JP2004018723A - 塗料組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】顔料を使用した塗料組成物において、分散安定剤を使用せずとも顔料の分散が安定で凝集を生じにくく、色彩性に優れた高品質の塗膜を形成し得る塗料組成物、及び界面活性剤を使用しないか、あるいはその使用量を大幅に低減できる簡便なその製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリヒドロキシアルカノエートによって顔料粒子の表面の少なくとも一部を被覆した色材と、該色材の分散用媒体とを少なくとも用いて塗料組成物を得る。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリヒドロキシアルカノエートによって顔料粒子の表面の少なくとも一部を被覆した色材と、該色材の分散用媒体とを少なくとも用いて塗料組成物を得る。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、顔料の分散状態が安定で凝集を生じ難く、塗膜の物理的特性等に優れた塗料組成物、及び界面活性剤を使用しないか、あるいはその使用量を大幅に低減できる簡便なその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、塗膜の物理的特性の向上や機能性付与等を目的として、顔料等の塗料添加剤のマイクロカプセル化技術が検討されてきた。例えば、顔料をマイクロカプセル化することにより、該顔料の塗料組成物中における分散安定性を向上させることができ、該塗料の保存安定性や塗膜の物理的強度、光沢等を向上させることができる。
【0003】
例えば、特開平6−248196号公報には、顔料粒子表面の全部または一部分をフルオロオレフィン系共重合体で被覆することによって、塗料用水分散性顔料を得ることができると開示されている。また、特開平5−320276号公報には、両親媒性グラフトポリマーを用いて疎水性顔料をマイクロカプセル化することで、耐水性に優れる外被を有するマイクロカプセル化顔料を製造する方法が開示されており、該マイクロカプセル化顔料を塗料組成物に用いることにより、分散性と塗膜の耐水性を両立させた塗料を得られるとされている。また、特開平5−9430号公報には、メラミン架橋タイプの1液型ベース塗料に、ウレタン樹脂で被覆したアルミニウム顔料を含有させることにより、アルミニウム顔料の凝集破壊の生じないメタリック塗料を得る方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来、上記のようなマイクロカプセルは、種々の化学的製造方法、例えば界面重合法(2種のモノマーもしくは反応物を分散相と連続相に別々に溶解しておき、両者の界面においてモノマーを重合させて壁膜を形成させる方法)、懸濁重合法(水性媒体中で芯物質をモノマー中に分散し、次いで系の温度を上昇することで壁膜を形成させる方法)、乳化重合法(界面活性剤を溶解した水媒体中に水不溶のモノマーを添加して攪拌し、乳化剤のミセルにモノマーを取り込ませ、ミセル内でモノマーを重合して壁膜を形成させる方法)、in−situ重合法(液体または気体のモノマーと触媒、もしくは反応性の物質2種を連続相核粒子側のどちらか一方から供給して反応を起こさせ壁膜を形成させる方法)、コアセルベーション法(芯物質粒子を分散している高分子溶液を高分子濃度の高い濃厚相と希薄相に分離させ、壁膜を形成させる方法)、液中乾燥法(芯物質を壁膜物質の溶液に分散した液を調製し、この分散液の連続相が混和しない液中に分散液を入れて複合エマルションとし、壁膜物質を溶解している媒質を徐々に除くことで壁膜を形成させる方法)等によって製造されている。
【0005】
しかし、これら従来の方法によって製造されたマイクロカプセルにおいては、大量に使用する懸濁安定剤や乳化剤等の界面活性剤がカプセル内やカプセル外被に残留する場合があり、塗料組成物を塗布した際の塗膜の耐水性や、塗膜と被塗装面との接着性の点で課題となる場合があった。
【0006】
また、これら従来の製造方法では、重合過程で使用する分散媒等の共存物を、顔料と共にマイクロカプセル中に内包してしまう場合があり、マイクロカプセル中の顔料の密度をより高くして、塗膜の色彩性を向上せしめるためには、製造方法の更なる改善が望まれていた。
【0007】
本発明の課題は、顔料の分散状態が安定で凝集を生じ難く、塗膜の物理的特性や色彩性等に優れた塗料組成物、及び界面活性剤を使用しないか、あるいはその使用量を大幅に低減できる簡便なその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討した結果、ポリヒドロキシアルカノエート(以下、PHAと略する)合成酵素を顔料粒子に固定化し、ここに3−ヒドロキシアシル補酵素Aを加えて反応させることにより、顔料を界面活性剤なしに容易に微細なマイクロカプセルに内包できること、その際、PHAが顔料表面を直接被覆するため、顔料が高密度に内包されていること、さらに適当な種類の3−ヒドロキシアシル補酵素Aを選択することで、マイクロカプセル化顔料の外被であるPHAを、親水性、親油性、あるいはその他の性質を有する組成のものに任意に設定できることを見出した。また、該PHAに化学修飾を施すことにより、各種の特性等を改良したマイクロカプセル化顔料を得ることができることを見出した。さらに詳しくは、例えば、該PHAにグラフト鎖を導入することで、該グラフト鎖に起因する各種の特性を備えたPHAにより、顔料の少なくとも一部を被覆したマイクロカプセル化顔料を得ることができることを見出した。また、該PHAを架橋化せしめることで、所望の物理化学的性質(例えば、機械的強度、耐薬品性、耐熱性等)を備えたPHAにより、顔料の少なくとも一部を被覆したマイクロカプセル化顔料を得ることができることを見出した。
【0009】
そして上記特性によって、該マイクロカプセル化顔料が、PHAの組成を適宜選択することにより、水性,油性いずれの塗料組成物においても、界面活性剤なしに良好な分散性を示すこと、そのため物理的特性等に優れた塗料が製造でき、さらに形成した塗膜が被塗装面との接着性や色彩性等に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明は、顔料表面の一部をPHAで被覆したマイクロカプセル化顔料と、該マイクロカプセル化顔料の分散用媒体とを含む塗料組成物に関する。
【0011】
またマイクロカプセル化顔料と、該マイクロカプセル化顔料の分散用媒体とを含有する塗料組成物の製造方法であって、水系媒体中に分散された顔料表面に固定されたPHA合成酵素の存在下で、3−ヒドロキシアシル補酵素Aを基質としてPHA合成反応を行うことで、該顔料表面の少なくとも一部をPHAで被覆してマイクロカプセル化顔料を得る工程と、該マイクロカプセル化顔料を分散用媒体に分散する工程とを有することを特徴とする塗料組成物の製造方法に関する。
【0012】
なお、本発明における塗料組成物とは、被塗装面の保護(耐候性・耐水性・耐薬品性などの向上、傷などからの保護、腐食および錆の防止、カビ・水性生物等の付着防止など)および被塗装面への意匠性の付与の少なくともいずれかの効果を有する塗膜の形成に用いる着色組成物を言う。また、化学修飾とは、高分子材料の分子内または分子間、あるいは高分子材料と他の化学物質との間で化学反応を行わせることにより、該高分子材料の分子構造を改変することを言う。また、架橋とは、高分子材料の分子内または分子間を化学的あるいは物理化学的にに結合せしめて網状構造を作ることを言い、架橋剤とは、前記架橋反応を行うために添加する、前記高分子材料と一定の反応性を有する物質を言う。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明をより詳細に説明する。
【0014】
<PHA>
本発明に利用可能なPHAとしては、PHAの生合成反応に関わるPHA合成酵素によって合成され得るPHAであれば、特に限定はされない。
【0015】
ここで、PHAの生合成は、原料となる各種アルカン酸から、生体内の様々な代謝経路(例えば、β酸化系や脂肪酸合成経路)を経て生成された(R)−3−ヒドロキシアシルCoAを基質とした、酵素による重合反応によって行われる。この重合反応を触媒する酵素がPHA合成酵素(PHAポリメラーゼ、PHAシンターゼともいう)である。なお、CoAとは補酵素A(coenzyme A)の略称であり、その化学構造は下記式の通りである。
【0016】
【化34】
【0017】
以下に、β酸化系及びPHA合成酵素による重合反応を経て、アルカン酸がPHAとなるまでの反応を示す。
【0018】
【化35】
【0019】
一方、脂肪酸合成経路を経る場合は、該経路中に生じた(R)−3−ヒドロキシアシル−ACP(ACPとはアシルキャリアプロテインのことである)から変換された(R)−3−ヒドロキシアシルCoAを基質として、同様にPHA合成酵素によりPHAが合成されると考えられる。
【0020】
さらに、上記のPHA合成酵素を菌体外に取り出して、無細胞系(in vitro)でPHAを合成できることもわかっている。例えば、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92,6279−6283(1995)では、アルカリゲネス・ユウトロファス(Alcaligenes eutrophus)由来のPHA合成酵素に、3−ヒドロキシブチリルCoAを作用させることにより、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットからなるPHBを合成することに成功している。また、Int.J.Biol.Macromol.,25,55−60(1999)では、アルカリゲネス・ユウトロファス由来のPHA合成酵素に、3−ヒドロキシブチリルCoAや3−ヒドロキシバレリルCoAを作用させることにより、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットや3−ヒドロキシ−n−吉草酸ユニットからなるPHAの合成に成功している。さらにこの報告では、ラセミ体の3−ヒドロキシブチリルCoAを作用させたところ、酵素の立体選択性によって、R体の3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットのみからなるPHBが合成されたとしている。Macromol.Rapid Commun.,21,77−84(2000)においても、アルカリゲネス・ユウトロファス由来のPHA合成酵素を用いた細胞外でのPHB合成が報告されている。また、FEMS Microbiol.Lett.,168,319−324(1998)では、クロマチウム・ビノサム(Chromatium vinosum)由来のPHA合成酵素に3−ヒドロキシブチリルCoAを作用させることにより、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットからなるPHBを合成することに成功している。Appl.Microbiol.Biotechnol.,54,37−43(2000)では、シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)のPHA合成酵素に3−ヒドロキシデカノイルCoAを作用させることにより、3−ヒドロキシデカン酸ユニットからなるPHAを合成している。
【0021】
このように、PHA合成酵素は、生物体内でのPHA合成反応系における最終段階を触媒する酵素であり、従って、生物体内において合成され得ることが知られているPHAであれば、いずれも該酵素による触媒作用を受けて合成されていることになる。よって、所望のPHAに対応する3−ヒドロキシアシルCoAを、本発明における基材に固定化された該酵素に作用させることによって、生物体内において合成され得ることが知られているあらゆる種類のPHAで顔料を被覆したマイクロカプセル化顔料を作成することが可能である。
【0022】
このようなPHAとして、具体的には、下記式[1]から[10]で表されるモノマーユニットを少なくとも1つ有するPHAを例示することができる。
【0023】
【化36】
【0024】
(ただし、該モノマーユニットは、式中R1及びaの組合せが下記のいずれかであるモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つである。
【0025】
R1が水素原子(H)でありaが0から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が ハロゲン原子でありaが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1がカルボキシル基あるいはその塩であり、aが1から 10 の整数であるモノマーユニット、R1が発色団でありaが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が、
【0026】
【化37】
【0027】
でありaが1から7の整数のいずれかであるモノマーユニット。)
【0028】
【化38】
【0029】
(ただし、式中bは0から7の整数のいずれかを表し、R2は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0030】
【化39】
【0031】
(ただし、式中cは1から8の整数のいずれかを表し、R3は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0032】
【化40】
【0033】
(ただし、式中dは0から7の整数のいずれかを表し、R4は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0034】
【化41】
【0035】
(ただし、式中eは1から8の整数のいずれかを表し、R5は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7,−CH3,−C2H5,−C3H7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0036】
【化42】
【0037】
(ただし、式中fは0から7の整数のいずれかを表す。)
【0038】
【化43】
【0039】
(ただし、式中gは1から8の整数のいずれかを表す。)
【0040】
【化44】
【0041】
(ただし、式中hは1から7の整数のいずれかを表し、R6は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”,−CH3,−C2H5,−C3H7,−CH(CH3)2,−C(CH3)3からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0042】
【化45】
【0043】
(ただし、式中iは1から7の整数のいずれかを表し、R7は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0044】
【化46】
【0045】
(ただし、式中jは1から9の整数のいずれかを表す。)
なお、前記のハロゲン原子の具体例としては、フッ素,塩素,臭素等を挙げることができる。
【0046】
上記PHAを合成する基質として用いることのできる3−ヒドロキシアシルCoAとして、具体的には、下記式[11]から[20]で表される3−ヒドロキシアシルCoAを例示することができる。
【0047】
【化47】
【0048】
(ただし、前記式中−SCoAはアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、式中R1及びaの組合せが下記のいずれかである群より選択される少なくとも1つであり、かつ、前記式[1]で表されるモノマーユニットにおけるR1及びaと対応する。
R1が 水素原子(H)でありaが0から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が ハロゲン原子でありaが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1がカルボキシル基あるいはその塩であり、aが1から 10 の整数であるモノマーユニット、R1が発色団でありaが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が、
【0049】
【化48】
【0050】
でありaが1から7の整数のいずれかであるモノマーユニット。)
【0051】
【化49】
【0052】
(ただし、式中−SCoAはアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、bは前記式[2]で表されるモノマーユニットにおけるbと対応する0から7の整数のいずれかを表し、R2は前記式[2]で表されるモノマーユニットにおけるR2と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0053】
【化50】
【0054】
(ただし、式中−SCoAはアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、cは前記式[3]で表されるモノマーユニットにおけるcと対応する1から8の整数のいずれかを表し、R3は前記式[3]で表されるモノマーユニットにおけるR3と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0055】
【化51】
【0056】
(ただし、式中−SCoAはアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、dは前記式[4]で表されるモノマーユニットにおけるdと対応する0から7の整数のいずれかを表し、R4は前記式[4]で表されるモノマーユニットにおけるR4と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0057】
【化52】
【0058】
(ただし、式中−SCoAはアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、eは前記化学式[5]で表されるモノマーユニットにおけるeと対応する1から8の整数のいずれかを表し、R5は前記化学式[5]で表されるモノマーユニットにおけるR5と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7,−CH3,−C2H5,−C3H7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0059】
【化53】
【0060】
(ただし、式中−SCoAはアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、fは前記式[6]で表されるモノマーユニットにおけるfと対応する0から7の整数のいずれかを表す。)
【0061】
【化54】
【0062】
(ただし、式中−SCoAはアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、gは前記式[7]で表されるモノマーユニットにおけるgと対応する1から8の整数のいずれかを表す。)
【0063】
【化55】
【0064】
(ただし、式中−SCoAはアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、hは前記化学式[8]で表されるモノマーユニットにおけるhと対応する1から7の整数のいずれかを表し、R6は前記化学式[8]で表されるモノマーユニットにおけるR6と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”,−CH3,−C2H5,−C3H7,−CH(CH3)2,−C(CH3)3からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0065】
【化56】
【0066】
(ただし、式中−SCoAはアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、iは前記化学式[9]で表されるモノマーユニットにおけるiと対応する1から7の整数のいずれかを表し、R7は前記化学式[9]で表されるモノマーユニットにおけるR7と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0067】
【化57】
【0068】
(ただし、式中−SCoAはアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、jは前記化学式[10]で表されるモノマーユニットにおけるjと対応する1から9の整数のいずれかを表す。)
なお、前記のハロゲン原子の具体例としては、フッ素,塩素,臭素等を挙げることができる。また、前記の発色団としては、その3−ヒドロキシアシルCoA体がPHA合成酵素の触媒作用を受け得るものである限り特に限定はされないが、高分子合成時の立体障害等を考慮すると、3−ヒドロキシアシルCoA分子内において、CoAの結合したカルボキシル基と発色団との間に炭素数1から5のメチレン鎖があるほうが望ましい。また、該発色団を有するPHAによるマイクロカプセル化顔料の着色組成物としての用途としては、例えば、顔料の発色成分との複合作用による、より効果的な発色性等が期待できる。このような発色団の例としては、ニトロソ,ニトロ,アゾ,ジアリールメタン,トリアリールメタン,キサンテン,アクリジン,キノリン,メチン,チアゾール,インダミン,インドフェノール,ラクトン,アミノケトン,ヒドロキシケトン,スチルベン,アジン,オカサジン,チアジン,アントラキノン,フタロシアニン,インジゴイド等が挙げられる。
【0069】
本発明において用いられるPHAとしては、上記モノマーユニットを複数含むランダム共重合体やブロック共重合体を用いることも可能であり、各モノマーユニットや含まれる官能基の特性を利用したPHAの物性制御や複数の機能の付与、官能基間の相互作用を利用した新たな機能の発現等が可能となる。
【0070】
さらに、基質である3−ヒドロキシアシルCoAの種類や濃度等の組成を経時的に変化させることによって、顔料の内側から外側に向かう方向においてPHAのモノマーユニット組成を変化させることも可能である。これによって、例えば、顔料と親和性の低いPHAで被覆構造体を形成する必要がある場合、顔料を、まず該顔料と親和性の高いPHAで被覆し、その顔料と親和性の高いPHAのモノマーユニット組成を、目的とするPHAのモノマーユニット組成に内側から外側に向かう方向に変化、例えば多層構造あるいはグラディエント構造とすることで、顔料との結合を強固にしたPHA被膜を形成することが可能となる。
【0071】
また、マイクロカプセル化顔料表層のPHAにグラフト鎖を導入することにより、該グラフト鎖に起因する特性を備えたマイクロカプセル化顔料を得ることができる。また、顔料表層のPHAを架橋化せしめることにより、機械的強度や耐薬品性等に優れたマイクロカプセル化顔料を得ることができる。
【0072】
なお、本発明の構造体に用いる、PHA合成酵素により合成されるPHAは、一般にR体のみから構成されるアイソタクチックなポリマーである。
【0073】
PHAの合成基質である3−ヒドロキシアシルCoAは、例えば、酵素を用いたin vitro合成法、微生物や植物等の生物体を用いたin vivo合成法、化学合成法等の中から適宜選択した方法で合成して用いることができる。特に、酵素合成法は該基質の合成に一般に用いられている方法であり、市販のアシルCoAシンセターゼ(アシルCoAリガーゼともいう、E.C.6.2.1.3)を用いた下記反応、
【0074】
【化58】
【0075】
を用いた方法等が知られている(Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)、Appl.Microbiol.Biotechnol.,54,37−43(2000)等)。酵素や生物体を用いた合成工程には、バッチ式の合成方法を用いても良く、また、固定化酵素や固定化細胞を用いて連続生産しても良い。
【0076】
<PHA合成酵素及びその生産菌>
本発明に用いるPHA合成酵素は、該酵素を生産する微生物から適宜選択された微生物、あるいは、それら微生物のPHA合成酵素遺伝子を宿主生物に導入した形質転換体により生産されたものを用いることができる。
【0077】
PHA合成酵素を生産する微生物としては、PHBや3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットと3−ヒドロキシ−n−吉草酸ユニットとの共重合体(以下、PHB/Vと略す)の生産菌を用いることができ、このような微生物として、アエロモナス属(Aeromonas sp.)、アルカリゲネス属(Alcaligenes sp.)、クロマチウム属(Chromatium sp.)、コマモナス属(Comamonas sp.)、メチロバクテリウム属(Methylobacterium sp.)、パラコッカス属(Paracoccus sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)等の他に、本発明者らにより分離された、バークホルデリア・セパシア・KK01株(Burkholderia cepacia KK01)、ラルストーニャ・ユートロファ・TB64株(Ralstonia eutropha TB64)、アルカリゲネス属・TL2株(Alcaligenes sp.TL2)等を用いることができる。
【0078】
また、PHA合成酵素を生産する微生物として、中鎖長アルカン側鎖を有するPHA(以下、mcl−PHAと略す)やフェニル基等の官能基を側鎖に有するPHA(以下、unusual−PHA と略す)の生産菌を用いることができ、このような微生物として、シュードモナス・オレオボランス(Pseudomonas oleovorans),シュードモナス・レジノボランス(Pseudomonas resinovorans),シュードモナス属 61−3株(Pseudomonas sp.61−3),シュードモナス・プチダ・KT2442株(Pseudomonas putida KT2442),シュードモナス・アエルギノーサ等の他に、本発明者らにより分離された、シュードモナス・プチダ・P91株(Pseudomonas putida P91),シュードモナス・チコリアイ・H45株(Pseudomonas cichorii H45),シュードモナス・チコリアイ・YN2株(Pseudomonas cichorii YN2),シュードモナス・ジェッセニイ・P161株(Pseudomonas jessenii P161)等のシュードモナス属微生物や、特開2001−78753号公報に記載のバークホルデリア属・OK3株(Burkholderia sp.OK3、FERM P−17370),特開2001−69968号公報に記載のバークホルデリア属・OK4株(Burkholderia sp.OK4、FERM P−17371)等のバークホルデリア属微生物を用いることができる。
