JP2003505472A - Il−18阻害剤の用途 - Google Patents

Il−18阻害剤の用途

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Abstract

(57)【要約】 腫瘍転移におけるIL−18阻害剤の用途を開示する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 [本発明の分野] 本発明は、腫瘍転移(tumor metastasis)および腫瘍転移の阻害に関する。さ
らに詳細には、本発明は、インターロイキン−18(IL−18)の産生および
/または作用を阻害することによる、腫瘍転移の予防に関する。
【0002】 [本発明の背景] 循環する癌細胞の毛細血管内皮に対する接着は、転移発生における臨界段階で
ある(1、2)。免疫グロブリンスーパーファミリーの1種である血管細胞接着
分子−1(VCAM−1)は、造血細胞および活性化された白血球の、炎症前サ
イトカイン活性化内皮細胞(proinflammatory cytokine-activated endothelial
cells)に対する接着を仲介する。しかしながら、VCAM−1の接着機能は、
実験的な転移の広がりを増大するために、動物および人間の癌細胞により使用さ
れ得る(6)。
【0003】 たとえば、IL−1βおよびTNF−αは、内皮細胞によるVCAM−1のア
ップレギュレーションに関連する機構によって、肺組織におけるVLA−4発現
メラノーマ細胞の転移を増大することが知られている(7〜9)。また、IL−
1およびTNF−αは、正常マウスおよびリポ多糖処理マウス双方において、B
16M細胞の肝転移増殖(hepatic colonization)に著しく寄与することも明ら
かにされてきた(7、8、10〜20)。さらに、マンノース受容体介在性肝洞
様毛細血管内皮(HSE)細胞活性化は、自己分泌IL−1β介在性HSE細胞
のVCAM−1の発現に関連し、B16M細胞の接着および転移の増強を導く(
21)。また、IL−1βで活性化されるHSE細胞はVLA−4刺激因子を放
出し、VLA−4刺激因子はB16M細胞のHSE細胞に対する接着を増大させ
ることも知られている(11)。したがって、IL−1βは、HSE細胞由来の
VCAM−1発現およびVLA−4刺激因子の放出を誘導し、洞様毛細血管内に
拘束されたVLA−4発現癌細胞に対する転移前の微小環境(microenvironment
)をつくる能力をHSE細胞に与えるのかもしれない。
【0004】 しかしながら、IL−1βおよびTNF−αの遮断は部分的な転移の途絶を導
くにすぎず、それらの欠如を補うほかの因子または代替経路を介して作用するほ
かの因子のいずれかもまた関連していることを示している。さらに、転移する癌
細胞およびその標的組織の多くは、これら炎症前サイトカインを産生することが
できない。そのうえ、エンドトキシンまたはマンノース受容体リガンドの濃度は
、通常、炎症前サイトカイン放出を誘導するほど充分に増加しない。したがって
、VCAM−1アップレギュレーションを誘導し、そして癌細胞の毛細血管通中
のVCAM−1の関与を誘導する多数のメディエーターは、充分に調べられてい
ない。
【0005】 IL−18(IFNγ誘導因子)は、タンパク質のIL−1ファミリーと構造
的特徴を共有し(22)、かつIL−12と機能的特性を共有する(23)新規
サイトカインである。クッパー細胞由来のIL−18産生は、エンドトキシン誘
導性肝障害において、TNF−αおよびFASリガンドが介在する肝毒性経路双
方を活性化することが報告されている(24)。より最近になって、IL−18
はまた、CD3+/CD4+およびナチュラルキラー細胞由来のTNF−αの遺伝
子発現と合成の直接的刺激ならびに引き続き起こるCD14+群由来のIL−1
βおよびIL−8の産生による、炎症前特性を有することが明らかにされ、それ
により、サイトカインの階層(hierarchy)におけるIL−18の予期せぬ重要
な位置が明らかになった(25)。しかしながら、癌転移におけるIL−18の
可能性のある役割は、今のところ解明されていない。
【0006】 インターロイキン18結合タンパク質(IL−18BP)は、IL−18ビー
ズでのクロマトグラフィーにより尿から精製され、配列決定され、クローン化さ
