JP2003155672A - 銀付人工皮革およびその製造方法 - Google Patents

銀付人工皮革およびその製造方法

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JP2003155672A JP2001350079A JP2001350079A JP2003155672A JP 2003155672 A JP2003155672 A JP 2003155672A JP 2001350079 A JP2001350079 A JP 2001350079A JP 2001350079 A JP2001350079 A JP 2001350079A JP 2003155672 A JP2003155672 A JP 2003155672A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】スポーツシューズ等の過酷な使用条件に耐えう
る機械的物性を持ち、かつ、柔軟な銀付人工皮革を、環
境に対する負荷を軽減した製法により提供する。 【構成】5.0デシテックス以下のステープル繊維から
なる3次元絡合不織布および樹脂水性分散体により付与
される高分子弾性体からなる繊維成分と高分子弾性体成
分の重量比が80/20〜35/65である基体層と銀
面層が水系ポリウレタン樹脂分散体と架橋剤とからなる
架橋系ポリウレタンを用いて接着されており、かつ架橋
系ポリウレタンが該基体層内において銀面層の側から1
50〜400μm下の基体層内部にまで浸透しているこ
とを特徴とする銀付人工皮革。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、銀付人工皮革およびそ
の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、従来
から問題となっている環境に負荷をかける有機溶剤を使
用することなく製造することが可能で、機械的物性に優
れ、柔軟性と充実感を有し、衣料、靴資材、インテリ
ア、鞄等の人工皮革一般用途に用いることができ、とり
わけスポーツシューズ等の靴用途に好適に用いることの
できる銀付人工皮革およびその製造方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】従来から、不織布などの繊維集合体にポ
リウレタンエラストマー等の樹脂を含有した多孔質基体
上に、ポリウレタンエラストマー等の樹脂からなる多孔
質あるいは無孔質の層を形成したシートは銀付天然皮革
に類似しており、スポーツ用人工皮革として性能を向上
させるための提案が数多くなされている。例えば銀付人
工皮革の柔軟性と充実感を出すために、1.0デシテッ
クス以下の極細繊維で3次元絡合不織布をつくり弾性樹
脂を含浸、湿式凝固したものが提案されている。また、
より一層柔軟なものとして、海成分が溶出可能な海島構
造の多成分繊維、たとえば海成分がポリエチレンからな
る海島構造繊維を用いて不織布とし、かかる海島構造繊
維を最終製品となるまでのいずれかの工程で海成分を除
去して極細繊維とし、それを用いた人工皮革が提案され
ている。そして、このような人工皮革製品は極細繊維特
有の風合いを有することによって市場で高い評価を得て
いる。また、ソフト性、折れシボ性に優れた人工皮革と
して、たとえば、特公昭62−46662号公報には、
高収縮繊維と自己伸長繊維とからなるウェッブをニード
ルパンチングした後収縮させた高収縮不織布にポリウレ
タン樹脂等を含浸凝固させたのち、繊維を自己伸長させ
た人工皮革が記載されている。さらに軽量性を有する合
成皮革や人工皮革として、特開昭47−28104号公
報および特開昭50−5502号公報に、中空繊維を用
いたものが記載されており、そして特開平11―811
53号公報および特開平11―100780号公報に、
40%を越える高い中空率を有するポリエステル系繊維
を用いた人工皮革基材が記載されている。
【0003】また、銀付表面の耐傷性に優れた人工皮革
として、特公平06−94629号公報に、単繊維繊度
0.2デニール以下のポリアミド極細繊維からなるシー
トの少なくとも片面にウレタン重合体を付与して銀面化
した後、芳香族アルコールの乳化液で処理し、乾燥して
収縮させることにより、高度な緻密シートにすると記載
されており、耐熱性、耐加水分解性に優れた人工皮革と
して特公平06−15747号公報に、基材表面にポリ
カーボネート系芳香族ポリウレタン接着層、ポリカーボ
ネート系芳香族ポリウレタン下部層、ポリアミノ酸層、
架橋シリコン層を順次積層させると記載されており、天
然皮革調銀面について特開昭57−89674号公報に
繊維デニールが0.001〜1.0の極細繊維からなる
立毛布帛の立毛面をカレンダーロールでプレス処理し、
樹脂付与後に60℃以上の熱水中で揉み処理するなど、
それぞれ記載されている様に銀付人工皮革に関して種々
の提案がなされている。
【0004】しかしながら、スポーツシューズの分野で
は機械的物性に優れ、かつ柔軟性と充実感を有する製品
が求められており、特にサッカーシューズ、ラグビーシ
ューズ、ゴルフシューズのように、雨降り等の過酷な状
況下で使用されるものにおいては、その湿潤状態での使
用においても基体層と銀面層の接着強力等の機械的物性
に優れ、柔軟性と充実感を兼ね備えたものが求められて
いる。
【0005】さらに、近年、環境面から上記の提案を実
現するために使用されているような有機溶剤の使用や高
濃度アルカリ液の使用の削減が求められており、種々の
脱有機溶剤製造プロセスが提案されているが、脱有機溶
剤プロセスで製造でき、かつ、その機械的物性と柔軟性
と充実感を満足するものは得られていない。特開平9−
31861号公報には、ポリウレタン系樹脂を含浸させ
た基布上またはポリウレタン系樹脂のミクロポーラス層
が形成された基布上にポリウレタン系樹脂水性分散体を
使用して銀面層を形成する提案がなされているが、銀面
層を造面する基体層は溶剤を使用して製造しているなど
の問題点がある。また、その他提案されているいずれの
技術においても、脱有機溶剤プロセスを採用し、かつ、
上記した湿潤時の基体層と銀面層の接着強力に優れ、か
つ、充実感と柔軟性を両立した銀付人工皮革は知られて
いないのが現状である。環境への負荷の低減が求められ
ている今日においても、上記の技術が完成していない理
由の一つとしては、従来の有機溶剤系の接着剤に比べ
て、水系の接着剤は接着力が弱く、とりわけ従来の人工
皮革の製造方法において、溶剤系ウレタンからなる銀面
層および接着剤と基体層がポリウレタンのジメチルホル
ムアミド(以下DMFと略す)溶液の湿式凝固で得られ
るポリウレタンスポンジなどである場合は銀面層と基体
層を構成するポリウレタン同士が溶剤によって一部溶解
して合体して接着して強い剥離物性を呈するなどの要因
がある反面、基体層中の水系樹脂分散体により付与され
る樹脂と水系樹脂分散体で供される銀面層、接着剤では
このような現象を期待できないだけでなく、基体層表面
の密度ムラ、基体層表面のフラット性の不足など、不利
な点が多いことを挙げることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】スポーツシューズの分
野では一般的に0.8〜1.3mmの厚みの基体が用い
られている。この厚みの範囲のなかで、機械的物性、特
に湿潤時の基体層と銀面層の接着強力に優れた、柔軟な
製品が求められているが、製品の柔軟性と機械的物性に
優れることとは裏腹の関係にあり、これらすべてを満足
し、かつ、脱有機溶剤プロセスを採用した人工皮革はな
い。スポーツシューズ用の人工皮革には、柔軟性、充実
感、高級感、着用感の向上が強く求められ、その一方で
雨降り等でも激しい運動に耐えられる機械的物性、特に
靴底ゴム部と人工皮革製品との高剥離強力が、最も重視
されている必要性能であり、この機械的物性と製品の柔
軟性、充実感の両立が極めて重要となる。従って、本発
明の目的はこのような問題を解決し、スポーツシューズ