【0079】
また、アエロモナス属(Aeromonas sp.),コマモナス属(Comamonas sp.)等に属し、mcl−PHAやunusual−PHAを生産する微生物を用いることもできる。
【0080】
なお、前記KK01株は寄託番号FERM BP−4235として、TB64株は寄託番号FERM BP−6933として、TL2株は寄託番号FERM BP−6913として、P91株は寄託番号FERM BP−7373として、H45株は寄託番号FERM BP−7374として、YN2株は寄託番号FERM BP−7375として、P161株は寄託番号FERM BP−7376として、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約に基づき、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに国際寄託されている。
【0081】
本発明にかかるPHA合成酵素の生産に用いる微生物の通常の培養、例えば、保存菌株の作成、PHA合成酵素の生産に必要とされる菌数や活性状態を確保するための増殖等には、用いる微生物の増殖に必要な成分を含有する培地を適宜選択して用いる。例えば、微生物の生育や生存に悪影響を及ぼすものでない限り、一般的な天然培地(肉汁培地,酵母エキス等)や、栄養源を添加した合成培地等、いかなる種類の培地をも用いることができる。
【0082】
培養は液体培養や固体培養等、該微生物が増殖する方法であればいかなる方法をも用いることができる。さらに、バッチ培養,フェドバッチ培養,半連続培養,連続培養等の種類も問わない。液体バッチ培養の形態としては、振盪フラスコによって振盪させて酸素を供給する方法、ジャーファーメンターによる通気攪拌方式の酸素供給方法がある。また、これらの工程を複数段接続した多段方式を採用しても良い。
【0083】
前記のPHA生産微生物を用いてPHA合成酵素を生産する場合は、例えば、オクタン酸やノナン酸等のアルカン酸を含む無機培地で該微生物を増殖させ、対数増殖期から定常期初期にかけての微生物を遠心分離等で回収して所望の酵素を抽出する方法等を用いることができる。なお、上記のような条件で培養を行うと、添加したアルカン酸に由来するmcl−PHAが菌体内に合成されることになるが、この場合一般に、PHA合成酵素は菌体内に形成されるPHAの微粒子に結合して存在するとされている。
【0084】
しかし、本発明者らの検討によると、上記の方法で培養した菌体の破砕液を遠心分離した上清液にも、相当程度の酵素活性が存在していることがわかっている。これは、前記の如き対数増殖期から定常期初期にかけての比較的培養初期には、菌体内で該酵素が活発に生産され続けているため、遊離状態のPHA合成酵素も相当程度存在するためと推定される。
【0085】
上記の培養方法に用いる無機培地としては、リン源(リン酸塩等)、窒素源(アンモニウム塩,硝酸塩等)等、微生物が増殖し得る成分を含んでいるものであればいかなるものでも良く、例えば無機塩培地としては、MSB培地,E培地(J.Biol.Chem.,218,97−106(1956)),M9培地等を用いることができる。なお、本発明における実施例で用いるM9培地の組成は以下の通りである。
【0086】
Na2HPO4: 6.2 g
KH2PO4 : 3.0 g
NaCl : 0.5 g
NH4Cl : 1.0 g
(培地1リットル中、pH7.0)
さらに、良好な増殖及びPHA合成酵素の生産のためには、上記の無機塩培地に以下に示す微量成分溶液を0.3%(v/v)程度添加するのが好ましい。
【0087】
(微量成分溶液)
ニトリロ三酢酸:1.5 g
MgSO4 :3.0 g
MnSO4 :0.5 g
NaCl :1.0 g
FeSO4 :0.1 g
CaCl2 :0.1 g
CoCl2 :0.1 g
ZnSO4 :0.1 g
CuSO4 :0.1 g
AlK(SO4)2 :0.1 g
H3BO3 :0.1 g
Na2MoO4 :0.1 g
NiCl2 :0.1 g
(1リットル中)
培養温度としては上記の菌株が良好に増殖可能な温度であれば良く、例えば 14〜40℃、好ましくは 20〜35℃程度が適当である。
【0088】
また、前述のPHA生産菌の持つPHA合成酵素遺伝子を導入した形質転換体を用いて、所望のPHA合成酵素を生産することも可能である。PHA合成酵素遺伝子のクローニング、発現ベクターの作製及び形質転換体の作製は、定法に従って行うことができる。
【0089】
大腸菌等の細菌を宿主として得られた形質転換体においては、培養に用いる培地として、天然培地あるいは合成培地、例えば、LB培地,M9培地等が挙げられる。また、培養温度は 25〜37℃の範囲で、好気的に8〜27時間培養することにより微生物の増殖を図る。その後集菌し、菌体内に蓄積されたPHA合成酵素を回収することができる。培地には、必要に応じて、カナマイシン,アンピシリン,テトラサイクリン,クロラムフェニコール,ストレプトマイシン等の抗生物質を添加しても良い。
【0090】
また、発現ベクターにおいて、誘導性のプロモーターを用いている場合は、形質転換体を培養する際に、該プロモーターの対応する誘導物質を培地に添加して発現を促しても良い。例えば、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG),テトラサイクリン,インドールアクリル酸(IAA)等が誘導物質として挙げられる。
【0091】
PHA合成酵素としては、微生物の菌体破砕液や、硫酸アンモニウム等によりタンパク質成分を沈殿・回収した硫安塩析物等の粗酵素を用いても良く、また、各種方法で精製した精製酵素を用いても良い。該酵素には必要に応じて金属塩,グリセリン,ジチオスレイトール,EDTA,ウシ血清アルブミン(BSA)等の安定化剤や付活剤を適宜添加して用いることができる。
【0092】
PHA合成酵素の分離・精製には、PHA合成酵素の酵素活性が保持される方法であればいかなる方法をも用いることができる。例えば、得られた微生物菌体をフレンチプレス,超音波破砕機,リゾチーム,各種界面活性剤等を用いて破砕した後、遠心分離して得られた粗酵素液、またはここから調製した硫安塩析物について、アフィニティクロマトグラフィー,陽イオンまたは陰イオン交換クロマトグラフィー,ゲル濾過等の手段を単独または適宜組み合わせることによって精製酵素を得る。
【0093】
特に、遺伝子組換えタンパク質は、N末端やC末端にヒスチジン残基等の「タグ」を結合した融合タンパク質の形で発現させ、このタグを介して親和性樹脂に結合させることによって、より簡便に精製することができる。融合タンパク質から目的のタンパク質を分離するには、トロンビン,血液凝固因子Xa等のプロテアーゼで切断する、pHを低下せしめる、結合競合剤として高濃度のイミダゾールを添加する等の方法を用いると良い。発現ベクターとしてpTYB1(New Englan Biolab社製)を用いた場合のようにタグがインテインを含む場合はdithiothreitol等で還元条件として切断する。
【0094】
アフィニティクロマトグラフィーによる精製を可能とする融合タンパク質には、ヒスチジンタグの他にグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST),キチン結合ドメイン(CBD),マルトース結合タンパク(MBP),あるいはチオレドキシン(TRX)等も公知である。GST融合タンパク質は、GST親和性レジンによって精製することができる。
【0095】
PHA合成酵素の活性測定は、既報の各種方法を用いることができるが、例えば、3−ヒドロキシアシルCoAがPHA合成酵素の触媒作用により重合してPHAになる過程で放出されるCoAを、5,5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)で発色させて測定することを測定原理とする、以下に示す方法によって測定することができる。
【0096】
試薬1:ウシ血清アルブミン(Sigma社製)を0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)に3.0mg/mL溶解、
試薬2:3−ヒドロキシオクタノイルCoAを0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)に3.0mmol/L溶解、
試薬3:トリクロロ酢酸を0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)に 10mg/mL溶解、
試薬4:5,5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)を0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)に2.0mmol/L溶解。
【0097】
第1反応(PHA合成反応):試料(酵素)溶液 100μLに試薬1を 100μL添加して混合し、30℃で1分間プレインキュベートする。ここに、試薬2を 100μL添加して混合し、30℃で1〜30分間インキュベートした後、試薬3を添加して反応を停止させる。
【0098】
第2反応(遊離CoAの発色反応):反応停止した第1反応液を遠心分離(147,000m/s2(15,000G)、10分間)し、この上清 500μLに試薬4を 500μL添加し、30℃で 10分間インキュベートした後、412nmの吸光度を測定する。酵素活性の算出:1分間に1μmolのCoAを放出させる酵素量を1単位(U)とする。
【0099】
<塗料組成物製造方法>
本発明のマイクロカプセル化顔料を用いた塗料組成物の製造方法の一例としては、▲1▼顔料を水性媒体に分散する工程、▲2▼水性媒体に分散された顔料にポリヒドロキシアルカノエート合成酵素を固定化する工程、▲3▼基質である3−ヒドロキシアシルCoAを添加する工程、▲4▼PHA合成反応を行う工程、▲5▼マイクロカプセル化顔料を塗料組成物として加工する工程を少なくとも有する方法を例示することができる。
【0100】
顔料を水性媒体に分散する工程は、選択した1つまたは複数の顔料を水性媒体に添加し、分散処理を行った後、必要であれば所望の粒径範囲に分級することによって行う。
【0101】
本発明で用いられる顔料は、各種の有機及び無機の着色顔料,体質顔料,防錆・防汚顔料等から1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0102】
有機顔料の例としては、アゾ系,フタロシアニン系,ベンゾイミダゾロン系,キナクリドン系,イソインドリノン系,ピラスロン系,ジブロムアンザンスロン系,インダスロン系,アンスラピリミジン系,フラバスロン系,ペリレン系,ペリノン系,キノフタロン系,フタロン系,チオインジゴ系,インジゴ系,ジオキサジン系,アントラキノン系,キサンテン系,メチン系,アゾメチン系の顔料及びその他の金属錯体系を含む縮合多環系顔料等を挙げることができる。
【0103】
無機顔料の例としては、ミロリブルー,酸化鉄,コバルト紫,マンガン紫,群青,紺青,コバルトブルー,セルリアンブルー,ビリジアン,エメラルドグリーン,コバルトグリーン等を挙げることができる。
【0104】
体質顔料の例としては、炭酸カルシウム,硫酸バリウム,カオリン,シリカ,タルク等を挙げることができる。
【0105】
防錆・防汚顔料の例としては、鉛丹,クロム酸亜鉛,シアナミド鉛,塩基性クロム酸鉛,亜鉛末,亜酸化銅等を挙げることができる。
【0106】
上記顔料は、公知の各種の表面処理等を施して用いても良い。表面処理の例としては、界面活性剤処理や、カップリング処理や、顔料誘導体処理等が挙げられる。
【0107】
分散処理は、ホモミキサー,水平ミニミル,ボールミル,ロールミル,サンドグラインダー,摩砕機,超音波処理等によって行うことができる。また、液体ジェット相互作用室内で少なくとも6.89MPa(1,000psi)の液圧で多数のノズルに混合物を通す方法によって行うこともできる。
【0108】
本工程の合成反応用の水性媒体の組成は、顔料を所望の状態に分散させ得るもので、かつ後述する酵素を顔料に固定化する工程やPHA合成反応を行う工程を妨げないものであれば良いが、後の工程の省略化を図るために、本工程の水性媒体の組成をPHA合成酵素の活性を発揮させ得る組成としておくこともできる。
【0109】
ここで、PHA合成酵素の活性を発揮させ得る組成として、例えば緩衝液を用いることができる。緩衝液としては、生化学的反応に用いられる一般的な緩衝液、例えば、酢酸バッファー,リン酸バッファー,リン酸カリウムバッファー,3−(N−モルフォリノ)プロパンスルフォン酸(MOPS)バッファー,N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルフォン酸(TAPS)バッファー,トリス塩酸バッファー,グリシンバッファー,2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルフォン酸(CHES)バッファー等が好適に用いられる。
【0110】
PHA合成酵素の活性を発揮させ得る緩衝液の濃度は、一般的な濃度、即ち5mmol/L〜1.0mol/Lの範囲で使用することができるが、望ましくは 10〜200mmol/Lで行うことが好ましい。また、pHは5.5〜9.0、好ましくは7.0〜8.5となるように調製するが、使用するPHA合成酵素の至適pHやpH安定性によっては、上記範囲以外に条件を設定することも除外されない。
【0111】
また、水性媒体中での顔料の分散状態を保つために、後の工程を妨げない種類及び濃度、さらには本発明の着色組成物の目的を妨げない種類及び濃度であれば、適当な界面活性剤を添加しても良い。
【0112】
このような界面活性剤の例として、オレイン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル−N−サルコシン酸ナトリウム,コール酸ナトリウム,デオキシコール酸ナトリウム,タウロデオキシコール酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド,ドデシルピリジニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤、3−〔(コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ〕−1−プロパンスルホン酸(CHAPS),3−〔(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ〕−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸(CHAPSO),パルミトイルリゾレシチン,ドデシル−β−アラニン等の両性イオン界面活性剤、オクチルグルコシド,オクチルチオグルコシド,ヘプチルチオグルコシド,デカノイル−N−メチルグルカミド(MEGA−10),ポリオキシエチレンドデシルエーテル(Brij,Lubrol),ポリオキシエチレン−i−オクチルフェニルエーテル(Triton X),ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(NonidetP−40、Triton N),ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(Span),ポリオキシエチレンソリビトールエステル(Tween)等の非イオン界面活性剤等を挙げることができる。
【0113】
また、水性媒体中での顔料の分散状態を保つために、後の工程を妨げない種類及び濃度、さらには本発明の着色組成物の目的を妨げない種類及び濃度であれば、適当な補助溶媒を添加しても良い。補助溶媒としては、例えば、ヘキサン等の直鎖脂肪族炭化水素、メタノール,エタノール等の1価アルコール類、グリセロール等の多価アルコール類、脂肪酸エーテル類、カルボン酸エステル類等の誘導体から選ばれる一種または二種以上のものを選択し使用することができる。
【0114】
PHA合成酵素を顔料に固定化する工程は、先の顔料分散液にPHA合成酵素を添加し、固定化処理を施すことによって行うことができる。固定化処理は、該酵素の活性が保持され得るものであり、かつ、所望の顔料において適用可能なものであれば、通常行われている酵素固定化方法の中から任意に選択して行うことができる。例えば、共有結合法,イオン吸着法,疎水吸着法,物理的吸着法,アフィニティ吸着法,架橋法,格子型包括法等を例示することができるが、特にイオン吸着や疎水吸着を利用した固定化方法が簡便である。
【0115】
PHA合成酵素等の酵素タンパク質は、アミノ酸が多数結合したポリペプチドであり、リシン,ヒスチジン,アルギニン,アスパラギン酸,グルタミン酸等の遊離のイオン性基を有するアミノ酸によってイオン吸着体としての性質を示し、またアラニン,バリン,ロイシン,イソロイシン,メチオニン,トリプトファン,フェニルアラニン,プロリン等の遊離の疎水性基を有するアミノ酸によって、また有機高分子であるという点で疎水吸着体としての性質を有している。従って、程度の差はあるが、イオン性や疎水性、もしくはイオン性と疎水性の両方の性質を有する顔料に吸着させることが可能である。
【0116】
主にイオン吸着法によってPHA合成酵素を固定化する方法では、イオン性官能基を表面に発現している顔料を用いれば良く、例えば、粘土鉱物や金属酸化物等を主要な成分とする無機顔料を用いることができる。
【0117】
また、主に疎水吸着によってPHA合成酵素を固定化する方法では、表面が非極性である顔料を用いればよく、例えば、芳香環を複数有するアゾ顔料,縮合多環のフタロシアニン系顔料,アントラキノン系顔料等の有機顔料,カーボンブラック等の炭素結晶からなる無機顔料を用いることができる。
【0118】
イオン吸着法または疎水吸着法によるPHA合成酵素の顔料への固定化は、顔料とPHA合成酵素を所定の水性媒体中で所定の濃度となるように混合することによって達成される。このとき、酵素が顔料の表面に均等に吸着されるよう、反応容器を適当な強度で振盪あるいは攪拌することが望ましい。
【0119】
上記固定化処理において、顔料と酵素の混合された水性媒体の組成としては、水性媒体のpHや塩濃度によって顔料及びPHA合成酵素の表面電荷の正負や電荷量、疎水性が変化することから、それを考慮した組成とするのが望ましい。
【0120】
例えば、顔料が主にイオン吸着性である場合には、塩濃度を下げることにより、顔料とPHA合成酵素との吸着に寄与する電荷量を増やすことができる。また、pHを変える事により、両者の反対電荷を増やすことができる。顔料が主に疎水吸着性である場合には、塩濃度を上げることによって両者の疎水性を増やすことができる。また、予め電気泳動やぬれ角等を測定し、顔料やPHA合成酵素の荷電状態や疎水性を調べることで、吸着に適した組成を設定することもできる。
【0121】
さらに、顔料とPHA合成酵素との吸着量を直接測定して組成を求めることもできる。吸着量の測定は、例えば、顔料が分散された溶液に濃度既知のPHA合成酵素溶液を添加し、吸着処理を行った後、溶液中のPHA合成酵素濃度を測定し、差し引き法により吸着酵素量を求める等の方法を用いれば良い。
【0122】
イオン吸着法や疎水吸着法によって酵素を固定化し難い顔料の場合は、操作の煩雑さや酵素の失活の可能性を配慮した処理を必要に応じて行うことで共有結合法による固定化を用いてもかまわない。例えば、芳香族アミノ基を有する顔料をジアゾ化し、これに酵素をジアゾカップリングする方法や、カルボキシル基、アミノ基を有する顔料と酵素の間にペプチド結合を形成させる方法、ハロゲン基を有する顔料と酵素のアミノ基等との間でアルキル化する方法、固体粒子のアミノ基と酵素のアミノ基との間を架橋する方法、アルデヒド基またはケトン基を有する化合物とイソシアニド化合物の存在下、カルボキシル基,アミノ基を有する顔料と酵素を反応させる方法、ジスルフィド基を有する顔料と酵素のチオール基との間で交換反応させる方法等がある。
【0123】
また、アフィニティ吸着によって酵素をリガンドが導入された顔料に固定化しても良い。この場合、リガンドとしてPHA合成酵素の酵素活性を維持しながらアフィニティ吸着を行えるものであれば、いかなるものも選択できる。また、PHA合成酵素にタンパク質等の他の生体高分子を結合させ、結合した生体高分子をアフィニティ吸着することで酵素を固定化しても良い。PHA合成酵素と生体高分子との結合は遺伝子組換え等によって行っても良いし、化学的に行っても良い。例えば、実施例に後述するように、形質転換によってGSTをPHA合成酵素に融合し、GSTのリガンドであるグルタチオンを導入したセファロースに融合タンパク質をアフィニティ吸着し、固定化することができる。
【0124】
また、顔料に対して結合能を有するアミノ酸配列を含むペプチドをPHA合成酵素に融合して提示させ、顔料に対して結合能を有するアミノ酸配列のペプチド部分と、顔料との結合性に基づいて、顔料表面にPHA合成酵素を固定化することもできる。
【0125】
顔料に対する結合能を有するアミノ酸配列は、例えば、ランダムペプチドライブラリのスクリーニングによって決定することができる。
【0126】
例えばM13系ファージの表面蛋白質(例えばgeneIII 蛋白質)のN末端側遺伝子にランダム合成遺伝子を連結して調製されたファージディスプレイペプチドライブラリーを好適に用いることが出来るが、この場合顔料に対する結合能を有するアミノ酸配列の決定するには、次のような手順をとる。
【0127】
即ち、顔料に対してファージディスプレイペプチドライブラリーを添加することによって接触させ、その後洗浄により結合ファージと非結合ファージを分離する。顔料結合ファージを酸等により溶出し緩衝液で中和した後、大腸菌に感染させファージを増幅する。この選別を複数回繰り返すと目的の顔料に結合能の有る複数のクローンが濃縮される。
【0128】
ここで単一なクローンを得るため再度大腸菌に感染させた状態で培地プレート上にコロニーを作らせる。それぞれの単一コロニーを液体培地で培養した後、培地上清中に存在するファージをポリエチレングリコール等で沈殿精製し、その塩基配列を解析すればペプチドの構造を知ることができる。
【0129】
上記方法により得られた顔料に対する結合能を有するペプチドのアミノ酸配列は、通常の遺伝子工学的手法を用いて、PHA合成酵素に融合して利用される。顔料に対する結合能を有するペプチドはPHA合成酵素のN末端あるいはC末端に連結して発現することができる。また適当なスペーサー配列を挿入して発現することもできる。スペーサー配列としては、およそ3〜400アミノ酸が好ましく、また、スペーサー配列はいかなるアミノ酸を含んでも良い。最も好ましくは、スペーサー配列は、PHA合成酵素が機能するのを妨害せず、また、PHA合成酵素が顔料に結合するのを妨害しないものである。
【0130】
上記方法により作製された、酵素を固定化した顔料は、そのままでも用いることができるが、さらに凍結乾燥等を施した上で使用することもできる。
【0131】
3−ヒドロキシアシルCoAの重合によりPHAが合成される反応において放出されるCoA量が1分間に1μmolとなるPHA合成酵素量を1Uとしたとき、顔料に固定する酵素の量は、顔料1g当り 10〜1,000U、望ましくは 50〜500Uの範囲内に設定すると良い。
【0132】
酵素の固定化処理を行う時間は1分間〜24時間、望ましくは 10分間〜1時間に設定すると良い。
【0133】
また、前工程の顔料を分散する工程を省略して、水性媒体に分散する前の顔料を酵素溶液に直接添加し、酵素溶液中で分散を行いながら、酵素を顔料に固定化しても良い。この場合、顔料に固定化された酵素が保有するイオン性官能基による電気的反発や立体障害によって、顔料が水性媒体中で分散することを容易にし、水性媒体への界面活性剤の添加を不要にする、もしくは少量化することが可能となる。
【0134】
基質である3−ヒドロキシアシルCoAを添加する工程は、前工程の酵素が固定化された顔料の水性分散液に対し、別途用意した3−ヒドロキシアシルCoAの保存液を目的濃度に達するように添加することによって達成される。基質である3−ヒドロキシアシルCoAは、一般に0.1mmol/L〜1.0mol/L、望ましくは0.2mmol/L〜0.2mol/L、さらに望ましくは0.2mmol/L〜1.0mmol/Lの終濃度で添加される。
【0135】
また、上記工程において、水系反応液中の3−ヒドロキシアシルCoAの種類や濃度等の組成を経時的に変化させることによって、顔料を被覆するPHAのモノマーユニット組成を、顔料の内側から外側に向かう方向に変化させることができる。
【0136】
このモノマーユニット組成の変化した顔料の形態として、例えば、PHA被膜の組成変化が連続的で、マイクロカプセル化顔料の内側から外側に向かう方向に組成の勾配を形成した1層のPHAが顔料を被覆した形態を挙げることができる。製造方法としては、例えば、PHAを合成しながら反応液中に別組成の3−ヒドロキシアシルCoAを添加する等の方法によれば良い。
【0137】
また別の形態として、PHA被膜の組成変化が段階的で、組成の異なるPHAが顔料を多層に被覆した形態を挙げることができる。この製造方法としては、ある3−ヒドロキシアシルCoAの組成でPHAを合成した後、遠心分離等によって調製中の顔料を反応液から一旦回収し、これに異なる3−ヒドロキシアシルCoAの組成からなる反応液を再度添加する等の方法によれば良い。
【0138】
PHA合成反応を行う工程は、合成するPHAによって所望の形状のマイクロカプセル化顔料が得られるように、反応溶液の組成を前工程までに調製していない場合にはPHA合成酵素の活性を発揮させ得る組成となるように調製を行い、反応温度及び反応時間を調整する方法によって行う。
【0139】
PHA合成酵素の活性を発揮させ得る反応溶液中の緩衝液の濃度は、一般的な濃度、即ち、5mmol/L〜1.0mol/Lの範囲で使用できるが、望ましくは 10〜200mmol/Lで行う。また、pHは5.5〜9.0、好ましくは7.0〜8.5となるように調整するが、使用するPHA合成酵素の至適pHやpH安定性によっては、上記範囲以外に条件を設定することも除外されない。
【0140】
反応温度は、使用するPHA合成酵素の特性に応じて適宜設定するものであるが、通常、4〜50℃、好ましくは 20〜40℃に設定すると良い。ただし、使用するPHA合成酵素の至適温度や耐熱性によっては、上記範囲以外に条件を設定することも除外されない。
