JP3993013B2 - 皮革様シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然皮革調の優美な外観、優れた柔軟性を有し、高い剥離強力を兼ね備えた皮革様シートに関するもので、さらに該皮革様シートの切断断面が適度な色傾斜を有し、切断断面および表面が摩耗したときに見た目の違和感が感じられない皮革様シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、合成皮革や人工皮革は、天然皮革の代替品として靴、衣料、手袋、鞄、ボール、インテリアなどのあらゆる分野に多く利用されている。これらは、より高い品質と感性が要求されており、とりわけ優美な天然皮革調の外観、および風合いと剥離強度が両立したものが強く望まれている。さらには、経時的に表面部分が摩耗したときの摩耗によって露出した下地との色差に違和感が生じないものや、あらゆる用途の製品を製造する場合に切断断面が着色されているものが望まれている。
【0003】
従来、天然皮革調の外観を作り出すために離型紙を用いて天然皮革のシボを再現した樹脂フィルムを作り基体に貼り付ける造面法が提案され、あるいは、同一の弾性体が均一に充填された基体層の片面に密着した多孔樹脂層を形成し、エンボスロールで型押しすることで天然皮革のシボを再現する方法がとられてきた。
また、基体の上に多孔層を形成するに際し、基体表面の界面をまたがるように高剥離強度を得るための高密度樹脂層を形成し、その上に必要な多孔皮膜層を形成する方法が提案されている。
さらには、特開平11−140779号公報では、表面多孔層と同一の弾性樹脂を表面多孔層と連続して基体表層に充填する方法が提案されている。
【0004】
【発明を解決しようとする課題】
しかしこれらの方法では目的とする天然皮革調の優美な外観とソフトな表面タッチ、柔軟性および高い剥離強力、さらに該皮革様シートの切断断面が適度な色傾斜を有し、切断断面および表面が摩耗したときに見た目の違和感が感じられない皮革様シートのすべてを満たすことは困難である。
まず、離型紙を用いる造面法では、あまりに均一で人工的であり天然皮革調とは言えず、また深いシボ模様を形成することは出来ない。
また、同一の弾性体が均一に充填された基体層の片面に密着した多孔樹脂層を形成し、エンボスロールで型押しすることで天然皮革のシボを再現する方法では、自然な天然皮革調の外観を得られるが、ソフト性を重視すると、基体層にソフトな弾性体を比較的少量充填する必要があるが、これでは必要な剥離強力を得る事は出来ない。また、必要な剥離強力を得ようとすると、比較的硬質の弾性体を多量に充填する必要があり、そうするとソフト性が失われることになりこれらをすべて満たすことは出来なかった。
【0005】
さらには、特開平11−140779号公報で提案されている表面多孔層と同一の弾性樹脂を表面多孔層と連続して基体表層に充填する方法では、エンボス型押しにより自然な天然皮革調の外観を得られるが、エンボス型押し時に表面多孔層と同時に、同一の樹脂からなる基体層上層も圧縮変形して基体層のソフト性を損う傾向がある。
これを避けるために、エンボスにより変形しにくい弾性体に変えると、エンボス型押しが不十分であり、天然皮革調の外観が得られにくい傾向がある。
また、基体の上に多孔層を形成するに際し、基体表面の界面をまたがるように高剥離強度を得るための高密度樹脂層を形成し、さらにその上に多孔皮膜層を形成する方法では、上記提案と同様に表面多孔層と基体層との界面をまたがるように存在する高密度樹脂層と表面多孔層とを同一樹脂とした場合、エンボス型押しにより天然皮革調の外観を得た場合には、必要な剥離強力も得られるがソフト性が損なわれ、ソフト性を優先すると十分にエンボス型押しすることが出来ず天然皮革調の外観を得ることが難しい。また、異種の弾性体を組み合わせて使用した場合、つまり表面多孔層にエンボス型押し性が良好な樹脂を用い、基体層との界面をまたがるように存在する高密度樹脂層にはエンボス型押しにより変形しにくい樹脂を用いた場合では、同一の樹脂を両方に使用した場合に比べると、型押し性とソフト性のバランスが良好にはなる傾向はあるが、表面多孔層の一部に型押し性が不十分な樹脂があることには変わらず、ソフト性を重視すると十分な型押し性は得られない。さらに複数の層が形成されることによりゴムライクな風合いになる傾向がある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討の結果、天然皮革調の優美な外観と柔軟性、高い剥離強力を兼ね備え、さらに、経時的に表面部分が摩耗したときの露出した下地部分との間の色差に違和感のない分野に使用することができる皮革様シートが得られることを見出した。すなわち、本発明は三次元絡合不織布の絡合空間にポリウレタンを主体とする弾性樹脂が充填された繊維質基体層、繊維質基体層の表面に密着したポリウレタンからなる表面多孔層、および表面仕上げ層とからなり、表面多孔層と密着した繊維質基体層中の上層部分には、表面多孔層を構成するポリウレタンより熱変形しにくいポリウレタン樹脂が充填されており、該表面多孔層を構成するポリウレタン樹脂量に対する着色剤の含有率(A)、該基体層中の上層部分を構成するポリウレタン樹脂量に対する着色剤の含有率(B)、該基体層中の下層部分を構成するポリウレタン樹脂量に対する着色剤の含有率(C)がA>B>Cを満足することを特徴とする皮革様シートである。
そして好ましくは、着色剤が顔料であり、また表面多孔層を構成するポリウレタン樹脂量に対する着色剤の含有率(A)が1.5重量%以上、40重量%以下である皮革様シートである。また、極細繊維が原着繊維からなる皮革様シートに関するものである。
【0007】
以下本発明を詳細に説明する。
