WO2009107246A1

WO2009107246A1 - 皮革様シートおよびその製造方法

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Publication number: WO2009107246A1
Application number: PCT/JP2008/053726
Authority: WO
Inventors: 佐々木　邦彦; 敏彦坂本
Original assignee: 帝人コードレ株式会社
Priority date: 2008-02-26
Filing date: 2008-02-26
Publication date: 2009-09-03
Also published as: EP2248941A1; CN101965423A; EP2248941B1; KR20100126653A; CN101965423B; US20110008575A1; EP2248941A4; US8465800B2; KR101426118B1

Abstract

本発明の目的は、インクジェット方式等によって描かれる微細な画像を表面に有し、かつ実用上十分な物性を有する皮革様シートを提供することにある。本発明は、(i)繊維質基体および(ii)その上の多孔質層を有する皮革様シートであって、多孔質層の表面には直径1μm以上の開放孔を有し、かつ多孔質層の表面には解像度5ドット/mm以上の画像を有する皮革様シートおよびその製造方法である。

Description

明細書皮革様シートおよびその製造方法技術分野

本発明は、微細な画像を表面に有する皮革様シートに関する。さらに詳しくは画像が鮮明で物性に優れた皮革様シートおよびその製造方法に関する。背景技術

従来、皮革様シートは多岐に渡る用途に使用され、なかでも表面に高分子弾性体層を有するいわゆる銀付調人工皮革はその外観表現に工夫がなされてきた。その外観表現方法としては、シート表面にグラビア印刷、ローラー印刷などの従来から知られている印刷技術で着色図柄を施す方法、あるいは転写による着色図柄を施す方法、あるいは捺染などによる着色図柄を施す方法が採用されている。これらの図柄はグラビアロール、彫刻ロール、捺染用スクリーンなどの図柄によりシート表面に表現されるものであるが、これらの色合い、図柄を変更するにはロールへの図柄の彫刻、さらには調色を繰り返す必要がある。また、これらの従来方法では、一回の工程で一色のみ着色するという制約など、その図柄の表現範囲、色合いには限度があり、数多くの繊細な図柄をシート表面に施すには多大な費用と時間を費やさなければならなかつた。

一方、近年になり印刷分野ではインクジエツトプリン夕一によりコンピュータ一上で描いた情報図柄を多色かつ短時間で印刷する技術が普及してきている。このインクジェット方式の印刷は、先に述べた従来方式のグラビア印刷、ローラー印刷、転写、あるいは捺染と異なり、短時間で多様な色彩で多様な図柄を鮮明に印刷することができる点に特徴がある。しかし紙に対する印刷と異なり、皮革様シートに印刷するのは容易ではなく、各種試みがなされているのが現状である。例えば、特許文献 1には、天然皮革などの皮革類の表面に水性下塗り剤層を形成し、その上にアルミナ水和物を含有する微多孔質インク受容層を設け、微多孔質インク受容層上にインクジエツト方式によって描画した皮革製品が記載されている。しかしながら、この皮革製品における多孔とはアルミナ水和物に依存する nmオーダーの多孔である。この皮革製品は、微多孔質インク受容層のインク受容性（染着性）力 s十分でないため、この方法を人工皮革表面に適用しても、鮮明な図柄が形成されにくく、しかも図柄の色調も深みのないものとなり易い。また、この方法ではアルミナ水和物が摩擦により脱落し易く、耐摩耗性の点でスポーツシューズなどに加工される人工皮革に適用するだけの実用性を持たないものであつた。

また、特許文献 2では、繊維質基体上の易染層上に染料インクを用いてインクジェット方式により描画し、その描画された画像上に透明または半透明の保護層を有する皮革様シートの製造方法力 ¾|案されている。しかしながら、この皮革様シートは、染料インクを使用しているために、特に屋外で使用するシューズ、競技用ポール、あるいは鞫類に加工されて実使用された場合、耐光堅牢性が十分でなく、インクジエツト方式で得られた繊細でかつ鮮明な画像を長時間保持できないという欠点を有する。

さらに、染料を使用しているため、耐色移行性が充分でないという欠点を有する。即ち、皮革様シートから加工された靴、ポール、鞫、あるいは手袋などが表面同士で接触する場合に、染料が表面に移行し、接触された相手を汚染するという問題がある。

この問題を解決するためには、染料インクではなく、顔料インクを着色剤として使用すること力 S考えられる。顔料ィンクをインクジェット方式に採用した場合には、画像が屋外使用される用途でも長期間保持できると考えられるためである。しかしながら、顔料インクを使用した場合、表面の耐摩耗性、耐剥離性、耐屈曲性力低下するという欠点がある。即ち、顔料インクで皮革表面に図柄を施した場合、図柄が施されている層と隣接する層との接着が、接着性を阻害する顔料粒子のために極めて弱くなるという欠点がある。特に皮革様シートとして靴ゃ鞫などに加工成型された場合には、屈曲を受けた部分が剥離する、あるいは屈曲を受けた部分の画像が脱落するなどの問題が発生する。以上のように、未だ微細な画像を表面に有する皮革様シートは、耐摩耗性、耐光堅牢性、耐色移行性、耐摩耗性、耐剥離性、耐屈曲性などについて、改良の余地がある。

(特許文献 1 ) 特開平 9一 5 9 7 0 0号公報

(特許文献 2 ) 特開平 1 1一 1 5 8 7 8 2号公報発明の開示

そこで、本発明の目的は、インクジェット方式等によって描かれる微細な画像を表面に有する皮革様シ一卜を提供することにある。また本発明の目的は、耐摩耗性、耐光堅牢性、耐色移行性、耐摩耗性、耐剥離性および耐屈曲性に優れ、人ェ皮革の各種用途に耐え得る皮革様シートを提供することにある。さらに本発明の目的は、該皮革様シートの製造方法を提供することにある。

本発明者は、皮革様シートの表面に微細な画像を形成する方法について検討した。その結果、皮革様シートの多孔質層の表面に開放孔を形成し、インクジエツト法で画像形成すると、意外にも、極めて鮮明な画像が形成され、かつ画像は、多孔質上に強固に保持され、耐摩耗性、耐光堅牢性、耐色移行性、耐摩耗性、耐剥離性および耐屈曲性に優れた皮革様シ一トが得られることを見出し、本発明を兀成し 7こ。

即ち本発明は、（i)繊維質基体および（i i)その上の多孔質層を有する皮革様シ —卜であって、多孔質層の表面には直径 1 xm以上の開放孔を有し、かつ多孔質層の表面には解像度 5ドッ卜/ mm以上の画像を有する皮革様シートである。また本発明は、（i)繊維質基体上に高分子弾性体の多孔質層を形成し、

