JP4778862B2 - 皮革様シート状物の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の皮革様シート状物は、繊維質基体上に接着層および着色層を有するものである。本発明で用いられる繊維質基体としては、繊維集合体、あるいはこの繊維集合体に高分子弾性体を含浸させた複合繊維集合体が使用でき、従来から人工皮革用として用いられているものが該当する。厚さとしては0.2〜5mm、さらには0.4〜2.5mmであることが好ましい。繊維集合体としては、不織布や織編物が挙げられ、これらを構成する繊維としては、例えばポリエステル、ポリアミドなどの合成繊維、または綿、麻、羊毛などの天然繊維、またはレーヨンなどの半合成繊維が挙げられ、また、これらの2種以上の混合であってもよい。
JIS−L0824に準ずる方法で50時間、カーボンアークの光照射を施した後の変退色を観察し、変化が無いものを5級とし、変退色が激しく元の図柄が読み取れないものを1級、元の図柄は残しているが変退色しているものを3級として判定した。
各実施例、比較例で得られたインクジェット方式で印刷された図柄を表面に有する皮革様シート状物表面と、表面がポリウレタンで形成された一般的な白色の人工皮革の表面とを、A6サイズの面積で重ね合わせ、均一に2kgの荷重を与えて70℃の雰囲気下に3日間放置した後の白色人工皮革表面への色移行を観察し、白色の人工皮革表面に移行していないものを5級とし、激しく移行して白色人工皮革のほぼ全面に着色されているものを1級、3割から5割の面積が着色されているものを3級として判定した。
ASTM D−3886法に準じ、サンドペーパーとして、HANDY ROLL P320J(NORTON社製)を使用し、摩耗部位の繊維層が露出した大きさが直径10mmに到達する回数とした。
JIS K6301法に準じ、引張速度50mm/分で100mm剥離させ、20mm毎のミニマム値5点の平均値をN/cmで表し剥離強力とした。
<繊維集合体の作成>
120℃で乾燥したナイロン−6(m−クレゾール中の極限粘度1.1)をエクストルーダーに供給し溶融した。別途160℃で乾燥したポリエチレンテレフタレート(o−クロロフェノール中の極限粘度0.64)を、前述とは別個のエクストルーダーにて溶融した。引き続き、ナイロン−6混合体溶融流は導管ポリマー温度250℃で、ポリエチレンテレフタレート溶融流は300℃で、275℃に保温されたスピンブロックへ導入し、中空形成吐出孔を格子状配列で有する矩形の紡糸口金を用いて両重合体溶融流を合流させ複合し2g/分・孔の量で吐出し、空気圧力0.35MPa(吐出量と複合繊維繊度から換算した紡速で約4860m/分)にて高速牽引した。牽引された複合繊維は、−30kVで高電圧印加処理し、空気流とともに分散板に衝突させ、開繊し、16分割の多層貼合せ型断面をもつ剥離分割型複合繊維からなるウェブとしてネットコンベアー上に幅1mで補集した。引き続き、得られたウェブを100℃に加熱された上下一対のエンボスカレンダーロールに通し熱接着を行った。得られたウェブをニードルパンチにて交絡処理を施した後、水に浸漬し、軽くマングルで絞った後シート状物打撃式揉み機にて剥離分割処理を行い目付210g/m2の極細繊維不織布を得た。次いでこの不織布を70℃の温水中で収縮させ収縮前の面積に対し60%の面積のものを得た。
得られた繊維集合の目付は350g/m2、厚さは1.0mmであり、繊度は0.15dtexであった。
上記の繊維集合体に、10重量%のポリウレタン(大日本インキ化学工業(株)製;クリスボンTF50P)−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと記す。)溶液を含浸させた後、繊維集合体表面の余分な溶液をかきとり、5%のDMFを含んだ水中に20分間浸漬してポリウレタンを凝固させ、DMFを水で十分に洗浄除去した後120℃で4分間乾燥して繊維質基体(複合構造物)を得た。
得られた繊維質基体(複合構造物)の表面は繊維とポリウレタンが混在するものであり、目付は455g/m2、厚さは1.0mmであった。
4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート274部、平均分子量1540のポリオキシエチレングリコール110部、および平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール572部をメチルエチルケトン50%、ジメチルホルムアミド50%の混合溶剤中で反応させ、エチレングリコール44部を加えて鎖伸長反応で得られた、ポリオキシエチレン鎖を11重量%含む20%ポリウレタン溶液を準備した。
離型紙離型紙(リンテック社製R53)上に、レザミンLU−2109HV(大日精化社製ポリウレタン濃度25%)100部、DMF15部、およびイソプロピルアルコール15部を混合した溶液を目付け120g/m2でコートして温度70℃で2分間、110℃で2分間乾燥して保護層(高分子弾性体層)を作成した。
<高分子多孔質層を表面に有する繊維質基材の作成>