まず本発明で使用する繊維質基体は、三次元絡合不織布を構成する従来公知の繊維いずれもが使用可能であり、極細繊維、中空繊維、および多空中空繊維の群から選ばれた少なくとも1種の繊維からなる三次元絡合不織布とその絡合空間に存在する弾性樹脂の多孔構造体とからなる表面平滑な繊維質基体である。例えば皮革様シートの柔軟性を発揮させるために極細繊維を用いた場合には、好ましくは単繊維繊度0.2デシテックス(dtexと称すこともある)以下、より好ましくは単繊維繊度0.0001〜0.05dtexの極細繊維の束が用いられる。そして、単繊維繊度0.2dtex以下の極細繊維の束は、従来公知の方法で作られる。例えば、少なくとも2種類のポリマーからなる極細繊維発生型繊維から少なくとも1成分を溶解又は分解除去することにより、又は機械的又は化学的な処理により2成分の界面で剥離することにより得ることができる。得られる極細繊維の束を構成する極細繊維の単繊維繊度を0.2dtex以下とするためには、貼合わせ型の極細繊維発生型繊維を用いるよりは繊維断面が海島構造となっている極細繊維発生型繊維を用いることが工程上有利である。
【0008】
本発明の繊維質基体層を構成する繊維としては前述の通り従来公知の天然または合成繊維を用いることが可能である。例えば極細繊維発生型繊維を用いる場合において、極細繊維発生型繊維中で極細繊維を構成するポリマーとしては、6−ナイロン、66−ナイロンをはじめとする溶融紡糸可能なポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、カチオン可染型変性ポリエチレンテレフタレートをはじめとする溶融紡糸可能なポリエステル類などから選ばれた少なくとも1種類のポリマーが挙げられる。
溶解または分解除去される成分としては、極細繊維成分と溶剤または分解剤に対する溶解性または分解性を異にし、極細繊維成分との相溶性の低いポリマーであり、かつ紡糸条件下で極細繊維成分より溶融粘度が小さいかあるいは表面張力が小さいポリマーであり、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンプロピレン共重合体、変性ポリエステルなどのポリマーから選ばれた少なくとも1種類のポリマーが挙げられる。
【0009】
本発明に用いられる繊維は原着していることが皮革様シートを厚み方向に切断した場合、繊維自体が着色されていることによって切断断面の違和感が低減すること、さらには繊維質基体層中の上層部分と下層部分の界面部分の色差を緩和し緩やかな色傾斜を発現する点から特に好ましい。そして原着剤としては公知の繊維に用いる着色剤が用いられるが、取り扱い性の容易さ、天然皮革の断面が濃色系の色であることからカーボンブラックが好ましく用いられる。原着剤の含有量としては、ポリウレタンの着色状態によって自由に選択できるものの、好ましくは繊維を構成する樹脂成分100重量部に対して7重量部以下であり、より好ましくは5重量部以下である。7重量部を越えた場合には繊維の機械物性が低下する傾向にある。また、本発明の皮革様シートを作成する工程中いずれかの段階で繊維部分を染色して着色することも本発明の効果を損なわない範囲で行うことは可能である。
【0010】
極細繊維発生型繊維は、カードで解繊し、ウェバーを通してウェブを形成し、得られた繊維ウェブは、所望の重さ、厚さに積層し、次いで、ニードルパンチ、高速水流などの公知の方法で絡合処理を行って三次元絡合不織布とする。ウェブには必要に応じて織編物等を積層することもできる。三次元絡合不織布は、得られるシートの風合いの点から繊維シート全体が極細繊維発生型繊維又は極細繊維からなっていることが好ましい。三次元絡合不織布は、表面平滑な基体層とするため、さらには繊維質基体層と表面多孔層の界面を平滑な層状とし、エンボス型押し斑の防止のため、弾性重合体の含浸前にプレス処理などにより表面平滑化することが好ましい。三次元絡合不織布、あるいはプレスして得られる不織布の厚みは、得られる皮革様シートの用途等によって任意に選択でき、特に制限されるものではないが、1枚ものの場合にその厚みは0.2〜10mm程度であることが好ましく、0.4〜5mm程度であることがより好ましい。密度は0.15〜0.50g/cm3が好ましく、0.20〜0.40g/cm3がより好ましい。0.15g/cm3未満であると含浸する樹脂が多くなることによってゴムライクな風合いとなり、さらに剥離強力も低下する。0.50g/cm3を越えると得られる皮革様シートの風合いが硬くなる傾向がある。
【0011】
次に該三次元絡合不織布中にポリウレタン樹脂溶液または分散液を充填し、ポリウレタン樹脂溶液をコートしたのち、凝固し多孔質表面層を形成する。
充填およびコートするポリウレタンの好ましい代表例としては、ポリエステル系ジオール、ポリエーテル系ジオール、ポリカーボネート系ジオール、ポリエステル・エーテル系ジオール、ポリカーボネート・エーテル系ジオールなどの高分子ジオールの1種または2種以上と、有機ポリイソシアネート、好ましくは脂肪族系、芳香族系あるいは脂環族系の有機ジイソシアネートの1種または2種以上と、低分子ジオール、低分子ジアミン、ヒドラジンなどの活性水素原子を2個有する鎖伸長剤とから得られるポリウレタン等が挙げられる。
【0012】
中でも、ポリウレタンエラストマー全重量に対する、該ポリウレタンエラストマーを合成するのに用いた有機ポリイソシアネート中のイソシアネート基を構成する窒素原子の重量百分率(以下N%と称す)が2.5〜5%であるようなポリウレタンエラストマーまたはこのポリウレタンエラストマーを主体とするポリマー混合物が好ましい。N%が2.5%未満の場合には、得られる表面多孔質層や基材層は耐摩耗性や耐引っ掻き強さにおいて劣ることとなり、またN%が5%を越える場合には、折り曲げシワが粗くなり、風合いも硬く、得られる皮革様シートが安っぽくなると同時に、耐屈曲疲労性においても劣ったものとなる。
【0013】
表面多孔質層に用いるポリウレタンは、エンボス型押しにより天然皮革調のシボが形成可能なポリウレタンを用いる。
