JP2004139963A - 非水系電解液二次電池および非水系電解液 - Google Patents
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Abstract
【構成】リチウムを吸蔵・放出することが可能な負極および正極、ならびに非水溶媒およびリチウム塩からなる電解液を有する非水系電解液二次電池において、非水溶媒が分子内に炭素−炭素不飽和結合を有する環状炭酸エステルおよび炭素数9以下のフッ素含有芳香族化合物を含有するものであることを特徴とする非水系電解液二次電池。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水系電解液二次電池、およびそれに用いる非水系電解液に関するものである。詳しくは、高容量で、連続充電後の放電特性、負荷特性およびサイクル特性に優れ、かつガス発生量の少ない非水系電解液二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気製品の軽量化、小型化にともない、高いエネルギー密度をもつリチウム二次電池の開発が進められており、リチウム二次電池の適用分野が拡大するにつれて電池特性を改善することが求められている。
また、リチウム二次電池を停電時のバックアップ電源またはポータブル機器の電源として用いる場合には、通常、自己放電を補うため常時微弱電流を流し、充電状態に保持する連続充電方法が用いられる。
【0003】
金属リチウムを負極とする二次電池には、充放電の繰り返しにより金属リチウムがデンドライト状に成長し、これが正極に達し電池内部での短絡が生じてしまうという問題があり、これが金属リチウムを負極とするリチウム二次電池を実用化する際の最大の障害となっている。これに対して、負極活物質にコークス、人造黒鉛または天然黒鉛等のリチウムを吸蔵・放出することが可能な炭素質材料を用いた非水系電解液二次電池では、リチウムがデンドライト状に成長しないため、電池寿命と安全性とを向上させることができる。特に、負極活物質に人造黒鉛や天然黒鉛等の黒鉛系炭素質材料を用いた非水系電解液二次電池は、高容量化の要求に応え得るものとして注目されている。
【0004】
しかしながら、黒鉛系炭素質材料を用いた負極を有する二次電池は、充放電中に電極表面において電解液が分解するため、充放電効率の低下、サイクル特性の低下、および発生したガスによる電池内圧の上昇等を引き起こすことがある。
ところで、電池を高容量化する方法として、電極の活物質量を増加させるため電極の集電体上に形成される電極層の空隙をなるべく減少させるべく、加圧して電極層を高密度化するのが一般的となっている。しかしながら、電池内の空隙を減少させると、電解液の分解で発生するガスがわずかであっても電池内圧は顕著に上昇してしまう。また、電極層を高密度化すると電解液の浸透性が低下するため、十分な電池特性が得られにくくなる。
【0005】
したがって、リチウム二次電池については、電極表面における電解液の分解を抑制すること、および電極層やセパレーターへの電解液の浸透性を高めることが求められている。
黒鉛系負極を用いた非水系電解液二次電池の電解液の分解を抑制するために、ビニレンカーボネートおよびその誘導体等の分子内に炭素−炭素不飽和結合を含む環状カーボネートを含有する非水溶媒を用いることが提案されている(特開平8−45545号公報)。この非水溶媒を用いると、不飽和結合を含む環状カーボネートが負極表面で還元分解されることにより形成される皮膜が、非水溶媒の過度の分解を抑制し、サイクル特性を向上させることができる。しかし、本発明者らが試験したところでは、分子内に炭素−炭素不飽和結合を含む環状カーボネートを含有する非水溶媒を用いた二次電池は、優れたサイクル特性を示すものの連続充電を行うとガスの発生量が増加するという問題があることが判明した。これは、一定電圧で充電を継続する連続充電では、正極の活性が低下することがないので、ガスの発生量が低下しないためと考えられる。
【0006】
ところで、電池特性や安全性等を向上させるために、非水溶媒中にフッ素含有芳香族化合物を含有させることは公知である。例えば、特開平10−112335号、特開平11−329496号、特開2000−106209号、特開2001−185213号、特開2001−256996号および特開2002−83629号の各公報には、非水溶媒中にフッ素含有芳香族化合物を含むリチウム二次電池が記載されている。しかしながら、いずれにも、連続充電時のガス発生を抑制する方法に関する記載はない。
【0007】
連続充電時の電池特性を向上させる方法としては、リン酸エステルを含有する電解液を用いた二次電池が提案されている(特開平11−233140号公報)。しかし、本発明者らの試験によれば、この電池は連続充電後の電池特性が不十分なものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高容量で、連続充電後の放電特性、負荷特性およびサイクル特性に優れ、かつガス発生量の少ない非水系電解液二次電池、およびそれに用いる非水系電解液を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑み種々の検討を重ねた結果、分子内に炭素−炭素不飽和結合を有する環状炭酸エステルおよび炭素数9以下のフッ素含有芳香族化合物を含有する非水溶媒を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、リチウムを吸蔵・放出することが可能な負極および正極、ならびに非水溶媒およびリチウム塩からなる電解液を有する非水系電解液二次電池において、非水溶媒が分子内に炭素−炭素不飽和結合を有する環状炭酸エステルおよび炭素数9以下のフッ素含有芳香族化合物を含有するものであることを特徴とする非水系電解液二次電池、に存する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に係る非水系電解液二次電池では、分子内に炭素−炭素不飽和結合を有する環状炭酸エステル、および炭素数9以下のフッ素含有芳香族化合物を含有する非水溶媒にリチウム塩を溶解させた電解液を用いる。