(i i)多孔質層の表層を除去して開放孔を形成し、

(i i i)開放孔を設けた多孔質層の表面にインクジエツト法により画像を形成する、各工程を含む皮革様シートの製造方法である。図面の簡単な説明

図 1 多孔質層の断面形状の一例である。 1 繊維質基体

2 多孔質層

3 空隙発明を実施するための最良の形態

以下に本発明について詳細に説明する。

〈皮革様シート〉

(繊維質基体）

本発明の皮革様シートは、繊維質基体上に多孔質層を有する。繊維質基体として、繊維集合体を使用することができる。繊維集合体には、繊維集合体に高分子弾性体を含浸させた複合繊維集合体も含まれる。繊維集合体は、従来から人工皮革用として用いられているものが好ましい。

繊維集合体として、不織布や織編物が挙げられる。繊維集合体を構成する繊維として、例えばポリエステル、ポリアミドなどの合成繊維、綿、麻、羊毛などの天然繊維、またはレーヨンなどの半合成繊維が挙げられる。また、これらの 2種以上の混合であってもよい。なかでも繊維質基体は、不織布あるいは不織布に高分子弾性体を含浸させた複合不織布であることが好ましい。

繊維集合体は、極細繊維を含むものであることが好ましい。極細繊維は、単繊維繊度が好ましくは 0 . 3デシテックス以下、より好ましくは 0 . 1〜0 . 0 0 0 1デシテックスの繊維である。

繊維集合体として、極細繊維が交絡された不織布が好ましい。単繊維繊度が細くなることにより、得られる繊維質基体の表面が平滑となり、インクジェット法等で描かれる微細な図柄をより引き立たせることが可能となる。

このような極細繊維は、従来から知られている方法によつて製造することができる。例えば、海島紡糸法、混合紡糸法、分割型複合紡糸法などにより合成繊維を製造する方法を挙げることができる。これらの繊維は比較的太い極細化前の親繊維を短繊維となした後、従来から知られているカード機等による開繊、ニードル機等による交絡により不織布とし、後に極細化することによつて極細繊維から成る不織布となる。極細化の方法としては、海島紡糸法および混合紡糸法で得られた親繊維から極細繊維となる以外の成分を抽出または分解除去する方法が挙げられる。また分割型複合紡糸法により得られた親繊維を機械的、または化学的に分割する方法を採用することができる。抽出または分解除去されるポリマー成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、あるいはこれらの共重合体が挙げられる。極細繊維となるポリマー成分としてはポリエチレンテレフ夕レート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルや、ナイロン 6、ナイロン 6， 6などのポリアミドなどを挙げることができる。また効率的に生産する場合には、分割型複合紡糸を紡糸し直接ウェブ化した後、ニードル機等で交絡し、機械的分割処理するなどして極細不織布とすることが好ましい。

繊維集合体と高分子弾性体とからなる複合繊維集合体としては、繊維集合体に高分子弾性体を含浸、凝固、乾燥させたものが挙げられ。高分子弾性体としては、例えば、ポリウレタン、ポリエステル系エラストマ一、ポリアミド系エラストマ一、ポリオレフイン系エラストマ一、あるいはポリブタジエン、ポリイソプレンなどの合成ゴムなどを挙げることができる。なかでも、耐摩耗性、弾性回復性、柔軟性等の面からポリゥレタンが好ましく用いられる。高分子弾性体は有機溶剤で溶解、あるいは分散された溶液、あるいは分散液として含浸に供される。好ましくは、これらの高分子は地球環境保護および作業環境保護のためにも水溶液、あるいは水分散として含浸に供されることが好ましい。

繊維質基体の厚さは、好ましくは 0 . 2〜5 mm、より好ましくは 0 . 4〜2. 5 mmである。

(多孔質層）

本発明の皮革様シートは、繊維質基体上に多孔質層を有する。多孔質層の厚みは、 0 . 0 5〜1 . 5 mmの範囲であることが好ましい。厚みが 0 . 0 5111111未満であると繊維質基体の凹凸が隠蔽しきれず表面の平滑性が得られ難い。また、多孔質層の厚みが 1 . 5 mmを超えると皮革様シートとしての風合いがゴム状となり好ましくない。

多孔質層の密度は、好ましくは 0 . 2〜0 . 7 g Z c m³、より好ましくは 0 . 3〜0 . 5 g Z c m³の範囲である。この範囲であると皮革様シートの風合いが良くなる。

多孔質層は、高分子弾性体により形成されていること力好ましい。高分子弾性体としては基体に用いる複合繊維集合体に用いるものを挙げることができる。多孔質層は、ポリウレタンにより形成されていること力 S好ましい。

ポリウレタンとしては、人工皮革用として使用されるものが好ましい。ポリウレタンとして、有機ジイソシァネート、高分子ジオールおよび鎖伸長剤の重合反応で得られる熱可塑性ポリゥレ夕ンを挙げることができる。有機ジィソシァネートとして、分子中にイソシァネート基を 2個含有する脂肪族、脂環族または芳香族ジイソシァネートが好ましい。有機ジイソシァネ一トとして、 4， 4 '—ジフエニルメタンジイソシァネート、 P—フエ二レンジイソシァネート、トルイレンジ

4 '一ジシク口へキシルメタンジィソシァネ一ト等が挙げられる。高分子ジォ一ルとして、グリコールと脂肪族ジカルボン酸の縮合重合で得られたポリエステルグリコール、ラクトンの開環重合で得られたポリラクトングリコール、脂肪族若しくは芳香族ポリカーボネートダリコール、またはポリエーテルダリコールの少なくとも 1種から選ばれた平均分子量が 5 0 0〜4， 0 0 0のポリマーグリコ一ルなどが挙げられる。鎖伸長剤として、イソシァネートと反応しうる水素原子を 2個含有する分子量 5 0 0以下のジオール、例えばエチレングリコール、 1 , 4 —ブタンジオール、へキサメチレングリコール、キシリレンダリコール、シクロへキサンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。

多孔質層の内部には複数の孔が形成されランダムに配置されている。孔の径は表面に近いほど小さくなる傾向がある。図 1に多孔質層の断面形状の一例を示す。孔は、連通孔でも独立孔であってもよレ^ 皮革様シートの風合いとしては連通孔であること力好ましい。

(開放孔）

多孔質層の表面には直径 1 //m以上の開放孔を有する。開放孔は、繊維質基体フ

から連通したものであることが好ましい。連通した孔を有する場合、通気性、透湿性に優れた皮革様シートとなる。

本発明の皮革様シートは、その多孔質層の表面に微細な画像を有する。本発明の皮革様シー卜では、画像を構成するィンクが多孔質層の表面に存在する孔内に入ることにより、単にフラットな表面にインクが塗布された場合と異なり、表面が磨耗されてもインクの脱落が防止されるものであると考えられる。また、フラッ卜な表面に付着したインクは皮革様シートの屈曲などにより剥離脱落し易いが、本発明の皮革様シートはィンクの剥離脱落が起こりにくレ^

