JP3961327B2 - 皮革様シート - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、天然皮革調の優美な外観と優れた柔軟性、特にソフトな表面タッチを有し、高い剥離強力を兼ね備えた皮革様シートに関するもので、一般的な皮革代替用途、特にボールの用途に好ましく使用することができる皮革様シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、合成皮革や人工皮革は、天然皮革の代替品として靴、衣料、手袋、鞄、ボール、インテリアなどのあらゆる分野に多く利用されている。これらは、より高い品質と感性が要求されており、とりわけ優美な天然皮革調の外観、ソフトな表面タッチおよび柔軟性と剥離強度が両立したものが強く望まれている。
【0003】
従来、天然皮革調の外観を作り出すために離型紙を用いて天然皮革のシボを再現した樹脂フィルムを作り基体に貼り付ける造面法が提案され、あるいは、同一の弾性体が均一に充填された基体層の片面に密着した多孔樹脂層を形成し、エンボスロールで型押しすることで天然皮革のシボを再現する方法がとられてきた。
また、基体の上に多孔層を形成するに際し、基体表面の界面をまたがるように高剥離強度を得るための高密度樹脂層を形成し、その上に必要な多孔皮膜層を形成する方法が提案されている。
さらには、特開平11−140779号公報では、表面多孔層と同一の弾性樹脂を表面多孔層と連続して基体表層に充填する方法が提案されている。
【0004】
【発明を解決しようとする課題】
しかし、これらの方法では、目的とする天然皮革調の優美な外観とソフトな表面タッチ、柔軟性および高い剥離強力をすべて満たすことは困難である。
まず、離型紙を用いる造面法では、あまりに均一で人工的であり天然皮革調とは言えず、また深いシボ模様を形成することは出来ない。
また、同一の弾性体が均一に充填された基体層の片面に密着した多孔樹脂層を形成し、エンボスロールで型押しすることで天然皮革のシボを再現する方法では、自然な天然皮革調の外観を得られるが、ソフト性を重視すると、基体層にソフトな弾性体を比較的少量充填する必要があるが、これでは必要な剥離強力を得ることは難しく、また必要な剥離強力を得ようとすると、比較的硬質の弾性体を多量に充填する必要があり、こうするとソフト性が失われてしまい、これらをすべて満たすことは出来なかった。
【0005】
さらには、特開平11−140779号公報で提案されている表面多孔層と同一の弾性樹脂を表面多孔層と連続して基体表層に充填する方法では、エンボス型押しにより自然な天然皮革調の外観を得られるが、エンボス型押し時に表面多孔層と同時に、同一の樹脂からなる基体層上層も圧縮変形して基体層のソフト性を損う傾向がある。さらにはエンボス型押しによって表面多孔層内部の空隙が潰れてしまい、結果として表面多孔層内部の密度が高くなり天然皮革並みの充実感は有るものの、ソフトな表面タッチを満足するものではなかった。これを避けるために、エンボスにより変形しにくい弾性体に変えると、エンボス型押しが不十分であり、天然皮革調の外観が得られにくい傾向がある。
また、基体の上に多孔層を形成するに際し、基体表面の界面をまたがるように高剥離強度を得るための高密度樹脂層を形成し、さらにその上に多孔皮膜層を形成する方法では、上記提案と同様に表面多孔層と基体層との界面をまたがるように存在する高密度樹脂層を同一樹脂とした場合、エンボス型押しにより天然皮革調の外観を得ることが出来る場合では、必要な剥離強力も得られるがソフト性が損なわれ、ソフト性を優先するとエンボス型押し性が不十分となり天然皮革調の外観を得ることが出来ない。また、異種の弾性体を組み合わせて使用した場合、つまり表面多孔層にエンボス型押し性が良好な樹脂を用い、基体層との界面をまたがるように存在する高密度樹脂層にはエンボス型押しにより変形しにくい樹脂を用いた場合では、同一の樹脂を両方に使用した場合に比べると、型押し性とソフト性のバランスが良好にはなる傾向はあるが、表面多孔層の一部に型押し性が不十分な樹脂があることには変わらず、ソフト性を重視すると、十分な型押し性は得られない。さらに、複数の層が形成されることによりゴムライクな風合いになる傾向がある。
これらのように、従来技術の製造方法で得られた合成皮革や人工皮革は、ほぼ全てにおいて表面層が無孔質あるいは見掛け密度が高くなる傾向を示しており、A/B>1となるものであった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討の結果、天然皮革調の優美な外観と柔軟性、高い剥離強力を兼ね備えた、特にボール用途等ソフトな表面タッチを必要とする分野に使用することができる皮革様シートが得られることを見出した。すなわち本発明は、三次元絡合不織布の絡合空間にポリウレタンを主体とする弾性樹脂が充填された繊維質基体層、繊維質基体層の表面に密着したポリウレタンからなる表面多孔層、および表面仕上げ層とからなり、該表面多孔層の見掛け密度(A)と該表面多孔層と密着した繊維質基体層中の上層部分の見掛け密度(B)の比率がA/B<1であり、繊維質基体層中の下層部分を構成するポリウレタンの100%モジュラスが基体上層を構成するポリウレタンの100%モジュラスよりも10kg/cm 2 以上低い皮革様シートに関する。そして、好ましくは、繊維質基体層中の上層部分を構成するポリウレタンが表面多孔層を構成するポリウレタンより熱変形しにくいポリウレタン樹脂であり、表面多孔層を構成するポリウレタンの対熱変形固定性と基体層中の上層部分を構成するポリウレタンの対熱変形固定性の関係において対熱変形固定性比が1.05以上、2.0以下を満足し、また、基体層中の上層部分の見掛け密度(B)が0.5g/cm3以下であることが好ましく、さらには繊維質基体層を構成する繊維が単繊維繊度0.2dtex以下の極細繊維からなる皮革様シートである。そして、本発明の皮革様シートを用いたボールに関するものである。