好ましい代表例としては、両末端にヒドロキシル基を有する分子量500〜5000のポリマーグリコールと4,4′−ジフェニルメタン−ジイソシアネートと炭素数2〜6の低級アルキレングリコールを主体とするハードセグメントから得られたポリウレタン、あるいは、両末端にヒドロキシル基を有する分子量500〜5000のポリマーグリコールと脂肪族または脂環族ジイソシアネートと有機ジアミンあるいは有機酸ジヒドラジドを主体とするハードセグメントから得られたポリウレタンなどがあげられる。ただし、ソフト性、耐久性、加工性、多孔質膜形成性等を考慮し、これらの共重合物、混合物も用いられる。
【0014】
両末端にヒドロキシル基を有する分子量500〜5000のポリマーグリコールとしては、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコール、ポリヘキサメチレンアジペートグリコール、ポリカプロラクトングリコールなどのポリエステル系グリコールや、ポリヘキサメチレンカーボネートグリコールで代表されるポリカーボネート系グリコール、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコールなどのポリエーテル系グリコールおよびこれらの混合物が使用されるが、特に、ポリエステル系グリコール、ポリカーボネート系グリコールあるいはポリエステル系グリコールとポリカーボネート系グリコールとの混合グリコール、ポリエステル系グリコール、ポリカーボネート系グリコールとポリエーテル系グリコールとの混合グリコールが好ましい。
【0015】
脂肪族ジイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが、また脂環族ジイソシアネートとしては、シクロヘキサンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタン−ジイソシアネートなどが挙げられる。有機ジアミンとしては、p−フェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4′−ジアミンジフェニルメタン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエタノールアミン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミンなどが挙げられ、有機酸ジヒドラジドとしてはアジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどが挙げられる。
【0016】
炭素数2〜6の低級アルキレングリコールの代表例としては、エチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどがあり、中でもエチレングリコールが良好な型押し性が得られる点で好ましい。
得られるポリウレタンの好ましい100%モジュラスとしては、20〜120kg/cm2であり、より好ましくは40〜80kg/cm2である。20kg/cm2未満の場合は、表面物性が劣る傾向があり、120kg/cm2を越えると、風合いが硬くなる傾向がある。また、表面多孔質層の好ましい厚みとしては、0.02〜1.50mmであり、より好ましくは0.05〜1.00mmである。0.02mm未満の場合には、平滑な面が得られず、さらにエンボス型押し性も不良となる傾向があり、1.50mmを越えると、エンボス型押し性は良好であるが、ゴムライクな風合いになる傾向がある。
【0017】
基体層にもポリウレタンを充填するが、特に表面多孔層に接する基体層中の上層部分を構成する三次元絡合不織布の絡合空間には表面多孔層を形成するポリウレタンより対熱変形固定性が大きいポリウレタン樹脂、下層にはソフト性を重視し、上層とのバランスを考慮した100%モジュラスが20〜90kg/cm2であり、より好ましくは20〜60kg/cm2のポリウレタン樹脂を充填する。
これは、エンボス型押し処理により表面多孔層が熱変形固定する際に、基体層は熱変形固定しにくく、柔軟性を保持するためである。そのために、基体層中の上層部分は表面多孔層を構成するポリウレタンより対熱変形固定性が大きい(スポンジ構造が潰れにくい)ポリウレタンを選択する必要がある。具体的には、表面多孔層に使用するポリウレタンと基体層中の上層部分に使用するポリウレタンの後述する評価方法による対熱変形固定性比が1.05〜2.0、好ましくは1.10〜1.50のものを使用する。対熱変形固定性比が1.05に満たない場合は、エンボス型押し時に表面多孔層と同様に変形し、基体層の風合いが硬化する傾向がある。また、対熱変形固定性比が2.0を越える場合は、エンボス型押し時に生じるはずの表面多孔層と基体層の一体感が損なわれ、風合いが劣る傾向がある。
【0018】
ここで、基体層中の上層に選択されるポリウレタンの種類は特に限定されず、エステル系、エーテル系、カーボネート系あるいはこれらの共重合系、あるいは混合物が用いることが出来る。
ここでは、ソフトセグメントにエーテル系を主体とするもの、ハードセグメントには、芳香族ジイソシアネートと芳香族ジアミンを主体とするものを使用することが、対熱変形固定性が大きい点より好ましい。例えば、平均分子量500〜3000のポリエーテルジオール、好ましくはポリテトラメチレングリコールを50%以上、さらに好ましくは、70%以上含むソフトセグメントと4,4′−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、p−フェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4′−ジアミンジフェニルメタンなどから選ばれた芳香族ジイソシアネートからなるポリウレタンが用いられる。このポリウレタンには、必要に応じ本発明の効果を損なわない範囲で上記とは異なるポリウレタンまたは公知の弾性体樹脂を混合させることや、表面多孔層との良好な接着性を満たすために表面多孔層と同一または近似したポリウレタンを混合させることも可能である。また、このポリウレタンは、上記のようなポリウレタンの混合物でも良いが、エーテル系ポリマージオール、ポリカーボネート系ポリマージオール、ポリエステル系ポリマージオール等が、同一の分子鎖に共存する共重合型ポリウレタンでも良い。
【0019】