開放孔の直径は 1〜 1 5 0 mが好ましく、より好ましくは 3〜 1 0 0 m、特に好ましくは 1 0〜8 0 mである。直径が 1 に満たない場合には、インク粒子が有効に孔内に入り込まないため、本発明の目的とする耐摩耗性、あるいは剥離強力を得ることができない。特に染色堅牢度に優れた顔料ィンクを用いた場合、インク粒子径が大きいためにより顕著である。また、開放孔の直径が大きすぎるとインク粒子が孔の内部に奥深く入り込むため、画像の微細さが阻害され、得られる皮革様シート表面の画像の解像度力低下する傾向にある。従って開放孔の平均直径は、好ましくは 1〜1 0 0 zm、より好ましくは 5〜7 0 mの範囲である。

またこの表面に存在する開放孔の形態は、皮革様シ一卜の表面状態とも関連している。表面が平滑な銀面を有する銀付調の皮革様シート（人工皮革）の場合には開放孔が少ない。銀付調の皮革様シートの開放孔の個数は、 1 c m²当り、好ましくは 1 0 0〜5 , 0 0 0個、より好ましくは 5 0 0〜3， 0 0 0個の範囲である。開放孔の平均直径は、好ましくは 5〜7 0 m、より好ましくは 1 0〜3 0 / mの範囲である。開放孔の個数および平均直径がこの範囲にあると、解像度の高い画像を形成できる。また表面の投影面積に対する開放孔の合計面積は 1 % 以下であること力 S好ましい。

ヌバック調の皮革様シート（人工皮革)、即ち、表面があたかも天然皮革の立毛（ヌバック）である場合には、その表面のほとんどが開放孔であることが好ましい。本発明の皮革様シートは、凹凸の多い表面を有するヌバック調の皮革様シートであっても、インクジエツトなどのように一方向から放出されるインクを用いた場合、微細な図柄を皮革様シート表面に形成でき、表面凹凸の影響は画像の解像度をあまり低下させず、逆に磨耗堅牢度等の耐久性が向上される効果がある。

(画像）

本発明の皮革様シ一卜は、多孔質層上に解像度 5ドット Zmm以上、好ましくは 1 0〜1 0 0ドット/ mmの画像を有する。このような細かい解像度の画像を印刷するためには 3 6 0ドット/ i n c hや 7 2 0ドット / i n c hのインクジエツトプリンタ一を用いることにより行うことができる。

また画像は、顔料インクによるものであることが好ましい。顔料インクを用いた場合には、染料ィンクより粒子が大きいので耐光性や色移行に優れるものとなる。顔料としては水系、溶剤系、あるいは UV硬化系のいずれのタイプを用いることもできる。また、本発明の皮革様シートは、従来のように平滑な表面ではなく、開放孔を有する表面に画像が形成されているため、接着強度等の物性にも優れたものとなる。

(保護層）

本発明の皮革様シートは、画像を有する多孔質層上に保護層を有することが好ましい。保護層は、高分子弾性体からなることが好ましい。保護層は、皮革様シ —卜の物性や風合い、表面の耐摩耗性を向上させる。また保護層と多孔質層との層間接着力も十分に得ることができる。本発明の皮革様シートは、表面に開放孔による凹凸を有し、さらにその平滑面にインクがあまり付着していないため、画像が存在するにもかかわらず、耐摩耗性および耐剥離性に優れる保護層を形成させることができる。

保護層として用いられる高分子弾性体としては、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステル系エラストマ一、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、あるいはポリ塩化ビニリデンなど力挙げられる。中でも物性面からはポリウレ夕ンが好ましい。画像の鮮明さを保っためにもこの高分子弾性体は透明あるいは半透明であることが好ましい。保護層の厚さは、好ましくは 0. 0 l mm以上、より好ましくは 0 . 0 2〜： L mmである。

保護層により、皮革様シート表面に描かれた画像を高度に保護することができ、皮革様シー卜表面の耐摩耗性ゃ耐色移行性が向上する。またシ一トを屈曲させた場合に、図柄が描かれている層にクラックが入りにくくなり、人工皮革のような屈曲性が要求される用途に好適に用いることができる。

また、本発明においては、印刷面に接する保護層の上に、さらに高分子弾性体からなる 1以上の保護層を設けてもよい。複数の保護層を積層することにより、シートの物性や風合いを向上させることができる。用いられる高分子弾性体としては、例えばポリウレタン、ポリエステル、ポリエステル系エラストマ一、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、あるいはポリ塩化ビ二リデンなどが挙げられる。

このような高分子弾性体層は、離型紙上で高分子弾性体層を形成させて接着剤により接着させても良い。また画像を有するシートを形成した後に、その表面に高分子弾性体の有機溶剤溶液、有機溶剤分散液、水溶液、あるいは水分散液をコ —ティングし次いで乾燥させて形成してもよい。コーティングの方法としては、ナイフコーティング、ロールコーティング、スプレー、あるいはグラビアコ一ティング等を採用することができる。

〈皮革様シートの製造方法〉

本発明の皮革様シートの製造方法は、以下の

(i)繊維質基体上に高分子弾性体の多孔質層を形成し、

(i i)多孔質層の表層を除去して開放孔を形成し、

(i i i)開放孔を設けた多孔質層の表面にィンクジェット法により画像を形成する各工程を含む。

(工程（i) ：多孔質層の形成）

工程（i)は、繊維質基体上に高分子弾性体の多孔質層を形成する工程である。繊維質基体は前述の通りである。繊維質基体は、不織布あるいは不織布に高分子弾性体を含浸させた複合不織布であることが好ましい。

高分子弾性体としては、例えば、ポリウレタン、ポリエステル系エラストマ一、ポリアミド系エラストマ一、ポリオレフイン系エラストマ一、あるいはポリブ夕ジェン、ポリイソプレンなどの合成ゴムなどを挙げることができる。この中では、耐摩耗性、弾性回復性、柔軟性等の面からポリウレタンが好ましい。

多孔質層は、基体上に高分子弾性体の有機溶剤溶液を塗布した後、湿式若しくは乾式で溶剤を除去して形成することができる。また、高分子弾性体の溶液に熱膨張性力プセル、不活性ガスを含有させ基体上に塗布することにより形成することができる。

例えば多孔質層は、高分子弾性体の良溶剤でありかつ水と相溶性の有機溶剤に、高分子弾性体を溶解させた溶液を、基体上に塗布した後、水浴中に浸漬して凝固させ形成することができる（湿式凝固法)。また多孔質層は、水と相溶性はないが高分子弾性体を溶解あるいは分散できる有機溶剤に、高分子弾性体を溶解あるいは分散させた液を、基体上に塗布した後、水の蒸発を妨げながら有機溶剤を選択的に蒸発させ形成することができる（乾式多孔成形法)。

また多孔質層は、高分子弾性体の水溶:液あるいは水分散液中に、熱膨張性微粒子カプセルを分散させ、基体上に塗布した後、乾燥しながら熱膨張性カプセルを膨張させ形成することができる。また、高分子弾性体の分子末端にアルコール性水素を有するプレボリマー、ポリイソシァネートおよび水を混合し、直後に基体上に塗布して形成することができる。