分子内に炭素−炭素不飽和結合を有する環状炭酸エステルとしては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、4,5−ジエチルビニレンカーボネート、フルオロビニレンカーボネート、トリフルオロメチルビニレンカーボネート等のビニレンカーボネート化合物;4−ビニルエチレンカーボネート、4−メチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4−エチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4−n−プロピル−4−ビニルエチレンカーボネート、5−メチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート等のビニルエチレンカーボネート;4,4−ジメチル−5−メチレンエチレンカーボネート、4,4−ジエチル−5−メチレンエチレンカーボネート等のメチレンエチレンカーボネート化合物などが挙げられる。このうち、ビニレンカーボネート、4−ビニルエチレンカーボネート、4−メチル−4−ビニルエチレンカーボネートまたは4,5−ジビニルエチレンカーボネート、特にビニレンカーボネートまたは4−ビニルエチレンカーボネートが好ましい。なお、これらの2種類以上を併用してもよい。
【0012】
分子内に炭素−炭素不飽和結合を有する環状炭酸エステルは、非水溶媒中に0.01重量%以上8重量%以下となるように含有させるのが好ましい。0.01重量%未満では、十分にサイクル特性を向上させるのが困難となる。一方、8重量%を超えると、高温保存時にガスが発生して電池の内圧が上昇することがある。下限値としては0.1重量%以上、特に0.3重量%以上とするのがさらに好ましく、0.5重量%以上とするのが最も好ましい。また、上限値としては5重量%以下、特に4重量%以下とするのがさらに好ましく、3重量%以下とするのが最も好ましい。
【0013】
炭素数9以下のフッ素含有芳香族化合物としては、フルオロベンゼン、1,2−ジフルオロベンゼン、1,3−ジフルオロベンゼン、1,4−ジフルオロベンゼン、1,2,3−トリフルオロベンゼン、1,2,4−トリフルオロベンゼン、1,3,5−トリフルオロベンゼン、1,2,3,4−テトラフルオロベンゼン、1,2,3,5−テトラフルオロベンゼン、1,2,4,5−テトラフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、2−フルオロトルエン、3−フルオロトルエン、4−フルオロトルエン、2,3−ジフルオロトルエン、2,4−ジフルオロトルエン、2,5−ジフルオロトルエン、2,6−ジフルオロトルエン、3,4−ジフルオロトルエン、ベンゾトリフルオライド、2−フルオロベンゾトリフルオライド、3−フルオロベンゾトリフルオライド、4−フルオロベンゾトリフルオライド、3−フルオロ−o−キシレン、4−フルオロ−o−キシレン、2−フルオロ−m−キシレン、5−フルオロ−m−キシレン、2−メチルベンゾトリフルオライド、3−メチルベンゾトリフルオライド、4−メチルベンゾトリフルオライド、オクタフルオロトルエン等が挙げられる。中でもフルオロベンゼン、1,2−ジフルオロベンゼン、1,3−ジフルオロベンゼン、1,4−ジフルオロベンゼン、2−フルオロトルエン、3−フルオロトルエンが好ましく、特にフルオロベンゼンが好ましい。
また、連続充電後の電池特性の点からは、ペンタフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼンが特に好ましい。
ガス発生抑制の点からはオクタフルオロトルエンが特に好ましい。
なお、これらは2種以上を併用してもよい。
【0014】
フッ素含有芳香族化合物の炭素数が10以上になると、負荷特性が低下してしまうので好ましくない。
炭素数9以下のフッ素含有芳香族化合物は、非水溶媒中に0.01重量%以上10重量%以下となるように含有させるのが好ましい。0.01重量%未満では連続充電時のガス発生を十分抑えるのが困難になる。下限値としては0.1重量%以上、特に0.2重量%以上、0.3重量%以上がさらに好ましく、0.5重量%以上とするのが最も好ましい。また、上限値としては8重量%以下、特に7重量%以下がさらに好ましく、5重量%以下、さらには4.5重量%以下であるのが最も好ましい。
化合物自身の引火点を考えると、大量に添加すると電解液の引火点が低下するので、4重量%以下、3重量%以下が好ましい。特にフルオロベンゼンの場合には、引火点が−13℃と低く、顕著である。
また、ベンゼン環にフッ素が4つ以上結合している1,2,3,4−テトラフルオロベンゼン、1,2,3,5−テトラフルオロベンゼン、1,2,4,5−テトラフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、オクタフルオロトルエン等の場合には、化合物自身が還元されやすいので大量に添加すると高温保存後の大電流放電特性が低下する場合があり、2重量%以下が好ましく、1重量%以下が特に好ましい。
【0015】
非水溶媒の主成分としては、非水系電解液二次電池の溶媒として公知の任意のものを用いることができる。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のジアルキルカーボネート(炭素数1〜4のアルキル基が好ましい);テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル;ジメトキシエタン、ジメトキシメタン等の鎖状エーテル;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状カルボン酸エステル;酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の鎖状カルボン酸エステルなどが挙げられる。これらは2種類以上を併用してもよい。
【0016】
非水溶媒の主成分としては、1種類の化合物を用いるよりも複数の化合物を併用するのが好ましい。例えば、アルキレンカーボネートや環状カルボン酸エステル等の高誘電率溶媒と、ジアルキルカーボネートや鎖状カルボン酸エステル等の低粘度溶媒とを併用するのが好ましい。
非水溶媒として好ましいものの一つは、アルキレンカーボネートとジアルキルカーボネートとを主体とするものである。中でも、炭素数2〜4のアルキレン基を有するアルキレンカーボネートと炭素数1〜4のアルキル基を有するジアルキルカーボネートとを合計で90容量%以上、好ましくは95容量%以上含有しており、かつアルキレンカーボネートとジアルキルカーボネートとの容量比が10:90〜45:55好ましくは20:80〜45:55である混合物に、分子内に炭素−炭素不飽和結合を有する環状炭酸エステルと炭素数9以下のフッ素含有芳香族化合物を含有させた非水溶媒を用いると、サイクル特性と大電流放電特性およびガス発生抑制のバランスがよくなるので好ましい。なお、本明細書において、非水溶媒の容量は25℃での測定値であるが、エチレンカーボネートのように25℃で固体のものは融点での測定値を用いる。
【0017】
