JP4778864B2 - 銀付調皮革様シート状物の製造方法 - Google Patents

銀付調皮革様シート状物の製造方法 Download PDF

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本発明は、微細な画像を表面に有する皮革様シート状物に関し、さらに詳しくは画像が鮮明でありながら物性に優れた皮革様シート状物の製造方法に関する。
従来、皮革様シート状物は多岐に渡る用途に使用され、中でも表面に高分子弾性体層を有するいわゆる銀付調人工皮革はその外観表現に工夫がなされてきた。その外観表現方法としては、シート状物表面にグラビア印刷、ローラー印刷などの従来から知られている印刷技術で着色図柄を施す方法、あるいは転写による着色図柄を施す方法、あるいは捺染などによる着色図柄を施す方法が採用されている。これらの図柄はグラビアロール、彫刻ロール、捺染用スクリーンなどの図柄によりシート状物表面に表現されるものであるが、これらの色合い、図柄を変更するにはロールへの図柄の彫刻、さらには調色を繰り返す必要がある。また、これらの従来方法では、一回の工程で一色のみ着色するという制約など、その図柄の表現範囲、色合いには限度があり、数多くの繊細な図柄をシート状物表面に施すには多大な費用と時間を費やさなければならなかった。
一方、近年になり印刷分野ではインクジェットプリンターによりコンピューター上で描いた情報図柄を多色かつ短時間で印刷することができ普及してきている。そしてこのインクジェット方式の印刷は先に述べた従来方式のグラビア印刷、ローラー印刷、転写、あるいは捺染と異なり、短時間で多様な色彩で多様な図柄を鮮明に印刷することができる点に特徴がある。しかし紙に対する印刷と異なり、皮革様シート状物に印刷するのは容易ではなく、各種試みがなされているのが現状である。
例えば、特許文献1には、天然皮革などの皮革類の表面に水性下塗り剤層を形成し、その上にさらにアルミナ水和物を含有する微多孔質インク受容層を設け、該微多孔インク受容層上にインクジェット方式によって描画した皮革製品が記載されている。しかしながら、この皮革製品における多孔とはアルミナ水和物に依存するnmオーダーの多孔であり、微多孔質インク受容層のインク受容性(染着性)が十分でないため、この方法を人工皮革表面に適用しても、鮮明な図柄が形成されにくく、しかも図柄の色調も深みのないものとなり易いものであった。さらに、この方法では微多孔質インク受容層を構成するアルミナ水和物が摩擦により脱落し易く、耐摩耗性の点でスポーツシューズなどに加工される人工皮革に適用するだけの実用性を持たないものであった。
また、染料系のインクではなく顔料からなるインクを着色剤として使用することも試みられているが、単に顔料インクを使用して皮革類の表面に図柄を施した場合、図柄が施されている層と隣接する層との接着が、接着性を阻害する顔料粒子のために極めて弱くなるという問題があった。特に皮革様シート状物として靴や鞄などに加工成型する場合には、屈曲を受けた部分が剥離する、あるいは屈曲を受けた部分の画像が脱落するなどの問題が発生するなどの問題があった。すなわち、未だ微細な画像を表面に有するとともに、実用に耐えうる皮革様シート状物は得られていないのが現状であった。
特開平9−59700号公報
本発明は、インクジェット方式等によって描かれる微細な画像を表面に有し、かつ実用上十分な物性を有する皮革様シート状物を提供することにある。
発明の銀付調皮革様シート状物の製造方法は、繊維質基体上に多孔層を有する銀付調皮革様シート状物の製造方法であって、多孔層の表面に溶剤を塗布する方法により繊維質基体上の多孔層を開孔させ、その表面にインクジェット法により顔料インクからなる画像を形成することを特徴とする。
さらには、多孔層が高分子弾性体溶液を湿式凝固させて得たものであることが好ましい
本発明によれば、インクジェット方式等によって描かれる微細な図柄を表面に有し、かつ実用上十分な物性を有する皮革様シート状物が提供される。
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の皮革様シート状物は、繊維質基体上に多孔質層を有するものである。本発明で用いられる繊維質基体としては、繊維集合体、あるいはこの繊維集合体に高分子弾性体を含浸させた複合繊維集合体が使用でき、従来から人工皮革用として用いられているものが該当する。厚さとしては0.2〜5mm、さらには0.4〜2.5mmであることが好ましい。繊維集合体としては、不織布や織編物が挙げられ、これらを構成する繊維としては、例えばポリエステル、ポリアミドなどの合成繊維、または綿、麻、羊毛などの天然繊維、またはレーヨンなどの半合成繊維が挙げられ、また、これらの2種以上の混合であってもよい。
繊維質基体としては極細繊維を含むものであることが好ましい。このような繊維質基体は、繊維集合体として単繊維繊度が0.3デシテックス以下、さらには0.1〜0.0001デシテックスの繊維が交絡された不織布を用いたものである。単繊維繊度が細くなることにより、得られる繊維質基体表面が平滑となり、インクジェット法等で描かれる微細な図柄がより引き立たせることが可能となる。このような単繊維繊度の繊維は、従来から知られている方法によって製造することができ、例えば、合成繊維製造における海島紡糸法、混合紡糸法、分割型複合紡糸法などを挙げることができる。これらの繊維は比較的太い極細化前の親繊維を短繊維となした後、従来から知られているカード機等による開繊、ニードル機等による交絡により不織布とし、後に極細化することによって極細繊維から成る不織布となる。