【0007】
以下本発明を詳細に説明する。
まず本発明で使用する繊維質基体は、三次元絡合不織布を構成する従来公知の繊維いずれもが使用可能である。極細繊維、中空繊維、および多空中空繊維の群から選ばれた少なくとも1種の繊維からなる三次元絡合不織布とその絡合空間に存在する弾性樹脂の多孔構造体とからなる表面平滑な繊維質基体層である。例えば皮革様シートの柔軟性を発揮させるために極細繊維を用いた場合には、好ましくは単繊維繊度0.2dtex以下、より好ましくは単繊維繊度0.0001〜0.05dtexの極細繊維の束が使用される。そして、単繊維繊度0.2dtex以下の極細繊維の束は、従来公知の方法で作られる。例えば、少なくとも2種類のポリマーからなる極細繊維発生型繊維から少なくとも1成分を溶解又は分解除去することにより、又は機械的又は化学的な処理により2成分の界面で剥離することにより得ることができる。得られる極細繊維の束を構成する極細繊維の単繊維繊度を0.2dtex以下とするためには、貼合わせ型の極細繊維発生型繊維を用いるよりは繊維断面が海島構造となっている極細繊維発生型繊維を用いることが工程上有利である。
【0008】
本発明の繊維質基体層を構成する繊維としては従来公知の天然または合成繊維を用いることが可能である。例えば極細繊維発生型繊維を用いる場合において、極細繊維発生型繊維中で極細繊維を構成するポリマーとしては、6−ナイロン、66−ナイロンをはじめとする溶融紡糸可能なポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、カチオン可染型変性ポリエチレンテレフタレートをはじめとする溶融紡糸可能なポリエステル類などから選ばれた少なくとも1種類のポリマーが挙げられる。
また溶解または分解除去される成分としては、極細繊維成分と溶剤または分解剤に対する溶解性または分解性を異にし、極細繊維成分との相溶性の低いポリマーであり、かつ紡糸条件下で極細繊維成分より溶融粘度が小さいかあるいは表面張力が小さいポリマーであり、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンプロピレン共重合体、変性ポリエステルなどのポリマーから選ばれた少なくとも1種類のポリマーである。
【0009】
極細繊維発生型繊維は、カードで解繊し、ウェッバーを通してウェッブを形成し、得られた繊維ウェッブは、所望の重さ、厚さに積層し、次いで、ニードルパンチ、高速水流などの公知の方法で絡合処理を行って三次元絡合不織布とする。ウエッブには必要に応じて織編物等を積層することもできる。三次元絡合不織布は、表面が極細繊維発生型繊維でなっていればよいが、得られるシートの風合いの点から繊維シート全体が極細繊維発生型繊維又は極細繊維からなっている場合が好ましい。三次元絡合不織布は、表面平滑な基体層とするため、弾性重合体の含浸前にプレス処理などにより表面平滑化することが好ましい。
三次元絡合不織布、あるいはプレスして得られる不織布の厚みは、得られる皮革様シートの用途等によって任意に選択でき、特に制限されるものではないが、1枚ものの場合にその厚みは0.2〜10mm程度であることが好ましく、0.4〜5mm程度であることがより好ましい。密度は0.15〜0.50g/cm3が好ましく、0.20〜0.40g/cm3がより好ましい。0.15g/cm3未満であると含浸する樹脂が多くなることによってゴムライクな風合いとなり、さらに剥離強力も低下する。0.50g/cm3を越えると得られる皮革様シートの風合いが硬くなる傾向がある。
【0010】
次に該三次元絡合不織布中にポリウレタン樹脂溶液または分散液を充填し、ポリウレタン樹脂溶液をコートしたのち、凝固し多孔質皮膜層を形成する。
含浸およびコートするポリウレタンの好ましい代表例としては、ポリエステル系ジオール、ポリエーテル系ジオール、ポリエステル・エーテル系ジオール、ポリカーボネート系ジオール、ポリエーテル・ポリカーボネート系ジオール等の高分子ジオールの1種または2種以上と、有機ポリイソシアネート、好ましくは脂肪族系、芳香族系あるいは脂環族系の有機ジイソシアネートの1種または2種以上と、低分子ジオール、低分子ジアミン、ヒドラジンなどの活性水素原子を2個有する鎖伸長剤とから得られるポリウレタンが挙げられる。
【0011】
中でも、ポリウレタンエラストマー全重量に対する、該ポリウレタンエラストマーを合成するのに用いた有機ポリイソシアネート中のイソシアネート基を構成する窒素原子の重量百分率(以下N%と称す)が2.5〜5%であるようなポリウレタンエラストマーまたはこのポリウレタンエラストマーを主体とするポリマー混合物が好ましい。N%が2.5%未満の場合には、得られる表面多孔層や繊維質基体層は耐摩耗性や耐引っ掻き強さにおいて劣る傾向があり、またN%が5%を越える場合には、折り曲げシワが粗くなり、風合いも硬く、得られる皮革様シートが安っぽくなると同時に、耐屈曲疲労性においても低下する傾向がある。
【0012】
表面多孔層に用いるポリウレタンは、エンボス型押しにより天然皮革調のシボが形成可能なポリウレタンを用いる。
好ましい代表例としては、両末端にヒドロキシル基を有する分子量500〜5000のポリマーグリコールと4,4′−ジフェニルメタン−ジイソシアネートで代表される芳香族ジイソシアネートと炭素数2〜6の低級アルキレングリコールを主体とするハードセグメントから得られたポリウレタン、あるいは、両末端にヒドロキシル基を有する分子量500〜5000のポリマーグリコールと脂肪族または脂環族ジイソシアネートと有機ジアミンあるいは有機酸ジヒドラジドを主体とするハードセグメントから得られたポリウレタンなどが挙げられる。ただし、ソフト性、耐久性、加工性、多孔質膜形成性等を考慮し、これらの共重合物、混合物も用いられる。