【0141】
反応時間は、使用するPHA合成酵素の安定性等にもよるが、通常、1分間〜24時間、好ましくは 30分間〜3時間の範囲内で適宜選択して設定する。
【0142】
前記工程によって得られるマイクロカプセル化顔料における、外被を構成するPHAのモノマーユニット組成及び構造は、該マイクロカプセル化顔料からクロロホルム等によってPHAを抽出した後、ガスクロマトグラフィーや、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)とイオンスパッタリング技術等を用いて分析することができる。
【0143】
PHAの分子量に特に制限はないが、マイクロカプセル化顔料の強度を維持するため、数平均分子量として1,000〜10,000,000、好ましくは、10,000〜10,000,00 の範囲にすると良い。PHAの分子量は、マイクロカプセル化顔料からクロロホルム等によってPHAを抽出した後、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定すれば良い。
【0144】
また、本工程で得られたマイクロカプセル化顔料に各種二次加工や化学修飾等の処理を施して使用することもできる。
【0145】
例えば、顔料表層のPHAに化学修飾を施すことにより、さらに有用な機能・特性を備えたマイクロカプセル化顔料を得ることができる。なかでも、グラフト鎖を導入することにより、該グラフト鎖に起因する各種の特性を備えたマイクロカプセル化顔料を得ることができる。特に、後述するポリシロキサンをグラフト鎖として導入すれば、機械的強度,分散性,耐候性,撥水性,耐水性,耐熱性等が向上したマイクロカプセル化顔料を得ることができる。また、マイクロカプセル化顔料表層のPHAを架橋化せしめることにより、該マイクロカプセル化顔料の機械的強度,耐薬品性,耐熱性等を向上させることが可能である。
【0146】
化学修飾の方法は、所望の機能や構造を得る目的を満たす方法であれば特に限定されないが、例えば、反応性官能基を側鎖に有するPHAを合成し、該官能基の化学反応を利用して化学修飾する方法を用いることができる。
【0147】
前記の反応性官能基の種類は、所望の機能や構造を得る目的を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、前記したエポキシ基を例示することができる。エポキシ基を側鎖に有するPHAは、通常のエポキシ基を有するポリマーと同様の化学的変換を行うことができる。具体的には、例えば水酸基に変換したり、スルホン基を導入することが可能である。また、チオールやアミンを有する化合物を付加することもでき、例えば、末端に反応性官能基を有する化合物、具体的には、エポキシ基との反応性が高いアミノ基を末端に有する化合物等を添加して反応させることにより、ポリマーのグラフト鎖が形成される。
【0148】
アミノ基を末端に有する化合物としては、ポリビニルアミン,ポリエチレンイミン,アミノ変性ポリシロキサン等のアミノ変性ポリマーを例示することができる。このうち、アミノ変性ポリシロキサンとしては、市販の変性シリコーンオイルを使用しても良く、また、J.Amer.Chem.Soc.,78,2278(1956)等に記載の方法で合成して使用することもでき、該ポリマーのグラフト鎖の付加による機械的強度,分散性,耐候性,撥水性,耐水性,耐熱性の改善等の効果が期待できる。
【0149】
また、エポキシ基を有するポリマーの化学的変換の他の例として、ヘキサメチレンジアミン等のジアミン化合物,無水コハク酸,2−エチル−4−メチルイミダゾール等による架橋反応が、物理化学的変換の例として電子線照射等による架橋反応が挙げられる。このうち、エポキシ基を側鎖に有するPHAとヘキサメチレンジアミンとの反応は、下記のスキームに示すような形で進行し、架橋ポリマーが生成する。
【0150】
【化59】
【0151】
本発明のマイクロカプセル化顔料の製造方法では、顔料に直接PHAを被覆できるため、マイクロカプセル中の顔料の密度を高めることができる。マイクロカプセル化顔料におけるPHAの被覆量としては、顔料に対して1〜30質量%の範囲の質量組成比、好ましくは1〜20質量%の範囲、より好ましくは1〜15質量%とする。また、前記マイクロカプセル化顔料の粒径は、通常 20μm以下とするのが望ましく、さらに光沢ある平滑な塗面を得るためには、粒径を1μm以下とすると有効である。マイクロカプセル化顔料の粒径は、吸光度法,静的光散乱法,動的光散乱法,遠心沈降法等の既知の方法により測定でき、例えば、コールターカウンターマルチサイザー等の粒径測定装置を用いることができる。
【0152】
本発明のマイクロカプセル化顔料は、上記のように顔料密度が高く、かつ微小であるという特長を有しているため、該マイクロカプセル化顔料を含有する塗料組成物を用いることで、色彩性の良好な塗膜を形成せしめることができる。
【0153】
本発明において、前記マイクロカプセル化顔料を含有させる塗料成分は、塗膜形成樹脂及びその他の塗料添加剤を配合した通常の溶剤系,非水分散液型,水溶液型,水分散液型等のものが使用できる。従って、ビヒクル(展色剤)となる塗膜形成樹脂には、アクリル樹脂,ポリエステル樹脂,ポリ塩化ビニル樹脂,フッ素樹脂等、通常用いられる塗膜形成樹脂が使用できる。
【0154】
上記の塗膜形成樹脂には、必要に応じて硬化剤を添加してもよく、例えば、メラミン樹脂,グアナミン樹脂,尿素樹脂等のアミノ樹脂や(ブロック)ポリイソシアネート化合物等を硬化剤として用いることができる。
【0155】
さらに、防汚剤,防カビ剤,レベリング剤、タレ防止剤、消泡剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、滑剤等の塗料添加物を添加して用いることもできる。
【0156】
本発明の塗料組成物は、例えば、刷毛塗り,浸漬法,スプレー塗装,ロール塗装,静電塗装,電着塗装等の公知の塗装法により塗装することが出来る。塗装対象物としては、例えば、木,紙,繊維,プラスチック,セラミックス,セメント,金属等の各種素材を挙げることができる。
【0157】
本発明の塗料組成物は、揮発乾燥等により塗膜を硬化せしめても良く、また、例えば、100〜250℃で5秒〜30分の加熱条件で焼付けることにより硬化塗膜を得ても良い。
【0158】
また、感光性樹脂や光重合性モノマーを構成成分として含み、さらに必要に応じて光重合開始剤等の添加剤を含有する光硬化性塗料として用いる場合は、紫外線,可視光,レーザー光等を照射することで塗膜を硬化させることができる。光硬化性塗料は一般に低公害で速乾性に優れるため、木質系基材等の塗装に広く用いられている。
【0159】
本発明のマイクロカプセル化顔料を光硬化性塗料として用いる場合、感光性樹脂としては従来公知のいずれのものを用いても良い。例えば、水酸基,カルボキシル基,アミノ基等の反応性置換基を有する線状高分子に、必要によりイソシアナート基,アルデヒド基,エポキシ基等を介して、(メタ)アクリル系化合物,ケイ皮酸系化合物,ビニルエステル系化合物等の反応性不飽和結合を有する化合物から導かれる光架橋性基を導入した樹脂等を用いることができる。さらには、スチレン/無水マレイン酸共重合体,α−オレフィン/無水マレイン酸共重合体等の酸無水物を構造単位に含む線状高分子、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル系化合物でハーフエステル化されたものを用いることもできる。これらは、必要に応じて2種以上の組合せで用いることもできる。感光性樹脂は、着色組成物中の全固形分に対して5〜90質量%、好ましくは 20〜70質量%の範囲で使用される。
【0160】
光重合性モノマーとしては、ノニルフェニルカルビトールアクリレート,2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート,2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート,2−ヒドロキシエチルアクリレート,N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー、トリプロピレングリコールジアクリレート,トリエチレングリコールジアクリレート,テトラエチレングリコールジアクリレート,ポリエチレングリコールジアクリレート,ビスフェノールAジアクリレート等の2官能モノマー、トリメチロールプロパントリアクリレート,ペンタエリスリトールトリアクリレート等の3官能モノマー、ジペンタエリスリトールペンタ,ヘキサアクリレート等のその他の多官能モノマー等が挙げられる。これらの光重合性モノマーは2種類以上組み合わせて使用することもできる。光重合性モノマーは、着色組成物中の全固形分に対して5〜90質量%、好ましくは 20〜70質量%の範囲で使用される。
【0161】
光重合開始剤としては、ベンゾイン及びそのアルキルエーテル類,アセトフェノン類,チオキサントン類,ケタール類,ベンゾフェノン類,アントラキノン類,キサントン類,トリアジン類,ヘキサアリールビスイミダゾール系化合物等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。光重合開始剤はバインダー樹脂及び光重合性モノマーの合計量に対して0.2〜30質量%、好ましくは2〜20質量%の範囲で使用される。
【0162】
一方、前記電着塗装は、電着塗料槽内に浸漬した導電性を有する被塗物を介して電流を通して、電着塗料中の固形成分を被塗物表面に析出せしめ、これにより塗膜を形成する塗装法であり、塗装工程の自動化が容易であり、塗料の被塗物への付き回り性が良く、厚みの均一な塗膜が得られる等の利点を有することから、従来より自動車塗装ライン等の各種塗装ラインで広く用いられている。
【0163】
本発明のマイクロカプセル化顔料は、アニオン系やカチオン系いずれの電着塗料としても用いることができ、例えば、アクリル系樹脂,エポキシ系樹脂,ポリエステル系樹脂,フッ素系樹脂,ポリブタジエン系樹脂等を、マイクロカプセル化顔料及び硬化剤と共にイオン交換水に分散させた組成物として用いる。硬化剤としてはメラミン樹脂,ブロックポリイソシアネート等が例示できる。
【0164】
一般に、電着塗料には、各成分の分散を促進するために界面活性剤が使用されるが、本発明のマイクロカプセル化顔料を用いることにより、界面活性剤の使用を低減あるいは全く使用しないことができ、該界面活性剤に起因する塗膜の物理的特性の低下等を防ぐことができる。
【0165】
なお、本発明の着色組成物及びその製造方法は、上記に限定されるものではない。
【0166】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、以下の実施例は本発明の最良の実施形態の一例ではあるが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下における「%」は特に標記した以外は質量基準である。
【0167】
<参考例1> PHA合成酵素生産能を有する形質転換体の作製
YN2株を 100mLのLB培地(1%ポリペプトン(日本製薬(株)製)、0.5%酵母エキス(Difco社製)、0.5%塩化ナトリウム、pH7.4)で 30℃、一晩培養後、マーマーらの方法により染色体DNAを分離回収した。得られた染色体DNAを制限酵素HindIIIで完全分解した。
【0168】
ベクターにはpUC18を使用し、制限酵素HindIIIで切断した。末端の脱リン酸処理(Molecular Cloning,1,572,(1989);Cold Spring Harbor Laboratory出版)の後、DNAライゲーションキットVer.II(宝酒造(株)製)を用いて、ベクターの切断部位(クローニングサイト)と染色体DNAのHindIII完全分解断片とを連結した。この染色体DNA断片を組み込んだプラスミドベクターを用いて、大腸菌(Escherichia coli HB101)を形質転換し、YN2株のDNAライブラリーを作製した。
【0169】
次に、YN2株のPHA合成酵素遺伝子を含むDNA断片を選択するため、コロニー・ハイブリダイズ用のプローブ調製を行った。配列番号:1及び配列番号:2の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを合成し(アマシャムファルマシア・バイオテク(株))、このオリゴヌクレオチドをプライマーに用いて、染色体DNAをテンプレートとしてPCRを行った。PCR増幅されてきたDNA断片をプローブとして用いた。プローブの標識化は、市販の標識酵素系AlkPhosDirect(アマシャムファルマシア・バイオテク(株)製)を利用して行った。
【0170】
得られた標識化プローブを用いて、YN2株の染色体DNAライブラリーからコロニーハイブリダイゼーション法によってPHA合成酵素遺伝子を含む組換えプラスミドを有する大腸菌菌株を選抜した。選抜した菌株から、アルカリ法によってプラスミドを回収することで、PHA合成酵素遺伝子を含むDNA断片を得ることができた。
【0171】
ここで取得した遺伝子DNA断片を、不和合性グループであるIncP、IncQ、あるいはIncWの何れにも属さない広宿主域複製領域を含むベクターpBBR122(Mo Bi Tec)に組み換えた。この組み換えプラスミドをシュードモナス・チコリアイYN2ml株(PHA合成能欠損株)にエレクトロポレーション法により形質転換したところ、YN2ml株のPHA合成能が復帰し、相補性を示した。従って、選抜された遺伝子DNA断片は、シュードモナス・チコリアイYN2ml株内において、PHA合成酵素に翻訳可能な、PHA合成酵素遺伝子領域を含むことが確認される。
【0172】
このDNA断片について、サンガー法により塩基配列を決定した。その結果、決定された塩基配列中には、それぞれペプチド鎖をコードする、配列番号:3及び配列番号:4で示される塩基配列が存在することが確認された。これらのPHA合成酵素遺伝子について、染色体DNAをテンプレートとしてPCRを行い、PHA合成酵素遺伝子の完全長を再調製した。
【0173】
即ち、配列番号:3で示される塩基配列のPHA合成酵素遺伝子に対する、上流側プライマー(配列番号:5)及び下流側プライマー(配列番号:6)、配列番号:4で示される塩基配列のPHA合成酵素遺伝子に対する、上流側プライマー(配列番号:7)及び下流側プライマー(配列番号:8)をそれぞれ合成した(アマシャムファルマシア・バイオテク(株))。
【0174】
これらのプライマーを用いて、配列番号:3及び配列番号:4で示される塩基配列それぞれについてPCRを行い、PHA合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA−PCRキット;宝酒造(株)製)。次に、得られたPCR増幅断片及び発現ベクターpTrc 99Aを制限酵素HindIIIで切断し、脱リン酸化処理(Molecular Cloning,1巻,572 頁,1989年;Cold Spring Harbor Laboratory出版)した後、この発現ベクターpTrc 99Aの切断部位に、両末端の不用な塩基配列を除いたPHA合成酵素遺伝子の完全長を含むDNA断片を、DNAライゲーションキットVer.II(宝酒造(株)製)を用いて連結した。
【0175】
得られた組換えプラスミドで大腸菌(Escherichia coli HB101:宝酒造)を塩化カルシウム法により形質転換した。得られた組換え体を培養し、組換えプラスミドの増幅を行い、組換えプラスミドをそれぞれ回収した。配列番号:3の遺伝子DNAを保持する組換えプラスミドをpYN2−C1、配列番号:4の遺伝子DNAを保持する組換えプラスミドをpYN2−C2とした。pYN2−C1、pYN2−C2で大腸菌(Escherichia coli HB101fB fadB欠損株)を塩化カルシウム法により形質転換し、それぞれの組換えプラスミドを保持する組換え大腸菌株、pYN2−C1組換え株、pYN2−C2組換え株を得た。
【0176】
<参考例2> PHA合成酵素の生産1
pYN2−C1に対して、上流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:9)及び下流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号: 10)をそれぞれ設計・合成した(アマシャムファルマシア・バイオテク(株))。このオリゴヌクレオチドをプライマーとして、pYN2−C1をテンプレートとしてPCRを行い、上流にBamHI制限部位、下流にXhoI制限部位を有するPHA合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA−PCRキット、宝酒造(株)製)。
【0177】
同様にpYN2−C2に対して、上流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:11)及び下流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:12)をそれぞれ設計・合成した(アマシャムファルマシア・バイオテク(株))。このオリゴヌクレオチドをプライマーとして、pYN2−C2をテンプレートとしてPCRを行い、上流にBamHI制限部位、下流にXhoI制限部位を有するPHA合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA−PCRキット、宝酒造(株)製)。
【0178】
精製したそれぞれのPCR増幅産物をBamHI及びXhoIにより消化し、プラスミドpGEX−6P−1(アマシャムファルマシア・バイオテク(株)製)の対応する部位に挿入した。これらのベクターを用いて大腸菌(JM109)を形質転換し、発現用菌株を得た。菌株の確認は、Miniprep(Wizard Minipreps DNA Purification Systems、PROMEGA社製)を用いて大量に調製したプラスミドDNAをBamHI、XhoIで処理して得られるDNA断片により行った。
【0179】
得られた菌株をLB−Amp培地 10mLで一晩プレ・カルチャーした後、その0.1mLを、10mLのLB−Amp培地に添加し、37℃、170rpmで3時間振とう培養した。その後IPTGを添加し(終濃度 1mmol/L)、37℃で4から 12時間培養を続けた。
【0180】
IPTG 誘導した大腸菌を集菌(78000m/s2(8,000G)、2分間、4℃)し、1/10量の4℃リン酸緩衝生理食塩水(PBS;8g NaCl,1.44g Na2HPO4,0.24g KH2PO4,0.2g KCl,1000mL精製水)に再懸濁した。凍結融解及びソニケーションにより菌体を破砕し、遠心(78000m/s2(8,000G)、10分間、4℃)して固形夾雑物を取り除いた。
【0181】
目的の発現タンパク質が上清に存在することをSDS−PAGEで確認した後、誘導され発現されたGST融合タンパク質をグルタチオン・セファロース4B(アマシャムファルマシア・バイオテク(株)製)で精製した。使用するグルタチオンセファロースは、予め非特異的吸着を抑える処理を行った。即ち、グルタチオンセファロースを同量のPBSで3回洗浄(78000m/s2(8,000G)、1分間、4℃)した後、4%ウシ血清アルブミン含有PBSを同量加えて4℃で1時間処理した。処理後同量のPBSで2回洗浄し、1/2量のPBSに再懸濁した。
【0182】
前処理したグルタチオンセファロース 40μLを、無細胞抽出液1mL に添加し、4℃で静かに攪拌した。これにより、融合タンパク質GST−YN2−C1及びGST−YN2−C2をグルタチオンセファロースに吸着させた。
【0183】
吸着後、遠心(78000m/s2(8,000G)、1分間、4℃)してグルタチオンセファロースを回収し、400μLのPBSで3回洗浄した。その後、10mmol/Lグルタチオン 40μLを添加し、4℃で1時間攪拌して、吸着した融合タンパク質を溶出した。遠心(78000m/s2(8,000G)、2分間、4℃)して上清を回収した後PBSに対して透析し、GST融合タンパク質を精製した。SDS−PAGEにより、シングルバンドを確認した。
【0184】
各GST融合タンパク質 500μgをPreScissionプロテアーゼ(アマシャムファルマシア・バイオテク(株)製、5U)で消化した後、グルタチオン・セファロースに通してプロテアーゼとGSTとを除去した。フロースルー分画をさらに、PBSで平衡化したセファデックスG 200 カラムにかけ、発現タンパク質YN2−C1及びYN2−C2の最終精製物を得た。SDS−PAGEによりそれぞれ 60.8kDa、及び 61.5kDaのシングルバンドを確認した。
【0185】
該酵素を生体溶液試料濃縮剤(みずぶとりくんAB−1100、アトー(株)製)を用いて濃縮し、10U/mLの精製酵素溶液を得た。
【0186】
各精製酵素活性は前述の方法で測定した。また、試料中のタンパク質濃度は、マイクロBCAタンパク質定量試薬キット(ピアスケミカル社製)によって測定した。各精製酵素の活性測定の結果を表1に示した。
【0187】
【表1】
【0188】
<参考例3> PHA合成酵素の生産2
P91株、H45株、YN2株またはP161株を、酵母エキス(Difco社製)0.5%、オクタン酸0.1%とを含むM9培地 200mLに植菌して、30℃、125ストローク/分で振盪培養した。24時間後、菌体を遠心分離(98000m/s2(10,000G)、4℃、10分間)によって回収し、0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)200mLに再懸濁して再度遠心分離することによって洗浄した。菌体を0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)2.0mLに再懸濁し、超音波破砕機にて破砕した後、遠心分離(118000m/s2(12,000G)、4℃、10分間)して上清を回収して粗酵素溶液を得た。各粗酵素活性は前述の方法で測定し、その結果を表2に示した。
【0189】
【表2】
【0190】
該粗酵素溶液を生体溶液試料濃縮剤(みずぶとりくんAB−1100、アトー(株)製)を用いて濃縮し、10U/mLの粗酵素溶液を得た。
【0191】
<参考例4> 3−ヒドロキシアシルCoAの合成
3−ヒドロキシオクタノイルCoAは、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)に記載の方法に基づいて合成した。3−ヒドロキシピメリルCoAは、J.Bacteriol.,182,2753−2760(2000)に記載の方法に基づいて合成した。3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタノイルCoAは、Int.J.Biol.Macromol.,12,85−91(1990)に記載の方法で合成した3−ヒドロキシ−7−オクテン酸の不飽和部分を3−クロロ安息香酸でエポキシ化して調製した3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタン酸を3−ヒドロキシオクタン酸の替わりに用いる以外は、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)に記載の方法に基づいて合成した。
【0192】
<実施例1> 塗料用マイクロカプセル化顔料の製造1
赤色顔料(C.I.ピグメントレッド 168)を0.1μm以下となるようにサンドミルで分散し、この1質量部にpYN2−C1組換え株由来のPHA合成酵素溶液(10 U/mL)10 質量部、PBS 39質量部を添加し、30℃にて 30分間緩やかに振盪してPHA合成酵素を顔料表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(10,000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(10,000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0193】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、3−ヒドロキシピメリルCoA 1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。生成したマイクロカプセル化顔料を遠心分離(98000m/s2(10,000G)、4℃、10分間)により回収した。
【0194】
回収したマイクロカプセル化顔料の一部を真空乾燥した後、クロロホルムに懸濁し、60℃で 20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した後、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、該PHAは3−ヒドロキシピメリン酸ユニットからなるPHAであることが確認された。
【0195】
さらに、該PHAの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度; 40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=60,000 であった。
【0196】
また、マイクロカプセル化前後の顔料の体積平均粒子径をレーザードップラー方式粒度分布測定機(UPA−150、日機装社製)を用いて測定したところ、マイクロカプセル化前の粒子径0.104μmに対し、マイクロカプセル化後の粒子径は0.112μmであり、顔料をPHAが被覆しているものと推測された。
【0197】
<実施例2> 塗料用マイクロカプセル化顔料の製造2
赤色顔料(C.I.ピグメントレッド 168)を用いて実施例1と同様の方法で固定化酵素を得た。これを0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、3−ヒドロキシピメリルCoA 0.8質量部、3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタノイルCoA 0.2質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪して酵素反応した後、遠心分離(98000m/s2(10,000G)、4℃、10分間)して沈殿物を回収した。
【0198】
前記沈殿物の一部を真空乾燥した後、クロロホルムに懸濁し、60℃で 20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。この抽出液について1H−NMR分析(使用機器:FT−NMR:Bruker DPX 400、測定核種:1H,使用溶媒:重クロロホルム(TMS入り))を行った。ここから計算した各側鎖ユニットのユニット%は、3−ヒドロキシピメリン酸ユニット 77%、3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタン酸ユニット 23%であった。