極細化の方法としては、海島紡糸法および混合紡糸法で得られた親繊維から極細繊維となる以外の成分を抽出または分解除去する方法や、分割型複合紡糸法により得られた親繊維を機械的、または化学的に分割する方法を採用することができる。抽出または分解除去されるポリマー成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、あるいはこれらの共重合体が代表例として挙げられ、極細繊維となるポリマー成分としてはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルや、ナイロン6、ナイロン6,6などのポリアミドなどを挙げることができる。また効率的に生産する場合には、分割型複合紡糸を紡糸し直接ウェブ化した後、ニードル機等で交絡し、機械的分割処理するなどして極細不織布とすることが好ましい。
繊維質基体として用いられる繊維集合体と高分子弾性体からなる複合繊維集合体としては、上記の繊維集合体に高分子弾性体を含浸、凝固、乾燥させたものなどである。高分子弾性体としては、例えばポリウレタン、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、あるいはポリブタジエン、ポリイソプレンなどの合成ゴムなどを挙げることができる。この中では、耐摩耗性、弾性回復性、柔軟性等の面からポリウレタンが好ましく用いられる。これらの高分子弾性体は有機溶剤で溶解、あるいは分散された溶液、あるいは分散液として含浸に供される。好ましくは、これらの高分子は地球環境保護、および作業環境保護のためにも水溶液、あるいは水分散として含浸に供されることが好ましい。
本発明はこの繊維質基体上に多孔層を有し、該多孔層の表面に直径1μm以上の開孔部を有していることを必須とする。本発明の多孔層における多孔とは、連通孔でも独立孔であってもかまわないが、皮革様シート状物の風合いとしては連通したものであることが好ましい。特には多孔層の開孔部が繊維質基材から連通したものであることが好ましく、通気性、透湿性に優れた皮革様シート状物となる。
また多孔層としては、高分子弾性体からなる層であることが好ましい。多孔層の厚みとしては0.05mm〜1.5mmの範囲であることが好ましい。厚みが0.05mm以下であると繊維質層の凹凸が隠蔽しきれず表面の平滑性が得られにくく好ましくない。また、該層の厚みが1.5mm以上となると皮革様シート状物としての風合いがゴム状となり好ましくない。密度としては0.2〜0.7g/cm、さらには0.3〜0.5g/cmの範囲であることが好ましく、風合いが向上する。この層を形成する高分子弾性体としては先の複合繊維集合体に用いたものを挙げることができるが、特にはポリウレタンを主成分とするものであることが好ましい。
多孔質に用いることができるポリウレタンとしては、人工皮革用として使用されるものが適当であり、有機ジイソシアネート、高分子ジオールおよび鎖伸長剤の重合反応で得られる従来公知の熱可塑性ポリウレタンを挙げることができる。有機ジイソシアネートとしては分子中にイソシアネート基を2個含有する脂肪族、脂環族または芳香族ジイソシアネート、特に4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、P−フェニレンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。高分子ジオールとしては例えばグリコールと脂肪族ジカルボン酸の縮合重合で得られたポリエステルグリコール、ラクトンの開環重合で得られたポリラクトングリコール、脂肪族または芳香族ポリカーボネートグリコール、あるいはポリエーテルグリコールの少なくとも1種から選ばれた平均分子量が500〜4000のポリマーグリコールなどが挙げられる。そして鎖伸長剤としてはイソシアネートと反応しうる水素原子を2個含有する分子量500以下のジオール、例えばエチレングリコール、1,4ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、キシリレングリコール、シクロヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
このような高分子弾性体を用いて多孔質層を得る方法としては、従来から知られている方法が採用できる。例えば、ポリウレタンの良溶剤でありかつ水と相溶性の有機溶剤にポリウレタンを溶解させ、このポリウレタン溶液を任意の厚みで支持体上にコーティングし、水浴中に浸漬して多孔凝固させるいわゆる湿式凝固法、またはポリウレタンを水と相溶性はないがポリウレタンを溶解あるいは分散できる有機溶剤に溶解、あるいは分散させた溶液、あるいは分散液を任意の厚みで支持体上にコーティングし、水の蒸発を妨げながら有機溶剤を選択的に蒸発させる乾式多孔成形法、またはポリウレタンの水溶液、あるいは水分散液中に熱膨張性微粒子カプセルを分散させ任意の厚みで支持体上にコーティングし、乾燥しながら熱膨張性カプセルを膨張させる方法、またはポリウレタンの分子末端にアルコール性水素を有するプレポリマーとポリイソシアネート、および水を混合し、直後に任意の厚みで支持体上にコーティングする方法、または溶融ポリウレタン中に不活性ガスを分散させて任意の厚みで支持体上にコーティング、発泡させる方法、または、ケミカル発泡剤を混合したポリウレタン溶液あるいは分散液を任意の厚みで支持体上にコーティングする方法などが挙げられる。中でも、本発明の多孔質を得るためには、湿式凝固法が孔の形状を制御し易く、繊維質基材からの連通孔が得られやすいので特に好ましい。
高分子重合体からなる多孔質層は、前述の繊維質基体上に直接、コーティング法などにより形成することができる。