れ、COS7細胞にて発現された。IL−18BPはインビトロにおいて、IL
−18のインターフェロン−γ(IFN−γ)、IL−8、およびNF−κBの
活性化の誘導を途絶した。マウスへのIL−18BPの投与は、LPSに続くI
FN−γの循環を途絶した。したがって、IL−18BPは早期Th1サイトカ
イン反応の阻害剤として機能する。IL−18BPは脾臓にて構成的に発現され
、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、そしてIL−1II型受容体に限
定的な相同性を有する。IL−18BP遺伝子はヒト染色体11q13に位置し
ており、8.3kbのゲノム配列には膜貫通ドメインをコードするエキソンはみ
られなかった。数種のポックスウイスルは、IL−18BPに高い相同性を有す
る推定タンパク質をコードしており、ウイルスの産物がIL−18の作用を減じ
て細胞毒性T細胞反応を妨げ得ることを示唆する(28および国際公開第99/
09063号パンフレット)。国際公開第99/09063号パンフレットに詳
細に記載されているように、IL−18BPおよびその突然変異タンパク質、融
合タンパク質、機能的誘導体、活性断片もしくは環状変更誘導体(circularly p
ermutated derivatives)ならびにそれらの混合物は、IL−18に結合するこ
とができ、および/またはIL−18の活性を調節することができ、および/ま
たはIL−18の活性を遮ることができる。
【0007】 [本発明の要旨] 本発明は、腫瘍転移を阻害するための医薬の製造における、IL−18の産生
および/または作用の阻害剤の用途を提供する。
【0008】 IL−18産生の阻害剤は、たとえばカスパーゼ−1の阻害剤である。
【0009】 IL−18作用の阻害剤は、IL−18に対する抗体、IL−18受容体サブ
ユニットのいずれかに対する抗体、IL−18受容体シグナル伝達経路の阻害剤
、IL−18と競合しIL−18受容体を遮るIL−18のアンタゴニスト、お
よびIL−18BP、IL−18に結合するその突然変異タンパク質、融合タン
パク質、機能的誘導体、活性断片もしくは環状変更誘導体から選択される。
【0010】 好ましくは、使用される阻害剤はIL−18BP、またはIL−18BPと同
じ活性を有するその突然変異タンパク質、融合タンパク質、機能的誘導体、活性
断片もしくは環状変更誘導体である。
【0011】 腫瘍転移を阻害するための、IL−18の産生および/または作用の阻害のた
めの医薬組成物もまた、本発明により提供される。
【0012】 腫瘍転移を阻害するために、IL−18の産生および/または作用を阻害する
ほかの方法は、IL−18BPなどのIL−18の産生および/または作用の阻
害剤のコード配列を含む発現ベクターの体内への導入である。
【0013】 [本発明の詳細な説明] インターロイキン(IL)−1βおよび腫瘍壊死因子−α(TNF−α)を含
むいくつかの炎症前サイトカインは、内皮細胞に対する癌細胞の接着を促進し、
それにより腫瘍の転移拡大を導く。それらの炎症前サイトカインは、おそらく血
管細胞接着分子−1(VCAM−1)を誘導することにより、接着および転移を
促進する。本発明は、B16メラノーマ(B16M)細胞培養物から調整した培
地(CM)(B16M−CM)を用いる初代培養マウスHSE細胞の処理は、イ
ンビトロにて、B16M細胞とHSE細胞との間の接着を促進することを示す。
B16M−CMはまた、インビトロにおいて、HSE細胞によるIL−1βおよ
びTNF−α産生を誘導する。しかしながら、腫瘍転移が実際にIL−1βおよ
びTNF−αにより仲介されていることは、明確に立証されていない。
【0014】 本発明は、B16M−CMはHSE細胞によるIL−18の産生を誘導するこ
と、およびIL−18はB16M細胞のHSE細胞に対する接着の増大に寄与す
るサイトカインであることを示す。IL−18は、TNF−αまたはIL−1β
に関係なくHSE細胞におけるVCAM−1発現を活性化することにより、接着
を増強する。HSE細胞と特異的カスパーゼ−1阻害剤とのインキュベーション
(10μM、18時間)は、TNF−α産生を減少させることなくB16M−C
M誘導性接着を完全に途絶し、その効果はマウスIL−1βの添加により復帰し
ない。HSE細胞への抗マウスIL−18抗体の添加は、B16M−CMのIL
