマーセットを用い、
2回目のPCRには、SS25'-N-FW-2とRNase HII-RVのプライマーセットを用い、
3回目のPCRには、SS25'-N-FW-3とRNase HII-RVのプライマーセットを用いた。
RNase HIITk-C-SS25'の場合
1回目のPCRには、Rnase HII-FWとSS25'-C-RV-1のプライマーセットを用い、
2回目のPCRには、RNase HII-FWとSS25'-C-RV-2のプライマーセットを用い、
3回目のPCRには、RNase HII-FWとSS25'-C-RV-3のプライマーセットを用いた。
SS25'-N-FW-1(配列番号65):
(2重下線部分はSS25'ペプチドをコードするDNA配列、残りはRNase HIITkをコードするDNA配列)
SS25'-N-FW-2(配列番号66):
(2重下線部分はSS25'ペプチドをコードするDNA配列)
SS25'-N-FW-3(配列番号67):
(1本下線部はNdeIサイト、2重下線部分はSS25'ペプチドをコードするDNA配列)
SS25'-C-RV-1(配列番号68):
(2重下線部分はSS25'ペプチドをコードするDNA配列、残りはRNase HIITkをコードするDNA配列)
SS25'-C-RV-2(配列番号69):
(2重下線部分はSS25'ペプチドをコードするDNA配列)
SS25'-C-RV-3(配列番号70):
(1本下線部はBamHIサイト、2重下線部分はSS25'ペプチドをコードするDNA配列)
ステンレス粒子に対する吸着実験は、試料溶液としてRNaseHIITk、RNase HIITk-N-SS25'およびRNase HIITk -C-SS25'溶液を用い、吸着のための溶媒としてRNaseHIITkについては、10mM KNO3、pH7.1を用い、RNase HIITk-N-SS25'およびRNase HIITk -C-SS25'については、10mM KNO3、pH6.6を用いて、実施例1と同様に実施した。
吸着等温線が直角平衡型になる場合とは、吸着時のタンパク質濃度が低い時には全てのタンパク質が固体表面に吸着し、タンパク濃度が高い時でも吸着量の増加が生じない場合である。これは、タンパク質が固体表面に不可逆的に吸着し、単分子吸着層を速やかに形成していることを示唆するものである。一方、平衡濃度の上昇とともに吸着量が増加する場合は、タンパク質が固体表面と可逆的に吸脱着を起こしており、タンパク質と固体表面との相互作用が非常に小さいと考えられる。
図12bに示すように、SS25'ペプチドを有するRNaseHIITkは、直角平衡型の吸着等温線を示したので、RNase HIITk-N-SS25'またはRNase HIITk -C-SS25'はステンレス粒子に非常に強固に吸着している。
これより、SS25'ペプチドとの連結位置に関係なく、RNaseHIITkのステンレスに対する吸着がSS25'ペプチドとの連結により強固になることが明らかとなった。また、これは、SS25'ペプチドの配列が反対であってもその効果が変わらないことを示している。
(1)実施例12の吸着実験後のRNaseHIITK、RNase HIITk-N-SS25'およびRNase HIITk -C-SS25'の吸着したステンレス粒子を用いて、吸着後のRNaseHIITkの残存活性を測定した。
吸着後のRNaseHIITkの残存活性測定は、実施例8の吸着実験後のRNaseHIITKの吸着したステンレス粒子の代わりに実施例12の吸着実験後のRNaseHIITKの吸着したステンレス粒子、RNase HIITk-N-SS25'の吸着したステンレス粒子およびRNase HIITk -C-SS25'の吸着したステンレス粒子を用いることを除いて、実施例10と同様である。
図13は、RNaseHIITK、RNase HIITk-N-SS25'およびRNase HIITk -C-SS25'のステンレス吸着後の残存活性率を示す。この時、比較として実施例7のRNaseA、RNaseA-T5またはRNaseA-SS25'のステンレス吸着後の残存活性率も示す。
ステンレス吸着後の残存活性率は、RNase HIITk-N-SS25'で約70%、RNase HIITk -C-SS25'で約60%と、RNase HIITk の場合と比較して高い残存活性率が得られた。
これにより、連結位置に関係なく、SS25'ペプチドがステンレスに吸着後のタンパク質の活性の保持に有効であることが明らかとなった。また、これは、SS25'ペプチドの配列が反対であってもその効果が変わらないことを示している。
そして、SS25'ペプチドと連結したRNaseHIITkは、ステンレスに吸着後も非常に高い活性を保持できることが明らかとなった。
Claims (3)
- 目的のタンパク質やペプチドを固体表面に吸着させる時、吸着後の目的タンパク質やペ
プチドの残存活性を高めるために目的タンパク質やペプチドのアミノ末端やカルボキシル
末端にペプチド結合により結合する配列番号2および4のペプチドからなる群から選択さ
れる少なくとも1つからなる、固体表面に吸着できるクッション性吸着剤。 - 固体が、金属、プラスチック、ガラスからなる群から選択される、請求項1に記載のク
ッション性吸着剤。 - 請求項1または2に記載のクッション性吸着剤を有する固体。
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