JP6817837B2 - インクジェット印刷人工皮革及び加飾成形体 - Google Patents

インクジェット印刷人工皮革及び加飾成形体 Download PDF

Info

Publication number
JP6817837B2
JP6817837B2 JP2017021687A JP2017021687A JP6817837B2 JP 6817837 B2 JP6817837 B2 JP 6817837B2 JP 2017021687 A JP2017021687 A JP 2017021687A JP 2017021687 A JP2017021687 A JP 2017021687A JP 6817837 B2 JP6817837 B2 JP 6817837B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
artificial leather
inkjet
printed
base material
fibers
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017021687A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018127736A (ja
Inventor
伸一 吉本
伸一 吉本
和洋 米澤
和洋 米澤
正勝 西原
正勝 西原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kuraray Co Ltd
Komatsu Matere Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
Komatsu Matere Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Family has litigation
First worldwide family litigation filed litigation Critical https://patents.darts-ip.com/?family=63172248&utm_source=google_patent&utm_medium=platform_link&utm_campaign=public_patent_search&patent=JP6817837(B2) "Global patent litigation dataset” by Darts-ip is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International License.
Application filed by Kuraray Co Ltd, Komatsu Matere Co Ltd filed Critical Kuraray Co Ltd
Priority to JP2017021687A priority Critical patent/JP6817837B2/ja
Publication of JP2018127736A publication Critical patent/JP2018127736A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6817837B2 publication Critical patent/JP6817837B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Coloring (AREA)
  • Synthetic Leather, Interior Materials Or Flexible Sheet Materials (AREA)