また多孔質層は、溶融した高分子弾性体中に不活性ガスを分散させ、基体上に塗布して発泡させ、形成することができる。また多孔質層は、ケミカル発泡剤を混合した高分子弾性体の溶液あるいは分散液を、基体上に塗布して発泡させ、形成することができる。なかでも、湿式凝固法が孔の形状を制御し易く、繊維質基体からの連通孔が得られ易いので特に好ましい。

従って、多孔質層を形成する工程（i)は、（i- 1)繊維質基体上に、高分子弾性体および有機溶剤を含有する溶液を塗布し、

(i - 2)得られた積層体を水中に浸漬して高分子弾性体を凝固させる、

工程を含むこと力 S好ましい。

多孔質層は、繊維質基体上に直接塗布して形成することができる。また、剥離性支持体上に形成された多孔質膜を、繊維質基体上に接着剤等により貼り合わせて多孔質層としても良い。

(工程（i i) ：開放孔の形成）

工程（i i)は、多孔質層の表層を除去して開放孔を形成する工程である。多孔質層は、図 1に示すように、内部には空隙を有するが、表面には高分子弾性体の表層が形成されている。本工程では、この表層を除去する。

開放孔は、多孔質層の表層に溶剤を塗布して、表層を溶解して除去することにより形成することができる。溶剤として、多孔質層を構成する高分子弾性体の良溶剤、貧溶剤、良溶剤と貧溶剤との混合溶剤、または良溶剤と非溶剤との混合溶剤が挙げられる。

ここで、良溶剤とは、高分子弾性体を溶解し得る溶剤を意味する。高分子弾性体が芳香族系の有機ジィソシァネー卜から合成されたポリゥレタンの場合、良溶剤としてジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジォキサンなどの極性溶剤が挙げられる。また貧溶剤とは、高分子弾性体を溶解はしないカ彭潤させ得る溶剤である。高分子弾性体がポリウレタンの場合、貧溶剤としてメチルェチルケトンなどのケトン類、ィソプロピルアルコールなどのアルコール類、トルエンなどの芳香族系溶剤が挙げられる。

非溶剤とは、高分子弾性体を溶解、膨潤させない溶剤である。高分子弾性体がポリウレタンの場合、非溶剤として水などが代表的である。

これらの溶剤を選択することにより、実際に使用される多孔質を構成する成分に対する溶解性を調整することができ、適度な開放孔を形成することができる。この場合、溶解性が強すぎる溶剤を使用すると、一旦は開放孔が形成されるが、その強すぎる溶解性のため溶剤の蒸発乾燥の過程で再び開放孔が閉ざされてしまう。一方、逆に溶解性が弱すぎる溶剤を使用すると、開放孔は形成されない。溶剤の塗布は、グラビアメッシュロール等で行なうことができる。グラビアメッシュ口一ルのメッシュの大きさが、形成される開放孔の径の大きさに大きく影響を及ぼす。即ち、メッシュの細かいロールを用いれば相対的に小さい径の開放孔が得られるし、メッシュの粗いロールを用いれば相対的に大きい径の開放孔が得られる。また、塗布圧も、形成される開放孔の径の大きさに影響を及ぼす。即ち、塗布圧が大きければ、得られる開放孔は径力 S大きく、塗布圧が小さければ、得られる開放孔は径が小さいものとなる。

適正な溶剤の選択、ダラビアメッシュロールの選択、塗布圧の適正化により、多孔質層の表面に直径 1 m以上の開放孔を形成することができる。開放孔の平均直径は、好ましくは 1〜1 0 0 /m、より好ましくは 5〜7 0 m、さらに好ましくは 1 0〜 3 0 mの範囲である。

この方法によれば、表面が平滑な銀面を有する銀付調の皮革様シート（人工皮革）を製造することができる。またこの方法によれば、開放孔は均一になりやすくばらつきを抑えることができる。また開放孔が少なく解像度のきわめて高い画像を形成しやすい。好ましい銀面の開放孔の個数としては 1 c m²当り 1 0 0〜 3 , 0 0 0個の範囲である。また表面の投影面積に対する開放孔の合計面積は 1 %以下であることが好ましい。

また、開放孔は、多孔質層の表面を研削して表層を除去することにより形成することができる。研削は、多孔質層の表面をサンドペーパーなどで研削するか、スライサ一などで表面を切り落とすことにより行なうことができる。

この方法によれば、ヌバック的な表面、即ち、開放孔があたかも天然皮革の立毛（ヌバック）であるかのような表面である皮革様シートを得ることができる。この場合、その皮革様シート表面のほとんどが開放孔とる。このようなヌバック的な凹凸の多い表面を有する場合であっても、インクジェット法で画像を形成する場合には一方向から放出されるインクを用いるため、微細な図柄をその表面に形成でき、表面凹凸の影響は画像の解像度をあまり低下させず、逆に磨耗堅牢度等の耐久性が向上される。

(工程（i i i) ：画像形成）

工程（i i i)は、開放孔を設けた多孔質層の表面にインクジエツト法により画像を形成する工程である。

インクジェット法によるインクとしては、耐光堅牢性、耐色移行性の点から顔料インクが好ましい。顔料インクを用いた場合には、染料インクより粒子が大きいので、耐光堅牢性および耐色移行性に優れるものとなる。本発明の皮革様シートは、従来のように平滑な表面ではなく、開放孔を有する表面に画像が形成されているため、画像の接着強度が優れる。

顔料インクの分散媒としては、有機溶剤タイプ、水系タイプ、または UV硬化タイプのいずれのタイプを用いることもできる。

図柄は任意に選択することができ、文字、写真、デザイン画等を印刷することができる。

印刷は、インクジェットプリンターによって行なうことができる。インクジェットプリン夕一は、コンピューターの画像展開ュニッ卜から送られるデーターに基づいて開放孔の表面に図柄を印刷する。

印刷される画像の解像度は、好ましくは 5ドット/ mm以上、より好ましくは 1 0〜1 0 0ドット/ mmである。このような細かい解像度の画像を印刷するためには 3 6 0ドット Z i n c hや 7 2 0ドット/ i n c hのインクジエツトプリン夕ーを用いることにより行うことができる。この印刷された皮革様シートは、このまま製品となりうるが、インクジエツトプリン夕一により画像を形成した後、 8 0〜 1 5 0 °Cで約 2 0〜 6 0秒間、熱処理することが好ましい。

(保護層の形成）

また、本発明では画像を有する表面に、保護層を形成してもよい。保護層は、画像を有する皮革様シートの表面に直接、高分子弾性体の有機溶剤溶液、有機溶剤分散液、水溶液、あるいは水分散液をコーティングし、次いで乾燥させる方法などで形成することができる。コーティング方法としては、ナイフコーティング、ロールコーティング、スプレーあるいはグラビアコーティング等を採用することができる。

また離型紙上に高分子弾性体層をいつたん形成させて、画像を有する皮革様シ —トと接着させても良い。接着剤としては、従来から知られている接着剤が使用でき、その中でもポリウレタン系接着剤（ポリイソシァネート系接着剤）力 S好ましい。接着剤は、有機溶剤系あるいは水系のどちらも使用できる。