【0013】
両末端にヒドロキシル基を有する分子量500〜5000のポリマーグリコールとしては、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコール、ポリヘキサメチレンアジペートグリコール、ポリカプロラクトングリコールなどのポリエステル系グリコールや、ポリヘキサメチレンカーボネートグリコールで代表されるポリカーボネート系グリコール、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコールなどのポリエーテル系グリコールおよびこれらの混合物が使用されるが、特に、ポリエステル系グリコール、ポリカーボネート系グリコールあるいはポリエステル系グリコールとポリカーボネート系グリコールとの混合グリコール、ポリエステル系グリコール、ポリカーボネート系グリコールとポリエーテル系グリコールとの混合グリコールが好ましい。
【0014】
脂肪族ジイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が、また脂環族ジイソシアネートとしては、シクロヘキサンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタン−ジイソシアネート等が挙げられる。有機ジアミンとしては、p−フェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4′−ジアミンジフェニルメタン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエタノールアミン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミンなどが挙げられ、有機酸ジヒドラジドとしてはアジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどが挙げられる。
【0015】
炭素数2〜6の低級アルキレングリコールの代表例としては、エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどがあり、中でもエチレングリコールが良好な型押し性が得られる点で好ましい。
得られるポリウレタンの好ましい100%モジュラスとしては、20〜120kg/cm2であり、より好ましくは40〜80kg/cm2である。20kg/cm2未満の場合は、表面物性が劣る傾向があり、120kg/cm2を越えると、風合いが硬くなる傾向がある。また、表面多孔層の好ましい厚みとしては、0.02〜1.50mmであり、より好ましくは0.05〜1.00mmである。0.02mm未満の場合には、平滑な面が得られず、さらにエンボス型押し性も不良となる傾向があり、さらには繊維質基体層の影響が強くなりソフトな表面タッチが得られ難くなる。1.50mmを越えると、エンボス型押し性およびソフトな表面タッチ感は良好であるが、ゴムライクな風合いとなり天然皮革調の風合いから遠ざかる傾向がある。
【0016】
基体層にもポリウレタンを充填するが、特に表面多孔層に接する基体層中の上層部分には表面多孔層を形成するポリウレタンより対熱変形固定性が大きいポリウレタン樹脂、下層にはソフト性を重視し、上層とのバランスを考慮した100%モジュラスが20〜100kg/cm2であり、より好ましくは40〜80kg/cm2のポリウレタン樹脂を含浸する。
【0017】
これは、エンボス型押し処理により表面多孔層が熱変形固定する際に、基体層は熱変形固定しにくく、いわゆる潰れにくく柔軟性を保持する必要がある。そのために、基体層中の上層部分は表面多孔層を構成するポリウレタンより対熱変形固定性が大きい(スポンジ構造が潰れにくい)ポリウレタンを選択することが特に好ましい。具体的には、表面多孔層に使用するポリウレタンの対熱変形固定性と基体層中の上層部分に使用するポリウレタンの対熱変形固定性の関係が後述する評価方法による対熱変形固定性比において1.05〜2.0であることが好ましく、より好ましくは1.10〜1.50のものを使用することが好ましい。対熱変形固定性比が1.05に満たない場合は、エンボス型押し時に表面多孔層と同様に変形し、基体層の風合いが硬化する傾向がある。また、対熱変形固定性比が2.0を越える場合は、表面多孔層の見掛け密度(A)が表面多孔層と密着した繊維質基体層中の上層部分の見掛け密度(B)よりも高くなり易くA/B>1となり易く表面のソフトなタッチは得られにくい傾向がある。また、エンボス型押し時に生じるはずの表面多孔層と基体層の一体感が損なわれ、風合いが劣る傾向となる。
【0018】
ここで、基体層中の上層に選択されるポリウレタンの種類は特に限定されず、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系あるいはこれらの共重合系、あるいは混合物を用いることが出来る。
ここでは、ソフトセグメントにポリエーテル系あるいはポリエーテル・ポリカーボネートを主体とするもの、ハードセグメントには、芳香族ジイソシアネートと芳香族ジアミンを主体とするものを使用することが、対熱変形固定性が大きいくなる点で好ましい。
例えば、平均分子量500〜3000のポリエーテルジオール、好ましくはポリテトラメチレングリコールを50%以上、さらに好ましくは、70%以上含むソフトセグメントと4,4′−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、p−フェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4′−ジアミンジフェニルメタンなどから選ばれた芳香族ジイソシアネートからなるポリウレタンが用いられる。