Description

本発明は、インクジェット印刷された起毛面を有する人工皮革及びその人工皮革を用いた加飾成形体に関する。
従来、人工皮革の表面に模様や図柄を施す方法として、インクジェットプリンタを用いて印刷するインクジェット印刷技術が知られている。近年、例えば、タブレット端末やスマートフォン端末の保護カバーケースなどにインクジェット印刷で染色された人工皮革が検討されている。しかしながら、人工皮革にインクジェットプリンタを用いて印刷することは、紙にインクジェットプリンタを用いて印刷することとは異なる種々の課題があった。
例えば、下記特許文献1は表面濃色でにじみ防止された高品位の染色を可能にすることを目的として、特定の前処理と発色方法とを組み合わせたインクジェット法による人工皮革である極細繊維構造物の染色方法を開示する。また、下記特許文献2は、布帛にインクジェット印刷する技術において、インクの滲みを抑制したり、表面のインクの抜けである目ムキを向上させたりする技術を開示する。また、下記特許文献3及び下記特許文献4は人工皮革にインクジェット印刷する技術において、インクの滲みを抑制したり、耐候性や耐移行性を向上させたりする技術を開示する。
特公平7−88635号公報 特開2014−177714号公報 特開2008−57062号公報 特開平11−158782号公報
人工皮革をインクジェット印刷する技術においては、従来、目的とする発色を得るために、明度の高い自然色の人工皮革基材や人工皮革基材の表面に積層した白色の印刷層に印刷していた。しかしながら、自然色の人工皮革基材や白色の印刷層に印刷した場合、人工皮革の端面が見えるような用途においては、端面に人工皮革の断面が露出してインクジェット印刷の色調と自然色の人工皮革の断面との色調の違いが表出し、一体感のない美観に乏しい外観になるという問題があった。特に、インクジェット印刷人工皮革を樹脂成形体等の表面に積層一体化して用いるような用途では、さらに樹脂成形体の端面が表出して各層が異なる色調の端面を露出させるためにさらに美観が乏しくなるという問題があった。
本発明は、端面における美観を改良したインクジェット印刷人工皮革及びそれを用いた加飾成形体を提供することを目的とする。
本発明の一局面は、不織布と不織布の内部に付与された高分子弾性体とを含む人工皮革基材を含み、人工皮革基材は全体が着色されており、且つ、インクジェット印刷された起毛面を有するインクジェット印刷人工皮革である。このようなインクジェット印刷人工皮革によれば、インクジェット印刷された起毛面を含む表層と、その表層以外の着色された内層との明度差を小さくすることができるために、人工皮革の端面が見えるような用途において、端面に人工皮革の断面が露出してインクジェット印刷の色調と自然色の人工皮革の断面との色調の違いを抑制でき、それにより、美観に優れたインクジェット印刷人工皮革が得られる。また、インクジェット印刷された起毛面の染料が退色した場合に褪色を目立たなくする。
また、人工皮革基材は、高分子弾性体に付着した無機顔料で着色されていることが、耐光性に優れる点から好ましい。
また、インクジェット印刷された起毛面のL***表色系に基づくL*値が最も低い色の部分のL*値(L* a)とインクジェット印刷されていない部分のL*値(L* )との明度差ΔL*(L* -L* a)が50以下であることが好ましい。このような場合には、インクジェット印刷された部分とインクジェット印刷されていない部分の明度差が小さいために、より端面の美観に優れたインクジェット印刷人工皮革が得られる。具体的には、インクジェット印刷された起毛面の明度L*値(L* a)が50以下である場合には、L*値(L* )が80以下になるように着色することが明度差ΔL*を小さくできる点から好ましい。
また、不織布は、平均繊度0.1〜0.8dtexの極細繊維を含む不織布であることが、しなやかさを維持しながら、高い耐光性を保持できる点から好ましい。
また、起毛面は平均立毛長30〜100μmの、不織布から起毛された繊維を有することが、インクジェット印刷された起毛面において部分的にドット状に色抜けする、いわゆる目ムキが生じにくくなる点から好ましい。
また、乾熱収縮率(130℃,10分間,60%RH)が2.0%以下、20%強力が5.0kg/2.5cm以上であることが伸び縮みせず形態安定性に優れているために、インクジェット印刷において図柄が正確に印刷される点から、好ましい。
また、本発明の他の一局面は、上記インクジェット印刷人工皮革と、インクジェット印刷人工皮革を樹脂成形体に積層一体化した加飾成形体である。
本発明によれば、人工皮革の端面が見えるような、例えば加飾成形体に一体化されるような用途において、端面に人工皮革の断面が露出してインクジェット印刷の色調と自然色の人工皮革の断面との色調の違いを抑制できる。
本実施形態のインクジェット印刷人工皮革は、不織布と不織布の内部に付与された高分子弾性体とを含む人工皮革基材を含み、人工皮革基材は全体が着色されており、且つ、インクジェット印刷された起毛面を有する。このようなインクジェット印刷人工皮革をその製造方法の一例に沿って詳しく説明する。
本実施形態のインクジェット印刷人工皮革の製造においては、はじめに、不織布と不織布に含浸付与された高分子弾性体とを含み、全体が着色された人工皮革基材を準備する。
不織布の繊度としては、平均繊度が1dtexを超えるような繊度であっても、平均繊度が1dtex以下の極細繊維であってもよい。本実施形態においては、代表例として、極細繊維の不織布を用いる場合について詳しく説明する。
極細繊維の不織布の製造においては、はじめに、極細繊維発生型繊維の繊維ウェブを製造する。繊維ウェブの製造方法としては、極細繊維発生型繊維を溶融紡糸し、これを意図的に切断することなく長繊維のまま捕集するような方法や、ステープルに切断した後、公知の絡合処理を施すような方法が挙げられる。なお、長繊維とは、所定の長さで切断処理されたステープルではない繊維であり、その長さとしては、例えば、100mm以上、さらには、200mm以上であることが繊維密度を充分に高めることができる点から好ましい。長繊維の上限は、特に限定されないが、連続的に紡糸された数m、数百m、数kmあるいはそれ以上の繊維長であってもよい。これらの中では、インクジェット印刷において、伸び縮みせず形態安定性に優れているために図柄が正確に印刷される点から、極細繊維発生型繊維の長繊維ウェブ(スパンボンドシート)を製造することが特に好ましい。本実施形態においては、代表例として、極細繊維発生型繊維の長繊維ウェブを製造する場合について詳しく説明する。
なお、極細繊維発生型繊維とは、紡糸後の繊維に化学的な後処理または物理的な後処理を施すことにより、極細繊維を形成するための繊維である。その具体例としては、例えば、繊維断面において、マトリクスとなる海成分のポリマー中に、海成分とは異なる種類のドメインとなる島成分のポリマーが分散されており、後に海成分を除去することにより、島成分のポリマーを主体とする繊維束状の極細繊維を形成する海島型複合繊維や、繊維外周に複数の異なる樹脂が交互に配置されて花弁形状や重畳形状を形成しており、物理的処理により各樹脂が剥離することにより分割されて束状の極細繊維を形成する剥離分割型複合繊維、等が挙げられる。海島型複合繊維によれば、後述するニードルパンチ等の絡合処理を行う際に、割れ、折れ、切断などの繊維損傷が抑制される。本実施形態では、代表例として海島型複合繊維を用いて長繊維の極細繊維(極細長繊維)を形成する場合について詳しく説明する。
海島型複合繊維は少なくとも2種類のポリマーからなる多成分系複合繊維であり、海成分ポリマーからなるマトリクス中に島成分ポリマーが分散した断面を有する。海島型複合繊維の長繊維ウェブは、海島型複合繊維を溶融紡糸し、これを切断せずに長繊維のままネット上に捕集して形成される。
島成分ポリマーは極細繊維を形成しうるポリマーであれば特に限定されない。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリトリメチレンテレフタレート(PTT),ポリブチレンテレフタレート(PBT),ポリエステル弾性体等のポリエステル系樹脂またはそれらのイソフタル酸等による変性物;ポリアミド6,ポリアミド66,ポリアミド610,ポリアミド12,芳香族ポリアミド,半芳香族ポリアミド,ポリアミド弾性体等のポリアミド系樹脂またはそれらの変性物;ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリエステル系ポリウレタンなどのポリウレタン系樹脂等が挙げられる。これらの中では、PET,PTT,PBT,これらの変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂が、熱処理により収縮しやすいために充実感のある人工皮革基材が得られる点から好ましい。また、ポリアミド6,ポリアミド66等のポリアミド系樹脂はポリエステル系樹脂に比べて吸湿性があってしなやかな極細繊維が得られるために、膨らみ感のある柔らかな風合いを有する人工皮革基材が得られる点から好ましい。また、島成分ポリマーは本発明の効果を損なわない範囲で、顔料などの着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、防黴剤、無機微粒子等をさらに含有してもよい。