これらのポリウレタンは、基体層のソフト性を発現できるようにソフトなポリウレタンを使用する。例えば、100%モジュラスが、20〜100kg/cm2、好ましくは、30〜60kg/cm2のポリウレタンが用いられる。また、ソフト性と剥離強力を重視し、全体のバランスを損なわない範囲の量を充填する。充填量としては、充填する上層部分の不織布の繊維重量に対して、固型分で0.3〜3.0倍、好ましくは、0.8〜2.0倍で設定する。不織布の繊維重量に対して、0.3倍未満では、繊維とのバインダー効果が弱く剥離強力低下する傾向があり、3.0倍を越える場合には繊維を固定しすぎ、また密度が高くなりすぎて、基体層のソフト性が低下する傾向がある。
【0020】
また、表面多孔層を形成する反対側の基体下層を構成する三次元絡合不織布の絡合空間にもポリウレタンを充填する。このポリウレタンとしては特に制限はないが、基体上層を構成するポリウレタンは、エンボス型押し時に表面多孔層を通して熱による影響を受けやすく熱プレスにより変形し易いのに対し、基体下層は基体上層よりもエンボス型押し時の熱による影響を受けにくい傾向があるため、基体層のソフト性を発現できるように、対熱変形固定性が基体上層部分よりも小さいポリウレタン、またはソフトなポリウレタンを使用することが好ましい。例えば、100%モジュラスが、20〜90kg/cm2、好ましくは、20〜60kg/cm2である。そして、基体上層を構成するポリウレタンの100%モジュラスよりも10kg/cm2以上低いポリウレタンも好ましく用いられる。また、ソフト性を重視し、全体のバランスを損なわない範囲の量を充填する。例えば、充填する下層部分の不織布繊維重量に対して、0.1〜1.5倍、好ましくは、0.3〜1.0倍に充填する。0.1倍を下回るとソフト性は得られるが、あまりに充填される樹脂が少ないために、充実感が失われ、全体の風合いバランスが損なわれ易く。また、1.5倍を越えると樹脂の充填度が高くなりゴム弾性が強く天然皮革調の高級な風合いが得られにくい。
【0021】
本発明に用いられるそれぞれの層を構成するポリウレタンの着色剤に関して、表面多孔層を構成するポリウレタン樹脂量に対する着色剤の含有率(A)、繊維質基体層中の上層部分を構成するポリウレタン樹脂量に対する着色剤の含有率(B)、繊維質基体層中の下層部分を構成するポリウレタン樹脂量に対する着色剤の含有率(C)の比率がA>B>Cであることが必須である。すなわち、着色剤の含有率の関係がA>B>Cであることで繊維質基体層中の下層部分から表面多孔層までの色の勾配が生じ、表面多孔層が摩耗して繊維質基体層が露出しても表面多孔層から繊維質基体層にかけて色が次第に薄くなることにより摩耗による違和感が感じられにくく、より天然皮革並みの素材に近づいたものとなる。A<BまたはB<Cの場合には、天然皮革の表面が緻密で裏面が疎となったコラーゲン繊維構造から派生する色の勾配が感じられず、より人工的な素材に感じられる。
ここでポリウレタン樹脂量に対する着色剤の含有率とは、ポリウレタンの固型分に対する着色剤の固型分の重量比率を意味する。
【0022】
着色剤としては、染料や顔料等公知のものが使用できる。好ましくは、色の移行や退色のしにくい顔料が用いられる。そして、着色剤の含有率としては表面仕上げ層との関係もあるが表面多孔層を構成するポリウレタン樹脂量に対する着色剤の含有率(A)が1.5重量%以上、40重量%以下であることが好ましい。1.5重量部未満の場合には、表面仕上げ層の着色を表面多孔層上に付与した場合に表面仕上げ層の色と表面多孔層の色との色差が顕著になる場合があるため仕上層が摩耗して表面多孔層が露出した時に違和感が生じる。また、40重量%を越えた場合には、表面多孔層の耐屈曲性が低下する傾向がある。従って、表面仕上げ層と表面多孔層、表面多孔層と基体層の上層、基体層の上層と下層を構成するポリウレタンのそれぞれ隣接する層と相互の着色剤の含有率の差は0.5〜16%であることがより好ましい。0.5%未満の場合には、天然皮革並みの色差の勾配が得られにくく、16%を越えると層状に色の境界線が目立ちやすくなる傾向がある。
着色剤が染料の場合には、もちろん各層を構成するポリウレタンそれぞれに添加する量をA>B>Cとする方法もあるが、各層を構成するポリウレタン自体を染着量の勾配を持たせたポリウレタンとし、1度の染色によって、各層のポリウレタンの着色剤の含有率をA>B>Cとする方法も好ましく用いられる。
【0023】
また、基体層の上層に充填されたポリウレタンと基体層中の下層部分に充填されたポリウレタンは出来るだけ層状に充填することがエンボス加工を行って天然皮革調の優美な外観を均一に付与できることから好ましい。表面多孔層に接する基体層中の上層部分に充填されたポリウレタン層は、基体層の厚みにもよるが、例えば0.1mm以上、好ましくは0.2〜0.6mmの範囲で存在させることが好ましい。層厚みが、0.1mm未満の場合には必要な剥離強力が得られず、またエンボス型押し時の変形に抗しきれず、ソフト性が損なわれることになる。また、1.0mmを上回ると、必要な剥離強力は得られるが、ゴム弾性が強くなる傾向がある。
さらに基体層中の上層部分と下層部分を構成するポリウレタン樹脂の好ましい重量比率は固型分で10:90〜90:10より好ましくは20:80〜80:20である。上層部分が10%に満たない場合、必要な剥離強力を得られにくく、またエンボス型押し時の変形に抗しきれず、ソフト性が損なわれ易くなる。また90%を越えた場合、必要な剥離強力は得られるがゴム弾性が強くなる傾向がある。
【0024】
基体層へのポリウレタン溶液の含浸は、以下のいくつかの方法が好ましい。まず、三次元絡合不織布に上面より表面多孔層を形成するポリウレタンより対熱変形固定性が大きいポリウレタン樹脂を所定量塗布し、自然浸透させるか、ロールあるいはナイフでこすり付けるように浸透させ、下面より基体下層用のポリウレタン溶液をロールあるいはナイフ等でこすりつけるように浸透させ、過剰分はナイフ等でかきとる方法がある。あるいは、不織布全体にいったん基体下層用のポリウレタン溶液を充填した後、ロールあるいはナイフで圧縮し、その直後に表面多孔層を形成するポリウレタンより対熱変形固定性が大きいポリウレタン樹脂をコートし、不織布の回復力を利用して浸透させ、その後該三次元絡合不織布よりはみ出した過剰分はナイフでかきとる方法も使用できる。