このポリウレタンには、必要に応じ、上記とは異なるポリウレタンを混合させることも出来る。特に表面多孔層との良好な接着性を満たすために表面多孔層と同一または近似したポリウレタンを混合させる方法も好ましく用いられる。
また、このポリウレタンは、上記のようなポリウレタンの混合物でも良いが、ポリエーテル系ポリマージオール、ポリカーボネート系ポリマージオール、ポリエステル系ポリマージオール等が、同一の分子鎖に共存する共重合型ポリウレタンでも良い。
【0019】
これらのポリウレタンは、基体層のソフト性を発現できるようにソフトなポリウレタンを使用する。例えば、100%モジュラスが、20〜100kg/cm2、好ましくは、30〜60kg/cm2のポリウレタンが用いられる。また、ソフト性と剥離強力を重視し、全体のバランスを損なわない範囲の量を充填する。
また、その充填量は、充填する上層部分の不織布の繊維重量に対して、固型分で0.3〜2.0倍が好ましく、0.3〜1.5倍がより好ましく設定される。不織布の繊維重量に対して、0.3倍未満では、基体上層部分の密度が表面多孔層部分の密度よりも低くなり繊維とのバインダー効果が弱く、必要な剥離強力が得られにくくなる。2.0倍を越える場合には基体上層の密度が高くなる傾向を示すが、繊維を固定しすぎ基体層のソフト性を損なうことによって天然皮革調の風合いは得られにくい。
【0020】
また、表面多孔層を形成する反対側の基体下層にもポリウレタンを充填する。
このポリウレタンとしては特に制限はないが、基体下層は、基体上層よりもエンボス型押し時の熱による影響を受けにくい傾向があるため、基体層のソフト性を発現できるように、対熱変形固定性が基体上層部分よりも小さいポリウレタンでもよく、またソフトなポリウレタンを使用することが好ましい。例えば、100%モジュラスが、20〜90kg/cm2、好ましくは、20〜60kg/cm2である。そして、基体上層を構成するポリウレタンの100%モジュラスよりも10kg/cm2以上低いポリウレタンが好ましく用いられる。また、ソフト性を重視し、全体のバランスを損なわない範囲の量を充填する。例えば、充填する下層部分の不織布繊維重量に対して固型分で、0.2〜2倍、好ましくは、0.3〜1.5倍になるよう充填する。0.2倍未満では、ソフト性は得られるがあまりに充填される樹脂が少ないために充実感が失われ全体の風合いバランスが損なわれる。また、2.0倍を越える場合には、樹脂の充填度が高くなりすぎ、全体的にゴム弾性が強く硬くなり柔軟な天然皮革調の風合いが得られにくい。
【0021】
また、基体層の上層に充填するポリウレタンと基体層中の下層部分に含浸するポリウレタンは出来るだけ層状に充填することがエンボス加工を行って天然皮革調の優美な外観を均一に付与できることから好ましい。
また、表面多孔層に接する基体層中の上層部分に充填されたポリウレタン層は、基体層の厚みにもよるが、例えば0.1〜1.0mm、好ましくは0.2〜0.6mm厚みで存在させることが好ましい。層厚みが0.1mm未満の場合には、必要な剥離強力を得られず、またエンボス型押し時の変形に抗しきれずソフト性が損なわれ易くなる。また、1.0mmを越えた場合には、必要な剥離強力は得られるが、密度の高い部分が支配的になる傾向があるためゴム弾性が強くなり、天然皮革調の風合いおよびソフトな表面タッチ感と離れる傾向がある。
さらに基体層中の上層部分と下層部分を構成するポリウレタン樹脂の好ましい重量比率は固型分で10:90〜90:10より好ましくは20:80〜80:20である。上層部分が10%に満たない場合には、必要な剥離強力を得られず、またエンボス型押し時の変形に抗しきれずソフト性が損なわれ易くなる。また90%を越えた場合には、必要な剥離強力は得られるがゴム弾性が強くなる傾向がある。
【0022】
基体層へのポリウレタン溶液の含浸は、以下のいくつかの方法が好ましい。
まず、三次元絡合不織布に上面より表面多孔層を形成するポリウレタンより対熱変形固定性が大きいポリウレタン樹脂を所定量塗布し、自然浸透させるか、ロールあるいはナイフでこすり付けるように浸透させ、下面より基体下層用のポリウレタン溶液をロールあるいはナイフ等でこすりつけるように浸透させ、過剰分はナイフ等でかきとる方法がある。
あるいは、不織布全体にいったん基体下層用のポリウレタン溶液を充填した後、ロールあるいはナイフで圧縮し、その直後に表面多孔層を形成するポリウレタンより対熱変形固定性が大きいポリウレタン樹脂をコートし、不織布の回復力を利用して浸透させ、その後該三次元絡合不織布よりはみ出した過剰分はナイフでかきとる方法も使用できる。
【0023】
そして、表面多孔層に接する基体層中の上層部分に充填するポリウレタンは、溶液型または水分散型のポリウレタンが用いられる。そしてポリウレタンの固型分濃度が10〜30重量%となるようにジメチルホルムアミドで代表される公知の希釈溶剤または水分散液で希釈して充填するのが好ましい。10重量%未満の場合には、凝固時の空隙率が大きくなり、表面多孔層と密着した基体層中の上層部分の見掛け密度(B)が低くなることによって表面多孔層の見掛け密度(A)に対しA/B>1となり易くソフトな表面タッチが得られにくくなる。さらには、ポリウレタンの充填量が低下することから剥離強力が低下傾向となり、基体層自体がエンボス加工によって潰れ易くなる。30重量%を越える場合には、A/B<1となり易くソフトな表面タッチは得られやすい反面、基体上層に付与されるポリウレタンの量が多くなりそれにともない風合いが硬くなる傾向がある。
【0024】