海成分ポリマーとしては、島成分ポリマーよりも溶剤に対する溶解性または分解剤による分解性が高いポリマーが選ばれる。また、島成分ポリマーとの親和性が小さく、かつ、紡糸条件において溶融粘度及び/又は表面張力が島成分ポリマーよりも小さいポリマーが海島型複合繊維の紡糸安定性に優れている点から好ましい。このような海成分ポリマーの具体例としては、例えば、水溶性ポリビニルアルコール系樹脂(水溶性PVA)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−プロピレン系共重合体、エチレン−酢酸ビニル系共重合体、スチレン−エチレン系共重合体、スチレン−アクリル系共重合体などが挙げられる。これらの中では水溶性PVAが有機溶剤を用いることなく水系媒体により溶解除去が可能であるために環境負荷が低い点から好ましい。
海島型複合繊維は海成分ポリマーと島成分ポリマーとを複合紡糸用口金から溶融押出する溶融紡糸により製造することができる。複合紡糸用口金の口金温度は海島型複合繊維を構成するそれぞれのポリマーの融点よりも高い溶融紡糸可能な温度であれば特に限定されないが、通常、180〜350℃の範囲が選ばれる。
海島型複合繊維の断面における海成分ポリマーと島成分ポリマーとの平均面積比は5/95〜70/30、さらには10/90〜50/50であることが好ましい。また、海島型複合繊維の断面における島成分のドメインの数は特に限定されないが、工業的な生産性の観点からは5〜1000個、さらには、10〜300個程度であることが好ましい。
複合紡糸用口金から吐出された溶融状態の海島型複合繊維は、冷却装置により冷却され、さらに、エアジェットノズルなどの吸引装置により目的の繊度となるように1000〜6000m/分の引取速度に相当する速度の高速気流により牽引細化される。そして牽引細化された長繊維を移動式ネットなどの捕集面上に堆積させることにより長繊維ウェブが得られる。なお、必要に応じて、形態を安定化させるために長繊維ウェブをさらに熱プレスすることにより部分的に圧着させてもよい。このようにして得られる長繊維ウェブの目付はとくに限定されないが、例えば、10〜1000g/m2の範囲であることが好ましい。
そして、得られた長繊維ウェブに絡合処理を施すことにより絡合ウェブを製造する。
長繊維ウェブの絡合処理の具体例としては、例えば、長繊維ウェブをクロスラッパーを用いて厚さ方向に複数層重ね合わせた後、その両面から同時または交互に少なくとも1つ以上のバーブが貫通する条件でニードルパンチするような処理が挙げられる。
長繊維ウェブには海島型複合繊維の紡糸工程から絡合処理までのいずれかの段階において、油剤や帯電防止剤を付与してもよい。さらに、必要に応じて、長繊維ウェブを70〜150℃程度の温水に浸漬する収縮処理を行うことにより、長繊維ウェブの絡合状態を予め緻密にしておいてもよい。また、ニードルパンチの後、熱プレス処理することによりさらに繊維密度を緻密にして形態安定性を付与してもよい。
また、絡合ウェブを必要に応じて熱収縮させることにより繊維密度及び絡合度合が高められる処理を施してもよい。熱収縮処理の具体例としては、例えば、絡合ウェブを水蒸気に接触させる方法や、絡合ウェブに水を付与した後、絡合ウェブに付与した水を加熱エアーや赤外線などの電磁波により加熱する方法が挙げられる。また、熱収縮処理により緻密化された絡合ウェブをさらに緻密化するとともに、絡合ウェブの形態を固定化したり、表面を平滑化したりすること等を目的として、必要に応じて、熱プレス処理を行うことによりさらに、繊維密度を高めてもよい。収縮処理工程における絡合ウェブの目付の変化としては、収縮処理前の目付に比べて、1.1倍(質量比)以上、さらには、1.3倍以上で、2倍以下、さらには1.6倍以下であることが好ましい。このようにして得られる絡合ウェブの目付としては100〜2000g/m2程度の範囲であることが好ましい。
そして、緻密化された絡合ウェブ中の海島型複合繊維から海成分ポリマーを除去することにより、繊維束状の極細長繊維の絡合体である極細長繊維の不織布が得られる。海島型複合繊維から海成分ポリマーを除去する方法としては、海成分ポリマーのみを選択的に除去しうる溶剤または分解剤で絡合ウェブを処理するような従来から知られた極細繊維の形成方法が特に限定なく用いられうる。具体的には、例えば、海成分ポリマーとして水溶性PVAを用いる場合には溶剤として熱水が用いられ、海成分ポリマーとして易アルカリ分解性の変性ポリエステルを用いる場合には、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性分解剤が用いられる。
海成分ポリマーとして水溶性PVAを用いる場合、80〜100℃の熱水中で100〜600秒間処理することにより、水溶性PVAの除去率が95〜100質量%程度になるまで抽出除去することが好ましい。なお、ディップニップ処理を繰り返すことにより、水溶性PVAを効率的に抽出除去できる。水溶性PVAを用いた場合には、有機溶剤を用いずに海成分ポリマーを選択的に除去することができるために、環境負荷が低く、また、VOCの発生を抑制できる点から好ましい。
極細繊維の平均繊度としては0.001〜2dtex、さらには0.002〜1dtex、とくには、0.1〜0.8dtexの極細繊維を含む不織布であることが、しなやかさを維持しながら、高い耐光性を保持できる点から好ましい。極細繊維の平均繊度が高すぎる場合には、インクジェット印刷による発色性や耐光性は向上する一方で、しなやかさを失う傾向がある。また、極細繊維の平均繊度が低すぎる場合には、耐光性や発色性が低下する傾向がある。なお、平均繊度は、得られるインクジェット印刷人工皮革の厚さ方向に平行な断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で1000倍で拡大撮影し、万遍なく選択された100本の断面積から、繊維を形成する樹脂の密度を用いて換算することにより求められる。
また、極細繊維の不織布の目付は、140〜3000g/m2、さらには200〜2000g/m2であることが好ましい。
本実施形態の人工皮革基材の製造においては、不織布に形態安定性や充実感を付与することを目的として高分子弾性体を含浸付与することが好ましい。極細繊維の不織布に高分子弾性体を付与する方法としては、極細繊維化する前の絡合ウェブや極細繊維化した後の不織布に高分子弾性体を含有するエマルジョン,分散液,または溶液を含浸させた後、乾燥凝固させる乾式法または湿式法等により凝固させる方法が挙げられる。なお、凝固後に架橋構造を形成する高分子弾性体を用いた場合には、架橋を促進させるために、必要に応じて、凝固及び乾燥後に熱処理するキュア処理を行ってもよい。
高分子弾性体の具体例としては、例えば、ポリウレタン、アクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等の弾性体が挙げられる。これらの中ではポリウレタンが好ましい。
なお、ポリウレタンは、ポリウレタンエマルジョン、または、水系媒体に分散されたポリウレタン分散液等の水性液から凝固されるポリウレタンが特に好ましい。また、エマルジョンが感熱ゲル化性を有している場合には、エマルジョンがマイグレーションすることなく感熱ゲル化するので、高分子弾性体を繊維絡合体に均一に付与することができる。
高分子弾性体のエマルジョン、分散液、または溶液等の含浸方法としては、プレスロール等で所定の含浸状態になるように絞るという処理を1回又は複数回行うディップニップ法や、バーコーティング法、ナイフコーティング法、ロールコーティング法、コンマコーティング法、スプレーコーティング法等が挙げられる。
高分子弾性体の含有割合としては、不織布の繊維の質量に対して、0.1〜60質量%、さらには0.5〜60質量%、とくには1〜50質量%であることが、得られる人工皮革基材の充実感としなやかさ等のバランスに優れる点から好ましい。
このようにして人工皮革基材が得られる。このようにして得られた人工皮革基材は、必要に応じて厚さ方向と垂直な方向に複数枚にスライスしたり、研削したりすることにより厚さ調節された後、起毛処理される。具体的には、人工皮革基材の少なくとも一面を、好ましくは120〜600番手、さらに好ましくは320〜600番手程度のサンドペーパーやエメリーペーパーを用いてバフィング処理することにより起毛処理が施されて起毛面に仕上げられる。