−1βおよびTNF−α誘導を妨げることなく、B16M−CM誘導性接着を予
防する。同様に、最近クローン化されたIL−18結合タンパク質(IL−18
BP)もまた、インビトロにおいて、B16M細胞のHSE細胞に対するB16
M−CM誘導性接着を予防する。p55可溶性TNF受容体またはIL−1受容
体アンタゴニストなどのTNF−αおよびIL−1βの阻害剤は、IL−18誘
導性接着を無効にすることはできなかった。したがって、本発明は、腫瘍転移を
阻害する手段として、IL−18産生および作用の阻害剤を提供する。IL−1
8産生の阻害剤はカスパーゼ−1の阻害剤を含む。IL−18作用の阻害剤は、
IL−18に対して誘導された抗体、2つの既知のIL−18受容体サブユニッ
トのいずれかに対して誘導された抗体、IL−18受容体シグナル伝達経路の阻
害剤、IL−18と競合しIL−18受容体を遮るIL−18のアンタゴニスト
、およびIL−18と結合しIL−18の生物学的活性を遮るIL−18結合タ
ンパク質からなる群より選択される。
【0015】 本発明は、VCAM−1発現の炎症前サイトカイン介在性アップレギュレーシ
ョンにおけるIL−18の可能性のある役割、ほかのサイトカインとの可能性の
ある相互作用、およびこのVCAM−1誘導を予防する手段に関する。本発明に
より、肝洞様毛細血管壁におけるVCAM−1のアップレギュレーションを導き
、したがって、癌細胞の接着および転移を容易にする炎症前の事象の開始時に、
IL−18が作用することが見出された。B16M−CMで処理された初代培養
マウスHSE細胞は、VCAM−1依存性の機構によるHSEに対するB16M
細胞接着の機構に関して、B16M細胞誘導性IL−18の役割を調べるために
、癌細胞依存性内皮細胞活性化モデルとして使用された。IL−18の特定の役
割は、IL−1Ra、不可逆性IL−1変換酵素阻害剤(ICEi)を使用する
成熟IL−1βおよびIL−18の分泌阻害、p55TNF可溶性受容体(TN
F−sR p55)を用いるTNF遮断、ならびに抗IL−18抗体およびIL
−18結合タンパク質を用いるIL−18機能遮断による、特異的なIL−1受
容体遮断の条件のもとで調べられた。さらに、B16M細胞は、ICE-/-およ
びIL−1β-/-マウスに脾臓内注射された。正常コントロールと比較した際に
欠損マウスで観察された低い転移密度は、炎症の転移前役割(the prometastati
c role of inflammation)におけるIL−1βおよびおそらくはIL−18の関
与を示唆する(表1)。
【0016】 実施されたインビトロ実験は、IL−18産生が、B16M細胞由来の上清に
より誘導されるHSE接着刺激効果の原因であることを示す。VCAM−1アッ
プレギュレーションがB16M−CMで処理したHSEのすべての接着刺激活性
の原因であるので、データは、IL−18がサイトカイン誘導性HSEからのV
CAM−1の発現を仲介することを示す。さらに、IL−18に対する抗体は、
HSE細胞からのTNF−αおよびIL−1βの産生に影響することなく、B1
6M−CM阻害性細胞接着を減少させる。したがって、HSE細胞におけるIL
−1βおよびTNF−αの産生は、IL−18非依存性であって、接着に寄与し
なかった。逆に、TNF−sR p55およびIL−1Raのいずれも、IL−
18で処理したHSE細胞の接着増大を阻害することができず、自己分泌TNF
−αおよびIL−1βのいずれも、IL−18誘導性HSE接着の原因でないこ
とを立証した。
【0017】 HSE細胞における結果は、たとえば非CD14+ヒト血液単核細胞(25)
など、IL−18がTNF−α産生を介してIL−1βを誘導したほかの細胞系
で得られる結果と、対照的である。HSE特異的な炎症前サイトカインの階層は
、TNF−αおよびIL−1βはIL−18の制御に非依存的であるがVCAM
−1アップレギュレーションの下流メディエーターとしてIL−18を用いてい
るようなところに、存在するようである。
【0018】 マウスHSE細胞と異なり、RT−PCRにより調査したかぎりでは、B16
M細胞はIL−18遺伝子を発現しておらず、また、ICEiとの18時間のイ
ンキュベーションは、HSE細胞に対するB16M−CMのサイトカイン刺激活
性および接着刺激活性を途絶しなかった。しかしながら、肝臓の微小血管系にお
