JP4230126B2 - 生物学的素材チップ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロテオーム解析・プロテオミクスに非常に有用であるタンパク質又はタンパク質結合物質(但し、核酸を除く)を固相表面に固定化したチップ、および該チップを用いた検出方法、さらにはその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
多彩な生物の遺伝子機能を効率的に解析するための技術開発が急速に進んでおり、それらのDNAもしくはDNA断片の塩基配列の解析のために、DNAチップとよばれる、多数のDNA断片あるいは合成オリゴヌクレオチドなどのヌクレオチド誘導体を固相基板の表面に固定した検出用具が用いられている。このような固相基板の表面に結合固定されたヌクレオチド誘導体などの、DNAもしくはその断片あるいは合成オリゴヌクレオチドのような検出用分子はプローブ分子とも呼ばれる。代表的なDNAチップは、スライドガラス等の固相担体に多数のプローブ分子を整列固定させたマイクロアレイである。このDNAチップの製造、そしてその使用に関するDNAチップ関連技術は、DNA以外の生体分子の検出にも利用可能であると考えられ、従って、創薬研究、疾病の診断や予防法の開発等に新しい手段を提供するものとして期待されている。
【0003】
一方、ゲノム解析もほぼ終わり、遺伝子情報の持つ意味を最終的に理解し、細胞の生命活動をシミュレートするために不可欠な情報を提供する「プロテオーム・プロテオミクス」研究が進められている。プロテロームとは、特定の細胞、器官、臓器の中で翻訳生産されているタンパク質の全セットを意味し、さらには化学構造、総量、発現時期、翻訳後修飾、集合体形成などの高次情報解析の研究分野のことを「プロテオミクス」と呼ぶ。
【0004】
プロテオーム研究は、タンパク質のプロファイリング、タンパク質の同定・精密分析、相互作用ネットワーク解析、プロテオームデータベースの構築からなり、それを生命科学研究への応用していくという分野である。
【0005】
このうち、相互作用ネットワーク解析法としては、酵母two?hybrid法やファージディスプレイ法、アフィニティキャプチャーを利用した方法として免疫沈降法やBIA―MS法、カラムスイッチング―質量分析法などが行われている(プロテオーム解析法、163―211、羊土社、2000)。以上に挙げた相互作用解析方法はいずれも、ハイスループット解析には至っていない。
【0006】
Schreiberらにより、ハイスループットなタンパク質の相互作用解析のためのタンパク質マイクロアレイに関する報告がなされた(Science、289,1760―1763、2000)。これは、アルデヒド基をもったスライドガラス上にタンパク質水溶液を点着し、BSA溶液でブロッキング後、タンパク溶液と反応させ蛍光スキャナーで検出するものである。この場合はアルデヒド基とアミノ基との反応生成物であるシッフ塩基の安定性が低い(通常、加水分解が起こり易い)という問題点を有する。
【0007】
このほかタンパク質を固相に固定化される方法として、特公平7―53108号公報には、タンパク質の末端に疎水性のポリペプチドを導入して、固相に固定化する方法が記載されている。
【0008】
特許2922040号には、プロテインA分子膜による抗体タンパク質を固定化する方法が記載されている。
【0009】
特公平7―43380号公報(米国特許第5094962号明細書に対応)には、リガンド―受容体アッセイに用いる検出用具であって、表面に反応活性基を有する微孔質ポリマー粒子の表面に受容体分子を結合させた分析用具が記載されている。
【0010】
国際公開WO00/61282号には、多孔性の固相担体に関する記載がある。主に無機物質の粒子を表面に塗布することで、支持体からの厚みを0.01〜70μmとし、空隙率が10〜90%となっている。この多孔性固相担体を用いると、表面積が大きくなるため生物ポリマーの固定量を上げられるメリットを有する。しかしながら、この場合には、(1)蛍光、発光、RI等で検出する場合、励起光や発光物質などによる散乱が増大し、バックグラウンドが高くなる;(2)スポット時の液の浸透が多いので、スポット径を小さくする事が困難で、高密度アレイを作成する事が困難である;(3)標識検体が粒子間の空隙に入り込むため、洗浄工程を十分に行う事が必要で、不十分な場合にはバックグラウンドが高く事が良くある:といった問題があった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、迅速かつ安定に結合固定可能な反応性固相担体に少なくとも一つのタンパク質又はタンパク質結合物質(但し、核酸を除く)が結合固定されてなるチップ、及びそのチップを用いた特異的結合標的物質の検出方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、上記チップの製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の側面によれば、凹凸を有する固相担体に、少なくとも一つのタンパク質又はタンパク質結合物質(但し、核酸を除く)の残基であるAが、下記式(I)のようにスルホニル基を介した共有結合により結合していることを特徴とする生物学的素材チップが提供される。
固相担体―L―SO2―X―A (I)
[上記の式において、Lは連結基を表わし、Xは、−CR1(R2)−CR3(R4)−を表わし;R1、R2、R3及びR4は、互いに独立に、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数6乃至20のアリール基、又は炭素原子数1乃至6のアルキル鎖を有する合計炭素原子数が7乃至26のアラルキル基を表し、Aはタンパク質又はタンパク質結合物質(但し、核酸を除く)の残基を示す。]
【0013】