また、人工皮革基材の起毛面には、起毛された繊維の素抜けを抑制したり、摩擦により起こされにくくしたりするためにその根元近傍に高分子弾性体を固着させる、目止めを行うことが好ましい。具体的には、起毛面に高分子弾性体を含有する樹脂液を塗布した後、高分子弾性体を凝固させる。このように起毛面に存在する繊維の根元近傍を高分子弾性体で固着させることにより、起毛面に存在する繊維の根元近傍が高分子弾性体で拘束されて、繊維が素抜けしにくくなる。
また、人工皮革基材は、さらに風合いを調整するために柔軟性を付与する収縮加工処理や揉み柔軟化処理を施したり、逆シールのブラッシング処理、防汚処理、親水化処理、滑剤処理、柔軟剤処理、酸化防止剤処理、紫外線吸収剤処理、蛍光剤処理、難燃剤処理等の仕上げ処理を施されたりしてもよい。
例えば、収縮加工処理としては、人工皮革基材を弾性体シートに密着させてタテ方向に機械的に収縮させ、その収縮状態で熱処理してヒートセットするような処理が挙げられる。この収縮加工処理についてさらに詳しく説明する。
収縮加工処理は、人工皮革基材をタテ方向(製造ラインの進行方向、または繊維の配向方向)に機械的に収縮させ、繊維を収縮させたまま熱処理してヒートセットすることにより、繊維の配向方向であるタテ方向に平行な断面において、繊維にミクロなうねりを形成させる。このようなうねりは繊維が伸びきっておらず、収縮している状態でセットされているために、タテ方向に伸縮性が付与される。収縮加工処理としては、例えば、人工皮革基材を厚さが数cm以上の厚い弾性体シート(ゴムシート、フェルトなど)のタテ方向に伸長した表面に密着させ、弾性体シートの表面を伸長状態から伸長前の状態に弾性回復させることにより、人工皮革基材をタテ方向に収縮させる方法が挙げられる。
収縮加工処理においては人工皮革基材を進行方向(タテ方向)に追い込むように収縮させるので、収縮加工処理された人工皮革基材は、極細繊維の繊維束と任意の高分子弾性体からなるミクロな挫屈構造(うねり構造)を有していることが好ましい。ミクロな挫屈構造は人工皮革基材がタテ方向に収縮した結果、タテ方向に沿って生じるうねり構造であり、収縮加工処理された人工皮革基材は極細繊維からなる不織布構造を有しているので、このうねり構造が形成され易い。うねり構造は連続している必要はなく、タテ方向に不連続であっても良い。収縮加工処理された人工皮革基材は、繊維自体の伸縮性ではなく、このような挫屈構造の変化(伸長)によりタテ方向に伸びる。
このようにして得られた起毛面を有する人工皮革基材は、全体が着色される。ここで、全体が着色されるとは、後述するインクジェット印刷のように印刷される面を選択的に染色するような着色ではなく、人工皮革基材の全体を均質に着色することを意味する。人工皮革基材の全体を着色する方法としては、人工皮革基材を染料液中に浸漬して不織布を形成する繊維を染色する方法や、不織布中に人工皮革基材を均質に着色するための顔料と、顔料のバインダとなる高分子弾性体を含浸付与する方法が挙げられる。これらの中では、不織布中に顔料と高分子弾性体とを含浸付与することにより着色する方法が、生産性に優れる点から好ましい。
不織布中に含浸付与される顔料としては、その種類は特に限定されない。その具体例としては、例えば、亜鉛華,鉛白,リトポン,二酸化チタン,沈降性硫酸バリウムおよびバライト粉等の白色顔料、鉛丹,酸化鉄赤等の赤色顔料、黄鉛,亜鉛黄(亜鉛黄1種、亜鉛黄2種)等の黄色顔料、ウルトラマリン青,プロシア青(フェロシアン化鉄カリ)等の青色顔料、カーボンブラック等の黒色顔料、フタロシアニン系,アントラキノン系,キナクリドン系,ジオキサジン系,イソインドリノン系,イソインドリン系,インジゴ系,キノフタロン系,ジケトピロロピロール系,ペリレン系,ペリノン系等の縮合多環系有機顔料、ベンズイミダゾロン系,縮合アゾ系,アゾメチンアゾ系等の不溶性アゾ系等の有機顔料が挙げられる。これらの中では無機顔料が耐光性に優れる点から特に好ましい。
全体が着色された人工皮革基材の着色においては、後述するインクジェット印刷された起毛面のL***表色系に基づくL*値が最も低い色の部分のL*値をL* aとし、全体が着色された人工皮革基材においてインクジェット印刷されていない部分のL*値の平均をL* とした場合、両者の差(L* -L* a)が50以下、さらには45以下になるように着色することが、インクジェット印刷された部分とインクジェット印刷されていない部分の明度差が小さいために、より端面の美観に優れたインクジェット印刷人工皮革が得られる点から好ましい。また、さらに具体的には、全体が着色された人工皮革基材の着色においては、L*値(L* )が80以下、さらには75以下になるように着色することが好ましい。
なお、人工皮革基材は分散染料等の染料で染色したり、顔料による着色と染色とを組み合わせたりして、上述のようなL*値(L* )に着色されてもよい。染色方法としては、高圧液流染色法、ジッガー染色法、サーモゾル連続染色機法、昇華プリント方式等による染色方法が特に限定なく用いられる。しかしながら、染料で染色した場合には堅牢性が低くなるために、顔料で着色することが好ましい。
人工皮革基材の見かけ密度は、0.4〜0.7g/cm3、さらには0.5〜0.6g/cm3であることが緻密でにじみの少ない高精細にインクジェット印刷されたインクジェット印刷人工皮革が得られる点から好ましい。人工皮革基材の見かけ密度が低すぎる場合には、インクジェット印刷の際に人工皮革基材が伸び縮みしたり、表面形状が不安定になったりすることにより、印刷される図柄に歪み等が生じやすくなる傾向がある。
人工皮革基材は130℃で10分間、湿度60%RH以下で加熱したときの乾熱収縮率が2.0%以下、さらには1.0%以下であることが印刷デザインの再現性に優れるとともに、形態安定性にも優れる点から好ましい。人工皮革基材の乾熱収縮率が高すぎる場合にはインクジェット印刷の際に人工皮革基材が伸び縮みすることにより印刷される図柄に歪み等が生じやすくなる傾向がある。
また、人工皮革基材は、その20%強力が、5.0kg/2.5cm以上、さらには7.0kg/2.5cm以上であることが、工程通過性に優れる点から好ましい。人工皮革基材の20%強力が低すぎる場合には、インクジェット印刷の際に人工皮革基材が伸び縮みすることにより印刷される図柄に歪み等が生じやすくなる傾向がある。
このようにして得られた人工皮革基材の表面に図柄をインクジェット印刷する。インクジェット印刷の際の印刷はインクジェットプリンタを用いて行われる。インクジェットプリンタは、画像データにより特定された画像を人工皮革基材の表面に印刷する。
ここで、人工皮革基材の表面を着色するインクジェット印刷された起毛面においては、上述のように、起毛面のL*値が最も低い色の部分のL*値をL* aとし、全体が着色された人工皮革基材においてインクジェット印刷されていない部分のL*値の平均をL* とした場合、両者の明度差ΔL*(L* -L* a)が50以下になるように図柄を印刷することが好ましい。さらに具体的には、インクジェット印刷された起毛面においては、L*値(L* a)が50以下、さらには45以下、とくには、40以下になるように着色することが好ましい。L* aが50を超える場合には起毛面が淡色になるために本発明の効果を発現しにくくなる。
インクジェット印刷に用いられるインクに含まれる着色成分としては染料であっても顔料であってもよい。インクは、着色成分を配合して所定の色のインクに調製されている。
インクの着色に用いられる染料または顔料の具体例としては次のものが例示できる。ブラック色としては、例えば、ブラック(No.2300,No.900、MCF88、No.20B、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B(以上全て商品名、三菱化学(株)製)、カラーブラックFW1,FW2,FW2V,FW18,FW200,S150,S160,S170、プリテックス35、U、V、140U、スペシャルブラック6,5,4A,4,250(以上全て商品名、デグサ社(Degussa AG)製)、コンダクテックスSC、ラーベン1255,5750,5250,5000,3500,1255,700(以上全て商品名、コロンビアカーボン社(Columbian Carbon Japan Ltd)製)、リガール400R,330R,660R,モグルL、モナーク700,800,880,900,1000,1100,1300,1400、エルフテックス12(以上全て商品名、キャボット社(Cabot Corporation)製)等が挙げられる。また、シアン色としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1,2,3,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,15:34,16,18,22,60,65,66、C.I.バットブルー4,60等が挙げられる。また、マゼンタ色としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,40,41,42,48(Ca),48(Mn),57(Ca),57:1,88,112,114,122,123,144,146,149,150,166,168,170,171,175,176,177,178,179,184,185,187,202,209,219,224,245,254,264,C.I.ピグメントバイオレット19,23,32,33,36,38,43,50等が挙げられる。また、イエロー色としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,4,5,6,7,10,11,12,13,14,16,17,24,34,35,37,53,55,65,73,74,75,81,83,93,94,95,97,98,99,108,109,110,113,114,117,120,124,128,129,133,138,139,147,151,153,154,155,167,172,180,185,213等が挙げられる。