さて本発明では、この多孔層の表面に直径1μm以上の孔が開孔していることが重要である。本発明ではその表面に微細な画像を形成されるが、画像を構成するインクがそのシート状物表面に存在する孔内に入ることにより、単にフラットな表面にインクが塗布された場合と異なり、表面が磨耗されてもインクの脱落が防止されているのであると考えられる。また、フラットな表面に付着したインクは皮革様シート状物の屈曲などにより剥離脱落がおきやすいが、本発明の皮革様シート状物はインクのそのような剥離脱着が起こりにくいものである。
開孔部の直径は1μm以上であることが必須であり、3〜150μmが好ましく、さらには10〜80μmであることが最も効果的である。孔径が1μmに満たない場合には、インク粒子が有効に孔内に入り込まないため、本発明の目的とする耐摩耗性、あるいは剥離強力を得ることができない。特に染色堅牢度等に優れた顔料インクを用いた場合、インク粒子径が大きいためにより顕著である。また、開孔部の直径が大きすぎるとインク粒子が孔の内部に奥深く入り込むため、画像の微細さが阻害され、得られる皮革様シート状物表面の画像の解像度が低下する傾向にある。したがって開孔部の平均直径としては1〜100μmの範囲であることが好ましく、さらには5〜70μmの範囲であることが好ましい。
またこの表面に存在する多孔の形態は最終的な皮革様シート状物の表面状態とも関連しており、表面が平滑な銀面(高分子弾性体層)を有する銀付調の皮革様シート状物(人工皮革)とする場合には開孔部が少なく、例えば銀面における開孔部の個数は1cm当り100〜5000個の範囲であることが、さらには500〜3000個の範囲であることが好ましく、開孔部の平均直径としては5〜70μmの範囲であることが、特に好ましくは10〜30μmの範囲であることが好ましく、解像度のきわめて高い画像を形成できる。また表面の投影面積に対する開孔部の合計面積は1%以下であることが好ましい。
逆にヌバック的な表面、すなわち高分子弾性体の多孔開孔部があたかも天然皮革の立毛(ヌバック)であるかのような表面を有するヌバック調の皮革様シート状物(人工皮革)とする場合には、その表面のほとんどが開孔部であることが好ましい。このようなヌバック的な凹凸の多い表面を有する場合であっても、インクジェットなどように一方向から放出されるインクを用いた場合、微細な図柄をそのシート状物表面に形成でき、表面凹凸の影響は画像の解像度をあまり低下させず、逆に磨耗堅牢度等の耐久性が向上される効果がある。
本発明の皮革様シート状物は、上記のような繊維質基体上に開孔部を有する多孔層を有し、その表面に解像度5ドット/mm以上の画像を有するものであるが、さらには10ドット/mm〜100ドット/mmの解像度の画像を有するものであることが好ましい。このような細かい解像度の画像を印刷するためには360ドット/inchや720ドット/inchのインクジェットプリンターを用いることにより行うことができる。また画像は顔料系のインクによるものであることが好ましい。顔料タイプのインクを用いた場合には、染料タイプのインクより粒子が大きいので耐光性や色移行に優れるものとなる。また、従来のように皮革様シート状物の平滑な表面ではなく、開孔部を有する表面に画像が形成されているために、接着強度等の物性にも優れたものとなる。顔料としては水系、溶剤系、あるいはUV硬化系のいずれのタイプを用いることもでき、その他の表面処理との関係により適切なものを選択することができるが、耐磨耗性の点ではUV硬化系の顔料インクを用いることが好ましい。
また、本発明では画像を有する表面のさらに外側に、その他の高分子弾性体層を有することも好ましい。このような高分子弾性体層は、透明、あるいは半透明の保護層となり、皮革様シート状物の物性や風合い、たとえば表面耐摩耗性等をさらに向上させることができる。本発明の皮革様シート状物では、表面に開孔部が存在し凹凸を有し、さらにその平滑面にインクがあまり付着していないため、画像が存在するにもかかわらず強い皮膜が形成される。また保護膜層となる高分子弾性体層と多孔質層との層間接着力も十分に得ることができるのである。
この保護層として用いられる高分子弾性体としては、例えばポリウレタン、ポリエステル、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、あるいはポリ塩化ビニリデンなどが挙げられる。
このような高分子弾性体層は、画像を有するシート状物の表面に直接、高分子弾性体の有機溶剤溶液、有機溶剤分散液、水溶液、あるいは水分散液をコーティングし次いで乾燥させる方法などで得ることができ、コーティングの方法としては、ナイフコーティング、ロールコーティング、スプレー、あるいはグラビアコーティング等を採用することができる。また離型紙上に高分子弾性体層をいったん形成させて、画像を有するシート状物と接着させても良く、接着剤としては、従来から知られている接着剤が使用でき、その中でもポリウレタン系接着剤(ポリイソシアネート系接着剤)が好ましく、有機溶剤系、あるいは水系のどちらも使用できる。
もう一つの本発明の皮革様シート状物の製造方法は、繊維質基体上の多孔層を開孔させ、その表面にインクジェット法により画像を形成する方法である。繊維質基体や多孔層としては先に述べたものが使用できる。また多孔層は高分子弾性体からなるものであることが好ましい。
