JP4536473B2 - 合成皮革およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、画像品位および耐摩耗性に優れた合成皮革およびその製造方法に関するものである。
合成皮革は、鞄、衣料、靴、椅子および車両用シートなど各分野に幅広く応用されている。一般的に合成皮革は、離型紙上に熱溶融樹脂または溶剤型樹脂を塗布し、乾燥して皮膜を形成し、ついで、前記皮膜もしくは基材に接着剤を塗布し、皮膜と基材とを張り合わせた後、熱圧着により接着し、離型紙を剥がすことにより製造される。
ところで、近年、一般的に無地である合成皮革においても、カラフルさやデザインの変化が要求され、表面に若干の凹凸をつけて模様や柄を付着したものも知られているが、着色されたもので耐摩耗性に優れているものはないのが現状である。
このような合成皮革に意匠性を付与したものとしては、例えば、特許文献1があげられる。この方法によれば、皮膜に多孔質シートを用いることにより、インクの弾きおよび滲みなどを抑えることができるものの、使用するインクが、水系または溶剤系であるためにインクの乾燥性が悪く、インクをはじくおそれがあり、出来上がった画像品位に不安が残る。また、画像を記録するためにウレタン樹脂を多孔質にしており、そのため耐摩耗性が低下するおそれがある。
このように、画像品位が良好で、かつ耐摩耗性に優れた合成皮革は、未だ得られていないのが現状である。
特開平11−36180号公報
本発明の目的は、画像品位が良好で、かつ耐摩耗性に優れた合成皮革およびその製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明は、基材、該基材上に形成された紫外線硬化型インクによる画像層、および該画像層上に形成された表皮層からなり、
該表皮層がポリウレタン樹脂層と滑性ポリウレタン樹脂層からなる合成皮革に関する。
前記滑性ポリウレタン樹脂が、ケイ素を含有するポリウレタン樹脂であることが好ましい。
前記紫外線硬化型インクが、着色成分、反応性オリゴマー、反応性希釈剤および光重合開始剤からなり、反応性オリゴマー単体での重合物のガラス転移点、および、反応性希釈剤単体での重合物のガラス転移点が、ともに−25〜70℃であることが好ましい。
また、離型紙上に滑性ポリウレタン樹脂層を形成する工程、該滑性ポリウレタン樹脂層上にポリウレタン樹脂層を形成する工程、該ポリウレタン樹脂層上に紫外線硬化型インクによる画像層を形成する工程、該画像層と基材とを接着する工程、および、該離型紙を剥離する工程からなる合成皮革の製造方法に関する。
本発明によれば、表皮層がポリウレタン樹脂層と滑性ポリウレタン樹脂層からなるので、画像品位が良好で、かつ耐摩耗性に優れた合成皮革およびその製造方法を提供することができる。
本発明の合成皮革は、基材、該基材上に形成された紫外線硬化型インクによる画像層、および該画像層上に形成された表皮層からなり、該表皮層がポリウレタン樹脂層と滑性ポリウレタン樹脂層からなる合成皮革である。
本発明で使用される基材としては、布帛および樹脂シートなどがあげられるが、耐久性および風合いが優れる点で、布帛が好ましい。具体的には、編物、織物および不織布などがあげられるが、特に限定されない。織物としては、例えば、平織、綾織および朱子織などがあげられる。編物としては、例えば、平編、ゴム編およびパール編などの緯編、シングルトリコット編、シングルコード編およびシングルアトラス編などの経編があげられる。その形状としては、風合いがよいという点で立毛布が好ましい。立毛布とは、地組織が織編物、あるいは不織布で構成され、立毛繊維を有する布帛をいう。なお、立毛をパイルともいうので、立毛布はパイル布とも呼ばれる。
また、これらを構成する素材としては、金属繊維、ガラス繊維、岩石繊維および鉱サイ繊維等の無機繊維、セルロース系およびたんぱく質系等の再生繊維、セルロース系等の半合成繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンおよびポリフッ化エチレン等の合成繊維、綿、麻、絹および毛等の天然繊維等各種の繊維があげられ、単独もしくは組合せて使用できる。なかでも、汎用性があり、比較的強度が高い点で、ポリエステルが好ましい。
前記布帛を構成する糸の密度について、トータル繊度が50〜1000dtex、単糸繊度が0.1〜10dtexであることが好ましい。