けるB16M細胞の通過または拘束のあいだに、IL−18の局部的な産生は、
B16M細胞の作用に影響するかもしれない。さらなる研究結果は、B16M細
胞を1ng/mlのマウスIL−18とともに6時間インキュベーションするこ
とにより、未処理HSEに対するB16M細胞の接着を2倍増加させたというこ
と、およびHSEに抗VCAM−1抗体を添加するとIL−18介在性接着を8
0%減少させたということであって、VCAM−1/VLA−4相互作用が関連
することを示唆した。同様に、B16M−CM処理HSE由来の上清を6時間与
えているB16M細胞もまた、VCAM−1依存性機構によるHSE対するB1
6Mの接着を2倍著しく(P<0.01)増加させ、抗IL−18抗体はその接
着刺激効果を撤廃した。
【0019】 本発明による研究結果は、IL−18が、炎症前サイトカインの肝性放出と転
移進行との間の新しい連絡経路であることを示唆する。腫瘍活性化HSE細胞か
らのIL−18産生は、HSE細胞に対するメラノーマ細胞接着の制御に関連す
る2つの相補的な機構を決定する。2つの相補的な機構は、TNF−α/IL−
1β介在性VCAM−1アップレギュレーションを調整するHSEの自己分泌機
構、およびメラノーマ細胞のVLA−4をアップレギュレーションし、VCAM
−1依存性接着能を促進するB16M細胞のパラ分泌機構である。この同時に生
じる双方の細胞接着対応物の分子アップレギュレーションは、癌−毛細血管内皮
細胞相互作用経路を非常に重要とする。
【0020】 B16M細胞のIL−18誘導性接着は、IL−18産生および/または作用
の阻害剤により途絶される。IL−18産生の阻害剤は、カスパーゼ−1の阻害
剤を含む。IL−18作用の阻害剤は、IL−18に対して誘導された抗体、2
つの既知IL−18受容体サブユニットのいずれかに対して誘導された抗体、I
L−18受容体シグナル伝達経路の阻害剤、IL−18と競合しIL−18受容
体を遮るIL−18のアンタゴニスト、およびIL−18に結合してその生物活
性を遮るIL−18結合タンパク質から選択される。
【0021】 IL−18産生および/または作用の阻害剤の直接的な用途に加えて、本発明
はまた、IL−18産生および/または作用の阻害効果が望まれる細胞への導入
も意図する。この目的のために、たとえばIL−18BPをコードするDNAの
、細胞への特定の導入のための系が必要である。これを行うためのいくつかの実
行可能な手段は、本分野において知られている。たとえば、前記DNAを運搬す
る適当なベクターであって、DNAが細胞内で発現するような手段で細胞へのD
NAの挿入を達成することができるベクターを、細胞に導入し得る。細胞への送
達方法は、ほかのもの、たとえば米国特許第5,910,487号、国際公開第
99/29349号パンフレットおよびそのほかのものに、記載されている。
【0022】 本発明によると、IL−18産生および/または作用の阻害のための医薬組成
物は、カスパーゼ−1阻害剤、IL−18に対する抗体、IL−18受容体サブ
ユニットのいずれかに対する抗体、IL−18受容体シグナル伝達経路の阻害剤
、IL−18と競合しIL−18受容体を遮るアンタゴニストならびにIL−1
8BPまたは同じ活性を有するその突然変異タンパク質、融合タンパク質、機能
的誘導体、活性断片もしくは環状変更誘導体から選択される阻害剤を、活性成分
として含有するものである。
【0023】 突然変異タンパク質、融合タンパク質、機能的誘導体、活性断片および環状変
更誘導体という用語は、国際公開第99/09063号パンフレットの場合と同
じ意味を有する。
【0024】 IL−18に対する抗体およびIL−18BP類は、医薬組成物の好ましい活
性成分である。
【0025】 医薬組成物はまた、適用方法すなわち注射、経口または本分野において知られ
るほかの方法に依存する従来の担体、賦形剤および本分野において知られるその
ほかの成分を含有してもよい。
【0026】 特定の投薬量は、適用の様式、患者の体重およびほかの要因に依存するであろ
うし、いずれの病状においても、医師により決定されるであろう。
【0027】 本発明を開示しているが、同様なことが、実例として提供されたものであって
本発明の限定を意図するものでない以下の実施例を参照することにより、より容
易に理解されるであろう。
【0028】 実施例 試薬 ラットの抗マウスIgGおよびラットの抗マウスVCAM−1モノクローナル
