JP2010106382A - 銀付調皮革様シート - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、鮮やかな色彩を有し、かつ経時的な変色を抑制することができる銀付調皮革様シートを提供することを目的とする。
【解決手段】繊維質基体およびその表面に多孔質層を有する銀付調皮革様シートにおいて、該多孔質層がチタン系複合酸化物を主成分とする顔料で着色されていることを特徴とする銀付調皮革様シート。
【選択図】 なし

Description

本発明は、鮮やかな色彩を有し、経時的なくすみ等の色変化のない銀付調皮革様シートに関するもので、ボール、特にバレーボールに好ましく使用することができる銀付調皮革様シートに関する。
近年、合成皮革や人工皮革は、天然皮革の代替品として靴、衣料、手袋、鞄、ボールおよびインテリアなどのあらゆる分野に多く利用されている。これら分野のうち、特にバレーボール等で代表されるボール用途においては近年カラーボールが流行しており、その鮮やかな色彩がスポーツの華やかな雰囲気を高め、ワールドカップ、オリンピックを始めとする各種大会の公式級にも採用されている。これら公式球は、より高い品質と感性が要求されており、皮革様シートを使用する場合には、極細繊維不織布とその内部に含有されるポリウレタン等の高分子弾性体からなる皮革様シート基体の表面に、種々の方法により表皮層を設けた構造の銀付調皮革様シートが用いられている。中でも、表皮層がポリウレタンの多孔質層を有する銀付調皮革様シートは、表皮の多孔質層がクッション性を有することから好ましく、そのクッション性や感性を高める工夫が各種行われている(例えば、特許文献1参照。)。また、酸性染料で着色可能な銀面を有し、高級感のある外観と柔軟性、耐久性などに優れた皮革様シート状物が開示されている(特許文献2参照。)。しかしながら、上記皮革様シートの表面は深みのある色調が得られるものの、染料由来の経時的な変色が懸念される。さらに、基体層の表面に、L*が30未満である着色剤を樹脂固形重量に対して1重量%〜100重量%含む樹脂溶液からなり、かつ厚さが0.5μm〜100μmである隠蔽層B、及び、L*が30以上である着色剤を樹脂固形重量に対して1重量%〜50重量%を含む樹脂溶液からなり、かつ厚さが0.1μm〜50μmである着色層C、が積層された透明性を有する皮革状シート状物が提案されている(特許文献3参照。)。しかしながら上記皮革状シート状物は透明感の有る外観を有するものの、経時的な表面色の変化と色調の鮮やかさを兼ね備える点について十分な記載はない。
特許第4024691号公報 特開平7−70945号公報 特開平11−1878号公報
前述の特許文献の例を含め、一般的に表皮層がポリウレタンの多孔質層からなる銀付調皮革様シートを着色する場合は、多孔質層表面にグラビア印刷やスプレー塗布のような手法により顔料をバインダーを介して着色層を付与する方法が一般的に採用されており、また多孔質層を形成するポリウレタン溶液中に顔料をブレンドし、塗布後湿式凝固することによって多孔質着色層を形成する方法が採用されている。しかしながら前者の付与方法においては、着色層が表面に限られるため、銀付調皮革様シートを用いた製品を使用中に表面の磨耗により着色層が脱落し色が薄くなるといった問題があった。一方、後者の付与方法においては、基体層に海島型繊維からなる極細繊維を用いる場合、海成分を抽出除去して極細繊維化する際に用いる有機溶剤によって顔料が溶出するため、鮮やかな色が出にくいといった問題があった。さらに、空気中または断続的に厚さ方向に圧縮されることで多孔質層の層内に浸透して存在するSOxガスやNOxガスと顔料が経時的に反応して黒変したり、退色したりするといった問題もあり、特に断続的に銀付調皮革様シートの厚さ方向に圧縮される多孔質層を有する銀付調皮革様シートを表皮材として用いるボールにおいては鮮やかな色彩を有し、かつ長年の使用においても色の変化がないものは得られなかった。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討の結果、銀付調皮革様シートの多孔質層にチタン系複合酸化物を主成分とする顔料を含有させることによって、銀付調皮革様シートが鮮やかな色調を有し、かつ経時的な色のくすみを防止することを見出し本発明に至った。すなわち、本発明は、