【0199】
また、前記酵素反応前後の顔料の体積平均粒子径を実施例1と同様に測定したところ、酵素反応前の粒子径0.103μmに対し、酵素反応後の粒子径は0.113μmであり、顔料をPHAが被覆しているものと推測された。
【0200】
前記沈殿物1質量部に対し、99質量部のイオン交換水を添加し、攪拌翼による攪拌(80rpm)によって分散させた。ここに、架橋剤としてヘキサメチレンジアミン0.5質量部となるよう溶解させた。溶解を確認後、凍結乾燥により水を除去した(これを粒子1とする)。さらに、粒子1を 70℃で 12時間反応させた(これを粒子2とする)。
【0201】
上記粒子1及び粒子2をクロロホルムに懸濁し、60℃で 20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出し、真空乾燥によりクロロホルムを除去し、示差走査熱量計(DSC;パーキンエルマー社製、Pyris 1、昇温: 10℃/分)装置で測定を行った。その結果、粒子1では 90℃付近に明確な発熱ピークがみられ、ポリマー中のエポキシ基とヘキサメチレンジアミンとの反応が起こり、ポリマー同士の架橋が進行していることが示される。一方、粒子2では明確なヒートフローは見られず、架橋反応がほぼ完了していることが示される。
【0202】
さらに、同様のサンプルにつき、赤外吸収を測定した(FT−IR;パーキンエルマー社製、1720X)。その結果、粒子1で見られたアミン(3340cm−1付近)及びエポキシ(822cm−1付近)のピークが粒子2では消失している。
【0203】
以上の結果より、側鎖にエポキシユニットをもつPHAとヘキサメチレンジアミンとを反応させることにより、架橋ポリマーが得られることがわかった。
【0204】
一方、3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタノイルCoAの代わりに3−ヒドロキシオクタノイルCoAを使用する以外は、上記と同様の方法で試料を作製し評価したが、前記の如き、ポリマー同士の架橋を明確に示す評価結果は得られなかった。
【0205】
前記粒子2の1質量部をイオン交換水 99 質量部に懸濁し、遠心分離(98000m/s2(10,000G)、4℃、10分間)により回収する操作を3回繰返して、マイクロカプセル化顔料を得た。
【0206】
該マイクロカプセル化顔料をイオン交換水,トルエン,キシレン,へキサンまたはメタノールに懸濁し 30日間室温で貯蔵したが、マイクロカプセル化顔料の貯蔵安定性において問題はなかった。従って該マイクロカプセル化顔料は、水性,油性いずれの塗料組成物中でも使用できることがわかった。
【0207】
<実施例3> 塗料用マイクロカプセル化顔料の製造3
赤色顔料(C.I.ピグメントレッド 168)を用いて実施例1と同様の方法で固定化酵素を得た。これを0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、3−ヒドロキシオクタノイルCoA 1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。生成したマイクロカプセル化顔料を遠心分離(98000m/s2(10,000G)、4℃、10分間)により回収した。
【0208】
回収したマイクロカプセル化顔料の外被を成すPHAを、実施例1と同様にGC−MSで分析した。その結果、該PHAは3−ヒドロキシオクタン酸ユニットからなるPHAであることが確認された。さらに、該PHAの分子量を実施例1と同様に評価した結果、Mn= 42,000 であった。
【0209】
また、マイクロカプセル化前後の顔料の体積平均粒子径を実施例1と同様に測定したところ、マイクロカプセル化前の粒子径0.127μmに対し、マイクロカプセル化後の粒子径は0.143μmであり、顔料をPHAが被覆しているものと推測された。
【0210】
<実施例4> 塗料用マイクロカプセル化顔料の製造4
赤色顔料(C.I.ピグメントレッド 168)を用いて実施例1と同様の方法で固定化酵素を得た。この1質量部を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、3−ヒドロキシピメリルCoA 0.8質量部、3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタノイルCoA 0.2質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した後、遠心分離(98000m/s2(10,000G、4℃、10分間)して沈殿物を回収した。
【0211】
前記沈殿物1質量部を 99 質量部のイオン交換水に懸濁し、遠心分離(98000m/s2(10,000G、4℃、10分間)して沈殿物を回収した後、凍結乾燥により水を除去した。この沈殿物1質量部に対して、末端アミノ変性ポリシロキサン(変性シリコーンオイルTSF 4700、GE東芝シリコーン(株)製)10 質量部を添加し、70℃で2時間反応させ、さらにメタノール 99 質量部に懸濁し、遠心分離(98000m/s2(10,000G、4℃、20分間)する操作を繰返すことにより洗浄し乾燥することで、ポリシロキサンのグラフト鎖を有するマイクロカプセル化顔料を得た。
【0212】
<実施例5> 塗料用マイクロカプセル化顔料の製造5
無機赤色顔料であるべんがらを0.3μm以下となるようにサンドミルで分散し、この1質量部にP161株由来のPHA合成酵素の粗酵素(10U/mL)1 質量部、PBS 39質量部を添加し、30℃にて 30分間緩やかに振盪してPHA合成酵素を顔料表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(10,000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(10,000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0213】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48 質量部に懸濁し、3−ヒドロキシオクタノイルCoA 1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。生成したマイクロカプセル化顔料を遠心分離(98000m/s2(10,000G)、4℃、10分間)により回収した。
【0214】
回収したマイクロカプセル化顔料の一部を真空乾燥した後、マイクロカプセル化顔料の外被を成すPHAの質量を、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS IV、CAMECA製)により測定した。得られたマススペクトルから、該PHAは3−ヒドロキシオクタン酸ユニットからなるホモポリマーであった。また、イオンスパッタリングによりマイクロカプセル化顔料表面を少しずつ削りながら同様にTOF−SIMSによりマススペクトルを測定していったが、いずれも3−ヒドロキシオクタン酸ユニットからなるホモポリマーで構成されていた。
【0215】
これより、本比較例のマイクロカプセル化顔料は、親水性の顔料の上を直接疎水性の3−ヒドロキシオクタン酸ユニットからなるPHAが被覆したマイクロカプセル化顔料であることがわかった。さらに、該PHAの分子量を実施例1と同様に評価した結果、Mn= 38,000 であった。
【0216】
また、マイクロカプセル化前後の顔料の体積平均粒子径を実施例1と同様に測定したところ、マイクロカプセル化前の粒子径0.242μmに対し、マイクロカプセル化後の粒子径は0.265μmであり、顔料をPHAが被覆しているものと推測された。
【0217】
<実施例6> 塗料用マイクロカプセル化顔料の製造6
無機赤色顔料であるべんがらを用いて実施例5と同様の方法で固定化酵素を得た。これを0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、3−ヒドロキシピメリルCoA 1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で 10分間緩やかに振盪した。次いで、30℃で緩やかに振盪しながら3−ヒドロキシオクタノイルCoA 1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を含む0.1 mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)をマイクロチューブポンプ(東京理化器械社製MP−3N)を用いて1分間に1質量部の割合で添加した。110分間反応後、生成したマイクロカプセル化顔料を遠心分離(98000m/s2(10,000G)、4℃、10分間)により回収した。
【0218】
回収したマイクロカプセル化顔料の表面に形成されたPHAの質量を、実施例5と同様にTOF−SIMSで測定した結果、該PHAは3−ヒドロキシオクタン酸ユニットと3−ヒドロキシピメリン酸ユニットとの共重合体(モル比 15 :1)であった。また、イオンスパッタリングによりマイクロカプセル化顔料表面を少しずつ削りながら同様にTOF−SIMSによりマススペクトルを測定していったところ、前記共重合体における3−ヒドロキシオクタン酸ユニットの割合が次第に減少して、最終的に3−ヒドロキシピメリン酸ユニットからなるホモポリマーに変化することが確認された。
【0219】
これより、本実施例のマイクロカプセル化顔料は、親水性の顔料を親水性官能基を有する3−ヒドロキシピメリン酸ユニットからなるPHAで被覆し、その上を3−ヒドロキシオクタン酸ユニットと3−ヒドロキシピメリン酸ユニットとの共重合体によって、表層に至るにつれて疎水性の3−ヒドロキシオクタン酸ユニットの組成比率を高めながら被覆したマイクロカプセル化顔料であることがわかった。さらに、該PHAの分子量を実施例1と同様に評価した結果、Mn= 39,000 であった。
【0220】
また、マイクロカプセル化前後の顔料の体積平均粒子径を実施例1と同様に測定したところ、マイクロカプセル化前の粒子径0.236μmに対し、マイクロカプセル化後の粒子径は0.258μmであり、顔料をPHAが被覆しているものと推測された。
【0221】
<比較例1> 比較用顔料の製造1
赤色顔料(C.I.ピグメントレッド 168)を0.1μm以下となるようにサンドミルで分散した。
【0222】
<比較例2> 比較用顔料の製造2
アクリル樹脂 16質量部、メラミン樹脂4質量部、赤色顔料(C.I.ピグメントレッド 168)10質量部、イオン交換水 70質量部からなる混合物をビーズミル分散機を用いて2時間分散させることによって混合して顔料の水分散体とした。
【0223】
<比較例3> 比較用顔料の製造3
無機赤色顔料であるべんがらを0.3μm以下となるようにサンドミルで分散した。
【0224】
<実施例7> 塗料組成物の製造及び評価1
実施例1または実施例2のマイクロカプセル化顔料、または、比較例1の顔料10部、アクリル樹脂溶液(Mw= 25,000、酸価 60、固形分 20%)12.5部、イオン交換水 20部、及び 3mmφアルミナビーズ 150部を 225mLのガラス容器に入れ、ペイントコンディショナーで3時間分散させた。さらに、上記アクリル樹脂 37.5部とメチル化メラミン樹脂4.3部を加えて混合し塗料組成物を得た。
【0225】
これらの塗料組成物中の顔料の体積平均粒子径及び 30日間室温で貯蔵した後の体積平均粒子径を、レーザードップラー方式粒度分布測定機(UPA−150、日機装社製)を用いて測定した。
【0226】
その結果、表3に示す通り、実施例1及び実施例2のマイクロカプセル化顔料を用いた塗料組成物中の顔料の体積平均粒子径は貯蔵前後でほぼ同等の値を示し、貯蔵安定性に優れていることがわかった。一方、比較例1の顔料を用いた塗料組成物中の顔料の貯蔵後の体積平均粒子径は、貯蔵前と比較して大きく、貯蔵安定性としては満足できるものではなかった。
【0227】
【表3】
【0228】
また、実施例1及び実施例2のマイクロカプセル化顔料を用いた塗料組成物を、前記ペイントコンディショナーで 24時間過剰に処理した後、光学顕微鏡で観察したところ、実施例2のマイクロカプセル化顔料は良好に分散していたが、実施例1のマイクロカプセル化顔料は一部に凝集が見られ、また被覆したPHAの剥離が一部に観察された。従って、外被を成すPHAが架橋化されていることにより、物理的負荷に対する耐久性がさらに向上することがわかる。
【0229】
次に、前記の塗料組成物をフィルムアプリケーターでPET フィルム上に展色し、140℃で 30分間焼き付けて塗膜を得た。この塗膜について以下の評価を行った。
【0230】
(1)付着性:
塗膜に1mm間隔の碁盤目を入れ、セロハンテープを貼り付けて剥離し、マス目の残存度合を評価した。
【0231】
(2)色彩性:
目視による官能評価により評価した。
【0232】
(3)耐候性:
サンシャインウェザオメーターで1,000時間後の光沢保持率を測定した。光沢はデジタル変角光沢計(UGV−5D、スガ試験機(株)製)を用いて 60 度鏡面光沢を測定した。
【0233】
(4)鉛筆硬度:
鉛筆(三菱鉛筆(株)製)を用いて塗膜に傷が付くまでの硬度で評価した。
【0234】
その結果、表4に示す通り、実施例1及び実施例2の塗料組成物で作製した塗膜は、被塗装面への付着性,色彩性,耐候性,硬度の全てにおいて良好な結果を示し、優れた特性を有することがわかった。一方、比較例1の塗料組成物で作製した塗膜は、これらの特性について満足できるものではなかった。
【0235】
【表4】
【0236】
<実施例8> 塗料組成物の製造及び評価2
実施例3のマイクロカプセル化顔料または比較例1の顔料を真空乾燥した後、その1質量部に対し、9質量部の感光性ポリアミド樹脂(PA−1000C、宇部興産(株)製)を添加し、混練機によって分散させ塗料組成物とした。
【0237】
前記塗料組成物中の顔料の体積平均粒子径及び 30日間室温で貯蔵した後の体積平均粒子径を、実施例7と同様に測定した。その結果、表5に示す通り、実施例3のマイクロカプセル化顔料を用いた塗料組成物中の顔料の体積平均粒子径は、貯蔵前後でほぼ同等の値を示し、貯蔵安定性に優れていることがわかった。一方、比較例1の顔料を用いた塗料組成物中の顔料の貯蔵後の体積平均粒子径は貯蔵前と比較して大きく、貯蔵安定性としては満足できるものではなかった。
【0238】
【表5】
【0239】
次に、前記の塗料組成物をフィルムアプリケーターでPET フィルム上に展色し、80℃で 10分間ベークした。次に、フォトマクスを介して適切な光量でUV硬化し、さらに 140℃で 30分間ポストベークして塗膜を得た。この塗膜について実施例7と同様の評価を行った。
【0240】
その結果、表6に示す通り、実施例3のマイクロカプセル化顔料を用いた塗料組成物で作製した塗膜は、被塗装面への付着性,色彩性,耐候性,硬度の全てにおいて良好な結果を示し、優れた特性を有することがわかった。一方、比較例1の顔料を用いた塗料組成物で作製した塗膜は、これらの特性について満足できるものではなかった。
【0241】
【表6】
【0242】
<実施例9> 塗料組成物の製造及び評価3
アクリル系共重合体(スチレン:メチルメタクリレート:n−ブチルアクリレート:ジメチルアミノエチルメタクリレート:ヒドロキシエチルアクリレート= 30:20:20:10:10、Mn= 15,000)75 質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネートのオキシムブロック化物 25 質量部とをヒドロキシ酢酸で中和後、イオン交換水 800 質量部を添加して分散した。ここに実施例1または実施例4のマイクロカプセル化顔料を 100 質量部(顔料としておおよそ 50 質量部)添加し、攪拌翼による攪拌(80rpm)によって分散させ塗料組成物とした。
【0243】
次に、前記アクリル系共重合体 75 質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネートのオキシムブロック化物 25 質量部とをヒドロキシ酢酸で中和後、イオン交換水 400 質量部を添加して分散した。ここに比較例2の顔料の水分散体を 500 質量部(顔料として 50 質量部)添加し、攪拌翼による攪拌(80rpm)によって分散させ塗料組成物とした。
【0244】
前記塗料組成物中の顔料の体積平均粒子径及び 30日間室温で貯蔵した後の体積平均粒子径を実施例7と同様に測定した。その結果、表7に示す通り、実施例1及び実施例4のマイクロカプセル化顔料を用いた塗料組成物中の顔料の体積平均粒子径は貯蔵前後でほぼ同等の値を示し、貯蔵安定性に優れていることがわかった。一方、比較例2の顔料を用いた塗料組成物中の顔料の貯蔵後の体積平均粒子径は、貯蔵前と比較して大きく、貯蔵安定性としては満足できるものではなかった。
【0245】
【表7】
【0246】
次に、前記塗料組成物中にアルミニウム板を浸漬し、次の条件で電着塗装した。印加電圧 150V、塗料温度 25℃、電着時間2分間。電着終了後、アルミニウム板を水洗し水切りした後、180℃で 30分間焼き付けて塗膜を得た。この塗膜について実施例7と同様の評価を行った。
【0247】
その結果、表8に示す通り、実施例1及び実施例4のマイクロカプセル化顔料を用いた塗料組成物で作製した塗膜は、被塗装面への付着性,色彩性,耐候性,硬度の全てにおいて良好な結果を示し、優れた特性を有することがわかった。特に、実施例4のマイクロカプセル化顔料を用いた塗料組成物で作製した塗膜は、耐候性がより優れていた。一方、比較例2の顔料を用いた塗料組成物で作製した塗膜は、これらの特性について満足できるものではなかった。
【0248】
【表8】
【0249】
<実施例10> 塗料組成物の製造及び評価4
実施例5または実施例6のマイクロカプセル化顔料または比較例3の顔料を真空乾燥した後、その4質量部に対し、エチレングリコール 10 質量部、ジエチレングリコール 15 質量部、スチレンーマレイン酸樹脂のモノエタノールアミン塩(平均分子量 30,000、酸価 300)0.6質量部、イオン交換水 70.4質量部を添加し、攪拌翼による攪拌(80rpm)によって分散させ塗料組成物とした。
【0250】
前記塗料組成物をそのまま用いた場合と、ボルテックス・ミキサーによって5分間激しく攪拌した場合での、塗料組成物中の顔料の体積平均粒子径及び 30日間室温で貯蔵した後の体積平均粒子径を、実施例7と同様に測定した。
【0251】
その結果、表9に示す通り、攪拌を行わなかった場合、実施例5及び実施例6のマイクロカプセル化顔料の体積平均粒子径は貯蔵前後でほぼ同等の値を示し、貯蔵安定性に優れていることがわかった。一方、比較例3の顔料の貯蔵後の体積平均粒子径は貯蔵前と比較して増大し、貯蔵安定性としては満足できるものではなかった。また、攪拌を行った場合においても、実施例6のマイクロカプセル化顔料の体積平均粒子径は貯蔵前後でほぼ同等の値を示し、親水性顔料を用いた場合の貯蔵安定性がさらに向上していることが示された。
【0252】
【表9】
【0253】
次に、前記塗料組成物を用いて実施例9と同様の方法で作製した塗膜について、実施例7と同様の評価を行った。その結果、表10 に示す通り、実施例5及び実施例6のマイクロカプセル化顔料を用いた塗料組成物で作製した塗膜は被塗装面への付着性,色彩性,耐候性,硬度の全てにおいて良好な結果を示し、優れた特性を有することがわかった。一方、比較例3の顔料を用いた塗料組成物で作製した塗膜は、これらの特性について満足できるものではなかった。
【0254】
【表10】
【0255】
【発明の効果】
本発明のマイクロカプセル化顔料を含有する塗料組成物は、水性、油性、両方の塗料組成物として使用でき、分散安定剤を使用せずとも顔料の分散状態が安定で凝集を生じ難い。また、顔料密度が高いため、色彩性の良好な塗膜が形成できる。さらに、界面活性剤の使用を抑えられるため、形成した塗膜が耐水性や被塗装面との付着性に優れている。また、その製造方法も簡便である。
【0256】
【配列表】
【発明の属する技術分野】
本発明は、顔料の分散状態が安定で凝集を生じ難く、塗膜の物理的特性等に優れた塗料組成物、及び界面活性剤を使用しないか、あるいはその使用量を大幅に低減できる簡便なその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、塗膜の物理的特性の向上や機能性付与等を目的として、顔料等の塗料添加剤のマイクロカプセル化技術が検討されてきた。例えば、顔料をマイクロカプセル化することにより、該顔料の塗料組成物中における分散安定性を向上させることができ、該塗料の保存安定性や塗膜の物理的強度、光沢等を向上させることができる。
【0003】
例えば、特開平6−248196号公報には、顔料粒子表面の全部または一部分をフルオロオレフィン系共重合体で被覆することによって、塗料用水分散性顔料を得ることができると開示されている。また、特開平5−320276号公報には、両親媒性グラフトポリマーを用いて疎水性顔料をマイクロカプセル化することで、耐水性に優れる外被を有するマイクロカプセル化顔料を製造する方法が開示されており、該マイクロカプセル化顔料を塗料組成物に用いることにより、分散性と塗膜の耐水性を両立させた塗料を得られるとされている。また、特開平5−9430号公報には、メラミン架橋タイプの1液型ベース塗料に、ウレタン樹脂で被覆したアルミニウム顔料を含有させることにより、アルミニウム顔料の凝集破壊の生じないメタリック塗料を得る方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来、上記のようなマイクロカプセルは、種々の化学的製造方法、例えば界面重合法(2種のモノマーもしくは反応物を分散相と連続相に別々に溶解しておき、両者の界面においてモノマーを重合させて壁膜を形成させる方法)、懸濁重合法(水性媒体中で芯物質をモノマー中に分散し、次いで系の温度を上昇することで壁膜を形成させる方法)、乳化重合法(界面活性剤を溶解した水媒体中に水不溶のモノマーを添加して攪拌し、乳化剤のミセルにモノマーを取り込ませ、ミセル内でモノマーを重合して壁膜を形成させる方法)、in−situ重合法(液体または気体のモノマーと触媒、もしくは反応性の物質2種を連続相核粒子側のどちらか一方から供給して反応を起こさせ壁膜を形成させる方法)、コアセルベーション法(芯物質粒子を分散している高分子溶液を高分子濃度の高い濃厚相と希薄相に分離させ、壁膜を形成させる方法)、液中乾燥法(芯物質を壁膜物質の溶液に分散した液を調製し、この分散液の連続相が混和しない液中に分散液を入れて複合エマルションとし、壁膜物質を溶解している媒質を徐々に除くことで壁膜を形成させる方法)等によって製造されている。
【0005】
しかし、これら従来の方法によって製造されたマイクロカプセルにおいては、大量に使用する懸濁安定剤や乳化剤等の界面活性剤がカプセル内やカプセル外被に残留する場合があり、塗料組成物を塗布した際の塗膜の耐水性や、塗膜と被塗装面との接着性の点で課題となる場合があった。
【0006】
また、これら従来の製造方法では、重合過程で使用する分散媒等の共存物を、顔料と共にマイクロカプセル中に内包してしまう場合があり、マイクロカプセル中の顔料の密度をより高くして、塗膜の色彩性を向上せしめるためには、製造方法の更なる改善が望まれていた。
【0007】
本発明の課題は、顔料の分散状態が安定で凝集を生じ難く、塗膜の物理的特性や色彩性等に優れた塗料組成物、及び界面活性剤を使用しないか、あるいはその使用量を大幅に低減できる簡便なその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討した結果、ポリヒドロキシアルカノエート(以下、PHAと略する)合成酵素を顔料粒子に固定化し、ここに3−ヒドロキシアシル補酵素Aを加えて反応させることにより、顔料を界面活性剤なしに容易に微細なマイクロカプセルに内包できること、その際、PHAが顔料表面を直接被覆するため、顔料が高密度に内包されていること、さらに適当な種類の3−ヒドロキシアシル補酵素Aを選択することで、マイクロカプセル化顔料の外被であるPHAを、親水性、親油性、あるいはその他の性質を有する組成のものに任意に設定できることを見出した。また、該PHAに化学修飾を施すことにより、各種の特性等を改良したマイクロカプセル化顔料を得ることができることを見出した。さらに詳しくは、例えば、該PHAにグラフト鎖を導入することで、該グラフト鎖に起因する各種の特性を備えたPHAにより、顔料の少なくとも一部を被覆したマイクロカプセル化顔料を得ることができることを見出した。また、該PHAを架橋化せしめることで、所望の物理化学的性質(例えば、機械的強度、耐薬品性、耐熱性等)を備えたPHAにより、顔料の少なくとも一部を被覆したマイクロカプセル化顔料を得ることができることを見出した。
【0009】
そして上記特性によって、該マイクロカプセル化顔料が、PHAの組成を適宜選択することにより、水性,油性いずれの塗料組成物においても、界面活性剤なしに良好な分散性を示すこと、そのため物理的特性等に優れた塗料が製造でき、さらに形成した塗膜が被塗装面との接着性や色彩性等に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明は、顔料表面の一部をPHAで被覆したマイクロカプセル化顔料と、該マイクロカプセル化顔料の分散用媒体とを含む塗料組成物に関する。
【0011】
またマイクロカプセル化顔料と、該マイクロカプセル化顔料の分散用媒体とを含有する塗料組成物の製造方法であって、水系媒体中に分散された顔料表面に固定されたPHA合成酵素の存在下で、3−ヒドロキシアシル補酵素Aを基質としてPHA合成反応を行うことで、該顔料表面の少なくとも一部をPHAで被覆してマイクロカプセル化顔料を得る工程と、該マイクロカプセル化顔料を分散用媒体に分散する工程とを有することを特徴とする塗料組成物の製造方法に関する。
【0012】
なお、本発明における塗料組成物とは、被塗装面の保護(耐候性・耐水性・耐薬品性などの向上、傷などからの保護、腐食および錆の防止、カビ・水性生物等の付着防止など)および被塗装面への意匠性の付与の少なくともいずれかの効果を有する塗膜の形成に用いる着色組成物を言う。また、化学修飾とは、高分子材料の分子内または分子間、あるいは高分子材料と他の化学物質との間で化学反応を行わせることにより、該高分子材料の分子構造を改変することを言う。また、架橋とは、高分子材料の分子内または分子間を化学的あるいは物理化学的にに結合せしめて網状構造を作ることを言い、架橋剤とは、前記架橋反応を行うために添加する、前記高分子材料と一定の反応性を有する物質を言う。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明をより詳細に説明する。
