JP2004335622A - 構造体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高分子化合物で磁性体を被覆した構造体において、環境や生物に対する負荷の低減と種々の機能性を両立させる。
【解決手段】磁性体の少なくとも一部が、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)で被覆されていることを特徴とする、構造体。また、磁性体表面にPHA合成酵素を固定してPHAを生合成し被覆することを特徴とする構造体の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】磁性体の少なくとも一部が、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)で被覆されていることを特徴とする、構造体。また、磁性体表面にPHA合成酵素を固定してPHAを生合成し被覆することを特徴とする構造体の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリヒドロキシアルカノエートと磁性体とを備え、該ポリヒドロキシアルカノエートが該磁性体の少なくとも一部を被覆した構造を有していることを特徴とする構造体及びその製造方法に関するものである。
【0002】
本発明の構造体は、機能性構造体として幅広い用途に利用可能であり、例えば、細菌、細胞、核酸、蛋白質、その他生体物質の分離精製あるいはスクリーニング用担体、生体中での移動を制御できる医療診断薬担体、薬剤を患者の疾患部に移動させるドラックデリバリー担体、固定化酵素担体、磁性トナー、磁性インク、磁性塗料、磁気記録媒体などの各種機能性構造体として、幅広い用途に利用可能である。
【0003】
【背景技術】
高分子材料は現代の産業や生活に不可欠のものであり、安価軽量であること、成形性が良いことなどから、家電品の筐体をはじめ包装材や緩衝材、あるいは繊維材料など、多岐に渡って利用されている。一方、これら高分子材料の安定な性質を利用して、高分子の分子鎖に様々な機能を発現する置換基を配して、液晶材料やコート剤などの各種機能材料も得られている。これら機能材料は構造材料としての高分子よりも付加価値が高いため、少量生産でも大きな市場ニーズが期待できる。このような高分子機能材料は、これまで高分子の合成プロセスの中で、あるいは合成した高分子を置換基で修飾することにより、有機合成化学的手法により得られている。高分子機能材料の基本骨格となる高分子はほとんどの場合、石油系原料から有機合成化学的手法によって得られている。ポリエチレン,ポリエチレンテレフタレート,ポリエステル,ポリスチレン,ポリ塩化ビニル,ポリアクリルアミドなどがその典型的な例である。
【0004】
[磁性体を被覆した重層構造体]
ところで、本願発明者らは高分子化合物に大きな付加価値を与えるための一つの要素技術として、高分子化合物により磁性体を被覆した重層構造体に着目してきた。このように高分子化合物で特定の磁性体を被覆することによって、極めて有用な機能性を有する複合構造体を得ることができる。このような構造体の具体的な用途としては、例えば高分子化合物に磁性体を内包させたマイクロカプセル構造体からなる生体物質の分離精製あるいはスクリーニング用担体や、高分子化合物でシート状の磁性体を被覆した磁気記録媒体などが考えられる。
【0005】
磁性体含有カプセル構造体は、磁力により容易に捕集される点から、主に生化学分野において、医療診断薬担体、細菌あるいは細胞分離担体、核酸あるいは蛋白分離精製担体、ドラッグデリバリー担体、酵素反応担体、細胞培養担体等としての優れた効果が期待されている。磁性体含有カプセル構造体の合成法については、親油化処理した磁性体を重合性モノマー中に分散し、これを懸濁重合する方法(特開昭59−221302号公報(特許文献1))、同じく親油化処理した磁性体を重合性モノマー中に分散し、ホモジナイザーで水中に均質化して重合することにより、比較的小粒子径の磁性粒子を得る方法(特公平4−3088号公報(特許文献2))、あるいは特定の官能基を有する多孔性ポリマー粒子の存在下で、鉄化合物を析出させたのち酸化することにより、多孔性ポリマー粒子内部に磁性体を導入し、大粒径かつ均一径の磁性粒子を得る方法(特公平5−10808号公報(特許文献3))等が挙げられる。
【0006】
しかしながら、これらの合成法により得られた磁性体含有カプセル構造体を医療診断薬担体等に用いると、磁性体の多くがカプセル構造体内部に存在する場合でも、感度が大幅に低下したり、非特異的反応を示したりして、十分な実用性能が得られない場合が多い。これは、磁性体含有カプセル構造体表面に磁性体が部分的に露出し、あるいは構造体表面と内部の磁性体の間にミクロパスが形成されるため、磁性体成分が溶出し、実用性能を損なうためであると考えられる。一般に、磁性体はポリマー粒子よりも親水性が高く、従来の合成法では、磁性体がカプセル構造体の表面あるいは表面近傍へ局在することが、実用性能を損なう大きな原因の1つであると考えられる。このように、従来の磁性体含有カプセル構造体においては、含まれる磁性体成分の表面への露出、ミクロパスの形成、などによる磁性体成分の溶出を抑えることが困難であり、その溶出が問題とならない分野に限定して使用せざるをえないのが実状であった。
【0007】
また、磁性体の表面特性を改質し、重合トナー中の磁性体の分散性向上を図る試みが数多く報告されている。特開昭59−200254号公報、特開昭59−200256号公報、特開昭59−200257号公報、特開昭59−224102号公報(以上、特許文献4〜7)等に磁性体の各種シランカップリング剤処理技術が提案されており、特開昭63−250660号公報(特許文献8)、特開平10−239897号公報(特許文献9)では、ケイ素元素含有磁性体粒子をシランカップリング剤で処理する技術が開示されている。
【0008】
しかしながら、これらの処理により磁性体の分散性はある程度向上するものの、磁性体表面の疎水化を均一に行うことが困難であり、従って、磁性体同士の合一や疎水化されていない磁性体粒子の発生を避け、磁性体の分散性を良好なレベルにまで向上させるには、さらなる改善が望まれていた。
【0009】
また、疎水化磁性酸化鉄を用いる例として特公昭60−3181号公報(特許文献10)にアルキルトリアルコキシシランで処理した磁性酸化鉄を含有するトナーが提案されている。この磁性酸化鉄の添加により、確かにトナーの電子写真諸特性は向上しているものの、磁性酸化鉄の表面活性は元来小さく、処理の段階で合一粒子が生じたり、疎水化が不均一であったりすることから、さらなる改善が望まれていた。
【0010】
[PHA]
ところで、近年、生物工学的手法によって高分子化合物を製造する研究が活発に行われてきており、また、一部で実用化されている。例えば、微生物由来の高分子化合物として、ポリ−3−ヒドロキシ−n−酪酸(以下、PHBと略す場合もある)や3−ヒドロキシ−n−酪酸と3−ヒドロキシ−n−吉草酸との共重合体(以下、PHB/Vと略す場合もある)等のポリヒドロキシアルカノエート、バクテリアセルロースやプルラン等の多糖類、ポリ−γ−グルタミン酸やポリリジン等のポリアミノ酸などが知られている。ここで、ポリヒドロキシアルカノエート(以下、PHAと略す場合がある)とは、ヒドロキシアルカン酸ユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートのことをいう。特にPHAは、従来のプラスチックと同様に、溶融加工等により各種製品に利用することができるうえ、生体適合性にも優れており、医療用軟質部材等としての応用も期待されている。
【0011】
これまで、多くの微生物がPHAを生産し菌体内に蓄積することが報告されてきた。アルカリゲネス・ユウトロファス・H16株(Alcaligenes eutrophus H16、ATCC No.17699)、メチロバクテリウム属(Methylobacterium sp.)、パラコッカス属(Paracoccus sp.)、アルカリゲネス属(Alcaligenes sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)の微生物によるPHB/Vの生産が報告されている(特開平5−74492号公報、特公平6−15604号公報、特公平7−14352号公報、特公平8−19227号公報(以上、特許文献11〜14)など)。また、コマモナス・アシドボランス・IFO13852株(Comamonas acidovorans IFO13852)が、3−ヒドロキシ−n−酪酸と4−ヒドロキシ−n−酪酸とをモノマーユニットに持つPHAを生産することが開示されている(特開平9−191893号公報(特許文献15))。さらに、アエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)により、3−ヒドロキシ−n−酪酸と3−ヒドロキシヘキサン酸との共重合体を生産することが開示されている(特開平5−93049号公報(特許文献16)、特開平7−265065号公報(特許文献17))。
【0012】
これらPHBやPHB/Vのような中短鎖長(short−chain−length)の3−ヒドロキシアルカン酸ユニットからなるポリヒドロキシアルカノエート(以下、scl−PHAと略す場合がある)の生合成は、PHA生産菌の体内で、種々の炭素源から、生体内の様々な代謝経路を経て生成された(R)−3−ヒドロキシプロピオニルCoA、(R)−3−ヒドロキシブチリルCoA及び(R)−3−ヒドロキシバレリルCoAの少なくとも1種を基質とした、酵素による重合反応によって行われる。この重合反応を触媒する酵素を本発明ではscl−PHA合成酵素と呼ぶことにする。その中で、例えばPHBを合成する酵素であれば、通常、PHB合成酵素(PHBポリメラーゼ、PHBシンターゼともいう)と呼ばれている。なお、CoAとは補酵素A(coenzyme A)の略称であり、その化学構造は下記化学式の通りである。
【0013】
【化34】
また、近年、炭素数が3から12程度までの中鎖長(medium−chain−length)の3−ヒドロキシアルカン酸ユニットからなるポリヒドロキシアルカノエート(以下、mcl−PHAと略す場合がある)についての研究が精力的に行われている。
【0014】
特許公報第2642937号(特許文献18)では、シュードモナス・オレオボランス・ATCC29347株(Pseudomonas oleovorans ATCC 29347)に非環状脂肪族炭化水素を与えることにより、炭素数が6から12までの3−ヒドロキシアルカン酸のモノマーユニットを有するPHAが生産されることが開示されている。また、Appl.Environ.Microbiol.,58,746(1992)(非特許文献1)には、シュードモナス・レジノボランス(Pseudomonas resinovorans)が、オクタン酸を単一炭素源として、3−ヒドロキシ−n−酪酸,3−ヒドロキシヘキサン酸,3−ヒドロキシオクタン酸,3−ヒドロキシデカン酸をモノマーユニットとするPHAを生産し、また、ヘキサン酸を単一炭素源として、3−ヒドロキシ−n−酪酸,3−ヒドロキシヘキサン酸,3−ヒドロキシオクタン酸,3−ヒドロキシデカン酸をユニットとするPHAを生産することが報告されている。ここで、原料の脂肪酸よりも鎖長の長い3−ヒドロキシアルカン酸モノマーユニットの導入は、後述の脂肪酸合成経路を経由していると考えられる。
【0015】
Int.J.Biol.Macromol.,16(3),119(1994)(非特許文献2)には、シュードモナスsp.61−3株(Pseudomonas sp.strain61−3)が、グルコン酸ナトリウムを単一炭素源として、3−ヒドロキシ−n−酪酸,3−ヒドロキシヘキサン酸,3−ヒドロキシオクタン酸,3−ヒドロキシデカン酸,3−ヒドロキシドデカン酸といった3−ヒドロキシアルカン酸、および、3−ヒドロキシ−5−cis−デセン酸,3−ヒドロキシ−5−cis−ドデセン酸といった3−ヒドロキシアルケン酸をユニットとするPHAを生産することが報告されている。
【0016】
上記のPHAは側鎖にアルキル基を有するモノマーユニットからなるPHA(以下、usual−PHAと略す場合がある)、あるいはそれに準じるもの(例えば他に末端部以外に二重結合をもつアルケニル基を側鎖にもつもの)である。しかし、より広範囲な応用、例えば機能性ポリマーとしての応用を考慮した場合、アルキル基以外の置換基(例えば、フェニル基,不飽和炭化水素,エステル基,アリル基,シアノ基,ハロゲン化炭化水素,エポキシドなどなど)を側鎖に導入したPHA(以下、unusual−PHAと略す場合がある)が極めて有用である。
【0017】
フェニル基を有するunusual−PHAの生合成の例としては、Macromolecules,24,5256−5260(1991),Macromol.Chem.,191,1957−1965(1990),Chirality,3,492−494(1991)(以上、非特許文献3〜5)などで、シュードモナス・オレオボランスが、5−フェニル吉草酸から、3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットを含むPHAを生産すると報告されている。また、Macromolecules,29,1762−1766(1996)(非特許文献6)で、シュードモナス・オレオボランスが、5−(4−トリル)吉草酸(5−(4−メチルフェニル)吉草酸)から、3−ヒドロキシ−5−(4−トリル)吉草酸ユニットを含むPHAを生産すると報告されている。さらに、Macromolecules,32,2889−2895(1999)(非特許文献7)には、シュードモナス・オレオボランスが、5−(2,4−ジニトロフェニル)吉草酸から、3−ヒドロキシ−5−(2,4−ジニトロフェニル)吉草酸ユニットおよび3−ヒドロキシ−5−(4−ニトロフェニル)吉草酸ユニットを含むPHAを生産すると報告されている。
【0018】
また、フェノキシ基を有するunusual−PHAの例としては、Macromol.Chem.Phys.,195,1665−1672(1994)(非特許文献8)で、シュードモナス・オレオボランスが、11−フェノキシウンデカン酸から3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸ユニットおよび3−ヒドロキシ−9−フェノキシノナン酸ユニットを含むPHAを生産すると報告されている。また、Macromolecules,29,3432−3435(1996)(非特許文献9)には、シュードモナス・オレオボランスが、6−フェノキシヘキサン酸から3−ヒドロキシ−4−フェノキシ酪酸ユニットおよび3−ヒドロキシ−6−フェノキシヘキサン酸ユニットを含むPHAを、8−フェノキシオクタン酸から3−ヒドロキシ−4−フェノキシ酪酸ユニット,3−ヒドロキシ−6−フェノキシヘキサン酸ユニットおよび3−ヒドロキシ−8−フェノキシオクタン酸ユニットを含むPHAを、11−フェノキシウンデカン酸から3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸ユニットおよび3−ヒドロキシ−7−フェノキシヘプタン酸ユニットを含むPHAを生産することが報告されている。さらに、Can.J.Microbiol.,41,32−43(1995)(非特許文献10)では、シュードモナス・オレオボランス・ATCC 29347株及びシュードモナス・プチダ・KT2442株(Pseudomonas putida KT2442)が、p−シアノフェノキシヘキサン酸または p−ニトロフェノキシヘキサン酸から、3−ヒドロキシ−p−シアノフェノキシヘキサン酸ユニットまたは3−ヒドロキシ−p−ニトロフェノキシヘキサン酸ユニットを含むPHAを生産すると報告している。特許第2989175号公報(特許文献19)には、3−ヒドロキシ−5−(モノフルオロフェノキシ)吉草酸ユニットあるいは3−ヒドロキシ−5−(ジフルオロフェノキシ)吉草酸ユニットからなるホモポリマー、少なくとも3−ヒドロキシ−5−(モノフルオロフェノキシ)ペンタノエートユニットあるいは3−ヒドロキシ−5−(ジフルオロフェノキシ)ペンタノエートユニットを含有するコポリマーとその製造方法が記載されており、その効果として、融点が高く良好な加工性を保ちつつ、立体規則性、撥水性を付与することができるとしている。
【0019】
また、シクロヘキシル基を有するunusual−PHAの例としては、Macromolecules,30,1611−1615(1997)(非特許文献11)に、シュードモナス・オレオボランスが、シクロヘキシル酪酸またはシクロヘキシル吉草酸から該PHAを生産するとの報告がある。
【0020】
これらmcl−PHAやunusual−PHAの生合成は、原料となる各種アルカン酸から、生体内の様々な代謝経路(例えば、β酸化系や脂肪酸合成経路)を経て生成された(R)−3−ヒドロキシアシルCoAを基質とした、酵素による重合反応によって行われる。この重合反応を触媒する酵素を本発明ではmcl−PHA合成酵素と呼ぶことにする。なお本発明では、前記scl−PHA合成酵素とmcl−PHA合成酵素とをあわせてPHA合成酵素と呼ぶことにするが、通常、mcl−PHA合成酵素がPHA合成酵素(PHAポリメラーゼ、PHAシンターゼともいう)と呼ばれる場合もある。以下に、β酸化系およびmcl−PHA合成酵素による重合反応を経て、アルカン酸がPHAとなるまでの反応を示す。
【0021】
【化35】
一方、脂肪酸合成経路を経る場合は、該経路中に生じた(R)−3−ヒドロキシアシル−ACP(ACPとはアシルキャリアプロテインのことである)から変換された(R)−3−ヒドロキシアシルCoAを基質として、同様にmcl−PHA合成酵素によりPHAが合成されると考えられる。
【0022】
[酵素を利用した無細胞系PHA合成]
近年、上記のPHA合成酵素(scl−PHA合成酵素やmcl−PHA合成酵素)を菌体外に取り出して、無細胞系(invitro)でPHAを合成しようとする試みが始まっている。
【0023】
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92,6279−6283(1995)(非特許文献12)では、アルカリゲネス・ユウトロファス(Alcaligenes eutrophus)由来のscl−PHA合成酵素に3−ヒドロキシブチリルCoAを作用させることにより、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットからなるPHBを合成することに成功している。また、Int.J.Biol.Macromol.,25,55−60(1999)(非特許文献13)では、アルカリゲネス・ユウトロファス由来のscl−PHA合成酵素に、3−ヒドロキシブチリルCoAや3−ヒドロキシバレリルCoAを作用させることにより、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットや3−ヒドロキシ−n−吉草酸ユニットからなるPHAの合成に成功している。さらにこの報告では、ラセミ体の3−ヒドロキシブチリルCoAを作用させたところ、酵素の立体選択性によって、R体の3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットのみからなるPHBが合成されたとしている。Macromol.Rapid Commun.,21,77−84(2000)(非特許文献14)においても、アルカリゲネス・ユウトロファス由来のscl−PHA合成酵素を用いた細胞外でのPHB合成が報告されている。
【0024】
また、FEMS Microbiol.Lett.,168,319−324(1998)(非特許文献15)では、クロマチウム・ビノサム(Chromatium vinosum)由来のscl−PHA合成酵素に3−ヒドロキシブチリルCoAを作用させることにより、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットからなるPHBを合成することに成功している。
【0025】
Appl.Microbiol.Biotechnol.,54,37−43(2000)(非特許文献16)では、シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)のPHA合成酵素に3−ヒドロキシデカノイルCoAを作用させることにより、3−ヒドロキシデカン酸ユニットからなるPHAを合成している。
【0026】
以上の他、本願発明には特許第2989175号公報(特許文献19)、特開2001−78753号公報(特許文献20)、特開2001−69968号公報(特許文献21);並びに、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(非特許文献17)、J.Biol.Chem.,218,97−106(1956)(非特許文献18)、J.Amer.Chem.Soc.,78,2278(1956)(非特許文献19)、Appl.Environ.Microbiol.,44,238−241(1982)(非特許文献20)、Molecular Cloning,1巻,572頁,1989年;Cold Spring Harbor Laboratory出版(非特許文献21)、J.Bacteriol.,182,2753−2760(2000)(非特許文献22)、Int.J.Biol.Macromol.,12,85−91(1990)(非特許文献23)の記載が引用されている。
【0027】
【特許文献1】
特開昭59−221302号公報
【特許文献2】
特公平4−3088号公報
【特許文献3】
特公平5−10808号公報
【特許文献4】
特開昭59−200254号公報
【特許文献5】
特開昭59−200256号公報
【特許文献6】
特開昭59−200257号公報
【特許文献7】
特開昭59−224102号公報
【特許文献8】
特開昭63−250660号公報
【特許文献9】
特開平10−239897号公報
【特許文献10】
特公昭60−3181号公報
【特許文献11】
特開平5−74492号公報
【特許文献12】
特公平6−15604号公報
【特許文献13】
特公平7−14352号公報
【特許文献14】
特公平8−19227号公報
【特許文献15】
特開平9−191893号公報
【特許文献16】
特開平5−93049号公報
【特許文献17】
特開平7−265065号公報
【特許文献18】
特許公報第2642937号
【特許文献19】
特許第2989175号公報
【特許文献20】
特開2001−78753号公報
【特許文献21】
特開2001−69968号公報
【非特許文献1】
Appl.Environ.Microbiol.,58,746(1992)
【非特許文献2】
Int.J.Biol.Macromol.,16(3),119(1994)
【非特許文献3】
Macromolecules,24,5256−5260(1991)
【非特許文献4】
Macromol.Chem.,191,1957−1965(1990)
【非特許文献5】
Chirality,3,492−494(1991)
【非特許文献6】
Macromolecules,29,1762−1766(1996)
【非特許文献7】
Macromolecules,32,2889−2895(1999)
【非特許文献8】
Macromol.Chem.Phys.,195,1665−1672(1994)
【非特許文献9】
Macromolecules,29,3432−3435(1996)
【非特許文献10】
Can.J.Microbiol.,41,32−43(1995)
【非特許文献11】
Macromolecules,30,1611−1615(1997)
【非特許文献12】
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92,6279−6283(1995)
【非特許文献13】
Int.J.Biol.Macromol.,25,55−60(1999)
【非特許文献14】
Macromol.Rapid Commun.,21,77−84(2000)
【非特許文献15】
FEMS Microbiol.Lett.,168,319−324(1998)
【非特許文献16】
Appl.Microbiol.Biotechnol.,54,37−43(2000)
【非特許文献17】
Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)
【非特許文献18】
J.Biol.Chem.,218,97−106(1956)
【非特許文献19】
J.Amer.Chem.Soc.,78,2278(1956)
【非特許文献20】
Appl.Environ.Microbiol.,44,238−241(1982)
【非特許文献21】
Molecular Cloning,1巻,572頁,1989年;Cold Spring Harbor Laboratory出版
【非特許文献22】
J.Bacteriol.,182,2753−2760(2000)
【非特許文献23】
Int.J.Biol.Macromol.,12,85−91(1990)
【0028】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、生物工学的手法を高分子化合物の合成に適用することによって、従来の有機合成的手法では実現が困難であった新たな高分子化合物の合成や、新たな機能・構造の付与が可能になると期待されている。また、従来の有機合成化学的手法では多段階に渡る反応を要していた製造工程を、1段階の工程のみで実現できる場合も多くあり、製造プロセスの簡略化やコストダウン、所要時間の短縮等の効果も期待されている。さらに、有機溶剤や酸・アルカリ、界面活性剤等の使用削減、温和な反応条件の設定、非石油系原料や低純度原料のからの合成等が可能となり、より環境低負荷かつ資源循環型の合成プロセスの実現が可能となる。なお、低純度原料からの合成についてさらに詳しく説明すれば、生物工学的合成プロセスでは一般に、触媒である酵素の基質特異性が高いため、低純度の原料を用いても所望の反応を選択的に進めることが可能であり、よって、廃棄物やリサイクル原料などの使用も期待できる。
【0029】
一方、前記の通り、本願発明者らは高分子化合物に大きな付加価値を与えるための要素技術として、高分子化合物で磁性体を被覆した構造体に着目してきた。このように高分子化合物で特定の磁性体を被覆することによって、極めて有用な機能性を有する複合構造体を得ることができる。前記の如き構造体を作出する試みは従来、有機合成的手法によって多くなされてきたが、該手法には一定の限界があった。
【0030】
仮に、かかる構造体を前述のような生物工学的手法により製造することができれば、従来の有機合成的手法では実現が困難であった新たな高分子化合物の利用や、新たな機能・構造の付与が可能になると期待できるうえ、より環境低負荷かつ資源循環型の製造プロセスを低コストで実現できるものと考えられる。例えば、生物の触媒作用に特有の極めて厳密な分子認識能や立体選択性を利用して、従来の有機合成化学的手法では実現が困難であった新たな機能性高分子化合物や、極めてキラリティーの高い高分子化合物により被覆されたカプセル構造体や積層構造体を、極めて簡便かつ環境低負荷なプロセスで製造することが可能になる。
【0031】
従って、本発明のは、生物工学的手法により製造することのできる高機能な高分子化合物構造体を提供することにある。また本発明は、機能性複合構造体として広範囲に利用可能な、高分子化合物により磁性体を被覆した構造体の効率的な製造方法を提供するものである。
【0032】
特には、磁性を有する金属および金属化合物に親油化処理を施すことなく、均一分散性に優れる、磁性体を被覆した構造体ならびにその製造方法を提供するものである。
【0033】
また、前述のように、従来の合成法により得られる磁性体含有カプセル構造体は、金属イオンの外部への溶出という課題を有するために、金属イオンの溶出による影響を受けない用途・分野にしか適用することができないのが現状である。本発明は、磁性体の分散性および磁気応答性に優れ、金属イオンが外部に溶出されにくく、種々の用途・分野に幅広く適用することのできる、磁性体を被覆したカプセル構造体ならびにその製造方法を提供するものである。
【0034】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、本発明者らが鋭意検討した結果、PHA合成酵素を磁性体表面に固定化し、ここに3−ヒドロキシアシルCoAを加えて反応させることにより、磁性体表面に所望のPHAを合成させ、磁性体をPHAで被覆した構造体を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。また、該PHAに化学修飾を施すことにより、各種の特性等を改良した構造体を得ることができることを見出した。さらに詳しくは、例えば、該PHAにグラフト鎖を導入することにより、該グラフト鎖に起因する各種の特性を備えたPHAにより、磁性体の少なくとも一部が被覆された構造体を得ることができることを見出した。また、該PHAを架橋化せしめることにより、所望の物理化学的性質(例えば、機械的強度、耐薬品性、耐熱性など)を備えたPHAにより、磁性体の少なくとも一部が被覆された構造体を得ることができることを見出した。なお、本発明における化学修飾(Chemical modification)とは、高分子材料の分子内または分子間、あるいは高分子材料と他の化学物質との間で化学反応を行わせることにより、該高分子材料の分子構造を改変することを言う。また、架橋(crosslinking)とは、高分子材料の分子内または分子間を化学的にあるいは物理化学的に結合せしめて網状構造をつくることを言い、架橋剤(crosslinking agent)とは、前記架橋反応を行うために添加する、前記高分子材料と一定の反応性を有する物質を言う。
【0035】
即ち本発明は、各種ヒドロキシアルカン酸ユニットを含有するポリヒドロキシアルカノエートが磁性体の少なくとも一部を被覆していることを特徴とする構造体に関する。
【0036】
また本発明は短鎖長または中鎖長ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素を磁性体表面に固定し、該酵素により3−ヒドロキシアシル補酵素Aを重合させてポリヒドロキシアルカノエートを合成することにより、前記磁性体の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートで被覆することを特徴とする構造体の製造方法に関する。
【0037】
また本発明は、磁性体をコア(芯材料)とし、scl−PHA、mcl−PHAやunusual−PHAを外被とするカプセル構造体に関する。また本発明は、平板またはフィルム状の磁性体の少なくとも一部をscl−PHA、mcl−PHAやunusual−PHAで被覆した積層構造体に関する。
【0038】
より詳細には、
(1) 磁性体の少なくとも一部が、ポリヒドロキシアルカノエートで被覆されていることを特徴とする、構造体に関する。
【0039】
好ましくは、
(2) 前記ポリヒドロキシアルカノエートが、3−ヒドロキシプロピオン酸ユニット、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニット及び3−ヒドロキシ−n−吉草酸ユニットより選択される少なくとも一つのモノマーユニットを有する前記(1)に記載の構造体、もしくは、
(3) 前記ポリヒドロキシアルカノエートが、3−ヒドロキシアルカン酸ユニット(ただし3−ヒドロキシプロピオン酸ユニット、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットまたは3−ヒドロキシ−n−吉草酸ユニットを除く)を含有する前記(1)に記載の構造体に関する。
【0040】
さらに好ましくは、
(4) 前記ポリヒドロキシアルカノエートが、化学式[1]から化学式[10]に示すモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つを含有するポリヒドロキシアルカノエートである、前記(3)に記載の構造体に関する。
【0041】
【化36】
(ただし、該モノマーユニットは、式中R1およびaの組合せが下記のいずれかであるモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つである。R1が水素原子(H)でありaが3から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1がハロゲン原子でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が発色団でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が カルボキシル基あるいはその塩でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が、
【0042】
【化37】
でありaが1から7の整数のいずれかであるモノマーユニット。)
【0043】
【化38】
(ただし、式中bは0から7の整数のいずれかを表し、R2は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0044】
【化39】
(ただし、式中cは1から8の整数のいずれかを表し、R3は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0045】
【化40】
(ただし、式中dは0から7の整数のいずれかを表し、R4は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0046】
【化41】
(ただし、式中eは1から8の整数のいずれかを表し、R5は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7,−CH3,−C2H5,−C3H7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0047】
【化42】
(ただし、式中fは0から7の整数のいずれかを表す。)
【0048】
【化43】
(ただし、式中gは1から8の整数のいずれかを表す。)
【0049】
【化44】
(ただし、式中hは1から7の整数のいずれかを表し、R6は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”,−CH3,−C2H5,−C3H7,−CH(CH3)2,−C(CH3)3からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0050】
【化45】
(ただし、式中iは1から7の整数のいずれかを表し、R7は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0051】
【化46】
(ただし、式中jは1から9の整数のいずれかを表す。)
また好ましくは、
(5) 前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部が、化学修飾されたポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする、前記(3)または(4)に記載の構造体に関し、さらに、
(6) 前記の化学修飾されたポリヒドロキシアルカノエートが、少なくともグラフト鎖を有するポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする、前記(5)に記載の構造体に関し、加えて、
(7) 前記グラフト鎖が、エポキシ基を有するモノマーユニットを少なくとも含むポリヒドロキシアルカノエートの化学修飾によるグラフト鎖であることを特徴とする、前記(6)に記載の構造体に関する。
【0052】
また好ましくは、
(8) 前記グラフト鎖が、アミノ基を有する化合物のグラフト鎖であることを特徴とする、前記(6)または(7)に記載の構造体に関し、さらに、
(9) 前記のアミノ基を有する化合物が、末端アミノ変性化合物であることを特徴とする、前記(8)に記載の構造体に関し、加えて、
(10) 前記末端アミノ変性化合物が、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、末端アミノ変性ポリシロキサンからなる群より選択される少なくとも一つであることを特徴とする、前記(9)に記載の構造体に関する。
【0053】
別の好ましい形態としては、
(11) 前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部が、架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする、前記(5)に記載の構造体に関し、さらに、
(12) 前記の架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートが、エポキシ基を有するモノマーユニットを少なくとも含むポリヒドロキシアルカノエートが架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする、前記(11)に記載の構造体に関する。
【0054】
また好ましくは、
(13) 前記の架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートが、ジアミン化合物、無水コハク酸、2−エチル−4−メチルイミダゾール、電子線照射からなる群より選択される少なくとも一つにより架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする、前記(11)または(12)に記載の構造体に関し、さらに、
(14) 前記ジアミン化合物が、ヘキサメチレンジアミンであることを特徴とする、前記(13)に記載の構造体に関する。
【0055】
さらに、好ましくは、
(15) 前記磁性体が粒状体であることを特徴とする前記(1)から(14)のいずれかに記載の構造体に関し、さらに、
(16) 前記ポリヒドロキシアルカノエートのモノマーユニット組成が前記構造体の内側から外側に向かう方向において変化していることを特徴とする前記(15)に記載の構造体に関する。
【0056】
あるいは、
(17) 前記磁性体が平板状またはフィルム状であることを特徴とする前記(1)から(14)のいずれかに記載の構造体に関し、さらに、
(18) 前記ポリヒドロキシアルカノエートのモノマーユニット組成が前記構造体の表面に対して垂直方向に変化していることを特徴とする前記(17)に記載の構造体に関する。
【0057】
また、好ましくは、
(19) 前記磁性体が磁性を有する金属または金属化合物からなることを特徴とする、前記(15)から(18)のいずれかに記載の構造体に関する。
【0058】
さらに、好ましくは、
(20) 前記磁性体にポリヒドロキシアルカノエート合成酵素が固定されていることを特徴とする前記(1)から(19)のいずれかに記載の構造体に関する。
【0059】
加えて、
(21) 前記ポリヒドロキシアルカノエートの分子量が1,000から10,000,000であることを特徴とする前記(1)から(20)のいずれかに記載の構造体に関する。
【0060】
また、本発明は、
(22) ポリヒドロキシアルカノエートで表面の一部を被覆した磁性体からなる構造体の製造方法であって、ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素を磁性体表面に固定化する工程と、該酵素により3−ヒドロキシアシル補酵素Aを重合させてポリヒドロキシアルカノエートを合成することにより、前記磁性体の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートで被覆する工程と、を有することを特徴とする構造体の製造方法に関する。
【0061】
好ましくは、
(23) 前記ポリヒドロキシアルカノエートが3−ヒドロキシプロピオン酸ユニット、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニット及び3−ヒドロキシ−n−吉草酸ユニットより選択される少なくとも一つのモノマーユニットを有し、前記ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素を固定化する工程の前に前記磁性体を水性媒体に分散する工程を有し、かつ、前記3−ヒドロキシアシル補酵素Aが3−ヒドロキシプロピオニル補酵素A、3−ヒドロキシブチリル補酵素A及び3−ヒドロキシバレリル補酵素Aより選択される少なくとも一つである前記(22)に記載の構造体の製造方法、または、
(24) 前記ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素が中鎖長ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素である前記(22)に記載の構造体の製造方法に関する。
【0062】
さらに好ましくは、
(25) 前記ポリヒドロキシアルカノエートが、化学式[1]から化学式[10]に示すモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つを含有するポリヒドロキシアルカノエートであり、前記ユニットのそれぞれに対して対応する3−ヒドロキシアシル補酵素Aが順に化学式[11]から化学式[20]に示す3−ヒドロキシアシル補酵素Aである、前記(24)に記載の構造体の製造方法に関する。
【0063】
【化47】
(ただし、該モノマーユニットは、式中R1およびaの組合せが下記のいずれかであるモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つである。R1が水素原子(H)でありaが3から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1がハロゲン原子でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が発色団でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が カルボキシル基あるいはその塩でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が、
【0064】
【化48】
でありaが1から7の整数のいずれかであるモノマーユニット。)
【0065】
【化49】
(ただし、式中bは0から7の整数のいずれかを表し、R2は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0066】
【化50】
(ただし、式中cは1から8の整数のいずれかを表し、R3は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0067】
【化51】
(ただし、式中dは0から7の整数のいずれかを表し、R4は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0068】
【化52】
(ただし、式中eは1から8の整数のいずれかを表し、R5は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7,−CH3,−C2H5,−C3H7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0069】
【化53】
(ただし、式中fは0から7の整数のいずれかを表す。)
【0070】
【化54】
(ただし、式中gは1から8の整数のいずれかを表す。)
【0071】
【化55】
(ただし、式中hは1から7の整数のいずれかを表し、R6は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”,−CH3,−C2H5,−C3H7,−CH(CH3)2,−C(CH3)3からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0072】
【化56】
(ただし、式中iは1から7の整数のいずれかを表し、R7は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0073】
【化57】
(ただし、式中jは1から9の整数のいずれかを表す。)
【0074】
【化58】
(ただし、前記化学式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、式中R1およびaの組合せが下記のいずれかである群より選択される少なくとも一つであり、かつ、前記化学式[1]で表されるモノマーユニットにおけるR1およびaと対応する。R1が 水素原子(H)でありaが3から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が ハロゲン原子でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が 発色団でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が カルボキシル基あるいはその塩でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が、
【0075】
【化59】
でありaが1から7の整数のいずれかであるモノマーユニット。)
【0076】
【化60】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、bは前記化学式[2]で表されるモノマーユニットにおけるbと対応する0から7の整数のいずれかを表し、R2は前記化学式[2]で表されるモノマーユニットにおけるR2と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0077】
【化61】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、cは前記化学式[3]で表されるモノマーユニットにおけるcと対応する1から8の整数のいずれかを表し、R3は前記化学式[3]で表されるモノマーユニットにおけるR3と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0078】
【化62】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、dは前記化学式[4]で表されるモノマーユニットにおけるdと対応する0から7の整数のいずれかを表し、R4は前記化学式[4]で表されるモノマーユニットにおけるR4と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0079】
【化63】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、eは前記化学式[5]で表されるモノマーユニットにおけるeと対応する1から8の整数のいずれかを表し、R5は前記化学式[5]で表されるモノマーユニットにおけるR5と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7,−CH3,−C2H5,−C3H7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0080】
【化64】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、fは前記化学式[6]で表されるモノマーユニットにおけるfと対応する0から7の整数のいずれかを表す。)
【0081】
【化65】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、gは前記化学式[7]で表されるモノマーユニットにおけるgと対応する1から8の整数のいずれかを表す。)
【0082】
【化66】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、hは前記化学式[8]で表されるモノマーユニットにおけるhと対応する1から7の整数のいずれかを表し、R6は前記化学式[8]で表されるモノマーユニットにおけるR6と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”,−CH3,−C2H5,−C3H7,−CH(CH3)2,−C(CH3)3からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0083】
【化67】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、iは前記化学式[9]で表されるモノマーユニットにおけるiと対応する1から7の整数のいずれかを表し、R7は前記化学式[9]で表されるモノマーユニットにおけるR7と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0084】
【化68】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、jは前記化学式[10]で表されるモノマーユニットにおけるjと対応する1から9の整数のいずれかを表す。)
また好ましくは、
(26) 前記磁性体を被覆する前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部に化学修飾を施す工程をさらに有する、前記(24)または(25)に記載の構造体の製造方法に関し、さらに、
(27) 前記化学修飾を施す工程が、前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部にグラフト鎖を付加する工程であることを特徴とする、前記(26)に記載の構造体の製造方法に関し、加えて、
(28) 前記グラフト鎖を付加する工程が、前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部と、末端に反応性官能基を有する化合物とを反応させる工程であることを特徴とする、前記(27)に記載の構造体の製造方法に関し、その上さらに、
(29) 前記ポリヒドロキシアルカノエートが、エポキシ基を有するモノマーユニットを少なくとも含むポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする、前記(28)に記載の構造体の製造方法に関する。
【0085】
また好ましくは、
(30) 前記末端に反応性官能基を有する化合物が、アミノ基を有する化合物であることを特徴とする、前記(28)または(29)に記載の構造体の製造方法に関し、さらに、
(31) 前記アミノ基を有する化合物が、末端アミノ変性化合物であることを特徴とする、前記(30)に記載の構造体の製造方法に関し、加えて、