(1):繊維質基体およびその表面に多孔質層を有する銀付調皮革様シートにおいて、該多孔質層がチタン系複合酸化物を主成分とする顔料で着色されていることを特徴とする銀付調皮革様シート。
(2):上記顔料が少なくともTiO2、NiOおよびSbO33成分系からなる無機顔料である(1)の銀付調皮革様シート。
(3):上記顔料がクロムおよびバナジン酸ビスマスを含まない顔料である(1)または(2)の銀付調皮革様シート。
(4):(1)〜(3)のいずれかの銀付調皮革様シートを表面に用いたボールである。
本発明は、鮮やかな色彩を有し、かつ経時的な変色を抑制することができる銀付調皮革様シートである。更に詳しくは、上記銀付調皮革様シートを表面に用いたバレーボール等で代表されるボール用途に特に好ましく用いることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
まず本発明で使用する繊維質基体は、不織布、織布、織物等その繊維の構造においては特に限定するものではなく、またその内部にポリウレタン等で代表される高分子弾性体等を含有させても良く、特に限定するものではない。その中でも、皮革様の風合いと柔軟性に優れる点で不織布が好ましい。不織布を構成する繊維の繊度は、単繊維繊度0.2dtex以下であることが好ましく、より好ましくは、風合いと繊維質基体の表面の平滑性を兼ね備える点で単繊維繊度0.0001〜0.05dtexである。
また、本発明の繊維質基体は上記繊度範囲の極細繊維の束からなる不織布が機械的物性に優れる点で好ましく、該不織布の絡合空間に高分子弾性体を含有させることが特に風合いと物性に優れる点で好ましい。
単繊維繊度0.2dtex以下の極細繊維の束は、従来公知の方法で製造される。例えば、少なくとも2種類のポリマーからなる極細繊維発生型繊維から少なくとも1成分を溶解もしくは分解除去することにより、または機械的もしくは化学的な処理により2成分の界面で剥離することにより得ることができる。得られる極細繊維の束を構成する極細繊維の単繊維繊度を0.2dtex以下とするためには、貼り合わせ型の極細繊維発生型繊維を用いるよりは繊維断面が海島構造となっている極細繊維発生型繊維を用いることが工程上有利である。
極細繊維発生型繊維中で極細繊維を構成するポリマーとしては、一般的に溶融紡糸可能なポリマーを用いることができる。中でも6−ナイロン、66−ナイロンをはじめとする溶融紡糸可能なポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、カチオン可染型変性ポリエチレンテレフタレートをはじめとする溶融紡糸可能なポリエステル類などから選ばれた少なくとも1種類のポリマーが物性と風合いを兼ね備える点で好ましく用いられる。
また溶解または分解除去される成分としては、極細繊維成分と溶剤または分解剤に対する溶解性または分解性を異にし、極細繊維成分との相溶性の低いポリマーであり、かつ紡糸条件下で極細繊維成分より溶融粘度が小さいかあるいは表面張力が小さいポリマーであり、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンプロピレン共重合体、変性ポリエステル等のポリマーから選ばれた少なくとも1種類のポリマーであり、より好ましくはPVA系、ポリエチレン、ポリスチレン樹脂である。