炭素数2〜4のアルキレン基を有するアルキレンカーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートおよびブチレンカーボネート等が挙げられる。これらの中で、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートが好ましい。
炭素数1〜4のアルキル基を有するジアルキルカーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネートおよびエチル−n−プロピルカーボネート等が挙げられる。これらの中で、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートまたはエチルメチルカーボネートが好ましい。
アルキレンカーボネートとジアルキルカーボネートの好ましい組み合わせの具体例としては、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート等が挙げられる。
【0018】
これらのエチレンカーボネートとジアルキルカーボネートとの組み合わせに、更にプロピレンカーボネートを加えた組み合わせも、好ましい組み合わせとして挙げられる。
プロピレンカーボネートを含有する場合には、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの容量比は、通常99:1〜40:60、好ましくは95:5〜50:50である。
これらの中で、非対称ジアルキルカーボネートであるエチルメチルカーボネートを含有するものが更に好ましく、特に、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートのエチレンカーボネートと対称ジアルキルカーボネートと非対称ジアルキルカーボネートを含有するものが、サイクル特性と大電流放電特性のバランスが良いので好ましい。
【0019】
好ましい非水溶媒の他の例は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンおよびγ−バレロラクトンよりなる群から選ばれた有機溶媒を60容量%以上含有する混合物を主体とするものである。この混合物に分子内に炭素−炭素不飽和結合を有する環状炭酸エステルと炭素数9以下のフッ素含有芳香族化合物を含有させた非水溶媒を用いると、高温で使用しても溶媒の蒸発や液漏れが少なくなる。中でも、エチレンカーボネートとγ−ブチロラクトンとを合計で90容量%以上、好ましくは95容量%以上含有しており、かつエチレンカーボネートとγ−ブチロラクトンとの容量比が5:95〜45:55である混合物、またはエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとを合計で90容量%以上、好ましくは95容量%以上含有しており、かつエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの容量比が30:70〜60:40である混合物に、分子内に炭素−炭素不飽和結合を有する環状炭酸エステルと炭素数9以下のフッ素含有芳香族化合物を含有させた非水溶媒を用いると、高温保存時でのガス発生が少なくなり、さらにサイクル特性と大電流放電特性等のバランスがよくなるので好ましい。
【0020】
特に非水溶媒が、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンおよびγ−バレロラクトンよりなる群から選ばれた有機溶媒を60容量%以上含有し、かつ炭素数1〜4のアルキル基を有するジアルキルカーボネートを10容量%以下含有する混合物に、分子内に炭素−炭素不飽和結合を有する環状炭酸エステルおよび炭素数9以下のフッ素含有芳香族化合物を含有する非水溶媒を用いると、電極層やセパレーターへの高い浸透性を維持しながら、しかもジアルキルカーボネートに由来するガスの発生が抑制されるので好ましい。
【0021】
非水溶媒として好ましいもののさらに他の例は、含燐有機溶媒を含むものである。含燐有機溶媒としては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸ジメチルエチル、リン酸メチルジエチル、リン酸エチレンメチルおよびリン酸エチレンエチル等が挙げられる。含燐有機化合物を非水溶媒中に10容量%以上となるように含有させると、電解液の燃焼性を低下させることができる。特に、含燐有機化合物の含有率が10〜80容量%で、他の成分が主としてエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンおよびジアルキルカーボネートよりなる群から選ばれた非水溶媒を20〜90容量%含有する混合物に、分子内に炭素−炭素不飽和結合を有する環状炭酸エステルおよび炭素数9以下のフッ素含有芳香族化合物を含有する非水溶媒を用いると、難燃性(自己消火性)を有する共に大電流放電特性がよくなるので好ましい。
【0022】
また、非水溶媒中に過充電防止剤を添加すると、過充電時における電池の安全性が向上するので好ましい。過充電防止剤としては、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化物、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソールおよび2,6−ジフルオロアニオ−ル等の含フッ素アニソール化合物などが挙げられる。これらを非水溶媒中に0.1〜5重量%含有させると、過充電時に電池の破裂・発火を抑制することができる。
【0023】
一般に、過充電防止剤を添加すると電池の保存特性は低下するが、炭素−炭素不飽和結合を有する環状炭酸エステルおよび炭素数9以下のフッ素含有芳香族化合物を含有する非水溶媒を用いると、この保存特性の低下を抑制することができる。過充電防止剤としては、シクロヘキシルベンゼン、2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼンよりなる群から選ばれたものが、高温保存後の電池特性の劣化が少ないので好ましい。
【0024】
さらに、非水溶媒中には、必要に応じて他の有用な化合物、例えば従来公知の添加剤、脱水剤、脱酸剤を含有させてもよい。