(32) 前記末端アミノ変性化合物が、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、アミノ変性ポリシロキサンからなる群より選択される少なくとも一つであることを特徴とする、前記(31)に記載の構造体の製造方法に関する。
【0086】
別の好ましい形態としては、
(33) 前記化学修飾を施す工程が、前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部を架橋化する工程であることを特徴とする、前記(26)に記載の構造体の製造方法に関し、さらに、
(34) 前記架橋化工程が、前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部と架橋剤とを反応させる工程であることを特徴とする、前記(33)に記載の構造体の製造方法に関し、加えて、
(35) 前記ポリヒドロキシアルカノエートが、エポキシ基を有するモノマーユニットを少なくとも含むポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする、前記(34)に記載の構造体の製造方法に関する。
【0087】
また好ましくは、
(36) 前記架橋剤が、ジアミン化合物、無水コハク酸、2−メチル−4−メチルイミダゾールからなる群より選択される少なくとも一つであることを特徴とする、前記(34)または(35)に記載の構造体の製造方法に関し、さらに、
(37) 前記ジアミン化合物がヘキサメチレンジアミンであることを特徴とする、前記(36)に記載の構造体の製造方法に関する。
【0088】
あるいは、
(38) 前記架橋化工程が、前記ポリヒドロキシアルカノエートに電子線を照射する工程であることを特徴とする、前記(33)に記載の構造体の製造方法に関する。
【0089】
さらに、好ましくは、
(39) 前記磁性体が粒状であり、該磁性体の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートで被覆して粒状の構造体を製造することを特徴とする、前記(22)から(38)のいずれかに記載の構造体の製造方法に
(40) 前記3−ヒドロキシアシル補酵素Aの組成を経時的に変化させることにより、前記ポリヒドロキシアルカノエートのモノマーユニット組成を前記構造体の内側から外側に向かう方向において変化させることを特徴とする前記(39)に記載の構造体の製造方法に関する。
【0090】
あるいは、
(41) 前記磁性体が平板状またはフィルム状であることを特徴とする、前記(22)から(38)のいずれかに記載の構造体の製造方法に関し、さらに、
(42) 前記3−ヒドロキシアシル補酵素Aの組成を経時的に変化させることにより、前記ポリヒドロキシアルカノエートのモノマーユニット組成を前記構造体の表面に対して垂直方向に変化させることを特徴とする前記(41)に記載の構造体の製造方法に関する。
【0091】
また、好ましくは、
(43) 前記磁性体が磁性を有する金属または金属化合物からなることを特徴とする、前記(39)から(42)のいずれかに記載の構造体の製造方法に関する。
【0092】
さらに、好ましくは、
(44) 前記ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素を該酵素の生産能を有する微生物を使って生産する、前記(22)から(43)のいずれかに記載の構造体の製造方法、または、
あるいは、
(45) 前記ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素を該酵素の生産能に関与する遺伝子を導入した形質転換体により生産する、前記(22)から(43)のいずれかに記載の構造体の製造方法に関する。
【0093】
さらに好ましくは、
(46) 前記遺伝子はポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の生産能を有する微生物から得られた遺伝子であることを特徴とする前記(45)に記載の構造体の製造方法に関する。
【0094】
また好ましくは、
(47) 前記ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の生産能を有する微生物が、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)に属する微生物である、前記(44)または(46)に記載の構造体の製造方法に関し、さらに、
(48) 前記シュードモナス属(Pseudomonas sp.)に属する微生物が、シュードモナス・プチダ・P91株(Pseudomonas putida P91、FERM BP−7373)、シュードモナス・チコリアイ・H45株(Pseudomonas cichorii H45、FERM BP−7374)、シュードモナス・チコリアイ・YN2株(Pseudomonas cichorii YN2、FERM BP−7375)、シュードモナス・ジェッセニイ・P161株(Pseudomonas jessenii P161、FERM BP−7376)からなる群から選択される少なくとも1つの微生物である、前記(47)に記載の構造体の製造方法に関する。
【0095】
あるいは、
(49) 前記ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の生産能を有する微生物が、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)に属する微生物である、前記(44)または(46)に記載の構造体の製造方法に関し、さらに、
(50) 前記バークホルデリア属に属する微生物が、バークホルデリア属・OK3株(Burkholderia sp. OK3、FERM P−17370)、バークホルデリア属・OK4株(Burkholderia sp. OK4、FERM P−17371)からなる群から選択される少なくとも1つの微生物である、前記(49)に記載の構造体の製造方法に関する。
【0096】
あるいは、
(51) 生産されるポリヒドロキシアルカノエート合成酵素が、3−ヒドロキシプロピオン酸ユニット、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニット及び3−ヒドロキシ−n−吉草酸ユニットより選択される少なくとも一つのモノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを合成するものであり、該酵素の生産能を有する微生物が、バークホルデリア・セパシア・KK01株(Burkholderia cepacia KK01、FERM BP−4235)、ラルストーニャ・ユートロファ・TB64株(Ralstonia eutropha TB64、FERM BP−6933)、アルカリゲネス属・TL2株(Alcaligenes sp.TL2、FERM BP−6913)からなる群から選択される少なくとも1つの微生物である前記(44)または(46)に記載の製造方法に関する。
【0097】
また好ましくは、
(52) 前記ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の生産能を有する形質転換体の宿主微生物が、大腸菌(Escheichia coli)である、前記(45)または(46)に記載の構造体の製造方法に関する。
【0098】
【発明の実施の形態】
本発明の構造体は、置換基を側鎖に有する多様な構造のモノマーユニットを含むPHAにより磁性体が被覆された形態を有する構造体であり、細菌、細胞、核酸、蛋白質、その他生体物質の分離精製あるいはスクリーニング用担体、生体中での移動を制御できる医療診断薬担体、薬剤を患者の疾患部に移動させるドラックデリバリー担体、固定化酵素担体、磁性トナー、磁性インク、磁性塗料、磁気記録媒体などの各種機能性構造体として極めて有用である。以下に、本発明をより詳細に説明する。
【0099】
<PHA> 本発明に利用可能なPHAとしては、scl−PHA、すなわち3−ヒドロキシプロピオン酸ユニット、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニット及び3−ヒドロキシ−n−吉草酸ユニットより選択される少なくとも一つのモノマーユニットを含むPHAであっても、また、mcl−PHAの合成反応に関与するPHA合成酵素によって合成され得るPHA(即ち、各種のmcl−PHAやunusual−PHAなど)であってもよく、特に限定はされない。また、ここでは3−ヒドロキシアルカン酸ユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートで代表的に示しているが、それに限定されることなく、ポリヒドロキシアルカノエートを含んでいれば制限なくいずれも使用することができる。
【0100】
前述の通り、PHA合成酵素は、生物体内でのPHA合成反応系における最終段階を触媒する酵素であり、従って、生物体内において合成され得ることが知られているPHAであれば、いずれも該酵素による触媒作用を受けて合成されていることになる。よって、所望のPHAに対応する3−ヒドロキシアシルCoAを、本発明における磁性体に固定化された該酵素に作用させることによって、生物体内において合成され得ることが知られているあらゆる種類のPHAで磁性体を被覆した構造体を作成することが可能である。
【0101】
このようなPHAとして、具体的には、下記化学式[1]から[10]で表されるモノマーユニットを少なくとも含むPHAを例示することができる。
【0102】
【化69】
(ただし、該モノマーユニットは、式中R1およびaの組合せが下記のいずれかであるモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つである。
【0103】
R1が水素原子(H)でありaが3から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1がハロゲン原子でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が発色団でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が カルボキシル基あるいはその塩でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が、
【0104】
【化70】
でありaが1から7の整数のいずれかであるモノマーユニット。)
【0105】
【化71】
(ただし、式中bは0から7の整数のいずれかを表し、R2は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0106】
【化72】
(ただし、式中cは1から8の整数のいずれかを表し、R3は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0107】
【化73】
(ただし、式中dは0から7の整数のいずれかを表し、R4は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0108】
【化74】
(ただし、式中eは1から8の整数のいずれかを表し、R5は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7,−CH3,−C2H5,−C3H7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0109】
【化75】
(ただし、式中fは0から7の整数のいずれかを表す。)
【0110】
【化76】
(ただし、式中gは1から8の整数のいずれかを表す。)
【0111】
【化77】
(ただし、式中hは1から7の整数のいずれかを表し、R6は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”,−CH3,−C2H5,−C3H7,−CH(CH3)2,−C(CH3)3からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0112】
【化78】
(ただし、式中iは1から7の整数のいずれかを表し、R7は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0113】
【化79】
(ただし、式中jは1から9の整数のいずれかを表す。)
なお、前記のハロゲン原子の具体例としては、フッ素,塩素,臭素などを挙げることができる。また、前記の発色団としては、その3−ヒドロキシアシルCoA体がPHA合成酵素の触媒作用を受け得るものである限り特に限定はされないが、高分子合成時の立体障害などを考慮すると、3−ヒドロキシアシルCoA 分子内において、CoAの結合したカルボキシル基と発色団との間に炭素数1から5のメチレン鎖があるほうが望ましい。また、発色団の光吸収波長が可視域にあれば着色した構造体が得られ、可視域以外に光吸収波長があっても種々の電子材料として利用することができる。このような発色団の例として、ニトロソ、ニトロ、アゾ、ジアリールメタン、トリアリールメタン、キサンテン、アクリジン、キノリン、メチン、チアゾール、インダミン、インドフェノール、ラクトン、アミノケトン、ヒドロキシケトン、スチルベン、アジン、オカサジン、チアジン、アントラキノン、フタロシアニン、インジゴイドなどを挙げることができる。
【0114】
本発明において用いられるPHAとしては上記モノマーユニットを複数含むランダム共重合体やブロック共重合体を用いることも可能であり、各モノマーユニットや含まれる官能基の特性を利用したPHAの物性制御や複数の機能の付与、官能基間の相互作用を利用した新たな機能の発現等が可能となる。
【0115】
さらに、基質である3−ヒドロキシアシルCoAの種類や濃度などの組成を経時的に変化させることによって、構造体の形状が粒状であれば内側から外側に向かう方向に、構造体の形状が平面状であれば垂直方向に、PHAのモノマーユニット組成を変化させることも可能である。
【0116】
これによって、例えば、磁性体と親和性の低いPHAで被覆構造体を形成する必要がある場合、まず磁性体と親和性の高いPHAでその磁性体を被覆し、その磁性体と親和性の高いPHAのモノマーユニット組成を、目的とするPHAのモノマーユニット組成に、内側から外側に向かう方向もしくは垂直方向に変化、例えば多層構造あるいはグラディエント構造とすることで、磁性体との結合を強固にしたPHA被膜を形成することが可能となる。
【0117】
また、scl−PHAを構成するモノマーユニットである3−ヒドロキシプロピオン酸ユニット,3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニット,3−ヒドロキシ−n−吉草酸ユニット,4−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットなどのモノマーユニットと、先に例示したようなmcl−PHAやunusual−PHAのモノマーユニットが互いに混在しているPHAについても、本発明において利用可能である。また必要に応じて、PHAを合成したのち、あるいは、合成中に、さらに化学修飾等を施しても良い。PHAの分子量は、数平均分子量で1,000から1,000万程度とするのが望ましい。
【0118】
なお、本発明の構造体に用いる、PHA合成酵素により合成されるPHAは、一般にR体のみから構成されるアイソタクチックなポリマーである。
【0119】
<3−ヒドロキシアシルCoA> 本発明のPHA合成酵素の基質として用いる3−ヒドロキシアシルCoAとして、まず、scl−PHA合成酵素の基質となるものとしては、3−ヒドロキシプロピオニルCoA、3−ヒドロキシブチリルCoA及び3−ヒドロキシバレリルCoAなどが挙げられる。また、mcl−PHA合成酵素の基質として用いる3−ヒドロキシアシルCoAとしては、具体的には、下記化学式[11]から[20]で表される3−ヒドロキシアシルCoAを例示することができる。
【0120】
【化80】
(ただし、前記化学式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、式中R1およびaの組合せが下記のいずれかである群より選択される少なくとも一つであり、かつ、前記化学式[1]で表されるモノマーユニットにおけるR1およびaと対応する。R1が 水素原子(H)でありaが3から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が ハロゲン原子でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が 発色団でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が カルボキシル基あるいはその塩でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が、
【0121】
【化81】
でありaが1から7の整数のいずれかであるモノマーユニット。)
【0122】
【化82】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、bは前記化学式[2]で表されるモノマーユニットにおけるbと対応する0から7の整数のいずれかを表し、R2は前記化学式[2]で表されるモノマーユニットにおけるR2と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0123】
【化83】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、cは前記化学式[3]で表されるモノマーユニットにおけるcと対応する1から8の整数のいずれかを表し、R3は前記化学式[3]で表されるモノマーユニットにおけるR3と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0124】
【化84】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、dは前記化学式[4]で表されるモノマーユニットにおけるdと対応する0から7の整数のいずれかを表し、R4は前記化学式[4]で表されるモノマーユニットにおけるR4と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0125】
【化85】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、eは前記化学式[5]で表されるモノマーユニットにおけるeと対応する1から8の整数のいずれかを表し、R5は前記化学式[5]で表されるモノマーユニットにおけるR5と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7,−CH3,−C2H5,−C3H7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0126】
【化86】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、fは前記化学式[6]で表されるモノマーユニットにおけるfと対応する0から7の整数のいずれかを表す。)
【0127】
【化87】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、gは前記化学式[7]で表されるモノマーユニットにおけるgと対応する1から8の整数のいずれかを表す。)
【0128】
【化88】
(ただし、式中−SCoAはアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、hは前記化学式[8]で表されるモノマーユニットにおけるhと対応する1から7の整数のいずれかを表し、R6は前記化学式[8]で表されるモノマーユニットにおけるR6と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”,−CH3,−C2H5,−C3H7,−CH(CH3)2,−C(CH3)3からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0129】
【化89】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、iは前記化学式[9]で表されるモノマーユニットにおけるiと対応する1から7の整数のいずれかを表し、R7は前記化学式[9]で表されるモノマーユニットにおけるR7と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0130】
【化90】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、jは前記化学式[10]で表されるモノマーユニットにおけるjと対応する1から9の整数のいずれかを表す。)
これらの3−ヒドロキシアシルCoAは、例えば、酵素を用いたin vitro合成法、微生物や植物などの生物体を用いたin vivo合成法、化学合成法等の中から適宜選択した方法で合成して用いることができる。特に、酵素合成法は該基質の合成に一般に用いられている方法であり、市販のアシルCoAシンセターゼ(アシルCoAリガーゼ、E.C.6.2.1.3)を用いた下記反応、
を用いた方法などが知られている(Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(非特許文献17)、Appl.Microbiol.Biotechnol.,54,37−43(2000)(前記・非特許文献16)など)。酵素や生物体を用いた合成工程には、バッチ式の合成方法を用いても良く、また、固定化酵素や固定化細胞を用いて連続生産してもよい。
【0131】
<PHA合成酵素およびその生産菌> 本発明に用いるPHA合成酵素は、該酵素を生産する微生物から適宜選択された微生物、あるいは、それら微生物のPHA合成酵素遺伝子を導入した形質転換体により生産されたものを用いることができる。
【0132】
scl−PHAの生合成は、PHA生産菌の体内で、種々の炭素源から、生体内の様々な代謝経路を経て生成された(R)−3−ヒドロキシプロピオニルCoA、(R)−3−ヒドロキシブチリルCoA及び(R)−3−ヒドロキシバレリルCoAの少なくとも1種を基質とした、酵素による重合反応によって行われる。
【0133】
本発明に用いるscl−PHA合成酵素は、該酵素を生産する微生物から適宜選択された微生物、あるいは、それら微生物のscl−PHA合成酵素遺伝子を導入した形質転換体により生産されたものを用いることができる。
【0134】
scl−PHA合成酵素を生産する微生物としては、例えば、PHBやPHB/V生産菌として知られている微生物を用いることができる。このような微生物として、アエロモナス属(Aeromonas sp.)、アルカリゲネス属(Alcaligenes sp.)、クロマチウム属(Chromatium sp.)、コマモナス属(Comamonas sp.)、メチロバクテリウム属(Methylobacterium sp.)、パラコッカス属(Paracoccus sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)などが知られている。また、本発明者らにより分離された、バルクホルデリア・セパシア・KK01株(Burkholderia cepacia KK01)、ラルストーニャ・ユートロファ・TB64株(Ralstonia eutropha TB64)、アルカリゲネス属・TL2株(Alcaligenes sp.TL2)などを用いることができる。なお、KK01株は寄託番号FERM BP−4235として、TB64株は寄託番号FERM BP−6933として、TL2株は寄託番号FERM BP−6913として、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約に基づき、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(経済産業省産業技術総合研究所(旧通商産業省工業技術院)生命工学工業技術研究所特許微生物寄託センター)に国際寄託されている。
【0135】
また、このような野生株以外に、scl−PHA合成酵素を生産するために、形質転換体を用いることもできる。scl−PHA合成酵素遺伝子のクローニング、発現ベクターの作製、および、形質転換体の作製は、定法に従って行うことができる。scl−PHA合成酵素遺伝子のクローニングに関しては、これまでにアルカリゲネス・ユートロファスのscl−PHA合成酵素遺伝子(phbC)がクローニングされている。また本発明者らはバークホルデリア・セパシアKK01株のphbCについてクローニングを完了しており、またラルストーニャ・ユートロファTB64株のphbCについてもクローニングを完了している。形質転換体はこのphbCを含むベクターを宿主に導入する事によって作出できる。phbCを含むベクターは、例えばプラスミドベクター、ファージベクター等にphbCを挿入することによって得られる。宿主としては、例えば大腸菌(エシェリチア・コリ:Escherichia coli)がよく用いられる。
【0136】
また、mcl−PHAやunusual−PHAの生合成も、原料となる各種アルカン酸から、生体内の様々な代謝経路(例えば、β酸化系や脂肪酸合成経路)を経て生成された(R)−3−ヒドロキシアシルCoAを基質とした、酵素による重合反応によって行われる。ここで、mcl−PHAやunusual−PHAの合成酵素(mcl−PHA合成酵素)を生産する微生物としては、例えば、mcl−PHAやunusual−PHAの生産菌を用いることができ、このような微生物として、前述のシュードモナス・オレオボランス,シュードモナス・レジノボランス,シュードモナス属61−3株,シュードモナス・プチダ・KT2442株,シュードモナス・アエルギノーサなどのほかに、本発明者らにより分離された、シュードモナス・プチダ・P91株(Pseudomonas putida P91),シュードモナス・チコリアイ・H45株(Pseudomonas cichorii H45),シュードモナス・チコリアイ・YN2株(Pseudomonas cichorii YN2),シュードモナス・ジェッセニイ・P161株(Pseudomonas jessenii P161)等のシュードモナス属微生物や、特開2001−78753号公報(特許文献20)に記載のバークホルデリア属・OK3株(Burkholderia sp.OK3、FERM P−17370),特開2001−69968号公報(特許文献21)に記載のバークホルデリア属・OK4株(Burkholderia sp.OK4、FERMP−17371)などのバークホルデリア属微生物を用いることができる。また、これら微生物に加えて、アエロモナス属(Aeromonas sp.),コマモナス属(Comamonas sp.)などに属し、mcl−PHAやunusual−PHAを生産する微生物を用いることも可能である。
【0137】
なお、P91株は寄託番号FERM BP−7373として、H45株は寄託番号FERM BP−7374として、YN2株は寄託番号FERM BP−7375として、P161株は寄託番号FERM BP−7376として、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約に基づき、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(経済産業省産業技術総合研究所(旧通商産業省工業技術院)生命工学工業技術研究所特許微生物寄託センター)に国際寄託されている。
【0138】
なお、前記のP91株,H45株,YN2株およびP161株の菌学的性質を列挙すれば以下の通りである。また、P161株については、16S rRNAの塩基配列を配列番号:5に示す。
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
以上に挙げたようなPHA生産菌は、単独で、あるいは必要に応じて2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0144】
本発明にかかるPHA合成酵素の生産に用いる微生物の通常の培養、例えば、保存菌株の作成、PHA合成酵素の生産に必要とされる菌数や活性状態を確保するための増殖などには、用いる微生物の増殖に必要な成分を含有する培地を適宜選択して用いる。例えば、微生物の生育や生存に悪影響を及ぼすものでない限り、一般的な天然培地(肉汁培地,酵母エキスなど)や、栄養源を添加した合成培地など、いかなる種類の培地をも用いることができる。
【0145】
培養は液体培養や固体培養等、該微生物が増殖する方法であればいかなる方法をも用いることができる。さらに、バッチ培養,フェドバッチ培養,半連続培養,連続培養等の種類も問わない。液体バッチ培養の形態としては、振とうフラスコによって振とうさせて酸素を供給する方法、ジャーファーメンターによる攪拌通気方式の酸素供給方法がある。また、これらの工程を複数段接続した多段方式を採用してもよい。
【0146】
前記したようなPHA生産微生物を用いて、PHA合成酵素を生産する場合において、scl−PHA合成酵素の場合は、例えば、酵母エキスなどを含む無機培地で該微生物を増殖させ、対数増殖期から定常期初期にかけての微生物を遠心分離等で回収して所望の酵素を抽出する方法などを用いることができる。また、mcl−PHA合成酵素の場合は、例えば、オクタン酸やノナン酸等のアルカン酸を含む無機培地で該微生物を増殖させ、対数増殖期から定常期初期にかけての微生物を遠心分離等で回収して所望の酵素を抽出する方法などを用いることができる。なお、上記のような条件で培養を行うと、酵母エキスなどに由来するscl−PHA、あるいは、添加したアルカン酸に由来するmcl−PHAが菌体内に合成されることになるが、この場合、一般に、PHA合成酵素は菌体内に形成されるPHAの微粒子に結合して存在するとされている。しかし、本発明者らの検討によると、上記の方法で培養した菌体の破砕液を遠心分離した上清液にも、相当程度の酵素活性が存在していることがわかっている。これは、前記の如き対数増殖期から定常期初期にかけての比較的培養初期には、菌体内で該酵素が活発に生産され続けているため、遊離状態のPHA合成酵素も相当程度存在するためと推定される。
【0147】
上記の培養方法に用いる無機培地としては、リン源(例えば、リン酸塩等)、窒素源(例えば、アンモニウム塩,硝酸塩等)など、微生物が増殖し得る成分を含んでいるものであればいかなるものでも良く、例えば無機塩培地としては、MSB培地,E培地(J.Biol.Chem.,218,97−106(1956)(非特許文献18)),M9培地等を挙げることができる。なお、本発明における実施例で用いるM9培地の組成は以下の通りである。
【0148】
さらに、良好な増殖及びPHA合成酵素の生産のためには、上記の無機塩培地に培地に以下に示す微量成分溶液を0.3%(v/v)程度添加するのが好ましい。
【0149】
培養温度としては上記の菌株が良好に増殖可能な温度であれば良く、例えば14〜40℃、好ましくは20〜35℃程度が適当である。
【0150】
また、前述のPHA生産菌の持つPHA合成酵素遺伝子を導入した形質転換体を用いて、所望のPHA合成酵素を生産することも可能である。PHA合成酵素遺伝子のクローニング、発現ベクターの作製、および、形質転換体の作製は、定法に従って行うことができる。大腸菌等の細菌を宿主として得られた形質転換体においては、培養に用いる培地として、天然培地あるいは合成培地、例えば、LB培地,M9培地等が挙げられる。また、培養温度は25から37℃の範囲で、好気的に8〜27時間培養することにより、微生物の増殖を図る。その後集菌し、菌体内に蓄積されたPHA合成酵素の回収を行うことができる。培地には、必要に応じて、カナマイシン,アンピシリン,テトラサイクリン,クロラムフェニコール,ストレプトマイシン等の抗生物質を添加しても良い。また、発現ベクターにおいて、誘導性のプロモーターを用いている場合は、形質転換体を培養する際に、該プロモーターの対応する誘導物質を培地に添加して発現を促しても良い。例えば、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG),テトラサイクリン,インドールアクリル酸(IAA)等が誘導物質として挙げられる。
【0151】
PHA合成酵素としては、微生物の菌体破砕液や、硫酸アンモニウム等によりタンパク質成分を沈殿・回収した硫安塩析物などの粗酵素を用いても良く、また、各種方法で精製した精製酵素を用いても良い。該酵素には必要に応じて、金属塩,グリセリン,ジチオスレイトール,EDTA,ウシ血清アルブミン(BSA)などの安定化剤,付活剤を適宜添加して用いることができる。
【0152】
PHA合成酵素の分離・精製方法は、PHA合成酵素の酵素活性が保持される方法であればいかなる方法をも用いることができる。例えば、得られた微生物菌体を、フレンチプレス,超音波破砕機,リゾチームや各種界面活性剤等を用いて破砕したのち、遠心分離して得られた粗酵素液、またはここから調製した硫安塩析物について、アフィニティクロマトグラフィー,陽イオンまたは陰イオン交換クロマトグラフィー,ゲル濾過等の手段を単独または適宜組み合わせることによって精製酵素を得ることができる。特に、遺伝子組換えタンパク質は、N末端やC末端にヒスチジン残基等の「タグ」を結合した融合タンパク質の形で発現させ、このタグを介して親和性樹脂に結合させることによって、より簡便に精製することができる。融合タンパク質から目的のタンパク質を分離するには、トロンビン,血液凝固因子Xa等のプロテアーゼで切断する、pHを低下せしめる、結合競合剤として高濃度のイミダゾールを添加する等の方法を用いると良い。あるいは、発現ベクターとしてpTYB1(New England Biolab社製)を用いた場合のようにタグがインテインを含む場合はdithiothreitolなどで還元条件として切断する。アフィニティクロマトグラフィーによる精製を可能とする融合タンパク質には、ヒスチジンタグの他にグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST),キチン結合ドメイン(CBD),マルトース結合タンパク(MBP),あるいはチオレドキシン(TRX)等も公知である。GST融合タンパク質は、GST親和性レジンによって精製することができる。
【0153】
PHA合成酵素の活性測定は、既報の各種方法を用いることができるが、例えば、3−ヒドロキシアシルCoAがmcl−PHA合成酵素の触媒作用により重合してPHAになる過程で放出されるCoAを、5,5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)で発色させて測定することを測定原理とする、以下に示す方法によって測定することができる。試薬1:ウシ血清アルブミン(Sigma社製)を0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)に3.0mg/ml溶解、試薬2:3−ヒドロキシオクタノイルCoAを0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)に3.0mmol/L溶解、試薬3:トリクロロ酢酸を0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)に10mg/ml溶解、試薬4:5,5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)を0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)に2.0mmol/L溶解。第1反応(PHA合成反応):試料(酵素)溶液100μlに試薬1を100μl添加して混合し、30℃で1分間プレインキュベートする。ここに、試薬2を100μl添加して混合し、30℃で1〜30分間インキュベートしたのち、試薬3を添加して反応を停止させる。第2反応(遊離CoAの発色反応):反応停止した第1反応液を遠心分離(147000m/s2(15000G)、10分間)し、この上清500μlに試薬4を500μl添加し、30℃で10分間インキュベートしたのち、412nmの吸光度を測定する。酵素活性の算出:1分間に1μmolのCoAを放出させる酵素量を1単位(U)とする。
【0154】
また、scl−PHAの場合の例としては、例えば前記3−ヒドロキシオクタノイルCoAの代わりに3−ヒドロキシブチリルCoAを用いて、同様に測定を行うことができる。
【0155】
なお、該酵素により合成されるPHAは、一般にR体のみから構成されるアイソタクチックなポリマーである。
【0156】
<磁性体> 本発明の方法に用いる磁性体としては、PHA合成酵素を固定化することのできるものであれば、何れについても適宜選択して用いることができる。また、PHA合成酵素の固定化方法や、作製した構造体の応用の形態等に応じて、磁性体の種類や構造を適宜選択して用いることができる。
【0157】
本発明の構造体を構成する磁性体としては、例えば、磁性を有する金属または金属化合物が挙げられ、さらに具体的には、四三酸化鉄((Fe3O4)、γ−重三二酸化鉄(γ−Fe2O3)、MnZnフェライト、NiZnフェライト、YFeガーネット、GaFeガーネット、Baフェライト、Srフェライト等各種フェライト、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、クロムなどの金属、鉄、マンガン、コバルト、ニッケルなどの合金を挙げることができ、これらに限定されるものではない。ここで、例えば生体物質を固定する場合、あるいは生体内に投与する場合などについては、生体に対する適合性の良好なマグネタイト((Fe3O4)のほか、必要に応じてマグネタイトの金属元素の一部を少なくとも1種類の他の金属元素で置換した各種フェライト組成などが好適に適用可能である。これら磁性体の形状は、生成条件によって変化し、多面体、8面体、6面体、球状、棒状、燐片状等などがあるが、異方性の少ない構造が機能の安定発現のためにはより好ましい。本発明の構造体を構成する磁性体の一次粒子の粒子径は、その用途に応じて適宜選択可能であるが、例えば、0.001〜10μmの範囲内の粒径を有する粒子を用いると良い。
【0158】
また、本発明の磁性体としては、超常磁性を有するものについても好ましく用いることができる。例えば、フェライトの粒子径が20nm程度以下と小さい場合には、フェライトは熱擾乱影響を受け超常磁性を示すようになり、残留磁化や保磁力を持たなくなる。超常磁性であっても磁界を印加することにより磁気的操作が可能であり、また超常磁性であれば残留磁化や保磁力を持たないので、磁界のないときに磁気的な凝集の生じるおそれがない。
【0159】
また、磁性体は金属または金属化合物を含むマトリックスなどのような複合材料であってもよく、マトリックスは有機または無機の各種材料から構成されるものである。
【0160】
その他、粒子表面を脂肪酸で被覆する方法、シランカップリング剤処理に代表される各種カップリング剤処理を行う方法など、各種手法により疎水化処理を行った磁性体についても、本発明の磁性体として利用することができる。
【0161】
<構造体の作製> 本発明の構造体の製造方法には、磁性体にPHA合成酵素を固定化する工程と、該固定化PHA合成酵素に3−ヒドロキシアシルCoAを反応させてPHAを合成させる工程とを含むものである。
【0162】
磁性体にPHA合成酵素を固定化する方法としては、該酵素の活性が保持され得るものであり、かつ、所望の磁性体において適用可能なものであれば、通常行われている酵素固定化方法の中から任意に選択して用いることができる。例えば、共有結合法,イオン吸着法,疎水吸着法,物理的吸着法,アフィニティ吸着法,架橋法,格子型包括法などを例示することができるが、特にイオン吸着や疎水吸着を利用した固定化方法が簡便である。
【0163】
PHA合成酵素などの酵素タンパク質は、アミノ酸が多数結合したポリペプチドであり、リシン,ヒスチジン,アルギニン,アスパラギン酸,グルタミン酸などの遊離のイオン性基を有するアミノ酸によってイオン吸着体としての性質を示し、またアラニン,バリン,ロイシン,イソロイシン,メチオニン,トリプトファン,フェニルアラニン,プロリンなどの遊離の疎水性基を有するアミノ酸によって、また有機高分子であるという点で疎水吸着体としての性質を有している。従って、程度の差はあるが、イオン性や疎水性、もしくはイオン性と疎水性の両方の性質を有する固体表面に吸着させることが可能である。
【0164】
本発明における磁性体の場合、例えばフェライトなどの金属酸化物においては表面に水酸基が存在しており、PHA合成酵素表面のカルボキシル基との水素結合による固定化法などが好適に用いうる。
【0165】
イオン吸着法または疎水吸着法によるPHA合成酵素のコアへの固定化は、該酵素とコアとを所定の反応液中で混合することによって達成される。このとき、該酵素がコアの表面に均等に吸着されるよう、反応容器を適当な強度で振盪あるいは攪拌することが望ましい。
【0166】
反応液のpHや塩濃度、温度によってコアおよびPHA合成酵素の表面電荷の正負や電荷量、疎水性が変化するので、用いるコアの性質に合わせて、酵素活性上許容される範囲内で溶液の調整を行うことが望ましい。例えば、コアが主にイオン吸着性である場合には、塩濃度を下げることにより、コアとPHA合成酵素との吸着に寄与する電荷量を増やすことができる。また、pHを変える事により、両者の反対電荷を増やすことができる。コアが主に疎水吸着性である場合には、塩濃度を上げることによって両者の疎水性を増やすことができる。また、予め電気泳動やぬれ角等を測定し、コアやPHA合成酵素の荷電状態や疎水性を調べることで、吸着に適した溶液条件を設定をすることもできる。さらに、コアとPHA合成酵素との吸着量を直接測定して条件を求めることもできる。吸着量の測定は、例えば、コアが分散された溶液に濃度既知のPHA合成酵素溶液を添加し、吸着処理を行った後、溶液中のPHA合成酵素濃度を測定し、差し引き法により吸着酵素量を求める等の方法を用いればよい。
【0167】
イオン吸着法や疎水吸着法によって酵素を固定化し難いコア材質の場合は、操作の煩雑さや酵素の失活の可能性を考慮すれば共有結合法によってもかまわない。
【0168】
また、磁性体に対して結合能を有するアミノ酸配列を含むペプチドをPHA合成酵素に融合して提示させ、該磁性体に対して結合能を有するアミノ酸配列のペプチド部分と、磁性体との結合性に基づいて、該磁性体表面にPHA合成酵素を固定化することもできる。
【0169】
磁性体に対する結合能を有するアミノ酸配列は、例えばランダムペプチドライブラリのスクリーニングによって決定することができる。特に例えばM13 系ファージの表面蛋白質(例えばgene III 蛋白質)のN末端側遺伝子にランダム合成遺伝子を連結して調製されたファージディスプレイペプチドライブラリーを好適に用いることが出来るが、この場合磁性体に対する結合能を有するアミノ酸配列を決定するには、次のような手順をとる。すなわち、磁性体あるいは該磁性体を構成する少なくとも一成分に対してファージディスプレイペプチドライブラリーを添加することによって接触させ、その後洗浄により結合ファージと非結合ファージを分離する。磁性体結合ファージを酸などにより溶出し緩衝液で中和した後大腸菌に感染させファージを増幅する。この選別を複数回繰り返すと目的の磁性体に結合能のある複数のクローンが濃縮される。ここで単一なクローンを得るため再度大腸菌に感染させた状態で培地プレート上にコロニーを作らせる。それぞれの単一コロニーを液体培地で培養した後、培地上清中に存在するファージをポリエチレングリコール等で沈殿精製し、その塩基配列を解析すればペプチドの構造を知ることができる。
【0170】
上記方法により得られた磁性体に対する結合能を有するペプチドのアミノ酸配列は、通常の遺伝子工学的手法を用いて、PHA合成酵素に融合して利用される。磁性体に対する結合能を有するペプチドはPHA合成酵素のN末端あるいはC末端に連結して発現することができる。また適当なスペーサー配列を挿入して発現することもできる。スペーサー配列としては、約3〜約400アミノ酸が好ましく、また、スペーサー配列はいかなるアミノ酸を含んでもよい。最も好ましくは、スペーサー配列は、PHA合成酵素が機能するのを妨害せず、また、PHA合成酵素が磁性体に結合するのを妨害しないものである。
【0171】
上記方法により作製された固定化酵素は、そのままでも用いることができるが、さらに凍結乾燥等を施した上で使用することもできる。
【0172】
3−ヒドロキシアシルCoAの重合によりPHAが合成される反応において放出されるCoA量が1分間に1μmolとなるPHA合成酵素量を1単位(U)としたとき、磁性体に固定する酵素の量は、例えば磁性体がカプセル構造体のコアである場合、磁性体 1gあたり10 単位(U)から1,000単位(U)、望ましくは50 単位(U)から500単位(U)の範囲内に設定すると良い。
【0173】
前記の固定化酵素は所望のPHAの原料となる3−ヒドロキシアシルCoAを含む水系反応液中に投入され、磁性体表面のPHA合成酵素によりPHAが合成されることにより、磁性体がPHAにより被覆された構造体を形成する。上記水系反応液は、PHA合成酵素の活性を発揮させ得る条件に調整された反応系として構成されるべきであり、例えば通常、pH5.5からpH9.0、好ましくはpH7.0からpH 8.5となるよう、緩衝液により調製する。ただし、使用するPHA合成酵素の至適pHやpH安定性によっては、上記範囲以外に条件を設定することも除外されない。緩衝液の種類は、使用するPHA合成酵素の活性を発揮させ得るものであれば、設定するpH領域等に応じて適宜選択して用いることができるが、例えば、一般の生化学反応に用いられる緩衝液、具体的には、酢酸バッファー,リン酸バッファー,リン酸カリウムバッファー,3−(N−モルフォリノ)プロパンスルフォン酸(MOPS)バッファー,N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルフォン酸(TAPS)バッファー,トリス塩酸バッファー,グリシンバッファー,2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルフォン酸(CHES)バッファーなどを用いると良い。緩衝液の濃度も、使用するPHA合成酵素の活性を発揮させ得るものであれば特に限定はされないが、通常5.0mmol/Lから1.0mol/L、好ましくは0.1mol/Lから0.2mol/Lの濃度のものを使用すると良い。反応温度は、使用するPHA合成酵素の特性に応じて適宜設定するものであるが、通常、4℃から50℃、好ましくは20℃から40℃に設定すると良い。ただし、使用するPHA合成酵素の至適温度や耐熱性によっては、上記範囲以外に条件を設定することも除外されない。反応時間は、使用するPHA合成酵素の安定性等にもよるが、通常、1分間から24時間、好ましくは30分間から3時間の範囲内で適宜選択して設定する。反応液中の3−ヒドロキシアシルCoA濃度は、使用するPHA合成酵素の活性を発揮させ得る範囲内で適宜設定するものであるが、通常、0.1mmol/Lから1.0mol/L、好ましくは0.2mmol/Lから0.2mol/Lの範囲内で設定すると良い。なお、反応液中における3−ヒドロキシアシルCoA濃度が高い場合、一般に、反応系のpHが低下する傾向にあるため、3−ヒドロキシアシルCoA濃度を高く設定する場合は、前記の緩衝液濃度も高めに設定することが好ましい。
【0174】
また、PHAの分子量制御、及びPHA被覆膜の親水性向上という観点から、反応溶液中に水酸基を有する化合物を適宜添加してもよい。
【0175】
本発明の方法で用いる水酸基を有する化合物は、アルコール類、ジオール類、トリオール類、アルキレングリコール類、ポリエチレングリコール類、ポリエチレンオキサイド類、アルキレングリコールモノエステル類、ポリエチレングリコールモノエステル類、ポリエチレンオキサイドモノエステル類化合物から選ばれる少なくとも1種類であるが、更に詳しく述べると以下の通りである。即ち、アルコール類、ジオール類及びトリオール類化合物が、炭素数3から14の直鎖状及び分岐アルコール、ジオール、トリオールである。アルキレングリコール類及びアルキレングリコールモノエステル類化合物の炭素鎖が、炭素数2から10の直鎖状及び分岐状構造を有している化合物である。ポリエチレングリコール類、ポリエチレンオキサイド類、ポリエチレングリコールモノエステル類、ポリエチレンオキサイドモノエステル類化合物の数平均分子量が100から20,000の範囲である。
【0176】
この様な、水酸基を有する化合物の濃度は、PHA合成酵素による3−ヒドロキシアシルCoA の重合反応が阻害されない濃度であれば特に制限はないが、好ましくはPHA合成酵素と3−ヒドロキシアシルCoAとの反応溶液に対して0.01%から10%(w/v)、更に好ましくは0.02%から5%(w/v)を添加することがよく、添加方法については反応初期に一括して添加する方法、反応時間内に数回に分けて反応溶液中に添加する方法のいずれでも良い。
【0177】
また、上記工程において、水系反応液中の3−ヒドロキシアシルCoAの種類や濃度などの組成を経時的に変化させることによって、構造体の形状が粒状であれば内側から外側に向かう方向に、構造体の形状が平面状であれば垂直方向に、磁性体を被覆するPHAのモノマーユニット組成を変化させることができる。
【0178】
このモノマーユニット組成の変化した構造体の形態として、例えば、PHA被膜の組成変化が連続的で、内側から外側に向かう方向もしくは垂直方向に組成の勾配を形成した1層のPHAが磁性体を被覆した形態を挙げることができる。製造方法としては、例えば、PHAを合成しながら反応液中に別組成の3−ヒドロキシアシルCoAを添加するなどの方法によればよい。
【0179】
また別の形態として、PHA被膜の組成変化が段階的で、組成の異なるPHAが磁性体を多層に被覆した形態を挙げることができる。この製造方法としては、ある3−ヒドロキシアシルCoAの組成でPHAを合成した後、遠心分離などによって調製中の構造体を反応液からいったん回収し、これに異なる3−ヒドロキシアシルCoAの組成からなる反応液を再度添加するなどの方法によればよい。
【0180】
上記反応により得られた構造体は、必要に応じて、洗浄工程に供する。構造体の洗浄方法は、該構造体製造の目的上好ましくない変化を、該構造体に及ぼすものでない限り、特に限定はされない。構造体が、磁性体をコアとしPHAを外被とするカプセル構造体である場合は、例えば、遠心分離によって該構造体を沈殿させ、上清を除去することによって、反応液に含まれる不要成分を除去することができる。ここに水,緩衝液,メタノール等の該PHAが不溶である洗浄剤を添加し、遠心分離をする操作を行うことにより、さらに洗浄することもできる。また、遠心分離の替わりに、濾過等の手法を用いても良い。一方、構造体が、平板状の磁性体をPHAで被覆した構造体である場合は、例えば、上記洗浄剤に浸漬するなどして洗浄することができる。さらに、上記構造体は、必要に応じて、乾燥工程に供することができる。さらに該構造体に各種二次加工や化学修飾等の処理を施して使用することもできる。