本発明の第2の側面によれば、上記した本発明のチップと、該チップの表面に担持されたタンパク質又はタンパク質結合物質(但し、核酸を除く)と特異的に結合する標的物質を含む検体とを接触させる工程;及び
該タンパク質又はタンパク質結合物質と該標的物質との間の相互の結合の形成を検出する工程;
を含む、標的物質を検出する方法が提供される。
【0014】
本発明の第3の側面によれば、下記式(II)で表されるビニルスルホニル基もしくはその反応性前駆体基を表面に持つ凹凸を有する固相担体上に、該ビニルスルホニル基もしくはその反応性前駆体基と反応して共有結合を形成する反応性基を有する少なくとも一つのタンパク質又はタンパク質結合物質(但し、核酸を除く)を接触させることを含む、本発明のチップの製造方法が提供される。
−L―SO2―X’ (II)
[上記の式において、Lは、―SO2―X’と固相担体とを結合する連結基を示し;X’は、―CR1=CR2(R3)または―CH(R1)―CR2(R3)(Y)を表し;R1、R2及びR3は互いに独立に、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数6乃至20のアリール基、又は炭素原子数1乃至6のアルキル鎖を有する合計炭素原子数7乃至26のアラルキル基を表し、Yは、求核試薬によって置換される基、あるいは塩基によって「HY」として脱離する基を表す]
【0015】
本発明の好ましい態様を以下に記載する。
表面に固定されたタンパク質又はタンパク質結合物質(但し、核酸を除く)が、抗体、抗体フラグメント、リガンド、抗原、ハプテン、又はレセプターである態様;
表面に固定されたタンパク質又はタンパク質結合物質(但し、核酸を除く)がアビジン類である態様;
アビジン類が、アビジン、ストレプトアビジンまたはビオチンと安定な複合体を形成しうるこれらの改変体である態様;
表面に固定されたタンパク質が、核酸認識タンパク質である態様;
核酸認識タンパク質が2本鎖DNA認識タンパク質である態様;
【0016】
2本鎖DNA認識タンパク質が2本鎖DNA認識抗体である態様;
2本鎖DNA認識タンパク質がDNA転写因子である態様;
2本鎖DNA認識タンパク質がZnフィンガーモチーフまたはリングフィンガーモチーフをもつタンパク質である態様;
凹凸が、無機物質により形成される粒子である態様;
凹凸が、珪素、アルミナ又はチタンを含有する、平均粒子径が50μm以下の粒子である態様;
固相担体がガラス、プラスチック、電極表面、センサーチップ表面である態様;
標的物質が検知可能なシグナルを生成しうる少なくとも一つの成分で標識されている態様;
チップをアミノ酸、ペプチドもしくはタンパク質の水溶液でブロッキング処理する工程を含む態様;
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明は、凹凸を有する固相担体に、少なくとも一つのタンパク質又はタンパク質結合物質(但し、核酸を除く)の残基であるAが、下記式(I)のようにスルホニル基を介した共有結合により結合していることを特徴とする生物学的素材チップに関するものである。
固相担体―L―SO2―X―A (I)
[上記の式において、Lは連結基を表わし、Xは、−CR1(R2)−CR3(R4)−を表わし;R1、R2、R3及びR4は、互いに独立に、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数6乃至20のアリール基、又は炭素原子数1乃至6のアルキル鎖を有する合計炭素原子数が7乃至26のアラルキル基を表し、Aはタンパク質又はタンパク質結合物質(但し、核酸を除く)の残基を示す。]
【0018】
固定するタンパク質又はタンパク質結合物質(但し、核酸を除く)の代表的な例としては、限定されるものでないが、抗体もしくは抗体フラグメント、リガンド、抗原、ハプテンなどの抗原決定基をもつもの、レセプター、リガンド、アビジン類、核酸認識タンパク質が挙げられる。核酸認識タンパク質の代表的な例としては、2本鎖認識タンパク質が挙げられる。
【0019】
アビジン類としては、アビジン、ストレプトアビジンまたはビオチンと安定な複合体を形成しうるこれらの改変体が挙げられる。かような安定な複合体を形成しうるとは、ビオチン−アビジン複合体の解離定数(10-15M)に近似する解離定数を有する複合体を形成することができることを意味する。また改変体とは、天然由来のアビジンまたはストレプトアビジンの修飾体もしくは断片、あるいはそれらの組換え体を意味する。
【0020】
核酸認識タンパク質として特に限定されるものではないが、2本鎖DNA認識物質が挙げられる。2本鎖DNA認識物質としては、2本鎖DNAを認識し、特異的に結合する物質を示す。2本鎖DNA認識物質の具体例としては、DNA転写因子、ミスマッチ修復タンパク質、2本鎖DNA認識抗体、又はペプチド核酸などを挙げることができる。さらに、2本鎖DNA認識物質としては、Znフィンガーモチーフまたはリングフィンガーモチーフを持つものも挙げられる。
【0021】
DNA転写因子は、遺伝子上のプロモーター領域に結合して、DNAからmRNAへの転写を制御する物質である(田村隆明著:転写因子(羊土社 1995年))。従って、転写因子は特定の配列の2本鎖DNAに特異的に結合することが知られている。
【0022】
多数ある転写因子のうち、Zinc Finger ProteinつまりZinc FingerやRing Fingerモチーフをもつ転写因子群は、真核生物における出現率は非常に高く、ゲノム中の1%はこれをコードしているらしい。Pabo等はZinc Figerモチーフの3次構造を解析、DNAと結合するメカニズムの解明した(Science,252, 809(1991))。さらに、Choo等は、遺伝子組換法により、特定の配列に結合する自然界にはないZinc Finger Protein群を作製することに成功している(Nature 372,642[1994],PNAS91,11163(1994))。さらに、Scripps Research InstituteのグループはPhage Displayにより新規なZinc Finger Protein群の作製に成功している(PNAS95,2812,[1998]:96,2758(1999))。このように、Zinc Finger Proteinに代表されるDNA転写因子群は、本来2本鎖DNAと結合する性質をもっており、かつ近年の研究によれば、任意のDNA配列を認識する組換体の作製も可能となってきている。このような、タンパク質を固定化することにより、2本鎖DNAを効率良く支持体上に捕捉することが可能である。