等に用いられる、機械的物性に優れ、柔軟性、充実感が
あり、脱有機溶剤プロセスで製造することによって環境
に対する負荷を低減した銀付人工皮革を提供することに
ある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに本発明者らは鋭意検討を行った結果、5.0デシテ
ックス以下のステープル繊維からなる3次元絡合不織布
および水性樹脂分散体により付与された高分子弾性体か
らなる基体層の少なくとも片面に水性ポリウレタン樹脂
分散体によって形成される銀面層を有する銀付人工皮革
において、該基体層のステープル繊維と高分子弾性体の
重量比が80/20〜35/65であり、かつ該銀面層
と該基体層とが水性ポリウレタン樹脂分散体と架橋剤と
からなる架橋系ポリウレタンを用いて接着されており、
かつ該架橋系ポリウレタンが該基体層表面から150μ
m〜400μm下の基体層内部まで浸透していることを
特徴とする銀付人工皮革が上記の課題を達成することを
見出した。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明に用いる原料ステープル繊
維は、公知のステープル繊維であればいずれを使用して
もよく、例えば、通常の合成繊維、収縮性繊維、潜在自
発伸長性収縮性繊維、多層貼り合わせ型潜在分割性繊
維、花弁型潜在分割性繊維、中空花弁型潜在分割性繊
維、極細繊維形成性海島繊維、またはその束状繊維、特
殊多孔質繊維、半合成繊維、天然繊維などを単独使用ま
たは併用して使用することができる。合成繊維を構成す
る樹脂の種類としては、例えば、従来から使用されてい
るポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフ
タレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチ
レンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、6ナイ
ロン、6-6ナイロン、6-12ナイロン、12ナイロン
などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレンなどで代表さ
れるポリオレフィン樹脂、アクリル系樹脂等を挙げるこ
とができる。製品となった後において、ステープル繊維
の繊度は5.0デシテックス以下である必要があり、繊
維が細いほど得られる人工皮革の風合いは優れることか
ら、好ましくは1.0デシテックス以下、より好ましく
は0.5デシテックス以下である。繊度が5.0デシテ
ックスよりも大きいと基体を構成する繊維が太くなり、
得られる人工皮革の柔軟性が損なわれゴワゴワとした触
感となり、折れシワの面からも不良となる。また、繊維
が太いと繊維の抵抗が不織布全体としては少なくなり、
抜けやすくなるために機械物性などが悪くなる傾向があ
る。5.0デシテックス以下の繊維を得る方法として
は、例えば、従来から使用されているような直接紡糸
法、潜在分割性繊維を割繊処理して所望の繊度とする方
法、混合紡糸法や複合紡糸法によって製造される海島型
繊維から海成分を抽出除去して所望の繊度の島成分を残
す方法を挙げることができる。とりわけ本発明において
は潜在分割性繊維を割繊処理する方法を好適に使用でき
る。また、海島型繊維から海成分を抽出除去する方法で
は、より繊度の小さい繊維を得ることができるが、抽出
する際に有機溶剤を使用することは本発明の主旨にはか
なわないので、例えば熱水抽出可能なポリビニルアルコ
ール系樹脂からなる海成分を熱水で抽出除去したり、ま
たはアルカリ易溶性の変性ポリエチレンテレフタレート
樹脂からなる海成分を低濃度のアルカリ性水溶液により
抽出除去したりして所望の繊度となる島成分を残すこと
が好ましい。
【0009】上記の潜在分割性ステープル繊維を使用す
る場合、その断面構造としては5層以上に分割可能であ
る2種以上の重合体成分からなる繊維が好ましく、その
断面形状から多層貼り合わせ型潜在分割性繊維、中空多
層貼り合わせ型潜在分割性繊維、花弁断面型潜在分割性
繊維、中空花弁断面型潜在分割性繊維などが知られてい
る。2種の重合体成分をそれぞれ成分A、成分Bとした
場合、本発明におけるステープル繊維に用いることがで
きる成分A、成分Bの両重合体としては、SP(溶解度
パラメーター)値、溶融粘度のバランスを考慮して組み
合わせれば、その用途、性能に応じて任意に選ぶことが
できる。その例としては、ポリエチレンテレフタレート
系やポリトリメチレンテレフタレート系、ポリブチレン
テレフタレート系などのポリエステル系重合体、ポリエ
チレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系重合
体、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド系重合
体、その他にポリスチレン系重合体、ポリビニルアルコ
ール系重合体、ビニルアルコール−エチレン共重合体な
どを挙げることができ、各成分には1種、または2種以
上が用いられる。この中でも得られる皮革様シートの風
合いが優れることから成分Aがポリエチレンテレフタレ
ート系重合体、成分Bがポリアミド系重合体である組み
合せなどを好適に使用することができる。
【0010】上記、ポリエステル系重合体には、必要に
応じて他のジカルボン酸成分、オキシカルボン酸成分、
他のジオール成分の1種または2種以上を共重合単位と
して有していてもよい。その場合に、他のジカルボン酸
成分としては、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジ
カルボン酸などの芳香族ジカルボン酸またはそれらのエ
ステル形成性誘導体;5−ナトリウムスルホイソフタル
酸ジメチル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ビス
(2−ヒドロキシエチル)などの金属スルホネート基含
有芳香族カルボン酸またはその誘導体;シュウ酸、アジ
ピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカル
ボン酸またはそのエステル形成性誘導体を挙げることが
できる。また、オキシカルボン酸成分の例としては、p
−オキシ安息香酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸ま
たはそれらのエステル形成性誘導体などを挙げることが
できる。ジオール成分としてはジエチレングリコール、
1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオー
ル、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオール;
1,4−ビス(β−オキシエトキシ)ベンゼン、ポリエ
チレングリコール、ポリブチレングリコールなどを挙げ
ることができる。
【0011】上記、ポリアミド系重合体は公知のポリア
ミド系化合物であるナイロン4、ナイロン6、ナイロン
66、ナイロン7、ナイロン610、ナイロン11、ナ
イロン12、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン
と1、10−デカメチレンジカルボン酸からのポリアミ
ド、1,9−ノナメチレンジカルボン酸からのポリアミ
ドを挙げることができ、さらにこれらポリアミド成分と
他成分を本発明の効果を損なわない範囲内で共重合した
もの、これらポリアミド成分と他成分を本発明の効果を
損なわない範囲内で混合したものを挙げることができ
る。これらのポリアミド化合物の中でも得られる人工皮
革の風合いが優れることからナイロン6、ナイロン66
が好適に使用できる。また、成分Aと成分Bの重量比は
目的とする断面構造が形成される限り問題はないが、好
ましくは90/10〜10/90の範囲にあり、さらに
好ましくは80/20〜20/80の範囲である。A、