【0181】
例えば、磁性体を被覆したPHAに化学修飾を施すことにより、さらに有用な機能・特性を備えた構造体を得ることができる。
【0182】
例えば、該PHAにグラフト鎖を導入することにより、該グラフト鎖に起因する各種の特性を備えたPHAが、磁性体の少なくとも一部を被覆した構造体を得ることができる。また、該PHAを架橋化せしめることにより、構造体の機械的強度、耐薬品性、耐熱性などを制御することが可能である。
【0183】
化学修飾の方法は、所望の機能・構造を得る目的を満たす方法であれば特に限定はされないが、例えば、反応性官能基を側鎖に有するPHAを合成し、該官能基の化学反応を利用して化学修飾する方法を、好適な方法として用いることができる。
【0184】
前記の反応性官能基の種類は、所望の機能・構造を得る目的を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、前記したエポキシ基を例示することができる。エポキシ基を側鎖に有するPHAは、通常のエポキシ基を有するポリマーと同様の化学的変換を行うことができる。具体的には、例えば水酸基に変換したり、スルホン基を導入したりすることが可能である。また、チオールやアミンを有する化合物を付加することもでき、例えば、末端に反応性官能基を有する化合物、具体的には、エポキシ基との反応性が高いアミノ基を末端に有する化合物などを添加して反応させることにより、ポリマーのグラフト鎖が形成される。
【0185】
アミノ基を末端に有する化合物としては、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、アミノ変性ポリシロキサン(アミノ変性シリコーンオイル)などのアミノ変性ポリマーを例示することができる。このうち、アミノ変性ポリシロキサンとしては、市販の変性シリコーンオイルを使用しても良く、また、J.Amer.Chem.Soc.,78,2278(1956)(非特許文献19)などに記載の方法で合成して使用することもでき、該ポリマーのグラフト鎖の付加による耐熱性の向上等の効果が期待できる。
【0186】
また、近年、リガンド−レセプター反応が高感度の反応技術として広範囲に用いられている。ここで、リガンド−レセプター反応には抗原−抗体反応、核酸の相補性、ホルモン−受容体、酵素−基質、ビオチン−アビジン等の生理活性物質とその受容体など様々な特異的結合を利用する反応が含まれる。これらは一般にリガントまたはレセプターを担体に結合させ、リガンド−レセプター反応後、相対するレセプターまたはリガンドをその媒体中から分離する方法が用いられる。特にこれらの反応を利用して媒体中に存在する極微量の抗原、ホルモンや特定配列の核酸を分離精製する精製法やそれらを検出するリガンド−レセプターアッセイが広く実施されている。
【0187】
これらのリガンド−レセプター反応に用いられるリガンドあるいはレセプターの担持に、本発明のPHAにおける反応性官能基を好適に用いることが可能であり、グラフト化による有用な機能・特性の発現が可能となる。
【0188】
また、エポキシ基を有するポリマーの化学的変換の他の例として、ヘキサメチレンジアミンなどのジアミン化合物,無水コハク酸,2−エチル−4−メチルイミダゾール,電子線照射などによる架橋反応が挙げられる。このうち、エポキシ基を側鎖に有するPHAとヘキサメチレンジアミンとの反応は、下記のスキームに示すような形で進行し、架橋ポリマーが生成する。
【0189】
【化91】
本発明における構造体の含有する磁性体の量は1〜80重量%、好ましくは5〜70重量%、さらに好ましくは10〜60重量%である。磁性体の量が1重量%より少ないと磁気性能が不足して磁性体含有構造体としての性能が不十分となるおそれがあり、また、磁性体含量が80重量%を越えると磁性体が多すぎるため、構造体本来の機能が損なわれ、実用性能の面で満足できなくなるおそれがある。
【0190】
本発明におけるカプセル構造体の粒子径は、用途等に応じて適宜選定されるが、通常、0.02〜100μm、好ましくは0.05〜20μmである。
【0191】
また、本発明における積層構造体の被覆膜の厚みは、用途等に応じて適宜選定されるが、通常、0.02〜100μm、好ましくは0.05〜20μmである。
【0192】
また、本発明の構造体を、生体関連物質の担持あるいは生体内への投与などに供する場合は、磁性体の溶出、生体関連物質の相互作用の阻害などを最小限とするためにも、磁性体がPHAにより完全に被覆される形態がより好ましいものである。
【0193】
得られた構造体において、磁性体がPHAで被覆されていることを確認する方法としては、一般には、例えば、ガスクロマトグラフィー等による組成分析と電子顕微鏡等による形態観察とを組み合わせた方法や、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)とイオンスパッタリング技術を用いて、各構成層のマススペクトルから構造を判定する方法などを用いることができる。しかし、さらに直接的かつ簡便な確認方法として、本発明者らによって新たに開発された、ナイルブルーA染色と蛍光顕微鏡観察とを組み合わせた方法を用いることもできる。本発明者らは、PHA合成酵素を用いた無細胞系(in vitro)でのPHA合成を簡便に判定できる方法について鋭意検討を続けてきた結果、PHAに特異的に結合して蛍光を発する性質を有する薬剤であり、Appl.Environ.Microbiol.,44,238−241(1982)(非特許文献20)において微生物細胞(in vivo)でのPHA生産の簡易的判別に用いることができると報告されているナイルブルーAが、適切な使用方法および使用条件の設定によって、無細胞系でのPHA合成の判定にも用いることができることを見出し、上記の方法を完成させた。即ち、本方法では、所定濃度のナイルブルーA溶液を濾過したのち、PHAを含む反応液に混合し、蛍光顕微鏡で一定の波長の励起光を照射しながら観察することにより、合成されたPHAのみから蛍光を発せしめ、これを観察することによって、無細胞系でのPHA合成を簡易に判定することができる。使用した磁性体が上記条件下で蛍光を発する性質を有するものでない限り、上記方法を本発明の構造体の製造に応用することにより、磁性体の表面を被覆したPHAを直接的に観察し、評価することができる。
【0194】
また、磁性体を被覆しているPHAの内側から外側に向かう方向もしくは垂直方向の組成分布は、イオンスパッタリング技術と飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)を組み合わせて評価することができる。
【0195】
<構造体の利用> 本発明の特徴の一つは、通常の有機合成化学的手法では製造が困難であった構造体の製造を可能にしたことであり、従って、従来の有機合成化学的手法で製造されたカプセル構造体や積層構造体にはない優れた特性を付与した構造体を得ることが可能である。例えば、従来の有機合成的手法では実現が困難であった新たな高分子化合物の利用や、新たな機能・構造の付与が可能になる。さらに具体的には、生物の触媒作用に特有の極めて厳密な分子認識能や立体選択性を利用して、従来の有機合成化学的手法では実現が困難であった新たな機能性高分子化合物や、極めてキラリティーの高い高分子化合物により被覆されたカプセル構造体や積層構造体等を、極めて簡便なプロセスで製造することが可能になる。
【0196】
特には、磁性を有する金属および金属化合物に親油化処理を施すことなく、均一分散性に優れる磁性体を被覆した構造体を、極めて簡便なプロセスで製造することが可能になる。
【0197】
また、磁性体の分散性および磁気応答性に優れ、金属イオンが外部に溶出されにくく、種々の用途・分野に幅広く適用することのできる、磁性体を被覆したカプセル構造体を、極めて簡便なプロセスで製造することが可能になる。
【0198】
本発明の構造体は、粒子の表面および/または表面近傍に磁性体が実質的に存在しないか、存在しても極めて少ないため、使用時の磁性体の溶出による影響が実質上問題となることがない。したがって、本発明の構造体は、金属成分を嫌うことの多い生化学用途においても従来の非磁性粒子と同様の目的に使用することができ、例えば一般の診断薬用担体および副作用の少ないドラッグデリバリー担体として、広範な抗原、抗体、蛋白、核酸等の担持に適用することが可能である。また、酵素免疫法の診断薬用担体として、磁性体の溶出による非特異的酵素発色が抑えられるなど、多様な検出手法に適用できるものであり、極めて実用性能の高いものである。さらに、本発明の構造体は、例えば、粒子表面に特定の核酸を捕捉するための特異的核酸あるいは蛋白プローブを担持し、核酸捕捉担体として使用することも可能である。これらの場合、従来の磁性体含有ポリマー粒子では、金属、特には鉄成分がPCR反応を阻害するため、粒子をPCR法に供することができなかった。これに対して、本発明の構造体は、表面に露出した磁性体が実質上存在しないため、PCR反応に対する阻害作用がなくなり、捕捉された核酸を結合したままでPCR法に供することが可能になった。このため、本発明の構造体は、核酸を用いる研究分野、核酸による検査・診断・治療分野、核酸を利用する産業分野等を含む幅広い技術分野において、極めて好適に使用できるものである。
【0199】
なお、本発明の構造体およびその利用方法およびその製造方法は、上記の方法に限定されるものではない。
【0200】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、以下に述べる実施例は本発明の最良の実施形態の一例ではあるが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。例えば、下記実施例では、3−ヒドロキシアルカン酸ユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを用いているが、それに限定されることなく、ポリヒドロキシアルカノエートを含んでいれば制限なくいずれも使用することができる。なお、以下における「%」は特に標記した以外は質量基準、「部」はすべて「質量部」である。
【0201】
まず、共通の基材としての磁性体の調製方法を示す。
【0202】
(参考例1)
<磁性体の調製>
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄イオンに対して1.0〜1.1当量の水酸化ナトリウム溶液を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。この水溶液のpHを8前後に維持しながら、空気を吹き込み、80〜90℃で酸化反応を行い、種晶を生成させるスラリー液を調製した。
【0203】
次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(水酸化ナトリウムのナトリウム成分)に対し0.9〜1.2当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液をpH8前後に維持して、空気を吹き込みながら酸化反応をすすめ、酸化反応後に生成した磁性酸化鉄粒子を洗浄、濾過乾燥し、凝集している粒子を解砕し、平均粒径が0.10μmの磁性体(1)を得た。
【0204】
次いで、scl−PHA合成酵素に係る実施形態について示す(参考例2〜4、実施例1〜10)。
【0205】
(参考例2)
<scl−PHA合成酵素生産能を有する形質転換体の作製>
TB64株を100mlのLB培地(1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム、pH7.4)で、30℃、一晩培養後、マーマーらの方法により染色体DNAを分離回収した。得られた染色体DNAを制限酵素Sau3AIで部分分解した。ベクターはpUC18を使用し、制限酵素BamHIで切断し、脱リン酸化処理(Molecular Cloning,1巻,572頁,1989年;Cold Spring Harbor Laboratory出版(非特許文献21))の後、DNAライゲーションキットVer.II(宝酒造)を用いて染色体DNAのSau3AI部分分解断片と連結した。次に、この連結DNA断片を用いて大腸菌(Escheichia coli)HB101株を形質転換し、TB64株の染色体DNAライブラリーを作製した。
【0206】
次に、TB64株のPHB合成系酵素群遺伝子を含むDNA断片を得るための表現型スクリーニングを行った。選択培地には2%グルコースを含有するLB培地を用い、寒天平板培地上のコロニーが適当な大きさに生育してきた時点でスダンブラックB溶液を噴霧し、UV光照射により蛍光を発するコロニーを取得した。取得したコロニーからアルカリ法によりプラスミドを回収することでPHB合成系酵素群遺伝子を含むDNA断片を得ることができた。
【0207】
ここで取得した遺伝子断片を不和合性グループであるIncP、IncQ、あるいはIncWの何れにも属さない広宿主域複製領域を含むベクターpBBR122(Mo Bi Tec)に組み換え、この組み換えプラスミドをラルストーニャ・ユートロファTB64m1株(PHB合成能欠損株)にエレクトロポレーション法により形質転換したところ、TB64m1株のPHB合成能が復帰し、相補性を示した。
【0208】
このPHB合成系酵素群遺伝子を含む断片についてサンガー法により塩基配列を決定した。その結果、配列番号:1で示される塩基配列を有するPHB合成系酵素遺伝子が該断片中に存在することが確認できた。
【0209】
次に、配列番号:2で示されるscl−PHA合成酵素遺伝子の開始コドン近傍の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを設計・合成し(アマシャムファルマシア・バイオテク)、このオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、scl−PHA合成酵素遺伝子を含む断片を増幅した(LA−PCRキット;宝酒造)。
【0210】
次に、上のようにして得られたPCR増幅断片について制限酵素BamHIを用いて完全分解し、発現ベクターpTrc99Aの制限酵素BamHIで切断、脱リン酸化処理(Molecular Cloning,1巻,572頁,1989年;Cold Spring Harbor Laboratory出版(前記・非特許文献21))したものに、DNAライゲーションキットVer.II(宝酒造)を用いて連結した。
【0211】
得られた組換えプラスミドで大腸菌(Escherichia coli HB101)を塩化カルシウム法により形質転換し(宝酒造)、得られた組換え体より回収した組換えプラスミドをpTB64−phbとした。
【0212】
pTB64−phbで大腸菌(Escherichia coli HB101)を塩化カルシウム法により形質転換し、pTB64−phb組換え株を得た。
【0213】
(参考例3) scl−PHA合成酵素の生産1
<GST融合scl−PHA合成酵素生産能を有する形質転換体の作製>
pTB64−phb組換え株をLB培地200mlに植菌して、37℃、125ストローク/分で振盪培養した。12時間培養の後、培養液200mlをグルコース2%を含むLB培地200mlに植菌して(計400ml)、37℃、125ストローク/分で12時間振盪培養した。このようにして得られた菌体を遠心分離によって回収し、常法によりプラスミドDNAを回収した。
【0214】
pTB64−phbに対して、上流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:3)および下流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:4)をそれぞれ設計・合成した(アマシャムファルマシア・バイオテク)。このオリゴヌクレオチドをプライマーとして、pTB64−phbをテンプレートとしてPCRを行い、上流にBamHI制限部位、下流にXhoI制限部位を有するscl−PHA合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA−PCRキット;宝酒造(株)製)。
【0215】
精製したPCR増幅産物をBamHIおよびXhoIにより消化し、プラスミドpGEX‐6P‐1(アマシャムファルマシア・バイオテク社製)の対応する部位に挿入した。これらのベクターを用いて大腸菌(JM109)を形質転換し、発現用菌株を得た。菌株の確認は、Miniprep(Wizard Minipreps DNA Purification Systems、PROMEGA社製)を用いて大量に調製したプラスミドDNAをBamHI、XhoIで処理して得られるDNA断片により行った。
【0216】
<scl−PHA合成酵素の調製>
得られた発現用菌株をアンピシリン(100μg/L)を添加した2×YT培地(ポリペプトン 16g/L、酵母エキス 10g/L、NaCl 5g/L、pH 7.0)100mlで30℃にて一晩前培養した。これをアンピシリン(100μg/L)を添加した2×YT培地(ポリペプトン 16g/L、酵母エキス 10g/L、NaCl 5g/L、pH 7.0)10リットルに添加し、30℃にて3時間培養後、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を最終濃度1mmol/Lとなるように添加し、30℃にて3時間培養した。
【0217】
回収した培養液を4℃、78000m/s2(=8000G)で10分間遠心処理し、上清を取り除いた後、菌体ペレットを4℃のPBS溶液500mlに再懸濁した。この菌液をあらかじめ4℃に冷却しておいたベッセルに各回40mlずつ注入し、フレンチプレスによって216MPa(=2200 kg/cm2)に加圧しながら少しずつノズルから菌液を解放することで菌体破砕処理を行った。菌体破砕液を4℃、78000m/s2(=8000G)で10分間遠心処理した後、上清を回収した。この上清を0.45μmのフィルタで濾過し、固形夾雑物を取り除き、上清中に目的のグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)の融合したscl−PHA合成酵素が存在することをSDS−PAGEで確認した。
【0218】
次に、このGST融合scl−PHA合成酵素をグルタチオン・セファロース4B(Glutathion SeSCL−PHArose 4B:アマシャムファルマシア・バイオテク社製)で精製した。グルタチオン・セファロース4Bの75%スラリー6.65mlを4℃、4900m/s2(=500G)で5分間遠心処理し、上清を取り除いた後、4℃のPBS溶液200mlに再懸濁し、さらに4℃、4900m/s2(=500G)で5分間遠心処理し、上清を取り除いた。さらに4℃のPBS溶液5mlに再懸濁し、グルタチオン・セファロース4B の50%スラリーとした。
【0219】
このグルタチオン・セファロース4Bの50%スラリー10mlに先ほど調整した上清全量を添加し、室温で30分間緩やかに振とうしてグルタチオン・セファロース4Bに上清中の目的とする融合たんぱく質をアフィニティ吸着させた。その後、4℃、4900m/s2(=500G)で5分間遠心処理し、上清を取り除いた後、4℃のPBS溶液5mlに再懸濁し、再び同様の遠心処理を行い、上清を除いた。このGST融合scl−PHA合成酵素を固定化したグルタチオン・セファロース4Bを固定化酵素(1)とした。
【0220】
その後、PBS溶液への再懸濁と遠心処理を2回繰り返して洗浄した後、最後に5℃のクリベージ緩衝液(Cleavage Buffer;Tris−HCl 50mmol/L、NaCl 150mmol/L、EDTA 1mmol/L、Dithiothreitol 1mmol/L、pH7)5mlに懸濁した。これに4% のプレシション・プロテアーゼ(PreScission Protease;アマシャム ファルマシア バイオテク社製)のクリベージ緩衝液溶液0.5mlを添加し、5℃で4時間緩やかに振とうした。これを4℃、4900m/s2(=500G)で5分間遠心処理し、上清を回収した。次に上記と同様に調整したグルタチオン・セファロース4Bの50%スラリー1mlを、4℃、4900m/s2(=500G)で5分間遠心処理し、上清を除いた後のグルタチオン・セファロース4Bに先ほど回収した上清を添加し、緩やかに攪拌して上清中に残留したプレシション・プロテアーゼをグルタチオン・セファロース4Bに吸着させた。次いで4℃、4900m/s2(=500G)で5分間遠心処理して上清を回収した。この上清はSDS−PAGEにより、シングルバンドを示し、精製されていることを確認した。
【0221】
また、含有するscl−PHA合成酵素活性を以下の方法で測定した。まず、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)を0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)に3.0mg/ml溶解した溶液100μlを酵素溶液100μlに添加して混合し、30℃で1分間プレインキュベートした。これに、3−ヒドロキシブチリルCoAを0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)に3.0mmol/L溶解した溶液100μlを添加して混合し、30℃で1〜30分間インキュベートしたのち、トリクロロ酢酸を0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)に10mg/ml溶解した溶液300μlを添加して反応を停止させた。反応停止したこの溶液を遠心分離(147000m/s2(=15000G)し、5,5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)を0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)に2.0mmol/L溶解した溶液500μlを上清500μlに添加し、30℃で10分間インキュベートしたのち、412nmの吸光度を測定した。そして1分間に1μmolのCoAを放出させる酵素量を1単位(U)として、酵素活性を計算した。その結果、比活性として7.5 U/mlが得られた。この液を、ライホゲルを添加して限外濾過濃縮し、10 U/mlとしたものを精製酵素液(1)とした。
【0222】
(参考例4)
<scl−PHA合成酵素含有粗酵素液の調製>
KK01及びTL2株を、酵母エキス0.5%、ミネラル溶液(下記参照)0.3%を含有したM9培地10リットルで30℃、24時間培養し、回収した培養液を4℃、(78000m/s2(=8000G)で10分間遠心処理し、上清を取り除いた後、菌体ペレットを4℃のPBS溶液500mlに再懸濁した。この菌液をあらかじめ4℃に冷却しておいたベッセルに各回40mlずつ注入し、フレンチプレスによって216MPa(=2200 kg/cm2)に加圧しながら少しずつノズルから菌液を解放することで菌体破砕処理を行った。得られた菌体破砕液を4℃、(78000m/s2(=8000G)で10分間遠心処理した後、上清を回収した。この上清を0.45μmのフィルタで濾過し、固形夾雑物を取り除き、含有するscl−PHA合成酵素活性を前述の方法で測定した。その結果、比活性としてKK01株からは1.6 U/ml、TL2株からは1.2U/mlが得られた。この液を、ライホゲルを添加して限外濾過濃縮し、10U/mlとした粗酵素液を、KK01株由来のものを粗酵素液(1)、TL2株由来のものを粗酵素液(2)とした。
【0223】
(実施例1)
精製されたscl−PHA合成酵素液を用いて、下記の方法で磁性カプセル構造体(1)を調製した。
【0224】
精製酵素液(1)10質量部に磁性体(1)1質量部、PBS39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してscl−PHA合成酵素を磁性体表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0225】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0226】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体はPHBにより表面を被覆されていることがわかった。
【0227】
対照として、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)49質量部に磁性体(1)1質量部を添加し、30℃で2.5時間緩やかに振盪した後、同様にナイルブルーAで染色して蛍光顕微鏡観察を行った。その結果、磁性体表面は全く蛍光を発しなかった。
【0228】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、モノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、3−ヒドロキシ酪酸ユニットからなるPHBであることが確認された。
【0229】
さらに、該PHBの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=68,000、Mw=140,000であった。
【0230】
<実施例2>
scl−PHA合成酵素を含有した粗酵素液を用いて、下記の方法で磁性カプセル構造体(2)を調製した。
【0231】
粗酵素液(1)10質量部に磁性体(1)1質量部、PBS39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してscl−PHA合成酵素を磁性体表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0232】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0233】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体はPHBにより表面を被覆されていることがわかった。
【0234】
対照として、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)49質量部に磁性体(1)1質量部を添加し、30℃で2.5時間緩やかに振盪した後、同様にナイルブルーAで染色して蛍光顕微鏡観察を行った。その結果、磁性体表面は全く蛍光を発しなかった。
【0235】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、モノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、3−ヒドロキシ酪酸ユニットからなるPHBであることが確認された。
【0236】
さらに、該PHBの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=59,000、Mw=130,000であった。
【0237】
(実施例3)
scl−PHA合成酵素を含有した粗酵素液を用いて、下記の方法で磁性カプセル構造体(3)を調製した。
【0238】
粗酵素液(2)10質量部に磁性体(1)1質量部、PBS 39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してscl−PHA合成酵素を磁性体表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0239】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0240】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体はPHBにより表面を被覆されていることがわかった。
【0241】
対照として、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)49質量部に磁性体(1)1質量部を添加し、30℃で2.5時間緩やかに振盪した後、同様にナイルブルーAで染色して蛍光顕微鏡観察を行った。その結果、磁性体表面は全く蛍光を発しなかった。
【0242】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、モノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、3−ヒドロキシ酪酸ユニットからなるPHBであることが確認された。
【0243】
さらに、該PHBの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=65,000、Mw=160,000であった。
【0244】
(実施例4)
精製されたscl−PHA合成酵素液を用いて、下記の方法で磁性カプセル構造体(4)を調製した。
【0245】
精製酵素液(1)10質量部に、磁性体(2)として1次粒子径0.02μmのニッケル粉末(Ni(200)UFMP、真空冶金(株)製)1質量部、PBS39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してscl−PHA合成酵素を磁性体表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0246】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0247】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体はPHBにより表面を被覆されていることがわかった。
【0248】
対照として、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)49質量部に、磁性体(2)として1次粒子径0.02μmのニッケル粉末(Ni(200)UFMP、真空冶金(株)製)1質量部を添加し、30℃で2.5時間緩やかに振盪した後、同様にナイルブルーAで染色して蛍光顕微鏡観察を行った。その結果、磁性体表面は全く蛍光を発しなかった。
【0249】
さらに、該粒子の一部を遠心分離()、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、モノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、3−ヒドロキシ酪酸ユニットからなるPHBであることが確認された。
【0250】
さらに、該PHBの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=78,000、Mw=170,000であった。
【0251】
(実施例5)
精製されたscl−PHA合成酵素液を用いて、下記の方法で磁性カプセル構造体(5)を調製した。
【0252】
精製酵素液(1)10質量部に、磁性体(3)として1次粒子径0.02μmのγ−Fe2O3微粉(NanoTek、シーアイ化成(株)製)1質量部、PBS39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してscl−PHA合成酵素を磁性体表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0253】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0254】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体はPHBにより表面を被覆されていることがわかった。
【0255】
対照として、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)49質量部に、磁性体(3)として1次粒子径0.02μmのγ−Fe2O3微粉(NanoTek、シーアイ化成(株)製)1質量部を添加し、30℃で2.5時間緩やかに振盪した後、同様にナイルブルーAで染色して蛍光顕微鏡観察を行った。その結果、磁性体表面は全く蛍光を発しなかった。
【0256】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、モノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、3−ヒドロキシ酪酸ユニットからなるPHBであることが確認された。
【0257】
さらに、該PHBの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=80,000、Mw=170,000であった。
【0258】
(実施例6)
精製されたscl−PHA合成酵素液を用いて、下記の方法で磁性カプセル構造体(6)を調製した。
【0259】
精製酵素液(1)10質量部に、磁性体(4)として粒子径0.3μmのマグネタイト微粒子(マグネタイトEPT500、戸田工業(株)製)1質量部、PBS39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してscl−PHA合成酵素を磁性体表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0260】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0261】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体はPHBにより表面を被覆されていることがわかった。
【0262】
対照として、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)49質量部に、磁性体(4)として粒子径0.3μmのマグネタイト微粒子(マグネタイトEPT500、戸田工業(株)製)1質量部を添加し、30℃で2.5時間緩やかに振盪した後、同様にナイルブルーAで染色して蛍光顕微鏡観察を行った。その結果、磁性体表面は全く蛍光を発しなかった。
【0263】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、モノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、3−ヒドロキシ酪酸ユニットからなるPHBであることが確認された。
【0264】
さらに、該PHBの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=79,000、Mw=180,000であった。
【0265】
(実施例7)
精製されたscl−PHA合成酵素液を用いて、下記の方法で磁性カプセル構造体(7)を調製した。
【0266】
精製酵素液(1)10質量部に磁性体(1)1質量部、PBS39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してscl−PHA合成酵素を磁性体表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0267】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)1質量部、ポリエチレングリコール200(PEG200、キシダ化学(株)製、平均分子量190〜210)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0268】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体はPHBにより表面を被覆されていることがわかった。
【0269】
対照として、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)49質量部に磁性体(1)1質量部を添加し、30℃で2.5時間緩やかに振盪した後、同様にナイルブルーAで染色して蛍光顕微鏡観察を行った。その結果、磁性体表面は全く蛍光を発しなかった。
【0270】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、モノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、3−ヒドロキシ酪酸ユニットからなるPHBであることが確認された。
【0271】
また、1H−NMR(FT−NMR:Bruker DPX400;1H共鳴周波数:400MHz;測定核種:1H;使用溶媒:CDCl3;reference:キャピラリ封入TMS/CDCl3;測定温度:室温)によってPHAの構造解析を詳細に行ったところ、3−ヒドロキシ酪酸ユニットからなるPHAに由来するピーク以外に、3.5〜3.8ppm、及び4.2ppm付近にポリエチレングリコールに由来するピークが確認された。
【0272】
さらに、該PHBの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=22,000、Mw=45,000であった。
【0273】
(実施例8)
縦30mm×横30mm×厚さ3mmのフェライトシート(NP−S01、日本ペイント(株)製、フェライト粒子の樹脂分散体)を1%グルタルアルデヒドに1時間浸漬し、純水洗浄後、精製酵素液(1)に30℃で30分間浸漬して、該酵素を固定化した。未反応のscl−PHA合成酵素をPBSで洗浄して除去し、固定化酵素を得た。
【0274】
30mmol/L 3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)、0.1%ウシ血清アルブミン(Sigma社製)を含む0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)に上記固定化酵素を浸漬し、30℃で2時間緩やかに振盪した。反応終了後、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)で洗浄して、未反応物等を除去した。
【0275】
反応後のフェライトシートを1%ナイルブルーA水溶液で染色し、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、フェライトシートの表面に蛍光が認められたことから、該構造体はフェライトシートからなる基材がPHBからなる膜で被覆された積層構造体であることがわかった。
【0276】
さらに、該積層構造体を真空乾燥したのち、クロロホルムに浸漬し、60℃で20時間攪拌して被覆層を成すPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、モノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、3−ヒドロキシ酪酸ユニットからなるPHBであることが確認された。
【0277】
(実施例9) 磁性カプセル構造体の被覆性評価
磁性体微粒子が完全にポリマーで保護被覆されているかどうかを確認するため、得られた磁性カプセル構造体(1)〜(7)、それぞれ0.1gを、70℃に加熱した純水100ml中に2時間浸漬した後、溶出液中の金属含有率を測定したところ、金属含有率は全てのカプセル構造体において3ppm以下であった。これより、これらのカプセル構造体は「金属イオンを溶出しない」と判定することができた。
【0278】
<実施例10> 磁性カプセル構造体の磁性体の分散性評価
磁性体のカプセル構造体における分散状態を確認するため、得られた磁性カプセル構造体(1)〜(7)、それぞれを酢酸ウラニルで染色した後、透過型電子顕微鏡によりカプセル構造体における磁性体の分散状態を観察したところ、粒子内部に均一に分散しており、カプセル構造体表面近傍の一部、または表面近傍の全部への局在化は観察されなかった。
【0279】
次に、mcl−PHAならびにunusual−PHAの合成酵素に係る実施形態について示す(参考例5〜7、実施例11〜28)。
【0280】
(参考例5)
<mcl−PHA合成酵素生産能を有する形質転換体の作製>
YN2株を100mlのLB培地(1%ポリペプトン(日本製薬(株)製)、0.5%酵母エキス(Difco社製)、0.5%塩化ナトリウム、pH7.4)で30℃、一晩培養後、マーマーらの方法により染色体DNAを分離回収した。得られた染色体DNAを制限酵素Hind IIIで完全分解した。ベクターにはpUC18を使用し、制限酵素Hind IIIで切断した。末端の脱リン酸処理(Molecular Cloning,1,572,(1989); Cold Spring Harbor Laboratory出版(前記・非特許文献21))ののち、DNAライゲーションキットVer.II(宝酒造(株)製)を用いて、ベクターの切断部位(クローニングサイト)と染色体DNAのHind III完全分解断片とを連結した。この染色体DNA断片を組み込んだプラスミドベクターを用いて、大腸菌(Escherichia coli)HB101株を形質転換し、YN2株のDNAライブラリーを作製した。
【0281】
次に、YN2株のmcl−PHA合成酵素遺伝子を含むDNA断片を選択するため、コロニー・ハイブリダイズ用のプローブ調製を行った。配列番号:6および配列番号:7の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを合成し(アマシャムファルマシア・バイオテク(株))、このオリゴヌクレオチドをプライマーに用いて、染色体DNAをテンプレートとしてPCRを行った。PCR増幅されてきたDNA断片をプローブとして用いた。プローブの標識化は、市販の標識酵素系AlkPhosDirect(アマシャムファルマシア・バイオテク(株)製)を利用して行った。得られた標識化プローブを用いて、YN2株の染色体DNAライブラリーからコロニーハイブリダイゼーション法によってmcl−PHA合成酵素遺伝子を含む組換えプラスミドを有する大腸菌菌株を選抜した。選抜した菌株から、アルカリ法によってプラスミドを回収することで、mcl−PHA合成酵素遺伝子を含むDNA断片を得ることができた。
【0282】
ここで取得した遺伝子DNA断片を、不和合性グループであるIncP、IncQ、あるいはIncWの何れにも属さない広宿主域複製領域を含むベクターpBBR122(Mo BiTec)に組み換えた。この組み換えプラスミドをシュードモナス・チコリアイYN2m1株(PHA合成能欠損株)にエレクトロポレーション法により形質転換したところ、YN2m1株のPHA合成能が復帰し、相補性を示した。
【0283】
従って、選抜された遺伝子DNA断片は、シュードモナス・チコリアイYN2m1株内において、mcl−PHA合成酵素に翻訳可能な、mcl−PHA合成酵素遺伝子領域を含むことが確認される。
【0284】
このDNA断片について、サンガー法により塩基配列を決定した。その結果、決定された塩基配列中には、それぞれペプチド鎖をコードする、配列番号:8および配列番号:9で示される塩基配列が存在することが確認された。これらのmcl−PHA合成酵素遺伝子について、染色体DNAをテンプレートとしてPCRを行い、mcl−PHA合成酵素遺伝子の完全長を再調製した。即ち、配列番号:8で示される塩基配列のmcl−PHA合成酵素遺伝子に対する、上流側プライマー(配列番号:10)および下流側プライマー(配列番号:11)、配列番号:9で示される塩基配列のmcl−PHA合成酵素遺伝子に対する、上流側プライマー(配列番号:12)および下流側プライマー(配列番号:13)をそれぞれ合成した(アマシャムファルマシア・バイオテク(株))。
【0285】
これらのプライマーを用いて、配列番号:8および配列番号:9で示される塩基配列それぞれについてPCRを行い、mcl−PHA合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA−PCRキット;宝酒造(株)製)。次に、得られたPCR増幅断片および発現ベクターpTrc99Aを制限酵素Hind IIIで切断し、脱リン酸化処理(Molecular Cloning,1巻,572頁,1989年;Cold Spring Harbor Laboratory出版(前記・非特許文献21))したのち、この発現ベクターpTrc99Aの切断部位に、両末端の不用な塩基配列を除いたmcl−PHA合成酵素遺伝子の完全長を含むDNA断片を、DNAライゲーションキットVer.II(宝酒造(株)製)を用いて連結した。
【0286】
得られた組換えプラスミドで大腸菌(Escherichia coli HB101:宝酒造)を塩化カルシウム法により形質転換した。得られた組換え体を培養し、組換えプラスミドの増幅を行い、組換えプラスミドをそれぞれ回収した。配列番号:8の遺伝子DNAを保持する組換えプラスミドをpYN2−C1、配列番号:9の遺伝子DNAを保持する組換えプラスミドをpYN2−C2とした。pYN2−C1、pYN2−C2で大腸菌(Escherichia coli HB101fB fadB欠損株)を塩化カルシウム法により形質転換し、それぞれの組換えプラスミドを保持する組換え大腸菌株、pYN2−C1組換え株、pYN2−C2組換え株を得た。
【0287】
(参考例6)mcl−PHA合成酵素の生産1
<mcl−PHA合成酵素生産能を有する形質転換体の作製>
pYN2−C1に対して、上流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:14)および下流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:15)をそれぞれ設計・合成した(アマシャムファルマシア・バイオテク(株))。このオリゴヌクレオチドをプライマーとして、pYN2−C1をテンプレートとしてPCRを行い、上流にBamHI制限部位、下流にXhoI制限部位を有するmcl−PHA合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA−PCRキット;宝酒造(株)製)。
【0288】
同様にpYN2−C2に対して、上流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:16)および下流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:17)をそれぞれ設計・合成した(アマシャムファルマシア・バイオテク(株))。このオリゴヌクレオチドをプライマーとして、pYN2−C2をテンプレートとしてPCRを行い、上流にBamHI制限部位、下流にXhoI制限部位を有するmcl−PHA合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA−PCRキット;宝酒造(株)製)。
【0289】
精製したそれぞれのPCR増幅産物をBamHIおよびXhoIにより消化し、プラスミドpGEX−6P−1(アマシャムファルマシア・バイオテク(株)製)の対応する部位に挿入した。これらのベクターを用いて大腸菌(JM109)を形質転換し、発現用菌株を得た。菌株の確認は、Miniprep(Wizard Minipreps DNA Purification Systems、PROMEGA社製)を用いて大量に調製したプラスミドDNAをBamHI、XhoIで処理して得られるDNA断片により行った。
【0290】
<mcl−PHA合成酵素の調製>
得られた菌株をLB−Amp培地10mlで一晩プレ・カルチャーした後、その0.1mlを、10mlのLB−Amp培地に添加し、37℃、170 rpmで3時間振とう培養した。その後IPTGを添加(終濃度 1mmol/L)し、37℃で4から12時間培養を続けた。
【0291】
IPTG 誘導した大腸菌を遠心分離により集菌(78000m/s2(=8000G),2分、4℃)し、1/10 量の 4℃リン酸緩衝生理食塩水(PBS;8 g NaCl,1.44 g Na2HPO4,0.24 g KH2PO4,0.2 g KCl,1,000ml精製水)に再懸濁した。凍結融解およびソニケーションにより菌体を破砕し、遠心分離(78000m/s2(=8000G),10分、4℃)して固形夾雑物を取り除いた。目的の発現タンパク質が上清に存在することをSDS−PAGEで確認した後、誘導され発現されたGST融合タンパク質をグルタチオン・セファロース4B(アマシャムファルマシア・バイオテク(株)製)で精製した。使用するグルタチオン・セファロースは、予め非特異的吸着を抑える処理を行った。すなわち、グルタチオン・セファロースを同量のPBSで3回洗浄(78000m/s2(=8000G)、1分、4℃)した後、4%ウシ血清アルブミン含有PBSを同量加えて4℃で1時間処理した。処理後同量のPBSで2回洗浄し、1/2量のPBSに再懸濁した。前処理したグルタチオン・セファロース 40μlを、無細胞抽出液1ml に添加し、4℃で静かに攪拌した。これにより、融合タンパク質GST−YN2−C1およびGST−YN2−C2をグルタチオン・セファロースに吸着させた。吸着後、遠心分離(78000m/s2(=8000G)、1分、4℃)してグルタチオン・セファロースを回収し、400μlのPBSで3回洗浄した。その後、10mmol/Lグルタチオン40μlを添加し、4℃で1時間攪拌して、吸着した融合タンパク質を溶出した。遠心分離(78000m/s2(=8000G)、2分、4℃)して上清を回収した後PBSに対して透析し、GST融合タンパク質を精製した。SDS−PAGEにより、シングルバンドを確認した。
【0292】
各GST融合タンパク質500μgをPreScissionプロテアーゼ(アマシャムファルマシア・バイオテク(株)製、5U)で消化した後、グルタチオン・セファロースに通してプロテアーゼとGSTとを除去した。フロースルー分画をさらに、PBSで平衡化したセファデックスG200カラムにかけ、発現タンパク質YN2−C1およびYN2−C2の最終精製物を得た。SDS−PAGEによりそれぞれ60.8kDa、および61.5kDaのシングルバンドを確認した。
【0293】
該酵素を生体溶液試料濃縮剤(みずぶとりくんAB−1100、アトー(株)製)を用いて濃縮し、10 U/mlの精製酵素溶液を得た。
【0294】
各精製酵素活性は前述の方法で測定した。また、試料中のタンパク質濃度は、マイクロBCAタンパク質定量試薬キット(ピアスケミカル社製)によって測定した。各精製酵素の活性測定の結果を表1に示した。
【0295】
【表1】
(参考例7)mcl−PHA合成酵素の生産2