【0023】
その他、核酸結合物質としてヘリックス・ループ・ヘリックスタンパク質やEtsドメインを持つものも挙げられる。
【0024】
また、固定するタンパク質結合物質(但し、核酸を除く)としては、ハプテン、ビオチン類(ビオチン、ビオシチン、デスチオビオチン、オキシビオチンまたはアビジンと安定な複合体を形成しうるこれらの誘導体が挙げられる。このような安定な複合体を形成しうるとは、ビオチン−アビジン複合体の解離定数 (10-15M)に近似する解離定数を有する複合体を形成することができることを意味する。さらには、ペプチド、糖類、ホルモン、医薬、抗生物質などが挙げられる。
【0025】
凹凸を有する固相担体に固定するタンパク質又は又はタンパク質結合物質は、その内在するアミノ基もしくはメルカプト基によってスルホニル基を介した共有結合を形成する。さらに、タンパク質にアミノ基、イミノ基、ヒドラジノ基、カルバモイル基、ヒドラジノカルボニル基、メルカプト基、もしくはカルボキシイミド基などを導入し、スルホニル基を介した共有結合を形成させてもよい。
【0026】
凹凸を有する固相担体にタンパク質又はタンパク質結合物質(例えば、抗体やアビジン類、核酸認識タンパク質)が固定されたチップは、水性媒体の存在下、該固定タンパク質又はタンパク質結合物質と特異的に反応する標的物質(例えばリガンドやビオチン類、核酸)と接触させて、その標的物質を固定することができる。固定すべき特異的結合性の標的物質(例えばリガンドやビオチン類、核酸)はその固定を外部から検知することが可能なように検知可能な標識(例、蛍光標識、酵素標識など)が結合していることが望ましい。
【0027】
固相担体としては、特異的結合パートナーの一員相互間の結合形成に悪影響を及ぼさないものであれば、その形状は、例えば、平板、マイクロウエル、ビーズ、スティック等のいずれをとることもできる。それらの表面の性状は、特に疎水性、あるいは親水性の低い、表面が平滑な基板であることが好ましい。また、その表面が凹凸を有する平面性の低い基板も用いることができる。固相担体の材質としては、ガラス、セメント、陶磁器等のセラミックスもしくはニューセラミックス、ポリエチレンテレフタレート、酢酸セルロース、ビスフェノールAのポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチえルメタクリレート等のポリマー、シリコン、活性炭、多孔質ガラス、多孔質セラミックス、多孔質シリコン、多孔質活性炭、織編物、不織布、濾紙、短繊維、メンブレンフィルターなどの各種の多孔質物質を挙げることができる。多孔質物質の細孔の大きさは、2乃至1000nmの範囲にあることが好ましく、2乃至500nmの範囲にあることが特に好ましい。固相担体の材質は、ガラスもしくはシリコンであることが特に好ましい。これは、表面処理の容易さや電気化学的方法による解析の容易さによるものである。固相担体の厚さは、100乃至2000μmの範囲にあることが好ましい。また、操作の便宜上、固相担体は磁性体や電極の形態に加工されていてもよい。
【0028】
本発明の凹凸を有する固相担体としては、従来よりDNAチップの製造に用いられているか、あるいはDNAチップの製造用として提案されている各種の固相担体が好ましく、そのままタンパクチップとて利用することができる。そのような固相担体の例としては、ガラス基板、樹脂基板、シランカップリング剤で表面処理されたガラス基板、もしくは樹脂基板、あるいは表面に被覆層を有するガラス基板もしくは樹脂基板などをあげることができる。固相担体としては、特に、ケイ酸ガラス基板、シランカップリング剤で表面処理されたケイ酸ガラス基板、あるいは有機質被覆層で被覆されたケイ酸ガラス基板であることが好ましい。また、電気化学的な分析方法に用いる電極基板であってもよい。また、前述の表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサ用基板、電荷結合素子(CCD)などの各種の機能性基板であってもよい。さらに、これらの基板以外にも、粒子状の固相担体なども用いることができる。
【0029】
また凹凸性の物質としては、無機物質が好ましく、例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、酸化チタン、ZrO2などの金属酸化物、水酸基をもったプラスチック、ラテックスなどが挙げられる。粒子径は50μm以下が好ましく、特に共焦点レーザー蛍光検出する場合には、バックグラウンドを抑えるため、100nm以下の微粒子を用いることが好ましい。固相担体に凹凸性物質をコートさせる方法としては、凹凸性物質をシランカップリング剤と混合して、固相担体に接触させ、反応させることで容易に固相担体に凹凸性を付与することができる。固相担体が特にガラスの場合には特に有効である。また凹凸性物質を接触させ、乾燥後、シランカップリング剤で処理しても、作製することができる。
粒子性物質で固相担体をコートすることで凹凸を生じさせると、表面積が平滑面に比べてかなり大きくなり、固定されるDNA断片の結合物量を大幅に増やせるという利点がある。さらに、以下の理由から重層の形態より単層の方が有利である。
1. 蛍光、発光、RI等で検出する場合、励起光や発光物質などによる散乱が減少し、バックグラウンドが低下する。
2. スポット時の液の浸透が少ないので、スポット径を小さくする事が可能で、高密度アレイを作成する事ができる。