B両成分の重量比の一方が10%未満の場合には、口金
より吐出する前に成分Aと成分Bとを交互に配列する際
に、一方の重合体の量が少ないために目的とする断面を
形成することが難しくなる傾向がある。
【0012】本発明においては、潜在分割性のステープ
ル繊維を使用する場合、その分割可能な層の数は5層以
上であることが好ましく、より好ましい層の数は7以上
である。層の数が4層以下では割繊処理後も繊度は大き
く、得られる人工皮革の風合いは劣る傾向にある。断面
構造としては前述のように多層貼合せ型、花弁型、中空
花弁型などが公知であるが、カード・ニードル工程の通
過性は多層貼合せ型が最も良いため、好適に使用され
る。また、層の数の上限としては、多分割になりすぎる
と潜在分割数よりも実際に分割する数が少なくなってし
まう傾向にあり、200分割以下が好ましい。
【0013】本発明における潜在分割性ステープル繊維
を製造するには、成分Aと成分Bとを溶融状態とし、こ
れを常法により交互に配列させた状態で口金ノズル孔に
導き、該ノズル孔より吐出させることで製造することが
できる。また潜在分割性ステープル繊維のカード工程の
通過性をよくする目的で、成分A、Bの両重合体を交互
に配列させ、口金の内部にて細孔から吐出するまでの間
に、成分Bと口金の金属と接触する部分において、成分
Bの表面張力により端部が丸みをおび、そこのすきまへ
成分Aが流れ込んでくるように制御することにより、成
分Aによって断面の外周全体を被覆された被膜を有する
繊維を得ることもできる。被膜厚みは使用する成分Aお
よびBのSP値や紡糸時の粘度により制御することがで
きる。例えば、SP値の高い場合には、重合体の極性基
がお互いの距離をできるだけ離れるように位置しようと
するために表面張力によって端部が丸くなりやすい。そ
こで、成分BのSP値が成分AのSP値より高い方が、
その端部がより丸くなり、口金との隙間にA重合体が流
れ込みやすく繊維の断面の周囲全体を覆う厚い被膜を形
成しやすくなる。
【0014】本発明に使用するステープル繊維には、必
要に応じて各種添加剤を配合し使用することができる。
例えば、触媒、着色防止剤、耐熱剤、難燃剤、蛍光増白
剤、艶消剤、着色剤、光沢改良剤、制電剤、芳香剤、消
臭剤、抗菌剤、防ダニ剤、無機微粒子などが含まれても
よい。また、2種の成分AおよびBを使用した潜在分割
性繊維を使用する場合には添加剤の配合は成分A、成分
Bのいずれか一方でも良いし、または両方であっても良
い。また、海島型繊維を使用する場合には添加剤の配合
は海成分、島成分のいずれか一方でも良いし、または両
方であっても良い。
【0015】本発明方法に用いられる不織布は、適度の
厚みと充実感を有し、かつ柔軟な風合いを有するもので
よく、不織布の厚みは得られる人工皮革の用途などによ
って任意に選択でき、特に制限されるものではないが、
0.3〜6.0mmであることが好ましく、0.5〜
3.5mmであることがより好ましい。不織布の見かけ
密度は、柔軟な風合いを有する皮革様シートを得るため
には0.1〜0.6g/cmであることが好ましく、
0.15〜0.55g/cmであることがより好まし
い。見かけ密度が0.6g/cmより大きくなると、
基体層がゴムのような風合いとなる傾向がある。一方、
見かけ密度が0.1g/cmより小さくなると、反発
性および腰感が劣り、風合いが損なわれる傾向がある。
本発明方法に用いる不織布には、シリコーン系またはフ
ッ素系の油剤、撥水剤、柔軟剤、帯電防止剤や耐光安定
剤、紫外線吸収剤などの公知の化合物を付着させるなど
の処理を行うことができる。
【0016】不織布を製造する際に用いられる繊維絡合
方法としては、ランダムウエッバーあるいは、クロスラ
ッパーにて積層ウエーブを作製し、ニードルパンチある
いは、水流絡合等で、3次元絡合不織布にする。この際
不織布の厚み方向に出来るだけ多くの繊維を配列させ、
該不織布の層間剥離物性を5.0kg/2.5cm以上
にすることが安定的に銀付人工皮革の剥離強力を高くす
ることができることから好ましい。またニードルパンチ
方法がより皮革様シートに類似した3次元絡合不織布が
得られ、またスポーツシューズ等に使用できる厚み1.
0mm以上の不織布を容易に処理可能であるといった点
から好ましい。
【0017】また、不織布の層間剥離強力を5.0kg
/2.5cm以上にするためには、たとえばシリコン系
などの油剤を繊維に付与することが好ましい。その油剤
の種類としては、繊維間の摩擦を下げる効果のあるポリ
オルガノシロキサンや各種の変性されたシリコン系の油
剤、および繊維をまとめ、ニードルパンチ工程時におけ
る対金属の摩擦を下げる効果のある鉱物油系の油剤、そ
の他帯電防止剤等の公知の油剤を繊維の特質を考慮しな
がらブレンドして付与する。付与する工程としては繊維
の捲縮前、捲縮後のいずれでもよい。特に潜在分割性繊
維はカード、ニードル工程での巻き付きや繊維割れなど
のトラブルが起きやすく、したがって該潜在分割性繊維
には摩擦係数を軽減する油剤を重点的に付与することな
どが好ましい。
【0018】さらに本発明におけるニードルパンチのフ
ェルト針は公知の物が用いられるが、ウェッブの厚さ方
向への交絡を確実に行うためには、繊維切れの起きにく
い1バーブ針が好適に用いられる。また不織布の表面の
密度を上げるためには3バーブ、6バーブ、9バーブ等
の多バーブの針が使用できる。目的によってこれらの針
を組み合わせても良い。
【0019】ニードルパンチ工程におけるパンチ数は使
用する針の形状や、ウェッブの厚みにより異なるが、2
00〜3500パンチ/cmの範囲で設定され、好ま
しくは1000〜3200パンチ/cmである。一般
的に潜在分割性繊維のニードルパンチにおいては、ニー
ドルパンチ条件が強すぎる場合には潜在分割性繊維の切
断や繊維割れがおこり、絡合が向上せず、またニードル
パンチ条件が弱すぎる場合には厚み方向に並ぶ繊維数の
不足をまねき絡合が向上せず、不織布の層間剥離強力が
向上しない。
【0020】本発明方法に用いられる樹脂水性分散体に
よって付与される高分子弾性体は、従来から人工皮革を
製造する際に使用されている高分子弾性体であればよ
い。このような高分子弾性体として、ポリウレタン系樹
脂、アクリル系樹脂、ポリアミドエラストマーなどで代
表されるポリアミド系樹脂、ポリエステルエラストマー
などで代表されるポリエステル系樹脂、弾性を有するポ
リスチレン系樹脂、弾性を有するポリオレフィン系樹脂
などがあるが、この中でも得られる人工皮革に優れた風
合いを与えることから、ポリウレタン系樹脂やアクリル
系樹脂およびその混合樹脂、複合樹脂が好適に使用され
る。樹脂の付与方法としては樹脂水性分散体を含浸して
熱風、スチーム、マイクロ波、熱水浴などのいずれかの
方法により樹脂の固化またはゲル化および乾燥を行うエ
マルジョン法を好適例として挙げることができる。樹脂
水性分散体はポリウレタンエマルジョン、アクリル系エ
マルジョンのようなエマルジョン、とりわけ水のみで分
散された水性エマルジョンを使用すれば、本発明方法で
得られる人工皮革に使用される基体層は有機溶剤を使用
することなく製造することができ、環境への負荷がより
少ない人工皮革の製造方法となる。また、これらのエマ
ルジョンが感熱ゲル化性を有している場合、エマルジョ
ン粒子がマイグレーションを引き起こすことなく、感熱
ゲル化させ均一に付与することができる。エマルジョン
は乳化する界面活性剤としてHLBの低いノニオン性界
面活性剤で乳化したり、いわゆるマイグレーション防止
剤と称する物質を感熱ゲル化剤としてエマルジョン中に
添加することにより感熱ゲル化性が得られる。添加する
感熱ゲル化剤としては、例えば、塩化カルシウムなどの
無機塩類とポリエチレングリコール型ノニオン性界面活
性剤、ポリビニルメチルエーテル、ポリプロピレングリ
コール、シリコーンポリエーテル共重合体、ポリシロキ
サン等を挙げることができ、これらのうち1種または2
種以上を用いることができる。
【0021】本発明では人工皮革の基体層を構成する繊