添加剤としては、フルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、エリスリタンカーボネートおよびスピロ−ビス−ジメチレンカーボネート等のカーボネート化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物およびフェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブサルファン、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、メチルフェニルスルホン、ジブチルジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィドおよびテトラメチルチウラムモノスルフィド等の含硫黄化合物;1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンおよびN−メチルスクシイミド等の含窒素化合物;ヘプタン、オクタン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物などが挙げられる。これらを非水溶媒中に0.1〜5重量%含有させると、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性が良好となる。
【0025】
非水系電解液の溶質であるリチウム塩としては、任意のものを用いることができる。例えば、LiClO4、LiPF6およびLiBF4等の無機リチウム塩;LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2 、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)、LiC(CF3SO2)3、LiPF4(CF3)2、LiPF4(C2F5)2、LiPF4(CF3SO2)2、LiPF4(C2F5SO2)2、LiBF2(CF3)2、LiBF2(C2F5)2、LiBF2(CF3SO2)2およびLiBF2(C2F5SO2)2等の含フッ素有機リチウム塩などが挙げられる。これらのうち、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2 またはLiN(C2F5SO2)2、特にLiPF6またはLiBF4が好ましい。また、LiPF6またはLiBF4等の無機リチウム塩と、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2 またはLiN(C2F5SO2)2等の含フッ素有機リチウム塩とを併用すると、連続充電時のガス発生が抑制されたり、高温保存した後の劣化が少なくなるので好ましい。特に電解液中のリチウム塩中、LiPF6またはLiBF4が70〜98重量%を占め、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2 またはLiN(C2F5SO2)2から選ばれる含フッ素有機リチウム塩が30〜2重量%占めるものが好ましい。
【0026】
なお、非水溶媒がγ−ブチロラクトンを55容量%以上含むものである場合には、LiBF4がリチウム塩全体の50重量%以上を占めることが好ましい。リチウム塩中、LiBF4が50〜95重量%、LiPF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2およびLiN(C2F5SO2)2よりなる群から選ばれるリチウム塩が5〜50重量%占めるものが特に好ましい。
【0027】
電解液中のリチウム塩濃度は、0.5〜3モル/リットルであるのが好ましい。この範囲以外では、電解液の電気伝導率が低くなり、電池性能が低下することがある。
【0028】
本発明に係る電池を構成する負極の活物質としては、様々な熱分解条件での有機物の熱分解物や人造黒鉛、天然黒鉛等のリチウムを吸蔵・放出可能な炭素質材料;酸化錫、酸化珪素等のリチウムを吸蔵・放出可能な金属酸化物材料;リチウム金属;種々のリチウム合金などを用いることができる。これらの負極活物質の2種類以上を混合して用いてもよい。
【0029】
リチウムを吸蔵・放出可能な炭素質材料としては、種々の原料から得た易黒鉛性ピッチの高温熱処理によって製造された人造黒鉛もしくは精製天然黒鉛、またはこれらの黒鉛にピッチその他の有機物で表面処理を施した後炭化して得られるものが好ましい。黒鉛は、学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)が0.335〜0.338nm、特に0.335〜0.337nmであるものが好ましい。灰分は、通常1重量%以下である。0.5重量%以下、特に0.1重量%以下であるのが好ましい。また、学振法によるX線回折で求めた結晶子サイズ(Lc)は、通常30nm以上である。50nm以上、特に100nm以上であるのが好ましい。
【0030】
レーザー回折・散乱法による炭素質材料粉体のメジアン径は、通常1〜100μmである。3〜50μm、特に5〜40μmが好ましく、最も好ましいのは7〜30μmである。BET法比表面積は、通常0.3〜25.0m2/gである。0.5〜20.0m2/g、特に0.7〜15.0m2/gが好ましく、最も好ましいのは0.8〜10.0m2/gである。また、アルゴンイオンレーザー光を用いたラマンスペクトルで分析したとき、1570〜1620cm−1の範囲のピークPA(ピーク強度IA)および1300〜1400cm−1の範囲のピークPB(ピーク強度IB)の強度比R=IB/IAは0.01〜0.7が好ましく、1570〜1620cm−1の範囲のピークの半値幅は26cm−1以下、特に25cm−1以下であるのが好ましい。
【0031】
特に好ましい黒鉛材料は、X線回折における格子面(002面)のd値が0.335〜0.338nmである炭素質材料を核材とし、その表面に該核材よりもX線回折における格子面(002面)のd値が大きい炭素質材料が付着しており、かつ核材と核材よりもX線回折における格子面(002面)のd値が大きい炭素質材料との割合が重量比で99/1〜80/20であるものである。この黒鉛材料を用いると、高い容量で、かつ電解液と反応しにくい負極を製造することができる。
【0032】
負極の製造は、常法によればよい。例えば、負極活物質に、結着剤、増粘剤、導電材、溶媒等を加えてスラリー状とし、集電体に塗布し、乾燥した後にプレスして高密度化する方法が挙げられる。
負極層の密度は、1.45g/cm3以上が好ましい。1.55g/cm3以上、特に1.60g/cm3以上とすると、電池の容量が増加するのでさらに好ましい。なお、負極層とは集電体上の活物質、結着剤、導電剤などよりなる層をいい、その密度とは電池に組立てる時点での密度をいう。
【0033】
結着剤としては、電極製造時に使用する溶媒や電解液に対して安定な材料であれば、任意のものを使用することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−アクリル酸共重合体およびエチレン−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0034】