【0014】
<PHA>
本発明に利用可能なPHAとしては、PHAの生合成反応に関わるPHA合成酵素によって合成され得るPHAであれば、特に限定はされない。
【0015】
ここで、PHAの生合成は、原料となる各種アルカン酸から、生体内の様々な代謝経路(例えば、β酸化系や脂肪酸合成経路)を経て生成された(R)−3−ヒドロキシアシルCoAを基質とした、酵素による重合反応によって行われる。この重合反応を触媒する酵素がPHA合成酵素(PHAポリメラーゼ、PHAシンターゼともいう)である。なお、CoAとは補酵素A(coenzyme A)の略称であり、その化学構造は下記式の通りである。
【0016】
【化34】
【0017】
以下に、β酸化系及びPHA合成酵素による重合反応を経て、アルカン酸がPHAとなるまでの反応を示す。
【0018】
【化35】
【0019】
一方、脂肪酸合成経路を経る場合は、該経路中に生じた(R)−3−ヒドロキシアシル−ACP(ACPとはアシルキャリアプロテインのことである)から変換された(R)−3−ヒドロキシアシルCoAを基質として、同様にPHA合成酵素によりPHAが合成されると考えられる。
【0020】
さらに、上記のPHA合成酵素を菌体外に取り出して、無細胞系(in vitro)でPHAを合成できることもわかっている。例えば、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92,6279−6283(1995)では、アルカリゲネス・ユウトロファス(Alcaligenes eutrophus)由来のPHA合成酵素に、3−ヒドロキシブチリルCoAを作用させることにより、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットからなるPHBを合成することに成功している。また、Int.J.Biol.Macromol.,25,55−60(1999)では、アルカリゲネス・ユウトロファス由来のPHA合成酵素に、3−ヒドロキシブチリルCoAや3−ヒドロキシバレリルCoAを作用させることにより、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットや3−ヒドロキシ−n−吉草酸ユニットからなるPHAの合成に成功している。さらにこの報告では、ラセミ体の3−ヒドロキシブチリルCoAを作用させたところ、酵素の立体選択性によって、R体の3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットのみからなるPHBが合成されたとしている。Macromol.Rapid Commun.,21,77−84(2000)においても、アルカリゲネス・ユウトロファス由来のPHA合成酵素を用いた細胞外でのPHB合成が報告されている。また、FEMS Microbiol.Lett.,168,319−324(1998)では、クロマチウム・ビノサム(Chromatium vinosum)由来のPHA合成酵素に3−ヒドロキシブチリルCoAを作用させることにより、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットからなるPHBを合成することに成功している。Appl.Microbiol.Biotechnol.,54,37−43(2000)では、シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)のPHA合成酵素に3−ヒドロキシデカノイルCoAを作用させることにより、3−ヒドロキシデカン酸ユニットからなるPHAを合成している。
【0021】
このように、PHA合成酵素は、生物体内でのPHA合成反応系における最終段階を触媒する酵素であり、従って、生物体内において合成され得ることが知られているPHAであれば、いずれも該酵素による触媒作用を受けて合成されていることになる。よって、所望のPHAに対応する3−ヒドロキシアシルCoAを、本発明における基材に固定化された該酵素に作用させることによって、生物体内において合成され得ることが知られているあらゆる種類のPHAで顔料を被覆したマイクロカプセル化顔料を作成することが可能である。
【0022】
このようなPHAとして、具体的には、下記式[1]から[10]で表されるモノマーユニットを少なくとも1つ有するPHAを例示することができる。
【0023】
【化36】
【0024】
(ただし、該モノマーユニットは、式中R1及びaの組合せが下記のいずれかであるモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つである。
【0025】
R1が水素原子(H)でありaが0から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が ハロゲン原子でありaが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1がカルボキシル基あるいはその塩であり、aが1から 10 の整数であるモノマーユニット、R1が発色団でありaが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が、
【0026】
【化37】
【0027】
でありaが1から7の整数のいずれかであるモノマーユニット。)
【0028】
【化38】
【0029】
(ただし、式中bは0から7の整数のいずれかを表し、R2は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0030】
【化39】
【0031】
(ただし、式中cは1から8の整数のいずれかを表し、R3は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0032】
【化40】
【0033】
(ただし、式中dは0から7の整数のいずれかを表し、R4は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0034】
【化41】
【0035】
(ただし、式中eは1から8の整数のいずれかを表し、R5は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7,−CH3,−C2H5,−C3H7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0036】
【化42】
【0037】
(ただし、式中fは0から7の整数のいずれかを表す。)
【0038】
【化43】
【0039】
(ただし、式中gは1から8の整数のいずれかを表す。)
【0040】
【化44】
【0041】
(ただし、式中hは1から7の整数のいずれかを表し、R6は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”,−CH3,−C2H5,−C3H7,−CH(CH3)2,−C(CH3)3からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0042】
【化45】
【0043】
(ただし、式中iは1から7の整数のいずれかを表し、R7は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0044】
【化46】
【0045】
(ただし、式中jは1から9の整数のいずれかを表す。)
なお、前記のハロゲン原子の具体例としては、フッ素,塩素,臭素等を挙げることができる。
【0046】
上記PHAを合成する基質として用いることのできる3−ヒドロキシアシルCoAとして、具体的には、下記式[11]から[20]で表される3−ヒドロキシアシルCoAを例示することができる。
【0047】
【化47】
【0048】
(ただし、前記式中−SCoAはアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、式中R1及びaの組合せが下記のいずれかである群より選択される少なくとも1つであり、かつ、前記式[1]で表されるモノマーユニットにおけるR1及びaと対応する。
R1が 水素原子(H)でありaが0から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が ハロゲン原子でありaが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1がカルボキシル基あるいはその塩であり、aが1から 10 の整数であるモノマーユニット、R1が発色団でありaが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が、
【0049】
【化48】
【0050】
でありaが1から7の整数のいずれかであるモノマーユニット。)
【0051】
【化49】
【0052】
(ただし、式中−SCoAはアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、bは前記式[2]で表されるモノマーユニットにおけるbと対応する0から7の整数のいずれかを表し、R2は前記式[2]で表されるモノマーユニットにおけるR2と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0053】
【化50】
【0054】
(ただし、式中−SCoAはアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、cは前記式[3]で表されるモノマーユニットにおけるcと対応する1から8の整数のいずれかを表し、R3は前記式[3]で表されるモノマーユニットにおけるR3と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0055】
【化51】
【0056】
(ただし、式中−SCoAはアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、dは前記式[4]で表されるモノマーユニットにおけるdと対応する0から7の整数のいずれかを表し、R4は前記式[4]で表されるモノマーユニットにおけるR4と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0057】
【化52】
【0058】
(ただし、式中−SCoAはアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、eは前記化学式[5]で表されるモノマーユニットにおけるeと対応する1から8の整数のいずれかを表し、R5は前記化学式[5]で表されるモノマーユニットにおけるR5と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7,−CH3,−C2H5,−C3H7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0059】
【化53】
【0060】
(ただし、式中−SCoAはアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、fは前記式[6]で表されるモノマーユニットにおけるfと対応する0から7の整数のいずれかを表す。)
【0061】
【化54】
【0062】
(ただし、式中−SCoAはアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、gは前記式[7]で表されるモノマーユニットにおけるgと対応する1から8の整数のいずれかを表す。)
【0063】
【化55】
【0064】
(ただし、式中−SCoAはアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、hは前記化学式[8]で表されるモノマーユニットにおけるhと対応する1から7の整数のいずれかを表し、R6は前記化学式[8]で表されるモノマーユニットにおけるR6と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”,−CH3,−C2H5,−C3H7,−CH(CH3)2,−C(CH3)3からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0065】
【化56】
【0066】
(ただし、式中−SCoAはアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、iは前記化学式[9]で表されるモノマーユニットにおけるiと対応する1から7の整数のいずれかを表し、R7は前記化学式[9]で表されるモノマーユニットにおけるR7と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0067】
【化57】
【0068】
(ただし、式中−SCoAはアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、jは前記化学式[10]で表されるモノマーユニットにおけるjと対応する1から9の整数のいずれかを表す。)
なお、前記のハロゲン原子の具体例としては、フッ素,塩素,臭素等を挙げることができる。また、前記の発色団としては、その3−ヒドロキシアシルCoA体がPHA合成酵素の触媒作用を受け得るものである限り特に限定はされないが、高分子合成時の立体障害等を考慮すると、3−ヒドロキシアシルCoA分子内において、CoAの結合したカルボキシル基と発色団との間に炭素数1から5のメチレン鎖があるほうが望ましい。また、該発色団を有するPHAによるマイクロカプセル化顔料の着色組成物としての用途としては、例えば、顔料の発色成分との複合作用による、より効果的な発色性等が期待できる。このような発色団の例としては、ニトロソ,ニトロ,アゾ,ジアリールメタン,トリアリールメタン,キサンテン,アクリジン,キノリン,メチン,チアゾール,インダミン,インドフェノール,ラクトン,アミノケトン,ヒドロキシケトン,スチルベン,アジン,オカサジン,チアジン,アントラキノン,フタロシアニン,インジゴイド等が挙げられる。
【0069】
本発明において用いられるPHAとしては、上記モノマーユニットを複数含むランダム共重合体やブロック共重合体を用いることも可能であり、各モノマーユニットや含まれる官能基の特性を利用したPHAの物性制御や複数の機能の付与、官能基間の相互作用を利用した新たな機能の発現等が可能となる。
【0070】
さらに、基質である3−ヒドロキシアシルCoAの種類や濃度等の組成を経時的に変化させることによって、顔料の内側から外側に向かう方向においてPHAのモノマーユニット組成を変化させることも可能である。これによって、例えば、顔料と親和性の低いPHAで被覆構造体を形成する必要がある場合、顔料を、まず該顔料と親和性の高いPHAで被覆し、その顔料と親和性の高いPHAのモノマーユニット組成を、目的とするPHAのモノマーユニット組成に内側から外側に向かう方向に変化、例えば多層構造あるいはグラディエント構造とすることで、顔料との結合を強固にしたPHA被膜を形成することが可能となる。
【0071】
また、マイクロカプセル化顔料表層のPHAにグラフト鎖を導入することにより、該グラフト鎖に起因する特性を備えたマイクロカプセル化顔料を得ることができる。また、顔料表層のPHAを架橋化せしめることにより、機械的強度や耐薬品性等に優れたマイクロカプセル化顔料を得ることができる。
【0072】
なお、本発明の構造体に用いる、PHA合成酵素により合成されるPHAは、一般にR体のみから構成されるアイソタクチックなポリマーである。
【0073】
PHAの合成基質である3−ヒドロキシアシルCoAは、例えば、酵素を用いたin vitro合成法、微生物や植物等の生物体を用いたin vivo合成法、化学合成法等の中から適宜選択した方法で合成して用いることができる。特に、酵素合成法は該基質の合成に一般に用いられている方法であり、市販のアシルCoAシンセターゼ(アシルCoAリガーゼともいう、E.C.6.2.1.3)を用いた下記反応、
【0074】
【化58】
【0075】
を用いた方法等が知られている(Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)、Appl.Microbiol.Biotechnol.,54,37−43(2000)等)。酵素や生物体を用いた合成工程には、バッチ式の合成方法を用いても良く、また、固定化酵素や固定化細胞を用いて連続生産しても良い。
【0076】
<PHA合成酵素及びその生産菌>
本発明に用いるPHA合成酵素は、該酵素を生産する微生物から適宜選択された微生物、あるいは、それら微生物のPHA合成酵素遺伝子を宿主生物に導入した形質転換体により生産されたものを用いることができる。
【0077】
PHA合成酵素を生産する微生物としては、PHBや3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットと3−ヒドロキシ−n−吉草酸ユニットとの共重合体(以下、PHB/Vと略す)の生産菌を用いることができ、このような微生物として、アエロモナス属(Aeromonas sp.)、アルカリゲネス属(Alcaligenes sp.)、クロマチウム属(Chromatium sp.)、コマモナス属(Comamonas sp.)、メチロバクテリウム属(Methylobacterium sp.)、パラコッカス属(Paracoccus sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)等の他に、本発明者らにより分離された、バークホルデリア・セパシア・KK01株(Burkholderia cepacia KK01)、ラルストーニャ・ユートロファ・TB64株(Ralstonia eutropha TB64)、アルカリゲネス属・TL2株(Alcaligenes sp.TL2)等を用いることができる。
【0078】
また、PHA合成酵素を生産する微生物として、中鎖長アルカン側鎖を有するPHA(以下、mcl−PHAと略す)やフェニル基等の官能基を側鎖に有するPHA(以下、unusual−PHA と略す)の生産菌を用いることができ、このような微生物として、シュードモナス・オレオボランス(Pseudomonas oleovorans),シュードモナス・レジノボランス(Pseudomonas resinovorans),シュードモナス属 61−3株(Pseudomonas sp.61−3),シュードモナス・プチダ・KT2442株(Pseudomonas putida KT2442),シュードモナス・アエルギノーサ等の他に、本発明者らにより分離された、シュードモナス・プチダ・P91株(Pseudomonas putida P91),シュードモナス・チコリアイ・H45株(Pseudomonas cichorii H45),シュードモナス・チコリアイ・YN2株(Pseudomonas cichorii YN2),シュードモナス・ジェッセニイ・P161株(Pseudomonas jessenii P161)等のシュードモナス属微生物や、特開2001−78753号公報に記載のバークホルデリア属・OK3株(Burkholderia sp.OK3、FERM P−17370),特開2001−69968号公報に記載のバークホルデリア属・OK4株(Burkholderia sp.OK4、FERM P−17371)等のバークホルデリア属微生物を用いることができる。
【0079】
また、アエロモナス属(Aeromonas sp.),コマモナス属(Comamonas sp.)等に属し、mcl−PHAやunusual−PHAを生産する微生物を用いることもできる。
【0080】
なお、前記KK01株は寄託番号FERM BP−4235として、TB64株は寄託番号FERM BP−6933として、TL2株は寄託番号FERM BP−6913として、P91株は寄託番号FERM BP−7373として、H45株は寄託番号FERM BP−7374として、YN2株は寄託番号FERM BP−7375として、P161株は寄託番号FERM BP−7376として、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約に基づき、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに国際寄託されている。
【0081】
本発明にかかるPHA合成酵素の生産に用いる微生物の通常の培養、例えば、保存菌株の作成、PHA合成酵素の生産に必要とされる菌数や活性状態を確保するための増殖等には、用いる微生物の増殖に必要な成分を含有する培地を適宜選択して用いる。例えば、微生物の生育や生存に悪影響を及ぼすものでない限り、一般的な天然培地(肉汁培地,酵母エキス等)や、栄養源を添加した合成培地等、いかなる種類の培地をも用いることができる。
【0082】
培養は液体培養や固体培養等、該微生物が増殖する方法であればいかなる方法をも用いることができる。さらに、バッチ培養,フェドバッチ培養,半連続培養,連続培養等の種類も問わない。液体バッチ培養の形態としては、振盪フラスコによって振盪させて酸素を供給する方法、ジャーファーメンターによる通気攪拌方式の酸素供給方法がある。また、これらの工程を複数段接続した多段方式を採用しても良い。
【0083】
前記のPHA生産微生物を用いてPHA合成酵素を生産する場合は、例えば、オクタン酸やノナン酸等のアルカン酸を含む無機培地で該微生物を増殖させ、対数増殖期から定常期初期にかけての微生物を遠心分離等で回収して所望の酵素を抽出する方法等を用いることができる。なお、上記のような条件で培養を行うと、添加したアルカン酸に由来するmcl−PHAが菌体内に合成されることになるが、この場合一般に、PHA合成酵素は菌体内に形成されるPHAの微粒子に結合して存在するとされている。
【0084】
しかし、本発明者らの検討によると、上記の方法で培養した菌体の破砕液を遠心分離した上清液にも、相当程度の酵素活性が存在していることがわかっている。これは、前記の如き対数増殖期から定常期初期にかけての比較的培養初期には、菌体内で該酵素が活発に生産され続けているため、遊離状態のPHA合成酵素も相当程度存在するためと推定される。
【0085】
上記の培養方法に用いる無機培地としては、リン源(リン酸塩等)、窒素源(アンモニウム塩,硝酸塩等)等、微生物が増殖し得る成分を含んでいるものであればいかなるものでも良く、例えば無機塩培地としては、MSB培地,E培地(J.Biol.Chem.,218,97−106(1956)),M9培地等を用いることができる。なお、本発明における実施例で用いるM9培地の組成は以下の通りである。
【0086】
Na2HPO4: 6.2 g
KH2PO4 : 3.0 g
NaCl : 0.5 g
NH4Cl : 1.0 g
(培地1リットル中、pH7.0)
さらに、良好な増殖及びPHA合成酵素の生産のためには、上記の無機塩培地に以下に示す微量成分溶液を0.3%(v/v)程度添加するのが好ましい。
【0087】
(微量成分溶液)
ニトリロ三酢酸:1.5 g
MgSO4 :3.0 g
MnSO4 :0.5 g
NaCl :1.0 g
FeSO4 :0.1 g
CaCl2 :0.1 g
CoCl2 :0.1 g
ZnSO4 :0.1 g
CuSO4 :0.1 g
AlK(SO4)2 :0.1 g
H3BO3 :0.1 g
Na2MoO4 :0.1 g
NiCl2 :0.1 g
(1リットル中)
培養温度としては上記の菌株が良好に増殖可能な温度であれば良く、例えば 14〜40℃、好ましくは 20〜35℃程度が適当である。
【0088】
また、前述のPHA生産菌の持つPHA合成酵素遺伝子を導入した形質転換体を用いて、所望のPHA合成酵素を生産することも可能である。PHA合成酵素遺伝子のクローニング、発現ベクターの作製及び形質転換体の作製は、定法に従って行うことができる。
【0089】
大腸菌等の細菌を宿主として得られた形質転換体においては、培養に用いる培地として、天然培地あるいは合成培地、例えば、LB培地,M9培地等が挙げられる。また、培養温度は 25〜37℃の範囲で、好気的に8〜27時間培養することにより微生物の増殖を図る。その後集菌し、菌体内に蓄積されたPHA合成酵素を回収することができる。培地には、必要に応じて、カナマイシン,アンピシリン,テトラサイクリン,クロラムフェニコール,ストレプトマイシン等の抗生物質を添加しても良い。
【0090】
また、発現ベクターにおいて、誘導性のプロモーターを用いている場合は、形質転換体を培養する際に、該プロモーターの対応する誘導物質を培地に添加して発現を促しても良い。例えば、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG),テトラサイクリン,インドールアクリル酸(IAA)等が誘導物質として挙げられる。
【0091】
PHA合成酵素としては、微生物の菌体破砕液や、硫酸アンモニウム等によりタンパク質成分を沈殿・回収した硫安塩析物等の粗酵素を用いても良く、また、各種方法で精製した精製酵素を用いても良い。該酵素には必要に応じて金属塩,グリセリン,ジチオスレイトール,EDTA,ウシ血清アルブミン(BSA)等の安定化剤や付活剤を適宜添加して用いることができる。
【0092】
PHA合成酵素の分離・精製には、PHA合成酵素の酵素活性が保持される方法であればいかなる方法をも用いることができる。例えば、得られた微生物菌体をフレンチプレス,超音波破砕機,リゾチーム,各種界面活性剤等を用いて破砕した後、遠心分離して得られた粗酵素液、またはここから調製した硫安塩析物について、アフィニティクロマトグラフィー,陽イオンまたは陰イオン交換クロマトグラフィー,ゲル濾過等の手段を単独または適宜組み合わせることによって精製酵素を得る。
【0093】
特に、遺伝子組換えタンパク質は、N末端やC末端にヒスチジン残基等の「タグ」を結合した融合タンパク質の形で発現させ、このタグを介して親和性樹脂に結合させることによって、より簡便に精製することができる。融合タンパク質から目的のタンパク質を分離するには、トロンビン,血液凝固因子Xa等のプロテアーゼで切断する、pHを低下せしめる、結合競合剤として高濃度のイミダゾールを添加する等の方法を用いると良い。発現ベクターとしてpTYB1(New Englan Biolab社製)を用いた場合のようにタグがインテインを含む場合はdithiothreitol等で還元条件として切断する。
【0094】