維と高分子弾性体の重量比は80/20〜35/65で
あり、好ましくは60/40〜40/60となるように
高分子弾性体を付与する。高分子弾性体の重量比が20
%に満たない場合、高分子弾性体の比率が少なく、樹脂
のバインダー効果の不足により、繊維の脱落が発生した
り、加工中に不織布が伸びたり、得られる人工皮革の充
実感が不足するなどの問題が発生し、得られる人工皮革
の風合いが悪くなり、かつ繊維が抜けやすく銀面層との
剥離強力は低下する。高分子弾性体の重量比が65%を
越える場合には、高分子弾性体の比率が高く、硬くなっ
たりゴムライクになると共に機械的物性に寄与する繊維
量が少ないため目的の剥離強力を出すことができない。
また、得られた基体を熱プレス処理等によって基体層表
面の平滑性をだすことも好ましく行われる。そして、得
られた基体層の密度は好ましくは0.18〜0.60g
/cmの範囲が天然皮革並みの柔軟性と充実感を有す
る。
【0022】本発明方法において、該繊維として潜在分
割性複合ステープル繊維を使用した場合は、例えば成分
Aと成分Bの割繊を進行させる方法として、熱水または
低濃度のアルカリ液水溶液を使用することができる。こ
の場合の割繊処理は、例えばサーキュラー染色機やジガ
ーの使用またはパッド・ロール法などを用いて行うこと
ができるが、100℃以上の熱水を使用することがで
き、得られる人工皮革の柔軟性が優れることから、サー
キュラー染色機などを用いることが好ましい。この場合
は割繊処理を行う処理温度は100〜160℃が好まし
い。加圧系の100℃以上の熱水において、基体層を形
成する繊維および樹脂は軟化しやすくなり、これとサー
キュラー染色機中での物理的な力の相乗効果により成分
Aによって成分Bが被覆されているような場合において
も、割繊が進行し、かつリラックス効果によって風合い
に優れた柔軟な人工皮革の基体層になると考えられる。
従って、処理温度が100℃よりも低いと得られるシー
ト基材の繊維成分の割繊が十分には進行しないことがあ
るために柔軟性に劣る傾向があり、同等の柔軟性を発現
させるために非常に多大な時間の処理を要し易い。上記
の理由から処理温度は高いほど割繊の進行およびリラッ
クス効果により得られる基体層は柔軟かつより均一な風
合いとなる傾向があるが、160℃よりも高いと基体層
を構成する樹脂成分または繊維成分が劣化して風合いが
悪化したり、物性が低下することがある。また、割繊を
さらに進行させる補助的な手段として、不織布化の後に
物理的な力、すなわち、擦過したり、揉んだりする処理
を行うか、ウォータージェット流処理を行う処理方法を
用いることもできる。これらの割繊処理は柔軟性が優れ
ることから、樹脂の付与後に行うことが好ましい。
【0023】本発明においては、上記のようにして得ら
れた基体層へ銀面層を形成して銀付き調人工皮革を製造
するが、銀面層を形成する方法としては、基体層の表面
に離型紙によって模様付けされた樹脂膜を接着するいわ
ゆる乾式造面法を用いることが好ましい。基体層の表面
に離型紙によって模様付けされた樹脂膜を接着するに際
し、本発明で重要な点は接着剤として水性樹脂分散タイ
プの架橋系ポリウレタン樹脂を基体層の表面より150
μm以上400μm以下の間まで沈み込ませた状態で接
着することにある。本発明では、例えば、離型紙によっ
て模様付けされた樹脂膜の上に銀面層を形成するため
に、顔料または染料を分散した水性樹脂分散体をコート
して水分を70℃〜120℃の温度で飛ばして銀面層を
形成し、この銀面層の樹脂上に水性樹脂分散タイプの架
橋系ポリウレタンからなる接着剤をコートし、70〜1
20℃で接着剤の水分を全部飛ばすか、幾分水分を残存
させた状態で、接着剤がタックの出る状態で基体層と張
り合わせ、基体層の厚みの1/2〜8/10のクリアラ
ンスで必要に応じて加熱したプレスロール等でプレス
し、接着剤が基体層内部に表面より150〜400μm
押し込んだ状態で銀層の被膜を接着する。接着剤は基体
層の繊維および高分子弾性体の空間に押し込まれるた
め、その基体層の密度に応じた接着剤溶液の接着時のタ
ック(粘着)状態、押し込みプレスのクリアランス、お
よびそれに応じた接着樹脂量を調節し、本発明の銀付人
工皮革の構造にすることによって銀面層の湿潤時の剥離
強力が目標とする2.5kg/cm以上にすることが可能
となる。この架橋系ポリウレタンの浸透が基体表面層よ
り150μm未満の場合は、基体層の掴み部分が少な
く、本発明の目的とする剥離強力値を達成できない。ま
た400μmを超える場合、本発明の剥離強力値を達成
することは可能であるが、人工皮革としての風合いが硬
くなり、表面層が硬く折れシワの荒いものとなる。そし
て好ましくは、180〜350μm、より好ましくは2
00〜300μmである。
【0024】銀面層付与に用いられる樹脂はポリウレタ
ンが最も好適に用いられるが、これは公知のポリウレタ
ンを用いれば良く、適宜他の樹脂を混合しても良い。た
だし、近年多くの用途で耐久性が要求されていることか
らポリエーテル系、あるいはポリカーボネート系などの
耐久性に優れたポリウレタンを用いることがより好まし
い。また、銀面層の厚みは10〜100μmの範囲が好
ましく、10μm未満では表面強度が低くなり、100
μmを超える場合では人工皮革の風合いが硬くなり折れ
シワも荒くなる。本発明に使用される銀面層を形成する
樹脂には、公知の添加物、例えば、増粘剤、硬化促進
剤、増量剤、充填剤、耐光安定剤、酸化防止剤、紫外線
吸収剤、蛍光剤、防黴材、難燃剤、浸透剤などの界面活
性剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロ
ースなどの水溶性高分子化合物、染料、顔料等の接着剤
などを配合することができる。
【0025】本発明で使用する銀面層用および接着剤用
のポリウレタンは、硬さの目安である100%伸張時の
モジュラスが10〜150kg/cmのものが好まし
く、10kg/cm未満では機械強度的物性が低下する
傾向があり、150kg/cmを越えるとポリウレタ
ン樹脂自体が硬くなる傾向となり、従って人工皮革全体
の風合いも硬く、折れシワが不自然で荒くなる傾向があ
る。
【0026】そして接着に使用される樹脂が架橋系のポ
リウレタンであることが必要であり、この架橋系のポリ
ウレタンを使用することによって、銀付人工皮革が水に
濡れ過酷な条件下で使用された時、接着層が膨潤し表面
層との接着力が低下することを防止することが可能とな
る。また銀面層の最表面は水の浸透を防ぐために無孔質
層にすることが好ましい。最表面を無孔質層にするため
には、あらかじめ発泡剤等の添加剤を添加していないポ
リウレタン等の公知の樹脂からなる最表面形成着色また
は無着色樹脂溶液を離型紙に塗布乾燥し、いったん無孔
質層を設けた後、該架橋系のポリウレタンの接着剤を該
離型紙に形成された最表面樹脂無孔質層上に塗布し基体
層と張り合わせる方法によって得られる。なお、本発明
の効果に影響をおよぼさない範囲で該最表面樹脂無孔質
層と架橋系ポリウレタン接着剤層の間に発泡層を有して
も良い。
【0027】本発明における接着剤の主剤となるポリウ
レタン系樹脂は架橋剤を併用する従来から使用されてい
る、例えば2液系接着剤用に使用される公知のポリウレ
タン系樹脂を水性分散液としたものであればよく、従来
から人工皮革、合成皮革などに使用されているポリウレ
タン樹脂はすべて使用できる。また、水性分散体の製造
方法についても公知の製造方法に従えばよく、特に制限
されるものではない。このようなポリウレタン樹脂は、
例えば、高分子ポリオール、有機ポリイソシアネート、
鎖伸長剤および架橋剤との反応部位となるヒドロキシル
基含有化合物、アミノ基含有化合物、カルボキシル基含
有化合物、乳化剤などを製造原料として使用することが
できる。
【0028】このような高分子ポリオールとしては、ポ
リテトラメチレングリコール、ポリエステルジオール、
ポリカーボネートジオールなどの高分子ポリオールを挙
げることができ、目的とする人工皮革の用途に応じて単