抗体は、セロテック社(Serotec Ltd.)(オックスフォード、イギリス)から入
手した。組換え体マウスIL−1βはR&Dシステム社(R&D System Inc.)(
ミニアポリス、MN)から入手した。組換え体ヒトIL−1受容体アンタゴニス
ト(IL−1Raは、アップジョン社(Upjohn Co.)、カラマズー(Kalamazoo
)、MIからの寛大な寄贈品である)およびヒトp55TNF可溶性受容体(T
NFsR p55)はセロノ社(Serono Inc)、ノーウェル(Norwel)、MAか
らの寛大な寄贈品であった。IL−1β変換酵素阻害剤(ICEi)は、アレク
シス社(Alexis Co.)(サンディエゴ、CA)から入手した。組換え体マウスI
L−18およびウサギの抗マウスIL−18ポリクローナル抗体IgGはペプロ
テックEC社(PeproTechEC Ltd.)(ロンドン、UK)から購入した。IL−1
8結合タンパク質(IL−18BP)は記載されているように産生した(28)
【0029】 B16M細胞の培養。B16M細胞は、以前に記載されたように(11)、培
養し、維持しそして継代した。B16M調整培地(B16M−CM)を以下のよ
うに製造した。5×105細胞を25cm2のTフラスコに播種し、24時間培養
した。そののち、5mlの血清を含まない培地にて、さらに24時間培養した(
最終的な細胞密度は6×104細胞個/cm2)。上清を回収し、血清を含まない
新鮮な培地において3:1に希釈し、
【外1】
【0030】 を通過させた。
【0031】 サイトカイン分析。初代培養HSE細胞およびB16M細胞からのサイトカイ
ンの放出は、製造会社(R&Dシステムズ社、ミニアポリス、MN)に示された
とおりに、抗マウスIL−1βモノクローナル抗体および抗マウスTNF−αモ
ノクローナル抗体による特異的なELISAキットを用いて、測定された。
【0032】 実施例1:初代HSE培養物に対する定量的B16M細胞接着。HSEは、以
前に記載されたように(26)、同系マウスから分離され、同定されて培養され
た。B16M細胞は、報告されているように(16)、2′,7′−ビス−(2
−カルボキシエチル)−5,6−カルボキシフルオレセイン−アセトキシメチル
エステル溶液(BCECF−AM、モレキュラープローブス社(Molecular Prob
es)製、ユージーン(Eugene)、OR)で標識された。ついで、2×105細胞
個/穴を、HSEを培養した24穴プレートに添加し、8分後、新鮮な培地で穴
を3回洗った。接着した細胞の数を、以前に記載された蛍光測定システム(16
)に基づく定量法を用いて決定した。いくつかの実験において、B16M細胞を
添加する前に、数時間、HSE細胞をB16M−CMを用いて前培養した。
【0033】 実施例2:肝転移検定。以前に記載されているように(27)、野生型、IL
−1β-/-およびICE-/-の雄C57BL/6Jマウスを作製した。1ケージ当
たり5匹収容した6から8週齢のマウスを使用した。肝転移は、麻酔したマウス
(ネンブタール、腹腔内に50mg/kg)に、ハンクス平衡化食塩水(Hanks' balanced salt solution)0.1mlに懸濁した3×105の生きたB16メラ
ノーマ細胞を脾臓内注射することにより、引き起こされた。マウスは、癌細胞の
注射から10日後に麻酔をかけて殺された。肝組織は、組織学用に処理された。
正常肝組織と転移B16Mとを識別するためにデジタル化顕微鏡画像の密度検定
を使用し、肝臓100mm3当たりの転移数(1肝臓当たり15の10×10m
2切片において検出した病巣の平均数に基づく)である肝転移密度を、以前に
記載された立体的解析法(17)を用いて計算した。
【0034】 実施例3:IL−1βおよびICE欠損マウスに注射したB16M細胞の減少
した転移および増殖。成体のC57Bl/6J野生型、ICE-/-およびIL−
1β-/-のマウスに脾臓内注射される同じB16M細胞の2つの異なる群を用い
、2つの独立した実験を1年ずらして実施した。剖検調査により、脾臓の重量に
より評価したサイズにおいて著しい差もなく、検定されたすべてのマウス由来の
脾臓において、明らかなメラニン性腫瘍が立証された(表1)。対照的に、野生
型マウスの肝臓と比較すると、転移の顕著な減少がIL−1β-/-およびとくに