次に極細繊維発生型繊維を紡糸ノズルから直接捕集ネットに吹き付けられた長繊維ウェブを所望の重さ、厚さに積層し、次いでニードルパンチ、高速水流などの公知の方法で絡合処理を行って不織布とする方法や、極細繊維発生型繊維を短繊維にカットした後、カードで解繊し、ウェバーを通して短繊維ウェブを形成し、得られた短繊維繊維ウェブを、所望の重さ、厚さに積層し、次いでニードルパンチ、高速水流などの公知の方法で絡合処理を行って不織布とする方法がある。これら繊維ウェブには必要に応じて織編物等を積層することもできる。また、得られた不織布は、表面平滑性に優れる基体層とするため、高分子弾性体の含浸前に加熱プレス処理などにより表面平滑化することが好ましい。
不織布、あるいは加熱プレス処理して得られる不織布の厚みは、得られる銀付調皮革様シートの用途等によって任意に選択でき、特に制限されるものではないが、1枚ものの場合にその厚みは0.2〜10mm程度であることが好ましく、0.4〜5mm程度であることがより好ましい。密度は0.15g/cm〜0.50g/cmが好ましく、0.20g/cm〜0.40g/cmがより好ましい。0.15g/cm未満であると含浸する樹脂が多くなりゴムライクな風合いとなり、さらに剥離強力も低下する。0.50g/cmを越えると得られる銀付調皮革様シートの風合いが硬くなる傾向がある。
次に該不織布の内部に高分子弾性体を含浸させる。そして、高分子弾性体を塗布した後、公知の方法で湿式凝固または乾式凝固し、表面に多孔質層を有する繊維質基体層を形成する。なお、極細繊維発生型繊維を用いる場合、該不織布に高分子弾性体を含浸・凝固させて、極細繊維発生型繊維から極細繊維(束)に変性することで繊維質基体をいったん製造した後に、公知の方法にて多孔質層を形成することも好ましい。
不織布の内部に含浸または多孔質層を形成する高分子弾性体は、通常皮革様シートに適用される高分子弾性体、例えばポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル弾性体樹脂またはそれらの共重合体や混合物が挙げられる。中でもポリウレタンが皮革様の風合いと物性に優れる点で好ましい。ポリウレタンの代表例としては、ポリエステル系ジオール、ポリエーテル系ジオール、ポリエステル・エーテル系ジオール、ポリカーボネート系ジオールなどの高分子ジオールの1種または2種以上と、有機ポリイソシアネート、好ましくは脂肪族系、芳香族系あるいは脂環族系の有機ジイソシアネートの1種または2種以上と、低分子ジオール、低分子ジアミン、ヒドラジンなどの活性水素原子を2個有する鎖伸長剤とから得られるポリウレタンがあげられる。
好ましくは、両末端にヒドロキシル基を有する分子量500〜5000のポリマーグリコールと4,4′−ジフェニルメタン−ジイソシアネートと炭素数2〜6の低級アルキレングリコールを主体とするハードセグメントから得られたポリウレタン、あるいは、両末端にヒドロキシル基を有する分子量500〜5000のポリマーグリコールと脂肪族または脂環族ジイソシアネートと有機ジアミンあるいは有機酸ジヒドラジドを主体とするハードセグメントから得られたポリウレタンなどがあげられる。ただし、ソフト性、耐久性、加工性、多孔質膜形成性等を考慮し、これらの共重合物、混合物も用いられる。
両末端にヒドロキシル基を有する分子量500〜5000のポリマーグリコールとしては、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコール、ポリヘキサメチレンアジペートグリコール、ポリカプロラクトングリコールなどのポリエステル系グリコール、ポリヘキサメチレンカーボネートグリコールで代表されるポリカーボネート系グリコール、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコールなどのポリエーテル系グリコールおよびこれらの混合物が使用されるが、特に、ポリエステル系グリコール、ポリカーボネート系グリコールあるいはポリエステル系グリコールとポリカーボネート系グリコールとの混合グリコール、ポリエステル系グリコール、ポリカーボネート系グリコールとポリエーテル系グリコールとの混合グリコールが好ましい。