【0025】
ポリウレタン溶液を充填させた基体に表面多孔層を形成する方法は、上記基体層に基体層用のポリウレタン溶液を含浸し、続いて表面多孔層用のポリウレタン溶液をコートした後に凝固する方法、あるいは含浸後に凝固液中で基体層のポリウレタンを凝固し乾燥した後にコートする方法があるが、基体層と表面多孔層の密着性を考えると、含浸後に引き続いてコートし、その後に凝固する方法が好ましい。密着とは基体層表面と表面多孔層が実質的に該2層以外の物質を介さず連続的に結合している状態を言う。そして部分的に接している状態と異なる場合を言う。部分的に接している状態とは、基体層表面にグラビアロール等でポリウレタン溶液等を塗布し、表面多孔層を貼り合せることによって基体層表面と表面多孔層とが点接着されている場合や、基体層表面と表面多孔層とが架橋型ポリウレタン接着剤によりドライ接着されているような状態を言う。
【0026】
ポリウレタンの凝固方法としては、ポリウレタンの非溶剤を含む液に浸漬して湿式凝固するか、ゲル化させた後加熱乾燥する乾式凝固方法等公知の凝固方法が用いられる。そして、基体層および表面多孔層がソフトな多孔構造を作ることが可能な湿式凝固する方法が好ましく用いられる。
また、ポリウレタン溶液には、必要に応じて着色剤、凝固調節剤、酸化防止剤、分散剤等の添加剤を配合する。そして、発明の効果が損なわれない範囲であれば、少量別のポリウレタン等の樹脂を添加させても良い。
【0027】
ついで、繊維質基体層を構成する繊維が極細繊維からなる場合には、例えば極細繊維発生型繊維を少なくとも1成分の溶解剤若しくは分解剤で処理して、又は機械的若しくは化学的処理により2成分の界面で剥離して極細繊維束に変性する。極細繊維発生型繊維の変性処理は弾性重合体の付与前であってもよいが、極細繊維束に変性後に弾性重合体を含浸・凝固すると、弾性重合体が極細繊維に接着し風合いが硬くなりやすいため弾性重合体付与後に極細繊維または極細繊維束に変性することが好ましい。弾性重合体付与前に変性処理を行う場合あるいは変性処理を行わないレギュラー繊維等の場合には、極細繊維あるいはレギュラー繊維と弾性重合体が接着しないようにポリビニルアルコールなどの溶解除去可能な仮充填剤を付与した後に弾性重合体を付与し、その後に該仮充填剤を除去することが好ましい。
【0028】
また、上記の三次元絡合不織布とポリウレタンを主体とした弾性重合体からなり、表面多孔層を有する繊維質基体層は、以下の方法で代表される公知の表面仕上げ方法で表面仕上げ層を形成することによって、天然皮革調の外観を得ることが出来る。すなわち、顔料、染料等の着色剤と樹脂とからなるインクをグラビアロール、リバースロール、スクリーン等の手法で表面多孔層に転写して着色し、エンボスロールで型押しして天然皮革調のシボを再現する。これにより得られたシート状物は、天然皮革調の高級な外観を有するものであった。また、エンボス加工により天然皮革調の外観を付与するためのエンボス加工条件は、エンボスロールの加熱温度100〜230℃の範囲が好ましい。加熱温度が100℃未満の場合、表面多孔層を形成するポリウレタン樹脂の軟化温度にもよるが、エンボス絞の掛かり斑が発生する場合があり、230℃を越えた場合には、絞のくずれが生じたり基体層中のポリウレタン樹脂の軟化にも影響を与え風合いが硬くなる場合がある。エンボスロールのプレス圧力は0.5〜15kg/cm2の範囲が好ましい。0.5kg/cm2未満の場合、エンボス絞の掛かり斑が発生する場合があり、15kg/cm2を越えた場合には、基体層下層にくたりを生じ風合いが硬くなる場合がある。得られる皮革様シートの柔軟性と天然皮革調の外観を兼ね備える為、さらに好ましくは、加熱温度120〜190℃、プレス圧力1〜6kg/cm2の範囲で処理する。
【0029】
さらに、エンボス加工後に機械的な揉み処理あるいは液流型染色機等でリラックス処理を行うことで、自然な揉みシワが入り、ソフト性も増すことができる。また、グラビア着色時に染料で染色可能な樹脂を塗布しておき、エンボス後に染色機で染料による着色を行うと透明感のある着色がされ、自然なシュリンク等も表現され、さらにソフト性も増すので、より高い高級感が得られる。
【0030】
本発明皮革様シートの一例の模式図を図1に示す。図1は断面を示すものであるが、皮革様シートの表面から、表面仕上げ層(1)、表面多孔層(2)、繊維質基体層(3)の順に積層され、繊維質基体層は上層(4)と下層(5)が存在する。
【0031】
本文中で述べている対熱変形固定性については、以下の方法により評価している。
<測定サンプル作成>
海成分としてメルトインデックス70のポリエチレン50重量部および島成分として6−ナイロン50重量部を同一溶融系で溶融紡糸して、単繊維繊度10dtex、島数約300の複合繊維を製造した。この複合繊維を3.0倍に延伸し、捲縮を付与した後、繊維長51mmに切断し、カードで解繊した後クロスラッパーウェバーでウェブとした。次に、9バーブのニードル針でパンチ数500パンチ/cm2の条件でニードルパンチを行い、120℃に加熱したロールでプレスし、厚み2.17mm、目付650g/m2、密度0.30g/cm3の繊維絡合不織布を作成する。
この不織布に評価するポリウレタンの13%ジメチルホルムアミド(以下DMFと略すこともある)溶液を含浸し、DMF/水=30/70、温度40℃の凝固浴中で凝固して、多孔構造体とする。続いて、水洗後、複合繊維中のポリエチレンを90℃に加熱したトルエンにて抽出除去して、0.01dtexの6−ナイロン極細繊維束状繊維とポリウレタンとからなるサンプルを作成する。
【0032】
<対熱変形固定性の評価>
上記サンプルを150℃に加熱された平板金型にクリアランスなしで2.0kg/cm2の圧力で挟み、10秒間圧着する。
