JP2002231419A - 加熱装置、及び画像形成装置 - Google Patents

加熱装置、及び画像形成装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】回転するスリーブ10と加圧ローラ30との圧
接ニップNで被加熱材Pを挟持搬送させて加熱する加熱
装置について、スリーブ10の耐久時における疲労劣化
を防止して、装置の耐久性を向上させる。 【解決手段】スリーブ10の両端部に、スリーブを外周
面にて保持するフランジ23a・23bを設け、このと
きスリーブ外径よりもフランジ内径を所定量大きくす
る。これにより、スリーブ全長より短い加圧ローラ30
をスリーブ10に当接させた際に、ニップ部にてスリー
ブが加圧ローラ形状に倣って変形するのに従って、加圧
ローラ当接部の外側で、かつフランジにより外周を保持
されているスリーブ端部部分も変形可能とし、しかも、
この変形により、スリーブ10とフランジ23a・23
bが一体的に回転可能となるための十分な摩擦力を得
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、加熱部材と加圧部
材の圧接ニップ部に被加熱材を通紙して挟持搬送させて
被加熱材を加熱する加熱装置、及び該加熱装置を画像の
加熱定着装置として備えた画像形成装置に関する。
【0002】より詳しくは、フィルム状の回転体と、該
回転体を導くガイド部材と、該ガイド部材に対し該回転
体を介して圧接ニップを形成する加圧部材と、該回転体
を昇温せしめ該回転体の回転と共に該ニップ内を搬送さ
れる被加熱材を加熱する加熱手段とを有する加熱装置、
及び該加熱装置を画像の加熱定着装置として備えた画像
形成装置に関する。
【0003】ここで、被加熱材を加熱とは、具体的に
は、例えば、被記録材上に転写方式或いは直接方式で形
成担持させた未定着画像の加熱定着処理、仮定着する像
加熱処理、画像を担持した被記録材を加熱してつや等の
表面性を改質する像加熱処理、シート状の被加熱材の加
熱乾燥処理、加熱ラミネート処理、しわ取り等のための
熱プレス処理等である。
【0004】
【従来の技術】電子写真複写機やプリンター等の画像形
成装置における定着装置を例にして説明する。
【0005】画像形成装置において、電子写真プロセス
等の適宜の画像形成プロセス手段で被記録材(用紙)に
間接(転写)あるいは直接に形成担持させた未定着トナ
ー画像を被記録材面に永久固着画像として加熱定着させ
る定着装置(定着器)としては従来より熱ローラ方式の
加熱装置が広く用いられている。
【0006】近年では、クイックスタートや省エネルギ
ーの観点からフィルム加熱方式(サーフ)の装置が実用
化されている。また金属からなるフィルム自身を発熱さ
せる電磁誘導加熱方式(IHF)の加熱装置も提案され
ている。
【0007】a)フィルム加熱方式の定着装置 フィルム加熱方式の定着装置は、例えば特開昭63−3
13182号公報・特開平2−157878号公報・特
開平4−44075号公報・特開平4−204980号
公報等に提案されている。
【0008】即ち、加熱体としてのセラミックヒータ
と、加圧部材としての加圧ローラとの間に耐熱性フィル
ム(以下、定着フィルムと記す)を挟ませて圧接ニップ
部(以下、定着ニップ部と記す)を形成させ、該定着ニ
ップ部の定着フィルムと加圧ローラとの間に未定着トナ
ー画像を形成担持させた被記録材を導入して定着フィル
ムと一緒に挟持搬送させることで、定着フィルムを介し
てセラミックヒータの熱を与えながら定着ニップ部の加
圧力で未定着トナー画像を被記録材面に定着させるもの
である。
【0009】このフィルム加熱方式の定着装置は、セラ
ミックヒータ及びフィルムに低熱容量の部材を用いてオ
ンデマンドタイプの装置を構成することができ、画像形
成実行時のみ熱源のセラミックヒータに通電して所定の
定着温度に発熱させればよく、画像形成装置の電源オン
から画像形成実行可能状態までの待ち時間が短く(クイ
ックスタート性)、スタンバイ時の消費電力も大幅に小
さい(省電力)等の利点がある。
【0010】b)電磁誘導加熱方式の定着装置 実開昭51−109739号公報には、磁束により定着
フィルムの金属層(発熱層)に渦電流を誘導させて、そ
のジュール熱で発熱させる誘導加熱定着装置が開示され
ている。これは、誘導電流の発生を利用することで直接
定着フィルムを発熱させることができ、ハロゲンランプ
を熱源とする熱ローラ方式の定着装置よりも高効率の定
着プロセスを達成している。
【0011】しかしながら、磁場発生手段としての励磁
コイルにより発生した交番磁束のエネルギーは定着フィ
ルム全体の昇温に使われるため放熱損失が大きい。その
ため、投入したエネルギーに対して定着に作用するエネ
ルギーの割合が低く、効率が悪いという欠点があった。
【0012】そこで、定着に作用するエネルギーを高効
率で得るために、発熱体である定着フィルムに励磁コイ
ルを接近させたり、励磁コイルの交番磁束分布を定着ニ
ップ部近傍に集中させたりして、高効率の定着装置が考
案された。
【0013】図20に、励磁コイルの交番磁束分布を定
着ニップ部に集中させて効率を向上させた電磁誘導加熱
方式の定着装置の一例の概略構成を示す。
【0014】10は電磁誘導発熱層(導電体層、磁性体
層、抵抗体層)を有する回転体としての円筒状・可とう
性の定着フィルム(以下スリーブと称す)である。
【0015】16cは横断面略半円弧状樋型のフィルム
ガイド部材(以下スリーブガイド部材と称す)であり、
スリーブ10はこのスリーブガイド部材16cの外側に
ルーズに外嵌させてある。
【0016】15はスリーブガイド部材16cの内側に
配設した磁場発生手投であり、励磁コイル18とE型の
磁性コア(芯材)17とからなる。
【0017】30は弾性加圧ローラであり、スリーブ1
0を挟ませてスリーブガイド部材16cの下面と所定の
圧接力をもって所定幅の定着ニップ部Nを形成させて相
互圧接させてある。
【0018】上記磁場発生手段15の磁性コア17は定
着ニップ部Nに対応させて配設してある。
【0019】加圧ローラ30は駆動手段Mにより矢示の
反時計方向に回転駆動される。この加圧ローラ30の回
転駆動により、該加圧ローラ30とスリーブ10の外面
との、定着ニップ部Nにおける摩擦力でスリーブ10に
回転力が作用して、該スリーブ10がその内面が定着ニ
ップ部Nにおいてスリーブガイド部材16cの下面に密
着して摺動しながら矢示の時計方向に加圧ローラ30の
周速度にほぼ対応した周速度をもってスリーブガイド部
材16cの外周を回転する(加圧ローラ駆動方式)。
【0020】スリーブガイド部材16cは、定着ニップ
部Nへの加圧、磁場発生手段15としての励磁コイル1
8と磁性コア17の支持、スリーブ10の支持、該スリ
ーブ10の回転時の搬送安定性を図る役目をする。この
スリーブガイド部材16cは磁束の通過を妨げない絶縁
性の部材であり、高い荷重に耐えられる材料が用いられ
る。
【0021】励磁コイル18は不図示の励磁回路から供
給される交番電流によって交番磁束を発生する。交番磁
束は定着ニップ部Nの位置に対応しているE型の磁性コ
ア17により定着ニップ部Nに集中的に分布し、その交
番磁束は定着ニップ部Nにおいてスリーブ10の電磁誘
導発熱層に渦電流を発生させる。この渦電流は電磁誘導
発熱層の固有抵抗によってジュール熱を発生させる。こ
のスリーブ10の電磁誘導発熱は交番磁束を集中的に分
布させた定着ニップ部Nにおいて集中的に生じて定着ニ
ップ部Nが高効率に加熱される。
【0022】定着ニップ部Nの温度は、不図示の温度検
知手段を含む温調制御系により、励磁コイル17への電
流供給が制御されることで所定の温度が維持されるよう
に温調される。
【0023】而して、加圧ローラ30が回転駆動され、
それに伴ってスリーブ10がスリーブガイド部材16の
外回りを回転し、励磁回路からの励磁コイル17への給
電により、上記のようにスリーブ10の電磁誘導発熱が
なされて定着ニップ部Nが所定の温度に立ち上がる。そ
して温調された状態において、不図示の画像形成手段部
から搬送された未定着トナー画像tが形成された被記録
材Pは、定着ニップ部Nのスリーブ10と加圧ローラ3
0との間に画像面が上向きに、即ち定着スリーブ面に対
向して導入され、定着ニップ部Nにおいて画像面がスリ
ーブ10の外面に密着してスリーブ10と一緒に定着ニ
ップ部Nを挟持搬送されていく。この定着ニップ部Nを
スリーブ10と一緒に被記録材Pが挟持搬送されていく
過程においてスリーブ10の電磁誘導発熱で加熱されて
被記録材P上の未定着トナー画像tが加熱定着される。
被記録材Pは定着ニップ部Nを通過すると回転するスリ
ーブ10の外面から分離して排出搬送されていく。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前述b)の
様な電磁誘導タイプの加熱定着装置はスリーブ10とし