増粘剤としては、カルボキシルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコ−ル、酸化スターチ、リン酸化スターチおよびガゼイン等が挙げられる。
導電材としては、銅またはニッケル等の金属材料;グラファイトまたはカーボンブラック等の炭素材料などが挙げられる。
負極用集電体の材質としては、銅、ニッケルまたはステンレス等が挙げられる。これらのうち、薄膜に加工しやすいという点およびコストの点から銅箔が好ましい。
【0035】
電池を構成する正極活物質としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物およびリチウムマンガン酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物材料などのリチウムを吸蔵および放出可能な材料が挙げられる。リチウム遷移金属複合酸化物は、コバルト、ニッケル、またはマンガンの一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr等の他の金属で置き換えることにより、その構造が安定化させることができるので好ましい。
【0036】
正極は、負極に準じて製造することができる。例えば、正極活物質に必要に応じて結着剤、導電材、溶媒等を加えて混合後、集電体に塗布、乾燥した後にプレスにより高密度化して正極とする方法が挙げられる。正極層の密度は3.0g/cm3以上に設定した場合が、電池とした場合の容量が増加するので好ましい。
正極用集電体の材質としては、アルミニウム、チタンもしくはタンタル等の金属またはその合金が挙げられる。これらのうち、アルミニウムまたはその合金が、好ましい。
【0037】
本発明に係る電池に使用するセパレーターの材質や形状は、電解液に安定であり、かつ保液性に優れていれば任意である。ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シ−トまたは不織布等が好ましい。
電池の形状は任意であり、例えば、円筒型、角型、ラミネート型、コイン型、大型等の形状が挙げられる。なお、正極、負極、セパレーターの形状および構成は、それぞれの電池の形状に応じて変更して使用することができる。
本発明に係るリチウム二次電池は、前述のように連続充電状態におけるガス発生が少ないので、過充電等の異常時に電池内圧の上昇により作動する電流遮断装置を備えた電池の連続充電状態での電流遮断装置の異常作動を防止することができる。また、外装体の厚みが通常0.5mm以下、中でも0.4mm以下で、材質が金属アルミニウムまたはアルミニウム合金を主体とした電池や、体積容量密度が110mAh/cc以上、更には130mAh/cc以上、特に140mAh/cc以上の電池は、電池内圧の上昇による電池の膨張という問題が生じやすいが、本発明に係る二次電池ではガス発生量が少ないので、このような問題が生ずるのを防止することができる。
【0038】
【実施例】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
X線回折における格子面(002面)のd値が0.336nm、結晶子サイズ(Lc)が、652nm、灰分が0.07重量%、レーザー回折・散乱法によるメジアン径が12μm、BET法比表面積が7.5m2/g、アルゴンイオンレーザー光を用いたラマンスペクトル分析において1570〜1620cm−1の範囲のピークPA(ピーク強度IA)および1300〜1400cm−1の範囲のピークPB(ピーク強度IB)の強度比R=IB/IAが0.12、1570〜1620cm−1の範囲のピークの半値幅が19.9cm−1である天然黒鉛粉末を負極活物質として用いた。この黒鉛粉末94重量部にポリフッ化ビニリデン6重量部を混合し、N−メチル−2−ピロリドンで分散させてスラリー状とした。これを負極集電体である厚さ18μmの銅箔の片面に均一に塗布し、乾燥後、プレス機により負極層の密度が1.5g/cm3になるようにプレスして負極とした。
【0039】
正極活物質としてはLiCoO2を用いた。このもの85重量部にカーボンブラック6重量部およびポリフッ化ビニリデンKF−1000(呉羽化学社製、商品名)9重量部を加え混合し、N−メチル−2−ピロリドンで分散し、スラリー状としたものを、正極集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布し、乾燥後、プレス機により正極層の密度が3.0g/cm3になるようにプレスして正極とした。
【0040】
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:7)95重量部に、ビニレンカーボネート2重量部とフルオロベンゼン3重量部とを添加し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。
上記の正極、負極、およびポリエチレン製のセパレーターを、負極、セパレーター、正極、セパレーター、負極の順に積層して電池要素を作製し、この電池要素を袋状のアルミニウムの両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルム内に正極負極の端子を取り出しながら設置後、電解液を注液して真空封止を行い、シート状電池を作製した。
【0041】
(比較例1)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:7)に十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。この電解液を用いた以外は、実施例1と同様にしてシート状電池を作製した。
【0042】
(比較例2)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:7)98重量部に、ビニレンカーボネート2重量部を添加し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。この電解液を用いた以外は、実施例1と同様にしてシート状電池を作製した。
【0043】
(比較例3)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:7)93重量部に、ビニレンカーボネート2重量部とリン酸トリメチル5重量部とを添加し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。この電解液を用いた以外は、実施例1と同様にしてシート状電池を作製した。
【0044】