このような多孔質層を得る方法としては、従来から知られている方法が採用できるが、多孔層が高分子弾性体溶液を湿式凝固させて得たものであることが好ましい。特には、ポリウレタンの良溶剤でありかつ水と相溶性の有機溶剤にポリウレタンを溶解させ、このポリウレタン溶液を任意の厚みで支持体上にコーティングし、水浴中に浸漬して多孔凝固させる、いわゆる湿式凝固法を採用することが、孔の形状を制御し易く、繊維質基材からの連通孔が得られやすいので特に好ましい。これらの多孔層は、繊維質人工皮革基体上に直接、コーティングなどにより形成することができ、または剥離性支持体上で作成された多孔質膜を多孔層として繊維質基材に接着剤により貼り合わせても良い。
また画像を形成する前に繊維質基体上の多孔層を開孔させる方法としては、たとえば多孔層表面に溶剤を塗布する方法や、機械的に多孔層表面を研削する方法を採用することが好ましい。
多孔層を開孔させるために溶剤を塗布する方法とは、より具体的には繊維質基材上に形成された多孔質膜表面を多孔質を構成する成分の良溶剤、貧溶剤、良溶剤と貧溶剤の混合溶剤、または良溶剤と非溶剤の混合溶剤のいずれかをグラビアメッシュロールで塗布して、開放孔を形成させる方法である。たとえば多孔質を構成する成分がポリウレタンであった場合、多孔質ポリウレタン層の表面に開放孔を出現させるためには、多孔質ポリウレタン層の表面に、ポリウレタンの、良溶剤、貧溶剤、良溶剤と貧溶剤の混合溶剤、または良溶剤と非溶剤の混合溶剤のいずれかを、グラビアメッシュロールで塗布することにより得られる。
ここで、良溶剤とは、実際に使用する成分であるたとえばポリウレタンを溶解し得る良溶剤を意味し、例えば芳香族系の有機ジイソシアネートから合成されたポリウレタンであればジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの極性溶剤が挙げられる。また貧溶剤とは、同じく実際に使用する成分を溶解はしないが膨潤はさせ得る溶剤であり、例えばポリウレタンであればメチルエチルケトンなどのケトン類、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、トルエンなどの芳香族系溶剤が挙げられる。さらに非溶剤とは、同じく実際に使用される成分を溶解、膨潤をさせないものであり、例えばポリウレタンであれば水などが代表的である。これらの溶剤を選択することにより、実際に使用される多孔質を構成する成分に対する溶解性を調整することができ、適度な開放孔を発現させることができる。この場合、溶解性が強すぎる溶剤を使用すると、一旦は開放孔が発現するが、その強すぎる溶解性のため溶剤の蒸発乾燥の過程で再び開放孔が閉ざされてしまう。一方、逆に溶解性が弱すぎる溶剤を使用すると、開放孔は発現しない。
この溶剤を塗布する方法を採用する場合、適正に選択された溶剤を、グラビアメッシュロールで多孔層の表面に塗布する。この場合、グラビアメッシュロールのメッシュの大きさが、形成される開放孔の径の大きさに大きく影響を及ぼす。すなわち、メッシュの細かいロールを用いれば相対的に小さい径の開放孔が得られるし、メッシュの粗いロールを用いれば相対的に大きい径の開放孔が得られる。また、塗布圧も、形成される開放孔の径の大きさに影響を及ぼす。すなわち、塗布圧が大きければ、得られる開放孔は径が大きく、塗布圧が小さければ、得られる開放孔は径が小さいものとなる。以上のように、適正な溶剤の選択、グラビアメッシュロールの選択、塗布圧の適正化により、多孔層の表面に直径1μm以上の開口部を発現させることができ、開孔部の平均直径としては1〜100μmの範囲であることが好ましく、さらには5〜70μm、特に好ましくは10〜30μmの範囲であることが好ましい。この方法によれば、表面が平滑な銀面(高分子弾性体層)を有する銀付調の皮革様シート状物(人工皮革)とすることができ、開孔部は均一になりやすくばらつきを抑えることができる。また開孔部が少なく解像度のきわめて高い画像を形成しやすい。好ましい銀面の開孔部の個数としては1cm当り100〜3000個の範囲であることが、また表面の投影面積に対する開孔部の合計面積は1%以下であることが好ましい。
また別の、多孔層を開孔させるために機械的に研削する方法とは、より具体的には繊維質基材上に形成された多孔層の表面をサンドペーパーなどで研削するか、スライサーなどで表面を切り落とし、多孔質表面の充実した皮膜部分を取り去ることによって孔を露出させ、開孔させる方法である。
この方法によれば、ヌバック的な表面、すなわち高分子弾性体の多孔開孔部があたかも天然皮革の立毛(ヌバック)であるかのような表面である皮革様シート状物を得ることができる。この場合、その皮革様シート状物表面のほとんどが開孔部となる。このようなヌバック的な凹凸の多い表面を有する場合であっても、インクジェット法で画像を形成する場合には一方向から放出されインクを用いるため、微細な図柄をその表面に形成でき、表面凹凸の影響は画像の解像度をあまり低下させず、逆に磨耗堅牢度等の耐久性が向上されるのである。
本発明の製造方法は、このようにして開孔した繊維質基体上の多孔層の表面に、インクジェット法により画像を形成する方法である。インク着色剤としては、耐光性、および色移行を避けるため顔料から構成されるものがより好ましい。顔料タイプのインクを用いた場合には、染料タイプのインクより粒子が大きいので耐光性や色移行に優れるものとなる。また、従来のように皮革様シート状物の平滑な表面ではなく、開孔部を有する表面に画像が形成されているために接着強度等の物性にも優れたものとなる。