アフィニティクロマトグラフィーによる精製を可能とする融合タンパク質には、ヒスチジンタグの他にグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST),キチン結合ドメイン(CBD),マルトース結合タンパク(MBP),あるいはチオレドキシン(TRX)等も公知である。GST融合タンパク質は、GST親和性レジンによって精製することができる。
【0095】
PHA合成酵素の活性測定は、既報の各種方法を用いることができるが、例えば、3−ヒドロキシアシルCoAがPHA合成酵素の触媒作用により重合してPHAになる過程で放出されるCoAを、5,5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)で発色させて測定することを測定原理とする、以下に示す方法によって測定することができる。
【0096】
試薬1:ウシ血清アルブミン(Sigma社製)を0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)に3.0mg/mL溶解、
試薬2:3−ヒドロキシオクタノイルCoAを0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)に3.0mmol/L溶解、
試薬3:トリクロロ酢酸を0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)に 10mg/mL溶解、
試薬4:5,5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)を0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)に2.0mmol/L溶解。
【0097】
第1反応(PHA合成反応):試料(酵素)溶液 100μLに試薬1を 100μL添加して混合し、30℃で1分間プレインキュベートする。ここに、試薬2を 100μL添加して混合し、30℃で1〜30分間インキュベートした後、試薬3を添加して反応を停止させる。
【0098】
第2反応(遊離CoAの発色反応):反応停止した第1反応液を遠心分離(147,000m/s2(15,000G)、10分間)し、この上清 500μLに試薬4を 500μL添加し、30℃で 10分間インキュベートした後、412nmの吸光度を測定する。酵素活性の算出:1分間に1μmolのCoAを放出させる酵素量を1単位(U)とする。
【0099】
<塗料組成物製造方法>
本発明のマイクロカプセル化顔料を用いた塗料組成物の製造方法の一例としては、▲1▼顔料を水性媒体に分散する工程、▲2▼水性媒体に分散された顔料にポリヒドロキシアルカノエート合成酵素を固定化する工程、▲3▼基質である3−ヒドロキシアシルCoAを添加する工程、▲4▼PHA合成反応を行う工程、▲5▼マイクロカプセル化顔料を塗料組成物として加工する工程を少なくとも有する方法を例示することができる。
【0100】
顔料を水性媒体に分散する工程は、選択した1つまたは複数の顔料を水性媒体に添加し、分散処理を行った後、必要であれば所望の粒径範囲に分級することによって行う。
【0101】
本発明で用いられる顔料は、各種の有機及び無機の着色顔料,体質顔料,防錆・防汚顔料等から1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0102】
有機顔料の例としては、アゾ系,フタロシアニン系,ベンゾイミダゾロン系,キナクリドン系,イソインドリノン系,ピラスロン系,ジブロムアンザンスロン系,インダスロン系,アンスラピリミジン系,フラバスロン系,ペリレン系,ペリノン系,キノフタロン系,フタロン系,チオインジゴ系,インジゴ系,ジオキサジン系,アントラキノン系,キサンテン系,メチン系,アゾメチン系の顔料及びその他の金属錯体系を含む縮合多環系顔料等を挙げることができる。
【0103】
無機顔料の例としては、ミロリブルー,酸化鉄,コバルト紫,マンガン紫,群青,紺青,コバルトブルー,セルリアンブルー,ビリジアン,エメラルドグリーン,コバルトグリーン等を挙げることができる。
【0104】
体質顔料の例としては、炭酸カルシウム,硫酸バリウム,カオリン,シリカ,タルク等を挙げることができる。
【0105】
防錆・防汚顔料の例としては、鉛丹,クロム酸亜鉛,シアナミド鉛,塩基性クロム酸鉛,亜鉛末,亜酸化銅等を挙げることができる。
【0106】
上記顔料は、公知の各種の表面処理等を施して用いても良い。表面処理の例としては、界面活性剤処理や、カップリング処理や、顔料誘導体処理等が挙げられる。
【0107】
分散処理は、ホモミキサー,水平ミニミル,ボールミル,ロールミル,サンドグラインダー,摩砕機,超音波処理等によって行うことができる。また、液体ジェット相互作用室内で少なくとも6.89MPa(1,000psi)の液圧で多数のノズルに混合物を通す方法によって行うこともできる。
【0108】
本工程の合成反応用の水性媒体の組成は、顔料を所望の状態に分散させ得るもので、かつ後述する酵素を顔料に固定化する工程やPHA合成反応を行う工程を妨げないものであれば良いが、後の工程の省略化を図るために、本工程の水性媒体の組成をPHA合成酵素の活性を発揮させ得る組成としておくこともできる。
【0109】
ここで、PHA合成酵素の活性を発揮させ得る組成として、例えば緩衝液を用いることができる。緩衝液としては、生化学的反応に用いられる一般的な緩衝液、例えば、酢酸バッファー,リン酸バッファー,リン酸カリウムバッファー,3−(N−モルフォリノ)プロパンスルフォン酸(MOPS)バッファー,N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルフォン酸(TAPS)バッファー,トリス塩酸バッファー,グリシンバッファー,2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルフォン酸(CHES)バッファー等が好適に用いられる。
【0110】
PHA合成酵素の活性を発揮させ得る緩衝液の濃度は、一般的な濃度、即ち5mmol/L〜1.0mol/Lの範囲で使用することができるが、望ましくは 10〜200mmol/Lで行うことが好ましい。また、pHは5.5〜9.0、好ましくは7.0〜8.5となるように調製するが、使用するPHA合成酵素の至適pHやpH安定性によっては、上記範囲以外に条件を設定することも除外されない。
【0111】
また、水性媒体中での顔料の分散状態を保つために、後の工程を妨げない種類及び濃度、さらには本発明の着色組成物の目的を妨げない種類及び濃度であれば、適当な界面活性剤を添加しても良い。
【0112】
このような界面活性剤の例として、オレイン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル−N−サルコシン酸ナトリウム,コール酸ナトリウム,デオキシコール酸ナトリウム,タウロデオキシコール酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド,ドデシルピリジニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤、3−〔(コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ〕−1−プロパンスルホン酸(CHAPS),3−〔(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ〕−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸(CHAPSO),パルミトイルリゾレシチン,ドデシル−β−アラニン等の両性イオン界面活性剤、オクチルグルコシド,オクチルチオグルコシド,ヘプチルチオグルコシド,デカノイル−N−メチルグルカミド(MEGA−10),ポリオキシエチレンドデシルエーテル(Brij,Lubrol),ポリオキシエチレン−i−オクチルフェニルエーテル(Triton X),ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(NonidetP−40、Triton N),ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(Span),ポリオキシエチレンソリビトールエステル(Tween)等の非イオン界面活性剤等を挙げることができる。
【0113】
また、水性媒体中での顔料の分散状態を保つために、後の工程を妨げない種類及び濃度、さらには本発明の着色組成物の目的を妨げない種類及び濃度であれば、適当な補助溶媒を添加しても良い。補助溶媒としては、例えば、ヘキサン等の直鎖脂肪族炭化水素、メタノール,エタノール等の1価アルコール類、グリセロール等の多価アルコール類、脂肪酸エーテル類、カルボン酸エステル類等の誘導体から選ばれる一種または二種以上のものを選択し使用することができる。
【0114】
PHA合成酵素を顔料に固定化する工程は、先の顔料分散液にPHA合成酵素を添加し、固定化処理を施すことによって行うことができる。固定化処理は、該酵素の活性が保持され得るものであり、かつ、所望の顔料において適用可能なものであれば、通常行われている酵素固定化方法の中から任意に選択して行うことができる。例えば、共有結合法,イオン吸着法,疎水吸着法,物理的吸着法,アフィニティ吸着法,架橋法,格子型包括法等を例示することができるが、特にイオン吸着や疎水吸着を利用した固定化方法が簡便である。
【0115】
PHA合成酵素等の酵素タンパク質は、アミノ酸が多数結合したポリペプチドであり、リシン,ヒスチジン,アルギニン,アスパラギン酸,グルタミン酸等の遊離のイオン性基を有するアミノ酸によってイオン吸着体としての性質を示し、またアラニン,バリン,ロイシン,イソロイシン,メチオニン,トリプトファン,フェニルアラニン,プロリン等の遊離の疎水性基を有するアミノ酸によって、また有機高分子であるという点で疎水吸着体としての性質を有している。従って、程度の差はあるが、イオン性や疎水性、もしくはイオン性と疎水性の両方の性質を有する顔料に吸着させることが可能である。
【0116】
主にイオン吸着法によってPHA合成酵素を固定化する方法では、イオン性官能基を表面に発現している顔料を用いれば良く、例えば、粘土鉱物や金属酸化物等を主要な成分とする無機顔料を用いることができる。
【0117】
また、主に疎水吸着によってPHA合成酵素を固定化する方法では、表面が非極性である顔料を用いればよく、例えば、芳香環を複数有するアゾ顔料,縮合多環のフタロシアニン系顔料,アントラキノン系顔料等の有機顔料,カーボンブラック等の炭素結晶からなる無機顔料を用いることができる。
【0118】
イオン吸着法または疎水吸着法によるPHA合成酵素の顔料への固定化は、顔料とPHA合成酵素を所定の水性媒体中で所定の濃度となるように混合することによって達成される。このとき、酵素が顔料の表面に均等に吸着されるよう、反応容器を適当な強度で振盪あるいは攪拌することが望ましい。
【0119】
上記固定化処理において、顔料と酵素の混合された水性媒体の組成としては、水性媒体のpHや塩濃度によって顔料及びPHA合成酵素の表面電荷の正負や電荷量、疎水性が変化することから、それを考慮した組成とするのが望ましい。
【0120】
例えば、顔料が主にイオン吸着性である場合には、塩濃度を下げることにより、顔料とPHA合成酵素との吸着に寄与する電荷量を増やすことができる。また、pHを変える事により、両者の反対電荷を増やすことができる。顔料が主に疎水吸着性である場合には、塩濃度を上げることによって両者の疎水性を増やすことができる。また、予め電気泳動やぬれ角等を測定し、顔料やPHA合成酵素の荷電状態や疎水性を調べることで、吸着に適した組成を設定することもできる。
【0121】
さらに、顔料とPHA合成酵素との吸着量を直接測定して組成を求めることもできる。吸着量の測定は、例えば、顔料が分散された溶液に濃度既知のPHA合成酵素溶液を添加し、吸着処理を行った後、溶液中のPHA合成酵素濃度を測定し、差し引き法により吸着酵素量を求める等の方法を用いれば良い。
【0122】
イオン吸着法や疎水吸着法によって酵素を固定化し難い顔料の場合は、操作の煩雑さや酵素の失活の可能性を配慮した処理を必要に応じて行うことで共有結合法による固定化を用いてもかまわない。例えば、芳香族アミノ基を有する顔料をジアゾ化し、これに酵素をジアゾカップリングする方法や、カルボキシル基、アミノ基を有する顔料と酵素の間にペプチド結合を形成させる方法、ハロゲン基を有する顔料と酵素のアミノ基等との間でアルキル化する方法、固体粒子のアミノ基と酵素のアミノ基との間を架橋する方法、アルデヒド基またはケトン基を有する化合物とイソシアニド化合物の存在下、カルボキシル基,アミノ基を有する顔料と酵素を反応させる方法、ジスルフィド基を有する顔料と酵素のチオール基との間で交換反応させる方法等がある。
【0123】
また、アフィニティ吸着によって酵素をリガンドが導入された顔料に固定化しても良い。この場合、リガンドとしてPHA合成酵素の酵素活性を維持しながらアフィニティ吸着を行えるものであれば、いかなるものも選択できる。また、PHA合成酵素にタンパク質等の他の生体高分子を結合させ、結合した生体高分子をアフィニティ吸着することで酵素を固定化しても良い。PHA合成酵素と生体高分子との結合は遺伝子組換え等によって行っても良いし、化学的に行っても良い。例えば、実施例に後述するように、形質転換によってGSTをPHA合成酵素に融合し、GSTのリガンドであるグルタチオンを導入したセファロースに融合タンパク質をアフィニティ吸着し、固定化することができる。
【0124】
また、顔料に対して結合能を有するアミノ酸配列を含むペプチドをPHA合成酵素に融合して提示させ、顔料に対して結合能を有するアミノ酸配列のペプチド部分と、顔料との結合性に基づいて、顔料表面にPHA合成酵素を固定化することもできる。
【0125】
顔料に対する結合能を有するアミノ酸配列は、例えば、ランダムペプチドライブラリのスクリーニングによって決定することができる。
【0126】
例えばM13系ファージの表面蛋白質(例えばgeneIII 蛋白質)のN末端側遺伝子にランダム合成遺伝子を連結して調製されたファージディスプレイペプチドライブラリーを好適に用いることが出来るが、この場合顔料に対する結合能を有するアミノ酸配列の決定するには、次のような手順をとる。
【0127】
即ち、顔料に対してファージディスプレイペプチドライブラリーを添加することによって接触させ、その後洗浄により結合ファージと非結合ファージを分離する。顔料結合ファージを酸等により溶出し緩衝液で中和した後、大腸菌に感染させファージを増幅する。この選別を複数回繰り返すと目的の顔料に結合能の有る複数のクローンが濃縮される。
【0128】
ここで単一なクローンを得るため再度大腸菌に感染させた状態で培地プレート上にコロニーを作らせる。それぞれの単一コロニーを液体培地で培養した後、培地上清中に存在するファージをポリエチレングリコール等で沈殿精製し、その塩基配列を解析すればペプチドの構造を知ることができる。
【0129】
上記方法により得られた顔料に対する結合能を有するペプチドのアミノ酸配列は、通常の遺伝子工学的手法を用いて、PHA合成酵素に融合して利用される。顔料に対する結合能を有するペプチドはPHA合成酵素のN末端あるいはC末端に連結して発現することができる。また適当なスペーサー配列を挿入して発現することもできる。スペーサー配列としては、およそ3〜400アミノ酸が好ましく、また、スペーサー配列はいかなるアミノ酸を含んでも良い。最も好ましくは、スペーサー配列は、PHA合成酵素が機能するのを妨害せず、また、PHA合成酵素が顔料に結合するのを妨害しないものである。
【0130】
上記方法により作製された、酵素を固定化した顔料は、そのままでも用いることができるが、さらに凍結乾燥等を施した上で使用することもできる。
【0131】
3−ヒドロキシアシルCoAの重合によりPHAが合成される反応において放出されるCoA量が1分間に1μmolとなるPHA合成酵素量を1Uとしたとき、顔料に固定する酵素の量は、顔料1g当り 10〜1,000U、望ましくは 50〜500Uの範囲内に設定すると良い。
【0132】
酵素の固定化処理を行う時間は1分間〜24時間、望ましくは 10分間〜1時間に設定すると良い。
【0133】
また、前工程の顔料を分散する工程を省略して、水性媒体に分散する前の顔料を酵素溶液に直接添加し、酵素溶液中で分散を行いながら、酵素を顔料に固定化しても良い。この場合、顔料に固定化された酵素が保有するイオン性官能基による電気的反発や立体障害によって、顔料が水性媒体中で分散することを容易にし、水性媒体への界面活性剤の添加を不要にする、もしくは少量化することが可能となる。
【0134】
基質である3−ヒドロキシアシルCoAを添加する工程は、前工程の酵素が固定化された顔料の水性分散液に対し、別途用意した3−ヒドロキシアシルCoAの保存液を目的濃度に達するように添加することによって達成される。基質である3−ヒドロキシアシルCoAは、一般に0.1mmol/L〜1.0mol/L、望ましくは0.2mmol/L〜0.2mol/L、さらに望ましくは0.2mmol/L〜1.0mmol/Lの終濃度で添加される。
【0135】
また、上記工程において、水系反応液中の3−ヒドロキシアシルCoAの種類や濃度等の組成を経時的に変化させることによって、顔料を被覆するPHAのモノマーユニット組成を、顔料の内側から外側に向かう方向に変化させることができる。
【0136】
このモノマーユニット組成の変化した顔料の形態として、例えば、PHA被膜の組成変化が連続的で、マイクロカプセル化顔料の内側から外側に向かう方向に組成の勾配を形成した1層のPHAが顔料を被覆した形態を挙げることができる。製造方法としては、例えば、PHAを合成しながら反応液中に別組成の3−ヒドロキシアシルCoAを添加する等の方法によれば良い。
【0137】
また別の形態として、PHA被膜の組成変化が段階的で、組成の異なるPHAが顔料を多層に被覆した形態を挙げることができる。この製造方法としては、ある3−ヒドロキシアシルCoAの組成でPHAを合成した後、遠心分離等によって調製中の顔料を反応液から一旦回収し、これに異なる3−ヒドロキシアシルCoAの組成からなる反応液を再度添加する等の方法によれば良い。
【0138】
PHA合成反応を行う工程は、合成するPHAによって所望の形状のマイクロカプセル化顔料が得られるように、反応溶液の組成を前工程までに調製していない場合にはPHA合成酵素の活性を発揮させ得る組成となるように調製を行い、反応温度及び反応時間を調整する方法によって行う。
【0139】
PHA合成酵素の活性を発揮させ得る反応溶液中の緩衝液の濃度は、一般的な濃度、即ち、5mmol/L〜1.0mol/Lの範囲で使用できるが、望ましくは 10〜200mmol/Lで行う。また、pHは5.5〜9.0、好ましくは7.0〜8.5となるように調整するが、使用するPHA合成酵素の至適pHやpH安定性によっては、上記範囲以外に条件を設定することも除外されない。
【0140】
反応温度は、使用するPHA合成酵素の特性に応じて適宜設定するものであるが、通常、4〜50℃、好ましくは 20〜40℃に設定すると良い。ただし、使用するPHA合成酵素の至適温度や耐熱性によっては、上記範囲以外に条件を設定することも除外されない。
【0141】
反応時間は、使用するPHA合成酵素の安定性等にもよるが、通常、1分間〜24時間、好ましくは 30分間〜3時間の範囲内で適宜選択して設定する。
【0142】
前記工程によって得られるマイクロカプセル化顔料における、外被を構成するPHAのモノマーユニット組成及び構造は、該マイクロカプセル化顔料からクロロホルム等によってPHAを抽出した後、ガスクロマトグラフィーや、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)とイオンスパッタリング技術等を用いて分析することができる。
【0143】
PHAの分子量に特に制限はないが、マイクロカプセル化顔料の強度を維持するため、数平均分子量として1,000〜10,000,000、好ましくは、10,000〜10,000,00 の範囲にすると良い。PHAの分子量は、マイクロカプセル化顔料からクロロホルム等によってPHAを抽出した後、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定すれば良い。
【0144】
また、本工程で得られたマイクロカプセル化顔料に各種二次加工や化学修飾等の処理を施して使用することもできる。
【0145】
例えば、顔料表層のPHAに化学修飾を施すことにより、さらに有用な機能・特性を備えたマイクロカプセル化顔料を得ることができる。なかでも、グラフト鎖を導入することにより、該グラフト鎖に起因する各種の特性を備えたマイクロカプセル化顔料を得ることができる。特に、後述するポリシロキサンをグラフト鎖として導入すれば、機械的強度,分散性,耐候性,撥水性,耐水性,耐熱性等が向上したマイクロカプセル化顔料を得ることができる。また、マイクロカプセル化顔料表層のPHAを架橋化せしめることにより、該マイクロカプセル化顔料の機械的強度,耐薬品性,耐熱性等を向上させることが可能である。
【0146】
化学修飾の方法は、所望の機能や構造を得る目的を満たす方法であれば特に限定されないが、例えば、反応性官能基を側鎖に有するPHAを合成し、該官能基の化学反応を利用して化学修飾する方法を用いることができる。
【0147】
前記の反応性官能基の種類は、所望の機能や構造を得る目的を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、前記したエポキシ基を例示することができる。エポキシ基を側鎖に有するPHAは、通常のエポキシ基を有するポリマーと同様の化学的変換を行うことができる。具体的には、例えば水酸基に変換したり、スルホン基を導入することが可能である。また、チオールやアミンを有する化合物を付加することもでき、例えば、末端に反応性官能基を有する化合物、具体的には、エポキシ基との反応性が高いアミノ基を末端に有する化合物等を添加して反応させることにより、ポリマーのグラフト鎖が形成される。
【0148】
アミノ基を末端に有する化合物としては、ポリビニルアミン,ポリエチレンイミン,アミノ変性ポリシロキサン等のアミノ変性ポリマーを例示することができる。このうち、アミノ変性ポリシロキサンとしては、市販の変性シリコーンオイルを使用しても良く、また、J.Amer.Chem.Soc.,78,2278(1956)等に記載の方法で合成して使用することもでき、該ポリマーのグラフト鎖の付加による機械的強度,分散性,耐候性,撥水性,耐水性,耐熱性の改善等の効果が期待できる。
【0149】
また、エポキシ基を有するポリマーの化学的変換の他の例として、ヘキサメチレンジアミン等のジアミン化合物,無水コハク酸,2−エチル−4−メチルイミダゾール等による架橋反応が、物理化学的変換の例として電子線照射等による架橋反応が挙げられる。このうち、エポキシ基を側鎖に有するPHAとヘキサメチレンジアミンとの反応は、下記のスキームに示すような形で進行し、架橋ポリマーが生成する。
【0150】
【化59】
【0151】
本発明のマイクロカプセル化顔料の製造方法では、顔料に直接PHAを被覆できるため、マイクロカプセル中の顔料の密度を高めることができる。マイクロカプセル化顔料におけるPHAの被覆量としては、顔料に対して1〜30質量%の範囲の質量組成比、好ましくは1〜20質量%の範囲、より好ましくは1〜15質量%とする。また、前記マイクロカプセル化顔料の粒径は、通常 20μm以下とするのが望ましく、さらに光沢ある平滑な塗面を得るためには、粒径を1μm以下とすると有効である。マイクロカプセル化顔料の粒径は、吸光度法,静的光散乱法,動的光散乱法,遠心沈降法等の既知の方法により測定でき、例えば、コールターカウンターマルチサイザー等の粒径測定装置を用いることができる。
【0152】
本発明のマイクロカプセル化顔料は、上記のように顔料密度が高く、かつ微小であるという特長を有しているため、該マイクロカプセル化顔料を含有する塗料組成物を用いることで、色彩性の良好な塗膜を形成せしめることができる。
【0153】
本発明において、前記マイクロカプセル化顔料を含有させる塗料成分は、塗膜形成樹脂及びその他の塗料添加剤を配合した通常の溶剤系,非水分散液型,水溶液型,水分散液型等のものが使用できる。従って、ビヒクル(展色剤)となる塗膜形成樹脂には、アクリル樹脂,ポリエステル樹脂,ポリ塩化ビニル樹脂,フッ素樹脂等、通常用いられる塗膜形成樹脂が使用できる。
【0154】
上記の塗膜形成樹脂には、必要に応じて硬化剤を添加してもよく、例えば、メラミン樹脂,グアナミン樹脂,尿素樹脂等のアミノ樹脂や(ブロック)ポリイソシアネート化合物等を硬化剤として用いることができる。
【0155】
さらに、防汚剤,防カビ剤,レベリング剤、タレ防止剤、消泡剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、滑剤等の塗料添加物を添加して用いることもできる。
【0156】
本発明の塗料組成物は、例えば、刷毛塗り,浸漬法,スプレー塗装,ロール塗装,静電塗装,電着塗装等の公知の塗装法により塗装することが出来る。塗装対象物としては、例えば、木,紙,繊維,プラスチック,セラミックス,セメント,金属等の各種素材を挙げることができる。
【0157】
本発明の塗料組成物は、揮発乾燥等により塗膜を硬化せしめても良く、また、例えば、100〜250℃で5秒〜30分の加熱条件で焼付けることにより硬化塗膜を得ても良い。
【0158】
また、感光性樹脂や光重合性モノマーを構成成分として含み、さらに必要に応じて光重合開始剤等の添加剤を含有する光硬化性塗料として用いる場合は、紫外線,可視光,レーザー光等を照射することで塗膜を硬化させることができる。光硬化性塗料は一般に低公害で速乾性に優れるため、木質系基材等の塗装に広く用いられている。
【0159】
本発明のマイクロカプセル化顔料を光硬化性塗料として用いる場合、感光性樹脂としては従来公知のいずれのものを用いても良い。例えば、水酸基,カルボキシル基,アミノ基等の反応性置換基を有する線状高分子に、必要によりイソシアナート基,アルデヒド基,エポキシ基等を介して、(メタ)アクリル系化合物,ケイ皮酸系化合物,ビニルエステル系化合物等の反応性不飽和結合を有する化合物から導かれる光架橋性基を導入した樹脂等を用いることができる。さらには、スチレン/無水マレイン酸共重合体,α−オレフィン/無水マレイン酸共重合体等の酸無水物を構造単位に含む線状高分子、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル系化合物でハーフエステル化されたものを用いることもできる。これらは、必要に応じて2種以上の組合せで用いることもできる。感光性樹脂は、着色組成物中の全固形分に対して5〜90質量%、好ましくは 20〜70質量%の範囲で使用される。