ポリウレタンを充填させた繊維質基体層上にポリウレタン液をコートするには、該基体層にポリウレタン溶液を含浸後に続いてコートする方法、あるいは含浸後に凝固浴中で基体層のポリウレタンを凝固させ、乾燥後にポリウレタン液をコーティングする方法があるが、基体層と表面多孔層の密着性を考えると、含浸後に引き続いてコートし、その後に基体層と表面多孔層を同時に凝固する方法が好ましい。密着とは基体表面層と表面多孔層が実質的に該2層以外の物質を介さず連続的に結合している状態を言う、そして部分的に接している状態と異なる場合を言う。部分的に接している状態とは、基体層表面にグラビアロール等でポリウレタン溶液等を塗布し、表面多孔層を貼り合せることによって基体層表面と表面多孔層とが点接着されている場合や、基体層表面と表面多孔層とが架橋型ポリウレタン接着剤によりドライ接着されているような状態を言う。
【0025】
そして、表面多孔層を形成するために用いられるポリウレタンは、溶液型または水分散型のポリウレタンが用いられる。そして固型分濃度が6〜25重量%となるようにジメチルホルムアミドで代表される公知の希釈溶剤または水分散液で希釈して充填するのが好ましい。6重量%未満の場合には、凝固後の表面多孔層形成性や耐磨耗性が低下する傾向にあり、さらに空隙率が大きくなることから天然皮革調の外観を付与するためのエンボス加工時に表面多孔層の厚みくたりが大きくなりA/B>1となり易い傾向があることから天然皮革調の外観は得られるが、ソフトな表面タッチが得られにくい傾向にある。25重量%を越える場合には、表面多孔層に付与されるポリウレタンの量が多くなりそれにともないA/B>1となり易く、よって反発感のある表面タッチとなる傾向がある。
また、基体層中の上層部分に充填するポリウレタン液の固形分濃度は表面多孔層を形成するために用いられるポリウレタン液の固型分濃度以上であることが基体上層の見掛け密度(B)が表面多孔層の見掛け密度(A)よりも高くなる点から好ましい。
【0026】
ポリウレタンの凝固方法としては、公知の方法が用いられる。例えば、ポリウレタンの非溶剤を含む液に浸漬して湿式凝固するか、ゲル化させた後加熱乾燥する方法などが挙げられるが、繊維質基体層および表面多孔層がソフトで均一な多孔構造を作ることが可能な湿式凝固する方法が好ましく用いられる。
また、ポリウレタン溶液には、必要に応じて着色剤、凝固調節剤、酸化防止剤、分散剤等の添加剤を配合する。そして、発明の効果を損なわない範囲内で少量別のポリウレタン等の樹脂を添加させても良い。
【0027】
ついで、繊維質基体層を構成する繊維が極細繊維からなる場合には、極細繊維発生型繊維を少なくとも1成分の溶解剤若しくは分解剤で処理して、又は機械的若しくは化学的処理により2成分の界面で剥離して極細繊維束に変性する。極細繊維発生型繊維の変性処理はポリウレタンを主体とする弾性樹脂の付与前であってもよいが、極細繊維束に変性後に弾性樹脂を含浸、凝固すると、弾性樹脂が極細繊維に接着し風合いが硬くなりやすいため、弾性樹脂付与後に変性することが好ましい。弾性樹脂付与前に変性処理を行った場合は、極細繊維と弾性樹脂が接着しないようにポリビニルアルコールなどの溶解除去可能な仮充填剤を付与した後に弾性樹脂を付与し、その後に該仮充填剤を除去することが好ましい。
【0028】
上記方法にて得られた皮革様シートの表面多孔層の見掛け密度(A)と該基体層中の上層部分の見掛け密度(B)の比率がA/B<1であることがソフトな表面タッチを有し、特にボールの用途に適する点で必須である。より好ましくは、A/B<0.95、さらに好ましくはA/B<0.90、特に好ましくはA/B<0.85である。A/Bの値が1を越える場合には、従来の公知技術によって得られる一般的な天然皮革並みの密度勾配構造による充実感は得られるもののソフトなタッチ特に表面のソフトなタッチが得られない。そして、さらに基体上層の見掛け密度(B)は0.5g/cm3以下であることが柔軟性および高い剥離強力を兼ね備えた皮革様シートを得る点から好ましく、0.3〜0.5g/cm3であることが皮革様シートの充実感と柔軟性を兼ね備えることからより好ましい。また、表面多孔層の見掛け密度(A)は、0.20〜0.45g/cm3であることがソフトな表面タッチを得る点から好ましい。0.20g/cm3未満の場合には、ソフトな表面タッチは得られるものの表面多孔層の空隙が大きくなる傾向にあり、表面の耐摩耗性および剥離強力が低下する傾向にある。0.45g/cm3を越えた場合には、空隙が小さくなり、直下の基体上層部分との有意差が小さくなる傾向のためソフトな表面タッチが得られにくくなる。
なお、表面多孔層の見掛け密度(A)は、皮革様シートの表面仕上げ層および繊維質基体層とを除くように断面を3分割スライスし、分割された表面多孔層の重量を見掛けの体積で除して測定した値であり、表面多孔層と密着した繊維質基体層中の上層部分の見掛け密度(B)の値を求める場合には、前記スライスにて表面多孔層を除いた後、下層部分をスライス除去して(A)と同様の方法で測定するが、測定を容易にするためには繊維質基体層を作製するときに予め上層部分を構成するポリウレタンに測定重量に影響をおよぼさない程度に極少量の着色剤を添加して下層部分のポリウレタンと区別できるように含浸・凝固しておいてから仕上げた後に着色部分の繊維基体層すなわち上層部分を得るように断面をスライス分割しその重量を見掛けの体積で除して測定した値をいう。
【0029】
また、上記の三次元絡合不織布とポリウレタンを主体とした弾性重合体からなり、表面多孔層を有する繊維質基体層は、以下の方法で代表される公知の表面仕上げ方法で仕上げることによって、天然皮革調の外観を得ることが出来る。すなわち、顔料、染料等の着色剤と樹脂とからなるインクをグラビアロール、リバースロール、スクリーン等の手法で基体表面に転写して着色し、エンボスロールで型押しして天然皮革調のシボを再現する。そして表面仕上げ層厚みは、特に制限はないが、ソフトな表面タッチを得るためには表面多孔層の10分の1以下が好ましく、2〜10μmの範囲がより好ましい。