その後、平板金型で圧縮された後の厚みを3点測定し、これらの平均をTとする。Tを対熱変形固定性と定義し、大きい程つぶれにくく、小さい程つぶれ易い。
比較するサンプル同士の圧縮された後の厚み(T1:表面多孔層構成するウレタン樹脂使用時の圧縮された後の厚み、T2:基体層中の上層部分を構成するウレタン樹脂使用時の圧縮された後の厚み)の比を算出し、これを対熱変形固定性比と呼ぶ。
対熱変形固定性比=T2/T1
【0033】
【実施例】
次に本発明を具体的に実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部及び%は断わりのない限り重量に関するものである。
本発明でいう単繊維繊度は、繊維束の断面の顕微鏡写真から、繊維束を構成する極細繊維の本数を数え、繊維束のトータル繊度を該本数で除した値である。
【0034】
実施例1
海成分としてポリエチレン50重量部および島成分として6−ナイロン50重量部(6−ナイロン100重量部に対してカーボンブラック粉末添加量1重量部添加)を同一溶融系で溶融紡糸して、繊度10dtexの複合繊維を製造した。この複合繊維を3.0倍に延伸し、捲縮を付与した後、繊維長51mmに切断し、カードで解繊した後クロスラッパーウェバーでウェブとした。次に、ニードルパンチにより、目付650g/m2の繊維絡合不織布とした。
【0035】
この不織布にポリヘキサカーボネートグリコール、ポリメチレンプロピレンアジペート、メチレンジアミンが5:2:3の重量比で構成され、n−ヘキサンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタン−ジイソシアネート(以下MDIと略す)、エチレングリコール(以下EGと略す)で共重合された100%モジュラス60kg/cm2のポリカーボネート系ポリウレタン13%ジメチルホルムアミド溶液に該ポリウレタン溶液のポリウレタン固型分に対してカーボンブラック1.0重量%含有したもの(T3(基体層中の下層部分を構成するウレタン使用時の圧縮された後の厚みであり、測定方法はT1、T2と同様の方法。)=0.80mm)を含浸後にナイフを押し当てて、不織布厚みの70%まで圧縮し、その直後にソフトセグメントがポリテトラメチレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコールが67.5:22.5:10の重量比で構成され、MDI、4,4′−ジアミンジフェニルメタン(以下DAMと略す)、EGで共重合された100%モジュラス50kg/cm2のポリウレタンの18%ジメチルホルムアミド溶液に該ポリウレタン溶液のポリウレタン固型分に対してカーボンブラック2重量%含有したもの(T2=1.05mm)をコートし浸透させた後、浸透しきれなかった溶液をナイフでかきとった。
【0036】
その後、かきとった上面に、ポリヘキサカーボネートグリコール、ポリメチレンプロピレンアジペート、メチレンジアミンが5:2:3の重量比で構成され、n−ヘキサンジイソシアネート、MDI、EGで共重合された100%モジュラス60kg/cm2のポリカーボネート系ポリウレタン18%ジメチルホルムアミド溶液に該ポリウレタン溶液のポリウレタン固型分に対してカーボンブラック6重量%含有したもの(T1=0.80mm)をコートし、DMF/水=30/70の比率の凝固浴中で凝固して、多孔構造体とする。続いて、水洗後、複合繊維中のポリエチレンを抽出除去して、0.01dtexの極細繊維からなる6−ナイロン極細繊維束状繊維三次元絡合不織布からなる皮革様シートとした。得られた皮革様シートの表面多孔層の厚さは0.2mmで、繊維質基体の厚さは1.3mmであった。そして、表面多孔層と基体層中の上層部分のポリウレタンの対熱変形固定性比は1.3であった。
この基体中の表面多孔層に接する基体上層部のポリカーボネート系エーテル系ポリウレタンの層は、厚みが0.3mm、繊維とポリウレタンの比率は、重量比50/50であり、その下層部は、繊維とポリウレタンの比が重量比60/40であった。
【0037】
この表面多孔質層の表面に表面仕上げ層用のポリウレタン溶液としてポリウレタンの固型分に対してカーボンブラック8重量%含有したポリウレタン液をグラビアロールで塗布し、固型分で5g/m2の着色層を形成した。その後、150℃に加熱したエンボスロールを30秒間プレス圧2kg/cm2で型押しし、天然皮革調模様を付与した。さらに揉み機で揉み処理を行ったことで、天然皮革調の自然な外感とソフトな外感を有し、さらに目標とする剥離強力を上回る2.8kg/cm以上、また切断部分の断面を確認したところ天然皮革に類似した断面の皮革様シートが得られた。さらにテーバー摩耗試験機にて強制的に傷や摩耗処理し表面多孔層または基体層の上層が露出した状態を作ってその表面を観察したところ損傷の状態は天然皮革並の違和感のない外観であった。上記皮革様シートを用いてスポーツ靴を作製したところ天然皮革調の優美な外観、優れた柔軟性および高い剥離強力を兼ね備えたものである。
【0038】
実施例2
実施例1と同一の不織布の上層より、ポリテトラメチレングリコール、ポリカプロラクトンが70:30の重量比であり、MDI、DAM、EGで共重合された100%モジュラス50kg/cm2のポリウレタン18%ジメチルホルムアミド溶液(T2=1.05mm)の該ポリウレタン溶液のポリウレタン固型分に対して茶色顔料4重量%含有したものをコートし、ロールでこすり付けるように浸透させ、浸透しきれなかった溶液をナイフでかきとった後、下層より100%モジュラス40kg/cm2ポリカーボネート系ポリウレタンを主体とするポリウレタン13%ジメチルホルムアミド溶液の該ポリウレタン溶液のポリウレタン固型分に対して茶色顔料2重量%含有したものをロールでパンより持ち上げ、こすり付けるように含浸後し、浸透しきれなかった溶液をナイフでかきとった後、不織布の上層面に、100%モジュラス60kg/cm2のポリカーボネート系ポリウレタン18%ジメチルホルムアミド溶液(T1=0.80mm)の該ポリウレタン溶液のポリウレタン固型分に対してカーボンブラック5重量%含有したものをコートし、DMF/水=30/70の比率の凝固浴中で凝固して多孔構造体とした。