【0160】
光重合性モノマーとしては、ノニルフェニルカルビトールアクリレート,2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート,2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート,2−ヒドロキシエチルアクリレート,N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー、トリプロピレングリコールジアクリレート,トリエチレングリコールジアクリレート,テトラエチレングリコールジアクリレート,ポリエチレングリコールジアクリレート,ビスフェノールAジアクリレート等の2官能モノマー、トリメチロールプロパントリアクリレート,ペンタエリスリトールトリアクリレート等の3官能モノマー、ジペンタエリスリトールペンタ,ヘキサアクリレート等のその他の多官能モノマー等が挙げられる。これらの光重合性モノマーは2種類以上組み合わせて使用することもできる。光重合性モノマーは、着色組成物中の全固形分に対して5〜90質量%、好ましくは 20〜70質量%の範囲で使用される。
【0161】
光重合開始剤としては、ベンゾイン及びそのアルキルエーテル類,アセトフェノン類,チオキサントン類,ケタール類,ベンゾフェノン類,アントラキノン類,キサントン類,トリアジン類,ヘキサアリールビスイミダゾール系化合物等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。光重合開始剤はバインダー樹脂及び光重合性モノマーの合計量に対して0.2〜30質量%、好ましくは2〜20質量%の範囲で使用される。
【0162】
一方、前記電着塗装は、電着塗料槽内に浸漬した導電性を有する被塗物を介して電流を通して、電着塗料中の固形成分を被塗物表面に析出せしめ、これにより塗膜を形成する塗装法であり、塗装工程の自動化が容易であり、塗料の被塗物への付き回り性が良く、厚みの均一な塗膜が得られる等の利点を有することから、従来より自動車塗装ライン等の各種塗装ラインで広く用いられている。
【0163】
本発明のマイクロカプセル化顔料は、アニオン系やカチオン系いずれの電着塗料としても用いることができ、例えば、アクリル系樹脂,エポキシ系樹脂,ポリエステル系樹脂,フッ素系樹脂,ポリブタジエン系樹脂等を、マイクロカプセル化顔料及び硬化剤と共にイオン交換水に分散させた組成物として用いる。硬化剤としてはメラミン樹脂,ブロックポリイソシアネート等が例示できる。
【0164】
一般に、電着塗料には、各成分の分散を促進するために界面活性剤が使用されるが、本発明のマイクロカプセル化顔料を用いることにより、界面活性剤の使用を低減あるいは全く使用しないことができ、該界面活性剤に起因する塗膜の物理的特性の低下等を防ぐことができる。
【0165】
なお、本発明の着色組成物及びその製造方法は、上記に限定されるものではない。
【0166】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、以下の実施例は本発明の最良の実施形態の一例ではあるが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下における「%」は特に標記した以外は質量基準である。
【0167】
<参考例1> PHA合成酵素生産能を有する形質転換体の作製
YN2株を 100mLのLB培地(1%ポリペプトン(日本製薬(株)製)、0.5%酵母エキス(Difco社製)、0.5%塩化ナトリウム、pH7.4)で 30℃、一晩培養後、マーマーらの方法により染色体DNAを分離回収した。得られた染色体DNAを制限酵素HindIIIで完全分解した。
【0168】
ベクターにはpUC18を使用し、制限酵素HindIIIで切断した。末端の脱リン酸処理(Molecular Cloning,1,572,(1989);Cold Spring Harbor Laboratory出版)の後、DNAライゲーションキットVer.II(宝酒造(株)製)を用いて、ベクターの切断部位(クローニングサイト)と染色体DNAのHindIII完全分解断片とを連結した。この染色体DNA断片を組み込んだプラスミドベクターを用いて、大腸菌(Escherichia coli HB101)を形質転換し、YN2株のDNAライブラリーを作製した。
【0169】
次に、YN2株のPHA合成酵素遺伝子を含むDNA断片を選択するため、コロニー・ハイブリダイズ用のプローブ調製を行った。配列番号:1及び配列番号:2の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを合成し(アマシャムファルマシア・バイオテク(株))、このオリゴヌクレオチドをプライマーに用いて、染色体DNAをテンプレートとしてPCRを行った。PCR増幅されてきたDNA断片をプローブとして用いた。プローブの標識化は、市販の標識酵素系AlkPhosDirect(アマシャムファルマシア・バイオテク(株)製)を利用して行った。
【0170】
得られた標識化プローブを用いて、YN2株の染色体DNAライブラリーからコロニーハイブリダイゼーション法によってPHA合成酵素遺伝子を含む組換えプラスミドを有する大腸菌菌株を選抜した。選抜した菌株から、アルカリ法によってプラスミドを回収することで、PHA合成酵素遺伝子を含むDNA断片を得ることができた。
【0171】
ここで取得した遺伝子DNA断片を、不和合性グループであるIncP、IncQ、あるいはIncWの何れにも属さない広宿主域複製領域を含むベクターpBBR122(Mo Bi Tec)に組み換えた。この組み換えプラスミドをシュードモナス・チコリアイYN2ml株(PHA合成能欠損株)にエレクトロポレーション法により形質転換したところ、YN2ml株のPHA合成能が復帰し、相補性を示した。従って、選抜された遺伝子DNA断片は、シュードモナス・チコリアイYN2ml株内において、PHA合成酵素に翻訳可能な、PHA合成酵素遺伝子領域を含むことが確認される。
【0172】
このDNA断片について、サンガー法により塩基配列を決定した。その結果、決定された塩基配列中には、それぞれペプチド鎖をコードする、配列番号:3及び配列番号:4で示される塩基配列が存在することが確認された。これらのPHA合成酵素遺伝子について、染色体DNAをテンプレートとしてPCRを行い、PHA合成酵素遺伝子の完全長を再調製した。
【0173】
即ち、配列番号:3で示される塩基配列のPHA合成酵素遺伝子に対する、上流側プライマー(配列番号:5)及び下流側プライマー(配列番号:6)、配列番号:4で示される塩基配列のPHA合成酵素遺伝子に対する、上流側プライマー(配列番号:7)及び下流側プライマー(配列番号:8)をそれぞれ合成した(アマシャムファルマシア・バイオテク(株))。
【0174】
これらのプライマーを用いて、配列番号:3及び配列番号:4で示される塩基配列それぞれについてPCRを行い、PHA合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA−PCRキット;宝酒造(株)製)。次に、得られたPCR増幅断片及び発現ベクターpTrc 99Aを制限酵素HindIIIで切断し、脱リン酸化処理(Molecular Cloning,1巻,572 頁,1989年;Cold Spring Harbor Laboratory出版)した後、この発現ベクターpTrc 99Aの切断部位に、両末端の不用な塩基配列を除いたPHA合成酵素遺伝子の完全長を含むDNA断片を、DNAライゲーションキットVer.II(宝酒造(株)製)を用いて連結した。
【0175】
得られた組換えプラスミドで大腸菌(Escherichia coli HB101:宝酒造)を塩化カルシウム法により形質転換した。得られた組換え体を培養し、組換えプラスミドの増幅を行い、組換えプラスミドをそれぞれ回収した。配列番号:3の遺伝子DNAを保持する組換えプラスミドをpYN2−C1、配列番号:4の遺伝子DNAを保持する組換えプラスミドをpYN2−C2とした。pYN2−C1、pYN2−C2で大腸菌(Escherichia coli HB101fB fadB欠損株)を塩化カルシウム法により形質転換し、それぞれの組換えプラスミドを保持する組換え大腸菌株、pYN2−C1組換え株、pYN2−C2組換え株を得た。
【0176】
<参考例2> PHA合成酵素の生産1
pYN2−C1に対して、上流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:9)及び下流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号: 10)をそれぞれ設計・合成した(アマシャムファルマシア・バイオテク(株))。このオリゴヌクレオチドをプライマーとして、pYN2−C1をテンプレートとしてPCRを行い、上流にBamHI制限部位、下流にXhoI制限部位を有するPHA合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA−PCRキット、宝酒造(株)製)。
【0177】
同様にpYN2−C2に対して、上流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:11)及び下流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:12)をそれぞれ設計・合成した(アマシャムファルマシア・バイオテク(株))。このオリゴヌクレオチドをプライマーとして、pYN2−C2をテンプレートとしてPCRを行い、上流にBamHI制限部位、下流にXhoI制限部位を有するPHA合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA−PCRキット、宝酒造(株)製)。
【0178】
精製したそれぞれのPCR増幅産物をBamHI及びXhoIにより消化し、プラスミドpGEX−6P−1(アマシャムファルマシア・バイオテク(株)製)の対応する部位に挿入した。これらのベクターを用いて大腸菌(JM109)を形質転換し、発現用菌株を得た。菌株の確認は、Miniprep(Wizard Minipreps DNA Purification Systems、PROMEGA社製)を用いて大量に調製したプラスミドDNAをBamHI、XhoIで処理して得られるDNA断片により行った。
【0179】
得られた菌株をLB−Amp培地 10mLで一晩プレ・カルチャーした後、その0.1mLを、10mLのLB−Amp培地に添加し、37℃、170rpmで3時間振とう培養した。その後IPTGを添加し(終濃度 1mmol/L)、37℃で4から 12時間培養を続けた。
【0180】
IPTG 誘導した大腸菌を集菌(78000m/s2(8,000G)、2分間、4℃)し、1/10量の4℃リン酸緩衝生理食塩水(PBS;8g NaCl,1.44g Na2HPO4,0.24g KH2PO4,0.2g KCl,1000mL精製水)に再懸濁した。凍結融解及びソニケーションにより菌体を破砕し、遠心(78000m/s2(8,000G)、10分間、4℃)して固形夾雑物を取り除いた。
【0181】
目的の発現タンパク質が上清に存在することをSDS−PAGEで確認した後、誘導され発現されたGST融合タンパク質をグルタチオン・セファロース4B(アマシャムファルマシア・バイオテク(株)製)で精製した。使用するグルタチオンセファロースは、予め非特異的吸着を抑える処理を行った。即ち、グルタチオンセファロースを同量のPBSで3回洗浄(78000m/s2(8,000G)、1分間、4℃)した後、4%ウシ血清アルブミン含有PBSを同量加えて4℃で1時間処理した。処理後同量のPBSで2回洗浄し、1/2量のPBSに再懸濁した。
【0182】
前処理したグルタチオンセファロース 40μLを、無細胞抽出液1mL に添加し、4℃で静かに攪拌した。これにより、融合タンパク質GST−YN2−C1及びGST−YN2−C2をグルタチオンセファロースに吸着させた。
【0183】
吸着後、遠心(78000m/s2(8,000G)、1分間、4℃)してグルタチオンセファロースを回収し、400μLのPBSで3回洗浄した。その後、10mmol/Lグルタチオン 40μLを添加し、4℃で1時間攪拌して、吸着した融合タンパク質を溶出した。遠心(78000m/s2(8,000G)、2分間、4℃)して上清を回収した後PBSに対して透析し、GST融合タンパク質を精製した。SDS−PAGEにより、シングルバンドを確認した。
【0184】
各GST融合タンパク質 500μgをPreScissionプロテアーゼ(アマシャムファルマシア・バイオテク(株)製、5U)で消化した後、グルタチオン・セファロースに通してプロテアーゼとGSTとを除去した。フロースルー分画をさらに、PBSで平衡化したセファデックスG 200 カラムにかけ、発現タンパク質YN2−C1及びYN2−C2の最終精製物を得た。SDS−PAGEによりそれぞれ 60.8kDa、及び 61.5kDaのシングルバンドを確認した。
【0185】
該酵素を生体溶液試料濃縮剤(みずぶとりくんAB−1100、アトー(株)製)を用いて濃縮し、10U/mLの精製酵素溶液を得た。
【0186】
各精製酵素活性は前述の方法で測定した。また、試料中のタンパク質濃度は、マイクロBCAタンパク質定量試薬キット(ピアスケミカル社製)によって測定した。各精製酵素の活性測定の結果を表1に示した。
【0187】
【表1】
【0188】
<参考例3> PHA合成酵素の生産2
P91株、H45株、YN2株またはP161株を、酵母エキス(Difco社製)0.5%、オクタン酸0.1%とを含むM9培地 200mLに植菌して、30℃、125ストローク/分で振盪培養した。24時間後、菌体を遠心分離(98000m/s2(10,000G)、4℃、10分間)によって回収し、0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)200mLに再懸濁して再度遠心分離することによって洗浄した。菌体を0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)2.0mLに再懸濁し、超音波破砕機にて破砕した後、遠心分離(118000m/s2(12,000G)、4℃、10分間)して上清を回収して粗酵素溶液を得た。各粗酵素活性は前述の方法で測定し、その結果を表2に示した。
【0189】
【表2】
【0190】
該粗酵素溶液を生体溶液試料濃縮剤(みずぶとりくんAB−1100、アトー(株)製)を用いて濃縮し、10U/mLの粗酵素溶液を得た。
【0191】
<参考例4> 3−ヒドロキシアシルCoAの合成
3−ヒドロキシオクタノイルCoAは、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)に記載の方法に基づいて合成した。3−ヒドロキシピメリルCoAは、J.Bacteriol.,182,2753−2760(2000)に記載の方法に基づいて合成した。3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタノイルCoAは、Int.J.Biol.Macromol.,12,85−91(1990)に記載の方法で合成した3−ヒドロキシ−7−オクテン酸の不飽和部分を3−クロロ安息香酸でエポキシ化して調製した3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタン酸を3−ヒドロキシオクタン酸の替わりに用いる以外は、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)に記載の方法に基づいて合成した。
【0192】
<実施例1> 塗料用マイクロカプセル化顔料の製造1
赤色顔料(C.I.ピグメントレッド 168)を0.1μm以下となるようにサンドミルで分散し、この1質量部にpYN2−C1組換え株由来のPHA合成酵素溶液(10 U/mL)10 質量部、PBS 39質量部を添加し、30℃にて 30分間緩やかに振盪してPHA合成酵素を顔料表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(10,000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(10,000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0193】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、3−ヒドロキシピメリルCoA 1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。生成したマイクロカプセル化顔料を遠心分離(98000m/s2(10,000G)、4℃、10分間)により回収した。
【0194】
回収したマイクロカプセル化顔料の一部を真空乾燥した後、クロロホルムに懸濁し、60℃で 20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮した後、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、該PHAは3−ヒドロキシピメリン酸ユニットからなるPHAであることが確認された。
【0195】
さらに、該PHAの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度; 40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=60,000 であった。
【0196】
また、マイクロカプセル化前後の顔料の体積平均粒子径をレーザードップラー方式粒度分布測定機(UPA−150、日機装社製)を用いて測定したところ、マイクロカプセル化前の粒子径0.104μmに対し、マイクロカプセル化後の粒子径は0.112μmであり、顔料をPHAが被覆しているものと推測された。
【0197】
<実施例2> 塗料用マイクロカプセル化顔料の製造2
赤色顔料(C.I.ピグメントレッド 168)を用いて実施例1と同様の方法で固定化酵素を得た。これを0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、3−ヒドロキシピメリルCoA 0.8質量部、3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタノイルCoA 0.2質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪して酵素反応した後、遠心分離(98000m/s2(10,000G)、4℃、10分間)して沈殿物を回収した。
【0198】
前記沈殿物の一部を真空乾燥した後、クロロホルムに懸濁し、60℃で 20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。この抽出液について1H−NMR分析(使用機器:FT−NMR:Bruker DPX 400、測定核種:1H,使用溶媒:重クロロホルム(TMS入り))を行った。ここから計算した各側鎖ユニットのユニット%は、3−ヒドロキシピメリン酸ユニット 77%、3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタン酸ユニット 23%であった。
【0199】
また、前記酵素反応前後の顔料の体積平均粒子径を実施例1と同様に測定したところ、酵素反応前の粒子径0.103μmに対し、酵素反応後の粒子径は0.113μmであり、顔料をPHAが被覆しているものと推測された。
【0200】
前記沈殿物1質量部に対し、99質量部のイオン交換水を添加し、攪拌翼による攪拌(80rpm)によって分散させた。ここに、架橋剤としてヘキサメチレンジアミン0.5質量部となるよう溶解させた。溶解を確認後、凍結乾燥により水を除去した(これを粒子1とする)。さらに、粒子1を 70℃で 12時間反応させた(これを粒子2とする)。
【0201】
上記粒子1及び粒子2をクロロホルムに懸濁し、60℃で 20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出し、真空乾燥によりクロロホルムを除去し、示差走査熱量計(DSC;パーキンエルマー社製、Pyris 1、昇温: 10℃/分)装置で測定を行った。その結果、粒子1では 90℃付近に明確な発熱ピークがみられ、ポリマー中のエポキシ基とヘキサメチレンジアミンとの反応が起こり、ポリマー同士の架橋が進行していることが示される。一方、粒子2では明確なヒートフローは見られず、架橋反応がほぼ完了していることが示される。
【0202】
さらに、同様のサンプルにつき、赤外吸収を測定した(FT−IR;パーキンエルマー社製、1720X)。その結果、粒子1で見られたアミン(3340cm−1付近)及びエポキシ(822cm−1付近)のピークが粒子2では消失している。
【0203】
以上の結果より、側鎖にエポキシユニットをもつPHAとヘキサメチレンジアミンとを反応させることにより、架橋ポリマーが得られることがわかった。
【0204】
一方、3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタノイルCoAの代わりに3−ヒドロキシオクタノイルCoAを使用する以外は、上記と同様の方法で試料を作製し評価したが、前記の如き、ポリマー同士の架橋を明確に示す評価結果は得られなかった。
【0205】
前記粒子2の1質量部をイオン交換水 99 質量部に懸濁し、遠心分離(98000m/s2(10,000G)、4℃、10分間)により回収する操作を3回繰返して、マイクロカプセル化顔料を得た。
【0206】
該マイクロカプセル化顔料をイオン交換水,トルエン,キシレン,へキサンまたはメタノールに懸濁し 30日間室温で貯蔵したが、マイクロカプセル化顔料の貯蔵安定性において問題はなかった。従って該マイクロカプセル化顔料は、水性,油性いずれの塗料組成物中でも使用できることがわかった。
【0207】
<実施例3> 塗料用マイクロカプセル化顔料の製造3
赤色顔料(C.I.ピグメントレッド 168)を用いて実施例1と同様の方法で固定化酵素を得た。これを0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、3−ヒドロキシオクタノイルCoA 1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。生成したマイクロカプセル化顔料を遠心分離(98000m/s2(10,000G)、4℃、10分間)により回収した。
【0208】
回収したマイクロカプセル化顔料の外被を成すPHAを、実施例1と同様にGC−MSで分析した。その結果、該PHAは3−ヒドロキシオクタン酸ユニットからなるPHAであることが確認された。さらに、該PHAの分子量を実施例1と同様に評価した結果、Mn= 42,000 であった。
【0209】
また、マイクロカプセル化前後の顔料の体積平均粒子径を実施例1と同様に測定したところ、マイクロカプセル化前の粒子径0.127μmに対し、マイクロカプセル化後の粒子径は0.143μmであり、顔料をPHAが被覆しているものと推測された。
【0210】
<実施例4> 塗料用マイクロカプセル化顔料の製造4
赤色顔料(C.I.ピグメントレッド 168)を用いて実施例1と同様の方法で固定化酵素を得た。この1質量部を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、3−ヒドロキシピメリルCoA 0.8質量部、3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタノイルCoA 0.2質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した後、遠心分離(98000m/s2(10,000G、4℃、10分間)して沈殿物を回収した。
【0211】
前記沈殿物1質量部を 99 質量部のイオン交換水に懸濁し、遠心分離(98000m/s2(10,000G、4℃、10分間)して沈殿物を回収した後、凍結乾燥により水を除去した。この沈殿物1質量部に対して、末端アミノ変性ポリシロキサン(変性シリコーンオイルTSF 4700、GE東芝シリコーン(株)製)10 質量部を添加し、70℃で2時間反応させ、さらにメタノール 99 質量部に懸濁し、遠心分離(98000m/s2(10,000G、4℃、20分間)する操作を繰返すことにより洗浄し乾燥することで、ポリシロキサンのグラフト鎖を有するマイクロカプセル化顔料を得た。
【0212】
<実施例5> 塗料用マイクロカプセル化顔料の製造5
無機赤色顔料であるべんがらを0.3μm以下となるようにサンドミルで分散し、この1質量部にP161株由来のPHA合成酵素の粗酵素(10U/mL)1 質量部、PBS 39質量部を添加し、30℃にて 30分間緩やかに振盪してPHA合成酵素を顔料表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(10,000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(10,000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0213】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48 質量部に懸濁し、3−ヒドロキシオクタノイルCoA 1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。生成したマイクロカプセル化顔料を遠心分離(98000m/s2(10,000G)、4℃、10分間)により回収した。
【0214】
回収したマイクロカプセル化顔料の一部を真空乾燥した後、マイクロカプセル化顔料の外被を成すPHAの質量を、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS IV、CAMECA製)により測定した。得られたマススペクトルから、該PHAは3−ヒドロキシオクタン酸ユニットからなるホモポリマーであった。また、イオンスパッタリングによりマイクロカプセル化顔料表面を少しずつ削りながら同様にTOF−SIMSによりマススペクトルを測定していったが、いずれも3−ヒドロキシオクタン酸ユニットからなるホモポリマーで構成されていた。
【0215】