独使用しても併用してもよい。該高分子ポリオールは、
高分子ポリオール1分子当たりの水酸基の数は2より大
きくてもエマルジョン合成に支障をきたさない限り使用
に問題はない。水酸基の数が2より大きい高分子ポリオ
ールを得る手段としては、高分子ポリオールを製造する
際に任意の高分子ポリオール1分子当たりの水酸基の数
となるように1分子中の水酸基の数が3個以上である低
分子ポリオールを使用する方法、ポリウレタン重合の際
に高分子ジオールと1分子中の水酸基の数が3個以上で
ある高分子ポリオールを混合することで、任意の1分子
当たりの水酸基の数とする方法等を挙げることができ
る。すなわち水酸基の数が2より大きい高分子ポリオー
ルを製造する方法としては、例えば低分子ジオールと低
分子ジカルボン酸を縮合重合してポリエステルジオール
を製造する際に、グリセリン、トリメチロールプロパ
ン、ペンタエリスリトールなどの3官能以上の低分子ポ
リオールを低分子ジオールに併用して製造することがで
きる。
【0029】イソシアネート化合物についても特に制限
はなく、通常のポリウレタン水性分散体の製造に従来か
ら使用されている分子中にイソシアネート基を含有する
公知の脂肪族、脂環族、芳香族の有機ジイソシアネート
のいずれを使用してもよく、例えば、イソホロンジイソ
シアネート、トリレンジイソシアネート、4,4´−ジ
フェニルメタンジイソシアネート、P−フェニレンジイ
ソシアネート、1,5ナフタレンジイソシアネート、キ
シリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシア
ネート、、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシ
アネート、水素化キシリレンジイソシアネートなどが挙
げられる。これらの有機イソシアネートは単独で使用し
てもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】上記ポリウレタン水性分散体の製造にあた
り高分子ポリオールと有機ジイソシアネートの使用モル
比は、通常1:1.2〜1:6の範囲であり、より好ま
しくは1:1.5〜1:5である。高分子ポリオールの
分子量に応じ上記の範囲内において最適組成を選択する
ことができる。
【0031】本発明において水性分散体を製造するに際
して使用できるカルボキシル基含有化合物としてはカル
ボキシル基を少なくとも1個およびカルボキシル基を除
く活性水素原子を含む基、例えば水酸基またはアミノ基
を少なくとも2個有する化合物であればよいが、なかで
もジヒドロキシル基含有アルカン酸が好ましく、ジヒド
ロキシル基含有アルカン酸のなかでもジメチロールアル
カン酸が好ましい。代表的なジメチロールアルカン酸と
しては2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジ
メチロール酢酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,
2−ジメチロールペンタン酸を挙げることができ、この
なかでも特に2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,
2−ジメチロールブタン酸が好適に使用できる。カルボ
キシル基含有化合物中のカルボキシル基は該化合物中の
水酸基またはアミノ基と比べてイソシアナート基に対し
て比較的反応性が低く、水性分散体製造時に有機ジイソ
シアネートとほとんど反応しない。前記カルボキシル基
含有化合物とはイソシアナート基と水酸基またはアミノ
基との間で選択的に反応し、第3級アミンと第4級塩の
形成に利用しうるぶらさがったカルボキシル基を持った
ポリマー構造を与える。ポリウレタン水性分散体の製造
時において、ポリウレタンに導入したカルボキシル基を
第3級アミンで全部塩の形にして中和しても良いが、部
分的に中和し、遊離のカルボキシル基の形で残しておい
ても良い。
【0032】ポリウレタン水分散体の製造の際にはポリ
ウレタンに導入されるカルボキシル基の塩形成のために
第3級アミンを使用することができるが、第3級アミン
としてはトリメチルアミン、トリエチルアミン、メチル
ジエチルアミン、トリプロピルアミン等のトリアルキル
アミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−
ジエチルエタノールアミン、N,N−ジイソプロピルエ
タノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン
等のアルカノールジアルキルアミン、N−メチルジエタ
ノールアミン等のジアルカノールアルキルアミン等が好
ましく使用される。第3級アミン塩はリチウム、ナトリ
ウム、カリウム等のアルカリ金属塩よりも水に対する感
受性が小さく耐水性が良好である。
【0033】鎖伸長剤としては、ポリウレタン水性分散
体製造に一般に用いられるジアミノ化合物、ジオール化
合物、アミノアルコールなどを挙げることができ、また
一部に単官能アミノ化合物を併用して分子量を制御した
り、アミノカルボン酸を使用して末端にカルボキシル基
を導入することもできる。このような化合物としては、
例えば、イソシアネート基と反応し得る水素原子を分子
中に含有する分子量400以下の低分子化合物を用いる
ことができる。例えば、ヒドラジン、エチレンジアミ
ン、プロピレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホ
ロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレ
ンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、ア
ジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、ヘ
キサメチレンジアミン、4,4´−ジアミノフェニルメ
タン、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジアミンなど
のジアミン類、エチルアミン、n−プロピルアミン、i
−プロピルアミン、n−ブチルアミン、i−ブチルアミ
ン、t−ブチルアミン、シクロヘキシルアミンなどの単
官能アミン、エチレングリコール、プロピレングリコー
ル、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオー
ル、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス(β−ヒド
ロキシエチル)テレフタレート、3−メチル−1,5−
ペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、キシリレ
ングリコール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキ
シ)ベンゼン、ネオペンチルグリコールなどのジオー
ル、アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコー
ルなどのアミノアルコール類、ε−カプロラクタムの加
水分解によって得られるアミノアルキル酸であるε−ア
ミノカプロン酸(6−アミノヘキサン酸)やγ−アミノ
酪酸(4−アミノブタン酸)、アミノシクロヘキサンカ
ルボン酸、アミノ安息香酸などのアミノカルボン酸、水
などが挙げられる。これら低分子化合物は単独で使用し
てもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】架橋系ポリウレタン樹脂に使用される架橋
剤としては、公知の架橋剤を使用することが可能であ
り、たとえば、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カ
ルボジイミド化合物、有機ポリイソシアネート化合物、
オキサゾリン化合物、メラミンホルムアミド化合物、ユ