実施例1で得られたポリウレタンと繊維からなる繊維質基体の表面に20重量%のポリウレタン(大日本インキ化学工業(株)製;クリスボンTF50P)−DMF溶液(添加剤として東レ・ダウコーニング製SH28PAを溶液100部に対し0.3部を使用)を800g/m2の目付けでコーティングした後、5%のDMFを含んだ水中に20分間浸漬してポリウレタンを凝固させDMFを水で十分に洗浄除去した後120℃で5分間乾燥して密度0.39のポリウレタン多孔質層(湿式多孔層)の形成された高分子多孔質層を有する繊維質基材を得た。得られた基材の剥離強力は31.2N/cmであり、スポーツシューズ用途を始め人工皮革の各用途での使用に耐えうる強度であった。
実施例1の繊維質基材の代わりに上記の高分子多孔質層を有する繊維質基材を用いた以外は実施例1と同様に行い、人工皮革(皮革様シート状物)−2を得た。得られた人工皮革−2は、着色層の下の接着層と繊維質基材との間にポリウレタン多孔質層が存在し、実施例1の人工皮革1よりも風合いに優れたものであった。耐光堅牢度を測定したところ、変化はなく5級の判定で良好なものであった。また、耐色移行性も無く5級の判定であり良好なものであった。剥離強力は31.3N/cmであり、その剥離箇所は不織布層とポリウレタン多孔質層の界面で、上記の高分子多孔質層を有する繊維質基材の剥離箇所と同様であった。また、耐磨耗性は1450回と良好であった。表1に物性を併せて示す。
実施例1で用いた繊維質基材の表面に、実施例1で準備したポリオキシエチレン鎖を11重量%含む20%ポリウレタン溶液を目付け120g/m2となるようにナイフコーターでコートした。次いで、120℃で乾燥後140℃の加熱ロールで加圧して面を平滑とし着色層を有するシート状物を作成した。得られたシート状物の着色層にインクジェットプリンター(PM3700C、EPSON社製)にて染料インク(IC5CL06、およびIC1BK05、EPSON社製)を使用して風景画を印刷した後、120℃で1分間熱処理を施し、人工皮革−3を得た。得られた人工皮革−3の表面は、微細で鮮明な画像が印刷されていたが、耐光堅牢度を測定したところ、部分的に色が退色変化し元の色彩とは程遠いものであり2級の判定であった。また、耐色移行性も3級の判定であり白色人工皮革表面に色が転写されていた。また、剥離強力は、18.6N/cmであった。その剥離箇所はインクジェット印刷の層が部分的にあり、剥離強力低下の原因であると考えられる。また、耐磨耗性は960回であった。表1に物性を併せて示す。
実施例2の着色を水系顔料を用いる代わりに、インクジェットプリンター(SJ−545EX、ローランド社製)にて有機溶剤系顔料インク(ECO−SOLMAX、シアン ESL3−CY、マゼンタ ESL3−MG、イエロー ESL3−YE、ライトシアン ESL3−LC、ライトマゼンタ ESL3−LM、ブラック ESL3−BK)を使用して風景画を印刷した以外は、実施例2と同様にして人工皮革―4を得た。得られた人工皮革−4は、耐光堅牢度を測定したところ、変化はなく5級の判定で良好なものであった。また、耐色移行性も無く5級の判定であり良好なものであった。剥離強力は8N/cmであり、その剥離箇所は風景が印刷された着色層と接着層の界面であり、明らかに顔料が接着の障害になっていた。また、耐磨耗性は65回であり、顔料層の剥離が原因であった。表1に物性を併せて示す。
比較例1のポリオキシエチレン鎖を含むポリウレタン溶液の代わりに、ポリオキシエチレン鎖を含まないポリウレタン溶液を用いた以外は、比較例1と同様にして表面にポリオキシエチレン鎖を含まないポリウレタン層を有するシート状物を得た。その表面にインクジェットプリンター(PM−4000PX、EPSON社製)にて水系顔料タイプのインク(PX−Pインク、シアン ICC23、マゼンタ ICM23、イエロー ICY23、ライトシアン ICLC23、ライトマゼンタ ICLM23、グレー ICGY23、フォトブラック ICBK23、マットブラック ICMB23)を使用して風景画を印刷した後、120℃で1分間熱処理を施し人工皮革−5を得た。得られた人工皮革−5は、耐光堅牢度を測定したところ、変化はなく5級の判定で良好なものであった。また、耐色移行性も無く5級の判定であり良好なものであった。剥離強力は9N/cmであり、その剥離箇所は風景が印刷された層であり、明らかに顔料が接着の障害になっていた。また、耐磨耗性は45回であり、顔料層の剥離が原因であった。表1に物性を併せて示す。
Claims (7)
- ポリオキシエチレン鎖を含有するポリウレタンを主成分とするフィルム層上に、インクジェット方式により水系顔料インクによる画像を形成し、その上に水系の高分子弾性体からなる接着層を形成した後に、繊維質基体と張り合わせることを特徴とする皮革様シート状物の製造方法。
- フィルム層主成分のポリウレタン中のポリオキシエチレン鎖の含有量が2〜20重量%である請求項1記載の皮革様シート状物の製造方法。
- 接着層がポリウレタンを主成分とするものである請求項1または2記載の皮革様シート状物の製造方法。
- 画像が解像度5ドット/mm以上の画像である請求項1〜3のいずれか1項記載の皮革様シート状物の製造方法。
- 着色層の外側にさらに高分子弾性体層を有する請求項1〜4のいずれか1項記載の皮革様シート状物の製造方法。
- 繊維質基体と接着層の間に、高分子多孔質層が存在する請求項1〜5のいずれか1項記載の皮革様シート状物の製造方法。
- 繊維質基体が極細繊維を含むものである請求項1〜6のいずれか1項記載の皮革様シート状物の製造方法。
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