【0039】
続いて、水洗後、複合繊維中のポリエチレンを抽出除去して、0.01dtexの極細繊維からなる6−ナイロン極細繊維束状繊維とポリウレタンとからなり、厚さ0.2mmの表面多孔層を有する厚さ1.3mmの繊維質基体を得た。なお、表面多孔層と基体層上層のポリウレタンの対熱変形固定性比は、1.3であった。
この基体中の表面多孔層に接する基体上層部のエーテル系ポリウレタンの層は、厚みが0.3mm、繊維とポリウレタンの比率は、重量比50/50であり、その下層部は、繊維とポリウレタンの比が重量比60/40であった。
【0040】
この表面多孔質層の表面に茶色顔料を主体とした着色剤を表面仕上げ層用のポリウレタン溶液のポリウレタン固型分に対して7重量%含有したもの含むポリウレタン液をグラビアロールで塗布し、固型分で5g/m2の着色層を形成した。その後、150℃に加熱したエンボスロールを30秒間プレス圧2kg/cm2で型押しし、天然皮革調模様を付与した。さらに揉み機で揉み処理を行ったことで、天然皮革調の自然な外感とソフトな外感を有し、さらに目標とする剥離強力を上回る2.7kg/cm以上、また切断部分の断面を確認したところ天然皮革に類似した断面の皮革様シートが得られた。さらにテーバー摩耗試験機にて強制的に傷や摩耗処理し表面多孔層または基体層の上層が露出した状態を作ってその表面を観察したところ損傷の状態は天然皮革並の外観であった。上記皮革様シートを用いてスポーツ靴を作製したところ天然皮革調の優美な外観、優れた柔軟性および高い剥離強力を兼ね備えたものである。
【0041】
比較例1
実施例1と同一の極細繊維発生型複合繊維からなる不織布に、100%モジュラス40kg/cm2ポリカーボネート系ポリウレタンを主体とするポリウレタン13%ジメチルホルムアミド溶液の該ポリウレタン溶液のポリウレタン固型分に対してカーボンブラック10重量%含有したものを含浸後にナイフを押し当てて、不織布厚みの70%まで圧縮し、その直後に100%モジュラス60kg/cm2ポリカーボネート系ポリウレタンを主体とするポリウレタン13%ジメチルホルムアミド溶液(T2=0.80mm)の該ポリウレタン溶液のポリウレタン固型分に対してカーボンブラック5重量%含有したものをコートし、不織布の回復力を利用して浸透させた後、浸透しきれなかった溶液をナイフでかきとった後、さらに同一の100%モジュラス60kg/cm2のポリカーボネート系ポリウレタン18%ジメチルホルムアミド溶液(T1=0.80mm)の該ポリウレタン溶液のポリウレタン固型分に対してカーボンブラック3重量%含有したものをコートし、DMF/水=30/70の比率の凝固浴中で凝固して多孔構造体とした。
【0042】
続いて、水洗後、複合繊維中のポリエチレンを抽出除去して、0.01dtexの極細繊維からなる6−ナイロン極細繊維束状繊維からなる三次元絡合不織布からなる皮革様シートとした。得られた皮革様シートの表面多孔層の厚さは0.2mmで、繊維質基体の厚さは1.3mmであった。そして、表面多孔層と基体層上層のポリウレタンの対熱変形固定性比は、1.0であった。
この基体中の表面多孔層に接する基体上層部のエーテル系ポリウレタンの層は、厚みが0.3mm、繊維とポリウレタンの比率は、重量比50/50であり、その下層部は、繊維とポリウレタンの比が重量比60/40であった。
【0043】
この表面多孔質層の表面に仕上用ポリウレタン溶液としてポリウレタンの固型分に対してカーボンブラック8重量%含有したポリウレタン液をグラビアロールで塗布し、固型分で5g/m2の着色層を形成した。その後、150℃に加熱したエンボスロールを30秒間プレス圧2kg/cm2で型押しし、天然皮革調模様を付与した。さらに揉み機で揉み処理をした。
このものは、目標とする剥離強力を上回る2.8kg/cm以上が得られたが、エンボス型押し時に表面多孔層のみならず、基体層も圧縮変形し風合いの硬い、高級感の乏しいものとなった。また切断部分の断面を確認したところ断面部分は着色されているものの天然皮革並みの着色勾配を有するものではなかった。さらにテーバー摩耗試験機にて強制的に傷や摩耗処理し表面多孔層または基体層の上層が露出した状態を作ってその表面を観察したところ傷の深いところが色が濃い状態となっており違和感を感じた。さらに、上記皮革様シートを用いてスポーツ靴を作製したところ天然皮革調の優美な外観、高い剥離強力を有するが柔軟性に劣るものであった。
【0044】
比較例2
繊維を原着していない他は実施例1と同様の極細繊維発生型複合繊維からなる不織布に、100%モジュラス40kg/cm2ポリカーボネート系ポリウレタンを主体とするポリウレタン13%ジメチルホルムアミド溶液(該ポリウレタン溶液のポリウレタン固型分に対して茶色顔料1.0重量%含有したもの)を含浸後にナイフを押し当てて、不織布厚みの70%まで圧縮し、その直後にポリテトラメチレングリコール、ポリカプロラクトンが70:30の重量比であり、MDI、DAM、EGで共重合された100%モジュラス50kg/cm2のポリウレタンの18%ジメチルホルムアミド溶液(T2=1.05mm)(該ポリウレタン溶液のポリウレタン固型分に対して茶色顔料1.0重量%含有したもの)をコートし、不織布の回復力を利用して浸透させた後、浸透しきれなかった溶液をナイフでかきとった後、さらに同一のポリテトラメチレングリコール、ポリカプロラクトンが70:30の重量比であり、MDI、DAM、EGで共重合された100%モジュラス50kg/cm2のポリウレタンの18%ジメチルホルムアミド溶液(T1=1.05mm)(該ポリウレタン溶液のポリウレタン固型分に対して茶色顔料1.0重量%含有したもの)をコートし、DMF/水=30/70の比率の凝固浴中で凝固して多孔構造体とした。
【0045】
続いて、水洗後、複合繊維中のポリエチレンを抽出除去して、0.01dtexの極細繊維からなる6−ナイロン極細繊維束状繊維からなる三次元絡合不織布からなる皮革様シートとした。得られた皮革様シートの表面多孔層の厚さは0.2mmで、繊維質基体の厚さは1.3mmであった。そして、表面多孔層と基体層上層の対熱変形固定性比は1.00であった。