3. ハイブリダイゼ−ション後の操作において、未反応の標識検体を除く後処理洗浄工程が容易になる。重層の場合には、標識検体が粒子間の空隙に入り込む。このため洗浄工程を十分に行う事が必要で、不十分な場合にはバックグラウンドが高く事が良くある。
【0030】
本発明において、チップ上のタンパク質又はタンパク質結合物質(但し、核酸を除く)Aは下記の式(I)のようにスルホニル基を介した共有結合により、凹凸を有する固相担体に結合されている。
固相担体−L−SO2−X−A (I)
【0031】
式(I)において、Lは連結基を表わし、Xは、−CR1(R2)−CR3(R4)−を表わし;R1、R2、R3及びR4は、互いに独立に、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数6乃至20のアリール基、又は炭素原子数1乃至6のアルキル鎖を有する合計炭素原子数が7乃至26のアラルキル基を表し、Aはタンパク質又はタンパク質結合物質(但し、核酸を除く)の残基を示す。
【0032】
式(I)において、Lは、―SO2―X―Aと固相担体とを結合する二価もしくはそれ以上の連結基を示す。−L−の具体例としては、Lとしては、脂肪族、芳香族、ヘテロ環、ヘテロ原子で中断されていてもよい炭化水素鎖から選ばれる任意の連結基、さらにこれらの組み合わせから選ばれる連結基を用いることができ、また、Lは単結合であってもよい。
【0033】
式(I)において、炭素原子数1乃至6のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、及びn−ヘキシル基を挙げることができ、メチル基であることが特に好ましい。炭素原子数6乃至20のアリール基の具体例としては、フェニル基及びナフチル基を挙げることができる。R1、R2及びR3は共に水素原子であることが好ましい。
炭素原子数1乃至6のアルキル鎖を有する合計炭素原子数7乃至26のアラルキル基の例としては、上記した炭素原子数1乃至6のアルキル基の例と炭素原子数6乃至20のアリール基の例とを組み合わせたものが挙げられる。
【0034】
本発明はさらに、上記した本発明のチップと、該チップの表面に担持されたタンパク質又はタンパク質結合物質(但し、核酸を除く)と特異的に結合する標的物質を含む検体とを接触させる工程;及び
該タンパク質又はタンパク質結合物質と該標的物質との間の相互の結合の形成を検出する工程;
を含む、標的物質を検出する方法に関する。
【0035】
本発明でいう「検体」の種類は特に制限されず、例えば、末梢静脈血のような血液、白血球、血清、尿、糞便、精液、唾液、培養細胞、各種臓器細胞のような組織細胞、その他核酸を含有する任意の試料を用いることができる。検体は上記のような組織細胞などの試料をそのまま使用してもよいが、好ましくは、検体試料中の細胞を破壊して核酸、リガンドなどを遊離させたものを検体として使用する。検体試料中の細胞の破壊は、常法により行うことができ、例えば、振とう、超音波等の物理的作用を外部から加えて行うことができる。また、核酸抽出溶液(例えば、SDS、Triton-X、Tween-20等の界面活性剤、又はサポニン、EDTA、プロテア―ゼ等を含む溶液等)を用いて、細胞から核酸を遊離させることもできる。核酸抽出溶液を用いて核酸を溶出する場合には、37℃以上の温度でインキュベ―トすることにより反応を促進することができる。
【0036】
さらに本発明は、下記式(II)で表されるビニルスルホニル基もしくはその反応性前駆体基を表面に持つ凹凸を有する固相担体上に、該ビニルスルホニル基もしくはその反応性前駆体基と反応して共有結合を形成する反応性基を有する少なくとも一つのタンパク質又はタンパク質結合物質(但し、核酸を除く)を接触させることを含む、本発明のチップの製造方法に関する。
−L―SO2―X’ (II)
[式(II)において、Lは、―SO2―X’と固相担体とを結合する連結基を示し;X’は、―CR1=CR2(R3)または―CH(R1)―CR2(R3)(Y)を表し;R1、R2及びR3は互いに独立に、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数6乃至20のアリール基、又は炭素原子数1乃至6のアルキル鎖を有する合計炭素原子数7乃至26のアラルキル基を表し、Yは、求核試薬によって置換される基、あるいは塩基によって「HY」として脱離する基を表す]
【0037】
式(II)において、炭素原子数1乃至6のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、及びn−ヘキシル基を挙げることができ、メチル基であることが特に好ましい。炭素原子数6乃至20のアリール基の具体例としては、フェニル基及びナフチル基を挙げることができる。R1、R2及びR3は共に水素原子であることが好ましい。
炭素原子数1乃至6のアルキル鎖を有する合計炭素原子数7乃至26のアラルキル基の例としては、上記した炭素原子数1乃至6のアルキル基の例と炭素原子数6乃至20のアリール基の例とを組み合わせたものが挙げられる。
【0038】
式(II)において、Yは、―OH、―OR0、―SH、NH3、NH20(但し、R0は、水素原子を除く、アルキル基などの基である)などの求核試薬によって置換される基、あるいは塩基によって「HY」として脱離する基を表わし、その例としては、ハロゲン原子、―OSO211、―OCOR12、―OSO3M、あるいは四級ピリジニウム基を表わす(R11は、炭素原子数が1乃至6のアルキル基、炭素原子数が6乃至20のアリール基、あるいは炭素原子数が1乃至6のアルキル鎖を有する合計炭素原子数が7乃至26のアラルキル基を表わし;R12は、炭素原子数が1乃至6のアルキル基あるいは炭素原子数が1乃至6のハロゲン化アルキル基を表わし;Mは、水素原子、アルカリ金属原子あるいはアンモニウム基を表わす)を挙げることができる。
【0039】