保護層の厚さは、好ましくは 0 . 0 1 mm以上、より好ましくは 0 . 0 2〜1 mm程度である実施例

以下、具体的に実施例によって本発明を詳細に説明する。なお、実施例中「部」および「％」とあるのは、いずれも重量基準であり、特性測定値は下記の方法で得られたものである。また、以下の例において耐光堅牢性、耐色移行性、耐磨耗性および剥離強力は次のような方法で測定した。

(耐光牢性）

J I S - L 0 8 2 4に準ずる方法で 5 0時間、力一ボンアークの光照射を施した後の変退色を観察し、変化が無いものを 5級とし、変退色が激しく元の図柄が読み取れないものを 1級、元の図柄は残しているが変退色しているものを 3級とし、それらの各中間段階を 4級、 2級と判定した。

(耐色移行性）

各実施例、比較例で得られたインクジエツト方式で印刷された図柄を表面に有する皮革様シート表面と、表面がポリウレタンで形成された一般的な白色の人工皮革の表面とを、 A 6サイズの面積で重ね合わせ、均一に 2 k gの荷重を与えて 7 0 °Cの雰囲気下に 3日間放置した後の白色人工皮革表面への色移行を観察し、白色の人工皮革表面に移行していないものを 5級とし、激しく移行して白色人工皮革のほぼ全面に着色されているものを 1級、 3割から 5割の面積が着色されているものを 3級として判定した。

(耐磨耗性）

A S TM D— 3 8 8 6法に準じ、サンドペーパーとして、 HAND Y R O L L P 3 2 0 J (NO R T ON社製）を使用し、摩耗部位の印刷下のウレタン多孔質層が露出した大きさが直径 1 0 mmに到達する回数とした。

(剥離強力）

J I S K 6 3 0 1法に準じ、引張速度 5 O mmZ分で 1 0 0 mm剥離させ、 2 0 mm毎のミニマム値 5点の平均値を NZ c mで表し剥離強力とした。

(耐屈曲性） J I S K6545法、 J I S K6505法に準じ、表面に亀裂の入った回数で表し耐屈曲性とした。

(表面開孔の測定）

得られた開孔シートの表面を倍率 100倍にて走査型電子顕微鏡にて撮影し、測定部分 1， O O O^mX l, 000 /imの範囲に存在する開放孔の直径を測定し、個数の密度、開放孔の平均直径および最大直径を求めた。なお、機械研削による開孔形成の場合は、表面に平滑な面が存在せず、無数の開放孔が互いに連絡しているため、孔の個数密度は「無数」とした。実施例 1 <皮革様シ一トー 1 >

(繊維集合体一 1の作成）

120°Cで乾燥したナイロン一 6 (m—クレゾール中の極限粘度 1. 1) をェクストルーダーに供給し溶融した。別途 160°Cで乾燥したポリエチレンテレフ夕レート（o—クロ口フエノール中の極限粘度 0. 64) を、前述とは別個のェクストルーダーにて溶融した。引き続き、ナイロン— 6混合体溶融流は導管ポリマ一温度 250°Cで、ポリエチレンテレフ夕レート溶融流は 300°Cで、 27 5°Cに保温されたスピンブロックへ導入し、中空形成吐出孔を格子状配列で有する矩形の紡糸口金を用いて両重合体溶融流を合流させ複合し 2 gZ分 ·孔の量で吐出し、空気圧力 0. 35MPa (吐出量と複合繊維繊度から換算した紡速で約 4, 86 Om/分）にて高速牽引した。牽引された複合繊維は、 —30 kVで高電圧印加処理し、空気流とともに分散板に衝突させ、開繊し、 16分割の多層貼合せ型断面をもつ剥離分割型複合繊維からなるウェブとしてネットコンベア一上に幅 lmで補集した。引き続き、得られたウェブを 100°Cに加熱された上下一対のエンボスカレンダ一ロールに通し熱接着を行った。得られたウェブをニードルパンチにて交絡処理を施した後、水に浸漬し、軽くマンダルで絞った後シート打撃式揉み機にて剥離分割処理を行い目付 210 gZm²の極細繊維不織布を得た。次いでこの不織布を 70°Cの温水中で収縮させ収縮前の面積に対し 60%の面積のものを得た。得られた繊維集合体— 1の目付は 350 g/m²、厚さは 1. 0mmであり、繊度は 0. 15d t exであった。

(複合繊維集合体一 1の作成）

繊維集合体一 1に、 10重量％のポリウレタン（大日本インキ化学工業（株）製；クリスボン TF 50 P) —ジメチルホルムアミド（以下、 DMFと記す。）溶液を含浸させた後、繊維集合体表面の余分な溶液をかきとり、 5%の DMFを含んだ水中に 20分間浸漬してポリウレタンを凝固させ、 DMFを水で十分に洗浄除去した後 120°Cで 4分間乾燥して複合繊維集合体一 1を得た。

得られた複合繊維集合体一 1の表面は繊維とポリウレタンが混在するものであり、目付は 455 gZm²、厚さは 1. Ommであった。

(シート— 1の作成）

複合繊維集合体一 1の表面に 20重量％のポリウレタン（大日本インキ化学ェ業（株）製；クリスボン TF 50 P) — DMF溶液（添加剤として東レ 'ダウコ —ニング製 SH28 PAを溶液 100部に対し 0. 3部を使用）を 800 g/m ²の目付けでコ一ティングした。その後、 5%の DMFを含んだ水中に 20分間浸漬してポリウレタンを凝固させ、 DMFを水で十分に洗浄除去した後 120°C で 5分間乾燥して密度 0. 39のポリウレタン多孔質層（湿式多孔質層）の形成されたシート— 1を得た。シート一 1の剥離強力は 31. 2 NZ cmであり、スポーッシューズ用途を始め人工皮革の各用途での使用に耐えうる強度であつた。 (開孔）

シート一 1の表面に、メチルェチルケトン 40 %、ジメチルホルムアミド 6 0%の混合液をグラビア塗布機（110メッシュのロール使用）で 4 k gZcm ²の圧力で塗布し、ポリウレタン多孔質層の表面を溶解した後、乾燥し、開放孔を形成し、皮革様シート一 1を得た。

得られた皮革様シート一 1の表面を走査電子顕微鏡で観察したところ、平均 3 0； mの開放孔が 1平方センチメートル当たり 2, 050個形成されていた。なお、この開放孔の最大径は 55 μπιであった。

(印刷）開孔シ一トー 1の表面に、インクジェットプリン夕一（ローランド社製、 S J - 545EX) にて有機溶剤系顔料インク（ECO— SOLMAX) を使用して 72 ODP I (ドットインチ）の解像度の風景画を印刷した後、 120 °Cで 1 分間熱処理を施し、皮革様シート（人工皮革） — 1を得た。なお、使用したインクは、シアン ESL3—CY、マゼン夕 ESL3— MG、イエロ一 ESL 3— YE、ライトシアン ESL3— LC、ライトマゼンタ ESL3— LM、ブラック ESL3— BKである。