て50μm前後の薄い金属(Ni,SUS等)を用いる
ため、スリーブ自体の剛性は高いものの、くり返し回転
状態で使用すると、スリーブ10の端部における定着装
置との摺擦部分から座屈による亀裂が生じ、破壊に至
る、という問題点が有った。
【0025】この問題は前述a)で述べたセラミックヒ
ータによるフィルム加熱方式の定着装置において、定着
フィルムの耐久性向上のために、通常用いられるPI
(ポリイミド)等の耐熱樹脂の代りに、前述の金属製の
スリーブを用いようとする場合においても同様に耐久寿
命を阻害する要因となり、金属製スリーブの使用を困難
なものとしていた。
【0026】上記問題点に対し、スリーブ10の端面
(円筒の断面)を周囲部材との摺擦から守る手段とし
て、図21の様に、スリーブ10の端部にスリーブ10と
一体になり回転する、端部保護部材であるフランジ20
1を設ける事が考えられる。
【0027】ところが、加圧ローラ30により、スリー
ブ10に図22の矢印Aの方向の力が加わると、スリー
ブ10の端部ではフランジ201により内径形状が決め
られてしまうため、加圧ローラ30の当接部と、スリーブ
10の端部(加圧ローラ非当接部)の間で歪みが発生
し、最も応力の大きいBの部分から、耐久による疲労破壊
が発生する、という新たな問題が生じた。
【0028】この歪みを軽減するために、フランジ20
1のかん合部r1を、スリーブ10の内径r2に対して
十分小さくする事が考えられるが、実際に試してみる
と、フランジ201とスリーブ10が十分に接触しな
い、すなわち、十分な摩擦力が得られないため、両者1
0・201が一体となって回転せず、スリップすること
で、フランジ201がスリーブ10により削られたり、
あるいはスリーブ10とフランジ201が摺擦をくり返
すうちに、スリーブ10が疲労破壊するなどの問題が生
じた。
【0029】そこで本発明は、この種タイプの加熱装置
について、上記のフィルム状の回転体であるスリーブの
耐久時における疲労劣化を防止して、装置の耐久性を向
上させること、常に安定した加熱性能、定着性能を得ら
れる様にすることを目的とする。
【0030】
【課題を解決するための手段】本発明は下記の構成を特
徴とする加熱装置及び画像形成装置である。
【0031】(1)フィルム状の回転体(以下スリーブ
と称す)と、該スリーブを導くガイド部材と、該ガイド
部材に対し該スリーブを介して圧接ニップを形成する加
圧部材と、該スリーブを昇温せしめ該スリーブの回転と
共に該ニップ内を搬送される被加熱材を加熱する加熱手
段とを有する加熱装置において、前記スリーブの全長
は、前記加圧部材の当接面長さよりも大きく設定され、
かつ、該スリーブは、その両端部を外周面側から支持部
材であるフランジにより支持される構造とし、該スリー
ブの端部における外径をa、該フランジの内径をb(b
>a)としたとき、前記加圧部材により該スリーブを所
定の圧力で加圧した際に、該フランジにて支持されるス
リーブ端部の断面形状が、前記加圧部材の当接により形
成されるニップ部におけるスリーブ断面形状に倣う方向
に変形可能となるように、該スリーブの端部における外
径a、該フランジの内径bの間に所定量のギャップΔt
=b−aを設けた、ことを特徴とする加熱装置。
【0032】(2)前記(1)において、前記Δtとa
の関係が、 0.009≦Δt/a≦0.03 であることを特徴とする加熱装置。
【0033】(3)フィルム状の回転体(以下スリーブ
と称す)と、該スリーブを導くガイド部材と、該ガイド
部材に対し該スリーブを介して圧接ニップを形成する加
圧部材と、該スリーブを昇温せしめ該スリーブの回転と
共に該ニップ内を搬送される被加熱材を加熱する加熱手
段とを有する加熱装置において、前記スリーブの全長
は、前記加圧部材の当接面長さよりも大きく設定され、
かつ、該スリーブは、その両端部を外周面側から支持部
材であるフランジにより支持される構造とし、かつ、該
フランジのスリーブ外周面支持部よりも外側に、スリー
ブの長手方向側からスリーブ端部を支持するためのスリ
ーブ長手方向支持面を形成し、該長手方向支持面によ
り、長手方向の外側からフランジがスリーブ端面を支持
する構造とするとともに、このとき該フランジのスリー
ブ長手方向支持部の、フランジ直径方向での幅Wを、ス
リーブの厚さSよりも大としたことを特徴とする加熱装
置。
【0034】(4)前記(3)において、前記フランジ
の長手方向の断面形状における、スリーブ外周面側の支
持面と、該フランジのスリーブ長手方向支持面のなす角
θが、90°以上であることを特徴とする加熱装置。
【0035】(5)フィルム状の回転体(以下スリーブ
と称す)と、該スリーブを導くガイド部材と、該ガイド
部材に対し該スリーブを介して圧接ニップを形成する加
圧部材と、該スリーブを昇温せしめ該スリーブの回転と
共に該ニップ内を搬送される被加熱材を加熱する加熱手
段とを有する加熱装置において、前記加熱装置のスリー
ブの全長は、前記加圧部材の当接面長さよりも大きく設
定され、かつ、該スリーブは、その両端部を支持部材で
あるフランジにより支持される構造とし、更に、前記フ
ランジの長手方向における、スリーブと反対側面から、
該フランジを介して前記スリーブ端部を支持するための
端部ホルダーを設けたことを特徴とする加熱装置。
【0036】(6)前記(5)において、前記端部ホル
ダーは、前記スリーブ内側に有って、スリーブの回転を
導くための前記ガイド部材に対し、一体的に固定支持さ
れていることを特徴とする加熱装置。
【0037】(7)前記(6)において、前記端部ホル
ダーと、前記加圧部材を端部から支持する支持部材と
を、加圧手段により相対的に加圧することで、前記圧接
ニップを形成することを特徴とする加熱装置。
【0038】(8)前記(1)から(7)の何れかの加
熱装置において、前記スリーブは、厚さ20μm〜10
0μmの可とう性を有する薄層金属を基材として用いた
ものであることを特徴とする加熱装置。
【0039】(9)前記(1)から(8)の何れかの加
熱装置は、前記被加熱材が画像を担持した被記録材であ
り、該被記録材上の画像を加熱して定着する、或いは仮
定着する、或いはつや等の表面性を改質する像加熱装置
であることを特徴とする加熱装置。
【0040】(10)被記録材上に未定着画像を形成担
持させる画像形成手段部と、被記録材上の未定着画像を
加熱定着させる定着手段を有する画像形成装置におい
て、前記定着手段が(1)から(8)の何れかに記載の
加熱装置であることを特徴とする画像形成装置。
【0041】〈作 用〉スリーブの両端部に、スリーブ
を外周面にて保持するフランジを設け、このときスリー
ブ外径よりもフランジ内径を所定量大きくする。これに
より、スリーブ全長より加圧部材をスリーブに当接させ
た際に、ニップ部にてスリーブが加圧部材形状に倣って
変形するのに従って、加圧部材当接部の外側で、かつフ
ランジにより外周を保持されているスリーブ端部部分も
変形可能とし、しかも、この変形により、スリーブとフ
ランジが一体的に回転可能となるための十分な摩擦力を
得るとともに、スリーブ回転時におけるニップ部近傍で
のスリーブ変形ストレスを軽減し、スリーブの耐久性を
大幅に向上することが可能となる。
【0042】Δtとaの関係が0.009≦Δt/a≦
0.03を満足する様に設定することで、上記の作用効
果をより良好に達成できる。
【0043】また、フランジのスリーブ外周面支持部よ
りも外側に、スリーブの長手方向側からスリーブ端部を
支持するためのスリーブ長手方向支持面を形成し、該長
手方向支持面により、長手方向の外側からフランジがス
リーブ端面を支持する構造とするとともに、このときフ
ランジのスリーブ長手方向支持部の、フランジ直径方向
での幅を、スリーブの厚さよりも大とする。これによ
り、上記と同様に、スリーブ回転時におけるニップ部近
傍でのスリーブ変形ストレスを軽減し、スリーブの耐久
性を大幅に向上することが可能となる。
【0044】更に、このとき、フランジの長手方向の断
面形状における、スリーブ外周面側の支持面と、該フラ
ンジのスリーブ長手方向支持面のなす角θが、90°以
上となる様にすることで、上記の良好な耐久性能がより
効果的に得られる。
【0045】また更に、上記の構成によりフランジで適
度にスリーブを保持することが出来るので、フランジの
長手方向における、スリーブと反対側面から、該フラン
ジを介して前記スリーブ端部を支持するための端部ホル
ダーを設ける様にすることで、フランジを端部ホルダー
により位置規制して、スリーブがニップ近傍で変形を受
けても、変形後の形状を安定して保つことが出来、安定
した加熱性能・定着性能を得ることが出来る。
【0046】
【発明の実施の形態】〈第1の実施例〉 (1)画像形成装置 図1は、本発明の加熱装置を定着装置100を適用する
ための、画像形成装置の一例の構成略図である。本例は
カラーレーザプリンターである。
【0047】101は有機感光体やアモルファスシリコ