リアメチロール化合物などを挙げることができる。この
中でも得られる人工皮革の剥離強力が優れることから有
機ポリイソシアネート化合物が好適に使用できる。架橋
剤は水分散タイプの架橋剤と必要に応じて界面活性剤を
配合したものであっても、それ自体が水分散体のもので
あってもよく、主剤中へ均一になるまで攪拌しながら添
加するなどして使用する。また、本発明の主旨からは架
橋剤などにも有機溶剤が含まれていないことが好まし
い。
【0035】主剤ポリウレタンと架橋剤の配合割合は不
揮発分で、主剤100重量部に対して架橋剤が2〜30
重量部であることが好ましい。架橋剤の量が2重量部未
満であると剥離強力が低くなる傾向があり、30重量部
より大きくなると剥離強力は強いが、得られる人工皮革
が硬くなり、折れシワも不良になる傾向にある。本発明
の水系樹脂分散体においては従来の溶剤系に対して架橋
剤を多く使用する必要がある場合があるが、架橋構造を
形成するイソシアネート基やエポキシ基が主剤となるポ
リウレタン樹脂の反応性官能基と定量的に反応しにくい
ことや、水との反応により一部が失われることが原因と
考えられる。また、配合した架橋系ポリウレタン樹脂水
性分散体の塗布量はウェット重量で 100〜500g
/m、純分で80〜300g/mの範囲が剥離強力
と風合いの点で好ましい。基体層を製造する際に使用す
る不織布の密度により同じ接着剤塗布量でも接着剤の基
体層表面から内部へ浸透量が変わることになる。すなわ
ち不織布の密度が高いほど空隙が少なくなるために、接
着剤がより内部の方向に浸透し易い傾向がある。このた
め、本発明の150〜400μmの範囲の浸透を達成す
るための塗布量は上記の範囲の塗布量を好適に採用でき
る。ウェット重量で500gを超える量を塗布した場
合、乾燥に著しく時間がかかったり、表面にウレタン樹
脂の膜が形成されて、それよりも内部の水分を飛ばすこ
とができずに、架橋反応を阻害する水分が残存して剥離
物性に悪影響を及ぼすといった問題を生ずることがあ
る。
【0036】本発明に使用される接着剤配合液中および
樹脂中には、公知の添加物、例えば、増粘剤、硬化促進
剤、増量剤、充填剤、耐光安定剤、酸化防止剤、紫外線
吸収剤、蛍光剤、防黴材、難燃剤、浸透剤などの界面活
性剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロ
ースなどの水溶性高分子化合物、染料、顔料等の着色剤
などを配合することができる。
【0037】本発明においては、銀面層を形成する前、
または形成した後に必要に応じてさらに柔軟性を付与す
るためや、天然皮革ライクな揉みシワを付与するために
柔軟化処理を行うことが好ましい。柔軟化処理には、高
圧液体流染色機、ウインス、タンブラー、および文字通
り機械的な揉み機等公知の揉み機による機械的な揉みを
行う方法、あるいは、柔軟化効果を持つ薬剤を付与する
方法等があり、より好ましい効果のある方法としては、
高圧液流染色機を用い熱水液流と共に狭いノズルを通過
させる方法がある。いずれの方法を用いても、本発明は
さらなる柔軟性および天然皮革ライクな揉みシワの付与
が可能である。そして、本発明の銀付調人工皮革の柔軟
性および天然皮革並みの揉みシワを最も効果的に付与す
るためには、銀面層を形成後さらに機械的な揉み処理を
行うことが好ましい。
【0038】本発明方法により得られる人工皮革は紳士
靴、スポーツシューズ、鞄、ベルト、カメラケース、ラ
ンドセルなどに用いられる銀付き人工皮革として好適に
使用することができる。この中でも、とりわけ、本発明
の銀付人工皮革は靴用途、その中でも湿潤時においても
高い剥離物性を必要とするスポーツシューズの主に甲部
分などに用いられ、靴底ゴム部とインジェクション一体
化を行って製靴する銀付人工皮革本来の剥離強力が影響
しやすい方法で製造されるスポーツシューズに好適に用
いられる。これにより得られるスポーツシューズなどは
柔軟な風合いと、湿潤時に優れた剥離強力を持ち、製造
時に環境への負荷を低減した製造方法によって得られる
のものである。
【0039】
【実施例】以下に実施例によって本発明方法を具体的に
説明するが、本発明はそれによって何ら限定されるもの
ではない。なお、実施例中の部及び%はことわりのない
限り重量に関するものである。また、以下の実施例およ
び比較例において機械的物性の評価は以下の方法に従っ
た。
【0040】[人工皮革の湿潤時の剥離強力測定方法]
表面を削った巾2.5cmのゴム板に接着剤を均一に塗
布し、100℃2分熱処理した後、たて方向23cm、
巾2.5cmにカットして同様の方法で接着剤を塗布後
熱処理した試験片を張り合わせる。張り合わせた試験片
を2〜4kg/cm圧力でプレスし、室温にて1昼夜
放置する。張り合わせた試験片を20℃の水中に10分
間浸し、その後湿潤状態で張りあわせた試験片のゴム板
先端部を一方のチャックに、サンプル先端部を他方のチ
ャックに挟む。引張試験機にて速度100mm/分でゴ
ム板とサンプル接着部分の剥離強力を測定、記録する。
得られたSS曲線から剥離強力の平坦な部分の平均値を
求める。試験片3個の平均値をcm当たりに換算して表
す。
【0041】[不織布の層間剥離物性測定法]不織布を
たて方向(シート長さ方向)に23cm、巾2.5cm
切り取り、表面から厚さ方向のほぼ中央までカミソリ刃
で切れ目を入れ、長さ約10cmを手で剥離させる。剥
離部分の両端をチャックで挟み、引張試験機で引張速度
100mm/分で剥離強力を測定、記録する。得られた
SS曲線から剥離強力の平坦な部分の平均値を求め試験
片3個の平均値で表す。
【0042】[接着層の厚みの測定および架橋系ポリウ
レタンの沈み込み深さの測定]銀付人工皮革の断面を電
子顕微鏡にて500倍の拡大写真撮影し、接着層の厚み
と、この厚み方向に対して垂直方向に任意2mm間で、
最も沈み込みの浅い部分から3点、最も深い部分から3
点を選びその沈み込み深さの平均値で示した。
【0043】実施例1 重合体成分Aとしてポリエチレンテレフタレート、重合
体成分Bとしてナイロン6を用いて、重量比を66/3
4の割合で、11層に交互に配列させた後に口金より吐
出させて紡糸した。紡糸時の溶融粘度はそれぞれ100
0ポイズと1200ポイズであった。紡糸油剤として松
本油脂製油剤KMTP−20を使用した。紡糸後、延伸
し、機械捲縮を付与し、その後51mmにカットし、図
1のタイプの断面形状の複合ステープル繊維を得た(成
分Aの平均厚み0.35μm)。得られた複合ステープ
ル繊維の繊度は3.3デシテックスであった。この複合
ステープル繊維を用い、カード処理を行なってウエッブ
を作製し3100パンチ/cmのニードルパンチ処理
を行った。この不織布の層間剥離物性は8.6kg/
2.5cmであった。このようにして得られた目付け3
20g/mの不織布へ水性アクリルエマルジョンボン
コートAN−258(大日本インキ化学工業製アクリル
エマルジョン)を乾燥後の固形分重量で不織布の80重
量%となるように含浸して(繊維/樹脂=55.6/4
4.4)、乾燥した後に165℃熱プレスで表面の平滑
化と密度合わせを実施し、密度0.40g/cm、厚
み1.3mmのシート状物とした。さらにサーキュラー
染色機を用いて、120℃の熱水中で40分間の割繊・
リラックス処理を行い乾燥を経てシート基材を得た。得
られたシートは単繊度が平均0.3デシテックスであ
り、風合いの優れた皮革様の風合いを呈するシートであ
った。以後、このシート基材を基体層1と称する。
【0044】離型紙上にポリウレタン樹脂水性分散体配
合液(大日精化製レザミンD−2020:100部、大
日精化製セイカセブンDW01−321ホワイト:15
部、大日精化製D−85増粘剤:1.5部)を80g/
塗布し、100℃で乾燥することで形成した厚み3
0μmの銀面層の上に下記組成の架橋系ポリウレタン接
着剤を380g/m(純分205g/m)を塗布
し、その後100℃で乾燥し水分がほぼ蒸発したタック
のある状態で基体層1の表面に90℃に加熱したプレス