(実施例2)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:7)95重量部に、ビニレンカーボネート2重量部とフルオロベンゼン3重量部とを添加し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットル、LiN(CF3SO2)2を0.1モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。この電解液を用いた以外は、実施例1と同様にしてシート状電池を作製した。
【0045】
(実施例3)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:7)94重量部に、ビニレンカーボネート2重量部、フルオロベンゼン3重量部およびシクロヘキシルベンゼン1重量部を添加し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。この電解液を用いた以外は、実施例1と同様にしてシート状電池を作製した。
【0046】
(比較例4)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:7)97重量部に、ビニレンカーボネート2重量部とシクロヘキシルベンゼン1重量部とを添加し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。この電解液を用いた以外は、実施例1と同様にしてシート状電池を作製した。
【0047】
(実施例4)
実施例1において、プレス機により負極層の密度を1.5g/cm3にプレスしたものを直径12.5mmの円盤状に打ち抜いて負極とした。正極としては、実施例1で調製した正極活物質含有スラリーを正極集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に均一に塗布、乾燥後、プレス機により正極層の密度が3.0g/cm3になるようにプレスし、直径12.5mmの円盤状に打ち抜いたものを用いた。
【0048】
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネートとγ−ブチロラクトンとの混合物(容量比3:7)91重量部に、ビニレンカーボネート1重量部、ビニルエチレンカーボネート1重量部およびフルオロベンゼン7重量部を添加し、次いで十分に乾燥したLiBF4を1.5モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。
【0049】
正極導電体を兼ねるステンレス鋼製の缶体に電解液を含浸させた正極を収容し、その上に電解液を含浸させたポリエチレン製のセパレーターを介して電解液を含浸させた負極を載置した。この缶体と負極導電体を兼ねる封口板とを、絶縁用のガスケットを介してかしめて密封することにより、コイン型電池を作製した。ここで電池部材への電解液の含浸は各部材を電解液に2分間浸漬することより行った。
【0050】
(比較例5)
エチレンカーボネートとγ−ブチロラクトンとの混合物(容量比3:7)98重量部に、ビニレンカーボネート1重量部とビニルエチレンカーボネート1重量部とを添加し、次いでLiBF4を1.5モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。この電解液を用いた以外は、実施例4と同様にしてコイン型電池を作製した。
【0051】
(比較例6)
エチレンカーボネートとγ−ブチロラクトンとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:5:2)98重量部に、ビニレンカーボネート1重量部とビニルエチレンカーボネート1重量部とを添加し、次いでLiBF4を1.5モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。この電解液を用いた以外は、実施例4と同様にしてコイン型電池を作製した。
【0052】
(実施例5)
エチレンカーボネートとγ−ブチロラクトンとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:6:1)96重量部に、ビニレンカーボネート1重量部、ビニルエチレンカーボネート1重量部およびフルオロベンゼン2重量部を添加し、次いでLiBF4を1.5モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。この電解液を用いた以外は、実施例4と同様にしてコイン型電池を作製した。
【0053】
(実施例6)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:7)96重量部に、ビニレンカーボネート2重量部、フルオロベンゼン2重量部を添加し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。この電解液を用いた以外は、実施例1と同様にしてシート状電池を作製した。
【0054】
(比較例7)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:7)98重量部に、ビニレンカーボネート2重量部を添加し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。この電解液を用いた以外は、実施例1と同様にしてシート状電池を作製した。
【0055】
(実施例7)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:7)96重量部に、ビニレンカーボネート2重量部、1,2−ジフルオロベンゼン2重量部を添加し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。この電解液を用いた以外は、実施例1と同様にしてシート状電池を作製した。
【0056】
(実施例8)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:7)96重量部に、ビニレンカーボネート2重量部、1,2,3,5−テトラフルオロベンゼン2重量部を添加し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。この電解液を用いた以外は、実施例1と同様にしてシート状電池を作製した。
【0057】
(実施例9)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:7)96重量部に、ビニレンカーボネート2重量部、ペンタフルオロベンゼン2重量部を添加し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。この電解液を用いた以外は、実施例1と同様にしてシート状電池を作製した。