また、前記布帛の密度について、織物の密度としては、経40〜300本/インチ、緯40〜200本/インチが好ましい。編物の密度としては、40〜70コース、30〜50ウェールが好ましい。織物の密度が経40本/インチ、緯40本/インチより少ない、または編物の密度が40コース、30ウェールより少ないと、密度が低すぎるため、接着剤が布帛にしみ込みすぎることとなり、風合いが硬くなり、且つ表皮と布帛との接着が弱くなる傾向にある。また、織物の密度が経300本/インチ、緯200本/インチより多い、または編物の密度が70コース、50ウェールより多いと、密度が高すぎるため、接着剤が布帛にしみ込まず、表皮と布帛の接着が弱くなる傾向にある。
前記基材上に形成された画像層は、紫外線硬化型インクからなっている。紫外線硬化型インクは、紫外線を照射することにより硬化するインクであり、水系インクや溶剤インクでは記録が不可能であるプラスチック類およびガラス類など、インク吸収性のない基材に対して、インク受容層の形成をしないで記録することが可能である。
画像層は、紫外線硬化型インクを5〜100g/m2で付与することにより形成されることが好ましい。付与量が5g/m2より少ないと、画像が濃度不足となる傾向にあり、100g/m2をこえると、層間剥離が発生する傾向にある。
本発明で使用される紫外線硬化型インクは、顔料または染料などの公知の着色成分、反応性オリゴマー、反応性希釈剤および光重合開始剤などの成分からなることが好ましい。
前記反応性オリゴマー単体での重合物のガラス転移点(Tg)、反応性希釈剤単体での重合物のTgはそれぞれ、−25〜70℃であることが好ましく、より好ましくは0〜70℃、さらに好ましくは5〜50℃、とくに好ましくは10〜30℃である。
ここで、Tgとは、ポリマーを加熱した場合にガラス状の硬い状態からゴム状に流動性を持ち始める温度のことをいう。Tgはポリマーの結合相互作用、分子量、官能基数、化学骨格等によって大きく影響される。一般的にTg以下ではポリマーは硬く・脆くなる現象が見られ、Tg以上ではポリマーは分子が流動性を持つために一定の強度やしなやかさを持つ。なお、本発明でいうガラス転移点(Tg)は、反応性オリゴマー単体での重合物、および反応性希釈剤単体での重合物、つまりホモポリマーのTgである。示差走査熱量計で測定できる。
Tgをそれぞれ前記範囲内とすることにより、紫外線照射によって得られる硬化皮膜の耐引っ掻き性、接着性、柔軟性、および可撓性基材との追従性は優れる。Tgが70℃より高くなると、紫外線硬化型インクの硬化皮膜は硬くなりすぎるため、柔軟性がなく逆に脆くなる。また、Tgが−25℃より低くなると、耐引っ掻き性などの堅牢性が悪くなり、またタック性が生じるようになる。
前記反応性オリゴマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、シリコンアクリレート、ポリブタジエンアクリレートがあげられ、単独、もしくは複合して使用しても良い。またこれら反応性オリゴマーの中でも、様々な材料に対する接着性に優れるといった点や、強靭性、柔軟性、耐薬品性、低温特性が優れるという理由から、ウレタンアクリレートが好ましい。
また、本発明において使用される反応性オリゴマーは、60℃における粘度が40〜10000cpsであることが好ましく、とくには40〜7500cpsであることが好ましい。反応性オリゴマーの60℃における粘度が40cps未満では、反応性オリゴマーが充分な分子量を有していないことが予想され、その為それらから得られる硬化膜の耐引っ掻き性や接着性が不足する傾向があり、10000cpsをこえると、インク中に添加できる量がごく僅かに限定されてしまい、インクの構成成分が反応性希釈剤でほとんどを占めることとなるために、得られる硬化膜が耐引っ掻き性や接着性が不足する傾向がある。
使用される反応性オリゴマーの分子中の官能基は2官能のものが望ましい。理由として、インク構成材料の官能基が多い場合、硬化皮膜の架橋点は多くなり得られる硬化皮膜は硬いものが得られるが、その反面脆くなり接着性や耐引っ掻き性に劣る硬化皮膜になりやすいからである。
分子中の官能基数が2以上でなければ、硬化時に分子が連続的な皮膜を形成しないという点も考慮すると2官能であることが好ましい。