11のアルキル基、R11のアリール基、およびR11のアラルキル基は、置換基を持っていてもよい。このような置換基としては、水酸基、炭素原子数が1乃至6のアルコキシ基、炭素原子数が1乃至6のアルケニル基、炭素原子数が2乃至7のカルバモイル基、炭素原子数が1乃至6のアルキル基、炭素原子数が7乃至16のアラルキル基、炭素原子数が6乃至20のアリール基、スルファモイル基(もしくはそのNa塩、K塩等)、スルホ基(もしくはそのNa塩、K塩等)、カルボン酸基(もしくはそのNa塩、K塩等)、ハロゲン原子、炭素原子数が1乃至6のアルケニレン基、炭素原子数が6乃至20のアリーレン基、スルホニル基、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる原子もしくは基を挙げることができる。
【0040】
式(II)において、Lは、―SO2―X’と固相担体とを結合する二価もしくはそれ以上の連結基を示す。−L−の具体例としては、脂肪族、芳香族、ヘテロ環、ヘテロ原子で中断されていてもよい炭化水素鎖から選ばれる任意の連結基、さらにこれらの組み合わせから選ばれる連結基を用いることができ、また、Lは単結合であってもよい。
上記「―X’」基の好ましい具体例を以下に示す。
【0041】
【化1】
Figure 0004230126
【0042】
「−X’」は、上記具体例中、(X1)、(X2)、(X3)、(X4)、(X7)、(X8)、(X13)あるいは(X14)であることが好ましく、(X1)あるいは(X2)であることがさらに好ましい。特に好ましいのは、(X1)で表わされるビニル基である。
【0043】
本発明で利用するスルホニル基を介した共有結合は、加水分解に対して高い抵抗性を有しているため、容易に安定に保存することができ、アミノ基やメルカプト基をを予め備えているタンパク質と迅速に反応して、安定な共有結合を形成することができる。
【0044】
タンパク質はアミノ基またはメルカプト基を有しているため通常は改めて別に反応性基を導入する必要はない。しかしながら、タンパク質の3次元構造はその機能に大きく関与しているので、タンパク質の活性が低下する場合は活性とは関係のない特定の位置に反応基を導入することが好ましい。
【0045】
タンパク質又はタンパク質結合物質(但し、核酸を除く)を点着する場合は水性液を反応性固相担体の表面に点着することにより実施される。具体的には、タンパク質又はタンパク質結合物質を水性媒体に溶解あるいは分散して水性液としたのち、その水性液を、96穴もしくは384穴プラスチックプレートに分注し、分注した水性液をスポッター装置等を用いて固相担体表面上に滴下して行うことが好ましい。このようにタンパク質又はタンパク質結合物質の点着にはスポッター装置を用いることもできるが、ピンヘッドの性状によってはタンパク質又はタンパク質結合物質の活性を低下させる可能性もある。その場合は、インクジェット装置などを用いることが好ましい場合もありうる。
【0046】
点着後のタンパク質又はタンパク質結合物質の乾燥及び変性を防ぐために、高沸点の物質を添加してもよい。高沸点の物質としては、点着後のタンパク質又はタンパク質結合物質が溶解あるいは分散してなる水性液に溶解し得るものであって、検出対象の試料との反応を妨げることがなく、かつ粘性があまり大きくない物質であることが好ましい。このような物質としては、グリセリン、エチレングリコール、ジメチルスルホキシドおよび低分子の親水性ポリマーを挙げることができる。親水性ポリマーとしては、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、そしてポリアクリル酸ナトリウム等を挙げることができる。このポリマーの分子量は、103乃至106の範囲にあることが好ましい。高沸点の物質としては、グリセリンあるいはエチレングリコールを用いることがさらに好ましく、グリセリンを用いることが特に好ましい。高沸点の物質の濃度は、点着後のタンパク質の活性によって調節することができる。
【0047】
同じ目的のために、タンパク質又はタンパク質結合物質を点着した後の固相担体を、90%以上の湿度および20乃至40℃の温度範囲の環境に置くことも好ましい。
【0048】
タンパク質又はタンパク質結合物質の固定量(数)は、固相担体表面に対して、1乃至105種類/cm2の範囲にあることが好ましい。点着によって、タンパク質又はタンパク質結合物質の水性液は、固相担体表面にドットの形状で固定される。ドットの形状は、ほとんど円形である。それぞれのドット間の距離、大きさ、点着する際の水性液の容量はその用途によって変動する。
【0049】
図1に、本発明の代表的な態様であるタンパク質チップの構成を模式的に示す。
【0050】
図1の凹凸を有する固相担体(P1)の表面に反応性基(Z)を有するタンパク質Aを点着させると、Xとタンパク質との反応が起こるが、固相担体(P1)の表面には該タンパク質が結合していない未反応のXも存在する。このようなXは、後に行なわれる標識されたリガンド等との反応において非特異的な反応を生じる可能性があり、非特異的な結合を測定してしまうおそれがあるため、予め該Xをブロッキング処理しておくことが好ましい。ブロッキング処理は、固相担体(P2)の表面に、アミノ基もしくはメルカプト基を有するものを接触させることによって行うことが好ましい。反応させるリガンドの非特異的な結合を防ぐためにはタンパク質ブロッキング剤、即ち、BSAやカゼイン、ゼラチンなどでブロッキング処理することが好ましい。そうすることで、点着されている部分以外の固相担体(P2)表面にはBSAなどが存在することとなり、リガンドが結合することができなくなる。また、核酸を反応させる場合には上記タンパク質ブロッキング剤のほかに、アミノ基またはメルカプト基を有するアニオン性化合物を接触させることによってブロッキング処理することができる。タンパク質と反応するものが核酸の場合は、核酸は負の電荷を有するため、固相担体(P2)表面にも負の電荷を発生させることによって、核酸が未反応のXと反応するのを防ぐことができる。このようなアニオン性化合物としては、Xと反応し、かつ負の電荷(COO-、SO3-、OSO3-、PO3-、もしくはPO2-)を有するものであれば何れのものも用いることができるが、アミノ酸であることが好ましく、グリシンもしくはシステインであることが特に好ましい。また、タウリンも好ましく用いることができる。