【0058】
(実施例10)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:7)96重量部に、ビニレンカーボネート2重量部、ヘキサフルオロベンゼン2重量部を添加し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。この電解液を用いた以外は、実施例1と同様にしてシート状電池を作製した。
【0059】
(実施例11)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:7)96重量部に、ビニレンカーボネート2重量部、オクタフルオロトルエン2重量部を添加し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。この電解液を用いた以外は、実施例1と同様にしてシート状電池を作製した。
【0060】
(実施例12)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:7)97重量部に、ビニレンカーボネート2重量部、ヘキサフルオロベンゼン1重量部を添加し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。この電解液を用いた以外は、実施例1と同様にしてシート状電池を作製した。
【0061】
(実施例13)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:7)97.5重量部に、ビニレンカーボネート2重量部、ヘキサフルオロベンゼン0.5重量部を添加し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。この電解液を用いた以外は、実施例1と同様にしてシート状電池を作製した。
【0062】
(実施例14)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物(容量比3:7)97.8重量部に、ビニレンカーボネート2重量部、ヘキサフルオロベンゼン0.2重量部を添加し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。この電解液を用いた以外は、実施例1と同様にしてシート状電池を作製した。
【0063】
(実施例15)
リン酸トリメチルとγ−ブチロラクトンとの混合物(容量比2:8)93重量部に、ビニレンカーボネート2重量部、ビニルエチレンカーボネート3重量部およびフルオロベンゼン2重量部を添加し、次いで十分に乾燥したLiBF4を1.2モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。この電解液を用いた以外は、実施例4と同様にしてコイン型電池を作製した。
【0064】
(比較例8)
リン酸トリメチルとγ−ブチロラクトンとの混合物(容量比2:8)95重量部に、ビニレンカーボネート2重量部、ビニルエチレンカーボネート3重量部を添加し、次いで十分に乾燥したLiBF4を1.2モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。この電解液を用いた以外は、実施例4と同様にしてコイン型電池を作製した。
【0065】
[電池の評価]
実施例1〜3および比較例1〜4の電池を、電極間の密着性を高めるためにガラス板で挟んだ状態で、25℃において0.2Cに相当する定電流で充電終止電圧4.2V、放電終止電圧3Vで充放電を3サイクル行って安定させ、4サイクル目を0.5Cに相当する電流で充電終止電圧4.2Vまで充電し、充電電流値が0.05Cに相当する電流値になるまで充電を行う4.2V−定電流定電圧充電(CCCV充電)(0.05Cカット)後、0.2Cに相当する定電流値で3V放電を行った。さらに、60℃、4.2V−CCCVの連続充電を2週間実施した。
【0066】
60℃、4.2V−CCCVの連続充電試験の前後で、シート状電池をエタノール浴中に浸して、体積の変化から発生したガス量を求めた。
また、実施例1、2と比較例1〜3の電池については、体積の測定後、25℃において0.2Cの定電流で放電終止電圧3Vまで放電させて連続充電試験後の残存容量を測定した。
【0067】
次いで、4.2V−CCCV(0.05Cカット)充電、0.2Cの定電流で放電終止電圧3Vで放電後、同様のCCCV条件で充電し、1.5Cに相当する電流値で3Vまで放電させ高負荷放電特性を測定した。ここで、1Cとは1時間で満充電できる電流値を表し、1.5Cとはその1.5倍の電流値を表す。
発生ガス量、連続充電前の放電容量を100とした場合の連続充電後の残存容量、および高負荷放電時の容量を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1から明らかなように、本発明に係る電池は、連続充電した場合にもガスの発生量が少なく、連続充電後の残存容量、高負荷放電特性に優れていることがわかる。また、比較例3の連続充電時の電池特性を向上させる効果を有するリン酸エステルを含有する電池(特開平11−233140号公報参照)では、ガス発生は少ないものの、本発明に係る電池と比較すると高負荷放電容量が劣ることがわかる。さらに、実施例3および比較例4の電池の比較から、本発明に係る電池は、過充電防止剤を添加した場合でもガス発生が少ないことがわかる。
【0070】
実施例4、5および比較例5、6の電池について、25℃において、0.5mAの定電流で充電終止電圧4.2V、放電終止電圧3Vで充放電を3サイクル行って安定させ、0.7Cに相当する電流で充電終止電圧4.2Vまで充電し、充電電流値が0.05Cに相当する電流値になるまで充電を行う4.2V−CCCV(0.05Cカット)充電後、1Cに相当する電流値で放電終止電圧3Vまで放電を行うサイクル試験を実施した。サイクル試験の4サイクル目の放電容量を100とした場合の50サイクル目の容量を表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
本発明に係る実施例4、5の電池は、優れたサイクル特性を示すことがわかる。なお、比較例5の電池は、充電することができなかった。これは、セパレーターの内部まで電解液が含浸されなかったためと考えられる。
また、50サイクル後の電池内部のガス量(メタン、エタン、エチレン、CO、CO2の発生量の合計)をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、比較例6の電池のガス量を100とした場合、実施例4の電池のガス量は77であった。