ン感光体でできた感光ドラム(像担持体)であり、矢示
の反時計方向に所定のプロセス速度(周速度)で回転駆
動される。
【0048】感光ドラム101はその回転過程で帯電ロ
ーラ等の帯電装置102で所定の極性・電位の一様な帯
電処理を受ける。
【0049】次いでその帯電処理面にレーザ光学箱(レ
ーザスキャナー)110から出力されるレーザ光103
により、目的の画像情報の走査露光処理を受ける。レー
ザ光学箱110は不図示の画像読み取り装置等の画像信
号発生装置からの目的画像情報の時系列電気デジタル画
素信号に対応して変調(オン/オフ)したレーザ光10
3を出力し、感光ドラム101面に走査露光した目的画
像情報に対応した静電潜像が形成される。109はレー
ザ光学箱110からの出力レーザ光103を感光ドラム
101の露光位置に偏向させるミラーである。
【0050】フルカラー画像形成の場合は、目的のフル
カラー画像の第1の色分解成分画像、例えばイエロー成
分画像についての走査露光・潜像形成がなされ、その潜
像が4色カラー現像装置104のうちのイエロー現像器
104Yの作動でイエロートナー画像として現像され
る。そのイエロートナー画像は感光ドラム101と中間
転写ドラム105との接触部(或いは近接部)である1
次転写部T1において中間転写ドラム105面に転写さ
れる。中間転写ドラム105面に対するトナー画像転写
後の感光ドラム101面はクリーナ107により転写残
トナー等の付着残留物の除去を受けて清掃される。
【0051】上記のような帯電・走査露光・現像・一次
転写・清掃のプロセスサイクルが、目的のフルカラー画
像の第2の色分解成分画像(例えはマゼンタ成分画像、
マゼンタ現像器104Mが作動)、第3の色分解成分画
像(例えばシアン成分画像、シアン現像器104Cが作
動)、第4の色分解成分画像(例えば黒成分画像、黒現
像器104BKが作動)の各色分解成分画像について順
次実行され、中間転写ドラム105面にイエロートナー
画像・マゼンタトナー画像・シアントナー画像・黒トナ
ー画像の4色のトナー画像が順次重ねて転写されて、目
的のフルカラー画像に対応したカラートナー画像が形成
される。
【0052】中間転写ドラム105は、金属ドラム上に
中抵抗の弾性層と高抵抗の表層を設けたもので、感光ド
ラム101に接触して或いは近接して感光ドラム101
とほぼ同じ周速度で矢示の時計方向に回転駆動され、中
間転写ドラム105の金属ドラムにバイアス電位を与え
て感光ドラム101との電位差で感光ドラム101側の
トナー画像を前記中間転写ドラム105面側に転写させ
る。
【0053】上記の中間転写ドラム105面に形成され
たカラートナー画像は、前記中間転写ドラム105と転
写ローラ106との接触ニップ部である二次転写部T2
において、前記二次転写部T2に不図示の給紙部から所
定のタイミングで送り込まれた被記録材(以下、転写材
あるいは用紙と記す)Pの面に転写されていく。転写ロ
ーラ106は転写材Pの背面からトナーと逆極性の電荷
を供給することで中間転写ドラム105面倒から転写材
P側へ合成カラートナー画像を順次に一括転写する。
【0054】二次転写部T2を通過した転写材Pは中間
転写ドラム105面から分離されて定着装置(像加熱装
置)100へ導入され、未定着トナー画像の加熱定着処
理を受けて、機外の不図示の排紙トレーに排出される。
【0055】転写材Pに対するカラートナー画像転写後
の中間転写ドラム105はクリーナ108により転写残
トナー・紙粉等の付着残留物の除去を受けて清掃され
る。
【0056】このクリーナ108は常時は中間転写ドラ
ム105に非接触状態に保持されており、中間転写ドラ
ム105から転写材Pに対するカラートナー画像の二次
転写実行過程において中間転写ドラム105に接触状態
に保持される。
【0057】また転写ローラ106も常時中間転写ドラ
ム105に非接触状態に保持されており、中間転写ドラ
ム105から転写材Pに対するカラートナー画像の二次
転写実行過捏において中間転写ドラム105に転写材P
を介して接触状態に保持される。
【0058】本例装置は、白黒画像などモノカラー画像
のプリントモードも実行できる。また両面画像プリント
モードも実行できる。
【0059】両面画像プリントモードの場合は、定着装
置100を出た1面目画像プリント済みの転写材Pは不
図示の再循環搬送機構を介して表裏反転されて再び二次
転写部T2へ送り込まれて2面に対するトナー画像転写
を受け、再度、定着装置100に導入されて2面に対す
るトナー画像の定著処理を受けることで両面画像プリン
トが出力される。
【0060】(2)定着装置100 A)装置の全体的構成 本例において定着装置100は電磁誘導加熱方式の装置
である。図2は本例の定着装置100の要部の横断側面
模型図、図3は要部の正面模型図、図4は要部の縦断正
面模型図(図2の(4)−(4)線部分の縦断正面模型
図)である。
【0061】本例装置100は図20の定着装置と同様
に、回転定着部材(定着スリーブ)としてフィルム状・
円筒状の電磁誘導発熱スリーブを用いた、加圧ローラ駆
動方式で、電磁誘導加熱方式の装置である。図20の装
置と共通の構成部材・部分には同一の符号を付して再度
の説明を省略する。
【0062】磁場発生手投15は磁性コア17a・17
b・17c及び励磁コイル18からなる。
【0063】磁性コア17a・17b・17cは高透磁
率の部材であり、フェライトやパーマロイ等といったト
ランスのコアに用いられる材料がよく、より好ましくは
100kHz以上でも損失の少ないフェライトを用いる
のがよい。
【0064】励磁コイル18には給電部18a・18b
(図5)に励磁回路27を接続してある。この励磁回路
27は20kHzから500kHzの高周波をスイッチ
ング電源で発生できるようになっている。
【0065】励磁コイル18は励磁回路27から供給さ
れる交番電流(高周波電流)によって交番磁束を発生す
る。
【0066】16a・16bは横断面略半円弧状樋型の
スリーブガイド部材であり、開口側を互いに向かい合わ
せて略円柱体を構成し、外側に円筒状回転体として全長
F=283mm、a=外径34mmの電磁誘導発熱ス
リーブ10をルーズに外嵌させてある。
【0067】前記スリーブガイド部材16aは、磁場発
生手段15としての磁性コア17a・17b・17cと
励磁コイル18を内側に保持している。
【0068】また、スリーブガイド部材16aには良熱
伝導性部材40が定着ニップ部Nの加圧ローラ30との
対向面側で、スリーブ10の内側に配設してあり、スリ
ーブ内面側バックアップ部材としても機能している。
【0069】本例においては、良熱伝導性部材40に厚
さ1mmのアルミニウムを用いている。
【0070】また、良熱伝導性部材40は磁場発生手投
15である励磁コイル18と磁性コア17a・17b・
17cから発生する磁場の影響を受けないように、この
磁場の外に配設してある。
【0071】具体的には、良熱伝導性部材40を励磁コ
イル18に対して磁性コア17b・17cを隔てた位置
に配設し、励磁コイル18による磁路の外側に位置させ
て良熱伝導性部材40に影響を与えないようにしてい
る。
【0072】22は良熱伝導性部材40のニップ部Nに
対応する部分の裏面側とスリーブガイド部材16bの内
面平面部とに当接させて配設した横長の加圧用剛性ステ
イである。
【0073】19は磁性コア17a・17b・17c及
び励磁コイル18と加圧用剛性ステイ22の間を絶縁す
るための絶縁部材である。
【0074】フランジ部材23a・23b(図3・図
4)はスリーブガイド部材16a・16bのアセンブリ
の長手方向左右両端部に外嵌し、前記左右位置を固定し
つつ回転自在に取り付け、スリーブ10の回転時に該ス
リーブ10の端部を受けてスリーブ10のスリーブガイ
ド部材16a・16bの長手に沿う寄り移動を規制する
役目をする。このフランジ部材23a・23bについて
は後記(D)項で詳述する。
【0075】加圧部材としての加圧ローラ30は、芯金
30aと、前記芯金周りに同心一体にローラ状に成形被
覆させた、シリコーンゴム・フッ素ゴム・フッ素樹脂な
どの耐熱性・弾性材層30b及び、表層の離型層30c
としてPFA,PTFE,FEP等のフッ素樹脂層(厚
さ10μm〜100μm程度)で構成されており、芯金
30aの両端部を装置の不図示のシャーシ側板間に回転
自由に軸受け保持させて配設してある。本実施例では、
加圧面長LR=250mm、外径20mmの加圧ローラ
30を用いた。従って、前記スリーブ10の全長LFは
加圧ローラ30の当接面長LRよりも大きい。
【0076】加圧用剛性ステイ22の両端部と装置シャ
ーシ側のバネ受け部材29a・29bとの間にそれぞれ
加圧バネ25a・25bを縮設することで加圧用剛性ス
テイ22に押し下げ力を作用させている。これにより良
熱伝導性部材40のニップ部Nに対応する部分の下面と
加圧ローラ30の上面とが定着スリーブ10を挟んで圧
接して所定幅の定着ニップ部Nが形成される。