また顔料インクの分散媒としては、有機溶剤タイプと水系タイプ、あるいはUV硬化タイプのいずれでも構わず、その他の表面処理との関係により適切なものを選択することができるが、耐磨耗性の点ではUV硬化系の顔料インクを用いることが最も好ましい。図柄は任意に選択することができ、文字、写真、デザイン画等が、通常用いられているインクジェットプリンターによって印刷することができる。インクジェットプリンターは、コンピューターの画像展開ユニットから送られるデーターに基づいて表面の開孔された多孔質層表面に図柄を印刷する。印刷される画像の解像度としては5ドット/mm以上であることが好ましく、さらには10ドット/mm〜100ドット/mmの解像度の画像であることが好ましい。このような細かい解像度の画像を印刷するためには360ドット/inchや720ドット/inchのインクジェットプリンターを用いることにより行うことができる。この印刷された皮革様シート状物は、このまま製品となりうるが、インクジェットプリンターにより画像を形成した後、80℃〜150℃で約20〜60秒間熱処理することが好ましい。
また、本発明では画像を有する表面のさらに外側に、その他の高分子弾性体を付与することも好ましい。このように付与し形成された高分子弾性体層は、透明、あるいは半透明の保護層となり、皮革様シート状物の物性や風合い、たとえば表面耐摩耗性等をさらに向上させることができる。本発明の製造方法で得られる皮革様シート状物では、表面に開孔部が存在し凹凸を有し、さらにその平滑面にインクがあまり付着していないため、画像が存在するにもかかわらず強い皮膜が形成される。また保護膜層となる高分子弾性体層と多孔質層との層間接着力も十分に得ることができる。
このようにして得られた本発明の皮革様シート状物は、微細な図柄を有したものであり、しかもこれらの図柄を有する皮革様シート状物は、耐摩耗性および人工皮革等の各種用途に耐えうる剥離強力等の物性を有したものである。本発明の皮革様シート状物に付与される画像は、インクジェットプリンターに接続されているコンピューター等で、デザイン、模様、写真などの図柄を自在にかつ容易に皮革様シート状物表面の意匠として表現できるため、従来から皮革様シート状物の使用されているスポーツシューズ、一般靴、各種競技用ボール、装丁用途、衣料、および家具・車両用途においても、個性を強調した「自分だけの図柄」を生かせるものとなる。
以下、具体的に実施例によって本発明を詳細に説明する。なお、実施例中「部」および「%」とあるのは、いずれも重量基準であり、特性測定値は下記の方法で得られたものである。また、以下の例において耐光堅牢度、耐色移行性、耐磨耗性および剥離強力は次ような方法で測定した。
(耐光堅牢度)
JIS−L0824に準ずる方法で50時間、カーボンアークの光照射を施した後の変退色を観察し、変化が無いものを5級とし、変退色が激しく元の図柄が読み取れないものを1級、元の図柄は残しているが変退色しているものを3級として判定した。
(耐色移行性)
各実施例、比較例で得られたインクジェット方式で印刷された図柄を表面に有する皮革様シート状物表面と、表面がポリウレタンで形成された一般的な白色の人工皮革の表面とを、A6サイズの面積で重ね合わせ、均一に2kgの荷重を与えて70℃の雰囲気下に3日間放置した後の白色人工皮革表面への色移行を観察し、白色の人工皮革表面に移行していないものを5級とし、激しく移行して白色人工皮革のほぼ全面に着色されているものを1級、3割から5割の面積が着色されているものを3級として判定した。
(耐磨耗性)
ASTM D−3886法に準じ、サンドペーパーとして、HANDY ROLL P320J(NORTON社製)を使用し、摩耗部位の繊維層が露出した大きさが直径10mmに到達する回数とした。
(剥離強力)
JIS K6301法に準じ、引張速度50mm/分で100mm剥離させ、20mm毎のミニマム値5点の平均値をN/cmで表し剥離強力とした。
[実施例1]
<繊維集合体−1の作成>
120℃で乾燥したナイロン−6(m−クレゾール中の極限粘度1.1)をエクストルーダーに供給し溶融した。別途160℃で乾燥したポリエチレンテレフタレート(o−クロロフェノール中の極限粘度0.64)を、前述とは別個のエクストルーダーにて溶融した。引き続き、ナイロン−6混合体溶融流は導管ポリマー温度250℃で、ポリエチレンテレフタレート溶融流は300℃で、275℃に保温されたスピンブロックへ導入し、中空形成吐出孔を格子状配列で有する矩形の紡糸口金を用いて両重合体溶融流を合流させ複合し2g/分・孔の量で吐出し、空気圧力0.35MPa(吐出量と複合繊維繊度から換算した紡速で約4860m/分)にて高速牽引した。牽引された複合繊維は、−30kVで高電圧印加処理し、空気流とともに分散板に衝突させ、開繊し、16分割の多層貼合せ型断面をもつ剥離分割型複合繊維からなるウェブとしてネットコンベアー上に幅1mで補集した。引き続き、得られたウェブを100℃に加熱された上下一対のエンボスカレンダーロールに通し熱接着を行った。得られたウェブをニードルパンチにて交絡処理を施した後、水に浸漬し、軽くマングルで絞った後シート状物打撃式揉み機にて剥離分割処理を行い目付210g/mの極細繊維不織布を得た。次いでこの不織布を70℃の温水中で収縮させ収縮前の面積に対し60%の面積のものを得た。
得られた繊維集合体−1の目付は350g/m、厚さは1.0mmであり、繊度は0.15dtexであった。
<高分子多孔質層を表面に有する繊維質基体(複合構造物)−1の作成>
上記の繊維集合体−1に、10重量%のポリウレタン(大日本インキ化学工業(株)製;クリスボンTF50P)−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと記す。)溶液を含浸させた後、繊維集合体表面の余分な溶液をかきとり、5%のDMFを含んだ水中に20分間浸漬してポリウレタンを凝固させ、DMFを水で十分に洗浄除去した後120℃で4分間乾燥して繊維質基体(複合構造物)を得た。