前記反応性希釈剤としては、たとえば6官能のジペンタエリスリトールヘキサアクリレートやそれら変性体、5官能のジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、4官能のペンタジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、3官能のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、グリセリルトリアクリレート、2官能のヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(1000)ジアクリレート、ポリプロピレングリコール(400)ジアクリレート、ポリプロピレングリコール(700)ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、および単官能のカプロラクトンアクリレート、トリデシルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールジアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ネオペンチルフリコールアクリル酸安息香酸エステル、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート、メトキシ−トリエチレングリコールアクリレート、メトキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチル−コハク酸、2−アクリロイロキシエチル−フタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸があげられる。さらに、これらにリン、フッ素、エトキシ基、またはプロポキシ基などの官能基を付与した反応性希釈剤があげられる。これらの反応性希釈剤を単独、もしくは複合して使用できる。
使用される反応性希釈剤の分子中の官能基は2官能のものが望ましい。理由として、インク構成材料の官能基が多い場合、硬化皮膜の架橋点は多くなり得られる硬化皮膜は硬いものが得られるが、その反面脆くなり接着性や耐引っ掻き性に劣る硬化皮膜になりやすいからである。
また、前述のような理由とインクの希釈性から官能基の数が少ないことが望まれるが、分子中の官能基数が2以上でなければ、硬化時に分子が連続的な皮膜を形成しないという点も考慮すると2官能であることが好ましい。
これらの2官能性反応性希釈剤の中でも、記録方法にインクジェット方式を用いる場合には、比較的低粘度であり、かつ、皮膚刺激性が低いという点で、ポリプロピレングリコール(400)ジアクリレート、ポリプロピレングリコール(700)ジアクリレート、エトキシ変性1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、プロポキシ変性1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エトキシ変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシ変性ネオペンチルグリコールジアクリレートがさらに好ましい。
反応性オリゴマー単体での重合物のTgと反応性希釈剤単体での重合物のTgの差は30℃以内であることが好ましい。さらに好ましくは20℃以内である。30℃を超える場合は、反応性オリゴマーおよび反応性希釈剤どちらかの特徴が顕著に現れることになる。よって、たとえば硬化皮膜が硬くなりすぎたり、硬化皮膜にタック性が生じるといった傾向にある。
また、光重合開始剤としては、ベンゾイン系、チオキサントン系、ベンゾフェノン系、ケタール系、アセトフェノン系があげられ、単独、もしくは複合して使用しても良い。
具体的には、2,2−ジメチル−2−ヒドロキシ−アセトフェノン、1−ヒドロキシ−1−シクロヘキシル−フェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンジル−ジフェニル−ホスフィンオキシド、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、イソプロリルチオキサントン(2−および4−異性体の混合物)、ベンゾフェノン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドと1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパノンとのブレンド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドと1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトンとのブレンド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、およびカンファーキノンなどがあげられる。