また、とくには、分散染料,カチオン染料,酸性染料,直接染料等の染料、とくには分散染料が、発色性や耐光性に優れる点から好ましい。分散染料の具体例としては、例えば、ベンゼンアゾ系染料(モノアゾ、ジスアゾなど)、複素環アゾ系染料(チアゾールアゾ、ベンゾチアゾールアゾ、キノリンアゾ、ピリジンアゾ、イミダゾールアゾ、チオフェンアゾなど)、アントラキノン系染料、縮合系染料(キノフタリン、スチリル、クマリンなど)等が挙げられる。これらは、例えば、「Disperse」の接頭辞を有する染料として市販されている。これらは、単独で用いてもよいが、通常、図柄を形成するために2種以上の染料を組み合わせて用いられる。
また、インクジェット印刷に際しては、人工皮革基材の表面を前処理剤で前処理することが好ましい。前処理を施すことにより、染料の滲みを抑えてシャープな図柄を形成しやすくなり、また、濃度が高く鮮明な色の図柄を印刷することができる。前処理の具体的としては、人工皮革基材の起毛面にパディング法やスプレー法などで前処理剤を付与した後、60〜170℃程度で乾燥するような方法が挙げられる。
前処理剤としては、水溶性高分子、還元防止剤、pH調整剤、多価金属塩などが挙げられる。水溶性高分子の具体例としては、例えば、アルギン酸ソーダ、ローカストビーン、加工でんぷん、カルボキシメチルセルロース(CMC)などが挙げられる。還元防止剤の具体例としては、例えば、m−ニトロベンゼンスルホン酸ソーダ、塩素酸ソーダなどが挙げられる。pH調整剤の具体例としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、第1リン酸ソーダなどが挙げられる。多価金属塩の具体例としては、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸マグネシウム、塩化バリウムなどが挙げられる。また、上記のものに限定されるものではなく、ブリード防止剤としてジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、N−アジリジルーN‘−アルキル尿素やワックスやキレート剤、分散剤、ポリグリセリンなどの多価アルコールなども含んでいてもよい。また、前処理剤は水を溶媒とした水溶液や分散液であっても、また、ターペンなども用いたエマルジョン(ハーフエマルジョン)であってもよい。
さらに、インクジェットプリンタによる印刷後においては、乾燥、好ましくは、50〜130℃で熱処理することにより定着性を向上させる後処理をすることも好ましい。
このようにして起毛面がインクジェット印刷された人工皮革が得られる。インクジェット印刷人工皮革の起毛面の起毛された繊維の長さは特に限定されないが、1〜500μm、さらには、4〜150μm、とくには30〜100μmであることがインクジェット印刷された起毛面において部分的にドット状に色抜けする、いわゆる目ムキが生じにくくなる点から好ましい。なお、起毛された繊維の長さは、インクジェット印刷人工皮革の起毛面の立毛を手で起こした状態で走査型電子顕微鏡(SEM)により断面写真を撮影し、任意の50本のその根本である絡合表面から立毛繊維の上端までの長さを計測し、その平均値を算出することにより得られる。
インクジェット印刷に際しては、人工皮革基材の表面を前処理剤で前処理することにより、染料の滲みを抑えてシャープな図柄を形成しやすくなり、インク本来の発色を発揮し、鮮やかなプリントが可能である。しかし、表面のみにインクが留まるとインク表面層が削られた際、容易に柄が消えてしまうため、用途毎に応じた染込深さを設定することが望ましい。なお、染込深さとしては、起毛の根元である基材表面から30〜50μmであることが表面の磨耗により印刷面が剥がれて、端面色が出にくい点で好ましい。
このようにして得られたインクジェット印刷人工皮革は、一般的な、衣料、靴、雑貨、ボール、内装材等の表皮材としての用途のほか、各種機器のハウジングやカバー等の樹脂成形体の表面に積層一体化して形成される加飾成形体の製造にも好ましく用いられる。加飾成形体の製造方法としては、インクジェット印刷人工皮革を基材となる樹脂成形体の形状に切り抜き、樹脂成形体の表面に接着層を介して接着したり、樹脂成形体に熱圧着したりして積層一体化する方法が用いられる。また、別の方法としては、射出成形の金型内に切り抜いたインクジェット印刷人工皮革を配置し、溶融樹脂を射出成形することにより成形される樹脂成形体の表面で一体化させるインモールド成形を用いた方法が挙げられる。なお、インモールド成形においては、インクジェット印刷人工皮革は予めプリフォーム成形されていてもよい。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は実施例により何ら限定されるものではない。
[実施例1]
海成分の熱可塑性樹脂としてエチレン変性ポリビニルアルコール(PVA)、島成分の熱可塑性樹脂としてイソフタル酸変性した変性PET(酸成分中のイソフタル酸単位の含有量6モル%)を、それぞれ個別に溶融させた。そして、海成分中に均一な断面積の島成分が25個分布した断面を形成しうるような、25個のノズル孔が並列状に配置された複合紡糸用口金に、それぞれの溶融樹脂を供給した。このとき、海成分と島成分との質量比が海成分/島成分=25/75となるように圧力調整しながら供給した。そして、口金温度260℃に設定されたノズル孔より溶融繊維を吐出させ、ノズル孔から吐出された紡糸速度が3700m/分となるように気流の圧力を調節したエアジェットノズル型の吸引装置で吸引することにより延伸し、平均繊度2.1dtexの海島型複合長繊維を紡糸した。紡糸された海島型複合長繊維は、可動型のネット上に、ネットの裏面から吸引しながら連続的に堆積させて海島型複合長繊維のシートを得た。そして、表面温度42℃の金属ロールでネット上の海島型複合長繊維のシートを軽く押さえ、表面の毛羽立ちを抑えてネットから剥離し、表面温度55℃の金属ロール(格子柄)とバックロール間で200N/mmの線圧で熱プレスすることにより海島型複合長繊維が表面で格子状に仮融着した目付31g/mの長繊維ウェブを得た。
次に、クロスラッパーを用いて長繊維ウェブを8層重ねて総目付が250g/m2の重ね合せウェブを作成し、更に、針折れ防止油剤をスプレーした。そして、重ね合せウェブをニードルパンチングすることにより三次元絡合処理した。具体的には、針先端から第1バーブまでの距離が3.2mmの6バーブ針を用いて積重体を針深度8.3mmで3300パンチ/cmでニードルパンチ処理して絡合させることによりウェブ絡合シートを得た。得られたウェブ絡合シートの目付は550g/m2であった。また、ニードルパンチ処理による面積収縮率は68%であった。
得られたウェブ絡合シートを110℃、23.5%RHの条件でスチーム処理した。そして、90〜110℃のオーブン中で乾燥させた後、さらに、115℃で熱プレスすることにより、目付1580g/m、見掛け密度0.681g/cm、厚さ2.28mmの熱収縮処理されたウェブ絡合シートを得た。
次に、熱収縮処理されたウェブ絡合シートに、ポリウレタン弾性体のエマルジョン(固形分22.5質量%)を含浸させた。そして、エマルジョンが含浸された熱収縮処理されたウェブ絡合シートを115℃、25%RH雰囲気下で乾燥し、さらに、150℃で乾燥した。次に、ポリウレタン弾性体が充填されたウェブ絡合シートを、ニップ処理、及び高圧水流処理しながら95℃の熱水中に10分間浸漬することによりPVAを溶解除去し、さらに、乾燥することにより、平均繊度0.2dtex、目付1110g/m、見掛け密度0.555g/cm、厚さ2.0mmである、ポリウレタン弾性体と極細繊維の長繊維の繊維束の絡合体である不織布との複合体を得た。複合体中のポリウレタン弾性体は、極細繊維の質量に対して、12質量%含浸付与されていた。