P91株、H45株、YN2株またはP161株を、酵母エキス(Difco社製)0.5%、オクタン酸0.1%とを含むM9培地200mlに植菌して、30℃、125ストローク/分で振盪培養した。24時間後、菌体を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)によって回収し、0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)200mlに再懸濁して再度遠心分離することによって洗浄した。菌体を0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)2.0mlに再懸濁し、超音波破砕機にて破砕したのち、遠心分離(118000m/s2(=12000G)、4℃、10分間)して上清を回収して粗酵素を得た。
【0296】
各精製酵素活性は前述の方法で測定し、その結果を表2に示した。
【0297】
【表2】
(実施例11) 磁性カプセル構造体(8)の作製
pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10 U/ml)10質量部に磁性体(1)を1質量部、PBS 39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してmcl−PHA合成酵素を磁性体(1)表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0298】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R)−3−ヒドロキシオクタノイルCoA(Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0299】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体(1)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(1)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。これを磁性カプセル構造体(8)とした。
【0300】
対照として、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)49質量部に磁性体(1)粒子を1質量部添加し、30℃で2.5時間緩やかに振盪した後、同様にナイルブルーAで染色して蛍光顕微鏡観察を行った。その結果、磁性体(1)粒子表面は全く蛍光を発しなかった。
【0301】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、図1に示す通り、該PHAは3−ヒドロキシオクタン酸ユニットからなるPHAであることが確認された。
【0302】
さらに、該PHAの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=20,000、Mw=39,000であった。
【0303】
(実施例12)磁性カプセル構造体(9)の作製
pYN2−C2組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10U/ml)10質量部に磁性体(1)を1質量部、PBS 39質量部を添加し、30℃にて30分間緩やかに振盪してmcl−PHA合成酵素を磁性体(1)表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0304】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R)−3−ヒドロキシオクタノイルCoA(Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0305】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体(1)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(1)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。これを磁性カプセル構造体(9)とした。
【0306】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、実施例11の結果と同様に、該PHAは3−ヒドロキシオクタン酸ユニットからなるPHAであることが確認された。
【0307】
(実施例13) 磁性カプセル構造体(10)〜(13)の作製
YN2,H45株,P91株またはP161株由来のmcl−PHA合成酵素の粗酵素99質量部に磁性体(1)を1質量部添加し、30℃にて30分間緩やかに振とうしてmcl−PHA合成酵素を磁性体(1)1表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0308】
上記の各固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R)−3−ヒドロキシオクタノイルCoA(Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、それぞれ30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0309】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、いずれの固定化酵素の反応液においても、磁性体(1)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(1)粒子はいずれも、PHAにより表面を被覆されていることがわかった。これを磁性カプセル構造体(10)〜(13)とした。
【0310】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、実施例11の結果と同様に、該PHAは3−ヒドロキシオクタン酸ユニットからなるPHAであることが確認された。
【0311】
(実施例14)磁性カプセル構造体(14)の作製
pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10 U/ml)10質量部に磁性体(1)を1質量部、PBS 39質量部を添加し、30℃にて30分間緩やかに振とうしてmcl−PHA合成酵素を磁性体(1)表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0312】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoA(Reformatsky反応により得られた3−ヒドロキシフェニル吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸を得たのち、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0313】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体(1)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(1)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。これを磁性カプセル構造体(14)とした。
【0314】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、図2に示す通り、該PHAは3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットからなるPHAであることが確認された。
【0315】
さらに、該PHAの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=17,000、Mw=35,000であった。
【0316】
(実施例15) 磁性カプセル構造体(15)の作製
pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10U/ml)10質量部に磁性体(1)を1質量部、PBS 39質量部を添加し、30℃にて30分間緩やかに振とうしてmcl−PHA合成酵素を磁性体(1)表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0317】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R)−3−ヒドロキシ−5−(4−フルオロフェニル)バレリルCoA(Reformatsky反応により得られた3−ヒドロキシフェニル吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−(4−フルオロフェニル)吉草酸を得たのち、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0318】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体(1)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(1)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。これを磁性カプセル構造体(15)とした。
【0319】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、図3に示す通り、当該PHAは3−ヒドロキシ−5−(4−フルオロフェニル)吉草酸をモノマーユニットとするPHAであることが確認された。
【0320】
(実施例16) 磁性カプセル構造体(16)の作製
pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10U/ml)10質量部に磁性体(1)を1質量部、PBS 39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してmcl−PHA合成酵素を磁性体(1)表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0321】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R)−3−ヒドロキシオクタノイルCoA(Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0322】
反応後、上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体(1)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(1)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。これを磁性カプセル構造体(16)とした。
【0323】
また、このカプセル構造体を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、乾燥処理後、この粒状体の表面に形成されたポリマーの質量を、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS IV、CAMECA製)により測定した。得られたマススペクトルから、カプセル構造体表面はポリヒドロキシオクタノエートのホモポリマーで構成されていることがわかった。また、イオンスパッタリングによりカプセル構造体表面を少しずつ削りながら同様にTOF−SIMSによりマススペクトルを測定していったが、いずれもポリヒドロキシオクタノエートのホモポリマーで構成されていた。これより、本比較例のカプセル構造体は、親水性の無機粒子を直接疎水性のポリヒドロキシオクタノエートのホモポリマーで被覆したカプセル構造体であることがわかった。
【0324】
ここで、該PHAの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=25,000、Mw=47,000であった。
【0325】
(実施例17) 磁性カプセル構造体(17)の作製
pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10U/ml)10質量部に磁性体(1)を1質量部、PBS 39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してmcl−PHA合成酵素を磁性体(1)表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0326】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R)−3−ヒドロキシピメリルCoA(J.Bacteriol.,182,2753−2760(2000)(非特許文献22)に記載の方法で調製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で10分間緩やかに振盪した。次いで、30℃で緩やかに振盪しながらこの反応液に(R)−3−ヒドロキシオクタノイルCoA(Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を含む0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)をマイクロチューブポンプ(東京理化器械社製MP−3N)を用いて1分間に1質量部の割合で添加した。さらに1時間30分後、生成した粒状体を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、上清を除いた後、この粒状体に(R)−3−ヒドロキシオクタノイルCoA(Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を含む0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)を25質量部添加し、30℃で20分間緩やかに振盪した。
【0327】
反応後、上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体(1)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(1)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。これを磁性カプセル構造体(17)とした。
【0328】
また、このカプセル構造体を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、乾燥処理後、この粒状体の表面に形成されたポリマーの質量を、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS IV、CAMECA製)により測定した。得られたマススペクトルから、カプセル構造体表面はポリヒドロキシオクタノエートのホモポリマーで構成されていることがわかった。また、イオンスパッタリングによりカプセル構造体表面を少しずつ削りながら同様にTOF−SIMSによりマススペクトルを測定していったところ、3−ヒドロキシオクタン酸と3−ヒドロキシピメリン酸の共重合体(モル比21:1)が現れ、粒状体内部にいくにつれて前記共重合体における3−ヒドロキシオクタン酸の組成比率が次第に減少し、逆に3−ヒドロキシピメリン酸の組成比率が増加して最終的にポリヒドロキシピメレートのホモポリマーに変化することが確認された。これより、本実施例のカプセル構造体は、親水性の粒状基材を、親水性官能基を有するポリヒドロキシピメレートで被覆し、その上を親水性官能基を有する3−ヒドロキシピメリン酸と疎水性官能基を有する3−ヒドロキシオクタン酸の共重合体によって、表層に至るにつれて3−ヒドロキシオクタン酸の組成比率を高めながら被覆し、さらに最表層をポリヒドロキシオクタノエートのホモポリマーで被覆したカプセル構造体であることがわかった。
【0329】
ここで、該PHAの平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=23,000、Mw=43,000であった。
【0330】
(実施例18) 磁性カプセル構造体(18)〜(21)の作製
pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10U/ml)10質量部に磁性体(1)を1質量部、PBS 39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してmcl−PHA合成酵素を磁性体(1)表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0331】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェノキシバレリルCoA(3−フェノキシプロパナールとブロモ酢酸エチルとのReformatsky反応で得られた3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸を得たのち、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)0.8質量部、(R,S)−3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタノイルCoA(Int.J.Biol.Macromol.,12,85−91(1990)(非特許文献23)に記載の方法で合成した3−ヒドロキシ−7−オクテン酸の不飽和部分を3−クロロ安息香酸でエポキシ化したのち、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)0.2質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪して磁性カプセル構造体(18)を得た。
【0332】
比較対照として、(R,S)−3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタノイルCoAを、3−ヒドロキシオクタノイルCoAに変更する以外は、上記と同様の方法で磁性カプセル構造体(19)を得た。
【0333】
上記の試料10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、いずれの試料においても、磁性体(1)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(1)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。
【0334】
対照として、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)49質量部に磁性体(1)粒子を1質量部添加し、30℃で2.5時間緩やかに振盪した後、同様にナイルブルーAで染色して蛍光顕微鏡観察を行った。その結果、磁性体(1)粒子表面は全く蛍光を発しなかった。
【0335】
さらに、試料の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。この抽出液について1H−NMR分析を行った(使用機器:FT−NMR:Bruker DPX400、測定核種:1H,使用溶媒:重クロロホルム(TMS入り))。ここから計算した各側鎖ユニットのユニット%を表3に示す。
【0336】
【表3】
上記の磁性カプセル構造体(18)を50質量部遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)してカプセル構造体を回収し、精製水50質量部に懸濁する操作を3回繰り返したのち、該懸濁液に架橋剤としてヘキサメチレンジアミン0.5質量部を溶解させた。溶解を確認後、凍結乾燥により水を除去した(これを磁性カプセル構造体(20)とする)。さらに、磁性カプセル構造体(20)を70℃で12時間反応させた(これを磁性カプセル構造体(21)とする)。
【0337】
上記磁性カプセル構造体(20)及び磁性カプセル構造体(21)をクロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出し、真空乾燥によりクロロホルムを除去し、示差走査熱量計(DSC;パーキンエルマー社製、Pyris 1、昇温:10℃/分)装置で測定を行った。その結果、磁性カプセル構造体(20)では90℃付近に明確な発熱ピークがみられ、ポリマー中のエポキシ基とヘキサメチレンジアミンとの反応が起こり、ポリマー同士の架橋が進行していることが示される。一方、磁性カプセル構造体(21)では明確なヒートフローは見られず、架橋反応がほぼ完了していることが示される。
【0338】
さらに、同様のサンプルにつき、赤外吸収を測定した(FT−IR;パーキンエルマー社製、1720X)。その結果、磁性カプセル構造体(20)で見られたアミン(3340cm−1付近)及びエポキシ(822cm−1付近)のピークが磁性カプセル構造体(21)では消失している。
【0339】
以上の結果より、側鎖にエポキシユニットをもつPHAとヘキサメチレンジアミンを反応させることにより、架橋ポリマーが得られることが明らかとなった。
【0340】
一方、比較対照として磁性カプセル構造体(19)について同様の評価を行ったが、前記の如き、ポリマー同士の架橋を明確に示す評価結果は得られなかった。
【0341】
(実施例19) 磁性カプセル構造体(22)〜(23)の作製
pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10U/ml)10質量部に磁性体(1)を1質量部、PBS 39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してmcl−PHA合成酵素を磁性体(1)表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0342】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェノキシバレリルCoA(3−フェノキシプロパナールとブロモ酢酸エチルとのReformatsky反応で得られた3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸を得たのち、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)0.8質量部、(R,S)−3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタノイルCoA(Int.J.Biol.Macromol.,12,85−91(1990)(前記・非特許文献23)に記載の方法で合成した3−ヒドロキシ−7−オクテン酸の不飽和部分を3−クロロ安息香酸でエポキシ化したのち、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)0.2質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪して磁性カプセル構造体(22)を得た。
【0343】
上記の磁性カプセル構造体(22)の10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果磁性体(1)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(1)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。
【0344】
対照として、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)49質量部に磁性体(1)粒子を1質量部添加し、30℃で2.5時間緩やかに振盪した後、同様にナイルブルーAで染色して蛍光顕微鏡観察を行った。その結果、磁性体(1)粒子表面は全く蛍光を発しなかった。
【0345】
さらに、磁性カプセル構造体(22)の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。この抽出液について1H−NMR分析を行った(使用機器:FT−NMR:Bruker DPX400、測定核種:1H,使用溶媒:重クロロホルム(TMS入り))。ここから計算した各側鎖ユニットのユニット%は、3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸78%、3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタン酸22%であった。
【0346】
上記の磁性カプセル構造体(22)を50質量部遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)してカプセル構造体を回収し、精製水50質量部に懸濁する操作を3回繰り返したのち、凍結乾燥により水を除去した。ここに、末端アミノ変性ポリシロキサン(変性シリコーンオイルTSF4700、GE東芝シリコーン(株)製)を10質量部添加し、70℃で2時間反応させた。これをメタノールに懸濁し、遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、20分間)する操作を繰り返すことにより洗浄し乾燥することで、ポリシロキサンのグラフト鎖を有する磁性カプセル構造体(23)を得た。
【0347】
(実施例20) 磁性カプセル構造体(24)の作製
pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10U/ml)10質量部に磁性体(1)を1質量部、PBS 39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してmcl−PHA合成酵素を磁性体(1)表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0348】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェノキシバレリルCoA(3−フェノキシプロパナールとブロモ酢酸エチルとのReformatsky反応で得られた3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸を得たのち、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)0.8質量部、(R)−3−ヒドロキシピメリルCoA(J.Bacteriol.,182,2753−2760(2000)(前記・非特許文献22)に記載の方法で調製)0.2質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪して磁性カプセル構造体(24)を得た。
【0349】
上記の磁性カプセル構造体(24)の10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果磁性体(1)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(1)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。
【0350】
さらに、磁性カプセル構造体(24)の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。この抽出液について1H−NMR分析を行った(使用機器:FT−NMR:Bruker DPX400、測定核種:1H,使用溶媒:重クロロホルム(TMS入り))。ここから計算した各側鎖ユニットのユニット%は、3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸83%、3−ヒドロキシピメリン酸17%であった。
【0351】
(実施例21) 磁性カプセル構造体(25)の作製
pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10U/ml)10質量部に磁性体(1)を1質量部、PBS 39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してmcl−PHA合成酵素を磁性体(1)表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0352】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェノキシバレリルCoA(3−フェノキシプロパナールとブロモ酢酸エチルとのReformatsky反応で得られた3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸を得たのち、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)0.8質量部、(R)−3−ヒドロキシ−8−ブロモオクタノイルCoA(Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)0.2質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪して磁性カプセル構造体(25)を得た。
【0353】
上記の磁性カプセル構造体(25)の10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果磁性体(1)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(1)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。
【0354】
さらに、磁性カプセル構造体(25)の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。この抽出液について1H−NMR分析を行った(使用機器:FT−NMR:Bruker DPX400、測定核種:1H,使用溶媒:重クロロホルム(TMS入り))。ここから計算した各側鎖ユニットのユニット%は、3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸89%、3−ヒドロキシ−8−ブロモオクタン酸11%であった。
【0355】
(実施例22) 磁性カプセル構造体(26)の作製
pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10U/ml)10質量部に、気相法で合成した磁性を有する金属として1次粒子径0.02μmニッケル粉末「Ni(200)UFMP」〔真空冶金(株)製〕(磁性体(2)とする)を1質量部、PBS 39質量部を添加し、30℃にて30分間緩やかに振とうしてmcl−PHA合成酵素を磁性体(2)表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0356】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoA(Reformatsky反応により得られた3−ヒドロキシフェニル吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸を得たのち、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0357】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体(2)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(2)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。これを磁性カプセル構造体(26)とした。
【0358】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、該PHAは3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットからなるPHAであることが確認された。
【0359】
さらに、該PHAの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=18,000、Mw=36,000であった。
【0360】
(実施例23) 磁性カプセル構造体(27)の作製
pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10U/ml)10質量部に、気相法で合成した1次粒子径0.02μmのγ−Fe2O3微粉「NanoTek」〔シーアイ化成(株)製〕(磁性体(3)とする)を1質量部、PBS 39質量部を添加し、30℃にて30分間緩やかに振とうしてmcl−PHA合成酵素を磁性体3表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0361】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoA(Reformatsky反応により得られた3−ヒドロキシフェニル吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸を得たのち、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0362】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体(3)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(3)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。これを磁性カプセル構造体(27)とした。
【0363】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、該PHAは3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットからなるPHAであることが確認された。
【0364】
さらに、該PHAの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=17,000、Mw=35,000であった。
【0365】
(実施例24) 磁性カプセル構造体(28)の作製4
pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10U/ml)10質量部に、湿式法で合成した粒子径0.3μmのマグネタイト微粒子「マグネタイトEPT500」〔戸田工業(株)製〕(磁性体(4)とする)を1質量部、PBS 39質量部を添加し、30℃にて30分間緩やかに振とうしてmcl−PHA合成酵素を磁性体(4)表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0366】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoA(Reformatsky反応により得られた3−ヒドロキシフェニル吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸を得たのち、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0367】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体(4)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(4)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。これを磁性カプセル構造体(28)とした。
【0368】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、該PHAは3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットからなるPHAであることが確認された。
【0369】
さらに、該PHAの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=15,000、Mw=34,000であった。
【0370】
(実施例15) 磁性カプセル構造体(29)の作製
pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10U/ml)10質量部に磁性体(1)を1質量部、PBS 39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してmcl−PHA合成酵素を磁性体(1)表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0371】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R)−3−ヒドロキシオクタノイルCoA(Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)1質量部、ポリエチレングリコール200(PEG200:平均分子量190−210;キシダ化学)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0372】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体(1)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(1)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。これを磁性カプセル構造体(29)とした。
【0373】
対照として、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)49質量部に磁性体(1)粒子1質量部を添加し、30℃で2.5時間緩やかに振盪した後、同様にナイルブルーAで染色して蛍光顕微鏡観察を行った。その結果、磁性体(1)粒子表面は全く蛍光を発しなかった。
【0374】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行ったところ、該PHAは3−ヒドロキシオクタン酸ユニットからなるPHAであることが確認された。
【0375】
また、1H−NMR(FT−NMR:Bruker DPX400;1H共鳴周波数:400MHz;測定核種:1H;使用溶媒:CDCl3;reference:キャピラリ封入TMS/CDCl3;測定温度:室温)によってPHAの構造解析を詳細に行ったところ、3−ヒドロキシオクタン酸ユニットからなるPHAに由来するピーク以外に、3.5−3.8ppm、及び4.2ppm付近にPEGに由来するピークが確認された。
【0376】
さらに、該PHAの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=7,000、Mw=13,000であり、分子量低下効果が得られた。
【0377】
(実施例26) 積層構造体の作製
縦30mm×横30mm×厚さ3mmのフェライトシート(NP−S01、日本ペイント(株)製、フェライト粒子の樹脂分散体)を1%グルタルアルデヒドに1時間浸漬し、純水洗浄後、pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10 U/ml)に30℃で30分間浸漬して、該酵素を固定化した。未反応のmcl−PHA合成酵素をPBSで洗浄して除去し、固定化酵素を得た。
【0378】
30mmol/L(R)−3−ヒドロキシオクタノイルCoA(Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)、0.1%ウシ血清アルブミン(Sigma社製)を含む0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)に上記固定化酵素を浸漬し、30℃で2時間緩やかに振盪した。反応終了後、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)で洗浄して、未反応物等を除去した。
【0379】
反応後のガラスシートを1%ナイルブルーA水溶液で染色し、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、フェライトシートの表面に蛍光が認められたことから、該シートはフェライトシートからなる基材がPHAからなる膜で被覆された積層構造体であることがわかった。
【0380】
さらに、該積層構造体を真空乾燥したのち、クロロホルムに浸漬し、60℃で20時間攪拌して被覆層を成すPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、図4に示す通り、当該PHAは3−ヒドロキシオクタン酸をモノマーユニットとするPHAであることが確認された。
【0381】
(実施例27) 磁性カプセル構造体の被覆性評価
磁性体微粒子が完全にポリマーで保護被覆されているかどうかを確認するため、得られた磁性カプセル構造体(8)〜(29)、それぞれ、0.1gを、70℃に加熱した純水100ミリリットル中に2時間浸漬した後、溶出液中の金属含有率を測定したところ、金属含有率は全ての磁性カプセルにおいて3ppm以下であった。これより、これらの磁性カプセルは「金属イオンを溶出しない」と判定することができる。
【0382】
(実施例28) 磁性カプセル構造体の磁性体の分散性評価
磁性体の磁性カプセルにおける分散状態を確認するため、得られた磁性カプセル構造体(8)〜(29)、それぞれを、酢酸ウラニルで染色した後、透過型電子顕微鏡により磁性カプセルにおける磁性体の分散状態を観察したところ、粒子内部に均一に分散しており、粒子表面近傍の一部、または表面近傍の全部への局在化は観察されなかった。
【0383】
【発明の効果】本発明の構造体は、磁性体の分散性および磁気応答性に優れ、金属イオンが外部に溶出されにくく、更に生体適合性の優れたものであるため、種々の用途・分野に幅広く適用することが可能となる。
【0384】
また、本発明によれば、磁性体を被覆したカプセル構造体や積層構造体を、極めて簡便かつ環境低負荷なプロセスで製造することが可能になる。
【0385】
特には、磁性を有する金属および金属化合物に親油化処理を施すことなく、均一分散性に優れる、磁性体を被覆した構造体ならびにその製造が可能となる。
【0386】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例11で同定された、PHAに含まれる3−ヒドロキシオクタン酸ユニット由来のメチルエステル化物のガスクロマトグラフィー−質量分析チャートを示した図である。
【図2】実施例14で同定された、PHAに含まれる3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニット由来のメチルエステル化物のガスクロマトグラフィー−質量分析チャートを示した図である。
【図3】実施例15で同定された、PHAに含まれる3−ヒドロキシ−5−(4−フルオロフェニル)吉草酸ユニット由来のメチルエステル化物のガスクロマトグラフィー−質量分析チャートを示した図である。
【図4】実施例26で同定された、PHAに含まれる3−ヒドロキシオクタン酸ユニット由来のメチルエステル化物のガスクロマトグラフィー−質量分析チャートを示した図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリヒドロキシアルカノエートと磁性体とを備え、該ポリヒドロキシアルカノエートが該磁性体の少なくとも一部を被覆した構造を有していることを特徴とする構造体及びその製造方法に関するものである。
【0002】
本発明の構造体は、機能性構造体として幅広い用途に利用可能であり、例えば、細菌、細胞、核酸、蛋白質、その他生体物質の分離精製あるいはスクリーニング用担体、生体中での移動を制御できる医療診断薬担体、薬剤を患者の疾患部に移動させるドラックデリバリー担体、固定化酵素担体、磁性トナー、磁性インク、磁性塗料、磁気記録媒体などの各種機能性構造体として、幅広い用途に利用可能である。
【0003】
【背景技術】
高分子材料は現代の産業や生活に不可欠のものであり、安価軽量であること、成形性が良いことなどから、家電品の筐体をはじめ包装材や緩衝材、あるいは繊維材料など、多岐に渡って利用されている。一方、これら高分子材料の安定な性質を利用して、高分子の分子鎖に様々な機能を発現する置換基を配して、液晶材料やコート剤などの各種機能材料も得られている。これら機能材料は構造材料としての高分子よりも付加価値が高いため、少量生産でも大きな市場ニーズが期待できる。このような高分子機能材料は、これまで高分子の合成プロセスの中で、あるいは合成した高分子を置換基で修飾することにより、有機合成化学的手法により得られている。高分子機能材料の基本骨格となる高分子はほとんどの場合、石油系原料から有機合成化学的手法によって得られている。ポリエチレン,ポリエチレンテレフタレート,ポリエステル,ポリスチレン,ポリ塩化ビニル,ポリアクリルアミドなどがその典型的な例である。
【0004】
[磁性体を被覆した重層構造体]
ところで、本願発明者らは高分子化合物に大きな付加価値を与えるための一つの要素技術として、高分子化合物により磁性体を被覆した重層構造体に着目してきた。このように高分子化合物で特定の磁性体を被覆することによって、極めて有用な機能性を有する複合構造体を得ることができる。このような構造体の具体的な用途としては、例えば高分子化合物に磁性体を内包させたマイクロカプセル構造体からなる生体物質の分離精製あるいはスクリーニング用担体や、高分子化合物でシート状の磁性体を被覆した磁気記録媒体などが考えられる。
【0005】
磁性体含有カプセル構造体は、磁力により容易に捕集される点から、主に生化学分野において、医療診断薬担体、細菌あるいは細胞分離担体、核酸あるいは蛋白分離精製担体、ドラッグデリバリー担体、酵素反応担体、細胞培養担体等としての優れた効果が期待されている。磁性体含有カプセル構造体の合成法については、親油化処理した磁性体を重合性モノマー中に分散し、これを懸濁重合する方法(特開昭59−221302号公報(特許文献1))、同じく親油化処理した磁性体を重合性モノマー中に分散し、ホモジナイザーで水中に均質化して重合することにより、比較的小粒子径の磁性粒子を得る方法(特公平4−3088号公報(特許文献2))、あるいは特定の官能基を有する多孔性ポリマー粒子の存在下で、鉄化合物を析出させたのち酸化することにより、多孔性ポリマー粒子内部に磁性体を導入し、大粒径かつ均一径の磁性粒子を得る方法(特公平5−10808号公報(特許文献3))等が挙げられる。
【0006】
しかしながら、これらの合成法により得られた磁性体含有カプセル構造体を医療診断薬担体等に用いると、磁性体の多くがカプセル構造体内部に存在する場合でも、感度が大幅に低下したり、非特異的反応を示したりして、十分な実用性能が得られない場合が多い。これは、磁性体含有カプセル構造体表面に磁性体が部分的に露出し、あるいは構造体表面と内部の磁性体の間にミクロパスが形成されるため、磁性体成分が溶出し、実用性能を損なうためであると考えられる。一般に、磁性体はポリマー粒子よりも親水性が高く、従来の合成法では、磁性体がカプセル構造体の表面あるいは表面近傍へ局在することが、実用性能を損なう大きな原因の1つであると考えられる。このように、従来の磁性体含有カプセル構造体においては、含まれる磁性体成分の表面への露出、ミクロパスの形成、などによる磁性体成分の溶出を抑えることが困難であり、その溶出が問題とならない分野に限定して使用せざるをえないのが実状であった。
【0007】
また、磁性体の表面特性を改質し、重合トナー中の磁性体の分散性向上を図る試みが数多く報告されている。特開昭59−200254号公報、特開昭59−200256号公報、特開昭59−200257号公報、特開昭59−224102号公報(以上、特許文献4〜7)等に磁性体の各種シランカップリング剤処理技術が提案されており、特開昭63−250660号公報(特許文献8)、特開平10−239897号公報(特許文献9)では、ケイ素元素含有磁性体粒子をシランカップリング剤で処理する技術が開示されている。
【0008】
しかしながら、これらの処理により磁性体の分散性はある程度向上するものの、磁性体表面の疎水化を均一に行うことが困難であり、従って、磁性体同士の合一や疎水化されていない磁性体粒子の発生を避け、磁性体の分散性を良好なレベルにまで向上させるには、さらなる改善が望まれていた。
【0009】
また、疎水化磁性酸化鉄を用いる例として特公昭60−3181号公報(特許文献10)にアルキルトリアルコキシシランで処理した磁性酸化鉄を含有するトナーが提案されている。この磁性酸化鉄の添加により、確かにトナーの電子写真諸特性は向上しているものの、磁性酸化鉄の表面活性は元来小さく、処理の段階で合一粒子が生じたり、疎水化が不均一であったりすることから、さらなる改善が望まれていた。
【0010】
[PHA]
ところで、近年、生物工学的手法によって高分子化合物を製造する研究が活発に行われてきており、また、一部で実用化されている。例えば、微生物由来の高分子化合物として、ポリ−3−ヒドロキシ−n−酪酸(以下、PHBと略す場合もある)や3−ヒドロキシ−n−酪酸と3−ヒドロキシ−n−吉草酸との共重合体(以下、PHB/Vと略す場合もある)等のポリヒドロキシアルカノエート、バクテリアセルロースやプルラン等の多糖類、ポリ−γ−グルタミン酸やポリリジン等のポリアミノ酸などが知られている。ここで、ポリヒドロキシアルカノエート(以下、PHAと略す場合がある)とは、ヒドロキシアルカン酸ユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートのことをいう。特にPHAは、従来のプラスチックと同様に、溶融加工等により各種製品に利用することができるうえ、生体適合性にも優れており、医療用軟質部材等としての応用も期待されている。
【0011】