脂肪族ジイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが、また脂環族ジイソシアネートとしては、シクロヘキサンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタン−ジイソシアネートなどが、また芳香族ジイソシアネートとしては、4,4′−ジフェニルメタン−ジイソシアネートなどが挙げられる。有機ジアミンとしては、p−フェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4′−ジアミンジフェニルメタン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエタノールアミン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミンなどが挙げられ、有機酸ジヒドラジドとしてはアジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどが挙げられる。
炭素数2〜6の低級アルキレングリコールの代表例としては、エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどがあり、中でもエチレングリコールが良好な型押し性が得られる点で好ましい。ここで、用いられるポリウレタンエラストマーは、ポリウレタンエラストマー全質量に対する、該ポリウレタンエラストマーを合成するのに用いた有機ポリイソシアネート中のイソシアネート基を構成する窒素原子の質量百分率(以下N%と称す)が2.5〜5%であるようなポリウレタンエラストマーまたはこのポリウレタンエラストマーを主体とするポリマー混合物が好ましい。N%が2.5%未満の場合には、得られる表面多孔層や繊維質基体層は耐摩耗性や耐引っ掻き強さにおいて劣る傾向があり、またN%が5%を越える場合には、折り曲げシワが粗くなり、風合いも硬く、得られる皮革様シートが安っぽくなると同時に、耐屈曲疲労性においても低下する傾向がある。
繊維質基体へのポリウレタンの含浸方法は、特に限定はせず、公知の方法で行なうことができる。ポリウレタンの水分散液を使用した場合は主に乾式法(50〜150℃)によりゲル化、固化させ、ポリウレタンの有機溶剤溶液を使用した場合は主に湿式法により、高分子弾性体をスポンジ状に凝固させる。湿式凝固では、有機溶剤溶液を含浸した繊維質基体を高分子弾性体の貧溶剤を含む処理浴中に浸漬し、高分子弾性体を多孔質状に凝固させる。高分子弾性体の貧溶剤としては水が好ましく用いられるが、水にジメチルホルムアミド等の高分子弾性体の良溶剤を混合した処理浴を用いると、その混合比率を適宜設定することにより凝固状態、即ち多孔質状態や形状などの制御が可能なので好ましい。水分散液を使用する場合は、感熱ゲル化剤を添加しておくと、乾式法、あるいはこれにスチーミングや遠赤外加熱などの方法を組み合わせることで厚み方向により均一な凝固が可能である。有機溶剤を使用する場合は、凝固調整剤を併用することで、より均一な空隙を得ることができる。前記有機溶剤の例としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。繊維質基体、とりわけ不織布に含浸した高分子重合体をスポンジ状に凝固させることにより、天然皮革に類似した風合い、特に、ボール用素材に適した諸物性を有する皮革様シートを得ることができる。
ポリウレタンの有機溶剤溶液を含浸させた繊維質基体に多孔質層を形成するには、上記繊維質基体のポリウレタン樹脂を凝固させる前に、繊維質基体の内部にポリウレタン樹脂を含浸する処理に続いて塗布(コート)する方法、あるいは繊維質基体にポリウレタン樹脂を含浸後に凝固液中で基体内部のポリウレタンを凝固させ乾燥後、また極細繊維発生型繊維を用いた場合には極細繊維化後、に基体層表面に多孔質層用のポリウレタン樹脂からなる溶液をコーティングする方法があるが、基体層と多孔質層の密着性に優れる点や工程を増やす必要が無い点で前述の、繊維質基体の内部にポリウレタン樹脂を含浸し、凝固する前に引き続いて塗布(コート)し、その後に繊維質基体の内部に存在するポリウレタンと多孔質層を構成するポリウレタンとを同時に凝固する方法が好ましい。密着とは繊維質基体層と多孔質層が実質的に該2層以外の物質を介さず連続的に結合している状態を言う、そして部分的に接している状態と異なる場合を言う。部分的に接している状態とは、繊維質基体表面にグラビアロール等でポリウレタン樹脂溶液等を塗布し、多孔質層を貼り合せることによって繊維質基体の表面と多孔質層とが点接着されている場合や、繊維質基体表面と多孔質層とが架橋型ポリウレタン接着剤によりドライ接着されているような状態を言う。