なかでも、反応性オリゴマーおよび反応性希釈剤との相溶性が良く、低臭気であり、自然光で反応しないものを選択するのが好ましい。
また、光重合開始剤の開始反応を促進させるために増感剤などの助剤を併用することも可能である。
前記着色成分としては、顔料および染料のいずれも使用可能である。印写記録された記録物に対して耐候性や耐光性が求められる場合は、顔料を使用することが好ましく、有機、無機を問わず任意のものが選択される。
たとえば有機顔料としては、ニトロソ類、染付レーキ類、アゾレーキ類、不溶性アゾ類、モノアゾ類、ジスアゾ類、縮合アゾ類、ベンゾイミダゾロン類、フタロシアニン類、アントラキノン類、ペリレン類、キナクリドン類、ジオキサジン類、イソインドリン類、アゾメチン類、ピロロピロール類などがあげられる。
また、無機顔料としては、酸化物類、水酸化物類、硫化物類、フェロシアン化物類、クロム酸塩類、炭酸塩類、ケイ酸塩類、リン酸塩類、炭素類(カーボンブラック)、金属粉類などがあげられる。
また、耐候性や耐光性をあまり重視しない場合には、染料を利用することも可能であり、その際の染料は特に限定されず任意のものが選択される。
たとえば、染料としては、アゾ類、アントラキノン類、インジゴイド類、フタロシアニン類、カルボニウム類、キノンイミン類、メチン類、キサンテン類、ニトロ類、ニトロソ類のような油溶性染料、分散染料、酸性染料、反応染料、カチオン染料、直接染料等があげられる。
その他、紫外線硬化型インク組成物には、必要に応じて分散剤、熱安定剤、酸化防止剤、防腐剤、消泡剤、浸透剤等の添加剤を加えることも当然可能である。
前記紫外線硬化型インクは、色材、必要に応じて樹脂、その他添加剤を混合し、さらにその混合物をロールミル、ボールミル、コロイドミル、ジェトミル、ビーズミル等の分散機を使って分散させ、その後、ろ過を行うことで得ることができる。
また、60℃における粘度は、5〜30cpsであることが好ましい。5cpsより低いと、反応性オリゴマーの含有量が少なくなる傾向にあり、耐引っ掻き性や耐接着性について充分な性能が得られにくくなり、30cpsをこえると、加熱した場合においてもインク粘度が充分に下がらず、吐出性に欠けたインクとなる。
前記画像層上に形成された表皮層は、ポリウレタン樹脂層と滑性ポリウレタン樹脂層からなっている。
滑性とは、樹脂表面が滑りやすく、外部との摩擦が小さいものをいい、滑性ポリウレタン樹脂層とは、具体的には、滑剤とポリウレタン樹脂とからなるポリウレタン樹脂組成物、ケイ素を含有するポリウレタン樹脂、または、それらの組み合わせからなる層である。なかでも、耐摩耗性がより優れている点で、ケイ素を含有するポリウレタン樹脂からなることが好ましい。
なお、ケイ素を含有したポリウレタン樹脂を得るには、例えば、ポリウレタン樹脂をシリコーン変性させる方法があげられる。
前記滑剤としては、流動パラフィン、パラフィンワックスおよびポリエチレンワックスなどの炭化水素系滑剤、ステアリルアルコール、ステアリン酸および12−ヒドロキシステアリン酸などの脂肪酸系・脂肪族アルコール系滑剤、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビステアリン酸アミドおよびエチレンビスステアリン酸アミドなどの脂肪族アマイド系滑剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸鉛などの金属せっけん系滑剤、硬化油、ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ブチル、ペンタエリスルトールテトラステアレートおよびステアリルステアレートなどのエステル系滑剤があげられる。
本発明で使用されるポリウレタン樹脂の種類については、特に限定されるものではない。なかでも、耐光性や耐熱性に優れる点で、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が好ましい。そのなかでも、無黄変イソシアネートおよび脂肪族系ポリカーボネートジオールから合成されたものがさらに好ましい。
前記滑性ポリウレタン樹脂層とポリウレタン樹脂層とからなる表皮層の膜厚は、乾燥膜厚で10〜200μmであることが好ましく、30〜100μmであることがより好ましい。乾燥膜厚が10μmより薄いと、薄すぎるため被膜が破れるおそれがあり、200μmをこえると、厚すぎるため風合いが固くなる傾向にある。