これまで、多くの微生物がPHAを生産し菌体内に蓄積することが報告されてきた。アルカリゲネス・ユウトロファス・H16株(Alcaligenes eutrophus H16、ATCC No.17699)、メチロバクテリウム属(Methylobacterium sp.)、パラコッカス属(Paracoccus sp.)、アルカリゲネス属(Alcaligenes sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)の微生物によるPHB/Vの生産が報告されている(特開平5−74492号公報、特公平6−15604号公報、特公平7−14352号公報、特公平8−19227号公報(以上、特許文献11〜14)など)。また、コマモナス・アシドボランス・IFO13852株(Comamonas acidovorans IFO13852)が、3−ヒドロキシ−n−酪酸と4−ヒドロキシ−n−酪酸とをモノマーユニットに持つPHAを生産することが開示されている(特開平9−191893号公報(特許文献15))。さらに、アエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)により、3−ヒドロキシ−n−酪酸と3−ヒドロキシヘキサン酸との共重合体を生産することが開示されている(特開平5−93049号公報(特許文献16)、特開平7−265065号公報(特許文献17))。
【0012】
これらPHBやPHB/Vのような中短鎖長(short−chain−length)の3−ヒドロキシアルカン酸ユニットからなるポリヒドロキシアルカノエート(以下、scl−PHAと略す場合がある)の生合成は、PHA生産菌の体内で、種々の炭素源から、生体内の様々な代謝経路を経て生成された(R)−3−ヒドロキシプロピオニルCoA、(R)−3−ヒドロキシブチリルCoA及び(R)−3−ヒドロキシバレリルCoAの少なくとも1種を基質とした、酵素による重合反応によって行われる。この重合反応を触媒する酵素を本発明ではscl−PHA合成酵素と呼ぶことにする。その中で、例えばPHBを合成する酵素であれば、通常、PHB合成酵素(PHBポリメラーゼ、PHBシンターゼともいう)と呼ばれている。なお、CoAとは補酵素A(coenzyme A)の略称であり、その化学構造は下記化学式の通りである。
【0013】
【化34】
また、近年、炭素数が3から12程度までの中鎖長(medium−chain−length)の3−ヒドロキシアルカン酸ユニットからなるポリヒドロキシアルカノエート(以下、mcl−PHAと略す場合がある)についての研究が精力的に行われている。
【0014】
特許公報第2642937号(特許文献18)では、シュードモナス・オレオボランス・ATCC29347株(Pseudomonas oleovorans ATCC 29347)に非環状脂肪族炭化水素を与えることにより、炭素数が6から12までの3−ヒドロキシアルカン酸のモノマーユニットを有するPHAが生産されることが開示されている。また、Appl.Environ.Microbiol.,58,746(1992)(非特許文献1)には、シュードモナス・レジノボランス(Pseudomonas resinovorans)が、オクタン酸を単一炭素源として、3−ヒドロキシ−n−酪酸,3−ヒドロキシヘキサン酸,3−ヒドロキシオクタン酸,3−ヒドロキシデカン酸をモノマーユニットとするPHAを生産し、また、ヘキサン酸を単一炭素源として、3−ヒドロキシ−n−酪酸,3−ヒドロキシヘキサン酸,3−ヒドロキシオクタン酸,3−ヒドロキシデカン酸をユニットとするPHAを生産することが報告されている。ここで、原料の脂肪酸よりも鎖長の長い3−ヒドロキシアルカン酸モノマーユニットの導入は、後述の脂肪酸合成経路を経由していると考えられる。
【0015】
Int.J.Biol.Macromol.,16(3),119(1994)(非特許文献2)には、シュードモナスsp.61−3株(Pseudomonas sp.strain61−3)が、グルコン酸ナトリウムを単一炭素源として、3−ヒドロキシ−n−酪酸,3−ヒドロキシヘキサン酸,3−ヒドロキシオクタン酸,3−ヒドロキシデカン酸,3−ヒドロキシドデカン酸といった3−ヒドロキシアルカン酸、および、3−ヒドロキシ−5−cis−デセン酸,3−ヒドロキシ−5−cis−ドデセン酸といった3−ヒドロキシアルケン酸をユニットとするPHAを生産することが報告されている。
【0016】
上記のPHAは側鎖にアルキル基を有するモノマーユニットからなるPHA(以下、usual−PHAと略す場合がある)、あるいはそれに準じるもの(例えば他に末端部以外に二重結合をもつアルケニル基を側鎖にもつもの)である。しかし、より広範囲な応用、例えば機能性ポリマーとしての応用を考慮した場合、アルキル基以外の置換基(例えば、フェニル基,不飽和炭化水素,エステル基,アリル基,シアノ基,ハロゲン化炭化水素,エポキシドなどなど)を側鎖に導入したPHA(以下、unusual−PHAと略す場合がある)が極めて有用である。
【0017】
フェニル基を有するunusual−PHAの生合成の例としては、Macromolecules,24,5256−5260(1991),Macromol.Chem.,191,1957−1965(1990),Chirality,3,492−494(1991)(以上、非特許文献3〜5)などで、シュードモナス・オレオボランスが、5−フェニル吉草酸から、3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットを含むPHAを生産すると報告されている。また、Macromolecules,29,1762−1766(1996)(非特許文献6)で、シュードモナス・オレオボランスが、5−(4−トリル)吉草酸(5−(4−メチルフェニル)吉草酸)から、3−ヒドロキシ−5−(4−トリル)吉草酸ユニットを含むPHAを生産すると報告されている。さらに、Macromolecules,32,2889−2895(1999)(非特許文献7)には、シュードモナス・オレオボランスが、5−(2,4−ジニトロフェニル)吉草酸から、3−ヒドロキシ−5−(2,4−ジニトロフェニル)吉草酸ユニットおよび3−ヒドロキシ−5−(4−ニトロフェニル)吉草酸ユニットを含むPHAを生産すると報告されている。
【0018】
また、フェノキシ基を有するunusual−PHAの例としては、Macromol.Chem.Phys.,195,1665−1672(1994)(非特許文献8)で、シュードモナス・オレオボランスが、11−フェノキシウンデカン酸から3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸ユニットおよび3−ヒドロキシ−9−フェノキシノナン酸ユニットを含むPHAを生産すると報告されている。また、Macromolecules,29,3432−3435(1996)(非特許文献9)には、シュードモナス・オレオボランスが、6−フェノキシヘキサン酸から3−ヒドロキシ−4−フェノキシ酪酸ユニットおよび3−ヒドロキシ−6−フェノキシヘキサン酸ユニットを含むPHAを、8−フェノキシオクタン酸から3−ヒドロキシ−4−フェノキシ酪酸ユニット,3−ヒドロキシ−6−フェノキシヘキサン酸ユニットおよび3−ヒドロキシ−8−フェノキシオクタン酸ユニットを含むPHAを、11−フェノキシウンデカン酸から3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸ユニットおよび3−ヒドロキシ−7−フェノキシヘプタン酸ユニットを含むPHAを生産することが報告されている。さらに、Can.J.Microbiol.,41,32−43(1995)(非特許文献10)では、シュードモナス・オレオボランス・ATCC 29347株及びシュードモナス・プチダ・KT2442株(Pseudomonas putida KT2442)が、p−シアノフェノキシヘキサン酸または p−ニトロフェノキシヘキサン酸から、3−ヒドロキシ−p−シアノフェノキシヘキサン酸ユニットまたは3−ヒドロキシ−p−ニトロフェノキシヘキサン酸ユニットを含むPHAを生産すると報告している。特許第2989175号公報(特許文献19)には、3−ヒドロキシ−5−(モノフルオロフェノキシ)吉草酸ユニットあるいは3−ヒドロキシ−5−(ジフルオロフェノキシ)吉草酸ユニットからなるホモポリマー、少なくとも3−ヒドロキシ−5−(モノフルオロフェノキシ)ペンタノエートユニットあるいは3−ヒドロキシ−5−(ジフルオロフェノキシ)ペンタノエートユニットを含有するコポリマーとその製造方法が記載されており、その効果として、融点が高く良好な加工性を保ちつつ、立体規則性、撥水性を付与することができるとしている。
【0019】
また、シクロヘキシル基を有するunusual−PHAの例としては、Macromolecules,30,1611−1615(1997)(非特許文献11)に、シュードモナス・オレオボランスが、シクロヘキシル酪酸またはシクロヘキシル吉草酸から該PHAを生産するとの報告がある。
【0020】
これらmcl−PHAやunusual−PHAの生合成は、原料となる各種アルカン酸から、生体内の様々な代謝経路(例えば、β酸化系や脂肪酸合成経路)を経て生成された(R)−3−ヒドロキシアシルCoAを基質とした、酵素による重合反応によって行われる。この重合反応を触媒する酵素を本発明ではmcl−PHA合成酵素と呼ぶことにする。なお本発明では、前記scl−PHA合成酵素とmcl−PHA合成酵素とをあわせてPHA合成酵素と呼ぶことにするが、通常、mcl−PHA合成酵素がPHA合成酵素(PHAポリメラーゼ、PHAシンターゼともいう)と呼ばれる場合もある。以下に、β酸化系およびmcl−PHA合成酵素による重合反応を経て、アルカン酸がPHAとなるまでの反応を示す。
【0021】
【化35】
一方、脂肪酸合成経路を経る場合は、該経路中に生じた(R)−3−ヒドロキシアシル−ACP(ACPとはアシルキャリアプロテインのことである)から変換された(R)−3−ヒドロキシアシルCoAを基質として、同様にmcl−PHA合成酵素によりPHAが合成されると考えられる。
【0022】
[酵素を利用した無細胞系PHA合成]
近年、上記のPHA合成酵素(scl−PHA合成酵素やmcl−PHA合成酵素)を菌体外に取り出して、無細胞系(invitro)でPHAを合成しようとする試みが始まっている。
【0023】
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92,6279−6283(1995)(非特許文献12)では、アルカリゲネス・ユウトロファス(Alcaligenes eutrophus)由来のscl−PHA合成酵素に3−ヒドロキシブチリルCoAを作用させることにより、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットからなるPHBを合成することに成功している。また、Int.J.Biol.Macromol.,25,55−60(1999)(非特許文献13)では、アルカリゲネス・ユウトロファス由来のscl−PHA合成酵素に、3−ヒドロキシブチリルCoAや3−ヒドロキシバレリルCoAを作用させることにより、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットや3−ヒドロキシ−n−吉草酸ユニットからなるPHAの合成に成功している。さらにこの報告では、ラセミ体の3−ヒドロキシブチリルCoAを作用させたところ、酵素の立体選択性によって、R体の3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットのみからなるPHBが合成されたとしている。Macromol.Rapid Commun.,21,77−84(2000)(非特許文献14)においても、アルカリゲネス・ユウトロファス由来のscl−PHA合成酵素を用いた細胞外でのPHB合成が報告されている。
【0024】
また、FEMS Microbiol.Lett.,168,319−324(1998)(非特許文献15)では、クロマチウム・ビノサム(Chromatium vinosum)由来のscl−PHA合成酵素に3−ヒドロキシブチリルCoAを作用させることにより、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットからなるPHBを合成することに成功している。
【0025】
Appl.Microbiol.Biotechnol.,54,37−43(2000)(非特許文献16)では、シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)のPHA合成酵素に3−ヒドロキシデカノイルCoAを作用させることにより、3−ヒドロキシデカン酸ユニットからなるPHAを合成している。
【0026】
以上の他、本願発明には特許第2989175号公報(特許文献19)、特開2001−78753号公報(特許文献20)、特開2001−69968号公報(特許文献21);並びに、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(非特許文献17)、J.Biol.Chem.,218,97−106(1956)(非特許文献18)、J.Amer.Chem.Soc.,78,2278(1956)(非特許文献19)、Appl.Environ.Microbiol.,44,238−241(1982)(非特許文献20)、Molecular Cloning,1巻,572頁,1989年;Cold Spring Harbor Laboratory出版(非特許文献21)、J.Bacteriol.,182,2753−2760(2000)(非特許文献22)、Int.J.Biol.Macromol.,12,85−91(1990)(非特許文献23)の記載が引用されている。
【0027】
【特許文献1】
特開昭59−221302号公報
【特許文献2】
特公平4−3088号公報
【特許文献3】
特公平5−10808号公報
【特許文献4】
特開昭59−200254号公報
【特許文献5】
特開昭59−200256号公報
【特許文献6】
特開昭59−200257号公報
【特許文献7】
特開昭59−224102号公報
【特許文献8】
特開昭63−250660号公報
【特許文献9】
特開平10−239897号公報
【特許文献10】
特公昭60−3181号公報
【特許文献11】
特開平5−74492号公報
【特許文献12】
特公平6−15604号公報
【特許文献13】
特公平7−14352号公報
【特許文献14】
特公平8−19227号公報
【特許文献15】
特開平9−191893号公報
【特許文献16】
特開平5−93049号公報
【特許文献17】
特開平7−265065号公報
【特許文献18】
特許公報第2642937号
【特許文献19】
特許第2989175号公報
【特許文献20】
特開2001−78753号公報
【特許文献21】
特開2001−69968号公報
【非特許文献1】
Appl.Environ.Microbiol.,58,746(1992)
【非特許文献2】
Int.J.Biol.Macromol.,16(3),119(1994)
【非特許文献3】
Macromolecules,24,5256−5260(1991)
【非特許文献4】
Macromol.Chem.,191,1957−1965(1990)
【非特許文献5】
Chirality,3,492−494(1991)
【非特許文献6】
Macromolecules,29,1762−1766(1996)
【非特許文献7】
Macromolecules,32,2889−2895(1999)
【非特許文献8】
Macromol.Chem.Phys.,195,1665−1672(1994)
【非特許文献9】
Macromolecules,29,3432−3435(1996)
【非特許文献10】
Can.J.Microbiol.,41,32−43(1995)
【非特許文献11】
Macromolecules,30,1611−1615(1997)
【非特許文献12】
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92,6279−6283(1995)
【非特許文献13】
Int.J.Biol.Macromol.,25,55−60(1999)
【非特許文献14】
Macromol.Rapid Commun.,21,77−84(2000)
【非特許文献15】
FEMS Microbiol.Lett.,168,319−324(1998)
【非特許文献16】
Appl.Microbiol.Biotechnol.,54,37−43(2000)
【非特許文献17】
Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)
【非特許文献18】
J.Biol.Chem.,218,97−106(1956)
【非特許文献19】
J.Amer.Chem.Soc.,78,2278(1956)
【非特許文献20】
Appl.Environ.Microbiol.,44,238−241(1982)
【非特許文献21】
Molecular Cloning,1巻,572頁,1989年;Cold Spring Harbor Laboratory出版
【非特許文献22】
J.Bacteriol.,182,2753−2760(2000)
【非特許文献23】
Int.J.Biol.Macromol.,12,85−91(1990)
【0028】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、生物工学的手法を高分子化合物の合成に適用することによって、従来の有機合成的手法では実現が困難であった新たな高分子化合物の合成や、新たな機能・構造の付与が可能になると期待されている。また、従来の有機合成化学的手法では多段階に渡る反応を要していた製造工程を、1段階の工程のみで実現できる場合も多くあり、製造プロセスの簡略化やコストダウン、所要時間の短縮等の効果も期待されている。さらに、有機溶剤や酸・アルカリ、界面活性剤等の使用削減、温和な反応条件の設定、非石油系原料や低純度原料のからの合成等が可能となり、より環境低負荷かつ資源循環型の合成プロセスの実現が可能となる。なお、低純度原料からの合成についてさらに詳しく説明すれば、生物工学的合成プロセスでは一般に、触媒である酵素の基質特異性が高いため、低純度の原料を用いても所望の反応を選択的に進めることが可能であり、よって、廃棄物やリサイクル原料などの使用も期待できる。
【0029】
一方、前記の通り、本願発明者らは高分子化合物に大きな付加価値を与えるための要素技術として、高分子化合物で磁性体を被覆した構造体に着目してきた。このように高分子化合物で特定の磁性体を被覆することによって、極めて有用な機能性を有する複合構造体を得ることができる。前記の如き構造体を作出する試みは従来、有機合成的手法によって多くなされてきたが、該手法には一定の限界があった。
【0030】
仮に、かかる構造体を前述のような生物工学的手法により製造することができれば、従来の有機合成的手法では実現が困難であった新たな高分子化合物の利用や、新たな機能・構造の付与が可能になると期待できるうえ、より環境低負荷かつ資源循環型の製造プロセスを低コストで実現できるものと考えられる。例えば、生物の触媒作用に特有の極めて厳密な分子認識能や立体選択性を利用して、従来の有機合成化学的手法では実現が困難であった新たな機能性高分子化合物や、極めてキラリティーの高い高分子化合物により被覆されたカプセル構造体や積層構造体を、極めて簡便かつ環境低負荷なプロセスで製造することが可能になる。
【0031】
従って、本発明のは、生物工学的手法により製造することのできる高機能な高分子化合物構造体を提供することにある。また本発明は、機能性複合構造体として広範囲に利用可能な、高分子化合物により磁性体を被覆した構造体の効率的な製造方法を提供するものである。
【0032】
特には、磁性を有する金属および金属化合物に親油化処理を施すことなく、均一分散性に優れる、磁性体を被覆した構造体ならびにその製造方法を提供するものである。
【0033】
また、前述のように、従来の合成法により得られる磁性体含有カプセル構造体は、金属イオンの外部への溶出という課題を有するために、金属イオンの溶出による影響を受けない用途・分野にしか適用することができないのが現状である。本発明は、磁性体の分散性および磁気応答性に優れ、金属イオンが外部に溶出されにくく、種々の用途・分野に幅広く適用することのできる、磁性体を被覆したカプセル構造体ならびにその製造方法を提供するものである。
【0034】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、本発明者らが鋭意検討した結果、PHA合成酵素を磁性体表面に固定化し、ここに3−ヒドロキシアシルCoAを加えて反応させることにより、磁性体表面に所望のPHAを合成させ、磁性体をPHAで被覆した構造体を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。また、該PHAに化学修飾を施すことにより、各種の特性等を改良した構造体を得ることができることを見出した。さらに詳しくは、例えば、該PHAにグラフト鎖を導入することにより、該グラフト鎖に起因する各種の特性を備えたPHAにより、磁性体の少なくとも一部が被覆された構造体を得ることができることを見出した。また、該PHAを架橋化せしめることにより、所望の物理化学的性質(例えば、機械的強度、耐薬品性、耐熱性など)を備えたPHAにより、磁性体の少なくとも一部が被覆された構造体を得ることができることを見出した。なお、本発明における化学修飾(Chemical modification)とは、高分子材料の分子内または分子間、あるいは高分子材料と他の化学物質との間で化学反応を行わせることにより、該高分子材料の分子構造を改変することを言う。また、架橋(crosslinking)とは、高分子材料の分子内または分子間を化学的にあるいは物理化学的に結合せしめて網状構造をつくることを言い、架橋剤(crosslinking agent)とは、前記架橋反応を行うために添加する、前記高分子材料と一定の反応性を有する物質を言う。
【0035】
即ち本発明は、各種ヒドロキシアルカン酸ユニットを含有するポリヒドロキシアルカノエートが磁性体の少なくとも一部を被覆していることを特徴とする構造体に関する。
【0036】
また本発明は短鎖長または中鎖長ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素を磁性体表面に固定し、該酵素により3−ヒドロキシアシル補酵素Aを重合させてポリヒドロキシアルカノエートを合成することにより、前記磁性体の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートで被覆することを特徴とする構造体の製造方法に関する。
【0037】
また本発明は、磁性体をコア(芯材料)とし、scl−PHA、mcl−PHAやunusual−PHAを外被とするカプセル構造体に関する。また本発明は、平板またはフィルム状の磁性体の少なくとも一部をscl−PHA、mcl−PHAやunusual−PHAで被覆した積層構造体に関する。
【0038】
より詳細には、
(1) 磁性体の少なくとも一部が、ポリヒドロキシアルカノエートで被覆されていることを特徴とする、構造体に関する。
【0039】
好ましくは、
(2) 前記ポリヒドロキシアルカノエートが、3−ヒドロキシプロピオン酸ユニット、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニット及び3−ヒドロキシ−n−吉草酸ユニットより選択される少なくとも一つのモノマーユニットを有する前記(1)に記載の構造体、もしくは、
(3) 前記ポリヒドロキシアルカノエートが、3−ヒドロキシアルカン酸ユニット(ただし3−ヒドロキシプロピオン酸ユニット、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットまたは3−ヒドロキシ−n−吉草酸ユニットを除く)を含有する前記(1)に記載の構造体に関する。
【0040】
さらに好ましくは、
(4) 前記ポリヒドロキシアルカノエートが、化学式[1]から化学式[10]に示すモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つを含有するポリヒドロキシアルカノエートである、前記(3)に記載の構造体に関する。
【0041】
【化36】
(ただし、該モノマーユニットは、式中R1およびaの組合せが下記のいずれかであるモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つである。R1が水素原子(H)でありaが3から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1がハロゲン原子でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が発色団でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が カルボキシル基あるいはその塩でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が、
【0042】
【化37】
でありaが1から7の整数のいずれかであるモノマーユニット。)
【0043】
【化38】
(ただし、式中bは0から7の整数のいずれかを表し、R2は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0044】
【化39】
(ただし、式中cは1から8の整数のいずれかを表し、R3は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0045】
【化40】
(ただし、式中dは0から7の整数のいずれかを表し、R4は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0046】
【化41】
(ただし、式中eは1から8の整数のいずれかを表し、R5は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7,−CH3,−C2H5,−C3H7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0047】
【化42】
(ただし、式中fは0から7の整数のいずれかを表す。)
【0048】
【化43】
(ただし、式中gは1から8の整数のいずれかを表す。)
【0049】
【化44】
(ただし、式中hは1から7の整数のいずれかを表し、R6は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”,−CH3,−C2H5,−C3H7,−CH(CH3)2,−C(CH3)3からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0050】
【化45】
(ただし、式中iは1から7の整数のいずれかを表し、R7は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0051】
【化46】
(ただし、式中jは1から9の整数のいずれかを表す。)
また好ましくは、
(5) 前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部が、化学修飾されたポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする、前記(3)または(4)に記載の構造体に関し、さらに、
(6) 前記の化学修飾されたポリヒドロキシアルカノエートが、少なくともグラフト鎖を有するポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする、前記(5)に記載の構造体に関し、加えて、
(7) 前記グラフト鎖が、エポキシ基を有するモノマーユニットを少なくとも含むポリヒドロキシアルカノエートの化学修飾によるグラフト鎖であることを特徴とする、前記(6)に記載の構造体に関する。
【0052】
また好ましくは、
(8) 前記グラフト鎖が、アミノ基を有する化合物のグラフト鎖であることを特徴とする、前記(6)または(7)に記載の構造体に関し、さらに、
(9) 前記のアミノ基を有する化合物が、末端アミノ変性化合物であることを特徴とする、前記(8)に記載の構造体に関し、加えて、
(10) 前記末端アミノ変性化合物が、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、末端アミノ変性ポリシロキサンからなる群より選択される少なくとも一つであることを特徴とする、前記(9)に記載の構造体に関する。
【0053】
別の好ましい形態としては、
(11) 前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部が、架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする、前記(5)に記載の構造体に関し、さらに、
(12) 前記の架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートが、エポキシ基を有するモノマーユニットを少なくとも含むポリヒドロキシアルカノエートが架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする、前記(11)に記載の構造体に関する。
【0054】
また好ましくは、
(13) 前記の架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートが、ジアミン化合物、無水コハク酸、2−エチル−4−メチルイミダゾール、電子線照射からなる群より選択される少なくとも一つにより架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする、前記(11)または(12)に記載の構造体に関し、さらに、
(14) 前記ジアミン化合物が、ヘキサメチレンジアミンであることを特徴とする、前記(13)に記載の構造体に関する。
【0055】
さらに、好ましくは、
(15) 前記磁性体が粒状体であることを特徴とする前記(1)から(14)のいずれかに記載の構造体に関し、さらに、
(16) 前記ポリヒドロキシアルカノエートのモノマーユニット組成が前記構造体の内側から外側に向かう方向において変化していることを特徴とする前記(15)に記載の構造体に関する。
【0056】
あるいは、
(17) 前記磁性体が平板状またはフィルム状であることを特徴とする前記(1)から(14)のいずれかに記載の構造体に関し、さらに、
(18) 前記ポリヒドロキシアルカノエートのモノマーユニット組成が前記構造体の表面に対して垂直方向に変化していることを特徴とする前記(17)に記載の構造体に関する。
【0057】
また、好ましくは、
(19) 前記磁性体が磁性を有する金属または金属化合物からなることを特徴とする、前記(15)から(18)のいずれかに記載の構造体に関する。
【0058】
さらに、好ましくは、
(20) 前記磁性体にポリヒドロキシアルカノエート合成酵素が固定されていることを特徴とする前記(1)から(19)のいずれかに記載の構造体に関する。
【0059】
加えて、
(21) 前記ポリヒドロキシアルカノエートの分子量が1,000から10,000,000であることを特徴とする前記(1)から(20)のいずれかに記載の構造体に関する。
【0060】
また、本発明は、
(22) ポリヒドロキシアルカノエートで表面の一部を被覆した磁性体からなる構造体の製造方法であって、ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素を磁性体表面に固定化する工程と、該酵素により3−ヒドロキシアシル補酵素Aを重合させてポリヒドロキシアルカノエートを合成することにより、前記磁性体の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートで被覆する工程と、を有することを特徴とする構造体の製造方法に関する。
【0061】
好ましくは、
(23) 前記ポリヒドロキシアルカノエートが3−ヒドロキシプロピオン酸ユニット、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニット及び3−ヒドロキシ−n−吉草酸ユニットより選択される少なくとも一つのモノマーユニットを有し、前記ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素を固定化する工程の前に前記磁性体を水性媒体に分散する工程を有し、かつ、前記3−ヒドロキシアシル補酵素Aが3−ヒドロキシプロピオニル補酵素A、3−ヒドロキシブチリル補酵素A及び3−ヒドロキシバレリル補酵素Aより選択される少なくとも一つである前記(22)に記載の構造体の製造方法、または、
(24) 前記ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素が中鎖長ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素である前記(22)に記載の構造体の製造方法に関する。
【0062】
さらに好ましくは、
(25) 前記ポリヒドロキシアルカノエートが、化学式[1]から化学式[10]に示すモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つを含有するポリヒドロキシアルカノエートであり、前記ユニットのそれぞれに対して対応する3−ヒドロキシアシル補酵素Aが順に化学式[11]から化学式[20]に示す3−ヒドロキシアシル補酵素Aである、前記(24)に記載の構造体の製造方法に関する。
【0063】
【化47】
(ただし、該モノマーユニットは、式中R1およびaの組合せが下記のいずれかであるモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つである。R1が水素原子(H)でありaが3から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1がハロゲン原子でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が発色団でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が カルボキシル基あるいはその塩でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が、
【0064】
【化48】
でありaが1から7の整数のいずれかであるモノマーユニット。)
【0065】
【化49】
(ただし、式中bは0から7の整数のいずれかを表し、R2は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0066】
【化50】
(ただし、式中cは1から8の整数のいずれかを表し、R3は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0067】
【化51】
(ただし、式中dは0から7の整数のいずれかを表し、R4は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0068】
【化52】
(ただし、式中eは1から8の整数のいずれかを表し、R5は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7,−CH3,−C2H5,−C3H7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0069】
【化53】
(ただし、式中fは0から7の整数のいずれかを表す。)
【0070】
【化54】
(ただし、式中gは1から8の整数のいずれかを表す。)
【0071】
【化55】
(ただし、式中hは1から7の整数のいずれかを表し、R6は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”,−CH3,−C2H5,−C3H7,−CH(CH3)2,−C(CH3)3からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0072】
【化56】
(ただし、式中iは1から7の整数のいずれかを表し、R7は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0073】
【化57】
(ただし、式中jは1から9の整数のいずれかを表す。)
【0074】
【化58】
(ただし、前記化学式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、式中R1およびaの組合せが下記のいずれかである群より選択される少なくとも一つであり、かつ、前記化学式[1]で表されるモノマーユニットにおけるR1およびaと対応する。R1が 水素原子(H)でありaが3から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が ハロゲン原子でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が 発色団でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が カルボキシル基あるいはその塩でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が、
【0075】
【化59】
でありaが1から7の整数のいずれかであるモノマーユニット。)
【0076】
【化60】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、bは前記化学式[2]で表されるモノマーユニットにおけるbと対応する0から7の整数のいずれかを表し、R2は前記化学式[2]で表されるモノマーユニットにおけるR2と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0077】
【化61】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、cは前記化学式[3]で表されるモノマーユニットにおけるcと対応する1から8の整数のいずれかを表し、R3は前記化学式[3]で表されるモノマーユニットにおけるR3と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0078】
【化62】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、dは前記化学式[4]で表されるモノマーユニットにおけるdと対応する0から7の整数のいずれかを表し、R4は前記化学式[4]で表されるモノマーユニットにおけるR4と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0079】
【化63】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、eは前記化学式[5]で表されるモノマーユニットにおけるeと対応する1から8の整数のいずれかを表し、R5は前記化学式[5]で表されるモノマーユニットにおけるR5と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7,−CH3,−C2H5,−C3H7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0080】
【化64】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、fは前記化学式[6]で表されるモノマーユニットにおけるfと対応する0から7の整数のいずれかを表す。)
【0081】
【化65】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、gは前記化学式[7]で表されるモノマーユニットにおけるgと対応する1から8の整数のいずれかを表す。)
【0082】
【化66】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、hは前記化学式[8]で表されるモノマーユニットにおけるhと対応する1から7の整数のいずれかを表し、R6は前記化学式[8]で表されるモノマーユニットにおけるR6と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”,−CH3,−C2H5,−C3H7,−CH(CH3)2,−C(CH3)3からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0083】
【化67】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、iは前記化学式[9]で表されるモノマーユニットにおけるiと対応する1から7の整数のいずれかを表し、R7は前記化学式[9]で表されるモノマーユニットにおけるR7と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0084】
【化68】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、jは前記化学式[10]で表されるモノマーユニットにおけるjと対応する1から9の整数のいずれかを表す。)
また好ましくは、
(26) 前記磁性体を被覆する前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部に化学修飾を施す工程をさらに有する、前記(24)または(25)に記載の構造体の製造方法に関し、さらに、
(27) 前記化学修飾を施す工程が、前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部にグラフト鎖を付加する工程であることを特徴とする、前記(26)に記載の構造体の製造方法に関し、加えて、
(28) 前記グラフト鎖を付加する工程が、前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部と、末端に反応性官能基を有する化合物とを反応させる工程であることを特徴とする、前記(27)に記載の構造体の製造方法に関し、その上さらに、
(29) 前記ポリヒドロキシアルカノエートが、エポキシ基を有するモノマーユニットを少なくとも含むポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする、前記(28)に記載の構造体の製造方法に関する。
【0085】
また好ましくは、
(30) 前記末端に反応性官能基を有する化合物が、アミノ基を有する化合物であることを特徴とする、前記(28)または(29)に記載の構造体の製造方法に関し、さらに、
(31) 前記アミノ基を有する化合物が、末端アミノ変性化合物であることを特徴とする、前記(30)に記載の構造体の製造方法に関し、加えて、
(32) 前記末端アミノ変性化合物が、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、アミノ変性ポリシロキサンからなる群より選択される少なくとも一つであることを特徴とする、前記(31)に記載の構造体の製造方法に関する。
【0086】
別の好ましい形態としては、
(33) 前記化学修飾を施す工程が、前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部を架橋化する工程であることを特徴とする、前記(26)に記載の構造体の製造方法に関し、さらに、
(34) 前記架橋化工程が、前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部と架橋剤とを反応させる工程であることを特徴とする、前記(33)に記載の構造体の製造方法に関し、加えて、
(35) 前記ポリヒドロキシアルカノエートが、エポキシ基を有するモノマーユニットを少なくとも含むポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする、前記(34)に記載の構造体の製造方法に関する。
【0087】
また好ましくは、
(36) 前記架橋剤が、ジアミン化合物、無水コハク酸、2−メチル−4−メチルイミダゾールからなる群より選択される少なくとも一つであることを特徴とする、前記(34)または(35)に記載の構造体の製造方法に関し、さらに、
(37) 前記ジアミン化合物がヘキサメチレンジアミンであることを特徴とする、前記(36)に記載の構造体の製造方法に関する。
【0088】
あるいは、
(38) 前記架橋化工程が、前記ポリヒドロキシアルカノエートに電子線を照射する工程であることを特徴とする、前記(33)に記載の構造体の製造方法に関する。
【0089】
さらに、好ましくは、
(39) 前記磁性体が粒状であり、該磁性体の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートで被覆して粒状の構造体を製造することを特徴とする、前記(22)から(38)のいずれかに記載の構造体の製造方法に
(40) 前記3−ヒドロキシアシル補酵素Aの組成を経時的に変化させることにより、前記ポリヒドロキシアルカノエートのモノマーユニット組成を前記構造体の内側から外側に向かう方向において変化させることを特徴とする前記(39)に記載の構造体の製造方法に関する。
【0090】
あるいは、
(41) 前記磁性体が平板状またはフィルム状であることを特徴とする、前記(22)から(38)のいずれかに記載の構造体の製造方法に関し、さらに、
(42) 前記3−ヒドロキシアシル補酵素Aの組成を経時的に変化させることにより、前記ポリヒドロキシアルカノエートのモノマーユニット組成を前記構造体の表面に対して垂直方向に変化させることを特徴とする前記(41)に記載の構造体の製造方法に関する。
【0091】
また、好ましくは、
(43) 前記磁性体が磁性を有する金属または金属化合物からなることを特徴とする、前記(39)から(42)のいずれかに記載の構造体の製造方法に関する。
【0092】
さらに、好ましくは、
(44) 前記ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素を該酵素の生産能を有する微生物を使って生産する、前記(22)から(43)のいずれかに記載の構造体の製造方法、または、
あるいは、
(45) 前記ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素を該酵素の生産能に関与する遺伝子を導入した形質転換体により生産する、前記(22)から(43)のいずれかに記載の構造体の製造方法に関する。
【0093】
さらに好ましくは、
(46) 前記遺伝子はポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の生産能を有する微生物から得られた遺伝子であることを特徴とする前記(45)に記載の構造体の製造方法に関する。
【0094】
また好ましくは、
(47) 前記ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の生産能を有する微生物が、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)に属する微生物である、前記(44)または(46)に記載の構造体の製造方法に関し、さらに、
(48) 前記シュードモナス属(Pseudomonas sp.)に属する微生物が、シュードモナス・プチダ・P91株(Pseudomonas putida P91、FERM BP−7373)、シュードモナス・チコリアイ・H45株(Pseudomonas cichorii H45、FERM BP−7374)、シュードモナス・チコリアイ・YN2株(Pseudomonas cichorii YN2、FERM BP−7375)、シュードモナス・ジェッセニイ・P161株(Pseudomonas jessenii P161、FERM BP−7376)からなる群から選択される少なくとも1つの微生物である、前記(47)に記載の構造体の製造方法に関する。
【0095】
あるいは、
(49) 前記ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の生産能を有する微生物が、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)に属する微生物である、前記(44)または(46)に記載の構造体の製造方法に関し、さらに、
(50) 前記バークホルデリア属に属する微生物が、バークホルデリア属・OK3株(Burkholderia sp. OK3、FERM P−17370)、バークホルデリア属・OK4株(Burkholderia sp. OK4、FERM P−17371)からなる群から選択される少なくとも1つの微生物である、前記(49)に記載の構造体の製造方法に関する。
【0096】
あるいは、
(51) 生産されるポリヒドロキシアルカノエート合成酵素が、3−ヒドロキシプロピオン酸ユニット、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニット及び3−ヒドロキシ−n−吉草酸ユニットより選択される少なくとも一つのモノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを合成するものであり、該酵素の生産能を有する微生物が、バークホルデリア・セパシア・KK01株(Burkholderia cepacia KK01、FERM BP−4235)、ラルストーニャ・ユートロファ・TB64株(Ralstonia eutropha TB64、FERM BP−6933)、アルカリゲネス属・TL2株(Alcaligenes sp.TL2、FERM BP−6913)からなる群から選択される少なくとも1つの微生物である前記(44)または(46)に記載の製造方法に関する。
【0097】
また好ましくは、
(52) 前記ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の生産能を有する形質転換体の宿主微生物が、大腸菌(Escheichia coli)である、前記(45)または(46)に記載の構造体の製造方法に関する。
【0098】
【発明の実施の形態】
本発明の構造体は、置換基を側鎖に有する多様な構造のモノマーユニットを含むPHAにより磁性体が被覆された形態を有する構造体であり、細菌、細胞、核酸、蛋白質、その他生体物質の分離精製あるいはスクリーニング用担体、生体中での移動を制御できる医療診断薬担体、薬剤を患者の疾患部に移動させるドラックデリバリー担体、固定化酵素担体、磁性トナー、磁性インク、磁性塗料、磁気記録媒体などの各種機能性構造体として極めて有用である。以下に、本発明をより詳細に説明する。
【0099】