ICE-/-マウスの肝臓においてみられた(図1)。調査したマウスの肝臓にお
ける転移密度(病巣数/100mm3として)パラメーターおよび転移量(器官
占有百分率(percent organ occupancy))パラメーターを決定するために、転
移病巣の数およびサイズに関する定量組織分析を実施した。野生型マウスと比較
して(表1)、肝転移密度は、IL−1β-/-およびICE-/-マウス肝臓におい
て、84%から90%まで、著しく(P<0.01)減少しており、注射したB
16M細胞の多くが、これらのマウス由来の肝組織に付着することができないこ
とを示した。さらに、転移量もまた、野生型マウスの肝臓における量と比較する
と、6から7倍、IL−1β-/-およびICE-/-マウス肝臓で著しく(P<0.
01)減少しており、肝臓に転移増殖するB16M細胞もまた、増殖率が減少す
ることを示した。本発明者らはまた、IL−1β-/-およびICE-/-のマウス肝
臓間のこれら転移パラメーターにおける相違を観察し、実験I由来のほぼすべて
のICE-/-マウス肝臓において転移根絶を導いた(図1)。
【0035】
【表1】
【0036】 実施例4:自己分泌IL−18は、B16M−CMで活性化されたHSE由来
のTNF−αおよびIL−1β誘導性接着を仲介する。B16M−CMは、HS
E細胞によるTNF−αおよびIL−1βの産生、ならびに他方のB16M細胞
に対する接着性を、インビトロにおいて著しく(P<0.01)増大した(図2
)。HSEと10μMのICEiとを18時間インキュベーションすることによ
り、HSEからのTNF−α産生を減少することなく、B16M−CMに誘導さ
れる接着性を完全に途絶した。外因的に添加したマウスIL−1βは、ICEi
のHSEに対する遮断効果を補うものではなく、IL−1β処理コントロールH
SEの著しいB16M細胞接着増大と対照的である(図3)。高い濃度の内因的
に産生されたTNF−αおよび外因的に添加されたIL−1βの存在下でB16
M−CM誘導性接着増強が撤廃されたという事実は、それらのサイトカインのい
ずれも、HSE接着を直接アップレギュレーションしなかったということを示す
。重要なことに、B16M−CMでの刺激前にHSEに添加した抗マウスIL−
18抗体の存在で、HSEからの誘導IL−1βおよびTNF−α産生に影響す
ることなく、B16M−CM誘導性の接着性が予防された(図2)。そのうえ、
抗IL−18抗体はまた、HSEに対するマウスIL−1βおよびTNF−αの
接着刺激効果を予防しており(図3)、HSEに対するそれらのサイトカインの
接着前作用はどちらもIL−18介在性であることを示す。RT−PCRは、H
SE細胞がIL−18遺伝子を発現することを立証した(データ示さず)。逆に
、マウスIL−18は、HSEに対するB16M細胞接着を著しく(P<0.0
1)増大し(図4)、そしてTNF−sR p55およびIL−1Raはいずれ
もIL−18を阻害することができないことから、自己分泌TNF−αおよびI
L−1βはいずれも、IL−18誘導性のHSE接着性の原因ではないことを立
証した。しかしながら、図4に示したように、抗VCAM−1抗体はIL−18
処理HSEに対するB16M細胞の接着を完全に阻害した。コントロールの非特
異的IgGは、IL−18処理HSEに対するB16M細胞接着のアップレギュ
レーションに影響しなかった。
【0037】 実施例5:IL−18BPは、B16調整培地で誘導されるB16メラノーマ
細胞の接着を予防する。表2に示したように、B16−CMで刺激されたHSE
へのIL−18BPの添加は、接着している細胞の百分率を35%から8.70
%まで下げた(P<0.01)。これは、その接着のレベルが基本培地を用いる
接着細胞のレベルより低いので、100%の阻害を示している。この結果は、B
16M−CMに存在するIL−18に加え、HSE由来の内因性IL−18は、
IL−18の内因性の根源であるかもしれないことを示唆する。
【0038】
【表2】
【0039】 [参考文献] 1. Kohn, E.C., and Liotta, L.A. (1995) Cancer Res 55(9), 1856-62 2. Nicolson, G.L., and Winkelhake, J.L. (1975) Nature 255, 230-232 3. Freedman, A., Munro, M., Rice, G. E., Bevilacqua, M. P., Morimoto, C.