【0077】本実施例では、ニップ部Nでの加圧ローラ
30による押圧力(線圧力)を7.8N/cm(800
g/cm)程度とした。
【0078】ここで、ニップNの幅をある程度確保する
には、加圧ローラ30の硬度が高すぎると好ましくな
い。加圧ローラ30の硬度は、ニップ確保のため上限7
5度、機械強度から下限45度程度(加圧ローラの表層
上からのアスカーC硬度測定、9.8N(1kg加
重))の範囲とするのが望ましい。
【0079】本実施例では、加圧ローラ30の硬度を約
56度とし、ニップ量Nを7mm程度とした。
【0080】加圧ローラ30は駆動手段Mにより矢示の
反時計方向に回転駆動される。この加圧ローラ30の回
転駆動により、前記加圧ローラ30との外面との摩擦力
でスリーブ10に回転力が作用し、前記スリーブ10が
その内面が定着ニップNにおいて良熱伝導性部材40の
下面に密着して摺動しながら矢示の時計方向に加圧ロー
ラ30の周速度にほぼ対応した周速度をもってスリーブ
ガイド部材16a・16bの外周を回転する。
【0081】この場合、定着ニップ部Nにおける良熱伝
導性部材40の下面とスリーブ10の内面との相互摺動
摩擦力を低減化させるために定着ニップ部Nの良熱伝導
性部材40の下面とスリーブ10の内面との間に耐熱性
グリスなどの潤滑剤を介在させる、あるいは良熱伝導性
部材40の下面を潤滑部材41で被覆することでニップ
Nでのスリーブ10の摺動性を向上させることもでき
る。これは、良熱伝導性部材40としてアルミニウムを
用いた場合のように表面滑り性が材質的によくない或い
は仕上げ加工を簡素化した場合に、摺動するスリーブ1
0に傷をつけてスリーブ10の耐久性が悪化してしまう
ことを防ぐものである。
【0082】良熱伝導性部材40は長手方向の温度分布
を均一にする効果があり、例えば、転写材(被記録材)
Pとして小サイズ紙を通祇した場合、スリーブ10での
非通紙部の熱量が、良熱伝導性部材40へ伝熱し、良熱
伝導性部材40における長手方向の熱伝導により、非通
紙部の熱量が小サイズ紙通紙部へ伝熱される。これによ
り、小サイズ紙通紙時の消費電力を低減させる効果も得
られる。
【0083】また、図5に示すように、スリーブガイド
部材16aの周面に、その長手に沿い所定の間隔を置い
て凸リブ部16eを形成具備させ、スリーブガイド部材
16aの周面とスリーブ10の内面との接触摺動抵抗を
低減させてスリーブ10の回転負荷を少なくしている。
このような凸リブ部16eはスリーブガイド部材16b
にも同様に形成具備することができる。
【0084】図6は交番磁束の発生の様子を模式的に表
したものである。磁束Cは発生した交番磁束の一部を表
す。
【0085】磁性コア17a・17b・17cに導かれ
た交番磁束Cは、磁性コア17aと磁性コア17bとの
間、そして磁性コア17aと磁性コア17cとの間にお
いてスリーブ10の電磁誘導発熱層1に渦電流を発生さ
せる。この渦電流は電磁誘導発熱層1の固有抵抗によっ
て電磁誘導発熱層1にジュール熱(渦電流損)を発生さ
せる。
【0086】ここでの発熱量Qは電磁誘導発熱層1を通
る磁束の密度によって決まり、図6のグラフような分布
を示す。図6のグラフは、縦軸が磁性コア17aの中心
を0とした角度φで表したスリーブ10における円周方
向の位置を示し、横軸がスリーブ10の電磁誘導発熱層
1での発熱量Qを示す。ここで、発熱域Hは最大発熱量
をQとした場合、発熱量がQ/e以上の領域と定義す
る。これは、定着に必要な発熱量が得られる領域であ
る。
【0087】この定着ニップ部Nの温度は、温度検知手
段26(図2)を含む温調系により励磁コイル18に対
する電流供給が制御されることで所定の温度が維持され
るように温調される。
【0088】温度検知手段26はスリーブ10の温度を
検知するサーミスタなどの温度センサであり、本例にお
いてはこの温度センサ26で測定したスリーブ10の温
度情報をもとに定着ニップ都Nの温度を制御するように
している。
【0089】而して、スリーブ10が回転し、励磁回路
27から励磁コイル18への給電により上記のようにス
リーブ10の電磁誘導発熱がなされて定着ニップ部Nが
所定の温度に立ち上がって温調された状態において、画
像形成手段部から搬送された未定着トナー画像tが形成
された転写材Pが定着ニップ部Nのスリーブ10と加圧
ローラ30との間に画像面が上向き、即ちスリーブ面に
対向して導入され、定着ニップ部Nにおいて画像面がス
リーブ10の外面に密着してスリーブ10と一緒に定着
ニップ部Nを挟持搬送されていく。
【0090】この定着ニップ部Nをスリーブ10と一緒
に転写材Pが挟持搬送されていく過程においてスリーブ
10の電磁誘導発熱で加熱されて転写材P上の未定着ト
ナー画像tが加熱定着される。
【0091】転写材Pは定着ニップ部Nを通過するとス
リーブ10の外面から分離して排出搬送されていく。
【0092】転写材P上の加熱定着トナー画像は定着ニ
ップ部通過後、冷却して永久固着像となる。
【0093】本例においては、図2に示すように、スリ
ーブ10の発熱域H(図6)の対向位置に暴走時の励磁
コイル18への給電を遮断するため温度検知素子である
サーモスイッチ60を配設している。
【0094】図7は本例で使用した安全回路の回路図で
ある。温度検知素子であるサーモスイッチ60は24V
のDC電源とリレースイッチ61と直列に接続されてお
り、サーモスイッチ60が切れると、リレースイッチ6
1への給電が速断され、リレースイッチ61が動作し、
励磁回路27への給電が速断されることにより励磁コイ
ル18への給電を遮断する構成をとっている。サーモス
イッチ60はOFF動作温度を220℃に設定した。
【0095】また、サーモスイッチ60はスリーブ10
の発熱域Hに対向してスリーブ10の外面に非接触に配
設した。サーモスイッチ60とスリーブ18との間の距
離は約2mmとした。これにより、スリーブ10にサー
モスイッチ60の接触による傷が付くことがなく、耐久
による定着画像の劣化を防止することができる。
【0096】本例の定着装置の場合は、装置故障による
定着装置暴走時、前述の図20の定着装置のような定着
ニップ部Nで発熱する構成とは違い、定着ニップ部Nに
紙(転写材)Pが挟まった状態で定着装置が停止し、励
磁コイル18に給電が続けられスリーブ10が発熱し続
けた場合でも、紙が挟まっている定着ニップ部Nでは発
熱していないために紙が直接加熱されることがない。ま
た、発熱量が多い発熱域Hには、サーモスイッチ60が
配設してあるため、サーモスイッチ60が220℃を感
知して、サーモスイッチ60が切れた時点で、リレース
イッチ61により励磁コイル18への給電が速断され
る。
【0097】本例によれば、紙の発火温度は約400℃
近辺であるため紙が発火することなく、スリーブ10の
発熱を停止することができる。温度検知素子としてサー
モスイッチ60のほかに温度ヒューズを用いることもで
きる。
【0098】本例ではトナーtに低軟化物質を含有させ
たトナーを使用したため、定着装置、にオフセット防止
のためのオイル塗布機構を設けていない。
【0099】B)励磁コイル18 励磁コイル18はコイル(線輪)を構成させる導線(電
線)として、一本ずつがそれぞれ絶縁被覆された銅製の
細線を複数本束ねたもの(束線)を用い、これを複数回
巻いて励磁コイルを形成している。本例では10ターン
巻いて励磁コイル18を形成している。
【0100】絶縁被覆はスリーブ10の発熱による熱伝
導を考慮して耐熱性を有する被覆を用いるのがよい。た
とえば、アミドイミドやポリイミドなどの被覆を用いる
とよい。
【0101】励磁コイル18は外部から圧力を加えて密
集度を向上させてもよい。
【0102】励磁コイル18の形状は、図2・図6のよ
うにスリーブ10の発熱層1の曲面に沿うようにしてい
る。本例ではスリーブ10の発熱層1と励磁コイル18
との間の距離は約2mmになるように設定した。
【0103】スリーブガイド部材(励磁コイル保持部
材)16a・16bの材質としては絶縁性に渡れ、耐熱
性がよいものがよい。例えば、フェノール樹脂、フッ素
樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイ
ミド樹脂、PEEK樹脂、PES樹脂、PPS樹脂、P
FA樹脂、PTFE樹脂、FEP樹脂、LCP樹脂など
を選択するとよい。
【0104】磁性コア17a・17b・17c及び励磁
コイル18と、スリーブ10の発熱層1との間の距離は
できる限り近づけた方が磁束の吸収効率が高いのである
が、この距離が5mmを越えるとこの効率が著しく低下
するため5mm以内にするのがよい。また、5mm以内
であればスリーブ10の発熱層1と励磁コイル18の距
離が一定である必要はない。
【0105】励磁コイル18のスリーブガイド部材16
aからの引出線すなわち給電部18a・18b(図5)
については、スリーブガイド部材16aから外の部分に
ついて束線の外側に絶縁被覆を施している。