【0051】
本発明の代表的な態様であるタンパク質チップは、タンパク質相互作用解析、タンパク質発現解析、創薬研究に利用される。さらに、タンパク質が核酸結合タンパク質の場合は、その認識核酸配列によっては変異解析や多型解析に利用することができる。
【0052】
検出原理は標識されたリガンドや核酸との反応である。標識方法としてはRI法と非RI法(蛍光法、ビオチン法、化学発光法等)とが知られているが、とくに限定されるものではない。例えば蛍光法の場合、蛍光標識に利用される蛍光物質としては、核酸の塩基部分やタンパク質アミノ酸残基と結合できるものであれば何れも用いることができるが、シアニン色素(例えば、市販のCy DyeTMシリーズのCy3、Cy5等)、ローダミン6G試薬、N―アセトキシ―N2―アセチルアミノフルオレン(AAF)あるいはAAIF(AAFのヨウ素誘導体)を使用することができる。
【0053】
核酸認識タンパク質が固定されたタンパクチップの場合、検体中の標的核酸は、PCR法などで増幅することなく直接検出するのが好ましいが、予め増幅したのちに検出してもよい。標的核酸またはその増幅体は、予め標識しておくことにより容易に検出可能である。核酸を標識するには、酵素(Reverse Transcriptase, DNA polymerase RNA Polymerase,Terminaldeoxytransferaseなど)を用いる方法がよく用いられるが、化学反応により、直接標識物質を結合させてもよい。このような標識方法については、公知の技術として成書に記載されている(野村慎太郎著 脱アイソトープ実験プロトコール1、秀潤社1994年、脱アイソトープ実験プロトコール2、秀潤社1998年、村松正明著 DNAマイクロアレイと最新PCR法標識物質 秀潤社2000年)。標識物質は、検出可能なシグナルを作ることの可能な物質であることが好ましい。標識物質が、酵素や触媒のような、シグナルの増幅能力のある物質である場合、DNAの検出感度は大きく向上する。
【0054】
しかしながら、前述の標識操作は、一般的に煩雑であるので、さらに好ましい検出方法としては、検体中の核酸を予め標識せずに測定する方法を挙げることができる。これには、例えば2本鎖DNAを認識するDNA挿入剤、いわゆるDNAインターカレーターを用いることができる。DNAインターカレーターの使用により、検出操作が簡単になるだけではなく、検出感度も向上する。例えば、1000bpのDNAを検出する場合、いわゆる標識法は多くとも数個の標識物質しか導入できないのであるが、インターカレーターを使用する場合は100個以上の標識物質を導入することが可能である。
【0055】
DNAインターカレーターは、そのもの自体が検出可能なシグナルを形成できる物質であってもよいが、その側鎖にシグナル形成物質を結合していたり、ビオチン―アビジン、抗原―抗体、ハプテン―抗体のような特異結合対を介してインターカレーターに結合していてもよい。本発明における、検出可能なシグナルは、例えば、蛍光検出、発光検出、化学発光検出、生物発光検出、電気化学発光検出、放射能検出、電気化学検出、比色検出により検出可能なシグナルであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0056】
リガンドが標的である場合は、内在しているアミノ基にシアニン色素(例えば、市販のCy DyeTMシリーズのCy3、Cy5等)、ローダミン6G試薬、N―アセトキシ―N2―アセチルアミノフルオレン(AAF)あるいはAAIF(AAFのヨウ素誘導体)のサクシンイミド体を反応させたものを使用することができる。
本発明を以下の実施例により、さらに具体的に説明するが、これらの実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明をこれらに限定することを意図するものではない。
【0057】
【実施例】
[実施例1]抗体固定化スライドによるリガンドの検出
(1)ビニルスルホニル基が導入された凹凸性固相担体(A)の作製
コロイダルシリカ(スノーテックスPS−S[日産化学工業]/平均粒子径約10nm)の5重量%の懸濁液を200ml作り、その中に洗浄済みのガラススライド20枚を市販のバスケットに入れ30秒間浸積させる。引き上げ後、水切りを行い45℃の乾燥機で10分間乾燥させる。次に、このガラススライドを信越シリコーンKBE903(信越化学工業)の2質量%溶液200mlに市販のスライドウォッシャーを使い3分間反応させる。反応終了後、200mlの超純水で1分間(スライドウォッシャー使用)水洗する。超純水を交換しながら、さらに前述水洗条件で2回繰り返す。水洗終了後、45℃の乾燥機で10分間乾燥させた後に、110℃にセットしたオーブンに入れ、10分間熱処理する。冷却後、3重量%1,2−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタン/pH8.0ほう酸緩衝溶液にスライドウォッシャーを使い、120分間反応させる。反応終了後、超純水で20秒間x3回水洗する。乾燥は25℃にセットした乾燥機で30分間行い、凹凸性固相担体(A)が得られた。原子間力顕微鏡(AFM)で(A)の表面を観察したところ、厚さが約10nmであることが分かり、単層でコートされたことを確認した。
【0058】
(2)抗体の固定
Goat Anti−Human IgG(Jackson ImmunoResearch)をPBSにて希釈し(100,20、4,0.8,0.16ng/μL、1μL)、上記(1)にて作製した固相担体(A)に点着した。直ちに点着後の固相担体を25℃、飽和食塩水チャンバーにて3時間放置した後、1%BSA/0.05%Tween20―PBS(PBS―T)に1時間浸積することでブロッキング処理し、抗体スライド(B)を得た。