次に、ポリウレタン弾性体と極細繊維の長繊維の繊維束の絡合体である不織布との複合体を均等な厚さで2枚にスライスした。そして、スライス片の裏面を♯120ペーパーで、主面を♯240、♯320、♯600ペーパーを用い、速度3.0m/分、回転数650rpmの条件で両面を研削することにより、目付245g/m、見掛け密度0.544g/cm、厚さ0.45mmである基材を得た。そして、ポリウレタン弾性体を基材の表面に付与し、乾燥させることにより、起毛面における起毛された極細繊維の根元近傍を高分子弾性体で目止めした。
そして、目止めされた基材に、ポリカーボネート系自己乳化型水系エマルジョン1.0%owfと粒径0.5〜20μmの顔料(R/W ブラックB、合成系無機顔料0.2%(御国色素(株)製))とマイグレーション防止剤2g/L(アルギン酸ソーダ)を全層にPick UP 57%になるように含浸した後、乾燥することにより、全体がグレー系に着色された厚さ0.45mmの人工皮革基材を得た。
〈全体が着色された人工皮革基材の表面及び内層のL*値(L* )の測色〉
人工皮革基材をスライスして2分割した。そして、表面及びスライス面をそれぞれベンチトップ型積分球分光測色計(X-rite社 Ci7800)でD65光源を用いて測色した。その結果、表面及びスライス面ともにL*値(L* )が72であった。
〈20%強力〉
人工皮革基材から切り出した2.5cm×16cmの試験片を用いて、JISL1096の8.12.1「引張強度試験」に準じて応力−歪み曲線を得た。そして、応力−歪み曲線から20%伸びたときの応力を読み取り、20%強力を求めた。なお、試験は、人工皮革基材のタテ方向及びヨコ方向をそれぞれ3本ずつ測定し、それらの平均値を20%強力とした。
〈乾熱収縮率〉
人工皮革基材から切り出した30cm×30cmの試験片を130℃、60%RHの空気恒温槽中で10分間保持する乾熱処理を施した。そして、乾熱処理前後の面積収縮率を求めた。
次に、全体が着色された人工皮革基材の起毛面を含む両面にパディング法を用いて前処理剤(CMC,ポリアクリル酸,ポリグリセリン,水の混合物)を付与した後、120℃で3分間乾燥する前処理を行った。そして、マイクロピエゾ方式の産業用インクジェットデジタル捺染印刷機(セイコーエプソン(株)製:MonaLisa)を用いて、4色の単色染料を調合(吐出量の調整)して、指定カラーの各25色の2.5cm×2.5cmの正方形柄をそれぞれインクジェット印刷した。その後、余分な染料を洗浄した後、乾燥することにより各色に印刷されたインクジェット印刷人工皮革を得た。
なお、インクとしては、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色の分散染料系インクを用いた。
得られたインクジェット印刷人工皮革のインクジェット印刷された起毛面のL*値(L* a)を下記方法により測定し、L* aが39のものを選択した。そして、L* aが39のインクジェット印刷人工皮革について、さらに、端面品位、目ムキ、鮮鋭度(シャープネス)、耐光性、及びインク染込み深さを次の評価方法に従って評価した。
〈起毛面のL*値(L* a)〉
各色のインクジェット印刷された起毛面のL*値をベンチトップ型積分球分光測色計(Ci7800)でD65光源を用いて測色し、最もL*値の小さい色(最も濃い部分)のL*値(L* a)を求めた。
〈端面品位〉
A:印刷面と端面の色調差がなく、良好であった。
B:印刷面と端面の色調差が少なく、やや良好であった。
C:印刷面と端面の色調差があり、不良であった。
〈目ムキ〉
染料インクの浸み込みが足らず、染料が載らない部位の様子を目視し、次の基準で判定した。
A:目視で認識できる元の人工皮革色が印刷面になく、良好であった。
B:元の人工皮革色が印刷面の色にやや影響を及ぼしているが、良好であった。
C:ドット不良(欠点)があった。
〈鮮鋭度(シャープネス)〉
画像中の色や濃淡の変わり目であるエッジ部分のコントラストの大きさを目視し、次の基準で判定した。
A:8ptの文字サイズで太りがなく、良好であった。
B:8ptの文字サイズで太りが少しあり、やや良好であった。
C:8ptの文字サイズで太りがあり、不良であった。
〈耐光性〉
得られたインクジェット印刷人工皮革から縦横3cm×5cmの試験片を切り出し、インクジェット印刷された起毛面において、ASTM D4459に準じたキセノン耐候性試験機でキセノン照射レベルが0.8W/m(波長420nm)、照射時間120時間の耐光試験を行い、その前後における色差ΔEを求めた。
〈インク染込み深さ〉
得られたインクジェット印刷人工皮革の断面を(株)キーエンス製のマイクロスコープで観察し、起毛された繊維の根元からインクの染込んだ部分までの深さを計測した。
結果をまとめて表1に示す。
Figure 0006817837
[実施例2]
実施例1において、起毛繊維の長さを30μmから50μmに変更した以外は同様にして人工皮革基材及びインクジェット印刷人工皮革を製造し、評価した。結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1において、起毛繊維の長さを30μmから100μmに変更した以外は同様にして人工皮革基材及びインクジェット印刷人工皮革を製造し、評価した。結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例1の人工皮革基材の着色の際に、L値(L* )が72になるように着色した代わりに、人工皮革基材のL値(L* )が60になるように着色し、また、L* aが39のインクジェット印刷人工皮革の代わりにL* aが29のものを選択した以外は同様にして人工皮革基材及びインクジェット印刷人工皮革を製造し、評価した。結果を表1に示す。
[実施例5]
実施例1において、平均繊度0.2dtexから平均繊度0.1dtexに変更し、また、L* aが39のインクジェット印刷人工皮革の代わりにL* aが48のものを選択した以外は同様にして人工皮革基材及びインクジェット印刷人工皮革を製造し、評価した。結果を表1に示す。
[実施例6]
実施例1において、平均繊度0.2dtexから平均繊度0.3dtexに変更し、また、L* aが39のインクジェット印刷人工皮革の代わりにL* aが29のものを選択した以外は同様にして人工皮革基材及びインクジェット印刷人工皮革を製造し、評価した。結果を表1に示す。
[実施例7]
実施例1において、平均繊度0.2dtexから平均繊度0.8dtexに変更し、また、L* aが39のインクジェット印刷人工皮革の代わりにL* aが29のものを選択した以外は同様にして人工皮革基材及びインクジェット印刷人工皮革を製造し、評価した。結果を表1に示す。
[実施例8]
実施例1において、平均繊度0.2dtexから平均繊度1.9dtexに変更し、また、L* aが39のインクジェット印刷人工皮革の代わりにL* aが29のものを選択した以外は同様にして人工皮革基材及びインクジェット印刷人工皮革を製造し、評価した。結果を表1に示す。
[実施例9]
実施例1において、起毛繊維の長さを30μmから4μmに変更し、また、L* aが39のインクジェット印刷人工皮革の代わりにL* aが30のものを選択した以外はは同様にして人工皮革基材及びインクジェット印刷人工皮革を製造し、評価した。結果を表1に示す。
[実施例10]
実施例1において、起毛繊維の長さを30μmから150μmに変更し、また、L* aが39のインクジェット印刷人工皮革の代わりにL* aが29のものを選択した以外は同様にして人工皮革基材及びインクジェット印刷人工皮革を製造し、評価した。結果を表1に示す。
[実施例11]
実施例1において、平均繊度0.2dtexから平均繊度0.01dtexに変更した以外は同様にして人工皮革基材及びインクジェット印刷人工皮革を製造し、評価した。結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、人工皮革基材の全体を着色する工程を省略した以外は同様にして人工皮革基材及びインクジェット印刷人工皮革を製造し、評価した。結果を表1に示す。
表1を参照すれば、本件発明に係る実施例1〜11で得られたインクジェット印刷人工皮革は、何れも人工皮革基材が全体的に着色されているために、端面品位がAまたはBであって、端面の美観に優れていた。一方、比較例1で得られたインクジェット印刷人工皮革は、人工皮革基材が着色されていないために、端面品位がCであって、端面の美観に劣っていた。また、起毛面の繊維の長さに関し、長さ30〜100μmである実施例1〜7、10は何れも起毛面において部分的にドット状に色抜けする、いわゆる目ムキが生じなかった。
本発明で得られるインクジェット印刷人工皮革は、衣料、靴、家具、カーシート、雑貨製品、IT機器等の表皮素材、特に端面が露出する樹脂成形体に積層一体化して用いられる加飾用途に好ましく用いられる。