【0106】C)スリーブ10 図8の(a)は本例におけるスリーブ10の層構成模型
図である。本例のスリーブ10は、電磁誘導発熱性のス
リーブ10の基層となる金属スリーブ等でできた発熱層
1と、その外面に積層した弾性層2と、その外面に積層
した離型層3の複合構造のものである。
【0107】発熱層1と弾性層2との間の接着、弾性層
2と離型層3との間の接着のため、各層間にプライマー
層(不図示)を設けてもよい。
【0108】略円筒形状であるスリーブ10において発
熱層1が内面側であり、離型層3が外面側である。前述
したように、発熱層1に交番磁束が作用することで前記
発熱層1に渦電流が発生して前記発熱層1が発熱する。
その熱が弾性層2・離型層3を介してスリーブ10を加
熱し、前記定着ニップNに通紙される被加熱材としての
転写材Pを加熱してトナー画像の加熱定着がなされる。
【0109】a.発熱層1 発熱層1はニッケル、鉄、強磁性SUS、ニッケル−コ
バルト合金といった強磁性体の金属を用いるとよい。
【0110】非磁性の金属でも良いが、より好ましくは
磁束の吸収の良いニッケル、鉄、磁性ステンレス、コバ
ルト−ニッケル合金等の金属が良い。
【0111】その厚みは次の式で表される表皮深さより
厚くかつ200μm以下にすることが好ましい。表皮深
さはσ[mm]は、励磁回路27の周波数f[Hz]と
透磁率μと固有抵抗ρ[Ωm]で σ=503×(ρ/fμ)1/2 と表される。
【0112】これは電磁誘導で使われる電磁波の吸収の
深さを示しており、これより深いところでは電磁波の強
度は1/e以下になっており、逆にいうと殆どのエネル
ギーはこの深さまでで吸収されている(図9)。
【0113】発熱層1の厚さは好ましくは1〜100μ
m、より好ましくは20μm〜100μmがよい。発熱
層1の厚みが1μmよりも小さいとほとんどの電磁エネ
ルギーが吸収しきれないため効率が悪くなる。更に、機
械的強度の観点からは、発熱層1の厚さは20μm程度
以上であることが望ましい。
【0114】また、発熱層1が100μmを超えると剛
性が高くなりすぎ、また屈曲性が悪くなり回転体として
使用するには現実的ではない。従って、発熱層1の厚み
は1〜100μm、機械的強度を考慮して、より好まし
くは20μm〜100μmの範囲で決定するのが好まし
い。本例では、50μmの厚さのニッケル電鋳メッキ品
を用いた。
【0115】b.弾性層2 弾性層2は、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシ
リコーンゴム等で耐熱性がよく、熱伝導率がよい材質で
ある。
【0116】「す」と称するこまかいモザイク状欠陥を
防止するのに、この弾性層が重要となる。すなわち、ワ
ックス内包トナー使用時においては、シャープメルト系
トナー使用時と異なり、弾性層2のやわらかさを反映し
てスリーブ10の表層である離型層3がトナー自体をつ
つみ込む効果が「す」を防止するのに必要である。
【0117】このために弾性層2としては、ゴム単体で
の硬度がJIS−A測定、すなわちJIS−K6301
のA型硬度計により規定される硬度にて30度以下、よ
り好ましくは25度以下、厚さは50μm以上より好ま
しくは100μm以上とする必要がある。
【0118】一方、弾性層2の厚さが500μmを超え
ると弾性層の熱抵抗が大きくなりすぎてしまい、クイッ
クスタートが実現困難(1000μm以上ではほぼ不可
能)となる。このため、弾性層2の厚さは500μm以
下とするのが望ましい。
【0119】また、弾性層2の熱伝導率λに関しては、
2.5×10-1〜8.4×10-1[W/m/℃](6×
10-4〜2×10-3[cal/cm・sec・de
g.])がよい。
【0120】熱伝導率λが2.5×10-1[W/m/
℃]よりも小さい場合には、熱抵抗が大きく、スリーブ
の表層(離型層3)における温度上昇が遅くなる。
【0121】熱伝導率λが8.4×10-1[W/m/
℃]よりも大きい場合には、硬度が高くなりすぎたり、
圧縮永久歪みが悪化する。
【0122】よって熱伝導率λは2.5×10-1〜8.
4×10-1[W/m/℃]がよい。より好ましくは3.
3×10-1〜6.3×10-1[W/m/℃](8×10
-4〜1.5×10-3[cal/cm・sec・de
g.])がよい。
【0123】本実施例ではゴム硬度が単体の硬度で10
度(JIS−A)、熱伝導率が4.2×10-1[W/m
/℃](1×10-3[cal/cm・sec・de
g.])、厚さが300μmのシリコーンゴムを用い
た。
【0124】c.離型層3 離型層3はフッ素樹脂、シリコーン樹脂、フルオロシリ
コーンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、PFA、P
TFE、FEP等の離型性かつ耐熱性のよい材料を選択
することができる。離型層3はこのようなフッ素系樹脂
のチューブ層あるいは樹脂コート層にすることができ
る。
【0125】前述の弾性層2のやわらかさを十分に表面
に伝えるためには、離型層3の厚さが最大でも100μ
m以下より好ましくは80μm以下である必要がある。
100μmより大きいと、トナーをつつみ込む効果が発
揮されなくなり、ベタ画像上に「す」が発生する。
【0126】更に、弾性層2が薄くなるに従い、離型層
3の厚さの上限値も小さくする必要が有る。本件出願人
の検討の結果では、離型層3の厚さは最大でも弾性層2
の厚さの1/3以下とする必要が有り、これ以上では弾
性層2のやわらかさが表層まで十分に反映されなくなっ
た。
【0127】一方、離型層3の厚さが5μmを下回る
と、弾性層に加わる機械的ストレスを緩和出来なくな
り、弾性層や離型層自体が劣化してしまう。このため、
離型層3の厚さの下限値として5μm以上、より好まし
くは10μm以上が必要である。
【0128】本実施例では離型層3として厚さ30μm
のPFAチューブを用いた。
【0129】上記弾性層2と離型層3相互の層厚の関係
をまとめると、弾性層2の厚さをt1、離型層3の厚さ
をt2としたとき、50μm≦t1≦500μm、5μ
m≦t2≦100μm、t1≧3×t2、であることが
好ましい。 d.断熱層4 また、図8の(b)に示すように、スリーブ10の構成
において、発熱層1のスリーブガイド部材面側(発熱層
1の弾性層2とは反対面側)に断熱層4を設けてもよ
い。
【0130】断熱層4としては、フッ素樹脂、ポリイミ
ド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PE
EK樹脂、PES樹脂、PPS樹脂、PFA樹脂、PT
FE樹脂、FEP樹脂などの耐熱樹脂がよい。
【0131】また、断熱層4の厚さとしては10〜10
00μmが好ましい。断熱層4の厚さが10μmよりも
小さい場合には断熱効果が得られず、また、耐久性も不
足する。一方、1000μmを超えると磁性コア17a
・17b・17c及び励磁コイル18から発熱層1まで
の距離が大きくなり、磁束が十分に発熱層1に吸収され
なくなる。
【0132】断熱層4は、発熱層1に発生した熱がスリ
ーブ10の内側に向かわないように断熱できるので、断
熱層4がない場合と比較して転写材P側への熱供給効率
が良くなる。よって、消費電力を抑えることができる。
【0133】D)端部フランジ23(a・b) 次に、端部フランジ23(a・b)について詳述する。
図10〜14に加圧ローラ30により、スリーブ10が
加圧を受ける際の変形の様子を示す。
【0134】図10は、加圧ローラ30による加圧を解
除した状態でのスリーブ10、及びスリーブ10を受け
る部分のフランジ23の断面形状を示すものである。こ
のように、ストレスを受けていない状態での、スリーブ
10の外径aは34mmである。bはフランジ23のス
リーブ外周面を保持する部分の内径bである。
【0135】これに対し、加圧ローラ30をスリーブ1
0に当接加圧した場合を図11〜図14に示す。
【0136】フランジ23のスリーブ外周面を保持する
部分の内径b(b≧a)は、小さすぎると図11のよう
にスリーブ10がフランジ内部で全く変形できず、フラ
ンジ内径bとほぼ同じ円の形状を維持する。
【0137】一方、大きすぎると、図12のようにスリ
ーブ10とフランジ23の間に摩擦力が働かなくなり、
フランジ23とスリーブ10を一体的に回転できなくな
る。
【0138】前者(図11)の場合には、従来例(図2
2)で説明したのと同様に、フランジ23との嵌合部と
加圧ローラ30の当接部分(ニップ形成部)とで、スリ
ーブ10になが手方向の歪みが生じ、耐久使用時におい
て、スリーブ10に加圧・加熱によるストレスが大きく
作用して、スリーブ10が疲労破壊を起こしてしまう。
【0139】一方、後者(図12)の場合に於いては、
スリーブ10とフランジ23がスリップを起こし、フラ
ンジ23(PPS,LCP,PI等の耐熱性樹脂を使
用)が削れて破損を起こしたり、スリーブ10の端部が