ロールで基体層厚みの35%のクリアランスロールで圧
着して張りつけた。
【0045】 架橋系ポリウレタン接着剤(水性樹脂分散体配合液)組成 レザミンD−1040(大日精化製ポリウレタンエマルジョン) 100部 レザミンD−62(大日精化製イソシアネート架橋剤) 15部 増粘剤レザミンD−85 1.5部
【0046】その後60℃で2日間熟成処理後、離型紙
を剥がし、機械的揉み処理をして銀付人工皮革を得た。
得られた銀付人工皮革は天然皮革と同様な低反発で柔軟
性と充実感のある緻密な折れシワのみられるものであっ
た。また電子顕微鏡でその断面を観察した結果、接着層
は基体層表面から基体層内部260μmまで浸透してい
た。湿潤時の剥離強力は3.1kg/cmと高いもので
あった。この銀付人工皮革を甲皮に用いてスポーツシュ
ーズを作製し使用したところ、柔軟性および充実感に優
れた履き心地であり、かつ延べ2週間湿潤状態でランニ
ングを行ったが靴底と該甲皮との剥離の無いものであっ
た。
【0047】比較例1 基体層1と銀面層を貼り合せるポリウレタン樹脂水性分
散体配合液の量を180g/m(純分97g/m
にする以外は実施例1と全く同様にして銀付き人工皮革
を製造した。得られた銀付人工皮革は天然皮革と同様な
低反発で柔軟性と充実感のある緻密な折れシワのみられ
るものであった。但し、電子顕微鏡でその断面を観察し
た結果、接着層は基体層表面から基体層内部130μm
までしか浸透しておらず、湿潤時の剥離強力は2.3k
g/cmとなり、スポーツシューズに要求される数値に
は至らないものであった。
【0048】比較例2 基体層1と銀面層を貼り合せるポリウレタン樹脂水性分
散体配合液の量を580g/m(純分313g/
)にする以外は実施例1と全く同様にして銀付き人
工皮革を製造した。電子顕微鏡でその断面を観察した結
果、接着層は基体層表面から基体層内部420μmまで
浸透しており、湿潤時の剥離強力は3.3kg/cmで
あった。しかし、得られた銀付人工皮革は実施例1の人
工皮革に比べて柔軟性に劣り、緻密な折れシワは見られ
ず大きいシワが発生する風合いに劣るものであった。
【0049】実施例2 重合体成分Aとしてポリエチレンテレフタレート、重合
体成分Bとしてナイロン6を用いて、重量比を50/5
0の割合で、8層に花弁型に配列させた後に口金より吐
出させて紡糸した。紡糸時の溶融粘度はそれぞれ400
ポイズと2000ポイズであった。紡糸油剤として松本
油脂製油剤KMT−930を使用した。紡糸後、延伸
し、機械捲縮を付与し、その後51mmにカットし、図
2のタイプの断面形状を呈する複合ステープル繊維を得
た(成分Aの平均厚み0.40μm)。得られた複合ス
テープル繊維の繊度は4.0デシテックスであった。こ
の複合ステープル繊維を用い、カード処理を行なってウ
エッブを作製し2500パンチ/cmのニードルパン
チ処理を行った。この不織布の層間剥離物性は7.2k
g/2.5cmであった。このようにして得られた目付
け300g/mの不織布へ水性ポリウレタンエマルジ
ョンボンディック1310NSA(大日本インキ化学工
業製ポリウレタンエマルジョン)を乾燥後の固形分重量
で不織布の60重量%となるように含浸して、乾燥した
後に165℃熱プレスで表面の平滑化と密度合わせを実
施した(繊維/樹脂=62.5/37.5)。このよう
にして得られた厚み1.35mm、密度0.36g/c
のシート基材を、さらにサーキュラー染色機を用い
て、80℃の6g/リットル水酸化ナトリウム水溶液中
で20分間の割繊・リラックス処理を行い、乾燥を経て
シート基材を得た。得られたシートは単繊度が平均0.
5デシテックスであり、風合いの優れた皮革様の風合い
を呈するシートであった。以後、このシート基材を基体
層2と称する。
【0050】離型紙上にポリウレタン樹脂水性分散体配
合液(大日本インキ製ハイドランWLS−202:10
0部、大日本インキ製ダイラックHS−724(白顔
料):15部、大日本インキ製ハイドランアシスターT
3(増粘剤):1.5部)を80g/m塗布し、10
0℃で乾燥することで形成した厚み25μmの銀面層の
上に下記組成の架橋系ポリウレタン接着剤を400g/
(純分175g/m )を塗布し、その後100℃
で乾燥し水分がほぼ蒸発したタックのある状態で基体層
2の表面に90℃に加熱したプレスロールで厚みの65
%のクリアランスロールで圧着して張りつけた。
【0051】 架橋系ポリウレタン接着剤(水性樹脂分散体配合液)組成 ハイドランWLA−301(大日本インキ製ポリウレタンエマルジョン) 100部 ハイドランアシスターC5(大日本インキ製イソシアネート架橋剤) 15部 増粘剤ハイドランアシスターT3 1.5部
【0052】その後60℃で2日間熟成処理後、離型紙
を剥がし、機械的揉み処理をして銀付人工皮革を得た。
得られた銀付人工皮革は天然皮革と同様な低反発で柔軟
性と充実感のある緻密な折れシワのみられるものであっ
た。また電子顕微鏡でその断面を観察した結果、接着層
は基体層表面から基体層内部180μmまで浸透してい
た。湿潤時の剥離強力は2.6kg/cmと高いもので
あった。この銀付人工皮革を甲皮に用いてスポーツシュ
ーズを作製し使用したところ、柔軟性および充実感に優
れた履き心地であり、かつ延べ2週間湿潤状態でランニ
ングを行ったが靴底と該甲皮との剥離の無いものであっ
た。
【0053】比較例3 基体層2と銀面層を貼り合せるポリウレタン樹脂水性分
散体配合液の量を200g/m(純分90g/m
にする以外は実施例2と全く同様にして銀付人工皮革を
製造した。得られた銀付人工皮革は天然皮革と同様な低
反発で柔軟性と充実感のある緻密な折れシワのみられる
ものであった。但し、電子顕微鏡でその断面を観察した
結果、接着層は基体層表面から基体層内部100μmま
でしか浸透しておらず、湿潤時の剥離強力は2.0kg
/cmとなり、スポーツシューズに要求される数値には
至らないものであった。
【0054】比較例4 基体層2と銀面層を貼り合せるポリウレタン樹脂水性分
散体配合液の構成を下記のように架橋剤を添加しない以
外は、実施例2と全く同様にして銀付人工皮革を製造し
た。得られた銀付人工皮革は天然皮革と同様な低反発で
柔軟性と充実感のある緻密な折れシワのみられるもので
あった。電子顕微鏡でその断面を観察した結果、接着層
は基体層表面から基体層内部185μmまで浸透してい
た。しかし、湿潤時の剥離強力は1.0kg/cmとな
りスポーツシューズに要求される数値には至らないもの
であった。
【0055】 架橋系ポリウレタン接着剤(水性樹脂分散体配合液)組成 ハイドランWLA−301(大日本インキ製ポリウレタンエマルジョン)100 部 増粘剤ハイドランアシスターT3 1.5部
【0056】比較例5 実施例2で使用した不織布へ水性ポリウレタンエマルジ
ョンボンディック1310NSAを乾燥後の固形分重量
で不織布の20重量%となるように含浸して(繊維/樹
脂=83.4/16.6)、乾燥した後に165℃熱プ
レスで表面の平滑化と密度合わせを実施し(厚み1.3
mm、密度0.28g/cm)、さらにサーキュラー
染色機を用いて、80℃の6g/リットル水酸化ナトリ
ウム水溶液中で20分間の割繊・リラックス処理を行
い、乾燥を経て得られるシート基材である基体層3を、
基体層2に代えて使用する以外は実施例2と全く同様に
して銀付き人工皮革を製造した。得られた人工皮革は充
実感が圧倒的に実施例2の人工皮革に比べて劣ってお
り、基体層と銀面層のバランスが悪いものであった。電
子顕微鏡でその断面を観察した結果、接着層は基体層表
面から基体層内部180μmまで浸透していおり、湿潤
時の剥離強力は2.6kg/cmであった。
【0057】比較例6 実施例2で使用した不織布へ水性ポリウレタンエマルジ
ョンボンディック1310NSAを乾燥後の固形分重量
で不織布の200重量%となるように含浸して(繊維/
樹脂=33.3/66.7)、乾燥した後に165℃熱
プレスで表面の平滑化と密度合わせを実施し(厚み1.