また、それぞれのポリウレタン樹脂層の膜厚比は、滑性ポリウレタン樹脂層:ポリウレタン樹脂層=5:1〜1:5であることが好ましく、3:1〜1:3であることがより好ましい。範囲外では、耐摩耗性、風合いおよびポリウレタン樹脂の接着性などの全ての物性を満足することが困難となる。なお、膜厚は、熱や外力が加わった際にも、ポリウレタン樹脂層同士の接着性を保持することができる点で、同程度であることが好ましい。
滑性ポリウレタン樹脂層の耐摩耗性は、カーシートなどの高い耐摩耗性が要求される分野での利用を考慮すると、平面摩耗機にて5000回以上であることが好ましい。
また、本発明の合成皮革の製造方法は、離型紙上に滑性ポリウレタン樹脂層を形成する工程、該滑性ポリウレタン樹脂層上にポリウレタン樹脂層を形成する工程、該ポリウレタン樹脂層上に紫外線硬化型インクによる画像層を形成する工程、該画像層と基材とを接着する工程、および、該離型紙を剥離する工程からなる。
本発明の製造方法の一例を、図1を参照しながら説明する。
まず、離型紙1上に、ケイ素を含有するポリウレタン樹脂を塗布したのち乾燥して、滑性ポリウレタン樹脂層2aを形成する。
ここで、前記離型紙としては、支持体と剥離層との2層構造になっているものが好ましい。具体的に、支持体としては、紙、合成紙、および、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ナイロン、トリアセチルセルロースなどの熱可塑性樹脂フィルムを用いることができる。剥離層としては、シリコーン系化合物またはポリオレフィン樹脂を支持体上に塗布することにより形成されているものが好ましい。さらに、支持体が熱可塑性樹脂フィルムの場合には、剥離層に使用される樹脂を、シリコーンで変性してもよい。
次いで、前記滑性ポリウレタン樹脂層2a上に、ポリウレタン樹脂を塗布したのち乾燥して、ポリウレタン樹脂層2bを形成する。
前記ポリウレタン樹脂および滑性ポリウレタン樹脂の塗布方法としては、スプレー塗布、ロール塗布、ナイフ塗布およびカーテンスプレー塗布、押し出し溶融塗布などがあげられる。なかでも、生産コストの点で、押し出し溶融塗布が好ましい。
乾燥は、恒温層またはセッター機などを用いて、60〜200℃で1〜10分間行なわれる。乾燥温度が、60℃より低いと、乾燥するのに時間がかかるため非効率的であり、200℃をこえると、樹脂が劣化する傾向にある。また、乾燥時間が、1分より短いと、十分に乾燥しない傾向にあり、10分をこえると、十分に乾燥しているためエネルギーが無駄になる傾向にある。
次に、前記ポリウレタン樹脂層2b上に、紫外線硬化型インクにて画像を記録し、直ちに紫外線を照射して画像層3を形成する。
画像の記録は、凸版印刷、平版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷またはインクジェット印刷などにより行なわれる。なかでも、従来の印刷方法では難しかった画像の微細な表現および小ロット加工が可能な点で、インクジェット印刷が好ましい。
ついで、形成した画像層3上に接着剤を塗布して接着層4を形成したのち、基材5を圧着により接着する。
前記接着剤としては、有機系接着剤としては、ユリア樹脂系、メラミン樹脂系、フェノール樹脂系、エポキシ樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、シアノアクリレート系、ポリウレタン系、αオレフィン−無水マレイン酸樹脂系、水性高分子−イソシアネート系、反応性アクリル樹脂系、変性アクリル樹脂系、エチレン−酢酸ビニル樹脂系、アクリル樹脂系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、クロロプレンゴム系、ニトリルゴム系およびシリコーン系などの合成系、ニトロセルロースおよび酢酸セルロースなどの半合成系、でんぷん、にかわ、カゼインおよびアスファルトなどの天然系があげられる。無機系としては、セメント類、ケイ酸ソーダ類およびセラミックス系などがあげられる。
なかでも、耐光性および耐熱性などの物性に優れる点で、ポリカーボネート系ポリウレタンが好ましい。そのなかでも、無黄変イソシアネートおよび脂肪族系ポリカーボネートジオールから合成されたものが好ましい。
その性状としては、溶液、エマルジョンおよびホットメルトなどの何れであってもよいが、溶剤を使用しないホットメルトが好ましい。具体的には、非反応型ホットメルトおよび反応型ホットメルトがあげられる。なかでも、化学反応により強固な接着が得られる点で、反応型ホットメルトがより好ましい。