【0059】
(3)リガンドとの反応及び検出
上記(2)で作製した抗体スライド(B)にHybriWell(GraceBio―Labs)を密着させた。Human IgG―Cy5(Jackson ImmunoResearch)を1%BSA/PBS―Tにて2μg/mlに希釈し、100μLをHybriWell内に添加後、モイスチャーチャンバー内にて25℃で1時間インキュベートした。次いでこのものを、PBS―Tで3回洗浄し、PBSでリンス後700rpmで5分間遠心処理することで乾燥させた。スライドガラス表面の蛍光強度を蛍光スキャニング装置で測定したところ、100ng/μLにて抗体をスポットした位置では39.2となりバックグランンド蛍光強度より大きく増加した。従って、本発明の凹凸を持つ固相担体上にスルホニル基を介して抗体を結合させた抗体固定固相担体を用いることによって、その抗体固定固相担体に固定されている抗体と反応性を有するリガンドを効率的に検出できることが分かる
【0060】
[実施例2]抗体固定化スライドによるリガンドの検出
(1)抗体の固定
Rabbit Anti Streptavidin(Polysience)をPBSにて希釈し(100ng/μL)、10μLずつ384プレートに分注した。カーテシアン製アレイヤー(PixSys5500)を用いて上記実施例1(1)にて作製した固相担体(A)に点着した。直ちに点着後の固相担体を25℃、飽和食塩水チャンバーにて1時間放置した後、1/4×ブロックエース(大日本製薬)/0.05%Tween20―PBS(PBS―T)に1時間浸積することでブロッキング処理し、抗体スライド(C)を得た。
【0061】
(2)リガンドの標識
1mgのStreptavidin(和光純薬)を400μlの0.1M NaHCO3(pH8.0)にて溶解した。それをCy3−monofunctional(Amersham Pharmacia Biotech)のチューブに移し、室温にて30分間インキュベートした。そこに、100μlの1M Tris・HCl(pH8.0)を添加し、さらに室温にて30分間インキュベートすることで反応を停止させた。この反応液をNAP−5カラム(Amersham Pharmacia Biotech)にて精製し、Cy3標識Streptavidinを得た。
【0062】
(3)リガンドとの反応および検出
上記(1)で作製した抗体スライド(C)にSecureSeal Hybridization Chamber(SA500,Grace Bio―Labs)を密着させた。上記(2)で標識したCy3−Streptavidinを1/4×ブロックエース/PBS―Tにて2μg/mlに希釈し、500μLをSA500内に添加後、モイスチャーチャンバー内にて25℃で1時間インキュベートした。次いでこのものを、PBS―Tで3回洗浄し、PBSでリンス後700rpmで5分間遠心処理することで乾燥させた。スライドガラス表面の蛍光強度を蛍光スキャニング装置で測定したところ、19,320となり、バックグランンド蛍光強度より大きく増加した。従って、本発明の凹凸を持つ固相担体上にスルホニル基を介して抗体を結合させた抗体固定固相担体を用いることによって、マイクロアレイの系でもその抗体固定固相担体に固定されている抗体と反応性を有するリガンドを効率的に検出できることが分かる。
【0063】
[実施例3]抗体固定化スライドによるリガンドの検出
(1)ビニルスルホニル基が導入された固相担体(D)の作製
DNAマイクロアレイ用コートスライドグラス(Type2高密度化アミノ基導入タイプ[松浪硝子工業])20枚を市販のバスケットに入れ、3重量%1,2−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタン/pH8.0ほう酸緩衝溶液に浸積し、スライドウォッシャーを使い、120分間反応させる。反応終了後、超純水で20秒間×3回水洗する。乾燥は25℃にセットした乾燥機で30分間乾燥する。
【0064】
(2)抗体の固定
Goat Anti Human IgG(Jackson ImmunoResearch)をPBSにて希釈し(100ng/μL)、10μLずつ384プレートに分注した。カーテシアン製アレイヤー(PixSys5500)を用いて上記実施例3(1)にて作製した固相担体(D)に点着した。直ちに点着後の固相担体を25℃、飽和食塩水チャンバーにて1時間放置した後、1/4×ブロックエース(大日本製薬)/0.05%Tween20−PBS(PBS−T)に1時間浸積することでブロッキング処理し、抗体スライド(E)を得た。
【0065】
(3)リガンドとの反応及び検出
上記(1)で作製した抗体スライド(E)にSecureSeal Hybridization Chamber(SA500,Grace Bio−Labs)を密着させた。Human IgG−Cy5(Jackson ImmunoResearch)を1/4×ブロックエース/PBS―Tにて5,2, 1, 0.2, 0.1μg/mlに希釈し、500μLをSA500内に添加後、モイスチャーチャンバー内にて25℃で1時間インキュベートした。次いでこのものを、PBS―Tで3回洗浄し、PBSでリンス後700rpmで5分間遠心処理することで乾燥させた。スライドガラス表面の蛍光強度を蛍光スキャニング装置で測定したところ、5,2, 1, 0.2, 0.1μg/mlのHuman IgG―Cy5を添加したスライドでそれぞれ、33,525、23,629、15,001、8,667、6,053となり、0.2〜2μg/mlの範囲ではほぼ直線性が成り立った(図2)。
【0066】
【発明の効果】
本発明により、迅速かつ安定に結合固定可能な反応性固相担体に少なくとも一つの特異的結合パートナーの一員が結合固定されてなる生物学的素材チップを提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の代表的態様であるタンパク質チップの構成の模式図である。