挫屈変形してクラックを生じる等の問題が発生する。
【0140】図13は上記スリーブ10の外径aとラン
ジ23の内径bの関係を適切に保ったときの、フランジ
23内でのスリーブ10の形状を示すものである。
【0141】本発明者等の検討の結果、具体的数値とし
てはフランジ23の内径bと、スリーブ10の外径aと
の間のギャップΔt(=b−a)が、0.3mm程度以
下となると,フランジ23内でスリーブ10の端部が十
分に変形できず、又、Δtが、1.0mm以上と成る
と、変形は十分にするが図11におけるスリーブ10の
変形後においてフランジ23と密着する部分が減少し、
この結果スリーブとフランジの間で十分な接触が得られ
ず、スリーブ10とフランジ23の間にスリップの発生
してしまうことが判明した。
【0142】一方、Δtが0.3mm〜1.0mmの間
では、スリーブ10がフランジ23内で十分に変形で
き、かつ、スリーブ10の変形時の戻り力で、スリーブ
10とフランジ23の間に十分な摩擦力が生じた(図1
3)。
【0143】このギャップΔtの最適値は主にスリーブ
10の外径、および厚さに依存するものと思われるが、
厚さ20μm〜100μm程度の金属スリーブ(Ni,
Co−Ni,鉄,SuS等)においては外径25mm〜
50mm位の範囲で、ほぼ下式 0.009≦Δt/a≦0.03 を満足することにより、適切なギャップΔtを得ること
ができた。
【0144】即ち、回転定着部材であるスリーブ10の
両端をフランジ23a,23bにより外周面上から保持
するとともに、このフランジ23a,23bの内径を、
上記のようにスリーブ10の外形よりも所定の大きさだ
け大となる関係とすることで、回転時におけるニップ部
近傍でのスリーブ10の変形ストレスを軽減し、スリー
ブ10の耐久性を大幅に向上することが可能となった。
しかも、このとき同時にフランジ23a,23bによ
り、適度にスリーブ10を保持することが出来、安定し
た定着性能を得ることが出来た。
【0145】本発明者等の耐久試験の結果では、一例と
してスリーブ10の外径a=34mmに対し、フランジ
23のスリーブ受け面内径をb=34.7mmとしたと
ころ、約30万枚のフルカラープリントにおいても、ス
リーブ10の破損が生じることはなかった。
【0146】一方、比較例として、b=34.1mmと
したところ、約5万枚のフルカラープリントにおいて、
加圧ローラ30によるニップ形成部よりも外側のスリー
ブ10の表面、すなわち長手方向でスリーブ10がフラ
ンジ23に支持される手前部分に、クラックが発生し
た。
【0147】〈第2の実施例〉以下、図15を用いて、
フランジ23(a,b)をさらに改良した第2の実施例
を説明する。
【0148】図15においてフランジ23bには、スリ
ーブ10の端部を外周面で受ける、外周面支持部50
と、スリーブ長手方向にてスリーブ端面を支持する、長
手方向支持部51を具備している。このうち、長手方向
支持部51は、スリーブ10の長手方向における定着装
置の中でのガタつきが存在する為、必ず一方向に片寄り
左右いずれかのフランジ23aまたは23bに対してス
リーブ10が押される構造となる。これは、スリーブ1
0や加圧ローラ30の真円度、加圧のバランス、スリー
ブ10と加圧ローラ30のアライメント、その他により
スリーブ10の片寄り方向が決まることとなる。図15
は、スリーブ10が図面上で相対的に右方向にずれ、右
側のフランジ23bに押し当たった場合を示している。
【0149】ところが、スリーブ10は第1の実施例の
説明における図13、図14から明らかなように、回転
に伴って、常にニップ部分ではフランジ23から離れ、
逆に、ニップと反対側では、フランジ23と摩擦力によ
り強く密着する、という動作を繰り返す。したがって、
ニップと反対側面においては、長手方向支持部51の長
さW(フランジ直径方向での幅)はスリーブ10の厚さ
Sよりも大きくなければ、スリーブ10を長手方向に押
し戻すことができない。
【0150】しかも、図15に示すような関係に、フラ
ンジ23b(23aも同様)の外周面支持部50と長手
方向支持部51のなす角度θを設定することで、この押
し戻しをスムーズに行なうことが可能となる。
【0151】θを、90度よりも大とすれば良い。即
ち、θ>90°とすることにより、スリーブ10の端面
(断面)はスリーブ長手方向支持部51に対し、面で接
触することがなくなり、エッジ部Eが、支持部51の形
成する斜面を点接触によりすべるように移動可能とな
る。
【0152】このため、θ=90°の場合では、スリー
ブ10が回転する際に、スリーブ10の断面と支持部5
1の摩擦が大きいため、ニップ部でスリーブ10の端部
が変形する際に、フランジ内部で、スリーブ10のスム
ーズな動き(変形)が阻害されることがあったが、θ>
90°とすることで、この問題がなくなり、常にスリー
ブ10の回転がスムーズに行なえるようになった。
【0153】尚、θ<90°では、スリーブ10の端部
が、フランジ23における支持部50と51の間の鋭角
部にはまりこみ、スリーブ10が、回転する際に、図1
3のように、変形することが阻害された。
【0154】一例として、本実施例では、フランジ23
のスリーブ外周面支持部50の幅を5mm、スリーブ長
手方向指示部51の幅を1.5mm,θ=120°とす
ることで、スリーブ10の良好な耐久性能が得られた。
【0155】本実施例のように、スリーブ10の全長
は、加圧ローラ30の当接面長さよりも大きく設定さ
れ、かつ、スリーブ10は、その両端部を外周面側から
支持部材であるフランジ23a・23bにより支持され
る構造とし、かつ、フランジのスリーブ外周面支持部5
0よりも外側に、スリーブの長手方向側からスリーブ端
部を支持するためのスリーブ長手方向支持面51を形成
し、該長手方向支持面により、長手方向の外側からフラ
ンジがスリーブ端面を支持する構造とするとともに、こ
のとき該フランジのスリーブ長手方向支持部51の、フ
ランジ直径方向での幅Wを、スリーブの厚さSよりも大
とした形状とすることで、回転時におけるニップ部近傍
でのスリーブ10の変形ストレスを軽減し、スリーブ1
0の耐久性を大幅に向上することが可能となった。しか
も、このとき同時にフランジ23a,23bにより、適
度にスリーブ10を保持することが出来るので、安定し
た定着性能を得ることが出来た。
【0156】〈第3の実施例〉第1、第2の実施例にお
いて、スリーブ10とフランジ23に関して、耐久時に
良好な動作を行なえるための構造を説明した。一方、ス
リーブ10はフランジ23により、長手方向の動きを規
制されるが、長手方向に垂直な方向に関しては、正確な
位置規制をするのは困難である。それは、スリーブ10
がスリーブガイド部材16a,16bに内側からガイド
されることで規制されており、スリーブ10自体が、円
周方向に回動する際に、加圧ローラ30と当接するニッ
プ部、ニップ部より外側、といった場所に応じて異なっ
た形に変形を受けるためで、しかも、スリーブガイド部
材16a,16bとスリーブ10のない周の間には、ス
リーブ10がスムーズに従動回転するための若干のすき
間を設けているためである。
【0157】このため、図16に示すようにスリーブ1
0の円周部の位置は、図中10−A,10−Bのように
若干変化する。
【0158】したがって、用紙Pに対し定着ニップの入
口、出口の部分において、スリーブ10の当接する状態
が変化してしまい、定着部分において、スリーブ10の
当接する状態が変化してしまい、定着性能や定着後の用
紙Pの分離状態、分離後の紙パスに影響を及ぼすことが
あった。
【0159】これに対し、図17に示すように、フラン
ジ23b(23aも同様)に対し、端部ホルダー42b
(図中、右フランジ23bに対するホルダー42bのみ
記したが、左フランジ23aに対しても同様にホルダー
42aを適用する)を嵌合させ、この端部ホルダー42
bを、加圧用剛性ステイ22(ステイ22は図16のス
リーブガイド部材16a,16bに対し、直接、または
良熱伝導性部材40を介して一体的に固定されている)
に、ビス43等で一体的に固定することにより、最終的
にスリーブガイド部材16a,16bと端部ホルダー4
2a,42bが一体的に固定され、スリーブ10はスリ
ーブガイド部材16a,16bだけでなく、端部におい
て、フランジ23a,23bを介して端部ホルダー42
a,42bによっても位置を規制することが可能とな
る。図16ではスリーブガイド部材16aが、ニップ部
の摺動面も兼ねる。このとき、端部ホルダー42bは固
定(42aも同様)、スリーブ10とフランジ23b
(23aも同様)は一体的に回転し、端部ホルダー42
a,42bとフランジ23a,23bは、嵌合部で摺動
することになるため、嵌合部におけるフランジ23a,
23bの内径cと、端部ホルダー42a,42bの外径
dの間には、適切なギャップc−dが必要である。
【0160】本実施例では、図17においてc=32.