得られた皮革様シート一 1の表面は、微細で鮮明な画像が印刷されていた。なお、耐光堅牢性を測定したところ、変化はなく 5級の判定で良好なものであった。また、耐色移行性も無く 5級の判定であり良好なものであった。剥離強力は 30. 7N/c mであり、その剥離箇所はィンクジェット印刷前の剥離強力測定時の不織布層とポリウレ夕ン多孔質層の界面であつた。また、耐磨耗性は 370回であつた。表 1にその物性を示す。実施例 2 <皮革様シートー 2 >

(開孔）

実施例 1で得られたシート一 1の表面を 200メッシュのサンドペーパーを装着させたバッフィングマシーンを使用して、表面の開放孔の径が平均で 50 nm となるようにサンドペーパー装着ロールの回転数とロール間の間隙を調整して表面を研削し開孔シート— 2を得た。得られた開放孔は無数存在し、開孔径は最大力 110 rn, 平均で 55 xmであった。

(印刷）

開孔シ一トー 2の表面にインクジェットプリンター（ローランド社製、 S J- 545EX) にて有機溶剤系顔料インク（ECO— SOLMAX) を使用して 7 2 ODP I (ドットィンチ）の解像度の風景画を印刷した後、 120でで 1分間熱処理を施し、皮革様シート（人工皮革）一 2を得た。なお、使用したインクは、シアン ESL3—CY、マゼン夕 ESL3—MG、イエロ一 ESL3 一 YE、ライトシアン ESL3— LC、ライトマゼンタ ESL3— LM、ブラック E S L 3— B Kである。

得られた皮革様シ一トー 2の表面は、微細で鮮明な画像が印刷されていた。なお、耐光堅牢性を測定したところ、変ィ匕はなく 5級の判定で良好なものであった。また、耐色移行性も無く 5級の判定であり良好なものであった。剥離強力は 3 1 . 2 N/ c mであり、その剥離箇所はィンクジェット印刷前の剥離強力測定時の不織布層とポリウレタン多孔質層の界面であった。また、耐磨耗性は 3 2 0回であつた。表 1に物性を併せて示す。実施例 3、 4ぐ皮革様シートー3、 4 >

離型紙（リンテック社製 R 5 3 ) 上に、ポリウレタン樹脂の 3 3 %水分散液 1 0 0部に増粘剤を混合し、攪拌して粘度を 8， 0 0 0 C P Sに調整した調合液を目付け 9 0 gZm²でコートし、温度 7 0 °Cで 2分間、 1 1 0 °Cで 2分間乾燥して高分子弾性体の膜を形成した。さらにその表面に、水分散型ポリウレタン系接着剤 1 0 0部に増粘剤を混合して粘度を 5 , 0 0 0 C P Sに調整した調合液を目付け 8 0 gZm²でコートした。その後、温度 9 0 °Cで 2分間乾燥した。

次に、離型紙上の高分子弾性体と、実施例 1で得られた皮革様シート一 1とを重ね合わせ、温度 1 1 0 °Cの加熱シリンダー表面上で 0 . 6 mmの間隙のロールに通過させ圧着した。その後、温度 6 0 °Cの雰囲気下で 2日間放置した後、離型紙を剥ぎ取り、人皮革様シート— 3を得た。

また、実施例 1で得られた皮革様シート一 1を用いる代わりに、実施例 2で得られた皮革様シート一 2を用いた以外は上記と同様にして、皮革様シート一 4を得た。

得られた皮革様シート— 3、 4は、ともに耐光堅牢性、耐色移行性が良好なものであった。剥離強力も高く、その剥離箇所はインクジェット印刷前の剥離強力測定時の不織布層内であった。また、耐磨耗性も良好であった。表 1に物性を併せて示す。実施例 5ぐ皮革様シ一トー 5 > 実施例 2で得られた開孔シ一トー 2の表面に、有機溶剤系顔料ィンクを用いる代わりに、インクジェットプリンタ一（EPSON社製、 PM— 4000 PX) にて水系顔料インク（PX— Pインク）を使用して 720 DP I (ドット/インチ）の解像度の風景画を印刷した後、 120°Cで 1分間熱処理を施した以外は実施例 2と同様にして、皮革様シート（人工皮革）一 5を得た。なお、使用したィンクは、シアン I C C 23、マゼン夕 I CM23、イエロ一 I CY23、ライトシアン I CLC 23、ライトマゼン夕 I CLM23、グレー I CG Y23、フォトブラック I CBK23、およびマットブラック I CMB 23 である。

得られた皮革様シ一トー 5の表面は、微細で鮮明な画像が印刷されていた。耐光堅牢性を測定したところ、変化はなく 5級の判定で良好なものであった。また、耐色移行性も無く 5級の判定であり良好なものであった。剥離強力は 30. 8Ν / c mであり、その剥離箇所はィンクジェット印刷前の剥離強力測定時の不織布層とポリウレタン多孔質層の界面であった。また、耐磨耗性は 330回であった。表 1に物性を併せて示す。実施例 6 <皮革様シートー 6 >

実施例 2で得られた開孔シ一トー 2の表面に、有機溶剤系顔料ィンクを用いる代わりに、インクジェットプリン夕一（ラスタープリン夕一社製、 RP-720 UVZ) にて UV硬化顔料タイプのインク（シアン、マゼン夕、イェロー、ライトシアン、ライトマゼン夕、およびブラック）を使用して 720 DP I (ドット Zインチ）の解像度の風景画を印刷した以外は実施例 2と同様にして、皮革様シート（人工皮革）一 6を得た。

得られた皮革様シート一 6の表面は、微細で鮮明な画像が印刷されていた。耐光堅牢性を測定したところ、変化はなく 5級の判定で良好なものであった。また、耐色移行性も無く 5級の判定であり良好なものであった。剥離強力は 29. 7N Z cmであり、その剥離箇所はインクジエツト印刷前の剥離強力測定時の不織布層とポリウレタン多孔質層の界面であった。また、耐磨耗性は 590回であった。表 1に物性を併せて示す。比較例 1

実施例 1の開孔シート一 1を印刷に用いる代わりに、実施例 1の途中で得られたシ一トー 1を用いる以外は、実施例 1と同様にしてインクジエツトプリンタ一 (口一ランド社製、 S J— 545EX) にて有機溶剤系顔料インク（ECO— S OLMAX) を使用して 720DP I (ドット Zインチ）の解像度の風景画を印刷し、人工皮革を得た。

得られた人工皮革の表面は、微細で鮮明な画像が印刷されていた。なお、耐光堅牢性を測定したところ、変化はなく 5級の判定で良好なものであった。また、耐色移行性も無く 5級の判定であり良好なものであった。しかしながら、剥離強力は 5. 2NZcmと低く、その剥離箇所はインクジェット印刷の顔料層であり、人工皮革として各用途の使用に耐えられる物ではなかった。また、耐磨耗性は 1 0回であり、顔料層の剥離が原因であった。表 1に物性を併せて示す。