Claims (9)

  1. 不織布と前記不織布の内部に付与された高分子弾性体とを含む人工皮革基材を含み、
    前記人工皮革基材は全体が着色されており、且つ、インクジェット印刷された起毛面を有することを特徴とするインクジェット印刷人工皮革。
  2. 前記人工皮革基材は、前記高分子弾性体に付着した無機顔料で着色されている請求項1に記載のインクジェット印刷人工皮革。
  3. 前記インクジェット印刷された前記起毛面のL***表色系に基づくL*値が最も低い色の部分のL*値(L* a)と前記インクジェット印刷されていない部分のL*値(L* )との明度差ΔL*(L* -L* a)が50以下である請求項1または2に記載のインクジェット印刷人工皮革。
  4. 前記L*値(L* )が80以下である請求項1〜3の何れか1項に記載のインクジェット印刷人工皮革。
  5. 前記L*値(L* a)が50以下である請求項1〜4の何れか1項に記載のインクジェット印刷人工皮革。
  6. 前記不織布は、平均繊度0.1〜0.8dtexの極細繊維を含む請求項1〜5の何れか1項に記載のインクジェット印刷人工皮革。
  7. 前記起毛面は平均立毛長30〜100μmの前記不織布から起毛された繊維を有する請求項1〜6の何れか1項に記載のインクジェット印刷人工皮革。
  8. 乾熱収縮率(130℃,10分間,60%RH)が2.0%以下、20%強力が5.0kg/2.5cm以上である請求項1〜7の何れか1項に記載のインクジェット印刷人工皮革。
  9. 請求項1〜8の何れか1項に記載のインクジェット印刷人工皮革と、前記インクジェット印刷人工皮革を樹脂成形体に積層一体化したことを特徴とする加飾成形体。
JP2017021687A 2017-02-08 2017-02-08 インクジェット印刷人工皮革及び加飾成形体 Active JP6817837B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017021687A JP6817837B2 (ja) 2017-02-08 2017-02-08 インクジェット印刷人工皮革及び加飾成形体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017021687A JP6817837B2 (ja) 2017-02-08 2017-02-08 インクジェット印刷人工皮革及び加飾成形体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018127736A JP2018127736A (ja) 2018-08-16
JP6817837B2 true JP6817837B2 (ja) 2021-01-20