また、含浸用のポリウレタン樹脂溶液には、必要に応じて着色剤、凝固調節剤、酸化防止剤、分散剤等の添加剤を配合する。そして、多孔質層用のポリウレタン樹脂溶液には本発明の顔料以外に本発明の効果を損なわない範囲で、上記添加剤を配合することが可能である。
ついで、極細繊維発生型繊維を極細繊維へと変換する方法について述べる。極細繊維発生型繊維は少なくとも1成分の溶解剤または分解剤で処理して極細繊維または極細繊維の束に変換する。溶解剤は溶解除去する成分によって異なるが、本発明において好適に用いられる除去成分であるポリエチレン、ポリスチレンに対してはトルエンまたはキシレンが好ましく用いられる。極細繊維発生型繊維の変換処理はポリウレタン樹脂の付与前であってもよいが、極細繊維束に変換後にポリウレタン樹脂を含浸、凝固すると、ポリウレタン樹脂が極細繊維に接着し風合いが硬くなりやすいため、ポリウレタン樹脂付与後に変換することが好ましい。ポリウレタン樹脂付与前に変換処理を行う場合は、極細繊維または極細繊維の束とポリウレタン樹脂が接着しないようにポリビニルアルコールなどの極細繊維化後に溶解除去可能な仮充填剤を付与した後にポリウレタン樹脂を付与し、その後に該仮充填剤を除去することが好ましい。
上記のようにして得られる銀付調皮革様シートであるが、本発明においては、多孔質層を形成するポリウレタン樹脂中にチタン系複合酸化物を主成分とする顔料を含有することを特徴とする。
本発明に使用する顔料はチタン系複合酸化物を主成分とする顔料であることが必須である。
チタン系複合酸化物とは、酸化チタンおよびその他の無機酸化物の複合体からなる化合物のことをいい、好ましくは、黒変防止の点でクロムおよびバナジン酸ビスマスを含まない顔料が好ましく、極細繊維に変換する際の有機溶剤に溶け出し難い点でチタン・アンチモン・クロム複合酸化物、ニッケル・コバルト・亜鉛・チタン複合酸化物またはチタン・アンチモン・ニッケル複合酸化物からなる顔料等を用いることがより好ましい。
そして、黒変防止と色の鮮明さを兼ね備える点でチタン・アンチモン・ニッケル複合酸化物からなるチタンイエロー等を用いることが特に好ましい。
このような顔料は、極細繊維を発生させる際にもちいるトルエン等の溶剤に対する溶解性を示さないため、得られる銀付調皮革様シートの色彩は配合した顔料濃度に比例して鮮やかとなる。逆に例示した以外の有機顔料を用いた場合、極細繊維化処理時に使用するトルエン等の溶剤に該有機顔料が溶出し、目的の鮮やかさが得られないばかりか、製造上トルエン等の溶剤が顔料により汚染される。
また本発明の顔料を用いた場合、詳細な色彩の経時変化機構については不明であるが、多孔質層内あるいは大気中にある変色物質との反応が抑えられ、得られる銀付調皮革様シートの表面の経時的な色彩変化を抑制する効果がある。また、本発明に用いる顔料は、SOxガスやNOxガスとの反応性も有しないことから、顔料に含まれる金属成分とこれらガスが反応して生成する硫化物や窒化物による変色も起こり難い。
このようにして得られる本発明の銀付調皮革様シートは、本発明の効果を損なわない範囲で以下の処理を行うことにより外観や触感に変化を加えることが可能である。例えば、着色した多孔質層の表面にさらに顔料、染料等の着色剤と樹脂とからなるインクをグラビアロール、リバースロール、スクリーン等の手法で転写して着色し、非多孔質表面仕上げ層を形成する。あるいは、エンボスロールで型押しして表面に意匠性を加えるといった処理である。これらの処理は単独で用いてもよいし、複数の処理を併用してもよい。