また、エンボス加工条件は、エンボスロールの加熱温度100℃〜230℃の範囲が好ましい。加熱温度が100℃未満の場合、多孔層を形成するポリウレタン樹脂の軟化温度にもよるが、エンボス絞の掛かり斑が発生する場合があり、230℃を越えた場合には、絞のくずれが生じたり基体層中のポリウレタン樹脂の軟化にも影響を与え風合いが硬くなる場合がある。エンボスロールのプレス圧力は0.5kg/cm2〜15kg/cm2の範囲が好ましい。0.5kg/cm2未満の場合、エンボス絞の掛かり斑が発生する場合があり、15kg/cm2を越えた場合には、基体層下層にくたりを生じ風合いが硬くなる場合がある。得られる皮革様シートの柔軟性と天然皮革調の外観を兼ね備える為、さらに好ましくは、加熱温度120℃〜190℃、プレス圧力1kg/cm2〜6kg/cm2の範囲で、さらにエンボスロール表面温度を表面多孔層を構成するポリウレタンの軟化点以上の高温に加熱し低プレスでエンボス加工することが絞の掛かりと表面多孔層の見掛け密度を極力高めないといった目的を両立させる点で好ましい。これらの仕上げ方法によって得られた皮革様シートは、天然皮革調の高級な外観を有するものであった。
【0030】
さらに、エンボス加工後に機械的な揉み処理あるいは液流型染色機等でリラックス処理を行うことで、自然な揉みシワが入り、ソフト性も増し自然な高級感を増すことができる。また、グラビア着色時に染料で染色可能な樹脂を塗布しておき、エンボス後に染色機で染料による着色を行うと透明感のある着色がされ、自然なシュリンク等も表現され、さらにソフト性も増すので、より高い高級感が得られる。
【0031】
本発明皮革様シートの一例の模式図を図1に示す。図1は断面を示すものであるが、皮革様シートの表面から、表面仕上げ層(1)、表面多孔層(2)、繊維質基体層(3)の順に積層され、繊維質基体層は上層(4)と下層(5)が存在する。
【0032】
本文中で述べている対熱変形固定性については、以下の方法により評価している。
<測定サンプル作成>
海成分としてメルトインデックス70のポリエチレン50重量部および島成分として6−ナイロン50重量部を同一溶融系で溶融紡糸して、単繊維繊度10dtex、島数約300の複合繊維を製造した。この複合繊維を3.0倍に延伸し、捲縮を付与した後、繊維長51mmに切断し、カードで解繊した後クロスラッパーウェバーでウェブとした。次に、9バーブのニードル針でパンチ数500パンチ/cm2の条件でニードルパンチを行い、120℃に加熱したロールでプレスし、厚み2.17mm、目付650g/m2、密度0.30g/cm3の繊維絡合不織布を作成する。
この不織布に評価するポリウレタンの13%ジメチルホルムアミド(以下DMFと略すこともある)溶液を含浸し、DMF/水=30/70、温度40℃の凝固浴中で凝固して、多孔構造体とする。続いて、水洗後、複合繊維中のポリエチレンを90℃に加熱したトルエンにて抽出除去して、0.01dtexの6−ナイロン極細繊維束状繊維とポリウレタンとからなるサンプルを作成する。
【0033】
<対熱変形固定性の評価>
上記サンプルを150℃に加熱された平板金型にクリアランスなしで2.0kg/cm2の圧力で挟み、10秒間圧着する。
その後、平板金型で圧縮された後の厚みを3点測定し、これらの平均をTとする。Tを対熱変形固定性と定義し、大きい程つぶれにくく、小さい程つぶれ易い。
比較するサンプル同士の圧縮された後の厚み(T1:表面多孔層構成するウレタン樹脂使用時の圧縮された後の厚み、T2:基体層中の上層部分を構成するウレタン樹脂使用時の圧縮された後の厚み)の比を算出し、これを対熱変形固定性比と呼ぶ。
対熱変形固定性比=T2/T1
【0034】
【実施例】
次に本発明を具体的に実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部及び%は断わりのない限り重量に関するものである。
本発明でいう単繊維繊度は、繊維束の断面の顕微鏡写真から、繊維束を構成する極細繊維の本数を数え、繊維束のトータル繊度を該本数で除した値である。
【0035】
実施例1
海成分としてポリエチレン50重量部および島成分として6−ナイロン50重量部を同一溶融系で溶融紡糸して、繊度10dtexの複合繊維を製造した。この複合繊維を3.0倍に延伸し、捲縮を付与した後、繊維長51mmに切断し、カードで解繊した後クロスラッパーウェバーでウェブとした。次に、ニードルパンチにより、目付650g/m2、見掛け密度0.32g/cm3の繊維絡合不織布とした。
【0036】
この不織布にポリヘキサカーボネートグリコール、ポリメチレンプロピレンアジペート、メチレンジアミンが5:2:3の重量比で構成され、n−ヘキサンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、エチレングリコールで共重合された100%モジュラス60kg/cm2のポリカーボネート系ポリウレタン13%ジメチルホルムアミド溶液(T3(基体層中の下層部分を構成するウレタン使用時の圧縮された後の厚みであり、測定方法はT1、T2と同様の方法。)=0.80mm)を含浸後にナイフを押し当てて、不織布厚みの70%まで圧縮し、その直後にソフトセグメントがポリテトラメチレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコールが67.5:22.5:10の重量比で構成され、4,4′−ジフェニルメタン−ジイソシアネート(以下MDIと略す)、4,4′−ジアミンジフェニルメタン(以下DAMと略す)、エチレングリコール(以下EGと略す)で共重合された100%モジュラス50kg/cm2のポリウレタンの20%ジメチルホルムアミド溶液(T2=1.05mm)をコートし浸透させた後、浸透しきれなかった溶液をナイフでかきとった後の上面に、ポリヘキサカーボネートグリコール、ポリメチレンプロピレンアジペート、メチレンジアミンが5:2:3の重量比で構成され、n−ヘキサンジイソシアネート、MDI、EGで共重合された100%モジュラス60kg/cm2のポリカーボネート系ポリウレタン13%ジメチルホルムアミド溶液(T1=0.80mm)をコートし、DMF/水=30/70の比率の凝固浴中で凝固して、多孔構造体とした。