Family

ID=63172248

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017021687A Active JP6817837B2 (ja) 2017-02-08 2017-02-08 インクジェット印刷人工皮革及び加飾成形体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6817837B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN116209976A (zh) * 2020-09-29 2023-06-02 东丽株式会社 人造皮革及使用其而成的透光器件
JP2022056712A (ja) 2020-09-30 2022-04-11 セイコーエプソン株式会社 捺染方法、印捺物、及び記録装置

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH11158782A (ja) * 1997-09-24 1999-06-15 Kuraray Co Ltd 皮革様シート
JP2008050714A (ja) * 2006-08-23 2008-03-06 Teijin Cordley Ltd 皮革様シート状物およびその製造方法
JP4778864B2 (ja) * 2006-08-30 2011-09-21 帝人コードレ株式会社 銀付調皮革様シート状物の製造方法
JP4950598B2 (ja) * 2006-08-30 2012-06-13 帝人コードレ株式会社 シート状物の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018127736A (ja) 2018-08-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JPWO2015045367A1 (ja) 立毛調人工皮革及びその製造方法
JP6817837B2 (ja) インクジェット印刷人工皮革及び加飾成形体
JP6752579B2 (ja) 人工皮革基材及びその製造方法、並びにオイル調,起毛調,または銀面調人工皮革
JP6346873B2 (ja) 人工皮革
JP2021121702A (ja) 立毛調人工皮革
CN101965423B (zh) 皮革样片材及其制造方法
CN111433404B (zh) 经印刷的起毛片及印刷用起毛片
JP7220202B2 (ja) 立毛人工皮革及びその製造方法
KR101179066B1 (ko) 프린터 인쇄 및 붓글씨 쓰기가 가능한 기록용 원단 제조방법 및 그 기록용 원단
JPWO2017221961A1 (ja) 立毛調人工皮革及びその製造方法
JP2010070737A (ja) 天然皮革用乾式転写捺染用転写紙及び乾式転写捺染法
JP6163422B2 (ja) 皮革様シート及びその製造方法
KR102652061B1 (ko) 입모 인공 피혁 및 그 제조 방법
JP2008055686A (ja) シート状物の製造方法
EP4083311A1 (en) Napped artificial leather and manufacturing method therefor
JPWO2020137168A1 (ja) 立毛人工皮革及びその製造方法
JPS62187075A (ja) 転写材料及びそれを用いた皮革印刷物の製造方法
JP4021093B2 (ja) 柄模様を有するスエード調人工皮革及びその製造方法
JP2008050714A (ja) 皮革様シート状物およびその製造方法
TWI255305B (en) Artificial leather having color patterns and method of making same
TWI427206B (zh) Quasi - leather sheet and its manufacturing method
WO2023161254A1 (de) Transferfolie, beschichtungssystem und verfahren zum übertragen von abbildungen auf substrate
JP2021021159A (ja) 立毛人工皮革
JP2010106382A (ja) 銀付調皮革様シート

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170308

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20191106

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200625

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200929

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20201210

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20201225

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6817837

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R157 Certificate of patent or utility model (correction)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R157

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250