さらに、機械的な揉み処理あるいは液流型染色機等でリラックス処理を行うこともできる。これらの処理は、好みにより自由に選択可能である。
次に本発明を具体的に実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部及び%は断わりのない限り質量に関するものである。
[実施例1]
海成分としてポリエチレン50質量部および島成分として6−ナイロン50質量部を同一溶融系で溶融紡糸して、繊度10dtexの海島型の極細繊維発生型繊維(以下、単に複合繊維と称す)を製造した。この複合繊維を3.0倍に延伸し、捲縮を付与した後、繊維長51mmに切断し、カードで解繊した後クロスラッパーウェバーで短繊維ウェブとした。次に、ニードルパンチにより、目付650g/mの不織布とした。この不織布にポリエステル系ポリウレタンの20%ジメチルホルムアミド溶液を含浸後、浸透しきれなかった溶液をナイフでかきとった後の上面に、ポリヘキサカーボネートグリコール、ポリメチレンプロピレンアジペート、メチレンジアミンで構成され、n−ヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、エチレングリコールで共重合されたポリカーボネート系ポリウレタン18%ジメチルホルムアミド溶液に、着色顔料としてチタン系複合酸化物からなる顔料(ダイピロキサイドイエロー#9121、大日精化工業株式会社製)を1質量部分散させた多孔質層形成用ポリウレタン溶液をコートし、DMF/水=30/70の比率の凝固浴中で凝固して、多孔質層を形成した。続いて、水洗後、複合繊維中のポリエチレンをトルエンにて抽出除去して、0.01dtexの極細繊維からなる6−ナイロン極細繊維束からなる不織布の内部にポリウレタンが含浸された繊維質基体と厚さ0.2mmの多孔質層からなる厚さ1.3mmの銀付調皮革様シートを得た。さらに、得られた銀付調皮革様シートの表面に毛穴シボのエンボスロールを用いて型押し処理を行なった。
なお、上記極細繊維化工程においてもポリエチレンの抽出除去のためのトルエン溶剤を顔料で汚すことはなかった。
得られた銀付調皮革様シートは鮮やかな色彩を有し、6ヶ月の放置試験においても変色は見られなかった。さらに、得られた銀付調皮革様シートを使用したバレーボールを用いて20000回のバウンドテストを行ったが、色落ちなどの変色は見られなかった。
[比較例1]
実施例1で使用した顔料の代わりに、チタン系複合酸化物を含有しないバナジン酸ビスマスを主成分とする複合酸化物系顔料(セイカセブンBS−480(S)エロー、大日精化工業株式会社製)を1質量部分散させた多孔質層形成用ポリウレタン溶液をコートした以外は実施例1と同様の操作をして銀付調皮革様シートを得た。
なお、上記極細繊維化工程においてもポリエチレンの抽出除去のためのトルエン溶剤が薄い肌色に着色していた。
得られた銀付調皮革様シートは鮮やかな色彩は有しており、該銀付調皮革様シートを使用したバレーボールを用いて20000回のバウンドテストを行ったが、色落ちなどの変色は見られなかった。
しかしながら、得られた銀付調皮革様シートは6ヶ月の放置試験において表面に黒ずみが発生した。

Claims (4)

  1. 繊維質基体およびその表面に多孔質層を有する銀付調皮革様シートにおいて、該多孔質層がチタン系複合酸化物を主成分とする顔料で着色されていることを特徴とする銀付調皮革様シート。
  2. 上記顔料が少なくともTiO2、NiOおよびSbO33成分系からなる無機顔料である請求項1に記載の銀付調皮革様シート。
  3. 上記顔料がクロムおよびバナジン酸ビスマスを含まない顔料である請求項1または2に記載の銀付調皮革様シート。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の銀付調皮革様シートを表面に用いたボール。
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