得られた多孔質層を有さない繊維質基体(複合構造物)の表面は繊維とポリウレタンが混在するものであり、目付は455g/m、厚さは1.0mmであった。
この多孔質層を有さない繊維質基体の表面に20重量%のポリウレタン(大日本インキ化学工業(株)製;クリスボンTF50P)−DMF溶液(添加剤として東レ・ダウコーニング製SH28PAを溶液100部に対し0.3部を使用)を800g/mの目付けでコーティングした後、5%のDMFを含んだ水中に20分間浸漬してポリウレタンを凝固させDMFを水で十分に洗浄除去した後120℃で5分間乾燥して密度0.39のポリウレタン多孔質層(湿式多孔層)の形成された高分子多孔質層を有する繊維質基体−1を得た。得られた基体の剥離強力は31.2N/cmであり、スポーツシューズ用途を始め人工皮革の各用途での使用に耐えうる強度であった。
<表面に開孔部を有するシート状物−1の作成>
上記のポリウレタン多孔質層を有する繊維質基体−1の表面に、メチルエチルケトン40%、ジメチルホルムアミド60%の混合液をグラビア塗布機(110メッシュのロール使用)で4kg/cmの圧力で塗布して乾燥し、孔を開孔させた。得られたシート状物−1の表面を走査電子顕微鏡で観察したところ、平均30μmの開放孔が1平方センチメートル当たり2050個形成されていた。なお、この解放孔の最大径は55μmであった。
<人工皮革(皮革様シート状物)−1の作成>
上記のシート状物−1の表面にインクジェットプリンター(ローランド社製、SJ−545EX)にて有機溶剤系顔料インク(ECO−SOLMAX)を使用して720DPI(ドット/インチ)の解像度の風景画を印刷した後、120℃で1分間熱処理を施し、人工皮革(皮革様シート状物)−1を得た。なお、使用したインクは、シアン ESL3−CY、マゼンタ ESL3−MG、イエロー ESL3−YE、ライトシアン ESL3−LC、ライトマゼンタ ESL3−LM、ブラック ESL3−BKである。得られた人工皮革−1の表面は、微細で鮮明な画像が印刷されていた。なお、耐光堅牢性を測定したところ、変化はなく5級の判定で良好なものであった。また、耐色移行性も無く5級の判定であり良好なものであった。剥離強力は30.7N/cmであり、その剥離箇所はインクジェット印刷前の剥離強力測定時の不織布層とポリウレタン多孔質層の界面であった。また、耐磨耗性は370回であった。表1のその物性を示す。
参考例1
<表面に開孔部を有するシート状物−2の作成>
実施例1で得られた繊維質基体(複合構造物)−1の未開孔ポリウレタン多孔質層の表面を200メッシュのサンドペーパーを装着させたバッフィングマシーンを使用して、表面の開孔した径が平均で50μmとなるようにサンドペーパー装着ロールの回転数とロール間の間隙を調整して表面を研削した。得られた開孔部は無数存在し、開孔径は最大が110μm、平均で55μmであった。
<人工皮革(皮革様シート状物)−2の作成>
上記のシート状物−2の表面にインクジェットプリンター(ローランド社製、SJ−545EX)にて有機溶剤系顔料インク(ECO−SOLMAX)を使用して720DPI(ドット/インチ)の解像度の風景画を印刷した後、120℃で1分間熱処理を施し、人工皮革(皮革様シート状物)−2を得た。なお、使用したインクは、シアン ESL3−CY、マゼンタ ESL3−MG、イエロー ESL3−YE、ライトシアン ESL3−LC、ライトマゼンタ ESL3−LM、ブラック ESL3−BKである。得られた人工皮革−2の表面は、微細で鮮明な画像が印刷されていた。なお、耐光堅牢性を測定したところ、変化はなく5級の判定で良好なものであった。また、耐色移行性も無く5級の判定であり良好なものであった。剥離強力は31.2N/cmであり、その剥離箇所はインクジェット印刷前の剥離強力測定時の不織布層とポリウレタン多孔質層の界面であった。また、耐磨耗性は320回であった。表1に物性を併せて示す。
[実施例2、参考例2
<人工皮革(皮革様シート状物)−3、4の作成>
離型紙(リンテック社製R53)上に、ポリウレタン樹脂の33%水分散液100部に増粘剤を混合し、攪拌して粘度を8000CPSに調整した調合液を目付け90g/mでコートし、温度70℃で2分間、110℃で2分間乾燥して高分子弾性体の膜を形成した。さらにその表面に、水分散型ポリウレタン系接着剤100部に増粘剤を混合して粘度を5000CPSに調整した調合液を目付け80g/mでコートした。次いで、温度90℃で2分乾燥後、その離型紙状の高分子弾性体と、実施例1で得られた人工皮革(皮革様シート状物)−1とを重ね合わせ、温度110℃の加熱シリンダー表面上で0.6mmの間隙のロールに通過させ圧着した。その後、温度60℃の雰囲気下で2日間放置した後、離型紙を剥ぎ取り人工皮革(皮革様シート状物)−3を得た。
また、実施例1で得られた人工皮革−1を用いる代わりに、参考例1で得られた人工皮革−2を用いた以外は上記と同様にして、人工皮革(皮革様シート状物)−4を得た。
得られた人工皮革−3、4は、ともに耐光堅牢性、耐色移行性が良好なものであった。剥離強力も高く、その剥離箇所はインクジェット印刷前の剥離強力測定時の不織布層内であった。また、耐磨耗性も良好であった。表1に物性を併せて示す。
参考例3
<人工皮革(皮革様シート状物)−5の作成>