4mm、d=32.0mmとし、ギャップを0.4mm
取ることで、スムーズな摺動性を得ながら、かつスリー
ブ10の長手方向に垂直な方向における位置を、所定の
位置に規制することができた。
【0161】尚、端部ホルダー42a,42bの材質と
しては、フランジ23a,23bと同様にPPS,LC
P,PI等の耐熱樹脂を用いても良く、この他に適切な
金属材質(しんちゅう等)を用いても良い。
【0162】また、本実施例では、第1の実施例中で述
べたように、加圧用剛性ステイ22は、図16のように
スリーブガイド部材16bの内面平面部に直接あるいは
良熱伝導性部材40を介して当接させ、これらをバネ2
5a,25bにより端部ホルダー42a,42bを介し
て一体的に加圧ローラ30の方向に押しつけており(図
2,図3参照)、かつ、スリーブガイド部材16a,1
6bも互いに接合されているという構成を成している。
【0163】従って、図17のような構成とすること
で、結果的にバネ25a、25bの力は、そのままニッ
プ部において、スリーブ10と加圧ローラ30の間に直
接作用し、かつ、スリーブガイド部材16a,16bと
端部ホルダー42a,42bは、良好な寸法精度にて互
いに固定されるので、各部材間の正確な位置出しが可能
となっている。
【0164】また、図2に示すように、サーミスタ26
もスリーブガイド部材16b(または16a)に保持す
ることで、スリーブ10とサーミスタ26の位置関係
も、上記と同様にして安定化でき、スリーブ10の正確
な温度制御が可能となる。
【0165】この他の方法として、例えば加圧用剛性ス
テイ22、スリーブガイド部材16a,16b等をあら
かじめ一体構造で成形したり、また、更に端部ホルダー
42a,42bをこれらと一体的に成形するなどの工夫
を行なっても良いのは言うまでもない。
【0166】〈第4の実施例〉本実施形態例は加熱体と
してセラミックヒータを用いたスリーブ加熱方式の定着
装置例である。図18は本例における定着装置100の
横断面模型図である。
【0167】16cは横断面略半円弧状樋型の耐熱性・
断熱性のスリーブガイド(フィルムガイド)、12は加
熱体としてのセラミックヒータであり、スリーブガイド
16cの下面の略中央部にガイド長手に沿って形成具備
させた溝部に嵌入して固定支持させてある。
【0168】11は円筒状もしくはエンドレス状の、可
とう性・耐熱性フィルム(定着フィルム)のスリーブ
(定着スリーブ)である。このスリーブ11はスリーブ
ガイド16cにルーズに外嵌させてある。
【0169】22はスリーブガイド16cの内側に挿通
した加圧用剛性ステイである。
【0170】30は加圧部材で、本例は弾性加圧ローラ
であり、芯金30aにシリコーンゴム等の弾性屠30b
を設けて硬度を下げたもので、芯金30aの両端部を装
置の不図示の手前側と奥側のシャーシ側板間に回転自由
に軸受け保持させて配設してある。表面性を向上させる
ために、さらに外周に、PTFE、PFA、FEP等の
フッ素樹脂層30cを設けてもよい。
【0171】定着ニップNを形成するための加圧手段及
びスリーブ端部の保持手段(端部フランジ)については
第1の実施例と同様の構成を取り、ここでの説明は省略
する。
【0172】加圧ローラ30の第1の実施例と同様のも
のを用いることが出来る。ここで、加圧ローラ30は駆
動手段Mにより矢示の反時計方向に回転駆動される。こ
の加圧ローラ30の回転駆動による加圧ローラ30とス
リーブ11の外面との摩擦力でスリーブ11に回転力が
作用して、スリーブ11がその内面が定着ニップ部Nに
おいてセラミックヒータ12の下面に密着して摺動しな
がら矢示の時計方向に加圧ローラ30の回転周速度にほ
ぼ対応した周速度をもってスリーブガイド16cの外回
りを回転状態になる(加圧ローラ駆動方式)。
【0173】定着ニップ部Nにおけるセラミックヒータ
12の下面とスリーブ11の内面との相互摺動摩擦力を
低減化させるために定着ニップ部Nのセラミックヒータ
12の下面に潤滑部材40を配設し、スリーブ11の内
面との間に耐熱性グリスなどの潤滑剤を介在させる。
【0174】プリントスタート信号に基づいて加圧ロー
ラ30の回転が開始され、またセラミックヒータ12の
ヒートアップが開始される。加圧ローラ30の回転によ
るスリーブ11の回転周速度が定常化し、セラミックヒ
ータ12の温度が所定に立ち上がった状態において、定
着ニップ部Nのスリーブ11と加圧ローラ30との間に
被加熱材としてのトナー画像tを担持させた転写材Pが
トナー画像担持面側をスリーブ11側にして導入される
ことで、転写材Pは定着ニップ部Nにおいてスリーブ1
1を介してセラミックヒータ12の下面に密着して定着
ニップ部Nをスリーブ11と一緒に移動通過していく。
【0175】その移動通過過程においてセラミックヒー
タ12の熱がスリーブ11を介して転写材Pに付与され
てトナー画像tが転写材P面に加熱定着される。定着ニ
ップ部Nを通過した転写材Pはスリーブ11の面から分
離されて搬送される。
【0176】スリーブ11は図19に示す様に、基層2
01、弾性層202、離型層203から成る。ここで基
層201は、耐久性向上のため、従来よく用いられるP
I等の樹脂フィルムの代わりに、60μm厚のSUS製
金属フィルムを用いた。
【0177】また、弾性層202は、カラー画像定着時
の定着性向上のため、必要に応じて設けられるもので、
白黒専用プリンター等の定着装置においては、必ずしも
必要ではない。本実施例では、弾性層202としおて、
ゴム硬度10度(JIS−A)、熱伝導率4.1860
5×10-1W/m・℃(1×10-3[cal/cm.s
ec.deg])、厚さ200μmのシリコーンゴムを
用い、離型層203は厚さ20μmのPFAコート層を
用いた。離型層203としては、第1の実施例と同様の
PFAチューブを用いても良い。PFAコートは、厚さ
が薄く出来、材質的にもPFAチューブに比較してトナ
ーをつつみ込む効果がより大きい点が優れている。一
方、機械的及び電気的強度はPFAチューブがPFAコ
ートよりも優っているので、場合により使い分けること
が出来る。
【0178】加熱体としてのセラミックヒータ12は、
スリーブ11・転写材Pの移動方向に直交する方向を長
手とする低熱容量の横長の線状加熱体である。チッ化ア
ルミニウム等でできたヒータ基板12aと、このヒータ
基板12aの表面にその長手に沿って設けた発熱層12
b、例えばAg/Pd(銀/パラジウム)等の電気抵抗
材料を約10μm、幅1〜5mmにスクリーン印刷等に
より塗工して設けた発熱層12bと、更にその上に設け
たガラスやフッ素樹脂等の保護層12cを基本構成とす
るものである。
【0179】前記セラミックヒータ12の発熱層12b
の両端間に通電されることで発熱層12bは発熱してヒ
ータ12が急速に昇温する。そのヒータ温度が不図示の
温度センサに検知され、ヒータ温度が所定の温度に維持
されるように不図示の制御回路で発熱層12bに対する
通電が制御されてヒータ12は温調管理される。
【0180】前記セラミックヒータ12は、スリーブガ
イド16cの下面の略中央部にガイド長手に沿って形成
具備させた溝部に保護層12c側を上向きに嵌入して固
定支持させてある。スリーブ11との接触する定着ニッ
プ部Nにはこのセラミックヒータ12の摺動部材40の
面とスリーブ11の内面が相互接触摺動する。
【0181】上記構成の装置において、スリーブ11と
加圧ローラ30を総圧147.1N(15kg)で当接
させ、略8mmのニップを形成させた。
【0182】上記構成の装置においても、スリーブ11
とスリーブガイド16cの関係は前述の第1〜第3の実
施例における場合と全く同様である。ここで、第1の実
施例に示したのと同様の条件でフランジ部材23a,2
3bをスリーブ11の両端に配設したところ、一例とし
て、スリーブ11とフランジ部材のギャップΔtを0.