これより、本比較例のマイクロカプセル化顔料は、親水性の顔料の上を直接疎水性の3−ヒドロキシオクタン酸ユニットからなるPHAが被覆したマイクロカプセル化顔料であることがわかった。さらに、該PHAの分子量を実施例1と同様に評価した結果、Mn= 38,000 であった。
【0216】
また、マイクロカプセル化前後の顔料の体積平均粒子径を実施例1と同様に測定したところ、マイクロカプセル化前の粒子径0.242μmに対し、マイクロカプセル化後の粒子径は0.265μmであり、顔料をPHAが被覆しているものと推測された。
【0217】
<実施例6> 塗料用マイクロカプセル化顔料の製造6
無機赤色顔料であるべんがらを用いて実施例5と同様の方法で固定化酵素を得た。これを0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、3−ヒドロキシピメリルCoA 1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で 10分間緩やかに振盪した。次いで、30℃で緩やかに振盪しながら3−ヒドロキシオクタノイルCoA 1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を含む0.1 mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)をマイクロチューブポンプ(東京理化器械社製MP−3N)を用いて1分間に1質量部の割合で添加した。110分間反応後、生成したマイクロカプセル化顔料を遠心分離(98000m/s2(10,000G)、4℃、10分間)により回収した。
【0218】
回収したマイクロカプセル化顔料の表面に形成されたPHAの質量を、実施例5と同様にTOF−SIMSで測定した結果、該PHAは3−ヒドロキシオクタン酸ユニットと3−ヒドロキシピメリン酸ユニットとの共重合体(モル比 15 :1)であった。また、イオンスパッタリングによりマイクロカプセル化顔料表面を少しずつ削りながら同様にTOF−SIMSによりマススペクトルを測定していったところ、前記共重合体における3−ヒドロキシオクタン酸ユニットの割合が次第に減少して、最終的に3−ヒドロキシピメリン酸ユニットからなるホモポリマーに変化することが確認された。
【0219】
これより、本実施例のマイクロカプセル化顔料は、親水性の顔料を親水性官能基を有する3−ヒドロキシピメリン酸ユニットからなるPHAで被覆し、その上を3−ヒドロキシオクタン酸ユニットと3−ヒドロキシピメリン酸ユニットとの共重合体によって、表層に至るにつれて疎水性の3−ヒドロキシオクタン酸ユニットの組成比率を高めながら被覆したマイクロカプセル化顔料であることがわかった。さらに、該PHAの分子量を実施例1と同様に評価した結果、Mn= 39,000 であった。
【0220】
また、マイクロカプセル化前後の顔料の体積平均粒子径を実施例1と同様に測定したところ、マイクロカプセル化前の粒子径0.236μmに対し、マイクロカプセル化後の粒子径は0.258μmであり、顔料をPHAが被覆しているものと推測された。
【0221】
<比較例1> 比較用顔料の製造1
赤色顔料(C.I.ピグメントレッド 168)を0.1μm以下となるようにサンドミルで分散した。
【0222】
<比較例2> 比較用顔料の製造2
アクリル樹脂 16質量部、メラミン樹脂4質量部、赤色顔料(C.I.ピグメントレッド 168)10質量部、イオン交換水 70質量部からなる混合物をビーズミル分散機を用いて2時間分散させることによって混合して顔料の水分散体とした。
【0223】
<比較例3> 比較用顔料の製造3
無機赤色顔料であるべんがらを0.3μm以下となるようにサンドミルで分散した。
【0224】
<実施例7> 塗料組成物の製造及び評価1
実施例1または実施例2のマイクロカプセル化顔料、または、比較例1の顔料10部、アクリル樹脂溶液(Mw= 25,000、酸価 60、固形分 20%)12.5部、イオン交換水 20部、及び 3mmφアルミナビーズ 150部を 225mLのガラス容器に入れ、ペイントコンディショナーで3時間分散させた。さらに、上記アクリル樹脂 37.5部とメチル化メラミン樹脂4.3部を加えて混合し塗料組成物を得た。
【0225】
これらの塗料組成物中の顔料の体積平均粒子径及び 30日間室温で貯蔵した後の体積平均粒子径を、レーザードップラー方式粒度分布測定機(UPA−150、日機装社製)を用いて測定した。
【0226】
その結果、表3に示す通り、実施例1及び実施例2のマイクロカプセル化顔料を用いた塗料組成物中の顔料の体積平均粒子径は貯蔵前後でほぼ同等の値を示し、貯蔵安定性に優れていることがわかった。一方、比較例1の顔料を用いた塗料組成物中の顔料の貯蔵後の体積平均粒子径は、貯蔵前と比較して大きく、貯蔵安定性としては満足できるものではなかった。
【0227】
【表3】
【0228】
また、実施例1及び実施例2のマイクロカプセル化顔料を用いた塗料組成物を、前記ペイントコンディショナーで 24時間過剰に処理した後、光学顕微鏡で観察したところ、実施例2のマイクロカプセル化顔料は良好に分散していたが、実施例1のマイクロカプセル化顔料は一部に凝集が見られ、また被覆したPHAの剥離が一部に観察された。従って、外被を成すPHAが架橋化されていることにより、物理的負荷に対する耐久性がさらに向上することがわかる。
【0229】
次に、前記の塗料組成物をフィルムアプリケーターでPET フィルム上に展色し、140℃で 30分間焼き付けて塗膜を得た。この塗膜について以下の評価を行った。
【0230】
(1)付着性:
塗膜に1mm間隔の碁盤目を入れ、セロハンテープを貼り付けて剥離し、マス目の残存度合を評価した。
【0231】
(2)色彩性:
目視による官能評価により評価した。
【0232】
(3)耐候性:
サンシャインウェザオメーターで1,000時間後の光沢保持率を測定した。光沢はデジタル変角光沢計(UGV−5D、スガ試験機(株)製)を用いて 60 度鏡面光沢を測定した。
【0233】
(4)鉛筆硬度:
鉛筆(三菱鉛筆(株)製)を用いて塗膜に傷が付くまでの硬度で評価した。
【0234】
その結果、表4に示す通り、実施例1及び実施例2の塗料組成物で作製した塗膜は、被塗装面への付着性,色彩性,耐候性,硬度の全てにおいて良好な結果を示し、優れた特性を有することがわかった。一方、比較例1の塗料組成物で作製した塗膜は、これらの特性について満足できるものではなかった。
【0235】
【表4】
【0236】
<実施例8> 塗料組成物の製造及び評価2
実施例3のマイクロカプセル化顔料または比較例1の顔料を真空乾燥した後、その1質量部に対し、9質量部の感光性ポリアミド樹脂(PA−1000C、宇部興産(株)製)を添加し、混練機によって分散させ塗料組成物とした。
【0237】
前記塗料組成物中の顔料の体積平均粒子径及び 30日間室温で貯蔵した後の体積平均粒子径を、実施例7と同様に測定した。その結果、表5に示す通り、実施例3のマイクロカプセル化顔料を用いた塗料組成物中の顔料の体積平均粒子径は、貯蔵前後でほぼ同等の値を示し、貯蔵安定性に優れていることがわかった。一方、比較例1の顔料を用いた塗料組成物中の顔料の貯蔵後の体積平均粒子径は貯蔵前と比較して大きく、貯蔵安定性としては満足できるものではなかった。
【0238】
【表5】
【0239】
次に、前記の塗料組成物をフィルムアプリケーターでPET フィルム上に展色し、80℃で 10分間ベークした。次に、フォトマクスを介して適切な光量でUV硬化し、さらに 140℃で 30分間ポストベークして塗膜を得た。この塗膜について実施例7と同様の評価を行った。
【0240】
その結果、表6に示す通り、実施例3のマイクロカプセル化顔料を用いた塗料組成物で作製した塗膜は、被塗装面への付着性,色彩性,耐候性,硬度の全てにおいて良好な結果を示し、優れた特性を有することがわかった。一方、比較例1の顔料を用いた塗料組成物で作製した塗膜は、これらの特性について満足できるものではなかった。
【0241】
【表6】
【0242】
<実施例9> 塗料組成物の製造及び評価3
アクリル系共重合体(スチレン:メチルメタクリレート:n−ブチルアクリレート:ジメチルアミノエチルメタクリレート:ヒドロキシエチルアクリレート= 30:20:20:10:10、Mn= 15,000)75 質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネートのオキシムブロック化物 25 質量部とをヒドロキシ酢酸で中和後、イオン交換水 800 質量部を添加して分散した。ここに実施例1または実施例4のマイクロカプセル化顔料を 100 質量部(顔料としておおよそ 50 質量部)添加し、攪拌翼による攪拌(80rpm)によって分散させ塗料組成物とした。
【0243】
次に、前記アクリル系共重合体 75 質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネートのオキシムブロック化物 25 質量部とをヒドロキシ酢酸で中和後、イオン交換水 400 質量部を添加して分散した。ここに比較例2の顔料の水分散体を 500 質量部(顔料として 50 質量部)添加し、攪拌翼による攪拌(80rpm)によって分散させ塗料組成物とした。
【0244】
前記塗料組成物中の顔料の体積平均粒子径及び 30日間室温で貯蔵した後の体積平均粒子径を実施例7と同様に測定した。その結果、表7に示す通り、実施例1及び実施例4のマイクロカプセル化顔料を用いた塗料組成物中の顔料の体積平均粒子径は貯蔵前後でほぼ同等の値を示し、貯蔵安定性に優れていることがわかった。一方、比較例2の顔料を用いた塗料組成物中の顔料の貯蔵後の体積平均粒子径は、貯蔵前と比較して大きく、貯蔵安定性としては満足できるものではなかった。
【0245】
【表7】
【0246】
次に、前記塗料組成物中にアルミニウム板を浸漬し、次の条件で電着塗装した。印加電圧 150V、塗料温度 25℃、電着時間2分間。電着終了後、アルミニウム板を水洗し水切りした後、180℃で 30分間焼き付けて塗膜を得た。この塗膜について実施例7と同様の評価を行った。
【0247】
その結果、表8に示す通り、実施例1及び実施例4のマイクロカプセル化顔料を用いた塗料組成物で作製した塗膜は、被塗装面への付着性,色彩性,耐候性,硬度の全てにおいて良好な結果を示し、優れた特性を有することがわかった。特に、実施例4のマイクロカプセル化顔料を用いた塗料組成物で作製した塗膜は、耐候性がより優れていた。一方、比較例2の顔料を用いた塗料組成物で作製した塗膜は、これらの特性について満足できるものではなかった。
【0248】
【表8】
【0249】
<実施例10> 塗料組成物の製造及び評価4
実施例5または実施例6のマイクロカプセル化顔料または比較例3の顔料を真空乾燥した後、その4質量部に対し、エチレングリコール 10 質量部、ジエチレングリコール 15 質量部、スチレンーマレイン酸樹脂のモノエタノールアミン塩(平均分子量 30,000、酸価 300)0.6質量部、イオン交換水 70.4質量部を添加し、攪拌翼による攪拌(80rpm)によって分散させ塗料組成物とした。
【0250】
前記塗料組成物をそのまま用いた場合と、ボルテックス・ミキサーによって5分間激しく攪拌した場合での、塗料組成物中の顔料の体積平均粒子径及び 30日間室温で貯蔵した後の体積平均粒子径を、実施例7と同様に測定した。
【0251】
その結果、表9に示す通り、攪拌を行わなかった場合、実施例5及び実施例6のマイクロカプセル化顔料の体積平均粒子径は貯蔵前後でほぼ同等の値を示し、貯蔵安定性に優れていることがわかった。一方、比較例3の顔料の貯蔵後の体積平均粒子径は貯蔵前と比較して増大し、貯蔵安定性としては満足できるものではなかった。また、攪拌を行った場合においても、実施例6のマイクロカプセル化顔料の体積平均粒子径は貯蔵前後でほぼ同等の値を示し、親水性顔料を用いた場合の貯蔵安定性がさらに向上していることが示された。
【0252】
【表9】
【0253】
次に、前記塗料組成物を用いて実施例9と同様の方法で作製した塗膜について、実施例7と同様の評価を行った。その結果、表10 に示す通り、実施例5及び実施例6のマイクロカプセル化顔料を用いた塗料組成物で作製した塗膜は被塗装面への付着性,色彩性,耐候性,硬度の全てにおいて良好な結果を示し、優れた特性を有することがわかった。一方、比較例3の顔料を用いた塗料組成物で作製した塗膜は、これらの特性について満足できるものではなかった。
【0254】
【表10】
【0255】
【発明の効果】
本発明のマイクロカプセル化顔料を含有する塗料組成物は、水性、油性、両方の塗料組成物として使用でき、分散安定剤を使用せずとも顔料の分散状態が安定で凝集を生じ難い。また、顔料密度が高いため、色彩性の良好な塗膜が形成できる。さらに、界面活性剤の使用を抑えられるため、形成した塗膜が耐水性や被塗装面との付着性に優れている。また、その製造方法も簡便である。
【0256】
【配列表】
Claims (41)
- ポリヒドロキシアルカノエートによって顔料粒子の表面の少なくとも一部を被覆した色材を含有することを特徴とする塗料組成物。
- ポリヒドロキシアルカノエートが、式[1]から式[10]に示すモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つを有するポリヒドロキシアルカノエートである、請求項1に記載の塗料組成物。
R1が水素原子(H)でありaが0から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1がハロゲン原子でありaが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1がカルボキシル基あるいはその塩であり、aが1から 10 の整数であるモノマーユニット、R1が発色団でありaが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が、
- 前記ポリヒドロキシアルカノエートのモノマーユニット組成が前記色材の内側から外側に向かう方向において変化していることを特徴とする請求項2に記載の塗料組成物。
- 前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部が、化学修飾されたポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする請求項2に記載の塗料組成物。
- 前記の化学修飾されたポリヒドロキシアルカノエートが、少なくともグラフト鎖を有するポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする請求項4に記載の塗料組成物。
- 前記グラフト鎖が、エポキシ基を有するモノマーユニットを少なくとも含むポリヒドロキシアルカノエートの化学修飾によるグラフト鎖であることを特徴とする請求項5に記載の塗料組成物。
- 前記グラフト鎖が、アミノ基を有する化合物のグラフト鎖であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の塗料組成物。
- 前記アミノ基を有する化合物が、末端アミノ変性化合物であることを特徴とする請求項7に記載の塗料組成物。
- 前記末端アミノ変性化合物が、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、末端アミノ変性ポリシロキサンからなる群より選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項8に記載の塗料組成物。
- 前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部が、架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする請求項4に記載の塗料組成物。
- 前記架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートが、エポキシ基を有するモノマーユニットを少なくとも含むポリヒドロキシアルカノエートが架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートであるであることを特徴とする請求項10に記載の塗料組成物。
- 前記架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートが、ジアミン化合物、無水コハク酸、2−エチル−4−メチルイミダゾール、電子線照射からなる群より選択される少なくとも一つにより架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする請求項10または請求項11に記載の塗料組成物。
- 前記ジアミン化合物がヘキサメチレンジアミンであることを特徴とする請求項12に記載の塗料組成物。
- 前記ポリヒドロキシアルカノエートの数平均分子量が1,000から10,000,000であることを特徴とする請求項1から請求項13に記載の塗料組成物。
- 前記ポリヒドロキシアルカノエートの数平均分子量が3,000から1,000,000であることを特徴とする請求項14に記載の塗料組成物。
- 色材と、該色材の分散用媒体とを含有する塗料組成物の製造方法であって、水性媒体に分散された顔料粒子の表面に固定されたポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の存在下で、3−ヒドロキシアシル補酵素Aを基質として、ポリヒドロキシアルカノエート合成反応を行うことで該顔料表面の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートで被覆して色材を得る工程と、該色材を分散用媒体に分散する工程とを有する塗料組成物の製造方法。
- ポリヒドロキシアルカノエートが、式[1]から式[10]に示すモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つを有するポリヒドロキシアルカノエートであり、それぞれ対応する3−ヒドロキシアシル補酵素Aが式[11]から式[20]に示す3−ヒドロキシアシル補酵素Aのいずれかである、請求項16に記載の塗料組成物の製造方法。
R1が 水素原子(H)でありaが0から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が ハロゲン原子でありaが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1がカルボキシル基あるいはその塩であり、aが1から 10 の整数であるモノマーユニット、R1が 発色団でありaが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が、
R1が 水素原子(H)でありaが0から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が ハロゲン原子でありaが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1がカルボキシル基あるいはその塩であり、aが1から 10 の整数であるモノマーユニット、R1が発色団でありaが1から 10 の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が、
- 前記3−ヒドロキシアシル補酵素Aの組成を経時的に変化させることにより、前記ポリヒドロキシアルカノエートの3−ヒドロキシアルカン酸ユニット組成を前記色材の内側から外側に向かう方向において変化させることを特徴とする請求項17に記載の塗料組成物の製造方法。
- 前記製造方法が、前記顔料粒子を被覆するポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部に化学修飾を施す工程をさらに有する請求項17に記載の塗料組成物の製造方法。
- 前記の化学修飾を施す工程が、ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部にグラフト鎖を付加せしむ工程であることを特徴とする請求項19に記載の塗料組成物の製造方法。
- 前記グラフト鎖を付加せしむ工程が、ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部と、末端に反応性官能基を有する化合物とを反応させる工程であることを特徴とする請求項20に記載の塗料組成物の製造方法。
- 前記ポリヒドロキシアルカノエートが、エポキシ基を有するモノマーユニットを少なくとも含むポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする請求項21に記載の塗料組成物の製造方法。
- 前記の末端に反応性官能基を有する化合物が、アミノ基を有する化合物であることを特徴とする請求項21または請求項22に記載の塗料組成物の製造方法。
- 前記アミノ基を有する化合物が、末端アミノ変性化合物であることを特徴とする請求項23に記載の塗料組成物の製造方法。
- 前記末端アミノ変性化合物が、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、末端アミノ変性ポリシロキサンからなる群より選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項24に記載の塗料組成物の製造方法。
- 前記の化学修飾を施す工程が、ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部を架橋化せしむ工程であることを特徴とする請求項19に記載の塗料組成物の製造方法。
- 前記架橋化工程が、ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部と架橋剤とを反応させる工程であることを特徴とする請求項26に記載の塗料組成物の製造方法。
- 前記ポリヒドロキシアルカノエートが、エポキシ基を有するモノマーユニットを少なくとも含むポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする請求項27に記載の塗料組成物の製造方法。
- 前記架橋剤が、ジアミン化合物、無水コハク酸、2−メチル−4−メチルイミダゾールからなる群より選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項27または請求項28に記載の塗料組成物の製造方法。
- 前記ジアミン化合物がヘキサメチレンジアミンであることを特徴とする請求項29に記載の塗料組成物の製造方法。
- 前記架橋化工程が、ポリヒドロキシアルカノエートに電子線を照射する工程であることを特徴とする請求項26に記載の塗料組成物の製造方法。
- ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素が、該酵素の生産能を有する微生物、または該生産能に関与する遺伝子を宿主微生物に導入した形質転換体により生産されるポリヒドロキシアルカノエート合成酵素である、請求項16または請求項17に記載の塗料組成物の製造方法。
- ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の生産能を有する微生物が、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)に属する微生物である、請求項32に記載の塗料組成物の製造方法。
- ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の生産能を有する微生物が、シュードモナス・プチダ・P91株(Pseudomonas putida P91、FERM BP−7373)、シュードモナス・チコリアイ・H45株(Pseudomonas cichorii H45、FERM BP−7374)、シュードモナス・チコリアイ・YN2株(Pseudomonas cichorii YN2、FERM BP−7375)、シュードモナス・ジェッセニイ・P161株(Pseudomonas jessenii P161、FERM BP−7376)からなる群から選択される少なくとも1つ以上の微生物である、請求項33に記載の塗料組成物の製造方法。
- ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の生産能を有する微生物が、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)に属する微生物である、請求項32に記載の塗料組成物の製造方法。
- ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の生産能を有する微生物が、バークホルデリア・セパシア・KK01株(Burkholderia cepacia KK01、FERM BP−4235)、バークホルデリア属・OK3株(Burkholderia sp.OK3、FERM P−17370)、バークホルデリア属・OK4株(Burkholderia sp.OK4、FERM P−17371)からなる群から選択される少なくとも1つの微生物である、請求項35に記載の塗料組成物の製造方法。
- ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の生産能を有する微生物が、アルカリゲネス属(Alcaligenes sp.)に属する微生物である、請求項32に記載の塗料組成物の製造方法。
- ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の生産能を有する微生物が、アルカリゲネス属・TL2株(Alcaligenes sp.TL2、FERM BP−6913)である、請求項37に記載の塗料組成物の製造方法。
- ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の生産能を有する微生物が、ラルストーニャ属(Ralstonia sp.)に属する微生物である、請求項32に記載の塗料組成物の製造方法。
- ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の生産能を有する微生物が、ラルストーニャ・ユートロファ・TB64株(Ralstonia eutropha TB64、FERM BP−6933)である、請求項39に記載の塗料組成物の製造方法。
- 前記ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の生産能を有する形質転換体の宿主微生物が、大腸菌(Escheichia coli)である、請求項32に記載の塗料組成物の製造方法。
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