参考例1で得られた表面に開孔部を有するシート状物−2の表面に、有機溶剤系顔料インクを用いる代わりに、インクジェットプリンター(EPSON社製、PM−4000PX)にて水系顔料インク(PX−Pインク)を使用して720DPI(ドット/インチ)の解像度の風景画を印刷した後、120℃で1分間熱処理を施した以外は参考例1と同様にして、人工皮革(皮革様シート状物)−5を得た。なお、使用したインクは、シアン ICC23、マゼンタ ICM23、イエロー ICY23、ライトシアン ICLC23、ライトマゼンタ ICLM23、グレー ICGY23、フォトブラック ICBK23、およびマットブラック ICMB23である。得られた人工皮革−5の表面は、微細で鮮明な画像が印刷されていた。なお、耐光堅牢性を測定したところ、変化はなく5級の判定で良好なものであった。また、耐色移行性も無く5級の判定であり良好なものであった。剥離強力は30.8N/cmであり、その剥離箇所はインクジェット印刷前の剥離強力測定時の不織布層とポリウレタン多孔質層の界面であった。また、耐磨耗性は330回であった。表1に物性を併せて示す。
参考例4
<人工皮革(皮革様シート状物)−6の作成>
参考例1で得られた表面に開孔部を有するシート状物−2の表面に、有機溶剤系顔料インクを用いる代わりに、インクジェットプリンター(ラスタープリンター社製、RP−720UVZ)にてUV硬化顔料タイプのインク(シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、およびブラック)を使用して720DPI(ドット/インチ)の解像度の風景画を印刷した以外は参考例1と同様にして、人工皮革(皮革様シート状物)−6を得た。得られた人工皮革−6の表面は、微細で鮮明な画像が印刷されていた。なお、耐光堅牢性を測定したところ、変化はなく5級の判定で良好なものであった。また、耐色移行性も無く5級の判定であり良好なものであった。剥離強力は29.7N/cmであり、その剥離箇所はインクジェット印刷前の剥離強力測定時の不織布層とポリウレタン多孔質層の界面であった。また、耐磨耗性は590回であった。表1に物性を併せて示す。
[比較例1]
実施例1の表面に開孔部を有するシート状物を印刷に用いる代わりに、実施例1の途中で得られた、表面に開孔していない多孔層を有する繊維質基体(複合構造物)−1を用いる以外は、実施例1と同様にしてインクジェットプリンター(ローランド社製、SJ−545EX)にて有機溶剤系顔料インク(ECO−SOLMAX)を使用して720DPI(ドット/インチ)の解像度の風景画を印刷し、人工皮革を得た。得られた人工皮革の表面は、微細で鮮明な画像が印刷されていた。なお、耐光堅牢性を測定したところ、変化はなく5級の判定で良好なものであった。また、耐色移行性も無く5級の判定であり良好なものであった。しかしながら、剥離強力は5.2N/cmと低く、その剥離箇所はインクジェット印刷の顔料層であり、人工皮革として各用途の使用に耐えられる物ではなかった。また、耐磨耗性は10回であり、顔料層の剥離が原因であった。表1に物性を併せて示す。
Figure 0004778864
[実施例
<繊維集合体−2の作成>
ナイロン6と低密度ポリエチレンを50/50で混合、エクストルダーで溶融、混合し290℃で混合紡糸し、延伸、油剤を処理しカットし5.5dtex、51mmの繊維を得た。これをカード、クロスラッパー、ニードルロッカー、カレンダーの工程を通し、重さ400g/m、厚さ1.6mm、見掛け密度0.25g/cmの繊維集合体−2を得た。
<高分子多孔質層を表面に有する繊維質基体(複合構造物)−2の作成>
上記の繊維集合体−2を10重量%のポリウレタン(大日本インキ化学工業(株)製;クリスボンTF50P)−DMF溶液を浸漬させた後、繊維集合体表面の余分な溶液をかきとり、基材厚さの90%でスクイズした後、基材の圧縮が回復する前に20重量%のポリウレタン(大日本インキ化学工業(株)製;クリスボンTF50P)−DMF溶液(添加剤として東レ・ダウコーニング製SH28PAを溶液100部に対し0.3部を使用)を800g/mの目付けでコーティングし、次いで5%のDMFを含んだ水中に浸漬してポリウレタンを凝固させDMFを水で十分に洗浄除去した後120℃で乾燥してポリウレタン多孔質層の形成されたシートを得た。得られたシートを90℃の熱トルエン中で圧縮、緩和を繰り返し、繊維中のポリエチレン成分を抽出除去し、0.003dtexの極細繊維を繊維質基材とするポリウレタン多孔質層の形成された、高分子多孔質層を表面に有する繊維質基体(複合構造物)−2を作成した。得られた繊維質基体−2の剥離強力は35.7N/cmであり、スポーツシューズ用途を始め人工皮革の各用途での使用に耐えうる強度であった。
<表面に開孔部を有するシート状物−3の作成>
上記のポリウレタン多孔質層を有する繊維質基体−2の表面に、グラビアロールを用いて、ジメチルホルムアミド:メチルエチルケトン=7:3の混合液をグラビア塗布機(150メッシュのロール使用)で4kg/cm の圧力で塗布して乾燥し、孔を開孔させた。得られたシート状物−3の表面を走査電子顕微鏡で観察したところ、平均値15μmの開放孔が1800個/cm形成されていた。なお、この開放孔の最大径は40μmであった。
<人工皮革(皮革様シート状物)−7の作成>
実施例1の表面に開孔部を有するシート状物−1を印刷に用いる代わりに、上記のシート状物−3を用いる以外は、実施例1と同様にしてインクジェットプリンター(ローランド社製、SJ−545EX)にて有機溶剤系顔料インク(ECO−SOLMAX)を使用して720DPI(ドット/インチ)の解像度の風景画を印刷し、人工皮革(皮革様シート状物)−7を得た。得られた人工皮革−7の表面は、微細で鮮明な画像が印刷されていた。なお、耐光堅牢性を測定したところ、変化はなく5級の判定で良好なものであった。また、耐色移行性も無く5級の判定であり良好なものであった。剥離強力は36.2N/cmであり、その剥離箇所はインクジェット印刷前の剥離強力測定時の不織布層とポリウレタン多孔質層の界面であった。また、耐磨耗性は440回であった。表2にその物性を示す。