接着剤の塗布方法としては、スプレー塗布、ロール塗布、ナイフ塗布およびカーテンスプレー塗布、押し出し溶融塗布などがあげられる。なかでも、生産コストの点で、押し出し溶融塗布が好ましい。
また、その厚さは、20〜150μmが好ましい。20μmより薄いと、接着剤量が少ないので接着不良となる傾向にあり、150μmをこえると、風合いが硬くなる傾向にある。
ここでは、接着剤を画像層上に塗布する場合を示したが、基材に塗布することも可能である。しかし、基材が吸液性のあるものの場合、接着剤が基材に浸透してしまい、接着力が弱くなったり、合成皮革の風合いが硬くなるおそれがある。
前記圧着としては、ラミネート方式などによるものがあげられる。
圧着条件としては、温度20〜100℃、圧力0.5〜10kgf/cm2が好ましい。圧着温度が、20℃より低いと、接着不良となる傾向にあり、100℃をこえると、生地に接着剤がしみ込みすぎるため風合いが硬くなる傾向にある。また、圧力が、0.5kgf/cm2より小さいと、接着不良となる傾向にあり、10kgf/cm2をこえると、生地に接着剤がしみ込みすぎるため風合いが硬くなる傾向にある。
最後に、離型紙1を剥離することにより、本発明の合成皮革を製造する。
本発明においては、ポリウレタン樹脂層2b側を紫外線硬化型インクの印写面とすることで、インクのはじきを抑えることができ、画像品位が良好となる。
また、表皮層2の最外層2aを滑性ポリウレタン樹脂層とすることにより、耐摩耗性を向上させることができ、特にカーシートでの利用に最適なものとなる。さらに、製造工程において、離型紙から簡単に被膜を剥離できるため作業効率も向上する。
次に本発明について実施例をあげて説明するが、本発明は必ずしもその実施例に限定されるものではない。
評価方法を以下に示す。
(1)耐摩耗性
平面摩耗試験機((株)大栄科学精器製作所製)にて測定した。
測定方法:幅70mm、長さ300mmの大きさで、タテ、ヨコ各方向から試験片をそれぞれ1枚採取し、裏面に幅70mm、長さ300mm、厚み10mmの大きさのウレタンフォームを添えた。ウレタンフォームの下面中央に直径4.5mmのワイヤーを設置し、ワイヤー上を、ワイヤーと平行に綿布をかぶせた摩擦子に荷重9.8Nを掛けて摩耗した。なお、摩擦子は、試験片の表面上140mmの間を60往復/分の速さで摩耗した。
評価:摩耗試験機を稼働し、表皮が破れたときの回数を測定した。
(2)画像品位
10cm角の無地柄を印刷し、その品位を目視にて観察した。
○ ‥ 均一な無地柄である。
× ‥ 均一な無地柄ではない。
実施例1
(樹脂溶液1の作製)
ポリウレタン樹脂(クリスボン NY−324、シリコーン変性ポリカーボネートポリウレタン、大日本インキ(株)製)を70重量部、溶剤としてジメチルホルムアミドを15重量部、メチルエチルケトン15重量部を混ぜ合わせ、ミキサーにて10分攪拌して樹脂溶液1を作製した。
(樹脂溶液2の作製)
ポリウレタン樹脂(クリスボン NY−331、ポリカーボネートポリウレタン、大日本インキ(株)製)を70重量部、溶剤としてジメチルホルムアミドを15重量部、メチルエチルケトン15重量部を混ぜ合わせ、ミキサーにて10分攪拌して樹脂溶液2を作製した。
(紫外線硬化型インクの作製)
反応性オリゴマー(名称Ebecryl 8807、ダイセルユーシービー(株)製、樹脂の種類ウレタンアクリレート、官能基数2、Tg=32℃、60℃における粘度7200cps)を20重量部、反応性希釈剤(名称SR−9003、サートマー社製、樹脂の種類プロポキシ変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、官能基数2、Tg=32℃)を72.5重量部、着色剤としてIRGALITE Blue GLNF(銅フタロシアニンブルー、PB15:4、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)2重量部、および分散剤としてDisperbyk−168(ブロック共重合体、BYK Chemie社製)0.5重量部、および光開始重合剤としてイルガキュア 907(2−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルホリノプロパン−1−オン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)5重量部を加え、ビーズミル分散機を用い分散させ、その後ろ過を行い不純物を除去し、均質な紫外線硬化型インクを作製した。このインクの粘度は14cps/60℃、表面張力は31.3dyne/cmであった。