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【図面の簡単な説明】
【図1】 野生型、IL−1β-/-およびICE-/-マウスにおける、脾臓内B16M細胞
注射後の実験的肝転移増殖。B16M細胞注射の10日後に肝臓を摘出し、10
%ホルムアルデヒドを含むリン酸緩衝液添加食塩水(phosphate buffered salin
e)で固定した。ほぼすべての実験的転移(黒色のメラニン性小結節)が、IL
−1β-/-およびICE-/-マウスの肝臓から一掃された。
【図2】 HSE細胞に対するB16M細胞接着における、不可逆性ICE阻害剤および
抗マウスIL−18抗体の効果、ならびに未処理およびB16M−CM処理HS
EからのIL−1βおよびTNF−αの産生。培養したHSE細胞を、B16M
−CMの存在下で10時間インキュベートした。いくつかの実験においては、未
処理および処理HSE細胞の双方に、B16M−CM前に10μMのICEiま
たは10μg/mlの抗マウスIL−18抗体を与えた。HSE基質に対して接
着したB16M細胞の百分率は、添加する細胞の最初の数に関する相対値として
計算された。さらに、ELISAによりIL−1βおよびTNF−αの濃度を決
定するため、接着前に培養上清を回収した。データは、6つ1組で、4つの独立
した実験の平均値±SDを示す(n=24)。スチューデントの両側、不対t検
定(Student's two-tailed, unpaired t-test)によると、B16M−CM処理
HSEに対するB16M細胞接着の増大ならびにIL−1βもしくはTNF−α
産生の増大は(*P<0.01)、未処理HSEに対して統計学的に著しいもの
であった。B16M−CMがない状態で、HSE細胞をICEiまたは抗IL−
18抗体で処理すると、IL−1βもしくはTNF−α産生ならびにHSE細胞
に対するB16M細胞の接着において、非統計学的に著しい変化があった(デー
タ示さず)。
【図3】 インビトロにおける、B16M−CM処理HSEに対するB16M細胞接着に
おけるICEiの効果。HSE細胞を、基本培地またはB16M−CMとともに
8時間インキュベーションした。HSE細胞によっては、B16M−CMの前に
、10μMのICEiを18時間与えた。さらに、HSE細胞によっては、B1
6M−CMとともに1ng/mlの組換え体マウスIL−1βも8時間添加した
。ほかの実験においては、HSE細胞に1ng/mlのマウスIL−1または1
00pg/mlのTNF−αを6時間与え、そして10μg/mlのウサギ抗マ
ウスIL−18ポリクローナル抗体をサイトカイン処理1時間前に添加、または
添加しなかった。非特異的IgGポリクローナル抗体もまた、未処理HSE細胞
およびサイトカイン処理HSE細胞に添加された。ついで、HSE細胞を洗い、
そしてBCEFCF−AMで標識されたB16細胞を添加し、8分後に再び洗い
を行った。HSE基質に対して接着したB16M細胞の百分率を、始めに添加し
た細胞数に関する相対値として計算した。その結果は、それぞれ6匹1組でなさ
れた3つの独立実験の平均±SDを示す(n=18)。スチューデントの両側、
不対t検定によると、未処理HSE(*)、ならびにIL−1βもしくはTNF
−α処理HSE(**)に関する接着の程度の差は、統計学的に著しいものであっ
た(P<0.01)。さらに1ng/mlのマウスIL−1βを8時間与えたま
たは与えなかったほかのICEi処理コントロールHSEに対するB16M細胞
の接着においては、非統計学的に著しい変化であった(データは示していない)
【図4】 インビトロにおける、IL−18処理HSEに対するB16M細胞接着。HS
E細胞を、1ng/mlの組換え体マウスIL−18とともに6時間インキュベ
ーションした。いくつかの実験では、10μg/mlのTNF−sRp55また
は100ng/mlのIL−1Raを、IL−18の10分前に添加した。ほか
の実験では、10μg/mlの抗VCAM−1抗体または同様の濃度の非特異的
抗マウスIgGを、B16M細胞の30分前にHSE細胞に添加した。ついで、
B16M細胞接着の百分率は、本明細書中における実施例に記載のようにして決
定した。その結果は、それぞれ6匹1組でなされた3つの独立実験の平均±SD