表 1

実施例 7ぐ皮革様シート一 7 >

(繊維集合体一 Ίの作成）

ナイロン 6と低密度ポリエチレンを 50/50で混合、ェクストルダ一で溶融、混合し 290°Cで混合紡糸し、延伸、油剤を処理しカツ卜し 5. 5 d t e X, 5 1mmの繊維を得た。これをカード、クロスラッパ一、二一ドルロッカー、カレンダ一の工程を通し、重さ 400 gZm²、厚さ 1. 6mm、見掛け密度 0. 2 5 g/ cm³の繊維集合体— 7を得た。

(複合繊維集合体— 7の作成）

繊維集合体ー7を、 10重量％のポリウレタン（大日本インキ化学工業（株）製；クリスボン TF 50 P) — DMF溶液に浸漬した。その後、繊維集合体表面の余分な溶液をかきとり、基材厚さの 90%でスクイズし複合繊維集合体一 7を得た。

(シ一トー 7の作成）

その後、圧縮が回復する前に複合繊維集合体一 7に、 20重量％のポリウレタン（大日本インキ化学工業（株）製；クリスボン TF 50P) — DMF溶液（添加剤として東レ ·ダウコ一ニング製 SH 28 PAを溶液 100部に対し 0. 3部を使用）を 800 gZm²の目付けでコーティングした。次いで 5%の DMFを含んだ水中に浸潰してポリウレタンを凝固させ DMFを水で十分に洗浄除去した後、 120°Cで乾燥してポリウレタン多孔質層の形成されたシートを得た。得られたシートを 90°Cの熱トルエン中で圧縮、緩和を繰り返し、繊維中のポリェチレン成分を抽出除去し、 0. 003 d t e Xの極細繊維を繊維質基体とするポリウレタン多孔質層の形成された、シート一 7を作成した。得られたシート一 7の剥離強力は 35. 7NZcmであり、スポーツシューズ用途を始め人工皮革の各用途での使用に耐えうる強度であつた。

(開孔） .

シート一 7の表面に、 1 10メッシュのグラビアロールを用いて、ジメチルホルムアミド：メチルェチルケトン =7 ： 3の混合液をグラビア塗布機（150メッシュのロール使用）で 4 k gZcm²の圧力で塗布し、表面のポリウレタンを溶解した後、乾燥し開放孔を設けた。得られた開孔シート一 7の表面を走査電子顕微鏡で観察したところ、平均値 15 imの開放孔が 1， 800個じ111²形成されていた。なお、この開放孔の最大径は 40 mであった。

(印刷）

開孔シート一 1を印刷に用いる代わりに、開孔シート— 7を用いる以外は、実施例 1と同様にしてインクジェットプリンタ一（ローランド社製、 S J-545 EX) にて有機溶剤系顔料インク（ECO— SOLMAX) を使用して 720 D P I (ドット Zインチ）の解像度の風景画を印刷し、皮革様シート（人工皮革） ― 7を得た。

得られた皮革様シ一トー 7の表面は、微細で鮮明な画像が印刷されていた。なお、耐光堅牢性を測定したところ、変化はなく 5級の判定で良好なものであった。また、耐色移行性も無く 5級の判定であり良好なものであった。剥離強力は 36. 2 NZ cmであり、その剥離箇所はインクジエツト印刷前の剥離強力測定時の不織布層とポリウレタン多孔質層の界面であった。また、耐磨耗性は 440回であつた。表 2にその物性を示す。実施例 8ぐ皮革様シートー 8〉

(印刷）

実施例 7で得られた開孔シ一トー 7の表面に、有機溶剤系顔料ィンクを用いる代わりに、インクジェットプリン夕一（EPSON社製、 PM— 4000 PX) にて水系顔料インク（PX— Pインク）を使用して 720DP I (ドット Zインチ）の解像度の風景画を印刷した後、 120°Cで 1分間熱処理を施した以外は実施例 7と同様にして、皮革様シート（人工皮革）一 8を得た。使用したインクは、シアン I CC 23、マゼン夕 I CM 23、イエロ一 I CY23、ライ卜シアン I CLC23、ライトマゼン夕 I CLM23、ダレ一 I CGY23、フォトブラック I CBK23、およびマットブラック I CMB23である。得られた皮革様シート一 8の表面は、微細で鮮明な画像が印刷されていた。なお、耐光堅牢性を測定したところ、変化はなく 5級の判定で良好なものであった。また、耐色移行性も無く 5級の判定であり良好なものであった。剥離強力は 30. 5N/c mであり、その剥離箇所はィンクジェッ卜印刷前の剥離強力測定時の不織布層とポリウレタン多孔質層の界面であった。また、耐磨耗性は 390回であつた。表 2に物性を併せて示す。実施例 9 <皮革様シート一 9>

(保護層の作成）

離型紙（リンテック社製 R53) 上に、ポリウレタン樹脂の 33%水分散液 1 00部に増粘剤を混合し、攪拌して粘度を 8000 C P Sに調整した調合液を目付け 90 gZm²でコートし、温度 70°Cで 2分間、 1 10°Cで 2分間乾燥して高分子弾性体の膜を形成した。さらにその表面に、水分散型ポリウレタン系接着剤 100部に増粘剤を混合して粘度を 5000 C P Sに調整した調合液を目付け 80 gZm²でコートした。

(印刷）

実施例 7で得られた開孔シート— 7の表面にインクジェットプリンター（ラスタープリンタ一社製、 RP— 720UVZ) にて UV硬化顔料タイプのインク (シアン、マゼン夕、イエロ一、ライ卜シアン、ライトマゼン夕、およびブラック）を使用して 720DP I (ドット Zインチ）の解像度の風景画を印刷し、皮革様シート（人工皮革）一 9を得た。

(積層）

次いで、温度 90°Cで 2分乾燥後、離型紙上の高分子弾性体と、皮革様シート一 9とを重ね合わせ、 0. 8 mmの間隙のロールに通過させ圧着した。その後、温度 60°Cの雰囲気下で 2日間放置した後、離型紙を剥ぎ取り保護層を有する皮革様シート一 9を得た。

得られた皮革様シート— 9は、微細で鮮明な画像が印刷されており、耐光堅牢性、耐色移行性が良好なものであった。剥離強力は 34. 7NZcmであり、その剥離箇所はィンクジエツト印刷前の剥離強力測定時の不織布層とポリウレタン多孔質層の界面であった。また、耐磨耗性は 1> 360回であった。表 2に物性を併せて示す。実施例 10ぐ皮革様シートー 10〉

(印刷）

実施例 7で得られた開孔シ一トー 7の表面に、有機溶剤系顔料インクを用いる代わりに、インクジェットプリン夕一（EPS ON社製、 PM3700 C) にて染料インク（I C5CL06、ぉょび1 (： 181：05) を使用して 720 DP I (ドット /インチ）の解像度の風景画を印刷した以外は実施例 7と同様にして、皮革様シート（人工皮革）一 10を得た。得られた皮革様シート一 10は、剥離強力が 32. 9 N/ cm、耐磨耗性が 410回であり、耐屈曲性が 12, 500 回であった。比較例 2