【0037】
続いて、水洗後、複合繊維中のポリエチレンを抽出除去して、0.01dtexの極細繊維からなる6−ナイロン極細繊維束状繊維とポリウレタンとからなり、厚さ0.18mmの表面多孔層を有する厚さ1.3mmの繊維質基体を得た。なお、表面多孔層と基体層中の上層部分のポリウレタンの対熱変形固定性比は、1.3であった。
この基体中の表面多孔層に接する基体上層部のポリカーボネート・エーテル系ポリウレタンの層は、厚みが0.3mm、繊維とポリウレタンの比率は、重量比50/50であり、その下層部は、繊維とポリウレタンの比は、重量比60/40であった。
【0038】
この基体表面に茶色顔料を含むポリウレタン液をグラビアロールで塗布し、固形分で5g/m2の着色層を形成した。その後、150℃に加熱したエンボスロールを10秒間プレス圧1.3kg/cm2で型押しし、天然皮革調模様を付与した。
得られた皮革様シートをスライス分割し測定した見掛け密度表面多孔層(A)と基体上層(B)はそれぞれ(A)=0.35g/cm3、(B)=0.42g/cm3、A/B=0.83であった。さらに揉み機で揉むことで、天然皮革調の自然な外感とソフトな外感を有し、さらに目標とする剥離強力を上回る2.5kg/cm以上が得られた。上記皮革様シートを用いてバスケットボールを作製したところ天然皮革調の優美な外観、ソフトな表面タッチ、優れたハンドリング性、柔軟性および高い剥離強力を兼ね備えたものであった。
【0039】
実施例2
実施例1と同一の不織布の上層より、ポリテトラメチレングリコール、ポリカプロラクトンが70:30の重量比であり、MDI、DAM、EGで共重合された100%モジュラス50kg/cm2のポリウレタンの18%ジメチルホルムアミド溶液(T2=1.05mm)をコートし、ロールでこすり付けるように浸透させ、浸透しきれなかった溶液をナイフでかきとった後、下層より100%モジュラス40kg/cm2ポリカーボネート系ポリウレタンを主体とするポリウレタン13%ジメチルホルムアミド溶液をロールでパンより持ち上げ、こすり付けるように含浸し、浸透しきれなかった溶液をナイフでかきとった後、不織布の上層面に、100%モジュラス60kg/cm2のポリカーボネート系ポリウレタン13%ジメチルホルムアミド溶液(T1=0.80mm)をコートし、DMF/水=25/75の比率の凝固浴中で凝固して、多孔構造体とした。
【0040】
続いて、水洗後、複合繊維中のポリエチレンを抽出除去して、0.01dtexの極細繊維からなる6−ナイロン極細繊維束状繊維とポリウレタンとからなり、厚さ0.18mmの表面多孔層を有する厚さ1.3mmの繊維質基体を得た。
なお、表面多孔層と基体層上層のポリウレタンの対熱変形固定性比は、1.3であった。
この基体中の表面多孔層に接する基体上層部のエーテル系ポリウレタンの層は、厚みが0.3mm、繊維とポリウレタンの比率は、重量比55/45であり、その下層部は、繊維とポリウレタンの比は、重量比60/40であった。
【0041】
この基体表面に茶色顔料を含むポリウレタン液をグラビアロールで塗布し、固形分で5g/m2の着色層を形成した。その後、150℃に加熱したエンボスロールを8秒間プレス圧1.3kg/cm2で型押しし、天然皮革調模様を付与した。
得られた皮革様シートをスライス分割し測定した見掛け密度表面多孔層(A)と基体上層(B)はそれぞれ(A)=0.31g/cm3、(B)=0.40g/cm3、A/B=0.78であった。さらに揉み機で揉むことで、天然皮革調の自然な外感とソフトな外感を有し、さらに目標とする剥離強力を上回る2.3kg/cm以上が得られた。上記皮革様シートを用いてバスケットボールを作製したところ天然皮革調の優美な外観、ソフトな表面タッチ、優れたハンドリング性、柔軟性および高い剥離強力を兼ね備えたものであった。
【0042】
比較例1
実施例1と同一の極細繊維発生型複合繊維からなる不織布に、100%モジュラス40kg/cm2ポリカーボネート系ポリウレタンを主体とするポリウレタン13%ジメチルホルムアミド溶液を含浸後にナイフを押し当てて、不織布厚みの70%まで圧縮し、その直後に100%モジュラス60kg/cm2ポリカーボネート系ポリウレタンを主体とするポリウレタン13%ジメチルホルムアミド溶液(T2=0.80mm)をコートし、不織布の回復力を利用して浸透させた後、浸透しきれなかった溶液をナイフでかきとった後、さらに同一の100%モジュラス60kg/cm2のポリカーボネート系ポリウレタン20%ジメチルホルムアミド溶液(T1=0.80mm)をコートし、DMF/水=25/75の比率の凝固浴中で凝固して、多孔構造体とした。
【0043】
続いて、水洗後、複合繊維中のポリエチレンを抽出除去して、0.01dtexの極細繊維からなる6−ナイロン極細繊維束状繊維とポリウレタンとからなり、厚さ0.2mmの表面多孔層を有する厚さ1.3mmの繊維質基体を得た。
なお、表面多孔層と基体層上層のポリウレタンの対熱変形固定性比は、1.0であった。
この基体中の表面多孔層に接する基体上層部のポリカーボネート系ポリウレタンの層は、厚みが0.3mm、繊維とポリウレタンの比率は、重量比60/40であり、その下層部は、繊維とポリウレタンの比は、重量比60/40であった。
【0044】