この基体中の表面多孔層に接する基体上層部のエーテル系ポリウレタンの層は、厚みが0.3mm、繊維とポリウレタンの比率は、重量比50/50であり、その下層部は、繊維とポリウレタンの比が重量比60/40であった。
【0046】
この表面多孔質層の表面に茶色顔料をポリウレタン固型分に対して7.0重量%含有したものを含むポリウレタン液をグラビアロールで塗布し、固型分で5g/m2の着色層を形成した。その後、150℃に加熱したエンボスロールを30秒間プレス圧2kg/cm2で型押しし、天然皮革調の模様を付与した。さらに揉み機で揉み処理をした。このものは、目標とする剥離強力を上回る2.8kg/cm以上が得られ、風合いもソフトであったが、表面多孔層に用いられたポリウレタンがエンボス型押し性の乏しいものであり、表面多孔層に天然皮革並みの模様が型押し出来ず、高級感の乏しいものであり、またテーバー摩耗試験機にて強制的に傷や摩耗処理し表面多孔層または基体層の上層が露出した状態を作ってその表面を観察したところ損傷の状態は天然皮革並の外観であったが切断部分の断面に色差の勾配が感じられず人工的なものとして違和感を感じた皮革様シートであった。
上記皮革様シートを用いてスポーツ靴を作製したところ、優れた柔軟性と高い剥離強力を有するが、天然皮革調の優美な外観を有さず高級感の乏しいものであった。
【0047】
比較例3
繊維を原着していない他は実施例1と同様の不織布に100%モジュラス40kg/cm2ポリカーボネート系ポリウレタンを主体とするポリウレタン13%ジメチルホルムアミド溶液(着色剤無し)を含浸後にナイフを押し当てて、不織布厚みの70%まで圧縮し、その直後に実施例1でコート層に使用した100%モジュラス60kg/cm2のポリカーボネート系ポリウレタン18%ジメチルホルムアミド溶液(T2=0.80mm)(着色剤無し)をコートし、不織布の回復力を利用して浸透させた後、浸透しきれなかった溶液をナイフでかきとった後の上面にソフトセグメントがポリテトラメチレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコールが67.5:22.5:10の重量比で構成され、MDI、DAM、EGで共重合された100%モジュラス50kg/cm2のポリウレタンの18%ジメチルホルムアミド溶液(T1=1.05mm)(着色剤無し)をコートし、DMF/水=30/70の比率の凝固浴中で凝固して多孔構造体とした。
【0048】
続いて、水洗後、複合繊維中のポリエチレンを抽出除去して、0.01dtexの極細繊維からなる6−ナイロン極細繊維束状繊維からなる三次元絡合不織布からなる皮革様シートとした。得られた皮革様シートの表面多孔層の厚さは0.2mmで、繊維質基体の厚さは1.3mmであった。そして、表面多孔層と基体層上層のポリウレタンの対熱変形固定性比は0.76であった。
この基体中の表面多孔層に接する基体上層部のポリカーボネート系ポリウレタンの層は、厚みが0.3mm、繊維とポリウレタンの比率は、重量比50/50であり、その下層部は、繊維とポリウレタンの比が重量比60/40であった。
【0049】
この表面多孔質層の表面に茶色顔料をポリウレタン固型分に対して7重量%含有したものを含むポリウレタン液をグラビアロールで塗布し、固型分で5g/m2の着色層を形成した。その後、150℃に加熱したエンボスロールを30秒間プレス圧2kg/cm2で型押しし、天然皮革調模様を付与した。さらに揉み機で揉み処理を行ったが、得られた皮革様シートは剥離強力が2.8kg/cmと高い値を示したが、天然皮革模調の模様が得られず、不織布層がつぶれ風合いが硬いものであった。また切断部分の断面や、テーバー摩耗試験機にて強制的に傷や摩耗処理し表面多孔層または基体層の上層が露出した状態を作ってその表面を観察したところ摩耗部分が着色されていない状態となっており違和感を感じた皮革様シートであった。上記皮革様シートを用いてスポーツ靴を作製したところ高い剥離強力を有したが、外観に劣り風合いの硬いものであった。
【0050】
【発明の効果】
本発明は、天然皮革調の優美な外観、優れた柔軟性を有し、高い剥離強力を兼ね備えた皮革様シートであり、さらに該皮革様シートの切断断面が適度な色傾斜を有し、切断断面および表面が摩耗したときに見た目の違和感が感じられない皮革様シートである。これにより高級な天然皮革調の外観とソフト性、剥離強力を兼ね備えた靴、ボール、鞄等の用途に広く使用できる皮革様シートが提供できる。
【0051】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の皮革様シートを模式的に表す断面図である。
【符号の説明】
1 表面仕上げ層
2 表面多孔層
3 繊維質基体層
4 繊維質基体上層
5 繊維質基体下層
Claims (4)
- 三次元絡合不織布の絡合空間にポリウレタンを主体とする弾性樹脂が充填された繊維質基体層、繊維質基体層の表面に密着したポリウレタンからなる表面多孔層、および表面仕上げ層とからなり、表面多孔層と密着した繊維質基体層中の上層部分には、表面多孔層を構成するポリウレタンより熱変形しにくいポリウレタン樹脂が充填されており、該表面多孔層を構成するポリウレタン樹脂量に対する着色剤の含有率(A)、該基体層中の上層部分を構成するポリウレタン樹脂量に対する着色剤の含有率(B)、該基体層中の下層部分を構成するポリウレタン樹脂量に対する着色剤の含有率(C)がA>B>Cを満足することを特徴とする皮革様シート。
- 着色剤が顔料である請求項1に記載の皮革様シート。
- 表面多孔層を構成するポリウレタン樹脂量に対する着色剤の含有率(A)が1.5重量%以上、40重量%以下である請求項1または2に記載の皮革様シート。
- 極細繊維が原着繊維からなる請求項1〜3いずれかに記載の皮革様シート。
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