実施例 7で得られた開孔シート— 7を印刷に用いる代わりに、実施例 7の途中で得られた、表面に開孔していないシ一トー 7を用いる以外は、実施例 10と同様にしてインクジェットプリンタ一（EPS ON社製、 PM3700 C) にて染料インク（I C5CL06、および I C 1 BK05) を使用して 720DP I (ドット Zインチ）の解像度の風景画を印刷し、人工皮革を得た。

得られた人工皮革の表面は、微細で鮮明な画像が印刷されていたが、耐光堅牢性を測定したところ、部分的に色力退色変化し元の色彩とは程遠いものであり 2 級の判定であった。また、耐色移行性も 3級の判定であり白色の人工皮革表面に色が転写されていた。また、剥離強力は、 11. 5NZcmと低く、その剥離箇所はインクジエツト印刷の顔料層であり、人工皮革として各用途の使用に耐えられる物ではなかった。また、耐磨耗性は 32回であり、顔料層の剥離が原因であつた。表 2に物性を併せて示す。実施例 11 <皮革様シートー 11〉

(保護層の形成）実施例 2で得られた皮革様シ一卜一 2の印刷面上に、レザミン L U— 2109 HV (大日精化社製ポリウレタン濃度 22%) 100部、 DMF 15部、およびイソプロピルアルコール 15部を混合した溶液を目付け 60 g/iriでグラビアコ一ティングして温度 120でで 2分間乾燥して保護層（高分子弾性体層）を形成して皮革様シート（人工皮革） ― 11を得た。

得られた皮革様シート一 1 1の表面は、微細で鮮明な画像が印刷されていた。なお、耐光堅牢性を測定したところ、変化はなく 5級の判定で良好なものであつた。耐色移行性も無く 5級の判定であり良好なものであった。剥離強力は 31. 8N/cmであり、その剥離箇所はインクジエツト印刷前の剥離強力測定時の不織布層とポリウレタン多孔質層の界面であった。また、耐磨耗性は 680回であつた。表 2に物性を併せて示す。実施例 12ぐ皮革様シ一トー 12〉

(保護層の作成）

離型紙（リンテック社製 ES 160 SK) 上に、レザミン LU— 2109HV (大日精化社製ポリウレタン濃度 22%) 100部、 DMF 20部、およびイソプロピルアルコール 10部を混合した溶液を目付け 100 gZm²でコ一ティングして温度 120°Cで 2分間乾燥して高分子弾性体の膜を形成した。さらにその表面に、 TA265 (大日本インキ社製ポリウレタン濃度 65%) 20部、 TA 290 (大日本インキ社製ポリウレタン濃度 41%) 80部、 NE架橋剤（大日精化社製架橋剤） 12部、 DMF 20部を混合した接着剤調合液を目付け 200 g/m²でコートした。その後、温度 120°Cで 2分間乾燥した。

(積層）

次に、離型紙上の高分子弾性体と、実施例 2で得られた皮革様シ一トー 2とを重ね合わせ、 0. 8 mmの間隙のロールに通過させ圧着した。その後、温度 6 0^の雰囲気下で 2日間放置した後、離型紙を剥ぎ取り皮革様シート（人工皮革）一 12を得た。得られた皮革様シート一 12は、微細で鮮明な画像が印刷されており、耐光堅牢性、耐色移行性が良好なものであった。剥離強力は 34. 5 2フ

N/ c mであり、その剥離箇所はィンクジェッ卜印刷前の剥離強力測定時の不織布層とポリウレタン多孔質層の界面であった。また、耐磨耗性は 1 , 4 3 0回であった。表 2に物性を併せて示す。

表 2

発明の効果

本発明の皮革様シートは、微細な図柄をすることができる。本発明の皮革様シ一卜は、耐摩耗性、耐光堅牢性、耐色移行性、耐摩耗性、耐剥離性および耐屈曲性に優れ、人工皮革の各種用途に耐え得る。

本発明の皮革様シートに付与される画像は、インクジェットプリンターに接続されているコンピュータ一等で、デザイン、模様、写真などの図柄を自在にかつ容易に皮革様シート表面の意匠として表現できる。従って、従来から皮革様シートの使用されているスポーツシューズ、一般靴、各種競技用ポール、装丁用途、衣料、および家具 ·車両用途においても、個性を強調した「自分だけの図柄」を生かせるものとなる。産業上の利用可能性

本発明の皮革様シートは、スポーツシューズ、一般靴、各種競技用ポール、装丁用途、衣料、および家具 ·車両用途に用いることができる。

Claims

請求の範囲

1 . (i)繊維質基体および（i i)その上の多孔質層を有する皮革様シートであつて、多孔質層の表面には直径 1 zxm以上の開放孔を有し、かつ多孔質層の表面には解像度 5ドッ卜/ mm以上の画像を有する皮革様シート。

2 . 繊維質基体が、不織布あるいは不織布に高分子弾性体を含浸させた複合不織布である請求項 1記載の皮革様シート。

3 . 繊維質基体が、極細繊維を含む請求項 1項記載の皮革様シート。

4. 多孔質層が、ポリウレタンにより形成されている請求項 1記載の皮革様シ一卜。

5 . 多孔質層の開放孔が、繊維質基体から連通している請求項 1記載の皮革様シー卜。

6 . 開放孔の平均直径が、 1〜 1 0 0 mである請求項 1記載の皮革様シート。

7 . 画像が、顔料インクによるものである請求項 1記載の皮革様シート。

8 . 表面が、銀付調である請求項 1項記載の皮革様シート。

9 . 表面が、ヌバック調である請求項 1記載の皮革様シート。

1 0 . 画像を有する多孔質層上に保護層を有する請求項 1記載の皮革様シー卜。

1 1 . 保護層が、ポリウレタンにより形成されている請求項 1 0記載の皮革様シート。

12. (i)繊維質基体上に高分子弾性体の多孔質層を形成し、

(ii)多孔質層の表層を除去して開放孔を形成し、

(iii)開放孔を設けた多孔質層の表面にインクジエツ卜法により画像を形成する、各工程を含む皮革様シートの製造方法。

13. 繊維質基体が、不織布あるいは不織布に高分子弾性体を含浸させた複合不織布である請求項 12記載の製造方法。

14. 高分子弾性体が、ポリウレ夕ンである請求項 12記載の製造方法。

15. 多孔質層を形成する工程（i)が、（i-1)繊維質基体上に、高分子弾性体および有機溶剤を含有する溶液を塗布し、

(i-2>得られた積層体を水中に浸漬して高分子弾性体を凝固させる、

工程を含む請求項 12記載の製造方法。

16. 多孔質層の表面に溶剤を塗布して表層を除去する請求項 12記載の製造方法。

17. 多孔質層の表面を研削して表層を除去する請求項 12記載の製造方法。