この基体表面に茶色顔料を含むポリウレタン液をグラビアロールで塗布し、固形分で5g/m2の着色層を形成した。その後、150℃に加熱したエンボスロールを10秒間プレス圧1.8kg/cm2で型押しし、天然皮革調模様を付与した。得られた皮革様シートをスライス分割し測定した見掛け密度表面多孔層(A)と基体上層(B)はそれぞれ(A)=0.42g/cm3、(B)=0.38g/cm3、A/B=1.11であった。さらに揉み機で揉むことで、天然皮革調の自然な外感、柔軟性、および充実感を有し、さらに剥離強力が2.0kg/cm程度であった。しかしながらエンボス型押し時に多孔表皮層のみならず、基体層も圧縮変形し、風合いの硬いものとなり、高級感の乏しいものとなった。上記皮革様シートを用いてバスケットボールを作製したところ天然皮革調の優美な外観、高い剥離強力を有するが柔軟性に劣り、さらにソフトな表面タッチが得られず使用時にプラスチックライクな触感を有するものでハンドリング性に劣ったものであった。
【0045】
比較例2
実施例1と同一の極細繊維発生型複合繊維からなる不織布に、ポリヘキサカーボネートグリコール、ポリメチレンプロピレンアジペート、メチレンジアミンが5:2:3の重量比で構成され、n−ヘキサンジイソシアネート、MDI、EGで共重合された100%モジュラス60kg/cm2のポリカーボネート系ポリウレタン13%ジメチルホルムアミド溶液(T3(基体層中の下層部分を構成するウレタン使用時の圧縮された後の厚みであり、測定方法はT1、T2と同様の方法。)=0.80mm)を含浸後にナイフを押し当てて、不織布厚みの70%まで圧縮し、その直後にソフトセグメントがポリテトラメチレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコールが67.5:22.5:10の重量比で構成され、4,4′−ジフェニルメタン−ジイソシアネート(以下MDIと略す)、4,4′−ジアミンジフェニルメタン(以下DAMと略す)、エチレングリコール(以下EGと略す)で共重合された100%モジュラス50kg/cm2のポリウレタンの13%ジメチルホルムアミド溶液(T2=1.05mm)をコートし浸透させた後、浸透しきれなかった溶液をナイフでかきとった後の上面に、ポリヘキサカーボネートグリコール、ポリメチレンプロピレンアジペート、メチレンジアミンが5:2:3の重量比で構成され、n−ヘキサンジイソシアネート、MDI、EGで共重合された100%モジュラス60kg/cm2のポリカーボネート系ポリウレタン18%ジメチルホルムアミド溶液(T1=0.80mm)をコートし、DMF/水=30/70の比率の凝固浴中で凝固して、多孔構造体とした。
【0046】
続いて、水洗後、複合繊維中のポリエチレンを抽出除去して、0.01dtexの極細繊維からなる6−ナイロン極細繊維束状繊維とポリウレタンとからなり、厚さ0.2mmの表面多孔層を有する厚さ1.3mmの繊維質基体を得た。
なお、表面多孔層と基体層中の上層部分のポリウレタンの対熱変形固定性比は、1.3であった。
この基体中の表面多孔層に接する基体上層部のポリカーボネート系エーテル系ポリウレタンの層は、厚みが0.3mm、繊維とポリウレタンの比率は、重量比60/40であり、その下層部は、繊維とポリウレタンの比は、重量比60/40であった。
【0047】
この基体表面に茶色顔料を含むポリウレタン液をグラビアロールで塗布し、固形分で5g/m2の着色層を形成した。その後、150℃に加熱したエンボスロールを10秒間プレス圧1.3kg/cm2で型押しし、天然皮革調模様を付与した。
得られた皮革様シートをスライス分割し測定した見掛け密度表面多孔層(A)と基体上層(B)はそれぞれ(A)=0.40g/cm3、(B)=0.37g/cm3、A/B=1.08であった。さらに揉み機で揉むことで、天然皮革調の自然な外感、柔軟性、および充実感を有し、さらに剥離強力が2.0kg/cmの皮革様シートが得られた。しかしながら、ソフトな表面タッチに劣るものであった。上記皮革様シートを用いてバスケットボールを作製したところ天然皮革調の優美な外観、柔軟性および高い剥離強力は得られたものの、ソフトな表面タッチ、優れたハンドリング性に乏しいものであった。
【0048】
【発明の効果】
天然皮革調の優美な外観と優れた柔軟性、特にソフトな表面タッチを有し、高い剥離強力を兼ね備えた皮革様シートに関するもので、一般的な皮革代替用途、特にボールの用途に好ましく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の皮革様シートを模式的に表す断面図である。
【符号の説明】
1 表面仕上げ層
2 表面多孔層
3 繊維質基体
4 繊維質基体上層
5 繊維質基体下層
Claims (5)
- 三次元絡合不織布の絡合空間にポリウレタンを主体とする弾性樹脂が充填された繊維質基体層、繊維質基体層の表面に密着したポリウレタンからなる表面多孔層、および表面仕上げ層とからなり、該表面多孔層の見掛け密度(A)と該表面多孔層と密着した繊維質基体層中の上層部分の見掛け密度(B)の比率がA/B<1であり、繊維質基体層中の下層部分を構成するポリウレタンの100%モジュラスが基体上層を構成するポリウレタンの100%モジュラスよりも10kg/cm 2 以上低いことを特徴とする皮革様シート。
- 繊維質基体層中の上層部分を構成するポリウレタンが表面多孔層を構成するポリウレタンより熱変形しにくいポリウレタン樹脂であり、表面多孔層を構成するポリウレタンの対熱変形固定性と基体層中の上層部分を構成するポリウレタンの対熱変形固定性の関係において対熱変形固定性比が1.05以上、2.0以下を満足する請求項1に記載の皮革様シート。
- 繊維質基体層中の上層部分の見掛け密度(B)が0.5g/cm3以下である請求項1または2に記載の皮革様シート。
- 繊維質基体層を構成する繊維が単繊維繊度0.2dtex以下の極細繊維からなる請求項1〜3いずれかに記載の皮革様シート。
- 請求項1〜4いずれかに記載の皮革様シートを用いたボール。
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