(表皮層の形成)
作製した樹脂溶液1を、離型紙(PXD R−86、リンテック(株)製)上にアプリケーター(テスター産業(株)製)にて塗布し、110℃の恒温槽で10分乾燥して、滑性ポリウレタン樹脂層を形成した。乾燥膜厚は32μmであった。
さらに、作製した樹脂溶液2を、前記滑性ポリウレタン樹脂層上にアプリケーター(テスター産業(株)製)にて塗布し、110℃の恒温層で5分乾燥して、ポリウレタン樹脂層を形成した。乾燥膜厚は65μmであった。
(画像層の形成)
前記ポリウレタン樹脂層上に、作製した紫外線硬化型インクを用いてインクジェット方式により、画像層を形成した。印写条件を以下に示す。なお、インクの付与量は33g/m2である。
〔印写条件〕
イ)ノズル径 : 70(μm)
ロ)印加電圧 : 50(V)
ハ)パルス幅 : 20(μs)
ニ)駆動周波数: 1(kHz)
ホ)解像度 : 180(dpi)
ヘ)加熱温度 : 60(℃)
〔紫外線照射条件〕
あ)ランプ種類: メタルハライドランプ
い)電圧 : 120W/cm
う)照射時間 : 1秒
え)照射高さ : 10(cm)
(接着および剥離工程)
形成された画像層に、接着剤(ハイボン YR345−1、ウレタン系反応性ホットメルト接着剤、日立化成ポリマー(株)製)を、ロールコーター(松下工業(株)製)にて、厚みが100μmとなるように塗布した。
ついで、接着剤塗布面と基材(ポリエステル立毛布、糸密度:トータル繊度、84dtex、単糸繊度2.8dtex、布帛密度:57コース、43ウェール)とを、ラミネート方式(温度:25℃、圧力:4kgf/cm2)にて貼り合わせたのち、離型紙を剥がして本発明の合成皮革を得た。
得られた合成皮革の評価結果を表1に示す。
実施例2
(樹脂溶液3の作製)
ポリウレタン樹脂(クリスボン NY−331、ポリカーボネートポリウレタン、大日本インキ(株)製)を65重量部、溶剤としてジメチルホルムアミドを15重量部、メチルエチルケトンを15重量部、および、滑剤としてステアリルアルコール5重量部を混ぜ合わせ、ミキサーにて10分攪拌して樹脂溶液3を作製した。
樹脂溶液1に代えて、樹脂溶液3を用いて、滑性ポリウレタン樹脂層(乾燥膜厚27μm)を形成したこと以外は、実施例1同様にして、本発明の合成皮革を得た。なお、表皮の乾燥膜厚は63μmであった。
評価結果を表1に示す。
比較例1
表皮層を樹脂溶液1のみを用いて形成したこと以外は、実施例1同様にして、合成皮革を得た。なお、表皮層の乾燥膜厚は57μmであった。
以下の工程については実施例1と同様にして行い、合成皮革を得た。
評価結果を表1に示す。
比較例2
表皮層を樹脂溶液2のみを用いて形成したこと以外は、実施例1同様にして、合成皮革を得た。なお、表皮層の乾燥膜厚は61μmであった。
以下の工程については実施例1と同様にして行い、合成皮革を得た。
評価結果を表1に示す。
Figure 0004536473
離型紙を剥離する前の本発明の合成皮革における断面を表わす模式図である。
符号の説明
1 離型紙
2 表皮層
2a 滑性ポリウレタン樹脂層
2b ポリウレタン樹脂層
3 画像層
4 接着層
5 基材

Claims (3)

  1. 基材、該基材上に形成された紫外線硬化型インクによる画像層、および該画像層上に形成された表皮層からなり、
    該表皮層がポリウレタン樹脂層と滑性ポリウレタン樹脂層からなり、
    前記滑性ポリウレタン樹脂が、ケイ素を含有するポリウレタン樹脂である合成皮革。
  2. 前記紫外線硬化型インクが、着色成分、反応性オリゴマー、反応性希釈剤および光重合開始剤からなり、反応性オリゴマー単体での重合物のガラス転移点、および、反応性希釈剤単体での重合物のガラス転移点が、ともに−25〜70℃である請求項記載の合成皮革。
  3. 離型紙上に滑性ポリウレタン樹脂層を形成する工程、該滑性ポリウレタン樹脂層上にポリウレタン樹脂層を形成する工程、該ポリウレタン樹脂層上に紫外線硬化型インクによる画像層を形成する工程、該画像層と基材とを接着する工程、および、該離型紙を剥離する工程からなり、
    前記滑性ポリウレタン樹脂が、ケイ素を含有するポリウレタン樹脂である合成皮革の製造方法。
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