6mmに設定した結果、約30万枚のプリント耐久にお
いても、スリーブ11の破損が生じることはなかった。
【0183】なお、この第4の実施例の装置において、同
様にして第2、第3の実施例における構造と略等しい構
造及び作用効果を実現することが可能であることは言う
までもなく、ここでの詳細は省略する。
【0184】以上説明したように本実施例によれば、ス
リーブ10の両端をフランジ23a,23bにより外周
面上から保持するとともに、このフランジ23a,23
bの内径を、第1の実施例の様にスリーブ10の外形よ
りも所定の大きさだけ大となる関係とする、あるいは第
2の実施例の様に所定の形状とすることで、回転時にお
けるニップ部近傍でのスリーブ10の変形ストレスを軽
減し、スリーブ10の耐久性を大幅に向上することが可
能となった。しかも、このとき同時にフランジ23a,
23bにより、適度にスリーブ10を保持することが〕
出来るので、本実施例の様にフランジ23a,23bを
ホルダー42a,42bにより位置規制することで、ス
リーブ10がニップ近傍で変形を受けても、変形後の形
状を安定して保つことができ、安定した定着性能を得る
ことが出来た。
【0185】〈その他の例〉第1〜第4の実施例におけ
る電磁誘導発熱型の定着装置は、発熱部がニップに近く
特に熱応答性に優れているので、第1の実施例の図1に
おける様な1つの感光体を用いたプリント装置以外に
も、例えば4つの感光体を用いて一括でフルカラープリ
ントを行なうことの出来る、インラインタイプのプリン
ターにも好適に用いることが出来、高速度の連続プリン
ト時においても、本発明を用いることで、耐久性能の良好
な定着装置を提供することが可能となる。
【0186】本発明の加熱装置は、画像加熱定着装置と
してばかりではなく、画像を担持した記録材を加熱して
つや等の表面性を改質する像加熱装置、仮定着処理する
像加熱装置、シート状物を給送して乾燥処理・ラミネー
ト処理する等の加熱装置など、広く被加熱材の加熱処理
装置として使用できることは勿論である。
【0187】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、フ
ィルム状の回転体と、該回転体を導くガイド部材と、該
ガイド部材に対し該回転体を介して圧接ニップを形成す
る加圧部材と、該回転体を昇温せしめ該回転体の回転と
共に該ニップ内を搬送される被加熱材を加熱する加熱手
段とを有する加熱装置、及び該加熱装置を画像の加熱定
着装置として備えた画像形成装置について、上記のフィ
ルム状の回転体の耐久時における疲労劣化を防止して、
装置の耐久性を向上させることができ、常に安定した加
熱性能、定着性能を得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施例における画像形成装置の概略構
成模型図
【図2】 第1の実施例における定着装置の要部の横断
側面模型図
【図3】 同装置の要部の正面模型図
【図4】 同装置の要部の縦断正面模型図
【図5】 磁場発生手段部分の斜視模型図
【図6】 交番磁束の発生の様子を示す模式図
【図7】 安全回路図
【図8】 スリーブの層構成模型図
【図9】 発熱層深さと電磁波強度の関係図
【図10】 スリーブと端部フランジの関係説明図(そ
の1)
【図11】 スリーブと端部フランジの関係説明図(そ
の2)
【図12】 スリーブと端部フランジの関係説明図(そ
の3)
【図13】 スリーブと端部フランジの関係説明図(そ
の4)
【図14】 スリーブと端部フランジの関係説明図(そ
の5)
【図15】 第2の実施例における定着装置のスリーブ
と端部フランジの関係説明図
【図16】 第3の実施例における定着装置のスリーブ
と端部フランジの関係説明図(その1)
【図17】 第3の実施例における定着装置のスリーブ
と端部フランジの関係説明図(その2)
【図18】 第4の実施例における定着装置の要部の横
断側面模型図
【図19】 スリーブの層構成模型図
【図20】 従来例の定着装置の要部の横断側面模型図
【図21】 スリーブと端部フランジの関係説明図(そ
の1)
【図22】 スリーブと端部フランジの関係説明図(そ
の2)
【符号の説明】
10・・スリーブ 16a,16b・・スリーブガイド
部材 17a〜17c・・磁性コア 18・・励磁コイ
ル 22・・加圧用剛性ステイ 23a,23b・・フ
ランジ 25a,25b・・加圧バネ 30・・加圧ロ
ーラ 40・・良熱伝導性部材 41・・潤滑部材1
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮本 厳恭 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 早川 辰郎 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 Fターム(参考) 2H033 AA23 AA24 BA31 BB12 BB18 BB29 BB30 BB33 BB34 BE03 BE06 CA06 CA07 CA23 CA38 3K058 AA45 BA18 DA04 DA21 GA03 GA06 3K059 AB19 AD34 CD66 CD75

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】フィルム状の回転体(以下スリーブと称
    す)と、該スリーブを導くガイド部材と、該ガイド部材
    に対し該スリーブを介して圧接ニップを形成する加圧部
    材と、該スリーブを昇温せしめ該スリーブの回転と共に
    該ニップ内を搬送される被加熱材を加熱する加熱手段と
    を有する加熱装置において、 前記スリーブの全長は、前記加圧部材の当接面長さより
    も大きく設定され、かつ、該スリーブは、その両端部を
    外周面側から支持部材であるフランジにより支持される
    構造とし、 該スリーブの端部における外径をa、該フランジの内径
    をb(b>a)としたとき、前記加圧部材により該スリ
    ーブを所定の圧力で加圧した際に、該フランジにて支持
    されるスリーブ端部の断面形状が、前記加圧部材の当接
    により形成されるニップ部におけるスリーブ断面形状に
    倣う方向に変形可能となるように、該スリーブの端部に
    おける外径a、該フランジの内径bの間に所定量のギャ
    ップΔt=b−aを設けた、ことを特徴とする加熱装
    置。
  2. 【請求項2】請求項1において、前記Δtとaの関係
    が、 0.009≦Δt/a≦0.03 であることを特徴とする加熱装置。
  3. 【請求項3】フィルム状の回転体(以下スリーブと称
    す)と、該スリーブを導くガイド部材と、該ガイド部材
    に対し該スリーブを介して圧接ニップを形成する加圧部
    材と、該スリーブを昇温せしめ該スリーブの回転と共に
    該ニップ内を搬送される被加熱材を加熱する加熱手段と
    を有する加熱装置において、 前記スリーブの全長は、前記加圧部材の当接面長さより
    も大きく設定され、かつ、該スリーブは、その両端部を
    外周面側から支持部材であるフランジにより支持される
    構造とし、かつ、該フランジのスリーブ外周面支持部よ
    りも外側に、スリーブの長手方向側からスリーブ端部を
    支持するためのスリーブ長手方向支持面を形成し、該長
    手方向支持面により、長手方向の外側からフランジがス
    リーブ端面を支持する構造とするとともに、このとき該
    フランジのスリーブ長手方向支持部の、フランジ直径方
    向での幅Wを、スリーブの厚さSよりも大としたことを
    特徴とする加熱装置。
  4. 【請求項4】請求項3において、前記フランジの長手方
    向の断面形状における、スリーブ外周面側の支持面と、
    該フランジのスリーブ長手方向支持面のなす角θが、9
    0°以上であることを特徴とする加熱装置。
  5. 【請求項5】フィルム状の回転体(以下スリーブと称
    す)と、該スリーブを導くガイド部材と、該ガイド部材
    に対し該スリーブを介して圧接ニップを形成する加圧部
    材と、該スリーブを昇温せしめ該スリーブの回転と共に
    該ニップ内を搬送される被加熱材を加熱する加熱手段と
    を有する加熱装置において、 前記加熱装置のスリーブの全長は、前記加圧部材の当接
    面長さよりも大きく設定され、かつ、該スリーブは、そ
    の両端部を支持部材であるフランジにより支持される構
    造とし、更に、前記フランジの長手方向における、スリ
    ーブと反対側面から、該フランジを介して前記スリーブ
    端部を支持するための端部ホルダーを設けたことを特徴
    とする加熱装置。
  6. 【請求項6】請求項5において、前記端部ホルダーは、
    前記スリーブ内側に有って、スリーブの回転を導くため
    の前記ガイド部材に対し、一体的に固定支持されている
    ことを特徴とする加熱装置。
  7. 【請求項7】請求項6において、前記端部ホルダーと、
    前記加圧部材を端部から支持する支持部材とを、加圧手
    段により相対的に加圧することで、前記圧接ニップを形
    成することを特徴とする加熱装置。
  8. 【請求項8】請求項1から7の何れかの加熱装置におい
    て、前記スリーブは、厚さ20μm〜100μmの可と
    う性を有する薄層金属を基材として用いたものであるこ
    とを特徴とする加熱装置。
  9. 【請求項9】請求項1から8の何れかの加熱装置は、前
    記被加熱材が画像を担持した被記録材であり、該被記録
    材上の画像を加熱して定着する、或いは仮定着する、或
    いはつや等の表面性を改質する像加熱装置であることを
    特徴とする加熱装置。
  10. 【請求項10】被記録材上に未定着画像を形成担持させ
    る画像形成手段部と、被記録材上の未定着画像を加熱定
    着させる定着手段を有する画像形成装置において、前記
    定着手段が請求項1から8の何れかに記載の加熱装置で
    あることを特徴とする画像形成装置。
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