42mm、密度0.62g/cm)、さらにサーキュ
ラー染色機を用いて、80℃の6g/リットル水酸化ナ
トリウム水溶液中で20分間の割繊・リラックス処理を
行い、乾燥を経て得られるシート基材である基体層4を
基体層2に代えて使用する以外は実施例2と全く同様に
して銀付人工皮革を製造した。得られた人工皮革は柔軟
性が圧倒的に実施例2の人工皮革に比べて劣った、風合
いの不良なものとなった。電子顕微鏡でその断面を観察
した結果、接着層は基体層表面から基体層内部220μ
mまで浸透しており、湿潤時の剥離強力は2.7kg/
cmであった。
【0058】実施例3 繊度は3.0デシテックスのナイロン6ステープル繊維
からカードニーパン法により得られた層間剥離物性が
6.0kg/2.5cmで目付け260g/mのナイ
ロン不織布へ水性アクリルエマルジョンボンコートAN
−258(大日本インキ化学工業製アクリルエマルジョ
ン)を乾燥後の固形分重量で不織布の40重量%となる
ように含浸して(繊維/樹脂=71.4/28.6)、
乾燥した後に165℃熱プレスで表面の平滑化と密度合
わせを実施し、厚み1.1mm、密度0.33g/cm
とした。さらにサーキュラー染色機を用いて、120
℃の熱水中で60分間のリラックス処理を行い乾燥を経
てシート基材を得た。以後、このシート基材を基体層5
と称する。
【0059】離型紙上にポリウレタン樹脂水性分散体配
合液(大日精化製レザミンD−2020:100部、大
日精化製セイカセブンDW01−321ホワイト:15
部、大日精化製D−85増粘剤:1.5部)を80g/
塗布し、100℃で乾燥することで形成した厚み3
0μmの銀面層の上に下記組成の架橋系ポリウレタン接
着剤を450g/m(純分243g/m)を塗布
し、その後110℃で乾燥し水分がほぼ蒸発したタック
のある状態で基体層5の表面に90℃に加熱したプレス
ロールで厚みの50%のクリアランスロールで圧着して
張りつけた。
【0060】 架橋系ポリウレタン接着剤(水性樹脂分散体配合液)組成 レザミンD−1040(大日精化製ポリウレタンエマルジョン) 100部 レザミンD−62(大日精化製イソシアネート架橋剤) 15部 増粘剤レザミンD−85 1.5部
【0061】その後60℃で2日間熟成処理後、離型紙
を剥がし銀付人工皮革を得た。得られた銀付人工皮革は
天然皮革と同様な低反発で柔軟性と充実感のあるもので
あった。また電子顕微鏡でその断面を観察した結果、接
着層は基体層表面から基体層内部330μmまで浸透し
ていた。湿潤時の剥離強力は2.8kg/cmと高いも
のであった。この銀付人工皮革を甲皮に用いてスポーツ
シューズを作製し使用したところ、柔軟性および充実感
に優れた履き心地であり、かつ延べ2週間湿潤状態でラ
ンニングを行ったが靴底と該甲皮との剥離の無いもので
あった。
【0062】比較例7 ナイロン不織布を構成するナイロン6の繊度を5.5デ
シテックスにする以外は実施例3と全く同様にして銀付
き人工皮革を製造した。得られた銀付人工皮革はシワ感
および柔軟性が実施例3で得られた人工皮革に比べて大
きく劣るものであった。電子顕微鏡でその断面を観察し
た結果、接着層は基体層表面から基体層内部310μm
まで浸透し、湿潤時の剥離強力は2.9kg/cmであ
った。
【0063】比較例8 基体層3と銀面層を貼り合せるポリウレタン樹脂水性分
散体配合液の量を150g/m(純分80g/m
にする以外は実施例3と全く同様にして銀付き人工皮革
を製造した。得られた銀付人工皮革は天然皮革と同様な
低反発で柔軟性と充実感のあるものであった。但し、電
子顕微鏡でその断面を観察した結果、接着層は基体層表
面から基体層内部95μmまでしか浸透しておらず、湿
潤時の剥離強力は1.8kg/cmとなり、スポーツシ
ューズに要求される数値には至らないものであった。
【0064】
【発明の効果】本発明の銀付人工皮革の構造をとること
によって、過酷なスポーツシューズ等の用途に耐えうる
機械的物性を持ち、かつ柔軟性に優れた充実感のある銀
付人工皮革を従来の製法に比べて環境に対する負荷を軽
減して得ることができる。この人工皮革を使用したシュ
ーズは雨降り等の過酷な条件下で使用しても、靴底と素
材部分の剥離や破れが起こりにくい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法に用いられる多層張り合わせ型複合
ステープル繊維の断面の一例を示す図である。
【図2】本発明方法に用いられる花弁型複合ステープル
繊維の断面の一例を示す図である。
【符号の説明】
1:成分A 2:成分B t:成分Aの厚み
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4F055 AA01 BA13 DA08 DA17 DA20 EA04 EA05 EA24 EA34 FA10 FA15 GA03 GA11 GA32 HA05

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 5.0デシテックス以下のステープル繊
    維からなる3次元絡合不織布および水性樹脂分散体によ
    り付与された高分子弾性体からなる基体層の少なくとも
    片面に水性ポリウレタン樹脂分散体によって形成される
    銀面層を有する銀付人工皮革において、該基体層のステ
    ープル繊維と高分子弾性体の重量比が80/20〜35
    /65であり、かつ該銀面層と該基体層とが水性ポリウ
    レタン樹脂分散体と架橋剤とからなる架橋系ポリウレタ
    ンを用いて接着されており、かつ該架橋系ポリウレタン
    が該基体層表面から150μm〜400μm下の基体層
    内部まで浸透していることを特徴とする銀付人工皮革。
  2. 【請求項2】 人工皮革の基体層を形成するステープル
    繊維が、成分A、成分Bの異なる2種の重合体からな
    り、該成分Aと該成分Bの合計層数が5層以上である潜
    在分割性のステープル繊維を分割処理して得られる繊維
    である請求項1に記載の銀付人工皮革。
  3. 【請求項3】 銀面層と基体層との間の湿潤時の剥離強
    力が2.5kg/cm以上である請求項1または2に記
    載の銀付人工皮革。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の銀付人
    工皮革を製造するに際し、銀面層と基体層を接着する架
    橋系ポリウレタンを基体層の厚みの1/2〜8/10の
    クリアランスでプレス浸透させる銀付人工皮革の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜3のいずれかに記載の銀付人
    工皮革を製造するに際し、銀面層を形成後に機械的な揉
    みを行う銀付人工皮革の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜3のいずれかに記載の銀付人
    工皮革を少なくとも甲皮として用いた靴。
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