<PHA> 本発明に利用可能なPHAとしては、scl−PHA、すなわち3−ヒドロキシプロピオン酸ユニット、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニット及び3−ヒドロキシ−n−吉草酸ユニットより選択される少なくとも一つのモノマーユニットを含むPHAであっても、また、mcl−PHAの合成反応に関与するPHA合成酵素によって合成され得るPHA(即ち、各種のmcl−PHAやunusual−PHAなど)であってもよく、特に限定はされない。また、ここでは3−ヒドロキシアルカン酸ユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートで代表的に示しているが、それに限定されることなく、ポリヒドロキシアルカノエートを含んでいれば制限なくいずれも使用することができる。
【0100】
前述の通り、PHA合成酵素は、生物体内でのPHA合成反応系における最終段階を触媒する酵素であり、従って、生物体内において合成され得ることが知られているPHAであれば、いずれも該酵素による触媒作用を受けて合成されていることになる。よって、所望のPHAに対応する3−ヒドロキシアシルCoAを、本発明における磁性体に固定化された該酵素に作用させることによって、生物体内において合成され得ることが知られているあらゆる種類のPHAで磁性体を被覆した構造体を作成することが可能である。
【0101】
このようなPHAとして、具体的には、下記化学式[1]から[10]で表されるモノマーユニットを少なくとも含むPHAを例示することができる。
【0102】
【化69】
(ただし、該モノマーユニットは、式中R1およびaの組合せが下記のいずれかであるモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つである。
【0103】
R1が水素原子(H)でありaが3から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1がハロゲン原子でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が発色団でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が カルボキシル基あるいはその塩でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が、
【0104】
【化70】
でありaが1から7の整数のいずれかであるモノマーユニット。)
【0105】
【化71】
(ただし、式中bは0から7の整数のいずれかを表し、R2は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0106】
【化72】
(ただし、式中cは1から8の整数のいずれかを表し、R3は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0107】
【化73】
(ただし、式中dは0から7の整数のいずれかを表し、R4は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0108】
【化74】
(ただし、式中eは1から8の整数のいずれかを表し、R5は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7,−CH3,−C2H5,−C3H7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0109】
【化75】
(ただし、式中fは0から7の整数のいずれかを表す。)
【0110】
【化76】
(ただし、式中gは1から8の整数のいずれかを表す。)
【0111】
【化77】
(ただし、式中hは1から7の整数のいずれかを表し、R6は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”,−CH3,−C2H5,−C3H7,−CH(CH3)2,−C(CH3)3からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0112】
【化78】
(ただし、式中iは1から7の整数のいずれかを表し、R7は水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0113】
【化79】
(ただし、式中jは1から9の整数のいずれかを表す。)
なお、前記のハロゲン原子の具体例としては、フッ素,塩素,臭素などを挙げることができる。また、前記の発色団としては、その3−ヒドロキシアシルCoA体がPHA合成酵素の触媒作用を受け得るものである限り特に限定はされないが、高分子合成時の立体障害などを考慮すると、3−ヒドロキシアシルCoA 分子内において、CoAの結合したカルボキシル基と発色団との間に炭素数1から5のメチレン鎖があるほうが望ましい。また、発色団の光吸収波長が可視域にあれば着色した構造体が得られ、可視域以外に光吸収波長があっても種々の電子材料として利用することができる。このような発色団の例として、ニトロソ、ニトロ、アゾ、ジアリールメタン、トリアリールメタン、キサンテン、アクリジン、キノリン、メチン、チアゾール、インダミン、インドフェノール、ラクトン、アミノケトン、ヒドロキシケトン、スチルベン、アジン、オカサジン、チアジン、アントラキノン、フタロシアニン、インジゴイドなどを挙げることができる。
【0114】
本発明において用いられるPHAとしては上記モノマーユニットを複数含むランダム共重合体やブロック共重合体を用いることも可能であり、各モノマーユニットや含まれる官能基の特性を利用したPHAの物性制御や複数の機能の付与、官能基間の相互作用を利用した新たな機能の発現等が可能となる。
【0115】
さらに、基質である3−ヒドロキシアシルCoAの種類や濃度などの組成を経時的に変化させることによって、構造体の形状が粒状であれば内側から外側に向かう方向に、構造体の形状が平面状であれば垂直方向に、PHAのモノマーユニット組成を変化させることも可能である。
【0116】
これによって、例えば、磁性体と親和性の低いPHAで被覆構造体を形成する必要がある場合、まず磁性体と親和性の高いPHAでその磁性体を被覆し、その磁性体と親和性の高いPHAのモノマーユニット組成を、目的とするPHAのモノマーユニット組成に、内側から外側に向かう方向もしくは垂直方向に変化、例えば多層構造あるいはグラディエント構造とすることで、磁性体との結合を強固にしたPHA被膜を形成することが可能となる。
【0117】
また、scl−PHAを構成するモノマーユニットである3−ヒドロキシプロピオン酸ユニット,3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニット,3−ヒドロキシ−n−吉草酸ユニット,4−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットなどのモノマーユニットと、先に例示したようなmcl−PHAやunusual−PHAのモノマーユニットが互いに混在しているPHAについても、本発明において利用可能である。また必要に応じて、PHAを合成したのち、あるいは、合成中に、さらに化学修飾等を施しても良い。PHAの分子量は、数平均分子量で1,000から1,000万程度とするのが望ましい。
【0118】
なお、本発明の構造体に用いる、PHA合成酵素により合成されるPHAは、一般にR体のみから構成されるアイソタクチックなポリマーである。
【0119】
<3−ヒドロキシアシルCoA> 本発明のPHA合成酵素の基質として用いる3−ヒドロキシアシルCoAとして、まず、scl−PHA合成酵素の基質となるものとしては、3−ヒドロキシプロピオニルCoA、3−ヒドロキシブチリルCoA及び3−ヒドロキシバレリルCoAなどが挙げられる。また、mcl−PHA合成酵素の基質として用いる3−ヒドロキシアシルCoAとしては、具体的には、下記化学式[11]から[20]で表される3−ヒドロキシアシルCoAを例示することができる。
【0120】
【化80】
(ただし、前記化学式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、式中R1およびaの組合せが下記のいずれかである群より選択される少なくとも一つであり、かつ、前記化学式[1]で表されるモノマーユニットにおけるR1およびaと対応する。R1が 水素原子(H)でありaが3から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が ハロゲン原子でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が 発色団でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が カルボキシル基あるいはその塩でありaが1から10の整数のいずれかであるモノマーユニット、R1が、
【0121】
【化81】
でありaが1から7の整数のいずれかであるモノマーユニット。)
【0122】
【化82】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、bは前記化学式[2]で表されるモノマーユニットにおけるbと対応する0から7の整数のいずれかを表し、R2は前記化学式[2]で表されるモノマーユニットにおけるR2と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0123】
【化83】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、cは前記化学式[3]で表されるモノマーユニットにおけるcと対応する1から8の整数のいずれかを表し、R3は前記化学式[3]で表されるモノマーユニットにおけるR3と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0124】
【化84】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、dは前記化学式[4]で表されるモノマーユニットにおけるdと対応する0から7の整数のいずれかを表し、R4は前記化学式[4]で表されるモノマーユニットにおけるR4と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0125】
【化85】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、eは前記化学式[5]で表されるモノマーユニットにおけるeと対応する1から8の整数のいずれかを表し、R5は前記化学式[5]で表されるモノマーユニットにおけるR5と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−CF3,−C2F5,−C3F7,−CH3,−C2H5,−C3H7からなる群から選ばれたいずれか1つを表す。)
【0126】
【化86】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、fは前記化学式[6]で表されるモノマーユニットにおけるfと対応する0から7の整数のいずれかを表す。)
【0127】
【化87】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、gは前記化学式[7]で表されるモノマーユニットにおけるgと対応する1から8の整数のいずれかを表す。)
【0128】
【化88】
(ただし、式中−SCoAはアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、hは前記化学式[8]で表されるモノマーユニットにおけるhと対応する1から7の整数のいずれかを表し、R6は前記化学式[8]で表されるモノマーユニットにおけるR6と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”,−CH3,−C2H5,−C3H7,−CH(CH3)2,−C(CH3)3からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0129】
【化89】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、iは前記化学式[9]で表されるモノマーユニットにおけるiと対応する1から7の整数のいずれかを表し、R7は前記化学式[9]で表されるモノマーユニットにおけるR7と対応する、水素原子(H),ハロゲン原子,−CN,−NO2,−COOR’,−SO2R”からなる群から選ばれたいずれか1つを表し、ここでR’は水素原子(H),Na,K,−CH3,−C2H5のいずれかであり、R”は−OH,−ONa,−OK,ハロゲン原子,−OCH3,−OC2H5のいずれかである。)
【0130】
【化90】
(ただし、式中−SCoA はアルカン酸に結合した補酵素Aを表し、jは前記化学式[10]で表されるモノマーユニットにおけるjと対応する1から9の整数のいずれかを表す。)
これらの3−ヒドロキシアシルCoAは、例えば、酵素を用いたin vitro合成法、微生物や植物などの生物体を用いたin vivo合成法、化学合成法等の中から適宜選択した方法で合成して用いることができる。特に、酵素合成法は該基質の合成に一般に用いられている方法であり、市販のアシルCoAシンセターゼ(アシルCoAリガーゼ、E.C.6.2.1.3)を用いた下記反応、
を用いた方法などが知られている(Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(非特許文献17)、Appl.Microbiol.Biotechnol.,54,37−43(2000)(前記・非特許文献16)など)。酵素や生物体を用いた合成工程には、バッチ式の合成方法を用いても良く、また、固定化酵素や固定化細胞を用いて連続生産してもよい。
【0131】
<PHA合成酵素およびその生産菌> 本発明に用いるPHA合成酵素は、該酵素を生産する微生物から適宜選択された微生物、あるいは、それら微生物のPHA合成酵素遺伝子を導入した形質転換体により生産されたものを用いることができる。
【0132】
scl−PHAの生合成は、PHA生産菌の体内で、種々の炭素源から、生体内の様々な代謝経路を経て生成された(R)−3−ヒドロキシプロピオニルCoA、(R)−3−ヒドロキシブチリルCoA及び(R)−3−ヒドロキシバレリルCoAの少なくとも1種を基質とした、酵素による重合反応によって行われる。
【0133】
本発明に用いるscl−PHA合成酵素は、該酵素を生産する微生物から適宜選択された微生物、あるいは、それら微生物のscl−PHA合成酵素遺伝子を導入した形質転換体により生産されたものを用いることができる。
【0134】
scl−PHA合成酵素を生産する微生物としては、例えば、PHBやPHB/V生産菌として知られている微生物を用いることができる。このような微生物として、アエロモナス属(Aeromonas sp.)、アルカリゲネス属(Alcaligenes sp.)、クロマチウム属(Chromatium sp.)、コマモナス属(Comamonas sp.)、メチロバクテリウム属(Methylobacterium sp.)、パラコッカス属(Paracoccus sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)などが知られている。また、本発明者らにより分離された、バルクホルデリア・セパシア・KK01株(Burkholderia cepacia KK01)、ラルストーニャ・ユートロファ・TB64株(Ralstonia eutropha TB64)、アルカリゲネス属・TL2株(Alcaligenes sp.TL2)などを用いることができる。なお、KK01株は寄託番号FERM BP−4235として、TB64株は寄託番号FERM BP−6933として、TL2株は寄託番号FERM BP−6913として、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約に基づき、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(経済産業省産業技術総合研究所(旧通商産業省工業技術院)生命工学工業技術研究所特許微生物寄託センター)に国際寄託されている。
【0135】
また、このような野生株以外に、scl−PHA合成酵素を生産するために、形質転換体を用いることもできる。scl−PHA合成酵素遺伝子のクローニング、発現ベクターの作製、および、形質転換体の作製は、定法に従って行うことができる。scl−PHA合成酵素遺伝子のクローニングに関しては、これまでにアルカリゲネス・ユートロファスのscl−PHA合成酵素遺伝子(phbC)がクローニングされている。また本発明者らはバークホルデリア・セパシアKK01株のphbCについてクローニングを完了しており、またラルストーニャ・ユートロファTB64株のphbCについてもクローニングを完了している。形質転換体はこのphbCを含むベクターを宿主に導入する事によって作出できる。phbCを含むベクターは、例えばプラスミドベクター、ファージベクター等にphbCを挿入することによって得られる。宿主としては、例えば大腸菌(エシェリチア・コリ:Escherichia coli)がよく用いられる。
【0136】
また、mcl−PHAやunusual−PHAの生合成も、原料となる各種アルカン酸から、生体内の様々な代謝経路(例えば、β酸化系や脂肪酸合成経路)を経て生成された(R)−3−ヒドロキシアシルCoAを基質とした、酵素による重合反応によって行われる。ここで、mcl−PHAやunusual−PHAの合成酵素(mcl−PHA合成酵素)を生産する微生物としては、例えば、mcl−PHAやunusual−PHAの生産菌を用いることができ、このような微生物として、前述のシュードモナス・オレオボランス,シュードモナス・レジノボランス,シュードモナス属61−3株,シュードモナス・プチダ・KT2442株,シュードモナス・アエルギノーサなどのほかに、本発明者らにより分離された、シュードモナス・プチダ・P91株(Pseudomonas putida P91),シュードモナス・チコリアイ・H45株(Pseudomonas cichorii H45),シュードモナス・チコリアイ・YN2株(Pseudomonas cichorii YN2),シュードモナス・ジェッセニイ・P161株(Pseudomonas jessenii P161)等のシュードモナス属微生物や、特開2001−78753号公報(特許文献20)に記載のバークホルデリア属・OK3株(Burkholderia sp.OK3、FERM P−17370),特開2001−69968号公報(特許文献21)に記載のバークホルデリア属・OK4株(Burkholderia sp.OK4、FERMP−17371)などのバークホルデリア属微生物を用いることができる。また、これら微生物に加えて、アエロモナス属(Aeromonas sp.),コマモナス属(Comamonas sp.)などに属し、mcl−PHAやunusual−PHAを生産する微生物を用いることも可能である。
【0137】
なお、P91株は寄託番号FERM BP−7373として、H45株は寄託番号FERM BP−7374として、YN2株は寄託番号FERM BP−7375として、P161株は寄託番号FERM BP−7376として、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約に基づき、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(経済産業省産業技術総合研究所(旧通商産業省工業技術院)生命工学工業技術研究所特許微生物寄託センター)に国際寄託されている。
【0138】
なお、前記のP91株,H45株,YN2株およびP161株の菌学的性質を列挙すれば以下の通りである。また、P161株については、16S rRNAの塩基配列を配列番号:5に示す。
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
以上に挙げたようなPHA生産菌は、単独で、あるいは必要に応じて2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0144】
本発明にかかるPHA合成酵素の生産に用いる微生物の通常の培養、例えば、保存菌株の作成、PHA合成酵素の生産に必要とされる菌数や活性状態を確保するための増殖などには、用いる微生物の増殖に必要な成分を含有する培地を適宜選択して用いる。例えば、微生物の生育や生存に悪影響を及ぼすものでない限り、一般的な天然培地(肉汁培地,酵母エキスなど)や、栄養源を添加した合成培地など、いかなる種類の培地をも用いることができる。
【0145】
培養は液体培養や固体培養等、該微生物が増殖する方法であればいかなる方法をも用いることができる。さらに、バッチ培養,フェドバッチ培養,半連続培養,連続培養等の種類も問わない。液体バッチ培養の形態としては、振とうフラスコによって振とうさせて酸素を供給する方法、ジャーファーメンターによる攪拌通気方式の酸素供給方法がある。また、これらの工程を複数段接続した多段方式を採用してもよい。
【0146】
前記したようなPHA生産微生物を用いて、PHA合成酵素を生産する場合において、scl−PHA合成酵素の場合は、例えば、酵母エキスなどを含む無機培地で該微生物を増殖させ、対数増殖期から定常期初期にかけての微生物を遠心分離等で回収して所望の酵素を抽出する方法などを用いることができる。また、mcl−PHA合成酵素の場合は、例えば、オクタン酸やノナン酸等のアルカン酸を含む無機培地で該微生物を増殖させ、対数増殖期から定常期初期にかけての微生物を遠心分離等で回収して所望の酵素を抽出する方法などを用いることができる。なお、上記のような条件で培養を行うと、酵母エキスなどに由来するscl−PHA、あるいは、添加したアルカン酸に由来するmcl−PHAが菌体内に合成されることになるが、この場合、一般に、PHA合成酵素は菌体内に形成されるPHAの微粒子に結合して存在するとされている。しかし、本発明者らの検討によると、上記の方法で培養した菌体の破砕液を遠心分離した上清液にも、相当程度の酵素活性が存在していることがわかっている。これは、前記の如き対数増殖期から定常期初期にかけての比較的培養初期には、菌体内で該酵素が活発に生産され続けているため、遊離状態のPHA合成酵素も相当程度存在するためと推定される。
【0147】
上記の培養方法に用いる無機培地としては、リン源(例えば、リン酸塩等)、窒素源(例えば、アンモニウム塩,硝酸塩等)など、微生物が増殖し得る成分を含んでいるものであればいかなるものでも良く、例えば無機塩培地としては、MSB培地,E培地(J.Biol.Chem.,218,97−106(1956)(非特許文献18)),M9培地等を挙げることができる。なお、本発明における実施例で用いるM9培地の組成は以下の通りである。
【0148】
さらに、良好な増殖及びPHA合成酵素の生産のためには、上記の無機塩培地に培地に以下に示す微量成分溶液を0.3%(v/v)程度添加するのが好ましい。
【0149】
培養温度としては上記の菌株が良好に増殖可能な温度であれば良く、例えば14〜40℃、好ましくは20〜35℃程度が適当である。
【0150】
また、前述のPHA生産菌の持つPHA合成酵素遺伝子を導入した形質転換体を用いて、所望のPHA合成酵素を生産することも可能である。PHA合成酵素遺伝子のクローニング、発現ベクターの作製、および、形質転換体の作製は、定法に従って行うことができる。大腸菌等の細菌を宿主として得られた形質転換体においては、培養に用いる培地として、天然培地あるいは合成培地、例えば、LB培地,M9培地等が挙げられる。また、培養温度は25から37℃の範囲で、好気的に8〜27時間培養することにより、微生物の増殖を図る。その後集菌し、菌体内に蓄積されたPHA合成酵素の回収を行うことができる。培地には、必要に応じて、カナマイシン,アンピシリン,テトラサイクリン,クロラムフェニコール,ストレプトマイシン等の抗生物質を添加しても良い。また、発現ベクターにおいて、誘導性のプロモーターを用いている場合は、形質転換体を培養する際に、該プロモーターの対応する誘導物質を培地に添加して発現を促しても良い。例えば、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG),テトラサイクリン,インドールアクリル酸(IAA)等が誘導物質として挙げられる。
【0151】
PHA合成酵素としては、微生物の菌体破砕液や、硫酸アンモニウム等によりタンパク質成分を沈殿・回収した硫安塩析物などの粗酵素を用いても良く、また、各種方法で精製した精製酵素を用いても良い。該酵素には必要に応じて、金属塩,グリセリン,ジチオスレイトール,EDTA,ウシ血清アルブミン(BSA)などの安定化剤,付活剤を適宜添加して用いることができる。
【0152】
PHA合成酵素の分離・精製方法は、PHA合成酵素の酵素活性が保持される方法であればいかなる方法をも用いることができる。例えば、得られた微生物菌体を、フレンチプレス,超音波破砕機,リゾチームや各種界面活性剤等を用いて破砕したのち、遠心分離して得られた粗酵素液、またはここから調製した硫安塩析物について、アフィニティクロマトグラフィー,陽イオンまたは陰イオン交換クロマトグラフィー,ゲル濾過等の手段を単独または適宜組み合わせることによって精製酵素を得ることができる。特に、遺伝子組換えタンパク質は、N末端やC末端にヒスチジン残基等の「タグ」を結合した融合タンパク質の形で発現させ、このタグを介して親和性樹脂に結合させることによって、より簡便に精製することができる。融合タンパク質から目的のタンパク質を分離するには、トロンビン,血液凝固因子Xa等のプロテアーゼで切断する、pHを低下せしめる、結合競合剤として高濃度のイミダゾールを添加する等の方法を用いると良い。あるいは、発現ベクターとしてpTYB1(New England Biolab社製)を用いた場合のようにタグがインテインを含む場合はdithiothreitolなどで還元条件として切断する。アフィニティクロマトグラフィーによる精製を可能とする融合タンパク質には、ヒスチジンタグの他にグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST),キチン結合ドメイン(CBD),マルトース結合タンパク(MBP),あるいはチオレドキシン(TRX)等も公知である。GST融合タンパク質は、GST親和性レジンによって精製することができる。
【0153】
PHA合成酵素の活性測定は、既報の各種方法を用いることができるが、例えば、3−ヒドロキシアシルCoAがmcl−PHA合成酵素の触媒作用により重合してPHAになる過程で放出されるCoAを、5,5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)で発色させて測定することを測定原理とする、以下に示す方法によって測定することができる。試薬1:ウシ血清アルブミン(Sigma社製)を0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)に3.0mg/ml溶解、試薬2:3−ヒドロキシオクタノイルCoAを0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)に3.0mmol/L溶解、試薬3:トリクロロ酢酸を0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)に10mg/ml溶解、試薬4:5,5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)を0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)に2.0mmol/L溶解。第1反応(PHA合成反応):試料(酵素)溶液100μlに試薬1を100μl添加して混合し、30℃で1分間プレインキュベートする。ここに、試薬2を100μl添加して混合し、30℃で1〜30分間インキュベートしたのち、試薬3を添加して反応を停止させる。第2反応(遊離CoAの発色反応):反応停止した第1反応液を遠心分離(147000m/s2(15000G)、10分間)し、この上清500μlに試薬4を500μl添加し、30℃で10分間インキュベートしたのち、412nmの吸光度を測定する。酵素活性の算出:1分間に1μmolのCoAを放出させる酵素量を1単位(U)とする。
【0154】
また、scl−PHAの場合の例としては、例えば前記3−ヒドロキシオクタノイルCoAの代わりに3−ヒドロキシブチリルCoAを用いて、同様に測定を行うことができる。
【0155】
なお、該酵素により合成されるPHAは、一般にR体のみから構成されるアイソタクチックなポリマーである。
【0156】
<磁性体> 本発明の方法に用いる磁性体としては、PHA合成酵素を固定化することのできるものであれば、何れについても適宜選択して用いることができる。また、PHA合成酵素の固定化方法や、作製した構造体の応用の形態等に応じて、磁性体の種類や構造を適宜選択して用いることができる。
【0157】
本発明の構造体を構成する磁性体としては、例えば、磁性を有する金属または金属化合物が挙げられ、さらに具体的には、四三酸化鉄((Fe3O4)、γ−重三二酸化鉄(γ−Fe2O3)、MnZnフェライト、NiZnフェライト、YFeガーネット、GaFeガーネット、Baフェライト、Srフェライト等各種フェライト、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、クロムなどの金属、鉄、マンガン、コバルト、ニッケルなどの合金を挙げることができ、これらに限定されるものではない。ここで、例えば生体物質を固定する場合、あるいは生体内に投与する場合などについては、生体に対する適合性の良好なマグネタイト((Fe3O4)のほか、必要に応じてマグネタイトの金属元素の一部を少なくとも1種類の他の金属元素で置換した各種フェライト組成などが好適に適用可能である。これら磁性体の形状は、生成条件によって変化し、多面体、8面体、6面体、球状、棒状、燐片状等などがあるが、異方性の少ない構造が機能の安定発現のためにはより好ましい。本発明の構造体を構成する磁性体の一次粒子の粒子径は、その用途に応じて適宜選択可能であるが、例えば、0.001〜10μmの範囲内の粒径を有する粒子を用いると良い。
【0158】
また、本発明の磁性体としては、超常磁性を有するものについても好ましく用いることができる。例えば、フェライトの粒子径が20nm程度以下と小さい場合には、フェライトは熱擾乱影響を受け超常磁性を示すようになり、残留磁化や保磁力を持たなくなる。超常磁性であっても磁界を印加することにより磁気的操作が可能であり、また超常磁性であれば残留磁化や保磁力を持たないので、磁界のないときに磁気的な凝集の生じるおそれがない。
【0159】
また、磁性体は金属または金属化合物を含むマトリックスなどのような複合材料であってもよく、マトリックスは有機または無機の各種材料から構成されるものである。
【0160】
その他、粒子表面を脂肪酸で被覆する方法、シランカップリング剤処理に代表される各種カップリング剤処理を行う方法など、各種手法により疎水化処理を行った磁性体についても、本発明の磁性体として利用することができる。
【0161】
<構造体の作製> 本発明の構造体の製造方法には、磁性体にPHA合成酵素を固定化する工程と、該固定化PHA合成酵素に3−ヒドロキシアシルCoAを反応させてPHAを合成させる工程とを含むものである。
【0162】
磁性体にPHA合成酵素を固定化する方法としては、該酵素の活性が保持され得るものであり、かつ、所望の磁性体において適用可能なものであれば、通常行われている酵素固定化方法の中から任意に選択して用いることができる。例えば、共有結合法,イオン吸着法,疎水吸着法,物理的吸着法,アフィニティ吸着法,架橋法,格子型包括法などを例示することができるが、特にイオン吸着や疎水吸着を利用した固定化方法が簡便である。
【0163】
PHA合成酵素などの酵素タンパク質は、アミノ酸が多数結合したポリペプチドであり、リシン,ヒスチジン,アルギニン,アスパラギン酸,グルタミン酸などの遊離のイオン性基を有するアミノ酸によってイオン吸着体としての性質を示し、またアラニン,バリン,ロイシン,イソロイシン,メチオニン,トリプトファン,フェニルアラニン,プロリンなどの遊離の疎水性基を有するアミノ酸によって、また有機高分子であるという点で疎水吸着体としての性質を有している。従って、程度の差はあるが、イオン性や疎水性、もしくはイオン性と疎水性の両方の性質を有する固体表面に吸着させることが可能である。
【0164】
本発明における磁性体の場合、例えばフェライトなどの金属酸化物においては表面に水酸基が存在しており、PHA合成酵素表面のカルボキシル基との水素結合による固定化法などが好適に用いうる。
【0165】
イオン吸着法または疎水吸着法によるPHA合成酵素のコアへの固定化は、該酵素とコアとを所定の反応液中で混合することによって達成される。このとき、該酵素がコアの表面に均等に吸着されるよう、反応容器を適当な強度で振盪あるいは攪拌することが望ましい。
【0166】
反応液のpHや塩濃度、温度によってコアおよびPHA合成酵素の表面電荷の正負や電荷量、疎水性が変化するので、用いるコアの性質に合わせて、酵素活性上許容される範囲内で溶液の調整を行うことが望ましい。例えば、コアが主にイオン吸着性である場合には、塩濃度を下げることにより、コアとPHA合成酵素との吸着に寄与する電荷量を増やすことができる。また、pHを変える事により、両者の反対電荷を増やすことができる。コアが主に疎水吸着性である場合には、塩濃度を上げることによって両者の疎水性を増やすことができる。また、予め電気泳動やぬれ角等を測定し、コアやPHA合成酵素の荷電状態や疎水性を調べることで、吸着に適した溶液条件を設定をすることもできる。さらに、コアとPHA合成酵素との吸着量を直接測定して条件を求めることもできる。吸着量の測定は、例えば、コアが分散された溶液に濃度既知のPHA合成酵素溶液を添加し、吸着処理を行った後、溶液中のPHA合成酵素濃度を測定し、差し引き法により吸着酵素量を求める等の方法を用いればよい。
【0167】
イオン吸着法や疎水吸着法によって酵素を固定化し難いコア材質の場合は、操作の煩雑さや酵素の失活の可能性を考慮すれば共有結合法によってもかまわない。
【0168】
また、磁性体に対して結合能を有するアミノ酸配列を含むペプチドをPHA合成酵素に融合して提示させ、該磁性体に対して結合能を有するアミノ酸配列のペプチド部分と、磁性体との結合性に基づいて、該磁性体表面にPHA合成酵素を固定化することもできる。
【0169】
磁性体に対する結合能を有するアミノ酸配列は、例えばランダムペプチドライブラリのスクリーニングによって決定することができる。特に例えばM13 系ファージの表面蛋白質(例えばgene III 蛋白質)のN末端側遺伝子にランダム合成遺伝子を連結して調製されたファージディスプレイペプチドライブラリーを好適に用いることが出来るが、この場合磁性体に対する結合能を有するアミノ酸配列を決定するには、次のような手順をとる。すなわち、磁性体あるいは該磁性体を構成する少なくとも一成分に対してファージディスプレイペプチドライブラリーを添加することによって接触させ、その後洗浄により結合ファージと非結合ファージを分離する。磁性体結合ファージを酸などにより溶出し緩衝液で中和した後大腸菌に感染させファージを増幅する。この選別を複数回繰り返すと目的の磁性体に結合能のある複数のクローンが濃縮される。ここで単一なクローンを得るため再度大腸菌に感染させた状態で培地プレート上にコロニーを作らせる。それぞれの単一コロニーを液体培地で培養した後、培地上清中に存在するファージをポリエチレングリコール等で沈殿精製し、その塩基配列を解析すればペプチドの構造を知ることができる。
【0170】
上記方法により得られた磁性体に対する結合能を有するペプチドのアミノ酸配列は、通常の遺伝子工学的手法を用いて、PHA合成酵素に融合して利用される。磁性体に対する結合能を有するペプチドはPHA合成酵素のN末端あるいはC末端に連結して発現することができる。また適当なスペーサー配列を挿入して発現することもできる。スペーサー配列としては、約3〜約400アミノ酸が好ましく、また、スペーサー配列はいかなるアミノ酸を含んでもよい。最も好ましくは、スペーサー配列は、PHA合成酵素が機能するのを妨害せず、また、PHA合成酵素が磁性体に結合するのを妨害しないものである。
【0171】
上記方法により作製された固定化酵素は、そのままでも用いることができるが、さらに凍結乾燥等を施した上で使用することもできる。
【0172】
3−ヒドロキシアシルCoAの重合によりPHAが合成される反応において放出されるCoA量が1分間に1μmolとなるPHA合成酵素量を1単位(U)としたとき、磁性体に固定する酵素の量は、例えば磁性体がカプセル構造体のコアである場合、磁性体 1gあたり10 単位(U)から1,000単位(U)、望ましくは50 単位(U)から500単位(U)の範囲内に設定すると良い。
【0173】
前記の固定化酵素は所望のPHAの原料となる3−ヒドロキシアシルCoAを含む水系反応液中に投入され、磁性体表面のPHA合成酵素によりPHAが合成されることにより、磁性体がPHAにより被覆された構造体を形成する。上記水系反応液は、PHA合成酵素の活性を発揮させ得る条件に調整された反応系として構成されるべきであり、例えば通常、pH5.5からpH9.0、好ましくはpH7.0からpH 8.5となるよう、緩衝液により調製する。ただし、使用するPHA合成酵素の至適pHやpH安定性によっては、上記範囲以外に条件を設定することも除外されない。緩衝液の種類は、使用するPHA合成酵素の活性を発揮させ得るものであれば、設定するpH領域等に応じて適宜選択して用いることができるが、例えば、一般の生化学反応に用いられる緩衝液、具体的には、酢酸バッファー,リン酸バッファー,リン酸カリウムバッファー,3−(N−モルフォリノ)プロパンスルフォン酸(MOPS)バッファー,N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルフォン酸(TAPS)バッファー,トリス塩酸バッファー,グリシンバッファー,2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルフォン酸(CHES)バッファーなどを用いると良い。緩衝液の濃度も、使用するPHA合成酵素の活性を発揮させ得るものであれば特に限定はされないが、通常5.0mmol/Lから1.0mol/L、好ましくは0.1mol/Lから0.2mol/Lの濃度のものを使用すると良い。反応温度は、使用するPHA合成酵素の特性に応じて適宜設定するものであるが、通常、4℃から50℃、好ましくは20℃から40℃に設定すると良い。ただし、使用するPHA合成酵素の至適温度や耐熱性によっては、上記範囲以外に条件を設定することも除外されない。反応時間は、使用するPHA合成酵素の安定性等にもよるが、通常、1分間から24時間、好ましくは30分間から3時間の範囲内で適宜選択して設定する。反応液中の3−ヒドロキシアシルCoA濃度は、使用するPHA合成酵素の活性を発揮させ得る範囲内で適宜設定するものであるが、通常、0.1mmol/Lから1.0mol/L、好ましくは0.2mmol/Lから0.2mol/Lの範囲内で設定すると良い。なお、反応液中における3−ヒドロキシアシルCoA濃度が高い場合、一般に、反応系のpHが低下する傾向にあるため、3−ヒドロキシアシルCoA濃度を高く設定する場合は、前記の緩衝液濃度も高めに設定することが好ましい。
【0174】
また、PHAの分子量制御、及びPHA被覆膜の親水性向上という観点から、反応溶液中に水酸基を有する化合物を適宜添加してもよい。
【0175】
本発明の方法で用いる水酸基を有する化合物は、アルコール類、ジオール類、トリオール類、アルキレングリコール類、ポリエチレングリコール類、ポリエチレンオキサイド類、アルキレングリコールモノエステル類、ポリエチレングリコールモノエステル類、ポリエチレンオキサイドモノエステル類化合物から選ばれる少なくとも1種類であるが、更に詳しく述べると以下の通りである。即ち、アルコール類、ジオール類及びトリオール類化合物が、炭素数3から14の直鎖状及び分岐アルコール、ジオール、トリオールである。アルキレングリコール類及びアルキレングリコールモノエステル類化合物の炭素鎖が、炭素数2から10の直鎖状及び分岐状構造を有している化合物である。ポリエチレングリコール類、ポリエチレンオキサイド類、ポリエチレングリコールモノエステル類、ポリエチレンオキサイドモノエステル類化合物の数平均分子量が100から20,000の範囲である。
【0176】
この様な、水酸基を有する化合物の濃度は、PHA合成酵素による3−ヒドロキシアシルCoA の重合反応が阻害されない濃度であれば特に制限はないが、好ましくはPHA合成酵素と3−ヒドロキシアシルCoAとの反応溶液に対して0.01%から10%(w/v)、更に好ましくは0.02%から5%(w/v)を添加することがよく、添加方法については反応初期に一括して添加する方法、反応時間内に数回に分けて反応溶液中に添加する方法のいずれでも良い。
【0177】
また、上記工程において、水系反応液中の3−ヒドロキシアシルCoAの種類や濃度などの組成を経時的に変化させることによって、構造体の形状が粒状であれば内側から外側に向かう方向に、構造体の形状が平面状であれば垂直方向に、磁性体を被覆するPHAのモノマーユニット組成を変化させることができる。
【0178】
このモノマーユニット組成の変化した構造体の形態として、例えば、PHA被膜の組成変化が連続的で、内側から外側に向かう方向もしくは垂直方向に組成の勾配を形成した1層のPHAが磁性体を被覆した形態を挙げることができる。製造方法としては、例えば、PHAを合成しながら反応液中に別組成の3−ヒドロキシアシルCoAを添加するなどの方法によればよい。
【0179】
また別の形態として、PHA被膜の組成変化が段階的で、組成の異なるPHAが磁性体を多層に被覆した形態を挙げることができる。この製造方法としては、ある3−ヒドロキシアシルCoAの組成でPHAを合成した後、遠心分離などによって調製中の構造体を反応液からいったん回収し、これに異なる3−ヒドロキシアシルCoAの組成からなる反応液を再度添加するなどの方法によればよい。
【0180】
上記反応により得られた構造体は、必要に応じて、洗浄工程に供する。構造体の洗浄方法は、該構造体製造の目的上好ましくない変化を、該構造体に及ぼすものでない限り、特に限定はされない。構造体が、磁性体をコアとしPHAを外被とするカプセル構造体である場合は、例えば、遠心分離によって該構造体を沈殿させ、上清を除去することによって、反応液に含まれる不要成分を除去することができる。ここに水,緩衝液,メタノール等の該PHAが不溶である洗浄剤を添加し、遠心分離をする操作を行うことにより、さらに洗浄することもできる。また、遠心分離の替わりに、濾過等の手法を用いても良い。一方、構造体が、平板状の磁性体をPHAで被覆した構造体である場合は、例えば、上記洗浄剤に浸漬するなどして洗浄することができる。さらに、上記構造体は、必要に応じて、乾燥工程に供することができる。さらに該構造体に各種二次加工や化学修飾等の処理を施して使用することもできる。
【0181】
例えば、磁性体を被覆したPHAに化学修飾を施すことにより、さらに有用な機能・特性を備えた構造体を得ることができる。
【0182】
例えば、該PHAにグラフト鎖を導入することにより、該グラフト鎖に起因する各種の特性を備えたPHAが、磁性体の少なくとも一部を被覆した構造体を得ることができる。また、該PHAを架橋化せしめることにより、構造体の機械的強度、耐薬品性、耐熱性などを制御することが可能である。
【0183】
化学修飾の方法は、所望の機能・構造を得る目的を満たす方法であれば特に限定はされないが、例えば、反応性官能基を側鎖に有するPHAを合成し、該官能基の化学反応を利用して化学修飾する方法を、好適な方法として用いることができる。
【0184】
前記の反応性官能基の種類は、所望の機能・構造を得る目的を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、前記したエポキシ基を例示することができる。エポキシ基を側鎖に有するPHAは、通常のエポキシ基を有するポリマーと同様の化学的変換を行うことができる。具体的には、例えば水酸基に変換したり、スルホン基を導入したりすることが可能である。また、チオールやアミンを有する化合物を付加することもでき、例えば、末端に反応性官能基を有する化合物、具体的には、エポキシ基との反応性が高いアミノ基を末端に有する化合物などを添加して反応させることにより、ポリマーのグラフト鎖が形成される。
【0185】
アミノ基を末端に有する化合物としては、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、アミノ変性ポリシロキサン(アミノ変性シリコーンオイル)などのアミノ変性ポリマーを例示することができる。このうち、アミノ変性ポリシロキサンとしては、市販の変性シリコーンオイルを使用しても良く、また、J.Amer.Chem.Soc.,78,2278(1956)(非特許文献19)などに記載の方法で合成して使用することもでき、該ポリマーのグラフト鎖の付加による耐熱性の向上等の効果が期待できる。
【0186】
また、近年、リガンド−レセプター反応が高感度の反応技術として広範囲に用いられている。ここで、リガンド−レセプター反応には抗原−抗体反応、核酸の相補性、ホルモン−受容体、酵素−基質、ビオチン−アビジン等の生理活性物質とその受容体など様々な特異的結合を利用する反応が含まれる。これらは一般にリガントまたはレセプターを担体に結合させ、リガンド−レセプター反応後、相対するレセプターまたはリガンドをその媒体中から分離する方法が用いられる。特にこれらの反応を利用して媒体中に存在する極微量の抗原、ホルモンや特定配列の核酸を分離精製する精製法やそれらを検出するリガンド−レセプターアッセイが広く実施されている。
【0187】
これらのリガンド−レセプター反応に用いられるリガンドあるいはレセプターの担持に、本発明のPHAにおける反応性官能基を好適に用いることが可能であり、グラフト化による有用な機能・特性の発現が可能となる。
【0188】
また、エポキシ基を有するポリマーの化学的変換の他の例として、ヘキサメチレンジアミンなどのジアミン化合物,無水コハク酸,2−エチル−4−メチルイミダゾール,電子線照射などによる架橋反応が挙げられる。このうち、エポキシ基を側鎖に有するPHAとヘキサメチレンジアミンとの反応は、下記のスキームに示すような形で進行し、架橋ポリマーが生成する。
【0189】
【化91】
本発明における構造体の含有する磁性体の量は1〜80重量%、好ましくは5〜70重量%、さらに好ましくは10〜60重量%である。磁性体の量が1重量%より少ないと磁気性能が不足して磁性体含有構造体としての性能が不十分となるおそれがあり、また、磁性体含量が80重量%を越えると磁性体が多すぎるため、構造体本来の機能が損なわれ、実用性能の面で満足できなくなるおそれがある。
【0190】
本発明におけるカプセル構造体の粒子径は、用途等に応じて適宜選定されるが、通常、0.02〜100μm、好ましくは0.05〜20μmである。
【0191】
また、本発明における積層構造体の被覆膜の厚みは、用途等に応じて適宜選定されるが、通常、0.02〜100μm、好ましくは0.05〜20μmである。
【0192】
また、本発明の構造体を、生体関連物質の担持あるいは生体内への投与などに供する場合は、磁性体の溶出、生体関連物質の相互作用の阻害などを最小限とするためにも、磁性体がPHAにより完全に被覆される形態がより好ましいものである。
【0193】
得られた構造体において、磁性体がPHAで被覆されていることを確認する方法としては、一般には、例えば、ガスクロマトグラフィー等による組成分析と電子顕微鏡等による形態観察とを組み合わせた方法や、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)とイオンスパッタリング技術を用いて、各構成層のマススペクトルから構造を判定する方法などを用いることができる。しかし、さらに直接的かつ簡便な確認方法として、本発明者らによって新たに開発された、ナイルブルーA染色と蛍光顕微鏡観察とを組み合わせた方法を用いることもできる。本発明者らは、PHA合成酵素を用いた無細胞系(in vitro)でのPHA合成を簡便に判定できる方法について鋭意検討を続けてきた結果、PHAに特異的に結合して蛍光を発する性質を有する薬剤であり、Appl.Environ.Microbiol.,44,238−241(1982)(非特許文献20)において微生物細胞(in vivo)でのPHA生産の簡易的判別に用いることができると報告されているナイルブルーAが、適切な使用方法および使用条件の設定によって、無細胞系でのPHA合成の判定にも用いることができることを見出し、上記の方法を完成させた。即ち、本方法では、所定濃度のナイルブルーA溶液を濾過したのち、PHAを含む反応液に混合し、蛍光顕微鏡で一定の波長の励起光を照射しながら観察することにより、合成されたPHAのみから蛍光を発せしめ、これを観察することによって、無細胞系でのPHA合成を簡易に判定することができる。使用した磁性体が上記条件下で蛍光を発する性質を有するものでない限り、上記方法を本発明の構造体の製造に応用することにより、磁性体の表面を被覆したPHAを直接的に観察し、評価することができる。
【0194】
また、磁性体を被覆しているPHAの内側から外側に向かう方向もしくは垂直方向の組成分布は、イオンスパッタリング技術と飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)を組み合わせて評価することができる。
【0195】
<構造体の利用> 本発明の特徴の一つは、通常の有機合成化学的手法では製造が困難であった構造体の製造を可能にしたことであり、従って、従来の有機合成化学的手法で製造されたカプセル構造体や積層構造体にはない優れた特性を付与した構造体を得ることが可能である。例えば、従来の有機合成的手法では実現が困難であった新たな高分子化合物の利用や、新たな機能・構造の付与が可能になる。さらに具体的には、生物の触媒作用に特有の極めて厳密な分子認識能や立体選択性を利用して、従来の有機合成化学的手法では実現が困難であった新たな機能性高分子化合物や、極めてキラリティーの高い高分子化合物により被覆されたカプセル構造体や積層構造体等を、極めて簡便なプロセスで製造することが可能になる。
【0196】
特には、磁性を有する金属および金属化合物に親油化処理を施すことなく、均一分散性に優れる磁性体を被覆した構造体を、極めて簡便なプロセスで製造することが可能になる。
【0197】
また、磁性体の分散性および磁気応答性に優れ、金属イオンが外部に溶出されにくく、種々の用途・分野に幅広く適用することのできる、磁性体を被覆したカプセル構造体を、極めて簡便なプロセスで製造することが可能になる。