を示す(n=18)。スチューデントの両側、不対t検定によると、基本培地処
理HSE(*)およびIL−18処理HSE(**)に関する接着の程度の差は、
統計学的に著しいものであった(P<0.01)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG ,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD, RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM,AT, AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,BZ,C A,CH,CN,CR,CU,CZ,DE,DK,DM ,DZ,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH, GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,K E,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS ,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN, MW,MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,RO,R U,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM ,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VN, YU,ZA,ZW Fターム(参考) 4C084 AA02 AA17 BA01 BA44 CA53 DC50 ZB26 4C085 AA13 BB36 EE01 4H045 AA11 AA30 CA40 DA76 EA20 FA72 FA74

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 腫瘍転移を阻害するための医薬の製造における、IL−18
    産生および/または作用の阻害剤の用途。
  2. 【請求項2】 IL−18産生の阻害剤がカスパーゼ−1阻害剤である請求
    項1記載の用途。
  3. 【請求項3】 IL−18作用の阻害剤が、IL−18に対する抗体、IL
    −18受容体サブユニットのいずれかに対する抗体、IL−18受容体シグナル
    伝達経路の阻害剤、IL−18と競合しIL−18受容体を遮るIL−18のア
    ンタゴニスト、ならびにIL−18結合タンパク質、同じ活性を有するその突然
    変異タンパク質、融合タンパク質、機能的誘導体、活性断片もしくは環状変更誘
    導体から選択される請求項1記載の用途。
  4. 【請求項4】 IL−18作用の阻害剤がIL−18に対する抗体である請
    求項3記載の用途。
  5. 【請求項5】 IL−18作用の阻害剤が、IL−18BP、またはIL−
    18BPと同じ活性を有するその突然変異タンパク質、誘導体もしくは断片であ
    る請求項3記載の用途。
  6. 【請求項6】 IL−18に対する抗体、IL−18受容体サブユニットの
    いずれかに対する抗体、IL−18受容体シグナル伝達経路の阻害剤、IL−1
    8と競合しIL−18受容体を遮るIL−18のアンタゴニスト、ならびにIL
    −18に結合してIL−18の生物学的活性を遮るIL−18結合タンパク質、
    同じ活性をするその突然変異タンパク質、誘導体もしくは断片を含有する、腫瘍
    転移を阻害するための、IL−18産生および/または作用の阻害のための医薬
    組成物。
  7. 【請求項7】 IL−18に対する抗体を含有する請求項6記載の医薬組成
    物。
  8. 【請求項8】 IL−18結合タンパク質、同じ活性を有するその突然変異
    タンパク質、誘導体または断片を含有する請求項6記載の医薬組成物。
  9. 【請求項9】 腫瘍転移を阻害するための医薬の製造における、IL−18
    産生および/または作用の阻害剤をコードする発現ベクターの用途。
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