【0073】
実施例6〜14および比較例7の電池を、電極間の密着性を高めるためにガラス板で挟んだ状態で、25℃において0.2Cに相当する定電流で充電終止電圧4.2V、放電終止電圧3Vで充放電を3サイクル行って安定させ、4サイクル目を0.5Cに相当する電流で充電終止電圧4.2Vまで充電し、充電電流値が0.05Cに相当する電流値になるまで充電を行う4.2V−定電流定電圧充電(CCCV充電)(0.05Cカット)後、0.2Cに相当する定電流値で3V放電を行った。さらに、60℃、4.25V−CCCVの連続充電を1週間実施した。
【0074】
60℃、4.25V−CCCVの連続充電試験の前後で、シート状電池をエタノール浴中に浸して、体積の変化から発生したガス量を求めた。
次いで25℃において0.2Cの定電流で放電終止電圧3Vまで放電させて連続充電試験後の残存容量を測定後、4.2V−CCCV(0.05Cカット)充電、0.2Cの定電流で放電終止電圧3Vで放電後、同様のCCCV条件で充電し、1Cに相当する電流値で3Vまで放電させ高負荷放電特性を測定した。
発生ガス量、連続充電前の放電容量を100とした場合の高負荷放電時の容量を表3に示す。
【0075】
【表3】
【0076】
実施例15および比較例8の電解液について難燃性(自己消火性)の試験を行った。試験は幅15mm、長さ300mm、厚さ0.19mmの短冊状のガラス繊維濾紙を、電解液の入ったビーカーに10分間以上浸して、非水系電解液をガラス繊維濾紙に十分に含浸させた。次に、ガラス繊維濾紙の一端をクリップで挟み垂直に吊した。この下端より、ライター類の小ガス炎で約3秒間加熱し、火源を取り除いた状態での自己消火性の有無、及び消火するまでの時間を測定した。また、電池について、25℃において、0.2Cに相当する定電流で充電終止電圧4.2V、放電終止電圧3Vで充放電を3サイクル行って安定させ、4サイクル目を0.5Cに相当する電流で充電終止電圧4.2Vまで充電し、3.5時間経過した時点で終了となる4.2V−定電流定電圧充電を行った。次いで0.2Cの定電流で放電終止電圧3Vで放電後、同様の定電流定電圧充電条件で充電し、1.5Cに相当する電流値で3Vまで放電させ高負荷放電特性を測定した。自己消火性と0.2Cでの放電容量を100とした時の高負荷放電時の容量を表4に示す。
【0077】
【表4】
【0078】
表4から明らかなように、本発明に係わる実施例15の電解液は比較例8と同様、優れた難燃性を示すことがわかる。さらに実施例15および比較例8の電池の比較から、本発明に係わる電池は優れた高負荷放電特性を示すことがわかる。
【0079】
【発明の効果】
リチウムを吸蔵・放出することが可能な負極および正極と、非水溶媒およびリチウム塩からなる電解液とを含む非水系電解液二次電池において、分子内に炭素−炭素不飽和結合を有する環状炭酸エステルを含有し、さらに炭素数9以下のフッ素含有芳香族化合物を含有する非水溶媒を用いることで、高容量で、保存特性、負荷特性およびサイクル特性に優れ、また、ガス発生量の少ない電池を作製することができ、非水系電解液二次電池の小型化、高性能化を達成することができる。
Claims (9)
- リチウムを吸蔵・放出することが可能な負極および正極、ならびに非水溶媒およびリチウム塩からなる電解液を有する非水系電解液二次電池において、非水溶媒が分子内に炭素−炭素不飽和結合を有する環状炭酸エステルおよび炭素数9以下のフッ素含有芳香族化合物を含有するものであることを特徴とする非水系電解液二次電池。
- 非水溶媒が、分子内に炭素−炭素不飽和結合を有する環状炭酸エステルを0.01〜8重量%含有するものであることを特徴とする請求項1記載の非水系電解液二次電池。
- 非水溶媒が、炭素数9以下のフッ素含有芳香族化合物を0.01〜10重量%含有するものであることを特徴とする請求項1または2記載の非水系電解液二次電池。
- 非水溶媒が、炭素数2〜4のアルキレン基を有するアルキレンカーボネートと炭素数1〜4のアルキル基を有するジアルキルカーボネートとの容量比が10:90〜45:55である混合物に、分子内に炭素−炭素不飽和結合を有する環状炭酸エステルおよび炭素数9以下のフッ素含有芳香族化合物を含有させたものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の非水系電解液二次電池。
- 非水溶媒が、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンおよびγ−バレロラクトンよりなる群から選ばれた有機溶媒を60容量%以上含有する混合物に、分子内に炭素−炭素不飽和結合を有する環状炭酸エステルおよび炭素数9以下のフッ素含有芳香族化合物を含有させたものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の非水系電解液二次電池。
- 非水溶媒が、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンおよびγ−バレロラクトンよりなる群から選ばれた有機溶媒を60容量%以上含有し、かつ炭素数1〜3のアルキル基を有するジアルキルカーボネートを10容量%以下含有する混合物に、分子内に炭素−炭素不飽和結合を有する環状炭酸エステルおよび炭素数9以下のフッ素含有芳香族化合物を含有させたものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の非水系電解液二次電池。
- 非水溶媒が、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸ジメチルエチル、リン酸メチルジエチルよりなる群から選ばれた有機溶媒を10〜80容量%含有し、かつエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンおよびγ−バレロラクトンよりなる群から選ばれた有機溶媒を20〜90容量%含有する混合物に、分子内に炭素−炭素不飽和結合を有する環状炭酸エステルおよび炭素数9以下のフッ素含有芳香族化合物を含有させたものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の非水系電解液二次電池。
- 負極層の密度が、1.45g/cm3以上のものであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の非水系電解液二次電池。
- 請求項1ないし8のいずれかに記載の非水系電解液二次電池に用いる非水系電解液。
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