【0198】
本発明の構造体は、粒子の表面および/または表面近傍に磁性体が実質的に存在しないか、存在しても極めて少ないため、使用時の磁性体の溶出による影響が実質上問題となることがない。したがって、本発明の構造体は、金属成分を嫌うことの多い生化学用途においても従来の非磁性粒子と同様の目的に使用することができ、例えば一般の診断薬用担体および副作用の少ないドラッグデリバリー担体として、広範な抗原、抗体、蛋白、核酸等の担持に適用することが可能である。また、酵素免疫法の診断薬用担体として、磁性体の溶出による非特異的酵素発色が抑えられるなど、多様な検出手法に適用できるものであり、極めて実用性能の高いものである。さらに、本発明の構造体は、例えば、粒子表面に特定の核酸を捕捉するための特異的核酸あるいは蛋白プローブを担持し、核酸捕捉担体として使用することも可能である。これらの場合、従来の磁性体含有ポリマー粒子では、金属、特には鉄成分がPCR反応を阻害するため、粒子をPCR法に供することができなかった。これに対して、本発明の構造体は、表面に露出した磁性体が実質上存在しないため、PCR反応に対する阻害作用がなくなり、捕捉された核酸を結合したままでPCR法に供することが可能になった。このため、本発明の構造体は、核酸を用いる研究分野、核酸による検査・診断・治療分野、核酸を利用する産業分野等を含む幅広い技術分野において、極めて好適に使用できるものである。
【0199】
なお、本発明の構造体およびその利用方法およびその製造方法は、上記の方法に限定されるものではない。
【0200】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、以下に述べる実施例は本発明の最良の実施形態の一例ではあるが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。例えば、下記実施例では、3−ヒドロキシアルカン酸ユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを用いているが、それに限定されることなく、ポリヒドロキシアルカノエートを含んでいれば制限なくいずれも使用することができる。なお、以下における「%」は特に標記した以外は質量基準、「部」はすべて「質量部」である。
【0201】
まず、共通の基材としての磁性体の調製方法を示す。
【0202】
(参考例1)
<磁性体の調製>
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄イオンに対して1.0〜1.1当量の水酸化ナトリウム溶液を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。この水溶液のpHを8前後に維持しながら、空気を吹き込み、80〜90℃で酸化反応を行い、種晶を生成させるスラリー液を調製した。
【0203】
次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(水酸化ナトリウムのナトリウム成分)に対し0.9〜1.2当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液をpH8前後に維持して、空気を吹き込みながら酸化反応をすすめ、酸化反応後に生成した磁性酸化鉄粒子を洗浄、濾過乾燥し、凝集している粒子を解砕し、平均粒径が0.10μmの磁性体(1)を得た。
【0204】
次いで、scl−PHA合成酵素に係る実施形態について示す(参考例2〜4、実施例1〜10)。
【0205】
(参考例2)
<scl−PHA合成酵素生産能を有する形質転換体の作製>
TB64株を100mlのLB培地(1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム、pH7.4)で、30℃、一晩培養後、マーマーらの方法により染色体DNAを分離回収した。得られた染色体DNAを制限酵素Sau3AIで部分分解した。ベクターはpUC18を使用し、制限酵素BamHIで切断し、脱リン酸化処理(Molecular Cloning,1巻,572頁,1989年;Cold Spring Harbor Laboratory出版(非特許文献21))の後、DNAライゲーションキットVer.II(宝酒造)を用いて染色体DNAのSau3AI部分分解断片と連結した。次に、この連結DNA断片を用いて大腸菌(Escheichia coli)HB101株を形質転換し、TB64株の染色体DNAライブラリーを作製した。
【0206】
次に、TB64株のPHB合成系酵素群遺伝子を含むDNA断片を得るための表現型スクリーニングを行った。選択培地には2%グルコースを含有するLB培地を用い、寒天平板培地上のコロニーが適当な大きさに生育してきた時点でスダンブラックB溶液を噴霧し、UV光照射により蛍光を発するコロニーを取得した。取得したコロニーからアルカリ法によりプラスミドを回収することでPHB合成系酵素群遺伝子を含むDNA断片を得ることができた。
【0207】
ここで取得した遺伝子断片を不和合性グループであるIncP、IncQ、あるいはIncWの何れにも属さない広宿主域複製領域を含むベクターpBBR122(Mo Bi Tec)に組み換え、この組み換えプラスミドをラルストーニャ・ユートロファTB64m1株(PHB合成能欠損株)にエレクトロポレーション法により形質転換したところ、TB64m1株のPHB合成能が復帰し、相補性を示した。
【0208】
このPHB合成系酵素群遺伝子を含む断片についてサンガー法により塩基配列を決定した。その結果、配列番号:1で示される塩基配列を有するPHB合成系酵素遺伝子が該断片中に存在することが確認できた。
【0209】
次に、配列番号:2で示されるscl−PHA合成酵素遺伝子の開始コドン近傍の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを設計・合成し(アマシャムファルマシア・バイオテク)、このオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、scl−PHA合成酵素遺伝子を含む断片を増幅した(LA−PCRキット;宝酒造)。
【0210】
次に、上のようにして得られたPCR増幅断片について制限酵素BamHIを用いて完全分解し、発現ベクターpTrc99Aの制限酵素BamHIで切断、脱リン酸化処理(Molecular Cloning,1巻,572頁,1989年;Cold Spring Harbor Laboratory出版(前記・非特許文献21))したものに、DNAライゲーションキットVer.II(宝酒造)を用いて連結した。
【0211】
得られた組換えプラスミドで大腸菌(Escherichia coli HB101)を塩化カルシウム法により形質転換し(宝酒造)、得られた組換え体より回収した組換えプラスミドをpTB64−phbとした。
【0212】
pTB64−phbで大腸菌(Escherichia coli HB101)を塩化カルシウム法により形質転換し、pTB64−phb組換え株を得た。
【0213】
(参考例3) scl−PHA合成酵素の生産1
<GST融合scl−PHA合成酵素生産能を有する形質転換体の作製>
pTB64−phb組換え株をLB培地200mlに植菌して、37℃、125ストローク/分で振盪培養した。12時間培養の後、培養液200mlをグルコース2%を含むLB培地200mlに植菌して(計400ml)、37℃、125ストローク/分で12時間振盪培養した。このようにして得られた菌体を遠心分離によって回収し、常法によりプラスミドDNAを回収した。
【0214】
pTB64−phbに対して、上流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:3)および下流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:4)をそれぞれ設計・合成した(アマシャムファルマシア・バイオテク)。このオリゴヌクレオチドをプライマーとして、pTB64−phbをテンプレートとしてPCRを行い、上流にBamHI制限部位、下流にXhoI制限部位を有するscl−PHA合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA−PCRキット;宝酒造(株)製)。
【0215】
精製したPCR増幅産物をBamHIおよびXhoIにより消化し、プラスミドpGEX‐6P‐1(アマシャムファルマシア・バイオテク社製)の対応する部位に挿入した。これらのベクターを用いて大腸菌(JM109)を形質転換し、発現用菌株を得た。菌株の確認は、Miniprep(Wizard Minipreps DNA Purification Systems、PROMEGA社製)を用いて大量に調製したプラスミドDNAをBamHI、XhoIで処理して得られるDNA断片により行った。
【0216】
<scl−PHA合成酵素の調製>
得られた発現用菌株をアンピシリン(100μg/L)を添加した2×YT培地(ポリペプトン 16g/L、酵母エキス 10g/L、NaCl 5g/L、pH 7.0)100mlで30℃にて一晩前培養した。これをアンピシリン(100μg/L)を添加した2×YT培地(ポリペプトン 16g/L、酵母エキス 10g/L、NaCl 5g/L、pH 7.0)10リットルに添加し、30℃にて3時間培養後、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を最終濃度1mmol/Lとなるように添加し、30℃にて3時間培養した。
【0217】
回収した培養液を4℃、78000m/s2(=8000G)で10分間遠心処理し、上清を取り除いた後、菌体ペレットを4℃のPBS溶液500mlに再懸濁した。この菌液をあらかじめ4℃に冷却しておいたベッセルに各回40mlずつ注入し、フレンチプレスによって216MPa(=2200 kg/cm2)に加圧しながら少しずつノズルから菌液を解放することで菌体破砕処理を行った。菌体破砕液を4℃、78000m/s2(=8000G)で10分間遠心処理した後、上清を回収した。この上清を0.45μmのフィルタで濾過し、固形夾雑物を取り除き、上清中に目的のグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)の融合したscl−PHA合成酵素が存在することをSDS−PAGEで確認した。
【0218】
次に、このGST融合scl−PHA合成酵素をグルタチオン・セファロース4B(Glutathion SeSCL−PHArose 4B:アマシャムファルマシア・バイオテク社製)で精製した。グルタチオン・セファロース4Bの75%スラリー6.65mlを4℃、4900m/s2(=500G)で5分間遠心処理し、上清を取り除いた後、4℃のPBS溶液200mlに再懸濁し、さらに4℃、4900m/s2(=500G)で5分間遠心処理し、上清を取り除いた。さらに4℃のPBS溶液5mlに再懸濁し、グルタチオン・セファロース4B の50%スラリーとした。
【0219】
このグルタチオン・セファロース4Bの50%スラリー10mlに先ほど調整した上清全量を添加し、室温で30分間緩やかに振とうしてグルタチオン・セファロース4Bに上清中の目的とする融合たんぱく質をアフィニティ吸着させた。その後、4℃、4900m/s2(=500G)で5分間遠心処理し、上清を取り除いた後、4℃のPBS溶液5mlに再懸濁し、再び同様の遠心処理を行い、上清を除いた。このGST融合scl−PHA合成酵素を固定化したグルタチオン・セファロース4Bを固定化酵素(1)とした。
【0220】
その後、PBS溶液への再懸濁と遠心処理を2回繰り返して洗浄した後、最後に5℃のクリベージ緩衝液(Cleavage Buffer;Tris−HCl 50mmol/L、NaCl 150mmol/L、EDTA 1mmol/L、Dithiothreitol 1mmol/L、pH7)5mlに懸濁した。これに4% のプレシション・プロテアーゼ(PreScission Protease;アマシャム ファルマシア バイオテク社製)のクリベージ緩衝液溶液0.5mlを添加し、5℃で4時間緩やかに振とうした。これを4℃、4900m/s2(=500G)で5分間遠心処理し、上清を回収した。次に上記と同様に調整したグルタチオン・セファロース4Bの50%スラリー1mlを、4℃、4900m/s2(=500G)で5分間遠心処理し、上清を除いた後のグルタチオン・セファロース4Bに先ほど回収した上清を添加し、緩やかに攪拌して上清中に残留したプレシション・プロテアーゼをグルタチオン・セファロース4Bに吸着させた。次いで4℃、4900m/s2(=500G)で5分間遠心処理して上清を回収した。この上清はSDS−PAGEにより、シングルバンドを示し、精製されていることを確認した。
【0221】
また、含有するscl−PHA合成酵素活性を以下の方法で測定した。まず、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)を0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)に3.0mg/ml溶解した溶液100μlを酵素溶液100μlに添加して混合し、30℃で1分間プレインキュベートした。これに、3−ヒドロキシブチリルCoAを0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)に3.0mmol/L溶解した溶液100μlを添加して混合し、30℃で1〜30分間インキュベートしたのち、トリクロロ酢酸を0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)に10mg/ml溶解した溶液300μlを添加して反応を停止させた。反応停止したこの溶液を遠心分離(147000m/s2(=15000G)し、5,5’−ジチオビス−(2−ニトロ安息香酸)を0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)に2.0mmol/L溶解した溶液500μlを上清500μlに添加し、30℃で10分間インキュベートしたのち、412nmの吸光度を測定した。そして1分間に1μmolのCoAを放出させる酵素量を1単位(U)として、酵素活性を計算した。その結果、比活性として7.5 U/mlが得られた。この液を、ライホゲルを添加して限外濾過濃縮し、10 U/mlとしたものを精製酵素液(1)とした。
【0222】
(参考例4)
<scl−PHA合成酵素含有粗酵素液の調製>
KK01及びTL2株を、酵母エキス0.5%、ミネラル溶液(下記参照)0.3%を含有したM9培地10リットルで30℃、24時間培養し、回収した培養液を4℃、(78000m/s2(=8000G)で10分間遠心処理し、上清を取り除いた後、菌体ペレットを4℃のPBS溶液500mlに再懸濁した。この菌液をあらかじめ4℃に冷却しておいたベッセルに各回40mlずつ注入し、フレンチプレスによって216MPa(=2200 kg/cm2)に加圧しながら少しずつノズルから菌液を解放することで菌体破砕処理を行った。得られた菌体破砕液を4℃、(78000m/s2(=8000G)で10分間遠心処理した後、上清を回収した。この上清を0.45μmのフィルタで濾過し、固形夾雑物を取り除き、含有するscl−PHA合成酵素活性を前述の方法で測定した。その結果、比活性としてKK01株からは1.6 U/ml、TL2株からは1.2U/mlが得られた。この液を、ライホゲルを添加して限外濾過濃縮し、10U/mlとした粗酵素液を、KK01株由来のものを粗酵素液(1)、TL2株由来のものを粗酵素液(2)とした。
【0223】
(実施例1)
精製されたscl−PHA合成酵素液を用いて、下記の方法で磁性カプセル構造体(1)を調製した。
【0224】
精製酵素液(1)10質量部に磁性体(1)1質量部、PBS39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してscl−PHA合成酵素を磁性体表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0225】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0226】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体はPHBにより表面を被覆されていることがわかった。
【0227】
対照として、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)49質量部に磁性体(1)1質量部を添加し、30℃で2.5時間緩やかに振盪した後、同様にナイルブルーAで染色して蛍光顕微鏡観察を行った。その結果、磁性体表面は全く蛍光を発しなかった。
【0228】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、モノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、3−ヒドロキシ酪酸ユニットからなるPHBであることが確認された。
【0229】
さらに、該PHBの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=68,000、Mw=140,000であった。
【0230】
<実施例2>
scl−PHA合成酵素を含有した粗酵素液を用いて、下記の方法で磁性カプセル構造体(2)を調製した。
【0231】
粗酵素液(1)10質量部に磁性体(1)1質量部、PBS39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してscl−PHA合成酵素を磁性体表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0232】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0233】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体はPHBにより表面を被覆されていることがわかった。
【0234】
対照として、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)49質量部に磁性体(1)1質量部を添加し、30℃で2.5時間緩やかに振盪した後、同様にナイルブルーAで染色して蛍光顕微鏡観察を行った。その結果、磁性体表面は全く蛍光を発しなかった。
【0235】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、モノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、3−ヒドロキシ酪酸ユニットからなるPHBであることが確認された。
【0236】
さらに、該PHBの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=59,000、Mw=130,000であった。
【0237】
(実施例3)
scl−PHA合成酵素を含有した粗酵素液を用いて、下記の方法で磁性カプセル構造体(3)を調製した。
【0238】
粗酵素液(2)10質量部に磁性体(1)1質量部、PBS 39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してscl−PHA合成酵素を磁性体表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0239】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0240】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体はPHBにより表面を被覆されていることがわかった。
【0241】
対照として、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)49質量部に磁性体(1)1質量部を添加し、30℃で2.5時間緩やかに振盪した後、同様にナイルブルーAで染色して蛍光顕微鏡観察を行った。その結果、磁性体表面は全く蛍光を発しなかった。
【0242】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、モノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、3−ヒドロキシ酪酸ユニットからなるPHBであることが確認された。
【0243】
さらに、該PHBの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=65,000、Mw=160,000であった。
【0244】
(実施例4)
精製されたscl−PHA合成酵素液を用いて、下記の方法で磁性カプセル構造体(4)を調製した。
【0245】
精製酵素液(1)10質量部に、磁性体(2)として1次粒子径0.02μmのニッケル粉末(Ni(200)UFMP、真空冶金(株)製)1質量部、PBS39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してscl−PHA合成酵素を磁性体表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0246】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0247】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体はPHBにより表面を被覆されていることがわかった。
【0248】
対照として、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)49質量部に、磁性体(2)として1次粒子径0.02μmのニッケル粉末(Ni(200)UFMP、真空冶金(株)製)1質量部を添加し、30℃で2.5時間緩やかに振盪した後、同様にナイルブルーAで染色して蛍光顕微鏡観察を行った。その結果、磁性体表面は全く蛍光を発しなかった。
【0249】
さらに、該粒子の一部を遠心分離()、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、モノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、3−ヒドロキシ酪酸ユニットからなるPHBであることが確認された。
【0250】
さらに、該PHBの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=78,000、Mw=170,000であった。
【0251】
(実施例5)
精製されたscl−PHA合成酵素液を用いて、下記の方法で磁性カプセル構造体(5)を調製した。
【0252】
精製酵素液(1)10質量部に、磁性体(3)として1次粒子径0.02μmのγ−Fe2O3微粉(NanoTek、シーアイ化成(株)製)1質量部、PBS39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してscl−PHA合成酵素を磁性体表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0253】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0254】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体はPHBにより表面を被覆されていることがわかった。
【0255】
対照として、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)49質量部に、磁性体(3)として1次粒子径0.02μmのγ−Fe2O3微粉(NanoTek、シーアイ化成(株)製)1質量部を添加し、30℃で2.5時間緩やかに振盪した後、同様にナイルブルーAで染色して蛍光顕微鏡観察を行った。その結果、磁性体表面は全く蛍光を発しなかった。
【0256】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、モノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、3−ヒドロキシ酪酸ユニットからなるPHBであることが確認された。
【0257】
さらに、該PHBの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=80,000、Mw=170,000であった。
【0258】
(実施例6)
精製されたscl−PHA合成酵素液を用いて、下記の方法で磁性カプセル構造体(6)を調製した。
【0259】
精製酵素液(1)10質量部に、磁性体(4)として粒子径0.3μmのマグネタイト微粒子(マグネタイトEPT500、戸田工業(株)製)1質量部、PBS39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してscl−PHA合成酵素を磁性体表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0260】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0261】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体はPHBにより表面を被覆されていることがわかった。
【0262】
対照として、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)49質量部に、磁性体(4)として粒子径0.3μmのマグネタイト微粒子(マグネタイトEPT500、戸田工業(株)製)1質量部を添加し、30℃で2.5時間緩やかに振盪した後、同様にナイルブルーAで染色して蛍光顕微鏡観察を行った。その結果、磁性体表面は全く蛍光を発しなかった。
【0263】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、モノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、3−ヒドロキシ酪酸ユニットからなるPHBであることが確認された。
【0264】
さらに、該PHBの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=79,000、Mw=180,000であった。
【0265】
(実施例7)
精製されたscl−PHA合成酵素液を用いて、下記の方法で磁性カプセル構造体(7)を調製した。
【0266】
精製酵素液(1)10質量部に磁性体(1)1質量部、PBS39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してscl−PHA合成酵素を磁性体表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0267】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)1質量部、ポリエチレングリコール200(PEG200、キシダ化学(株)製、平均分子量190〜210)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0268】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体はPHBにより表面を被覆されていることがわかった。
【0269】
対照として、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)49質量部に磁性体(1)1質量部を添加し、30℃で2.5時間緩やかに振盪した後、同様にナイルブルーAで染色して蛍光顕微鏡観察を行った。その結果、磁性体表面は全く蛍光を発しなかった。
【0270】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、モノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、3−ヒドロキシ酪酸ユニットからなるPHBであることが確認された。
【0271】
また、1H−NMR(FT−NMR:Bruker DPX400;1H共鳴周波数:400MHz;測定核種:1H;使用溶媒:CDCl3;reference:キャピラリ封入TMS/CDCl3;測定温度:室温)によってPHAの構造解析を詳細に行ったところ、3−ヒドロキシ酪酸ユニットからなるPHAに由来するピーク以外に、3.5〜3.8ppm、及び4.2ppm付近にポリエチレングリコールに由来するピークが確認された。
【0272】
さらに、該PHBの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=22,000、Mw=45,000であった。
【0273】
(実施例8)
縦30mm×横30mm×厚さ3mmのフェライトシート(NP−S01、日本ペイント(株)製、フェライト粒子の樹脂分散体)を1%グルタルアルデヒドに1時間浸漬し、純水洗浄後、精製酵素液(1)に30℃で30分間浸漬して、該酵素を固定化した。未反応のscl−PHA合成酵素をPBSで洗浄して除去し、固定化酵素を得た。
【0274】
30mmol/L 3−ヒドロキシブチリルCoA(シグマ・アルドリッチ・ジャパン(株)社製)、0.1%ウシ血清アルブミン(Sigma社製)を含む0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)に上記固定化酵素を浸漬し、30℃で2時間緩やかに振盪した。反応終了後、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)で洗浄して、未反応物等を除去した。
【0275】
反応後のフェライトシートを1%ナイルブルーA水溶液で染色し、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、フェライトシートの表面に蛍光が認められたことから、該構造体はフェライトシートからなる基材がPHBからなる膜で被覆された積層構造体であることがわかった。
【0276】
さらに、該積層構造体を真空乾燥したのち、クロロホルムに浸漬し、60℃で20時間攪拌して被覆層を成すPHBを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、モノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、3−ヒドロキシ酪酸ユニットからなるPHBであることが確認された。
【0277】
(実施例9) 磁性カプセル構造体の被覆性評価
磁性体微粒子が完全にポリマーで保護被覆されているかどうかを確認するため、得られた磁性カプセル構造体(1)〜(7)、それぞれ0.1gを、70℃に加熱した純水100ml中に2時間浸漬した後、溶出液中の金属含有率を測定したところ、金属含有率は全てのカプセル構造体において3ppm以下であった。これより、これらのカプセル構造体は「金属イオンを溶出しない」と判定することができた。
【0278】
<実施例10> 磁性カプセル構造体の磁性体の分散性評価
磁性体のカプセル構造体における分散状態を確認するため、得られた磁性カプセル構造体(1)〜(7)、それぞれを酢酸ウラニルで染色した後、透過型電子顕微鏡によりカプセル構造体における磁性体の分散状態を観察したところ、粒子内部に均一に分散しており、カプセル構造体表面近傍の一部、または表面近傍の全部への局在化は観察されなかった。
【0279】
次に、mcl−PHAならびにunusual−PHAの合成酵素に係る実施形態について示す(参考例5〜7、実施例11〜28)。
【0280】
(参考例5)
<mcl−PHA合成酵素生産能を有する形質転換体の作製>
YN2株を100mlのLB培地(1%ポリペプトン(日本製薬(株)製)、0.5%酵母エキス(Difco社製)、0.5%塩化ナトリウム、pH7.4)で30℃、一晩培養後、マーマーらの方法により染色体DNAを分離回収した。得られた染色体DNAを制限酵素Hind IIIで完全分解した。ベクターにはpUC18を使用し、制限酵素Hind IIIで切断した。末端の脱リン酸処理(Molecular Cloning,1,572,(1989); Cold Spring Harbor Laboratory出版(前記・非特許文献21))ののち、DNAライゲーションキットVer.II(宝酒造(株)製)を用いて、ベクターの切断部位(クローニングサイト)と染色体DNAのHind III完全分解断片とを連結した。この染色体DNA断片を組み込んだプラスミドベクターを用いて、大腸菌(Escherichia coli)HB101株を形質転換し、YN2株のDNAライブラリーを作製した。
【0281】
次に、YN2株のmcl−PHA合成酵素遺伝子を含むDNA断片を選択するため、コロニー・ハイブリダイズ用のプローブ調製を行った。配列番号:6および配列番号:7の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを合成し(アマシャムファルマシア・バイオテク(株))、このオリゴヌクレオチドをプライマーに用いて、染色体DNAをテンプレートとしてPCRを行った。PCR増幅されてきたDNA断片をプローブとして用いた。プローブの標識化は、市販の標識酵素系AlkPhosDirect(アマシャムファルマシア・バイオテク(株)製)を利用して行った。得られた標識化プローブを用いて、YN2株の染色体DNAライブラリーからコロニーハイブリダイゼーション法によってmcl−PHA合成酵素遺伝子を含む組換えプラスミドを有する大腸菌菌株を選抜した。選抜した菌株から、アルカリ法によってプラスミドを回収することで、mcl−PHA合成酵素遺伝子を含むDNA断片を得ることができた。
【0282】
ここで取得した遺伝子DNA断片を、不和合性グループであるIncP、IncQ、あるいはIncWの何れにも属さない広宿主域複製領域を含むベクターpBBR122(Mo BiTec)に組み換えた。この組み換えプラスミドをシュードモナス・チコリアイYN2m1株(PHA合成能欠損株)にエレクトロポレーション法により形質転換したところ、YN2m1株のPHA合成能が復帰し、相補性を示した。
【0283】
従って、選抜された遺伝子DNA断片は、シュードモナス・チコリアイYN2m1株内において、mcl−PHA合成酵素に翻訳可能な、mcl−PHA合成酵素遺伝子領域を含むことが確認される。
【0284】
このDNA断片について、サンガー法により塩基配列を決定した。その結果、決定された塩基配列中には、それぞれペプチド鎖をコードする、配列番号:8および配列番号:9で示される塩基配列が存在することが確認された。これらのmcl−PHA合成酵素遺伝子について、染色体DNAをテンプレートとしてPCRを行い、mcl−PHA合成酵素遺伝子の完全長を再調製した。即ち、配列番号:8で示される塩基配列のmcl−PHA合成酵素遺伝子に対する、上流側プライマー(配列番号:10)および下流側プライマー(配列番号:11)、配列番号:9で示される塩基配列のmcl−PHA合成酵素遺伝子に対する、上流側プライマー(配列番号:12)および下流側プライマー(配列番号:13)をそれぞれ合成した(アマシャムファルマシア・バイオテク(株))。
【0285】
これらのプライマーを用いて、配列番号:8および配列番号:9で示される塩基配列それぞれについてPCRを行い、mcl−PHA合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA−PCRキット;宝酒造(株)製)。次に、得られたPCR増幅断片および発現ベクターpTrc99Aを制限酵素Hind IIIで切断し、脱リン酸化処理(Molecular Cloning,1巻,572頁,1989年;Cold Spring Harbor Laboratory出版(前記・非特許文献21))したのち、この発現ベクターpTrc99Aの切断部位に、両末端の不用な塩基配列を除いたmcl−PHA合成酵素遺伝子の完全長を含むDNA断片を、DNAライゲーションキットVer.II(宝酒造(株)製)を用いて連結した。
【0286】
得られた組換えプラスミドで大腸菌(Escherichia coli HB101:宝酒造)を塩化カルシウム法により形質転換した。得られた組換え体を培養し、組換えプラスミドの増幅を行い、組換えプラスミドをそれぞれ回収した。配列番号:8の遺伝子DNAを保持する組換えプラスミドをpYN2−C1、配列番号:9の遺伝子DNAを保持する組換えプラスミドをpYN2−C2とした。pYN2−C1、pYN2−C2で大腸菌(Escherichia coli HB101fB fadB欠損株)を塩化カルシウム法により形質転換し、それぞれの組換えプラスミドを保持する組換え大腸菌株、pYN2−C1組換え株、pYN2−C2組換え株を得た。
【0287】
(参考例6)mcl−PHA合成酵素の生産1
<mcl−PHA合成酵素生産能を有する形質転換体の作製>
pYN2−C1に対して、上流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:14)および下流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:15)をそれぞれ設計・合成した(アマシャムファルマシア・バイオテク(株))。このオリゴヌクレオチドをプライマーとして、pYN2−C1をテンプレートとしてPCRを行い、上流にBamHI制限部位、下流にXhoI制限部位を有するmcl−PHA合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA−PCRキット;宝酒造(株)製)。
【0288】
同様にpYN2−C2に対して、上流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:16)および下流側プライマーとなる、オリゴヌクレオチド(配列番号:17)をそれぞれ設計・合成した(アマシャムファルマシア・バイオテク(株))。このオリゴヌクレオチドをプライマーとして、pYN2−C2をテンプレートとしてPCRを行い、上流にBamHI制限部位、下流にXhoI制限部位を有するmcl−PHA合成酵素遺伝子の完全長を増幅した(LA−PCRキット;宝酒造(株)製)。
【0289】
精製したそれぞれのPCR増幅産物をBamHIおよびXhoIにより消化し、プラスミドpGEX−6P−1(アマシャムファルマシア・バイオテク(株)製)の対応する部位に挿入した。これらのベクターを用いて大腸菌(JM109)を形質転換し、発現用菌株を得た。菌株の確認は、Miniprep(Wizard Minipreps DNA Purification Systems、PROMEGA社製)を用いて大量に調製したプラスミドDNAをBamHI、XhoIで処理して得られるDNA断片により行った。
【0290】
<mcl−PHA合成酵素の調製>
得られた菌株をLB−Amp培地10mlで一晩プレ・カルチャーした後、その0.1mlを、10mlのLB−Amp培地に添加し、37℃、170 rpmで3時間振とう培養した。その後IPTGを添加(終濃度 1mmol/L)し、37℃で4から12時間培養を続けた。
【0291】
IPTG 誘導した大腸菌を遠心分離により集菌(78000m/s2(=8000G),2分、4℃)し、1/10 量の 4℃リン酸緩衝生理食塩水(PBS;8 g NaCl,1.44 g Na2HPO4,0.24 g KH2PO4,0.2 g KCl,1,000ml精製水)に再懸濁した。凍結融解およびソニケーションにより菌体を破砕し、遠心分離(78000m/s2(=8000G),10分、4℃)して固形夾雑物を取り除いた。目的の発現タンパク質が上清に存在することをSDS−PAGEで確認した後、誘導され発現されたGST融合タンパク質をグルタチオン・セファロース4B(アマシャムファルマシア・バイオテク(株)製)で精製した。使用するグルタチオン・セファロースは、予め非特異的吸着を抑える処理を行った。すなわち、グルタチオン・セファロースを同量のPBSで3回洗浄(78000m/s2(=8000G)、1分、4℃)した後、4%ウシ血清アルブミン含有PBSを同量加えて4℃で1時間処理した。処理後同量のPBSで2回洗浄し、1/2量のPBSに再懸濁した。前処理したグルタチオン・セファロース 40μlを、無細胞抽出液1ml に添加し、4℃で静かに攪拌した。これにより、融合タンパク質GST−YN2−C1およびGST−YN2−C2をグルタチオン・セファロースに吸着させた。吸着後、遠心分離(78000m/s2(=8000G)、1分、4℃)してグルタチオン・セファロースを回収し、400μlのPBSで3回洗浄した。その後、10mmol/Lグルタチオン40μlを添加し、4℃で1時間攪拌して、吸着した融合タンパク質を溶出した。遠心分離(78000m/s2(=8000G)、2分、4℃)して上清を回収した後PBSに対して透析し、GST融合タンパク質を精製した。SDS−PAGEにより、シングルバンドを確認した。
【0292】
各GST融合タンパク質500μgをPreScissionプロテアーゼ(アマシャムファルマシア・バイオテク(株)製、5U)で消化した後、グルタチオン・セファロースに通してプロテアーゼとGSTとを除去した。フロースルー分画をさらに、PBSで平衡化したセファデックスG200カラムにかけ、発現タンパク質YN2−C1およびYN2−C2の最終精製物を得た。SDS−PAGEによりそれぞれ60.8kDa、および61.5kDaのシングルバンドを確認した。
【0293】
該酵素を生体溶液試料濃縮剤(みずぶとりくんAB−1100、アトー(株)製)を用いて濃縮し、10 U/mlの精製酵素溶液を得た。
【0294】
各精製酵素活性は前述の方法で測定した。また、試料中のタンパク質濃度は、マイクロBCAタンパク質定量試薬キット(ピアスケミカル社製)によって測定した。各精製酵素の活性測定の結果を表1に示した。
【0295】
【表1】
(参考例7)mcl−PHA合成酵素の生産2
P91株、H45株、YN2株またはP161株を、酵母エキス(Difco社製)0.5%、オクタン酸0.1%とを含むM9培地200mlに植菌して、30℃、125ストローク/分で振盪培養した。24時間後、菌体を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)によって回収し、0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)200mlに再懸濁して再度遠心分離することによって洗浄した。菌体を0.1mol/L トリス塩酸バッファー(pH8.0)2.0mlに再懸濁し、超音波破砕機にて破砕したのち、遠心分離(118000m/s2(=12000G)、4℃、10分間)して上清を回収して粗酵素を得た。
【0296】
各精製酵素活性は前述の方法で測定し、その結果を表2に示した。
【0297】
【表2】
(実施例11) 磁性カプセル構造体(8)の作製
pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10 U/ml)10質量部に磁性体(1)を1質量部、PBS 39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してmcl−PHA合成酵素を磁性体(1)表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0298】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R)−3−ヒドロキシオクタノイルCoA(Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0299】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体(1)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(1)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。これを磁性カプセル構造体(8)とした。
【0300】
対照として、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)49質量部に磁性体(1)粒子を1質量部添加し、30℃で2.5時間緩やかに振盪した後、同様にナイルブルーAで染色して蛍光顕微鏡観察を行った。その結果、磁性体(1)粒子表面は全く蛍光を発しなかった。
【0301】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、図1に示す通り、該PHAは3−ヒドロキシオクタン酸ユニットからなるPHAであることが確認された。
【0302】
さらに、該PHAの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=20,000、Mw=39,000であった。
【0303】
(実施例12)磁性カプセル構造体(9)の作製
pYN2−C2組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10U/ml)10質量部に磁性体(1)を1質量部、PBS 39質量部を添加し、30℃にて30分間緩やかに振盪してmcl−PHA合成酵素を磁性体(1)表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0304】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R)−3−ヒドロキシオクタノイルCoA(Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0305】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体(1)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(1)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。これを磁性カプセル構造体(9)とした。
【0306】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、実施例11の結果と同様に、該PHAは3−ヒドロキシオクタン酸ユニットからなるPHAであることが確認された。
【0307】
(実施例13) 磁性カプセル構造体(10)〜(13)の作製
YN2,H45株,P91株またはP161株由来のmcl−PHA合成酵素の粗酵素99質量部に磁性体(1)を1質量部添加し、30℃にて30分間緩やかに振とうしてmcl−PHA合成酵素を磁性体(1)1表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0308】
上記の各固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R)−3−ヒドロキシオクタノイルCoA(Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、それぞれ30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0309】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、いずれの固定化酵素の反応液においても、磁性体(1)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(1)粒子はいずれも、PHAにより表面を被覆されていることがわかった。これを磁性カプセル構造体(10)〜(13)とした。
【0310】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、実施例11の結果と同様に、該PHAは3−ヒドロキシオクタン酸ユニットからなるPHAであることが確認された。
【0311】
(実施例14)磁性カプセル構造体(14)の作製
pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10 U/ml)10質量部に磁性体(1)を1質量部、PBS 39質量部を添加し、30℃にて30分間緩やかに振とうしてmcl−PHA合成酵素を磁性体(1)表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0312】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoA(Reformatsky反応により得られた3−ヒドロキシフェニル吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸を得たのち、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0313】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体(1)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(1)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。これを磁性カプセル構造体(14)とした。
【0314】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、図2に示す通り、該PHAは3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットからなるPHAであることが確認された。
【0315】
さらに、該PHAの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=17,000、Mw=35,000であった。
【0316】
(実施例15) 磁性カプセル構造体(15)の作製
pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10U/ml)10質量部に磁性体(1)を1質量部、PBS 39質量部を添加し、30℃にて30分間緩やかに振とうしてmcl−PHA合成酵素を磁性体(1)表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0317】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R)−3−ヒドロキシ−5−(4−フルオロフェニル)バレリルCoA(Reformatsky反応により得られた3−ヒドロキシフェニル吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−(4−フルオロフェニル)吉草酸を得たのち、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0318】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体(1)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(1)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。これを磁性カプセル構造体(15)とした。
【0319】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、図3に示す通り、当該PHAは3−ヒドロキシ−5−(4−フルオロフェニル)吉草酸をモノマーユニットとするPHAであることが確認された。
【0320】
(実施例16) 磁性カプセル構造体(16)の作製
pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10U/ml)10質量部に磁性体(1)を1質量部、PBS 39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してmcl−PHA合成酵素を磁性体(1)表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0321】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R)−3−ヒドロキシオクタノイルCoA(Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0322】
反応後、上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体(1)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(1)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。これを磁性カプセル構造体(16)とした。
【0323】
また、このカプセル構造体を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、乾燥処理後、この粒状体の表面に形成されたポリマーの質量を、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS IV、CAMECA製)により測定した。得られたマススペクトルから、カプセル構造体表面はポリヒドロキシオクタノエートのホモポリマーで構成されていることがわかった。また、イオンスパッタリングによりカプセル構造体表面を少しずつ削りながら同様にTOF−SIMSによりマススペクトルを測定していったが、いずれもポリヒドロキシオクタノエートのホモポリマーで構成されていた。これより、本比較例のカプセル構造体は、親水性の無機粒子を直接疎水性のポリヒドロキシオクタノエートのホモポリマーで被覆したカプセル構造体であることがわかった。
【0324】
ここで、該PHAの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=25,000、Mw=47,000であった。
【0325】
(実施例17) 磁性カプセル構造体(17)の作製
pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10U/ml)10質量部に磁性体(1)を1質量部、PBS 39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してmcl−PHA合成酵素を磁性体(1)表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0326】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R)−3−ヒドロキシピメリルCoA(J.Bacteriol.,182,2753−2760(2000)(非特許文献22)に記載の方法で調製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で10分間緩やかに振盪した。次いで、30℃で緩やかに振盪しながらこの反応液に(R)−3−ヒドロキシオクタノイルCoA(Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を含む0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)をマイクロチューブポンプ(東京理化器械社製MP−3N)を用いて1分間に1質量部の割合で添加した。さらに1時間30分後、生成した粒状体を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、上清を除いた後、この粒状体に(R)−3−ヒドロキシオクタノイルCoA(Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を含む0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)を25質量部添加し、30℃で20分間緩やかに振盪した。
【0327】
反応後、上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体(1)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(1)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。これを磁性カプセル構造体(17)とした。
【0328】
また、このカプセル構造体を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、乾燥処理後、この粒状体の表面に形成されたポリマーの質量を、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS IV、CAMECA製)により測定した。得られたマススペクトルから、カプセル構造体表面はポリヒドロキシオクタノエートのホモポリマーで構成されていることがわかった。また、イオンスパッタリングによりカプセル構造体表面を少しずつ削りながら同様にTOF−SIMSによりマススペクトルを測定していったところ、3−ヒドロキシオクタン酸と3−ヒドロキシピメリン酸の共重合体(モル比21:1)が現れ、粒状体内部にいくにつれて前記共重合体における3−ヒドロキシオクタン酸の組成比率が次第に減少し、逆に3−ヒドロキシピメリン酸の組成比率が増加して最終的にポリヒドロキシピメレートのホモポリマーに変化することが確認された。これより、本実施例のカプセル構造体は、親水性の粒状基材を、親水性官能基を有するポリヒドロキシピメレートで被覆し、その上を親水性官能基を有する3−ヒドロキシピメリン酸と疎水性官能基を有する3−ヒドロキシオクタン酸の共重合体によって、表層に至るにつれて3−ヒドロキシオクタン酸の組成比率を高めながら被覆し、さらに最表層をポリヒドロキシオクタノエートのホモポリマーで被覆したカプセル構造体であることがわかった。
【0329】
ここで、該PHAの平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=23,000、Mw=43,000であった。
【0330】
(実施例18) 磁性カプセル構造体(18)〜(21)の作製
pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10U/ml)10質量部に磁性体(1)を1質量部、PBS 39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してmcl−PHA合成酵素を磁性体(1)表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0331】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェノキシバレリルCoA(3−フェノキシプロパナールとブロモ酢酸エチルとのReformatsky反応で得られた3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸を得たのち、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)0.8質量部、(R,S)−3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタノイルCoA(Int.J.Biol.Macromol.,12,85−91(1990)(非特許文献23)に記載の方法で合成した3−ヒドロキシ−7−オクテン酸の不飽和部分を3−クロロ安息香酸でエポキシ化したのち、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)0.2質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪して磁性カプセル構造体(18)を得た。
【0332】
比較対照として、(R,S)−3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタノイルCoAを、3−ヒドロキシオクタノイルCoAに変更する以外は、上記と同様の方法で磁性カプセル構造体(19)を得た。
【0333】
上記の試料10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、いずれの試料においても、磁性体(1)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(1)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。
【0334】
対照として、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)49質量部に磁性体(1)粒子を1質量部添加し、30℃で2.5時間緩やかに振盪した後、同様にナイルブルーAで染色して蛍光顕微鏡観察を行った。その結果、磁性体(1)粒子表面は全く蛍光を発しなかった。
【0335】
さらに、試料の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。この抽出液について1H−NMR分析を行った(使用機器:FT−NMR:Bruker DPX400、測定核種:1H,使用溶媒:重クロロホルム(TMS入り))。ここから計算した各側鎖ユニットのユニット%を表3に示す。
【0336】
【表3】
上記の磁性カプセル構造体(18)を50質量部遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)してカプセル構造体を回収し、精製水50質量部に懸濁する操作を3回繰り返したのち、該懸濁液に架橋剤としてヘキサメチレンジアミン0.5質量部を溶解させた。溶解を確認後、凍結乾燥により水を除去した(これを磁性カプセル構造体(20)とする)。さらに、磁性カプセル構造体(20)を70℃で12時間反応させた(これを磁性カプセル構造体(21)とする)。
【0337】
上記磁性カプセル構造体(20)及び磁性カプセル構造体(21)をクロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出し、真空乾燥によりクロロホルムを除去し、示差走査熱量計(DSC;パーキンエルマー社製、Pyris 1、昇温:10℃/分)装置で測定を行った。その結果、磁性カプセル構造体(20)では90℃付近に明確な発熱ピークがみられ、ポリマー中のエポキシ基とヘキサメチレンジアミンとの反応が起こり、ポリマー同士の架橋が進行していることが示される。一方、磁性カプセル構造体(21)では明確なヒートフローは見られず、架橋反応がほぼ完了していることが示される。
【0338】
さらに、同様のサンプルにつき、赤外吸収を測定した(FT−IR;パーキンエルマー社製、1720X)。その結果、磁性カプセル構造体(20)で見られたアミン(3340cm−1付近)及びエポキシ(822cm−1付近)のピークが磁性カプセル構造体(21)では消失している。
【0339】
以上の結果より、側鎖にエポキシユニットをもつPHAとヘキサメチレンジアミンを反応させることにより、架橋ポリマーが得られることが明らかとなった。
【0340】
一方、比較対照として磁性カプセル構造体(19)について同様の評価を行ったが、前記の如き、ポリマー同士の架橋を明確に示す評価結果は得られなかった。
【0341】
(実施例19) 磁性カプセル構造体(22)〜(23)の作製
pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10U/ml)10質量部に磁性体(1)を1質量部、PBS 39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してmcl−PHA合成酵素を磁性体(1)表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0342】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェノキシバレリルCoA(3−フェノキシプロパナールとブロモ酢酸エチルとのReformatsky反応で得られた3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸を得たのち、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)0.8質量部、(R,S)−3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタノイルCoA(Int.J.Biol.Macromol.,12,85−91(1990)(前記・非特許文献23)に記載の方法で合成した3−ヒドロキシ−7−オクテン酸の不飽和部分を3−クロロ安息香酸でエポキシ化したのち、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)0.2質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪して磁性カプセル構造体(22)を得た。
【0343】
上記の磁性カプセル構造体(22)の10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果磁性体(1)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(1)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。
【0344】
対照として、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)49質量部に磁性体(1)粒子を1質量部添加し、30℃で2.5時間緩やかに振盪した後、同様にナイルブルーAで染色して蛍光顕微鏡観察を行った。その結果、磁性体(1)粒子表面は全く蛍光を発しなかった。
【0345】
さらに、磁性カプセル構造体(22)の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。この抽出液について1H−NMR分析を行った(使用機器:FT−NMR:Bruker DPX400、測定核種:1H,使用溶媒:重クロロホルム(TMS入り))。ここから計算した各側鎖ユニットのユニット%は、3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸78%、3−ヒドロキシ−7,8−エポキシオクタン酸22%であった。
【0346】
上記の磁性カプセル構造体(22)を50質量部遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)してカプセル構造体を回収し、精製水50質量部に懸濁する操作を3回繰り返したのち、凍結乾燥により水を除去した。ここに、末端アミノ変性ポリシロキサン(変性シリコーンオイルTSF4700、GE東芝シリコーン(株)製)を10質量部添加し、70℃で2時間反応させた。これをメタノールに懸濁し、遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、20分間)する操作を繰り返すことにより洗浄し乾燥することで、ポリシロキサンのグラフト鎖を有する磁性カプセル構造体(23)を得た。
【0347】
(実施例20) 磁性カプセル構造体(24)の作製
pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10U/ml)10質量部に磁性体(1)を1質量部、PBS 39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してmcl−PHA合成酵素を磁性体(1)表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0348】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェノキシバレリルCoA(3−フェノキシプロパナールとブロモ酢酸エチルとのReformatsky反応で得られた3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸を得たのち、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)0.8質量部、(R)−3−ヒドロキシピメリルCoA(J.Bacteriol.,182,2753−2760(2000)(前記・非特許文献22)に記載の方法で調製)0.2質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪して磁性カプセル構造体(24)を得た。
【0349】
上記の磁性カプセル構造体(24)の10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果磁性体(1)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(1)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。
【0350】
さらに、磁性カプセル構造体(24)の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。この抽出液について1H−NMR分析を行った(使用機器:FT−NMR:Bruker DPX400、測定核種:1H,使用溶媒:重クロロホルム(TMS入り))。ここから計算した各側鎖ユニットのユニット%は、3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸83%、3−ヒドロキシピメリン酸17%であった。
【0351】
(実施例21) 磁性カプセル構造体(25)の作製
pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10U/ml)10質量部に磁性体(1)を1質量部、PBS 39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してmcl−PHA合成酵素を磁性体(1)表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0352】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R,S)−3−ヒドロキシ−5−フェノキシバレリルCoA(3−フェノキシプロパナールとブロモ酢酸エチルとのReformatsky反応で得られた3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸を得たのち、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)0.8質量部、(R)−3−ヒドロキシ−8−ブロモオクタノイルCoA(Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)0.2質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪して磁性カプセル構造体(25)を得た。
【0353】
上記の磁性カプセル構造体(25)の10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果磁性体(1)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(1)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。
【0354】
さらに、磁性カプセル構造体(25)の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。この抽出液について1H−NMR分析を行った(使用機器:FT−NMR:Bruker DPX400、測定核種:1H,使用溶媒:重クロロホルム(TMS入り))。ここから計算した各側鎖ユニットのユニット%は、3−ヒドロキシ−5−フェノキシ吉草酸89%、3−ヒドロキシ−8−ブロモオクタン酸11%であった。
【0355】
(実施例22) 磁性カプセル構造体(26)の作製
pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10U/ml)10質量部に、気相法で合成した磁性を有する金属として1次粒子径0.02μmニッケル粉末「Ni(200)UFMP」〔真空冶金(株)製〕(磁性体(2)とする)を1質量部、PBS 39質量部を添加し、30℃にて30分間緩やかに振とうしてmcl−PHA合成酵素を磁性体(2)表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0356】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoA(Reformatsky反応により得られた3−ヒドロキシフェニル吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸を得たのち、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0357】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体(2)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(2)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。これを磁性カプセル構造体(26)とした。
【0358】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、該PHAは3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットからなるPHAであることが確認された。
【0359】
さらに、該PHAの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=18,000、Mw=36,000であった。
【0360】
(実施例23) 磁性カプセル構造体(27)の作製
pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10U/ml)10質量部に、気相法で合成した1次粒子径0.02μmのγ−Fe2O3微粉「NanoTek」〔シーアイ化成(株)製〕(磁性体(3)とする)を1質量部、PBS 39質量部を添加し、30℃にて30分間緩やかに振とうしてmcl−PHA合成酵素を磁性体3表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0361】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoA(Reformatsky反応により得られた3−ヒドロキシフェニル吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸を得たのち、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0362】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体(3)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(3)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。これを磁性カプセル構造体(27)とした。
【0363】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、該PHAは3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットからなるPHAであることが確認された。
【0364】
さらに、該PHAの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=17,000、Mw=35,000であった。
【0365】
(実施例24) 磁性カプセル構造体(28)の作製4
pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10U/ml)10質量部に、湿式法で合成した粒子径0.3μmのマグネタイト微粒子「マグネタイトEPT500」〔戸田工業(株)製〕(磁性体(4)とする)を1質量部、PBS 39質量部を添加し、30℃にて30分間緩やかに振とうしてmcl−PHA合成酵素を磁性体(4)表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0366】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R)−3−ヒドロキシ−5−フェニルバレリルCoA(Reformatsky反応により得られた3−ヒドロキシフェニル吉草酸エステルを加水分解して3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸を得たのち、Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0367】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体(4)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(4)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。これを磁性カプセル構造体(28)とした。
【0368】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、該PHAは3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニットからなるPHAであることが確認された。
【0369】
さらに、該PHAの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=15,000、Mw=34,000であった。
【0370】
(実施例15) 磁性カプセル構造体(29)の作製
pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10U/ml)10質量部に磁性体(1)を1質量部、PBS 39質量部を添加し30℃にて30分間緩やかに振盪してmcl−PHA合成酵素を磁性体(1)表面に吸着させた。これを遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)し、沈殿をPBS溶液に懸濁し、再度遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)して固定化酵素を得た。
【0371】
上記固定化酵素を0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)48質量部に懸濁し、(R)−3−ヒドロキシオクタノイルCoA(Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)1質量部、ポリエチレングリコール200(PEG200:平均分子量190−210;キシダ化学)1質量部、ウシ血清アルブミン(Sigma社製)0.1質量部を添加し、30℃で2時間緩やかに振盪した。
【0372】
上記反応液10μlをスライドグラス上に採取し、1%ナイルブルーA水溶液10μlを添加し、スライドグラス上で混合した後、カバーグラスを載せ、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、磁性体(1)粒子表面が蛍光を発していることが確認された。従って、該磁性体(1)粒子はPHAにより表面を被覆されていることがわかった。これを磁性カプセル構造体(29)とした。
【0373】
対照として、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)49質量部に磁性体(1)粒子1質量部を添加し、30℃で2.5時間緩やかに振盪した後、同様にナイルブルーAで染色して蛍光顕微鏡観察を行った。その結果、磁性体(1)粒子表面は全く蛍光を発しなかった。
【0374】
さらに、該粒子の一部を遠心分離(98000m/s2(=10000G)、4℃、10分間)により回収し、真空乾燥したのち、クロロホルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌して外被を成すPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行ったところ、該PHAは3−ヒドロキシオクタン酸ユニットからなるPHAであることが確認された。
【0375】
また、1H−NMR(FT−NMR:Bruker DPX400;1H共鳴周波数:400MHz;測定核種:1H;使用溶媒:CDCl3;reference:キャピラリ封入TMS/CDCl3;測定温度:室温)によってPHAの構造解析を詳細に行ったところ、3−ヒドロキシオクタン酸ユニットからなるPHAに由来するピーク以外に、3.5−3.8ppm、及び4.2ppm付近にPEGに由来するピークが確認された。
【0376】
さらに、該PHAの分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC−8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXED−C(5μm)、溶媒;クロロホルム、カラム温度;40℃、ポリスチレン換算)により評価した結果、Mn=7,000、Mw=13,000であり、分子量低下効果が得られた。
【0377】
(実施例26) 積層構造体の作製
縦30mm×横30mm×厚さ3mmのフェライトシート(NP−S01、日本ペイント(株)製、フェライト粒子の樹脂分散体)を1%グルタルアルデヒドに1時間浸漬し、純水洗浄後、pYN2−C1組換え株由来のmcl−PHA合成酵素溶液(10 U/ml)に30℃で30分間浸漬して、該酵素を固定化した。未反応のmcl−PHA合成酵素をPBSで洗浄して除去し、固定化酵素を得た。
【0378】
30mmol/L(R)−3−ヒドロキシオクタノイルCoA(Eur.J.Biochem.,250,432−439(1997)(前記・非特許文献17)に記載の方法で調製)、0.1%ウシ血清アルブミン(Sigma社製)を含む0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)に上記固定化酵素を浸漬し、30℃で2時間緩やかに振盪した。反応終了後、0.1mol/Lリン酸バッファー(pH7.0)で洗浄して、未反応物等を除去した。
【0379】
反応後のガラスシートを1%ナイルブルーA水溶液で染色し、蛍光顕微鏡(330〜380nm励起フィルタ、420nmロングパス吸収フィルタ、(株)ニコン製)観察を行った。その結果、フェライトシートの表面に蛍光が認められたことから、該シートはフェライトシートからなる基材がPHAからなる膜で被覆された積層構造体であることがわかった。
【0380】
さらに、該積層構造体を真空乾燥したのち、クロロホルムに浸漬し、60℃で20時間攪拌して被覆層を成すPHAを抽出した。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮したのち、常法に従ってメタノリシスを行い、ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(GC−MS,島津QP−5050、EI法)で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。その結果、図4に示す通り、当該PHAは3−ヒドロキシオクタン酸をモノマーユニットとするPHAであることが確認された。
【0381】
(実施例27) 磁性カプセル構造体の被覆性評価
磁性体微粒子が完全にポリマーで保護被覆されているかどうかを確認するため、得られた磁性カプセル構造体(8)〜(29)、それぞれ、0.1gを、70℃に加熱した純水100ミリリットル中に2時間浸漬した後、溶出液中の金属含有率を測定したところ、金属含有率は全ての磁性カプセルにおいて3ppm以下であった。これより、これらの磁性カプセルは「金属イオンを溶出しない」と判定することができる。
【0382】
(実施例28) 磁性カプセル構造体の磁性体の分散性評価
磁性体の磁性カプセルにおける分散状態を確認するため、得られた磁性カプセル構造体(8)〜(29)、それぞれを、酢酸ウラニルで染色した後、透過型電子顕微鏡により磁性カプセルにおける磁性体の分散状態を観察したところ、粒子内部に均一に分散しており、粒子表面近傍の一部、または表面近傍の全部への局在化は観察されなかった。
【0383】
【発明の効果】本発明の構造体は、磁性体の分散性および磁気応答性に優れ、金属イオンが外部に溶出されにくく、更に生体適合性の優れたものであるため、種々の用途・分野に幅広く適用することが可能となる。
【0384】
また、本発明によれば、磁性体を被覆したカプセル構造体や積層構造体を、極めて簡便かつ環境低負荷なプロセスで製造することが可能になる。
【0385】
特には、磁性を有する金属および金属化合物に親油化処理を施すことなく、均一分散性に優れる、磁性体を被覆した構造体ならびにその製造が可能となる。
【0386】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例11で同定された、PHAに含まれる3−ヒドロキシオクタン酸ユニット由来のメチルエステル化物のガスクロマトグラフィー−質量分析チャートを示した図である。
【図2】実施例14で同定された、PHAに含まれる3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸ユニット由来のメチルエステル化物のガスクロマトグラフィー−質量分析チャートを示した図である。
【図3】実施例15で同定された、PHAに含まれる3−ヒドロキシ−5−(4−フルオロフェニル)吉草酸ユニット由来のメチルエステル化物のガスクロマトグラフィー−質量分析チャートを示した図である。
【図4】実施例26で同定された、PHAに含まれる3−ヒドロキシオクタン酸ユニット由来のメチルエステル化物のガスクロマトグラフィー−質量分析チャートを示した図である。
Claims (52)
- 磁性体の少なくとも一部が、ポリヒドロキシアルカノエートで被覆されていることを特徴とする、構造体。
- 前記ポリヒドロキシアルカノエートが、3−ヒドロキシプロピオン酸ユニット、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニット及び3−ヒドロキシ−n−吉草酸ユニットより選択される少なくとも一つのモノマーユニットを有する請求項1に記載の構造体。
- 前記ポリヒドロキシアルカノエートが、3−ヒドロキシアルカン酸ユニット(ただし3−ヒドロキシプロピオン酸ユニット、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニットまたは3−ヒドロキシ−n−吉草酸ユニットを除く)を含有する請求項1に記載の構造体。
- 前記ポリヒドロキシアルカノエートが、化学式[1]から化学式[10]に示すモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つを含有するポリヒドロキシアルカノエートである、請求項3に記載の構造体。
- 前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部が、化学修飾されたポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする、請求項3または請求項4に記載の構造体。
- 前記の化学修飾されたポリヒドロキシアルカノエートが、少なくともグラフト鎖を有するポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする、請求項5に記載の構造体。
- 前記グラフト鎖が、エポキシ基を有するモノマーユニットを少なくとも含むポリヒドロキシアルカノエートの化学修飾によるグラフト鎖であることを特徴とする、請求項6に記載の構造体。
- 前記グラフト鎖が、アミノ基を有する化合物のグラフト鎖であることを特徴とする、請求項6または請求項7に記載の構造体。
- 前記のアミノ基を有する化合物が、末端アミノ変性化合物であることを特徴とする、請求項8に記載の構造体。
- 前記末端アミノ変性化合物が、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、末端アミノ変性ポリシロキサンからなる群より選択される少なくとも一つであることを特徴とする、請求項9に記載の構造体。
- 前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部が、架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする、請求項5に記載の構造体。
- 前記の架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートが、エポキシ基を有するモノマーユニットを少なくとも含むポリヒドロキシアルカノエートが架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする、請求項11に記載の構造体。
- 前記の架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートが、ジアミン化合物、無水コハク酸、2−エチル−4−メチルイミダゾール、電子線照射からなる群より選択される少なくとも一つにより架橋化されたポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする、請求項11または請求項12に記載の構造体。
- 前記ジアミン化合物が、ヘキサメチレンジアミンであることを特徴とする、請求項13に記載の構造体。
- 前記磁性体が粒状体であることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれかに記載の構造体。
- 前記ポリヒドロキシアルカノエートのモノマーユニット組成が前記構造体の内側から外側に向かう方向において変化していることを特徴とする請求項15に記載の構造体。
- 前記磁性体が平板状またはフィルム状であることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれかに記載の構造体。
- 前記ポリヒドロキシアルカノエートのモノマーユニット組成が前記構造体の表面に対して垂直方向に変化していることを特徴とする請求項17に記載の構造体。
- 前記磁性体が磁性を有する金属または金属化合物からなることを特徴とする、請求項15から請求項18のいずれかに記載の構造体。
- 前記磁性体にポリヒドロキシアルカノエート合成酵素が固定されていることを特徴とする請求項1から請求項19のいずれかに記載の構造体。
- 前記ポリヒドロキシアルカノエートの分子量が1,000から10,000,000であることを特徴とする請求項1から請求項20のいずれかに記載の構造体。
- ポリヒドロキシアルカノエートで表面の一部を被覆した磁性体からなる構造体の製造方法であって、ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素を磁性体表面に固定化する工程と、該酵素により3−ヒドロキシアシル補酵素Aを重合させてポリヒドロキシアルカノエートを合成することにより、前記磁性体の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートで被覆する工程と、を有することを特徴とする構造体の製造方法。
- 前記ポリヒドロキシアルカノエートが3−ヒドロキシプロピオン酸ユニット、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニット及び3−ヒドロキシ−n−吉草酸ユニットより選択される少なくとも一つのモノマーユニットを有し、前記ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素を固定化する工程の前に前記磁性体を水性媒体に分散する工程を有し、かつ、前記3−ヒドロキシアシル補酵素Aが3−ヒドロキシプロピオニル補酵素A、3−ヒドロキシブチリル補酵素A及び3−ヒドロキシバレリル補酵素Aより選択される少なくとも一つである請求項22に記載の構造体の製造方法。
- 前記ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素が中鎖長ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素である請求項22に記載の構造体の製造方法。
- 前記ポリヒドロキシアルカノエートが、化学式[1]から化学式[10]に示すモノマーユニットからなる群より選択される少なくとも一つを含有するポリヒドロキシアルカノエートであり、前記ユニットのそれぞれに対して対応する3−ヒドロキシアシル補酵素Aが順に化学式[11]から化学式[20]に示す3−ヒドロキシアシル補酵素Aである、請求項24に記載の構造体の製造方法。
- 前記磁性体を被覆する前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部に化学修飾を施す工程をさらに有する、請求項24または請求項25に記載の構造体の製造方法。
- 前記化学修飾を施す工程が、前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部にグラフト鎖を付加する工程であることを特徴とする、請求項26に記載の構造体の製造方法。
- 前記グラフト鎖を付加する工程が、前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部と、末端に反応性官能基を有する化合物とを反応させる工程であることを特徴とする、請求項27に記載の構造体の製造方法。
- 前記ポリヒドロキシアルカノエートが、エポキシ基を有するモノマーユニットを少なくとも含むポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする、請求項28に記載の構造体の製造方法。
- 前記末端に反応性官能基を有する化合物が、アミノ基を有する化合物であることを特徴とする、請求項28または請求項29に記載の構造体の製造方法。
- 前記アミノ基を有する化合物が、末端アミノ変性化合物であることを特徴とする、請求項30に記載の構造体の製造方法。
- 前記末端アミノ変性化合物が、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、アミノ変性ポリシロキサンからなる群より選択される少なくとも一つであることを特徴とする、請求項31に記載の構造体の製造方法。
- 前記化学修飾を施す工程が、前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部を架橋化する工程であることを特徴とする、請求項26に記載の構造体の製造方法。
- 前記架橋化工程が、前記ポリヒドロキシアルカノエートの少なくとも一部と架橋剤とを反応させる工程であることを特徴とする、請求項33に記載の構造体の製造方法。
- 前記ポリヒドロキシアルカノエートが、エポキシ基を有するモノマーユニットを少なくとも含むポリヒドロキシアルカノエートであることを特徴とする、請求項34に記載の構造体の製造方法。
- 前記架橋剤が、ジアミン化合物、無水コハク酸、2−メチル−4−メチルイミダゾールからなる群より選択される少なくとも一つであることを特徴とする、請求項34または請求項35に記載の構造体の製造方法。
- 前記ジアミン化合物がヘキサメチレンジアミンであることを特徴とする、請求項36に記載の構造体の製造方法。
- 前記架橋化工程が、前記ポリヒドロキシアルカノエートに電子線を照射する工程であることを特徴とする、請求項33に記載の構造体の製造方法。
- 前記磁性体が粒状であり、該磁性体の少なくとも一部をポリヒドロキシアルカノエートで被覆して粒状の構造体を製造することを特徴とする、請求項22から請求項38のいずれかに記載の構造体の製造方法。
- 前記3−ヒドロキシアシル補酵素Aの組成を経時的に変化させることにより、前記ポリヒドロキシアルカノエートのモノマーユニット組成を前記構造体の内側から外側に向かう方向において変化させることを特徴とする請求項39に記載の構造体の製造方法。
- 前記磁性体が平板状またはフィルム状であることを特徴とする、請求項22から請求項38のいずれかに記載の構造体の製造方法。
- 前記3−ヒドロキシアシル補酵素Aの組成を経時的に変化させることにより、前記ポリヒドロキシアルカノエートのモノマーユニット組成を前記構造体の表面に対して垂直方向に変化させることを特徴とする請求項41に記載の構造体の製造方法。
- 前記磁性体が磁性を有する金属または金属化合物からなることを特徴とする、請求項39から42のいずれかに記載の構造体の製造方法。
- 前記ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素を該酵素の生産能を有する微生物を使って生産する、請求項22から請求項43のいずれかに記載の構造体の製造方法。
- 前記ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素を該酵素の生産能に関与する遺伝子を導入した形質転換体により生産する、請求項22から請求項43のいずれかに記載の構造体の製造方法。
- 前記遺伝子はポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の生産能を有する微生物から得られた遺伝子であることを特徴とする請求項45に記載の構造体の製造方法。
- 前記ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の生産能を有する微生物が、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)に属する微生物である、請求項44または請求項46に記載の構造体の製造方法。
- 前記シュードモナス属(Pseudomonas sp.)に属する微生物が、シュードモナス・プチダ・P91株(Pseudomonas putida P91、FERMBP−7373)、シュードモナス・チコリアイ・H45株(Pseudomonas cichorii H45、FERMBP−7374)、シュードモナス・チコリアイ・YN2株(Pseudomonas cichorii YN2、FERM BP−7375)、シュードモナス・ジェッセニイ・P161株(Pseudomonas jessenii P161、FERM BP−7376)からなる群から選択される少なくとも1つの微生物である、請求項47に記載の構造体の製造方法。
- 前記ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の生産能を有する微生物が、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)に属する微生物である、請求項44または請求項46に記載の構造体の製造方法。
- 前記バークホルデリア属に属する微生物が、バークホルデリア属・OK3株(Burkholderia sp. OK3、FERM P−17370)、バークホルデリア属・OK4株(Burkholderia sp. OK4、FERM P−17371)からなる群から選択される少なくとも1つの微生物である、請求項49に記載の構造体の製造方法。
- 生産されるポリヒドロキシアルカノエート合成酵素が、3−ヒドロキシプロピオン酸ユニット、3−ヒドロキシ−n−酪酸ユニット及び3−ヒドロキシ−n−吉草酸ユニットより選択される少なくとも一つのモノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを合成するものであり、該酵素の生産能を有する微生物が、バークホルデリア・セパシア・KK01株(Burkholderia cepaciaKK01、FERM BP−4235)、ラルストーニャ・ユートロファ・TB64株(Ralstonia eutropha TB64、FERM BP−6933)、アルカリゲネス属・TL2株(Alcaligenes sp.TL2、FERM BP−6913)からなる群から選択される少なくとも1つの微生物である請求項44または請求項46に記載の製造方法。
- 前記ポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の生産能を有する形質転換体の宿主微生物が、大腸菌(Escheichia coli)である、請求項45または請求項46に記載の構造体の製造方法。
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