[実施例
<人工皮革(皮革様シート状物)−8の作成>
実施例で得られた表面に開孔部を有するシート状物−3の表面に、有機溶剤系顔料インクを用いる代わりに、インクジェットプリンター(EPSON社製、PM−4000PX)にて水系顔料インク(PX−Pインク)を使用して720DPI(ドット/インチ)の解像度の風景画を印刷した後、120℃で1分間熱処理を施した以外は実施例と同様にして、人工皮革(皮革様シート状物)−8を得た。なお、使用したインクは、シアン ICC23、マゼンタ ICM23、イエロー ICY23、ライトシアン ICLC23、ライトマゼンタ ICLM23、グレー ICGY23、フォトブラック ICBK23、およびマットブラック ICMB23である。得られた人工皮革−8の表面は、微細で鮮明な画像が印刷されていた。なお、耐光堅牢性を測定したところ、変化はなく5級の判定で良好なものであった。また、耐色移行性も無く5級の判定であり良好なものであった。剥離強力は30.5N/cmであり、その剥離箇所はインクジェット印刷前の剥離強力測定時の不織布層とポリウレタン多孔質層の界面であった。また、耐磨耗性は390回であった。表2に物性を併せて示す。
[実施例
<人工皮革(皮革様シート状物)−9の作成>
実施例で得られた表面に開孔部を有するシート状物−3の表面に、有機溶剤系顔料イ
ンクを用いる代わりに、インクジェットプリンター(ラスタープリンター社製、RP−7
20UVZ)にてUV硬化顔料タイプのインク(シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシ
アン、ライトマゼンタ、およびブラック)を使用して720DPI(ドット/インチ)の
解像度の風景画を印刷した以外は実施例と同様にして、人工皮革(皮革様シート状物)
−9を得た。得られた人工皮革−9の表面は、微細で鮮明な画像が印刷されていた。なお
、耐光堅牢性を測定したところ、変化はなく5級の判定で良好なものであった。また、耐
色移行性も無く5級の判定であり良好なものであった。剥離強力は34.7N/cmであ
り、その剥離箇所はインクジェット印刷前の剥離強力測定時の不織布層とポリウレタン多
孔質層の界面であった。また、耐磨耗性は1360回であった。表2に物性を併せて示す。
参考例5
<人工皮革(皮革様シート状物)−10の作成>
実施例で得られた表面に開孔部を有するシート状物−3の表面に、有機溶剤系顔料インクを用いる代わりに、インクジェットプリンター(EPSON社製、PM3700C)にて染料インク(IC5CL06、およびIC1BK05)を使用して720DPI(ドット/インチ)の解像度の風景画を印刷した以外は実施例と同様にして、人工皮革(皮革様シート状物)−10を得た。得られた人工皮革−10の表面は、微細で鮮明な画像が印刷されていたが、耐光堅牢性を測定したところ、部分的に色が退色変化し元の色彩とは程遠いものであり2級の判定であった。また、耐色移行性も3級の判定であり白色人工皮革表面に色が転写されていた。また、剥離強力は、32.9N/cmとインクジェットプリンターでの印刷前とほぼ同等であり、耐磨耗性は410回であった。表2に物性を併せて示す。
[比較例2]
実施例で得られた表面に開孔部を有するシート状物−3を印刷に用いる代わりに、実施例の途中で得られた、表面に開孔していない多孔層を有する繊維質基体(複合構造物)−2を用いる以外は、参考例5と同様にしてインクジェットプリンター(EPSON社製、PM3700C)にて染料インク(IC5CL06、およびIC1BK05)を使用して720DPI(ドット/インチ)の解像度の風景画を印刷し、人工皮革を得た。得られた人工皮革の表面は、微細で鮮明な画像が印刷されていたが、耐光堅牢性を測定したところ、部分的に色が退色変化し元の色彩とは程遠いものであり2級の判定であった。また、耐色移行性も3級の判定であり白色人工皮革表面に色が転写されていた。また、剥離強力は、11.5N/cmと低く、その剥離箇所はインクジェット印刷の顔料層であり、人工皮革として各用途の使用に耐えられる物ではなかった。また、耐磨耗性は32回であり、顔料層の剥離が原因であった。表2に物性を併せて示す。
Figure 0004778864

Claims (7)

  1. 繊維質基体上に多孔層を有する銀付調皮革様シート状物の製造方法であって、多孔層の表面に溶剤を塗布する方法により繊維質基体上の多孔層を開孔させ、その表面にインクジェット法により顔料インクからなる画像を形成することを特徴とする銀付調皮革様シート状物の製造方法。
  2. 画像を有する表面のさらに外側に水溶液あるいは水分散液をコーティングし、高分子弾性体層を形成する請求項1記載の銀付調皮革様シート状物の製造方法。
  3. 画像を形成する顔料インクが有機溶剤系、水系またはUV硬化系である請求項1または2に記載の銀付調皮革様シート状物の製造方法。
  4. 表面の投影面積に対する開孔部の合計面積が1%以下である請求項1〜3のいずれか1項記載の銀付調皮革様シート状物の製造方法。
  5. 多孔層の開孔部が繊維質基体から連通したものである請求項1〜4のいずれか1項記載の銀付調皮革様シート状物の製造方法。
  6. 繊維質基体が極細繊維を含むものである請求項1〜5のいずれか1項記載の銀付調皮革様シート状物の製造方法。
  7. 多孔層が高分子弾性体溶液を湿式凝固させて得たものである請求項1〜5のいずれか1項記載の銀付調皮革様シート状物の製造方法。
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