【図2】図2は、本発明による抗体固定化スライドを用いてリガンドを検出した結果を示すグラフである。

Claims (22)

  1. 凹凸を有する固相担体に、少なくとも一つのタンパク質又はタンパク質結合物質(但し、核酸を除く)の残基であるAが、下記式(I)のようにスルホニル基を介した共有結合により結合し、凹凸が、珪素、アルミナ又はチタンを含有する、平均粒子径が50μm以下の粒子であり、さらにアミノ酸、ペプチドもしくはタンパク質の水溶液でブロッキング処理されていることを特徴とする生物学的素材チップであって、固相担体に上記した平均粒子径が50μm以下の粒子を接触させ、シランカップリング剤で処理し、ビニルスルホニル基もしくはその反応性前駆体基を導入することを含む工程により製造される生物学的素材チップ
    固相担体―L―SO2―X―A (I)
    [式(I)において、Lは連結基を表わし、Xは、−CR1(R2)−CR3(R4)−を表わし;R1、R2、R3及びR4は、互いに独立に、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数6乃至20のアリール基、又は炭素原子数1乃至6のアルキル鎖を有する合計炭素原子数が7乃至26のアラルキル基を表し、Aはタンパク質又はタンパク質結合物質(但し、核酸を除く)の残基を示す。]
  2. 表面に固定されたタンパク質又はタンパク質結合物質(但し、核酸を除く)が、抗体、抗体フラグメント、リガンド、抗原、ハプテン、又はレセプターである、請求項1に記載のチップ。
  3. 表面に固定されたタンパク質又はタンパク質結合物質(但し、核酸を除く)がアビジン類である、請求項1に記載のチップ。
  4. アビジン類が、アビジン、ストレプトアビジンまたはビオチンと安定な複合体を形成しうるこれらの改変体である、請求項3に記載のチップ。
  5. 表面に固定されたタンパク質が、核酸認識タンパク質であることを特徴とする、請求項1に記載のチップ。
  6. 核酸認識タンパク質が2本鎖DNA認識タンパク質である請求項5に記載のチップ。
  7. 2本鎖DNA認識タンパク質が2本鎖DNA認識抗体である、請求項6に記載のチップ。
  8. 2本鎖DNA認識タンパク質がDNA転写因子である、請求項6に記載のチップ。
  9. 2本鎖DNA認識タンパク質がZnフィンガーモチーフまたはリングフィンガーモチーフをもつタンパク質である、請求項6に記載のチップ。
  10. 固相担体がガラス、プラスチック、電極表面、センサーチップ表面である、請求項1から9の何れかに記載のチップ。
  11. 請求項1〜10の何れかに記載のチップと、該チップの表面に担持されたタンパク質又はタンパク質結合物質(但し、核酸を除く)と特異的に結合する標的物質を含む検体とを接触させる工程;及び該タンパク質又はタンパク質結合物質と該標的物質との間の相互の結合の形成を検出する工程;を含む、標的物質を検出する方法。
  12. 標的物質が検知可能なシグナルを生成しうる少なくとも一つの成分で標識されていることを特徴とする、請求項11に記載の標的物質の検出方法。
  13. 固相担体に、ケイ素、アルミナまたはチタンを含有する平均粒子径が50μm以下の粒子を接触させ、シランカップリング剤で処理し、ビニルスルホニル基もしくはその反応性前駆体基を導入することを含む工程により製造される下記式(II)で表されるビニルスルホニル基もしくはその反応性前駆体基を表面に持つ凹凸を有する固相担体上に、該ビニルスルホニル基もしくはその反応性前駆体基と反応して共有結合を形成する反応性基を有する少なくとも一つのタンパク質又はタンパク質結合物質(但し、核酸を除く)を接触させること、及び固相担体表面にあるフリーのビニルスルホニル基もしくはその反応性前駆体基をアミノ酸、ペプチドもしくはタンパク質水溶液でブロッキング処理することを含み、凹凸が、ケイ素、アルミナまたはチタンを含有する、平均粒子径が50μm以下の粒子である、請求項1に記載のチップの製造方法。
    −L―SO2―X’ (II)
    [上記の式において、Lは、―SO2―X’と固相担体とを結合する連結基を示し;X’は、―CR1=CR2(R3)または―CH(R1)―CR2(R3)(Y)を表し;R1、R2及びR3は互いに独立に、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数6乃至20のアリール基、又は炭素原子数1乃至6のアルキル鎖を有する合計炭素原子数7乃至26のアラルキル基を表し、Yは、求核試薬によって置換される基、あるいは塩基によって「HY」として脱離する基を表す]
  14. 表面に固定されたタンパク質又はタンパク質結合物質(但し、核酸を除く)が、抗体、抗体フラグメント、リガンド、抗原、ハプテン、又はレセプターである、請求項13に記載のチップの製造方法。
  15. 表面に固定されたタンパク質がアビジン類である、請求項13に記載のチップの製造方法。
  16. アビジン類が、アビジン、ストレプトアビジンまたはビオチンと安定な複合体を形成しうるこれらの改変体である、請求項15に記載のチップの製造方法。
  17. 表面に固定されたタンパク質が核酸認識タンパク質であることを特徴とする、請求項14に記載のチップの製造方法。
  18. 核酸認識タンパク質が2本鎖DNA認識タンパク質である請求項17に記載のチップの製造方法。
  19. 2本鎖DNA認識タンパク質が2本鎖DNA認識抗体である、請求項18に記載のチップの製造方法。
  20. 2本鎖DNA認識タンパク質がDNA転写因子である、請求項18に記載のチップの製造方法。
  21. 2本鎖DNA認識タンパク質がZnフィンガーモチーフまたはリングフィンガーモチーフをもつタンパク質である、請求項18に記載のチップの製造方法。
  22. 固相担体がガラス、プラスチック、電極表面、センサーチップ表面である、請求項13から21記載のチップの製造方法。
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